魔女「…」(334)

魔女「……」

ここに男が倒れている。

安価>>4

魔改造

魔女「…そうよね。倒れているのなら埋葬しなきゃ」

男をまいそうした。生けた屍蠢いている。

安価>>5

って自分じゃねぇかよ再度
>>10

終了

魔女「コーンに生まれたこのフフフン♪」

男「」

魔女「シャキッと咲かせてぇぇぇぇ!……ん?」

男「」

魔女「………」

男「」

魔女「………」キョロキョロ

男「」

魔女「いいもん見っけ……」にや……

ダダダダッ!



男「………」

……「中々起きないです」

魔女「放っておきなさいエインセル。その内目を覚ますでしょ」

エインセル「はい!です」

魔女「しかしまぁ……何で誰も来ない森にある池の畔何かに倒れてたんだか……」

エインセル「……魔女様を探しに来たんじゃ……です?」

魔女「………」

エインセル「………」

魔女「有り得るな……」

エインセル「どどどどうするんです!魔女様の力を悪用する為に!そして拘束され凌辱され肉奴隷にですッ!」

魔女「落ち着け……そんな事にはならないから……」

エインセル「いいえ!なるです!」

魔女「………」

エインセル「きっとこの人間は『ぐへへッこうなっちゃ魔女様も形無しだなぁ』ってですッ!」

魔女「………」

エインセル「で魔女様はッ!『くっ!このような事で私が屈伏するとでも!』ってです!」

魔女「………」

エインセル「『はははッ!そんな強がっていても……その潤った股を見せられては説得力が無いなぁええ?』」

エインセル「『こ、これは違う!断じて貴様の

魔女「………」ガスッ!

エインセル「ギャアァァッ!な、何するですか!」

魔女「エインセル……欲求不満なの?」

エインセル「……そんな事は無いです」

魔女「はぁ……雄の妖精見付けてきてあげようか?」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「……オベロン様似の格好良くて頭が良くて筋肉の付き方も程よい感じで背中には虹色の羽が付いてて雄の猛りもそれなりに大きくて交尾も最低二回以上出来て年収

魔女「エインセル……いくら私でもそれは無理だよ……」

エインセル「なッ!まだ探してもいないのに何故無理だなんて言うですかッ!」

魔女「無理なんだよ……」

エインセル「ふうぐぅ……どっかにいるです……どっかにいるです……」

魔女「もうあっち行ってろ……怪我人の側で騒ぐのもあれだから」

エインセル「はいです……」フラフラ……

魔女「理想が高過ぎなんだあいつは……そんなのいる訳無いだろ……」

男「ん……」

魔女「おや?起きるか?」



男「………」

魔女「起きたか」

男「ここは……?」

魔女「ここ?ここは近くて遠きし誰も訪れない森の中にある古屋」

男「………」

魔女 (声よし……ちょっと渋くて良いねぇクククッ)

男「……あ、あの魔女が住み着いてる場所ですか?」

魔女「そう、運がいいよアンタ。普通なら辿り着かないから」

男「ぐぅ……」じわ……

魔女「……?」

男「うぅゎ……良かった……来れたんだぁぁ……」

魔女「………」

男「ぐぅ……あぁう……」

魔女「……大の男がいきなり泣くな。あんた名前は?」

男「男……です。あ、あの!魔女はどこにいるんですか!?」

魔女「慌てなくても近くにいるから。あんた……男は何でこんな辺鄙な所に来たんだい?」

男「……それは」

魔女 (まぁ……大方、富や名声とか力とかだろうね……)

男「………」

魔女 (そんなくだらない用件だったら……骨の髄までしゃぶり尽くして叩き出すだけだなグヘヘッ!)

男「俺を殺して欲しいんです……」

魔女「あ?」

男「………」

魔女「………」

男「………」

魔女「なにそれ……つまらない……」

男「つまらないって……」

魔女「そんなの勝手に死ねばいいだろ……」

男「………」

魔女「どうせ死にてえ理由何か大した事無いんだろ?」

男「………」

魔女「女に振られたとか人生に絶望してとか……そんな理由ならここから今すぐ出て行け」

男「そんな理由じゃ無いです……」

魔女「ならなんだい?」

男「理由は……魔女に直接言わせてください」

魔女「魔女なら目の前にいる。ほら言え」

男「……は?」

魔女「アタシが魔女だ。何か文句でもあんのか?ああ?」

男「いえ……本当に魔女何ですか?」

魔女「そうだよ」

男 (随分若そうなのに……)

魔女「早く理由を言えっての!」

男「……勇者になれと言われたからです」

魔女「………」

男「………」

魔女「お前、そんなに強かったりいい血筋の人間なのか?」

男「いいえ……」

魔女「なら誰に勇者になれと言われた?」

男「夢の中で……女神にです……」

魔女「………」

男「これが理由です……」

魔女「わかった。ちょっと待ってな」



バターンッ!

魔女「おい!エインセル!」

エインセル「ぐらぁなえかえぅッ!」ビクゥッ!

魔女「………」

エインセル「な、なッ!魔女様入って来る時はノックくらいするですッ!」ササッ!

魔女「………」

エインセル「え、エチケットと言うものがなってないです!」

魔女「何隠した?」

エインセル「……何も……です」

魔女「出せ」

エインセル「何も隠して無いです!」

魔女「……ん?」

エインセル「………」

魔女「まあいい。あんま男の裸見てばかりいるなよ」

エインセル「グアッ!あ、アタクシは学術的に生命の神秘を紐解く努力をですね!」

魔女「へぇ……」

エインセル「………」

魔女「深く追及しないでおいてやる」

エインセル「……そうしてくださいです」

魔女「エインセルちょっと来い。仕事だ」

エインセル「仕事……です?」

魔女「ああ、あの男……勇者に選ばれたらしい……」

エインセル「へぇです」

魔女「本当かどうか見極めなければならん。だから来い」

エインセル「それ……嘘なんじゃないんです?」

魔女「わからんから来いって言っているんだ!」

エインセル「……めんどくさいですぅ」

魔女「………」

エインセル「アタクシに来いって事はあれをやるんです?」

魔女「そうだ……」

エインセル「あれ……凄い疲れるんですぅ」

魔女「で?」イラッ……

エインセル「何かアタクシが元気になるものでも……ね?です?」

魔女「………」

エインセル「はあ……何か無いですぅ?」

魔女「はいはい……後で水晶に投影してやるから……」

エインセル「何をです?」

魔女「いい男が全裸で!くんずほぐれつしてる場所」

エインセル「ッ!?」

魔女「……どうする?」

エインセル「いい男でも……が、ガチムチは嫌ですよ……?」

魔女「程よく筋肉が付いてる美少年

エインセル「やるですッ!さぁッ!何をボヤボヤしてるですかッ!」

魔女「………」

エインセル「早く行くですよッ!」

バターンッ!

魔女「色欲妖精め……」

魔女「………」

魔女「本当はそんな場所知らんけど……適当に男見せとけばいいか……」

魔女「しかし……本当に女神が選んだ勇者だったらあれだな……」

魔女「………」



男「………」ポカーン……

エインセル「そんな見詰められたら恥ずかしいです……」

魔女「……早く準備しろ」

男「これは……妖精ってものですか?」

魔女「そう。魔女の古屋にこんなのがいても不思議じゃ無いだろ」

男「はあ……」

エインセル「こんなのって言うなです!」

魔女「いいから!準備は出来たのか?」

エインセル「いつでもオッケーですぅ」

魔女「おい、いつまでも馬鹿みたいに口開けてないで話を聞け」

男「あ、はい……」

魔女「今からお前が本当に女神の神託があったのか見極める」

男「どうやって……?」

魔女「こいつを使ってさ」

エインセル「エッヘンですッ!」

男「………」

魔女「こいつの手を持ってエインセルって言ってごらんよ」

男「……するとどうなるんです?」

魔女「お前自信が今置かれている真実の姿になる」

男「意味がわかりません……」

魔女「まぁ見ればわかるさ」

男「はあ……」

魔女 (恐らく嘘か……勘違いか……)

男「………」

魔女 (それでもいい……死ぬ覚悟があるならもうここから帰らないだろうからさ……)

魔女 (ウヒョゥゥゥ!何したっていい!うん!若い男なんて久し振りだねぇッ!)

魔女「………」

魔女 (ヤバイな……アタシも欲求不満か?こんなんじゃエインセルと同じじゃないか……)



エインセル「さぁッ!ですッ!」

男「あの……」

エインセル「何です?」

男「これ……痛いですか……?」

エインセル「大丈夫ですぅ」ニタリ……

男「………」

エインセル「優しくぅ優雅にぃ情熱的にぃそして時には甘美で熱く激しい悦楽の如く手を持ってですッ!」

男「……そんな難しい事出来ません」

エインセル「簡単だからです!早くです!」バッ!

男 (なんだろう……凄い嫌だな……)ソゥ……

エインセル「………」

男「えーと……エインセル?」

シュバァァァアッ!

魔女「………」

エインセル「おお!……ってこの姿です……」

男「お、男の人になった……」

魔女「どうやらマジもんみたいだねぇ……」

エインセル「………」

男「これが……俺の真実の姿ってやつですか?」

魔女「そうだね。……チッ」

男「………」

魔女「これでわかったからあんたは休んでな。アタシらは向こうにいるから何かあったら呼んどくれ」

男「はぁ……はい……」

魔女「エインセル来い」

エインセル「ええ!?ちょっとこの人間の看病したいです!」

魔女「……何で?」

エインセル「ほら!せっかく人間の雄の姿になったんですから!肌と肌を合わせたお付き合いって

魔女「馬鹿野郎ッ!その姿でそんな事してみろ……岩と同化させて封印するぞ!」

エインセル「やめてです……アンジェロとか名前付いちゃうです……」

男「………」

魔女「さっさとしな!行くよ!」

エインセル「はぁいです……」

バタンッ……

男「………」

男「……あれが俺の真実の姿?」

男「どこかで見た記憶があるんだよな……」

男「………」



魔女「参ったね……」

エインセル「ほう……中々の大きさです……」

魔女「そんなもん見てないで早く元の姿に戻れ……」

エインセル「雄の体をもっと堪能させてです!」

魔女「いい加減にしろ……その姿は見ていたく無いんだ……」

エインセル「……この姿ってやっぱり昔魔女様が

魔女「頼むからやめろ」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「魔女様……」

魔女「なんだい……」

エインセル「はいです……」チラッ

魔女「………」

エインセル「魔女様も見たかったんです?いくらでも見てです」

魔女「死ねッ!エロ妖精!」

エインセル「なッ!死ねなんて酷いです!」ぶらん!

魔女「エロ妖精ってところも否定しろ!そしてスボンを上げろ!」

エインセル「好意で見せてるのにあんまりです!」ぶらん!

魔女「そんなのは好意じゃなぁぁい!」

エインセル「うぅ……アタクシが人肌脱いで……です……」ぶらん!

魔女「……しまえって」

エインセル「いいえ!しまいませんです!」ぶらん!

魔女「………」

エインセル「………」ムクッ……

魔女「本当……それ以上やったら切り取るからな……」

エインセル「はいです……」



魔女「………」

魔女「また同じ事繰り返すのかい……」

魔女「……運命だからって何も出来ないまま」

魔女「………」

魔女「笑えないね。何が運命だ、人が皆運命だからって全てを受け入れると思うなよ」

魔女「やってやろうじゃんか……勇者の運命とやら抗ってねじ曲げてやる……」

魔女「人間嘗めるなよ……」

魔女「………」



魔女「お前の頼みだけどね……アタシには無理だ」

男「………」

魔女「悪いね……」

男「いえ……いいです。こっちこそ無理な事を……」

魔女「……聞きたいんだがいいかい?」

男「何をでしょうか?」

魔女「何故……死んでまでも勇者になりたくないんだい?」

男「………」

魔女「………」

男「俺は……親父の元で靴職人として働いてたんです……」

魔女「………」

男「ちっちゃい頃から親父の仕事を見て育ちましたから……将来自分も同じ靴職人としての道を行くんだなって思ってました……」

魔女「………」

男「それが……いきなり勇者だなんて言われて……意味がわかりません」

男「俺の他にも立派な人は沢山います。何故その人達じゃなくて俺なのか……」

魔女「………」

男「……それに勇者になるとあれなんですよね?」

魔女「あれ?」

男「魔物を誘き寄せてしまうって……」

魔女「そうだね。いくら勇者になろうが魔物と会わなければ意味無いからねえ」

男「………」

魔女「それであれかい、夢を奪われ自分の周りには魔物も寄ってくるし人に迷惑をかけたくないから死にたいと」

男「はい……」

魔女「なるほど」

男「魔女さん……俺はどうやったら死ねるんでしょうか……」

魔女「………」

男「やっぱり勇者の勤めってやつを果たさないといけないんでしょうか……」

魔女「そうだな」

男「俺には無理です……武器も扱えない人間がいきなり勇者だなんて」

魔女「じゃあどうするんだい?」

男「………」

魔女「何も考えて無いみたいだねぇ」

男「すいません……ここに来られれば解決すると思ってたので……」

魔女「まあいい……アタシに助けを求めに来たのに無理だからって追い出しはしないから安心しな」

男「はい……」

魔女「さてとどうしょうかね……」

男「あの……俺も聞いていいですか?」

魔女「なんだい?」

男「さっきの真実の姿ってやつで現れた男の人は誰なんでしょうか?」

魔女「………」

男「どこかで見た事があるんですが……思い出せなくって」

魔女「あれはね……正義だなんだって宣って最後には裏切られ死んでった馬鹿な男さ……」

男「……知り合いなんですか?」

魔女「知り合い……そうだね。昔の勇者があいつだよ」

男「あっ……」

魔女「……?」

男「思い出しました!確か昔話の絵本に出てくる勇者があんな感じでした……」

魔女「………」

男「………」

魔女「多分その勇者がそいつだろうね」

男「あの話は本当にあった話だったんですか……」

魔女「何百年も前の話さ……」

男「へぇ……え」

魔女「なんだい?」

男「いえ……なんでも……」

魔女「……?」

男 (何百年も前の人と知り合い……?そんな歳なんだ……。やっぱり魔女なんだな……)

魔女「余計な事考えるんじゃ無いよ」

男「考えてません……そ、その人はどんな人だったんですか?」

魔女「あまり言いたく無

エインセル「こんな顔で『魔女、僕は正義の道を貫くよ(キリッ!)』とか言っちゃう人だったです」

魔女「おまっ!まだ元の姿に戻って無かったのかい!」

エインセル「だってぇ人間の!しかも雄になれる事なんか無いんですから!」

魔女「………」

エインセル「もう楽しくて楽しくてですッ!」

魔女「いい加減におしよ……」

エインセル「もうテンション上がっちゃって!です!」

男「………」

魔女「男になれたのがそんなに嬉しいもんかね……」

エインセル「嬉しいですよ!」

魔女「まぁいいから戻んな」

エインセル「嫌です」

魔女「………」

エインセル「まだ堪能したりないです」

魔女「しなくていいからさ……」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「魔女様に少しばか

魔女「お断りだ!」

エインセル「………」

魔女「馬鹿かい!どうせアタシの体でなんて言うんだろ!」

エインセル「その通りです」

魔女「誰がやらせるか……」

エインセル「ほう……です……」

魔女「……なんだい」

エインセル「誰でしたっけですぅ?むふふです……」

魔女「………」

エインセル「この体で責められて!ヒィヒィ喘いでいたのはです?」

魔女「言うな……」

男「………」

エインセル「アァァァァッ!勇者様のがぁぁですう!」

魔女「黙れ……」

エインセル「熱いぃぃ中で擦れてぇぇです!」

魔女「………」

男「………」

エインセル「奥にぃぃ奥にいっぱ

グワシンッ!

エインセル「ふぅがぁてす!」

魔女「言うな……黙れ……」

エインセル「てをふぁなすててすぅぅ!」

魔女「……何故知ってる?」

エインセル「………」

魔女「まぁそんな事はどうでもいい……馬鹿だよお前……」

エインセル「………」ガタガタ!

魔女「今……アタシはお前の顔を掴んでるね?」

エインセル「……ふぁいてす」

魔女「さて問題だ。答えは三択だよ」

エインセル「………」

魔女「アタシはこれからお前に対して何をするでしょう……」

エインセル「………」

魔女「一、地獄の業火で塵も残さず焼き尽くす」

エインセル「もがもがぁてす!」

魔女「二、冥界の絶氷で凍り付かせ粉々に砕く」

エインセル「えあぁぁてす!」バダバタッ!

魔女「暴れるんじゃないよッ!」

エインセル「ふぁああ……」ガタガタ……

魔女「三……手を離し解放する」

エインセル「ふぁん!ふぁんてす!」

魔女「なんてぇ!?」

エインセル「ふぁんてすッ!」バダバタッ!

魔女「へぇ……よくわかったね。正解だよ」

エインセル「………」ホッ……

魔女「普通は三を選ぶと思ったんだけどねぇ……まさか一を自ら選ぶなんて……」ニヤ……

エインセル「ふぁッ!?」

魔女「覚悟しな!来たれ我が手に地獄の業火よぉぉッ!」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「」グテ……

魔女「ふん……気絶したかい」

男「………」



魔女「さて……どうしようかねぇ……」

男「妖精さんは放っておいていいんですか……?」

魔女「いいよ。起きた時に殺されてないって歓喜するだろうさ」

男「はあ……」

魔女「ん……そうだ!お前魔物になりな!」

男「……はい?」

魔女「魔物になれば勇者になんかならずに済む。うん、いいねぇ!」

男「それ大丈夫何ですか……?」

魔女「大丈夫さ。魂の色をちょちょいと変えちまえばいいんだから」

男「痛くは……?」

魔女「さあ?どうだろうね。魔物になんかなった事無いからわからん」

男「……腕が増えたり目が増えたりするの嫌なんですけど」

魔女「………」ニヤ……

男「申し訳ありませんが嫌です……」

魔女「何言ってんだい。死ぬ覚悟はあるのに他の事は出来ないって?」

男「………」

魔女「大丈夫だって!見た目も変わらんから……多分」

男「………」

魔女「痛くもしないでおいてやるから……多分!」

男「………」

魔女「ほら立ちな!ここじゃ狭くて魔方陣描けないからね、外行くよ!」

男「………」

魔女「楽しみだねぇ!ふふふ」

男 (なんで楽しみ何ですかッ!凄い嫌だぁぁぁぁ……)



魔女「チッ……間違えた」カリカリ……

男「………」

魔女「チッ……はみ出しちまった……」カリカリ……

男「あの……魔女さん……」

魔女「なんだい!チィッまた間違えた!」

男「何度かやった事があるんですよね?」

魔女「無いよ。初めてさ」カリカリ……

男「………」

魔女「この歳になって初体験なんざするとはねぇクククッ」

男「大丈夫なんですよね?失敗したりしませんよね!?」

魔女「運が良けれりゃ失敗しないよ」

男「………」

魔女「こんなの簡単にやっちまう人間だっていたんだ。アタシにだって出来らあ」

男「………」

魔女「ここどうだったかな……適当でいいか」

男「適当はやめてください……」

魔女「うるさい!気が散る!」

男「………」

魔女「………」カリカリ……

男「人間を簡単に魔物へ変えてしまう人なんていたんですか?」

魔女「いたね……」カリカリ……

男「……恐ろしいですね」

魔女「そうだね……だがあれは馬鹿がやる所業だよ……」

男「それ……今やろうとしている事ですよね……?」

魔女「人助けだからアタシがやるのはいいんだよッ!文句あんのかい!」

男「いえ……」

魔女「あああッ!また間違えた!」

男「その人も魔女さんの知り合いなんですか?」

魔女「そう。錬金術師って言ってね……人間ながらとんでもない事をする奴だったよ」カリカリ……

男「………」

魔女「魔術、召喚、錬金術……魔法に関連するものなら何でもござれって奴でさ……」カリカリ……

男「………」

魔女「………」

男「……?」

魔女「………」カリ……

男「その……錬金術師と言う方はどんな人だったんですか?」

魔女「……人間って奴は復讐って言うのに取り付かれるとあそこまで狂うものかね」

男「……え?」

魔女「………」

男「………」

魔女「まあ……あれだよ裏切られて全てを失っちまった奴でさ……」

男「………」

魔女「可哀想な奴だったよ……優しくて気が利いて……ガキの面倒見も良くて……」

魔女「美人な女もいたのに全て他人に取られちまったのさ」

男「………」

魔女「後はお決まりの復讐をってやつだよ」

男「魔女さんは……その人を助けてあげられなかったんですか……?」

魔女「………」

男「………」

魔女「錬金術師からしたらアタシも裏切者の一員だったからね……聞く耳持ってくれなかったのさ」

男「………」



魔女「出来たッ!」

男「………」

魔女「ぐふふ……さあ!行くよ!」

男「あの……」

魔女「なんだい!今さら嫌だなんて言ってももう遅いよ!」

男「いえ……そうじゃなくて……」

魔女「あ?なんだ?」

男「あれなんですか……」

魔女「あれ?」

ォォ…………

男「………」

魔女「………」

ォォォォオオ………

男「大きい岩に見えるんですが……」

魔女「岩だね……」

男「こっちに飛んで来てますよね……」

魔女「……そうだねぇ」

男、魔女「………」

魔女「に、逃げるよぉぉッ!」

ォォオオオオゴゴ……

男「あわわわ……」

魔女「何してるんだい!立ちな!走りな!」

男「ひいぃぃ!」

グゴオオオオオ………

魔女「ま、間に合うか!?エカルラートトゥルム (緋色の塔) !!」

男「ああ……」



バキ……パラパラ……

魔女「………」

男「………」

魔女「……大丈夫かい」

男「ああ……は、はい……」

魔女「間に合って良かった……」

男「………」チラッ

魔女「なんなんだい一体……」

男「ま、魔女さん……今のは……それと古屋が……」

魔女「知らん……ん……ああああッ!?」

男「………」

魔女「あたあた、アタシの古屋が……消し飛んでる……」

男「………」

魔女「………」



魔女「うおおお……」

男「………」

魔女「長年集めに集めた秘薬やらがぁ……あああ……」

男「……魔女さん」

魔女「な、なんでこんな事に……」

男「聞いてもいいですか……」

魔女「なんだい……」

男「さっき魔女さんが俺にしようとした魔法でこうなったんじゃ無いですよね……?」

魔女「………」

男「………」

魔女「ば、馬鹿言うんじゃ無いよ!」

男「………」



魔女、男「………」

エインセル「魔女様ドイヒーですッ!」ぷんぷん!

魔女、男「………」

エインセル「いくら怒ったからって古屋ごとアタクシを消し飛ばそうとするなんてあんまりです!」

魔女「お前よく生きてたね……」

エインセル「アタクシを嘗めないで欲しいです!あれしきの事じゃ死なないです!」

魔女「へぇ……と言うかさ……お前の事すっかり忘れてたよ……」

男「妖精さんより古屋の事とかの方を残念がってましたもんね……」

エインセル「………」

魔女「一応言っとく。無事でなりよりだ」

エインセル「そっちの方でも酷いです……」

魔女「………」

エインセル「……ん?」

魔女「なんだい?」

エインセル「魔女様……変な匂いしないです?」

魔女「匂いだぁ?……」クンクン

エインセル「……魔女様がこれやったんじゃ無いです?」

魔女「違うよ……なるほど」

エインセル「………」

魔女「やってくれたね……」

男「原因わかったんですか?」

魔女「……お前を魔物に変えようとしたのが原因だね」

男「………」

エインセル (魔女様そんな事しようとしてたですか……)

魔女「チッ……どうあってもお前を勇者にしたいみたいだねぇ……」

男「勇者にって……これやったのはもしかして……」

魔女「そうだね、女神だろうさ」

男「………」

魔女「邪魔するなって警告のつもりなんだろ……これは」

男「………」

魔女「………」

エインセル「じゃ、じゃあこの人間を早く追っ払って安全確保をです!」

魔女「やだね!……チッ嘗められたもんだねアタシも」

エインセル「何かする気です……?」

魔女「全力で抗ってやろうじゃないか……女神に目にもの見せてやるッ!」

エインセル「………」

魔女「フェイの称号受けたアタシの実力見せてやんよッ!」

エインセル「魔女様……無茶はしない方がです……」

魔女「うるさいッ!」



魔女「………」カキカキ……

エインセル「はぁ……です」

男「妖精さん……」

エインセル「何です?」

男「また魔方陣ってやつを書いてますけど魔女さんはどうするつもりなんですか?」

エインセル「さあ?です。わからないですけどあんまり関わりたくない感じです」

男「そうですか……後、魔女さんが言っていたフェイって言うのは何ですか?」

エインセル「フェイって言うのは偉い魔女が貰える称号ですよ」

男「へぇ……」

エインセル「………」

男「………」

エインセル「わかって無いです?」

男「はい……すいません」

エインセル「仕方無い人間ですね……魔女にも色々いてです」

男「はい……」

エインセル「灰被り姫の話は知ってるです?」

男「それならわかりますけど……それが?」

エインセル「あの話に出てくる魔女はフェイなんです」

男「………」

エインセル「ああ言う魔女がフェイと言われてるんです」

男「へぇ……」

エインセル (こいつまだわかってないって顔してるです……)

魔女「出来たあッ!」

エインセル「………」

魔女「こう一日に何度も魔方陣描くと目がシパシパするねぇ……」

エインセル「……この魔方陣はです?」

魔女「転移魔方陣」

エインセル「……どこ行くです?」

魔女「い、い、と、こ、ろ!」

エインセル「………」

魔女「さあ入りな。行くよ」

エインセル「え、遠慮しとくです……」

魔女「なんで?」

エインセル「………」

魔女「なんだ……女神に楯突こうってのが怖いかい?」

エインセル「はいです……」

魔女「ふん……じゃあ来なくていい。男、入りな」

男「……またさっきみたくならないですよね?」

魔女「大丈夫。また岩が降ってきても魔術で防いでやるさ」

男「………」

魔女「さっきも防げたんだから安心しなって」

男「はあ……出来たらちゃんと行き先を教えて欲しいんですけど……」

魔女「あんま頼りたく無いんだかねぇ……ある男の所へ行くのさ」

エインセル「………」ピクッ

魔女「………」

エインセル「………」

魔女「……これがね中々いい男でねぇ」

エインセル「………」ピクッピクッ!

魔女「………」

エインセル「………」

魔女「上腕二頭筋と上腕三頭筋のバランスも良くってねぇ……」

エインセル「……ああ、魔女様」

魔女「なんだい?」

エインセル「も、もしアタクシがどうしても必要なら行ってやってもいいです」

魔女「……別に来なくていいよ」

エインセル「ええ……でもアタクシが居れば

魔女「本当に来なくていいから」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「付いて行かせてくださいですッ!」

魔女「だけどね……お前怖いんだろ?」ニヤ……

エインセル「何を仰います魔女様ッ!恐怖心などあの雲ひとつ無い晴れ渡る青空の如く微塵も御座いませんですぅッ!!!!」

魔女「……曇ってるけどね」

エインセル「連れてってくださいよぉですぅ……」

魔女「仕方無いね……来な」

エインセル「はいです!」

ーー

魔女「着いたよ」

男「ここは……洞窟ですか……?」

魔女「そうだよ。まったくこんな所によく居られるもんだよ」

カツーン……

男「………」

エインセル「………」

カツーン……カツーン………

エインセル「魔女様……この音はです?」

魔女「金属か何か叩いてんだろ。行くよ」

エインセル「………」

男「何かの鉱山なんですかね?」

エインセル「わからないです……」

男「………」



カツーン……

……「………」ピタッ

魔女「あれま、相変わらず辛気臭い顔してるねぇ」

……「あ……あがが……な、なんでいるんだ!」

魔女「なんでって来たからいるんだよ」

……「帰れッ!!」

魔女「いきなり挨拶だね。ドヴェルグ」

ドヴェルグ「こ、ここはお前が来る所じゃないだろ!」

魔女「………」

ドヴェルグ「帰れぇ!」

魔女「帰ってやってもいいが……アレ寄越しな」

ドヴェルグ「……アレ?なんじゃいアレって」

魔女「お前が作ってる物だよ」

ドヴェルグ「やらん」

魔女「そうかい……へぇ……そうかいそうかい……」

ドヴェルグ「………」

魔女「ここは……ちょっと狭いねぇドヴェルグ……」

ドヴェルグ「………」

魔女「もう少し……広くした方が良いと思うんだかねぇドヴェルグぅぅ……」

ドヴェルグ「やめんか……」

魔女「それはお前次第さね……クククッ」

ドヴェルグ「……わかったわい。持ってけ」



男「妖精さん……あの人?は魔女さんの知り合いなんですかね?」

エインセル「………」

男「……妖精さん?」

エインセル「まさか……あの小汚いオッサンじゃ無いです……」

男「………」

エインセル「………」

男「あ、あの……」

エインセル「ババア……やってくれたです……」

男「………」

エインセル「アタクシを騙すなんて……許さないですッ!」

男「何するかわかりませんが止めておいた方が……」

エインセル「人間うるさいです!」

男「………」

エインセル「よし!お前も一緒に魔女様をババアって言うです」

男「出来ません……」

エインセル「何でです!お互い力じゃ敵わないから言葉の暴力で抗うですッ!」

男「………」

エインセル「早くですッ!さあです!」

男「俺を巻き込まないでください……」

エインセル「ああ?意気地が無いですね!ババア謀ったなですッ!って言えばいいです!」

魔女「………」

男「………」

エインセル「ムキーッ!もうどうしてやるですかぁぁぁぁッ!」

男「何もしない方が……」

エインセル「アホですか!魔女様ババアにギャフンと言わせたいんですッ!」

魔女「言葉の暴力ってどうやるんだい?」

エインセル「ふふふッ!恥ずかしい秘密を暴露してやるです!」

男「………」

エインセル「これでババアは!『やめてエインセル……昔のエインセルそんなんじゃ無かったわ……』ってです!」

魔女「………」

エインセル「『今のエインセル……怖い……。昔はあんなに優しかったのに……』」

エインセル「『残念だったなぁぁこれがアタクシの本性なのさですぅう』」

エインセル「『そ、そんな……』」

エインセル「『グハハハ……今更詫びても遅い……ババア後悔しろですぅぅ!』」

魔女「へぇ……で、結末はどうなるんだい?エインセルさぁん」

エインセル「………」

男「………」

エインセル「なんで……居るって言わないです……」

男「時既に遅し……だったので……」

魔女「さあ……言葉の暴力とやらを披露して御覧よ……エインセルさぁん」

エインセル「………」

魔女「なんだい黙って。エインセルさあん早くしてくださいよぉ」

エインセル「ごめんなさいです……」

魔女「………」

エインセル「………」

魔女「さてエインセルさん……いつもの問題いっておこうか」

エインセル「勘弁してくださいです……」

魔女「今回はサービスで二択にしてあげるよ」

エインセル「……五十択くらいがいいです」

魔女「雨と雪……どっちがいい?」

エインセル「………」

魔女「早く選びなッ!」

エインセル「しょ、詳細キボンヌです……」

魔女「仕方無いねぇ……まず雨は普通の雨さ」

エインセル「じゃあそれで!です!」

魔女「……いいのかい?濡れた所から燃え出して苦しみながら逝くけどねぇ」

エインセル「全然普通じゃ無いです……」

魔女「次に雪……これは一瞬だから痛くは無いさ」

エインセル「じゃ、じゃあそれで!です!」

魔女「……いいのかい?爆散したお前の破片が雪みたく降る事になるけどねぇ」

エインセル「………」

魔女「さあ……選びな」

エインセル「無理です……」

ドヴェルグ「お前こそさっさと選んで帰れッ!」

魔女「あ?……まあそうだね。エインセル後でね!アハハハハ!」

エインセル (な、なんとか誤魔化しきらないと大変な事になるです……)

魔女「で?どの武器がそれなんだい?」

ドヴェルグ「……それ?」

魔女「ああ。こうアタシにはどれかわからなくてね」

ドヴェルグ「お前……ただ武器が欲しいだけじゃ無いのか?」

魔女「そんな物いるかい」

ドヴェルグ「じゃあ……何が欲しいんだ……」

魔女「神殺しの武器だよ。早く出しな」

ドヴェルグ「まだ出来とらんわい」

魔女「はあああ?お前……何百年かかってるんだい……」

ドヴェルグ「仕方無いだろうが!材料も作り方もわからんのだから!」

魔女「使えないねぇ……」

ドヴェルグ「………」

魔女「全く……あてが外れたよ」

ドヴェルグ「もし出来とってもお前にはやらんわい」

魔女「何でさ?」

ドヴェルグ「あのな……お前はわしらの敵だったんだぞ……」

魔女「それで?」

ドヴェルグ「そんな奴にわしが生涯賭けてる物やる訳無いだろうが……」

魔女「ケチ臭い男だねぇ……」

ドヴェルグ「………」

魔女「なんだい?何か言いたそうな顔して」

ドヴェルグ「お前な……わしらにした事忘れてるのか?」

魔女「……ん、忘れた」

ドヴェルグ「こ、こいつ……アホか!お前のせいでわしらがどんなめにあったか!」

魔女「そんな昔の事……」

ドヴェルグ「………」

男 (魔女さん……この人?に何やったんだろ……)

ドヴェルグ「もういいわい……それに無いもんはやれん。帰れ」

魔女「はいそうですかで帰れるか」

ドヴェルグ「本当……帰ってくれ……。第一、神殺しの武器なんぞ何に使う?」

魔女「神を殺す為さ。それ以外でそんなもんいるかい」

ドヴェルグ「………」

魔女「………」

ドヴェルグ「は?お前……」

魔女「………」

ドヴェルグ「事情はわからんが……それがどう言う事なのか

魔女「わかってる。それに喧嘩を売ってきたのは向こうさ。なら買ってやれってな」

ドヴェルグ「………」

男「魔女さん……」

魔女「なんだい?」

男「……この方は?それにさっきから物騒な言葉が聴こえてくるんですけど……」

魔女「こいつかい。こいつは神殺しの武器を造ろうとしてる奴だよ」

男「その神殺しとは……?」

魔女「言葉通りの意味さ」

男「………」

ドヴェルグ「おい……」

魔女「なんだいうるさいね」

ドヴェルグ「……こいつ人間だろ?」

魔女「ああ、そうさ。それがなんだい?」

ドヴェルグ「わしが人間嫌いなのわかっての嫌がらせか……」

魔女「……忘れてた。悪ったよ」

ドヴェルグ「ならここから出て行かせろ……」

魔女「嫌だね」

ドヴェルグ「なんで……」

魔女「そりゃお前、こいつがアタシと一緒に神を殺しに行くからさ」

男、ドヴェルグ「……は?」

魔女「それじゃなきゃドヴェルグ、お前に神殺しの武器をくれだなんて言うかい」

男、ドヴェルグ「………」

魔女「なんだい?」

男「そそそそそそそんな事聞いてませんよ!」

魔女「そりゃそうだろ。言ってないからね」

男「なんで!何がどうなったらそうなるんですか!?」

魔女「……お前勇者になりたく無いんだろ?」

男「そうですけど……」

魔女「なら大元をぶっ倒せば全て解決じゃないか」

男「いや……あの……もっと他に方法ありますよね?」

魔女「無い。あるなら言ってごらんよ」

男「………」

魔女「な?無いだろ。じゃあ決まりだ」

男「………」

魔女「お前は勇者にならずに済む、アタシはメンツやら過去の……まあ色々仕返しも出来る。良いことづくめじゃないか」

男「でも……」

魔女「もう決まった事だ諦めな」

ドヴェルグ (人間……人間ってだけでお前の事は嫌いだが同情するわい……)



魔女「ドヴェルグよ、神殺しの武器を造るのに何が足りないんだい?」

ドヴェルグ「………」

魔女「お前の生涯を賭けた仕事を手伝ってやろうってんだ。早く言いな!」

ドヴェルグ「……魔王の魂の破片が込められた武器がいるわい」

魔女「………」

ドヴェルグ「………」

魔女「あれかい……」

ドヴェルグ「あれだ……」

男「……?」

魔女「またとんでもない物を必要とするじゃないか……」

ドヴェルグ「仕方あるめえ……今じゃそれぐらいしか神に対抗出来る物が無いんじゃから」

魔女「困ったねえ……どうしたものか……」

てす

男 (また……禍々しい名前が……)

魔女「あいつはどこにいるんだい」

ドヴェルグ「知らん」

魔女「まあ……お前が知ってる訳無いか……」

ドヴェルグ「………」

フォシュン……

精霊「オッス!ドヴェルグ!今日こそは秘蔵のお酒……」

魔女、ドヴェルグ「………」

精霊「………」

ドヴェルグ (こいつまた何て間の悪い時に……)

精霊「どどどドヴェルグ!今忙しいみたいだから僕帰るよッ!」

魔女「待ちな……」にや……

精霊「ななななななんで君がいるのッ!?」

魔女「あんた……いい時に来るじゃないかぁ……」ガシッ!

精霊「ひぃぃッ!は、離して!」

魔女「ちょうどお前に頼みたい事があったんだよぉ」

精霊「……頼みたい事って?」

魔女「ほら、前にアタシに寄越したアレをまた寄越しな」

精霊「………」

魔女「………」

精霊「嫌だけど……」

魔女「なんで?」

精霊「今持ってないし」

魔女「なんで持って無いんだい!」

精霊「また人間達に渡したからね」

魔女「お前もまだそんな事やってんのかい……」

精霊「そんな事って……僕にとってはね!」

魔女「まったく……揃いも揃って使えない奴等だねぇ……」

精霊、ドヴェルグ「………」

魔女「おい精霊。お前人間に返して貰っておいでよ」

精霊「嫌だよ……ドヴェルグさ、これなに?どういう事?何で魔女いるの?」

魔女「………」

ドヴェルグ「こいつ……神殺しの武器が欲しいんだと」

精霊「はぁぁあ?」

魔女「………」



エインセル「………」

男「何か突然現れた方と話してますけど……あの方も魔女さんの知り合いなんですかね?」

エインセル「キタです……」

男「はい?」

エインセル「荒れ狂う大海原を一陣の微風が救いの衣を纏い降り立った……です……」

男「意味がわかりません……」

エインセル「……オベロン様とは違う不思議な感じのいい男ですぅ」

男「………」

エインセル「これはきっと運命と言う神がアタクシくれた思し召しに間違いないです!」

男「………」

エインセル「こうしちゃいられないですッ!」バサバサッ!

男「何であんなに必死なんだろ……」



精霊「あのさ……今さら君には必要無いだろ?何で欲しいの?」

魔女「今必要になったから欲しいんだよ」

精霊「なんで?」

魔女「あそこにいる男……女神の信託で勇者に選ばれたんだよ」

精霊「………」

魔女「勇者になりたく無いんだとさ」

精霊「……な、なら君が助けてあけなよぉ」

魔女「助けようとしたさ。そしたらどうなったと思う?」

精霊「……どうなったの?」

魔女「あいつもろとも殺されそうになった」

精霊「………」

魔女「これがアタシじゃ無かったら女神の思い通りになったろうがそうはいかない」

精霊「………」

魔女「喧嘩売られて黙っていられるかいッ!」

精霊「………」

魔女「上等だその喧嘩買ってやれってね!……そうすればあいつも勇者にならずに済む」

精霊「………」

魔女「それに……借りも返さなきゃならないしねぇ……」

精霊「……そ、そっかぁ」

魔女「………」

精霊 (どどどどどうしよう!多分あの男が勇者にって……僕のせいだなぁ……)

魔女「だからアレ寄越しな。あまり気は進まないがあのボンクラでいいから」

精霊「……いや、協力してあげたいんだけどね……無理だよ」

魔女「ああ?どうせまた失敗するんだ。こっちに寄越せばいいだろ!」

精霊「またとか言わないで……」

魔女「いいから!」

精霊「よくないし!それにね……フフフ」

魔女「……?」

精霊「今回はうまくいくような感じなんだよ」

魔女「へぇ。安心しな失敗するから」

精霊「しないって!」

魔女「するね」

精霊「なんでそう言い切れるのさ!?」

魔女「寄越さないならアタシが邪魔してやるからね」

精霊「………」

魔女「槍と斧と剣……どれがいいかねぇ……クククッ!」

精霊「ほ、本気でやめてよ……」

魔女「なら寄越せ」

精霊「………」

魔女「………」

精霊「悪いけど絶対にあげられない……今回だけは本当にいけそうなんだよッ!」

魔女「………」

精霊「………」

魔女「……そんなに凄い人間がいたのかい?」

精霊「いたね……」

魔女「へぇ……どんな奴等だい?」

精霊「黄泉を見た者と真言使い、生ける者の理を嗅覚で感じ取れる男に普通の女だね」

魔女「ほう……真言使いなんてまた珍しいもん見付けてきたね」

精霊「僕もそれだけ必死なんだよ」

魔女「……最後の普通の女ってのは?」

精霊「………」

魔女「お前……あのボンクラと組ませる為に……」

精霊「仕方無いだろ……ちょうどいい人間いなかったんだから……」

魔女「………」

精霊「でもね、意外とうまくやってるんだよ。君以外の人間とね」

魔女「へぇ……」

精霊「………」

魔女「それだけ人間揃えたのに邪魔するのも悪いねぇ……」

精霊「そう!悪い!だから無理!」

魔女「そうかい……なら新しく造りな。喋る武器をさ!」

精霊「………」

魔女「変人とガキとボンクラ以外の中身だったら文句は無いよ。出来るんだろ?」

精霊「いや……それも無理かな……」

魔女「なんでだい!」

精霊「そんな事したら僕……消滅しちゃうよ……」

魔女「すればいいじゃないか。どうせ結末は同じだろ?」

精霊「無茶苦茶言わないでよ……出来る訳無いじゃないか……」

魔女「………」

エインセル「魔女様ぁぁですぅ」

魔女「……突然なんだい?」

エインセル「この方……どなたですぅ?」

魔女「………」

精霊「………」

エインセル「ちょっと内気なアタクシに紹介して欲しいですけどぉ!」

魔女「なんだいエインセル。こいつを気に入ったのかい?」

エインセル「やだ魔女様!そんな事は……大いにありまくりで防波堤決壊です!」

精霊「………」

魔女「へぇそうかい」

エインセル「だから!仲を取り持ってです!」

魔女「こいつはやめた方がいい」

エインセル「なんでです!こんな素敵で不思議な感じのお方そうはいないですよ!」

精霊「………」

魔女「こいつは魔王だよ」

エインセル「アタクシとちょっと違う感じですから精霊さんか何かです?妖精と精霊ってお似合いだと思わないですかッ!?」

魔女「こいつは魔王だよ」

エインセル「まあ異種姦に寛容なアタクシですからもう全然オールオッケーですよッ!?」

魔女「こいつは魔王だよ」

エインセル「困っちゃうですぅ……次から次へと未来設計図が完成しまくっちゃうですッ!」

魔女「こいつは魔王だよ」

エインセル「子供は八人くらいがいいです?いやぁ周りからビックマザーとか言われちゃうですぅ」

魔女「こいつは魔王だよ」

エインセル「女の子と男の子はやっぱり半々がいいですかね!」

精霊「………」

魔女「エインセル……」

エインセル「なんです?」

魔女「現実を見たくないのはわかるが……本当だよ。こいつは魔王だ」

エインセル「………」

精霊「………」

エインセル「……馬王?です?」

魔女「魔王!」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「……全然構わないです」

魔女、精霊「は?」

エインセル「今日からアタクシは魔王の配下兼愛人に降るぞぉぉぉッ!魔女様!ですッ!」

魔女「だとさ……」

精霊「いらないよ……」



男「……あの」

ドヴェルグ「………」

男「あの!」

ドヴェルグ「聴こえてるわ……なんじゃい?」

男「ま、魔王とかって聴こえましたけど……」

ドヴェルグ「それがどうかしたのか。わしは人間嫌いなんじゃ。話しかけるな」

男「………」

ドヴェルグ「………」

男「……その」

ドヴェルグ「話し掛けるなと言ったッ!」

男「その金槌……立派ですね。……それに使われて嬉しそうな……」

ドヴェルグ「………」

男「こめんなさい……そう思っただけですから……」

ドヴェルグ「………」

男「………」

ドヴェルグ「お前……ここにある武器達がどう見える?」

男「どう……ですか……」

ドヴェルグ「………」

男「なんて言うか……期待みたいな思いが籠ってるって言うか……」

ドヴェルグ「………」

男「誰かに選ばれるのを待ってるって言うか……そんな風に見えます……」

ドヴェルグ「………」

男「……おかしいですよね。こんな事思うなんて……」

ドヴェルグ「………」

男「………」

ドヴェルグ「なら……これはどう見える?」

男「これは?」

ドヴェルグ「ある魔物が大切に持っていた刀と言うもんだ。折れてはいるがな」

男「魔物に……刀?ですか……」

ドヴェルグ「………」

男「この刀ですか……凄い悲しそうに見えますけど……」

ドヴェルグ「そっか……」

男「………」

ドヴェルグ「………」

男「………」

ドヴェルグ「お前、鍛冶屋か何かしてたのか?」

男「何故そんな事を聞くんです?」

ドヴェルグ「いいから答えんかい」

男「……俺は靴職人をしてました」

ドヴェルグ「してました?今は違うのか?」

男「勇者に選ばれちゃいましたから……ははは」

ドヴェルグ「………」

男「死のうにも死ねず……夢も半ばで諦めなきゃならないって……勇者になるって何なんですかね……」

ドヴェルグ「………」

男「………」

ドヴェルグ「………」

精霊「あんまり近寄らないでくれるかなッ!」

エインセル「それは出来ません魔王様ぁですッ!」

精霊「魔女!この妖精何とかしてよッ!」

魔女「そいつはシツコイからねぇ……頑張って振り払いな」

精霊「………」

ドヴェルグ「やかましいわい!ここにいるなら静かにせんかい!」

男「………」



精霊「………」
エインセル「………」

魔女「どうすりゃいいかねぇ……」

精霊「ねぇ魔女、あの男は本当に勇者に選ばれたで間違いないの?」

魔女「……間違いない。エインセルで確かめたからね」

精霊「そっか……」

魔女「エインセル使ったら……あれだ、元の槍の持ち主が現れたからね」

精霊「………」

魔女「なんだい……」

精霊「いや……ごめんねって……」

魔女「………」

ドヴェルグ「おい精霊」

精霊「なに?」

ドヴェルグ「あの人間……多分魂の色相見えとるぞ」

精霊「………」

魔女「……本当なのかい?」

ドヴェルグ「もしかしたら色で見えてるのじゃ無いかもしれんが近いもんを持っとる」

精霊「……まあ勇者に選ばれるくらいだから普通の人間にって訳にはいかないよね」

ドヴェルグ「お前が横取り

精霊「アアアアーッ!アアアッ!」

ドヴェルグ「なんじゃい?」

精霊「ドヴェルグッ!40万だからねッ!」

ドヴェルグ「はぁ?」

魔女「………」ジィ……

精霊「………」

ドヴェルグ「なんじゃ?」

魔女「………」ジィ……

精霊「……ぁ……ぁぁ」

ドヴェルグ「???」

魔女「お前……男が勇者に選ばれた事に関与してるね?」

精霊「なななななんの事かなぁぁぁ……」ビクゥッ!

魔女「エインセル……」

エインセル「はいです?」

魔女「好きにしていいよ……そいつの体をねぇッ!」

精霊「………」

エインセル「………」ニタリ……

精霊「……言うよ。多分そうなるかな、そこの男が勇者に選ばれたのは僕のせいかもね」

エインセル「脱ぐですッ!脱がすですッ!脱がせば脱がざるでぇぇぇすぅぅぅッ!」

魔女「おっと。お待ちよエインセル」ガシッ

エインセル「ガルルルルルッ!」バタバタッ!

精霊「………」

魔女「聞かせて貰おうか。どう言う事だい」

精霊「……まあ、あれだよ……少し前に女神に選ばれた勇者候補がいたんだよ」

魔女「………」

精霊「わざわざ天使使ってさ君は勇者だぁ!ってね」

魔女「で?」

精霊「そのね……その勇者候補を僕が横取りした……かな?」

魔女「………」

精霊「あは……はは……凄いんだよその人間……」

魔女「………」

精霊「本当にさ……凄

魔女「あの男が勇者に選ばれたのは全部お前が悪いんじゃないかいッ!ああッ!?」

精霊「全部じゃ無いんじゃないかなぁ……はは……」

魔女「いいや!全部お前が悪いッ!」

精霊「………」

魔女「……どう落とし前付ける気だい?」

精霊「陰ながら応援してるよ!頑張って!」

魔女「アホかッ!……今から問題出すよ」

精霊「も、問題?」

魔女「これからアタシと男の為に神殺しの武器を制作する事に協力するか……」

精霊「だから協力しないって……」

魔女「……エインセルをこのまま離す……どっちがいい?」

エインセル「ギャギャギャアアアアッ!!」バタバタッ!

精霊「………」

魔女「選びな。……協力と凌辱どちらがお前にとって害が無いか……ね」ニヤ……

精霊「……も、もしだよ?協力しなかったら僕はどうなる?」

魔女「こいつを見ればわかるだろ……」

エインセル「グヘヘヘヘッ!雄の体ぁぁぁ雄のぉぉぉッ!」バタバタッ!

精霊「………」

魔女「悪い事は言わない。協力した方が……いいと思うねアタシは」

精霊「わかったよ……協力するから……」

魔女「おし」



精霊「はぁ……」

エインセル「……zzz」

魔女「まさか睡眠呪文連発しなきゃ眠らないなんてね……」

精霊「………」

魔女「どんだけ飢えてたんだいこいつは……」

精霊「……魔女さ」

魔女「なんだい?」

精霊「協力するって言っといてなんだけど……もう喋る武器を精製出来るだけの力は僕には無いよ?」

魔女「じゃあなんなら出来るんだい」

精霊「そうだね……武具に魂を込めるくらいかな……」

魔女「………」

精霊「あの武器達の半分くらいしか出来ないって思って貰っていい」

魔女「そうかい……」

精霊「………」

魔女「半分か……」

ドヴェルグ「……ならその半分、わしが受け持ってやるわい」

魔女「………」

ドヴェルグ「お前の為じゃ無いぞ。……あの人間の為にやってやる」

精霊「君は……人間嫌いなんじゃ無いの?」

ドヴェルグ「確かに嫌いじゃ……」

魔女、精霊「………」

ドヴェルグ「だが……あの人間は……これ見て何て言ってくれたと思う」

魔女「その汚ない金槌を見てかい?」

ドヴェルグ「そうじゃ」

魔女「………」

ドヴェルグ「お前らにはわかる訳無い。職人じゃ無いんだからな」

魔女「なんて言われたんだい」

ドヴェルグ「使われて嬉しそうって言ってくれたんだわい……」

魔女「………」

ドヴェルグ「………」

精霊「ドヴェルグにも同じような力はあるんだよね?自分では見れなかったの?」

ドヴェルグ「ああ……」

魔女「男のお世辞じゃ無いのかい」

ドヴェルグ「それでもいい……」

精霊「なら色相を見てそのまま言ったのかもよ?」

ドヴェルグ「それでもいいわい……アイツはこれを見て理解してくれだんだからな……」

精霊、魔女「………」

ドヴェルグ「そんな奴なら嫌いな人間でも助けてやりたい……と思っただけじゃ」

精霊「………」

魔女「そうかい。……ドヴェルグ頼んだよ」

ドヴェルグ「ああ……」

精霊 (へぇ……ドヴェルグがねぇ……)

魔女「ドヴェルグ……手抜くんじゃ無いよ」

ドヴェルグ「誰に向かってそんな事を言っとるんだ!まったく失礼な奴じゃ……」

魔女「ふふ……さて、精霊。これからどうするんだい?」

精霊「そうだね……簡単に説明すると僕がドヴェルグの造った武器に魂を込めて完成かな」

魔女「……ふむ」

エインセル「ふぁ……」キョロキョロ

魔女「え……こいつもう起きるのか……?」

エインセル「全裸な男が敷かれて無いです……?」

精霊「………」

魔女「なんだい敷かれてって……」

エインセル「はッ!あれ!?美男子マットはです!?」

魔女「知るかいそんなの……お前どんな夢見てたんだ……」

エインセル「魔女様……言ってくれれば貸しますですよ?」

魔女「誰がそんなもん欲しがるか……そうだエインセル」

エインセル「はいです?」

魔女「お前、魂寄越しな」

エインセル「……は?です?」

魔女「神殺しの武器を造るのに何かの魂が必要なのさ。な?だから」

エインセル「お断りしますです……」

魔女「なんで?」

エインセル「いや……なんでって聞かれても困るです……」

精霊「魔女さ……」

魔女「なんだい?」

精霊「言っておくけど……普通の魂じゃ駄目だからね?」

魔女「エインセルはどう見ても普通じゃ無いだろ……色々と」

精霊「そうだけどさ……色々と」

エインセル「………」

精霊「多分この妖精の魂だと……魂を移す時に耐えられないと思うんだよ」

魔女「耐えられない?耐えられないとどうなるんだい?」

精霊「下手したら消滅かな……」

魔女「へぇ……だとさエインセル」

エインセル「………」

精霊「それに武器自体に力が宿らない可能性もあるよ」

魔女「……どう言う事だい?」

精霊「武器を造っても……それがただの喋る武器になるって事かな」

魔女「それは困るねぇ……」

精霊「だろ?だからちゃんとした物をね準備しないと……」

魔女「………」

精霊「どうするの?」

魔女「……アタシの魂じゃ駄目かい?」

精霊「………」

エインセル「ちょ、ちょっと魔女様です?」

魔女「黙ってな!」

精霊「いけるだろうね……でも……」

魔女「でも……なんだい?」

精霊「君はそれでいいの?一度魂を移したら元に戻れないよ?」

魔女「いい。神を殺そうって言うんだ、それぐらいの覚悟が無くてどうするんだい」

精霊「………」



魔女「………」

ドヴェルグ「……お前正気か?」

魔女「気なんか狂っちゃいないよ。それしかないんだ、だったらやってやるさ」

ドヴェルグ「………」

魔女「……なんだい?そんな顔して」

ドヴェルグ「いやな……」

魔女「………」

男「魔女さん……」

魔女「お前もそんな顔するんじゃ無いよ。別に死ぬ訳じゃ無い」

男「魔女さんがこれから行う事って……魂を移すとか言ってましたけど……」

魔女「まあ、あれさ……簡単に言うとこいつが造った武器にアタシの意識が宿るって言うのかね……」

男「………」

魔女「アタシが武器になるって言った方がいいか……そんな感じさ」

男「………」

魔女「………」

男「ごめんなさい……」

魔女「何を謝る事があるんだい。これはアタシが決めた事だ。それにお前為だけじゃない、アタシの為でもあるんだからね」

男「……自分の為ですか」

魔女「そう」

男「………」

ドヴェルグ「魔女よ」

魔女「なんだい?」

ドヴェルグ「わしはお前が武器になる事止めんぞ?」

魔女「誰も引き止めろなんていってないだろ」

ドヴェルグ「………」

魔女「ドヴェルグ……あんたの最高傑作になってやる。感謝しな」

ドヴェルグ「………」

魔女「嫌いな人間の為に……昔敵だった奴の為に……こんな事やらせて悪いねドヴェルグ」

ドヴェルグ「いや……いいわい……」

男「………」

ドヴェルグ「覚悟っちゅうもんは……これ程心を揺さぶるんだな……なぁ魔女よ」

魔女「そんな……甘い事言ってるから人間に騙されるんだよ。お前は」

ドヴェルグ「……かもな」

魔女「ありがとよドヴェルグ……」

ドヴェルグ「………」

魔女「さあ!ドヴェルグ!アタシを入れる武器を見せな!」

ドヴェルグ「……いや、そんな物無いぞ?」

魔女「はぁぁぁぁ?」

ドヴェルグ「そりゃそうだろ……」

魔女「………」

ドヴェルグ「ここらにある武器で構わんのだったら直ぐにでもいいが……」

魔女「………」

ドヴェルグ「それに……こいつが使える武器で、尚且つお前の希望する武器にした方がいいだろうが」

魔女「そうだねぇ……」

男「俺……武器なんて扱えませんよ?」

魔女「………」

ドヴェルグ「どうするんじゃい……」

魔女「困ったねぇ……」

男、ドヴェルグ「………」

魔女「………」

ドヴェルグ「まあ……ゆっくり考えろ」

魔女「………」

ドヴェルグ「こっちも精霊に聞いて色々と準備せないかんだろうしな」

魔女「そうだね……」

ドヴェルグ「それで心変りしても……わしは文句言わんから安心しろ」

魔女「………」

ドヴェルグ「………」

男「あの……聞いていいですか?」

魔女「なんだい?」

男「あそこの若い方……魔王なんですか?」

魔女「そうだよ」

男「こんな事言うのもあれなんですけど……本来ならあの方を倒すんですよね……?」

魔女「ん……あれは魔王だけど魔王じゃ無いって言うかねぇ……」

男「……?」



精霊「離れてくれるかな!」

エインセル「はいぃ魔王様ぁですぅ……」

精霊「はぁ……君さ、本当に僕が魔王って思ってる?」

エインセル「はいはい思ってるです思ってるです」

精霊「それ……微塵も僕を魔王だって思って無いだろ……」

エインセル「だってぇ有り得ないです。魔王がこんな所にいる訳無いじゃないです?」

精霊「………」

エインセル「きっと魔女様が貴方を独り占めしようとして言った戯れ言です!」

精霊「………」

エインセル「と、言う事はぁ……フフフですぅ……」

精霊「何……?」

エインセル「もう下の方があれやこれやと凄い物を持ってる筈ですッ!」

精霊「君はそれしか無いのかい……」

エインセル「妖精とはぁッ!生命の神秘に触れる事と見付けたりですッ!我、淫靡好色と也て目の前の雄全てを喰らうッ!ですッ!」

精霊「そこまで行くと意味がわからない……」

エインセル「さぁ!ですッ!」

精霊「何がさぁなのさ……あのね!いい加減にして!怒るよ!」

エインセル「あっ……そっちです?」

精霊「は?」

エインセル「……雌は受け付けないとかです?」

精霊「………」

エインセル「そこまでアタクシを拒む理由って……なるほどです……」

精霊 (こんな駄目妖精初めてだよ……)



精霊「………」

エインセル「もうその時の事情を事細かに語ってくださいですッ!」

魔女「精霊、ドヴェルグが呼んでるよ」

エインセル「タチです?ネコですッ!?痛いです?気持ちいいですッ!?」

魔女「静かにしな」グバッ!

エインセル「ギャアア!な、何するです!」

魔女「お前はいつまでも精霊に絡んでんじゃないよ」

エインセル「……魔女様の方こそ一人占めの為に嘘付かないで欲しいですぅ」

魔女「嘘?アタシがいつ嘘付いた?」

エインセル「この方を魔王だって言って!雄を貪るような真似を!です!」

魔女「お前ね……」

これはあの話の過去か

>>121
過去を知ってる者の話ですね。

エインセル「もうッ!魔女様!美男子侍らせてそれを眺めながら『さぁ……見ててやるからおやりよ』って言う時はアタクシも混ぜて欲しいですッ!」

魔女「……何の事だい?」

精霊「戯れ言だよ……君はこれの相手をしてよく疲れないね……」

魔女「慣れだよ……早くドヴェルグの所行きな」

精霊「………」

エインセル「アタクシも行くです!」

魔女「お前は邪魔するんじゃないよ」ガシッ!

エインセル「離してくださいですッ!」バタバタッ!

魔女「そんなに魔王がいいのかねぇ……」

エインセル「魔王なんて嘘です!こんな所にいるわけ無いですぅ」

魔女「……お前にも説明しなきゃならないのかい。めんどくさいねぇ……」

男「妖精さん……あの方が魔王と言うのは本当みたいですよ」

エインセル「人間までそう

魔女「あれはね、魔王の中身なのさ。体と魂が分離している状態だね」

エインセル「………」

魔女「あいつの体は他の奴に乗っ取られててね……それで戻れないからあんなんになってんだよ」

エインセル「……信じられないです」

魔女「別に信じなくてもいいさ。それが事実なんだからね」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「魔女様です……」

魔女「なんだい……」

エインセル「妖精と魔王って釣り合うと思うです?」

魔女「だから諦めろって……」



ドヴェルグ「………」

精霊「はぁぁぁ……」

ドヴェルグ「お前……本当に魔女に力を貸していいのか?」

精霊「まあ……やりたくは無いよね」

ドヴェルグ「ならどうして力を貸すんだ?」

精霊「それは……。ドヴェルグさ……女神の目的って知ってるかい?」

ドヴェルグ「なんじゃ突然。目的って魔王を倒す事だろ?」

精霊「そうだね……勇者を使ってね」

ドヴェルグ「それがどうかしたのか?」

精霊「うん……何で僕じゃあなくて向こうの魔王を倒そうとしてるのかってね」

ドヴェルグ「………」

精霊「わかるかい?」

ドヴェルグ「いや……」

精霊「そう……これは推測……いや、間違いなくこれが理由なんだと思うんだけど」

ドヴェルグ「………」

精霊「女神は僕の身体が欲しいんじゃないかってね」

ドヴェルグ「まさか……有り得んだろそんな事……」

精霊「有り得なくもないんだよ。それじゃないと説明がつかないんだ」

ドヴェルグ「………」

精霊「まぁ今は僕と偽魔王がいるよね。魔王を倒すなら両方相手にしないといけないのはわかるよね?」

ドヴェルグ「ああ、そうじゃな」

精霊「で、どちらか簡単に倒す事が出来そうなのは……僕だと思わないかい?」

ドヴェルグ「あの妖精に負けそうだからな。そうだろうな」

精霊「……流石に負けないよ。それでわざわざ勇者を仕立て挙げて僕から倒そうとしないのか」

ドヴェルグ「簡単に倒す事が出来そうなのを後に……って言うのもあるんじゃないのか?」

精霊「無いね。女神が僕の身体を欲しいなら僕が生きてないと意味が無いからね」

ドヴェルグ「……???」

精霊「………」

ドヴェルグ「どう言う事じゃ?さっぱりわからん」

精霊「女神は僕の身体を使ってこの世界の悪を演じさせようとしてるんじゃないか……ってね」

ドヴェルグ「それは女神が自分への信仰を完璧なものにする為にか……?それ以外の理由は無いと思うが……」

精霊「多分当たりかな……笑えないね。人の身体をいいように使われる事に慣れちゃったとしても」

ドヴェルグ「それで……女神を相手にしようとしてる魔女に協力する気になったのか……」

精霊「それだけじゃ無いけど……」

ドヴェルグ「後はなんじゃい?」

精霊「色々あるんだよ。僕の身体を取り戻す事を邪魔させないとか、あの男が勇者になっちゃった事へのお詫びとか……」

ドヴェルグ「ふむ……」

精霊「……魔女へ押し付けた事へのお詫びとか」

ドヴェルグ「………」

精霊「………」

ドヴェルグ「色々あるんじゃな……」

精霊「そうだね。……本当は僕が消え去れば全て終わるんだけど」

ドヴェルグ「………」

精霊「……僕は人間好きだからこのままって訳には出来ないし」

ドヴェルグ「………」

精霊「………」

ドヴェルグ「お前は今でも十分変わってるが人間が好きな魔王なんてな……わしには理解出来んわい」

精霊「………」



ドヴェルグ「精霊、魔王の魂の破片が込められた武器達の材質ってなんじゃい?」

精霊「………」

ドヴェルグ「お前がそれを知られたく無いのはわかるが……それがわからんかったら魔女に協力出来んだろ」

精霊「いや……」

ドヴェルグ「なんじゃ?」

精霊「何で出来てるんだろうねって……」

ドヴェルグ「………」

精霊「………」

ドヴェルグ「お前……自分が造った物なんだろうが……」

精霊「そうなんだけどね……ははは……」

ドヴェルグ「どうするんじゃ……それくらいわからんとわしでも手が出せんぞ……」

精霊「………」

ドヴェルグ「………」

精霊「その辺は適当でいいんじゃないかなぁ……」

ドヴェルグ「適当って……」

精霊「ほら!何か凄い材料使ってさ!君、凄い材料持ってるだろ!?」

ドヴェルグ「あるにはあるが……」

精霊「それなら魔女も満足してくれるって!ねッ!」

ドヴェルグ「……それで大丈夫なんか?」

精霊「大丈夫!大丈夫!」

ドヴェルグ「………」

精霊「ただし……この事は魔女には内緒だよ……わかったね?」

ドヴェルグ「言えるかそんな事……」

精霊「………」

ドヴェルグ「適当に材料選びましたなんて知られたら……また笑いながら頭燃やされるわい……」

精霊「君……そんな事されたんだ……」

ドヴェルグ「お前がわしに武器達を見せていたらわかっていたのにな!」

精霊「………」

ドヴェルグ「まったく……」

精霊「しょうがないだろ?君はそれをさ……」

ドヴェルグ「………」

精霊「魔物使えるようにしようとしてたんだから!」

ドヴェルグ「それがわしの生きている意味だからな。じゃが……」

精霊「じゃが?なに?」

ドヴェルグ「今のこの世界で……わしが造った魔王の魂の破片が込められた武器を使いこなせる魔物がいるのかってな……」

精霊「………」

ドヴェルグ「………」

精霊「いるんじゃないかな……何処かに……」

ドヴェルグ「だといいな……」

精霊「………」



男「………」

ドヴェルグ「この壁に並べられた武器で何かピンッとくる物はあるか?」

男「……無いです」

魔女「こんなんでいいんじゃないのかい」カチャッ

ドヴェルグ「お前はそれでいいのか……」

魔女「アタシはなんだっていいさ。剣でも斧でも槍でもね」

ドヴェルグ「少しは拘れ……」

男「やっぱり無理です……俺……」

魔女「まだ言うかい。……次、無理だなんて言葉使ったらエインセルを服の中に忍び込ませるからねッ!」

男「………」

エインセル「………」ニタリ……

男「それは絶対止めてください……」

魔女「ならどれがいいか早く選びな!」

男「そう言われましても……」

ドヴェルグ「……お前、靴職人だったな?」

男「はい……」

ドヴェルグ「靴職人ってのはどんな道具を使うんじゃ?」

男「ワニとか……ポンポンとか……包丁とかですかね……」

ドヴェルグ「専門用語だとわからん。どんな形状とか、ここにあるもので似た物はあるのか?」

男「その金槌とか……ヤットコなんかはワニに似てますけど……」

ドヴェルグ「包丁ってのは?」

男「それは革を裁断する物でこれくらいの大きさで形はこんな感じのやっですね」

ドヴェルグ「ふむ……」

男「あの……それを聞いてどうするんです?」

ドヴェルグ「武器にする」

男「………」

ドヴェルグ「わけわからん武器を使うよりいいだろうが」

男「………」

魔女 (ヤットコ?ってやつだったら嫌だね……アタシが気にんないなら何度でも作り直させればいいか……)

エインセル (是非ともヤットコってやつにして欲しいです!ぷぷぷっ……ヤットコ魔女ぉヤットコ魔女ぉですぅ!)

魔女「………」

エインセル「ヤットコ魔女様です!」

魔女「……あぁ?今なんて言った?」

エインセル (しまったです!……つい声に……です……)

魔女「後……二回だからね。何が後二回なのかは……言わないがね」ニヤァ……

エインセル「………」



ドヴェルグ「んあぁーんんー……」

魔女「………」

ドヴェルグ「ほあーああんー……」

魔女「気持ち悪いね……なにやってんだい……」

ドヴェルグ「……どんな武器にするか考えとったんじゃ」

魔女「普通に考えられないのかい……まぁいい、ドヴェルグ」

ドヴェルグ「なんじゃい?」

魔女「武器造るのに時間かかるんだろ?」

ドヴェルグ「そうじゃな。早くて二、三百年くらいだわい」

魔女「………」

ドヴェルグ「冗談じゃ。なるべく早く造ったるわい」

魔女「世の中には冗談が通じない奴もいるんだって事……知りたいのかい?」

ドヴェルグ「………」

魔女「次、冗談かましたらエインセル

エインセル「絶対嫌ですぅ!」

魔女「いいじゃないか。お前男好きだろ?」

エインセル「アタクシ面食いですから!」

ドヴェルグ「………」

魔女「こいついいやつだからさ。お前を受け入れてくれるかもしれないよ?」

エインセル「それでも小汚いオッサンは嫌です!」

ドヴェルグ「………」

魔女「へぇ。だとさドヴェルグ」

ドヴェルグ「……お前らわしを何だと思っとるんだ……」

魔女「ああ……こんな事してる場合じゃなかったね。ドヴェルグ、たしかこの近くに村かなんかあったろ?」

ドヴェルグ「知らんわ!」

魔女「知らないのかい。ちっとは人間の世界の事も知っときな」

ドヴェルグ「あのな……お前さっきからなんじゃ?何が言いたい?」

魔女「アタシ達はそこで待ってるよ」

ドヴェルグ「何故だ?ここで完成を待てばいいだろうが」

魔女「嫌さ……こんな辛気臭い所で待ってられるかい」

ドヴェルグ「………」

魔女「さて、精霊行くよ」

精霊「……行かないよ?」

魔女「何で?」

精霊「行く必要が無いからね」

魔女「そうかい……そうかい……へえ……」

精霊「………」

魔女「………」

精霊 (魔女……なんでもかんでも暴力で従わせようなんて無理だよ。僕は絶対暴力なんかには屈しないからッ!)

魔女「………」

精霊 (ふふ……君の思いどうりにはならないよッ!)

魔女「アタシは……風呂に浸かりながら一杯やって待つって言うのもおつなもんだと思うんだけどねぇ……」

精霊「………」ピクゥッ

魔女「アタシの記憶が確かなら……この近くに温泉の村があった筈なんだけどねぇ……」

精霊「……どう言う事なのか詳しく聞かせてくれないかな」

魔女「ああ悪いね……お前には関係無い事口走っちまったよ。忘れておくれ」

精霊「………」

魔女「………」

精霊「………」

魔女「……一緒に来るか?」

精霊「仕方無いなぁ……行くよッ!」

ーー

フォシュンッ!

魔女「この方角に……おお、あったあった。あそこだ」

男「あの……魔女さん……」

魔女「なんだい」

男「あそこで待ってなくて良かったんですか?」

魔女「お前は飯も食わず風呂にも入らず待ってられるのかい?」

男「……無理です」

魔女「だろ?さあ行くよ。エインセルはこんなか入って

精霊「僕の服の中に入ろうとするの止めてくれるかな!」

エインセル「人間に見付かると大変ですから!仕方無い事なんです!」

魔女「………」グバシッ!

エインセル「イタタタです!魔女様離してくださ

グイッ!

……「出してくださいです!ナニの大きさを調べられないですぅぅぅ!」

魔女「静かにしな」

……「ババア出せコラですぅ!折角のチャンスが台無しです!」

魔女「………」

……「………」

魔女「エインセル……後一回だからね。覚悟しときな」

……「質問は受け付けるです……?」

魔女「なんだ?」

……「その……後一回が終わったらアタクシはどうなるです……?」

魔女「さあ……どうなるかね……」

……「………」

魔女「泣いてやるから安心しな……」

……「そんなの微塵も安心出来ないです……」



魔女「なんだぁ?……この村、様子がおかしいねぇ」

男「そうですか?普通に見えますけど……」

魔女「お前ここは温泉の村なんだよ?人が少な過ぎると思わないかい?」

精霊「……村人しかいない感じだよね」

男「………」

魔女「ん……まぁいいや。行くよ」

男「何で人が少いんですか……?」

魔女「そんなの知るかい。不穏な空気ってのは無いから、ただ廃れていくだけの村に来ちまったか……別の理由があるかだけどね」

男「………」

魔女「これだけ人が少いなら……」

男「………」

魔女「ふふっ温泉貸し切り状態だね!」

男「………」



宿屋「………」

精霊、男「………」

魔女「おら、早く金出しな」

男「あの……お金持ってるんじゃ無いんですか……?」

魔女「そんなもん長い間使う事が無い生活してたんだ。あるわけないだろ」

男「俺も無いですよ……」

精霊「仕方無いなぁ……」チャリ……

魔女「ほう。お前結構持ってるねぇ」

精霊「たしなみだよたしなみ」

魔女「へぇ……」

男 (魔王のたしなみってなんだろ……)

魔女「オヤジ三人分だ」チャリ

宿屋「では。……はぁ」

魔女「オヤジ、この村で何かあったのかい?」

宿屋「え、ええ……まぁ……」

魔女「なんだい、歯切れが悪いね。言ってごらんよ」

宿屋「……あなた方はどこへ向かわれる途中なんでしょうか?」

魔女「別にどこへも向かいはしない。ここへ来ただけだからね」

宿屋「そうでございますか……ならあまりこの辺りにはいない方がいいと思います……」

魔女「なんで?」

宿屋「何やら……ここから西へ行った国が争い事を起こすとかなんとか……」

魔女「人が少いのはそれでかい……」

宿屋「はい……」

男「戦争なんて……」

魔女「ふぅん……気を付けるさ」

宿屋「そうしてください……」

魔女「男、行くよ」

男「はい……」

魔女「そんな湿気た面してんじゃないよ。そんなのはアタシ達には関係無いんだ」

男「そう……なんですかね……」

魔女「そうさ。そんなのはやりたい奴がやってりゃいいんだ」

精霊「魔女……」

魔女「なんだぁ?お前もか」

精霊「お釣り返して!」

魔女「セコイ奴だね……」

ーー

チャポーン……

精霊「うあああ……ぁぁぁぁぁ……」

男「………」

精霊「これは駄目だ……いけない……なんと言う……」

男「………」

精霊「ぁぁぁ……このままだと確実にぃ……」

男「………」

精霊「堕落していくぅぅ……はぁぁ……」グビッ

男「………」

精霊「うあああ……もっと駄目だぁ……もう堕落の深みに嵌まっていくぅぅ……」

男 (この人……本当に魔王かな……」

精霊「ぎゃあああ……」

男「あの……」

精霊「ああ、ごめんね。あまりにも良くてね……静かにするよ」

男「そうでは無いんですが……」

精霊「うん?」

男「貴方と魔女さんってどう言う関係なんですか……?魔王……と知り合いなんて……」

精霊「どう言う関係ねぇ……まあ普通は魔王と知り合いなんておかしいよね」

男「はい……」

精霊「君、僕の事は魔女に聞いた?」

男「はい、聞きました」

精霊「そう。なら僕の体の事とかは説明はいらないかな?」

男「そうですね……」

精霊「そっか。僕と魔女ね……ふふ」

男「………」

精霊「なんて言うかな……僕が主人で魔女が奴隷の関係だったんだよ!」

男「………」

精霊「ふふふふ……」

男「嘘ですよね?」

精霊「嘘だけどさ……もうちょっと驚いて欲しいね……」

男「あの魔女さんが奴隷なんて想像つきませんし……」

精霊「あ……あっちが主人ぽいもんね……」

男「………」

精霊「冗談は置いといて……昔、魔女に僕の体を取り返してって頼んだ事があったんだよ。そう言う関係かな」

男「そうなんですか……なら体は取り戻せたんですか?」

精霊「いや、駄目だったよ。取り戻せたんなら僕は今、ここにいないし」

男「………」

精霊「魔女の他にも頼んだのは二人いたんだけどね……それでも駄目だったよ」

男「………」

精霊「………」

男「精霊さん……でいいですか?」

精霊「いいよ。魔王って呼ばれるより好きかな」

男「その……精霊さん、なんで体を取り返すのに人間に頼むんですか?」

精霊「………」

男「人間より強い魔物とかいると思うんですが……」

精霊「そうだね……いるよ強い魔物」

男「なら何故なんです……?」

精霊「人間ってさ……時にとんでもない力を発揮する事があるんだよ。その強い魔物なんか遥かに凌駕する程ね」

男「………」

精霊「その強い力は……魔物や悪魔とか僕とか絶対に出せない力なんだよ」

男「………」

精霊「例えばね……君は南の方で勇者になった若者の事知ってるかい?」

男「……はい。確か前に勇者してた人が死んで……その後になった人ですよね?」

精霊「そう、番人って言う名前なんだけど」

男「その方が何か?」

精霊「実はね……彼に僕の体を取り戻す事に協力して貰ってるんだよ」

男「………」

精霊「彼自信は僕が魔王だなんて知らないんだけどさ」

男「それは……その方を騙してって事ですか……?」

精霊「違う違う。結果的にそうなるような感じになった……かな?」

男「よくわからないんですが……」

精霊「ん……僕が彼等に力を貸してあげたんだよ」

男「力……ドヴェルグさんが言っていた魔王の魂うんぬんって言う武器ですか……?」

精霊「そう」

男「……ならその方の力は関係無いんじゃないんですか」

精霊「大いにあるんだよ。僕が与えた力なんて彼が勇者にまでなる発端に過ぎないんだからね」

男「………」

精霊「彼は……ある物を無くしてね、それを取り戻そうとしてるんだよ」

男「………」

精霊「その為には魔王のいる城へ行かなきゃ行けないんだけど……普通だと行けないよね?」

男「それはわかりませんが……強くなければ無理だと思います……」

精霊「そうだね。だから彼は強くなった」

男「………」

精霊「……その物の為に努力して努力して……凄く強くなった」

男「………」

精霊「こんなの人間以外出来ない事なんだよ。僕達には到底無理な事なんだ……」

男「………」

精霊「それでついでに僕の体を取り返してくれるかなってやつなんだよ」

男「それはついででいいんですか……」

精霊「構わないよ。さっきも言ったけど結果的にそうなるんだから。形はどうあれね」

男「………」

精霊「………」グビッ

男「俺は……その方みたく強くなれそうにありません……」

精霊「………」

男「………」

……へぇ……中々広いんだねぇ……

男「……へ?」

魔女「ほれ精霊、酒持ってきてやったよ」

精霊「おお!気が利くね!」

男「ブハァァッ!まままま魔女さんそそその!」

魔女「なんだい?」

男「ななななんでこっちにいるんですかッ!?」

魔女「いいだろ居たって。どうせアタシ達しか風呂に入ってないんだ」

男「ですがッ!」

魔女「ですが?」

男「いや……その……前ぐらい隠してください……」

魔女「見られて困るもんなんか無いから隠す必要無いね」

男「俺が困るんです!?」

魔女「……ほれ」

男「ほほほほ本当やめてください……」

精霊「魔女……あまり虐めてあげないでよ……」

魔女「アハハハッこう初な奴からかうのは楽しいからねぇ!」

精霊「君は変わらないね……」

魔女「変わってたまるかい。アタシはアタシだよ」

精霊「僕は変わった方がうけがいいと思うんだけどね……」

魔女「アホか……どこにうけろっててんだい。それに今更ですます口調なんか使えるかい」

精霊「………」チラッ

魔女「……?」

精霊「人間って皆同じ様に毛が生えるものじゃないんだね……」

魔女「………」

男「そそそそうです!それぐらい生やしといてください!あわわ……」

魔女「生えなかったんだから仕方無いだろうが……」

精霊「君はテンパり過ぎだよ……」



男「………」グデェ……

精霊「ん……あああ……」

魔女「そんなにいいのかい?」

精霊「いいよ魔女……最高だ……」

男 (……え?ななななッ!)

魔女「フフフッお前も変わんないねぇ」

精霊「こればっかりは死んでも変わらないだろうね……ウアァ……」

男「………」

魔女「………」

精霊「クゥゥ……いいねぇ……」

男「………」

魔女「こいつもいつまでも湯だってないで起きればいいのにさ……」

精霊「そうだね……それそれ……」

男 (あわわわ……)

魔女「お前……そんなに大きいの出して……」

精霊「凄いだろ?」

男「………」

魔女「……馬鹿かい」

精霊「そんな事言って……君も使ってみたいんだろ?」

魔女「そんなの使えるか……」

男「………」

精霊「へぇ……それが強がりじゃなきゃいいねぇ!」

魔女「………」

男「ああああああのッ!」ガバァッ!

魔女「やっと起きたかい」

男「俺外へ……?」

精霊「お酒ッ!最高ッ!効き過ぎだぁぁぁ!」

魔女「花瓶みたいなデカイコップで飲むな!」

男「………」



男「風が気持ちいいや……」

男「はぁぁ……何か普段より疲れちゃったな……」

男「………」

男「普段か……」

男「もう普通の生活ってやつには戻れないのかな……」

男「覚悟とか何か色々……俺には重過ぎだよ……」

男「………」

ガサッ……

魔女「なんだ、お前も夜風に当たりに来てたのかい?」

男「そうです……魔女さんもですか?」

魔女「お前もって言ったろ。だから同じだよ」

男「………」

魔女「……こんな夜はあれだね。寝れそうに無いねぇ……」

男「そうですね……あの精霊さんは?」

魔女「あいつは酔い潰れてイビキかいて寝てるよ」

男 (魔王が酔い潰れてイビキかいて寝てるって……)

魔女「酒好きなのは変わりゃしない……ふふっ」

男「………」

魔女「………」

男「魔女さん……さっき精霊さんから聞いたんですけど……」

魔女「何をだい?」

男「魔女さんも……魔王の体を取り戻す事を手伝った事があるんですよね……」

魔女「ああ、あるよ」

男「それで取り戻せなかったって聞いたんですけど……」

魔女「………」

男「魔女さんくらいの力があっても無理だったんですか?」

魔女「無理だったね。……昔のアタシはここまで魔術やらを使いこなせて無かったからねぇ……」

男「………」

魔女「そうだ……おい男よ、お前が知ってる勇者の昔話を教えておくれよ」

男「急になんです……?」

魔女「いいから。さっさとしな」

男「はあ……?昔々、勇者と魔法使いが悪い悪い海賊を退治するって話なんですけど」

魔女「………」

男「……?こんな話ですよ?」

魔女「へぇ……」

男「この話がどうかしたんですか?」

魔女「ん……懐かしいねぇと思ってさ」

男「懐かしい……は?え?」

魔女「勇者と知り合いなんだ。不思議じゃないだろ」

男「……そうですけど」

魔女「その話の中にアタシもいたんだよ」

男「………」

魔女「………」

男「魔法使い……ですか?」

魔女「違うね」

男「……村人A?」

魔女「そんなの出てんのかい……違う」

男「なら……」

魔女「ふふっ悪い悪い海賊ってのがアタシさ」

男「………」

魔女「ついでに魔法使いってのは前に話した錬金術師だよ」

男「………」

魔女「なんだ?そんなにアタシが海賊だったのが不思議か?」

男「……いえ」

男 (ぴったり過ぎて怖いです……)



魔女「その話は……あれだ、アタシがまだ精霊と会う前の話だね」

男「そうなんですか……」

魔女「あの頃のアタシはね……まぁ殺しまではしないが金品奪うのに明け暮れててね」

男「………」

魔女「何だかんだでちょっとは名の売れた海賊してたのさ」

男「………」

魔女「そこへ勇者がアタシを討伐しに来てね、ふふっ見事やられちまった」

男「………」

魔女「……あれが始まりだったね」

男「始まり?」

魔女「アタシが今ここにいる事のさ」

男「………」

魔女「勇者にくっついて行ってね……いつしか勇者に惚れちまって……」

男「………」

魔女「……勇者もそれに応えてくれるようになってね」

男「………」

魔女「もう錬金術師がいようが所構わずヤってヤってヤりまくって!」

男「……は?」

魔女「もうッ!一日三回戦以上は当たり前ッ!猿よりヤりまくってたねッ!」

男「い、いや……魔女さん……?」

魔女「あ……悪い。話が脱線したね……」

男「いえ……それで精霊さんと出会ったんですか?」

魔女「そうだ、あいつ突然三人の前に現れてね武器を貰ってくれってきたんだよ」

男「それで精霊さんの武器を貰ったんですか?」

魔女「いや、貰わなかったよ」

男「……何故です?」

魔女「だってそうだろ、いきなり武器貰えなんて怪しすぎだ。そんなの貰うわけがない」

男「………」

魔女「それであいつ強引にアタシらに押し付けやがってね……ったく!」

男「………」

魔女「まぁ……仕方無いからアタシらが貰ったんだよ」

男「その場に置いていくって選択肢は無かったんですか……」

魔女「それでも良かったんだけどね……その武器達はね喋るんだよ。そんなの置いて行けないだろ?」

男「精霊さんの武器って喋るんですか……」

魔女「ああ、そうだよ」

男「………」

魔女「槍と斧と剣……こいつらと出会ってアタシらのアタシらの運命が変わっちまったってね」

男「………」



運び人「おやっさん、これかい?」

宿屋「ああ、そうだよ」

運び人「じゃあ預かるよ。……この小さい箱もそうかい?」

宿屋「……?あ、ああそれも頼むよ」

運び人「うん了解」

宿屋「ふぅ……仕事の方はどうだい?」

運び人「まぁなんとかだよ。おやっさん所は……」

宿屋「……大変だな。人が減って商売あがったりだよ」

運び人「そっか……」

宿屋「やめて欲しいね戦なんて。いい事なんてありゃしない」

運び人「………」

宿屋「まあいいや。お前さん頼んだぜ。気を付けて行けよ」



パカラッ……パカラッ……

エインセル「………」

エインセル「ここはどこです……何故アタクシは馬車に乗ってるです……」

エインセル「………」

エインセル「何で……です……」

エインセル「………」

エインセル「大変な事になったです……一大事です……」

エインセル「あああああ……きっと魔女様がぶちギレて……です……」

エインセル「………」

エインセル「こんな……どこかもわからない人間の世界に放りだされたら……です……」

エインセル「あああああ……」

エインセル「もうそれは妖精の中では上の中のアタクシですから!」

エインセル「きっと人間に見付かったら……『おうおう色っぺえ妖精じゃねえかぁ……グヒョヒョ!』」

エインセル「『ああ……御離しくださいです……』」

エインセル「『離すと思うか?ええ?……小さい体だがストリップぐらい出来るよなぁ?』」

エインセル「んん……」

エインセル「なんか……気分が乗らないですぅ……」

エインセル「取り合えず魔女様の所へ戻るです……」

エインセル「………」

バサバサッ……



魔女「でさ、勇者には槍を錬金術師には斧をアタシには剣をってね」

男「魔女さんが剣なんですか……」

魔女「……何かおかしいかい?」

男「いえ……あ、ドヴェルグさんが欲しがるくらいですから喋るだけじゃ無いんですよね?」

魔女「そうだね。それぞれ凄い能力があったよ。特に斧が凄かったね……」

男「………」

魔女「……中身ガキのくせにさ」

男「ガキ……?」

魔女「ああ、武器どもは喋るくらいだからさ其々性格や性別?もあってね。中身が変人だったりガキだったり……ボンクラだったりね」

男「………」

魔女「槍の中身は勇者以外喋らないわ斧の中身は女のガキだわ……剣の中身は……」

男「……どうしました?」

魔女「………」

男「……魔女さんが貰った剣はそんなに変わっていたんですか?」

魔女「……変わってるってもんじゃなかったよ。中身はオカマだったからね!」

男「……オカマって」

魔女「あああああ!何か思い出しただけでも腹立つねッ!」

男「………」

魔女「こいつが一番まともじゃ無い奴だったんだよ!」

男「………」

魔女「それを人に渡しやがって……」

男 (魔女さんは剣?に何されたんだろ……中身聞いただけでまともじゃ無いのはわかるけど……)

魔女「……行くよ」

男「どこへ……ですか?」

魔女「精霊の野郎を一発殴りにさ!」

男「………」



精霊「ぐごごご……」

魔女「………」

男 (本当に酔い潰れて寝てるよ……イビキまで……)

魔女「ぬあぁッ!」グッ!

ドボグゥッ!

精霊「へびゃッ!ぐごほッ……ななななひ?」

魔女「………」

精霊「ばびゃ?!」

魔女「……起きな」

精霊「……な、なに?」

魔女「思い出したら腹がたってねぇ……」

精霊「何を……」

魔女「言わなきゃわからんのかい?なあ?」

精霊「……わかるけどさ」

魔女「なら黙って一発殴られな」

精霊「嫌だよ……ってもう一発殴ったろ!」

魔女「寝ぼけてんじゃ無いよ。なぁ男よ、アタシはこいつを殴ったかい?」

男「………」

精霊「人が気持ちよく寝てるのにあきなり殴ったよね!?君ッ!」

男「………」

魔女「殴って無いってさ」

精霊「何も言って無いだろッ!」

魔女「こいつの思ってる事はアタシにはわかるんだよ。覚悟しな……」

精霊「覚悟なんかしないよ!君!魔女止めてよ!」

男「……俺には出来そうもありません」

精霊「………」

魔女「………」ゴキッ……



精霊「………」

魔女「はあ……スッキリした!」

男「笑えないくらいの一撃でしたね……」

精霊「……何度も謝ってるだろ?」

魔女「何度謝ろうが許せないものは許せないんだよ」

精霊「いい加減忘れなよ……」

魔女「アタシがこんなんになって忘れられると思うかい?……こんな魔女にされてさ」

精霊「………」

男「……魔女にされたんですか?」

魔女「ああ。さっき言ったろ、アタシは海賊だったって」

男「はい……」

精霊「僕はあのまま海賊やって燻ってる様を見ていたくは無かったね」

魔女「………」

精霊「彼女ね……たぐいまれな才能はあったのにそれを使いこなせて無かったんだよ」

魔女「仕方ないだろ……生まれが海賊の旗の下だったんだからさ……」

精霊「まあ……そうだけど……」

男「……どう言う事です?」

精霊「魔女言う?」

魔女「ああ。アタシはね生まれつき魔力の量が尋常じゃない程あったのさ」

男「………」

魔女「でも魔力があろうが……周りにいる人間は海賊だらけ。魔法とか呪文なんか知ってる人間はいなかったわけでね」

男「……魔女になるまでは力の使い方がわからなかったですか?」

魔女「そう。……ただね、どう言うわけか一つだけ魔法が使えたのさ」

精霊「………」

男「どうしたんですか精霊さん……」

精霊「その魔法が迷惑極まりない物だったんだけどね!」

魔女「そうかい?アタシには便利な魔法だったんだけどねぇ……クククッ」

男「一体どんな魔法だったんですか……」

魔女「爆発系の魔法さ。ドカーンてね」

男「………」

精霊「海賊で爆発系の魔法が使えるってあれだよね……」

魔女「いいじゃないか。これが無かったらあんたが寄越したボンクラ制御出来なかったろ」

精霊「………」

魔女「野郎は舐めた事してくれるからね……何かあれば爆発!爆発!アハハハハ!」

男「………」

精霊「………」

男「……そこから魔女になったのはどう言う経緯なんです?」

精霊「まあ……こちょこちょっとあってサラサラサラってね」

魔女「なんだいそりゃ……別に言っちまってもいいよ」

精霊「そお?……例の件で魔女は死にかけてね……なんとか生き長らえる為に魔女になったんだよ」

男「例の件って武器を貰った事ですか……?」

魔女「違う。錬金術師の件だよ」

男「………」

魔女「アタシも裏切り者の一員として消されそうになったのさ」

精霊「………」

魔女「勇者と一緒にね……それで死にかけたんだよ」

精霊「可哀想だったね……彼……」

魔女「………」

精霊「国の為にさ……勇者と一緒に魔王を倒す旅に出て……」

魔女「………」

精霊「海賊退治して……一時帰ったら全部取られてて……」

魔女「それで狂っちまったんだ。……ガキを使って人間を魔物に変えたり魔物混ぜまくって化物造っちまったり……」

精霊「後は……悪魔の召還だね……」

魔女「………」

男「……悪魔って」

精霊「それは喚んだ悪魔が特種だったから事なきを得たんだけど」

男「特種ですか……それならもっと危険だったんじゃ?」

精霊「言葉足らずだったね……特種な性癖の悪魔だったからかな」

男「………」

精霊「その辺は気にしないでいいよ。終わってる事だからね」

男「はぁ……」

魔女「まあ……それらを止める為にアタシは死にかけて」

男「………」

魔女「勇者と錬金術師はよくわからん魔力の光に飲み込まれ消えちまった……」

男「それで……魔女さん達はどうなったんですか?」

魔女「アタシはこいつにサバトに連れてかれて魔女にされられてね、勇者と錬金術師は依然行方不明……」

男「………」

魔女「だが、エインセルが勇者の姿になったって事は勇者はもう死んでるんだろ……」

男「………」

魔女「あれは生きてる者にはならないからさ」

男「そうですか……」

魔女「………」

精霊「………」

男「……ところで妖精さんは?」

魔女「すっかり忘れてた……」



男、精霊「………」

魔女「どこしまったっけかな……」

男「あの……もしかして見つらかないんですか……?」

魔女「………」

精霊「あの妖精入ってる箱無くしたのかい……?」

魔女「………」

男、精霊「………」

魔女「だ、大丈夫さ!あいつは放っておいても死にやしないって!」

男、精霊「………」

魔女「そんな目で見るんじゃないよ……」

男「いくらなんでも酷いと思いますけど……」

精霊「そうだね……」

魔女「………」

男「………」

魔女「……?」

精霊「……んん」

男「どうしたんですか?」

魔女「……なんだいこの雰囲気」

精霊「なんだろうね……」

男「あの……」

魔女「お前……西の方から何か感じるかい?」

男「……いえ?何も……」

魔女「そうかい……」

精霊「………」

男「その方角に何かあるんですか……?」

魔女「わからんが……何か起ころうとしてるねえ……」

男「………」

魔女「なんだい……これは……」

男「……どうするんですか?」

魔女「………」

男「………」

魔女「……お前見ておいでよ」

精霊「はあ?嫌だよ……」

魔女「なんでだい?いいじゃないか」

精霊「あのね……今僕にもしもの事があったらどうするの……僕の力必要なんだろ?」

魔女「お前の力が使え無くなったら別の手を考えるさ。だから……」

精霊「嫌だよ……めんどくさいし……」

男「魔女さんも行けますよね?なら魔女さんが行けばいいんじゃないんですか?」

魔女「アタシもめんどくさいからやだよ……」

男「………」

ーー

ポチャーン……

男、精霊「………」

クロケル、ロノウェ「………」

クロケル『……オッパイは?』

ロノウェ「わからん……」

精霊「………」

男「精霊さん……か、変わった方達ですね……」

精霊「変わったも何も……あの二人悪魔だよ……」

男「……は?」

精霊「しかも結構偉いね……何でいるんだか……」

男「………」

精霊「………」

男「悪魔って事は……前に言っていた、西の方で何かあった事と関係してるんでしょうか……?」

精霊「さあどうだろ……」

クロケル『オッパイは!?』

ロノウェ「そ、そう言われてものぉ……」

クロケル『………』

ロノウェ「……すまん、どうやらわしの下調べが甘かったようじゃ」

クロケル『………』ぶすぅ……

ロノウェ「そう口を尖らせるな……」

……宇宙の海はぁ俺のぉぉ海ぃぃ!

男「ままま魔女さんまた!」

魔女「あ?いいだろ。客なんて……」

クロケル、ロノウェ「………」

魔女「なんだ、今日はいたのかい」

男「いたのかいじゃ無くて前を隠してください!」

魔女「必要無いね」

男「おおおおお願いですから!」

魔女「見たい奴には見せとけばいいんだよ。減るもんでも無いんだし」

男「………」

クロケル、ロノウェ「ん……」

魔女「………」

ロノウェ「四十五点じゃな……」

クロケル『僕は五十点あげてもいいと思うけど』

ロノウェ「……ほう?その五点上がる理由は?」

クロケル『まあ……オッパイは大きくも小さくも無く、程好い感じでも無いけど下が生えて無い……僕はそこを評価したよ』

ロノウェ「ふっ……なるほど」

クロケル『ロノウェはどう評価したのさ?』

ロノウェ「オッパイの評価はクロケルとほぼ同じじゃ。ただな……」

クロケル『うん……?』

ロノウェ「どうやらわしが見込んだよりも歳を取っておるな。そこがマイナス評価になったんじゃ」

クロケル『流石ロノウェ……その鑑定眼素晴らしいね……』

魔女「………」

精霊「……落ち着こうね」

魔女「人の体タダで見て言いたい事言ってる奴等をぶっ殺さない理由は無いだろ……」

精霊、男「………」

ロノウェ「ハズレじゃな……」

クロケル『うん……』

魔女「……お前ら……」

ロノウェ、クロケル「……?」

魔女「そこのクソジジイにアホ面だよ……」

クロケル『……え?』

ロノウェ「あれ……わしら見えとる……?」

魔女「ああ?……声も確り聴こえてるさ……」

クロケル『ろろろろろロノウェ!』

ロノウェ「ななななななんでじゃ!」



魔女「……で?」

クロケル、ロノウェ「………」

魔女「答えな。悪魔がこんな所でアタシの胸を酷評してた理由をさ……」

精霊「違うだろ……何でこんな所にいるかだよ……」

男「もう少し冷静になりましょう?ね?」

魔女「……うるさい。これ解決してからだよそれは!」

ロノウェ「お前ら……何者じゃ……」

クロケル『僕の言葉もわかるんだよね……?』

魔女「質問しているのはこっちだ。……さっさと答えな。それが出来ないなら……」

ロノウェ「……なら?」

魔女「お前らの真の名前暴いて人間界にばら蒔いてやる……」

クロケル『そそそそそれだけはやめて!』

ロノウェ「お、お前は悪魔か!」

魔女「悪魔はお前らだろうが……」

男「……魔女さんが言った事をしたらどうなるんです?」

精霊「最悪……全人類の願い事を片っ端から叶えないといけなくなるかな……」

男「………」

魔女「アタシはね……今、激しく腸煮えくり返ってるんだよ。……だからやると言ったらやるからね!」

クロケル『どどどどうしようロノウェ!』

ロノウェ「………」

クロケル『………』

ロノウェ「翼を用意せい……逃げるぞ……」コソコソ

クロケル『………』コクッ

魔女「何をコソコソとやってんだい」

クロケル、ロノウェ「………」

ロノウェ「今じゃッ!」

クロケル『おうッ!』バサッ!

魔女「………」

ロノウェ「さらばじゃ!残念オッパイ!」

クロケル『アディオスッ!』

バサバサバサッ!

魔女「………」

……アハハハハハッ……

魔女「馬鹿だねぇ……逃がすわけ無いだろ……」

魔女「……爆ぜな」グバッ!

スドォォォォン………

魔女「ふん!汚い花火だね……」

精霊、男「………」



剣士「おーい!盗賊よぉッ!」

剣士「あいつまたどこ行きやがったんだよ……ったく……」

ガサガザッ

剣士「あ?」

盗賊「………」

剣士「お前は何回うろちょろするんじゃねえって言えばいいんだよ……」

盗賊「食料確保してた」

剣士「食料?」

盗賊「これ」

エインセル「………」カタカタ……

剣士「………」

盗賊「………」ジュルリ……

エインセル「たたたた食べないでです!」

剣士「なんだこりゃ……」

盗賊「………」

剣士「……食えるのか?」

エインセル「食べれないです!」

盗賊「………」

エインセル「ひぃぃぃ!そ、そんな眼で見ないで欲しいです!」

剣士「………」

盗賊「美味しそう……」

エインセル「あああ……」カタカタ……

剣士「やめとけよ盗賊……」

エインセル「え……です……」

剣士「そんなん食ったら腹壊すぞ……」

エインセル「なッ!失礼ですね人間ッ!」

剣士、盗賊「………」

エインセル「見た目的に美味しそうなアタクシを食べてもお腹なんて壊さないです!」

盗賊「……本人が補償してるから安全」ニヤ

エインセル「………」

剣士「馬鹿だなお前……せっかく助けてやろうとしてたのに……」

エインセル「………」

盗賊「いただきます」

エインセル「まままま待つです!まだお預けです!」

盗賊「………」グゥ……

エインセル「おーしイイ子イイ子……です……」

盗賊「………」グゥゥウ

エインセル「………」

盗賊「………」グゥウバアアアッ!

エインセル「ぇぇぇぇ……」

剣士「凄えな盗賊……そんなにこれ食いてえのかよ……」

盗賊「………」コクッコクッ

剣士「ん……悪りいけどちょっと食べられてやってくれよ。な?」

エインセル「な?ってなんです!な?って!」

剣士「いいだろ?」

エインセル「いいわけないです!」

盗賊「………」

エインセル「ステイ!ステイです!」

盗賊「………」

剣士「なあ盗賊、これもしかして妖精ってやつか?」

エインセル「見ればわかるです!それ以外有り得ないじゃないです!」

剣士「……そう言う虫かと思ってたぜ」

エインセル「………」

盗賊「いただきます」

エインセル「いいいいきなり食べようとするんじゃ無いです!」

盗賊「………」

エインセル「そ、そうだ!です!」

盗賊「………」

エインセル「この近くに温泉の村があるです!?」

剣士「あるな。それがどうかしたのか?」

エインセル「あたあたアタクシをそこまで送り届けてくれたらお礼するです!」

剣士、盗賊「………」

エインセル「もうどんな物でもあげちゃいますです!」

剣士「……盗賊どうする?」

盗賊「いただきます」

エインセル「だああああ!食べるなです!」

盗賊「………」



魔女「チィィィッ!野郎共どこ行きやがった!」

精霊、男「………」

魔女「出て来いやぁぁぁぁぁあッ!クソ悪魔どもぉッ!」グワッ!

精霊「もう諦めなよ……」

男「そうですよ……あんな爆発に巻き込んだんですから無事じゃないですよ……」

魔女「……無事だったらどうするんだい」

男「………」

魔女「………」

男「それはそれでいいんじゃ……」

魔女「駄目だね……アタシの気が晴れないんだよ!」

精霊「じゃあどうするの……」

魔女「ここいら一帯……草木も残さず爆破してまわるか」

男「絶対やめてください……」

ザザザザッ!

魔女「……あ?」

男「なななな!」

精霊「………」

親衛隊「……貴様達、これより先に行く事は許さん」

魔女「………」

親衛隊「村の外へは出るな」

魔女「出ようが出まいがアタシらの勝手だろ。アタシらに指図するんじゃ無いよ」

精霊「アタシらじゃあ無くてアタシだけだからね。僕達を巻き込まないでよ」

魔女「今は虫の居所が悪いんだ……減らず口叩いてんじゃないよ……」

精霊「………」

男「あ、あの……何故ここから先には行っては駄目なんですか?」

親衛隊「貴様達には関係無い。大人しくこちらの指示に従え」

男「………」

精霊 (なんだろうね……この兵隊達は……)

親衛隊「そこの女、わかったか?」

魔女「……わからないね。こんな夜中に兵隊共が村を囲んで何しようってんだい」

親衛隊「関係無いと言った」

魔女「ああ?」

男「ままま魔女さん落ち着いて!そんなメンチ切らないでください!」

親衛隊「………」

魔女「気に食わないね……」

男「きっと何かの演習とかですよ……人が入ったら危ないのでそう言ってるんだと……」

魔女「………」

精霊 (村から東側に行かせないように展開しているようだけど……)

魔女「………」

親衛隊「………」

男「魔女さん……邪魔しちゃうといけませんので行きませんか……」

魔女「………」ギロリッ!

親衛隊「………」

男「兵隊さんを睨み殺そうとしないでください……」

魔女「ふん……やるじゃないか。アタシの睨みに微動だにしないなんてさ」

親衛隊「………」

魔女「よく訓練された犬だね……ったく」

精霊 (……ん?)

ロノウェ「………」コソコソ

クロケル「………」コソコソ

精霊「………」

ロノウェ「今度こそ完璧に姿を消せてる筈じゃ!」コソコソ

クロケル『うん!』コソコソ

精霊「………」

ロノウェ「今の内じゃ!」コソコソ

クロケル『おう!』コソコソ

精霊、男「………」

魔女「………」

ロノウェ「こんの残念オッパイめ……覚えておれ……」

クロケル『本当だよね!悪魔爆破してただで済むと思うなよ!』

魔女「………」

ロノウェ「今度会ったら泣かせてやるからの!」

クロケル『おお!流石ロノウェ!悪魔の鏡だね!』

魔女「………」

ロノウェ、クロケル「ナアハハハハ!」

精霊「……あのね君達」

ロノウェ「なんじゃ?」

精霊「姿が見えてるし……声も聴こえてるんだよ……」

ロノウェ「そんなわけあるか……?あれ?」

クロケル『………』

ロノウェ「なななな何故じゃ!今回は完璧だったはず!」

精霊「………」

ロノウェ「何故普通の人間にわしらが見えるんじゃ!」

精霊「……人間じゃ無いからかな」

ロノウェ、クロケル「……は?」

精霊「僕は人間じゃ無いから……」

男「俺は普通の人間ですけど……」

精霊「君はね……自分が思ってるより普通の人間じゃ無いんだよ」

男「え……」

魔女「………」ズォォォォ

ロノウェ「………」

魔女「覚悟しな……今度は塵も残さず消し去ってやるからさ……」

ロノウェ「ままま待て!」

魔女「なんだい……遺言なら聞いてやるよ……」

ロノウェ (どうするわし!?どうこの場を切り抜ける!考えろ……考えろ……)



盗賊「いただきます」

エインセル「はいはい……そう何回もやっても面白く無いです……」

盗賊「………」

剣士「食われそうになってるの慣れるなよ……」

エインセル「早くアタクシを温泉の村まで連れてくです!」

剣士「めんどくせえな……俺らも用があんだよ……」

エインセル「じゃあ温泉の村行ってから用を済ませるんです!」

剣士「………」

エインセル「アタクシの方が急を要するですから!」

剣士「あの村に何があるってんだ……」

エインセル「アタクシの連れがいるです。きっと今頃……アタクシがいなくなって泣いてるです……」

剣士「……嬉し泣きか?」

エインセル「がっ!失礼です人間!」

剣士「だってな……」

エインセル「だって何です!」

剣士「お前うるせえし……正直迷惑だぜ?」

エインセル「………」

剣士「………」

エインセル「無口人間……聞いたですか?この筋肉人間言うに事欠いてか弱い妖精のアタクシを迷惑だなんて言ったですよ!」

盗賊「………」

エインセル「そうか……です……」

剣士、盗賊「……?」

エインセル「お前……この筋肉に喋るな喋ったらこの場で犯すぞ!って脅されてそんな無口なんです……」

盗賊「………」

エインセル「恐ろしい……です……悪魔的筋肉人間です……」

剣士「………」

エインセル「うわわもう華奢な無口が筋肉に蹂躙されるかもしれない恐怖ったらです!」

剣士「何言ってんだ……お前……」

エインセル「恐ろしい!恐ろしいです!」

剣士「別に蹂躙なんかしてねえよ……それは普通にやってるだけだもんな盗賊」

盗賊「………」コクッ

エインセル「……は?です?」

剣士「こいつは元々無口だしよ……俺はそんな悪党みてえな真似してねえって……」

エインセル「いや、普通の所を詳しく説明してほしいですが……」

剣士「詳しくも何もやってるだけだぞ?」

エインセル「………」

盗賊「………」?

エインセル「………」

剣士「……?」

エインセル「マジで……です?」

盗賊「………」コクッ

エインセル「うわあああああッ!本物の犯罪者ですぅッ!」

剣士「犯罪者って言うなよ……いいって言うからしてるだけだしな……」

エインセル「例え合意を得られたとしても世間的に見れば立派な犯罪者です!」

剣士「……そうなのか?」

エインセル「そうですッ!」

剣士「だってよ盗賊……じゃあもう出来ねえなぁ……」

盗賊「やらないと駄目」

剣士「でもな……」

盗賊「……こっそりやればいい」

剣士「なるほどな!」

エインセル (何か……凄いズレた人間です……)

ズゥゥゥゥン……



魔女「今のは脅しさ。次は無いよ……」

ロノウェ、クロケル「ひぃぃぃ……」

魔女「……言え」

ロノウェ「ああああれじゃ!あれ!」

クロケル『う、うん!あれ!』

魔女「………」

ロノウェ「……ぶ、武器を探しておったんじゃ!」

魔女「武器……?なんだい武器って?」

ロノウェ「……こんな事を言っても理解出来んじゃろうが……女神の喉元へ届く武器を一目見ようとな」

魔女「………」

ロノウェ「………」

魔女「……そんな探して何をするつもりだい」

ロノウェ「別にどうともせんわ……」

魔女「………」

精霊 (そんな物あるの……?悪魔が言ってるんだからあるのかもしれないけど……)

魔女「それと……アタシの胸と何が関係ある……?」

ロノウェ「………」

ザザザザッ!!

親衛隊「………」ザッ!

魔女「チッ……なんだいぞろぞろ集まって来て」

親衛隊「……先程の爆発は貴様がやったな?」

魔女「邪魔だ!向こう行ってな
!」

親衛隊「その力を我が軍に貸せ」

魔女「………」

親衛隊「………」

魔女「ああ、いいよ」

男「え?ま、魔女さん……」

魔女「……お前らの属してる国を寄越すなら考えてやってもいいさ」

男「………」

親衛隊「ふざけるな……」

魔女「ふざけてるのはお前らだよ」

親衛隊「………」

魔女「……なんだ?力づくでアタシを従わせるか?」

親衛隊「………」チャキッ……

魔女「そんなもん抜いたからには覚悟しなよ……」グッ……

男「せせせせ精霊さん!止めてくださいよ!」

精霊「……僕に出来ると思うの?」

男「今は精霊さんくらいしか……」

ロノウェ、クロケル「………」

精霊「……悪魔に頼むかい?」

男「魂とか寿命とか取られますか……?」

ロノウェ「いらんわそんなもん……」

男「なら!」

ロノウェ「わしらは人間の世界に根を張る者に対しては干渉出来んのじゃ」

クロケル『そうそう!』

男「……それはどう言う事ですか?」

ロノウェ「つまりじゃ……わしらは悪魔を相手にしか出来ん。人間には触る事さえ……」

ポンッ

男「……?」

ロノウェ「……はあ?」

男「なんでしょう……?」

ロノウェ「ななな何でじゃ!」サワサワサワ!

男「………」

ロノウェ「何故触れる!」サワサワサワ!

男「止めていただけませんか……」



ダダダッ!

剣士「なんだよ今のはッ!」

盗賊「爆発」

剣士「そんな事はわかってんだよ!なんで爆発したかって言ってんの!」

盗賊「……魔術によって空気中の魔力分子が凝縮され

剣士「意味わかんねえからそれ以上はいいぜ……」

盗賊「そう……」

エインセル (あれは絶対魔女様です……)

剣士「急ぐぞ盗賊!馬鹿親父の軍隊が何か仕出かしたかもしれねえ!」

盗賊「………」コクッ

エインセル「……あのです?」

剣士「なんだ!」

エインセル「軍隊って……なんです?」

剣士「ああー……今な、ここら辺から逃げらんねえように軍隊が展開されてるんだとよ」

エインセル「………」

剣士「でよ、それを止めんのが俺がさっき言ってた用事ってやつよ」

エインセル「へぇ……です……」

剣士「わかったか?」

エインセル「……その軍隊は二、三人の人間なんです?」

剣士「いくらなんでもそれはねえだろ。国一個から人を逃がさねえようにしてるんだぜ?」

エインセル「………」

剣士「百か二百はこの先にいるんじゃねえの」

エインセル「……それを筋肉人間と無口人間で相手するです?」

剣士「まあそうなるな!」

エインセル「………」

剣士「死んでもやんなきゃなんねえんだ……どうしてもな」

エインセル「………」

盗賊「剣士……」

剣士「なんだ?」

盗賊「さっきの爆発はあの辺」

剣士「……あそこは温泉あった所だよな?」

盗賊「そう」

剣士「おお!ちょうど良かったねえか!」

エインセル「………」

剣士「あそこにお前みたいな虫がいんのか?」

エインセル「虫じゃ無いです!妖精です!」

剣士「似たようなもんだろ……」

エインセル「全っ然違うです!」

剣士「じゃあどんなんがいるのよ?」

エインセル「横暴でがさつな雌とパッとしない雄と魔王様です!」

剣士「へぇ……」

エインセル「………」

剣士「まあいいや、行くぜ……」

エインセル「え?反応それだけです?」

剣士「お前の知り合いだし変わってんだろ?それでいいじゃねえか……」

エインセル「………」

盗賊「剣士……あそこ」

剣士「おうおう!たんまりいるな!行くぜぇッ!」



魔女「まとめて来な!全員ぶちのめしてやるよッ!」

親衛隊「………」

魔女「……ドゥム……シュレッケン……」

待てぇぇぇッ!!!

魔女「……あん?」

剣士「待てッ!」

魔女「………」

剣士「てめら……将軍の兵隊だな?」

親衛隊「答える必要は無い。……貴様も我らの邪魔をするならその女もろとも消えて貰う」

剣士「おう、姉ちゃん……こいつらに何かされたか?」

魔女「喧嘩を売られたさ。……退け、アタシの喧嘩だよ」

剣士「あ……そうなのか。悪りけど引いてくんねえか?」

魔女「………」

剣士「俺よ、わけあってさこいつらを止めなきゃなんねえんだ。……馬鹿野郎との約束でよ」

魔女「………」

剣士「………」

魔女「チッ……譲ってやるから少しは残しときなよ」

剣士「おう!ありがとよ!」

親衛隊「今日は何故こんな頭の悪い奴等が湧く……この数を相手に何とかなると思っているのか?」

剣士「ああ、思ってるぜ……てめらには恨みはねえが……」

親衛隊「………」

剣士「ここら辺の兵隊止めさせて貰うぜ。……盗賊行くぞ!」

盗賊「………」コクッ



剣士「盗賊ッ!殺すなよ!」

盗賊「………」コクッ

剣士「うおおおおッ!」

ガギンッドズッ!……ワアァァァァ!

魔女「ほう……凄いねぇあの筋肉達磨。あの数に突っ込んでくかい」

エインセル「ひぃぃぃん!魔女様ですぅ!」

魔女「ッ!?」

エインセル「この汚れた世界に放り出されて身も心もズタズタになりながらも健気に魔女様の事を思い戻って来たですぅ!」

魔女「………」

エインセル「恐かったです!途中何度も貞操の危機に瀕して……どうしましたです?」

魔女「……無事だったのかい」

エインセル「……え?無事でしたがです……」

魔女「………」

エインセル「聞いていいです……?」

魔女「………」

エインセル「アタクシがいなくなってから……アタクシの事を探しましたよね?です……?」

魔女「………」

エインセル「………」

魔女「すまん……」

エインセル「………」

魔女「ほら!ちゃんと帰って来たんだ!良いじゃないか!」

エインセル「………」

魔女「………」

エインセル「魔女様……ドイヒーです……」

魔女「こっちもこっちで色々忙しかったんだよ……」

エインセル「………」

魔女「しかしお前、どこ行ってたんだい?」

エインセル「どこって……誰か!に閉じ込められた箱から出るとそこは馬車の中だったです……」

魔女「………」

エインセル「どこぞともわからぬ場所でアタクシはさ迷い戸惑い世界の悪意と闘いながらも懸命に生きです……」

魔女「………」

エインセル「そんな中あの下僕達と出会い壮大な冒険の末……ここに舞い戻って来た……です……」

魔女「………」

エインセル「何度も……何度も……襲い来る劣情を千切っては投げ

魔女「ああ……もう長いからいいよ……」

エインセル「なッ!?ちゃんと聞くですッ!」



ロノウェ「………」ペタペタ

クロケル『………』ペタペタ

男「精霊さん……助けていただけませんか……」

精霊「嫌かもしれないけど我慢しなよ……」

男「何故です……」

精霊「何かゴチャゴチャしだしたからさ……こっちに目が向かないようにさジッとしててね」

男「ぇぇぇ……」

ワアアァァァ……

剣士「ワラワラ湧いて来やがってッ!めやどくせぇぇぇッ!」

シュガッ!ドドスッ!

盗賊「………」バババッ!

ズガッガガがッ!

魔女「お前、あの筋肉達磨と来たんだろ?」

エインセル「………」ブスゥ!

魔女「そんな膨れっ面いつまでもしてんじゃ無いよ……エインセル、あいつら一体何者だい?」

エインセル「さあ?です」

魔女「さっきは気付かなかったが、ちっこいの方は?」

エインセル「さあ?です」

魔女「お前ね……」

エインセル「アタクシが下僕人間達の素性を知る必要は無いです!」

魔女「……まあいいや。それにしても……あいつら本当に人間かい?」

エインセル「……え?です?」

魔女「特にあのちっこい方……かなりヤバい臭いがするがね……」

エインセル「確かに無口人間はヤバいです……」

魔女「なんだ?わかってんのかい?」

エインセル「アタクシを頭から丸飲みしようとしたですよ!」

魔女「………」

エインセル「ガシッと掴まえられて!それはそれは恐ろしかったです!」

魔女「………」

エインセル「あああ!思い出しただけでも……魔女様です?」

魔女「お前を食べようとしたのかい?」

エインセル「はいです!」

魔女「二人ともかい?」

エインセル「いいえ!無口人間だけです!」

魔女「………」

エインセル「……です?」

魔女「あのちっこいの……マジで人間じゃ無いんじゃないのかい……」

エインセル「……何でです?」

魔女「お前を食べようなんざ……普通の人間がするかい」

エインセル「するです!胃袋的にも性的にもです!」

魔女「するわけ無いだろ……もしそんなんなら筋肉の方もお前を食おうとしていさね」

エインセル「確かに……です……」

魔女「本当に何者だい……あいつら……」

エインセル「………」



盗賊「………」ズガッ!

ギャアアアァァ……

剣士「盗賊!ちったあ手加減しろよ!」

盗賊「殺して無いから大丈夫」

剣士「そっか。それにしても……まだ偉えいるな……」

親衛隊「………」

剣士「おい!この部隊の一番上は誰だ!」

親衛隊「言えるか!」

剣士「そりゃそうか。……将軍の使者だと言っても会わせて貰えねえか?」

親衛隊「………」チャキッ……

剣士「まあ言ったところで信じられるわけねえよな……」

親衛隊「………」

剣士「………」ヒュバッ……

ドズッ!

親衛隊「グァァ……」ガクッ……

剣士「なんだよ……ただ振り回しただけだろ?当たんなよ……」

親衛隊 (は、早い……あんな大剣を……)

剣士「……ん。ほら、これ見ろ」カチャ

親衛隊「……?」

剣士「………」

親衛隊「……ッ!」

剣士「これ見りゃわかって貰えるか?」

親衛隊「な……何故貴様がそんな物を……グッ……」

剣士「………」

親衛隊「答えろ……何故貴様がそんな物を持っているッ!」

剣士「答えてやってもいいが……まずてめらの兵を止めろ」

親衛隊「………」

剣士「……もし俺の言っている事が本当ならマズイ事になるだろ?」

親衛隊「………」

剣士「………」

親衛隊「……皆!やめろッ!」

ザワ……ザワ……

親衛隊「手を出すのはやめろッ!」

………ザワ………

盗賊「………」ビシッズガッバキッ!

剣士「と、盗賊!手出してねえんだからお前もやめろよッ!」



親衛隊「……何故貴様が将軍様が使われている剣を持っている?」

剣士「だからよ……一番偉い奴に話させろって……」

親衛隊「私がこの部隊の隊長だ。……私の掛け声で兵が止まったのだ、わかるだろ……」

剣士「確かに……」

親衛隊「聞かせて貰おう。その剣を持っている理由を……」

剣士「……将軍は死んだからだ」

親衛隊「なッ!何を馬鹿な事を……」

剣士「それでねえと……この剣がここにある理由になんねえだろ?」

親衛隊「………」

剣士「リザルチメントスパーダ……馬鹿野郎が持ってたんだな」

親衛隊「………」

剣士「ふん……」

親衛隊「何故……死んだ……?あれ程までに己の大道を志した御方が……」

剣士「その大道やらが絶たれたから自害した……」

親衛隊「………」

剣士「馬鹿だよなぁ……出来ねえ事やって後悔して死んだんだぜ?」

親衛隊「………」

剣士「笑っちまうよ。夢を追わなきゃ死ぬ事も無かったのによ」

親衛隊「それ以上……将軍様を侮辱する事は許さんぞ……」

剣士「………」

親衛隊「………」

剣士「……で?兵を引いてくれるか?」

親衛隊「ひとつ聴きたい……」

剣士「なんだ?」

親衛隊「将軍様は……貴様にその剣を託し、我ら兵を止めろと命したのは何故だ?」

剣士「ん……なんて言うかな……」

親衛隊「………」

剣士「息子だからか。だから親父がやらかした事を他人にやらせるわけにはいかねえだろ?」

親衛隊「……親父?……息子?」

剣士「ああ。俺は野郎の息子だ」

親衛隊「………」

剣士「そんな顔すんなよ……別に嘘なんか言ってねえよ」

親衛隊「信じられん……」

剣士「そこは信じねえでもいいよ。だが……テメエらの大将はもういないのは事実なんだ」

親衛隊「………」

剣士「……兵を引いてくれるか?」



魔女「なんだい……ぞろぞろ兵を引き上げやかって……」

剣士「いやぁ迷惑かけたな!」

魔女「………」

剣士「……?」

魔女「……アタシの分は?」

剣士「悪い……忘れてたわ!」

魔女「まあいい……お前に聞きたい事がある」

剣士「なんだ?」

魔女「お前ら一体何者だい?随分と腕が立つわ……さっきの兵隊共はお前の一言で引き上げてくわ……」

剣士「………」

魔女「それにそのちっこいのは人間か?」

剣士「……言わねえと駄目か?」

魔女「駄目だね。アタシが殺る分を残しとかなったんだ、言いな」

剣士「んふ……しかたねえな。ちょっと話が長くなるぞ?」

魔女「構わないよ。暴れる時間を取られちまったからね」

剣士「俺、剣士。こいつは盗賊で化け物だ」

魔女「………」

剣士「ここから西の方でイザコザがあってな……」

精霊「……おさまったみたいだね」

男「ならそろそろ……」

ロノウェ、クロケル「………」サワサワ

男「助けて頂けませんか……」

精霊「わかった……君達ね、彼が珍しいのはわかるけど触るの止めてあげて」

ロノウェ「教えてくれ……」

精霊「何をだい?僕達の正体を……かな?」

ロノウェ「そうだ……」

精霊「じゃあ……僕も教えて欲しい事があるんだけど」

ロノウェ「教えて欲しい事?」

精霊「さっき言ってた女神の喉元へ届く武器……この事についてだよ」

ロノウェ「………」

精霊「どうかな?」

ロノウェ「……知ってどうする?」

精霊「別に……ただそんな武器が本当に存在するのか疑問なんだよ」

ロノウェ「………」

精霊「………」



剣士「とまあ、それで俺はここにいるわけだぜ」

魔女「へぇ……そんな事があったのかい」

剣士「信じらねえかもしれんけど……」

魔女「いや、信じるさ。西の方で感じたざわつきが何だったのかわかったからね」

剣士「ざわつき?姉ちゃんそんなの感じられんのか?」

魔女「何百年と生きてりゃ出来るようになるもんなんだよ」

剣士「へぇ」

エインセル「何で普通の反応なんです……」

剣士「盗賊も何百年って生きてるもんな。だろ?」

盗賊「………」コクッ

剣士「周りにこんな奴等がいたんだ、今更驚きはしねえぜ」

エインセル「………」

剣士「そう言やぁお前は仲間見付かったのか?」

エインセル「ここにいるのがそうです……」

剣士「おお!そうなのか!良かったな!」

魔女「で?このちっこいのは結局なんなんだい?」

剣士「………」

魔女「……?」

剣士「なんだっけな……く……く……」

盗賊「クロミュオーンの猪……」

剣士「……そんなんだったか?」

盗賊「そう……」

剣士「だそうだ」

魔女「嘘付くんじゃ無いよ……」

剣士「本当だって。なぁ?ネメアって奴とジノって奴も一緒だったぜ」

魔女「ネメア……?ジノ……?」

エインセル「魔女様……です……」

魔女「………」

エインセル「聞かない方がいいです……?」

魔女「言わなくてもどんな化け物かわかってんだろ……」

エインセル「はいです……」

魔女「なんで……そんな化け物共がこの世界にいるんだい……」

剣士「俺の師匠が召喚ってやつをしたからじゃねえかな」

魔女「………」

剣士「俺の師匠、アホみたいに強いからな!」

魔女「へぇ……」

剣士「さっき言ってた件でよ!師匠は千人の兵隊を相手に大立回りしてんだぜ!」

魔女 (このちっこいの……マジもんだろうねぇ……って……)

エインセル「もう言わなくてもいいです……」

剣士「なんでよ?聞けって。なんて言うかな……人間的に器がデケエんだ師匠!」

魔女「……おい」

剣士「あ?なんだい?」

魔女「お前……ちっこいのを名前で呼んでたが、それは自分で名乗ってたのかい?」

剣士「いや?こいつが名前くれって言うからよ俺が付けた」

魔女「………」

剣士「な?」

盗賊「………」コクッ

魔女「ちっこいの……お前、何か目的があってそいつに付いてるのか?」

盗賊「………」フルフル

魔女「何にも無しにただ……いや、そう言うもんなのかねぇ……」

盗賊「………」

魔女「こいつが生きてる間は側にいるってやつかい?」

盗賊「………」コクッ

魔女「ふぅん……」

精霊「で?それは……どんな物なの?」

ロノウェ「物では無い」

精霊「でも武器なんだろ?」

ロノウェ「……心じゃよ」

精霊「はあ?」

ロノウェ「………」

精霊「そんなどっかの老師が口にした言葉なんて言わないでいいから……」

ロノウェ「そんなつもりで言ったんじゃ無いわ!」

精霊「違うの?なら心って何さ?」

ロノウェ「この世界の誰かが持つ心なら女神に対抗出来うる武器になると言いたいんじゃ」

精霊「………」

ロノウェ「わかったか?」

精霊「……その誰かって言うのは?」

ロノウェ「知らん」

精霊「………」

ロノウェ「まだわしでも感じられん程小さいか……本人がそれと自覚して無いか……じゃな」

精霊「へぇ……」

ロノウェ「………」

精霊「後、もうひとついいかな?」

ロノウェ「なんじゃ?」

精霊「その武器を持っている者がここにいるから……君達はいるの?」

ロノウェ「………」

精霊「どうなの?」

ロノウェ「……あの女に言わんのなら教える」

精霊「良いけど……」

ロノウェ「絶対言うなよ!」

精霊「わかったから……」

ロノウェ「オッパイ倶楽部による野外活動の一環でここにいるんじゃ……」

精霊「………」

ロノウェ「のお?クロケル」

クロケル『うん』

ロノウェ「ここに来れば……様々なオッパイを見れると思ったんじゃがなぁ……」

クロケル『うん……ガッカリだよね……』

精霊「………」

魔女「お前ら……」

ロノウェ「なななななんじゃ?」ビクッ!

魔女「付いてきな」

ロノウェ「……嫌じゃが?」

魔女「拒否出来る立場だと思ってんのかい!」

ロノウェ、クロケル「………」

魔女「行くよ!」

ーー

剣士「丁度良かったな盗賊!宿取る手間が省けてよ!」

魔女「……付いてきなって言っただけだろ!誰もてめえらの世話をするなんて言って無いね!」

剣士「ええ……いいじゃねえかよ……」

精霊「おおお……」

男「盛大に巻き上げられましたね……」

精霊「何で僕が全部負担しないといけないのさ……」

ロノウェ、クロケル「………」

魔女「さて……どうされたい?」

ロノウェ「帰して貰いたい……」

精霊「魔女ね……いい加減に許してあげなよ」

魔女「………」

精霊「彼達は偶然ここに来て……偶然魔女の胸を見て……ちょろっと口が滑っただけなんだよ」

魔女「………」

精霊「これ以上追い詰めても良い事なんて無いと思うよ?それが悪魔なんだから尚更ね」

魔女「………」

精霊「……どうだい?」

魔女「チッ……仕方無いね……」

ロノウェ「………」

魔女「今回は見逃してやるよ。……今から言う条件を飲んだらだけどね」

ロノウェ「なんじゃ……条件って……」

魔女「アタシ達に協力しな」

ロノウェ「誰が

魔女「………」パチンッ!

エインセル「グヘヘヘェ!天使ぃ天使ぃですぅ!」

クロケル『ひぃぃぃぃぃ!た、助けてロノウェええッ!』

ロノウェ「………」

魔女「条件を飲まないなら……お前の仲間がどうなるかねぇ……ククッ」

ロノウェ「………」

魔女「………」

ロノウェ「……構わんぞ別に」

クロケル『はあああッ!?』

魔女「お前……仲間を見捨てるなんてなんて奴だい……」

ロノウェ「わしの事じゃ無いし!」

魔女「………」

エインセル「だそうですぅ……ふふふ……」

クロケル『………』

剣士「なあ?そこの兄ちゃんよ」

男「はい、なんでしょう……」

剣士「あの姉ちゃん……何も無い所に向かって何をしてるんだ?」

男「え?……ああ……そのですね……」

精霊「普通の人間には見えない者がそこにいるんだよ」

男「……せ、精霊さん!言っちゃっていいんですか?」

剣士「………」

精霊「いいと思うよ。隠す必要は無いし……隠す意味無いと思うし」チラッ

盗賊「………」

剣士「見えねえ者か……盗賊よ、どんな奴がいるんだ?」

盗賊「悪魔二人」

剣士「悪魔って……」

精霊、男「………」

剣士「そう言う奴らってどこにでもいるもんなんだな」

男「あんまり驚かないんですね……」

剣士「ああ!そんな奴等いっぱい見てきたからな!慣れちまったぜ」

男「そうなんですか……」

剣士「おうよ!」

クロケル『君!助けて!』

男「へ?」

エインセル「お前も蝋人形にしてやろうかぁですぅ!」バサッ!

男「………」

剣士「よっと」バシッ

エインセル「離すです!筋肉人間!」バタバタ!

剣士「お前……うるせえよ」

エインセル「うるさく無いです!妖精的コミュニケーションです!」

剣士「もしかしてよ……お前って邪魔なんじゃねえの?」

エインセル「ぐあわ!ボケカス筋肉人間なんて事言うですか!アタクシが邪魔だなんて微塵も無いに決まってるです!ねえ!」

精霊、男「………」

エインセル「………」

剣士「………」

エインセル「……魔女様は……邪魔だなんて思って無いです……?」

魔女「………」

エインセル「………」

剣士「やっぱり……」

魔女「それ以上言ってやるんじゃ無いよ……」

エインセル「うぅ……」



エインセル「シクシクです……」

魔女「………」

ロノウェ「お前達に協力なんて……一体何をしようとしとるんじゃ……」

魔女「女神をぶちのめしに行くのさ」

ロノウェ「………」

魔女「………」

ロノウェ「それは本気……か?」

魔女「嘘言ってどうするんだい。特が無いのに言うか」

ロノウェ「……それはここにいる奴等でか?」

魔女「いや、アタシとこいつさ」

男「俺は行きたくな

魔女「あ?」

男「いえ……なんでも……」

ロノウェ「こいつ……?こいつもお前みたいな力を持っとるのか?」

魔女「さあ?だが……普通じゃ無い何かを持ってる事は確かさ」

ロノウェ「なんじゃい……その普通じゃ無い何かって?」

魔女「……こいつは女神に勇者になれって言われたんだとさ。そんな人間なら何か力を持ってるだろ?」

ロノウェ「………」

男「………」

魔女「で、こいつは勇者になんかなりたくないと言ってるんだよ。だからそれを手伝って女神ぶちのめしに行くのさ」

ロノウェ「アホか……もっとましな冗談を言え……」

男「……本当なんです」

ロノウェ「………」

魔女「別に信じなくてもいいさ。協力さえして貰えばいいからねぇ」

ロノウェ (こ、こいつが……武器か……)

男「………」

ロノウェ (本当に……こんな奴が……)

男 (あんまり見ないで欲しいな……)

ロノウェ「………」

魔女「……協力するか?」

ロノウェ「してやってもいいが……わしらは何をすればいいんじゃ?」

魔女「こいつ……男を強くしてやって欲しい」

ロノウェ「………」

男「けけけけ結構ですよ!俺は強くなんて

魔女「黙りなッ!」

男「………」

魔女「出来るかい?」

ロノウェ「………」

魔女「なぁに、ちょいと女神ぶちのめすくらいにして貰えばいいさ」

ロノウェ「アホか……ちょいとで女神に手を出せる程になるか……」

魔女「なら徹底的でもいいよ」

ロノウェ「………」

剣士「いやぁネメアんち帰る前に戻れそうで良かったな盗賊!」

盗賊「………」コクッ

剣士「親父の兵隊とグダグダやる事になんなくて良かったぜ」

精霊 (ん……この人間強そうだね……女騎士が駄目になったら彼に頼もうかな……)

剣士「盗賊はよ……本当にネメアとかと帰んなくて良いのか?」

盗賊「構わない」

剣士「でもよ……兄弟なんだろ?」

盗賊「………」

剣士「遠くに行っちまって……会えなくなってよ……」

精霊「ちょっといいかい?」

剣士「……なによ?」

精霊「それは彼女にとって失礼なんじゃないかな」

剣士「はあ?どうして?」

精霊「君は彼女を使役しているんだよね?」

剣士「よくわかんねえけど……そうだな……」

精霊「なら彼女は君が居ればいい」

剣士「………」

精霊「使役したと言う事は彼女にとっては兄弟よりも君との繋がりが強くなるんだよ」

剣士「……使役ってそんな重い物なのか?」

精霊「そうだね」

剣士「………」

ロノウェ「ちょっと考えさせてくれんか?」

魔女「………」

ロノウェ「やらないじゃ無いぞ?出来ないかもしれんのでな」

魔女「出来ないって?」

ロノウェ「こちらにだって事情があるんじゃ……悪魔が手を貸すとなると色々面倒な事になりかねんし」

魔女「………」

ロノウェ「下手して悪魔と神の全面戦争になんてなったらどうするんじゃ……」

魔女「そこは上手くやんな!」

ロノウェ「上手く出来るならお前らに捕まってここにいないわ……」

魔女「……使えないねぇ」

ロノウェ「………」

ーー

チャポーン……

クロケル『はぁぁ……』

ロノウェ「ええ湯じゃなぁ……」

男 (ここ数日……ダラダラと悪魔とお風呂入ってるってどうなんだろ……)

クロケル『どうかしたかい?』

男「いえ……」

ロノウェ「時には自分のやっている事に疑問を持たんのも大切な事じゃ」

男「………」

ロノウェ「何も考えず先に進むのもな……ういぃ……」

男「………」

クロケル『ロノウェ……』

ロノウェ「なんじゃ?」

クロケル『本当にこの人間……何か特殊な力なんてあるのかな……』

ロノウェ「ん……」

男「………」

ロノウェ「こう観察をしとけば自ずと解ると思ったんだがのぉ……」

クロケル『あれじゃ無いの?自分がピンチになったら覚醒するとかってやつ』

ロノウェ「ふむ……」

男「………」

ロノウェ、クロケル「………」

男「あ、危ない事は止めてくださいね……?」

ロノウェ「せんわ。お前が傷付く様な事すればあの女に何されるかわかったもんじゃないからな!」

クロケル『僕達が悪魔だからって!普通に爆破する人間だもんね!」

男 (魔女さんなら……悪魔とか人間とか関係無く爆破しそうだけど……)

ロノウェ「はぁ……それにしても厄介な事を引き受けてしまったの……」

クロケル『そうだねぇ……』

ロノウェ「……こいつの力が何なのか。こいつ自身が強くなるのかなんてのぉ」

クロケル『そんなの僕達にわかるわけ無いじゃないかね!』

男「………」

ロノウェ「困ったの……」

クロケル『うん……』

ロノウェ (じゃが……こいつに頑張って貰わな召喚士の事も解決しないのも事実だしの……)

男「……やっぱり勇者やった方がいいんでしょうか」

ロノウェ「んあ?何でじゃ?」

男「何て言うか……魔女さん達と貴方達まで迷惑かけてますし……」

ロノウェ「………」

男「俺が大人しく勇者やっていたらこんな事に……」

ロノウェ「お前は勇者をやりたくないと言ってここにいるんじゃろ?」

男「はい……」

ロノウェ「その事にあの女は付いて来たんじゃろ?」

男「……連れてこられたと言った方がいいかもしれませんけど」

ロノウェ「それは違うな」

男「違う……んですか?」

クロケル『君が中心となって事が動き出してるんだよ』

ロノウェ「左様。形はどうあれ、お前が勇者をやりたくないと行動を起こした時から……な」

男「どう言う事でしょう……?」

ロノウェ「ん、例えばじゃ。気にも止めないような小さい事が、やがて無視出来ない程大きな事になる」

男「………」

ロノウェ「その小さい事が、今のお前なんじゃぞ?」

男「まさか……」

ロノウェ「……多分わしらもその小さい事の渦に巻き込まれてしまったようじゃが」

男「………」

ロノウェ「だからと言ってお前を責めようなんて思わんから安心せい。これはなるべくしてなった事なのじゃろ」

クロケル『そしてあの女もかな。ね、ロノウェ』

ロノウェ「そうじゃな」

男「………」

ロノウェ (本当にそうなら……わしは何もせんでいいな。本当にそうなら!)

クロケル (小さい渦は小さいままなのか……はたまた……かな)

男「……逃げ

ロノウェ「それはしちゃいかんぞ!」

男「……え?」

ロノウェ「うん!それは駄目じゃ!逃げる選択肢を選んでみろ……わしらはいいが!あの女が……黙っとらんじゃろ……」

クロケル『そうだね!僕達はいいけど!あの女に……苦しめられながら……ゴニョゴニョ……」

男「苦しめられながら……何です……?」

ロノウェ、クロケル「………」

男「………」



剣士「セアアアアッ!」ブワッ!

盗賊「………」ザッ!

魔女「………」

精霊「彼……凄いね……」

魔女「ああ……クロミュオーンの猪と互角かい……」

精霊「うん……」

魔女「最近の人間はそんなに強くなったのか……?」

精霊「なるわけないだろ……」

剣士「チッ!喰らえ!」

盗賊「がら空き」シュッ!

ドボグッ!

剣士「ゲハッ……ま、参った!」

盗賊「………」バッ!

剣士「くそぉ……今日はいけると思ったんだがなぁ!」

盗賊「甘い」

魔女「おい、お前」

剣士「ああ、なんだい?」

魔女「人間か……?」

剣士「いきなりなんだ……化け物になった覚えはねえから人間だぜ?」

魔女「それにしちゃあ随分と腕が立つじゃないさ」

剣士「そっか?こいつに勝てねえし俺より強え奴なんかゴロゴロいるからなぁ……」

魔女「………」

精霊 (そういないと思うけど……)

剣士「俺の師匠なんか剣を顔面で受けても平気なんだぜ!」

魔女「それはもう人間じゃないんじゃないのかい……」

剣士「確かに人間じゃねえのかもなぁ……所々おかしかったし」

魔女「へぇ……」

剣士「そう言えばよ、姉ちゃんいける口か?」ポンポン

魔女「あ?アタシとやりたいってのかい?」

剣士「その気があるならな。あの兵士の数相手に喧嘩しようとしてたんだろ?」

魔女「ふん、アタシは魔女だよ。あんなの数になるかい」

剣士「なら俺の相手してくれよ」

魔女「相手になるわけないだろ……」

剣士「なんでだ?」

魔女「だから!魔女だって言ったろ!」

剣士「……魔女だと俺と戦えねえ何かがあるのか?」

魔女「お前馬鹿かい……剣一本で魔術に張り合うつもりか……」

剣士「出来ねえ事もねえだろ」

魔女「………」

剣士「大丈夫だぜ!魔術とかよくわかんねえがな!」

魔女「はぁ……」

剣士「ほれ!構えて!」

魔女「仕方無いねぇ……怪我しても知らんからね」

剣士「おう!」

精霊「魔女……殺さない様にね……」

魔女「それはアイツ次第だよ。死ななきゃ死なないし死ぬ時はしぬ」

精霊「………」

剣士「いつでもいいぜ!」チャッ!

魔女「ふん……じゃ軽く……ヘレ……」

精霊「……え?」

魔女「 アインエッシェルングゥゥッ!」グババッ!

精霊「それいきなり全力じゃないか!」

魔女「ちっと熱いが耐えろよ!アハハハハ!」

ゴバアアアァァッ!

剣士「ウオオオオッ!」

シュパンッ!……ズバァッ!

魔女「な……」

精霊「は……」

剣士「……炎を切り裂くくらいやってやれねえ事無いぜ」

魔女、精霊「………」

剣士「………」

盗賊「……剣士、お尻」

剣士「あ?……あぢぃぃぃ!あっぢあっぢ!」バサバサ!

魔女「………」

精霊「驚いた……魔法を切り裂いたよ……」

魔女「………」

精霊「一体彼は……」

剣士「焦ったぜぇ……よし、今度はこっちから行くぜッ!」

精霊「ま、魔女!」

魔女「……はっ!」

剣士「ドリャアアアア!」バッ!

魔女「チィッやらせるかい!エカルラートトゥルム ッ!」バッ!

シュバアァァァッ!

剣士 (光の壁が……関係ねえ!ぶった斬ってやらあッ!)

魔女「無駄だよ!隕石さえ防げる壁だ!」

剣士「オオオオオオッ!」

魔女「弾き返せぇぇッ!」

……ズバンッ!

剣士「………」スゥ……

魔女「あが……ぐっ……参った……」

剣士「……よっしゃ!」バッ!

盗賊「………」バッ!



魔女「ふざけんじゃないよ……なんなんだい……」

精霊「………」

魔女「あああ!?これはなんだいッ!」ガバッ!

精霊「は、離して!やったのは僕じゃ無いだろ!」

魔女「普通の人間が何故魔術を斬れるんだい!悔しいぃぃ!」

精霊「………」

魔女「このままじゃ悔しいからお前一発殴らせな!」

精霊「やだよ!」

魔女「なら何故アイツが炎やら光の壁を斬れたか教えな!」

精霊「あのね……」

魔女「わかんないなら殴るからね」

精霊「君はどうやっても殴る口実を作りたいのかい……じゃあ冷静になって彼の剣を見てごらんよ」

魔女「………」ダッ!

精霊「………」

剣士「いやぁ、俺はいつの間にか炎とか斬れる程になってたんだなぁ……」

盗賊「………」

剣士「努力してきたかいがあるってもんだぜ、な盗賊」

盗賊「………」

剣士「こんなんじゃそろそろお前をぶっ飛ばせる日も近えかもしれねえな!ぶははは!」

盗賊「………」

魔女「お前!剣見せな!」

剣士「……嫌だぜ?」

魔女「いいから!」

剣士「おいおい……勝負に負けたからって道具のせいにしようとしてるのか?」

魔女「違うッ!さっさと見せな!」

剣士「なんだよ……壊すなよ……」チャッ……

魔女「………」

剣士「別に変わったとこなんてねえ剣だぜ?ただ折れねえってだけで……」

魔女「チィィィィッ!お前!この剣どこで手に入れた!」

剣士「どこってなぁ……この近くにいる奴に売って貰ったんだよな盗賊?」

盗賊「………」コクッ

魔女「売って……盗んだんじゃ無くてかい?」

剣士「……盗んでねえよな?」

盗賊「盗んで無い。銅貨80枚だった」バッ!

剣士「えれえ安かったんだな……お前そんなに安く買えたんじゃ意外と商才あんのな!」

盗賊「………」ニヤ

魔女「あのボケッ!人間嫌いとか言っといて武器やってんじゃないかいッ!」

剣士「……?」

魔女「野郎……」

剣士「姉ちゃん……この剣造った奴知ってんのか……?」

魔女「あ?知ってるよ。だからなんだ」

剣士「会わせてくれ!」

魔女「………」

剣士「頼む……礼をしてえんだ」

魔女「いいだろ。着いてきな」

精霊「え……ドヴェルグのとこ行くの?」

魔女「アタシの拳が殴らせろってうるさくてねぇククッ……」

精霊「………」

魔女「あんたはどうする?」

精霊「僕は男が心配だから待ってるよ……なんせ悪魔二人といるからね」

魔女「そうかい。じゃ行ってくるよ」

精霊「う、うん……」



キャー……ゴサルウー……デス!……

ロノウェ、クロケル「………」

男「……あの、いい加減上がりませんか?ゆだってしまいますよ……」

ロノウェ「来たな……」

クロケル『来たね……』

男「何がです……?」

ロノウェ「この壁の向こうに未知なる柔らかき丘が出来たのじゃよ……」

クロケル『待ってたかいがあるってもんだよねロノウェ……』

男「………」

ロノウェ「ふっ……さっそく鑑定といこうかのクロケル!」

クロケル『おうさ!ロノウェ!』

男「……女の人のお風呂を覗こうとしてるんですか?」

ロノウェ「覗く?チッチッ……甘いのぉ。オッパイ倶楽部では覗きは御法度じゃ」

男「なら……何をなさろうとしてるんですか……」

ロノウェ「直に鑑定しに行くんじゃ」

男「………」

クロケル『間近で見ないとね……間違った鑑定したら恥かいちゃうし!』

男「………」

ロノウェ「さて!」

男「そんな事……駄目です!」

ロノウェ、クロケル「………」

男「なに考えてるんですか!貴殿方は偉い悪魔なんですよね!?」

ロノウェ、クロケル「………」

男「それが……人間の胸を見たいが為にコソコソと!」

ロノウェ「それは違うぞ?」

男「何が違うんですか!」

ロノウェ「堂々とな!クロケル!」

クロケル「うん!」

男「それでも駄目です!」

ロノウェ「なんと……何故怒るんじゃ……」

クロケル『……ロノウェ、彼も……』

ロノウェ「ああ……」

男「はあ?俺が何です……」

ロノウェ「すまんかったの……誘わなくて」

クロケル『君も見たいなら見たいって言えば良いのに……』

男「違います!胸を覗く様な事はしないでくださいと言ってるんです!」

ロノウェ、クロケル「………」

男「………」

ロノウェ「なんでじゃ?」

男「だから!偉い悪魔なんですよね!そんな方達が!」

ロノウェ「悪魔が人間のオッパイ見ちゃいかんのか?なあ?」

男「……駄目だと思います」

ロノウェ「思います?……なんじゃ、今度は言い切らんのか?」

男「………」

ロノウェ「………」

男「やっぱり駄目です……それは悪い事ですから……」

ロノウェ「かーかっかっ!悪魔が悪い事して何が悪いんじゃ!」

精霊「駄目に決まってるだろ……」

男「せ、精霊さん!助けてください……」



……「くわぁ!なんでゴザル!」

エインセル「ゴザルじゃ無いです!アタクシを見るなり叫ぶなんて失礼です!」

……「されどでゴザルな!奇っ怪な虫羽人形がバサバサと舞えば驚きもするでゴザル!」

……「キャー!キャー!虫!虫ぃぃ!魔術士ぃぃ!」

魔術士「女忍者殿……少しばかり叫び過ぎでゴザルぞ……」

女忍者「だ、だって!苦手なんだからしょうがないでしょ……キャァァ!」

エインセル「ヘンペー胸人間黙るです!」

女忍者「誰がヘンペー胸よ!」

エインセル「それとアタクシは虫じゃ無いです!よ、う、せ、い!妖精なんですよ!」

魔術士、女忍者「………」

エインセル「わかったですか!」

女忍者「………」ガシッ!

エインセル「ひっ!なななななんです!」

女忍者「……西洋幻想捕まえた」

エインセル「な、な……このヘンペー胸人間目がおかしいですけど……」

魔術士「………」

エインセル「ゴザル!なんですこれ!」

魔術士「女忍者殿は……魔法使いになりたいんでゴザル……」

エインセル「……で?」

魔術士「それに伴い西洋の……妖精殿みたいな者に目がないと言うかでゴザル……」

エインセル「………」

魔術士「……そう言う物を見付けると目を輝かせて離さないんでゴザル」

女忍者「………」キラキラッ!

エインセル「……このままだとアタクシどうなるです?」

魔術士「魔法使いになる為のヒントか何か出さないと離さないでゴザル……」

エインセル「なんだ……そんな事でいいですか……」

魔術士「妖精殿……そんな事とはこれ如何にでゴサル?」

エインセル「ふふふ……アタクシ、何を隠そうちょっとばかり魔女を従えていましてねです……」

女忍者「魔女ッ!?」

エインセル「ついでに?悪魔なんかもござれですぅ……むふふ」

女忍者「悪魔ッ!?聴いた魔術士!魔女に悪魔だってぇ!」

魔術士「確りと聴いていたでゴサルよ……」

女忍者「ついに……夢が叶います先生……」

魔術士「………」

エインセル「わかったら手を離すです!ヘンペー胸人間!」

女忍者「………」グッ

エインセル「グハァです!なななな何ですか!強く握ってです!」

女忍者「私ぃヘンペー胸?」

エインセル「………」

女忍者「……私はヘンペー胸なのかな?」

エインセル「………」

女忍者「次、ヘンペー胸とか言ったら握り潰しちゃうかもしれないから気を付けてね」

エインセル「はいです……」

女忍者「………」

エインセル (はわわ……こ、これは危険な人間に関わってしまったかもです……)ヒュウン

魔術士「拙者の後方へ隠れるのは止めてくださいでゴザル……」

エインセル「ならその立派な谷間にインしちゃっていいです?」

魔術士「………」

女忍者「憎たらしい程の谷間だよね……」

魔術士「そんな事言われてもでゴザル……」

女忍者「ま、それはいいから魔女に会わせて!」

エインセル「はいはいです……」



フォシュン!

魔女「………」

剣士「うげぇぇぇ……」

魔女「汚いね!吐くんじゃ無いよ!」

剣士「し、しかたねえだろ!何か飛んじまう魔法だか?に入ったら気持ち悪くなったんだから……」

魔女「転移酔いだね。ったく、それぐらいで吐いてんじゃ無いよ情けない……」

盗賊「………」クイクイッ

剣士「あ?……この奧にこの剣売ってくれた魔物がいるのか?」

盗賊「そう」

剣士「……やっぱ化物か?」

魔女「小汚い親父さ。行くよ」

剣士「親父ぃ?ま、待ってくれよ」



カツーン……

ドヴェルグ「………」

ザッ……

ドヴェルグ「……ん?」

魔女「………」

ドヴェルグ「何じゃ……お前か。武器ならまだ出来とらん

魔女「ドラルァアアッ!」ズバッ!

ドキャャャャンッ!!!

ドヴェルグ「ベブラッ!」

ズガァァァンッ!

魔女「はぁ……スッキリした!」

ドヴェルグ「な、ななな何じゃいきなり!」

魔女「……お前、こいつに武器やったろ?」

ドヴェルグ「あああ?」

盗賊「………」

剣士 (あの姉ちゃん魔法とかより素手のが強えんじゃねえのか……)

ドヴェルグ「……何でいるんじゃ」

魔女「やったんだな?武器を!」

ドヴェルグ「仕方無いだろ……」

魔女「なんでだい!」

ドヴェルグ「こいつ……わしの武器達を片っ端から折り歩いた挙げ句、売ってと来たんだぞ!」

魔女「………」

剣士「お前……そんな事したのかよ……」

盗賊「殴って折れなければナマクラじゃ無いから」

剣士「ああ!なるほどな!」

魔女「関心してんじゃ無いよ……」

ドヴェルグ「小娘……お前にやった剣はそいつにやったのか?」

盗賊「………」コクッ

ドヴェルグ「………」

剣士「この剣スゲエな!ありがとな!」

ドヴェルグ「………」

剣士「……?」

ドヴェルグ「魔女……いい加減にせい……」

魔女「お前に礼がしたいって付いてきたんだ。人間が嫌いだろうが礼くらい聞いてやんな」

ドヴェルグ「ふん……」

剣士「あんた……人間嫌いなんだっけ?」

ドヴェルグ「………」

剣士「そのままでいいから聞いてくれよ……」

ドヴェルグ「………」

剣士「あんたの作った剣ってよ、人間の間じゃナイトメアなんて呼ばれてるんだぜ」

ドヴェルグ「………」

剣士「俺よ無い頭で考えたんだ。あんた……こんなの望んじゃいないだろ?」

ドヴェルグ「………」

剣士「人間に武器を盗まれて……人間の間で持て囃されるなんてよ……」

ドヴェルグ「………」

剣士「自分が作った物が自分の知らない奴等に使われてるってよ……」

ドヴェルグ「………」

剣士「……その武器をあんたはどうしたい?」

ドヴェルグ「………」

剣士「取り返すか?」

ドヴェルグ「あのな……人間、誰がそんな事をする?それにお前だって同じだろ……」

剣士「俺のは……ちょっと大目に見てくれよ。な?」

ドヴェルグ「………」

剣士「それと、あんたが望むなら俺が取り返してきてやるぜ」

ドヴェルグ「どこにあるかもわからん物をどうやって取り返すんじゃ」

剣士「ここに一本はあるぜ」カチャ

ドヴェルグ「………」

剣士「だから残り八本……どうだ?やってやるぜ?」

ドヴェルグ「……勝手にやれ」

剣士「おう!じゃあ決まりな!」

ドヴェルグ「………」



魔女「で?」

ドヴェルグ「何がで?じゃ……」

魔女「アイツにやった剣はなんなんだい」

ドヴェルグ「………」

魔女「……なんだい?」

ドヴェルグ「お前……あの剣を相手にしたのか?」

魔女「………」

ドヴェルグ「したんじゃな……それで負け

魔女「それ以上言ったら炙ってやるよ……」

ドヴェルグ「……何故殴られたか理解したから言わないわい」

魔女「………」

ドヴェルグ「あの剣だったな……あれはドラゴベヒーモスと言う魔物の鱗から造った剣だわい」

魔女「ドラゴ……ベヒーモス……」

ドヴェルグ「何じゃ?知っとるのか?」

魔女「………」

ドヴェルグ「……?」

魔女 (こんな所まで……因縁が付きまとうのかい……)

ドヴェルグ「まあ知ってて当然か。魔女だしの」

魔女「………」

ドヴェルグ「あれは中々の素材だったぞ?」

魔女「そうだろうさ……」

ドヴェルグ「一体、どこのどいつがあんな魔物造り出したんだろうな」

魔女「………」



精霊「君達はね自分の立場ってものがわかってるのかいッ!」

ロノウェ、クロケル「………」

精霊「悪魔の秩序を乱れさせない為に君がいるんだろ!それが人間の胸にうつつを抜かして恥ずかしく無いのッ!」

ロノウェ「わ、ワシの唯一の楽しみ……」

精霊「はあッ!?なにッ!?」

ロノウェ「いや……何でも無い……」

男「精霊さん……?お二人とも反省してるようですし……」

ロノウェ、クロケル「………」シュン……

精霊「………」

男「そろそろ解放してあげては……」

精霊「……君がそう言うなら」

魔術士「いやぁいい湯でゴサったですな!」

女忍者「本当!お肌ツルツルだもんねぇ」

ロノウェ「ヒューヒュー!そこのパツキン姉ちゃんエエもの持っとるのぉ!」

クロケル『もっと胸元がクッキリと強調出来る服ならなおよしだよね!』

精霊、男「………」

女忍者「………」

魔術士「……どうしたでゴザルか?」

ロノウェ「うむ……これは鑑定していきたいな!」

クロケル『そうだね!八十点はかたいね!』

精霊「……これが反省している態度かい」

男「………」

精霊「君達ね……まだ言ってもわからないの!」

ロノウェ、クロケル「………」キラキラ!

精霊「そんな店先に飾ってある物に憧れる少年みたいな眼差しやめなよ……」

魔術士「女忍者殿?」

女忍者「……おい」

ロノウェ「エエ……エエのぉ……」

女忍者「おいって言ってるでしょ!」

ロノウェ「……?」

女忍者「そこの魔術士の胸見てる変態ジジイだよ!」

ロノウェ「……は?」

女忍者「は?じゃない!失礼だと思わないの!」

ロノウェ「………」

女忍者「な、何よ!そんな驚いた顔して……」

ロノウェ「ワシが見えとるのか……?」

女忍者「はああ?それで隠れて胸見てたつもりなの?」

ロノウェ「そうじゃ無く!……ワシが見えとるのか?」

女忍者「意味わかんないんだけど……」

魔術士「……女忍者殿?一人で何をブツプツ言ってるでゴザルか?」

女忍者「え……ここにいるじゃない……」

魔術士「何が?」

女忍者「エロそうなジジイに頭の可哀想な格好した人が……」

魔術士「……誰もいないでゴザルが?」

女忍者「………」

ロノウェ「どう言う事じゃ……胸が無いのに……」

クロケル『本当……胸は無いのにね……』

女忍者「………」



魔術士「ふむ……ここに見えぬ人がいるでゴザルか……」

女忍者「魔術士……こっちだよ……」

ロノウェ、クロケル「………」

男「どう言う事何でしょうか……」

精霊「あの変わった格好した彼女にも何か特別な力があるから……じゃないかな」

男「………」

ロノウェ「胸の無いお嬢さん……」

女忍者「一々胸の無い付けるな……何?」

ロノウェ「お前何者じゃ……」

女忍者「何者って言われてもね……ね?魔術士」

魔術士「ふむ、何者と聞くならばまずはそちらから名乗るのが礼儀ではないでゴザルか」

ロノウェ「そうじゃな……わしはロノウェと言う」

魔術士「ほう!姿なき者の名はそう言うのでゴザルか!」

女忍者「……聴こえてるの?」

魔術士「全然!はははでゴザル!」

ロノウェ (言動に難有か……勿体無いのぉエエ乳しとるのに……)

女忍者「ロノウェってふざけた名前なんだって」

ロノウェ「ふざけた所など無いじゃろ!」

女忍者「あるでしょ……さっきから目線がこっち向いてないじゃない……」

ロノウェ「………」

女忍者「……んん?あんた精霊って言うの?」

男「え……俺は違いますよ。こっちの方が精霊さんですね」

精霊「何で僕の名前を知ってるの……?」

女忍者「妖精に聞いたの。私を魔法使いにしてくれる事に協力してくれるって!」

精霊「………」

男「妖精さんが絡んでるんですね……」

女忍者「ねえ!魔女は!」

精霊「取り合えずこんな所じゃなんだから部屋で話そうか……」

女忍者「………」

精霊「……なに?」

女忍者「そうやっていたいけな少女を部屋に連れ込んで

精霊「しないよッ!失礼だな君は!」

女忍者「そう?」

精霊「………」

男「ところで妖精さんは?」

女忍者「希望の淵を這いずり雄のシンポルをどうたら言ってお風呂から出て来ないから置いてきたよ」

男「………」



剣士「はぁ……凄えなぁ……」

盗賊「………」

剣士「見ろよ盗賊、この剣透き通ってるぜ……」

盗賊「………」

ドヴェルグ「……触るなよ」

剣士「あ、ああ……触っていいか?」

ドヴェルグ「触るなよと今言ったばかりだろ!」

剣士「良いじゃんか……減るもんでも無しに……」

ドヴェルグ「………」

剣士「こいつとそれどっちが凄え剣になるんだ?」ジャ!

ドヴェルグ「……ッ!」

剣士「まあ、こいつだな。なんてったって俺が愛用してんだこいつの方が凄え筈!」

ドヴェルグ「………」

魔女「ほれ、用件は済んだから帰るよ」

剣士「おう!」

ドヴェルグ「………」

魔女「ほんじゃドヴェルグまた来るよ」

ドヴェルグ「……人間」

剣士「なんだ?」

ドヴェルグ「お前……本気で武器を取り返してくれるつもりか?」

剣士「ああ、やってやるぜ!」

ドヴェルグ「………」

剣士「……?」

ドヴェルグ「なら……ある一本は取り戻さなくていいわい……」

剣士「なんでだ?」

ドヴェルグ「やったもんだからだ……」

剣士「そっか!」

魔女「………」

ドヴェルグ「………」

魔女「……あんたも色々因縁があんのかい」

ドヴェルグ「お前にはわからんわい……」

魔女「………」

剣士「……?」

魔女「チッ……魔方陣に入りな。帰るよ」

剣士「ああ?……じゃあなオッサン。また来るから」

ドヴェルグ「………」

魔女「………」

シュフォンッ!

ドヴェルグ「………」

ドヴェルグ「あの人間……わしの剣を大事に使っとったな……」

ドヴェルグ「………」

ドヴェルグ「……?……あいつどの剣を取り戻さなくていいか知っとるのか?」

ドヴェルグ「まあいいわい……何とかなるだろ……」



魔女「なんだい……この女二人は……」

精霊「まあ……よくわからないけど君に用があるみたいだよ」

魔女「アタシに用?」

女忍者、魔術士「………」

精霊「ほら君達が探してた魔女だよ」

魔女「………」

女忍者「……こんなの魔女じゃ無い」

魔女「ああ?」

女忍者「魔女って言うのは……溢れるほど胸が大きくてガン飛ばしてこないもん……」

魔女「喧嘩売ってんのかい……」

女忍者「………」

ロノウェ「その女が言う事は正しいな」

魔女「黙ってなクソ悪魔!」

ロノウェ「おぉ怖」

魔女「………」イラッ……

魔術士「魔女殿!」ガバッ!

魔女「………」

魔術士「どうか!拙者達を弟子入りしてくらされでゴザル!」

魔女「………」

女忍者「ち、ちょっと魔術士……」

魔術士「女忍者殿!拙者は貴殿の為に頭を下げているのに魔女になりたいと申していた貴殿が頭を下げぬのはこれ如何にでゴザル!」

女忍者「………」

魔女「………」

女忍者「わかったよ……弟子にしてください。私を魔法使いにしてください……」

魔女「……やだね」

女忍者「なんで!」

魔女「アタシみたいな魔女は嫌なんだろ?」

女忍者「………」

魔女「それにさ……見ず知らずのお前らを弟子にしてアタシに何の得があるだい」

女忍者、魔術士「………」

魔女「出直してきな」

精霊「魔女ね……ちょっと問題があるだよね……」

魔女「あ?なんだい」

精霊「あの小柄な彼女……ロノウェ達が見えてるみたいなんだよ」

魔女「………」

精霊「ね?……これは大変な事だと思うけど」

魔女「おい、そこのメッシュシャツ」

女忍者「これは鎖帷子って言うの!」

魔女「そんなのはどうでもいい、ここに何が見える?」

ロノウェ、クロケル「………」

女忍者「さっきも言ったけど……ハゲとオカマが見える……」

ロノウェ「お前さっきはハゲなんて言っとらんじゃろッ!」

クロケル『オカマだなんて酷いよッ!』

魔女「……本当に見えてるみたいだね」

ロノウェ、クロケル「………」

女忍者「見えたから何なの……」

魔女「……こいつらは普通の人間には見えないんだよ。悪魔だからね」

女忍者「悪魔……?」

魔術士「おお!悪魔がいるのでゴザルか!……え?」

魔女「………」

魔術士「……女忍者殿」

女忍者「悪魔はこんなハゲて無い……悪魔はこんなオカマじゃ無い……」

ロノウェ「失礼じゃぞ!」

クロケル『そうだ!そうだ!』

魔女「黙れ」



剣士「何でいるんだ……ってかちっと見ねえ間に凄え老けたな……」

執事「ぉぉぉ……」ヨボヨボ……

剣士「大丈夫かよ……」

執事「うわぁぁぁぁ旦那様ぁぁぁぁぁ申し訳ありませんんんんんん……」

剣士「………」

執事「私めは旦那様に申し付けられた事さえ果たせずぅぅぅ……うぅ……」

剣士「まぁ姫さんは何事も無くだろ?」

執事「はいぃぃぃぃ……」

剣士「なら別に構わねえからさ……」

執事「………」

剣士「何か事情があってここにいるだろうし、気にすんなよ」

執事「……旦那様」

剣士「なんだ?」

執事「私め、今から首をかっきりますので受け取って頂けますでしょうか?」

剣士「……は?」

執事「あひひひッ!この執事!旦那様のお申し付けを果たせずならば!」

剣士「待て待て待てッ!」

執事「……何で御座いましょう?」

剣士「その死にそうな目やめろよ……怖えよ……」

執事「………」

剣士「首なんていらねえしさ……別に絶対申し付け守れだなんて

執事「何を仰います!私めにとっては絶対守らなければいけない事なので御座います!」

剣士「もういいからさ……」

執事「よくはありません!」

剣士「………」

女兵士「あぁ!いたって!勝手に離れちゃ駄目でしょって!」

執事「ッ!?」ビクゥッ!

剣士「………」

女兵士「ねえ!」

執事「あわわあわ……そそそその私め……」

女兵士「………」

執事「あががが……」ガタガタ……

剣士 (爺がこんなにビビってんの初めて見るぜ……爺をこれ程までにするこの女何者だよ……)

女兵士「……あわわ」

剣士「……?」

女兵士 (な、何で将軍の息子がいるって!)

執事「だ、旦那様ぁぁ慈悲をぉぉ……」

剣士「……何だよ慈悲って」

執事「私めを!この悪魔からお救いくださいませ!」

女兵士「………」

剣士「……お前、悪魔なのか?」

執事「その通り!」

女兵士「………」ギロッ……

執事「………」

女兵士「私は……谷の国の兵士って」

剣士「あん?……爺、悪魔じゃねえみたいだが?」

執事「悪魔で御座います!私めの拠り所を侵す極悪人で御座います!」

剣士「……って言ってるが?」

女兵士 (このジジイ……後でこれでもかって言うくらい罵倒してやるって……)

剣士「どうなんだよ……」

女兵士「執事は私の護衛をしてもらってるって」

剣士「護衛?」



剣士「はあ、なるほどな。谷の国のにネメアがいるって広めるのか……」

女兵士「そうって」

剣士「……それ大丈夫なのか?」

女兵士「大丈夫って!何てったって恋愛にか弱き女性の味方ネメアがいるんだからって!」

剣士「何かよくわからんけど……」

女兵士「で、私一人だといつ世界に存在する悪い劣情に襲い掛かれるかわからないからって!」

剣士「………」

女兵士「だから執事に護衛をねって」

剣士「へぇ……」

執事「何が護衛で御座いますか!私めをこきつかい挙げ句の果てには国税を使い込

女兵士「それ以上言ったら酷い事するって……」

執事「………」

剣士「落ち着けよ爺……」

執事「はい……」

剣士「しかしなぁ……姫さんの周りでゴタゴタあったばかりだろ?召喚士やネメアがいるからってな……」

盗賊「………」クイクイッ

剣士「あ?なんだ盗賊」

盗賊「……私が行く」

剣士「……この女の護衛にか?」

盗賊「………」コクッ

女兵士 (ぇぇ……それは非常に不味いって……)

剣士「良いのか?」

女兵士「ああああ!それは駄目って!」

剣士「……何でだ?」

女兵士「この子には恋愛とかまだわからないっぽいし!そう言うのに付いてこられても私困るって!」

剣士「だけどよ……」

盗賊「………」

女兵士 (このオチビチャンじゃ……執事の様に扱えないって……)

剣士「………」

執事「……私めは賛成で御座います」ニタリ……

剣士「爺……怖えよ……。……んん」

盗賊「………」

魔女「おい、筋肉」

剣士「あ?なんだ?今取り込んでるんだけとよ……」

魔女「お前こいつらの相手しな」

女忍者、魔術士「………」

剣士「取り込んでるって言ってるだろ……それに何で俺が相手しなきゃなんねえのよ?」

魔女「アタシの弟子になりたいって来てね、それでさ」

剣士「それなら姉ちゃんが相手してやれよ……何で俺なんだよ……」

魔女「面倒事は苦手でね」

剣士「それを俺に押し付けるなよ……」

魔女「良いじゃないさ、お前戦うの好きだろ」

剣士「別に好きってわけじゃねえけど……」

魔女「こいつら……それなりに強いんじゃないのかねぇ……」

剣士「………」

魔女「お前ら、何か強い魔物とか倒した事あるか?」

女忍者「何でそんな事聞くの……」

魔女「試験してやろうってんだ、答えな」

女忍者「……鬼なら倒した事あるけど」

剣士「………」

魔女「なんだい鬼って?」

魔術士「鬼と言うのはゴザルな!東方に住みし魔物でゴザル!」

魔女「……強いのかそれ?」

魔術士「如何にも!立てば豪腕座れば暴脚歩く姿はクロマニヨン!でゴザル!」

魔女「ふぅん……こんなのか?」

剣士「………」

魔術士「ああ!こんなのでゴザルよ!」

剣士「人をこんなの呼ばわりするんじゃねえ……」

魔女「そいつは強そうだね。で?どうする?二人一緒にやるのかい?」

剣士「おいおい……俺はまだやるなんて言ってねえぜ……」

魔女「お前……強い奴と戦いたくないのかい」

剣士「戦いてえけど……」

魔女「じゃあ決まりだ」

剣士「だああ!仕方ねえな!盗賊!爺!ちょっと待ってろ!」

盗賊「………」コクッ

執事「はい畏まりました……」

剣士「何で俺が……」ブツブツ……

魔女「まあ言った通りだ。こいつを倒せたら弟子にしてやる」

女忍者「そんなんでいいの?」

魔女「ああ、いいさ」

女忍者 (ラッキー……ふふ) ニヤリ

魔術士「………」

魔女 (この顔は野郎をなめてる顔だねぇ……ククッ)

魔術士「……女忍者殿、如何致すでゴザル?」

女忍者「一発で決めるよ!」



剣士「……いつでもいいぜ。……はぁ」

女忍者「本当にあれ倒せたら弟子にしてよ!」

魔女「わかったわかった……早くやれ……」

女忍者「おーし!魔術士!」

魔術士「女忍者殿……」

女忍者「んん?」

魔術士「あの風貌でゴザルから……あまりなめてかからぬ方が……」

女忍者「平気!平気!……あれ使えば一撃でしょ!」

魔術士「………」

剣士「何で女ってやつはわがままなんだろうな……なぁ、盗賊」

盗賊「………」

剣士「姉ちゃんよ……手加減しねえけどゴメンな」

魔女「アホかい……ちょっとは手加減しな……」

魔術士「……行くでゴザルぞ!」

女忍者「うん!」

剣士「………」

魔女 (お手並み拝見といこうかね……ククッ)

魔術士「………」バッ……

女忍者「………」フンスッ!

剣士 (小せえ黒髪の女が攻撃役で……金髪の変な言葉使いの女が補助役ってところか……)

魔術士「インドゥメントプロテッティーヴォエテルノ!」ババッ!

シュウウウンッ!

女忍者「きたきた!」

剣士「……姉ちゃんアレなんだ?」

魔女「防御魔法さ。あのメッシュシャツを硬くしたってところかい」

剣士「へぇ……」

女忍者「………」ダッ!

ズダダダダッ!

剣士 (あ?……木の上登って何するつもりだ?)

魔女「気を付けな。何か飛ばしてくるかもしれないね」

剣士「………」

魔女「……?」

剣士 (ありゃそんな感じじゃねえな……それにそんな事じゃ防御上げた意味がねえ)

女忍者「………」グッ!バッ!ババッ!

剣士「………」

魔女「見てないで攻撃したらどうだい?」

剣士「折角何か見せてくれんだ、もったいねえだろ?」

魔女「アタシはさっさとぶちのめした方が楽だと思うけどね」

女忍者「おおおおッ!我、日輪を纏いて火の矢と成りし!」ババッ!

……グゴアッ!

剣士「お……あの女体が燃え出したけど大丈夫なのか?」

魔女「………」

剣士「……?」

女忍者「飛翔……とう!」ダッ!

剣士「………」

女忍者「喰らえ……火輪突頭撃ッ!」グワァッ!

ズバァァァァァ!

剣士 (ど、どうすっか……取り敢えず剣身で防いどくか……)サッ……

女忍者「ハアァァァァアアッ!」

……ゴチィィンッ!

女忍者「」ドサッ……

剣士「………」

魔女、魔術士「………」

剣士「え……は?……もしかして終わりか?」

魔術士「おおおおお女忍者殿ぉぉぉぉ!」

女忍者「」キュウ

剣士「………」

魔術士「女忍者殿ぉぉぉぉ……拙者を置いて先に逝かないでくらされでゴザルよぉぉぉぉ!」

剣士「……死んでねえよ……多分」

魔術士「おーいおいおい!」ぶわっ

魔女「………」

剣士「姉ちゃんよ、もういいか?」

魔女「ああ……手間かけさせたね」

剣士「もうちっとなぁ……まあいいか」

魔女「………」

魔術士「おーいおいおい!おーいおいおい!」



魔術士「おーいおいおい!」ぶわっ

魔女「おい……金髪……」

魔術士「おーいお

魔女「おい!」

魔術士「ぐすっ……何でゴザルか……」

魔女「そこのメッシュシャツは魔法使いになりたいんじゃなかったのか」

魔術士「………」

魔女「なんだあれは……」

魔術士「………」

魔女「……魔法使ってんじゃないかい」

魔術士「それは……」

魔女「………」

魔術士「………」

魔女「……何やら訳ありかい?」

魔術士「はいでゴザル……」

魔女「ふぅん……なんだい訳って」

魔術士「………」

魔女「言いな。言えないならソイツを連れてここから消えな」

魔術士「言います故……此より御話する事……どうか女忍者殿にはご内密に願いたいでゴザル……」

魔女「ああ、いいさ」

魔術士「それと……出来れば弟子入りを認めてもらえはしませぬでゴザルか……?」

魔女「話の内容によっては考えてやるよ。それに……お前のその面から察するに真面目な話なんだろうさ」

魔術士「………」

魔女「………」

魔術士「女忍者殿は……魔法、魔術が伝わっていない東方の出なのでゴザル……」

魔女「………」



魔女「………」

魔術士「………」

魔女「なんとまぁ……大層なこった」

魔術士「………」

魔女「魔法は使っているが、本人は魔法と認識して無いとはねぇ……」

魔術士「………」

魔女「で?出生が人からじゃ無いって言ってから黙りだが」

魔術士「……言いずらい事故にでゴザル」

魔女「あのメッシュシャツは魔物か何かか?」

魔術士「いえ……」

魔女「あ?」

魔術士「おそらくどれにも当てはまらないかとでゴザル……」

魔女「じゃあなんだい」

魔術士「………」

魔女「そこでまた黙りだと話が進まないだろ!」

魔術士「ホムンクルス……」

魔女「………」

魔術士「ご存知かと思われるでゴザルが……」

魔女「メッシュシャツがそれだって言いたいのか」

魔術士「ゴザル……」

魔女「………」

魔術士「………」

魔女 (……有り得るのか?いや……あんなん見せられてクソ悪魔共が見えてるんだ……)

魔術士「この事は女忍者殿自身も知らぬ事故……どうか……どうか御内密に……」

魔女 (……クソッ!これからだって時になんて事だい!)

魔術士「……?」

魔女「………」グッ……

魔術士「……虚妄だとは思われぬでゴザルか?」

魔女「ああ?嘘なのか?」

魔術士「いえ……」

魔女「ならいいじゃないか。それに違うなら違うでいいし、メッシュシャツが変わったモン持ってるのは間違いないんだしさ」

魔術士「………」

魔女「お前の話を信じる信じないはこのさいどうでもいい」

魔術士「は、はぁ……」

魔女「……本物ならヤらなきゃいけない事が増えるねぇ」ボソッ……

魔術士「なんでゴザルか?」

魔女「いや……こっちの話さ」

魔術士「………」

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