苗木「どきどき修学旅行?」 (1000)
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苗木「どきどき修学旅行?」
苗木「どきどき修学旅行?」 - SSまとめ速報
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スレ立てサンキューだべ
苗木「戦刃さんはあまり堪えてないようだね」
戦刃「う、うん……死ぬとかそういうのには慣れてるから……。でも気分いいようなものではなかったかな」
苗木「……ボクはみんなが戦刃さんみたいに耐えられると思ったんだけどね」
戦刃「仕方ないよ……むしろ苗木君みたいに普通の生活を送ってきた人がそこまで強いっていう事が凄いと思う」
苗木「そう……かな。はは、まぁ前向きな所が取り柄だからね」
戦刃「その前向きさも、十分超高校級だと思うよ、私は」
苗木「……ありがとう、戦刃さん」ニコ
戦刃「っ/// う、うん……」モジモジ
苗木「なんていうか、変わったよね戦刃さん」
戦刃「えっ、そ、そうかな?」
苗木「うん、可愛くなった」
戦刃「ななななななな苗木君!?///」ボンッ
苗木「あ、いや、よく笑うようになったなってさ!」アセアセ
戦刃「そ、そっか……私ってやっぱり無愛想だったかな……?」
苗木「うーん、ちょっと皆から距離を置いてるっていうのはあったかな。元軍人っていう影響かな?」
戦刃「……確かに初めは環境の違いに戸惑ったかな。でも、苗木君は構わず私に話しかけてくれた」
苗木「ご、ごめん、迷惑だったかな」
戦刃「ううん、嬉しかったよ。その、私の方こそあの頃は冷たくあたっちゃってゴメン……」
苗木「全然気にしてないって! 今はこうして仲良くなれたしさ!」ニコ
戦刃「うん! ……あのね、苗木君。私少し迷っていたの」
苗木「迷ってた?」
戦刃「私はずっと戦場にいて、戦い続けて、超高校級の軍人なんて呼ばれるようになった。でも、これが私の望んだ道なのかって」
苗木「戦刃さん……」
戦刃「そんな時、こうして普通の学生になって、世の中にはたくさんの道があるって事を知る事ができた。
例えどんな才能があったとしても、道を選ぶのは自分自身。それが分かって本当に良かった」ニコ
おかえりなさい、待ってました
……本当の超高校級の生徒は自分の才能だけに頼るような事はしない。
自分の進む道を決めるのは才能じゃない。
時には誰かに助言を貰うのはいいと思う。その相手は家族だったり親友だったり。
でも、最終的に決めるのは自分自身なんだ。
戦刃さんはそれをよく分かっている。
彼女は例えこれから才能を失う事があっても、前を向いて進んでいける。
超高校級の生徒は、才能がなくても超高校級なんだ。
才能があるから超高校級なんじゃない、超高校級だから才能がある。
ボクが信じる本当の超高校級の生徒、みんなの希望はそんな人達なんだ。
戦刃「あ、あの、それで、ちょっといいかなっていう夢もあってね……」モジモジ
苗木「へぇ、聞かせてよ。興味あるな、戦刃さんの夢」ニコ
戦刃「…………笑わない?」
苗木「笑わないって! 約束するよ!」
戦刃「わ、私の夢はね…………好きな人と一緒になって、家を建てて、子供に囲まれて幸せに暮らしていく事なの」
ボクは一瞬何も考えられなくなった。
幸せそうに夢を語る戦刃さんはとても…………。
戦刃「あっ、苗木君笑った!! 酷い、笑わないって言ったのに!!」プンスカ
苗木「えっ、あ、ごめんごめん!! なんていうか微笑ましいというかなんていうか……!」
戦刃「うぅ……どうせ子供っぽい夢だって思ってるんだ……」
苗木「そんな事思ってないって! 凄く良いと思う!」
戦刃「…………本当?」
苗木「うん! ボクも憧れるなぁそういうの!」
戦刃「ッ!?」ビクッ
苗木「な、なに!?」
戦刃「な、ななななな苗木君も幸せな家庭が夢なの!?」
苗木「えっ、あー、ごめんボクはまだそういうハッキリしたものは浮かんでないけど、でもそういうのって憧れるよ」ニコ
戦刃「……そ、それじゃあお願いしても……いいかな……」
苗木「お願い?」
戦刃「う、うん……あのね……」
口ごもる戦刃さんの顔は真っ赤だ。
そのまま中々続きを言い出せない様子だったけど、何か声をかけるのも躊躇われたからそのまま待った。
そして。
戦刃「わ、私の夢をかなえるのを手伝ってくれないかな……?」
苗木「……手伝う? うん、もちろんいいけど、何をすればいいのかな?」
戦刃「……わ、私の夢はまず好きな人と結ばれる所から始まるの。だからね」モジモジ
えーと、それを手伝ってほしいってことなのかな?
つまり戦刃さんはボクに…………。
……そうか、分かったぞ!!!
苗木「あはは、そういう事ね! もう戦刃さん、もっとハッキリ言ってくれないと!」
戦刃「っ!! い、言えるわけないよ///」
苗木「大丈夫大丈夫、ボクはもちろんオッケーだよ」ニコ
戦刃「ほ、本当!? 本当にいいの!?///」
苗木「うん、もちろん! それで、戦刃さんは誰の事が好きなの?」
戦刃「…………え?」
苗木「あ、ちょっと待って、予想してみるよ! ボクに頼むって事は同じクラスでしょ!」
戦刃「…………」
苗木「高スペックとなると十神クンか……いや、でもちょっと性格キツすぎるかな……」ブツブツ
戦刃「…………」
苗木「ここはもっと押してくる人……桑田クン? いや、待てよ」ブツブツ
戦刃「…………」
苗木「そうだ、戦刃さんは元軍人、それなら相手も強い人か! それなら大和田クンが当てはまる……」ブツブツ
戦刃「…………」
苗木「……そっか何を勘違いしてたんだ。強さっていうのは何も力だけじゃないよね」ブツブツ
戦刃「!」
苗木「それは内面的な強さでもいいはずだ。そしてクラスでも戦刃さんの事を気にかけていた人!!」
戦刃「!!」
そうか、分かったぞ!!!
苗木「これが戦刃さんの恋を初めから振り返ってみよう!!」
戦刃「ええっ!?///」
苗木「まず戦刃さんは軍人から学生になって戸惑う事も多かった。その時は恋どころではなかったはずだ」
戦刃「!!」コクコク
苗木「そんな戦刃さんにクラスに馴染んでもらおうと、手を差し伸べてくれた人がいた!」
戦刃「!!!」コクコクコク!!
苗木「その人の優しさもあって、みんなと溶け込めて仲良くなれた戦刃さん。
そして、キミはきっかけをくれた一人の男子に特別な感情を抱いている事に気付いたんだ!!」
戦刃「!!!!!」コクコクコクコク!!!!!
苗木「……その男子の名前は」
戦刃「…………」ゴクッ
苗木「石丸清多夏クンだ!!!!!」ドーン!!!
戦刃「…………」
苗木「彼はいつもクラスみんなの事を想っている。この状況でも決してブレなかった。素晴らしい人だよ」ウンウン
戦刃「…………」
苗木「さすがは戦刃さんだ。うん、彼なら間違いない……」
戦刃「苗木君、ちょっと動かないでくださいね」
苗木「え、なに――――」
最後まで言う前に。
戦刃さんは凄い速さでボクの肩を掴んで引き寄せて。
気付けば彼女の顔がすぐ近くにあって。
チュッ
そのまま、ボクと彼女の唇が重なった。
一秒が何倍にも引き伸ばされたかのようだった。
ゆっくりと離れた戦刃さんの顔は真っ赤で。
ボクも自分の顔が熱くなっているのを感じる。
特に唇。まださっきの柔らかい感触がハッキリと残っている。
彼女は、満面の笑みで言う。
戦刃「それは違うよ、苗木君」ニコ
流石にボクにも分かる。
彼女が、ボクに手伝ってほしいこと。
苗木「……戦刃さん」
戦刃「う、うん……」
だから、ボクは答える。
ハッキリと、自分の言葉で。
苗木「悪いけど、そういう事ならボクは手伝う事はできない」
戦刃さんの顔に影が落ちる。
それでも、ボクは目を逸らしたりはしない。
ただ真っ直ぐ、彼女の事だけを見続ける。
戦刃「……そっか。他に……好きな人がいるの?」
苗木「ううん、そういう事じゃないんた」
戦刃「じゃあ私の事が……」
苗木「それも違うよ。キミからそう想われてボクは嬉しい」
戦刃「それなら……どうして……」
苗木「ごめん、それは言えない」
戦刃「…………」
苗木「断った上に理由も言わない。それが最低だっていうのは分かってる。でも、これがボクなんだ」
戦刃「……ふふ、分かった。でも、私は諦めないよ」ニコ
苗木「えっ?」
戦刃「苗木君がどうして私の告白を断ったのかは分からない。でも、分からないなら分かるようになりたいな、私は」
苗木「…………幻滅しないの?」
戦刃「しないよ。このくらいじゃ、苗木君への気持ちは変わらないよ」
苗木「……はは、そんなにいい人間じゃないんだけどなぁ、ボク」
戦刃「私がどう思うのか決めるのは私だよ」ニコ
彼女の笑顔はとても眩しい。
こんな笑顔ができる人に想われるなんて、ボクの才能も捨てたものではないかもしれない。
ごめんね、戦刃さん。理由はきっと話すから。
――――が終わったその時に。
江ノ島「あはは、思いっきりフラれちゃったねお姉ちゃん!」ニヤニヤ
戦刃「う、うん……でもなんかスッキリしたよ。それにまだ諦めてないし」ニコ
江ノ島「うんうん、他に好きな人がいるとかだったら絶望的だったけど、あれならまだ何とかなりそうだよね!」
戦刃「……そ、それでさ盾子ちゃん」
江ノ島「ん、なに?」
戦刃「そこの人達は……?」
霧切舞園セレス「「……!!!」」ジタバタ
江ノ島「あー、なんか邪魔しそうな雰囲気だったからとっ捕まえて縛った」
戦刃「そ、そう……」
大和田「おい苗木!! オメー何断ってんだよ!!!」
桑田「それがモテ男の余裕か!!!」
苗木「ち、違うって、そういう事じゃなくて……」
葉隠「せっかく俺達が空気読んで大人しくしてたのになー」
苗木「そ、そういえばやけに静かだったような……」
山田「ぐっ……僕もギャルゲーならば……!!」
腐川「そ、そうだわ! あたしもあのくらい白夜様に積極的にいけば!!」
不二咲「それはやめた方がいいような……」
朝日奈「で、でも苗木も理由くらい言えばいいのに……戦刃ちゃん可哀想だよ」
大神「苗木には苗木の事情があるのだろう。この男が理由なく誰かを傷付けぬ事は朝日奈も分かっておろう」
朝日奈「そ、それは……そうだけど……私だったら凹むっていうか……」
苗木「…………」
パーティは続く。
こうして見ると、みんな本当に楽しそうだ。
例えそれが、無理をして装ったものだとしても。
誰と話す? >>136
モノクマの中の人
充電切れるべ
江ノ島「やっほー、苗木! うちのお姉ちゃんを見事にふってくれたみたいだね!」ギュッ
苗木「うっ……」
江ノ島「あはは、そんな気まずい顔しなくていいって。あたしも別に怒ってないし」
苗木「でも、江ノ島さんは戦刃さんを応援してたんだよね? 霧切さん達も縛ってたし」
江ノ島「ふふ、そう思う? 何か別の理由があるかもよ?」ニヤ
苗木「別の理由?」
江ノ島「当ててみ当ててみ? 名探偵の苗木なら分かるって!」
苗木「分かんないよ、ボクは探偵じゃないし。霧切さんに言ってよ」
江ノ島「どうかな、霧切ちゃんは今回の黒幕は暴けても、恋愛関係は苦手って感じもするけど」
苗木「…………黒幕、か」
江ノ島「あれ、そっち反応しちゃう? 恋愛の方はスルー?」
苗木「恋愛なら外でもできるじゃないか。今はやっぱり黒幕の方が重要だよ」
江ノ島「それがお姉ちゃんをふった理由……ってわけじゃないよね?」
苗木「うん。それなら隠さないで言ってるよ」
江ノ島「それじゃ、苗木が大好きな黒幕の話しよっか?」ニヤ
苗木「大っ嫌いだよあんなの」ハァ
江ノ島「それじゃ大っ嫌いな黒幕の話。ズバリ、誰だと思う?」
苗木「具体的な名前は出てこないよ。でも、初めのウサミの話を信じるなら、学園の関係者だろうね」
江ノ島「ウサミの話?」
苗木「元々この修学旅行は希望のカケラを集めてクラスの絆を強くするっていう目的だった。
そこに介入してくるって事は、その事情を知らなきゃダメだよね」
江ノ島「ふむふむ、でもそれってあたし達もここに来るまで知らなかったよね」
苗木「うん。だから学園の上層部なのかな…………まぁここに来てから何か仕掛けたっていう可能性もあるけど」
江ノ島「ほう、あたし達の中に黒幕が居る可能性もあるってこと?」ニヤニヤ
苗木「そ、そこまで言ってないよ! それにボク達だとモノクマを操作するのも難しそうだし……」
江ノ島「まぁ妙な動きしてたらバレちゃうか。でもさ、もしかしたら黒幕はそいつであってそいつじゃない。そんな事もあるかもよ?」ニヤ
苗木「そいつであって、そいつじゃない? なぞなぞ?」
江ノ島「さぁ……何となく言ってみただけだよ」
苗木「…………そっか」
江ノ島「ちなみにさ、あたし達の中に黒幕が居るとして、苗木は誰だと思う?」ニヤ
苗木「江ノ島さん」
江ノ島「わお、即答! なになに、あたしってそんなに怪しい?」ニヤニヤ
苗木「ううん、根拠なんて何もないよ。そもそもボク達の中にいるとも思えないし。
ただ、クラスのみんなの中で江ノ島さんの事だけが全然分からない。それだけだよ」
江ノ島「あはは、あたしってそんな謎めいたキャラ? そういうのって霧切ちゃんの方が似合ってない?」
苗木「霧切さんもあまり自分を出さないけど、キミ程じゃないよ」
江ノ島「……そっかそっか。つまり苗木はあたしをもっと知りたいと!」
苗木「…………え?」
江ノ島「分かってるよ苗木、それがあんたなりのナンパ文句なんだね! よし、それじゃ明日の夜辺りに、あたしの部屋来なよ! 色々教えたげる!」ニヤニヤ
苗木「そ、そういう意味じゃないよ!!」
江ノ島「あはは、照れるなってば!!」バンバン!!
霧切「そんな事」ズイッ
舞園「私達が」ズイッ
セレス「許しませんわよ」ズイッ
江ノ島「あーあ、ここまでか。ていうか舞園ちゃんは人の事言えないと思うけど」
舞園「あれは合意の下でしたので問題ありません!」
苗木「た、確かにそうだけど……」
江ノ島「はいはいー、それじゃ邪魔者は退散しますよーだ」スタスタ
苗木「あ、江ノ島さん!」
霧切「苗木君、そんなに江ノ島さんが気になるのかしら?」
セレス「なるほど、草食系の苗木君はやはり肉食系の女の子に惹かれるのですか……」
苗木「そ、そういうわけじゃないって!」
……また江ノ島さんを知る事ができなかった。
それとも、向こうは必死に隠そうとしてるのかな。
普段は皆にフレンドリーで親しみやすい印象があるけど、ただそれだけじゃないって事は何となく分かるようになってきた。
でも…………ちょっと遅かったかな。
パーティーはまだ続く。
他には誰と話そうか。
>>177
御曹司
少し頭を冷やすのもいいのかもしれない。
そう思ったボクは休館を出て夜風に当たる事にした。
外に出ると、心地良い風が頬を撫でた。
大広間の前と旧館入口前ではちゃんとモノミが見張りをしていた。
モノミ「あそこに十神クンがいるでちゅ。やっぱり仲間外れにするのは可哀想でちゅよ……」
苗木「……うん。少し話してみるよ」
そう言うと、プールサイドをゆっくりと歩いている十神クンに近付く。
十神「止まれ」
言われた通りに立ち止まる。
十神クンの声には有無を言わさない威圧感があった。
流石は超高校級の御曹司。常に勝者である人間だ。
十神「……なんだ苗木か」
苗木「うん。やっぱりボク達と一緒にいる気はない?」
十神「分かりきっている事を聞くな」
苗木「そう……だよね」
十神「それに苗木、お前も少しは気を付けろ。もしここで俺がお前を殺そうと思ったらどうする?」
苗木「……でも今ボクを殺したら疑われるのは十神クンだよ」
十神「くくっ、それもそうだ。せめてあそこのモノミが居なければ、お前を殺した後土に埋めて発見を遅らせる事もできたが」
さらっと恐ろしい事を言う十神クン。
それも冗談でもなんでもなく、本気で言っているんだろう。
苗木「でも気を付けろだなんて、どうしたの? ボクの心配をしてるわけじゃないよね?」
十神「俺はこのゲームに乗る上で、お前達を三つのグループに分けている。
一つは意識を向ける価値もない愚図、一つは使い道はありそうな愚民、そして一つは俺を楽しませる事ができる警戒すべき敵だ」
苗木「ゲーム……か」
十神「ふん、反応する所はそこか? しっかりしろ、俺を失望させるなよ。
簡単にクリアできるゲーム程つまらん物はない。お前と霧切の責任は重大だ」
苗木「……それってボクもキミの言う“敵”に入ってるって事なのかな。霧切さんはともかく、どうしてボクなの?」
十神「とぼけるなよ。お前には状況を冷静に判断し、対処する力がある。加えて霧切にはない、人心掌握術を持っている」
苗木「はは、まさかボクが十神クンに褒められるなんてね」
十神「相手の能力を把握できない奴らはただの小物だ。そういう奴らが足元をすくわれる」
苗木「……キミはどうしてこのゲームに乗ったの? 勝ち続ける宿命を背負っているから?」
十神「……くくっ、そういえばお前には俺の一族の事も少し話した事があったか。あぁ、そうだ。これが勝負である限り俺には勝つ義務がある」
苗木「でもそれだとモノクマはどうするの? コロシアイはアイツの望みだ、それに乗るっていうのはアイツに負けたって事にならない?」
十神「俺があのふざけた物体に何もしないとでも思ったか?」
苗木「えっ、じゃあ」
十神「もちろんお前達とのゲームは勝つ。そしてその後に黒幕を潰す。
今までの様子を見て、どうやらこの場所でアイツを潰すのは得策ではない事が分かったからな」
苗木「つまり、このゲームに勝って、ここを脱出してから黒幕を叩く。それが十神クンの選択なんだね?」
十神「あぁ、そうだ。文句があるなら俺に勝ってみろ。
お前達の甘過ぎる理想には吐き気がするが、本気で望んでいるならそれを掲げて俺を叩き潰してみせろ」フッ
苗木「…………」
十神クンの言いたい事はよく分かった。
そして、それに対する僕の言い分なんて決まっている。
苗木「文句なんてあるわけない!! 素晴らしいよ十神クン!!!」
十神「…………なに?」
苗木「流石は超高校級の御曹司!! そうだよね、キミがただここから出たいが為にモノクマの言いなりになるわけないよね!!」
十神「当たり前だ。俺の標的はあくまでモノクマ。お前らは前座に過ぎない」
苗木「はは、あはははははははははは!!! いいよ、十神クン!!!
この状況でも常に目的に向かって突き進む!! 石丸クンみたいな人とは考え方は違うけど、それだって立派な強い希望に違いないんだ!!!」
十神「ふん、どうした苗木。それがお前の本性か?」
苗木「本性? 別にボクはいつも何も隠していないよ。ただ純粋に希望を求めているんだ!!」
十神「…………」
苗木「頑張ってね十神クン!! キミなら、ただ生き残る事しか考えられない弱い希望に負けるわけがないよ!!
そしてその後は霧切さんのような強い希望ともぶつかり合う…………そこで勝てばキミこそ超高校級の希望と呼ぶに相応しい!!!」
十神「おい苗木、言っておくが手を抜くなんていうふざけた真似はするなよ」
苗木「当たり前さ! そんなのキミの希望に対して失礼だ!!」
十神「……分からん奴だな。俺の様な奴が生き残る事を期待しているくせに、なぜアイツらと共に居る」
苗木「あ、いや、もちろんボクにはボクの希望があるよ? でも、キミの希望も素晴らしいっていう事さ!」
十神「ふん、どうせお前の希望とやらも石丸の考えそうな甘いものだろう」
苗木「……うーん、どうかなぁ。キミと似ているかもしれないし、石丸クンと似ているかもしれない」
十神「何を言っている。俺と石丸の望みなど真逆だろうが」
苗木「あはは、それもそうだね」ニコニコ
十神「……だがこれで少し分かった。どうやらお前は俺が想像している以上に警戒すべき人間らしい。理解が及ばない相手というのは厄介だ」
苗木「へぇ、それは光栄だね。ボクは十神クンが素晴らしい人だと分かって嬉しいよ」
十神「ふん、それじゃあな。これ以上お前と話して時間を消費する価値はない」スタスタ
あはは、やっぱりボクの期待通りの人は居るんだ!
でも、ボクは十神クンみたいに弱い希望の人達を見捨てたりはしないよ。
今は弱い希望しかなくても、いつかは強い希望に変わってくれる。だって超高校級の才能を持つ人達なんだから。
だけど、せめてものラインは越えてね?
じゃないとボクが――――。
【旧館 大広間】
大広間に戻ると、何やら朝日奈さんが心配そうな表情をしていた。
朝日奈「うーん、石丸大丈夫なのかなー?」
苗木「どうかしたの?」
朝日奈「さっきトイレ行こうとしたんだけど、まだ使っててさー。大丈夫って聞いてみても返事ないし」
苗木「あー、今ボクがここに来る時に聞いて見たけど、中から小さな声で返ってきたよ。朝日奈さんにもよろしくって」
朝日奈「もう、結構本気で重症じゃんか。ちょっと葉隠!! あんた看病してきなよ!!」
葉隠「えっ、男二人でトイレの中で!?」
朝日奈「元々あんたのせいじゃん!!」
苗木「あはは、まぁまぁ朝日奈さん。石丸クンも少しは良くなってきたって言ってたし……あと三十分くらい様子見てもいいんじゃないかな」
朝日奈「むぅ……ならその後ちゃんと行きなよ葉隠!」
葉隠「わ、分かったって…………」
苗木「これに懲りたら葉隠クンも妙なジュースは自重してね」ハァ
葉隠「……にしても、ちっと退屈になってきたべ。確か倉庫に遊べそうなもんなかったっけ?」
苗木「えっ、倉庫はやめた方がいいよ。クモとか凄いし。葉隠クンは見たよね?」
江ノ島「あー、そういえば苗木そんな事言ってたっけ。あたしは行かないから!!」
葉隠「けどこの退屈はきついっつーの!! よし、桑田っちも一緒に行くべ!!」
桑田「俺もかよ!!」
苗木「い、いや、でもさホコリとかも凄いし体にも悪いかも……」
葉隠「そんな長くいねえから大丈夫だべ。ちょっと探してすぐ帰ってくんよ」
そう言って葉隠クンは桑田クンを連れて倉庫へ向かっていった。
そして言葉通り、数分足らずで戻ってくる。
葉隠「あったあった!! ツイスターゲームだべ!!」
舞園「ナイスです葉隠君!! さぁ苗木君!!!」
苗木「やらないよ」
桑田「ナチュラルに無視られてんな俺」
結局ツイスターゲームはジャンケンで負けた人がやるという事になって、葉隠クンが山田クンに潰される結果になった。
しかもジャンケンの時は男子はなぜかボクを睨んで敵意全開だし、霧切さん達は危ない目をしてるしで居心地は最悪だった。
それから少しして。
苗木「あ、そうだ。食後のデザート事務室に置きっぱなしだった。ちょっと行ってくるよ」
舞園「それでは私も!」
霧切「私も行くわ」
セレス「もちろんわたくしも」
苗木「そんな何人も行ってどうするのさ……じゃあ一番速かった舞園さんで」
舞園「やった!!!」
霧切セレス「「ちっ!!」」
桑田「おいコラ苗木!! テメー舞園ちゃんと二人きりになって何かするんじゃねえだろうな!!」
苗木「しないよ!!」
舞園「え、しないんですか?」
苗木「だからしないってば!!!」
【事務室】
入り口近くの事務室に入る。そこは物がいくつも乱雑に置かれており、あまり片付いていない。
そして、大広間から一つだけ持ってきてある丸テーブル。そのテーブルクロスの上に、目当てのデザートは置いてある。
舞園「わぁ、これって結構高級なクッキーじゃないですか!」
苗木「へぇ、そうなんだ。知らなかったよ」
舞園「ふふ、ちょっとだけ二人で食べませんか? あーんし合ったりして!」
苗木「霧切さん達にバレたら怖いから遠慮するよ……」
舞園「大丈夫ですって、バレませんから! ねっ?」ニコニコ
二人きりになるという事である程度は覚悟していたが、想像以上に攻めてくる。
だけど、流されてはいけない。そういう人は結局包丁で刺される無残なエンドを迎えるからだ。
そう考えて、何とか彼女をなだめようと口を開いた時。
ピッ
停電キタ―――――――(゚∀゜)――――――――――
【大広間】
ピッ
霧切「……? 今何か音しなかった?」
大神「我にも聞こえたな……どこからだ?」
大広間に居た何人かはどこからか聞こえてきた電子音にキョロキョロと辺りを見回す。
そして今度は別の音も聞こえてくる。
ゴォォ……
戦刃「あっ、この音。たぶん、あそこのエアコンじゃ…………」
プツッ
戦刃の言葉の直後、大広間は完全な暗闇に包まれた。
「何これ!? 何も見えない!!!」
「あああああんた達暗闇に乗じて卑猥な事したら許さないわよ!!!」
「ふひひひひ、これはラッキースケベのチャンスですな!!!」
「いってえええええええええ!!!!! おい誰か思いっきり足踏みやがっただろ!!!!!」
「な、なぁ、あんまり動かねえ方がいいんじゃねえか? あぶねえべ」
「そうね。みんな落ち着いて、まずは目を慣らすのよ」
「けどさー、こんだけ真っ暗だと慣れるも何も…………あ、お姉ちゃんが居た!!」
「う、うん……もう少し待って。見えてくると思うから……」
「みなさん大丈夫でちゅかー!!」
「あ、あの声はよく分かるね……」
「あれ、苗木君? 舞園さん? ブレーカーはその部屋でちゅよ!」
「むっ、そういえばモノミは大広間の扉の前に居たか……」
「……あれ、石丸クンでちゅか? 体調は大丈夫なんでちゅか?」
「おいおい今出てくんなよ石丸は……」
「…………見えてきたよ!!」
「すごい、お姉ちゃんが残念じゃない!!」
「それではお願いいたしますわ戦刃さん」
「うん、分かった! 行ってくるね!」
バタン
それから少しして。
パチッ
桑田「お、点いた…………な」
朝日奈「はぁ、怖かったぁ……」
霧切「みんなは…………居るわね」
バタン!!!
戦刃「みんな!!! ちょっと来て!!!!!」
不二咲「ど、どうしたのぉ……?」ブルブル
戦刃「じ、事務室で…………とにかく来て!!」
葉隠「なっ、舞園っちに何かあったんか!?」
桑田「はぁ!? くっそ、行くぞ!!!」
ダダダダダダダダダダダッ
大広間の扉を開けると、すぐそこでモノミがどうするべきか分からずにオロオロしていたが、誰も構っている余裕などない。
全員が真っ直ぐ戦刃を追って事務室へ向かう。
そして、部屋の中では。
超高校級のアイドル舞園さやかが。
全身の力が抜けた……まるで人形のように、床に倒れていた。
苗木「」
一瞬の静寂。
誰も何も考えられない完全な空白。
そして。
朝日奈「きゃああああああああああああああああああ!!!!!」
山田「ひぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!」
セレス「……酷い事を」
大和田「クソがぁ……!!!」ギリッ
桑田「誰だよ!!! 誰がやりやがったオラァァ!!!!!」
霧切「ねぇ、戦刃さん。舞園さんは」
戦刃「み、みんな、落ち着いて! 舞園さんは生きてるよ!!」
再び静寂。
「「え??」」
霧切「そこにスタンガンが捨てられているわ。おそらくそれでやられたんじゃないかしら」
霧切が指差す先には確かにスタンガンが無造作に捨てられていた。
その瞬間、場の緊張が僅かにだが緩まった。
桑田「な……なんだよ……驚かせやがって…………」ガクガク
朝日奈「……ぅぅ……ぅぅぇぇぇええええん……」ポロポロ
葉隠「こ、腰が抜けたべ……」ヘタッ
江ノ島「お姉ちゃんも早く言ってよもー」
戦刃「ご、ごめん慌ててたから……」
不二咲「ひっく……ぐすっ……で、でもぉ……良かったぁ……」ポロポロ
大神「……いや、待て。安心するのはまだ早いぞ」
大和田「な、何だよ?」
腐川「ま、まだ何かあるわけ? もういいわよ!!」
霧切「苗木君は…………どこ…………?」
事務室、大広間、厨房。
次々と探すが苗木は見つからない。元々ここは隠れるような場所は少ない。
手分けした事もあり、五分程で旧館中を探し終えてしまった。
そしてトイレ前に全員が集まる。
葉隠「おーい石丸っち? 苗木っち知らねーか? おーい」コンコン
朝日奈「大丈夫かなぁ石丸……」
霧切「…………扉を破りましょう」
大和田「いっ!? マジか!?」
霧切「この状況よ、止むを得ないわ。大神さん」
大神「ふむ、仕方あるまい…………許せ石丸よ」ガチャガチャ
山田「まぁ見られるのを好む性癖の持ち主もいますし」
桑田「オメーはいつでも気持ちわりいな」
その直後、大神は鍵を破壊して無理矢理扉を開いた。
時間が止まった。
誰も口を開かない……いや、開けない。
視覚で情報を得ても、それを脳内で処理する事ができない。
そんな中、後ろの方に居た腐川だけが怪訝そうな表情で、
腐川「ど、どうしたのよ、あんた達石丸の恥ずかしい姿をそんなまじまじ見て、そういう趣味が…………」
霧切「腐川さん」
腐川「な、なによ」
霧切「あなたは来ない方がいいわ」
霧切の言葉に、目を点にする腐川。
だが、次第に。
その言葉の持つ意味を理解し始め…………。
直後、腐川は絶叫と共に外へ逃げて行く。
それをきっかけに、後を追うように他の者達の悲鳴もあがった。
『ピンポンパンポーン。死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』
モノクマのアドバイス。そしてみんなの悲鳴。
ボクはゆっくりと身を起こす。ゆっくりと開けた視界は真っ赤に染まっている。
体全体にぬるっとした感触があり、自分の手を見てみるとやはり真っ赤だ。
そして、見た。
全身を縛られ、口にはガムテープを貼られ。
凄まじい量の血に濡れた。
超高校級の風紀委員、石丸清多夏クンを。
苗木「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
朝日奈「どうして……どうしてよ苗木いいいいいいいいいい!!!!!」ポロポロ
苗木「……え?」
桑田「なんで石丸を殺したんだって言ってんだよ!!!!!!」
大和田「ふざけんな……兄弟に何しやがったテメェ!!!!!」
葉隠「う、うそだべ……苗木っちが……石丸っちを……」ガクガク
苗木「なっ……待ってよみんな!!! どうしてボクが石丸クンを殺さなきゃいけないんだ!!!」
朝日奈「じゃあそのナイフは何よ!!!!!」
背筋が凍った。
先程見た左手とは逆、利き手である右手を見ると。
そこには真っ赤に染まった刃渡りの長いナイフが握られていた。
苗木「わああああああああああっ!!!!!」
反射的に投げ捨てる。しかし、そんな事でみんなからの視線が変わることはない。
苗木「ち、違う……ボクは……!!」
確かにこの状況、ボクを疑うのは当然だ。
だが、これでは捜査も何もなしに、ボクがクロだと決められてしまう。
その時。
霧切「待って、苗木君がクロだと決め付けるのは早いわ」
霧切さんの凛とした声が響いた。
桑田「おい霧切……いくら苗木に惚れてるからって何言ってんだよ!! 俺達全員の命かかってんだぞ!!」
霧切「……認めるわ、確かにその感情も入ってる。でも、捜査はきちんとするべきよ。それこそ私達全員の命がかかっているのだから」
山田「で、でもこの状況はどう考えても苗木誠殿が……」
セレス「……わたくしも霧切さんの意見に賛成ですわ。結論を出すにしても捜査を行ってからでしょう」
戦刃「う、うん、そうだよ!! 学級裁判までにできることはするべきだと思う!!」
大和田「だからオメーらも苗木を庇いたいだけだろうが!!」
十神「黙れ愚図が」
全員がその声の方向に顔を向けた。
そこには超高校級の御曹司、十神白夜クンが顔色一つ変えずに、この凄惨な現場を見ていた。
大神「十神、お主なぜここに……」
十神「アナウンスを聞いて来ただけだ。とにかく、学級裁判にはお前達愚図だけではなく、俺の命までかかっている。勝手な事をほざくな」
葉隠「い、今更来て何様だべ……」
十神「こうするか。捜査をする気がない、役に立たない愚図は現場の見張りだ。証拠を隠滅されないようにな。
それと俺や霧切の捜査の邪魔は絶対にするな。学級裁判では思考停止をやめろ、その足りない脳を少しでも動かして俺達の言葉を聞け」
大和田「んだとコラァァ!!!」ガシッ
十神「……なんだ、死にたいのか貴様」ギロ
大和田「ッ!! …………ちっ!!!」バッ
十神クンの言葉で空気が変わった。さっきまでの絶望的な状況が緩和しているのが分かる。
少なくとも、これで何とか問答無用でクロにされる事もなさそうだ。
苗木「……ふふ」
不二咲「えっ……」ビクッ
桑田「い、今笑いやがったぞそいつ!!!」
苗木「ごめんごめん、何でもないよ。ねぇ、ちょっとシャワー浴びてきてもいいかな? 流石に血まみれは気持ち悪いんだけど」
大和田「行かせるかよ、証拠隠滅する気だろうが!!!」
苗木「じゃあ誰かついて来てくれるならいいでしょ?」
葉隠「さ、殺人鬼と一緒に居るなんてできないべ……」
苗木「……はぁ、困ったな」
霧切「……それなら私が行くわ。本当は同性の人が行くべきでしょうけど、誰も行かないのなら」
山田「き、霧切響子殿は苗木誠殿を庇いそうで信用なりませんぞ!!」ビシッ
苗木「分かった、分かったよ。それならこのままで」ハァ
江ノ島「あ、じゃああたしが行ってあげるよ」
戦刃「じゅ、盾子ちゃんが……?」
江ノ島「どう? あたしは苗木を庇いそう?」ニコ
桑田「それは……ねえだろうけどよ……」
大和田「あぶねえだろうが……そいつは人殺しだぞ……」
十神「いや、好都合だ。これで江ノ島も殺されれば判断材料も増える。このゲームでは共犯のメリットもないしな」
戦刃「ッ!!」キッ
江ノ島「んー、まぁ確かにそうかもね。でもさ、腐川ちゃん程じゃないけど、あたしも結構血とかキツイのよ。
つまり、血まみれの苗木がそこら辺に居ても困るってわけ。だからいいっしょ?」
山田「ま、まぁ、本人がそう言うのなら止めはしませんが……」
葉隠「オーガはできればこっちの方に残しておきてえしな……」
江ノ島「よし、決まり! そんじゃさっさと行くよ苗木ー」グイッ
苗木「わ、分かったから引っ張らなくていいって!」
そうやって江ノ島さんに引っ張られながら、今回の捜査は始まる。
常にみんなをまとめてきた石丸クンが殺された。
これからボク達はその犯人を突き止めなければいけない。
仲間同士で疑い合う絶望的な状況。逃げることは許されない。
……はは。
あははははははははははははははははははははははははははは!!!!!
寝るべ
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
【苗木のコテージ】
シャワーを浴び終えると、そこには替えの服が置いてあった。
ボクがよく着ているものとは微妙にズレている気もしたが、そのまま着ることにした。
赤い模様が描かれた白いシャツ、深緑色でフード付きの長いコート、黒いスボンにはチェーンがかかっている。
部屋に戻ると江ノ島さんは満足そうに微笑んで、
江ノ島「へぇ、結構いい感じじゃん。でもやっぱもうちょっと身長ほしいなー」ニコ
苗木「えっと……この服は?」
江ノ島「スーパーにあったやつ持ってきたんだ。お礼はいいよー」
苗木「う、うん……」
なんていうか、こんな状況でも江ノ島さんはいつも通りだ。
これは無理をして装っているだけか。
それとも。
江ノ島「ねぇねぇ、ぶっちゃけ苗木が犯人なの? あたしだけにコッソリ教えてよ!」
苗木「それが目的なんだね……」ハァ
江ノ島「あはは、まぁね! それでそれで?」
苗木「さぁ……どうだろうね。とりあえず調べてみないと」
江ノ島「うわーはぐらかされたー!!!」
苗木「ちなみに江ノ島さんは誰が犯人だと思ってるの?」
江ノ島「ん、もちろん苗木だよ?」
何を言ってるんだろうといったキョトンとした表情で言われてしまった。
苗木「あー、うん。まぁ普通に考えればそうだよね……あれ、でもそれならどうしてボクと二人になろうって思ったの?」
江ノ島「別に深い意味はないよ。ただちょっと近くで見たかっただけ」ニコ
苗木「??」
江ノ島さんの言葉には首を傾げる事も多いな。
【旧館 トイレ】
ボクと江ノ島さんが戻ると、トイレでは霧切さんと十神クンが捜査をしていた。
でもこうして改めて見ると凄まじい出血だな。
江ノ島さんは袋に入れたボクが着ていた服を置く。
江ノ島「はいこれ、苗木の服。パクられないように気を付けてねー」ストン
苗木「誰も盗らないって……」
霧切「…………えぇ、そうね」
苗木「なんか今の間すっごく気になるんだけど……」ハァ
霧切「それより苗木君、その服よく似合っているわ」
苗木「えっ、あぁ、うん。ありがとう」
江ノ島「あたしが選んだんだよ!」
十神「そんな話はどうでもいい。苗木、お前には話すべき事があるはずだぞ」
苗木「あ、うん。ボクがどうしてこんな所に居たか、だよね」
十神「そうだ。ここで石丸を刺し殺したから、なのか?」
苗木「ち、違うよ! ボクも襲われたんだ!」
霧切「襲われた?」
苗木「うん……あの事務室に誰かが潜んでたんだ。
舞園さんのすぐ後ろに居たからボクが何とか助けようと思ったんだけど間に合わなくて…………そういえば舞園さんは大丈夫?」
霧切「…………?」
十神「舞園なら今も大広間のソファーで寝ている。お前は話を続けろ、そいつの顔は見なかったのか?」
苗木「ごめん、なんだか白い布を被っていたから顔がよく見えなくて」
霧切「体型は?」
苗木「あの時は無我夢中だったからよく覚えていないんだ……少なくとも不二咲クンみたいに小さくもなかったし、大神さんみたいに大きくもなかったかな」
十神「ハッキリしないな、つかえん奴め」
苗木「うっ……」
霧切「それで、舞園さんが襲われた後は?」
苗木「その後はいきなり停電して、すぐにボクも気絶させられちゃったよ…………あれ、でも何で犯人はあの暗い中でボクを襲えたんだろう?」
十神「それはこいつを付けたからだろうな。どうやら暗視スコープのようだ」スッ
…来ちゃった。
>>321
帰れ希望厨
苗木「それはどこに?」
霧切「トイレの中に落ちていたわか」
十神「それで、気絶させられたお前は気付いたらトイレで、死んだ石丸の側にいた、というわけか?」
苗木「うん……ごめん、ボクは気絶させられてたから事件の流れがよく分からないんだ。教えてくれないかな?」
霧切「……分かったわ。まずあの停電はブレーカーが落ちたのでしょうね、あの瞬間旧館全体が真っ暗になったわ」
苗木「ブレーカー……」
十神「ちなみにそのブレーカーはお前と舞園がいた事務室にあるようだぞ」
苗木「うぐっ……」
霧切「それで、目が慣れた戦刃さんがブレーカーを戻しに行って、その時事務室で倒れている舞園さんを見つけたの」
十神「そしてその後苗木がいない事から旧館中を捜索。最後にこのトイレをこじ開けてみると、死んだ石丸と気絶した苗木を発見した、だったな?」
霧切「えぇ」
苗木「…………それなら犯人はさ」
十神「まさか分かったのか? これだけの情報で?」ギョッ
苗木「……ボク、みたいだね?」
霧切さんと十神クンがポカンとこちらを見ている。
そして次第に十神クンはイライラをあらわにして、
十神「つまり、お前は自白した。そういう事でいいんだな……」ギリギリ
苗木「あはは、そういう事じゃないよ。でも客観的に見たら、どう考えてもボクが犯人だ。
いやー、参った参った。一体真のクロはどんな手を使ったんだろうね!」ニコニコ
霧切「なぜ……笑っているの……? あなたがクロにされそうなのよ?」
苗木「実は少し期待しているんだ、ここまでの事をやったクロはどうしてこんな事をしたのか!
ただここから抜け出したいからっていうだけならガッカリだけど、もっと素晴らしい理由である可能性もあると思うんだ!」キラキラ
霧切「……どんな理由があろうとも殺人が許されるわけがないわ」
苗木「そうかな? よく推理物でもいろあるじゃない、被害者が凄く酷い奴で、犯人にも同情できるパターンとかさ。
その犯人は自分の強い希望の為に殺人を犯した、それならボクは応援してあげたいなぁ!」
十神「……やはりこの環境でどこかネジが飛んだんじゃないのかコイツは」
苗木「まぁでも、もちろん諦めるつもりはないよ。それじゃ、捜査を続けよっか!」
霧切「……えぇ、そうね。まず凶器はこのナイフで間違いないと思うわ。死体の傷口とも一致する」
十神「苗木が握りしめていたものだな」
苗木「……なんか調べれば調べる程ボクが怪しいね。ていうか二人共、その手に持ってるのは何?」
霧切「あら、苗木君は受け取っていないの? これは」
モノクマ「モノクマファイルです!」ドーン
相変わらずの神出鬼没っぷりを発揮するモノクマ。
本当にこれどうなっているんだろう?
モノクマ「というわけで、はい。大事に使えよー!」
苗木「……なるほどね、被害者の情報を記録してるんだねこれ」
受け取ったタブレット端末を操作すると、殺された石丸クンの写真とその人型が表示される。
『被害者は石丸清多夏。外傷は喉の刺し傷のみ、体内から薬物反応あり』
苗木「……これだけ? 死亡推定時刻とかは?」
モノクマ「甘えるんじゃない!! これだからゆとりは!!」
苗木「はいはい、分かったよ」ハァ
霧切「血が全く乾いていない所を見る限り、石丸君は刺されてからほとんど時間が経っていないわ。
死斑もない、体温もまだ下がっていない、死後硬直もほとんど進行していないわ」
十神「……だが、モノクマファイルを読む限りでは、必ずしもこのナイフが死因とは言えないようだな」
苗木「それって…………この薬物反応の所だよね? まさか、毒?」
十神「あぁ、カプセルに入れて飲ませれば好きな時に殺す事も可能だ」
霧切「…………」
十神「そもそもこの状況がうさんくさい。苗木が犯人だとしたら、なぜナイフを処分せずに握りしめていた? せめて窓から捨てるだろう」
十神クンの言葉を聞いて、トイレの窓を調べてみる。
鉄格子がはめられていて腕も通らないけど、ナイフくらいなら捨てることもできるはずだ。
苗木「うーん、でもそれなら犯人はどうやって鍵をかけたのかな? ここって大神さんが無理矢理開けたんでしょ?」
十神「その辺りは大方の見当はつく。鍵のつまみの部分を見てみろ」
言われた通りに調べてみると、何かが付着しているのが分かる。
苗木「これって……テープ?」
十神「単純なトリックだ。わざわざ説明しないぞ」
霧切「……ねぇ、苗木君。あなたは事件前にこのトイレに入った?」
苗木「うん……他にも掃除当番だった人は入った人も居るんじゃないかな」
霧切「それなら聞きたいのだけど、この床の敷物。最初からあったものかしら?」
そう言われて視線を下に向けると、気にしていなかったけど白い布が敷かれている。
何とか記憶を呼び出してみる。なんだか何日も前の出来事であるかのようだ。
苗木「んー、どうだったかな。確か」
モノミ「あちしはこんなもの知りまちぇんよ!」ヒョコ
十神「……盗み聞きか」
モノミ「ち、違いまちゅ! あちしは耳がいいんでちゅ!」
霧切「それならこの布は他の場所から持ち込まれた、そういう事でいいのね?」
モノミ「はい、間違いありまちぇん!」
十神「コイツの言葉を信じるのか?」チッ
モノクマ「大丈夫、ウソなんてついたら兄であるボクがオシオキしてあげるよ!」
モノミ「だからあんたなんてお兄ちゃんなんかじゃないでちゅってー!!」ムキー
そんなモノクマとモノミの騒ぎには関心を向けず、霧切さんは布をめくり上げる。
霧切「…………これは」
苗木「どうしたの、霧切さん?」
霧切「布の下にも血が広がっているわ。それもかなりの量」
十神「……ふむ」
苗木「えっと、つまり………」
少し頭をひねってみる。
だけど、ボクが何かを言う前に更に霧切さんが口を開いた。
霧切「それに乾いた血痕もわずかに残っている」
十神「乾いた血痕だと?」
霧切「…………」
霧切さんは無言で石丸クンの死体近付く。
そして彼の出血を調べながら、
霧切「……石丸クンの口元にも同じく乾いた血痕があるわね」
苗木「それって……どういう事?」
霧切「それはまだ分からないわ。でもこの血痕、少しおかしいわね」
十神「当たり前だ。その床と石丸の口元以外の血は乾いていないんだ」
霧切「いえ、それ以外にも何か…………」
そう言って考え込む霧切さん。
ボクはただ首を傾げる事しかできない。
充電切れるべ
毒か何か盛られてたんか食事に
ナイフで刺したのも停電させたのも苗木かな
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切
十神「……石丸は動けそうにないな」
十神クンは今度は石丸クンを縛っているロープに目を向ける。
口のガムテープも合わさって、まさに監禁されている様子だ。
霧切「石丸クンは動けなかった。それはいつからだったのかしらね」
苗木「うーん……石丸クンはずっとトイレにこもっていたからなぁ」
十神「これでは自殺は不可能か。いや、薬物を使えばあるいはな」
苗木「じ、自殺?」
霧切「……それでもやっぱり首にナイフを指した人間はいるはずよ」
十神「そういう事はお前がやりそうだな、苗木」ギロ
苗木「……あはは。でも、石丸クンが自殺なんて……」
十神「考えられんか? 明日の朝、俺達は死の光景を見せられる予定だった。アイツは自分の命でそれを防いだ。そうは考えられる」
霧切「…………」
十神「ふん、ここはこんなものか。俺はここからは一人で調べるぞ、馴れ合いはここまでた」
苗木「うん……でも何か見つけたら……」
十神「それは学級裁判で教えてやる」
スタスタ
そのまま十神クンはさっさと行ってしまった。
霧切さんも霧切さんで何かを考え込んでいる様子だ。
……うん、二人共期待通りの対応だ!
苗木「ボク達も他の場所調べようか?」
霧切「……ええ、そうね」
『モノクマファイル』
『苗木の証言』
『死体の様子』
『鍵のつまみに付いたテープ』
『床に敷かれた布』
『乾いた血痕』
http://i.imgur.com/fsreX11.jpg
【事務室】
トイレから出たボク達は次に近くの事務室に入る。
そこは変わらず多くの物が置かれていた。
苗木「ここなら危ないものとかも隠せそうだよね」
霧切「えぇ、これは完全に私のミスよ。初めにきちんと調べておくべきだった」
苗木「……霧切さんは、みんなの中に誰かを殺すの人がいるなんて思いたくなかったんだよね?」
霧切「…………」
苗木「でもさ、疑うのは全然良いと思うんだ!」
霧切「えっ?」
苗木「ボクも最近気付いたんだけど、無条件に信じるなんて、そんなの信頼なんかじゃないんだよ。
どれだけ疑っても否定してくれる。そう信じるからこそ疑うんだ」
霧切「…………そう、ね。苗木君の言う通りかもしれないわ」ニコ
そう、ボクはみんなを信じている。
だから疑うし、試すんだ。
お願いだから裏切らないでほしいな。
霧切「苗木君が見た不審者はどの辺りに居たのかしら?」
苗木「ここら辺……かな」
霧切「……確かに隠れられなくもないわね」
とにかく、ここは物が多い。
だから隠れようと思えば隠れられる。
霧切「……エアコンのタイマーがセットされているわね」
苗木「あー、うん。そういえば停電前に起動したかな」
霧切「停電前に?」
そう言うと、霧切さんは再び考え込んでしまう。
よく聞くと小さな声で何かを呟いているようでもあるけど、邪魔をしてはいけないと思ったのでそのまま見ていた。
霧切「……苗木君?」
苗木「ん?」
霧切「いえ、その、あまり見られると落ち着かないわ……///」
苗木「あ、ごめん。そうやって考え込んでいる霧切さんって、なんか見惚れちゃうんだよね」ニコ
霧切「えっ///」カァァァ
霧切さんは恥ずかしそうにそっぽを向いてしまう。
そんなに恥ずかしがる事ないのに。
真剣に考え込む霧切さんからは希望が溢れていて大好きだ。
霧切「こ、このテーブルは初めからあったのかしら? 大広間にあったものと同じタイプよね?」
苗木「うん、そうだね。これは大広間から持ってきたやつだよ。クッキーを置いてたんだ」
霧切「テーブルクロスは?」
苗木「あれ、おかしいな。確かに敷いてあったはずだけど」
霧切「…………」
苗木「…………」ニコニコ
霧切「だ、だからあまり見ないで///」
最終章までかいてほすい
苗木「分かった、霧切さんの事は見ないよ」キリッ
霧切「えっ……そ、それは…………いや」
苗木「じゃ、じゃあどうすれば……」
霧切「苗木君は私を見て。私だけを」
苗木「うん、分かった」ジー
霧切「///」
とにかく霧切さんの要望にはなんでも応えよう。
彼女には気分良く推理してもらわないと。
なんたってこの中では最大級の希望なんだから!
霧切「あら、あの台車」
苗木「台車? あー、あれか」
霧切「金具に何か引っかかっているわ」ゴソゴソ
霧切「……髪の毛ね。これって」
苗木「うん、石丸クンっぽい気がする。でもどうしてこんな所に……」
霧切「こんな低い位置にある金具に彼の髪の毛が挟まっていた。普通に台車を押していて起こる事ではないわね」
確実に手がかりは集まっていく。
流石超高校級の探偵、霧切さん。
クロは彼女を欺く必要があり、ボクとしてはそんな人も見てみたいとも思うんだよね。
まぁそしたらクロ以外死んじゃうんだけど。
『エアコンのタイマー』
『消えたテーブルクロス』
『台車の金具に挟まった髪の毛』
【大広間】
大広間のソファーでは、目を覚ました舞園さんがぼんやりとしていた。
周りには桑田クンや葉隠クンもいる。
苗木「舞園さん? 大丈夫、舞園さん?」
舞園「苗木君……あの、石丸君が……」
苗木「……うん」
舞園「酷い……一体誰がそんな事……」
葉隠「いや、だから苗木っちだべ」
舞園「違いますよ!! 苗木君は私の事を助けてくれたんですから!!!」
桑田「それだって苗木を庇ってるんだろ……? おい分かってんのかよ、俺達犯人当てに失敗したら殺されるんだぜ?」
霧切「だからこそ情報を集めるのよ。舞園さん、襲われた時の事話せるかしら?」
舞園「っ」ビクッ
桑田「おいおい、やめとけよ。怯えてんじゃねーか」
舞園「……な、苗木君。あの、お願いが」
苗木「ん、なに?」
舞園「まだちょっと怖いんで、えっと、抱きしめてもらえませんか……?」ウルウル
霧切「!!」
桑田「苗木ぃぃ……!!」
葉隠「こんな時でもラブコメ全開だべ」
苗木「あー、その……」チラ
霧切「…………別にいいんじゃない。それで落ち着いてくれるなら」プイッ
苗木「そ、それじゃあ……」
ギュッ
舞園さんの体は柔らかく、暖かくて、良い香りがした。
舞園「……えへ、えへへへへへ///」ニタァ
ゴン!!!
嬉しそうに頬を緩ませる舞園さんの脳天に、霧切さんの拳が叩き落された。
舞園「いったあああ!!! な、なにするんですか!!!」
霧切「ごめんなさい、手が滑ったわ。でもあなた意外と余裕ありそうだし、このくらい平気でしょ?」
舞園「平気じゃないですよ! ふん、なんですか、どうせ私が苗木君に抱きしめられているのを見て嫉妬しただけでしょう!」
霧切「ええ、その通りよ羨ましい。あなたが憎いわ」
苗木「ハッキリ言い過ぎだから…………それで舞園さん、あのさ」
舞園「はい、もう大丈夫です! 苗木君からたくさんの愛情をいただきましたから」ニコ
霧切「そんなものは気のせいよ、この枕園さん」
舞園「なっ、今なんて言いました!?」
霧切「ごめんなさい、噛んでしまったわ」
舞園「ウソです!! わざとです!!」
苗木「……えーと、そろそろ話してもらえないかな?」
石丸が草葉の影から泣いてるよ!
舞園「……分かりました。石丸君の為ですもんね」
苗木「うん。ありがとう、舞園さん」
霧切「…………」ムスッ
桑田「なぁ俺達はどうすればいいんだ?」
葉隠「ただモブでいればいいんだべ」
そして、舞園さんはポツリポツリと話し始めた。
舞園「まず、私と苗木君は事務室でラブラブしてたんですけど」
霧切「ちょっと」
苗木「とりあえず最後まで聞こうってば!」
舞園「そしたら苗木君が私の背後の辺りを見て驚いた顔をしていて、私も振り返ろうとしたんですけど、その前に苗木君に抱きしめられて」
霧切「ねぇ」
苗木「はい、最後ね最後」
舞園「そしたら背中から凄い衝撃が走って、気を失ってしまったんです。苗木君の腕の中で」
霧切「…………」イライライライラ
苗木「ど、どう? ボクが言った話とは矛盾しないよね……?」
霧切「今の話を要約すると、苗木君は舞園さんとラブラブしてて、彼女を抱きしめて幸せのあまり気絶させたというわけね」ムカムカムカムクラ
舞園「そ、そうだったんですか!」
苗木「それは違うよ……」
ダメだ、霧切さんがおかしい。
こういう時は。
苗木「霧切さん、ボクはやっぱり捜査中の真剣な表情のキミが好きだな」ニコ
霧切「舞園さん、今の話で少し聞きたい事があるわ」キリッ
舞園「は、はい……」
葉隠「苗木っちが完全に悪い男だべ」
桑田「やっぱコイツがクロだろ……いや、クロであってくれ」
霧切「まず、あなたは襲われた相手の事を見ていないの? 視界の端に微かに捉えていたりしない?」
舞園「いえ……すぐに、その……苗木君に抱きしめられてしまったので///」
霧切「…………」イラッ
苗木「霧切さん、しっかり」ニコ
霧切「じゃあその様子をここで再現してもらおうかしら。相手は桑田クンで」キリッ
桑田「マジで!? ったく、しゃあねえなぁ……」ニヤニヤ
舞園「いやです」ニコ
笑顔で一刀両断。
アイドルの笑顔っていうのは恐ろしい武器だ。
霧切「これは必要な事よ」
舞園「あの時のことを再現するなら、相手は苗木君の方がいいじゃないですか」
霧切「ぐっ……それは……!!」
日向「七海七海…ウッ」シコシコ
カムクラ「ふぅ……アア、ツマラナイです」
苗木「舞園さんの言う通りだよ。相手はボクの方が良いと思う」
霧切「…………分かった……わ……」
葉隠「絶望的過ぎる表情だべ。桑田っちもだけど」
桑田「」
舞園「じゃ、じゃあ苗木君!///」スッ
霧切「待って、あなたそうやって両手を広げて抱きしめられるのを待っていたの?」イライラ
苗木「舞園さん、ちゃんとその通りにやろう」
舞園「わ、分かりましたよぉ。えっと、それで、このくらいの距離で苗木君と話していた時に、彼の表情が変わったんです」
苗木「その時の表情をした方がいいのかな?」
霧切「いえ、いいわ。代わりに私に微笑んで見せて」
苗木「…………」ニコ
霧切「///」
葉隠「いや、何やってんだべ」
ちょっと女子!真面目にやってよ!
舞園「はい、それで次は苗木君が私を守る為に抱きしめるシーンです! ほら、苗木君!」
苗木「う、うん……なんか緊張するな……」
霧切「……ちっ」イライラ
照れくささを感じながら、その時と同じように腕を回す。
舞園「ふふ、もうちょっと背中の方に腕を回してましたよ苗木君」ニコ
苗木「あ、そ、そうだっけ。やっぱり恥ずかしいな……」ギュッ
霧切「…………」
葉隠「恐ろしい程の無表情だべ……」ブルブル
苗木「え、えっと、もういいかな霧切さん?」
舞園「えー、もう終わりですかぁ?」
霧切「…………ええ、もういいわ」
葉隠「あちゃー、完全に拗ねちゃったな」
苗木「……?」
なんだろう、今の霧切さんの表情は拗ねたという様なものではなかった気がする。
霧切「舞園さん、もう一つだけ聞かせて。事務室で何かの電子音を聞かなかった?」
舞園「電子音……あぁ、確かに聞こえました! ちょうど、苗木君が何かを見つける直前です!」
霧切「…………そう、ありがとう」
葉隠「(なぁなぁ、霧切っちマジで凹んでね? 何かフォローしてやろうべ)」ヒソヒソ
苗木「…………」
葉隠「苗木っち?」
苗木「え、あっ、ごめんごめん。なに?」
葉隠「こっちはこっちでぼーっとしてるし……もう知らねえっつーの」ハァ
まさか、霧切さんに限って希望を失うなんていう事はないよね。
大丈夫、彼女は素晴らしい人だ。
例えどんな事があっても、力強く前へ進んでくれるはずなんだ。
霧切「…………」
次に霧切さんはエアコンの方へと近付いていく。
ボクもその後を追いながら、
霧切「事務室ではエアコンがついたすぐ後に停電したって言ってたわね。それはここも同じなの」
苗木「……ていう事は、このタイマーは停電の合図っていう事なのかな?」
霧切「それはどうかしら…………でも、やっぱり事務室のタイマーの設定時刻と同じね」
確かにリモコンに表示されているタイマー設定時刻は事務室と同じだ。
つまりあの瞬間、二つの部屋でエアコンが同時に起動した事になる。
霧切「……これがブレーカーを落とすトリックかしら」
苗木「エアコンが?」
霧切「苗木君、直接触れずにブレーカーを落とす方法といえば何が思い浮かぶ?」
苗木「え、それは…………あ」
霧切「そういう事かもしれないわ」
苗木「で、でも、エアコンが二つ点いたくらいじゃ……」
霧切「それだけじゃないのかもしれない。まぁ、そこは他の部屋を調べれば分かるかもしれないわ」
苗木「……そっか」
霧切「あとは……」
バシャッッ!!!
霧切さんはなんと、手近にあったテーブルの上にあったジュースを思い切りこぼしてしまった。
苗木「な、何やってるの!?」
霧切「ちょっとした実験よ」
そう言いながら霧切さんはテーブルクロスを外して、その下を覗き込む。
霧切「……シミ一つないわね」
モノミ「当たり前なのでちゅ!」
苗木「モノミ?」
霧切「このテーブルクロスは水分を通さないのね」
モノミ「はい! ペットボトルの水をドバドバやっても下に染みまちぇんよー!」
霧切「それと、このテーブルクロスって予備とかあるのかしら?」
モノミ「倉庫に二枚ありまちゅよ!」
霧切「そう、ありがとう」
苗木「霧切さん、テーブルクロスがどうしたの?」
霧切「水分を通さないテーブルクロス。使い道はありそうじゃない?」
苗木「……うーん、そうかなぁ」
『苗木、舞園の証言』←情報追加
『エアコンのタイマー』←情報追加
『消えたテーブルクロス』←情報追加
【厨房】
次にやって来たのは厨房だ。
中には大神さんと朝日奈さんが居た。
霧切「……大神さん。あなたには殺人現場のトイレの現場保全の監視をしてもらいたいのだけど」
大神「すまぬ、朝日奈がかなり落ち込んでいてな……」
朝日奈「ううん……私はもう大丈夫だから……」
苗木「あのさ、朝日奈さん」
朝日奈「な、苗木……っ!」ビクッ
苗木「…………」
やっぱりボクがクロだと思われているみたいだ。
まぁ、この状況では仕方ないけど、怯えているだけでは始まらないっていう事を分かってほしいなぁ。
……いや、これもただボクが望みすぎているだけか。
霧切「……そういえば、今日は手作りの料理がいくつか出ていたわね。あれは朝日奈さんが?」
朝日奈「う、うん、苗木もね。ていうか、最初に言い出したのが苗木の方だよ」
苗木「うん、たまにはそういうのもいいかなって。確かにレストランの料理も美味しいけどさ」ニコ
朝日奈「でも苗木、お肉解凍する時にドリップたくさん出しちゃったりして、ダメダメだったじゃん」
苗木「うっ……お、覚えてたんだ……」
朝日奈「……はぁ。あの時はとっても楽しかったのになぁ」
霧切「…………」
苗木「霧切さん?」
霧切「そのドリップ、誰が処分したの?」
朝日奈「え、私はやってないよ。苗木でしょ?」
苗木「うん、そうだね。ボクの失敗だし」
霧切「…………そう」
『肉のドリップ』
【倉庫】
調べるなら全ての部屋を調べるべきだから、当然ここもその対象になる。
でもやっぱりホコリっぽいし、あまり長くは居たくないなぁ。
霧切「予備のテーブルクロスは二枚ともあるわね…………って何をやっているの苗木君?」
苗木「えっ、あ、その、電気勿体ないなぁって」
霧切「…………それで、何をしていたの?」
苗木「えーと、アイロンが三つもコンセントに繋がってたから、抜いてたんだ」
霧切「苗木君、勝手に物を動かさないで」
苗木「ご、ごめんなさい」
自分だってさっきジュースぶちまけたのに……。
霧切「アイロンが三つ……コンセントは繋がっていたのよね?」
苗木「うん、三つともね」
苗木が事件に関与してるのは明白
霧切「……これでブレーカーの方のトリックは分かりそうね」
苗木「あ、それとさ霧切さん。この倉庫から床下へ行ける扉があるんだ」
霧切「床下? どこ?」
苗木「ここ、ここ。掃除当番の皆と相談して、南京錠で塞いじゃってるけど」
床下へ続く扉は完全に閉じている。南京錠も壊された形跡がない。
霧切「これ、鍵は誰が持っているの?」
苗木「鍵は壊しちゃった。なんか床下ってトリックに使えそうだったから、念の為塞いじゃったんだ」
霧切「……なるほどね。でも、これって大神さんなら破れるんじゃないかしら」
苗木「……確かにそうかも」
霧切「ちょっとこの下も調べてみるわ。念の為」
それから厨房から来てもらった大神さんに無理矢理こじ開けてもらい、霧切さんは懐中電灯片手に床下へと下りていった。
程なくして、霧切さんが戻ってくる。
霧切「特に何もなかったわね。でも」
苗木「でも?」
霧切「シミができている場所があったわ。ちょうど大広間の下かしら」
苗木「あー、それたぶん石丸クンがこぼしたジュースじゃないかな」
霧切「ジュースをこぼした? いつ?」
苗木「旧館の掃除中。ちょっと休憩している時にさ」
霧切「…………」
苗木「その時の話をしたいなら、他の掃除当番の人も一緒の方がいいかな?」
霧切「……えぇ、そうね。聞かせてもらおうかしら」
『消えたテーブルクロス』←情報追加
『三つのアイロン』
【大広間】
朝日奈「あー、うんうん、覚えてるよそりゃ。あのゲテモノジュースのせいで石丸がトイレにこもるはめになっちゃったんだから」
葉隠「いや、そこまでまずくねえって!」
霧切「詳しく聞かせてもらえる?」
大広間には朝日奈さん、桑田クン、葉隠クンが集まっていて、その時の状況を霧切さんに説明する。
霧切さんは特に口を挟むこともなく、ただ何度か頷きながら話を聞いていた。
霧切「……ありがとう、だいたい分かったわ。それで聞きたいんだけど、石丸君がそのジュースを飲んだ後、吐血しなかった?」
桑田「と、吐血だぁ!? ねえよ、そんな事になったら大騒ぎだろうが!」
霧切「…………」
それから霧切さんは少し長く考え込んだ後、
霧切「石丸君の姿が見えなくなったのがいつ頃か分かる?」
朝日奈「うーん……どうだったかなぁ……」
桑田「……確か、葉隠のふざけたミステリーサークル騒動の後はもう居なかったよな」
朝日奈「あー、確かにその前まではソファーに居たっていうのは言えるかも。私、葉隠に言われて外出る前に大広間の石丸の事確認したもん」
桑田「おう、俺も葉隠がソファーで寝てる石丸も誘うかって言ってたから止めたぞ」
葉隠「なんていうか、もはや懐かしい思い出だべ……」シミジミ
霧切「その時の事をもう少し詳しく聞かせてもらえる?」
霧切さんの目が鋭くなっているのが分かる。
葉隠クンはその目に怯みながらも、
葉隠「え、えーとなんだったか……そう、まず俺が旧館の裏手にミステリーサークルを見つけたんだべ!!」
朝日奈「あ、霧切ちゃん、それは調べなくていいよ。どう見ても意味不明な模様だったから」
桑田「あぁ……あの時程時間の無駄を感じた事はなかったぜ……」
葉隠「なんだべなんだべ!! ただお前らの感受性が足りねえだけなんだ!!」
霧切「……まぁ一応念の為後で調べておくわ。続けてくれる?」
葉隠「それで俺が旧館に居た皆を外に呼び出したんだ! 朝日奈っち、桑田っち、苗木っち、腐川っちをな! 石丸っちはダウンしてたから免除したべ」
朝日奈「で、いざ見てみればただの落書き。ホントうんざりしたよ」ハァ
葉隠「だから落書きじゃねえっつの!!!」
霧切「葉隠君が呼んだ時の皆の位置関係とか分かるかしら?」
葉隠「ん、石丸っちと桑田っちと腐川っちが大広間、苗木っちと朝日奈っちが厨房だったな」
霧切「それで、皆すぐに葉隠君についてきたの?」
桑田「あぁ、そうだな。少なくとも俺と腐川はさっさと外に出たな」
葉隠「そう聞くと二人が仲良さそうだべ」
桑田「おいふざけんな、アイツだけは勘弁だ!!」
朝日奈「あ、でもこっちは苗木がトイレ行きたいって言ってたから、私が先に行ったよね」
苗木「うん、そうだったね。遅刻して葉隠クンにも怒られたのは覚えてるよ」ハハ
葉隠「当たり前だべ!! ミステリーサークルの立ち会いに遅刻とは信じられないべ!!」
朝日奈「あーあー、私もオチに気付いてたら遅刻どころか欠席したのに」
葉隠「な、なんだとおおおおおおお!!!!!」
霧切「…………」
霧切さんはじっくり考え込んでいる。
でも、どことなくだけど。
彼女の表情がとても悲しそうなのはなぜだろう。
霧切「……他に掃除当番の皆が全員一箇所に集まるような機会はなかった? できればまとまった時間」
桑田「後は……倉庫の床下へ続く扉をどうするか話し合った時じゃねえか? 苗木が集めたやつ」
朝日奈「あー、確かにその時は皆で倉庫に行ったね。あれ、でも誰か居なかったような…………葉隠だ!」
葉隠「俺はもうその扉については苗木っちから聞いてたから行かなかったんだべ。な?」
苗木「うん、そうだね」
桑田「そういやそんな事言ってたな。まぁ、まとまった時間って言ったらそんくらいだ、後は基本的に結構バラバラだったぜ」
霧切「……そう、ありがとう」
朝日奈「霧切ちゃん……苗木が犯人じゃないって思ってるの……?」
霧切「それはまだ言い切れないわ。でも、もしかしたらこの事件にはかなり特殊な思惑が絡んでいるのかもしれない」
桑田「特殊な思惑……?」
霧切「えぇ。私達では理解できないようなもの、ね。だからこそ常識を捨てて、より柔軟な発想をする必要があるかもしれない」
葉隠「んー、霧切っちの言葉は難しくてよく分からないべ」
苗木「そう? ボクは何となく分かるよ。つまり、どんな事でも『ありえない』って決めつけちゃいけないって事だよね」
霧切「…………えぇ、そうね」
朝日奈「なになに、どゆこと?」
苗木「人が何を大切にしていて、何に怒るのかっていうのは分からないものだよ。
例えばさ、ボク達がコロシアイをすることになるなんて、この修学旅行前には想像もつかなかったでしょ?」
桑田「そりゃ……そうだろうがよ……」
苗木「それはモノクマが現れてからも同じだったかもしれない。何だかんだ皆の心の底には『コロシアイなんてありえない』っていう気持ちがあったんじゃない?」
朝日奈「…………うん」
苗木「それでも、現にこうして殺人は起こってしまった。もう、何が起こるかなんて分からないんだよ。
だからもう『こんな事はありえない』なんていう気持ちは捨ててしまった方がいい。そういう所で足元をすくわれてしまうんだよ」
葉隠「はっ……つまり不二咲がオーガを殺すとかそういう事も想定しなきゃいけねえんか?」
苗木「そうだね。条件が揃えばありえるかもしれない。とにかく思考を止めずに、ただ立ち向かっていく事が大切だよ」
霧切「それなら苗木君」
霧切さんは真っ直ぐこちらを見つめてくる。
それはどこかすがりつくような目で、ボクからしたらあまり見たくないものだった。
霧切「あなたが私を殺す、そんな事も起こりえるのかしら」
苗木「……どうだろうね。ないとは言い切れないんじゃないかな」
やめてよ……そんな顔をしないでよ霧切さん。キミはそんなものじゃないはずだ。
寝るべ。中々裁判までいけねえべ
ご
朝日奈「ちょ、ちょっと苗木!」
苗木「ボクは予知能力者じゃないよ。未来の事なんて分からない。今回のクロだって修学旅行前までは石丸クンを殺すなんて夢にも思っていなかったはずだよ」
桑田「それは……そうだろうけどよぉ……!!」
霧切「いいわ。確かに苗木君の言っている事も間違いではない。それに今は起きてしまったこの事件に集中するべきよ」
朝日奈「霧切ちゃん……」
そうだ、そうだよ霧切さん!
絶望なんかに負けちゃダメだ、どんなに辛いことがあってもキミは前を向いていないと!
霧切「それと葉隠君と桑田君、あなた達には聞きたいことがあるわ」
葉隠「お、なんだべなんだべ?」
桑田「ま、まさか俺達のどっちかを疑ってるわけじゃねえだろうな……」
霧切「そういうわけではないわ。あなた達ってパーティー中に倉庫へ行ったわよね? そこでアイロンを見なかったかしら?」
桑田「おー、見た見た。なぜか三つも置いてあったな」
葉隠「そうそう、電気もったいねーから俺がコンセント抜いちまったべ」
霧切「…………なんですって?」
葉隠「えっ……ま、まずかったんか……?」
桑田「あー、そういや葉隠が見つけて『こんな無駄遣い許せねえべ!』ってコンセント引っこ抜いてたな」
葉隠「そ、そうだべ! 電気代だってバカにならないんだぞ!!」
霧切「…………」
葉隠「……え、本気で怒ってる? 悪かったって!!」
霧切「……いえ、そういうわけではないわ。ありがとう」
葉隠「???」
霧切さんのあの様子、何かに気付いたみたいだね!
他のみんなも彼女までとは言わないから、少しは前へ進もうとする姿勢を見せてくれればいいんだけど……。
『ゲテモノジュース』
『ミステリーサークル騒動』
『葉隠、桑田の証言』
【廊下】
その後、ボク達は大広間から廊下に出る。
霧切さんが話しかけたのはモノミだ。
霧切「あなたに聞きたい事があるわ」
モノミ「はい、もちろんいいでちゅよ! 生徒の質問に答えるのが先生でちゅから!」
苗木「じゃあキミの正体は?」
モノミ「あちしはモノミ……じゃなくてウサミでちゅ! あなた達の先生でちゅ!」
なるほど、それで通すんだね。
まぁ、今はモノミの正体はどうでもいいかな。
霧切「あなたは今回見張りの役をしていたわね? つまり、ここでの皆の動きはあなたが一番良く知っている」
モノミ「……あ、あちしはみなさんを疑うような真似はしたくないのでちゅが…………」
霧切「えぇ、私もそうよ。だから、みんなの無実を証明する為に調べているの」
モノミ「みなさんの無実……」
霧切「その為にはあなたの協力が必要よ。今回の事件、あなたの証言が最も重要な意味を持つはずだから」
モノミ「…………分かりまちた。みなさんが石丸君を殺すなんてありえないと証明してみせまちゅ!!」
あはは、なるほど。確かにそういう形の希望もあるかもね。
みんなを信じたまま死んでいく。それはそれでいい事なのかもしれない。
まぁ、ボクは納得出来ないけどね。
苗木「えーと、まずモノミはボク達が掃除している時は、旧館入り口前で見張りをしていたよね?」
モノミ「はいでちゅ。パーティーの飾り付けで他のみなさんを驚かせたいと頼まれまちたから」
霧切「それは掃除当番の人達全員で決めたのかしら?」
苗木「うん、そうだよ。まぁ、桑田クンとか腐川さんは乗り気じゃなかったけどね」ハハ
霧切「……そう。それで掃除が終わってからは旧館入り口と大広間の前で見張りをしていたのよね?」
モノミ「はい。あちしは何体か出てくる事ができまちゅから。モノクマ対策でちたよね」
霧切「掃除が終わった後、当番の人達は私達を呼びに来たわよね。その時あなたはどうしていたの?」
モノミ「えーと、まず掃除が終わったらあちしは二体目を大広間の前に出しまちた。その後みなさんが出て行ったので、そのままじーっとしていまちたよ」
苗木「飾り付けが終わった部屋をモノクマに壊されたら嫌だったからね」
霧切「掃除中、掃除当番の人以外は旧館に入って来なかった、それでいいの?」
モノミ「はい、その為の見張りでちゅから!」
霧切「掃除当番の人達で旧館の出入りはあったのよね?」
苗木「そりゃスーパーで買い出しとかあったからね」
霧切「その買い出しは全員で?」
苗木「ううん、基本的に二人で」
霧切「それじゃあ、一度に全員で外に出た時は……」
モノミ「一度、葉隠君に連れられてみなさんが出てきた事がありまちたよ! あ、でも石丸君がいませんでちたね……」
霧切「……その時だけという事ね」
苗木「あれ、でもボク達が霧切さん達をパーティーに呼びに行く時も、石丸君以外の全員が旧館から出て行ったよね?」
霧切「その時はもうモノミが大広間の前で見張りをしていたのよ」
苗木「……えっと、そこに意味があるの?」
霧切「えぇ……大きな意味がね」
霧切「掃除中、モノミは旧館の外で見張りをしていた、そうよね?」
モノミ「はいでちゅ」
苗木「それがどうかしたの?」
霧切「本当に旧館の中に誰も居なくなった時というのは、その葉隠君のミステリーサークル騒動の時だけという事よ」
苗木「え、でもその時も石丸君は大広間のソファーに居たままだったよ?」
霧切「…………」
霧切さんは無言で考え込む。おそらく彼女の頭の中では、ボクなんかでは想像もつかないほど様々な事が巡っているのだろう。
霧切「モノミ、私達が旧館にやって来てからの事を聞かせて。
まず、大広間以外……外に出て行った人やトイレに行った人、事務室、厨房、倉庫に行った人は居なかった?」
モノミ「え、えっと……外に行った人は何人かいまちたよ。苗木君、朝日奈さん、江ノ島さんでちゅかね。
朝日奈さんと江ノ島さんは元々トイレに行くつもりだったみたいでちゅけど、石丸君が使っていたので外へ行ったみたいでちゅ」
霧切「苗木君はどうして外に?」
苗木「ちょっと夜風に当たりたかっただけだよ」
霧切「……そう」
モノミ「あと、トイレに行った人もその三人だけでちゅね。石丸君がいまちたので、誰も中には入りませんでちたけど」
霧切「石丸君は一度も出てこなかった、そういう事ね?」
モノミ「あ、いえ、停電中に一度トイレの扉が開きまちたので、その時に出てきたみたいでちゅよ」
苗木「よくトイレの扉って分かったね」
モノミ「あちしは耳がいいんでちゅよ。どこの扉が開いたかというのは聞き分ける事ができまちゅ」エッヘン
霧切「そう……それで事務室はどう?」
モノミ「停電前に苗木君と舞園さんが入りまちたね。二人が大広間から出てきて、トイレの前の角を曲がった後に事務室の扉が開く音がしまちたから。
あとは停電中に二回扉が開いた音がしまちた。一回目は苗木君と舞園さん、二回目は戦刃さんだと思うのでちゅが……」
苗木「ちょっと待って、それはありえないよ。ボクも舞園さんも襲われて気絶させられちゃったんだからさ!」
モノミ「うーん……でも確かに音は……」
霧切「……他の部屋はどうかしら?」
モノミ「厨房は朝日奈さんと大神さんが何度か入っていまちたよ。停電後に苗木君を探すときも、その二人が厨房を担当してまちた。
倉庫は葉隠君と桑田君の二人、後は苗木君を探しに行った不二咲君と大和田君が入りまちたね」
霧切「…………モノミ、あなたが最後に石丸君を見た時、彼はどんな様子だった?」
モノミ「えーと……あれは掃除中でちゅね。みんなの分のジュースを持って旧館の中に入る時でちゅ。あちしにも一本くれたのでちゅよー」ニコニコ
モノミ「……そんな、良い子でちたのに」ウルウル
霧切「……つまり、その時から石丸君は一度も旧館から出ていない」
苗木「となると、やっぱりトイレなんじゃないかな」
霧切「そう……ね。モノミ、次は停電中の事を詳しく教えてもらえるかしら?」
モノミ「停電中はあちしも全く見えませんでちたから、耳で聞いた事しか教えられないのですが……」
霧切「十分よ。まず、停電中のあなたの言葉を確認したいわ」
モノミ「あちしの言葉……でちゅか?」
霧切「えぇ、あなたは確かあの時……」
『みなさん大丈夫でちゅかー!!』
『あれ、苗木君? 舞園さん? ブレーカーはその部屋でちゅよ!』
『……あれ、石丸クンでちゅか? 体調は大丈夫なんでちゅか?』
霧切「こう言っていたわね?」
苗木「よ、よく覚えているね……」
モノミ「はい、そうでちゅが、それが……」
霧切「これってつまり、最初に事務室の扉が開いて、その後にトイレの扉が開いたという事なのよね?」
モノミ「はい、その通りでちゅ。そしてその次に大広間の扉が開いて、すぐ後にまた事務室の扉が開きまちた。
そこで電気がついて、戦刃さんが真っ青な顔で再び大広間の中へ入っていきまちた」
苗木「停電中の大広間の扉と二回目の事務室はやっぱり戦刃さんだよね」
霧切「……扉の開け閉めの間隔も教えてもらえるかしら」
モノミ「えっ? んーと、最初の事務室の扉は開いてすぐ閉まりまちた。次のトイレと大広間もそうでちゅ。でも二回目の事務室は開けっ放しでちたね」
苗木「そりゃ、扉を開けたら舞園さんが倒れていたんだからね。閉めなくても不思議じゃないよ」
霧切「そうね。私達が戦刃さんについて行って事務室へ向かった時も扉は開いたままだったわ。でも……」
苗木「あれ、何かおかしい? もしかして戦刃さんを疑ってるの?」
霧切「…………いえ、何でもないわ。次に聞きたいのは十神君よ」
モノミ「十神君……でちゅか?」
霧切「えぇ、彼はこの旧館には入ったのかしら?」
モノミ「いえ、彼は一度もここには入っていまちぇん……彼もみんなの輪に加わる事ができればいいんでちゅが……」ショボン
苗木「十神クンとは一度外に涼みに行った時に会ったけど、彼は彼なりの希望があるんだよ」
霧切「…………」
苗木「えっと、整理すると……停電になったら事務室→トイレ→大広間→事務室っていう順番に扉が開いたんだよね?」
モノミ「はい、その通りでちゅ!」
霧切「…………」
モノミ「き、霧切さん、どうしまちた……? とても顔色が悪いのでちゅよ……?」オロオロ
霧切「……ごめんなさい、何でもないわ。ありがとうモノミ、あなたのお陰でかなり進展したわ」
苗木「本当!? すごい、さすが霧切さんだ!!」ニコニコ
モノミ「も、もちろんみなさんは無実なんでちゅよね……?」
霧切「…………」
モノミ「き、霧切さん……?」
モノミは恐る恐る尋ねているけど、霧切さんは答える事ができない。
それはほとんど彼女の考えを言っているようなもので。
モノミは信じられないような表情で、ただ立ち尽くすしかなかった。
……あは、はははははは。
『モノミの証言』
次に霧切さんは不二咲クンと大和田クンに話を聞いていた。
大和田「ん、倉庫だぁ? あー、そうだな、確かに俺と不二咲で苗木を探しに行ったぜ」
霧切「その時、アイロンを見かけなかった?」
不二咲「う、うん……見たけどぉ……」
大和田「そういや何であんな所にアイロンなんてあったんだかな」
霧切「あなた達はそれに触った?」
不二咲「ううん……あの時は苗木君を探すのに必死だったからぁ……」
大和田「んで、いざ見つかったと思ったら人殺してたってんだからな。ったく、やってらんねえぜ」
苗木「あ、あはは……ごめんね……でも、違うんだよ……」
不二咲「ぼ、僕も苗木君がそんな事するはずないと思いたいけどぉ……」
霧切「とにかく、あなた達はアイロンには触れていないっていう事ね?」
大和田「だから言ってんだろ。あの時はアイロンどころじゃなかったってよ」
【大広間】
その後、ボクは霧切さんにある事を頼まれた。
それは大広間と事務室、二つのエアコンのタイマーをこれから少し後にセットしろというものだった。
何をしたいのかと聞いても、彼女は“実験”としか言わなかった。
霧切「苗木君、ちゃんとやってくれたかしら?」
苗木「う、うん……後ちょっとで作動すると思うけど…………あれ、霧切さん倉庫に行ってたの? 頭にホコリ乗っかってるよ?」
霧切「え、そう?」
苗木「ちょっと待って、取ってあげるから」スッ
そう言って彼女の髪に手を伸ばすと、
霧切「……いいわ、自分で取れる」サッサッ
苗木「そ、そっか……」
舞園「ふふふ、何もったいないことしてるんですか」ヌッ
霧切「舞園さん……」
舞園「私だったら今のチャンスに思い切り頭を撫でてもらいますよ! おしい事をしましたね」ニヤニヤ
苗木「い、いや、頭くらいならいくらでも撫でてあげるって……」
舞園「ほ、本当ですか!? それではぜひっ!!」スッ
苗木「はいはい」ナデナデ
舞園「えへへ……///」ポー
霧切「…………」
舞園「あれ、何ですか霧切さん。羨ましいんですか? 仕方ないですねぇ、私が十分堪能したら少しだけ代わってあげても……」
霧切「…………」
舞園「……霧切さん? な、何ですかそんな人を哀れむような目で……」
苗木「ん、どうしたの?」
霧切「いえ、何でもないわ」
そう言って霧切さんが目を逸らした瞬間。
ピッ
一瞬聞こえた電子音。
しかし、次の瞬間には目の前が真っ暗になっていた。
大広間に居た人達の慌てた声も聞こえてくる。
「て、停電!?」
「またかよクソっ!!!」
「落ち着いて、すぐに点くわ」
その言葉通り、直後には電気は復旧していた。
いきなり光が点いたから、目がパチパチする。
霧切「予め大神さんをブレーカーの近くに待機させておいたわ。懐中電灯も持たせて」
葉隠「い、いきなりでビックリしたべ……」ハァ
桑田「おい少しは説明しとけよなー!!」
霧切「ごめんなさい。でも、これで分かったわ」
苗木「分かった?」
霧切「えぇ、事件の時の停電と今の停電。ハッキリとした違いがあったわ」
苗木「違い…………? って舞園さん腕痛い痛い」
舞園「うぅ……」ブルブル
小刻みに震えながら彼女は腕に抱きついてきていた。
柔らかい感触にはドキドキするんだけど、その前に純粋に力を込めすぎて痛い。
『エアコンのタイマー』←情報追加
【???のコテージ】
その後、霧切さんに連れられてとある人の部屋にやって来た。
勝手に人の部屋に入っていいのかとも思ったけど、モノクマに捜査に必要だと言ったらすんなり入れてくれた。
そして霧切さんはというと、ゴミ箱を漁っている。
苗木「あ、あのさ霧切さん、いきなりそんな所を……」
霧切「……あったわ」
霧切さんが取り出したのは透明な袋だった。
中はほとんど空だけど、白い粉が少し残っているのが分かる。
苗木「それは……?」
霧切「さぁ、何かしらね。後で本人にでも聞いてみましょう」
そう言って霧切さんは次は机の上を物色し始める。
当たり前だけど、清々しい程お構いなしだなぁ。
霧切「これは何かしら?」
霧切さんが手にした紙に目を通してみると、
苗木「『一回十万円、初回サービス九万円』…………あー、これ彼の商売関係の紙なんじゃないかな」
霧切「そう……一応持っておこうかしら」
苗木「えっ、霧切さんそういうのに興味あるの?」
霧切「あると思う?」
苗木「…………って事は事件に関係しているってわけか」
【石丸のコテージ】
次にやって来たのは石丸クンの部屋だ。
さすが超高校級の風紀委員だけあって、どこから持ってきたのか勉強道具が充実している。
霧切「……なるほど、ね」
苗木「えっ、それって!!」
霧切さんが拾い上げた紙には…………。
『今夜、殺人を起こす。超高校級の風紀委員ならば止めてみせろ。もしこれを他の者に話せば、無差別に殺す事になるだろう』
ワープロか何かで打たれたと思われる綺麗な書体。だけど、その意味はとてつもなく恐ろしい。
苗木「これって脅迫状……だよね……」ゴクッ
霧切「……今日みんなで集まろうと言ったのも、これが原因だったみたいね」
苗木「でも、誰がこんなもの……!!」
霧切「…………」
【苗木のコテージ】
そして次はボクの部屋だ。
こうして目の前でゴミ箱を漁られるのは何だかなぁ……。
苗木「や、やっぱりボクも疑われてるんだよね……」
霧切「当たり前じゃない。苗木君だけ特別扱いはできないわ」
苗木「でも、別に何も出てこないよ? ほら、ボクの部屋って無個性だし」
他の人達のコテージを見て分かったけど、ボクの部屋は極端に物が少ない。
まぁ、何かを運び込む気力も湧かなかったからなんだけど。
霧切「……苗木君」
苗木「ん? どうしたの?」
霧切「ベッドの下にこんなものが落ちていたけど、これは?」
そう言って霧切さんが見せたのは、何かの紙袋の切れ端らしきものだった。
苗木「これはって言われても……そんな小さいものよく覚えてないよ……。何かのお菓子のゴミかな?」
霧切「……そう」
苗木「え、えっと……それも何かの手がかりだと思うの……?」
霧切「さぁ……でも一応そう考えた方がいいとは思うわ」
苗木「うぅ……」
この徹底っぷり。クロが彼女から完全に証拠を隠すのは不可能なんだろう。
人間である限り、どこまで完璧にこなしてもどこかでボロを出しているんだ。
『白い粉』
『商売文句を書いた紙』
『脅迫状』
『何かの紙袋の切れ端』
コテージから出るボク達。
そろそろ夜も更けてくる頃で、今日も頭上には満天の星空が広がっている。
そんな時、目の前にいきなりモノクマが出現した。
モノクマ「うぷ、うぷぷぷぷぷぷぷぷ、お楽しみでしたね苗木君!」
苗木「何が……」
モノクマ「まぁまぁとぼけるなってば。こんな夜更けに若い男女が同じ部屋に。そこまでいったらもうアレしかないよ!!」
苗木「何を想像しているのか知らないけど、ボク達は真面目に捜査しているだけだよ」
モノクマ「うぷぷ、キミが捜査してるのは霧切さんのカラダなんじゃないかな?」ニヤニヤ
苗木「はぁ……もういいよ」
霧切「いえ、ちょっと待ってモノクマ。あなたに聞きたい事があるわ」
苗木「え……ええ!? モノクマに!?」
モノクマ「いいよいいよ、答えられる事なら答えてあげるよ!」
霧切「捜査情報をまとめたいの。この島にワープロとかないかしら?」
モノクマ「むむっ!! ダメだよそんなものに頼っちゃ!! あのねー、スペース押して変換に頼ってると漢字書けなくなるよ?
日本人としてそれはいいのか!? いや、良くない!! というわけで、ボクはキミ達に手書きを強制しているので、この島にそんなものはありません」
苗木「い、石丸クンなら凄く同意しそうだけど、やっぱり不便だよそれ……」
モノクマ「うるさいうるさいうるさーい!! ボクが決めたからそうなの!!」
霧切「……分かったわ。それなら毒薬はない? それも欲しいのだけど」
苗木「き、霧切さん!?」
霧切「どうしてそんなに驚くの? 誰にも気付かれないように誰かを殺すなら、毒が手っ取り早いわ」
苗木「え……ええっ……?」
モノクマ「うぷ、うぷぷぷぷぷぷぷぷぷ。どうやら霧切さんも殺る気になってくれたみたいだね!
でも残念! 確か苗木クンと朝日奈さんには言ったけど、今キミ達が行ける範囲では毒は手に入らないんだよ!!」
霧切「そう……残念ね」ショボン
苗木「ざ、残念って……」
モノクマ「だって毒あったらみんなそれに頼っちゃうじゃん。そんなのつまんないじゃん」
霧切「でも、スーパーには薬がいくつかあったわよね? それを混ぜればもしかしたら……」
モノクマ「ぶぶー、残念! どんなに調合しても毒にはならないように一生懸命調整してあるから無駄なんだよね!!
まぁ、ずっと手に入らないとは言ってないじゃん!! コロシアイを進めていけば手に入るようにしてやるから、我慢しろよ!!」ニヤニヤ
霧切「……はぁ、仕方ないわね」
苗木「えーと……霧切さん……?」
モノクマ「それじゃそろそろ学級裁判だからボクはこれで! オマエラ頑張れよー」
楽しげにそんな事を言い残して、モノクマは消えた。
ボクは恐る恐る霧切さんを見て、
苗木「……霧切さんも誰かを殺そうって思ってるの?」
霧切「そんなわけないじゃない。あれはただモノクマの機嫌をとっただけよ。お陰でいい情報が手に入ったわ」
苗木「そ、そっか。そうだよね! 良かった良かった」ニコニコ
霧切「あなたはどうなの、苗木君」ジッ
苗木「えっ?」
霧切「あなたは……人を殺す気はあるの……?」
霧切さんのその目を見て、精一杯強がっているという事はすぐ分かった。
彼女はボクに否定してもらいたいんだろう。『そんな事しないって!』……みたいな感じに。
でも、残念ながらその想いには応えられないんだよね。
苗木「あはは、言ったよね。そんなの分からないって」ニコ
>>570
しかし狛枝にしては運が悪すぎる
>>574
狛枝は幸運が不運を帳消しにしてるだけで、境遇は苗木以上に不運だぞ
霧切「…………」ウルッ
苗木「えっ……」
……待ってよ。どうして目を潤ませているの?
それじゃあ舞園さんと変わらないじゃないか。
そんなのボクが好きな霧切さんじゃない。
ボクが好きな霧切さんはどんな時でも挫けないで、ただ前だけを見て絶望に立ち向かっていく人だ。
やめてよ……泣かないでよ……。
苗木「霧切さん!!」
霧切「っ!!」ビクッ
苗木「どうしちゃったの!? キミはこんな所で立ち止まっている場合じゃないよ!!
石丸クンの為に、みんなの為に、キミは常に強くいなければいけないんだ!!」
霧切「…………ぅぅ」ポロポロ
苗木「泣かないでよ!!!」
苗木「キミまで弱さを見せちゃダメだ! 石丸クンはもういない、だからこそキミがしっかりしなきゃダメだよ!
ここまで頑張って捜査してきたじゃないか!! それってクロ以外のみんなを助ける為でしょ!?」
霧切「……ひっく…………ぐすっ……」ポロポロ
苗木「ここまできて諦めるの!? そんなのモノクマの思い通りじゃないか!!
クロだってそれ相応の想いがあるんだと思う、でもキミ達もそれに全力で立ち向かわなければいけないんだ!!」
霧切「……で……で、もぉ……ぅぅ……」ポロポロ
苗木「キミならできる!! キミは強い!! とても強い希望を持ってる!! 」
霧切「わ、わたっ……私……は…………」ポロポロ
霧切「私は……強くなんかない…………!!!」
霧切さんが。
いつも冷静で、誰よりも先を見ていて。
本当はとても優しくて、みんなの事をよく見ている。
どんなにみんなが混乱しても慌てず、前へ進んで道を作る。
そんな、最後の希望の砦である彼女が。
膝から崩れ落ちて、ただ泣き続けている。
霧切「もう……いや…………真実なんて……知らなくていい……」グスッ
苗木「…………」
霧切「私は……あなたが……苗木君が居てくれたから…………強くいられた……でも」ポロポロ
苗木「霧切さん」
霧切「な、に――――」
ギュッ
ボクは彼女の体を抱きしめた。
それは想像していたよりもずっと小さくて、弱々しかった。
とても華奢で、今にも壊れてしまいそうで。
それでも、ボクは腕の中の震えを止める為に力を強める。
霧切「っ……」
苗木「霧切さん、ボクもキミに居てほしい。キミだけがここから出る事になってもいいって思ってる 」
霧切「いや……苗木君も……一緒に…………」
苗木「霧切さん、目を閉じてくれる?」
霧切「えっ……分かった……わ……」
無防備に目を閉じた霧切さんの顔。
それはきっと滅多に見ることができない貴重なものなんだろう。
苗木「……初めてボク達が話した時を覚えてる? キミはみんなの輪から外れて一人で本を読んでいた」
霧切「えぇ……忘れるはずがない。私はその時一言であなたを追い払った。でも」
苗木「ボクは何日も繰り返した。ストーカーだとか言われた時もあったかな」ハハ
霧切「ごめんなさい……本当はどうしたらいいか分からなかっただけだったの……」
苗木「大丈夫、気にしてないよ。でも、だんだんキミはボクに構ってくれるようになった。
えーと、ボクが財布落としちゃった時は結局どこにあったんだっけ?」
霧切「葉隠君の机の中よ」
苗木「あー、そうだっけ。霧切さん、見事に探し出してくれたよね。あと、ボクの筆箱が無くなった時はどうだったっけ?」
霧切「桑田君よ。原因は舞園さんとベタベタしていたから」
九頭龍がトップだろクズだけに
苗木「あー、それでボクより舞園さんが本気で怒っちゃったんだっけ。あと、腐川さんに因縁つけられた時も霧切さんが助けてくれたよね」
霧切「えぇ。原因は山田君がふざけて描いた苗十ものの同人誌」
苗木「あれ結局全部は回収できなかったんだよね……」
霧切「他にもたくさんあるわ。
舞園さんがインタビューで苗木君と付き合っているとかいうデマ話したり、セレスさんが苗木君をギャンブルで破滅させて自分で保護しようとしたり」
苗木「ごめん、もういいや。思い出したら頭痛くなってきた」
霧切「…………私にラブレターが届いてあなたに相談した時もあったわ」
苗木「そ、そんな事もあったかな……」
霧切「えぇ……あなたはその相手の事を調べて、熱心に良い人だって言っていたわね」
苗木「あー、うん。そうだったかも……」
霧切「今ならあの時の私の気持ち、少しは分かるかしら?」フフ
苗木「ご、ごめんなさい」ペコッ
霧切「…………」
苗木「…………」
霧切「……つまり、苗木君はこう言いたいのかしら。例えあなたが私の側から居なくなっても、思い出の中にいる。
だから私は思う存分自分の推理をするべき……って? 本気でそんな言葉で説得できると思ったの?」
苗木「はは、霧切さんにはなんでも伝わるな」
霧切「バカ」
ギュッ
苗木「……今のキミになるまでに、ボクが少しでも役に立てたなら嬉しい。でも、もうキミは大丈夫だよ」
霧切「そんなの……あなたが決める事じゃないわ……」
苗木「霧切さんも本当は分かっているはずだよ。自分が何をすべきかを」
霧切「…………」
沈黙が続いた。
その沈黙は人生で一番重く、そして長く感じた。
彼女はボクを強く抱きしめて離さない。
霧切「…………分かった」
霧切さんはゆっくりとボクから離れた。
そしてこちらを真っ直ぐ見る。
その瞳には、強い意志と敵意がこもっていた。
霧切「私は、どんな理由があろうとも殺人とそれを企てた人を許すわけにはいかない」キッ
苗木「……うん、霧切さんらしいよ」ニコ
霧切「それじゃあね、苗木君。私は最後に調べる場所があるの。学級裁判で会いましょう」
そう言って立ち去る霧切さんの背中はいつものように力強く、とても眩しかった。
そうだ、それでこそ霧切さんだ。
口元が緩むのを抑えられない。彼女はこれでまた一つ強くなった!
苗木「……はは、あはははははははははははははははははは!!!!!」
『モノクマの証言』
キーンコーンカーンコーン
『さてさてオマエラ、お待ちかねの学級裁判が始まるよ! 今すぐ中央の島にあるモノクマロックへとお集まり下さい。愛らしいボクの顔が目印だよ!』
辺りに響き渡る放送。
ついに始まる、これからボク達は一つの試練を迎える。
失敗すれば死。そんなクロとそれ以外のみんなの戦いが始まる。
苗木「……っ」ブルッ
不意に体か震える。
これは恐怖なのか、それとも喜びなのか。
決まっている、ボクは本当に楽しみにしているんだ。
みんなが勝っても、クロが勝っても、生き残るのはより強い希望だけだ。
それを、あと少しで見ることができる。こんなに楽しみなことはない。
あぁ……もう待ちきれないよ……。
【モノクマロック】
目の前には巨大なモノクマ顔岩がいくつも並んでいる。
何とも悪趣味としか言うしかないけど、それでもボクの高揚感は増すばかりだ。
苗木「どう、霧切さん。思うような手がかりは集まった?」
霧切「えぇ。必ずクロを暴いてみせるわ」
苗木「……でも、気を付けてね。謎を解けばいいってものでもないよ、これは」
霧切「えっ?」
苗木「クロを指摘するにはみんなの投票が必要なんだ。ボクの予想ではキミも苦労すると思うよ」ニコ
霧切「…………」
十神「ふん、余裕だな苗木。おそらく周りの愚図共はお前がクロだと決めつけているぞ」フッ
苗木「まぁ……それは仕方ないよ。でも、キミはそう思っていないみたいだね?」
十神「勘違いするなよ、お前を信用しているわけではない」
苗木「分かってる分かってる。期待してるよ十神クン」ハハ
十神「……ちっ!」
周りを見渡してみると、確かに多くの人達がボクを怪しげな目で見ていた。
でも、心配なんてしていない。
霧切さんや十神クンが居るんだ、すんなりと終わるはずがない。
さて、と。裁判が始まるとみんなともゆっくり話せないだろうし、今の内に話してみようかな。
誰と話す? >>623
おーが
大神「……張り詰めているな。戦いの空気だ」
苗木「た、確かに……ね。直接ケンカするわけじゃないんだけど……」
大神「同じだ。生き残る為に命を削り合う。そこに変わりはない」
苗木「……うん」
大神「しかし、まさかクラスメイトとここまでの真剣勝負を交える事になろうとはな。
そう仕向けられたのがどうしても気にくわんが、避けられないのであれば仕方あるまい」
苗木「でも、例え仕向けられたとしても、やっぱりクロには負けるわけにはいかないよね」
大神「あぁ、理由はどうあれ、クロは石丸を殺した。ならば戦わねばなるまい。
それが死んだ石丸の為に、そして皆の為にすべき事だ」
流石は大神さん!
彼女もやっぱり希望に満ち溢れているね!
苗木「もし朝日奈さんがクロだったとしても、大神さんは彼女に投票する?」
大神「万が一にも朝日奈がそのような事をするとは思えんが、その時は我も覚悟を持って投票しよう」
苗木「……やっぱり強いね大神さんは。身体だけじゃなくて心も」
大神「それはお主もだろう。流石は我が認めた男、お主なら朝日奈も任せられる」
苗木「あはは、大神さんって朝日奈さんの怖いお父さんみたいだね」
大神「我は女だが」ギロ
苗木「お、お母さんみたいだね……」ブルブル
大神「……あぁ、朝日奈は我に本当に良くしてくれる。かけがえの無い友だ。幸せを望むのは当然だろう」
やっぱり大神さんと朝日奈さんは強い絆で結ばれている。
もしそれを試されるような事が起きても、二人ならきっと乗り越えられるだろう。
ボクは改めて大神さんの強さを実感した。
さて、と。他には誰と話そうかな? >>633
江ノ島
江ノ島「はぁ……めんどくさー」
苗木「ど、どうしたの江ノ島さん?」
江ノ島「ん、あー、苗木かぁ。だってさぁ、もう夜遅いじゃん?
あたし、こう見えても夜更かしはあんまりしない、規則正しいギャルなのよ。肌にも悪いし」
苗木「……えーと、なんていうか余裕だね江ノ島さん。これから命懸けの学級裁判が始まるんだけど……」
江ノ島「えー、だってあたしバカだからそういう頭使うの無理だし。とりあえず霧切ちゃんとか十神に任せときゃ何とかなるっしょ?」
苗木「そんな人任せな……江ノ島さんだって何か役に立てる事があるはずだよ」
江ノ島「あ、じゃああたしは盛り上げ担当で! 裁判中にみんなが凹んじゃったらチョーウケる話してあげるよ!」ニコ
苗木「…………う、うん、よろしく」
いや、でも江ノ島さんの提案はバカにできない。
その場の空気というのはかなり重要になってくるはずだ。
でも、江ノ島さんも強い。
こんな状況なのにいつもの調子を崩さないなんて、普通の人なら無理だ。
いつもふざけてる彼女も、やっぱり超高校級なんだ。
江ノ島「よしっ、そうと決まれば苗木もみんなを盛り上げる練習でもしよっか!」ニコ
苗木「えっ、ボクも?」
江ノ島「うん!! だってどーせ苗木だって霧切ちゃんの言葉に相槌打つだけっしょ?」
苗木「そ、そんな事ないって! ボクだって議論に参加するよ!」
江ノ島「あはは、無理すんなって。それじゃあ苗木、ちょっとこっち来てみ?」グイッ
苗木「わわっ、なに!?」
江ノ島「まずこーして頭をグチャグチャにして」ワシャワシャ
苗木「ちょ、ちょっとやめてよ!!」
まさに江ノ島さんにされるがまま。
流石にボクにも男としてのプライドはあるから、かなり悔しい……。
江ノ島「よしよし、雰囲気出てきたね! 服もいつもと違うし!」
苗木「何の雰囲気さ……」ハァ
江ノ島「うーん、でもやっぱもうちょっと身長が欲しいなぁ。苗木、引っ張っていい?」
苗木「嫌だよ!」
江ノ島「ケチー。まぁいいや、それじゃ次は発声練習でもしとこっか」
苗木「発声練習? 確かに議論ではハッキリ通る声がいいけど……」
江ノ島「ううん、ダメダメ。苗木はもっとネットリした声にしないと!」ニコ
苗木「いやいや、それじゃ逆効果だよ!」
江ノ島「そんな事ないって、むしろ大喜びだよ。主に女の子が」
苗木「え……ええ……?」
ダメだ、江ノ島さんが何を言っているのかが全く分からない。
議論なら舞園さんのようなよく通る声で話した方がいいに決まってる。
確かにボクはそんな声は持っていないけど、わざわざ聞こえにくい声にする必要はないはずだ。
……でも、なんだろう。
何となく江ノ島さんが正しい事を言っているようなこの感じは。
江ノ島「それじゃ、練習してみよっか! 今から私が言う事を否定してみて!」ニコ
苗木「えっ、い、いきなり!?」アセアセ
江ノ島「始めるよ! 【苗木はクロじゃない!】」
苗木「そ、それはちが…………えええええ!?」
江ノ島「もー、なに?」プンプン
苗木「い、いや、ボクに否定させるなら、そこは【苗木はクロだ】とかじゃないの……?」
江ノ島「それは違うし!!!」ブレイク!!
ガシャーン!!!
苗木「…………な、なんで?」
江ノ島「自分がクロだっていうのを否定するなんて普通過ぎて面白くないから!!」ドヤァァァ
苗木「…………」ガクッ
江ノ島「あれ、どうしたの苗木? あたしの清々しい程の論破に再起不能?」
苗木「いや、うん、もう何でもいいや……」
江ノ島「それじゃ、もっかいやるよ! 次は決めてよねー!」
苗木「はいはい……」ハァ
江ノ島「【苗木はクロじゃない!】」
苗木「それは違うよ!!!」キリッ
ガキーン!!!
江ノ島「ちっがああああああああう!!!!!」ムキー
苗木「ど、どうして!? ボクなりに全力でやったよ!!」
江ノ島「全力じゃダメなの!!! ほら、深呼吸!!! 肩の力抜きまくって!!!」
苗木「う、うん……分かったよ……」スーハースーハー
江ノ島「んじゃ、本当にうんざりしたような顔してみて。
写真を年代別に順番にアルバムに入れ終わったら、後からかなり昔の写真が出てきた時みたいな!!」
苗木「な、なんで例えがそんな前時代なのさ…………やってみるけど…………」
とにかく、この様子では江ノ島さんを納得させないと解放されないみたいだ。
えーと、とにかく力を抜いて……本気でうんざりした感じで……。
苗木「…………」ドヨン
江ノ島「それ!!! いいよ、苗木そのまま!!!」
苗木「本当にこれでいいの……?」
江ノ島「声はもっとネットリ!!」
ネットリってなにさ。
よく分かんないけど、イメージ的には…………。
江ノ島「じゃあいくよ!! 【苗木はクロじゃない!】」
苗木「それは違うよ……」ネットリ
ガシャーン!!!
江ノ島「っっ!!」ビクッ
苗木「……えーと、こんな感じで良かったの? やっぱりボクはもっとハッキリ言った方が…………」
江ノ島「……いい」
苗木「えっ?」
江ノ島「いいよ、苗木!!! 今のすっごく良かった!!! あたし、ちょっと濡れちゃったよ!!!」
苗木「なっ……大声で何言ってんの!?」
江ノ島「やっぱりあたしの考えに間違いはなかった!! 苗木、分かってると思うけど、裁判中は常にあの声ね!!」
苗木「ええ!? 本当にあれでいいの!?」
江ノ島「いいからいいから!! 超高校級のギャルであるあたしが言うんだから間違いない!!」
確かに人とのコミュニケーションを教わる上で江ノ島さんは適任なんだろうけど…………。
舞園「苗木君……?」ヌッ
セレス「今、江ノ島さんが何か卑猥な事を仰っていましたが……?」ヌッ
ここでいつもの人達が登場というわけで、ボクは江ノ島さんからのアドバイスを保留という事にして、二人への弁解を始めた。
裁判前に何やってるんだろうボク…………。
その後何とか二人から解放されると、溜息をつきながら周りを見渡す。
大部分はやっぱり緊張感のある固い表情をしていて、これが普通なんだろう。
ボクだって江ノ島さんと話す前はシリアスモードだったのに……。
とにかく、ここは他の人と話して緊張感を取り戻そう!
誰と話す? >>661
残姉
お腹減ったべ
苗木「戦刃さん、少し話相手になってくれないかな」
戦刃「えっ、う、うん! もちろん!! …………あれ?」
苗木「ん、どうしたの?」
戦刃「いや、その……雰囲気違うなぁって。服も髪型も……」
苗木「あ……う、うん。江ノ島さんがこれが良いって……変かな?」
戦刃「ううん!!! そういう苗木君も新鮮で、すっごくいいよ!!!」
苗木「はは、ありがと。ちょっと照れるなぁ」テレテレ
戦刃「あっ/// ぅぅ……」カァァ
苗木「戦刃さんはあまり緊張してないみたいだね。やっぱりこういう命懸けの事は慣れてるの?」
戦刃「うん、まぁ…………でも、私もやっぱり怖いよ。だって、大切な人の命がかかっているんだから……」
苗木「…………そっか」
戦刃「戦場にいた時はこんな事なかった。でも今は失いたくない人がたくさんできた」
苗木「それはもちろん良い事なんだよね?」ニコ
戦刃「もちろん!! 確かに前みたいにどんな戦いでも無傷っていうのは無理かもしれない。でも、私は今の私の方が好きだから」ニコ
苗木「うん、ボクも今の戦刃さんの事好きだよ。それに強いとも思う」
戦刃「えっ、す、好き!?/// 本当に!?///」
苗木「本当だよ。ボクはみんなの事が好きなんだから」ニコ
戦刃「…………あー、うん。そうだよね、あははははは……」ズーン
苗木「ど、どうしたの? なんか急にテンション下がったみたいだけど…………」
戦刃「…………」ジトー
苗木「い、戦刃さん……?」タジタジ
戦刃「苗木君が好きっていうから、女の子としてなのかと思っちゃったんだよっ」プイッ
苗木「あっ……そ、そっか……ごめん……」
戦刃「…………」ジトー
苗木「うっ……あ、あの…………」オロオロ
なんだか戦刃さんに押されてる。
これは初めての経験かもしれない。
戦刃「……ふふ」
苗木「えっ……?」
戦刃「なんだか、私また変われたかもね。苗木君に気持ちを伝えてから、結構大胆になれるようになったよ」ニコ
苗木「そ、そうだね……うん、ボクもそう思う……」
戦刃「……やっぱりこれが人間らしいよね。色んな事を経験して、少しずつ変わっていく。昔はそんなのなかったから」
苗木「……まだまだこれからだと思うよ」
戦刃「えっ?」
苗木「戦刃さんはこれからも色んな事を経験する。それは楽しい事だったり、つらい事だったり。
その度にこれからも少しずつ変わっていきながら、なりたい自分っていうのを探していくんじゃないかな」ニコ
戦刃「…………」ポー
苗木「あ、ご、ごめん、なんか偉そうに……」
戦刃「すごいな……///」
苗木「へっ?」
戦刃「なんていうか……凄く響いたよ! 苗木君、学園ドラマの良い先生みたい!」
苗木「そ、それは褒めすぎだって!」アタフタ
戦刃「ううん、本当にそう思う。そういえば、石丸君も苗木先生って呼んでた事もあったっけ……」
苗木「……そんな事もあったね。石丸クンは本当に真っ直ぐで……良い人だったね……」
戦刃「うん……私にも良くしてくれたよ。いつもクラスの事を気にかけてた」
苗木「そんな石丸クンも……もういない」
戦刃「……でも、落ち込んでばかりはいられないよね。
ここで私達が全員死んじゃったら、天国の石丸君は悲しむと思う。もしかしたら自分が死んじゃった事以上に」
苗木「そう……だね……。石丸クンはそういう人だった」
戦刃「『こういう時こそクラスみんなで力を合わせて乗り越えようではないか!!』……えへへ、似てたかな?」
苗木「あはは、確かに言いそうだ」ニコ
戦刃「…………でも、石丸君を殺した人もクラスの仲間なんだよね」
戦刃さんの言葉に、思わず黙り込んでしまう。
石丸クンはクラスのみんなの事をいつも想っていた。
そんな彼を殺した人が、そのクラスメイトの中にいるんだ。
苗木「…………でも、ボク達は止まる訳にはいかない。石丸クンを殺したような人を放っておくわけにはいかないんだ」
戦刃「うん……それしか……ないんだよね」
苗木「本当に戦わなきゃいけない相手はモノクマなんだ。だから、ボク達はここで倒れるわけにはいかない。
みんなの死を引きずってでも、アイツと戦わなくちゃいけないんだ」
戦刃「そうだよ……悪いのは全部モノクマなんだ……アイツさえ居なければこんな事には……!!」
戦刃さんの顔が悔しそうに歪む。
たらればを言っても仕方ないのは分かる、それでも中々割り切る事はできないものだ。
苗木「もしかしたらクロもクロで譲れない想いや夢があったのかもしれない。でも、モノクマと戦うためにはクロに負けるわけにはいかない」
戦刃「そうだね……譲れない夢なら私も持ってる。ここで負けるわけにはいかないよ」
苗木「うん。戦刃さんの夢への気持ちの強さはよく知ってる。きっとクロにも負けないよ」
戦刃「…………」ジー
苗木「な、なに……?」
戦刃「何でそんな他人事なのかなーって。苗木君も大きく関係してるのに///」
苗木「あっ、う、うん……確かに……そうだけど……」
戦刃「ふふ、でもそんなに気を使わなくてもいいよ。私は私の力できっと苗木君を振り向かせてみせるから」ニコ
苗木「…………」
戦刃さんのその笑顔はとても強く、頭上に広がる満天の星空よりもずっと綺麗だった。
だから、ボクは。
苗木「この学級裁判が終わったらさ」
戦刃「え、うん……?」
苗木「ボクがキミの夢を手伝えない理由を言うよ」
すると戦刃さんは目を丸くして、
戦刃「ほ、本当?」
苗木「うん、必ず」
戦刃「……そっか。よしっ、それならなおさら頑張らないとね!! 夢を叶える為に!!」グッ
苗木「ごめんね、本当はあの告白の時に言う事なんだろうけど……」
戦刃「ううん、いいよ。苗木君の事だからちゃんとした事情があるっていう事はよく分かってるから」ニコ
戦刃さんは本当にボクの事を想ってくれている。
それはとても嬉しいし、幸せな事だとも思う。
でも、彼女と同じようにボクにもボクの希望がある。
ボクはそれを曲げる訳にはいかない。例えそれが他の人の希望を傷付けるような事があっても。
でも、心配はしていない。
なんたって、ボクはみんなの中の希望を信じているのだから。
モノクマなんかに負ける事のない、強い希望を。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
突然、強い震動が辺りに広がった。
そして次の瞬間。
ガコン!!!!!
モノクマロックの石像の内の一つの口が開き、中からエスカレーターが飛び出して地面に下ろされた。
葉隠「なんじゃそりゃああああああああああああ!?」
そんな葉隠クンの絶叫は、まるでボク達の心を代弁してくれているようだった。
いくらなんでもやりたい放題すぎるだろ…………。
山田「こ、これに乗れという事ですかな……?」
セレス「……激しく気が進みませんわね」ハァ
桑田「あぁ……ぜってー罠とかあるだろこれ……」
そう考えるのも無理はない。これで警戒するなっていう方が無理だ。
でも、ただここに立っているだけでは始まらない。
だから、ボクはみんなの前に一歩踏み出す。
苗木「よし、行こうよ、みんな」
みんなポカンと拍子抜けしたような表情でボクを見ている。
え……何かおかしい事言ったかな……。
江ノ島「ぶふっ、ぎゃははははははははは!!! 苗木あんた緊張感無さ過ぎ!!!」
苗木「えっ、そ、そうだった?」
大和田「ったく、言うならせめて『行くぜ!』くらいは言えねえのかよ。いや、そもそもオメーが言う時点で何かちげーな」
朝日奈「た、確かに自分が一番疑われてるのにああ言えるのはある意味凄いかも……」
舞園「もう、みんな何なんですか!! 苗木君は自分がクロじゃないって分かっているからこそ、こんなにも緊張感がないんですよ!!」
セレス「そうですわ。これは言わば強者の余裕、といった所でしょうか」
や、やっぱり二人にも緊張感がないって思われてるんだボク……。
十神「苗木の緊張感が無いのは今に始まった事ではないだろう」
大神「ふっ、だがセレスの言う通り、それは大物である事の証明とも言えるかもしれん」
腐川「な、何が大物よ……白夜様と比べればミジンコレベルよ……」
不二咲「で、でも僕も苗木君は凄いと思うよぉ……逆の立場だったら僕はきっとこんなに平然としていられないよ……」
山田「ふむふむ、確かに自分が苗木誠殿の立場だったらと思うとゾッとしますな。あ、顔に関しては喜んで替わりたい所ですが」
戦刃「そうだよ、苗木君はとても強い人なんだよ! だから私達も頑張ろう!」
葉隠「へっ、どーせ開き直ってるだけなんだべ」
桑田「はぁ…………けどまぁ話だけは聞いてやるよ。俺らの命もかかってんだからな」
次にボクは霧切さんの方を向く。
そこには期待通り、凛とした表情で真っ直ぐ見つめ返してくる彼女が居た。
霧切「……先導を切るなんて苗木君のくせに生意気ね」
苗木「うっ……じゃ、じゃあいいよ、霧切さんが先で……」
霧切「嫌よ、罠があったら大変じゃない」
苗木「…………」ズーン
霧切「ほら、先頭は頼んだわよ。男子でしょ」
苗木「分かったってば。それじゃ……」
足を踏み出すと、どうやらスピードなどは全て一般的なエスカレーターと同じらしく、少し安心する。
それでも、石像の口の中に進んでいくのは激しく気が進まないんだけど。
それから少しして、ボク達は今度は四角いエレベーター空間の中に居た。
こうしていると、自分達があのモノクマの石像の中に居る事を忘れてしまいそうになる。
こんな技術を持っているくせに、エレベーター自体の性能は高くはなく、細かい震動と音が辺りに響いている。
苗木「……どこまで潜るんだろこれ」
腐川「何よ、逃げられないからって不安になってるわけ?」
舞園「ですから苗木君はクロではないと言ってます!!」
霧切「静かにして。それは裁判所に着いてからする話よ」
……だけど、いざみんな静かになると何だか落ち着かない。
ボクは仕方なく慣れない服を整えたり、江ノ島さんにグシャグシャにされた髪が元に戻らないだろうかと無駄な努力をしてみる。
十神「おい苗木。少しはじっとしていろ、目障りだ」イライラ
江ノ島「あはは、なになに、もしかしてその髪どうにかしようとしちゃってる? ムリムリ、あたしが絶望的にグシャグシャにしたんだから!」ニヤニヤ
苗木「ねぇ誰か寝癖直しとか持ってないかな……」
戦刃「あ、確かスーパーに置いてあったよ!」
桑田「つかこれ終わったらどうせすぐ寝るんだから、直す意味ねえだろ。今何時だと思ってんだ」
山田「苗木誠殿の場合は永眠する可能性もありますがな」
セレス「黙れ豚、テメーを屠殺して永眠させんぞコラァァ!!!」
葉隠「そしたら代わりにセレスっちがクロ確定だべ」
舞園「あれ、でも相手が豚なら殺人にはならないんじゃないですか?」ニコ
大和田「アイドルってのは笑顔ですげー事言うんだなオイ」
不二咲「や、やめようよ殺すとかさ……」ブルブル
朝日奈「そうだよ……聞いてるだけで気が滅入るもん……」ガックリ
大神「安心しろ、我が居る限り同じ空間でそんな事はさせん」
腐川「どどどどうでもいいけど、血は出すんじゃないわよ……」
霧切「……まったく、苗木君のせいで落ち着いて頭を整理する事もできないわ。これが狙いなのかしら」
苗木「えっ、ボクのせい!? それは……その、ごめん……」
エレベーターは更に深く潜る。
もしかして止まることがないんじゃないか。そんな嫌な予感が頭をよぎった時。
チーンという軽い音と共に、エレベーターが停止した。
そして扉が開かれると、その先には…………。
苗木「……これが」
モノクマ「はい、学級裁判場へようこそー!!!」
何やら厳かな空気が漂う場所だった。
周りにはたくさんの見物席が階段状に並んでいるけど、誰も座っていない。
そして部屋の中央には円形に並べられた、16個の席があった。
モノクマ「それではみなさん、さっそく自分の名前が書かれた席へどうぞ!」
ここで逆らうわけにはいかない。
考えてみればボク達はモノクマによって生かされている状態でしかないんだ。
みんなはぞろぞろと自分の席へとついた。
こうして向かい合うとみんなの表情がよく分かる。
ある人は怯え、ある人は堂々と構え、ある人は敵意を向けてくる。
言葉には出さなくても、感情を直接ぶつけられている感覚だ。
そして、始まる。
それぞれの思惑と策略、希望と絶望が交差する。
命がけの…………学級裁判が。
コトダマ
『モノクマファイル』
被害者は石丸清多夏。外傷は喉の刺し傷のみ、体内から薬物反応あり。
『苗木、舞園の証言』
停電前、二人は事務室に居たが潜んでいた何者かに舞園が襲われた。
苗木は彼女を抱きかかえる事で助けようとするが間に合わず、彼女はスタンガンで気絶させられてしまう。
その後、停電が発生し、苗木もすぐに為す術無く同じように気絶させられてしまった。
相手は暗闇の中でも正確に苗木を襲ってきたことから、現場に残されていた暗視スコープを持っていたと思われる。
白い布を被っていたらしく、顔と体型はハッキリしない。
『死体の様子』
刺された首からの出血はまったく乾いていなく、ほとんど時間が経っていない様子。
傷口は苗木が握りしめていたナイフとも合う。
全身をロープで縛られ身動きの取れない状態で、口にはガムテープが貼られている。
『鍵のつまみに付いたテープ』
トイレはつまみを捻って鍵をかけるタイプだが、そこにテープが付着していた。
『床に敷かれた布』
トイレには白い布が敷かれていた。モノミによると、元々そこにあったものではないらしい。
布の下にもまだ乾いていない血液が大量に広がっていた。
『乾いた血痕』
床と石丸の口元に、乾いた血痕が残っていた。
『暗視スコープ』
トイレに残されていたもの。暗闇の中でも良く見える。
『エアコンのタイマー』
大広間と事務室のエアコンのタイマーは同じ時間に設定されていた。
事件当時はタイマーが起動してから少ししてブレーカーが落ちたが、その後の実験では起動した瞬間に落ちた。
『三つのアイロン』
倉庫ではアイロンが三つコンセントに繋がっていた。
『消えたテーブルクロス』
事務室にあった丸テーブルに敷かれていたテーブルクロスが停電後には無くなっていた。
このテーブルクロスは防水性が高く、大量の水分も弾く。予備は二枚あり、どちらも倉庫に残っていた。
『台車の金具に挟まった髪の毛』
事務室にあった台車の金具に髪の毛が挟まっていた。髪質から石丸のものと思われる。
普通に手で押していたらありえない、低い位置の金具なのだが……。
『肉のドリップ』
厨房にて苗木と朝日奈で料理を作っている時に、苗木が肉のドリップをたくさん出してしまった。
いわゆる旨味成分であり、これが出てしまうと味が落ちる。その後苗木が処分した。
『ゲテモノジュース』
石丸が葉隠から受け取ったジュース。葉隠以外の掃除当番全員と共に大広間で休憩している時に口にした。
しかしそのマズさ故か、直後に取り落としてこぼしてしまう。そして気分が悪くなったようで、そのままソファーの上で休む事になる。
『ミステリーサークル騒動』
旧館の掃除中に、葉隠がミステリーサークルを見つけたと言って、旧館の裏手に石丸以外の掃除当番を呼び出した。
石丸はそのまま大広間のソファーに寝かしておき、苗木もトイレに行ってから向かったので他のみんなよりも遅れて行った。
朝日奈や桑田が最後に石丸を見たと思われるのはこの時らしい。
『葉隠、桑田の証言』
パーティー中に葉隠と桑田の二人は、倉庫へ何か遊べるものがないか探しに行った。
その時、三つのアイロンがコンセントに繋がっている事に気付いた葉隠は、電気がもったいないと全て引き抜いた。
『モノミの証言』
モノミは旧館の掃除中は外の入り口前、掃除が終わった後は外の入り口前と大広間の扉の前を二体で見張りをしていた。
耳が良いので、旧館の中に居ればどこの扉が開いたのか聞き取る事ができる。十神だけは一度も旧館に入ることがなかった。
最後に石丸を見たのは、葉隠から受け取ったジュースを持って旧館に入って行く時。
停電中の各部屋の扉の開閉については、事務室→トイレ→大広間→事務室の順番。
最後の事務室の扉以外は全て開いてすぐ閉まった。最後の事務室だけは開いたままで閉まる音はしなかった。
『白い粉』
とある人物のコテージのゴミ箱に透明な袋が捨てられており、中に白い粉が少量残っていた。
『商売文句を書いた紙』
とある人物の商売関係のもの。
『脅迫状』
石丸に出された脅迫状。ワープロで打ったと思われる綺麗な字で書かれている。
“今夜、殺人を起こす。超高校級の風紀委員ならば止めてみせろ。もしこれを他の者に話せば、無差別に殺す事になるだろう”
『何かの紙袋の切れ端』
苗木の部屋のベッドの下に落ちていた何かの紙袋の切れ端。本人は何の物か覚えていないらしい。
『モノクマの証言』
モノクマは手書きを推進していて、ワープロ関係のものを島に置いていない。
今行ける範囲で毒を手に入れる事はできない。他の薬同士を調合しても、毒にはならないように調整されている。
寝るべ。このスレに収まんのかな
コトダマ修正
『死体の様子』
刺された首からの出血はまったく乾いていなく、ほとんど時間が経っていない様子。
死斑もなく、体温も下がっていない。死後硬直もほとんど進行していない。
傷口は苗木が握りしめていたナイフとも合う。
全身をロープで縛られ身動きの取れない状態で、口にはガムテープが貼られている。
念の為
http://i.imgur.com/fsreX11.jpg
モノクマ「それでは早速始めてもらいましょうか!」
モノミ「うぅ……どうしてこんな事に……」
モノクマは仰々しい立派な椅子の上に座っていて、モノミはその近くで縛られて吊るされている。
だけど、今はそっちに意識を向けている場合じゃない。
これは単なる話し合いなんかじゃなく、命がかかった学級裁判なんだから。
苗木「……それじゃ、まず現場の状況の確認からしようか? 石丸クンは」
舞園セレス「「っ///」」ビクッ
朝日奈「わ、わぁ……///」
苗木「えっ……な、なに? ボク何か変な事言ったかな……?」
十神「何だその不快な話し方は。いつも通り話せ」チッ
葉隠「なんつーか……ネットリしてるべ……」
桑田「はっ、それがオメーの作戦だな!!」ビシッ
全然ダメじゃないか江ノ島さんー!!!!!
苗木「…………」チラッ
江ノ島「えー、いいじゃんいいじゃん!! あたしはこっちも好きだなー。ねっ、お姉ちゃん?」ニヤニヤ
戦刃「えっ!? あ、その、う、うん……そう……かも…………///」
舞園「私もいいと思います!!! なんか新鮮でキュンキュンします!!!」
セレス「そうですわ。いつもと違った雰囲気が緊張感を生み出すのです」モジモジ
山田「主に女性に人気のようですな……。くっ、これだからリア充は!!!」
十神「……もういい、さっさと話せ苗木」イライラ
苗木「あ、う、うん。石丸クンが見つかったのは旧館のトイレ、中からは鍵がかかっていた。首を刺されたみたいで、出血は凄まじい量だった。
彼の全身はロープで縛られていて、口にはガムテープ。とても身動きの取れる状況ではなかったみたいだね。後、ボクがナイフを握りしめたまま倒れていた」
大和田「なぁ、これってそんな話し合う必要なんかあんのか?」
苗木「えっ?」
大和田「オメー今自分で言っただろ。鍵は締まってた、オメーが中で倒れていたってよ。それなら【石丸を殺せるのはオメーしかいねえじゃねえか】」
苗木「…………」
そうだ、まずはここからだ。
カシャカシャ
『鍵のつまみに付いたテープ』
苗木「それは違うよ……」
ガシャーン!!!!!
大和田「なんだと?」
苗木「あのトイレはつまみを捻って鍵をかけるタイプだった。そこにテープが付いていたんだ」
大神「テープ……それが事件と何か関係しているのか?」
十神「ふん、お前達の為にわざわざ俺がこんなものを見つけてやったぞ」スッ
十神クンが取り出したのは、ヒモ……いや、中央部分を粘着部分同士で合されたテープのようだ。
だけど、両端は合わされていなくて、どこかに貼り付ける事ができそうだ。
十神「大広間のゴミ箱に捨てられてあったものだ。ここまで見せればお前達も分かるだろう」
腐川「ひ、拾ったのはあたしだけどね……うふふ……」
セレス「鍵のつまみにテープを貼り付け、外から引っ張って鍵を締めたのですね。わたくしも以前に苗木君の部屋から下着を盗んだ時に同じような手を使いました」
不二咲「じゃ、じゃあ苗木君じゃなくてもトイレに鍵はかけられたんだねぇ」
舞園「そうですよ!! だからあれは犯人が苗木君に罪を被せるための偽装工作なんです!!」
江ノ島「確かに凶器のナイフ握りしめたまま気絶したフリっていうのもおかしいもんねー」
葉隠「いや、あえてそうやって不自然さを出したのかもしれないべ!!」
苗木「……え、ちょっと待ってよセレスさん。さっき何て言ったの? 下着?」
セレス「それではみなさん、誰かがトイレに入った瞬間を誰にも見られなかった理由。そこから話し合ってみましょうか」
朝日奈「それはあの停電のせいだよね? 真っ暗で何も見えなかったし」
セレス「それは犯人も同じだったはず。ですから現場に残されていた暗視スコープを使ったのでしょう」
苗木「ねぇ、確かにボクの下着が無くなるっていう事があったんだけど、それセレスさん」
十神「うるさいぞ苗木、後にしろ」
桑田「そうだ、今はそれどころじゃねえだろうが!」
…………。
不二咲「で、でもぉ、暗くなったから暗視スコープを使った……それで何が分かるのぉ……?」
霧切「なぜ犯人は都合よくそんなものを用意していたのか。答えは簡単よ、あの停電は犯人によって仕掛けられたものだから」
山田「それではやはりブレーカーのあった事務室に居た苗木誠殿の仕業ですな!!」ビシッ
苗木「ち、違うよ、ボクと舞園さんも事務室で襲われたんだ!」
舞園「はい、間違いありません!!」
腐川「どどどどどうせ二人で口裏合わせてるだけでしょ……」
大神「だが、それで助かるのは一人だけだぞ」
朝日奈「……でも、苗木と舞園ちゃんの関係ならありえなくもないかも」
セレス「いいえ……事務室に居なくてもブレーカーを落とす方法…………あるはずですわよ」
そうだ……ブレーカーを落とす方法は他にもある。
むしろ、直接手で落とすよりもありきたりなものがあったはずだ。
カシャカシャ
『エアコンのタイマー』
苗木「……ねぇ、事務室では停電の前にエアコンが起動したんだけど、大広間も同じだったんだよね?」
戦刃「うん、それはよく覚えてるよ!!」
大和田「けどそれがどうしたってんだよ」
十神「ブレーカーが落ちる原因には何があると思う」
桑田「手で直接落とすくらいじゃねえの? つーかブレーカー落ちた事なんてねえし」
不二咲「あ、僕は一度落としちゃった事あるよ。電気の使いすぎで……」
山田「……そういえば僕も同じ経験がありますな」
セレス「電気の使いすぎ…………もしや」
苗木「うん、大広間と事務室、そこのエアコンのタイマーが全く同じ時間に設定されていたんだ。犯人はこれで電気使用量を一気に増やしてブレーカーを落としたんだ」
江ノ島「うへー、よくそんな事思いつくねー」
朝日奈「……ううん、でもそれはおかしいよ!」
苗木「えっ?」
朝日奈「だってエアコン二つ点けたくらいでブレーカーが落ちるわけないもん!!」
舞園「そ、それは、あの旧館に欠陥があったとか……」
モノクマ「もう失礼だなみんなー、そんな欠陥ないよねモノミー?」
モノミ「は、はいでちゅ……」
舞園「うっ……じゃ、じゃあ……その……」
葉隠「やっぱ舞園っちは苗木っちを庇ってるに違いないべ!!」ビシッ
舞園「そんな事ありません!! 私達は本当に襲われたんです!!」
大神「ふむ……しかし外からブレーカーを落とす事ができなかったとなると……」
桑田「やっぱ苗木なんじゃねえの? 事務室には物もたくさんあったし、苗木の身長でだってブレーカーも十分落とせただろ」
大和田「踏み台になるテーブルもあったしな」
戦刃「ちょ、ちょっと待ってよみんな!! 苗木君がそんな事するわけないって!!」
腐川「ど、どうかしら……最近様子がおかしかったじゃないソイツ……」
ボクがそんな事するわけない。
戦刃さんがそう思ってくれているのは嬉しいけど、それでは到底みんなを納得させることはできない。
朝日奈「でも実際、【エアコン二つだけじゃ】ブレーカーは落ちないって!」
――――ここだ!!
『三つのアイロン』
苗木「それは違うよ!!!」キリッ
ガシャーン!!!!!
江ノ島「ちょっと苗木、戻ってるってばー!!」プンプン
苗木「あ、ごめん……」
朝日奈「な、何が違うの?」
苗木「電気を使っていたのはエアコン二つだけじゃなかったんだ。倉庫にアイロンが三つも置いてあったよ」
不二咲「あ、そういえば……」
十神「ふん、確かに妙だな。あんな場所にアイロンなど」
セレス「つまり、犯人はエアコン二つの他にアイロン三つを使ってブレーカーを落とした、というわけですね」
舞園「そ、そうですよ! そうとしか考えられません!! モノミさん、それならブレーカーは落ちますよね!?」
モノミ「落ちまちゅよ! もう、誰でちゅかそんな無駄遣いしてた人はー!」プンプン
桑田「だ、誰ってそりゃ……」
大神「犯人……というわけだな」
葉隠「な、なんだよ、それじゃ苗木っちが犯人じゃねえんか!?」
十神「別の人間とも考えられるという事だ。それに襲われたという証言も苗木だけではなく舞園もしている」
セレス「ですが、そこまでの仕込みをしたとなると……掃除当番だった方が怪しいですわね。もちろん苗木君は除外ですが」
苗木「あ、あはは……別に除外しなくてもいいよ……」
桑田「なっ……」
朝日奈「そ、そんな!! 私そんな事してない!!!」
腐川「ななななな何よあたしに恨みでもあるわけ!? 呪い殺すわよ!!!」
江ノ島「あはは、あたしらってより腐川の方が恨み持ってそうじゃん」
大和田「おい待てよ、兄弟は停電中に殺られたんだったよな? けどよ、あの時ほとんどの奴らが大広間に集まってたじゃねえか」
十神「ふん、誰が居たか正確に思い出せるのか?」
不二咲「そ、それは……」
桑田「……いや、確実に居なかったって言える奴は居るぜ。それは苗木、舞園ちゃん……………そんで十神オメーだ!!!」ビシッ
十神「ほう……」
大神「そういえばお主はパーティーには一度も顔を出さなかったな」
葉隠「それじゃあ十神っちで決まりだべ!!!」
十神「面白い。ならば言ってみろ、俺のやった事全てを」
桑田「そんなの簡単だ、オメーは事前にこっそり旧館に忍び込んで小細工した後、エアコンのタイマーの時間に合わせて旧館に入ってきたんだ!!
用意してあった暗視スコープを付けたオメーは、事務室で苗木と舞園ちゃんを気絶させた後、苗木をトイレの中に運んで石丸を殺した!!!」
十神「…………」
葉隠「やったべ!! ぐうの音も出ないだろ!!」
大和田「テメー十神ィィ……!!!!!」ビキビキ
山田「ややや……なんとここで貴重なイケメン枠が……」
腐川「何白夜様に失礼な事言ってるのよ!! この方がそんなすぐバレるような事があるわけないじゃない!!!」
朝日奈「ひ、人を殺すっていう所は否定しないんだ……」
舞園「そ、それで……どうなんですか十神君……」
十神「…………くくっ」
不二咲「えっ」ビクッ
江ノ島「あーあ、笑っちゃったよ。もう諦めたの?」
十神「諦める? 何の事だ?」
大和田「あぁ!?」
十神「俺はお前達があまりにも愚図過ぎるのを見て失笑しただけだが」フッ
戦刃「く、桑田君の言った事に何かおかしい所があるの……?」
桑田「はっ、どうせ負け惜しみだ!!」
十神「……お前達はいつもそうだ」
大和田「んだと?」
葉隠「言いたいことはハッキリ言うべ!!」
十神「お前達は常に妥協の道を探している。高みを、先を追い求める事もなく、今いる場所で安心する。
この状況も実にお前達らしいものだ。安易な発想に飛びつき、そこで終わりにしてしまおうとする」
十神クンの言葉にみんな思わず黙り込む。
それは超高校級の御曹司の威圧感以外にも、彼の言っている事を正面から否定する事ができない事もあるんだろう。
はは……ははははははは、そうだよ、十神クンの言う通りだよ!!
セレス「……確かに十神君の言う事も一理ありますわ。わたくしも自分の夢の妥協はいたしませんもの」
大神「ふむ、それでは十神よ。お主の言い分を聞こう」
十神「いいだろう、話してやる。まず、俺は死体発見アナウンスを聞くまで、旧館には一度も入らなかった」
山田「で、ですがそんなものは自分ではいくらでも言えますがな……」
十神「そんな事は分かっている。だが、俺にはそれを証明する手段もある」
大和田「いちいち周りくでえんだよテメーはよぉ!!! さっさと言いやがれ!!!」
十神「はっ、お前はバカみたいに口を開けて親から餌を与えてもらうのを待っている雛鳥か? 一応プランクトンからは成長したようだな」
大和田「コロス!!!!! ここでブチ殺してやんよオラァァ!!!!!」ビキビキ
モノクマ「はいはい、そういうのはここ出てからやってよねー」
朝日奈「で、でも十神もハッキリ言いなよ!! 自分の命だってかかってるんだよ!?」
十神「それがどうした?」
不二咲「ど、どうしたって……なんで……そんなに平然としていられるの……?」
十神「お前達が怯えるのはなぜだ? それは自分が負けるのではないかという考えがあるからだ。
だが、俺にはそれがない。俺は決して負けない、それならば怯える必要がどこにある?」
腐川「んんんっ!!!///」ビクンビクン
セレス「大した自信です事。この状況でその姿勢はもはや感心すらしますわ」
十神「自信ではない、確信だ。さて、お前達の中に俺の無実を証明できる奴はいないのか? 言っておくが、このまま俺をクロにすると本当のクロ以外全員死ぬぞ」
舞園「おかしいですよ……あなた絶対におかしいです……!!」
十神「おかしい? 退屈なゲームを少しでも盛り上げようとする事のどこがおかしいんだ?
少しは足りない脳みそを動かして足掻く努力くらいしたらどうだ。お前達の大半は俺の敵にすらなれていない」
苗木「…………ふふ」
その瞬間、みんなの視線がボクに集まった。
しまった、笑い声が漏れちゃったみたいだ。
戦刃「な、苗木……君……?」
苗木「……あー、ごめんごめん。ボクに構わず続けてよ」ニコ
十神「どうだ舞園、セレス。こいつだって十分頭が飛んでいるとは思わないか?」
舞園「そ、そんな事ありません!!」
セレス「えぇ……あなたと苗木君を一緒にしないでくださる?」
霧切「ねぇ、いいから話を続けましょう」
霧切さんのその一言。
それだけで一気に場の空気が引き締まる。
霧切「まず、十神君が一度も旧館に入っていない証明、だったわね」
朝日奈「で、でも、入った事じゃなくて、入っていない事なんて……【そんなの証明できないでしょ!!】」
……そんな事はない。証明する方法は確かにある。
『モノミの証言』
霧切「それは違うわ」キリッ
ガシャーン!!!!!
朝日奈「えっ……?」
霧切「証明する方法はある。それはモノミよ」
大和田「モノミが何の役に立つってんだよ」
モノミ「うぅ、酷い言われようでちゅ……」
桑田「……ん、そういやモノミってよ、ずっと見張りをしてなかったか?」
朝日奈「あっ、そっか! 旧館の外の入り口辺りにずーっと居たから十神が入ってきたら分かるんだ!」
葉隠「ど、どっかに抜け道とかあったんじゃねえの……」
霧切「館中を探したけどそんなものはなかったわ。それでモノミ、確か一度聞いたけど、十神君は旧館に入ったのかしら?」
モノミ「いえ、一度も入らなかったでちゅよ。みなさん、仲間はずれは良くないでちゅ……」
十神「ふん、分かったか愚民ども」ドヤァァ
江ノ島「何であんたがドヤ顔してんのか分かんないんだけど……」
腐川「うふふふ、そうよ、白夜様がこんな簡単に終わるなんてありえないもの……」
大神「しかし十神ではないとなると……」
江ノ島「実は誰かがこっそり大広間から抜け出してた、とか? 停電前と停電後、ちゃんとみんな居たって言える?」ニヤニヤ
山田「ぼ、僕の事はみんな見ましたよね!? こんなデブを見逃すはずがありません!!」
桑田「自分で言ってて悲しくならねえのかそれ……」
霧切「そこもモノミに聞けばすぐ分かることよ。パーティー中は大広間の前で見張りをしていたのだから」
大和田「ちょっと待てよ、そいつの言うことってのは信用できんのか?」
モノクマ「うん、信用してやってよ。こいつは一応中立って事でさ」
モノミ「ちゅ、中立なんかじゃありまちぇん! あんたの敵でちゅ!!」
モノクマ「なんだとコイツ!!!」ボコッ!!!
モノミ「むぎゃあああああ!!!!!」バキィィィ!!!
霧切「……それで、モノミの言うことは信用できるのね?」
モノクマ「もちろん、ウソなんかついたら兄のボクが黙ってないよ。それでみんなが騙されるような事があれば、お詫びにここから出してあげるよ」
葉隠「そんな甘い言葉は罠に決まってるべ!!」
苗木「……でもさ、モノクマはボク達を殺そうと思えばいつでも殺せるんだと思うよ。それなのにそれをしない理由は、やっぱりボク達にこんなコロシアイをさせたいからなんだと思う。
つまり向こうはこれをゲームだと思っているはずだから、ゲーム性を重視して決まり事は守ってくれるんじゃないかな」
モノクマ「そゆこと。モノミを使ってみんなを混乱させるなんてつまんないしねー」
十神「ふん、それでは早く言え。停電前と停電後、大広間には俺、苗木、舞園、石丸以外の全員が居たのか?」
モノミ「もちろんでちゅ! あちしは誰が出て行って、誰が入ってきたか覚えていまちゅから!
停電前には確かにみなさん大広間に集まっていまちたし、停電後も…………」
そこまで言ってモノミは固まる。
口まで出かかった言葉を、そのまま出していいのかどうか悩んでいるようだ。
十神「……どうした? 誰か居なかったのか」
霧切「…………」
大和田「マ、マジかよ……じゃあそいつが……」
桑田「おい誰だよそいつは!!」
苗木「それはみんなも知っているはずだよ」ニコ
大神「なに?」
朝日奈「ていうか、苗木はその時大広間に居なかったじゃん!!」
苗木「居なくても分かるよ、停電中の話を聞けばね」
不二咲「て、停電中……? でも、その時は真っ暗で何も……」
山田「そうですぞ、僕もラッキースケベを狙えなかったのですから!!」
セレス「命拾いしましたわね、もしわたくしにそんな事をすればあなたが被害者になっていましたわよ」ニコ
江ノ島「それで苗木ー、いったい誰が居なかったってのよー!」
苗木「じゃあさ、停電中の大広間での出来事をもう一度ボクに説明してくれないかな? それで分かるはずだよ」
葉隠「分かったべ。んーまずは…………なんだっけ?」
大神「停電の前にエアコンが作動したな。そしてそれは犯人が仕掛けたトリックだった」
大和田「そんで真っ暗になって……オメーらギャーギャー騒いでたな」
朝日奈「し、仕方ないじゃん、いきなり停電するんだから!!」
桑田「それから確か…………戦刃がブレーカーを戻しに行ったんだよな?」
戦刃「う、うん、私は目が慣れるの早いから……」
江ノ島「それで珍しくお姉ちゃんが役に立って電気が戻りました。めでたしめでたし」
苗木「……じゃあ、停電後に大広間に居なかった人は誰だと思う?」
みんなが固まった。
初めはわけが分からないかのようにボクの方を見ていたけど、次第に他の位置に視線が集まっていく。
停電後、つまり電気が戻った時に大広間に居なかった人物。
それは、ブレーカーを上げにいった人だ。
苗木「停電後、キミは大広間に居なかったはずだよね、戦刃さん」
戦刃「っ!!」
戦刃さんは目を見開いて、体を震わした。
それからオロオロと周りを見渡し、他のみんなから向けられる視線を受けて、更に大きく震え始める。
戦刃「ち……ちがっ……わ、私……!!」
苗木「停電中に大広間を出て行ったのは戦刃さんだけだ。そうだよね、モノミ?」
モノミ「は、はい……でちゅ……」
江ノ島「うわー、マジでお姉ちゃん……ドン引きなんですけどー」
舞園「え、えっと……すみません、上手く整理できていなくて。あの、つまり、戦刃さんは……」
苗木「戦刃さんは大広間から出て行った後、事務室でボクと舞園さんを気絶させたんだ。
そしてボクをトイレに運んで石丸クンを殺した。本当は暗視スコープなんて必要なかったんだよ。あれは戦刃さんがわざと現場に残したんだ」
セレス「なるほど……暗視スコープを置いたのは犯人はそれを使ったとわたくし達に勘違いさせる為でしたか……」
戦刃「違うよ!! 私そんな事してない!! どうして……苗木君……!!」
苗木「ボクだってキミを疑いたくなんてないよ!! でも、実際に大広間から出て行ったのはキミだけなんだ!!」
山田「ふむふむ、考えてみますと喉にナイフを突き刺すというのはいかにも軍人の殺し方ですな……」
戦刃「そんな事ない!! 私だったら綺麗に頸動脈切るもん!!!」
不二咲「ひっ……」ビクッ
葉隠「可愛くとんでもねえ事言ってるべ」
朝日奈「う、うそ……だよね……戦刃ちゃん……?」
大神「……お主は良い戦いの相手だったのだがな」
戦刃「違う!!! 違うってば!!!」
十神「喚くな鬱陶しい。そんなもので俺達を納得させられるとでも思っているのか。根拠を言え」
戦刃「根……拠……。ちょ、ちょっと待って……え、えっと……えっとね……!!!」オロオロ
桑田「おい何もねえのか!? やっぱりオメーなのか!?」
戦刃「ま、待って!! 待ってよ!!!」
苗木「……いいよ、戦刃さん。深呼吸して、落ち着いて、よく考えてみて?」
戦刃「え……?」
苗木「ボクもキミがやったなんて思いたくないんだ。だから、キミの言うことはちゃんと聞くから」
桑田「オ、オメーが言い出したんじゃねえか、訳分かんねえ奴だな!!」
苗木「ん、いや、別にボクはこの考えに自信を持ってるわけじゃないよ。だからおかしな所がないか聞いているだけだよ。
これは失敗は許されないし、慎重に越した事はないんだ。なんたってボク達全員の命がかかっているんだからね」
舞園「そ、そう……ですよね……よく考えないと」
腐川「ううううう……でもそいつ何にも言わないじゃない……!!」ギリギリ
十神「……どうした戦刃。俺達はお前の言い分を聞く準備があるぞ」
戦刃「えっと……ご、ごめんね、ちょっと待って……うぅ…………な、何か……なにか…………」
江ノ島「はぁぁ……お姉ちゃんは最後まで残念だねぇ……」
戦刃「さ、最後って……ぅぅ……だ、だから私はやってない……よ……」
苗木「大丈夫だよ、戦刃さん。キミはやっていない、そうだよね?」
戦刃「っ!! う、うん!!!」
苗木「それならきっと、それを証明できる事はあるはずだよ。キミならきっと見つけられる」ニコ
戦刃「苗木君…………分かった、私……やってみる……」ポロポロ
大和田「だからテメーはどっちの味方なんだよ!!!!!」
腐川「あ、上げたり落としたり……そういうのが趣味なわけ? この変態!!」
舞園「苗木君の性癖をどうこう言わないでください!! 私は全て受け入れますから!!!」
苗木「え、えーと……別にそういうわけじゃなくてさ……。あと、ボクはいつでもみんなの味方でモノクマの敵だよ」
モノクマ「むむっ、苗木君に嫌われるとはモノミもダメな奴だなぁ」
モノミ「あちしじゃないでちゅ!! あんたでちゅよ!!!」
戦刃「あっ!!! そうだ!!!」
戦刃さんが大きな声を出して顔を上げた。
うんうん、いいよその顔。ボクは好きだな。
十神「ふん、やっとか。話してみろ」
戦刃「うん……あのね、石丸君は首を刺されて殺されちゃった、そのせいでトイレも血まみれ……そうだったよね?」
不二咲「そ、そう……だね……僕は怖くてあんまり見れてないけどぉ……」オドオド
江ノ島「で、それがどうかしたの? 悪あがきなんてやめたら?」シラッ
葉隠「オメー、姉にホント容赦ねえべ……」
戦刃「…………」チラ
苗木「うん、続けて? 大丈夫、ちゃんと聞いてるよ」ニコ
戦刃「あ、ありがとう!! それでね……あんな殺し方をしたらね、どうしても……」
十神「なるほどな、返り血か」
みんなが一斉にハッとした表情を浮かべた。
考えてみればそうだ。あれではどうやっても返り血を浴びてしまい、すぐにバレてしまう。
葉隠「そ、それはほら、軍人的な力でなんとか……」
戦刃「いくらなんでも返り血を浴びないのは無理だよ」
桑田「んじゃ、洗い流したんだろ!!」
戦刃「私、水に濡れてたかな?」
セレス「…………確かにその件に関しては、戦刃さんがクロだと言うのは少し無理がありますわね」
朝日奈「じゃ、じゃあ戦刃ちゃんは犯人じゃない!?」
戦刃「うん!! いくら私だって【返り血を防ぐのは無理】だもん!!」
……ははははは!!!
『床に敷かれた布』
苗木「それは違うよ……」
ガシャーン!!!!!
戦刃「えっ!?」ビクッ
大和田「ま、またテメーかよ!? ホントなんなんだよ、ふざけてんのか!!!!!」
苗木「何って、ボクはいつでもみんなの為を思って行動しているよ……みんなの希望のためにね……?」ニコ
葉隠「や、やばいべ……目がおかしいべ……」ガクガク
苗木「ねぇ、戦刃さん。キミは返り血を防ぐ方法なんてないって言ったけどさ……」
戦刃「っ……う、うん…………!!」ビクビク
苗木「トイレにはあったはずだよ。ほら、床に敷かれていた白い布だよ」
戦刃「え……ぬ、の……?」ブルブル
苗木「うん、しかもその布の下には血が広がっていた。これってさ、床に血が撒き散った後に、その上に布を置いたっていう事なんじゃないかな?」
十神「…………そう考えるのが自然だな」
苗木「つまり戦刃さんはあの白い布で返り血を防いだ、そしてその後に血を防いだ布は床に置いていったってわけだよ!」ハハハ
一旦離脱だべ
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!人__ノ . :ノ:乂| |: : :| ===、 `ヽノ: :リ ねみー
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ヽ __ノ ∧:.丶 :|、 '<⌒)⊂ヽn┬ 、
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` <二ノ ,∠二\` |i-< : :ノ ⊂ニ rー、く\ ヽ
厂\_///八厂≧=|lノ个ヘ/∧ \ \\\',
丶∠≦⌒|l/∧ /|j\|'⌒|l//|__ '. 〉 〉 ハ
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受け取れ!これが…
未 来 だ
【舞園さやかとの幸せな家庭】
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/ヽ、 ` ー-----‐ ´ /. : \ヽ: : .、.: :l : : ハ
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イ⌒ \\|/⌒へ从 ノ , へ⌒\l: :|/ /⌒ヽ
│ イ / /⌒>‐、 , -<⌒ヽ \ ∨/
│ | ' , / ノ l─| 、 \ ヽ, ' 〉
| ' イ ノ └ヘ ' /:l
人 丿 人 〈: :|
戦刃「っ……!!!」ビクッ
江ノ島「へぇ、なるほど!! 凄いじゃん、お姉ちゃん珍しく頑張ったんだ!!」
戦刃「ち……違う……よ……!!」
苗木「うん大丈夫、聞いてるよ。他にも何があるんだよね? ボクの言ってる事なんて的外れなんだよね?」ニコ
戦刃「ぁ……ぅぅ……そ、れは…………!!!」ウルウル
桑田「な、苗木……オメー自分で追い詰めといて何言ってんだ……?」
苗木「はは、誤解しないでほしいんだけどさ、ボクは何も戦刃さんをクロにしたいんじゃないんだよ。
むしろ逆さ。ボクは彼女がクロではないって信じたい。だから問い詰めているのさ。心配しなくても、彼女ならきっとボクの言ってる事を全部否定してくれるよ!」
戦刃「ち……違うの……わ、私じゃ……私じゃないの!!!」
苗木「うん、だからその根拠は?」
戦刃「……ぁ……ぁぁ……わ、私……」ブルブル
葉隠「これは今度こそ決まりだべ」
セレス「ええ……戦刃さん、負けを認めたらどうですか?」
戦刃「……ち……ちが……う……のに……」ブルブル
苗木「…………」
戦刃「うっ……ぅぅ……!!」
苗木「……んー、でも本当にあの布で血を防げたのかな」
大和田「は!?」
大神「苗木よ、お主は何がしたいのだ……」
苗木「いや、ごめんごめん、ちょっと自分でも疑問に思っちゃってさ。ねぇ、戦刃さん?」
戦刃「えっ…………」
苗木「石丸クンからは凄く血が出てたよね……」
不二咲「そ、それをその布で防いだんじゃないのぉ……?」
腐川「ななな何がおかしいのよ……いや、あんたはおかしいけど……」
苗木「だけど、あの量だよ? あれを完全に防ぐなんて……」
戦刃「あっ!! そ、そうだよ! いくら布があってもあの量の血液は布の下まで【染み込んじゃうよ!!】」
……まぁ、普通の布ならそうなんだろうけどね。
『消えたテーブルクロス』
苗木「それは違うよ」
ガシャーン!!!
戦刃「…………え?」ゾクッ
桑田「おい苗木、オメー遊んでんだろ? ハッキリ言ってみろよ」
苗木「いやいや、いくらなんでも命かかってるのに遊べる程ボクは図太くないって。ただ、自己解決したってだけだよ」
大和田「自己解決……だぁ?」ボキボキ
苗木「ご、ごめんごめん、分かったよ。次からはちゃんと考えてから発言するからさ!
えっとね、停電してから事務室からなくなったものがあるんだ。テーブルクロスなんだけど……」
十神「……ふん、なんだ分かっていたのか。あのテーブルクロスの行方に」
苗木「あれ、十神クンも?」
山田「あ、あのー、二人で通じ合ってないで僕達にも教えてくれませんか?」
腐川「きいいいいい!! 苗木のくせにいいいいいい!!!」
苗木「事務室にあった丸テーブル、これって元々大広間にあったものを移動させてきたんだけど、停電後に敷かれてあったテーブルクロスが無くなってたんだ。
予備が置いてある倉庫に行ってもないし、他の場所を探してもない。それならトイレにあったあの布なんじゃないかって」
十神「元々トイレにはそんなものを置いていなかったらしいからな。モノミにも確認させたら、やはりあのテーブルクロスだという事らしいぞ」
苗木「確かあれは凄い防水性能があったよねモノミ?」
モノミ「は、はい……でも……戦刃さんが犯人だなんて……!」
戦刃「…………ぅぅ」ガクッ
戦刃さんは膝から崩れ落ちてしまった。
そしてそのまま、顔を上げずにただ震えている。
舞園「い、戦刃さん……?」
セレス「ついに諦めましたか」
苗木「…………」
朝日奈「そんな……ど、どうして!? どうして石丸を殺したの!?」
江ノ島「急にガーッ!! と軍人の血が騒ぎ始めたんじゃない?」
戦刃「…………」ブルブル
江ノ島「あれ、おーい。今のツッコミどころだよー?」
そんな……こんなのあってはいけない……。
戦刃さんはこんな所で負けるような人じゃないんだ!
苗木「ダメだよ戦刃さん!! 諦めちゃダメだ!!!」
大和田「なぁ、いい加減一発殴っていいかコイツ?」
桑田「たぶん効果ねえよ……」
戦刃「……わ……私…………」
苗木「戦刃さん!! 例えキミがクロであったとしても、最後まで頑張ってほしいんだ!!」
葉隠「……はああああああああ!?」
山田「何この子こわい」
戦刃「な、苗木……君……?」
苗木「キミが自分の希望の為に石丸クンを殺したとしても、ボクは許せない。いくら希望の為とはいえ、人の希望を永遠に奪うなんて絶対ダメだ!!」
腐川「もう何言ってんのよコイツ!! 変態すぎるわ気持ち悪い!!!」
不二咲「えっと、つまり…………えっ?」
大神「支離滅裂になっているぞ苗木……」
苗木「でもさ、やってしまったものはもう仕方ないじゃないか!!!」
舞園「し、仕方ないって……苗木君……?」
苗木「石丸クンを殺したのは許される事じゃないよ。でも、キミはそれだけ大きな希望を持っていたはずなんだ!
そうじゃなかったらクラスメイトを殺す事なんてできないよ!! だからさ、キミは責任をもってその希望を貫き通さなければいけないんだ!!」
戦刃「ま、待ってよ……私は……!!」
苗木「キミが絶望した所で石丸クンが戻ってくる事はない。そうだよ、ここでキミが希望を失ってしまったら彼は何の為に死んだんだ!
それならキミは最後まで貫くべきだ。何より石丸クンの為に!! そしてボク達の死も乗り越えた先にはもしかしたら究極の希望があるかもしれない!!!」
朝日奈「もう意味分かんないよおおお!!!」
戦刃「……違う、よ」スッ
やった、立った!戦刃さんが立った!
いいよ、その目! それでこそ戦刃さんだ!!
戦刃「私はクロじゃない!!!」
苗木「……じゃあ怖かったのかな? このままだと本当のクロ以外みんな死んじゃうから」
戦刃「……うん。私よりもみんなが、苗木君が死んじゃうなんて耐えられない」グスッ
苗木「それなら頑張らないと! ボク達を救ってよ戦刃さん!」
よし、戦刃さんはまだまだ前を向いていられる。
状況は変わっていなくても、諦めない姿勢というのは大切だ。
苗木「それじゃ、戦刃さん。ボクの考えのどこがおかしいのか言ってもらえるかな?」
戦刃「……ごめん、ちょっと考えさせて」
苗木「うん、待つよいくらでも」
モノクマ「えええええ、言っておくけどボクが飽きたら打ち切るよ?」
桑田「なっ、そんなのありかよ!」
セレス「随分と好き勝手いたしますわね。まぁ、今更ですが」
モノクマ「うんうん、そうだよ今更だよ。オマエラ、ボクに生かされてる事を忘れちゃいけないよ?」
苗木「……はぁ。ごめん戦刃さん、そういう事らしいからてきるだけ急いでくれる? あ、でも焦ったらダメだよ」
戦刃「うん……必ず……私が……」
その時だった。
霧切「ねぇ、苗木君」
その声に、ボクは震えた。
あぁ、来た。いつ来るか期待してたよ。
全然来ないから心配してたよ……!!
霧切「いつまでこんな事を続けるつもりなのかしら?」
いつもの、真実を見通す冷静な表情で。
心の底まで響いてくる鋭い声で。
彼女は真っ直ぐボクに敵意を向けている。
苗木「……何か言った?」
霧切「えぇ、いつまでこんな事を続けるつもりなのか、と尋ねたわ」
苗木「はは、質問の意味が分からないな。いつまでって、それはもちろんクロを見つけるまで……」
霧切「それはウソよ」
苗木「へぇ、随分とハッキリと言うね? 理由を聞かせてもらえるかな?」
霧切「戦刃さんはクロではない、あなたはそれが分かっているのに彼女を追い詰めているからよ」
頼んだ
苗木「どきどき修学旅行?」
立ったみたいだぞ
戦刃「えっ!?」
苗木「……どうしてそう思うのかな?」
霧切「あなたの推理には大きな矛盾がある。あなたなら気付かないはずがない程のね」
十神「なに……?」ギリッ
江ノ島「あっ、十神も気付いてなくてショック受けてるし! ぎゃはは、ウケる!!」
大和田「なっ、つまりそいつはクロじゃない奴をわざとクロに仕立てあげようとしてたのかよ!?」
朝日奈「じゃあ……やっぱり……犯人は!!!」
舞園「待ってください!! それはないって言っているでしょう!! 苗木君は私と一緒に襲われたんですから!!」
苗木「……あはは、待ってよ。霧切さんはボクの事を買いかぶり過ぎなんじゃないかな?
そんな、戦刃さんをクロに仕立てあげようとしているなんて、全部キミの想像じゃないか」
霧切「いいえ、あなたは誰が石丸クンを刺したのかよく分かっているはずよ」
苗木「……どうしてそう言えるの?」
霧切「なぜなら、あなたが刺した張本人だからよ」
あ
苗木「どきどき修学旅行?」
苗木「どきどき修学旅行?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1377185413/)
立てたぞ
なんか専ブラ使えなかったべ。ありがと
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