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研究員「安価でデジモンを進化させる」
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デジタルモンスター研究報告会 season2 後編
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デジタルモンスター研究報告会 season2 エピローグ
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…
「以上が我々ジャスティファイアが、レアモン掃討作戦を行ったときの顛末だ」
パルタス氏が重い口ぶりで報告をした。
まさか、レアモンが潜んでいる鉱山の内部にヤツのアジトがあり、そんな激戦が繰り広げられただなんて…。
もしも先に知っていれば加勢に行けたかもしれないのに。
「我々も想定外だった。拠点があったことだけでなく、ヤツの戦力規模も。まさかレベル5デジモンを持ち出してくるとは…」
メタルティラノモンでしたっけ。
強かったんですね。
「シューティングスターモンの特攻をくらって死ななかったデジモンは初めて見た。しかもAAAの口ぶりからして、自己修復をしようとしていたようだ。もう一撃食らわせてやれば倒せたかもしれないが…、天使のようなデジモンがジオグレイモンの邪魔をした」
…蛮族さえ滅ぼせば、ヤツの戦力の大部分は削げたと思ったのに。
「くそ…!情けない…我々は国家防衛用の最終戦力だ!それがこのザマとは…!たかがクラッカー如きに!遅れを取るとは!こんなことでは血税を払っている国民達に示しがつかん!」
AAAの戦力が、ジャスティファイアの総攻撃に対処できるほどだなんて…。
これからメタルティラノモンを使って暴れるんでしょうか。
「ヤツが復活して暴れ始めたら手が付けられない…!手を打てないものか…」
我々の方でもセキュリティデジモン育成は進めています。
コマンドラモンがケンキモンになってからは、透明化能力を喪失したのでデジタマ採取ができてませんでしたが…
パルモンが進化したシュリモンが補い余るほどの活躍をし、次々と優秀な野生デジモンのタマゴを収集してます。
「…メガ、ハックモンとやらはまだ完成しないのか?そいつの力を使ってAAAのメインサーバーへ襲撃するという展望だったはずだが」
「AAAに通用するレベルにはまだ至ってないよ。それに、まだ足りないピースがある」
「足りないピース?」
「それは『AAAのサーバーへ侵入した状態でネットから切断されたら、サーバー内に閉じ込められる』という問題を解決できていないという点だ」
それはそうだ。
シュリモン達がAAAのサーバーに襲撃を仕掛けても、システムをネットから切断されたら…!
…ん?
確かAAAは、我々のサーバーにアイスデビモンやプラチナスカモンなど、『絶対に失いたくないデジモン』を送り込んできたよね。
今の話と同条件のはずだけど…
そのへんのリスク意識はどうなってたんだ?
「それがさ…ナニモンっていたでしょ。あの酒飲んでたオヤジみたいなデジモン。あいつはデジタルゲートを開く力を持っている。それがあれば、たとえスタンドアローンのシステムからでもデジタルワールドへ脱出できるんだ」
そういやいたな…!
AAAが蛮族という強大な戦力を持ちながら、あの事件のときまで本格的な襲撃に踏み込めなかったのは…
ナニモンの完成を待っていたからか!
「だから僕達がAAAのサーバーへ突撃する場合にも、僕達側でナニモン同様にデジタルゲー卜を開きデジタルワールドへ脱出する力を持つデジモンを開発しなきゃいけない」
アプリモンスターズの領域か…
で、できそう?メガ。
「…技術的にはできるかもしれない。だけど…うーん…なかなか難しい問題があってね」
なんで?
「デジタルゲートを開くソフトは、デジクオリアの関連アプリケーションだ。つまり権利元はカンナギ・エンタープライズだ。つまり本来、ネットワークライセンスをオンライン認証しなきゃ使っちゃいけないものなんだ。それをおいそれとアプモンに組み込んでいいものか…」
それを聞いたカリアゲが首を傾げる。
「アプモンを開発してるデジタルアソートは、カンナギと提携してるんだろ?だったらいいんじゃねーか?メガ」
「うーん…神木さんに頼めばどうにかしてくれるかな?彼はカンナギエンタープライズの全権を持ってるわけじゃなく、あくまで日本支部の管轄なんだよな」
パルタス氏は歯ぎしりをする。
「国家存亡級の危機だというのに、権利がどうこうで渋るほど神木のヤツは間抜けではないだろうが…、もしも神木のヤツが渋るようなら我々から話をする」
は、話をするって?
「超法規的措置をする」
そ、そんな…なんかヤクザみたいな…!
「はん?ケンよ。国家というものは古今東西、暴力装置の独占のおかげで成り立っているものだ。それを綺麗に飾り立てて御立派そうに見せかけているだけにすぎない。本質的に貴様が言ったそれと大差ない」
国防に関わってる人がそんな事言っちゃダメですよ!
「分かっているさ。我々はあくまで白い側を名乗る秩序の守護者だ。デジモンの開発においても白い手段を取らねばならん。面倒極まりないがな」
…そこがAAAとの違いなんでしょうね。
奴らは『黒い方法』でデジモンを育成する。
「忌々しいが、面倒な段取りを積まねばならん我々とはデジモン育成のスピードに差が出るのは致し方ないといえるな。ああ忌々しい、滅ぼしたいったらありゃしない」
それは同感です。
それで、確認できたAAAの戦力は?
「ムゲンマウンテンとやらに、ワイヤーゴーレモンという熱戦照射能力を持つデジモン達がいた。8体ほどはムシャモンやスターモン達が倒したが、それからも四方八方から熱戦が飛んでくることから察するに、まだまだいるだろう」
うげ…。
我々が死ぬほど苦労して育てた成熟期を、そんなにわんさか保有してるなんて…。
「あとは天使型のダルクモンと、そして…メタルティラノモン。ヤツは仕留めておきたかった…!チャンスはあったのだ…!だが、我々は国家防衛戦力だ。分の悪い賭けをするには、背負っているものが大きすぎる…!」
…惜しいですね。
我々のように身軽に動ける戦力が、そのサポートをできていていれば良かったんですが。
メタルティラノモン…
目下最大の脅威。
AAAがヤツを企業のサーバーにけしかけて暴れさせたらどうします?
「…唯一対抗できるのはシューティングスターモンだが…。そう無駄打ちできるものではない」
厄介ですね…。
…AAA視点…
本当に危なかった。
メタルティラノモンの自己再生能力は、あの場で即戦線復帰できるほどのものではない。
シューティングスターモンの突撃で大ダメージを受けた後に、ジオグレイモンから追撃を受けたらメタルティラノモンといえど死んでいただろう。
しかもメタルティラノモンが受けたダメージは、想定以上に凄まじいものだった。
5日で完治…などできるはずがない。生体組織や体内の機械類がメチャクチャだ。
今、一応死んでいないといえるのは、プラチナスカモン由来の粘菌型デジモンの特性に由来するものだ。
メタルティラノモンの体細胞は、それらが単独でアメーバのように振る舞うことができる性質を受け継いでいる。
故に今のこいつは粘菌の集まりが辛うじて栄養供給されて生きながらえているにすぎず「メタルティラノモン」という一個体の戦力としてはほぼ死んでいる。
レベル4デジモンの戦力か?あれが…
ジャスティファイアはとんでもない隠し玉を持っていたものだ。
それに…クソ!
苦労して育て上げたワイヤーゴーレモンが、11体中8体も殺された。
こいつらを育て上げて教育するのにどれだけ手間がかかったかを思い返すと苦虫を噛み潰したような表情にならざるを得ない。
だが、ハッタリとダルクモンのおかげで、どうにか本拠地を護りきれた。
ムゲンマウンテンには、ゴーレモンの熱戦を様々な箇所から発射できるように、故アイスデビモンが遺した特殊な光ファイバーケーブルが張り巡らせてある。
残り3体までゴーレモンを減らされてしまったが、ムゲンマウンテンへ潜伏し、この光ファイバーケーブルを使ってアジトの各地から四方八方の熱戦を浴びせることで、実際のワイヤーゴーレモンの数よりも多くいるように見せかけることができるのだ。
「自分の手札を実際より強いように見せかける」。
慎重な相手にほど良く効くフェイクだ。
しかし、メタルティラノモンが中途半端に生き残っていることが、我々クラッカーチームの活動の妨げになっている。
こいつはレベル5デジモン。
レベル4とは比較にならないほど高いDPを持つが故に、飯を食う量も半端じゃない。
それは瀕死の現在でも同じことだ。
臓器を破壊されて消化吸収能力を喪失しているくせに大食いだから、大量に採ってきた餌を細かくすりつぶしペースト状にしてから与えねばならん。
それも、本当にとんでもない大喰らいだ。
ただでさえ元通りに自己修復できるか怪しいのに、貴重なデジモン達の活動リソースをこの役立たずの餌収集に割かなくてはいけないとなると、本来やるべき活動がなにもできない。
本来は!メタルティラノモン自身に自分でデジタルワールドから餌を採らせる予定だったのだ!
そもそも、あの場でレアモンとプラチナスカモンをメタルティラノモンへとジョグレス進化させること自体が緊急措置だった。
我々クラッカーチームはこれまで、DPが少なく、尚且つスパイウェアやランサムウェアとして振る舞えるデジモンを作り上げてきた。
過剰戦力を持っていると維持コストが利益を上回るから、強ければ良いというものではないのだ。別に無為な破壊活動をして儲かるわけでもない。
だのに、そんな我々がレベル5という過剰戦力を常時維持し続けるというのが、そもそも大きな負債なのだ。
そんなに毎回働いてもらうようなものではないというのに。
…ズバモンやルドモンのような外付け武装タイプや、セキュリティチームのフレイドラモンのような一時的な戦力強化が理想なのだ。
だというのに…なんだこの状況は。
自分で飯をとってこれない状態の、こんな大食いを抱えていては、身動きがとれん!
ヒョーガモンやフックモンが採ってきたホエーモン肉の備蓄はどんどん減っている。
修復するまでこのまま待つことなどできるか!
どうしたものかと考えていたが…
そうだ。
こいつにはプラチナスカモンの特性と知能が引き継がれているのだ。
おい…
聞こえるかメタルティラノモン。
『…ガウ…』
最早貴様の自己修復なぞ待てん。
その肉体は自壊処理…破棄する。
『…グウゥ…』
だが!死して尚役に立ってもらうぞ、この私のために。
粘菌デジモンとしての能力を駆使し、その肉体からいくつかのデジタマを作れ。
『…ガウ…?』
貴様の優秀な遺伝子は、私の最高傑作のひとつだ。
水銀の体を持つプラチナスカモンと、強靭なティラノモンの遺伝子を併せ持つ存在。
それを廃棄するなどあってはならない。
貴様はゲレモンの遺伝子を継いでいるだろう?
ヤツは自身の肉体を分裂させて小さなズルモンとして生まれ変わる力を持つ。
それを応用し、肉体を分裂させデジタマとして転生しろ。
できんとは言わせんぞ。ん?
私がそう指示すると…
メタルティラノモンからチャットが来た。
『偉大なマスター ワガハイは ずっと マスターの使命に コミットし続けるゾ』
…そう文章が送られてきた後、メタルティラノモンの肉体は分裂し始めた。
しばらくすると、6個のデジタマが形成されていた。
ふむ…これでいい。
何が育つか…いや、『何を育てるか』。
決めねばなるまい。
その時、ある人物から通話がきた。
『ヒッヒッヒ…AAA様、い~いタマゴができましたねぇ…!』
QQ、喜べ。最高傑作のデジタマだ。
貴様に育てさせてやる。光栄に思え。
『勿論でございますゥゥ~…、ヒッヒ!最高のクラッカーデジモンちゃんを育ててみせますねェ~…!』
…この女はコードネーム『QQ』。
私が示した指針に従い、クラッカーデジモンの育成をしているババァだ。
この私が育成を任せるだけあって、育成の腕はいい。
腕がいいというよりも、異常な執着心が力の源だろう。
このババァは、かつてとある出来事で息子と孫を喪ったのだという。
その際の心の傷が、デジモン達へ愛情を注がせているのだろう。
…腕はいい、腕はいいのだが…
このババァは余計なことをする。
本来まだ狙う予定がなかったクレジットカード会社へ勝手にハッキングを仕掛け、結果としてルドモンとズバモンをセキュリティチームへ鹵獲させる結果となった。
あの件は未だに許せん!クソババァが…!
かつては私と同格の三ツ星クラッカーと認め『QQQ』と呼んでいたが、あの出来事がきっかけでランクを降格させQをひとつ減らしたのだ。
だが、マトモじゃないのも仕方ない。
マトモなやつは真っ当な方法で真っ当に社会に適合し、真っ当に稼ぐだろうからな。
我々のような犯罪組織に付き従う者達に、マトモさを求めるのはそもそもが無理筋だ。
セキュリティチームに、ジャスティファイア…!
『マトモな人材』を集められることが奴らの強み。そして我々との差だ。
続く
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