【番外編】エレン「ジュマンジ……?」【5スレ目】(734)

※『進撃の巨人』の世界の登場人物たちが、映画「ジュマンジ」に登場する不思議なボードゲーム・ジュマンジを
 安価でプレイしてクリアを目指すハートフル(ボッコ)なゲーム【でした】。
※現在は本編が終了し、おまけSSや番外編SSがメインとなります。
※原作11巻までのネタバレ、および>>1の妄想による独自設定やキャラ改変が多数ありますので注意してください
※荒らしには反応せずにスルーをお願いします
※以下、前スレになります

1スレ目:エレン「ジュマンジ……?」エレン「ジュマンジ……?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1370660978/)
2スレ目:【安価】エレン「ジュマンジ……?」【2スレ目】【安価】エレン「ジュマンジ……?」【2スレ目】 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1371378371/)
3スレ目:【安価SS】エレン「ジュマンジ……?」【3スレ目】【安価SS】エレン「ジュマンジ……?」【3スレ目 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1372562255/)
4スレ目:【番外編】エレン「ジュマンジ……?」【4スレ目】【番外編】エレン「ジュマンジ……?」【4スレ目】 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1373861320/)

>>1です。とりあえず前スレが埋まりそうなので立てました。

 早いもので5スレ目に突入しました。

 海編をそろそろ終わらせて、レイシング(ヘルシングパロ)を投下したいものです。

※5スレ目記念、おまけSS
 マンガ『ドリフターズ』より、黒王様を出張させてみました。


~勝手に出張版・黒王様御乱心~


黒王「ハイハイハイ、さーそういうわけで」

黒王「黒王なんですけどね、せっかく5スレ目まで行ったので、ハリキッて行きましょうかねー」

黒王「今度は進撃の巨人の世界をメチャンコ踏みにじってバリバリ滅ぼしちゃおうと思うんですよネー」

黒王「あ、私が誰か分からないって人はね? 聖書を? 読むと? 良いんじゃね?」


エルヴィン「やめろォ!! 貴方はあくまでジョ○ー・デップ似のお兄さんだ!!」

リヴァイ「それ以上はヤバい!! おまえは立川でルームシェアでもしてろ!」

ハンジ「お願いだからブルース・リーとか宮本武蔵を甦らせたりしないでイヤマジでフリじゃなくてマジで」


ミーナ「はい黒王さま、おねがいがあります」ヒュパッ


黒王「ウム、そこの歩いてるだけで憲兵団に捕縛されそーなモザイク必須18禁ヘッドの娘、なんでも言ってみんしゃい」ビシッ


ミーナ「あ、あのー、ここだけの話ですよ? みんなにはないしょですよ? そのー………」オソルオソル

ミーナ「黒王様、私って、『ミーナ・カロライナ』っていうキャラクターがですねー、その………なんか恨みでもあるのか? ってぐらい散々な扱い方をされているんですよ」

ミーナ「『亀頭』とか『公然猥褻カット』とか『ズル剥け黒光り』とか『デスペニス』とか『マーラ様』とか、とにかく酷い扱いなんですよー……」

ミーナ「あるクソSSじゃマーラ・ハイラナイナとかマーラ・カリデカイナとか言われたり、他でもご立派様とか『豚小屋出身家畜以下の雌豚』呼ばわりされたり……」

ミーナ「良くてマロい尻とかおさげ可愛いぐらいのもので、あんまり私がメインヒロインのSSってないじゃないですか?」


黒王「あー、そもそも本編でもロクに出番ねーうちに死んだもんねー。キャラ固まってないうちに死んだもんねー。回想編でもロクに出てこねーし」


ミーナ「そのおかげか、私の扱いってぞんざいすぎる気がするんですよー。キャラも好き勝手乱立してて、正直困るっていうかー………」

ミーナ「極稀にメインで扱われても、事もあろうか巨人もとい巨根に変身して精液で敵を薙ぎ倒すとかマジキチSSだったり」

ミーナ「なんやかんやイイハナシダナーって感じでも、最終的にはデッドエンドオチなSSとかもありますよね?」


黒王「あー、それで?」ホジホジ


ミーナ「私がエレンとか、他の特定の人物とくっついて、最終的にニャンニャンしちゃって幸せな家庭を築くー………みたいなSSって無いじゃないですか」

ミーナ「だ、だからそのう、黒王さまのお力で、どうかもっとミーナSSを増やすこととかできないでしょーか………な、なんちゃって」エヘヘッ


黒王「――――」


ミーナ「…………」エヘ、エヘヘヘ


黒王「…………」ニッコリ


黒王「みなさん~~~~! きいてくださーい!! この女、メインヒロインになりたいんだってさぁ~~~~!」

黒王「攻略されたいんだってさぁ~~~~!! バッカじゃないのおーーーーッ!!」


ミーナ「ぎゃあああああああああ」


黒王「シーナ、ローゼ、マリアの壁内の全ての人民および巨人に告げる、よくお聞きー!」ズパッ

黒王「ミーナが男とズコバコチュッチュクチュッチュクして孕みたいとかこの私に言ってました!」

黒王「コレどう思う? マジ豚小屋出身家畜以下の雌豚なんですけどー! ひくわー! すげーひくわー!!」ゲラゲラゲラゲラ


ミーナ「いやあああああああああ」


黒王「そりゃ私も馬小屋出身だけどね、さすがにドン引きだわ。あり得んわ。おまえの頭やっぱち○このことしかねーんじゃねーの?」プークスクス


ミーナ「ひどいいいいいいいいいいいいいいっ」


黒王「拡散希望」カチャカチャ


ミーナ「Twitterに書き込まないでぇえええええ!! やめてえええええええええええ」


黒王「ミーナは、雌豚が一番」ホッコリ


ミーナ「ぎぎぎぎぎぎぎぎ」


~完~

※前スレの埋め完了しました。
 海編の続きを投下していきます。

 それと余談ですが、私の好きなとある漫画家の方は、こうおっしゃっていた。


 ヒラコー「は? 何言ってんの? 女キャラでパイパンじゃねー女とかありえねえよ普通」


 マジリスペクツっすわ。

………
……


~洗い場~


 ザバーッ


ベルトルト(どうしてこうなった)チラッ


女の子「~~~~♪ ~~~~~♪」ゴシゴシ


ベルトルト(僕の背後には、バスタオルで最低限の部分を隠した彼女がいて、楽しそうに僕の背中をこすってくれている)


ベルトルト「ね、ねぇ、やっぱりやめようよ」アセアセ

女の子「ダメダメ。男の子だからしょうがないかもしれないけど、烏の行水じゃだめだよ? ちゃんと汚れ落とさなくっちゃ♪」フンフフーン♪

ベルトルト「そ、そういう問題じゃなくて、誰かが入ってきたら、困るでしょ?」

女の子「心配ないよ、この時間には従業員の人でも入らないし、兵隊さん達はみんなカラオケで大盛り上がりしてるし♪」ゴシゴシ


ベルトルト(退路が断たれてる。耐えるしかないのか………籠城戦しかないのか………)



女の子「~~~~♪ ~~~~~♪」コシュコシュ


ベルトルト(あ、でも………力加減が絶妙で、かなり気持ちいいな)ホワーッ


女の子「えへへっ、お客さーん、こういうところは初めてですかぁ~?」フフッ

ベルトルト「ブフッ!? ど、どこでそんな言葉覚えたのっ!?」

女の子「あははっ! ないしょ♪」

ベルトルト「からかわないでよ、もう………」ハァ

女の子「えへへっ♪」ニコニコ


ベルトルト(くそぅ、かわいいなぁ!!)


女の子「ね、ベルトルさん」ゴシゴシ

ベルトルト「ん、なんだい?」

女の子「訓練兵団ってどんなところ? やっぱり訓練は厳しいのかな?」キュッキュッ

ベルトルト「うん。入団初日に、肉体的にも精神的にも、徹底的にいじめられるよ」

女の子「ふわぁ、やっぱり厳しいんだ」シュコシュコ


ベルトルト(僕なんか存在を忘れ去られていたからね………アレは辛かった。みんなが楽しそうに焼肉してるのに、僕は隅っこでさ………)フフフ

女の子(あ、暗い表情………いけないこと、聞いちゃったのかな。訓練中に死んでしまう人もいるっていうし………)ショボン


ベルトルト「ま、まぁ、巨人の消滅以前とは、配点がやや座学寄りになったけれど、壁がなくなった分、外界でのサバイバル訓練が増えてね? これがキツいんだ、結構」

女の子「辛くない?」ゴシゴシ

ベルトルト「辛くないって言ったら、嘘になるかな。でも、僕には―――――たくさんの、仲間が、同期がいるから」

ベルトルト「僕のことを助けてくれる仲間がいるから。一人ぼっちじゃないから………だから、頑張れるよ」

女の子「そっか………」ゴシ……

ベルトルト「…………? どうしたの?」


ベルトルト「…………? どうしたの?」

女の子「ううん。私は弱いなぁって、そう思っただけ」トン

女の子「ベルトルさんが、羨ましいって思ったの。沢山のお友達がいて、仲間がいて、支え合って」

女の子「私、ベルトルさんと離れるって思っただけで、辛いから………か、悲しいっ、からっ」ポロッ

ベルトルト「…………」


女の子「私には、何にもないっ………!! お友達もっ、仲間もっ、いない………」ポロッ

女の子「大好きな人ができて………せ、ぜっかく、恋人になれてっ、なれだのにっ………それなのにっ………」ポロポロ

女の子「ベルドルしゃん、帰っちゃう゛………わ、わだじ、まだ、港町でっ、ひ、一人、ぼっぢに、な゛るっ………」エグッエグッ

女の子「やだよぉ………行っちゃ、やだぁ、ベルドル、ざぁん………」ヒックヒック


ベルトルト「―――――」ギュウッ

女の子「あ、あう、あ゛う゛、あ、あ゛う………」ギュウウッ

ベルトルト「いっぱい、手紙書くからね」ヨシヨシ

女の子「うんっ、うんっ!」ポロポロ

ベルトルト「いつだって、君のことを想ってるから」ナデナデ


女の子「う゛んっ!」ポロポロ

ベルトルト「いろんなお話しようって、言ってたよね」ポンポン

女の子「ぐずっ………うんっ」エグエグ

ベルトルト「凄く恥ずかしいこと、今から言うから。一度しか言わないから………ちゃんと聞いて?」ギュッ

女の子「う、うん………」ゴシゴシ



ベルトルト「一目惚れ、だったんだ」



女の子「え………?」


ベルトルト「一目見た瞬間、好きになってた。君のことが、頭から離れなくなった」

ベルトルト「舟に乗ってる時も、大物を釣り上げた時も、昨夜の夕食の時も、ずっとずっと君ばかり見てた」

ベルトルト「酔った勢いでも………君とキスできて、凄く嬉しかった」

ベルトルト「何も知らないし、何も知られていないけれど………僕は君が好きだ。誰よりも、君のことを愛してる」


女の子「うんっ! うんっ!!!」ポロポロ


ベルトルト「一緒に馬に乗った時、凄く柔らかくていい匂いがして、ドキドキした。どんどん君が好きになった」

女の子「わ、私だって、ずっとドキドキしてた。一秒ごとに、ベルトルさんのことが、好きになっていったよ」

ベルトルト「君が泣いたとき、胸が痛かった。嫌われたんだって思った。嫌われたくないって、思った」

女の子「キスしたとき、きっと嫌われたって、思った。ベルトルさん、困らせたって、そう思ったよ」

ベルトルト「君の笑ってる顔が好きだ。守りたいって、心の底から守りたいって、初めて思えた」

女の子「ベルトルさんに、ぎゅってされてると、本当に安心するの。安心するけど、胸が痛いくらい高鳴って………」

ベルトルト「ねぇ、笑って?」

女の子「もっと、強く抱きしめて?」


ベルトルト「ん」ギュウウウッ

女の子「………あは」ニコッ


ベルトルト「大好きだ―――――」スッ

女の子「私も、好きだよ………ん」スッ


 チュッ



……
………


 それからの三日間は、とても楽しい日々だった。

 一緒に海で泳いだり。

 夜の海岸を散歩したり。

 肝試し大会を行ったり。

 海辺の漁師さんたちが主催する海神祭りに参加して、出店を回ったり。

 大きな打ち上げ花火を、皆で眺めて大騒ぎして――――。

 魚を釣って、捌いて、美味しい食べ物に舌鼓を打ち、歌い、飲み、騒ぎ――――。



 僕と彼女の、短くも濃密で、楽しかった日々に、終わりがやってきた。




………
……


~三日後・帰還日~


キース「数日に渡ってお世話になった、民宿の方々に、礼!!」スッ


全員「ありがとうございました!」バッ


旦那「こちらこそ、いい勉強になりました。ライナー君、サシャちゃん、そして――――ベルトルト君」

女将「ベルトルトさん………ウチの子を助けてくれて、本当にありがとうございます」ペコリ

コック長「身体、大事にしろよ。腕を錆びさせてくれるな? 次は負けねえ」


ライナー「はっ!! 皆さんのご健勝をお祈りします!!」バッ

サシャ「ありがとうございました!! 勉強させていただきました!!」バッ

ベルトルト「必ず、また来ます! 戻ってきますから!!」バッ


副コック長「クロコ、料理の基礎は全て教えた。後はお前次第だ」

料理人「!!! ふ、副コック長、い、今、私のこと、クロコって………」ポロッ

副コック長「ああ! 『魚女』は卒業だ!! いい料理人になれよ………これは選別だ。大事に使え」スッ

料理人「あ、ああ、これは、刺身包丁………!? こ、こんな、こんな良いものを………」

副コック長「腕を上げるも腐らせるも、おまえのこれからの心根次第だ。また、ここに勉強しに来い………」

料理人「ふ、副コックじょおおおおおおおおおおおおおおっ!!」ガバッ

副コック長「ふふ、馬鹿やろう、泣くこたぁねえじゃねえか………」ギュウッ

料理人「ありがどう、ございまじだっ!!!」ドバーッ

副コック長「ッ、へへ、いけねえいけねえ………年を取ると、涙腺がモロくなって、いけねえや。いけねえよ……」ポロッ


キース「この数日で見聞きしたものを、一生忘れるな!!」


 ハッ!!

キース「速やかに馬に乗れ!! 海岸へ集合したのち、帰還する!!」


 ハッ!!


リヴァイ「おい、ベルトルト・フーバー。おまえは残れ」

ベルトルト「え………は、はっ! なぜでありますか!」

ユミル「別れの時間ぐらい、取ってやる。海辺で待ってるから、十分で済ませろ」

ベルトルト「―――――!! あ、ありがとうございますっ!!!」ペコッ




女の子「ベルトルさん」スッ


ベルトルト「…………うん」

女の子「行っちゃうんだね」

ベルトルト「うん」

女の子「手紙、いっぱい書くよ」

ベルトルト「うん。ちゃんと全部読む。全部返信するから」

女の子「体、壊さないようにね」

ベルトルト「君こそ、また足をひねったりしちゃだめだよ?」フフフ

女の子「もぅ! 私、そんなにドジじゃありませんっ!」プンスカ

ベルトルト「ははは――――」

女の子「ぷっ、ふふふ―――――」


ベルトルト「…………」

女の子「…………」


ベルトルト「…………」

女の子「…………」



 笑顔で別れようと、この三日で決めていた。

 しかし、どちらの両目にはもう、決壊寸前のダムのように涙がたまっている。

 耐えがたき別離の時。

 離れていても通じていることに、彼らは体験がない。

 これからには、不安ばかりだ。

 だからこそ、笑って別れようと――――彼らは決めていたのだ。



ベルトルト「戻ってくるよ、ここに。必ず」

女の子「待ってる…………ずっと、ずっと待ってるから………」



 ―――だから。


 今は、さようなら。




ベルトルト「またね――――大好きだよ、○○○」


女の子「またね、ベルトルさん――――私も大好き」




 いつかまた、笑顔の君と再会する日まで。


 ただいまと言って、おかえりなさいと言う。


 そんな日まで。



~完~

※というわけで、海編完結。御疲れ様でした。おまけ投下もやろうかしら。

 さて、次は何を書こうかと思っているところです。

  済『LmC(ライナー・メイ・クライ)』(サシャパパ)……ギャグ。怖すぎて狂っちまいそうだ!
  済『俺の娘が遠い異国の地で男を作って帰ってくるわけがない』(語るに及ばず)……アニパパの悲劇
  ③リヴァイ外伝(リヴァイ×???)……シュールギャグ調。リヴァイが結婚します
  済:エンゲージを貴方と(エロアニエレSS)……初夜
  済『ブラウン家の牧場物語』(ライサシャほのぼのSS)……かなり時代を先取りした経済戦略による未曾有の発展がブラウン牧場に齎される―――!!
  ⑥『レイシング』……もしも最後のダイスロールで【全ての巨人が吸血鬼】になっていたら?
  ⑦『駆逐のススメ』(本編に関係がないネタSS)……もうエレン一人いれば人類は助かるんじゃないかな
  済アルミン『きょ、巨人!? い、いや、違う、アレは―――!!』(本編に全く関係がないネタSS)……ミーナ大活躍!!
  ⑨アニ、結婚の挨拶に行く(アニ・カルラSS)……ほのぼのSS。
  ⑩その他(エロ系はパワー使うんで時間かかります)

 さて、⑥レイシングかな? それとも⑨かな?

 明日辺りから開始予定です。

※あ、⑥選ぶとハートフルボッコです。ぶっちゃけ死にまくりです。ほとんど死にます。

 いわゆるBADENDですので……特にエレンは救われません。

 ⑨は超絶ほのぼのです。カチコチに緊張するアニと、ほんわかカルラさんの会話がメインになります。

巨人が居なくなった世界でハンジさんが何をしてるのかとか、憲兵団を倒したあとの調査兵団の動きとか、マルロ&ヒッチとかの話が見たいです。

原作のグリシャは巨人化の薬持ってたけど巨人がいなくなった世界では何してるの?

※帰宅。③もありですよ。誤解をまねく書き方をしてすいません。

 ライサシャエロ………? 知らんな………。

 だけど⑦はカンベンな。
 今読み返すとスゲエヘタクソ………書かなきゃ良かったってレベル。
 こんなにコメントいただけて、本当に嬉しいです。

 さて、本日の投下ですが、実際レイシングは長い。バンリ=チョウジョウめいて長い。
 ……ので、先に⑨をやろうと思います。
 多分、二~三回の投下で終わるはずなので……。

 あ、久々に安価でも取ろうかと思います。

※先にコメ返しです。

>>39
 >巨人が居なくなった世界でハンジさんが何をしてるのかとか

 想定では以下の通り。
 ①ウォール教に変わるゾエ教の創立者になり、教祖様として信仰を集めている。教的な天敵はへーちょ
 ②フツーに壁外での新種生物の調査、研究。毎日が新鮮ですごく楽しい! アルミンみたいな部下が欲しい!
 ③コンサルティング業を生業にして、日々コウショウ=ジツを用いた詐欺まがいのことを行っている。ぶっちゃけヤクザ
 ④ミケあたりと結婚して、専業主婦。

 >憲兵団を倒したあとの調査兵団の動きとか、マルロ&ヒッチ
 ちょこちょこ書いていきたいところです。もうちょっと先になるかもしれません。
 マルロ・ヒッチはわからないかな……書きづらそうな二人だし。 

>>40
>原作のグリシャは巨人化の薬持ってたけど巨人がいなくなった世界では何してるの?
 これから9を書く最中で、少し触れていこうと思っています。

………
……





          アニ「お母さん」 カルラ「はいはい」





……
………

………
……


~849年~


 訓練兵団の入団から、二年の歳月が経過した。

 訓練兵団解散式まで一年を切り、誰もが将来の進路を意識し始めた頃。

 これは日に日に寒さが深まっていき、厳しい冬が迫り始めた季節のお話。


ライナー「今日も今日とて肉の日だ」

サシャ「美味しいものを作りましょうね、ライナー! それに、クロコ=サン!!」

ν料理人「副コック長に鍛えられた私に隙はありませんの!!」フンス


ライナー(といっても、本当に基礎だけだけどな)

サシャ(マズくはないがウマくもないって感じですけどね)


サシャ「さて、今月の肉の日はを集計して、多いものを作ることになっていましたね」

ライナー「今までいろいろ作ったもんなあ。軽く20品以上のレシピができたぞ?」

ν料理人「ですの」


 1.みんな大好き・デミグラチーズハンバーグ
 2.とろとろ・ビーフシチュー
 3.コラーゲンたっぷり・テールスープ
 4.ジューシィ・ローストビーフ
 5.超絶厚切り・ビーフステーキ
 6.東洋の神秘・スキヤキ
 7.一頭丸ごと・焼肉天国
 8.十種類のソース・しゃぶしゃぶ
 9.超豪華・スタミナ丼
10.ほっこりおふくろの味・牛そぼろのもやしご飯
11.具だくさん・ハッシュ・ド・ビーフ
12.たっぷり凝縮・牛肉メンチカツ
13.秋の味覚・牛肉ときのこのオイスターソース炒め
14.ボリューム満点・牛ひき肉とじゃがいもの重ね焼き
15.とろける旨さ・ラザーニャ・アル・フォルノ(ラザニア)
16.あったか・肉うどん
17.激辛激熱・牛筋煮込みカレー(甘口もあるぞ)
18.柔らか牛肉と夏野菜・串焼きバーベキュー
19.山盛り挽肉・ミートソーススパゲティ
20.貴族風・牛肉のパイ包み焼き香草風味
21.リア充お断り・にんにくたっぷりホルモン焼
22.東洋風・ワサビ山掛け牛丼


ライナー「…………マジでいろいろ作ったよな、この二年間」

サシャ「新しいものを作ってもいいですが、みんなからのアンケート結果で多いものを採用してもいいですね」

ライナー「うーん、そうだなぁ………」



 【超久しぶりに安価】
 ※信じられないだろ………? 安価スレなんだぜ、ここ………。

 さて、本日のメニューは?

 ↓3 上記番号から指定しても良いし、食いたい牛肉料理を書いてもいい……必要以上に旨そうに見えるように頑張って書くよ……。


ライナー「よし、パッと引いたこれにしよう、これ」

サシャ「あ、『備長炭でじっくり焼いた串焼き』ですかー」

ライナー「なるほど、こないだの好き勝手鉄板の上で焼いて作ったバーベキューの串焼きではなく、より本格的な一品料理がいいということだな?」

ν料理人「やってやりますの!!」ムン

ライナー「冬野菜はおるか!!」

サシャ「ここに!!」

ν料理人「ハクサイ、ニンジン、大根、カブにネギ………たけのこ芋、わさび菜、さつまいも、じゃが芋、ブロッコリー・ロマネスコ」

ν料理人「無理難題ですの!」

ライナー「いや、いる」

サシャ「この食材をどうにかできるリョウリニンが、少なくとも一人」



アニ「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ベルトルト「…………」ドドドドドドドドドドド


ライナー「否………二人」


………
……


~食堂(肉の日)~



エレン「ぷはぁっ、やっぱりスゲエ肉だよなぁ。ジューシィで、香りがついてて……あれ、香り? こんないい香りがする肉だったっけ?」

アニ「焼く前に、香草入りのタレに付け込んでたからね。塩味に爽やかさが効いていいでしょ?」

ミカサ「まくまくもぐもぎゅ」リスジョウタイ

アルミン「あはは、ミカサったら、そんなに頬張ったらはしたないよ?」

ミカサ「むきゅむきゅ//////」モグモグ

アニ「なんて言ってるの?」

アルミン「すごくおいしくて幸せ、アニありがとうって言ってる」

アニ「よしよし、美味しいなら良かったよ。私もうれしい」ナデナデ

ミカサ「もくもくはぎゅはぎゅ//////」ポッ


ベルトルト「こっちのカブも食べてみると良い」

コニー「えー? 焼いたカブだろ? こんなの………う、うめええええええっ!?」

ジャン「ウソだろ……なんで焼いただけのカブに、どうしてこんな、しんなりしっとりじゅわっとした瑞々しさが」

ベルトルト「カブは軽く塩で下ゆで。串に通した後にさっと強火で焦げ付きを付けることで香りを際立たせる」

アニ「そこに私が香草、スパイスで味付けした」

マルコ「メッチャクチャうまいよ! このダイコンも、ニンジンも! 噛むたびにジュワジュワッて、本当にしっとりしてる!」


ライナー「野菜をナメるなよ、串焼きに合わせづらい食材だろうと、合わせるのがリョウリニンだ」

アニ「それでいて旨味を最大限に引き出すチョウリ=ジツ」

ベルトルト「僕たちが美味しくリョウリできない食材なんて、あんまりない!!」


ジャン「すげえ、肉が、肉が柔らかくてよ………口に入れたとたん、香ばしい香りがまず鼻腔に広がって」

ミーナ「はぐッ、と噛み締めると、熱くておいしい肉汁が、香草ソースと一緒にじゅわぁああっって、口の中いっぱいに広がっていく……」

コニー「こってりとしてるけど、全然しつこくない………野菜串も、どれもこれも味わい深くて、こっちを食うと口の中がさっぱりして、また肉が食いたくなって……」

マルコ「この筍串、シャキシャキして瑞々しくて、本当にうまいよぉ………」

クリスタ「お肉もおいしい、野菜もおいしい! 付け合せのご飯に合うね!」

ベルトルト「クリスタは臨海兵団以降、米派になっちゃったね」

ライナー「ほれ、こっちの甘辛く焼いた串焼きなんかメシに合うぞ」

クリスタ「えっ、ふぁあああっ、からぁい! で、でも、おいしいーーーー!」パクパク

ハンナ「トロみのあるソースが、ご飯とすごくマッチする! これだけでご飯おかわりしちゃいそう!!」モグモグ


サシャ「お芋の串焼きもいいですね! 一回蒸かしたせいか、全然パサパサしてなくて、むしろほっこりとした強い甘みを備えています!」モッキュモッキュ

ライナー「焼きねぎの芳醇な甘みも忘れちゃ困るぜ。肉との相性は抜群だ。ほれ」

サシャ「うわああああああんうまああああああああああい!! 肉! ネギ! 肉、肉! ネギ! 肉肉ネギ!」ガッツガッツ

ベルトルト「やっぱり甘辛タレの牛肉串には、アツアツ白米だよね!」モグモグ

ライナー「おーい、料理人がピラフ作って来たぞー。明日人に会う予定がない奴は食えー」

ν料理人「にんにくたっぷりの牛肉ピラフですの!!」

エレン「おおおおお! こりゃまた旨そうだが、すげえ匂いだ!」

ミカサ「食欲をそそる………」ゴクン

アルミン「うう、明日会う人いるけど………構わないやっ、食べちゃえ!」パクッ

アニ「気になる人は私に言ってね。一応匂い消し用のスパイス上げるから」

エレン「え、マジ!? そんなのあるのか! 後でくれよ! 俺、このピラフ食う!!」バクッ

ミカサ「私! 私も!!」パクリッ


アルミン「うわあああああうんまぁぁああい!! なんて香ばしくて、香り高いんだ! 舌にビリッビリくる!!」

エレン「ニンニクがっ、すげえっ! でも、なんて美味いんだ! メシに肉汁が染みてやがる!」

ミカサ「そのくせ全然ベチャベチャしてない。肉の旨味だけで炊きあげた様なピラフ!! すっごく美味しい!!」

アニ「これは………うん、やるじゃないクロコ」

ν料理人「どんなもんですの!」ムフー

サシャ「あれも! これも! それも! 全部全部、おいちぃいいいいいいっ!!」フッギャァアアアッ

ライナー「慌てるな、どれも、これも、それも、あれも、お前のために作ったんだから」フフッ

サシャ「すごくおいしいです、ライナー! 大好きですっ、うまあっ!!」

ライナー「食うか褒めるかにしてくれ、はは………」



……
………


………
……


~食堂(食後)~


 ワイワイガヤガヤ……


サシャ「あと数ヶ月で、訓練兵団も解散ですね…………」シミジミ

クリスタ「うん。なんだかしんみりしちゃうな…………」ションボリ


ジャン「おいおい、湿った空気出すんじゃねえよ。いよいよ来週から大型休暇が待ってるんだからよ!」

マルコ「十連休なんて、教官たちもずいぶん思い切ったよねえ」

ジャン「それだけ平和で、金があるってことなんだろ。食糧事情も改善されてきたしよぉ」

コニー「最近、肉の日じゃなくてもメシがうめえもんな!」


料理人ν「!!!」グッ


マルコ「そういえば、皆は休暇はどう過ごすんだい? 僕は南区のジナエ町に戻ろうと思う」


ジャン「オレも帰省………だな。家族にも、近況報告しておきてーし」

マルコ「ジャンは実家がトロスト区だから近くていいね」

ミーナ「私もトロスト区!」チラッ

マルコ「そ、そうだね」

ミーナ「ここからジナエ町に行くのに、確か半日もかからないよね!」

マルコ「そ、そうだけど」

ミーナ「私ね、家族に近況を報告しようと思ってるの!」チラチラッ

マルコ「そ、そうなんだ」

ミーナ「うん! 一緒に行ってほしい人がいるんだけどね!!」ジーッ



マルコ(何が言いたい………何が言いたいんだ………)ブルブル

ジャン(そろそろ覚悟決めた方がいいぞマルコ………ありゃ逃がすつもりはないって目だ)


コニー「俺も帰省だ! ラガコ村に帰って、母ちゃんや弟たちを驚かせてやるんだ! 成績上位だしな!」


ベルトルト「…………」

ライナー「…………」

アニ「…………」


コニー「あ…………わ、わりぃ。そういえば、おまえらの故郷って、遠いんだよな………ごめん、悪気はねえんだ」アセアセ

ベルトルト「気にしないで、コニー。なかなか帰る機会はないけれど、ちゃんと連絡は取れてるから」

ライナー「…………ああ、そうだな。俺は兵舎で過ごすよ。牛の世話もあるし、ハナコが産気づいてて手が離せんしな」

アニ「その後は?」

ライナー「無事にお産が終わったら、新規顧客獲得のための営業だな! だけどサシャ、おまえは帰省しなくていいのか?」

サシャ「え、えええっと………そ、その、また休暇の時には、帰ります、ハハ」

ライナー「分かった。じゃあその時に親父さんに合わせてくれよ! 結婚のお許しをいただかなきゃな!」ハハハハ

サシャ「ハ、ハハハ、そ、そうですねー」ハハ…

ベルトルト「僕も宿舎で寝泊まりしながら、座学の復習や自主トレに精を出すよ。暇なときは彼女に手紙を書くさ」


ライナー「アニはどうするんだ?」

アニ「私は、その………どうしようかな」

エレン「ああ、アニ。それなんだけどさ」

アニ「え?」

ミカサ「私とエレン、アルミンはシガンシナ区に戻ろうと思う」

アルミン「久しぶりに家族団らんで過ごそうかって思っているんだ」

アニ「………そう。楽しんできなよ」ニコ

エレン「いや、だからさ。その………楽しんでくるのは俺たちだけじゃねーっつーか、まぁ、なんだ………」

アニ「?」


エレン「シガンシナに………俺の家に、一緒に来ないか? アニも、その、さ………/////」プイッ


アニ「!!!!?!!?!?」



……
………

※というあたりで本日は終わり

 続きは明日。明日にはアニとカルラの会話パートに入ります。

 って明日残業デーか………戻れたら書きます。

 お疲れ様でした。おやすみなさい。良い夢を……zzz

※帰宅……。や、やったぞ……帰宅できたぞ……。

 投下は明日です。御疲れ様でした、おやすみなさい。良い夢を。ナランチャァアアアアアッ!!

>>1きさまっ!
ASB買ったなッ!

※帰宅。

>>74
 まだ買えてないです………。


 そして明日も仕事。

 あァァァんまりだァァアァ!!

 AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!

 おおおおおおれェェェェェのォォォォォ休みィィイ~~~~~!!


 という訳です、スッキリ。
 じゃない、すいません。
 明日の夜には確実に投下します。

※充電完了。ゲームは明日やる。今やったら歯止めが効かない。

 というわけで、投下開始。ほとんど書き溜めがないのでゆっくりです。


………
……


 ――――俺と一緒に、シガンシナ区に行かないか?

 エレンは、どこか照れくさそうに言った。


エレン「外に出ないか」


 驚きの抜けぬまま、アニは誘いに了承の頷きを返す。

 吐息に白が混ざりはじめた深々とした空気に、僅かに身を震わせながら、エレンとアニは兵舎の外に出る。

 満天の星空の下、二人つれだって訓練場のトラックを無言のままに歩き続ける。

 意を決して、アニが口を開いた。


 ――――どうして、私も?


 アニの質問に、エレンは苦笑しながら答えた。


エレン「本当は卒業するまで帰らないつもりだったんだけどな」


エレン「けど、やっぱり、両親には話しとかなきゃと思ってさ」

エレン「………その、おまえの親父さんには、事後承諾みたいな形になっちまうけど」


 エレンの照れくさそうに頬を掻く仕草に反して、アニは目を見開いた。

 半ば確信めいた予感を感じ、アニは自身の体温が一気に上昇するのを感じた。

 耳まで赤くなるほどに、アニの胸は高鳴った。言いようのない期待に対して「逸るな」と叫ぶ内心を無視して、鼓動は加速する。



エレン「一生連れ添って歩いてほしい人を、ちゃんと両親に報告したいんだ…………駄目か?」



 アニの瞳を真っ直ぐに見つめながら、エレンは告げた。

 告げながら差し出されるエレンの掌の上には、一組の指輪がある。



エレン「そんなに高価なもんじゃねえけど………受け取って、くれるか?」



 予感が確信に変わる。


 エレンからの、プロポーズだった。アニ・レオンハートに、その申し出に『否』と返す理由など、一欠けらもなかった。

 ただ、声が出ない。ただかくかくと壊れた人形のように、首の関節を上下に動かすことしか、アニにはできなかった。

 震える指でエレンの掌から、小さい径の指輪をつまみ上げ、左手の薬指に嵌めようとすると、エレンがその手を優しく掴んだ。

 驚く間もなくアニの手から指輪を奪い取り、彼女の薬指に嵌める。

 元よりそこにあったかのような、不思議な感覚を感じた。冷たく野暮ったい意匠の、巨人に変身するための指輪とは違う、どこか温かみのある指輪だった。


エレン「はは…………夫婦になるまでのこれからも、なってからのそれからも………よろしくな、アニ」


 嬉しそうに笑顔を見せるエレンに、アニの瞳からひとしずくの涙がこぼれた。

 くしゃくしゃに、泣き笑いするアニを、エレンは優しく抱きしめた。

 冷え込んだ大気の冷たさなど、もうどこにも感じない。

 ただ暖かな時間だけが、二人の間に流れていた。



……
………


………
……



 かくして、ミカサ、アルミンを加えた四名は、休暇初日に訓練場を出立し、トロスト区を後にした。

 幸先も良く天候は晴れ。雲一つない青空の下を、馬に乗って駆け抜ける。

 エレン、ミカサ、アルミン、三人の故郷であるシガンシナ区に向かって、四人は南下を続ける。

 道中は他愛もない雑談に花を咲かせながら、彼らは何事も無くシガンシナ区に到着した。

 馬を駐屯兵団に預けた後は、ハンネスを始めとする飲んだくれの駐屯兵にからかわれつつも祝福され、頑張れよと肩を叩かれた。

 散々にアニとの関係を茶化されたエレンは、怒りで顔を真っ赤にしながら、肩をいからせて駐屯兵団の詰所を飛び出した。

 道行く人々が彼の顔を見た瞬間に道を譲るほどの怒りっぷりであり、泣く子がもっと泣き、商会の有力者ですらその迫力に息をのむほどであった。

 『エレンが歩くと道が割れた――――その目を直視できるのは、彼と親しい一部の兵士だけであった』

 後世の歴史書にそういった逸話が書かれるほどであった。


 さもあらん、生来の悪人顔が災いしたか、この時のエレンは傍目には、さながら獲物を品定め中の殺人鬼のようであったという。

 そんなエレンを追いかけるように、恥ずかしげに頬を染めるアニが続き、その後ろをどこか嬉しそうなミカサがついていく。

 更にあまりの恐怖から憲兵団に通報しようとする人を、苦労人アルミンが必死に止めるという混沌とした図面が展開されていた。


 かくして、彼らは歩き続ける。

 エレンの生家、イェーガー家を目指して。



……
………


~(元)シガンシナ区 住宅街~


アルミン「ねぇ、エレン。そろそろ機嫌なおしなよ? 別にハンネスさんだって悪気があったわけじゃないんだから」

エレン「うるせぇ。あの飲んだくれども………巨人がいなくなったからって、ますます飲んだくれてんじゃねえか………」

ミカサ「それだけ平和ということ。勤務時間に呑むのは悪いことだけど、そう悪いことじゃない」

アニ「ま、そうだね。怒ってもしょうがないよ、エレン」

アルミン「そうそう。それに、怒った顔をカルラおばさんに見せるつもりなの?」ヒソヒソ

エレン「う………分かったよ。もう怒ってねえよ、ったく………」

ミカサ「そう。もっと建設的な話をしよう」

アニ「うん」


エレン「話、か…………そういえば、土産のことだけど」

アルミン「ああ、ライナーに貰ったんだよね。僕もだけど」

ミカサ「私も」

エレン「ライナーには頭が上がらないよな………」

アルミン「帰省する訓練兵全員に、お土産持たせてくれたよね………しかもブラウン牛の詰め合わせって………」

ミカサ「噂は聞いている。今や超有名ブランドで、一生に一度は食べたい肉だと言われてる」

アルミン「それを毎月食べてる僕たちって…………一食分だけで、僕たち訓練兵の薄給数ヶ月分が吹き飛ぶよ?」

アニ「しかも私の分まで…………無理しちゃってさ」

エレン「コニーなんか大家族だからっつって、すげー量を渡されてたよな」

アルミン「コニーったら感極まって泣いてたよ。『家族に贅沢させてやれ』なんて笑顔で言われちゃ、無理もないよ」


ミカサ「よっぽど嬉しかったんだろう。コニーはどことなく以前から、ライナーに憧れているような節があった」

アニ「その念はますます深まったかもね」

アルミン「はは、かもね………あ、そうそう。気前がいいと言えば、リヴァイ教官もそうだよね」

エレン「ああ。希望者には馬を貸してくれるなんて………おかげで馬車代が浮いたし、時間も短縮できる」

ミカサ「訓練場で遊ばせておく余裕がなかっただけかも………」

アニ「それもあるんだろうね。その間は私達で世話してあげなきゃいけないし」

アルミン「しかし怖かったね…………『もし馬をダメにしやがったら、俺が直々にマンツーマンで格闘訓練の手ほどきをしてやる』なんてさ」

エレン「ははは、死んでも馬だけは訓練場に戻さないとな」

アニ「ん、そうだね…………しかし」

エレン「どうした?」


 アニが視線を大通りへと向ける。

 エレンが視線を追った先には、子供が走り回る姿や、買い物帰りの主婦たちが道端で談笑する姿が見えた。


アニ「いや、ずいぶんと賑やかな区域だと思ってさ。聞いた話と大分違う」

エレン「お、おお………たった二年で、町の様子もずいぶんと様変わりしたな」


アルミン「今やウォール・マリアの………いや、元・ウォール・マリアの突出区は、壁外への玄関口だからね。そりゃ発達もするさ」

ミカサ「先ほど通った市場も、記憶よりずっと活気があった。トロスト区じゃあまり見ない食材も売っていた」

エレン「帰りにライナーへの土産で買っていこうぜ。なんだっけ? 南の果実で、パパイヤとか、マンゴーとか、マンゴスチンだっけ?」

アニ「ああ………あれはおいしいよ。南国の果実はどれもこれも、こっちで食べられるものより甘みが強くて、いい香りがするんだ」

ミカサ「!! それは楽しみ………」

アルミン「あはは、全部食べちゃダメだよ、ミカサ」

エレン「しかし…………やっぱり、壁外調査の成果でもあるんだろうなぁ。これだけ成果出してれば、そりゃ憲兵団の人気も落ちるぜ」

アルミン「………皮肉なものだね。巨人の脅威で滅亡寸前だった【前】の時よりも、今の方が調査兵団の支持者がずっと多いなんて」

アニ「現金なものだとは思うけれど、そういうものじゃない? 兵士でさえ平和ボケしてるんだから」

エレン「ああ…………そうだな」


ミカサ「………そういえば、ここからずっと南下したところに、【砂の雪原】があるという話だった」

アニ「ああ、砂漠か。あそこはある意味で海以上に危険だからね」

アルミン「だけど、いつか必ず、自分の足で行くよ。この目でちゃんと見てみたいんだ」

エレン「ああ、絶対に行こうな…………っと、そこの角を曲がれば、俺の家だ」

アニ「ッ…………う、うん」


 エレンの言葉に、アニはごくり、と唾を飲み込んだ。―――いよいよだ、と全身が固くこわばっていくような感じがした。


アルミン「だ、大丈夫かい、アニ? 見るからに緊張してるけれど」

ミカサ「平気、おじさんもおばさんもいい人だから」

アニ「だ、大丈夫。うん、ちょっとだけ深呼吸させ………」



???「――――――エレン? エレンなの?」


エレン「あ………か、母さん」

アニ「!?」


 エレンの「母さん」という発言に、アニの身体が驚愕に跳ね上がる。

 おそるおそる振り返った視線の十数メートル先には、真っ白なエプロンを付けた女性が立っていた。

 一目見ただけで「ああ、エレンは母親似なんだな」ということが、初対面のアニにも分かった。

 エレンとそっくりな、すっと通った目鼻立ちに、思わずはっとさせられた。目つきはエレンよりも優しい曲線を描いている。

 背中の中ほどまで届きそうな長さの黒髪を、右肩の横で一つに結わえている。

 美人だ………とアニが冷静に観察できたのはそこまでだった。


 現実を再認識する。

 目の前にいるのは、エレンの母親である。アニにとって、今まさに御挨拶に向かおうとしていた方であった。


 ――――心の準備が、まだできてないのに!


 内心で愚痴るも、どうにもならない。

 エレンの母親――――カルラ・イェーガーは、二年ぶりの息子との再会に、嬉しそうにこちらへと歩を進めてくる。


エレン「ただいま、母さん。買い出しの帰りか? 俺が持つよ」

カルラ「あ、ありがとう………けれど、急にどうしたの? 訓練兵団は? どうしてミカサとアルミンも? そちらの子は誰?」

アニ「あ、ああああ、ああの、あのぅ、そのぅ………」

エレン「いっぺんに言われてもわかんねぇよ………とりあえず、長期休暇が取れたから戻って来たんだよ」

アルミン「え? ちょ、ちょっと待って! エレン、手紙とか出してなかったの!?」

エレン「あ………そういや、忘れてた」

アルミン「いや、そこ忘れちゃダメだろう!?」

カルラ「手紙の一つぐらい入れてもいいでしょうに、全くこの子は………」

ミカサ「ごめんなさい、カルラおばさん………私の配慮が足りなかった」

エレン「どういうことだよ! まるで俺がバカみたいじゃねえか!!」


ミカサ(エレン………)

アルミン(その通りなんだよ………どうして肝心なところで、君は残念なんだ………)

アニ(馬鹿だ………)

カルラ(馬鹿ね………)


カルラ「まぁ、この子の馬鹿は相変わらずとして…………」

エレン「なんだよその言いぐさ!!」

カルラ「アルミン、ミカサ。貴方たちも久しぶり」

エレン「無視すんなよ!!」

アルミン「ありがとうございます。そちらもお変わりないようで、何よりです」

ミカサ「カルラおばさんは、相変わらず美人」

カルラ「あら、口がうまくなったわね」

ミカサ「本当のこと」

カルラ「ふふ、本当に立派になったわ………きっと、貴女のお母さんも喜ぶわよ」

ミカサ「ん…………ありがとう」


カルラ「それに、エレン」

エレン「ん………なんだよ」

カルラ「二年ぶりね。ずいぶんと背が伸びたのね………訓練兵団に入団する前は、私より小さかったのに」

エレン「まぁ、成長期だしな」

カルラ「どれ………よしよし」

エレン「え、ちょ、母さん? 頭撫でるなよ!」

カルラ「いいじゃない、少しくらい。親としては、背を越えられちゃうのって、なかなか感慨深いものよ?」

エレン「け、けど、恥ずかしいだろ………」

ミカサ「エレン、大人しくして」

アルミン「そうだよ。久しぶりに会ったんだし、そのぐらいはいいじゃないか」

エレン「わ、分かったよ………」

カルラ「あらあら、本当に大きくなって………ふふ、このままじゃお父さんもそろそろ抜かれちゃうかも」


アニ「…………?」


 アニの目の前で、エレンが恥ずかしそうに、しかしまんざらでもなさそうな顔で、カルラに頭を撫でられている。

 カルラも愛しそうに、慈しむような優しい瞳でエレンを見つめながら、ゆっくりとエレンの固い髪を指先で梳いていく。

 そのことに、アニはちくりと心がささくれ立つのを感じた。

 嫉妬、ではない。怒りでもない。

 この感情はなんだろう? アニがそれを考えようとした時のことだった。


カルラ「あら? ごめんなさいね。ないがしろにしていた訳じゃないのだけれど………エレン、こちらの子は? 紹介なさい」

エレン「ッ!! あー、その、こっちの子は、だな………」

アニ「ぅ、あっ………わ、私はッ! え、えっと、アニ・レオンハートです!!」バッ

エレン「アニ!?」


アルミン(敬礼した………)

ミカサ(アニは混乱している………)

※続きは明日に書きます。

 うん。思い入れが割と強いせいか、今日はやや描写を強めに書いてしまいました。

 私、明日起きたら早速ジョジョASBプレイするんだ………。

 お疲れ様でした。おやすみなさい。良い夢を。

※言い訳を………。

 エレン「ドリフターズ?」

 を夢中になって書いてて、今日のところはこっちに手が回らなくなりました。

 すいませんが、明日投下します。良かったらそっちも読んで見てください。


エレン「あー………アニ? その、なんだ。敬礼はいらないと思うぞ?」

アニ「あぅ、あうあう………」

カルラ「あらあら、ふふっ、面白い子ね」

エレン「えっと、母さん。こいつは俺たちと同じ訓練兵の同期で………」


アニ(や、やらかした…………絶対変な子だと思われた………)


カルラ「そう。アニちゃんって言うのね? 初めまして、エレンの母のカルラ・イェーガーです」

アニ「は、はひっ! は、初めましてっ!」

カルラ「いつもうちの息子がお世話になっています」

アニ「いっ、いえっ! む、むしろお世話になってるのは、そのっ、私の方でして………」

カルラ「ふふっ、いいのよ。手間がかかるでしょ、この子」

エレン「どういう意味だよ………」

カルラ「そのままの意味よ」


エレン「…………まぁ、いいや。こんなところで話すのもなんだしよ、続きは家で話そうぜ」

カルラ「そうね。色々と聞かせてもらいたいわ………ああ、ミカサ、アルミン。貴方たちも一度お家に戻りなさい」

カルラ「見たところ、戻って来たばかりなのでしょう? まずはご家族に色々と報告しなくっちゃあね?」

アルミン「は、はい。また後でお伺いします」

ミカサ「うん。エレン、また後で」

エレン「おう、またな!」

カルラ「アニちゃんは? お家はシガンシナ区なの? それともここには観光で?」

アニ「ぅ、あ、う、え、えっと、そ、そのぅ………」

エレン「ああ、母さん。それについては俺が話す。とりあえずは、アニと一緒に家へ行こうぜ」

カルラ「あら、そう? それじゃあアニちゃん、こっちよ」

アニ「は、はい………」オロオロ



……
………


………
……


~イェーガー家・リビング~


カルラ「粗茶ですけれど…………ごめんなさいね。御茶菓子の一つも用意してなくって」

アニ「い、いえ。とんでもありません」

カルラ「誰かさんが事前に連絡しておいてくれたなら、こんなことにはならなかったのだけれど」ジロッ

エレン「ぅ………わ、悪かったな。あ、そうだ! これ、お土産だ」

カルラ「あら、トロスト区の? 気が利いて……………ぎゅ、牛肉? なぜ?」

エレン「ああ、結構前に送った手紙に書いてただろ? 今期の訓練兵団は色々な試みを行ってて、その一環で牛育ててるってさ。ライナーって同期から、それ貰ったんだ」

カルラ「そういえばそんなこと書いてあったような………なんにしても嬉しいわ。今日の夕食は豪勢になるわね」

エレン「あと、これもな」ガサッ

カルラ「あら? これは………?」

エレン「トロスト区で評判の菓子店の、菓子詰め合わせ。結構高かったんだぞ」

カルラ「まぁ、ありがとう、エレン………ちょうどいいわ。これを御茶菓子にしちゃいましょう」


エレン「ん。アニも食べろよ。凄くおいしいクッキーだってクリスタが言ってたぞ?」

アニ「あ、ああ。いつの間にこんなの買ってたの………?」

エレン「ん、まぁ、その。行きがけの買い物で、別行動とっただろ? その時にクリスタ達とばったり会ってよ………手土産の一つでも買っていかなきゃダメって」

アニ「そ、そうなの………(私、何も持ってきてない………)」ズーン

カルラ「あら、本当においしそう。ふふっ、お父さんは残念ね。今お仕事で内地に行ってしまったから、食べそこなっちゃったわ」

エレン「え!? お、親父、いないのか!?」

カルラ「一応、三日後ぐらいには帰ってこれるわ。それまではこちらにいられるんでしょう?」

エレン「ま、まあ、そうだけど…………」

カルラ「………さっき言ってた、話したいってこと?」


 そう言って、カルラは優しく微笑みかける。

 その笑みを見て、アニは再び心が絞られるような感覚を覚えた。

 不快ではない、痛みともこそばゆさともつかぬ、不思議な感覚だった。


エレン「ああ、楽しみにしてる…………それでさ、母さん。話があるんだ。凄く、真剣な話だ………」

アニ「ッ…………!!」

※凄い誤字。というか紛れ込んだミス。

×:エレン「ああ、楽しみにしてる…………それでさ、母さん。話があるんだ。凄く、真剣な話だ………」
○:エレン「ああ…………それなんだけどさ、母さん。話があるんだ。凄く、真剣な話だ………」


カルラ「ええ………そちらの、アニちゃんに関わることなんでしょう? その子の緊張っぷりを見てたら、なんとなく分かるわ」

エレン「ああ。アニのことだ」

アニ「ッ………」


 明確に空気が緊張していくのを感じ取り、アニは背筋に力を込める。


アニ「あ、あのっ。改めまして、その、私は、アニ・レオンハートと言います」

カルラ「あら、これはご丁寧に」

アニ「そ、それでっ………わ、私は、エレンと、その、お、お、お付き合いを、させていただいており、ます………」

エレン「ああ。この子は、俺の彼女だ」

カルラ「まあ」


 カルラは口元を押さえて、大仰に驚く。

 実際のところ、予想の斜め上をゆく話の内容に、カルラは驚きを隠せない様子だった。


カルラ「ああ、驚いた。貴方が彼女を連れて帰ってくるだなんてね………」

エレン「それでさ、母さん。話したいのは、それだけじゃないんだ」

カルラ「あら? こちらに滞在する間の宿泊のこと? それなら女の子同士だし、ミカサの方が………」


 まだ混乱しているのか、カルラは少しばかり視線を泳がせていた。


エレン「違う。真剣な話だって言っただろ」


 そう言ったエレンは居住まいを正し、真っ直ぐにカルラを見つめる。

 落ち着きを多少取り戻してきたカルラもまた、正面からエレンの瞳を見つめ返す。

 真剣な表情だ、とアニは思った。こういった表情は、本当にエレンとそっくりだ、とも。


エレン「さっきも言った通り、アニは訓練兵団の同期で、俺にとって大切な人だ」

エレン「だけど、それだけじゃない。ずっと、これからの人生を一緒に過ごしたいって、そう思える人なんだ」

カルラ「―――――!!」

※おっそろしくゆっくりでごめんなさい。今日はマジ疲れてます。

 短いですが、ここまで。後1、2回で終わらせたいと思います。

※帰宅。今帰宅。超疲れました……。

 明日以降、残業のない日を狙って投下します。本当にすまぬ……。

※帰宅。疲れてる時の電車内ほどキチ○イじみたアイデアがわく。
 本当は本編でやりたかったネタ。


【ユミルハード~私が鰊を嫌いな訳~】


エレン「唐突だがくらえユミルッ!! ニシンの缶詰!!(シュールストレミング)」

ユミル「ギャーーーーー」

エレン「ふはは、臭いか、臭いかーーーー!」

ユミル「ぎゃああああああ」

エレン「臭いか! 臭いのか! そんなに臭いかーーーーー!」

ユミル「ぎゃああああああ」

エレン「口を開けろー! あーんするのだ! ふははははは!! 臭いかーーーー!!」

ユミル「ぎゃああああああ」


【完】


 なんかすまない。明日も明後日も残業らしい……よ……。


カルラ「人生を一緒にって………その、つまり………」

エレン「ああ。俺はアニと結婚する」

カルラ「ああもう、本当……………急な話ね。母さん驚いたわ」


 椅子に深く腰掛けて、カルラは溜息をついた。


アニ「と、突然のことで、本当にすいません」

カルラ「貴女はいいのよ? 悪いのは全部この子だから………」


 カルラにじろりと睨まれ、エレンはばつが悪そうに頬を掻く。


エレン「事前に連絡できなかったのは、その、悪かったと思ってる。アニのことは、先入観とか無しで見てほしいと思ってたから………」

カルラ「せめて帰ってくることぐらい伝えなさい………全く、貴方って子は………」

エレン「ご、ごめん。どうやってアニのこと話そうかって思っていたら、考えが及ばなかった………」

カルラ「はぁ………もういいわ。エレンが一度思い込んだら一直線だってことくらい、分かっているから」


 カルラは諦めたように呟くと、姿勢を正した。

 それを受けて、エレンもまた再び口を開く。


エレン「…………本当は親父にも一緒に聞いてほしかったんだけどな」

カルラ「ええ」

エレン「俺は親父と母さんに、報告に来たんだ。俺は、アニが好きだ。アニと結婚したい。こいつしかいないって、そう思ったからだ」

カルラ「…………勿論、アニちゃんも同じ気持ちなのね?」


 向けられた眼差しに、思わず心臓が跳ねる。

 乱れそうになる呼吸を整え、アニもまたカルラをまっすぐに見つめ、言った。


アニ「…………はい。私はエレンが好きです。彼と結婚したいと、そう考えています」

エレン「だから親父と、母さんにも祝福してもらいたい………そう思ってる」

カルラ「そう………分かったわ。それじゃあ答えから言わせてもらうけれど」




カルラ「………駄目よ。認めないわ。お父さんもきっと認めないと思う」


エレン「ッ、母さん、どうして!!」


 にべもない却下の言葉に、エレンは声を荒げて立ち上がる。


カルラ「誤解しないで、エレン。認めないというのは、現時点では、という意味よ」


 先ほどまで混乱していたカルラは、エレンと対照的に静かなものだった。微笑さえ浮かべている。


エレン「どういう意味だよ………」

カルラ「聞きなさい。私は、アニちゃんのことを何も知らないわ」

アニ「…………」

カルラ「彼女の歳も、人となりも。彼女のご両親は結婚を承諾されているのかも、何をしてるのかも、何もかもわからない」


 仮にエレンが結婚相手として紹介したのが、ミカサなら話は別だっただろう。

 この世界においては養子と言う関係ではなかったものの、カルラはミカサのことはよく知ってる。

 ミカサは少し感情表現が苦手で口下手だけれど、真面目で優しい良い子だ。

 優れた身体能力を持ち合わせた彼女ならば、なにかと突っ込んで行きがちなエレンを止めることもできるだろう。


カルラ「まだ彼女のことを何も知らないわ。だから、簡単に認める訳にもいかない」

エレン「そういうことなら………ちゃんとアニのこと分かってくれれば、認めてくれるんだな?」

カルラ「ええ。だからね、エレン。貴方に少しお願いがあるの」

エレン「え?」


 カルラはにっこりと微笑むと、ゆっくりと左を指さす。

 エレンが指先を辿ると、その方向には玄関のドアがあった。


カルラ「少し―――――出かけてきてくれないかしら? アニちゃんとお話したいことがあるのよ」

エレン「……………は?」

アニ「……………え?」



……
………


………
……



 どうしてこうなった――――。


 エレンの母親・カルラを前にアニ・レオンハートは己が境遇を少し嘆いていた。

 先ほどまで自分の隣に座っていたエレンは「じゃあしばらくしたら戻るから。母さん、アニを虐めたら怒るからな」なんて言い残して、あっさりと外出していったのである。

 二人きり。そう、二人きりである。


カルラ「そう固くならないで」

アニ「は、は、はひ………」


 無茶な話であった。

 今のアニは「立体機動装置なしで巨人に立ち向かったら、きっとこんな心地なのだろうな」とすら感じている。


カルラ「う、うーん。緊張してるわね。それじゃあ、簡単な所から質問するから、答えてくれる?」

アニ「は、はひっ!!」


カルラ「まず、歳は?」

アニ「じゅ、十五歳、です」

カルラ「あら、エレンより一つ年上なのね?」

アニ「は、はい」

カルラ「じゃあ次ね。貴方のご出身はどちら?」

アニ「その…………壁外に」

カルラ「まあ………!! ずいぶん遠いところから来たのね。ご家族とは………?」

アニ「その………母は私を産んですぐに………」

カルラ「ごめんなさい。辛いことを聞いたわね………それじゃあ、お父様は?」

アニ「父とも、訓練兵団に入る二年前から、もう会っていません。距離の問題から、帰ることも容易ではありませんので………」


カルラ「そう………きっとお父さん、寂しくしてるわね」


 カルラが申し訳なさそうに俯いた。


アニ「いえ。父も男ですから。自炊もできますし、きっと元気に暮らしていると信じています」

アニ「それに約束しましたから。必ず帰ってくるって…………その、お婿さんを連れて」


 最後は口ごもるように言ってしまったが、カルラの耳にはしっかりと聞こえていたのだろう。


カルラ「あらあら、ごちそうさま」

アニ「…………ぅう」

カルラ「そうそう、アニちゃん。エレンったらこの二年間、貴女のことは手紙に何一つ書いてなかったけれど、最近付き合い始めたの?」

アニ「えっと、ではその辺りから………私と、エレンは―――――」


 そこからアニの口は饒舌に動いた。

 エレンとの馴れ初め。

 同じ成績上位者であること。

 自分にとっての弟子のような存在でもあり、男子の対人格闘術においてはトップであるということ。

 座学はさほど得意ではなかったが、持ち前の努力で少しずつ試験の点数を伸ばしてきたこと。

 訓練兵団で過ごしたおよそ二年以上もの日々を、共に過ごしてきた思い出のことを。

 ミカサやアルミンと一緒に座学の勉強をしたり、サバイバル訓練で助け合ったり、対人格闘でペアを組んだり。

 一緒に料理をしたり、海へ行って泳いだり、たまの休暇でデートをしたり。


 エレンとの日々を、語る。


 辛いこともあったし、悲しいこともあった。

 だけどそれ以上に楽しかったし、嬉しかったことが沢山あった。

 そんな、宝石のように輝く日々を。


 滔々と語っていくにつれ、アニははたと気づく。


 ………この二年間の思い出って、本当にエレンのことばっかりだ。


 語っても語り尽くせないほどに、どんどんとエレンとの思い出ばかりが脳裏を埋め尽くしていく。

 はっと我に返ると、どこか困ったような笑みを浮かべるカルラが見つめていることに気付き、アニは羞恥で頬を染めて、俯いた。


アニ「す、すいません………長々と、その」

カルラ「――――――ううん。そんなことはないわ。よく分かったもの………貴女がいい子だってこと」

アニ「え………?」


 視線を上げた先に、カルラの優しい笑みがあった。

 胸がとくんと鼓動を打つ。


カルラ「あの子、馬鹿だから。悪い子に騙されてるんじゃないかなんて、最初はそんな考えがふとよぎってしまったわ」

アニ「あ、あの、えっと、その………」

カルラ「本当にごめんなさい。だけど、いい子だってことはすぐ分かったわ」


アニ「え? そ、それは、どういう………」

カルラ「もし貴方が悪い子なら、ミカサやアルミンが黙って見ている訳がないもの」

アニ「……………は、はい」

カルラ「それに、今の話…………貴女、本当にあの子のことが………エレンが、好きなのね」


 かぁっと顔の体温が上がる。

 視線を左右に揺れさせながら、アニは縮こまる様にして、ゆっくりと頷いた。

 そんなアニに微笑みかけ、カルラは渇いたカップに再びお茶を注ぐ。

 「私はてっきり、エレンはミカサとくっつくものだと思っていた」とカルラが言う。


 ――――それは私も同感だった、とアニは言う。


 【前】の時はそう思って、諦めていた。いつだって彼の傍にはミカサがいて、お節介を焼いていた。

 甲斐甲斐しく接する彼女に対し、エレンは嫌そうな態度を取るものの、なんだかんだで受け入れている。

 何より、ミカサは美人だ。きっとエレンも心の底ではミカサに淡い思いを抱いていたんじゃないか―――――アニは己の見解を、そう語った。

 するとカルラは「アニちゃんがいなかったら、将来はエレンとアルミンでミカサを取り合いに、なんて事になっていたかも」とおかしそうに笑った。


アニ「やっぱり、子供のころからあの三人はずっと仲が良かったんですか?」

カルラ「ええ、それはもう………ふふ、懐かしいわ。もう十年近く前になるのかしら」


 アニの緊張がほぐれてきたところで、今度はカルラがエレンの子供時代のことを語りだした。


 わんぱくで、いたずら好きで、いろんなことに好奇心旺盛だった子供だったということ。

 まだ人類が巨人の脅威に脅かされていたのに、エレンはずっと調査兵団への入団を志望していた。

 その頃からカルラは、人と少し違う物の考え方をする子だったと感じていたという。


カルラ「あの子は、危険な事ばかりするし、友達全然いないし………母親としては心配ばかりかけさせられたわ」


 母親であるカルラの言うことなんて全然聞いてくれない、手のかかる子だったという。


カルラ「自分を抑えるってことを知らなかったあの子が変わったのは、いつだったかしら………」

アニ「…………エレンは、何と言えばいいんでしょう。その、珍しいタイプの人だと思います」

カルラ「ええ。エレンには、なんて言ったらいいのかしら………こう、頑固で向こう見ずなところがあってね」


アニ「一度こうと決めたら、なかなか意見を曲げない?」

カルラ「そう、それ」


 悪いことは悪いことだと、良いことは良いことだと、強い信念を持ってハッキリと言えてしまうのは、エレンのいいところなのだろう。

 エレンの言っていたことはきっと正しいことなのだろう、とアニは感じている。

 だけど、世の中まっすぐなことだけでは、生きていけない。

 正しいことばかりを押し通すだけじゃ、世界は生き辛い。

 そんなエレンのことが、母親としてのカルラはずっと心配だった。


カルラ「あの子は自分が正しいと思ったことのためなら、命すら投げ出そうとする勢いだったから………何歳の頃だったかしら? あの子が調査兵団に入りたいって言った時は、本当に驚いたわ」


 今や壁が消失し、巨人は全て人間へと戻ったと言われているが、当時は本当に驚いたという。

 調査兵団が壁外調査を行うたびに何人もの人が犠牲になっていた、そんな時代だ。

 母親としては、一人息子に、そんな危険なことをさせたくない。


アニ「でも、今や調査兵団は、訓練兵の中で憧れる者が最も多い兵団です」

カルラ「今は、ね。そうそう、確か、アッカーマンさんが、ミカサを連れてきたときだったかしらね。少し雰囲気が変わったのよ。あの子が確か、五歳くらいの時」


カルラ「なんていうのかしらね、お友達が増えて、視野が広がったのかしら?」

アニ「…………」


 押し黙って傾聴の姿勢を取るアニは「それは違う」ということを知っている。

 エレンが変わったのは、【ジュマンジ】をクリアして戻ってきたことによるものだろう。


カルラ「世の中には「仕方ない」ことがあるってことを、納得せずとも理解はできるようになったような……」

アニ「今でも、そういうところありますよ、あいつは。曲がったことが大嫌いで、愚直で、物覚えが悪いくせに、諦めも悪くって………」

カルラ「あらあら、酷い言われ様。でも――――矛盾するようだけどアニちゃん?」

アニ「はい?」

カルラ「あなたはあの子のそんなところに惹かれたんじゃないの?」

アニ「ッ…………」

カルラ「まっすぐで、一生懸命な、あの子を」

アニ「あ、あう、えっと」


カルラ「何かのために一生懸命になれる男の子って、やっぱりカッコ良いわよね。それが、自分のために頑張っているともなれば、特にね」

アニ「あ、あぅ、あ………」

カルラ「ふふふ、図星ね? 顔まっかっかよ、アニちゃん」


 ゆでだこのように顔を真紅に染めたアニは、無意味に唸って俯くばかりだった。


カルラ「うふふ、ミカサと初めて会った時も思ったけれど、やっぱり娘も欲しかったわ。アニちゃんみたいな可愛い子なら大歓迎よ」

アニ「ッ…………か、からかわないでください」


 それは暗に、エレンとの結婚を認めると言う言葉だった。

 聡いアニはそれと気づいたが、カルラは素で言っているのか、目を丸くしている。


カルラ「からかってなんかいないわ。本当よ? 貴女みたいな娘がいたら、本当に嬉しいわ」

アニ「ッ…………なんというか、そういうところ、エレンとやっぱり似てます」

カルラ「え? あはははっ、そりゃあ親子ですもの」


 アニからすれば、やや弱めな嫌味(ジャブ)を放ったつもりだが、糠に釘である。全く通じていない。


アニ「…………そういうところも、そっくりです。一目見た時から、やっぱり親子なんだなって、そう思いました。顔立ちもどこか似てますし」

カルラ「顔も? ヘンね………私はあんな悪人顔じゃないはずだけれど。全く誰に似たのかしら」

アニ「…………え?」

カルラ「あ、ここ笑うところよ、アニちゃん」

アニ「あ、そ、その、すいません」

カルラ「うーん、やっぱりちょっと硬いわね。そうだ、アニって呼んでもいいかしら?」


 アニからすれば、十分に打ち解けてきているように感じられているが、カルラにはまだ不満なようだった。


アニ「え? ええ、まあ………お好きなように」


 アニは了承の意を返し、喋りっぱなしで渇いた喉を潤そうと、紅茶を口に含む。


カルラ「うん。それじゃあ私のことは―――――「お母さん」って呼びなさい」


アニ「ブッ………!?」


カルラ「あらあら、はしたないわよ、アニ」

アニ「な、な、なな、なななな………」



 紅茶をかろうじて正面で無く真横へと噴き出したアニは、混乱しながらも心の底で確信する。


 ―――――この人、天然だ!!



カルラ「さぁ、アニ。お母さんと呼んでみて頂戴」

アニ「え、いや、その、か、カルラ、さん? その、グリシャさんにもまだお話してないのに………」

カルラ「……………つーん」

アニ「え、その、カルラ………さん?」

カルラ「お母さんと呼んでくれないと、返事をしません」

アニ「えー………」

カルラ「ね。お母さんって、呼んでくれないの?」

アニ「――――――!」


 この笑みだ、とアニは思った。

 カルラの優しい笑みを見ると、心が痛んだ理由が分かった気がした。

 アニは、母親の愛を知らない。

 幼い頃に、アニは父に聞いたことがあった。


 ――――どうして、私にはお母さんがいないの?


 父は困ったように、アニにいずれ教えると言った。

 アニは、もう二度と問うまいと心に決めた。その時、父が泣きそうな顔をしていたからだ。

 アニはこっそりと父の部屋に忍び込み、父の日誌を手に取った。

 そして知ったのだ。


 ――――私が生まれた日、お母さんは死んだ。


 そこには、父の思いが込められていた。母の無念が込められていた。


『アニ―――――母さんの気持ちが分かるか。

 どれだけお前を愛していたか。どれだけその手でお前を抱き上げてやりたかったか。

 どれだけ、おまえに「お母さん」と呼んでほしかったか、母さんの無念が分かるか』


 アニにとっては、それだけで十分だった。

 自分はいらない子じゃなかった。捨てられたわけじゃなかったと、それが分かっただけで良かった。

 自分は愛されていたんだと、母は自分を愛してくれていたんだと分かったから、それだけで嬉しかった。


 そのはずだった。そのはずだったのだ。


 だけど、会いたい。

 お母さんに会いたい。

 一度だけでいい。一目逢って、お礼を言いたい。

 ただそれだけが、アニの願いだった。



 だから、きっとアニは、エレンが羨ましかったのだ。


アニ「あ……………」


 ぽろりと、アニの瞳から涙が零れ落ちる。

 突然の涙に、しかしカルラは全てを察したように、アニを抱きしめ、背中を優しくさすった。


カルラ「どうしたの、アニ?」

アニ「あ、あ、あ………」


 温かで柔らかい、いい香りがした。

 洗剤の匂いと、台所の匂いが入り混じった優しい匂いが、アニが心の奥で欲していた母親のそれと重なった。

 堰を切ったように、アニの瞳から次々に涙が流れた。

 エレンがカルラに頭を撫でられたとき、アニは羨ましいと思った。

 エレンには母親がいる。彼が自分の手で守り抜いた家族だ。

 ―――――アニは違う。アニには母親がいない。助けようにも助けられない。

 アルミンとミカサにも母親がいる。彼らを力いっぱい抱きしめて、微笑んでくれる家族がいる。

 ―――――アニは違う。アニには逢えない。もうどこにもいないから、逢えない。


 顔も知らない。見たこともない。

 声が聞きたい。聞いたこともない。

 子供の頃の悪夢を思い出す。何もない空間で、ただがむしゃらに走っていた、そんな下らない夢を。


 ―――――おかあさん。おかあさん。おかあさん。


 あいたいよ。どこなの。どこにいるの。

 アニ、いい子にしてるよ。だから、逢いたいよ。

 なでなでして欲しいの。今日もきらいなかくとうじゅつのおけいこを、がんばったの。

 いっしょうけんめい、がんばったの。いっぱいいっぱい、おとうさんには、ほめてもらったの。

 だから、ほめてよ…………おかあさんも、ほめて。

 おかあさん、どこ、どこ………。


 走りつかれて、後はただ座り込んで泣き喚いていた。

 そんな、下らない夢だ。

 だけど、ああ、だけど、今は――――。


カルラ「アニ、どうしたの? 何が悲しいの? 大丈夫よ………お母さんはここにいる。カルラ・イェーガーは、貴女のお母さんは、ここにもいるわ」


 優しげな手つきで、しゃくりあげるアニの背を撫でる手がある。

 もう片方の手で、アニの柔らかい金髪を撫で梳いてくれる手がある。

 エレンの次に欲しかったものが、そこにあった。


アニ「いい、の? 私、私、お母さん、いなくて………顔も、声も知らないのに」

カルラ「ええ、もちろん」

アニ「きょ、今日、あった、ばかりなのに………こ、こん、こんな」

カルラ「構わないわ」

アニ「ぅあ、ああ、あう、あ…………」


 もう、喉が痙攣して、言葉にならない。

 だけど、アニは最後に力を振り絞って、確かに言ったのだ。

………
……





          アニ「お母さん」 カルラ「はいはい」





……
………

………
……



エレン「ただいま…………って!?」

カルラ「あら、お帰りなさい、エレン」

アニ「…………おが、えり」


 帰ってきたエレンの眼前には、泣きじゃくるアニを抱きしめているカルラがいた。

 予想の斜め上を行く光景に、エレンの頭の中が一瞬真っ白になる。


エレン「か、母さん!! あれだけアニを虐めるなって――――!!」

アニ「ち、違う。違うの、エレン。カルラさんは………お母さんは、悪くないの」


 空白に滑り込んだ怒りの赤で、カルラを責めようとするエレンを、アニが慌てて止めた。

 どれだけ泣き喚いたのだろう。目元は真っ赤に腫れて、涙の跡が頬に残っている。


アニ「エレン………家を、私、私が、実家を、飛び出してきたときの気持ちを、思い出せた」

エレン「アニ………?」


アニ「わ、私は、私は、いつだって、自分で決めてきた。やるべきことを為すために、自分で決めてきたんだ」

アニ「だ、だけど、本当に欲しかったのは、違ったんだ。私が、本当に欲しかったのは、ただ、ただ………」


 己の思いを吐露しながら、アニはとめどなく涙を流し続ける目で、エレンをまっすぐに見た。


アニ「わ、私はただ、撫でてほしかったんだ。よしよしって、優しく、無条件に甘えられる何かが、欲しかったんだ………」


 言い切ると、再びカルラの胸の中で涙を流し続けた。

 いっぱいに泣き声を上げて、ただただ、その温かさを甘受した。

 泣き疲れて眠るまで、ずっと、ずっと―――――カルラの心地良い手の感触に溺れながら。



……
………


………
……



 眠りについたアニを、カルラの寝室にまで運び終えた後、エレンはカルラとリビングで向き合っていた。

 程なくして合流したミカサとアルミンもいる。


エレン「なぁ、母さん…………アニと何を話してたんだ? あいつがあんなに泣き喚くなんて、ホントに何言ったんだよ」

カルラ「ふふ、秘密よ。女の子同士の秘密のお話」

エレン「は? アニはともかく、母さんは女の子って歳かよ………」

カルラ「まあ、体つきは大きくなっても、相変わらず余計な口が減らないわね、この子は!」

エレン「いだだだだっ!? いはいいはい!! ほっへたつねららいでふれよ!!」

カルラ「ごめんなさいは?」

エレン「ごへんらさい、ごへんらさい!!」

カルラ「よろしい」


エレン「いてえ………」

アルミン「エレン。女性に年齢を聞いたり、指摘したりするのはエチケット違反だ」

ミカサ「エレンには昔からデリカシーというものが足りない」

エレン「ど、どっから出てきたんだよおまえら………なんだよ皆して………俺が悪者かよ。別にいいじゃねえか、親子なんだしさ」

カルラ「覚えておきなさい、エレン。いつだって女は若くいたいものよ? これでも若い時はモテたんだから」

アルミン「それ、判ります」

ミカサ「当然」

カルラ「あら、お世辞でも嬉しいわ。ありがとう」

エレン「ふーん…………あ、でさ。アニと結婚する話だけど………」


 言いかけるエレンの口に、カルラの指先がそっと触れ、続きを押し留める。


カルラ「ええ。OKよ。あんな可愛い子、こっちからお願いしたいくらいだわ」


 そう言って、エレンに微笑みかけた。

 アニに向けたのと同じ――――優しい、母の顔で。


 そして、三日後にグリシャを含めた結婚の挨拶を行い、恙なくアニはイェーガー家に受け入れられていった。

 カルラと並んで一緒に料理をしたり、洗濯に悪戦苦闘したり、買い物に行ったり。

 客の立場とは思えぬ働きぶりにエレンが止めようかとも思ったが、よくよく見れば、カルラを手伝うアニは、終始笑顔だった。

 あんなに幸せそうな顔で家事を手伝われたら、エレンとて止める訳にもいかなかった。

 そんな風に、滞在期間は過ぎてゆき―――――出立の日が、やってくる。


………
……


グリシャ「結婚式の日は、解散式の日なんだな?」

エレン「ああ。その日に、ライナーとサシャの結婚式があるんだ。合同で行わないかって誘われてる」

グリシャ「分かった。変更予定があるなら、手紙を入れなさい」

カルラ「今度はマメに連絡しなさいよ!」

エレン「了解。じゃあ、またな、親父、母さん」

グリシャ「ああ。行ってこい――――」

カルラ「行ってらっしゃい、エレン」


 馬に跨って手を振る息子に、グリシャとカルラもまた笑顔で手を振りかえした。

 アニもまた、手を振る。


アニ「お邪魔しました。また、結婚前には、ご挨拶に。手紙も必ず…………」

カルラ「違うでしょ、アニ」

アニ「え?」


 ぱちくりと目をしばたたかせるアニに、カルラは困ったように笑った。


カルラ「ここはもう、貴女の家でもあるのよ」

アニ「―――――!」


 はっとした表情で、アニはカルラを見つめる。

 カルラは、今度こそ優しく笑っていた。

 いつもの、優しい、アニの大好きな笑みで。

 だから、アニはこう言うのだ。



アニ「――――行ってきます、お母さん」

カルラ「ええ、行ってらっしゃい。アニ」



 いつまでも。これからも。




【アニ「お母さん」 カルラ「はいはい」】

     【完】

※というわけで、終わり。

 カルラさんとアニの仲良しSSが書きたかっただけなんですよ。

 イヤマジでそれだけだったんですよ。

※ほのぼのをー、書いてるとー、血が見たくなるー。

 血液の匂い染みついてー。


 む せ る 。


 疲れた。本当に疲れてる。昨日は一日寝て、今日はスーツ新調したりしてました。

 というわけで明日から(来週は仕事の都合がスサマジク微妙だけど)は血みどろスプラッタ誰得バッドエンドSS「レイシング」が開始ですよー。

 もう死にまくり。キャラが立ったら死ぬ。ヘルシング読んでる人は色々お察しで。

 ドリフターズを先に仕上げたいところなのですが、そっち仕上げちゃうと種付けも書かにゃならん。

 書きたいものが多すぎるー。


【おまけ~休暇初日の訓練兵団~】


 十日間の長期休暇が与えられ、訓練兵たちは各々の時間を過ごすことになった。

 内訳としては半々の割合で、兵舎で過ごす者と帰省する者に分かれた。

 続々と己が故郷へと帰省を始める訓練兵たちに、ライナーとサシャは「土産だ」と、牛肉の入った袋を手渡した。


ライナー「冬だから腐りはしないだろうが、早めに食えよ」

コニー「い、いいのか、ライナー?」

ライナー「もちろんだ。いつもお前らが手伝ってくれている御蔭で、ここまでたくさんの牛を育てることができた。これはそのささやかな礼と思ってくれ」

コニー「で、でも、これ………おれのだけ多くないか? どうして………」

ライナー「おい、声がデカい………内緒だぞ? おまえの家は大家族なんだろ? たまには親兄弟に………家族に贅沢させてやれ」


 優しく微笑み、コニーの背を軽く叩く。


コニー「…………ぅ、あ」

ライナー「おいおいコニー、泣くな」

コニー「ッ………ありがとな、ありがとな、ライナー………おれ、おれは………胸張って、故郷に帰るよ」

ライナー「調理方法も軽くメモしたヤツを中に入れておいたから、安心しろ。かーちゃん喜ばせるんだろ? うまいの作ってやれ」

コニー「ち、ちげえよ! そっちのこと心配してたわけじゃねえ!!」

ライナー「ははは。さておき、道中気を付けろよ。家族に元気な顔を見せてこい」


 そう言って豪快に笑うライナーが、コニーには酷く眩しく見えた。

 牛の解体作業に精肉、袋詰め、更には手書きのレシピまで添付する心配りを見せながらも、恩に着せるようなこともしない。

 恐らく徹夜で作業したのだろう。


 しかしコニーの視線の先では、そんな素振りすら見せずに、ライナーとサシャは帰郷する訓練兵一人一人に、次々と牛肉を手渡していく。

 途中で脱落する者が後を絶たない訓練兵団だが、それでも未だ二百余名もの訓練兵を抱えている。

 帰郷する者はその半数でも、百を下らない。

 ライナーとサシャの苦労を思えば、頭の下がる思いだった。


ライナー「兵舎に残って勉強する奴らにもな。休暇初日の今日と、休暇最終日には美味いもの食わせてやるよ」

サシャ「今日は焼肉ぱーちーですよ!!」


 その言葉に、兵舎に残る訓練兵たちからも歓声が上がった。

 日々切磋琢磨して過ごすライバル同士の彼らではあったが、ライナーとサシャには頭が上がらなかった。

 喧嘩が起こっても、二人が「メシ抜きにするぞ」と言うだけで収まった。


 愛する人を慈しみ、一生懸命に生きて、仲間から尊敬される、ライナーのような男になりたいと、そう思った。

 訓練場から足を踏み出す前に、コニーは一度振り返り、右手を心臓に打ち付ける敬礼の姿勢を取った。



 ―――――いつか、あんな男になってやる。



 決意の下に。

 真っ直ぐに、前を向いて。




【おまけ~完~】

※書き溜めていたおまけも投下しました。

 書いてる途中に、こういった雑念が色々湧いてしまったのも、遅れた原因の一つです。


 カルラと一緒にお風呂入るアニとか。

 カルラと一緒にお布団で寝るアニとか。

 カルラと一緒にお洋服選びするアニとか。



 最高じゃないか。

 でもテンポ悪くなるから泣く泣く削った。

※きーたーくー。うわー、ぎゃー、ぶおーぎゃー。

 仕事終わった。やっと終わった。

 とりあえず明日か明後日には投下開始します。もうちょっとお待ちください。


※3スレ目の>>11からの分岐となります。

 3スレ目:【安価SS】エレン「ジュマンジ……?」【3スレ目 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/internet/14562/storage/1372562255.html)

 『③【すべての巨人】が【吸血鬼】に!』
 が選択されていた場合のIFルートとなります。

 『HELLSING』をパロるのでフツーに何人も死にますが、原作通りには行かない人もいます。
 キャラ崩壊注意。一応キャラ崩壊には理由があります。


………
……


~845年 ウォール・マリア シガンシナ区~



~巨人襲来日~



エレン「ッ…………どうだ!? アルミン!!」

アルミン「あ、ああ、あ………だ、だめだ」

エレン「ッ………!?」

ミカサ「…………ッ、こ、これは」


 食い入るように覗き込んだ先、まるで目を疑うような文言が、ジュマンジの文字盤に浮かび上がった。


【全ての巨人は、人の血肉を糧とする吸血鬼だった】


アルミン「ッ…………な、に?」


【其は朝日に背を向け、夜闇を闊歩する存在であった】


ミカサ「何、何なの、これは………」


【其は銀、大蒜、流水、聖水、十字架、太陽、心臓に釘、聖書を嫌う、人類の敵である】


エレン「ふざけるな………ふざけるなよ、おい」

アルミン「こ、こんな…………こんなことがッ…………」

ミカサ「か、壁が、崩れて、いく」


 シガンシナ区の誰もが、その光景を目撃した。

 不意にひび割れ、連鎖的に崩れ落ちていく壁の様子を。

 土煙を上げて砕け散っていく壁の様子を。

 そして――――――。


エレン「ああっ!! 見ろ………人がッ………人がいるぞッ………!!」

ミカサ「エレン! アルミン! 何が、何が起こっている!? 壁から出てきた、人が………じょ、蒸気を上げて………あれは、灰!?」


エレン「あ、ぁ、あ…………ッ!? た、太陽の、光で、と、とけて、塵に…………」


 壁から出てきた者は―――――死せる定めであったかのように、太陽の光によって溶けていく。

 その様を、誰もが見ていた。

 その声を、誰もが聞いた。

 否が応にも耳元まで届く、耳をふさぎたくなるような絶叫。

 痛み、苦しみを訴える、断末魔の悲鳴だった。


アルミン「た、太陽が弱点なんだ………! 太陽の光で、死ぬんだ………!!」

ミカサ「ッ、待って!! 何人か、生きてる人もいる………!!」

エレン「ほ、本当か!?」

アルミン「ッ………!!」


 ミカサの指差した先、音を立てて崩れ落ちる壁の内側には、確かに未だに塵へと変じない、人の形を保った影が見える。

 極僅かな人数だ。壁となっていた巨人の総数を考えれば、1%にも満たぬ微々たる数だった。


 崩落した壁材に巻き込まれたのだろう。血みどろの姿でありながら、かろうじて生きている様子だった。

 少し安堵するエレンだったが、アルミンの顔色が今度こそ蒼白になる。


アルミン(ジュマンジに浮かび上がった文言が、正しければ、あれは人間ではなく―――――)


 彼の明晰な頭脳は、『吸血鬼』という聞くだに悍ましい単語の意味を考えていた。

 既に幾通りもの推測を立てていたが―――――その考えのどれもに共通するものがあった。

 すなわち、ジュマンジの文言にもあった『人類の敵』という言葉。

 そして、アルミンの予想は正しかった事は、すぐに証明された。


駐屯兵「お、おい!! 大丈夫か、おまえ!!」

???「う、う、ぅう、ううううう………」


 市民の大半は唖然とした表情で壁が崩れていくのを見つめており、そこから出てきた者たちを遠巻きに見ている者がほとんどだった。

 しかし、その民衆から抜け出して、声を掛ける物が一人いた。


駐屯兵「す、すぐに医者を呼んで…………がっ!?」

???「ガ、アアアア、GEEEERAAAAAAAAAAA!!!」


 駆け寄った駐屯兵の首元に、牙を突き立てる男の姿が、遠目にも見えた。

 首筋の動脈がそれで噛み切られたのか、噴水のように血液が噴き出した。

 そして、エレンは見た。

 駐屯兵の首に噛みつく男の喉元が、ごくりごくりと蠢くのを。


エレン「人を………人の、血を、飲んでる………!!」

ミカサ「これが、吸血鬼………」


 壮絶な光景を、エレンもアルミンも、そしてミカサも、唖然と見ているほかなかった。


エレン「ッ、なんでだ!? なんで、こんなことに…………俺は、俺は、こんなことは願ってないぞ!!!」

ミカサ「ッ、分かってる…………! だけど、現実にこれは起こっている!!」

エレン「『全ての巨人を人間に』と! 俺は確かにそう願った! 全ての巨人たちが、永遠に巨人化しないようになればいいって! 俺はちゃんと願ったぞ!!」


アルミン「君は壁なんか消えてしまえと願ったのかもしれない―――――こんな望みではなかったのかもしれない」

アルミン「けれど、これは悪魔のゲームだ。やっぱり、悪魔のゲームだった………悪魔にとって都合の良い展開になる様に、仕組まれているだけなのかもしれない」

アルミン「【前】の時に、僕らにゲームをクリアさせたのも、ただの気まぐれに過ぎないのかもしれない」

アルミン「『ジュマンジ』は、僕らが足掻いて、苦しむさまを見ていただけなのかもしれない。この展開を、予想して!」


エレン「ッ、そんな、ことが………!!」


アルミン「ホンのちっぽけな蜘蛛の糸を、希望の糸と勘違いした僕らを、嘲笑っていただけなのかもしれない」

アルミン「そして――――――『壁は消えて、巨人も消えて、彼らは全て吸血鬼となった』………」

アルミン「これが結果だ。結果はこれなんだ。西の空へ沈んだ夕日は、西から昇っては来ない」

アルミン「落ちた木の実は二度と枝へと還ることはない。誰だって知っていることだ」

エレン「何か………手はないのか、アルミン!!」


アルミン「ある…………と言いたいところなんだけど、ね」


 ちらりとアルミンが視線を向けた先には、件のゲーム・ジュマンジのボードがある。

 しかし、文字盤が輝き、新たな文字が浮かび上がった。


アルミン「しかも、駄目押しとばかりに、ハハ…………なんだよ、この文は。ふざけてるのか?」

エレン「ッ、こ、これは………」

ミカサ「ジュマンジから、また文字が………!!」



【―――なお、当『希望のゲーム』ジュマンジのクリア如何に関わらず、この現象に変更はない】


【彼らについての弱点について纏めた資料及び武装を一式寄贈する】


【それではゲームスタート―――――吸血鬼の夜へようこそ】



エレン「ッ、ジュ、ジュマンジが、き、消えて………!?」

ミカサ「こ、こんなことが………!!」


アルミン「ッ…………戦おう。エレン。戦うんだ。あいつらと。人類の敵と」

エレン「ッ、アルミン! 諦めろってのか!! やっと、やっとここまで来たのに!! 巨人を、人間に戻せると思ったのにッ!!」


 悲鳴のようなエレンの叫び声に、アルミンは黙って首を横に振った。


アルミン「違う。諦める諦めないっていう話じゃない。現実を見ろ、と言っているんだ」

エレン「ッ…………現実だと!?」

アルミン「そうだ。あれが現実だよ、エレン。見てご覧………」


 アルミンがついと視線を向けた先には、地獄が広まっていた。

 冗談のような光景に固まっていた民衆たちも、ようやく正気を取り戻したのだろう。

 我先にと、争うように逃げ出そうとしている。

 だが、逃げる方向は様々だ。

 今やもう、壁はなくなったが、シガンシナ区は突出区ということもあり、狭い面積の四方を壁で覆われていたことが災いした。

 壁があった場所とは、吸血鬼がいる場所なのだ。


 逃げ惑う彼らを、巨人の移動速度にも匹敵する速度で、吸血鬼たちが追いかける。

 当然のように彼らは掴まり、喰われる。

 ―――――人を、喰う。

 だが、それだけではなかった。


エレン「ッ、血を、血を吸われた人が………なんだ、あれは!!? う、動いてる!!」

ミカサ「他の人を、襲い始めた………!!」


 彼らは後に知る。

 非処女・非童貞である者が吸血鬼に血を吸われることで変じる化け物を。

 喰屍鬼(グール)と呼ばれる、化物(ミディアン)を。

 一度こうなってしまった人間を、元に戻す方法はないということを―――――。


アルミン「吸血鬼は巨人と何も変わらない。そうだ。何も変わらない。彼らは、僕らの敵だ。人類の敵だ!!」

ミカサ「アルミン………」


アルミン「僕らの手元には、ヤツらと戦うための手段がある! ジュマンジの置き土産だ! 僕らが戦わなくてどうする! これを、リヴァイ兵長たちに届けるのが、僕らの役目だ! 違うか!?」

エレン「ッ、だけど、けどっ…………!!」

アルミン「…………ミカサ。【赤】の信煙弾を上げてくれ」

ミカサ「ッ…………アルミン、それは」

エレン「まだだッ!!!! まだ、そうと決まったわけじゃないッ!!」

アルミン「ッ、駄目だ、エレン…………何よりも、もうジュマンジは消えた。ダイスも、残ってない。もう終わったんだ」


 叫び声が、聞こえる。

 お母さん、と泣き叫ぶ子供の声。

 死にたくない、と懇願する女の声。

 人が喰らわれ、人が死ぬ。

 悍ましい現実が、目の前に広がっている。


アルミン「共存の道は今、断たれた」


エレン「違うッ! 終わってないッ! 終わってなんかいない!!」

ミカサ「エレン、落ち着いて!!」


 目を血走らせて叫ぶエレンの顔は、あの日、シガンシナ区から避難する時と同じだった。

 駆逐してやると、高らかに宣言した時と、同じ瞳、同じ声音、同じ形相。

 だが、唯一違いがあるとすれば、それは――――。


エレン「ッ、い、いやだ………嫌だッ!! だって、だってあそこには、ライナーが………あ、アニがッ!!!」

ミカサ「ッ…………!!」


 尊敬する者と、愛する者の存在だろう。

 愛しい女との再会を待ちわびてきた五年間。

 それが、己のダイス一振りでふいにされたという事実。

 化け物になったかもしれない友人と彼女。

 塵になったかもしれない二人。

 それを思えば、必死になるのも当然のことだった。


 だからこそ―――――アルミン・アルレルトは、告げる。



アルミン「エレン………君は強い。とても強い。膂力が優れているというわけではないし、頭が働くという訳でもない」

アルミン「ただ心が強い――――リヴァイ兵長ですら、君の強さを認めていた」

アルミン「僕らは、君のその強さに賭けた。誰もが認めてくれた。僕ら三人が揃ってできなかったことなんて、唯の一つもありはしない」

アルミン「だから、認めるべきだ。僕らは、驕っていたんだと」

エレン「いやだ、いやだっ………巨人が全て吸血鬼になっちまったんなら、二人が………あの二人が………!!」

ミカサ「そん、な………」


 残酷な真実の言葉であろうと、親友であるエレン・イェーガーから憎まれることになろうとも、冷たい言葉を告げるのだ。


アルミン「そこで、ベルトルトの名前が出てこないということは、やっぱり、捨てきれなかったんだね。彼への恨みを」

エレン「ッ…………!!」

アルミン「血みどろに薄汚れた巨人なんかって思いが―――――よくも俺の母さんを殺したな、っていう思いや恨みが………無かったとは言わせない」

アルミン「きっと、その強い妄執のようにこびり付いた、君の嫌悪が――――ジュマンジに、この結末を現実化させたのかもしれない」


エレン「ぁ、あ、あ……………」


 エレンが膝をつく。


アルミン「けど、その思いを、誰が責められるっていうんだ? ………誰も、君を責めたりなんかしない」

アルミン「お母さんを巨人に殺された君が、どうして、憎まずにいられるだろう。僕だってそうだ。おじいちゃんや両親が口減らしにされた時、奴らをどれだけ憎く思ったか分からない」

ミカサ「…………アルミン」

アルミン「何よりも、人を憎んだ。体のいい口減らしのために、父を、母を、祖父を、巨人の餌にした王政府を」

アルミン「巨人が憎い。王政府が憎い。人間が憎い。僕はそう思っている。ミカサだって、その気持ちがないとは言えないはずだよ」

ミカサ「……………この世界は」

アルミン「ああそうだ――――残酷だよ。だけど、美しいものもある。僕にとっては、エレン、君だ」

エレン「ッ…………!!」

アルミン「その憎しみを、その思いを殺せるとしたら、君だけしかいないって、誰もがそう信じていた」

アルミン「誰よりも巨人を憎んで、誰よりも巨人を………アニを愛してしまった君だから、出来るって」


アルミン「今でも、その気持ちは変わらない。僕もミカサも、君を信じてる」


アルミン「だから、だから立って…………立てよ、エレン!」

エレン「ッ………!!」

アルミン「僕らには責任がある! 善意のつもりだろうとも、結果的に人類に危険を招いた償いを取らなければならないんだ!!」

ミカサ「アルミン…………!!」

アルミン「僕らにしかできないことだ! 僕らがやらねばならないことだ! 君は言ったな! この世から巨人を、一匹残らず駆逐すると!!」


 【前の時】から数えて十年近い時が流れた今でも、アルミンの記憶の中で鮮明に輝いている。

 超大型巨人の襲来によって壁が崩れ、先に避難していたアルミンと、エレンらが合流した後に、ミカサから伝え聞いた言葉だ。

 ――――エレンは、巨人を駆逐しようとしている、と。

 母であるカルラを目の前で食われてなお、決して揺るがず朽ちぬ強い意志。

 エレン・イェーガーという怪物の不屈の精神、その輝きを見た。

 その強さに、いつだってアルミンは憧れた。自分もこうでありたい、と。彼の友人に恥じぬ自分でありたい、と。

 そんなエレンがそばにいたからこそ、アルミンもまたジュマンジという地獄を、乗り越えられたのだ。


アルミン「戦うんだ!! 立て!! 立って戦え!! エレン・イェーガー!! 僕の親友は、こんなところで終わる男じゃないはずだ!!」

エレン「―――――!」


 エレンの瞳に、力が戻った。

 ふらつく足でゆっくりと立ち上がる。


エレン「…………どうすればいい。俺はどうすればいい、アルミン。どうやって戦う。指示をくれ」

ミカサ「エレン………!」

アルミン「それでこそ、君だ。ジュマンジから出てきた武装を、まず確認してみよう」


 ジュマンジが消えた場所には、大小様々な武装が、うず高く積み上がっていた。


エレン「………これで、あれと戦えって言うのか?」

ミカサ「これは…………本と、剣と…………これは、ブレード?」

アルミン「聖水、銃剣(バイヨネット)の精錬方法と使い方………銀の十字架………吸血鬼の生態に………」

ミカサ「アルミン、何を………何を読んでいるの? その本、どこから………!!」

アルミン「聖書による『転移術』に『結界術』………回復法術………自己再生能力(リジェネレーション)……違う、これも、違う!!」

エレン「あ、アルミン、なんだよ、その本は!!」

アルミン「ジュマンジから出てきた。この本には、化物(フリークス)殲滅のための………技術や、彼らに関する知識が乗っている」


エレン「これは………なんだこれ、ニホントウ? 銃剣ってのもあるのか?」

ミカサ「銃、なの? こんな、小型の………」

アルミン「それには、銀の銃弾が詰まっているらしい!! 馬鹿正直にも、使い方から性能まで記載されたカタログスペック付きでね!」

エレン「じゃあ、その本には………」

アルミン「ああ! あの吸血鬼に関しての知識や、それへの対処法、戦闘方法まで、詳しく乗ってる!!」

アルミン「礼装に、銃剣の投擲術………ッ!! あった!! これだ!! 『吸血鬼の起源』!!」

ミカサ「それが分かれば、対処できる?」

アルミン「そう願いたいけどね………とにかく、ここにいたらまずい! まずは、建物に入ろう。吸血鬼と鉢合わせたら、今の僕らじゃ返り討ちだ」

アルミン「僕は何か有効な手立てがないか、本を読んで探してみる………エレンは武器の使い方を調べて」

エレン「分かった………」

アルミン「ミカサ、【赤】の信煙弾を………まずはリヴァイ兵長に作戦失敗の連絡をして、君もそれから武器を見てくれ」

ミカサ「…………分かった」


 エレンは武器を手に、ミカサは【赤】の信煙弾を空へと向けながら、建物へと向かっていく。

 本を抱えて二人の背を追いながら、アルミンは思う。

 巨人なんてものは元々この世からいなかったことにされた。

 人類の敵は巨人ではなく、吸血鬼。

 そういうことに『なった』。


アルミン(僕たちは…………負けたんだ)


 バシュッという、引き金を引く音が聞こえた。

 どこまでも澄み渡った青い空に、緋色の煙の帯が伸びていく。

 この日、人類は思い知った。

 エレン・イェーガーは思い知った。


 ―――――あまりにも矮小でちっぽけな、己自身の『力』というものを。

………
……





 そして――――十年の月日が流れた。





……
………

※今夜はここまで。

 とても疲れた。今月は残業地獄で更新ペースが牛歩です。

 そしてこの番外編も地獄です。

 救い? ねえよ。

 そういうのに耐性無い方はご注意を。

※祝日とはなんだったのか。

 ものすごくゆっくりペースになりそうです……。

※大丈夫じゃない。問題だ。今帰ったからな。

 だが来週の土日は普通に休めるので、そこからは通常運行できそうです。

 生暖かい目で見ていて下さると嬉しいです。

※先にエレン「ドリフターズ?」の方を書いてます。

 ところで十月はヒマになると言ったな。

 あれは(ウチの会社の部長の)ウソだ。

 畜生、畜生、畜生。うへへ、畜生。

>>1さんにひとつ質問です。
まったく関係ないことですみません。
最初のジュマンジ本編にてユミルは巨人化能力を持っているということですが
魂はユミルでも体はあの「女の子」なんですよね?だとしたら巨人化能力はどこ
からきたのかなぁって少し気になったんです。
なんか見落としてたらすみません。

>>234
>>1じゃねーけど、ユミルが巨人化能力の開発者って設定だから、また作ったとかじゃね?
またはユミルは先天的な巨人化能力者とかで、それをキッカケに研究はじめたとかの裏設定?
もしくはジュマンジのオマケ特典?

思いつく限りじゃこんなもんだな
ヒマな時に教えて>>1さん

>>234
 ジュマンジ本編での設定では、>>235の仰る通り、ジュマンジのオマケ特典です。
 女の子に転生したのちに付与されたという、しょーもない理由です。ご勘弁を。
 では会社行ってきます。

※安西先生………休みが欲s………SSが書きたいです

 今度こそ休めるよ! 三連休だよ!

 明日は帰って来てからゆっくり書けるよ! やったねタエちゃん!

 また部長がウソついたらライナーの肛門にカラーコーンを ぶ ち こ む 。

 ベルトルト、おまえの尿道にはシャープペンシル(H)を入れて へ し 折 る 。


………
……



 十年前の話をしよう。


 ―――――世界は変わった。

 一部の権力者が税を搾取し、享楽と快楽に染まる時代は幕を下ろした。

 かつて鳥籠の中に捕らわれていた人類は、その檻から解放された。

 今や自由だ。誰も彼もが世界を知った。


 吸血鬼という名の化け物を知った。


 巨人を遥かに上回る恐ろしい存在。壁の恩恵など何ら意味を持たぬ、忌まわしき夜の眷属(ミディアン)を。

 崩れた壁の中から顕れた彼らの大半は日光によって消滅した。

 しかし、日光に耐性を持った吸血鬼―――通称『ヴェアヴォルフ』は、その絶対数こそ少ないものの、あっさりと人類を未曾有の危機へと陥らせた。


 彼らは人を襲い、人を喰らい、仲間を増やす。

 非童貞・非処女は喰屍鬼(グール)に。

 童貞・処女は自由意志を持つ吸血鬼(ドラクル)、女吸血鬼(ドラキュリーナ)に。

 死人が歩き、死人が戦列を組む悪夢のような光景が、世界を蹂躙した。

 そこには奇跡などない。ただあるのは絶望のみ。

 誰もが己を木漏れ日の下で生まれた豚にすぎないことを思い知る。

 吸血鬼の力は強大だった。

 むき出しになった本能が支配する暴力の世に、裕福層の持ちうる財など無価値であることを知らしめた。

 神を呪って死ねる者は、まだ幸せであっただろう。


 ――――神など、この世のどこにも存在しないのだから。


 より豊かな財を持つ者が住まうウォール・シーナは、他の壁内の区域とは異なり、その面積が他に比すれば小さいことが裏目に出た。

 皮肉なことに、王族や王侯貴族といった、それまで最も安全と思われていた内地に住まう者が、真っ先に吸血鬼に食い殺された。

 王は倒れ、逃げ出した貴族の大半も吸血鬼の餌食となり、内地は大混乱に陥った。


 百年の安寧は、人類の野性を退化させていたのだろう。

 その日に備えて訓練を怠らなかった調査兵団を除いた、憲兵団・駐屯兵団の兵士の多くも、その責務を果たせずに散っていった。

 壁内は無政府状態となり、秩序は消え去り、仮初の平和は泡沫の如く消え去った。

 誰も彼もが、絶望に打ちひしがれ、このまま死を待つばかりと諦めた。

 このまま人類は、ただ滅びの時を待つばかり―――――そんな折、南のシガンシナ区に、三人の英雄が現れた。

 その強大な絶望に立ち向かおうとする者が、そこには残っていた。

 吸血鬼に対抗するための技術をどこからともなく持ち出し、シガンシナ区を救ったその英雄たちは、僅か十歳の少年少女たちだった。


 エレン・イェーガー、ミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルト。

 その三名は、吸血鬼から人類を救う『三英雄』として讃えられた。

 彼らの放つ白刃や弾丸は、ヴェアヴォルフの強靭な肉体を易々と切り裂き穿ち、その肉体を灰へと変じさせた。

 シガンシナ区の吸血鬼を皆殺しにした後、彼らは、若者たちに武器を与えて扇動し、王都を解放するために北上を開始した。

 吸血鬼殺しの異能を備えた彼らの持つ武器は強大無比にして、ヴェアヴォルフにも通用する唯一絶対の手段であった。


 その勢いたるや波濤の如し。瞬く間にウォール・ローゼ・トロスト区を奪還、その後も生き延びた人類の総力を以て北上を続け、遂にはウォール・シーナ内に巣食った吸血鬼たちを殲滅するに至る。

 僅か一月足らずの電撃戦であった。

 問題は、吸血鬼による王都の死都化以後のことであった。

 ヴェアヴォルフ達は数こそ少ないものの、並の吸血鬼以上の膂力や知性を有し、何よりも日光が効かぬその体質から、人の中に潜り潜むようになった。

 既に王政が崩壊した世である。憲兵団も機能しない状況は彼らに味方した。日中は人として生活を送り、夜は闇に隠れて人を喰らう。

 人々は、吸血鬼を畏れ、恐怖し、憎悪した。

 隣人が吸血鬼かもしれない、いつ己が襲われ、喰われ、死人(グール)となるやも知れぬ。

 その恐怖がいずれ爆発し、凶行へと至らせることは、目に見えていた。

 この問題に端を発し、三英雄を始め、生き延びた軍属の兵士たちや、一部の良識ある貴族は、より力在る秩序を世に布くために、新たに王を選定することを考えた。

 既存の王族並びに王侯貴族を廃し、新たな王族として祭り上げられたのは、ヒストリア・レイス。

 彼女を女王として、彼らはヒストリアの名の下に、吸血殺しのスペシャリスト集団を結成した。


 その特務機関の通称を――――『REISSING(レイシング)』といった。



……
………


………
……


~855年 元ウォール・マリア シガンシナ区~


子供A「くちくっ、くちくーーっ!!」

子供B「あーっ、このー、やったなぁー! くちくしてやるぅーーーっ!!」


 うららかな春の陽気に包まれたシガンシナ区の一角で、ポカポカという擬音が聞こえそうな微笑ましい殴り合いをする二人の子供がいた。

 ケンカの原因は些細なことである。

 その二人の様子を見ている人物が一人。

 大柄な体格である。漆黒のカソックに身を包んだその男性は、己の頬を引っ張り合って唸り声を上げる二人の子供に、ゆっくりと歩み寄った。


「こらこら、二人共……暴力はダメだ。お友達を駆逐しちゃダメだろう?」

子供A「ええーっ、でもぉ、こいつが先に」

「そんなことじゃ天国へは行けないぞ?」

子供B「うー………はい」


 ゆっくりと宥めすかすように、しかし有無を言わせぬ口調で語りかける男性に、あっという間に子供の稚気は収まっていく。

 その様子に、男性は満足そうに笑みを浮かべて頷き、続けてこう告げた。


エレン「いいか? 駆逐して良い相手は、吸血鬼(バ ケ モ ノ)どもと家畜どもだけだ」


 二人の子供は、彼――――エレン・イェーガーの笑みに宿った、狂気に気付くことはなかった。


子供A「はーい、イェーガー神父ー!」

子供B「わかりましたー!」


 そういって走り去っていく子供たちの背を見送り、エレンはゆっくりと振り返る。

 その視線の先には、新たに一人の男性が立っていた。


エレン「どうした、アルミン。変事(トラブル)か」

アルミン「ああ、それも火急だ。最近、内地で頻発している吸血鬼事件のことは知っているだろう」

エレン「――――ほう」


アルミン「ジャンとミカサからの報告によれば、既に三つの村が丸々吸血鬼の餌食になっている」

エレン「そうか」


 十年前のエレンならば、罪もない人々を襲ったその痛ましい事件に、義憤を抱いたことだろう。

 しかし、今や違う。


エレン「――――結構なことじゃあないか。内地の家畜どもがいっぱいいっぱい死んだんだろう?」


 虫けらを踏み潰している時の子供のような瞳で、エレンはそう言った。


アルミン「ああ。だが王立国教騎士団(レイシング)もそれなりに上手くやっているようだ」


 それに対し、アルミンもまた特別気にした風も無く、平然とした様子で話を続ける。


エレン「それで? あいつらが何をどうしようが、俺の知ったことではない」

アルミン「ああ。それが内地であればの話だ」

エレン「――――というと?」


アルミン「今度の事件が起きた地は、ウォール・ローゼ、トロスト区だ。今や正しくは元・トロスト区だがね。それも国境付近」

エレン「成程」

アルミン「レイシングが動き出している。我々が、『ヴァチカン』がそれを黙って見過ごすわけにはいかない」

エレン「まるで自領土と言わんばかりだな。誰があの土地を奪い返してやったと思っているのやら」

アルミン「その通りだ。あの土地は、我々ヴァチカンの土地だ。奴らレイシングのものではない。断じて」


 忌々しげに唇を噛み、虚空を睨み付けるアルミンの瞳にもまた、狂気が宿っていた。


アルミン「働いてもらうぞ、イェーガー神父。吸血鬼共は我々の獲物だ。奴らに先んじられるわけにはいかん」


 つまりは、出撃命令。

 エレンは口元を、笑みに似た歪な形に歪め、


エレン「――――もしも、レイシングの連中と衝突した際は?」


 発した問いに、法王庁(ヴァチカン)特務局第十三課『イスカリオテ』の局長として、アルミン・アルレルトは、苦笑交じりに告げる。


アルミン「――――我々は唯一絶対の神の地上代行者だ。あんな家畜共の挑戦から引いてやる道理がどこにある?」


 その解答に満足げに頷き、エレンはその表情に、より狂気の色を濃くした亀裂を走らせた。


エレン「If anyone does not love the Lord,Jesus Christ,let him be accursed.O Lord,come.Amen!(主たるイエス・キリストを愛さぬ彼らに呪いあれ。主よ、来たり給え。エイメン!)」


 十年前、ジュマンジの置き土産の中にあった『聖書』の一節を謳い上げ、エレンは身をひるがえす。

 目指すは元・トロスト区。

 その両手には、二振りの銃剣(バイヨネット)が握られていた。


アルミン「Amen」


 去りゆく背中に、アルミンもまた、そう告げた。




……
………

※うむ、若干スランプ。なんか久々でテンポが掴めぬ。

 じっくりやっていきます。

※1です。一時的にPC復活したので、書き溜めておいた別のSSを別スレに投下しました。

 今日のところはこれでご勘弁をば………ふへへ。

 ユミル「天使ー、天使クリスタはいらんかねー」 クリスタ「!?」
 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1382197944

※携帯から。
 御免なさい、無理でした
 明後日投下。なんかここんとこ踏んだり蹴ったり。


………
……



21歳の誕生日を迎えたサシャ・ブラウスが、自由意思を持つ女吸血鬼となったのは、ほんの数ヶ月前のことだ。


吸血鬼の脅威は、今も各地で頻発している。

今回、彼らにとっての標的となったのが、サシャの住まうダウパー村であった、というだけのことだった。

鎧袖一触。

哀れダウパー村は吸血鬼によって死の坩堝が渦巻く超グール村となったのである。

生存者はたまたま出稼ぎのために元・トロスト区へ向かったサシャの父と一部の同伴者3名を含めた、この四名のみだ。

そう、この四名のみだ。

この時点では、その生存者にサシャも含まれていない。

生存者が五人になるか四人になるかはサシャの奮闘次第であった。

狩人としての弓術で孤軍奮闘、グールの群れをさばいていたサシャであったが、親玉吸血鬼の登場によってあっさりと体の自由を奪われる。

哀れサシャもまた吸血鬼の餌食と成り果る、その瞬間にやってきたのが『彼』である。

王立国教騎士団≪レイシング≫の殺し屋。吸血鬼殺しのエキスパートたる『彼』だ。


これまた鎧袖一触。

超グール村と化したダウパー村は、『彼』という軍団一人によって殲滅され、残るは親玉吸血鬼と、それに人質に取られたサシャ、それと相対する『彼』のたったの三人。

少子高齢のあおりを受けた過疎化もブッ飛ぶほどの閑散っぷりに、もはやダウパー村は村としての体をなせなくなっていた。

この時点で吸血鬼は生存者にカウントされないので、実際のところ生存者はサシャ一名であるが、人質に取られている以上、それがゼロになる可能性はまだまだ高いと見えた。

親玉吸血鬼がサシャを羽交い絞めにして、『彼』に逃亡を見逃すことを要求する。

だが、今回派遣された吸血鬼殺しのエキスパートが、たまたまサシャの顔見知りであったが故に、状況は一変した。

『彼』は親玉吸血鬼のわめいている要求を半ば無視して、銃を構えながら、サシャに声をかけた。


???「おい、サシャ。おまえまだ処女だよな?」

サシャ「は?」

???「処女かと聞いてんだ。【戻って】から処女膜貫通される機会があったのかを聞いている。答えろ!!」

サシャ「なっ、ないです! わ、私、ぴっかぴかのーーーー」


 ガォン


 銃声が響いたのは一度、穿たれる肉は二つ。


 サシャの左肺を抜き、背後でサシャを押さえ込んでいた親玉吸血鬼の心臓を抉る。


???「おら、トドメ」


 彼我の距離を一瞬にして無とした『彼』は倒れ伏した親玉吸血鬼の心臓を抉りだして絶命させる。

 わずか数秒間のうちに行われた早業である。


???「で、だ。サシャ。左肺を抜いたが、大口径の銃だ。悪いがまず助からねえ。普通の方法ならな」

サシャ「ごふっ………ごぼっ………」

???「どうする?」

サシャ「―――――――」


 答えは、決まりきっていた。

 サシャ・ブラウスは、こちらの世界に【戻って】から、ずっと望んでいたことがある。

 そしてその望みは未だ叶わず、ここで死ねば永劫に叶わない。

 だから――――その諦めを、踏破するのならば。



………
……


 ――――かくして、ダウパー村吸血鬼事件は終息した。

 出稼ぎに出ていた四名のみ。

 村にいた村人たちの生存者は、ゼロである。



クリスタ「え? ぜ、ゼロ? で、でも、サシャ生きて――――」

???「死んでるんだなぁ、コレが」

サシャ「あ、あはは………お久しぶりですね、クリスタ………陛下??」ギランッ

クリスタ「ちょ、ちょっと、サシャ、それ………!!」


 サシャの笑みにゆがんだ口の端から覗く、八重歯にしても鋭く長すぎる『牙』。

 それが意味することは一つしかなく。


クリスタ「ユミルウウウウウウウウウウウウ!!! 生存者ゼロって、そういうこと!? なにサシャを吸血鬼にしちゃってるのよーーーー!!」

ユミル「ああ、しょうがねえだろう。そうでもしねえと死んでたんだから」

サシャ「え? ゆ、ユミル? こ、こちらの、渋いオジサマが、ユミ…………ええええええええええええええええええええ?!」

ユミル「なんだ。そういえばまだ自己紹介していなかったな」


 真紅のコートに縁取りの長い帽子。

 眼鏡の奥には怪しく恐ろしい吸血鬼の真紅の瞳が輝いている。

 そう、『彼』は、かつては『彼』であり、『彼女』となり、再び『彼』へと戻った、その人物の名は、



ユミル「王立国教騎士団≪レイシング≫が最強戦力、吸血鬼ユミル・アーカードとは、私のことだ」

クリスタ「はい。騎士団長兼、この国の女王のヒストリア・レイス。あ、サシャはクリスタって呼んでね?」

サシャ「は、はぁ。わ、私は、その、ご存じのとおり、サシャ・ブラウスです。狩人、です」

ユミル「うん。それ、今日で廃業な」


サシャ「ええ?」

クリスタ「うん。だって貴女、吸血鬼になっちゃったんだし。もう普通のお仕事なんて無理だよ?」

サシャ「ええええ?」

ユミル「とりあえずは私の下でバリバリやっていこうなー、はっはっはっはっは」

サシャ「えええええええええええええええ!!!!?」

クリスタ「あ、私は表向きだとクリスタ・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・レイシングって名前だから、騎士団で呼ぶときはクリスタでいいけど、それ以外の時は注意してねー?」

サシャ「あっさり言わないでくださいよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」


 かくして王立国教騎士団≪レイシング≫に新たな吸血鬼がメンバーとして参入した。

 そんな事件だった。

 ここまでが数ヶ月前の話。

 今回のトロスト区で起こった事件は、サシャにとってもデビュー戦となる対吸血鬼の戦いが待ち受けているハズだった。



……
………



………
……



 目的地のトロスト区南部の区画一帯を閉鎖し、後はグールを蹴散らしつつ、この状況を作り出した元凶たる吸血鬼を取っちめれば終わり。

 比較的シンプルなヤマのハズだったのだが。



エレン「いい夜だな―――――化け物ども」



 それはもう一つの吸血鬼殺しのプロフェッショナル集団、法王庁特務局第十三課特務機関≪ヴァチカン・イスカリオテ≫に所属する最強の戦力によって崩される。

 エレン・イェーガー神父の横槍により、全てが台無しにされようとしていた。




……
………

※今日はここまで。超短いのです。
 win8.1にアプデしてたら予想以上に時間かかった。
 PC買ってすぐはキツい。

>>1です
 >>1はB型インフルエンザだったよ……まだ熱が高いので投下できませんけど、これはチャンスだ。
 来週月曜までは会社に行かなくてもいいという現実!
 体調さえよくなれば……今週中にドリフを終わらせることも可能……!!

>>1です。
 やっとインフルエンザが治った。タミフルェ……。
 どうにもこうにも投下できずに本当に申し訳ない。
 保守してくださる方、本当にありがとうございます。
 来週末は休めそうなので、土日を利用して投下します。もうちょっとだけお待ちください<m(__)m>

>>1です。本日(もう昨日ですが)はドリフターズのほうを更新。

 明日(もう今日ですが)はこっちを投下します。お待たせしてます。

※うん、仕事だったんだぁ。(レイプ目)

 部長の嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき。

 もうアレだ、さすがにそろそろ投下せにゃマズイ。

 私はSS書いてるか自転車乗らないと頭がどうにかなってしまうのだ。

 書き溜め分だけで短いですが、投下します。


………
……



~元・ウォールローゼ・トロスト区 王立迎賓館~


 十年前の話をしよう。


 十年前の壁崩壊後、突如壁内から出現した吸血鬼に対し、人類は三英雄を筆頭に数年の時をかけて対抗した。

 結果的に吸血鬼たちをほぼ死滅させることに成功した。

 ほぼ、である。

 吸血鬼には弱点こそ多いものの、その厄介なところは、その特殊な『繁殖方法』にこそある。

 処女・童貞を同族に変え、非処女・非童貞は人の肉を漁るグールと化す。

 グールとなった存在はすでに自我が崩壊し、本能のままに人を襲う化け物である。これを皆殺しにするのは、むしろグールとなった者にとっても救いであったために、殺すことに否やはなかった。

 だが、問題は吸血鬼にされた人類の扱いである。これには民をはじめ、新王政の中でも意見が真っ二つに割れ、ヒストリアも頭を抱えた。

 一方で人類側の被害もまた甚大であった。家族を吸血鬼の餌食とされた者、戦いの中で果てたもの。その親族たちにとって吸血鬼は憎悪の対象である一方で、己の家族を吸血鬼にされた者にとっては、人類の敵と断言することはできなかった。

 何よりも、人を喰らい、生き血をすすることになんら躊躇を持たぬヴェアヴォルフとは違い、元々は人類であった彼らには、わずかながらも理性と、確かな人格がある。


 それこそが、ヒストリアにとっての頭痛の種でもあった。

 吸血鬼にさせられてしまった人類は少なくなく、年齢層も幅広い。なかには二、三歳程度の子供まで混ざっている。

 中には涙を流しながら、『吸血鬼になんてなりたくなかった、だけど、血が、血が飲みたい。助けて、助けて』と訴えるものがいた。

 これを人類の敵として皆殺しにするには、ヒストリアの良心が許さなかった。

 悩んだ末にヒストリアは人類に敵対する意思を見せない吸血鬼に関しては保護する法令を布告しようとした。

 その矢先、ある事件が起こる。


 『吸血鬼を全て殺すべきだ』と主張する者たちが、現れた。


 その筆頭こそが、後に王政府に反旗を翻すヴァチカンを設立する存在、アルミン・アルレルトである。


 彼のやり方は狡猾だった。三英雄としての名声を利用し、吸血鬼によって家族を殺された遺族たちの支持を得て、吸血鬼は神の敵であると、ヒストリアの意見に真正面から異を唱えたのである。

 ほかでもない三英雄の一人の意見に、ヒストリアも無視を決め込むことができなかったため、ヒストリアは会談の場を設けた――――それこそがアルミンの真の狙いであることも知らずに、だ。

 ヒストリアは決死の説得に当たるも、アルミンは頑として意見を曲げることはなかった。『後の千年の禍根を絶ち、新王政を絶対とするためには、吸血鬼はどのような例外も認めずに殺すべきだ』と、意見を主張した。

 その上で、残る三英雄の二人であるエレン・イェーガー、ミカサ・アッカーマンまでもが同調したことで議会は真っ二つに割れ、ヒストリアは、決断を迫られた。

 

 吸血鬼はどんなものであれ殺すべきか、殺さぬべきか。

 保護すべきか、絶滅するべきか。

 そして、ヒストリアは――――――短い人生の中で、最大の決断を下す。





……
………


………
……



 結局のところ、この会談は平行の一途を辿り、ヒストリアとアルミンはこの日を境に決裂した。

 ヒストリアは一部の吸血鬼の保護を行う法令を断行する。これがきっかけとなり、ヒストリアと三英雄は袂を分かつことになり、国は真っ二つに割れた。

 元ウォールローゼを国境線とする内側に現王政府、外にヴァチカンという二つの政権が誕生することになった。


 吸血鬼による被害を最小限に食い止めようとする王立国教騎士団・ヘルシングを有するヒストリア王政権と、

 異端殲滅を掲げ、全ての吸血鬼を皆殺しにすることを教義とする異端審問の特務機関・イスカリオテを有するヴァチカン。


 現在に至るまで、直接的な衝突こそなかったものの―――――今宵、そのかりそめの平穏は破られることとなる。



……
………


………
……



 話を戻そう。今回の事件は現王政府の一部の官僚が起こした不始末に端を発する。

 前体制の頃の悪習の名残とでも言うべき、地下街での人身売買は、現ヒストリア政権に移ってもなお、密かに、そして確実に続いていた。


 以前と比べて変わったことといえば、地下街で売りに出される『商品』のラインナップに『吸血鬼』が増えたことだろう。


 吸血鬼は恐ろしい存在だ。

 吸血鬼は力が強く、再生能力を持ち、人の血を吸い、仲間を増やし、グールを生み出す。

 しかし、その吸血鬼が子供であればどうだろう。

 力が強いといっても、鋼鉄の手枷足枷を破壊するほどの腕力は子供の吸血鬼にはない。

 何より―――――吸血鬼は年を取らない。

 定期的に牙を抜き、手枷足枷を嵌めて拘束しておけば、恐れるべき存在ではない。

 これ以上にコストパフォーマンスに優れた奴隷は存在しない。


 未だ利権や肉欲の味を忘れられぬ前王政府のダニにとって、吸血鬼とは売れ筋の『商品』であり、格好の『餌』だった。



 そこから後は、よくありそうな話だ。

 地下室に密かに監禁していた吸血鬼とひとしきり楽しんだ変態どもの一人が、うっかり牙を突き立てられてグールと化し、グールが他の変態を喰らい、グールが増え、グールは使用人を喰らう。

 グールが増え、グールを増やす。喜劇と悲劇の幕が上がる。残るのは哀れな土塊ばかりだ。

 そうしてネズミ算式に増えたグールの群れを率いた、哀れな吸血鬼の少女は、己を道具のように扱った人類に復讐を誓う。

 三流小説にありそうな、ありきたりなストーリー。

 王立迎賓館はホラーハウスと化し、次は外の世界へとその手を伸ばすだけ。

 夜の帳が下りれば、元トロスト区内を阿鼻叫喚の地獄絵図へと変えるだろう。

 しかし、そうは問屋が下ろさぬとばかりに、そこに駆け付けたのが件の王立国教騎士団―――――ヘルシングのユミル・アーカードと、新米女吸血鬼・サシャ・ブラウスであった。



……
………


………
……



サシャ「どぼじでごんなハメに゛な゛る゛の゛ぉ゛お゛おおお゛お゛おお゛お゛おお!?」


 迎賓館へ突入してから一時間弱の時間が経過した頃、サシャは二十一歳の女子がしてはいけない顔と叫び声を上げていた。

 顔面を様々な液体で汚しながら、サシャは襲い来るグールの群れから逃げ惑っているのである。


グールA「あー☆」

グールB「うー☆ うー☆」

グールC「がおー、たーべちゃーうーぞー♪」

サシャ「ひぎぃいいいいいいいいいいいいいい!!!?」


 さながらB級ホラーの演劇である。わらわらと緩慢な動きでサシャを喰らわんとグールの群れが列をなす。


サシャ「いやあああああああああああああこっちこないでぇえええええええええええええ!!!」


 手に持った銃の存在を忘れたかのように、泣き叫んで逃走するサシャであったが、


ユミル「何やってんだバカ、さっさと倒せ」

サシャ「ヴぇっ!?」


 グールの群れの向こう側から、いらだちを含んだ声が聞こえた。

 次の瞬間、サシャに今まさに掴み掛らんとしていたグールの脳天に、454カスールの弾頭がシャワーのように降り注ぐ。


ユミル「ったく、キリがねえな。グールどもめ」ジャカッ

サシャ「ギャーーーー! ユミルゥウウウ!! 助げでッ、助げでぐだざぁああああい!!」ヒィーーッ!!

ユミル「やかましいぞ、芋女。おまえが手に持ってるのはなんだ? さっさと撃て。グール来てるぞほら、そこまで来てる」

サシャ「う゛う゛う゛………せ、せやかて………いえ、そ、そうは言っても、わっ、わっ私っ!」

ユミル「いつまでも人間のつもりでいるな。そして相手を人間と思うな。つーかおまえ、ダウパー村ではグールぶっ殺してたんじゃねえのかよ」

サシャ「あの時は無我夢中だったんですよぉおおっ!!」


ユミル「なら今も『そう』なれ。奴らはすでにグールだ。人間だった彼らは、哀れにも吸血鬼の餌となり、その絞りかすとなってまだああして死に続けている」


 背後から迫っていたグールに視線すら向けず、銃を抜き放ちつつ、ユミルは残酷な真実を告げる。


ユミル「殺せ。もはやそいつらは人間ではないんだ。彼らは化け物になった。グールになったのだ。ぶち殺してやるのが慈悲ってもんだぜ、芋女」

サシャ「そっ、それは、そうですけど……」

ユミル「そしてお前もだ。お前ももはや人間ではない。吸血鬼の血を飲み、与えることの意味を理解しろ。お前はもう二度と、あの日を拝むことはできないのだから」

サシャ「―――――」


 サシャは一瞬目を伏せ、どこか悲しげな色を含んだ笑みを浮かべた。

 再び視線を上げたときには、まだ涙の跡が光ってはいるものの――――確かな意思を宿した眼光で、目の前のグールを睨みつけ、手の中のサブマシンガンの安全装置をがちりと外した。


ユミル「…………芋女。狙うなら確実に頭か心臓をぶち抜け。こいつらとて好き好んでグールになった訳ではない。一度こうなってしまった人間を元に戻す方法は無い――速やかに、ぶち殺してやるのがこいつらの為ってもんだ」

サシャ「りょ、りょりょりょ…………了解です」

※ごめんなさいごめんなさい、超中途半端ですが今宵はここまでです。

 既にBADEND臭がプンプンしてますね。

 マジでエレンは救われない話なので、苦手な人はそっ閉じした方がいいです。

 今度の更新は来週……になったらいいんじゃないな。うん。年末は地獄だぜ。

※仕事納め完了なのだわ。ついでに異動も決まったのだわ。

 今の住居からイケる距離。むしろ近くなったので良くってよ。

 明日は帰省でドタバタしてますので、明後日あたり投下するわ。

 エレン「ジュマンジ……?」はなんやかんやで半年続きましたネー。

 エレン「ドリフターズ?」は年内で終わるといいですネー。

 エレン「種付け?」の続編は、エレンが次々に女の子たちをズブリと犯す話なのだわ。プロット死んだのでダラダラ書き直し中。

 お待たせしています。

>>1です。蝶お待たせしました。

 来週からは暇になる予定。今度こそ……今度こそは……。

 書き溜めがないので、ゆっくり投下します。



サシャ「――――――すー………ふー」スーハー

ユミル「ほう?」


 殺意という漆黒で感情を塗りつぶして深呼吸を一つ、サシャは銃把を握りしめて駆け出した。

 ポニーテールをなびかせて駆け抜ける速度はさながら疾風。常人ならば十歩の距離を、わずかに一歩でゼロとする。


グール「アー………」ブンッ

サシャ「!」


 顔面に向かって突き出されたグールの腕を、首だけの動作で余裕をもって回避する。


サシャ(落ち着いて。敵は多い。ですがのろい)


 冷静になって見てみれば、グールの動きは緩慢だ。

 ましてや吸血鬼たるサシャの身体能力からすれば、殊更にのろく見える。


サシャ(何よりも――――ッ、体が軽い! 軽く駆け出しただけなのに、まるで立体機動装置を使ったときみたいな疾駆感! これならッ!)


 両掌に収まったハンドガンの冷たい感触を確かめるように、サシャはグリップを強く握りしめた。


サシャ(動きを止めずに走り続けて、すれ違いざまに狙って撃って、後は御終い)


 覚悟を決めて、狙いを定める。

 すれ違いざま、脳天に一発。

 祈りながら心臓にもう一発。

 引き金を弾き、彼らの死に、本当の終わりを与えていった。


ユミル(――――ほう、思っていたよりやる)


 次々とグールたちを動かぬ屍へと変えていくサシャの姿を前に、ユミルは静かに笑みを浮かべた。

 サシャはその身柄を王立国教騎士団(レイシング)で引き取られた後に、銃撃訓練を積んだとはいえ、実戦は今日が初だった。

 『なりたて』の吸血鬼は、急激に上がった身体能力に振り回されることがままあるものの、サシャはユミルの目から見ても及第点以上の動きを見せている。


ユミル(そうでなくては。わざわざ眷属にした意味がない)


 かつての同期だから、などといった感情で、ユミルはサシャを吸血鬼としたわけではない。

 サシャ・ブラウスという人間は死に、サシャ・ブラウスという一人の女吸血鬼へと生まれ変わらせた。

 そこにはユミルの打算があり、サシャの選択の結果があった。

 そもそも、ユミルはサシャを助けたつもりもない。

 吸血鬼の立場は、未だ人類の中では敵以外の何物でもないのだから。

 吸血鬼という存在そのものを忌み嫌う者が大多数を占めているといってもいい。

 事故や自死を選択しない限りは死に辛い吸血鬼という生き物に生まれ変わったことは、今の世では足枷以外の何物でもないのだから。


ユミル「―――――と。終わったか」


 思考の海から意識を引き上げたとき、ユミルの眼前は血風呂で満たされていた。

 廊下を埋め尽くすグールの群れは、一匹残らず無残な挽肉と化している。

 血のプールの中、荒く呼吸をするサシャ・ブラウスを除いて、物言わぬ肉塊が転がっているだけだった。


サシャ「はぁ………はぁ………はぁッ………!!」


ユミル「グールどもはもうほぼ全滅だろう。次は大本を叩くぞ。おそらく地下だ」

サシャ「は、は――――――――ぐ!?」


 返答を返そうとしたサシャの言葉が詰まる。


ユミル「サシャ? どうした。早くついてこ―――――――ッ!?」


 血風呂と化した廊下を先行するユミルが、遅れるサシャを呼びつけようと振り返った先には、


サシャ「ぐ、あっ………?! いっ、ぐ、はっ…………」

ユミル「!?」


 胸からいくつもの刃を生やし、血の塊を吐き出すサシャの姿があった。

 呆然とした表情で血にまみれた白刃を見下ろしながら、サシャは力なく膝をつき、血に染まる廊下に倒れ伏す。


ユミル「サシャ! ―――――ぬッ!?」


 駆け寄ろうとしたユミルの足を止めたのは、視界の端に移った白刃の煌めき。

 幾条もの閃光が薄暗い廊下の宵闇に線を引き、窓ガラスやドアに突き刺さる。

 ―――――それは、銃剣(バイヨネット)と呼ばれる短剣。

 その刃群の先端には例外なく、聖なる文言の記載された紙片が付帯されていた。


ユミル「チッ………結界か!」


 見覚えのありすぎる凶器の群れに、ユミルは露骨に舌打ちをする。

 ―――――この装備を用いる輩に、心当たりがあった。

 そしてその心当たりは、確実に正解しているという確信も。


 【―――――生と死の選択を己に課す命題として自ら問う】

 【されば嘲笑の歓喜する渦に喜劇の幕よいざ上がれ】


 そして朗々とした唄が、長い廊下に粛々と響きわたった。


【嵐の夜に吠え立てる犬は愚かな盗賊と果敢に戦う】

【温かい巣で親鳥を待つ雛は蛇の腹を寝床に安らぐ】

【木漏れ日の下で生まれた獅子は幾千の鹿を飽食し】

【せせらぎを聞く蛙の卵は子供が拾って踏みつぶす】


 ユミルの険しい視線の先、廊下の端から現れたのは、漆黒のカソックに身を包んだ男だ。


【生の意味を信じる物よ道化の真摯な詭弁を聞け】

【死の恐怖に震える者よ悪魔の仮面は黒塗りの鏡】

【生命に問いを向けるなら道化と悪魔は匙を持ち】

【生命を信じ耽溺するなら道化と悪魔は冠を脱ぐ】


 聖書ではなく、その両腕に銃剣を握りしめた大柄な神父。年の頃は二十代の半ばを過ぎた程度だろうか。

 その外見を裏切るように謳い上げるは、聖歌でも聖句でもなく、ただの呪言。

 生命の賛美を否定し、ただひたすらに世の残酷性を説く、禍々しき歌。


【獣よ踊れ野を馳せよ唄い騒いで猛り駆けめぐれ】

【いまや如何なる鎖も檻も汝の前には朽ちた土塊】


 殺意と悪意と害意を歌う。

 人の狂った本質を歌う。

 となった。



「我等は神の代理人。神罰の地上代行者。我らが使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること―――――Amen」



 十字架を示すがごとく武骨な剣を交差させ、笑みを浮かべる神父の男。

 窓から差し込む月明かりによって、露わとなったその神父の顔を、ユミルも、そしてサシャもまた知っていた。


サシャ「え、れん………? えれん、ですか………?」


 唖然、と。

 サシャは信じられない、といった表情でエレンを見上げ、茫然とつぶやいた。

※ごめんなさい、 【となった。】はスルーしてくだちい。どっからか入り込んだ誤りです。


………
……


~同トロスト区内・某所~


「へ、陛下ッ! ヒストリア女王陛下!!」

クリスタ「何事です、騒々しい」

「大変です!! トロスト区へ向かったレイシングに、ヴァチカンからの………イスカリオテからの介入がッ!!」

クリスタ「ッ………イスカリオテの派遣兵力は? 規模は?」


 イスカリオテ第十三課。

 壁崩壊後、王権から独立した異端審問局を含むヴァチカンの非公式特務実行部隊の総称。

 そしてヴァチカン最強の戦力であり、悪魔退治、異教弾圧、異端殲滅のプロフェッショナルの総称だ。

 そして現王政権と真正面から敵対する勢力でもある――――その介入ともあって、クリスタの語調が険を帯びる。


「派遣兵力はただ一人。三英雄の一人、『聖堂騎士(パラディン)』エレン・イェーガー神父です!!」


クリスタ「ッ………!! エレン、が」

 報告にきた兵士も、ヒストリア自身も、苦虫を噛み潰したような顔をする。

 よりにもよって、なのだ。

 エレン・イェーガー。

 誰もが知る、吸血鬼殺しの大英雄。

 そして多くの者は知る由もないが―――――ヒストリアにとっては、かつての戦友でもある。


「し、しかし、何故、ここに連中が? トロスト区は協定の緩衝地帯のこちら側、我々の土地だ。これは重大な協定違反です!」

クリスタ「問題は、協定違反だけではありません。ユミル達よ」

「は、はっ? それは、どういう―――――」

クリスタ「もし、彼らと十三課のエレン神父が鉢合わせになったらどうなります!? 絶対にまずい!」


 ヒストリアは部屋の隅に視線を向ける。

 控えていた執務官が、資料を片手に、エレン・イェーガーの情報を淡々と読み上げた。


「エレン・イェーガー神父。『聖堂騎士』、『殺し屋』、『銃剣』、『首斬判事』、『天使の塵』、『紅蓮の弓矢』、『吸血鬼殺し』。言わずと知れた、十年前の壁崩壊後に、人類を救済した『三英雄』の一人」

「出身地はシガンシナ区、分かっているのはこの数々の輝かしい経歴の他一つだけ」

「彼が―――――化物専門の戦闘屋であるという事です。我々にとって化物に対する切り札がユミル・アーカードである様に、彼もヴァチカン十三課の対化物の切り札であるという事です」

クリスタ「しかも、彼らの吸血鬼殺しの技術は、私たちの遥か先を行っている………当然です。もともと彼らが、エレンが、ミカサが、アルミンが、われわれに吸血鬼への抗い方を教えたのだから」

クリスタ「そしてその技術の全ては、我々には伝えられていません。彼らはより多くの吸血鬼殺しの叡智を備えています」


 いよいよ事態の深刻さを思い知ったのか、伝令の兵士は顔色を蒼くする。


「………すぐさま、増援を送りますか、ヒストリア陛下」

クリスタ「――――間に合わない。私が行きます」


 立ち上がり、デスクの引き出しから拳銃を取り出しつつ、ヒストリアは有無を言わせぬ口調で断言した。

 いかな相手がエレンとはいえ、やすやすと後れを取るユミルではないだろう。ヒストリアはユミルを信頼している。しかし――――。


クリスタ(エレン…………貴方に会って、聞きたいことがある。聞かなきゃならないことがあるの)


 身支度を整えた後、ヒストリアは部下数名を引き連れて、足早に部屋を後にする。

 ただ、ユミルとサシャの無事を祈りながら――――。



……
………


………
……


エレン「いい夜だな、化け物ども」

ユミル「エレン………エレン・イェーガー………!!」

サシャ「え、エレ、ン………? あ、ぐっ、ごふっ………」

エレン「…………ずいぶんと可愛らしい声で鳴くじゃあないか。だがその程度じゃあお前らは死ねねえよ。久しぶりの吸血鬼狩りだ。楽しませてもらわねば」


 何かを話そうとして、血を吐き出すサシャに対し一瞥もくれず、エレンはユミルを睨みつける。

 ユミルは右手の拳銃を握りしめて、苦笑を一つ、


ユミル「よう。元気だったか、死に急ぎ野郎」

エレン「気安く話しかけるな、王政の犬」

ユミル「久しぶりだってのに、ずいぶんとご挨拶じゃあねえか」

エレン「化け物と仲よく会話をする趣味も信仰も持っていない」

ユミル「そうかい………それよりおまえ――――今、下から上がってきたな」


サシャ「―――――!」


 ハッとしたように、サシャの両目が見開いた。

 階下から上がってきたということは。

 地下室に、いたということ。

 そして、そこには―――――。


ユミル「いただろう、吸血鬼が―――――吸血鬼の、少女は………子供はどうした」

エレン「子供? ああ、それなら―――――」





エレン「―――――こいつのことか?」



 エレンが背中に手を回し、そして床に何かを転がした。

 エレンが背中に手を回し、そして床に何かを転がした。

 ユミルとサシャは転がってくる『何か』を胡乱げに見つめ、そして、


サシャ「ッ―――――――あ、あ、ああ、あああ………」


 それが、なんであるかを、悟った。


ユミル「…………ッ!!」


 それは恐怖に染まった悲痛な表情の、物言わぬ少女の生首だった。よほどの地獄を見たのだろうか。見開かれた両目は世の全てに絶望したかのように濁りきっている。

 頬には涙の伝った跡がありありと残っていた。


ユミル「――――――殺したのか」


 歯を擦り合わせ、ユミルは絞るように言葉を紡いだ。

 憤怒の表情を隠そうともせず、殺意をみなぎらせるユミルに対して、エレンの態度は自若としたものだった。

 一瞬だけ、転がった少女の生首をふと眺めるように見やり、首をかしげるような動作をした後、再度ユミルへと瞳の向きを直す。


エレン「…………見ての通りだが? まるで造作もない…………楽しむ間もありはしなかった」


 食卓に並んだ料理の感想を述べているかのように、エレンは淡々と少女の殺害を自供した。

 ユミルが何かを口にしようとする前に、激昂したのは、サシャだった。


サシャ「な、なんて、ことを………な、んて、ことをッ………!!」

エレン「うん?」


 エレンは初めてサシャの存在に気づいたかのように、再度首をかしげてサシャに視線を向けた。

 灼熱の如き怒りに染まった瞳でエレンを睨みつけながら、サシャは胸の激痛も忘れて叫び声を上げた。


サシャ「ぐぅっ………え、エレンッ!! その、その、吸血鬼の、こは、その子はッ………その子だって、ひ、被害者、で………!!」

エレン「被害者?」

サシャ「ぐ、くっ…………その子、はっ………!!」


 作戦の直前に、サシャは今回の『保護対象』である吸血鬼の少女についての情報を聞いていた。

 そう――――保護対象、だ。

 今回の吸血鬼の少女は、レイシングにとっての殲滅の対象ではなかったのだ。


………
……


 ――――少女の両親は善良な人間だった。


 共に内地の少しばかり裕福な家に生まれ、しっかりとした親にしっかりとした教育を受け、善良に育ち、出会い、幸せに結婚をして、子を――――少女を儲けた。

 その生活に亀裂が入ったのは、十年前の壁の崩壊後………彼らの住む町を襲った吸血鬼によって、少女が噛まれたことに端を発する。


 ――――少女の両親は善良な人間だった。


 哀れにも吸血鬼となってしまった少女の存在を、両親は地下室へ隠匿し、ひそかに養っていた。

 既に十五歳になっているはずの少女は、十年の歳月を経ても五歳児の容貌を保ったままであったが、その精神性は年齢相応に発達していた。

 地下室に軟禁された当初はどうして自分がこんな目に、と世を恨んだこともあった。

 しかし時が経つにつれ、己の立場を否が応でも思い知った。


 ――――少女の両親は善良な人間だった。


 吸血鬼。化け物。異端。人殺し。悪魔。世の吸血鬼の評価などそんなものだ。

 そんな己を心底愛し、養い、血を分け与えてくれる両親の存在は、少女にとって何物にも代えがたき宝物であることを知った。

 少女は、己の境遇を受け入れた。いずれ両親は死ぬことになるだろう。寿命か、事故か、あるいは他の要因で。

 その時が己もまた朽ちる時だと――――。

 それは悲観ではなく、むしろ少女はそれを嬉しく思った。

 こんな素晴らしい家族とともに暮らせる己は、世界一幸せな吸血鬼だと、心の底から信じた。


 ――――少女の両親は善良な人間だった。

 ――――ただ、絶望的なまでに、この世界は残酷だった。


 これはそれだけの話である。

 どこから嗅ぎ付けてきたのかは分からない。

 ある日のこと、少女が地下室で眠っていると、突然何かが覆いかぶさり、己を拘束した。


 何が何だか分からなかった。視界を塞がれ、両手両足に鉄の輪の冷たい感触が伝わってきて、身動き一つとれない。

 少しだけ漏れ聞こえてくる誰かの声。

 一瞬だけ浮遊感を感じ、自分が運ばれていることを悟った。

 その過程。布団でぐるぐる巻きにされていた少女の視界が、一瞬だけ開けた。その先に。

 血だまりに付す、愛すべき両親の変わり果てた姿があった。


「――――――、―――――――」


 そこから、少女の記憶はない。

 気が付けば、油まみれのでっぷりとした中年男が、己の股の間に腰を打ち付けているところにまで、記憶は飛んでいた。


 ――――少女の両親は善良だった。

 ――――故に少女もまた、善良に育っていた。


 ………ドウシテ。

 少女は聡明だった。己の身に何があったのかをすぐに理解し、現状を知った。失ったことを知る。

 ………ドウシテ。

 父はいない。母はいない。あの血だまりだ。もう生きてはいないだろう。奪われたことを知る。

 ………ドウシテ。 

 己を犯す中年男の一人が、余興と称して、あるものを少女に投げつけた。そして、知る。

 ………ナンデ。

 血にまみれた二つの球体に、見覚えがあった。

 ああ、これは。


 父と、母だ。


 醜悪な肉の塊が囀る。

 ――――お前の当面の食糧だ、と。

 ――――よかったな。これで家族全員集合だ、と。

 そう言って笑うのだ。

 ケラケラと。ゲラゲラと。

 白濁した汚液を、少女の最奥にぶちまけながら、楽しそうに。

 少女は悟ったのだ。

 かつて、他の誰かが悟ったことを、少女もまた理解した。


 ――――コノセカイハ、ザンコクナンダ。


 そして他の誰かとは違い、少女にはマフラーを巻いてくれる少年がいなかった。

 これはそれだけの話だった。

 寄る辺を失った。全てを失った。

 失うことから、憎悪は始まる。

 そして少女は、生まれて初めて吸血鬼となった。


………
……



サシャ「あの子は、何も悪くない………悪いことなんて、して、ないッ………!」


 その事情を知っているからこそ、サシャは憤っていた。

 両親を殺され、辱められ、残った憎悪の果てに凶行に走ったことを、誰が責められる?

 助けてやりたかった、とサシャは泣き叫んだ。

 あの子は、これから幸せになるべきだったんだと、必死の形相でエレンの行いを糾弾する。

 なぜ殺したのか、と。




エレン「成程、理解した」



 そして、エレンは、



エレン「――――――だから?」



 エレン・イェーガーは嗤った。

 嘲笑である。



サシャ「……………え」


 思考が凍り付く。

 最初は己の目を疑った。

 エレンが、笑っているように見えたからだ。


エレン「お仲間を殺されて怒り心頭か? 心配するな、すぐにお前らも地獄に送ってやる」


 続いて、耳を疑った。エレンが嬉しそうな声を出しているように聞こえたからだ。


エレン「害獣を殺しただけじゃあねえか。何を意味の分からないことを喚いているんだ?」


 そしてサシャは―――――目の前の存在を疑った。

 誰だ、これは。





 誰だ、これは。




 違う、とサシャは思った。


 信じたくない、とサシャは願った。



 こんな様になってしまったものが、エレン・イェーガーであるはずがないと――――――神に背を向けた吸血鬼たる身で、祈った。

※今宵はこんなところで終了です。

 はい、今のエレンはこんな感じです。

 もう書いてて辛いんよ。楽しいけどな。(ゲス顔)

 それと、改めて注意喚起。

 このSSには、萌えとか、燃えとか、ハッピーエンドとか、救いとか、そんなピンク色した生ぬるい成分は一切含まれておりません。

 エレアニが見たい、とか、ライサシャが見たい、とか、おいしいものを食べたり、友情を深めたりしてる進撃キャラが見たい人は、

 ジュマンジの1~4スレに戻るか、別のスレのSSを、読んでください。

 お、俺は悪くない。BADエンドだと事前に伝えたんだ! 俺は悪くねえ! 俺は悪くねえっ!!


【場つなぎ的おまけ小劇場】


マルコ「マルコとー」

ジャン「ジャンのー」
       かみだんこん
マルコ「人情紙男根ー」

ジャン「モブ・シーンのコーナー」

マルコ「エレン「ジュマンジ……?」 人気キャラクター コンテストーッ。投票結果 大発表ーッ!!」

ジャン「うわーい、やったーーッ。人気投票なんかやってねえけどやったーーーーッ」

マルコ「第1位ーッ、オレー。マルコ・ボットおにーさーん」

ジャン「わーッ、すごーい。やったーやったー。さすがはオレのしーんーゆーうー」

マルコ「第2位ーッ。マスター・ヨーダーッ」

ジャン「えーまじーー? ヨーダさんがーーッ!?」

マルコ「第3位ーッ。エレン・イェーガーッ!!」

ジャン「あらやだー主人公だわー。かっこいいですよねー。(これはウソ。ジャンはエレンのことが大嫌い。自分こそ主人公の地位にふさわしいと思っている)」


マルコ「第4位ー。ストライクフリーダムッガンダムー」

ジャン「かっこいいよねー。何気にこのSSにガンダム出てるのよねー。何人が覚えているかしらー」

マルコ「第5位ー。魔改造 キース・シャーディスー」

ジャン「かっこいいよねー」

マルコ「第6位ー。チーズハンバーグー」

ジャン「おいしいよねー」

マルコ「第7位ー。オッパイー」

ジャン「オッパイーン。オッパイーン。このSSのオッパイ枠はアニとサシャじゃよー。最近本誌の方でクリスタ巨乳疑惑が浮上したけれど、このSSだと貧乳じゃよー」

マルコ「第8位ー。マーラ・ハイラナイナー」

ジャン「デカーイ。説明不要ー。キャー、裂けるー。恥骨が割れるー」


マルコ「中略ー。第375位ー。ジャン・キルシュタインー」

ジャン「ああー!? なんでテメーが1位でオレが375位なんだコラ!! ブッ殺すぞこの野郎!!」

マルコ「うるせえだまれよゲス野郎」

ジャン「あぁ!? コラ! 黙れやこのカス野郎。テメーになんの権利があ」

マルコ「あぁ!? やんのかコラ? ああ!?」

ジャン「コロス!! こいつ絶対コロス!!」

マルコ「完」

ようやく追い付いた…
>>1よ…
ガンバ!エレアニ&エレン「種付け?」も期待してるぞ(ゲス顔

連投スマン

臨海兵団の続きが一番見たいな


何はともあれ、>>1、体には気を付けろよー
体調崩したら元も子もないからなー




…まず貴様ら(>>1のPC初期化した奴等)から血祭りに上げてやらァーッ!!


 サシャ・ブラウスにとって、エレン・イェーガーという人物への評価は高い。

 サシャがエレンという名を聞いて真っ先に浮かぶのが、『尊敬』の念だった。

 ジュマンジをクリアしてから十五年余りの歳月が経った今でも、その思いは変わらない。

 訓練兵として三年間を同じ学び舎で過ごす中、エレンは際立った才覚はないが、人の数倍努力して、少しずつ成績を伸ばしてきた。

 いつしか自分すら追い越して、成績上位五名に名を連ねるようになった時、サシャが抱いた感情は、嫉妬でも嫌悪でもなく、安堵だった。


 ――――あんなにも努力している人が、報われないのはおかしい、と。今考えれば呑気に、そう考えていた。


 恩恵には義務が必要だ、とはサシャの父の言葉だ。

 その言葉を受けて、サシャは常々考えた。

 才能しかり、財産しかり、権力しかり。

 元々そこにあるものを甘受するだけの人間に、報われる価値があるのだろうか。恩恵を受ける資格があるのだろうか?


 ――――分からない。だけど、努力した人は報われるべきだと思う。


 だからこそ、エレンのような『努力する人』は、いつだってサシャにとって尊敬に値する存在だった。

 小心者で、否定されることが怖くて、本当の自分を偽って生きる自分とは違う、と。


 そんなサシャにとって、エレンは強い人間だった。その強さは、クリスタにもユミルにも、サシャ自身にもないものだ。

 憲兵団に入っておいしいものを食べたいという動機で成績上位を目指している自分などとは、及ぶべくもない、と。

 エレンの、正しいことは正しい、悪いことは悪いと、はっきりと自分の考えを言葉にする意志の強さは、サシャにとって少し眩しいものだった。

 その眩しさは、【前】の世界で起こった出来事によって、確かな尊敬に変わったのだ。


 リヴァイが示し。

 アルミンが導き。

 ミカサが切り開き。

 エレンが押し進む。


 そして、自分たちがそれに続いた。

 自分たちが絶望に押しつぶされそうになっても、彼は前を見続けていた。

 そうしてあの悪魔のゲームをクリアしたことは、今でも鮮烈な記憶として、サシャの脳裏に焼き付いている。

 だから十年前に巨人が吸血鬼となり、人類を襲い始めた後、エレンらが英雄として名を馳せた時も、サシャはすんなり納得した。

 ――――ああ、あの三人ならば、と。

 そもそも彼らは、それほどのことを行ったのだ。報われるのが当然だ、と。


 これまでは義務に対し、あまりにも恩恵が少なかったのだからと――――サシャは彼らの出世を心から喜んだ。

 なのに。


サシャ「え、エレン………ッ、ごほっ、ごふっ」


 彼は今、子供を殺して嗤っている。

 たとえ吸血鬼だとしても、子供の姿をしたものの首を掻き取り、笑みを浮かべている。

 まるで、悪鬼のように楽しげに。

 それが、サシャにはどうしようもなく信じられなかった。

 サシャ・ブラウスが見たエレン・イェーガーは、そんな人間ではないはずなのだ。

 ………これではまるで、どちらが化け物か分からない。

 化け物たる身で、サシャはそう思った。


ユミル「喋るな、芋女。じっとしてろ、すぐにカタをつける」


 喀血するサシャに優しく、しかし確かな殺意を滲ませた声で、ユミルが前に出る。


 エレンもまた口元から笑みを消し、ゆっくりと歩みを進める。

 両者の距離は徐々に縮まり、交差し、互いに背を向けた位置で、止まった。


エレン「この館にいる化け物(ミディアン)は、もはや貴様らだけだ」

ユミル「そうかい―――――じゃあてめえを殺せば仕舞いだな、死に急ぎ!!」

エレン「ッシィイイイイイイイイイ!!」


 振り向きざま、全身を発条のようにしならせて、エレンが銃剣を投擲する。

 銃弾にも匹敵する速度で迫る凶器は、同じく振り向いていたユミルの喉にあっけなく突き刺さった。


ユミル(………速い。とんでもねえ身体能力………いや、これもジュマンジから得た、例の叡智ってヤツか)


 激痛で赤熱する思考で、ユミルは素直にエレンを称賛する。


ユミル(しかし―――――)


 並の吸血鬼ならば今の一撃でお陀仏だっただろう。

 だが、ユミルはその『並』をはるかに超越した吸血鬼だ。


 何事もなかったかのようにユミルは悠々と銃を構え、引き金を引く。


エレン「ッ!」

ユミル「じゃあな」


 ユミルの放った銃弾はエレンの額のど真ん中を撃ち抜く。

 撃たれたエレンの肉体は衝撃で宙を舞い、その体を壁にしたたかに撃ちつける。

 壁を血で染めたまま、エレンはぴくりとも動かない。確認するまでもなく、即死だ。


エレン「―――――」

ユミル「はン。夜に正面から不意も打たずに吸血鬼に戦いを仕掛けるとは、全く相も変わらずとんだ死に急ぎ野郎だな………フン、こんな形でボコボコにされた借りを返すことになるとは」


 一方のユミルは、喉に突き刺さった銃剣を無造作に引き抜き、微笑んでいる。

 互いに人間であれば両者相討ち。しかしこれは人類と吸血鬼の闘争だ。

 相討ちならば動かなくなるのは、エレンの方であるのは至極道理だった。


サシャ「ユ、ユミル!」

ユミル「喋るなサシャ。この剣、全て祝福儀礼を施されてやがる………これで斬られると私たち吸血鬼もなかなか傷を塞ぐ事が出来ん。今抜いてやる。動くな」


 ゆっくりとした足取りで、サシャの元に歩み寄り、ユミルは傷の具合を確かめるために膝を折った。


サシャ「! ユ……ユミ、ル……!!」

ユミル「喋るなと言っている」


 サシャの声に滲む焦りの色に気づけなかったことが、ユミルの失敗だった。


サシャ「違う! ユミルッ! 後ろです!」


 ユミルの背後には死んだ筈のエレン・イェーガーが立っていた。


エレン「シィイイイイイイイ………」

ユミル「何ぃぃっ!?」


 ユミルが振り向きざま銃を構えるが、それよりも早くエレンの銃剣は投擲されている。

 二振りの凶器がユミルの両手を貫き、体を壁に張り付けた。


ユミル(ばかな! 確実に脳天を撃ち抜いた! なぜ生きている! なぜ動けるッ!!)


 確かに銃弾はエレンの頭蓋を貫き、脳漿をグチャグチャに破壊したはずだった。

 だが、そのエレンの額の傷がみるみる塞がっていく。


エレン「――――――」シュゥウウウウウ

ユミル「!! 巨人の、再生能力………?! いや、それはまさか!!」

エレン「一緒にするな、化け物。我々ヴァチカンには、貴様らに伝えていない叡智は山ほど存在している」

ユミル「再生者(リジェネレーター)……!? 更に回復法術だと!? それもその叡智の一つってかッ!!」

エレン「そうだ! 俺たち人類が、貴様ら化け物どもと戦うために作り出した技術だ」


 鋼の声で答申し、エレンは左右の銃剣を左右に振る。

 鮮血が、舞った。


※左右の銃剣を左右に振るとか、いくら疲れててもこんな描写はねえだろJK。軽く鬱った………。

 

 ぼとり、と湿った音が倒れ伏すサシャの耳元で響く。

 ――――首だ。

 ユミルの、生首。


サシャ「あ、あッ………うわあああああああああああ!!」

エレン「は は ははハは ははは はハハははははは!!!!」

 絶叫するサシャをよそに、エレンはまた笑っていた。

 ケラケラと、ゲラゲラと。

 狂ったように。

 悪鬼のように。



……
………

………
……


~同刻・王立迎賓館前~


 そのエレンの哄笑は、迎賓館に到着していたヒストリアの耳にも届いていた。

 そしてエレンの笑い声が、何を意味するかを考えたとき、ヒストリアの脳裏に『最悪』の二文字が躍った。


クリスタ「………! 突入します。遅れずについてきなさい!」

護衛官A「はッ!」

護衛官B「了解!」


 逸る心を抑えつつ、しかし心なしか足早に、ヒストリアは迎賓館に向かって歩き出す。


クリスタ(――――どうか、無事でいて。ユミル、サシャ)



……
………


………
……



エレン「ハハハハハハハハハ! これが!? こんなモノが!? レイシングの切り札!?」


 エレンは心底馬鹿にするように、ユミルの死に様を嘲笑った。


エレン「まるでお話にならない。さて…………ん?」


 あまりの歯ごたえのなさに少しばかり物足りなさを覚えながらも、残った『もう一匹』を始末するべく廊下に視線を向ける。

 だが、そこには何もない。

 ユミルの生首が転がっているだけだった。


エレン「ふん、自ら銃剣を引き抜き逃げ出したか………あのダメージでまだ動けるとは。どうやら少し甘くみていたらしい」


 ――――そうでなくては。

 そう呟き、エレンは無造作にユミルの生首をつかみ上げ、血の跡の残る廊下をゆっくりと歩き出す。

 追撃が、始まった。


サシャ「はぁ………ぐっ、はぁ、はぁ………」


 胸の傷を抑えながら、サシャは必死に廊下を歩いていた。

 ――――何が何だか、分からない。

 ただ逃げねば、と、本能が警鐘に従い、体を動かしていた。


エレン「―――――どこへ行く? まだまだ、これからだぞ?」

サシャ「!?」


 エレンが放り投げた何かが、振り向いたサシャの腕の中に納まる。


サシャ「ッあ…………ゆ、ユミ、ル…………そんなッ………」


 未だ血が滴る、苦悶に歪めた表情のままに固まった、ユミルの生首だった。


エレン「どこにも逃げられはしない。Ashes to ashes, dust to dust(灰は灰に、塵は塵に)………チリにすぎないお前らはチリに帰れ、エイメン!」

サシャ「っひ―――――あ、あああああああああ!!!」


 逃げ惑うサシャを嬲るように、エレンは銃剣を、サシャがぎりぎりで回避できる絶妙な加減を以って投擲する。


エレン「はははははははっ、逃げろ逃げろ吸血鬼!はははははは!」

サシャ「あ、あああ、あぐ、あ………後、少し………あと、すこし、で………」


 息も絶え絶えに、サシャは出口の扉に手を伸ばす。

 だが、その手は衝撃によって弾かれる。


サシャ「えっ……あ………?」


 よくよく見れば、扉が淡い燐光を発している。

 扉に触れた手が、思い出したかのように強く傷んだ。


サシャ「な、に………こ、れ、どうなって………」

エレン「それが『結界』だ。お前たち夜の勢力共に それを突破する事は不可能だ。おとなしく皆殺しにされろ、『化物』め」

サシャ「そ、んな…………」


 呆けたように立ち尽くすサシャの絶望を煽るように、エレンがサシャを嘲笑う。


サシャ(ど、うすれば……こ、こんなの、どうしたらいいんです………?!)


 濁流の如く押し寄せる絶望の中、サシャは必死で考えた。

 どうすればこの状況を覆せる?

 どうすれば、どうすれば、どうすれば。

 考えれば考えるほど焦りだけが湧きあがり、思考がまとまらない。


サシャ(こッ、殺される………殺されるっ、殺されるっ、殺されるっ………死………)


 そんな思考に割り込むように―――――響く声があった。


ユミル(――――慌てふためいてる場合か、サシャ)

サシャ(え………?! ゆ、ユミル?!)


 まさか、とサシャが腕の中のユミルの生首を凝視すると、それは形状を失い、どろどろと崩れ落ちる。

 脳髄と血液が入り混じったそれは、意思持つかのごとくうごめき、床に文字を模り始めた。


ユミル(――――私の血を飲め、サシャ)


サシャ「え………?」

ユミル(そうすれば お前は使役される為の吸血鬼ではなくなる。本当の意味での吸血鬼(ヴァンパイア)となる)

サシャ「本当の、吸血鬼………?」

ユミル(自分の意志で血液を喰らい自分の力で夜を歩く不死の血族(ノーライフキング)に。私の血を飲め、サシャ! サシャ・ブラウス!!)

サシャ「―――――!」


 意を決してサシャが行動を起こそうとした瞬間、しかし一瞬早くエレンが動き出した。

 ―――サシャに、止めを刺すために。


エレン「終わりだ!!」

サシャ「ッ………!!」


 振りかぶった銃剣がサシャの脳天に叩き込まれるその寸前、その刃が甲高い音を響かせて砕け散った。


エレン「――――何ッ!?」


 その先には護衛二人を従えた、ヒストリアの構える銃があった。


クリスタ「何をしてくれているの、イェーガー神父………」

エレン「これはこれは、レイシング局長にして、女王陛下………ヒストリア・ファルブルケ・ウィンゲーツ・レイシング。女王閣下自らお出ましとは、せいの出るこった」

クリスタ「質問に答えなさい、イェーガー神父。これは重大な協定違反よ。ここは、トロスト区は、我々王政の管轄です! いくら貴方が英雄とて、こんな無理は通りません!」

エレン「無理? 何がだ? 化け物を殺すのに、どんな理由がいる? 協定違反? 知ったことか! 感謝されこそすれ、非難される謂れはない」


 悪びれもせず、エレンは必死の形相で銃口を向けるクリスタを笑う。


クリスタ「彼女は、王立国教騎士団(レイシング)の構成員です! 何より…………何よりッ………」

エレン「うん?」

クリスタ「ねえ、見忘れちゃったの? サシャだよ? サシャなんだよ………サシャは私たちの、仲間じゃない。友達じゃない。忘れちゃったの、エレン………」

エレン「仲間? 友人? 生憎だが、俺の仲間にも友人にも、化け物(クズ)はいない」

クリスタ「それを、言うの。貴方がッ………よりにもよって、貴方がッ………!」


エレン「俺が? なんだ? 言ってみろ」


 人を小馬鹿にしたような表情を崩さないエレンに対し、ヒストリアは、言葉を濁した。

 言うべきか、言わざるべきか。

 聞くべきか、聞かざるべきか。

 いつかは聞かなければならないことだとわかっていながら、先延ばしにし続けた事柄を。

 ヒストリアは、何かに耐えるように唇を噛みしめた。

 そこにどんな葛藤があったのか―――――しばしの沈黙の後、





クリスタ「貴方が言う化け物を………誰よりも最初に認めて、愛した貴方が………どうしてそれを言うの………?」





 その『禁句』を、口にした。


 エレンの笑みが崩れる。

 一瞬呆けたように。

 次の瞬間には、憤怒のそれに。

 煮えたぎったマグマの如き、烈火の感情で満たされた。

 だが、それもまた一瞬だった。

 ――――エレンの表情から、一切の色が抜け落ちた。


エレン「殺す」

クリスタ「ッ………!」


 呟くような声には、ぞっとするような冷たさがあった。


 危機感を覚えたクリスタの思考が目まぐるしく回転する。

 ――――やはり。言うべきでなかった。やはりこうなった。

 そんな後悔は後でもできる。


クリスタ「―――――とにかく、退きなさい。エレン・イェーガー神父。これ以上の交戦は、お互い望むものじゃないはず。十三課とて、それは」

エレン「退く? 退くだと!? 我々が? 我々神罰の地上代行イスカリオテの第13課が? 舐めるなよ売女(ベイベロン)」


 エレンが銃剣を握る両手に力を込めた。


エレン「薄汚い化け物を従える貴様ら王政に、我々が退くとでも思うかァアアアアアアアアアアア!!!!」


 絶叫し、銃剣を構えたエレンが疾走する。


護衛官A「ッ!! ひ、ヒストリア様、お下がりを!!」

護衛官B「こ、こいつ―――――ぐあっ!?」


 瞬く間に接近したエレンは、護衛二人を一太刀の元に切り捨て、ヒストリアに迫る。


クリスタ「ッく!」


 咄嗟にヒストリアも抜刀。間一髪でエレンの斬撃を受け止める。

 しかし膂力の差は圧倒的だった。拮抗する間もなく、小柄なヒストリアの体躯は壁際へと押し込まれていく。

 苦悶に喘ぎながらも、クリスタは見た。

 護衛官が放った銃弾の一発がエレンの太腿に食い込んでおり――――しかし、煙を上げてその傷が再生していく様を。


クリスタ「ッ………それは、生物工学の粋をこらした自己再生能力!? おまけに回復法術まで!」

エレン「はっ………お前ら、揃いも揃って弱すぎだ。話にならん。貴様ら自慢のユミル・アーカードも全く他愛なかった。首ィ落として、殺してやったぞ?」


 勝ち誇るように笑みを浮かべるエレンに、ヒストリアは一瞬だけ唖然とした表情を浮かべ、


クリスタ「―――――首を落とした? ………それだけ?」

エレン「………何?」


 すぐに安堵の笑みが浮かび上がった。

 訝しむように眉根を寄せたエレンだったが、その思考を一発の銃弾が寸断する。


 反射的にエレンは背後へと飛び退り、その凶弾を危なげなく回避した。


サシャ「ぐっ………クリスタから、離れてください、エレン!!」

エレン「チッ………サシャ・ブラウスか」

クリスタ「貴方に勝ち目は無いわ、イェーガー神父。大人しく手を引いた方が身の為よ」

エレン「ああ? ひ弱な雑魚に、死にかけた雑魚が加わった程度で、何ができる。今すぐまとめてお前らを―――――」

クリスタ「なら早くすることね。もたもたしてると、殺したはずの人が生き返っちゃうかも………」

エレン「なんだと?」


 クリスタの笑みを強がりやブラフの類と判断したエレンが、止めを刺すべく再びヒストリアに迫ろうと一歩を踏み出した。



 ―――――飲まなかったのか、馬鹿が。



エレン「ッ!? この、声は………うおおおおっ!?」


 廊下の最奥、首なしの死体が蠢いた。


 首を落とされ、亡者となったユミルの肉体が無数の蝙蝠となって、エレンへと襲い掛かる。


エレン「ッチィイイイ!! なんだッ、これは………!!」 

クリスタ「首を切った? 心臓を突いた? そこいらの吸血鬼と、ユミルを一緒にしないでよ」


 煩わしそうに蝙蝠を切り捨てていくエレンに、クリスタは静かに告げる。


クリスタ「そんなモノでは死なない! 貴方が対化物法技術の結晶であるように。ユミルはただの吸血鬼なんかじゃあない!」

エレン「なんだと!?」

クリスタ「忘れたの? 吸血鬼は、巨人が成り変わったもの。では、その巨人を創ったのは、いったい誰?」

エレン「―――――!」

クリスタ「彼は、【原初の巨人】」


 次第に蝙蝠が一か所へと集結し、凝縮し、圧縮され、人の形を縁取っていく。

 現れたのは始まりにして最強のアンデッド。

 吸血鬼ユミル・アーカード。


エレン「ッ………成程。十年前に、貴様の姿が壁内から消えたのは、そういう理由か」


 クリスタの言葉から、同時に【別の何か】を悟ったのか、エレンの表情に苦々しげなものが加わる。

 対するユミルは不敵な笑みを浮かべ、億劫げに首を鳴らす。


ユミル「はァ………やれやれ、久しぶりだぞ。【殺される】のは」

サシャ「ユッ、ユッ、ユミルぅ………!!」


 涙を浮かべて情けない声を上げるサシャを、微笑ましげに見やった後、ヒストリアはエレンへと視線を向け、


クリスタ「この十年間、巨人に代わって吸血鬼の脅威に晒された人類が、王政(われわれ)が、何の手段も講じていなかったと思われるのは、正直心外よ」

エレン「………成程。貴様は巨人化薬の、今となっては『吸血鬼化薬』とでも言うべき存在の、生みの親………つまりは、『吸血鬼化』の原理を知っているということ。研究を行っていたか」

ユミル「――――そういうこった。さて、どうする? 私としてはここでケリをつけることにやぶさかでもねえが?」

クリスタ「さあ、どうするの。イェーガー神父!」

エレン「…………今の装備では殺しきれんか」



 聖書の断片が宙を舞い、発光しながらエレンの周囲を旋回する。

 転移の法術だ。その姿が掻き消える寸前、エレンは呟いた。



エレン「――――次は皆殺しだ」



 負け惜しみとも取れる言葉を、ユミルもクリスタもそう受け取りはしなかった。

 ヴァチカンには、ありとあらゆる吸血鬼殺しの叡智がある。

 その全てをエレンが携えて今回訪れたと考えるのは、楽観に過ぎる。

 『次』は、必ずやユミルを殺す手段を携えての邂逅となるだろうことは明らかだった。

 ……いずれにせよ、危機は去った。

 そのことに安堵を覚えたためか、クリスタが膝から床に崩れ落ちる。


サシャ「クッ、クリスタ!? だ、大丈夫ですかッ!?」

クリスタ「あ、あはは…………腰が、抜けちゃった。怖い。すっごく怖かった………」

ユミル「無茶しやがる、まったく。それに傷ついた。私が負けるとでも思ったのか? いや、それ以前にだな、仮にも女王なんだぞおまえは。ノコノコ鉄火場に足を運ぶ女王がどこにいる。立場を考えろ、立場を」


クリスタ「ハイ、おっしゃる通りです……」

ユミル「やれやれ………にしても、だ。問題は山積みだな」

クリスタ「うん………協定違反による越境戦闘。機関員による戦闘行為。ヴァチカンに対する大変な貸しになる」

ユミル「ま、それは帰ってから考えようや。ほら、サシャ。立てるか…………サシャ? ほら、しっかりしろ」

サシャ「…………」

ユミル「やれやれ。腰の抜けた女を二人抱えて帰れってか? ホレ、一応は私の眷属なんだ。傷ももうそろそろ塞がっただろう――――」



サシャ「ユミル………あれは、彼は、本当にエレンなんですか」



 肩を貸そうと膝をついたユミルの耳元で、サシャはぽつりとつぶやいた。

 その呟きはヒストリアにも届いていたらしく、悲しげに眉をひそめた。


ユミル「…………ま、当然の疑問だわな」

サシャ「まるで、まるで別人です………何があったんですか。エレンに何が………」


 サシャの心中は、死にかけたことの恐怖以上に、喪失感で満ちていた。

 尊敬していた人がいなくなってしまった。

 そのことが、別の恐怖を呼び覚ます。

 自分の愛した『あの人』も、そうなってしまっているのではないかと。

 もう十五年も逢えていない、逢いたい、あの人も。

 変わってしまったのではないかと―――――サシャはその恐怖に、思わず涙がこぼれた。




サシャ「ら、ラッ、ライナーもッ……ライナーはっ、どご………どごでずがっ………わだ、わだじはっ………」




 ライナーに逢いたいです――――と、サシャは幼子のように床に蹲って、泣きじゃくった。


 その背を優しくさすりながら、ユミルが答える。
 

ユミル「…………いつまでもガキのままじゃいられねえ。そういうこった。そしてあの大馬鹿野郎は、あいつが一番なりたくなかった大人になった。なってしまった。それだけのことだ」

クリスタ「いずれ、サシャにも話すよ。エレンに、アルミンに、ミカサに、あの三人に何があったのか、必ず。今は休んで」

サシャ「は……い。はいっ………」


 そう言って、サシャは立ち上がった。

 ――――ライナーについての返答がなかったことには、あえて考えないようにしながら。

 サシャは、夜を歩く。




……
………

>>1です
もう一か月休みがないんですがね(^p^)
いつからウチの会社はブラック企業になったんだろうね(^p^)

とりあえず書き溜めないので、ゆっくり投下します(^p^)

P.S.
帰り道、路上にかりんとうが落ちてると思ったけれど、思い返すとあれはう○こだったのかもしれない(^p^)
どっちだろう(^p^)
そうだ、食べればわかる(^p^)

まだ落ちてるかなあ、ちょっと拾ってくる(^p^)

………
……



 元ウォールシーナ南部突出区・エルミハ区の郊外にある、ヒストリアの別荘で、その集まりはひっそりと行われていた。

 円卓会議。

 王政に、ひいてはヒストリア・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・レイシングに忠誠を誓う十二名の政財界の重要人物および貴族と軍人が集まる結社。

 表向きには存在しない組織である「レイシング」を支え、実質的に現王政圏を支配している。

 その十二名がヒストリアの招集に応じ、一堂に会した理由はほかでもない。

 ダウパー村を始め、ここ数ヶ月で爆発的に増加しつつある、吸血鬼による事件の原因究明のためだ。


ピクシス「ここ数ヶ月、吸血鬼による事件は増加の一途を辿っております。ようやく吸血鬼の脅威も沈静化し始めた矢先、一刻も早い解決を図らねばなりませぬ」

キース「そうですな………エルヴィン。捜査の方は? その後、何か進展はあったか」

エルヴィン「はい。今まで『レイシング』が撃破したヴァンパイア、およびグール。それらを徹底的に調査した結果、判明したのは以下の事実です。――――ハンジ、例の物を」

ハンジ「はっ!」


 円卓の末席に座していたエルヴィンの背後から、ハンジが小さな金属片に似た何かを手渡す。

キッツ「な、なんだね、それは」


 小指の先ほどもないそれを摘み上げながら、エルヴィンは静かに答えた。


エルヴィン「――――発信機です。ヴァンパイア達の体内数か所に埋め込まれ、その状態や行動、精神状態……そして戦闘結果。全てを調査し、何者かに報告していたと思われます」

キッツ「な、何ぃいっ!?」

エルヴィン「お静かに、キッツ将軍。この一連の事件は単なる自然発生的な吸血事件ではありません。明らかに後ろで誰かが操っている」

ハンジ「それともう一つ、グールです。本来グールは吸血鬼に血を吸われた非童貞、非処女がなってしまうモノですが、今回は違う。違いすぎる。今までの事件で被害者のうち、吸血鬼は一匹も増えなかった」

ヒストリア「ええ、その通り。明らかに処女・童貞と思われる少女や少年ですら残らずグールに! 更にグールとは、宿主である吸血鬼が死ぬと全て死滅するモノでした、が――――先日の事件、ヴァチカン神父エレン・イェーガーが吸血鬼をすでに倒していたにもかかわらず、我々が突入した時、中はグールで溢れていました。これほどの技術力を持つ存在となると、我々が知りうる限りでの黒幕は」

ピクシス「………ヴァチカン、ということになりますな。しかし、『そうは思っていない』とおっしゃりたいご様子。お主もそうだな、エルヴィン?」

エルヴィン「はい。間違いなく、彼らではありません」

キッツ「ばっ、バカなッ!! あいつらだ! あいつらだろう!? そんなっ、そんな叡智を持ちうる存在が、奴らのほかにありうるとでもいうのかあっ!!」


 キッツは机に拳を叩きつけ、口角を飛ばしながら喚き散らす。

 対するエルヴィンは平然と、どこか冷やかさすら感じさせる態度で、首を横に振る。


エルヴィン「これが未だ人類の多くが知らない『ジュマンジ』によってもたらされた技術であることは明白。だからこそ、そこが逆にきな臭い」

ピクシス「………何より、あの者たちが、紛いなりにも私たちと共にあったあの者たちが、一度は共に吸血鬼の脅威を立ち向かった、あの者たちが。どうしようもなく吸血鬼を憎み、恨み、国を割ってなお根絶を叫び続ける彼らが、斯様な真似をするのかね?」

キッツ「な、ならば、ならば、なぜ………誰がッ、いったい………」

キース「それを明らかにするための会議だ。エルヴィン、他に何を掴んだ。そいつらの情報は?」

エルヴィン「そこまではまだ。しかし、これは断言できます」


 一呼吸を置き、エルヴィンは力強く告げた。


エルヴィン「事件の裏で糸を操る「何か」は、吸血鬼・グールを知っている奴ということです。そして、「ジュマンジ」の叡智を知っている。「我々」のように。そして―――ヴァチカンのように」


 静寂に包まれる会議室内で、ヒストリアだけが下唇を強くかみしめていた。


ヒストリア「…………」


 何かを堪えるように。懺悔するように。



……
………


………
……



 一方その頃、30m下の地下階。


サシャ「リ……リヴァイ兵長……? なんですか……コレ」

リヴァイ「何って、見りゃわかんだろうが」


 執事然とした服装に身を包んだ小男―――――リヴァイは煙草に火をつけ、紫煙をくゆらせながら答えた。


リヴァイ「――――棺桶だ」

サシャ「だからなんでですかッ!? なんで? ナゼに、こげなモノが私の部屋にィッ?」

リヴァイ「ヒストリア陛下からの御用命だ。「やっぱ吸血鬼は棺桶で寝なきゃダメだよ!」だとよ」

サシャ「ベ……ベッドは? ふかふかもふもふのベッドは!?」

リヴァイ「着服した。なかなかいい寝心地だぞ」

サシャ「いや~~ッ!! へ、へぇちょぉおおおおおおおおおおお……」

リヴァイ「うるせえ。兵長って呼ぶな。とっくの昔に兵長なんぞ引退してんだ俺ァ」


サシャ「へ? い、引退ッ!? っていうか、兵長、そのお召し物は」

リヴァイ「兵長って呼ぶんじゃねえ………そんなもん、見りゃわかんだろ。ヒストリア陛下直属の執事だ。ガラじゃあねえが、案外性分にあっていたらしい」ケッ

サシャ(こんな口の悪い執事さんが、仮にも女王直属の執事でいていいんでしょうか………)

リヴァイ「それにな、その棺桶のことだが――――そいつはユミルからの用命でもある」

サシャ「え、ええッ!? ユミルの?」

リヴァイ「ああ。芋女、てめえは吸血鬼となってから、一度も血を飲んでいない。そうだな?」

サシャ「そ、それは………はい」

リヴァイ「だから、だ。せめててめえが生まれたダウパー村の地の土の棺桶で寝なければ、力が弱まる一方だ。だから棺桶だ。そのクソおもてえ棺桶運んだのは誰だと思ってやがる………ったく」

サシャ「そ、それはその、すいません……お手数をおかけしまして」

リヴァイ「……何故、血を飲まん? ジュマンジからもたらされたのは、通信技術や武器だけじゃあねえ。医療技術に関してもだ。この輸血用血液等なら、別に悪意もなく飲めるんじゃあねえのか?」


 そう言って、おもむろに懐から血液パックを取り出し、サシャの前に差し出した。

 サシャは無言のままうつむくばかりだ。


ユミル「半端者が」


サシャ「! ゆ、ユミル……!」

リヴァイ「っと………いきなり出てくるんじゃあねえよ。びっくりしただろうが」


 リヴァイの悪態には答えず、ユミルはリヴァイの手から血液パックをひったくるように掴むと、サシャの鼻先に突き付けた。


ユミル「血を飲むから吸血鬼だ。それが嫌なら、私に血など吸われなきゃあ良かったじゃあねえか。あの時死んでいればお前は「人間」として死ねたんだからよ」

サシャ「…………」

ユミル「わかってるさ。おまえにはおまえの事情があるってことぐらいはな。だが、おまえは夜を選んだ。いくらおまえがあの日の光を渇望しようとも、もはやお前の体を蝕む光でしかない」

サシャ「…………」

ユミル「――――――それでも、飲まないか。フン」


 その頑なさを理解したのか、ユミルは突き付けていた血液パックを懐にしまう。


ユミル「けどな。いいか、言っておくぞサシャ。一度朝日に背を向け夜を歩き始めた者に、日の光は二度と振り向きはしない!」

サシャ「……ッ」


 いよいよ泣き出す寸前の子供のように肩を震わし始めたころ、助け船を出すかのようにリヴァイが話に割り込んだ。


リヴァイ「それはそうとユミル。例の物、仕上がっているぞ。クソ眼鏡に作らせておいた」

ユミル「ほう、見せてくれ」

リヴァイ「今さっき届けてやろうと思ってたんだが………ああクソ、こいつもクソ重てえ」


 リヴァイは机にアタッシュケースを置き、面倒くさげに開いた。

 そこには黒光りする長身の銃があった。


ユミル「! はは……これは……」

リヴァイ「対化物戦闘用13ミリ拳銃「ジャッカル」。今までの454カスール改造弾使用ではなく、初の専用弾使用銃だ。全長39センチ、重量16キロ、装弾数6発。もはや人類では扱えない代物だ」


ユミル「専用弾は?」

リヴァイ「13ミリ炸裂徹鋼弾」

ユミル「弾殻は?」

リヴァイ「純銀製マケドニウム加工弾殻」

ユミル「装薬は?」

リヴァイ「マーベルス科学薬筒 NNA9」

ユミル「弾頭は? 炸薬式か? 水銀式か?」

リヴァイ「法儀式済み水銀弾頭だ。満足したか?」

ユミル「パーフェクトだ、リヴァイ」ニィイッ

リヴァイ「そいつは重畳」フッ

サシャ(なんでしょう、この茶番は………女の私には理解できそうにもない)


 男子たるもの、一度は刀剣や銃器にロマンを抱く生き物である。


ユミル「これならば、あの腐れ死に急ぎ野郎すらも倒しきれるだろう」

サシャ「へ、へー、ほっへぇー………凄いんですかソレ」

リヴァイ「っと、こっちも忘れていたな。ったく、歳ってのはイヤなもんだぜ………」


 言うと、リヴァイは部屋の片隅の壁に片掛けてあった、布に包まれた長大な物に手を掛ける。


リヴァイ「サシャ、てめえの武器も新調してある」

サシャ「え!? わ、私の武器ですかあ?!」

リヴァイ「ッああクソッ! こいつも重てえな! おいユミル、てめえも手伝いやがれ」

ユミル「へーへー仕方ねえなあ………よ、っと」


 ドズン、と底が抜けるのではないかという轟音とともに、それはサシャの目の前の床に、たたきつけられるように置かれた。


リヴァイ「30ミリ対化物用カノン「ハルコンネン」だ。弾は2種。劣化ウラン弾、及び爆裂徹鋼焼夷弾! 主力戦車を除く全ての地上・航空兵器を撃破可能………とマニュアルには書いてあるが、主力戦車やら航空兵器ってのは何のことだろうな?」

ユミル「細かいことはいい。なんにせよ素晴らしい。バカでかい! いいことだ。ロマンだな、サシャ。正直羨ましいぞ」

サシャ「へ、へ? な、なにが………」

リヴァイ「ああ、全くだ。男として生まれ落ちたからには、一度でいい。こんなバカでかい銃をブッ放してみてえもんだ。人間が撃ったら千切れ飛ぶが、おまえなら大丈夫だろう、吸血鬼だし」

サシャ「な……な……なんですかこりゃあああ!!」

リヴァイ「ロマンだ」

ユミル「ロマンだな。ロマンだから仕方ねえ」

サシャ「意味がわからないんですけどぉおおおおおおおおおおおおお!!?」


 サシャの絶叫は、地上に届けとばかりに響き渡ったが、その声にこたえる存在が現れることはなかった。



……
………

※うふふ、眠気がもうやばい(^p^)

 もうね、もっと気軽なSS書きたいよ。始めたのは私だけどね。

 エレン「巨人駆逐は進グルイなり」とか、アニ「壁内の連中がクレイジーすぎてライナーとベルトルトの精神がヤバい」とか、

 小野田「クレイジーハイケイデンスモンスターが本性を現したようです」とか、

 アニ「私はアニ・レオンハート。十歳。乙女なの」とか、アルミン「林間兵団?」とか

 俺は、俺はただ、SSが書きたいだけなんだ……皆に乙とか、つまんねとか、面白かったとか、ここをこうしたほうがいい、いやこっちがいいとか、そういうのでいいんだよ。

 どうしてこうなった。どうしてこうなった。

 と、豚足が、豚足が、夢に出てくるんだ(^p^)

 お、おぎゃあああああああああああああああああああああ。

 美人になあれッ……美人になあれッ………!! 払います、払いますから、この共和国の雌豚どもを整形、いな、成型して……。

 いやだ、いやだ大佐。戦争なんてしたくない……大佐、助けて……。

※種付けのことは今は考えさせないでくれぇうえへへへ(^p^)

 SAN値が下がるんだぁぁへはは(^p^)

 明日、明後日あたりはドリフターズに投下します。

 こっちの方は来週あたりかなあ。

 ところで有休とって投下じゃーっていう日にこのスレがいくえふめいになっていたので、むしゃくしゃしてこんなの書いてしまいました。

 よかったら読んでみてください。SAN値下がるかもしれないけど。

 エレン「俺が同期の女をレイプしてアヘ顔ダブルピースさせる話」
 エレン「俺が同期の女をレイプしてアヘ顔ダブルピースさせる話」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1394113020/l50)

もういっそのことレイジングを別のスレに移してはどうだろうか

あのニヤニヤしながら見てたジュマンジが恋しい…

※さあ、明日から中国だ。 >>1です。

 来週金曜夜には帰ってくる短期出張です。>>448の提案を読んで、かなり思うところがありまして、出張の間にアンケートを実施したいと思います。
 なお、ジュマンジの番外編はまだまだネタがあったりします。

 アルミン「林間兵団?」
 ⇒臨海兵団の続き。今度は山だ! 狩りだ! 熊だ! 鹿だ! 逃げろ、サシャとリョウリ=ニンたちが来るぞ!

 ジャン「おい、アルミン? 何作ってんだ?」 マルコ「それは、車輪かい?」 アルミン「自転車だよ」とか。
 ⇒座学・技巧においてトップクラスのアルミン。馬より遅いが生身より早い、そんな乗り物を友人たちの協力を経て開発。
  後にツール・ド・シガンシナ、ブエルタ・トロストなど、様々なロードレースが開催されるに至る。
  人を魅了してやまないその乗り物が、天才アルミンの手によって生み出されようとしていた。

 ライナー「料理で」 ベルトルト「最大の難敵」 サシャ「アニに勝ちます!」 料理人「ですの!」
 ⇒山奥組のタツジン=シェフクラスのチョウリ=ジツの始まりは、アニにあった!? 突如始まる料理対決。
  果たしてアニの料理の実力とは? 勝負の行方は如何に?! 

 というわけで、アンケです。

①レイシングをこのまま続ける。現実は非情である。
②ダイジェスト形式で要所要所ピックアップして終わらせる。
③レイシングはこのまま未完で終わらせて、ジュマンジの番外編を書いてもいいのよ?
 
 不思議と愛着がわいてしまったジュマンジシリーズ、そろそろ区切りをつけたく思っています。

 信じられないだろ………もうこのシリーズ10か月続いてるんだぜ………。

 では、よろしくお願いいたします。

>>1です
 こっちにジュマンジ番外編的なものを投下中です。アニがブッ壊れております
 アニ「私はアニ・レオンハート。10さい。乙女なの」
 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1397309606

 こっちもぼちぼち投下していきます。

※お久しぶり、>>1です。

 まず、レイシングは凍結扱いにします。

 ひとまず思いついた番外編とか投下していきます。

………
……


~849年 秋~

訓練兵団への入団から一年半が過ぎた。全訓練課程の半分が終わり、いよいよ折り返し。暑い夏を超え、やっと秋が訪れたころのお話。


エレン「秋真っ盛りだな」

アルミン「うん。食べ物がおいしい時期がやってきたね」

エレン「少し空っ風が染みるな。夏が終わった途端に冷え込んできやがった」

アルミン「うん。ちょっと物臭しちゃいそうになるね」

エレン「しかし、問題だな」チラリ

アルミン「うん。以前から問題視していたけれど、こいつは厄介だよ」チラリ


ミカサ「ヤツが………ヤツが来る………冬が近づいてきている。なんてこと………」ガタガタブルブル

アニ「寒い。いやだ。こんなところにいられるか。私は布団に引きこもるよ」ソソクサ


エレン「まさかこの二人がここまで寒さに弱いとは………」

アルミン「アニが寒がりってのは去年知ったけれど、ミカサはそこまでじゃなかったのに、どうして………」


ミカサ「さむい。ゆびがいたい。きんにくが、きんにくがちぢんでいく………しんからふるえてくる………おなかもすいた………わたしは、わたしはどこにかえればいいの? おしえて、エレン………」ガチガチガチ

アニ「!? え、エレン! アルミン!! ミカサが、ミカサが!!」

ミカサ「さむくなると、シバリングのたはつによってカロリーがよけいにしょうひされ、やがてカロリーぶそくとなったみかさは、いとあわれにもこおりづけとなってしんでしまうのだ」ブルブルブルブル

アルミン「スゴい理論だね」ネーヨ

エレン「そういや筋肉質な人は寒さに弱いとか聞いたことがあるような」

アルミン「そ、そうか………訓練兵団での訓練の日々によって鍛え上げられたミカサの肉体は余分な脂肪を根こそぎ削ぎ落したが、皮肉なことに寒さにはめっぽう弱くなってしまったんだね」

アニ「フッ………氷の女と呼ばれた私が、なんたるザマだ………ごめんね、お父さん。私、帰れない…………」ガチガチ

ミカサ「ああ………体のコントロールが、効かない………む、むねん………」ブルブル

エレン「悲劇だな」

アルミン「喜劇だよ」


~宿舎前~


エレン「さて、アニもミカサも布団に引きこもっちまったが、どうする」

アルミン「今日は休日だからいいけど、このままじゃ訓練にも支障をきたすよ。なんとかしなくちゃ」

エレン「っつってもなあ………寒さをどうにかしろっつっても、厚着するぐらいしか思い浮かばねえぞ?」

アルミン「去年それで大失敗したじゃないか。アニがまともに立体機動できないくらい着膨れて、それを見たライナーが『お? なんだアニ。とうとうエレンの子を妊娠したのかガハハ』っつって、お約束の如く半殺しにされて」

エレン「つってもなあ。厚着してもダメ、湯たんぽ使ってもダメ。どうすんだよ」

アルミン「大丈夫。実は昨年の失敗を考慮した秘策がある」

エレン「おお」

アルミン「そもそも寒がりという点を改善すればいいんじゃないかな」

エレン「というと?」

アルミン「それはもちろん―――――」



……
………


………
……


~厨房~

エレン「料理?」

アルミン「うん。体を温める料理を作ってあげれば、寒さに耐性がつく。本格的な冬が来る前に、体質を冬向けにしてしまおうってことさ」

エレン「おいおい、言うのは簡単だけどよ、そんな都合のいい料理なんか知らねえぞ? それに俺にしてもアルミンにしても、あんまり料理は得意じゃないだろうが」

アルミン「エレンの言いたいことも分かるよ」

エレン「なんかあるのか?」

アルミン「僕は野菜くずの浮いた薄い味のスープや、お爺ちゃんの作ったヤケに柔らかいだけで味のほとんどない料理ばかり食べてきた人間だ………」

エレン(一気に不安になってきた)

アルミン「だけど、僕には薬草や薬膳の知識はある。それに煮るだけの簡単な料理なら僕にだって作れるよ」

エレン「ヤクゼン? なんだそれ」

アルミン「うん。王政府が解体されて、外の世界の本が解禁されたでしょ? 解禁された本の一つに、医術と食事を同列に見て、栄養、効果、色、香り、味、形などを全てそろえた食養生の方法………薬膳の本があったんだ。それを試してみたいと思う」

エレン「んー………まあ、何もしないよりはましか。いっちょやってみようぜ!」


エレン「さて、どうすればいい? 指示をくれよ、アルミン」

アルミン「オーケー。まずは大量の鶏ガラを軽く湯がいたらザルにあけて、流水で洗ってゴミを取る」ザバッ

エレン「かなり面倒だな」ヨイショヨイショ

アルミン「やるとやらないとじゃ仕上がりでかなり香りと味に差が出るからね。丁寧にやろう」ウンショウンショ

エレン「おう」エイヤッサ

アルミン「えーっと、次は………洗い終わったら再び水を沸騰させた鍋に入れて、強火にかける」

エレン「アクが出て来たな。こいつを出来る限り取り除いて、と………」スクイスクイ

アルミン「あらかたアクが取れたら、ネギを大きめに切って、ショウガ、クコの実、乾燥なつめ、乾燥リュウガンなどを投入し、蓋をして放置する」


グツグツ


エレン「うん。いい香りがしてきた。そろそろいい感じか?」

アルミン「よし。中の具材は全て取り出して、洗っておいた生米をこのダシ汁に投入し、中火にかける」ザラザラザラザラ

エレン「お? ひょっとして粥を作るのか?」

アルミン「うん。薬膳粥ね。煮立ったら軽く混ぜる。あんまり頻繁にかき混ぜるとトロトロになっちゃうので注意がいる………らしいよ?」

エレン「ってことは、サラサラ系の粥にするのか」


アルミン「さて、後は蓋をして放置すれば完成だよ」

エレン「そりゃいいんだけどよ…………なぁ、アルミン。これって一つ問題があるよな?」

アルミン「うん、分かってる………っていうか、僕も今気づいた。病人用の粥じゃないから、流石にこれだけで食べさせるのは寂しすぎるんだよね」

エレン「何かトッピングできるおかずを作るか?」

アルミン「うーん………残った材料は、お粥に使った材料のあまりと、ダシを取った鶏ガラぐらいかな」

エレン「……とりあえず、鶏ガラにひっついてた身を細切れにして、甘辛いそぼろ風にしてみるか」ジュージュー

アルミン「わあ、エレン上手だね」

エレン「このくらいならな」

アルミン「残ったネギを刻んで………うん。不格好だけど白髪ねぎができた。これもトッピングにしよう」ザクザク

【トッピング】
・白髪ねぎ
・鶏のそぼろ

エレン「………質素だな」

アルミン「………肉の日に慣れきったせいか、そう感じるね。これでも寂しいとか、まったくいい時代になったものだよ」


エレン「でもどうせ二人に作ってやるなら喜んでほしいけどな……しかし、俺達には料理スキルがさほどない」ウーム

アルミン「だよね。食材もあんまり残ってないし」ウーン

エレン「どうするか」

アルミン「どうしよう」

エレン「………あいつら呼ぶか?」

アルミン「………呼んだ方がいいかな」

エレン「うむ」

アルミン「うむ」

エレン「呼ぼう」

アルミン「呼ぼう」


そういうことになった。



……
………


………
……


ライナー「呼んだか?」ヨバレテ

ベルトルト「呼んだ?」トビデテ

ν料理人「呼びましたの?」リョウリニーン

エレン「おう、呼んだぜシェフたち」

アルミン「呼んだよ。助けてくれ」

ベルトルト「何を助けてほしいの?」

ν料理人「ですの?」

ライナー「まあ、俺とベルトルトと料理人さんを呼んだ時点で大体予想はつくんだが…………なんだ、薬膳粥か? ………成程。体を温めるのが狙いか」

アルミン「残った食材を見ただけで分かるなんて流石だね」

ライナー「ヤギ肉使うとあったかくなっていいぞ。ヤギ、ショウガ、ネギ。この組み合わせは最強だ。配合次第では人を殺せるレベルにまで体温を高められる」

アルミン「ヤギ肉はさすがに僕らの薄給じゃちょっと………それに殺してどうする」


ν料理人「しかしまぁ、まだ秋口だというのにどうして体を温める食べ物などを?」

エレン「まぁその、ツレが寒さに異常に弱くてな。なんとかしようかと」

ベルトルト「ああ、アニか………そういえば少し冷え込んできてはいるね」

エレン「アニだけじゃなくて、ミカサもな。寒くて死ぬからどうにかしてくれ、と」

ライナー「そういやそういう時期だな。おまえらも幼馴染には苦労してるな」

ベルトルト「それで体を温める料理を作っていたのか。そういうことなら、僕らも手伝うよ」

ν料理人「無論、わたくしも手伝いますの!」デスノ!

ライナー「俺も手伝おう。その代り………」

アルミン「うん。多めに作ってあるから、お粥はおすそ分けするよ」

ライナー「交渉成立だな」

アルミン「ありがとう、助かるよ。といっても、粥はもう完成なんだ。ただ、お粥に合わせるトッピングで、何かいいおかずがないかな、と」

エレン「鶏そぼろと、白髪ネギだけじゃちょっと寂しいだろ?」

ライナー「ふむ、粥に合うトッピングか………」

ベルトルト「そういうことなら、西の漁村から届いた食材を少し分けてあげるよ。ハイ」

アルミン「わあ、ありがとうベルトルト!!」

ベルトルト「どっちみち僕だけじゃ食べきれない量だしね。今日の夕食にでも振る舞おうと思っていたところだから、遠慮なく使っちゃって!」

エレン「サンキュー、ベルトルト! お、塩昆布とおかかはこのままでもイケるけど、アサリと海苔は?」

ベルトルト「粥に合わせるなら佃煮にでもしようか。すぐ作るよ」

エレン「悪い。助かる」

ν料理人「もずくはこのままでもいいですが、てんぷらもありですの」フム

ライナー「せっかくだ。何か俺も作るか…………アルミン。この余った鶏皮使っていいか?」

アルミン「うん、いいよ」

ライナー「フライパンでカリカリになるまで鶏皮を炒めて、鷹の爪を入れ、塩コショウで味付け。仕上げに胡麻油をサッとひと回し………ピリ辛パリパリ鶏皮の千切りの出来上がり、だ」

エレン「おお!」

ライナー「シンプルだがうまいぞ。食感パリパリで噛むと脂が滴る。実にジューシィだ」

エレン「」ゴクリ

アルミン「」ゴクリ


【トッピング】
・白髪ねぎ
・鶏のそぼろ
・塩昆布
・おかか
・アサリの佃煮
・海苔の佃煮
・もずく酢
・ピリ辛パリパリ鶏皮


ベルトルト「うーん。弾数は揃ってきたけど、野菜分が不足してるね」

ライナー「もう一品作りたいところだが………油揚げと、生の剥きエビ、牡蠣、アワビ、イカ、タコ、アサリに………鶏卵と牛乳と、作り置きのバターにチーズ、各種調味料だけか。見事に野菜がない」

アルミン「ネギならあるけど」

エレン「それと米」

ベルトルト「うーん………」

ν料理人「肝心のブツと先立つモノがない以上、無理難題ですの」


サシャ「いい匂いがします………何作ってるんですか?」

コニー「おーい、リョウリニン! これ使ってなんかウマいもん―――――って、おまえらか?」

エレン「お。サシャ、コニー。なんだ、匂いにつられてやってき………」

アルミン「ああ、二人とも。何のよ………」

サシャ「何かおいしいものを作ってるんですか? 私にもください!」

コニー「どうした? 何を固まってんだよ」


エレン「―――――くさい」


サシャ「え?」

コニー「は?」

アルミン「凄く臭い。臭い。君たち、凄く臭い。何の匂いなのコレ」

ν料理人「鼻が曲がりそうですの!! 信じられないくらい臭いですの!!」

ライナー「す、すまんサシャ。フォローできんぐらい臭い。牛小屋や馬小屋と似た匂いがする………」

ベルトルト「うん。正味な話、排泄物のにおいがする」

コニー「し、失礼だなおまえら! そんな態度じゃ分けてやらねーぞ!」プンスカ

エレン「ウ○コなんかいらねえよ!!」

コニー「ウ○コじゃねえよ!! 食いもんだよ!!」

サシャ「あー、ひょっとしてコレですか?」ヒョイ

エレン「そ、その籠か。何入ってんだ? クソか何かか?」

アルミン「コニーの籠には………あ、栗だね。それとミカンに、これは鴨かな?」

ライナー「サシャの籠は…………ってくせええええええええええええ!!」

ν料理人「オゲロロロロロロ」ビチャビチャ

コニー「ギャーーーーー!?」

ベルトルト「こ、この匂いはギンナンかい?」

サシャ「正解です! 栗とギンナンの炊き込みご飯を作ろうと思いまして、コニーと山に行ってたんです!!」エッヘン

エレン「くせええええええええええ!! くっせ!! くっせええええええええええええええええ!!!」

サシャ「エレン、うるさいです! ギンナンは確かにくっさいですが、この中に美味しくてキレイな実が詰まってるんですよ!」

コニー「そーだそーだ。これから中身取り出すんだよ。下処理はめんどいけど、すげえウマいんだぜ」


エレン「マジかよ………そんなくっせえのからウマいもんが出てくるのか………?」

コニー「おう、うまいぜ! 軽く炒って塩振って食うと、ほのかな甘さと苦味があってな。ほくほくでうめーんだ」エッヘン

サシャ「他にもいっぱい収穫があったんですよ! 外の荷台にたっぷり積んであります!」エッヘン

ライナー「他にも?」


~厨房前~


ベルトルト「うわあ、荷台に野菜やら果物やらが満載だね……」

ライナー「サツマイモ、にんじん、ジャガイモ、レンコン、たまねぎ、オクラ、サトイモ、ズッキーニ、カボチャに、りんごにぶどうに柿に、シイタケなどのきのこ類はともかく……」

エレン「な、なんなんだこの血まみれの肉塊は…………五十キロはあるぞ?」

サシャ「いやあ、コニーと山に栗やギンナンを拾いに出てたら鴨がいたので、せっかくだから狩っていこうと思いまして、コニーが射掛けたんですよ」

コニー「天才のおれさまとしたことが一射目を外しちまってな。まあそこは天才のおれさま、二射目で仕留めたんだけど、外しちまった一射目が、なんつーか、その」

サシャ「物陰に潜んでいた冬眠前の肥え太った熊に命中しまして」

ライナー「」

ベルトルト「」


コニー「襲い掛かってきたから返り討ちにしてやったんだぜ!」

エレン(なぜ逃げるという発想がない)

サシャ「そしてその場で捌きました」

コニー「解体中はずいぶん暴れたなー、コイツ」

アルミン「生きたまま解体したのかい!? コワイ! 狩猟民族コワイ!」

サシャ「何言ってるんです、アルミン。熊は興奮させてから仕留めた方が味が良くなる。これ即ち山の常識です」ムフー

コニー「アルミンって意外とモノを知らねえよなー」ハハハ

アルミン(うわー腹立つぅー!)

エレン(おっかねえ。狩猟民族おっかねえ)

サシャ「そして捌き終わった後に、重大なことに気づいたんです」

コニー「ああ、天才のおれも考えもしなかったんだぜ。熊は―――――重くて、二人じゃあ運べないってことに」

ライナー(馬鹿だ! 筋金入りの馬鹿だ俺の嫁は!)ダガカワイイカラユルス

ベルトルト「ああなるほど。話が読めて来たよ」

アルミン「うん。つまり山のふもととかにある農家の人に熊肉と野菜の物々交換を持ちかけたとか、そういうことでしょ?」

サシャ「正解です!」


エレン「じゃあ、俺達とも物々交換しねえか? 薬膳粥とトレードでさ」

サシャ「すぐに食べられるものならウェルカムですよ。それに山ほど野菜貰っちゃってどうしたものかと思っていたところです」

コニー「おれはうめーもん作ってくれるなら、いくらでも持ってっていいぞ。おれ、料理とか干し肉以外はあんまりわかんねえし」

アルミン「ありがとう! これで野菜分は確保できた!」

ν料理人「では秋ナスですの。どうしましょうか? わたくしはシンプルに焼きがいいと思いますの。味付けはかつおぶしとお醤油で」

ライナー「それもいいが、トッピングなら甘辛い煮浸しにするのもいいと思うが。さっぱり系の粥には濃いめの味付けが合うだろ」

ベルトルト「せっかくだから熊肉を使ったナスの肉詰めなんかどうだろう。味噌味で」

サシャ「じゃあ全部やりましょう」

ν料理人「ヤキナス!」ジュー

ライナー「ニビタシ!」グツグツ

ベルトルト「ニクヅメ!」セッセッ

コニー「すげえ、見る見るうちに料理が出来上がってくぜ………」

アルミン「ワザマエ!」

エレン「どれもうまそうだな」ゴクリ


エレン「うん。随分とトッピングが増えたな」

アルミン「というかもはやメインで行けそうなトッピングだねこれ」

ν料理人「せっかくだからもう一品、油揚げを使ったものをご用意いたしますの………では、サツマイモとレンコン、カボチャを茹でますの」テキパキ

ライナー「! 成程、そりゃいい。んじゃ、茹であがったら細かく刻む」ザクザク

ベルトルト「僕の方はギンナンと栗。これらは焼いて、殻をむいて、と」セッセ

エレン「これで完成か?」

アルミン「いや、そんなはずはないよ。まだ油揚げを使ってない………」

ライナー「分かってるじゃないかアルミン。このように油揚げに切り込みを入れて……ホレ、袋になった」

ベルトルト「そこに塩コショウで味をつけた茹でた食材と、栗とギンナン、そしてシラタキを詰めて………つまようじで口を閉じる。秋の味覚たっぷりの巾着が出来上がり」クルクル

エレン「完成だな!」

ライナー「まだまだ。こいつを軽く炙る」パチパチ

アルミン「わあ、パリパリしておいしそう」

ν料理人「その間に細かく刻んだシイタケ、たまねぎ、にんじんをフライパンで炒めて、そこに酒、みりん、しょうゆ、砂糖、酢を入れて煮詰めますの………」グツグツ

ベルトルト「仕上げに片栗粉を入れて………とろみのついた『しょうゆあん』の出来上がり」トローン

ライナー「こいつを焼いた巾着にかければ………」トロッ


トロロォーーーン

ベルトルト「秋の味覚ぎっしり巾着のとろとろあんかけの出来上がり」

ν料理人「ですの」ドヤァ

エレン「」ゴクリ

アルミン「」ゴクリ

サシャ「」ゴクリ

コニー「」ゴクリ

ライナー「エレンが作った鶏そぼろを入れてもウマいぞ。炒めもやしを一緒に入れると食感もいい感じになる」

ベルトルト「サシャとコニーが食べたがってた栗とギンナンの炊き込みご飯に『あん』をかけても美味しいよ」

コニー「まじか! くぅううう! 飯時が楽しみだぜ!」

サシャ「あとで作ってみます! きのこたっぷりいれたあんかけにします!」

ライナー「おっ、そりゃうまそうだな」


ライナー「………っと、エレン、アルミン。粥のトッピングにゃあこんなもんでいいだろ? もう昼もまわったし、腹すかせてるだろ。持って行ってやれよ」

【トッピング】
・白髪ねぎ
・鶏のそぼろ
・塩昆布
・おかか
・アサリの佃煮
・海苔の佃煮
・もずく酢
・ピリ辛パリパリ鶏皮
・焼きナス
・ナスの煮浸し
・熊肉のナス肉詰め
・秋の味覚ぎっしり巾着のとろとろあんかけ


エレン「十分すぎるぜ! ありがとな、ライナー、ベルトルト、ν料理人!」

アルミン「本当にありがとう!」

ベルトルト「どういたしまして」フフ

ν料理人「なんのなんのですの!」ムン


ライナー「さて。それじゃあ俺は夕食の仕込みだな。この牡蠣を使って、グラタンでも作るか」

ベルトルト「僕は海の幸を山ほど使ったリゾットを。これを今日の夕飯のメインにしようか」

ν料理人「ではわたくしは、前菜としてカボチャのクリームスープと………温野菜サラダでも作りましょうか」

サシャ「おお、鯛があるじゃないですか! 鴨の肝を塗って焼いてみますか」


チョ、ナンテモッタイネーツカイカタヲ
チョット!! タイハイチビシカナインダヨ!?
ワタシガクライツクシマスノデモンダイアリマセン
オマエサイアクダナ?!
オレサマハウマケレバナンデモイーゾ?

ヤイノヤイノ



……
………

………
……


~宿舎~


ミカサ「さむいよ………くらいよ………せまいよ………」ガタガタ

アニ「フフフ、パトラッシュ、暴力はいいぞ!」ブルブル

エレン「手遅れだったか?」

アルミン「いや、間に合うはずだ」

エレン「おーい、ミカサ、アニ、メシだぞー」

ミカサ「…………!! いいにおい」ガバッ

アニ「! ショウガの香りがする………」

エレン「ほら、あったかくなる料理作ってきたから、これ食って元気出せよ」

ミカサ「うん………たべる」モグッ

アニ「そういえばおなかすいてたんだよね。気が利くじゃないか、二人とも………(粥? なんで?)」ハグッ

ミカサ「!!」

アニ「!!」


アルミン「美味しくできてる?」

ミカサ「うん……おいしい。じんわり、体があったかくなってくる。優しい味がする」

アニ「これは、薬膳? 意外なものを作ったね、エレン、アルミン。うん、ぽかぽかしてきた」

エレン「よっしゃ!! 俺らも食おうぜ、アルミン。考えて見りゃ、俺達も昼飯食ってねえ」

アルミン「うん。いっただきまーす」


モグモグ パクパク アグアグ ハグハグ


アニ「うん。良いダシが出てるね。ちゃんと鶏ガラを丁寧に煮た、本格的な薬膳だ。入ってるのはショウガにネギ………クコの実とリュウガン、それとナツメかな」

アルミン「あたり。やっぱりアニはいい舌してるね」

ミカサ「このそぼろ、優しい味がする………これはエレンが?」

エレン「おう。初めて作ったわりにはいいデキだろ?」ヘヘッ

ミカサ「こっちの焼きナスも素朴な味わい………煮浸しはとろりとしていて、食欲が増してくる」オイシイ

アニ「ん。この巾着のあんかけ………トロトロのあんに浸っていても、お揚げはパリパリ、中身はいっぱいの秋野菜のうまみと、ギンナンの滋味深さと栗の甘味………うん。美味しい。この味はライナーか、ベルトルトか。相変わらずいい腕だね。」

エレン「はは、さすがにバレたか。あいつらにも手伝ってもらったんだ」

アニ「後で礼を言っておかないとね。ミカサ」


ミカサ「ぱくぱく、もぐもぐ………うん。白髪ねぎをお粥に浮かべると、シャキシャキとしんなりの中間の面白い食感になる。美味しい」モムモム

アルミン「あ、それ僕が作ったんだ。ちょっと不格好だけど、結構お粥に合うでしょ?」エヘヘ

ミカサ「ええ。凄くおいしい………ありがとう、アルミン。そしてエレン」

エレン「何言ってんだ。俺とお前の仲だろ。家族なんだから、困ってたら助け合うのが当たり前だ」

アニ「単調な粥の味わいに飽きてきたところに、この佃煮や塩昆布はいいね。味が引き締まるよ。おかかも実に味わい深いね」ズルズル

エレン「こっちの熊肉の肉詰めもいい感じだぜ。熊っていうとカタそうなイメージあったけど、口の中で脂がさらりと溶けて、何とも言えない肉の香りが残る」モグモグ

アルミン「さっぱりしたもずく酢もいいね。食欲が増すよ。鶏皮のパリパリした食感がいいね。辛いけど、お粥に合わせるとちょうどいい辛さになって……」ハムハム

ミカサ「…………」アムアム

アニ「…………」モムモム

エレン「…………」ガツガツ

アルミン「…………」パクパク


エレアルミカアニ「「「「はふー…………」」」」


エレン「食ったなぁーー……」

アルミン「お粥って、結構腹にたまるものなんだねぇ………」

エレン「で、どうよ? 体、あったかくなったか?」

ミカサ「ええ。お陰様で、カロリーも摂取できたし、ショウガとネギでぽかぽかあったかい」

アニ「うん。だいぶマシになったね。定期的に食べれば、少しは寒さにも強くなれるかな」

エレン「やったぜ」

アルミン「やったね!」

ミカサ「まあ、それはさておき」

アニ「そうだね。それは置いておいて」



アニ「エレン。おかわりだよ」

エレン「へいへい」ハハハ

ミカサ「アルミン、おかわり」スッ

アルミン「はいはい」ヨソイヨソイ

~完~

※今回の目的ですか。メシテロです。

 悪いとは思ったが反省はしていない。

 >>1は7月から休職手続となります。ヘルニアがやっべえんですわマジで。

 コンスタントには難しいですが、週1ぐらいで投下できるように頑張ります。

 今後ともよろしくお願いします。


※ちょっとした短編集をば。


サシャの簡単クッキング
~じゃがバター編・CROSS†CHANNEL風~


サシャ「シェフのサシャです。そしてこちらは助手の」

コニー「こにぃれす(^p^)」

サシャ「ではさっそくじゃがバターを作っていきましょう」

コニー「あっ、ちょーちょ(^p^)」パシッ

サシャ「コニー、それは蛾です」

コニー「きちょーなたんぱくげんなのら(^p^)」モッチャモッチャ

サシャ「やめてください。シャレにならんくらい物悲しい気分になってきます」

コニー「あい(^p^)」ゲプー

サシャ「気を取り直して始めます。まずは火を起こします」

コニー「くるいもだえます(^p^)」ピギィィイイイ

サシャ「喜びで! つづいて手ごろな大きさの石を放り込んで加熱していきます」ポイッ


コニー「じゃがいもになー、だいすきなひとのなまえをつけるのらー(^p^) おれはなー、かーちゃんとー、サニーとー、マーティンってつけたのらー(^p^)」エヘヘヘ

サシャ「風味が増しますね。ではジャガイモをホイルに包んで、笑顔で石に投げ込みます」

コニー「か、かーちゃぁあああああああああん!! サニィィイイ!? マーティィイイイイン!!!(^p^)」

サシャ「焼きあがるのを待ちます」

コニー「うあ、あう、あああ………(^p^)」ポロポロ

サシャ「家族を失って悲しみに暮れるコニーを嘲りながら待ちます」クスクス

コニー「う、ううっ、ぐずっ………(^p^)」グスグス

サシャ「鼻水垂らして泣きじゃくるコニーを指さしながら笑って待ちます」プププ

コニー「そ、それでも………おれは、りっぱなへーしに、なるんだじぇ………(^p^)」キリッ

サシャ「哀しみを乗り越えて人として大きくなったコニーに舌打ちしつつ待ちます」チッ


コニー「かなしくてもおなかはすくのじぇ………(^p^)」グゥゥウウ

サシャ「待つのをやめて、ジャガイモを取り出して皿に移します」

コニー「いたらきまーす(^p^)」ガツガツ

サシャ「バター(有塩)をつけます。『コニーはそのまま食ってるからじゃがバターじゃないじゃん?』とかいう些細な疑問はうっちゃります」

コニー「げふっ(^p^)」ゲップ

サシャ「いただきます」


~完~

※裏設定。

 サシャはライナーとの結婚間近でちょっとマリッジブルー的なアトモスフィアに包まれていて精神が不安定気味。
 頭を打って精神が一時的に退行しているこにぃの面倒を見てきたせいで少しスレている。

 こにぃは訓練で頭を打ったせいで、一時的にクレイジーな幼子風味になってしまった。
 動くものを見つけるととりあえず食おうとする残念な脳味噌をしているが、家族思いのええ子。


番外編「いいじゃないか。考えるだけなんだから。考えるだけなら罪じゃないだろ。俺は悪くねえ、俺は悪くねえ!」

エレン「裸エプロン」
アルミン「定番にして王道、根強い人気を誇るみんな大好きエロエロコスだね。僕も好きだよ。むしろ断然アリだね。調理中に背後からズブリとやるワケだね」

エレン「裸Yシャツ」
ジャン「霧吹きはオプション完備だよな。ピンクのポッチが徐々に透けてくる様は想像するだけで滾るわー」

エレン「裸パーカー」
ライナー「当然少しブカブカのサイズで、顔を真っ赤にして裾を両手で押さえたりするわけだな。おまえ天才だな」

エレン「裸立体機動ベルト」
ベルトルト「何それ捗る。サスペンダーっぽいベルトの食い込みがたまらないね! アレだろう、『俺の立体機動装置を装着してやるぜグヘヘ』とか言って襲うわけだろう? パないよそれ」

エレン「裸首輪、もしくは裸チョーカー」
ユミル「おまえ絶対ドSだろ。服従させたい、隷属させたいって願望が透けて見えんぞ。まあ私も好きだが」


アニ「何の話してんのあいつら………」

ミカサ「結婚したらエレンがやってみたいエロプレイのシチュエーションがうんたらかんたら」

アニ「オーライ、クソッタレ。あのエロガキめ、粛清してやる」ジャキッ

サシャ「私も行きます」ジャガッ

クリスタ「私も」シャガッ

~完~


番外編「結婚したので実行に移してみようと思います」


エレン「な、なあアニ。今夜はこれを………」エプロン

アニ「嫌だよ。はしたない」フン

エレン「じゃ、じゃあこれを………」Yシャツ

アニ「嫌だよ。汚らわしい」プイッ

エレン「こ、これならいいだろ? な?」パーカー

アニ「………まあ、それくらいなら」

エレン「バンザイヤッターーー!!」ニコニコ

アニ(男ってやつは分かんないなホント………まあ、可愛いっちゃ可愛いね)ヤレヤレ


番外編「計画通り」


アニ「…………ど、どう?」ハダカパーカー

エレン(うおおおおおおおおおおおおお!!)サイコウ!!

アニ(こ、これ、思ったより恥ずかしいかも………っていうか、裸より恥ずかしいような………)モジモジ

エレン「いいッ! すごくいいッ!! アニかわいい!!」

アニ「ば、バカじゃないの………(やっばいこれすっごい恥ずかしい。あ、やだ。乳首浮いちゃってる………)」サッ

エレン(隠すしぐさがぁああああああああああああ!!!)イイ

アニ「っ、う………(うう、足見られてる………胸元も……自意識過剰かな。でも、いつもよりエレンの視線が熱っぽいような……)」アウアウ

エレン(も、もう辛抱溜まらん)ガバッ

アニ「あっ、やっ………んっ」


番外編「想定外だ」


エレン「はぁ、はぁ………アニ、すげえ可愛かったよ」

アニ「も、もう………(い、いつもより乱れてしまった………情けない)」アウ

エレン「抜くぞ、っつ………」

アニ「ん………(この感覚だけは相変わらずこそばゆくって慣れないな)」

エレン「あ゛」

アニ「どうかした?」

エレン「………落ち着いて聞いてくれ、アニ」

アニ「何よ」

エレン「決して慌てないでくれ。驚くのも無理はないだろうが、どうしたところで過去は戻らない。ジュマンジのような奇跡は早々起こらない」

アニ「だから何?」

エレン「―――――ゴムに、穴が」

アニ「」


――――三ヶ月後、妊娠が発覚。第二子・三子のカレンおよびグレン誕生まで、あと十一ヶ月。

※という、どうでもいいカレン・グレン誕生秘話。

 この後、エレンはアニに滅茶苦茶リンチされました。


※かつてPCが逝ったときに外付けバックアップHDDに残っていた進撃SSのネタ帳が見つかったのでなんとなく晒すことにした。


~エレン『エレン? さんをつけろよデコ助野郎』~


エレン「いい加減にしろこのアマ肝臓ぶっ潰れろ!」ドスッ

ミカサ「もるすぁっ!」ガクッ

エレン「なんで風呂場にまでついてくんだよ……そんなに俺のち○こに興味があるのか」ヘンタイ?

ミカサ「べ、別にエレンの背中を流すのを口実にちょっとあんなところやそんなところをじっくりたっぷり見て感じて触れてあわよくばしゃぶってズブリとやりたいだなんて思春期特有の変態的思惑なんてない。私たちは家族だから一緒にお風呂に入ったりするのも実に自然なことでよーしエレンの成長ならぬ性徴具合を確かめちゃうぞグヘヘなんてこと微塵にも考えてない。だから勘違いしないで、私はエレンのことを魅力的なオスとして見てなんかいないし一匹のメスとしての本能がうずいてもう辛抱たまらんなんてことは考えていないの。お願い信じてエレン」ハァハァ

エレン「この変態が脾臓ぶっ潰れろ!!」ドグォッ

ミカサ「いい! あ、ごめんなさい今のなし、痛い!」アヘェ

アルミン「ふふふ、エレンとミカサは今日も仲良しだね」ニコニコ


 エレン・イェーガー。幼き頃からクレイジーサイコストーカーのミカサの魔の手から逃れるため、日々逃げ回っていた。

 自然と逃げ足が鍛えられ、九歳にして百メートル走で十秒を切る走りを身に着ける。

 しかしそれにも限度というものがある。このまま精通を迎える歳を迎えてしまえば、己が貞操が危うい。

 エレンはミカサのストーキングを振り切った後は、日課としてしゃにむに体を鍛えまくることにした。


 その結果、エレンが行き着いたのは感謝だった。

 己を生み育んでくれたシガンシナ区へ、共にある友に、愛する両親に、今日もミカサから逃げきってくれた己の肉体に、そして母なる大地への感謝の祈りをささげ、構え、突く。一日一万本の感謝の正拳突きを続けた末に、ついに羽化。

 一日一万本の感謝の正拳突き、1時間を切る!

 代わりに、駆逐とつぶやく時間が増えた。

 そうしてエレンは一人で一個旅団の働きをするといわれるリヴァイの戦闘力をはるかに上回る化け物へと進化を遂げ、独力でミカサの過剰な性的アプローチを撃退することが可能になったのだ。


エレン「何度でも言うぞミカサ。もう俺にまとわりつくな。まとわりつくとしても段階を踏め。おまえは一足飛びに駆け上がりすぎだ」

ミカサ「分かった。じゃあ服を脱ごう、エレン。受精から始まる愛があってもいいと思うの!」

エレン「このド低脳が子宮ぶっ潰れろ!!」ドムッ

ミカサ「いくっ!」アヘェ

アルミン「お熱いねぇ、二人とも」ヒューッ!


アニ(もうやだ、壁内の連中はクレイジーすぎる………)ガクガク

ライナー(俺が小人に見えるくらいのデカさと尋常でないパワーを持つエレン……そのエレンの打撃を受けてもピンシャンしてるミカサ……それを笑ってみてるアルミン……)ビクビク

ベルトルト(もう何もかもイカれてるだろコレどうやったら勝てんだこいつらに)ブルブル


 山奥組三人にとっては悪夢であるが、この食堂内の光景は日常であった。

 エレンがミカサの腹部を執拗に殴打する音が響く中、食堂の入り口からみすぼらしい姿の男が現れた。

 ―――――山奥組三人は「またか……」と思った。

 男は息を切らせながら食堂内を見まわし、アルミンの姿を確認するや否や、その場で土下座した。


男「おねっ、お願いですッ! あと、あと一週間だけッ………一週間だけ、待ってくださいッ!」

アルミン「成程。いい姿勢だ。まるで頭と地べたと一体化しているようじゃあないか。実にいいッ。僕の好みというものをよくわかっているッ」

男「な、ならっ………」バッ

アルミン「誰が頭を上げていいといったカス野郎」グリッ

男「あぐっ」

アルミン「君は懸命だ。だが賢明ではない。僕の好みは分かっていても、己の立場というものを理解していない。分かるか? あと一週間待ってほしい? その言葉を言うべき時期は一週間前に過ぎている」ゴリリッ

男「う、うぐっ………」


 土下座する男の頭を靴底で踏みつけるというアルミンの傍若無人な振る舞いを非難するものは誰もいない。

 これもまた、食堂内では日常の如く頻繁にみられる光景であった。


アルミン「物事を納得させるにはコツがいる。そこに説得力があるかという点だ。信用だ。分かるかい? 子供のお約束とはワケが違う。これは契約なんだよ」グリグリ

アルミン「だが君は契約を、物事の筋道を曲げろという。君には誠意がない。物事を曲げろとホザくこと自体に誠意など、あるわけがない。土下座しようと腹を掻っ捌こうと、そこに誠意などない。君にあるのは、なんとかして僕を言いくるめて、期限を一週間引き延ばそうという、浅ましく悪辣な考えだ」

男「う、あ………」

アルミン「では、その小細工が通じなかった今、君はどうする? 君はどうすべきだろう?」


 アルミンの微笑みには、得も言われぬ『スゴ味』があった。


アルミン「僕は言ったはずだ。期限通りに金を返せないのならば、担保をいただくと」

男「ッぅ、ああああ………お、お願いですッ、そ、それだけはッ! お願いですッ、一週間あれば、お借りしたお金はすべてッ、すべてッ」

アルミン「そうだ。分かってるよね。君の娘さん、凄く可愛しい子だった。一度会ったことがある。肌も白くて、おまけに処女と来た。きっとウチの風呂屋でもモテモテになるよ」

男「ッッッ………!」

アルミン「お金は一週間後に返せると言ったね? では一週間後に娘さんをその金で買い戻すといい」

男「あ、あ、お、おね、が、おねがい、ですッ………待って、待って………た、たかが、一週間、じゃない、ですか」

アルミン「そのたかが一週間に間に合わなかったのは誰だ? そう、君だよ。……おいおい、涙を流して悔しがることはないじゃあないか。何か悲しいことでもあったのかい?」

男「う、うあ、ぐ、ぐぎっ、ぐぅっ………」ブルブル


 男は床に何度も何度も拳を振り下ろしながら、泣きじゃくった。周囲でそれを見る者の多くは同情的なものを見る目であったが、誰一人として男を庇おうという者はいない。

 このクレイジーな壁内人類の中にあってなお『天使』や『女神』の異名を持つ、クリスタ・レンズですら辛そうに眉を潜め、唇をかんで俯くばかりだ。

 誰もアルミンに逆らえない。逆らってはいけない。その理由があり、実績があった。


アルミン「しかしまあ………そう嘆くことはない。君にとっては不幸なことだったのかもしれないが、こういうのを不幸中の幸いとでも言うんだろうか? 君にとっていいこともある」

男「え………?」


 駄々をこねる子供を宥めすかすような穏やかな声で、アルミンは男に告げる。


アルミン「僕が商売上手だということだよ――――その一週間の間に娘さんが稼いだ額で、買い戻し額は「かなり」安くなっているだろう。余ったお金で美味しいものでも食べるといい」ニコリ

男「」

アルミン「まぁ、ウチの客には、なんというか、フフ、下品なんだけれどね、少々―――――『変態』……が多くてね。そのころまでに壊れていなければいいのだが。まぁその時は引き取り手になってくれるとありがたい。代金はその時の『状態』で応相談だよ、フフ……」

男「う、うわあああああああああああああ!!!」グワッ

アルミン「つまみ出せ」パチン

サムエル「はッ!」バッ

トーマス「ただちに」バッ


 激昂し、アルミンに襲い掛かろうとしていた男は、サムエルとトーマスという壁にその暴挙を阻まれた。

 未だ子供とはいえ、日々の大半を鍛錬に費やす兵士の卵である彼らは、一般人とは鍛え方が違う。男はたちまちのうちに捕えられ、食堂の入口へと引きずられていく。


男「は、はなせッ! 待ってくれ! 待って、待って………まだ、まだ娘は11歳なんだぞッ!?」

アルミン「ああ。幼さの中に可憐さを帯び始めた、実に可愛らしく、穢れを知らない年頃だ。高く売れる『商品』として、十分なスペックだと思う。――――で?」

男「ッ…………お、鬼ッ! 人非人っ!!」

アルミン「いかにも」

男「畜生ッ! 外道ッ!!」

アルミン「いかにも」

男「血も涙もない金の亡者ッ! 悪魔の末裔がぁあああああッ!!」


アルミン「いかにもォォオオオオオオオ!!!」


 心底愉快と言わんばかりの笑い声であった。哄笑であった。嘲笑であった。朗笑であった。

 アルミン・アルレルト。

 彼こそは地下街で名の売れだした若き総会屋のトップにして、異色を放つ第104期訓練兵の中で最も敵に回してはいけないディアボロである。


 セックスと暴力、ドラッグと恐喝による飴と鞭により、トロスト区の駐屯兵団を影から支配。噂では憲兵団とも黒いつながりがあるという。

 なお、クリスタとサシャ、そしてアニは『商品価値』が高いとアルミンから目をつけられており、日々彼の視線に怯えている。

 ただしエレンとミカサにだけは無条件の親愛を注ぐ。

 アルミンの鬼畜の所業に対し、エレンは『弱者は死ぬ残酷な世界。それだけのこと』とバッサリ切り捨て、ミカサに至っては『エレンに害がないなら特にどうとも』と無関心である。


アルミン「ああ、貧乏人の嘆きはいつも耳に心地よい。それは思わないか、皆?」

ライナー「…………」

アニ「…………」

ベルトルト「…………」

アルミン「どうした? おかしいだろう? 僕がおかしいと言っているんだ。ならばおかしいことだ―――――笑え」


 ワハハハハ!! ワハハハハハハ!!


 アルミンに逆らうなど不可能であった。


 すっかり気分が落ち込んだ三人は、目の前の朝食に手を付けられないでいた。

 あまりにも凄惨な光景に、もはや食欲が失せていたのだ。

 そんな三人のところに、一人の少女が訪れた。


サシャ「…………三人とも、食事を分けてくれませんか?」

ライナー「あ、ああ? さ、サシャか。パンか? いいぞ、もってけ………なんか食欲失せた」

サシャ「いえ、お肉を下さい」

ライナー「に、肉? 肉なんてどこにも――――」


サシャ「あるじゃないですか、ライナーの胸筋と、ベルトルトの上腕二頭筋と、アニの腹筋ですよ。実にきめ細やかで良く絞り込まれています。食いでがありそうです」


ライナー「あっちいけ!! あっちいけ!!」ウワアアア

ベルトルト「パンあげるから! お願いだからあっちいって!!」ヒィィイイ

アニ「こっちくんな!! こないで! こないでったら!!」イヤァアア


 サシャ・ブラウス。食人鬼。


サシャ「そんなにみっちりお肉詰まってるんだったらホンの十キロぐらい分けてくれたっていいじゃないですか!! この人でなし」ブワッ

ライナー「いいわけねえだろ! つーかなんでこいつこんな追い詰められてんだよ配給されるメシは確かに少ないけど生きていくには充分だろ! カエルを前にしたヘビみたいな目で俺をみないでくんない!? マジ怖いんだが!」

ベルトルト「っていうか、美味しいもの食べたいならアルミンのところ行きなよ! っていうかあの幼馴染三人組の食卓だけなんか究極VS至高の食事風景みたいになってるぞなにアレ」


アルミン「今日の夕餉は口に合わないね」ペッ

エレン「アルミンはグルメだからな。いらないなら俺にくれよ」

ミカサ「エレン。なんだったら私が咀嚼したのを口移しでいつでも」

エレン「うっとおしいぞッ、このアマッ!! 腎臓片方ぶっつぶれろ!」ドスッ

ミカサ「ありがとうございます!」アヒィン


アニ(ひでえ光景だね)ウワァ


サシャ「以前あそこにご飯たかりに行ったら、クリスタが無理やり止めてきたんです」


クリスタ『だ、ダメッ! あそこだけはダメよ、サシャ! 見返りに何を要求されるかッ………』

アルミン『黙ってれば可愛いよね、サシャって。肉付きも悪くないし、どう? 僕と契約してソープ嬢になるなら、君の食事には毎日わかめスープを――――』

サシャ『前でも後ろでも好きな穴をつかえばいいじゃないですか! 契約書どこです!?』

クリスタ『ワンコイン以下の値段で貞操切り売ろうとすんなこのボケ女とにかくダメったらダメだパンやるからこっちこい』

サシャ『パァン!!』キラキラキラキラ

アルミン『チッ…………サシャはパンが好物、と』メモメモ


ライナー「あ、もういい。なんか分かった。そしてクリスタマジ天使グッジョブ」

ベルトルト(そのせいでクリスタは毎日食事を切り詰めて、日に日に痩せ衰えてるけどね)

アニ(精神が参ったころにアルミンにどうこうされなきゃいいんだけれど………)ビクビク


サシャ「なんにしてもパァンください。ダメなら肉を下さい。ほんの5キロでいいんです」

ベルトルト「パンでもスープでもあげるから、もうあっち行ってくれ!!」

サシャ「わーい、パァンゲットです!!」ニコニコ


 そうしてサシャはホッコリ顔で去って行った。


ライナー「つ、疲れた………」

クリスタ「ごめんね、三人とも………」

ライナー「ク、クリスタ!? お、おまえ、また痩せたな………」

クリスタ「え、ほんとう?」ニコリ

アニ(頬がこけてる……)ゾッ

ベルトルト(サシャめ……奪いすぎたんだ……)

クリスタ「ダイエット成功だね。実は最近、ちょっと太った気がしてたから……」

ライナー(天使すぎる)ブワッ

ベルトルト(この子、そのうち死ぬぞマジで)クッ

アニ(駄目だ、泣きそうだ………)ウルウル


アニ「グスッ…………ほ、ほら。実はちょっとだけパン取っておいたんだ。食べな」

クリスタ「え? でも、アニは―――」

アニ「いいから食いな。私は、その、そう――――私もダイエット中なんだ。あんたはちょっと痩せすぎだ。少し位食った方が可愛いよ。そうだろ、ライナー、ベルトルト」

ベルトルト「!! あ、ああ! アニの言うとおりだ!!」コクコク

ライナー「そ、そうだぞクリスタ! 女の子なんてのは少しくらいぽっちゃりしてるぐらいがいいんだ!」ウンウン

クリスタ「そう、かな? じゃあ、お言葉に甘えて、いただきます」モグモグ

アニ「…………あんた、サシャと仲いいよね。なんかその、秘訣とかあるの?」

クリスタ「…………アニの言いたい意味は分かるよ」

アニ「大丈夫? ちゃんと寝れてる?」

クリスタ「いいの。もう慣れたから……」

アニ(目が死んでる………)ゾクッ


 クリスタ・レンズ。ただでさえ自己犠牲が行き過ぎている上に、壁内クレイジーピープルの容赦の無さが相まって、被虐度マックスであった。

 「このまま死んで蝶になりたい」とは彼女の口癖である。


 そんな時であった。

 焦点の合わない瞳を虚空に向けて、涎をまき散らしながら、よたよたとした足取りでクリスタに近づく女の影があった。


ユミル「い、いくぅ………」


 言わずと知れたユミル・イワモトであった。

 人生の多くを巨人として過ごし、壁外を徘徊していた彼女の意識はほぼ常に曖昧であり、人間としての体を取り戻してなお白痴の如き有様であった。

 しかしそんな彼女も、心の底から信じ、守りたいと思う存在がいる。クリスタのことだ。

 彼女の人生に転機が訪れたのは、847年のことだ。

 いつものようにノラ猫の如く路地裏のゴミ箱を漁っているユミルのところに、同じぐらいの年頃の少女がたまたま通りがかった。

 名前をクリスタ・レンズと言った。

 クリスタは訓練兵団の食堂にユミルを引き入れると、食卓に座る仲間たちに向かって、叫ぶように言った。


クリスタ『この子を訓練兵団に入れてやりたいんですが、構いませんね!!』


 すると彼らは何を質問するでもなく、かといって嫌悪の表情もなく、

 アルミンは「一つ貸しだよ」と言って、スパゲティの乗った皿を、うすぎたない小娘の前に差し出した。

 食事中、ユミルはうすうす「この人たちは兵士なんじゃあないか」と思った。

 たまたま正気を取り戻していたユミルは、クリスタにこう言った。


ユミル「なんでもやりますッ! あなたのところで働かせてくださいッ!!」


 すると大きな音を立てて扉を開け放ったハゲの教官が怒鳴り声を上げて乗り込んできた。タイミングを見計らっていたのだ。


キース「いい度胸だッ、この薄汚い小娘がッ!! 俺の訓練はキビしいぞッ! もう二度と笑ったり泣いたりできねーようにしてやるッ!!」


 これがいきさつだ……。

 第二の人生を送る、ユミルのファンタジー………。


~斬撃訓練~


ユミル「い、逝くぅ…………」ギリギリギリギリ

ライナー「やめろユミル! およそ一切の流派に聞いたことも見たこともない奇怪な構えをとるのは! おまえがやるとシャレにならねえマジで」

コニー「いくー(^p^)」ギリギリギリギリ

ライナー「コニーくん、マネしちゃいけません」

ミカサ「スリケン!」ワザマエ!

アニ「替刃を投げるんじゃないよ! そういう使い方じゃねーからそれ」

エレン「駆逐観音―――――討伐数1」ズバッ

ベルトルト「君は刃を使え!! 手刀で木を薙ぎ倒すんじゃあないッ!」オソロシイゾッ

ダズ「激流に身を任せて同化する………」スヒュッ

ベルトルト「君もだダズ!! 何、流行ってんの!?」

ミーナ「マ○ラギダイン」どぴゅ!

 ズバッ、ズババッ

ライベルアニ(あれには関わりたくねェ………)


アルミン「だるいからやっとけ」ヒラヒラ

トーマス「はッ!」ズバッ

サムエル「御意」ズババッ

キース「…………う、うむ。今日もアルレルト訓練兵はまじめに訓練をこなしているな!」シセンソラシ

ライアニベル(ひでえ癒着を見た)


 こうして『日常』は過ぎていく。

 イカレた壁内人類と、それを侵略せんとする知性巨人の戦いの日はすぐそこだ。

 頑張れ、人類。負けるな、人類。


 ~完~


~おまけ~


ベルトルト「ライナー、分かっているとは思うけど、もう少し連中とは距離を置いた方が」

ライナー「クリスタに食事を分けてくる。いい加減、何か食べさせてやらないと死んでしまう」

アニ「ライナー、あんたあの子に惚れたの? そういうの後で辛くなるだけだ。やめておきな」


ライナー「――――この地獄めいた訓練兵団での生活で、数少ない癒しを求める俺が、そんなにも滑稽か?」アン?


ベルトルト「ご……ごめん……(すりガラスのような目でこっち見ないで怖い)」

アニ「わ、悪かったよ。そんなに睨まないでくれる……(人殺しの目をしてる)」


 ライナーの精神は順調に崩壊への道をたどっていた。


 ~完~

※アニ乙女やエレンレ○プのSSの原型なので色々ごちゃ混ぜです。

 このSSをボツにした理由はただ一つ。

 どうやってオチ付けりゃいいんだこんなもん。南無八幡大菩薩、どうすりゃいいんだこんなもん。

 そういう理由。


※続いてボツSS第二弾。

~エレン『は? 何言ってんの? パイ○ンじゃねえ女とかありえねーよ普通』


ライナー「……え?」

ベルトルト「……はい?」


エレン「え? でも、はい? でもねえよ。生えてるわけねーよ」

アルミン「完全同意」

ジャン「百理ある」


ライナー「!?」

ベルトルト「!? !??!!?」


 ライナーとベルトルトは混乱していた。

 ここは多くの兵士の卵たちが体を休める男子宿舎の一室である。

 厳しい訓練の続く日々の中にあって宿舎とは、寝て起きるだけの場所ではあるが、入団から二年が過ぎた現在は多少の余裕が出来ている。

 就寝前にしばしの雑談や遊戯に興じることもある。

 そして思春期の男子特有の女性の体に対する興味から発生した猥談―――――ライナーとベルトルトのとある一言が、エレンの発言を引き出したのだ。


エレン『陰毛? は? 何言ってんだよライナー、ベルトルト。そんなもんは即剃る、即抜く、雑草みたいなもんだろうが………』


 そんな、発言を。

 始めは冗談だと思った。あるいはエレンの隠されていた特殊性癖か何かではないかと。

 だが、常識人であるアルミン、皮肉げではあるがくだらない冗談の類を嫌い、何よりエレンを嫌っているジャンが、エレンの発言にさも『当然』と言いたげに同意したことが、ライナーとベルトルトを混乱させていた。


マルコ「生えてたら剃るか抜く。これ人の常識だろ」

コニー「むしろ生えてるとかキモいわ。どこの蛮族だよそいつは」

ライナー「えええええええ!?」


 更に混乱を加速させる、マルコとコニーの同意発言に、いよいよライナーとベルトルトの心中は混沌と化した。


エレン「東洋人は生やしっぱなしらしいぞ」

ジャン「!?」

エレン「まあミカサはこっちの風習に染まってるからキチッと剃ってるだろうが」

ジャン「不覚にも少しホッとしちまったぜ………あそこボーボーの女とか、百年の恋も冷めるわ」

エレン「良くわからんが良かったな、ジャン」

ライナー「…………(どういうことなの)」

ベルトルト「…………(どういうことなんだろうね)」


 どういうことなのだろう。


ライナー「議長。質問がある」

エレン「発言を許可する」

ライナー「叱責や嘲笑を覚悟の上で問うが、どうして陰毛が生えているとダメなんだ?」

ベルトルト「僕も同じ疑問がある。どうしてなんだい? みんなはそれが当たり前みたいに言ってるけど、僕ら山奥にいたせいか、そういう事情には疎いみたいなんだ」

エレン「なるほど、そういう事情があるなら仕方ねえな。アルミン、説明してやってくれないか」

アルミン「任されたよ」


アルミン「まずは衛生面についてだね。シラミなどが寄生するのを防ぐために、剃毛と脱毛は大いに役立つことは知っているね?」

ライナー「言われて見りゃそうだな」

ベルトルト「うん。でも、全部剃るのが当たり前っていう事実を納得するにはちょっと弱い」

アルミン「じゃあ次は本能の領域の話をしよう。男がより若くて美しい女性を本能的に求めるという話があるけれど、これに異論はあるかい?」

ライナー「まあ、無いな」

ベルトルト「見目麗しいに越したことはないし、若い方がいいっていう理由は何となく分かるよ」

アルミン「じゃあ話は早いね。陰毛がない、つまりは幼さのある性器っていうのはさ、その女性が成人した大人でも『幼い』っていう錯覚を覚えさせる。しかもそれが処女だったら? 想像してご覧?」

ライナー「………アリ、だな」

ベルトルト「ライナー!?」

ライナー「ッ! す、すまん。続けてくれるか、アルミン」

アルミン「まあ、そうした「幼さ」から父性的な『守ってあげなければ』という思いを呼び覚ましたりするわけだよ。また、パイ○ンは本来の年齢より若く見られるということに繋がるわけだから、より若くて生殖能力の高い女性を選ぶという種の保存という男の本能から考えると実に合理的だよね」

ライナー「意外と納得できてしまうな」

ベルトルト「まあ、そうだね」

アルミン「有名な画家が描いた絵画を見たことはあるかい? あるいは銅像。女神を描いた絵や銅像だ。彼女たちはえてして裸だろう? 思い出してほしいんだ―――――彼女たちは皆パイパ○だ」

ライナー「ッ! そ、そういえば………」


ベルトルト「言われてみれば、みんな生えてなかったような………」

アルミン「つまり、これはもはや文化なんだ。女性はより清潔に性器を保ち、かつ男性を興奮させるという効果を持つ剃毛と脱毛は当然のマナーなんだよ」

エレン「すなわち生えていない、あるいはきちんと剃毛処理しているというのは衛生的であり合理的であり文化的でありマナーであり何よりエロいということだ。分かったかこのクルピラ野郎」

ライナー「……まあ、分かったよ。でもよ、全員が全員生えてないってのもなんかこう、微妙というか」

エレン「ならば想像してみるがいい。貴様の天使であるクリスタの股間がジャングルの密林めいた樹林で覆われていたとしたら? あまつさえそれがケツの穴の周囲にまで生い茂っていたら?」

ライナー「―――――吐き気がしてきた」

エレン「そうだ。その気持ちを忘れるな」

ジャン「俺は脱毛派だ。つるつるで剃り跡が残ってない白い肌とか最高だろ常識的に考えて」

マルコ「ああ、加えて性器の形がスジだったら極上だね。色素の黒ずんだ沈着の無いひだを押し開くとピンク色の花びらが咲く、なんて考えただけで最高だ」

コニー「ビラビラはみ出てると思うと萎えるよなー。やっぱパ○パンはスジが最高だぜ!」

エレン「異議なし」

アルミン「同じく」

ライナー「目から鱗が落ちたわ」

ベルトルト(………ユミルも剃ってるんだろうか)ドキドキ

 ~完~

※この後の展開として、女性兵士たちの下半身事情が気になった連中がおのおのT字カミソリや毛抜きを手に、深夜の女子宿舎に侵入するとかいううらやまけしからんものを予定。

 汚物は除毛だぁ~~~~~!!

 ボツ理由はキャラが壊れすぎたから。

 あと言うまでもなく進撃の女性陣はパイパンか、生えていても極薄の生えかけであると信じているから。

 生えてる女とかないわー。萎えるわー。っていうか世界規模でみると日本人は少数派ッスよ。ドイツ人みんな永久脱毛っすよ。

 ヌーディストビーチ行くともうなんていうか、私のために用意された天国ですね。フフフハハハ。


~『進撃の麗しきガールズトーク』~


ミーナ「さあ―――――ちんちんの話をしようか」キリッ


アニ「タイトル詐欺の出オチにも程があるわ。あんたの頭部の話なんかして何が面白いんだい?」

ミーナ「なんだと………亀頭って言ったな………殺してやる! 殺してやるぞアニィ~~~~」

アニ「ナランチャやめろいい加減にしないとその首に地獄蹴りカマして中折れさせるよ」

クリスタ「やめてくれる? もうほんとそういうのいいから……ほんと……ほんとに……」

サシャ「帰っていいでしょうか? 厨房で仕込みをしてるν料理人さんのお手伝いに行きたいんですが」

ハンナ「久々の出番だと思ったらこれだよ(失笑)」

ミーナ「ちんちんとセックス! ンフフフフ、これは男を語る上で切り離せない永遠の命題ですよォ」コココココ

アニ「王騎将軍みたいな口調やめてくれないマジで殺意が湧くわ」イラッ

サシャ「そりゃちんちん切り離したらオカマになっちゃいますもんね」ドヤァ

クリスタ「サシャも「わし今うまいこといった」みたいなドヤ顔やめてくれる? いくら世間に天使やら女神やら謳われる私の理不尽セービングスローにも限界はあるのよ?」イラッ

ハンナ「はぁ……女子会で下ネタとか話すのはまあ許容範囲だけど、なんでまたそんな直接的な話題を振ってくるかなあ」


ミーナ「じゃあ聞くけれどねハンナ。貴女は、男が好きなのか? 女が好きなのか?」

ハンナ「え? そ、そりゃ、私はそっちのケはないし、男の子が好きだけど………」ビクッ

ミーナ「では男女の違いとは?」

ハンナ「え? えっと………男の子は力が強い?」

ミーナ「それは決定的ではない。ミカサとかいるし」

ハンナ「……反射神経や耐久力において女性を上回ってる?」

ミーナ「少々役不足だ。外見的な意味合いでもっと違いがあるだろう?」

ハンナ「…………女の子よりも体格に優れている?」

ミーナ「それは確かに明確な違いだ。だが決定的かと言われると少し違う。もっともっともっともっともっと単純なことだ」ニヤニヤ

ハンナ「…………」

ミーナ「…………」ニヤニヤ

ハンナ「言わせる気か!! わかったよ! ちんちんよ! 女にはちんちんないわよ! 言った! 私言ったわよ! これで満足!?」

ミーナ「ンフフフフ」ホッコリ

ハンナ「ブン殴るぞこのやろう」ビキッピキィッ


ミーナ「そうだ。それが最後のいちじくの葉だ。葉っぱを取っ払った時、そこにあるのはムキ出しの男性器だ。ティンコだ。ちんちんだ。股座がいきり立つ!」

アニ「あんたそれが言いたかっただけだろ」

ミーナ「世には男らしい女がいる。女らしい男もいる。だが――――男性器のついた女はいない。女性器のついた男もいない。見た目だけはそれらしく繕うこともできなくはないだろう。だが機能として十全なそれを備えた者はいない」

サシャ「んー………まあ、間違ってはいませんね。ライナーにちんちんついてなかったら好きにならなかったでしょうし、私」

クリスタ「ずいぶんぶっちゃけたね!?」

サシャ「クリスタは別でしょうけどネー」ニヤニヤ

クリスタ「や、やめてよっ!」カァアッ

ハンナ「?? 何の話?」

アニ「(1スレ目を見て来いとは言えない……)ク、クリスタはより精神的なつながりの方を重視して、そこに男女の性差とかはあまり意識しない天使って話さ。で? ミーナは何が言いたいんだい?」

ミーナ「男が好き=ちんちんが好きってことよ。言わせんな恥ずかしい」

アニ「私はあんたと友達というポジションにある自分が恥ずかしいよ」


ミーナ「邪ッッ!!」

アニ「」ビクッ

ミーナ「カマトトぶんなや……いいか? ちんちんは男の一部だ。それを含めて男なんだ。ちんちんが嫌いで男が好きなんてのは、有り得ない。欺瞞だ。全てを受け入れてこそ本当にその人のことが好きだと言えるのではないかね?」ドドドドドド

アニ(なんだこの謎の説得力と迫力は………ッ!? わ、私が精神的なプレッシャーを受けているというのか? ミ、ミーナなんぞに?)

ハンナ「い、異議あり」

ミーナ「言ってみろ」

ハンナ「そ、その、ちんちんは確かに男の子の一部だけど、その要素を抜きにしても」

ミーナ「ほう………貴様、ちんちんをえり好みできるほどちんちんに造詣が深いのか?」

ハンナ(なんだその質問!?)

ミーナ「どうなんだ? ン? コニーのちんちんは嫌いか?」

ハンナ「き、嫌いとか、そういうんじゃなくてね? コニーってお調子者で子供っぽいし、ちょっとおバカだけど、家族思いで情に厚くて、不器用ながらも向上心があって……」


ミーナ「コ ニ ー の ち ん ち ん は お 嫌 い で す か ?」ニコリ


ハンナ(うわあこいつめんどくせえ!!)


ミカサ「何の話をしている………?」ヌゥウウッ


ミーナ「ひっ!? 妖怪クレイジーサイコアブドミナルマッスル………」ビクッ

アニ(来た!)

サシャ(メイン腹筋来た!)

クリスタ(これで勝つる!)

ミカサ「私のいないのをいいことに、何やらイヤらしい話をしているようだが……誰か説明してくれない?」ゴゴゴゴゴ

ミーナ「ア、アワワワワ…………」ガクガク

クリスタ「かくかくしかじか」

ミカサ「なるほど、エレンの腰つきはエロいということね。ミーナ、私はとても残念だ。貴女にはこれまで貴方には散々に教育してきたつもりだ…………不健全なことは慎めと」

ミーナ「フッ………ならばミカサ、あなたなら私の言論を論破することができるとでも?」

ミカサ「言い残すことはそれだけでいいか淫猥ヘッド」ン?

ミーナ「えっ、ちょ、待って。なんで拳振りかざしてんのやだこの子怖い………は、話し合いで解決しましょ? ねっ? ねっ?」ビクビクッ


ミカサ「話し合い? 勘違いしないでほしいのだが、これは躾だ。信賞必罰は軍の基本。東洋文化でもKEJIMEとOTOSHIMAEは重要。言葉で躾けても聞かない馬鹿な子供には、拳による教育が必要不可欠だと、昔からそう決まっている」

ミーナ「そ、それって体罰ですよね。イヤだわー、前時代的だわー、暴力反対。倫理的じゃないのはどうかと思う次第です」ブルブル

ミカサ「倫理? 何を言っているの? 腕力、兵力、軍事力、そして暴力……武力制裁および侵略行為はいつの時代も現役最先端。倫理の外にある過酷にして冷徹な『現実』よ。そう――――世界は残酷なのよ、ミーナ」

アニ(ヤバい。非の打ち所のない正論だ)

クリスタ(あ、知ってる。『これアカンやつや』ってやつだ)


ミカサ「口の中で砕けた歯がカラカラ鳴る音を聞けば、貴女もきっと理解してくれるだろう………振り下ろされる暴力の前に、言葉なんて無意味だってこと」ニコリ


ハンナ(やっぱこの子は怖いわ…………こと暴力を振るうことに関しては、その機会において微塵も躊躇しない)

サシャ(さっちゃん知ってるよ。怒ったミカサの前では理屈なんて無意味だってこと)ナムナム


ミカサ「ハイクを詠め、ミーナ=サン」first comes rock……


ミーナ(怖ェエエエエ、怖ェエエエエ………ミカサやっぱ怖ェエエよぉおおおおお!!)ガクガクブルブル


アニ「いや、待ちなミカサ」ガシッ

ミカサ「アニ!?」


アニ「ミーナは確かに淫猥で淫乱で淫逸なド変態マーラヘッドだ。しかし有無を言わさずボコるんじゃ、こいつは反省しない。きちんと何が悪いのかを論破したうえでなら、後々のためにもなる」

ミーナ(実は私の事嫌いだろ、アニ。しかし、これは千載一遇のチャンス! これでミカサが私を論破できなければ、今後は好き放題に下ネタをブチ撒けることができるというものよ!)イヒヒヒヒ

ミカサ「…………なるほど、一理ある。アルミンも昔、いじめっ子に殴られた時には『僕の主張を否定できないから暴力に訴えるんだろこのDQN!』と煽っていた。よろしい、ならば主張してみなさい」キリッ

ミーナ「ブヘェエエエエwwwwwそのスカしたツラをヘコましてやんよwwwww男が好きってことはちんちん好きってことだろwwww違う? 言い返してみwwwwできるwwwwもんならwwww」プギャーーッ

ハンナ(うっぜえー☆)イラッ

クリスタ(天使も一瞬で堕天するレベルでうざい)イラッ

アニ(止めなきゃ良かったな)イラッ

サシャ(あーあ………もう擁護できませんよ、ミーナ)ナムナム

ミカサ「…………」

ミーナ「おっwwwwおっwwwwどうしましたwwwww黙っちゃってwwwww言い返せないんですかなwwwww本気出していいんす―――」


ミカサ「…………? 私はエレンとアルミンのちんちんは見たことがない。だけど、あの二人のことは好きだが?」キョトン


ミーナ「……………アポ?」


アニサシャクリハン((((完全論破キタコレ))))


アニ(逆転の発想……かつて(処女)の私ならばいざ知らず、今(精神的非処女)の私には思いつかなかった反論!)

ハンナ(むしろどうして思いつかなかった私……そうだよ、ちんちん見たことなくても男の人好きになるじゃん……そうじゃん……)


ミーナ「ちょ、ちょっと待て……そ、そんなふざけた理屈が……あ、あれ? で、でも、う、うん? あれ? え?」

ミカサ「ちんちんがついてなくとも、私はアニやクリスタ、サシャやハンナのことは好き。大切な仲間だと思っている。それはおかしなこと?」

ミーナ「」

ミカサ「それにちんちんがついてなくても、私のお母さんは私のことを愛してくれている。それはおかしなこと?」

ミーナ「」

ミカサ「答えて」

ミーナ「」

ミカサ「どうしたの? 先ほどまでの余裕っぷりが消えている。 笑 え よ 、ミ ー ナ」

ミーナ「」ガクガクブルブル


クリスタ(こ、これは酷い……)

サシャ(情に深いミカサならではの発想ですね。まあ私は最初から気づいていましたけれども)ニヤリ


ミカサ「で? なにか申し開きはあるか?」ン?

ミーナ「ありません。ですが一つだけお願いがあります。せめて顔だけは………顔だけはやめてください………」

ミカサ「よろしい。では腹筋に力を入れましょう。後は祈りなさい」

ミーナ「はい」

ミカサ「ファイナルアッタクライドゥ・ディディディディケイド!!」

ミーナ「ぎゃああああああああああああああああああああああああ」

アニ「いい蹴りだ」

クリスタ「これ、どうオチをつけるの?」

ハンナ「まあ、ちんちんの有無なんて、私たちの友情にはなんら関係ないってことで――――つまりは」

サシャ「ええ。私たち――――」


ミカアニクリハンサシャ「「「「「仲間だもんげ!!」」」」」

ミーナ「」ビクンビクン


【完】

※近いうちにメシテロSS投下予定。つーかドリフもいい加減に終わらせたいね。

 ちなみに上記のSSの元ネタは実体験だって言ったら信じるかい?

※テロ第一弾投下

ベルトルト「塩ラーメン」


 休養日の夜、兵士食堂はにわかに活気づいていた。

 そもそも第104期訓練兵団が結成されて以来、この食堂が賑わいを見せないことがあっただろうか。

 食堂とは読んで字の如く、食を提供する建物である。しかし彼らが入団してくるまでの兵士食堂は会話こそあれ、食事を楽しむという発想すらない場所であった。

 壁内の食糧事情は乏しく、肉を口にできる機会すら滅多にない中、出てくる食事はどれもこれも質素と呼ぶにも烏滸がましい粗末なものばかりであった。

 日々厳しい訓練や任務に明け暮れる彼らにとっての癒しの場所とは、ただ寝起きするだけの硬いベッド以外にはありえなかったのだ。

 だが、今は違う。


アニ「うん。これはいい。実にいい。何がいいって、気取ってないのがいい」チュルチュル

ベルトルト「分かるかい、アニ」

アニ「繊細な味付けをしておいて、まるでテキトーに作りましたよって感じに仕立てるの、あんた本当に上手だね」

ベルトルト「そういうの好きだろう? 気取ってないの」

アニ「ああ。変に小賢しいだけで深みの無い料理は嫌いだよ。これは潔くていい」


 そう言って見下ろしたアニの視線の先には、大きな丼の中に浮かぶ黄金色のスープと、小麦粉を叩いて伸ばした麺。ベルトルト特製の「黄金スープの塩ラーメン」があった。


サシャ「ベルトルトは器用ですねえ。小麦粉を練ってこんなのを作っちゃうんですから………あっ、やべっ、うめっ!! うんまっ!」ズゾゾッ、ゾゾッ

ライナー「鶏ガラベースに香味野菜を煮込んだ出汁に塩ベースのタレで造ったスープか………すげえな。器の底が見えるほどのこの透明感ったらどうよ?」ゴクリ


 ベルトルトの作った黄金スープの塩ラーメン。これは実に潔いものだった。

 具は分厚く切ったチャーシューに、しょうゆ味のメンマ、油通ししてサッと炒めたシャッキシャキのほうれん草、無造作に輪切りにした白ネギ、それだけである。

 麺は黄金色をした中細のたまご麺で、啜るとさほど抵抗もなく口中へ躍り込む。ぷるんっとした弾力のある麺は噛みしめるたびに歯を喜ばせ、ほのかな卵の甘味が口中にまろび出てくる。

 スープの塩味が麺の微かな甘みを際立たせ、麺の甘味が塩の風味を引き立てる。この二つの黄金色は夫婦のように相性がいい。

 啜った時に紛れ込む、ネギやほうれん草のしゃきしゃきとした感触も良いアクセントだ。

 ――――おいしい、とアニは思った。

 余計な感想こそ無粋。ひたすらにズズッと下品な音を立てて麺を啜り、ゴクゴクと喉を鳴らしてスープを飲む。

 それはただただ、旨い。

 気取った料理も、格調高い料理も、時には悪くないだろう。だが、兵士なんてものの普段食べるものは、こういうのでいいのだ。こういうので。


 現在、食堂ではライナー、ベルトルト、サシャの料理が大人気だった。

 他と隔絶した旨さを誇る彼らの料理は、香り、味、見た目、どれをとっても素晴らしく、食べ盛りの訓練兵たちの心をつかんで離さない。


クリスタ「なんかホッとするね。鶏のいい香り。………脂っこくないのが嬉しいよ。塩ってこんなにも奥深い味わいだったんだね」ツルルルッ

ハンナ「付け合わせの、このメンマっていうのが凄くいい仕事してる。お醤油の味が染みてて、スープと一緒に頬張るとまた違った味わいが口の中に広がるの。何より、食感が面白いね」コリコリ

ベルトルト「もっとガツンとした味がいい人は、追加の塩コショウやおろしにんにくを入れるといいかもね。味に変化が出るよ」

コニー「入れてみるか。どれどれ………はふっ、ずるるっ………っかぁ!! 効くなぁ!!」ウメェ

ミカサ「ふむ……ちゅるっ、ずるっ、ずるるっ……はぁ、なるほどなるほど」ウマイ

ジャン「スープに具と小麦粉の細切りをブチ込んだだけのモンが、なんでこんな旨いかねえ………このブ厚いチャーシューの濃厚な味わいと言ったらどうだよ? そのくせ唇で噛み切れるほどの柔らけえ」ホロホロッ

マルコ「そうだね。このチャーシュー、くどいほどの味付けの癖に、さっぱり旨み系のスープと合わさると実にいい塩梅で………どちらか一方だけじゃあ飽きが来るのを、鉄壁なまでに防いでる」オイシイ

エレン「ああ、もどかしい。メシを思いっきり掻き込みたい気分だ」ズルズルッ、ゴクゴクッ

ベルトルト「食べ盛りの兵士は、そう言ってくると思ってね」ゴトッ


 ベルトルトは手元のフライパンで作ったそれをお玉で掬い上げ、カウンターに乗せた皿によそり、エレンの前に差し出す。


ベルトルト「―――――炒飯作ったよ」


エレン「よもや、お前が俺たちの神か?」

ミカサ「ベルトルト、今日ほどあなたを大切に思った日はない」

アルミン「僕の体重がどうなったっていい………カロリーがどうなったっていい! だけど、その炒飯だけは、絶対食べる!!」

ベルトルト「いっぱいあるからあわてず食べてね」ニコニコ

トーマス「あっ、やべっ!! これやっべ!! コメッ! 香ばしい油に包まれた旨みッ! ネギッ! 甘味さえ感じるほどに香り高いッ!! しかもほんのり酸味が効いてて後味がしつこくな――――酸味?」

ベルトルト「ああ、気づかれちゃったか。梅をつけて天日干しした漬物、梅干しっていうのを細かく刻んで入れたんだ。シソも入ってるから爽やかでしょ」

ダズ「うみゃあああああ!! こりゃいくらでも食えるぞッ!!」

ナック「塩味のスープと交互に頬張るとこれまたいい加減でよォ~~~~~!!」


 しかし、そこに待ったをかける者がいた。ライナーである。


ライナー「甘いぞベルトルト。これほどの味わいの塩スープには、このシンプルな銀シャリこそ相応しい。油でコーティングされた焼き飯など、あからさまにカロリーオーバーよ!!」パカッ

クリスタ「あ、おじやみたいにして食べたい。私は白米がいいな」

ジャン「俺も白米」

コニー「おれは炒飯がいい」


マルコ「僕はどっちも少しずつ貰おうかな」

エレン「あっ、ずりー」

ジャン「さすがは優等生。いいとこどりだな」

ベルトルト「まぁまぁ、どっちも美味しいよ。僕とライナーが保証する」

サシャ「うはぁ、この炒飯、梅がカリッカリです! 炒飯は食感に難のある食べ物だと思ってましたが、こんなのもありですね!!」ガッガッ

アルミン「うん。脂っこくなりがちな炒飯が梅の酸味と香りで程よく中和されている。むしろ食べるとどんどん食欲がわいてくる!」

エレン「口の中が炒飯でいっぱいになったところで、塩ラーメンのスープを一啜り」グビ

ミカサ「同じく」ズルッ

アニ「当然」ゴク

エレン「ッ………あぁ、やばいわー」プハー

ミカサ「うま………うめっ………うままっ」プハ

アニ「はぁ………いいね。おいしい」プハ


クリスタ「こっちのスープおじやも美味しいよぉ…………旨みたっぷりの塩スープに、青ネギをさらに散らして、スープと一緒にご飯をパクつくと………」アムッ

ジャン「あ゛~~~~~ッ!! うめえっ!! スープを飲んでるんじゃなくて、実に『食ってる』って感じがするッ!」ズゾッ

マルコ「ずるずる行けちゃうね」チュル、ズズッ

ベルトルト「そんなあなたにはこれ。おじやの上に、梅肉を潰したヤツをちょっぴり乗せると」

クリスタ「いやあああだめだめだめだめ、これは駄目でしょう、ベルトルト!」オイシスギル

ジャン「うわぁ、ひたすら掻き込むだけだったところに、酸味の横槍が入ってきたな」ウメエ

マルコ「旨みさっぱり系塩スープに更なる塩気と酸味が加わって、まるで僕たちの胃袋は水門の開いた激流の河のようだ!!」ウォオン

ライナー「こっちは肉味噌だ。さっぱりが一転して野獣のように味覚を攻めてくるぜ」クックック

ハンナ「きゃあああああだめええええデブになる! デブになっちゃうよう!!」ガツガツ

ミーナ「豚に、豚になる…………って私既に豚でしたーーー! マルコ専用の雌の豚でしたぁーーーー!! 家畜小屋出身でしたーーーッ!」ブゲエエエ

マルコ「エターナルフォース腹パン」ドズッ

ミーナ「ミーナは死ぬ」ガフッ


サシャ「我慢できなくなったのでこっちも作りました! みなさーん! 餃子が焼きあがりましたよー!」

ハンナ「サシャ大好き! だけど大嫌い! よくもそんなカロリーの高そうでかつ旨そうなものをッ!」

コニー「うンま………カリッとした皮を食い破ると、アツアツの肉汁とニラの香りがぷぅーんってよお………」ウメエ

トーマス「こ、こっちはエビ! エビ餃子だぞ!! なんて芳醇な甘みなんだ………噛みしめるたびにプリッとして、歯が喜んでやがるッ!」

ν料理人「更に、胡麻油でさっと炒めたザーサイとネギの和え物ですのー。教官方はビールもどうぞ」ゴトッ

ユミル「おっ、ウマそう」

キース「いただこうか」

リヴァイ「腕を上げたな。タツジン=シェフとまではいかんが、ツワモノ=シェフ並にはなれたようだ」

ν料理人「まだまだですの。あの三人………いえ、四人の腕前には程遠く」

リヴァイ「そうか……ん? 待て、四人? 三人は分かるが、もう一人は誰のことだ?」

ν料理人「そうですわね………あの方はあまり目立つのがお嫌いのようでして……」

リヴァイ「言うつもりはねえってか?」

ν料理人「まあ、あれだけの腕を持つお方ですから、近いうちに嫌でもお目にかかることになるかと」

リヴァイ「ほー、そりゃ楽しみだ。………おおっ、このザーサイ旨いな。やはり胡麻油で炒めると風味が違うな。ビールもう一杯寄越せ」

ν料理人「はいはい、ただいまー」


 ズルッ、ズルルッとラーメンをすする音。

 ガツガツ、ムシャムシャと炒飯を貪る音。

 ザバッ、ジュクジュクッとおじやを掻き込む音。

 カリッ、ジュワッと餃子が弾ける音。

 シャキッ、シャクッとザーサイの噛み切られる音。

 そして、笑い声。

 兵士食堂の夜は、今日も賑やかで、騒々しくて――――楽しそうな音と声で満たされていた。


『続く』

※腹に肉が溜まっても良いと言う覚悟!
 ラーメンに餃子に炒飯にザーサイにビール。こんなにも旨い庶民向けのグルメがあるだろうかッ!

 >>1はこれが大好きです。でもデブりたくないので運動します。


※飯テロというのは少し違うような気もする。


アニ「カキ氷」


 うだるような暑気を孕む真夏の炎天下でも、若き兵士たちの訓練の日々は続いていた。

 その日は特に暑い日だった。熱波のような真昼の灼熱地獄を乗り越え、ようやく日が落ちたというのに、肌にまとわりつくような粘ついた暑さがトロスト区内に吹き溜まっている。

 電化製品など存在しない文明である。クーラーどころか扇風機すらないのだ。

 暑気払いなどせいぜいが打ち水か、北部の避暑地へと遠出するぐらいしかない時代である。

 職務の性質上、自由な遠出など夢のまた夢である兵士などは、井戸の冷たい水で冷やしたスイカを齧ったり、水を張った桶に足を浸すなどして暑さを凌ぐしかない。

 ただひたすらに暑さに耐え忍ぶのみ。そのはずだった。

 その年までは。


アニ「というわけで、暑気払いだ。冷たいものを食べて気を引き締めようじゃないか」


 巨人の大陸より秘かに伝えられた文化の中には、より効率的に氷を保存運用する術があった。真夏でも氷が安価に手に入るようになったのである。

 暑さと訓練疲れでヘトヘトになっていた訓練兵たちに、アニが差し出したそれは、ひんやりとした冷気を放つ雪山の如ききらめきを放っている。

 言わずと知れた夏の名物――――カキ氷であった。


アニ「果物から作ったシロップや蜜は各自で。トッピングは砂糖蜜シロップ、練乳、ミルク、キャラメルソース、白玉、キャラメル玄米、クラッシュカラメル、クラッシュチョコ、ココアパウダー、その他諸々お好みで」


 天然氷を削って作られたその氷山の頂に、各々が好みのシロップや蜜をかけ、歓談しながら嬉しそうに頬張っていた。


エレン「つーか氷を食うと言う発想そのものがなかったわ。やべえ、メチャクチャ旨いんだけど」シャクシャク

アルミン「うん、おいしいねえ。僕はキャラメル玄米ミルクにしてみた。キャラメルを纏った玄米のサックサクの心地よさといったらないよ」サクサク

エレン「一口くれよ。俺の生バナナミルクと食べ比べてみようぜ」

アルミン「いいよ。あー、これも美味しいね」

エレン「バナナとミルクって本当に合うよな。トロットロだ。氷と一緒に口の上でトロける」

アルミン「あー………正直この暑さにはホント参ってたからなぁ、染み入るよ」シュクシュク

ダズ「おっ、炭酸水かけて食べてみてもウマいぞ。シュワシュワしてる」

ナック「ふぁー………腹ん中から冷たくなってく感覚が新鮮だ………気持ちいーなー」

サムエル「折角だ、いろいろ試してみようぜ」


ハンナ「私は黒蜜きなこー♪」

クリスタ「私はマロンフロマージュー♪ コーンフレークいっぱいかけるのー♪」

ミカサ「わ、私は、べ、ベリーミックスー♪」←恥ずかしいけど乗った

ミーナ「私は○んこー♪」

マルコ「何故伏字にした? あんこだろ? ん? 何故「あ」を伏字にしたか言ってみ? 言い残すことあるだろ?」ミシミシ

ミーナ「い、いっぱいあります………お、お許しを………つ、つい、出来心なんスよ、ヘ、ヘヘ………あ、ぎ、ギブ、ロープ、ロープ………」ブクブク

マルコ「ロープなどない。ここが貴様の終着だ………」ミキッパキッ

ミーナ「アナヤ! ブレイク………ブレェイク………」ピクピク


 誰も血の泡を吹くミーナを見てもうろたえない。訓練兵はうろたえない。

 それはいつも通りの光景である。


ベルトルト「カキ氷かー。久しぶりだねぇ。故郷じゃよくアニが作ってくれたっけ」

ライナー「これぞまさしく氷の女」

アニ「あんた氷の女って言いたいだけだろカキ氷だけに。自分でもちょっと複雑な思いだよ」


ライナー「うん。マンゴーとココナッツはやはり合うな。どちらも互いの甘さを引き立てている…………ベルトルト、なんだ、それは」

ベルトルト「砂糖蜜シロップかけ。これだけ美味しい氷なら砂糖蜜シロップがシンプルイズベストかなって」

アニ「あんたはなんというか、そういうところジジむさいよね」

ベルトルト「そうかな? 結構イケるよ? アニは何食べてるの?」

アニ「苺みるくに、ぶどうに、キャラメルに、ブルーベリーに、メロンに、ブルーハワイに、レモン。名付けてレインボートッピング」

ライナー「おまえホントそれ好きだよな。最後の方は色が茶色くなって味が混ざっちまうだろ」

アニ「うるさいね。それもまたオツなもんだよ。あんたこそマンゴーにココナッツとか全然似合わない」

ライナー「うっせ。俺はこれが好きなんだよ」

ベルトルト「まあまあ、二人とも仲良く仲良く」


 遠い故郷であったありし日を焼直すように、元巨人の三人は口がましく喋りながら、氷を歯んでいた。


サシャ「おいちぃですね、コニー、ジャン」シャクシャク

ジャン「ああ、地獄にホトケってやつだな。こりゃ今夜はスッキリ眠れそうだぜ」シャクシャク

コニー「暑さでブッ倒れたやつらもいたからなー。アニも気の利いたことしてくれるぜ」シュクッ

ジャン「コニーは何食ってんだ?」

コニー「キャラメルソースとチーズソースにクラッシュカラメルまぶしたヤツ」シャクシャク

ジャン「ゲテモノ臭くねえか、それ」

サシャ「って思うじゃないですか?」

ジャン「え? ウマいのかそれ?」

コニー「おう。サシャにオススメされた時はどうかと思ったが、意外とイケんだよコレ。ホレ一口」

ジャン「おう………ほう? マジだ、旨いなコレ。チーズっつってもアレか、レアクリームチーズか。キャラメルの香ばしさとレアチーズのまろやかさがマッチしてんな。散らしたカラメルのほろ苦さも相まってコクがある」

サシャ「でしょでしょ?」


コニー「そういうジャンは何食ってんだ、それ? フルーツてんこ盛りだな」

ジャン「白熊っていうらしい。ホレ一口」

コニー「サンキュー…………おお、確かにいいぜこれ。フルーティっつーか、瑞々しいっつーか、果物の甘味が際立ってんな。食感もいい」

ジャン「だろ? 砂糖の甘ったるさは好きじゃねえっつったら、サシャがコレがいいっつってな」

サシャ「美味しいでしょう」ドヤァ

コニー「ドヤ顔うぜえやめろ」

ジャン「で、サシャはなんだそれ?」

サシャ「さつまいもミルクです。ほくほくした甘さとミルクのクリーミーな甘みがベストマッチですよ」

ジャン(芋女め)

コニー(けどウマそーだな、それ)


 互いに食い比べをしながら、やいのやいのと騒がしい三人組であった。


コニー「そういえばよ、氷って噛むとキーンってすることあるじゃん?」

ジャン「あるな」

サシャ「ありますねえ」

コニー「これ全然キーンってしねえんだけど。すげえな。どうなってんだ?」

ジャン「そういやそうだな」

サシャ「謎ですね。アルミンは知ってます?」

アルミン「冷たいものを食べると頭がキーンとするのは、急激に冷えた口内を温めるために、一時的に大量の血液が使われて炎症が起きるからだよ。細かく薄く削った低温の氷は口どけが良くて、口内が冷えにくいんだ」

ジャン「なるほど、わかった」

アルミン「流石はジャン」

コニー「なるほど、わからん」

サシャ「なるほど、わかりません」

アルミン「流石はコニー、流石はサシャ………要するに、カッチカチに冷たい氷じゃなくて、解けかけの氷使ってるから、頭が冷えて痛くならない。そんな風に思えばいいよ」

コニー「へー」

サシャ「アルミンは物知りですねえ」


キース「うむ………この抹茶はいい。よもや茶葉をこのように使うとは恐れ入った。この厳かな甘みと渋み、冷たさが実に心地よい。粉末から茶を自ら点ててかけて食うというのも、真に粋だ」

リヴァイ「こっちのキャラメルエスプレッソかけもなかなか。苦味と甘味の対比が実に涼やかだ。…………ん? ユミル、それはなんだ」

ユミル「焼酎と黒糖混ぜてぶっかけた。超ウメーんですけどコレ」シャクシャク

キース「一口くれ」ガタッ

リヴァイ「俺はいい………今から作ってくる」ガタッ

ν料理人「それには及びませんの」スッ

リヴァイ「? これは?」

ν料理人「コメの酒とチョコを混ぜたシロップですのよ。ウィスキーボンボンが美味しいなら、これとチョコも合うと思いまして」

リヴァイ「そんな安易な発想でウマいものが……………旨いな、オイ。寄越せ」

ν料理人「キース教官もどうぞ。こっちはウィスキーと合わせてありますの」

キース「うむ。……………良いな、これは。酒好きにはたまらん、染みる味だ」


 大人三人は大人のカキ氷に舌鼓を打っていた。


エレン「チュー」

アルミン「チュー」

ミカサ「チュー」

アニ「チュー」

エレン「…………この溶けた氷とシロップの混ざった汁もまたなかなか」チュー

アルミン「クセになるね」チュー

ミカサ「各種ベリーが混ざり合って、すごく美味」チュー

アニ「…………なんていえばいいんだろう、混沌とした味だこれ」チュー

ライナー「それもまたオツなんだろ? だから言ったろうが」ワハハ


 こうして熱帯夜は更けていく。

 ふわっとした氷が、シャリッ、シャクッと掬われては、じゅわーっと口中で溶けて消える。

 終わらぬ季節はない。

 幾千幾万と繰り返される一夜もまた、真夏の氷のように溶けて還っていくのだろう。


『続く』

※最近のマイブームはカキ氷。カキ氷専門店のカキ氷の旨さは異常。お値段はそこそこ張りますが、旨さは的屋の数十倍を保証。

 九月いっぱいまでカキ氷やってるところは結構あるのでお早めに。

 熊谷の雪くまはオイシイですネ………。

 熊谷『慈げん』とか東京日暮里の『ひみつ堂』とかチョーおすすめ。

 リッチマンは赤坂の『虎屋果寮』で宇治金時もいいかも。

 もう夏も終わりですね。


~ミカサ『私の同期が駆逐系過ぎる』~


 その爽やかな朝は、私にとって地獄だった。


ミカサ「おはようア………ア、アニ?」

??「おはよう、ミカサ」ムキーン

ミカサ「ちっ、近寄るなッッ! 何だ貴様は! アニをどこへやったッ!!」ジャキッ

??「アニ? 誰だいそいつは」ムチンムチン

ミカサ「むしろ貴様が誰だ!?」

アニ「誰って………私だよ、アブ・ドミナブルハートさ。寝ぼけてこの腹筋を見忘れたかい? アブッ!」バキバキッ

ミカサ(極限にまで鍛え抜かれたその腹筋はまさに―――――ダイヤモンドッッ


???「朝カラ騒ガシイナ………一体ナンダッテイウンダ」

ミカサ「そ、その声はユミル――――――」

???「?」ムッキムキ

ミカサ「じゃない!? 貴様も誰だ! ユミルをどこへやった!!」

ユミル「誰ガユミルダ………マッスル、ソウ呼ビナ」ムチーン

ミカサ(肥満―――!!? 否!! 肥満(デブ)ではない!!! よく絞り込まれた……とてつもなく巨大な筋肉ッッ……!)

????「どうしたのミカサ。朝から大声出して」

ミカサ「ヒ、ヒストリア! よ、良かった、なんだかみんなが変――――って貴様も誰だ!?」

クリスタ「ヒストリアの名は捨てたよぉ………今の私は、スパルタ・レンズ」ムキーン

ミカサ(どこのスリーハンドレッドだよなんだよなんなんだよそのおぞましい上腕二頭筋)


ユミル「流石ハ私ノ天使スパルタダ………見事ニバランスノ取レタ素晴ラシイ肉体美ダ」グワシグワシッ

クリスタ「やんっ、も、もうマッスルったら、そんなとこ(大胸筋)触っちゃダメだよぉ、ピクピクしちゃうよぉ」ビクンッビクンッ

ミカサ「OH………」

アニ「アブッ、アブッ、アブッ!!」フンフン

ユミル「オオ、朝カラ腹筋カイ………精ガ出ルナ、アブ」フフ

アニ「早朝の腹筋二千回は日課だしね。これをやらないと、どうにも朝メシの鶏のササミが美味くないんだよ」ギチッミチッ

クリスタ「マッスル、私たちも筋トレしよ!」サイドチェスト

ユミル「フッ、ソウダナ、私ノ天使………終ワッタラ一緒ニ、プロテインヲ飲モウゼ………」スクワット

クリスタ「うん/////」ムキムキン


ミカサ「く、首から上だけ元のみんなの顔のままだなんて、なんて恐ろしい光景………くっ、こ、こんなところにはいられない!! 誰か、誰かまともな人はいないのか…………!!」ダッ


サシャ「ウォールローゼ・ダンベル村出身、サシャ・ブルァァァウス………(CV:わかもと)」ムキムキ

ミカサ(ウホッ、いい声………)

ハンナ「ジャック・ハンナーだ……明日強くなるためのトレーニングなどたかが知れている………」ムチムチッ

ミカサ(咬合力ヤバそう)

ミーナ「マーラ・カリデケェナ」ムワッ

ミカサ「ホッ、ミーナはいつも通りだ………相変わらず裏筋すごいですね」

ミーナ「それほどでもない////」ポッ

ミカサ(うわ、充血した。きめえ)




ミカサ「…………なんだ、夢か」



『完』


~『後日談』~


ミカサ「今日は夢見が悪かった」ゲッソリ

エレン「へー、どんな夢なんだ?」

ミカサ「思い出したくもない」ブルブル

アルミン「ミカサがそう言うなら相当だね。ところでミカサ、今日は模擬戦を頼めるかな」

ミカサ「私と、アルミンで?」

アルミン「ううん。僕とエレンで、ミカサと対戦するんだ。ちょっとミカサにも対抗できる工夫がついたんだよ」フフフ

エレン「今日こそミカサに勝つぜ?」ニヤリ

ミカサ「それは――――………楽しみだ。是非やろう」


 そういうことになった。


~訓練場~


ミカサ「さあ、やろう」バキバキ

エレン「待て、ちょっとした準備がいるんだ」

ミカサ「準備?」

アルミン「エレンの巨人化能力が成長したのか、ちょっと変わった能力が使えるようになったんだよ」

エレン「別に17メートル級になってミカサとバトるわけじゃないから安心しろよ」

ミカサ「分かった。それじゃその準備、を………え?」


 メキョメキョと音を立てて、エレンの身体が変形していく。


アルミン「エレンは巨人化能力のちょっとした応用で武器化できるようになったんだ。“武態”といってね。その威力は使う者の能力次第…………」

ミカサ「いや、その理屈はおかしい」


 エレンの肉が、骨が、関節がイミフな方向に曲がっていき、とうとう…………け、剣に変わったァーーーっ!?


アルミン「そしてェェーーーェ!!」


 ボンッ!!!


ミカサ「!?」


 アルミンが注射器を腕に突き刺した途端、背丈が急に伸びて大人の…………いや、3メートル級巨人の背丈へと変わり、それに伴って筋肉が膨れ上がった!

 物凄い威圧感である! 何せ筋力は肥大化しているのに、顔立ちは中性的なアルミンのままである。


ミカサ「やめて!! せっかくあのマッチョなみんなのことは記憶の底に封印指定していたのに!!!」

マッチョミン「僕はエレンの力を最大限に発揮する薬物(ドーピング・コンソメスープ)を持つ!! 僕達親友は二人でひとつ!!」ゴゴゴゴゴゴゴ

エレン「行くぜミカサ! 覚悟はいいかァァアアア!!」

ミカサ「夢なら醒めてェェェエエエエ!!!!」





ミカサ「ゆ………夢、かッ…………」ゼェゼェ

『完』



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エレン『クリスマス撲滅兵団?』


※クリスマス特別企画SS。世界観は、というかなんかもう何もかも壊れてる。


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 12/24

 その日、人類は思い出した。

 リア充に支配される一日の恐怖を……。

 リア充の笑顔に囲まれる、耐え難い屈辱を……。




 ――――忘れられない夜が来る。


ピクシス「大隊総員―――傾注!」


 ウォールローゼの壁上にて、叫ぶ男がいた。

 その眼下に居並ぶは、兵装に身を包む兵士たち。

 男もいる、女もいる、少年がいる、少女がいる、中年の男女がいる。

 そこには調査兵団員がいた。駐屯兵団員がいた。訓練兵団員がいた。

 年代も、出身地も、所属も、役職すら異なる男女入り乱れた兵士たち――――およそ千人。

 一個大隊に迫る彼らは、誰もが敬礼をして壁上の老人――――ピクシスの言葉を待っていた。


ピクシス「―――諸君、ワシはクリスマスが嫌いだ」


 ピクシスはそうのたまった。

 酔ってはいない。この日に限り、彼は酒を断つ。

 それはさほど大きな声ではなかったが、兵士たち誰もがその言葉を聞いた。


ピクシス「諸君、ワシはクリスマスが嫌いだ」


 そして繰り返す。怨念が篭ったその言葉を。


ピクシス「諸君、ワシはクリスマスが大嫌いだ。

 カップル共が嫌いだ。既婚者共が嫌いだ。愛人関係が嫌いだ。乳繰り合う男女が嫌いだ。

 クリスマスイブが嫌いだ。クリスマスツリーが嫌いだ。クリスマスパーティが嫌いだ。クリスマスプレゼントが嫌いだ。

 クリスマスソングが嫌いだ。クリスマスケーキが嫌いだ。クリスマスデートが嫌いだ。クリスマス性交が嫌いだ。

 マリアで、ローゼで、シーナで、家庭で、街中で、職場で、壁上で、王城で、

 この壁内で行なわれるありとあらゆるクリスマスイベントが大嫌いだ」


 雲間から差し込んだ月明かりが、ピクシスの口元を僅かに照らす。

 ―――ピクシスは笑っていた。


ピクシス「聖なる夜は誰かと一緒に過ごすのが当たり前、という空気が嫌いだ。二十年前、ふと気づくとクリスマス当日で「ああ、今年も一人寂しく過ごすんだな」と気づいたあの日、ワシはスーパーサイヤ人に覚醒した。

 クリスマスソングの鳴り響く往来のど真ん中で乳繰り合う連中が嫌いだ。連中の幸せそうなマヌケ面を見ていると、衝動的にうなじを削ぎ落したくなる。

 仕事帰りに立ち寄った店内で幸せそうに食事を楽しむカップルどもが嫌いだ。右を見ても左を見てもカップルだらけな状況で、テーブルを唯一人で占領するときなど心が折れる!!

 リア充気分でうかれる連中が自爆する様などもうたまらない! ルンルン気分で彼女との待ち合わせ場所で待機したものの、何時間たっても彼女はやってくることなく、自分が実はキープだったと気付いた時の男の表情には感動すら覚える。

 恋人や夫婦がクリスマス当日に破局し、我々と同じ側へと落ちてくるのも最高だ!

 クリスマス当日にドタキャンされ一人とぼとぼ歩いていると、ふと目に映ったレストランで件の彼女が知らない男と幸せそうにディナーを楽しむ光景を目撃した男の精神がシガンシナ区のように壊滅したときなど絶頂すら覚える!

 クリスマスに一人高いシャンパンを空けるのが嫌いだ。世の不公平と残酷さを呪いながら酒を飲むときの心地はとてもとても切ないものだ。

 分不相応な組み合わせのカップルが嫌いだ。不細工な野郎が美人と連れ添っていてかつ美人が幸せそうに笑っていたりするのは屈辱の極みだ」



 その自己中心的で八つ当たりにも程がある演説は、しかし兵士達の共感を得ていた。

 そこに集う全ての人間が、ピクシスの演説に熱中しており、一秒ごとにその憎悪を高めている。


ピクシス「―――諸君。ワシはクリスマスの中止を、地獄のような聖夜を望んでいる。

 諸君、ワシに付き従う『クリスマス撲滅兵団』所属の戦友諸君。

 君達は一体何を望んでいる?

 更なるクリスマスを望むか?

 カップルたちが存在し、夫婦が歩き、リア充どもがいちゃつく、地獄絵図を体現した糞のようなクリスマスを望むか?

 鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の鴉を殺す、嵐のようなクリスマスを望むか?」


 瞬間、軍団に動きがあった。

 誰も彼もが血走った瞳を見開いて、軍靴を打ち鳴らす。

 ガンガンと軍靴を床に叩きつけて、拒絶の意志を大音響で打ち鳴らす。


 『戦争(クリーク)!!!』


 誰かが、叫んだ。

 それに、誰もが続いていく。


ミタビ『戦争!!』

アンカ『戦争!!』

キッツ『戦争!!』


 駐屯兵団の面々が、


ネス『戦争!!』

ブラウン『戦争!!』

モーゼス『戦争!!』


 そして調査兵団が、


 『―――戦争!!』


 その叫びは、魂の歌。

 非モテたちの凱歌だ。

 心の臓腑から零れ落ちた悲痛を孕む、世の不公平を嘆く負け犬の叫びだ。


 満足そうに―――ピクシスは、唇の端を吊り上げ、諸手を上げる。


ピクシス「よろしい―――ならば戦争だ。

 我々は満身の力をこめて、今まさに振り下ろさんとする超硬化ブレードだ。

 だが、我々ぼっちクリスマスを思春期の時期から耐え続けてきた我々に―――ただの戦争ではもはや足りない!


 大戦争を!

 一心不乱の大戦争を!!

 我らは僅かに一個大隊。

 千人にすら満たぬ敗残兵にすぎない。

 だが諸君は一騎当千の負け組だとワシは信仰している。

 ならば我らは諸君とワシで総兵力100万と一億の非モテとなる」


ピクシス「我々を忘却の彼方へと追いやり聖夜ならぬ性夜を過ごさんとしている連中に思い知らせよう。

 髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう!

 連中に恐怖の味を思い出させてやる!

 連中に我々の怨嗟の呼び声を思い出させてやる!

 天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。

       カンプグルッペ
 一千人の兵士の戦闘団でクリスマスイベントを滅ぼし尽くしてやる。

 毎年毎回幾度となく繰り返されたこのクソッタレな聖夜を、壁内の聖夜を終わらせてやる!!


ミケ「司令!」

モブリット「司令殿!」

エルヴィン「代行!」

ハンジ「代行殿!!」

リヴァイ「大隊指揮官殿!!」


 ピクシスを呼ぶ声の中に、なんかいちゃいけない人がいたりした。


ピクシス「全兵士――――立体機動装置を装備せよ! 着剣!

 離床!! 全ワイヤー 安全装置解除!

 『最後の大隊』 大隊指揮官より 全小隊へ

 目標、壁内全土、全区市町村!!

 第二次クリスマス撲滅作戦、状況を開始せよ。

 征くぞ、諸君」















※続かない(俺の脳内が)


※おまけ

ピクシス「大隊総員傾注!!

 諸君、夜が来た。

 無敵の敗残兵諸君。

 最古参の新兵諸君。

 万願成就の夜は来た。

 戦争の夜へようこそ!!」

アンカ「それでは皆様、お手元のしおりを。

 『対壁内作戦第2次クリスマス撲滅作戦』のしおり、3P目『王城大爆発!! ぶっちぎりバトル進撃の非モテ』の項をごらんくださーい」

ピクシス「目標は壁内の全都市、全区市町村。

 そして、全リア充の打倒だ。

 エルヴィン! エルヴィン・スミス団長!!」

エルヴィン「御前に」ズパッ


ピクシス「高性能爆薬10トンと一個中隊を与える。

 麾下中隊を対ウォールローゼ・トロスト区への先遣隊とする。

 トロスト区訓練兵団居住区へ急行せよ。

 だが、強攻は避けよ。ワシと本隊の到着を待つべきだ」

エルヴィン「ははは、お手を患わせることもありません。たかだか訓練兵上がりの恋人未満の男女など、赤子同然」

ピクシス「………」フルフル

エルヴィン「!?」


エルヴィン「あの者達がいる。あの者達を甘く見るな。

 ミカサ・アッカーマンとエレン・イェーガーを甘く見るな!!

 彼女は東洋人の末裔だぞ。人類最強の兵士たるリヴァイと同格の兵士だ。

 ミカサ・アッカーマン。

 あのキース・シャーディスが認めた。あの第104期訓練兵団の『主席』だ。

 そして『死に急ぎ野郎』。『巨人』エレン・イェーガー。

 彼は……ははは、奇跡のような存在だ。冗談の様といってもいいがな。

 そして、恐らく彼は、自分でも気がついてすらいない!! こいつはなんとも、楽しい事じゃ。

 2人とも恐ろしく未熟で、不完全で、だが、それ故に………ワシは、彼女と彼を『宿敵』に値するリア充だ、と結論している。

 いいかねエルヴィン、もう一度いう。―――――強攻するな、ワシの到着を待て」


エルヴィン「……了解(ヤボール)。了解しました、大隊指揮官殿(ヤボール ヘルコマンダン)」


ピクシス「堰を切れ!! 戦争の濁流の堰を切れ!! 諸君!! 第一目標は全て、全てだ! 壁内の全てを燃やせ!!」

ミタビ「少佐殿!! 各都市部の連れ込み宿(ラブホ)は?」

ピクシス「爆破しろ!! 当然だ。アレはリア充どもの性夜を助長する公害施設だ、不愉快極まる欠片も残すな」

グスタフ「各地区の憲兵団はいかがしますか司令殿!!」

ピクシス「殺せ。憲兵宿舎は燃やせ。基本的に憲兵団は勝ち組で万年モテ期だからな、全て破壊しろ不愉快だ」

ミケ「小さい子供同士の初々しいカップルは?」

ピクシス「助走つけて殴り飛ばせ。一切合財容赦するな巨人のように。シガンシナ区の様に滅ぼせ」

モーゼス「シーナ中央の王城どうしましょうか」

ピクシス「爆破しろ。貴族の邸宅も悉く無に帰せ」

ピクシス「構うものか、目についたカップルは片っ端からボコし、目についた夫婦は片っ端から血祭りだ。存分に殴り、存分に削げ。

 この人口100万の壁内国家は、今宵、諸君らの八つ当たり対象と成り果てるのだ。さあ!! 諸君!!八つ当たりの時間だ。ボコしたりボコされたりしよう。

 さあ乾盃しよう。宴は遂に、今宵、此の時より開かれたのだ。乾盃!!(プロージィット)」

兵士達「「「「乾盃!!(プロージィット)」」」」



※ゴメン、もう無理

※お、マジだ。指摘ありがとう。

 あとなんか妄想が続いたからダイジェストでお送ります。


 クリスマスの雰囲気に当てられ、なんかいい感じに盛り上がってきたイアンとリコ。



イアン「ここには俺とおまえの二人だけだ。誰も邪魔は入らないさ………」ギュッ

リコ「イアン………」ギュッ



ミタビ「いるさっ、ここにひとりな!!」ヒューッ!! 


 パリーン!! 

 窓ガラスから飛び込む影。それはまぎれもなくミタビだった。


イアン「」

リコ「」


 正直、ドン引きである。



ミタビ「………イアン、リコ。お前たちとはずいぶん長い付き合いだ。幾度となく鈍感なお前たちを度々フォローしたもんだ。雨の日も風の日も、意地っ張りで鈍感なお前たちはなかなかくっつくことはなかった」


 血の滴るブレードを両手に構えたミタビは、穏やかな笑みを浮かべてイアン・リコとの距離を詰める。

 そのあまりにも殺人鬼めいた威圧感に、さしもの駐屯兵団の精鋭である二人もビビッた。


イアン「だ、だったら何故………なぜここに来て、お、俺たちの邪魔をするんだ?」ビクビク

リコ「そ、そうだ。おまえが協力してくれるっていうなら、その、祝福してくれてもいいじゃないか」オドオド



ミタビ「イアン、リコ。お前たちを祝福してもよかった。あの日なら。三人で辛い訓練に明け暮れたあの日なら、共に駐屯兵団の精鋭として抜擢されたあの日ならあの日なら―――――お前たちを、祝福しても良かった」シャガッ


ミタビ「でももう、もはやだめだ。俺はお前たちを呪ってやる――――クリスマスにはしゃぐカップルは、いつだって害悪だ。殲滅されねばならないのだ!!!」

イアン「」

リコ「」


 そんな感じでミタビとイアンは相討ちになってこう原作のフラグをいい感じに消化して散ったとさ。

 リコには未亡人って属性が結構似合う。


 一方で、永遠のライバルが激突する。


エレン「くくくくく、くはははははは」

エレン「よう「馬面」。ミカサに叶わぬ恋をするのが己の信念だと言ったじゃないか。原作の設定もブッコ抜いた恋愛成就など断ると言うたじゃないか」

エレン「そう言ってのけたお前の姿は、その様の何兆倍何京倍も美しかったというのに――――なんて醜い様だ。身も心も馬になったか」

ジャン「そうだ!! 所詮この世は修羅の巷の一夜の夢だ。一睡!! 一酔!! 俺は「ミカサはエレン以外とは絶対に結ばれない」という運命に抗うジャンミカ派の一夢の残骸だ! 俺はこの夜明けの刹那に、遂に馬となった」ヒヒーン


 馬の被り物を被ったジャンは、高々と嘶いた。さながら馬のように。


エレン「いい女だろう? とっくに俺のものだ。俺だけの。俺だけの愛しい美人で東洋人で幼馴染で俺にベタぼれのミカサだ――――――最初から………お前のじゃあない」

ジャン「―――――!!」


 なんかもう人が違った笑みを浮かべてジャンを煽りまくるエレン。


エレン「怒ったか馬面! 怒れ怒れ!!」

ジャン「テメエは言ったな!!  かつて!! 巨人は倒せると! 巨人を一匹残らず殺しつくすと! その言葉の通りだ。殺せぬ巨人など存在しない。くたばるまで殺してやる!!」


 なんやかんやで激突する二人。ぶっちゃけるとこの後エレンが巨人化し、ジャンを容赦ゼロでひねりつぶした。



 んでなんやかんやでアルミンが裏切った。


ミカサ「そうかアルミン、そうなのか。貴方は貴方の意思をもって反逆の徒と成り果てて私の前に立ったのか。お前はもう私の幼馴染ではなくなったのか。私はもう貴方の幼馴染ではなくなったのか。アルミン・アルレルト」

ミカサ「「何があった どうしてだ」などともはや聞かない!! 今や貴方は私の敵になった! カップル達の敵になった!! エレンの敵になった!! なってしまった!! 倒さねばならない!! 滅ぼさなければならない!!」

アルミン「素晴らしい。君はやはり僕の親友だった」


 この後、アルミンは滅茶苦茶リンチされた。

 戦力差的に当然である。


 訓練兵らの多くは訓練兵団宿舎内において、ささやかではあるがクリスマスパーティを楽しんでいた。

 コニー、サシャが獲ってきた七面鳥のローストに舌鼓を打ち、少量ながら酒を味わい、クリスマスソングを歌う。

 そして満を持して登場するクリスタお手製のクリスマスケーキが切り分けられたとき、空気を読まず襲撃するクリスマス殲滅兵団。宿舎内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 成績上位陣を中心に果敢に反抗する訓練兵らであったが、多勢に無勢。ミーナとかトーマスとか速攻で死ぬ。

 特に理由もなく死んだライナーの亡骸の傍らで、なんか絶望的なことを呟きながら相変わらずどんづまってるベルトルト。

 アニは速攻で水晶化して我関せずのスタイルを貫いててホントこいつ空気読めないし役に立たねえ。


エルヴィン「死ね死ね死ね死ね死ね!! いいぞッ皆殺しだ!! これが我々の力だ!! 目で見よ!! これが撲滅兵団の力だ!!」

クリスタ「あ、ああっ、ああああ………」

エルヴィン「虫けらどもめ!! はははは見ろッあの哀れな連中を!! 死んだリア充だけが良いリア充だ!!」

ユミル「なぁ泣くなようクリスタ。おまえはしぶとい女じゃん。私を喰えよう。私を喰って、いっしょにやっつけようぜ、クリスタ………」


 クリスタを庇って致命傷を受けたユミルは、死に際にクリスタの唇を奪い、果てる。


クリスタ「虫といったな……この人を、虫けらといったな!! 許さない 許さない!! 許さない!!!!!!」
 
エルヴィン「リヴァイッ、リヴァイッ!! 助けて……リヴァイッ!! 助けて…ッ、リヴァイ…ッ リヴァイッ!!」


 クリスタ覚醒でエルヴィンの毛根の寿命がストレスでマッハ。


エルヴィン「こんなところでハゲて死ぬのか…ッ!! 嫌だッ嫌だ!! フサフサで生まれて……ハゲて死ぬのか……ッ……畜生……ッ」

リヴァイ「馬鹿だよおまえ……大馬鹿野郎」


 エルヴィン、クリスタに髪を全部抜き取られた後にもみじおろしにされて死亡。

 リヴァイはリア充は嫌いだが、百合カップルは大好物であった。


サシャ「そんなにモテたきゃ……ッ! そんなに童貞捨てたけりゃッ!! 勝手にソープ行け!! 成人後にソープ行け!!」

コニー「そーだそーだ! そーぷ? に行けばいいじゃねえか!!」


ピクシス「そう言う訳にはいかんのだよリア充ども。ただ商売女を相手に脱童貞するのは真っ平御免なんだ。それ程までに度し難いのだ、我々は。

 世界中の全ての人間が我々を必要となどしていない。世界中の全ての人間が我々を忘れ去ろうとしている。

 それでも我々は、我々のために必要なのだ。ただただ脱童貞するのなんかいやだ。それだけじゃいやだ!

 ワシ達が童貞を捨てるにはもっと何かが必要なのだ、もっと!! もっと!! と。

 そうやってここまでやって来た、来てしまった!! もっと何かを!!

 まだあるはずだ!! まだいつかモテ期が!! まだどこかで運命の人が!! 世界は広く!!  エロスとToLoveるに満ち!! 美少女にして処女も肥えて溢れ!!

 きっとこの世界には 我々が童貞を捨てるに足るだけの乙女(しょじょ)が確実に存在するに違いないと!!」


サシャ「」ドンビキ

コニー「正直引くわー」



※続かない(妄想が)


【嘘予告集そのいち】


カルラ『んー? どうしたの、その子?』

グリシャ『いや、その………何というかだな………突然で済まないんだが………』

ミカサ『…………』

グリシャ『この子を、うちの養子にしようと思う』

カルラ『………ふーん、そう』


 対する女性の反応は気の抜けた炭酸水のように淡泊そのもので、感情の起伏というものがまるで感じられなかった。


カルラ『………じゃあ………』


 そう言って、庭花に水をやっていた彼女が振り返る。

 緩やかに弧を描いた口元は、まぎれもなく笑みを形作っていて、


カルラ『お昼ごはん――――四人分作らなきゃね』


 慈しみを込めた瞳が、私を見つめながら、優しい声で語り掛けた。

 私はきっと、その時の彼女の微笑みを、生涯忘れることはないだろう。

 その瞬間から、きっと私は。

 ミカサ・アッカーマンは、ミカサ・イェーガーとなり。

 イェーガー家の家族となったのだ。



……
………


………
……



 そして、845年。

 超大型巨人が、人類の束の間の安寧を破壊すべく、ウォールマリア・シガンシナ区を襲撃する。


 しかし、人類には巨人に対抗しうる唯一にして無二の兵器が存在していた。


 それこそが魂が刻み込まれた兵器―――――劒冑(ツルギ)。


 空を翔け、人外の膂力と速力を得た武者なる存在は、巨人を相手取っても引けを取らぬほどの武を誇る。

 しかし数百年の安寧は人類を堕落させていた。

 兵士たちの『武者』としての質もまた低下していたのだ。

 憲兵が王政の機嫌取りに、指南と称して剣を振るう様は演武以下。

 駐屯兵団および憲兵団の武者衆の初動は大幅に遅れ、おっとり刀で駆けつけた劒冑を纏う武者たちの大多数が巨人に太刀打ちできぬ有様である。

 シガンシナ区の住人がローゼへと避難する最中、ミカサは崩落したイェーガー家の下敷きとなり、身動きの取れないカルラを発見する。

 果敢にカルラを救出すべく力を尽くすミカサであったが、カルラを釘づけにする瓦礫の山はびくともしない。


 そこへ迫る一体の巨人。絶体絶命の危機が訪れたその時、ミカサの足元の石床が崩れ落ちる。

 全身を強打しつつも必死に立ち上がったミカサは、己がイェーガー家の地下室にいることに気づいた。

 父であるグリシャ・イェーガーが、頑なにエレンとミカサを近づけなかったそこには果たして、


ミカサ「な、なに? なんなのこれは…………蜘蛛の、彫像?」


 イェーガー家の地下に封じられていたのは、真紅の蜘蛛の独立形態を持つ、一振りの劒冑。

 それも真打。通常の兵団の武者に配備される数打とは異なり、抜群のポテンシャルとワンオフの特殊技能たる『陰義(シノギ)』を備えた業物である。

 助けを求めるミカサに、真紅の蜘蛛は冷たく言い放つ。


???《――――――我との契りを求める者。我と共に凶刃と成る覚悟ありや》


 もう二度と家族を失うまいと誓ったミカサは、迷わずその劒冑と縁(えにし)を結び、装甲ノ構(カマエ)と共に、誓約を唱える。


ミカサ「―――――――鬼に逢うては鬼を斬る。仏に逢うては仏を斬る」


 だが、ミカサは理解していなかった。

 凶刃と成ることの意味を。


 人を殺すということの真実を。


ミカサ「ツルギの理―――――ここに在り」


 その時のミカサにとって、決して許せないことはただ一つ。

 ――――母が失われることだけだった。






ミカサ「鬼に逢うては鬼を斬る 仏に逢うては仏を斬る」

ミカサ「刃の報いは己に返る 人の命を奪う者は己の命も奪われる」

ミカサ「惡に報いは必ずあるのだ…………惡に報いはあるのだ!!」





 ―――――善悪相殺。

 憎む者を殺したなら、愛する者をも殺すべし。


 そして巨人を打ち滅ぼしたミカサに待っていたものは、破滅であった。

 善悪相殺の呪いは容赦なくミカサの体を蝕み――――その手に握った刃は、カルラの胸を貫いた。


ミカサ「お、おばさん………カルラおばさァアアアアアアん!!!」

カルラ「く………こふっ」

ミカサ「私は………ち、違う。これは、こんな………嘘だ。どうして、どうして、私は………!!」


 善悪相殺。

 呪われし妖甲・勢州右衛門尉村正。


カルラ「いいのよ………ミカサ、分かってる」

カルラ「本当に言い伝え通りだったのね………敵を殺したら味方も殺す………か」

カルラ「悪を殺したら善も殺す。憎む人間を殺したら愛する人間も殺す………」

ミカサ「あ、ああ、あ…………」


 そうしてミカサは、己の過ちを悟る。

 ミカサが縁を結んだ劒冑の正体は、まさしく妖の類であった。


 敵を殺したのならば、愛する者を殺さねばならない。

 ミカサは『巨人』を殺した。

 その結果、村正の掟がミカサを縛り、愛する者たるカルラをその凶刃にかけることになったのだ。


カルラ「………ふ、ふふ。つまりはミカサ? 貴女は私を誰よりも愛してくれていたの? なんだ…………安心しちゃった。貴女、いっつもむっつりした顔で物静かだったから、居心地が悪かったのかなあって」

ミカサ「ち、違う。私は、お、おばさ…………お母さん!! いやだ!! 死なないで!!」

ミカサ「わた、私は、何も返せてない!! お父さんにも、お母さんにも、エレンにも!! だからいやだ! こんな、こんな終わり方はいやだ!!」


 喪ってから気づいた。

 そうだ、いつもミカサはそうだった。

 父と母を失い、また母を失った。初めてカルラを母と呼んだその時に、失ってしまったのだ。


カルラ「いっぱい助けてもらったわ、孝行娘。だから……私のことはいいから、あの子を頼んだわよ、ミカサ」

カルラ「エレンを………お願いね。生き延びるのよ」


エレン「愛は儚いかもしれない。

      弱い物かもしれない。

         移ろいやすいのかもしれない。

           形のない夢なのかもしれない。

                だが………構わぬ!!」



 すべてを呑み込む、無尽の暗黒(スラッシュ・ダーク)



ミカサ「答えろ! 銀星号を知っているな!!」


アルミン「ミカサはもう殺さなくていい。それは――――僕がやる」

アルミン「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。

        ツルギの理、ここに在り!!」


 濃紺色の天牛虫(カミキリムシ)が弾け、装甲される。

 その劒冑こそはかの天下一名物にして「正義」を体現する大業物――――『相州五郎入道正宗』である。


ベルトルト「いかで我が こころの月を あらはして

             闇にまどへる ひとを照らさむ」


 悍ましき百足(ムカデ)が、ベルトルトの全身を覆っていく。

 大阪正宗とも称される真打劒冑、井上和泉守国貞が空を翔ける。


ライナー「天に冥府 地に魔道 踏まえし道は修羅の道」


 巨大な亀が四散五裂し、破片は装甲として巨躯の男の全身を覆う。

 重厚な装甲が特徴的な劒冑、同田貫正国。いかに堅固な装甲とて、その槍の前には紙に等しき脆きもの。


ユミル「THE(鋼の人形は)

        IRON(裸体で肉色で)

            MAIDEN(化粧されている)」


 血の茨。死の茨。装甲を持たぬ、ただ『陰義』にのみ特化した貴婦人のための劒冑。

 たおやかに肌を這う白い指先が血に染まる時、そこに悲劇の幕が上がる。


                              アベンジ・ザ・ブルー
クリスタ「慟哭をかき鳴らしてこの名を唄え―――――逆襲騎」


 青の衝撃は、全てを置き去りにする。

 過去も。現在も。

 全ては未来へと向かって、駆け抜けていく。


リヴァイ「――――兇器(まがきもの)に銘など無用」


 ナナフシの異形が鎧へと変じ、リヴァイを守る劒冑となった。

 銘もなき名甲『無銘』を前に、ミカサは苦戦を強いられる。


マルコ「帰命頂礼八幡大菩薩!

         我、御器と罷り成る!!」


ジャン「帰命頂礼八幡大菩薩!

         我、御剣と罷り成る!!」


 源氏の至宝。対となる兄弟の劒冑。

 漆黒と黄金の装甲が、空を切り裂く。


ニック司祭「Sacrosanct. (神聖にして侵すべからず)」


 西洋の文化を元に生み出されたクルセイダーの真打劒冑(ブラッドクルス)。

 神たる壁を守るべく、ニック司祭は大剣を振るう。


ペトラ「ヘェェェッッド!!」


オルオ「ボォォォディィ!!」


エルド「レェェェェェフ!!」


グンタ「ラァァァイッッ!!」


GUTS EIDER「「「「合体だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」


リヴァイ「(我が部下ながらきたねえジーグだ)」


ピクシス「やあ、ミカサ訓練兵。今日も元気にパンツしてるかな?」

ミカサ「遠まわしに言うがご老体―――――捻り潰すぞ?」

ピクシス「ムカ。怒った! パンツ脱げ!」

ミカサ「誰が脱ぐか変態」

アルミン「いや。脱ぐんだ、ミカサ」

ミカサ「!?」

ジャン「そうだ。脱げミカサ」

ミカサ「!?」

クリスタ「ぬーげ! ぬーげ! ぬーげ!!」

サシャ「早くしてくださいなー。もうこっちは待ちくたびれましたよハリーハリーハリーハリー」

ミカサ「!?」オロオロ


 ミカサ、貞操の危機に陥る。



サシャ「―――――The paradox of"tell and apple"(弓聖の一矢 林檎に届かず)」

ミカサ(グロい)

サシャ「ゲェッハハハハハァァ――ッ!!」

ミカサ(怖い)


 目を開いたらトンボの目でした。ぐろい。こわい。ミカサは虫が苦手であった。





ケニー「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ――――――――――」


 その瞬間、理解した。


ミカサ(ミカサ・アッカーマンの敵は――――――ケニー・アッカーマンなのだ)


アニ「いいかい、ミカサ。これは私からの、あんたへの忠告だ」

アニ「ミカサ、あんたはミカサ・イェーガーである限り、アイツには絶対に勝てない。アイツは、エレン・イェーガーだからだ」

アニ「あんたはアイツの家族であるミカサ・イェーガーとしてではなく、赤の他人……ミカサ・アッカーマンとして、エレン・イェーガーを打倒しなくてはならない」

アニ「まあ―――――それもこれも、あんたが私に勝つって前提があっての話。取らぬ狸のなんとやらってね。私に勝てないのならば、あんたは絶対にエレンには勝てない」


アニ「――――――私が賭けたのは、ここからだから」


アニ「虎徹―――――」


 呟き、両腕を顔の前で交差させる――――装甲ノ構。


ミカサ「ッ! 劔冑!?」


アニ「獅子には肉を 狗には骨を 龍には無垢なる魂を

            今宵の虎徹は―――――血に飢えている」


 ―――――そして、銀の悪夢が訪れる。


エレン「…………うぅむ。少々、力が乗りすぎたようだ」


エレン「―――――トロスト区が無くなってしまったぞ」

二世村正《………御堂》

エレン「ん?」

二世村正《あそこだ》

エレン「うん?」



二世村正《―――――内地側にめり込んでいる》



エレン「おお、本当だ! あの突出区はスライド式だったのか」

二世村正《違うぞ、多分》

エレン「ともあれ無事で何よりだ。外敵からの城攻めが激しさを増した際は内地側へと籠城する機構か――――なかなか合理的だな」

二世村正《どうして御堂はそこまで頭が残念なんだ》


ミカサ「―――――ひ―――――」


 その事実を理解した瞬間――――畏怖のあまり、ミカサは失禁しかけた。


イアン「貴様―――――貴様が銀星号か!!」

エレン「ああ。自称した覚えこそないが、確かに俺は『白銀(ぎん)』の名で呼ばれる者だ」

イアン「なんだ………何をしたのだ、貴様ッ!!」

エレン「邪魔なものを消し飛ばした」

イアン「何………邪魔なもの………?」

エレン「―――――倫理。人が自らの手足に填めた枷。これを取り払ってやった」

イアン「何故!?」

エレン「それが俺の道を阻むが故だ。打破し、踏破し、壊滅させなければならない。

    壁に押し込められて構築された『人の世界』―――――斯様な家畜の如き生きざまを晒してなお、恥知らずにも生き延びようとする者ども、全てを打ち滅ぼす」

ミカサ「エレン………」

エレン「いい表情(かお)だ、ミカサ。苦痛と煩悶と懊悩、それでもなお挫けぬ意志。上々だ! こちらに近づいてきているぞ、ミカサ」


 そして、決着の時もまた訪れる。


ミカサ「エェェレェエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!!」

エレン「来るか、ミカサ!!!」


      リニアアクセル  グラビティアクセル
ミカサ「磁気加速! 辰気加速!!」
      エンチャント・エンディング
ミカサ「磁装・蒐窮!!」

三世村正《――――諒解。死を始めましょう》


エレン「村正! 辰気収斂!!」

二世村正《諒解した、御堂》


三世村正《蒐窮開闢 終焉執行 虚無発現(おわりをはじめる しをおこなう そらをあらわす)》

二世村正《蒐窮開闢 終焉執行 虚無発現(おわりをはじめる しをおこなう そらをあらわす)》


ミカサ「吉野御流合戦礼法“迅雷(ジンライ)”が崩し………!」

エレン「吉野御流合戦礼法“月片 (ツキカケ)”が崩し」


     レールガン    ウガチ
ミカサ「電磁抜刀――“穿”!」

     フォーリンダウン・レイディバグ
エレン「天座失墜・小彗星!!」






 ―――これは英雄の物語ではない。

 ―――英雄を志す者は無用である。


※ちなみに装甲悪鬼村正を知らない人は『30秒で分かる装甲悪鬼村正』でググるとあらすじが見れるよ。大体あってるよ。愛はあったんだよ。

 いや、書かんよ。

 理由はまあ色々あるんだが、一言でいえば単純だよ。酷くシンプルな答えだ。

 ………SSにしたら完結におよそ五年はかかる見込み。ガチで。今の忙しさを考えるとそれでも足りないような気がする。ドリフなんかメじゃねえぞオイ。

 装甲悪鬼村正はメチャクチャ好きなゲームだからSSにするとしたら一切妥協しねえ。

 アルミンと正宗の触手プレイ(グロ的な意味で)は絶対やるし、ベルトルトは死に様が気の毒だし、クリスタは輪姦されるし、アニは「私はちんちんとか好きだー! 見たことないけどー!」ってゼッタイ言わせる。

 ライナーはライナーで腐れ外道の地獄から来た婆娑羅者として「いかにも(ほっこり)」を連発するしでもう大好き。

 ジャン? そりゃ華麗にして優美なるキルシュタイン閣下ですよ。そんなもので! このジャン・キルシュタインを! 倒せると思うかァアアアアアアアア!!!

 ニッカリ青江枠は誰でもいいや。可哀想なモブAとかでいいよ。小太郎枠はアレだ、真打持ってる精鋭的な意味でも月山従三位的な意味でリコ、イアン、ミタビでいいよね。

 リヴァイはそりゃ獅子吼枠。悪くない……悪くないではないか、この男。

 あ、コニーは一話でミカサに首おいてけされるよ。んでサシャがゲハハハハ笑いで弓ぶっ放すよ。

 エレンは辰気でミカサの夢を操作するわ十円玉十枚縦に重ねるわミカサ愛を拗らしてブッ壊れるわリバーストロストキックで宇宙空間突入するわでもう大暴れ。


【嘘予告集そのに】


 始まりは、幼馴染の友人が持ち出した、一冊の書籍。

 禁書として世に流通することのないそれは、武術の本。

 失われた東洋の武術の教本であった。


「ッ…………」


 その本に惹かれた。ただただ没頭する。

 馬歩椿歩と呼ばれる基本勁。套路と呼ばれる型稽古。基礎を繰り返す。何時間も。何日も。何年も。

 石畳を足裏で叩くように踏み込み、肘を、背中を、打ち開く。


「ッ、ふッ、ぎッ………」


 傍から見れば、狂気の沙汰であっただろう。

 どうしてこれを、こんなことを繰り返そうと思ったのか、そのきっかけは本人にしかわからない。

 当の本人………エレンとて、それの意味など分かっていなかっただろう。


「っ、ずッ! ッぜ! はッ!」


 だが、妙な確信があった。

 その確信を、己の感性をただ信じる。信じて、繰り返す。

 余計な疑問や雑念を捨てる。何故こんなことを繰り返すのか。何のために。何へと至るために。


 ――――ひたすらの鍛錬は。


「はッ、はぁッ、はッ、ぜぇッ、はッ………」


 己を知るためだった。

 壁に囲まれた世界。巨人の脅威に怯える世界。その中で生きる、ただの一生物。人間。

 人間はどの程度なのだろうか?

 その人間のカテゴリに入る、己はどの程度なのだろうか。

 ただの一個の人間にできることなど限られている、と人は言う。
 
 だが、その限りがどこまであるのか。それを知りたい。己になしえることの限界を知るために、一個の極地を目指す。

 ただ知りたい。そのために繰り返し繰り返し。


 季節が巡っても、雨の日も、豪雪の日も、雷が降り注ぎ、大風が吹きすさぶ嵐の日も、歩法を整え、構え、踏み出し、撃つ。


 幾度日の昇り沈みを見、季節が廻っていくのを肌で感じただろう。


 それは、石床が一撃で破砕するほどに激しい踏み込みができるようになった頃だった。

 エレンは石床が、明らかに己の踏みつけるよりも大きな規模で砕けていることを疑問に思った。

 そんな疑問も一つの雑念と伏して、更に鍛錬に明け暮れた。

 まるで狂気に取りつかれている息子を見かねた父が、たまには別のものに目を向けた方が良いと考えたのか、東洋人の末裔だという患者を往診する際に、エレンを同伴させた。


 父の思惑は外れ、実際のところ、それがトドメとなった。


 山間に存在するアッカーマンという姓を持つ一家。扉を開いた先、夫と妻は血に塗れ、既に事切れていた。

 エレンには一目で彼らが死んでいることを理解できた。彼らから、もはや生物としてのエネルギーを感じなかった。

 父がエレンに何かを言う。恐らく憲兵を呼ぶとかどうとか、言っていた気がした。ここで待っていろとも、言っていたような気がした。

 エレンはうなずき、父が麓へと降りていくと同時に動き出した。

 感覚に従う。恐らくそこに何かがある。

 そうして、エレンはアッカーマン家の娘である、ミカサ・アッカーマンと出会った。


 エレンに驚きはない。無力な少女を、男たちがよって掛かって手籠めにしようとしている。

 一秒で理解できた。


「どうしたんだいボク………こんなところに一人で」


 言葉遣いは穏やかであったが、ミカサを取り囲む三人の男たちの瞳は、はた目には獲物を見る肉食獣のソレであった。

 獲物が増えた。収穫物が増えた。儲けが増えた、と。

 しかし、エレンには、そうは見えていない。


「―――――………まるで、狗だな。こんなもんか」


 その呟きは、あからさまな失望が籠っており。

 男たちはそれを、挑発として受け取った。


「なんだテメェコラ、テメェ」

「知らん。知りたいから、修行した。こんな風に」


 そして、大爆発が起こる。八極が、文字通りの威力となって、男たちを襲った。


 踏み込み、打つ。

 エレンにとってはいつもの通りの動作だった。常と異なるのは、今回は確かな『的』が存在しているという点。


 そして、エレンに真っ先に詰め寄ろうとしていた男は、一撃で肉塊と化した。


 ミカサは、人が飛ぶというものを初めて見た。

 そもそも、人は飛ぶものなのか。あんなにもひしゃげて、原型を残さずに、関節を捻じ曲げられた虫けらのようになるものなのか。

 ただ唖然と眺める。不思議と、恐怖はなかった。名前も知らない、突然現れた少年はきっと、己を害すことはない。そんな確信があった。


「ば、ばッ、ばけ、化け物ッ………」

「に、逃げ、逃げなきゃッ、逃げなきゃッ………」


 残る二人の男が慌てふためく中、エレンは落ち着いた様子で、酷く平静とした声で言う。


「あと五メートル、好きなだけあがけ」


 そして歩みを進める。宣言した距離が、その距離を詰めるエレンの歩みが、その距離がゼロとなるまでの時間こそが、男たちの残りの寿命だった。


 そうしてエレンが、後に己の家族となるミカサを取り囲む三人の男を、それぞれ一撃で絶命させた時。

 ようやく、エレンは違和感に気づいた。それほどまでに没頭していた己に気づく。

 普通の人間が、ただの踏み込みで石床など砕けるはずもない、ということに。

 どれだけ肉を鍛え、骨を太くしようと、できるわけがない、ということに。

 十歳にも満たない子供が、大の大人を、一撃で吹き飛ばして絶命させるなど。

 できるわけがない、ということに。


 己の繰り出す一撃に、筋肉や骨以外の『何か』の要素が絡まったことを自覚した瞬間。

 エレンの視界に広がったのは、エネルギーの塊。

 世界は、モノだけでできているわけではない。

 その内に、エネルギーを携えている。

 それを理解したと同時、エレンは、


「―――――――――――!」


 己の修行の終わりを、理解した。


 獣の笑みを浮かべ歓喜するエレンの傍らで、ミカサ・アッカーマンは、


「…………かっこ、いい」


 ただ、見惚れた。嵐のように現れ、己を救いだしたその少年に、淡い感情を抱く。

 否、淡いなどというものではない。それは種から芽吹き、一気に花を咲かせた。

 家族も何もかも失って、氷河期が訪れた己の心に、確かな『春』の到来を感じた。

 この時だ。ミカサ・アッカーマンは、己が『雌』であることを自覚し、一人のとびっきりの『雄』たる、エレン・イェーガーを、愛するようになった。


「貴方は、誰? 名前は?」

「あ? エレン。エレン・イェーガー」

「そう。私はミカサ。ミカサ・アッカーマン」

「おう」


 赤ちゃんがどこから来るのか、結局のところ、父も母も答えてくれなかったが。

 女としての本能が、ミカサにそれを誓わせた。


「私は、貴方の、赤ちゃんを、産む」

「おう………………おう?」


 後に己の肉体を100%コントロールする術を身に着け、エレンに匹敵する強さを宿し、エレンにとって天敵となる『ラブゾンビ』が産声を上げた瞬間であった。







アルミン「もしもエレンが秘伝八極拳の極意を読んだら」







『完(姦)』

※「なんかエレンマンセーで強エレンものを書いてみたいなー」とふと思ったら、こうなっていたよ。

 ウチのエレンは割と優遇される方向だけど、突き抜けて最強モノにしたらどうなるか試してみた結果がこれだよ。

 いやあ、やっぱりミカサは強敵ですね。結局エレンはミカサに勝てない運命なんですかね。物理的には勝てても精神的に勝てる気がしない

 ちなみにこの後、坂本ジュリエッタばりにマキ厨もといエレン厨になったミカサ

 ストーカーめいてエレンに四六時中引っ付いたり、告白しては玉砕して「エレンを殺して私のものにする」といった暗い井戸の底の魔女の如きヤンデレを発揮したりしつつ、話は進む

 原作通り壁は破られるが、カルラはエレンの異次元八極拳で無事に救出される

 アルミンの両親と爺さんもエレンが八極拳という説得で口減らしを避ける

 なんやかんやで訓練兵団に入った幼馴染トリオ

 アニはエレンに惚れる。

 「私みたいな女は、あんたみたいなのがどうしようもなく必要だ。エレン、あんたに抱かれたい」

 ベルトルト涙目。ミカサはレイプ目。壮絶な殺し合い(グランギニョル)の幕が上がる


ミカサ「このクリスタとかいうエレンに色目を使うメスブタには、蹴りで壁内から出て行ってもらう」

クリスタ(アカン)

エレン「やめろミカサ」

ミカサ「うん………わかった、エレン」ピタッ

クリスタ「ふー………」ホッ

アニ「エレン………ベッドに行こう。そして私にシンプルな安心を頂戴」

エレン「安心?」

アニ「エレンの 童 貞」

ミカサ「<●><●>」シャガッ


マルコ「モテモテだね、エレン」

アルミン「羨ましくない。僻みじゃなくて、ほんと、まじで」

ジャン「羨ましい」

ライナー「こっちに飛び火しなければもはやどうでもいい」

ベルトルト「アニ………アニ、アニ、アニ」ブツブツ


※メシテロ第三弾:訓練兵時代の話


ライナー「ホルモン祭り」


 火を使うことを覚えた人類が、最初に熱を加えて食したもの。

 それは肉だ。きっとそうだ。

 野を奔る獣を狩り、皮をはぎ、その肉を喰らう。

 人類が最初に火を用いることを知ったのはいつだろう。偶然か? 必然か? そんなことはどうでもいい。

 とにかく人は、火によって加熱することを知ったのだろう。より味わい深い豊かな食を手にしたと言える。

 だが人はそこに味をつけることを学んだ。否、望んだと言ってもいい。現状に満足しない生き物は人間だけだ。故にこそ馬鹿馬鹿しく面白い。

 より旨い料理を。もっともっと旨い料理を。

 旨い料理のために。もっと旨い料理のために。次の料理のために。


ライナー「というわけで、新作を考えているわけだ」

エレン「はあ。で、なんで俺なんだよ。っていうか何故かな? お前と会うのが超久々な気がする」

ライナー「実は俺もだ」

エレン「その上、なんていうかこう、如何とも耐え難い衝動に駆られる。ちょっと気を抜いたら殴り殺してしまいそうだ」

ライナー「やめろ。別のスレの引力に魂を引かれるんじゃあない」

アルミン「話が脱線してるよ? それで、なんで僕やエレンを? 料理ならベルトルトを呼べばいいのに」

ライナー「尤もだが、あいつはライバルでもある。アッと驚くような料理を作ってびっくりさせてやりたいと思うんだよ」

アルミン「はあ。それにしたって僕とエレンはないだろ。自慢じゃないけど、僕にしろエレンにしろ美食とかからは最も縁遠い存在だよ?」

サシャ「ああ、何か勘違いされてますね。実は新作料理の方向性はある程度まとまってはいるんですよ。ただ、それをどう広めればいいのか、お知恵を借りたいと思いまして」

エレン「ああ、ならアルミンは適任だな。ん? 俺は?」

サシャ「エレンなら良くも悪くも忌憚のないご意見をいただけるかなーと」

アルミン「うん、納得した。で、新作っていうのは?」

ライナー「こいつだ」ドスンッ



 おもむろにライナーがまな板の上に巨大な肉塊を載せる。それは紛れもなく――――。


エレン「……これは牛の肉? いや、にしては色合いが……つーか、これ」

アルミン「内臓肉だね」

エレン「げ」


 エレンが苦虫をかみつぶしたような表情で、露骨に嫌悪感を露わにする。

 アルミンはそれほど露骨ではなかったものの、眉を顰めているところから、はっきりとした拒否感が感じられた。


 ―――さて、エレンとアルミンの反応に対し、ライナーとサシャは顔を見合わせ「やっぱり」とでも言いたげな表情で頷きあう。


 無理もない。牛の正肉に対し、内臓肉というものは非常に不味いものとして認識されているのだ。

 通常、正肉は牛を殺した後、一週間から三週間ほどで食べ頃となる。しかし内臓肉に関してはその限りではない。

 とにかく不味いのだ。これは壁内で生まれ育ち、内臓肉を食したことのあるものならば、誰もが持つ共通認識である。

 何せ冷蔵庫など存在しない文明時代において、保存性が皆無であり、常温ではあっという間に腐敗が進む内臓肉など、下肉中の下肉である。


ライナー「が、精肉店に行くと、内臓肉を置いてる店もそれなりにある。何故だと思う?」

エレン「なんだっけ? 蓼食う虫も好き好き?」

アルミン「単純にアレでしょ? 牛一頭から採れる肉の量に対して、内臓肉は捨てるには勿体なさすぎる量が出る」

ライナー「その通り」


サシャ「ですが、それだけじゃあありません。論より証拠。こちら、下処理を済ませて味付けしたテッチャン(大腸)を炙ったものです。さっ、食べてみてください」

エレン「げ」

アルミン「うわぁ」


 今度はアルミンまで心底嫌そうな顔をした。子供の頃に一度食べたときの嫌な記憶を思い出す。

 ぐにゃぐにゃとして噛み切れない感触。一噛みごとに口の中へ広がる苦味とエグみと鉄臭さ、何とか呑み込んでも残り続ける悪臭。


ライナー「そんな顔するな。俺がおまえらにマズいもの食わせたことがあるかよ」

エレン「わーったよ………あぐっ」

アルミン「覚悟を決めるか……もぐっ」


 瞬間、エレンとアルミンの両名に電流奔る。


エレン「う………うま、いぞ………?」

アルミン「うそ………なんで? 全然、臭くない………それになんだ。この心地良い歯ごたえと、芳醇な味わいは。噛めば噛むほど、旨みが染みだしてくるようだ」

サシャ「それが答えです」

ライナー「そう、内臓肉は適切に処置するとメチャクチャうめえんだよ」



エレン「なんだよ。イケるじゃんか………ん? 何が問題なんだ?」

アルミン「あー、そうか。僕らの反応そのものが答えなんじゃないかな」

エレン「どういうこった?」

アルミン「僕らがそうだったように、内臓肉=マズい、っていう認識があるでしょ? 旨い旨い言われても、そう簡単に広まらないし売れないって話」

エレン「ああ、そういうことか。でもライナーは肉を精肉店に卸してんだよな? ライナーんとこの肉はうめえって評判だし、だったら売れるんじゃねえのか?」

サシャ「そう単純な話じゃないんですよ……だから頭を抱えてしまっていて」

ライナー「えれん、しっているか」

エレン「いいから言え」

ライナー「なんだ。ノリが悪いな……ブランド牛から出た精肉はそのブランドの名前が付くだろ? ○○牛のフィレ肉とか」

エレン「そうらしいな。良くは知らんけど。おまえんところのはブラウン牛だっけ?」

ライナー「そうだ。けど、内臓肉だけはブランド名が付けられないって知ってたか? どんなブランド牛でも内臓肉は所詮は内臓肉なんだよ」

エレン「へぇ………あ、思わずしみじみと『へぇ』って言っちまったわ」

ライナー「そうなんだよ。意外だろ? しかも旨いブランドの牛でも、内臓はやっぱり下肉扱いなのか、買取拒否されることがあんだよ。もしくは買い叩かれる」

アルミン「まあ、臭いがキツいとかクセがあるとかイメージ的にグロいとか処理が面倒とか、散々に言う人はいるみたいだね。正直言うと僕も苦手だ」


サシャ「上手に処理すれば美味しいのに、失礼な話です。まあ確かに処理は面倒なんですけど、美味しいお肉の牛の内臓肉は、やっぱり凄く美味しいんですよ? テールなんか上手に煮ればふんわり柔らかな美味しいスープになるのに」

アルミン「それは寡聞にして知らなかったよ。っていうかテールも内臓肉に分類されるんだね」

ライナー「そう。だが内臓肉は所詮は内臓肉ってことで買い叩かれちまう。売れずに処分されるのは、俺の立場からすると凄くツライ。なんとかならんものかと」

アルミン「んー………さっきサシャが言ってたように、やっぱり論より証拠。まずは訓練兵から口コミで広めていくのがいいんじゃないかな?」

エレン「同感だ。ついさっきまで大嫌いだった内臓肉が、旨いの食ったとたん宝の山に見えてきたもんな」

サシャ「やはりそうですか。よし、じゃあ今夜は―――――」


ライナー「ホルモン祭りだ」


エレン「やっほう」

アルミン「いやっほう」


 そういうことになった。



……
………


………
……



夜・訓練兵団食堂。


ライナー「――――というわけでだ。そこで今夜は、そんな不遇な扱いを受ける内臓肉への認識を変えてもらうことにする」

サシャ「そう、全ては――――」

ライサシャ「「牧場の経営資金確保のために」」

アニ「まあ、頑張れば? で? ごはんは?」

ミカサ「ごはんまだ?」チンチン

アルミン「ミカサ、すっかり腹ペコキャラが板について………」


ライナー「いきなりだが本日のメイン。ハラミ、別名アウトサイドスカートのステーキだ。バター+ステーキ醤油もよし、ニンニクソース、おろしポン酢、ミントクリームソース、オニオンソース、各種勢揃いだ」


 肉の乗った鉄板がじゅうじゅうと音を立て、香ばしさを纏った煙がもうもうと立ち上がっている。

 少し焦げ目のついた肉の上を、溶けかけたクリーム色のバターがとろとろと魅惑的に彩っていた。


コニー「っ、うおおッ……これマジで内臓なのか? すんげえ旨みと肉汁が口いっぱいに溢れるぞ」

ライナー「横隔膜の背中側の肉だ。バラす際に肺がくっついてくるから内臓扱いなんだよ。下処理を上手くやってるから全然臭みがないだろ?」

コニー「おお、臭くない! 全っ然、臭くないぞ。むしろ芳ばしい香りで断然食欲がわいてくる」

ベルトルト「この肉、不思議だ。すっごく柔らかいのに、弾力があるんだよ。確かに肉を食べてるって実感があるんだ。ギュッキュッて、歯を押し返してくる。スゴいよこれ!」

サシャ「フフフ、これがハラミの凄いところです。ロースよりは柔らかく、カルビよりは固い。その絶妙な歯ごたえと適度な脂身が、実に『肉』を主張する」

ミカサ「おかわり」モギュモギュ

アニ「こっちも。次はミントソースで」モキュモキュ

エレン「うまっ」ハフハフ

アルミン「おいしい」モムモム


ライナー「続けて喰らえ。レバーの刺身だ。塩と胡麻油でシンプルに喰らってみろ。見た目はアレだが、ハマるとヤミツキだぞ」


ベルトルト「ッ………新鮮な生レバっていうのは、これほどなのか! 血の臭さどころか、ぷるぷるでとろとろで、濃厚なコクがあって、甘味さえ感じる!」

マルコ「同感だ。胡麻油に塩をつけているのに、どうしてこんなにも甘いんだろう。舌がトロけそうだ」

ミーナ「禿同」


ライナー「次ッ、モツ煮込みに、ツラミ(頬肉)のシチュー、そしてグラ・ドゥーブル・ア・レスパニョール(ハチノスの煮込み)だ」


フランツ「モツ煮込みの旨さは説明不要だね。こう、ご飯の上にブッかけてガッツガッツ食べると無敵だよ!」

トーマス「やっべ、うまッ、これうめッ」

トム「ツラミのシチューいいなぁ。頬肉ってこんな濃厚な味わいだったのかよ。見る目変わっちゃうぜ」

サムエル「こっちのハチノス煮込みも最高だ! トマトの汁に牛の旨みがとっくりと溶け込んでる。こっちも飯に最高に合う!」

サシャ「おかわりもあるぞ!」

ダズ「………!」フルフル

ライナー「遠慮するな……たっぷり食え……」ヨソイヨソイ

ダズ「うめ、うめ」モグモグ

トーマス「」ニコリ

トム「」ニコリ

サムエル「」ニコリ



ライナー「まだまだ! 牛ギアラと春野菜のランプレドットだ。パニーニに挟んでガブッと行け!」ゴトッ


クリスタ「わぁ、彩りも綺麗。味わいは………わっ、ミネストローネ風なんだ。内臓肉って聞いてびっくりしちゃったけど、これは随分と優しい味わいだね」モムモム

ハンナ「そうね。臭いしマズいしキモチ悪いしで最悪だと思ってたのに、こんな美味しいなんて」ハムハム

ジャン「さっくりしたパニーニに程よく汁が染みこんでていい塩梅だな」ガツガツ


ライナー「コブクロ(子宮)と香味野菜の辛味噌炒めだ。これまたメシに合う」ドンッ


リヴァイ「むしろ酒が欲しくなる味だな……ピリッと来る辛さと葱の香ばしさが、僅かに残ったコブクロの臭みを完全に殺している。染みこんだ味噌の味わいも実にいい」

キース「うむ。ビールが欲しくなってくるな」

ユミル「ビールうめえ」グビグビ

リヴァイ「寄越せ。いつもいつもテメーばっかり呑みやがって」

キース「はよ」

ユミル「ヘイヘイ、やるから殺気を抑えてくれませんかねえ」


ライナー「ラストだ。ホルモン(ヒモ・小腸)の七輪焼きだ。片っ端からよーく火を通して、特製ダレに付けて食え!」


ミカサ「うおォン、私はまるで人間立体機動装置だ。はふ、はふ、もぐもぐ」

アニ「ご飯お代わり。大盛で」バッ

エレン「こっちもだ! 大盛で!」バッ

アルミン「ぷりっぷりのとろっとろだぁ! 僕もお代わり!!」バッ

コニー「うンまぁあああああい!! 味に目覚めたァーーーー!」カッ

ベルトルト「流石だライナァ! こんな美味しい内臓肉は初めてだァ!!」

マルコ「こんなに濃い味わいなのに、脂ぎってるのに、なんて、なんて!」ガツガツ

ミーナ「ミルキィで甘くて、なのに香ばしくって、なんて、なんて! ごはんに合うんでしょう!」ハフハフ

リヴァイ「ビールお代わり。ジョッキで」ドン

キース「こっちもだ。ピッチャーで持って来い」ドン

ユミル「まどろっこしい。樽ごと持って来い」ドン

ν料理人「はいはい、ただいま。ああ忙しい忙しい」セコセコ



……
………


 で。


クリスタ「美味しかったあ。こんなに内臓肉が美味しいなんて知らなかったよ。私たち損してたね」

ジャン「ああ、こりゃヤバい。こんなん食ったら、もう二度とあのド腐れ内臓肉なんざ食えねえよ」

トーマス「市販されてるのがマズいのは下処理に問題あったのか。今後うめえのが取り扱われるようになったら買いに行かねえと」

コニー「最後のホルモン焼きがヤバかった……また食わせてくれよな、ライナー、サシャ」

ライナー「おうとも。任せとけ!!」


エレン「やっぱ好感触だったか。これならイケるんじゃないか?」

アルミン「うん! 先輩訓練兵や後輩訓練兵達にも広めていけば、うまく行くかも!」


 そうしてこの夜の祭りは終始賑やかに終わった。


 ところがぎっちょん。


 翌週のことである。


アルミン「おーい、ライナー」

エレン「内臓肉の買い付け行ったんだろ? どうだった?」

ライナー「ああ、エレン、アルミンか………」

サシャ「あうあうあうあうあー」


 振り返ったライナーとサシャは、目の前で親を巨人に喰われた実際哀れな少年の如く憔悴していた。


エレン「お、おい。大丈夫か? どうしたんだよ?」

ライナー「内臓肉の買い付けの件な」

サシャ「ダメでした」

アルミン「ウソでしょ……? ちゃんとお店の人にも試食してもらったんでしょ?」

ライナー「ああ、お前のアドバイス通りにやった。絶品だと褒めてもくれたよ」

サシャ「でも、ダメでした……」

エレン「なんでだよ!?」


ライナー「なあ、二人とも。以前、俺は内臓肉にはブランド名をつけられないって言ったろ?」

エレン「は? ああ、確かに言ってたような」

ライナー「ホルモンはホルモンなんだよ。どこの牛も一緒くただ」

サシャ「それが原因です。だからダメなんです」

エレン「どういうこったそりゃ……?」

ライナー「ウチの肉は最高だ。どこに出しても恥ずかしくないと自負してる。どんな食通だろうがうならせる自信はある」

アルミン「うん。それに限って言えば決して慢心じゃないと思うよ」

エレン「むしろ誇っていいことだと思う。けど、なんでダメだったんだ?」

アルミン「あっ! ひょっとして」

ライナー「ウチの牛肉は絶品だ。当然だがホルモンも旨い。だが、ホルモンはホルモンなんだ、ブランド名や産地が記載される訳じゃない。つまり他の牧場からのホルモンも一緒くただ。この意味が分かるか」

アルミン「!! つまり………全部ごっちゃに売られちゃうってこと?」

ライナー「そうだ。そうなると困ったことが起こる」

エレン「何がだ? 別に売れるならいいんじゃないのか?」

ライナー「違う、エレン、そうじゃないんだ」

アルミン「エレン。たとえ話をするよ。りんご百個のうち九十個はものすごく不味いんだけど、十個だけ特に美味しいりんごが混ざっているとする。けれど、それは見た目ではパッと分からない。値段は同じ。どう?」


エレン「…………買いづれえ、かな」

ライナー「だろう? それに店側としても宣伝しにくい。ウマいの扱ってるよーといってハズレを引いた客に文句を言われたらたまらん」

アルミン「逆にあたりを引いて「こんなにうまいならもっと買おう」とリピート客が来たとしても、次はハズレを引く可能性がある。むしろその可能性が高い」

エレン「あー………じゃあ区別して売ってもらうってのは? これはライナーのところの牧場の牛のホルモンですって。それならOKだろ?」

ライナー「それをやると他の牧場のホルモンは確実に売れ残るだろうが………」

エレン「それはしょうがないんじゃないのか?」

ライナー「ダメだ。まだホルモンの旨さが浸透してない現状、牧場主や精肉店としちゃホルモンは捨て値で売ってる。だが、捨て値でも売り物は売り物なんだよ。同じ価格なのにウチのだけ格別にウマいとなると、いろいろ不都合が起こる」

サシャ「仮にエレンの言うようにウチの牧場のホルモンと別の牧場のを区別して売ったとします。下処理が済んでて、あとは好みに味付けて煮るなり焼くなり調理するだけ、しかも旨いという、主婦に嬉しい商品なわけです」

エレン「いいことじゃないか」

ライナー「そうだな、人気が出るだろう。そしてすぐに売り切れる。ちょっと想像してみてほしいんだが、例えばある精肉店にウチのホルモンのうわさを聞きつけて買いに来た客がいたとしよう」

エレン「ああ」

ライナー「が、ウチのは売り切れ。仕方なしに別の牧場のホルモンを買っていく。んで作る。結果はマズい。なぜ不味いかを考える。そしてこんな結論に至る――――マズいのはブラウン牧場のホルモンじゃないからだ、と」

エレン「………………………………ああ、そういうことか」


 理解の遅いエレンであったが、ここにきてようやく理解した。


ライナー「そうだ。俺の牧場の牛のホルモン『だけ』が旨いと思われるのは困るんだよ。他のはみんなマズいなんて消費者に思われるのは、本当に最悪なんだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎しで、新興のウチの牧場は他の牧場から総スカン喰らう。牧場同士、いろいろと仲良くしてやってかなきゃいけない部分もあるんだ」


 牧場経営とて持ちつ持たれつでやっている。

 後に大牧場の経営主となるライナーではあるが、それは信頼という下積みを重ねてきた土台あってのことだ。


ライナー「タダでさえウチの肉は他と隔絶した旨さがあるから、既にいらん嫉妬と顰蹙を買ってる………」

エレン「あれだけ旨けりゃそうなるか……」

ライナー「くそう……こうなったら内臓肉に関しては、精肉屋を別事業として展開するか………あるいはどこかの店と契約して、ウチの牛だけ取り扱ってくれる直営店という手も………」


 がりがりと乱暴に頭を掻いて悩むライナーに、エレンとアルミンはなんと声をかけるべきか分からなかった。

 しかし、


サシャ「いいじゃないですか、ライナー。美味しい牛の作り方や、ホルモンの処理方法、他の牧場にも教えてあげましょうよ」


 そんな声に、ライナーは苦渋に満ちた表情を呆けたものに切り替えて、サシャの顔を見る。


サシャ「互いが切磋琢磨してこそ、新しいものができる。私はそう思います。ひょっとしたら私やライナーが及びもつかない牛の生育法を誰かが考え付いて、とっても美味しい牛肉ができるかもしれませんよ?」


ライナー「む、しかし……」

サシャ「鎧は礎でしょう? いつだって私たちの前を行く貴方は、それでも、私たちを置いて行ってしまうことはなかったじゃないですか」

ライナー「むむ」

サシャ「ライナーの知識を礎に、この壁から解放された人類圏に、食肉ブームを巻き起こしてやりましょう! その上で、ライナーと私が群雄割拠の肉世界で、彼らの一歩上をいけばいいんです!」

ライナー「むむむ……」


 ねっ、そうしましょ? と笑顔でライナーにねだる姿は、はた目にも可愛らしく、エレンとアルミンの笑いを誘った。


アルミン「くっ、ふふ……そう、だね。他の牧場の肉も美味しいけれど、やっぱりライナーの牧場の肉には敵わない。最高最強の肉だって!」

エレン「ははは、そうだぜライナー。おまえの育てた牛はどいつもこいつも最高だ。ちょっと知識を身に着けたぐらいで、おまえの牛ほどのものはできっこねえよ!」

サシャ「そうですそうです、ケチケチしないで、教えてあげましょう?」

アルミン「うん、悪くない案だ。それに、これは例の嫉妬されてるって状況をうまく打破できるきっかけになるかもよ?」

ライナー「なに?」

アルミン「ライナーが考えた牛の新たな生育法を、他の牧場に伝える。余すところなくね。牧場によっては環境も違うだろうから、それに応じた効率化はどこの牧場も実行するだろう。だけど牛を旨くするための手間暇は過酷の一言で断じるにはいささか弱いほどに過酷だ。その過酷さに本格的な育成を諦める牧場主は自ずと限界を知るだろう」

ライナー「!」


アルミン「その上で肉を売るんだ。条件は五分。それでもライナーの方が旨い。それはライナーとサシャが情報を隠していたからじゃあない。精一杯、どこの牧場よりも真心と手間暇かけて牛を育てたからだって、喧伝すればいい。逆に大っぴらにすることで上手い精肉を生み出す難しさや過酷さをアピールし、嫉妬を消してしまおうってことだ」

サシャ「そうですそうです、美味しいものは簡単には作れないんです」

アルミン「そうすれば大衆は自ずと、牧場にランク付けをするよ。安いが味も悪い牧場と、普通の値段だけど結構おいしいお肉を出す牧場、そこそこ値が張るが旨い肉を売る牧場、そして、凄く高いがとんでもなく旨い肉を売る牧場。その旨さの秘訣は、牧場主とその恋人が、牛たちへの手間暇を惜しまなかったが故であると。高いのはそれだけコストをかけているがためだと」

ライナー「成程……そんな手が!」

アルミン「すると食材を調理して客に提供するレストランや定食屋も潤うんだ」

ライナー「!! おまえ、やっぱ天才だなアルミン!!」

エレン「? なんでだ? どうしてそうなる?」

アルミン「大衆向けレストランにせよちょっとリッチなレストランにせよ高級レストランにせよ、現状は有象無象のマズい肉か、ライナーのところの極上肉か、仕入れる肉に二つしか選択肢がない」

ライナー「うむ」

エレン「へー」

アルミン「安く料理を提供したい店にとって、君の牧場の肉は単価が高すぎる。だからといって安い肉を仕入れてしまっては、旨くするための手間がかかり、やはり料理自体の単価が上がる」

ライナー「つまり」

アルミン「仕入れる肉の選択肢が広がると言うことは、それを仕入れる料理店にとっても利益があるということだよ。君は高級店担当。他の食肉業者はそれ以外のレストラン担当、みたいにね」


 これは後のファミリーレストランや高級レストランの住み分けの始まりであったと言う。


エレン「はぁ、色々あんだなぁ。アルミンはこういう小賢しくて狡すっからいこと考えさせると天才だよなマジで。今度から卑劣ミンって呼ぶわ」

アルミン「ひ、ひどいよ! 僕は真剣に――――ちょっと、あっ、逃げた!! 待ってよエレン!! 僕怒ってるんだからね!!」


 ぷりぷりと怒りながらエレンを追いかけるアルミンの背を見送りながら、ライナーは微笑んだ。

 もう迷いはない。ふっきれた男の清々しい笑みだった。


ライナー「やっぱ、俺の友達は最高だな」

サシャ「ええ。最高の友達で、恩人です」


 ライナーとサシャの牧場物語は、まだ始まったばかりだ。

 頑張れライナー。まだこの時点で君はサシャ父という最大の難関が待ち受けている。

 死ぬな、ライナー!

 戦え、ライナー!



 ライナー「ホルモン祭り」【完】

※超久しぶりにこっちにも顔を出してみました。

 やっぱり料理はいいよねえ。料理は人の心を豊かにしてくれる。

 食べてくれる人に笑顔をくれる。リリンの生んだ文化の極みだよ。

 嫁の飯が不味い……? うっ、頭が……。

 実は結構まだまだネタはあったりするんだ。ライナー、ベルトルト、サシャ、アニの料理合戦とか。

 需要あればそのうちまたここで。

 では。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月06日 (金) 18:38:35   ID: 3qUbvtzC

残業ですか、大変ですね。
頑張ってください

2 :  SS好きの774さん   2013年09月08日 (日) 18:55:11   ID: CrSGCEB2

頑張れよ

3 :  SS好きの774さん   2013年09月11日 (水) 20:10:40   ID: hcQfXy_c

レイジングか・・・・
とんでもないことになりそう・・

4 :  SS好きの774さん   2013年09月11日 (水) 20:10:40   ID: hcQfXy_c

レイジングか・・・・
とんでもないことになりそう・・

5 :  SS好きの774さん   2013年09月21日 (土) 01:34:29   ID: dP1n922s

なんか凄いことになりそう……!

6 :  SS好きの774さん   2013年09月29日 (日) 11:22:34   ID: pSPPGf6i

死せる餓狼の自由を!

7 :  SS好きの774さん   2013年10月14日 (月) 01:44:38   ID: aZ4zpsit

きゅーけつきかぁ

8 :  SS好きの774さん   2013年11月28日 (木) 12:48:53   ID: nyQzjpBC

パーフェクトだ、うp主



さあ、どうした?
まだ更新が止まって一月経っただけだぞ
かかってこい!!

エレアニを出せ!!
ラブラブチュッチュさせろ!!

ライサシャエロパートを再構成して立ち上がれ!!
PCをアップデートして投稿しろ!!

さあSSはこれからだ!!
お楽しみはこれからだ!!

ハリー!
ハリーハリー!!
ハリーハリーハリー!!!

9 :  SS好きの774さん   2013年11月30日 (土) 19:51:00   ID: s4NZLyhI


どこぞのアーカードだよ?www

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