アリス「人を、殺す?」
忍「はい! アリスは、人を殺してみたいとは思いませんか?」
アリス「ええっ? 突然聞かれてもわかんないよ~」
忍「ふふ…想像してみてください」
アリス「うん」
忍「首を絞められて顔を真っ赤にするカレンを……」
アリス「うんうん」
忍「じたばたと、必死に抵抗するんです…死なないために、生きるために」
忍「でも…だんだん…だんだんカレンは抵抗する力を失っていき…」
アリス「……」
忍「最後に少しだけピクッと揺れて…動かなくなるんです」
忍「どうです? 考えるだけで、興奮してきませんか?」
アリス「うーん…私には、ちょっと分からないかな…」
忍「ええっ! そ、そんなっ…アリスなら分かってくれるとばかり」シュン
アリス「あっ…す、素敵だよシノ! とっても楽しそうだよ!」
忍「いえ…いいんです…無理して分かってもらわなくても…」
アリス「シノ~っ」
アリス(はわわ、どうしよう、シノが落ち込んじゃったよう…)
忍「はぁ…どんな感じなのでしょう…」
アリス(……そうだ!)
アリス「じゃあ、実際に殺してみればいいんだよ!」
忍「…へ?実際に?」
アリス「ほら、さっきカレンが出てきたでしょ? カレンを殺してみようよ!」
忍「でも、カレンに悪いですよ~」
アリス「仕方ないよ、殺してみたいんでしょ? カレンも許してくれるよ」
忍「……」
アリス「私も協力するから!」
忍「ほ、ホントですか!?」
アリス「うん! 私頑張るよ! シノのために!」
忍「アリスっ…私のためにそこまでっ…!」ブワッ
アリス「元気、でた?」
忍「はい! アリスがいれば、簡単にカレンを殺せそうですね!」ニコッ
アリス「うん! 頑張ろうね、シノ!」
アリス「それじゃあ、計画たてようよ」
忍「そうですね~」ニコッ
アリス(……こんな生き生きしたシノ、初めて見るかも)
忍「どうしました?」
アリス「あっ、ううん! じゃあ、私が呼び出すから…」
忍「ふむふむ…」
一週間後、体育倉庫
ガラガラガラガラ……ピシャン
忍「あっ♪」
アリス「シノ、カレンをつれてきたよ~」
カレン「ここ、体育倉庫? もう、なんデスか~?」
アリス「いや、私も知らないよ~。 シノに頼まれたんだもん」
カレン「そうデス? 忍、こんなところで何の用デス?」
忍「ふふ、とっても楽しいことをするんですよ」
カレン「楽しいことー!? なんデスなんデス!?」
忍「金髪少女だけにかかる催眠術があるんですよ~。それを試してみたくって」
忍「暗くて誰も来ないところでないとかからないのですよ。ほら、テスト期間ですので、ここなら誰も来る心配がないでしょう?」
カレン「うぇ、催眠術? そんなの、何が楽し…」
アリス「うわ~っ! とっても楽しそう!はやくやってよ、シノ!」
カレン「あ、アリス?」
忍「ほらほら、とりあえず目をつむってください♪」
アリス「うん、わかった! ワクワクするね!」スッ
カレン「あ、アリス…? なんか、おかしいデスよ?」
アリス「んー? そんなことないよー」
忍「ほらほら、カレンも♪ 」
カレン「…わかりまシタ。」スッ
カレン(アリスもやるんだし、忍のことですから危ない催眠術ではないデスよね)
忍「ありがとうございます!」
カレン(それにしても、二人とも楽しそうデスねー…)
カレン(でも、いつものように微笑ましく感じないのは何故デス?)
カレン(素直に、二人の輪の中に入っていけないような…不思議な感じデス)
忍「では、質問していくので、発音良く『いぇす』『のー』で、お願いしますね♪」
アリス「はーい」
カレン「了解デス」
忍「では、カレンから、質問を始めますね。目はつむったままでお願いします」
カレン「わかりまシタ」
忍「では、一つ目。日本に来て、楽しいですか?」
カレン「Yes、もちろんデスよー」
忍「ふふ、ナイス発音ですね」
忍「二つ目。私達のこと、好きですか?」
カレン「Yes、そんなのもっと分かりきったことデスよ」
忍「三つ目。家族のこと、好きですか?」
カレン(なんだか楽しそうな質問が多いようデスね)
カレン「Yes、だーいすき!」
忍「次は、いえすのーではなく、普通に答えてくださいね」
カレン「OKデス」
忍「もし、そんな人達とお別れって言われたら……どうしますか?」
カレン「お別れ……?」
忍「はい、どうしようもない理由でお別れになっちゃうんです。残念ですよね、だってカレン、私達のことも家族のことも大好きだって言いました。そんな人とお別れなんてっ……なんてことでしょう」
カレン「……し、の? なんでそんなこと聞くデス?」
忍「質問に答えてください♪」
カレン「……そんなの、考えられまセン。もしそうなったら、想像も出来ないほど苦しいと思いマス……」
忍「……ハァ、ハァ……」
カレン「シノ? なんで、黙っ…」
忍「ごめんなさい、カレン……」ギュッ
カレン「……はっ……!? し、し………のっ………!?」
忍「……」ニコッ
カレン(ほんき、デスかこれ……っ!? 冗談にしては、強すぎ……!?)
アリス「頑張って、カレン! 応援するよ!」
カレン「あ………り……っ? ぅ、かっ………はっ……やめ、やめ……!」ジタバタ
忍「……」ギュゥゥゥ
アリス(ああ、シノ、本気なんだ……本気で殺す気なんだ……)
アリス(カレン、苦しそうだよ……でも、なんでだろう)
アリス(ちょっと、うらやましいかも……?)ゾクゾク
カレン「っ………あ………し……」パタパタ
忍「……」
カレン「……………っ……………」ピクッ
カレン「」プラン
忍「……カレン?」パッ
カレン「」バタン
忍「カレン?」
忍「カレン?」ユサユサ
カレン「」フラフラ
忍「カレン?」
カレン「」
忍「……」
アリス(し、シノ……殺し、たんだ)
アリス(人を、殺したんだ。カレンを、殺したんだ)
忍「アリス……」
忍「私、殺しました。カレンを、殺しました」
アリス「うん! おめでとう、シノ! どうだった?」
忍「……」
アリス「どうしたの、シノ? とっても良かったよ!」
忍「そうですか…?」
アリス「だってカレン、とっても苦しそうだったよ?」
忍「…何故でしょう、アリス」
アリス「?」
忍「私、ちっとも満たされてないんです。不思議です、とってもとってもやりたかったことが出来たのに」
アリス「そ…そうなんだ。私はとっても楽しかったよ…?」
忍「え? 見てただけなのに、ですか?」
アリス「あっ…/// ううん、忘れて!忘れてね!」
忍「? … クスッ、変なアリスですね」
アリス「そ、それにしても何で満足できないんだろう?」
忍「…」
アリス「シノ?」
忍「そういえば、陽子ちゃんが、今日は綾ちゃん家で勉強するって言ってましたよね?」
アリス「え? うん、言ってたと思うよ」
忍「……」
アリス「シノ? まさか……」
忍「わからない、わからないんです」
忍「なんで殺したいと思ってしまうのでしょう?」
忍「おしえてください、アリス。 なんで……」
アリス「えっ? そ、そんな、なんでって言われても…」
忍「うう……」
アリス「…」
忍「…」
アリス「ねぇ、シノ」
忍「……アリス?」
アリス「私、シノが苦しんでるの、見たくないよ。私、シノのためならなんだってするよ? 私に、シノのしたいこと言って欲しい!」
忍「アリ、ス……」
忍「…」
アリス「シノ!」
忍「……私、綾ちゃんと陽子ちゃんを殺したい……なので」
アリス「うん」
忍「アリスに、協力して欲しい、アリスに見ていて欲しい……ごめんなさい、わがままで……ただでさ」
アリス「ありがとう、シノ!」ダキッ
忍「……!? あ、アリス!?」
アリス「話してくれて、ありがとう! わかったよ、シノ! 私、協力するよ」
忍「……あり、すっ……ありす……! ありがとう…ございます…っ!」グスッ
アリス「あはは、泣かないでよシノ~」
三十分後
アリス「おさまった?」
忍「はい…すみません、取り乱してしまいました」
アリス「ううん、いいんだよ」ニコッ
忍「…それで、さっきの話、なのですが。やりたいことがあるのです、どうしても」
アリス「うん、なんでも言って」
忍「……綾ちゃんは、夜遅くまで親が帰ってこないので、今日はみっちり陽子ちゃんを指導するって言ってました」
忍「なので、時間に余裕はあるはずです。いったん家に帰って準備しましょう♪」
アリス「わかった!」
午後5時半 綾宅
忍「……いきますよ、アリス」
アリス「うん」
ピンポーン
忍「…」
アリス「…」
「はい、小路です」
忍「綾ちゃん? 忍です」
「え、シノ? どうしたの?」
忍「いえ、その~私とアリスも勉強を教えてもらいたいと……」
「ええ? 来ないんじゃなかった?」
アリス「ごめんね綾! 陽子と二人きりのところ!」
「~~!! そうじゃないわよ! いいわよ、入りなさいよ!もうっ!」
ブチッ
忍「ナイスです、アリス♪」
アリス「えへへ」
綾の部屋
陽子「ういーす」
忍「すみません、どうも~♪」
アリス「こんにちは~」
綾「もう……ブツブツ」
陽子「どうしたんだよ綾、そんなに二人きりが良かったのか?」
綾「ちっ! ちがうわよ!/// さ、騒がしくなるからっ!」
アリス「ごめんね~…綾…」
綾「い、いいわよ別に、静かにしてくれるなら……」
一時間後
綾「それで、ここはね…」
陽子「うんうん」
忍「…アリス」ボソッ
アリス「!…わかった」
忍「綾ちゃん陽子ちゃん、ちょっといいですか?」
陽子「ん、どうしたー?」
綾「……なに? 今大事なところなのに…」
忍「いえ、すぐに終わりますので。ちょっと質問です」
忍「なんでカレンがいないと思います?」
陽子「はぁ?」
綾「なによ、突然?」
忍「考えてみてください♪」
陽子「いや、普通にカレンは先に帰ったんだと思ったけど」
忍「普通はそうですよね~」
陽子「はぁ? 何言ってるんだ?」
綾(……なに、これ……なんか変よ……)
綾(シノなのに、シノじゃないみたいな)
陽子「そうじゃない、ってことか? 何かあったの?」
シノ「いや、惜しいんですけど、先に帰ったというか、先に行ったというか…」
陽子「…シノ?」
綾「…」ドキドキ
綾(絶対おかしい絶対おかしい絶対おかしい…なんで、こんなに、怖……そういえば、アリスは…)
ザクッ
陽子「え」
綾「え? 陽……」
陽子「……足が、いたいっ……?」
アリス「…」
陽子「……う……うぁぁぁぁぁぁ……っっ!! いたいぃ……!!」
綾「よ、陽子!! なんで、どうして、なんで、アリス!? なんでよ!?」
アリス「アヤ……静かにしないと陽子死んじゃうよ」ザクッ
陽子「ぅ……ぁぁぁ!! やめっ……ぅぁ、なんで……っ!? 意味が……」
綾「……夢……? やめて、やめてよ……」
アリス「静かにしてくれたら、刺さない。静かにしなかったら、足以外も刺すよ。シノ、お願い」
シノ「はい! 綾ちゃん、ちょっと縛りますね~。口も塞がせてもらいます♪」
綾「……なに、これ……? 陽子にひどいこと、しないで……」ペタン
忍「完成です♪」
綾「…んー…んー…」ゴロン
陽子「ふーっ……ふーっ……っ……った……なん、なんだよ……!」
アリス「…あとは、シノにまかせるね!」ニコッ
忍「はい、ありがとうございます、アリス!」
陽子「おい、シノ……どういう、ことだよ……なんで私達……」
忍「綾ちゃん、陽子ちゃんのこと大好きですよね?」
綾「!」ビクッ
陽子「おい……! シノ……!」
忍「知り合った時からほとんどずっと一緒で。綾ちゃんは陽子ちゃんの後ろをずっとずっとついて」
綾「…」
陽子「シノ!! おい!!!」
忍「一緒にいたら、心が満たされるような、くすぐったいような……少なくとも全然嫌じゃなくって」
綾「…」
陽子「聞こえてるだろ!!! シノ!!!!!」
忍「そんな人が死んだら、すごく悲しくて」ザクッ
陽子「ぐぅっ!?……うあっ……ぁぁぁ!!!!」
綾「!!……んー!! んー!!!」
忍「目の前で陽子ちゃんが刺されるなんて、考えたこともなかった。こんなに苦しむ姿を見るなんて……綾ちゃんは、考えたこともなかったんです」ザクッザクッ
陽子「くぁぁぁぁっ!!……や……め……ろっ……!!! やめてくれぇ……!!」
綾「んーー!!!んー!!!」
忍「傷口をえぐられて」グリッ
陽子「ぃぃぃ……っ!!!!!!!!」
綾「んー!!!!!!んーーー!!!!!!」ドタバタ
忍「そして、死んでしまう陽子ちゃんなんて」
陽子「いた……いよ……」
アリス(……)ゾクゾク
忍「綾ちゃんは、見たくなかったんです」
ドスッ
陽子「かっ…」ピク
綾「…!」
陽子「…………」
陽子「」バタン
忍「…死んでしまいましたね、陽子ちゃん」
綾「ふっ……」
綾「ううっ……ふっ……ぅっ……」ポロポロ
忍「……綾ちゃん? 泣いてるんですか?」ズイッ
綾「ふぅぅ……ぅぅぅ……」ポロポロ
忍「今、ガムテープを剥がします。しゃべれるようにしてあげますね」ペリッ
綾「あぁあ……!! 陽子ぉぉ……!!」ポロポロ
忍「…おねしょ、してますね」
綾「……お願い……殺して……」
忍「え?」
綾「ひくっ……殺して、殺してよぉぉ……!!」
忍「…」
綾「殺してぇぇぇ………!!!!」
忍「…」
アリス「……シノ?」
忍「…わかりました。一思いに…」
綾「……っ!」
忍「さようなら」
ドスッ
綾「…ぁぁ…ああ…」
綾「陽子…………」
綾「」バタン
忍「…」
アリス「……シノ? 終わったね」
忍「…」
アリス「でも、意外だったよ。綾はすぐに殺しちゃったんだね」
忍「…」
アリス「シノ?」
忍「私、気づいたんです。綾ちゃんの泣く姿を見て、陽子ちゃんの苦しむ姿を見て、もっと満たされると思っていました。でも、それは違ったんです」
アリス「ちがう……?」
忍「私は……大好きな人達を殺したかっただけなんですね……」
アリス「…」
忍「大好きな人を殺す……過程は関係ないんです。『殺す』ことに意味があるんです」
アリス「…」
忍「なんで、満たされないのか…」
アリス「…」
忍「アリス」
アリス「…」
忍「殺してもいいですか?」
アリス「…」
忍「簡単な話でした。カレン、陽子ちゃん、綾ちゃん……殺せば殺すほど、殺すことに満足しなくなるんです」
忍「それは、協力してくれるアリスを、尽くしてくれるアリスを、ますます好きになっていったからです」
アリス「…」
忍「アリスを殺さないと、満たされない……」
忍「大好きだから、殺したい……」
忍「……ごめんなさい……ごめんなさい……」グスッ
忍「ごめんなさい……ごめんなさい……!」ポロポロ
アリス「シノ……いいんだよ」
忍「アリス……?」
アリス「私もね、気づいたことあるんだよ」
アリス「シノがね、私の大好きなカレンや綾や陽子を苦しめたり、殺すたびにね」
アリス「私もシノに殺されたいって強く思ったの」
忍「ころ、されたい……?」
アリス「そうだよ。私、シノに殺されたい」
忍「本当に…? 私に気を遣わなくてもいいのですよ…?」
アリス「本当に本当だよ。シノに、私を殺して欲しい」
アリス「私が大好きなシノに、私のことを大好きになってくれたシノに、私を殺して欲しい」
アリス「だから、お願い」
アリス「私を殺して?」ニコッ
忍「……アリス……ありがとう……」ズイッ
アリス「あっ……待って」
忍「、」
アリス「最後に……強く、抱きしめて欲しいな」
忍「そんなの、お安い御用です……」ダキッ
アリス「……あったかいよ、シノ……」ギュー
忍「……アリスも、とってもあったかいです」ギュー
五分後
アリス「ごめんね、もういいよ…」パッ
忍「…どんな、殺し方がいいですか?」
アリス「首を、絞めて欲しい。最後まで、シノを感じて死にたい……」
忍「……わかりました……では……」スッ
アリス「うん……」
忍「…アリスっっ!!」ギュッ
アリス「っ……!」
忍「大好きですアリス…っ! 大好きです!」ギュウウウ
アリス「っ……わた、しも……! ふっ……!」
忍「アリス、アリス、アリス……」ギュウウウウウ
アリス「し……っ……のっ……!! ぁぁっ……!!」
忍「……っ!」ギュウウウウ
アリス「……あ……」
忍「…アリス…!!!」ギュッ
忍「…」
アリス「」プラン
忍「…」
忍「…」
ドスッ
忍「……っは……」バタン
忍「…」
「ありがとう」
忍「」
おわり
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません