ユミル「たったひとつの贈り物」 (ユミクリ)(79)

ユミル×クリスタ、ユミルメイン、ユミル視点の地の文あり
52話までネタバレあり

現在公開されている情報から色々想像で補完してます



よろしくお願いします



「我らを恨むでない。全ては運命のままに-」


ここへ連れてこられた時、そう言われたのを覚えている。
それがいつの事だったかははっきりしない。
寝台に横たわりまどろむ私の顔に、高窓から入り込んだ光が差し掛かってきていた。


「…おい起きろ、いつまで寝てるつもりだ!」

(もう、朝か…)


乱暴に扉を開けて入ってきた憲兵の声に、私の意識は繋がっていく。
今日もまた変わり映えの無い一日が始まった。


「ぐずぐずしていないで早く仕事の準備をしろ」



憲兵は私の足鎖から錘を外し、こう続ける。


「今日の水汲みはいつもの倍にしておけ。馬屋の掃除も忘れるなよ」

(相変わらず人使いが荒いな…)


足鎖を引きずり井戸へ向かう途中、ふと顔を上げる。
砦を再利用した憲兵の駐屯所は、砦としては小さい方だが数人が住まうには十分な広さだった。
周囲は高い壁に囲まれており、侵入も脱出も困難だ。子供一人を軟禁するには十分と言える。

この砦で、憲兵のために洗濯をし、馬の世話をし、薪を割り、冬になれば雪をかく。それが私の生活だった。


(…そろそろ憲兵が入れ替わる頃か)



ここに連れられてもうどれだけの日々を過ごしただろうか。
気候の変動で大体の季節はわかるが、今は何日かも判然としない。

最初は木に刻みをつけて日にちを数えていたが、しばらくしてそれもやめた。
そんな事をしても私がここを出る日は来ない。

汲み上げた水を運んでいると、憲兵の声が聞こえてくる。


「おい…あいつはいつまで生かしておくつもりなんだ?」

「12歳の誕生日までだ。言っただろう、その歳にならなければ法で裁けない」



この国の法では12に満たない子供に罪を問うことはできない。

ここに連れて来られる前に私の周りにいた者達は全て殺されたが、
幼かった私はここでしかるべき時を待つことになった。


『ユミルに連なるもの』

『ユミルの民』

『ユミルを継ぎし者』


私を取り巻く環境が変わってしまったのは、ユミルとして生まれた意味をきちんと理解する前のことだった。
代わりに理解したのは、連中にとって私の存在は殺したいほど邪魔だということ。



「こうやって食わせてるのも税金の無駄遣いじゃねえか…」

「だからこうして働かせているんだろう」

「その金で村から雑用係を雇った方がマシだ。見張る必要もないしな」

「あいつが生まれてきてなけりゃ話は簡単だったのによ」


(わからねえな…何のために生まれてきたのかも、生きてることに何の意味があるのかも)


12歳を迎えたら私は処刑される。今はただ、死ぬために生きている。



一日の仕事を終え、体を拭いた私の足鎖に錘が繋がれた。
敷地の片隅にある石造りの小屋に入ると、外から鍵がかけられる。

憲兵の居館では夕食の準備が始まっているようだった。


小規模の砦に専属の料理人を配置する余裕はないらしく、日に三度、村から食事が運ばれる。
調理場でスープが温めなおされ、憲兵が食事を始めた頃に私にも食事が運ばれてくる。


「…こんばんは」


~少しだけおまけ~

エレミカ+アルミン中心、台本形式
※キャラ崩壊注意

ユミル「たったひとつの贈り物」の続きというかおまけになりますが
ユミクリ成分はアルミン視点から少しだけ(クリスタ出番なし)



サシャ「ユミル!大変です!」

ユミル「どうした芋女」

サシャ「ミカサがユミルを参考にしたせいで、エレンが入院しました!」

ユミル「知るか」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アルミン「芋とパァンとエレンとミカサ」


~病院~

エレン「…ったく、本当にいい迷惑だよ」

アルミン「まあまあ、相手がミカサな事を考えると、数日の入院で済んでよかったと思うよ」

エレン「良くねえよ!あいつ、突然抱きついてきてなんて言ったと思う!?」

エレン「『エレンが生まれてきてくれて良かった。エレンと過ごす日々は私の宝物』だぞ?意味がわからねぇ」

アルミン「それは…日頃の感謝を言葉にしたというか、なんというか」

エレン「お前は俺の母親かっつーの。しかも全力で締めてくるから肋骨にヒビ入っちまった」

アルミン「ミカサのパワーもエレンの回復力も驚異的だって医者は言ってたね」

エレン「それに毎日来るもんだから、思わず言っちまったよ。『もう来なくていい』って」

アルミン「それで、僕がお見舞いを頼まれたのか…明日の退院の付き添いも」

エレン「いい加減にしてほしいよな。オレは子供じゃないんだ。いちいち付きまとわれても迷惑なんだよ」



アルミン「…」

エレン「…アルミン?」

アルミン「…」

エレン「お、おいアルミン、どうした」

アルミン「エレンはさ」

エレン「え?」

アルミン「ちょっとだけ、贅沢だよね」

エレン「お、オレが贅沢?」

アルミン「うん、それに、甘えてる」

エレン「ば、馬鹿言うなよ。オレのどこが甘えてるって言うんだ」

アルミン「ミカサに対して強く出られるのは甘えだよね。どんな事を言っても、ミカサは許してくれるっていう」



アルミン「例えばキース教官が毎日やってきても、エレンは追い返したりしないだろう?」

エレン「そ、そりゃあ、お前、教官とミカサは違うだろうが」

アルミン「教官に酷い態度をしたら評価が下がるけど、ミカサは絶対に自分を見捨てたりしないってこと?」

エレン「そ、そんなんじゃねえよ!」

アルミン「ねえエレン、どうしてミカサがエレンに付きまとうのか考えたことがある?」

エレン「…いや」

アルミン「ミカサはさ、不安なんだよ。いつかエレンが自分から離れてしまうんじゃないかって」

エレン「…」

アルミン「もし、本当にエレンが顔も見たくないほどミカサが嫌いなら」

アルミン「中途半端な対応をするんじゃなくて、はっきり言った方がいい。勿論言葉は選んでね」

アルミン「その方が、ミカサも早く楽になれると思うよ」



エレン「…あいつは家族だし、嫌いなわけじゃねえよ。ただ、少し放っておいてほしいこともあるんだ」

アルミン「それならそうと伝えてあげればいい。あとは、少し安心させてあげればいいと思うよ」

エレン「安心させる?」

アルミン「ミカサを見捨てたりしないってことを示してあげればいいんだよ。少し甘えさせてあげるとか」

エレン「き、気持ち悪い事いうなよ。甘えさせるってなんだよ」

アルミン「僕らはさ、訓練兵だけど兵団の一員で、立派な男だよね?」

アルミン「それならさ、女の子を守って、安心させてあげるのは普通だよ。ミカサだって女の子なんだから」

エレン「…あいつにそんな必要無いだろ。ぶっちぎりの主席なんだからさ、不安の一つもねえよ」

アルミン「そうでもないよ。成績は関係ない」

エレン「んな事ねえだろ。あいつは涼しい顔して一人で何でもできちまう」

エレン「…立体起動も、格闘術も馬術もあいつの方が優秀なのに、オレが守るなんて言えねえよ…」



アルミン「う~ん、そうだなあ…じゃあ、クリスタとユミルだったら、どっちがどっちを守ってると思う?」

エレン「そりゃあユミルがクリスタを守ってるに決まってんだろ」

エレン「クリスタもまあ優秀だけど、ユミルは今期のトップ10入り確実って言われてるぞ」

エレン「悪い男もクリスタにだけは手を出さないのは、ユミルが傍にいるからだっていう奴もいるくらいだ」

アルミン「だと思うでしょ?でもさ…今度あの二人をよく見てみるといいよ」

エレン「どういう事だよ」

アルミン「いつもしかめっ面で憎まれ口叩いてるユミルだけど、クリスタと二人の時だけは表情が和らいでる」

エレン「…そうなのか?」

アルミン「それを見てこう思ったんだ」

アルミン「ユミルはクリスタを守ってるだろうけど、クリスタもユミルの事をを守ってるんだろうなって」

アルミン「自分の方が弱くても、守ってあげたいって思うのはおかしなことじゃないと思う」

エレン「……」



アルミン「この場合ユミルは男じゃないんだけどね」

エレン「男より男らしいところがあったりするけどな」

アルミン「まあ、とにかく僕が言いたいのは、強い弱い関係なく、男なら女を守ってみせろってこと」

アルミン「カルラおばさんもよく言ってたでしょ?」

エレン「ああ…確かに母さんにはよく言われた」

アルミン「…そういう考えでいくと、僕はエレンよりも『男』をやってるってことになるのかな」

エレン「ミカサはお前の所に甘えに行くのかよ?」

アルミン「ほとんどエレン関係の相談だけどね。エレンを怒らせたとか、エレンに嫌われたかも、とか」

エレン「マジかよ…座学と技巧以外でお前に負けるのはなんか悔しいな…」

アルミン「ひどいなあ…ぼくは座学と技巧しか取り柄がないってこと?」



エレン「そ、そんなこと言ってねえよ、俺はただ…」

アルミン「あはは、冗談だよ。…もうそろそろ面会終了の時間だ。僕もう行くよ、おやすみ」

エレン「あ、ああ、すまなかったアルミン」

アルミン「あ、そうだエレン」

エレン「え?」

アルミン「明日は僕用事があるんだ。だから退院の付き添いはミカサに頼んでもいいよね?」

エレン「しょーがねえな…いいよ」

アルミン「じゃあ、今度こそおやすみエレン」

エレン「ああ、おやすみアルミン」

エレン「……」



~翌日~

ミカサ「エレン、大丈夫?」

エレン「ああ、もう大丈夫だ。…心配かけたな」

ミカサ「悪かった。私が色々とやり過ぎてしまった」

エレン「いいよ別に…オレの鍛え方が足りなかったんだ」

ミカサ「…」

エレン「なあミカサ」

ミカサ「?」

エレン「ええと、その、お前が、オレの事を色々心配してくれるのはありがたいんだが」

エレン「その、周りに人がいるときにあからさまに世話を焼かれると、恥ずかしいというか」

エレン「そっとしておいてくれた方が助かることもあるんだよ。…それだけだ。寮に帰ろうぜ」

ミカサ「わかった…。これからは少し控える」



エレン「…(これでいいかな…あとは安心させてやればいいんだが、どうすればいいんだ?)」

ミカサ「…」

エレン「…(こいつが本当に安心した表情を見せたのは…マフラーをやった時だったな)」

ミカサ「…」

エレン「…(マフラーを常備しておけばいいのか?でもこいつやったマフラー全部巻きとかしそうだな)」

ミカサ「…」

エレン「(う~ん、どうすれば…そうだ!)おいミカサ、手出せ」

ミカサ「手?」

エレン「そうだよ。初めて会った時も繋いで帰ったろ」

ミカサ「…エレン」

エレン「恥ずかしいから兵舎につくまでだぞ!」

ミカサ「分かった」


~~~

ミカサ「…(エレンが自分から手を繋いでくれた…)」

エレン「休んでた分を取り返さないとな。座学はアルミンに教えてもらおう」

ミカサ「…(これはもうそういうことと理解していいだろう)」

エレン「なるべく早く勘を取り戻すために、立体起動が苦手な奴の補習補佐にも積極的に名乗りを上げて…」

ミカサ「…(ミカサ・イェーガーを名乗る日も近い)」

エレン「対人格闘は…ライナーあたりに訓練が終わった後に練習に付き合ってもらうかな」

ミカサ「…(付き合う。エレンと恋人として付き合って、そして、家庭を作る)」



エレン「このままじゃまたアニ辺りに子供扱いされちまうからな」

ミカサ「…(子供…そう、家庭を作るなら子供がいる。私はエレン似の男の子が欲しい)」

エレン「見返りは…水汲み当番の交代…だけじゃやっぱり足りないかな」

ミカサ「…(一人じゃ足りないなら、もっと作ればいい…)」

エレン「追加でパン1個、だと少ないかな…ライナーはでかいからな…何個渡せば納得するかな…」

ミカサ「…(そう、エレンが納得するまで、私が頑張る)」

エレン「なあミカサ、どのくらいがいいと思う?」

ミカサ「エレンが望むなら、分隊1個分でも…」

エレン「は!?」




おわり


ありがとうございました

みんな幸せになってほしい

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