穂乃果「バトル・ロワイヤル」 (52)
※別の所で書いてたやつの続きです
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凛も真姫も絵里も、誰も声をあげなかった。ただただ呆然と、目の前の光景を見つめている。
絵里がふらふらとした足取りで歩き出し、希だった物の側へ膝をついた。飛び散った血液が脚に付着しても気にした様子はない。
絵里「──」
絵里は何かを呟いているようだった。ぶつぶつと、言葉にならない音が周囲に広がる。
上半身のほとんどが血まみれの包帯で覆われた絵里の姿を見て、海未が息を呑んだ。
にこ「リエラの唐可可よ。絵里が助けようとしたところを襲ってきたそうよ」
海未「そんな……」
にこ「それで、穂乃果」
穂乃果「……」
にこ「希をやったのは?」
ぼんやりと座り込んだままでいた穂乃果が、にこの方へと視線を持ち上げた。
にこ「もう充分に分かったでしょ? 海未が言ったように、他のグループと協力するなんて絶対に無理だって」
穂乃果「……」
にこ「まだ私に人殺しなんてして欲しくないなんて甘い事言うなら─」
にこ「あんたの考えなんてどうでもいい。私は─アクアもリエラも皆殺しにしてやる」
穂乃果「……」
穂乃果「……アクアの……」
穂乃果「黒澤…ダイヤさん……」
にこ「……分かった」
ぽつりと呟いた穂乃果の言葉に対して、にこはそれだけ言った。一拍置かれた沈黙が、海未には恐ろしかった。
にこ「もう一つだけ。そいつは…黒澤ダイヤは、何か付けてなかった? 多分だけど、ゴーグルみたいな何かを」
穂乃果が小さく頷いたのを確認すると、にこは穂乃果から目を外した。聞きたいことは全て済んだようだった。
「ぅぇっ…」とむせ込むような声がして、凛の背中が丸まった。続いて、ぱしゃぱしゃという音とともに、足元に黄色っぽい液体が飛び散った。真姫が両手で包み込むように、凛の背中を抱きしめる。
一同の様子を見回した後、にこは再び海未に向かって言った。
にこ「海未、この子達の事はあんたに任せるわ。探知機の反応にだけ注意して、逃げることだけ考えなさい」
海未「……」
にこ「あんたと穂乃果がこの集落まで来た理由は聞かない。けど、今度は私の言う事を守れるわね?」
『にこは─?』その言葉を海未は呑み込んだ。分かりきった事を聞き返そうとする自分が愚かに思えた。にこはとっくに心を決めている。この益体もないゲームで生き残るために。
海未はにこが抱えているマシンガンに目をやり、自分に問いかける。
私には──出来ない。
希が亡くなっても、考えは変わっていない。自分にそんなことが出来るなど到底思えない。しかし──自分にはもう、にこに掛ける言葉が何も思い浮かばかった。
海未「分かり…ました」
にこ「頼んだからね」
鋭い、射抜くような目で海未に念を押し、にこは続ける。
にこ「まずは─夜明けまで待つ。黒澤ダイヤは間違いなく、夜目が効くようになる武器を持ってる。今すぐにでも殺してやりたいけど、視界が効かない中で襲われたら分が悪い」
にこ「朝が来たら私はここを出る。で、あんた達は制限時間が来るまでひたすら逃げる。それだけでいい。そうすれば─」
にこ「最期に生き残るのは私達よ」
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