モバP「黒くて速いアイツ」 (14)

【PM11:30】

【CGプロ 本社ビル 第1事務室】


P「…………

 ……………………

 ………………………………」グー



P「腹減った。一休みするか。ん、あったあった。お湯もポットに残ってるな」ゴソゴソ


ジョボボボボ


P「さあ、準備万端、許せぬあんたん。——ジャジャーン! すぺしゃるかっぷらあめん(の○代ボイス)。

 四条貴音プロデュースだぞ。僕のパパが765Pさんと知り合いだから、なんとまだ発売前の新商品なのに

 もらってきたんだ。だけど、このカップラーメンは3人用でね。……恥ずかしくなってきた。やめよう。いやあ、

 でもしかし持つべきものは人脈だなあ! しかもあの四条さんだから味のほうも期待大! おお、空きっ腹に

 響き渡るは馥郁たる香り! 更にパッケージも納得の風格! 大胆にも四条さんのおしr……」


ピピピピピ


P「おっと、独り言を楽しんでいる間にできたようだ。どれどれ、いっただきまーす!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1373886044

P「……」ズゾゾゾゾ

P「うっ……まああああああああああああああい! 正直カップラーメンだからなめてた。だけど、このスープのコク、

 絶妙な塩加減、ほどよくからむちぢれ麺、しっかりと味のある具、全てにおいて味のパーフェクトコミュニケーションだ!

 さすがらあめん女王四条貴音の名を冠するだけのことはある」ズルズル

P「ごちそうさま」フゥ

P「そして、食後のスタドリ1本」ゴクゴク

P「ぷはっ。空き容器と瓶は、うーん、面倒だし明日片付ければいいか。とりあえず横に置いとこう」コト

P「さて、続きを頑張るぞ。……深夜に1人で残業してると、どうしても独り言が多くなっちゃんだよな」




         カサ   カサ

            カサ   カサ



【翌日 PM6:30】

【CGプロ 本社ビル レッスンルーム】


トレーナー「はいっ、今日のレッスンはここまで。皆さんお疲れさま。ちゃんと水分を補給して、しっかり休んでくださいね!」

アイドル一同「お疲れさまです!」


                                                               カサ


————


みく「みんな、このあとはどうするにゃ? みくは何も予定が無いにゃ」

乃々「も、もうすることも無いので帰りたいんですけど……」

蘭子「我が為すべき未来の追憶に刻まれたるは無のみ(私もこのあと特にすることはないですよ)」

早苗「そっかー、今日はもうあたしたち全員仕事が無いんだね。そうだ! みんなでP君のところへ行こう!」

みく「賛成だにゃ! Pチャン、忙しいとかなんとか言って、最近はあまりみくたちのことをかまってくれないにゃ」


                                                            カサカサ

蘭子「我らが友なれど久しくまみえず(私たちのプロデューサーなのにしばらく会っていません)」

早苗「きっといろいろ事情があるんだろうけどねぇ。あっ、どうせなら今夜はP君に夕飯おごらせちゃおう!」

乃々「えっ……もりくぼは……」

みく「乃々チャン、遠慮することはないにゃ。みくたちだって頑張ってるんだにゃ。ごほうびをもらってもいいにゃ」

早苗「そうそう、だからたまにはこのくらいしてもらっても、ばちは当たらないわよ♪」


                                                            キャアアアアアア……


蘭子「? いずかたよりか幽かなる声(どこからか小さな声が)」

みく「なにか聞こえたのかにゃ?」

早苗「気のせいじゃない? さあ、P君のいる第1事務室へGO!」

乃々「あうう……。早苗さん、引っ張らないでほしいんですけど……」

【PM7:15】

【CGプロ 本社ビル 第1事務室】


P「分かった、分かったよ。確かに最近あんまりコミュニケーションがとれてなかったな。本当に済まない」

早苗「さっすがP君。話が分かるわねー!」

みく「じゃあPチャンのおごりでおいしいものを食べるにゃ」

P「よし、だったら回らない寿司にでも行くか!」

みく「にゃにゃ〜、Pチャン相変わらずひどいにゃ!」

早苗「あはは、このやりとりも久しぶりねぇ」

乃々「私は別に食べに行かなくても大丈夫なのでもうお構いなく……」

蘭子「退嬰的な乙女よ、我らが友に斟酌は無用!(乃々ちゃん、プロデューサーに遠慮は要りませんよ)」





                     カサカサカサカサカサカサカサカサ



全員「!!!!!」


                      カサ カサ カサ カサ カサ……


全員「ぎええええええええええええええええええええ!!!」

P「な、なんだあのゴキブリは!? スマホくらいの大きさがあるぞ。化け物か!」

みく「にゃんにゃのにゃの! にゃんにゃのにゃの!」

乃々「帰りたいんですけど……」

蘭子「冒涜的にしてむくつけき漆黒(恐ろしいです怖いです)」

P「はっ、そ、そうだ! 武道で段持ちの早苗さんならなんとかしてくれる! お願いします、早苗さん」

早苗「——ふええ、いやだあ。大きい虫、いやだあ。えぐっえぐっ。

   うわ〜ん。いやいやいや! 許してぇ、ごめんなさい。びぇ〜っ!」

みく「早苗チャンが幼稚園児みたいに我を忘れて泣いてるにゃ……」

蘭子「名状しがたき狂気の宴(早苗さんの周りに水溜りが)」

P「それには触れないのが優しさだ、蘭子」

P「アイツは壁に張り付いて止まった。おそらく刺激しない限りはしばらく動かないだろう」

みく「その間に対策を考えるにゃ。そうにゃ、晶葉チャンのロボットなら勝てるんじゃにゃい?」

P「駄目だ。以前、スズメバチが入ってきたときに使ったけど、結果、このビルが半壊した。

 奇跡的に死者・負傷者はゼロだったけどな」

蘭子「諸行無常万物流転のゆえんは斯くなるか(ビルが壊れたあの事件の原因ってそれだったんですか)!?」

乃々「お仕事とレッスンがしばらく休みになったのは嬉しかったんですけど……

  でもそのせいで第3女子寮が建てられなくなったから素直に喜べませんでした……」

みく「それにゃら、第2事務室にいるちひろチャンにお願いするのはどうかにゃ? お金があればなんとかしてくれるにゃ」

P「そうだな。この際マニーに糸目をつけてもしょうがないからお願いしよう。内線取り出しポパピプペ」トゥルルルル

P「もしもし、Pです。ちひろさんでしょうか?」

ちひろ『……………………』

P「もしもし、聞こえていますか?」

ちひろ『……逃げて! ……黒い物体……飛ぶ………………顔面……もう、限界……』ツーツー

P「もしもし、もしもーし! 駄目だ! ちひろさんはやられてしまったようだ……」

蘭子「先刻流れ響きたるは吝嗇家の声か(さっき聞こえたのはちひろさんの声だったんですね)」

P「そ、そうだ! みくは猫だよな? 猫ならゴキブリを退治するくらいわけないだろ?」

蘭子「我らが友、ついに乱心したか(プロデューサーがおかしなことを言い出しました)」

前川「いえ、私はただの前川です。みくにゃんというチャーミングでセクシーな猫ではありません」

乃々「いつのまに猫耳をとったんですか……」

P「お前、そんな簡単に自分を曲げていいと思ってるのか?」

前川「物事には限度というものがあります。私は清楚な前川としてこれから生きていきます」

P「たかが虫ごときでアイドル生命さえも投げ捨てるとは嘆かわしい!」

前川「たかが虫とおっしゃるなら、どうぞ、Pさんが退治してください」

P「ぐっ……。俺が悪かった……。確かに虫が嫌いな猫もいるよな」

みく「分かってくれたならいいにゃ」

乃々「いつのまに猫耳をつけたんですか……」


    ガチャッ

のあ「戻ったわ。今日のイベントも盛況だった……」

アナスタシア「ダクラート……報告に来ました」

P「おおっ、のあさんにアーニャ! 実はかくかくじかじか……」


  ——事情を説明中——


のあ「後日また会いましょう」

アーニャ「ダ・スヴィダーニヤ……さようなら」

P「ま、待ってください! 2人ともみくに並ぶ猫キャラですよね?」

みく「Pチャン」ジロ

P「あっ、と、とにかくNOA-Sanなら目からレーザービームでも出してアイツを消せるんじゃないですか?」

のあ「……機能停止。スリープモードに入ります」

P「わーっ、ロボット扱いしてすみません! そういえば気にしてたんですよね!」

のあ「機能停止、応答不能、応答不能、応答不能」

みく「のあチャンって意外と根に持つタイプにゃの? それにしてもPチャンひどいにゃ!

   みくに対してもよくひどいことを言うけど、許せる冗談と許せない冗談があるにゃ!」

P「本当に申し訳ありません、のあさん。この件が片付いたらみんなに 寿司 をごちそうしますから、ご一緒にどうですか?」

みく「えっ、本当にひどくない?」

蘭子「凍れる大地の乙女よ、いかがした(アナスタシアさん、どうしたのですか)?」

アーニャ「バリショーイ・タラカーン……大きいゴキブリ……怖いでs…………………………………………」

乃々「ア、アナスタシアさんが凍っちゃったんですけど……」


      ミンミンミン ミンミンミン ウーサミン!


P「おっ、電話だ」ピッ

P「はい、CGプロのPです。あっ、765Pさん、先日はどうも。はい。ええ、ああ、はい。」

みく「こんなときでもすぐに営業トークに入れるのはさすがだにゃ」

P「ええ、四条さんのカップラーメンは昨日大変おいしく頂きました。本当にありがとうございます。えっ、発売中止!?

 人体には影響が無いけど、旨味成分とスタドリを昆虫が同時に摂取すると巨大化することがあるのが判明した!?

 ……そうですか、分かりました。ありがとうございます……」ピッ

みく「四条貴音さんの大胆なパッケージの空き容器とスタドリの空き瓶がそこにあるにゃ……」

P「ははは、もうこれは業者さんに頼もう。明日、朝一でお願いするから、安心していいぞ!」

みく「ちょっとPチャン……」

P「ほらほら、みんなでうまい寿司でも食って嫌なことは忘れような。のあさんとアーニャも、ほら、一緒に」



              カサカサカサカサ


みく「に゛ゃ゛〜!! うごっ、動き出したにゃっ!」

乃々「うう……」

P「乃々の方に向かってるぞ! 逃げるんだ! 乃々!」

乃々「……」ガッ

乃々「もりくぼは」ドガッ

乃々「静かに」ゲシッ

乃々「暮らしたいッ!!」バキッ

みく「にゃ、にゃんと乃々チャンがPチャンの重たいかばんを持ってめった打ちにしてるにゃ!」

P「俺のかばんが……」

みく「乃々チャン、もういいにゃ。落ち着くにゃ。アイツは……うへあ……潰れて気持ち悪い汁が」

P「泣きたい……」

早苗「自業自得よ」

P「……あっ、早苗さん、見かけないと思ったら着替えに行ってたんですね」

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