美琴「とある科学の少女分派」 (50)

【御坂美琴】

――私には、好きな人がいた。

とても好きで、とても好きだから、素直になれずに、私の想いはいつも空回りするばかり。
加えてその人は超が付く程の鈍感で、私の気持ちに気付く素振りも見せてはくれない。
でも、自分から想いを伝える勇気も無い。

私は、気付いていた。
私の恋は、子供がする恋と同じだということ。
恋に恋をしているだけなんだと。
でも、きっとこの『好き』という気持ちは本物なのだろう。

だけど、『好き』というだけ。

それ以上の感情を、私は持ってはいなかった。
そう気付いているのに、私はその人を想い続けていた。

だから、私は疲れてしまった。
自分でも気付かない内に、その終わらない片思いを負担に感じ始めていたのだ。

――そんな時だった。


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常盤台中学、教室

その日の授業を全て終え、下校しようと席を立ったところで、私は担任の教師に呼び止められた。
また研究機関からの呼び出しか何かだろうか、と辟易しながらも、手にしていた鞄を机に置き、教師の話を聞く。
それは私の予想を反し至って普通の内容で、職員室の照明のスイッチが不調らしく、それの修理の依頼だった。
特に断る理由も無かったので、私は快く承諾し教師と共に職員室へと向かった。

修理は思いの外時間がかかったものの滞り無く終了した。
教師達の感謝と称賛の言葉を背に、私は先程に比べやや薄暗くなった廊下に出る。

そこで、鞄を机に置いたままにしている事に気が付いた。
特に持ち帰らなければならないような理由も無かったが、同様に持ち帰らない理由も特に無いので、私は一旦教室へ戻ることにした。

職員室から少し離れた階段を登り、二階に上がる。
1年の教室がズラリと並んだ廊下は、普段からは考えられない程に静かで、時間的に見ても残っている生徒がいないことは明らかだった。
静寂と夕闇に包まれたその光景は、どこか不気味さを感じさせる。

だから、階段脇のクラスを通り抜ける時に物音が聞こえ、私はビクッ、と全身を強張らせる程に驚いてしまった。

息を潜め、中の様子を窺うように耳を澄ます。
すると、小さく声が聞こえてきた。
更に注意深く、その声に耳を傾ける。

――それは、女性二人の、快楽に浸る、矯声だった。

私は、その場から立ち去れなかった。

羞恥心と罪悪感から、逃げ出したい気持ちでいっぱいなのに。

――なのに、私は、少しだけ開かれたドアの隙間から『それ』を見ていることしかできなくて…。

教室の中央、机に座る女の子と、その子に覆いかぶさるようにして立つ女の子。
その二人の顔には、見覚えがあった。

――湾内さんと、泡浮さん。

黒子のクラスメイトで、付き合いこそそこまで多くはないものの、私の友達でもある。

けど、今の二人からは、私と話す時のような、柔らかで落ち着いた印象などまるで感じられなかった。

「んっ…ねぇ絹保…気持ちいい…?」
泡浮さんは貪るように湾内さんの身体にキスをして、スカートの中に入れた手をいやらしく動かし続けている。

キスをする度、湾内さんの身体がピクリ、と痙攣し、それを見た泡浮さんは優しく微笑み、またキスをする。

「ぁっ!んぅっ…まあや…っ…き、きもちいい、よ…ああっ!」
顔を真っ赤に染め、どこか焦点の定まらない瞳で恍惚の表情を浮かべる湾内さん。
普段の彼女からは想像もできないような、そのなまめかしい表情と声に、私は顔を紅潮させ、息を荒くした。

「絹保…可愛い…」
泡浮さんは胸に顔を埋め、膣内に入れた指を一気に奥まで突いた。

「~~~~っ!!!!!」
湾内さんの身体がビクン、と跳ね、泡浮さんの手が更に激しく動く。

「っ!?だ、駄目っ…声、我慢できな…ぅああっ!!!!ィ、イクッ!イッちゃうぅ!!!!ま、まあやぁ…っ!」
胸にキスをする泡浮さんの顔を持ち上げ、瞳を潤ませた、切なげな表情で見つめる。

「絹保…好き」
そう言って、泡浮さんは最後に、唇にキスをした。

それは、互いの唾液を求め合うような、背徳的で、官能的な、とても美しいキス。

あぁ…なんて綺麗なんだろう。
私は、そんなことを思った。

そして、キスをしたまま、湾内さんは身体を大きく痙攣させ、絶頂を迎えた。

気付いた時には、既に学生寮に帰ってきていた。
行為を終え、帰ろうとする彼女達から慌てて逃げたのだが、そこからどうやって寮まで来たのか記憶が無い。

それほどまでに、私はあの光景に心を揺さぶられていた。

常盤台は女子校であり、女の子同士で付き合っている子がいっぱいいるのは知っていた。
女の子同士でキスをしている姿だって何度も見ている。

でも、あんなキスは、初めてだった。
とても幸せそうな二人の顔が、頭を過ぎる。

――私も、あの綺麗な景色の一部になりたい。

そう思った時、私の中で『何か』が失われた気がした。
それは、私にとって大切なものだったのかもしれない。

でも、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

「ただいま帰りましたのー」
完全下校時刻の直前になって、黒子が帰ってきた。

私もかなり遅くなった方なのに、それより遅いのだから、風紀委員の仕事で何かあったに違いなかった。

「黒子、何かあったの?あんまり遅くて心配したんだから」
言いつつ黒子の姿を見ると、制服が所々焼け焦げていた。
それに、かなり疲れている様子だ。
発火能力者との戦闘があったのは一目で解った。

「黒子!大丈夫!?」
駆け寄って、その小さな身体を抱きしめる。

「お、おねえさま…?」
黒子は始めこそ困惑していたが、少しして、私の胸に顔を埋め安心したように笑った。

「ごめんね…肝心な時に側にいなくて」
優しく頭を撫でてあげる。
すると、黒子はとても恥ずかしそうに俯いて、黙ってしまった。
そんな彼女が、とても愛おしく感じられた。

「お姉様…今日はなんだか優しいですの」
まだ少し恥ずかしそうにしながら、黒子が言う。

たしかに今までの私なら、調子に乗った黒子の反撃を恐れて、抱きしめたりはしなかっただろう。
好きな人がいるからとか、女の子同士だからとか、くだらない言い訳を並べて自分を納得させて、本当はただ恥ずかしさから逃げていただけ。

今の私は、そんな過去の自分が許せないでいた。
可愛い後輩に優しくしてあげることもできないなんて、それでもこの子の先輩なのか、と。
黒子はこの小さな身体で一生懸命頑張っているのに、それを褒めてやることもできないなんて。
こんなにも、自分のことを慕ってくれているのに。

「黒子…いつもご苦労様」
チュッ、と黒子のおでこに軽いキスをする。
私も少し恥ずかしかったが、黒子の方も相当に恥ずかしかったようだ。
顔を真っ赤にして、アタフタと声にならない声を上げている。

「えっと、頑張ったご褒美…に、なったかな?」
えへへ、と照れ臭さで少しはにかみながら聞いてみる。

黒子は、疲れなんて全て吹き飛んでしまったかのような笑顔で…

「はい…もちろんですのっ!」

と、答えてくれた。

その笑顔に、私の心の疲れも、一緒に癒された気がした。
そして、これも一つの『綺麗な景色』なのだと、そう思うことができた。

その夜は、黒子と一緒に寝ることにした。

最初は遠慮していた黒子だが、私がどうしてもとお願いすると、最後には折れてくれた。

私は、今までできなかった分を取り戻すように、黒子が眠るまで、そして自分が眠ってしまうまで、黒子の頭を撫で続けた。
黒子が幸せそうに笑ってくれると、私も幸せな気持ちで笑うことができた。

そんな、とても温かな夜だった。

翌朝、頭に何か温かい物が触れているのを感じて目を覚ますと、ベッド脇に座った黒子が、私の頭を撫でてくれていた。

「おはようございます、お姉様」
言いながらも、黒子は撫でるのをやめない。
昨日と同じ、幸せそうな笑顔だった。

「黒子…昨日はちゃんと眠れた?」
私も昨日と同じ、幸せな笑顔で返す。

「はい。疲れなんか吹き飛んでしまうくらい、幸せな一夜でしたの」
少し照れ臭そうに、頬を紅く染める。
そして…

――私達は、とても自然に、キスをした。

黒子は唇を合わせるだけで満足げだったが、私はそれでは止まらず、自らの舌を彼女の小さな口に滑り込ませ、その先にある小さな舌を舐め回す。

「んっ!…ふぁ…お、おねさまぁ…」
トロン、とした恍惚の表情を浮かべる黒子。
その顔を見た瞬間、私はもう自分の気持ちを抑えられなくなった。

黒子の肩を抱き、優しく、ベッドに押し倒す。

「黒子…今日は、二人で遅刻しちゃおう?」
私は、荒くなる息を抑えることもなく、黒子を見つめた。

「…おねえさまっ」
その言葉の意味を想像してか、黒子は真っ赤な顔をさらに紅潮させる。
そして、震えるような瞳で私を見つめると…

「…やさしく、してください」
囁くように、小さく、言った。

「くろこ…」
首筋に舌を這わせる。
黒子の身体は少し汗ばんでいて、とても甘い味がした。

「ひゃっ!」
黒子の身体がピク、と跳ねる。
いつもの調子からは想像できない可愛らしい反応に、私はとても興奮した。
舌を首筋から鎖骨へ、移動させていく。

「あっ…そこ…恥ずかしい、ですの…っ」
胸に差し掛かったところで、黒子が両手で私の頭を抑えつけた。
よほど恥ずかしいのだろう、ブンブン、と首を振って抵抗の意志を見せている。
私は、お構いなしにその小さく愛らしい乳首にキスをした。

「ぁ…~~~っ!」
黒子は声が出ることを恐れてか、片手で口を抑える。
抵抗が弱まった隙に、私は執拗に乳首を舐め回す。

「んっ!んぅ…っ!ん~…!?」
抑えた口から漏れだす喘ぎはとても官能的で、私は頭の奥が痺れるような感覚に襲われる。

「はぁ、はぁ…くろこ、とってもかわいいよ」
口で乳首を責めながら、右手で性器に触れる。
既に濡れているようで、下に敷かれたシーツには小さなシミが広がっていた。


「~~~っ!?」
ビクン、と黒子の身体が大きく反り返る。
首や耳まで紅く染めながら迫り来る快楽に耐える姿は、淫靡で、どこか妖艶な雰囲気すら感じさせる。

「黒子の可愛い声、聞きたいな…」
空いている左手で、黒子の口を抑える手を外す。
そのタイミングで、性器の外側を愛撫していた指を黒子の中へ挿入した。

「ひぐ…っ!」
膣内は思っていたよりも締め付けが強く、黒子は苦しそうな声を上げた。

「ごめん…痛かった?」
おそらく、自分でする時は指を入れるということをしないのだろう。
外側を撫でた時の反応が良かったのもそのせいかもしれない。

「すみません…少し、痛かったです」
黒子は正直に答えてくれる。
私も黒子に痛い思いはさせたくなかったので、ゆっくりと指を引き抜いた。
代わりに、顔を性器の目の前まで持っていく。
毛も生えそろっていない、綺麗なピンク色をしたそこは、溢れ出た愛液で妖しく光り、とてもエロチックだ。

「ぁぅ…あまり見られると、恥ずかしいです…」
恥ずかしがる黒子も可愛いよ、と言いたいところだが、本人にしてみれば本当に恥ずかしいのだろうから、茶化すようなことはせず行為を続けることにする。
両手を使い性器を拡げる。
それは本当に綺麗で、私は我慢できず、舌を挿入する。
今度は抵抗なく受け入れられ、私は味わうように黒子の膣内を舐め回した。

「ぅああっ!?そ、それ駄目ぇっ!!!!き、気持ちよすぎますぅ…っ!!!!」
黒子は経験したことのない快楽に身をよじる。
私は黒子が感じてくれたことが嬉しくて、今度は激しく、舌を出し入れする。

「んあっ!ぁあっ!!!おねえさまぁ…!!!!!黒子、もうっ!!!!!!」
黒子が腰を浮かすのを確認して、私は舌を引き抜き、再び指を挿入する。
適度に解れた膣は、私の指をすんなり迎え入れた。

「くろこ…愛してるっ」
私は、黒子にキスをした。
黒子の愛液でヌルヌルになった舌を、小さな舌と絡み合わせる。
グチュグチュ、といやらしい音を奏でながら、互いの舌を絡ませ合う。
それは、とっても幸せな表情で。

「~~~~ッ!!!!!?」

そして、黒子は私が驚いてしまう程大きく跳ね、そのまま絶頂に達した。

「はぁ、はぁ…ン…ッ」
黒子はピクピク、と身体を小さく震わせていた。
とても気持ち良さそうだけど、どこか、終わらない快楽の余韻を怖がっている様子だ。

「黒子…もしかして、イッたの初めて?」
私は、優しく黒子の身体を抱きかかえ、髪を撫でる。

「よ、よく解らないですけど…多分、そうですの…っん!」
ピクッ、と全身を痙攣させながら、不安と快感でどうにかなってしまいそうな、恍惚の表情で答えた。

「うふふ…大丈夫。私が抱きしめててあげるから、その快感を受け入れるの。そしたらもっと気持ち良くなるから」
ギュッ、と黒子をしっかり支えられるように強く抱きしめる。

「はい…んっ…ぁ…っ!」
とても気持ち良さそうに、黒子は私の腕の中で余韻に浸り続ける。
私は、何度も彼女の髪にキスをした。

「貴様らぁ!一体今何時だと思って…」
バン!と勢いよくドアが開かれ、学校に行く前の最後のキスをしていた私達と、寮監の目が合ってしまった。
私達は唇を合わせたまま硬直する。

「…すまない。ノックくらいするべきだったな」
コホン、と咳ばらいをして寮監は廊下に戻り扉を閉めた。
そして、ガンガン!とノックなのか破壊活動なのか解らないような音がして、ようやく状況を理解した私達は、慌てて身体を離し居住まいを整える。

バン!

「貴様らぁ!一体今何時だと思っている、さっさと学校へ行かんかっ!遅刻の罰は帰ってから言い渡すから覚悟しておけ!」
どうやら、今見たことは無かったことになるらしい。
…さすが、女子寮の寮監様だった。

ズカズカ、と音を鳴らして寮監が部屋から去っていった。

私達は、もう一度、キスをする。

それは、とても綺麗な光景だったろう。

――だって、私達は今、とっても幸せなのだから。


【御坂美琴】~完~

すいません
勢いで書きました反省しております

書き溜めは無いんですが続きは考えてるので、書いたらsage進行でひっそり投下しようと思います。

とりあえず読んで下さった方に感謝

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