斉木(『コロシアイ学園生活を阻止する』)苗木「お待たせ、3スレ目だよ!」 (66)

「ちょっと待て 誰に宛てての 『お待たせ』だ?」
今スレの超能力標語 モデル:斉木楠雄さん、苗木誠さん

・ダンガンロンパ(無印)×斉木楠雄のΨ難
・あの日エタった二次創作の続きが今でも気になってる奴のためのSS
・麻生先生を始めとする関係各所には絶対にこのスレの存在を教えないでください
・一部安価あり
・圧倒的ネタバレにつきダンガンロンパ(無印)クリア後の閲覧推奨
・キャラ崩壊注意
・いよいよSS内の独自設定もわんさか出てくる頃なので更に注意
・ご都合主義? 残念、マインドコントロールだ
・初心者は>>2も読むように

過去スレ ※開幕ネタバレ注意
【斉木楠雄(コロシアイ学園生活を阻止する)】
プロローグ~Chapter2
斉木楠雄(コロシアイ学園生活を阻止する) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1384176147/)
【斉木楠雄(『コロシアイ学園生活を阻止する』2スレ目だ)】
Chapter3~Chapter4冒頭
斉木楠雄(『コロシアイ学園生活を阻止する』2スレ目だ) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407686522/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1722957775

【SS速報VIPに不慣れな方へ】

斉木(僕の名は斉木楠雄。超能力者だ)

斉木(このSSを読む前にいくつか心掛けてほしいことがある)

斉木(SS速報VIPは、物語を投稿することに特化した板だ)

斉木(レス(書き込み)が無くても、スレッドが流れて消えることはない。条件もあるが2ヶ月は大丈夫らしい)

斉木(よってニュー速VIPに見られる【「支援」「保守」のレスは必要ない】)

斉木(折角レスするならこのSSに対する感想を書いてもらえるとありがたい。読者からの言葉は>>1も僕も嫌いじゃない)

斉木(それと……レスする際は【E-mail欄に半角英数で「sage」と入力する】ようにしてくれ)

斉木(平たく言うと、「sage」と入力することでこのスレッドが目立つ事態を回避できる。僕は必要以上に目立ちたくないんだ)

斉木(その代わり、>>1が話の続きを投下する時だけは目立つ場所に行く。俗に言う【スレがageられた】状態になる、目安にしてくれ)

斉木(……最後に、SS速報とは関係ないがもうひとつ)

斉木(1スレ目でアンケートをしたところ、『ダンガンロンパ』の原作を知らない読者が多かった)

斉木(“ハイスピード推理アクション”というジャンルの都合上、ダンガンロンパは本来ネタバレを回避すべき作品だ)

斉木(できるならば原作をプレイしたり、アニメを視聴したりして【結末を知った上でこのSSを読んでほしい】)

斉木(不可避のネタバレでガッカリさせられるのは僕ひとりで十分だ……)

斉木(それでも構わない身の程知らずは1スレ目から読んでくれ。>>2で盛大なネタバレを喰らうことになるぞ)

斉木(さて……注意すべきことはこのくらいか)

斉木(次のレスは設定のまとめ、その次のレスは自由行動安価のルール説明だ。数年越しのスレ立てだ、復習がてら読んでおいてもらいたい)

斉木(……やれやれ、コロシアイ学園生活の完全阻止にはもうしばらくかかりそうだな)

【斉木の考察まとめ(Chapter3終了時点)】

コロシアイ学園生活について
・斉木は“超高校級のジャンケニスト”として希望ヶ峰学園に入学したらしい
・黒幕の正体は特定済み。便宜上「黒幕」と読んでいるだけ
・それに伴い、黒幕の思惑や内通者2人の存在にも気付いている
・内通者1人を除いた希望ヶ峰学園生徒15人が2年間の記憶を失っているが、これは黒幕の仕業である
・黒幕と内通者1人は2年間の記憶を保持したままだが、斉木に関する記憶は持っていない様子
・斉木も黒幕に記憶を消されてはいるが、テレパシーによって2年間の出来事の大半は把握している
・現時点で斉木が超能力者であることを知る人物は苗木とセレスの2人のみ
・外の世界は荒廃しているが、少なくとも両親は無事な様子である
・斉木は“他の生徒による殺人を未然に防ぎ、生徒間の結束を強め、その後黒幕の所業を全員に認知させる”ことでコロシアイを阻止しようとしている



斉木自身の超能力について
・学園の外に向けて使える超能力は「透視」と「アポート/テレポート」のみ
・「復元能力」は死者の蘇生も可能になっている
・絶望している人間の心の声(絶望テレパシー)を聞き続けると斉木は体調不良になる
・制御装置を引き抜くと外界の絶望テレパシーを大量受信してしまう
・よって制御装置を引き抜くと極度の体調不良に陥るので、マインドコントロールなどの強力な超能力は使えない
・幽体離脱しても校舎や寄宿舎の外壁をすり抜けることはできない
・これらの変化は“空白の2年間”のうちに起こったものだと推測される
・黒幕に正体がバレるのを防ぐため、監視カメラの前ではできる限り超能力の使用を控えている
・斉木楠子に変身した姿は黒幕から“僕っ娘魔法少女”と呼ばれている
・黒幕は“僕っ娘魔法少女”が斉木楠雄と同一人物であることに気付いていない(セレスには変身解除を目撃されたためバレている)
・ちなみに斉木は読者に見えないところで普通に会話しているという公式設定があります

【自由行動安価について】
このSSでは1つのChapterにつき3回、計15回の「自由行動安価」イベントを実施しています。
斉木が他の生徒と接して交流を図ったり図らなかったりするイベントです。

作中で斉木からのアナウンスがありましたら、15人の生徒のうち誰と一緒に過ごすか指名してください。
選んだキャラとタイミングによっては、ストーリーや人間関係を左右するようなフラグが立つ場合もあります。
(過去スレでは桑田が改心する、セレスが仲間になる、マジカル御曹司が爆誕する等の影響がありました)

但し、以前に指名されたことがあるキャラは安価下、話の展開上自由行動ができないキャラは最安価とさせていただきます。
その他特殊ルールが発生することもありますので、適宜従ってください。

また、自由行動安価の際に投下するSSは、話の流れを踏まえつつリアルタイムで書いております。
>>1は非常に遅筆ですゆえ、投下までに時間が掛かってしまうことをご容赦願います。


【以前に指名されたキャラ】
Chapter1 霧切、桑田、山田
Chapter2 苗木、大神、十神
Chapter3 セレス、不二咲、舞園

斉木(テンプレも一通り貼り終えたところで、Chapter4冒頭からキリ良く再開しよう)

斉木(前スレのラストの再放送になってしまうが、ゆっくり読みながら記憶を掘り起こしてもらえると幸いだ)





Chapter4

【終わることのないイッツショータイム】




【前回のあらすじ】
…ジャスティスナイフ


苗木「この学園生活と……斉木クンのことについて……?」

霧切「ええ。これ以上は話せないけれど、ある程度の確証を持った上であなたに話すつもりよ」

霧切「それと……私に呼び出されたことを斉木くんに伝えてもいいけれど、私が話す内容そのものは誰にも口外しないで」

苗木(斉木クン相手に隠し事するの自体無理なんだよなぁ)

霧切「最終的な判断はあなたに任せるわ。……じゃあね」スタスタ

苗木(行っちゃった。ボクも霧切さんの期待に沿った方が良さそうだけど……)

斉木(僕も賛成だ。霧切さんほど冴えた人物なら有益な情報を与えてくれるだろう)

苗木(やっぱり聞いてたんだね)

【寄宿舎1階・脱衣所】

苗木(……なんだかここには頻繁に来ている気がするなぁ)

霧切「待っていたわ。こうして誰にも介入されずに話す機会を設けたかったの」

苗木(きっと斉木クンにも筒抜けだろうけど仕方ないよね)

苗木「それにしても……そんな言い方、まるで恋人同士」

霧切「突然だけどあなたは今の状況についてどう思う?」

苗木(バッサリ切られた!)

苗木「えーと、どう思う……って」

霧切「コロシアイ学園生活が始まってから数日経過した、今の状況よ」

苗木「別に……何もおかしいとは思わないけど」

霧切「あなたは本当にそう思うの? “事件は起こるが誰も死なない”……一触即発の均衡を常に保っている今の状況が?」

苗木「一触即発? そんなの偶然だよ! 偶然!」

霧切「果たしてそうかしら。これまで起きた2つの事件は、どちらの犯人もいつ人を殺したっておかしくない精神状態だったわ」

苗木(確かに……ボクを刺した時の舞園さんは、脱出願望が強くなってた上に軽いパニック状態だだったし)

苗木(大和田クンはモノクマから動機を提示された直後で、石丸クンにもコンプレックスを刺激されて怒りに我を忘れていた)

苗木「でも、不二咲クンは打ち所が悪いとあのまま死んでたかもしれないんだよ! 霧切さんも看病したから知ってるよね?」

霧切「そうね。犯行当時、大和田くんが衝動のままに不二咲くんを殴打したことの裏付け……と受け取って構わないでしょう」

霧切「だとしたら、他に不自然な点が浮かび上がるわ。……不二咲くんが快復したことよ」

霧切「通常、頭部を殴られたら脳に何らかの後遺症が生じてもおかしくない。けれど目覚めた後の不二咲くんは、どこにも異常が見られないわ」

苗木「それは違うよ! 脳には異常が無くても、不二咲クンは今だって車椅子で過ごしてるじゃないか!」

霧切「あれは数日間も昏睡状態に陥っていたことによる筋力低下よ。軽いリハビリを行えば普通に歩けるようになるわ」

苗木(そ……そこまでは考えてなかった……)

霧切「だから私はこう考えたの。この学園には、定期的に“殺人未遂”を起こそうとする何者かの力が働いている……とね」

苗木「殺人未遂……?」

霧切「ええ。少々危険な方法ではあるけれど16人全員を守れるし、モノクマへの牽制にもなるわ」

苗木(斉木クンとボクが事件を完全に防ぎきれなかった結果そうなってるだけなんだけどなぁ)

霧切「事実、モノクマは現状にさほど大きな不満を抱いていない。100億円を巡る事件が発生しなかったことにはご立腹の様子だけどね」

霧切「ここからモノクマの目的は何なのか絞り込めるわ。苗木くん、あなたにも分かるかしら?」

苗木「目的って言われても……多分、ボクたちを殺すことではないとは思うけど……」

霧切「十分よ。つまり、モノクマの目的は“私たちが仲違いすること”なの。それこそ、誰かが誰かを殺してもおかしくないくらいに」

苗木「でも、どうしてモノクマはボクたちの仲を裂きたがるんだろう? ボクたちに恨みでもあるのかな」

霧切「それは私にもわからないわ。けれど、モノクマにとって得をすることなのは確実でしょうね」

霧切「ここで更に浮かび上がってくる謎が、先に言及した人物の正体よ」

苗木「殺人未遂を起こそうとしてる人……だっけ」

霧切「ええ。その人物は事件が全く起きていない段階からモノクマの目的を数日以内に見抜き、対処にあたっているわ」

霧切「推理力、行動力、策略、機転……あらゆる面に秀でた、優れた才能の持ち主だと考えられるのよ」

苗木(確かに超能力は優れた才能だよね)

霧切「……ただ、この条件に該当する人物は、希望ヶ峰の生徒といえども滅多に存在しない」

苗木「そうかな? 条件だけならセレスさんとかピッタリだと思うけど」

霧切「セレスさんはあり得ない。さっき体育館でモノクマにあの台詞を言ったのだから、一度は100億円を手に入れるつもりだったはずよ」

苗木(ボクも適当に言ったけど、そもそもセレスさんはコロシアイを阻止しようなんて考える性格じゃないよな……)

苗木「じゃあ十神クンは? コロシアイに乗ると見せかけてこっそり……」

霧切「十神くんは無いわ」

苗木「でも十神クンは推理力も行動力もあって機転も利くしきっと策略だって」

霧切「あなたにもなんとなくわかるでしょ。十神くんは無いわ」

苗木「……うん」

苗木「じゃあ霧切さんは誰を疑ってるの? ボクはもう思い付かないよ……」

霧切「ところで苗木くんは何故あの日……モノクマがわさびドラDVDを見せた次の日、ドッキリカメラをやろうと思ったの?」

苗木「え? まさか霧切さん……ボクを疑って?」

霧切「あの日のあなたは、どんなタイミングで私たちの前に現れ、種を明かしたんだったかしら?」

苗木「それは……えーと、その」

苗木(斉木クンの超能力任せだったけど、そんなことは言えないし……)

苗木「って、霧切さんが“殺人未遂を起こそうとしてる人”って疑ってるのは……!」

霧切「そう――斉木楠雄。“超高校級のジャンケニスト”」

霧切「あなたは四面楚歌に陥った彼を助けるかのように、私たちの前に蘇ってみせたのよ」

苗木(覚悟してたけどやっぱり!)

霧切「ドッキリカメラ自体は斉木くんの提案で、あなたは単なる協力者だった……私はそう考えているわ。実際のところはどうかしら?」

苗木(斉木クンが関わったのを下手に否定したらボロが出そうだ……言い逃れはしないでおこう……)

苗木「……確かに、あのドッキリカメラは斉木クンの企画だった。それは認めるよ」

霧切「なら、斉木くんからドッキリカメラの趣旨は聞かされた?」

苗木「それは……ドッキリカメラなんだから、みんなをドッキリさせるために決まってるよ!」

霧切「出まかせね。実行役が苗木くんだとしても、目立ちたがりでない彼が無意味なドッキリを企画するはずがない」

苗木「……そこまでいうなら、霧切さんはあのドッキリカメラについてどう思ってるの?」

霧切「“誰かが死んだら学級裁判が開かれる”と私たちに知らしめること」

苗木「!」

霧切「私にはそう思えてならないわ」

苗木「それは違うよ! ドッキリカメラをやったら結果的に学級裁判が開かれちゃっただけで、ボクらは何も知らなくて」

霧切「苗木くんが知らされていないだけの、偶然を装った計画的行動だとしたら?」

苗木「うっ…………」

苗木(そこはボクも知らないから、否定できないんだよなぁ……)

霧切「もうひとつ不可解な点があるわ。私が捜査を行った時だけれど」

霧切「苗木くんの身体は本当に事切れたかのように冷たかったし、心音すら聞こえなかった」

霧切「今となっては“単なる死んだふりではモノクマを欺けない”というメッセージにすら感じられるわ」

苗木(事切れたかのようにじゃなくてその時は本当に死んでたんだと思うよ)

霧切「仮死状態を演出する方法はいくつかあるけれど、倉庫も保健室も使えないあの段階ではいずれも不可能に等しかった」

苗木(むしろそんな方法あるんだ……)

霧切「教えて。あなたはドッキリカメラの時、どうやって仮死状態になったの?」

苗木「えーと……それは…………」

苗木「……ボクの特技なんだけど、気合いを込めれば心臓の音がピタッと」

霧切「もういいわ」

苗木「え?」

霧切「もういいわ」

苗木「……うん」

霧切「つまり、私が斉木くんについて疑問に思うポイントは2つ」

霧切「“学級裁判を知っていたかもしれない”ことと、“道具が不足している中で苗木くんを仮死状態にできた”こと」

霧切「これらを踏まえて導き出される可能性は……」

苗木(……下手に怪しまれるよりは自分から言ってみた方がいいかもしれない!)

苗木「わかった! 斉木クンは超能力者なんだね!」

霧切「馬鹿を言わないで。そんなにも超能力がありふれたものだとしたら奇跡の価値は薄れてしまうわ」

苗木(やった! 霧切さんは斉木クンを超能力者だと思ってない!)パァァァ

霧切「……推理が外れたのに嬉しそうね」

苗木「いや、霧切さんのツッコミが見事だなと思って」

霧切「話を戻すわ。私が言いたいのは――斉木くんは内通者ではないか、ということよ」

苗木「………………」

苗木「………………内通者?」

霧切「そう、内通者。モノクマと協力関係にある人物……言うなればスパイよ」

霧切「彼が内通者だったとしたら、学級裁判を知っていたことにも仮死状態の小道具を用意できたことにも説明がつくわ」

苗木「そんなわけないよ! 斉木クンはモノクマに加担するような人じゃない!」

霧切「加担しないからこその行動よ。人質や脅迫で、内通者として動くことを強いられていたなら?」

苗木「斉木クンなら人質ごと救出できるし脅迫にも屈しない!」

霧切「あなたは彼をヒーローか超能力者と勘違いしているの?」

苗木「勘違いじゃないよ! 根拠も無いのに仲間をスパイ扱いするなんて……!」

霧切「根拠ならあるわ。アルターエゴ」スッ

アルターエゴ『こんばんは、霧切さん! 苗木くん!』

苗木「アルターエゴ! キーボードを使わなくてもボクらの会話がわかるの?」

アルターエゴ『うん。千尋くんが蝶ネクタイ型変声機を改造して音声入力に対応させてくれたんだぁ!』

苗木(不二咲クン、いつの間にそんなことを……)

霧切「アルターエゴ。復元したプログラムを見せて頂戴」

アルターエゴ『えっと、ロックされたファイルは解析しきれてないけど……破損データの修復は完了したよぉ』

苗木「すごいよアルターエゴ、お手柄じゃないか!」

アルターエゴ『えへへ……ありがとう、僕もやりがいがあったよ!』

霧切「私からも感謝するわ。……話を続けて」

アルターエゴ『それでね……修復したのは前にも話した会話記録だったんだけどね』

苗木『確かKってイニシャルの人が出てくるんだったっけ?』

アルターエゴ『そう、その人のフルネームも……』

アルターエゴ『“Kusuke Saiki”って判明したんだぁ!』

苗木「クウスケ・サイキ?」

アルターエゴ『うん。ログは全文英語だから漢字表記は分からなかったんだけど、“my brother”って単語も書かれていたんだよぉ』

霧切「斉木くんの兄弟が希望ヶ峰学園と何らかのコンタクトを取っていた可能性は十二分にあるわ。それをモノクマが察知していたら……」

苗木「モノクマが斉木クンの兄弟を人質に取ってもおかしくない、ってことだよね」

霧切「とはいえクウスケ・サイキが同一姓の他人という線も捨て切れない……アルターエゴ、他に調べる方法はある?」

アルターエゴ『オンライン接続されているならググって一発なんだけど……ごめんねぇ……』

霧切「なら……苗木くん、あなたは斉木くんの家族構成について聞いたことは?」

苗木「特に何も。斉木クンに兄弟がいたなんてボクも初耳だよ」

霧切「確証は取れないままね。クウスケ・サイキが希望ヶ峰の謎を紐解く上で手掛かりになることは間違いないのだけれど……」

アルターエゴ『僕ももう少しデータスキャンを進めてみるねぇ!』

霧切「というわけで苗木くん。彼の友人という立場を利用して、斉木くんの素性について探ってくれるかしら」

苗木「なんだか人聞きの悪い言い方だね……普通に友達として尋ねるんじゃダメなの?」

霧切「斉木くんはとても頭の切れる人物よ、どう動くかわからないわ。友達だと油断したら足を掬われかねない」

霧切「もし斉木くんが本当に内通者だったとしたら、モノクマの命令を受けてあなたを殺しに掛かるかもしれないのよ?」

苗木「……昨日までのボクなら、霧切さんの言葉をどう受け止めていたかわからない」

苗木「でも今は違うよ。斉木クンが内通者なら、斉木クンが解放されるための手段を友達として探し出す」

苗木「そのついでにお兄さんのことを教えてもらう。霧切さんの協力するのはそれからになっちゃうけど、待っててくれる?」

霧切「……あなたは本当に呆れるほどのお人好しね」

苗木(斉木クンにも同じことを言われたけどボクってそんなにお人好しなのかな……)

霧切「いいわ。苗木くんは苗木くんのやり方で、斉木楠雄という人物を調べておいて」

霧切「きっとそれが……この学園の、ひいては私たちの謎を解き明かす鍵になるかもしれないわ」

霧切「最後にもうひとつ、あなたに教えておくわね。2階の男子トイレの奥に隠し部屋が存在するの」

苗木「男子トイレ!? 霧切さん男子トイレ入ったの!?」

霧切「別にいいじゃない。他人の靴下を洗ったわけじゃないんだから」

苗木(基準がわからない……!)

霧切「とにかく、疑うなら用具入れの壁を調べてみるといいわ。なんなら斉木くんと2人で行っても構わない」

霧切「但しその場合は……斉木くんの反応を注意深く観察しておいて」

苗木「……その隠し部屋って、何があるの?」

霧切「……それは、」

キーンコーンカーンコーン

モノクマ『夜時間になりました云々』

霧切「いけない、もうこんな時間だわ。苗木くんもたまには出歩き禁止のルールを守ったらどうかしら」スタスタ

苗木「なんで知ってるの霧切さん!?」

苗木(クウスケさんのこと、内通者のこと、隠し部屋のこと……)

苗木(楽観的かもしれないけれど、斉木クンに聞いたら全部正直に答えてくれそうな気がしてる)

苗木(そもそも斉木クンのことだから、超能力でお見通しかもしれないしね。テレパシーに心の声で質問しちゃえば……)

苗木(……今すぐじゃなくて、明日の朝食会の時にしてみよう)



霧切(苗木くんは斉木くんの全てを知っているわけではない。けれど、私に対して隠し事をしている様子だった)

霧切(超能力者だという話もあながち間違っていないかもしれないわね。超能力者はこの世に実在したのだから)

霧切(そして……もし苗木くんが今のことを斉木くんに打ち明け、かつ斉木くんが内通者ではなかったとしても)

霧切(彼の頭脳を利用して炙り出せるはずよ……複数人存在するはずの、真の内通者を)



――――――――――



斉木(以上で前スレの再放送は終了だ。一息ついたらもう少しだけ続きを投下する)

【前回のあらすじ】
…十神くんはないわ



苗木(朝食会が始まる前、斉木クンに兄弟がいるか聞いてみると)

斉木(あ゛?)

苗木(すごく露骨に迷惑そうな顔をされてしまった)

苗木「……兄弟の話って、そんなに気に障る内容だった……?」

斉木(家族構成自体は別にどうでもいい。ただ、兄のことを思い出すだけで顔を顰めてしまうだけだ)

苗木「だからってその表情をそのままボクに向けないでよ! ボクが嫌われてるのかと思ったよ!」

斉木(……改めて)

斉木(僕には……あいつを兄とは思いたくないが、兄が1人いる)

苗木「そのお兄さんってどんな人? 大学生?」

斉木(僕の2歳上だが飛び級で大学を卒業済だ。現在あいつは科学者として生計を立てている)

苗木「科学者!? 飛び級!? そんなに凄い人なの!?」

斉木(常人の目には“凄い人”に映るかもしれないが、僕にとってはただの変態だな)

斉木(やれやれ、連載が長期化しなければあいつの存在自体が闇に葬られていたというのに……)

苗木「……さっきから斉木クン、お兄さんのこと酷く言い過ぎだよ。どんなに嫌いでも家族なんだし、流石に変態呼ばわりは」

斉木(あいつは僕へ勝負を挑みすぎたせいで僕に負けることに喜びを抱く性癖を持ってしまった人間だ)

苗木(変態だね)

苗木「それで……お兄さんは、なんて名前?」

斉木(――空助。斉木空助だ)

苗木「!」

苗木(ローマ字で書くとKusuke Saikiだから……斉木クンのお兄さんは、やっぱり会話記録の人……?)

斉木(あいつの最終学歴はケンブリッジだ、全文英語のメールを送ってもおかしくない)

斉木(念のためあいつが黒幕と協力関係にある可能性は覚えておこう。以上だ、謎のメールについては他をあたってくれ)

苗木「昨日の会話が筒抜けなのはボクも覚悟してたけど答えが雑すぎない!?」

斉木(あいつの話題を一刻も早く終わらせたいからな、手短に纏めさせてもらった)

苗木「もっと会話を膨らませる努力をしようよ!」

セレス「あら、どのような会話ですって?」

苗木「っわぁ!?」ビクッッ

斉木(セレスさんか。普段なら朝食会ギリギリに来るのに今朝は早起きだな)

セレス「わたくしもお二人の仲間に加わりましたから、嬉しくて嬉しくていつもより早く目が覚めてしまいましたの」

セレス「決して他意などありませんのに……苗木くんはどうして大声を上げるのですか?」

苗木「ゴメン……なんだか実感がわかなくて、今でも少し警戒しちゃうんだ」

セレス「心外ですわ。もうわたくしはどなたかを殺めようとは考えもしなくなりましたのに……」

セレス(これではわたくしの執事としてお二人を飼い慣……コロシアイ阻止への道のりは遠そうですわね)フゥ

斉木(おい今何を考えていた)

苗木「実は今こんな話を……」カクカクシカジカ

セレス「家族構成ですか。確かに相手の人となりを知るのに適した話題ですわね」

苗木「ボクには妹が1人いるんだ。斉木クンにはお兄さんがいるんだって」

セレス「意外ですわ。わたくし、斉木くんはひとりっ子だと思っていました」

斉木(当時の読者もほぼ全員同じ感想だっただろうな。伏線も1箇所しか存在していなかったし、予想できていた方が珍しいくらいだ)

苗木(それって後付けじゃ)

斉木(違う。外付けと言え)

石丸「3人とも何を話しているのだ! 朝食会まで時間があるとはいえ、大神くんたちを手伝ってはどうだね!」

セレス「いやですわ。わたくし自ら働くだなんて、貴族のイメージにそぐいませんもの」

斉木(どの口が言ってるんだ安広多恵子)

苗木「そういえばセレスさんには兄弟っているの?」

セレス「わたくしに兄弟姉妹はいませんわ。フランス貴族のお父様と、ドイツ人音楽家のお母様ならいるのですが」

石丸「そうか、セレスくんは本当に貴族だったのだな! しかしお父上がフランス国籍ならどうして苗字はドイツの流れを汲んでいるのかね?」

セレス「お父様が婿入りしたからに決まってんだろボケナスがァァァ!!!」

石丸「失礼したっ!」

斉木(そこの設定作り込んであったんだ)

朝日奈「なになに? 兄弟の話? 私にもいるよー! 中学生の弟!」

大神「我には実の兄弟はおらぬが、道場の者たちは家族同然の存在だ……」

斉木(そうだ苗木、2人に僕の兄について話してくれ。今の話をできるだけ詳しく説明し直してほしい)

苗木(え? いいけど……)

苗木「あのね、斉木クンには空助さんっていうお兄さんがいるんだって!」

苗木「2歳上でケンブリッジを飛び級で卒業してて、今は科学者として活躍してるらしいんだ!」

石丸「そうだったのか! 優秀なお兄様を持ったということは、斉木くん自身もさぞかし苦労しただろう……!」

斉木(確かに苦労はしたな。石丸が想像しているものとはだいぶベクトルが違うが、間違いなく苦労はした)

苗木「それでセレスさんにはフランス貴族のお父さんがいて、ドイツ人のお母さんに婿入りしてて」

斉木(そこまでは話さなくていい)

朝日奈「そうなの!? それってセレスちゃんの両親は身分違いの恋をして結ばれたってこと!?」

斉木(朝日奈さんはそっちに食い付くのか)

セレス「それはそれは波瀾万丈な大恋愛だったと伝え聞いています。2人の出逢いはお父様と当時の許嫁の婚約パーティー会場で……」

朝日奈「うんうん!」ワクワク

セレス「その頃まだ無名の楽団員だったお母様は、ヴィオラのケースにお守りとしてつけていたチャームを会場で紛失してしまったのです」

朝日奈「うんうんっ!」キラキラ

セレス「偶然にもそれを拾ったお父様は、チャームに小さく彫られたお母様の頭文字を頼りに……」

セレス「そういえば斉木くんのお兄様、空助というお名前でしたら“頭文字がKの男性”の条件にも該当しますわね」クルッ

斉木(我に返るな)

苗木「本当だ! “頭文字がKの男性”がどんな意味を持つかサッパリ解らないけど、でも空助さんはKっていう頭文字だね!」

斉木(お前も便乗するんじゃない)

石丸「む? ということは有田英五くんが見つけたあの――」

大神「石丸よ……厨房を手伝ってくれるのではなかったのか」

石丸「そうだったな! 僕としたことがつい雑談に興じてしまった、朝食会の支度を急がなくては!」

朝日奈「私も行かなきゃ! セレスちゃん、また後で続き聞かせてね!」

斉木(ありがとう大神さん)

苗木「……お兄さんの話、さっきみたいな感じでよかったかな?」

斉木(ああ。苗木があいつのことを話している間、テレパシーで黒幕の心の声に耳を傾けていた)

斉木(……どうやら黒幕はあいつのことを全く知らないらしい。お陰で僕も斉木空助共謀説を可能性から除外することができた)

苗木(全く知らないってことは……黒幕がお兄さんを人質に取っている可能性も無いんだね!)

斉木(第一あいつは大人しく誰かの人質に取られるような人間じゃないからな。……それと)

斉木(僕は内通者じゃないぞ)

苗木(!)

斉木(考えてみろ。もし僕が内通者だったら、お前が舞園さんに殺されても生き返らせず、学級裁判を続行させるはずだ)

斉木(今後も僕が疑わしく思える時は遠慮無く問い詰めてくれて構わない。黙秘権を行使する場合もあるが、お前に嘘を吐くのはもう止めた)

苗木「斉木クン……」



苗木「じゃあ、斉木クンが前よりちょっとだけ素直になった理由は」

斉木(黙秘権を行使します)フイッ

苗木「なんで目を逸らすの!?」

セレス「それにしても困りましたわね。モノクマは昨日、『誰かが殺されるまで4階行きのシャッターは開けない』と宣言していました」

苗木「そうだったね。なんとか3階以下にあるものから学園の謎を解明しないと……」

セレス「現在開放済みのフロアで得られる情報はほぼ出尽くしているのに、ですか?」

苗木「え?」

セレス「これ以上新たな情報を得られなければ、脱出の糸口を求めて4階を目指す方も出てくることでしょう」

セレス「ともすれば、4階を開放するためだけにわざとコロシアイを起こすような方まで現れるやもしれませんわ」

苗木「手掛かりならまだ残されてるよ! 2階の……」ピタッ

セレス「2階の?」

斉木(そういった情報はあまり口外しない方がいい。今回は僕が強制以心伝心でセレスさんにもテレパシーで伝えてやる)

苗木(――2階の男子トイレの奥に隠し部屋があるらしいんだ。そこに行けば何か新しい手掛かりが得られるかもしれないよ!)

セレス(うっわ男子トイレに潜入とか普通に嫌ですわ)

斉木(真っ当な反応)

セレス「何があるかは存じ上げませんが、そちらはお二人にお任せしますわ」

斉木(諦めろ苗木。霧切さんがイレギュラーだっただけだ)

苗木(うぅ……)

斉木(しかしセレスさんのような発想は無かったな。膠着状態が続けば“封鎖されたままの4階”自体がコロシアイの動機になるということか)

斉木(仮に自己犠牲も厭わない2人が死闘を繰り広げる系の事件が発生したら、流石の僕でも阻止できるか怪しいぞ……)

セレス「――色々と憶測を申し上げましたが、もしもの事態を述べたまで。4階目当ての事件が現実に起きる可能性は低いと予測しております」

セレス(だって、その前に斉木くんと苗木くんが4階のシャッターをこじ開けてくれるのでしょう?)ニコッ

斉木(……やれやれ、随分な他力本願だな。シャッターを開けるための作戦も無くはないが、その時はセレスさんにも協力してもらうぞ)

苗木(じゃあ男子トイレの隠し部屋にはボクと斉木クンの2人で行こう!)

斉木(さらっと決定するな)

苗木(斉木クンの超能力を使えば有力な情報を得られるかもしれないし!)

斉木(お前も結構な他力本願だな)

――――――――――

【数時間後・斉木の個室】

斉木(朝食会も終わり、苗木と隠し部屋へ突入する時刻を取り決めてから自室へ戻ってきた)

斉木(この辺りで超久々の自由行動時間を執り行おうと思う)

斉木(78期生の誰と過ごすか……通常ならば>>5に記載した通り安価で決めるところだが、今回は特別ルールで先に決定させてもらった)

斉木(SS速報VIPで2スレ目がDAT落ちするまでの間、当時の読者の皆様に好きなキャラ・活躍してほしいキャラを挙げてもらった)

斉木(名前が挙がったキャラを集計したところ、3位は江ノ島さん(仮)、2位はセレスさん、1位はマジカル御曹司という結果になった)

斉木(とにかくマジカル御曹司がぶっちぎりの人気だったな。なお“十神”表記で答えた者は0人だったことも補足しておく)

斉木(マジカル御曹司とセレスさんとは既に自由行動時間を共にしているから除外して、その次に多く名前の挙がっていた戦……)

斉木(じゃなかった、江ノ島さん(仮)のところへ行こう)



【校舎1階・視聴覚室】

斉木(江ノ島盾子(仮)。彼女は女子高生のファッションリーダーとして雑誌でも活躍する“超高校級のギャル”……)

江ノ島「ワン、ツッ、スリッ、フォッ、……軍隊式7日間ダイエットってこんな簡単でいいの?」グルグル

斉木(……のフリをして暗躍している“超高校級の軍人”だ。本物の江ノ島盾子は別の場所にいるため、僕は“江ノ島さん(仮)”と呼んでいる)

江ノ島「あっ斉木! ちょうど良かった、これって7日目の次はどのDVD再生すんの?」

斉木(また随分と懐かしいものを)

江ノ島「モデルやるなら体型維持はマストだけどこういうエクササイズって色々あるじゃん?」

江ノ島「MA-1とかモンスターパーカーみたいなミリタリーアイテムが流行った時もあったしブートキャンプもワンチャンあるかなって!」

斉木(要するに軍モノが好きなだけか)

江ノ島「……もしかして斉木、アタシのこと疑ってる?」

斉木(疑う余地も無く別人だと思ってる)

江ノ島「何だよその目は! アタシこれでも一応カリスマギャルとして名を馳せまくってるんですけど!」

江ノ島「そこまで疑うってんなら……その証拠に……えっと」チラッ

江ノ島(監視カメラにアイコンタクトを送れば盾子ちゃんも助け船を出してくれるはず……!)チラッチラッ

黒幕(なんかお姉ちゃんがこっち見てるけど面白いからモノクマ出さないでモニタリング続行しよーっと)

江ノ島「…………………………」

江ノ島「…………その証拠に、この学園にあるファッションアイテムで斉木のコーディネートを考えてやんよ!!だってアタシ超高校級のギャルだし!!」

黒幕(うはwwwww残姉ガンバwwwwww)

斉木(どんまい)

――――――――――

【半日後 寄宿舎1階・江ノ島の個室】

江ノ島「――できた!!」

江ノ島「苗木から強奪したパーカーの上に倉庫で見つけた黒ジャージをレイヤード!」

江ノ島「ボトムスはランドリーから拝借したジーパンに桑田が貸してくれたウォレットチェーンでさりげないこだわりをアピール!」

江ノ島「斉木のトレードマークともいえるカラーグラスをモノモノマシーンから入手したおでこのメガネに変えて大胆にイメチェン!」

江ノ島「靴は体育館にあった誰かのスニーカー! シュータンに留めた子猫のヘアピンで遊び心も忘れない!」

江ノ島「エノジュンプロデュース・希望ヶ峰流スポカジMIXコーデ、いっちょ上がり!」

江ノ島「ところでジーパンのジーって実はGHQの頭文字から来てるんだよ(諸説あり)!」エッヘン

斉木(全体的に盗品多くない?)

江ノ島「どうよ斉木!アタシだってこう見えて日々ファッションの勉強してるんだし!!」

黒幕(うわー……全身から絶望的に残念が滲み出てるわ……)

江ノ島「よーし斉木! このまま食堂へ行ってヌン茶しばいてる誰かにコーデ見せびらかしてこよ!」グイッ

斉木(早く着替えさせてくれ)

【寄宿舎1階・食堂】

江ノ島「ちょっと斉木もちゃんと歩いてよ! 袖の生地伸びちゃうじゃん!」グイグイ

斉木(しかし妙だな。テレパシーから察するに江ノ島さん(仮)は黒幕の実姉らしいが、こうして半日一緒に過ごしても僕の体調は悪化していない)

斉木(ふとした瞬間に受信する心の声は、黒幕と同レベルまで絶望に満ちている時もあるんだが……)

斉木(いや、深く考えるのは止めておこう。彼女自身の残念要素が上手いこと絶望を中和しているのかもしれない)

江ノ島「さぁーてちゅうもーく!! これが今シーズンのトレンドコーデに身を包んだエノジュンプロデュースの斉木楠雄だー!!」



霧切「……全体的に中途半端な印象を受けるわね」

桑田「オレのチェーンいらなくね? なんかゴツくてミスマッチだわ」

不二咲「うーん……子猫のヘアピンも外した方がシンプルで良いと思うよぉ」

大和田「前に茨城のどっかで闘り合った連中が普段着でこういうカッコしてたぜ」

ジェノ「あー確かに今年の流行ってこんな感じだったかしらん!」ゲラゲラゲラ

石丸「斉木くん! 嫌なら断る勇気も必要だぞ!」



江ノ島「……大丈夫。流行がアタシに追い付いてないだけだから」

斉木(僕も追い付けないし追い付きたくない)

――――――――――

【校舎2階・廊下】

斉木(そろそろ約束の時刻だ。江ノ島さん(仮)と別れ、僕は2階の男子トイレ前までやってきた)

苗木「や、やあ斉木クン! ボクもちょうどトイレに行こうかと思ってたところなんだ! 奇遇だね!」ソワソワ

斉木(不自然)

苗木(だって偶然会ったフリをしないと黒幕に怪しまれちゃうよ……)

斉木(それは一理あるが、今回に関してはあまり意識しなくてよさそうだ。何故なら――)

黒幕(うぷぷぷぷ! このまま苗木と斉木が隠し部屋に入って資料を開いた数秒後のタイミングで気絶させちゃって!)

江ノ島「了解。任せて、盾子ちゃん」

斉木(――黒幕には既にバレてる)

苗木(バレてる!? バレてるのにこのまま隠し部屋へ入るの!?)

斉木(ああ、日を改めたところでまたバレるのが関の山だろうからな。その代わりこちらも対策を講じておいた……)

セレス「あら、ごきげんよう江ノ島さん」

斉木(こちらからも強力な味方を召喚させてもらった)

江ノ島「は? セレスじゃん! 悪いけどアタシ今急いでんだよね……」

セレス「急いでいる? それはどのようなご用事ですか?」

江ノ島「用事は用事だよ! アタシにも色々あんの!」

セレス「わたくし気になりますわ。そんなに急いでいるのに内容をはぐらかされるなんて……まるで何かの計画的犯行の最中みたいで……」

江ノ島「そんなんじゃねーし! いやある意味そうだけども!」

セレス「『ある意味そうだけども』?」ジロッ

江ノ島「違う違う! そうじゃ、そうじゃない!」

江ノ島(どうしよう、このままじゃセレスさんに言い負かされる! 助けて盾子ちゃん!)

斉木(さて、僕らだけで隠し部屋に行こう)スタスタ

苗木「トイレを我慢するのは健康に良くないよね」スタスタ

江ノ島「あっ! 見失った!!」

【校舎2階・男子トイレ】

苗木(……ねぇ斉木クン、セレスさんが江ノ島さんを引き留めてたってことは……もしかして)

斉木(流石に苗木も気付いたか。その通り、江ノ島さん(仮)は黒幕の内通者だ)

苗木(あの時々天然でカリスマギャルにしてはちょっとズレたところもある江ノ島さんが!?)

斉木(天然と残念以外は陽キャのギャルを取り繕って演じているだけだ。江ノ島さん(仮)は黒幕とも頻繁に連絡を取り合っているようだな)

苗木(そんな……ボクたちの中に、本当に内通者がいたなんて……)

斉木(信じられないだろうが事実だ。僕には入学初日の時点で丸分かりだったが、揉め事を起こさないよう牽制しつつ黙っておいた)

苗木「……斉木クンは、最初から知ってて江ノ島さんとも普通に接していたんだね」

斉木(前に言っただろう。伝えていないことは他にも山ほどある、お前を絶望させかねない情報ばかりだ……と)

斉木(そして隠し部屋のことは僕も知らなかった。もしかすると、僕だって想像もつかないほどの絶望が待ち構えているかもしれない)

苗木「………………それでもボクは、」



ガチャ


桑田「ンだよ苗木と斉木じゃん! こんなトコで何やってんの? 連れション?」

苗木「く、桑田クン!? 偶然だね!」

苗木(どうしよう斉木クン! もしかして桑田クンも内通者なの!?)

斉木(内通者なわけないだろ。あいつは普通にトイレを利用しに来た一般的なアポ……)

斉木(いや、そうでもなさそうだ)

葉隠「待ってくれぇ桑田っち! 周りに罠が仕掛けられてねーか慎重に進むべ!」

桑田「うっせーなー、大体マジでこの奥に隠し部屋なんてあるのかよ?」

苗木「えっ」

葉隠「間違いねーぞ! 俺のインスピレーション占いは“2階の男子トイレに秘密の部屋が存在する”と指し示したべ!」

桑田「アホか! オメーの占いが半分以上外れることくらいオレにだってわかるんだからな!」

桑田「……まっ、ミラクル野球選手のオレと一緒ならホントーに隠し部屋を見つけるミラクルも起きちまうかもだけど?」ドヤッ

葉隠「折角だし苗木っちと斉木っちも一緒に調べてくれよ! ここに居合わせたのも何かの縁だべ!」

斉木(……驚いたことに、偶然にも葉隠の占いが的中してしまったらしい)

苗木「後で霧切さんに怒られたらどうしよう」

3スレ目の初回投下はここまでです。
今でもこのSSのことを覚えてくれている方がいたのは予想外でした。ありがとうございます。
こちらのスレに細々と最新話を投稿しつつ、pixivには後から誤字脱字を修正しておまけを追加したまとめ版「ようこそΨコポップ」を投稿していこうと思います。

何年経っても未だにChapter4以降の展開を妄想してしまうので、どうにかして結末まで書ききるつもりでスレ立てしました。
よろしければお付き合いください。

次回投下の目処が立ったのでお知らせします。
8/28(水)23時頃から投下予定です。自由行動安価はありません。

コメントレスありがとうございます。
2スレ目のDAT落ち後にこのSSを知ってくださった方もいて嬉しさと申し訳なさが綯い交ぜになっています……

【前回のあらすじ】
…黙秘権



葉隠「俺の占いによると、奥の用具入れに秘密の部屋への入口があるって出てるべ!」

桑田「秘密の部屋への入口ねぇー……」ガチャ

桑田「パッと見フツーの掃除用具しか無いけどマジで部屋なんてあんのか?」

苗木(霧切さんからも用具入れの壁を調べるように言われたよ。葉隠クンの占い、本当に当たったんだね)

斉木(ふむ、どうやらここの壁は押すと回転するどんでん返しになっているらしい……)スゥゥゥ

斉木(透視すると奥に薄暗い部屋が見えるな。本棚と机が置いてある)

桑田「ん? なんかここの壁に中途半端な切れ目があるぞ!」

苗木「も、もしかしてそこに隠し部屋への入口があるんじゃないかな(棒)!?」

桑田「オッシャ任せろ! 桑田ズミラクルモップロッドプーッシュ!!」グイッ

斉木(ダサい技名を叫ばなくても壁は回転する)

桑田「コ、コイツは……!!」

葉隠「忍者屋敷みてーに隠し通路が出てきたべ!」

苗木「葉隠クンが占いで言った通りだ(棒)! この先に隠し部屋があるんだよ(棒)!」

斉木(いい加減棒演技やめろ)

桑田「ぶっちゃけ半信半疑だったぜ。こんなトコに隠し部屋なんざ作っても便所臭くなるだけじゃね?」ズイッ

葉隠「ちょっとタンマだべ!! 桑田っち本当にそこに入るんか!?」

桑田「だって中に何があんのか入ってみねーとわかんねーだろうが」

葉隠「止めた方が身のためだべ! その先には宇宙人を捕らえるために用意された靴が左足だけ大量に蓄えられてるって!」

桑田「んじゃ靴以外のモンが見つかるってことだな! 流石に葉隠の占いも2連チャンで的中しねーだろ!」ズカズカ

斉木(桑田にしては頭が回るじゃないか)スタスタ

苗木「えーと……ボクも行くね!」スタスタ

葉隠「待ってくれぇー!!」ダッ

【男子トイレ・隠し部屋】

桑田「……なんか殺風景っつーか、変なカンジの部屋だな」

苗木「そうか、この部屋には監視カメラやモニターが無いんだ!」

斉木(つまり黒幕はこの部屋を監視の対象外にしているということか。それにしては……)

黒幕(あーあ……残姉が使えないんだったらアタシが直接出向くしかないのかなー……)

斉木(……黒幕の心の声は妙にこちらを意識していることが気掛かりだな)

葉隠「なぁ、早く帰んねーか? こんな場所には長居しない方がいいべ……」

苗木「そうだね。必要最低限のことを調べたらすぐに帰ろう」

苗木(というわけで斉木クン、サイコメトリーの準備よろしく!)

斉木(軽々しく言うな)ペリペリ

葉隠「苗木っち、なんだその本?」

苗木「“希望ヶ峰学園在校生名簿”って書いてあるね。もしかしたら何か手掛かりが掴めるかも」

桑田「んなモン見てどうすんだよ? 何年か前の名簿だったら意味ねーだろうが」

苗木「それでも目は通しておきたいんだ。もしかしたら、黒幕への手掛かりになるかもしれないし」パラパラ

斉木(? 苗木が本を開いた拍子に隙間から紙切れが滑り落ちたぞ――)ピリッ

――――――――――

???『……事件の影響がどこまで及ぶか判らない以上、私の部屋だけでは不十分だ』

???『念のためここにもメッセージを残しておこう。全ては彼らを……そして、響子を護るためだ……!』

――――――――――

斉木(…………………………)

斉木(今のは……紙切れに対してサイコメトリーが発動したのか)

斉木(他にも製紙工場の光景や備品置き場に紙を補充する様子が見えたが、SSという媒体の都合上描写は割愛させていただいた)

斉木(在校生名簿にこれを挟んでいた男性は、あの口振りから察するに……)

葉隠「のわあぁぁぁぁぁっ!!」バタン

斉木(やれやれ、また葉隠か。少しはサイコメトリーの考察に集中させてくれ――)

苗木「葉隠クン!? どうしたの葉隠クン!!」

桑田「……オイ苗木、アイツ誰だ?」

苗木「え、誰って――」

桑田「オレら以外の野郎がトイレ使いに来た……ってワケじゃねーよな?」

斉木(桑田の視線の先を向くと、隠し部屋の入口を塞ぐようにして何者かが佇んでいた)

斉木(体型を隠すようなオーバーサイズの白衣に、プロレスラーを思わせる黒い覆面)

斉木(右手に握ったバールのようなものは、足元にくずおれている葉隠を殴るために使ったのだろう)

斉木(そして何より、一瞬で僕を不快にさせるほどの、純度の高い絶望に染まった心の声……)

覆面(ったく、結局アタシが正体隠して男子トイレに乗り込むことになっちまったじゃねーか! まぁこれはこれで絶望的だからいいけど!)

斉木(――下がれ苗木。あいつが黒幕だ)

苗木「黒幕!? コロシアイ学園生活の黒幕……!?」

桑田「は? まさかアイツがモノクマ操作したりオレらにコロシアイを強要したりゲンナマ100億用意したりしてんのかよ!?」

覆面「…………………………」

覆面(全部正解なんだけど一応モノクマだけは中に誰もいないってことで設定守りたいわー)

斉木(僕には最初からバレてるが)

桑田「なんとか言えよテメー! あと葉隠に何しやがった!!」

覆面(だって葉隠の行動を5分刻みで記録した葉隠日記作るの超大変だったんだもんっ!)

斉木(私怨で殴ったの?)

苗木「とにかく、手掛かりを持って早くここから逃げないと……」

桑田「逃げるも何も出口をアイツに塞がれてんだよアホ!」

斉木(まずいな。このまま苗木や桑田にも危害を加えられては、僕が黒幕と共謀していると誤解されるかもしれない)

斉木(人前なので目立った超能力は使えないが……)フォン

覆面「…………………………!?」

覆面(何これ金縛りみたいに指一本も動かせない!!)

桑田「その割にはアイツ、オレらに襲い掛かってこないでずっと突っ立ってるよな」

斉木(サイコキネシスで動きを封じ込めることならできそうだ)

斉木(苗木、今のうちに桑田と逃げろ。その間僕が黒幕の動きを封じておく……)

覆面(でも……この金縛りのような感覚は初めてではないね。これは確か僕っ娘魔)

斉木(すまんやっぱ無理だわ)パッ

苗木「なんで!?」

覆面「!!!!!」ダッ

桑田「危ねぇ! こっち来た!!」サッ

覆面(また金縛りが起こらないうちに、まずは苗木を殴って――)ブン

苗木「うわっ!」サッ

覆面(思ったよりすばしっこいじゃねーか苗木! つーかアタシが狙い外してるだけ!?)ブンブンッ

斉木(……今度は黒幕が苗木を殴る直前を見計らい、サイコキネシスでバールのようなものの軌道を逸らしているが……思ったより難しいな)

斉木(調整を間違えたら不二咲の時と同じ惨事になりかねない上、黒幕の心の声を聞いているだけで精神力がすり減っていく)

斉木(かといって派手な超能力でカタを付ければ、今度こそ黒幕が勘づいて僕の正体がバレてしまう。そうなれば……)

『うぷぷぷぷ! いやぁ、まさかボクへ会いに来てくれる僕っ娘魔法少女の正体が斉木くんだったとはね!』

『僕っ娘……もしかしてオレが前に1度だけ脱衣所で会ったノーブラトランクスD寄りCカップのアルエ系美少女か!?』

『どういうことだ斉木!! 愚民の分際でどうして俺に魔法少女であることを黙っていた!?』

『大丈夫だよ。どんな特殊性癖を抱えていても……ボクは、斉木クンの友達だから……』

斉木(……といった具合で、Chapter2も真っ青の社会的おしおきが始まってしまう)

斉木(とにかく……早くこの状況を打破しないと僕が消耗するだけだ……!)

桑田「コノヤロー!! 苗木から離れやがれ!!」ブンッ

覆面「――!!」カラン

斉木(――桑田が本棚の分厚い本を黒幕に投げて、その拍子に黒幕はバールのようなものを取り落とした)

桑田「苗木! 今のうちにとっとと逃げろ!」

苗木「でも桑田クンは――」

桑田「オレは後から葉隠おぶって追い掛ける! いいから早く!!」

斉木(桑田の死亡フラグも含めて僕がしっかり対処しておく、心配するな)

苗木「っ……ごめん!!」ダッ

桑田「つーかオメーも逃げろ斉木! 何ボサッとしてんだアホ!」

斉木(そうだな。形だけでも臨戦態勢の構えを取ろう)サッ

桑田「無茶すんな!! 斉木のじゃんけんパワーじゃソイツに勝てねーだろ!!」

斉木(いや……少々リスキーな手段だが、黒幕を完全に封じ込める方法を思い付いた。これなら勝ち目がありそうだ)

覆面「……………………」

斉木(黒幕がバールのようなものを拾って構え直し、僕を目掛けて振りかざした)

桑田「あーもう! 何やってんだ斉木のアホォ!!」ブンッ

斉木(桑田が投げた別の本が、黒幕に直撃するタイミングを見計らって――)

覆面「――――――――――!!」

斉木(一瞬だけ眼鏡を外す!!)スチャッ





桑田「……何だコレ? 何が起こったんだ?」

桑田「黒幕の動きががマネキンみてーに止まった……いや、マネキンっつーより石像か?」

斉木(――裸眼の僕と目が合った人間は、問答無用で24時間“石化”する)

斉木(この超能力の発動条件は僕が眼鏡を外すこと。僕さえ裸眼であれば、相手側は眼鏡だろうが覆面だろうが関係ない)

斉木(幸いここには監視カメラが無いから、石化する瞬間の映像は残らない。そして目撃者も)

桑田「これってまさか……オレが本をぶつけた瞬間に奇跡が起きて、黒幕を石像に変えた!?」

斉木(ご覧の通りのアホだから何も心配しなくていい)

桑田「ヤッベー!! 超ヤッベー!! オレってマキシマムスゲーじゃん!!」

葉隠「……ぅう、頭がギュンギュンするべ……何そんなに騒いでんだ桑田っち……」

斉木(そして葉隠も意識を取り戻した。当たり所が良かったのか、復元能力を使うまでもなかったようだな……)

桑田「なぁ聞いてくれよ葉隠!! オレはまた奇跡を起こしちまったぜ!!」

斉木(やっぱアホすぎて心配になってきた)

【校舎2階・廊下】

苗木「みんな! 無事だったんだね!!」

桑田「おう! オレのミラクル野球術でバッチリ返り討ちにしてやったぜ!」

斉木(ミラクル野球術ってなんだ)

葉隠「にしてもひでーぞ苗木っち! 俺を置いて1人で逃げるなんて薄情者だべ!」

桑田「アホか、苗木はオレが逃がしてやったんだよ! 大体オメーと一緒じゃ逃げ遅れてたに決まってんだろ!」

苗木「でもボクも黒幕と戦えそうな人を呼びに行ってたんだよ! 桑田クンたちを助けたくて!」

大神「本当に黒幕がお主らを襲撃したというのか……!!」

斉木(男子トイレに女子を呼ぶな)

大神「黒幕め……苗木たちに何と卑劣な行いを……!!」ゴゴゴゴゴゴ

桑田「まーまー落ち着けよ大神! オレが奇跡を起こして指一本動かせないくらいカチンコチンにしてやったからさ!」

葉隠「ぜってーありえねーべ! 俺はオカルトは信じねーぞ!」

苗木(斉木クンの超能力だと思うけどそっとしておこう……桑田クンも幸せそうだし)

葉隠「つーか俺を殴った奴って本当に黒幕だったのか? 背後から先制攻撃されたから何も見えなかったべ」

桑田「オレは……覆面野郎を見た苗木が黒幕だーって言ったから、てっきりオレもそうだと思い込んでたんだけど」

苗木「えーと……ボクは、斉木クンに『あいつが黒幕だ』って教えられて……」

桑田「斉木に教えられて? あの時斉木何か喋ってたか?」

苗木「こう……、斉木クンが、ボクを見据えてボディランゲージで伝えてくれたんだ!」

斉木(言い訳苦しすぎるだろ)

大神「斉木よ……お主は何故、その人物が黒幕だと見抜けたのだ……?」

斉木(冷静に考えてみれば、あの時の僕は謎の襲撃者を一目で黒幕だと言い当てたことになるのか)

斉木(参ったな……苗木たちを黒幕から守ったというのに、端から見れば怪しいことこの上ないじゃないか)

大神「……答えられぬなら、無理に答えずともよい」

大神「武道の鍛練を積んだ者は、相手が放つ覇気から人となりを識ることもできる。斉木もまた、黒幕と確信させる何かを読み取ったのであろう」

斉木(別に鍛練は積んでいないが話を合わせておくか)

葉隠「そうか! それが斉木っちにだけ読み取れる黒幕のじゃんけんオーラなんだな!」

斉木(オカルトならもっとマシなこじつけをしろ)

大神(うむ……これで良い。我は斉木と拳を交えた日に己の拳で判断したのだ)

大神(斉木は大きな秘密を抱えているが、悪しき道に外れるような真似はしない。黒幕に屈して手を貸すことも無かろう)

斉木(……1回手合わせに付き合っただけなのに、大神さんは随分と僕を過大評価してしまっているようだな)

斉木(僕はあの隠し部屋に行ったせいで……“空白の2年間”に何が起きたか、ますますわからなくなったというのに)

桑田「そういや苗木、隠し部屋で見てた本に何か書いてあったか?」

苗木「ううん……黒幕が来た騒ぎで全然読めなかったんだ。でも」ピラッ

苗木「あの名簿に挟んであった紙切れだけは持ち出せたよ!」

桑田「……何だコレ?」

大神「『ここから出てはいけない』……?」

葉隠「どういうことだ? モノクマ……っつーか黒幕は俺たちを外に出させたいからコロシアイなんて持ち掛けてくるんだろ?」

苗木「ボクにもわからないけど……もしかしたらモノクマとは無関係な、希望ヶ峰学園そのものの謎に関わる手掛かりかも」

大神「……この紙を挟んだ者は」

大神「コロシアイ学園生活の始まりを、なんとしても阻止したかったのかもしれぬ……」

斉木(……大神さんの推測は的中している。サイコメトリーで視えた男性は、藁をも縋るような悲痛な表情で紙を隠していた)

斉木(彼は希望ヶ峰学園の教職員……その上私室を持っているということは、恐らく学園内で最高レベルの役職に就いている人物)

斉木(言わば“学園長”だろう)

桑田「けどよ、この紙を挟んだヤツって今どこにいるんだろうな? ここから出るなって言えんのは1度はこの学園の外に行ったからだろ?」

葉隠「逆に外から来て今も学園内に隠れてる可能性だってあるべ! ここはひとつ俺が居場所を占ってやっか!」

桑田「いやゼッテー外れるだろ、さっき隠し部屋のこと当てちゃったし」

葉隠「ひでーぞ桑田っち!?」

苗木「……斉木クン、さっきから浮かない顔してるよ。どうかしたの?」

苗木(もしかして、超能力で絶望的な事実を知っちゃったとか……?)

斉木(……知り得た情報は色々あるが追って伝える。それより今最も優先すべきは、内通者が突飛な行動に出ないよう牽制することだ)

苗木「それって、桑田クンたちが来る前に教えてくれた……」

斉木(江ノ島さん(仮)だけじゃない。今回黒幕自らがこっちへ出向いたせいで――)



大神(葉隠たちに危害を加えてきたということは……黒幕は、我ら全員へ直接手を下すつもりやもしれぬ)

大神(その前に……我が何としてでも、奴の凶行を阻止せねば……!!)



斉木(――もう1人の内通者・自己犠牲も厭わない大神さんが、黒幕と死闘を繰り広げる決意を固めてしまった)

今回分はここまでです。
諸事情から事前予告した時刻より早めに投下させていただきました。どうか台風の被害が少なく済みますように。

地の文ゼロで戦闘シーンを書くのが難しすぎて、覆面の台詞がシュールになってしまいました。
各自で脳内補完をお願いいたします。

前回投下から2ヶ月経ってしまいますね……
次回は三連休中、11/2(土)~4(月)のどこかで投下予定です。

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