後輩「なんだか嬉しそうですね先輩? 何かいいことがあったんですか?」
後輩「ひょ、ひょっとして私のシフトが変わって、一緒にバイトできる時間が増えたから嬉しいんですか? あ、いえいえいえ冗談ですよ。言ってみただけですよ! 私、そんな自意識過剰な嫌な女じゃありませんから」
後輩「ちょっと真剣にお金ためてみようかなーと思って、ちょっと部活やめてバイト増やしてみたんですよ」
後輩「別に欲しいものができたからとかじゃあないんですけど、いやできたことにはできたけどそれはお金じゃ買えないから関係ないっていうか、いや関係なくはないけどやっぱりないかなって……」
後輩「あっと……話が逸れましたね。で、何かいいことがあったんですか」
男「いやー実は今月末でバイト辞めることが決まってさ」
後輩「え?」
男「部活に専念したいし、高校生の内はしっかり遊んどこうと思ってさ。いやぁ、肩の荷物が降りた気分だよ」
後輩「」
後輩「な、なんでですか? 先輩、このバイト楽しくないんですか? いつもあんなに笑顔で接客してたのに……」
男「いや、結局は労働だし……。それに接客笑顔はマナーだし」
後輩「ひょっとして私がいるから辞めるんですか? 正直に言ってくれていいんですよ、ほら」
男「思ったよりバイトしんどくてさ。ほら、定期試験前にも休みくれないしここ」
後輩「わかりました! 定期試験前になったら、先輩の代わりにシフト入ります! これなら大丈夫ですよね?」グッ
男「……俺とシフトモロ被りしてんじゃん」
後輩「わ、わたしの妹を連れてきます。それで先輩が忙しいときには代わりに入れます」
男「いや、それは難しいんじゃあないかな」
男「とにかく俺は辞めるから」
後輩「ち、ちょっと待ってくださいよ! わかりました。私のバイト代、月に半分あげます。三万五千円ですよ三万五千円!」グッ
男「いや、いいよ……悪いし」
後輩「ほら、私もそんなにお金いらない人だから大丈夫ですよ。あっ、ひょっとして半分じゃあ足りないってことですか? わかりました、私もさすがにちょっと抵抗感あるけど仕方ありません、全額……」
男「いやいや、受け取れないから」
後輩「……やめないでください、お願いします。私寂しいです」ペコッ
男「つっても、もう決めたことだからさ」
後輩「……」
後輩「先輩、責任感とかないんですか?」
男「え?」
後輩「先輩ほどの人が急に辞めたら後の人がどれだけ迷惑か、わかってないんですか? どうしてそんなに気軽止めるなんて言えるんですか?」
男「……」
後輩「黙ってないで何か言ってくださいよ」
男「いや、でも店長には結構前から言ってたから、求人もう出してると思うぞ」
後輩「新人さんが何人入ったって、代わりにはなりませんよ。それに、どうして真っ先に私に言ってくれなかったんですか?」
男「いや、それは……」
後輩「……もういいです。先輩のバカ」グスッ
ダッ
男「……」
男「おい、お前シフトこれからだろどこ行くつもりだよっ!」
…………
後輩「先輩、一昨日はすいませんでした。私がどうかしていました、少し錯乱していました。どうか嫌いにならないでください」シュン
男「いや、いいよ……。それよりお前の代わりにずっと半泣きでレジ打ちしてた店長には謝っといた方がいいぞ」
後輩「店長はいいんです。店長ですから。バイトの尻拭いだけが仕事ですし」
男「そっか、まあそうかな。うん」
後輩「私も一昨日は本当にバカなことをしました。先輩があと数日で辞めてしまうというのに、自分から一緒にバイトできる時間を減らすなんて」グスッ
男「……」
後輩「先輩、今日を除けばあと2日しか来ないんですよね?」
男「ああ」
後輩「そうだ先輩、住所教えてもらえませんか?」
男「え? なんで?」ゾクッ
後輩「い、いやその興味本位……と言いますか、なんて言いますかその……暇なとき、遊びに行こうかなぁ……とか」
男「きゅ、急にこられても困るかな」
後輩「冗談ですよっ! ほら、年賀状とか送りたいですし」
男「でもほら、年賀状面倒くさいんだよな……。メールでいいじゃんメールで」
後輩「じゃあこっちは年賀状で送るんでメールで返してください! っていうことで住所を……」
男「そ、そろそろシフト交代だな。行くぞ後輩」
後輩「…………」
…………
後輩「あ、先輩おはようございますっ」ペコッ
男「どっちかというと、こんにちはかな」
後輩「えへへへへ」
男「つーか隈すげーぞ。ひょっとして、夜中起きてて朝から夕方まで寝てたとか?」
後輩「ふふん。今日、学校休んじゃいましたいっ!」
男「得意気に言うことではないかな」
後輩「ぱんぱかぱんぱんぱーん! 実は先輩にプレゼントがあるんです」
男「お、なんだ?」
後輩「昨日徹夜で作った先輩人形ですっ! スマホにでも付けてください」
男「……あ、ああ。うん。ありがとう」
店長「男君、ちょっと店の奥まで来てくれ、話があるんだが……」
男「うん? ああ、わかりました」
男「話ってなんでしょうか? ひょっとして公共料金か何かミスってましたか」
店長「後輩ちゃんがな、昨日店の大事な書類を弄くろうとしていたんだ。未遂だったし、上手くかわされたってこともあって深くは追求できなかったけれど、一応男君にも注意しておこうと思ってな」
男「なんであいつがそんなことを……」
店長「私もそう思ったんだが、昨日のお前達の会話を思い出してわかったよ」
男「?」
店長「店の書類には、お前の個人情報が載ってるからな」
男(うっげ……)
男「はっはっはっ! 考え過ぎですよ店長さん。従業員の会話、盗み聞きするものじゃありませんよ」
店長「男君、明後日が最終日だったな?」
男「ええ、そうですが……」
店長「なら、今日でクビだ。明後日は私が代わりに出る。あの娘は普通じゃあない」
男「でも店長、明後日は大事な用事があるんじゃあ……」
店長「店で問題起こされるかもしれないと思うと気が気じゃあないわよ。後輩ちゃんには当日適当に風邪でもひいたらしいと言っておくから、今日で辞めなさい」
男「……はい」
男「……」
後輩「なんの話でしたか先輩?」
男「……え、ああ、うん。えっと」
後輩「なんの話だったんですか、先輩?」
男「店長にもやめないでくれ~って泣きつかれちゃってな、ははっ」
後輩「そうですか」
後輩「……先輩、本当に明後日で辞めちゃうんですよね?」
男「う、うん」
後輩「その、明日もバイト入ってもらえませんか?」
男「それは用事があるから代わってくれってこと?」
後輩「いえ、私以外の人と代わってください。私は普通にいますから」
男「え?」
後輩「その、一緒にバイトできる日を一日でも増やして欲しいなぁ、なんて」モジモジ
男「……悪い。明日は用事があってさ」
後輩「どんな用事ですか?」
男「知り合いとカラオケに行くんだ」
後輩「……それぐらい、それぐらいすっぽかしてくださいよ」ボソッ
男「じゃ、じゃあそろそろ交代に行こうか」
…………
男「はあ。今日、本当はバイト最終日なんだよなあ。後輩、怒ってるかなあ」
男「……なーんか、逃げるように辞めちまったな。後味わりーや」
人形「……」
男「これ、どうしたものかなぁ……。いや似てるけど、よくできてるけど」
男「自分にそっくりな手作りストラップ付けてる奴ってヤバいよな。普通にキモいよな」
チャラチャカーラーチャラララー
男「電話? 設定してない相手だな、誰からだろ」ピッ
このSSまとめへのコメント
まさか
このつづき書きたい
パロOK?
誰かつづき!
誰か続き書いてください!
見たくて見たくてしゃーない!