村人「もしも、このスライムがヒトだったら?」 (5)



村人「私には殺せないよ、とてもではないが」

子供「どうしてなんですか村人さん」

村人「ごらんよ。あのスライムは毎日のように村の周りをウロウロして草花をたまに溶かして食べてる」

村人「それ以上に何かしてるわけじゃないんだ」

子供「はぁ……なるほど?」

村人「近頃は魔王なんていうものが世の中を悪くしていて、魔物という生物を過剰に敵視する者も増えてる」

村人「だがそれは誤解というものだよ。悪いのは世に仇成す魔王であり魔物ではないんだ」

村人「悪いことをする国の王様が居たとして、その国民までもが罪深いわけでは無いのだからね」

子供「んー……けど、その国王さまはその国で育った人間でしょ? ならその国民を殺すのは将来の敵を減らす事に繋がってない?」




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村人「……その考えは賛同しかねる」

子供「え? なに?」

村人「ああ……いや、ね。君の考えは優しくないんだ、私はそれを好まない」

村人「さっき、スライムがヒトだったなら殺せないと言ったね。だがヒトではない彼等を殺すのに躊躇いはないのか? という疑問が出て来ないかい」

子供「村人さんがそう言うから疑問出た。それで?」

村人「私が言わんとしているのは、何食わぬ顔で生きている無知で幸福な者を率先して殺そうとは思わない……という事だよ」

村人「あのスライムは何も知らない、そして特別な害もない。数が増え過ぎれば畑に侵入された際に作物を溶かしてしまうから間引きが必要なだけだ」

子供「害だよそれ」

村人「言ったろう、間引けば問題ないんだ」

村人「……間引けば……ん、ん。そうか、そうなると人が人を殺すよりも冷徹に命を奪ってるように思えるのか」

村人「なんと言おうね、難しいな……ふむ」


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