モバP「小さいけれど、大きな一歩」 (27)
———事務所
泰葉「…………」サラサラ…
泰葉(静かだな……)
泰葉「…………」カキカキ
泰葉(まさか事務所で宿題なんて……)
泰葉(なんだか不思議。昔の私じゃ考えられないな……)
泰葉「……んー」ケシケシ
泰葉(私を変えてくれた……大切な人たちのおかげかな)
泰葉「……ふふ」
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がちゃっ
P「戻りましたー」
泰葉「あ、Pさん。おかえりなさい」
P「あぁ、ただいま泰葉。ふいー、冷風が五臓六腑に染み渡る……」
泰葉「大げさじゃありませんか?」
P「そんなことないぞ。この暑さは正直堪えるよ」
泰葉「ふふっ、熱中症には気をつけてくださいね」
P「そう言う泰葉もな?」
泰葉「はい、大丈夫です。私にはとっても優しくて素敵なプロデューサーがついてますから」
P「そんなやつがいるのか?」
泰葉「はいっ。私の目の前にいますよ、Pさん」ニコッ
P「うう、泰葉にそんな嬉しいこと言われたら泣けてくるよ……」
泰葉「あ、泣かないでください……よしよし」ナデナデ
P「泰葉は優しいなぁ」
———
P「ところで泰葉」
泰葉「はい?」ナデナデ
P「も、もう撫でなくていいぞ……じゃなくて、今やってるのって宿題か?」
泰葉「ええ、そうです。毎年、夏休み前には先生に頼んで、早めに宿題を頂いてるんです」
P「へぇ、そうだったのか。頑張ってるな」
泰葉「こういうお仕事だと、どうしても時間が足りなくなってしまいますから……」
泰葉「少しでも周りに遅れを取らないようにって。……あんまり頭は良くないですけど」
P「いやいや、そういう姿勢は大事だと思うぞ。偉いな泰葉」
泰葉「い、いえ……そんなこと」
P「少なくとも、事務所に来てはネイルいじったり音楽聴いてたりするよりは偉いって」
泰葉「あ、あの二人はあれでいいんですよ。なんと言うか、賑やかで」
P「賑やかすぎるんだよ、あいつらは……」
泰葉「ふふ、賑やかすぎるくらいがちょうどいいです」
P「そうかなぁ……いつの間にか私物も増えてるし」
泰葉「生活感があっていいと思いますよ?」
P「にしたって限度があるだろ……ごちゃごちゃと物が多すぎだ」
泰葉「物が……」
P「少しくらい片付けしろよな……泰葉を見習って欲しいよ。なぁ、泰葉」
泰葉「…………」
P「泰葉?」
泰葉「……それでも、何も……何も無いより、よっぽどいいです」
P「……!」
泰葉「何も無い、殺風景な……ただ仕事を待つだけの空間より、今の方が……ずっと」
P「……泰葉……」
泰葉「——っ! ご、ごめんなさい、私っ……」
P「…………」ポフ ナデナデ
泰葉「……あ……」
P「……そうだよな。何も無いなんて寂しいよな」
P「大丈夫、泰葉。泰葉の居場所はここだ。ずっとここだから」
泰葉「は、い……」
P「だから、なんにも心配いらないよ。なっ?」ナデ
泰葉「……ん」コクッ
P「よしよし」ナデナデ
泰葉「……Pさん」
P「ん? どした——」
泰葉「んっ」
ぎゅっ
P「うおっとっとぉ!? や、泰葉っ?」
泰葉「んん……ん」ギュウゥ
P「……。意外と甘えんぼだなぁ、泰葉は」ギュ
泰葉「……ん、ふふ♪」
P「なぁ、泰葉。お前の笑顔、これからも見せてくれよな」
泰葉「……はい。精いっぱい、ファンの方に笑顔を届けられるように頑張ります!」
P「おし、その意気だ!」
泰葉「はいっ!」
がちゃーんっ
加蓮「遅れ!」
李衣菜「ましたー!」
P・泰葉「!?」ビクッ
だりかれ「って」
だりかれ(Pさんと泰葉が抱き合ってるぅぅぅぅぅ!?!?)
———
李衣菜「…………」ジトー
加蓮「…………」ジトー
P「違うんだ。違うんだこれは」アセアセ
泰葉「そう、そうなの。違うのこれは」ワタワタ
加蓮「私が何回抱きついても抱きしめ返してくれないのに!」
李衣菜「なぁにが違うってんですか、正直に話してください! あと加蓮それどういうこと!?」
P「な、なにもやましいことなんてないから!」
だりかれ「やましいこと考えなければ抱きついてもいいの!?」ガタッ
P「やましさ100%に聞こえるけど!?」
泰葉「と、とにかく李衣菜、加蓮。ホントにPさんとはなにもなかったの!」
加蓮「むぅ……泰葉がそう言うなら信じてあげてもいいけど」
李衣菜「ま、今日は特別な日だし。ね、Pさん?」
P「あ、ああ。李衣菜、加蓮、頼んでた物は受け取ってきたか?」
加蓮「うん、もちろんっ」
李衣菜「はい、これですよね?」スッ
P「おー、結構でかいな」
泰葉「あ、あの……この大きな箱なんですか? それに特別な日って、どういう……」
加蓮「あれ? 泰葉、まだ気づいてないの?」
泰葉「え、気づいてないって……?」
李衣菜「へへ。泰葉、今日は何月何日だ?」
泰葉「えっと、今日は……あれ?」
P「はは、忘れてたか。そう、今日は7月16日——」
李衣菜「泰葉!」
加蓮「誕生日!」
三人「おめでとう!!」
泰葉「あ——!」
———
泰葉「…………」
P「今日この日のために、通りの奥にある美味いケーキ屋にオリジナルケーキを用意してもらったんだ」
P「それが、この箱の中身ってわけ。……よ、っと」
ぱかっ
加蓮「わ、チョコケーキ!」
李衣菜「ほら、ここに『Dear YASUHA』って書いてあるよ!」
加蓮「びっくり! 李衣菜が英語読めるなんて!」
李衣菜「突然の悪口にこっちがびっくりだよ!?」
泰葉「…………」
李衣菜「バカにすんなーっ」ペシペシ
加蓮「あははっごめんごめーん」
P「ありがとな、二人とも。受け取りに行ってくれて」
李衣菜「いえ! 一年に一回の泰葉の誕生日ですから。それと、遅れちゃってすいませんでした」
P「いや、それはいいんだけど……なにかあったのか?」
李衣菜「実はですね……」
加蓮「ちょっとタンマ! いいでしょ別に。そんな些細なことより」
李衣菜「加蓮が新装開店のモクドナルドに入っちゃって、中々出てこなかったんですよー」
加蓮「なんで話しちゃうかなぁ!?」
泰葉「…………」
P「なんだ、いつもの加蓮の発作か」
李衣菜「そうなんですよ……新メニューだかなんだかで、余計に時間食っちゃって」
加蓮「発作って……いいじゃん、ちゃんと受け取って来れたんだし!」プンスカ
P「今度は俺が連れてってやるから」
加蓮「やったぁ♪」
李衣菜(ちょろいなー)
泰葉「…………」
P「そうそう、二人も泰葉にプレゼント用意してたんだろ?」
李衣菜「あっ、はい! えへへ、加蓮のおかげでいい店見つけられたんです!」
加蓮「なに言ってんの、李衣菜がセンスいいアクセ見つけたんでしょ?」
李衣菜「ううん、加蓮が」
加蓮「ううん李衣菜が」
P「仲いいのは分かったから、泰葉にプレゼント渡してやれ」
泰葉「…………」
加蓮「あ、そうだね。じゃあ李衣菜っ」
李衣菜「うんっ」
だりかれ「泰葉、誕生日おめでとう!」スッ
ブローチ(どうも)
泰葉「…………」
P「へぇ、ブローチか。いいデザインだな」
加蓮「でしょ? 真ん中の彫刻がPさんで……」
李衣菜「周りに埋め込んである3つの宝石が私たちです!」
泰葉「…………」
李衣菜「すぐ付けてもらいたかったからラッピングはしなかったんだけど……」
P「いいじゃないか、付けてあげたらどうだ?」
加蓮「うんっ。はい泰葉、じっとしててね……」
泰葉「…………」
加蓮「ん、よしっ」
李衣菜「おおー、やっぱり似合ってる!」
加蓮「さすが李衣菜のセンス!」
P「似合ってるぞ、泰葉」
泰葉「…………」
李衣菜「……泰葉?」
泰葉「…………」
加蓮「そういえばさっきからフリーズしてない?」
P「泰葉ー? おーい」ヒラヒラ
泰葉「…………」
泰葉「…………」
泰葉「…………」
泰葉「(´;ω;`)」ポロッ
三人「!?」
P「おおおおお、どどどどどどうした泰葉ぁぁぁぁあああ!!?」オロオロ
加蓮「泰葉、泰葉ー!? どうしたのどこか痛いの、病院行く、救急車呼ぶ!?」ワタワタ
李衣菜「ちょ、二人とも焦りすぎ! ……や、泰葉? どしたの?」ギュッ ナデナデ
泰葉「ぐす、あ、ごめ……。こんなにお祝いしてもらったの、初めてで……」ポロポロ
李衣菜「うん……そうだったんだ」ポン ポン
泰葉「ふふ……ありがと李衣菜。なんだかお姉さんみたい」ギュ
李衣菜「い、一応一つ年上なので……」
泰葉「あ、そういえば。忘れちゃってた、ふふっ」
李衣菜「ひどーい。あはは……」
加蓮「Pさん救急って110だっけ!?」ドタドタ
P「バカ言え0120だ!」ドタバタ
加蓮「そっか!」
李衣菜(うるさいなー)
泰葉「ふふ……」ニコニコ
———
——
—
P「さて、そろそろ帰るか」
加蓮「お腹いっぱーい……当分ケーキいらないかも……」
李衣菜「わ、私も……まだ口の中甘いよ……」
泰葉「……あ、あのっ!」
P「うん? どうした泰葉」
泰葉「今日はありがとうございます。こんな素敵な誕生日、生まれて初めてでしたっ」
李衣菜「そ、そんな改まって言わなくてもいいよ?」
加蓮「うん、私たちも楽しかったしね」
泰葉「ううん、言わせて。本当に、本当に……ありがとう!」
泰葉「私、これからももっともっと……!」
泰葉「みんなと仲良くなりたい!」
李衣菜「……へへっ。そんなの当たり前だよ」
加蓮「たっくさんの思い出、作ってこうよ!」
泰葉「——!」パァァッ
泰葉「うんっ!」ニパッ
P「…………」ニコニコ
李衣菜「ね、手繋いで帰ろ?」
泰葉「うん、いいよ」
加蓮「泰葉真ん中ねー」
ぎゅっ
李衣菜「よーし、いくぞー!」
加蓮「せーのっ!」
泰葉「目指せー!」
三人「トーップアイドルーっ!」
P(なれるさ、きっと!)
おわり
というお話だったのさ
やすだりかれの三人が好き
ちょっと過ぎたけど岡崎先輩、誕生日おめでとう!
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