ー燃える集落
ゴオオオ……
メラメラ… パチパチ…
燃える大人の死体「」メラメラ
燃える子供の死体「」メラメラ
燃えるスライムの死骸「」ジュクジュク…
犬「クゥン……クゥン……」ウロウロ
妖精「……」フヨフヨ
妖精「誰も彼も……苦しんで、苦しめ合って、死んでいく……」
妖精「……ここももう、終わりね」
妖精「………」
ガサッ
妖精「!」ビクッ
妖精(生き残り? それとも……)
妖精(………まあ、何でもいいか)
妖精「……誰?」クルッ
「ーー」
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◇インフォメーション◇
・概要
タイトルの通り、魔法の存在するファンタジー世界で生きるスレです。
主人公がどのような道を歩むかは安価とコンマ次第です。
・世界観
ファンタジーです。文明レベルは国や地域によって様々ですが、現存文明のほとんどは魔力や魔法を主軸としたものです。
なお話の都合により設定が一部変更されたり新しく生えたりする可能性はあります。ご了承ください。
・安価について
安価の連取りは原則禁止です。また内容によっては再安価する場合があります。コンマの連取りは可です。
なおシステムやルールは途中で変更する可能性があります。ご了承ください。
・注意
更新頻度と筆は遅めです。そして見切り発車です。展開にガバがあります。
また、物語の展開や安価コンマの結果によっては、最悪の場合キャラクターが死んだり消えたり闇堕ちしたりすることがあります。
苦手な方はお気を付けください。
◇用語◇
〈魔法〉
この世界で生きるための必需技術。
ほとんどの国や地域に広く普及しており、人々の生活を支えている。
〈魔力〉
習得した魔法を行使するためのリソース。
この世界のほとんどの生命は生まれながらにこれを保有・生産・出力する能力を持つ。
魔力の保有量・生産量・瞬間出力量は生まれつきの才能によって決まるが、多少は訓練などで伸ばすこともできる。
魔力は一晩熟睡する程度の休息で概ね全回復する。ポーションなどの薬物で即時に回復させることもできる。
魔力を全て失った生命体は死亡する。ただし普通の人間はある程度まで魔力が欠乏すると意識を失うため、日常生活において魔力枯渇死を心配する必要はない。
〈魔法の属性〉
大抵の魔法は、火や水などと言った特定の属性を有する。
属性を持たない魔法は無属性として扱われる。
属性間に有利不利はほとんどないが、光と闇のように相克し合う関係はいくつかある。
既存の属性に当てはまらない新属性が発見されることもある。
〈得意属性〉
ほとんどの生命体は、得意とする魔法の属性を一種類持つ。
得意属性の魔法は習得コストが低く、行使における燃費が良く、発動する効果・威力も高い。
そのため、基本的には得意属性の魔法を中心に習得していくのが普通である。
研究の進んでいない希少属性やユニーク属性の持ち主は独学にならざるを得ない。
その他質問等あればいつでもお気軽にどうぞ。
まず主人公(妖精が振り向いた先の人)の人物像を決めます
燃える集落にいてもおかしくない人物である必要はあります(集落の生き残り、通りすがりの旅人、集落の襲撃者など)
よろしくお願いします
↓から23:59:59まで募集
・テンプレ
【名前】
【種族】
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】(主に使う魔法や得意属性など)
【備考】(来歴や嗜好、その他特徴や長所短所などなんでも)
※主人公に採用されなかった場合、設定を一部変更するなどして別の場面で登場する可能性があります。設定変更を許可しない場合はその旨をご記述ください
【名前】アリシラ
【種族】人間(半死人?)
【性別】女性
【年齢】15
【容姿】薄茶色の髪をした青白い肌の小柄な少女
【性格】気弱で臆病で周りの人物を気にして常にビクビクオドオドしている
【魔法】吸収魔法(無属性)周囲の生命から魔力を(強制的に)吸収する 自身の魔力に変えて別の魔法として利用することもでき、各属性の魔法の勉強をすれば全属性の魔法を使うことも可能だが加工した分燃費や効果・威力が通常より劣ってしまい、使用した分の魔力はその分周囲から無差別に吸収してしまう
【備考】生まれた時は死産だったが両親の魔力を吸収して蘇生したが、自身の魔法で無理やり生き残った反動なのか常に魔力が少しずつ消耗し、それを補うように自動的に周囲の生物の魔力を少しずつ吸収しながら生きていく必要があった
普段であれば怪我や病気、魔法の使用等で無駄に体力や魔力を消費しなければ日常生活に支障がない程度の吸収量だったため、周囲に気を遣いながら割と平穏に暮らしていた
しかし襲撃者によって殺されかけた時に吸収魔法が暴走し、襲撃者や同じく殺されかけていた両親の魔力を限界まで吸収し殺害。罪悪感を抱えたまま生き残ってしまった
【名前】ミスティ・クローバー
【種族】人間
【性別】女性
【年齢】16
【容姿】黒を基調とした衣服に身を包んだ、儚い雰囲気の女性。長い黒髪で痩せ気味
【性格】根は心優しいがやや悲観的で冷めている
【魔法】氷
【備考】通りすがりの旅人。故郷を襲撃されて天涯孤独の身になって以来、自分にとっての安息の地を求めて旅をしている。動物が好き
若者ばっかりなのでおじさん主人公がいてもいいんじゃないかと
【名前】ローガン
【種族】人間
【性別】男
【年齢】37
【容姿】ボサボサの金髪で無精髭を生やした長身の男性。身なりを整えればなかなかのイケオジ
【性格】元は真面目で正義感の強い性格だったが、今は後述の事件がきっかけで自暴自棄ぎみになっている
【魔法】鋼魔法。魔翌力を使って鋼の武器や防具を作り出したり、その他様々な攻撃が出来る
【備考】かつて、とある魔法騎士団に所属していた男で当時はそれなりに名の知れた存在だった
しかし妻と息子が魔物に襲われて命を落とし、騎士でありながら大切な者たちを守れなかった自分に絶望
その後は騎士を辞めて、まるで死に場所を探すかのように放浪の旅を始める
集落に来たのも襲撃の噂を聞きつけ、どうせ死ぬなら今度こそ誰かを守って死んでやろうと思っての事だった
皆さま、たくさんのキャラクター案をありがとうございます
ありがたいことにたくさんの案を頂き、考えることもたくさん出てきてしまったので、本編の更新は明日とさせていただきます
よろしくお願いします。本日はありがとうございました
黒いスライム「……」ズズ
妖精(……黒いスライム? スライム種に黒いやつなんていたっけ?)
妖精(まあ私も物知りってわけじゃないし、知らない種くらいあるか)
妖精「……スライムのあなたにこの熱さは厳しいでしょ。早く逃げなよ」
黒いスライム「……」
妖精「熱くて動けないの?」
黒いスライム「……」フルフル
妖精「じゃあ、どうして――」
ニュルン
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「え、と……」
妖精(人に化けた。高い知性と技能を持ったスライムは擬態能力を持つと言うけれど……質感までそっくりだ)
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「今の、わたしと……おんなじ顔の、女の子……知ら、ない……?」
妖精(そういうことか)
妖精「ごめん。見てない」
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「……」
妖精「……言いにくいけど……この火災じゃ、既に焼け死んでるか、逃げてるかのどっちかだと思う」
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「……。フメイちゃんは……炎に強い、から……」
妖精「そうなんだ……。じゃあ待ってる? その前にあなたが焼け死にそうだけど」
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「……」
妖精「伝言か何かだけ残して、今はここを離れるのが賢明だよ。そのフメイって子が火に強いとしても、この火災の中で平気でいられるとは限らな――」
「――! ――――!!」
妖精(人間の声! まずい、火の手に気付いてこっちに来た……!?)
妖精(私もこいつも、人間に捕まったらロクなことにならない……! 逃げないと……!)
妖精「逃げるよ! 火の手よりも厄介な悪辣種が来た……!」
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「え……?」
妖精「グズグズしてないで!」
黒いスライム(黒髪幼女の姿)「あ、え、えと……」オロオロ
タッタッタッ!
妖精(うわああ!! 思ったより早い!!)
↓1コンマ 来た人
01-11 帽子をかぶった緑髪の少女
12-22 黒髪の無愛想な青年
23-33 半狂乱の薄茶髪の少女
34-44 長い黒髪の儚げな女性
45-55 赤髪ロングポニテの冒険者女性
56-66 銀髪ウェーブセミロングお嬢様
67-77 ボサボサ黒髪の若い傭兵
78-88 ボサボサ金髪の壮年放浪者
89-99 赤橙ポニテの魔術師少女
00-00 黒髪幼女
全員出るかどうかはわかりませんが、後々自由安価での行動を設ける予定なので、もし登場させたいキャラクターがいる場合は登場する方向に展開を誘導すると良いかもしれません
赤橙ポニテ少女「誰かあー! 生きている人がいたら返事を――あ!!」タッタッ
妖精「……」
黒いスライム「……」オロオロ
赤橙ポニテ少女「よ、良かった……生きてる人、いた……!! それ!」
泡「」ポワン
妖精「!?」ポワン
黒いスライム「??」ポワン
妖精(しまった! これは泡の魔法! 泡に包まれて……身動きが……!)
赤橙ポニテ少女「ごめんね! 風魔法で安全なとこまで運んであげるから!!」
泡「」フワァー
妖精「う、うわああ!!」ジタバタ
黒いスライム「???」オロオロ
◆
―夜
森の川辺
焚き火「」パチパチ…
妖精(私たちは赤橙の魔術師イリス・プラネットに捕まり、この川辺へと連行された……)
妖精(そして今は、彼女の用意したスープを飲まされている……。とりあえず毒は入っていないみたい)
妖精(ちなみに黒いスライムはクロシュと言うらしい)
イリス「そっか……。クロシュちゃんの友達の、フメイちゃんが……」
クロシュ「うん……」
イリス「……風魔法を応用した探知をしてみたけれど、もうあの集落に生きてる人はいなかったんだ」
クロシュ「……」
イリス「……でも大丈夫! フメイちゃんが火に強かったのなら、きっとどこかに逃げてるよ!」
クロシュ「うん……」
イリス「その……いろいろ、つらいとは思うけど……。明日、フメイちゃんに向けて伝言を残したら森を出よう? それで、安全なところへ……」
妖精「……安全なところ? ついさっき焼け落ちた村くらいだよ、私とこいつみたいなはぐれ者が安全に暮らせる場所なんて」
イリス「うっ……妖精さん」
妖精「ま、私は元々放浪の途中だから別に良いけどね」
クロシュ「…………わたし、も……。前は……フメイちゃんと、一緒に……旅、してた……」
妖精「あなたも流れ者だったの?」
クロシュ「うん……。だから……フメイちゃんさえ、いれば……」
妖精「……」
イリス「……」
イリス(助けてあげたい、けど……。そこまでしてあげる義理はないと言えばない……)
イリス(それに……ここ王国領じゃ、魔族や魔物に対する風当たりがとても強い)
イリス(妖精はなんとも言えないけれど、もしスライムと一緒にいるところを目撃されれば……)
イリス(実際、火事からは助けてあげたわけだし……これ以上はこの子自身の問題で……)
イリス(……いや、でも! 本当にそれで良いの、イリス・プラネット!?)
イリス(お師匠様なら、こんな時――)
イリス「ううう〜〜〜……」
妖精「なんか唸り始めた……。人間、こわ……」
クロシュ「……おなか、痛いのかな……?」
妖精「さあ。人間って消化器官が弱いらしいし、そうなのかも」
クロシュ「……」
↓1〜3 多数決
1.そっとしておく
2.背中をさすってあげる
イリス「はうぅ……クロシュ、ちゃん……?」
クロシュ「え、と……。フメイの具合、悪い時……こうすると、少し……良かった、から……」
クロシュ「あの……。泡で……助けてくれて……ありが、と……」
イリス「……!!」
イリス(……何を迷うことがあったのだろう。困っている誰かがいたら助ける。当たり前のことじゃない)
イリス(こんなんじゃ師匠に怒られちゃうな……。しっかりしろ、私!)
イリス(王国が何だ、差別が何だ! 私は未来の大魔法使い、イリス・プラネットだぞ!)
イリス(よし!!)
イリス「ありがとう、良くなったよ!」スクッ
クロシュ「あ、うん」
イリス「それで……あなたの友達のフメイちゃんのことだけど、私も探すのを手伝うよ!」
クロシュ「え……?」
妖精「ええ……?」
イリス「人手は多い方が良いでしょ? それに私、自慢じゃないけどいろんな属性の魔法が使えるから役に立てると思う!」
クロシュ「わ……」
イリス「これからよろしくね!!」
☆修行中の魔法使いイリス・プラネットが仲間になりました
◇
妖精「……そういえばいろんな属性が使えるって言ってたけど、得意属性は何なの?」
イリス「……複数属性、だと思う。多分……」
妖精「なんか随分歯切れが悪いけど……」
イリス「じ、実はまだはっきりとはわかってないんだよね……アハハ……」
妖精「自分の属性を把握できてない魔法使いなんて初めて見たよ!」
イリス「だ、大丈夫! 本職には及ばないけど、実際にいろんな属性で得意属性に迫るくらいの効果は出せてるから!」
妖精「器用貧乏ってことね……」
クロシュ「わたし……反映魔法しか、使えないから……うらやましい……」
イリス「ふっふっふ、大抵のことはできるからどんどん頼ってね!」
◆
―夜
どこかを走る馬車
ガタンガタン…
黒髪幼女「」グッタリ
「けっ、手間かけさせやがって! クソガキが!!」
ブンッ
パシッ
「……やめておけ。下手に傷付ければ俺達全員の首が飛ぶ。文字通りな」
「ざけんな! こいつのせいでタゴサクとヨタローは火傷の苦痛にのたうち回りながら死んだんだぞ!!」
「落ち着け! 俺達全員を殺す気かお前は!」
「チッ……。大体なんなんだこのガキは。ガキの癖に意味不明な火力出しやがって……!」
「……詮索も厳禁だ。俺達は、ただ命じられた任務を遂行していれば良い」
「くそっ!」
「なあ、この任務が終わったら魔族自治区に行って憂さ晴らししねえか? へへっ……」
「へっ、いいな。タゴサクとヨタローの分も発散してやらねえとなあ……!!」
「…………」
ギャハハハ… ゲラゲラゲラ…
ガタンガタン…
黒髪幼女「……」グッタリ
黒髪幼女「くろ、しゅ……」
◆
―早朝
焼け落ちた集落跡
トンカントンカン… ザンッ!
看板『クロシュちゃんは大魔法使いイリス・プラネットが保護しています。御用の方は大魔法使いイリス・プラネットまで――(イリスの師匠の住所)』
イリス「よし。これならすれ違いになったりしないでしょ」
クロシュ「ありがと……。でも……イリスさんの、お師匠様の住所……いいの……?」
イリス「いいのいいの。知られて困るものでもないから」
妖精「……これでフメイ捜しは終わり?」
イリス「ううん。話を聞いた限りだと、フメイちゃんは強い火属性魔力の持ち主みたいだし、火災で焼け死んだ可能性は低いと思うの」
クロシュ「……うん」
イリス「でも本人は見当たらないし、こうして日が昇ってもここに戻ってくる様子もない。旅慣れてるって話から、逃げた先で事故ったり動物や魔物にやられたっていう線も薄い……」
妖精「ということは――」
イリス「――うん。拉致された可能性が一番高い」
クロシュ「……」
妖精「……」ギリ
イリス「だからまずは、ここに遺留品がないか調べよう。襲撃犯たちの」
妖精「なるほどね……。そういえばクロシュ、あなたは襲撃犯のこと見てないの?」
クロシュ「……」
↓1コンマ 見つけたもの
01-40 焦げた布の切れ端
41-80 ↑+溶けかけた兜の破片
81-00 ↑+目撃者
↓2コンマ クロシュが見たもの
01-40 白い鎧を着た人たち
41-80 白い鎧に描かれた紋章まで
81-00 変身できました
↓1目撃者コンマ
01-12 帽子をかぶった緑髪の少女
13-24 黒髪の無愛想な青年
25-36 薄茶髪の少女
37-48 長い黒髪の儚げな女性
49-60 赤髪ロングポニテの冒険者女性
61-72 銀髪ウェーブセミロングお嬢様
73-84 ボサボサ黒髪の若い傭兵
85-96 ボサボサ金髪の壮年放浪者
97-00 ??
クロシュ「……なんか……鎧、着てた……。白い……」
イリス「白い鎧……。まさか……ね。おや、これは……」
溶けかけた兜の破片+焦げた布の切れ端「」
イリス「……」
妖精「何? 心当たりでもあるの?」
イリス「……ヤバイかも」
ガサッ
イリス「!!」
妖精「!!」
クロシュ「?」
スタスタ……
ミスティ(>>8)「……人と、妖精……? 貴方たちは?」スタスタ
イリス「……こんにちは。犯人を捜しているんです。ここを襲った」
ミスティ「ああ……。あれは……王国の騎士団じゃなかったかしら。部隊は知らないけれど……」
イリス「ああ、やっぱり……。ていうか、あなたも見ていたんですか?」
ミスティ「直接じゃないけれど。昨晩、私も救援に向かおうとしたら、騎士団の馬車が走り去っていくのを見たから。いつもの過激な魔族狩りだと思ってたけれど……」
クロシュ「!! あ、あの……そ、その……ばしゃ……」
イリス「その馬車がどこに向かったかわかりますか!!?」ズイッ
ミスティ「……? わかるけれど……王国騎士よ? 復讐とかは考えない方が……」
クロシュ「あ、あの……とも、友達、が……」
イリス「この子の友達が連れて行かれたかもしれないんです!!」
ミスティ「……そうだとしても、国家権力よ? 下手に楯突いたら……」
イリス「そ、それは……」
妖精「……いいから教えてよ。私もこいつも、こんな国に帰属した覚えはないしどうでもいいから」
ミスティ「……東方面の街道を行ったわ。行き先は……チカーバの街かしら」
イリス「!! い、いいんですか!? いえ、教えてくれるのはありがたいですけど……!」
ミスティ「……まあ、私も別にここの国民ではないからね。旅の途中に寄ったってだけ。それより、追うなら急いだ方が良いんじゃない?」
クロシュ「!! う、うん……! ありがと……お姉さん……!!」タタッ
妖精「……どうも。あなたに、精霊の加護がありますよう」フワッ
イリス「す、すみませんバタバタしちゃって! 大したお礼もできませんが、それじゃあ――」
ミスティ「あ、ちょっと待ちなさい!」
◇
―街道
ソリ「」スイー
クロシュ「ゆ、雪もないのに……ソリが……」
ミスティ「便利でしょ。馬車いらずだし馬車よりずっと早いのよ」
イリス「凄い……! でも、ここまでしてもらっていいんですか? 指名手配されちゃうかも……」
ミスティ「……騎士団の馬車が目視できるところまでは行ってあげる。そこから先はあなたたちでなんとかしなさいよ」
イリス「わかりました! 十分です、ありがとうございます……!!」
◆
―夕
街道
ソリ「」スイーッ ピタッ
遠方に見える騎士団の馬車「」パカラッパカラッ
クロシュ「……!」
ミスティ「意外と早く追いつけたわね。それじゃあ……骨くらいは拾っておいてあげるから……」
イリス「ありがとうございます……! お達者で……!!」
妖精「……イリスと言い、あなたと言い……最近はお人好しが流行っているの?」
ミスティ「たまたまでしょう」
◇
騎士A「止まれ! 我々は騎士団であるぞ! 無闇な接近は許可しない!!」
イリス「待ってください!! あの、この子の双子のお姉さんがそちらの馬車に乗っていませんか!!?」
クロシュ「……」ペコ
・・・
―馬車の中
騎士B「双子だあ? んなもんいるわけ……!!!?!!??」
騎士C「お、おいどういうことだ? なんでこのガキと同じ顔のガキが……!?(小声)」
騎士D「た、隊長どうしますか……?(小声)」
隊長「……あの子供も捕らえるぞ。何らかの関係者である可能性が高い、放置できん」
騎士D「あの魔術師の少女は……?」
隊長「……目撃者は生かしておけん。始末する」
騎士C「……始末する前に『お楽しみ』しても?」
隊長「好きにしろ。ただし子供と言えど魔術師だ。油断はするな」
・・・
騎士A「あー……うむ。そちらのお嬢さんの双子の姉と思しき少女は、確かにこの馬車に乗っている」
クロシュ「!!!」
騎士A「ただ、我々が保護した時点で非常に衰弱していてな。今、街の医療施設へ向かっているところなのだ」
イリス「ほ、本当ですか? あの、それなら顔だけでも見せていただくのは――」
騎士A「ああ、もちろんだ。二人とも、こっちへ来たまえ……同乗を許可しよう」
クロシュ「フメイちゃん……!!」ヨタヨタ
イリス「…………」
イリス(筋は通っているけれど……。こいつらが集落を焼き払った犯人だというのはわかっている……)
イリス(明らかに罠だ……)
イリス「クロシュちゃん(小声)」ギュッ
クロシュ「あ……イリス、さん……?」
イリス「まだ、待って……。妖精さんが上手くやってくれるはず……」
クロシュ「……うん」
・・・
―馬車の中
騎士たち「」ガヤガヤ
妖精「……」コソコソ
フメイ「」グッタリ
妖精(いた……)
フメイの首を縛る首輪「」ガチッ
妖精(これは……魔封じの首輪……。魔力を封じられる苦しみは、私もよく知ってる……。本当に、許せない……)
妖精(外側から壊してやる……。腐蝕しろ――)フォン…
フメイの首を縛る首輪「」ボロボロ
妖精(よし、もう少しで――)
騎士B「――ん? なっ!!?」
妖精「!!!」ビクッ
騎士B「こいつ!! 何をしている!!!」ブンッ
ベシッ
妖精「ぎゃっ……!」ドカッ
騎士C「なんだなんだ!?」
騎士B「羽虫が入り込みやがった!!」
騎士D「まさか――」
隊長「――外の子供二人を逃がすな!! 絶対に捕らえろ!!」
・・・
―街道
馬車の中から響く声「羽虫が入り込みやがった!!」
イリス「!!!」
クロシュ「あ……!!」
イリス「くっ、妖精さん……!!」タンッ
クロシュ「わ、わたしも……!!」トテトテ
騎士A「どこへ行こうと言うのかね?」シャキン
クロシュ「!!!」
↓1コンマ
01-50 劣勢
51-75 優勢
76-00 優勢+ミスティ参戦
騎士A「ぬん! せいっ!」ブンッブンッ
クロシュ「わっ、ひゃっ!」ヨロヨロ
騎士E「馬鹿、そいつは無傷で捕らえろって言われてるだろ!! 剣は使うな馬鹿!!」
騎士A「お前、今二度も馬鹿って言ったか!? おい、二度言ったのか!!?」
騎士E「うるせえよ馬鹿!!! おらっ!」ガシッ
クロシュ「……!! や、やだ……!!」ジタバタ
騎士E「へっへっへ……こっちのガキはお楽しみできねえのが残念――グアッ!!!」ザシュッ
騎士A「なにっ!?」
宙に浮く無数の氷柱「」キラキラ
ミスティ「……」
ミスティ(ああ、やってしまった……。指名手配確定かしら……)
ミスティ(でも、ここで見捨てていたら一生後悔してた……。それだけは間違いないわ……)
ミスティ(だから――もうどうにでもなれ!!)
ミスティ「……その子を離しなさい。さもなくば――」ギラッ
↓1
01-05 ??
06-25 劣勢
26-75 優勢
76-95 勝利
96-00 ??
イリス「水よ――」
撃ち出される水の弾丸「」バシュンバシュン
騎士C「くっ、なかなか近付けねえが……水だけじゃ決定打にならねえぞォ!!」ビショビショ
騎士B「へへっ、じわじわ追い詰めてやんぜ!!」ビショビショ
騎士D「我々騎士団の連携を見せて差し上げましょう!!」ビショビショ
騎士B~D「ウオオオオオ!!」ビショビショ
イリス「――ここ!! 電気よ――!!」
地を走る電気「」パリッ
騎士B~D「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
騎士B~D「」プスプス
イリス「……っ、妖精さんっ!」タッ
↓1
01-05 ??
06-95 勝利
96-00 ??
―馬車の中
隊長「……なんと不甲斐ない。所詮は実践経験皆無のボンクラ共か」
妖精「はあ、はあ……ざまあ、みろ……悪辣種共……」
隊長「……」ブンッ
ベシッ
妖精「はぐっ……」ドカッ
妖精「」グッタリ
隊長「この羽虫は変態貴族の慰み者にしてやるとして……。問題は外にいる者たち……一人増えているな」
隊長「……仕方ない。不出来な部下の尻拭いに赴くとするか」スクッ
・・・
―街道
隊長「……」スタスタ
クロシュ「……!」
イリス「……あなたの部下は全員倒した! 降参して!!」ジャキ
ミスティ(今から無関係を装ったら間に合うかしら……)
隊長「……諸君らは優れた才能をお持ちのようだ。それだけに、怒りを覚えざるを得ない……」
イリス「……?」
隊長「……我が剣の錆としなければならぬ、世の不条理にな――」ヴォン…
イリス(な、何あの魔力……!? 闇……!?)
ミスティ(ああ……やっぱり国家権力になんて歯向かうんじゃなかったわ……)
クロシュ「……! だ、だめ――」
隊長「――」
カッ――
クロシュ(わたしは、とっさに目を瞑った……)
クロシュ(でも……衝撃は、いつまでも、来なかった……)
クロシュ(目を開けてみると――)
黒焦げになった隊長だった物体「」プスプス
イリス「あ……え……?」
ミスティ「な……何、が……?」
クロシュ「あ――」
ヒュオオオオ…
フメイ?「……」チリチリ
クロシュ(隊長の背後から現れたのは――今のわたしと同じ姿の女の子――フメイちゃんだ!!)
クロシュ「フメイちゃん……フメイちゃん……!!」トテトテ
フメイ「……クロ、シュ……?」
クロシュ「フメイちゃん……良かった……!!」ヨタヨタ
フメイ「……」
クロシュ「心配、したよ……。でも……無事で……」
フメイ「……」スッ
クロシュ「え?」
カッ
イリス「きゃあああああ!!!」
ミスティ「いやあああああ!!!」
クロシュ(フメイちゃんが手をかざした次の瞬間――巨大な爆発音と共に、イリスさんとミスティさんの悲鳴が響いた……)
クロシュ(どうして……?)
クロシュ「フメイ、ちゃん……?」
フメイ「クロシュ……。人間なんかと……一緒にいちゃ、だめ……」
クロシュ「え……。で、でも……」
フメイ「フメイ……よく、わかった……。人間を……滅ぼさなきゃ……。フメイも、クロシュも……永遠に、安らげない」
クロシュ「そんな、こと……! フメイちゃんだって……人間……」
フメイ「んーん……。フメイ……たぶん、人間じゃない……。人間は……魔法を使っても、髪が赤くなったり、しない……」
クロシュ「あ……」
フメイ「……クロシュ……フメイと、一緒に行こ……?」
フメイの手「」スッ
クロシュ「――」
イリス「く、クロシュちゃん……!!」グッ
ミスティ「クロシュさん……!!」ググ
クロシュ「!!!」
クロシュ「……」オロオロ
フメイ「……フメイのクロシュを、たぶらかさないで――」チリッ…
クロシュ「ふ、フメイちゃん! やめて……!!」
フメイ「……」スン
クロシュ「わ、わたし、は……」
――運命の選択――
↓1〜5
1.フメイと一緒に行く
2.フメイと一緒に行けない
クロシュ「…………」
クロシュ「行け、ないよ……。フメイちゃんと……一緒でも……」ジワッ
フメイ「……」
クロシュ「ごめん、なさい……」ジワワ…
フメイ「……クロシュは……殺すの、苦手だもんね」
クロシュ「…………」ポタポタ
フメイ「ごめん……」
クロシュ「フメイ、ちゃ……」
フメイ「……フメイ……一人で、やる……」クルッ
クロシュ「……!?」
フメイ「フメイたちが、平和に暮らせる世界……きっと作るから。待ってて」
クロシュ「ま、待っ――」
ボンッ!
クロシュ(小さな爆発音を残して……フメイちゃんは、姿を消した……)
クロシュ(わたしは……その場に崩れ落ちることしか、できなかった……)
◆
これにて、チュートリアルステージ終了となります
見てわかると思いますが、クロシュちゃんは非常によわいです。前に旅をしていた時もほとんどフメイちゃんに頼り切りだったかと思われます
そして運命選択が満場一致の2で、>>1の心の中のフメイちゃが泣きそうでした
ちなみにどちらのルートに進んでも妖精は付いて来ます
それでは本日はここまでです。ありがとうございました
実際、運命選択1の方がハードモードな上にクロシュちゃんのただでさえ弱いメンタルがさらに削れるので、順当に進める場合は2の方が良いのは確かでした。でも1は闇堕ちするフメイちゃんを間近で止められるルートでもあった……のかもしれません
ミスティさんとは一緒に国家権力に喧嘩を売った仲なので、よほどのことがない限りは味方でいてくれると思います(半ばヤケクソになっています)。弱いクロシュちゃんにとって仲間の存在は生命線なので、仲間は大事にしましょう
今回は種族や性別や年齢は自由なのですが、今のところコンマが女性キャラばかり出そうとしてくるため、いただいた男性キャラを登場させられておりません……
ダブル主人公を上手く書くのは>>1には難しいので多分無理なのですが、募集キャラの何名かがフメイちゃんに付くというのはあるかもしれないです
―夜
焼け落ちた集落跡
雨「」ザァァァァ…
ボンッ!
フメイ「……」ストッ
大人の焼死体「」
子供の焼死体「」
スライムの焼死骸「」
フメイ「…………」
◆
―いつかの日
集落
フメイ「はあ、はあ……」ヨロヨロ
クロシュ「……」グッタリ
老婆「おやまあ……! 酷い怪我じゃないかい……!」
若者「どうした婆さん……これは!?」
老婆「イーシャさんとこに連れてってあげておくれ!」
若者「おう! 悪いが二人まとめて背負うぜ!」ヒョイヒョイ
フメイ「ぁ……」
*
―集落の診療所
フメイ「クロシュは!? クロシュは治るの!?」ガタッ
魔族の医者「うむ。黒いスライムの子は問題ない。どちらかと言うと君の方が重症なのだが……」
フメイ「良かった……」ホッ
魔族の医者「良くはない。君は集中治療が必要だ」ズイッ
フメイ「むう……」
◇
―集落の診療所
フメイ「……ここは、どういうところなの?」
魔族の医者「ここがどういう場所か知らないで辿り着いたのか? だとしたら運が良いな」
クロシュ「?」
魔族の医者「ここは王国から排斥された者たちが集う隠れ里のようなものだ。人であろうと魔であろうと、ここでは等しく文化的に生きる権利を持つ」
クロシュ「ぶんかてき……けんり……?」
フメイ「……」
魔族の医者「ここは君たちのような者が集まり、助け合って築いた共同体ということだ」
クロシュ「……!」
魔族の医者「無論、君たちは傷が治った後もここに居て良い。他者を尊重し、不当に傷付けないと約束できるならな」
クロシュ「………フメイちゃん……」
フメイ「……。クロシュが、嫌じゃなければ」
魔族の医者「うむ。歓迎するぞ」
◇
―集落の広場
村の子供「――」キャッキャ
スライム「――」キャッキャ
クロシュ「――」キャッキャ
フメイ(……)
フメイ(あの医者の言う通り……この集落は、平和……)
フメイ(誰も……フメイとクロシュを、いじめない……)
フメイ(ここなら……。フメイたちは……平穏に、暮らせる……?)
クロシュ「フメイちゃん……」クイクイ
村の子供「フメイちゃんもいっしょにドロダンゴつくろ!」
スライム「〜〜」モニョモニョ
フメイ「……ん」コク
◇
―集落の家
アリシラ(>>7)「――勇者と魔王はお互いを許し合い、長い長い戦いを終わらせて平和を取り戻したのでした。めでたしめでたし……」
クロシュ「わあ……」
スライム「〜〜」モニョモニョ
村の子供「すう、すう……」zzz
フメイ「……」ウツラウツラ
アリシラ「あはは……ちょっと、つまんなかったかな……?」
クロシュ「んーん……。すごく、良かった……」
スライム「〜〜」モニョ
アリシラ「なら良かった……! ふふ、スライムの子たちは眠気に強いのかな?」
◇
―集落の畑
クロシュ「んしょ、んしょ……」
大量の雑草が積まれた手押し車「」ガラガラ
若者「おお〜、いっぱい抜いたな! 雑草!」
クロシュ「んへへ……」
若者「運ぶのはオレに任せろ! 焼却炉まではけっこうあるからな!」
クロシュ「うん……」
*
―集落の焼却炉
若者「フメイちゃん! 頼むぜ!」
フメイ「ん」チリッ
焼却炉「」ボッ メラメラ
クロシュ「わあ〜」
老婆「フメイちゃんが来てから火起こしが楽になったなあ」
若者「ははっ、本当に大助かりだぜ。薪がなくても風呂が沸かせるし、フメイちゃん様々だ!」
クロシュ「んふふ……」
老婆「フメイちゃんがいれば冬も安泰だねえ」
フメイ「……うん」
◇
―集落の広場
焚き火「」メラメラ
アリシラ「焼けたよ〜。はい、クロシュちゃんとフメイちゃんの分!」
焼き芋「」ホカホカ
クロシュ「わあ……」
フメイ「……ごくっ」
若者「ははっ、君たちが手伝ってくれた畑で採れたやつだぜ。味わって食うんだ!」
村の子供「あたちのは!?」
スライム「〜〜」モニョモニョ
アリシラ「はいはい、ちょっと待っててね。今取り出すから」
◇
―集落の共同浴場
フメイ「……」チリッ
カッ
浴場「」ホカホカ
魔族の医者「ほう……。湯加減もバッチリだな」
フメイ「まあ」
村の子供「はじめはヤケドしちゃうくらいアツアツだったもんねえ〜」
フメイ「もう覚えた。加減」
魔族の医者「ふむ……。しかし素晴らしい魔力コントロールだ。将来は大成するかもしれんな」
フメイ「興味ない。クロシュがいれば、いい……」
村の子供「あたちは!?」
フメイ「あ、えと……い、いた方が……いい、と思う……」
村の子供「えへへ〜」
フメイ「……ふふ」
◇
―集落の家
アリシラ「それで、この文字は……」
クロシュ「……」カキカキ
スライム「……」モニョモニョ カキカキ
*
アリシラ「ふう。二人ともお勉強お疲れさま」
クロシュ「ん……ありがとう、ございました……!」
スライム「〜〜」モニョモニョ
アリシラ「……ど、どう? わかりやすく教えられてるかな?」
クロシュ「うん……!」
スライム「〜〜」モニョ
アリシラ「それなら良いんだけど……。クロシュちゃんだけでなくてスライムちゃんも文字を勉強したいのはびっくりしたなあ」
スライム「〜〜」モニョモニョ
クロシュ「あ、えっと……スライムちゃんも、自分の言葉でみんなとお話したいんだって。でも声は出せないから……」
アリシラ「そうだったんだ……!」
クロシュ「うん……。わたしの通訳も、まちがってるかもしれないし……」
スライム「〜〜」モニョモニョ
クロシュ「あ、うん。えへへ……」
デロロン…
クロシュ(スライムの姿)「〜〜」モニョモニョ
スライム「〜〜」モニョモニョ
クロシュ(スライムの姿)「〜〜」キャッキャ
スライム「〜〜」キャッキャ
アリシラ「な、なんて話してるか全然わからない……。私もスライム語を勉強しようかな……」
◇
―集落の家
アリシラ「クロシュちゃんとフメイちゃんがここに来て一年……」
若者「二人とも――」
村の子供「たんじょーび、おめでとー!!」
スライム「〜〜〜!!」モニョモニョ
ワーワー パチパチパチ モニョモニョ
クロシュ「わ……」
フメイ「……!」
老婆「ほっほっほ……。誕生日がわからんのなら、この村に初めて来た日を誕生日にすりゃええ」
魔族の医者「という提案をしたのは私だ」
フメイ「……ありがと。みんな……」
クロシュ「あ、ありがと……ござい、ます……」ペコ
若者「堅苦しいのは無しだ! 今夜はいっぱい食おう!!」
スライム「〜〜!」モニョモニョ
クロシュ「えへへ……」
フメイ(……)
フメイ(もう疑う必要、なさそう)
フメイ(ここでなら……フメイとクロシュは、きっと―――……)
◆
―現在
焼け落ちた集落跡
雨「」ザァァァァ…
大人の焼死体「」
子供の焼死体「」
スライムの焼死骸「」
フメイ「……」
フメイ「…………」ジワッ
フメイ「…………あいつらの、せいだ……。あいつらのせいで……みんな……」
フメイ「………みんな………フメイの、炎で…………」
フメイ「う、うぅ……うあああぁぁ…………」ポロポロ
フメイ「ごめんなさい……ごめん、なさい……」ポロポロ
フメイ「……フメイ………作るから……。みんなが……ずっと平和に………暮らせる世界……」ポロポロ
フメイ「だから……だから……っ」ポロポロ
「フメイちゃん……?」
フメイ「!!!?」バッ
アリシラ?「フメイちゃんだあ……」ヨタヨタ
フメイ「アリシ、ラ……?」
◆
―翌朝
イリスのテント
チュンチュン…
クロシュ(スライムの姿)「」グニャァ
クロシュ(村のみんな……死んじゃった……。フメイちゃんも……いなくなっちゃった……)
クロシュ(わたし……もう……どうしたらいいか……わかんないよ……)
クロシュ(あ……イリスさんと、ミスティさんに……謝らなきゃ……)
クロシュ(フメイちゃんを助けるためにがんばってくれたのに……。フメイちゃんに、攻撃されちゃった……)
クロシュ(…………)
クロシュ(……イリスさんも、ミスティさんも……わたしたちのこと……きっと嫌いになってる……)
クロシュ(………きっと……また、追い出される……)
クロシュ(今度は、フメイちゃんもいないから……一人ぼっち………)
クロシュ(……もう、やだ………。一昨日までの村に、帰りたいよぉ………)
クロシュ(スライムの姿)「」グニャァ
イリス「……どう、声をかけてあげたら良いのかな……」
ミスティ「あの姿じゃ、寝ているのか動けないのかも判別付かないわね……」
妖精「ふわあ……。なに、クロシュのやつまだ不貞腐れてるの?」
イリス「不貞腐れてるって……。住んでた場所を失って、ずっと一緒だった友達とも仲違いしちゃったんだよ!?」
妖精「わ、悪かったね……。でも私たちは推定指名手配犯なんだから、いつまでもうずくまってるわけにはいかないでしょ?」
ミスティ「……そうね。クロシュさんには気の毒だけれど、ここに長居しているわけにはいかないわ……。王国領内には無数の間者が潜んでいると言うし、私たちの犯行がバレていないと楽観視するのは自殺行為よ」
妖精「自分の名前を集落の焼け跡に堂々と突っ立てて来た大魔法使いもいるしね」
ミスティ「えっ何それは……」
イリス「わ、私ってもしかして最悪手を踏んでしまったんじゃ……?」
妖精「……最悪はあいつらに捕まったり殺されたりすることでしょ。まだまだ程遠いよ」
イリス「妖精さん……!!」ズイッ
妖精「とにかくクロシュを叩き起こすよ! 起きろクロシュ!」ゲシゲシ
クロシュ(スライムの姿)「〜〜…」モニョモニョ…
イリス「ああ、そんな乱暴な……!」
妖精「こういう奴は優しくしとくと永遠に甘え続けるんだよ! ほらっ起きろ!」ゲシゲシ
ミスティ(乱暴とは言っても、妖精の蹴りじゃ指先でツンツンされるようなものね)
クロシュ(スライムの姿)「……」モニョニョ…
クロシュ(半分スライムの姿)「うぅ……妖精さん……」グニャ…
イリス「クロシュちゃん! その……大丈夫?」
クロシュ(半分スライムの姿)「あ……イリス、さん……」
イリス「その……大丈夫じゃないかもしれないけど……。今だけでも、起きて欲しいの。ここにいたらまずいから……」
ミスティ「……具体的には、私のソリに乗るまでは自力で立って欲しいわ。スライム状態のあなたを持ち上げるのって、凄く難しいから……」
クロシュ(半分スライムの姿)「……う、うん……」
◇
―ミスティのソリ
クロシュ「……」スト
ミスティ「……お疲れ様。起きているのが辛ければ、また寝ていても良いわ……」
クロシュ「あ、えと……。どう、して……?」
ミスティ「……? 何が……?」
クロシュ「そ、その……。どうして……わたしを………見捨てない、の……?」
イリス「み、見捨てるわけないでしょ! 何を言っているの……!」
クロシュ「だ、だって……わたし……。わたしの、せいで……みんな……」
妖精「ああ……。確かに、あなたに付き合ったお陰で私たち全員お尋ね者になった可能性が高いね。目的のフメイにも結局逃げられちゃうし」
クロシュ「あぅ……」グニャァ
イリス「私は自分の意思でクロシュちゃんに付き合ったんだから、クロシュちゃんが気に病むことじゃないよ……!」
ミスティ「……それは首を突っ込んだ私自身の責任よ。あなたに擦り付ける気はないわ……。それにまあ……この国に永住する気もないしね……」
妖精「だってさ。良かったじゃん、こいつらが筋金入りのお人好しで」
クロシュ「……」
妖精「……それでも納得できないなら、こいつらの逃亡生活に手を貸してやれば良い。あなたの変身能力はいろいろ役に立ちそうだしね」
クロシュ「……わたし……役に、立てる……?」
妖精「多分ね」
イリス「役に立つとか関係なく、クロシュちゃんを見捨てたりなんか絶対にしないから安心してね?」
妖精「ところで、このソリはどこへ向かっているの?」
ミスティ「それは――」
↓1〜3選択 最もコンマが高いもの
1.王国領 チカーバの街(道中自由安価×1、ランダム×1)
2.王国領 魔族自治区 (道中自由安価×2、ランダム×2)
3.自由安価(道中安価とランダムイベント数は内容に応じて>>1が決めます。なお、クロシュ用の装備が整っていないため長旅はできません)
◇簡単な解説◇
〈チカーバの街〉
王国領内にある地方都市の一つ。
近場にいくつかのダンジョンがあるため、冒険者たちの拠点としてよく利用されている。
冒険者たちの出入りが盛んなため、市場に珍しい物品が並ぶこともある。
今回ここに向かう理由は、情報収集と消耗品の補充、クロシュ用の装備の調達などが考えられる。
〈王国領魔族自治区〉
王国領北西にある、魔族たちによる自治が認められた地域。しかし実際には自治区とは名ばかりの植民地である。
かつては知性ある魔族たちが固まって暮らす平和的な都市国家の一つだったが、十数年前に王国より派遣された「勇者」なる存在によって蹂躙され、王国に降伏した。
魔法、手工業、性産業が盛んだが、成果物のほとんどは王国によって搾取されている。
厳しい検問が敷かれているため、一般人の出入りには煩雑で時間のかかる手続きが必要。当然魔族や魔物は出入り禁止である。
今回ここに向かう理由は、情報収集と消耗品の補充、クロシュ用の装備(スライムに適したもの)の調達などが考えられる。
検問や駐屯騎士の存在など、リスクもある。
ミスティ「……魔族自治区よ」
妖精「……は? いや……あなたたち、自分の立場がわかってるの?」
イリス「で、でもほら……クロシュちゃん用の装備を整えるには普通の街じゃだめだしさ……」
クロシュ「?」
妖精「いやいや! だからって危なすぎるでしょ! あそこは悪辣騎士の駐屯地もあるし……! お尋ね者の私たちが行ったりしたら……!」
イリス「ううん。指名手配のお触れが出回るのはもう少し時間がかかると思う。ああいうのっていろいろ手続きがあるらしいし……」
ミスティ「……楽観視は危険だけどね……。でも、逆に言えば検問を通れるのはまだ出回っていない今だけかもしれないのよ……」
妖精「そ、それはそうかもしれないけどさあ……」
イリス「それに実は私、小さい頃に師匠のツテで魔族自治区に魔法使いと会ったことがあるんだ。もしかしたら力になってくれるかも……」
ミスティ「それは……人? それとも魔族?」
イリス「……あ、あはは……それが、その……覚えてなくて……」
妖精「人だったら危険だし、魔族だったらそもそも生きているかわかんないじゃん……」
イリス「凄い魔法使いだって師匠が言ってたから、もし魔族でも殺されずに生きてると思う……!」
ミスティ「……はあ……。他者を頼りにするのは危険ね……」
ソリ「」スイーッ
↓1 ランダムイベント
01-05 野生の魔王が現れた!!!!
06-20 襲撃
21-35 食べられる野草(まずい)
36-50 自生する野菜(まあまあ)
51-65 自生する果物(おいしい)
65-80 良いものがあった(自由安価)
81-95 良いことがあった(自由安価)
96-00 旅の仲間
ソリ「」スイーッ
ミスティ「……ん? あれは……」
街道を塞いで騒ぐ野盗の群れ「ヒャッハー!!!」
イリス「げ……。思いっきり塞いでる……」
ミスティ「……迂回すると物凄く遠回りになるのよね……」
クロシュ「…………」
妖精「めんどくさ……。悪辣屑騎士団はああいうのを取り締まれよ……」
ミスティ「本当にね……。面倒だし強行突破するわ……」
クロシュ「あ……だ、大丈夫……?」
ミスティ「襲ってきたら返り討ちにしてやれば良いのよ……って、今更正当防衛とか気にする必要もないわね……」
イリス「じゃあ先手必勝だね! どうせ未来はお尋ね者なんだからこっちから仕掛けちゃおう!!」
ミスティ「……そうね。そうしましょう……その方がローリスクだわ……」
妖精「……あなたたち、なんか自棄になってきてない?」
*
野盗A「へっへっへ、なんかソリが来たぜ!」
野盗B「見ろよ、女だ!」
野盗C「ガキばっかじゃねーか! 俺ァでっけえ姉ちゃんがいいぞ!!」
野盗D「いいや、おれは妖精さんだね! おれ専用の飯炊き係にしてやんぜ……!!」
野盗E「おい、なんかあのソリめっちゃ加速してねーか?」
野盗F「ああん――」
ソリ「」シュゴオオオオ――!!
↓1
01-05 ??
06-15 劣勢
16-55 優勢
56-95 勝利
96-00 ??
ソリ「」ドッギャアアアアアン
野盗の群れ「ぐああああああ!!!」
*
イリス「これに懲りたらもう盗賊なんてやめてください! いいですか!!」
野盗の群れ「はい……」
妖精「甘いんじゃない? 野放しにすればまた盗みも殺しも働くよ、こういう奴らは」
イリス「えっ……」
野盗の群れ「えっ……」
ミスティ「……」
妖精「私は人間社会のことなんてどうでもいいけどさ。被害を最小限に抑えたいならここで始末した方が良いよ」
イリス「そ、それは……でも……!」
ミスティ(……正直……妖精の言う通りだと思う。一度罪を犯すと……『次』の心理的ハードルは、劇的に下がる……。彼らは、きっと更生しないし……もし奇跡的に更生したとしても……機会さえあれば、容易くまた暗黒面へ堕ちる……)
ミスティ(そして……少し事情が違うとは言え……騎士団を攻撃し、開き直って彼らをソリで強襲した私自身も……また……)
ミスティ(……心を、強く持つべきね……)
イリス「でも私、信じたいよ……。たとえ間違えても……罪を犯しても、人は反省できるって。やり直せるって、信じたい……。信じちゃ、だめかな……」
妖精「……クロシュはどう思う?」
クロシュ「……」
↓1〜3多数決
1.野盗を許した方が良いと思う
2.野盗を殺した方が良いと思う
3.自由安価
バラけてしまったので決選投票。どれも絶妙に属性が異なっていて良いですね。クロシュちゃんはどういう方向に成長するのでしょうか
↓1〜5
1.野盗を許した方が良いと思う
2.何回でも返り討ちにすれば良いと思う
3.自分たちを襲わなければどうでも良いと思う
混沌クロシュ『来るなら何度でも返り討ちにしちゃえ。悪いやつは何度でも懲らしめてやる』
秩序クロシュ『返り討ちにできない人は殺されちゃうよ……』
混沌クロシュ『殺られるような弱い奴が悪いんだよ。弱肉強食だよ』
秩序クロシュ『村のみんなも……弱くて殺されたから、悪いって言うの……?』
混沌クロシュ『…………ちがうもん』
秩序クロシュ『そうだよね。弱いからって、殺されて良い理由にはならないよ。それに、一番弱いのはわたしだよ……。今回はイリスさんとミスティさんのお陰で返り討ちにできただけだよ……』
混沌クロシュ『…………むう』
中庸クロシュ『わたしたちをいじめないなら……誰が何をしようと、どうでもいい……』
秩序クロシュ『それは……』
中庸クロシュ『イーシャさんも言ってたでしょ、他者を尊重しろって。野盗の生き方も尊重すべきだよ』
秩序クロシュ『で、でもイーシャさんは、不当に他者を傷付けるなとも言ったよ……。野盗の生き方は、不当に誰かを傷付けるよ……』
中庸クロシュ『それは、そうだけど……』
秩序クロシュ『だから、やっぱりだめだよ……。野盗の人たちには……ちゃんと、反省してもらうのが一番だよ……』
混沌クロシュ『反省するの?』
中庸クロシュ『しないと思う』
秩序クロシュ『……するの!! してもらうの!!!』
*
クロシュ「……反省、してもらうの!!!」
妖精「うわっびっくりした! な、何いきなり……」
クロシュ「あっ……ご、ごめんなさい……」
イリス「……クロシュちゃん、反省してもらうって言った? ねえ、言ったよね?」ズイッ
クロシュ「う、うん……。言った……」
イリス「ほらー!! クロシュちゃんもこう言ってるし、野盗の皆さんには反省してもらうのが一番だよ!! 命まで取る必要ないって!」
ミスティ(……それで良いと思うわ。命を奪うとなれば、その罪を私たちが背負うことになるし……何より、『命を奪う』ことに慣れてしまう危険性がある……。私はともかく、イリスとクロシュが道を踏み外したら気分が悪いしね……。妖精は……もう慣れてそうだけど……)
妖精「……はあ、まあいいけどさ。反省してもらうってんなら、何か考えはあるんでしょうね?」
*
拘束されて木にくくりつけ野盗の群れ「」
イリス「これにて一件落着! 毎日誰かしらは通るだろうし、見つけた人がチカーバの騎士か領主様に引き渡してくれるでしょ!」
ミスティ「た、他力本願ね……。まあ、私たちにこいつらを街まで連れて行く余裕はないから仕方ないけど……」
クロシュ「……反省……して、ください……。もう、誰も……傷付けないって……」
野盗F「……それを言うなら、約束だろ?」
クロシュ「あっ……」
野盗F「……まあ、反省はする。だが約束はできねえ。俺たちだって今日のメシを食うのに必死なのさ。刑期が終わって牢から出た時に、まともな仕事にありつけなけりゃあ……俺たちは、また野盗に戻るだろうぜ。そんで次は、慈悲もクソもねえ騎士様にその場でぶち殺されて終わりかもな」
クロシュ「……」
野盗A「へっへっへ、なんか生きてるぜ俺たち!」
野盗B「命まで取らないでくれてありがとな、嬢ちゃんたち!」
野盗C「俺ァどうせならでっけえ姉ちゃんにシバかれたかったなァ」
野盗D「妖精さんが人間に厳しすぎて心臓がバクバクすんぜ……!」
野盗E「おれにも魔法って使えんのかなあ。シャバに出たら勉強してみてえなあ」
野盗F「ま、そんときゃそんときだ。生きてる間は死ぬまで生きる。それが俺たちの信念さ」
◇
ソリ「」スイーッ
クロシュ「……」
イリス「……考えてるの? さっきの人たちのこと」
クロシュ「あっ……イリスさん」
イリス「……いくら苦しくても、それは誰かから物を奪ったり、傷付けたりして良い理由にはならないよ。わかっているとは思うけれど」
クロシュ「……うん」
イリス「なんて……恵まれてる私が、知ったような口で言うのは傲慢かもしれないけどね……。でもこれは、曲げちゃいけないことだと思うんだ」
クロシュ「……イーシャさん……あ、村にいた魔族のお医者さんなんだけど……。その人も、そんなようなこと、言ってた……」
イリス「そうなんだ……。やっぱり、魔族の人も私たち人間と変わらないんだよね」
クロシュ「うん……。きっと……変わらない、と思う……」
↓1
自由安価 移動中何をするか、または何が起きるか
自由安価で遭遇するのは可能ですが、その場合は仲間にはなりません。情報交換や交流程度に留まります。また、特定の非同行キャラと連続で交流することはできません
なお、ランダムイベントでクリティカル〈旅の仲間〉を引いた場合、誰かが確定で仲間入りします
―夕
街道
ソリ「」スイーッ
ミスティ「……?」
イリス「どうしたの、ミスティさん」
ミスティ「いえ……ソリが、少し重いような……」
妖精「……そこ!」ゲシッ
??「あいたっ!」ベシッ
クロシュ「!?」
イリス「えっ!?」
ミスティ「……なるほど」
妖精「隠れても無駄だよ。妖精の目からは逃れられない」
帽子を被った少女「ひえ〜……流石は妖精、目ざといなあ〜」スゥー
イリス「えっ誰!?」
*
メルル「ってわけでちょっと乗り合わせてもらってただけだからさ〜。許してよ〜」
ミスティ「油断も隙もない……」
イリス「い、いつの間に乗り込んだんだろう……」
妖精「……何が目的? 密航なら他を当たって欲しいんだけど」
メルル「だからただの乗り合いだって〜。馬を買うお金なんてないからさァ。馬車より早いソリなんて乗らない理由がないじゃん?」
ミスティ「……」
妖精「……どう思う? 王国の間者の可能性は?(小声)」コソコソ
イリス「十分にあり得るよね……。どうししよう……(小声)」コソコソ
ミスティ(……口封じ……いえ、いたずらに罪を重ねるべきではないわね……)
クロシュ「えと……メルルさんは……どこに行く、の……?」
メルル「お、話の通じそうな子だね〜。まァ実は目的地とかはないんだけど。雪もないのにソリが走ってたからつい飛び乗っちゃっただけでさ」
クロシュ「そうなんだ……」
メルル「てか、このソリこそどこに向かってんの? まさか魔族自治区じゃないよね?」
クロシュ「え、魔族自治区、だよ……?」
メルル「へ……? ま、マジ?」サーッ
クロシュ(なんか、顔が青くなった)
メルル「ご、ごめーん!! お腹痛くなってきたから降りるね〜!! ばいばーい!!」パッ
イリス「へ?」
ミスティ「あ、ちょっと……!」
妖精「……逃げられたね」
*
―街道沿い
メルル「はあ〜……。魔族自治区行きとか、危ない危ない……。半人半魔のあたしがそんなとこ行ったら問答無用で打首確定じゃんね」
メルル「まあでも、雪でもない道を走るソリに乗れたし良しとしますか!」
メルル「さ〜って今日は野宿野宿♪」
◆
↓1 ランダムイベント
01-05 野生の魔王が現れた!!!!
06-20 何もなし
21-35 食べられる野草(まずい)
36-50 自生する野菜(まあまあ)
51-65 自生する果物(おいしい)
65-80 良いものがあった(自由安価)
81-95 良いことがあった(自由安価)
96-00 旅の仲間
はい、自由安価でランダム遭遇とした場合でも仲間にはなりません。それをアリにしてしまうと、毎回それをすれば簡単に全員仲間にできてしまいますし、同行キャラが増えすぎると>>1の頭がパンクするので……
↓1 クロシュたちが見つけたいいもの
ソリ「」スイーッ
ミスティ「……あら?」
打ち捨てられた馬車「」
イリス「廃馬車だね……」
ミスティ「せっかくだし中を見ていきましょうか」
妖精「目ぼしいものは野盗とかがもう持ってっちゃってると思うけどねえ」
*
―廃馬車
イリス「う〜……もう誰のものでもないとは言え、気が引けるなあ……」ガサゴソ
ミスティ「……大事な感覚だとは思うけれど、旅に不要な価値観の一つでもあるわ……。誰かが困るわけでもないのだから、貰えるものは遠慮なく貰ってしまいましょう……」ガサゴソ
クロシュ「……あ!」ガサ
妖精「何かあった?」
クロシュ「これ……!」スッ
状態の良い鉄鍋「」キラキラ
イリス「わお! 綺麗な鉄鍋……!」
ミスティ「状態が良いわね……」
クロシュ「木箱に入ってた……!」
妖精「へえ……お風呂に使えそうね」
イリス「えっ」
妖精「冗談。それとも、私の出汁でも取ってみる?」
ミスティ「妖精の出汁……ちょっと需要がありそうなのがまた……」
◇
鍋「」グツグツ
クロシュ「わあ……」
イリス「ふふふ、ちゃんとしたお鍋を使うのなんて久し振りだなあ〜」
ミスティ「……良い香り……胸が高鳴るわね……」
妖精「そういえば、初めて会った日に飲まされたスープはどうやって作ったの?」
イリス「ああ、あれは地魔法で作った即席土鍋で作ったの。あ、一応言っておくけど衛生管理はちゃんとしてるからね! 火魔法で殺菌、加熱ってわけ」
ミスティ「複数属性……ずるいわ……」
イリス「でもやっぱり、ちゃんとした鍋の方が火の通りも良いし美味しく作れるんだよね……!」
*
食べられる野草のスープ「」ホカホカ
イリス「……」ゴクン
イリス「……うん! 街に付いたら、まずは食料調達だね!!」
ミスティ「………」ズズ
ミスティ「…………そうね。食は……生命活動の要よ……」
妖精「……」ゴクゴク
妖精「ぷあ……。けっこういけるね。やるじゃん、イリス」
クロシュ「……」ゴクゴク
クロシュ「……おかわり、いい……?」
イリス「お、美味しいならいいけど……」
ミスティ(……やっぱり、人間とは味覚が異なるのかしら……)
↓1 自由安価 移動中何をするか、または何が起きるか
本日はここまでとなります
上の方にもありましたが、クロシュの人格形成に関わる選択が今後また出てくることもあるかと思います。今回は秩序クロシュが勝利を収めました。なお今のところ、秩序属性にはイリス、中庸属性にはミスティと妖精が該当しています。クロシュちゃんの人格がどのようなものになるかは皆さんの安価にかかっています。よろしくお願いいたします
それでは本日もありがとうございました
ミスティよりもイリスの方が年上なのですが、人生経験という意味では、幼い頃にいろいろあって旅立たざるを得なかったミスティの方がいろいろあるのかもしれません。実際、ミスティの方がお姉さんに見えます
しかしイリスは扱いの難しい複数属性(仮)の修練に人生の多くを費やしているので、その分魔法でできることが多いです。複数属性は少人数での旅においては圧倒的な利点と言えるでしょう
秩序の視点と中庸の視点があるのは人間らしく成長するには良い環境と言えるかもしれません。でもクロシュはスライムなので、もし魔物として生きる場合は混沌の視点が必要不可欠です
フメイちゃんが遭遇したアリシラさんが一体何なのか、今後の展開で明らかになったりならなかったりするかもしれません
―街道
ソリ「」スイーッ
雨「」ポツ ポツ…
クロシュ「!」
妖精「雨ね」
雨「」サァァァァ
イリス「うわ、本当だ!」
ミスティ「丁度良く廃屋があるわね……。雨宿りしましょう」
*
―廃屋
キィ……
イリス「お邪魔しまーす……」
ミスティ「カウンターに捨て置かれた台帳があるわね……。宿屋かしら……」
妖精「げえ、埃っぽい……。私は外にいようかな……」
クロシュ「妖精さん……雨、大丈夫……?」
妖精「なに、気遣ってくれるの? 雨は平気だから気にしなくて良いよ」パタパタ
クロシュ「でも……一人じゃ危ない、よ……?」トコトコ
*
―廃屋
ボロボロのソファ「」ボフッ
ミスティ「当たり前だけど、目ぼしいものは何も残ってないわね」
イリス「……そういえば、ミスティって16歳なんだよね」
ミスティ「そういうイリスは17歳だっけ?」
イリス「うん。でもなんか、全然年下って感じがしない」
ミスティ「最初なんて敬語使ってたくらいだしね……私に……」
イリス「あ、あはは……年上だと思ってたから……」
ミスティ「……旅をしている期間で言えば、私の方があなたより先輩かもね……」
イリス「あ、やっぱりそうかな?」
ミスティ「ええ……。あなた……育ちの良さが、出すぎているから……」
イリス「……褒められているのか、馬鹿にされているのか……」
ミスティ「ふふ……どこにも辿り着けないまま、善意も道徳も見失って彷徨い続ける私みたい旅人になるよりずっと良いわ……」
イリス「……ミスティは善意も道徳も見失ってないよ。見失ってたら、あの場でクロシュちゃんを助けなかったはずだもの」
ミスティ「……魔が差したのよ。本当は、助ける気なんてなかったわ……」
イリス「でも助けた。魔が差して、善なる決意をしてくれたんだよ。ミスティは」
ミスティ「ふふ………。後輩の癖に、生意気ね……」
イリス「後輩だけど、年上だからね……!」
◇
―廃屋 玄関
雨「」サァァァ
妖精「平気だって言ったのに」
クロシュ「でも、危ない生き物が潜んでるかも……」
妖精「はあ、私がどれだけの時間を一人で生きてきたと思っているの? あなたみたいな赤ちゃんに心配される謂れはないんだけど」
クロシュ「赤ちゃん……」
妖精「あなたの方がよっぽど危なっかしくて心配されるべき生き物なの。前に旅をしてたなんて言ってたけど、その様子じゃ戦いも探索も何もかもフメイに頼り切りだったんでしょ」
クロシュ「う……そ、そうかも……」
妖精「そこそこちゃんと自己認識できてることだけは及第点ね。イリスもミスティも底なしのお人好しみたいだし、赤ちゃんらしく遠慮なく頼るんだよ?」
クロシュ「う、うん……。でも……嫌われない……?」
妖精「あんまりにも我儘が酷すぎたら流石のお人好しも愛想を尽かす可能性はあると思うけど、あなたはそういうタイプでもないし大丈夫でしょ」
クロシュ「そうなの……?」
妖精「そうなの」
クロシュ「……そうなんだ」
雨「」サァァァァ
妖精「……良い雨ね」
クロシュ「……好きなの? 雨」
妖精「まあね。綺麗な水と風と植物は大体好き」
クロシュ「……わたしも、好き。そういうの」
妖精「なかなか見所のあるスライムだね、あなた」
クロシュ「そ、そう?」
妖精「そう。ふふ、まあ私もあなたを軽率に見捨てたりはしないから安心していいよ」
クロシュ「……! う、うん……。ありがと……」
◆
―魔族自治区 検問所
兵士A「そこの……ソリ? とにかく止まりなさい!」
ソリ「」キキッ
ミスティ「どうも……」スト
兵士B「入区を希望する者は身分証明書を提示しろ。大人も子供も例外なくだ」
ミスティ「これで良いですか……?」スッ
イリス「私も……」ガサゴソ
ミスティの冒険者証「ランク3」
イリスの冒険者証「ランク2」
兵士B「よし! それでは受付で手続きを――ん?」
イリスの後ろを歩く黒い犬「……」ヒョコヒョコ
兵士B「ほう。黒い毛並みの犬か……。よく躾されていると見える」
ミスティ「はい……。この子も……私たちの、旅の仲間なのです……」
兵士A「かわいいですね! 犬はとても良い動物です! 薄汚い魔物共はクソです! 奴らも犬のかわいさ、気高さを見習うべきです!! お手!!」スッ
黒い犬「……」
↓1コンマ
01-05 混沌クロシュ「噛みついちゃえ!」
06-50 無視する
51-95 心を無にしてお手に応じる
96-00 ??
黒い犬「……」ギギギ
お手「」スッ
兵士A「わああ!! やっぱり犬は素晴らしいです!!!」キャッキャ
兵士B「いや、なんかすっげェぎこちなかったぞ……。お前嫌われてんじゃねえか」
兵士A「そんなことはありません! 犬は人類の友、私は犬の友です!!!」
兵士B「そうか……」
*
黒い犬「……」グッタリ
イリス「クロシュちゃん……よくがんばったよ……!」
ミスティ「ええ……とても偉かったわ……」ナデナデ
ミスティの懐から顔を出した妖精「やるじゃん、クロシュ」
黒い犬「……」グッタリ
黒い犬(……頭がおかしくなりそうだった……。でも、我慢できて良かった……)
☆クロシュの我慢強さが向上しました
◇
―魔族自治区
ワイワイ ヘラヘラ ギャハハハ…
クロシュ(ミスティさんたちの長い手続きが終わり、門を抜けて魔族自治区に入ると……)
クロシュ(この、魔族自治区がどういう場所なのか……一目で、理解できた……)
路上に座り込む魔族の老人「……」
やせ細った魔族の子供「……」フラフラ
高貴な身なりの女性「んま〜、小汚いところ! アテクシの美貌がバイ菌で汚れてしまいますわ!!」
高貴な身なりの男性「フッ……君の美しさはこの程度じゃビクともしないさ。おいガキ、誰の許可を得てその小汚ェ面を人間様の視界に入れてんだ? ああ!?」ゲシッ
やせ細った魔族の子供「ぎゃっ……」ドサッ
高貴な身なりの男性「ペッ! 王国の寄生虫が!」
豊満な淫魔の女性「……」ヨロヨロ
ガラの悪い冒険者A「淫魔の癖に白昼堂々と出歩きやがって! こっち来い!!」ガシッ
ガラの悪い冒険者B「公然猥褻の取締だオラッ!!」グイグイ
豊満な淫魔の女性「………」
クロシュ(人間の男性に蹴られた魔族の子供は……何も言い返さず、フラフラとどこかへ去っていった……)
クロシュ(淫魔の人は、がっくりと項垂れて……何もかもを、諦めた目で……路地裏へ引っ張られていった……)
クロシュ(わたしには……どうすることも、できなかった……)
イリス「………っ」
ミスティ「…………」
妖精「……チッ」
◇
―魔族自治区 宿
受付の女性「人間様が三名でお間違いはありませんか?」
ミスティ「ええ、合っているわ……」
受付の女性「部屋分けは如何なさいますか?」
ミスティ「三人部屋で良いわ……。一番安いのでお願い」
受付の女性「かしこまりました。食事は付属しておりませんので、各自でご用意をお願い致します。また、夜伽をご希望される場合は別途料金が――」
ミスティ「結構よ……」
受付の女性「失礼致しました。それでは、こちらが客室の鍵となります。ごゆっくりお過ごしくださいませ……」スッ
*
―客室
妖精「はあああ〜〜〜……。だから来たくなかったんだよ、こんなとこ……」
イリス「……予想はしてたけど……予想以上だった……」ガックリ
ミスティ「……人間の私にとっても、あまり気分の良いところではないわね……。長居はしたくないわ……」
クロシュ「…………」
イリス「クロシュちゃん……大丈夫……?」
クロシュ「あ……うん……」
ミスティ「無理はしないで。ここは……想像以上に、あなたに毒があるように思えるわ……」
クロシュ「……」
妖精「……でも、この甘ちゃんな赤ちゃんに王国の悪性を教えるには丁度良いかもね」
イリス「刺激が強すぎるよお……!」
魔族自治区で何をする?
↓1〜3 自由安価
イリス「……ひとまず、お風呂に入ろう!」
ミスティ「そうね……。浴場へ向かうとしましょう……」
◇
―魔族自治区 公衆浴場 脱衣所
ヌギヌギ
妖精「ねえ、スライムって入浴が必要なの?」ヌギヌギ
クロシュ「あ、えっと……。ぽかぽかになるから……いる、と思う……」
イリス「入浴には体を洗う以外にも、血行を良くしたり筋肉をほぐして疲労回復させたりする効果があるんだって。スライムもきっと例外じゃないよ!」ヌギヌギ
妖精「いや、スライムの血行とか筋肉って人とは作りが全然違くない!?」
ミスティ「……まあ、良いじゃない……。ぽかぽかになるのは、気持ちが良いもの……」ヌギヌギ
*
―浴場
カポーン
ワイワイ キャッキャ
クロシュ「ふにゃあ……」デロデロ
妖精「溶けてる溶けてる」ツンツン
ミスティ「ふう……良いお湯……」チャプン
イリス「……ミスティ、ちょっと痩せ気味じゃない? もうちょっとお肉を付けた方が……」チャプン
ミスティ「脂肪があった方が、いざという時に死ににくいのは知っているわ……。でも私、少食なのよね……」
イリス「……そ、そっか……。確かに、あんまりたくさんは食べてなかったもんね」
ミスティ「ええ……。でも、まあ、その……」
イリス「?」ポヨン
ミスティ「…………」
ミスティ「いえ……詮無きことね……」
イリス「え、もしかして私、太い……!?」
ミスティ「ふふ……適度な脂肪は生存率を上げるわ……」
妖精「……それにしても」
淫魔の幼女「――」キャッキャ
淫魔の女性「――」ニコニコ
ハーピィの少女「――」バシャバシャ
竜人の女性「――」ゴシゴシ
妖精「……ここは平和みたいね。まあ、こんなところで不快なものを見せられても困るけどさ」
クロシュ「うん……。ここは……良いところ、だね……」
↓1コンマ
01-90 良い湯でした
91-00 旅の仲間
―魔族自治区
ミスティ「ふう……良いお湯でした……」ツヤツヤ
イリス「さっぱりしたね……! それじゃあ次はご飯いこ、ご飯!」
クロシュ「ごはん……!」
妖精「魔族食か……」
*
―魔族自治区 大衆酒場
ワイワイ ゲラゲラ
クロシュ「わ……」
妖精「……もうちょっと、他になかったの?」
イリス「……なかったの! 私だってできればもっと落ち着いたとこで食べたかったよ……!」
ミスティ「まあ……私たちは人間だし、クロシュも人間の姿だし……妖精は妖精だし、大丈夫でしょう……」
ウェイトレス「食材をお決めになりましたら、お手元のベルを鳴らしてくださいね」
イリス「……えっ!? 食材なの!?」
ウェイトレス「はい。当店では、お客様にお選びいただいた食材をシェフの独断で調理するシステムとなっております」
ミスティ「な、なんて店なの……」
↓1〜2選択
1.オーク肉
2.マンドラ大根
3.食べられる野草
4.カニ
5.オリハルガニ
6.ザリガニ
7.ウルティ米
8.海竜の大トロ
イリス「それじゃあ、ウルティ米と――」
ミスティ「それじゃあウルティ米――」
イリス&ミスティ「あっ」
ウェイトレス「ウルティ米とウルティ米ですね! 少々お待ちくださいませ!」ピューン
イリス&ミスティ「……」
妖精「……」
クロシュ「え、えっと……。わたし……お米、好き、だよ……?」
イリス「……クロシュちゃんの気遣いが、逆に胸に突き刺さるよ……!」ブワッ
ミスティ「ごめんなさい……軽率だったわ……」
*
特大盛りウルティ米ごはん「」ドドン!
イリス「わあお……」
ミスティ「うっ……見ているだけで胸焼けしてきそう……」
妖精「言っておくけど、私は見た目通りの量しか食べらんないからね」
クロシュ「……」ジュルリ
イリス「と、とりあえず……食べよっか!」
「いただきます」
*
イリス「ウルティの名を関するだけあって……究極って感じがする……」グルグル
ミスティ「も、もう無理……。お米だけで、この量を食べるのは……」
妖精「うーん……なんか、くどい甘みが口に残るな……。品種改良のし過ぎじゃないの」モグモグ
クロシュ「……食べきれない分は、わたしがもらってもいい……?」モグモグ
☆クロシュが全部美味しくいただきました
↓1
01-90 お腹いっぱいになった
91-00 旅の仲間
お腹いっぱいになったところで本日はここまでです
ウルティ米は王国の隣国である農業国で品種改良され、生産されている米の品種の一つです。糖度が高く、栄養効率が優れているのですが、妖精には不評だったようです。ちなみにうるち米とは何の関係もありません
それでは本日もありがとうございました
スライム種全般の特徴として、体が丈夫で病気や怪我に強く、食欲旺盛で何でもよく食べるというものがあります。その反面属性攻撃に弱いという弱点もあり、魔法の蔓延るこの世界では注意が必要です
これはネタバレなのですが、クロシュ氏のポテンシャルは実際かなり高いです。しかしクロシュちゃん自身が臆病で争い事が苦手という性格のため、放っておけば強くなるということは多分ありません(混沌クロシュが優勢になれば放っておいても化けます)
あの冒険者と淫魔さんがどうなったのかは今回の更新でちょっと出てくるかもしれません
世界観的な繋がりは多分ありませんが、前作要素が小ネタ程度には出てくることがあるかもしれません
――夜
魔族自治区 表通り
スタスタ…
クロシュ「おいしかった」
ミスティ「……まあ、お腹いっぱいにはなったわね……」
イリス「ウルティ米、糧食に良いかも」
妖精「私は普通のお米の方が良い……」
イリス「宿に帰る前にこの辺りを見て回ろうよ。まだ来たばっかりでどこに何があるかもわかんないしさ」
ミスティ「そうね……。一応、観光案内は貰ったけれど……実際に自分の目で見た方が把握はしやすいわ……」
*
看板「マジーア魔法店」
ミスティ「やっぱり魔法の店がけっこうあるわね……」スタスタ
妖精「魔族の国だからね」フヨフヨ
イリス「人類に初めて魔法を教えたのは魔族っていう説もあるんだって」スタスタ
妖精「それが真実だとしたらそいつは大戦犯だね。世界最悪の悪辣種に武器を与えちゃったんだもん」フヨフヨ
イリス「うう……悪い人しかいないわけじゃないのに……」
ミスティ「……妖精は、どうしてそんなに人間が嫌いなの?」
妖精「この街の惨状が全てだね。他に説明がいる?」
ミスティ「……返す言葉もないわね……」
クロシュ「魔法のお店って……どんなものがあるの……?」
イリス「そうだねえ。魔法に関するいろいろなもの……例えば魔法を学ぶための魔術書とか、魔力を回復させる薬物とか……」
ミスティ「イリスが使っている杖のような魔法の補助具なんかもあるわね」
イリス「えへへ、この杖はどこにも売ってないと思うけどね。そういえばミスティは杖は使わないの?」
ミスティ「私は短剣派よ……」スッ
魔術用の短剣「」キラッ
イリス「か、かっこいい……。私は杖派だけど、短剣にもちょっと憧れるなあ」
ミスティ「懐にいれておくだけでもある程度は効果があるし……魔法以外にもいろいろ使えて便利なのよ……。魔法の補助機能は杖に劣るけどね……」
妖精「ふうん。私は無手派。ていうか魔法に補助具使うとか甘えでしょ」
イリス「私の出身国じゃそういう意見は老害扱いされるよ!」
妖精「」グサッ
ミスティ「有用なものは何でも使うべきよ……。生きる為ならね……」
イリス「クロシュちゃんには何が似合うかな?」
クロシュ「わたし……?」
ミスティ「反映魔法だと……他の例を知らないから、正直私には何が良いかわからないわ……」
イリス「杖も短剣も、スライムの形だと使いにくそうだし……」
クロシュ「……そうかも」
妖精「……スライム用の装備くらいあるでしょ、ここなら。そもそもここに来た理由の一つがそれなわけだし」
イリス「クロシュちゃんは無手じゃなくて良いの?」
妖精「クロシュは赤ちゃんだもん」
ミスティ「では、私たちも妖精から見れば赤ちゃんということでここは一つ……」
妖精「」グサッ
妖精「わ、私が悪かったから……。老害ババア扱いはやめてよお……」ジワワ
スティ「ところで……イリスの師匠の知人という魔法使いの居所は、わかっているの?」
イリス「うろ覚えだけど、裏通りの方だったと思う。多分……。今日はもう遅いし、行くのは明日にしよう」
↓1コンマ
01-90 宿に戻って寝ました
91-00 旅の仲間
↓1コンマ
01-16 帽子をかぶった緑髪の少女
17-32 黒髪の無愛想な青年
33-48 赤髪ロングポニテの冒険者女性
49-64 銀髪ウェーブセミロングお嬢様
65-80 ボサボサ黒髪の若い傭兵
81-96 ボサボサ金髪の壮年放浪者
97-00 ??
クロシュたち「――」キャッキャ
スタスタ…
ドッ
クロシュ「ひゃっ……」グニャッ
ガラの悪い冒険者C「いってえなあ、脛にヒビが入ったん……おい!? こいつスライムじゃねえか!!」
ガラの悪い冒険者D「おいおいおい……人に化けるスライムとか、ナメてんのか?」
クロシュ「あっ……ご、ごめんなさ――」
イリス「謝る必要ないよ、クロシュ。スライムが魔族自治区にいて何が悪いの?」ズイッ
ガラの悪い冒険者C「ああ!? クソッタレの魔物なんざ存在そのものが悪だろうが!!」
ガラの悪い冒険者D「嬢ちゃんさあ、何魔物の味方なんかしてんの? 魔物に優しい自分に酔ってるクチか?」
ミスティ「どうでもいいわ……。早くいきましょう……」
ガラの悪い冒険者C「おいおいおい、ぶつかってきといて何逃げようとしてんだよ? こっちゃ脛にヒビが入ったんだぞ?」
ガラの悪い冒険者D「治療費は払ってもらわねえとなあ? あとそのスライムは殺処分確定な」チャキ
クロシュ「……!」ビクッ
クロシュの懐に隠れた妖精「うんざりする……。吐きそう……」ゲンナリ
イリス「……やってみなよ。返り討ちにしてやるから」ブゥン―
ミスティ「はあ……本当に面倒……」キラッ…
ガラの悪い冒険者C「おいおい、ガキの癖に俺らに楯突く気か?」
ガラの悪い冒険者D「へへ、こりゃ教育が必要だなあ?」
ガラの悪い冒険者C「くっせぇ魔族ばっかで飽き飽きしてたとこだ! 楽しませてもら――」
ガッ
ガラの悪い冒険者C「がッ!」ドサッ
ガラの悪い冒険者D「な、なんだ!?」
ボサボサ金髪の壮年男性「……」ヌッ
ブンッ ガッ
ガラの悪い冒険者D「ゲアッ!」ドサッ
クロシュ「――」ポカーン
イリス「え、ええ……?」
ミスティ「い、一体――」
ボサボサ金髪の壮年男性「失せろ……。今の私は……虫の居所が悪い……」ギラッ
ガラの悪い冒険者C~D「ひ、ひええ〜〜〜!!」ドタドタドタ
◇
――宿 ロビー
ローガン(ボサボサ金髪の壮年男性>>14)「……先程はすまぬ。見苦しいところを見せた」
クロシュ「……」フルフル
イリス「そんなことありません! かっこよかったです!」
ミスティ「ええ……ありがとう……。助かったわ……」
ローガン「そうか……」
イリス「でも、同じ宿だったんですね。もしかして、一人旅を……?」
ローガン「うむ……。旅……と言うには、意義も目的もない……放浪のようなものだが」
クロシュの懐から顔を出した妖精「ふうん。じゃあ私たちと似たようなものね」ヒョコ
ローガン「なんと、妖精とは……。いや、しかし……君たちも、宛のない旅を……?」
ミスティ「ええ、まあ」
イリス「私は目的がないわけじゃないけどね!」
妖精「少し前までは全員他人で、それぞれ一人旅をしてたんだけどね」
ミスティ「……いろいろあって今は行動を共にしているのよ」
ローガン「その若さで……。いろいろ、苦労をしているのだな」
妖精「……そう! 私も若いけれどいろいろ苦労してるの!!」
イリス「よ、妖精さん……」
クロシュ「…………」
ローガン「……ところで。この魔族自治区は、魔物の出入りは制限されていたはずだが……。そのスライムの子は……」
妖精「あ」
イリス「え、えと……!」
ミスティ「…………」
ローガン「……すまぬ。聞いてはならぬことを聞いたようだ」
クロシュ「……!」
ミスティ「……悪いわね。恩人に、隠し事なんて……」
ローガン「恩を売るつもりだったわけではない。それに君たちなら、私が何もせずともあの者どもを返り討ちにしていただろう」
妖精「まあそうね。こいつら、年の割にはかなりやるし」
イリス「ま、まあそれほどでもある、かも……? えへへ」
ローガン「フッ……心配は不要のようだ。君たちの旅路が幸運に包まれていることを陰ながら祈らせていただこう……。それでは――」スクッ
スタス―
クロシュ「まっ……待って……!」ガタ
イリス「クロシュちゃん?」
ローガン「……?」クルッ
クロシュ「あ、あの……。もし……宛がないなら……。わ、わたしたちと……一緒に……」
イリス「えっ!?」
ミスティ「!?」
妖精「ええ?」
ローガン「……!!?」
クロシュ「……」ウワメヅカイ
ローガン「い、いや……しかしだな……」
イリス「く、クロシュちゃん! いきなり何を……!」
クロシュ「あ……ご、ごめんなさい……」シュン
ミスティ「……いえ、クロシュが考えていることはわかるわ。現状、私たちは魔法使いばかりで接近戦に弱すぎるし……全員が若い女だから、さっきみたいに下劣な輩に舐められやすい……。彼のような歴戦の戦士がいれば、実際かなり安心できるのは確かよ……」
クロシュ「……?」
妖精(いや、そんなこと全然考えてないと思う……)
ミスティ「でも……彼自身も男性である以上、私たちの仲間となった場合にどのような変化が起きるか予測できないわ……。人柄はまあ……多分信用できると思うのだけれど……。突然魔が差す可能性だってある……」
クロシュ「うぅ……」
ミスティ「だから……彼を引き入れるという考えを否定はしないけれど……もう少し、慎重に考えたいわ……。私は……」
イリス「……うん。クロシュちゃんには悪いけれど、ミスティの言う通りだよ。ローガンさんのこと、もう少し知ってからでも遅くはないと思う」
妖精「まあ、この男は私たちと同じやらかしをしたわけじゃないしね。その辺りの非対称性も考えると、同じ道を行くのは難しいんじゃない?」
クロシュ「……」ジワ
イリス「あっあっ」アタフタ
ミスティ「……ざ、罪悪感が……。でも、みんなで生き残るためには、慎重にならざるを得ないのよ……ごめんね……」
妖精「よしよし、泣かない泣かない……。クロシュなりにいろいろ考えてくれてるのはわかってるから」
ローガン「……フッ。良いパーティだ。ますます安心した」
イリス「ふふ、そうでしょ?」
ローガン「ああ。今日会ったばかりの男を引き入れるような迂闊な娘たちであったら、逆に庇護欲が刺激されて全力で守る決意を固めていたかもしれん」
ミスティ「それは残念だったわね……。とりあえず、しばらくは様子見ということでも良いかしら……?」
ローガン「うむ。君たちの目で、私が信用に足る男であるかどうか見極めると良い。その結果がどのようなものであるにせよ、私は受け入れよう」
☆ローガンが仮加入しました(後日正式加入します)
◇
――翌朝
魔族自治区 宿
ワイワイ ガヤガヤ ナンダナンダ
窓の外「号外、号外だよ〜〜!」バサッバサッ
クロシュ「ふみゅ……?」ノソ
妖精「……何? 朝っぱらから騒々しい……」グシグシ
ミスティ「……? ハーピィが飛びながら新聞をバラ撒いているわね……」
イリス「ふわあ……。何かあったのかな……?」
窓「」ガラッ!
ハーピィ記者「旅人さんもどうぞ!」バサッ
新聞「」バサッ
妖精「うわあ!! 急にこっちに来ないでよ!!」
イリス「び、びっくりした……。一体何があったんです?」
ハーピィ記者「ふっふっふ、それはだね――」
「コラーッ!! 風説の流布は重罪であるぞーッ!!」
ハーピィ記者「おっと! 新聞を読めばわかるよ! それじゃあ私はこの辺で!」バサッバサッ
窓「」バタン
ミスティ「……とりあえず、読んでみましょうか」
*
風雪新聞:
〈強姦未遂冒険者、魔力枯渇死!!騎士による怨恨殺人か!?〉
昨日昼過ぎのことだ。魔族自治区の路地裏で、ここに滞在していた冒険者の遺体が二つ発見された。
目撃者の証言によると、彼らはある女性(プライバシーに配慮し詳細は省く)を路地裏に連れ込んて性的暴行を加えようとしていたところ、突然に白目をむき泡を噴いて倒れ、間もなく死亡したのだという。その症状は外的要因によって急激な魔力欠乏を起こした時のものと酷似しており、第三者による何らかの作為によって魔力を奪われて死亡した可能性が高い。なお遺体は駐屯騎士によって回収されてしまったため、詳細な死因の特定は断念した。
件の冒険者は問題行動を起こす二人組として有名であり、騎士と衝突している姿も度々目撃されていた。今回の件は魔力操作に長けた騎士、あるいはそれに近しい人物による怨恨殺人である可能性がある。今後の動向を注視していきたい。(風雪のルフ)
*
イリス「……これって」
ミスティ「もしかして、昨日見た奴らかしら……」
妖精「へえ〜、面白いこともあるもんだね」
クロシュ「……騎士の人、が……?」
イリス「冒険者が死んだのは本当のことみたいだけど、それを騎士がやったっていうのは根拠のない憶測じゃない?」
ミスティ「まさに風説の流布ね……。可能性がある、に留めて断定していないところに小賢しさを感じるわ……」
妖精「まあいいじゃん、悪辣騎士のせいにしとけば。日頃の行いが悪いせいでしょ」
ミスティ「それもそうだけど……。クロシュ、こういう新聞は鵜呑みにせず、自分の頭でちゃんと考えて判断するのよ……?」
クロシュ「う、うん……」
*
――宿 ロビー
ローガン「おはよう。君たちは読んだか? あの号外を」
イリス「ってことはローガンさんの部屋にも?」
ローガン「うむ。恐らくは正当防衛の類かと思われるが、我々も用心すべきだろう」
ミスティ「そうね……。用心するに越したことはないわ……」
何をするか。この行動終了後、イリスの師匠の知人(新キャラ募集、仲間化率極低)に会いに行きます
↓1〜3自由安価
参考:魔族自治区主要施設
表通り:宿、武具店、雑貨店、装飾品店、魔法店、工芸品店、大衆酒場、公衆浴場、他
裏通り:妖しい商店、娼館、薄暗い路地裏、他
旧市街:廃図書館、廃神殿、貧民街、他
*上記にない施設でも、安価に書いていただければ実装します
――魔族自治区 表通り
イリス「……はっ!」
クロシュ「?」
ミスティ「どうしたの?」
イリス「……手持ちが、あんまりないかも」
ミスティ「……そういえば、私も三人分の宿代を払ったからけっこう厳しいわね」
ローガン「……足りない分は私が……いや、私は仮加入中の身か。余計な貸し借りはなしにしておいた方が良いだろう」
妖精「はあ、仕方ないなあ。私がその辺のバカから盗って――」
イリス「そ、それはだめだよ! 窃盗は犯罪だよ!」
妖精「いや、今さら気にすることでもなくない……?」
イリス「そ、そうかもしれないけど……これは、私が私であるために必要なことなの!」
ローガン「……ほう。芯の通った人物であるようだ、君は」
イリス「え、えへへ……そんな、大層なものじゃないですけどね」
ミスティ「とりあえず、路銀を稼ぎに冒険者ギルドへいきましょう……」
イリス「単発かつ短時間で終わるものがあれば良いなあ……」
◇
――冒険者ギルド 魔族自治区支部
閑古鳥「カンコーン」
クロシュ「……?」
イリス「なんかすっごい閑散としてる……」
ローガン「魔族自治区の冒険者ギルドにはあまり仕事が入って来ないそうだ」
イリス「え、それはまたどうして……?」
ローガン「自治区を訪れる冒険者がどのようなものかは君たちも知っているだろう? あれに仕事を依頼したがる魔族住民などいると思うかね?」
イリス「な、なるほど」
ミスティ「騎士団も駐屯してるしね。荒事は騎士団、困りごとは住民の互助、ってところなのかしら」
イリス「ってことは、ここに気てる冒険者は魔族に嫌がらせしに来てるだけってこと!? う〜ん……腹が立ってきた」
ローガン「いや……それもあるかもしれんが、魔族の技術ゆえかここは人間の街よりも質の良い武具や道具が多い。魔法の品などは特に。それらを買い求めに来る冒険者が多いのだろう」
受付嬢「……はっ!? い、いらっしゃいませ! 当ギルドのご利用は初めてですか!?」
イリス「あ、はい。一応冒険者証はあります」スッ
受付嬢「ありがとうございます!」
ミスティ「それで……できれば、単発でかつ短時間で終わりそうなものが良いのだけれど……」
受付嬢「かしこまりました。その条件で本日ご案内できる依頼は――」
↓1
01-30 駐屯地の便所掃除(報酬:低)
31-60 旧市街の廃屋解体(報酬:中)
61-90 菜園の草むしり (報酬:高)
96-00 実験の助手募集 (報酬:超)
――魔族自治区 旧市街
入植者の男性「おお! こんなに若くてかわいい冒険者の方々が来てくれるなんて予想外だ!」
イリス(なるほど。数少ない依頼も、ここに入植した人からのものってことかあ)
ミスティ「解体する建物は?」
入植者の男性「こっちだ!」
*
朽ちた石造りの廃屋「」
入植者の男性「ここに入植者用の集合住宅を建てたくてね。更地にして欲しいんだ」
ミスティ「なるほど……。瓦礫はどこに?」
入植者の男性「んー、貧民街の辺りに捨ててくれば良いんじゃないかな? あそこなら魔族と魔物しか住んでないし」
クロシュ「……」
イリス「……」ギリ
クロシュの懐に隠れた妖精「……」イライラ
ミスティ「いえ……ここでは形骸化しているとしても、王国法違反となりますので……」
入植者の男性「はは、お嬢さん方は真面目だなあ。それじゃあ少し遠いけど、騎士団の駐屯地に瓦礫の廃棄場があるからそこまで持っていってもらってもいいかな?」
ミスティ「承知致しました……。それでは作業に取り掛かります……」
入植者の男性「ああ! 終わったら呼んでくれ!」
*
イリス「うがあああ!!! 何なのあれはあああ!!!!」バリバリ
ミスティ「仕方ないでしょう。ここはそういうところなのよ……」
妖精「解体はあなたたちでやってよね。私はあんな下衆共の集合住宅作りに関わる気はないから」プイッ
クロシュ「…………」
ローガン「君たちは魔族や魔物に対して……いや、クロシュくんを見れば明らかなことだったな」
妖精「そういうあなたこそどうなの? 仮とは言え、私やクロシュと一緒にやっていける?」
ローガン「……魔物に対して、何も思うところがないと言えば大嘘になるだろう。だが……個別に当てるべき感情を安易に全体化するのが愚かなことだというのはわかっているつもりだ」
妖精「……そう」
◇
ゴオン…ガギイン…ゴゴオン…
イリス「はあ。地属性も使えて良かったなあ、私……」
ミスティ「こういう作業では頼りになるわね」
ローガン「鉄材があれば私に言ってくれ。適切な大きさに解体する」
クロシュ「わ、わたしは……」キョロキョロ
妖精「クロシュは私と見学。どうせできることもないし」
*
ゴオン…ガギイン…ゴゴオン…
ダダダダダッ
魔族の子供「やめろーっ!!!」ダダダッ
ミスティ「……? 魔族の子、かしら」
イリス「ど、どうしたの……!? そこにいると危ないよ!?」
魔族の子供「そ、その家は……!! ジョンと、ジョンのママが住んでた家なんだぞ!!!」
ミスティ「……!」
イリス「!!!!」
魔族の子供「勝手に……勝手に壊すなよお……!!」ポロポロ
イリス「……あ……あぁ……」グニャァ
ミスティ「…………っ」
ローガン「……ジョン君と、そのお母様は……今どこに?」
魔族の子供「死んだよ!! お前たち人間の、勇者とかいうバケモノに殺されたんだ!!」
ローガン「……そうか。なら今は、誰も住んでいない……誰のものでもない住居ということだな」
魔族の子供「え……?」
ローガン「我々は、この土地の現所有者から委託を受けて建造物の解体を行っている。権利者でもない赤の他人である君に、我々の行動を止める権限はない」
魔族の子供「ふざ、けるなよ……。なんで……なんでだよお……!!」ポロポロ
ローガン「ちなみに、彼女らは私がこき使っている奴隷だ。恨むなら私一人を恨め、少年」
魔族の子供「うわああ!!! ばかやろー! ばかやろー! 奴隷使いのクソジジイ!! 地獄に堕ちろーッ!!!」ダダッ
イリス「あ……」
ミスティ「…………ローガンさん……ごめんなさい……。あなた一人に……嫌われ役を……」
ローガン「気にしないで頂きたい。私はかつて、何人もの魔族と魔物を殺した男だ。既に地獄行きは決まっている」
ミスティ「……あなたが、そう言うなら」
◇
更地「」
入植者の男性「おおー、綺麗にしてくれたね! これは約束の報酬だよ!」スッ
硬貨の入った袋「」ジャラ…
ミスティ「確認しました……。どうも……」
入植者の男性「入植者が増えればこの街はもっと綺麗で住みやすくなるはずだ! 君たちには是非その一助となれたことの栄誉を感じて欲しい!!」
イリス「……」
クロシュ「……」
入植者の男性「さて、次は建築業者に連絡しないと! 今回はありがとう! さようなら!」ダダッ
更地「」
イリス「…………」
イリス「ぐすっ……。私……魔族の人たちが……住んでたおうちを……」グスグス
クロシュ「……」サスサス
妖精「……」ナデナデ
ミスティ「お疲れ様、イリス……。あなた一人の責任ではないわ……。私たち全員が背負うべきものよ、それは……」
ローガン「…………ままならぬ。優しきゆえに……苦しまなければならぬなど……」
◆
本日はここまでです。次回は下着編と道具調達編です
ローガン氏の加入によってパーティの平均年齢が一気に上がりました(妖精は見た目年齢が幼女なので幼女です)。若いおなごばかりだったパーティにおじさんが入ったことで、いろいろとやれることの幅が広がったような気もします。頼りになりそうです
魔族自治区にいる限り今後も胸糞の悪い描写がけっこうあると思いますが、実際そういう環境なので何卒ご容赦ください。多分、きっと、滞在の最後の方に何らかの変化が起きると思うので……
それでは本日もありがとうございました。平日の更新は厳しいかもしれません。今後ともよろしくお願いします
突然ですがエラッタです。>>75で「十数年前」と書かれている箇所がありますが、正しくは「数年前」でした。脳内で訂正をお願いいたします
ハーピィ記者こと風雪のルフは、魔族自治区で活躍する反王国活動家記者です。事実と憶測と捏造を織り交ぜた飛ばし記事を乱発し、王国や騎士団のネガティブキャンペーンを繰り返しています。魔族自治区では彼女の書くネガキャン記事を楽しみにしている住民が多く、彼らの数少ない娯楽となっているようです。また、彼女の新聞を読んで反王国思想に目覚める入植者もおり、その影響力は意外とバカにできません。逃げ足も早く、騎士団の目の上のたんこぶとなっているようです
言われてみれば、何の力も技能も持たないかわいいだけの穀潰しであるクロシュちゃんが、何の疑問もなく守ってもらえているのは少し不思議かもしれませんね……。まあ、幼い生き物を愛らしく感じるのは人間の本能なので、クロシュは自己防衛として無意識に人間に好かれやすい振る舞いをしているのかもしれません。愛嬌がなければ殺される、そんな環境もあるのでしょう
ローガン氏の声は実際渋いかもしれません。ともあれおじさんキャラをちゃんと書けていたようで何よりです
どの依頼もまあ大概ろくでもないものでしたが、クリティカルのやつだけはまあまあ悪くないものだったかもしれません
―魔族自治区 表通り
イリス「……」トボトボ
ミスティ「……」スタスタ
ローガン「……」スタスタ
クロシュ「……」トコトコ
妖精「……」フヨフヨ
妖精(空気が重い……)
妖精(お金のためとは言え王国の悪逆に手を貸したも同然のことをしたのだから、人情派のイリスが落ち込むのは仕方がないと思う。割り切るの苦手そうだし)
妖精(でもミスティは流石にドライね。長年女一人で旅をしてきただけのことはある。いちいち心を乱されていたら身が持たないことを理解してるのかも)
妖精(ローガンはまだよくわからない。割り切っているのか、ハナから何も感じていないのか)
妖精(クロシュは……何やら考えている様子。落ち込んだり嘆いたりしてる様子はないけど、何考えてるんだろう。赤ちゃんスライムなりに思うところがあったのかな)
妖精(ともかく、空気が重い……)
妖精「……ねえ。稼いだお金、どう使うの?」
ミスティ「消耗品の補充・交換に、クロシュの旅支度ね。これだけあれば、高級品を求めない限りは足りるはずよ」
クロシュ「わたしのは……安物で、いいと思う」
ミスティ「だめよ。あなたは弱いのだから、流れ弾に当たっても死なないようにちゃんとしたものを装備する必要があるの」
妖精「こいつ、周囲が燃え盛っていてもそこそこ平気でいられる程度には頑丈だよ」
ミスティ「えっ、スライムなのに……? いや、でもだめよ。自身の耐久力にあぐらをかいた結果呆気なく死んでいった愚か者を何人も見たわ」
妖精「一理ある。まあお言葉に甘えて良いの買ってもらいなよ、クロシュ」
クロシュ「うん……」
妖精「そうと決まれば……いや、そういえばクロシュって人型になると服を着てるけど、スライムに戻ると服着てないよね? どうなってるの?」
ミスティ「……私も、それは少し気になっていたわ」
クロシュ「えっと……服も、作ったり、戻したり……」
妖精「ええ!? 作れるの!?」
クロシュ「うん……。形と肌触りを覚えれば、見た目と質感は大体再現できるよ……。わたしから離れると、黒いデロデロに戻っちゃうけど……」
ミスティ「犬になった時はフサフサモフモフだったわね、そういえば……。普通のスライムにあそこまで高度な擬態はできない気がするわ……」
妖精「反映魔法ってやつのなせるワザなの?」
クロシュ「え、えと……わかんない……。気がついたら、できたから……」
ミスティ「……気にはなるけど、今はとりあえず服屋を探しましょう。私もいろいろ買い替えたいし」
◇
―魔族自治区 表通り
アラクネの服屋
ワイワイ キャッキャ
旅行者の少女A「てかこのセンスめっちゃヤバくない!?」
旅行者の少女B「めっちゃわかる〜! 最先進って感じ〜!」
キャピキャピ
アラクネ店主「ど、どうして人間がこんな寂れた店に……」ビクビク
カランカラン
ミスティ「どうも」スタスタ
イリス「こ、こんにちは……」
クロシュ「……」ペコリ
ローガン「失礼する」スタスタ
アラクネ店主「また来た……。今日は厄日かしら……」
*
蜘蛛絹のハンカチ「」サラサラ
クロシュ「わあ……」
イリス「これ、肌触りがすっごい良い……!」
ミスティ「蜘蛛絹って書いてあるわね……。見た目は普通の絹にそっくりだけど……」
ローガン「蜘蛛絹とは、蜘蛛の糸を編んで作られた繊維のことだ。絹のように心地よい肌触りでありながら非常に高い靭性を持つ。特にアラクネのものは魔法に強い耐性があるらしく、ここ魔族自治区で人気の特産品の一つなのだが……」
妖精「王国に搾取されてるんでしょ、知ってる」
ローガン「御名答。ここで生産される蜘蛛絹製品のほとんどは王国に捨て値で輸出させられる。そしてそれらを低価格で仕入れた王国の業者は、自社ブランド品としてそれを高値で売り捌くというわけだ」
イリス「……」ギリリ
旅行者の少女A「それ聞いたことある! めっちゃナメてるよね!!」ズイッ
旅行者の少女B「王国のブティックで売ってる服めっちゃ高いもん! しかもセンスないし!!」ズズイッ
イリス「――」ポカーン
ミスティ「あ、あなたたちは……?」
旅行者の少女A「あ、ごめんね名乗りもせず! うちら、王国から旅行で来たただの学生!」
旅行者の少女B「王国民の癖に何言ってんだこいつって思うかもしんないけど、けっこういるんだよ。王国のやり方が良くないって思ってる人もさ。学生運動とかもけっこうやってるし」
イリス「……!」
ミスティ(学生か……。懐かしい響きね……)
旅行者の少女A「あたしたちも、あたしたちなりに何かできることはないかなって思ってね」
旅行者の少女B「直接買いに来たってわけ!」
旅行者の少女A「売りたい価格で売って欲しいよね〜、やっぱ」
ミスティ「なるほどね……」
妖精「……」
イリス「……ねえ、私たちも買おうよ!」
妖精「そのために来たんでしょ」
イリス「そ、そうだけど……下着とかもいろいろ! 蜘蛛絹のものなら、丈夫で旅にも向いてるだろうし……!!」
ミスティ「そうね……。一応言っておくけれど……ローガンさんもいるのよ……」
イリス「あっ……///」
ローガン「……私は外で待っていよう」スタスタ
旅行者の少女A「おじさんめっちゃ紳士〜!」
*
カランカラン
アラクネ店主「毎度ありがとうございました……」ペコリ
アラクネ店主「……」
アラクネ店主「…………」
アラクネ店主「………………」
アラクネ店主「……なによ……同情のつもりなの……」
アラクネ店主「………ふざけないでよ……」
売上金「」ガッ
アラクネ店主「こんな金……人間なんかの、金なんて……!」グッ
売上金「」プルプル
アラクネ店主「…………」グググ
アラクネ店主「……」ガクッ
売上金「」カシャン…
アラクネ店主「う、ううぅ……うぐううぅぅ……」ポロポロ
アラクネ店主「これがなきゃ………あの子たちを食わせてやれない……」ポロポロ
アラクネ店主「……なんて……惨めなの………」ポロポロ
売上金「」ポタッポタッ…
☆蜘蛛絹の下着・肌着を買いました
☆クロシュが蜘蛛絹繊維を覚えました
◆
―魔族自治区 表通り
雑貨店
イリス「わあ! ここも良い品揃え……!」
ローガン「先程も言ったが、ここの道具は質が良い。良いものを揃えられるだろう」
ミスティ「不足しているのは緊急用のマナポーションと、日持ちする保存食と……。テントも大人数用のが欲しいわね……」ブツブツ
イリス「あ、それなら複数人キャンプ用に調理器具を買い足しても良い? 軽くて丈夫な鉄鍋が手に入っちゃったから、なんか欲が出てきちゃって」
ミスティ「良いんじゃないかしら……。ああ、でも貨物手段と移動手段は考えておいた方が良いかも……」
イリス「えっ」
ミスティ「私のソリ、そもそも二人用なのよ……。クロシュが小さいからなんとかなったけど、ここから人数が増えたり荷物が増えたりすれば多分限界を超えるわ……」
イリス「あっ……!」
ローガン「ふむ……。私が加入した場合のことであれば心配には及ばぬ。馬ほどの速さは出ないが、重装備での長距離走行は心得ている」
ミスティ「えっ……!?」
イリス「いやローガンさん一人だけ走らせるなんてできないですよ!?」
ローガン「だが、他に代案があるのか?」
クロシュ「えと……わたしも……犬になれば、走れるかも……」
イリス「どうして自分で走る方向に行くの!?」
☆旅の準備を整えました
☆クロシュ用の道具を揃えました。長距離移動が可能となります
◇
ミスティ「これで良し、と……。あとは……」
イリス「クロシュちゃん用の武器でも買っていく? ここ、武具店も併設されてるみたいだし」
ミスティ「……そうね。移動手段は一旦保留にして、クロシュ用の装備を整えましょうか」
イリス「うん……! 店員さん、すみません!」
人型スライム店員「はあ〜い。何かご入用かしらあ?」
イリス「あの、スライムの子に適した装備ってありますか?」
人型スライム店員「スライムの子に……? でも、あなたたちは人間の旅人さんじゃ――」
クロシュ「……」ペコリ
人型スライム店員「――なるほどねえ。そういうことならご案内するわあ〜」
*
人型スライム店員「ふむふむ……反映魔法を使う擬態に秀でた黒いスライム……初めて聞くわねえ……」
妖精「擬態するスライムは他にもいるでしょ?」
人型スライム店員「反映魔法のことよお。擬態はあくまでスライムの生得能力だもの。う〜ん……まあ、とりあえずこれを持ってみて」ヒョイ
鉄の小盾「」ポン
クロシュ「ん……」カチャ
人型スライム店員「スライム種全般が共通して秘める能力の一つに、体内に何らかの物質を取り込んで自己強化するっていうものがあるのお。例えばその子盾なら、体が少し頑丈になる、みたいなねえ。クロシュちゃんはできそお?」
クロシュ「……?」
人型スライム店員「食べて消化するんじゃなくて、自分自身の一部として体全体に行き渡らせるイメージよお。ちょっと難しいかしらあ……?」
クロシュ「んん……」
↓1コンマ
01-70 わかんない(経験1/3)
71-90 あと少し (経験2/3)
91-00 できた (経験3/3)
クロシュ「んん〜……」ムム
人型スライム店員「うふふ、難しいわよねえ。これ、優しい子ほど苦手なのよお」
妖精「そうなの? ていうか性格って関係あるの?」
人型スライム店員「そうねえ。性格っていうかあ、気性が荒くて闘争心の強い子ほど、力への渇望も強いでしょお? そういう子は、教えなくても勝手に覚えちゃったりするのよお」
妖精「なるほどね……。確かにクロシュは苦手そう」
クロシュ「む〜……」
イリス「あはは……クロシュちゃんはそれだけ優しくて良い子ってことなんですね!」
人型スライム店員「ええ。こういう子にこそ、平和で優しい世界を生きて欲しいのだけれどねえ……。そういうわけだから、その小盾はあげるわあ」
クロシュ「!」
イリス「い、いいんですか!?」
人型スライム店員「ええ。同じスライムのよしみよお。いろいろ世知辛いけれど、なんとか生き延びてねえ……」
クロシュ「……うん。ありがと、ございます……」ペコリ
☆小盾を手に入れました
☆今後、自由行動などで自己強化の練習を行うことができます
◆
―昼
魔族自治区 裏通り
魔族の浮浪者「……」ジッ
魔族のストリートチルドレン「……」ジー
スタスタ…
ミスティ「ねえ、本当にこっちなの……?」
イリス「う、うん。多分合ってるはず……。あの頃と同じなら……あ!」
妖しい商店「」ゴゴゴゴゴ…
イリス「こ、ここ! 記憶にある店と同じだもん!」
クロシュ「……?」
ローガン「……何の店なのだ、これは?」
イリス「え、ええと……魔法に関係する店、だと思います……」
妖精「ろくでもない気配がぷんぷんするんだけど……」
ミスティ「……イリスを信じて入ってみるしかないわ……」
*
―妖しい商店 店内
カランカラン…
爬虫類の干物「」
壁にかけられた謎の布袋「」
謎の液体が詰まった小瓶「」
何かの骨「」
妖しい宝玉「」
クロシュ「わ……」
ローガン「こ、これは……」
ミスティ「……なるほど。魔法の店というのは間違いないわね……」
妖精「……」
イリス「ごめんください……! あの、誰かいますか……!?」
店の奥「」ガタ…
スタスタ…
クロシュ(あ……誰か、来た……)
イリスの師匠の知り合いの魔法使い
↓1
【名前】
【種族】
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】
【備考】
フラナ「その声は……イリス?」スタスタ
イリス「フラナさん!」
ローガン(この娘……吸血鬼か……!)
ミスティ(小さい……でもこのプレッシャー……! 只者じゃない……!)
フラナ「大きくなったわね。あいつは一緒じゃないの?」
イリス「はい。私、修行の旅をしているんです……!」
フラナ「へえ。それでわざわざ、この腐った国へ物見遊山に来たってわけね」
イリス「ち、違います……! その、ここに来たのには理由があって――」
*
フラナ「……なるほどね。王国に喧嘩を売っちゃったから、逃避行の支度をするついでにスライムの装備を整えにきた、と」
イリス「は、はい……! それで、その、あわよくばフラナさんにお力を貸していただければ、なんて……」
フラナ「……クックック。じゃあお前たちは、既に王国を敵に回した反逆者ってわけだ」ニヤァ
イリス「えっ……い、いやまあ、一応、そういうことになる……のかな……?」
フラナ「……逃げ回るより、もっと良い方法があると言ったら……どうする?」
イリス「えっ……?」
ミスティ「……先に言っておくわ。私たちは王国に投降する気はない。もしあなたが密告しようというのなら、全力で抵抗――」
フラナ「ああ、勘違いしないで。私はそんな冷たい提案をしようとしているわけじゃない」
ミスティ「では……?」
フラナ「――革命軍に加わりなさい。イリスとその朋友たちよ」
全員「――!!?」
フラナ「ここに来たなら既に見ていると思うが――私たち魔族は、完全に王国の奴隷だ」
フラナ「奴らに虐げられ、奉仕を強いられ、血と涙と魂を踏み躙られ続けている……」
フラナ「見たでしょう? 腐った貴族に蹴り飛ばされる魔族の子を」
妖精「……」
フラナ「見たでしょう? 腐った冒険者に拐かされる淫魔の女を」
ミスティ「……」
フラナ「見たでしょう? 友の家を壊され、慟哭を上げる少年の姿を」
イリス「……っ」
フラナ「――もう、道は二つしかないのよ。このまま奴らに、永久に殺され続けるか……」
フラナ「自由を勝ち取る為に、武器を手に立ち上がるか――」
イリス「……!!!」
フラナ「……それに、あなたたちにとっても悪い話ではないでしょう? 王国に追われるくらいなら、逆に奴らを追い出してしまえば良い。それで事足りるわ。そして平穏な時間は帰って来る」
クロシュ「…………」
フラナ「スライムの子よ。お前が受けた苦痛を私たちは知っている。お前が我々と共にあると言うのであれば、王国に勝利した暁には悠久の平和を約束するわ」
フラナ「そして……お前の友だというフメイという子の捜索も、全面的に協力する用意がある」
クロシュ「!!!」
フラナ「さあ、手を取りなさい。私たちと共に――」
ローガン「待たれよ!」ズイッ
フラナ「何。聞けば、あなたは王国の反逆者でもない部外者らしいじゃない。密告されても困るからここで闇に葬ってあげても良いのよ?」
ローガン「……話し合いの時間をいただいても良いだろうか。私たちは全員で一つのパーティだ、意思は統一しておきたい」
フラナ「仕方ないわね……。もし断る場合、申し訳ないけど忘却の魔法を受けてもらうからそのつもりで」
ローガン「……承知した」
フラナ「あと、全員一緒である必要はないわ。一人でも戦う意思のある者がいれば、私は歓迎する。それだけ覚えておいて」
*
ローガン「……先に言っておく。私は断る」
ミスティ「……私も断るわ。この国の為に命を賭ける気はない」
妖精「私はどっちでもいい。どっちに転んでも死なない自信あるもん」
イリス「わ、私は……っ」
ミスティ「……イリス。気持ちはわかるけれど、やめておきましょう。あなたが深入りすべき問題ではないわ、これは……」
ローガン「うむ……。薄情かもしれんが……これは、魔族自治区と王国の問題だ。外様の我々に関与しなければならぬ理由はない」
クロシュ「……」
妖精「クロシュはどうしたいの? クロシュが行きたい方に付いてってあげるよ、私」
クロシュ「…………」
↓1〜5
1.断る
2.革命に加わる
21:44:59に締め切ります。同数だった場合、クロシュは決断できなかったという選択を取ります。このレスは安価に含まれません
クロシュ「わたし……革命、したい」
イリス「……!!!!」
クロシュ「……王国のせいで……みんな……苦しんでる……。もう……わたしの村みたいなのは……もう、嫌だもん……」
ミスティ「………そう……。そう、よね……。あなたは……見過ごせない、わよね……」
クロシュ「ミスティさん……。ごめんなさい……装備……返し――」
ミスティ「いいわ……。その旅の装備はもうあなたのものよ。返す必要はないわ……」
クロシュ「…………」
イリス「……ミスティ、ごめん……。私も……やっぱり、見過ごせない……」
ミスティ「……………そう……。イリスは……優しすぎる、のよ………」
イリス「そんなんじゃ……」
ミスティ判定 仲良し度大
↓1
01-20 ミスティ離脱
21-00 ミスティ残留
ローガン判定 仲良し度小
↓2
01-80 ローガン離脱
81-00 ローガン残留
あ、訂正です。ローガン氏は死に場所求めたがりおじさんなのでここでミスティさんが成功したら自動成功でした
言うまでもなかった。仲良しパーティでした。おめでとうございます
ミスティ「…………っ」
ミスティ(放っておけるわけ……ないじゃない……!!)
ミスティ「私も……参加するわ……!!」
イリス「え……?」
ミスティ「あなたたち、放っておくと死んじゃいそうだもの……。べ、別に……良いでしょ……?」
イリス「ミスティ……! ミスティ……!!」ダキッ
ミスティ「わっ、く、くっつかないで……!!」
ローガン「……ふう。それもまた良し、か」
妖精「おじさんは一人寂しくパーティ離脱ってこと?」
ローガン「いや。正直に言って他国の事情に首を突っ込むのはやはり気が進まないが……さりとて、君たちをこのまま死地に行かせるのはもっと気が進まぬというか……」
クロシュ「えっと……?」
ローガン「……ああ、そうとも。私も参加させてもらおう。ただし、革命戦士ではなく君たちを守る盾としてな」
クロシュ「……!!」
イリス「ローガンさん……!」
ミスティ「何よ……結局全員参加じゃない……」
クロシュ「えへへ……」ニヘラ
妖精「……ふふ。まあ、こういうのも悪くないかも」
*
フラナ「……話はまとまったようね?」
イリス「はい……! 私たちは、魔族の解放に力添えします……!」
ミスティ「……参加はするけど、自分たちの生存を優先させてもらうわよ。それでもいい?」
フラナ「ええ、もちろん。生きて未来を掴むことこそが、真の勝利よ」
クロシュ「よろしく、お願いします……!」
妖精「私とクロシュは戦闘能力皆無だから後方支援でお願い」
フラナ「擬態スライムと妖精……ククク、素晴らしいわ。あなたたちを前線で使い潰すほど無能ではないわよ、私は」
ローガン「……私は人間だが、ここのやり方に思うところがないわけではない。参加させてもらおう」
フラナ「まあ、戦力になってくれるのならなんでもいいわ」
ローガン「ところで聞いておきたいのだが、もし〝勇者〟が投入された場合はどうする? 打つ手はあるのか?」
フラナ「ああ、それなら問題ないわ。だって勇者は――」
フラナ「もう、死んでいるもの」
◆
本日はここまでとなります
全員揃って革命ルート進出おめでとうございます。実をいうと>>1は不参加ルートに進むだろうと思っていたので、少々びっくりしています。まあでもクロシュちゃんとイリスさん的には王国殺すべし!が正道な気もします。お人好しのミスティさんと死にたがりのローガン氏も離脱せず、結果的にパーティの結束が高まった一件となりました。ちなみに妖精はクロシュの保護者気取りなので多分どんなルートでも付いてきます
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
勇者についてはまあいろいろあるのですが、詳しいことはおいおい明かされていくかもしれません
フラナ氏自身はかつての魔族国においては軍人だったわけでも幹部だったわけでもないようです(逃亡せず最期まで戦った魔族の軍人や幹部は全員戦死または処刑されています)
しかし実力は当時の魔族軍幹部クラスを凌ぐものがあり、他に適任もいないので革命軍の指導者を務めています
戦火に身を投じる選択をした今のクロシュ氏なら、才能を開花させる日もそう遠くはないかもしれません
ところで、勇者の死を惜しむ声をたくさんいただいたので、勇者(故人)のキャラクター案を募集します
故人ですが今後の展開に影響を与える可能性があります。よろしくお願いします
↓1
【名前】
【種族】人間
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】
【備考】(故人。生前は単騎で魔族国を一方的に蹂躙できる強さがありました)
【名前】サイン
【種族】人間
【性別】男
【年齢】22
【容姿】金髪碧眼。襟足長め。全体的に華奢で小柄。
【性格】何事にも揺れない(様に見えた)、冷静沈着で口数が極端に少ない
【魔法】光魔法。出力がおかしい。地形に影響があるくらいは朝飯前
【備考】故人。魔族自治区が成立したあたりで突然血を吐いて斃れた、寿命であったと大きく喧伝されている
>>205
ありがとうございます。ところで備考欄の記述について、王国はそれを喧伝せず隠蔽しているという内容に変更させていただいてもよろしいでしょうか?
ありがとうございます、変更させていただきます。惜しくも間に合わなかった方も、ありがとうございました。それでは本編に移らせていただきたいと思います
―妖しい商店
ローガン「死んだ、だと……? そんな話は初めて聞いたが……」
フラナ「自国の最強戦力が失われたことを知られたくはないのでしょう。彼の情報についてはあの日から徹底的に隠蔽されているわ」
ローガン「……それならなぜ、貴女はそのことを知っている?」
フラナ「……これも公には知られていないことなのだけれど……。勇者に大勢の魔族が殺されたあの日……〝魔王〟が生まれたわ」
ミスティ「!?」
イリス「えっ……!?」
ローガン「なっ……!!」
妖精「……」
クロシュ「……?」
妖精「……クロシュ、〝魔王〟って何かわかる?」
クロシュ「えっと……魔族の、王様……?」
妖精「字面はそうだね。けど、意味は全然違うんだよ」
フラナ「……歴史に疎い子が勘違いするのも無理はないわ。私たちが使わされているこの公用語って王国発祥のものなんだけれど、あいつら自分たちが嫌いなものは全部〝魔〟で一括りにするんだもの。だからこういう誤解が生まれるのよ」
イリス「えっとね、クロシュちゃん。魔王っていうのは……なんて言えば良いかな……。生きる災害っていうか……」
ミスティ「種として……いえ、生命体としての殻を破り、破滅的な力を得てしまった存在のことよ……。尋常な生命だった頃の性質は失われ……ひたすら破壊と殺戮をもたらすだけの災害と化す……と言われているわ……。合っている、かしら……?」
フラナ「ええ、説明ありがとう。もう少し付け加えると、強烈な感情が引金になることが多いらしいわ。多分あの魔王も……勇者に何もかもを壊された魔族たちの怒りか……あるいは、哀しみか……。とにかく、凄まじい感情が魔王を顕現させたのでしょうね。私も魔王を見たのはあれが初めてだったから、想像の域は出ないのだけれど……」
ローガン「魔王……歴史上に語られるのみの存在だと思っていたが……」
フラナ「話を戻すわね。顕れた魔王は、周囲に甚大な破壊を齎しながら明確な殺意を持って勇者を襲ったわ。そして激しい死闘の末、勇者は辛くも魔王を撃破したのだけれど……勇者自身もまた、致命的な呪いを受けていたわ……。勇者がいかに規格外の超人だったとしても、あれで長く生きていられるわけがない。実際、あの日以来勇者は公の場に姿を現していないのよ」
イリス「そ、そんなことが……」
ミスティ「……解呪される可能性は?」
フラナ「絶対に不可能。術式の問題じゃなくて、量の問題でね。海の水を干上がらせるようなものだもの」
ミスティ「……理解できたわ」
フラナ「まあ、そういうわけだから。王国は隠蔽しているけれど、私たちは既に勇者の死を知っているのよ。だから後は、烏合の騎士団をどう追い出すかってだけ」
ローガン「最大の懸念点は既にないというわけか。それを聞けて安心した」
フラナ「勝ち目のない戦だったら挑まないわ。私たち革命軍には、魔族国の罪なき国民全ての命がかかっているのだもの」
ローガン「うむ……。それでは、現在の戦力や作戦について把握しておきたいのだが――」
フラナ「ええ、今現在の革命軍は――」
*
クロシュ(それから、フラナさんとローガンさんを中心になんだかよくわからない話し合いがしばらく続いた)
クロシュ(とりあえず、わたしと妖精さんは、決行の日に後方支援……。余裕があれば騎士に擬態して、王国の人を誘き出したり、嘘の情報を流したりすれば良い、らしい……)
クロシュ(よくわかんないけど……みんなで生き残って……王国を追い出して……この国の平和を取り戻して……)
クロシュ(そしたら……。フメイちゃんを、捜しに行きたいな……)
◆
↓革命決行まで
01-40 あと二日(残り2ターン)
41-80 あと三日(残り3ターン)
81-00 あと四日(残り4ターン)
―翌朝
魔族自治区 宿
チュンチュン
クロシュ(スライムの姿)「…モニョ……」zzz
妖精「……すう、すう……」zzz
ミスティ「……朝ね」
イリス「……ど、どうしよう。あんまり眠れなかった……」
ミスティ「ちゃんと睡眠は取っておかないとまずいわよ。決行は明後日なんだから」
イリス「わ、わかってるけど……でもちょっと急すぎない……!? もう今日と明日しかないなんて……!」
ミスティ「……フラナさん……革命軍からすれば、私たちの加入の方こそ急だったんじゃないかしら……」
イリス「そ、それはそうだけどお……」
ミスティ「……絶対、生き残りましょう。全員で」
―革命決行日まであと[2日]
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人のローブ(擬)
◇妖精 武:なし 防:妖精のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・自己強化の練習をする[1/3]
・革命の準備
今日は何をする?
↓1〜3 自由安価
―妖しい商店 地下
ガギンッ! シュバッ!
ゴウッ!
ミスティ「はっ!」バッ
氷柱「」ヒュンヒュン
フラナ「あはっ、遅い遅い!」ガキンガキン!
イリス「光よ!」カッ
フラナ「その程度の薄明かりが効くか!」ゴウッ
闇「」グオオッ
イリス「あっ――」
ミスティ「イリス!!」
闇「」ピタッ
闇「」フッ
イリス「―――はあっ、はあっ……!」
フラナ「……まあ、大体わかったかな。そこらの雑兵には負けないだろうけど、隊長格が相手だとちょっと怪しいわね」
ミスティ「……そうね。実際、隊長格っぽいやつには負けかけたわ……」
フラナ「やっぱり。私の審美眼もなかなかね」
イリス「くう……も、もう一回お願いしますっ!」
フラナ「いいわ。でも次は寸止めできないかもよ?」ニヤァ
↓1
01-30 根性は認める
31-60 もう一息
61-90 一発入れた
91-00 連携◯
キンキンッ シャキンッ
ガガガッ
カッ ゴウッ
イリス「う、うぐうう……」バタッ
ミスティ「も、もう……私……無理……」ガクッ
フラナ「お疲れ様。初めよりも連携が取れるようになってたわ。隊長格が相手でも、相手が一人ならやり込められるかもね」
ミスティ「……有利な状況を想定しても仕方ないわ。常に最悪の状況を考えて……」
フラナ「最悪を想定するのは大事だけど、そればかりじゃ歩みが鈍るわ。人も魔族もね」
ミスティ「……」
イリス「だ、大丈夫です! ミスティは確かにちょっと後ろ向きなところがあるけど、その分私は前向きだから……!」
フラナ「ふふ、そうね。昨日も言ったけれど、当日あなたたちはなるべく離れないようにするのよ? 戦闘面よりも、心理的な面で補い合える部分が多いわ」
イリス「はいっ……!」
ミスティ「……ふふ。そうかも、しれないわ……」
◆
本日はここまでです。次回は騎士擬態練習編とキノコ採集編になります
魔王化はこの世界においては誰にでも起こり得る現象だったりします。人でも魔族でも魔物でも動物でも植物でも、命を持つ者は魔王化する可能性を秘めています。また、魔王となった存在が元に戻った例は歴史上一度も確認されていないため、魔王化は不可逆の変質であると考えられているようです
それでは本日もありがとうございました。平日の更新は厳しいかもしれませんが、よろしくお願いいたします
現状だと戦える人がイリス、ミスティ、ローガンの三人だけなので確かに少し心許ないかもしれません。一応クロシュも頑張れば戦えるようになり、妖精もやろうと思えば補助的な魔法が使えます
主人公候補として投下していただいたキャラクター案は今後も機会があれば加入する可能性はあります。また、仲間にはなりませんが自由安価で情報交換や交流することもできます。ただ、今は魔族自治区での革命前なので、仲間になっていない人間のキャラクターが登場すると良くない方向に向かうかもしれません
一応、魔族自治区での活動はステージ1に該当します
冒険者ギルド魔族自治区支部の受付嬢さんは人間です。冒険者ギルドの受付嬢は現地の人を雇用する場合と本部から出向してくる場合があり、魔族自治区支部は本部からの出向のようです。基本的には現地の人を雇うパターンが多いのですが、魔族自治区の現地人にとっては冒険者の存在自体がかなり不評のため、やはりここで働きたがる魔族はあまりいなかったようです
ちなみに本部から出向してくるタイプの受付嬢は特殊な訓練を受けているため、平均的な兵士や冒険者よりも強いです
イリスとミスティは同年代の魔法使いの旅の仲間ということもあり、お互いの存在が良い刺激になっているようです
一応歴史的な事実として残ってはいますが、歴史の影で人知れず発生していた魔王もけっこういるのかもしれません
―魔族自治区 大通り
騎士A「――」スタスタ
騎士B「――」スタスタ
妖精「いたいた。クロシュ、覚えられそう?」
クロシュ「ん〜……」
ローガン「難しいか?」
クロシュ「……触ったりしないと……わかりにくい……」
妖精「難しいこと言うなあ。変な真似して目を付けられたら面倒だし」
ローガン「ふむ……。ならば私の鋼魔法で彼らの鎧の模造品を作ってみるのはどうだろうか。外見を模すだけであれば私の鋼魔法でも十分なはずだ」
妖精「へえ、そういうこともできるんだ。見るだけで模倣できるの?」
ローガン「しっかり見て記憶すれば理論上は可能だ」
妖精「理論上は……。まあ、やるだけやってみても良いんじゃない? クロシュもそれで大丈夫そう?」
クロシュ「う、うん……多分……」
ローガン「よし。それでは早速観察して来よう」スタスタ
↓1 ローガンの造形技術
01-10 なんか違う……
11-30 よく見なければバレない
31-70 割と大丈夫そう
71-90 違和感に気付けたら鎧マニア
91-00 鋼の造形術師
↓2 クロシュの即席擬態
01-10 スライム騎士
11-30 幼女騎士
31-70 とりあえず外見は擬態できた
71-90 声色や口調まで似せてきた(演技力UP)
91-00 ???
↓3 ついでにクロシュの自己強化練習(主題ではないため成功率低)
01-60 変わらず(経験1/3)
61-85 あと少し(経験2/3)
86-00 できた (経験3/3)
―宿 客室
ローガン「むんッ」
王国騎士鎧の模造品「」ガチャンッ
クロシュ「わ……!」
妖精「おお〜、やるじゃん!」
ローガン「うむ……まあまあな出来だが、騎士や鎧マニアでもなければバレまい」
妖精「十分でしょ。クロシュ、これを着た騎士に擬態できる?」
クロシュ「や、やってみる……!」
クロシュ(スライムの姿)「――」デロデロ
グニョニョ
スライム騎士「――」モニョモニョガシャガシャ
ローガン「こ、これは……」
妖精「だめだこりゃ……」
☆クロシュがスライム騎士の姿を覚えました
*
妖精「もう一回! ちゃんと鎧を見て!」
クロシュ「うゆぅ……」モニョモニョ
ローガン「頑張れ……! あと一息だ……!」
クロシュ「んん……っ」
クロシュ(スライムの姿)「」デロデロ
グニョグニョ
黒髪女騎士「……で、できた……?」ガシャン
ローガン「少し鎧の中身と声が可愛すぎるが……まあ良しとしよう!」
妖精「まあ及第点かな? 兜まで被れば大丈夫でしょ」
☆とりあえず最低限の擬態はできるようになりました(苦手な擬態なので疲れます)
◆
―怪しい商店
フラナ「訓練も一段落着いたところで、あなたたちに革命軍としての初任務を与えるわ」
イリス「は、初任務……!」ゴクッ
フラナ「これは人間であるあなたたちにしかできないことよ」
ミスティ「……先に言っておくけど、密偵とかはできないわよ」
フラナ「そんな難しいものじゃないわ。ちょっとしたお使いよ、お使い」
イリス「お使い……?」
フラナ「北の森の樹海でこれとこれとこれを採って来て」スッ
魔法薬の材料が書かれた紙「」ペラッ
イリス「これは……魔法薬の材料ですか?」
フラナ「ええ。私たち魔族は出入り禁止だから。監視をすり抜けて外に出られるのもいるけど、今手が空いてるのは新人のあなたたちだけなのよ」
ミスティ「なるほど……」
イリス「……あの、これがどういう効能の薬か聞いても良いですか?」
フラナ「これは――」
↓1
01-05 ???
06-20 人間だけを殺す毒薬
21-50 特製マナポーション
51-80 ウィッチパウダー
81-95 マジカルブラッドワイン
96-00 反魂丹
ラナ「――反魂丹よ」
イリス「……え?」
ミスティ「……言葉の綾、ってやつかしら……」
フラナ「文字通りだけど?」
イリス「え、えええええ!!!?」
ミスティ「……信じられない」
フラナ「そんなに万能なものでもないけどね。黄泉還りにはある程度以上に壊れていない死体が必要だし、もし腐敗や劣化が進行していたらロクなことにならないわ」
ミスティ「……そんなものが、近くの森で採れる素材から作れるの?」
フラナ「いいえ。素材の殆どはここの在庫から出すわ。あなたたちに採ってきてもらいたいのは足りないほんの一部だけ」
ミスティ「……そう。でも、それを作ってどうしようって言うの?」
フラナ「あなたたちにあげるわ」
イリス「!!?」
ミスティ「……ますますわけがわからないわ」
フラナ「まあ、私も責任を感じていないでもないのよ。既に反逆者だったとは言え、情に訴えて人間であるあなたたちを巻き込んでしまったことにね」
ミスティ「……」
フラナ「戦いはきっと苛烈を極めるでしょう。だから、もしもの時の為にね」
イリス「フラナさん……ううん、フラナ師匠……!!!」ウルウル
フラナ「お前の師匠になった覚えはないが」
◆
>>235 誤字
ラナ→フラナ
―魔族自治区近郊
常闇の樹海 南部 浅層
ホーホケキョ ポッポポーホー
イリス「こ、ここが……あの常闇の樹海……!!」
木漏れ日「」キラキラ
イリス「全然暗くない!」
妖精「そりゃ浅層だもの。奥に行けばご期待に添えるんじゃない?」
ミスティ「妖精は知っているの?」
妖精「少しだけね。でも目的のキノコは浅層にあるんでしょ? さっさと見つけて帰ろうよ」
ローガン「……それにしても、反魂丹とは。魔王のこともそうだが、世には私の知らぬものごとで溢れているな……」
クロシュ「…………」
妖精「どうしたの、クロシュ」
クロシュ「あ、えと……。その……それって……燃えて、死んじゃった、生き物には……」
イリス「あ……」
ミスティ「……使用には、腐敗や劣化のしていない遺体が必要だそうよ。火に焼かれて炭化してしまった遺体には……」
クロシュ「…………」
ミスティ「……ごめんなさい」
クロシュ「……ううん……! 教えてくれて……ありがと……。わたしこそ……ごめんなさい……」ペコリ
イリス「……ミスティもクロシュちゃんも何も悪くないよ。もちろん、焼かれちゃった人たちも……。悪いのは、そうやって人も魔族も踏みにじる王国騎士の奴らなんだよ……!!」
妖精「うんうん。あいつらが全部悪いんだよね」ウンウン
イリス「だから、革命を成功させてあいつらを追い出そう! みんなで平和を勝ち取るんだ!」
妖精「おー!」
クロシュ「おー!」
ミスティ「……おー」
ローガン「……うむ」
↓1 探索判定
01-05 なんか暗くなってきてない……?
06-35 樹海オオカミだ!
36-65 普通に見つけた
66-95 森スライムの群生地
96-00 旅の仲間
あと一人くらいまでは増える余地がありますが、それ以上は難しいかもしれません(>>1の限界)
マジカルマッシュルーム「」
イリス「あった! ねえ、あったよみんな!」
ミスティ「ふむ……紙に書かれているものと一致しているわね。妖精はどう思う?」
妖精「間違いなくマジカルマッシュルームだね」
イリス「よし! これで全種揃った!」
クロシュ「わあ〜」パチパチ
ローガン「常闇の樹海に行くと聞いた時は肝を冷やしたが、なんてことはなかったな」
妖精「浅いとこはこんなもんだよ。時々常闇領域からハグレ者が出てくることもあるけどね」
ミスティ「……出くわさなくて良かったわ」
◆
―妖しい商店
グツグツ…
ポン!
反魂丹「」ポン!
反魂丹「」ポン!
フラナ「できたわ。はい、二つしかないから誰が持つかは慎重に決めなさいよね」
イリス「ふ、二つも……!!? フラナ師匠、本当にありがとうございます……!」
ミスティ「……本当に良いの? これほどの貴重品を」
フラナ「ええ。出費は痛いけど、平和になれば材料なんていつでも集められるもの」
ローガン「かたじけない……」
クロシュ「ありがと、ございます……」ペコリ
*
ローガン「それで、反魂丹を誰が持つかだが……」
ミスティ「前線と後方支援で分けるのが良いんじゃないかしら」
イリス「そうだね。それが一番安心できるかも」
妖精「じゃあ一個はクロシュが持って」
クロシュ「ん」
ミスティ「それじゃあ前線の分は……ローガンさんが良いかしら」
ローガン「いや、盾役の私は自由に動けん。イリスくんかミスティくんにお願いしたい」
ミスティ「なら、イリスに持ってもらおうかしら」
イリス「……え!?」
ミスティ「複数属性なら対応力もあるでしょ? 私よりは自由に動けるはずよ」
イリス「そ、そうかな……」
ミスティ「ええ。だから頼むわね」
ローガン「それではイリスくんに任せよう。何かあった時は頼む」
妖精「使わないで済むのが一番だけどね」
☆クロシュとイリスが「反魂丹」を携行します
◆
―魔族自治区 朝
宿 客室
チュンチュン
バサッ
風雪新聞「種さえ撒ければ誰でもいいのか!!?国王のふしだらな異性関係に迫る!!!!」ペラ
風雪新聞「正義の炎!!!!悪徳冒険者が無様な消し炭となって発見される!!!!」ペラ
風雪新聞「明日は季節外れの大吹雪が発生する予報が出ています。善良なる市民や旅人の方々に置かれましては、戸締まりをしっかりしていただくのが良いでしょう」ペラ
ミスティ「……相変わらずね、この新聞」
イリス「でも、明日戸締まりするように書いてある。あの風雪のルフって記者……」
ミスティ「……そういうことなんでしょうね」
クロシュ「むむ……」デロデロ
黒髪女騎士クロシュ「む……」ガシャン
妖精「よしよし、だいぶ慣れてきたね」
イリス「おおー、良い感じだね! でもちょっとかわいすぎるかな?」
ミスティ「……まあ、騙せれば良いのよ。この新聞みたいに、あることないこと言ってね」
イリス「正直、その作戦にはあんまり賛成できないんだけど……四の五の言ってられないもんね」
妖精「クロシュ、嘘はつけそう?」
クロシュ「が、がんばる……」
―革命決行日まであと[1日]
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人のローブ(擬)
◇妖精 武:なし 防:妖精のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・自己強化の練習をする[1/3]
・革命の準備
□魔族自治区主要施設
表通り:宿、武具店、雑貨店、装飾品店、魔法店、工芸品店、大衆酒場、公衆浴場、他
裏通り:妖しい商店、娼館、薄暗い路地裏、他
旧市街:廃図書館、廃神殿、貧民街、他
今日は何をする?
↓1〜3 自由安価 行動終了後、革命に移ります
フラナ、力をつけるため特製人工血液を飲み干す
>>244
申し訳ありませんが、パーティメンバーが関与しない内容のものは流石に最安価とさせていただきます。ご了承ください
なおこのレスも安価には含まれません
>>244
それは失礼、では「イリス達が貧民街の子供たち(フラナの知り合い)と遊ぶ」でお願いします
パーティメンバーが関与しないものはダメというルールを事前に通知していなかった>>1も悪いと思うので、今回は特例として>>249も採用させていただきたいと思います。申し訳ありませんでした
次回から、自由安価を書く際はご考慮くださいませ
―旧市街 廃図書館
図書館だった建物の瓦礫「」
イリス「ここが、魔族国立大図書館……だった場所……」
ミスティ「……見る影もないわね」
ローガン「魔族たちの文化、歴史を抹消する為に入念に破壊されたのだろう。これを掘り返すのはかなり骨が折れそうだが……」
イリス「仕方ないかあ……。墓荒らしみたいなことをするのも気が引けるし、ここは退散――」
妖精「イリスの地魔法なら掘り返せるんじゃない?」
イリス「え、ええ……」
ミスティ「……それは流石に、やめた方が……」
ローガン「大きな音を立てれば騎士が来るかもしれんぞ」
妖精「でも明日は命を賭けた戦いなんだよ? 遵法精神はご立派だけどそんなんで生き残れると思ってるの?」パタパタ
イリス「で、でも……」
妖精「ここを掘り返せば魔族国のすごい魔導書とかが出てくるかもしれないんだよ。生き残りたくないの?」
ミスティ「……それは、そうかもしれないけど……」
妖精「それに、もしここに埋まっている魔族の遺物があったとしたら、革命に役立たせてあげるのが正しさじゃない?」
ローガン「むう、確かに一理あるか……」
妖精「クロシュだって生き残りたいでしょ?」
クロシュ「う、うん」
妖精「なら決まり! 騎士の奴が来そうになったら私が撹乱しといてあげるから」パタパタ
ローガン「……仕方ない。イリスくん、頼めるか?」
イリス「わ、わかりました……。だ、大地よ……」
ゴゴゴゴゴ…
↓1コンマ
01-50 瓦礫しかない
51-80 「正の魔法と負の魔法」
81-95 「星の魔力」
96-00 「影の魔王」
ゴゴゴゴ
本『星の魔力』パサッ
イリス「!」
ミスティ「これは……なんとか読めそうね。タイトルは……星の魔力?」
イリス「星の魔力かあ……星自身が内容する魔力についての本かな?」
ミスティ「……そうみたいね。目次は……星に流れる魔力……龍脈……」
イリス「おお、もしかしてけっこう実用的!?」
ミスティ「……これは星の魔力を利用する方法というよりは……星属性っていう希少属性の持ち主の為に書かれた本みたい」
イリス「なんだあ……じゃあ私たちには関係ないね……」
ミスティ「でも星の魔力なんて誰もがその恩恵を受けているのだから、知っておいて損はないと思うわ」
イリス「それもそうだね! もしかしたら私たちにも応用できるとこがあるかもしれないし……!」
ミスティ「ええ。とりあえず持ち帰るだけ持ち帰ってみましょう」
イリス「うん! 図書館を建てた魔族さん、そしてこの本を書いた魔族さん、ごめんなさい。ちょっとお借りしていきますね……!」
◇
―旧市街 廃神殿
神殿の廃墟「」ガラン
ミスティ「ここは原型を保っているのね」
ローガン「これほどの規模の建物だと、破壊を断念したのかもしれんな。邪教のシンボルとしてあえて残したということも考えられる」
イリス「……王国のやり方、聞けば聞くほどハラワタが煮えくり返りそうになる……」
クロシュ「……」サスサス
イリス「クロシュちゃん……ありがとう。怒りに囚われちゃだめだよね」
妖精「いつの間にかクロシュの方がお姉ちゃんになっちゃったの?」
クロシュ「?」
イリス「ど、どっちがお姉ちゃんでも妹でもないでしょ」
*
―廃神殿 内部
破壊された像「」ガレキ
ローガン「流石に像などは壊されているな……」
イリス「……ねえ、流石にここから物を持っていったりとかは……」
妖精「まあ、ここには流石に役に立ちそうなものもなさそうだしねえ」
ミスティ「……魔族の神々の力を借りる、とか言うと思っていたわ……」
妖精「そりゃ借りられるものがあれば借りたいけど、ないでしょここ」
ローガン「うむ……。図書館と違って、ここは知識の倉ではないし、戦いに向いた物品があるとも思えん」
イリス「そ、そうですよね。良かった」
クロシュ「……」
↓1
01-05 邪神
06-95 何もなし
96-00 魔神
クロシュ「……」
妖精「クロシュ? 早く行くよ」
クロシュ「あ、うん」トテトテ
クロシュ「……」
クロシュ「……」クルッ
神殿の廃墟「」ガラン
クロシュ「……」
クロシュ「……」トテトテ
神殿の廃墟「」ガラン…
◆
本日はここまで。次回は貧民街の子どもたち編と工芸品編です
常闇の樹海は魔族自治区の少し北に広がる大規模な森林地帯です。どこの国にも属していない未開拓地域でもあります
浅層はうららかな木漏れ日の差す穏やかな森ですが、少し奥へ進むとその名の通り鬱蒼とした植物の生い茂り日光が届かぬ常闇領域に突入します
チカーバの街から冒険者や調査隊が何度か調査へと旅立っていますが、深層に足を踏み入れて帰ってこれた者はほとんどいません。数少ない帰還者も肉体か精神かその両方に異常をきたしている場合が多いです。それでも夢とロマンと美しき森の民(妄想)との出逢いを求めて樹海へ挑む命知らずは後を絶ちません
なおかつての魔族国は樹海奥地に住まう種族と交流がありましたが、現在の魔族自治区になってからは公的な連絡は途絶えているようです
また、手に入った『星の魔力』という本は、自由安価などで解読を試みることができます。しかし現時点でイリスは自分の属性をちゃんと理解しているわけではないので、本の内容をすぐに活かすことは難しいです
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
多数属性の人は検査などによって比較的容易に自分の属性を知ることができますが、希少属性の人は検査を受けても『多数属性に当てはまらない属性』ということしかわからないため、自力にせよ他力にせよいろいろと試したり研究したりといった過程が必要となります。まずは自分の属性が持つ性質を理解し、どのような運用が最も効率的であるかを探り当て、属性に適した術式を組み上げる――といった具合です。そういう点では複数属性に似た面を持つ星属性の本質を突き止めるのはとても難しく、気付かずに一生を終える人もかなりいると考えられます。まあ複数属性の時点で激レアかつ有能なので、気付かなくても困ることは殆どないです
クロシュちゃんは感受性が豊かなので、神殿の方に何かの気配を感じたのかもしれません。それが何なのかはわかりませんが、直ちに世界へ影響を及ぼすものではなさそうです
フメイちゃんとアリシラさんかどうかはわかりませんが、確かに魔族自治区で魔力枯渇死と焼死が発生したようです。革命に変な影響が出なければ良いけど、とフラナ氏が心配しているかもしれません
常闇の樹海深部は大陸内でもかなり上位に入る危険地帯のため、特に用がなければ近寄らない方が良いでしょう。向こうに用がある時は迂回していくのが無難です
―魔族自治区
貧民街 公園
魔族の子供「――」キャッキャ
淫魔の幼女「――」キャッキャ
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
イリス「クロシュちゃん、すっかり馴染んでるね」
妖精「イリスも混ざって来たら?」
イリス「や、人間の私が混ざったら嫌な気持ちにさせちゃうよ、きっと」
妖精「そりゃそうか」
ミスティ「世知辛いわね……。イリス自身は魔族を悪く思っていないのに……」
ローガン「個々の人格を見て判断して欲しいところだが、ここ魔族自治区でそれは不可能だろうな。ここから見える人間は、王国の暴虐者が全てだ」
イリス「……」グッ
フラナ「……いいえ。あの子たちなら、人間であるイリスも受け入れられると思うわ」スタスタ
イリス「フラナさん!」
ミスティ「……それは、どうして?」
フラナ「いろいろあってね。癪に障るけど、あの子たちは人間であっても個々の人格を見て判断できるわ。本当に癪に障るけど」
ローガン「……それは良いことなのでは? 貴女はあの子供たちに思考停止で人間を憎んで欲しいのか?」
フラナ「いくら個々を見て判断できるとは言ってもあの子たちはまだ子供。狡猾な輩には簡単に騙されてしまう。それなら初めから思考停止して拒絶した方がマシでしょう」
ミスティ「……王国の悪意が蔓延るここでは、確かにそれが一番かもね」
フラナ「でも、結局あの子たちは人間相手でも最初から完全拒絶はしなくなっちゃったわ。だから遊んで来ても良いわよ。あなたたちのことは信用しているから」
イリス「……はい!」
*
即席ソリ「」スイー
魔族の子供「わああ!!」キャッキャ
淫魔の幼女「すべる〜」キャッキャ
イリス「飛ばすよ〜!」キャッキャ
ミスティ「も、もう少し速度を落として……!」
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
妖精「や、やめてえ……スライム同士で挟まないで……ひあぁ」モニョモニョ
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
フラナ「すっかり馴染んでるわね」
ローガン「うむ……。しかし、なぜあの子たちは人間を毛嫌いしないのだ?」
フラナ「ああ、それはね――」
魔族の子供「あ! 黒い服のお姉さん!」
淫魔の子供「おねーちゃん!!?」
イリス「え?」
ミスティ「あれは……」
スタスタ… ガラガラ…
聖女「こんにちは、旧市街の皆さん」ペコリ
イリス「……シスター?」
ミスティ「あれは……ロイエ教の……?」
魔族国のスライム「!」モニョッ
スライムクロシュ「?」モニョ
魔族国のスライム「〜〜」モニョモニョ
スライムクロシュ「!」モニョモニョ
ローガン「リヤカーを引いた教会のシスター……? しかしあのリヤカー……」
大鍋やパン類などの食料品が載せられたリヤカー「」ガラガラ
聖女「教会より炊き出しに参りました。お納めください、魔族自治区の皆様」
魔族の子供「ごはん!」ダッ
淫魔の幼女「おねーちゃん!」トテトテ
魔族国のスライム「〜〜」ズルズル
聖女「こんにちは。今日も元気にしていましたか?」
魔族の子供「うん!」
淫魔の幼女「えへへ〜」
魔族国のスライム「〜〜」モニョモニョ
聖女「ふふ。ご飯は逃げませんから、ゆっくり順番にね……」
ワイワイ キャッキャ
ローガン「……なるほど。あのシスターの影響、というわけか」
フラナ「そういうこと。自己満足だか自己陶酔だか知らないけど、ああやってお情けを与えてくださるのよ」
イリス「みんなに、ご飯をあげてる……!」
ミスティ「……そうみたいね」
イリス「昨日服屋で会った旅行者の二人もそうだけど……ああいう人もいるんだ……」
ミスティ「魔族の為に命をかけようとする旅人もいるくらいだもの」
イリス「あ、それは確かに……」
魔族の老人「おお、今日も炊き出しが……。ありがたや……」ノソノソ
竜人の女性「……今日もやってんのか。チッ……背に腹は代えらんねえ……」スタスタ
ハーピィ記者「おっ、やってますねえ炊き出し! タダなら私も貰ってこうかな!」パタパタ
妖精「続々と集まってきたね。空腹には抗えないか」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
妖精「クロシュはだめ。十分に食べてるでしょ」
スライムクロシュ「……」ショボン
妖精「余らないだろうけど、もし余ったらそれを貰うくらいは――ん?」
ザッザッザッ!
魔族の青年「……」ザッ!
馬頭の男「……」ザッ!
オークの若者「……」ザッ!
聖女「こんにちは。炊き出しは順番を……」
オークの若者「フンッ!」ブンッ
聖女の足元の地面「」ゴシャァッ!
聖女「……!」
淫魔の幼女「ひっ……!」ビクッ
ザワザワ…
魔族の子供「な、なんだよ、おまえ……!」ザッ
魔族の青年「ガキはどいてろ」ゲシッ
魔族の子供「ぎゃっ!」ドテッ
魔族国のスライム「!!」モニョモニョ
オークの若者「汚えんだよ、下等魔族が!」ドカッ
魔族国のスライム「〜〜……」ベシャッ
聖女「やめてください! どうして、同じ魔族なのに……!!」バッ
馬頭の男「……じゃア……魔族じゃない、あんたには……何をシても、いいのカ……?」
聖女「えっ……」
オークの若者「」シャッ
聖女「きゃっ!」ガシッ
魔族の青年「いっつもいっつも、上から哀れみやがって……!! お前たちさえいなけりゃ、俺たちはこんな惨めに施される必要もなかったんだろうが!!」
聖女「……」
オークの若者「このままじゃおれたちゃあ満足に子孫すら残せねえ……。だからよお、おれたちの子供を孕んでくれよ聖女様よォ!!」
聖女「……それで、あなた方が、本当に救われるのなら――」
魔族の青年「…………ふざけんな。どこまで……どこまで上から目線なんだ、お前たち人間はァァァ!!!!」グググッ
聖女「……!」ギュッ
↓1〜3多数決 どうしよう
1.何もしない
2.止めようとする
イリス「……!」ザッ
ミスティ「やめなさい! 私たちが出ていけばこじれるどころじゃない!」
イリス「で、でも……!!」
スライムクロシュ「」シュバッ
妖精「あっバカ!」パタパタ
聖女「か……はっ……」ギリギリ
オークの若者「お、おい! それ以上は死んじまうだろ! この女には俺の子を孕んでもらわねえと……!」
魔族の青年「うるせえ! 子孫なんてどうでもいい! 殺してやるってんだよ!!」ギリギリ
馬頭の男「」オロオロ
スライムクロシュ「」シュバッ
ドンッ
魔族の青年「おあっ!?」ヨロッ
聖女「あっ……」ドサ
スライムクロシュ「……」ジリ…
オークの若者「なんだァ!?」
魔族の青年「この野郎……下等魔族の分際でこの俺に……!」ゴゴゴ
馬頭の男「」オロオロ
魔族の青年「まずはテメェみてぇな魔族国の穀潰しからぶっ殺し――」
ガッ
魔族の青年「オゴッ……」フラッ
竜人の女性「みっともねえ真似してんじゃねえよ、クソガキが」ゲシッ
魔族の青年「ゲウーッ!」ゴロゴロ
フラナ「はあ、全く……。こんな時に面倒事を起こさないでよ」スタスタ
オークの若者「ふ、フラナさん!?」
フラナ「お前たちの愚行のせいで私たち全員が迷惑すんのよ。そいつを殺したら王国どころか教会まで敵に回すとか想像できないの?」
オークの若者「うぐ……」
馬頭の男「」オロオロ
フラナ「魔族が単純な力だけで支配できる時代はもうとっくに終わってんのよ。頭を冷やせ、小僧」
魔族の青年「う、ぐううう……!!!」ポロポロ
竜人の女性「フラナ、こいつらどうする? 牢にぶちこんどくか?」
フラナ「いや、いい。牢を使うのにも騎士連中の許可が必要でしょ。下手するとこいつらが尋問されて余計なことを口走るかもしれないし」
竜人の女性「それもそうだな……。おいお前ら、今回見逃してもらえたからって二度目はねえからな? 次やったらオレがお前らを殺す。覚えとけ」
オークの若者「ひ、ひえっ……」ジョワァァ
魔族の青年「……」ポロポロ
馬頭の男「」オロオロ
*
聖女「あの……この度は、ご迷惑をおかけしてしまい……」ケホッ
淫魔の幼女「おねーちゃん!」
フラナ「……あんたたち人間に恨みを抱いている奴は大勢いる。精々気をつけることね」
聖女「……はい」
フラナ「あと……餌だけ与えて後は何もしないっていう教会のやり方も気に入らないわね。私たちに自活する力を与えず、恩だけ押し売りたいって意図が透けて見える」
聖女「それは……しかし……」
フラナ「……あんたみたいな末端に言っても仕方ないことなのはわかってるわ。でも、そういう態度が今回みたいな怒りを生んだってのも覚えておきなさい」
聖女「…………はい」
淫魔の幼女「フラナおばさん!! おねーちゃんをいじめないで!!」ベシッベシッ
フラナ「いたっ! 私はどう見てもあんたと同年代くらいの幼女でしょうが!!」
淫魔の幼女「頭がおばさんだからおばさん!! どうしていつもごはんをくれてありがとうって言えないの!?」
フラナ「」グサグサッ
竜人の女性「はは、飯をくれることに変わりはねえからな。感謝の気持ちも抱けねえようになっちゃお終いだぜ」
フラナ「それはまあ、そうね……。意図は何であれ、この子たちやここの住民に食事を提供してくれていることにはまあ……感謝しているわ……」
聖女「……! はい!」
フラナ「それにしても、なかなかやるじゃない。あなた」
スライムクロシュ「?」モニョ
魔族国スライム「!」モニョモニョ
淫魔の幼女「うん……! クロシュちゃん、すっごくかっこよかった……!」
魔族の子供「てへへ……ぼくはカッコ悪かったなあ……」
竜人の女性「そんなことねー! クロシュもお前たちも見上げた根性だったぞ!」
妖精「ふふん、まあクロシュは私が鍛えてやってるからね。あれくらいは当然」
イリス「クロシュちゃんが飛び出してった時はびっくりしたけど……でも良かった!」
ミスティ「ええ……。とりあえず、酷いことにならなくて良かったわ……」
ローガン「最悪私が騎士鎧に変装して突っ込もうかと思っていたが、クロシュくんの勇気に助けられたな」
スライムクロシュ「……///」モニョモニョ
聖女「あの、黒いスライムさん!」
スライムクロシュ「!」モニョ
聖女「……ありがとう、ございました」ペコリ
スライムクロシュ「……」デロデロ
聖女「!?」
黒髪幼女クロシュ「えと……。余計なこと、じゃなかった……?」
聖女「あ……ええと。はい。私は……本当は、怖くて……覚悟もできていなくて……。あのまま殺されていたら、何もかもを不幸にしてしまうところだったんです……」
クロシュ「……うん」
聖女「……あなたは、とても小さいのに……それを止めてくださった。あなたの勇気に、感謝を示します……」ペコリ
クロシュ「え、えと……」
妖精「あ、それならこいつに炊き出しの余り物をくれない? さっき物欲しそうに見てたからさ」
クロシュ「……///」モジモジ
聖女「……! はい、喜んで……!」
◆
―魔族自治区 表通り
スタスタ
妖精「いやー良いことをすると気持ちが良いね!」パタパタ
クロシュ「うん……!」
ミスティ「妖精は何もしていないじゃない」
妖精「クロシュは私の手足みたいなもんだから、私の手柄も同然ってこと」
イリス「あはは、都合が良いなあ」
ローガン「……」
イリス「ローガンさん、どうかした?」
ローガン「ああ、いや……少しこの国の工芸品が気になってな」
看板「工芸品店」
妖精「魔族国の工芸品かあ。まあ、今のうちに見ておくのもアリかもね。明日以降どうなるかわかんないし」
ミスティ「そうね……。予算はもうあまりないけど、見ていきましょう」
*
―魔族自治区 工芸品店
カランカラン
イリス「これは……!」
美しい文様の描かれた磁器「」
淡い色合いの綺麗なガラス食器「」
木彫りのドラゴン「」
カニの置物「」
ミスティ「……凄いわね」
妖精「当たり前だけど、私には大きすぎるね」
ローガン「うむ……。どちらかと言えば、お土産用や観賞用の物品が多いな。我々のような旅人には不向きかもしれん」
職人オーク「冷やかしなら帰ぇんな」
イリス(職人の……オーク!)
ミスティ(そりゃオークにもいろいろいるでしょ)
ローガン「これは失礼した。我々は旅をしているもので、できれば旅に適した物品が欲しいのだ。ついでに言うと、予算もあまりない」
職人オーク「そりゃまた難しい注文だな……。こういうのはどうだ?」
↓1
01-50 丈夫な飯盒
50-85 ザリガニのお守り
86-95 ミスリルコイン(特化)
96-00 オリハルコイン(大特価)
ザリガニのお守り「」ポン
ローガン「これは……」
クロシュ「……ザリガニ?」
職人オーク「ザリガニの加護がかけられたお守りだ。守りの力と、水や泥への耐性・適性を僅かに得る。どちらも気休め程度だがな」
イリス「へえ〜凄い! ちょっと触ってみても良いですか?」
職人オーク「はいよ」スッ
ザリガニのお守り「」
イリス「これは……」
ミスティ「何かわかるの?」
イリス「微かだけど、川の魔力を感じる……。凄い……! ザリガニだ……!」
妖精「本当? どれどれ……あ、本当だ。川の鼓動が聞こえる……」
ミスティ「え、イリスと妖精ってそういうのがわかるの?」
妖精「まあ私は妖精だからね。でもイリスもこういうのがわかるのはちょっと意外かも」
イリス「複数属性だからかな? なんかちょっとだけわかるんだよね、昔から」
ローガン「不思議なこともあるものだな。私は鋼属性しかわからん」
ミスティ「単純な属性の判別くらいは私もできるけど、川とかそういう……魔力の出身地? みたいなものは全然わからないわね……」
妖精「元を辿れば大体全部根っこは同じだけどね」
イリス「あ、星の魔力ってやつ!」
妖精「そ。自然界に存在する魔力の殆どは、星の魔力が源流だもん」
イリス「へえ〜、なんだかロマンがあるなあ……!」
職人オーク「……それで、買うのか?」
イリス「あ、買っても良い?」
ミスティ「私は良いわよ」
ローガン「異議なし」
妖精「良いんじゃない? 高いものでもないし、あって困るものでもないし」
クロシュ「うん」
イリス「じゃあ買っちゃうね……!」
☆ザリガニのお守りを買いました
◆
というわけで本日はここまでです。次回より魔族自治区ステージクライマックス、革命編開始です
聖女様は、聖女という名前ではありますが、宗教的に優れた人物であるとか世界運命的に大きな役割を持っているとかではありません。精神性が聖女なので聖女の名を冠しているだけです
彼女との交流が吉と出るか凶と出るかは革命編におけるクロシュちゃんたちの行動次第であります。魔族自治区やそこに住まう人々がどのような運命を辿ることになるのかはわかりませんが、悔いのないように動きたいものです
それでは本日もありがとうございました。例によって平日更新は多分できませんが、次回もよろしくお願いします
書き忘れていました。今回クロシュちゃんが悪漢に立ち向かう選択をしたので、勇気によって体組成が活性化し自己強化経験が[2/3]になりました。あと一息です
劇的な成長というわけではありませんが、クロシュ氏も日進月歩です。お見守りください
フラナ氏は年齢についてはそこまで気にしているわけではないのですが、流石におばさん呼ばわりは堪えたようです
Rに建っていたらまあ、安価コンマ次第でちょっとかわいそうなことになっていた可能性はあります
馬頭氏自身はあまり攻撃的な人ではないのかもしれません。ただ、付き合う友達が悪かったというか……
竜人の女性さんは、前作の彼女がこの世界に生まれてこのような状況で成長したらどうなるか? という想定かもしれません
なんか書いていたらピッタリハマッてしまったという奇妙な偶然でもあります
そして突然ですがここで王国の正式名称を募集したいと思います(『イングランド王国』のイングランドに当たる部分)
↓1〜3 コンマが高いもの(>>1が世界観にそぐわないと思った場合は次点採用となります。ご了承ください)
セイントレア
17:04:59まで。それまでになければ>>287を採用させていただきます
というわけで王国の名前は「セイントレア王国」となりました。ありがとうございました
続けて、王国騎士団魔族自治区駐屯地の部隊長を募集します
彼または彼女は王国を統治する現セイントレア王の子息です。しかし王位継承順位は低めです(女性の場合は王位継承権自体がありません)
魔族自治区においては絶対的な地位と権力を有しています
※恐らくこの先ろくな目にあいません。ご了承の上でお願いします
↓1
【名前】
【種族】人間
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】
【備考】
【名前】マリー
【性別】女
【年齢】24
【容姿】金髪ショート、スレンダー体型
【性格】真面目
【魔法】新大陸強化魔法が得意な他、雷魔法も使える
【備考】内心は皆仲良くできればな・・・と願っているがなかなかうまく行かない
ありがとうございます。部隊長は>>291のマリーさんで決定です
それでは本編に移らせていただきたいと思います
―夜明け前
魔族自治区 裏通り
ヒッソリ…
クロシュ(静か……)
イリス「……あと少しだね」
ローガン「うむ……。二人とも、無理はするな」
ミスティ「わかっているわ……」
イリス「ローガンさんも無理はしないでね……! 一番危ない役なんだから」
ローガン「心得ている」
イリス「妖精さんとクロシュちゃんも、頑張って……!」
クロシュ「うん」コク
妖精「まー私たちは後ろでコソコソするだけだから気楽だけどね」
ローガン「だが、君たちの働き次第で前線の我々も楽になる。しっかり頼むぞ」
妖精「はいはい。あることないこと吹聴して頑張るよ、クロシュが」
クロシュ「う、うん……」
ミスティ「でも、もし工作がバレたら私たち以上に危険な立場よ……。警戒は怠らないで……」
妖精「大丈夫大丈夫、私もこいつも隠れ潜むのは得意だから」
クロシュ「うん」
コケコッコー!!
イリス「……! そろそろ行かなきゃ……!」ザッ
ミスティ「絶対に生きて帰るから。あなたたちも、死なないで」スッ
ローガン「クロシュくんを頼むぞ、妖精くん」ザッ
妖精「任せなさい。行くよ、クロシュ」
クロシュ「う、うん……!」
◆
―夜明け前
魔族自治区 全域
コケコッコー!!
魔族自治区全域を覆う巨大な紫の魔法陣「」フォン…
夜勤明けの兵士A「んあ?」
夜勤明けの兵士B「なんだ? 足元が光って……」
夜勤明けの魔法兵A「……!!? 皆さん魔力防御を――」
魔族自治区全域を覆う巨大な紫の魔法陣「」カッ!!!!
夜勤明けの兵士A「がっ……」ガクッ
夜勤明けの兵士B「な、にが……」ガクッ
夜勤明けの魔法兵A「ぎっ……!」グッ
夜勤明けの魔法兵A「ま、魔力が……奪われて……!」クラクラ
◆
―王国騎士団駐屯地 部隊長私室
ワーワー ナンナンダアアアア!!
マリー「ぐっ……な、何が……」ハァハァ
マリー「これは……魔力を奪う、魔法……!?」ハァハァ
扉「」バァン!
魔法騎士A「部隊長、ご無事ですか!!」ザザッ
マリー「じ、状況を……!」
魔法騎士A「魔族自治区全域に大規模な対人消魔陣が発動した模様!! 保有魔力の少ない人や抵抗力の弱い人は身動きが取れません!! これは――」
ドゴオオオオン!!!!
マリー「!!?」
魔法騎士A「くっ……! ま、魔族の……反乱です……!!」
◆
―魔族自治区 王国騎士団駐屯地
夜勤騎士A「こ、これは……!!」ググッ
夜勤騎士B「魔力が……!」ググッ
ドガアァァァァァァアン!!!!
夜勤騎士A「何――」グチャッ
夜勤騎士B「あ、ああ……アバッ」グチャッ
竜人の女性「返しに来たぜ……今までの借りを!!」メラメラ
ムキムキオーク「姐さんに続け、野郎ども!!」ザッ
ムチムチラミア「うふふ……殺すわぁ……」ユラッ
魔族革命戦士たち「うおおおおおおお!!!」ダダダダッ
*
ウオオオオオオ!!
グワーッ!グワーッ!アバーッ!
イリス「……」カタカタ
ミスティ「イリス!」
イリス「あ……」
ローガン「……今引き返しても、誰も咎めはせん」
イリス「……」
イリス「……ううん。怖いけど……魔族が……あの子たちが平和に生きていく為に……やれることを、やらなきゃ……!!」グッ
ミスティ「……わかったわ」
ローガン「足が止まりそうな時はすぐに言え。戦場では一瞬の迷いが命取りだ」
イリス「大丈夫……! 私……やれるよ……!!」ザッ
↓1
01 イリス負傷
02 ミスティ負傷
03-05 ローガン負傷
06-25 隊長格早期参戦、革命軍劣勢
26-95 革命軍優勢
96-00 イリスパーティ、電撃侵攻し部隊長マリーを捕縛
騎士C「あ、ああ、お、お助け――」
竜人の女性「そうやって命乞いした魔族を助けたことが一度でもあったのかよ、おい……!!」ゴウッ
騎士Cだった燃えカス「」プスプス
イリス「はあ、はあ……!! み、水よ……!」
泡「」ポワン
騎士D「おわっ……! み、身動きが……!」ポワン
ムチムチラミア「上手よお、フラナちゃんのお弟子ちゃん……。あとは私が殺すわぁ……」ヒュッ
騎/士D「」バシャッ
イリス「……!!」カタカタ
ムキムキオーク「人間だって聞いてなんだそりゃって思ったが、流石はフラナさんの弟子だな!」
ムチムチラミア「人間なのに魔族(私たち)に付くなんて、道理のわかる子よねえ……うふふ……」
ミスティ「……イリス」
イリス「……た、戦えるよ!! 正しいことの、為だもんっ!!!」
ローガン「…………」
☆革命軍優勢+1
◆
―魔族自治区 表通り
駐屯地の方角「」メラメラ
ザワザワ ナニガオキテイルンダ…
妖精「始まったみたいだね。私たちもやることやるよ、クロシュ」
クロシュ「う、うん!」
妖精「狙い目は、ここ表通りでざわつく住民や旅行者か……入植者たちのいる入植街だね。普通の人間は魔法陣の効果でまともに動けないけど、逆にその隙こそ嘘八百を刷り込むチャンスだよ」
クロシュ「……」
どこで活動する?
↓1選択
1.表通り(住民のざわめきが聞こえる……)
2.入植街(魔法陣で人間が倒れたからか、静かだ……)
妖精『状況は刻一刻と変化していく。最適解なんて、きっとない。だから、その瞬間瞬間であなたが最もすべきだと思ったことをするの。それで、例え取り返しのつかないことが起きたとしても……それは、そういう運命だったってだけだから』
クロシュ「まずは……ここ」
妖精「まあ無闇に移動するものでもないか。じゃあ私はクロシュの懐からアドバイスするから」ススッ
クロシュ「ん……」
*
ぐったりしている旅行者A「はあ、はあ……」グッタリ
ぐったりしている旅行者B「助けてください!! 朝の散歩をしていたら、突然魔力が……!!」
弱っている兵士「み、皆さん落ち着いてください!! もうすぐ騎士の方が来ますので、それまでは――」
黒髪女騎士クロシュ「」ヌッ
弱っている兵士「!! き、騎士様!」
妖精(よし、やれクロシュ!)
↓1コンマ
01-05 バレた
06-35 怪しまれつつもとりあえず遂行
36-65 なんとかやれた
66-95 好調
96-00 迫真
黒髪女騎士クロシュ「えっと……もうし訳ございません……。この魔法陣は……騎士団が、魔族をぎゃくさつするために、使おうとした実験のもので……」
弱っている旅行者B「ええ!? 虐殺って……!!」
弱っている兵士「そ、そんな……」
黒髪女騎士クロシュ「こ、国王様の要請で……実験を早めるように言われて……。すみません、誤発動してしまい……。人間には、魔力が減るだけで死んだりしないので……」
旅行者B「に、にわかには信じがたいけど……当の騎士様本人が言ってるし……」
黒髪女騎士クロシュ「旧市街の、神殿を緊急の救護所としておりますので……動ける方は、そちらへおねがいします」
妖精(救護所とか避難所を装った人質監禁施設だけどね)
弱っている兵士「わ、わかりました!! 動ける方は動けない方を背負って神殿へ向かいましょう……!」
旅行者B「と、とにかくありがとう!」ペコッ
黒髪女騎士クロシュ「…………」
妖精「よし、クロシュにしては上出来!」
黒髪女騎士クロシュ「…………うん」
☆革命軍優勢+1
*
妖精「次はどこで活動する? まだここで続けるか、別の場所に向かうか」
↓1選択
1.ここ(表通り。そろそろ本物の騎士が来そう……)
2.入植街(戦いの音が聞こえる……?)
3.旧市街(子供たちと女性の声が聞こえる……)
―魔族自治区 革命中
クロシュ「……旧市街」
妖精「旧市街? あっちは魔族住民ばっかりだから嘘を吹聴する旨味はあんまりないと思うけど」
クロシュ「でも……なんか……気になる……」ヨタヨタ
妖精「そうなの? じゃあ行こっか」パタパタ
◇
―駐屯地
ムキムキオーク「むんっ!」ブンッ
棍棒「」ゴオッ
騎士E「」ゴシャァ
ムキムキオーク「もう一匹!」ブンッ
ガギンッ
ムキムキオーク「むっ!?」
精鋭騎士A「好き勝手やってくれるじゃないか、劣等種共が……!!」ギギギ
精鋭騎士B「本隊が遠征中の今を狙ってくるたァ、きたねェ奴らだぜ!」
竜人の女性「チッ、精鋭の奴らか……! 所詮は駐屯地の居残り組だ、叩き潰せ!!」
ムチムチラミア「ええ……殺すわぁ……」
ローガン「……! 彼らは一人ひとりが隊長格並だ! 消魔陣も殆ど効いていないと見える、油断するな!」
ミスティ「ええ……! イリス、いける!?」
イリス「……うん」スッ
↓1コンマ
01-05 イリス負傷
06-10 ミスティ負傷
11-20 ローガン負傷
21-50 革命軍劣勢
51-95 革命軍優勢
96-00 イリスパーティ、電撃侵攻し部隊長マリーを捕縛
精鋭騎士A「死ね劣等種共!!」シュビビッ
ムキムキオーク「ぐわあああああ!!!」ズババッ
竜人の女性「下がれ! 奴らの相手はオレがやる!!」シュバッ
イリス「はあ、はあ……! だ、大地よ……!」ゴゴゴ
精鋭騎士B「おっと!」ヒョイ
ローガン「――」シャッ
精鋭騎士B「ちっ!」キィンッ!
ミスティ「――」ブツブツ
無数の氷柱「」ヒュンヒュン
精鋭騎士B「うおお!」サササッ
ミスティ「……!」
ローガン「この男……かなりやる……!」
精鋭騎士B「お褒めに預かり光栄……と言いたいところだが……お前ら人間だよな?」
イリス「!」ビクッ
精鋭騎士B「ペッ……。薄汚ェ劣等種より尚下劣で醜い人類の裏切者が。ただ殺すのもつまらねェ、本国に送って最下層奴隷に堕としてやんぜ」シャキン
◆
―旧市街
ザワザワ ナニガオキテイルノ…
聖女「皆さん、どうか落ち着いてください……。教会を開放しています、不安な方は是非教会へ避難してください……」ハァハァ
魔族の子供「お姉さん、大丈夫……?」
淫魔の幼女「おねーちゃん、魔力が減ってる……」
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
聖女「だ、大丈夫です……。私にはロイエ神のご加護がありますから、これくらいは……」
魔族の若者A「おい、この魔法陣で入植者のクズ共が参ってるらしいぞ!! しかも今駐屯地の方でフラナさんたちがクソ騎士共とガチバトルしてるらしい!!」
魔族の若者B「マジ!? ついに反乱の時か!!?」
魔族の若者A「入植街でもバトってるらしいから加勢に行こうぜ!」
魔族の若者B「おっしゃ! 晴らそうぜ、鬱憤!!」
ザワザワ
友達の家を壊された魔族の少年「……」グッ
聖女「……っ! と、止めに、行かないと……!」ヨロヨロ
魔族の子供「あ、危ないよ! お姉ちゃん、人間だし……殺されちゃうよ……」
淫魔の幼女「こ、ここにいよ……?」
魔族国スライム「〜〜!」モニョモニョ
聖女「……ありがとう。でも、行きます……。例え、どれほどの憎しみがあっても……殺して良い理由には……」
「こんな時までお花畑の綺麗事か?」
聖女「……あなたは!」
魔族の青年「……ケケケ。こんな状況だ、一介の聖職者様が一人死んだとこで単なる〝事故〟にしかなんねえよな?」
聖女「やめてください……! 私を殺しても、何の解決にも――」
魔族の青年「うるせェ!!! 解決なんてどうでもいいんだよ!!!」シャキン
魔族の子供「や、やめろおお!!」
淫魔の幼女「いやあああ!!!」
魔族国スライム「〜〜!!!」モニョモニョ
シュバッ
ガギンッ
小盾を構えた黒髪女騎士クロシュ「……」ギギ
魔族の青年「なんだ、てめえ……。騎士じゃねェ……まさか!」
聖女「あなたは……まさか……!」
魔族国スライム「!!」モニョモニョ!
淫魔の幼女「クロシュちゃん!?」
魔族の子供「クロシュちゃん!!」
ギンッ
黒髪女騎士クロシュ「!」ズザザッ
魔族の青年「へっ……あの時の穀潰しスライムか。胸糞悪い騎士のコスプレまでしてくれるたあありがてえ。気持ち良くぶっ殺しせるってもんだ……!!!」シャキ
――ボス戦闘開始――
↓1コンマ
01-05 痛恨
06-40 劣勢
41-95 優勢
96-00 覚醒
魔族の青年「おらどうしたどうしたァ!! その格好は見掛け倒しかァ!?」ブンブンッ
クロシュ「っ!」ギンギンッ
魔族国スライム「〜〜!」モニョモニョ
淫魔の幼女「えっ! クロシュちゃんの擬態って見かけだけなの!?」
魔族の少年「見た目と感触だけで、実際に堅くなったり強くなったりしてるわけじゃないの!?」
聖女「そ、そんな……! た、助けないと……! あっ……」フラッ
クロシュの懐にいる妖精「〜〜」ブツブツ
クロシュ「!」フワッ
妖精「追い風の魔法。体が軽くなったでしょ? 負けないでよ、クロシュ」
クロシュ「!」コクッ
クロシュ「……!」シュバッ
魔族の青年「なっ、こいつ急に動きが……!!」ギンギンッ
クロシュ「!」ブオンッ
ガッ!!
魔族の青年「オゴッ……!」
↓1コンマ
01-05 痛恨
06-40 劣勢
41-95 勝利
96-00 覚醒
クロシュ「!」ブンブンブンッ
魔族の青年「オゴッ! オゴッ! オゴッ!」ガッガッガッ
クロシュ「――」グオオッ
魔族の少年「振りかぶって……!!」
淫魔の幼女「やっちゃえー!!!」
魔族国スライム「!!!」モニョモニョ!!!
クロシュ「!!!」ブンッッ!!!
ガゴンッ!!!
魔族の青年「ゲウーッ!!!」ゴロゴロゴロ
――勝利!
*
縛られた魔族の青年「」
魔族の子供「フラナさんに言いつけてやる!」プンスコ
淫魔の幼女「でもクロシュちゃんかっこよかったあ……。えへへ……好きになっちゃいそう……」
クロシュ「?」
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
クロシュ「!///」っっっ
聖女「……一度ならず二度も助けていただいて……。クロシュさんには、何とお礼を言ったら……」
妖精「いいよいいよ。クロシュが好きでやったことだからさ」
クロシュ「ん」コク
聖女「本当にありがとう……。今回は、何もお礼できなくてすみませんが……私も、もう行かないと……」ヨロヨロ
妖精「えっ、そんなフラフラなのにどこに?」
聖女「入植街の方で、争いが始まったそうなのです……。不要な殺生は止めにいかなければ……」
妖精「無駄だと思うけどなあ。それに当人らは不要だとは思ってないよ多分」
聖女「……そうだとしても。命を亡くしてしまえば、取り返しは付きません……。後悔も、反省も……何もできなくなってしまうのですから……」
妖精「考え方は立派だと思うけどね。まあ無理に止めはしないよ」
淫魔の幼女「無理に止めて! おねーちゃん死んじゃうよ!」
妖精「そんなこと私に言われても……」
クロシュ「……」
↓1〜3多数決
1.聖女を止める
2.聖女を止めない
3.聖女と一緒に行く
クロシュ「……わたしも、行く」
妖精「へ!?」
聖女「え?」
淫魔の幼女「クロシュちゃん!」
妖精(いやいやいや、ちょっと待って! 一緒に行ってどうするの!? 聖女はどっちかと言うと革命を止めたい側なんだよ!?)
クロシュ(……わたし……わかんない……。何が、正しくて……何が、正しくないのか……)
妖精(……)
クロシュ(一緒に行けば……わかるかもしれない……。わたしが、やってること……。やりたいこと……。やらなきゃ、いけないこと……)
妖精(……そっか。成り行きで革命に参加したけど、クロシュは考える時間もなかったもんね。まあ私たち二人がサボったところで大勢は変わらないだろうし、行ってみよっか)
クロシュ(うん)
聖女「……しかし、あなたをこれ以上巻き込むわけには……」
クロシュ「……スライムのわたしが一緒にいた方が……攻撃、されにくいと思う……」
聖女「それは、そうなのですが……」
妖精「じゃあ決まり。でも私たちはただ付き添うだけだからね。今何が起きているのか……見極めたいだけ」
聖女「……何から何まで……本当に、ありがとうございます。でも、もし危なくなったら私など見捨てて逃げてくださいね……」
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
魔族の子供「ぼくたちは教会に避難してるから。お姉さんも、クロシュちゃんも、妖精さんも、気をつけてね……!」
淫魔の幼女「……死んじゃやだからね」
◆
―駐屯地
竜人の女性「――」シュビビッッ
精鋭騎士A「チイッ! トカゲ人如きが調子に乗るなよ……!!」ガギンッ
精鋭騎士B「死ねィ!」ビビビッ
ローガン「くっ……! このままでは……!」ガガガッ
イリス「ローガンさん……!」
ミスティ「くっ……! 距離が近すぎて援護できない……!」
精鋭騎士C「では裏切者のお嬢様方はワタクシが味見してしまっても?」ヌッ
イリス「」ゾッ
ミスティ「――!」バッ
無数の氷柱「」シュババッ
パキンパキンパキンッ…
ミスティ「なっ……!」
精鋭騎士C「ハッハッハ! ワタクシの対魔法装甲にそんな脆氷が効くとでも?」シャキン
イリス「ッ! ミスティ……!!」ダッ
精鋭騎士C「ハッハッハ! もう遅い!!」シュバッ
ミスティ「っ!!」
ゴッ…
精鋭騎士C「オボッ……」ドサッ
フラナ「ごめんなさい、遅れたわ」シュタ
ミスティ「……た、助かった、わ……」
イリス「あ、あ……フラナ、さん……」ジワッ
フラナ「……無理をさせたみたいね。あなたたちはもう下がって良いわよ」スッ
フラナの手に現れる魔血の槍「」クルクル ブンッ
フラナ「始めましょうか。消化試合を――」
↓1コンマ
01-95 優勢
96-00 イリスパーティ、隙をついて部隊長マリーを捕縛
フラナ「」ヒュンッ
精鋭騎士A「アバッ…」ザシュザシュッ ドサッ
竜人の女性「おいそいつはオレの獲物……って今はいいか! 早かったなフラナ!」
フラナ「首尾は上々よ。遠征騎士も王国の援軍ももうここには来れない。あとはこいつらの何人かを生かして捕虜にすれば完全勝利ね」ブンッ
高速飛翔する魔血の槍「」ギュオオオオ!!
ザシュッ!!
精鋭騎士B「な、に……」クシザシ
ローガン「!!」
フラナ「あなたもお疲れ様。イリスとミスティを下がらせたから、傍にいてやって」ギュオオ
再びフラナの手で形作られる魔血の槍「」ジャキン
ローガン「う、うむ……」
*
イリス(そこから先は、一方的だった)
イリス(フラナさんは、赤子の手をひねるように残存する兵士や騎士たちを次から次に殺戮していった……)
イリス(……これで良いんだ。魔族を命として尊重できない奴らなんて……死んじゃえば……いいんだ……)
イリス(…………)
イリス(……私……最低なこと……考えてる……)
イリス(もう……やだよお……)
◆
―入植街
串刺しにされた兵士の死体「」メラメラ
串刺しにされた騎士の死体「」メラメラ
串刺しにされ恐怖の表情で固まった入植者の生首「」メラメラ
「ぶっ殺せ!ぶっ殺せ!」
「や、やめて……あぎっ」
「ギャハハハハ!!!クソッタレの人間どもめ!!!」
「女はいねえのかよ!?孕ませ奴隷にしてやる!!」
「おぎゃあ、おぎゃあ…」
「どうか、娘だけは……」
「人間の赤子だ!!蹴っ飛ばしちまえ!!!」
「あっははははは!!!私の子もあいつらに蹴っ飛ばされたなあ!!!」
「お前たちを壊したところで何も還って来ねェんだよォォォ!!!」
「まだまだ隠れてる奴が大勢いやがるぞ!!全員引きずり出せ!!!」
「殺せ!!殺せ!!!殺せえええええええ!!!!」
聖女「……!!」
クロシュ「……」
妖精「あーあ。やっぱりこうなるよね」
聖女「止め、させないと……」
妖精「人間のあなたが言っても、絶対に聞く耳なんて持たないよ。あの串刺し死体が一つ増えるだけ。運が良ければ孕ませ奴隷で済むかもね」
聖女「……っ」
妖精「よく見ておきなよクロシュ。これが命の本当の姿。生きることの本質なんだよ」
クロシュ「……」
妖精「苦しんで、苦しめ合って……最期の瞬間まで、誰一人として救われない。苦しむために生まれて、生きるために苦しんで、苦しめ合わなきゃ生きられない。そんな最低の存在なんだよ。私たちは」
クロシュ「…………」
↓1〜3 どうしよう
1.どうにもならない
2.それでも、この惨劇を止めたい
クロシュ(……妖精さんの言う通りだ)
クロシュ(こんなの……どうにもならない……)
クロシュ(人も魔族も、こうやって苦しめ合わなきゃ生きられないのなら……)
クロシュ(…………)
クロシュ(……フメイちゃんに、会いたい……)
妖精「私たちにできることは終わった。撤収撤収」
聖女「そ、それでもっ……!! 命は……命は、苦しめ合うだけなんかじゃないと……私は……!!!」
妖精「自殺行為はやめてよね。寝覚めが悪くなる」
聖女「……く、クロシュさんは……」
クロシュ「……」
クロシュ「…………ごめんなさい」ペコリ
聖女「……」
聖女「……」ガックリ
妖精「クロシュ、この人に肩を貸してあげて。勝手に死なれたらあの子らが悲しむから、引きずってでも連れて帰るよ」
クロシュ「ん……」コクリ
☆クロシュの心境が変化しました
◆
本日はここまでです。クロシュの属性が中庸になりました。最も自由ですが、何らかの信念を持たないと単なる無軌道となってしまう属性でもあります
革命編はは恐らく次回の更新で終わります。今のところ身内に犠牲者が出ておらず、放って置くと魔族青年に殺されていた聖女&子供たちもしっかり助けたので、かなり好調な進行です。この調子で行けば反魂丹の出番もないかもしれません。使わないのが一番です
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
フラナ氏は実際とても強いです。もちろん近接戦闘もできます。彼女は以前の魔族国の幹部級の強さなのですが、実のところ勇者さえいなければ魔族国は王国などに負けることはなかったと言われています。その理由は今回のフラナ氏の活躍をご覧いただければわかるかと思います。このくらいの強さの幹部が複数いたので、魔族国は当時小規模な都市国家でありながら極めて高い軍事力を有していました
妖精さんはまあ、きっと人生で嫌なことがたくさんあったのでしょう。苦しい経験をした人が虚無主義や悲観主義を抱くのは珍しいことではありません
今回、人も魔族も一切犠牲にならない選択というものはありませんでした。どこかで妖精が言っていたように、最適解はありません。魔族自治区は物語開始時点の状況で既に平和的解決を目指すのは不可能でした。そんな詰んだ状況でクロシュちゃんとイリスさんはよくがんばっていると思います
イリスさんにとってはつらい状況が続いています。彼女には苦しい現実を受け流せるドライさも、正義に酔える愚かさも、自分で選んだことから逃げ出す無責任さもありませんでした。魔族のためだと自分に言い聞かせながら同族の人間を殺す加害者にならざるを得ない今の状況は実際とてもつらいものかと思われます。前作主人公もそうでしたが、曲がったことや理不尽から目を逸らすことのできない王道主人公気質であるがゆえに、人一倍苦しみやすいのかもしれません
ちなみにローガンさんの属性は秩序と中庸の中間くらいです。普段の発言は中庸っぽいですが、内心では秩序も重んじています。時と場合によって思考を切り替えられるタイプの人でもあり、根無し草の旅人をやっている今は中庸スタンスでいた方が都合が良い場合が多いため、結果的に口から出る言葉も中庸寄りのものが多くなってしまうのです
聖女さんの出番が今後もあるかはわかりませんが、もし出番がありそうなら名前とかを募集するかもしれません。余談ですが、彼女は見ての通り完全な秩序属性なのでイリスさんとは意見が合いやすいです
―旧市街 教会
聖女「……」グッタリ
淫魔の幼女「おねーちゃん……」
魔族国スライム「……」モニョ…
魔族の子供「……クロシュちゃんと妖精さんは、これからどうするの……?」
妖精「とりあえず宿に戻って待機かな?」
クロシュ「……」
妖精「クロシュ? どうしたの?」
クロシュ「なんか……ざわざわ、する……」
魔族の子供「ざわざわ?」
クロシュ「…………」
クロシュ「……みんなのとこ、行かなきゃ」バッ
妖精「あ、こら! ちょっとくらい私に相談しなさい!」パタパタ
魔族の子供「あ……行っちゃった……」
◇
―駐屯地
縛られた騎士たち「……」
縛られた部隊長マリー「……」
ムチムチラミア「生かしておくのはこれくらいで良いかしらぁ……?」
フラナ「ええ、良いわ。部隊長のマリー・セイントレア一人でも十分過ぎるくらいだしね」
竜人の女性「あー、王族なんだっけ?」
フラナ「ええ。人質としては最高のカードでしょ?」
竜人の女性「政治的な駆け引きはわかんねえ。フラナに任せるぜ」
フラナ「はいはい」
ムキムキオーク「王族ってことは、ロイヤルってことか!?」
フラナ「お前は何が言いたいのよ……」
ムキムキオーク「いやなに、この俺のムキムキ遺伝子をその女のロイヤル遺伝子とかけ合わせたいっていう提案なんだが……」
フラナ「王国の出方次第。今はまだダメ」
ムキムキオーク「くう、頼むぞ王国の外交……!!」
フラナ「入植者の奴らなら好きに使って良いわよ。王族や騎士ほどの価値はないから」
ムキムキオーク「俺はロイヤル遺伝子がいいの!!」
ムチムチラミア「駄々をこねる男ってキモいわぁ……」
*
マリー(ああ……どうして、こんなことに……)
マリー(……いいえ。わかっています……。魔族たちの反抗心を育てたのは……)
マリー(王国の、魔族を虐げる方針をどうにもできなかった私の……落ち度……)
マリー(私には……ここ魔族自治区を変えることのできる地位も、権力も、あったのに……)
マリー(精々、気休め程度に法整備を進めただけ……。しかも実際に取り締まる騎士たちは魔族に不利な裁定ばかりして……結局、何の意味もなかった……)
マリー(もっと他にも、できることはあったはずなのに……。私は結局、憂うばかりでそれ以上何もしなかった……。何もできなかった……)
マリー(今更後悔しても、手遅れ……。既に大勢の命が失われ……私自身もまた、人質になってしまった……)
マリー(この命が、魔族たちの外交カードとして使えるのなら……それが、最低限の贖罪になるのでしょうか……)
*
イリス「……」
ミスティ「……帰りましょう、イリス。私たちは十分戦ったわ」
ローガン「ああ、帰って休もう。クロシュくんたちもきっと待っている」
イリス「……うん」
ローガン「それではフラナ殿には私から伝えて――ん?」
ミスティ「ローガンさ――」
キラッ―
ローガン「――伏せろ!!!!」
イリス「え――」
ミスティ「あ――」
フラナ「――!!!」バッ
光「」キラッ―
カッ――
↓1コンマ 死の光
01 フラナ完全消滅
02 イリス死亡
03 ミスティ死亡
04-05 ローガン死亡
06-15 フラナ死亡
16-20 イリス重傷
21-25 ミスティ重傷
25-35 ローガン重傷
36-85 フラナ重傷
86-95 全員無事
96-00 ??
大きくえぐれた地面「」ゴゴゴゴゴ…
イリス「え……え!?」
ミスティ「な、に……が……」
ローガン「……はっ!! フラナ殿!!!」
両手を広げて仁王立ちするフラナ「――」シュゥゥゥ…
金髪碧眼の少年「…………」スタッ
フラナ「お……前、は……!!!」
竜人の女性「なん、で……生きてんだよ……!!!!」
フラナ「勇者ァァァァ!!!!」
勇者サイン?「……」スッ
サイン?の掌に収束する光「」ヴゥン…
イリス「あ……あの、光、は……」
ミスティ「……ま、また……来る、の……?」
ローガン「馬鹿、な……」
シュバッ
ドンッ
勇者サイン?「!」ヨロッ
クロシュ「……!」シュタッ
勇者サイン?「……影の……スライム……?」
クロシュ「……」ジリ
勇者サイン?「まあ、いいか……」スッ
クロシュの懐にいる妖精(ああああ馬鹿馬鹿馬鹿!!! なんで前に出ちゃうのこのポンコツスライムはあ〜〜!!!!)
サイン?の掌に収束していく光「」ヴゥン―
クロシュ「……!」ジリ
クロシュ(躱せない。防げない。どうにもならない)
クロシュ(でも……イリスさんたちが逃げ出す隙くらいなら、作れたと思う)
クロシュ(……どうせ、どうにもならないのなら……みんなのために、ここで終わったっていいや)
クロシュ(妖精さん、巻き込んじゃってごめんなさい)
クロシュ(……フメイちゃん……。一緒にいてあげられなくて……ごめんね……)
クロシュ(わたし……先に行くね……)
クロシュ(……集落のみんな……向こうに、いるかな……)
イリス「クロシュちゃん!!!!」
ミスティ「クロシュ!!!!」
ローガン「クロシュくん!!!」
カッ――
突然の業火に包まれる勇者サイン?「!!?」ゴオオオオッ!!!
「……ばか。なに、格好つけてるの……」スタスタ
クロシュ「え――」
フメイ「クロシュ……」
クロシュ「フメイ、ちゃ……」
アリシラ?「私もいるよお〜。魔力吸収〜〜!」ギュウウウン
業火に包まれている勇者サイン?「!!!」ギュウウン
イリス「え、え……!? あの子って……」
ローガン「人間形態のクロシュくんに似ているが――」
ミスティ「……フメイ。どうして、ここに……」
業火に包まれている勇者サイン?「……」シュバッ
霧散する業火「」シュウン
勇者サイン?「……お前たちは……」
フメイ「……クロシュは殺らせない。帰って」
アリシラ?「魔力はもう空っぽでしょ? 退いた方が身のためだよお〜?」
勇者サイン?「……」
勇者サイン?「……」ヒュンッ
アリシラ?「ふえ?」
超高速飛翔するナイフ「」ヒュオッ
縛られた部隊長マリー「え――」
↓1
01-95 マリー死亡
96-00 覚醒
ストンッ―
額にナイフが突き刺さったマリー「」
ドサッ…
勇者サイン?「……」シュバッ
光の残像「」ヒュンッ―
ミスティ「あ……」
フラナ「く、そ……! 勇者、め……!!!」ググッ
フラナ「――」バタッ
イリス「ふ、フラナさん……!!」
フメイ「……フメイたちも、もう行く」スッ
クロシュ「あ……フメイちゃん……!」
フメイ「……クロシュは、こんなとこいないで……もっと、平和なとこにいて……」
クロシュ「やだ……!! フメイちゃんが、一緒じゃなきゃ……!!」
フメイ「……。フメイは……人間を、許さない……。フメイやクロシュをいじめる奴らを、全部焼き尽くすまで……足を止めない……」
クロシュ「どうでもいい……! 人間も、魔族も……わたしたちをいじめる奴らなんてどうでもいいもん……!!」
フメイ「…………」
フメイ「……ごめん。全部終わったら……クロシュのとこに、帰るから……」
アリシラ?「クロシュちゃん、ごめんねえ……。クロシュちゃんのことを大切に思うフメイちゃんの気持ち、わかってあげてね……」
クロシュ「……」ジワッ
フメイ「……ごめん」
ボンッ
アリシラ?「あ、もう! それ速すぎて追いつけないからやめてよお〜」ドタドタ
*
イリス(フラナさんは意識を失い、危篤状態らしい……。みんなを守る為に全力であの光を防いだんだ……克服したとは言え、光は吸血鬼の弱点……。消滅していないのが奇跡のような状態なのだとか……)
イリス(革命軍はとりあえずの勝利を収めたけれど……フラナさんの意識がなく、部隊長のマリー・セイントレアも死亡していて、魔族自治区は混乱の様相を呈し始めていた……)
イリス(あの勇者のような少年が何だったのか……? どうして突然現れ、マリー・セイントレアを殺害して去っていったのか……? わからないことは山積みだ……)
イリス(私たちは……どうすれば良いのだろう……)
*
―駐屯地
竜人の女性「クソッ! 戦後処理って何すりゃいいんだ!? 全員ぶっ殺しゃいいのか!!?」
ムチムチラミア「落ち着いて……とにかく今は怪我人の手当をすべきよお……。革命軍にもかなりの被害が出てるわあ……」
ムキムキオーク「なんてことだ……俺のロイヤル遺伝子が……」ブツブツ
竜人の女性「うるせえ!! いつまでも死人のことを引きずってんじゃねえ!」ドカッ
ムキムキオーク「グワッ! でもよお……!! なんとかして生き返らせらんねえのかよお!? なんかこう、復活の呪文とかないのかよお!?」
竜人の女性「んなもんがあったら苦労しねえだろうが!!!」
イリス(復活の、呪文……? あ――)
↓1〜3多数決
1.マリーに反魂丹を使う(1つ消費)
2.使わない
イリス「あ――あります!! 呪文じゃないけど……復活の薬なら……」
ムキムキオーク「何!!?」
ミスティ「……いけるかしら。幸い死体はかなり完全な状態に近いし、劣化も腐敗も進んでない……。ただ……頭に刺さってるのよね……」
イリス「……う、うん。でもやるだけやってみようよ……!!」
ミスティ「まあ、そうね……。この人が生きている方が……きっと、いろいろ良いのは確かだし」
イリス「……じゃあ、使うよ」
ミスティ「ええ、お願い」
ムキムキオーク「た、頼むぞ……!!」
☆イリスが所持していた反魂丹を1つ消費します
↓1
01-50 マリー、蘇生するも脳のダメージにより幼児退行
51-00 マリー、普通に蘇生
☆クリティカルボーナス 事態が少し良い方へ向かいます
マリー「…………あ」パチッ
イリス「!! あの……大丈夫ですか!? 自分のこととか、わかりますか!?」
マリー「……わ、たし……頭に、何かが当たって……。ええと……マリー・セイントレア……セイントレア王国騎士団魔族自治区駐屯地の部隊長、です……」
ミスティ「……意識もはっきりしているし、記憶も大丈夫そうね。良かった……」
ムキムキオーク「ウオオオオオ!!! 良かったァァァァ!!!」オンオン
マリー「え、ええと……これは、どういう状況で……」
ローガン「うむ……それでは私から説明させていただこう……」
*
マリー「……なるほど。私は、あの勇者に似た少年に殺されて……今、あなたがたの手によって蘇生を果たしたということなのですね……」
イリス「はい……。その……あなたの、捕虜という立場は変わらないのですけれど……」
ローガン「死んでいた方がマシだった、ということになる可能性もある。そうなった場合は申し訳ないのだが……」
マリー「……魔族自治区の反乱を招いたのは私の責任です。いかなる処遇も受け入れる覚悟はできております」
ムキムキオーク「おお……ますます俺好みの良い女だ……!」
竜人の女性「お前は黙ってろ。だがまあ、覚悟ができてるのは感心だな」
イリス「あ、あの……!! 私……この人を酷い目に遭わせる為に、生き返らせたんじゃありません……!」
竜人の女性「あ?」
イリス「……っ、ひ、人質にするのは……良いとしても……! 必要以上に、苦しい思いをさせたりとか……強姦、したりとかは……」
ムチムチラミア「そうねえ……。私もその意見に賛成よお」
イリス「!」
竜人の女性「ほう……理由を聽かせてもらおう」
ムチムチラミア「みんなあんまり知らないけど、この人もこの人なりに法整備とかいろいろ頑張ってくれてたのよお? 組織全体が腐ってたせいで殆ど意味なかったんだけどねえ……。そんな人を不要に痛めつけるのは、ラミア族の誇りに反するわぁ……」
竜人の女性「誇り、か……」
ムキムキオーク「……へへっ。誇りを持ち出されると弱っちまうな……」
竜人の女性「……そうだな。オレたちは……少々、誇りってやつを見失っていたかもしれねえ……」
ムチムチラミア「仕方ないわよお。みんなが、王国の人間にされたことを思えば……」
竜人の女性「だがオレたちは今、その王国の人間と同類の畜生に両足を突っ込んじまっている……。しかもフラナがノビている今、末端の奴らは歯止めが効かねえ……」
ムキムキオーク「……俺たちが見せなきゃなんねえってわけか。手本を!」
竜人の女性「そういうこった。オレたちはガキ共に見せても恥ずかしくない生き方をしなっきゃならねえ」
マリー「……」
竜人の女性「……まあ、その、なんだ。そういうわけだから……牢屋暮らしは変えられねえが、お前も含め人質の処遇はできる限り良いものにしようと思う。それで良いな?」
マリー「はい……ありがとうございます、魔族の皆様……」ペコッ
竜人の女性「フラナの弟子の……イリスか。礼を言うぞ。お前のお陰で、オレたちは最低の畜生に堕ちずに済んだかもしれねえ」
イリス「あ、え、えと……!」
ミスティ「……どういたしまして、よ」ニコッ
イリス「……ど、どういたしまして……!」
ローガン「フッ……」
◆
―翌日
宿
クロシュ「……」ボー
妖精「元気出しなって。革命に成功して、人質もがっぽりで、フラナも今朝目が覚めたんだからさ。オマケにイリスの提言で人質の扱いも良くなったって言うし、良いことづくめじゃん」
クロシュ「でも……フメイちゃん………」
妖精「全部終わったら帰って来るって言ってたし、それまで待ったら良いんじゃない?」
クロシュ「……でも、危ないことしてる……。殺されちゃうかも……」
妖精「そればかりはどうしようもないよ。フメイ自身が選んだ道だもん」
クロシュ「…………」
妖精「……まあ、仲間も増えてたみたいだし、多分大丈夫じゃない? 勇者の魔力を一気に奪える魔法なんて規格外も良いとこだよ」
クロシュ「アリシラさん……」
妖精「あの集落の生き残りなんでしょ? それなら安心じゃん」
クロシュ「……でも……なんか、様子が変だった……」
妖精「……まあ、うん」
ガチャッ
包帯ぐるぐる巻きのフラナ「お疲れ様、二人共。見舞いに来てやったわよ」スタスタ
クロシュ「フラナさん……」
妖精「いや、どう身てもお見舞いされるべきなのはあなたでしょ……」
フラナ「大したことないわ。全身が光焼けでヒリヒリするだけだし」
妖精「そ、そう……」
フラナ「それで、とりあえずあなたたちの今後のことを聞こうと思ってね。今復興を手伝ってくれてるイリスたちにはもう聞いたんだけど、あなたたちにはまだ聞いてないから」
妖精「あいつらから聞いたんならそれで良いでしょ。仮にも同一パーティなんだから」
フラナ「……イリスたちは人間だけど、あなたたちは人間じゃないでしょ? だから、一応聞いておくべきだと思ったのよ」
妖精「……」
フラナ「この国に定住するか否か、ってね」
クロシュ「……」
フラナ「あなたたちなら歓迎するし、今回の働きを評価して土地と家屋と当面の生活資金を提供する用意はあるわ。それにスライムと妖精であるあなたたちにとって、きっとここはこの大陸のどの国よりも住心地の良い国になると思う。まあ、王国とかあの勇者モドキとか、いろいろ不確定要素がないとは言えないのが悔しいところだけど……」
クロシュ「……」
フラナ「どうする? ああ、別に急かしたいわけじゃないからゆっくり考えてもらってもいいけど」
妖精「どうするの?」
クロシュ「……」
※今はまだ定住を選択できません
クロシュ「えっと……わたし……フメイちゃんを、捜しにいきたいから……」
フラナ「そう、わかったわ。でもあなたたちならいつでも歓迎するから、気が変わったらいつでも私のところに気なさいね。それとフメイ捜しの方は当初の約束通り、ここに住んでも住まなくても手伝ってあげる予定だったからそこは安心して」
クロシュ「……ありがと、ございます……」ペコリ
フラナ「いいのよ。昨日ここに来たんでしょ? ならきっとあなたの近くにいるわ。早く見つけてあげましょう」
クロシュ「うん……」
◆
―少し前
入植街
ワイワイ ガヤガヤ
竜人の女性「ここは無傷だな。再利用できそうなもんはどんどん再利用するぞ」
ムキムキオーク「うす!」
ムチムチラミア「力仕事は苦手よお……」
イリス「石材は任せてください。私の地魔法で解体します……!」
ローガン「鋼材は私に任せたまえ」
ミスティ「氷材は……ないわね。かき氷でも作っていようかしら……」
竜人の女性「あー……お前たちは無理に手伝わなくて良いんだぜ。人間なんだし……」
イリス「でも、私たちは革命軍の一員ですから。魔族国を復興する為に立ち上がった気持ちは、ずっと変わりません」
ミスティ「イリスリーダーの指示に従うだけよ」
ローガン「右に同じくだ」
イリス「え、私リーダーなの!?」
竜人の女性「フッ、そうか……。それならまあ、できる範囲で頼むぜ」
包帯ぐるぐる巻きのフラナ「ここにいたのね。探したわ」スタスタ
イリス「フラナさん!?」
竜人の女性「いや、寝てろよ! 吸血鬼っつーかミイラみたいだぞお前!」
フラナ「この大事な時に寝てる暇なんかないでしょ。まずはあなたたち、イリス、ミスティ、ローガンの今後についてよ」
ミスティ「私たちの……?」
フラナ「ええ。今回の働きを評価して、あなたたちは人間だけどここ魔族国の永住権を与えても良いと思っているの。住む場所も土地も当面の資金も提供できるわ」
ミスティ「……」
フラナ「ただ、まあ……あなたたちは人間だから、旅人としての滞在ならともかく、今のこの国に定住するとなるといろいろ大変なのは間違いないわ。多くの魔族たちの人間憎悪は根深いし、謂れなき攻撃に晒されることもあると思う。だから正直、あまりお勧めはできないのよ……。私としては歓迎なんだけどね」
ローガン「この少女二人だけでなく、私のような不審者にまでそのような計らいをしてくれるとは、身に余る栄誉だ。気持ちだけで十分ありがたい」
ミスティ「ええ……。あなたにそう言ってもらえるだけで、ここで戦った甲斐があったと思えるわ……」
イリス「はい……! 私は未だ修行中の身なのでここに定住はできませんが、フラナさんにそう言っていただけると凄く嬉しいです……!」
フラナ「ふふ。気持ちの良い断り方をしてくれるわね、あなたたちは。もし人と魔族の関係が今よりももっと良くなったら、改めてここに住むことを選んでも良いからね。あなたたちなら歓迎するわ」
竜人の女性「おう! 別に住まなくても良いからいつでも遊びに来いよな!」
ムキムキオーク「へへ、かわいいお嬢さんはいつでもウェルカムだ! 鋼のおっさんもな!」
ムチムチラミア「うふふ、あなたたちの活躍は子供たちにしっかり聽かせてあげるわあ……」
◆
―旧市街 公園
聖女「皆さんこんにちは……」ペコリ
淫魔の幼女「おねーちゃん……」
魔族国スライム「……」モニョ
魔族の子供「やっぱり、ちょっと元気ないね……」
ハーピィ記者「号外〜! 号外だよ〜!!」バサッバサッ
風雪新聞「」バササッ
聖女「新聞ですか……。昨日のこと……目を通しておかないと……」ペラ
風雪新聞「魔族大革命!!!悪の王国を討ち滅ぼす正義の革命軍!!!!」ペラ
風雪新聞「かわいい姿に正義の心!!!黒スライムのクロシュ氏、間一髪で聖女を救う!!!」ペラ
風雪新聞「人でありながら悪を討つ!!!ダークヒーローイリス!!!!!!」ペラ
風雪新聞「ダークヒーローイリス、人質の扱いに提言!!!我らが竜人姉貴、誇りを取り戻す!!!!」ペラ
風雪新聞「革命軍総司令フラナ氏、突然降り注いだ天光により全身に全治一ヶ月の光傷!!!!!」ペラ
聖女「こ、これ本人らに許可は取っているのでしょうか……。少なくとも私は許可を出していないのですが……」ペラッ
風雪新聞「ダークヒーローイリス、人質の扱いに提言!!!我らが竜人姉貴、誇りを取り戻す!!!!」ペラ
聖女「……! 王国の人質や捕虜の扱いを全面的に改善……健康で文化的な最低限度の生活を保証し、無用な暴力を禁ずる……!?」
聖女「こ、これは……」
ハーピィ記者「本当ですよ、ロイエ教の聖女さん」バサッ
聖女「きゃっ! き、記者さん!?」
ハーピィ記者「普段は誇張気味の記事を書いてますが、それは事実です。竜人の姐さんも、ガキ共に見せられない振る舞いはするなと魔族国全域にお達ししましてね」
聖女「……!」
ハーピィ記者「ふふ、案外良い方に向かうかもですよ。あんまり平和になり過ぎても記者的にはつまんないですけどね」
聖女「……」
ハーピィ記者「ほら、笑って笑って。子供たちのお姉さんであるあなたが沈んだ顔をしてちゃ、みんな暗くなっちゃいますから」
聖女「あ……は、はい……」ニコッ
ハーピィ記者「オッケーオッケー! それじゃあ私は次の現場に急行しますんで、また炊き出しよろしく!」バサッバサッ
聖女「あ……い、いってらっしゃーい……!」
淫魔の幼女「いってらっしゃーい!」
魔族の子供「いってらっしゃーい!」
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
聖女「皆さん……!」
淫魔の幼女「おねーちゃん、元気になった……?」
魔族の子供「えへへ、あのハーピィさんの新聞面白いもんね」
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
聖女「ふふ……はい」
◆
―牢屋
旅行者の少女A「えええ!? お姉さん、マリー・セイントレア!!?」
旅行者の少女B「やっば、超有名人っつーか王族じゃん!!!!!!」
旅行者の少女A「さ、サインとかもらっていい系!?」
旅行者の少女B「てかあれっしょ! ドゲザ! ドゲザしなきゃ!!」
旅行者の少女A、B「ははーっ!!」ドゲザッ
マリー「い、いや……今はただの人質です。一般の方と一緒の部屋になるとは思っていませんでしたけど……」
旅行者の少女A「てことは、あたしたち王族と同格……ってコト!!?」
旅行者の少女B「やば!!! ウチら実質お姫様じゃん!!!」
旅行者の少女A「も、もしかして……マリーちゃん、みたいに呼んじゃっても良いとか?」
マリー「えっ……」
旅行者の少女B「や、それはまずいっしょ……! フケイザイだよフケイザイ!」
マリー「い、いえ……も、もう一回、お願いします」
旅行者の少女A「へ? ま、マリーちゃん?」
マリー「!!」
旅行者の少女B「マリーちゃん!」
マリー「!!!」
マリー(な、なんでしょう……。こんな風に呼ばれるのは、初めてで……)
マリー(私は……ずっと、憧れていたのかもしれません……)
マリー(みんなと、仲良くしたかったのに……王族だからって、みんな一歩引いて……)
マリー(……魔族なら、って思っても……王族だから、余計に嫌われるばかりで……)
マリー(でも、今なら……。ただの捕虜のマリーになった、今なら……)
マリー(誰かと……仲良く、なれるのかな……?)
◆
クロシュ(それから……王国と新生魔族国は、いろいろと難しいやり取りを繰り返しているみたい……)
クロシュ(イリスさんが助けたはずのマリーさんが王国で死んだことになっているとか、本人が公式の場に人質として登場して王国内が大変なことになったりとか、いろいろ騒動はあるみたいだけど……政治のことは、よくわかんない……)
クロシュ(そして王国の騎士団に喧嘩を売ったわたしたちの罪は、ここ最近のゴタゴタで多分有耶無耶になった可能性が高いとかなんとか……)
クロシュ(とりあえず、安心して国の外に出ていくことはできそう……)
クロシュ(フメイちゃん……)
◆
―数日後
新生魔族国 表通り
ワイワイ ガヤガヤ ダークヒーローイリス!!
包帯ぐるぐる巻きのフラナ「もう行っちゃうのね……」
イリス「はい……! 今までありがとうございました……!」ペコッ
クロシュ「ありがとう、ございました」ペコリ
妖精「魔族国がかつての栄光を取り戻せるよう陰ながら祈ってるよ」
ミスティ「……餞別って……本当に、こんなに良いの……?」
竜人の女性「おうよ! お前たち人間は体が弱ェ、それで美味いもん食ってしっかり肉を付けな!」
ムチムチラミア「こらぁ、女の子にお肉の話は厳禁よぉ……」
ムキムキオーク「ラミアはお肉付け過ぎだろ! 俺はもっとほっそりした体型の方が」
ベギンッ
地に伏したムキムキオーク「」シュウウウウ…
イリス「あ、あはは……美味しいもの、いっぱい食べますね!」
ローガン「うむ……。ありがたく頂戴しよう。このパーティには育ち盛りが三人もいるからな」
ミスティ「……そうね。私も……少しは、脂肪を付けようかしら……」
☆お金をいっぱいもらいました
☆魔族国永久旅券(特定の国・地域では身分証明書としても使えます)を人数分もらいました
*
聖女「はあ、はあ……! クロシュさん!」タッタッタッ
淫魔の幼女「クロシュちゃーん!」タタタッ
魔族の子供「水臭いよー!」タタタッ
魔族国スライム「〜〜!」モニョニョ
妖精「あれは……聖女と、子供たちか」
聖女「はあ、はあ……。もう行ってしまわれるのですね……」
クロシュ「うん……」
淫魔の幼女「ずっとここにいれば良いのに……」
クロシュ「えと……」
聖女「聞きました……。大切なお友達を探しているのだとか……」
淫魔の幼女「えっ、そうだったの!?」
クロシュ「……うん」
魔族の子供「そ、そうだったんだ……。全然知らなかった……」
魔族国スライム「〜〜」モニョ
聖女「……クロシュさんが、一日も早くお友達を見つけられることをお祈りいたします……。どうか、ご無事で……」
クロシュ「ん……ありがと……」
聖女「そして……妖精さん」
妖精「え、私?」
聖女「私は……やはり、命は苦しめ合うばかりのものではないと、信じています」
妖精「……」
聖女「妖精さんの言い分ももっともです。しかし……ダークヒーローイリスの活躍で、魔族の方々の心証は少しづつ変化しつつあります……。苦しめ合うだけでない……互いに許し合い、憎しみを断ち切ろうとする、慈しみの心へと……」
妖精「……まあ、一時的にはそういうこともあるかもね」
聖女「私は……私たちは、これを一時的なもので終わらせはしません……! 必ず、この魔族国を、人と魔族が共に支え合い、助け合って暮らす国へと変えていってみせます……!!」
妖精「……そう」
聖女「だからいつか……またここに、来てくださいね。妖精さん自身の目で、心で、本当に変わったかどうか見届けてください。お願いします」ペコリ
妖精「まあ……いいけどさ……」
クロシュ「……わたしも……いい……?」
聖女「もちろんです……! クロシュさんも、是非いつかいらしてくださいね……! 待っています……!!」
淫魔の幼女「クロシュちゃんのこと、ずっと待ってるね……!」
魔族の子供「友達の子も、一緒に連れてきてね……!」
魔族国スライム「!」モニョモニョ
クロシュ「うん……!」
*
―新生魔族国 門
包帯ぐるぐる巻きのフラナ「気をつけていってくるのよー!!」
竜人の女性「死ぬんじゃねえぞー!!」
ムキムキオーク「また来いよー!!」
ムチムチラミア「元気でねぇ〜!!」
聖女「神のご加護を〜!!」
淫魔の幼女「ずっと待ってるからね〜〜!!」
魔族の子供「怪我しないでねーー!!」
魔族国スライム「〜〜!!」モニョモニョ!!
イリス「みんなも元気で〜〜!!」
ミスティ「さようなら……!」
ローガン「達者で……!」
妖精「……魔族国に、精霊の加護がありますよう」
クロシュ「……ありがと……!」
強化ソリ「」シャーッ……
――魔族革命編 完
クリアボーナス
↓1
01-60 運命賽(致命的な運命を辿った時、一度だけ直前の判定を振り直せる。一度使うとなくなる)
61-90 ↑+マジカルブラッドワイン
91-00 ↑+反魂丹
というわけでクリアボーナスが欲張りセットに決定したところで本日はここまでです。魔族革命編、クリアおめでとうございます
いろいろと胸糞の悪いシーンの多い魔族国でしたが、なんとか後味の悪くなさそうな結末に着地したようで良かったです。酷い場合は炎上する魔族自治区から逃げるように脱出して次の国へ向かうルートなども想定されていたので、かなり良い感じに終わることができて本当に良かったです
次にどこへ向かうのかは、次の更新の時に選択肢などを提示しようかと思っております。もしかしたら国や地域、敵対ネームドキャラクター、汎用クリーチャーの募集などを平日にするかもしれません。その時はよろしくお願いします
それでは本日もありがとうございました。次回の本編更新も恐らく土日になるかと思います。よろしくお願いいたします
マリー様は本来あっさり死ぬか、生き残っても魔族たちにひどいことをされるかわいそうな運命を辿るはずでした
しかし反魂丹、イリスさんの精神性、復活時のクリティカル等、様々な要因が重なってかわいそうなことにはなりませんでした
多くの魔族にとって人間とは悪そのものであるため、人間でありながら人間を討つ決意をしたイリスはやや不可解な存在に映ったかもしれません。しかしそこで登場した『ダークヒーロー』という概念は魔族の子供たちの心を鷲掴みにしました
悪たる人の血を宿しながら、愛と正義に殉ずる哀しみの戦士イリス・プラネット。同胞を殺す度、心奥で流す血の涙は誰にも見せず。弱音も嗚咽も呑み込んで、彼女は悪を討つのでしょう――……
魔族国永久旅券を持っている限り、魔族国にはいつでも自由に出入りできます。特に集落を失って間もないクロシュにとって、帰る場所があるというのはとても心強いことかと思います
魔族国はこれから、少しづつ変わろうとしています。その変化の灯火がこれからどうなるかは、フラナや聖女や、魔族国に生きる者たちにかかっています。妖精の悲観した通りになるか、聖女の夢見る理想に近付けるか――。魔族国を出て再び旅路につくクロシュたちも、その先行きを案じていることでしょう
イリスさんは元気で人当たりが良く感情も豊かなので、自然と人々の中心になりやすいのかもしれません
なお我らが主人公クロシュ氏は良くも悪くも控えめで感情表現も得意ではないので、目立ちにくい方の子かもしれません……
アリシラさんは……どうしてしまったのでしょうか。ぼんやりスライムのクロシュちゃんにすら『様子が変』と言われてしまうほど変だったようです
フメイちゃんも淫魔幼女ちゃんも、クロシュちゃんのことが好きなようです。クロシュ氏は控えめなようでいて幼女たらしの悪いスライムなのかもしれません
このスレに登場するスライムの容姿については、基本的にはデロデロのゲル状粘体のような姿を想定しております。幼いスライムは体の再構成能力が未熟なため、発声器官を上手く作ることができず、モニョモニョといういわゆるスライム語しか話せません。ある程度以上の力を持ったスライムは自分の形状を自由に再構成できるため、発声器官を作って人語を話すことができるのです
クロシュちゃんも今はまだ力のない幼いスライムなので、気を抜くとスライムの姿になってモニョモニョ言い始めます。クロシュちゃんが通常のスライムを逸脱した高度な擬態能力を有しているのは、反映魔法という特殊な魔法のお陰なのです
というわけで、国や地域を募集したいと思います。その中から今のクロシュたちが目指したり滞在したりするのに丁度良さそうなものをピックアップして次の目的地候補とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします
↓1〜 23:59:59まで
〈国名〉
概要:
産業:
情勢:
■参考:
〈魔族国〉
概要:
王国領北西にある独立都市国家。知性ある魔族たちによって統治されている。
多様な種の魔族が協調して暮らしており、生活水準は高め。
産業:
魔法、手工業、性産業、服飾が盛んだが、現在は国内での自給的な生産・消費に留まっている。
特に蜘蛛絹を用いた衣料品が人気だったが、革命後は輸出量が大幅に絞られており、国外における蜘蛛絹需要は上昇傾向にある。
情勢:
先日の魔族革命により駐屯していた王国騎士が壊滅し、主権を取り戻した。
未だ革命直後の混乱が残っているが、治安は革命以前より大きく向上している。
現在は王国との緊張状態が継続している為、出入国には厳格な審査を経る必要がある。
〈オノゴロ諸島〉
概要:
大陸から遥か東の海域にある島国。代々続く姫巫女の血筋によって統治されている。
大陸とは異なる独自の文化を発展させており、その独特の雰囲気から旅行者の間で密かに人気がある。
忍術や妖術といったこの地域特有の魔法(?)もあり、これの習得や研究を目当てに訪れる者もいる。
また、他の国とは異なる進化を遂げた魔の者〝妖怪〟が存在する。
産業:
温泉、忍術、妖術、鉄鋼業(特に刀鍛冶)が盛ん。
刀剣の品質は世界最高水準と言われており、それを求めてここを訪れる剣客も少なくない。
情勢:
近年、国の中心に聳える霊峰の神域が荒廃し、その影響で闇に属す者どもが勢力を伸ばしつつある。
当代の姫巫女は原因の調査や闇の勢力への対処に尽力しているが、今のところ芳しい成果は挙がっていない。
未だ成果を挙げられない姫巫女の求心力も低下しつつあり、霊峰のみならず人心も荒廃し始めている。
〈セクリエ・ロイエ〉
概要:全世界に信者を抱えるロイエ教の総本山。定住しているのは高位の神官を中心にそこまで多くなく、国内人口の大半は巡礼の一時滞在者。魔族の数は人口の1割ほどだが表立った対立はなく、同じ神を信仰している(魔族は力ある種族、高貴な種族が多い事も関係している)
産業:神の奇跡を込めたお守り。ちょっとした幸運を呼ぶものから死者を呼び戻す、世の理に触れるものまで。
外貨を得る流れは他に建築物の観光くらいで、あとはほぼ寄付で賄われている。
情勢:混乱を増す世界情勢に対し、今こそロイエ神の名の下に世界を一つにするべしという急進派が台頭し、穏健派の現教皇と裏で対立している
〈港湾都市ウォーターポート〉
概要:
王国南西部の海に面した大きな港町。王国内外をつなぐ主要な玄関口のひとつ
いつも多くの人で賑わい、外国の物や文化が入ってくるせいか、どことなく異国情緒が感じられる
産業:
王国の輸出入の要となっているほか、漁業も盛ん
ここを中継地点として利用する観光客や旅人も多いため、そういった人たちを狙った珍しい土産物屋や旅人向けの店も多い
世界中から多様なものが集まってくるため少し変わった品揃えが見られる
情勢:
噂では、近海にこの港を利用する船を狙った海賊が出没するようになり
それを恐れて輸送船も漁船も本数が減っているらしい
リテン・ヘイブン
概要:
王国から北の海に存在する島 かつては王国の犯罪者の流刑地であったが、いつしか犯罪者達に占拠されて半ば独立国家のようになった過去がある 現在でも何らかの事情で故郷にいられなくなった犯罪者者や逃亡者や亡命者が最後の逃げ場所とばかりに種族問わず集まってきている歓楽街
産業:
場所柄だけに他の地域では非合法な商品・あるいは曰く付きな商品が集まり、普通の賭博を楽しめる表カジノ・時には命を賭け合う過激な賭博を行ったり見学できる裏カジノ、どんな性癖持ちも満足できる多種多様な娼館等といった他の地域では
中々楽しめない産業で外貨を稼いでいる また各地から特殊な事情を持つ人々が集まってる関係上ガセ情報から国家機密レベルの情報まで多種多様の情報も売り買いされている
もちろんそういった怪しい部分に関わらないで小規模な農業や漁業でひっそりと自給自足して生活している人たちや普通の飲食店や宿屋を経営している人達もいる
情勢:
ここを追われたら他に逃げ場所が無い者が多く集まっているためか治安は意外と安定している しかしそれは後ろ盾の無い一般人レベルの話で上位の財力を持っている者達は独自の私兵を用意して派閥を形成し緊張状態が続いており、
また観光客に扮したスパイや暗殺者が紛れ込んでおり、人や情報をめぐって密かに争いあっている
機械都市テンペスター
概要:王国の南に位置する都市、機械産業が発展しており工場が数多く立ち並び、日夜様々な兵器や武器が開発されている。
産業:ここで作られる機械仕掛けの武器や兵器の性能は高く、様々な国が国防のためにここの製品を求めている。
情勢:腕があれば種族問わず活躍できるため、治安は比較的良いが、武器を横流しする闇市場も少なからず存在する。
温泉町トウゲン
概要:山奥にある温泉町。そこかしこから温泉が沸き、観光地として人気。
産業:温泉は勿論のこと、宿や美味い料理や酒も人気。
情勢:治安はいいが、最近温泉の出が悪くなっており、魔物の仕業だと噂されている。
芸術都市ミュージア
概要:王国西部に位置する都市。芸術、及び芸能活動が盛んで、美術館や劇場などが至る所に立ち並んでいる。
芸術家や役者、歌手などを志す者にとっては憧れの街であり、この街で成功した者たちは皆、巨万の富と名声を手にしている。
産業:最近では少年少女たちが歌って踊るステージが人気を集めており、彼らまたは彼女らは"アイドル"と呼ばれている。
人気のアイドルともなれば熱狂的ファンも多く、ステージを見に遠方から駆けつけるファンもいるほどである。
情勢:今までは平和そのものだったが、アイドル達の人気に伴い様々な迷惑行為をする過激なファンが増えているという。
そのため、最近ではそういう連中の対処を冒険者に頼む事も多いようだ。
〈国名〉大魔女帝国
概要:空中機動要塞上にある独立都市国家。大魔女と呼ばれる強大な独裁者によって支配されている。大魔女の魔翌力によって空中機動を含むインフラの全てが運営されている。国民は大魔女のファンであり、大魔女は国民のことを愛しているアイドル国家。洗脳国家ともいう。入国条件は各国に置かれた大使館に申請した上で大魔女への愛を語る面接にクリアすること、要塞が迎えに来てくれる。割りとガバガバ入国できる。
産業:エンタメ産業が発達しているが、作品は大魔女が主役の映画や漫画、オペラ、小説など偏りが見られる。また、大魔女の教えにより魔法アイテム産業が盛ん。
情勢:長命の大魔女による独裁のため、政治は非常に安定しているが、他国の日照権を奪うわ国民という名の信者が布教してくるわ迷惑国家の誹りを受ける。大魔女暗殺未遂など事件の大半は専ら外国勢力によるもの。
〈オリシン王国〉
概要:大陸北東部に存在する国。世界で最も長い歴史を持つ最古の国の一つであり、各地に古代の遺跡やダンジョンが存在している。
また一方で「本の国」とも呼ばれ、首都に存在する世界最大の大図書館をはじめ、見られない本が無いと言えるほど、古今東西の本が閲覧・購入が可能である
〈産業〉
基本的な産業は自国で補う自給率の高さが特徴だが特に、遺跡の観光や欲しい本を目当てに集まる観光客や遺跡の探索者を相手にした商業が盛んであり、たまに遺跡から発掘された掘り出し物がオークションで取引されていたりする。
〈情勢〉
政治的には最近国王が幼い兄弟姉妹を残して亡くなり、権力争いが起こっている。 なお、当の兄弟姉妹同士は仲良しでお忍びで街に遊びに繰り出していたりする。
〈ユーシリア帝国〉
概要:王国の東にある帝国
遥か昔に死闘の末に魔王を討伐した英雄が初代皇帝となり、建国したと言われている
初代皇帝が魔王討伐時の仲間の一部が、筆頭貴族となり、その内のいくつかの家は現在まで存続しており、魔王復活に備え先祖の武具や魔法を代々伝承し続けているとされている
しかし現在は問題をいくつも抱えておりそれなり程度の国の一つとなっており、国際的な発言力も低下中
産業:国内に肥沃地帯や港を抱えており、近海に優良な漁場も抱えている
そのため、食料の輸出や交易が盛ん
現皇帝が各種産業への魔法技術の活用を推進しており、その分野で芽が出つつある
長い歴史を持つため、古い遺跡や文化遺産、書物・文物があり観光業や留学生受け入れも盛んだったが、国内情勢の悪化により減退しつつある
情勢:十数年前までは、圧倒的な武勇を誇り建国の英雄の生まれ変わりとまで言われ、国民から絶大な人気を誇っていた前皇帝のもと、安定した情勢を保っていた
しかし遠征中に魔王復活を叫ぶ魔族達の襲撃により殺害
ほぼ同じくして帝位継承第一位が病により倒れ、魔族の呪いと噂されるようになる
それにより、後継者としての教育を受けて来なかった現在の皇帝が急遽即位
即位してすぐに、魔族排斥を訴える国民達に対して軽はずみに魔族の排斥を止めるよう発したことで国民の反発を招く
そして帝国内の混乱を見た近隣各国が帝国の肥沃な土地と財産を求め侵攻、帝国はかなりの領土を失う
この一連の流れにより、現皇帝の国民からの信頼は完全に失墜
皇帝の座を欲して、魔族と手を組んで偉大な先帝と肉親を手に掛けたとの噂まで流れ、帝国史上最低の愚帝とまで言われるようになる
一方で、現在の情勢は先帝の無理な外征と、国内の発展や後継者教育を怠ったことが主要因とし、現皇帝はそのツケを支払っているだけと見る者
現皇帝は配下の才覚を的確に見分け、公正明大な国政を行い、先帝よりも優れていると見る者もいる
皇帝の人となりを知る近しい人からは、彼を強く信頼するものが多く見受けられる
〈テラヌス・ウルス〉
概要:荒涼とした砂漠地帯に位置する国家。多様な部族が共生しており、各部族の首長による議会制をとっている。
魔族に対しては寛容で部族も存在するが彼らは少数派で影響力は低い。
産業:良質な魔石の鉱脈が存在し、それらを用いた魔道具や魔術と過酷な環境に鍛えられた屈強な傭兵で外貨を得ている。
国内には傭兵を鍛えるための錬兵場も存在し訓練を受けることもできる。
また性には開放的で風俗業も盛ん。
情勢:
各国に対し中立を宣言しているが近年は干ばつによる水不足が深刻化しており、水の安定供給のために中立を捨てるべきという派閥が台頭しはじめている。
国内の治安は現在良好だが、中立を捨てるなら人間と魔族の間で対立が発生する可能性はある。
〈緑の国フォレスティナ〉
概要:王国のある大陸の巨大森林地帯にある、多種多様な種族が暮らす国
人間や亜人、妖精や魔族、精霊やはてはドラゴンまで、様々な存在がいる
四年に一度の選挙で代表者を選び政治を取り仕切る
森の中心には世界樹と呼ばれるてっぺんが見えないほどの巨大な木がある
一説には世界樹の上は天界に、根は星の中心に繋がっているとされる
世界樹近辺は聖域とされ、濃密かつ清浄な魔翌力が満ち溢れているが、世界樹の結界により一部の人物しか出入りできないようになっている
産業:森の恵みによる食料による自給自足が主
一部で食料や質の高い工芸品を輸出し、対価で森では手に入らない物資を輸入している
情勢:意外にも外からの来訪者にはそれほど排他的でもなく、国外から訪れる人もそれなりにいる
ただし森を荒らすと精霊達にポイッと追い出されるらしい
魔翌力が濃密で精霊と触れる機会も多いため、魔法の修行には最適
四年に一度の選挙ではいろんな種族の者たちが様々な手段で得意分野をアピールする、一種の大きな祭と化しており、それを楽しみにしてる人達も大勢いる
皆さま、たくさんの案をありがとうございます。全ての場所を登場させられるかはわかりませんが、是非とも使わせていただきたいと思います
また事後的な通告となってしまい申し訳ないのですが、世界観や設定に合わせて内容を若干程度変更させていただくことがあります。ご了承くださいませ(ダメな場合は早めに連絡をお願いします)
敵対キャラクターや汎用クリーチャーの募集もしようかと思っていましたが、そちらは展開に沿って都度募集をした方が良さそうな気がしたので今回は見送りといたします
本編の更新は予定通り土日に行いたいと思います。よろしくお願いいたします
◆
―数日前 夜
新生魔族国 宿 ロビー
ローガン「魔族国を出たらこのパーティはどこへ行く予定なのだ?」
イリス「あー、ええと……実はまだ、決まっていないというか……」
ミスティ「……このパーティ、明確な目的地はないのよね。強いて言うなら、捜し人のいるクロシュだけど……」
妖精「クロシュの捜し人もどこにいるかわかってるわけじゃないしねえ。まあ、適当に近辺を巡って聞き込みでもすれば良いんじゃない?」
クロシュ「……えと……ごめんなさい……」
イリス「いやいやクロシュちゃんが謝ることなんて何もないって! 元からそういうつもりのパーティだもん! ね?」
ミスティ「ええ……。私も目下の目的があるわけじゃないから、付き合ってあげるわ……」
ローガン「うむ……。私も行く宛のない流浪の身だ。正式にパーティ入りした今、異論などあるはずもない」
妖精「だってさ。良かったねクロシュ」
クロシュ「……ありがと、ございます……」ペコ
ミスティ「いいのよ……」ナデナデ
ローガン「うむ……」
*
イリス「……とは言っても、聞き込みだけじゃ埒が明かないんじゃないかなあ……」
ミスティ「地道にやっていたら何年もかかってしまうかもしれないわね……。フメイ自身も恐らく定住はしないでしょうし……」
ローガン「そのフメイ殿が人間の絶滅を望む炎魔法の使い手だというのなら、この先何らかの過激な行動を起こすかもしれぬ。その後を追うというのはどうか」
イリス「で、できれば何かを起こす前にお話したいです、私は……」
妖精「それなら占い師とかを頼ってみるのはどう?」
ミスティ「占い……。妖精はアテがあるの?」
妖精「ないわけじゃないけど……私の知ってる奴は屑だからやめといた方が良いよ。あなたたちは?」
イリス「うーん……運命に関わる属性は希少中の希少らしいし……」
ミスティ「私も知らないわ……。ローガンさんは?」
ローガン「私もわからぬ……」
イリス「ううーん……あ!! 大魔女とか、どうかな!?」
妖精「ええ……」
ミスティ「だ、大魔女って……」
ローガン「もしや、大魔女帝国の……」
イリス「そ、そう! 大魔女はあらゆる属性に精通してるって話だし、占術魔法も使えるんじゃないかな……!?」
ミスティ「……入国する為に各国の大使館を巡るの? 今から?」
イリス「あっ」
ローガン「トウゲン帝国やオノゴロ諸島といった大陸外の国の大使館まで巡らねばならんとなると……今から目指すのは現実的ではないな……」
妖精「……占いの線は厳しそうだね、こりゃ」
窓「」ガラッ
ハーピィ記者「どうもこんばんは!!」ヌッ
妖精「うわああ!!」コテッ
クロシュ「!」ビクッ
ミスティ「い、いきなり何!?」
イリス「あ、あなたは……私を勝手にダークヒーロー扱いしてる悪徳記者!!」
ハーピィ記者「心外だなあ、人と魔族の架け橋となる記事を書いてるだけなんですから大目に見てください」
イリス「ま、まあ嫌われてるわけじゃないから別に良いですけど……」
ローガン「……それで、ハーピィの記者殿がなぜここに? 号外というわけでもなさそうだが」
ハーピィ記者「そこのクロシュちゃんの探し人の目撃情報と、ついでに次の目的地を盗聴して来たのでそのご報告を」
クロシュ「!!」
ハーピィ記者「ふっふっふ、それはですね――」
↓1〜 先に2票入ったもの 道中イベントはどれも自由安価×1、ランダム×2で統一します
1.宗教国家セクリエ・ロイエ(>>374)
2.ユーシリア帝国(>>383)
3.緑の国フォレスティナ(>>386)
ハーピィ記者「――フォレスティナです!」
妖精「えええええ!!!!?」ドテッ
イリス「フォレスティナ……! 世界樹があるっていう……!」
ハーピィ記者「ええ、そのフォレスティナです。今現在、彼女らはそこを目指しているようです」
ローガン「……不可解だな。人を滅ぼすつもりなら他に人間が繁栄している国などいくらでもありそうなものだが……なぜよりにもよって人の多くない緑の国を……?」
ミスティ「……まさか、世界樹を焼き滅ぼそうなんてつもりじゃ……」
妖精「……フメイの火は強力だけど、世界樹を死に至らせるのは到底無理だよ……。だからその心配はいらないと思う……」
ハーピィ記者「それじゃあ私は伝えましたので! 皆さんの旅路が良いものであることを祈ってますよ!」バサッバサッ
クロシュ「……フォレスティナ……」
ミスティ「まあ何にせよ、次の行き先は決まったわね……」
ローガン「うむ。森歩き用の装備を整えねばな」
イリス「いざ、緑の国フォレスティナ!」
妖精「うげぇ……フォレスティナかぁ……」ドンヨリ
◆
―とある夜
街道沿い 野営地
焚き火「」パチパチ…
フメイ「……」
アリシラ?「もー、落ち込むくらいなら無理矢理にでもクロシュちゃんを引っ張って来たら良かったのに」
フメイ「……落ち込んでなんか、ない」
アリシラ?「いやいや、どう見ても落ち込んでるよ〜。それにクロシュちゃんなら、フメイちゃんがもっと食い下がって無理を言えば一緒に来てくれたかもよ?」
フメイ「……クロシュの優しさにつけ込むのは、嫌。それに……優しいクロシュが、フメイたちと一緒に来たら……きっと、いっぱい傷付く……」
アリシラ?「頑固だねえ。フメイちゃんがクロシュちゃんを大事にしたいのはわかるけどさ……。人類殲滅もクロシュちゃんのためなんでしょ?」
フメイ「……別に、クロシュのためだけじゃない。フメイだって人間が嫌いだし、フメイたち以外にも人間に苦しめられている種はいっぱいいる。人間がいなくなれば……」
アリシラ?「人間がいなくなっただけで、本当に世界が平和になると思う?」
フメイ「……」
アリシラ?「うふふ……見たよね? 憎さのあまりに子供や赤ん坊ですら串刺しにしてげらげら笑っていた魔族たちの姿を……」
フメイ「………」
アリシラ?「あの残虐性が、はぐれ者のクロシュちゃんやフメイちゃんに向けられることはないって断言できる?」
フメイ「…………」
アリシラ?「フメイちゃんの敵はねえ……人間だけじゃないんだよぉ。フメイちゃんは、クロシュちゃんに害をなそうとする全てを焼き滅ぼさなきゃいけないの……」
フメイ「………わかってる」
アリシラ?「自分の力だけじゃ、敵を全て滅ぼすのが難しいのもわかってるでしょ?」
フメイ「…………」
アリシラ?「下劣で狡猾で残虐な輩は、どこにでも、いくらでも、この世界に潜んでるの。そいつら全てを焼き滅ぼさなきゃ、クロシュちゃんが本当に安心して生きられる日なんて永遠に来ないんだよ……」
フメイ「…………」
アリシラ?「うふふ……焼き殺したいよね? でも、それが難しいのもわかるよね? じゃあ……どうしたら良いと思う……?」
フメイ「…………わかん、ないよ……」
アリシラ?「ふふ……。じゃあ、教えてあげる。フメイちゃんがどうしたら、クロシュちゃんが平和に暮らせる世界を作れるか」
フメイ「……?」
アリシラ?「というわけで、次の行き先はフォレスティナに決まり!」
フメイ「……なんで?」
アリシラ?「うふふふ……その時が来たら教えてあげる……」
フメイ「…………」
フメイ「あなた……誰?」
◆
―緑の国への旅路
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・自己強化の練習をする[2/3]
……………………………………………………………………………………
―街道
強化ソリ「」シャーッ
イリス「緑の国へは……常闇の樹海沿いの街道をずっと行くと、緑の大森林の入口に着くんだよね」
ミスティ「森林に入ったらソリはどうしようかしら……」
妖精「フォレスティナまでは森林内でも街道が整備されてるから普通にソリで走れるよ。前と変わってなければね」
イリス「妖精さんは行ったことがあるの? ていうかもしかして出身だったり?」
妖精「黙秘」
*
イリス「それにしても色々貰っちゃったなあ……。反魂丹まで……」
ミスティ「私たちが使うためのものだったのにマリーさんに使わせちゃったから、って言ってたわね」
ローガン「律儀な方だ。そういうところが人望に繋がっているのだろうな」
クロシュ「……この、赤いのは……?」
赤い液体が入った瓶「」チャプ
イリス「これは……マジカルブラッドワインっていう吸血鬼用のお酒、なんだって……」
ミスティ「……まさか、血が入ってるんじゃ……」
イリス「あ、そこは大丈夫みたい! これは非吸血種の子供でも飲めるように血を使わないで度数もかなり低くしたものみたいだから」
ローガン「ふむ……。私は度数が高い方が好みだが、名前からするとこれは君たち魔法使いに適したものなのだろう?」
イリス「そうみたいです。飲むと一時的に魔力の生産量と出力量が大きく上がるんだとか。人間が使う場合は体への負担もあって多用は厳禁みたいなんですけど」
ミスティ「一本しかないのなら多用する心配はないわね。ここぞって時に使いましょう」
イリス「うん。フラナ師匠がくれた餞別の品、大事に使わなきゃね」
妖精「……ん? 餞別袋の底の方にまだ何かある」ゴソゴソ
石の賽「」コロン
クロシュ「……? いし……?」
ミスティ「石の……立方体ね」
ローガン「面には何も描かれていないが、大きさからするとサイコロのようにも見えるな」
イリス「なんだか、不思議な魔力を感じる……。何だろう、これはフラナ師匠からも聞いてないけど……」
妖精「……何かの加護がかけられてるけど……何だったかな、この感じは……」
イリス「う〜ん……わかんないや! でも悪い感じはしないし、大事にとっとこう!」
ミスティ「そうね。フラナさんたちが悪いものを渡すとも思えないし、次に会った時にでも聞いてみましょう」
強化ソリ「」シャーッ
↓1 ランダムイベント
01-05 野生の魔王が現れた!!!!
06-20 襲撃
21-35 食べられる野草(まずい)
36-50 自生する野菜(まあまあ)
51-65 自生する果物(おいしい)
65-80 良いもの発見(自由安価。道具限定)
81-95 良いもの発見(自由安価。道具に限らず人やスポットでも可)
96-00 旅の仲間
強化ソリ「」キキッ
ミスティ「ふう……」
イリス「お疲れ様!」
ミスティ「あなたも。風魔法で移動を補助してくれてたでしょ?」
イリス「えへへ、まあ……。できることないかなって思って」
ミスティ「氷魔法は使えないの?」
イリス「だめみたい。氷と闇はどうにも……」
ミスティ「……言っては何だけど、あなたが氷まで使えなくて良かったと今思ってしまったわ」
イリス「あ、あはは……もし使えたとしてもミスティには敵わないよ。所詮は器用貧乏だからね」
ミスティ「平均レベルより上だと思うわ。何にせよ、とりあえず今は休憩にしましょう」
妖精「はーい」
スライムクロシュ「〜」モニョ
ローガン「私は周辺を警戒していよう」
*
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
妖精「ん? なあに?」
スライムクロシュ「〜」モニョ
妖精「あっち? ああ、あれのこと?」
森林木苺「」
スライムクロシュ「〜」モニョ
ローガン「おお、これは……!」
イリス「わあ、綺麗な木苺!」
ミスティ「美味しそうだけど……これは本当に木苺なの? 良く似た毒苺ってことはない?」
妖精「これは緑の大森林で採れるやつだね。人間が食べても大丈夫なやつだったと思う。多分」
ミスティ「多分……」
スライムクロシュ「〜〜」モグモグ
妖精「ほら、クロシュも平気で食べてるでしょ」
ローガン「クロシュくんはスライムだと思うのだが……」
イリス「……よし! 妖精さんが大丈夫って言ってるんだから大丈夫だよ!」プチッ
モグモグ
イリス「あ……」
ミスティ「あ……?」
イリス「あま〜い!!」
☆森林木苺を食べて元気になりました
この道中の次の戦闘時、コンマ+15
◆
―夕方
関所 王国領側
ワイワイ ガヤガヤ
露店A「安いよ安いよ〜」
露店B「今なら森歩きの靴がなんと銀貨一枚!!!」
露店C「マナポーションはいらんかね?」
強化ソリ「」キキッ
ミスティ「ここが……関所みたいね」
イリス「けっこう賑わってるなあ。観光地だからかな?」
ローガン「今年は四年に一度のフォレスティナ首長選挙があるらしい。それで人が多いのかもしれんな」
妖精「とりあえず王国領を出ようよ。私もクロシュも王国領にいると息が詰まる」
ミスティ「そうね……。それじゃあ妖精は隠れて、クロシュは犬か何かに擬態していて」
クロシュ「ん」コク
*
―夕方
関所 森林側
木々「」サワサワ
イリス「わあ……こっち側はもうかなり森って感じだねえ」
ミスティ「地図によると、ここから緑の大森林……つまりフォレスティナ領ということみたいよ」
ローガン「ふむ。フォレスティナの首都までこの森林地帯が続くというわけか」
ミスティ「そういうことみたいね……。それにしても……」
ワイワイ キャッキャ
森妖精A「フォレスティナにようこそ、旅人さん!」ヒラヒラ
森妖精B「えっへへ〜楽しんでいってね〜」ヒラヒラ
森妖精C「ねえねえ旅人さん、フェアリーシロップ欲しくない? ねえ欲しくない?」ヒラヒラ
森妖精D「妖精のお宿ですよ〜。妖精さんのせいいっぱいのご奉仕付きですよ〜」ヒラヒラ
ワイワイ キャッキャ
ミスティ「……こっちもこっちで、賑やかね……」
イリス「そ、そうだね……。森の妖精さんは、積極的というか……」チラ
妖精「はあ……王国領にいるよりはマシだけどさ……」
ローガン「妖精殿は森の妖精が苦手なのか?」
妖精「別に……。ただ、相容れないってだけ……」
犬クロシュ「……」ペロペロ
妖精「うひゃあ! 急に舐めるな!!」
森の関所で一晩過ごします
↓1 どこに泊まる?
1.妖精のお宿(お金が減りますが、お元気になります)
2.野営(お金が減りません)
イリス「今夜は妖精さんのお宿に泊まろうよ! 竜人姐さんも美味しいもんいっぱい食べろって言ってたし……!」
ミスティ「私も同意するわ。せっかく頂いたお金だもの、有意義に使いましょう」
ローガン「私も異論はない。心地良い環境での休息は良き活力となろう」
妖精「まあ……良い寝床なのは確かだと思うよ、うん……」
犬クロシュ「ハッハッハ」
ミスティ「……もう人やスライムの姿に戻って良いわよ、クロシュ……」
*
―妖精のお宿
お宿の妖精たち「せっせせっせ」パタパタパタパタ
イリス「わぁ〜、小さい妖精さんたちが一生懸命働いてる……! かわいいなあ」
妖精「そういう視覚効果を狙った宿だからね。かわいく見せてるんだよ」
イリス「そ、そういうこと言うのやめてよぉ〜」
妖精「事実だもん。これでお金を落とす妖精性愛者が後を絶たないんだから。下品な商売だよ」
ミスティ「妖精はもうちょっとこう……言葉を選べないのかしら……」
妖精「これでも選んでる方なんだけど……」
ローガン「ううむ……。かわいいと思ってしまうが……それが意図されたものだと聞かされると、なんとも言い難い痒さがあるな……」
イリス「あれ? そういえばクロシュちゃんは?」
ミスティ「……あそこでお宿の妖精たちに囲まれているわね……」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
お宿の妖精A「わぁ〜黒いスライムさんだあ〜」
お宿の妖精B「黒くて綺麗でかっこいいです、お客様……」
お宿の妖精C「スライムさん向けのマッサージしてあげるね」フニフニ
スライムクロシュ「///」モニョニョ
妖精「何をやっているのあの馬鹿スライムは……」
妖精のお宿に一泊します
↓1〜3 自由安価 宿泊中何をする?
―妖精のお宿 温泉
カポーン…
スライムクロシュ「〜〜」デロデロ
妖精「だから溶けてるってば」ペチペチ
イリス「あはは、クロシュちゃんってお風呂でいつも溶けそうになってるよね」
ミスティ「ふふ、気持ち良さそうよね。私もお風呂で溶けちゃいたいって思うことが時々あるわ……」
イリス「えっ」
ミスティ「え……」
妖精「……」
ミスティ「……な、ない? そういうの」
イリス「……ど、どう、かな……。私は……ない、かも……」
ミスティ「……よ、妖精は……?」
妖精「大気に溶けちゃいたいって思うことはあるけど……お風呂はないかな」
ミスティ「そ、それは私もわからないわね……」
半スライムクロシュ「……えと……わたしも……溶けちゃいたいとき……ある、よ……」モニョ
ミスティ「クロシュ……! クロシュならわかってくれると思ったわ……!!」
半スライムクロシュ「え、えへへ……」モニョニョ
*
―同刻 男湯
カポーン
ローガン「ふう……。若い女性ばかりのパーティの唯一の男というのは、誉れ高い立場ではあるが……しかし、気疲れするな……」
ローガン「考えても見れば、あの子らは皆未だ20にも満たない子供たちか……。私の責任は重いな……」
ローガン「……フッ。どうせ生きる価値などない身だ。命を賭して、あの子たちの盾となれれば本望……」
ガラッ
お宿の妖精「お客様ぁ、熱燗をお持ちいたしましたぁ〜」パタパタ
ローガン「む、ありがたい……」
お宿の妖精「お注ぎいたしますねぇ」
熱燗「」トクトク
ローガン「感謝する……。いただこう」グビッ
お宿の妖精「わぁ、良い飲みっぷりですぅ」
ローガン「はっはっは、温泉でやる一杯はやはり格別だ!」
お宿の妖精「うふふ……お客様ぁ……追加サービスに、お夜伽はいかがですかぁ……?///」ピラ
ローガン「…………」
ローガン「」グビッ
ローガン「君はとても可愛らしく美しい妖精だが……私が愛するのは、亡き妻ただ一人……。丁重に断らせて頂こう……」グビグビ
お宿の妖精「わぁ……素敵な旦那様ですぅ……///」
ローガン「フッ。私は鋼属性ゆえ、誘惑には強いのだ」グビグビ
◆
―夜
お宿の庭
スライムクロシュ「……」モニョモニョ
小盾「」
スライムクロシュ「……」モニョモニョ
妖精「温泉を出てから見かけないと思ったら、こんなとこにいたの」パタパタ
スライムクロシュ「!」モニョ
妖精「ああ、前に武器屋で教わったやつね。できそうなの?」
スライムクロシュ「〜」モニョ
妖精「あと少しなの? じゃあ見ててあげるから、やってみて」
スライムクロシュ「〜」モニョ
↓1
01-95 成功
96-00 ??
スライムクロシュ「……」モニョニョ…
スライムクロシュ「!!」
カッ!
盾を背負ったスライムクロシュ「!」ジャキンッ!
妖精「へっ?」
盾を背負ったスライムクロシュ「?」
妖精「……なんか、かたつむりみたいになってるよ?」
盾つむりスライムクロシュ「??」モニョニョ
風呂上がりローガン「何やら鋼の気配を感じて来てみれば……素晴らしい姿ではないか、クロシュくん!!」ホカホカ
妖精「うわっ! なんかちょっと酒臭いんだけどローガン!」
風呂上がりローガン「はっはっは、気にするな! どれ、私が今のクロシュくんの鋼度を測ってあげよう!」
妖精「なんかテンションおかしいし……」
盾つむりスライムクロシュ「?」モニョ
風呂上がりローガン「ふむ……かたつむりのような見た目だが、実のところ全身が鉄の堅さを獲得している! 試しに私の拳をコンコンしてみると――」
盾つむりスライムクロシュ「?」コンコン
風呂上がりローガン「うむ、堅い!! これで君は、見た目だけでなく能力の擬態までできるようになったというわけだ!!!」
盾つむりスライムクロシュ「!」
風呂上がりローガン「その盾の堅さを保ったまま他の姿に擬態できたりはするかね?」
盾つむりスライムクロシュ「〜」デロデロ
盾士クロシュ「!」ジャキーン!
妖精「……!」
風呂上がりローガン「素晴らしい……!! まるで小盾を構える為に生まれてきた聖騎士のようだ……!! しかも頑丈さは継続している……!」
盾士クロシュ「……!」
妖精(く、悔しいけど……ちょっとかっこいいって思っちゃった……)
風呂上がりローガン「これが、スライムの潜在能力と反映魔法を組み合わせた、クロシュくんの新しい力というわけだ!!!!」
盾士クロシュ「わたしの……ちから……!!」ジャキーン!
風呂上がりローガン「うむ!! 近接戦闘の心得なら私がいつでも教えてあげよう!! よくやったぞ、クロシュくん!!!」
盾士クロシュ「うん……!!」
妖精「……慣れるまでは無理しちゃだめだよ。新しい力なんだから」
盾士クロシュ「う、うん……!」
風呂上がりローガン「はっはっは! 妖精くんの言う通りだぞクロシュくん! 体が慣れるまで禁物だ! 無理はな!!」
◆
―お宿 ロビー
冒険者ギルド出張所「」
出張所受付嬢「……」コックリコックリ
ミスティ「こんなところに冒険者ギルドの出張所……?」
イリス「せっかくだし見ていってみようよ」
ミスティ「お金にはまだまだ余裕があるわよ。それにフォレスティナの首都に向かっている最中なのだから、ここで依頼を受けている暇はないんじゃないかしら」
イリス「ま、まあそう言わずに。納品依頼とかなら手持ちでできるものもあるかもしれないし」
ミスティ「まあ、イリスリーダーがそう言うなら……」
イリス「すみません」
出張所受付嬢「はっ! こ、こんばんは! 冒険者ギルド、フォレスティナ関所出張所です! 寝ていません!」ビシッ
ミスティ「……まあ、夜も遅いしね」
イリス「あはは……。ええと、ちょっとした簡単な依頼とかってありますか? 明日の朝には出発したいので、納品とかここの掃除とか……」
出張所受付嬢「むむ……そうですね」
↓1
01-70 都合の良い依頼はなかった
71-90 納品:蜘蛛絹
91-00 納品:ザリガニのお守り
イリス「……まあ、流石になかったね」
ミスティ「さっきも言ったけど、餞別をたくさんもらってるからしばらくは大丈夫よ」
イリス「そだね。部屋に戻ろっか」
ミスティ「ええ」
◆
というわけで本日はここまでです。次回、フォレスティナ旅程後半から開始です
これはネタバレですが、氷と闇は他の属性とは実は若干成り立ちが異なります。星属性に含まれるのは火や光などの正の属性であり、負の属性である氷と闇は含まれていないのです
そしてクロシュちゃんの能力解放おめでとうございます。これで多分ちゃんと戦えるようになりました。あとは装備次第です。温かく見守ってあげましょう
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
フラナさんは吸血鬼なので血液はちゃんと接種しています。血を吸わずとも直ちに死ぬことはありませんが、長期間接種しないと人間で言うところの栄養失調のような状態に陥り弱っていきます。そのため、よほど特殊な事情があったり変わった思想の持ち主でもない限り、血を吸わない吸血鬼はいないと考えられます
小盾を取り込んだクロシュ氏は軽量さを保ちつつ防御能力が向上しており、一般的な兵士や冒険者や下級騎士より少し強いくらいの戦闘力があるかと思われます。鉄の小盾を取り込んだため、属性が鉄属性に変化しています(鉄属性や鋼属性は地属性の派生です。ローガン氏が鋼の気配と誤認したのはこのためです)
妖精さんたちの大きさは、平均身長がだいたい20センチメートルくらいです。人間やその他の大きな種族を相手に宿泊業を営むのは大変そうに見えますが、実はそれほどの労力はかかっていません。お客様の前ではせっせせっせと一生懸命手作業で働いているように見せていますが、お客様の見ていないところでは高度に洗練された生活魔法を駆使して効率的に作業を行っています。意外としたたかな商売なのです
そして妖精性愛者とはそんな小さい妖精さんたちを性的に愛する変わった方々です
緑の国では妖精や他の知性ある種族の捕獲や略取は禁じられていますが、密猟の被害は少なからず出ています。緑の国の治安組織は捜査を行っていますが、末端の密猟者を捕まえることはできてもその大元を特定して根絶するには至っていないようです
緑の国住民の多くは、自国民以外を奴隷化するのが大好きな隣国の王国の仕業ではないかと疑っています。しかし決定的証拠はなく、また緑の国と王国は相互不可侵条約を締結しているため、治安組織は思い切った捜査に踏み切れないようです
―朝
妖精のお宿 玄関
チュンチュン
妖精女将「またお越しくださいませ、旅人の皆様……」ペコリ
お宿の妖精A「また気てね〜」
お宿の妖精B「どうかお達者で……」
お宿の妖精C「体に気をつけてね、黒いスライムさん」
お宿の妖精D「またいらっしゃってくださいねぇ、鋼の旦那様ぁ」
*
―緑の大森林 街道
強化ソリ「」シャーッ
イリス「良いとこだったねえ」
ミスティ「また来ても良いかもね。ちょっとお高かったけど」
クロシュ「うん」
ローガン「うむ。良き宿であった」
妖精「すっかり酔っ払ってたもんね、ローガン」
ローガン「はは、昨晩はすまんな。可愛らしい妖精さんにお酌されてしまってな。つい酒が進んでしまったのだ」
妖精「……」タジ
ローガン「……安心していただきたい。やましいことは何もしていないし、私が愛するのは亡き妻ただ一人」
イリス「え……亡き……?」
ローガン「……過ぎた話だ」
ミスティ「…………。ローガンさんも、なのね……」
ローガン「私も、とは?」
ミスティ「……私も……家族はもうないわ。家族っていうか……故郷も、ね」
イリス「え………」
妖精「クロシュもだね。まあ、クロシュにはまだフメイがいるけど」
クロシュ「……」コク
イリス「……」
↓1コンマ
01-50 イリスの師匠、既に他界
51-95 イリスの師匠、存命
96-00 イリスの師匠大魔女説
イリス「……私も……地の繋がった家族も、師匠も……もう、いないんだ」
ミスティ「イリスも……」
イリス「でもね……。師匠は私に、家を遺していってくれたから……。私には……帰る場所が、ある……」
ローガン「……そうなのだな」
イリス「はい……。だから……その……」
ミスティ「……ふふ。大切にしなさいよ。あなたの……帰るべき場所を……」
イリス「あ……」
ローガン「私にはもう望めぬが……イリスくんには、それをすることができる」
イリス「……!」
妖精「まあでも、天涯孤独って点じゃみんな同じみたいだね?」
クロシュ「……フメイちゃん……」
妖精「冗談だよ。クロシュにはまだ……家族と呼べる人が残ってるんだよね」
クロシュ「うん……」
イリス「……なら! 絶対、連れ戻そう! フメイちゃんをクロシュちゃんのもとへ……!」
ミスティ「ええ……。失ってからでは、遅いもの……。クロシュは、フメイを取り戻さなきゃ」
ローガン「うむ……! まだ間に合うのなら、クロシュくんはこれ以上我々と同じ苦しみを味わうべきではない」
クロシュ「……!」
妖精「ふふ。良かったねクロシュ。みんなお人好しで」
イリス「妖精さんもね」
妖精「私はただの暇つぶしだもん」
強化ソリ「」シャーッ
☆妖精のお宿に宿泊したことにより、今回の道中戦闘時にコンマ+20の効果を得ます
おいしい果実の効果と累積し、コンマ+35となります
↓1 ランダムイベント
01-05 野生の魔王が現れた!!!!
06-20 襲撃
21-35 食べられる野草(まずい)
36-50 自生する野菜(まあまあ)
51-75 良いもの発見(自由安価。道具限定)
76-95 良いもの発見(自由安価。道具に限らず人やスポットでも可)
96-00 旅の仲間
見つけたもの(アイテム限定)
↓1 自由安価
強化ソリ「」シャーッ
妖精「……ん? ちょっと止まれる?」
強化ソリ「」キキッ
ミスティ「何かあった?」
妖精「面白い気配がある」パタパタ
*
―街道 道端
打ち捨てられた傘「」
クロシュ「……?」
ローガン「……傘、だな」
妖精「何か感じない? イリス」
イリス「これ……微かだけど……雨の魔力……?」
妖精「うん。多分、これに込められているのは雨乞いの魔法。気休め程度のものだけど、これを開けば雨雲を呼び寄せやすくなるはずだよ」
ミスティ「傘なのに雨を呼んでしまうなんて……。なんだか本末転倒ね……」
イリス「じゃあ、雨が降っている時に開いたら?」
妖精「周囲の雨雲をさらに呼び寄せて、傘の周辺が集中豪雨になるだろうね」
ミスティ「ますます本末転倒じゃない……」
妖精「多分、イタズラ好きな妖精が作ったものだろうね。何も知らない旅人に拾わせて、雨の中でこれを差させるのが目的なんだと思う」
ローガン「な、なんと回りくどいイタズラか……」
イリス「……でも、使いようによっては凄い道具になるんじゃない? これ」
ミスティ「そうね……。任意に雨雲を呼べるっていうのは、かなり便利に思えるわ……」
妖精「肝心の雨雲が近くになければ意味ないけどね。使いようはあるって意見には同意」
イリス「じゃあ……拾わせる目的で置かれたものなら、遠慮なくもらっちゃおう!」
ミスティ「妖精の推測だけどね」
☆雨乞い傘を拾得しました
◆
強化ソリ「」スイー
クロシュ(森のトンネルを抜けて、一気に視界が開けると――)
天を衝いて聳える世界樹「」キラキラ
ワイワイ ガヤガヤ
妖精の露店「フェアリーシロップあるよ〜! 採れたてホヤホヤの新鮮なフェアリーシロップだよ〜」ヒラヒラ
馬頭の飛脚「オデ、荷物、運ベル。オ前、楽ニナル。オデ、儲カル。皆、シアワセ」
アルラウネの八百屋「野草、野菜、果物、なんでも揃ってるよ。私たちが丹精込めて育てた野菜、買ってかない?」
エルフの吟遊詩人「それでは聞いて下さい。魔族大革命の裏で暗躍した闇の英雄……ダークヒーローイリスの物語を……」ポロロン
クロシュ「――!」
イリス「――――わああ……!!」
ミスティ「これは……圧巻ね……!」
ローガン「なんと……森の中に、これほど美しく自然と調和した街並みが広がっているとは……!」
妖精「……変わってないか。良くも悪くも」
クロシュ(わたしたちは――緑の国フォレスティナの首都へ、到着した)
◆
―緑の国 大樹の宿
イリス「わああ……! 大きな木の中に空洞があって、その中が宿になってるの……!?」
ミスティ「凄いわね……。でも、木の方は大丈夫なのかしら……」
妖精「ああ、うん……。中はくりぬかれてるけど、一応木の生命に影響は出ないようにやってるんだよ。木の方にも同意は得てるし、健康管理とかにも気を遣ってるからその辺の心配はいらないと思う」
ローガン「木の同意とは……。全く考えもしなかった世界だな……」
受付のアルラウネ「お客さん詳しいね。ここ出身の妖精?」
妖精「違います」
受付のアルラウネ「そう。まあ詮索はしないけど。部屋割りはどうするの?」
イリス「一人部屋と、三人部屋と、三人部屋にオプションの妖精付きをお願いします!」
受付のアルラウネ「はいはい。おじさんのハーレムかと思ったら違うのね」
ローガン「……私はそのような者に見えるのだろうか……」
*
―大樹の宿 客室
完全木造ベッド「」
綿花のクッション「」
光るキノコのランプ「」
イリス「おおお……! 内装も木! 植物! キノコ!」
ミスティ「徹底しているわね……。とりあえず、フメイ捜しは明日からにしましょう……少し疲れたわ……」
クロシュ「ん……」コク
妖精「クロシュがフメイの姿に擬態してれば聞き込みもしやすいし、意外と簡単に見つけられるかもね」
ミスティ「どちらかと言うと、見つけた後どう説得するかの方が難しそうだわ……」
イリス「た、確かに……。何か良い方法を考えなきゃね……」
……………………………………………………………………………………
―緑の国フォレスティナ
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
フォレスティナ滞在初日の夜です
↓1〜3 自由安価 何をする?
イリス「とりあえず今夜はここでくつろごうよ。私、この宿の雰囲気を満喫したい……!」
ミスティ「そうね。きっとこんな宿はここ緑の国にしかないでしょうし、しっかり味わっていきましょう」
妖精「悔しいけど、妖精である私にとってもやっぱり心地良い環境なんだよね……」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
イリス「あはは、クロシュちゃんも疲れちゃった? スライムの姿に戻ってる」
コンコン
ミスティ「あら? ローガンさんかしら……」
イリス「ちょっと見てくるね」スクッ
イリス「はあい、どちら様?」
ドアの向こう「初日限定のマッサージサービスにお伺い致しております」
イリス「あ、そういえば受付の時に……」
ドアの向こう「はい。お時間の変更やキャンセルも受け付けておりますが、いかが致しますか?」
イリス「あ、いえいえ! せっかくなのでお願いします!」ガチャッ
マッサージ担当アルラウネ「かしこまりました。それでは、誠心誠意マッサージさせていただきます」スッ
*
イリス「うう……服を脱ぐ必要があったなんて……///」
ミスティ「もう……タダだからって軽率に頼むからよ……///」
スライムクロシュ「」モニョモニョ
妖精「ねえ、スライムも受けられるの?」
マッサージ担当アルラウネ「もちろんです。私共のマッサージはスライムの方にも対応しております」
妖精「そうなんだ……」
スライムクロシュ「」モニョモニョ
マッサージ担当アルラウネ「それでは始めさせていただきたいと思います。まずはアルラウネオイルを全身にお塗り致します……」
ヌリヌリ
イリス「ひゃっ……!///」ヌリヌリ
ミスティ「ひ、ひんやりするわね……///」ヌリヌリ
妖精「んっ……」ヌリヌリ
スライムクロシュ「!」モニョニョ
マッサージ担当アルラウネ「それでは、ここからが本番です。施術を始めます……」
*
↓1 マッサージの効果
01-60 疲れが取れました
61-90 クロシュがアルラウネに擬態できるようになった
91-00 能力も含めて擬態できるようになった
*
イリス「ほわああ……な、なんか……すごかった……///」
ミスティ「え、ええ……。でも、なんだか体が軽くなったような気がするわ……」
妖精「」ビクンビクン
スライムクロシュ「〜〜?」モニョモニョ
妖精「は、はひっ……ひまは……さわら……ないで……くろしゅ……///」ビクンビクン
スライムクロシュ「〜」モニョ
☆疲れが取れました
*
―同刻 ローガンの部屋
マッサージ担当アルラウネ「随分、こっていますね……」
ローガン「ぬ、ぬう……」
マッサージ担当アルラウネ「ふふ……。お夜伽も追加致しますか……?」
ローガン「ここ緑の国では、そうするのが流行っているのかね……?」
マッサージ担当アルラウネ「さあ……。でも、そういうサービスがお好きなお客様は少なくありませんから……」
ローガン「そ、そうか……」
マッサージ担当アルラウネ「でも、お客様のように身持ちが固い殿方もお好きですよ……? 私……」
ローガン「それは光栄だ……。しかし私は、愛する者は一人と決めているのでな……」
マッサージ担当アルラウネ「ふふ……それは残念です……。せめて体の疲れは、しっかり解して差し上げますね……」
ローガン「う、うむ……」
◇
―大樹の宿 客室
妖精「ああもう……! 酷い目にあった……!」プンスコ
イリス「あ、あはは……。妖精さん、けっこうすごい声出してたよね……」
妖精「う、うるさい……! くそお、何が『アルラウネオイルは妖精には刺激が強すぎるかもしれません』だよ!」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
ミスティ「クロシュも気持ち良かったみたいね……。妖精にだけ刺激が強かったのかしら……」
イリス「で、でも疲れは取れたんじゃない? 妖精さんも!」
妖精「うぐぐ……確かに、体は解れてるけど……」
ミスティ「ならまあ、良しとしましょうよ……」
イリス「ねえ、疲れた取れたからついでに明日からどうするか考えてみない? 聞き込みの他に、何か良いやり方がないかさ」
スライムクロシュ「!」モニョッ
ミスティ「そうね……。就寝まで時間はあるし、少し考えてみましょう……」
*
イリス「……ビラ配り!」
ミスティ「なるほど……その手があったわね……!」
スライムクロシュ「!」モニョモニョ
妖精「……紙はどこから調達するの? 絵は誰が書くの?」
イリス「あ」
↓1コンマ
01-30 宿泊中の暗黒行商人が大量の紙と画材を持っていた(とても高い)
31-60 宿泊中の行商人が大量の紙と画材を持っていた
61-90 宿泊中の優良行商人が大量の紙と画材を持っていた(安い)
91-00 ハーピィ記者「話は聽かせて貰いましたよ」ガラッ
イリス「も、もしかしたらこの宿に紙と画材を売っている行商人の人が泊まってるかもしれない!!」
妖精「いやいや、そんな都合の良いことがあるわけ……」
*
―大樹の宿 ロビー
ターバンの褐色少女「いかにも、あたしは行商人だけど」
ミスティ「本当にいた……」
イリス「ターバンは行商人の証って昔から決まってますもんね!」
ターバンの褐色少女「実際ターバンは行商人組合で定められた行商人の正装だかんね。あんたの認識は正しい。巻いてない奴も多いけど」
イリス「それでですね、行商人さん。紙と画材はありますか?」
妖精「まあ、いくら行商人がいたとしてもそこまでピンポイントな偶然は……」
ターバンの褐色少女「あるよ。どれくらい欲しい?」
妖精「嘘でしょ」
ミスティ「こんなことが……」
*
ターバンの褐色少女「王国の芸術都市で仕入れた質の良い紙と画材だよ。まさか旅人に売れるとは思ってなかったけどね。まいど!」
イリス「ありがとう!」
ターバンの褐色少女「こちらこそ。今後ともご贔屓に」
☆紙と画材を買いました
お金が少し減りました
◇
―客室
イリス「というわけで、作りましょう! ビラを!」
スライムクロシュ「!」モニョモニョ
ローガン「い、いつの間にそんなことになっていたのか……。だが安く仕入れられたのは幸いだな」
ミスティ「偶然って凄いわ……」
妖精「……それで、この中で一番絵が上手いのは誰?」
全員「……」
コンマ数値が大きいほど絵が上手い(0が最大)
↓1 1桁目クロシュ 2桁目妖精
↓2 1桁目イリス 2桁目ミスティ
↓3 1桁目ローガン
イリス(絵心2)「うう〜……絵って苦手なんだよなあ……」
ミスティ(絵心3)「……絵の描き方なんて学んだことないわ……」
ローガン(絵心2)「私もだ……。生まれてこの方、絵筆など取った記憶がない……」
妖精(絵心4)「私でもマシな方だなんて……。このパーティ、絵心なさすぎるんじゃ……」
イリス「いや、待って! まだ、クロシュちゃんの絵を見ていない……!」
妖精「ええ? あのぼんやり赤ちゃんスライムがちゃんとした絵を描けるわけ……」
スライムクロシュ(絵心10)「……」モニョモニョ カキカキ
写実的なフメイちゃんの似顔絵「」ピラッ
妖精「なっ……」
ミスティ「なんですって……!!?」
ローガン「これは、まさか……!」
イリス「すごい……すごいよ、クロシュちゃん!!」
スライムクロシュ「……」モニョモニョ カキカキ
◇
フメイちゃんの迷子ビラ束「」ドサッ
イリス「あ、あっと言う間に描き終えちゃった……」
ローガン「途中から版画板に擬態してバンバン刷っていたな……」
妖精「まさか、クロシュにこんな才能があったなんて……。擬態とか反映魔法の応用……?」
スライムクロシュ「〜」モニャァ
ミスティ「ふふ……スライム語はわからないけど、今クロシュがドヤ顔をしているのはなんとなくわかったわ……」
☆クロシュの天才的な描画能力が判明しました
☆擬態による活版印刷が可能となりました
☆フメイちゃんの迷子ビラを大量に作成しました
◆
―大樹の宿 夜更け
スライムクロシュ「……」zzz
妖精「すう、すう……」zzz
キノコランプ「」ボウ…
ペラッ カキカキ
イリス「……」
魔術書「星の魔力」ペラッ
イリスの研究ノート「」カキカキ
イリス「……」ペラッ
イリス「……」カキカキ
イリス「……」ペラッ
イリス「…………ふわあ……」ググ
ミスティ「お疲れ様、イリス……。はい」
コトン…
カモミールティー「」ホカホカ
イリス「あ、ミスティ。ありがと……」ゴクゴク
イリス「……あったまる……。美味しいや」
ミスティ「この国で採れたカモミールで淹れたお茶よ。ロビーのアルラウネが用意してくれたの。疲れに効いて、睡眠に良いって」
イリス「そうなんだ……。後でお礼を言わないとね……。あ、そういえば起こしちゃった? ごめん」
ミスティ「気にしないで……。それより、根を詰めすぎじゃない? まだここに来たばかりなのだから、そんなに慌てて読み解かなくても」
イリス「……でも私、ミスティがソリを動かしてる間……ちょっと風を吹かせるくらいしかできないんだよ」
ミスティ「適材適所よ、それは」
イリス「でも……クロシュちゃんは、この前持っている道具の力を自分に取り込む能力を身に付けたし……絵も上手で、活版印刷もできるんだよ。それに比べたら……」
ミスティ「いや、あなただって土鍋を作ったり火も起こしたり即席温泉も湧かせたりできるじゃない……。ソリの運行とかき氷作りくらいしかできない私よりずっと多才だと思うのだけれど……」
イリス「そ、そうかな……」
ミスティ「そうよ。自分にできることに自信を持ちなさいよ……」
イリス「……えへへ、ありがと」
ミスティ「全くもう……。後ろ向きは私の役でしょう……」
イリス「それはそれでどうかと思う……。ふわ……」
ミスティ「もう寝ましょう。明日からフメイ捜しよ」
イリス「だね。クロシュちゃんに悲しい思いをさせないよう、頑張らなきゃ」
ミスティ「ええ」
◆
イリスの勉強成果
↓1
01-30 読解1/4
31-60 読解2/4
61-90 読解3/4
91-00 イリス「あれ? 私の属性って……」
というわけで、イリスさんの魔術書読解が2/4まで進んだところで本日はここまでです。次回から緑の国で本格的な活動開始です
風雪のルフことハーピィ記者さんはかなり自由に動ける上に空も飛べるので、もしかすると今後の登場機会が魔族国住民の中で最も多いかもしれません。今回のようにコンマ表に紛れ込むこともあれば、記事のネタを探すために火事場に突っ込んできたりすることもあるでしょう。もちろんルフ氏に限らず、今までに登場したキャラクターが再登場することはあると思います
そして今回クロシュ氏の隠れた才能が発掘されました。擬態や反映魔法を応用した結果なのか、クロシュ自身の内なる才能なのかはわかりませんが、非常に優れた描画能力を持っていることだけは確かなようです。もう穀潰しなどとは呼べないかもしれません。おめでとうございます
それでは本日もありがとうございました。次回も恐らく土日になるかと思います。よろしくお願いいたします
迷子ビラも行方不明者ビラも意味するものと目的は同じかと思います。なおクロシュ氏は犬猫などの動物と人や魔族などの知性を持つ種族をあまりはっきりとは区別していないようです
ここ最近急にクロシュ氏のできることが増えました。お絵描きに関してははお金を取っても良い出来かもしれません。赤ちゃんから一気にプロフェッショナルです。これはとてもすごいです。でも中身はぼんやり赤ちゃんスライムのままなのでごあんしんください
実のところ風雪新聞は魔族国以外にも出回っているので、魔族国ほどではないと思いますがダークヒーローイリスの威名はそこそこ知れ渡り始めているのかもしれません
妖精の過去が緑の国編で明らかになるかどうかは今後の展開次第であります。気になる場合は自由行動で交流してみても良いでしょう
妖精に限らず仲間や他の特定の人物を指定して交流を図ると、クロシュの中でその人への理解が深まったり、擬態や能力のレパートリーが増えたり等、いろいろな良いことがあるかもしれません
本日は本編の更新はできませんが、近日開催予定の緑の国首長選挙における候補者をニ名募集したいと思います
一人は現首長であり今回の選挙でも最有力と目される伝統派、もう一人は近年台頭してきた親王国路線の改革派です
よろしくお願いします
↓2伝統派(現首長・最有力)
【名前】
【種族】(森っぽい種族であると良いです)
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】
【備考】
↓4革新派(親王国・対抗)
【名前】
【種族】
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】
【備考】
【名前】ティセリア
【種族】エルフ
【性別】女性
【年齢】1500才
【容姿】外見では二十歳前後
緑髪のポニーテール
スタイル抜群の爽やかな雰囲気の美少女
【性格】明るく快活ながらも、慈愛と威厳も併せ持った女性
【魔法】精霊との親和性が非常に高い
様々な属性の精霊の力を借り、千年以上の研鑽を積んだ武術に上乗せする
【備考】
他種族との平和な暮らしを望む、冷静で大局的な判断もできる首相
多忙ではあるが、他の国の文化も興味を持って知ろうとしている
お菓子作りが得意で身近な人におすそ分けしたりしている
彼女の魔翌力が籠もったお菓子は食べると心身ともに元気になる
精霊や子供に懐かれやすいが、懐かれやすすぎてちょくちょくじゃれつかれまくってあわあわ言ってる
【名前】サリー
【種族】エルフ
【性別】女
【年齢】1000歳
【容姿】見た目は紫ショートの幼女
【性格】冷静沈着だが時折腹黒な一面も
【魔法】基本地属性魔法が得意だが、幻術も使える。
【備考】毎日業務に追われるもそれが使命だとして日々励んでいる。その経験からか人の心を見透かすこともできる。
【名前】マーベル・クライス
【種族】エルフ
【性別】男
【年齢】600
【容姿】フォレスティナの伝統衣装の上に今国際的に流行りのブランドマントを着けている。笑顔が特徴的な薄金髪のお兄さん。
【性格】脱田舎思考のシティボーイ。新しい物好き。気さくな時とシリアスの時のギャップがある。
【魔法】金属を生み出し操る
【備考】世界を渡り歩いた国際通として革新派から出馬。人当たりがよく選挙活動の一環で街に出没して色んな人に握手を求める。
森しかない祖国に多少のコンテンツを増やす目的で一部森林の開拓を主張する。レジャーやスポーツ、その他娯楽施設を開業することで国民の幸福度は上がるわ、業者から裏金が入ってくるわとWin-Win。彼の事務所には王国やその他の外国の者たちが出入りしてるが、いったい何なのだろうね。
祖国は歴史的に伝統派が強く、そのため進歩が止まっている事実に悲観し、森>進歩の現状を変えようと心から思っている。それはそれとして汚職はする。
皆さんありがとうございます。伝統派の現首長は>>458のティセリア氏、革新派は>>461のマーベル氏に決定いたしました。スタイル抜群伝統派エルフとイケメン汚職エルフです
惜しくも安価から外れてしまった>>460の幼女エルフのサリー氏も、ちょっとした役柄で登場することがあるかもしれません。よろしくお願いします
それでは本日はありがとうございました。土日(+祝日?)に本編更新をしたいと思いますので、よろしくお願いします
―緑の国フォレスティナ 滞在2日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・フメイちゃんの迷子ビラ
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
―翌朝
露店通り
ワイワイ ガヤガヤ
ミスティ「朝からもう賑わっているわね……。流石は観光地といったところかしら……」
ローガン「しかももうすぐ首長選挙だ。国内外問わず見物客が首都に集まってきているのだろう」
妖精「うんざりするね。毎日毎日頭空っぽの奴らがお祭り騒ぎしててさ」
ミスティ「タイミング的に、私たちもお祭り騒ぎしに来た観光客と思われてるでしょうね……」
イリス「でも、人目が多い時期ならフメイちゃんの目撃情報もきっとあるはずだよ!」
妖精「言われてみればそうか。クロシュ、ビラ配りの準備は良い?」
クロシュ「ん」コク
*
イリス「人を捜しています!」ピラッ
金髪爆乳エルフ「あら、迷子? 見かけたら連絡するわね」
ミスティ「この子を見たら、大樹の宿に連絡を……」ピラッ
エルフの吟遊詩人「ふむ……覚えておきましょう……」ポロロン
ローガン「失礼。この子に見覚えはないだろうか」ピラッ
馬頭の飛脚「オデ、見覚エナイ。見タラ教エル」
妖精「迷子を捜してま〜す。お見かけの方は大樹の宿まで〜」ピラッ
森妖精「わあ、かわいい絵! あなたが描いたの?」キャッキャ
クロシュ「え、えと……と、友達を……さがして……」オロオロ
ガッ(つまづく音)
クロシュ「ひゃっ……」
ドテッ
バッサァ…(ビラが散らばる音)
クロシュ「あ、あ……」ジワワ
ザワザワ ナンダァ?
クロシュ「ご、ごめ、なさ……」オロオロ
「――風の精霊よ、ビラを集めて―――」
フワッ
バササササッ!(ビラが綺麗に集まる音)
フメイちゃんのビラ束「」ビシッ!
緑髪エルフの少女「……はい、どうぞ!」ニコッ
クロシュ「あ……ありがと、ございます……」スッ
緑髪エルフの少女「転んだところは……あら、もう治ってる。ふふ、流石はスライムの子です」
クロシュ「え……?」
緑髪エルフの少女「ああ、申し遅れちゃいましたね。私はティセリア。この緑の国の――」
「一枚忘れてますよ? ティセリア首長殿?」ヌッ
フメイちゃんのビラ「」ピラッ
クロシュ「あ……」
薄金髪エルフの青年「もう落としちゃダメだぜ?」ニコッ
ティセリア(緑髪エルフの少女)「……マーベル」
マーベル(薄金髪エルフの青年)「おっと、そう睨まないでくださいよ。ビラを拾ってこの子に渡しただけでしょ?」
ティセリア「睨んでなどいませんが。ご協力、感謝致します」ペコ
マーベル「どういたしまして。ところで君……この子、迷子なのかい?」
クロシュ「あ、うん……」
マーベル「じゃあお兄さんも一枚もらっていいかな? 手伝うよ」
ティセリア「……! 私も手伝います、一枚もらっても良いですか?」
クロシュ「うん……」
ピラッピラッ
マーベル「……フメイちゃんて言うのか。君にそっくりだけど、双子とか?」
クロシュ「あ、えと……わたし、フメイちゃんの姿に、化けてて……」
デロデロ
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
マーベル「なるほど」
ティセリア「状況はわかりました」
デロデロ
クロシュ「……よろしく、お願いします……」ペコリ
紫髪のエルフ幼女「……こんなところで何をしているんですか、ティセリア」スタスタ
ティセリア「あっ、ごめんなさい! それでは失礼します、お探ししますからね!」タタッ
マーベル「おー、流石首長殿はお忙しいねえ」
「……マーベル」スタスタ
マーベル「っと、俺にもお迎えか」
クロシュ「…………!!?」バッ
勇者サイン?「……? お前……あの時の……」スタスタ
マーベル「ん? 知り合いか? セイン」
セイン「……」
マーベル「なんだ、気になるな。もしかしてお前、こういう子が好みなのか?」ニヤニヤ
セイン「いや」
マーベル「はあ、相変わらず遊びのねえやつ。まあいい、行くぞ」ザッ
セイン「……ああ」
マーベル「んじゃまたな。俺も捜しとくけど見つかると良いな」ヒラヒラ スタスタ
セイン「……」ジッ
クロシュ「……」
セイン「……」クルッ スタスタ…
クロシュ「……」
*
―緑の国
郊外 農道
ヒュオオオ…
ヒラヒラ パシッ
フメイちゃんの迷子ビラ「」パタパタ…
アリシラ?「わお、フメイちゃんフメイちゃん、これ見て!」
フメイ「……? え、クロシュ!?」バッ
アリシラ?「ううん、この紙に描かれてるのはフメイちゃんのことみたいだよ。捜しています、だって」
フメイ「捜し、て……?」
アリシラ?「クロシュちゃんだよぉ! このインク、クロシュちゃんの粘液がちょっとだけ混じってるもん!」
フメイ「あ……クロシュ……」
アリシラ?「うふふ……フメイちゃんも愛されてるんだねえ……」
フメイ「……」グッ
アリシラ?「どうする? 会ってあげる?」
フメイ「……だめ。今はまだ……クロシュに、会えない……」
アリシラ?「も〜、強情なんだからぁ」
フメイ「……」
アリシラ?「そうは言ってもねえ、実のところ選挙の日までやることないんだよねぇ」
フメイ「じゃあ……その辺で寝てれば良い……」
アリシラ?「寝てるだけじゃ暇で死んじゃうよぉ」
フメイ「……アリシラの顔してるなら、もっとアリシラらしく振る舞って」
アリシラ?「うふふ……私はアリシラだよ?」
*
妖精「え、ええ!? あの勇者っぽいやつを見たって!?」
クロシュ「うん……」
ローガン「なんと……。この国に来ているのか……」
イリス「で、でもそれならクロシュちゃんが無事で良かったよ……!」
ミスティ「……流石に、この平和な国で事を起こそうなんて気はないってことかしら……」
ローガン「何にせよ、警戒は必要だな……。単独で人目の少ない場所に行くのはやめておいた方が良いかもしれん」
妖精「うへぇ……とんだ災難だよ全く……」
フォレスティナ滞在2日目です
↓1〜3 自由安価 何をする?
―精霊の泉
サラサラ…(水の流れる音)
イリス「おお〜、ここが精霊の泉……」
泉「」サラサラ…
イリス「……」
妖精「……」
クロシュ「……」
イリス「……精霊、見えない」
妖精「精霊が物理的に目視できる姿を見せることなんて滅多にないもん。ほとんどは自然の中に同化してるだけだから、いないわけじゃない」
イリス「ここでならもしかしたら、って思ったんだけどなあ……」
クロシュ「えと……どうして、精霊に……会いたかったの……?」
イリス「私、いつも木の杖を使ってるでしょ? この木、精霊樹って言って精霊の力を授かりやすい性質があるの。だから日頃のお礼を言おうかなあって思って」
妖精「あー、何か親しみやすい杖だなあって思ってたけど、それ精霊樹だったんだ」
イリス「うん。なんでか知らないけど私の属性とも相性が良いみたいで、師匠から頂いた大事なものなんだあ」
妖精「自然の属性を感じ取ったりとか、なんかイリスの属性ってただの複数属性じゃないっぽいよね。もしかして私たち妖精の仲間なんじゃない?」
イリス「そ、そうなのかな? でも妖精さんの魔法は原理も術式も全然わかんないよ、私」
妖精「……じゃあ妖精じゃないか。……あそうだ、自然の属性を感知する感じで精霊の気配でも探ってみれば?」
イリス「……ど、どうかなあ。精霊は感じ取れたことさえないし……」
妖精「自然の属性を感じ取れるイリスなら、自然と同化してる精霊を見つけられるかもよ」
イリス「わ、わかったよ。やれるだけやってみる……!」
↓1
01-70 わかりませんでした
71-90 気配がある?
91-00 見つけた!
イリス「むむむ……むむむむ……!」ムムム
イリス「…………だめだぁ!」バタッ
妖精「お疲れさま。まあそもそも普通の人間は精霊を感じ取れるようにできてないからね。自然を感じられるだけでも人間にしては十分凄いと思うよ」
イリス「うぐうう……『人間にしては』って枕詞が逆にすっごく悔しい……!!」
妖精「あっはは、褒めたつもりなんだけどなあ。まあ悔しさをバネに頑張りなよ」
イリス「うん……! ところでクロシュちゃんは?」
妖精「泉の……水の精霊と遊んでる」
イリス「え゛」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ キャッキャ
水の精霊『〜〜』キャッキャ
イリス「うぐううう!!! 私には見えないよおお!!」ジダンダ
◆
急用が入ってしまったため一旦休止いたします。本日中に再開できるかは未定です。あまり進んでいないのに申し訳ありません
昨日はすみませんでした。再開します
―冒険者ギルド 緑の国支部
ワイワイ ガヤガヤ
ミスティ「流石にここは賑わっているわね……酒場も併設されているし……」
ローガン「すまないな。わざわざ付き合ってもらって」
ミスティ「気にしないで。私もここのギルドの雰囲気を見ておきたかったし」
ローガン「では冒険者証の更新をしてくる。待っていてくれ」スタスタ
ミスティ「ええ……」
ミスティ「……」
ミスティ「……路銀にはまだまだ全然余裕があるけれど、せっかくだしどんな依頼があるか見ていきましょうか」スタスタ
依頼書「常闇の樹海調査員募集 報酬:極高」
依頼書「マンドラ大根の収穫手伝い募集 報酬:中」
依頼書「おうちの木がよわってるの たすけて 報酬:時価」
依頼書「選挙祭でのバックダンサー募集!! 報酬:中」
依頼書「畑の害獣駆除 報酬:中」
ミスティ「……いろいろあるわね。常闇の樹海調査員とバックダンサー以外なら、やれないこともなさそうだけど……」
↓1選択
1.マンドラ大根の収穫を手伝う
2.おうちの木を助ける
3.害獣駆除をする
4.今回はやめておく
依頼書「おうちの木がよわってるの たすけて 報酬:時価」
ミスティ「……」
ミスティ(拙い字……。書き手の不安と、藁にも縋りたい想いが伝わってくるかのよう……)
ミスティ(どう見ても、ロクな報酬は望めない……。時価というのも、ギルドがお情けで付けてあげた表記ということくらい私にもわかる……)
ミスティ(他の冒険者たちも、見向きもしない……。確実に、時間と労力の無駄だもの……)
ミスティ(……当然、私も………)
―
――
――――
―ある日
雪の降る街
キャハハハハ!! ウワアアア!!!
イヤアアアア!!! タスケテクダサイ!!
シンジャエー!!! キャハハハハ!!!
キャハハハハハハ!!! アバーッ!!
幼ミスティ「あ、あ……」ガクガク
ミスティ母「ごほっ……。ごめん、ね……。ミスティ……」
幼ミスティ「……マ、マ……」
ミスティ母「このソリに乗ったら……そのまま、じっとしていて……。それで……人のいるところに、着いたら…………助けてって……ごほっごほっ!」
幼ミスティ「やだ……やだ……! パパとママも、いっしょじゃなきゃ……!!」
ミスティ母「ごめんね……。ママは、もう……。パパも……」
近くで斃れているミスティ父「」
幼ミスティ「やだあ……!!」
ミスティ母「わがまま……言わない、の……。ミスティは……強い子、なんだから……」キラキラ…
幼ミスティ「ふ、え……」
トサッ…
ミスティ母「はあ、はあ……。ごめんね、ミスティ……。許してね……」グイッ
ポフッ(幼ミスティがソリに乗せられる音)
輝きと共に走り出すソリ「」キラキラ… スイーッ…
ミスティ母「……さようなら……ミスティ……」
ミスティ母「氷の精霊よ――どうかミスティを、お守りください――」
――――
――
―
ミスティ「……」
ミスティ「……」パシッ
依頼書「おうちの木がよわってるの たすけて 報酬:時価」ベリッ
ミスティ「……」スタスタ
ミスティ(馬鹿ね、私……。こんな依頼……受けたところで何の足しにもならないのに……)スタスタ
ミスティ(でも……この依頼主の不安が、恐怖が……私には、痛いほどにわかってしまうから……)スタスタ
ミスティ(ふふ……もう、イリスのことを馬鹿にできないわね……)スタスタ
*
ローガン「おお、ミスティくん。丁度冒険者証の更新が終わったところだ……む? それは依頼書かね?」
ミスティ「……ええ。ひとまず、先に謝っておくわ……」
依頼書「おうちの木がよわってるの たすけて 報酬:時価」ピラッ
ローガン「……ふむ。相わかった。君の意思でこの依頼書を持ってきたというのなら、謝る必要などない。同じパーティの一員として全力で取り組むのみだ」
ミスティ「ありがとう……」
*
―緑の国 露店通り
ミスティ「……というわけで突然で悪いのだけど……みんなにも手伝って欲しいわ……」
イリス「もちろん!! 改まって何事かと思ったら、まさかミスティがこんな依頼を持ってくるなんて……!」
妖精「確かに意外だなあ。ミスティってこういうのはけっこうドライだと思ってた」
ミスティ「……ガラじゃないのはわかってるわ……」
ローガン「フッ……私としては安心したがな。ミスティくんくらいの歳で感性を冷え切らせてしまうのはあまりに哀しいことだ」
ミスティ「そ、そういうものかしら……」
クロシュ「……」
ミスティ「ごめんね、クロシュ……。フメイ捜しも進んでないのに……」
クロシュ「ううん……。わたしも……この人の、つらさ……わかる、から……」フルフル
ミスティ「クロシュ……」
クロシュ「わたしも……助けて、あげたい……」
ミスティ「……ええ。助けてあげましょう……!」
*
―依頼主のおうち
弱った木のおうち「」
クロシュ「……!」
イリス「こ、これは……」
ミスティ「植物には詳しくないけれど……私にも、この木の具合が悪いことはわかるわ……」
ローガン「ひとまず依頼主に会おう。ドアの呼び鈴は……」キョロキョロ
ミスティ「これね」スッ
チリンチリン
ドアの向こう『だ、だあれ……?』
ミスティ「ギルドの依頼を見て来たミスティよ。連絡は来ているかしら」
ドアの向こう『あっ! い、いまあける……!』
ガチャッ
森妖精の子「こ、こんにちは。よろしくおねがいします」ペコッ
*
ミスティ「ふむふむ。症状が出始めたのは、大体一ヶ月くらい前……」
森妖精の子「う、うん……。さいしょは……木さんも、これくらいへーきへーきって言ってたんだけど……」
弱った木のおうち『……』
森妖精の子「どんどん、くるしそうになってって……。いまはもう、声もきこえなくなっちゃって……」ジワワ
森妖精の子「いらい……出しても……だれも、来てくれなくて……」ポロポロ
ミスティ「……」
ミスティ(……妖精。この木は、助かりそうなの?)
妖精(……ごめん。最初は、私が見れば病気の原因なんて一発でしょとか思ってたんだけど……私の知らない病気だ、これ)
ミスティ(嘘でしょ……)
妖精(……軽率な約束はできないよ。最悪のケースも想定しておいて)
ミスティ(……っ)
森妖精の子「でも……ミスティさん、来てくれた……! えへへ……これで、たすかるんだよね……?」
ミスティ「…………」
森妖精の子「……?」
ミスティ「全力を……尽くすわ……!!」
■緊急クエスト発生「おうちの木を助けろ!」
木の生命力:5/40(1日1減ります)
◆
―露店通り
ミスティ「……」ウロウロ
イリス「お、落ち着いてミスティ。まだ時間はあるんだから、きっとなんとかなるよ」
ミスティ「落ち着いてなんかいられないわ……! 妖精の見立てだとあと5日くらいしか保たなそうなのよ……!」
ローガン「5日もあるのか、5日しかないのか……。いや、そんな言葉遊びに意味はないな……」
クロシュ「妖精さん……。原因は……やっぱり、わかんないの……?」
妖精「うん……。あんな症状、初めて見た……。虫や寄生植物にやられてるわけでもないし……呪いの魔力も感じられなかったし……。そもそも精霊樹は精霊の加護を受けやすい木なんだから他の植物よりも丈夫なはずなのに……」ブツブツ
イリス「あ、あの木って精霊樹なんだっけ。じゃあ精霊に聞いてみるっていうのは……?」
妖精「もう聞いた。精霊たちにもわかんないし、もう加護もかけてるって」
イリス「そんな……」
ミスティ「……」
ミスティ「……聖域に侵入してくるわ」
妖精「!?」
イリス「!?」
ローガン「!?」
クロシュ「?」
ミスティ「世界樹には、あらゆる生命の傷病を癒やす果実が実ると聞くわ。その果実を取ってきて、おうちの木に与えれば……」
妖精「いやいやいや!!! 無茶だよいくらなんでも!!!」
イリス「そ、そうだよ!! 聖域への侵入は最悪極刑なんだよ!!?」
ローガン「落ち着き給え……!! 昨日の今日来たばかりの旅人が容易く侵入できると本気で思っているのか……!?」
ミスティ「……もうそれくらいしかないじゃない……! 原因がわからないとなれば、こっちも強硬手段を取るしか……!!」
妖精「ま、まだ完全に調査し尽くしたとは全然言えないでしょ! 気が早すぎるって!」
イリス「そうだよ! いつもの冷静なミスティに戻って……!」
ミスティ「冷静になったら、侵入なんて絶対にできないじゃない……!!」
ローガン「そ、それはそうかもしれんが……」
クロシュ「……」
↓1〜3多数決
1.ミスティさんを止める
2.擬態と反映魔法を使った侵入のお手伝いを申し出る
クロシュ「……わたし……擬態、できる……」
妖精「……は?」
クロシュ「……だから……侵入……手伝える、かも……」
ミスティ「クロシュ……!!」
妖精「はあああ!!!?」
イリス「く、クロシュちゃんまで……」
ローガン「お、落ち着くんだ、クロシュくん……!」
クロシュ「……あの、森妖精さん……おうちの木も、家族だった……。だから……きっと……あのおうちの木が、死んじゃったら……」
イリス「……」
ローガン「ぬう……」
妖精「でも……だからって、そんなに慌てなくたって……」
クロシュ「……ごめんなさい。でも……わたしも……すぐにでも、助けたい……」
ミスティ「クロシュ……ありがとう……。でも極刑の危険があるから、あなたはサポートだけしてくれれば……」
クロシュ「ううん……。わたしの方が……スライムだし、擬態できるし、ちょっと隙間があれば隠れられるから……向いてると思う……」
ミスティ「…………じゃあ、こうしましょう。私が司令官で、あなたは私の命令に従って聖域に侵入しただけの何も知らないスライム……こういう筋書きでどう?」
クロシュ「……? よくわかんないけど……うん」
ミスティ「決まりね。絶対に成功させるわよ……!!」
クロシュ「ん……!」
妖精「ああもう……」
イリス「なんだか大変なことに……」
ローガン「せめて私たちにできることは……」
*
―深夜
緑の国首都中央 聖域前
馬頭の警備「……」
エルフの警備「……」
ミスティ「……やっぱりいるわね、警備が……」
クロシュ「うん……」
ミスティ「作戦通りに行くわよ……」
妖精「ねえ、警備を突破しても世界樹の結界はどうするつもりなの?」
ミスティ「それは――」
↓1
01-40 無策
41-70 反映魔法で精霊の気配を纏う
71-90 ティセリアに擬態
91-00 精霊化
クロシュ「ん……!」フォン―
精霊装クロシュ「……」パァ…
妖精「! クロシュ、こんなこともできたの……!?」
ミスティ「……クロシュがいなかったら、どうにもならなかったわ」
精霊装クロシュ「ん……。でも……姿までは……精霊みたいに、消せない……」
ミスティ「十分よ。道は私が開くわ……」キラキラ…
宙に浮く無数の氷の粒「」キラキラ
ミスティ「騒ぎを起こすから、その間に頼むわ!」シュバッ
精霊装クロシュ「ん!」
妖精「……クロシュ一人じゃ心配だから私も行くよ。懐に入れて」
精霊装クロシュ「! うん……!」
*
エルフの警備「ふわあ……。どうせ結界があんだから警備なんていらないと思うんだけどなあ」
馬頭の警備「眠イノカ?」
エルフの警備「そりゃ眠いさ。昼間起きて夜に寝るのが普通だからな」
馬頭の警備「ソウカ……ム?」
――バラララララッ
降り注ぐ大粒の雹「」バララララララッ!!
エルフの警備「うおおおおおおお!!? いたたたたっ、なんだなんだ!?」
馬頭の警備「ムムッ!?」
突然の落雷「」ドガアン!
降り注ぐ鋼の槍の雨「」ビュンビュン!
エルフの警備「うおあああああああ!!! 異常気象だ、異常気象だ!!!」
馬頭の警備「敵襲! 敵襲!! 増援ヲ遅レ!!」
*
―結界前
精霊装クロシュ「……」ヒョコヒョコ
妖精「ずさんな警備だったなあ……。さて、あとは結界を抜けられるか……」
聖域の結界「」
精霊装クロシュ「……」スッ
聖域の結界「」トプン…
妖精「本当にいけた……。やるなあクロシュ」
精霊装クロシュ「えへへ……。あ、でも妖精さんは……」
妖精「私? 私も通れるよ。ダメだったら私がクロシュも通してあげようと思ってたし」トプン
精霊装クロシュ「ほえ……」
妖精「私たち妖精も精霊の親戚みたいなもんだからね。とにかく早く行こ。あんまりのんびりしてたらバレちゃう」パタパタ
精霊装クロシュ「ん」トテトテ
*
―聖域
世界樹の麓
天に向かって聳える世界樹「」キラキラ…
クロシュ「わあ……!」
妖精「……さて」
クロシュ「えっと、くだものは……」キョロキョロ
妖精「……や、果実を採っていくのは流石にまずい。葉っぱにしとこう」
クロシュ「ふえ……?」
妖精「世界樹の果実には確かに癒やしの力があるけれど、あれの本来の役割は全然別だから。私たちが私的な目的で勝手に採って良いものじゃないの」
クロシュ「う、うん」
妖精「葉っぱを煎じればそれでも十分癒やしの力は得られるから、とりあえずはそれで――」
世界樹の精霊「…………」ジーッ
妖精「げっ!!」
クロシュ「!」
世界樹の精霊「……妖精と……スライム? 精霊の気配を纏っているけれど……」
クロシュ「あ、え、えと……」アタフタ
妖精「こ、こんばんは。ちょっと葉っぱの剪定をしに……」
世界樹の精霊「葉と言えど勝手に取らないで欲しい。それはみんなの生命でできているの」
妖精「そ、そこをなんとか……!」
クロシュ「なんとか……!」
世界樹の精霊「何に使うの?」
妖精「……友達の住んでる木が弱ってるんだ。それを癒やすために、葉が欲しい」
世界樹の精霊「……みんなの生命を、不公平に分けるの?」
妖精「それを言うなら、あの木はよくわからない病気で不公平に苦しんでるんだよ。帳尻を合わせるだけ」
世界樹の精霊「……」
↓1
01-05 妖精警備「そこで何してるの!」
06-30 だめ
31-95 いいよ
96-00 ??
世界樹の精霊「……だめ。不条理も含めて……循環は、公平」
妖精「ケチ!」
世界樹の精霊「……ケチ、なの?」
クロシュ「え? えと……」
妖精「ケチだよ! いっぱいあるんだからちょっとくらいいいじゃん!」
世界樹の精霊「…………」
世界樹の精霊「……落葉なら、持っていって構わない」
妖精「え! 本当!?」
世界樹の精霊「……本当は、落葉も大事な生命の欠片だけど……ケチと言われるのは……心外……」
妖精「……! ありがとうございます、世界樹の精霊様!」ペコッ
クロシュ「ありがと、ございます」ペコペコ
世界樹の精霊「……釈然としない」
*
世界樹の精霊「……一つ、良い?」
クロシュ「?」
妖精「な、何? 今更返せなんて言わないでよ?」
世界樹の精霊「ケチじゃないもの……。そうじゃなくて……一つだけ、お願いを聞いて欲しい……」
クロシュ「おねがい…?」
世界樹の精霊「……緑の森の一部に、嫌な気が広がっている。その弱っている木も、多分それやられたのだと思う」
妖精「嫌な気……?」
世界樹の精霊「正体は……私にも、わからない……。だから……あなたたちに、その原因を突き止めて修正して欲しい」
妖精「……わかったよ。私も気になるしね。あ、でもそれって本来は私たちみたいな外様じゃなくて、この森に棲む者たちがすべきことじゃないの?」
世界樹の精霊「あなたは……ここの妖精じゃないの……?」
妖精「違います」
世界樹の精霊「そう……? 一応、ティセリアにも伝えてある。でもティセリアには……いろいろなしがらみがあって、難しいみたい……」
妖精「はぁ〜、そういうこと……。まあわかった。私たちも調べてみるよ」
世界樹の精霊「お願い……。スライムの、あなたも……」
クロシュ「あ、うん……!」
世界樹の精霊「ふふ……精霊の気を纏えるスライム、初めて見た……。また、いつでも遊びに来てね……」
クロシュ「うん……!」
妖精「いや、見つかったら極刑だからね!?」
*
―結界前
バララララッ
ミスティ「くっ……! クロシュ、妖精……まだなの……!」
ローガン「このままでは我々が見つかってしまう!」
イリス「だ、大丈夫だよ! もうすぐ来る……ほら!」
精霊装スライムクロシュ「……」モニョモニョ
クロシュに取り込まれている妖精「……」モゴモゴ
ミスティ「クロシュ! 妖精!」
ローガン「来たか……! 退くぞ!」
イリス「よおし最後にもう一発!」
落雷「」ドガアン!!
◆
―明け方
おうちの木
妖精「世界樹の落葉を煎じて作ったお茶を……」
ミスティ「根本に……かけるわ……!」
世界樹のお茶「」トプトプトプ…
弱っているおうちの木「……」
少し元気になったおうちの木「……」ググ…
森妖精の子「……あ……まだ、くるしいの……?」
少し元気になったおうちの木「……」
森妖精の子「うぅ……」
ミスティ「……だめ、だったの?」
妖精「ううん。だめだったわけじゃない。少しだけど、体力は回復したみたいだし。でも落葉程度の力じゃ、焼け石に水かも」
ミスティ「果実や、新鮮な葉は……」
妖精「流石に、多分無理……。世界樹の精霊に見つかっちゃってるし……」
ミスティ「……やはり、原因を排除しなければどうしようもないってことね」
妖精「うん。でも精霊からいろいろ聞いてきたから、やりようはあるよ」
ミスティ「……わかったわ。クロシュ、妖精……今回は……本当に、ありがとう……。私の我儘で、あなたたちを危険に晒してしまったわ……」
クロシュ「えと……ううん」
妖精「……まあ、結果的にいろいろ収穫はあったから良し」
クロシュ「うん。わたしも……自分で、行っただけだもん」
ミスティ「……本当に、ありがとう。恩は必ず返すから」
妖精「ふふっ、じゃあ楽しみにしてる」
クロシュ「ん……!」
☆木の生命力が2回復しました
◆
―緑の国フォレスティナ 滞在3日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・おうちの木を助ける(木の生命力[6/40])
・木の病気の原因を突き止める
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
……………………………………………………………………………………
―朝
大樹の宿 ロビー
妖精「ふわぁ……。流石に、眠い……」
イリス「お疲れ様……。とりあえず上手くいって良かったよ」
ミスティ「ええ……。でも、まだ解決したわけじゃないわ……」
イリス「……嫌な気、だっけ。一体何なんだろう……」
ローガン「ううむ……。まだこの国で何が起きているのかもわからん。情勢を調べてみても良いかもしれんな」
妖精「ティセリア……っていう、現首長に話を聞きに行くのも良いかもね。まあ、忙しいから簡単には会えないかもしれないけど」
クロシュ「えと……弱ってる、木さんから……嫌な気を辿ってみるのは……?」
妖精「うーん……私にも他の妖精や精霊たちも、その気配にすら全然気付けてないんだよね……。普通の毒気や瘴気なら気付けると思うんだけど……」
イリス「一体、何なんだろ……」
ミスティ「……絶対、突き止めましょう」
フォレスティナ滞在3日目です
↓1〜3 自由安価 何をする?
安価が出揃ったところで本日はここまでです。次回は首長に会いに行く編と妖精の昔の伝手編と選挙飛び入り編です
緑の国編における役者も出揃ってきました。それぞれが様々な思惑で動いているようです。一体この国はどこへ向かうのでしょうか
なお実は>>1には政治とかの知識が全然ないので、今後の選挙描写で明らかにおかしかったり不自然だったりする箇所が出てくるかもしれません。ご容赦くださいませ
それでは本日もありがとうございました。明日もやれそうなので、よろしくお願いいたします
言われてみれば、ミスティ氏はクロシュちゃんたちをソリで送っていくのを提案した時から一貫してずっとお人好しですね……。ドライなのは表面上だけで、中身はぷるんぷるんに潤っているのかもしれません
ミスティ氏が住んでいた場所で何が起きたのかは、ミスティ本人にすらよくわかっていません。数少ない生き残りは、小さな子供のような笑い声を度々聞いたという証言をしていますが、今のところそれが何だったのか、犯人の声だったのかどうかさえもわかっていないようです。真相は闇に包まれています。なお似たような事件は大陸の各地で幾度か発生しており、冒険者ギルドを初めとした様々な国際組織が調査を続けています
妖精は緑の国の仕組みや情勢に少し詳しいように見えますが、当人は緑の国出身ではないと言い張っているようです。真相は闇に包まれています
―緑の国
首長官邸前
クロシュ「わあ……。でっかい木……」
イリス「というわけで首長さんのおうちに来てみました!」
ローガン「来てみたは良いが……アポなしで一介の旅人などに会ってくれるのだろうか……」
妖精「今は選挙前で忙しいだろうから、そもそも今ここにいるかどうかも……」
ミスティ「……悩む前に行動よ。呼び鈴を鳴らすわ!」ザッ
チリンチリン
↓1
01-10 マーベル「首長は留守だぜ」ヌッ
11-36 紫髪のエルフ幼女「お引き取りください」
35-65 紫髪のエルフ幼女「御要件は? 聞くだけ聞いてあげます」
66-90 ティセリア「あ、昨日のスライムの子!」
91-00 ティセリア「あれ……? あなた……もしかして!」
扉の向こう「どちら様でしょうか」
ミスティ「旅人のミスティよ。首長と話がしたいわ」
扉の向こう「首長は多忙の身です。お引き取りください」
ミスティ「……伝言だけでも」
扉の向こう「国民でもない旅人の陳情にまで耳を傾けていてはキリがありません。ご理解ください」
ミスティ「くっ……」
イリス「ど、どうするの……?」
クロシュ「……」
クロシュはどうする?
↓1
1.できることはなさそう
2.擬態してミスティの補助をする(誰に擬態するか要記載。成否はコンマ)
3.その他自由安価
クロシュ「……」チラッ
妖精「……?」
クロシュ「……」ジッ
妖精「……」
クロシュ「……」オロオロ
妖精「いやいや、言いたいことがあるならはっきり言え!」
クロシュ「え、えと……。妖精さん……ティセリアさんと……知り合いだったり、とか……しない……?」
妖精「しない」
クロシュ「あぅ……」
妖精「……まあ、言いたいことはわかった。ここの国民のフリくらいならできるし、やるだけやってあげる」
クロシュ「!」
ミスティ「……ごめんなさい、私からも頼むわ……。昨日から頼ってばかりで申し訳ないけど……」
妖精「いいよ。このままじゃ埒があかないのも事実だしね」
コンコン
扉の向こう「まだいたのですか。お引き取りくださいと言ったはずですが」
妖精「私はこの国の妖精だよ。話っていうのも、緑の森や木々に関わる大事なこと。国民の声なら聞いてくれるんだよね?」
扉の向こう「……」
↓1
01-05 ??
06-70 紫髪のエルフ幼女「魔紋は……確かにこの国の妖精のものですね。良いでしょう、聞いてあげます」
71-95 ティセリア「あれ……? 妖精!?」バァン
96-00 ??
扉の向こう「魔紋は……確かにこの国の妖精のものですね。良いでしょう、お入りください」
扉「」ギィ…
ミスティ「……!」
妖精「よし、じゃあ入ろっか」
*
―首長官邸
応接室
ふかふかのソファ「」ボフッ
イリス「わぁ……。木の中だけど、大樹の宿とはまた違って気品のある内装……!」
紫髪のエルフ幼女「官邸は首長の住居であると同時に、執務を執り行う施設ですから。内装も相応しいものとなっています。それで、御要件は――」
妖精「……郊外の、ある精霊樹の家が不可解な病気にかかって死にかけてる。原因を知っていたら教えて欲しい」
紫髪のエルフ幼女「……その件ですか。同様の事例は既にいくつか報告を頂いております」
ミスティ「……! じゃあ……なぜ放置しているのかしら」
紫髪のエルフ幼女「放置しているわけではありません。しかしながら私共も正確な原因は未だ掴めておらず、解決の見通しが立っていないのです」
妖精「……正確じゃない原因は?」
紫髪のエルフ幼女「……お答えできかねます」
ローガン「……何か知っていることがあれば、教えて頂きたい。住む場所を失いかけている妖精もいるのだ」
紫髪のエルフ幼女「何も答えることはできません」
妖精「……緑の森と自然を一番大切にするのが伝統派でしょ。下らないしがらみなんかの為にその理念まで捨てるつもり?」
紫髪のエルフ幼女「……」
紫髪のエルフ幼女「お引き取りください」
妖精「かーっ! 何も変わってないどころか悪化してんじゃん!! もういいよこんな国!! 森が滅んだら次は世界樹、その次は世界そのものだよ!! バーカ!!!」パタパタ
イリス「ああっ、妖精さん!」
ミスティ「くっ……ありがとう、ございました」ペコッ
ローガン「……ご多忙のところ、時間を取って頂き感謝する。お互い後悔のないように生きたいものですな」
紫髪のエルフ幼女「……ええ。そうですね」
ローガン「それでは」
ガチャ バタム…
紫髪のエルフ幼女「……」
紫髪のエルフ幼女「好き勝手言ってくれて……。何も知らない癖に……」グッ
◇
―首長官邸前
妖精「あーやだやだ!! だから嫌いなんだよ、こんな国!」プンスコ
イリス「妖精さん、どうどう……。お水飲む? 水魔法で作ったやつだけど……」
パシッ
妖精「飲む! んぐ、んぐ……」ゴクゴク
ミスティ「……お話を聞く作戦は失敗だけど……」
ローガン「うむ。次善の策を立てておいて正解だったな」
ミスティ「ええ……。噂をすれば……」
官邸の隙間から這い出てきたスライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
妖精「クロシュ!」
イリス「クロシュちゃん!」
ミスティ「首尾は……いえ、一旦宿に戻りましょう」
ローガン「うむ……!」
◆
―大樹の宿 客室
クロシュ「……これで……いい?」
クロシュが盗み見て版画印刷した伝統派内部資料「」ペラッ
妖精「こ、これは……」
ミスティ「……革新派の森林開発計画……!?」
イリス「ええ……!? なんで革新派の計画が伝統派の資料に……!?」
ローガン「ここを見てみろ……!」
ミスティ「革新派の大規模森林開発計画を秘密裏に支援……ですって!?」
妖精「……嘘でしょ。ティセリアの、血判まで……」ワナワナ
ローガン「計画によると開発に着手したのはおおよそ一ヶ月と少し前……。依頼主の家の木が弱り始めた時期と合致する……」
イリス「で、でも、革新派が選挙に勝ったわけでもないのに勝手に開発なんか始めちゃだめなんじゃないの!?」
ローガン「……現政権の首長が承認しているのだ。恐らく法的には問題のない行為だろう」
ミスティ「この分だと……選挙も、もしかしたら……」
ローガン「……票を偏らせる工作くらいはしていてもおかしくないだろうな」
イリス「ど、どうして……。伝統派と革新派って、水と油みたいな関係なんでしょ?」
妖精「……知らないよ。わかってるのは……伝統派も、もう既に内の内まで腐りきってたってことだけだ!!」
クロシュ「よ、妖精さん……」オロオロ
ローガン「落ち着き給え……! 革新派と伝統派の間に何らかの取引があったのは間違いないだろうが、この資料からは伝統派にとっての利点が一切読み取れん。伝統派が一方的に開発支援をするばかりで、その見返りなどについては何も書かれていないのだ」
ミスティ「それは、つまり……?」
ローガン「……どちらか片方に利点のない共同関係など通常は成立せん。個人ならともかく組織なら尚更だ。それが成立しているということは――」
イリス「……お金? 票?」
ローガン「いや、伝統派の組織理念からすると恐らくそのどちらでもない。これは――」
妖精「――脅迫」
ローガン「……根拠はないがな。しかしそうでもなければ、辻褄が合わん。それを一番わかっているのは、他ならぬ妖精くんだろう?」
妖精「……そうだね。ティセリアはぽやぽやしてるところはあるけれど……事情もなしに、こんな馬鹿なことをする奴じゃない。そうだったよ」
クロシュ「……!」
妖精「……でも……世界樹は文字通り、世界の樹だ。それを危険に晒さなきゃいけないほどの脅しって……何……?」
◆
―大樹の宿 客室
イリス「……こ、これからどうしよう?」
ローガン「……ううむ。開発計画が原因とすると、相手は革新派で……しかも裏には現政権である伝統派まで付いていることになる……」
ミスティ「……」
ローガン「……変な気は起こさないでくれたまえよ。世界樹の侵入は上手くいったが、今後もあのような危ないことをし続けるのは御免被るぞ……」
ミスティ「わ、わかっているわよ……。テロなんて考えてないわ……」
イリス「テロ!? あ、いや考えてないってことか……。良かったあ……」ホッ
ローガン「いや、考えてないのならなぜそんな物騒な単語が真っ先に出てきたのだ……」
ミスティ「気のせいよ……。ねえ……妖精は、この国の出身なんでしょ?」
妖精「……もう隠しても仕方ないか。そうだよ。まあ、いろいろあって今は放浪してるけど」
ミスティ「……ティセリア首長とも知り合いっぽい雰囲気みたいだけど……何か手はない? 例えば、とても強い影響力を持つ第三者の知り合いがいるとか――」
妖精「……」
↓1
01-05 いるにはいるけど……
06-35 元首長(故人)
36-65 元首長(病気)
66-95 元首長(隠居)
96-00 元首長(私)
妖精「いないいない、影響力の強い知り合いなんているわけないじゃん」
ミスティ「誰でもいいのよ。例えば、元首長とか……」
イリス「ミスティ、誰でもいいで出す例えじゃないと思う。元首長は」
ミスティ「そ、そうかしら……。まあ、とにかく誰でも……」
妖精「……」
ミスティ「……妖精? もしかして、心当たりがあるの?」
妖精「あー……いや……。その可能性は……考えてなかった、というか……」ダラダラ
ミスティ「いるの!? いるなら――」
妖精「いや……でもお……」
ミスティ「あの子の木のおうちが……世界の危機なのよ! 苦手な人物だったら、交渉は私たちがするから……! お願い……!!」
妖精「こ、交渉は、大丈夫っていうかぁ……」
クロシュ「……?」
ローガン「……一体何が問題なのだ?」
妖精「えっと……その、ね……?」
イリス「うん……」
妖精「すっごい昔だけど……。私……首長、やってたこと……あったり……」
ミスティ「え――」
ローガン「な、に――」
イリス「えええええええええ!!!?」
クロシュ「わあ……!」キラキラ
*
妖精「と言っても、本当に昔のことだよ。もう覚えてる人もほとんどいないくらい、ずっと昔。長命種の中でも記憶力の良い奴が時々覚えてるかもって程度だと思うし……影響力に期待は……」
ミスティ「ロビーの本棚に歴代首長名鑑があったわ! これによると――」パラパラッ
妖精「や、やだ! 見ないで……!」
〈歴代首長名鑑〉パラッ
◇妖精
第1期から第250期まで連続で首長を務めた、初代にして歴代最長記録を持つ首長。建国の太母と呼ばれる。
各種族の調停、インフラ整備、規範・法の導入、教育の徹底等、1000年の時をかけて緑の国を強く美しく育てあげた。
他の妖精と同様に愛らしい幼子の姿をしていたが、その心奥には深い知性と慈愛を秘めていた。
彼女は最後の任期を終える瞬間まで、他の妖精たちと同様に自らの名は持たず、ただ『妖精』とだけ名乗り続けた。
最後の任期を終えた後、惜しまれる拍手喝采の中で一人静かに緑の森の奥へ姿を消したとされる。
ミスティ「挿絵に描かれてる人物とも特徴が完全に一致してる……!」
イリス「ええっ……!! 元首長どころか――」
ローガン「……建国の太母、だと――!?」
クロシュ「妖精さん……! すごい……!!」
妖精「……ま、まあ……そんなやつ、らしいよ……。私……」
ミスティ「影響力に期待どころじゃないでしょ!! あなたが立ち上がれば、緑の国はきっと――」
妖精「いや、だから誰も覚えてないって! 初代首長を名乗る精神異常妖精だと思われるだけだよ!」
ローガン「いや、他の妖精や精霊、エルフ、トレントなどの長命種であれば覚えている者もいるはずだ……!」
妖精「エルフとトレントはともかく、普通の妖精や精霊は記憶力が悪いから覚えてないと思う……。世界樹の精霊も私のこと覚えてなかったし……」
ミスティ「でも覚えている者がいることに変わりはないわ……!」
妖精「そ、そうかもしれないけどぉ……」
イリス「……初代首長、建国の太母の大いなる帰還だよ。腐った国を叩き直す為に、世界の果てから還ってきたんだ……!! 革命――ううん、これは――大政奉還の時だよ!!!」
妖精「ひ、ひええ……もうそれしか、ないの……?」グニャァ
◆
―緑の国
露店通り
ワイワイ ガヤガヤ
ティセリア「緑の森を守り、世界樹を守り、全ての生命を守っていく所存です! どうか世界の為に伝統派へ清き一票を!」
ワーワー ティセリアチャーン!!
マーベル「伝統なんて古い古い! これからは都市開発と娯楽の時代だ!! 外貨を稼いでもっと豊かに暮らすのが時代の流れだぜ!」
キャー! マーベルサマー!!
マーベル「……」ニヤ
ティセリア「……っ」
「生命? 外貨? そんなものにこだわって何になるの。こんな、泡沫みたいな世界で――」
ザワザワ エッダレ?
ティセリア「え――? その、声――」
マーベル「ああん――?」
妖精「どうせ全ては、終わりゆく運命。哀しみからも苦しみからも、決して逃れられない。だから――」ヒラヒラ
妖精「私が、導いてあげる。哀しみも、苦しみも乗り越えた先――最期の楽園へ―――」キラキラ…
クロシュ「わ、わー!! 行きたい! 楽園、行きたい!!!」
ミスティ「ね、ねえあれって建国の太母じゃない!!?」
イリス「ほ、ほんとうだー!!! どう見ても初代から千年もの間フォレスティナを支え続けた初代首長にして建国の太母の妖精さんだー!!!」
ローガン「建国の太母の帰還だあああああ!!!!」
ザワザワ エッマジ!? タ、タシカニミオボエガ…
ティセリア「あ……あ、あ……」ジワッ
マーベル「ウッソだろ……」
↓1 選挙活動結果(99クリティカルのため超有利)
01-60 歓声
61-90 大歓声
91-00 ハーピィ記者「プロパガンダならお任せあれ!」
ワアアアアアア!!!
キャーヨウセイチャーン!! オレモツレテイッテクレーッ!! タイボサマァァァァ!!!
妖精「みんな、ありがとう。きっと――導いてあげるから――」カリスマァ…
*
―夜
大樹の宿 客室
イリス「やったねえ!! 大歓声だったよ、大歓声!!」
ミスティ「初動はバッチリね……!! 凄いオーラだったわ、妖精……!!」
ローガン「これで〝復権派〟は一気に知れ渡ったはずだ……!!」
クロシュ「うん……! 妖精さん……かっこよかった……!」
妖精「うへぇ……もうやだ……」ゲッソリ
◆
―首長官邸
首長の私室
ティセリア「……」
マーベル「……アレ、何ですか? 初代首長とか言われてますけど」
ティセリア「……知りません」
マーベル「伝統派ってのは初代首長の流れを汲んだ組織なんでしょ? なら知らないはずないじゃん」
ティセリア「ほ、本当に知らないんです」
マーベル「まあいいけどさ。でももし政権取れなかったら……王国にどう言い訳すんの?」
ティセリア「……」
壁「」ドンッ
ティセリア「!」ビクッ
マーベル「……わかってるよな? 今回、俺たち革新派が政権を取れなかったら……この国は、終わる」
ティセリア「……」
マーベル「本来なら、もうとっくに侵略されて奴らの植民地にされててもおかしくない状況なんだ。それをなんとかギリギリ保ててるのは、俺たち革新派が必死に交渉を続けてるお陰なんだぜ?」
ティセリア「……はい。わかっています……」
マーベル「王国には勇者がいる。戦争になれば……いや、戦争にすらならねえ。勇者が一瞬で電撃的に侵攻して、首長の首を獲って終わりだ。その後は……かつての魔族自治区のような、屈辱に満ちた支配が待っているだろう」
ティセリア「……」
マーベル「だが必死の交渉の結果、俺たち親王国の革新派が政権を勝ち取れば侵略だけは免れられる。最低限の尊厳は保てんだよ」
ティセリア「……無理矢理従わせられるよりは、率先して媚びを売った方がまだ待遇が良いかもしれないということですね」
マーベル「そういうこと。哀しいことにウチは王国の隣国なんだ。逃げも隠れもできねえ。植民地になるくらいなら、王国の靴を舐めて子分の地位を確保した方がマシだろ?」
ティセリア「……結局……王国の言いなりという点は変わらないですけどね」
マーベル「いいんだよ、今は言いなりで。勇者は人間だ、その寿命は俺たちよりずっと短い。今は下手に楯突かず、無害な腰抜け平和主義国家のフリして……勇者の寿命が尽きるのを待つんだよ。その間に外貨を稼いで、力を蓄えて、牙を研いで――勇者が死んだら、後はこっちのもんだ」
ティセリア「……あなたのその計画は、合理的だと思う。でも――」
マーベル「なんだよ? もしかして森林開発のこと、まだ納得できてねえの? 外貨を稼ぐにゃアレが一番手っ取り早いし、それに森しかねえこの国を近代化して楽しく暮らしやすくすんのは王国関係なく良いことだろ。王国を出し抜いても国際競争は続くんだ、古臭い価値観に囚われてちゃ負けるぜ」
ティセリア「……しかし、日に日に苦しみを訴える声が大きくなっています。急進的な開発はやはり――」
マーベル「大丈夫だろ。星脈の流れはちゃんと調べた上で開発してんだ、世界樹への影響はないと断言できる。そりゃいくつかの地区や木に悪い影響は出るかもしれねえが、今後見込める外貨収入を考えれば必要な犠牲ってやつだろ」
ティセリア「……」
マーベル「大局的に見ろよ、おばさん。1500年も生きてりゃわかるだろ?」
ティセリア「……お黙りなさい。若造」
マーベル「おっ、反抗的だなあ。王国の犬である俺にそんな態度取って良いんですか?」スッ
ティセリアの顎「」クイッ
ティセリア「くっ……自分から、犬などと……。あなたに、エルフの誇りはないのですか……?」
マーベル「誇りで国が守れるかよ」
ティセリア「……そう」
マーベル「…………王国の侵略を許せば、一番危ないのはあんたなんだ。わかってんのか」
ティセリア「だから何です……」
マーベル「……」
ティセリア「……?」
マーベル「別に。俺にも守りたいもんがあるってだけさ」スッ
◆
投票日まであと――
↓1コンマ
01-50 4日
51-80 5日
81-00 6日
―緑の国フォレスティナ 滞在4日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・おうちの木を助ける(木の生命力[4/40])
・木の病気の原因を突き止める
・選挙で勝つ
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
……………………………………………………………………………………
―朝
大樹の宿 客室
妖精「はああ〜〜〜……。外に出たくない……。引きこもっていたい……」ゴロゴロ
スライムクロシュ「〜〜…」モニョモニョ
ミスティ「よ、妖精……なんとか……立ち上がってもらえないかしら……。無理を強いているのは、わかっているのだけれど……」
イリス「あ、あと5日しかないんだよ! もっと宣伝とかして知名度を上げていかないと! いくら伝説の太母でも、街頭宣伝一回だけじゃ……」
妖精「う〜ん……わかってるけどぉ……」ゴロゴロ
スライムクロシュ「!」ピコン!
デロデロ…ポンッ!
妖精クロシュ「……」ヒラヒラ
イリス「わっ! クロシュちゃん……! その姿は妖精さんの……!」
ミスティ「これは……かなり再現度が高い気がするわ……!」
妖精「う、うわあ……。なんかすっごい変な気分……」
妖精クロシュ「これで……わたしが……妖精さんの、代わりに……!」
妖精「……ちょっと、昨日の私を真似て演説とかしてみて」
妖精クロシュ「ん!」
妖精クロシュ「……生命は……どうしようも……ない……」
妖精クロシュ「みんな……どうにも……ならない……」
妖精クロシュ「えと……。だから……わたしが、みんなを……えと……救って……」モニョモニョ
妖精スライムクロシュ「〜〜……」モニョモニョ…
妖精「だめだこりゃ……。やっぱ私が出るしかないみたいだね……」スッ
フォレスティナ滞在4日目です(投票日までの残り行動可能日数5)
↓1〜3 自由安価 何をする?
というわけで安価が揃ったところで本日はここまでとなります
クロシュ一行、初代首長の妖精を立てて電撃参戦という急展開です。この流れは>>1の目をもってしても全く読めませんでした。実のところこの展開に一番うろたえているのは>>1かもしれません
何やら99クリティカルのせいで異常に設定の盛られた妖精さんですが、クロシュの保護者面をするお節介妖精というこれまでの姿勢は今後も変わらないのでごあんしんください。ただ、設定が盛られた分いろいろ融通がきくようにはなったかもしれません
それでは本日もありがとうございました。次回は多分また土日になるかと思います。よろしくお願いいたします
王国がラスボスかどうかはわかりませんが、大陸における影響力は宗教国家セクリエ・ロイエに次いで大きいと言えます。単純な軍事力で言えば世界最強です(勇者を抜きにしても実はかなり強いです)
クロシュちゃんも彼女なりに成長しているようです。穀潰しの誹りを受けることは多分もうないでしょう。中身はぼんやり赤ちゃんスライムなので、やや打たれ弱いところもあります
妖精さんは気楽な放浪生活の方が好きなようです。立候補にはあまり気乗りしていない様子ですが、一応建国者らしく緑の国に対する憂いはけっこうあるようです
イケメン金髪汚職エルフ氏はいろいろ考えていることもありそうに見えます。ところで彼は600歳ですが、1500歳のティセリア氏からすると若造のようです。フラナ氏があのやり取りを聞いていたら喜んでいたかもしれません
勇者は実際、兵士というよりは兵器のように考えられているかもしれません。こちらの世界で例えるならいろいろと融通が効く大量破壊兵器という感じだと思います。風雪新聞の過去の記事には勇者を「王国が保持する非人道的生物兵器」と揶揄し批判した記事があります
紫髪幼女エルフ氏は妖精のことを知らなかったようです。彼女が生まれた時代には妖精は既に緑の国を後にしていたと思われます。妖精が去った後の時代に生まれた世代に初代首長の威光が通じるかどうかは今後のがんばり次第でしょう(初回演説は好調だったため、割と上手くいくかもしれません)
―大樹の宿 客室
妖精「……いや、その前にもう一度ティセリアのとこに行こう。復権派からの会談申込みなら無視はできないでしょ」
ミスティ「ただの旅人でも国民でもない今なら、確かに昨日のように門前払いされることもなさそうね」
妖精「そういうこと。いろいろ直接聞きたいこともあるしね」
◇
―首長官邸前
チリンチリン
妖精「復権派の妖精だよ。ティセリアはいる?」
扉の向こう「……お入りください」
ガチャッ…
*
―首長官邸 応接室
妖精「……」
ティセリア「……」
紫髪のエルフ幼女「……」
ミスティ「……」
イリス「……」
ローガン「……」
クロシュ「……」ソワソワ
妖精「……久しぶりだね、ティセリア」
ティセリア「……はい。お久しぶりです、初代首長」
妖精「なに、改まっちゃって。妖精って呼べば良いじゃん、昔みたいに」
ティセリア「……昔話をしに来たわけではないでしょう」
妖精「……そうだね。じゃあ単刀直入にいこう。なぜ革新派の事業に協力しているの?」
紫髪のエルフ幼女「!!?」
ティセリア「……」
妖精「確かな筋からの情報でね。あなたたち伝統派が、革新派の森林開拓計画に加担してるのは知ってるんだよ。票の操作にも手を染めるつもりだと」
ティセリア「…………隠しても無駄のようですね」
妖精「そうだよ。洗いざらい話しちゃいなさい」
ティセリア「……確かに私たち伝統派は、革新派の事業に協力しています。次の選挙でも、革新派を勝たせるつもりです」
妖精「理由は何?」
ティセリア「……緑の国を、終わらせない為です」
*
妖精「……つまり、王国への白旗ってこと?」
ティセリア「……簡単に言えばそうです。私たち伝統派より、以前から王国と交渉を続けている革新派が政権を取った方がより安全で確実なので」
イリス(王国……!! こんなところでも……!!)ギリッ
ミスティ(……でも、これだと私たち復権派が勝ったら一番まずい展開になるんじゃ……?)
妖精「……大体わかった。抗おうともしないで奴隷の安息を選んだってわけだ」
ティセリア「……今更戻ってきた癖に、知ったようなことを言わないで。私たちの決断には、大勢のフォレスティナ国民の生命がかかっているのです」
妖精「……」
ティセリア「私たちのことを想うなら、参政を取りやめてください。突然のあなたの出現で国民は活気づいていますが、王国との緊張は高まりかねません」
妖精「…………森林開発も王国からの命令?」
ティセリア「……いえ。それは革新派の意向です。王国とは関係ありません」
妖精「……じゃあ、それはやめられるよね。現在進行系で民や木々を苦しませてどうするの」
ティセリア「…………それは……」
↓1
01-10 今更太母面しないで!
11-50 復権派が退くなら考えます
51-90 もう一度革新派とよく話し合います
91-00 ??
ティセリア「……復権派が、今回の選挙から退くなら考えてあげます」
妖精「……今苦しんでる民より、不正選挙が滞りなく進むことの方が大事なの?」
ティセリア「……不正は不正でも、国が存続するための不正……必要悪です。それに革新派の事業も、今後の緑の国の国際競争力を培う意味では大きな価値のあるものだと私は考えています」
妖精「未来のためなら、不正を許容し今を苦しむ民も切り捨てるってことか」
ティセリア「……はい」
妖精「……成長したね。草木の一本一本を慈しみ、虫一匹殺せなかったあの精霊の申し子ティセリアちゃんが、こんな冷徹な判断を下せるようになっていたなんて」
ティセリア「……っ」
妖精「よくわかったよ。もうあなたは立派な為政者で――そして私の政敵だ。新参の立候補者として、全力で立ち向かわせて頂く」
ティセリア「……!? ま、待ってください! 話を聞いていなかったのですか!? 復権派が退くなら考えると――」
妖精「為政者の『考える』を信用してやれるほど耄碌したつもりはないから。私も昔よく言ったしね」
ティセリア「……!」
妖精「私が勝ったら民の苦痛も王国の侵略も全部平穏無事に解決してやるから、安心して首長の座を譲りなよ」
ティセリア「……」
妖精「じゃ、そういうことで。行くよ、みんな」フワッ
イリス「あ、うん!」
ミスティ「え、ええ……」ペコッ
ローガン「ありがとうございました……」ペコッ
ガチャッ… バタン…
*
ティセリア「……」
ティセリア「…………」ジワワ
ティセリア「………………」ポロポロ
紫髪のエルフ幼女「ティセリア……」
ティセリア「……どうすれば……良かったの……。どうして……」ポロポロ
紫髪のエルフ幼女「…………マーベルも、妖精も……どいつもこいつも、自分勝手すぎるんです……!」
ティセリア「…………」ポロポロ
スライムクロシュ「……」モニョ
なんとなく気になってこっそり残っていたクロシュが、首長の涙を目撃してしまいました
何かしますか?
↓1
1.少しだけ謝っておく
2.そっとしておく
3.自由安価
スライムクロシュ「……」デロデロ
クロシュ「あの……」
ティセリア「!!?」
紫髪のエルフ幼女「曲者!!」バッ
クロシュ「ひゃっ!」
ティセリア「待って! あなたは……そういえば、ビラを配っていた――」
紫髪のエルフ幼女「……! あの時のスライム……妖精のお供だったの……?」
クロシュ「うん……。えっと……ごめんなさい」ペコリ
ティセリア「えっ。ど、どうして謝るのですか?」
クロシュ「えと……妖精さんが……ひどいこと、言ったから……」
ティセリア「……いいえ。妖精の言ったことは、間違っていません。私は……冷徹な、為政者なのです」
紫髪のエルフ幼女「違います! ティセリアは……誰よりも優しくて、民想いで……今回の決断だって、ティセリア自身がどれだけ苦しい気持ちを抑えてるか……!!」
ティセリア「サリー!」
紫髪のエルフ幼女「あっ……も、申し訳ありません……」
クロシュ「……本当は……ティセリアさんも……いやなの……?」
ティセリア「……嫌、では……」
クロシュ「……いやなら……やだって、言った方が……良いと思う……」
ティセリア「……」
クロシュ「えと……妖精さんも……ティセリアさんが、やだって言わないと……きっと、わかんないから……」
ティセリア「……」
クロシュ「……えと……それじゃあ……私も、帰るね……。お話……ありがと、ございました……」デロデロ
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
ズルズル…
ティセリア「……ぐすっ。ふふっ……かわいいお供を連れているのですね……妖精は……」
紫髪のエルフ幼女「……!」
ティセリア「嫌なことには、やだって言え、かあ……。首長の身でそれは……難しいなあ……」グスッ
紫髪のエルフ幼女「……。良いんじゃないですか。首長が、嫌なことにやだって言っても」
ティセリア「でも……」
紫髪のエルフ幼女「どうせ復権派の台頭で今回の選挙は大荒れです。国内世論もどこへ向かうかわからない。それなら好きにやりましょうよ」
ティセリア「……少しだけ、考えさせて」
◆
―首長官邸前
妖精「う〜ん……言い過ぎたかなあ……。でも政敵である以上手加減するのは失礼だし……」フヨフヨ
イリス「お疲れ様、妖精さん……!」
ミスティ「政治のことはあまりわからないけれど、ティセリアさんの言い分も一理あると思ってしまったわ……」
ローガン「うむ……。これについてはどちらが正解というわけでもないからな。だが戦うと決めた以上は、我々も全力で票を取りにいかなければならん」
ミスティ「ええ……わかってるつもりよ……」
スライムクロシュ「〜〜」モニョニョ
妖精「あ、クロシュ! 遅いよ、何してたの!」
クロシュ「え、えと……。ティセリアさんと……ちょっとだけ、お話……」
ミスティ「えっ、ティセリアさんと……!?」
クロシュ「えと……ティセリアさん……泣いてた……。だから……妖精さんがひどいこと言ってごめんなさい、って……」
イリス「な、泣いて……」
ミスティ「……傷付いていたのね……」
ローガン「妖精くん……」
妖精「わ、悪かったよお……! でもティセリア……根っこは、昔のままなのかなあ……」
ミスティ「……彼女の心根がどれだけ優しいとしても……それで今を苦しむ民が救われるわけではないわ。それは違えないようにしないとね……」
◇
―革新派事務所前
ミスティ「というわけで今度は革新派の事務所にやってきたわ……。この国どころか大陸中でも珍しい、鉄筋建築ね……」
イリス「首長への陳情がだめだったなら、革新派に直接文句を言おうってことだね!」
ミスティ「ま、まあそうね……。ちょっと短絡的かしら……」
妖精「聞いてくれるとは思いにくいけど、革新派の頭と話をしてみたいとは思ってたし丁度良いよ」
ローガン「しかし革新派は強引な森林開発や親王国路線など、やや不穏な姿が見え隠れしている。警戒はすべきだろう」
ミスティ「そうね……。荒事になることはないと思うけれど、最低限の警戒はしておきましょう……」
クロシュ「……」
ミスティ「それじゃあ、呼び鈴を鳴らしましょうか……」
チリーン
↓1
01-30 セイン「……」ヌッ
31-90 マーベル&セイン
91-00 マーベル1人
ガラッ
セイン「……」ヌッ
クロシュ一行「!!!?」
セイン「…………」
妖精(なんで勇者がこんなとこにいるの!!?)
イリス(し、知らないよお〜!!)
ミスティ(ま、まさか二日目辺りでクロシュが出くわしたのって――)
クロシュ(え、えと……)
ローガン(革新派に潜んでいたというのか!?)
セイン「……」
セイン「……マーベルは留守だ」
ミスティ「え、ええと……そ、そうなのね……」
セイン「ああ」
セイン「……」ジッ
クロシュ「……?」
セイン「……」
妖精「……クロシュに何か用?」
セイン「……クロシュと言うのか。その……影のスライムは」
クロシュ「……? うん」
セイン「……」
妖精「……ちょっと。相手の名前だけ知って、自分が名乗らないのは失礼じゃないの」
セイン「……失礼した。僕はセイン。革新派マーベルの……護衛だ」
ミスティ「……革新派の……護衛?」
イリス「……」
ローガン「……」
クロシュ「えと……魔族革命の時は……」
セイン「……何のことかわからないな」
クロシュ「……」
妖精(やめなさいクロシュ! 下手に突っ込んだら消されちゃうよ!)
クロシュ(う、うん……)
セイン「……茶でも飲んでいくか?」
イリス「えっ!」
ミスティ「お茶……」
ローガン「う、ううむ……」
↓1〜3多数決
1.飲んでいく
2.帰る
クロシュ「……うん」コク
妖精「クロシュ!?」
*
―革新派事務所
応接室
鉄瓶「」トプトプ
湯呑み「」ホカホカ
セイン「どうぞ」スッ
イリス「け、けっこうなお点前で……」
ミスティ「珍しい形のティーポットね……」
セイン「……この鉄瓶か? これは……マーベルがオノゴロ諸島を旅した時の土産物……だそうだ」
ローガン「ほう、これがオノゴロ諸島の製鉄技術か……! 私もいつか行ってみたいものだ」
セイン「物品の良し悪しは僕にはわからないが……これは良いものなのか」
ローガン「ああ、良いものだ。鋼魔法の使い手たる私が言うのだから間違いない。マーベル氏もなかなかお目が高いと見受けられるな」
セイン「そうなのか」
クロシュ「んぐ、んぐ」ゴクゴク
クロシュ「……おかわり……いい……?」
セイン「どうぞ。茶菓子も出そう」スッ
↓1〜2 話題や聞きたいこと
イリス「……セインくんって、勇者サインとはどういう関係なの? とてもよく似ているけれど……」
セイン「赤の他人だ。少なくとも、僕は勇者サインについて何も知らない」
イリス「そ、そうなんだ……」
セイン「ああ」
クロシュ「……」
セイン「……」
クロシュ「……」モジモジ
セイン「……別に、取って食ったりなどしない。聞きたいことがあれば聞け」
クロシュ「あ、えと……。じゃあ……」
クロシュ「……魔族自治区で……どうして……あんなこと……したの……?」
妖精&イリス&ミスティ&ローガン「!!!!」
セイン「……やはり、お前はあの時のスライムか」
クロシュ「……うん」
セイン「……」
↓1
01-75
76-95
96-00
セイン「……茶会は終わりだ」ガタッ
クロシュ「あっ……」
セイン「今の僕はマーベルの護衛。それ以外のことは知らないし、する気もない」
クロシュ「……」
セイン「影のスライムクロシュが今日ここに来たことは、忘れておく。さあ、早く帰れ」
クロシュ「……」
妖精「……帰るよ、クロシュ」
クロシュ「う、うん……」
*
―夕方
露店通り
イリス「……なんか……不思議な時間だったね」
ミスティ「ええ……。あの時の苛烈な光魔法を使う姿しか見ていなかったから……」
ローガン「……時折、年相応な表情を見せていたような気もしたが……ううむ……」
妖精「……はあ。クロシュが変に突っ込むから死ぬかと思った……」
クロシュ「ご、ごめんなさい……」
イリス「でも……セインくん、意外と良い人かも。クロシュちゃんのこと、忘れておくって……」
ミスティ「……釘を刺したとも取れるわ……。これ以上こちらに深入りするな、という……」
ローガン「一欠片の温情もなければ、釘を刺すまでもなく目撃者である我々は始末したはずだ。私は、彼は人としての善性を持っていると思いたい」
クロシュ「……」
*
―革新派事務所
セイン「……」
セイン「クロシュ……」
セイン「……」
セイン「……」チラッ
フメイちゃんの迷子ビラ「」
セイン「そういえば……マーベルが、言っていたな……」
セイン「……フメイって子を……捜している……女の子……」
セイン「…………」
セイン「………………???」
ズキッ
セイン「う、ぐっ……」ガクッ
セイン「なん、だ……頭、が……」
「あらあらあら、ダメですよ? 勇者が余計なこと考えちゃあ……」
セイン「……おま、え……は……」
「勇者は何も考えず、ただ神の御心のままに、聖務を遂行していれば良いのです。わかりますね?」
セイン「……」
「さあ、心を真っ白にして……。穢い雑念は勇者に相応しくありません……」コオオオ…
セイン「う……ぁ……」
バタッ…
「ふふ……」
◆
本日はここまでです。次回はフラナ氏へのお手紙編です
ティセリア氏を泣かせ、マーベル氏は留守で会えずお茶して帰っただけの復権派ですが、まあ残り日数はまだまだあるので多分大丈夫でしょう。一応将来のビジョンや王国対策なども考えておくと良いかもしれません
セイン氏は勇者サインと似ている容姿と似た名前ですが、その名前は誤字ではないようです。本人は赤の他人と言っていますが、その真相は闇に包まれています。今回のような交流を重ねればもしかしたら彼の口から何らかの真実を聞ける時もあるかもしれません
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
紫髪のエルフ幼女さんがティセリア氏に仕えている理由は今のところ明らかになっていませんが、強い信頼関係で結ばれていることは確かなようです。一方を説得すればもう一方も傾きやすくなります
セイン氏は突然お茶に誘う程度にはクロシュちゃんのことが気になっているようです。不意打ちとは言え、臨戦態勢に入っている彼に体当たりを命中させてよろけさせた存在が珍しかったのかもしれません
人間以外の種に対してどう思っているかはよくわかりませんが、今のところは悪く思っているわけではなさそうに見えます
何か怪しい人物が見え隠れしているような気がしますが、彼または彼女が黒幕となるかどうかは今後の展開次第とも言えます。クロシュちゃんは真の敵の姿を見極めることができるでしょうか
セクリエ・ロイエは影響力こそ大陸一ですが、現在の教皇は穏健派のため、少なくとも表立ってその影響力が行使されることはあまりないようです。ロイエ教の教えに従い、平和的な宗教活動を行ってます
ただ、穏健派と対立を深める急進派の勢力も決して小さくはなく、いろいろときな臭い動きがあるようです
アリシラ?さんはアリシラちゃんが知らないはずのことを知っていたり等、明らかに不可解な言動を繰り返しています。彼女が何なのかは現時点ではよくわかりませんが、選挙の日にフメイちゃんと何らかの行動を起こそうとしているようです。フメイちゃんは彼女をアリシラちゃんではないと思っているようですが、真相は闇に包まれています
―夜
大樹の宿 ロビー
イリス「はあ、今日はなんだか疲れたなあ……」
妖精「大したことはできてないんだけどねえ」
ローガン「うむ……だがまあ、収穫がなかったわけではない」
ミスティ「そうね……。ティセリアさんの意向もわかったし……セイン、という人のことも……少しわかったし……」
宿屋アルラウネ「お休みのところちょっと良い?」スッ
クロシュ「?」
イリス「はい、なんでしょうか?」
宿屋アルラウネ「お手紙が届いてるよ。イリス・プラネットさん宛」ピラッ
手紙「イリス・プラネット様」
イリス「! ありがとうございます……!」
宿屋アルラウネ「旅中のお手紙って良いわよね。じゃごゆっくり〜」
バタム…
妖精「手紙?」
イリス「うん。ここに来た時にフラナ師匠にお手紙を書いてね。その返事かも……!」
ミスティ「すっかりフラナさんの弟子ね」
イリス「えへへ……。ちょっと読んでくる!」パタパタ
ミスティ「……フラナさんは、亡くなったイリスの師匠の知人なのよね」
妖精「そう言ってたね。その師匠はイリスの育ての親でもあるみたいだし……やっぱり寂しいのかもね」
ミスティ「……」
クロシュ「……」
ローガン「……」
妖精「……あなたたちも……家族がいないのは、やっぱり寂しい?」
ミスティ「……そうね。でも今はあなたたちもいるし、平気よ……」
ローガン「……全く寂しくないと嘘になるが、時の流れは残酷なものでな……。家族のない寂しさにも、慣れてしまったよ」
妖精「そうなんだ……。クロシュは?」
クロシュ「…………わかんない……。でも……みんなのこと……思いだすと…………」
クロシュ「……」ジワワ
妖精「……そうだよね。まだ……」
ミスティ「……ハンカチよ」スッ
クロシュ「あり、がと……」グスッ
ローガン「……クロシュくんは、その集落を失ってまだ間もないのだったな……」
ミスティ「ええ……。フメイのこともあって心の整理を付ける暇もなかったろうし……」
クロシュ「……」
妖精「……フメイを説得したら、お墓を立てに行こうよ。きっと……まだ、あのままだろうし」
クロシュ「…………うん」
ミスティ「……ソリを走らせればすぐよ。だから……必ず、フメイを連れ戻しましょう……」
ローガン「フメイくんと共に、弔ってあげなさい。私もできる限りのことはする」
クロシュ「……うん。……ありがと……みんな……」
*
―客室
イリス「フラナ師匠からのお手紙……! えへへ、何が書かれてるかな……」ピラッ
↓1
01-05 ??
06-50 近況報告
51-95 選挙支援
96-00 私も旅行に来たわ
ガチャッ
ミスティ「どんなことが書かれてたか聞いても良い?」スタスタ
イリス「あ、うん! 師匠、包帯取れたんだって!」
妖精「ああ、なんか凄いぐるぐる巻きだったねそういえば……。他には……うわっ、何これ? 魔法の術式?」
ミスティ「妖精、人の手紙を勝手に読んだりしちゃだめよ……」
イリス「あはは。別に良いよ、減るもんでもないし。私が考案した術式についてフラナ師匠に添削してもらったの」
ミスティ「そ、そういう使い方もあるのね……手紙って……」
イリス「個人的にはかなり良い感じだと思ってたんだけどなあ。まだまだ無駄が多かったみたい……てへへ」
妖精「へえ、確かに添削後の方はかなり洗練されてるね。流石は吸血鬼の魔法使い」
イリス「あ、それと風雪のルフさんがダークヒーローイリスの連載にちょっと行き詰まってるらしくて、何かネタが欲しいそうなんだけど……何か良い案ある……?」
ミスティ「いや、知らないわよそんなの……。ルフが勝手に始めた物語でしょうが……」
妖精「勝手に人の名前を使っておいて行き詰まったら本人に泣きつくとか凄い面の皮だなあ……」
クロシュ「……!」ピコン
イリス「お、クロシュちゃん何か思いついた?」
クロシュ「うん……。えと……ダークヒーローイリスが……建国の妖精さんと一緒に、緑の国のみんなを苦しめる悪い人たちをこらしめるお話、とか……」
妖精&イリス&ミスティ「!!」
イリス「それだ!! この際だから風雪新聞にも協力してもらおう!!」
妖精「冴えてるじゃんクロシュ!!」
ミスティ「今こそ偏向新聞の使い所だわ!! 早速返事を書きましょう!!」
イリス「よおし、じゃあ緑の国の現況も添えて――」
☆ダークヒーローイリス 緑の国の悪代官成敗編のプロット案を送りました
◆
―緑の国フォレスティナ 滞在5日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・おうちの木を助ける(木の生命力[3/40])
・木の病気の原因を突き止める
・選挙で勝つ
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
……………………………………………………………………………………
―朝
郊外 弱った木のおうち
チュンチュン
弱った木のおうち「」カサッ…
森妖精の子「うぅ……ミスティさん……まだ……?」グスグス
ドドドドド…
森妖精の子「ふえっ!? な、なに……?」
ドワーフ開拓団「エッホエッホ」ドドドドド
森妖精「ど、ドワーフさん……? おおぜいで……どこに、むかってるの……?」
*
フォレスティナ滞在5日目です(投票日までの残り行動可能日数4、おうちの木の残り生命力3)
↓1〜3 自由安価 何をする?
―滞在5日目 朝
露店通り
妖精「風が哭き、大地はひび割れ、枯れ落ちる木々――。今この国を襲う諸問題を放置すれば、終末への刻は限りなく加速していく。私は、それを止めたいだけ――」キラキラ
ワーワー!! タイボサマ-!!
妖精「苦しみからは逃れられないけれど、それを最小限に抑えることはできる――。どうか――あなたの賢明な一票を――」カリスマァ
ワーワーワー!! ヨウセイサンカワイイ
*
クロシュの懐でぐったりしている妖精「」
クロシュ「えと……お疲れさま……妖精さん……」
ミスティ「本当にお疲れ様、妖精……。まだ朝ご飯前なのに、ありがとう……」
イリス「この国の朝は早いよねえ。もうこんなに賑わってるんだもの」
妖精「本当に疲れたよ……。何か美味しいものを食べたい……」
ローガン「ここは妖精殿を労い、朝食を頂きにいこうか」
ミスティ「そうね……ん?」
紫髪のエルフ幼女「……」
ミスティ「あ……」
イリス「わ、わあ……。おはようございます、奇遇ですね……!」
紫髪のエルフ幼女「奇遇ではありません。見ていましたから。妖精の演説を」
妖精「げっ……」
紫髪のエルフ幼女「……普段とは全く違うのですね。態度も、言動も」
妖精「そりゃまあ……人の上に立つんならのはそれなりの威厳が必要でしょ」
紫髪のエルフ幼女「ご尤もですが……あなたのそれは少々芝居がかりすぎでは」
妖精「う、うるさいなあ。首長をやってた頃のことなんて忘れてんだから仕方ないじゃん」
紫髪のエルフ幼女「…………初代首長にして、建国の太母……ですか」
妖精「そうだよ。初代首長がこの国の未来を憂いて悪い?」
紫髪のエルフ幼女「悪いなどとは言っていません。しかし国を憂う気持ちなら、長年この国を放ったらかしにしていたあなたよりもティセリアの方が万倍上です」
妖精「ぐぎぎ……。憂う気持ちだけじゃ国は治められないもん……!」
紫髪のエルフ幼女「あなたのような過去の者が今のこの国を治められるとは――」
イリス「は、はいはいそこまで!!」バッ
妖精「むうぅ……」
紫髪のエルフ幼女「ふん……」
ミスティ「……ねえ。一つ良い?」
紫髪のエルフ幼女「何ですか」
ミスティ「もし朝ご飯がまだなら……一緒にどうかしら」
紫髪のエルフ幼女「え」
妖精「ええ!?」
◆
―食事処 どんぐり食堂
ワイワイ キャッキャ
イリス「わあ、ここも風情があって良いねえ」
紫髪のエルフ幼女「自然と調和した街作りこそ、伝統派の最も得意とするものですから」
妖精「ずっと伝統派一強らしいじゃん。せっかく投票制にしたのに、これじゃ独裁と変わんない。不健全だよ」
紫髪のエルフ幼女「千年もずっと独裁し続けた人が言うと説得力がありますね」
妖精「私は建国者だからいいの!」
クロシュ「」オロオロ
ミスティ「ああもう……」
ローガン「ううむ……とりあえず食事を頼むとするか……。お品書きは……」
食堂妖精「あ、お客さんたち初めて? ここはお客さんに選んでもらった食材をうちのシェフが独断で調理する仕組みになってるんだよ!」
イリス「な、なんか凄く聞き覚えのあるシステムのような……」
ミスティ「お米とお米にしないように気を付けましょう……」
↓1〜2 食材を1〜2つ選択
1.畑の肉
2.マンドラ大根
3.食べられる野草
4.ニワトリの卵
5.サワガニ
6.ザリガニ
7.パン
8.ウルティ米
9.淡水海竜の大トロ
10.森林木苺
11.どんぐり
12.ヤマイモ
13.マジカルトリュフ
14.森ニンジン
15.ゴボウの根っこ
16.精霊樹の実
17.アルラウネオイル
18.スライムゼラチン
19.エルフミルク
20.フェアリーシロップ
イリス「……この、エルフミルクって……」
紫髪のエルフ幼女「……よく勘違いされる方がいますが、エルフが分泌したミルクのことではありませんよ。それはこの国のエルフと精霊が協力して育てた牛の出す高級ミルクの銘柄です」
イリス「わ、わあ〜そうなんだぁ〜。じゃあエルフミルクを一つ……!」
ミスティ「何を想像していたのよ、イリス……。そういえばこの国に来てから時々耳にする、このフェアリーシロップというのはどういうものなの?」
妖精「あー、それは……」
紫髪のエルフ幼女「企業秘密です。この国で最も人気のある特産品の一つなので、是非ご賞味ください」
ミスティ「そ、そう……。じゃあとりあえず、フェアリーシロップも一つ」
イリス「他のみんなは?」
ローガン「私は食せるものならなんでも好きだ。気にせず選ぶと良い」
紫髪のエルフ幼女「私もここの国民なので、この国のものならなんでも好きです。なので気にせずお選びください、旅人の妖精様」
妖精「はいはい、じゃあ私は精霊樹の実で」
クロシュ「……」
妖精「クロシュも遠慮しないで、選びな」
クロシュ「あ、えと……じゃあ……木苺……」
紫髪のエルフ幼女「森林木苺を選ぶとは、素晴らしい慧眼です。野生で育っているものも良いですが、ここで出されるものはアルラウネ農家が丁寧に育てた至高の一品。是非味わってください」
クロシュ「うん……」
食堂妖精「ご注文は、森林木苺と、精霊樹の実と、エルフミルクと、フェアリーシロップでよろしいですね!? それではお待ちください!」ピューッ
妖精「……それにしても……ふふ。あなた、本当にこの国が好きなんだね」
紫髪のエルフ幼女「当然です。あなたよりもずっとね」
*
食堂妖精「はい、お待ちどうさま!」
木苺と精霊樹のフェアリーエルフアイスシェイク「」ポンッ
イリス「わぁ〜!」
ミスティ「素敵……!」
ローガン「ほう……!」
妖精「こ、これは……!」
紫髪のエルフ幼女「ふふふ……素晴らしいです。我が国の食材も、それを活かす優秀な料理人も。全てが、素晴らしい……!!」
クロシュ「いただきます……」モニョモニョ
*
イリス「あま〜い!!」
ミスティ「こ、これ氷魔法で再現できないかしら……」
妖精「美味しい……。悔しいけど、これは凄い……」
ローガン(……。我が妻と、子に……これを食べさせてやれれば……)
スライムクロシュ「〜〜!」モニョモニョ
紫髪のエルフ幼女「……食材とシェフの腕も至高のものですが、あなた方の選び方が見事だったというのもあります。それは認めましょう」
妖精「……食事中にこんな話して悪いんだけどさ。本当のところ、ティセリアはどう考えてるの?」
紫髪のエルフ幼女「……そのスライムの子から聞いていないのですか?」
妖精「や、聞いてる。本心では苦しんでるって……。でも、そこはあなたから直接聞かないと筋が通らないと思って」
紫髪のエルフ幼女「……律儀ですね。まあ昨日私が口を滑らせた通り、ティセリアは……伝統と革新、抵抗と降伏の板挟みになって苦しんでいます」
妖精「……まあ、そりゃそうか。いくら為政者の仮面をかぶったところで、あの子の本質が変わるわけもないし」
紫髪のエルフ幼女「……あなたは……ティセリアの、何なのですか」
妖精「別に何でもないよ。ただ、幼い頃のあいつを知ってるってだけ」
紫髪のエルフ幼女「……」
妖精「ティセリアに言ってやってよ。自分の心を偽り続ければ――顔に張り付いて取れなくなった仮面ごと、何もかもが壊れちゃうよ――って」
紫髪のエルフ幼女「……あなたに言われるまでもありません」
妖精「そう。なら良いけど」
☆紫髪のエルフ幼女に意思を伝えました
ティセリアにも影響があります
◆
というわけで本日はここまでです。なかなか進まず申し訳ありません
次回は首長と裸の付き合い編とドワーフ開拓団とお話編からです
フェアリーシロップの正体については様々な噂がありますが、真相は闇に包まれています。緑の国が誇る人気の特産品なので、その製法は簡単には明かせないようです
そして今回の食材選びが功を奏し、紫髪のエルフ幼女さんに無事意思を伝えることができました。彼女もまた緑の国を愛する者の一人なので、地産地消はとても良かったと思います
それでは本日もありがとうございました。次回はまた土日になるかと思います。よろしくお願いいたします
安価で行動しなくともなるようにはなりますが、より良い結果を目指すのであれば安価で何らかの行動をさせてあげたほうが良いかもしれません
木のおうちについてはドワーフ開拓団を追っていただければ何か手がかりが掴めるかもしれません
フェアリーシロップは濃ゆい魔力と糖分とその他諸々を多分に含んだとても甘くて美味しい液体です。マナポーション代わりに魔力回復薬として使うこともできますが、糖分のとりすぎには注意が必要です
フラナ氏は現在新生魔族国の暫定的な指導者を務めています。しかし本人はあくまで暫定的なものと考えており、ゆくゆくは正当な指導者を選任するつもりでいるようです
これはネタバレなのですが、対王国については成り行きに任せてもなんとかなるかもしれません。もちろんしっかり対策を取っておけばより良い結果に繋がる可能性は高まります
前回の接触では特に復権派に対して敵対的な行動を取ってきたりはしなかったので、セインくん自身が何かをしてくる可能性は低いと思われます。セインくん以外が何かをしてくる可能性はあるかもしれません
―緑の国 公共温泉
カポーン…
妖精「あ〜……生き返るぅ……」グデッ
スライムクロシュ「〜〜」デロデロ
イリス「あはは、妖精さんまで溶けちゃいそう」
ミスティ「やっぱり溶けたくなるものなのよ……」
イリス「そ、そうなのかな? でもこの様子なら来て良かったねえ、温泉」
ミスティ「妖精が露骨に疲れたオーラを出していたものね……。まあ、午前中はこれで終わりにしましょう……」
イリス「そうだねえ……」
ガラッ
ティセリア「ふぅ……」
ミスティ「あっ」
ティセリア「……あ」
イリス「てぃ、ティセリアさん!?」ザバッ
妖精「あんだって……?」
*
ティセリア「……おはようございます、復権派の皆さん」チャプン
ミスティ「え、ええ。おはようございます、ティセリア首長」
イリス「お、おはようございます」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
妖精「おはよ〜……あなたも朝風呂……?」
ティセリア「ええ、まあ……。たまに、利用するのです……」
イリス「そうなんですね……」
妖精「……さっき、あなたの秘書?の紫髪の子と朝ご飯食べてきたよ」
ティセリア「……はい、聞き及んでおります。朝食を共にしたと……」
ミスティ「ええ……。でもあれ、朝ご飯って言って良いのかしら……」
イリス「どちらかと言うとデザートだよね、木苺と精霊樹のフェアリーエルフアイスシェイク」
ティセリア「……ふふ。今の緑の国を満喫されているようで、何よりです」
妖精「観光に来たわけじゃないんだけどなあ」
ティセリア「……この国を是正しに来た、のですよね」
妖精「いや……実は当初はそういうつもりでもなかったりして……」
ティセリア「……ええ!? 首長選挙以上に重要な目標があるってことですか!?」
妖精「そ、そういう言い方はちょっと語弊がある。どっちもとても重要な目標なんだよ、優先順位は付けられない」
スライムクロシュ「〜〜…」モニョモニョ
妖精「そう。私たちは……この、クロシュの友達を捜しに来たんだ」
ティセリア「あ……。あの、ビラの……」
スライムクロシュ「〜」コク
妖精「フメイさえ見つかれば、私もこの国に干渉するつもりなんてなかった。もう首長なんて面倒なことやりたくなかったし。でも――」
ティセリア「……見過ごせないものを見つけてしまった、ということ……ですね……」
妖精「そういうこと。きっかけはそこのミスティが気まぐれに受けた冒険者ギルドの依頼だったんだけどね。木の家が弱ってるから助けて欲しいっていう」
ミスティ「……まあ、気まぐれと言えば気まぐれだけど……。でも、私にとってはあれも見過ごせないものだったわ……」
ティセリア「……そう、だったのですか……」
妖精「……ティセリア。やり方を変えてくれる気はないの?」
ティセリア「……」
↓1コンマ 紫髪のエルフ幼女との交流により補正+30
01-05 止まれません
06-50 もう少し考えさせてください
51-95 今夜革新派と話し合う予定です
96-00 ナシつけました
ティセリア「……その件についてですが、つい先程革新派の長と話を付けて来たところです」
妖精「へっ!?」
◆
―少し前
首長官邸
ティセリア「そうですか……。妖精が、そのようなことを……」
紫髪のエルフ幼女「はい。あのような老害の言葉を聞くのは癪ですが……どうか、ご決断ください。あなたが本当にしたいこと、すべきことを成すために――」
ティセリア「……」
ティセリア「サリー、来客準備を。マーベルの坊やと緊急会談します」
紫髪のエルフ幼女「……! はい……!」
*
マーベル「急な呼び出しはやめてくださいよ。頼み事があるならそっちから来るのが筋でしょ?」スタスタ
セイン「……」スタスタ
ティセリア「……マーベル」
マーベル「しかもこれまたけったいな格好ですねえ。一体全体どうしたって言うんです?」
紫髪のエルフ幼女「言葉を慎みなさい……」
マーベル「はいはい。それで何の用なんです? 俺、忙しいんですけど」
ティセリア「……森林開発計画についてお話があります」
マーベル「またその話か。もう決まったことに後からグダグダ言わないでくださいよ」
ティセリア「いいえ。木々や住民への被害が深刻なものとなっています。開発の一時停止を命じます」
マーベル「はあ!? 開発に関して口を出さない取り決めだろ!」
ティセリア「不正な契約に効力はありません。法廷で争いますか?」
マーベル「お前ら伝統派の不正も明るみに出るぞ……!」
ティセリア「承知の上です。元より、私が大切にしているのは伝統派ではなく民と木々そのもの。痛くも痒くもありません」
マーベル「ふざけやがって、愛国ババアが……!!」
紫髪のエルフ幼女「言葉を慎めと言った……!」シャキンッ
セイン「――」シャッ
ティセリア「納めなさい、サリー」
マーベル「チッ……セイン、お前も納めろ」
紫髪のエルフ幼女「……」スッ
セイン「……」スッ
ティセリア「……被害の現状把握と原因究明、被害者救済は我々が行います。革新派は開発の一時停止および開拓団への説明と謝罪を――」
マーベル「……はいはい、わかりましたよ」
ティセリア「……素直ですね」
マーベル「伝統派と心中する気はないんでね。被害が悪いってんなら被害がなくなりゃ再開しても良いってことだろ?」
ティセリア「はい」
マーベル「だったら原因究明には俺たち革新派も一枚噛ませてもらう」
ティセリア「……! もちろん構いませんが……良いのですか?」
マーベル「お前ら老害だけに任せてたら何年かかるかわかんねえだろうが……。一刻も早く再開させたいだけだっての」
ティセリア「……いえ、ありがとう。是非よろしくお願いします」
マーベル「ところで、選挙の件は別だよな? 開発は俺たち革新派の事業でしかないが、選挙は王国が絡んでんだ。しくじったら国が滅ぶ」
ティセリア「……」
↓1コンマ
01-90 民と木々の為です。王国はどうにもなりません
91-00 秘策があります。正々堂々戦いましょう
ティセリア「……はい。王国はどうにもなりませんから」
マーベル「へっ、流石にそこまで耄碌したわけじゃねえか。開発は後でもできるが国は滅んだら終いだからな」
ティセリア「……」
◆
―現在
公共温泉
ティセリア「……というわけで、間もなく開発の方は一旦停止します」
ミスティ「……!!」
スライムクロシュ「!!」モニョニョ
イリス「そ、それなら木のおうちも……!」
ティセリア「開発が止まるだけでは、恐らく木々を苦しめる毒気がすぐに消え去ることはないと考えられます……」
ミスティ「……まだ、安心はできないということね」
ティセリア「少しでも状況が良くなれば良いのですが……楽観視は危険でしょうね」
妖精「……ティセリア」
ティセリア「? 何でしょうか」
妖精「……ありがとう」
ティセリア「……! 首長として……いいえ、森に生きる者として当然の責務を果たしただけです」
☆森林開発が一時停止したことにより、木のおうちの生命力減少も停止しました
毒気はまだ残留しているため、生命力は自然回復しません
◆
―午後
郊外 森妖精の子のおうち
弱った木のおうち「」カサッ…
森妖精の子「えっ……? それじゃあ……これから、よくなるの……?」
ミスティ「……そうとは言い切れないみたい。でも、これ以上悪化することはないと思うわ……」
森妖精の子「……木さん、たすかる……?」
妖精「あなたが毎日しっかりお世話してあげれば、しばらくは大丈夫だと思う。でも現時点でとても弱ってるから、油断はできないよ」
森妖精の子「うん……おせわ、する……」
ミスティ「ええ、そうしてあげて……。私たちもこれから原因の調査に向かおうと思っているのだけれど……」
森妖精の子「……あ。そういえば……あさ、ドワーフさんたちが、えっほえっほ言いながら歩いてったの……。かんけい、あるかな……?」
ミスティ「ドワーフ……?」
ローガン「開拓と開発はドワーフの十八番だ。革新派に委託されて来た業者かもしれん」
イリス「現場に行ってみようよ……!」
◇
―郊外 森林開発現場
ドワーフの現場監督「一時停止だと? 応援が今朝到着してこれからって時にか」
マーベル「本当に申し訳ない。森への影響や被害が無視できない水準に達しましてね……」
ドワーフの現場監督「あんたの計画じゃ影響はほとんど出ないって話だったが」
マーベル「想定外に出すぎてしまったようです」
ドワーフの現場監督「……俺たちはどうなる。手ぶらで国に帰れってか」
イリス「な、なんか揉めてる?」
クロシュ「……! あの人……!」
ミスティ「……革新派のリーダー、マーベルね」
ローガン「急な計画の停止でゴタついているようだな……」
妖精「はあ。国の事業に他所の国の開拓団なんか招くからこんなことになるんだよ」
↓1 どうする?
1.その辺のドワーフ作業員に話を聞く
2.マーベルと現場監督の話に加わる
3.その他自由安価
妖精「失礼」パタパタ
ミスティ「ちょっといいかしら……」
マーベル「んん? あなたは方は……!」
ドワーフの現場監督「誰だ?」
妖精「新参の復権派だよ。地域住民の被害報告を受けて調査に来たの」
ドワーフの現場監督「……被害は深刻なのか?」
ミスティ「……ええ。一部の住民の住居……木の家が、死に瀕するほどには」
ドワーフの現場監督「……いつからだ」
ミスティ「話によると、約一ヶ月前から影響が出始めたみたい……」
ドワーフの現場監督「……お前は知っていたのか?」
マーベル「いえ、私もつい先日報告を受けたばかりなのです」
ドワーフの現場監督「……」
ドワーフの現場監督「……俺たちは開拓と開発が大好きだが、それで誰かを苦しめたいわけじゃない。それを知っていれば……お前にわざわざ言われずとも、こちらの判断で開発は一時停止していただろう」
マーベル「……」
ドワーフの現場監督「……再開の目処が立ったらまた呼べ」
マーベル「これまでの賃金と旅費、違約金は滞りなくお支払い致します」
ドワーフの現場監督「……未完の仕事で悪いが、ありがたくいただこう。こちらも生活がかかっている」
◆
撤収作業中のドワーフ開拓団「エッホエッホ」ガタンゴトン
マーベル「……ふう。見苦しいところをお見せしてしまいましたね。復権派の皆さん」
妖精「あなたの見苦しいところを見に来たわけではないんだけどね」
マーベル「こりゃ手厳しいなあ。そういえば昨日もウチに来たそうですけど、何の用だったんですか?」
ミスティ「……あなたへの用はもう済んだわ……」
マーベル「……なるほど。ティセリアおばさんをたぶらかしたのもあなた方ですか」
妖精「ティセリア自身が自分で考えて行動しただけだよ」
マーベル「はあ、まあそういうことにしておいて差し上げますよ。全く、とんだおばあちゃんが出張って来たもんだ」
妖精「ああ!? 今なんつった!!?」パタパタパタ
マーベル「貫禄もクソもないし……。なんなんだよあんたは……」
◆
―緑の国フォレスティナ 滞在6日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・おうちの木を助ける(木の生命力[3/40]、減少停止中)
・木の病気の原因を突き止める(開発が関係しているっぽい?)
・選挙で勝つ
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
……………………………………………………………………………………
―朝
郊外 森妖精の子のおうち
チュンチュン
森妖精の子「〜〜」ブツブツ
弱った木のおうち「」キラキラ…
森妖精の子「はあ、はあ……。木さん……しなないで……」
ミスティ「……今のは……癒やしの魔法……?」
森妖精の子「うん……。木さんをげんきにする、おまじない……。きのうより……ちょっとだけ、きいてるきがする……」
ミスティ(……私にも、癒やしの魔法が使えたら……)
ミスティ(いえ……ないものねだりをしても仕方ないわ。今は、この木を侵している病気を取り除くことを考えるのよ……。開発の停止と同時に病気の進行も止まったということは、開発が関係しているのは明らか……。開発の何が原因だったのか……それさえ突き止められれば……)
森妖精の子「えへへ……ミスティさんたちの、おかげなんだよね……。ありがと……」
ミスティ(この笑顔を……絶対に失わせないわ……)グッ
フォレスティナ滞在6日目です(投票日までの残り行動可能日数3)
↓1〜3 自由安価 何をする?
本日はここまでとなります。ただでさえ遅い筆がさらに遅くなっている気がします。申し訳ありません
次回は泉のセインくん編、薬師フラナの応援編、森林開発現場調査編です
自分で書いていて思うのですが、この程度のなんちゃって政治要素でさえかなり難航している模様です。ここ最近特に進行が遅くて申し訳ないですが、長い目で見ていただけると幸いです
ドワーフは地上だろうと地底だろうと整備開発を行うのが大好きな種族です。大陸の北の方にはとても長くて高い山脈が連なっており、そこの地下にはいにしえのドワーフ文明が築き上げた地底帝国の巨大遺跡が眠っています。今回来たドワーフ開拓団はその辺りの出身らしく、もしかしたら地底帝国の末裔かもしれません。なお山越えの難易度は登山ルートも地底ルートも同じくらい危険が危ないそうです。赤ちゃんスライムのクロシュちゃんは近づかないようにしましょう
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いします
妖精おばあちゃんは今でこそこんな感じですが、首長をやっていた頃はもう少し威厳とか貫禄があったのかもしれません。今はすっかり失われています
王国の手先とのバトルが今後あるかどうかはわかりませんが、安価次第で良い結末へ向かうことは可能です。是非目指してみてください
常闇の樹海などもそうですが、行き来の難しい危険地帯はけっこうあります。そういう場所に行く場合には専門のガイドを雇うか、頑張ってサバイバル技術や戦闘力を磨くのが良いでしょう
勇者と真正面から戦える人材を用意できれば戦いになりますが、今のところ勇者と真っ向から争える戦闘力を有するのは魔王化した者くらいしかいないようです……
―朝
精霊の泉
チュンチュン
クロシュ「えと……木さんたちが病気になってること……知ってる……?」
水の精霊『……』コクリ
クロシュ「その……原因は……?」
水の精霊『……』フルフル
クロシュ「そうなんだ……。ありがと……」
水の精霊『……』コクリ
妖精「やっぱり原因まではわかんないか……。まあ、わかってたら精霊たちがなんとかしてるだろうしね」
水の精霊『……』ショボン
妖精「ああ、ごめん。責めてるわけじゃ――」
セイン「精霊と話せるのか」スタスタ
クロシュ「!」ピクッ
水の精霊『?』
妖精「……あなたは……セイン、だっけ」
セイン「ああ。スライムが精霊を認識できるのは知らなかった」
妖精「クロシュは珍しいスライムだからね。普通のスライムとはちょっと違うんだよ」
セイン「そうなのか」
クロシュ「……えと……セイン、さんも……見えるの……?」
セイン「ああ」
妖精「あなた、本当に人間?」
セイン「さあ」
妖精「まあなんでもいいけどさ。あなた革新派の護衛でしょ? こんなとこに何しに来たの?」
セイン「外出許可は得ている。少し水を汲みに来た」スッ
空き瓶「」
妖精「……何に使うの? 確かにここの水は良識の範囲内で観光客も汲んでいって良いことになってるけど」
セイン「……」
↓1
01-60 教えてくれない
61-90 少し教えてくれる
91-00 ??
セイン「……答える義務はない」
妖精「いや、答えたくないなら別に良いけどさ……。精霊の祝福を受けた水、大事に使ってよね」
セイン「ああ」
クロシュ「……」
セイン「……見つかると良いな。友達」
クロシュ「!」
セイン「では失礼する」スタスタ
クロシュ「あ……えと……あ、ありがと……!」
妖精「……やっぱり、悪い奴じゃないのかも。よくわかんないけど」
◆
―大樹の宿 ロビー
宿のアルラウネ「イリスさん、郵便が届いてるよ」
イリス「ありがとうございます!」
ミスティ「もう返事が来たの?」
イリス「や、実はいつもの手紙のやり取りとは別に植物に効く薬がないかっていう速達便もこの前送ったから、多分それの返事だと思う!」
ローガン「……そういえばフラナ氏は薬屋でもあったな。魔法使いや革命軍の指導者としての姿の方が印象に残ってしまっているが」
イリス「師匠の反魂丹には本当に助けられたもんね……。重さと厚みからして何か入ってるみたいだし、早速開けてみるよ……!」
↓1
01-35 樹木用活力剤(木の生命力+1)
36-65 疑似世界樹の葉(木の生命力+2)
66-95 疑似世界樹の雫(木の生命力+4)
96-00 植物用反魂丹(木の生命力全回復)
樹木用活力剤「」ポン
手紙『ごめんなさい、植物の薬は専門外だからこんなものしか用意できなかったわ。効能も一時的なものだから、やはり木を弱らせている原因を取り除くのが最善よ』
手紙『あなたたちの活躍は風の便りで聞いています。私たち魔族の大人はもちろん、聖女や子供たちもあなたたちを応援しているわ』
手紙『選挙活動も森林保護活動も大変だと思うけれど、体に気を付けて頑張りなさいね』
イリス「師匠……!! 専門外にも関わらず薬を作ってくれたんですね……!」ウルウル
ミスティ「……初めて会った時は剣呑な人だと思ったけれど、今はもう全然人の良い吸血鬼にしか見えないわね……」
ローガン「あの時はまだ王国の支配下にあった上、革命を間近に控えて気が張っていたのだろう。こちらが本来の彼女なのかもしれんな」
◇
―郊外 森妖精の子のおうち
樹木用活力剤「」トプトプ
弱った木のおうち「」ググ…
森妖精の子「……! まだ、声はきこえないけど……すこし、いいみたい……!」
イリス「本当!? よおし!」
ミスティ「やったわね……!」
イリス「うん……! でもこれは一時的なものだから、原因を取り除かないとね……!」
ローガン「うむ。クロシュくんたちと合流したら森林開発現場に向かおう」
ミスティ「ええ……!」
☆おうちの木の生命力が1回復しました
現在の生命力は[4/40]です
◆
―郊外
森林開発現場
建築中の鉄筋造りの建造物群「」
ティセリア「ここの地質はどうですか?」
地質専門アルラウネ「う〜ん……ここも異常なしね」
ティセリア「むう、一体どこから木を痛めつける毒気が流れているのでしょう……」
マーベル「一応言っておくが、建材に毒性のあるものは使ってないからな。これほどの被害は想定外ってのは本当なんだぜ」
ティセリア「わかっていますよ。責は承認した私にあります。原因の究明を急ぎましょう」
妖精「お〜い」パタパタ
ティセリア「あなた方は……復権派の皆さん」
ミスティ「私たちも手伝うわ……」
マーベル「なんだ? 新参の余所者が調査の邪魔をしないでもらえるか?」
紫髪のエルフ幼女「革新派のあなたが余所者を排斥するのですか? まるで伝統派の老害のようですよ」
マーベル「なんだと……」
妖精「老害ってのは実は年齢じゃなくて精神性のことなんだよねえ……」ニヤニヤ
マーベル「このババア……!」
ティセリア「こら、喧嘩はやめなさい! 今は協力して調査を行うのが先決でしょう!」
紫髪のエルフ幼女「すみません」
マーベル「チッ……わかってるっての」
妖精「はいはい、もちろんそのつもりだよ」
クロシュ「う、うん……!」
イリス「なんだかティセリアさんってみんなのお母さんみたい。妖精さんまで素直になってるし」
ローガン「フフ、釣られてクロシュくんまで返事をしているな」
ミスティ「みんな私たち人間よりも遥かに歳上なのよね……。なんだか不思議な気分になるわ……」
↓1コンマ 本日の調査結果
01-60 毒気は地下の深いところから出てきているらしい……?
61-90 地下深くに何かある?
91-00 ??
地質専門アルラウネ「……ん!? この直下……なんだかすっごく嫌な感じがする……!」
ティセリア「! マーベル、サリー!」
マーベル「金属反応はねえが……なんだ、こりゃ……」ジリ…
紫髪のエルフ幼女「地下深くに、何か……ひっ……!? なに……これ……!?」ガタガタ
ティセリア「サリー!?」
ローガン「私も鋼魔法で地下を探知してみたが……確かに何かある……。だが、これは一体……」
イリス「……これは……封印? でも解けかけてて……封印されている何かが……漏れ出てるの……?」
ミスティ「……氷よりも……永久凍土よりも冷たい……これは……」
クロシュ「――」
妖精「……」
妖精「――ねえ。みんな疲弊しているみたいだし、今日の調査はここまでにしようよ」
ティセリア「妖精……?」
妖精「藪を突いて蛇を出すこともないでしょ」
ティセリア「何か、知っているのなら――」
妖精「さあ。私は何も知らないけど、みんなの反応を見れば厄モノがあることくらいわかるよ。何の準備もなしに掘り起こすのは危ないでしょ」
ティセリア「そ、それはそうですが……」
妖精「何かするなら選挙が終わってからにしな。幸い開発の一時停止で毒気の漏出も多少収まったみたいだし、木々も保つでしょ」
ティセリア「……そう、ですね……」
妖精「そうと決まれば撤収撤収!」
◆
―夜
大樹の宿 客室
イリス「……」zzz
ミスティ「……」zzz
スライムクロシュ「……」
妖精「……」スッ
スライムクロシュ「…」モニョ
妖精「……起きてたの、クロシュ」
クロシュ「妖精さん……どこ、行くの……?」デロ
妖精「どこって……ちょっと夜の散歩だよ」
クロシュ「……」
妖精「すぐ戻るから。心配しないで」
クロシュ「……やだ」
妖精「なあに、片時も私と離れたくないの? 全くもう、かわいい赤ちゃんスライムなんだから……」
クロシュ「……」
妖精「……」
クロシュ「……」
妖精「……クロシュは……もう、大丈夫だよね」
クロシュ「えっ……?」
妖精「イリスと、ミスティと、ローガンがいて……魔族国のみんなも、きっといつでもクロシュを待ってくれてる。フメイもきっと、いつでもクロシュのことを案じてる」
クロシュ「……??」
妖精「……フメイを連れ戻せたら……平和なところで、幸せに暮らすんだよ。生きるのは苦しいことばかりだけど……クロシュならきっと、大丈夫だから」
クロシュ「……???」
妖精「――それじゃ、さよなら」
クロシュ「え――」
妖精「あなたに――あなたたちに、精霊の加護がありますよう――」フワッ
ビュオッ
クロシュ「ふわっ……!」
窓「」ガラン
カーテン「」バタバタ
クロシュ「あっ……! よ、妖精さん……!!」
◆
本日はここまでとさせていただきます
地下に眠っていたもの、それは一体何だったのか。妖精は何を知っているのか。夜分遅くに一人でどこへ向かったのか。赤ちゃんスライムのクロシュに何ができるのか――
次回「恩讐のフォレスティナ」編。お楽しみに
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願い致します
原因特定が迅速に進んだという意味での高コンマだったのですが、確かにこれではせっかく高コンマを引いたのにバッドイベントが起きたように見えるので、次の判定に良い感じの補正をかけるなどの好影響を出したいと思います。紛らわしくて申し訳ありません
フラナ氏は薬師もできる魔法使いなので、彼女の店は魔法に関するいろいろなものが売られています。人間に向いたものもいくらかはあるかもしれません
妖精さんがどのような運命を辿るのかはこの後の展開次第であります。よろしくお願いします
これはネタバレですが、妖精の得意属性は自然というものです。自然に働きかけることによって様々なことができますが、出力はそれほど高くないため戦闘向きではないようです(台風の中やマグマ地帯など、自然の脅威がある場所では逆に猛威を振るうことができます)。妖精種はこの属性を得意としていることが多いようです
―とても昔
緑の国フォレスティナ 郊外
魔王樹『――』ギギギギギ
妖精「……ごめんね。あなたは――ただ、生きたかっただけなのに――」
魔王樹『――』ギギギ
妖精「生命を奪わなければ――生命は、生きられない。そしてあなたは――奪う生命が、多くなりすぎてしまった」
魔王樹『――』ギギ
妖精「……ごめんね」キラキラ
ヒュオッ…
封印の要石「」ズン…
アルラウネ族長「お、終わった……の……?」
エルフ族長「おお……ついに、あの魔王樹を――!」
馬頭族長「バンザイ! 妖精サンバンザイ!」バンザイ!
ワアアアア!! ヨウセイサンバンザイ!! バンザイ!!
妖精「……」
◆
幼ティセリア「えっ!? 妖精、首長辞めちゃうってほんと!!?」
妖精「うん……」
幼ティセリア「ど、どうして!? 妖精が辞めちゃったら誰がこの国を治めるの!?」
妖精「今いる子たちに任せるよ。いつまでも私がふんぞり返ってたら不健全でしょ」
幼ティセリア「……なにか、あったの?」
妖精「さあ。まあ、いろいろ疲れたってのもあるかな……」
*
―聖域
フォレスティナ建国千周年 戴冠式
妖精「みんな、千年間ありがとう。とても良い時間だった。後はよろしくね」
エルフ族長「妖精首長に託されたこの国を、必ずや強く美しく育て続けることを誓います……!!」
妖精「うん。それじゃあ……私はもう、行くよ」
エルフ族長「はい……!」
幼ティセリア「妖精……」ウルウル
妖精「後は頼んだよ、ティセリア。私は……世界を、見てくるから」
幼ティセリア「うん……!! 妖精の旅路に……精霊の加護がありますよう……!!」
妖精「ありがと。ティセリアとフォレスティナにも、精霊の加護がありますよう――」
ワーワー! イカナイデー!! ヨウセイサーン!!
妖精「それじゃあ――さようなら――」フワッ
ヒュオッ
幼ティセリア「あ――」
エルフ族長「……行ってしまったな」
幼ティセリア「うん……」ポロポロ
エルフ族長「いつか、妖精が帰ってくる時に……この国をもっともっと美しくして、驚かせて差し上げよう。ティセリア」
幼ティセリア「うん……!!」ポロポロ
◆
―とても昔
緑の国フォレスティナ 郊外
封印の要石「」
妖精「……」
妖精「あなたのような哀しい存在を生み出してしまうこの世界が……本当に良いものなのかどうか……。見てくるよ……」
封印の要石「」
妖精「……あなたの憎しみも、哀しみも……。きっと、永い時が癒やしてくれるから……。どうか、安らかに――」
封印の要石「」
◆
―現在 夜
フォレスティナ郊外
妖精「……」パタパタ
妖精(あれから……本当に、永い時間が経った)
妖精(この世界が良いものだと無邪気に信じられなくなったのも……もうずっと昔のことだ)
妖精(そんな苦しみに満ちた世界に――私は、あの魔王樹を閉じ込め続けてしまった)
妖精(魔王樹は……あの暗い地下で、怒りと憎しみと哀しみを募らせながら……ずっと、ずっと……封印が綻ぶのを待ち続けていたんだろう)
妖精(当時の私の甘さが招いた……致命的失敗。死をもって終わらせるのが忍びないからと――安らぎの結界で心だけでも救われて欲しいなどと、個人的感傷を優先したから)
妖精(――今この国を脅かしている苦しみは、私のせいだったんだ)
妖精(今度こそ、終わらせてあげないと。死ぬことでしか解放されない――魔王という、哀しい存在を)
◇
―大樹の宿 客室
クロシュ「い、イリスさん! ミスティさん!」モニョモニョ
イリス「んん……クロシュちゃん……?」
ミスティ「ど、どうしたのよ……? まだ真っ暗みたいだけど……」
クロシュ「よ、妖精さんが……出てっちゃった……!!」
イリス&ミスティ「!!」
扉「」バンッ!
ローガン「どこに行ったかわかるか!?」
クロシュ「え、えと……多分――」
ミスティ「――開発現場」
クロシュ「う、うん!」
イリス「た、確かに帰ってきてから少し様子が変だったけど……」
ローガン「明らかに何かを知っている様子でもあったな。一人で何かしようとしているのかもしれん、急ぐぞ!」
◇
―郊外
森林開発現場
要石の破片「」
妖精(どうして忘れていたのだろう。首長の退任を決意するほどの出来事だったはずなのに)
妖精(――忘却を促すのもまた……魔王の力……? そういえば、魔族国で勇者を呪ったとされる魔王も、多数の住民が目撃しているはずだし、時間もそれほど経っていないのに――覚えている者はあまり多くなかった)
妖精(……いや、今はそんな考察なんてどうでもいいか。自分自身の不始末を、付けにいかなきゃ)
妖精「――開け」
結界口「」ヴォン…
妖精(……元々は私が作った結界。この中でなら、例え魔王樹が相手でもこちらが圧倒的に優位だ)
妖精(そして魔王と言えど樹木なら、私の自然を司る魔法で枯らせられる……)
妖精(……でも多分、それでも命がけ。というか、十中八九生きては帰れない……)
妖精(でも仕方ない。私の責任だし……私一人の命で被害を食い止められるなら安いもんでしょ)
妖精(ティセリアはすっかり成長したし、優秀な側近もいる。マーベルとかいう奴もまあそこまで悪い奴ではなさそう)
妖精(王国への恭順は嫌だけど、理屈はわかるし無闇に抵抗するよりはマシだとも思う。一応策もあるみたいだし、頭ごなしに否定するほどじゃない)
妖精(……こいつさえなんとかすれば……この国は多分、大丈夫……。あとは今の子たちがなんとかやってくれるはず)
妖精(気がかりなのは――)
妖精の想像するクロシュ『〜〜』モニョモニョ
妖精(……)
妖精(イリスたちが見ていてくれるとは思うけど……でもやっぱり、心配なものは心配……)
妖精(そもそも、イリスとミスティだってまだまだ幼い子供みたいなもんだし……ローガンもローガンで時々危うさがちらついてる……)
妖精(……ああもう、何もかも私の楽観が招いた危機だ)
妖精「……そこの風の精霊。伝言頼める?」
風の精霊『?』ヒュオオ
妖精「ティセリアに、復権派のみんなをよろしくって伝えておいて」
風の精霊『!』ヒュイッ
ビュオオッ
妖精「……これでまあ、悪いようにはならないはず。さて――」
結界口「」ゴゴゴゴ…
妖精「……行こう」
*
―封印結界
ゴゴゴゴゴ
魔王樹『――』
妖精「久しぶり。その様子……全然変わってないね……」
魔王樹『――』ギギ
妖精「……覚えてるか。そうだよ……あなたをここに閉じ込めた、妖精だよ」
魔王樹『――』ギギギ
妖精「……あなたの怒りも、憎しみも――受けて立つ覚悟はできて――」
ゴゴゴゴ メキメキメキ
妖精「えっ――」
妖精を取り囲む樹木の群れ『――』ギギギ
妖精「なんで――数が増えて――」
蔓の触手「」ギュオッ
ガシシッ
妖精「ひっ……! や、放し――」
蔓の触手「」ギラッ
ギュオンギュオン
妖精(い、命が――吸われ――)
妖精「みん、な……ごめ…………」
カクン…
◆
―森林開発現場
結界口「」ゴゴゴゴゴ
クロシュ「!!」
ミスティ「あれは……!」
イリス「結界の……入口!」
ローガン「日中はなかったが!?」
イリス「きっと妖精さんが開けたんだ! でもこれ……一方通行だよ!」
ローガン「何!? なぜ――」
イリス「大抵は、中にいる何かを外に出さない為! でも術者なら関係なく出入りできるのが普通だから、妖精さんが術者だとしたら――」
クロシュ「――」シュバッ
結界口「」トプン…
ミスティ「クロシュ! くっ、一方通行が何よ……!」バッ
結界口「」トプン…
イリス「ああ、話は最後まで……ええい、私も!」タッ
結界口「」トプン…
ローガン「クッ、私でも守りきれる相手なら良いが……!」ダッ
結界口「」トプン…
*
―封印結界
ゴゴゴゴ
魔王樹『――』ギギ
捕らえられてぐったりしている妖精「」
クロシュ「!! 妖精さん!!」
ミスティ「妖精……!! くっ……なんて重いプレッシャーなの……!!」
イリス「……!! あれが……木々を弱らせてる、原因……!?」
ローガン「今助けるぞ……!」シャキン
ゴゴゴゴ メキメキメキ
クロシュ「!!」
ミスティ「なっ――」
クロシュたちを取り囲む樹木の群れ『――』ギギギ
ローガン「何っ!?」
イリス「えっ――」
殺到する蔓の触手「」ギュオオオオッ
↓1コンマ 最速発見ボーナスにより補正+10
01-02 劣勢、ミスティ負傷
03-04 劣勢、イリス負傷
05-07 劣勢、ローガン負傷
08-10 劣勢、クロシュ負傷
11-70 劣勢、伝統派参戦
71-90 優勢、伝統派+マーベル参戦
91-00 優勢、伝統派+マーベル+???参戦
殺到する蔓の触手「」ギュオオオオッ
ミスティ「ぼ、防御が間に合わな――」
「大地の壁!」
「風の精霊よ、哀しみの蔓を切り裂いて――!」
大地の壁「」ゴゴゴゴ!!
風の刃「」ヒュンヒュンッ
壁に防がれて切り裂かれる蔓の触手「」スパスパッ
ボトボトッ
ティセリア「大丈夫ですか! 復権派の皆さん!!」
紫髪のエルフ幼女「はあ、はあ……! 怪我はありませんか……!」
クロシュ「!」
ミスティ「伝統派……!!」
ローガン「あ、ありがたい……!」
イリス「助かりました……!!」
ティセリア「妖精は……あそこですね! 協力して助けますよ!」
紫髪のエルフ幼女「第二波が来る! 備えてください!」
↓1コンマ
01 劣勢、ミスティ負傷
02 劣勢、イリス負傷
03-04 劣勢、ローガン負傷
05-06 劣勢、クロシュ負傷
07-08 劣勢、ティセリア負傷
09-10 劣勢、紫髪のエルフ幼女負傷
11-50 劣勢
51-70 優勢
71-90 優勢、マーベル参戦
91-95 優勢、マーベル+???参戦
96-00 優勢、???+????参戦
蔓の触手「」ビュンビュン
ミスティ「数が多すぎるわ……!!」
盾クロシュ「うう……!!」ガギンガギンッ
ローガン「くっ、私とクロシュくんだけでは守りきれん……!!」ギンギンッ
イリス「炎よ!」ゴウッ
蔓の触手「」メラメラ
ティセリア「……! 火の通りが良い……! 見かけは凶悪ですが、既に枯れかけているのかも――」
イリス「よおし、このまま――」
火の付いた蔓の触手「」ググ ブンッ
イリス「えっ――」
ミスティ「イリス!!」バッ
バシンッ!!!
ミスティ「う、ぐ……」フラッ
イリス「ミスティ!!!!」
↓1コンマ
01 敗北、ミスティ死亡
02-10 敗北
11-50 劣勢
51-60 優勢
61-90 優勢、マーベル参戦
91-95 優勢、マーベル+???参戦
96-00 優勢、???+????参戦
ミスティ「……」ドサッ
イリス「あ、あ……私が油断したせいで、ミスティが……」グニャァ
ローガン「イリスくん前を見ろ!!!!」
イリス「あ――」
ガギンッ!
イリス「え……?」
鉄板「」シャキーン!
「ふう、間一髪だ。急過ぎてダサい鉄板になっちまったぜ」スタスタ
ティセリア「あ、あなたは――」
紫髪のエルフ幼女「まさか――」
イリス「革新派の、マーベルさん!?」
マーベル「東洋の五行思想じゃ金は木に強ェんだぜ?」ニヤ
↓1コンマ
01 敗北、ミスティ死亡
02-05 敗北
06-35 劣勢
36-90 優勢
91-95 優勢、???参戦
96-00 優勢、???+????参戦
マーベル「おら! 最先端の回転ノコギリだ!」ブンッ
飛翔する回転ノコギリ「」ギュオオッ
蔓の触手「」スパスパッ
マーベル「そして俺自身は――鎖ノコギリで伐採だ!!」ブオンッ
魔王樹の眷属樹木「」ギャリギャリ
ズバアッ ドスーンッ
マーベル「おらっ、次はどいつだ!?」シュババッ
ティセリア「あ、あんなに楽しそうに伐採して……」
紫髪のエルフ幼女「心強いですが癇に障りますね……」
ミスティ「……うっ」
イリス「ミスティ!! 今手当するからじっとしてて!!」
ミスティ「こ、これくらい……まだ戦えるわ……!!」ググッ
ローガン「マーベル氏の参戦で余裕ができた! クロシュくん、イリスくんとミスティくんをカバーするぞ!!」
盾クロシュ「うん!!」
↓1コンマ
01 敗北、ミスティ死亡
02-05 敗北
06-35 劣勢
36-90 優勢
91-95 勝利、???参戦
96-00 勝利、???+????参戦
ズバアッ ドシーン ドシーン
ティセリア「戦局がこちらへ傾きました……! このまま畳み掛けますよ……!」ヒュンヒュン
紫髪のエルフ幼女「はい……!」ゴゴゴ
マーベル「おらっ、次は――」ギュイイッ
黒い精霊「……」
マーベル「うおおおっ!?」ズザザッ
黒い精霊「……」
マーベル「なんだ……お前は?」
黒い精霊「……」
マーベル「チッ……! お前、あの木の精霊か……!?」
黒い精霊「……」
マーベル「なんとか言え!」
黒い精霊「……おなか、すいた」
マーベル「……!?」
↓1コンマ
01 敗北、ミスティ死亡
02-05 敗北
06-90 勝利
91-95 勝利、???参戦
96-00 勝利、???+????参戦
黒い精霊「」フッ
マーベル「!? 消え――」
魔王樹『』ギギ…
崩れていく蔓の触手「」シナシナ
崩壊する樹木の群れ「」メキメキメキ
イリス「あっ……黒い木が……!」
クロシュ「!」シュバッ
魔王樹から落ちる妖精「」ヒュウン…
モニョッ
スライムクロシュ「」モニョ
妖精「ぁ……くろ、しゅ……?」
スライムクロシュ「〜〜…」モニョモニョ
妖精「……うん……。ごめん、ね……」
スライムクロシュ「〜〜」モニョニョ
枯れていく魔王樹『』メキメキ パキパキ…
ティセリア「黒い木が……枯れていく……」
紫髪のエルフ幼女「……勝った、のでしょうか……」
ローガン「ふう……。皆生き残れた、か……」
――戦闘終了
◆
―朝
大樹の宿 客室
チュンチュン
ミスティ「……」パチ
イリス「ミスティ!」
クロシュ「ミスティさん!」
ミスティ「イリス……クロシュ……」
ローガン「ミスティくん。体の調子はどうだろうか」
ミスティ「ローガンさんも……。私、あれからまた気を失ったのね……。体は……まだ痛むけど、動きに支障はなさそうかしら……」ググッ
イリス「良かった! 一時はどうなることかと思ったけど、みんな無事で……」
ミスティ「……ということは、妖精も無事なのね?」
妖精「無事だよ。迷惑かけたね……」ヌッ
ミスティ「わっ……本当に無事みたいね……」
妖精「あなたたちのお陰でね……。本当に、ありがとう……」ペコッ
ミスティ「まあ……何かする前に相談くらいはして欲しかったわね……。パーティなのだし……」
妖精「返す言葉もない……」
イリス「……ねえ、どういうことだったのか聞いても良い?」
妖精「うん……話すよ。まずあの黒い木だけど……あれは、大昔に私と当時の族長たちが封印した樹の魔王なんだ」
イリス「ま、魔王……!? あの木、魔王だったの……!?」
ローガン「なんとなくそんなような気はしていたが……まさか本当に魔王だったとは」
妖精「当時は魔王樹って呼ばれてた。地中深くに根を張り巡らして、フォレスティナ中の命を吸い上げる困ったちゃんだったの」
ミスティ「困ったちゃんという次元ではない気がするわ……」
妖精「うん……。実は当時にトドメを刺すこともできたんだけど、その……かわいそうに思っちゃってさ……。私の主導で安らぎの封印結界に閉じ込めたんだよ。でもその結果はご覧の通り……全く安らげなかったみたいだし、今になってこの国に被害を出させた始末。本当、とんだ失策だったよ……」
ミスティ「そう……だったのね……」
妖精「……ずっと永い間……独りぼっちで、ひもじい思いをさせちゃったんだ。あの魔王樹も、元はこのフォレスティナの樹の一つだったはずなのに……。私……なんて仕打ちを……」
イリス「……それは……妖精さんが、悪いわけじゃないと思う……」
妖精「……そう、かもね」
クロシュ「……」
◆
―郊外 森妖精の子のおうち
ミスティ「おはよう……」スタスタ
妖精「おはよ…」パタパタ
森妖精の子「あ、ミスティさんと太母さん! おはよ!」
ミスティ「その後、おうちの具合はどうかしら……?」
森妖精の子「えっとね、木さんね……!」
少し元気になってきたおうちの木「」ググッ!
妖精「少し元気になってきたね」
森妖精の子「うん……! ミスティさんたちが、なにかやってくれたの……!?」
ミスティ「……まあ、そうね。恐らく病気の原因と思われるものをなんとかしたわ……」
森妖精の子「わあ……! やっぱりミスティさんたちがやってくれたんだ……!」パァ
ミスティ「ええ……」
妖精「でも、病み上がりだからしばらくはしっかり見てあげてね」
森妖精の子「うん……! しっかりみる……!」
ミスティ「ええ、是非そうして……。あなたがおうちの木を大事に思っているように……きっとおうちの木も、共に暮らすあなたのことを大事に思っているから……」
森妖精の子「うん……!! ずっといっしょだもん……!! だいじに、する……!」
ミスティ「ふふ、約束よ……」
森妖精の子「うん、やくそく! えへへ……ミスティさん、ほんとに、ほんとに……ありがと……!!」
☆緊急クエスト「おうちの木を助けろ!」を無事にクリアしました
報酬に「精霊樹の種」をいただきました
復権派の名声が大きく上がりました
◆
―緑の国フォレスティナ 滞在7日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・精霊樹の種
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・選挙で勝つ
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
……………………………………………………………………………………
―朝
大樹の宿 客室
イリス「すっごく喜んでくれてたね……!」
クロシュ「うん……!」
ミスティ「ええ……。ふふ……本当に良かったわ……」
イリス「うん、本当に良かった! 後は、選挙に向けて一直線だね!」
妖精「うへぇ……。考えたくない……」
「号外だよー! 号外ー!」バサッバサッ
イリス「ん? この声は……」
ミスティ「まさか……」
窓「」バサッ
風雪新聞「ダークヒーローイリス、建国の太母と共に緑の国の闇に抗う!!!!」バササッ
イリス「やっぱり!!!」
フォレスティナ滞在7日目です(投票日までの残り行動可能日数2)
↓1〜3 自由安価 何をする?
というわけで本日はここまでです。次回は紫髪ちゃんと一緒に害獣退治編、伝統派と革新派にフメイちゃんのことを聞いて回る編、その後お食事会編です
突然発生したイベント戦闘でしたが、無事に勝利できたようで何よりです。伝統派と革新派と復権派が夢の共闘を果たしたことにより、いろいろとお話しやすくなったかもしれません。選挙に向けて頑張っていきましょう
なお魔王樹さんは、眷属を増やすという新技を見せて妖精を追い詰めましたが、実のところ永い封印と栄養の枯渇、無理な眷属の生成により戦闘開始時点で枯死寸前の状態だったようです。妖精さんはとても迂闊だったようですが、無事に勝利したことでかなしいお別れをすることもなくパーティに復帰することができました。おめでとうございます
それでは本日はありがとうございました。次回は例のごとく土日になるかと思います。よろしくお願いします
革新派以外が選挙で勝利した場合、王国への対策は必須となります。なお現状、伝統派は依然として革新派を勝たせるつもりのようです
常闇の樹海には、精霊や妖精を好んで捕食する触手生物の存在が確認されたことがあります。気を付けましょう
>>1も01を引き当ててミスティさんが怪我をすることになったのには驚きました。コンマはコンマなので仕方がありませんが、ままならないものです
最近は魔族国以外でもダークヒーローイリスの知名度が上がってきているため、トンチンカンなプロパガンダであっても意外と効果が出てしまうかもしれません
おうちの木は無事に助かり、これから少しづつその生命力を回復させていくことになるかと思われます
そして魔王樹はようやくその生を終え、フォレスティナの大地に還りました。その跡地に残されていた小さな種が魔王樹の生まれ変わりかどうかはわかりませんが、緑の国ではあらゆる生命の誕生は祝福するのが良いと考えられています。きっとその種もまた、精霊の加護に包まれていることでしょう
―郊外
クロシュ「今日は、こっちでやるの?」キョロキョロ
妖精「うん。例え人が少ないとしても、国民一人一人に声を届けることが大事なんだよ」
ミスティ「へえ。なんかそれっぽいわね」
イリス「私も、自分の足でしっかり地域を回ってくれる人は良いなあって思うよ」
ローガン「ううむ、しかし選挙というのは大変だな……。票を獲得するためにこうも奔走する必要があるとは……」
妖精「ほとんどの国は君主制だからねえ。多分大陸内でもフォレスティナくらいじゃないかな、選挙で国の長を決めてる国」
イリス「けっこう変わった制度って言われてるよね。妖精さんはどうしてこんな制度にしたの?」
妖精「フォレスティナっていろんな種族がいるでしょ? そんな国で特定の誰かがずっと王様をやるのはあんまり良くないと思ってさ。まあ実際には、千年間も首長をさせられ続けた奴がいたりもするんだけど……」
ミスティ「ふふ……ちゃんとした首長であれば、種族を気にする人もあまりいなかったということね……」
◇
ー郊外 道端
ピーヒョロロロ…
ア、フッケンハダ ヨウセイサンカワイイ タイボサマー!
妖精「いにしえより続く緑の大森林を守り……激化していく国際競争にも勝ち続ける……。どちらか一方だけに傾倒する必要なんてない……。私たち復権派は、全てを目指すの……」
妖精「大丈夫……。この建国の太母が、この国の過去も、未来も―――ん?」
ドドドドド…
紫髪のエルフ幼女「待ちなさい! 待て!!」タッタッタッ
イリス「あ、あれは……!?」
↓1
01-05 ??
06-35 狂い咲きアルラウネ
36-65 マノシシの群れ
66-95 脱走マンドラ大根
96-00 フォレスティナミドリガニ
マノシシの群れ「ブヒーッ!!」ドドドドド
ミスティ「黒い……イノシシ!?」ザッ
イリス「図鑑で見たことある! あれマノシシってやつだ! でも生息地は常闇の樹海浅層のはずなのに……」
紫髪のエルフ幼女「復権派!? 丁度良い、そいつらを止めて!!」タッタッタッ
ローガン「言われずともそのつもりだ! 皆、構えろ!」シャキン
盾クロシュ「!」シャキン
妖精「民よ、私の後ろへ。次期首長として、責務を果たしましょう……」キラキラ
――戦闘開始
↓1
01-05 痛恨
06-15 劣勢
16-95 優勢
96-00 会心
マノシシの群れ「ブヒーッ!!」ドドドドド
ドゴンッ!!
盾クロシュ「んんーっ!!」ズザザザッ
ローガン「踏ん張れ、クロシュくん……!!」ズザザッ
妖精「クロシュ、あなたに精霊の加護を授けましょう――」キラキラ
イリス「私たちは突破してきたマノシシを迎え撃とう!」
ミスティ「ええ!」
マノシシ「ブヒーッ!!」ドドド
イリス「来た!」
ミスティ「これで!!」ヒュオオ―
氷の壁「」ガギン!!
激突するマノシシ「ブヒウーッ!!!」ドゴン!!
イリス「大人しくして! 水よ!」
泡「」ポワン
マノシシ「ブヒッ…」ジタバタ
紫髪のエルフ幼女「はあ、はあ……! 助かります……!!」タッタッタッ
↓1
01-05 痛恨
06-15 劣勢
16-95 勝利
96-00 勝利+??
ガギンッ! ドガッ! バキャッ!!
制圧されたマノシシの群れ「ブヒ…」
妖精「哀れなマノシシたち……。なぜここに姿を現したのか……言葉を持たぬあなたたちに問うても、仕方のないことね……」
ワーワー!! タイボサマー!! フッケンハスゴイ!
*
紫髪のエルフ幼女「ふう……本当に助かりました。街中では不用意に地属性魔法を使うわけにもいかず……」
イリス「ええと、でもどうしてマノシシがここに? 確かに常闇の樹海と緑の森は隣接していますけれど……」
紫髪のエルフ幼女「……原因は不明です。腹をすかせてこちらまで餌を探しに来たのか……」
クロシュ「えと……マノシシさん、おなかすいてたの……?」
紫髪のエルフ幼女「仮説の一つです。実際の原因は現地に行って調べなければわからないでしょう」
ミスティ「そういえば冒険者ギルドにも常闇の樹海の調査員募集があったわね……」
紫髪のエルフ幼女「ああ、あの依頼は私たちと冒険者ギルドが共同で貼り出したものですね。冒険者ギルドは周辺各国と連携して樹海の闇を解き明かそうとしているようです。私たちももちろんそれに協力を惜しまないつもりなのですが――」
ローガン「……その様子では、調査は遅々として進んでいないようだな」
紫髪のエルフ幼女「……ええ。仰る通り、樹海の調査は順調とはとても言い難い状況が続いています。深層に進んだまま帰らない調査員は数知れず……。樹海と地続きの緑の森に住む私たちにとっては全く気の休まらない状況なのです。しかも最近は人間至上主義を掲げるセイントレア王国も台頭してきて……」
イリス「うわあ、王国と常闇の樹海に若干挟まれてるんだ、この国……」
妖精「常闇の樹海は昔っからあんな感じだからどうしようもないっちゃどうしようもないんだよね。森が地続きだから魔族国みたいに防壁を建造するわけにもいかないし」
紫髪のエルフ幼女「ええ……。まあ王国と違い、悪意をもって侵略してくることはないのでそこまで急を要する問題ではないのが救いですが」
*
―首長官邸
ティセリア「お疲れ様、サリー。そしてご助力感謝致します、復権派の皆さん」
ミスティ「……当然のことをしただけよ。感謝する必要はないわ……」
ティセリア「まあそう言わず。あなたがたの活躍で多くの被害を未然に防ぐことができたのです。いち緑の国の民として、是非お礼をさせてください」
クロシュ「おれい……」
ティセリア「はい。何か、私たちにして欲しいことはありますか?」
妖精「……じゃあ選挙で復権派を――」
ティセリア「それ以外で!」
妖精「ケチ!」
ティセリア「私たちの不正を糾弾した口で不正を持ちかけるのはどういう了見ですか!!」
妖精「ま、まだ選挙で復権派をとしか言ってないし……」アセアセ
ティセリア「まだということはその後言うつもりだったのでしょう!! 勝たせろ、と!!!」
妖精「う、うぐぐ……」
イリス「よ、妖精さん……。それは筋が通らないよ……」
ミスティ「はあ、もう……。でもお礼か……。ローガンさんは何かある……?」
ローガン「君たちに任せよう。私の欲するものは、既に持っているか、あるいは二度と届かぬものしかない」
ミスティ「それはそれで難しい話ね……。うーん……私も今すぐ欲しいものは特にないかしら……」
イリス「私も特には。自分の魔法については自分で解き明かしたいし。ということで……クロシュちゃん!」
クロシュ「?」
イリス「フメイちゃんのこと、もっといっぱい探してって頼んじゃおうよ!」
クロシュ「!」
ミスティ「……ごめんなさい、私がこの国の問題に首を突っ込んだからあまり探せていないのよね……」
クロシュ「んーん……。ミスティさんのやりたいことも……この国のことも……大事、だから……」
ミスティ「クロシュ……ありがとう……」
ローガン「うむ……! 私もそれが良いと思う。せっかくお国の人に頼めるチャンスなのだ、生かさぬ手はない」
妖精「まあそうだね。選挙活動ばっかりで後回しにしちゃってて悪かったよ。ティセリアたちにも探してもらおう」
クロシュ「うん……!」
ティセリア「クロシュちゃんのお友達、フメイちゃんの捜索ですね。彼女のビラはこちらでも一枚預かっております。そして現在集まっている目撃情報ですが――」
↓1
01-60 郊外の方で黒髪の幼女が薄茶髪の少女と一緒にいた
61-90 露店通りで食べ歩いていた
91-00 聖域付近をうろついていた
―ある日
露店通り
アリシラ?「あれ美味しそうじゃない? 食べてみようよぉ」グイグイ
ヤマイモ餅屋台の森妖精「ヤマイモ餅あるよ〜。焼き立てホヤホヤのヤマイモ餅だよ〜」
フメイ「ヤマイモ餅……? 美味しそうだけど……お金、もうあんまりないんじゃないの」
アリシラ?「フッフッフ、実はあるんだよねえ」スッ
金貨袋「」ジャラッ
フメイ「!? ど、どこで拾ってきたの?」
アリシラ?「妖精の密猟者っぽい奴らがいたから、ちょっと永眠してもらってぇ……そしたら誰の持ち物でもないお金を見つけたの!!」
フメイ「……いつの間に追い剥ぎなんてしてたの?」
アリシラ?「フメイちゃんがおねんねしてる間かな? でも追い剥ぎなんて人聞き悪いなあ。私はあの人たちが現世でこれ以上罪を重ねないよう、終わらせてあげただけだよ?」
フメイ「……そういう考え方もあるんだ」
アリシラ?「生きとし生けるものは、生まれながらに罪を背負い……生きている限り、さらなる罪を重ね続けるの……。だからそれを終わらせてあげるのもまた、救いの一つなんだよ」
フメイ「わかるような、わからないような……」
アリシラ?「うふふ……フメイちゃんはクロシュちゃんのことだけを考えていれば良いと思うよ。でも今はヤマイモ餅のことも考えよう!」
*
ヤマイモ餅屋台の森妖精「ありがと〜。熱いうちに食べてね〜」
ヤマイモ餅「」ホカホカ
フメイ「……」ジュルリ
アリシラ?「じゃあいただきま〜す! はむっ、はふはふ、あふい!」アチチ
フメイ「いただきます。はむ……もぐもぐ……」モグモグ
アリシラ?「わあ、流石炎のフメイちゃん! 熱いのも平気なんだねえ」
フメイ「ごくん……。あなたが猫舌なだけでしょ……」
アリシラ?「そうかなあ? ふふ、でも私って体が弱いみたいだし熱さにも弱いのかもねえ」
フメイ「……はむ。もぐもぐ……」モグモグ
フメイ(ヤマイモ餅は、とても美味しかった)
フメイ(……クロシュと一緒に……食べたいな……)
フメイ(…………アリシラ、ずっとこのままなのかな……)
◆
―首長官邸
ティセリア「――露店通りで、クロシュちゃんと同じ姿の黒髪の女の子が、薄茶髪の少女と一緒にヤマイモ餅を食べている姿が目撃されたようです」
クロシュ「!!」ガタッ
妖精「本当にここに来てたんだ! フラナたちの情報を疑ってたわけじゃないけど――」
イリス「でもこれは大きな前進だよ! フメイちゃんたちもこの国に滞在してて、しかもけっこう私たちの知くにいるかもしれないってことでしょ!?」
ミスティ「露店通りと言えば、本当に近い可能性があるわね……。ニアミスしてるかも……」
ローガン「その時の様子や、どんな話をしていたかもなどもわかるだろうか」
ティセリア「熱いのが平気とか、猫舌がどうとか……だそうです」
イリス「……な、なんか普通の会話だね」
ミスティ「意外と満喫しているのかしら……」
クロシュ「……フメイちゃん、熱いの平気で……アリシラさん、猫舌だった……」
ローガン「うむ……二人の特徴とは一致しているわけだな……」
ミスティ「……もっと目撃情報が欲しいわね。たまたま露店通りを通っただけで、いつもは全然別の場所にいるかもしれないし……」
イリス「そうだね……。ティセリアさん、他に目撃情報はないですか?」
ティセリア「ごめんなさい、私たちが掴んでいるのはこれくらいで……。元々人通りの多い時期ですから、人混みに紛れてしまうとなかなか難しいのです……」
妖精「まあそればかりは仕方ないか……。そうだクロシュ、あなた革新派の奴らにもビラを渡したんでしょ? あいつらにも聞いてみようよ」
クロシュ「!」
ティセリア「なるほど、革新派ですか……。あの若造が皆さんに失礼なことを言わないか心配なので、私も同行しましょう……」スッ
◆
―森林開発現場
マーベル「……ここの地質も問題なし。やはりあの魔王樹が異常の原因だったと考えて――」
ティセリア「マーベル。ここにいたのですね」スタスタ
マーベル「あなたがたは……伝統派のおばさま方と復権派の大老ではありませんか」
妖精「うるさいよ若年老害」
紫髪のエルフ幼女「躾のなってないガキは嫌いですね」
ティセリア「ああもう、やめなさい! マーベルは煽らないで、妖精とサリーも乗らないで! 私たちはこんな煽り合いをしに来たわけではありません!」
マーベル「何だ、用があったのなら先に言ってくださいよ」
ティセリア「何か言う前にあなたが煽ってきたのでしょう……」ゲンナリ
*
マーベル「ああ、あのビラの子の件か! もちろん俺たち革新派でも目撃情報を集めてはいるが――」
↓1
01-60 郊外の方で黒髪の幼女が薄茶髪の少女と一緒にいた
61-90 露店通りで食べ歩いていた
91-00 聖域付近をうろついていた
―ある日
郊外
焚き火「」パチパチ
アリシラ?「ねえフメイちゃん……」
フメイ「なに」
アリシラ?「……テント……買わない?」
フメイ「……」
アリシラ?「いや、フメイちゃんが野宿が平気な女の子だっていうのはもうわかったから……。温室育ちのアリシラちゃんは、もうちょっとマシな環境で寝泊まりしたいなあって……」
フメイ「……そういうとこは、元のアリシラと同じなんだ」
アリシラ?「テントどころか寝袋もなしに地面で熟睡できるフメイちゃんがおかしいだけだと思うんだけどなあ……」
フメイ「クロシュも地面で熟睡できてたけど……」
アリシラ?「クロシュちゃんはスライムだから、お布団を使う必要があんまりないだけだと思うなあ」
フメイ「……」
アリシラ?「フメイちゃんもさ、炎の魔力が体の内側でぽかぽかしてるから、お布団いらなかったりするんじゃない?」
フメイ「……フメイだって、固い地面で寝るのが好きなわけじゃない。まあ、暑さとか寒さには確かに他の人より強いような気もするけど……」
アリシラ?「でしょお? でもか弱いアリシラちゃんは、か弱いからお布団がいっぱい必要なの。わかるよね?」
フメイ「まあ……」
アリシラ?「というわけでちょっくら買ってくるから! テントと寝袋! フメイちゃんの分もね!」
フメイ「あ、うん」
*
不格好なテント「」
アリシラ?「……テントを張るのって難しいんだね」
フメイ「……うん。こんなに難しいなんて知らなかった……」
アリシラ?「まあでも、これで私たちも一国一城の主! 雨風を凌げる場所で存分に寝よう!」
フメイ「うん」
*
―不格好なテント内
ランプ「」ユラユラ
アリシラ「それじゃあ灯り消すよ〜」
フメイ「うん」
ランプ「」フッ
アリシラ「おやすみ〜」
フメイ「うん……」
フメイ「……」
アリシラ「……」zzz
フメイ「……」
フメイ(テントの外から、そよ風の音と虫の声が聞こえる)
フメイ(でもこのテントの中は真っ暗で、何も見えない。まるでここだけ、外から切り離されてしまったかのよう)
フメイ(……もしここが、あの集落だったら……)
フメイ(クロシュと、みんなと、こうやって……テントのお泊りを楽んでいるのだったら……)
フメイ(どれだけ………)ジワ…
ポロポロ グスッ スンッ ポロポロ
アリシラ?(……)
アリシラ?(フメイちゃんも……まだ、赤ちゃんみたいなものだもんねえ……)
アリシラ?(ああ――どうして世界は、この無垢なる子供たちに、かくも残酷な運命を強いるのでしょう――)
アリシラ?(――ごめんね。でも、だからこそ……利用させてもらうよ。あなたの、炎を)
アリシラ?(この最悪の世界を――焼き尽くして、終わらせる為に――)
◆
―森林開発現場
マーベル「郊外の空き地で、そこのクロシュちゃんと同じ容姿の女の子と薄茶髪の少女がテントを設営していたらしい」
クロシュ「!!」
マーベル「だがその情報を聞いたのは実際に目撃した翌日でな……。俺たちは急いで現地に向かったんだが、そこには焚き火の跡が残っているくらいで既に誰もいなかった」
イリス「フメイちゃんともう一人の人は、テントで寝泊まりしながら郊外を転々としている……ということ!?」
マーベル「まあその可能性は高いだろうな。だが郊外と一口に言ってもかなり広い。毎日寝床を変えているとなると見つけるのは簡単じゃないぜ。ただでさえ今の時期は他にもテントを張って寝泊まりしてる観光客や冒険者が大勢いるからな」
ミスティ「でもこれも大きな前進よ……! 寝泊まりは郊外で、日中は首都にやってきて何かをしているということなのかも……!」
ティセリア「しかし、一体どういう状況なのでしょう? この国へ来ているのなら、どこかであのビラを見ることもあるでしょうし、それならクロシュちゃんに直接会いに来てもおかしくなさそうなものですが……」
妖精「あー、それはまあ、ちょっと込み入った事情があってね……」
マーベル「家出とかか?」
妖精「家出……言われてみれば、家出みたいなものなのかも」
クロシュ「……」
ティセリア「……私たちも目を増やしましょう。マノシシの件のみならず、魔王樹の討伐などについても、あなたたち復権派には大きな恩がありますから」
マーベル「まあ、俺もできる範囲で探しといてやる。元はと言えばあの魔王樹のせいで開発に支障が出たわけだからな。借りっぱなしは性に合わねえ」
クロシュ「えと……ありがと、ございます」ペコリ
ティセリア「いえいえ、恩を返すだけですから!」
マーベル「おう。借りを返すだけだ。礼はいらねえぜ」
妖精「だってさ。何にしても良い感じに進みそうだね、クロシュ」
クロシュ「うん……!」
ティセリア「ところで皆さん、本日は一緒にお夕飯などいかがですか?」
マーベル「は?」
妖精「いいよ」
イリス「え、ええと」
ミスティ「いいのかしら……?」
ティセリア「はい。昨晩の戦は急だったので、終わった後はそのままへとへとで解散してしまいましたが、祝勝会をやっていなかったなあと思いまして」
ローガン「なるほど……。確かに、魔王を倒したのであれば祝杯くらいは上げたいものですな」
マーベル「いや、だがこのタイミングで祝勝会って……。もう選挙まで日も少ないのに呑気すぎるだろ……」
紫髪のエルフ幼女「これが伝統派のやり方です。で、あなたは来るんですか?」
マーベル「……行くが。伝統派と復権派だけで食事会なんてどんな談合が行われるかわかったもんじゃねえ」
ティセリア「決まりですね! では突発的ですが、三派閥で食事会です!」
◇
本日はここまでです。次回は食事会編からとなります
フメイちゃんとアリシラ?さんは隠れる気があるんだかないんだかわからない行動をしているようです。ばったり街中でクロシュちゃんと会ってしまったらどうするつもりなのでしょう。多分、どうするつもりでもないのでしょう。実際のところ、フメイちゃんはばったりクロシュちゃんと会いたいとすら思っているかもしれません。偶然なら仕方ないよね、くらいの甘えがあっても良いと思います
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
アリシラ?さんが今後クロシュちゃんたちの前に立ちふさがるかどうかは今のところわかりませんが、彼女は少々変わった価値観を持ち、世界を破壊しようとしているようです
また、以前のアリシラ氏であれば知り得ないはずのことを知っていたり独特の価値観を披露したりなど人格が異なっているかのような言動を繰り返していますが、野宿や熱いものが苦手だったりなど、以前のアリシラ氏と共通する面も有しているようです。完全に何者かに成り代わられてしまったわけではないのかもしれません。真相は闇に包まれています
自由行動でフメイちゃんを捜すことももちろん可能です。成否はコンマ次第ではありますが、ビラ配り効果や目撃情報なども集まってきているため、全く手がかりなしで捜すよりは成功率が高くなっているかと思います
―夕方
どんぐり食堂
ワイワイ キャッキャ
ミスティ「祝勝会もここなのね」
紫髪のエルフ幼女「見かけこそ庶民的ですが、ここは食材も料理人も最高水準です。他の国の三ツ星店にも引けを取りません」
ティセリア「産地直送でお値段も抑え、誰でも気軽にご利用いただけるようにあえて庶民的な雰囲気にしているそうですよ」
食堂妖精「そうそう! いかにも高級って感じの雰囲気だと気後れしちゃうからね〜」
イリス「へ〜そうなんですね。でも確かにこっちの方が親しみやすいと思います!」
セイン「……」
クロシュ「……」
妖精「あら、あなたもいたんだ」
セイン「ああ。魔王樹との戦には参加できなかったが」
マーベル「護衛なのに護衛してくれねえんだよ、こいつ。いつもふらっとどっか行っちまうし」
セイン「逆だ。何も言わずどこかに行くのはマーベルの方だろう」
マーベル「そうだっけか? 悪いな、護衛を連れるってのがどうも慣れなくてな」
ローガン「セインくんもなかなか苦労をしているようだな……」
食堂妖精「それで、今日の食材はどうするの?」
↓1〜2 食材を1〜2つ選択
肉類:畑の肉、マノシシ肉(期間限定)
野菜:食べられる野草、マンドラ大根、マジカルトリュフ、森ニンジン、ゴボウの根っこ
穀物:ウルティ米、パン、ヤマイモ
魚介:サワガニ、ザリガニ、淡水海竜の大トロ
果実:森林木苺、どんぐり、精霊樹の果実
卵乳:ニワトリの卵、エルフミルク、エルフチーズ、エルフバター
特殊:アルラウネオイル、スライムゼラチン、フェアリーシロップ
※表にない調味料などが使われることもあります
ミスティ「前回はデザートみたいな感じだったけど、今回はどうする……?」
イリス「せっかくだから今回はがっつりいきたいかも!」
紫髪のエルフ幼女「がっつりいくのなら、本日最適の食材があります」スッ
メニュー表「マノシシ肉(期間限定)」
ローガン「これは……もしや!」
ティセリア「はい。あなたがたに制圧していただいたマノシシたちの肉を加工し、このどんぐり食堂に納入しました」
ミスティ「マノシシって食べられるのね……」
紫髪のエルフ幼女「常闇の樹海出身の生物は全体的に黒みがかっているため敬遠されがちですが、マノシシの肉に毒性はなく、味もイノシシ肉とさほど変わらないものです」
マーベル「ちょっとクセは強いけどな。俺は嫌いじゃない」
イリス「じゃあ一つはマノシシ肉にしようよ! 私たちのお手柄でもあるんだしさ」
ミスティ「そうね……。そういえば前も気になったのだけど……淡水海竜って、矛盾してないかしら……。海竜なのに、淡水って……」
紫髪のエルフ幼女「ああ……きっと、初めて海竜が発見されたのは海だったんでしょうね。だから当時の発見者たちはその竜を海竜と名付けてしまい……」
イリス「そっか……! 後になって、淡水域に生息する海竜の仲間が発見されちゃったんだ……!」
紫髪のエルフ幼女「恐らくはそういうことなのだと考えられます」
ミスティ「なるほどね……。合点がいったわ……」
妖精「そういえば大トロって生で食べるんだっけ……?」
紫髪のエルフ幼女「はい。このフォレスティナでも、魚類を生で食べる文化が浸透してきたのはごく最近のことですが」
マーベル「大陸より東の文化圏じゃ昔から生で食ってたらしいがな」
妖精「う〜ん……でも魚を生で食べたりして大丈夫なの? なんか気持ち悪くなりそう……」
マーベル「なんだい、おばあちゃん大トロ食ったことねえの? じゃあせっかくだから頼もうぜ、大トロ!」
妖精「ええっ!? い、いらないよ! ていうかおばあちゃん言うな!」
マーベル「一度食ってみろって! 絶対美味いから!」
妖精「うへぇ……」
ティセリア「妖精ほど長く生きていても、食べたことのない食材があるのですね……。さて、あと二品は……」
マーベル「セイン、お前は何か食いたい食材とかないのか?」
セイン「特にない。だが出されたものはなんでも食べるつもりだ」
イリス「あ、ローガンさんも似たようなこと言ってましたよね」
ローガン「そうだったろうか……。まあ、私も出されたものはなんでも食そう。皆で好きに選ぶと良い」
紫髪のエルフ幼女「セインさんとローガンさんは紳士的で奥ゆかしい方なのですね。私も普段からこの食堂を利用しているので……ティセリアはどうしますか?」
ティセリア「私もいつも美味しいものを食べさせてもらっていますから、復権派の皆さんに選んでいただきたく思います」
ミスティ「……それじゃあ、肉と魚でこってりしているから……野菜も入れたいわ……。マンドラ大根、良いかしら……?」
イリス「た、確かにお肉とお魚じゃ重いよね……! 良いと思う! それじゃあ、あと一品だけど……クロシュちゃん、どれが良いとかある?」
クロシュ「……えと……この、スライムゼラチン、っていうのは……?」
紫髪のエルフ幼女「これは森スライムの皆さんから分けていただいているスライム性ゼラチンです。美容と健康にとても良いと多くの種族の女性から好評をいただいている人気食材の一つなんですよ」
クロシュ「……わたしからも、出せる……? ゼラチン……」
紫髪のエルフ幼女「それは……わかりません。私たちが契約しているのは他種族が食しても問題のない種の森スライムの方々なので……黒いスライムであるクロシュさんの体から採れるゼラチンを他種族が摂取しても問題ないかは、一度調べてみないとわからないかと」
クロシュ「そうなんだ……」
妖精「なあに、もしかして自分から採れたゼラチンをみんなに食べさせたいの?」
クロシュ「え、えと……体に、良いなら……。非常食代わりにも、なるかも……」
イリス「いやいやいや! クロシュちゃんを非常食代わりになんてしないよ!?」
ミスティ「何を言っているのよ、もう……。クロシュを食べたりなんてしないわよ……」
妖精「ほんとにもう、この赤ちゃんスライムは……」
ローガン「フッ……他のメンバーはともかく、クロシュくんはやはり放っておけんな……」
紫髪のエルフ幼女「復権派の皆さんが、クロシュさんのお友達を一緒に捜してあげている理由が少しわかる気がします」
ティセリア「ふふ、ええ……。クロシュちゃんは優しい子なのですね」
マーベル「危うい優しさだがな。俺もそこのおっさんと同意見だ、もしパーティメンバーだったら放っておけん」
ローガン「私はマーベル氏よりも遥かに年下なのだが……」
セイン「……」
◇
薄切り大根と角煮マノシシ肉のスライムあんかけ大トロカルパッチョ「」ジャン!
ミスティ「こ、これは……初めて見る料理だわ……。カルパッチョ、と言うの……?」
食堂妖精「うん! 見た目はちょっと独創的だけど、味はしっかり美味しいから安心してよ!」
イリス「盛り付けの仕方も勉強になるなあ……」
ティセリア「それでは料理も揃ったので、皆さん祝杯の準備を」
マーベル「はいよ」スッ
セイン「……」スッ
ミスティ「祝杯なんて、いつぶりかしら……」スッ
イリス「私もすっごい久し振りかも……。魔族国では復興最優先でそんな余裕なかったもんねえ」スッ
ローガン「次に魔族国に立ち寄ることがあれば、改めて上げたいものだな」スッ
妖精「ほらクロシュも、グラスを持って」クイクイ
クロシュ「えと……こ、こう……?」
紫髪のエルフ幼女「お願いします、ティセリア」
ティセリア「はい! それでは――今回の勝利を祝い、この国の輝かしい未来を祈って――」
「乾杯!」カチャン!
*
イリス「もぐもぐ……ごくん。これ美味しいかも……!」
ミスティ「ええ……! 実をいうと私もスライムあんかけと大トロは初めてだったんだけど、美味しく感じるわ……!」
ローガン「これは……! 柔らかく煮込まれたマノシシの角煮と冷たくも濃厚な大トロの二つがスライムあんかけによって絶妙な味を作り出している……! そして大根の薄切りがアクセントとなってそれを引き立てているのも見逃せん……!」
紫髪のエルフ幼女「ふふふ、流石はどんぐり食堂です。やはりここに来て正解でしたね、ティセリア」
ティセリア「ええ。こうやって、食材を選んで出てきた予想外の料理を楽しむのもこの店の楽しさですよね」
マーベル「で、どうよおばあちゃん。美味いだろ? ちょっと俺が想像してた大トロとは違ったけどな!」
妖精「もぐもぐ……。なんか……不思議な味と食感……。まあ、悪くはないけど……。あとおばあちゃん言うな」モグモグ
クロシュ「もぐもぐ」モグモグ
妖精「クロシュ、スライムの姿で食べても良いよ。緑の国ならスライムの姿を気にする人はいないから」
クロシュ「! う、うん……ありがと」デロデロ
スライムクロシュ「〜〜♪」モニョモニョ モグモグ
セイン「……」モグモグ
☆各派閥の親交が深まりました
◆
―緑の国フォレスティナ 滞在8日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・精霊樹の種
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・選挙で勝つ
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
―朝
大樹の宿 ロビー
チュンチュン
イリス「昨日は楽しかったなあ……!」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ
ローガン「うむ……! 私も久し振りに羽目を外せた気分だ」
ミスティ「ええ……。伝統派と革新派の人たちのことを……少しだけ知れたような気がするわ……」
妖精「明日には票を巡って争う相手だけどね……」
イリス「はっ……! も、もう明日だっけ!? 投票日!!」
ローガン「明日だな……」
妖精「まあやれるだけのことはやってきたと思うし、後はなるようになるよ」
イリス「で、でも勝てるかなあ……。もし私たちが負けちゃったら、この国は王国の靴を舐めることになるんでしょ……?」
ミスティ「私たちが勝ったら、靴を舐めるどころじゃ済まなくなる可能性もあるけどね……。でも対策はあるんでしょ? 妖精」
妖精「……まあ、ないわけじゃないよ。でもマーベルは絶対に反対するだろうし……ティセリアは……どうだろう」
イリス「え、ええ……? それ、どういう対策なの……?」
妖精「聖域の範囲を緑の国全域まで広げて、フォレスティナを完全に鎖国する」
イリス&ミスティ&ローガン「!!?」
妖精「自由な往来は妖精と精霊と、あとは一部の認められた者だけしか行えなくなる。聖域を広げる際に適切な選別を行えば観光客や冒険者も聖域外に追い出せるし、あのセインってやつもそれは例外じゃない。だからフォレスティナの安全は確実に保てるようになるよ」
イリス「そ、それはそうかもしれないけど……!」
妖精「王国に滅ぼされるか、王国の靴を舐めるか、閉じた楽園にみんなで引きこもかの三択なんだよ。その中なら一番マシでしょ」
ミスティ「……私たちは、どうなるの?」
妖精「確実に外患とならないことがわかっている者には、聖域の通行許可を与える。まあ、最初はあなたたちくらいだけどね」
スライムクロシュ「〜」モニョ…
妖精「大丈夫。フメイも聖域の中にいれたままにしてあげるから。聖域を閉じた後、みんなで捜せばきっと見つかるよ」
ローガン「……しかし、国民は納得するだろうか? 彼らの理解を得られないまま強行するのは危険だと思うのだが……」
妖精「世界樹の意思ってことにすれば良い。私の意図で行えば反対も出るだろうけど、世界樹が気まぐれに聖域を広げたのなら受け入れざるを得ないよ。世界樹は、この国の根幹なんだもん」
イリス「……そもそも、妖精さんの手で聖域を広げることなんて可能なの? それこそ、世界樹自身でもないのに」
妖精「私を誰だと思っているの? 千年間も世界樹の近くにいて、この国を支え続けた建国の太母だよ? 聖域の結界はとっくの昔に解析済みだし、範囲を変更する手法も確立してる……ていうか今の聖域も実は範囲を変更した後なんだよね」
イリス「え、ええ!? そうだったの!?」
妖精「うん。元々、世界樹の結界は緑の森を覆うくらい広かったんだよ。でもそれじゃ往来に不便だったから、建国の時に私が手を加えたの。だからまあ、厳密に言えば聖域を広げるっていうよりは元の広さに戻すって感じかな」
ミスティ「元に戻すだけ……確かに、それなら仕方ないような気もするわ……」
イリス「う〜ん……それしかないのかな……」
ローガン「……気持ち的には納得し難いところだが……これより良い作戦も思いつかん……」
妖精「まあ、納得できない気持ちはわかるよ……。でも国際競争なんかに挑んだって、その行く末はきっと慈悲も仁義もない弱肉強食だもん。だったら閉じた聖域の中で、食うのも食われるのも最小限に留めて穏やかに暮らした方が良いと私は思う」
イリス「……そうなの、かも……?」
ミスティ「……そうね。異議はないわ……。あの森妖精の子も……きっとその方が、穏やかに暮らせるだろうし……」
ローガン「……奪うことも奪われることもなく、穏やかに暮らせるのなら……それに越したことはない、か……」
スライムクロシュ「……」
妖精「……すぐに納得してくれとは言わないよ。でも、生きることの痛みを知っているあなたたちなら……きっと、わかってくれると思う。いや、無理にわかれとも言わないけども……」
スライムクロシュ「〜〜」モニョニョ
妖精「クロシュ……ありがと」ニコ
フォレスティナ滞在8日目です(投票日までの残り行動可能日数1、選挙前最終行動です)
↓1〜3 自由安価 何をする?
あまり進まずに申し訳ありませんが、本日はここまでとさせていただきます
次回はミスティの特訓編、フメイちゃんとアリシラ?さんを捜す編、セインくんの真意を探る編となります
突然の鎖国宣言ですが、果たして上手くいくでしょうか。それは実際にやってみなければわかりません。そもそも選挙で復権派が勝てるかどうかもわからないので、あまり気にする必要もないかと思います
そしてもう選挙の前日です。当初は険悪だった三派閥ですが、いろいろあってお食事会を楽しめる程度には仲良くなれたようです。これが実際の投票日にどのような影響を及ぼすかはわかりませんが、恐らく悪い方には傾かないことでしょう。緑の国の平和を願う気持ちは、概ねみんな共通しています
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
妖精おばあちゃんは国の運営に関してはともかく、個人的な趣味嗜好については割と保守的なため、生魚を食べたことがなかったようです。ちなみに緑の国のエルフは肉も魚も食べるので、細身ではない人も多く見られます
クロシュちゃんは実際、パーティの末っ子のような感じなのかもしれません。もう穀潰しではありませんが、その立ち位置はあまり変わっていないようです
クロシュゼラチンがどんな味かは、実際に食べてみないとわかりません。また、スライムゼラチンは種によって毒性があったりもするので、摂取には注意が必要です。どんぐり食堂で提供されている森スライムのゼラチンは、おおよそほとんどの生物が食しても毒性を示すことがない安心安全なゼラチンです
―朝
大樹の宿 ロビー
ミスティ「それで……今日はどこで活動するの?」
妖精「それなんだけど、今日は各自自由行動にしない?」
イリス「えっ!? 明日選挙だよ!?」
妖精「知名度は十分上がったし、やれることも大体やったもん。あとはなるようになるよ」
ローガン「妖精くんが言うならそうなのだろう。私には未だに選挙のせの字もわからんしな……」
ミスティ「それはその通りね……。妖精がもう十分だと思ったのなら、私たちはそれを信じるしかないわ……」
妖精「まあそういうわけで私はちょっとやることあるから、みんな今日は自由に好きなことやっててね」
クロシュ「……? 妖精さん……」ジッ
妖精「この前みたいに一人で危ないことしに行くわけじゃないから大丈夫だよ。ちょっとティセリアたちと話をしてくるだけ」
ミスティ「……さっき言った作戦を話してくるのね」
妖精「そういうこと。あなたたちがいても、その……できることがないと思うからさ……」
イリス「遠回しに戦力外通告されちゃった! 事実だけど!」
ローガン「う、うむ……。実際、妖精くん以外はつい先日ここに来たばかりの部外者だからな、我々は……」
妖精「今更だけど悪かったね、この国のゴタゴタに巻き込んじゃってさ……」
ミスティ「いいえ、首を突っ込んだのは私自身の意思よ。巻き込まれたつもりはないわ」
イリス「右に同じく!」
ローガン「うむ。微力ではあろうが、建国の太母に力添えできて光栄だ」
クロシュ「ん……」コクリ
妖精「ありがと! それじゃ行ってくるよ」フワッ パタパタ
*
ミスティ「……それじゃあ、私も一人でやりたいことがあるから出るわね」スクッ
イリス「えっ? 一人で?」
ミスティ「ええ」
ローガン「相わかった。しかしいくらこの国の治安が良いと言えど……いや、君には言うまでもないか」
ミスティ「ええ、心得ているわ。元より一人で放浪してきた身だもの、警戒は怠らない」
ローガン「ならば良し」
イリス「さ、流石だなあ……」
ミスティ「日が暮れるまでには帰るわ。それじゃあ行ってくる」スタスタ
クロシュ「いってらっしゃい……」
*
クロシュ「……」
イリス「……それじゃあ私たちは、フメイちゃんを捜しに行こっか!」
クロシュ「!」
ローガン「うむ。目撃された場所を中心に捜してみるとしよう」
イリス「はい!」
クロシュ「えと……ありがと、ございます」ペコ
*
―郊外
精霊の泉
ホーホケキョ
ポッポーホーホー
ミスティ「……」
ミスティ(先日の戦いで……私だけ、無様に攻撃を食らって気を失ってしまったわ……)
ミスティ(イリスを庇う為だった……なんてのは言い訳にしかならない……。わざわざ体を張らずとも、氷の壁を張るとか他に手はあったはずだもの……)
ミスティ(……歴戦の戦士であるローガンさん、複数属性扱えるイリス、最近戦えるようになってきたクロシュ、実は凄い人物だった妖精……。みんな、凄い人……)
ミスティ(それに比べて……私は……。かき氷が作れて、ソリを動かせるだけの女……。このままでは……みんなに、申し訳が立たないわ……)
ミスティ(強く……ならないと……)グッ
*
宙に浮く氷柱「」キラキラ
ミスティ(私の作る氷柱……相手が人や獣であればある程度は有効だけど……樹木にはまるで刃が立たなかったわ……)
ミスティ(……樹木だけじゃない。強固な装甲を纏っている相手には、同様に通じないはず……)
ミスティ(今までは自分が生き残ることさえできれば、必ずしも戦いに勝つ必要はなかったけれど……。この前みたいに、仲間の誰かが敵対者に捕まったりしたら、そうも言ってられないわね……)
ミスティ(でも、勝つ為にはどうすれば良いのかしら……。イリスみたいにしっかり魔法を学んで来たわけじゃないのが災いしたわ……。我流以外のやり方がわからない……)
ミスティ(イリスも氷属性は使えないらしいし……。ここはやはり、魔力の限り氷柱を重く鋭くしていくしか……)
↓1コンマ
01-60 燃費の悪い新技を開発
61-90 燃費の良い新技を開発
91-00 負属性への理解
宙に浮く巨大な氷柱「」グググ
バリンッ
砕け散った氷柱「」シュウウ…
ミスティ「っ、だめね……。魔力量に見合わない真似をしても、燃費が悪すぎる上に不安定……。実戦じゃとても使えないわ……」
ミスティ「……それにしても……」
砕け散った氷柱「」
ミスティ「この無理矢理大きくしようとして砕けた氷柱の破片……やけに白っぽいわね……。なんでかしら……」スッ
ミスティ「……そもそも普段から私の作る氷は妙に白みがかっているけれど……。この氷柱は特に白っぽいというか……」
ミスティ「昔、ママが作った魔法の氷はもっと透明で澄んでいたわ……。一体何が違うのかしら……」
砕け散った氷柱「」パキン…
ミスティ「……! ……これ、空気なんだわ! 製氷の精度が甘いせいで空気が混ざり込むから……!」
ミスティ「この大きくしすぎた氷柱がいつもよりさらに白っぽいのは、無理矢理大きくしたせいで普段よりさらに精度が失われていたから……!」
ミスティ「それなら空気が混ざらないように――ママの魔法みたいに、氷を作ることができれば――」グッ
◇
澄んだ透明な氷柱「」キラン…
ミスティ「……コツを掴めば意外と簡単にやれたわ。あとはこれを――」
ヒュンッ
ドスッ
大岩に深々と突き刺さった透明な氷柱「」
ミスティ「よし……。これなら岩のゴーレムが相手でも有効打を与えられるわね……」
ミスティ「ついでに、氷柱ばかりだと刺突に強い相手には不利だから――」ヒュオオ
宙に浮く氷の刃「」シャキン
宙に浮く氷塊「」ゴゴゴ
ミスティ「これで斬撃も打撃もカバーできるわ……」
ミスティ「……それにしても……コツを掴んだお陰かしら。製氷の燃費が良くなった気がするわ……。空気という不純物のせいで余計な消耗を強いられていたかも……」
ミスティ「ふう……。とりあえずまだやれそうね……私も……」
☆ミスティの製氷技術が上がりました
◆
―露店通り
イリス「まずはここだね。ヤマイモ餅を食べてたってことは――」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「ヤマイモ餅が食べたい? 焼き立てホヤホヤだよ〜、どうぞどうぞ〜」
イリス「ヤマイモ餅屋さん、何日か前にここへ来た二人組について知らない? 一人は――」
クロシュ「……えと……わたしに、似てる……黒髪の、女の子……」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「あっ、この前買ってってくれたお客さん! ……に似てる子……?」
イリス「うん……。なんていうのかな……まあ、双子みたいなものなんだけど、私たちはその子を捜してるの」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「双子ちゃんかあ〜! 迷子なの? 大変だねえ」
クロシュ「えと……薄茶色の、お姉さんも……一緒だった……?」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「うん、一緒だったよ〜。なんだか面白い二人組だったから印象に残ってるかも〜」
ローガン「その二人組がどこへ向かったか、知らないだろうか」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「それはわかんないな〜。私はヤマイモ餅を買って食べた後は、人混みに紛れてどっか行っちゃったと思うよ〜」
イリス「うーん、そう簡単には見つからないか……。でもありがとう! ヤマイモ餅買うね! 三本!」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「えへへ、ありがと〜。熱いうちに食べてね〜」
*
ヤマイモ餅「」ホカホカ
イリス「いただきまーす! あむっ……あふいっ!」
ローガン「熱いうちに、と言うがこれは熱いうちは食べられん熱さだな……」
クロシュ「あむ……もぐ、もぐ……」モグモグ
イリス「わあ、クロシュちゃん凄いな! こんなに熱いのに食べれるんだ……!」
クロシュ「ごっくん……。うん……」
◇
―郊外 空き地
焚き火跡「」
ローガン「ここだな。次の目撃現場は」
イリス「微かに、あの時食らった炎の魔力の残滓を感じる……。フメイちゃんがここにいたのは間違いないと思う」
クロシュ「フメイちゃん……」
ローガン「だがやはりここにはいないようだな……。せめて足跡が見つかれば良いのだが……」キョロキョロ
イリス「私ももっと魔力探知してみる……!」
クロシュ「……」
探索度合計100%以上でフメイちゃんを見つけます
イリスの魔力探知
↓1コンマ(目撃情報により+10)
01-05 空振り
06-35 探索度+10%
36-65 探索度+20%
66-95 探索度+40%
96-00 イリス「近くにいる!」
ローガンの斥候術
↓2コンマ(目撃情報により+10)
01-05 空振り
06-35 探索度+10%
36-65 探索度+20%
66-95 探索度+40%
96-00 ローガン「この足跡は新しいぞ!」
クロシュの発想
↓3コンマ(目撃情報により+10)
01-05 空振り
06-35 探索度+10%
36-65 探索度+20%
66-95 探索度+40%
96-00 クロシュ「フメイちゃん!」
イリス「魔力反応は……微かだけど、こっちに続いてる」
ローガン「私も足跡を発見した。方向は……イリスくんの示すものと同様だな」
イリス「本当ですか! それなら間違いなさそうです……!」
犬クロシュ「……」クンクン
イリス「わっ、クロシュちゃんいつの間に犬の姿に……!?」
犬クロシュ「……!」
犬クロシュ「」シュバッ
イリス「急に走り出さないでよぉ!」ダッ
ローガン「くっ、なんという速さだ……! しかしあの様子は、まさか――」ダッ
*
―郊外 森の境
犬クロシュ「」シュタタタッ
デロッポンッ
クロシュ「フメイちゃん!!」トタトタ
フメイ「え……? クロ、シュ……?」
クロシュ「フメイちゃん!」
フメイ「クロシュ……どうして……」
クロシュ「…………かえろ……? 一緒に……」
フメイ「…………」
アリシラ?「あ〜クロシュちゃんだ〜! お久しぶり〜!」ヌッ
クロシュ「!」ビクッ
フメイ「……」
アリシラ?「あれぇ? 私のこと忘れちゃったの? アリシラちゃんだよぉ、お隣さんの〜」
クロシュ「え、えと……」オロオロ
フメイ「……アリシラは、少し変になってるの。放っておいてあげて」
アリシラ?「も〜、変になんてなってないよ〜」
フメイ「……」
クロシュ「……あ、アリシラさんも……。かえろ……?」
アリシラ?「ん〜? どこに?」
クロシュ「あ……」
アリシラ?「うふふ……。帰るとこなんて、ないよ。私たちの住んでたとこがどうなったか、覚えてるでしょ? お母さんもお父さんも、村のみんなも……私たち以外、みーんな死んじゃったもの」
フメイ「……」
アリシラ?「だからごめんね? クロシュちゃんと一緒には帰れないかな〜」
クロシュ「えと……でも……お墓、だけでも……」
アリシラ?「お墓かあ……。それも悪くないけど……うふふ……むしろクロシュちゃんこそ、私たちと一緒に行こうよ。この最悪の世界を、私たちと一緒に綺麗にしよう?」
クロシュ「えっ……?」
フメイ「……」
アリシラ?「クロシュちゃんも見たでしょ? 惨たらしくいたぶられ、辱められ、殺される人間たちと……人間の赤ちゃんを惨たらしくいたぶって殺しながら、哄笑を上げる魔族たちの姿を……。かつて虐げられた魔族が、立場が変わった途端に同じことをし返すの。あれはあの魔族たちが特別悪い奴らだったというわけではないんだよ? 誰だってああなるの。誰もが〝魔王〟になる可能性を秘めているの」
クロシュ「……」
アリシラ?「うふふ……怖いねぇ。でも大丈夫。クロシュちゃんを傷付けようとする者は全てこの世から追い出してあげるから。ね、フメイちゃん?」
フメイ「……うん。フメイが……みんな、焼き払う。私たちをいじめる奴らは……全員……」
クロシュ「フメイちゃん……」
アリシラ?「そういうわけだから、私たちはまだ帰れないの。お墓はいつか作ってあげたいけどね。それで……どう? クロシュちゃんも一緒に来ない?」
フメイ「……クロシュを巻き込まないで。これは、私とあなたが始めたことでしょ」
アリシラ?「クロシュちゃんに聞いてるの〜。フメイちゃんは黙っててよぉ」
クロシュ「……」
クロシュ(アリシラ?さんの言うことも……ちょっと、わかる……)
クロシュ(まさにその時、妖精さんが言っていたように……命には、どうにもならない面がある……)
クロシュ(フメイちゃんとアリシラ?さんは……そのどうにもならないものを、どうにかしようとしているのかもしれない……)
クロシュ(でも口ぶりからすると……そのやり方もまた、きっとどうにもならないくらい悲惨なものだ……)
クロシュ(どっちに転がっても……どうにもならないことに変わりはない……)
クロシュ(わたしは……)
↓1〜3多数決
1.やっぱりどうにもならないと思う。一緒には行けない
2.やっぱりどうにかしたいけど、悲惨なやり方はだめ。一緒には行けない
クロシュ(……)
クロシュ(聖女さんは……あの光景を目の当たりにしながら……それでも、命は苦しめ合うだけじゃないって……魔族国でがんばってる……)
クロシュ(妖精さんも……どうにもならないと口では諦めたようなことを言いながら……今この国で、必死に奔走してる……)
クロシュ(……それに……森妖精の子のおうちだって……)
クロシュ(わたし一人じゃ、何もできなかったかもしれないけれど……みんなで諦めずにがんばったから……助けられたんだ……)
クロシュ(……)
クロシュ(どうにもならないことは、やっぱりどうにもならないかもしれないけれど……)
クロシュ(それでも……やっぱり、わたしも……)
クロシュ(諦めたくない……!)
クロシュ「……一緒に……行けない」
フメイ「……うん。クロシュは、安全なところに……」
クロシュ「んーん……。フメイちゃんも……アリシラさんも……危ないことは、やめて……やっぱり、一緒にかえろ……?」
フメイ「え……」
アリシラ?「……」
クロシュ「えと……ひどいやり方は……だめ……。それじゃあ、本当に……どうにも、ならなくなっちゃう……」
フメイ「……」
アリシラ?「まあ、優しいクロシュちゃんには向いてないとも思ってたし仕方ないかな。やっぱり私とフメイちゃんの二人でやるしかないねぇ」
フメイ「……」
アリシラ?「うふふ……もしかしてフメイちゃん、帰りたくなっちゃった?」
↓1コンマ
01-95 それでも……
96-00 帰りたくなっちゃった
―
――
――――
―燃える集落
ゴオオオ……
メラメラ… パチパチ…
燃える大人の死体「」メラメラ
燃える子供の死体「」メラメラ
燃えるスライムの死骸「」ジュクジュク…
◆
―焼け落ちた集落跡
雨「」ザァァァァ…
大人の焼死体「」
子供の焼死体「」
スライムの焼死骸「」
――――
――
―
フメイ「……」グッ
クロシュ「フメイちゃん……」
フメイ「……クロシュ……。ごめん……。フメイ……一緒に、帰れない……」
クロシュ「あ……」
フメイ「……みんなを焼いたの……フメイの炎、だから……。フメイに……帰る資格なんて……ない……」
クロシュ「そんな……こと……。だって、フメイちゃんは……仕方なかったもん……」
フメイ「仕方なく、ない……。フメイのせいで……みんな、死んじゃった……」
アリシラ?「……」
フメイ「だから……あの村のみんなが夢見てた……差別も暴力もない、平和な世界を……フメイが、作る……。あんなこと……二度と、起こさせないために……」
クロシュ「……フメイ、ちゃん……」
アリシラ?「ごめんねぇ。フメイちゃんも本音ではクロシュちゃんと一緒にいたいんだけどね? それ以上に、やらなっきゃならないことがあるの……」
クロシュ「……」
フメイ「……クロシュは……安全なとこで、待ってて……」
クロシュ「…………」ジワ
フメイ「……ごめんね、クロシュ。本当に……ごめんね……」
アリシラ?「うふふ……つらいねぇ……。待つ身も、待たせる身も……」
イリス「クロシュちゃーん!」タッタッタッ
ローガン「クロシュくん!」タッタッタッ
アリシラ?「あらら、クロシュちゃんの新しいお友達? 鉢合わせるのも面倒だしお暇しよっか、フメイちゃん」
フメイ「あっ……。クロシュ……! これ……!」ビリッ
スッ
フメイの服の切れ端「」
クロシュ「ふえ……?」
フメイ「涙、拭いて……。毎日熱殺菌してるから、清潔だから……」
クロシュ「あ……」
フメイ「それじゃあ、またね……!」
ボンッ!
アリシラ?「それじゃあまたねぇ、クロシュちゃん。あそうそう、選挙の日はあんまり世界樹に近付かない方が良いかもよ? じゃ!」タッタッタッ
クロシュ「あ、うん……」
*
本日はここまでとなります。クロシュちゃんのメンタリティにまた少し変化があったようです
今回はミスティさんが魔法のコツを掴み、フメイちゃんとの接触に成功しました
コンマ表にちらっとありましたが、ミスティさんの魔法はさらにもう一段上の可能性を秘めています。もし機会があれば、今回のようにパーティメンバーの成長を促すような行動をするのも良いかもしれません
そしてフメイちゃんを説得するのはとても難しそうに見えますが、アリシラ?さんを説得するよりは易しいかもしれません。今回ある程度のコミュニケーションが取れたのは、クロシュちゃんにとってもフメイちゃんにとっても良いことだったと思います
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
フメイちゃんとアリシラ?さんが何をしようとしているかはわかりませんが、アリシラ?氏がろくでもないことを考えているのは確かだと思われます。気を付けましょう
フメイちゃんは心情的にはクロシュちゃんと一緒にいたいようなのですが、村を焼いた罪悪感やら、王国や人間等への憎しみやら、平穏な世界を作りたい願いやら、様々な感情が絡まり、折り合いが付かなくなってしまっているようです。クロシュちゃんはフメイちゃんと一緒に帰りたいだけなのに、なかなか上手くいかないようです
ミスティさんの氷魔法は、一人で旅をする中ほぼ独学で身に付けたもののため、実は意外と荒削りだったりします。そういう点では、自分の属性を正しく理解できていない状態で複数属性を使っているイリスと良い勝負かもしれません。二人ともちゃんと自分の属性を理解すればもっと凄いことができるようになります。クロシュちゃんやローガンさんも、修行をすれば良い発見があるかもしれません
実はミスティさんはこのパーティに愛着が湧いています。今まで誰も信用せずに一人で旅をしてきた彼女にとって、警戒せず一緒にいられる仲間というのはとても新鮮で心地良いものだったのかもしれません。それゆえに、パーティの仲間に迷惑をかけかねない自らの不甲斐なさが許せなかったのでしょう
―郊外 森の境
イリス「そっか……。説得、できなかったんだね……」
クロシュ「うん……」
イリス「……でも、フメイちゃんはクロシュちゃんのことを今でも大切に思ってくれてるんでしょ? だったら……きっと、まだ手はあるよ……!」
ローガン「うむ。しかしアリシラという子の性格が以前と大きく異なっているとのことだが、もしかするとフメイくんよりもアリシラくんの奇妙な変化について調べた方が良いかもしれんな」
イリス「そうですね……私もそれは思いました。もしかしたらフメイちゃんは、変になったアリシラちゃんに引っ張られてるのかもしれませんし……」
クロシュ「うん……。アリシラさん……前はもっと、静かで優しい人だったのに……」
ローガン「謎は深まるばかりだな……」
イリス「とりあえず今日はもう帰りましょう。そろそろミスティも戻ってるかもしれない」
クロシュ「うん……」
*
―夕方
郊外 街道
カァー カァー
スタスタスタ…
イリス「……」スタスタ
ローガン「……」スタスタ
クロシュ「……」ヨタヨタ
セイン「……」スタスタ
イリス「セインくん!」
ローガン「なんと」
クロシュ「……!」
セイン「……お前たちか」
イリス「うん! セインくんも帰るとこなの?」
セイン「いや、マーベルを探している」
ローガン「……やはり大変なのだな。彼の護衛というのは」
セイン「もう慣れた。お前たちはマーベルを見ていないか?」
イリス「見てないなあ……。ごめんね、役に立てなくて」
セイン「いや、いい。護衛でありながら奴を見失った僕の責任だ」
イリス「真面目!」
ローガン「勤め人の辛いところだな……。旅人は気楽で良いぞ。セインくんも旅人にならないか?」
セイン「僕にはやらなければならないことがある。気楽に旅をしている暇などない」
ローガン「ふむ……。彼の護衛もその一環なのか?」
セイン「……お喋りが過ぎたな。僕はもう行く」スタスタ
イリス「あっ……!」
ローガン(……これ以上は無理か。前に釘を刺されたばかりだし、深追いは禁物――)
クロシュ「……なんで……王国なんかのために、動いてたの……?」
イリス&ローガン「!!?」
セイン「……」ピタ
クロシュ「みんな……王国のせいで、ひどい目にあって……苦しんでる……。セインさんは……悪い人じゃ、なさそうなのに……どうして……?」
セイン「……」
ローガン「く、クロシュくん! もうやめておけ! それ以上はまずい!!(小声)」
イリス「そ、そうだよクロシュくん! セインくんは怒らせない方が……!(小声)」
クロシュ「あっ……ご、ごめんなさ……(小声)」
セイン「……」
↓1
01-50 無視
51-90 僕は悪人だ
91-00 ??
セイン「……僕は……守るべきものを、守りたいだけだ」
クロシュ「え……?」
セイン「その結果、王国の悪しき陰謀の走狗となり――罪のない者たちを手にかける、悪そのものに堕ちるとしても――構わない」
イリス「……!」
ローガン「セインくん、君は――」
セイン「僕の邪魔をする者は、誰であろうと――」クルッ
クロシュ「――」
セイン「……!」ズキッ
セイン「う、ぐ……」グラッ
クロシュ「あっ……! せ、セインさん……!」トテトテ
ポフッ(クロシュがセインを支える音)
セイン「はあ、はあ……! まさか……お前は……お前、たちは……!!」
クロシュ「??」
セイン「う、ぐ、ああああっ……!!」
「はいそこまで」フォン
クロシュ&イリス&ローガン「!?」
僧侶「困るんですよね。私たちのセインくんに勝手なことされると」スタスタ
イリス「あ、あなたは……?」
僧侶「私ですか? セインくんの仕事仲間……ってとこですかね」
ローガン「では、あなたも革新派の護衛を?」
僧侶「革新派の護衛ィ?? ぷっ……あっはははは!! なんで神の僕たるこの私が、こんな土臭い国の泥臭い奴らの護衛なんかしなきゃならないんです??」
イリス「……セインくんは、その土臭くて泥臭い革新派の護衛やってるみたいですけど」イラッ
僧侶「あーはいはいそういえばそういうことになってましたね。私としたことが、ロールをすっかり忘れていました。反省反省」
ローガン「……貴様、何者だ」
僧侶「……まあ、いいでしょう。教えて差し上げます。私は――」
僧侶「ロイエ教原理派幹部――名前は、神に捧げたのでもうありません。ただの僧侶とお呼びくださいませ」カーテシー
イリス「ろっ……ロイエ教原理派幹部!!? な、なんでそんな人がここに――」
僧侶「さあ、なんでだと思います?」
ローガン「明日の選挙へ向けた内政干渉……いや、工作か?」
イリス「そ、それって条約違反じゃ――」
僧侶「神の代行者である私たちが、人間同士の取り決めに従う必要なんてあります?」
イリス「滅茶苦茶だ……!」
ローガン「……何を企んでいる? セインくんの仕事仲間とはどういう意味だ?」
僧侶「いきなり質問攻めとかやめてくれません? デリカシーのないおじさんとか最悪なんですけど」
クロシュ「……」ギュッ
セイン「…うっ……」
クロシュ「セインさん……。あの人は……だめ……」
セイン「………やはり……お前、は……」
僧侶「うわっ、よく見たらそれスライムじゃないですか。穢いなあ、セインくんから離れてよ」シッシッ
クロシュ「……」キッ
僧侶「は? 何ですかその目つき。スライムの分際で生意気ですね」
クロシュ「……」
僧侶「うざ……。もういいです、浄化して差し上げます。来世では馬頭くらいになれると良いですね」コオオ…
イリス「あ、ああっ! だめっ!!」
ローガン「クロシュくん!!」
セイン「や……めろ……!」ザッ
クロシュ「セインさん……!」
僧侶「んん? ちょっとセインくん、何のつもりですか?」
セイン「……こいつを殺したら……僕は、お前たちと手を切る……」
僧侶「は?」
セイン「……」
僧侶「あなた自分が何を言っているかわかっているのですか? あなたが手を切ったら、あの子たちは――」
セイン「だが、お前たちは……僕という戦力を失う……」
僧侶「……チッ。交渉ごっこですか? 悪知恵を付けましたね」
セイン「……」
僧侶「はあ、わかりましたよ。セインくんに機嫌を損ねられると困るのは私たちですからね」
セイン「……」
僧侶「そういうわけですから、本日は見逃して差し上げます。帰りますよ、セインくん」
セイン「いや……僕は、マーベルを探さなければ……」
僧侶「それはもういいです!!」
*
イリス「……何だったんでしょうか。あの人」
ローガン「……いろいろ、聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がするな」
イリス「正直、生きた心地がしませんでした。消されなかったのは奇跡じゃないですか、これ……」
ローガン「うむ……。恐らくセインくんのお陰だろうが……。しかしロイエ教原理派、か……。王国と言い、良からぬ企みが渦巻いているな。この大陸には……」
イリス「明日の選挙……心配ですね……」
ローガン「妖精くんには報告しておいた方が良いだろうな」
クロシュ「セインさん……」
イリス「セインくんも……心配だね……」
ローガン「彼は……不本意に利用されているのかもしれんな」
◆
―首相官邸 応接室
ティセリア「今日は一人なのですね」
妖精「あの子たちがこの場にいても仕方ないからね。フメイ捜しとか他にもいろいろやりたいことがあるだろうから、今日は選挙活動はお休みだよ」
紫髪のエルフ幼女「前日だというのに余裕ですね。建国の太母だからって甘く見ていると足元を掬われますよ」
妖精「その時はその時だよ。大体、不正を働くあなたたちには正攻法じゃ勝ちようがないでしょ?」
紫髪のエルフ幼女「……」
ティセリア「……では、正攻法ではないやり方があるのですか?」
妖精「そういうこと。今日は交渉に来たの。不正をやめさせるためのね」
紫髪のエルフ幼女「交渉……? この国の未来を天秤にかけるほどの交渉材料があるとは思えませんが」
妖精「それがあるんだよね。それも、王国の干渉を完全に遮断することのできる名案が――」
ティセリア&紫髪のエルフ幼女「!?」
妖精「簡単に言うと――聖域で、フォレスティナを鎖国するの」
*
ティセリア「た、確かにそれは、王国の干渉を完全に遮断することができますが……」
紫髪のエルフ幼女「しかし他のあらゆる国や地域との国交もほとんど断絶してしまいます! この国がこれまでに築き上げ、諸外国からも人気を博してきた数多の観光産業はどうなるんです!! 鎖国なんて簡単に言いますが、妖精のお宿のように外貨で生計を立てている者たちもいるんですよ!? 国外資源の輸入もできなくなれば、生活水準も……!!」
妖精「でも、王国を排除できる」
ティセリア&紫髪のエルフ幼女「……!!!」
妖精「鎖国によって収入が減ったり失業したりした事業者や労働者には手厚い補償を与える。衣食住に関する自給率はどれも余裕で十割を越えてるんだから、みんなが生きるのに困らない程度に資源を分配しても問題はないでしょ?」
ティセリア「それは、まあその通りですが……。国外へ輸出する分を国内へ回せば、むしろ供給過多なくらいですし……」
妖精「国外資源についてはまあ……私たち妖精とか認められた者は聖域を自由に通行できるから、国外との交流が完全に絶たれるわけじゃないし、なんとかできるでしょ。完全に信頼できる相手としか取引はできないから難しくはなるけれど、不可能ってわけじゃない。まあ私としては、王国以外とも完全に国交を絶って昔ながらの森と共に生きる生活に戻っても良いと思うんだけど……これは流石に老害意見すぎるかな……」
ティセリア「…………」
妖精「……どう? 王国の奴隷になるのと、多少の痛みを我慢してこの国の秩序と尊厳を守るのは……どっちが良い?」
☆太母の威光、復権派の名声、伝統派との親交により判定は自動成功となります
紫髪のエルフ幼女「……例え、手厚い補償を与えられても……これまでに築き上げてきたものが崩れ去る苦しみは、簡単には癒えません……」
妖精「……わかってるよ。でも……あったかいご飯と、あったかい寝床と……家族や友達と穏やかに過ごせる時間があれば……それもいつか、癒やされると思う……」
紫髪のエルフ幼女「そんなの……ただの、根拠のない楽観でしょう……。そうやって楽観視した結果が、あの魔王樹だったのではありませんか」
妖精「……でも、今度は……誰にもお腹を空かさせないし、寂しい思いもさせない」
紫髪のエルフ幼女「口だけなら、なんとでも……」
ティセリア「サリー。もう良いでしょう……」
紫髪のエルフ幼女「……!」
ティセリア「あなただって……わかっているはずです。王国に隷属すれば……鎖国するどころではない痛みと苦しみが、この国に吹き荒れることを……」
紫髪のエルフ幼女「……」
ティセリア「滅亡でも、降伏でもない……私たちが夢にまで見た、第三の選択肢なのです……。それが完全に理想的なものではなかったとしても……十分すぎるではありませんか」
紫髪のエルフ幼女「…………はい……。私も……わかって、いるのです……。申し訳、ありません……」
ティセリア「……妖精。私たち伝統派はあなたの提案を支持し、公正公平な選挙を執り行うことを約束します」
妖精「ありがとう。当日は正々堂々戦おう」
ティセリア「はい。もし私たち伝統派が勝った時は、鎖国の施行を手伝ってもらいますからね」
妖精「当然。あなたたちこそ、もし私たちが勝ったらいろいろ手伝ってもらうからね」
ティセリア「ええ、もちろんです」
◆
―森林開拓現場
マーベル「よし、もう十分だな。地質良し、星脈良し、リスク無し! ドワーフたちを呼び戻して開発再開を――」
妖精「やっぱりここにいたね、マーベル」フヨフヨ
マーベル「復権派の妖精に――伝統派のおばさんたちか。なんだ、また食事のお誘いか? 若いイケメンが恋しいのか?」
ティセリア「……この国の未来を左右する、大事なお話をしに来たのです」
マーベル「なんだ? 明日の選挙のことか? それならもうやることは決まってるだろ、王国を敵に回さないように――」
妖精「私から提案がある。その王国に降伏も隷属もしないで済む方法を、伝えに来たの」
マーベル「なんだと……?」
*
マーベル「さ……鎖国だと!!?」
妖精「うん。この国を守るためには、もうそれ以外の選択肢はない。先んじて王国の靴を舐めるという革新派の路線は、国家滅亡という最悪こそ避けられるかもしれないけれど……結局その先は、かつての魔族自治区のような、王国からの苛烈な差別と搾取がまかり通る生き地獄にしかならないよ」
マーベル「ぐっ……それは、そうかもしれねえが……。しかし、鎖国なんてしちまったら――」
妖精「……革新派が目指していた、外貨を獲得して国全体を豊かにしていく方針は……多分、達成できなくなるね」
マーベル「そうだよ! 鎖国なんてしちまったら、この国は今より更に土いじりしか脳のない土人国家になっちまう!! 俺たちの森林開発だけじゃねえ、他の連中の観光業もようやく軌道に乗ってきたとこなんだぞ!? それをお前……お前!! 鎖国なんて……!!!」
紫髪のエルフ幼女「……しかし王国を受け入れれば……この国の観光業は、破壊と搾取の限りを尽くされます。私たちが大切に育て上げた観光業を……王国に踏み躙られるか、私たち自身の手で終わらせるか……そのどちらかなのです……」
ティセリア「マーベル……どうか、賢明な判断を……」
マーベル「……」
↓1コンマ(復権派の名声、革新派との親交により+40)
01-50 認めねえ!!!
51-90 仕方ねえか……
91-00 待てよ?
マーベル「……チクショウ。わかってんだよ……。王国なんぞの軍門に下るくらいなら、鎖国しちまった方が遥かにマシだってことくらい……」
ティセリア「マーベル……!」
マーベル「俺一人の我儘で、王国のカス共をこの国に入れさしたら……国民も、産業も、何もかもが王国の慰み者になっちまう……。んなことくらい……わかってんだよ……」
紫髪のエルフ幼女「マーベル……」
マーベル「俺はさ……。この国をもっと、盛り上げたかったんだ。諸外国の新しい文化を取り入れたり、開発や観光で外貨をもっと稼いだりして……この国をより豊かに、より楽しい国にしたかったんだ。いつも元気に飛び回る妖精たちも、意外と順応性の高いアルラウネの奴らも、言葉足らずながら気の優しい馬頭の連中も、頭の固い老害ばかりのエルフも……誰もが豊かに楽しく暮らせるようにしてえって、本気で思ってたんだぜ」
妖精「うん……」
マーベル「だがまあ……潮時だったのかもな。目先の開発に固執して、聞こえているはずの声を、見えていたはずの涙を無視しちまった……。上に立つ者として、やっちゃいけないことをしちまったんだ。しかもそれで魔王樹っつー脅威を見落としていたんだぜ? 笑い話にもならねえよ」
ティセリア「……」
マーベル「……まあ、そういうわけだ。革新派は……復権派の提案を受け入れる」
妖精「……ありがとう」
マーベル「この国のことを考えりゃ当然の判断だろ。しかしこうなると……選挙は普通にやるってことか?」
ティセリア「はい。どうやら、私たちの誰が勝っても鎖国する方針は確定のようですから」
紫髪のエルフ幼女「私たち以外の候補者が勝った場合は……どうしますか」
ティセリア「その時は改めて、新首長へこの提案をしましょう。私の知る限り、どの候補者もこの国の現状をしっかり理解している方々ですから、きっと受け入れてくれるかと……」
マーベル「俺が受け入れたんだから大丈夫だろ。はっきり言って俺以外は全員伝統派よりの考え方だしな」
紫髪のエルフ幼女「それもそうですね……。革新派はそういう意味では貴重な存在です」
マーベル「フッ……。さっきは潮時と言ったが、革新を求める支持者がいる限り革新派は不滅だ。まあ、今後の活動は少々慎重になるかもしれんが……」
妖精「鎖国って言っても、完全に国交を断絶するわけじゃないからさ。妖精と精霊と、認められた者には通行の許可を与えることができる。だから、規模は縮小しちゃうかもしれないけど……」
マーベル「おう。やれることを模索していくぜ」
☆伝統派と革新派の説得に成功しました
◆
三派閥の合意を得られたところで、本日はここまでです。次回はついに、フォレスティナ首長選挙編開始です
ついに姿を現した、セインくんを裏で操る巨悪の影――ロイエ教原理派。セクリエ・ロイエで急進派と呼ばれているのは何を隠そうこの原理派のことでもあり、その実態は闇に包まれています。大陸の闇に蠢くその悪意を前に、クロシュちゃんはどうすれば良いのでしょう。一介の赤ちゃんスライムにできることなどあるのでしょうか
そして今回は三派閥がついに手を取り合いました。これで選挙は、誰が勝っても鎖国する方向で統一されることでしょう。しかし暗躍する王国や原理派、そしてアリシラ?さんの世界樹に近づくなという不可解な発言など、不確定要素も少なくないようです。選挙は無事に始まり、そして無事に終わることができるのか――
それでは本日はありがとうございました。次回も恐らく土日です。よろしくお願いたします
候補者たちの思惑は異なれど、国への想いは皆本物なのかもしれません。団結できたのは良いことと思います
しかしこの選挙の行方がどうなるかは誰にもわかりません。クロシュちゃんは、真なる敵の姿を見極めることができるでしょうか
僧侶氏は、少なくともクロシュちゃんにとってはかなり嫌な存在だったようです。クロシュちゃんはできればあまり関わりたくないと思っているようですが、それだけにセインくんのことが心配でもあるようです
彼女がセインくんの上司にあたる関係なのかはわかりませんが、僧侶氏の行動をセインくんが邪魔した辺りを見ると明確な上下関係があるわけではないようです。しかしはっきりしたことはまだわかりません
セインくんにも彼自身の考えや目的があるようです。その事情は明らかになっていませんが、やはりクロシュちゃんのことが気になるようです。好みのタイプというわけではないらしいですが、真相は闇に包まれています
―緑の国フォレスティナ 滞在9日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・精霊樹の種
・フメイの服の切れ端
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・選挙で勝つ
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
―フォレスティナ首長選挙投票日
露店通り 広場
ワイワイ ガヤガヤ
森妖精の屋台「太母まんじゅうだよ〜! フェアリーシロップたっぷりでとっても甘いよ〜!」
エルフの屋台「こっちはティセリア様のお手製クッキーですよ〜! エルフミルクたっぷりでとっても濃厚ですよ〜!」
観光客の男性「太母のシロップとティセリア様のミルクだと!? おれはどっちを選べば良いんだ……!!!」
エルフの男性「私は当然、ティセリア様の濃厚ミルクですね」
*
エルフの吟遊詩人「無数の触手に捕まり、四肢を拘束されて絶体絶命の太母――。万事休す、運命はここで潰えてしまうのか――」ポロロン
エルフの子供「たいぼさま……しんじゃやだ……」ウルウル
観光客の女性「無数の触手に四肢を拘束された伝説の妖精……ゴクッ……」
宿屋アルラウネ「そ、それでどうなっちゃうの……!?」
エルフの吟遊詩人「しかしそこへ業火一閃! 無数の触手を炎の刃で切り払って現れたのは――我らがダークヒーローイリス!!!」ポロロン
エルフの子供「わあああ!! だーくひーろーいりす!!」
観光客の女性「うおおお!! ダークヒーローイリス!!」
宿屋アルラウネ「来たあああ!! ダークヒーローイリス!!!」
*
マーベル「富国強兵文明開化! 革新革命近代化! イエーッ!」シュババッ
森妖精の踊り子「イエーッ!」シュババッ
エルフの踊り子「イエーッ!」シュババッ
アルラウネの踊り子「イエーッ!」シュババッ
馬頭の踊り手「イエーッ!」シュババッ
革新派支持者たち「イエーッ!」
観光客のマーベルファンA「キャーマーベル様ー!」
観光客のマーベルファンB「こっち向いて〜!」
観光客のマーベルファンC「素敵です、マーベル様……」
*
イリス「わあ……! すっごい盛り上がってる……! 流石は四年に一度の特大イベント……!!」
ミスティ「あのダンサーの募集、革新派だったのね……」
ローガン「伝統派もお菓子の屋台を出しているようだな。しかし太母まんじゅうはいつ手配したのだ?」
妖精「あの妖精たちが勝手に私を使って商売してるだけだと思う……。私は何もしてないし許可も出してないし……」
イリス「あ、あはは……妖精って自由な種族だよね」
*
―郊外の投票所
紫髪のエルフ幼女「投票用紙をお書きになりましたらこちらの箱へお入れください」
森妖精の子「えと……ここ……?」
紫髪のエルフ幼女「はい」
森妖精の子「ありがと……」ヒョイ
紫髪のエルフ幼女「……ところで、あなたはお祭り会場には行かないのですか?」
森妖精の子「」「……うん。今は……木さんといっしょに……いたいから……」ニッコリ
紫髪のエルフ幼女「……ふふ。そうですか」
*
―夕方
露店通り 広場
ティセリア「フォレスティナ国民の皆さん、投票ありがとうございました。観光に来た方々も、お越しいただきありがとうございます。現首長のティセリアです」ペコリ
ワーワー ティセリアチャン!!
ティセリア「皆さんに支えられ、私はここまで首長として歩んでくることができました。今回の結果がどうなろうとも、皆さんへの感謝と、緑の国への想いが変わることはありません」
ティセリア「本当に、本当に……ありがとうございました」
公務員エルフ「……」ススッ
ティセリア「……ありがとう。それでは――たった今開票結果が届きましたので、読み上げさせていただきます」
ティセリア「今回のフォレスティナ首長選挙は――」
↓1コンマ
01-05 ??
06-15 革新派
16-55 伝統派
56-00 復権派
ティセリア「――復権派の妖精――建国の太母、堂々の再当選です!!」
ワアアアア!! タイボ! ヨウセイ!! ソンナァー! マーベルサマァァ!!!
妖精「えええええ!!!? いや、もう私が当選する必要は――」
ティセリア「新首長!! 当選のお言葉をお願い致します!!」
妖精「……あー、こほん。みんな、ありがとう――。前と同じように――私は、みんなが平和で幸せに生きていけるよう、最善を尽くすから――。よろしくね――」
ワアアアアア!! オメデトオオオ!! パチパチパチ!!
ティセリア「それでは、続けて新首長就任式を聖域にて行います。本日は、厳正な審査を受けて頂ければ一般の方も聖域に入ることができます。参加をご希望で未だ審査を受けていない方は、こちらで審査を行っておりますので――」
*
妖精「なんてことだ……こんなことになるなら直前に棄権すれば良かった……。もう鎖国の合意が取れている今、私が当選する必要なんて全くなかったのに……」
イリス「ま、まあまあ……! この国のみんな、妖精さんのことをちゃんと覚えてくれてて、今でも好きでいてくれたってことだよ!」
クロシュ「うん……! 妖精さん……大人気……!」
妖精「う〜ん……まあ、確かに悪い気はしないけれど……。でもまあ、この国の運営についてあそこまで口出ししちゃったんだから仕方ないか……」
ミスティ「そうね……。四年間の任期、頑張りましょう……」
ローガン「フッ……思っていたよりも長い間この国に滞在することになりそうだな」
妖精「……それにしても……昨日イリスが言っていた奴ら、影も形も見せないね」
イリス「そうだね……。もう工作とかをするタイミングは過ぎたように思えるけれど……はっ!? まさか暗殺――」
ローガン「一応、私も細心の注意を払っている。今のところ厄介な気配は感じないが……」
ミスティ「聖域に侵入して何かするつもりなんじゃ……? 審査があるとは言え、今日は聖域が一般公開されるわけだし……」
妖精「まあ、流石に聖域に入り込んで不届きを働くなんて狂った真似をする輩がいるとは思いたくないね……」
クロシュ「……」
ティセリア「復権派の皆さん、ここにいらしたんですね」スタスタ
妖精「ティセリア……」
ティセリア「ふふ、首長就任おめでとうございます、妖精」
妖精「あー、うん……ありがと……」
ティセリア「先ほども話しましたが、就任式を聖域で執り行いますので、妖精だけでなく復権派の皆さんにもご出席をお願いしたいのです」
イリス「えっ! いいんですか!?」
ティセリア「良いに決まっているじゃありませんか。あなたがたが世界樹に狼藉を働くような輩でないことはとっくにわかっておりますし」
ミスティ「それはありがたいけれど……。一般の人に対しては、審査はちゃんとやるのよね……?」
ティセリア「もちろんです。世界樹はこの国の象徴というだけでなく、世界そのものを維持する存在なのですから。不届き者の侵入を許すことは決してありません」
ローガン「うむ……。それなら安心だが……」
ティセリア「そういうわけですから、ご都合がよろしければ是非ともご参加くださいね」
◆
―聖域
世界樹「」キラキラ
イリス「ここが……世界樹の聖域……!!」
ミスティ「清浄な……それでいて力強い魔力に満ちているわ……!」
ローガン「不思議だ……。鋼の力すら感じられる……」
イリス「……」
イリス(鋼だけじゃない……ものすごく多様な魔力が……ここに集まってきてる……)
イリス(これが……星の魔力……?)
イリス(……でも……それならどうして……)
イリス(私……この魔力が、こんなにも体に馴染むんだろ……?)
↓1コンマ
01-30 まあそういうこともあるか!
31-60 私の複数属性って、もしかして星属性にも適性がある!?
61-90 私の本当の属性って――
91-00 ??
イリス(まあそういうこともあるか!)
イリス(……そういえば最近あの本読めてないなあ。選挙が終われば、読む時間も取れるかな……?)
*
―聖域
首長就任式
紫髪のエルフ幼女「それでは、伝統派ティセリアより復権派妖精へ、首長交代の儀を行います。ティセリア、妖精、お願い致します」
ティセリア「はい」
妖精「はい」
ティセリア「……妖精。あなたが、またこの国の首長になってくれて……私は、とても嬉しいです。どうか、この国の未来と、民の幸せを――よろしく、お願い致します――」
妖精「ええ――。後は、私が――」
クロシュ(世界樹の前で、ティセリアさんと妖精さんが言葉を交わしてる……)
クロシュ(わたしたち復権派も、伝統派も、革新派も、他の参加者も……みんな、静かにそれを見守ってる……)
クロシュ(これから、きっといろいろ大変だけど……みんなで協力してがんばれば、きっとこの国は大丈夫……)
クロシュ(だから、どうか――変なことは、起こらないで――)
クロシュ(でも――そんな、わたしの祈りは――)
クロシュ(どこにも、届かなかったみたい――)
カッ
ドガアアアアアン!!!!
キャアアアア!!! ナ、ナンナンダ!? ナニガオキタ!!!?
イリス「な、何が起きたの!?」
ローガン「くっ……!! 煙で何も見えん……!! 皆無事か!?」
ミスティ「わ、私は無事よ!! クロシュと妖精は!!?」
クロシュ(これは……フメイちゃんの炎だ……)
クロシュ(フメイちゃんたちの気配が、世界樹の上の方へ向かっていってるのがわかる……)
クロシュ(わたしも……行かなきゃ……!)
クロシュ「わたし……世界樹の上に、行く……!!!」シュバッ
イリス「え、えええ!!? なんで!?」
ミスティ「説明不足よクロシュ!!!!」
ローガン「くっ……! 我々もクロシュくんを追うぞ……!!」
*
―世界樹
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ ヨジヨジ
妖精「クロシュ!! 何してるの!?」パタパタ
スライムクロシュ「〜〜!」モニョモニョ ヨジヨジ
妖精「フメイが……! なら早く追うよ!! 上昇気流の魔法を使って上げるから凧か何かに化けて!」
スライムクロシュ「!」デロデロ
綿毛クロシュ「!」フワッ
妖精「いくよ!!」
ビュオオオオオッ
*
―世界樹 中腹
アリシラ?「うふふ……面白いくらい簡単に来れちゃった……!」
フメイ「……本当に、ここにあるの? 世界を覆すほどの……力が……」
アリシラ?「あるよ。その力があれば、嫌な奴らをみんなまとめて焼き払える。フメイちゃんの理想の世界が実現するんだよ」
フメイ「……」
アリシラ?「まだ半信半疑だね。でも力さえ手に入れば、全てはフメイちゃんの思うがまま……。フメイちゃんが今まで奪われてきたものを、存分に奪い返して――」
「その力って――これのことですかぁ?」スタスタ
フメイ「!」バッ
アリシラ?「……誰?」
僧侶「下賎な者どもに名乗る名なんてありませんけど? それで……その力って、これのことですよね?」スッ
僧侶の手に抱えられた大きな果実「」キラキラ
アリシラ?「……!」
僧侶「図星みたいですねえ? うふふ……あなたたちのような下賎なる者共が手にして良いものではありませんよ? これは」
アリシラ?「……フメイちゃん。あいつ、焼いていいよ」
フメイ「ん」チリッ
爆炎「」ゴウッ!
ブンッ
切り払われた爆炎「」シュウウ…
セイン「……」シャキン
僧侶「危ないなあ。セインくんがいなかったら火傷しちゃってましたね」
アリシラ?「へえ……また会ったねえ」
セイン「……」
フメイ「お前……クロシュを殺そうとした……」
セイン「…………」
僧侶「セインくん、こんな奴らとも知り合いなんですか? 友達は選べと言ったはずですが?」
セイン「言われた記憶はないが」
僧侶「もう、冗談の通じない子ですねえ。でも、やることはわかってますよね?」
セイン「ああ」
僧侶「そうです。神に仇なす下賎の者どもを、救済して差し上げなさい」
セイン「……」シャキン
*
ビュオオオオッ
綿毛クロシュ「」フワフワ
妖精「見えてきたよ……! でも、あれは……」
キンキンキンッ!!
ゴオオオッ!!
ギュオオオン!!
妖精「え、枝の上で戦ってる!! フメイたちと……セインと、変な女!」
綿毛クロシュ「!」フワフワ
妖精「ど、どうする!? 下手に突っ込んだら巻き添えで死ぬよアレ!?」
↓1〜3多数決
1.制止を呼びかける
2.戦いに割って入る
3.様子を見る
セイン「……」ビビビッ
フメイ「ううっ!」ササッ
アリシラ?「吸収!」バッ
セイン「同じ手は食わない」ヒョイ
アリシラ?「勇者モドキ、やるなあ……!!」
フメイ「やるどころじゃない、強すぎる……! どうするの……!?」
僧侶「当然です。お前たち如き虫けらなど、セインくんの敵ではありません。しかし――」
セイン「……」
僧侶「さっきから何を遊んでいるのですか!! さっさと救済しろと言ったはずです!!」
セイン「僕は全力だ。奴らが想定以上に強い」
僧侶「くっ……! あの薄穢いスライムのせいですね……セインくんに下らない感傷を植え付けて……!!」
フメイ「……スライム?」
僧侶「……丁度お前にそっくりな容姿の小穢いスライムでしたね。ああ、思い出すだけでイライラしてきます……早く殺してしまいなさい!!」
フメイ「お前……クロシュに何をした」ゴオオオオッ
*
綿毛クロシュ「」フワフワ
妖精「あいつらが何を喋っているかまでは聞き取れないけど、あの変な女が手に持ってるアレ世界樹の果実だ……!!」パタパタ
綿毛クロシュ「?」フワフワ
妖精「詳しく説明してる暇はないけど、簡単に言うと世界を内包する卵みたいなものなんだよ! アレは誰かの手に渡って良いものじゃない!! 下手に扱えば世界が滅びる!!」パタパタ
綿毛クロシュ「!」フワフワ
妖精「なんとかアレだけでも奪い返さないと……!」
世界樹の精霊「……」ジーッ
妖精「……!? あなたは……世界樹の精霊!」
世界樹の精霊「……森の脅威を……解決してくれて、ありがとう……」
妖精「あ、うん……いや、今はそれどころじゃなくて……!」
世界樹の精霊「うん……。果実を……取られちゃって……今……とても、困っている……」
妖精「だろうね!」
世界樹の精霊「だから……度々申し訳ないけれど……取り返して欲しい……」
妖精「言われなくてもそうするよ! でも今回はあなたも手伝って!」
世界樹の精霊「えっと……何をすれば、いいの……?」
妖精「ええと、そうだな……じゃあ囮になってあいつらの目を引き付けて! その間に私たちが果実を奪い返すから!」
世界樹の精霊「ええ……痛いのは、やだ……」
妖精「精霊なら殴られても物理的なダメージは受けないでしょ!!」
世界樹の精霊「ダメージはないけど……気分は、悪い……」
妖精「ああもうつべこべ言うな!! あなた自身の果実が危ないんでしょうが!!!」
世界樹の精霊「……そうだった。じゃあ……やるだけ、やってみる……」フヨフヨ
妖精「全くもう、これだから精霊ってやつは……! 私たちもこっそり行くよ、クロシュ……!」
綿毛クロシュ「!」フワフワ
*
フメイ「……」ゴオオオオッ
セイン「っ……!」
アリシラ?「フメイちゃん……凄い、凄いよ! あの勇者モドキを圧倒する炎……!! それでこそ――」
僧侶「な、なんだと言うのです、薄穢いガキどもめ……!! セインくん、早く殺ってしまえと言っているで――」
世界樹の精霊「ばあ」ヌッ
僧侶「ひゃあああああ!!!」ドテッ
妖精「今だよクロシュ!」
クロシュ「!」シュバッ
↓1コンマ
01-20 転ぶ
21-80 果実を奪うが……
81-00 果実を奪う
シュバッ ガッ
僧侶「あっ……!!」
クロシュ「!」タタッ
クロシュの手に収まった果実「」キラキラ
僧侶「こ、この劣等種がァァァ!!! セインこいつを殺せェェェェ!!!」
フメイ「クロシュ……!! させない……!!!」ゴウッ
セイン「!!」ササッ
妖精「でかしたクロシュ! さあ、世界樹の果実はクロシュの手の中だぞ!! 異邦の者共よ、矛を納めなさい!!」
僧侶「劣等種の分際で……!! 私たちの聖務を妨害するなどと……!!!」
セイン「……」
アリシラ?「……ねえ、クロシュちゃん……その果実、私たちにくれない?」
クロシュ「……」
妖精「あげないよ。これは誰のものでもない。世界樹に還さなきゃならないものだ」
アリシラ?「クロシュちゃんに聞いてるの。ねえ……それがあれば、この世界をとっても綺麗にできるんだよ? そうしたら、クロシュちゃんはまたフメイちゃんと一緒に暮らすことができるの……。あの頃、あの村で過ごしたみたいに……みんなで、ずうっと、平和に、幸せに……。だから――それ、私たちに頂戴?」
クロシュ「……」
妖精「クロシュ、耳を貸さないで! これはそんな都合の良いものじゃ――」
光の残像「」パヒュンッ
フメイ「はっ! クロシュ――」
クロシュ「え――」
アリシラ?「させるか!!」バッ
セイン「!!」キキッ
アリシラ?「全く、こっちが丁寧にクロシュちゃんを説得しようとしてる時にさあ……」
セイン「……」
妖精(……まずい。果実を奪い返せたは良いけど、こいつらを相手に逃げ回り続けるのは不可能だ……)
妖精(いっそクロシュに果実を食べてもらう? いや……それはだめだ。一番だめ)
妖精(ああもう、どうすれば良い……!?)
アリシラ?「クロシュちゃん、わかったでしょ? こんな暴力的な奴らにその果実を渡したら大変なことになるんだよ。でも私たちなら、それを有効に活用できるの。さあ、早くそれをこっちへ渡して?」
セイン「……」
フメイ「クロシュ……」
僧侶「くそっ……!!」ギリギリ
クロシュ「……」
世界樹の精霊「……」
世界樹の精霊「クロシュちゃん」
クロシュ「?」
世界樹の精霊「もうどうしようもないみたい。だから……それ、壊しちゃって」
全員「!!!?」
世界樹の精霊「それでも、世界には戻るから――。少し、歪になるかもしれないけれど――」
クロシュ「……本当に……いいの?」
世界樹の精霊「いいの。多分……それが、一番まし」
クロシュ「……わかった」コク
スッ……
僧侶「だめええええええ!!」
グシャッ――
―聖域
世界樹上空「」パァァァァァ
紫髪のエルフ幼女「あ、あれは……? 世界樹上空から――夜空に、色とりどりの光が、広がって――」
マーベル「一体何が起きてやがんだ……?」
ティセリア「とっても、綺麗だけれど――なんだか――」
*
―世界樹下層
世界樹上空「」パァァァァァ
ローガン「くっ、この歳になって木登りは……む? あの光は――」
ミスティ「……オーロラ……? いえ……この地方でオーロラが見えるはずが……」
イリス「……!! 体の奥底が……震えるような……。これは……何? 何なの……?」
*
―露店通り
世界樹上空「」パァァァァァ
ザワザワ…
観光客の男性「なんだあ、あれは……?」
観光客の女性「すっごく綺麗……。これ、選挙祭の演出……?」
エルフの男性「長年生きてきたが、こんな演出は初めてだ……」
エルフの吟遊詩人「世界樹の空から放たれる、命の光――。それは、愛の輝き――あるいは、哀の叫び――」ポロロン
宿屋アルラウネ「……世界樹に、何かあったのかしら……」
マーベルファン「マーベル様……」
ヤマイモ餅屋台の森妖精「こんな時こそヤマイモ餅だよ!」
ハーピィ記者「こりゃ面白い現象ですねえ……。ヤマイモ餅一つお願いします」
*
―郊外
世界樹上空「」パァァァァァ
森妖精の子「わあ……きれい……。でも……」
元気になったおうちの木「」サワサワ
森妖精の子「どうして……こんなに……むねが、くるしいの……?」ジワワ
元気になったおうちの木「」サワサワ…
森妖精の子「木さんも……かなしいの……? えへへ……いっしょだね……」ポロポロ
*
―魔族国
旧市街 広場
フォレスティナ方面の夜空「」パァァァァァ
フラナ「あれは……星属性の光? 世界樹に何かあったのかしら……」
竜人の女性「あいつら大丈夫か……? 今はフォレスティナにいるんだろ?」
ムチムチラミア「なんだか政治活動をしているらしいわよお……。変なことに巻き込まれてなきゃ良いけどお……」
ムキムキオーク「ははっ、あいつらなら変なことに巻き込まれていても大丈夫だろう!」
フラナ「もしあの光の近くにいるのなら、何か掴めると良いわね。星属性の申し子、イリス・プラネットよ――」
聖女「美しい光……ですが、どこか胸騒ぎがします……。クロシュさん……妖精さん……皆さん……どうか、ご無事で……」
淫魔の幼女「あの光の下に、いるのかな……クロシュちゃん……」
魔族国スライム「〜〜…」モニョモニョ…
魔族の子供「きっと元気でやってるよ! もう友達とも会えたかもしれないし!」
聖女「ええ……。きっと元気でやっています。待ちましょう、あの子たちが再び、ここに来る日を――」
*
―世界樹中層
クロシュ(わたしが壊した世界樹の果実から、五色の光が放たれていった)
クロシュ(世界樹が永い年月をかけて実らせた、世界を形作る命の光――)
クロシュ(それが、こうして不意に放たれてしまったことの意味は――――)
本日はここまでとなります。次回は、選挙祭の後始末編です
今回は復権派の妖精さんが首長に返り咲き、聖域で行われたテロに対してクロシュちゃんが独自のアプローチを仕掛けるお話と相成りました
今回、イリスさんが何やらアホの子のような感じになってしまいましたが、星の魔力についての本を読むことによって今回自分の身で感じたことを整理することができるかもしれません。今回の出来事が自身の属性について考える切っ掛けとなれば良いねえとフラナ氏も考えているようです
そして、果実を壊したことによって世界に放たれた五色の光。それの意味するものが何なのかは現時点ではわかりませんが、もしかしたら世界に何かしらの影響があるかもしれません。状況を注視していただければと思います
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
クロシュたちの次の旅がどのような目的になるかはわかりませんが、もし光を追うとすれば最低でも5つの国を巡ることになるのは恐らくその通りだと思われます
僧侶とアリシラ?さんは面識はないようで、その目的も異なるものと考えられます。彼女たちはとても相性が悪そうです
妖精の知名度や復権派のこれまでの活動により、選挙結果のコンマ範囲が決まりました。最終的には伝統派よりも僅かに優位と言えるほどには名声を獲得できていたようです
僧侶氏はどうやら女性のようです。そして今気付きましたが、主要キャラクターの女性率が高いように見えます。男性キャラクターも少し意識して登場させた方がバランスが良いかもしれません……
復権派メンバーは首長の任期である四年間をフォレスティナでの活動にあてるつもりでいたようですが……未曾有の世界樹テロが発生した今は状況が変わったかもしれません
原理派の人物は、僧侶氏以外にも何人か登場するかと思います。募集するかどうかは未定です(原理派のイメージは既に>>1の中である程度固まってしまっているため、自由度の高い募集をすることは難しいかもしれません)
穏健派の人物については、穏健な人格の持ち主でさえあれば問題ないので、然るべき時が来たら募集するかと思います(魔族国編で登場した聖女さんは穏健な性格ですが、穏健派の所属ではないようです)
世界樹の精霊『――ありがとう』スゥゥ―
クロシュ(世界樹の精霊さんは、そう言って消えていった……)
僧侶「あ、ああ……!! 果実が……!! 私たちの、希望が……!!!」ガクッ
アリシラ?「ざぁんねん……。計画はおじゃんだねえ、フメイちゃん……」
フメイ「……おじゃんになったの?」
アリシラ?「うふふ……実際どうだろうね? あの光を追いかければ、ひょっとしたらまだ取り返せるかも?」
フメイ「……まだやれる?」
アリシラ?「お、フメイちゃんやる気だねえ。多分だけど、まだやれるよ。私たちの目指す世界は――まだ潰えてない」
フメイ「じゃあ――」
クロシュ「フメイちゃん……!」
フメイ「クロシュ……。無事で、良かった」
クロシュ「うん……。えと……ごめんね……。果実……壊しちゃった……」
フメイ「……いいよ。クロシュなら……」
アリシラ?「良くないよ! も〜!」
クロシュ「う、うん……」
フメイ「……でも、フメイたち……諦めないから」
クロシュ「……うん」
フメイ「……安全なとこで待ってて、とはもう言わない。だから……クロシュは、生きて」
クロシュ「……!」
フメイ「クロシュが生きていてくれれば……フメイは……それで、十分だから」
クロシュ「…………わたしも……フメイちゃんに、生きてて欲しい……」
フメイ「……クロシュがそう言うなら……」
クロシュ「うん……」
フメイ「それじゃあ、フメイたち、もう行く……。クロシュ……本当に、生きてね」スッ
ボンッ!
アリシラ?「ほんとにも〜、次は邪魔しないでよ〜?」ピョンッ
*
―世界樹 麓
妖精「はあ……結局、フメイは連れ戻せず……。あの僧侶とかいう変な女とセインの姿もいつの間にか消えてるし……。世界樹の果実は割れて飛散しちゃったし……」パタパタ
綿毛クロシュ「……」フワフワ
妖精「首長の就任式がこんなことになっちゃったし……ああ〜首長に就任した途端にこれとか最悪だあ〜……」
綿毛クロシュ「……」フワフワ
ティセリア「妖精! クロシュちゃん!」
妖精「ティセリア……。一般参加者たちは帰してくれたんだ……」
ティセリア「はい。しかし一体上で何があったのですか!?」
マーベル「セインの奴もいつの間にかいなくなってるし、一体何が起きてんだよ!?」
妖精「あ〜……話すとちょっと長くなるんだけど……」
*
ティセリア「そんな、世界樹の果実が……」
妖精「下手人たちも取り逃がした……というか私たちの手に負える相手じゃなかったんだもん」
ティセリア「いえ……犯人たちを目撃して来て頂いただけでもありがたいです……! しかし……クロシュちゃんのお友達のフメイちゃんと……同郷のアリシラさんが……」
クロシュ「ごめんなさい……」
ティセリア「いえ、クロシュちゃんが謝ることではありません。しかし……うう、どうしたものでしょう……」
マーベル「……しかしセインの奴……やはり王国の手の者だったのか」
紫髪のエルフ幼女「気付いていたのですか……?」
マーベル「勇者サインにそっくりだからな。何らかの関係者であることはわかっていた。だからこそ俺の目が届くところに置いておこうと思っていたんだが……」
紫髪のエルフ幼女「しょっちゅう別行動してたではありませんか……」
マーベル「いやまあ……それは本当に悪かった。だが奴も勇者だとすると、王国は二人の勇者を抱えてるってことなのか……!?」
妖精「ううん。勇者サインは死亡してるみたい。だから、セインが勇者だとしても勇者は依然として一人だよ。まあ、一人だけでも十分脅威なんだけどね」
マーベル「なにィ!?」
ティセリア「勇者サインが既に死んでいる、ですって……!?」
紫髪のエルフ幼女「初耳です……!!」
妖精「まあ、王国自身も秘匿してるみたいだからね……。でもこれは魔族国で得た確かな筋からの情報だから、信用して良い」
ティセリア「し、しかしそうだとするとまだ彼はこの国にいるということでしょう……!?」
妖精「そうだけど……目的は世界樹の果実だったみたいだし、今すぐこの国に侵攻してくるってことはないじゃないかな……。殺ろうと思えば、私たちなんていつでも殺れただろうし」
マーベル「チッ……癪だが、実際その通りだろうな。この国を侵略する目的なら、わざわざ俺の護衛を志願するなんてまどろっこしい真似をする必要はねえ」
妖精「うん。だからまだ猶予はある。それと――聖域を拡張するなら、多分今が絶好のタイミングだよ」
ティセリア「……そうですね。この混乱に乗じて聖域を拡張すれば――」
マーベル「テロに対する世界樹の防衛反応ってことにすりゃ丁度良いってことか」
紫髪のエルフ幼女「嘘も方便というわけですね」
妖精「そういうこと」
◆
クロシュ(その後……世界樹から降りてきたイリスさんたちも合流して……妖精さんたちは、世界樹の聖域を元の大きさに戻す施術をした)
クロシュ(でも今は観光客の人がいっぱいいるから、一気に元の大きさに戻すわけじゃなくて、ゆっくり少しづつ大きくしていくそう)
クロシュ(最初こそ混乱が広がったけれど……緑の国の人たちは、大らかにそれを受け入れてくれる声が多数だったみたい……)
クロシュ(……)
クロシュ(でも……受け入れられない声も……なかったわけじゃないみたい……。その声も……ちゃんと、聞かなきゃだめなんだって……)
クロシュ(……政治って……難しい……)
◆
日後
露店通り
ワイワイ ガヤガヤ
観光客の男性「あと数日でフォレスティナ観光も見納めかあ……」
観光客の女性「世界樹がテロを怖がって聖域を広げ始めちゃったんだよね」
観光客の男性「でも仕方ねえよなあ……。ま、あと数日楽しむとするか!」
ヤマイモ餅屋台の妖精「そーそー! あと数日、うちのヤマイモ餅を楽しんでいってよ!」
エルフの吟遊詩人「世界樹の涙は――やがて世界を潤す命の雫となって――大地へ染み渡るだろう――」ポロロン
*
>>797訂正
日後 → ―数日後
―首長官邸
妖精「ふう……。とりあえず聖域関連はこれで一段落かな……」
ティセリア「お疲れ様です、妖精」
妖精「本当に疲れたよ……。でも……まだ、重大な問題が残ってるんだよね……」
ティセリア「飛散した果実の光、ですね……」
妖精「うん……。あの場では、世界樹自身が自らの意思でああすることを選んだけど……実際、あれがあの場では最善だったとは思う。でも――」
ティセリア「……はい。あの光が落ちた国々で異変が起きている――そのような話が既に伝わってきています」
妖精「世界樹の果実を危険に晒して、こういった事態を引き起こしてしまったのは私の責任だ。放置するわけにはいかない……。でも……」
ティセリア「……大丈夫です。この国のことは」
妖精「ティセリア……」
ティセリア「今回の選挙で、妖精が戻ってきてくれて……本当に、良かった……。もし妖精が戻ってきてくれなかったら……きっと、今よりもずっと悲惨な状況に陥ってたと思います」
妖精「……」
ティセリア「だから……この国の中のことは……私たちに任せてください。妖精は、妖精が成すべきことを――」
妖精「……ごめん。建国の太母として、みんなに期待されて首長に返り咲いたのに……」
ティセリア「いいのです。それに、世界樹の果実のこともこの国の問題には違いないのですから」
妖精「……ふふ、それもそうだね。じゃあ……この国の中のことは、任せて良い?」
ティセリア「はい……!」
◆
―緑の国フォレスティナ 滞在最終日
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:蜘蛛絹のレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・精霊樹の種
・フメイの服の切れ端
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・世界樹の光を追う
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹
……………………………………………………………………………………
―朝
大樹の宿 ロビー
妖精「というわけであの光を追うよ。出立は明日。みんな、準備は良い?」
イリス「妖精さん……! 首長としての仕事は……!?」
妖精「ティセリアたちに任せる。今のこの国を熟知してるのはあの子たちの方だもの。私にできることなんてないし」
ミスティ「……そ、そうなのね……。でもわかったわ……。明日、出立ね……」
ローガン「フッ……恐らくこういうことになるだろうと予想はしていた。準備はできている」
クロシュ「……」コク
妖精「……あの光を追えば、きっとその先にフメイたちもいるよ。何度でも……諦めずに、説得し続けよう」
クロシュ「うん……!」
フォレスティナ滞在最終日です。この行動終了後、フォレスティナを出ます
↓1〜3 自由安価 何をする?
―大樹の宿 ロビー
宿屋アルラウネ「イリス・プラネットさん宛にお手紙が来てるわ」スタスタ
イリス「! 師匠からだ!」
妖精「マメだねえ。今回も魔法の授業?」
イリス「それもあるけど、今回はセインくんのことについても報告したの。師匠の意見を聞いておきたくて」
ローガン「ふむ……確かに、フラナ氏の見解は気になるな」
ミスティ「どんなことが書かれてるか、私たちにも見せてもらっても良いかしら……?」
イリス「うん……! 読んでみる……!」
↓1コンマ
01-30 全然わからないわ
31-60 勇者サインの血縁者かしら
61-90 王国とロイエ教について調べてみるわ
91-00 ??
手紙『勇者サイン本人は、もし仮に生きていたとしたら二十代半ばほど。しかしあの勇者モドキはまだ十代前半くらいにしか見えない』
手紙『安直に考えるなら、奴は勇者サインの血縁者ね。人間にしては年の離れた弟と考えるのが最も自然でしょう』
手紙『ただ――勇者サインの家族関係については、一切の情報がないのよ。だから軽率に断定することはできないわ』
イリス「ううーん……本人は、前に勇者サインは赤の他人だって言ってたけど……」
妖精「口先では何とでも言えるよ。隠してるだけかもしれないし」
ミスティ「でも……もし本当に弟なら、そう名乗った方が勇者として活動しやすいんじゃなかしら……?」
ローガン「ううむ……しかし彼が王国の勇者だとすると、ロイエ教原理派幹部とも共同で動いているのも不可解だ。一体どういう関わりがあるのだろうか……」
クロシュ「……セインさん……守りたいものがあるって……」
イリス「……セインくんは、やっぱり悪い人じゃなさそうに思えるんだよね。何か……王国とかロイエ教原理派に、人質を取られたりしてるのかも……」
妖精「でもあの勇者に人質なんて通用する? 瞬間的には光の速さで動けるんだから、人質なんて意味がない気がする」
ローガン「人質が複数人いて、それぞれ別の場所に捕らえられているなどの場合はそうも言えないかもしれん」
ミスティ「……可能性を考え出すとキリがないわね……」
イリス「そ、そうだね……。今はっきりしてるのは、セインくんが王国とロイエ教原理派に従ってるってことくらいかな……」
妖精「……まあ、実際そんなに悪い奴ではなさそうだよね。セイン」
クロシュ「うん……」
*
イリス「とりあえず師匠に返事を書いて……」
宿屋アルラウネ「ちゃんとこの国を出る旨も書くのよ? ここにお師匠さんからの返事が来たら、あなたには届けられないからね」
イリス「はい、大丈夫です! いつもありがとうございます!」
宿屋アルラウネ「どういたしまして。ねえ、せっかくならお土産とかも送ってあげれば? この国を出る前に」
イリス「あ、それ良いですね……! 師匠だけじゃなくて聖女さんやあの子たちにもいろいろ送ってあげたいかも……!」
クロシュ「うん……!」
ミスティ「何が良いかしら……」
ローガン「ここの名産品であれば――」
宿屋アルラウネ「それにしても、あなたたちとも明日でお別れなのねえ。ふふ、初日はまさか建国の太母が率いるパーティだなんて思いもしなかったわ」
妖精「こっちも名乗るつもりなんてなかったんだけどね……」
宿屋アルラウネ「世界樹を癒やす旅、頑張ってね。私も陰ながら応援してる」
妖精「ありがと」
*
というわけで本日はここまでです。次回は魔族国へ送るお土産編、次に向かう場所決め編となります
ついに選挙が終わりました。鎖国を選んだ緑の国にも、ひとまずの安らぎが訪れることでしょう
そして首長となった妖精はその座をティセリアに譲り渡し、クロシュたちは世界樹の光を巡る新たな旅へ――
それでは本日もありがとうございました。次回は、可能であれば祝日などもやろうかと思います。よろしくお願いいたします
採用されている国について、全ての場所を実際に登場させるのは難しいですが、いちおう頂いた案の国・都市・地域は全てこの世界内に存在するものとして考えています(世界観や設定の整合性を取るために、内容を一部変更させていただいている場合もあります)
今まではクロシュのフメイ捜しに付き合ってくれている形の妖精でしたが、世界樹の光を追うという能動的な目的を持ったため、今後は以前よりも積極的にいろいろ参加してくれるようになるかもしれません
フメイ氏にとって、クロシュちゃんは一人では生きていけないか弱い妹分スライムだったのかもしれません。しかしクロシュちゃんのがんばりが功を奏したのか、その認識は改まりつつあるようです
気を抜くとつい女性キャラクターを登場させてしまうので、意識的に男性キャラクターを登場させるよう気をつけようと思います
―露店通り
ワイワイ ガヤガヤ
森妖精の露店「フェアリーシロップだよ〜! 鎖国間際の大感謝特売中だよ〜!」ヒラヒラ
馬頭の飛脚「オデ、荷物、運ベル。デモ、森ノ外ニハ、運ベナイ。ゴメン」
アルラウネの八百屋「フォレスティナの野菜が食べられるのも今週が最後よ。買っていきなさい」
エルフの露店「森エルフ印の乳製品、買っていきませんか〜? 今を逃すとこの先一生味わえないかもしれませんよ〜?」
森妖精の装飾品露店「ふわあ……。安いよ〜……人間用のもあるよ〜……」
エルフの吟遊詩人「この国を訪れし全ての旅人に、精霊の加護がありますよう――」ポロロン
クロシュ「わあ……」
ミスティ「前よりも、さらに賑わっているかしら……?」
妖精「鎖国が解かれるのがいつになるかもわからないからねえ」
ローガン「買う方も売る方も、今しかないというわけだ」
イリス「慎重に選ばないと……!」
↓1〜3自由安価 魔族国へ送る特産品(特定の誰かに贈りたい場合はその旨も)
看板『鎖国直前超特価! エルフ酒造』
ローガン「む……!」
クロシュ「おさけ……?」
妖精「酒だね」
イリス「お酒と言えば――フラナ師匠はワインが好きだったはず!」
ミスティ「でもワインはあるのかしら……」
紫髪のエルフ幼女「もちろん。大抵のお酒は取り扱っています」ヌッ
イリス「ティセリアさんの秘書の――サリーさん!」
紫髪のエルフ幼女「どうも。旅立ちの前にお土産探しですか?」
ミスティ「実は――」
*
紫髪のエルフ幼女「なるほど……魔族国への贈り物を選んでいるのですね。もうすぐ鎖国を迎えるこの国の特産品は今後希少価値が高まるでしょうから、良い考えだと思います」
イリス「あ、あはは……そこまで考えたわけじゃないですけど」
紫髪のエルフ幼女「よろしければ私がご案内致しましょうか」
妖精「えっ、でも今忙しいんじゃないの? あなたもティセリアも」
紫髪のエルフ幼女「あなたが建国の太母としての威光と手腕でいろいろ調整してくれたお陰で、今は余裕があります。この国の為に影に日向に尽力してくれた復権派の皆さんに、せめてもの恩返しをさせてください」
ミスティ「そういうことなら……お言葉に甘えさせていただこうかしら……」
*
紫髪のエルフ幼女「聞けば、あなたのお師匠様は吸血鬼だそうですね」
イリス「はい、そうなんです! いやまあ、師匠というのは私が勝手にそう呼んでるだけで、実際は師匠ではないんですけど……」
紫髪のエルフ幼女「そ、そうですか……。いえ、吸血鬼の方でしたらピッタリのお酒があると思いまして」
イリス「ピッタリの……?」
紫髪のエルフ幼女「こちらです」スッ
ヴァージンエルフワイン「」
イリス「ま、真っ赤……!!」
ミスティ「マジカルブラッドワインよりさらに鮮やかな赤色ね……」
ローガン「これは、まさか――」
紫髪のエルフ幼女「ご安心ください。本物の血は使用しておりません。これはエルフ酒造の方々が長年の研究を積み重ねて開発した、純潔エルフの血液に極めて近い成分を含有する人工血液――を用いて造られたワインなのです」
イリス「純潔エルフの血液に極めて近い成分を含有する人工血液……」
ミスティ「を用いて造られたワイン……?」
ローガン「う、うむ……。つまり……美味いのか?」
紫髪のエルフ幼女「吸血種の方々からは非常に高い評価を頂いておりますが、それ以外の方からの評価はあまり芳しくありませんね……。まあ、元々吸血種の方向けに開発されたワインですので当然と言えば当然なのですが」
イリス「そうなんですね……! それなら確かに師匠にピッタリかも……!」
妖精「じゃあお土産の一つはこれに決定?」
イリス「うん!」
◇
―露店通り
イリス「師匠に宛てたお土産はこれで良さそうだけど……これで喜ぶのは多分師匠だけだし、他のお土産もいるよね」
ミスティ「そうね。他のみんなには、何が良いかしら……」
クロシュ「……えと……魔族国には……甘いもの……あんまり、なかったから……」
ローガン「甘味だな。サリー殿、お土産に適したスイーツなどがあればご教示頂きたい」
紫髪のエルフ幼女「お土産スイーツですね。それならば――」
*
―甘味処 木苺堂
カランカラン
ティセリア「いらっしゃいませ――えっ!?」
紫髪のエルフ幼女「こんにちは、ティセリア」スタスタ
妖精「ティセリア……ここでも働いてるんだ」
ティセリア「いえ、まあ、軽い手伝い程度で……本業に差し支えはありませんので……」
妖精「あいや、そういうことを言いたいんじゃなくて。ティセリア、今でもお菓子作り好きだったんだなあって思ってさ」
ティセリア「あ……はい! ふふ、ずっと好きですよ」
森妖精の子「いらっしゃいませ……ミスティさん!」パタパタ
ミスティ「わっ……あなたもここで働いていたの……!?」
森妖精の子「うん。まだみならいだけど……」
ティセリア「選挙祭が終わって少し後くらいに、ここでかけていた募集に応募してきてくれたんです」
森妖精の子「おかね……あった方が、いいと思って……。ミスティさんたちにも……あんまり、おかね、だせなかったから……」
ミスティ「いいのよ。あなたとあなたのおうちの木が助かったことが、一番の報酬だもの……」
森妖精の子「……??」
イリス「ミスティ、すっかりその子に甘々だねえ」
ミスティ「そ、そういうのじゃないわ……」
*
ティセリア「なるほど。魔族国の方々へのお土産ですね」
クロシュ「うん……。どれが……良い……?」
ティセリア「それでしたら、これはどうでしょう?」
色とりどりの世界樹の果実風ゼリー「」キラキラ
クロシュ「わあ……!」
ミスティ「綺麗ね……」
妖精「世界樹の果実風? なかなか洒落てるじゃん」
ティセリア「ふふ、そうでしょう。味はリンゴやブドウなど既存の果物を模したものになっていますが、とても美味しいと好評を頂いているんですよ」
妖精「まあ、世界樹の果実の味を知ってる奴なんてどこにもいないからね……」
森妖精の子「えっとね……フェアリーシロップと、スライムさんのゼラチンも、使ってるんだよ……」
クロシュ「!」
ティセリア「魔力にも健康にも美容にも良いスイーツとなっております。せっかくですから試食品をどうぞ、クロシュちゃん」スッ
クロシュ「う、うん……。あむ……」モグモグ
スライムクロシュ「〜〜!」モニョモニョ
ミスティ「クロシュ、溶けているわ……」
妖精「ふふ、溶けるほど美味しいってさ」
ティセリア「それほどまでに美味しく感じて頂けたのでしたら良かったです」
ミスティ「それじゃあ、もう一つのお土産は世界樹の果実風ゼリーにしましょう……」
妖精「そうだね。きっとあの子たちも喜ぶよ」
◆
ものすごく眠いので本日はここまでとなります。全然進まず申し訳ありません
ワインとお菓子、お土産はやはり消え物が良いのかもしれません。そして次のお土産は世界樹の枝編です。よろしくお願いします
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願い致します
緑の国はここ最近観光産業に力を入れていたこともあり、観光客向けの商売に積極的な住民も多い模様です
鎖国はそういった住民たちに大きな影響を及ぼすものですが、ほとんどの国民は元から自給自足で暮らしていたため、鎖国を言い渡されても切羽詰まることなく商売を続けられるようです
本編更新の前に今後の進め方について多数決を取りたいと思います
クロシュたちは世界樹の光を追うことになったわけですが、その旅程について少々決めたいことがございます。よろしくお願いします
↓1〜5
1.光が遠くに落ちたので、途中にある他の国や地域を経由する必要がある
2.光は近くに落ちたので、目的の場所へは意外とすぐに到着する
◇簡単な解説◇
〈1.他の国や地域を経由する〉
他の国や地域を経由することになるので長旅になります。メインシナリオに加えて多くのサブシナリオが発生する可能性があります。出会いと別れもあるでしょう
世界観や登場人物の描写は増量されますが、全体的なお話のテンポは悪くなってしまうかもしれません
〈2.経由せずすぐ到着〉
サブシナリオはあまり発生せず、メインシナリオ(王国や原理派との戦い、勇者の謎、フメイちゃんとアリシラ?さんの行方)を主に追う形式となります
全体的なお話のテンポは早くなりますが、世界観や登場人物の描写は薄くなってしまうかもしれません
皆さんありがとうございます。それでは、光は遠くに落ちたので他の国や地域を経由していくこととなりました
―大樹の宿 ロビー
イリス「それじゃあ、魔族国へ送るお土産はこの二つで良いかな?」
ヴァージンエルフワイン「」
世界樹の果実風ゼリー詰め合わせ「」
クロシュ「うん」
妖精「異議なし」
ミスティ「ええ、良いと思うわ」
ローガン「うむ。私も異論はない」
イリス「みんなありがとう! それじゃあお土産はこの二つ――」
世界樹の精霊「……」ジーッ
ローガン「む……? 妖精の子だろうか……?」
ミスティ「世界樹の果実風ゼリーが気になるのかしら……?」
イリス「あー……ごめんね、これはお土産として送るためのもので――」
妖精「そいつ世界樹の精霊だよ」
イリス「えっ……ええええええええ!!!?!??!?」ガタンッ
ミスティ「せ、世界樹の精霊……!?」
ローガン「そんな方が、どうしてこんなところに……」
妖精「それは私が聞きたい。あなた、聖域の外に出て大丈夫なの?」
世界樹の精霊「うん。ここも聖域に包まれる予定だから。クロシュちゃん、お久しぶり」
クロシュ「あ、うん。世界樹の精霊さん、お久しぶりです」ペコ
イリス「な、なんかクロシュちゃんと知り合いになってる……!?」
妖精「ま、まあいろいろあってね……。それで、今日はどうしてこんなところに?」
世界樹の精霊「今日は……これを渡そうと思って、来た……」スッ
世界樹の枝「」
妖精「こ、これ……世界樹の枝!?」
イリス「え、ええ!? 世界樹の枝!!!?!?!?」
世界樹の精霊「うん。あなたたちに、あげる」
妖精「いやいやいや……この前葉っぱ一枚くれるのすら渋ってたじゃん!」
世界樹の精霊「もうこの枝に循環すべき命は残っていないから、大丈夫」
妖精「そ、そう……」
世界樹の精霊「でも、とても良い触媒になる……ってティセリアが言ってた」
イリス「触媒って……魔法の触媒のこと?」
世界樹の精霊「わからない」
ローガン「わからないのか……」
世界樹の精霊「そういうわけだから、今回のお礼に、あげる。ありがとう……」
妖精「わかったよ……。ありがたくもらっとく」
世界樹の精霊「どういたしまして」
*
イリス「世界樹の枝かあ……。素材としては最高級の逸品なのは間違いないけど……」
ミスティ「少し手に余るわね……。何か良い活用法はないかしら、妖精」
妖精「魔法の触媒としてなら、一般的な補助具より遥かに強力な効果を期待できると思う。でも未加工で使うのは危ないし消耗も早まるだろうからやめといた方が良いよ」
ローガン「ならば杖などに加工すれば――いや、明日出立するのに加工している暇はないな……」
クロシュ「……えと……それじゃあ……一緒に、魔族国に送るのは……?」
イリス「そっか! 魔族国なら魔法技術も緑の国と遜色ないし、師匠なら世界樹の枝の使い方もなんか知ってそうだもんね……!」
ミスティ「なんか知ってそう……。まあ、確かになんか知ってそうではあるわね……」
ローガン「そうだな。我々は持て余してしまうが、魔族国の者たちなら有効活用できるかもしれん」
妖精「じゃあこれも魔族国に送っちゃおうか」
イリス「うん!」
☆ヴァージンエルフワイン、世界樹の果実風ゼリー詰め合わせ、世界樹の枝を魔族国に送ります
◆
―大樹の宿 ロビー
妖精「さて、お土産の発送も完了したところで次の目的地についての話をしよう」
イリス「うん! あの日の夜、世界樹から飛び散っていった光の行き先だよね」
妖精「そう。あの光が落ちた場所で被害が出てるから、私は緑の国の妖精としてそれを解決したい。……よく考えたら、首長ではないあなたたちにまで強要することはできないんだけど……」
ミスティ「今更水臭いわね……。私たちは共に選挙で勝利を治めた復権派の仲間じゃない……」
ローガン「うむ。首長のサポートを行うのは復権派構成員として当然の務めだ」
イリス「そうだよ! 妖精さん一人につらい思いなんてさせないんだから!」
クロシュ「うん……! それに……フメイちゃんたちも、そこにいるから……」
妖精「みんな……ありがとう。それじゃあ早速本題に入らせてもらうよ。まず次の目的地は――」
↓1〜 先取3票
1.ユーシリア帝国[>>383](チカーバの街[>>75]を経由)
2.テラヌス・ウルス[>>385](芸術都市ミュージア[>>380]、砂漠[危険地帯]を経由)
3.トコナツ火山島[熱帯](機械都市テンペスター[>>378]および港湾都市ウォーターポート[>>375]を経由)
※4.オノゴロ諸島[>>373](ユーシリア帝国[>>383]、???を経由)
※5.大陸西部上空(港湾都市ウォーターポート[>>375]、国際商業都市イスファハーン[384]、大魔女帝国[>>381]を経由)
※6.トウゲン帝国(オリシン王国[>>382]、大山脈[超危険地帯]、北部地方[超危険地帯]、リテン・ヘイヴン[>>377]を経由)
※7.常闇の樹海[超危険地帯]
(※が付いているものはまだ選べません)
(※4はユーシリア帝国編クリアで解放されます)
(※5〜7は特定の条件を満たすと解放されます)
(温泉町トウゲン[>>379]はオノゴロ諸島にあるようです)
妖精「――トコナツ火山島。聞いたことはある?」
イリス「えっ、トコナツ火山島!? それってあのトコナツ火山島!?」
妖精「トコナツ火山島って地名は多分一つしかないと思う」
ミスティ「聞いたことあるわ。確か、一年中熱い季節が続く熱帯の島だとか……」
ローガン「しかも活火山があって溶岩も頻繁に出る、と聞いたことがあるな」
クロシュ「ようがん……」
妖精「とっても熱い、燃えて溶けてる岩のことだよ」
クロシュ「???」
ミスティ「私も実物を見たことがないから、溶岩という物体の知識はあるけれど、気持ちはクロシュと似たようなものよ……。燃えて溶ける岩なんて全く想像が付かないわ……」
ローガン「精錬で溶けた金属なら見たことはあるが、あんな感じなのだろうか……」
イリス「私、昔魔法の大会をお師匠様と見に行ったときに一度だけ見たことある。なんていうか……メラメラでデロデロで、すごかった」
クロシュ「メラメラで、デロデロ……。わたしも……デロデロなら、できる」
妖精「絶対触っちゃだめだからね!?」
ミスティ「とりあえずトコナツ火山島が目的地となったのはわかったわ。でもそれだと……海に出る必要があるけれど、どうするの?」
イリス「トコナツ火山島は大陸の南の海だよね。それなら最も近い港は――」
ローガン「……港湾都市ウォーターポートだな。王国の」
イリス「げげっ」
妖精「……まあ、こればかりは仕方ない。王国内ではまたクロシュの服の中とかに隠れるから、その時は入れさせてよね」
クロシュ「ん」コク
ミスティ「ところで……ウォーターポートと隣接している、このテンペスターという街は?」
ローガン「テンペスターは王国の武器庫と呼ばれる工業都市だな。通常の武器だけでなく、機械式の武器や兵器も開発・生産しているらしい」
妖精「げえ、機械兵器は私たち妖精の天敵だ……! 自然の力が通じにくい上に、自然の守りを容易く壊してくるんだよ!」
イリス「そ、そういえばマーベルさんが振り回してた機械式の回転ノコギリ、魔王樹に効果抜群だったね……」
妖精「そういうこと……! 魔王樹も元は精霊樹だったことを考えると、機械がいかに私たち妖精や精霊の天敵かわかるでしょ? はあ……。そんな街が港の近くにあるなんて……」
クロシュ「えと……妖精さんが、危なくなったら……わたしの中に……隠れて、いいよ……?」
妖精「ふふ、ありがとクロシュ。でも私が危ない時はクロシュも危ないだろうから、一緒に隠れよう」
クロシュ「うん」
☆次の目的地がトコナツ火山島になりました
港湾都市ウォーターポート&工業都市テンペスターを経由して向かいます
◆
―魔族国
妖しい魔法店
カランカラン
馬頭の飛脚「コンニチワ、馬頭便デス。イリス・プラネット様ヨリ、オ届ケ物ガゴザイマス」ヌッ
フラナ「ありがとう、ご苦労様。……あなた、緑の国の飛脚よね? もうすぐ鎖国するそうだけれど、帰りは大丈夫なの?」
馬頭の飛脚「アッ! ヤバイカモシレマセン」
フラナ「……。まあ、今この国は働き手がいくらでも欲しいから、もし緑の国に帰れなかったら魔族国に来なさい。寝床と仕事を用意してあげるから」
馬頭の飛脚「オ世話ニナリマス!」
フラナ「いやまずは帰れるかどうか確認しなさいよ」
*
フラナ「はあ、全く……。緑の国の住民ってちょっとのんきすぎる気があるのよね。そこが良いところでもあるのだろうけれど……」
フラナ「それより今はイリスからの届け物ね。何かしら……」ワクワク
ヴァージンエルフワイン「」ポン!
フラナ「こ、これは……生娘エルフの血――に限りなく近い味と成分の人工血液を用いて造られたヴァージンエルフワイン……!!!」
フラナ「鎖国すると聞いた時はもう飲めないかと諦めていたけれど……まさかイリスがこれを送ってきてくれるなんて……!!」
フラナ「ふふふふ、持つべきものは優秀な教え子ね……。後で飲みましょ」
フラナ「……ん? 他にも入ってるわね。何かしら――」
世界樹の枝「」ポン
フラナ「世界樹の――枝!?」
◆
―魔族国旧市街
ロイエ魔族国教会
ガチャッ
馬頭の飛脚「コンニチワ、馬頭便デス。クロシュ様ヨリ、オ届ケ物ガゴザイマス」ヌッ
聖女「はい、こんにちは……えっクロシュさんから!?」
馬頭の飛脚「ハイ」
聖女「あ、あの……クロシュさんたちは、お元気でしたか?」
馬頭の飛脚「ハイ。ミナサン、息災デアッタト記憶シテオリマス」
聖女「そうですか、良かった……。あれ、でも確か今は緑の国にいっていて、緑の国はもうすぐ鎖国で……あっ! あなたは大丈夫なのですか!?」
馬頭の飛脚「同ジコトヲ別ノオ客様ニモ言ワレマシタ。ヤバイカモシレマセン」
聖女「そ、そうですか……。あの、もしお国に帰れなかったら、ロイエ教の教会をお尋ねください。簡易的な宿泊施設と、炊き出しも行っておりますので……」
馬頭の飛脚「オ世話ニナリマス!」
聖女「まずは帰れるかどうかご確認くださいね!」
*
聖女「ふう……お布団もご飯も無限にあれば良いのですが……」
ガチャッ
魔族の子供「こんにちは、お姉さん! 遊びに来たよ!」ヒョコッ
魔族国スライム「〜〜」モニョモニョ
淫魔の幼女「こんにちは、おねーさん!」ヒョコッ
聖女「あら、いらっしゃい! なんと今ですね――クロシュちゃんから、緑の国のお土産が届いたんです!」
魔族の子供「えっ、本当!?」
魔族国スライム「!」モニョモニョ
淫魔の幼女「……言われてみれば、クロシュちゃんの匂いがする……」
聖女「に、匂いがするかは私にはわかりませんが……こちらを、みんなで食べて欲しいと」スッ
世界樹の果実風ゼリー詰め合わせ「」ポン!
淫魔の幼女「わああ……! きらきら……!!」
魔族の子供「これ、何!?」
聖女「これは〝ゼリー〟というおやつです。緑の国で人気のお菓子なのだそうですよ」
魔族国スライム「〜」モニョモニョ
魔族の子供「ゼリー……!」
淫魔の幼女「ええ、食べていい? 食べていい?」
聖女「ふふ、もちろんです。ゼリーは逃げませんから、ゆっくりね……」
◆
―???
アリシラ(……)
アリシラ(真っ暗で……何も、見えない……)
アリシラ(ここは……どこ、なのかな……)
アリシラ(帰らなきゃ……)
アリシラ(……? 帰るって……どこに……?)
アリシラ(あれ……? 私は……私って、誰……?)
アリシラ?「帰る場所なんて、もうないよ」
アリシラ(え――)
アリシラ?「忘れたの? 私の大好きなお父さんも、お母さんも――私が殺したんじゃない」
アリシラ(あ――あ、ああ―――!!)
アリシラ?「思い出した? あの日の夜のこと」
アリシラ(わ、私……私は……!!!)
アリシラ?「でも仕方ないよ。だって、私が吸収しなくたってお父さんもお母さんもあのままなら死んでたんだもの)
アリシラ(だからって……だからって……!)
アリシラ?「うふふ……一緒に死ねていたら良かったのにね。生存欲なんてものがあったばかりにね……。大好きな人たちと一緒に死ねず、後を追うこともできず、現世を彷徨い続けるしかない……」
アリシラ(どう、して……。私、だけ…………)
アリシラ?「それは私が、他者の命を奪って生き延びる力を持っていたから。ただ、それだけ。単なる必然」
アリシラ(…………あなたは……誰、なの……?)
アリシラ?「私は私だよ。アリシラ」
アリシラ(……)
アリシラ?「うふふ……本当だよ? だって〝私も〟お父さんとお母さんからその名前を授かったんだもの」
アリシラ(それは……どういう……)
アリシラ?「私はね――あなたが死産した時に生まれて、蘇生と引き換えに消滅した――」
魔王アリシラ「――魔王の、断片だよ」
◆
本日はここまでとなります。次回はとうとう緑の国を出発する時となります
今回、旅の方式が他の国や地域を経由していくものになりました。話のテンポはゆっくりになってしまうかもしれませんが、文量はその分増えますので、他の登場人物にスポットが当たることも増えるかと思います。よろしくお願いします
そして次の目的地であるトコナツ火山島は、劇中でも説明のあった通り、熱帯に位置する火山島です。赤道に近いため一年中暑く、独特の文化が発達しています。観光に訪れる人も多く、一年中賑わっています。海も山も遺跡もあるので、冒険者にも人気があるようです
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
特定条件で解放される目的地についてですが、条件を満たすにはメインシナリオを進める必要もあるため、序盤の段階で突入することは難しいかと思われます(無理に行こうとしても他のパーティメンバーに止められます)
イリス、ミスティ、ローガンが離脱する可能性についてですが、魔族国編での革命参加選択の時のように、各仲間の意にそぐわない行動を選ぶと離脱判定が発生することがあります
なお現時点ではクロシュおよびパーティそのものに対する好感度は全員けっこう高いため、よほど信念に反する行動を取らない限りは基本的に離脱する可能性は低いと考えて頂いて大丈夫かと思います
ただし特定のサブイベントなどでは、展開次第で離脱判定または強制離脱が発生する可能性もあります
超危険地帯には、勇者は多分いないと思いますが、魔王やそれに比肩する存在が潜んでいる可能性はあります。通行する際は十分に注意しましょう
アリシラ?さんは、かつて魔王化したアリシラさんの凶悪な力の断片のようです。厳密には魔王ではないので、災害と呼べるほどの力は残っておらず、言葉も通じるように思えます
本来のアリシラさんもどうやら消滅したわけではないようです
フラナ氏が若い頃にどういう吸血鬼だったかは明らかではありませんが、竜人の女性氏やムキムキオーク氏が尊敬するような人物だったのは確かなようです
緑の国の冒険者ギルド支部は一旦活動を休止することになるかと思います。鎖国が解消されたら再び活動を再開するでしょう
―朝
露店通り
ワイワイ ガヤガヤ
ティセリア「……もう出立の時なのですね」
妖精「うん。世話になったね」
ティセリア「こちらこそ。本当に……この年の選挙に戻ってきてくれて、ありがとうございました」
妖精「あなたこそ、この国を守ってくれてありがとう。これからも頼っちゃうけれど、よろしくね」
ティセリア「はい……」
紫髪のエルフ幼女「これを。旅にお役立てください」
お金の入った袋「」ジャラッ
イリス「わっ……! こ、こんなに良いんですか……!?」
紫髪のエルフ幼女「……むしろ、この程度の額しか用意できなかったことをお許しください。本来であれば、世界樹の光の回収は国を挙げて支援すべき事案なのですが……」
ローガン「とんでもない。これほどの大金を頂けるとは、ありがたみしかありません」
妖精「うん。この情勢でここまで捻出してくれて本当に助かるよ。ありがたく使わせてもらうね」
紫髪のエルフ幼女「それと、これをお受け取りください」スッ
精霊の印「」キラキラ
クロシュ「きらきら……」
イリス「なんだろ……透き通った心地良い魔力を感じる……」
紫髪のエルフ幼女「これは精霊の魔力が込められたお守りです。認められた人がこれを持っていれば、聖域を自由に通行できるようになります」
ミスティ「……本当に良いの? 私たちのような素性の知れぬ旅人に、聖域の通行許可なんて与えて……」
紫髪のエルフ幼女「あなたがたは現首長妖精と共に復権派として活動し、この国の為に尽力してくださった賓客ですから。どうかお受け取りください」
クロシュ「うん……ありがと……」
マーベル「なんだ、もう行くのか。帰って来る時はなんか珍しい土産とか持ってきてくれよ」
妖精「はいはい。覚えてたらね」
イリス「あの、今更ですけど……あの時、魔王樹の攻撃から助けてくださって、ありがとうございました……!」ペコッ
マーベル「あー、そういえばそんなこともあったな……。恩を着せようと思ったわけじゃないが、せっかくだから貸し一つってことにしとくか」
イリス「は、はい」
妖精「ちょっと、イリスに変な要求しないでよ」
マーベル「しねえよ! 百年どころか十数年しか生きてないガキにんな大人げないことするかっての!」
妖精「ならいいけど」
マーベル「まあ、そうだな……。またここに来ることがあったら、外国土産とか持ってきてくれりゃいい。それと、もしセインの奴に会うことがあったら、マーベルの分っつって一発ぶん殴っておいてくれ」
イリス「え、ええ!? セインくんを……それはちょっと、ハードルが高いというか……」
マーベル「あいつ変なとこで真面目だから、俺の名前出せば殴られてくれると思うぞ。多分な」
イリス「わ、わかりました。やれそうならやってみます……」
マーベル「ったく、あいつが勇者じゃなけりゃな……」
森妖精の子「ミスティさん……もう、いっちゃうの……?」
ミスティ「ええ……。私たちには、やらなければならないことがあるのよ」
森妖精の子「……うん。ミスティさんは……たびびと、だもんね……」
ミスティ「ええ……」
森妖精の子「…………これ……あげる……」スッ
精霊樹の実のジャム「」ポン
ミスティ「これは……ジャム?」
森妖精の子「うん……。木さんの、実と……わたしのフェアリーシロップで、つくったの……。ティセリアさんに、やりかた、おしえてもらって……」
ミスティ「すごいわ……! お菓子作り、もうできるのね……」
森妖精の子「えへへ……。木さんと、ティセリアさんのおかげ……。ミスティさん……げんきでね……」
ミスティ「ありがとう……。お菓子作り、応援してるわ。あなたも、元気で……」
☆お金をいっぱいもらいました
☆精霊の印(持っていると聖域を通行できます)を人数分もらいました
☆精霊樹の実のジャム(魔力大回復、甘くて美味しい)をもらいました
◇
―緑の国フォレスティナ
森のトンネル前
妖精「それじゃあ行ってくるよ。後はよろしくね、ティセリア、サリー」
ティセリア「はい、お任せください。あなたがたも、どうか無事に帰ってきてくださいね」
紫髪のエルフ幼女「……私たちを打ち負かして首長の座を取ったのですから、勝手に消えたら承知しません。絶対、五体満足で帰ってきてください」
妖精「わかってるよ。責任は全うする。飛び散った光を集めて、必ず戻るよ」
ティセリア「……もし、上手くいかなくても……どうか気に病まず、堂々と帰ってきてください。あなた方の無事が、一番の良い知らせになりますから」
妖精「うん……」
ティセリア「あなたがたに、精霊の加護がありますよう……」
紫髪のエルフ幼女「復権派に、精霊の加護がありますよう」
森妖精の子「ミスティさんたちに……せいれいのかごが、ありますよう……」
マーベル「あいつらに精霊の……あー面倒臭ェな! 老衰でくたばんじゃねえぞ妖精のババア!」
妖精「緑の国フォレスティナとその民に、精霊の加護が――ああ!!? あんのクソガキ!!!」
イリス「お、落ち着いて妖精さん!! フォレスティナの人たちに、精霊の加護がありますよう!!」
ローガン「はは……。フォレスティナの民に、精霊の加護がありますよう……」
ミスティ「もう……。フォレスティナと――あの子たちに、精霊の加護がありますよう――……」
クロシュ「えと……森のみんなに……精霊の加護が、ありますよう……!」
強化ソリ「」シャーッ
――緑の国フォレスティナ編 完
クリアボーナス
↓1
01-60 運命賽(致命的な運命を辿った時、直前の判定を振り直せる。一度使うとなくなる)
61-90 ↑+鋼の回転ノコギリ
91-00 ↑+会心賽(判定時に会心と書き込むと、コンマに関わらず最上の結果となる。一度使うとなくなる)
―王国港湾都市への旅路
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:エルフのレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:精霊のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽×2
・雨乞い傘
・精霊樹の種
・フメイの服の切れ端
・精霊の印
・精霊樹の実のジャム
・鋼の回転ノコギリ
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・世界樹の光を追う[0/5]
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
―緑の大森林 街道
強化ソリ「」シャーッ
ミスティ「良いとこだったわね……フォレスティナ……」
クロシュ「うん……!」
イリス「でも、だからこそ鎖国しちゃうのがもったいなく思えちゃうよ、仕方のないことだけれど……」
ローガン「うむ……だが我々には通行許可がある。ある意味では、緑の国の観光を独占できると言っても良いだろう」
イリス「な、なんかちょっとズルしてるみたいな気分になっちゃいそうです……」
妖精「いいじゃん。私たちは復権派なんだからさ」
ミスティ「そうね……。次に来た時は、のんびりしてみたいわ……」
ローガン「ところで……先ほどから、どこか鋼の気配を感じるのだが……」
妖精「奇遇だね……。私も、なんだか忌々しい気配を感じてたとこ……」
謎の荷物「」ゴゴゴゴゴ
イリス「あ、あの荷物は……?」
ミスティ「ソリを出す前に、マーベルさんが餞別とか言って置いてったのよ。言うのを忘れていたわ……」
妖精「あいつ……爆弾でも置いてったんじゃないだろうね」
ローガン「ははは、まさか……。この鋼の気配は、悪いものではないだろう……」
イリス「とりあえず開けてみよう!」
*
鋼の回転ノコギリ「」ドン!
妖精「……」
ローガン「これは……マーベル氏が使っていた機械式の武器だな……」
イリス「え、ええと……ローガンさん、使えそう……?」
ローガン「……使えないこともないだろうが、かなりクセが強そうだ……。ううむ……」
クロシュ「えと……じゃあ……わたしは……?」
妖精「だ、だめ! クロシュはこんな忌々しい武器を使っちゃだめだよ!」
クロシュ「う、うん……」
ローガン「……うむ。盾しか使っていないクロシュくんが、いきなりこのような変則的な武器を持つのは推奨できん。まあとりあえず私が試してみよう」
☆ローガンが状況に応じて回転ノコギリを使用するようになります
↓1 ランダムイベント
01-05 ???
06-20 襲撃
21-35 食べられる野草(まずい)
36-50 自生する野菜(まあまあ)
51-65 自生する果物(おいしい)
65-80 良いもの発見(自由安価。物品またはスポット)
81-95 旅は道連れ
96-00 ???
強化ソリ「」シャーッ
ミスティ「そろそろお昼ね……。休憩にしましょうか」
クロシュ「おひる……!」
イリス「ミスティ、魔力は大丈夫?」
ミスティ「ええ。少し前にコツを掴んだから、燃費はすこぶる良いわ」
ローガン「おお、以前よりも快速な気がしていたが、燃費も良くなっていたのか」
ミスティ「ふふ、私はソリの運行くらいしかできないから。これくらいは役立たせて欲しいわ」
妖精「むしろミスティがいなきゃ行軍にものすごく困るんだよね……」
*
―森の空き地
自生する森ニンジン「」
自生するゴボウ「」
自生するドングリ「」
妖精「お、森ニンジンとゴボウが生えてる。昼はあれも食べようよ」
イリス「わ、森ニンジンとゴボウってその辺に自生してるものなの?」
妖精「うん。味は流石に農場で作ってるのに劣るけれど、旅の糧食としては十分でしょ?」
ローガン「流石は緑の森だな……。自然の恵みに感謝せねば」
*
森の恵み野菜スープ「」ポン!
焼きドングリ「」ポン!
スライムクロシュ「〜〜♪」モニョモニョ モグモグ
イリス「ふふ、おかわりもあるからたくさん食べてね」
ミスティ「ふう……体が温まるわね……。美味しいわ……」
ローガン「うむ。このドングリもコクがあって美味いな。いくらでも食べられそうだ」ポリポリ
イリス「緑の森の食べ物は美味しいし、こうやって現地調達すれば保存食の節約にもなるし、森の恵み様々だね」
☆野菜スープを飲んで元気になりました
この道中の次の戦闘時、コンマ+10
◆
―夕方
関所 森林側
ワイワイ キャッキャ
森妖精A「フォレスティナに来てくれてありがと〜!」
森妖精B「えっへへ〜またいつか鎖国が解かれたら遊びに来てね〜」
森妖精C「ねえねえ旅人さん、鎖国前にフェアリーシロップ欲しくない? もう二度と手に入らないかもよ?」
お宿の妖精「妖精のお宿ですよ〜。鎖国前なので格安で提供してますよ〜。最後の一泊、どうですか〜?」
クロシュ「……!」
ローガン「ここはまだ、営業してるのだな……」
イリス「妖精さんのお宿……! 入国した時に一泊したのが、もうずっと昔みたいに感じられるなあ……」
ミスティ「格安でやってるみたいだし、今夜も妖精のお宿で一泊していかない……?」
妖精「……そうだね。泊まっていこう」
◇
お宿の妖精A「わあ、黒いスライムさん! また来てくれたんだあ」
お宿の妖精B「ああ……黒くて滑らかで……美しいです、お客様……」
お宿の妖精C「スライムさん向けのマッサージ、気に入ってくれた?」フニフニ
スライムクロシュ「///」モニョニョ
お宿の妖精D「またいらっしゃってくださったんですねぇ、鋼の旦那様……」
ローガン「う、うむ……。またよろしく頼む」
イリス「あはは、クロシュちゃんもローガンさんも覚えられちゃったみたい」
ミスティ「ふふ……でも、いいわね。そういうのも……」
妖精「クロシュもローガンもすっかり気を良くしちゃってるなあ。ふふ、本当に上手い商売」
妖精のお宿に一泊します
↓1〜3 自由安価 宿泊中何をする?
―妖精のお宿 客室
イリス「さて、と……。久しぶりに時間が取れそうだし……」ガサゴソ
魔術書「星の魔力」ポン!
イリス「今夜こそはこれをしっかり読み込んでみよう……! この前世界樹で感じたことを照らし合わせれば、何かが見えるような気がする……!」
イリス「よおし……」グッ
↓1 イリスの勉強成果
01-90 私の本当の属性って――
91-00 ???
魔術書「星の魔力」ペラッ
イリスの研究ノート「」カキカキ
イリス「……」ペラッ
イリス「……」カキカキ
イリス「……」ペラッ
イリス「……」カキカキ
イリス「……」
イリス「…………」
イリス(……あの日、夜空を飛び散っていった光は……星の魔力を源泉とした――火、水、風、地、光属性の、奔流……)
イリス(……)
イリス(そして私が使える属性も……火、水、風、地、光。他にも使える属性はあるけれど、それらも今言った五大属性の派生属性……)
イリス(つまり――私の、複数属性というのは――)
イリス(――星属性)
イリス(……そっか。あの時感じた、あの魔力に対する馴染みやすさは……私と一致した属性の魔力だったから……。単純な話だったんだ)
イリス(……)
イリス(お師匠様……。私、ようやく見つけました。私の、本当の属性を……)
☆イリスが自らの属性を自覚しました
◇
本日はここまでとなります。緑の国フォレスティナ編、クリアおめでとうございます
当初は選挙に飛び入り参加する方向などは全然考えていませんでしたが、こうして完結してみるとちゃんと綺麗に収まっているように思えます。妖精が建国者になったり、ティセリア氏とマーベル氏と和解に至ったり、とても良い着地をすることができたかと思います
そして次の更新の前に、やっぱり敵対ネームドキャラクターや汎用クリーチャーの募集などを平日中に行うかもしれません。その時はよろしくお願いします
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
緑の国編は魔族自治区編と比べると、実際明るく前向きな雰囲気で進んでいたかと思います。というか魔族自治区編が際立って重苦しかっただけかもしれません……
鋼の回転ノコギリは、単純な破壊力で言えばローガン氏の愛用しているはがねのつるぎよりも上なので、活躍しないということはないと思います。ただしローガン氏自身も言っていたように癖が強い武器のため、使いこなすにはある程度の習熟が必要となるでしょう
妖精さんが突然大物になりましたが、>>1自身も意外とちゃんとまとめられたことに驚いております。この調子で今後も良い感じに書いていきたいところです
というわけで本日は更新はできませんが、敵対ネームドキャラクターおよび汎用クリーチャーの募集を行いたいと思います
全員出せるかはわかりませんが、機会があれば是非とも使わせていただきたく思います。よろしくお願いします
(ネームドキャラクター用テンプレート)
【名前】
【種族】
【性別】
【年齢】
【容姿】
【性格】
【魔法】(主に使う魔法や得意属性など)
【備考】(来歴や嗜好、その他特徴や長所短所などなんでも)
(汎用クリーチャー用テンプレート)
【種族】
【分類】
【外見】
【性質】
【備考】
■参考:
(敵対ネームドキャラクター例)
【名前】ブラッド(冒険者ギルド命名)
【種族】スライム類の一種と推測される
【性別】♀
【年齢】不明
【容姿】血のように赤いスライム。人間に擬態する時は、真紅の髪を足元の辺りまで無造作に伸ばした幼子の姿を取る
【性格】わがまま。感情の起伏が激しく、気に入らないことがあるとすぐに癇癪を起こす
【魔法】詳細は不明だが、通常のスライムとは一線を画す卓越した擬態能力と同化能力を有する
【備考】幼い外見とは裏腹に異常な力を有しており、何人もの冒険者を血の海に沈めている
単純な戦闘能力も高いが、擬態能力を活かして不意打ちや騙し討ちをする等の狡猾さもあり、危険
過去に起きた災害級の事件に関与している疑いがあり、冒険者ギルドは調査を進めている
(汎用クリーチャー例)
【種族】ヒヒイロガニ
【分類】甲殻類
【外見】緋緋色の美しい甲殻を持つカニ
【性質】穏やかな性格であることが多い。大抵のヒヒイロガニは不要な争いを避け、静穏な環境を好んで暮らしている
【備考】甲殻に希少金属を含有している珍しいカニ。極めて頑強で堅く、並の物理攻撃では傷一つ付かない
特定の地域では高級食材として扱われている
↓1〜 23:59:59まで
皆さま、この度もたくさんのキャラクター案をありがとうございます。全員を登場させられるかはわかりませんが、機会があれば是非とも登場させていただきたく思います
例によって、世界観や設定に合わせて内容を若干程度変更させていただく場合がございます。ご了承くださいませ
それでは本日はありがとうございました。本編の更新は予定通り土日にかけて行いたいと思います。よろしくお願いいたします
彼ら彼女らがどのように登場するかは今後の展開次第となります。道中での偶発的な遭遇もあれば、宿命的な邂逅を果たしてしまうこともあるでしょう
敵対キャラクターなので、基本的には友好的でない出会いとなる可能性が高いです
―妖精のお宿 ロビー
ミスティ「……そういえば……魔王樹を討伐した後に、妖精のポケットにいつの間にか入ってたっていう種……あれ、どうしたの?」
妖精「ああ、あの精霊樹の種? 今も持ってるけど………フォレスティナに植えてくれば良かったね。持ち歩いても仕方ないし……」
ミスティ「こういうのって、種のまま放っておくのも良くないと聞いたことがあるわ……。大丈夫かしら……」
妖精「確かに種のままずっと放置してると死んじゃうけど、ニ、三年くらいは大丈夫だよ」
ミスティ「でも、出自が出自だし……普通の種と同じように考えて大丈夫かしら……」
妖精「そう言われると確かに心配かも……。私の感覚ではまだ元気な感じだけど、念の為早めに植えてあげた方が良いかもしれないね」
ミスティ「……でも、植える場所がないわよね……。勝手に緑の森に植えるのも良くないだろうし……」
妖精「う〜ん、まあそうだね……。これがもし魔王樹が遺した種だとしたら、万が一の可能性もあるし……」
ミスティ「……鉢とか、どうかしら……。まずは、様子見って感じで……」
妖精「多分大丈夫だと思うけど、念の為他の妖精の意見も聞いてみよう」
ミスティ「他の妖精……?」
妖精「長い事国外を放浪してた私より、ずっとこの森で暮らしてる妖精の方が今の精霊樹の栽培情勢に詳しいだろうし」
*
お宿の妖精E「えっ、精霊樹の種の育て方?」
妖精「うん。精霊樹って鉢に植えても大丈夫だっけ?」
お宿の妖精E「大丈夫ですよ。鉢の大きさにもよりますが、一年くらいまでなら鉢で育てられると思います。むしろ鉢の方が、外敵が減る分安全に成長させられるかもです」
妖精「普通に世話してやれば良いの?」
お宿の妖精E「昼間は陽の光をいっぱいに浴びさせてあげて、夜は寒くなりすぎないように気にかけてあげてください。お水は朝か夕方にあげるのが良いです。あ、でも夏の日差しは幼い木にはつらいからほどほどに。妖精のあなたが見ていてあげれば大丈夫だと思いますが」
ミスティ「なるほどね……。一年後はどうすれば……?」
お宿の妖精E「栄養がいっぱいあって日当たりも良い土地に植え替えてあげてください。精霊樹なら精霊の祝福をいっぱいにもらって元気に育ってくれますよ」
妖精「植え替えまですれば後は普通の精霊樹と同じだね」
お宿の妖精E「そういうことです」
ミスティ「あ……精霊樹を植えた鉢を、ソリで運んだりしても大丈夫かしら……?」
お宿の妖精E「えっ、ソリですか? あまり揺らさない方が良いかと思いますが、ひっくり返したりしなければ大丈夫だと思いますよ」
妖精「ミスティのソリならあんまり揺れないし大丈夫じゃない?」
ミスティ「それなら良いけれど……」
*
―お宿 庭
精霊樹の鉢植え「」ポン
ミスティ「こんな感じで良いのかしら……?」
お宿の妖精E「うんうん、良い感じです。あとは先程申し上げたことをしっかり守って大切に育ててあげてくださいね」
妖精「うん。ありがとう」
ミスティ「でも、鉢まで頂いてしまって良いの……?」
お宿の妖精E「はい。元々はここで使う予定だった鉢ですけれど、もうすぐ無期限休業に入りますから……」
妖精「……」
お宿の妖精E「だから、遠慮せず持っていってください。新たな命を育む揺りかごになれるなら、その方が良いので」
ミスティ「……わかったわ……。大切に使う……」
☆お宿の妖精から妖精の鉢をもらいました
☆妖精の鉢に精霊樹の種を植えました
◆
―妖精のお宿
ロビー
ローガン「すまないな、近接戦闘訓練に付き合わせてしまって」
クロシュ「んーん……。わたしも……訓練、しないとだから……」
ローガン「うむ……クロシュくんは立派だな。しかしあまり気負いすぎないように――」
お宿の売店妖精「閉館特売中だよ〜。そこの旅人さん、何か買ってかない〜?」
ローガン「む、特売か。せっかくだし見ていこうか?」
クロシュ「あ、うん」
*
フェアリーシロップが入った瓶「」
お宿の焼き菓子「」
シロップ漬け森林木苺「」
保存どんぐり「」
お宿の妖精たちが描かれた織物「」
お宿の妖精たちを模した人形「」
クロシュ「わあ……」
ローガン「ふむ。前回は酒に酔っていてあまり見ていなかったが、いろいろあるな」
お宿の売店妖精「いらっしゃ〜い。安いよ〜在庫処分だよ〜」
ローガン「クロシュくんは何か欲しいものはあるかね?」
クロシュ「あ、えと……」
↓1〜3 自由安価 買うもの(特に指定がなければパーティの共有アイテムになります)
クロシュ「ローガンさんは……?」
ローガン「私か? そうだな……私はこの焼き菓子を買おうかな。旅の補給食に丁度良さそうだ」
お宿の焼き菓子「」
お宿の売店妖精「この焼き菓子に目をつけるとはお目が高いね〜。これは一枚一枚うちの妖精たちが丁寧に焼き上げた至高の逸品なんだよ〜」
ローガン「表面に描かれた妖精たちの絵もかわいらしい。優れた製菓技術をお持ちのようだ」
お宿の売店妖精「お、旦那さんも好きだねえ〜。それじゃあこっちの織物もどう?」
お宿の妖精たちが描かれた織物「」キラキラ
ローガン「こ、これは……か、かわいらしいが……」
お宿の売店妖精「旦那さんが懇ろにしてた子もしっかり描かれてるよ〜。どう? どう?」
ローガン「い、いやしかしだな……」
お宿の売店妖精「お願い! 旦那さんが買ってくれないと廃棄処分になっちゃうかもしれないの!」
ローガン「うっ……廃棄処分は忍びないな……。わかった、買おう……」
お宿の売店妖精「わあい! 鋼の旦那さん、だぁいすき!」キャッキャ
ローガン「はは……」
お宿の売店妖精「大切にしてね! 飾るのも良いし、ふわふわの木綿だからブランケットにするのも良いと思うよ!」
ローガン「うむ……。我がパーティの女性陣なら似合うだろう……」
お宿の妖精たちを模した人形「」
クロシュ「……」ジッ
クロシュ「……!」
黒髪セミロングの女の子の人形「」
薄茶髪の小柄な少女の人形「」
お宿の売店妖精「その人形が気になるの? それは丁度昨日ここに泊まってった二人組の――ってあれ!? あなただよ! 今日も泊まりに来たの!?」
クロシュ「あっ……え、えと……! これ……!」スッ
フメイちゃんの迷子ビラ「」ピラッ
お宿の売店妖精「え、え……? つまり、どういう……?」
ローガン「うむ……。その子とこのビラの子は、生き別れの姉妹のようなものでな……。我々は彼女を追って旅をしているのだ」
お宿の売店妖精「そ、そうだったんだあ……。えっとね、その人形はうちの制作担当がその二人組を気に入っちゃってねえ。一晩で作ったんだけど、うちの従業員の人形じゃないからどうしよっかってなってたとこでえ……」
ローガン「そ、そうなのか……」
クロシュ「え、えと……これ……買っても、いい……?」
お宿の売店妖精「事情があるみたいだし、売り物としてもどうしよっかってとこだったから、今日のお買い物のオマケってことであなたにあげる!」
クロシュ「あ、え、えと……」
ローガン「売店の妖精さんもこう言っていることだし、ありがたく頂いておこう。クロシュくん。」
クロシュ「うん……」
クロシュ(フメイちゃん……アリシラさん……)
☆お宿の焼き菓子、お宿の妖精の織物を買いました
☆フメイ人形、アリシラ人形をオマケとしていただきました
◆
―朝
妖精のお宿 客室
チュンチュン
スライムクロシュ「……」モニョモニョ
フメイ人形「」
アリシラ人形「」
イリス「昨日売店でもらってきたっていうフメイちゃんとアリシラちゃんのお人形をずっと大事に抱えてるね、クロシュちゃん……」
ミスティ「やっぱり、寂しいのよね……。私たち、あの子の支えになれているかしら……」
妖精「……支えにはなってるよ、間違いなく。でも……私たちは、クロシュにとってのフメイの代わりには決して成り得ない」
イリス「……代わりにはなれないけれど、支えになれるなら……支えてあげないとね」
ミスティ「ええ……。次こそは、フメイを説得できるように……」
◆
―妖精のお宿 玄関
妖精女将「この度のご利用、誠にありがとうございました……」ペコリ
お宿の妖精A「鎖国が終わったらまた来てね〜」
お宿の妖精B「どうか、どうか、お達者で……」
お宿の妖精C「さよなら、黒いスライムさん!」
お宿の妖精D「またいつか、お越しになってくださいね……。鋼の旦那様……」
お宿の妖精E「精霊樹、大切に育ててあげてくださいね」
お宿の売店妖精「早く追いつけると良いね〜」
イリス「本当に良いとこだったねえ。首都の大樹の宿も良いとこだったし……」
ミスティ「鎖国、早く終わると良いけれど……」
ローガン「私が生きている内に終わることは……ないだろうな……」
妖精「まあ……王国っていう脅威が存在する限り鎖国は解けないからねえ……」
クロシュ「王国……」
妖精「クロシュが気にすることじゃないよ。私たちは世界樹の光を追うことに専念しよう」
◆
―王国港湾都市への旅路
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:エルフのレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:精霊のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽×2
・雨乞い傘
・フメイの服の切れ端
・精霊の印
・精霊樹の実のジャム
・鋼の回転ノコギリ
・精霊樹の鉢植え
・フメイとアリシラの人形
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・世界樹の光を追う[0/5]
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
―王国領
平原 街道
強化ソリ「」シャーッ
ミスティ「久しぶりの王国領ね……。道も視界も広いわ……」
妖精「街から離れた平原は景色も良いんだけどねえ……」
クロシュ「えと……そういえば……どうして、王国を通るの……?」
ローガン「王国はこの大陸で最も領土が広い。大陸南部を中心とした四分の一程度は王国領と言っても良いだろう。今回の目的地であるトコナツ火山島に行く場合、王国のウォーターポート以外の港を使おうとすれば大幅な遠回りになってしまうのだ」
クロシュ「そうなんだ……」
妖精「元々は大陸南部で興った小国だったんだよ。でも侵略戦争が上手くてさ、いつの間にか周辺国家を打ち負かして従えてどんどん領土を広げてったんだ。勇者が出現する前からそんなだったのに、勇者が出てきてからは……」
ミスティ「勇者……おとぎ話じゃ、世界を滅ぼそうとする魔王と戦う人間の英雄なのよね……」
妖精「王国の奴らが勝手に勇者だなんて言ってるだけで、実態は大量破壊兵器だよ。セインのやつがどうなのかはよくわかんないけど」
イリス「セインくん……。マーベルさんとも約束したし、ちゃんとお話してみたいな……」
クロシュ「……」
↓1 ランダムイベント
01-05 ??
06-15 強敵
16-30 敵襲
31-50 食料調達
51-70 発見(自由安価:物品またはスポット)
76-95 旅は道連れ
96-00 ??
読み終わっていました。以下のように修正です
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
↓
◯仲間の目標
・星の魔力を読む[4/4](イリス)達成!
↓1 見つけた物品またはスポット
勇者サインの銅像を見つけたところで本日はここまでとなります
>>1の現実が今現在少々忙しく、更新のペースが遅くなってしまっています。明日も遅くなってしまうかもしれません。申し訳ありませんがご了承ください
精霊樹の鉢植えは、旅をしていれば芽を出すかと思います。一年後くらいには地面に植え替えてあげた方が良いのですが、その時くらいまでにクロシュちゃんの旅が終わるかどうかはまだわかりません
もし旅が終わらなくとも、信頼できる人の管理する場所に植えることはできます。今のところ、魔族国と緑の国が信頼できる安全な植え替え候補地として選択可能です
それでは本日もありがとうございました。上述の通り明日も遅くなってしまうかと思いますが、よろしくお願いいたします
来月も更新が遅れる場合が多くなってしまうかもしれません。気長にお待ちいただければさいわいです
これまではクロシュのサポートをすることが多かった妖精ですが、世界樹の光を追うという目的を得た今なら武器を手に主体的に戦ってくれるようになるかもしれません
人間用の武器は大きくて重いため、もし武器を持たせたい場合は妖精用の武器を別途調達する必要があります。針などの暗器は隠密性や素早さに優れた妖精に適した武器と言えます
妖精の自然魔法を活かすのであれば、物理的な武器よりも魔法の補助具の方が良いかもしれません(なお本人は補助具を使うのは甘えだと思っているようです。参考:>>144)
―街道沿い
廃村
打ち捨てられた廃屋「」
荒れた畑「」
枯れた井戸「」
野ざらしの農具「」
地に刺さった剣「」
割れた盾「」
折れた槍「」
強化ソリ「」スイー
イリス「ここは……」
ミスティ「廃村ね……」
ローガン「激しい戦いの跡が見えるな。遠目からでは詳しいことはわからんが……」
妖精「野盗の群れに襲われたか、あるいは人間に恨みを持つ魔族たちの報復か……。何にせよ、長居はしたくないね」
クロシュ「……あ」
イリス「何かあった?」
クロシュ「うん……あれ……」スッ
寂れた勇者サインの銅像「」
イリス「あれは……大人になったセインくん! じゃなくて――」
ミスティ「勇者サインの銅像ね……。すっかり荒れ果ててるけれど……」
妖精「あれが壊されてないってことは、襲撃者が魔族の線は薄くなったかな」
ローガン「しかしイリスくんも言ったように、やはり似ているな」
クロシュ「セインさん……」
↓1 どうしよう
1.放っておく
2.手入れする
クロシュ「あの……。銅像さん、だけでも……」
イリス「そうだね。このまま放っていくのもかわいそうだし……」
妖精「ええ、掃除してくの? 勇者サインの銅像なんて放っておけば良いのに」
クロシュ「で、でも……セインさんに、似てるし……」
ローガン「はは、まあ良いじゃないか。銅像に罪はないのだし」
ミスティ「そういう問題なのかしら……? まあ、私は構わないけれど……」
妖精「わかったよ、仕方ないなあ……」
*
ミスティ「この青いサビってどう取れば良いかしら……? 素人が削るのは危ないわよね……」
ローガン「いや、その青いサビは取らなくて良い。それが表面にあると内側への腐食を防いでくれるんだ」
イリス「へえ……! 流石ローガンさん、金属のことには詳しいんですね……!」
ローガン「そうだろうか……。とりあえず表面は砂や泥を拭き取る程度で良いだろう」
イリス「じゃあ私の水魔法で高圧洗浄します!」
バシャバシャバシャ――
*
クロシュ「雑草さんは……」
妖精「こいつらはただここで生まれただけなのに、像の見栄えなんかの為だけに殺すのはあまりに理不尽だ。そのままにしとこうよ」
クロシュ「うん……」
ミスティ「そうね……。生活の為とかならともかく、もう誰も住んでいない廃村に生える草を刈る意義なんて、ないものね……」
妖精「そうそう。自然のままにしとくのが一番だよ」
「あなたたち、その像に何をしているの?」
妖精「!?」
イリス「っ!!?」
ミスティ「!!」
ローガン「……!」
クロシュ「?」
淫魔の女「こんな、誰もいない村の銅像なんか掃除して……何になるの?」スタスタ
ローガン(……接近に全く気付けなかった。何者だ、この女……!)
イリス「あ、あなたは……?」
淫魔の女「質問に質問で返さないで。そんな像の手入れなんかして、何になるのかって聞いているのよ」スタスタ
ミスティ(な、なんかヤバいわ……。私たち、今かなり危ない状況なんじゃないかしら……)
妖精(じ、実際ヤバイ! あれ多分エルダーサキュバスだ! 魔族国にもほとんどいないめちゃくちゃ高位の魔族だよ……!)
淫魔の女「早く答えなさいよ……。さもないと――」スッ
闇の塊「」ヴォン―
イリス(うわあああ!!! ヤバイ!!)
ミスティ(本当にヤバイわ……)
ローガン(くっ……! 私に防げるか……!?)
クロシュ「……」
↓1選択
1.銅像さんがかわいそうだったから
2.セインさんと友達だから
3.(自由安価)
クロシュ「え、えと……。銅像さんが……かわいそうだったから……」
淫魔の女「……銅像が?」
クロシュ「うん……。砂とか……泥とかで、汚れて……。誰もいないここで……独りぼっちで……」
淫魔の女「……銅像なんかに、意思も感情もあるわけないでしょう。ただの無機物よ」
クロシュ「でも……もし、あったら……。きっと、寂しい……」
淫魔の女「……」
クロシュ「……」
淫魔の女「……その像が模している人物を尊敬しているとか、そういうわけではないの?」
クロシュ「うん……。えと、勇者サインって人のことは……あんまり、知らない……」
淫魔の女「………じゃあ、本当に……銅像自体をかわいそうに思ったってだけ?」
クロシュ「うん……」
淫魔の女「……」
闇の塊「」シュゥン…
淫魔の女「……そういう理由なら、好きにすれば良いわ。邪魔して悪かったわね……」クルッ
イリス「あっ……! あ、あの……あなたは、一体……」
淫魔の女「……レイン・フォールって名前――聞いたことあるかしら」スタスタ
ミスティ「え――」
ヴォン―
妖精「消えた……。レイン・フォール……どこかで聞いたことがあるような……」
ローガン「レイン・フォール……はっ!! まさか、国際指名手配犯のレイン・フォールか!?」
イリス「え、えええ!!?」
妖精「あー……思い出した……勇者をたぶらかした、魔族の裏切り者のレイン・フォール……」
ミスティ「……ほ、本当に危ないところだったのね……。クロシュの返答のお陰で命拾いしたわ……」
クロシュ「え、えっと……」
妖精「はは……この赤ちゃんスライムは、きっと本心から言葉を返しただけだけどね……」
イリス「つ、つまりクロシュちゃんの正直さが私たちの窮地を救ったってことだね……!」
ローガン「うむ……。クロシュくんのおかげだな……!」
クロシュ「う、うん……」
クロシュ(でも……。あの人も……)
クロシュ(なんだか……寂しそうだった……)
☆国際指名手配犯レイン・フォールと出遭ってしまいました
◆
―夜
街道沿い 野営地
即席岩風呂「」カポーン
イリス「みんな、湯加減どう?」
スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ デロデロ
ミスティ「丁度良いわ……。ありがとう、イリス……」
妖精「どこでもお風呂が作れるなんて本当に便利だよねえ、複数属性って」
イリス「あ〜……それなんだけど、実は昨日の夜に私の本当の属性が判明しまして……」
ミスティ「えっ、複数属性じゃないの?」
イリス「……私、星属性ってやつみたい……」
ミスティ「な、なんですって……!?」
妖精「……いや、言われてみれば確かに辻褄は合うかも……」
イリス「や、あはは……まあ、まだ属性がはっきりしただけで、魔法の運用についてはまだ更新できてないんだけどね」
ミスティ「むう……私が氷属性のコツを掴んだと思ったら……」
イリス「てへへ、私も日進月歩なんだよ……!」
妖精「でもイリスが星属性なら、世界樹探索にすごく良いかも。私の自然属性でもある程度は星属性を追えるけれど、やっぱり星属性そのものの持ち主の方が精度は高いだろうし」
イリス「ほんと!? よおし、それなら張り切っちゃおうかな……!」
ミスティ「私も負けてられないわね……。星属性でカバーできない氷は、私の領分よ……」
スライムクロシュ「〜」デロデロ
*
即席衝立の向こう「」キャッキャ
ローガン「……」
ローガン「くっ……やはり女性ばかりのパーティに男一人というのは体に悪い……」
ローガン「……」
ローガン「ええい! こんな時こそ回転ノコギリで素振りだ!!」ザッ
回転ノコギリ「」ギャリギャリ
街道沿いの野営地で一泊します
↓1〜3 自由安価 野営中何をする?
ローガン「むん! むん!」
回転ノコギリ「」ギャリギャリ
妖精「わあ、ローガンも張り切ってる……。あの気持ち悪い武器がそんなに気に入ったのかなあ……」
クロシュ「……コツを掴んだミスティさんも……属性を見つけたイリスさんも……回転ノコギリの練習をするローガンさんも……みんな、すごくすごい……」
妖精「そうだねえ……。クロシュも、盾を使えるようになったし」
クロシュ「……でも……わたし……まだ、よわい……」
妖精「一般的な冒険者よりもちょっと強いくらいの実力はあると思うよ。赤ちゃんスライムなのにそれだけ戦えるのは十分すごいことだよ」
クロシュ「みんなよりは……よわい……」
妖精「強情だなあ……。じゃあ、クロシュもなんか特訓とかしてみる?」
クロシュ「うん……!」
*
盾クロシュ「えい! えい!」ブンッブンッ
妖精「う〜ん……盾を振り回すのは、なんか違う気がする……」
盾クロシュ「えと……だめ……?」
妖精「だめってわけじゃないけど、盾って振り回すものじゃないからねえ。盾以外の装備は取り込めないの?」
盾クロシュ「えと……」
妖精「例えば……ここに置いてある、ローガンの鋼の剣とか」
はがねのつるぎ「」シャキン
盾クロシュ「ん……!」スッ
デロデロ…ポン!
剣士クロシュ「!」シャキーン!
妖精「おお! 鋼の剣を振り回す為に生まれた剣士の女の子みたい……! 見た目は十分良い感じだよ!」
剣士クロシュ「ん!」
妖精「せっかくだし実技の方もやってみよう。ちょっとここの土をこねこねして……」コネコネ
土塊の王国騎士風ゴーレム「」ドン!
剣士クロシュ「わ……」
妖精「見た目だけの木偶の坊だけど、練習台には丁度良いでしょ。こいつと戦ってみて」
剣士クロシュ「う、うん……!」
土塊の王国騎士風ゴーレム「」モゾモゾ
――模擬戦闘開始――
↓1
01-05 だめだめ
06-35 練習すればなんとか
36-65 ふつう
66-95 筋が良いらしい
96-00 天賦の才
剣士クロシュ「えい! えい!」ブンッブンッ
土塊の王国騎士風ゴーレム「」ゴッゴッ
剣士クロシュ「えいっ!」ブンッ
ドスッ
土塊の王国騎士風ゴーレムに突き刺さった鋼の剣「」
剣士クロシュ「あっ……えと、えと……えいっ!」グイグイ
土塊の王国騎士風ゴーレムから抜けない鋼の剣「」グイグイ
土塊の王国騎士風ゴーレム「……」
剣士クロシュ「あっ、あっ……」ジワワ
妖精「そ、そこまで!! なんでそんな土塊相手に苦戦した上に剣が抜けなくなっちゃってるの!?」
剣士クロシュ「うぅ……」
妖精「全くもう……」パチン
土に還るゴーレム「」ボロボロ
はがねのつるぎ「」カラン
スライムクロシュ「」デロデロ…
妖精「……まあ突き刺す前までは、そこまで酷くなかったし……練習すればなんとかなるよ……。多分……」
スライムクロシュ「」デロロ……
☆クロシュの剣技が『微妙』レベルになりました
◇
本日はここまでです。次回は星属性の使い方編、クロシュの特訓Part2編です
指名手配犯のレイン氏は、勇者サインのことが大好きで、勇者サイン以外の大体全てが大嫌いな人物のようです。今後関わることがあるかはわかりませんが、関わる際は細心の注意を払いましょう
そしてクロシュ氏の剣技が微妙レベルだということが判明いたしました。一応クロシュちゃん自身はスライム特有の高耐久と物理耐性で前衛を張れますので、剣がへたっぴでもなんとかなります
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
セインくんと友達だと言っていた場合、誰そいつ……という感じになり、勇者サイン本人ではないということで見逃してもらえたかと考えられます
メタ的な話になってしまいますが、ファンブルイベントではないのでよほど酷い回答をしない限り事を構えるということにはならなかったかと思います
レイン氏は怖い人ですが、実際今のところ双方に敵対する理由はありません。今のクロシュちゃん一行には厳しい相手なので、理由がなければ敵対しないでおいた方が無難です
ローガンさんは亡き妻子を今でも強く想っているため、よほどのことがない限り他の女性に手を出すことはありません。しかしそれはそれとして、年齢的にはまだ枯れていないため、若い女の子ばかりのパーティにいる現状ではいろいろ持て余すようです
お人好しが多い現在のパーティは、実際クロシュちゃんにとって居心地の良いものであります。殺伐としたこの世界においては珍しい集団かもしれません
敵対キャラクターは皆恐ろしい方々ですが、上記のレイン氏のように時と場合によっては敵対せずに済む可能性もあります(時と場合に関わらず激突不可避のキャラクターもいます)。赤ちゃんスライムのクロシュちゃんは賢く立ち回りましょう
妄想ポンコツ小隊長さんは……恐らく敵対キャラクターの中では話が通じやすいと思われますが、目的がクロシュ一行とバッティングしているため、遭遇時は気を付けた方が良いかもしれません
クロシュ氏は実際、能力のポテンシャルで言えば輝きを秘めうると言えましょう。戦う決意もできてはいる……のですが、生来の優しさや臆病さが足を引っ張っているかもしれません
―夜
街道沿い 野営地
焚き火「」パチパチ
ミスティ「……世界樹の光……星属性の塊、らしいけれど……。あれが何なのか、星属性のイリスにはわかるの……?」
イリス「あの本に書いてあったことと、あの日起きたことを照らし合わせれば……素人なりの推察はできそうかなあ。妖精さんに聞いた方が正確だと思うけど……」
ミスティ「今はクロシュと遊んでるわね……」
イリス「だねえ……。よし、じゃあおさらいがてらに私の見解を述べます!」
ミスティ「よろしくお願いします……」
イリス「妖精さんが言っていたように、あの光は世界樹の果実が宿した莫大な星の魔力……の欠片。地、水、火、風、光の五属性に分割されて、それぞれ別の方向に飛んでいきました」
ミスティ「氷はないのよね……」
イリス「氷は……星属性には含まれないみたい。星属性も全ての属性を含んでいるわけじゃなくて、氷と闇と、特定の希少属性やユニーク属性は含まないんだって。あの本にも少しだけ触れられていたけれど、本筋じゃないからかその辺りのことはあんまり書かれてなかったんだよね」
ミスティ「……仲間外れにされたてしまったわ……」
イリス「そ、そんなことないよ!? ミスティは私の友達で、私たちの大事なパーティメンバーだよ!!」
ミスティ「ふふ、冗談よ……。脱線したわね……それで、分割された星属性の光は各地に飛んでいったわけだけど……放っておくとどうなるの……?」
イリス「えっと、星属性というのはこの星が内包する大きなエネルギーで、この星を形作る資源でもあるから……あの光が落ちた場所では、エネルギーと資源が過剰になります!」
ミスティ「……つまり?」
イリス「なんか、大変なことになってると思う!」
ミスティ「そ、そうらしいわね……」
イリス「……ご、ごめん! 不勉強です!」
ミスティ「い、いいわよ別に……。まだ始めたばかりでしょ、勉強……」
イリス「そう言ってもらえると助かるよお〜……」
ミスティ「それじゃあ……ちょっと話題を変えましょう。あなた自身の星属性について……」
イリス「えっ私?」
ミスティ「実際、星属性ってことがわかって、どう……? 魔力の使い方とかも変わるの……?」
イリス「そ、そうだねえ。今までよりは少し魔力効率が良くなるかもしれない」
ミスティ「星属性固有の魔法とかは書かれてなかったの?」
イリス「うん。あの本、前編らしくて。星属性についての概要と、他の属性に転用する場合の効率的なやり方とかは書いてあったんだけど、星属性固有の魔法とか運用については中編とか後編なんだって」
ミスティ「……ええと。それじゃあ、つまり……」
イリス「ちょっと効率が良くなったよ! 最近のミスティとおんなじだね!」
ミスティ「そ、そうなのね……」
イリス「でもせっかくだから、自分で固有の使い方を模索してみるよ。この前の世界樹の時に星属性の感触は覚えられたから、あとは術式を考えれば……」
ミスティ「……イリスは術式を自分で組めるのよね。羨ましいわ……。私は魔導書で学んだものと、それを自己流でアレンジしたものくらいしか使えないから……。アレンジも上手くいくことの方が少ないし……」
イリス「誰の教えも受けず独学で魔導書を読んでそれをモノにできるミスティも凄いよ! 私なんか、お師匠様……私の育ての親のお師匠様がいなかったら、きっと魔法なんて絶対に使えなかったもん」
ミスティ「そうかしら……。でも、私も誰の教えも受けてないわけではないわ……。ママ……母から、簡単な手ほどきは受けていたもの……。母が教えてくれなければ、私もきっと魔法は使えなかったわ……」
イリス「そっか……。えへへ……私たち、やっぱり似たもの同士なのかも?」
ミスティ「……ふふ、そうね……」
イリス「今思ったけれど、フラナさんを勝手に師匠呼びするのは……なんだか良くないよね」
ミスティ「そ、そうね……。まあ、フラナさん自身も師匠になった覚えはないと言っていたものね……」
イリス「だからこれからはフラナ先生と呼ぶことにします」
ミスティ「い、いいんじゃないかしら……」
イリス「うん!」
◆
スライムクロシュ「」デロデロ…
妖精「クロシュは打たれ強いんだから、剣がへたっぴでもなんとかなるよ」
半スライムクロシュ「うゅ……」モニョニョ
妖精「納得できてなさそうだなあ……。クロシュにしかできないことは他にもいっぱいあるんだから元気出しなって」
半スライムクロシュ「わたしにしか、できないこと……?」モニョニョ
妖精「そう。例えば擬態とか、お絵かきとか。精霊の気配を纏うのも、精巧な絵を描くのも、クロシュにしかできないことだよ」
半スライムクロシュ「……!」モニョ
妖精「せっかくパーティを組んでるんだから、一人で何でもできるようになるより、得意分野を伸ばしてみんなができないことをカバーできるようになった方が良いんじゃない?」
半スライムクロシュ「とくいぶんや……」モニョモニョ
妖精「そうそう。お絵かきについてはもうお金を取っても良さそうなレベルだし、伸ばすなら擬態とかの方面かな」
クロシュ「……うん!」スクッ
*
剣士クロシュ「!」シャキーン
妖精「再び鋼の剣を取り込んでみたわけだけど……やっぱり、クロシュ自身の属性も鋼に変化してるね。これがスライムの固有能力……同化とかマテリアライズって言うらしいね」
剣士クロシュ「まてりあらいず……」
妖精「今までは鉄の小盾と鋼の剣っていう、金属……つまり地属性に分類される物質を使ったわけだけれど……。これが例えば、他の属性の物質とか、あるいは生き物だったら? できそう?」
剣士クロシュ「んと……わかんない……。でも、生き物は……消化しちゃうかも……」
妖精「そりゃそうか……。まあ試すだけ試してみようよ。この野営地にもいろいろあるしさ」
剣士クロシュ「うん」
↓1 同化を試みる物質
1.精霊樹の杖 難度:易
2.魔銀の短剣 難度:易
3.雨乞い傘 難度:易
4.水 難度:普
5.空気 難度:難
6.焚き火 難度:超
7.自由安価 難度:?
※↓1のコンマにより成否が決定されます
精霊樹の杖「」ポン
妖精「お、こんなところにイリスの杖。精霊樹を使った質の良い品だね。これとかどう?」
クロシュ「やってみる……!」
デロデロ……ポン!
魔女っ子クロシュ「!」キラキラ
妖精「…………ええと。魔術師のローブっぽい衣装はまあ良いとして……その三角帽子はどこから出てきたの?」
魔女っ子クロシュ「?」
妖精「自覚なしか! うう〜ん……クロシュが無意識にイメージする、杖を持つ魔法使いがそんな感じってことなのかな……?」
魔女っ子クロシュ「??」
妖精「まあいいか……。精霊樹の杖、どんな感じ? 何か面白いことできそう?」
魔女っ子クロシュ「……」
↓1コンマ
01-35 鈍器
36-65 反映魔法を他者にもかけられます
66-95 ↑+なんか精霊魔法を使えます
96-00 ↑+???
魔女っ子クロシュ「えと……えいっ!」ブンッ
岩「」ヴン
勇者サインの銅像「」ポンッ
妖精「えっ……! い、今何したの!?」
魔女っ子クロシュ「えと……。あの岩を……お昼に見た、銅像に……見えるようにした……」
妖精「自分以外を擬態させられるってこと……!? それって私にも使えたり……!?」
魔女っ子クロシュ「うん。えいっ!」ブンッ
ポンッ
スライム妖精「わわっ!」
魔女っ子クロシュ「わあ……!」
スライム妖精「か、体がデロデロのスケスケになっちゃった……! 私、スライムみたいな質感になってる……!」
魔女っ子クロシュ「えへへ……妖精さんも、スライム……」
スライム妖精「こ、これは凄いかも……。あ、でも視覚的な見た目が変わっただけで私自身の能力は特に変わらないみたい。宙も飛べるし自然魔法も使える……本当にスライムになったわけじゃないんだね」
魔女っ子クロシュ「うん」
ポンッ
妖精「元に戻った……。や、やっぱり元の姿の方が落ち着くなあ……。でも凄いよクロシュ! なんかすっごい悪いことに使えそうじゃん!」
魔女っ子クロシュ「わるいこと……」
妖精「精霊樹の杖が、クロシュの魔法の潜在能力を引き出してくれたのかな?」
魔女っ子クロシュ「……あ。えっと……もう一つ……できそう」
妖精「へ?」
魔女っ子クロシュ「えいっ!」ブンッ
つむじ風「」ヒュルルル
妖精「わわっ! それ、精霊魔法!? どこで覚えたの!?」
魔女っ子クロシュ「えと……この杖が……教えて、くれた……」
妖精「そ、そんなことがわかるの!?」
魔女っ子クロシュ「うん……。でも……これ、わたしも、初めて……」
妖精「そ、そうなんだ……。いやでも本当に凄いな……クロシュ、あなたもしかしたら凄い才能の持ち主かもよ」
魔女っ子クロシュ「そうなの……?」
妖精「いきなり習ってもない適性もない属性の魔法を使ったんだもん。普通じゃありえないことだよ、それ」
魔女っ子クロシュ「?? イリスさんと……杖さんの、おかげ……?」
妖精「あはは、そうかもね。その杖はイリスのだから、クロシュがいつでも使えるわけじゃないのが惜しまれるなあ……。次の街に行ったら、クロシュ用の魔法具を買ってみるのも良いかもね」
魔女っ子クロシュ「うん」
☆魔法補助系アイテムと同化した際、反映魔法を他者へかけられるようになりました
☆魔法系アイテムと同化した際、そのアイテムの潜在魔法を引き出せるようになりました
◆
―王国港湾都市への旅路
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:エルフのレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:精霊のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽×2
・雨乞い傘
・フメイの服の切れ端
・精霊の印
・精霊樹の実のジャム
・鋼の回転ノコギリ
・精霊樹の鉢植え
・フメイとアリシラの人形
・お宿の焼き菓子
・お宿の妖精の織物
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・世界樹の光を追う[0/5]
……………………………………………………………………………………
―朝
王国平原 街道
強化ソリ「」シャーッ
イリス「ウォーターポートにはあとどれくらいで着くの?」
ミスティ「地図を見る限りだと、今日の夕方には着きそうね……」
イリス「夕方かあ……! 海の見えるとこに行くのはすっごい久しぶりだから、ちょっと楽しみ……!」
ミスティ「私も海は久しぶりね……。ウォーターポートには行ったことないけれど、どんな街なのかしら……」
ローガン「ウォーターポートは王国の主要な玄関口の一つだ。大陸外の国との貿易の要でもあるゆえ、他国の文化や物品、人の出入りも多い。王国内でもかなり栄えた街の一つだと言えるだろう」
イリス「大陸外の文化や物品かあ……どんなものがあるんだろう……!」
妖精「うへぇ……王国の栄えた街だなんて、聞くだけでげっそりするよ……」
ローガン「まあ……ウォーターポートは人間以外の種の出入りもかなりあるはずだ。異種族に対する風当たりも他の王国の街よりは比較的穏当だろう」
妖精「でもその隣には機械工業都市があるんでしょ? 異種族を殺すための兵器を作ってるっていう」
ローガン「うむ……そちらの方については私もわからんが……特に用がなければ行く必要はないだろう」
ミスティ「そうね。私たちに必要なのはトコナツ島行きの船だもの……機械都市に用はないから大丈夫よ、妖精……」
イリス「そうだよ妖精さん……! 何かあったら私たちが守るから、安心してよ……!」
クロシュ「妖精さん……わたしの中に隠れてれば、大丈夫……」
妖精「守るのは私……と言いたいとこだけど、先走ってみんなに迷惑をかけた前科があるから何も言えない……。でも、ありがとね……」
↓1 ランダムイベント
01-05 ??
06-15 強敵
16-30 敵襲
31-40 食料調達(まずい)
41-50 食料調達(うまい)
51-60 発見(自由安価:物品)
61-70 発見(自由安価:スポット)
71-95 旅は道連れ
96-00 ??
赤いレッサースライムの群れ「」モニョモニョ
クロシュ「わ……」
妖精「あれは……レッサースライムの群れ? でもやけに赤いな……あんな種類いたっけ……?」
イリス「あはは、赤いのもかわいいねえ」
ミスティ「こうして遠くから眺める分にはかわいいものよね……」
ローガン「うむ……。ペットとして飼う者もいると――」
赤いレッサースライムの群れ「」フッ
クロシュ「!!?」
妖精「え――」
イリス「レッサースライムの群れが――」
ミスティ「消え――」
ローガン「!! 鋼よ!!」バッ
巨大な鉄板「」ガゴンッ
ドガガガガガガッ!!!!
イリス「うわわわ!!」
ミスティ「な、何が……」
ローガン「くっ……! だが間一髪……!」
「へえ、今のを防げるの?」ズズズ
イリス「れ、レッサースライムが集まって……」
ローガン「人型になっていく……!」
ミスティ「お前、は――」
クロシュ「――」
赤い髪の幼女「――ふうん。似た気配を感じたと思ったら、やっぱり」
クロシュ「……」
赤い髪の幼女「あたしを始末するために差し向けられたの? お前も哀れだね……」
クロシュ「……?」
イリス「あ、あなた……クロシュちゃんのこと知ってるの!?」
赤い髪の幼女「は? 人間の声とか聞きたくないんだけど」ズズ
バシュンッ
ミスティ「氷よ!!」
氷の壁「」ガガガガッ
イリス「あ――み、ミスティありが――」
ミスティ「まだよ!! こいつは――こいつは、話が通じる相手じゃない!!!」
赤い髪の幼女「……」
ミスティ「こいつは――こいつの声は!! 聞き間違うはずもない――!!!」
ミスティ「私の故郷を――パパとママを、返して!!!!」
――遭遇戦 血飛沫スライムのブラッド――
↓1コンマ
01-05 ??
06-30 劣勢
31-95 優勢
96-00 勝利
というわけでキリは悪いですが、コンマ判定優勢が出たところで本日はここまでです。次回は戦闘の途中から再開となります
突然始まった戦いですが、先ほどいただいたキャラクター案を見返していたところ、突発的にクロシュ一行を襲ってきそうなキャラクターがあまりいないことに気付きました……。いるにはいますが、今現在のクロシュちゃんたちが相手取るには厳しい強さの人ばかりだったため、今回は自動的に血飛沫スライムのブラッドさんの登場となったようです。ミスティさんは、無事に怨敵を討ち果たすことができるのでしょうか――
それでは本日はここまでです。次回もよろしくお願いいたします
ランダムイベントの??についてですが、コンマの低いほうはファンブル、高い方はクリティカルとなっております。ファンブルの??は大変な悪いことが起こり、クリティカルの??はとても良いことが起きるかと思われます
お尋ね者をギルドに引き渡せば報酬をもらえるのはもちろんその通りなのですが、敵対キャラクターを捕縛するのは討伐するよりも遥かに難しいため、よほどクロシュ側が有利な状況でない限りあまり推奨されません
なお大抵の賞金首については、討伐した場合でもその証明さえできれば報酬を受け取ることはできます
ミスティさんは……基本的にはクールでドライな女の子のはずなのですが、最近は確かに感情的になる場面が多いですね……
ちなみに得意属性と性格や人間性に相関関係はありません。火属性で冷徹冷酷な人とかもいると思います
ただ、属性によっては周囲の人々からの扱いなどが変わることもあるため、それが人格形成に影響することはあります(闇属性の人は虐待やいじめの対象になりやすいため心が歪みやすい等)
高い技量を持ったスライムは自身の分体を作り出して操ることができるようです。現時点のクロシュちゃんにはまだ使えませんが、これはスライム類の種族特性でもあるため、研鑽を積めばいつか使えるようになるかもしれません
フラナ氏は教師というわけではありませんが、イリスとミスティに稽古を付けてあげた時のように、子供たちや保護者、聖女などから請われれば教鞭を取ることもあると思います
なお魔法についても薬学についても、弟子を取るつもりは今のところないようです
ミスティ「氷刃よ――!」ギラッ
氷の刃「」ヒュンッ
ドスッ
ブラッド「痛っ――とでも言うと思った?」ニヤ
妖精「ミスティ! 戦慣れしたスライムに物理攻撃はほとんど効かないよ!!」
イリス「で、でもあれは氷属性も入ってるんじゃ――」
ブラッド「――」ズズ
ローガン「! 氷の刃を取り込んで――」
氷刃ブラッド「」タンッ
ミスティ「な、速――」
ガギンッ!!
盾クロシュ「ううっ……!!」ズザザッ
ミスティ「クロシュ……!」
氷刃ブラッド「んん? 同類かと思ったけど……お前、力の使い方が全然なってないじゃん。ただのはぐれスライム?」
盾クロシュ「……?」
氷刃ブラッド「まあどうでもいいか。人間に与するなら死んでいいよ」スッ
氷の刃「」シュビビビッ
盾クロシュ「あ、うっ、あっ……!」ズバババッ
妖精「クロシュ!!!!」パタパタ
イリス「やめろーっ!!!」カッ
火球「」ボウッ
氷刃ブラッド「うわっ!」ボンッ
ジュウウウウ……
ブラッド「いたいなあ……! 雑魚の分際で……!!」ギリッ
↓1コンマ
01-05 ??
06-30 劣勢
31-95 優勢
96-00 勝利
クロシュ「あ、う……」ドサッ
妖精「クロシュ! クロシュ!」
ローガン「攻め続けろ! クロシュくんを守れ!!」ババッ
複数の鉄板「」ガゴンガゴン
イリス「クロシュちゃん……! 今はローガンさんの言う通り、攻め続けなきゃ……!」ゴゴ
ミスティ(私の安易な攻撃のせいで、クロシュが――いいえ、今は後悔している時ではない)
ミスティ(成形した氷での攻撃がダメなら――冷気そのものを浴びせれば――!)
冷気「」キンッ
ブラッド「遅い!」シュビッ
イリス「そこ!」カッ
雷撃「」バチッ
ブラッド「ああああ!!!」バリバリ
ミスティ「今度こそ! 凍れ!!」キラッ
冷気「」キンッ
ブラッド「う、ぐ……この、この……!」カチン
ローガン「凍ってしまえば同化もできまい!! 容赦せんぞ!!」バッ
回転ノコギリ「」ギュオオオオオ!!
ブラッド「」ギャリギャリ
バリンッ…!!
ブラッドだったものの破片「」バシャッ…
ミスティ「はあ、はあ……!! た、倒せた……?」
ローガン「……うむ。再生する気配もない。倒せたと見て問題ないだろう……」
イリス「クロシュちゃ――」
ヒュンッ
↓1
01-05 全滅
06-15 イリス
16-25 ミスティ
26-35 ローガン
36-65 クロシュ
66-95 覚醒(一時的)
96-00 覚醒(完全)
ドスッ
ミスティ「――え?」
ドスッ
イリス「あ――」
ドスッ
ローガン「ばか……な……」
ドサッ ドサッ ドサッ
ズズズズ……
ブラッド「分体一つ潰した程度で勝った気になるなんて、人間って本当に愚鈍……」
ブラッド「……まだ息がある。刺しとこ、トドメ」スタスタ
クロシュ「……」ヨタヨタ
妖精「だ、だめだよクロシュ……。私たちじゃ……どうしようも……」オロオロ
ブラッド「なあに、まだいたのお前たち……。人間じゃないから見逃してやろうかと思ってたのに……」
クロシュ「……その人たちに……手を出さないで……」キッ
ブラッド「はあ……身も心も完全に飼いならされたペットスライムか。可哀想だから、ここで終わらせてあげる……」スッ
分体ブラッドA「」ズズ
分体ブラッドB「」ズズ
分体ブラッドC「」ズズ
妖精「あ、あ……」ジワ
クロシュ「……」
ブラッド「ばいばい」
分体ブラッドたち「」シャキン バッ
カッ!
分体盾クロシュ「」ガギンッ
分体剣士クロシュ「」ギンッ
分体魔女クロシュ「」ゴウッ
つむじ風「」ビュオオオッッ
分体ブラッドたち「!!」ズザザッ
クロシュ「……」キッ
ブラッド「!! お前……やっぱり……!!」
クロシュ「いなくなって……!! ここから……!!!」
分体盾クロシュ「」ザッ
分体剣士クロシュ「」シャキンッ
分体魔女クロシュ「」キラキラ
ブラッド「……その付け焼き刃であたしに勝つつもり? 舐めてるの?」
クロシュ「……」
ブラッド「……違うか。人間に飼いならされたお前は、もうそうする以外の選択肢がないってこと」
クロシュ「……」
ブラッド「はあ……いいよ、今回は見逃してあげる。人間に隷属してるとは言え、やっぱ同類を手にかけるのは気分良くないし」
クロシュ「……」
ブラッド「でも次に会った時にまだ人間のペットを続けてたら、容赦なく殺すから」
クロシュ「……」
ブラッド「じゃあね」トプン―
――戦闘終了――
◆
―街道沿い
イリス「――はっ!!!」ガバッ
ミスティ「イリス……!」
ローガン「イリスくん!」
妖精「良かった、気が付いた……」
イリス「あ、あれから……一体どうなったの?」
妖精「えっとね……」
*
イリス「あの赤い子が分身を作って襲ってきて、クロシュちゃんも分身で対抗して、追い払った!?」
妖精「うん……。私たちが最初に戦った相手も、実は分身の一体だったみたい……」
ローガン「……後で判明したことだが、あれはギルドに指定された特級危険生物――通称ブラッドという存在だったようだ……」
イリス「と、特級危険生物って……!」
ローガン「うむ……命があるのは奇跡かもしれん……」
ミスティ「……悔しいけれど……私たちの手に負える相手ではなかったみたい……」
イリス「ひ、ひええ……。そ、それで……クロシュちゃんは……?」
妖精「寝込んでる……。外傷はほとんど治ってるけど、使ったことのない能力を無理矢理使ったから、体にかなりの負担がかかっちゃったみたい……」
イリス「……そう、なんだ」
イリス(……悔しい。幼いクロシュちゃんに負担をかけて……私は結局何もできなかった……)
イリス(でも……きっとミスティの感じている悔しさや怒りは、私なんかとは比べ物にならないはず……)
イリス(ミスティの家族の仇……。私も、大切な人を喪っているけれど……それは、誰かに殺されたわけじゃない……)
イリス(だから、ミスティの気持ちに本当の意味で共感してあげることが、できない……)
イリス(それが……それも、とても悔しい……)
イリス(私は……私に、できることは……)
ミスティ(……復讐なんて考えず、安息の地を見つけて平穏に生きていこうと……半ば、諦めていたのに……)
ミスティ(どうして……こんな時に、出てくるのよ……。ようやく私の居場所を見つけられた……今に、なって……)
ミスティ(ようやく……ようやく、あいつのことを考えずにいられるように……なってきた、のに……)
ミスティ(許せない……。殺したい……。パパとママだけでなく、私の大切なパーティのみんなをも殺そうとした、あいつは……絶対に、許さない……)
ミスティ(でも……復讐に囚われたら……私は……)
ミスティ(きっと……このパーティには……もう……)
ローガン(……何という不甲斐なさだ。前衛の腕を買われてパーティ入りを果たしたというのに……)
ローガン(仲間を守れず、生き恥を晒し続けた甲斐もなく、無様な死体と成り果てかけた)
ローガン(どうせ死ぬなら誰かを守って死にたい――だと? 結局、家族もパーティも、誰一人として守れてなどいないではないか――)
ローガン(こんな無力で無能な中年に、守れるものなど――――……)
ローガン(……いかんな。一応は、私がこのパーティを守る盾なのだ。皆が不安にならぬよう、私だけは堂々としていなければ……)
ローガン(例え、その盾にヒビが入っているとしても……)
妖精(……みんな、塞ぎ込んでるね……)
妖精(……正直に言えば、私も塞ぎ込みたい。本当に、心底から絶望して涙が出たのは……一体、何年……何十年ぶりだろう……)
妖精(みんなが無事で……本当に、良かった……。でも……私、本当に役立たずだなあ……)
妖精(無駄に歳ばかり重ねてる癖に……あんな事態に何もできずに狼狽して、挙げ句赤ちゃんスライムのクロシュに守られる始末……)
妖精(はあ……。でもくよくよしてるわけにはいかないよね。私が一番歳上で、みんなを導かなきゃならないんだから)
妖精(ティセリアたちには、訃報なんて絶対に届けたくないもん)
◆
―夕方
強化ソリ「」シャーッ
スライムクロシュ「――…」モニョ
妖精「クロシュ……!」
イリス「クロシュちゃん!」
スライムクロシュ「?」モニョモニョ
妖精「うん……クロシュはあれからずっと寝てたんだよ」
イリス「えと……ありがとうね、クロシュちゃん。私たちを守ってくれて……」
ローガン「すまないな……本来は私が君を守らなければならなかったのに……」
ミスティ「ごめんなさい……今回はあなたに大きな負担をかけてしまったわね……」
半スライムクロシュ「あ、えと……いつもは、わたしがみんなに守ってもらってる、から……」モニョニョ
妖精「おあいこってことだね」
半スライムクロシュ「うん……」モニョ
イリス「……あ! 見て、みんな!」
ミスティ「え――?」
妖精「あ――」
ローガン「あれは――」
クロシュ「わあ……!」
水平線に沈む夕日「」
夕日にきらめく水面「」キラキラ
イリス「海だよ……!!」
ミスティ「海ね……」
ローガン「海だな……」
妖精「海だね」
クロシュ「海……!」
クロシュ(生まれて初めて見る海は、とてもきれいで、輝いていて……)
クロシュ(みんなと一緒に……生きて、これを見ることができて……良かった……)
クロシュ(…………フメイちゃんと、アリシラさんとも一緒に……これを、見られたら……)
◆
―夕方
港湾都市ウォーターポート
ワイワイ ガヤガヤ
露天商のおじさん「異国の装飾品はいかがかね〜」
行商妖精「綺麗な貝殻だよ〜。カニとかウニの殻もあるよ〜」
ターバンの褐色少女「芸術家御用達の画材ありま〜す! 港町に来た記念に一描きどうでしょう?」
観光エルフ「ああ、あれもこれも欲しいわ……。でも予算が……」
怪しい商人「へへへ、お姉さんほどの美人なら簡単な稼ぐ方法がありまっせ!」
クロシュ「うゆゅ……」グルグル
イリス「す、すごい……人が多すぎて目が回りそう……。クロシュちゃん、しっかりおてて繋いでようね」
クロシュ「うん……」
ミスティ「緑の国も賑わっていたけれど……同じ賑わいでも、ここはまた毛色が少し違うわね……」
ローガン「うむ……前にも言ったが、ここには大陸内外から様々な文化の人やモノが集まる。王国内では最も異文化に寛容な場所と言えるだろう」
妖精「そうみたいだね……。まさかこんなとこで商売をしてる妖精がいるなんて思わなかった……。仮にも王国なのにさ、ここ」
ミスティ「ふふ……良かったわね、妖精」
妖精「良かったのかなあ……」
◇
―港湾都市ウォーターポート
宿「旅の船着場」
宿の看板娘「お泊りは四名――五名様でよろしいですか?」ニコニコ
妖精「ねえ、私は妖精だから数に数えなくても良いんじゃない?」
宿の看板娘「そういうわけにはいきません! 他の街はともかく、ここウォーターポートでは人間以外の種族の方も等しくお客様ですから!」
妖精「お客様扱いも考えものだね……」
イリス「ま、まあいいじゃない妖精さん。路銀は足りてるわけだし、お客様として堂々とサービスを受けようよ」
妖精「なんか私がケチで面倒な客みたいに思われそうだし、そうしよっか」
ミスティ(もう既にケチで面倒な客と思われてる気がするわ……)
宿の看板娘「それでは部屋割りは――」ニコニコ
◇
―旅の船着き場 客室
イリス「おお〜! ここからでも夜の海が見えるよ!」
クロシュ「わあ……」
ミスティ「良い部屋ね……。異国情緒を感じられるわ……」
妖精「まあ悪くはないかな……。意外と妖精用に調整された気配りも感じられるし……」
妖精「さて、とりあえずトコナツ島行きの船探しは明日にして、今日はいろいろと疲れもあるしゆっくり休もっか」
イリス「そだね……。全員死にかけてるし、今日は無理しない方が良いよ本当に」
……………………………………………………………………………………
―港湾都市ウォーターポート 滞在初日
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:エルフのレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:精霊のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽×2
・雨乞い傘
・フメイの服の切れ端
・精霊の印
・精霊樹の実のジャム
・鋼の回転ノコギリ
・精霊樹の鉢植え
・フメイとアリシラの人形
・お宿の焼き菓子
・お宿の妖精の織物
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・世界樹の光を追う[0/5]
・トコナツ火山島行きの船を探す
◯仲間の目標
・???(ミスティ)
……………………………………………………………………………………
□港湾都市ウォーターポート 主要施設
大通り:旅の船着場、武具店、雑貨店、魔法店、鮮魚店、食品店、食事処、酒場、浴場、冒険者ギルド、他
裏通り:占い屋、怪しい露天商、暗黒商店、奴隷商店、他
沿岸部:港、造船所、魚河岸、灯台、他
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ウォーターポート滞在初日の夜です
↓1〜3 自由安価 何をする?(疲れているため、宿から遠くへは行けません)
安価が揃ったところで本日はここまでとなります。次回は入浴編、お食事編、お手紙編です
ついに港湾都市ウォーターポートに到着です。目的地への経由地ですが、クロシュちゃんたちはすんなりトコナツ島へ向かうことができるのでしょうか
ブラッドは実際とても殺意が高いです。彼女は敵対キャラクターの中でも特に対話が通じにくく、人間だけのパーティであれば問答無用で皆殺しにしようとします。今回はクロシュに興味を持ったため、すんでのところで見逃されることとなりました
今回はファンブルの影響で彼女の本体が来てしまうという最悪の事態になってしまいましたが、分体一体程度であればクロシュたちのパーティなら十分に勝てるはずの相手でした(実際勝っています)。しかし幸い犠牲者は出ず、クロシュちゃんも自身の能力の発展性を自ら学ぶことができたため、最終的には悪くない結果となったと言えるかもしれません
ただ、ミスティさんのメンタルが少々不安定になってしまっているようです。もし余裕があれば気にかけてあげた方が良いかもしれません
それでは本日もありがとうございました。次回も土日となるかと思います。よろしくお願いいたします
現状のパーティでも平均的な冒険者パーティよりは強いのですが、強敵と相対するには実際少し力不足かもしれません。しかし皆まだまだ伸び代はたくさんあり、冒険の旅もまだ始まったばかりなので、彼らの成長を長い目で見ていただければ幸いです
ブラッドとクロシュは初対面のようです。しかし口ぶりからすると、ブラッドはクロシュの出自かあるいは種族について何か知っているのかもしれません。今のところクロシュの出自についての真相は闇に包まれています
クロシュは取り込んだものによって様々な姿に変化します。盾を取り込めば盾騎士に、剣を取り込めば剣士に、杖を取り込めば魔女っ子になるように、弓矢を持てばそれに応じた姿になるでしょう。テディベアは>>1にも予想が付きませんが……
人間の強さが各人によって様々なように、スライムの強さも個体によって様々です。今回登場したブラッドはスライムの中でも上澄みの部類に入る個体であり、平均的なスライムはあそこまで強くはありません
クロシュもどちらかと言えば弱い方の個体でしたが、ここ最近は実力を伸ばしつつあるようです。今後の成長に期待しましょう
―夜
ウォーターポート 公衆浴場
ワイワイ キャッキャ
カポーン…
イリス「大浴場は良いねやっぱり!」
ミスティ「イリスの作る即席風呂も良いと思うわ……。人目を気にする必要がないし……」
妖精「私にとってはどっちも大浴場みたいなもんだし、人目に付かないイリス風呂の方が良いなあ」
イリス「そ、そうなんだ……。確かに、ここじゃクロシュちゃんも安心して溶けられないもんね……」
半スライムクロシュ「んゅ……?」デロ…
イリス「わ、わわわ! く、クロシュちゃん!」
ミスティ「溶けてるわ……!」
半スライムクロシュ「!!」
キュッ
クロシュ「ん……」
妖精「一応ここは王国だから……なるべくスライムの姿を晒しちゃだめだよ、クロシュ」
クロシュ「う、うん……」
↓1コンマ
01-70 良い湯でした
71-00 湯は道連れ
旅人の気配があります
↓1コンマ
01-19 帽子をかぶった緑髪の少女
20-38 黒髪の無愛想な青年
39-57 赤髪ロングポニテの冒険者女性
58-76 銀髪ウェーブセミロングお嬢様
77-95 ボサボサ黒髪の若い傭兵
96-98 フメイ&アリシラ
99-00 セイン
カポーン…
メルル「……ん?」
妖精「……んん?」
メルル「あんたたち、いつぞや会ったソリの旅芸人!」
ミスティ「誰が旅芸人よ……」
イリス「あなたは……確かメルルちゃん、だよね?」
メルル「そーそー! 久しぶりだねェ」
妖精(あの時は王国の間者かと思ったけれど、結局何もなかったし違うっぽいね)
イリス(そうだね……。ただの旅人みたい)
ミスティ(疑って悪いことしたわね……)
メルル「ね、あの後魔族自治区行ったんでしょ? もしかして魔族大革命に立ち会っちゃったんじゃないの……!?」
クロシュ「え、えと……」
妖精「あー……まあそうだね。すごかったよ、うん」
メルル「ワオ! あたしも付いてけば良かったなァ〜歴史的瞬間に立ち会いたかった……」
イリス「……そんなに、良いものでもないよ」
メルル「そーなの? でもさァ、アレでしょ? ダークヒーローイリスっていう謎の人間が、バッタバッタと悪者騎士をなぎ倒して愛と平和を掴み取ったんでしょ?」
イリス(うへぇ……そういうことになってるのかあ……)
妖精「ダークヒーローイリスが革命後の魔族国の在り方について大きな役割を果たしたのは間違いないけれど……。本当の彼女は、心優しい普通の女の子だったよ。新聞で書かれるようなセンセーショナルな人物では決してない」
メルル「ええ!? もしかして会ったことあるの!?」
妖精「……まあ、うん」
メルル「そうなんだ! でも普通の女の子かァ……ちょっと親近感湧いちゃうなァ」
イリス(妖精さん……)
*
―公衆浴場 待合室
ワイワイ キャッキャ
ローガン(男風呂を出たら、何やら知らぬ顔の少女がパーティに混ざっている……)
メルル「それで、ソリ芸人の皆さんは何をしにウォーターポートへ?」
ミスティ「だからソリ芸人ではないわ……。ちょっとトコナツ島に行きたくてね……」
メルル「あ〜、ちょっと間が悪かったかもねェ。今は一部の漁船とか交易船を除いて、船はほとんど出てないんだよ」
イリス「えっそうなの!? どうして!?」
メルル「なんか最近海賊がめっちゃ出るんだって! ガチガチの武装船でもないと身ぐるみ剥がされて海の藻屑だから、どこの船も欠航ってわけ!」
妖精「何それ……! 王国の無能騎士団は何してんの!?」
メルル「自分で答え言ってるじゃん! 無能だから検挙できてないんだよ!」
妖精「ええ……」
メルル「そーゆーわけだから、今は海に出らんないよ。トコナツに行くならここじゃない別の海路を使うか、海賊が検挙されるのを大人しく待つかだね」
ミスティ「……さっき、一部の漁船とか交易船と言ったわね。ガチガチの武装船とも……。そういう船には乗れないの……?」
メルル「無理無理。公の武装船は一介の旅人なんか乗せてくれないし、闇船は裏にマフィアとかが付いてるから関わっちゃだめ」
イリス「ま、マフィア……?」
メルル「実際のところ海賊ってのもそのマフィア関係だと思うんだよね。なぜかマフィアの闇船は海賊に襲われないみたいだしさァ」
ミスティ「それが本当なら酷いマッチポンプね……」
メルル「ほんっとやんなるよねェ。悪い奴らってさァ」
☆メルル・マインドストーンと再会しました
☆欠航の情報を入手しました
◆
―夜
食事処「ポートレストラン」
ワイワイ ガヤガヤ
クロシュ「わあ……」
イリス「おしゃれなレストラン……!」
メルル「良い雰囲気でしょ〜。料理も美味しいんだよここ〜」
ミスティ「当たり前のように混ざってるわね、あなた……」
メルル「そんなつれないこと言わないでよォ〜、旅は道連れ世は情けって言うでしょ?」
妖精「まあ……情報提供してくれたわけだしね」
メルル「そうとも! 奢ってくれても構わんよ?」
イリス「え、ええと……私は情報のお礼に奢ってあげても良いけれど……」チラッ
妖精「私もいいよ」
ミスティ「私も。メルルの情報がなければ何も知らず闇船のチケットを掴まされてた可能性もあるし」
クロシュ「うん……わたしも……」
ローガン「う、うむ……私も構わん……」
メルル「おじさん! おじさんって誰!?」
ローガン「だ、誰とは……」
メルル「前はいなかったよね!? どうして女の子ばっかりのソリパーティに混ざってるの!? ハーレムなの!?」
ローガン「ハーレムではない……! これにはいろいろ経緯があってだな……」
*
メルル「へェ〜若い女の子たちに求められるがままに応じちゃったんだァ……」
ローガン「誤解を招くような言い方はよしてくれたまえ……」
メルル「にゃは、冗談だって! でも凄いねェ、あたしがおじさんの立場だったら煩悩爆発で追放待ったなしだよ多分!」
ローガン「私が愛する女性は妻だけだ。違えることはない」
メルル「カタブツだ! 今どき珍しいイケオジじゃん……!」
イリス「そうだよ! ローガンさんはイケオジなんだよ! ちょっと髪がボサボサでヒゲも適当だけど!」
妖精「素材は良いんだから、身なりを整えれば実際かなりハンサムだと思うんだけどねえ」
ミスティ「そう言われるとちょっと見てみたいわね……身なりを整えたローガンさん……」
ローガン「……まあ、気が向いたらな」
↓1〜2 食材を1〜2つ選択
肉類:トリ肉、ケモノ肉、オーク肉、触手肉
野菜:セイントレア草、王国キャベツ、ユーシリアカボチャ、海藻類、テラヌスアロエ(欠品中)、森ニンジン(欠品中)
穀物:ウルティ米、ヤマイモ、ふっくらパン、港湾パスタ、甘もろこし、ナッツ
魚介:カニ、海ザリガニ、異世エビ、アークサーモン、イクラ、ホタテ、ウニ、海竜(欠品中)
果実:リンゴ、モモ、トウゲンライチ(欠品中)、森林木苺(欠品中)、精霊樹の実(欠品中)、トコナツバナナ(欠品中)、トコナツドリアン(欠品中)、トコナツココナッツ(欠品中)
卵乳:トリの卵、ミルク、チーズ、バター、エルフ印の乳製品(欠品中)
特殊:スライムゼラチン、アルラウネオイル(欠品中)、フェアリーシロップ(欠品中)、きび砂糖(欠品中)、胡椒(欠品中)
※表にない調味料などが使われることもあります
イリス「……欠品中多いね。欠航の影響……?」
メルル「それもあると思うけど、何日か前に夜空を光が流れた日があったでしょ? あの光が落ちたとこはなんか大変なことになってんだって。食材の取引どころじゃないんじゃない?」
ミスティ「トコナツ島原産っぽい果物類も見事に欠品してるわね……」
妖精「まあトコナツの果物は現地に行けば食べられるだろうし、今はあるものを頼もうよ」
ローガン「うむ。であれば、せっかくだしこの港湾都市ならではのものを食べてみたいところだが――」
メルル「それだったらやっぱり魚介とパスタだね! 漁港ならではの新鮮な海の幸と、ここの職人が丹念に伸ばしたパスタでしょ!」
クロシュ「ぱすた……?」
イリス「えっと、パスタっていうのはね……小麦粉を棒状に伸ばしたものを――」
クロシュ「???」
ミスティ「口で説明するより実物を見てもらった方が早いと思うわ……」
◇
サーモンとイクラのクリームパスタ「」ポン
クロシュ「わあ……!」キラキラ
ミスティ「これは……美味しそうだわ……!」
メルル「ささ、どうぞお嬢様方……」
妖精「奢られる立場でしょあなた……」
*
クロシュ「〜〜♪」モグモグ
ローガン「これは……サーモンの旨味とイクラの塩気がパスタによく合っている……! そしてそれらを優しく包み込むクリーミーな味わい……!」モグモグ
ミスティ「……美味しいわ。メルル、センス良いわね……」モグモグ
イリス「クリームを絡めるとこんなにもパスタがまろやかになるの……!? メモを取っておかなきゃ……!」ガサゴソ
妖精「……へえ。これ、本当に美味しい……。パスタ、嫌いじゃないかも……」
メルル「フッフッフ、凄いでしょ? これが港町の味ってわけ……!」
イリス「ねえ、このアークサーモンって普通のサーモンとは何が違うの?」
ミスティ「それは私もちょっと気になっていたわ……」
メルル「アークサーモンっていうのは、その名の通りアークなサーモン――つまりでっかいサーモンのこと!」
妖精「そ、そのまんますぎる……」
☆サーモンとイクラのクリームパスタを食べて元気になりました
◆
―夜
旅の船着場 客室
スライムクロシュ「……」zzz
カキカキ…
イリス「……」カキカキ
ミスティ「……フラナ先生へのお手紙?」
イリス「うん。聖女さんにも。ウォーターポートに着いたことを報告するの」
妖精「マメだねえ」
イリス「そ、そうかな? 緑の国のみんなにも出したいんだけど、流石に鎖国中だし届けられないよね」
ミスティ「…………」
妖精「ああ、緑の国なら手紙より速くて簡単な方法があるよ」
イリス「え?」
窓「」ガラッ
妖精「お〜いそこの風の精霊」
風の精霊『?』ヒュオ
妖精「緑の国のティセリアに、妖精一行が無事港町に着いたって伝えてくれる?」
風の精霊『』コク
イリス「そ、そんな裏技が……!」
妖精「他に何か伝えたいこととかある?」
イリス「あ、えと! そ、それじゃあ私たちは元気だからそちらもお元気でって……!」
妖精「ふふ、わかった。ミスティは?」
ミスティ「……」
↓1
01-05 ごめんね、と……あの子に……
06-35 私も……どうかお元気で、と……
36-65 何を言えば……良いのかしら……
66-95 私……どうすれば……
96-00 ……必ず、帰るから。心配しないでと、あの子に……
ミスティ「私も……どうかお元気で、と……」
妖精「イリスとおんなじ?」
ミスティ「ええ……。元気でいてくれれば……何よりよ……」
イリス「うんうん、そうだよね。ティセリアさんたちも、あの森妖精の子も……みんなが元気でいてくれたら、それが一番だよ」
ミスティ「……ええ」
妖精「……わかった。風の精霊、お願いして良い?」
風の精霊『!』ヒュイッ
ヒュオオッ
妖精「……行ったよ。すぐに届くと思う」
イリス「うん! でも良いなあ……私も精霊とお話できるようになりたい……」
ミスティ「……ふふ。なれるわよ……」
イリス「えへへ、そうかな?」
ミスティ「ええ……イリスなら、きっと……」
妖精「……」
☆魔族国と緑の国へ港湾都市到着の報を出しました
◆
―港湾都市ウォーターポート 滞在2日目
◆パーティメンバー
◇クロシュ 武:鉄の小盾 防:旅人の服
◇妖精 武:なし 防:エルフのレオタード
◇イリス 武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:精霊のローブ
◇ローガン 武:鋼の剣 防:鎖帷子
◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽×2
・雨乞い傘
・フメイの服の切れ端
・精霊の印
・精霊樹の実のジャム
・鋼の回転ノコギリ
・精霊樹の鉢植え
・フメイとアリシラの人形
・お宿の焼き菓子
・お宿の妖精の織物
◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・世界樹の光を追う[0/5]
・トコナツ火山島行きの船を探す
◯仲間の目標
・???(ミスティ)
……………………………………………………………………………………
□港湾都市ウォーターポート 主要施設
大通り:旅の船着場、武具店、雑貨店、魔法店、鮮魚店、食品店、食事処、酒場、浴場、冒険者ギルド、他
裏通り:占い屋、怪しい露天商、暗黒商店、奴隷商店、他
沿岸部:港、造船所、魚河岸、灯台、他
隣接地:機械工業都市テンペスター
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―朝
旅の船着場 客室
チュンチュン
イリス「トコナツ島行きの船が今は出てないわけだけど……ど、どうしよっか?」
妖精「あー……どうしようか……」
ミスティ「……海賊ってやつらを滅ぼせば良いんじゃないかしら?」
イリス「えっ!?」ギョッ
妖精「……」
ミスティ「そいつらが私たちのみならず皆を困らせる不届き者なわけでしょう。だったら、そんな奴らこそ海の藻屑にしてしまえば良いわ……」
ローガン「落ち着けミスティくん……! 王国の騎士団が未だに検挙できていない手練れの海賊団だぞ……!」
イリス「そ、そうだよミスティ! それにもし戦うにしても……問答無用で海の藻屑にしちゃうのは……だめだよ!」
ミスティ「……そうね。ごめんなさい、少し寝ぼけているのかもしれないわ……。顔、洗ってくる……」フラフラ
クロシュ「ミスティさん……」
イリス「ミスティ……やっぱり……昨日のことで……」
ウォーターポート滞在2日目です
↓1〜3 自由安価 何をする?
というわけで本日はここまでです。次回は冒険者ギルドで傭兵またはパーティメンバー探し編となります
旅は道連れということで、メルルさんと親交を深めることができました。正式なパーティメンバーにならずとも、親交を深めたキャラクターは一時的にパーティ入りしたり助っ人として現れたりすることがあるかもしれません。パーティ外の人との交流は赤ちゃんスライムであるクロシュにとっても良い刺激となることでしょう
また、今回のようなランダムイベントだけでなく、自由安価行動でパーティ外の人物と交流することも可能です(今回の傭兵探しや仲間探しも近い結果になるかもしれません)。旅は道連れ世は情け、クロシュちゃんにとって良き出会いがあることをお祈りいたします
それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
また、次回は次スレとなります。このスレの残りは質問や雑談やその他何でもご自由にお使いくださいませ
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