しずく「あああっ!!!!」 (37)

部室

しずく「あれ わたしが1番なんて珍しい」

しずく「これは普段とは違う何かが起こりそうな予感…!!!」

しずく「なんて」

しずく「ふう」

しずく「とりあえず皆さんが来るまでお茶でも飲んでよう」

カチャカチャ

しずく「えっと、わたしのマグカップは…」カチャカチャ

ドンッ

しずく「あっ…!」

ガチャアアアアアンッ!!!!!!!

しずく「侑先輩が大事にしてる、歩夢さんとのお揃いのマグカップを割ってしまいました!」

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https://i.imgur.com/kVDPR8D.jpg

しずく「あ…ああ……」

しずく「ど、どうしよう……」

しずく「こ、このマグカップ……侑先輩のだ…」

しずく「歩夢さんのは花柄の色がピンクだったはず…黒の花は侑先輩だ……」

しずく「ほ、ほんとにどうしよう……!」

しずく「お、お揃いなんだって、2人とも嬉しそうに話してたのはまだ1週間前のこと……」

しずく「まだ部室で使い始めて1週間のマグカップを…わ、わたしが……」

しずく「ああああああああっ!!!!??!」

しずく「どうしようどうしようどうしよう!!!」

ガチャッ

しずく「!?」ビクッ

侑「おはよー あれ、しずくちゃんだけ?」

しずく「」

しずく「ゆ、ゆゆ…侑先輩……」

侑「? どうしたの?」

しずく「あう……」

侑「具合悪いの?!大丈夫!?」

しずく「ち、違うんです…」

侑「え?」

しずく「ご、ごめんなさい……」

侑「え?なにが?」

しずく「侑先輩のマグカップ…落としちゃって…割っちゃって……わざとじゃないんです…本当にごめんなさい……」グスッ

侑「…」

しずく「うう…」

侑「…怪我はない?」

しずく「………え…?」

しずく「け、怪我はないですけど……」

侑「よかったぁ ライブも近いのに怪我したら大変だからねえ」

しずく「ゆ、侑先輩…?」

侑「どうかした?」

しずく「その…お、怒らないんですか……?」

侑「どうして?」

しずく「だ、だって…!わたしは侑先輩が大切にしてた…歩夢さんとのお揃いのマグカップを割っちゃったんですよ…っ!?」

侑「マグカップくらいで怒らないよ〜」

しずく「そんな…」

侑「別に隠そうとしてたわけでもなく、正直に言ってくれたんだし 誰だってマグカップとかお皿割っちゃった経験あるもんね」

しずく「侑先輩……っ…」

侑「ほら、マグカップはわたしが片しておくから、しずくちゃんは顔洗ってきなよ!」

しずく「で、ですが…」

侑「大丈夫大丈夫!」

しずく「は、はい…」

スタスタ

しずく「…」

しずく(侑先輩…本当に素敵な人だ…)

しずく(マグカップを割っちゃったわたしの心配をしてくれるなんて…)

しずく(逆にその優しさが辛いよ…)

しずく(…今度侑先輩のために何か日常で使える物を買って、改めて謝ろう…)

ジャバジャバ

しずく「…ふう」

しずく「…」

しずく「部室戻ろっと」スタスタ

しずく「…」

しずく(部室前に戻ってきたはいいけど、少し気まずいや…)

しずく(ちゃんと侑先輩の顔見れるかな……)

…っ……

しずく(…部室から何か聞こえる)ソッ

カチャッ

……ひぐっ…

しずく「………!?」

…ごめんね…っ…歩夢…

カチャカチャッ

しずく「」

部室から聞こえてきたのは、粉々になったマグカップを片付ける音と

侑先輩の泣く声だった

しずく(わたしは、かすみさんと璃奈さんが部室に来るまでずっと、部室の前で放心状態で立っていたらしい)

しずく(もう部室から泣く声は聞こえてこなかった)

しずく(わたしは罪悪感に苛まれながらも)

しずく(大丈夫だって言ってくれた侑先輩の)

しずく(…その言葉だけを頼りに、再び部室へと…入ることは出来なかった)

しずく「ごめん…もう少しだけここにいる…」

かすみさんと璃奈さんは、恐らく相当深刻な顔をしていたわたしから何かを察してくれて

何も言わずに部室へと入っていった

────────

かすみ「そういえば、歩夢先輩から聞きましたよ侑先輩〜!!」

侑「なにを?」

かすみ「先週からお2人が使い始めたマグカップって、小学校卒業の頃からずっと使ってるらしいじゃないですか〜!!」

しずく(…え?)

璃奈「そうなの? 璃奈ちゃんボード「びっくり」」

侑「ま、まあね〜…」

しずく(そんな…)

かすみ「でも、どうしてこの前買ったばっかりだ〜なんて言ったんですか?」

璃奈「確かに」

侑「ほら、昔から一緒に使ってるなんて言ったら、みんな気を使っちゃうでしょ?」

かすみ「そんなことまで考えてくれてたんですか!?」

侑「うん」

かすみ「さっすが侑先輩〜♡」ダキッ

侑「おっとっと」

璃奈「その優しさに痺れるし憧れる」

侑「あれ、ジョジョ?璃奈ちゃんわかってるね〜」

璃奈「侑さん、好き」

しずく「…っ……」

璃奈「でも、本当によかったの?」

侑「なにが?」

璃奈「あのマグカップって、それだけ侑さんと歩夢さんの思い出が詰まってるってことでしょ?」

かすみ「言われてみればそうですね 家とかで使ってた方がよくないですか?」

侑「いや、ね 中学生の頃とか、ニジガク入ってすぐの時はそうしてたんだけど」

侑「同好会で活動始めてから、部室でマグカップ使う機会増えたでしょ?」

かすみ「そうですね 毎日お茶飲んでますし」

侑「逆に、家で使う機会が減っちゃったんだよね」

璃奈「だから部室で使うようにしたんだ」

侑「そうそう マグカップも沢山使ってもらえる方が嬉しいと思うし!」

かすみ「さすが侑先輩と歩夢先輩ですね」

しずく「…」

かすみ「あれ、でも今使ってるマグカップって、お揃いのマグカップじゃなくないです?」

侑「あー、気付いちゃったか〜」

しずく「っ…!」

侑「実はね」

しずく(あはは…そんな大事なマグカップをわたしが割ったなんて聞いたら、かすみさんと璃奈さんはどう思うのかな…)

しずく(失望とか…されるのかな…)

侑「さっきお茶飲もうとして割っちゃったんだよね〜」

しずく「え…」

かすみ「えーー??!!」

璃奈「怪我しなかった?」

侑「怪我は大丈夫だよ ただ、マグカップはこの通り」スッ

かすみ「うわぁ…粉々だ…」

璃奈「さすがにこれは直しようがない」

侑「ね〜 わたしも、やっちゃった〜!って感じでさ〜」

しずく(違う違う違う…っ!マグカップを割ったのはわたしなのに…っ!!)

かすみ「どうして割っちゃったんですか!?」

侑「それがさ〜 マグカップを取って1度洗ったんだよね それで水気を飛ばそうとブンブンしてたら滑って飛んでっちゃって」テヘ

しずく(違う…)

かすみ「侑先輩も結構ドジなんですね〜」

しずく(違う……)

璃奈「人がいなくてよかったかもしれない」

しずく(違う……っ!!)

侑「いやぁ、面目無い」

しずく(違うッ!!!!!侑先輩は何も悪くない…!!!!!)

しずく(そう…侑先輩は悪くない)

しずく(悪いのは全部わたし…)

しずく(それなのに、侑先輩がドジだとか、割っちゃった時に人がいなくてよかったとか言われてる)

しずく(それは違う…割ったのはわたし)

しずく(侑先輩は何も悪くない)

しずく(侑先輩を悪く言わないで)

しずく(そう言いに行かなきゃいけないはずのに…)

しずく(手と足が震えて…動かなくて…)

しずく(何より、わたしが悪く言われるのが怖くて……)

しずく(部室に入ることが出来ないよ…っ)

しずく(わたしは…桜坂しずくは最低だ…っ!)

しずく(こんな時でも、侑先輩のことより自分のことを考えてる…!)

しずく(侑先輩が庇ってくれてるなら…わざわざわたしが割ったって言わなくても…)

しずく(そんなことを考えてる…っ!!!)

しずく(わたしは…わたしは…本当に最低だ……)ポロポロ

かすみ「…歩夢先輩には話したんですか?」

侑「ううん、まだだよ 部室に来たら謝ろうと思ってる」

しずく(違う…謝らなきゃいけないのはわたしだ……)

璃奈「大変そう」

かすみ「ね 歩夢先輩のことだもん すごい怒ると思う」

侑「やっぱり2人もそう思う?」

かすみ「はい」

侑「実はね、部室でマグカップ使うの、歩夢はあまり乗り気ではなかったんだよね」

璃奈「そうなの?」

侑「うん 歩夢は2人だけの思い出にしたいってずっと言ってたから」

かすみ「歩夢先輩らしいですね」

侑「あと、例えば同好会の誰かが割っちゃったとしたら、怒りたくても怒れなくてどうすればいいのって」

しずく(っ……)

かすみ「…歩夢先輩には話したんですか?」

侑「ううん、まだだよ 部室に来たら謝ろうと思ってる」

しずく(違う…謝らなきゃいけないのはわたしだ……)

璃奈「大変そう」

かすみ「ね 歩夢先輩のことだもん すごい怒ると思う」

侑「やっぱり2人もそう思う?」

かすみ「はい」

侑「実はね、部室でマグカップ使うの、歩夢はあまり乗り気ではなかったんだよね」

璃奈「そうなの?」

侑「うん 歩夢は2人だけの思い出にしたいってずっと言ってたから」

かすみ「歩夢先輩らしいですね」

侑「あと、例えば同好会の誰かが割っちゃったとしたら、怒りたくても怒れなくてどうすればいいのって」

しずく(っ……)

璃奈「それも優しい歩夢さんらしい」

かすみ「うん でも、今回は割っちゃったのが侑先輩だったので、良くはないけど良かったんですかね」

侑「そうかもねぇ」

しずく(…違うッ!!!!!)

かすみ「喧嘩とかしないでくださいね…?」

璃奈「うん 辛い」

侑「大丈夫大丈夫 わざと割ったわけじゃないってことをちゃんと説明すれば、歩夢も許してくれると思うから」

かすみ「そうだといいんですけど…」

しずく(違う!!!わたしが歩夢さんに謝らなきゃ!!!!!!)

歩夢「しずくちゃん?」

しずく「…っ!?あ、歩夢さん?!」

歩夢「どうしたの?部室の前でぼーっとして」

しずく「あ、いや、その…」

しずく(言わなきゃ…言わなきゃ…っ!!)

歩夢「…もしかして具合悪いの?」

しずく「…え?」

歩夢「顔真っ青だよ?」

しずく「あ、その…」

しずく(言わないと…謝らないと…!!)

しずく「……さ、寒くて!」

歩夢「確かに今日寒いよねぇ」

しずく「はい…」

しずく(違う…!こんなことを言ってる場合じゃないのに…!!)

しずく「…な、なので、温かい飲み物を買いに行こうとしてて…」

歩夢「そうだったんだ!」

しずく「はい…」

しずく(マグカップを割っちゃったことをちゃんと言わなきゃいけないのに…怖くて言えないよ……っ…)

歩夢「じゃあ早く帰ってきてね?」

しずく「…え?」

歩夢「実はね、クッキー焼いてきたんだぁ」

しずく「く、クッキーですか…?」

歩夢「うん!今日さ、3年生は進路指導で、せつ菜ちゃんは生徒会の仕事、愛ちゃんは日直でそれぞれ練習遅れるから、練習の開始時間がいつもより遅いでしょ?」

しずく「そうですね…」

歩夢「だから、みんなが集まるまで少しお茶とか出来ないかな〜って家でいっぱい焼いてきたの!」

しずく「そ、そうだったんですか…」

歩夢「だからしずくちゃんも早く帰ってきてね!今日のは自信作だからしずくちゃんにも早く食べてほしいから♪」

しずく「歩夢さん…」

しずく(侑先輩も歩夢先輩も、どうしてこんなに優しいんだろう…)

しずく(そして、そんな優しい人たちを傷付けることをしてしまったわたしは…っ)

歩夢「じゃあわたしは先に部室に入ってるね?」

しずく「あっ…」

しずく(だ、だめ…!このまま歩夢さんを部室に入れたら、侑先輩は自分がマグカップを割ったって言う…)

しずく(そんなのはだめだよ…!割ったのはわたしだって…今言わないと…)プルプル

しずく「は、はい!わたしは自販機に行ってきますね!」

歩夢「うん!じゃあまた後でね〜」ガララッ

バタンッ

しずく「…」

しずく(…わたしは最低だ…っ)

歩夢「おはよ〜」

侑「あ、歩夢!?」

かすみ「お、おはようございます!」

璃奈「お、おはよう」

歩夢「? なんでみんな挙動不審なの?」

かすみ「べ、別にそんなことないですけど!」

璃奈「うんうん」

歩夢「そう?」

かすみ「はい!」

歩夢「ならいいんだけど…それより、今日クッキー作ってきたんだ!」

かすみ「クッキー?」

歩夢「今日の練習、始まる時間がいつもより遅いからお茶しよっかな〜って」

侑「…」ギクッ

璃奈「そ、それは楽しみ」

かすみ「そうですね!」

歩夢「あとね、今日ミルクティーのパック持ってきたんだ」

かすみ「ミルクティー?」

歩夢「クッキーに合うかなって思って!だからみんなの分もわたしがいれてあげるね♪」

璃奈「…」

歩夢「えっと、わたしのマグカップがこれで、かすみちゃんと璃奈ちゃんのがこれで」カチャカチャ

歩夢「…あれ?侑ちゃんのマグカップは?」

侑「…」

しずく(っ…)

歩夢「もしかして今使ってる?」

侑「…あ、あのね歩夢!」

歩夢「どうしたの?」

侑「…」ガサガサ

ガチャ

歩夢「…え」

侑「ごめん歩夢…マグカップ、割っちゃった…」

歩夢「……」

しずく(違う…割ったのはわたし…早く言わなきゃ…取り返しのつかないことに…)

しずく(なのに…足が震えて動かない…)プルプル

侑「わ、わざとじゃなかったんだよ!」

歩夢「…うん 侑ちゃんがわざとするようには思えないから…」

侑「本当にごめん」

歩夢「うん…」

侑「歩夢…」

侑(わかってくれたのかな…)

歩夢「そっか…思い出、割れちゃったんだ…」

侑「あ、歩夢…?」

歩夢「それじゃあもう…このマグカップもいらないよね…」ギュ

侑「!」

かすみ「あ、歩夢先輩!」バッ

歩夢「…」スッ

かすみ「だめ…っ!!」ガシッ

歩夢「離して…!」

かすみ「こんなこと間違ってますよ!!」ググッ

歩夢「かすみちゃんに関係ないでしょ!?これはわたしと侑ちゃん2人の問題なの!!」

かすみ「あっ…そ、それはそうですけど……」

歩夢「離して」

かすみ「っ……」グスッ

侑「ちょっと歩夢!そんな言い方はないじゃん!!」

歩夢「なに?!侑ちゃんはわたしを責めるの!?」

侑「責めるも何も、今のは絶対に歩夢が間違ってるよ!!」

歩夢「っ…」

侑「かすみちゃんに謝って」キッ

歩夢「……マグカップ割ったくせに」

侑「!」

歩夢「大事な…っ……わたしたちのマグカップを割ったくせ…!!!」

侑「それはちゃんと謝ったじゃん!!」

歩夢「謝って済ませられるほどわたしにとって軽い思い出じゃないの!!!」

侑「っ…」

歩夢「…ねえ、覚えてる?このマグカップを買った時のこと…」

侑「…」

歩夢「中学生になったら、2人で夜中までお勉強会とかするのかなって…」

歩夢「そしたら、温かい飲み物がほしくなるねって…それで…2人で買ったお揃いのマグカップ…」

侑「…そうだね」

しずく()ダラダラ

歩夢「テスト前に必死に勉強した思い出…受験勉強をお互い励ましあって突き抜けた思い出…」

歩夢「2人で部屋でお菓子を食べながら楽しくおしゃべりした思い出…」

歩夢「そんな思い出が、このマグカップにはたくさん詰まってるんだよ…?」グスッ

侑「歩夢…っ」

しずく()ダラダラダラダラ

歩夢「だからわたしは部室に持って行きたくなかったんだよ!」

侑「それは…」

歩夢「家で使ってて割っちゃいそうになったことあった!?なかったよね!?」

歩夢「なのに、1週間だよ!?部室に持ってきて1週間で侑ちゃんは割っちゃったんだよ!?」

しずく(違う…割ったのは…割ったのは……)

侑「だからわざとじゃないって…」

歩夢「わざとじゃなくても!!マグカップは割れちゃったんだよ!!!?」

侑「っ…」

歩夢「粉々になっちゃったんだよ……」

侑「……」

しずく()ズキズキ

侑「………わたしだって……わたしだって辛いよ…っ!!!」

歩夢「!」

侑「こんな形で歩夢との思い出に傷が付いちゃって…辛いよ……」グスッ

しずく(っ……)

侑「でも…もうマグカップは割れちゃったんだよ…どんなに辛くても…元には戻らないんだよ……っ」

歩夢「そんなことわかってるよ…!!」

侑「なら!…受け入れるしかないじゃん!!」

歩夢「…っ」

>>16はミスです

侑「わたしと歩夢の間には、たくさんの思い出があるんだよ!!?マグカップだけじゃない!」

侑「それなのに、1個のマグカップなんかでわたしと歩夢の思い出に…わたしたちの仲に亀裂が入るなんて…わたしは絶対嫌!!」

歩夢「…」

侑「…はぁ…はぁ」

歩夢「……マグカップ"なんか"、か…」

侑「…」

歩夢「ねえ、侑ちゃん」

侑「なに」

歩夢「…侑ちゃんにとってこのマグカップは、数ある思い出の中のたった1つなのかもしれない」

歩夢「でも、わたしにとって…わたしにとって侑ちゃんの思い出は…」

歩夢「どんなに小さなことでも…1つ1つが宝物なんだよ…っ」

侑「…!」

歩夢「…」グスッ

侑「歩夢……ご、ごめ…」スッ

歩夢「触らないで…!!」パシッ

侑「っ…」

歩夢「…こんなことになるなら…最初からこんな思い出、なかったらよかったんだ……」

侑「…やめて」

歩夢「マグカップなんて…買わなきゃよかった…」

侑「…やめて!」

歩夢「こんなもの…」

侑「やめろ…!!!」スッ

パアンッ

歩夢「……っ…」ヒリヒリ

侑「…はぁっ…はぁ……っ」ズキズキ

歩夢「っ……」ジンジン

侑「…それ以上…バカなことは言わないで…っ!」

歩夢「…じゃあわたしは何を言ったらいいの…?!どうしたらいいの!?」

侑「!」

歩夢「大切なマグカップが…思い出が割れちゃったって聞いて…まだ冷静にもなれてないのに…」

歩夢「それなのに…っ!!さっきからわたしばっかり………!!」

侑「そういうつもりじゃ…!」

歩夢「……ううん、わたしがバカだからいけないんだよね…」

侑「…!」

歩夢「わたしがバカだから…マグカップ"なんか"でこんなに怒って…侑ちゃんと喧嘩して…」

侑「…っ」

歩夢「…わたしはバカだよ……でも…でも……っ!」

歩夢「わたしより侑ちゃんの方が絶対にバカだから…っ!!!」ダッ

侑「歩夢!」

ガララッ

侑「あっ…」

バンッ

侑「…っ……」

しずく(部室内から聞こえてくる怒鳴り声)

しずく(同好会の誰もが認める仲良し幼なじみの侑先輩と歩夢さんが喧嘩する声)

しずく(そして、その喧嘩を引き起こしたのは、紛れもないこのわたし)

しずく(その事実を受け入れられず、ただ部室の前に立ち尽くすわたしを現実に引き戻したのは…)

しずく(勢いよく部室のドアが開くと同時に、涙を流しながら走り去って行った歩夢さんの背中と)

しずく(一瞬だけドアの隙間から見えた部室内の光景)

しずく(…顔をくしゃくしゃにしながら、必死に涙を拭っているかすみさん)

しずく(部屋の隅で、体を小刻みに震わせながら俯く璃奈さん)

しずく(そして、力なく崩れていく侑先輩の姿だった)

しずく(全てが最悪のドミノみたいになっててかなしいです...)

しずく(どうしたらハッピーエンドになるのか分かりません…)

しずく(誰か……誰か救って下さい……)

二人は関係が悪化したまま卒業した

おしまい

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