斉木楠雄(コロシアイ学園生活を阻止する) (1000)

「シュールギャグ 持ち込みづらい この空気」
今スレの超能力標語 モデル:斉木楠雄さん(16)

・ダンガンロンパ(無印)×斉木楠雄のΨ難
・一部安価ありの予定
・ネタバレ注意
・キャラ崩壊気味
・ご都合主義? 残念、それはマインドコントロールだ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384176147

斉木(僕の名前は斉木楠雄。超能力者だ)

斉木(サイコキネシス、瞬間移動、透視、テレパシー……大抵の超能力は使うことができる)

斉木(もっとも、このことは周囲に隠しているがな)

斉木(しかし、僕は超能力に感謝したことが一度も無い。デメリットがあまりにも大きすぎる)

斉木(はかいこうせんを撃った後のターンは動けないように、超能力には全てデメリットが存在する)

斉木(最もわかりやすい例がテレパシー。僕の半径200m以内に居る人間の心の声が絶え間なく流れ込んでくるので……)

黒幕(うぷぷぷぷ! 荒廃しきった外界から自分たちの身を守るためシェルター化した学園内に立てこもっているクラスメイト達の2年間共に過ごし友情を育んだ記憶を奪いコロシアイを強要するなんて……超絶望的ィ!!)

斉木(という感じで初っぱなから盛大なネタバレを喰らうことが日常茶飯事なのだ)

斉木(な? 興醒めするだろ?)

斉木(超能力によって、僕の他にいる15人の私立希望ヶ峰学園新入生……もといクラスメイトの素性も判明してしまう)

斉木(例えばあちらにいる背の低い生徒、不二咲千尋さんをご覧いただきたい)

不二咲「あ、あの……不二咲千尋……“超高校級のプログラマー”です……」ウルウル

苗木「な、泣かないでよ……ボクってそんなに怖いかなぁ?」

不二咲「だって……なんだか不機嫌そうだったから、怒らせちゃったかなって……」

斉木(一見小動物の如き華奢な少女……少なくとも初見では誰もがそう思うだろう)

斉木(しかし僕は超能力者だ。視線を不二咲さんに向けるだけで“透視”が発動し……)スゥゥ

斉木(少女という認識を全否定されたのち、小動物はリアルな筋肉剥き出し人間へと変貌する)

斉木(……今後、彼のことを「不二咲くん」と呼ばないように注意しよう)

斉木(不二咲さんの名誉のために断っておくが、透視による筋肉剥き出しは僕が目にする全ての人に言えることだ。僕の周りには常に170センチ級の巨人たちが堂々闊歩している)

斉木(むしろ厄介なのは24時間営業中のテレパシーだ。頭の中に入ってくる他人の心の声は、僕の力ではどうやっても消すことができない)

苗木「ええと、キミは……」

江ノ島「“超高校級のギャル”江ノ島盾子! てかアタシのことファッション雑誌の表紙とかで見たことない?」

苗木「いやぁ……なんだか雑誌とかと顔が違う気がして」

江ノ島「アレはフォトショで誤魔化してんの! 芸能界じゃ常識だから!」ケラケラ

斉木(明るく裏表の無さそうな江ノ島さんのことだって、テレパシーのせいで)

江ノ島(どうしようどうしようちゃんとギャルっぽく話せてるかな上手くコロシアイ学園生活を進められるかなそもそもふぉとしょって何だっけ後で盾子ちゃんに怒られたらどうしよう)

苗木「江ノ島さん……どうかしたの?」

江ノ島「!? ううん全然! それより苗木は他の奴らともう話し終わった感じ!?」

斉木(必死に江ノ島盾子という人物を演じている別人だと見抜けてしまう)

斉木(そう。僕には宝箱がミミックだったという驚きを味わうことすら許されないのだ)

江ノ島「ちゃんと他の人とも話なさいよ! じゃないと……えーと、げきまる……」

苗木「……激おこぷんぷん丸?」

江ノ島「そうそれ! 激おこぷんぷん丸だかんね!」

斉木(なんか残念な人だな)

斉木(希望ヶ峰学園は、各分野において突出した才能を持つ“超高校級の高校生”を集めた完全スカウト制の学校だ)

斉木(何故そんなところにお前が居るんだとか言わないでくれ。僕も黒幕に記憶を消されたらしく、入学を決めた理由が思い出せないんだ)

斉木(それにしても個性的な面々ばかりが揃っているな。ナントカと天才は紙一重と言ったところか)

斉木(僕は出来るだけ目立つことはしたくない。超能力も隠して平穏に過ごしたいんだ、出来るなら今すぐにでも瞬間移動で外へ脱出したい)

斉木(だが、僕の超能力には必ずデメリットがある。瞬間移動は“一度でも見たことのある場所”にしか行けないし、連続使用の際には3分の間隔を空ける必要がある)

斉木(試しに自宅へ飛ぼうとしたが、それすら失敗に終わってしまった。これも記憶を消された影響だろうか)

斉木(よって当分の間はこの学園内で過ごさざるを得ない。本当に僕は何故ここに入学したんだ……)

苗木「えーと……斉木楠雄クン、だよね?」

斉木(……非常に不本意だが、僕も自己紹介の輪に入るとしよう)

苗木「ボクは苗木誠。抽選で決まる“超高校級の幸運”枠で入学してきたんだ。これからよろしくね」

斉木(ふむ、苗木誠か)

斉木(突出した才能こそ無いが素直でとっつきやすい人物のようだな。貴重な一般人だし好感が持てる)

斉木(彼となら交流を深めても損する可能性は低そうだ。こちらこそよろしく頼むとしよう)

苗木「……ところでさ、斉木クンにお願いしたいことがあるんだけど」

斉木(お願い? 妙なことを切り出すんだな……)

苗木「“超高校級のジャンケニスト”の斉木クンとじゃんけんをしてみたいんだ! 1戦だけでも相手してよ!」

斉木(ジャンケニストって何だ)

苗木「だって斉木クンって幼稚園児の頃に無敗の天才じゃんけん小僧として話題になったんでしょ?」

苗木「今は勝率こそ落ちたけど、学級委員決めのじゃんけんでは小中高と必ず一抜けしてたって!」

斉木(確かに事実だ……テレパシーを利用して面倒なことを避け続けてきたのが裏目に出たか)

黒幕(ジャンケニストwwwwwじゃんけん少し強いだけとか超ショボいwwwwほぼ一般人wwwwww)

斉木(うるせぇ)

苗木「みんな凄い人ばかりで気疲れしちゃったから、どうせならじゃんけんのプロと勝負をしてみたいんだ。どうかな?」

斉木(……しかし、僕の肩書きが“超高校級の超能力者”じゃなかったことは不幸中の幸いだ。ここは期待に応えて勝負を引き受けよう)サイショハグー

斉木(ジャンケニストとして交流する以上、肩書きは伊達じゃないと証明するためにストレート勝ちしておくか)ジャンケンポン

苗木「うわぁ、やっぱり強いや。ありがとう斉木クン、また勝負してね!」

斉木(ああ。超高校級の幸運に免じて、次は特別に勝たせてあげよう)

朝日奈「なになに? ジャンケニスト? 私もやりたーい!!」

桑田「じゃんけんの強者か! だったらオレも負けねーぜ!」

葉隠「それが終わったら俺とのバトルだべ!」

江ノ島「じゃあその次はあたしと3回勝負ね!」

斉木(やっぱ次もあいつ負かしてやる)

斉木(その後もじゃんけんがてらの自己紹介は続き、ほとんどの生徒の情報や人となりを聞かされる羽目に遭った)

斉木(だが、唯一素性の分からない人物がいる)

霧切「私は霧切響子。…………自分の肩書きについては、教える義務はないはずよ」サイショハグー

斉木(そう、霧切響子だ。霧切さんが発する心の声には、自分の才能に関する情報が含まれていない)ジャンケンポン

斉木(どうやら彼女だけが、2年間の学園生活だけでなく入学以前の記憶も喪失しているらしい。怪盗とか殺人鬼とか厄介なものでなければいいが……)アイコデショッ

黒幕(やっぱ霧切の記憶は多めに消しといて正解だったわ! 超高校級の探偵にあれこれ推理されたらコロシアイ学園生活も破綻しちゃうもんね!!)

斉木(もうお前思考停止しててくんない)

十神「おい、お遊びはそこまでだ。ここからは本題に入るぞ」

斉木(ちゃっかりじゃんけん大会に参加して負けた奴が何言ってるんだ)

十神「俺はこの学園へ入った瞬間に気を失い、気が付くと廊下に倒れていた」

十神「しかも、ここに居る全員がだ」

斉木(実際には入学式から2年間の記憶を消されたからそう感じるらしいですけどね)

十神「おまけにいつの間にか窓は全て分厚い鉄板で塞がれ、この玄関は巨大な機械で閉ざされている」

大神「我がボルトを取り払おうとしたが、頑丈で全く歯が立たなかった……」

大和田「オレもこの機械をブッ叩いてみたけどビクともしなかったぜ」

十神「つまり、俺達はこの建物の中に完全に閉じ込められたことになる」

斉木(本当は僕ら自身がこの建物に閉じこもったらしいですけどね)

葉隠「閉じ込められたぁ? これはきっとオリエンテーションの一環だべ!」

腐川「な、なに呑気なこと言ってんのよ……そもそもこんな、監視カメラだらけで怪しい雰囲気の建物が、本当に希望ヶ峰学園なわけ……?」

斉木(僕らが忘れてるだけで本当に希望ヶ峰学園なんだそうですよ)

斉木(そうだ、腐川さんのお陰で僕にとって最大の問題を思い出した。この学園には至るところに監視カメラが設置されている)

斉木(おそらく今後起こるであろうコロシアイの一部始終を記録するためだろうが……お陰で堂々と超能力を使える場所が見つからないじゃないか)

斉木(やむを得ない、後でどこかの監視カメラを破壊しておこう)

ピンポンパンポーン

『只今より入学式を始めます。新入生のオマエラは体育館へ移動してください――』

セレス「……ひとまず、今のアナウンス通り体育館へ向かいませんか?」

霧切「そうね。現時点ではあまりにも情報が不足しているわ」

斉木(確かに僕もさっきから黒幕の心の声を聞いて事態を把握しつつあるが、肝心な“コロシアイ学園生活”に関する情報は得られていない)

斉木(やれやれ……面倒だが僕も移動するとしよう)

【体育館】

斉木(僕を含めた16人が体育館に到着した数分後、そいつは現れた)

モノクマ「気をつけ! 礼! おはようございます!」

石丸「おはようございますッ!!」ビシッ

腐川「……ぬ、ぬいぐるみが喋った……?」

苗木「それとも……ロボット……?」

モノクマ「ぬいぐるみでもロボットでもないよ! ぼくはモノクマ、この学園の学園長なのです!」

斉木(……構造を透視する限り、かなり精密なロボットのようだ。黒幕が操縦しているのだろう)

斉木(しかしどこから出てきたんだ? それらしい仕組みは全く見当たらないぞ……)

モノクマ「えー、オマエラは未来への希望溢れる大変貴重な人材です。そんな才能を保護するために、今日からこの学園内だけで共同生活をしてもらいます!」

モノクマ「期限は……一生!!」

山田「い……一生ォォォ!?」

舞園「そんな!! もう二度と外には出られないってことですか!?」

斉木(大方の予想はついていたが、一生という言葉を使われると身に堪えるものがあるな……)

モノクマ「オマエラ、人の話は最後まで聞きなさい! クマの話もね!」

モノクマ「ぼくはとっても優しいから、どうしても外に出たいという人のためのルールを用意したのです!」

モノクマ「共同生活の秩序を著しく乱した生徒には、“卒業”という形でこの学園から出ていってもらいます!」

霧切「“秩序を著しく乱す”……どういう意味なの」

モノクマ「うぷぷぷぷぷ……それはね」

モノクマ「“人が人を殺すこと”だよ」

石丸「何だとッ!?」

苗木「仲間同士で殺し合えって言うのか!?」

モノクマ「殴殺、刺殺、撲殺、斬殺、焼殺、圧殺、絞殺、惨殺、呪殺……殺し方は問いません」

モノクマ「“誰かを殺した生徒だけがここから出られる”。それだけの簡単なルールだよ」

モノクマ「それが無理ならここでの生活を受け入れることだね!」

斉木(……命を狙われる不安を抱きながらの共同生活。下手なバトロワよりも厄介だな)

斉木(まあ、僕は殺されても自分で治せるが)

大和田「……おい、さっきから何ふざけたこと言ってんだ!!」

モノクマ「ふざけた……? それって君のトウモロコシみたいな髪型のこと?」

大和田「――ッ!! 上等だコラァ!! ボッコボコにぶちのめしてやんよ!!」ガシッ

モノクマ「はわわわ! 学園長への暴力は校則違反だよぉ!」ジタバタ

大和田「るせぇ!!」



モノクマ『ピコーン ピコーン ピコーン』

斉木(……まずい、これは……)

大和田「だからこの髪はコーンじゃねぇ!!」

斉木(それただの機械音)

霧切「大和田くん、今すぐそれを放り投げて! 早く!」

大和田「チッ……わぁったよクソが!!」ブンッ

ドカーン

大和田「……なっ……」

朝日奈「爆発……しちゃった……」

モノクマ「もぉ、危ないじゃないか!」ピョコン

桑田「げっ、また出てきやがった!」

モノクマ「最初だし今回は見逃してあげるけど、次はタダじゃ済まないからねっ!」

山田「残機はまだまだあるようですなぁ……」

モノクマ「それじゃ最後に電子生徒手帳を配ります! 起動時に名前が出るから念のため確認しといてね!」

モノクマ「その手帳は学園生活の中で必要になるから、壊したりなくしたりしないこと! まぁちょっとやそっとじゃ壊れないんだけどね」

モノクマ「校則も確認できるからしっかり熟読すること! ではでは、素敵な学園生活をエンジョイしてください……うぷぷぷぷぷ」ヒュン

苗木「……消えちゃった」

舞園「………………」

セレス「………………」

苗木「………………」

斉木(……残された者たちは、何も言わずに互いを見回していた)

大和田「………………」

腐川「………………」

桑田「………………」

斉木(僕も不安に駆られる生徒のフリをして、学園の外側を透視する)

斉木(……成程。こんなに荒廃しているなら、外に出たところで絶望しか待ち受けていない)

石丸「………………」

朝日奈「………………」

斉木(僕がやるべきことは大きく分けて3つ)

斉木(他の生徒による殺人を未然に防ぐこと、生徒間の結束を強めること、黒幕の所業を全員に認知させること)

斉木(面倒だが仕方あるまい。サバイバーズギルトを背負うよりはよっぽどマシだ)

葉隠「………………」

十神「………………」

斉木(コロシアイ学園生活を阻止する)

斉木(過去何度も地球の危機を回避してきた僕になら、それくらい可能だろう)

大神「………………」

江ノ島「………………」

山田「………………」

不二咲「………………」

斉木(………………にしても沈黙長くない?)

霧切「……それで、この睨めっこはいつまで続くのかしら」

斉木(霧切さんよく言った)

石丸「む、それもそうだな! まずは全員で校則の確認をしよう!」ピッ

セレス「賛成ですわ。ルールを知らずに行動しては、先程のように爆破されても文句も言えませさんものね」ピッ

斉木(確かにその通りだ。超能力が使える場所を増やすには、上手く校則の隙を突かないと……)ピッ

江ノ島「えっと最初は……『生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません』か」

大神「モノクマが要求したことの土台と言える部分だな……」

不二咲「次は『夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう』……だねぇ」

朝日奈「どこが立ち入り禁止区域になるんだろう?」

大和田「3番目が『就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します』だな」

葉隠「寄宿舎の個室っつーことは寝泊まりできる場所はあるんだな!? やったべ!」

山田「その次が『希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません』ですな」

腐川「な、なんか引っかかる言葉ね……」

斉木(しかし行動に制限が無いというのは都合が良い。できるだけ早く監視カメラを破壊して――)

苗木「それから、」

苗木「『学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます』だね」

斉木(………………)

斉木(…………詰んだ)

プロローグが済んだところで、早いですが今回の投下は終了です。
スローペースになることと思いますが、お付き合いいただけると幸いです。

【前回のあらすじ】
ジャンケニスト



斉木(『監視カメラの破壊を禁じます』)

斉木(超能力の使用をほぼ不可能にする一文に、僕は少なからずショックを受けていた)

舞園「あの……すみません、この6番目の校則ってどういう意味だと思いますか?」

桑田「『仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません』か。普通に殺すんじゃ駄目なのか?」

腐川「ま、まさかあんた……早速誰かを殺す気じゃないでしょうね……」

桑田「んなわけねーだろアホ!」

十神「……意味など簡単だ」

十神「卒業したければ誰にも知られないよう殺すだけ。お前ら愚民は何も考えず、与えられたルールに従えばいい」

朝日奈「何よその言い方! 最っ低!」

十神(最低なのはお前の返し文句の方だろう、感情的な言葉のみで構成された理屈も何もない反論は頭の悪さを象徴しているようだ。脳味噌の容量は筋肉に回ったかそれとも胸に回ったか、どらにせよこのゲームで生き残るには不向きな……)

斉木(うわぁこいつめんどくさい)

斉木(だが僕も6番目の校則の意味は気になるな。周りを出し抜いて殺せという意味か……?)

黒幕(コイツラ早速疑心暗鬼に駆られてる! うぷぷぷぷ、そうこないと事件の後の学級裁判が面白くならないもんね!)

斉木(今回ばかりは有益な情報をありがとう)

斉木(“学級裁判”……学活の時間に給食費泥棒をクラス全員でフルボッコにするトラウマイベントか)

斉木(被害者本人が『彼は犯人ではない、有罪と決めつけるな!』とか言ってくれればいいのだが……この学園で起こりうる裁判沙汰はただひとつ)

斉木(けして被害者からの証言が得られない、証拠だけが物を言う事件――)

斉木(“殺人”だ)

斉木(つまり6番目の校則は『学級裁判のために証拠を握られるな』という意味になるのだろうか。これ以上の詳細はモノクマからの説明を待つしか――)

十神「どけ、プランクトン」

大和田「あァ!? 何が言いてぇんだ!」

斉木(おっと、何やら揉め事が起こっていたようだ。どうも考察シーンになると周囲の様子を疎かにしがちだな)

大和田「今のは全員で校内探索するっつー流れだっただろうが! 勝手な行動は許さねぇぞ!」

十神「俺は一人で行くと言っているんだプランクトン。微生物一匹が騒いだところで大海にはなんの影響も及ぼすまい」

大和田「さっきから馬鹿にしやがって! プランクトンだってなぁ……なんか……なんかいいとこあんだぞコラァ!!」

斉木(なんかって何だ)

苗木「ちょっと待ってよ! 一旦落ち着こうよ、喧嘩はよくないって!」

大和田「あァ!? オメー今綺麗事言ったな! オレに説教しようってのか!!」ズアッ

苗木「そんな、ボクは違――っ!!」ドンガラッシャーン

舞園「苗木くんっ!!」

江ノ島「……あちゃー……」

葉隠「清々しいくらいド派手に吹っ飛んだべ……」

斉木(……モロコシプランクトンとは極力関わらないでおこう)

霧切「ところで……大和田くんには悪いけど、私も別行動が適していると思うわ。全員で回るよりも手分けして報告した方が効率良く調査できるはずよ」

十神「お前は愚民の中でも頭のいい部類のようだな。そういう訳だ、俺は単独行動させてもらう」

石丸「ならば各自でこの建物について調査し、後ほど報告しあうとしよう! 午後7時に寄宿舎の食堂へ集合だ!」

斉木(こうして各々が体育館を後にしたのだが、中には体育館から動こうとしない生徒や……)

舞園「苗木くん! しっかりしてください、苗木くん!」

腐川「無理よ……完全に気を失ってるじゃない」

斉木(元から動けない生徒も居た)

斉木(山田、腐川さん、安……セレ……ルーデンベルクさんは当分ここに留まるつもりらしい)

斉木(アクティブ系オタク、被害妄想癖、ゴスロリ中二病……こいつらに捕まると大変面倒なことになりそうだ)

斉木(早いうちに僕もここを出よう。そうだな、僕も監視カメラの様子を見て回るか)

斉木(電子生徒手帳には、この建物のマップを表示する機能がある。寄宿舎には僕の部屋も用意されているようだ、まずはそこを目指すとしよう)

【寄宿舎1階】

斉木(さて、お手元にゲームソフト『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』がある方は是非とも起動していただきたい)

斉木(僕の予想では、寄宿舎のエントランスから赤い照明のエリアへ直接向かうと、左手にはイシマル、オオワダ、トガミ、エノシマ、セレスという順番で個室が並んでいるはずだ)

斉木(その並びの一番手前に僕の個室“サイキ”が増えている。具体的には霧切さんの向かい側、石丸の隣の部屋だ)

斉木(建物の構造上、多少無理のある設定なのは百も承知だ。後は各自で脳内補完しておいてほしい。超能力者にも限界がある)

斉木(室内に入って一通り確認したが、備え付けのシャワールームには監視カメラがついていなかった)

斉木(現時点で唯一黒幕の死角となる場所だ。少々狭いが超能力が使えるだけで良しとしよう)

斉木(体育館から自室に来るまでの短い距離ではあるが、僕が見つけた監視カメラは全てセンサーで可動する仕組みのものだった)

斉木(これではレンズにダミーの風景を貼り付ける手段も使えないぞ……まったく、無駄に高性能なものを用意してくれたな)

斉木(……現在の時刻は午前11時9分か)

斉木(石丸が設定した集合時間は午後7時。時間多く取りすぎだろ、崖の上のポニョを4回観てもまだ暇があるぞ)

斉木(じっとしていても仕方ない、僕も校内探索に出掛けるか)

斉木(……その前に)



【苗木の個室】

苗木「…………」

斉木(未だ気絶中の苗木を起こしてパーティに加える)

斉木(テレパシーから察するに、現在単独行動しているのは十神、石丸、霧切さん。現時点では3人とも好感度メーターの数値が40を下回っている……僕はこの中に名前を連ねたくない)

斉木(それに、誰かと行動していれば万が一の時にアリバイが証明できる。食堂での調査報告もそいつに任せればいい)

斉木(以上の理由により、僕は苗木を利用するために彼の部屋へやってきた)

斉木(黒幕に怪しまれないための配慮も忘れない。探索するフリをしてランドリーに立ち寄り、自販機でポカリを入手した。これで僕は苗木を見舞いに来ただけの同級生だ)

斉木(……どうやらモロプラさんが罪滅ぼしに苗木をここまで運んだようだな)

斉木(罪悪感を抱いて当然だ、殴られたせいで脳震盪を起こしている。この分だと集合時間までに起きるかすら危ういな……)

斉木(……この程度の超能力なら使ってもバレないだろう。“復元”!!)キィン

苗木「……うぅん…………あれ? なんだか急に体の疲れが取れたような……」

斉木(復元能力。触れた物や人間を24時間前の状態に戻す超能力だ)

斉木(1度使うと同一対象には24時間後まで効かなかったり、近くのものも一緒に復元されてしまったりするなどのデメリットもあるが……さすがに初日から殺しに走る奴もいないだろう)

苗木「……斉木クン? お見舞いに来てくれたんだね、ありがとう!」

斉木(一応そういうことになっている。さて、ポカリを飲んだら探索に付き合ってもらうぞ)

苗木「でもごめん……ボク、アクエリアス派なんだ」

斉木(その文句は自販機に言ってくれ)

【1-A教室】

斉木(殺人事件の発生を防止する上で非常に有効な超能力がある)

斉木(一度行ったことのある場所の様子を遠方から見ることができる能力――“千里眼”だ)

斉木(この能力を存分に発揮するため、僕は苗木と共に現在行ける場所を片っ端から見て回っている。まあ、目的はもうひとつあるが)

斉木(この教室は苗木が最初に目を覚ました場所らしい。クレヨンで書かれた入学案内が置き去りにされたままだ……)

苗木「それにしても7時集合ってまだまだ先だね。今は1時を回ったところだから……ん?」

斉木(どうした? 掛け軸の裏にアジトへのスイッチでもあったか?)

苗木「時計近くにこのコインが落ちていたんだ。モノクマの顔が描いてあるけど、これって何だろう?」

斉木(それは“モノクマメダル”だな。僕の部屋のシャワールームにも落ちていた)

斉木(ちょうど購買部へ行けば校舎の探索は終了だ。暇潰しにモノクマメダルを消費しよう)

【購買部】

苗木「なんだか怪しげな雰囲気だね。購買部っぽい要素が自販機しかないよ……」

斉木(全くだ。あとはそこに設置されているガチャガチャ台……“モノモノマシーン”くらいのものだな)

斉木(ランドリーでポカリを入手した時もそうだったが、この学園の自販機は全て無料で利用できる。モノクマメダルは、完全にモノモノマシーン専用のメダルということになる)

斉木(モノモノマシーンの景品は随分とバラエティに富んでいるようだ。物理法則を根本から覆すレベルで様々なアイテムが詰め込まれている)

斉木(このままメダルを持っていても仕方ない、マシーンを回してみよう……)ガチャ

『“隕石の矢”が出てきた!』ゴトン

斉木(僕にこれ以上何の能力を獲得しろと)

苗木「面白そうだね! 僕もやってみよう、っと」ガチャ

『“希望ヶ峰の指輪”が出てきた!』ゴトン

苗木(校章デザインの指輪かぁ。ボクはあんまりいらないな……)

斉木(まあ、それは級友にプレゼントすることで初めて意味をなす代物だからな)

苗木「斉木クン、これはキミが持っててよ。さっきポカリをくれたお礼ってことでさ」

斉木(自然体な押しつけをどうもありがとう)

【校舎1階・廊下】

苗木「あっ、舞園さん!」

舞園「苗木くん……! よかった、無事に目を覚ましたんですね!」

苗木「まぁね。ボクもあそこで大和田クンに殴られるとは思わなかったよ……」

斉木(舞園さんか。最初の自己紹介の時は妙に好意を持って苗木と話していた)

斉木(テレパシーによると二人は同じ中学校の出身らしいが、その割には苗木の方は緊張した様子だな……)

苗木「えっ!? まさか舞園さんが僕のことを知ってたなんて! 違うクラスだったのになんで……」

舞園「勿論です! 2組の苗木くんのこと、ちゃーんと知ってましたよ」

斉木(成程。会話をしたことは無かったものの、お互いのことは認識していたのか)

舞園「苗木くん、校内へ迷い込んだ鶴を逃がしてあげてたじゃないですか」

苗木「見ててくれたの? あれは僕が飼育委員だったから押し付けられただけなのに……」

舞園「たとえ押し付けられたとしても立派な行いですよ! 私、あの時……」

斉木(まさか『あの時の鶴なんです』なんて冗談を言うつもりじゃないだろうな)

舞園「バレちゃいました? 斉木くんって鋭いんですね!」

苗木「? 斉木クンは何も言ってないよ?」

舞園「言葉にしなくても何を考えているか分かるんです。 私、エスパーですから!」

斉木(なのに僕が本物のエスパーだとは気付かないのか)

斉木(二人だけで談笑を続けるものだから、苗木と舞園さんは置いてきてしまった)

斉木(当然まだまだ時間はある。二人以外の誰かの所にでも行ってみよう)

斉木(突然だがここで“安価指定”を執り行いたい)

斉木(原作でいうChapter1からChapter5の間、各Chapterごとに3回ずつ――計15回の自由行動イベントが発生する。僕は他の生徒たちと一定の友好関係を築くため、安価で指定された人物と共に時間を過ごす)

斉木(それぞれの人物を指定できるのは1回限りだが、“生徒の死によってイベントが不可能になる”という事態は起こらないから安心してくれ。僕が保証する)

斉木(なお、イベント内容は若干変化する。例えば、不二咲さんとのイベントは彼の得意分野であるプログラミングが可能になった後の方がより充実するだろう)

斉木(最後に……自由行動イベントに関しては全く“書き溜め”をしていない)

斉木(よってイベント発生中はSSの投下ペースが格段に下がることをご容赦願いたい。僕には超能力は使えても魔改造はできないんだ)

斉木(さて……それでは【安価下2】のところへ行こう)

斉木(……苗木のところへ引き返すか)



【校舎1階・購買部前】

斉木(まだここに居たのか。随分と話し込んでいるんだな……)

苗木「それでさ、妹のこまるが…………」ペチャクチャ

舞園「わぁ! アンテナって不思議ですね!」ペチャクチャ

斉木(………………)

苗木「ところで舞園さん、去年の末に出た新曲って…………」ペチャクチャ

舞園「モノクローム・アンサーのことですか? あの曲は私から作詞家さんに内容をリクエストして…………」ペチャクチャ

斉木(……………………)イラッ

パァン

苗木「うわっ!? 急にポカリのペットボトルが爆発した!!」

舞園「大丈夫ですか苗木くん! ずぶ濡れですよ!!」

斉木(……………………)スタスタ



斉木(……リア充は爆発させた)

斉木(待たせて申し訳ないが再安価だ。今度は【安価下2】のところへ行こう)

斉木(……今度は霧切さんの様子を伺いに行こう)



【1-B教室】

斉木(霧切響子。“超高校級の探偵”らしいが、その事実を他人はおろか本人までもが忘れてしまっている)

斉木(しかし心配する必要は無い、記憶が消えても類稀なる推理力は健在だ。現に今もこうして……)

霧切「私の身体能力は超高校級と言えるほど優れてはいない、きっと文化系の才能だわ。けれど文化系という一言で括っても分野が広すぎる、せめて理系と文系のどちらかに絞らないと……」ブツブツ

斉木(着々と推理を進めている)

霧切「……それで、あなたの才能は理系と文系のどちらなのかしら。斉木くん」

斉木(! 気配は消していたはずなのに、霧切さんが相手では無駄だったということか……)

霧切「自己紹介のじゃんけん対決で、あなたは15人の生徒全員に勝っていたわ」

霧切「けれど苗木くんの話では、あなたがじゃんけんに於いて全戦全勝だったのは幼稚園児の頃までだったそうね」

霧切「……どうしてここへ来た途端、あなたのじゃんけんの勝率は飛躍的に上昇したのかしら?」

斉木(参ったな。僕は霧切さんの推理力を完全に侮っていた……)

斉木(とりあえずここは『希望ヶ峰へ入るにあたって相手の思考を読む能力に磨きをかけた』とでも言い訳しておこう)

霧切「そう……腑に落ちないけれどまぁいいわ」

斉木(こんなに肝を冷やしたのは久々だ。とどめを刺される前に早くこの教室を出よう――)

霧切「……斉木くん」

霧切「あなたほどの切れ者なら、私たち全員の学園脱出を可能にすることもできるはずよ」

斉木(…………本当に、僕は霧切さんのことを侮っていたな)

斉木(超能力を以てしても不可能なことがあれば、真っ先に彼女の力を借りるとしよう)ガラッ

【食堂】

斉木(そうこうしているうちに集合時間を迎え、石丸の宣言のもとに“第1回希望ヶ峰学園定例報告会”が始まった)

十神「俺はモノクマの正体……すなわち俺たちをここに閉じ込めた犯人について調べたが手掛かりは得られなかった。以上だ」

朝日奈「え……それだけ?」

十神「手掛かりが得られなかったんだ、これ以上お前らに言うことは無い」

斉木(こいつは貢献度ゼロなのにどうしてここまで他人を見下せるんだ)

石丸「次は僕の番だな! 大発見だぞ、寄宿舎には全員分の個室があったのだッ!!」

斉木(うん、全員知ってた)

江ノ島「ついでにアタシと不二咲で確認したけど、個室は完全防音になってたよ」

セレス「それから室内にはシャワールームもありましたわね」

大神「テーブルの上には部屋の鍵も置かれていたな……」

石丸「はっはっは! みんな積極的に調査をしたのだな!」

斉木(お前が大して調査しなかっただけだろ)

霧切「私はこれを見つけたわ」スッ

不二咲「えっと……“希望ヶ峰学園案内図”……?」

霧切「そして案内図にはこの建物の見取り図が描かれている。つまり、私たちは誘拐されたのではない……ここは正真正銘の希望ヶ峰学園なのよ」

斉木(流石霧切さんだ、単独行動した3人の中で一番の成果じゃないか。やっと報告会らしくなってきたな)

桑田「オレらは窓の鉄板が外せないか片っ端から確認したんだけどよ……」

葉隠「全然ビクともしなかったべ。そもそもオーガですら無理だったんだ、俺たちに外せるわけなかったべ」

斉木(僕としては鉄板のボルトが“建物の内側から取り付けられている”ことに気づいてほしかったが……今真実を伝えると混乱を招きかねない、やめておこう)

山田「僕は寄宿舎のトラッシュルームに入ったところ、突如エンカウントしたモノクマにシャッターの鍵を押し付けれてしまいました……」

腐川「あんた会ったの!? あのモノクマに……!?」

山田「はい。重要品を勝手に処分されないよう、シャッターの鍵は週替わり制の掃除当番が管理してほしい……と言っておりましたぞ」

斉木(これは有益な情報だな。何も知らなければサイコキネシスで無理矢理シャッターをこじ開けていたかもしれない)

舞園「モノクマさんなら、私も厨房を調べている時に会いましたよ。食糧は毎日自動で追加されるから飢えの心配は無いそうです」

葉隠「どこにでも現れるんだな。熊出没注意の標識でも立てておくべ!」

斉木(ヒグマとモノクマはかなり違うと思うぞ)

大和田「オレと朝日奈と大神は学校エリアを回ってきたぜ」

朝日奈「2階に行ける階段を見つけたんだけど……シャッターが降りててどうにもならなかったの」

苗木「ボクと斉木クンも学校エリアを調べてたんだ。でも、いくつか入れない部屋があって……」

斉木(……そう、僕の探索におけるもうひとつの目的は“これ”だ)

大神「それは……保健室のことか?」

苗木「保健室もそうなんだけど、もうひとつ……」

苗木「何の部屋かも分からない、大きな“赤い扉”があったんだ」

舞園「赤い扉……ですか?」

斉木(そう。この建物のどこに何があるのかは、透視のお陰でほとんど把握できた。しかし唯一用途の分からない部屋があった……それが赤い扉の部屋だ)

斉木(大きなエレベーターに乗って地下へ向かう部屋のようだが……あまりにも深くへ続いているので、流石の僕でもその先を見ることはできなかった)

苗木「あの扉の奥には、一体何があるんだろう……?」

斉木(苗木もこう言っていることだ。教えてもらうぞ、黒幕……!!)



モノクマ「その疑問にお答えしましょう!」ピョーイ

斉木(今までどおりテレパシーでも事足りたんだが)

腐川「ひいっ!? 本当に出てきた……!!」

不二咲「神出鬼没だねぇ……」

モノクマ「赤い扉が開放されるのは、殺人事件が起きた後になります!」

十神「殺陣事件が起きた後……? どういうことだ、説明しろモノクマ」

モノクマ「これ以上は言えません! 気になるんなら自分で確かめなよ、百聞は一見にしかずって言うしさ!」

苗木「ふざけるな!ボクたちは仲間を殺したりなんかしない!!」

モノクマ「そう言ってられるのも今のうちだよ! その言葉が嘘になるまで何日かかるか……うぷぷぷぷ、楽しみ楽しみ!」ヒュン

霧切「……モノクマのことは無視して、話を進めましょう」

斉木(大した情報も得られなかったし、この作戦は失敗だったようだな)

200m以内に黒幕いるからわかるんじゃね?

セレス「あの……ひとつご提案をしてもよろしいでしょうか」

石丸「うむ! 会議への積極的な参加は関心・意欲・態度の評価を向上させるぞ!」

セレス「では。……わたくしたちの間で“夜時間の出歩き禁止”というルールを設けたいのです」

十神「ルールだと? 何の拘束力も持たない口約束にどんな意味があるというんだ」

セレス「十神くんの仰るとおり、このルールに従うか否かは皆さんの自由ですわ。けれどこのままでは、わたくしたちは夜が訪れる度に恐怖に怯えることになります」

セレス「でしたら、口約束でもしておいた方が気持ちも和らぐはずです」

石丸「素晴らしいアイディアだ! みんな、夜時間の外出は極力控えるように心掛けたまえ!」

斉木(僕個人としてはこれ以上行動を制限されたくはないが……少しでも互いの疑心暗鬼をなくすためだ、致し方ないだろう)

石丸「以上、これで第1回希望ヶ峰学園定例報告会を終了する!」

【斉木の個室】

斉木(現在は9時48分。もう少しで夜時間になる)

斉木(各自が学園の外に出たいという欲求こそあるものの、まだ誰も殺人を犯そうとは考えていないようだな)

斉木(今日はもうやることがない、早めに寝るか……)

斉木(……っ! 急に頭痛が――)クラッ

――――――――――

桑田『お、落ち着けって舞園ちゃん!』

舞園『うるさい! 私は――私はあなたを殺してこの学園を卒業します!!』ブンッ

桑田『何考えてんだよ! 一旦それ置いて話聞け、って!!』ガッ

舞園『きゃあっ!!』

――――――――――

斉木(……今のは“予知”か!?)

斉木(普段は大して役に立たないクソ能力だが、予知が外れたことは一度もない。つまり……)

斉木(舞園さやかと桑田怜恩は、近いうちに事件を起こす……!!)

今回の投下はこれにて終了です。みなさん応援ありがとうございます。
>>1は本作がSS初挑戦なので、暖かいお言葉がとても励みになっています。
ちなみに斉木の禁書クロスはリアルタイムで見ていました。あの再現度には到底及びそうにありません。


>>73
斉木は黒幕の正体には既に気付いていますが、残姉ちゃんとの区別がつくよう、妹様のことは便宜上“黒幕”と表記しています。
描写不足ですみません。

勇者「ここが希望ヶ峰学園だな、俺が総理になるフラグを叩き降りやがって。黒幕を殺してやる。」

斉木父「頼む父さんを助けてくれぇ、こんな世界じゃまともにいきられないよくすおぉ~~。くすえもん、くすお大明神さまぁ~。」

斉木母「おらぁ、世界をこんなにしやがったつけ払う覚悟あるんだろうなあ!!私の家族や地球人類をメチャクチャにしやがって、ク-ちゃん今助けるからね。」

燃堂「この中に相棒が、今助けにいくぞ!!!」

鳥束「斉木さんと一緒にいれば、安全は確保できる。能力のデパ-トの斉木さんといればこのリアル北斗の拳の世界でも楽にいきれる気がするっす。」

照橋「べ別に斉木なんて好きでも何でもないのよ、でもこのままおっふ言わないで死なれたら目覚めが悪いそれだけだから。」

灰呂「問題はこの鉄扉か、さすがに根性ではこれは。」

照橋兄「ここみのまえではかっこいいとこ見せたいが、俺がアクション俳優でも無理だぜ。」

海堂「ここは俺に任せろこの漆黒の翼、いや海堂瞬にな!ママの仇だ、ダ-クリユニオンの総統!!」

夢原「やだっ格好いい。さすが海堂くん。」

くぼやす「おらぁ、でてこいや黒幕!てめえが世界をぜつぼうに導くとか言うふざけたことしたつけ払ってもらうぜぇ!!
俺の後輩の大和田もいるしなあ!!」

【前回のあらすじ】
ポカリ



斉木(僕の予知能力で見られる映像は非常に断片的だ。ドラマが始まる前に流れる“この後すぐ!”の映像をイメージすればわかりやすいだろう)

斉木(よって、いつどこでどんな状況からそれが起こるのか、自分で推理して阻止しなければならない……これがクソ能力のクソ能力たる所以だ)

斉木(舞園さんがどのタイミングで桑田に殺意を抱くか分からないため、昨夜はずっと眠らずにテレパシーを聴いていたのだが……結局何も起こらなかった)

斉木(今日から僕は事件のきっかけになりそうなものを排除していく)

斉木(そのためにも僕は早く行動を起こしたいのだが……)

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

斉木(インターホンがやかましい)

石丸(これほどやっても出てこないということはまさか斉木くんは既に……!? いや不吉なことを考えるな石丸清多夏!! きっと斉木くんはまだ眠っているだけだ!!)ピンポンピンポンピンポン

斉木(それを押してる奴の心の声はもっとやかましい)

斉木(まったく、こいつには迷惑を掛けているという自覚が無いのか……?)ガチャ

石丸「グッモーニンだ斉木くんっ!!」

斉木(徹夜明けに大声を出さないでくれ、頭に響く)

石丸「僕は君が惨殺されてしまったのではないかと不安だったのだぞ、無事で何よりだ!!」

斉木(なぜ“惨”の字をつけた)

石丸「きっと昨晩は慣れない環境に置かれたストレスのせいで眠れぬ夜を過ごしたことだろう。僕は風紀委員として、全員が規則正しい生活をするための手助けをしなくてはならない!」

斉木(僕が眠れぬ夜を過ごしたのは事件が起きないか見張っていたからだ。分かったら帰ってくれ……)

石丸「そこで今日から朝食会を開くことにした! 全員で集まりご飯を食べれば親交も深まって一石二鳥だ!」

斉木(こいつ分かろうとすらしないタイプの奴か)

石丸「その無言は暗黙の了解と受け取ったぞ! 僕は他の生徒たちにも声を掛けるから、先に食堂へ向かってくれたまえ!」

斉木(慣用句の使い方間違ってるぞ優等生)

斉木(僕は一人飯の方が気楽なんだ、朝食会は欠席させてもらおう……)

朝日奈「あっ、斉木も起きたんだね! 朝食会の準備手伝ってよ!」

斉木(お前らグルだろ)

【食堂】

不二咲「おはよう斉木くん。石丸くんも朝日奈さんも、朝から元気だよねぇ……」

斉木(……結局来てしまった)

朝日奈「さくらちゃんが朝ご飯を作っててくれたの。後はお米とお味噌汁だけらしいから、斉木も協力して!」

斉木(さくらちゃん……大神さんのことか? 僕はあまり手伝いたくないが……)

斉木(……いや、やっぱり手伝うことにしよう)



【厨房】

大神「む……苗木か」トントン

斉木(随分手際が良いな。道場の娘だ、大人数向けの料理も作り慣れているのだろう)

大神「米が炊けてから10分ほど経った。済まないが、茶碗に16人分盛り付けてほしい」パッパッ

大神「その間に我は味噌汁を仕上げておく」グルグル

斉木(僕は道具を介する作業は苦手なんだ。ご飯をよそう動作をしつつ、こっそりサイコキネシスを使おう)パカッ

斉木(……昨日見た予知では、舞園さんは桑田に包丁を向けていた)ホカホカ

斉木(包丁が置いてあるのは厨房だけだ。舞園さんが包丁を持ち出すとしたら、ここのもの以外に考えられない)ホカホカ

斉木(強引な手を使うが、凶器は撤去させてもらうぞ――!!)カッ



石丸「全員を食堂へ連れてきたぞ! 僕も配膳の手伝いを――うおっまぶしっ!」

苗木「みんな大丈夫!? ……って大神さん、何を持ってるの?」

大神「……どういうことなのだ、これは……」

斉木(――厨房の包丁6本を、全て旧石器時代のものとすり替えた)

斉木(同じ“鋭利な調理器具”でも、石包丁で人を殺そうと思う人は滅多にいないだろう。いたとしたらその人は生まれる時代を200万年ほど間違えている)

斉木(ついでに僕が超能力を使っている様子を監視カメラに撮られないよう、目くらましに部屋全体を発光させたのだが……少しやりすぎたか?)

苗木「…………ええと……大神さん、その石でも料理作れそう?」

大神「……致し方ない。我の手刀で食材を切ろう」

斉木(超高校級の格闘家すげぇな)

【食堂】

斉木(大神さんの特製味噌汁も無事に完成し、全員が朝食を摂り始めた)

斉木(……ふむ、嫌いじゃないな。出汁から丁寧に作られているのがわかる)ズズズ

斉木(焼き鮭の塩加減も絶妙だ、素材本来の旨みが存分に堪能できる。全然嫌いじゃないな……)パクパク

桑田「だーかーらー、オレは野球やめてミュージシャンになるって自己紹介の時に言っただろ!」

葉隠「折角の才能を活かさないなんて勿体無いべ!」

舞園「………………」

斉木(……! 舞園さんが桑田を殺そうとした動機はこれか?)

葉隠「桑田っちならプロ1年目で俺の借金全額返済できるべ!」

桑田「誰がオメーの借金肩代わりするかっての! ボーカルはオレに決定済みだから、後はギターとベースとドラムとマニピュレーターだな!」

斉木(マニピュレーターとか随分マニアックだな)

舞園(芸能界を甘く見ないでください、野球の世界ですら努力をしたことがないくせに……きっと痛い目に遭って終わりですよ……)

苗木「どうしたの舞園さん? なんだか怖い顔してるよ?」

舞園「……ごめんなさい、考えごとをしていただけなんです」ニコッ

斉木(演技で取り繕っても僕を騙すことはできないぞ、エスパーだからな)

斉木(だが“芸能界を甘く見るな”という点には僕も同意見だ。桑田にはさっさと夢から醒めてもらおう)

『そんなに自信があるなら歌ってみろ……』

桑田「……ん? 何か言ったか?」

葉隠「いーや何も言ってないべ」

斉木(まずは桑田にテレパシーを送る。そこそこ挑発的な文句を選べば、すぐにこちらのペースに乗ってくる)

桑田「よーし、じゃあ未来のトップアーティストが1曲歌ってやんよ! オメーらちゃんと聴いとけよ!」

江ノ島「は? 別に桑田の歌なんて聴きたくないんですけど……」

桑田「いいからいいから!」

斉木(そして桑田がまんまとテレパシーに煽られ、歌いだすタイミングで――)

桑田「いくぜ! ♪泣いたっていいんだよ~……」

斉木(“マイク”!!)バリバリバリーン

>>114
訂正

× 大神「む……苗木か」トントン

○ 大神「む……斉木か」トントン

ついにやってしまった……

気を取り直して>>117続き

腐川「何これ……っ! 頭が割れそうだわ……!!」キィィィィン

山田「食器類は実際に割れてますぞぉぉぉぉ!!」ガシャガシャーン

不二咲「箱庭に通じる窓ガラスも全部吹き飛んじゃったよぉ……!!」パリリーン

葉隠「何かポルターガイストも起こってるべ!!」ブォォォォン

斉木(……念のため断っておくが、これらの現象は全て僕が超能力で引き起こしたものだ)

斉木(実際の桑田の歌声はそこまで酷くない。せいぜいカラオケで46点といったところだな)

斉木(これに乗じて監視カメラも壊すか……いや、やっぱやめておこう。流石に桑田が可哀想だ)

十神「おい桑田! 今すぐ歌うのをやめろ!! これは命令だ!!」

桑田「…………アポ?」

斉木(なんだもう終わりか)ピタッ

モノクマ「ちょっとちょっと! 何なんですかこの惨状は! 」ピョーイ

桑田「いや……オレが歌い出したら勝手に……」

モノクマ「勝手に物が壊れるの? 勝手にポルターガイストが起こるの? 現象には必ず理由があるんだよっ!」

モノクマ「罰として、桑田くんには1人で食堂を掃除してもらいます!」

桑田「……オレ……やっぱミュージシャン目指すのやめるわ……」

霧切「その方が身のためだと思うわ」

斉木(これでおそらく事件のフラグは折れた。ついでに桑田の心も折れた)

舞園(あの程度の歌唱力でトップアーティストになるつもりでいたなんて……とんだお笑い草ですね)

苗木「どうしたの舞園さん? なんだか雨の日のふやけたミミズを見るような顔してるよ?」

舞園「……ごめんなさい、まだ少し頭が痛くて」ニコッ

斉木(やっぱこれフラグ立ったままだ)

【斉木の個室】

斉木(不安要素は残るが、少しは肩の力を抜いてもいいだろう)

斉木(それに他の生徒が事件を起こさないとも限らない。適当に誰かのところへ行ってみるか)

斉木(というわけで、深夜で申し訳ないが安価の時間だ)

斉木(詳しいルールは>>52を参照してほしい。前回は霧切さんの場所に行ったから、今回は他の14人の中から指定してくれ)

斉木(そうだな、【安価下】と一緒に過ごそう)

斉木(殺人を止めるためだとはいえ、あれこれ派手に壊しすぎたかもしれないな……)

斉木(僕にも多少の非はある。桑田の様子を見に行こう)



【食堂】

斉木(桑田怜恩。“超高校級の野球選手”の肩書きを持っていながら本人は一度も練習をしたことがないという)

斉木(苦労の末にトップアイドルの座を掴み取った舞園さんとは正反対の人物だ。ぶっちゃけ僕でも軽く殺意を抱く)

桑田「よう斉木……お前は手伝いに来てくれたんだな……?」

斉木(ただ様子を見に来ただけなんだが、そう正直に言うのが躊躇われる程度にはげんなりとしているな)

桑田「なぁ……手伝いに来たんだろ……? 手伝ってくれよ……そこのテーブル拭くだけでいいからさ……」

斉木(駄目だこいつ早く何とかしないと)

桑田「オレさ……どうせ有名人になるなら、華のある男になりたかったんだよ……」

斉木(なんか自分語りモードに入ってるけど無視しよう)フキフキ

桑田「汗と泥に塗れたマルコメ坊主なんかより、歓声とスポットライトを浴びるミュージシャンが良かったんだよ……」

斉木(お前は元から汗と泥に塗れようとしなかっただろ)フキフキ

桑田「でもさ……今日気付いたよ……オレはやっぱりミュージシャンには向いてねーんだ」

桑田「ワンフレーズ歌っただけで罵声が飛んできたんだ……プロどころかインティーズでも売れそうにない……」

斉木(もっと早く気付け、あと口より手を動かせ)フキフキ

桑田「そう考えるとさ……野球やってた頃のことが急に懐かしく思えてきてさ……」ポンッ

斉木(いいから働け、なんか格好つけてミカン拾い上げるな)フキフキ

桑田「オレ……努力とか練習とかダセーことしたくないけど、やっぱ野球のためならそれもできるかもしんない」

斉木(じゃあ野球を再開するためにもさっさと食堂片付けろ)

桑田「……オレ、やっぱ野球が好きだ!!」ブンッ



桑田「――って、何だこりゃ?」

斉木(勘違いするな。時速168キロで投げられて潰れたミカンが勿体なかったから復元させただけだ)

斉木(勢い余って食堂全体を元に戻してしまったが……僕はこれっぽっちもお前に肩入れしていないからな)

斉木(さて、僕が手伝うべきことはなくなった。後は勝手にやってくれ……)スタスタ

桑田「よく分かんねぇけどスゲー! オレの野球愛は奇跡を起こすんだな!!」

斉木(こいつ本当にちょろいな)

【校舎1階】

斉木(妙に浮かれている桑田を置き去りにしてからしばらく経ったのだが……僕はある光景を目撃してしまった)

舞園「うーん……護身用になりそうな武器ってなかなかありませんね」

苗木「いや、きっとどこかにあるはずだよ。頑張って探そう!」

斉木(という会話をしながら歩く二人組だった)

斉木(舞園さんは苗木に好意を寄せつつも、お互いの立場をうまく利用しようと企んでいる。苗木のやつ、お人好しにも程があるだろ……)

斉木(……もしや、ここで二人が見つける“護身用になりそうな武器”とは模擬刀のことか?)

斉木(予知によると、舞園さんに攻撃された桑田は模擬刀で応戦するはずだ)

斉木(あれは確か体育館の入口に飾られていたな……先回りして対処しておこう)

【体育館入口】

苗木「舞園さん、あれなんてどうかな?」

舞園「なんだか立派な模擬刀ですね。金箔まで貼ってありますよ!」

苗木「本当だね。でもこの金箔、なんだか剥がれやすそう……」ボロッ

苗木「………………え?」

舞園「…………折れちゃいましたね……」

苗木「…………舞園さん、これって護身用に」

舞園「なりませんね」

苗木「…………そう、だよね……」

舞園「……苗木くん、他のところへ行きましょう」スタスタ

苗木「……うん」スタスタ



斉木(……二人とも模擬刀は置いて帰ったようだな)

斉木(お気付きのとおり、苗木は模擬刀に何もしていない。これも僕の仕業だ)

斉木(僕が模擬刀に先制攻撃しておいた)

斉木(今度こそフラグは折れた。もし事件が起こるとしても、エア包丁とエア模擬刀のエアバトルになることだろう)

斉木(しかし、今日は超能力を使い過ぎたかもしれないな。昨日から一睡もしていないんだ、部屋に戻って少し休もう……)

霧切「ここで何をしていたのかしら、斉木くん」

斉木(休ませてくれない人が現れた)

斉木(やけに心の声が近くにあるとは思っていたが、まさか僕に話しかけてくるとは……何か挙動のおかしな点でもあったのか?)

霧切「あなたは昨日教えてくれたわよね、『相手の思考を読む能力に磨きをかけた』って」

霧切「あなたがじゃんけんに強いのは、細かな仕草や表情から相手の思考を読み取れるから」

霧切「……だとしたら、あなたの真の才能は“人間観察”ということになるわ」

斉木(真の才能は“超能力者”なんだが、まあそういうことにしておこう)

霧切「ここからが本題になるけれど……あなた、殺人を防ごうとしているの?」

霧切「何をしているのかはさっぱり分からないけれど、あなたはある目的を持って動いている……」

霧切「あなたが人間観察の結果、殺人が起こりそうだと考えた。そう仮定すれば納得がいくのよ」

斉木(ご名答だ。一度殺人事件が起こってしまうと、次の事件までの閾値が下がってしまう)

斉木(命の危機に瀕するのはご免なんだ、僕の正体がバレやすくなるからな……)

霧切「その割には、事件が起こりそうだということを他人に相談しようとはしないのね」

斉木(………………)

霧切「別に私は斉木くんから話を聞き出すのが目的ではないわ。けれど」

霧切「人の信念は、外的要因には滅多に左右されないものよ。良くも悪くもね」

霧切「私はただ、あなたにそれを忠告したかったの。じゃあね、斉木くん」スタスタ

斉木(……どんなに事件の火種を排除しても、舞園さんは必ず桑田を殺そうとする)

斉木(霧切さんはそう言いたかったのか?)

斉木(……やはり僕は疲れているようだな。早く部屋で休もう)

今回の投下はこれで終了です。
苗木と斉木がごっちゃになるから気をつけていたのに……ついにやってしまった……
次回は動機提示の少し先まで行くと思いますが、もしかすると日にちが空くかもしれません。

雑談における彼方セブンチェンジの空気っぷりに泣いた。

照橋さんなら普通に超高校級の美少女として入学できそう

>>140
正直照橋さんも超高校級の美少女として入学させようかと悩んだのですが……
それだとクロスSSというよりただの斉照in希望ヶ峰になりそうだったので断念しました……

逆に燃堂とかはやらないだろう というか状況を理解できるか 海堂瞬とかはいろもおそらくやらないだろう
入れるキャラとしちゃ

めらこのみ 超高校級の大食いとかになんないかな

次の話はまだか 強制以心伝心で黒幕の声だけ全員聞こえるようにしたら

すみません、次回の投下は来週以降になると思います。
Chapter1の終わりまで書き切ってから投下したいんです……

ところで相談なのですが、斉木の動機DVDの中身って書いた方がいいんでしょうか。

>>153
目良さんの下の名前は千里です!千里眼のモジリです!
彼女に肩書きが付くとしたら「超高校級の倹約家」だと思います。

>>162
そんなことしたらあっという間に話が終わってしまう……というメタな理由は置いといて、
斉木がその手法を取らないのは混乱を避けるためです。
この辺りのことにはChapter2に入ってから触れる予定です。

Chapter1のプロットが組み上がったので、生存報告がてら続きを投下します。
お待たせしてすみません。

【前回のあらすじ】
旧石器時代



桑田「……それでよ、オレは失意の中でミカンを拾い上げたんだ」

桑田「ミカンっつーよりオレンジだったのかもしれねぇな。とにかく、そのミカンは野球ボールくらいの大きさがあったわけ」

桑田「手に馴染んだボールの感触が頭に蘇ってきて、グワーって胸が熱くなって……」

桑田「その時オレは確信したんだ。オレはやっぱり野球が好きだったんだ、ってな」

桑田「ミュージシャンに比べたらモテないとか、ダセー格好で毎日練習しなきゃいけないとか、オレはちっぽけなことに囚われてた」

桑田「オレの剛速球がバッターの横を駆け抜けてキャッチャーミットに収まる爽快感。あれは何物にも代えられない、オレだけに許された至高の体験なんだ」

桑田「そんで、込み上げてきたありったけの想いを込めてミカンを投球したら……」

桑田「なんと! 奇跡が起こって! 荒れ放題だったこの食堂は一瞬でキレイさっぱり元通りになっちまったんだよ!!」ドヤッ

苗木「ええと……それはすごいと思うんだけどさ……」

江ノ島「アンタその話するの今日何回目?」

斉木(6回目だな)

斉木(昨日もそれなりに遅い時間まで眠らずにいたが、事件は起こらなかった)

斉木(朝食会に無事16人全員が集まった時は安心した。……しかし約1名、おかしなことになっている奴がいた)

桑田「だってスゴくね!? オレ奇跡起こしちゃったんだぜ、ミラクルボールだぜ!?」

斉木(それがこいつだ)

斉木(なんてったってウザい。このテンションはどうしようもなくウザい)

斉木(桑田の話を聞きたくない連中はさっさと食堂を出ていったのだが……一部の人間は未だここに残り、かれこれ3時間近く経過している)

苗木「それじゃあ話も一段落ついたことだし、ボクは部屋に戻ってもいいかな……?」

桑田「待て待て待て! もうちょいオレの奇跡体験を聞いてけよ!」

斉木(苗木は今朝の朝食会で桑田の近くに座っていたため強引に止められてしまった)

江ノ島「でもさー、それ以外にに何が起きたの? 食堂が元に戻った1回きりじゃん」

斉木(江ノ島さん(仮)は初めこそ不思議な出来事に目を輝かせていたが、同じことを繰り返し聞かされたために飽きてしまったようだ)

葉隠「そう冷たいこと言わないで、みんなもっと桑田っちに付き合ってやるべ!」

斉木(葉隠だけは桑田の話を催促しているが……)

葉隠(将来桑田っちが有名人になったら俺が週刊誌にトンデモエピソードを売り込んでやるべ!)

斉木(所詮クズはクズだ)

桑田「オメーらが疑いの目を向けてくるからこそオレは証人をこの場に引き止めたんだよ! なぁ斉木!?」

斉木(その台詞も6回目だな)

苗木「でも……斉木クンだってさっきから知らないって言ってるし……」

江ノ島「ダメじゃん斉木、こんなやつの言いなりになっちゃ! どうせならもっと見た目も中身も完璧でカリスマ性があって独創的なアイディアで周りを楽しませる人を選びなよ!」

斉木(お前が黒幕の言いなりだということはよくわかった)

桑田「そんなに文句つけるんだったらオメーらにも見せてやんよ! もう1回ミカンを投げりゃきっとまた何かが起こる!」

斉木(食べ物を粗末にするな)

桑田「奇跡を……起こすぜぇぇぇぇぇ!!」ブンッ

苗木「………………」

江ノ島「………………」

葉隠「………………」

桑田「……これはアレだな、もっと野球に精を出さないと奇跡は起こらないってことだな!」

斉木(野球選手の才能がおめでたい方向に開花してくれて助かったよ)

斉木(当然ながら僕は桑田の言いなりになどなっていない。ずっと食堂に残って考え事をしていただけだ)

斉木(『人の信念は外的要因には滅多に左右されない』……霧切さんは昨日、僕にそう告げて去っていった)

斉木(僕がどんなに凶器を使えなくしようと、どんなに桑田をアホにしようと、舞園さんは予知通り桑田を殺す)

斉木(僕のテレパシーが何よりの裏付けになる。舞園さんの桑田に対する嫌悪感は弱まったものの、完全には消えていなかった)

斉木(……待てよ。あの時の霧切さんは、僕が他人の協力を仰ぐように誘導したかったんじゃないのか?)

斉木(しかし直接誰かに頭を下げるのは癪だな……テレパシーを使うとしよう)



『舞園さやかに気をつけろ……』

苗木「……? 何か言った?」

葉隠「いーや、桑田っち以外誰も喋ってないべ」

苗木「そっか。じゃあ空耳かな……」

『舞園さやかは桑田怜恩を殺そうとする……』

苗木「………………!!」

『大事なことだから2回言う……』

『近いうちに……舞園さやかは桑田怜恩を殺そうとする……』

苗木(舞園さんが……桑田クンを……!?)

『舞園さやかは1-B教室に居る……今なら彼女を止められるかもしれない……』

苗木(まさか舞園さんがそんなことするはず……でも何なんだ、この胸騒ぎは……!)

苗木「ごめん桑田クン! ボク用事を思い出したから行くね!!」ダッ

桑田「ちょっ、待てよ苗木ぃ!」

斉木(……どうやら上手く行ったようだな)

斉木(苗木は舞園さんと親しい人物だし、何より16人の中で最も一般的な感性を持っている。きっと上手いこと説得してくれるだろう)

斉木(後はここから千里眼で苗木の様子を監視するか――)ギュルン

江ノ島「……斉木、何その顔?」

葉隠「そっとしておいてやるべ。桑田っちの話を聞きすぎて頭がおかしくなったんだって」

桑田「んなわけねーだろ! 斉木はきっと目玉リレーの練習してたんだよ!」

斉木(どっちも違う)

【斉木の個室】

斉木(千里眼の発動条件は“寄り目になること”だ)

斉木(よって目の前のものと遠くのものを同時に見ることはできないし、人前で千里眼を使うと先程のように変人と見なされてしまう)

斉木(……江ノ島さん(仮)と葉隠には哀れみの視線を向けられてしまった。やはり早いうちに部屋に戻るべきだったな)

斉木(さて、改めて苗木の様子を監視しよう――)ギュルン

――――――――――

斉木(――丁度1-B教室に苗木が入ってきたところだな。このまま静観するか)

苗木『本当だ……ここに居たんだね、舞園さん』

舞園『苗木……くん……』

舞園『苗木くんってば険しい顔してますよ。大丈夫ですか?』

苗木『いや……なんだか、嫌な予感がしてさ』

舞園『嫌な予感……?』

苗木『舞園さん。何か不満や不安があるならボクに打ち明けてよ』

苗木『例えば……桑田クン、のこととかさ』

舞園『……どうして桑田くんの名前が出てきたんですか?』

苗木『えっと、それは……』

苗木(まさか桑田クンを殺すって空耳が聞こえたからとか言えないよな……)

苗木『いや……だって舞園さんはいつもアイドルのお仕事に一生懸命でしょ?』

苗木『だから、天才肌でお調子者の桑田クンのことを嫌いになるんじゃないかと思ったんだ』

舞園『……苗木くんってすごいですね。私が思っていたことを当てちゃうなんて』

苗木『! じゃあもしかして……』

舞園『でもそれは昨日までの話です』

苗木『え?』

舞園『軽い気持ちでミュージシャンになると言っていた桑田くんが、今朝の朝食会では真面目に野球の練習をするって宣言していました』

舞園『理由はおかしなものだったけど……そのために努力をしようとする姿勢は評価に値すると思うんです』

舞園『……だから私も決めたんです。どれだけ腹が立っても桑田くんを許す努力をしよう、って』

斉木(成程、これが桑田に対する嫌悪感が薄れた理由だったのか。桑田のアホが思わぬところで作用するとは予想外だった)

苗木『よかった。じゃあ舞園さんの悩みは解消されたんだね――』

舞園『私にだって悩みならありますよ』

苗木『――だよね。ごめん』

舞園『……私たち、いつまでここに居なきゃいけないんでしょうか』

斉木(! そう来たか……)

舞園『アイドルという職業には、人に夢と希望を与える義務があるんです』

舞園『幼い頃の私も、テレビで見たアイドルに夢と希望を分けてもらった。私もそんな存在になりたくて、ここまで登り詰めた』

舞園『……けれど、アイドルは世間に忘れられたらおしまいなんです。それだけ競争の激しい世界ですから』

舞園『こうしている間にも、私たちのグループはどんどん忘れられていく……』

舞園『……出してっ! 私を早くここから出してよ!!』

苗木『…………舞園さん……』

舞園『ごめんなさい。八つ当たりみたいになっちゃいましたね……』

斉木(……盲点だった。舞園さんが桑田を殺そうとする理由が、外に出たいという欲求だったとは)

斉木(凶器ごときで事件発生を防げなくて当然だな。もしや霧切さんはここまで見越していたのか?)

斉木(……それは置いておこう。問題はどうやって舞園さんの外界への思いを断ち切るかだ……)

苗木『……八つ当たりしてしまうのも仕方ないよ。アイドル活動が生き甲斐の舞園さんなら尚更だ』

苗木『でも今は落ち着いて。きっとどこかに全員揃って脱出する方法があるはずだから』

苗木『そうして外に出たら、また活動を再開しよう』

苗木『……その時までは、ボクが舞園さやかっていうアイドルのことを、ずっと覚えていてあげるよ』

苗木『それじゃ……だめかな?』

舞園『苗木……くん…………!!』ギュッ

苗木『うわっ!?』

舞園『苗木くんだけは……どんなことがあっても、私の味方でいて……!!』

苗木『……わかった。約束するよ』

――――――――――

斉木(………………)パッ

斉木(本当に苗木が説得してしまった)

斉木(最初から苗木を頼っていれば僕の出る幕は無かったんじゃないのか……もう後のことは全部あいつに任せてしまおう)

斉木(さて、Chapter1の安価があと1回残っている。なんかいい感じになっていた2人のことを忘れるためにも、僕は安価指定を行わねばならない)

斉木(3回目だからそろそろ慣れてきたと思うがルールは>>52参照だ。今回は霧切さんと桑田を除いた13人の中から選んでほしい)

斉木(さて、それでは【安価下2】のところへ行こう)

斉木(……山田のところへ行こう)



【購買部】

斉木(山田一二三。“超高校級の同人作家”の肩書き通り二次元に精通しており、超高校級の年齢対象の同人誌もバンバン発行している……それでいいのか)

斉木(だが、この学園ではアニメを観ることができない……いや、アニメどころかインドア系の娯楽自体が少ない)

斉木(“人並みの運動”ができない僕は、毎日時間を潰すのも大変なのだが……)

山田「ブーコォ……ブーコクレェ……ブーコォ…………」ガチャガチャ

斉木(なんかコイツはもっと大変なことになっている)

山田「……はっ! 斉木楠雄殿、いつからそこにッ!?」

斉木(だいたい15分くらいはここに居たな。どう接したらいいか分からなかった)

山田「これは失礼……僕はてっきり瞬間移動してきたのかと思いました」

斉木(やろうと思えばできるが)

斉木(それにしてもさっきのは何だったんだ? モノクマメダルを1枚投じるのに5分はかかっていたぞ……)

山田「……承知の上ですよ。僕のこの行為が、常人には白い目で見られて当然であることくらいはね」

斉木(僕は常人ではない)

山田「たかがモノモノマシーンに何をそこまでとお思いでしょう! しかーし! 僕にとってモノモノマシーンは“最後に残った道しるべ”なのです!!」

山田「このモノモノマシーンからは1/92の確率で“外道天使☆もちもちプリンセスのフィギュア”が出てくるというのです!」

山田「アニメも漫画も無い絶望学園でぶー子と触れ合える……なんという僥倖なのでしょう!!」

山田「こんな僕のことを馬鹿にしたって構いません……だが!! ぶー子を侮辱することだけは!! 外道天使専属騎士が赦さんっ!!!」

斉木(やっぱこいつめんどくさいわ)

斉木(それに何やら勘違いしているようだが、僕はアニメは嫌いじゃないぞ。アニメやドラマは僕が純粋に楽しめる数少ない娯楽だ)

斉木(中でもすこやか戦隊スペシャライザーは僕のお気に入り作品だ。最終回をリアルタイムで観られなかったことが今でも悔やまれる)

山田「で……では……もちプリのことも理解してくれるのですか……?」

斉木(萌えに媚びた部分は嫌いだが、敵幹部のキャラクターデザインが秀逸だった。まぁ嫌いではないな)

山田「は……初めてですっ!! アニメカルチャーについてここまで理解を示してくれる一般人は!!」

斉木(僕は一般人ではないし大した理解も示していない)

山田「斉木楠雄殿。もしもこの学園にフィギュア製作が可能な場所があったら、僕がスペシャライザーのフィギュアを作って差し上げましょう!」

山田「ですからどうか斉木楠雄殿も、もちプリのフィギュアを出すために協力を……」

斉木(それは無理だな)

山田「(´・ω・`)」

斉木(山田は僕に数々のトリビアを披露した後、意を決してモノモノマシーンを回した)

斉木(結果は“無限タンポポ”だったが……本人はそれなりに喜びながら部屋に帰っていった)

斉木(しかし僕はここにずっと留まっていた。テレパシーが不穏な心の声を拾い上げたからだ)

黒幕(ぐすん……事件が全く起きそうにない中で監視生活を続ける日々は絶望的に退屈です……)

黒幕(もっと直接的な殺人動機を与えるしかありませんね……)

斉木(――ということで僕は現在モノクマによる招集を待機している。一足早く視聴覚室に向かい、動機の提示を阻止するためだ)

斉木(視聴覚室は購買部からすぐ行ける距離にあるからな。僕はモノクマメダルを4枚ほど所持していたため、さも山田に触発されてモノモノマシーンを回しているかのような演技をしている)

斉木(……ちなみに以前話したとおり、モノモノマシーンには物理法則の常識を塗り替えんとする勢いで様々な景品が詰め込まれている)

斉木(超能力者の僕ですら出てくる景品を変えたり中身を透視したりできない、謎の機械なのだ。山田に協力できるなら僕も苦労していない)

斉木(僕が狙っているのはルアックコーヒー、ミレニアム懸賞問題、もしもFAX、アゴドリルなのだが……)ガチャ

『“無言電話”が出てきた!』ゴトン

斉木(他3つの景品は毛虫くん、アンティークドール、蝶ネクタイの変声機だった)

斉木(まさかメダルを4枚ともドブに捨てることになろうとはな……)



キーンコーンカーンコーン

モノクマ『えー、校内放送、校内放送……』

モノクマ『オマエラにプレゼントを用意しました! 至急、視聴覚室へお越しください。来ないとオシオキだよ? うぷぷぷぷぷ……』

斉木(……景品は全部ここに置いていこう)ダッ

【視聴覚室】

モノクマ「斉木くんが一番乗りだね! それでは、ダンボール箱の中から自分の名前が書かれたDVDを持って行ってください!」

斉木(テレパシーからDVDの内容は大体把握できている。各々の大切な人の死を連想させる映像……黒幕はそれを見せ、外界への欲求を強めるのが目的だ)

斉木(折角苗木が舞園さんを説得したんだ、元の木阿弥にはさせない……!)カッ



苗木「ええと……自分の名前が書かれたDVDを持っていく……?」

モノクマ「そうだよ! ぼくが心を込めて全員に用意したプレゼントです!」

霧切「その割にはどこにも名前が書かれていないわね」

モノクマ「書いてあるよっ! DVDのディスク表面にマジックで堂々と……あれ?」

桑田「これってのび太の恐竜のリメイク版じゃん! こんなん誰が喜ぶんだよ!」

モノクマ「…………マジで?」

斉木(マジだ)

斉木(僕の超能力の中には、人や物を近くへ引き寄せる“アポート”と人や物を遠くへ送る“テレポート”がある)

斉木(これらの能力のデメリットは、アポートとテレポートをふたつ同時にしか行えないことだ。そのうえ対象は互いにほぼ同価値のものでないといけない)

斉木(食堂の包丁を旧石器時代の包丁に替えられたのも、希望ヶ峰学園が三ツ星レストラン御用達の最高級包丁を用意していたからこそだ)

斉木(そして今回の対象は黒幕の自主制作DVD。学園外に同価値のDVDが存在するか不安だったが……)

苗木「のび太の恐竜かぁ。父さんが懐かしがって家族全員で観に行ったんだよね」

大和田「何でのび太の恐竜なんだよ! 前の年のワンニャン時空伝見せろやコラァ!!」

斉木(上手い具合に劇場版わさびドラの中古DVDを安売りしている店があって助かった)

そっかぁ、まあ葉隠が人殺せるとは思えんしな~

山田「僕としては魔界大冒険の方が好みですな。美夜子さんの猫化には夢が詰まっているッ!!」

朝日奈「私はあれ! 人魚になるやつがいいな!」

不二咲「えっと……鉄人兵団は無いのかなぁ……?」

斉木(それにしてもお前らよく知ってるな)

モノクマ「うわー! ぼくってば渡すDVDを間違えちゃった(棒)!本物はこっちの箱に入ってるよ! 」

斉木(おっと、その手は通用しないぞ)カッ

モノクマ「ふぅ、今度こそちゃんとプレゼントを……」

モノクマ「ってこれも違うじゃん! どうなってるんだよまったくもう、主題歌の福山雅秋って誰だよ!!」

斉木(いくつ予備があろうと無駄だ、僕が全てわさびドラに替えてやる)

十神「……答えろモノクマ。結局お前は何の目的でDVDを用意したんだ」

モノクマ「えー……? あー……それはですね……」

斉木(さあどうする? 僕がいる限り“殺る気が出るDVD”の手は通用しないぞ……)

モノクマ「…………最初に誰かを殺した人には映画ドラえもんDVDを全巻プレゼント」

十神「実に下らんな」

斉木(僕もそう思う)

【斉木の個室】

斉木(あの後、集められた生徒達はモノクマの動機提示に反応せず、そのまま解散となった)

斉木(葉隠だけは全巻セットをネットオークションに出品したらいくら儲かるか皮算用していたが……>>201も言っている通り、あいつは殺人には走らないだろう)

斉木(しかし……僕の心は確実に揺らいでいた)

斉木(無論、殺人を犯そうなどとは考えていない。だが家族の安否が気になってしまう)

斉木(モノクマのDVDに我が家の光景が映っていればそこへ瞬間移動もできたかもしれないが、今となっては不可能だ)

斉木(せめて千里眼でもできたらいいのだが、何故か学園外の様子を見ることはできない。やれやれ……俺無双を回避するためとはいえ、どんな制限が掛かっているんだ)

斉木(……待てよ。頭の制御装置を外せば、学園外に向けて超能力を使うこともできるようになるんじゃないのか?)

斉木(可能性は試してみるべきだ。まずは千里眼から――)スポッ

『■赴建猿"・阨■■・pl"蛟落癆]的t搭(・Cu■"楳・・東vq"柱k■"逐・梳・少』

斉木(――――!!)ヨロッ

斉木(何だこれは――学園外のテレパシーを拾っているのか!?)

『i"■■蛟閾闡・・■・?t?■・・葛■mZ級v〕タバ■レ』

斉木(頭が割れるように痛い……立っていることすらままならない!)

『■■本肴?・o丞■?・・癆]w"■・凍苡揩■ム逐÷梳遣』

『も?・・■■・・c…s計q"逐■焉激Xm"潔・桝烙・■・・逐■о÷逐・準・』

斉木(早く……制御装置を……)プスッ



斉木(……学園外の人間の思考回路は世紀末ってレベルじゃなかった。脳味噌が汚染されそうだった……)

斉木(それでもどうにか我が家の様子は見えたぞ……父さんと母さんは無事のようだ)

斉木(……まだ頭が痛む。近くのテレパシーも朧気にしか聞こえない)

斉木(今後は滅多なことがない限り制御装置を外さないようにしよう。今日はもう寝るか……)バタン

【翌日】

斉木(昨日は泥のように眠った。頭痛は若干残っているが日常生活に支障は無いだろう)

斉木(時刻は7時4分。ゆっくり身支度をしても朝食会には間に合うだろう)

斉木(今日は少しだけ静かな朝だ。聞こえてくるテレパシーが減りでもしたのか……)

斉木(…………テレパシーが減っているだと!?)バッ

斉木(まだ熟睡しているのか……いや違う、睡眠中でも微弱ながら心の声は聞こえてくるはずだ!)ガチャッ

石丸「おはよう斉木くん! 早起きとはよい心がけだな!」

斉木(早起きは偶然だが今はそれどころじゃないんだ)ダッ

石丸「こら斉木くん! 自分が挨拶されたら挨拶を返したまえ……って、何をしているのだ!」

斉木(やはり……苗木の部屋の鍵が掛かっていない!)ガチャッ

朝日奈「おはよー石丸! そんなに怒った顔してどうしたの?」

石丸「斉木くんがっ! 斉木くんが不法侵入しているのだ!」

大神「苗木の部屋のドアが開け放たれているのは、斉木の仕業であったか……」

斉木(部屋の中は特に異常無しだが……いや、シャワールームのドアノブが破壊されているな)

斉木(この中に……!!)ガッ

石丸「これ以上の悪事は許さないぞ斉木くん!」

朝日奈「そうだよ、大人しく食堂へ向かいなって――」



朝日奈「きゃあああああああああああああああ!!!」

石丸「ななななな何だこれはあああああああああ!?」

大神「…………何が起こったのだ……!!」



斉木(……眼前に広がる光景を、僕は受け容れることができなかった)

斉木(どうしてこうなった? 昨日制御装置を外したからか? 昨日早く寝たからか?)

斉木(ようやく合点がいった頃には、霧切さんの言葉が再び脳裏に蘇っていた)

斉木(『人の信念は外的要因には滅多に左右されない』。この現状に至る課程を説明するのに適した言葉だな)

斉木(決して揺らぐことのない誰かの信念があったからこそ――)





斉木(――――苗木誠が、変わり果てた姿になっているのだ)

今回はこれにて終了となります。
投下が遅れてしまった本当の理由は、事件のトリックを考えていたからです。
Chapter1の展開が完全に固まるまで大変でした……慣れないことをするもんじゃなかった。
明日の夜には捜査パート前半を投下したいと思っております。

【前回のあらすじ】
わさびドラ



斉木(前回の投下終了後、『どうせ時間を巻き戻すんだろ』というレスがいくつか見受けられたが……)

斉木(僕の復元能力は、たとえ24時間以内であろうとも死者を生き返らせることはできない。このことに関してはWikipediaにも記述がある)

斉木(つまり……僕の“コロシアイ学園生活を阻止する”という目論見は、誰かが死んだ時点で失敗してしまうものだったのだ)

朝日奈「な、苗木が……苗木が殺されちゃった……!!」

石丸「おおお落ち着きたまえ! まずは冷静に119番へ掛けるのだ!!」

大神「石丸よ……この学園に電話は無いぞ……!」

斉木(……真っ白になった頭に黒幕のテレパシーが届いてきた)

斉木(その声の浮かれっぷりたるや、遠足前日におやつを買いに来た小学生のようだ。僕には迷惑極まりない……)

ピンポンパンポーン

モノクマ『死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きまーす!』

モノクマ『と言っても学級裁判は初めてだからね! オマエラ、とっとと起きて体育館にお集まりください!』

大神「……体育館に向かうぞ。動揺する気持ちは分かるが、モノクマの命令を無視すれば我らも殺されるやもしれぬ……」

石丸「いいい一理あるな! では僕は皆を起こしに回ってくる!」ダッ

朝日奈「……斉木……私たちは先に行こう」

斉木(言われなくても体育館に行くつもりだ。とっくに僕は平静を取り戻している……)ズキン

斉木(っ、また頭痛だ……予知か……)

――――――――――



「――――それは違うよ!」



――――――――――

斉木(…………は?)

斉木(見たこともない場所に全員が揃っていて……)

斉木(そして高らかに何かを叫ぶ人影は……いや、まさかな)

斉木(僕の予知は正確なんだ、ありもしない未来を映すはずがない……)

斉木(だが……だとしたら今の頭痛は一体なんだったんだ。昨日の後遺症か……?)

朝日奈「ねぇ斉木、聞こえてる……?」

大神「余程苗木の死がショックだったのだろう……」

【体育館】

葉隠「こんな朝早くから全員集合だなんてどうかしてるべ……ふわーぁ」

不二咲「そんなこと言ってる場合じゃないよぉ……だって、苗木くんが……!」

葉隠「えっ!? 苗木っちがどうしたんだって!」

腐川「あんた、ちゃんと校内放送聞いてたの……!?」

モノクマ「ホントだよね! 放送が意味を為さないでしょーが!」ピョーイ

桑田「で、出たっ!!」

モノクマ「一部のねぼすけ生徒が校内放送を聞かなかったせいで、ボクが直々に起こしてあげなきゃいけなかったんだからね?」

大和田「黙れクソが! 苗木を殺したのもオメェなんだろ!!」

斉木(とりあえずモノクマに直々に起こされたのはお前なんだな)

モノクマ「ボクが苗木くんを? そんなわけないじゃーん! 正真正銘、オマエラの中の誰かが殺ったことなんだよ!」

セレス「まぁ……ドラえもんDVDセットを本当に欲しがる人がいらしたのですね」

斉木(最初に驚くべきポイントはそこじゃない)

霧切「モノクマ、早く本題に入って」

モノクマ「はっ、そうだった! 危うく話の長い学園長として生徒にウザがられるところだったよ!」

モノクマ「ボクがオマエラを呼び出したのは他でもありません、新たに追加された校則の説明をするためなのです!」

十神「『仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません』……ようやくこの意味が明かされるのか」

モノクマ「その通り。殺人を犯したクロが、この6番目の校則の基準を満たせているか……それを判定するシステム、“学級裁判”を行います!」

山田「学級裁判……ですと?」

モノクマ「学級裁判は、生徒全員で誰がクロなのかを話し合って決める場です!」

モノクマ「投票による多数決の結果、見事クロを指摘できればクロはオシオキ……しかし、クロを外せばそれ以外の全員がオシオキとなります!」

モノクマ「要は裁判員制度ってヤツだよ! 裁判員は出廷の義務があるから全員強制参加ね!」

舞園「あの……モノクマさん、“オシオキ”って何ですか……?」

モノクマ「そんなの決まってるじゃん、処刑のことだよ!」

舞園「…………!!」

モノクマ「電気椅子でビリビリ! 毒ガスでモクモク! ハリケーンでバラバラ殺人……なんてのもアリだよね! ま、そこら辺はボクの気分次第なんだけどさ!」

石丸「……犯人を外せば、僕ら全員が処刑される……?」

モノクマ「いいねぇ、賢いチンパンジーだね! さり気なく自分が犯人じゃないとアピる小技もグッド!」

石丸「なっ……!?」

斉木(……やれやれ、ようやく学級裁判について説明されたが……裁判員裁判よりは人狼ゲームに近い気がするぞ)

斉木(しかも最終的な犯人は多数決で決めるだと? 犯人が誰なのか説得力のある形で全員に知らしめる……勝利条件が難しくないか?)

斉木(まぁ多分僕ならできるが)

江ノ島(あっ、今のタイミングだ)

江ノ島「冗談じゃねーよ! 学級裁判? 処刑? そんなものに誰が参加するか!」

モノクマ「あれあれあれ?ひょっとして校則を無視するつもり?」

江ノ島「当たり前っしょ、そんなムチャクチャな要求こっちから願い下げだし!」

江ノ島(うんうん! 私、盾子ちゃんの要望通りギャルっぽい演技できてるよね!)

斉木(僕には全部バレてるが)

モノクマ「出たな不良生徒! どうしても参加したくないのなら、ここでボクを倒していきなさ」ギュムッ

江ノ島「はい、これで満足? 分かったらここを通しなさいよ!」

江ノ島(よーし、もうすぐ盾子ちゃんと合流だ……!)

斉木(お前無理せず素のキャラで行った方がいいんじゃないか?)

モノクマ「……分かってないのはそっちの方だよ」

江ノ島「……え?」

斉木(……まずいぞ、江ノ島さん(仮)はモノクマを踏み付けてしまったから……!)

モノクマ「召喚魔法発動! 助けて! グングニルの槍ッ!!」バババッ

江ノ島「えっ――」

斉木(させるか!)フォン

モノクマ「……あーあ、外しちゃった。狙いは正確だったはずなのになぁ」

江ノ島「……どうして……? わた……アタシは檻に閉じ込められるはずだったのに……」

モノクマ「それ以上変なこと喋んなよ歩く残念!」

モノクマ「キミを殺せなかった以上は学園長への暴力も見逃してやるけど、学級裁判には強制参加だかんね!」

江ノ島「…………わーったよ、モノクマ」

斉木(……“盾子ちゃん”は相当薄情な人間のようだな)

モノクマ「最後に、皆さんにはこのモノクマファイルを配ります! 死体の状況が書いてあるから捜査に役立ててね!」パッ

モノクマ「んじゃ、みんな頑張ってねー!」ヒュン

朝日奈「……ホント、いつも嵐のように去っていくよね……」

セレス「ですが、死体に関する情報をくださるなんてモノクマさんらしくないですわね?」

十神「いいや、中身は実にモノクマらしい内容だ。あまりにも不十分……俺達自身の推理が不可欠となる書き方だ」

霧切「そう。だからこそ正しい情報を得るために捜査の攪乱を防ぎたいんだけれど……誰か2人、現場の見張り役を引き受けてくれないかしら」

大神「ならば我がやろう。我の力があれば、現場を荒らす者を捩じ伏せることができる……」

大和田「オレもやるよ。頭使って真相解明なんてのは苦手なんだ」

霧切「じゃあ任せたわ。集合時間まで、各自で捜査を行いましょう」

斉木(……さて、ミステリーの中には“倒叙式”というものがある)

斉木(刑事コロンボ及び古畑任三郎がわかりやすいだろう。冒頭に犯人が誰なのか明かした上で、それを知らない探偵が犯人を追い詰めていく展開方法だ)

斉木(そのため、倒叙式の作品に於いてはフーダニットよりもハウダニット……“誰が殺したか”より“どうやって殺したか”が重視されるのだ)

斉木(因みにドラマや映画で倒叙式を用いれば、キャストからの犯人予測を防止するため登場人物には全員豪華役者を抜擢するという手間を省くことができる)

斉木(なぜ僕が急にこんなことを話し出したかって? 決まってるだろう、僕は既にテレパシーで犯人を知っているからだ)

斉木(もうお気づきの人も多いと思うが、苗木を殺した犯人は――)

舞園(私があんなことを考えたせいで……苗木くんだけでなく全員を殺すことになるなんて……!!)

斉木(――舞園さやか。彼女だ)

斉木(どうやら舞園さんのアイドルグループには、ドラえもんが大好きなメンバーが居たらしい……)

斉木(昨日のDVDを観たしばらく後、そのメンバーのことを思い出して脱出願望が高まってしまったようだ)

斉木(やれやれ、思わぬところで地雷を踏んでしまったな。クレしんの映画にしておいた方が良かったか……)

斉木(だが後悔しても遅い。今の僕がすべきことは、舞園さんが犯人だという証拠の収集だ)

斉木(……よし。捜査を始めよう)

斉木(まずは他生徒に不評のモノクマファイルを確認しよう)ペラッ

斉木(“被害者は苗木誠。犯行時刻は昨夜10時以降、死体発見現場は自室のシャワールーム”)

斉木(“死因は鋭利な道具が腹部に刺さったことによる失血死”……)

斉木(……せめて死亡推定時刻くらい載せてくれ)

コトダマゲット!
【モノクマファイル】
被害者は苗木誠。死亡時刻は昨夜10時以降、死体発見現場は自室のシャワールーム。
死因は鋭利な道具が腹部に刺さったことによる失血死。

斉木(次は苗木の部屋に行くか。現場を調べずして推理は成り立たない)



【寄宿舎1階・苗木の個室前】

斉木(………………)

大和田「斉木、オメェ何しにきたんだ? 今は霧切が捜査中だ。ここは通さねぇぞ!」

斉木(大和田てめぇこの野郎)

斉木(ぶっちゃけ室内の様子は外からでも透視で観察できる。わざわざ大和田に頭を下げる必要など無い)

斉木(しかしそれではコトダマが手に入らないんだ、そういうシステムなんだ。こうなったら正面突破するか……?)

大神「待て、斉木よ」

斉木(おっと、大神さんが相手では正面突破も無理だな)

大神「霧切が現場検証を終えたらお主も通してやる……それまでは他の場所を調べていてくれ」

斉木(不思議なものだ、大神さんに言われたら素直に他を当たろうと思える。どこぞのモロプラとは大違いだ……)

大神「詫びの代わりではないが、お主に情報を教えよう」

斉木(あなたが神か)

大神「我は毎日厨房で朝食の支度をしているのだが……今朝、厨房の石包丁が5本に減っていた」

斉木(ふむ。包丁は全部で6本だから、そのうち1本が消えたことになるな)

大神「数が変わり形が変わり……あの包丁は一体どうなっているのだ……?」

斉木(形が変わったのは僕のせいです)

コトダマゲット!
【厨房の石包丁】
石包丁は全部で6本備え付けてあるが、今朝の時点では5本になっていた。

【食堂】

斉木(……大神さんから得た情報をもとに厨房を確認してきた)

斉木(確かに石包丁の数は1本減っていた。しかし、他にも気になる点がある……)

朝日奈「あっ、斉木! 苗木のために頑張って調べてるんだね 」

斉木(勘違いしないでくれ朝日奈さん、これは全部自分のためだ)

朝日奈「私は何をどうしたらいいか分かんなくてさ……昨日までの苗木はあんなにピンピンしてたのに、って考えちゃって」

斉木(まあ、そうなるのも無理はないか。起き抜けに級友の死体を見せられては気分も悪くなる)

朝日奈「だからちょっとここで休もうと思ったの。えへへ」

斉木(そうだ、朝日奈さんは大神さんと仲が良い。石包丁の件も何か知っているかもしれないな……)

朝日奈「包丁の数? うん、さっき見たら確かに5本に増えてたよ!」

斉木(なん……だと……?)

朝日奈「私、昨日の夜時間前も食堂に来てお茶を飲んだんだけど……その時厨房に入ったら、石包丁が4本に減ってたんだ」

斉木(どういうことだ……?)

朝日奈「何その目つきー! 見間違いじゃないよ、疑わないで!」

斉木(疑うわけないだろ、僕にはどんな嘘もお見通しだ)

朝日奈「でもさ、戻ってきた5本目の包丁だけど、よく見たら先っちょが欠けてたんだよね。何に使われたんだろ?」

斉木(そう……僕が気になっていたのは先端が欠けた包丁のことだ)

斉木(朝日奈さんの“包丁が増えた”発言も妙だったが、昨夜の犯行に使われた後で返却されたと考えれば辻褄が合うな)

コトダマゲット!
【朝日奈の証言】
夜時間直前、朝日奈は食堂に居たが、その時厨房の石包丁は4本しかなかった。
今日になって戻ってきた1本の石包丁は、先端が欠けていた。

【寄宿舎1階】

斉木(石包丁がこの事件のキーアイテムであることは分かったが犯人を追い詰めるには至らない。何か舞園さんに結びつく情報は……)

桑田「オイ探したぜ斉木! オレからひとつ頼みがあるんだ、聞いてくんね?」

斉木(断る。お前の頼みがろくでもないことなのはお見通しだ)

桑田「昨日のオレと舞園ちゃんの待ち合わせ時間がいつだったか教えてくれよ!」

斉木(何故それを僕が知ってると思った?)

桑田「何だよそりゃ! 斉木はじゃんけんのオーラを読み取って相手の思考を知ることができるんじゃねーのかよ!?」

斉木(じゃんけんのオーラは読み取れないが、情報源が葉隠だということなら分かった)

桑田「参ったなー。せっかく苗木が死んだ時間帯を知るチャンスだったのにお手上げか……」

桑田(本当は舞園ちゃんが昨日何をしてたのか知るための手掛かりなんだけどな!)

斉木(どちらにしろ有力情報だ、さっさと話せ)

桑田「昨日モノクマの呼び出しがあったじゃん? その時オレさ、舞園ちゃんから夜のお誘いを受けてたんだよね!」

斉木(夜のお誘い……まぁこいつがわざと厭らしい言葉に言い換えているだけだろう)

桑田「ま、舞園ちゃんと苗木とオレの3人で親睦を深めたいって話だったからほぼ脈ナシなんだけどな。それでもアイドルのご期待に沿うため、オレは舞園ちゃんにオッケーを出したわけ」

桑田「んで場所は舞園ちゃんの部屋に決まって、何時に始めるか話してたのに、モノクマのせいでその約束もムニャムニャになっちまったんだよ」

斉木(有耶無耶が分からないなら無理して言わなくてもいいぞ。それで結局どうしたんだ)

桑田「寝る前にふと思い出して、ほっとくのも悪いから舞園ちゃんの部屋に行ってみたけど反応ナシ、苗木の部屋にも行ってみたけど反応ナシ!」

桑田「インターホン押されたら出るっしょ普通……苗木の奴ズェッテー許さねぇ!」

斉木(……で、お前は何時ごろに二人の部屋を訪ねたんだ?)

桑田「11時半くらい!」

斉木(なら出なくて当然だ)

コトダマゲット!
【桑田の証言】
昨日は苗木と桑田が舞園の部屋を訪ね、3人で話をするという約束をしていた。
しかし集合時間は決まっておらず、11時30分頃に2人の部屋を訪ねても反応はなかった。

【ランドリー】

斉木(桑田の証言は有力なのかそうでないのか微妙な情報だった。舞園さんが桑田を利用するべく嘘をついた可能性もあるだろう)

斉木(苗木も舞園さんの誘いを受けていたのか、このことを第三者に確かめなければならない)

斉木(……ということで、苗木について何か知っている奴をテレパシーで探り質問することにした)

斉木(まずは事件当夜に苗木を見たという山田のところへ来たのだが……)

山田「斉木楠雄殿ッ!! もちプリのことを深く知ってもらうためにも、この学園を出たらもちプリのブルーレイ限定版一式をお貸ししましょう!!!」

斉木(円盤より目撃証言をくれ)

山田「おっとそうでしたな! 昨日10時を回った頃、寄宿舎の廊下で苗木誠殿とお会いしました!」

山田「僕は昨日、モノクマからのプレゼント分で配布されたのび太の恐竜を観ていたのですが……エンドロールの最後まで再生していたところ、夜時間を過ぎてしまいましてね……フフ」

山田「慌てて自室に戻る途中に苗木誠殿と遭遇しました!」

斉木(ふむ。モノクマファイルの記述通り、苗木は夜時間に入ってから殺されたということか)

山田「その時の苗木誠殿は、部屋に鍵を掛けていたのですが……」

山田「聞いて驚け! 見て笑え! なんと、そこは苗木誠殿本人の部屋ではなく!! 舞園さやか殿の部屋だったのです!!」

斉木(驚きはするが笑えない情報だな)

斉木(……その言葉に間違いはないんだな? 見間違いだったら承知しないぞ)

山田「はい、そのことは僕も訊いてみたのですが……苗木誠殿は一瞬警戒した様子を見せ、答えをはぐらかしてしまったのです……」

斉木(成程。苗木が何をしたかったのかは知らないが、これでようやく犯人と被害者の接点が見つかった……!)

コトダマゲット!
【山田の証言】
夜時間になった直後、寄宿舎の廊下で苗木の姿を目撃した。
その際苗木は舞園の部屋に鍵を掛けていた。

キリの悪いところですが、今回の投下はここで終了です。
裁判パートが進まない上に私生活も忙しくなってきたので、次回の投下まではまたしばらく時間が空くと思います。

斉木の動機DVDの中身ですが、折角相談に乗っていただいたにもかかわらず完全に出すタイミングを逃してしまいました……
内容は考えてあるので、Chapter1終了後におまけとして投下する予定です。

事件のことは大体まとまったと思うので、捜査パート後半を投下します。

【前回のあらすじ】
あっ、今のタイミングだ



【1-A教室】

斉木(山田の布教活動を無視して、もう一人の苗木目撃者のもとへやってきた)

江ノ島「……ゴメン斉木、話なら後にしてくんない?」

江ノ島(私は……どうして盾子ちゃんが私を殺そうとしたのか、今はそれしか考えられないから……)

斉木(……表向きにはいつもの笑顔を見せているが、だいぶ参っているようだ。そんなに黒幕に心酔していたのか)

斉木(用済みの手下がラスボスに殺される展開はよくあることだが、いざ身近でそれを見ると少しばかり同情してしまうな……)

斉木(……いや、敵に同情して何になる。僕はただ目撃証言が欲しかっただけだ)

斉木(時間は有限なんだ、江ノ島さん(仮)が立ち直るのを待っている暇はない……)ガラッ

江ノ島(……出ていっちゃった……ううん、気にする必要はない)

江ノ島(他のクラスメイトとの交流は必要最低限でいい。疑いの目を向けられない程度の、必要最低限で)

江ノ島(私はずっと、盾子ちゃんただ一人だけの味方だから……)

江ノ島(……もし、盾子ちゃんが私を味方だと思わなくなったとしたら?)

江ノ島(……盾子ちゃんがそこに絶望を感じてくれるなら、私はそれでいい……)

江ノ島(……本当にそれでいい……?)

江ノ島(……さっきから、こんなことばかり考えてる)

江ノ島(戦場では一瞬の迷いが命取りだというのに。そこの掛け軸にも“常在戦場”って書かれているのに……)フォン

江ノ島(…………何、これ……)

江ノ島「チョークが勝手に……黒板に字を書いてる……?」

【校舎1階・廊下】

江ノ島「――斉木! 待てって斉木!」タタタッ

斉木(廊下を走るな。石丸に見つかったら説教を喰らうぞ)

江ノ島「あんたも積極的に事件の捜査してんでしょ? アタシ、昨日苗木に会ったの!」

江ノ島「あいつ……護身用の武器になりそうなものを探してた!」

斉木(…………! 武器探索は模擬刀が折れて終わりじゃなかったのか!)


コトダマゲット!
【江ノ島(仮)の証言】
苗木は昨日、護身用の武器を求めて一人で校内探索していた。


江ノ島「……あと斉木、ありがとう」

斉木(……何がだ? 僕は感謝されるようなことなどしていないぞ)

江ノ島「斉木が教室を出てった後、突然チョークが浮かび上がって黒板に文字を書き始めたの」

江ノ島「そしたら……“鏡を見てみろ、一番の味方はそこにいる”って文章が出来上がって」

江ノ島「それを眺めてたら、なんでか知らないけど斉木に礼を言わなきゃなんないような気分になってきたんだよね」

斉木(お前は何を言っているんだ。僕は人を励ますこともしないし、そんな臭いセリフを吐くこともない)

斉木(キャラ崩壊も甚だしいぞ。二次創作であることを差し引いても危険なレベルだ)

斉木(まぁ、江ノ島さん(仮)が他人に情報提供できる程度まで立ち直ったことは喜ばしく思うがな)

斉木(……そろそろ霧切さんの現場検証も終わりそうだ。寄宿舎へ戻るとしよう)スタスタ



江ノ島(……“鏡を見てみろ、一番の味方はそこにいる”。この言葉の意味がわかるまで時間が掛かってしまった)

江ノ島(今の私が鏡を見たら盾子ちゃんが映る。やっぱり私の一番の味方が盾子ちゃんであることに変わりはない……!)

斉木(チガウ)

【寄宿舎1階・廊下】

斉木(霧切さんは苗木の部屋から去ったようだ。次は僕も現場を調べたいのだが……)

石丸「やあ斉木くん! 聞いてくれたまえ、こんなところに汚れがあったのだ!」

斉木(目の前に壁が現れた)

石丸「自分の部屋の真ん前だというのに、僕は床が汚れていることに気が付かなかった……なんたる不覚だ!!」

斉木(僕としては至極どうでもいい)

石丸「しかもこの汚れ、誰かが乱雑に拭ったような痕跡があるのだ!」

石丸「皆が過ごす寄宿舎を綺麗にしようとする心意気は立派だ……しかし! 掃除は丁寧にしなければ意味がない! 斉木君もそう思うだろう!」

斉木(知らんがな)

斉木(……で、その汚れはどの辺りにあるんだ?)

斉木(石丸の隣は僕の部屋だが、汚れなんて全然気に留めなかったぞ……)

石丸「ああ! 僕がたった今濡れ雑巾で拭いたところだ!」

斉木(石丸てめぇこの野郎)


コトダマゲット!
【床の汚れ】
石丸の部屋の前は何故か汚れていたという。
誰かが拭いた痕跡もあったらしいが、それらは全て石丸が掃除してしまった。


石丸「さて、それでは僕はこの雑巾をすすぎに……」

斉木(洗うな)

石丸「何だねその目は! 使った雑巾は綺麗に洗って元の場所へ戻すのが礼儀……」

斉木(絶対に洗うな)ギロッ

石丸「承知したっ!」

【苗木の個室】

大和田「良いタイミングで戻ってきたな。オメェも入っていいぜ」

大神「分かっておると思うが……証拠隠滅をした場合は、我らが制裁を加える。心するがよい」

斉木(初っ端から物騒なことを言わないでほしい)

斉木(だが、隠滅するような証拠はどこにも見当たらないぞ。シャワールームを除けば、室内は何事もなかったかのように片付いている)

斉木(……ん? シャワールームの入口付近に何かが落ちている……)

大和田「おいコラ斉木! ソイツは重要な証拠品だ、どっかに捨てたりすんじゃねぇぞ!」

斉木(誰が捨てるか。地上最強の人間に脅された後だぞ)

斉木(……1センチ程度の小さな破片だが、先端は鋭利に尖っている)

斉木(あの道具がどこで使われたか……この破片のお陰で簡単に証明できそうだな)


コトダマゲット!
【小さな破片】
苗木の部屋の床には、小さく尖った何かの破片が落ちていた。

斉木(忘れてはならないのがシャワールームのドアノブだ。破壊されて役に立たなくなっている)

斉木(まぁ簡素な構造だし、留めてあるネジさえ外せば簡単に壊れそうだな……)


コトダマゲット!
【シャワールームのドア】
シャワールームのドアノブは破壊されていた。
犯人がドアをこじ開ける際に壊されたと思われる。


斉木(そういえば、男子の部屋には工具セットなるものが支給されていたな)

斉木(僕は道具を使うのは苦手だから放置していたが……確か机の引き出しに入っていたはずだ)ガラッ

斉木(……ふむ、未開封のままか)ガタン

斉木(犯人が舞園さんである以上、他人の工具セットが使われたとは考えづらい。ドアノブの破壊には他の道具が用いられたと推理するのが妥当だろう)


コトダマゲット!
【苗木の工具セット】
苗木の部屋の工具セットは一度も使われていなかった。

斉木(この際、他の道具が使われた形跡も無いか確認してみよう)

斉木(……机の上のメモが1枚消費されているな。何に使われたんだ?)

斉木(次のページには筆圧が残っている。鉛筆で軽くこすれば文字が浮かび上がるはずだ……)サラサラ

斉木(……“シャワールームのあけ方 ドアノブをひねりながら上にもちあげておす”)

斉木(“さっきは悪かった 大和田”……?)

大和田「ああ、メモ帳か? ソイツはオレが使ったんだ」

斉木(なんだモロプラだったのか)

大和田「オレがここに来た初日、カッとなって苗木を殴っちまっただろ?」

大和田「さすがに悪いことしちまったからよ、オレがアイツを部屋まで運んでやったんだ」

大和田「そしたらモノクマが出てきやがって……なんでも苗木の部屋のシャワールームだけドアの建付けが悪いんだとよ」

大和田「アイツはそれだけ言って消えちまったから、苗木がいつ起きてもいいように書き置きを残しといたんだ」

大神「苗木はそのメモを、ズボンのポケットに入れていた。霧切が苗木の体を調べている時に発見したのだ……」


コトダマゲット!
【ポケットのメモ】
“シャワールームのあけ方 ドアノブをひねりながら上にもちあげておす さっきは悪かった 大和田”と書かれている。
苗木はこのメモをズボンのポケットに入れていたようだ。

斉木(他には……床をコロコロしてゴミを取るアレが置いてあるな)

斉木(一度だけ使われた形跡がある。犯人が証拠隠滅に使ったのか?)

大神「それは先程、霧切が捜査のために封を切ったものだ……」

斉木(事件そのものとは無関係か。しかし霧切さんが手掛かりを得たという裏付けにはなる、念のため覚えておこう)


コトダマゲット!
【粘着テープクリーナー】
苗木の部屋の粘着テープクリーナーは霧切が捜査に使用。
それ以前は全く使われていなかった。


斉木(……これ、粘着テープクリーナーって名前だったのか)

斉木(ついでにゴミ箱の中身も見ておこう……)

斉木(……僕が苗木にやったポカリのペットボトルしか捨てられていないな)


コトダマゲット!
【苗木のゴミ箱】
苗木の部屋のゴミ箱には、斉木が苗木に渡したスポーツドリンクのペットボトルが1本捨てられていた。
その他のゴミは無い。

斉木(さて、いよいよシャワールームの捜査だ)

斉木(苗木の死体は壁にもたれ掛かり、両腕を体の横に投げ出した体勢を取っている)

斉木(腹部には石包丁が深々と刺さったままだ。体の内部まで透視してみたが、傷はこの1箇所にしかない)

斉木(それから……右手の人差し指は血で汚れている。ダイイングメッセージでも書いたのか?)


コトダマゲット!
【苗木の死体】
苗木の腹部には石包丁が刺さっていた。傷はこの1箇所のみである。
また、右手の人差し指には血液が付着していた。


斉木(……死体を少し左にずらしてやると、壁に書かれた血文字が見つかった)

斉木(“LEOII”か。犯人による偽のダイイングメッセージだろうが、残念ながら僕に嘘は通用しないぞ)


コトダマゲット!
【ダイイングメッセージ】
苗木の死体の陰には“LEOII”という血文字が書かれていた。


斉木(……待てよ、そもそも不自然な点がある。どうしてシャワールーム内はこんなに綺麗なんだ?)

斉木(モノクマファイルによると、苗木の死因は失血死のはずだ)

斉木(にもかかわらず、ここにある血の量は明らかに少ない。少なすぎてダイイングメッセージの血の方が目立つほどだ)


コトダマゲット!
【シャワールームの状況】
シャワールーム内に遺された血液は、失血死にしては少ない量だった。

ピンポンパンポーン

モノクマ『学級裁判の時間となりました!』

モノクマ『オマエラ、校舎1階にある赤い扉の部屋にお集まりください!』

大和田「斉木、今の聞いてたか? 時間切れだ、犯人当てに行くぞ……」

大和田「……って、誰も居ねーじゃねぇか。アイツいつの間に出ていきやがった?」

大神「我は出入り口に立っていたが、斉木はまだこの部屋を出ていないはずだぞ」

大和田「んだよ、まだどっか隠れてんのか?」

『気に留めることはない……』

大神「……気に留めることはない。斉木が出ていった時に、我が目を離していたのかもしれぬ」

大神「霧切も斉木もこの部屋を荒らしていない。それで良かろう……」

大和田「……チッ、わーったよ。んじゃ行くか」



斉木(ふぅ、危うくバレるところだったが……“透明人間化”には間に合った)

斉木(透明人間になるには1分の時間を要する。制限時間は10分、しかも誰かに触れられたら強制解除だ)

斉木(いつアナウンスが流れるのかはテレパシーで事前に知っていたので、僕は自然なタイミングで透明人間化し、見張りコンビの目を掻い潜った)

斉木(騙してしまったが見逃してくれ。どうしても最後に調べたいことがあってな――)

――――――――――

【赤い扉の部屋】

葉隠「やっと来たな。オメーが最後だぞ、遅かったべ!」

腐川「どうせ死ぬのが怖くて逃げ出そうとしてたんでしょ……!」

斉木(アナウンスから5分も経っていないだろ、大目に見てくれ)

モノクマ「うぷぷぷぷ! 全員揃ったみたいだね!」

モノクマ「それではオマエラ、奥のエレベーターに乗ってください。学級裁判の舞台へ続くエレベーターにね……」

舞園「……私達、どうなってしまうんでしょうね」

十神「決まりきっている。この犯人当てゲームで負けた者が死ぬ……俺はただ勝つだけだ」

セレス「あら、随分と強気ですのね。それではあなたが最初にエレベーターへお乗りくださいますか?」

十神「何を言う。エレベーターに初めに乗るのは操作ボタンを押す人間だ」

モノクマ「ちょっと! エレベーターはボクが動かすから、順番は気にしないでさっさと乗ってよ!」

斉木(やれやれ。赤い扉の部屋の謎が、最悪の形で解明されてしまった)

斉木(この部屋に来るのは今回限りにしよう。その方が話もテンポ良く進む気がする……)

斉木(全員を乗せたエレベーターは、ゆっくりと下降を始めた)

斉木(中は静寂で包まれているのだろうが、僕にはテレパシーがあるので普段とさほど変わらない)

斉木(……常人には仕方のないことなんだろう。この先に待ち受けるものは、全てが命懸けだ)

斉木(だが、超能力者には無関係だな。事件の論証には手間が掛かりそうだが……命懸けの裁判になることはまず無い)

斉木(黒幕に見せてやろう。超能力者の力をな)

斉木(……エレベーターが大きな音を立てて停まり、裁判場への扉を開いた)

斉木(ある者は戸惑い、ある者は怯え、ある者は自信を見せながら、それぞれの席へと向かう)

斉木(僕は全員の背中を見届け、一番最後にエレベーターを降りた)

斉木(さあ――学級裁判の開廷だ)

開廷だとか言っちゃってますが、ここで今回の投下は終了です。
次回は学級裁判を一気に進める予定です。
けれど、未だに続きを書き進められていないため、またしても投下が遅れると思います。
学級裁判パート難しすぎワロエナイ。


余談ですが、>>1は現在単行本派のため、窪谷須のことは7巻を読んでようやく知りました。
スレの最初の方でネタバレした人が、動くこけしばかりを引き当てますように。

Chapter1はほとんど書けたので続きを投下します。
今度こそ学級Ψ判開廷です。

【前回のあらすじ】
床をコロコロしてゴミを取るアレ



斉木(現在モノクマが学級裁判のルールを再度説明しているが……このくだりは原作をプレイすれば12回は聞かされる。正直飽きてしまった)

斉木(おそらくこのSSの読者も同意見だと思うので、今のうちに僕が手に入れたコトダマを整理しよう)


【モノクマファイル】>>240

【厨房の石包丁】>>241

【朝日奈の証言】>>243

【桑田の証言】>>246

【山田の証言】>>247

【江ノ島(仮)の証言】>>269

【床の汚れ】>>270

【小さな破片】>>271

【シャワールームのドア】>>272

【苗木の工具セット】>>272

【ポケットのメモ】>>273

【粘着テープクリーナー】>>274

【苗木のゴミ箱】>>274

【苗木の死体】>>275

【ダイイングメッセージ】>>275

【シャワールームの状況】>>275


斉木(この学級裁判は安価で進行しようかと思ったが、システムが複雑化しそうだったので諦めた)

斉木(ド素人が考えた事件だけあってトリックの難易度も低いはずだ。スナック菓子でも食べながら話の展開を楽しんでくれ)

モノクマ「――というわけで、後はオマエラが議論してクロを当てちゃってください!」

斉木(説明シーンも省略できたことだ、ノンストップ議論を始めよう)

斉木(そして……今からでも遅くない。コロシアイ学園生活を阻止してやる)

議論開始!

十神「まずは凶器の特定だ」

舞園「モノクマファイルには【鋭利な道具】と書かれていますね」

葉隠「漠然としててわかんねーべ。もっとハッキリ書いてほしいべ」

不二咲「鋭利な道具って……【刃物】のこと……?」

桑田「つまり【ナイフ】で刺されたんだな!」



斉木(やれやれ……現場を一度でも見た人物なら、すぐにわかることなんだがな)

斉木(しかし僕自身はコトダマを撃ちたくない……『それは違うよ!』と高らかに叫ぶのは苗木あたりの役目だろう)

斉木(だがこの場に苗木は居ない。残るは口数の少ない切れ者と口数の多いバカだ)

斉木(このままでは裁判が明後日の方角へ向かいかねない。そこで僕が考えた、議論を円滑に進める方法が……)



『【苗木の死体】……』

朝日奈(……どうしてだろ? 桑田の言ったことを否定しなきゃいけないような気がしてきた……)

朝日奈「――それだけは違う!」

BREAK!



斉木(……テレパシーを利用して他の生徒に指示を出す。名付けて“代理論破”だ)

桑田「ハァ? 何が違うってんだよ!」

朝日奈「私、この目で苗木の死体を見たもん! お腹に石包丁が突き刺さってたの。あれが凶器だよ!」

石丸「正確には“打製石器”と呼ぶのだぞ!」

桑田「ダセー石器? イケてる石器もあんのか?」

斉木(この学園に燃堂みたいなボケをかます人間は存在してほしくなかった)

腐川「でも……その打製石器は、どこから持ってきたのよ……?」

セレス「不思議ですわね。どこかに郷土資料室でもあるのでしょうか?」

斉木(いや……この石包丁は郷土資料室から来たものではない)

斉木(もっと言えばこの学園外のものですらないが……それは黙っておいて、彼女に証言してもらおう)

『【厨房の石包丁】……』

大神「……その石包丁は厨房にあったものだ」

大神「今朝には1本消えていたが、やはり凶器に利用されていたか……」

江ノ島「は? 石器が厨房に? なんで?」

大神「一昨日の朝……朝食の支度をしている最中、突然包丁がまばゆい光を放った」

大神「……光が収まる頃には、6本あった包丁は全て石包丁へと変わっていた」

大神「厨房に立ち入ったことの無い者ならば、知らぬのは当然のことだ……」

大和田「オ、オメー……マジで言ってんのか?」

葉隠「オカルトは信じねーぞ! オーガが自分ですり替えんだべ!」

石丸「しかし……その場には僕と斉木くん、そして苗木くんも居合わせていたぞ」

石丸「念のため後で普通の包丁を探したが、1本たりとも見つからなかった!」

朝日奈「うーん……だったら誰がどうやって包丁をすり替えたのかな?」

斉木(まずい、完全に議論が脱線している……!)

モノクマ「それは監視係のボクにも分からないんだよ! てゆーか今回の事件と関係ないじゃん!」

モノクマ「手品のタネ明かしよりも大切なことがあるでしょ! ホラ、さっさと本題に戻った戻った!」

斉木(初めてモノクマが良い奴に見えた)

議論開始!

江ノ島「そうは言ってもさぁ……犯人に直結する手掛かりなんてどこにあんの?」

山田「ではでは、現場に【遺された手掛かり】から考えていきましょう!」

葉隠「サスペンスで定番の手掛かり……ズバリ! 【シャイニングメッセージ】だべ!」

舞園「ダイイングメッセージ……って言いたいんですよね?」

朝日奈「けど……私が見た時はダイイングメッセージなんて【どこにもなかった】よ?」

腐川「フン……現実はフィクションほど上手くは行かないのよ……」



斉木(……ただ現場を見ただけでは、アレの存在には気付けないだろう)

斉木(つまり、もっと入念に現場を調べた人物なら……)

『【ダイイングメッセージ】……』

霧切「――それは違うわ」

BREAK!

霧切「苗木くんの背後の壁には、血で文字が書かれていたの」

葉隠「うおっ! オートフォーカスなバイキングソーセージだべ!」

斉木(最早何を言いたいのかさっぱりわからない)

霧切「血文字は死体を除けなければ見られない場所にあった。朝日奈さんが見つけられなかったのも当然のことよ」

朝日奈「ゴ、ゴメン……って霧切ちゃん! 死体を動かしたの!?」

霧切「終わったら元の位置に戻しておいたわ。それなら問題ないでしょう?」

桑田「オメーが死体にさわれることが驚きなんだよ!!」

セレス「それで、苗木くんはどのような言葉を書き遺していたのですか?」

霧切「そこにあった血文字は……“LEOII”というものだったわ」

不二咲「える、いー、おー、あい、あい……?」

朝日奈「私は英語苦手だから、なんて意味か分かんないよ……」

十神「愚民はこのくらいのことも推理できんのか」フッ

大和田「んだとゴラァ!?」

十神「霧切、現場を見たお前に問いたい。ふたつ並んだ“I”の字の間に掠れた線はなかったか?」

霧切「……ええ、あったわね」

十神「俺の予想では、その線は斜めに引いてあったはずだ。アルファベットの“N”のようにな」

舞園「! それって……」

十神「ダイイングメッセージは“LEON”――人の名前になる」

十神「ちょうど、お前らの中にもレオンという名前の人間が居たはずだが?」

桑田「…………!?」

山田「……桑田怜恩殿のことですか……?」

江ノ島「そうだ、レオンって桑田の下の名前だ!」

桑田「ち、違……」

大神「苗木は犯人の名前を伝えようとしたのか……」

桑田「オレじゃねーって! ホントなんだよ、信じてくれよぉ!」

腐川「誰だって最初はそう言うのよ! 犯人か否かにかかわらずね!」

斉木(やれやれ……十神のやつ、余計なことに気付いてくれたな)

斉木(犯人は舞園さんなんだ、苗木が無関係な桑田の名前を書くわけがない)

斉木(少々頭を使えば偽の手掛かりであることには気付けるはずだ。もう一度霧切さんに頑張ってもらおう)

『逆さ文字……』

霧切「……ちょっと待って。確かにダイイングメッセージはあったけれど、果たしてこれは本物なのかしら」

桑田「だよな! やっぱ嘘だよなぁ!」

斉木(お前は黙ってろ)

霧切「ダイイングメッセージが書かれていたのは、苗木くんの背後の壁だった」

霧切「そんなところに文字を書けばどうなるか……舞園さん、ちょっと実験に協力してもらえる?」

舞園「……はい、私でいいんでしたら」

霧切「私は常に手帳とペンを携帯しているわ。ここに“LEON”と書いてみて」スッ

舞園「……こうですね。書けました!」サラサラ

霧切「ええ、平面でなら難なく書ける。次は私があなたの背後で手帳を持つから、ここに書いてみて」

舞園「うぅん……難しいですね……えっと、こうですか……?」カキカキ

朝日奈「あっ! 舞園ちゃんの書いた“LEON”って文字が……」

朝日奈「上下がひっくり返って“N037”に見える!」

霧切「そう、自分の背後に正しい向きで字を書くことは難しいの」

霧切「後ろ手で“LEON”と書けば、この字は180度回転して“N037”となってしまう……」

舞園「…………! 言われるまで全く気付けませんでした」

十神「成程な。確かにそのダイイングメッセージは偽物だったようだ」

桑田「ほら見ろ! オレぁマジでなんもやってねーもん!」

不二咲「じゃあ……苗木くんの背後にあった血文字はなんだったのかな?」

大和田「桑田が関係ねーんだったら、ありゃあ一体なんなんだ?」

霧切「考えられる結論はひとつ。あれはそもそも……」

斉木(これでダイイングメッセージは偽物だったと証明されたも同然だ。まったく、議論が脱線しすぎてどうなるかと思っ……)

石丸「そうかわかったぞ! 苗木くんは“N037”もしくは“11037”と伝えたかったのだな!!」ビシッ

斉木(石丸KY多夏め)

葉隠「よーし、ダイビングマッサージの真相を皆で考えるべ!」

斉木(余計な一言のせいで更におかしな方向へ脱線し始めた)

舞園「N037……北緯37度、でしょうか?」

斉木(しかも真犯人まで流れに便乗している)

不二咲「プログラム言語的には意味を見い出せないよぉ……」

セレス「確か、Nというのは窒素の元素記号でしたわね」

江ノ島「てゆーかさ! ソビエト連邦で開発された超ヤバい威力の航空機用機関砲がN-37って名前なんだけど!」

朝日奈「11037が何かの語呂合わせなのかも。ヒトミナ……とか!」

桑田「ヒトミナって何だよ。フツー11037と言やぁいいお産……7ってなんだ?」

石丸「1103年は日本では康和5年、堀河天皇の時代だぞ! この年は地震が多かったとされ7月にも……」

斉木(これも完全に無関係な話題だろ。モノクマ、さっきのように忠告してくれ……)

黒幕(うはwwwマジウケるwwwwwwこのまま放置してよっとwwwwww)

斉木(お前後で覚えとけ)

十神「馬鹿馬鹿しい。試験問題は簡単なものから解いていけと習わなかったのか」

桑田「習わなかったな! オレはスポーツ推薦で入学したし!」

斉木(胸を張るな)

十神「お前もだ霧切。愚民の中では頭の冴える方だと踏んでいたが、次元の低い議論をいつまでも長引かせるようでは高が知れている」

霧切「……この議論に一切口出しせず放置していたという点では、あなたも同罪だと思うけど」

霧切「そもそも私はダイイングメッセージが偽物だと指摘しようとしたのよ。何もしていないわけではないわ」

斉木(……霧切さん、露骨に苛立っているぞ)

腐川「何よ……また振り出しに戻ったわけ……?」

石丸「仕方がない、もう一度事件の手掛かりを考えようではないか!」

斉木(どの口が言っているんだ石丸KY多夏)

議論開始!

舞園「ここまでの確定事項って……」

大和田「【凶器は石包丁】っつーことと……」

不二咲「【ダイイングメッセージは偽物】なこと……だよねぇ」

霧切「それから石包丁は【厨房にあった】ということも、ね」

山田「あのー……凶器は誰が持ち出したかを推理するというのはどうでしょう?」

大神「石包丁は【犯人が持ち出した】はずだからな。おそらく有力な手掛かりになるだろう」

十神「ほう、愚民にしてはそこそこの案だ……」



斉木(……事実とは若干異なる推理がなされているものの、今度は無駄なやり取りにはならないだろう)

斉木(議論を続けるためにも、新たな可能性を提示してもらうとするか)

『【江ノ島(仮)の証言】……』

江ノ島「――それは違うって!」

BREAK!

江ノ島「石包丁は犯人が持ち出したって、絶対とは言い切れないと思うんだけど」

大神「……されど、他に誰が石包丁を要するというのだ?」

江ノ島「苗木だよ。殺された張本人」

江ノ島「昨日の昼間に苗木と会った時、あいつは“護身用の武器”を探してたの」

セレス「苗木くんはご自分で持っていた石包丁を犯人に奪われ、刺し殺されてしまった……というのですか?」

江ノ島「少なくともアタシはそう思う」

十神「恐ろしいほどに間抜けな話だが……その可能性もあるだろうな」

石丸「では、その持ち出された打製石器の動向を追えばいいのかね!」

斉木(おっと補足説明だ)

『【朝日奈の証言】……』

朝日奈「――待って! 持ち出された石包丁は1本だけじゃないよ!」

大神「しかし……我が今朝厨房に入った際、石包丁は6本中5本揃っていたはずだが……」

朝日奈「私、昨日の夜時間直前まで食堂に居たの。その時は石包丁が4本しか無かったんだよ!」

桑田「ハァ? 苗木のヤツ、2本も持ってったのかよ!」

霧切「いいえ、そうは考えにくいわ。護身用なら1本で足りるはずよ」

葉隠「苗木っちの他にもう1人石包丁を拝借したヤツがいるんだな!?」

霧切「ええ。そして、その人物こそが……」

舞園「苗木くんを殺した犯人、というわけですね」

斉木(……石包丁を持ち出した犯人が舞園さんだということくらい、超能力者の僕にはお見通しだ)

斉木(問題はそれをどうやって証明するかだ。舞園さんが持ち出すところを見た人間は1人もいない……)

斉木(しかも、苗木と舞園さんが護身用の武器を探していたことを知る人物もいないようだ)

斉木(……いっそ僕がテレパシーで全員に真相を教えた方が効率的じゃないのか?)

斉木(まあ、それも野暮というものか。面倒だが地道に立証していこう)

議論開始!

腐川「犯人と苗木は……石包丁を何に使うつもりだったのよ……?」

江ノ島「だからさー、苗木は【護身用】に使ったって言ってるんですけど!」

セレス「犯人は【どなたかを刺す】おつもりだったのでしょうね」

山田「実際、苗木誠殿は【石包丁で殺された】のですからなぁ……」

葉隠「でも2本ある石包丁のうち【1本は無事だった】べ!」



斉木(……ウィークポイントがあからさまにツッコミ待ちの状態だ)

斉木(まぁ、これくらいの方が論破しやすいのかもしれないな……)

『【小さな破片】……』

大和田「――ソイツはちげーよクソが!」

BREAK!

大和田「無事なわけねーだろうが葉隠……オメーちゃんと石包丁見たのか!?」

葉隠「だってよぉ、オーガと朝日奈っちの話だと石包丁は1本戻ってきたんだろ?」

葉隠「俺じゃなくても無事だと判断するべ!」

朝日奈「いや……無事じゃなかったよ」

葉隠「朝日奈っちまで!?」

朝日奈「さっき言いそびれちゃったけど、戻ってきた1本は先っちょが欠けてたの」

山田「先っちょ(意味深)……?」

斉木(特に意味深でもないだろ)

大和田「んで、霧切が苗木の部屋で何かの破片を見つけたんだ」

霧切「そうよ。1センチにも満たない小さな欠片だけど、先端は鋭く尖っていたわ」

葉隠「えーと……それってつまり……」

十神「もう1本の石包丁も苗木の部屋で使われ……その際に欠けてしまった、ということだ」

江ノ島「だとしたら……やっぱり気になんない? もう1本の石包丁が何に使われたか」

不二咲「先端が欠けるなんて、どんな使い方をしたんだろう……」

斉木(破片はシャワールームの入口付近に落ちていたんだぞ。現場を見た人間には簡単だろう)

『【シャワールームのドア】……』

大神「……もしや」

桑田「大神! なんか分かった感じ!?」

大神「うむ。その石包丁で、シャワールームのドアノブを破壊したのだろう」

大神「シャワールームのドアノブは激しく損傷し、ドアから外れてしまっていた」

大神「石包丁を何度も打ち付けたと考えれば、あのようになるのも納得が行く……」

石丸「しかし……何故ドアノブを壊す必要があったのだ?」

石丸「シャワールームを施錠できるのは女子の部屋限定ではないか。苗木くんは男なのだぞ、簡単にドアを開けられたはずだ!」

舞園「それは私も気になります。どうしてドアが開かなかったのか……」

斉木(いや、ドアが開かない理由があったんだ。苗木の部屋限定でな)

『【ポケットのメモ】……』

大和田「……おう、オメーらは知らなくて当然だよな」

十神「どうした? プランクトン風情が急に得意気な顔をして」

大和田「それは今関係ねーだろうが!! ブッ転がされてーのか!?」

不二咲「暴力はだめだよぉ!」

斉木(大和田、お前は紛れもなくモロコシプランクトンだよ)

大和田「苗木の部屋のシャワールームは、ドアの建付けが悪くて開きづらくなってんだよ」

大和田「このことを知ってんのは苗木本人と、モノクマの伝言をメモしたオレだけだ」

霧切「そしてそのメモは苗木くんのズボンのポケットから見つかった。当然犯人も知らなかったのでしょうね」

霧切「きっと、事件発生当時の犯人はひどく混乱していたと推測できるわ」

江ノ島「当然っしょ。ドアが開かなかったんだし」

霧切「根拠は他にもあるの。ドアノブを壊すにしたって、石包丁を使うよりも簡単な方法があったはずよ」

斉木(言われてみればそうだな。単に犯人が気付かなかっただけかもしれないが……)

『【苗木の工具セ

葉隠「そうかわかったべ! 犯人は苗木っちの工具セットを使えばよかったんだな!!」

斉木(何が起こった)

霧切「そう。苗木くんの工具セットは未開封のままだったわ」

霧切「犯人は石包丁で無理矢理ドアノブを壊した。あのドアノブなら、ドライバーでネジを取れば簡単に外れたのにね」

十神「おまけに、犯人の奴は俺に新たな情報を与えてしまった」

朝日奈「新たな情報……? もったいぶんないでさっさと言ってよ!」

十神「……お前らの密度の低い脳味噌で考えてみろ」

十神「犯人がシャワールームのドアを開いた瞬間、苗木が石包丁を構えていたらどうなる?」

セレス「反撃されてしまいますわね。犯人には隙がありますもの」

十神「お前も多少は頭が回るようだな。そう、犯人は苗木から石包丁を奪った上で犯行に及んだんだ」

十神「見張りをしていたという脳筋2人なら咄嗟の反撃も可能だろうが……」

霧切「大和田くんはドアの開け方を知っているから、わざわざドアノブを壊す必要がないわ」

桑田「大神なら道具を使わなくても素手でドアぶち破れそうだしな!」

大神「ああ……疑うのであれば、ここで実演してみせよう」

桑田「だからってオレの方に寄ってこなくてもよくなくない!?」

舞園「……何はともあれ、段々と事件の全貌が見えてきましたね」

石丸「次は全員で事件の流れを整理してみようではないか!」

またしてもキリの悪いところですが、学級Ψ判はここで中断します。
次回は全員で事件の流れを振り返るところから再開し、Chapter1終了まで進む予定です。

……まさか最初の章がこんなに長くなるとは思わなかった。

葉隠「ここまで一言もしゃべってない斉木っちが怪しいべ!!」

>>337
いや、『自分に注意を向けない』じゃなくて『周りが他のものに注意を向けるから、結果自分が注目されない』をしてるんじゃないの?

予告内容を変更して、Chapter1の残りは2回に分けて投下します。
あともう少しなのになかなか進まない……
楽しみにしてくださっていた方が居ましたらすみません。

【前回のあらすじ】
11037



斉木(学級裁判……苗木誠を殺した犯人を生徒全員で突き止める場だ)

斉木(議論は着々と進み、犯行の詳細をゆっくりと浮かび上がらせていく)

斉木(僕は超能力者だから、犯人が舞園さやかであることは既にお見通しなのだが……)

斉木(僕は頃合いを見計らって、オシオキという名の処刑を受ける運命から彼女を救い出さなければならない)

斉木(……勘違いするな。僕は勧善懲悪主義者だ、アイドルであろうと肩入れはしない)

斉木(ただ、僕は自由行動安価の時に公約してしまった)

斉木(『“生徒の死によってイベントが不可能になる”という事態は起こらないから安心してくれ。僕が保証する』……とな)

斉木(僕があの夜制御装置を外していなければ、今回の事件を防ぐこともできたはずだ)

斉木(……今度こそ僕は止めてみせる。そして、舞園さんを改心させてやる)

斉木(それでは学級裁判の再開だ)

議論開始!

朝日奈「んーと、昨日の夜時間までに厨房の石包丁は【2本なくなってて】……」

江ノ島「それは【苗木と犯人】が1本ずつ持ってったから……だったよね」

石丸「そして、昨夜のうちに苗木くんは殺されてしまった」

山田「凶器になったのは【犯人の石包丁】……」

大神「苗木の石包丁は……シャワールームの【ドアノブを壊す】際に使われ、先端が欠けた……」

江ノ島「犯人は、苗木も石包丁を持ってたことに動揺してたっぽいよね」

大和田「犯人は【建付け云々】も関係無しにドアを開けて……」

十神「【シャワールームの中】に居た苗木を刺し殺した」

葉隠「ついでに【ラッピングパッケージ】を偽装したんだべ!」



斉木(葉隠のボケは放置するとして……この推理が完璧なはずがない)

斉木(シャワールームには、まだ不自然な点がある……!!)

『【シャワールームの状況】……』

霧切「――それは違うわ」

BREAK!

十神「面白い。俺の推理のどこが違うというんだ?」

霧切「……苗木くんが殺されたのは、シャワールームの中ではないはずよ」

霧切「苗木くんは失血死したはずなのに、シャワールーム内はあまりにも綺麗だった」

腐川「シャワーの水で流したんじゃないの……?」

霧切「死体は濡れていなかったし、何より夜時間は水が止まっているのよ。その可能性は有り得ない」

腐川「そう……あたしはシャワーを使わないから……知らなかったわ……」

斉木(お、おう)

桑田「でもよ、殺人現場はシャワールームだろ? モノクマファイルにもそう書いて……」

『【モノクマファイル】……』

桑田「……もしかして」ペラッ

十神「お前は何を読んでいた? モノクマファイルには“死体発見現場”の記述があるだけで“殺人現場”は明かされていない」

桑田「うわー、やっぱりかー……こういう引っ掛け問題はズリーって」

十神「嘘は書かれていないんだ、言葉の裏を読めない人間が悪い」

霧切「よって、導き出される答えは……」

霧切「“苗木誠は別の場所で殺された”ということよ」

舞園「でも……それだと辻褄が合わなくなります。どうして犯人は苗木くんをシャワールームに運んだんですか?」

舞園「わざわざ……石包丁でドアノブを壊す真似までして……」

セレス「おそらく、犯人はルールを誤解していたのでしょう」

大和田「ルール……?」

セレス「『仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません』……6番目の校則です」

セレス「犯人はこれを、“殺人が起ったことを知られないようにする”のだと解釈したのでしょう」

不二咲「そっか……学級裁判のことを知らされたのは、苗木くんが殺された後だったもんね」

セレス「ええ。苗木くんの亡骸をシャワールームに隠せば、ドアを開けられるまで苗木くんは行方不明のままですわ」

セレス「そして念押しにダイイングメッセージを捏造した……」

セレス「万一苗木くんが見つかってしまっても、疑いの矛先が桑田くんへと向かうようにです」

舞園「っ…………そう、ですね」

朝日奈「でも、朝一番に斉木が異変に気付いちゃったから……」

大神「犯人の思惑通りには行かなかったのだな……」

セレス「せめて苗木くんの個室に鍵を掛け、数日経ってから解錠しておけば捜査も難航したでしょうに」

葉隠「物騒なこと言うなって!」

斉木(もしそうなったとしてもサイコキネシスで鍵を開けられるが)

斉木(そして……先程の霧切さんの推理によって、別方面の謎がもうひとつ解けた)

斉木(あれを見つけた本人にもヒントを与えてやろう……)

『【床の汚れ】……』

石丸「……はっ! もしやあの拭き残しは……!」

江ノ島「? 拭き残しって何?」

石丸「うむ。寄宿舎の廊下で妙な汚れを発見したのだ」

石丸「しかも! あろうことか、その汚れは僕の部屋の前にあったのだよ!」

石丸「僕はすぐさま濡れ雑巾で汚れを落とした! 適当に拭ったような跡が許せなかったからな!」

石丸「しかし……あの雑な掃除の痕跡も、夜時間で乾拭きしか行えなかったと仮定すれば納得が行く」

石丸「ああ!! 僕は良き心がけを浅慮の上に軽蔑してしまった!!」ブワッ

大和田「オメー、この一大事に拭き掃除なんかしてたのかよ」

石丸「拭き掃除なんかとは何だね! 居住空間の汚れは心の汚れへと繋がるのだぞ!」

斉木(希望ヶ峰はめんどくさい奴ばかりスカウトしたな)

石丸「ちなみにその時使った雑巾も持ってきたぞ! 斉木くんに洗わないよう止められたからな!」

斉木(あまり僕の名前を出すな)

霧切「……その雑巾、ちょっと見せてもらえるかしら」

桑田「げっ! 掃除した後のきたねー雑巾なんか見てどうすんだよ!」

石丸「喜んで見せよう。これが努力の勲章だ!」バッ

桑田「ホラやっぱきたね……ぇ……」

江ノ島「……マ、マジ……?」

朝日奈「嫌っ……!」

山田「ぎょえええええ!?」

霧切「……予想通りね」

腐川「……ちょっと、急にメガネが曇って……何も見えないんだけど……」

斉木(悪く思うなよ。腐川さんにこの雑巾を見られると厄介なんだ……)

石丸「どうしたのかね、揃いも揃って顔面蒼白だぞ……」クルッ

石丸「って、なななななんだこれはああああああああ!? 血液じゃないかああああああああああああ!!!」

斉木(リアクション芸の域に達しているな)

腐川「ひいいいいいい!! 血ぃいいいいいいいいいい!?」

斉木(落ち着け)

石丸「ぼぼぼ僕が見つけた汚れはけけ血痕でそのその汚れをふふふ拭いてつまままつまり先に拭いたのはははは犯犯犯人」

斉木(お前はもっと落ち着け)

朝日奈「でもなんで犯人は拭き残しに気付かなかったんだろ? 血の跡なんて目立って当然なのに」

山田「むむむ……きっと、個室前の廊下は赤い照明が使われているからでしょうなぁ」

山田「カラーイラストの作業は白いLEDライトの下で行う……これが僕の仕事の流儀ですぞ!」

大和田「どういうことだァ? もっと手っ取り早く説明しろよ」

山田「照明のせいで辺りは真っ赤っ赤だから、石丸清多夏殿ほど汚れに注視しない人には血の色が同化して見えるのです!」

江ノ島「あー、なんとなく分かった。確かにショッキングピンクって赤い光の中だと目立たないかも……」

不二咲「えっ……血の色は赤だよぉ?」

江ノ島「は? ショッキングピンクじゃね?」

不二咲「………………」

江ノ島「………………」

霧切「…………とにかく、遂に判明したわね。真の殺人現場が」

斉木(パンドラの箱に無理矢理蓋をしたな)

葉隠「あ、ああ。苗木っちは寄宿舎の廊下で殺されたんだったべ」

大神「されど……何故苗木は石丸の部屋の前で殺されたのだ?」

石丸「……僕の部屋は、苗木くんの部屋の向かい側にあるのだ」

石丸「僕が何らかの形で事件に気付けていれば……すまない、苗木くん……!」

舞園「仕方ないですよ……個室は完全防音ですから、外の音も聞こえません」

舞園「だから……仕方、ないんです……」

斉木(ここで注釈だ。『苗木の部屋の向かいは大和田だろ』と思った人は>>42を再度読んでおいてくれ)

斉木(石丸は自分が気付けなかったことを重く受け止めているな。第三者が責任を負う必要は無いと思うが……すぐに復活するだろう)

大和田「けどよ、どうして苗木は廊下に居たんだ?」

セレス「わたくしがご提案した“夜時間出歩き禁止”のルールがありますのに……」

朝日奈「もしかして、苗木は夜時間前に殺されたんじゃないの……?」

斉木(……いよいよ事件当夜の目撃証言を出す時が来たか)

斉木(覚悟しろ、舞園さん……!)

『【山田の証言】……』

山田「――異議あり!!」

斉木(それ別のゲーム)

ダンガンロンパやったことないからわからんが血液はショッキングピンクで表現されてるのか?

山田「拙者……昨日はうっかり夜時間ルールを破ってしまいましてなぁ……」

セレス「あら、あなたはご自分の生活習慣どころか他人との約束ごとすら守れない腐れラードなのですね」

山田「ありがとうございます!!」

葉隠「山田っち、そんなに言われて悔しくねーのか……?」

山田「我々の業界ではご褒美です」キリッ

斉木(僕の業界ではお前を変態と呼ぶ)

舞園「それで……山田くんは、どうしてルールを破ってしまったんですか?」

山田「視聴覚室でモノクマから渡されたのび恐リメイク版を観ていたのです! 結果、僕としては旧版の方が好みでしたが……」

桑田「んなこたぁいいんだよ! とっとと話せブーテー!」

山田「はいぃぃ! エンドロールが終わる頃には午後10時を少し過ぎており、急いで寄宿舎へ戻りました!」

山田「その途中に僕は苗木誠殿と遭遇したのですっ!」

「じゃあやっぱり事件は夜時間になってから起きたんだ!」

霧切「その時の苗木くんはどんな様子だったのか……山田くん、言ってくれる?」

山田「わかりますた! 苗木誠殿は個室の前に立って鍵を掛けていたのです……」

山田「ズヴァリ! 舞園さやか殿の個室にね!!」

舞園「…………!!」

霧切「どうして苗木くんは、他人の部屋に鍵を掛けていたのかしらね。それも夜時間に」

舞園「…………」

不二咲「そんな……舞園さんが犯人だったの……?」

舞園「………………」

朝日奈「嘘……だよね? 舞園ちゃんって苗木と仲良かったもんね?」

舞園「……………………」

斉木(……僕のテレパシーは、舞園さんの胸中を嘘偽りなく拾い上げていた)

斉木(少々心苦しいが……更に追い討ちをかけさせてもらうぞ)

『【桑田の証言】……』

桑田「……あのさ、オレら昨日の夜にプチ親睦会みたいな感じで舞園ちゃんの部屋に集まる予定だったじゃん?」

桑田「そのこと思い出して、昨日の夜11時半くらいに舞園ちゃんと苗木の部屋に行ってみたんだよね」

桑田「どっちの部屋もインターホン押したのに誰も出てこねーし、鍵が掛かってるしで諦めたんだけどさ……」

桑田「もしかして……まさにその時、苗木殺害計画が進行中だったりした……?」

舞園「……殺害計画だなんて、そんな言い方……!」

十神「違うのか? 今の桑田の発言によって、お前と苗木の間には大きな接点が生まれたんだぞ」

腐川「その親睦会とやらの会場を、あんたの部屋から苗木の部屋へ変えてしまえば……」

セレス「苗木くんの部屋へと入る口実が、簡単に出来上がりますわ」

舞園「っ…………!!」

大和田「オイ、待ってくれよ。苗木は廊下で殺されたって結論が出ただろ?」

大和田「けどよ……オメーらの言い分じゃ、犯人は苗木の部屋ん中で苗木をブッ刺したみてーじゃねぇか」

腐川「い……言われてみれば確かにそうかも……」

江ノ島「そうそう! そこんとこどうなってんの?」

霧切「ええ、確かに苗木くんは廊下で殺されたわ」

霧切「正確には……“苗木くんの立っている場所は廊下だった”と言えば正しいかしら」

霧切「“犯人がシャワールームのドアを開いた瞬間、苗木くんが石包丁を構えていたらどうなるか”……」

霧切「このことについて、十神くんが言及していたでしょう?」

斉木(>>320の辺りだな。犯人に隙があるので苗木が反撃できるという話だったが……)

霧切「シャワールームのドアを、個室のドアに置き換えて考えてみて」

石丸「……まさか! 犯人は苗木くんが自室に戻ってきた瞬間を狙って……!」

霧切「“苗木くんが個室のドアを開いた瞬間、犯人が石包丁を構えていたら”……どうなると思う?」

大和田「……刺されちまうな。気心が知れた相手なら尚更だ」

十神「自室の鍵を掛け忘れてしまった。夜時間になり不安だから、代わりに掛けてきてほしい……」

十神「舞園にそう頼まれれば、苗木は二つ返事で了解するだろう。あいつはお人好しの馬鹿だからな」

大神「部屋の主である苗木が外に出ている間なら、苗木の石包丁も容易く奪える……」

十神「そういうことだ。反論はあるか、舞園」

舞園「……………………証拠は」

舞園「証拠はあるんですか」

舞園「苗木くんが私の部屋に鍵を掛けていた? きっと山田くんの見間違いです」

舞園「桑田くんを交えた親睦会? 後日に延期しましょうって連絡したはずですよ」

舞園「石包丁も持ち出していません。目撃者が居ないことが何よりの裏付けです」

舞園「苗木くんの部屋にも入ったことがありません。」

舞園「…………それに」

舞園「あんなに優しい苗木くんを、殺すわけがありません……!!」ウルッ

斉木(……この場に居るほとんどの人間が、舞園さんの涙に冷ややかな視線を送っていた)

斉木(当然僕は舞園さんの本心を知っている。だからこそ思う、現実は残酷だ)

斉木(それに……舞園さんがいくら否定しても、決定的な証拠を持つ人物が存在する)

斉木(きっと、僕がテレパシーを送るまでもないだろう……)

霧切「証拠ならあるわよ。苗木くんの部屋を、私が【粘着テープクリーナー】で掃除したの」

斉木(……ここには“超高校級の探偵”が居るからな)

桑田「ね、粘着テープクリーナー?なんじゃそりゃ?」

霧切「俗に言う“コロコロ”よ」

桑田「あぁアレか……ってそれなら最初っからそう言えよ! 分かりづれーよ!!」

斉木(僕もそう思った)

霧切「粘着テープクリーナーを使えば、床に落ちている髪の毛を採取できる……」

霧切「初歩中の初歩だけど、得られる手掛かりは大きいわ」

霧切「そして……これが使用済みの粘着テープよ。長いストレートの黒髪が付着している」

斉木(黒髪……? 青色に見えるのは僕だけか?)

霧切「念のため黒い長髪の女子に確認したけれど、これは彼女のものではなかったわ」

セレス「わたくしは見た目に気を遣っていますの。髪にはしっかりと巻き癖がついておりますわ」

腐川「あたしも違うわよ……あたしの髪ならもっとベタついてるはずだもの」

斉木(そもそも髪色自体が違うと感じるのは僕だけなのか?)

霧切「……あと確認を取っていないのは舞園さんただ1人なのだけれど」

霧切「あなたは聡い人だから、ここまで言えばわかるわね?」

舞園「………………」

舞園「…………霧切さんたちの言い分はわかりました」

舞園「でも、ひとつだけどうしてもわからないことがあるんです」

十神「なんでも言ってみろ、今のお前に逃げ道は無いからな。辞世の句でも構わないぞ」

舞園「…………どうして……」

斉木(――しまった)

斉木(僕は舞園さんが犯人だと証明することばかりに気を取られていた)

舞園「……どうして、この学級裁判が始まってから」

斉木(このままでは今までの議論が……)

舞園「斉木くんは、一言も喋っていないんですか……?」

斉木(全て台無しじゃないか……!!)

斉木がいる世界なんだから「そういうのが当たり前だ」とみんな思ってる世界なんだと思ってたw

江ノ島「マジだ! なんで斉木が喋ってないことに気付かなかったんだろ?」

斉木(本当にどうして僕自身も気付かなかったんだ……>>333ですら気が付いたというのに……!)

桑田「けどよぉ、斉木がなんも言わねーのって普段からだろ! 疑うこたぁねえじゃん!!」

舞園「いいえ。他にも不審な点はありますよ」

舞園「霧切さんの使用済み粘着テープには、4種類の髪の毛が付いています」

舞園「ひとつは私の髪の毛、ひとつは栗色の……苗木くんの髪の毛」

舞園「ひとつはパーマのかかった金髪。これは大和田くんが苗木くんを部屋に運んだ時に落ちたのでしょうね」

舞園「そして最後にピンク色の髪……間違いなく斉木くんのものですよね」

大和田「斉木ならアレだろ、事件の捜査で苗木の部屋に来たから……」

大神「……斉木が室内に入ったのは、霧切が捜査を終えた後だ」

大和田「っ…………!!」

舞園「それと、石丸くんが血を拭いた雑巾を見せてくれましたけど……」

舞園「『斉木くんに洗わないよう止められた』と言ってましたよね?」

石丸「ぼ……僕を共犯者だと疑うのかね!?」

舞園「シャワールームの血を拭った雑巾を、石丸くんに渡しておいた……可能性は大いにあると思いますよ」

霧切「つまり、斉木くんが舞園さんを陥れようとして工作を働いた……あなたはそう言いたいのね?」

舞園「はい。自分の命が懸かった場で、何も喋らないで議論を聞いているだけなんて……どう考えてもおかしいですよ」

石丸「そんなの言い掛かりではないか! 僕も斉木くんも無実だっ!!」

朝日奈「でも……だんだん怪しく思えてきちゃった……」

朝日奈「犯人が第一発見者のフリをするのって、ミステリードラマで良くある展開だもん」

十神「どういうことだ、説明しろ斉木!」

斉木(……僕はテレパシーで真相を知っていたから冷静だっただけだが、まさか舞園さんにそこを突かれるとはな)

斉木(苗木の部屋には前に一度行っている。最初の学園探索で、苗木と共に行動しようと考えた時だ)

斉木(そのことを証明できるのは……)

『【苗木のゴミ箱】……』

斉木(1人しかいない…………!!)カッ
















苗木「――――それは違うよ!」














今回の投下はここまでです。
このSSの斉木は、普段は原作同様に映らないところでちょっと会話しています。
学級裁判では完全に喋るのを忘れていたけれど、>>338の状態だったので上手く誤魔化せていた……ということにしておいてください。
次回こそChapter1完結です。

>>365
だって斉木が改変した割には珍しい髪色のロンパキャラなんてほんのひと握りじゃないですか!

乙乙!うーん、いいところで区切るなー…。これからどうなるか楽しみでしょうがない。

これがジャンプだったら
舞園「斉木くんは、一言も喋っていないんですか……?」
斉木(全て台無しじゃないか……!!)
この辺で次回に続きそうだwあっちはギャグ漫画だし、こういうオチの付け方もあるに違いない。

この展開は元から考えてたの?
それとも>>333を受けて?

>>378
少なくとも前々回の投下の時点から決めていた展開です。
そのため、斉木の怪しさを指摘するレスが続いてめちゃめちゃ焦りました。

贔屓のアーティストが過去曲しかやらせてもらえなかったので泣きかけました。
他はみんな今年の曲も歌っていたのに……


お待たせしてすみません。続きを投下します。

【前回のあらすじ】
ショッキングピンク



【苗木の個室】

黒幕「ふー、今のうちに苗木の死体を運んどかねーと」

黒幕「クローズドサークル系作品の醍醐味は一般人が狂気に犯されていく姿にあります。最初に一般人が死ぬとは大変残念です」

黒幕「けれどもぉ、その分舞園さんがオシオキの恐怖に怯えてるから結果オーライだよねっ!」

黒幕「……よって、私様が直々に人間の残骸を撤去してやろう!」ガチャッ



黒幕「………………ファッ!?」

黒幕「死体がどこにもありません……それどころかダイイングメッセージすら消えています……」

黒幕「まるで事件など起こっていないかのように……綺麗さっぱりと……」

黒幕「…………いえ、ひとつだけ何か落ちていますね……」

黒幕「これは…………希望ヶ峰の指輪……?」

【裁判場】

朝日奈「……えっ? えええええええっ!?」

大神「なん……だと……!?」

葉隠「ぁぁあああり得ねえええええええええ!!!」

舞園「………………うそ」

舞園「どうして、苗木くんが…………!?」ヘナッ

山田「しかも急に現れましたぞ!?」

腐川「ゆ、幽霊よ! 幽霊だわっ!!」

苗木「えっと……ボクはまだ生きてるんだけど」

石丸「ならば僕達が発見した死体は何だったというのかね!?」

苗木「それは…………ドッキリカメラ?」

斉木(もっとうまく誤魔化せ)

苗木(で、でも、斉木クンがボクを生き返らせてくれたなんて言えないし……)

斉木(言えないからこそだ、もっとうまく誤魔化せ)

苗木(無茶言わないでよ……)

斉木(話は学級裁判が始まる前……具体的には>>276の直後に遡る)

斉木(苗木の死体を発見した際に見た予知について、僕は本気出して考えてみた。そしてひとつの仮説を打ち立てた……)

斉木(僕でさえ忘れている“空白の2年間”のうちに、超能力の性質が変化してしまった可能性がある)

斉木(例えば……復元能力は、死体に使っても命は取り戻せない。これは今月4日に発売された『斉木楠雄のΨ難』第7巻でも言及されている)

斉木(しかし、現在の僕は死者蘇生もできるようになったのではないか? だからこそ僕は“生きている苗木”の姿を予知したのではないか?)

斉木(実際に試した結果……シャワールームの中にあったものは全て事件前の状態に復元された。“苗木の命”も含めてな)

斉木(それと、アポートについて補足説明だ)

斉木(人間をアポート/テレポートする場合、人間の価値は身につけている服飾品の価値に準ずる)

斉木(僕が苗木に押し付けられた希望ヶ峰の指輪のは……学生服にオシャレパーカー1着を足した程度の値段だった)

斉木(僕はエレベーターを最後に降り、希望ヶ峰の指輪を裁判場の入口に設置した)

斉木(そして議論の途中で苗木をアポートし、学級裁判を中止させる予定だったのだが……)

斉木(……代理論破に夢中になるあまり、タイミングを逃してしまった。このことは苗木に黙っておこう)

斉木(僕が超能力者であることを苗木に知られてしまったのは痛手だが、あいつは口が堅いから大丈夫だろう)

斉木(さて……恩は返してもらうぞ。僕の無罪をしっかり証明してくれ)

苗木(勿論だよ。斉木クンも舞園さんも……クロになんかさせない!)

苗木「この学園に来た最初の日、ボクは大和田クンに殴られて気絶しちゃったでしょ?」

苗木「そのあとボクの部屋に、斉木クンがポカリを持ってお見舞いに来てくれたんだ」

苗木「証拠に……ボクの部屋のゴミ箱には、ポカリのペットボトルが捨てられていたはずだよ」

葉隠「そう言われてもなぁ……急に現れた苗木っちの幽霊の言葉なんて、怪しくて鵜呑みにできないべ……」

大和田「誰かが苗木に変装してる……わけねーか、そっくりすぎるし」

霧切「……確かに、苗木くんの部屋には空のペットボトルが1本捨てられていた」

霧切「よって私は苗木くんの証言を信じるわ。ただし……“あなたが本物なら”という条件付きでね」

霧切「苗木くん、あなたしか知らない情報を教えてくれるかしら? この事件の不可解な点を解決するような情報を」

苗木「不可解な点……って……」

斉木(心配するな。あの事実を明かしても舞園さんは死なない……むしろ彼女のためになるはずだ)

苗木「……わかったよ。みんなの推理は大体合ってるけど、ひとつだけ大きな間違いがある」

苗木「舞園さんはボクを刺してしまったのは、計画的犯行なんかじゃない……」

苗木「“誰かを殺してしまうかもしれない恐怖”に怯えていたからなんだ」

苗木「舞園さんが桑田クンとのミニ親睦会を計画していたのは本当のことだよ。舞園さんは桑田クンのことをもっとよく知ろうとしてたんだ」

桑田「マジかよー!オレってやっぱ舞園ちゃんと脈アリだっ

苗木「正確には“苦手なタイプの人を克服しようとしてた”……かな」

桑田「……アポ?」

苗木「でも……夜時間に入る前、ボクの部屋に舞園さんが訪ねてきた」

苗木「その時舞園さんはこう言ってた。『グループの仲間に会いたくてどうしようもないんです』」

苗木「『このまま桑田くんに会ったら、彼を殺してしまうかもしれません』……って」

苗木「ボクは舞園さんを宥めて、話を聞いてあげてたんだ」

苗木「……でも、舞園さんが落ち着きを取り戻した頃、制服のポケットに鍵が入ってないことに気が付いてボクが探しに行ったんだよ」

苗木「舞園さんの部屋の前に落ちていたから、鍵を掛けてすぐに戻ってこれたけど……」

苗木「舞園さんは机の上に置きっぱなしの石包丁を見つけて、またパニック状態になって……」

舞園「もういいです」

苗木「えっ?」

舞園「そっくりさんは帰ってください。私は最初から計画的に苗木くんを殺すつもりでした」

苗木「そんな! だってあの時舞園さんは――」

舞園「違います!!」

舞園「私は……苗木くんを殺した、最低の人間です……!」ボロッ

十神「とうとう白状したか。苗木の偽者を出すとは、モノクマも手の込んだことをするな……」

モノクマ「ボクじゃない、ボクじゃない、ボクじゃないっ!!」ピョーイ

モノクマ「たった今確認してきたんだよ……シャワールームから、苗木くんの死体が消えているのをさぁ!」

セレス「たった今? あなたはずっとそこに座っていらしたはずですが」

モノクマ「こまけぇこたぁいいんだよ! とにかく、その苗木くんは正真正銘モノホンの苗木くんです!」

舞園「……そう、ですか。そっくりさんの方が良かったかもしれません」グスン

不二咲「だったら……どうして、苗木くんと舞園さんの証言が食い違ってるの……?」

斉木(答えは簡単、舞園さんが素直になれないだけだ)

斉木(この期に及んで嘘をつかないでくれ。苗木を生き返らせた以上、僕は全員生還ルートへ進むしかないんだ……!)

桑田「いい加減にしろよ舞園ちゃん!!」

舞園「っ……桑田、くん……?」グスッ

斉木(ほう、ここで意外な人物が出張ってきたな)

桑田「オレに罪被せようとしといて何を急に犯行認めてんだよ!」

舞園「けど、私は、苗木くんを……」

桑田「どうせ苗木に合わせる顔が無いから処刑された方がマシだとか思ってんだろ!」

桑田「アホか! 苗木はここに生きてんだぞ!」グニッ

苗木「い、いひゃいよくわひゃクン……」

桑田「だから舞園ちゃんは殺人未遂だ! 処刑なんかされない!」

舞園「でも……処刑は免れても、苗木くんに許してもらえるわけが……っ」

桑田「お互いが生きてる限り頭下げりゃ許してくれるかもしれねーだろ!!」

舞園「………………!」グズッ

桑田「謝る前からムリだって決めつけんなよ……まだやり直せるっしょ」

斉木(やれやれ。一歩間違えば自分が殺されていたというのに、お気楽な奴だ)

舞園「……やり直せ、ますか? 私……」

桑田「苗木が許してくれたらね」

斉木(だが……珍しく役に立ったことは褒めてやろう)

舞園「…………苗木くん、」

舞園「私のために護身用の武器を探してくれて、混乱する私を落ち着かせてくれて」

舞園「あんなに私に優しくしてくれたのに、全部、恩を仇で返してしまって……」

舞園「ごめんなさい……本当に、ごめんなざい……っ!!」グズッ

苗木「…………怒っひゃりなんかひないよ。ボクはまいぞのひゃんの味方でいるっひぇ約束しひゃから」

斉木(桑田、苗木をつねる手を離してやれ)

苗木「いてて……とりあえず、ボクが本物の苗木誠だって信じてくれるよね?」

霧切「……ええ。あなたが己を顧みないほどのお人好しだということを忘れていたわ」クスッ

舞園「それから……桑田くん」

舞園「あなたにも濡れ衣を着せようとしてしまって……ごめんなさい……」

桑田「オレは最初っから許すつもりだったぜ! ……それに、オレにも非はあるからさ」

舞園「……どうしてですか?」

桑田「視聴覚室でDVDを渡された時、オレが『こんなん誰が喜ぶんだよ』って言ったじゃん?」

桑田「あの後、舞園ちゃんのグループにはドラえもんの大ファンの娘がいるって知ってさ」

桑田「……仲間の好きなものを悪く言われて傷ついたんだろ」

桑田「でも、その分思うんだよ」

桑田「オレが舞園ちゃんにミニ親睦会のお誘いを受けたのはDVDを渡される前だったから……あの時は純粋な気持ちでオレのこと誘ってくれたんだ、って」

桑田「つまり、その……舞園ちゃんの気持ちを考えてなかった! 本っ当に、マジでゴメン!!」

舞園「……本当だ」

舞園「桑田くんのことは嫌いなのに、頭を下げられたら許す気持ちになれました」

桑田「舞園ちゃん……ちょっと言葉キツくね?」

モノクマ「ねーねー、この三流少年漫画の雰囲気っていつまで続くの?」

モノクマ「そこの3人ばっかり目立っちゃってさ……本来の目的を完全に忘れてない?」

苗木「うるさい!!」

苗木「DVDを用意して舞園さんを揺さぶったのは……悪いのはお前じゃないか!!」

斉木(実際には僕のせいだなんて言えない雰囲気だ)

苗木「だから……ボクはこの裁判の中止を要求する!」

モノクマ「えー、そんなこと言われてもなぁ……新しい世界への扉の鍵はオープンしちゃったし」

桑田「もっかい言わなきゃわかんねーのかアホ! 舞園ちゃんは殺人未遂だ、“誰かを殺したクロ”なんかじゃねえ!」

モノクマ「うーん……でも舞園さんが殺人未遂で終わったのって、苗木くんがたまたま死ななかったからだよね?」

モノクマ「だから……ボクは舞園さんが“たまたまオシオキを回避できるか”試してみたいな!」

霧切「……それは、どういうこと……?」

モノクマ「舞園さんのオシオキをするか否かは、じゃんけんで決めたいと思いまーす!」

苗木「じゃ、じゃんけん……!?」

石丸「たかがじゃんけんの結果で命を奪おうというのかね!?」

モノクマ「近頃のアイドルは大所帯すぎて、じゃんけんでセンターを決めるっていうでしょ? だからボクも真似してみようと思います!」

大神「理不尽ではないか……! 舞園よ、直ちにモノクマの提案を断るのだ……」

舞園「私はそれでも構いませんよ」

桑田「マジかよ舞園ちゃん!!」

舞園「はい。アイドルにとっては運も実力のうちです……」

モノクマ「あのさぁ、何か勘違いしてない?」

腐川「な、何がよ!? このルールのどこに勘違いのしようがあるの!?」

モノクマ「このじゃんけんには舞園さんの生死が懸かってるけども……ボクと対決するのは舞園さんじゃないよ」

モノクマ「“超高校級のジャンケニスト”斉木楠雄くんでーす!」

斉木(ここで僕に来るのか)

朝日奈「ちょ、ちょっとタンマ! どうして斉木がじゃんけんするの!? 舞園ちゃんとは関係無いでしょ!!」

モノクマ「関係無いからこそだよ! ジャンケニストなんてショボい才能、強引に見せ場を作りでもしないと一生日陰者のままじゃんか!!」

斉木(余計なお世話だ。見せ場はそれなりに作ってきたはずだが)

苗木(仕方ないよ、斉木クンは正体を隠してるんだから……)

苗木「……でも、納得行かないぞ。舞園さんをじゃんけんの結果で殺そうとすることも、斉木クンをそれに携わらせることも……!」

モノクマ「まぁまぁ、そんなカタいこと言わないでよ!」

モノクマ「裁判場の椅子の上で『クロの処分はじゃんけんで決める』と言ってしまったらボクたちの関係はどう変わってしまうのか……」

モノクマ「ボクなりに何秒間か考えた上でのやや絶望的な結論のようなものなんだからさ!」

大和田「大して考えてねぇじゃねーか!」

モノクマ「斉木くんがじゃんけんに勝てば舞園さんのオシオキは中止! ボクがじゃんけんに勝てば舞園さんのオシオキを実行!」

モノクマ「ちなみに斉木くんはこの対決を棄権できません! そんなことしたら舞園さんもろともオシオキしちゃうからね!」

不二咲「あ……あんまりだよぉ……!!」

苗木「……さ、斉木クン……」

斉木(言いたいことは伝わっている。僕はこの勝負を棄権する気など毛頭ない)

斉木(問題はモノクマがゲスい企みをしていることだ……好感度メーターの変動も不可避だし、どうやって切り抜けるべきか……)

十神「フン、モノクマも下らん茶番を企画するものだな」

桑田「オメー何様だよ!! 舞園ちゃん……と斉木が死ぬかもしれねーんだぞ!?」

十神「ジャンケニストだか何だか知らないが、他人の命を背負うとなれば怖気付いて逃げ出したくなるはずだ」

斉木(………………)イラッ

十神「……おっと、逃げ出したら処刑だったか? ならばさっさと勝負を終わらせろ、時間が無駄になる」

斉木(…………いいだろう、正面突破してやる)スッ

モノクマ「……うぷぷぷぷ。どうやらヤル気になったみたいだね」

石丸「正気かね斉木くん!? ここは交渉して妥当な解決案を模索すべきでは……」

舞園「よかった。斉木くんが引き受けてくれて」

石丸「舞園くんまで!」

舞園「……思うんです。斉木くんなら絶対に勝ってくれるって……私に、やり直すチャンスをくれるって」

江ノ島「やけに自信満々じゃん。根拠はあんの?」

舞園「……エスパーですから」ニコッ

斉木(その決め台詞は極力使わないでくれ、ヒヤッとする)

【オシオキ場】

斉木(……舞園さんはアイドル衣装を纏い、きらびやかなステージの上に拘束されている)

斉木(いや、ステージと言うよりは処刑台か? 舞園さんの周囲には、彼女を喰い千切るための巨大なトラバサミも設置されているのだ)

斉木(僕はその横の安全圏にいる。まったく……アイドルと同じステージに立たされては、僕も目立ってしまうじゃないか……)

モノクマ「勝負は1回きり! 買っても負けても恨みっこナシだからね!」グッ

斉木(そんなこと言われなくても分かっている)グッ

葉隠「斉木っちー! 俺の占いだと、モノクマはパーを出すと出てるべー!」

大和田「アホか、それ言ったら意味ねーだろ! 斉木ぃ、グー出せグー!」

山田「惑わされてはダメですぞー! 自分のシックスセンスを信じてー!!」

斉木(応援は止めてくれ、迷惑だ)

舞園「……斉木くん。信じてますからね」

斉木(……その応援も迷惑だが……まぁ、特別に許してやらなくもないな)

モノクマ「それでは張り切って参りましょう!」

斉木(……もう、好感度メーターなど知ったことか。この後ゆっくり平均値に戻していけばいい)

モノクマ「最初はグー!」


斉木(黒幕、しっかりと目に焼き付けておけ)


モノクマ「じゃーん……」



斉木(これが超能力者の……)



モノクマ「けーん……」




斉木(……いや、“超高校級のジャンケニスト”の)




モノクマ「ぽーーーーーーーーーーんッッ!!」ガッ





斉木(――――真の力だ!!)ザッ



石丸「…………な、何が起こったのだ?」

不二咲「えーっと……じゃんけん対決でモノクマはグーを出して……」

山田「そのままレベルを上げて物理で殴ろうとしたのですが……」

大神「斉木が……あろうことか、それを平手で止めたのだ……!」

腐川「そ、それって…………!!」

苗木「斉木クンの勝ちだよ……“パー”の手を出したんだから!!」

桑田「よっ…………よっしゃあああああああああああああああ!!!」

朝日奈「やったーーーー! ありがとう斉木ーーーーー!!」

江ノ島「つーかあんなん平手で止めるって軍人のレベルじゃない!? 斉木マジヤバなんだけど!!」

十神「………………」チッ

霧切「念を押しておくけど、今からのルール変更は効かないわよ?」

モノクマ「……分かってるって。あーあ、まさか完全勝利されちゃうなんてなぁ……ツマンナイなぁ……」

斉木(当然の結果だ。ジャンケニストは正念場では特に強くなるという設定だからな)

モノクマ「はい、そんじゃ今回の学級裁判はこれにて閉廷でーす。解散解散ー」

江ノ島「テンション下がりすぎじゃね!?」

モノクマ「お帰りはそこのエレベーターをお使いくださーい。じゃーねバイキュー」ピョーイ

葉隠「はぁ……やっと終わりか。朝からずーっと続いて疲れたべ」

不二咲「……ねぇ、斉木くんってどうして結局一言も喋らなかったのぉ?」

十神「知るか。桑田の言う通り、こいつは元から無口な奴だからな」

大神「されど……力ずくで勝利をもぎ取った、その闘志は褒め称えるべきであろう」

斉木(若干大袈裟だがそういうことにしといてくれ)

霧切「さて、やるべきことはまだ残されているわ。早く寄宿舎へ戻りましょう」スタスタ

石丸「そうだな! これでやっと雑巾が洗えるぞ!」

斉木(まだ言うか)

舞園「あのっ……斉木くん、苗木くん……それから桑田くん」

舞園「本当にありがとうございました!」ペコッ

桑田「……おかえり、舞園ちゃん。もう変な気は起こすなよ?」

斉木(何故お前が真っ先に返事をした?)

セレス「まあ、主要人物の皆さんがお揃いで」

苗木「主要人物、って……」

セレス「今回の学級裁判の主要人物、という意味です。折角ですからあなたがたに忠告をさせてください」

斉木(どうしたんだルーデンベルクさん、やっと台詞が回ってきて嬉しいのか?)

セレス「この学級裁判を乗り越えても、舞園さんは罪を犯した咎人……という事実は消えません」

舞園「……それくらい、承知の上です」

セレス「あなたには覚悟がお有りでも、他の方はどうでしょうね」

舞園「!」

セレス「同じ過ちを繰り返すかもしれない、とあなたを恐れ、凶器を向けてしまう可能性がありますわ」

セレス「咎人の肩を持った桑田くん、野に放した斉木くん……あなたがたも同罪です」

セレス「死んだはずでしたのに蘇った苗木くんも、少なからず腫れ物扱いされることでしょう」

桑田「そんな……マジかよ、ありえねーって……」

セレス「よろしいですか? これこそがモノクマが真に狙っていた展開やもしれないのですよ?」

斉木(実際にそうなんだ。だからこそ僕はじゃんけん勝負を躊躇っていた)

苗木「……大丈夫だよ」

苗木「舞園さんは同じ過ちなんて繰り返さないし、コロシアイも二度と起きない」

苗木「ボクたちはみんなに白い目を向けられるだろうけど……何日か経てば収束するよ」

セレス「そうして乗り越えていくんだ……とでも仰るつもりですか?」

苗木「ううん、乗り越えなんかしない。そんな器用な真似なんかできないよ」

苗木「……ボクはここで起こる全てを“引き摺っていく”んだ」

斉木(引き摺っていく……? 無理して原作に沿ったことを言わなくてもいいんだぞ?)

苗木「無理なんかしてないよ。ひとつひとつの出来事を忘れないように進んでいけば、きっとボクたちは結束できる」

舞園「雨降って地固まる、ということですね?」

苗木「そ、それだよ! きっと今は雨が降り出したところなんだ!」

斉木(なんかうまいこと纏めてくれてありがとう舞園さん)

セレス「それでは……いつか地面が固まる時を、楽しみにしておりますわ」カツカツ

桑田「……要するにセレスは何が言いたかったんだ?」

斉木(気にするな。嫌味が言いたかっただけだ)

斉木(それにしても……最初の章からクライマックスになるとは思わなかったな)

斉木(Chapter2からは学級裁判を回避する方向で話を進めたいのに、この先盛り上がらなかったらどうしてくれるんだ……)

舞園「では……そろそろ私たちもエレベーターに乗りませんか?」

苗木「これ以上みんなを待たせたら悪いしね。行こう!」

桑田「そんでちょっと休もうぜ! そしたら頭も回るようになるって!」

斉木(ここに居る人間の中で頭が回っていないのはお前だけだ)

苗木(……斉木クン、ありがとう。この事件を解決してくれて)

斉木(勘違いするな、僕は事件を解決したわけじゃない。バラバラな情報を組み合わせる手伝いをしただけだ)

苗木(それを解決したって言うんだよ。もっと胸を張っていいのに……)

斉木(胸を張るのはキャラじゃないんだ。とやかく言わないでくれないか)

苗木(ゴ、ゴメン……)

斉木(……やれやれ。貴重な一般人を有効利用するはずだったのに、どうしてこうなったんだ?)

斉木(まぁ、なってしまった以上は割り切るしかないか。苗木をしっかり口止めしておけばいいだけのことだ)

斉木(さて……まだまだ課題は山積みだ。戻って今後の計画を立てるとしよう)



霧切(……苗木くんと斉木くんは、どうして互いを見つめあっているのかしら? まさか2人は……)

斉木(チガウ)




アイテムゲット!
【打製石器】
旧石器時代の産物。その名の通り、岩を打ちつけて作るらしい。
日本では群馬県岩宿で初めて発掘された。



Chapter1 END

To Be Continued

どうにか年内にChapter1を終わらせることができました。
お付き合いいただきありがとうございます。
「斉木は死者蘇生ができる」という原作無視の設定が登場しましたが、これについても理由は考えてあります。
どうかしばしの間、目をつぶっていてください。

来年1月は多忙を極めるので、投下ペースは更に下がってしまいます。
気長にお待ちくださると嬉しいです。

【ボツネタ 斉木の動機DVD】

斉木(……再生ボタンを押すと、画面には見慣れた我が家が映し出された)



斉木父『楠雄ー! 見えてるかー?』

斉木母『くーちゃん、希望ヶ峰学園入学おめでとう!』

斉木母『私たち、くーちゃんを応援しようと思ってビデオレターを撮ることにしたの!』

斉木(成程。こんな映像を見せられると、確かに外の世界が恋しくなるな……)

斉木父『いやーまさか楠雄があの希望ヶ峰にスカウトされちゃうとはなぁ! 父さんがどれだけ靴を舐めても入れなかったのになぁ!』

斉木(希望ヶ峰は超高校級の靴舐めなど求めていない)

斉木父『さて、ここでサプライズゲストの登場だ!』

斉木(予想がつくから大してサプライズでもないな)

燃堂『おー相棒! 元気でやってるか? お?』

斉木母『じゃーん! くーちゃんのお友達にも来てもらいましたー!』

斉木(ほらやっぱり)

燃堂『オレも来年にはキボーガミネに転校するからな! 待ってろよ相棒!』

斉木(希望ヶ峰は完全スカウト制だが)

海藤『うぅっ……斉木よ、今だけはお前の門出を祝ってやろう……寂しくなどない、俺達は血を分けた盟友……っ』グスッ

斉木(僕を祝うより先に涙を拭いてほしい)

灰呂『まさか斉木くんが希望ヶ峰学園に入学するとはね! 僕も負けていられないな、もっと熱く努力しないと!』

斉木(灰呂、お前は来るな。絶対キャラ被りする)

照橋『斉木くん。ずっと応援してるから……私達のこと、忘れないでね?』ニコッ

斉木(……そういや何で照橋さんは希望ヶ峰に入学していないんだ?)

斉木父『みんな協力してくれてありがとう! きっと楠雄も喜ぶぞー!』

斉木母『なんだかお正月のことを思い出すわねー。初詣の後、くーちゃんも一緒になってみんなでおせちを食べたっけ……』

灰呂『そうだ斉木くん! 寄宿舎生活もいいが、時にはこちらに帰省してご両親に元気な顔を見せてあげてほしいんだ!』

海藤『ついでに俺たちにも会え! 月に1回ダークリユニオンの動向を報告しに来い!』グスン

照橋『そうよ……違う学校に行っちゃっても、斉木くんは私たちのクラスメイトだもの!』

燃堂『相棒、夏休みまでこっちに来なかったら覇王翔吼軒の刑な!』

斉木(勘弁してくれ、今は物理的に帰省できない状況なんだ)

モノクマ『斉木くんのことを心から応援してくれる、優しいお友達や親御さん……』

斉木(!)

モノクマ『それがまさかっ! あんなことになってしまうなんてっ!!』

斉木(……モノクマのナレーションに合わせて、モニターの映像が切り替わり……)

モノクマ『なんと!! 斉木くんの家は、面影も残らないほどに様相を変えてしまったのです!!』

斉木(……我が家と思しき建物は、“照橋心美護衛組織”という看板を掲げた核シェルターに変貌していた)

モノクマ『果たして彼らの身に何が起こったのか!? 斉木くんの大切な人は無事なのか!?』

斉木(どう考えても無事だろ)

モノクマ『正解は……卒業の後で!!』

斉木(……完璧少女を演じる照橋さんのことだ。あの建物の中に、他の人を収容人数のギリギリまで避難させているに違いない)

斉木(……とりあえず“超高校級の美少女”に感謝しておこう)

モノクマ「あれ!? どうして斉木くんは無反応なの!?」

以上、展開の都合上お蔵入りとなった斉木の動機DVDでした。
皆さんよいお年を。

遅くなってしまってすみません。
短い上に地味な展開ですが投下します。

【前回のあらすじ】
ドッキリカメラ?



斉木(新Chapterに入ったことだし、改めて自己紹介しておこう)

斉木(僕の名前は斉木楠雄。“超高校級のジャンケニスト”だ)

斉木(じゃんけんの才能を見込まれ、天下の私立希望ヶ峰学園にスカウトされた……らしい)

斉木(事実、僕はじゃんけんに強い。勝ちに限らず負けやあいこも思うままだ)

斉木(……というのは全て、僕が“超能力者”であることに起因する)

斉木(僕も好きでこんな力を得たわけじゃないんだ。むしろこの能力にはウンザリしている)

苗木(どうして? 超能力者なんて誰でも一度は憧れるはずだよ?)

斉木(質問なら後にしてくれ。そんなことより今は……)

霧切「……苗木くん、今の話を聞いていたかしら」

斉木(全員揃って会議をしている最中だぞ?)

苗木「わ、分かってるよ! 舞園さんをどうするかってこと……だよね?」

朝日奈「大して聞いてないじゃん。話し合いはもうちょっと先に進んだのに!」

苗木「うぅ……」

石丸「では、苗木くんのために再度説明しようではないか!」

斉木(苗木のためというよりSS読者のためじゃないのか?)

石丸「斉木くんの活躍もあり、舞園くんは処刑されることなく無事に戻ってきた!」

石丸「しかし……舞園くんには一度人を殺めようとした罪がある」

腐川「アイドルはみんな腹黒いのよ……表面上は反省してても、また誰かを殺すチャンスを窺っているに違いないわ……!」

桑田「いい加減にしろよ! 舞園ちゃんは絶対に殺人なんかしねぇ!!」

十神「絶対も何も、その女は事実として一度人を殺そうとしているんだぞ?」ニヤリ

桑田「なんだよアホぉ!!」

石丸「静粛にしたまえ!! ……とにかく、このように舞園くんを信頼するか否か、意見は真っ二つに分かれているのだ」

大神「いがみ合いや疑心暗鬼が起こったままでは……舞園に限らず、全員が殺人を犯す可能性がある」

霧切「そして疑いの矛先は、間違いなく舞園さんに向けられるでしょうね」

石丸「万が一そのような事態に陥ってしまったら、犯人とモノクマの思う壺だ!」

セレス「よって、わたくしからご提案をさせていただきました。舞園さんの見張りを行ってはいかがでしょうか、と」

レス「起床から夜時間まで、見張り役の方が舞園さんと行動を共にするのです」

セレス「交代は5時間ごと。日誌を準備して舞園さんの様子を記録しておけば、情報も共有できます」

セレス「現時点で一番の危険人物を全員の責任で見張っておけば、殺人も未然に防げるはずですわ」

石丸「そのためこれから舞園くんの見張り当番表を作成するところだったのだよ!」

苗木「ありがとう。これでボクも話に追いつけたよ」

霧切「…………そう。それは良かったわ」

斉木(現時点で一番の危険人物……か。僕には十神やルーデンベルクさんの方がよっぽど危険に感じるな)

斉木(それにルーデンベルクさんは見張り制度に抜け道があることを黙っている……)

苗木「でも舞園さん……そんなに拘束されて平気なの?」

舞園「はい。……私がしでかしたことの重大さを考えたら、このくらい当然です」

霧切「私も見張りの案には同意するけれど、ひとつ条件を付けたいの」

霧切「見張りは二人一組、舞園さんを信用している人と警戒している人がペアになること」

桑田「ハァ? 何考えてるんだよ霧切! 舞園ちゃんを2人掛かりで抑えつけるつもりかよ!?」

桑田(勘弁してくれよ、二人一組じゃ舞園ちゃんと2人きりになれねーだろーが!)

斉木(そんなことだろうと思ったよ)

不二咲「もしかして……見張りの人が舞園さんに濡れ衣を着せないようにするため?」

霧切「察しが早くて助かるわ。見張りが複数人であれば、虚偽の報告も防げるでしょう?」

斉木(さすが安定の霧切さん、すぐに抜け道を塞いでくれた)

舞園「私としてもその方が助かります。一刻も早く皆さんの信用を取り戻したいので……」

大和田「本人もそう言ってるわけだ。オメェは諦めろ」

桑田「………………ちぇっ」

石丸「では霧切くんの意見も採用するとしよう!」

セレス(残念ですわ。卒業への布石にしようと思っていましたのに……)

斉木(お前のやろうとしていることは全てお見通しだ。そのまま観念してくれ)

斉木(そのまま石丸と霧切さんを中心に当番表が作られ、早速桑田と江ノ島さん(仮)が夜時間まで舞園さんを見張ることになった)

斉木(現在の時刻は午後6時42分。夜時間までしばらく時間があるし、久々の自由行動安価でも出すか)

斉木(ルールを忘れた人は>>52を参照してほしい。今回は過去に指名された霧切さん、桑田、山田の3人に加え、江ノ島さん(仮)を除外する)

斉木(舞園さんを指名することもできなくはないが、その場合には見張り番の人物……今回で言えば桑田と江ノ島さん(仮)とも一緒に行動する)

斉木(おそらくこのルールは舞園さんから見張りが外されるまで続くだろうな。まあ、遅くともChapter3が終わるまでにはどうにかなるだろう)

斉木(さて……それでは【安価下】のところへ行くとするか)

斉木(苗木のところへ行くとするか)

【校舎1階】

斉木(苗木誠。“超高校級の幸運”枠として、一般人の中から抽選で選ばれた、普通を絵に描いたような生徒だ)

斉木(それから、この学園で僕の正体を知る唯一の人物でもある。……死者を生き返らせてしまった以上は仕方の無いことだったんだ)

斉木(僕は苗木と行動を共にすることで時間を潰そうと思ったのだが……)

苗木「ボクの時間の潰し方? みんなのことを知るために、自由時間はいつも誰かと一緒に行動してるよ」

斉木(これが主人公の運命か)

斉木(しかし安価は絶対だ……このまま苗木についていくとしよう)

【体育館】

朝日奈「ほらダッシュダッシュ! いっぱい動いて汗かくと気持ちいいよー!」タッタッタッタッ

苗木「待っ……朝日奈さん、速すぎるよ……」ヨロヨロ

斉木(ここは……苗木よりちょっと速い程度に調整するか)タッタッ



【1-B教室】

不二咲「でね、アルゴリズムっていうのはねぇ……」ペラペラ

苗木「へぇ……ボクは体操と行進しか知らなかったよ……」

斉木(ふむ、上手く応用すれば他人の発言の記憶も効率化できそうだな)



【ランドリー】

葉隠「そんなわけで、とんでもなくありがたーいご利益のある水晶玉を苗木っちに勝ってほしいんだべ!」

苗木(……斉木クン、これって)

斉木(アクリル樹脂製だ)

苗木(だよね…………)

【食堂】
苗木「なんだか……心身共に疲れが増した気がする……」

斉木(まあ一度殺されてる時点で朝から疲労困憊だろうな)

苗木「斉木クンはちっとも疲れてないみたいだね。さすが超」

斉木(………………)ギロッ

苗木「……超、高校級のジャンケニスト……だよね」

斉木(それでよろしい)

苗木「そうだ! 斉木クンにもプレゼントを渡さないと」

斉木(プレゼントか……そういえば、朝日奈さんや不二咲さん、葉隠にも何か渡していたな)

苗木「一緒に過ごした人には、ありがとうの気持ちを込めてプレゼントを渡してるんだ。……と言っても、中身はモノモノマシーンの景品だけど」

斉木(ありがとうの気持ち? 何をどう感謝するんだ?)

苗木「うまく言えないんだけど……ボクらは学園内に閉じ込められて、コロシアイを強要されてるでしょ?」

苗木「しかもボクは、みんなと違って何の取り柄もない一般人なのに……それでも一緒に同じ時間を過ごして、お互いを知って、少しずつ仲良くなれる」

苗木「それって、よくありそうだけどなかなか無いことだと思うんだ」

苗木「だから今日は斉木クンのことも沢山知れた気がするよ。そんなわけで、はい」ポン

斉木(これは……“ルアックコーヒー”じゃないか!!)キラキラ

苗木「ここまで喜んでもらえると、あげたこっちも嬉しくなるよ。今日は本当にありがとう」

苗木(ボクを、舞園さんを……みんなを助けてくれて)

【寄宿舎廊下】

斉木(最高級コーヒーの味をひとしきり堪能してから苗木と別れたのだが……今度は違う人物が僕に近付いてきた)

霧切「斉木くん。あなたに頼みたいことがあるの」

斉木(お断りさせてもらおう。僕は超能力者だから霧切さんの真意も丸分かりなんだ)

霧切「どこへ行くつもり? 何か後ろめたいことでもあるのかしら」

霧切「私はただ、人間観察が得意なあなたに危険な人物を探ってほしいだけよ」

斉木(それくらいのことは霧切さんにもできるだろう。スキル“観察眼”の持ち主が何を言う)スタスタ

霧切「どうやら応じてもらえないようね……だったら別のことを質問させてもらうわ」タッ

霧切「あなたはどうしてモノクマの攻撃を完璧に見切ることができたの?」

斉木(……やっぱりな。そこを突いてくると思ったよ)

霧切「あなたのじゃんけんの強さの秘訣は、優れた人間観察能力よね」

霧切「普通、人間観察は表情や仕草の微妙な変化を見るものよ」

霧切「けれどあの時の相手はモノクマ……間違いなくあれはロボットだったわ」

霧切「斉木くん、あなたはモノクマの……無機物の思考すらも読むことができるというのかしら……?」

桑田「いやぁそんなマネできねーよ! オレにできんのは野球を通じて奇跡を起こすことだけだな!」

霧切「えっ」

桑田「オレの野球ミラクルはマジヤベェぞ、荒れ放題の食堂を元通りにしちまうんだからな!」

桑田「ヤケになってた舞園ちゃんもオレの言葉で正気を取り戻したからな! オレってマキシマムカッケー!」

桑田「おっと、舞園ちゃんなら今さっき部屋まで送り届けてきたぜ! 舞園ちゃんしっかり反省してたぞ」

桑田「部屋の鍵は大神に渡しといたからな。アイツ次の当番だし……ってオイ、ちゃんと聞いてる?」

霧切(そんな……私は確かに斉木くんを追いかけていたはずよ)

霧切(なのに気が付いたら桑田くんに話しかけていた……どうしてなの? いつの間に?)

斉木(……やれやれ。霧切さん相手は不安だったが、上手く“催眠”に掛かってくれたようだな)

斉木(僕が使う“催眠”は、他人を別の誰かとして誤認させる超能力だ。今回は桑田の姿を僕だと誤認するようにしておいた)

斉木(この能力の最大の欠点は自分の姿を誤認させることはできないところだ。それができればもっと手早く霧切さんを撒けただろうに……)

斉木(まあ別にいいか。もうすぐ夜時間だ、部屋に入ろう)バタン

斉木(……霧切さんが僕を警戒してさえいなければ、僕も素直に彼女を頼れるのだが……現実は厳しいな)

【斉木の個室】

斉木(シャワーを浴びて服を着た頃、モノクマのアナウンスが聞こえてきた。夜時間の合図だ)

斉木(そのまま寝支度を進めながら、周囲のテレパシーに意識を傾ける)

斉木(不二咲さんや朝日奈さんは夜時間を待たずして眠ってしまったようだ。今日は朝から酷い騒ぎだったからな、疲れるのも無理はない)

斉木(それから……石丸も眠りについたようだが、こいつの場合は規則正しい生活を実践しているだけだな)

斉木(眠っている人間はこの3人くらいだ。残りはまだ寝付けない人か、元々夜型人間かのどちらかに分類される)

斉木(全員に共通しているのは……今日の事件から身に迫る死を実感したということか。今夜ぐっすり眠れる人は居ないだろうな)

斉木(さて、僕も横になるとしよう。もうすぐあいつが話しかけてくるはずだ……)

苗木(……もしもし、斉木クン。届いてる?)

斉木(ああ、ばっちり届いているぞ。挙動不信にならないよう、狸寝入りでもしながら念じてくれ)

斉木(それでは密談を始めるとするか。食堂と違って、テレパシーの会話なら黒幕にもバレないだろう)

斉木(僕のテレパシーによると、明日モノクマは校舎の2階を開放するらしい)

苗木(もしかして……裁判で言ってた“新しい世界への扉の鍵”って、そのことだったのかな?)

斉木(そう考えて間違いない。明日は2階の探索から始めることになりそうだな)

斉木(特に図書室には学園生活の謎を解くヒントが用意されている。僕達はそこを調べよう)

苗木(すごい! 斉木クンって何でも分かるんだね!)

斉木(不可抗力だ。透視とテレパシーは歯止めが利かないから、おおよそのことは分かってしまう)

苗木(だったら……次に誰かを殺しそうな人も分かる?)

斉木(霧切さんに続いてお前もそれを尋ねるのか……まあ、苗木には話しておいてやろう)

斉木(現時点で明確に卒業を狙っているのは十神とルーデンベルクさんの2人だ。まだ準備段階だが、潮時になれば容赦無く誰かを殺すだろう)

斉木(それから腐川さんと江ノ島さん(仮)も危険だな。きっかけがあればいつでも人を殺しかねない)

斉木(後は舞園さんも含め大丈夫だ。事故でも起きない限り人を殺すことはない)

斉木(後は状況が変わり次第追って説明していく。これで満足か?)

苗木(…………うん)

斉木(……十神はともかく、ルーデンベルクさんが殺人を計画していることが意外だったようだな)

斉木(彼女は超高校級のギャンブラーだ。平然と嘘をつける人間でなければ、そんな肩書きは持っていないだろう)

苗木(でも……セレスさんはボクらの中で一番この生活を受け入れてたのに……)

斉木(内心では誰よりも外に出たがっているぞ。具体的にはChapter3辺りで実行に移すつもりらしい)

苗木(そんな……斉木クンの超能力でどうにかできないの?)

斉木(……無理だな。僕は舞園さんの時も犯行を止めようとしたが、結局あんなことになってしまった)

斉木(僕が無駄に超能力を使ったところで、人を殺すほどの強い気持ちはどうにもならないだろうな)

苗木(……斉木クンって冷めてるんだね。ボクには諦めるなんてできないよ……)

斉木(ああ、達観している部分はあるかもしれないな。幼児期には人類を滅ぼそうとしたこともある)

苗木(ま、まさか斉木ク)

斉木(落ち着け。今はそんなこと微塵も考えていない)

苗木(よかった……一瞬心臓が止まりそうになった)ホッ

斉木(それに僕はコロシアイの阻止を諦めているわけではないぞ。殺意をへし折ることはできないと言っただけだ)

斉木(凶器の殺傷力を下げられるし、監視カメラが無ければ死者蘇生もできる……と判明した)

斉木(どれだけの超能力を使うか考えると気が遠くなるが、16人揃って生存することも可能だろう)

斉木(僕がモノクマに気付かれないよう超能力を使うために、苗木にはサポート役を引き受けて貰う。いいな?)

苗木(……サポート役なんて言わないでよ)

苗木(そんな役割が無くたって、ボクは斉木クンに協力する!)

斉木(……予想より良い返事が聞けて安心した。今のやり取りが死亡フラグにならないことを切に願おう)フッ

苗木(もしかして斉木クン……今、笑った?)

斉木(気のせいだ。顔も見えないのに何を言っている)

苗木(あれ? 絶対そうだと思ったのになぁ……)

というわけで、今後は基本的に斉木と苗木の協力プレイでお送りしていきます。
次回からChapter2本格始動の予定ですが……投下は2月になってしまいそうです。もうしばらくお待ち下さい。

今頃ミスに気付きました。
>>354の台詞「じゃあやっぱり事件は夜時間になってから起きたんだ!」は朝日奈ちゃんの発言ということで脳内補完してください……

どうにか峠は越えたので、短いですが投下します。

【前回のあらすじ】
二人一組



葉隠「おっ、苗木っちと斉木っちだべ!」

舞園「おはようございます。二人とも早起きなんですね」ニコッ

苗木「おはよう! ボクはいつもこれくらいの時間に起きるけど、葉隠クンが居るなんて珍しいな……」

朝日奈「今朝は葉隠が舞園ちゃんの見張り当番だから早起きしてるの。普段から早起きした方が絶対気持ちいいのに!」

苗木「へぇ。葉隠くんって、そういうところは意外と真面目なんだね」

斉木(それは違うぞ。葉隠は舞園さんを疑っている側の人間だ)

葉隠「いやぁ、本当はもうちょっと寝てたいんだけどよ……ここで俺が舞園っちを引き止めとかねーと、朝飯に毒を盛られるかもしれないべ!」

苗木「それは……ちょっと考えすぎじゃないかな……」

斉木(だから言っただろ。葉隠が真面目なわけがない)

葉隠「今の時間は本来なら俺とオーガが見張り役だべ。朝食の支度を手伝うとか言ってオーガについていけば、舞園っちは簡単に毒を仕込めるべ」

葉隠「代理の朝日奈っちは簡単に騙されそうだからな、この場で唯一の味方は俺自身だべ!」

斉木(頼りない味方だな)

朝日奈「何よその言い方! 舞園ちゃんはしっかり反省したんだから、そんなことするわけないのに!」

舞園「いえ……このくらいは拘束されて当然ですよ。私が犯した罪は、それだけ大きいんですから」

舞園「自分の行動がもたらした結果を受け止める……苗木くんの言う“引き摺っていく”って、こういうことだと思うんです」

苗木「舞園さん……」

舞園「それに、アイドルはスキャンダルがあったら自力で信用を取り戻さなきゃいけませんからね」ニコッ

朝日奈「うぅ……舞園ちゃん本人がそこまで言うなら、仕方ないのかなぁ……」

斉木(どうやら事件前よりもメンタルが強くなったようだな。流石は超高校級のアイドルと言ったところか)

斉木(それに比べて葉隠は……)

葉隠(今の舞園っちを占って名誉挽回の最善策を教えてやれば30万は確実に貰えるべ!)

斉木(どこまでもクズだ)

葉隠からエロ霊能力者と同じ臭いがするぞう

斉木(そういえば……石丸と不二咲さんの姿が無いな。2人とも早起きだから既に来ていると思ったが、テレパシーは食堂の外から聞こえてくる)

斉木(石丸の方は1-Bの教室に居るようだな。千里眼で様子を見よう)ギュルン

――――――――――

桑田『なー石丸ー、もうこれでいいだろー?』

石丸『駄目だっ! 日誌は最初の1ページ目によってモチベーションも持続されるのだぞ!』

石丸『だのに何かねこの適当な記録は! “まいぞのちゃんカワイイ マジアイドル”だなんて、単なる個人の感想ではないか!』

桑田『個人の感想じゃねーよ事実だよ! イインチョは舞園ちゃん見てカワイイと思わねーのか!?』

石丸『彼女は超高校級のアイドルだぞ、容姿が優れているのは言わずと知れたことだろう! この日誌に書くべきは昨日の舞園くんの行動だ!』

桑田『あーあ……たまに早起きしたらこれかよ……』

――――――――――

斉木(……石丸は今日も元気そうだ)パッ

舞園「石丸くんなら、日誌の管理は風紀委員の仕事だって張り切っていましたよ」

苗木「あはは……熱心だね」

斉木(後は不二咲さんか。彼は寄宿舎内に居るようだが……)ギュルン

斉木(…………駄目だ、探しても見つからない。一体どこに居るんだ?)

不二咲「――み、みんなぁ!!」ダッ

朝日奈「不二咲ちゃん! おはよー、今日は遅かったね!」

不二咲「はぁ、はぁ……あのね、倉庫が開放されてたんだぁ!」

苗木「倉庫!? そんな場所あったっけ……?」

不二咲「えっと……寄宿舎の中に、シャッターが降りてて通れない階段があるでしょ?」

不二咲「その手前の右側にある扉……黄色い封鎖テープが無くなってたんだ!」

不二咲「中には消耗品とか、着替えとかお菓子とか……天井まで届くくらい、たくさんのダンボールがあったよ!」

葉隠「本当か!? すげー大発見だべ!」

不二咲「えへへ……ちょっとだけ役に立てたかなぁ?」

斉木(そうか。僕がまだ行ったことのない場所に居たのなら、千里眼で見つからなくて当然だな)

モノクマ「なぁんだ、もう見つけちゃったの?」ピョーイ

朝日奈「うわっ、また出た!」

モノクマ「倉庫は死角になりやすい場所にあるから、開けといても気付かれないと思ったのになー……」

モノクマ「まぁいいや。折角だからほかの場所もいくつか開けとくね!」

モノクマ「新しい凶器もいくつかあるだろうから頑張って探してねー!」ヒュン

舞園「……あっという間でしたね……」

斉木(……若干Chapter1での台詞と整合性が取れていないが、そこは目を瞑ることにしよう)

朝日奈「ねえねえ、これからどうする? やっぱり探索に行った方がいいのかな?」

葉隠「行くにしても朝飯の方が先だべ。腹が減っては戦もできないべ!」

苗木「じゃあ……このことを朝食会でみんなにも伝えてから 、手分けして探索するのはどう?」

舞園「それがいいですよ。前回と同じように報告会も開きましょう!」

不二咲「新しい場所に出口があるといいなぁ……!」

【校舎2階・図書室】

斉木(朝食会の後、早速僕たちは校内探索に乗り出した)

斉木(倉庫の他に、寄宿舎の大浴場と校舎2階全域が開放されたようだ。透視やテレパシーのお陰で足を運ばずとも瞬時に把握できる)

斉木(だが、遠くから物を見聞きしていることに変わりはない。詳細な部分は自らの目で確かめるしかないのだ)

斉木(だからこそ、重要なアイテムが眠っている図書室へ来たのだが……)

苗木「……2人とも、何をそんなにムキになってるの……?」

山田「腐川冬子殿が! 腐川冬子殿が漫画を馬鹿にしたのですっ!!」

腐川「当然でしょ……! あんたの好きな低俗で汚らわしい本が、この神聖な活字の海にあるわけないじゃない!!」

山田「何もわかっちゃいない! 今や漫画も世界に誇る日本の立派な文化ですぞ!」

腐川「立派な文化? 恥を晒してるだけじゃないの!?」

斉木(図書室は静かにご利用ください)

苗木「2人とも喧嘩しないで。漫画も小説も面白いんだから、もっと歩み寄ろうよ……」

腐川「歩み寄る!? あんな下品なものを好きになれっていうの!?」

山田「下品んんんんん!? あなたは上品な漫画や下品な小説があることをご存知、ないのですか!?」

十神「そこの2人、気が散るから失せろ。或いは呼吸を止めろ」

山田「なっ……!」

十神「それと……腐川、だったか? お前は風呂に入れ。臭うんだよ」

腐川「ぐ……うぅ……」

苗木「十神クン、それはちょっと言い過ぎじゃ

腐川「はいぃぃい! 分かりました今すぐ垢と臭いとその他諸々の不純物を落としてきますぅぅぅぅう!」デレッ

山田「」

斉木(……形はどうあれ、十神に自分のことを気に掛けてもらえたことが嬉しいようだぞ)

苗木「…………人間って不思議だね」

霧切「あら、斉木くんと苗木くん」ガチャ

苗木「霧切さん! 奥の部屋には何かあった?」

霧切「様々な資料を保管するための書庫……と言ったところかしら。中でこんな物を見つけたわよ」ピラッ

斉木(手紙か。差出人は“希望ヶ峰学園事務局”となっているな)

苗木「えっと……『希望ヶ峰学園閉校のお知らせ』!?」

霧切「ええ。文中には“深刻な問題の発生”によって決断を余儀なくされた、と書いてあるわ」

霧切「便箋の劣化具合から推測するに、この手紙は1年以上前に書かれたと考えられるわね」

苗木「深刻な問題? 入学式の朝、外から校舎を見た時はそんなことが起こってるように思わなかったけど……」

斉木(その記憶は2年前のものなんだが……下手に事実を教えたら、苗木は確実に動揺するだろう)

斉木(それがきっかけで黒幕に悟られると、今以上に超能力を使いづらい状況になってしまう)

斉木(やれやれ……どの程度までの真実を苗木に教えるか、考えものだな……)

十神「だが、これではっきりした」

十神「ここに他の生徒や教職員が居ないのは、希望ヶ峰学園が閉校していたからだったとな……」

十神「お前ら愚民にしては上出来じゃないか。褒めてやろう」フッ

斉木(あいつの眼鏡サイコキネシスで割ってもいいかな)

苗木「あっ! 見てよ、机の引き出しにこんなのが入ってたよ!」

斉木(これは……旧型のノートパソコンか)

霧切「でも電源が入らないみたいね。不二咲さんなら修理して解析できると思うけれど……」

苗木「そうか、不二咲さんは“超高校級のプログラマー”だもんね! 不二咲さんは今どこに居るのかな……」

苗木(……斉木クン、超能力で不二咲さんの居場所を調べられない?)

斉木(不二咲さんのテレパシーは水練場の辺りから聞こえてくる。桑田や朝日奈さん、ルーデンベルクさんと一緒のようだ)

苗木「よし、それじゃあボクたちで不二咲さんを呼んでこよう!」

【水練場】

苗木「居た! 不二咲さん、ちょっと図書室に来てほしいんだけど……」

朝日奈「ねぇ苗木っ!」ズイッ

苗木「うわぁ!?」

朝日奈「この奥にプールがあったんだよ! プールだよプール、おっきなプール!!」

斉木(落ち着け)

朝日奈「私ずっと泳ぎたかったの! もう今すぐ泳いじゃいたいよ、服なら後で乾かせばいいし!!」

朝日奈「あーもう! 全身がムズムズしてきた! むしろムズムズを通り越してムカムカしてきた!」

斉木(何故怒りに変わった)

桑田「マジかよ!? だったらオレも朝日奈と一緒に泳ごーっと!」

朝日奈「あ、桑田はダメね。なんか下心ありそう」

桑田「べべべ別にそんなんじゃねーよ、全身運動したかっただけだし!」

セレス「下手な嘘は見苦しいですわよ」

斉木(全くだ)

朝日奈「泳ぐなら他の女の子と一緒の方がいいな! セレスちゃん、不二咲ちゃん! 私と泳がない?」

セレス「わたくしはご遠慮致しますわ。お顔が水に濡れるのが怖くて……」

桑田「どーせ化粧の落ちた顔を見られたくないだけだろ」ボソ

セレス「何か言ったかアホザルがぁぁぁ!!!」

桑田「ヒイッ!?」

朝日奈「うーん……なら不二咲ちゃんだけでも! どうかな?」

不二咲「えっ、えっ……あの……泳げなくて……」

朝日奈「泳ぎ方なら私が教えるよ! 泳げるようになったらプールは友達、怖くないよ?」

不二咲「そ、そんな……!」ウルウル

斉木(苗木、助けてやってくれ。不二咲さんをプールに行かせてはならない)

苗木(どうして? カナヅチを克服させてあげるのは良いことだと思うけど……)

斉木(間違いなく大騒動になるぞ。不二咲さんは男性だからな)

苗木(えっ……)

苗木「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

不二咲「わっ!?」ビクッ

桑田「どうしたんだよ苗木、急にスットンキョーな声上げて!」

苗木「あ……いや……えっと、ボクは不二咲……さんに用があってここに来たから……」

苗木「そうだ、図書室で壊れたパソコンを見つけたから不二咲さんに診てほしいんだ!!」アセアセ

セレス「妙に挙動不審ですわね……」

苗木「本当だよ! 不二咲く……不二咲さんなら修理できるかもって霧切さんが言ったんだ!」ニギッ

不二咲「わ、わかったよぉ! わかったから引っ張らないで!」

苗木「――朝日奈さん!!」

朝日奈「な、何!?」

苗木「不二咲さんがパソコンのことを完全に調べ終わるまで泳ぎに誘っちゃ駄目だからね!!!」

朝日奈「ああ……うん」

苗木「じゃあ行こう不二咲さん!!」ダッ

不二咲「だから引っ張らないでってばぁ!」

斉木(………………)

斉木(……やっぱ苗木には下手に真実を教えない方がいいな)

本日分はここまでです。いつも鈍足進行のSSに付き合って下さり、ありがとうございます。
次回はもうちょっと早く投下できるよう努めたいと思います……

>>557
そういえば2人とも澄んだ目をしたクズですね。

やっと復旧しましたね……何よりです。
相変わらずの遅筆っぷりですが、今週火曜日には続きを投下できるように頑張ります。

干し椎茸のイリュージョ人参

>>600
葦柳錠人参(いりゅうじょうにんじん)とは

13世紀前半の中国において重宝された漢方薬の一種である。
古来より人参は漢方として用いられてきたが、葦や柳の葉から造られる丸薬「葦柳錠(いりゅうじょう)」と調合することで、疲労回復・滋養強壮、抗絶望病において著しい効果を発揮する新薬として爆発的人気を得た。
しかし葦柳錠は製造に手間が掛かるため供給が追いつかず、干し椎茸を代用品とした粗悪品が流通するようになってしまった。
なお、幻・錯覚などを意味する「illusion」という英単語については、当時の中国において正規の葦柳錠人参が非常に入手困難だったことに由来するという説が支配的である。

――民明書房刊 『東洋医学の真常識』より



予告より大幅に遅れてしまいましたが、続きを投下します。

【前回のあらすじ】
人間って不思議だね



【校舎2階・図書室】

苗木(不二咲さんが男の子?)

苗木(そんなわけないよ、ボクよりも背が低くて大人しい性格なのに……)

苗木(でも……機械いじりは男の人の方が得意って言うよなぁ……)

不二咲「えっとね、このパソコンは基盤がいくつか損傷してたせいで電源が入らなかったみたいなんだぁ」

不二咲「2日か3日で直せると思うから……預かってもいいかな?」

霧切「ええ、任せたわ。何か有力な情報の入ったファイルが見つかったら報告して」

不二咲「うん! 頑張るねぇ!」

苗木(……やっぱりこの笑顔は女の子にしか見えない)

苗木(斉木クンがボクをからかって嘘をついたのか……?)

山田「それにしても不二咲千尋殿はすごいですな!」

不二咲「ほ……ほんと?」

山田「拙者はピザでヲタクですがパソコン操作は人並みしかできず……不二咲千尋殿がテライケメンに見えますぞ!」

不二咲「えへへ……! イケメンかなぁ、かっこいいかなぁ?」

苗木(……不二咲さんがイケメンって言われてとっても嬉しそうにしている)

苗木(ってことは……やっぱり男の子!?)

霧切「どうしたの苗木くん」

苗木「えっ……いや、なんでも……」

霧切「……何か、重大な発見をしたのかしら?」

苗木「重大な発見……? そ、そうだ! さっき水練場に行ったら更衣室の入口に大きな機関銃がぶら下がってて、ひょっとしたらあのプールは巨大兵器に変け」

霧切「もういいわ」

苗木「え?」

霧切「もういいわ」

苗木「……うん」

【寄宿舎1階・倉庫】

斉木(あと20分ほどで報告会の時間だ)

斉木(校舎に関してはほとんど調べ終わった。ここを除けば、残るは大浴場のみなんだが……)ガサゴソ

斉木(僕にはどうしても確認しておきたいことがある)ガサゴソ

斉木(…………あった。粉ゼラチンだ)

斉木(ダンボール箱2つに、粉ゼラチンの小箱が隙間無く詰めてある。ざっと見て3年分はあるな)

斉木(食堂にはコーヒーの素があるから……これを使えばコーヒーゼリーが3年分食べられる……!!)ジュルリ

江ノ島「ありゃ? 斉木も倉庫に来てたんだー!」

斉木(おっと、江ノ島さん(仮)が来てしまった)ササッ

江ノ島「ここってマジで色んなものがあるって聞いたからさー、アタシの好きな食べ物も倉庫になら置いてるかなーって思ったんだよね」

斉木(ふむ。ここにはドーナツや油芋など、生徒の好きそうな食べ物が置いてある。だが……)

江ノ島「災害対策のレーション! あれメチャウマだから!」

斉木(断言しよう、それは無い)

江ノ島「斉木は知らないだろうけど、近頃のギャル的にはレーションがチョベリグなの!」

斉木(ああ知らないな。近頃のギャルがチョベリグという言葉を使うことも知らなかった)

江ノ島「でもなんか無さげだよねー。朝日奈は冷凍ドーナツ見つけたって言ってたのになー……」

江ノ島(盾子ちゃん……私の好物を用意してくれないなんて、とっても絶望的……)

斉木(お前も中々に絶望的な人物だと思うぞ)

江ノ島「……そう言えばさー、朝日奈が言ってたんだけど」

江ノ島「昨日、朝日奈と苗木と3人でランニングしたんだって?」

斉木(確かに昨日はそうして過ごしたな。ランニングは朝日奈さんたっての希望だった)

江ノ島「でも……そのちょっと前まで、苗木はお腹を刺されて倒れてたんでしょ?」

江ノ島「現場を見張ってた大神すら、まだ生きてるって気付かないレベルの重体でさ」

斉木(………………)

江ノ島「……ねぇ、斉木」

江ノ島「昨日戻ってきた苗木は、本物の苗木くんなのかな?」

斉木(……まさか江ノ島さん(仮)にこんな穿った質問をされるとは思わなかった)

斉木(昨日のうちに気付けばよかったが……どういう言い訳が最も自然だろうか……)

黒幕(オイコラ残姉! 素が出てんぜ! オレは苗木と斉木について探れたぁ言ったがキャラ崩せなんて命令しちゃいねーぞ!)

斉木(またお前か)

斉木(黒幕は江ノ島さん(仮)を介して僕達の情報を入手しようとしている)

斉木(しかし今までの行動から察するに、江ノ島さん(仮)は相当残念な人だから……)キィン

『非常食スペースの一番奥……』

江ノ島「あっ! レーションみーっけ! こんなところにダンボールごと置いてあるとかマジ神じゃね!?」

斉木(アポートを使って、適当な箱をレーションにすり替えた。今のうちに退散するとしよう)

斉木(……ついでにコラコーラの箱も用意しておくか。スペシャライザーフィギュアの礼を山田に先払いしてやる)キィン

黒幕(残姉! 残姉! レーションばっか食ってねぇで斉木を追い掛けろよ!!)

江ノ島「んー……フランスの味付けサイコー……」モグモグ

斉木(まあ、苗木本人の『壮大なドッキリだった』という言い分を信じ込ませておけば問題は無さそうだ)

【食堂】

石丸「全員揃ったな! 第2回希望ヶ峰学園定例報告会を始めようではないか!」

石丸「まずは校舎2階に非常口や脱出可能な場所があったか確認したい!」

舞園「それは私と葉隠くんと大神さんで調べました。2階全体をまわったから時間も掛かっちゃいましたが……」

大神「またしても無理だった……窓の鉄板は頑丈に取り付けられていた」

葉隠「それと3階に続く階段も見付けたべ! ……でもシャッターが降りてて進めなかったべ」

石丸「ふむ。ならば3階に出口があることを期待しよう!」

苗木(斉木クンなら上の階に出口があるか超能力でわかるよね?)

斉木(その通り、僕には透視で最上階の様子まで見えている。しかし時には真実を言わないでおく優しさも必要だぞ)

苗木(……無いんだね)ハァ

石丸「次に、2階の特殊教室の有無を知りたいのだが……報告はあるかね?」

朝日奈「はいはいはい!! プールがあったよ! おっきなプール! やっと泳げるよ水と一体化できるよ!!」

朝日奈「それから更衣室にはトレーニング器具もあったんだよ!! これで体を鍛え直せるよ!!」

桑田「オメーちょっと落ち着けよ!」

苗木「ととと、ところでさ!」

苗木「更衣室の入口……水練場のところに、大きな機関銃が設置されてたよね?」

朝日奈「そうだっけ? 私はプールのことばかり考えてたから目が行かなかったよ?」

斉木(それは重症だぞ)

腐川「ききき機関銃!? 一体誰を蜂の巣にしてカイカンを得るつもりなのよ!?」

モノクマ「決まってんじゃん、覗き魔へのオシオキだよ!」ピョーイ

斉木(また出た)

モノクマ「水練場の更衣室は男女に分かれていますが、入口に電子生徒手帳をかざしてロックを解除しないと中に入れません!」

モノクマ「もしも自分と違う性別の更衣室へ入ろうとしたら……」

モノクマ「容赦無く警報が鳴り響き、ガトリング銃で見るも無惨な姿に!!」

不二咲「うぅ……あんまりだよぉ……!」

モノクマ「そう? 煩悩まみれの犯罪者には然るべき制裁を加えなきゃいけないと思うんだ」

モノクマ「ホラ、ボクって曲がりなりにも教育者じゃん?」

斉木(曲がりすぎだ)

大和田「人殺しは犯罪じゃねーのか?」

モノクマ「やだなぁ、殺人犯にも相応のオシオキを用意してるよ! それが学級裁判のシステムってワケ」

朝日奈「ほんっと悪趣味……」

セレス「ひとつ確認をさせてください」

セレス「その防犯システムは、異性の電子生徒手帳を借りてしまえば簡単に突破できるのでは……?」

モノクマ「むむっ、ボクとしたことが何たる見落とし! そんな抜け道があったとは!」

モノクマ「そんな姑息な手は通じないからね! 校則にも書き足しとくから足掻いてもムダだよ!」

【校則が追加されました】
『電子生徒手帳の他人への貸与を禁止します。』

モノクマ「ルールを守って健全なコロシアイ学園生活をしましょう! じゃーねー!」

葉隠「コロシアイに健全も不健全もねーべ!」

苗木「でも……どうして更衣室の警備をそこまで厳しくするんだろう?」

苗木(そのせいで不二咲さんの性別がバレるのも時間の問題になっちゃったし……)

十神「……そうかそうか、つまりお前はそういうやつなんだな」

葉隠「許してやるべ、苗木っちも健全な男子だべ」

苗木「それは違うよっ!」

セレス「あら、苗木くんは不健全な男子なのだそうですよ」

苗木「そっちじゃないよ! ボクは覗くつもりで言ったんじゃなくて……!!」

斉木(どんどん墓穴を掘り進めてるぞ)

石丸「話題を切り替えて次に進もう! 他に校舎で新たな発見はあったかね?」

山田「そうでした! 同じく2階には広い図書室がありましたぞ!」

十神「奥には書庫もあったな。古今東西の様々な資料が集積されていた」

石丸「図書室……だと……!? 遂に僕は勉強を再開できるのだなッ!!」ブワッ

斉木(それは顔面を崩壊させて泣くほど嬉しいことなのか?)

不二咲「あっ……それとね、図書室には……」

霧切「図書室には1通の手紙があったわ。『希望ヶ峰学園閉校のお知らせ』と題した手紙がね」ズイッ

不二咲「…………うぅ」シュン

大和田「閉校って……オレらは潰れた学校に入学しちまったってことかよ!?」

セレス「きっとモノクマは無人になった希望ヶ峰学園を占拠し、コロシアイの舞台に仕立てあげたのでしょうね」

大神「黒幕は莫大な財力を持っているのだろうな……」

斉木(改築費用に関しては希望ヶ峰の予算をフル活用したみたいだぞ)

苗木(格別お金持ちってわけでもないんだね……)

不二咲「それとね、図書室にパ」

霧切「けれどわからないことがあるの。黒幕がこんなことをした目的は何なのかしら」

不二咲「…………うぅぅ」グスン

葉隠「黒幕の目的なぁ……きっと俺たちの中の誰かに恨みがあったんだべ!」

山田「他の人は完全なとばっちりじゃないすか! やだー!!」

腐川「じゃあ……ここにいる人は全員何らかの罪を犯したことがあって、黒幕は制裁を加えるために……」

十神「犯人は超高校級の判事だとでも言うつもりか?」

不二咲「……あの、パソ……」

霧切「解析が終わるまでパソコンのことは内密にしてほしいの。モノクマに気付かれると危険だから」ヒソヒソ

不二咲「う……うん……」ショボン

舞園「あの……黒幕がジェノサイダー翔って可能性はありますか?」

腐川「ジェノサイダー翔!? そんなわけないじゃない、なんであんな奴があたし達をターゲットにするのよ!?」

苗木「……ジェノサイダー翔? それって有名人?」

桑田「んだよ、オメー知らねぇのか? 」

葉隠「ジェノサイダー翔。現場に血文字で“チミドロフィーバー”って書き残す、巷で噂のシリアルキラーだべ」

苗木「シリアルキラー……猟奇殺人犯!?」ゾワッ

斉木(一聴しただけではピーチティー長谷川みたいなふざけた名前に思えるが……やってることのえげつなさは本物だぞ)

舞園「ジェノサイダー翔は数々の殺人を犯していながら未だ逮捕されていない人物ですから……」

朝日奈「誰にもバレないで私たちをさらってきてコロシアイさせるくらいの実力はあるのかも……」

霧切「そして……黒幕には動機など存在せず、ただ人を殺す楽しみだけを求めている。ありえなくもない話ね」

斉木(いや、黒幕はジェノサイダー翔じゃないぞ。あいつがこんな回りくどい殺人を犯すわけがない)

斉木(この能力を使う機会はもう無いと思っていたが……)

『“人を殺す楽しみ”……』

江ノ島「――それは違うって!」

斉木(代理論破でジェノサイダー翔への嫌疑を晴らしておこう)

苗木(なんだろう……江ノ島さんの言葉を聞いた瞬間、うら寂しい気持ちになったような……)

斉木(決め台詞を取られたからじゃないのか?)

大和田「あぁ? ジェノサイダーが黒幕じゃねぇって根拠でもあんのかよ?」

江ノ島「こう……殺人鬼ってさ、自分で人を殺したいから殺人鬼なわけじゃん?」

江ノ島「なのに他人同士で殺し合わせてそれを眺めてるだけって……なんかつまんなくない?」

葉隠「え、江ノ島っちがしれっと怖いこと言ってるべ……」

山田「色相が濁りまくってそうですな……」

江ノ島「はぁ!? あたしが人を殺すとかありえないんだけど!!」

斉木(変装してる時点で十二分に怪しいぞ)

十神「江ノ島……だったか?」

十神「お前の言い分は随分幼稚だが、俺も黒幕はジェノサイダー翔ではないと考えている」

腐川「と、十神……白夜様……っ!!」

霧切「あなたは……黒幕の正体を確信しているというの?」

十神「いや、俺は単にジェノサイダー翔が黒幕である可能性を否定しているだけだ」

十神「もっとも、その根拠をお前らに話してやる義理などないがな」

斉木(相変わらず他人の神経を逆撫でする言葉ばかり使うんだな……しかし)

腐川「白夜様ともあろうお方ならば……根拠なぞ語らずとも説得力を発揮するのですね……!」ハァハァ

斉木(こいつにとってはご褒美のようだな)

石丸「話題が脱線してしまったが報告会を続けるぞ! 次に寄宿舎の方だが――」

――――――――――

――――――――――

【数十分後・斉木の個室】

斉木(その後も報告会は滞りなく行われ、舞園さんの見張り役を山田と朝日奈さんに交代してから解散となった)

斉木(会議シーンが長すぎるとダレるからな。後の描写は割愛して、ここら辺で自由行動安価に移ろうと思う)

斉木(今回は過去に指名された霧切さん、桑田、山田、苗木、そして見張り中の朝日奈さんを除いた10人から選んでほしい)

斉木(その代わり、舞園さんを指名した場合は山田と朝日奈さんとも同時に過ごすことになる。後はいつも通り>>52を参照してくれ)

斉木(それでは……【安価下2】と共に過ごすか)

斉木(……大神さんと共に過ごすか)



【校舎2階・水練場】

斉木(大神さくら。“超高校級の格闘家”という肩書きで希望ヶ峰に入学した人物だが、彼女は“超人級の格闘家”と名乗っても遜色ないと思う)

斉木(乳母車に乗っている頃から戦い続け、公式戦において未だ無敗の人物だ。僕が超能力を駆使して死闘に臨んだとしても、良くて相討ちにしかならないだろう)

斉木(そして現在、大神さんは女子更衣室の中で筋トレ真っ最中だ……かれこれ4時間は続けている。疲れないのか?)

大神「……む、斉木か。奇遇だな」ガチャ

斉木(すみません、ずっとスタンバってました)

大神「我はトレーニングの息抜きにな……プロテインコーヒーを飲みに、1階へ降りようと思っていたのだ」

斉木(プロテインコーヒー? それは美味いものなのか……?)

大神「……時に斉木よ。我と手合わせをしてはくれぬか?」

斉木(どうしてそうなった)

大神「先日の学級裁判の折……お主は舞園の命運を懸けてモノクマと戦ったな」

大神「お主はモノクマの反則技を完全に見切った上、見事勝利を収めた……」

大神「よって我はお主が武芸にも長けた人物だと見た。斉木よ、その実力を我にも見せては貰えぬか……?」

斉木(ぜんぶ気のせいだ。丁重にお断りさせていただく……)

大神「もし手合わせをしてくれるのならば、明日の朝食の献立にはお主の好物を加えるが……」

斉木(コーヒーゼリーをお願い致します)

【校舎1階・体育館】

斉木(……結局、大神さんとは3回ほど戦った。結果は全て大神さんの圧勝だった)

斉木(献立プラスの条件に勝敗は関係無かったため、僕は“常人よりやや強い”程度の印象を与えつつ、負けを選んだ)

斉木(それに、意地になってしまえば超能力をうっかり使ってしまいかねないからな。この閉鎖空間で過ごすにはこれくらいが丁度いい……)

大神「感謝するぞ……お主が付き合ってくれたお陰で良い息抜きになった」

斉木(本当に息抜きになったのか? 僕としては息もつかせぬ戦いだったぞ)

大神「独りで黙々と体を鍛えることも大切だが、他人と一戦を交え経験を積むこともまた大切なのだ……」

大神「そして……この手合わせを通じて、我は斉木楠雄という人物を理解できたと感じるぞ」

大神「お主……何か大きな隠し事をしているだろう」

斉木(!)

大神「吐露しろとは言わぬ。大なり小なり、人であれば誰もが秘密を抱えているものだ」

大神「その秘密は、時として人の心を束縛し、蝕んでしまうが……」

大神「斉木は寧ろ、大きな秘密を抱えた上で前進する力へと換えてしまう……静かな強さを秘めた男だ」

大神「よって、我はお主を信じるとしよう……拳は何よりも雄弁だ」

斉木(……『拳は何よりも雄弁』、か)

斉木(テレパシーで全てが分かってしまう僕には理解しがたい感覚だな)

大神「では、我はトレーニングに戻る。お主も汗をかいただろう……体を冷やさぬように気をつけるのだぞ」

斉木(そう言って、大神さんは体育館を後にした)

斉木(……大神さんの戦闘スタイルは、地上最強に相応しいものだった。古今東西、ありとあらゆる武術を寸分の狂いもなく繰り出してきた)

斉木(それでいて、全ての動きの根幹には武道を極める者としての誇り……スポーツマンシップが存在した)

斉木(故に、大神さんの技は強く、猛々しく、美しかった)

斉木(今回のことはビクトリーバーサスの前哨戦と思うことにしよう。さて……忠告通り、僕も汗を流しにいくか)

斉木(……彼女を束縛する秘密からも、いつか解放してやるべきなのだろうな)

今回はこれにて終了です。
念のため書いておきますが、さくらちゃんは斉木が超能力者であることには気付いていません。
さくらちゃんマジ女神。

ちーたん(と七海ちゃん)の誕生日にもかかわらず酷い扱いをしてしまったので、
次回からはちーたんにも少しずつクローズアップしていきたいと思います。

斉木って本気出さなくても余裕で世界滅ぼせるって言ってた気がするんだが………
それと相討ち以上に持ち込めるさくらちゃんって何者なの………


質問なんですけど、

斉木の復元ってかけたやつを24時間前の状態に戻すことができるけど24時間後復元かける前の状態に戻るんでしたよね?

苗木生き返ったんじゃなくて実はただ気絶してただけ……?

>>655
斉木(僕は多彩な超能力を持っているが、その能力を戦闘目的で使うことはない。ギャグ漫画の摂理だな)

斉木(対する大神さんは百戦錬磨の武人だ。一撃一撃の威力が大きい上に、モノクマの校則違反用オシオキトラップすら通じないときた)

斉木(僕の攻撃が余程トリッキーでもない限り、躱されるか受け流されるだけで終わってしまうことだろう)

斉木(そして大神さんは容赦無く僕を攻撃してくる。テレパシーがあるからそれなりに対処はできるが、疲労が蓄積してくると反応も鈍くなってしまう)

斉木(というわけで、先の手合わせは3本とも持久戦の末に押し負けた。僕も体力はある方だが、大神さんには及ばなかった)

斉木(やれやれ……本来ならばエスパーはかくとうに強いはずなんだがな……)



>>658
斉木(勘違いしているようだな。“復元をかける前の状態に戻る”のではなく、“24時間経過した状態になる”んだ)

斉木(復元対象が、外的要因によって壊れた物……例えば、何者かに割られた花瓶だったとしよう)

斉木(24時間前の状態に戻された花瓶は、その瞬間から24時間遅れの時間を刻み始める)

斉木(しかし“花瓶が何者かの手によって割られる”という出来事は起こらない。花瓶を割った犯人が24時間後もそこに居るとは限らないだろう?)

斉木(ただ、花瓶が割れた原因がヒビや老朽化などの内的要因ならば、花瓶が割れるのは避けようがないだろう)

斉木(ややこしい説明になってしまったが……ゲームオーバーになったので最後にセーブした地点からやり直す、という表現が最も近いかもしれない)

斉木(当然、苗木は今も普通に生きている。あいつは外的要因によって殺されたからな)

斉木(ちなみに記憶は24時間前どころか、死ぬ瞬間まで残っているようだが……それは放っておこうか)



斉木(次の投下はまだ先だが……折角だし、>>666の言うことは可能な範囲で実行してみようと思う。あくまで実行可能な範囲で頼むぞ)

黒幕と対談とか

斉木(“黒幕と対談”……か)

斉木(かなりのリスクを冒すことになりそうだが……まあ、その程度ならできなくもない)

斉木(わかった。次の次の投下あたりには、黒幕と直接話しをすることになるだろう)



斉木(……ところで、バンナムはちゃんと僕のビクトリーバーサスプレイ動画を製作してくれているんだろうか?)

限りなく透明に近い琥珀の角「解せぬ」

>>679
限りなく透明に近い青の角です!

エイプリルフールなのに大した嘘も思いつかないので、地味な回ですが続きを投下します。

【前回のあらすじ】
フランスの味付け



斉木(寄宿舎へ戻る道すがら、僕はあの赤い扉の前へ歩を進めた)

斉木(今は学級裁判の必要も無いので、扉は固く閉ざされている。願わくばこのまま永遠に開かないでほしい)

斉木(僕達にコロシアイをさせるため、黒幕もあの手この手を使ってくるだろうが……僕が居る限り、もう誰も死なせはしない)

斉木(……汗が冷えてきたな。早く寄宿舎へ戻――)ヨロッ



――――――――――



苗木『っぐ……う……』グスッ

苗木『……間違ってるよ。こんなの絶対、絶対に間違ってる……!!』



――――――――――



斉木(……今のは予知か? 苗木がこの扉に縋りついて、泣きじゃくっている姿が見えた)

斉木(状況を推理するに……学級裁判は再び開廷してしまうのか……!?)

【寄宿舎1階・苗木の個室前】

ピンポーン

苗木「あれ、斉木クン?」ガチャ

斉木(風呂道具を用意しろ、大浴場へ行くぞ)

苗木「ボクは別にいいけど……斉木クンから誘ってくれるなんて珍しいね?」

斉木(勘違いするな。風呂に入るだけなら1人で事足りる)

斉木(脱衣場と大浴場には監視カメラが無いからお前を誘ったんだ)

苗木「ってことは……」

苗木「………………」ゾッ

斉木(違う。コロシアイ阻止の作戦会議をするためだ)

【脱衣所】

斉木(ふむ……大浴場から伝ってくる湯気が温かい。毛穴の開く心地がするな)

苗木「石丸クンが報告してくれた通りの広いお風呂だ! 気持ち良さそう!」

苗木「それに……本当に監視カメラが付いてないね。ここならテレパシーを使わなくても話し合いができそうだよ」

斉木(このまま話しているのもなんだ、早く服を脱いで湯船に……)ピリッ

――――――――――

照橋『あれ? こんなところに男子の制服が……』

照橋(……ってこれ斉木くにおのじゃない!)オッフ

照橋(きっと斉木のことだから、暑くなって制服の上を脱いで椅子の背もたれに掛けたまま帰ってしまったのね……)

照橋(きっと普通の美少女は誰かの制服を見つけても放置して立ち去るでしょうけれど、私は綺麗に畳んで机の上に置いといてあげるわ!)

照橋(何故なら私は可愛いだけでなく、完璧な美少女だから……!!)

――――――――――

斉木(……たった今気付いた。大神さんと手合わせした時に、左手の透明手袋が破れてしまっていたようだ)

斉木(直ちに復元しておこう。風呂のお湯に対して“サイコメトリー”が発動してしまったら大惨事だ)キィン

苗木「サイコメトリー? それって、えーと……」

斉木(物体の残留思念を読み取る能力だ。ややマイナーな超能力だが、推理モノに時々出てくる)

苗木「じゃあ、その能力があれば事件の犯人を簡単に当てられるんだね!」

斉木(いや……そうでもないぞ。殺人事件の凶器に触れたとしても、事件に無関係な残留思念を多く読み取ってしまう)

斉木(その中には精神衛生上よろしくない残留思念も含まれている。レストランの食器なんかは地雷そのものだ)

苗木「あー……どんな人が使ったか分かんないもんね」

斉木(そんなわけで、僕はサイコメトリーの発動を防ぐため、極薄の透明手袋をはめている)

斉木(僕が捜査にサイコメトリーを使う時が来たら、ほぼお手上げの状態だと思ってくれ)

苗木「……なんだか、学級裁判で地道に議論を展開してた理由が分かった気がしたよ」

【大浴場】

苗木「あったかい……体がほぐれる気分だ……!」チャポン

斉木(悪くない湯加減だな。掃除も行き届いているし、嫌いではない)

斉木(ところで……苗木、ここに来た目的は覚えているか?)

苗木(えっ? 確か……)

苗木「……コロシアイ対策会議、だったよね?」

斉木(まあ良しとしよう。黒幕は僕達にコロシアイをさせようと、何らかの方法で煽動する方法を考えているようだ)

苗木「そんな……! 黒幕はボクと舞園さんの時と同じことを起こすつもりなのか!?」

斉木(起こさせないための会議だろう。このくだり何回やれば気が済むんだ?)

苗木「でも……斉木クンってどんな超能力が使えるの?」

苗木「テレパシーや復元は分かるけど……もっとこう、RPGの攻撃技みたいな超能力は無い?」

斉木(攻撃に用いることは少ないが、色々使えるぞ。例えば……“パイロキネシス”)ボッ

苗木「わっ! 火が出た!!」

斉木(僕のパイロキネシスは元を辿せば加熱能力だ。発火点まで行かずとも、気温や体温の微調整もできる)メラメラ

苗木「じゃあ……水を使った攻撃は?」

斉木(何も無い場所から水を出す超能力は原作未登場だが、サイコキネシスを応用すれば……)フォン

斉木(こんな感じで風呂のお湯を宙に浮かせることくらい造作もない)プカプカ

苗木「すごいや……! 無重力の映像みたい!」

斉木(更にサイコキネシスでお湯の形状を変え、瞬間冷凍して……)パキン

斉木(電撃を使って表面を削る)バリバリ

斉木(アイスグラスの完成だ)

苗木「まるで手品みたいだったよ! そのアイスグラス、触ってみていい?」ペタペタ

斉木(勝手にしろ。どうせそのうち解ける)

苗木「これだけ自由自在に超能力を操れるなら、黒幕のところに行って直接攻撃しても……」

斉木(無理だ)

苗木「えっ」

斉木(その方法は僕も既に考えた。具体的に言うと、ここに閉じ込められた晩に徹夜しながら考えた)

斉木(だが、その時に黒幕の心の声を聞いてな……)

斉木(『万が一私様が人間達に殺されることがあったとしても、全員が共倒れになるように細工を施してある!』……とか考えていた)

苗木「黒幕の思考回路がそんなにダダ漏れなのに、手出しできないなんて……」

斉木(情けない話だが事実だ。今は僕達の身の安全を最優先すべきだろう)

苗木「じゃあ、斉木クンの超能力で外から助けを呼ぶのは?」

斉木(それも無理だな。今の僕は学園の外に干渉する能力がほとんど使えない)

斉木(せいぜい外の様子を透視するか、アポートで外のものを引き寄せる程度だな)

苗木「アポート……遠くのものを引き寄せる超能力だっけ」

斉木(それだ。テレポートで等価交換という原則は存在するが、ここに足りないものを外部から調達することができる)

苗木「だったら学園の外にいる人を引き寄せてみようよ! 裁判場にボクをアポートした時みたいにさ!」

斉木(ふむ……その発想は無かった。一度試してみる価値はありそうだな)

斉木(では、学園の外に居る役立ちそうな人間を――)

斉木(――アポート!!)カッ





苗木「……何も起こらなかったね」

斉木(風呂場の道具じゃ等価交換は成立しなかったらしい)

苗木「うーん……せめて斉木クンが外に出られたらいいのになぁ……」

斉木(さっきも言っただろう、超能力は使えないんだ。瞬間移動も試したが無理だった)

苗木「それは分かってるけどさ、まだ試してない超能力ってない? 壁を突き破るとか、すり抜けるとか」

斉木(壁を突き破ろうとしたことならいくらでもある。“火事場の馬鹿力”で思い切り殴ってみたが、壁には傷ひとつ付かなかった)

斉木(それに僕は壁をすり抜ける超能力など使えない。そこそこ良いアイディアだったが却下させてもらおう……)

斉木(……いや、前言撤回だ。あの能力を使えば壁をすり抜けられたな)

苗木「ほんと!? それってどんな能力なの?」

斉木(“幽体離脱”だ)

苗木「幽体離脱……?」

苗木(それ……超能力っていうか霊能力なんじゃ……)

斉木(超能力だ。読切時代からある由緒正しき超能力だ)

斉木(念のため改めて説明するが、幽体離脱は幽霊の状態になって行動できる超能力だ)

斉木(霊感の無い人間には認識されないが……壁をすり抜けたり、他の幽霊と接触できる)

苗木「これで外に助けを呼べるね! 斉木クン、霊感のある人にボク達が閉じ込められてることを伝えてきてよ!」

斉木(部屋に戻ってから試してみる。ここでは抜け殻になった身体に何をされるか分からないからな)

斉木(……そういえば、苗木。ひとつ確認させてくれ)

苗木「確認……? どんなこと?」

斉木(お前……ここに来てから赤い扉の前で泣いた覚えがあるか?)

苗木「? ううん、赤い扉の前どころか、泣いたことすら全然無いよ」

斉木(……だとすると、さっき見た光景は予知によるものか、“空白の2年間”のサイコメトリーか……)

苗木「それが一体どうしたの?」

斉木(……いや、何でもない。そろそろ上がろう、作戦会議とはいえ長湯しすぎた)

【脱衣所】

苗木「ふう、気持ち良かった! また近いうちに入りに来たいな。今度はみんなも誘っ……」

不二咲「」ビクッ

苗木「て……」カラン

斉木(風呂道具が落ちたぞ)

不二咲「……ぁ……ぅ……」

苗木「ごっ、ごめんね不二咲さん! すぐに服着るから!」アセアセ

不二咲「あっ……あのね、急がなくても……」

苗木「で、でも……不二咲さんにボクの裸なんか見せちゃって……」

斉木(不二咲さんは男子だ、同性の裸を見るくらい何ともないはずだぞ)

苗木(そうだ! 不二咲さんは女の子に見えるけど本当は男なんだった!」

不二咲「…………なんで、知ってるの……!?」グズッ

斉木(声に出てる)

苗木「あっ」

斉木(苗木が平謝りを続けてしばらく経った頃、不二咲さんはぽつりと呟いた)

不二咲「……驚かないんだね」

苗木「えっ? うん……まあね」

苗木(斉木クンから先に教えてもらってたことは黙ってよう)

苗木(でも……なんで男の子なのに女の子の格好なんかしてるんだ……?)

斉木(お前はそんなことも分からないのか。不二咲さんの女装は――)

不二咲「僕が、弱いからなんだ」

斉木(おっと自供が始まってしまった)

不二咲「体も小さいし、気も弱いし……昔からよくいじめられてたんだ」

不二咲「いじめっ子はいつも、僕を女みたいだって言うから……思ったんだ」

不二咲「女の子のフリをしちゃえば、もう僕をいじめる人はいなくなるって」

不二咲「それで僕は女装をして……弱さの中に逃げ込んだんだ」

苗木(弱さの中に逃げ込んだ……?)

苗木(不二咲さ……不二咲クンはどう見ても女の子にしか見えないけど、そのせいで本人はこんなに苦しんでたのか……)

不二咲「……男の癖にスカートなんか履いて、気持ち悪いよねぇ……」グスン

苗木「……気持ち悪くなんかない」

不二咲「……なん、で……?」

苗木「ただでさえ不二咲クンが悩んでいたことなのに、他人のボクがとやかく言う筋合いは無いよ」

苗木「それに……その、不二咲クンがボク達に自分のことを打ち明けてくれて、嬉しかった……っていうかさ」

不二咲「う……うえぇ……!!」ボロボロ

苗木「だ、だからもう泣かないで! 泣かないでってば!」

苗木(斉木クン! 不二咲クンの涙を超能力で止め)

斉木(無理だな)スタスタ

苗木(なんで逃げるのさ!!)

不二咲「ぐすっ……あのね。僕、強くなりたいんだ」

不二咲「今は無理でも……いつか胸を張って『僕は男です』って言えるようになりたいんだ」

不二咲「だからね、苗木くん。お願いがあるんだけど……友達になってくれるかな?」

不二咲「僕が強くなるための手伝いをしてくれるかなぁ……?」

苗木「勿論手伝うよ。それに……ボクも斉木クンも、もう友達でしょ?」

斉木(勝手に僕を含めるな)

不二咲「やったぁ! ありがとう、これからよろしくね!」ニコッ

斉木(……やれやれ。“もう友達だ”なんて決まり文句、手垢がつきすぎて聞き飽きてしまったぞ)

斉木(それを言う苗木も苗木だが……言われて喜ぶ方も大概だな)

斉木(全く、不二咲はどうしてこんなに心の底から喜んでいるんだ……常人の気持ちは理解し難いな)

苗木「そういえば不二咲クン、どうしてここに来たの? お風呂道具は持ってないみたいだけど……」

不二咲「あのね……図書室で見つけたノートパソコンの修理が終わったから、隠しに来たんだぁ!」

苗木「確かにここは監視カメラが無いけど……なんでパソコンを?」

不二咲「このパソコンには希望ヶ峰学園に関する機密データが入ってるみたいだから、モノクマに気付かれないように解析を進めたいんだ。それに……」

パソコン『コンニチハ、ゴ主人タマ!』パッ

苗木「パソコンが喋った!?」

不二咲「うん。作業を効率化してくれるAI……人口知能をプログラミングしたんだぁ!」

斉木(かがくのちからってすげー)

不二咲「表情や会話パターンもこれから増やしていきたいから、プログラム開発にも協力してねぇ!」

苗木「う……うん、協力するね」

斉木(それは僕達が協力できる事柄なのか?)

【斉木の個室】

斉木(夜時間を迎えたので、2人とは別れて部屋に戻ってきた)

斉木(さて……苗木のアイディアに従って、幽体離脱を試してみよう)フワッ



斉木(……これで幽体離脱完了だ。SSの文面ではわかりづらいが、今の僕は霊となって宙に浮いている)

斉木(実体が無いから壁をすり抜けることもできる。音も立てずに廊下に出ることだって簡単だ)スッ

斉木(おっと、本来の目的を忘れかけていたな。僕が幽体離脱したのは、希望ヶ峰学園のことを外の人間に伝えるためだ)

斉木(まずは外に出て幽霊と接触するか。誰かの協力を仰ぐのは不本意だが、この状態で出来ることは限られている)

斉木(せめて寺生まれの霊能力者にでも現状が伝わ)ゴツンッ



斉木(…………壁にぶつかった、だと……?)ヒリヒリ

幽霊「やあ! 君って超能力だけじゃなく霊能力も使えたんだね!」

斉木(誰だお前)

幽霊「ここに閉じ込められた幽霊だよ! どうやらこの学園の外壁には特殊な呪術が施されてるみたいでね、幽霊も外には出られないんだ!」

斉木(………………)フワッ

幽霊「でも超能力者ならこの壁を突破できると思ったんだけど……ってあれ? どこ行ったんだい!?」



斉木(……今日はもう寝るか。苗木には明日“変な幽霊が居た”とだけ報告しよう)

今回の投下はここまでです。
ビクトリーバーサスの斉木はサイコビットのせいでやけに嫌われていて悲しいので、
このSSの斉木はそこそこ好感が持てるように書いていきたいです。

毎度ご迷惑をお掛けしております。
29日には続きを投下できそうです。
今回は>>666も実行していますので、もう少しだけお待ちください。

予定よりも多めに時間が取れたので、今晩22時頃から続きを投下しようかと思うのですが、どうでしょうか。

【前回のあらすじ】
ゾッ



斉木(時刻は朝8時20分。遅刻常習犯も含め、食堂にはいつもの顔ぶれが揃ってきた)

斉木(こうして辺りを眺めていると、生徒間で少しずつ人間関係が築かれていることが伺える)

斉木(例えば……)

大神「今日のトレーニングは何時から行うか……」

朝日奈「朝食会が終わって少し休憩してから……9時半でいいんじゃない? あっ、それ運ぶよ!」

斉木(体育会系女子の朝日奈さんと大神さんは、この生活が始まってすぐに打ち解けたらしい)

斉木(2人とも早起きなのもあって、朝食はいつも彼女達が準備してくれている)

斉木(それから……山田とルーデンベルクさん)

山田「ほ、本日のモーニングミルクティーでございます」

セレス「では一口……」コクッ

斉木(執事とお嬢様のような謎の主従関係が築かれている)

セレス「――ロイヤル以外のミルクティーなんざちっとも美味くねぇんだよ!! とっとと淹れ直せビチグソがぁぁぁぁぁ!!」パリーン

山田「ぶひぃぃぃぃぃぃ!?」

斉木(いや……下僕と女王の方が正しいかもしれない)

斉木(後は……似た者同士なのか、桑田と葉隠がよくつるんでいるな)

斉木(石丸と大和田は立場上すぐにいがみ合うものの、そこまで仲が悪いわけではないと思う)

斉木(……そして、この僕にも行動を共にする人物がいる)

苗木「おはよう斉木クン! 今日はいつもより早く来てたんだね」

斉木(友達かと言われると首を傾げてしまうが……コロシアイ阻止の協力関係にある相手を無下に扱うわけにもいかない)

苗木(そういえば昨日の幽体離脱作戦はどうだった?)

斉木(変な幽霊が居た。もう一度言おう、変な幽霊が居た)

苗木(……失敗だったんだね)

江ノ島「チョリッス苗木! 昨日はよく眠れたー?」

斉木(お前は本当に死語が好きだな)

苗木「お、おはよう江ノ島さん……今日はいつもより早起きなんだね」

江ノ島「まぁね! 昨日は久々に大好物が食べれたし! ところでさー、今朝はまだ舞園って来てない感じ?」

苗木「うん。見張り当番の人が一緒じゃないと部屋を出られないから……」

苗木(……見張り当番?)

苗木「斉木クン、今朝の見張り当番って誰だっけ?」

斉木(十神と不二咲だ。あの2人もまだ食堂に来ていない)

苗木「十神クンと、不二咲……さん……」

江ノ島「それってありえなくね? 不二咲は毎朝早起きっしょ、なんでまだ来てないワケ?」

斉木(あの2人は既に起きているが、別の場所でひと悶着あったみたいだ)

苗木(それって……コロシアイに発展しそうなこと?)

斉木(心配するな、些細なことだ。今は大人しく座っていよう……)

朝日奈「さくらちゃーん! 冷蔵庫のコーヒーゼリーってどうするのー?」

大神「食後に全員分持ってこよう……食べる直前まで冷やしておいた方が美味であろうからな」

朝日奈「わかった! じゃあしばらくお預けだね!」

斉木(十神と不二咲はまだ来ないのか)ガタッ

十神「…………」スタスタ

石丸「おはよう十神くん、遅かったではないか! 約束の時間を守りたまえ!」

十神「俺がいつお前らと約束をした」

石丸「なっ……!?」

十神「俺はコーヒーを淹れに来ただけだ。朝食会などという無益な集いに参加する気は無い」

霧切「……随分と協調性に欠けたことを言うのね」

十神「いずれ殺す相手と馴れ合うことに何の意味がある?」コポコポ

桑田「キョーチョーセーとかどーでもいいんだけどさー、オメー今朝の舞園ちゃん当番っしょ? それはどーすんだよ?」

十神「知ったことか。俺としては、あの女が誰かを殺して事態が進展した方が都合が良い」

桑田「コイツ……舞園ちゃんをあの女呼ばわりしやがった! ゼッテー許さねぇ!!」

斉木(十神が来た途端、一気に場の空気が悪くなった。心の声も十神への敵意が剥き出しだ……)

腐川(白夜様……大胆不敵なその態度、なんて素敵なの……!)トロン

斉木(約1名を除いて)

大和田「オイ、朝っぱらから何の騒ぎだよ……」

石丸「おはよう大和田くん、君も遅刻だな! もっと早起きしたまえ!」

十神「……フン、誰かと思えばプランクトンか。お前のような人種が居るから、俺は朝食会に参加する気が失せるんだ」

斉木(大和田が居なくてもどうせ不参加だっただろ)

大和田「丁度いい、十神。さっきそこで不二咲と会ったんだが……あの女を泣かせたの、オメェだろ」

十神「察しが良いな。不二咲千尋はこの期に及んで人を殺したくないとほざいたから、現実を突きつけてやった」

十神「『お前のような弱虫こそ、真っ先に殺されるべき人間だ』……とな」

朝日奈「ちょっと十神! そんな言い方……」

大和田「テメェこそブッ殺されるべきクズ野郎だろうが!!」ガッ

朝日奈「やめなよ大和田もっ!」

十神「すぐ暴力に訴える単細胞がどの口で俺をクズと言うんだ?」

大和田「女を泣かせる野郎なんざ総じてクズだクソがァ!!」

苗木(不二咲クンって本当は男なんだけどなぁ……)

大和田「それとも何だ? 御曹司ってのは弱い者いじめが趣味なのかよ?」ビキビキ

斉木(お前不二咲の地雷をことごとく踏み抜いてるぞ)

斉木(だが……僕も十神の言動を快くは思わない。ミステリーでは集団から外れて行動するのは典型的死亡フラグじゃなかったのか……?)

十神「何とでもほざいていろ。馴れ合いの空気でコーヒーがぬるくなる前に、俺はこの場を立ち去るとしよう」スタスタ

大和田「オイ待てコラ! 不二咲に詫びのひとつもねぇのかよ!」

斉木(自分から謝るつもりは毛頭ないようだな。後でサイコキネシスでも使って十神のコーヒータンブラーを破壊してやろう)

セレス「けれど……困りましたわね」

セレス「十神くんが舞園さんの見張りを放棄してしまっては、いつまでも彼女を迎えに行けませんわ」

桑田「んなモン別に不二咲1人で行きゃいいだろ?」

霧切「いいえ、それだと2人のうちどちらかが殺された時にアリバイを立証できないの」

霧切「ただでさえ舞園さんが真っ先に疑われる状況なのに……捜査が難航してしまうわ」

苗木(そうか。学級裁判の結果はそれぞれの投票によるから、先入観を払拭するだけでも一苦労だろうな……)

大和田「……なぁ霧切、十神の代わりにオレが不二咲と組んでもいいか?」

霧切「別に構わないけれど、どうしてあなたが面倒を引き受けようと?」

大和田「別に……女を泣かせたままにしたくねぇだけだ」

大和田「朝食会は先に始めててくれ。オレは不二咲と一緒に舞園を連れてくる」

斉木(……大和田は不二咲を気遣っているようにも見えるが、実際はもっと複雑な感情によって行動しているようだ)

斉木(まぁ、あいつもプランクトンほど単純な人間じゃなかったということか)

江ノ島「ねーねー! ご飯冷めちゃうよー?」

斉木(お前はもう少し複雑な人間になれ)

【数時間後・食堂】

斉木(………………)モニュモニュ

斉木(……十神が朝食会を欠席したお陰でコーヒーゼリーが1個余った)モニュモニュ

斉木(給食のプリンよろしく、じゃんけんによる争奪戦が勃発したが……参加者は僕が一瞬で捩じ伏せた)モニュモニュ

斉木(そして今、僕は昼食のデザートとしてコーヒーゼリーを食べている)モニュモニュ

斉木(やはり大神さんは料理が上手だな。芳醇で贅沢な味わい……これっぽっちも嫌いじゃない)モニュモニュモニュモニュ

不二咲「あっ、斉木くんだぁ!」

大和田「オレらはこれから昼飯なんだ。隣座るぜ」ガタン

斉木(不二咲と大和田か。見張り当番は終わったようだな)キリッ

不二咲「うん! 舞園さんと3人で購買部に行ってきたんだぁ」

大和田「モノモノマシーンをブッ叩いてやったらラッキー5連チャンになったんだが……」

大和田「5つとも同じやつが出たんだよ!! 子猫のヘアピンなんざ5つもいるかってんだクソがぁ!!」

斉木(因果応報という言葉を知ってるか?)

不二咲「それからね、大和田くんと“男の約束”をしたんだよ!」

斉木(男の約束……不二咲が食いつきそうな言葉だな)

大和田「不二咲はもう泣かない、オレは誰かに暴力を振るわない。オレと不二咲が誓った“男の約束”だ」

斉木(お前さっきモノモノマシーンに暴力振るったって言ってなかった?)

不二咲「男の約束は死んでも守るものだから、破ったら絶交なんだって……」

斉木(絶交という言葉を小学校以来久々に聞いたぞ)

不二咲「でもね、大和田くんと絶交するのは嫌だから、泣きたくなっても我慢するんだ!」

大和田「……ってわけだから、オレもウカツに十神を殴れねぇんだよなぁ」

不二咲「男の約束……破っちゃうの……?」ウルウル

大和田「冗談だよ冗談! だから泣くんじゃねーって!」アセアセ

不二咲「だよねぇ……よかったぁ!」

斉木(仮にこいつらが絶交したとしても翌日には仲直りしそうな気がする)

【斉木の個室】

斉木(コーヒーゼリーを食べ終えたので自分の部屋に戻ってきた)

斉木(今は特に用事も無いし、自由行動安価をやっておこう)

斉木(例によってルールは>>52参照だ。指名できない生徒は……霧切さん、桑田、山田、苗木、大神さんの5人だな)

斉木(……重複禁止のルールさえなければ、もう一度大神さんと共に行動してコーヒーゼリーを作ってもらうんだが……)ショボン

斉木(おっと、説明は途中だった)キリッ

斉木(舞園さんを見張っている最中の2人は指名不可の決まりだが……今は苗木と霧切さんの2人だから関係無いな)

斉木(それから舞園さんを指名した場合には、苗木と霧切さんを入れた4人で行動することになる)

斉木(これら諸々のことに注意して……今回は【安価下3】のところへ行こう)

斉木(よし、今回は十神のところへ……)

斉木(……十神? 十神だと?)

斉木(……まぁいい、まずは移動しよう)



【校舎2階・図書室前】

斉木(十神白夜。十神財閥の激しい後継者争いに勝利した“超高校級の御曹司”だな)

斉木(当然あいつは単なる運で後継者になれたわけじゃない。天性の才能と並々ならぬ努力の賜物だ)

斉木(しかし……あいつはあまりに他者を見下し軽蔑している。“超高校級”という点においては御曹司も暴走族も同列なんだがな)

斉木(…………僕は今とても迷っている)

斉木(自由行動安価といっても、各生徒ごとにある程度の行動の方針は事前に立ててあるのだ)

斉木(苗木なら“苗木流自由行動に密着”、山田なら“スペシャライザーの話を振ってみる”といった具合にな)

斉木(だが……十神だけはそれが無い。僕と十神が2人きりになったらどんな行動を取るべきか、全くもって思いつかないのだ)

斉木(……そんなわけで、今回は特別に安価に丸投げする)

斉木(現在の十神は優雅に読書中のようだ。僕はどうするべきか……>>756に委ねてみる)

斉木(……安価の結果がどうなったとしても、タンブラーは最後に破壊してやるつもりだ)

十神自身が超能力に目覚めたように錯覚させて反応を楽しむ

斉木(神降臨とは正にこのことか)

斉木(これは僕としても楽しみだ。早速図書室へ入って十神に悪戯してみよう)ガチャ



【図書室】

十神「……お前か」

十神「ジャンケンなどという児戯で希望ヶ峰に入った人間も活字を読むんだな」

斉木(うるさい。読書は僕の数少ない娯楽だ)

斉木(やはり十神には痛い思いをさせてやるべきだ。あいつは今、何を考えているんだ……?)

十神(……喉が渇いた。またコーヒーを淹れてくるか……)

斉木(……成程。その必要は無いぞ、超能力者はサイコキネシスで飲み物を引き寄せられる)フォン

十神(…………今度は誰だ、落ち着いて本も読めない……)

十神「って……水筒が勝手に入ってきただと!?」

水筒「^^」フワフワ

十神(これが斉木の仕業とは思えない……まさか俺がコーヒーを飲みたいと念じたからか!?)

水筒「^^」コトン

十神「いいだろう……飲んでやる」ゴクゴク

十神「!?」ブフォ

十神(なんだこれは……とてつもなく不味い……!!)ゲホゴホ

斉木(おいおい、御曹司とあろうお方が青汁と乾汁の区別もつかないのか?)

斉木(監視カメラのことは心配するな。僕は十神から離れたところで本棚を物色するフリをしている)

斉木(今使っている超能力は全て十神のせいにしているし、モノクマにバレる心配は無いだろう)

斉木(そんなことより……超高校級の御曹司も乾汁には勝てなかったようだ)

十神(口の中が焼けるように痛い! ……せめて……せめて普通の水を……!!)

ミネラルウォーター「」フワフワ

十神(今度はペットボトルが飛んできた!?)

十神(まさか……まさか俺は魔法や超能力の類が使えるようになったのか……!?)ゴクゴクゴクゴク

十神(ありえない……ありえないがしかし…………!!)ゴクゴクゴクゴク

十神「………………」プハッ

十神「…………本よ、元の棚に戻れ」ボソッ

斉木(超能力は声に出さなくても使えるぞ)フォン

十神「なっ……間違いなく元の棚に戻っていった……!!」

十神「やはり俺は魔法使いの才能に目覚めたということか……!!」パァァァァ

斉木(それ魔法じゃなくて超能力なんだけど)

十神「幼い頃に憧れていた>>761の魔法も使えるかもしれない……!!」

浮翌遊

十神「これなら……幼い頃に憧れていた浮遊の魔法も使えるかもしれない……!!」

十神「俺の体よ、宙に浮け!!」ビシッ

斉木(よほど嬉しいのか珍妙なポーズまで取り始めた)

十神「…………何も起こらないな」

十神「水筒やペットボトルを飛ばせるんだ、俺の体を浮遊させられないわけがない……」

十神「もしかして……空を飛ぶには箒が必要なのか!?」

十神「この図書室にも掃除用具箱は備わっている……」ガチャ

十神「学校用の回転箒に跨って……」

十神「箒よ! 空を飛べ!!」ビシッ

斉木(御曹司さん超ノリノリだな)フォン

十神「やった……遂に空を飛べた……!!」フワッ

十神「この力で俺は完全犯罪を成し遂げ、十神財閥を生まれ変わらせてやる……フハハハハハ!!」フワフワ

十神「ドアよ開け! 箒よ前に進め!」ヒュン

十神「このまま校内を箒でドライブしようじゃないか! まずはプールの天井を触りに――」

モノクマ「あのさぁ」

十神「」ピタッ

モノクマ「殺人事件に魔法とか使うなんてさー、どう考えてもアンフェアじゃない?」

モノクマ「そんなわけだから校内で魔法を使うの禁止ね! 破ったらオシオキだよ!!」

十神「せめて……せめて殺人以外の用途に使うのは……」

モノクマ「ダメったらダメ! 御曹司なんでしょ、それくらい我慢なさい!」

十神「…………………………」ウルッ

斉木(……可愛そうだからタンブラーは破壊しないであげよう)

【校則が追加されました】
『学園内で魔法を使ってはいけません。』

【寄宿舎1階】

斉木(寄宿舎へ戻ってくると、脱衣所の方から心の声が聞こえてきた)

斉木(それもただならぬ音量のテレ(ぬおおおおおおおおおお負けるものかああああああああああああ!!!!!!!!)で)

斉木(僕自身の心の声も掻き消され(暑さにやられるかよクソがあああああああああああああああああああああ!!!!!!!)ほどだ)

斉木(………………)イラッ

斉木(少し様子を見てこよう。そしてなるべく早めに黙らせてやろう)



【脱衣所】

セレス「あら斉木くん、ごきげんよう」

舞園「お風呂なら後にした方がいいですよ……今は取り込み中ですから」

不二咲「うぅ……2人が死んじゃっても、泣いちゃダメだ……!」グスッ

石丸(正義は必ず勝つ! 正義は必ず勝つ!! 正義は必ず勝つんだああああああああああああああああああああ!!!)

大和田(オレは強ぇ! オレは強ぇ!! オレは強ぇんだああああああああああああああああああああ!!!)

斉木(問題の心の声は、大浴場の一番奥……サウナの中から聞こえてくる)

斉木(大和田と石丸がサウナで我慢比べをしているようだな。苗木の微かなぼやきは……立会人を任されでもしたのか?)

不二咲「うん……石丸くんが大和田くんを根性無しだって言って……」

舞園「怒った大和田くんが、どちらが根性のある男か白黒つけようって、サウナ対決を持ちかけたんです」

斉木(やっぱプランクトンはプランクトンか)

セレス「またしても問題発生ですわ。現在舞園さんの見張り役を務めているのは、わたくしと石丸くんなのです」

舞園「夜時間も近いのに、このままじゃ私は自分の部屋に帰れません……」

斉木(十神の時みたいに不二咲が代理役になれば済むんじゃないのか?)

セレス「霧切さんの許可を得ないまま勝手な行動をするなんて……胸が痛みますわ」

斉木(ちっとも痛んでないだろ)

斉木(やれやれ、やはりここに来たのは間違いだった。見なかったふりをして立ち去ろう――)クラッ

――――――――――

モノクマ『というわけで……今から24時間以内にクロが出なかったら、その紙に書いてあるオマエラの秘密を世間に公表しちゃいまーす!』

不二咲『そ、そんなぁ!?』

大和田『マジかよ……!!』

苗木『モノクマ……どうしてこんなことを……!』

モノクマ『だってオマエラ、ここ最近やけに仲良しこよしで事件とか起きそうにないんだもん!』

――――――――――

斉木(今のは……予知か。頭痛もしたしサイコメトリーではなさそうだ)

斉木(どうやらモノクマは新たな動機を造ることで僕たちを殺人に駆り立てるつもりらしい)

斉木(次なる事件を防ぐためにも、早急に対策を取らなければならない。今回は苗木の協力が無くても事足りそうだ)

斉木(だがその前に……)ズカズカ

【大浴場】

苗木「斉木クン! 聞いてよ、大和田クンと石丸クンが大変なんだ!」

斉木(話はルーデンベルクさんたちから聞いた)ズカズカ

苗木「ほんと? じゃあ斉木クンは2人を止めに来てくれたんだね!」

斉木(ああ、2秒で止めてやる。SSとして書かれていないだけで、今も心の声が喧しいからな……)スッ

斉木(“パイロキネシス”)ボッ

大和田「」バタッ

石丸「」バタッ

苗木「えっ」

斉木(一瞬だけサウナの室温を発火点ギリギリまで上昇させた)

苗木「それ下手したら2人の息の根まで止まっちゃうよね!?」

斉木(心配するな、命に別状は無い。後は適当に看病しといてくれ)スタスタ

苗木「一番面倒なことを任せないでよ!!」



斉木(――耳障りな心の声は消えた。これで安心して黒幕の根城へ乗り込める)

【午前1時・倉庫】

斉木(夜時間も深くなってきた。ほとんどの人間は深い眠りに就いている)

斉木(これくらいの時刻になれば、僕が>>666を実行しても……)

斉木(……じゃなかった、黒幕のもとへ殴り込みに行っても他人にはバレないだろう)

斉木(黒幕と直に接触するにあたって、僕も細心の注意を払ってある)

斉木(まず、自室のベッドにはダミーとして適度に布類を突っ込んできた。これで僕は掛け布団の中に潜り込んでいたと言い訳できる)

斉木(次に、僕のイメージとは掛け離れた服をアポートして着替えておいた)

斉木(日中の十神の件もあるし、黒幕には魔法で侵入してきた魔法使いだと思われるだろう)

斉木(そしてこれが最大のポイントだ。服装が変わろうが外見を変えなければ僕の仕業だと丸分かりなので――)

斉木楠子(――女の子に“変身”しておいた)

楠子(“変身”はその名の通り、自分の姿を変える超能力だ。現在の僕は生物学上正真正銘の女性になっている)

楠子(当然デメリットもある。姿が変わるまでに2時間も掛かるし、実在の誰かに変身することはできない)

楠子(おまけに超能力も普段よりパワーダウンしてしまうが……)シュンッ



【校舎4階】

楠子(それでも僕のスペックが常人よりかけ離れていることに変わりはない)タンッ

楠子(ふぅ……この姿だと気兼ねなく超能力を使えるな。いくら目立っても“斉木楠雄”が怪しまれることはない)

楠子(とはいえ油断は禁物だ。黒幕が居る情報処理室へ行き、動機提示を阻止しよう)

【情報処理室】

黒幕「あーあ……食糧補充し終わった後ってホントに退屈だなー」

黒幕「十神くんはずっと図書室で本を読んでるしぃ、後のみんなはぐっすり夢の中だしぃ……」

黒幕「大和田くんと石丸くんが脱水で倒れたらしいけど、脱衣所にカメラは無いから監視できないしぃ……」

黒幕「つまんないつまんないつまんないー!!」ジタバタ

黒幕「舞園さんが苗木くんを刺しちゃった時は絶望で全身がゾクゾクしたのに……」

黒幕「あの素晴らしい絶望をもう一度味わえないかなぁ……」

黒幕「…………ん?」

黒幕「無人のはずの4階廊下に人影が見えるけれど……アタシの気のせいかな?」

黒幕「いや……気のせいではなさそうだね。ファンシーなドレスを着た少女が4階を探索している」

黒幕「この学園にいるのはアタシを含めて17人だけのはずだけど……あの娘は何処から迷い込んだのかな?」

黒幕「まあ侵入経路は気にしないでおこう。どう足掻いたってあの娘は――」

黒幕「アタシに殺される運命だからね」ポチッ

【校舎4階・廊下】

楠子(殺される運命? 僕がそう簡単に死ぬわけないだろ)シュタッ

楠子(槍を降らせるなら本数を増やせ。でないと簡単に躱されてしまうぞ?)シュバババババ

黒幕(このアマぁ! ちょこまか逃げんじゃねーよ!)ポチッポチッ

楠子(やれやれ……ついでだから学園長室にも入って情報収集したかったが……)フォン

楠子(ここまで手厚く歓迎されたら、あのドアにすら近づけないじゃないか)バシュッ

楠子(黒幕のやつ、よっぽど僕に構ってほしいようだな……)タタタタタッ

楠子(……いいだろう)ピタッ

楠子(少々手荒になるが、覚悟しておけ……!)ガシャン

黒幕「うそ!? 鍵掛けてたのに開いちゃったんだけど!!」

楠子(この程度のセキュリティなら設けるだけ無駄だ。1秒の時間稼ぎにもならないぞ)

黒幕(こいつ……直接脳内に……!?)

楠子(僕は外から来た魔法使いだ。お前の悪行を止めに来た)

黒幕「ちょっとタンマタンマ!! 魔法は校則違反だから使うの禁止だってば!!」

楠子(知ったことか。僕が要求することはただひとつ……)

楠子(このコロシアイ生活を終わらせ、希望ヶ峰学園の生徒たちを解放することだ)

楠子(逆らうならばお前の首を刎ねてやる。どうだ、降伏するか?)

黒幕「……ふっふっふっふ……」

黒幕「ふっふっふ……はーっはっはっはっは!!」

黒幕「面白い! 面白いぞ魔法少女!! この私様が呑むわけのない条件をわざと突きつけてきたわね!?」

楠子(とりあえず見事な二段笑いを実演してくれてありがとう)

黒幕「これは失礼。私のもとへ人が訪ねてくるのは貴方が初でして、つい取り乱してしまいました」

楠子(嘘つけ。内通者をカウントしろ)

黒幕「おっしゃる通りです。正式には“内通者を除いて貴方が初”ですね」

黒幕「しかしながら、貴方は生徒の中に内通者が存在することを把握済みの様子……」

黒幕「ならば貴方は、私を殺しても無益だとご存知なのでは?」

楠子(やれやれ……流石の分析力だな。このコロシアイ学園生活を企て実行しただけのことはある)

黒幕「分析力だけではありません。洞察力、思考力、判断力、身体能力や女子力など、私はありとあらゆる能力に秀でています」

黒幕「これらの力を結集すれば貴方が超能力を使えることもお見通しです」

楠子(要するに才能を持て余してるんだな)

黒幕「おっと、話が脱線しちまったなぁ! オメェがホントに要求することを言ってみな!」

楠子(……お前は生徒たちを煽動するために、各人の秘密を握って脅そうと考えていたな?)

黒幕「うっわスゲーなんで当てちまったんだよ(棒)!?」

楠子(僕の真の要求は……“その脅迫を実行しないこと”だ)

黒幕「そんなことでいいんですか……? なんだか拍子抜けです……」

楠子(“内通者の人質を解放すること”も候補に入れていたんだが……ひとまずこちらを優先させる)

黒幕「いいですよ。分かりました」

楠子(え?)

黒幕「明日の夜時間直前に生徒を体育館に集め、各々の秘密を記した封書を渡して殺人を教唆する予定でしたが……」

黒幕「人質を解放するのは嫌ですし……あなたの要求を受け入れることにします」

楠子(それは……本当か? 何か裏があるんじゃないのか……?)

黒幕(裏があってもどうせあなたには隠し通せないのでしょう?)

楠子(分かってるじゃないか黒幕)

黒幕「僕っ娘魔法少女は……私にとって未知の存在です……」

楠子(正直僕にとっても未知の領域だ、こんなの二度としたくない)

黒幕「下手に抗って殺されるのもそれはそれで絶望的ですが……」

黒幕「ここは大人しくあなたの要求を呑むのが最善の手でしょう……」

楠子(……その言葉に嘘偽りは無いようだな)

楠子(少々不安は残るが、僕もお前に手出しはしないでおこう)

黒幕「その代わり……私のくだらない質問に答えてください……」

楠子(……まあいい。僕の素性に関わること以外なら答えよう)

黒幕「うぷぷぷぷ! じゃあ僕っ娘魔法少女さんのお言葉に甘えて……」

黒幕「魔法少女の中には、絶望に打ちのめされると化物に変身しちゃう女の子もいるんでしょ?」

黒幕「だったらさ……キミは何かに絶望したことある?」

楠子(……………………)

楠子(絶望したところで、現状は何ひとつ変わらないだろう)

黒幕「……ふーん。絶望的に退屈な答えをありがとう」ニコッ

楠子(さて、僕はこの場を去るが……約束を破った場合は損得関係無しにお前の首を刎ねに来るからな)シュンッ

黒幕「うわー消えた! さっすが僕っ娘魔法少女!!」

黒幕「はぁ……いつかあの娘にも教えてあげたいなぁ」

黒幕「現状を何ひとつ変えられないからこそ味わえる、本物の“絶望”を……」ゾクゾクッ

【寄宿舎1階・脱衣所】

楠子(やれやれ……予定よりも長くあの部屋に滞在してしまったな)タンッ

楠子(いつもの制服はあらかじめロッカーに入れてある。後は着替えを済ませて変身を解除するだけだ)

楠子(しかし……“超高校級の絶望”の心の声を至近距離で聞き続けたからか、体調があまり優れない)

楠子(去り際に黒幕の首の裏を“トン”と叩いて気絶させてやればよかったか……?)

楠子(……そんなことしても焼け石に水か。絶望テレパシーにはもっと根本的な対策をしないと……)ヌギヌギ

桑田「やっべ! 大和田の見舞いに来た時にキャットドッグプレス置いてきちまっ……た……」

桑田「……………………」カァァァァァ

楠子(それとあの部屋にあった壊れたテレビ……一体何だったんだ……)ヌギヌギ

楠子(……って、桑田? お前いつの間に……?)

桑田「…………あの」

桑田「ノーブラでトランクスってマジ刺激的っすね」

楠子(黙れ)トン

桑田「」ドサッ

今回は以上です。
書き込み前の段階では楠子はジャージ姿で乗り込んでいました。
不快にさせてしまったら申し訳ありません。半分は>>1のせい、もう半分は十神のせいです。

遅筆と多忙が相まって超スロー進行になっていますが、月1~2回は投下できるように頑張ります。

ごめんなさい……誤植を発見しました。
>>773で黒幕が「あなたが超能力を使えることもお見通しです」と言っていますが、
黒幕は楠子の能力を超能力ではなく魔法によるものだと思い込んでいます。
よってここの台詞は、
黒幕「これらの力を結集すれば貴方がクーデレ属性の魔法少女であることもお見通しです」
とかに脳内で差し替えておいてください。
多分これも十神のせいです。

念のため書いておきますが、SS速報VIPは基本的に保守の書き込みが不要なシステムの掲示板です。

■ SS速報VIPに初めて来た方へ
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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399385503/)

お気持ちはありがたいのですが、折角なら内容のある書き込みの方がモチベーションに繋がって嬉しいです……

ところで質問なのですが、このSSの読者の皆さんの中に
斉木は知っているけれどダンガンロンパは知らない、という方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
斉木は現ジャンプ連載作品の中でも読者の平均年齢が低いという噂を耳にしたので、
対象年齢17歳以上のゲームとクロスさせて良かったのか、今更ながら不安になってきまして……
気の早い話ですが、結果によっては2スレ目の頭に低年齢層向けの注意書きを追加しようかと考えております。

本編の方はそこそこ大きな展開があるので、投下までにはもうしばらく時間が掛かりそうです。
毎度ながらすみません。

ご意見・ご協力ありがとうございます。
ダンガンロンパより斉木の方をご存じの方が多かったのが意外でした。流石ジャンプ……
やはり僅かながら若年層の斉木ファンも流れ込んでいるようなので、次スレの冒頭には注意書きを付け足しておきますね。
ちなみに17歳以上対象のエログロ展開をやる予定は無いです。>>1が書けません。

続きが中途半端に長くなりそうなので、区切りの良いところまで投下します。

【前回のあらすじ】
僕っ娘魔法少女



――――――――――

モノクマ『だーいせーいかーい! 今回のクロは大和田紋土くんでしたー!!』

石丸『信じないぞ……僕は……信じない……』

大和田『……すまねぇ、石丸』

石丸『何故だ!?』ガシッ

石丸『何故だ……何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!?』

石丸『何故……そんなことをしたんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

――――――――――



斉木(――っ!!)ガバッ

斉木(何だ……ただの予知夢か。テレパシーの数は減っていない、全員無事だ)

斉木(いや、今後無事では済まないからこその予知夢か。どうやら大和田が誰かを殺してクロになるようだが……)

斉木(いくらあいつが超高校級の暴走族といえども、簡単に人を殺すほどのプランクトンには思えない)

斉木(黒幕には昨日動機提示を中止するよう脅しておいたし、いざとなれば本気で黒幕を立体パズルのピースにしてやれる)

斉木(……念のため苗木にも伝えて、2人体制で大和田の様子を見ていよう)

【寄宿舎1階・廊下】

斉木(その前に、今朝の僕にはすべきことがある)

斉木(腐川さんと2人で舞園さんを迎えに行く……そう、僕にもやっと見張り当番が回ってきたのだ)

斉木(というわけで僕は今、舞園さんの部屋の前に立っている)

斉木(だが……当番を組む相手が腐川さんだというのは先行きが不安になってくる)

腐川「……な、何よ」ギロッ

斉木(僕の心境を察したのか、こちらを睨みつけてくるし……)

腐川「あんたのことだもの……どうせあたしなんかと二人一組になって心底ガッカリしてるんでしょ!?」

斉木(被害妄想癖を遺憾なく発揮してくるし……)

腐川「あんたなんてこっちから願い下げだわ! クール系眼鏡男子なんて白夜様とキャラ被りまくりなのよ!!」

斉木(こんな風に十神と比較して難癖つけられるし)

斉木(僕は腐川さんと組むこと自体はそこまで嫌ではない。問題は腐川さんが抱えている“大きな爆弾”の方だ)

斉木(腐川さんは極度の血液恐怖症だ……彼女に血の一滴でも見せると大混乱が生じてしまう)

腐川「それより……インターホン押さなくていいの? 舞園絡みで問題が起こったらあんたの責任よ……?」

斉木(安心しろ、連帯責任だ。それにインターホンを押さないのにも歴とした理由がある)

斉木(透視とテレパシーのせいで舞園さんの部屋の状況は手に取るように分かるのだが……)スゥゥゥ

舞園(どうしよう、制服のボタンを付け直してたら指刺しちゃった……!)アセアセ

斉木(現在タイミング良く流血中だ)

腐川「ああもう! 早くあたしを解放してよ!!」ピンポーン

斉木(! まずい、このままだと舞園さんの傷を見た腐川さんが卒倒してしまう……!)

斉木(かくなる上は……)

舞園「はーい、今行きま」ガチャ

斉木(恥を忍んで舞園さんの手を握る)ギュッ

舞園「えっ……!? 斉木くん、いきなり何を……」

腐川「不潔よ不貞よインモラルよ! だからあんたとなんか組みたくなかったのよぉぉぉぉぉ!!」

斉木(おっと語弊があったな。正確には『舞園さんの手を握って傷口にポケットティッシュを押し当てる』だ)

斉木(本来はティッシュのような繊維質のものを傷口に押し当てるのは応急処置として間違っている)

斉木(しかし、この学園に医学に精通した人はいない。正しいやり方はどこかの世界に居るスーパー校医に任せるとして……)ゴソゴソ

斉木(アポートで絆創膏を引き寄せ、舞園さんの指に貼る)ペタリ

斉木(そしてその上から復元能力を使えば、もう血が流れる心配もない)キィン

舞園「ありがとうございます。流石超高校級のジャンケニストさん、桁外れの動体視力ですね!」

斉木(疑念を抱かないでくれたのは嬉しいがこじつけが強引すぎる)

腐川「……動体視力? 斉木が何をしたわけ……?」

舞園「私の指先の怪我を見つけて、瞬時に手当てをしてくれたんです」

腐川「ななな何よそれ!? 人外じみてるわ!!」

斉木(元から人外だ)

【食堂】

斉木(食堂に着くと、大方の人間は既に揃っていた)

斉木(相変わらず十神の姿は無い。あいつは今日も図書室で優雅にモーニングコーヒーを飲んでいるようだな)

斉木(……それにしても)

大和田「どうだ石丸! オレはもう6人分のメシを並べたぜ!!」シュバババババ

石丸「やるな大和田くん! しかし配膳が間違っているぞ、主菜の正しい位置は左奥だ!!」シュバババババ

斉木(こいつら昨日よりやかましくなってないか?)

舞園「いいじゃないですか、仲が良いに越したことはありませんよ」

斉木(いい加減そのエスパーごっこをやめてくれ)

苗木「……おはよう斉木クン」

斉木(苗木か。お前なら昨日の一部始終を知っているはずだ、どういうことか説明しろ)

苗木「………………」

苗木(ボクが話さなくたって、斉木クンならテレパシーで簡単に分かるでしょ?)

斉木(分からないから尋ねているんだ。まあ、今の苗木は介抱を手伝わなかった僕に対して怒っているようだがな)

苗木「……サウナから大和田クンと石丸クンを運び出したり、夜時間間際に冷水を用意したり」

苗木「2人同時に倒れたことを伝えたら、石丸クンと大和田クンがお互いをライバルとして認め合っちゃったり」

苗木「更に勝負を続けようとするのをみんなで押さえたり……」

苗木「……どのくらい大変だったかなんて、体験してない斉木クンには分かりっこないよ」プイッ

斉木(なんやかんや僕に説明してくれるあたりお前は本当にお人好しだよ)

石丸「ああ、彼には分かりっこない! 分かりっこないな!」シュバババババ

石丸「“好敵手”と書いて“とも”と読む、僕と大和田くんの関係の素晴らしさも分からないだろう!」シュバババババ

斉木(そんな素晴らしさ永遠に分からなくていいです)

大和田「“とも”だァ? オレらはそんなチャチな関係じゃねぇ……“宿敵”と書いて“マブダチ”だろうが!!」シュバババババ

斉木(結局敵と味方のどっちなんだ?)

石丸「この配膳対決が終わったら食器洗い対決! それも終わったら掃除対決!!」シュバババババ

大和田「昼は最速カップラーメン早食い対決、午後はプールで競泳対決だコラァ!!」シュバババババ

石丸「男同士の戦いは炎よりも熱いのだ!!!」シュバババババ

腐川「男って単純ね……くだらないわ」

斉木(男を一括りに扱わないでくれ、あれはバカな男のパターンだ)

舞園「……とりあえず、朝食の支度は順調に進んでるみたいですね」

斉木(バカ2人の対決が流血沙汰に発展しないことを祈ろう)

斉木(……苗木、頼みたいことがある)

苗木(今度は何? またボク1人が大変なことは嫌だからね……)

斉木(大和田と石丸の対決に同行し2人を見張っていてほしい)

苗木「案の定ボク1人が大変なことだ!!」

斉木(諦めてくれ。僕は昼まで舞園さんから離れられないんだ)

斉木(それに……大和田と石丸の身に何かが起こるという予知夢を見てしまった)

苗木(まさか……2人が殺人を……!?)

斉木(役目を終えたら僕も合流する。それまでの間の辛抱だ)

斉木(危険な対決をしようとした場合、お前がどうにかして止めてくれ……)

舞園「なんだか面白そうですね!斉木くん、腐川さん、私たちも2人の対決を観戦しませんか?」

苗木「それに賛成するよ! ボクも舞園さん達と一緒に過ごしたいな」ニッコリ

斉木(まあ薄々こうなる気はしていたよ)

腐川「……あたしは嫌よ」

腐川「本当なら今すぐにでも白夜様のお姿を拝見したいのに、あんな連中の低能な勝負を見るなんて、時間をドブに捨てるようなものだわ……」

舞園「先入観だけで判断することこそ勿体ないですよ! もしかしたら腐川さんの小説のネタにできるかもしれないでしょう?」

腐川「あたしの恋愛小説は純度100%の妄想で出来てるの、馬鹿にしないで!!」

斉木(そこを力説されましても)

石丸「なればこそ妄想の外側の世界を知るべきだ!」グッ

斉木(お前配膳対決はどうした?)

石丸「世の中にはどれほど座学を極めても知り得ない事象がある! それを知るには未知の領域へと足を踏み入れねばならないのだ!」

石丸「現に僕は“宿敵”と正反対の男と対決したことで、所謂チンピラへの印象が大きく変わってしまった!!」

石丸「未知との出逢いは化学反応を引き起こす! どうだ腐川くん、僕達の試合を

苗木「そうだ! 掃除対決の舞台を図書室にするのはどうかな?」

腐川「図書室!? 図書室なら白夜様に会えるわ!!!」バッ

斉木(……石丸の熱弁は何だったんだろうな)

大和田「おい“宿敵”! さっさと勝負に戻れよ!」

【校舎2階・図書室】

十神「……で、お前らは騒音を立てるために図書室へ来たのか?」

石丸「断じて違うッ!!」サッサッサッサッ

大和田「“宿敵”同士で戦うためだコラァ!!」フキフキフキフキ

斉木(などと供述しており現在も図書室の騒音公害は続いている模様です)

苗木「えーと……ここまで1勝1敗1分だから、決着をつけたいんだって」

腐川「そんな事情白夜様が聞くわけないでしょ!!」

斉木(お前の言動1レス前と矛盾してない?)

十神「何が宿敵と書いてマブダチだ。1人で殺人のトリックを考えた方が有意義な時間を過ごせるはずだが」

十神「それとも共犯関係になるつもりか? モノクマ曰く卒業できるのは実行犯1人だけらしいぞ?」ニヤリ

舞園「まあまあ。お昼前には引き上げますので少しくらい大目に見てくださいよ」

舞園「それに……本棚は整理してあった方が、目当ての本も探しやすくなると思いませんか?」

十神「……………………」

十神「…………俺は奥の書庫に篭る。扉を開けたら10点マイナスにするからな」

斉木(勝手にルールを作り始めた)

大和田「おう! 悪ィな!!」フキフキフキフキ

石丸「感謝するぞ十神くん!!」サッサッサッサッ

腐川「あたしもご一緒します白夜様ぁ!!」

十神「お前はこっちに来るな、舞園を見張っていろ」

腐川「はいぃ!!!」ビュンッ

十神「…………それと」

十神「魔術に関連した書籍を見つけたら俺のところに持ってこい。その場合は50点のボーナスだ」

斉木(お前本当に魔法使いを目指すつもりか)

【寄宿舎1階・食堂】

斉木(図書室掃除対決は石丸の辛勝だった。英語が読める分、魔術関連の洋書を多く見つけられたのが勝因らしい)

斉木(腐川さんは図書室に残ると言い出したので、僕は苗木を引き連れ、次の舞園さん当番のもとに来たんだが……)

桑田「だからよー、マジでホントの話なんだって!」ズイッ

斉木(……たった今、とても不快な心の声を聞いてしまった)

葉隠「信じねーぞ! 俺はオカルトは嫌いなんだ!」

桑田「信じる信じない以前の話だよ! オレはズェッテェーに見た、そして感じた!!」

苗木「2人とも何を話してたの?」

桑田「ヨッシャ、苗木なら信じてくれんだろ! ……あんまし大声で話せる内容じゃねーけどさ」

斉木(大声でも小声でも話してほしくない)

桑田「昨日の夜中、忘れ物したから脱衣所に行ったんだけどさ……」ヒソヒソ

桑田「ピンク色の髪の女の子が生着替え中だったんだよ!」

苗木「えっ……!?」カァァァァァ

斉木(…………屈辱だ)

苗木「そ、それって江ノ島さんの見間違いじゃないの?」

葉隠「そうだべ! 江ノ島っちの髪色はピンクゴールドって感じだべ!」

桑田「江ノ島じゃねーよ全く見たことない女の子だよ! メガネ掛けててクールっつーかアンニュイっつーか……」

桑田「歌に例えるとアルエとか何処へでも行ける切手みたいな……」

斉木(要するに綾波レイっぽかったんだろ)

桑田「しかもだぜ、その娘クールな感じなのにめっちゃフリフリのロリータドレス着てたんだぜ!?」

桑田「その上ロリータドレスなのにトランクス穿いてたんだぜ!? このチグハグっぷり超かわいくね!?」

葉隠「やっぱ俺には桑田っちの幻覚としか思えねーべ」

桑田「いーや幻覚じゃなかった!! オレはその娘に“トン”されて気絶しちまったんだけど……」

桑田「そのとき腕におっぱいが当たったんだよ! あれはD寄りのCだった!!」ガシッ

苗木「そんなこと力説しなくても……」

苗木(……それに斉木クン)

苗木(さっきから怖い顔してない……?)

斉木(気のせいだ。敢えてもう一度言う、気のせいだ)

苗木(…………そうだね。気のせいだね)

斉木(誤解を招きそうな言い方をするが……楠子状態の着替えを見られたことは大して恥ずかしくない)

斉木(問題は桑田が近付いてくることに気付かず着替えを続行していたことだ。普段の僕ならあのくらい簡単に気付けたはずだ)

斉木(あの晩は黒幕と接触するにあたり、入念な準備をして臨んだというのに……)

斉木(最後の始末をする段階で、アポの桑田に姿を見られ、あまつさえバストサイズまで把握されてしまった)

斉木(これを屈辱と言わずして何と言う……!!)ピキピキ

葉隠「そういや斉木っちの髪もピンク色だな。もしかすっと斉木っちが女そ」

苗木「なんてこと言うんだよ葉隠クン!!! 言いがかりにも程があるよ!!!!!」バッ

葉隠「むがもご」

舞園「……男子だけで何を話しているかと思えば
桑田くんってそんな人だったんですね」

桑田「へ? 舞園……ちゃん?」

舞園「まあスケベ丸出しな桑田くんのことですし、最低な幻覚を見ちゃうのも頷けますね」ジトー

桑田「違うって誤解だって! 本当にオレが見たありのままを話しただけなんだよぉ!!」

モノクマ「そうだそうだー! 僕っ娘魔法少女は桑田くんの前でありのままの姿を見せたに過ぎないんだよ!!」ピョーイ

桑田「全くだぜ……ってモノクマ!? オメーいつからそこに!?」

モノクマ「ボクはいつでもオマエラの心の中にいるよ!」

斉木(もう一人の目撃者が来てしまった)

苗木「お前……またみんなを煽動するつもりか!!」

舞園「しばらく登場しなかったから、私達も平和に過ごせていたのに……!」

斉木(>>1の力量不足を痛感させるようなことを言わないでほしい)

モノクマ「実はさー……桑田くんが見たっていう女の子、昨日ボクの部屋にも来たんだよねー」

葉隠「はぁ!? 幻覚じゃなかったんか!?」

モノクマ「桑田くんはともかくボクがそんな幻覚見るわけないでしょ!」

桑田「だから最初からそうだって言ってたろアホ!」

モノクマ「ボクはあの娘に惹かれて、もう一度会うことを夢見ちゃってさぁ……」

斉木(その夢が今実現中ということには気付いていないようだな)

モノクマ「そんなわけで、ボクはあの娘をおびき出すためのグーッドアイディーアを思いついちゃいました!!」

ピンポンパンポーン

モノクマ『えー、校内放送、校内放送……』

モノクマ『オマエラ、至急体育館にお集まりください。来なかったらオシオキだかんね!』

舞園「――これって、もしかして」ガクガク

モノクマ「おや? どうしたの舞園さん、顔色が悪いよ?」

桑田「オメーのせいだろ! オメーが校内放送で全員を集めてドラえもんのDVDを配るから、舞園ちゃんは……!!」

モノクマ「だーかーらー、それだけはボクのせいじゃないってば!」

苗木「とぼけるな!!」

斉木(すまん本当のことなんだわ)

モノクマ「じゃあボクは先に行ってるから、オマエラも早くおいでよ!」ヒュン

斉木(先に行くも何もお前の本体はずっと同じ場所に居るだろ)

葉隠「……モノクマがみんなを集めるなんて、占うまでもなく嫌な予感しかしないべ」

舞園「でも……行きましょう。行かなかったら、オシオキされてしまいます……」ヨロヨロ

苗木「待ってよ舞園さん!」

斉木(……舞園さんの頭の中で、苗木を刺してしまった記憶がフラッシュバックしている)

斉木(苦痛を隠しきれていないが、それでも自ら体育館へ赴こうとするのは……彼女のプライドのお陰だろうな)

斉木(僕も行くとしよう。黒幕は僕と交わした約束を破るつもりのようだ)

斉木(黒幕を倒すとしても事件が起こった後では手遅れだ。かと言って、今から楠子に変身していたのでは間に合わない……)

斉木(……やはり体育館で直接手を打とう)ガタン



斉木(……ところで)

大和田「~~~~~~~~!!!!」ズルズルズル

石丸「~~~~~~~~!?!?」ハフハフハフハフ

不二咲「だめだよぉ! もっとフーフーしないと舌をヤケドしちゃうよぉ!!」

斉木(何やってんだあいつら)

というわけで、今回はここまでです。
6月中にはChapter2終了まで進むことができるよう頑張ります。

このSSを読んでいる友人が、斉木を見てマジカル御曹司十神くんを思い出していました。

石丸「なんてことだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ビヤァッ

苗木「どうしたんだろう石丸クン……世界の終わりみたいな顔してるよ」

斉木(瑣末なことだ。気にするだけ損だぞ)

石丸「瑣末なことなんかではない! 日本人たるもの間違えてはならないほどの重要事項なのだっ!!!」ガッ

斉木(お前までエスパーの仲間入りか?)

石丸「だのに僕は……僕はもう日本人失格だぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

苗木「えっと……流石に日本人失格にはならないだろうから、何があったか話してみてよ」

石丸「流石苗木先生!! どうか僕の恥ずべき過ちを嘲笑ってほしい!!!」

斉木(いつ苗木がお前の先生になった?)

苗木(こないだの自由行動かな)

石丸「僕は先日……厳密には>>832で『主菜の正しい位置は左奥だ』と堂々語っていたが……」

石丸「本当は右奥に配置するのが正解だったのだぁぁぁぁぁぁああああああああっっっ!!!!!!!」ブワァッ

苗木(……気にして損した)

斉木(だから言ったろ)

苗木「そんなに思い悩むことはないよ。ボクはお茶碗を右側に置いても気にしないからさ……」

石丸「それはいけない! 和食の皿の配置には日本人の思い遣りの心が溢れているのだぞ!!」

斉木(急に泣き止んで解説を始めた)

石丸「日本人には右利きが多い! 食事の際は左手で食器を持って食べることを想定し、茶碗や副菜は向かって左側に置く!」

石丸「対する主菜は大皿に盛られるので、食器を置いたままでも食べやすいよう向かって右側の奥に配置するのだ!!」

苗木「右の手前には置かないの?」

石丸「汁物を手に取りづらくなるではないかっ!!!」論破!

苗木「しまった!」シュウン

斉木(発言力減ったぞ苗木先生)

石丸「社会に出向いても立派に胸を晴れるよう、食事のマナーについて勉強したというのに……」

石丸「僕は日本が誇る無形文化遺産を侮辱してしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ブワァッ

斉木(こいつホントめんどくさい)

大和田「そう泣くなよ、“宿敵”」

石丸「はっ! その声は……“宿敵”か!?」

苗木「大和田クン! いつからここに?」

大和田「話は最初から聞かせてもらってた。配膳のこたぁよく知らねーが、そう悩むほどのモンでもねぇと思うぜ」

大和田「“宿敵”……オメェ、左利きだろ?」

石丸「――――!!」

苗木「石丸クンにそんな設定あったっけ」

斉木(一応ゲームの公式サイトに行ったら左手でチョーク持って“清掃週間”と書き殴ってるぞ)

大和田「左利きなら左腕の届くところに大皿置きてーだろ。 オメェが間違えて覚えちまったのもしゃあないんじゃねーのか?」

石丸「だが……左利きは右利きという多数派のため、圧倒的我慢をすべき立場の人間だ」

石丸「配膳だけではない。右利きの人と腕がぶつかることも、右利き向けに設計された道具の数々も」

石丸「罫線の無い紙に横書きしたら字がどんどん斜めに上がっていってしまうことも……!!」

大和田「……だったらよ、“宿敵”。今日の昼飯はオレと一緒に鍋焼きうどん食おうぜ」





大和田「一品料理なら……配膳なんざ関係ねぇだろ?」ドヤッ



石丸「“宿敵”……! 君は馬鹿ではなかったのだな……!!」ウルッ





斉木(いや、どっちも十二分に馬鹿だよ)

苗木「結局ボクが話を聞いた意味って何だったんだろう……」

以上、お詫びと訂正のSSでした。>>1が左利きなせいで完全に間違えて覚えてました。
時系列については深く考えないでください。

本編も今晩か明日辺りに投下します。

【前回のあらすじ】
“宿敵(マブダチ)”



斉木(僕が体育館に来て15分ほど経ってから、やっと全員が集合した)

斉木(特筆すべきは、最後に来たのが十神ではなく大和田・石丸・不二咲の3人であることだ)

霧切「あなたたち……モノクマは“至急”と言っていたはずよ」

石丸「風紀委員とあろう者が集合に遅れてしまって大変申し訳ない! しかし致し方ない事情があったのだ!!」

大和田「男と男の真剣勝負は……何があっても途中で放り出しちゃいけねぇんだ!!」

不二咲「……えっと……霧切さん、ごめんねぇ……」

霧切「…………呆れて怒る気にもならないわ」ハァ

モノクマ「ようやく全員揃ったみたいだね。それじゃあ始めるとしますか!」ピョーイ

朝日奈「出た!!」

モノクマ「今日オマエラを呼び出したのは他でもない。実は昨日、メンバーのヒロミに……」

斉木(絶妙に懐かしいネタを出してきたな)

モノクマ「『折角コロシアイの場を設けたのに全然事件の起こる気配が無いんだけど』って言ったらさぁ」

モノクマ「『建物に閉じ込めるだけじゃ動機として弱いんじゃないの?』って指摘しやがって……」

モノクマ「図星じゃねーか! ヒロミに的確なアドバイスされるとか自己嫌悪だよっ!!」

石丸「つまり……どういうことなのだ……?」

大和田「おう、“宿敵”はテレビに疎いんだったか? オレが今度教えてやるよ」

モノクマ「そんなわけで……ボクは今後、誰も事件を起こさなかった場合は定期的に“動機”を提示することにしました!」

モノクマ「第1弾はコチラ! テキトーにバラ撒くから自分の名前が書かれた封筒を拾ってね!」バッ

黒幕(僕っ娘魔法少女たんとの約束を破れば、きっと私を殺すためにまたあの娘が来てくれる……)

黒幕(会いたくて会いたくて震えちゃいそう!)トロリ

苗木「さ、斉木クン……」

斉木(案ずるな。下準備は済ませておいた)キィン

霧切(……これが、私宛ての封筒)

霧切(モノクマ……今度はどんな手を使って私達を煽るつもりかしら……)ペラッ

霧切「……………………」

霧切「……『モノクマは間違えてマスカラを眉毛に塗ったことがある』」

霧切「……………………」クスッ

桑田「は? 『モノクマは三枚おろしが苦手だから最終的には内臓をグチャグチャにして遊ぶ』だァ?」

山田「『モノクマはこう見えて恋人がいた経験有り』……ですと?」ズーン

江ノ島「『モノクマは3年前に家族から借りた6300円を返していない』……そうだった!」

大神「……モノクマも人間味溢れるエピソードを持っていたのだな」

モノクマ「違うって! それ半分くらい嘘だから!!」

十神「ほう。残りの半分は事実か」

モノクマ「あ゛」

苗木「…………これって」

斉木(封筒の中身を“モノクマ及びモノクマの家族が持つ恥ずかしい秘密”にすり替えておいた)

黒幕(何これ超ハズカシイんだけど超絶望的なんだけど!!! 誰の仕業だよまったく!!!!)

黒幕(――はっ!? まさかあの娘が!? 私にも会わないまま……!?)

斉木(ご名答。テレパシーで読み取った情報を15枚の便箋に写し、封筒の中身とアポートした)

斉木(僕との約束を破った罰だ。しばらくその恥辱に身悶えていろ……!)ニタァ

苗木(うわぁ……斉木クンの笑顔がそこはかとなく悪役じみてる)

セレス「それで、モノクマさん」

セレス「あなたに関する情報が……ふふっ……何故わたくし達の動機となりうるのですか?」

モノクマ「笑うな笑うな! そんなに笑うならオマエラにもボクと同じ辱めを受けてもらうよ!」

十神「お前と同じ辱め? 俺はエレベーターとエスカレーターを呼び間違えるような真似はしていないぞ?」

モノクマ「キミわざと言ってるでしょ!? ボクが言いたいのは“オマエラの恥ずかしい秘密を知っている”ってことだよ!!」

腐川「あたし達の……」

不二咲「恥ずかしい秘密……!?」

大和田「………………!!」ギリッ

モノクマ「今から24時間以内にコロシアイが起きなかった場合、オマエラの秘密を学園の内外にバラ撒いちゃいます!!」

モノクマ「フルボリュームで校内放送しちゃったり、街宣カーに乗ってビラを撒いちゃったり……」

モノクマ「うぷぷぷぷ! 考えるだけでワックワックドッキドッキしちゃうなぁ!!」

石丸「待て! 僕達には後ろめたい隠し事などない! 仮にあったとしても真正面から打ち明ければきっと理解しあえるはずだ!」

モノクマ「果たしてホントにそうかなぁ? 秘密の重さは人それぞれだよ?」

葉隠「……今回ばかりは俺もモノクマに同意だべ」

葉隠「他人にとっちゃ些細なことでも、本人には深刻な問題だったりするもんだべ……」

モノクマ「そういうこと! バラされたくない人はサクッと誰か殺しちゃってよね!」

霧切「待って。訊きたいことがあるの」

モノクマ「なぁに? 一発殺りたい気分になっちゃった?」

霧切「……便箋に書かれたあなたの秘密は、とても人間じみたものばかりだわ」

霧切「今更だけど……あなた、クマの皮を被った人間ね?」

モノクマ「知らないよそんなの! モノクマはモノクマ! 中に誰もいませんよっ!!」ヒュン

朝日奈「なんか……図星だったみたいだね」

十神「さて、お前らはどうするつもりだ」

十神「俺には後ろめたい秘密など無いが、お前ら愚民は隠し事にまみれているんだろう?」

斉木(“十神白夜は魔法使いに憧れている”は隠さなくていいのか)

桑田「でもなー……どんな秘密を暴露されるか分からない分、思い当たるフシもあんまし無いっつーか」

腐川「あんたらしいアホな意見ね」ボソッ

桑田「誰がアホだぁ!? アホって言った奴がアホなんだよアホー!!」

斉木(その発言が一番アホっぽい)

腐川「あたしには……あるわ。思い当たる節が」

腐川「あたしの秘密を知られたら……あんた達はこぞってあたしを殺すに決まってる!」

腐川「だからって誰かを殺しても結局あたしはクロだとバレて処刑される……終わりよ、終わりだわ……!!」

朝日奈「お……落ち着きなって腐川ちゃん。思い切って打ち明けたら、みんな受け入れてくれるかもよ?」

大和田「オメェ何言ってんだよ、誰がそんな自分の首絞めるようなマネ……」

舞園「――舞園さやかは、ほぼ全てのライブでリップシンク……口パクをしています」

大和田「しちまうのかよ!?」

舞園「それから……クイズ番組でディレクターさんから答えを事前に教えてもらったことがあります」

舞園「他にも一昨年の京セラ公演でノーブラのままステージに立っちゃったこととか……」

舞園「あと、撮影用の水着を反対に着ちゃったこともありますね」

腐川「そんなこと言って、自分にダメージの少ない秘密を選んでるだけでしょ……どうせ枕営業してるくせに!」

舞園「未遂に終わったことなら1度だけありますよ」

桑田「それ言っていいのかよ舞園ちゃん!?」

舞園「但し私から営業に出向いたんじゃありません。まだ駆け出しの頃、某テレビ局のお偉いさんに騙されてホテルに連れ込まれちゃって……」

舞園「必死で抵抗して逃げ出したら、その人が怒って週刊誌にウソの情報を売り込んだんです」

舞園「まあ、事務所が横分けヘアの敏腕弁護士さんに依頼してくださったお陰で裁判は圧勝でしたよ」

舞園「その人はロリコンエロ親父だと業界で干され、私は慰謝料の2億円でお父さんにお家を買ってあげました」

舞園「今となっては週刊誌に“枕園さやかの下半身アンサンブル”なんて書かれたことも良い思い出です」ニコッ

葉隠「すげぇべ! 暴露本出したらベストセラー確実の内容だべ!」

苗木(……斉木クン、舞園さんの言ってることって)

斉木(嘘みたいな話だが全て事実だ)

斉木(あたかも発声練習をするかのように、躊躇なく言える度胸……超高校級のアイドルは伊達じゃないな)

苗木(でも、それだと舞園さんのアイドルとしての人気が……!)

舞園「心配しないでください。このくらいへっちゃらですよ!」

苗木「また考えてることを読まれた!?」

斉木(いつも僕がやってることだろ)

舞園「誰かを殺してしまうくらいなら……隠し事をぜんぶ話した方がよっぽどマシです」

舞園「スキャンダルがあっても人気は努力次第で取り戻せますが……命を奪った罪は、決して消えませんから」

苗木「舞園さん……」

苗木「……ボクは、小学5年生までおねしょ癖が治らなかったよ!」

舞園「えっ」

斉木(いきなり斜め上に行ったな)

苗木「ボクも舞園さんのマネをして恥ずかしい秘密を自己申告するんだ!」

斉木(だからっておねしょの話から入らなくても)

舞園「ありがとうございます。……苗木くんが私の味方でいてくれて、本当によかった」ウルッ

斉木(それに対して感極まらなくても)

石丸「さあ、皆も舞園くんと苗木くんを見習って恥を晒すのだ! 僕は祖父が大切にしていた盆栽を割ってしまったことがある!」

朝日奈「……え、えーと、私も水着を表裏逆に着ちゃったことあるよ! しかもそのまま大会に出て優勝したよ!」

山田「拙者は中学の文化祭で劇のBGMと間違えてアニソンを流したことがありますぞ!」

不二咲「……そ、その……いつか、ちゃんとみんなに言えるくらい強くなるから……!!」

斉木(軽い懺悔の部屋状態になっているが……案外いい流れかもしれない)

斉木(賭けに近いが、お前にも秘密をさらけ出してもらうぞ。腐川冬子……!!)スッ



江ノ島「あれ? 斉木、紙で指切ってね?」

腐川「指を切っ……!? それって血じゃないのぉぉぉぉぉぉ!!!」バターン

葉隠「わぁぁ! 腐川っちが死んだべ!!」

十神「この人でなし……」

大神「否……死んではいない。気絶したのであろう」

不二咲「腐川さん、血が苦手って言ってたもんねぇ……」

江ノ島「え? なんで腐川倒れてんの? アタシ何かした?」

斉木(江ノ島さんは何も悪くない、僕が浅い切り傷を付けただけだ)

斉木(腐川さんは複雑な家庭環境、過酷な日常生活、歪みきった人格構造から、精神面で深刻な問題を抱えている)

斉木(それが……)





腐川?「呼ばれてないけど邪邪邪邪ぁーーーんっ!!!」シャキン

斉木(“解離性同一性障害”。俗に言う多重人格だ)

桑田「ちょ、待てよ腐川! カミングアウトするならもっとわかりやすいように言えっつーの!」

腐川?「アタシのこと腐川って呼ぶなやアポ! そういう気遣いができないせいで主人公から第1クロに格下げされたんじゃねーの!?」

桑田「いや何の話だよ!!」

苗木「あの……腐川さん、なんか雰囲気変わった……?」

腐川?「まーくん惜しいけどざんねーん☆ 変わったのは雰囲気じゃなくて人格でーっす!」

山田「な、なんと……腐川冬子殿は二重人格だったのですか!?」

腐川?「そゆことそゆこと! でもアタシは腐川冬子なんてダッセェ名前で呼ばれるのは御免なのよゴルァ!!」

霧切「もうひとつの人格は随分と攻撃的なのね……」

腐川?「そんでもって自分の名前が“腐川?”って表示されてる現状にもウンザリだから、」

腐川?「こっちのアタシのことは以後“ジェノサイダー翔”と呼ぶように!!」ビシィ

斉木(腐川さんは、くしゃみをするか血を見ることでもう1人の人格と交代する。それがこの“ジェノサイダー翔”だ)

ジェノ「あースッキリしたぁ! アイデンティティの確立って感じ!?」ゲラゲラゲラゲラ

苗木「ジェノサイダー翔……!?」

江ノ島「ジェノサイダー翔って、現場に“チミドロフィーバー”の血文字を書き残して遺体を磔にする、あの連続猟奇殺人鬼の!?」

斉木(説明乙)

十神「ククククク……十神家所有の極秘ファイル通りだ」

十神「ジェノサイダー翔は解離性同一性障害者……鋭く研いだ鋏を使って人を殺し、磔にする……」

十神「その太腿に装着したシザーケース! 幾つも刻まれた正の字! お前が本物のジェノサイダー翔である何よりの証だ!!」

ジェノ「やだー嬉しいー! アタシったらそんなにナマ足魅惑のマーメイドかしらん???」ニヤニヤ

斉木(敢えて何も言うまい)

十神「よもや希望ヶ峰学園の生徒の中に殺人鬼が紛れ込んでいたとは夢にも思わなかっただろうな!」

十神「どうする? 舞園のように監視対象にするか? 下手をすると返り討ちに遭うかもしれないぞ!?」

斉木(やけに楽しそうですね御曹司さん)

石丸「決めつけは良くないぞ十神くん!」ビシッ

石丸「きっと腐川くんは己の秘密を吐露したかっただけだ! 僕達がその秘密を受け容れずして誰が受け容れるというのかね!!」

十神「一方的に信頼して何になる。相手が裏切るつもりだとは思わないのか?」

苗木「うん。腐川さんは誰かを殺したりなんかしない」

十神「……お前の善人ぶりには心底呆れる」

苗木「理由ならあるよ。腐川さんにとって最大の秘密は、ジェノサイダー翔のことだと思うんだ」

苗木「それをみんなに知られちゃった以上、腐川さんは誰かを殺しても秘密を隠しきれなくなる……ちっとも得しないんだよ」

霧切「その通りよ。加えて、今後事件が発生した場合、ジェノサイダー翔は真っ先に疑いを向けられるわ」

霧切「少なくとも今回は、舞園さんと腐川さんは事件を起こさないんじゃないかしら」

斉木(石丸の希望論はさておき……苗木と霧切さんの考えは的を射ている)

斉木(舞園さんは改心どころか積極的に事件を防ごうとした。実際秘密のカミングアウト大会によって場の空気はかなり和らいだ)

斉木(そして……ジェノサイダー翔もまた、この学園での人殺しはしないだろう)

ジェノ「つーかさ、さっきからアタシが人を殺すか殺さないかについてグダグダ喋ってっけど……」

ジェノ「アタシは高潔なる誇りを持って人を殺す愛と正義の殺人鬼なの! 無駄な殺しはしない主義なのっ!!」

朝日奈「殺人そのものが無意味だと思うけど……」

ジェノ「ノンノン、そこは深く考えないこと! ところでアンタおっぱいでかくね? 牛乳に相談した?」

朝日奈「ち……違うよっ!!」カァァァ

十神「ならば、お前が考える無駄ではない殺人とは何だ?」

ジェノ「アタシが殺すのは“萌える男子”だけ! 女子供は関係ないのよ!! ドューユーアンダスタァン?」

山田「萌える男子とはどのような……?」

ジェノ「そうねぇ……この中で“萌える男子”に該当するのは、そこのパツキンイケメン眼鏡ぐらいのモンね!」

ジェノ「奥の方に立ってるパラスコ星人も良さげだけどカラーリングが目に優しくないからアウト。他は今後の成長に期待!」

斉木(パラスコ星人って誰だ?)イラッ

苗木(たぶん斉木クンのことだと思う……)

石丸「これでわかっただろう。腐川くんは人殺しなどしない!」

石丸「腐川くんが人殺しをしないということは、16人の中で誰も人殺しをしないということだ!」

江ノ島「いや話飛躍しすぎじゃね?」

十神「……そこまで自信満々に断言するならば、俺は黙って24時間後を待つとしよう」

十神「それまでお前らは互いの傷を舐め合っていろ」スタスタ

斉木(やれやれ……一か八かだったが、ジェノサイダー翔はあまり大きな騒動にならずに済んだ)

斉木(いつもの方の腐川さんが人を殺す可能性も捨てきれないが……テレパシーに集中すれば事件を阻止できる)

斉木(残る要注意人物は……内通者の2人と、元から誰かを殺すつもりのルーデンベルクさん、あと一応十神)

大和田「…………なぁ“宿敵”、早くプールに行こうぜ。急がねーと自由形水泳50往復対決ができなくなっちまう」

石丸「む、それもそうだな! 今日はこれで解散だ、モノクマになど惑わされず普段通り過ごすのだぞ!」

斉木(そして……秘密を隠すことに執着して生きてきた男、大和田紋土だ)

【校舎2階・男子更衣室】

苗木「……それで、どうしてボクまでここに……?」

斉木(コロシアイ阻止の一環だ。お前は了承してくれたはずだろう?)

苗木「それはそうだけど……ここで事件は起きにくいっていうか……」

苗木(どちらかというとプールで溺死とかの方がありえそうかなって……)

斉木(よく考えろ。観戦者がいる状況でどうやって相手を溺れさせる? 事故に見せかけた殺人は僕には通用しないぞ)

斉木(何より問題なのは更衣室のセキュリティシステムだ。電子生徒手帳を取り出して解錠する手間が掛かる)

斉木(万が一の事態に備えるなら、鍵の内側でギリギリまで粘った方が確実だろう)

苗木(納得したような……納得できないような)

大和田「おう! オメェらいつまでオレ達のこと待ってんだ?」

苗木「えっ? いやぁ……プールサイドに行ってもやることがないからさ……?」チラッ

斉木(何だその目配せは)

石丸「よいではないか“宿敵”よ! 彼らは貴重な観戦者だ!」

石丸「モノクマのせいで舞園くんと腐川くんの興が醒めてしまった今、僕達の勝負の行く末を見届けてくれるのは彼ら2人しかいない!」

大和田「そうなのか? 不二咲も水泳対決見たいって言ってたぞ」

石丸「何だと? それでは不二咲くんも含めると観客は3人になるのだな! 嬉しい誤算だ!」

苗木(きっと不二咲クンは男の友情に憧れたんだろうね……)

斉木(不二咲がこいつらと同じ方向に進まないことを切に願おう)

大和田「ここまでは2勝2敗1分……この対決でようやくオレの勝ちが決まる!」

石丸「寝言は寝て言いたまえ! この対決で勝利するのは僕だ!」

大和田「抜かすじゃねーか“宿敵”……オレは泣く子も黙る関東最大の暴走族“暮威慈畏大亜紋土”の総長なんだぞ?」

石丸「暴走族など知ったことではない! 僕は日本随一の偏差値を誇る高校で風紀委員を務めた“超高校級の風紀委員”だ!」

斉木(お前らの馬鹿さ加減を鑑みると完全に設定負けしてるな)

大和田「オレは総長になって以来“走り”も“喧嘩”も負けたことがねえぜ! オレの勝負にはメンバー全員の誇りが懸かってんだ!」

石丸「僕は文武両道を体現するために鍛錬を積み重ねてきた人間だぞ! 誰が相手であろうと戸惑うことは無い!」

石丸「だからこそ……だからこそ僕は、モノクマの殺人教唆にも動じないのだっ!!」

大和田「………………!!」ギリッ

斉木(何の戸惑いも無く地雷を踏み抜きやがった)

斉木(まずい……大和田の心の声が激情で満ちてくる)

苗木「……お、大和田クン……ちょっと怖い顔してる、よ……?」

大和田「…………のかよ」

石丸「む? 聞こえないぞ、もっと大きな声で話したまえ!」

大和田「……弱いのかよ」

大和田「モノクマの脅しに怯えるような奴は弱いのかよ……」

石丸「僕はそう思うぞ! 屈強な心を持っていれば秘密の暴露など痛くも痒くもない!」

斉木(監視カメラは……死角がゼロになる場所を計算して設置されている)

斉木(悪目立ちする超能力は使えない……!)

大和田「そうか……オレは弱くてオメェは強えってのか……!!」

苗木「落ち着いてよ大和田クン! ほら、深呼吸して!」

石丸「“宿敵”……どうしたのだ……?」

大和田「“秘密”の上に成り立つ“強さ”が、“強さ”がねぇと守れねぇ“約束”が」

斉木(大和田の突発的犯行を防ぐためには)

大和田「“約束”のために“秘密”を隠し続ける苦しみが……!」グッ

斉木(ダンベルを振り下ろす腕の軌道を……)

大和田「オメェなんかに!! わかるってのかよおおおおおお!!!!!」

斉木(“サイコキネシス”でねじ曲げる!!)フォン









不二咲「やめて大和田くん――」

ガンッ

斉木(――テレパシーを大和田に集中させていたせいで気付けなかった)

斉木(まさかこんな都合の良すぎる……いや、都合の悪すぎるタイミングで、男子更衣室のドアを開けて)

斉木(不二咲が飛び込んでくるだなんて……!!)



石丸「なっ……ふ、不二咲くん!?」

苗木「不二咲クン! しっかりして、不二咲クン!!」

苗木(斉木クン! 早く不二咲クンに復元の超能力を!)

斉木(言われるまでもない、“復元”!)キィン

大和田「………………どうして」ガクッ

大和田「…………オレは今、石丸を殺そうとして」

石丸「――何故だ!?」ガシッ

石丸「何故だ……何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!?」

石丸「何故……こんなことをしたんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

苗木「やめてよ2人とも!! 不二咲クンなら一命を取り留めたから――」

斉木(……すまない。無事とは言えない状況だ)

苗木「え?」

斉木(不二咲の体は24時間前の健康な状態に戻った。呼吸や心拍数にも異常は無い)

斉木(だというのに……不二咲のテレパシーが全く聞こえてこないんだ)

苗木「……まさか」

斉木(不二咲の意識が……戻らない……!!)

ピンポンパンポーン

モノクマ『死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きまーす!』

モノクマ『……と言いたいけど、まだ不二咲くんは死んでないし、大和田くんは犯行現場を3人に目撃されてるんだよねぇ』

モノクマ『うーん……非常に残念だけど、今回の学級裁判はナシ!』

モノクマ『意識不明の不二咲くんがお亡くなり次第、大和田くんへのオシオキを執り行いまーす!!』

モノクマ『いやぁ、大和田くんには中々に絶望的なモノを見せてもらっちゃったね!』

モノクマ『今回はご都合展開じゃなく、ちゃーんと3階を開放してあげるし……』

モノクマ『オマエラの秘密も“大和田紋土は兄を殺した”ってこと以外は暴露しないどいてあげるよ!!』

モノクマ『それじゃあ大和田くん、残り少ない執行猶予期間を有意義に過ごしてねー! ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!』

ピンポンパンポーン



石丸「苗木くん、斉木くん。済まないが不二咲くんを運ぶのを手伝ってはくれまいか」

苗木「……それなら、ボクらよりも力持ちの大和田くんの方が」

石丸「不二咲くんの華奢な身体を人殺しに運ばせるのかね」

苗木「そんな言い方っ……!」

石丸「彼には心底失望した」

石丸「暴走族とは、掛け替えのない兄弟や友人をいとも容易く殺してしまう最低の人種だったのだな」

大和田「待てよ! それは――」

石丸「この期に及んでまだ言い訳をするのか!!」

大和田「ぐっ……」

石丸「……もういい、不二咲くんは僕が看病する。人殺しは二度と不二咲くんの前に姿を見せるな」

石丸「少しでもお前と理解し合えると勘違いした僕が馬鹿だった!!!」



斉木(……どうしてこうなった)

斉木(サイコキネシスを使わなければよかったのか? モノクマに動機提供の話をさせなければよかったのか?)

斉木(それとも……僕は協力者がいることに安堵して、事件発生を阻止するための努力を怠ってしまったのか……?)

今回はここまでです。
「週刊少年ゼツボウマガジン」の醍醐味は、学園生活の中で築かれた友情がモノクマの手によって瓦解してしまうところにあると思います。
……それを実践しようとしたら、かなり駆け足な展開になってしまいました。反省。

おそらく次回でChapter2完結です。もうしばらくお待ちください。

ご迷惑をお掛けしてすみません……期末のレポート課題に追われておりました。
本編は2/3程度まで書き上がっていますが、投下出来るのは8月10日頃になりそうです。
あと10日ほどお待ちください。

あと、次回投下分は30レスを超えそうなので、なるべくこのスレに書き込むのはお控え願います……
その代わり、後ほど時間を見つけて次スレを立てておきます。

お待たせしました。続きを投下します。
今回はだいぶ長くなってしまったので、感想等のレスは投下終了後に書き込まれるようご協力をお願いいたします。

【前回のあらすじ】
パラスコ星人



【不二咲の個室】

不二咲「………………」

石丸「……調子はどうかね」

石丸「僕たちの調子はすこぶる良好だぞ。今しがた朝食会の片付けを終えて戻ってきたところだ」

石丸「ジェノサイダー翔……とやらは、特に問題を起こすこともなく皆と交流している」

石丸「十神くんに関しては相変わらず挑発的な言動が目立つが、案ずることはない」

石丸「彼は率先してジェノサイダー翔の相手をしてくれているのだ!」ハッハッハッ

不二咲「………………」

石丸「………………」

石丸「……すまない。今のは笑いどころではなかったようだな」

石丸「それにしても……丸3日も経つが、お腹は空かないのかね?」

石丸「健康な身体は健康な食生活からなるのだぞ。このままでは餓死してしまうではないか!」

不二咲「………………」

石丸「……それとも、君はあの男を殺したいのか?」

石丸「僕は反対だ。あの男が処刑される条件は、君が息を引き取ること……」

石丸「確かに彼は罰せられるべきだが、君は死ぬべきではない。大切な仲間が1人減ってしまう!」

不二咲「………………」

石丸「……君が目覚めるまで、僕はずっと看病を続ける」

石丸「今は封鎖されているが、校舎1階の保健室もいつかは開放される。保健室を利用すれば看病も捗るはずだ!」

石丸「手始めに医学書を読み漁るとしよう! 何、万全の知識を身に付ければ長期治療など恐るるに足らない!」

不二咲「………………」

石丸「だから……君も、頑張って生きていてくれ」

石丸「僕を……ひとりにしないでくれ……」

斉木(……やれやれ。今回の事件、石丸の方が大きなダメージを受けたんじゃないのか?)

斉木(不二咲は3日経っても目覚める気配が無い。せめて不二咲の部屋に直接入れたら手掛かりを掴めるかもしれないが……)

斉木(石丸が他の生徒を徹底的に追い出すせいで、千里眼すら使えやしない……)

幽霊「ハロー超能力者くん!」

斉木()

幽霊「なかなか幽体離脱してくれなかったから寂しかったよ! 3~4ヶ月ぶりの再会かな?」

斉木(作中時間はそこまで経っていない。冷やかしなら消えてくれ)

幽霊「冷やかしなんかじゃないよ! 俺はあの2人のことが気になって仕方ないだけなんだ!」

斉木(……大和田と石丸のことか)

幽霊「そうだよ。君が総長に山盛りの激マズパスタを食わせてグロッキー状態にしてくれてたら事件も防げたはずなのに!」

斉木(そんな所業ができるのは大泉洋くらいだろ)

幽霊「ところでシゲのBE MY BABYはいつになったらネタにしてもらえるのかな? 俺アレのせいで原曲聴いても笑っちゃうんだよね」

斉木(知るか。僕は1×8派だ)

幽霊「なんだ……君は日5そっちのけで木村アナ演じるおばちゃん役を観ちゃうタイプの人か」ショボン

斉木(冗談じゃない。あの人最近はSTVの番宣でも誰得女装するようになってしまったんだぞ)

幽霊「もうやめてくれ! 誰のせいでこんなに話が脱線したと思ってるんだよ!!」

斉木(お前だ)

斉木(それに……今回の事件で不二咲を殴打したのは大和田ということになっているが)

斉木(あれは僕の仕業だ。僕が超能力の使いどころを誤ったせいで……大和田を止めるどころか……)

幽霊「やっぱりね。ダンベルで誰かを殴ろうとして、人間の腕があんな奇妙な動きをするはずがない」

幽霊「でも……少なくとも君は、風紀委員くんの命を救ってくれた。感謝しているよ」

斉木(その石丸はあんなにやつれているぞ? お前も見ただろう、現在の石丸は不二咲の介抱だけを心の拠り所にしている)

幽霊「じゃあ君が心の拠り所を増やしてやってくれないか? 風紀委員くんは意地を張ってるけど、本当は誰よりも総長のことを信じているはずだ」

幽霊「超能力者くんならそれくらい分かるんでしょ。テレパシーとか使えそうだし」

斉木(馬鹿言うな。超能力は万能ではない、他人同士を仲直りさせることなどできるものか)

幽霊「とか言っちゃって……連載第1話は両親を仲直りさせる話じゃなかったっけ?」

斉木(なんでそんなこと知ってるんだよ)

斉木(それより少し黙ってろ。苗木と石丸が喋っている)

幽霊「苗木? ああ、幸運枠で入学したアンテナくんか!」

石丸「やあ苗木くん。すまないが、まだ不二咲くんの部屋には入らないでくれ」

苗木「不二咲クンのことも気になるけど……ボクの用事はお見舞いじゃないんだ」

苗木「石丸クン! もう一度大和田クンとサウナ対決をしてよ!!」

斉木(ちょっとまてわけがわからない)

石丸「またその話かね! 今日で3度目だぞ!」

苗木「でもボクだってこのまま終わるのは嫌なんだ!」

石丸「朝食会の後にも言ったが、僕はこの期に及んであんな人殺しと関わるつもりは無い」

石丸「不二咲くんの看病を怠るわけにもいかないし、何よりあんな奴に貴重な時間を割きたくないのだ!」

苗木「だけど、このままじゃ2人の対決は決着がつかないまま終わっちゃうし……」

苗木(永遠に仲直りできなくなったら……大和田クンも石丸クンも、ボクもきっと後悔する……!)

斉木(………………)

石丸「人殺しとの決着などつかないままで構わない。僕は看病で忙しいのだ、帰ってくれないだろうか」

苗木「……また後で来るよ。ボクは諦めないからね」スタスタ



幽霊「へー……アンテナくんもアンテナくんなりに2人をどうにかしようと頑張ってるね」

斉木(……幽霊。僕は2人を仲直りさせることは不可能だと言ったが、前言撤回だ)

幽霊「え!? マジ!?」

斉木(お前の活躍次第では、大和田と石丸の仲を改善させられるかもしれない)

幽霊「よっしゃー!! なんだか俺の出番もChapter2限りな気がするしメインキャラを食うぐらいの意気込みで活躍するぞー!!」

斉木(いい加減そのメタギャグ連発やめてくんない?)

幽霊「それでは俺は総長の様子を見に行ってくるよ! また後で打ち合わせしようねー!」ヒューン

斉木(……やっと行ったか。幽霊の心は読めないからどうも苦手だ)

斉木(僕もそれなりに策は講じているが、石丸を大浴場へ行かせなければ話にならない)

斉木(そのためには超能力で……)

『ババンババンバンバン……』

石丸「……む? 空耳か?」

『ババンババンバンバン……』

石丸「何故だろう……時には時間を忘れて湯舟でのびのびとしたい気分になってきたぞ……」

石丸「……はっ! そんなことより今は医学書を優先せねば!」

斉木(石丸の脳内に温泉ステマソングを流し、気持ちを傾けていこうと思う)

【校舎3階・物理室】

大和田「………………」

舞園「……ここに居たんですね」

大和田「舞園……1人なのか? 見張りはどうした」

舞園「桑田くんと江ノ島さんなら、外で待ってくれています」

舞園「万が一私が大和田くんを殺しても、部屋の出入口を見張っていれば現行犯で取り押さえられる……という算段です」

大和田「怖くねぇのかよ。オレがオメェを殺すかもしれないだろ」

舞園「ご冗談を。大和田くんは女性に手を上げるような人じゃありません」

大和田「根拠も無いのにえらい自信だな」

大和田「オレは……不二咲に、か弱い女子に手を上げたんだぞ」

舞園「不二咲くんは男の子だったんですよ。石丸くんがみんなに報告してくれました」

大和田「はァ!? 男っ……不二咲が!?」

舞園「男の子です。紛れもなく男の子です」

大和田「……妙に納得したぜ。アイツ、やけに“男の約束”って言葉に喜んでたもんな……」

舞園「ふぅ、やっと登れました。梯子ってちょっと怖いですね」

大和田「天下の希望ヶ峰学園がボロい梯子を使うわけねーだろ」

舞園「言われてみればそうでした。お隣、失礼します」

大和田「おう」

大和田「……ところでオメェ、何でこの場所が分かったんだ?」

舞園「大和田くんは物理室の奥……梯子を登ったところのロフトで孤独に座り込んでいる、って予知したんです! エスパーですから!」

大和田「ヤケに細けぇ予知だな。的中してんのが更に不気味だぜ」

舞園「うふふ、冗談ですよ。電子生徒手帳にみんなの居場所を調べてくれる機能があるんです」

大和田「そいつを使っても大方の居場所しかわかんねーだろ。ロフトの上だなんて、どうやって見分けんだ?」

舞園「そこは私の推理です。このロフトからだと――」

ゴオオオオオオオ

舞園「空気清浄機がてっぺんまでよーく見えますからね」

大和田「空気清浄機? オレはずっと“タイムマシン”って呼んでたぜ」

舞園「違います。この学園全体に酸素を供給し続ける立派な空気清浄機ですよ!」

舞園「……もしかして、大和田くんもモノクマさんに嘘つかれちゃいました?」

大和田「なんだ、オメェも同じこと言われたのか」

舞園「はい。3階の探索で、ここへ初めて来たときに」

大和田「“1分だけ過去に戻れるタイムマシン”……つくづくロクでもねぇ野郎だぜ」

テーレーレーレーレー

モノクマ「心外だなぁ! ロクでもねぇ野郎って言う方がロクでもねぇ野郎なんですー!」

ヒュン

大和田「それ言うためだけに出てきたのかよ!?」

大和田「……なぁ、舞園」

大和田「オメェ……もしタイムマシンが使えたら何をしたい?」

舞園「1分前に戻って伸びたカップラーメンを元に戻します」

大和田「アホか。モノクマの嘘は抜きにして、だよ」

舞園「でも……本当にタイムマシンで過去に戻っても、私は今以上の私になんてなれないと思います」

舞園「行くなら未来がいいですね。ちゃんと16人で揃ってここを脱出して、私はメンバーの皆とアイドルに復帰できてたらいいなぁ」

大和田「………………」

舞園「……こんな質問をしてくるってことは、大和田くんはタイムマシンを使いたいんですか?」

舞園「例えば……不二咲くんを殴ってしまう前に戻りたいとか」

大和田「…………もっともっと、それよりも前だ」

大和田「オレは……兄貴を殺しちまった日に戻って、全てをやり直してぇ」

舞園「……モノクマさんが言っていた“大和田くんの秘密”ですね」

大和田「オレは一時の焦りに気を取られて、兄貴を殺しちまった……」

大和田「“暮威慈畏大亜紋土”を一緒に立ち上げた……実の兄貴を……!!」ギリッ

舞園「違いますよ」

舞園「大和田くんがお兄さんの死に責任を感じているから、オレが兄貴を殺した、なんて言い回しをしているだけですよね?」

大和田「……なんでそう思うんだよ。エスパーだからとか言わねーだろうな」

舞園「仮に大和田くんが本当にお兄さんを殺害していたら、“超高校級の暴走族”になれるはずがありません」

舞園「お兄さんの死を1人で背負い込んだまま、総長の座を継いで暴走族を纏め上げる強さの持ち主……」

舞園「希望ヶ峰学園は、そんな大和田くんを見込んでスカウトしたんじゃないでしょうか」

大和田「舞園はオレのことを買い被りすぎだよ」

舞園「あれ、バレちゃいました?」テヘペロ

大和田「……オメェが女じゃなけりゃアイドルだろうとブン殴ってたところだ」

大和田「第一、オレなんかより不二咲の方が遥かに強ぇよ」

舞園「今日の大和田くんは珍しいことを言いますねえ」

大和田「だってよ……アイツは何の迷いも無く石丸を庇ったんだ」

大和田「モノクマが握ってた秘密ってのは、きっと性別のことなんだろ」

大和田「自分の体裁より他人の命を優先させるなんてこと……オレにはできなかった」

大和田「今まで隠してきた過去も、執着してきた“強さ”も、もう何の意味も持っちゃいねぇ」

大和田「やっぱオレは……石丸の言う通り、弱ぇ人間だったんだ……」

舞園「……大和田くんは強いですよ」

大和田「は? オレは弱ぇって散々説明しただろ、オメェちゃんと聞いてたのか?」

舞園「聞いてましたよ。聞いた上で思ったんです、大和田くんは強くて弱くて強い人だって」

舞園「大和田くんが自らの弱さに気付けたなら……きっと今より強い大和田くんになれますよ」ニコッ

大和田「………………」

大和田「……なんだ。その、ありがとよ」

舞園「どういたしまして、です」クス

大和田「……いつだったか、十神の代わりにオレが舞園の見張り当番をやっただろ」

舞園「はい。とても真面目に見張ってくださいましたね」

大和田「多分……オレは舞園に、昔のオレの姿を重ねちまってたんだと思う」

大和田「焦りに負けて苗木を死なせそうになって……なのにオメェは苗木に許された」

舞園「あれは……苗木くんが優しかったから……」

大和田「だからオレも、どうにか不二咲と石丸に許してもらえねーか考えてみる」

大和田「オメェはオレより先に自分の弱さに気付けた女だ。そんだけ強くなりゃ苗木のヤツも文句なんざ言わねーよ」

舞園「……こちらこそ、ありがとうございます」



桑田「ちきしょー!! 大和田のヤロー舞園ちゃんとイイ感じじゃねーか! このままだと舞園ちゃん取られちまうよ!!」

江ノ島「んなわけないじゃん、舞園こないだ苗木が好きって言ってたらしいよ?」

桑田「どっちにしろ前途多難じゃねーかオレ!!」





【不二咲の個室】

石丸「では、失礼して……」ソーッ

不二咲「………………」

石丸「……………………」ガクガク

石丸「やっぱり駄目だぁぁぁぁ! 僕には脈拍数の計測など到底できない!!」バッ

石丸「そもそも医師免許を持っていない上に本から得た知識だけで意識不明の患者と向き合うという愚行に走るなど僕には到底不可能だぁぁぁぁぁ!!」

ピンポーン

石丸「む、また来客か。面会謝絶の旨を伝えなければ……」ガチャ

霧切「それには及ばないわ」スチャッ

石丸「っ!?」ビクッ

石丸「ななななな何のつもりかね霧切くん!? 今すぐその銃を下ろして諸手を挙げたまえ!!」

霧切「……モノモノマシーンで獲得した“黄金銃”。パーツが欠けていて撃つこともできない不良品よ」バンザイ

石丸「紛らわしいことをしないでくれ!!」

霧切「それよりあなた、三日三晩看病し続けて体力も限界のようね」

石丸「僕はまだまだ余裕だぞ! あと2週間は行ける!」

霧切「ふらついた足取り、骨ばった頬、隈ができて落ち窪んだ目元」

石丸「ぐっ……」

霧切「そしてたった今、あなたは何の警戒も無しにドアを開けた。思考能力が鈍っている証拠だわ」

石丸「に、鈍ってなどいない! 僕は不二咲くんのために荒事は避けようと……」

霧切「満身創痍のまま看病を続けることが果たして不二咲くんの為になるのかしら」

石丸「…………っ」

霧切「あなたは一度休むべきよ。1日程度なら私が代わりに不二咲くんを看てあげるわ」

石丸「……では……非常に不服だが、今晩だけ休息をとらせて頂こう。しかし……」

霧切「大丈夫。もし不二咲くんに何かあれば、私を疑ってくれて構わない」

石丸「縁起でもないことを言わないでくれっ!!」バタン



霧切「ようやく帰ってくれたわね。意固地な彼にしては早々に折れてくれたけれど」

霧切「それにしても、苗木くんはどういうつもりかしら?」

霧切「石丸クンに息抜きをさせてあげたいから霧切さんの力を貸してほしい、なんて……」

霧切「苗木くんのくせに、何か別の目的があるような気がするわ……」

石丸(……本当に、霧切くんに一任してよかったのだろうか)

石丸(もし不二咲くんの容態が悪化したら……もし不二咲くんが目を覚ましたら……)

石丸(否! 僕はその時のために己の身を休めようと決めたのだ!!)ブンブン

石丸(しかし……睡眠不足の状態での入浴は、果たして許されることなのだろうか)

石丸(入浴中に心疾患を発症する恐れがあるから皆様には真似しないでいただきたいような気がするのだが……)

『ババンババンバンバン……』

石丸(何故かは分からないが、大浴場へ行けばこのメロディも忘れられるような気がする……)

石丸「……む」

大和田「…………よ、よぉ。その……オメェも風呂か?」

石丸「……気が変わった。人殺しと同じ湯船に入るくらいならシャワーで済ませた方がマシだ」スタスタ

大和田「待て! オレは今風呂を上がったところだから――」

キーンコーンカーンコーン

モノクマ『夜時間となりました云々』

大和田「あー……水飲みたかったけどしゃーねえ、自販機のポカリで我慢するか」

石丸「……なんと間の悪い……」

【大浴場】

斉木(……大和田と石丸が鉢合わせになったぞ)

苗木「さすが霧切さん、うまく説得してくれたみたいだね」

苗木「後は大和田クンの頼み事がうまく行けばいいけど……心配だなぁ……」

斉木(しかし苗木、何故お前はそこまでサウナ対決にこだわるんだ? 僕にはどうしても理解できないんだが)

苗木「そう言われると……なんでだっけ?」

斉木(覚えてないのかよ)

苗木「でも……どうしてか分からないけど、大和田クンと石丸クンがサウナで対決したら仲直りできそうな気がするんだ」

斉木(やれやれ、根拠は無いのに自信だけはあるようだな)

斉木(……奇遇なことに、僕の作戦もサウナで実行する予定だった)

苗木「作戦……? 斉木クンも2人を仲直りさせようとしてくれてたの?」

斉木(実行すればわかるはずだから説明は省く。人が来たぞ)

大和田「まだ湯舟に居たのか。オメェら長風呂だな」

苗木「大和田クン!」

石丸「……まだ上がるつもりがないのならば、サウナ対決の立会人になってもらえるかね」

苗木「石丸クンも! ってことは、交渉は成功したんだね!」

大和田「ああ。少し条件が変わっちまったけどな」

石丸「僕が我慢比べに負けた場合、彼が不二咲くんに面会することを特別に許可する。その代わり……」

大和田「オレが負けたら明日の朝までに腹を切る」

斉木(やれやれ……えらく大きく出たじゃないか)

苗木「腹を切る!? 切腹するってこと!?」

石丸「ああ。最大限譲歩した結果だ!」

斉木(まったく、石丸はどれだけ大和田を憎んでいるんだ? 下手したら十神よりタチが悪いぞ……)

苗木「だからってこんなの……!!」

大和田「よせ苗木。命の1つや2つ、これっぽっちも惜しかぁねえよ」

石丸「本人もこう言っていることだ。さあ、サウナに入るぞ!」

大和田「おう……“灼熱地獄”の始まりだ……!!」





大和田「……………………」ダラダラ

石丸「……………………」ジリジリ

苗木「もう1時間経つのに……2人とも平気なのかな」

斉木(サウナ内の室温はパイロキネシスで調整している。暑さで死なれたら困るからな)

苗木(超能力でそんなこともできるの? だったら早く大和田クンを勝たせてあげようよ!)

斉木(急かすな。どのみち大和田には勝ってもらわないと困るが、その前にやっておきたいことがある)

斉木(ひとつは石丸に考えを改めさせることだ――)



『絶対に……負けてたまるかよ……』

石丸「――む?」キョロキョロ

石丸(今のは大和田く……じゃなくて、人殺しの声か……?)

大和田「……どうした。オレの顔になんか付いてたか?」

石丸「………………」プイッ

苗木(今、石丸クンに超能力を使ったの?)

斉木(“強制以心伝心”……テレパシーの応用技だ。大和田が考えていることをそのまま石丸の脳内に送っている)

苗木(それ大和田クンには結構キツい仕打ちだね……)

斉木(だが石丸の固定観念を壊すにはこれ以外の方法が浮かばなかったんだ)

苗木(聞く耳を持たない今の石丸クンには、心からの本音をぶつけるしかない……ってこと?)

斉木(まぁそういうことになる)

『不二咲は強ぇ心の持ち主だ……オレと石丸の間に怯みもせず飛び込んできたんだから』

石丸(やはり空耳ではなかった! しかし口は全く動いていないぞ? 彼は腹話術の才能も持っているのかね……?)

石丸(…………才能)

石丸(才能の上に胡座をかいて挑発してくる人間なんかに、僕が負けてたまるものか……!!)ギリィ

『比べてオレはどうだ? どんなに喧嘩が強くたって、あの事故からずっと目を背けてるようじゃ不二咲の足元にも及ばねぇ』

石丸(事故? 殺人の言い間違いではないのかね?)

『……オレは、兄貴の命日からずっと成長しねーままだったんだ』

『けどそれも今日で終いだ……変わってやるよ』

石丸(一体何を言っているのだ! 暴走族の総長として人を纏める才能の持ち主が今更どう変わろうと――)

『石丸をかばった不二咲みてぇに、オレをかばってくれた兄貴みてぇに』

『大切なモンのためなら、自分の身を呈して守れるような……本当の強さを持った“漢”になってやる』

石丸(かばった? 身を呈した? では、人殺しは故意の行いではなく、むしろ大和田くんの兄が自ら……!?)

『この勝負は、今からオレが始める“努力”の第一歩だ!!』

石丸(っ――――!!)

大和田「オレは強くなる、オレは強くなる……」ブツブツ

大和田「……ん? 石丸、オメェ顔色が悪ィぞ?」

石丸(努力!? 超高校級の才能の持ち主が努力を……!?)ワナワナ

大和田「おい石丸、聞いてんのか」

石丸(そんな、天才とは努力もなしに成功を約束された人間の集まりであって、)ワナワナ

大和田「テメェシカトしてんじゃねーよ、真剣勝負の途中だぞ?」

石丸(天才とは悲劇であって、努力の大切さを知ることなどできなくて、)ワナワナ

石丸「だからこそ僕は、僕は、僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は、」ガクガク

大和田「石丸……? オメェ気は確かか……!?」

苗木「斉木クン! 石丸クンを助けよう! なんだか様子がおかしいよ!」

斉木(――天才は悲劇だ。それは確かに同意しよう)

苗木「何をじっとしてるんだ! 石丸クン寝不足だったから無理がたたったんだよ!!」

斉木(だが、才能を有していながらもなお努力する人間もいること……)

斉木(そして、“努力”を体験できないからこそ、その価値を知る人間もいること)

苗木「っ……大和田クン!早く石丸クンを脱衣所へ連れていこう!!」ガチャ

斉木(――そんな天才たちの苦悩を知らない石丸も、悲劇の主人公だと思うぞ)ボッ

石丸「」バタン

大和田「オイ石丸!! 返事しろ石丸!!!」

【脱衣所】

苗木「……石丸クンを殺したのって斉木クンでしょ?」

斉木(人聞きが悪いぞ。生命の危機に陥る前に気絶させてやっただけだ)

苗木「嘘だ! 直前の斉木クンの独白があからさまに不穏だったもん!!」

斉木(判断材料それでいいのか)

苗木「これが斉木クンの作戦だとしても、次からはもっと安全な方法を考えてね?」ムスッ

斉木(安全な方法か……34通りしか浮かばなかったな)

苗木「じゃあそっちを実行してよ!!」

大和田「タオル濡らしてきてやったぜ。……まだ目ぇ覚めないのか」

苗木「呼吸はあるから命に別状は無いと思うけど……何かあったら斉木クンの責任だよ」

斉木(好きにしろ。放っておけば回復する)

大和田「おいおい、責任のなすりつけなんざ苗木らしくねーぞ。今回の件はサウナ対決に誘ったオレのせいだ」

苗木「大和田クン……」

大和田「……にしても、なーんか後味悪ィな。オレの勝ちだってのに、不二咲と会うのが後ろめたいっつーか」

苗木「そろそろ石丸クンの意識も戻るはずだよ。そしたら寝る前に不二咲クンのところへお見舞いに行こう」

苗木「きっと石丸クンも、サウナ対決を通じて大和田クンの根性を認めてくれたはずだからさ」

大和田「そうなら良いんだけどよ……」

苗木(……斉木クン、早く石丸クンに復元の超能力を使ってくれないかな……)

斉木(断る。放っておけば回復するんだぞ、復元を使うまでもない)

苗木(そういえば日中にモノモノマシーンでルアックコーヒー引いたんだけどこれ誰にあげたらいいんだろう)

斉木(うん、手当ては迅速かつ適切にするべきだ)ササッ

大和田「斉木オメェ急にどうした!?」

苗木「えーと……斉木クンも早く2人に仲直りしてほしいんだって」

斉木(違う。最高級コーヒーを飲むなら相応の仕事をしたいだけだ)テキパキ

大和田「ありがとよ。んじゃ、オレもウチワで扇いでやっか」パタパタ

斉木(大和田が石丸に接近した。今だ――)フワッ

石丸「…………ん」

大和田「!! 石丸、オメェようやく――」

石丸「無理に変わろうとすんな。お前は十分強いだろーが」

大和田「っ――!?」

石丸「お前は今までも努力してきただろ。秘密ってのは曝け出すにも隠し通すにも相応の努力が要るもんだ」

大和田「オメェ、何言って」

石丸「けど過去の自分を恥じるのは間違ってたからじゃねぇ、お前が成長した証拠だよ」

大和田「わけわかんねーぞ! 普段と雰囲気も違うしよぉ!」

石丸「変わるにしても、お前らしさを忘れんじゃねーぞ。さもないと――」





大亜「俺は寂しくて寂しくて成仏できやしねぇんだ。紋土」



大和田「………………!!」ボロッ




大和田「ぁ……兄貴……!!」

斉木(残念だが、時間切れだ)フワッ

石丸「…………」ガクッ

大和田「………………っ」グズッ

大和田「クソが……なんで今、こんな幻覚を見ちまうんだよ……」

苗木(……一瞬だけ、石丸クンの姿が違う人に見えた)

苗木(それに石丸クンの口調も変だったし……これも斉木クンの超能力?)

斉木(……“幽体離脱”と“催眠”を使った。気絶した石丸に幽霊を憑依させ、その人物の姿に見えるよう錯覚を起こした)

苗木(つまり……石丸クンに憑依した人って)

斉木(ああ。事故で亡くなった大和田の兄、大和田大亜だったようだな)

斉木(さて、そろそろだろう。復元を使うまでもない……)

石丸「…………うぅ」

石丸「頭がふらつくぞ……僕は確かサウナで…………む?」

大和田「クソが! クソがぁ……!!」ボロボロ

石丸「……何故君が泣いているのだ。大和田、くん」

大和田「るせぇ!! オメェのせいだ、この野郎……!!」グズッ

石丸「……大和田くんも泣きやんだところで」

石丸「約束通り、君を不二咲くんに面会させよう」

大和田「……おう」

苗木「やったね、大和田クン!!」

石丸「だが、その前に……すまなかった!!!」バッ

斉木(見事なまでに直角に頭を下げたな)

大和田「何で謝んだよ。まさかお前、オレを散々人殺し呼ばわりしたからとか言わねぇだろうな?」

石丸「それ以前の問題だ。僕は今まで君たち天才のことを、努力も苦労も知らない人間だと勝手に思い込み、勝手に憎んでいた」

石丸「しかし……君は先程のサウナ対決で、強い意志を胸に僕と戦っていた」

石丸「不二咲くんのことやお兄様のことに悩み、苦しみ……その気持ちと真正面から向き合おうとしていた」

大和田「オメェなんでたかがサウナ対決からそんなにオレの心情分かるんだよ」

石丸「君の強い想いがサウナの熱を介して僕の心へひしひしと伝わってきたのだっ!!」

斉木(強制以心伝心を好意的に解釈してくれてありがとう)

石丸「君は僕に、努力というものが凡人のみに与えられた権利ではないことを教えてくれた」

石丸「これからは僕も変わっていきたい! 平凡非凡を問わず、人々に努力の素晴らしさを伝えられるようになりたい!!」

石丸「独り善がりは承知の上だ! 大和田くん、僕が変わる手伝いをしてはくれないだろうか!!」

大和田「……人ってのは」

大和田「無理に変わろうとするよりも、自分らしさを忘れないで少しずつ成長していった方が良いんだろ」

大和田「だから……オメェのそういう頑固なとこも、ちったぁ残しといた方が良いんじゃねーか?」

石丸「……む? そうなのかね?」

大和田「オメェ自分で言ったことなんだから少しは覚えとけよ」

石丸「すまない! 全く記憶にないぞ!」

大和田「は? じゃあさっき喋ってたのは……」

大和田「………………」ウルッ

苗木「お、大和田クン! あんまり泣いちゃだめだよ、脱水になるよ!!」

大和田「黙れ苗木ぃ! こいつぁ花粉症だコラァ!!」グスッ

石丸「それは違うぞ大和田くん! ここに植物は無いからな!」

大和田「テメェも黙れ石丸!!」

大和田「ったく、オメェら斉木を見習えよ! この期に及んで無口なヤツだぜ……」

苗木「……っていうか寝ちゃってるね」

苗木(それか幽体離脱中なのかも……きっと大和田クンのお兄さんと話したいだろうから)

大和田「コイツ! 人が大事な話をしてるのに何寝てんだよ!!」ガッ

苗木「抑えて抑えて!! もう夜も遅いんだから不可抗力だよ!!」

石丸「!? 現在の時刻は……」

大和田「……夜中の1時回ってんな」

石丸「しまったぁぁぁぁぁぁぁ!! 夜時間は出歩き禁止のルールを堂々と破ってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

大和田「んなモン夜時間ギリギリに風呂場来た時点でたかが知れてるだろ」

石丸「知れてなどいない! 僕は風紀委員だぞ、僕がルールを守らなければ誰が守るというのだ!」

大和田「そのルールは単なる口約束だろうが! オメェもっと柔軟になれ!!」

石丸「断る! 僕は僕らしさを残したまま成長していくぞ!!」

苗木「……とりあえず、不二咲クンに会いにいくのは明日の朝にしようか……」

斉木(……やれやれ。石丸も大和田も、ようやく立ち直ったみたいだな)

幽霊「本当大変だったよねー! 僕の熱演が無ければあのまま険悪ムードで短い障害に幕を下ろしてたよね!」

斉木(……ひとつ訊かせてくれ。知り合いのアホ霊能力者の話だと、幽霊は生前の記憶を持っていないらしいが……)

斉木(お前、本当は全部覚えてるんじゃないのか?)

幽霊「滅相もないよ!! 僕は本当に生前の自分が暴走族だったなんて信じたくないレベルなんだ!!」

斉木(特攻服でリーゼントヘアのくせにどの口が言う)

幽霊「でも……なんでか知らないけど、あの総長のことはずっと気掛かりで仕方なかったんだよね」

幽霊「……もしかして、僕の“魂”が総長のことを“憶”えていたのかも?」ドヤァ

斉木(こいつさっさと成仏してくれないかな)




アイテムゲット!
【魔法少女ドレス】
リボンやフリル、ピンク色など、女の子らしい要素がふんだんに盛り込まれたメルヘンなドレス。
かつて世界を絶望から救った少女がノートに描いたデザインを元にしているらしい。



Chapter2 週刊少年ゼツボウコニャック
END

To Be Continued

これにてChapter2終了です。
今回サウナ対決以降のシーンで詰まってしまい、息抜きにTOKIOがダンガンロンパをプレイするSSを書き溜めていたところ、
途中から指が勝手に「斉木」と入力し始めたのでこちらの続きを書いてみたらスラスラ進みました。
人間真面目に生きなきゃ駄目ですね。

次回のChapter3から次スレに投下します。
引き続きよろしくお願いします。

折角なので、>>1000に書かれたことは可能な範囲で実現させます。
(連続レスは無効です)

次スレURL忘れてました。

斉木楠雄(『コロシアイ学園生活を阻止する』2スレ目だ)
斉木楠雄(『コロシアイ学園生活を阻止する』2スレ目だ) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407686522/)

>>1000なら黒幕にコーヒーゼリー馬鹿にされ怒りの超能力無双

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月23日 (土) 13:24:36   ID: Y45WUsuF

誰か書いてくださるのを期待してました。

2 :  SS好きの774さん   2014年01月03日 (金) 09:02:05   ID: MWvSQ0ua

つづきが気になる

3 :  SS好きの774さん   2014年02月21日 (金) 12:19:22   ID: QhyMnUfk

続き期待

4 :  SS好きの774さん   2014年03月12日 (水) 07:01:26   ID: g4PES65Q

続きを待っています!

5 :  SS好きの774さん   2014年03月13日 (木) 14:20:05   ID: 3nIc5Sqq

続きまってるよ

6 :  SS好きの774さん   2014年03月29日 (土) 10:43:43   ID: fXnP-_S8

続き全裸待機

7 :  SS好きの774さん   2014年05月04日 (日) 18:33:56   ID: 3igTL-iw

続きが気になりすぎる
秀逸の極みだな(^ω^)

8 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 11:21:03   ID: jICpcnGU

待機!

9 :  SS好きの774さん   2014年09月20日 (土) 12:05:53   ID: 7Dydb391

早く続き誰か書いてよ!

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