美琴「まったく、遅いわよ」 (555)
初めまして。
長くなりそうなので要点だけ。
1.上琴SS
2.スレ立ては初めて
3.ルール等は読んできました。
以上です。
それでは
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376578478
超能力者
常盤台中学のエース
お嬢様
御坂美琴に対する周囲の評価などそんなものだ。
彼女はそれが嫌だった。
可愛らしいものを好むし、清楚なんてほど遠い性格だ。
友達とクレープを食べたりゲームセンターで一緒に遊んでみたい。
だけども学園都市の広告塔として表舞台に立つことの多く、そのせいでイメージだけが先行していった。
そのせいで周囲は勝手に期待し、そして理想を押し付けた。
いつしかそれに耐えられなくなった美琴は寮へ帰らず外で目的もなくふらつくようになった。
6月下旬
夜の学園都市に御坂美琴はいた。
寮の門限はとっくに過ぎている。
彼女の周りには何人もの不良。
その周囲を歩くものは皆、見て見ぬ振りである。
(ま、しょうがないわよね。皆自分が可愛いんだから。それにこんな状況で助けに来る奴がいるとしたら、ただの馬鹿よ)
だが助けてほしいなどとは微塵も思っていない。
彼女は学園都市に7人しかいない超能力者。
その気になればこんな群れて強がってる雑魚共など一蹴できる。
だからどれだけ囲まれようが、最初からどうでもよかったのだ。
そろそろ鬱陶しくなってきたので、能力で追い払おうとした時、現れたのだ。
「まったくどこ行ってたんだよ」
不良の集団の中、たった1人で割り込んできた『馬鹿』が。
(うそ・・・いるんだ。こんなやつ)
「いやー、すいませんね連れが。ほら、行くぞ」
そう言って『この馬鹿』は手を伸ばしてきた。
どうやら知り合いのフリをしてここから抜け出す作戦なのだろう。
本来なら誰ともわからない人間など信用できないはずだった。
「まったく、遅いわよ」
だけども『この馬鹿』に興味が出てきた。
『この馬鹿』の目を見れば下心で動いてなどいないことはわかった。
だから信用して、その手を掴んで走り出した。
本日(今夜?)はここまでで。
放置だけはしないようにしていきます。
>>1です。
今日はあまり進まず1レスしか書けてません。
上条は美琴と別れたあと、別の女性を助けたため疲れてベッドに倒れ込んでいた。
「・・・御坂美琴、か」
第一印象は『可愛い』だった。
手を繋ぎながら逃げて『ドキドキ』した。
そんなことを感じたのは初めてだ。
『また、会えるかな?』
その言葉が今でも頭から離れない。
次の投稿までかかる・・・かもしれません。
>>88
>>4に6月下旬って書いてある。→次の日?に再開。→その次の日にデート。→その次の日に告白。→数日後。今ここ
>>1乙です
シュチュエーションなら、特売に付き合わされる御坂とか、上条に料理をごちそうする御坂とか、ゲコ太関係のことに付き合わされる上条とか、猫関係の話とか、上条の寮で二人でぐーたらする話とか、どうでしょうか?
>>1です。
>>92さんの言うように、6月下旬に会い、その数日後に再会、その後の日曜日にデート、月曜日に告白なので、7月の初旬あたりです。
インデックス、妹達関連は書く予定はあるのでもう少し待ってください。
(幸せから突き落としてこその絶望だと思ってるので)
実は佐天さんってキス以上のことを知らないんじゃないかと思う。
(逆に初春はわかってると思います)
あとわがままかもしれませんが、レスは嬉しいのですが『インなんとかさん』の言い方は好きじゃないのでこのスレでは抑えてもらえると嬉しいです。
それでは日常編の投下していきます
美琴と付き合い初めて1週間以上が過ぎた。
上条には悩みがあった。
美琴の趣味が子供っぽいとか、意外と天然な部分というのもあるが、そんなものは問題にならない。
喧嘩をしたわけでもない。
では一体なんなのか
それは、
「どうしたのアンタ?」
一度も彼女は上条を『アンタ』としか呼ばないのだ。
上条の様子がおかしいことに気づく美琴だが、今日も今日とてアンタ呼ばわりだ。
「もしかして、私アンタに何かした?」
「それだよそれ!」
「それって、何よ」
いきなり「それ」と言われても訳がわからないのは当然である。
が、今の上条は何も考えていなかった。
「いつもアンタアンタって!!」
「つまり、アンタは名前で呼んで欲しいと」
「ぐっ」
何も間違っていないし、むしろ気づくようにしたのは上条自身だ。。
けれどもそんなくだらないことで悩んでいたのがバレて恥ずかしかった。
「当麻」
「!!?」
突然の襲撃に思わず鼻を押さえてしまう上条。
(やべ、可愛い!)
「も、もう一度」
「当麻」
その可愛さに負けた。
「当麻当麻当麻」
「うぉおおぉ」
からかっているとわかった。
けれども美琴が可愛すぎて何も言えない上条であった。
その日から美琴は上条の呼び方を『アンタ』から『当麻』へ変えた。
美琴は上条と共に買い物袋を持って歩いていた。
「ありがとうな御坂、わざわざ荷物まで持ってもらって」
「いいわよこれぐらい」
『8個入り卵50円お一人様2パックまで』を4パック入手するためので手伝ってくれ、と上条に頼まれたのだ。
美琴にとっては初めての特売だ。
彼女はファストフード店やクレープ屋買でい食いはするものの、常盤台中学は基本、朝、昼、夜と食事が出るため、スーパーで買い物をするいうこと自体ないのだ。
そのため、(上条と一緒にということもあり)初めてのスーパーはとても楽しかった。
話しながら上条の寮までついてしまった。
冷蔵庫に食材を入れながら美琴は考えた。
このままでは何もすることもないと。
そろそろ夕飯を食べても早くはない時間である。ちょうど目の前には特売で買ってきた食材がある
「ねえ」
「ん?」
「ご飯、作ってあげようか?」
今更ですけど小ネタにはタイトルを入れていきます。
「授業以外で作るのって初めてだけど、どうかな?」
美琴が持ってきた皿に盛られているのはオムライスだ。
先ほどの特売の卵を使ったのだろう。
「うまい!」
これはすぐにでも高級レストランに出してもいいのもだと、上条はそう美琴に感想を伝えた。
「そんなに喜んでくれると・・・これから毎日夕飯を作りに来ても・・・」
「よろしくお願いします!!」
上条に褒められ、毎日上条の部屋へ行ける都合も出来て、とても幸せな美琴であった。
食事が終わって片付けもして、やることもなく、いつの間にやら美琴は上条の肩に身を寄せて眠っていた。
「すー、すー」
「寝ちゃったか、俺も・・・眠くなって・・」
美琴の料理に満足して、肩に身を寄せる美琴を可愛く思いつつ、上条も眠りにつく。
「んにゅ・・・」
目が覚めると、窓の外が暗くなっていた。
「今何時・・・?」
眠い目をこすって時計に目を移す。
時計の針が指している時間を見て一気に目が覚めた。
「あーーーー!!」
「うわ!?ど、どうした!?」
美琴の悲鳴に驚いて上条も目が覚めた。
けれども起こしてしまったことを気にしている暇は今の美琴にはなかった。
「門限・・・・・・過ぎちゃってる」
「お願い!今日だけでいいから泊まらせて!!」
必死に懇願する美琴を無下にはできないが、
一つ屋根の下で男女は夜を過ごすということには抵抗があった。
「そ、それはまずいだろ。俺も一緒に謝りに行くから」
「そういう問題じゃないのよ!」
「そんなに怖い人なのか?」
「怖いなんてものじゃないわ。もし男といて門限に遅れたなんて知られたら・・・・・・殺される!あの人は強能力者くらいなら軽くなぎ払うと言われてるし、私だって敵うかわからないわ」
「どれだけ強いんだよ・・・」
「10年前にはイギリス王女を襲撃したテロリストを全滅させたとまで噂されるほどよ・・・!」
とりあえず寮監は常盤台生にとって恐怖の象徴なのだろうと上条は思った。
美琴の携帯電話に電話が来た。
それは白井からのものだった。
美琴は携帯を開いてボタンを押した。
「く、くろ―」
『お姉さま!一体どこにいますの!!これ以上寮監を誤魔化すことは・・・こ、これは寮監様『御坂はどこだ?』あ、あの・・・『罰則は連帯責任だ』お、お姉さ』
白井が悲鳴をあげる直前に美琴は聞きたくないと、携帯を閉じた。
だが、このままでは白井が可哀想だと、美琴が言った。
「安心しろ。俺がいる」
「当麻・・・」
「だから、行こう」
「・・・うん」
美琴に映る上条は、普段の10倍以上格好よく見えた。
「「申し訳ございませんでした」」
常盤台中学の寮の前、寮監に土下座をしている二人。
寮監はゴキ、ゴキ、と拳を鳴らしている。
「御坂、門限に遅れるほどの理由があるのだろう?」
「そ、それは・・・」
「寮監さん!俺が悪いんです!御坂は何も悪くありません!!」
「そうか、正直な男だな」
寮監は上条の首を掴むと、ゴギッ!と想像もしたくないような音をたてた。
『制裁』を受けた上条は悲鳴をあげることもできずに地面に倒れ込んだ。
「当麻!!」
「この少年に免じて、門限に遅れたことは勘弁してやろう」
「あ、ありがとうございます寮監様」
上条には悪いが、助かったと、美琴は思った。
「だが、」
「・・・え?」
けれどもそんなものは幻想だと、すぐに思い知らされた。
「不純異性交遊は見逃せんな」
「ひっ!」
ゴギッ!!と本日3度の『制裁』が行われた。
>>1です
投下しますよと
「――『書庫』内の10万3000冊により、防壁に傷をつけた魔術の術式の逆算・・・・・・失敗。該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術を組み上げます――対侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました」
インデックスの目の魔法陣は一気に拡大した。
それは首をかしげるインデックスの目線の後を追った。
「 。 」
人が理解できるものではない、けれども意味があるであろう『何か』を歌う。
そしてその魔法陣は大きくなり、そこから白い『何か』が上条へ向けて放たれた、
「ぐっ・・・・・・おおぉ・・・・・・」
右手を構え、打ち消そうとするも少し、また少しと押されている。
「当麻!!」
ビリビリ、と音がした。
おそらく美琴がインデックスを電撃で止めようとしたのだろう、けれどもインデックスの魔術だろうか、電撃が彼女に届く前に逸れた。
「何をやっている!まだ悪あがきをするつもりか!!」
騒ぎに気づいて入ってきたのは2人の魔術師だ。
神裂はインデックスを見て
「それは、『竜王の息吹』!?そんな、あの子は魔術を使えないはずじゃ・・・・・・」
「・・・・・・Fortis931」
たじろく神裂を尻目にステイルの懐から何万枚ものカードが飛び出し、部屋中に貼られる。
「そんなことはもうどうだっていい。もしかしたら助かるかもしれないなんて、そんな賭けにもう、やめたんだよ」
それに応えるのは上条だ。
「お前ら、ずっと待ってたんだろ。インデックスを救える日を、インデックスともう一度笑えるような日を!だったら諦めんじゃねえ!!今、こうしてチャンスが来てんだろ。諦めたって、挫けたって、もう一度立ち上がれるんだよ。いい加減始めようぜ、魔術師!!」
その言葉を聞いて、最初に動いたのは神裂だった。
「salvere000!!」
自らの意思、覚悟である魔法名と共に7本のワイヤーが舞う。
それが斬るのインデックスではない。彼女の足元の畳だ。
足場が崩れたインデックスの目線に沿うように『竜王の息吹』も上へと向く。それは天井をごと、空を貫いた。
「行きなさい、上条当麻!!」
邪魔するものがなくなった上条は走り出す。
一歩、また一歩と確実にインデックスに近づいている。
しかし、上条の目の前に破壊された天井から現れた羽が舞い降りる。
「っ!!その羽に触れてはいけません!!」
「くそっ!」
右手で1つ打ち消した。
その隙にインデックスは体制を立て直し、再び『竜王の息吹』が襲いかかる。
「イノケンティウス!!」
『竜王の息吹』を炎の巨人、イノケンティウスが受け止めた。
「――警告、第二十二章、第一節。炎の魔術師の術式の逆算に成功しました。曲解した十字教の教義をルーンにより記述したものと判明。対十字教徒用の術式を組み込み中・・・・・・第一式、第二式、第三式。命名、『神よ、何故私を見捨てたのですか』完全発動まで十二秒」
白い『竜王の息吹』から血のような真紅へと変わっていき、イノケンティウスも押されている。ルーンのカードがある限り無尽蔵に回復するイノケンティウスでさえ、いつまでもつかわからない。
そしてようやく、辿り着いた。
頭上には何十枚もの羽。目の前には何の罪もない、くだらない運命に振り回された無垢な少女。
どちらを選ぶかなど、決まっている。
(いいぜ神様、この世界があんたの思い通りになるって言うんなら、そのふざけた幻想を、この俺がぶち殺す!!)
右手がインデックスの額に触れ、バジンッ!と音を立てた。
「――警、こく。最終・・・・・・章、第、零――・・・・・『 首輪、』致命的な、破壊・・・・・・再生。不可・・・・・・消」
プツン、とインデックスの口から声が消えた。
(・・・・・・終わった)
インデックスを抱えるも、頭上には何十枚もの羽。
「当麻!!」
(・・・・・・最後に御坂の声が聞けてよかった)
インデックスを抱えた上条は動けない。
「御坂、――――――」
(だ、め・・・いや・・・)
そんな言葉、聞きたくなかった。まるで今生の別れのような言葉など。
見たくなかった。頭に羽が触れ、上条がインデックスを庇うように倒れこむ光景など。
「ぁ、嫌・・・・・・いやあああぁああぁああぁああ!!!!!」
少女の叫びの後に残るのは、虚しい静寂だけだった。
以上です。
戦闘シーンは、疲れます
さて、禁書目録編は終了しまして、続きを投下します
「みこと、とうまは?」
病室から出ると、インデックスが駆け寄ってきた。
彼女も心配しているのだ。
「いつも通りよ、行ってきなさい」
「うん!!」
きっと真実を知れば彼女は自分を責めるだろう。
だから決して言わない。
それは上条のためでもあると考えたから。
インデックスが病室に入るのを見ると、美琴は椅子に腰掛けた。
(何も出来なかった)
誰が悪い、なんてことは考えていない。
でももしあの時、動くことができれば。
あの時、上条を庇っていれば。
そんな後悔が美琴を襲った。
あれから数日経った。
「今日も来てくれたのか」
記憶を失った少年、上条当麻は現在入院中である。
自分が高校1年生で夏休み中であること。
インデックスを助けるために記憶を失ったこと。
それらはお見舞いに来てくれた美琴との会話から知ったことである。
「今日はあんたのためにお見舞いの品も持ってきたんだから」
「お、ありがとうな」
美琴と毎日会えて嬉しい・・・・・・のであるが、
(美琴が好きなのは、俺じゃない)
付き合っていたのは記憶を失う前の上条当麻だ。
だが決めたのだ。嘘をつき続けると。
「どうしたの?」
暗い様子の上条に美琴はお見舞いの品である林檎の皮を剥きながら聞いてきた。
「何でもない」
「そう」
美琴は林檎を一口サイズに切り分けると、それを爪楊枝で刺して上条へと差し出した。
「はい」
(え・・・・・・?、前の俺は美琴にあーん、をしてもらってたのか?)
前の自分が羨ましいと思う反面、ここで素直に口を開けてあーん、としてもらうのは恥ずかしい。
でもここで拒否をしたら怪しまれるのではないか。
「・・・・・・何してるのよ、病人は黙って食べさせてもらうものよ」
(あ、そういうこと)
納得したためとりあえず口を開けた。
恥ずかしいことに変わりはなかったが、口に入った林檎によりその考えは消え去った。
(う、美味すぎるだろこれ!!)
それは噛んだ瞬間、シャリッ、と小さな音を立てて水分が甘味と共に口いっぱいに広がった。
記憶のあるうちに林檎を食べたのは初めてだがすぐに上条はわかった。これは高級品であると。
「あ、あのつかぬ事をお聞きしますが、これ、おいくら?」
「ん?あんまり値札とか見てないけど、せいぜい1、2万程度じゃないかしら」
「なっ!」
平然と万単位の値段を『せいぜい』と言う美琴に上条は驚きを隠せない。
もしかしたらお金持ちのお嬢様ではないかと上条は考えた。
(そんなお嬢様と付き合ってた前の俺、一体何をしたんだ?)
前の自分がどんな人間だったのか、高級林檎を食べさせてもらいながら上条は考えていた。
以上!
・・・・・・これ、何編がいいかな?
乙
偽りの恋人編とか?(後に本物になることを見越して)
おはようございます。
>>225さんの『偽りの恋人編』を採用させていただきます。
それでは投下開始です
(今日は安く買えわね)
昼下がりのスーパーから出てきた美琴の手には買い物袋が握られていた。
中身は何の変哲もない、安売りされていた豚肉やネギである。
金銭感覚もお嬢様だった彼女も、上条当麻との恋人生活によって主婦的になってきたのだ。
(と言ってもそれは食材の買い出し時のみであり、2000円するホットドックを平然と買うあたり、彼女もまだまだお嬢様である)
そして彼女は現在、上条の部屋で料理中である。
だが振舞う相手は上条ではない。彼が預かることとなったインデックスである。
台所のまな板の上には刻まれた豚肉とネギ。
冷凍されたご飯を熱せらているフライパンに入れ、ボールの中の卵と同時にかき混ぜる。
ご飯がほどよく解されたところで卵と豚肉、ネギを投下してかき混ぜる。
「できたわよー」
「とっても美味しそうなんだよ!!」
出来上がった炒飯を大きな皿いっぱいに盛ってきた。
これだけでインデックス1人分だ。
美琴が初めてインデックスに振舞った日には、次の日の朝の分として作ったものまで食い尽くされて驚いたものだ。
「いただきます!!」
美琴が皿をテーブルに置くと、インデックスはグー掴みのスプーンでそれに襲いかかった。
「ちゃんと噛んで食べるのよ」
ガツガツモグモグムシャムシャと、おいしいんだよみこと!!というような顔をして頬張っているている。
そんなインデックスの姿を見ていると、上条のことを思い出す。
本来なら、この場には上条もいるべきなのに、と。
「どうしたのみこと?」
インデックスがスプーンを置いて美琴に聞いてきた。
「わたしはシスターだから、いつでも迷える子羊の話をきくんだよ」
誰かに話して解決する問題ではない。
けれど気を晴らす事くらいならと思い、美琴は話すことにした。
「今の私には、あいつに何ができるかなって」
「みことはみことらしく、とうまを待つべきなんだよ」
「私、らしく?」
「うん、とうまは何があっても絶対にみことのところまで帰ってくる。2人を見てればわかるんだよ。だから、待とう?」
美琴はうん、とだけ答えた。
今日で上条は退院である。
美琴は病院の前にいた。
「美琴」
上条が出てきた。
決めたのだ、待つと。
もしいつか、来るべき日が来たら本当のことを言おうと。
だから今は、笑顔でこう言った。
「おかえり」
以上です。
>>1です
それでは4レスを
上条は美琴の妹に缶ジュースを半分ほど持ってもらっている。
「ありがとうな、持ってもらって」
「いえ、大丈夫です。とミサカは平然と答えます」
しかし、先ほどの美琴の様子はおかしかった。
いつもは絶対にあんな表情はしないはずなのに。
「あー、美琴のことだけどさ、いつもはあんなんじゃないんだよ」
「なんのことですか?とミサカは聞きます」
「なんのって、さっき美琴と会った時のことだよ」
「ミサカは先ほどあちらから来ましたが、とミサカはミサカが来た方向を指さします」
美琴の妹が指差したのは上条がきた方向とは違うのだ。
美琴とのことは無かった事にしたいのか。
(俺がどうこうできる問題じゃないとは思うけど、仲直りしてもらいたいもんだよなー)
部屋へと帰るとインデックスはスフィンクス(インデックスが前に勝手に飼うと言い出した猫)と遊んでいた。
「ただいまー」
「お邪魔します、とミサカは挨拶します」
「おかえりとうま、みこと・・・・・・みことじゃない?」
やはりいつも美琴といるインデックスでさえ見間違えかけるほどだ。
「こいつは妹だよ・・・・・・あれ?」
まだ名前を聞いていなかったとうことを思い出したのだ。
「そういえば名前を聞いてなかったな」
「ミサカの名前はミサカです。とミサカはこのミサカがミサカであるということをミサカ自身の口から説明します」
ミサカミサカと言われると『ミサカ』がゲシュタルト崩壊しそうだが、何一つ答えになっていないのだ。
「いや、苗字じゃなくて名前を」
「検体番号のことをもうされているのなら、ミサカの検体番号を10032です。とミサカは」
サバイバルゲームのコードネームなのだろうか。
というかそれもおかしいのだが。
聞いていても埒があかない。
自分で呼び名を考えようと決めた。
(美琴妹・・・・・・違うなー。みさか、御坂・・・・・・)
「よし、御坂妹と呼ぼう」
「この猫はミサカにも懐きます。とミサカは驚きを隠せません」
「スフィンクスは美琴で慣れてるんだよ。クールビューティー」
せっかく頑張って呼び名を決めたのにインデックスは既に違う名前で呼んでいた。
「それではミサカはこれで。お邪魔しました。とミサカは惜しみつつもお別れの挨拶をします」
「じゃあな」
「ばいばい。クールビューティー」
美琴の妹改め、御坂妹はスフィンクス(インデックスが前に勝手に飼うと決めた三毛猫)を惜しみながら出て行った。
「じゃあそろそろ夕飯を・・・・・・あ」
そこで彼は思い出した。
彼があんな暑い中で出かけた理由を。
「とうま、どうしたの?」
「・・・・・・悪い、インデックス」
きっとインデックスインデックスは怒り狂うだろう。
「夕飯、買い忘れてた」
「とーうーまー!」
ガブリッ!!と頭を噛み砕かれかけた。
今日は久しぶりにお姉さまが門限までに帰ってきた。
「ねえ黒子、もし私が捕まるようなことをしたら、どうする?」
ベッドで寝っ転がっているお姉さまは突然そんなことを聞いてきた。
「はあ、自販機を蹴ることであれば、おやめになったほうがいいかと」
「あれは新入生の時に私の一万円札を飲み込んだからいいの!」
それにもうやんないし、とお姉さまが小声で言ったような気がした。
「違うの。もっとこう、学園都市の根底に関わるような」
お姉さまが何を考えてこんな質問をしたのかは白井にはわからなかった。
けれど彼女はお姉さまが望むであろう。白井黒子自身の答えを言うだけだ。
「もしそのようなことがあれば黒子は風紀委員として、お姉さまを捕まえるだけですの」
「・・・・・・なーに本気になってるのよ」
そう言って、美琴は白井の額を指でつついた。
「お姉ーさまー」
久しぶりにお姉さまの心からの笑顔を見れた。
以上です。
さっさと美琴を救いたいので3レス行きます
研究所を潰した程度で実験は終わらない。
ならば実験の前提そのものが間違っていると思わせればいい。
次の日、美琴が侵入した場所は学園都市でも重要な施設。
明日の天気から研究結果の予測までの全てを行う『樹形図の設計者』と唯一交信ができる施設だ。
たとえ『樹形図の設計者』が宇宙にあろうが、ここから美琴の能力で細工ができるのだ。
警備員も、警備ロボットすらいない。
それよりも気になるのは機材が埃をかぶっていることだ。
(誰もいないというより、施設そのものが放棄されてるの?)
美琴は能力で目の前の機械を起動させた。
(違う。申請自体はあるし、受理もされてる。でも1ヶ月近く前から1つも処理してない?)
施設の情報をPDAに映す。
それは英語でこう書かれていた。
『樹形図の設計者を搭載した人工衛星おりひめ1号は地上からの謎の攻撃により大破。現在調査中である』と。
研究所から出て、美琴は考えていた。
(もう計画を止める方法はないの?・・・・・・あれ、そういう問題じゃないのかな・・・・・・)
計画の前提そのものを変更させることは不可能だ。
(あれ・・・・・・?)
空を見上げて、気づいてしまった。
(・・・・・・そうよ。この街は徹ところに監視カメラがある。あんな実験が、バレないわけがないじゃない)
七年住んでいるこの学園都市が。
自分の居場所そのものが『敵』なのだと。
「・・・・・・私が、何したっていうのよ」
自身のDNAマップさえあれば筋ジストロフィーの子供達を助けることが出来ると。
それを信じて、彼女は渡した。
その結果がこれなのだ。
(壊してやる)
悲しみは絶望へと。
(あんな実験も、それを許す学園都市も)
絶望は怒りへと。
(全部、1つ残らず。私を苦しめるもの全て!!)
怒りは憎悪へと変わっていく。
以上です。
「ごめんなさいインデックスさんすぐ買いに行きますから!!」
「ホントだよ!私はお腹がすいて死にそうなんだよ!!だいたい今日はみことも来ないし!」
なんとかインデックスから開放されたところで携帯が鳴った。
「あれ、美琴から?」
上条は携帯を開いてメールを見た。
『今日は行けそうにない。ごめん』
(美琴・・・・・・)
昼間のことも関係しているのか。
何か抱えているのなら相談して欲しい。
「とうま?」
「あー、美琴はこれないらしい。今日は久々に上条さんが腕に振るいをかけますよっと」
美琴だって朝昼晩と3食用意してくれるわけではない。
夕飯は必ず作ってくれるものの、朝や昼は上条が作る日もある。
手の込んだものを作るわけではないが。
「えー」
インデックスは明らかに不服そうだ。
居候の分際で図々しいこと甚だしいのだが、美琴が来れないのは上条も残念だし、料理の腕が適わないのも事実だ。
「えー、じゃない。すぐに買ってくるから機嫌直せ」
いや、すいませんね。はい
今日は頑張った!!
数レス行きます
上条は夕飯の買い出し中だ。
「美琴、じゃない。妹か」
御坂妹は何やら地面に置いてあるダンボールを見つめている。
「何見てるんだ?」
上条は声をかけてみた。
「にゃー」
「にゃー?」
「と鳴く、四足動物です」
「つまり?」
「猫です。とミサカはこの猫から目を離せないながらも答えます」
そう答えた美琴の妹の手には先ほど買ってきたのか、牛乳を注いだペット用の器がある。
だけどもそれをダンボールの中に置こうとしない。
「やっぱり怖がっちゃうのか」
「はい、とミサカは答えます」
電気系能力者は電磁波のせいで動物に避けられがちである。
しかし、美琴はスフィンクスに餌付けをすることでなついてもらった。
「今は怖がっちまうだろうけどさ、その皿、置いてみろよ」
「しかし」
「いいからいいから」
「・・・・・・はい、とミサカは渋々従います」
御坂妹がダンボールの中に皿を置いた。
最初は子猫は怖がっていたが、安全だとわかったのか、皿の中の牛乳をペロペロと舐め始めた。
「な?それじゃあ上条さんはお買いものに」
「待ちなさい、とミサカは呼び止めます」
「どうした?」
「あなたはここに捨てられている可哀想な子猫を見捨てるのですか?とミサカは問いかけます」
確かに可哀想ではある。が、だ。
「だから俺に飼えと?ただでさえ猫一匹と大食らいの居候がいるってのに」
そんなことをすればいつか美琴に金銭面の世話になってしまう。
それだけは絶対に嫌なのだ。
「ではあなたはこの純粋無垢で可愛い子猫がこんな道端でのたれ死ぬというのに見捨てるというのですか!?とミサカは再び問いかけます」
「そんなに言うならお前が飼えばいいだろ」
「ミ、ミサカはこの子猫を怖がらせてしまいますし、とミサカは・・・・・・」
「はー、じゃあお前の家までは俺が持って行ってやる。だからこの猫はお前が飼え」
「そ、それなら、とミサカは承諾します」
仕方なく子猫は上条が抱えている状態だ。
(お、そうだ)
「ちょっと本を買ってくるよ」
いい事を思いつき、上条は本屋へと入っていこうとするが、
「あー、本屋入るのに猫抱えてるのはまずいなー」
「?」
「喰らえ!必殺猫爆弾!!」
ポイーッっと猫を放り投げる。
慌てて子猫をキャッチする御坂妹。
猫の身体能力ならあのくらい余裕で着地できるのだが、どうしてもキャッチしてしまうのが人間というものだ。
子猫は電磁波のせいか御坂妹の胸で少しばかり暴れていたが、安全だとわかったのか落ち着いた。
「ほら、大丈夫だろ?」
「は、はい」
子猫を撫でる御坂妹は本当に嬉しそうだ。
今度こそ、上条は本屋へと入っていく。
「ぐ・・・・・・ああ・・・・・・」
「ちく、しょぅ」
「あァあ、つまンねェ」
「ひっ!た、助けてくれ!――ガッ!!」
白い髪に色の無い肌。
学園都市第一位の少年、一方通行だ。
「ったくよォ、ピーピー泣き喚いて。静かに仕事を全うする人形どもだっていンのによォ」
コンビニで缶コーヒーを買おうとして路地裏を通った。
そうしたら不良どもに絡まれたから蹴散らした。
彼にとってはそれだけだ。
それが彼の日常なのだ。
(・・・・・・)
いつからだろうか。
超能力者である彼の周りはその力を利用しようとする研究員か、自身の力を過信しか馬鹿だけだ。
だから彼は力を欲した。
誰も近づけさせない。誰も傷つけたくない。
だから彼を絶対的な力を欲した。
そうすれば、あの頃に戻れると。
「あァ、もう時間か」
路地裏の先、本屋の前で立っている彼の実験相手。
2万体製造され、命令通りに動く人形。
それを見て実験開始の時間だと思い出した。
「おい、今日の実験相手はお前でいいのか?」
「いえ、本日の相手はこのミサカです。とミサカは挨拶します」
そう横から話かけてきたのはもう一人の実験相手は大きな楽器ケースを背負っている。
中身はどうせチャチな玩具だ。
「ややこしいンだよお前らは。さっさと行くぞ」
再び路地裏へと入っていく。
実験を始めるために。
とある研究所。扉は破壊され、機材は電撃によって破壊されていく。
襲撃者はたった1人の少女。
「あはははは!」
その表情は憎悪に満ちて、笑いながらも、泣いていた。
壁を焦がし、機材を爆発させて煤が美琴の制服を黒くしていく。
「そうよ!こうしてればいつか、いつか!!」
『(いつか?じゃあその日までに、一体どれだけの妹達が死ぬの?)』
それは幻聴か、自身の心の表れか。
そんな声が美琴には聞こえた。
「っ、うるさい!!」
感情に任せて辺りに電撃を撒き散らす。
「じゃあどうすればいいのよ!どうすればこれいじょうあの子達が死なずに済むっていうのよ!!どうすればあの子達が助かるって言うのよ!!!」
美琴はあるモニターが目に入った。
その画面には美琴と同じ姿が、血まみれで映っていた。
「また、実験が」
もう一人、白い少年が画面に入ってきた。
その少年は画面の少女へと近づいていく。
「おねがい、やめて・・・・・・」
美琴の嘆きも届かない。
白い少年が少女に触れた瞬間、画面が紅色に染まった。
(また・・・・・・死んだ)
結局、無意味だったのか。
また1人、妹達が死んでいく。
(・・・・・・もう、いいや)
そして憎悪は、諦めとなってしまった。
猫の飼育に関する本を買って上条は本屋を出るが、そこに御坂妹はいなかった。
(あれ?)
足元では子猫が御坂妹が用意してであろうアンパンを食べている。
(どこいったんだ?)
ふと、路地裏が目に入った。
上条は子猫を抱えてそちらへ入っていく。
「御坂妹ー、御坂妹やーい」
なんとなく、この路地裏にいるのではないかと思った。
が、やはり気のせいだったのか。
(ん?)
パキ、と何かガラスのようなものを踏んだ。
足元に落ちていた物には見覚えがあった。
(これ、御坂妹のゴーグル?)
しかし、何故割れているのか。
もしかしたら事件に巻き込まれたのか。
上条の足が早くなる。
少し走って、人の気配がない奥まで来た。
唯一そこにある『それ』を、見てしまった。
「み、さか、妹・・・・・・?」
信じたくなかった。
先ほどまで話していた少女が。
子猫を可愛がっていた少女が。
赤い池の上で、目を開いたまま、苦しそうな表情で倒れている光景など。
「う・・・・・・ぁ・・・・・・」
見てしまった。
彼女の股の間から出ている『それ』を。
本来、人間から出てくるものでない。
ピンク色の、ブヨブヨした『それ』を。
「うああああああ!!!」
とうとう逃げ出してしまった。
気づけば表通りまで出ていた。
上条にはやはり、信じられなかった。
(そう、だよ。死んでるわけねえよ。もう一度。もう一度だけ、確かめよう)
あの光景を否定したい。
きっと御坂妹は用事が出来て帰ったに決まってる。
そう決めつけようとして、再び入っていく。
もう一度あの場所に戻ってきた。
そこにはゴーグルの破片も、血の後もない。
「何をしているのですか、とミサカは尋ねます」
彼女と同じ声がする。
「ああ、ごめんごめん。急にいなくなるから探し・・・・・・に、」
しかし、そこにいるのは彼女だけでない。
十何人も同じ顔、常盤台の制服にゴーグルという同じ格好。
「ま、さか、クローンだとでも言うんじゃねえだろうな?」
「ミサカはお姉さまのDNAマップから生成されたクローンです。とミサカはあなたの疑問に答えます」
答えたのはまた別の『彼女』だ。
その腕で抱えている黒い、人が入れるような袋。
もし、あの光景が現実で、それを綺麗に片付けたのが彼女達ならば。
「おい、その袋、もしかして」
「ミサカです。とミサカは答えます」
何故そんなに平然と答えることができるのか、わからない。
同じクローンが、いや、1つの命が消えているのに。
「なんで、なんで平気なんだよ」
「実験ですから。とミサカは答えます」
「じ、っけん?そのために、死んでもいいってのかよ」
「被験者一方通行との2万通り、2万回の戦闘を行い」
「ミサカ達、妹達を2万体を殺害することにより」
言葉をリレーするように言葉を繋げる彼女達。
「一方通行を絶対能力者にするという目的という実験であり」
「ミサカ達はそのために作られた」
「実験動物ですから。とミサカは答えます」
「それでは。とミサカはあなたに別れの挨拶をします」
妹達が去っても、上条は立ち尽くすことしかできなかった。
どれくらい経ったかはわからないが、上条はあることを考えた。
(美琴は、このことを知ってるのか?)
それを知っていて、上条達の前で笑っていたのか。
いや違う。彼女はそんな人間ではない。
昨日様子からすると、それを知っていて、止めようとしたのかもしれない。
だけども上手くいかなかったのか。
(話をしないとな)
子猫を連れて、歩き出した。
夕日も落ちて、月が出てきた。
上条は常盤台中学の寮の玄関にいる。
電話やメールを使う気にはならない。直接、美琴の口から聞こうと思ったのだ。
どんな回答が帰ってこようと構わない。美琴なら大丈夫だと信じてるから。
勇気を出して、インターフォンを押した。
「あの、上条だけど、美琴か?」
(お姉さまと約束でも?)
だが、お姉さまは帰ってきていない。
だがもしかしたら、少しでもお姉さまのことを知っているのかもしれない。
『あれ、いないのか?あ、おい』
服の中で何かが暴れている。猫でも入れているのだろうか。
到底何かを知っているとは思えないのだが、
(・・・・・・お姉さま)
待っていると決めたのに。
お姉さまの口から聞くまでは、と。
だけどもこの男ならばと、そう思って、ボタンを押した。
「鍵は空いてますので、自分で入ってきてくださいな」
以上です。
300行ったー!
―とあるコンビニ―
結標「(はぁ…、??の素シリーズを使うのは上手く料理出来たとは言えないわ…、てか失敗する人は流石にいないでしょ)」
結標「(うーん、誰か料理できそうな人いないかしら…)」モンモン
数分考えるが思い浮かばない…orz
結標「(あれ?私ってもしかして友達少ない……?)」ガーン
結標「(あ、そういえばあのシスターさんって居候してたわね……。○○が作る料理は上手いんだよって)」
結標「(えーとたしか……、とうま?だったかしら。小萌の教え子だったはずだし明日聞いてみよう)」
ゼンブデ980エンニナリマス
カードバライデ
アリガトウガザイマシタ
飲み物以外にもサラダと永○園の??の素シリーズを購入した結標……。
ごめんなさい間違えました……
1レスだけですけど投下します
あれから上条の考えると胸がドキドキする。
心の奥から出てきた『それ』がなんなのか。
上条に会えば分かるのだろうか。とりあえず上条のお見舞いに行こうと、クッキーを作って(半分以上インデックスに食われたが)出かけた。
(うー、でもなんて言えばいいのよ)
切り出し方が分からない。
どうやってクッキーを渡せばいいのか分からない。
そもそも病室に入れるかどうかさえ今の彼女には問題なのだ。
「お、美琴じゃん」
「うにゃ!!?」
頭を抱えている美琴に話かけてきたのは上条だ。彼はまだ包帯も取れておらず、松葉杖をついている。
何故か見られたくなく、クッキーを背中に隠す。
幸い2人がいる鉄橋には、他に誰もいないため先ほどの奇声も2人以外聞いていないし、誰も見ていない。
「あ、アンタ、まだ入院中じゃ!」
胸がドキドキし、いつも通りでいられない。
「いや、入院費も馬鹿にならないしな。というか昨日の夜メールしたはずだぞ?」
「・・・・・・あ」
慌てて携帯を見ると、確かに上条から着信が来ていた。
そういえば昨日の夜はどんなクッキーを作ろうかと白井黒子のことも気にせずに考えていて、今日もいろんなことを考えていたから気づいていなかった。
「んじゃ、インデックスにも心配かけたし、早く家に帰るか」
歩きだそうとする上条を見て、胸が更に高まってしまう。
(あ、待って)
何かを考えたわけではない。『それ』とはまた違う。ただ、『来るべき時』は今なのだと思ったのだ。ここを逃したら、きっと機会は無いと。
待って!と美琴は上条を呼び止めた。
「・・・・・・本当は、あんたが記憶喪失だってこと、最初から知ってたの」
ピタ、と上条の体が固まる。
「ごめんな、ずっと隠してて」
お互いに後ろを向いていたが、きっと上条は申し訳なさそうな顔をしているのだろう。
理由なんて最初からわかっている。恨んでなどいないし、上条が謝るべきだとも思っていない。
「どうせ、誰にも心配かけたくなかったとかでしょ?」
美琴は振り返って、
「だから、さ。『あんた』の言葉で1つ聞きたい」
『彼』に問いかける。
「怖くなかったの?今回のことも、前に錬金術師と戦ったって言ってた時も」
それに対し、上条は振り返り、少しばかり笑って答えた。
「確かに怖かったけどさ、誰かが泣いているのを見ると、自然に足が動いちまうんだよ」
その言葉で、美琴は『それ』がなんのなのか、理解できた。
(やっと分かった)
ずっと心の奥底に溜め込んでいた『それ』がなんなのか。
「当麻!!」
上条に向かって走り出した。その手のクッキーも放り投げて。
「みこ、っ!?」
そして泣きながら、抱きついた。
「私が好きになった『上条当麻』は、ずっとここにいた。アンタは今でも私のこと、好き?」
「・・・・・・俺は、『上条当麻』は、御坂美琴のことが大好きだ」
あの時と同じ。
お互いの気持ちを知って、受け止めて。
幸せの口付けを交わす。
以上です。1レスと言ったな?あれは嘘だ。
はい。偽りの恋人編終了です。
とりあえずここで一区切りです。
>>1です。
酉ってのは、本人だとわかるパスワードみたいなもの。と調べたのですが、あったますか?
まあ、考えるのも覚えるもの面倒そうですし、SS投下すればそれが証拠かなー、と
というわけで、小ネタを。鉄橋編の夜です。
上条はいつもに様にベッドの横に布団を敷く。ベッドはインデックスに占領されているのだ。
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ、とうま」
いつもの様に眠りについた。
(・・・・・・水)
深夜、暑いのか目が覚めると喉が渇き、インデックスを起こさないように静かに台所へ行き、水を飲んだ。
喉も潤い寝ようと布団に戻ろうとしたが、あることに気づく。ベッドで寝ているインデックスは、ちょうどあと1人入れるスペースを作っているのだ。
(寂しい、のかな)
前に美琴が言っていた。インデックスは1年毎に記憶を消していて、上条と会うまでの1年は魔術師から逃げていたと。
だから温もりが欲しいのかもしれない。誰かに甘えたいのかもしれない。
「ぬにゅ・・・・・・」
インデックスも暑さで目が覚めてしまったのだろうか。
「喉、乾いたか?」
インデックスは寝ぼけ眼ながら首を横に振る。
「まだ夜中だ。もう一眠りしてろ」
頷いき、体を寝かせるインデックスはやっぱりもう一人分のスペースを空けている。
(しょうがねーな)
インデックスを寝かしつけたら布団に戻ろうと思い、上条はベッドに入る。
「あれ、とうま?」
「今日だけだぞ」
「ありがとう」
インデックスは上条のパジャマの袖を掴む。
やはりまだ不安なのか。上条はインデックスの頭を撫でる。
「お前が俺たちと会う前に何があったかは、詳しく知らない。でも今は俺もいるし、美琴もいる。ステイルや神裂だって。だから、何も怖くなんかない」
インデックスはうん、とだけ言い、再び眠りについた。
この日以降、インデックスはベッドでスペースを空けることをしなくなった。
以上です。
美琴「私とアンタがたくさんね」
上条「こんだけ美琴が多いと、妹達みたいだな」
美琴「そうね」
美琴(あれ、そういえば今コイツ、私のこと美琴って・・・・・・いや気のせいよね)
上条「グヘッ!」ガンッ
美琴「だ、大丈夫?」
上条「不幸だ・・・・・・にしても360度同じに見えてどこに進めばいいかわからなくなるな」スッ
美琴「え?」
上条「はぐれるといけないし、手、繋ごうぜ」
美琴「え、あ、うん」
美琴(何なんだろう、私1人で空回りしてるのかしら)ギュッ
上条(・・・・・・やべ、よく考えたら俺、美琴と手繋いでるじゃん!)
麦野「あー、中が気になるー。ねえ番外個体、監視カメラハックしてよ」
番外個体「無理言わないでよー。出来ないことはないけど、監視カメラに何かしらの装置を接続しないといけないし、バレたら捕まるのミサカだし」
打ち止め「ねーあなた、ミサカ喉渇いたって、ミサカはミサカはおねだりしてみる」
一方通行「しょうがねェ」スクッ
番外個体「あ、ミサカ、コーラね」
麦野「じゃあ私はカフェオレで」
一方通行「アツアツのイチゴおでんと青汁か。すぐに買ってきてやるから残さず飲めよ」
以上です。
浜滝?(滝壺が)カップ回しすぎて(浜面が)酔ってますよ
番外個体「結局あれ、どっちなのさ」
麦野「第三位が左にいて、置いたのはこっちから見て奥の方ね」
番外個体「それってつまり」
麦野「本当に面白いわね、あの2人は」
打ち止め「ハンバーガーおいしー」モグモグ
黒夜「おいし」ムグモグ
絹旗「超美味しいです」モグモグ
うわあああ!!!またやらかしました!!
今度は大丈夫です、ちゃんと本編を投下します
「起きろー!!」
「ブフォ!!」
ズドンッ!!と何かが上条に襲いかかった。
「何すんじゃおんどりゃぁー!!!」
体を起こし怒鳴り散らしながら襲撃者の顔を見る。しかしそれは、違いはワンピースしかない、姿形が美琴そのものの少女だった。
「おはよう、お兄ちゃん」
「起きろー!!」
「ブフォ!!」
ズドンッ!!と何かが上条に襲いかかった。
「何すんじゃおんどりゃぁー!!!」
体を起こし怒鳴り散らしながら襲撃者の顔を見る。しかしそれは、違いはワンピースしかない、姿形が美琴そのものの少女だった。
「おはよう、お兄ちゃん」
お兄ちゃん、オニイチャン、おにいちゃん?
何が何なのか訳がわからなった。
朝起きたら目の前に美琴にお兄ちゃんと呼ばれた。
ここで上条は3つの仮定を立てる。
仮定1、朝早く起きた美琴の妹(義妹も可)プレイ。
仮定2、美琴の量産型妹がバグった。
仮定3、ただ美琴にそっくりなだけの上条自身の妹。
彼は1つずつ解消してくことにした。
まず、仮定1は『×』だ。美琴は上条の横で、えっ、なに!一方通行の逆襲!?などと言いながら起きたばかりなのだ。
仮定2も『×』だ。妹達ならば語尾に『と、ミサカは』とつくはずだからだ。
仮定3も『×』である。事前情報として、上条の家族は両親だけのはずなのだから。
(じゃあ一体誰!?)
上条の頭が混乱している最中に、美琴が少し眠そうだが声を出した。
「あの、どちらさま?」
謎の少女は美琴の方を見て、満遍の笑みで答える。
「初めまして!上条当麻の従姉妹の竜神乙姫です。もしかしてあなたはお兄ちゃんの彼女?」
以上です。
そういや、今日初めて竜神乙姫の設定が見ました
SSとは関係ないけど、乙姫ちゃん見ると、ブロックの精神能力者の子を思い出す
>>1です。続き投下します
「・・・・・・は?『エンジェフォール』?」
「エンジェルって、天使?」
いきなり『天使』などと言われてもわけがわからない。科学の街で育った2人でなくとも、天使と言われても理解ができるはずがない。
「なんだ、知らないのか」
2人の反応を見て、土御門はそう言った。
「知らないって・・・・・・だからその『御使堕し』ってのは何なんだよ」
「簡単に言えば『天使』をこの世に呼び出すものだぜい」
「いや、『天使』を呼び出すって・・・・・・そもそも『天使』の存在を認めることだってできないのよ」
美琴が土御門に問いかけ始める。それに対し、土御門はサングラスの奥を光らせながら、
「でもあるだろ?科学では証明できないことをやってのけるものが」
「まさか、魔術?」
「正解だぜい、彼女さん」
しかし何故、土御門が魔術の存在を知っているのだ。彼も学園都市で住人であり、住む世界が違うはずなのだ。
上条と美琴という、『科学の世界の住人』も、インデックスという『魔術の世界の住人』がいたからこそ知りえたのだ。
「何故魔術を知っているか、って顔をしているな。それは俺も魔術師だからだ」
「いや待てよ。能力者が魔術を使ったら、体が・・・・・・」
上条にはわかる。三沢塾で魔術を使った塾生徒は体が弾けた。美琴だってインデックスから聞いて知っているらしい。
「そうだ。俺も元々は優秀な魔術師だったんだが、学園都市に来て魔術と引き換えに得たものは付け焼刃にもならねーレベル0」
魔術師が魔術を捨てたというのに、軽い感じの土御門を不思議に思う。
「・・・・・・、元々あった力を捨ててまで学園都市に来た理由は何なんだよ」
「それがにゃー、イギリス清教に学園都市に潜入しろって命令されてにゃー。ま、3日もしないでバレたけど」
イギリス清教。インデックスやステイル。神裂が所属しているといっていた組織。もしかしたら彼も『必要悪の教会』なのかもしれない。
「で、舞夏と自分の命の代わりに科学と魔術の双方を行き来する2重スパイになったってわけだ」
先ほどまでとまったく同じノリで話を続ける。
「だから土御門さんは禁書目録争奪戦、三沢塾戦、絶対能力者進化計画。禁書に至っては情報やったの俺だし。お前らが知っている『闇』を俺は知っているし、お前らの知らない『闇』の更にそこも俺は見てきた」
そして土御門は上条から美琴へと視線を移し、彼女に言う。
「だから言っておくぞ超電磁砲。お前が見た『闇』なんてまだまだ『浅い』」
その言葉で美琴の表情は険しくなる。
「あの子達が死んでいったことを、『軽い』?」
「俺だってあんな糞みたいなのはさっさと潰したいと思ったさ。でもな、舞夏の命が関わってんだ。無暗なことはできない。わかるよな?」
「このこと、舞夏は知っているの?」
「舞夏は何も知らない。いいか。絶対にこのことは舞夏に言うな。もし舞夏を巻き込んでみろ。たとえ自分の命を犠牲にしても、後悔させてやる」
睨み合う2人をどうしようかと考える上条だが、美琴の方から口を開いた。
「いいわ。この話は終わりにしましょう。『御使堕し』とかいうもの気になるし。でもアンタを信用したわけじゃないから」
「信用してくれなくて結構。こっちは『御使堕し』を阻止できればいいからにゃー」
「そろそろ本題に入るか、ねーちんも来るし」
「「ねーちん?」」
「土御門!あれほど勝手に行くなと」
「いやー、悪いぜいねーちん」
2人はねーちんと呼ばれた女性に見覚えがあった。
ステイルやインデックスと同じ、イギリス清教に所属し、かつてはインデックスの記憶を消すために動いていた女性。
「「神裂火織・・・・・・?」」
「お久しぶりですね。上条当麻、御坂美琴」
すいません、以上です
どうも>>1です。
偽りの恋人編終わってから劣化ぎみでしょうか?
投下します。
「・・・・・・」
昨夜は散々だった。
母親と入れ替わっているインデックスを守る為に両親の寝室に美琴と共に突撃し、刀夜が寝るまで見張っていたのだ。
その間美琴はインデックスに寄り添って可愛い寝顔を見せてくれたのが唯一の救いか。
土御門と神裂もこの『わだつみ』に泊まっていたようで、朝、下の階に降りると上条と美琴、サーシャ=クロイチェフ以外の全員が集まっていた。
「おはよう当麻」
「あー、おはよう」
「おはようだぜい、カミやん」
「おはようございます。おじ様、おば様」
美琴も眠い目を擦って降りてきた。
「そうだ当麻。昨日渡しそびれたが、この前の出張のお土産だ」
そう言って刀夜が差し出したのは、虫のようなものが入ったケースだった。
「何、これ?」
「インドへの出張の時のだ」
「わざわざインドへ行ってこれ!?」
「いえ、このような物は現地では魔除けとして扱われています」
割り込んで来たのは神裂。
彼女は魔術師らしく説明を開始した。
詳しいのですね。出来れば詳しく教えて欲しいです。と刀夜が言ったが為に、神裂は嬉しそうに刀夜と話している。
仕事をする時の彼女とは違うので少し戸惑う上条と美琴。
それらを見て土御門はニヤニヤ笑っている。
『御使堕し』や火野神作についての手がかりは何もない。
美琴と客室のテレビを見ていると、ニュース番組の途中で速報が入った。
『速報です!昨日、刑務所を脱走した火野神作死刑囚が発見されました!火野死刑囚は家屋に侵入し、立てこもっているようです。現在機動隊が火野死刑囚を――――』
画面に映るのはある家屋の空からの映像。
その家屋に、上条は見覚えがあった。
「ここ・・・俺の家だ」
前に刀夜が送ってきた、詩菜が趣味のパラグライダーで撮ったという新居の写真の場所そのものだった。
急いで携帯を取り出し、座標を割り出す。
立ち上がろうとしたところで土御門が入ってきた。
「カミやん!ニュース見たか!?」
「ああ。急ぐぞ土御門。あそこは俺んちだ!」
火野神作を捕縛する為に上条家の新居へ向かうためにタクシーを呼び止めたが、問題が1つ起きた。
上条と美琴。土御門、神裂。それにサーシャ=クロイチェフ。
タクシーに入りきらないのだ。
すると土御門がこんなことを言った。
「ねーちんは大丈夫だとして、サーシャ=クロイチェフ、お前はどうだ?」
「回答一。問題ない」
「だ、そうだ。さっさと乗っちまうぞ」
「いや、あの2人どうすんだよ」
「放っておいて大丈夫だぜい。あの2人ならタクシーに追いつくはずだにゃー」
そう言うと、土御門はさっさとタクシーの助手席に乗ってしまった。
上条家の新居の近くで降りると、神裂とサーシャ=クロイチェフがいた。本当に走って追いついたのか。
新居の方を見ると、大量の機動隊員が新居を囲っていた。
「これじゃあ近づけないな」
どうするかと上条が尋ねると、美琴が他の家の茂みに向かいながら上条に言った。
「さすがに全員の目を掻い潜る事はできないけど、人数が少ない場所なら把握できるわ」
美琴についていくと、巡回している機動隊員は確かに少なかった。
しかしそれだけで避難警報の出されている一帯を突破できない。
その時には土御門が、機動隊員の視界にうつらない瞬間を突いて先へと進んだ。
そして新居間近。どこもかしこも機動隊員で一杯であり、
「土御門、ここは任せてください」
神裂は立ち上がり、どこかへと行ってしまった。
それから少しして、上条宅を包囲していた機動隊員達は、どこかへと消えてしまった。
「な、何があったんだ?」
「ねーちんがやってくれたんだぜい」
土御門によると、神裂が周囲に結界のようなものを張って、機動隊員達に他人の家を、上条宅と誤認させたらしい。
本当に魔術って便利だなと思ったが、神裂は聖人といって、特別らしい。
「お待たせしました」
上条の家。この中に火野神作はいる。
玄関は鍵がしまっている。どこから侵入したのか。上を見ると2階の窓が空いている。出かける際に閉め忘れたのだろうか。
「私達が中へ入り、鍵を開けましょう」
そう言うと神裂はミーシャ=クロイチェフと共にジャンプした。
予備動作も、特別な術式を使う様でもなかった。ただの身体能力で自身の身長の倍以上の高さまで届いてしまった。
神裂が玄関を開け、家から出てくる。
「お待たせしました。ですが火野神作はまだ発見されていません」
中へ入り探索を開始する。
二階はミーシャ=クロイチェフ、神裂と土御門。
一階は上条と美琴だ。
最初に開けたのは洗面所。2人分の歯ブラシの横に、アフリカ辺りにありそうなお土産がある。刀夜が出張で買ってきたのだろう。
そのお土産みたいなものが浴室にも置いてある。一体誰だけ買ってきているのだろうか。
「・・・・・・ここには何も無さそうね」
次に来たのはリビング。大き目のテレビに茶箪笥。
窓とカーテンを締め切られ薄暗く、何か異臭を感じる。
それが何か、気づいてしまった。
「っ!ガスが漏れてる」
「え!?」
「とにかく火花を出さないようにして元栓を閉めない・・・・・・と」
振り返って見てしまった。
どこを見てるかも分からない目で、美琴目掛けてナイフを振りおろそうとする火野神作の姿を。
「みこっ!!」
しかし、ナイフが美琴に突き刺さることはなかった。
「ぐ、ぁっ!」
美琴は振り返ろうとしようともしなかった。
ただ腕を後ろへ力一杯伸ばす。それだけで火野神作を怯ませた。
「がぁ!!」
振り向きざまに美琴は火野神作のナイフを持つ手首を掴んで捻り落としたナイフを掴んで、その刃先を火野神作の首筋めと向ける。
「さっさと『御使堕し』のこと洗いざらい吐きなさい」
美琴の目はまるで、ゴミクズでも見るかのようだった。
以上です。
このままでは放棄しかねないのでもう一度誓わせて。
完結させます!
どうも>>1です。
とりあえず言い訳させて。
「御使堕し編おわったら」
現在は火野神作を全員で囲んでいる。
火野神作は抵抗をしようとしない。
観念したからではなく、発狂して襲いかかったところを土御門に人間の急所を何か所も打たれ、激痛で動けないのだ。
「ではまず、あなたの言う『エンゼルさま』というものについて教えてもらいましょうか」
「エンゼルさまエンゼルさまエンゼルさま。いつでも俺を助けてくれただろ今回だって助けてみせろよ」
火野神作はブツブツとうわ言のように呟く。
「つーか、本当にいるのかねー『エンゼルさま』って」
ふと、土御門がそんなことを言った。
「ふざけるな!お前もあの医者と同じことを言うのか!!」
その言葉に、上条は引っかかった。
「……医者?」
「ねぇ、まさか」
美琴も、引っかかりに気付いた。
「……二重人格」
その場の全員が凍りついた。
「もし『人格A』と『人格B』が入れ替わってるだけだったら」
「あの、二重人格の場合って、魂とかはどうなるんですか?」
神裂も土御門も何も言えなかった。
「ふざけんな!本当にエンゼルさまはいるんだエンゼルさまは、エンゼルさ…まは……」
『エンゼルさま』否定されたショックか、先ほどの激痛のせいか、そのまま火野神作は意識を失ってしまった。
「……火野神作は犯人じゃない」
上条の言葉はそのまま、手掛かりがまたなくなってしまったことと同じだった。
どうしたものかと美琴が辺りを見回すと、ある物が目に映った。
刀夜が海外出張で買ってきたであろうお土産の数々の中にある一枚の写真。
上条はそれを見つめ、そして。
「……父さん」
「おじ様」
夕日に照らされた浜辺にいる男、上条刀夜。
世界全体を巻き込んだ魔術『御使堕し』の発動者。そのはずなのに。
「こんな時間までどこに行ってたんだ?母さんも心配していたぞ」
2人の目に映ったのは、長い時間どこかへ行っていた息子とその彼女を心配する『父親』だった。
いや、だからこそ。
「何で、あんなものに手を出したんだよ」
「……そうか、見てしまったか」
そして刀夜は、決心をしたように2人を見て、
「これは美琴ちゃんにも大事な話かな。当麻、お前は幼稚園を出てすぐ学園都市に行ったからあまり覚えてないかもしれないが、小さい頃、周りになんて言われてたか覚えているか?」
上条当麻には夏休み以前の記憶はない、何も言わずに首を横に振る。
それを見て刀夜は、
「疫病神だよ」
躊躇わずに、はっきりとそう言った。
以上です。
挨拶の続きは「御使堕し編終わったらもう少しマシになるはず」
>>1です。
投下します。
刀夜は淡々と、話を続けた。
「ただ他の子より転んだり怪我をする。くじ引きはいつも外れて、じゃんけんでは必ず負ける。いつしか当麻の周りにいると自分まで不幸になると言われ始めた。子供だけじゃない。それを止めて叱るはずの大人でさえも、そんな噂話を信じて、遠ざけた。いつしかそんな噂は町中に広まって、とうとう借金に追われた男に逆恨みで追い回されて刺されたよ。そんな当麻をマスコミは格好のネタだとよくわからない霊能番組にまで引っ張り出して、そこの霊能力者でさえも、当麻の不幸をどうしようもないと言ったさ」
自分の過去がそんなに悲惨だったのかと、上条は驚愕した。
美琴は黙り込んでいる。一体何を思っているのだろうか。
「私は怖くなったんだよ。不幸がいつか当麻を殺してしまうんじゃないかと。だから超能力さえも科学で証明された、そんな不幸を否定する学園都市に送ったんだ。手紙だと、前のようないじめは受けてないようだったけど、それでは満足できなかった。当麻の不幸がなくらなければ。だから私はオカルトに手を染めた」
それは息子に幸せになって欲しいという父親の願いだった。
たとえ息子が赤の他人を家族だと言い、自分をもう二度と、父親だと思わなくなっても。
見ず知らずの人間が、自分の家族だと言っても。
「…………ふざけるなよ」
『御使堕し』。それは人間の魂。役割を入れ替える魔術。
結局それは、上条の不幸を誰かに押しつけることなのだ。
確かに上条は右手の幻想殺しのせいで不幸だ。
「俺はこの夏休みだけでも3回も入院したよ。いろんな事件に巻き込まれた」
それでも、インデックスを地獄の連鎖から救い出すことができたのは。
「でもそれで助けることの出来た人がいる」
姫神秋沙を三沢塾から解放したのは。
「出会えた人がいる」
妹達をあの実験から助け出したのは。
「俺はそれ胸を張ってる。不幸だなんて言わせねぇ」
いつだって上条だったではないか。
「たとえ『不幸』で何度死にかけても、俺には自慢の友達がいる。インデックスがいる。そして何より、美琴がいるんだ。だから俺は世界で一番『幸福』だ!!」
「おじ様、私は当麻さんが不幸体質で何度も事件に巻き込まれていることを知っています。たとえ命に関ることでも、一緒に乗り越えていこうと決めているんです。何があっても私が守っていきます。それは恩返しとかそういうのじゃありません。好きだから、心から愛しているから」
刀夜はしだいに、フッと笑いだした。
「ははっ、何だ、当麻、不幸じゃないどころか幸せを共有できる彼女までできて。結局私は何もできなかったか」
憑き物が取れたようにすっきりした顔で、刀夜は言った。
「あんな観光地で買えるお土産程度じゃ意味無いってわかってたのにな。今度から出張のお土産は菓子にでもするよ。そっちの方がまだ母さんも喜ぶ」
「…え?」
お土産程度じゃ意味が無いと、刀夜はそう言った。
「父さん、母さんどこ行ったかわかるか?」
「ん?今頃海の家で皆と休んでいるはずだが?」
今頃、本物の上条詩菜はどこかの誰かと入れ替わっているはずなのに。まるで、インデックスが上条詩菜であると思っているかのように。
「あの『御使堕し』を発動させたのは……」
「エンゼルフォール?ご何だいそれは。あいにく流行には疎くてね」
刀夜の答えに嘘偽りは感じられない。
それでも上条や美琴、土御門らと違い、一般人であるはずの上条刀夜だけが入れ替わっていない。
(だけど『御使堕し』の影響を受けている。それじゃあもしかして)
そこでザッと、砂を踏む音がした。
振り返るとそこには、
「ミーシャ=クロイツェフ……やめろ、待ってくれ!父さんは何も知らないんだよ!!」
『御使堕し』の犯人が刀夜であると知ったミーシャ=クロイツェフは刀夜を抹殺することで事件を解決させようとしている。
昨晩火野神作を腕を圧し折ったようなことをされては、刀夜には耐えられないし、上条と美琴で阻止する自信もなかった。
「解答一。その懇願を受け入れなれない」
「待ちなさい!」
ノコギリを構え、踏み込もうとするミーシャ=クロイツェフを止めたのは、神裂火織だった。
「神裂……?」
「遅くなってすみません。どうしても気になることがあったので」
神裂は堤防から飛び降り、上条とミーシャ=クロイツェフの間に降り立つ。
「本来ミーシャとは、ロシアの男性に付けられる愛称です。それを女性につけることはありません。先ほどロシア凄教に問い合わせてきました。本当にミーシャ=クロイツェフなる人物がいるのかと」
神裂は片足を一歩前へ前へ出して、
「ロシア凄教の答えは、そんな人物はいない。代わりにサーシャ=クロイツェフならいると」
さらに腰の鞘に手をあてる。
「受け取った写真はたしかに私たちが見ているミーシャ=クロイツェフでした。私や土御門ですら、写真の中ではいれかわっているのに、です」
「でも、『御使堕し』を発動させたのは父さんだろ!?」
「はい。それは間違いありません。ですが2人とも、この魔術が何を呼び出すものか、覚えていますか?」
『御使堕し』は天使を地上へ呼び出す魔術。
誰かの体に宿り、元からいた魂は追い出されて別の体に行き、元の魂はまた追い出される。
そうして世界中の人間の魂と肉体が入れ替わる。
「でも、どう見ても女の子にしか見えないじゃないですか」
「いるのですよ。性別が存在しない天使の中で、唯一男でもあり女でもある天使が」
そして神裂は、腰を落とし、構える。
「引きなさい『神の力』。私にこの刀を抜かせないでください」
『神の力』は、手のノコギリを捨てた。
そのまま海面まで行くと、そこを中心に巨大や魔法陣がドーム状に現れ、夕日に照らされていた世界が一気に暗くなった。
『神の力』はその魔法陣へと浮かびながら移動した。
「強制的に夜にすることで自らの力を強化させましたか」
上条当麻、御坂美琴!と神裂は叫んだ。
「あなたは刀夜氏を連れて非難を」
「神裂さん、私も!」
一緒に戦うと言う美琴を、神裂は止めた。
「たとえレベル5であろうとも、『神の力』に対抗する術はないでしょう。大丈夫です。私は神裂。神を切り裂く者です。あなたはあの2人を守ってください」
美琴は頷くと、上条と刀夜と共に防波堤の向こうへと行った。
海の家『わだつみ』まで来れば、とりあえずは安心だろうと思い、上条は一息つけた。
「当麻!あれは一体何なんだ!?」
混乱する刀夜にの質問に上条も美琴も答えられない。
2人も突然のことでよくわかっていないのだ。
「2人ともお疲れさん。後は俺がやっとくぜい」
軽い調子で土御門が入ってきた。
そして突然、プシュッと、スプレーのようなものを吹きかけた。
意識を失った美琴を、土御門が抱き止めると優しく床に寝かせた。
「土、みかど?」
「この場で超電磁砲を最大の脅威だからな。ちょっくら眠ってもらったんだにゃー」
上条は何も言わずに土御門に突っ込む。
が、パンチは軽く避けられ、腹に一撃を食らわされ数歩後ろに下がった。
「感心しないぜい。戦いで一番やっちゃぁいけないのは、何も考えず闇雲に突っ込むことだ」
「な、んで、神、ざきは」
「ねーちんは甘いからにゃー。人を殺す選択肢なんて絶対に選ばない」
が、俺は違うぞと、いつものように二やけながら言い、
「10秒だ。10秒耐えたから褒めてやる」
上条が体制を立て直す前に仕掛けた。
心臓、あばら、肺。
土御門は確実に人間の弱点に打撃を与えていく。
上条のような路地裏のケンカ程度では決して身につかない、人の殺し方を、彼は知ってそれを活かす技術と経験を持っている。
必死に耐えようとしたが、反撃の隙すら与えられず、床に倒れこんだ。
「……8秒か、まあまあだったが、残念だったな」
「もう止めてくれ!」
上条を守るように、刀夜は土御門に立ちはだかった。
「とぉ、さん。やめ、てくれ」
「事情はわからないが、私が原因なんだろう?これ以上息子を巻き込むわけにはいかないさ」
「上条刀夜。俺に勝てるとでも」
「確かに私は酒とタバコで肺はボロボロ、おまけに運動不足だ。でも、私は上条当麻の父親だ!」
嬉しかった。命をかけてそう言ってくれることが。
だから上条は立ち上がれた。
「当麻!」
「あれだけやられたまだ立ち上がれるのか。だけど立っているだけで精一杯だろ?」
「そう、だよ。でもな、俺は上条刀夜の息子だからな!!」
叫べるだけ叫んだ。もう一歩も動かない。
立ち向かおうとするも、体は限界だった。再び床に倒れこむ。
「……さて、準備はこれぐらいでいいか。それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ。ほんじつのステージはこちら。まずはメンドクセエしたごしらえから」
土御門が懐から取り出したのは拳銃やナイフでなく、何かが入ったフィルムケース。
玄武、白虎と、それらを部屋に四隅に投げた。それらは淡く光を放つ。
「ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする」
それは明らかに魔術。
だが学園都市の能力開発を受けた人間は魔術を使えないはずだ。
「ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを」
土御門は口や目から血を垂れ流している。
「お、まえ、まさか!」
「ピストルにはけっかいを。ダンガンにはシキガミを。トリガーにはテメエのてを……悪かったな、お前らだったら絶対止めると思ったからな。実はあれ、小物1つで別の大規模魔術発動されるようになってたし」
最初から土御門は刀夜を殺す気などなかった。
『御使堕し』の術式を消滅させる為の魔術を阻止させないために上条と美琴の動きを封じた。
「悪いにゃーカミやん。俺って実は、天邪鬼なんだぜい」
視界全体が光に包まれると、次第に暗くなっていった。
「…………」
目が覚めたら病室の天井はこれで4回目。
学園都市で能力開発を受けた以上『外』の病院にはいれられない。
「当麻」
その視界の隅に美琴がいるのはこれで2回目。
しかし、ここまで気分が悪いのは初めてだ。
「美琴、『御使堕し』は?」
「いつの間にか元に戻ってたわよ」
「そう、か」
あの時、土御門は命がけで『御使堕し』を止めた。
本当にあれしか道がなかったのか。もう少し時間をかければよかったかもしれない。上条は悔やんだ。
「……土御門」
「カーミやーん!呼んだかにゃー!?」
聞きなれた軽い調子の声
金髪にサングラスと派手なアロハシャツ。
信じられないが、確かにそれは、そこにいる。
「何で生きてんだよ。お前魔術使っただろ」
「いやー、確かに魔術は使ったけど、俺の能力は肉体再生のレベル0。ぶっちゃけあと数回なら魔術の使用に耐えれるんだけど、ぶっちゃけメンドいし、イギリス清教にばれたら限界まで使えとか絶対言うし」
まーそんなことでお二人さんお幸せに―。などと吐きながら病室を後にした。
一体何しに来たんだと。
「あれでも、俺の友達なんだよな」
「ま、まあ、良い人…なのかな?」
だけどこれだけで騒動は終わらない。
インデックスが病室に入ってきた。怒り心頭である。
「……いじめられた」
「「あ」」
どうやら入れ替わっていた人間は元に戻ると辻褄が合うように出来ているらしい。
というかいろいろあって忘れていた。
朝からの蹴り、垂直生き埋め、その後の放置等、インデックスに対しての仕打ちの数々を。
「どうせ私は邪魔なんでしょ!一生乳繰り合ってろバカップル!!」
うわーん!!とインデックスらしからぬ暴言を吐いて泣きながら走り去る。
「ごめんねインデックス誤解なの!」
美琴もインデックスを追いかける為に病室を出ようとする。
「じゃあね当麻。またお見舞いの品買ってくるから!!」
勢いよく閉められた扉を音をたて、反動で隙間が出来ていた。
まってー!と廊下を駆ける美琴の声が病室まで聞こえてくる。
「…まあこれも幸せ……なのか?」
騒がしくても楽しいかな、と上条は微笑んだ。
以上で『御使堕し編』終了です。
次こそいちゃいちゃさせたいです。
\ \ ∠ィ __ ヽ! ハ ノ} __
\、 ) n_n_ //,-―-、ヽ{\ノ;;>ーy―<;;;;ノイ´ __ ヽ
\ ̄ /, ∩ b`! (/イ二二`ヽ{;;;;;/ ̄,、v,、 ̄\;;{<二ヽ__
>、 込乂ム_> ∠イ_/ ̄〈;;/ / / 黒 ヽ 、i、ゝ、 \`ー―
、 /___\ く> /━'¨¨´. ∠イ/レ \_}{_/レⅥ ゝ`━‐、二
..\、ヽ// ̄ ̄ .) n ハ (\ ヽ: : : :.{.〃.-=*>仝<*=-.∨} : : : : :/
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┏━━━┳┳┓) 七n /、、 Ⅵ: : : ハ、. |fくエエエエ}| .リ :「| |〃
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ヾ\. ┗━┛_ /厶__ \,′ ノ .| |: : . . ヽ: : : : ><: : 「 ̄!: ハM∧
\ヽ /_ └'^ー┘ 「ヽ .イ |/`i:.-==<: : : : : : : :>くΣ;;;;;;;;;
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{ i! i|、* i、ト、ト.i ! |/ \! イ .イ レ'}__ }__,、-――-、-―く ` ^
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\!ハ! iト、" _ > \ヽ/ ノ ノ / {:i:i:i:i{_,ィ,》ノ;|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:└‐f7´
ヽ_rくヾ_>.-` 丶 \. ヽ ノト- ′ / |:i:〃ヽ._!ハ、:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i /トィ ´
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ト二二ノ: : イ! .\、| 只i / / ) |;;!{ }iト (. ヽ ┏┛┏┛
ヽ\ ヽ !ハ \ \ | ゲコ太↑ l/ rtィ;;リ {!;;j⌒ヽ┏┛┏┛
ト: : ヽ V ! \ 、 ノ { / `″ ´┏━┛┏┛-=
ハ: : : :\ \ .>.___/  ̄ ┗━━┥\
どうもお久しぶり>>1です。
最終回、投下します。
その後も小物や服を見て楽しむ2人。時間などすっかり忘れてしまっている。
インデックスは今頃どうしてるかな、と美琴が思うと、正午を告げる音が聞こえてくる。
「……ご飯、どうしよう」
「……作り置きなんてしてないよな」
今からスーパーへ向かい学生寮に戻っても昼食を食卓に出せるのは一時を過ぎてしまう。
どこかで買って帰ろうと考えて、ふと辺りを見回すと行列が目に入った。美琴にはわからないが有名なハンバーガー店なのだろうか。
お腹を空かせた白い悪魔、インデックスを鎮めるにはあれしかない。
「そこで待ってて当麻!」
美琴は上条をその場に待機させ、一人で歩道橋を渡り、反対側の行列に並んだ。
暑いけれども、上条が食い殺されるよりはマシである。
(ったく、美琴のやつ)
1人待ちぼうけをくらう上条は反対側の歩道で行列の暑さと戦っている美琴を見守っていた。
美琴のことだ。代わりに並ぶと言っても絶対に譲らないだろう。
「おや、また貴方ですか」
つい数時間前に聞いた声に、思わず上条は顔をしかめるが、さすがにそのままでは相手に悪いだろうと、一息つけてから振り返る。
「ああ、また会ったな」
相変わらず『さわやか』という言葉を具現化したような人間である。嫌な気持ちが前面に出ている自分とは対極であり余計にいらついてしまう。
「御坂さんはどうなされました?」
「あいつなら、あそこだ」
海原の問いに、上条は美琴が並ぶ行列を指さしながら言う。
「そうですか」
「……」
すぐに会話は途切れた。
気まずいと、上条は動揺していた。
デートの邪魔だから出て行けとは言えず、けれどもこれから仲良くしましょうなどとも決して言えない。
美琴に早く戻って来てほしいと願いながらチラリと見る。
「ん?あれって……」
行列に走っていく男。それは服装も、髪型も、遠くて良くは見えなかったが、顔も海原光輝そっくりだ。
「海原、お前兄弟とかいたのか?」
「いえ、私の家は一人っ子ですが」
「でも、確かに」
海原と瓜二つの男は行列に割り込んでいった。
「偽物、かもしれませんよ。肉体変化という能力までありますからね」
もし見間違えでなく、本当に海原と瓜二つだったら。
わざわざ海原に化けた理由。
あの行列の中に誰がいるか。
「ま…さか、美こ――っ!!」
突然背中に激痛が走る。肺から空気が一気になくなり息が出来なくなる。
「――!げほっ、ごほっ!ちく、しょう。こっちが」
「まったく、あのまま寝ていればよかったものを」
海原は懐から黒い石でできたナイフを取り出した。
「残念ですが、貴方にも死んでもらいます」
そのナイフに何か、危険なものを感じて必死で距離を取る。
海原がナイフを翳す。すると走る上条の近くにあったベンチが木材とネジに、バラバラに『分解』された。
少しでも距離を取りながら隠れようと、路地裏に入る。
あのナイフは魔術だろう。
対抗策を得るために走りながら『専門家』に電話をかける。
『は、はい!カミジョーです!』
一人で留守番でできるように、電子レンジすら使えないインデックスに美琴と2人で頑張って電話の使い方を教えたのがやっと役に立った。
「インデックス!」
『とうま!?こんな時間までどこにいるの!私はもうお腹ペコペコなんだよ!!』
「それは悪いと思ってる!後でハンバーガー食わせてやるから!それよりも、魔術師に遭遇した!!」
『魔術師!?とうま、相手はどんな霊装を?』
インデックスに心配をかけることはわかっている。
それでも10万3000冊の魔導書の知識を借りたいのだ。
「黒い石でできたナイフみたいなもんを空にかかげて、近くのベンチを分解しやがった!」
『それは、トラウィスカルパンテクウトリの槍だね』
「トラウィ……何だって?」
『トラウィスカルパンテクウトリの槍。アステカの神話が元で、黒曜石のナイフで金星の光を反射させて光に触れた対象を分解させる魔術だよ。でも本物なら世界中の人間が死ぬはずだから、それはレプリカだよとうま』
10万3000冊の魔導書の知識を存分に発揮させるインデックス。
こんな場面だが、初めてインデックスに関心した気がする。
「ありがとうインデックス。じゃあな!」
『あ!とう――』
携帯を仕舞う。
電話に気を取られて建設途中のビルの工事現場についた。
「もう逃げ場はありませんよ」
追いつかれた。彼の言う通り、これ以上の逃げ場はない。
魔術師は槍を空にかかげ、謎の光が上条に向かって飛んできて、上条は右手で防ぐ。
光はいくつも飛んできた。その一つが建設途中のビルの柱を分解させた。
その上から数本、鉄骨が降ってきた。
(このままじゃすぐに崩壊しちまう!)
すぐに決着をつけなければいけない。
近くにあった集められた砂の中に入ったスコップを掴んで魔術師に襲いかかった。
振ったスコップは大きく外れたが散った砂が魔術師の目をくらませた。
「っく!無駄な足掻きを!!」
魔術師は空へとトラウィスカルパンテクウトリの槍をかかげるが、何も起きない。
「な!槍に砂が!!」
「それでその槍は使えないだろ!」
槍の砂を服で拭こうとする隙を上条は見逃さなかった。
魔術師へと殴りかかる。
魔術師が防ぎ、右手は槍に触れ、槍はバラバラに砕け散った。
「このぉ!!」
武器を失った魔術師は殴りかかろうとするが、ただのケンカならば上条にも分はある。
魔術師のパンチを避けて上条は魔術師の顔面に一撃を食らわす。
魔術師の顔にヒビが入り、崩れたところから褐色の肌が露わになった。
(でも、どうして)
命がけの戦いの中でも考えていた。分らないのだ。
あの時、美琴を自分のものにすると宣言した時の魔術師は嘘偽りを感じなかった。
解るのだ。自分と同じで、美琴が本当に好きなのだと。
だからこそ、美琴の命を狙う理由が。
「何で、海原に化けてまで、仮面を被ってまで美琴に、海原光輝の偽物になってまで美琴!?」
「……偽物じゃあ、いけませんか」
ポツリと、魔術師が恨めしそうに呟いた。
「貴方が、貴方さえいなければ私だってこんなことはしませんでしたよ!!」
その叫びに反応するかのようにまた一本、鉄骨が降ってきた。
「貴方の力は強大です。錬金術師アウレオルス=イザード、学園都市第一位の一方通行の撃破だけでなく、貴方を中心にイギリス清教に第三位の御坂美琴。もう組織は個人として見逃せない。『上条勢力』という一つの組織が出来上がってしまっているのですよ!!」
結局は、上条当麻が悪いと。
誰かが泣いていたから。それだけを理由に戦った結果が、彼を苦しめていた。
そして、自分がいたから、美琴の命も狙われたと。
「組織の命令で自分は御坂さんを殺そうとしました。でも、できなかったんですよ。海原光輝だって素直に皮を渡してくれれば見逃してやるつもりだったんですが、能力で冷凍状態になったのか、槍でも分解できませんでしたよ」
この魔術師は、美琴を傷つけない為に、ここにいる。
「せめて貴方さえ始末できれば」
「そんなこと、させるわけねぇだろ」
上条は、美琴を悲しませない為にその拳を握る。
お互いに、真っすぐ駆けだす。
勝負はすぐについた。
魔術師よりも早く、上条の拳が届いた。それだけだ。
倒れこむ魔術師と上条の間に、支柱を失った鉄骨が何本も降りかかった。
「っ!!」
動けない魔術師を助けようと駆けより、そして。
何が起こっていたのか。それを理解する時間は美琴にはなかった。
実は今まで自分に話しかけていた海原光輝は偽物で、ついさっき行列に割り込んできたのが本物だとか、ハンバーガーを受け取ってから慌てて上条の元に戻ったら上条がいなくて。轟音がしたから駆けつけたら上条と海原の偽物が殴り合いをしていた。
決着がついたからかと思えば2人の間に鉄骨が降ってきたので咄嗟に電撃で落下位置をずらしたので怪我はないと思う。
(あーもうどうなってんのよ!?後で当麻を問い詰めてやるんだから!!)
意識を取り戻したのか。倒れた鉄骨で挟み込むようにして動けなくなっている偽物は上条に話しかけている。距離があり、詳しくは聞こえなかった。
上条は微笑んで偽物に向かって言った。
「―――――――――」
聞こえた。それだけははっきりと。
これ以上、上条を見ることが出来ずに、上条から隠れるように支柱の裏に隠れた。
(何で、何であんなこと平気で言えんのよ!?)
告白をした。キスもした。それでも顔を赤ら目をそらす程の言葉だった。
上条があそこまで自分のことを想って事が嬉しかった。その想いに答えたかった。
だが今の美琴にはどんな言葉で返せばいいかわからなかった。どんな顔をして上条の前に出ればいいかわからなかった。
だからたくさんのハンバーガーが入った紙袋を抱きしめながら、美琴は先ほど上条と別れた場所まで逃げ出した。
自分は何も知らない。何も聞いていないと。
それから少ししてからだ。
「一体どこに行ってたのかしら」
「ごめんごめん。道に迷った人がいたからな」
どうせ上条はあの件を美琴に知られたくないようだ。いつもの様に心配かけたくないからだろう。
「ふーん。まさか女の人じゃないでしょうね?」
「違うって。まさか美琴さん、嫉妬していらっしゃるんですか?」
「するわけないでしょ。当麻は私だけの当麻でしょ?」
「そーだな」
美琴はクルリと向きを変えた。その先には上条の寮がある。
「早く帰りましょう。今頃インデックスがお腹を空かせて倒れてる頃かしら」
「そ、それはやばいな」
2人はインデックスが待つ寮へと帰り始める。
ふと、上条は美琴が持っている紙袋を掴んだ。
「こういう時は、男が持つもんだろ?」
「いいわよ別に……でも」
ちょっとだけ甘えるだけなら、今の美琴でも十分できる。
「そのまま、手、離さないでよ」
「……わかった」
それだけ言って、上条はそのまま紙袋を離さなかった。
夏の暑い日差しは、何かに遮られることもなく上条と美琴を照らしていた。
以上で完結です。
HTML依頼、頑張ってやってきます
土御門「御使堕しは魂と肉体を入れ替える術式だ。カミやんはその右手のお陰で影響を受けていないと考えるべきだな」
上条「でも待てよ。俺はともかく美琴の見た目は変わってないぞ。右手でも触ってないし」
土御門「いるだろ?カミやん。超電磁砲と瓜二つの人間が」
上条「っは!まさか妹達!?」
美琴「一体何の話をしているのよ」
本当に終わり!
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けしからン!もっとやれェ!