花陽「これで一件落着だね」【ラブライブ】 (110)

花陽「先生、お願いします!!」

真姫「いきなり何よ?」

花陽「私の両親が苦しんでいるんです! 病気を診ていただけませんか!?」

真姫「別にいいけど、高く付くわよ」

花陽「お、お代はいかほどで?」

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真姫「往診で2両、治療費込みでまぁ6両ってとこかしらね」

花陽「高い!?」

真姫(価格設定とかよく分かんないけど)

真姫「当たり前でしょ、この私を誰だと思ってるの?」

花陽「近所で評判の名医だと」

真姫「そうよ。その名医の真姫ちゃん先生が直に診てあげるんだから、これくらいして当然ね」

花陽「で、でも6両は高いです!」

真姫「これでも町人相手には安くしてるつもりなんだけどね」

花陽「や、安くなりませんか?」

真姫「ならないわね」

花陽「ど、どうしよう……」

花陽(他のお医者さんのところにも行ったけど門前払いだし……)

真姫「それで、払うの? 払わないの?」

花陽「えっと……」

真姫「まぁ払うと言ったところで、どうせ払えないんでしょ」

花陽「な、なんでそれを?」

真姫「居るのよねぇ、町人相手だとそういうのが、こっちもそんなの相手だから慣れっこよ」

花陽「じゃ、じゃあ私のお父さんとお母さんは……」

真姫「お金払えないのなら、私の知ったことじゃないわ」

花陽「そ、そんなぁ」

真姫「私に治療をお願いするのなら、まとまったお金を用意することね」

花陽「お、お金はちゃんと払いますから!」

真姫「しつこいわね!」

花陽「そこをなんとか!」

真姫「役人呼ぶわよ!」

花陽「血も涙もないヤブ医者!」

真姫「言ってなさいよ!」

 
 
「待てぇい!」

 
 

凛「かよちんを虐めるとは何事かにゃ!?」

真姫「は?」

花陽「り、凛ちゃん!?」

真姫「何? 貴女、あの侍と知り合いなの?」

凛「だから、なんでかよちんを虐めてるの!?」

真姫「虐めてないわよ」

凛「嘘だ! かよちんが必死に頼み込んでるのに、なんで無下にするの!?」

真姫「お金払えない人を相手してるほど、この真姫ちゃん先生は暇じゃないのよ!」

ドンッ

花陽「きゃっ!」

凛「かよちん!」

花陽「いたたっ……」

真姫「ちゃんとお金を用意したら、診るくらいは診てあげるわ。まっ、ちゃんとお金が出来るのに何年掛かるか分かんないけどね」

凛「酷い……」

真姫「あーあ、やっぱり名医のこの私が町人相手に治療なんてもったいないにも程があるわね。ほら、帰って帰って……しっしっ」

花陽「ひっく……ぐすっ」

凛「かよちん、泣いちゃダメ」

花陽「でも、お父さんとお母さんが」

凛「かよちん……」

花陽「このままじゃ死んじゃう……ぐすっ」

凛「うぅ……」

凛(こうなったら)

凛「おいっ!」

真姫「何まだ居たの? 塩撒くわよ」

凛「かよちんの両親を助ける気はないのか!?」

真姫「二人揃って物分かりが悪いわねぇ……だからお金が」

チャキッ

凛「覚悟ぉ!!」

グサリ

真姫「あぁぁぁぁぁァァァァー!!」

バタッ

花陽「きゃーっ!!!!」

凛「ふぅ……」

花陽「り、凛ちゃん!?」

凛「かよちん、仕方ないんだよ」

花陽「だ、だからって斬ること!?」

凛「そんなことより早くお医者さん探そ!」

花陽「えっ、う、うん」

凛「この先のお医者さんなら、もしかしたら診てくれるかも」

花陽「ほ、ほんと!?」

凛「分かんないけど、行こっ!」

花陽「うんっ!」

………………………………
……………………
………………
…………
……

凛「こうして悪の医者は成敗され、二人は色々と奔走するのであった。めでたしめでたし」

花陽「……」

真姫「……」

凛「我ながら最高の出来にゃ!」

真姫「どこがよ」

凛「真姫ちゃん、不満そうな顔してどうしたの?」

真姫「不満ありまくりよ! なんなのこのしょーもない話は?」

凛「しょーもなくないよ! 凛が一生懸命に考えたストーリーだよ!」

花陽「まぁまぁ」

真姫「てゆーか、なんで時代劇チックなのよ」

凛「実は最近、時代劇の再放送とかよく観てるんだ」

花陽「そうなんだ」

凛「そうそう。ついでに、もし凛が時代劇の主人公ならどんなのがいいか、ストーリーを考えたりしてたの」

真姫「凛の中で私、殺されてるんだけど」

凛「しょーがないよ」

真姫「しょーがなくないでしょ」

凛「だって凛は『善』だもん。『善』が活躍するには『悪』が必要だし」

真姫「だからってなんで私が悪なのよ」

凛「だって真姫ちゃん将来お医者さんになりたいんでしょ」

真姫「そうよ」

凛「だからだよ」

真姫「意味わからないわよ」

花陽「多分だけど、医者って役職付きの武士や商人程じゃないけど、悪役の定番みたいな感じがするから」

凛「そう」

花陽「特に町人相手にお高い態度の医者は確実に悪だね」

凛「かよちんすごーい」

花陽「えへへ」

真姫「どこがお高い態度の医者なのよ」

花陽「ご、ごめん」

真姫「それに凛のストーリーの中で私、何か悪どいことしてる?」

凛「かよちん虐めてる」

真姫「いやいや、単にお金持ってないから追い返しただけでしょ」

花陽「確かに悪いことはしてないよね」

真姫「言い方は悪いにしても、間違ったことは何もしてないわよ」

凛「真姫ちゃん」

真姫「何よ」

凛「そこが根本的な間違いなんだよ」

真姫「は?」

凛「凛が主人公……つまり善である以上、真姫ちゃんは悪になるんだよ」

真姫「分けわかんないわよ」

凛「何故なら、まだ他のメンバーのことは何も考えていないから、まぁとりあえずってことで」

真姫「扱い酷くない?」

凛「かよちんを悪にするのはしのびないよ」

真姫「私はいいワケ?」

凛「昨日観たやつが悪徳医者の話だったからね」

真姫「ひどっ!」

凛「それに真姫ちゃんは間違ってないよ」

真姫「でっしょー」

凛「だけどね。どんなに正しいことや正論を言ったところで、悪役なんだから成敗されて終わる運命なんだよ」

真姫「何それ……」

凛「真姫ちゃんは凛に成敗されて江戸の平和は保たれる、ってストーリーなんだよ」

真姫「私一人成敗されるだけで江戸の平和が保たれるって……」

花陽「ものすごい危険人物だよぉ」

凛「ふふん!」

真姫「一つ訊ねるわ」

凛「いいよ」

真姫「凛は侍なのよね」

凛「そうだよ」

真姫「なんで花陽と知り合いなのよ」

凛「かよちんとは幼馴染だからだよ」

真姫「凛が武士で花陽が町娘って釣り合いが取れてなくない?」

凛「そう?」

真姫「身分制度のある時代を設定してるなら、それはそれで……」

凛「めんどくさいなぁ」

真姫「それで私が殺されてるんだから、たまったもんじゃないわよ」

花陽「そもそも凛ちゃんはお侍さんとしても、どのくらいの地位の人に設定してあるの?」

凛「ん?」

花陽「浪人から大名や旗本とか色々あるよ」

凛「んん?」

花陽「私も詳しくはわからないけど、私と幼馴染ってことは浪人とか」

凛「んんん?」

花陽「もしくは私の両親が凛ちゃんの家に奉公している関係で、小さい頃から知り合いとか」

凛「かよちん難しいこと言うにゃあ……」

真姫「浪人なら凛は役人に付き出されるわね」

花陽「大名とかなら町方は手出し出来ないからね」

凛「凛、主人公なのに?」

真姫「悪いことしてないのに斬ったらそうなるでしょ」

凛「侍には斬り捨て御免ってのがあって」

真姫「主人公でもなんでも、悪くない人斬っちゃダメでしょ」

花陽「確かに主人公にあるまじき行為だね」

真姫「私より極悪非道だわ」

花陽「潔く切腹コースだね」

凛「にゃあ……」

キーンコーンカーンコーン♪

花陽「あっ、もうすぐ一時間目だね」

真姫「朝から凛のバカ話に付き合って疲れたわ」

凛「失礼だなぁ」

真姫「失礼だと思うなら私を殺さないストーリーでも考えて、あと私を良いところの姫様にしなさい」

凛「なんで?」

真姫「西木野病院の跡取り娘で凛達よりは地位が高いわ。それに名前に『姫』がついてるんだからね」

花陽(やっぱり真姫ちゃんお高い態度だなぁ……斬られても仕方ないかも)

凛「考えとくよ」


 
 
凛「というワケで数学の時間中ずっとストーリーを考えていました」


真姫「バカなの?」

凛「μ'sのおバカトリオだからね!」

花陽(残りは穂乃果ちゃんとにこちゃんかな?)

真姫「次の時に小テストやるって言ってたわよ」

凛「あとで色々と教えてね」

真姫「私の扱い次第でね」

凛「色々指摘されてアレコレ考えてみた結果」

花陽「うんうん」

凛「凛は星空幕府の将軍……つまり上様というポジションになりました!」

花陽「えっ?」

真姫「はぁ?」

凛「ふふーん。これでかよちんを虐める悪を退治するにゃー!」

真姫「ちょっと待ちなさい」

凛「何?」

真姫「星空幕府って何よ?」

凛「凛が作ったもの」

真姫「本気で言ってる?」

凛「本気だよ」

真姫「なんかこう、すぐにでも倒れそうな幕府ね」

花陽「家臣が謀反とかしそうな雰囲気があるね」

凛「二人とも酷くないかにゃ?」

真姫「それで、その将軍がどう活躍するのよ」

凛「そりゃー、悪いやつをバッサバッサと」

真姫「将軍ってそんな簡単に町を出歩けるものなの?」

花陽「そこら辺は身分を隠せばいけると思うけど」

凛「さっすがかよちんにゃー」

花陽「でも凛ちゃんが将軍様なら私達は?」

凛「かよちんは何故か凛の正体を知ってる町娘で」

花陽(役的にはいいのかな?)

凛「真姫ちゃんは長崎帰りの医者の卵で」

真姫「まぁ、さっきよりはマシだけど」

凛「それで、何かの陰謀に巻き込まれて悪役に斬られる運命にゃ」

真姫「やっぱり死ぬんじゃないの!」

凛「凛に斬られるよりはマシだよ」

真姫「小テストに関しては何も教えない」

凛「かよちんに教えてもらうよ」

花陽「ちょっとはマシになったの、かな?」

真姫「それでも殺されてるんだけど」

凛「凛にやられるかやられないかの違いだよ」

真姫「どのみち死んでるんじゃ変わらないわよ」

凛「今のところ、それが限界なんだよねぇ」

真姫「凛の頭じゃね」

凛「バカにしてるの?」

真姫「バカにしてあげてるのよ」

凛「むぅ」

花陽「そういえば私達以外のメンバーは出たりしないの?」

凛「出るよ、と言っても細かいところまではまだだけど」

花陽「どんな役どころなの?」

凛「穂乃果ちゃんは凛がよく行く和菓子屋さんの娘」

真姫「まんまね」

凛「海未ちゃんは園田道場の娘で門弟相手に稽古してる」

花陽「剣術指南役ってとこかな?」

凛「そうそうそんな感じ」

花陽「じゃあ、ことりちゃんは?」

凛「武家の娘」

真姫「ことりって武家っぽい?」

花陽「むしろ大棚の一人娘っぽいような」

凛「ことりちゃんのお母さんって何してる人」

真姫「何って理事長でしょ」

凛「そう、理事長だね」

花陽「それと武家って何か関係あるの?」

凛「ほら、理事長ってドラマとかだと黒幕というか悪役ポジションじゃん」

花陽「そうでもないような気がするけど……」

凛「絵里ちゃんも色々と理事長に妨害されたって聞くし」

真姫「そんなこともあったわね」

凛「だから、悪の理事長を凛が成敗するストーリーを考えてるとこにゃ!」

花陽「それなら別に武家にこだわらなくても」

凛「凛は上様だからね。町民は斬れなくても、武家の……理事長にふさわしいポジションなら遠慮なく斬れると思うんだよね」

真姫「もしかして単に人斬りをやりたいの?」

凛「そういうワケじゃないよ」

花陽「でも、理事長を斬る相応の理由ってあるの?」

凛「公金横領とか賄賂とかの定番ネタで」

真姫「そんなの貰ってどうするのよ」

凛「出世して御定法を変えるとか」

真姫「なんのよ」

花陽(理事長まだ出世したいのかな?)

凛「ママさん世代もラブライブに出たいー、とかかな」

真姫「いつからラブライブは法律が関わるような大層なものになったのよ」

凛「あくまで設定にゃ」

真姫「もっとちゃんとした設定とかないの?」

凛「凛は悪を成敗出来たらいいよ」

花陽(凛ちゃん成敗の為なら善人も悪人にでっち上げそう……)

真姫「多分、私は理事長の陰謀を知って殺されるのね」

凛「真姫ちゃんが殺されるのはまた別問題だよ」

真姫「関係ないのね……」

凛「ともかく、理事長がラブライブに出るために悪事を働くのは規定路線だから」

真姫「悪事にマシとかはないけど、理由がくだらなすぎるわね」

花陽「確かに」

凛「理事長というポジションは悪役たる宿命みたいなもんだし」

花陽「そういうものなの?」

凛「若くないのにラブライブって夢を見るのは諦めろってことだよ」

真姫「夢見てるのかしら?」

凛「分かんないけど、あれはいつまでも自分は若いと思ってるタイプだね」

花陽「理事長が聞いたら怒りそうだね」

凛「大丈夫、大丈夫。どうせ聞かれてないし、なんにも問題ないよ」

ピーンポーンパーポーン♪

『星空凛さん。至急、理事長室へ』

凛「ん?」

真姫「なんかやらかしたんじゃないでしょうね」

凛「なんにもやってないよ」

真姫「じゃあなんで呼び出されてるのよ」

凛「分かんないけど、とりあえず行ってくるよ」

花陽「行ってらっしゃーい」

スタスタスタ

真姫「今の話、聴かれてたんじゃ?」

花陽「まさか、ね」


 
 
花陽「お昼休みになったけど……」


真姫「凛が帰って来ないじゃない」

花陽「凛ちゃん何やらかしたのかなぁ」

真姫「理事長のことボロクソに貶したから、簀巻きにされて川に流されたとかかしら?」

花陽「うぇぇぇー!」

凛「ただいまー」

花陽「凛ちゃん!」

凛「遅くなってごめんね」

真姫「もうお昼よ。遅いどころじゃないわ」

凛「ごめんごめん」

花陽「り、理事長にこっぴどく怒られたの!?」

凛「まぁ、ちょっと怒られたけどね」

真姫「ちょっとの割に時間かかり過ぎでしょ」

凛「そのあと『理事長はストレスが溜まる仕事』だの『ラブライブに出れるなら出たい』と色々と愚痴こぼされたよ」

真姫「よくもまぁ長時間も耐えれてわね」

凛「実際は二十分くらいかな怒られたの」

花陽「えっ、後は何やってたの?」

凛「理事長と一緒にテレビの時代劇観てた」

花陽「はい?」

凛「あと、お昼ご飯もご馳走になった」

真姫「は?」

凛「いやー、美味しかったなぁ」

花陽「理事長ってストレス溜まる仕事なんじゃ……」

真姫「ストレスの欠片もないわね」

花陽「普段、何してる人なんだろね」

真姫「さぁ?」

凛「それでね。凛はあることに気付いたんだ」

真姫「何?」

凛「凛に武士の世界は似合わないってこと」

真姫「そうでしょうね」

花陽(刀の試し斬りで喜んでそうだしね)

凛「そこでさっきまで時代劇観てて思ったのが、凛には十手持ちの方が似合ってるってことかな」

花陽「武士じゃないってことは、岡っ引きとか御用聞きとか目明かしの?」

真姫「捕物帖ってやつね」

凛「それそれ」

真姫「まぁ、武士じゃないのなら刀持たなくて安全ね」

凛「刀振り回して斬るような血生臭いのは御免だね」

花陽「じゃあ凛ちゃんは町奉行とか火盗とかの下で働くんだね」

凛「よく分かんないけど、そんな感じで『凛ちゃん親分』とか呼ばれて町の人気者になるんだー」

花陽「へー」

凛「こう犯人に向けてお金をピシャッと!」

花陽「上手くいくの?」

凛「やったことないから分からない」

真姫「神田明神が近いから、そこでやれば」

凛「それで困ってる人を助けて悪を滅ぼすんだよ」

真姫「滅ぼせる悪は町人くらいよ」

花陽「武士が絡むと支配違いでややこしいからね」

凛「分かってるよ。それに、二人にも色々と活躍してもらうから」

真姫「死ぬのは御免よ」

凛「大丈夫だから」

真姫「本当かしらね」

花陽「で、どんな役なのかな?」

凛「かよちんは町娘でしょ」

花陽「そこは変わらないんだ」

真姫「変な役が来るよりマシでしょ」

凛「そして真姫ちゃんは」

真姫「悪徳医者とか勘弁してよね」

凛「そんなんじゃなくて、真姫ちゃんは十手持ちで凛の子分だよ」

真姫「はぁー!」

凛「何か不満でもあるの?」

真姫「なんでこの私が凛の子分なのよ!」

凛「死なない分マシじゃん」

真姫「せめて奉行とは言わないけど、与力とか同心とかあるでしょーに!」

凛「なんで凛が真姫ちゃんの下で働かなきゃいけないの!? 凛が主人公なんだから、真姫ちゃんより下なワケないでしょ!」

真姫(コイツはぁ……)

凛「じゃあ真姫ちゃんは凛の子分じゃなくて、死ぬ確率が少し高くなるけどかよちんの友達の町娘で」

真姫「子分より町娘の方が死ぬ確率が高いってどういう世界よ……」

花陽(あれ、私も死んじゃったりする?)

凛「そこで凛達のポジションに三年生組を入れたら、面白くなりそうじゃない?」

花陽「んー、どうかなぁ」

真姫「面白いかは別として凛のストーリーじゃねぇ」

凛「そこは三人で考えるとして、まずはにこちゃんをどのポジションにするかによって変わる」

花陽「にこちゃんのポジションって?」

凛「凛の中では二つある」

真姫「二つ?」

凛「生意気で怖い親分さんか、貧乏人で長屋暮らしの町娘ポジション」

真姫「にこちゃんの性格なら前者、境遇とかなら後者が似合いそうだけど」

凛「にこちゃんをどっちかに固定しない限り、希ちゃんのポジションが決まらないんだよ」

花陽「ちなみに希ちゃんのポジションは?」

凛「にこちゃんを親分にした場合は大棚の商人で、町娘にしたら怖い親分さん」

真姫「あぁ、なんか分かるわ」

凛「希ちゃん関西弁?キャラだから怖いキャラとか似合いそうだしね」

花陽「あとスピリチュアルとかって怪しい商品とか売ってそうな上に、上方訛りだと怪しい商人っぽい雰囲気はあるね」

凛「これをどっちにするかによって凛の活躍が決まるんだよねぇ」

花陽「私達は?」

凛「んー、特にはないかな」

真姫「ないのね」

凛「あっても真姫ちゃんを囮に使うくらいかな」

真姫「殺す気満々じゃないの……」

凛「それはそうとして、凛の構想ではこうなるよ」

……
…………
………………
……………………
…………………………

《にこ:親分 希:商人》

 
 
にこ「おらおらー、さっさと立ち退きなさいよ!」


花陽「きゃーっ!」

真姫「何するのよ!」

にこ「この近辺は東條屋さんが買い取ったんだから、住人のみんなはさっさと出ていきなさいよね!」

真姫「はぁ? 聞いてないんだけど」

にこ「今言ったからに決まってんでしょバカじゃないの?」

真姫「ふざけるんじゃないわよ!」

にこ「暴力? いやーん、暴力怖いにこー」

真姫「このクソチビ……」

希「まあまあ、落ち着き」

にこ「これは東條屋の旦那さん!」

希「にこっち親分、立ち退きまだ終わらんの?」

にこ「い、今すぐに!」

真姫「立ち退きとか初耳なんですが!」

希「そら今日決まったことやからなぁ」

真姫「なら事前に言うなり出来るでしょーが!」

希「めんどいやんか」

花陽「あ、あのっ」

にこ「何よ?」

花陽「ここを出ていったら長屋のみんなは何処で……」

にこ「そんなの知らないわよ。自分でなんとかしなさい」

希「せやなぁ、頑張りなぁ」

花陽「そんなぁ」

希「ほな、にこっち親分さん頼むわ」

にこ「へーい……おぅ、やっちまぇ!」

「「「うぉぉぉー」」」

花陽「私達の長屋が……」

真姫「明日からどうしたらいいのよ……」

凛「あー、ちょっと待ってほしいよ」

花陽「凛ちゃん!」

にこ「あっ……って、これは星空の親分!」

凛「話は聞いたけど、立ち退きとは穏やかじゃないね」

希「親分さん、ここの土地はウチが買ったんやから、ウチの自由やないの? ほら、証文もあるよ」

凛「それはそうだけど、すぐの立ち退きは法に反するよ」

希「なぬ?」

凛「立ち退きするならちゃんと勧告はしなきゃダメだよ。せめて三ヶ月くらい前には」

希「そうなん?」

にこ「にこ、法とか分かんなーい」

凛(凛もよく分かんないけどね)

凛「とりあえず、しばらく待って欲しいんだよ」

希「分かったわ。ほなにこっち親分、帰ろか」

にこ「おぅ、また来るわよ」

真姫「来なくていいから、しっしっ」

凛「大変だね」

真姫「ほんとにね」

花陽「でもどうしよう……」

凛「とりあえず解決策はあるだろうから、凛に任せてほしいよ」

真姫「えぇ、お願いするわ」

花陽「頑張ってね、凛ちゃん!」

凛「うん!」

………………………………
……………………
………………
…………
……

凛「てな具合で立ち退き阻止を考えてるんだけど」

真姫「にこちゃん親分可愛くない?」

花陽「そうかなぁ?」

凛「クッソ生意気そうだから、後で色々と思い知らせたいね」

真姫「それで、このあとの展開は?」

凛「まだ決めてないけど」

花陽「パターン的に、にこちゃんと希ちゃんが悪事を働いていて、そこを凛ちゃんが捕縛して終わり。それで長屋も元通りって感じかな」

真姫「悪事は……なんでもいいわね。黒幕はいそうだけど、凛は武士じゃないからそこまでは無理そうだし」

凛「その方向で考えるとしてもう一つのプランは……」

……
…………
………………
……………………
…………………………

《にこ:町娘 希:親分》

 
 
希「なぁにこっち、借りたお金返してもらおうか?」


にこ「もう少しだけ待って!」

希「あのなぁ、この前もそう言ったよね」

にこ「だって、借りた額よりなんか増えてるじゃないの!」

希「利子って知ってる?」

にこ「く、詳しくは知らないわよ」

希「にこっちはウチからいくら借りたん?」

にこ「一両よ!」

希「そやね」

にこ「それがなんで十両になるのよ!?」

希「だから利子やん」

にこ「利子ってこんなするの?」

希「七日借りて大体が九両くらいやね」

にこ「高っ!」

希「そうやろ」

希(ウチも利子の計算方法は分からんけど)

にこ「どう足掻いても返せないじゃない……」

希「まぁ、そやね」

にこ「どうしたらいいの……」

希「んー、ここだけの話やけど、借金をチャラにする方法があるんよ」

にこ「ほんと!?」

希「うん。ウチの知り合いの異人さんになぁ、にこっちのことを気に入ってなぁ」

にこ「はっ? 私、売られるの?」

希「言い方はアレやけど、まぁそうやね」

にこ「くっ、どうすれば」

希「助かる道はそれくらいしかないやろ。実際、借金に悩んでた赤髪のお嬢様もそうなったワケやし」

にこ「その娘はどうなったのよ?」

希「それより先はウチの預かり知らぬとこやからなぁ」

にこ「くっ」

希「なっ、観念しぃ」

にこ「妹達は……」

希「ウチが適当に理由言っとくし、なんやったら知り合いの寺に預けとくわ。別に妹さん達に手を出す気はないから」

にこ「本当?」

希「ホンマやホンマ」

にこ「ごめんね、こころ、ここあ、虎太郎……」

………………………………
……………………
………………
…………
……

凛「こうして、にこちゃんは借金のかたとして売られたのでした」

花陽「事件性が……あるとしたら異人に売られること?」

凛「それくらいかな」

真姫「ねぇ、なんか地味に私が売られてるんだけど」

凛「気にしたら負けだよ」

真姫「くっ」

凛「それで、希ちゃんと異人を捕縛したいんだけど」

真姫「すぐに行きなさいよ」

凛「捕縛するタイミングが重要なんだよ」

花陽「そんなのあるのかな?」

凛「あるよ。具体的には」

①:にこが異人にヤられそうになる前に希と異人を捕縛

②:にこが異人に少し手をかけられたところで希と異人を捕縛

③:にこがヤられて全てに絶望して自害を阻止した後に希と異人を捕縛

④:にこがヤられて自害した後に希と異人を捕縛

⑤:にこが絶望して異人に反撃しようとしたところで希と異人を捕縛

⑥:にこが絶望して異人に反撃しようとして殺害された後に希と異人を捕縛

 
凛「こんなところかな」

真姫「普通に①でしょ」

花陽「①だけど……最悪でも②かな」

凛「怒りのボルテージを上げるなら③と⑤、怒りやら憎しみやらを込めるなら④と⑥かな」

真姫「なんで怒りと憎しみなのよ」

凛「その方がなんか雰囲気出るかもって」

花陽「なんのかな?」

凛「ちなみに③~⑥を選べば挿入歌が流れるにゃ」

花陽「それと一点気になったんだけど」

凛「何?」

花陽「この異人って絵里ちゃんだよね」

凛「そうだね」

花陽「絵里ちゃん、こんな役でいいの?」

凛「だって絵里ちゃんの役思い付かないから『ハラキリ、ゲイシャ、オイラン、エリチカ、カシコイ!』って言うだけの異人がいいかなって」

真姫「エリーが聴いてたら怒るわよ」

凛「ここには居ないから問題ないよ」

ガラガラ

絵里「凛、ちょっといい?」

凛「何、絵里ちゃん?」

絵里「希からラーメン貰ったのはいいんだけど、数が多いからラーメン大好きな凛に取りに来てほしいのよ」

凛「わーい」

絵里「今行ける?」

凛「余裕、余裕。ちょっと行ってくるね」

スタスタ

花陽「行っちゃったね」

真姫「帰って来れるのかしらね」

花陽「次の授業なんだっけ?」

真姫「物理よ」

花陽「そうだったね……」

 
 
 
にぃやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 
 

  
花陽「い、今の叫び声って」

真姫「三味線作りで猫の毛の皮を剥いだ時の猫の悲鳴でしょ」

花陽「ん……ん?」


 
 
凛「うぇぇーん!」


真姫「いつまで泣いてるのよ」

凛「凛は三年生組にヤられたにゃあ……もうダメにゃあ……」

真姫「何されたのよ」

凛「正座させられて説教喰らった……」

花陽「午後の授業までに帰ってこれなかったね」

凛「あの三人のせいで、凛は補習決定だよ……」

花陽(原因は主に凛ちゃんだけどね)

凛「あと、ラーメンなんてなかった……」

花陽「あらら」

凛「くすん……」

真姫「もう泣き止みなさいよ」

凛「ラーメン……」

真姫「今度、ラーメン奢ってあげるから元気出しなさい」

凛「うん、分かった」

花陽「いい子、いい子」

凛「えへへ~」

真姫「まっ、補習に関しては頑張りなさい」

凛「うん……」

凛「あっ、あそこにお地蔵さんがあるよ」

花陽「そうだね」

凛「ちょっと拝んでいっていいかな?」

真姫「別にいいわよ」

凛「お地蔵さん、どうか凛に酷いことをした希ちゃん、にこちゃん、絵里ちゃんを懲らしめて下さい!」

真姫「罰当りなお願いなんてやめなさいよ。お地蔵さんが可哀想でしょ」

凛「あと、お供え物は真姫ちゃんが持ってきますので」

真姫「はぁ?」

凛「どうか凛の願いを聞いて下さい!」

真姫「何言ってんのよ」

凛「真姫ちゃん。あとは任せた!」

タッタッタッタッタッ

花陽「あっ、凛ちゃん」

真姫「もぉ、勝手ね」

真姫(本当に……ね)


 
 
凛「よーしっ、部活頑張るにゃー!」


真姫「昨日はメソメソしてたのにね」

凛「昨日は昨日、今日は今日だよ」

真姫「切り替えが早いわね」

花陽「それが凛ちゃんのいいところだよ」

真姫「そうね」

ガラガラ

希「遅れてごめん!」

にこ「はぁはぁ、間に合ったわね」

絵里「はぁはぁ、なんとかね」

真姫「遅かったわね」

希「ちょっと進路相談でな」

にこ「思ったより時間かかったのよ」

花陽「あとは二年生組だけど」

絵里「穂乃果達は役員会あるから、練習は私達だけでやるわよ」

凛「はーい」

真姫「まぁ、急いで来たみたいだし、取り敢えず座って行きを整えたら?」

絵里「ええっ、それもそうね」

ガタッ

希「そうしよか」

にこ「はぁーあ」

 
 
 
ぷぅー


ぶぅー

ぶふぉー

 
 
 

凛「えっ?」

花陽「な、何?」

真姫「凄い音ね」

 
絵里「……」

希「……」

にこ「……」

 
凛「あー、椅子にクッションが敷かれてるよ」

花陽「これって踏んだら音が出るやつだよね」

真姫「そうね」

凛「オナラみたいな音だったね」

花陽「う、うん……」

凛「盛大な音だったにゃあ」

花陽「心臓に悪いよぉ」

真姫「てゆーか、これ誰の?」

凛「さぁ、凛のじゃ……」

絵里「凛!」

バンッ!

凛「!」

絵里「あなたでしょこれやったの!?」

凛「えぇー、違うよ!」

にこ「嘘言うんじゃないわよ!」

希「昨日のウチらへの仕返しやなぁ!」

凛「えぇー、無実だよぉ!」

希「とりあえず、向こうの部屋で話聞こか」

凛「凛やってないよ!」

にこ「あんた以外誰がやるって言うのよ!」

凛「ほんとだってばぁ!」

絵里「二人とも、私達は凛と話をするから、先に屋上行って練習しててね」

花陽「う、うん」

真姫「分かったわ」

凛「離せにゃー!」

にこ「じたばたするんじゃないわよ!」

希「取り調べにはカツ丼とラーメン、どっちがいい?」

凛「じゃあラーメン!」

絵里「そんなのあるわけないでしょーが!」

凛「にゃあああああ!!」

バタン

真姫「行きましょ」

花陽「う、うん」


 
 
♪▶~


●REC

真姫「ほっ、はっ」

花陽「……」

真姫「ねぇ、ちゃんと録ってる?」

花陽「大丈夫だよ」

真姫「よっ、とっ」

花陽(凛ちゃん……大丈夫かなぁ)

♪■~

真姫「どう?」

花陽「いいんじゃないかな」

真姫「ほんと?」

花陽「ほ、ほんとだよ」

真姫「ふーん」

花陽「それより、凛ちゃんのことだけど」

真姫「別に命奪うワケじゃないんだし、大丈夫でしょ」

花陽「そうだけど、なんであんなことしたんだろう」

真姫「さぁ、お地蔵さんのお願いが効いたんじゃないの?」

花陽「だけど、凛ちゃんがあんな回りくどいことするかなぁ」

真姫「凛は変なところで頭が回るから」

花陽「三人がクッション踏んだ時、驚いてたよね?」

真姫「誰だってあんな音が出たら驚くわよ」

花陽「そりゃそうだけ……あっ」

真姫「?」

花陽「あの時、確か真姫ちゃんもの凄く冷静だったよね?」

真姫「クールな真姫ちゃんだから当然でっしょー」

花陽「あれってもしかして、あそこにクッションがあるのを知ってたんじゃ」

真姫「だからって」

花陽「三人を椅子に座らせるよう誘導してたよね」

真姫「ぐうぜ」

花陽「最初から真姫ちゃんが仕組んだんじゃ!?」

真姫「いや、だから」

花陽「真姫ちゃん!」

真姫「……」

花陽「……」

 
 
 
真姫「そうよ。やったのは私よ」

 
 
 

花陽「真姫ちゃん!?」

真姫「だって、凛からあんだけボロクソに言われたのよ! 腹くらい立って当たり前なんだけど!」

花陽「だからって凛ちゃんに罪を被せなくても、真姫ちゃんが直接凛ちゃんを叱れば」

真姫「叱ったところで凛は反省すらしないと思うわよ」

花陽「凛ちゃんも流石には……」

真姫「私自身も凛にどう仕返ししようかと思案してたら、凛がお地蔵さんにあの三人への仕返しをお願いしてたから、それに便乗させて貰ったわ。私の叱りをあの三人に代行して貰ってね」

花陽(酷い)

真姫「朝練の後に昨日の帰りに買ったクッションを用意しておいて、あとは三人を座らせるだけ、まぁ一人が引っ掛かればいいくらいには思ってたら、まさか三人とも引っ掛かかるなんて傑作もいいとこだわ」

花陽「酷いよぉ!」

真姫「それに、私がやったとは誰も思わないだろうしね」

花陽「わ、私が証言するよ!」

真姫「なら私はすっとぼけるだけよ」

花陽「うぅ、ならば!」

真姫「花陽が証言してもあの三人からは凛を擁護したいとしか思われないだろうし、下手したら凛と共謀したと見なされるわよ」

花陽「くっ」

真姫「お互いの為、何も聞かなかったことにしましょう」

花陽「それじゃあ凛ちゃんが可哀想だよぉ」

真姫「昨日あんだけ怒られても今日にはピンピンしてたし、明日になれば元気な姿を見せるわよ」

花陽「でも!」

真姫「じゃあ、ちょっとトイレ行って来るわね」

花陽「逃げるの!?」

真姫「トイレ行くの! 漏れそうなの!!」

花陽「あっ、うん」

タッタッタッタッ

花陽「凛ちゃん……」

花陽(真姫ちゃんがやったことを証明させたいけどどうすれば……)

花陽「……」

花陽(考えなきゃ!)

花陽(何を言ったところで真姫ちゃんはしらを切るだろうし)

花陽「あー」

花陽(私が擁護すれば余計に怪しまれる)

花陽「うーん」

花陽(このままなかったことには)

花陽「……」

花陽(どうしたらいいのぉ!)

真姫「ふぃー」

花陽「おかえり」

真姫「すっきりしたわ」

花陽「そう」

真姫「ねぇ、花陽」

花陽「何?」

真姫「さっき撮影した私のダンスシーンのとこ、ちょっと確認したいことがあるから見せてくれない?」

花陽「う、うん。いい……」

花陽(あれ?)

花陽「ダンス、練習、撮影」

花陽(これって、もしかして)

真姫「早くしなさいよ」

花陽(いける……これ、いけるよ!)

真姫「ちょっと、私の話」

花陽「これだぁー!!!」

真姫「ヴェッ!!!!!!!」


 
 
凛「なんで凛達は部室にいるんだろうね」


真姫「花陽がいきなり、みんなを部室に集めてって言うから」

凛「かよちん、どうしたんだろうね」

真姫「それで、凛の方はいいの?」

凛「怒られたけど、なんとか許してもらったよ」

真姫「そっ、良かったわね」

希「それにしても花陽ちゃん、なんの用やろ」

にこ「てゆーか、部室の床に撒いてあるこの白い砂は何よ?」

凛「かよちんがせっせと撒いてたけど」

真姫「この砂。花陽の指示で私がホームセンターまで買いに行かされたんだけど、おかげで腰が痛いわ」

凛「ご苦労なことで」

絵里「シートの上に座ってるけど、砂利が混じってて足が痛いわね」

にこ「部室の真ん中にある椅子はなんなのよ」

希「それに、なんで凛ちゃんだけウチらとは別のポジションなん?」

凛「かよちんがここに座れって」

絵里「花陽は?」

凛「さぁ?」

真姫「まさか私達を放置して帰ったんじゃ……」

ガチャ

花陽「みんな、お待たせ」

凛「かよちん!」

にこ「どこ行ってたのよ!」

希「足痛くなって来たんやけど」

絵里「私は痺れて……」

花陽「静粛に、ここはお白洲だよ」

凛「はい?」

花陽「今、目の前にいる人達はお裁きを受ける人だよ」

にこ「はぁ?」

希「何言ってるん?」

絵里「お白洲って何?」

真姫「ちょっと、悪ふざけはやめなさいよ」

凛「かよちん足痛いから、その椅子に座らせて」

花陽「この椅子は奉行専用の椅子だからダメだよ」

真姫「奉行専用って何よ……」

花陽「ここでの私は奉行だから、これは私専用の椅子だよ」

真姫「意味分かんない……」

花陽「さてと、ここに集まってもらったのはある事件について吟味するものであり」

にこ「事件?」

花陽「その事件とは、さっきの部室でのクッションのことだよ」

絵里「何言ってるの花陽、その件は凛が犯人で」

花陽「絵里ちゃん。私は奉行だよ」

絵里「え、えぇ……」

希「なんかめんどくさそうやなぁ」

花陽「その事件について凛ちゃんは無実だと言い張ってるよね」

凛「凛は本当にやってないもん!」

花陽「仮にだけど、凛ちゃんがもしもやっていないと証明されたら、にこちゃん達三人は無実の人間に制裁を加えたことになるよ」

にこ「制裁って……」

絵里「叱りはしたけど」

希「別に危害とか加えたりしてないしなぁ」

真姫「……」

花陽「それでも、無実の人間を責め立てたってことに変わりはないよ」

凛「昨日はやり過ぎたかもってことで、ご飯大盛りのタダ券は貰ったよ」

花陽「あとでそれを奉行に提出するように」

凛「う、うん」

花陽「さて、あんまり時間もないし形式的なのは省略して結論から言うと、凛ちゃんは無罪である」

凛「!」

にこ「!」

希「!」

絵里「!」

真姫「……」

花陽「驚いてるようだね」

花陽(真姫ちゃんは下向いてるけど)

希「じゃあウチら、無実の凛ちゃんを……」

にこ「ど、どうすんのよ!?」

絵里「り、凛! ごめ……」

花陽「沙汰はまだだよ。それまで待ってね」

絵里「はい……」

花陽「凛ちゃんが無実であると同時に、凛ちゃんに事件の罪を被せた人間が存在する」

凛「酷いよぉ……」

にこ「誰よ、それ」

希「酷いことするなぁ」

絵里「許せないわね」

真姫「……」

花陽「私自信は犯人を知ってるけど、本人に名乗り出てもらうのが一番だと思うけどシラを切るって言うから……」

 
 
花陽「ねっ、真姫ちゃん」

 
 

にこ「!」

希「!」

絵里「!」

凛「真姫ちゃん!?」

真姫「……」

花陽「今日の部室での事件の犯人は真姫ちゃんだよ」

凛「どういうことなの!?」

真姫「し、知らないわよ! 花陽、適当なこと言わないで」

花陽「奉行は適当なこと言いません!」

希「真姫ちゃんがウチらと同じとこに座ってるのも」

にこ「罪人だってことなのね?」

真姫「な、何言ってるのよ!?」

凛「真姫ちゃん……」

真姫「花陽! 私が犯人だって言うのなら、ちゃんとした動かぬ証拠を見せなさいよね!」

花陽「証拠?」

真姫「私が犯人だという証拠をね」

希「やっぱ真姫ちゃんが犯人なん!?」

絵里「なんで!?」

真姫「だから……ほら早く出しなさいよ。出せないの? 出せるワケないわよね。私が自白したとかなんとかを証明出来る手段が」

凛「真姫ちゃんが犯人でも、凛は真姫ちゃんを嫌いにならないから……」

真姫「ありがと、ほらほらどーするのかしら?」

希「真姫ちゃん往生際が悪いよ」

にこ「あんたの口ぶりだと、どう見ても悪足掻きしてる犯人じゃないの!」

絵里「真姫、白状しなさい! 怒らないから!」

真姫「はぁ!?」

凛「凛も怒らないよ!」

真姫「ちゃんとした証拠がないのだから、犯人扱いしないで!」

にこ「あんた罪を逃れる気!?」

真姫「罪なんか犯してない!?」

花陽(うるさいなぁ)

真姫「ほら、ほら」

花陽「……よ」

真姫「頭の中はお米で一杯だから、まともに考えることが出来なくなったのね」

花陽「……いよ」

真姫「証拠がないのなら『ごめんなさい』の一言で許してあげるわよ」

花陽「……さいよ」

真姫「なんたって真姫ちゃんは寛大な心の持ち主なんだからね」

花陽「……るさいよ」

真姫「まっ、一週間くらい私のお世話係として……」

 
 
花陽「うるさいんだよ! このバカタレのトマト頭!!」

 
 

真姫「!?」

にこ「!」

希「!」

絵里「!」

凛「かよちんがキレた!?」

花陽「さっきからみんなギャーギャー、ギャーギャーとうるさいよ!」

絵里「ご、ごめんなさい……」

花陽「雰囲気作りでせっかくお白洲も作ったのに!」

希「これ雰囲気作りなんや……」

真姫「砂を運んだの私……」

花陽「うるさい!」

真姫「ヴェェ……」

花陽「証拠だ証拠だうるさいのなら、見せてあげるよ!」

 
 
花陽「真姫ちゃんが言い逃れ出来ない証拠……」

 
 
花陽「それはこれだよ!」

にこ「スマホ?」

真姫「それがなんなのよ」

花陽「みんな、目を見開いてよくご覧あれ!」

ポチッ

♪~

希「真姫ちゃんが曲に合わせて踊ってるなぁ」

真姫「これが証拠って言うならバカバカしいわね」

花陽「ここじゃなくてもうちょい先だね」

スイーッ

花陽「この辺りかな」

花陽『だけど、凛ちゃんがあんな回りくどいことするかなぁ』

真姫『凛は変なところで頭が回るから』

 
希「二人の会話やな」

凛「なんかバカにされてないかにゃ?」

真姫「これがなんの……」

真姫(あっ)

花陽(真姫ちゃん気付いたね) 

花陽『あの時、確か真姫ちゃんもの凄く冷静だったよね?』

真姫『クールな真姫ちゃんだから当然でっしょー』

 
絵里「なんか言い争いを始めたわね」

真姫(ヤバい……)

 
花陽『あれってもしかして、あそこにクッションがあるのを知ってたんじゃ』

 
真姫(ヤバい!)

 
花陽『最初から真姫ちゃんが仕組んだんじゃ!?』

真姫『いや、だから』

花陽『真姫ちゃん!』

 
真姫「ダメッ!!」

 
真姫『そうよ。やったのは私よ』

 
真姫「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

花陽「録画を停止させてなかったのを思い出して良かったよ」

にこ「真犯人は真姫で確定ってことね」

真姫「あぁぁぁ……」

希「凛ちゃん……疑ってごめんな」

凛「大丈夫、気にしてないよ」

絵里「あとで、ラーメンとご飯の一杯無料券あげるわね」

凛「わーい!」

にこ「んで、あんたは何か言いたいことある?」

真姫「ヴェッ……ヴェッ……」

花陽「それじゃあ裁きについて話すね」

花陽「まず無実の凛ちゃんを執拗に責め立てた三年生」

にこ「責め立てたとか、そこまでやってないわよ」

花陽「にこちゃん。奉行とお白洲だよ」

にこ「はい……」

花陽「えっと、三年生組は一週間の部室掃除だよ」

希「軽い罪やけど」

にこ「練習で疲れた後だと余計に疲れそう……」

花陽「それと絵里ちゃんは、持ってるご飯の無料券を私に差し出すこと」

絵里「欲しいの? 別にいいけど」

花陽「ちなみにこれで罪が軽くなるワケでもなく、賄賂でもなんでもないことだけは言っておくね」

絵里「えぇ……」

希「悪いお奉行様や」

凛「かよちんは町娘より悪代官タイプだったかぁ」

花陽「次に真姫ちゃん」

真姫「はい……」

花陽「自分の罪を凛ちゃんに被せて自分は知らぬ存ぜぬを決め込み、あわよくば悪事を闇に葬り去ろうとしたこと不届き千万」

凛(かよちん難しい言葉知ってるなぁ)

花陽「よって一週間の部室の掃除および校内引き回しの刑、あとお米をバカにしたから一ヶ月の間トマト禁止!」

真姫「いや、トマト禁止だけは」

花陽「もう真姫ちゃんのお母さんには連絡済みだよ」

真姫「嘘でしょ……」

花陽「裁きは以上である……引っ立てぇい!!」

にこ「……」

希「……」

絵里「……」

凛「……」

真姫「……」

花陽「……」

にこ「ごめん。どうしたらいいの?」

花陽「凛ちゃん以外、部室の外で待っててくれるかな」

にこ「しょーがないわね」

絵里「じゃあ、行きましょうか」

希「真姫ちゃん、ちょっと向こうでお話しやね」

真姫「くっ、凛が悪いんだからね」

にこ「ほら行くわよ」

真姫「引っ張らないで!」

スタスタスタ

花陽「色々と慌ただしかったね」

凛「うん」

花陽「凛ちゃん」

凛「かよちん!」

花陽「良かったね。無実が証明されて」

凛「うん、良かった!」

花陽「ふふっ」

凛「真姫ちゃん……なんで凛を……やっぱり真姫ちゃんは」

花陽「そのことなんだけど、凛ちゃんにも原因があるよ」

凛「凛にも?」

花陽「ほら昨日、真姫ちゃんに対して悪徳医者とか凛の子分とか、それなりに貶したでしょ」

凛「貶した、のかな?」

花陽「凛ちゃんはそう思ってないにしても、真姫ちゃんは相当怒ってたと思うよ」

 
真姫『だって、凛からあんだけボロクソに言われたのよ! 腹くらい立って当たり前なんだけど!』

 
  
真姫『叱ったところで凛は反省すらしないと思うわよ』

 
 
花陽「ほらね」

凛「真姫ちゃんに悪いことしちゃった……」

花陽「凛ちゃんを目立たせるストーリーを考えるのはいいけど、それで割りを食う人のことも考えないとね」

凛「反省します……」

花陽「はい」

凛「真姫ちゃん、許してくれるかなぁ?」

花陽「大丈夫だと思うよ」

凛「だといいね」

花陽「そうだね」

凛「じゃあ、帰りにみんなでラーメン食べに行こっか」

花陽「ご飯の無料券もあるしね」

凛「よーっし、行っくにゃー」

花陽「ふふっ」

花陽(良かったね、凛ちゃん)

花陽「……」

 
 
花陽「これで一件落着だね」

 
 
 
おしまい

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