あかり「爆友?」 (31)

-放課後、理科室-

ガラッ

あかり「失礼しまーす…」

西垣「ん? おお、これは珍しいお客さんだな」

りせ「……」

あかり「こ、こんにちは!」

西垣「はっはっは、そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ」

あかり「はいっ」

西垣「それで赤座君、私に何か用かな?」

あかり「あ、えっと…西垣先生にプリントを渡すように言われて…」

西垣「どれ…」

西垣「…む、また面倒くさい…」

りせ「……」

西垣「そうか、では頼むぞ松本」

あかり「会長さん、なんて言ったんですか?」

西垣「プリントを代わりに書いてくれるそうだ」

りせ「……」

西垣「こういったプリントは私より松本の方が書き慣れているからな」

あかり「そうなんですか…」

あかり「…ところで、先生は何してたんですか?」

西垣「私か? 私はもちろん実験をしているところだ」

あかり「実験…」

西垣「実験は面白いぞ」

あかり「あかりも、理科は好きです!」

西垣「そうか…なら、良ければ君も手伝ってみないか?」

あかり「えっ、いいんですか…?」

りせ「……」

西垣「松本もそう言っている」

あかり「えへへ…じゃあ、よろしくお願いしますっ」

西垣「うむ、いい返事だ」

西垣「赤座君…いや、赤座」

あかり「はい!」

西垣「私の爆発友達…爆友になってくれないか?」

あかり「ば、爆友!?」

西垣「ああ、そこまで危険な事をさせるつもりはないから安心してくれ」

あかり「…わかりました!」

西垣「よし、では君が念願の爆友一号だ!」

あかり「一号…あれ? 会長さんはどうなるんですか?」

西垣「松本は爆友よりずっと上の関係だからな」

りせ「……」

あかり「ずっと上?」

西垣「ふっ…君にはまだ早いかも知れんな」

あかり「うーん…」

西垣「…ではそろそろ実験を始めようか」

あかり「は、はいっ」



西垣「赤座、あれを取ってくれ」

あかり「あれ?」

西垣「む…済まない、いつもの癖で…」

りせ「……」スッ

あかり「会長さん? これって…」

りせ「……」

西垣「ああ、それだ」

西垣「いつも松本が手伝ってくれているのでな」

あかり「なるほど…」

あかり(すごいなぁ、会長さん…『あれ』だけでどれか分かるなんて…)



西垣「…よし、今日はここまでだ」

あかり「疲れたぁー…」

りせ「……」

あかり「…そういえば、爆発しませんでしたね」

西垣「なんだ赤座、爆発希望だったか?」

あかり「あ、いえっ! そういう訳じゃ…」

西垣「まだ慣れない内は爆発に巻き込ませたくはないからな」

あかり「そっかぁ…」

あかり(西垣先生、あかりの事考えてくれてたんだ…)

西垣「ところで…部活には行かなくて良かったのか?」

あかり「…あっ! 忘れたっ!」

西垣「やっぱりか…下校時間までもう少しだ、行って来るといい」

あかり「はい! 失礼します!」タッ

西垣「またな、赤座」

りせ「……」


翌日

-放課後、理科室-

ガラッ

あかり「失礼しますっ」

西垣「む、赤座か」

あかり「あの…今日も、お手伝いしていいですか?」

西垣「ああ、歓迎するぞ」

あかり「やったぁ!」

あかり「…あれ? 会長さん、今日は来てないみたいですけど…」

西垣「松本は生徒会室で会議中だ」

あかり「そうですか…」

西垣「今日は部活、大丈夫か?」

あかり「えへへ、今日はお休みしました」

西垣「いいのか?」

あかり「あかり、もっと実験のお手伝いがしてみたくって…」

西垣「ふっ…そうか」

西垣「…では休憩も終わったところで、早速始めるとしようか」

あかり「はいっ!」



西垣「赤座、そこの棚の緑のラベルが貼ってある薬品を取ってくれ」

あかり「わかりました!」

あかり「…ん、しょ…」

あかり「…あっ!」

ガシャン

西垣「! 大丈夫か!?」

あかり「は、はい…」

西垣「そうか…それなら良かった」

あかり「でも…これ、割っちゃいました…」

西垣「気にするな、私が片付けておく」

あかり「すいません…」

あかり(はぁ…あかり、足引っ張ってばっかりだなぁ…)

あかり(本当は西垣先生、迷惑してるんじゃ…)

西垣「…そんな事はないぞ」

あかり「えっ…?」

西垣「…私は普通の人とは違う、こんな趣味を持っている」

西垣「壁にぶつかった時、あまり人には助けてもらえない…」

西垣「…だが、君のような理解者がいてくれるだけで頑張れる…そんな気がするんだ」

西垣「…なんて、柄にも無い事を言ってしまったな…今のは忘れてくれ」

あかり(先生、あかりを必要としてくれてるんだ…)

あかり「…あれ? あかり、さっき声に出してました?」

西垣「聞こえたんだよ、赤座の心の声が」

あかり「えぇっ!?」

西垣「冗談だ、冗談」

西垣「思いっきり顔にそう出てたぞ?」

あかり(顔に出てたんだ…なんだか恥ずかしいな…)

あかり(でも、それだけあかりの事を見てくれてるって事だよね?)

あかり(…よぉし、もっと頑張っちゃおっと!)


翌日

-放課後、理科室-

西垣「松本、あれを取ってくれ」

りせ「……」スッ

西垣「済まんな、松本」

りせ「……」

西垣「…そういえば、今日は赤座来ないな」

りせ「……」

西垣「どうした?」

りせ「……」

西垣「…違う、といえば嘘になるな」

りせ「……」

西垣「そうかもな…」

りせ「……」

西垣「なんだ、もしかして…嫉妬しているのか?」

りせ「……!」

西垣「はっはっは、そうかそうか」

りせ「……」

りせ「……」

西垣「明日?」

りせ「……」

西垣「うむ、わかったぞ」

西垣「…では実験の続きをするか」

りせ「……」


翌日

-放課後、廊下-

あかり「今日は部活行く前に、少しだけ理科室に行こーっと」

あかり「~♪」

あかり「…よし、着ーいたっ」

ガラッ

あかり「失礼しまー…」

西垣「! 危ない赤座! 伏せろっ!」バッ

あかり「わっ!?」

ドオォォォォォン!

あかり「……っ」

あかり「あ、あれっ? なんともない…?」

西垣「…怪我はないか? 赤座」

あかり「あ…はい…」

あかり(そっか…西垣先生があかりをかばって…)

あかり「って先生! 腕、怪我してますよ!?」

西垣「ん? 本当だ…なに、破片で少し切っただけだ」

あかり「ちょっと待ってください!」ゴソゴソ

あかり「…あった!」

ペタッ

あかり「えへへ、これで大丈夫ですねっ」

西垣「…済まないな」

西垣「先に一言、声をかけておくべきだった…」

あかり「ぜっ、全然、大丈夫ですから!」

あかり「それに、あかりだっていきなり入っちゃったし…」

あかり「だ、だから…」

西垣「……」スッ

チュッ

あかり「…!」

あかり(お…おでこに…!)

西垣「優しいな、赤座は」

あかり「あう…」

西垣「本当は松本にも、あまりこういう事はしないんだがな…」

西垣「…今のは二人だけの秘密だぞ?」

あかり(二人だけの、秘密…)

あかり「…はいっ!」

りせ「……」

西垣「ま、松本!?」

あかり「会長!?」

りせ「……」

西垣「今日は会議のはずじゃ…」

りせ「……」

西垣「も、もう終わったのか…」

りせ「……」スタスタ

西垣「待ってくれ! 違うんだ!」

西垣「いやっ、違くはないけど! 違うんだぁぁぁぁ!」

あかり(……)


友達より、ずっと上の関係…

今なら少しだけ…わかる気がするなぁ



終わり

ありがとでした

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