アヤベさん卒業後にトレーナーと結婚してしばらく位の話
アヤベさんの話だけど視点はトレーナー
アヤベさん可愛いよアヤベさん
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久々の休み、車を走らせつつ、横目で助手席のアヤベを見る。
首を傾け、静かに景色を眺め続けている。
ともすれば冷たい印象を与えるが、時折耳は揺れ、窓に映った瞳は優しい眼差しを湛えている。
今日という日を自分が思っていたより心待ちにしてくれていたのではないかと、そう少しくらい自惚れても、ばちは当たらないだろう。
アヤベ「……」
この静かな時間が、俺は好きだ。
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木々に囲まれた道を行くことしばらく、小高い山の中腹にあるキャンプ場に辿り着く。
学園時代のアヤベが、休日に星を見に訪れていた場所の一つらしい。
リュックを背負った彼女は辺りをゆっくり見渡し、懐かしむかのように僅かに目を細めた。
アヤベ「……行きましょうか」
歩き出したアヤベの後を追う。気持ちいつもより揺れる尻尾が、手招きしてる様に感じられた。
管理棟で手続きをした後、アヤベに誘われ森を行く。なんでも、彼女のお気に入りの設営場所があるとのこと。
迷わぬよう整備されているとは言え、森の道は独特な雰囲気を纏っており、心が浮き足立つのを感じた。
アヤベ「……」
そのせいだろうか。数歩先を行くアヤベがふと何処かへ消えてしまうんじゃないか、そんな下らない想像が頭を過ぎった。
アヤトレ「……なぁアヤベさん。手を、繋がないか?」
頭ではなく、心が紡がせた言葉だった。
ただの想像にこれだけ揺さぶられる、自分は随分小心だったのかと、内心で自嘲する。
アヤベ「……こんな所で手を繋いでたら、万が一転んだ時危ないわよ」
歩調を落とし、隣に並んだアヤベが言う。
アヤトレ「ははっ。そうだな、すまん。忘れてくれ」
正論で諌められる。幾つも年下のアヤベの方が大人じゃないかと、思わず今度こそ自嘲の笑みを顔に浮かべてしまう。
アヤベ「……ん」
すると唐突に差し出される右手。
アヤベ「別に嫌ではないから。……繋がないの?」
アヤトレ「アヤベさん……。いや、是非」
そこは、森の中のぽつりと開けた空間だった。近くには小川も流れ、確かに静かでこれは落ち着けそうな良い場所だと感嘆した。
手慣れたアヤベの指示のもとにテントを貼り、軽い夕食も済ませた頃には日も沈んでいた。
2人分の珈琲を淹れ、アウトドアチェアを並べて座る。
アヤベの趣味であり、生き甲斐。
今日の目的である星見の時間である。
例え妹さんが消えてしまったとしても、アヤベが星を想い、星に願った時間は無駄でも嘘でもない。だからこそ2人で大事にしていきたい。
初めてアヤベに想いを伝えた日、彼女にそう約束した。
ふと、ある星の並びを見つけた。
アヤトレ「あれは……北斗七星か」
銀河に浮かぶ大戦車(グランシャリオ)。そしておおぐま座の尻尾である、北斗七星。
アヤベに倣って星を学んだお陰で、昔よりは知識を得て、星も見つけられるようになったと自負している。
そんな知識の中から、おおぐま座に関する星の名を思い出す。
アヤベが『ミザル』なら、俺は『アルコル』が良い。
横目でアヤベの横顔を見ながら、そう思った。
アヤベ「……ねえ」
アヤベが徐に、優しい声色で問う。
アヤトレ「ん?」
顔は星を見上げたまま、しかし口元に微笑を浮かべて、至って短く、言葉を投げる。
アヤベ「……好きよ。愛してる」
まるで俺の意思が伝わったかのように、今1番望む言葉を告げられた。
アヤトレ「……ん。俺もだよ、愛してる」
アヤベ「……そう。……ふふっ」
これからも、その輝きを1番近くて見たいと、思わずにはいられなかった。
おわりです
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