渋谷凛「アイドルで」北条加蓮「大河ドラマ」神谷奈緒「源平物語!」 (205)

P「大胆な新解釈で、女性アイドルだけをキャストにして大河ドラマをやるという企画だ」

渋谷凛「ふうん。ちょっと面白そう」

北条加蓮「それで誰が出演るの?」

P「美嘉が源頼朝(みなもとのよりとも)役で、莉嘉が源義経(よしつね)役だ」

奈緒「待て待て待て!!!」

凛「どうしたの?」

奈緒「ダメだろ、その配役!」

加蓮「なんで?」

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https://i.imgur.com/IRbXghO.jpg
トライアドプリムス:左から
渋谷凛(15)
神谷奈緒(17)
北条加蓮(16)

奈緒「2人は源頼朝ってどんな人だったのか知ってるのか?」

凛「日本史の教科書で読んだよ。鎌倉幕府を作った人」

加蓮「いいはこつくろう鎌倉幕府……だったよね」

奈緒「良かった、ちゃんと知ってたか」

凛「歴史の教科書に載るぐらいだから、すごい大きさのライブ会場を作ったんでしょ?」

加蓮「でも実際にライブ会場を作ったのは大工さんじゃない?」

奈緒「そのハコじゃないよ!!!」

凛「え? 鎌倉幕府ってライブ会場じゃないの?」

奈緒「ライブ会場じゃないよ! おかしいだろ、そんな名前のライブ会場!!」

凛「鎌倉バクフとか」

奈緒「無理矢理それっぽくするなよ!」

加蓮「BAKUFU鎌倉」

奈緒「ありそうな気がしてくるだろ、やめろよ!!!」

P「奈緒は配役に問題があるって言うんだな」

奈緒「そうだよ」

凛「なんで?」

奈緒「あのさ、頼朝と義経は兄弟なんだけどさ」

加蓮「じゃあ美嘉ちゃんと莉嘉ちゃんにピッタリじゃない」

奈緒「だから! 最初は仲が良かったんだけど、段々と険悪になっていくんだよ」

P「ちなみに梶原景時役は、みりあだ」

奈緒「やめろおーーー!!!」

凛「なにをそんなに騒いでるの?」

奈緒「ちょっとPさん、具体的にどんなドラマなのか、ちょっと見せてみてくれよ。あたしが解説入れて、凛と加蓮にどのくらいヤバい話なのか教えるから」

P「うむ。物語は平清盛(たいらのきよもり)が源氏の棟梁……つまり一番偉い人だった源義朝を倒して武家のトップに立ったところから始まる」

奈緒「平治の乱だな」

加蓮「奈緒、歴史に詳しいの?」

奈緒「歴史というか、このあたりは人形歴史スペクタクル『平家物語』って作品があってさ!」

凛「なるほど、アニメか」

奈緒「アニメじゃなくて人形劇なんだけど、もうメチャメチャ面白いんだよ! それに2022年はアニメで平家物語もやるし、予習はバッチリだからな!」

加蓮「それで今回は、どんなドラマなの?」

P「清盛という人は、武士として初めて太政大臣にったぐらい政治的能力もあり、武家の頭領になったわけだから武にも秀でて、当時の中国だった宋の国とも貿易を始めたり経済にも明るいすごい人物でな」

加蓮「そんなすごい人、誰が演じるの?」

奈緒「政治家で武士で商人で……」

凛「あ、わかった」

奈緒「え? 誰だよ?」

凛「つまりカツでチーズでカレーみたいな……」

加蓮「なるほど」

P「そう、ギャルで社長でアイドルの……」

桐生つかさ「源氏の頭領は倒したし、マジ天下はアタシたちのモノってカンジ? ヤバくない?」

P「源氏の棟梁である義朝を、複雑な政治情勢を制して倒した平家の棟梁清盛ではあったが、ここでひとつの問題が持ち上がる」

つかさ「しかしなー。義朝の御曹司つまり源氏の嫡流である、源頼朝……捕らえたはいいけどどうすっかなー……やっぱ禍根は断つべきかな……」

?「お待ちなさい!」


加蓮「え? 誰、誰? 今、止めにはいったの?」

凛「禍根を断つ……ってつまり、殺しちゃおうってことだよね?」

奈緒「ああ。源氏の生き残りがいると、またいずれ平家に敵対してくるんじゃないか、って不安があったんだよ。まあその不安は的中するんだけど」

P「それはまた後のことになるが、頼朝つまり美嘉が演じる役の命を救おうとしたのが……」

クラリス「戦いは既に終わりました。この上、人の命を奪うなどあってはならないことです。み仏もお許しにはなりませんよ」アーメン

つかさ「こ、これはお義母さま……」


凛「お義母さま?」

P「そう、クラリス演じるこの女性は清盛の父の正室つまり正妻である、藤原有信の娘こと宗子。この時はもう出家していて池禅尼(いけのぜんに)だ。清盛からは義母の関係になる」

加蓮「出家って? 家出とは違うの?」

奈緒「違うよ! 旦那さんが亡くなったから、髪を切って尼さんになるってことかな」

P「この池禅尼が、頼朝の命を奪うことに大反対をした」


つかさ「けど、もしも将来、頼朝が……」

クラリス「都から遠いところに追放し、その上で監視をつければ良いのです。なにも命を奪うことはないではないですか」

つかさ「うーん……でも万が一ってこともあるわけじゃない? 失敗は成功の母ってゆーし、この負けを源氏が糧にしてさ」

クラリス「命だけは助けてあげなさい」

つかさ「でも……」

クラリス「……そうですか、わかりました」

つかさ「え? わかってくれたの?」

クラリス「この池禅尼、あなたが頼朝の命を助けてくれるまで……断食をします!」

つかさ「がっくぜえーん! え? あ、あの腹ぺこで有名なお義母さまが断食を!?」

凛「これ本当にこんなやりとりがあったの?」

奈緒「こんなだったかはともかく、池禅尼が頼朝の助命嘆願の為に断食をしたのは本当なんだよな」

加蓮「クラリスさん、アタシが勢いで頼んだポテトを手伝って軽く片づけてくれたりするぐらい食べる人なのに、断食なんて大丈夫?」

P「この断食はすさまじくてな」


つかさ「さーて、今日も朝からチーズカツカレー食べてお仕事がんばるかなー♪」

クラリス「おはようございます」キュルルルル

つかさ「うおわっ! こ、これはお義母さま……んっ? なんの音コレ?」

クラリス「恥ずかしながら私のおなかの音です」グギュルルルル

つかさ「あの、断食はもうやめたら……」

クラリス「では頼朝の命、助けてくれますか?」グー

つかさ「いやーそれはちょっと」

クラリス「……」ギュイーンギュインギュイーングルルルルルル

つかさ「そ、そのバイクみたいな腹の音、ホントに大丈夫なのかよそれ」

クラリス「頼朝の命、助けてくれるまで私は断食を続けます!」ギュンギュンギュンギュイーンギュインギュイーン

つかさ「あのーアタシこれからモーニングタイムなんだけど」

クラリス「どうぞ私に構わず、お召し上がりください」ドルッドドドドルッドドド

つかさ「そ、そう? じゃあ失礼して」アーン

クラリス「……」パララパララパララパララパラリラパラリララー

つかさ「そのお腹の音、目茶苦茶気になるんだけど!」

クラリス「……」ドドドドドドドドドドドドド

つかさ「ジョジョ立ちはやめろって、ジョジョ立ちは! あーもうわかった。助けるって、頼朝」

クラリス「本当ですか!」

つかさ「その代わり、伊豆に流すからな。そんで北条一族に監視させっから」

クラリス「よろしいですとも。み仏のご加護がありますように」アーメン

つかさ「じゃあこれで心置きなくチーズカツカレーを……あれ?」

クラリス「ごちそうさまでした」アーメン

つかさ「……」

P「こうして美嘉こと源頼朝は伊豆に流されることになったんだ」

凛「じゃあいよいよ美嘉の登場だね」

P「ああ。当時の伊豆の国は別段田舎というわけではなかったが、やはり京の都からは距離があった。そこへ京育ちの源氏の御曹司が流人とはいえやって来ることになったわけだ」

奈緒「頼朝って美男子で、和歌を詠んだりできる教養もあって、それでもって弓矢の腕も良かったらしいんだよな?」

加蓮「そんでもって源氏の御曹司……ってものすごいチートじゃない?」

P「じゃあ舞台は伊豆に移動するぞ。番組ナビゲーター役の保奈美、頼む」

加蓮「え? 保奈美ちゃん?」

凛「手に持ってる楽器は……なに?」

奈緒「これが琵琶だよ。保奈美ちゃんが、琵琶法師の衣装でナレーションやナビゲーションをしてくれるのか」

西川保奈美「そうなんです。それではみなさん。次なる舞台の地、1160年頃の伊豆に、行ってらっしゃい」ベベン

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

加蓮「うわ、いい声」

奥山沙織「あれが源氏の御曹司の頼朝が。あんたきれいな服、見だごどねぁね。メイクもなに使ったらあんたにビシッど決まるんだべが?」

工藤忍「そったのんきなごどしゃべってぢゃまいねよ。わんどはあの頼朝ば監視すて、何かがあった時ゃ、都の平家さ報告すねばまいねんだはんで」


奈緒「いや待て待て待て! 沙織さんと忍ちゃんはこれ、誰の役なんだよ!!」

P「沙織が北条宗時(むねとき)で、忍はその弟の義時(よしとき)だが?」

奈緒「なんであんなに訛ってるんだよ! そもそも流されたのは伊豆なのに、なんで東北訛りになってるんだよ!!」

凛「プロデューサーが、さっき伊豆の国は京の都からは距離があった、って言ったから?」

加蓮「伊豆って京からどのくらい離れてるの?」

奈緒「京から伊豆まで馬で10日かかった、と当時の書物には書かれてるみたいだな」

凛「けっこう離れてたんだ」

加蓮「この兄弟が、美嘉ちゃんを監視する役割なの?」

P「そう。しかし実は北条氏一族も困っていて」

沙織「何かがあったら、って何があったら報告すればええのがな?」

忍「それは……どうなんだびょん?」

沙織「例えば他の源氏とか東国の武士ば集めで、頼朝が挙兵どがしたどしてもだよ、討ぢ取ってしまってもえのがな?」

忍「いやそれは……そもそもわんど、頼朝さ監視すろって命令されでらだげで、命取れども取るなども命令されではいねえす……」

城ヶ崎美嘉「やほー★」

沙織「きゃっ!」

忍「あ、よ、頼朝……」

美嘉「お世話になるみたいで、これからよろしくね★」

沙織「あ、ええど……流人どはいっても、あんだは清和天皇の血ばひく源氏の御曹司。監視はさせでもらうんだども、不自由ばさせねぁがら」

美嘉「おけまる★」キラッ!

沙織(なんかこのふと……キラキラしてら。なんだべこの雰囲気)

忍(都会……じゃなぐで都の貴人ってみんなこった風なのがな……憧れでまるな)

P「伊豆の国に入った頼朝は、次第にお目付役である北条家から尊崇の目で見られるようになった。頼朝の人品のなせるわざだな」

加蓮「さっすが美嘉ちゃん」

沙織「それで? 頼朝は、なにすてるの?」

忍「うん。毎日、書物を読んだり時々鷹狩りとかして暮らしてるよ」

沙織「義時!? その言葉遣いはどうしたの!?」

忍「あ、わかっちゃった? 実は最近、頼朝さんに都会の喋り方を教わってさ」

沙織「よぐ見れば着でるものも!」

忍「あ、これ? いや、頼朝さんがさ」


美嘉「レディース用のアウターも、やっぱりおしゃれに着こなしたいじゃない?」

忍「あ、そそそ、んだの。あるよねそった時」

美嘉「でもアウターって種類がいっぱいあってどれがいいのか分からないってことない?」

忍(アウターってなにがな? 直垂のごどがな? 狩衣?)

美嘉「すっぽりと足元まで隠してくれるロングコートは、真冬でも暖かく便利なアイテムなんだよね。春や秋であれば、トレンチコートも今年は長めのものがトレンドだし、ロングコートは、縦のラインが強調されるので大人っぽく上品な着こなしを簡単に作ることができるんだよ。それにブラウスやスカート、ニットといった女性らしさ満点のコーデにプラスすれば、王道の女性らしいコーディネートになるし、インナーやボトムスを敢えてボーイッシュなアイテムで作って、ロングコートでおしとやかさをプラスするのもバランスが取れるのでおすすめかな★」

忍(言葉の意味はわがねばって、とにがぐすごぇなあ頼朝は)

美嘉「そういえば義時さ」

忍「え?」

美嘉「そのメイク前から気になってたんだけど。義時の場合アイラインはね、こう黒目の上部分を太く強調すると、瞳の縦幅が大きく見えてスッキリ&パッチリした印象になると思うよ。こう……こう、ね。それにリキッドアイライナー以外にも、こっちの密着力が高く落ちにくいジェルアイライナーもおすすめだよ★ ほら、鏡見て。鏡★」

忍「わい……? こぃがわー?」

美嘉「義時は元がいいんだから、もっとメイクにも気をつかった方がいいよ?」

忍「頼朝さん、こぃがら色々教えでけ!」ゲザ

忍「ってことがあってね」

沙織「こんなごど、都の平家になんて言って報告すればええの!?」

忍「あ、都? 私、行こうか? 今なら私、都でも通用するし」グーパン

沙織「報告でぎねぁっつってらの! もう……頭の痛ぇごどばりだわ」

忍「そういえば姉上のことはどうするの?」

沙織「そのごどよ……どうしたものがしら……困った妹ね」


加蓮「姉上? 妹?」

奈緒「宗時にとっては妹、義時にとっては姉となる姫……北条政子だよ」

凛「なんか聞いたことあるかも」

奈緒「教科書にも載ってる人物だからな。その意味では、兄弟である北条宗時や北条義時よりも有名人かもな」

P「この時代、姫は政略結婚の対象で家と家、一族と一族を結びつける存在だったんだが北条政子は……」

佐久間まゆ「いやですよぉ。まゆ、いつか出会う運命の人が現れるまで結婚はしませんからねぇ」

沙織「いや、そっただことでは困るって」

忍「北条一族の発展と繁栄のために、お願いだから有力な家へ嫁いで欲しいの」

まゆ「いやですよぉ」


凛「あのさ、まゆが演じてるのは北条政子なんだよね?」

加蓮「自分のこと、まゆって呼んじゃってるけどいいの?」

P「実は北条政子の本名がなんだったのかは、わかってないんだ」

凛「え!?」

奈緒「政子って名前は、江戸から明治時代ぐらいに呼ばれ始めた名前で、どうも本当の名前じゃないらしいんだよな」

加蓮「本当の名前じゃないって、教科書にも載るような人なのに!?」

奈緒「忌み名といって、この頃の女性は世間に本名を名乗ったりしないらしいんだ。それは、本名を知られると霊的に攻撃されたりするって思想かららしいんだけど」

P「わかりやすく言うと、本名はパスワードでそれを知られるっていうのはパスワードがネットに流出すること……って感じだ」

凛「なるほど、ちょっとわかったかも」

加蓮「じゃあ政子さんの本名もわかってないんだ」

P「なのでここでは通名は北条政子だが、一人称はまゆでいく」

奈緒「いいのかよ、それ……」

まゆ「まゆはぁ、運命の人に出会うまで誰ともおつき合いはしませんからねぇ」

美嘉「はろー★」

まゆ「!」

美嘉「あれ? 誰だっけ?」

まゆ「……うふ」

美嘉「?」

まゆ「運命の人、見つけちゃいましたぁ////」

沙織「えええっっっ!?」

忍「いや、さすがにそれは……」

まゆ「お名前を、聞かせてもらってもいいですかぁ?」

美嘉「アタシ? アタシは源頼朝。あ、もしかして美人で有名な北条の政子姫? 本当に噂通りの美人だね★」

まゆ「まあ、それで婚礼はいつにしますかぁ?」

美嘉「え?」

沙織「駄目駄目駄目!!!」

忍「私たち北条氏は一門ではないけど平家の血筋、その北条氏の姫が源氏の御曹司と恋仲になるなんて……」

美嘉「アタシは気にしないけど?」

沙織「わだすが気にするんだって! 絶対にだみだんてね、政子」

忍「姉上、都の平家一門に知られたら北条は敵とみなされて滅ぼされてしまうかも知れないんだよ!?」

まゆ「頼朝さまぁ」

美嘉「政子は可愛いなあ」

沙織「話を聞げ、って!」

忍「頼朝さんだけは駄目だって!」

沙織「よりにもよって、源氏ん御曹司と結婚はさせられんど」

忍「と言っても、どうするの兄上?」

沙織「実は政子は、伊豆目代の山木兼隆と結婚させようち思うちょっと」

忍「伊豆目代の山木……平家にかなり近い血筋だから、それはその婚儀がまとまれば北条は安泰だけど、肝心の姉上があれじゃあ」

沙織「無理矢理んでも……手足と口を縛って箱にとじ込めて婚礼に送っことにすっわ。婚儀が終わればもうどうにもできんやろ、政子も」

忍「縛って箱にとじ込めて、って……誰がそれをやるの!?」

沙織「義時、頼んだでね」ポン

忍「えー! 私ーー!?」

まゆ「ムー!!!」

忍「山木の家に着いて婚礼が終わればほどいてくれるから、それまでおとなしくしていて! お願い!!」

まゆ「ムー!!!」

忍「箱に入れて背負って……と、うわめっちゃ箱の中からカリカリしてる……ごめんね姉上。さあ、山木兼隆の領地へ!」

まゆ「ムー!!!」


忍「ありがとうございます。Uber伊ー豆です、花嫁をお届けに参りました。ここ置きますね。あ、生モノなんで本日中に婚礼にしてくださいね。それじゃあここに花押を……はい、ありがとうございましたー!」

忍「ふう。今夜には婚礼だろうし、姉上には悪いことしたけどさすがに頼朝さんは……源氏の御曹司と北条の姫は結婚させられないから。ごめんね」

保奈美「その夜 嵐となった頼朝が済む山中の家」ベンベンベン


忍「というわけで、姉上は山木兼隆と今頃婚礼の最中のはずなんだ」

美嘉「……そう。流人の身のアタシにはどうすることも……」

忍「や、やっぱり頼朝さんは姉上のこと、真剣に好……」

ドンドンドン

美嘉「? 誰かな?」

忍「こんな夜更けの嵐の日に、山の中に……」

ドンドンドン

忍「はいはーい。どなたですか……って、ええっ!?」

まゆ「頼朝さまぁ」

美嘉「政子! どうして? 山木へ嫁いだんじゃ……」

まゆ「婚礼の前に帰ってきちゃいましたぁ」

忍「帰ってきちゃいました、って……あれだけきつく縛って、箱に詰めて、しかもこの嵐の夜中の山道を……あ」

忍(姉上、びしょ濡れの上に手も足も傷だらけで……)

美嘉「よく戻ってきてくれたね。もう離さないから」

まゆ「あ、頼朝さま。まゆ、泥や血で今汚れてて……」

美嘉「政子!」ギュッ

まゆ「……頼朝さまぁ!」ギュッ

忍「……」

忍(良かったね。姉上……)

沙織「いや良うなかって。もう一回、山木へ政子を送りなおさんな!」

忍「無駄ですよ、兄上」

沙織「え?」

忍「2人は伊豆山権現に預けてきたから」

沙織「伊豆山権現って、あそこは僧兵ん力が強かで……」

忍「兄上でも手が出せないでしょ?」


奈緒「うわー抱き合って……うわー! す、すすす、すごいな!!」

加蓮「縛られて閉じ込められて、それでも明かりもない嵐の山に帰ってくるとか、すごいね」

凛「うん。でも、まゆならやりそう……かな」

加蓮「シンデレラガールズのプリンセス天功だ」

奈緒「今と違って明かりもない、嵐の夜は怖かったろうなあ」

凛「だから義時も、2人を応援してくれるようになったんだね」

加蓮「2人はこの後もずっと伊豆山権現にいたの?」

P「いや、しばらくすると北条の館に戻ってきた」

沙織「絶対に2人ん仲は認めんでね、わだすは!」

まゆ「叔父上、大きな声を出さないでくださいねぇ」

沙織「え?」

まゆ「って、この子が言ってますよぉ」サスサス

沙織「お腹をさすて……まさか、あ、あかちゃん……が?」

美嘉「いやー……あはは★」

忍「うわあ、良かったね……って兄上……兄上?」

美嘉「立ったまま気を失ってるみたいだね」

まゆ「あらあらぁ、叔父上はあなたの存在を認めたくないみたいですねぇ」ナデナデ

沙織「わ」

忍「あ、気づいた」

沙織「わだすは、絶対に認めもはんでね!!!」

保奈美「それから8ヶ月後」ベベン


沙織「おー、よしよし。大姫はむぜねぇ。ほーら、叔父上ちゃまですどお」

大姫「キヤッキャッ」ニコニコ

忍「大姫が生まれたら、コロッと変わるんだもんなあ兄上」

沙織「あはは……なあ義時、わだすは決めたじゃ」

忍「なにを?」

沙織「北条は、頼朝どのにお味方いたす。今後は源氏再興に力を貸し、目指すは打倒平家じゃ」

忍「兄上……ついに決意を」

美嘉「ありがとうございます」

まゆ「よかったですねぇ頼朝さまぁ。大姫ぇ」

奈緒「こうして平家の血筋であった北条家は頼朝を助け、打倒平家を目指すことになったんだ」

凛「結局全部、つかさ……清盛が心配してた通りになったんだ」

奈緒「そうなるよな。でも」

加蓮「え?」

奈緒「このことは、平家にはすぐに伝わらなかった」

加蓮「まあ監視役が北条家なんだし、その北条家が黙ってたらわからないか」

P「そして頼朝の決起もまだ先のこととなる」

凛「ここからすぐに、都を目指すわけじゃないんだ」

奈緒「さて、じゃあもう一人の主人公の登場だな」

加蓮「それって……そうか!」

奈緒「池禅尼が頼朝の助命をしてくれたことで助かった人が頼朝以外にもいる」

凛「もうわかった。義経だね」

奈緒「そう。兄で源氏の頭領を継ぐ立場の頼朝ですら許されたんだから、弟も自然な流れで命は救われることになった」

加蓮「頼朝こと美嘉ちゃんは伊豆に流されてたけど、義経こと莉嘉ちゃんはどこに流されたの?」

奈緒「義経というかこの時はまだ牛若丸と呼ばれてたんだけど、彼は京都のお寺に預けられたんだ」

加蓮「え? 京にいさせてもらえたんだ」

P「といっても寺に入れられたということは、俗世とは縁を切った……ことにされたわけだ」

凛「されたわけだ……ってもしかして頼朝みたいに義経も、源氏を率いて決起することになるの?」

P「まあそこは、おいおい見ていくことになる」

加蓮「じゃあ次の舞台は、京の都へ行ってらっしゃい。だね?」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

凛「本当にいい声だよね」

莉嘉「え? アタシお寺に入れられるの?」

つかさ「そう。僧になるんだぞ……You are my僧! 僧! いつも監視の目ある♪ ゆずれないよこの条件だけは♪」

莉嘉「えー。アタシ、父上やお姉ちゃんみたいな立派な"武士(ギャル)"になりたい」

つかさ「だから! 源氏はもう"武家(ギャルサー)"としての身分じゃねーから。な、大人しく鞍馬山の鞍馬寺に入ったら命は助けてやるから」

莉嘉「山ー? アタシ行きたくない」

つかさ「……山にはカブトムシとかいっぱいいるぞ」

莉嘉「行く☆」

莉嘉「とは言ったけど鞍馬山ってこんな大変なトコなの? 朝からずっと登ってきてもうアタシ疲れたよー!」

鞍馬天狗「ちょっと待つっス」


奈緒「いや誰だかわかるけど誰なんだよ、このジャージ着て天狗のお面かぶってるのは!?」

凛「? ちゃんと鞍馬天狗ってテロップ出てたよ?」

加蓮「演じてるのは、比奈さんだよね?」

奈緒「2人とも、こういう時だけ理解が早すぎる!!」


莉嘉「? あなた誰?」

荒木比奈「清盛に命じられた牛若丸で間違いないな?」

莉嘉「え? うん」

比奈「牛若丸、お前は兄が打倒平家を掲げて挙兵したらどうする?」

莉嘉「アタシもお姉ちゃんのもとに馳せ参じる☆」

比奈「判断が速い!」ピンポンピンポンピンポーン

莉嘉「当然だよ。アタシ、まだ会ったことないけどお姉ちゃんのこと大好きだもん☆ それよりあなた誰?」

比奈「アタシはこの鞍馬山の鞍馬天狗っス。源氏の御曹司であるあなたに、武芸を教えるために待ってたっス」

莉嘉「え? じゃあアタシを“武士(ギャル)”にしてくれるの?」

比奈「そうっス。あなたは源氏嫡流の血筋ゆえ、“武士(ギャル)”としての才能に恵まれてるっス。それをアタシが磨いてあげるっス」

莉嘉「やったー☆ あ、でも大変そうなのはヤだよ?」

比奈「大丈夫っス。ここ鞍馬山は個別指導でみるみる成績が上がると評判っス」

莉嘉「成績?」

比奈「今ならキャンペーンで、入会金は無料のうえ受講生を紹介してくれたらキャッシュバックもあるっス」

莉嘉「キャンペーン? 受講生? キャッシュバック?」

比奈「ともかく、アタシが教えればあなたのギャル力はめちゃくちゃ上がるっスから」

莉嘉「うん☆ よろしくー☆」

保奈美「こうして牛若丸は、鞍馬山で武士としての力すなわちギャル力を磨いていったのです」ベンベン

凛「この天狗って、本当に天狗なの?」

奈緒「色んな説があるけど、今回はどの説なんだろう?」

加蓮「どうなのPさん」

P「それはおいおいわかる。それからしばらくして、京の都で事件が起こる」

加蓮「事件?」


「聞いたか? 最近、洛中に現れる辻斬りの話」

「ああ、なんでも本を持ってるとおそわれて、その本を奪われちゃうそうだな」

「五条大橋の辺りに出没するらしいぜ」


鷺沢文香「本……もっと本を……本を……」


莉嘉「ふー。久々の都の洛中であちこちのお店からシール集めてたら遅くなっちゃったな。でもシール帳がシールでいっぱいだよ☆」

文香「本……」

莉嘉「? 誰?」

文香「その本、こちらに渡して……ください」

莉嘉「え? これ? これはダメだよ、アタシの大事な……」

文香「渡さないと言うのなら……力ずくで……」

莉嘉「うわっ! す、すごい力!!」

文香「本を求めて倒した相手は……既に、九百九十九人。あなたで千人目でその本が千冊目……もっと本を……私に本を……」

莉嘉「この人、見た目は華奢なのにすごい力!!! こうなったら……えいやっ☆」

文香「! 一瞬でこんな距離を跳ぶなんて……何者!?」

莉嘉「えい! えい!! えいっ!!!」

文香「す、すごい早さで移動して……ど、どこに……」

莉嘉「そこだあっ☆」

文香「きゃっ! ……参りました。とうてい私の敵う相手ではありませんでした……あなた様はいったい……」

莉嘉「アタシ? アタシは牛若丸☆ 今はまだ修行中の身だけど、お姉ちゃんが決起したらアタシも一緒に“武士(ギャル)”として戦うんだ」

文香「源義朝の八男の名が確か、九郎牛若……では源氏の御曹司。どうりで……その戦い、私も連れて行っていただけませんか?」

莉嘉「え?」

文香「私は武蔵坊弁慶。あなた様の家来になります」

莉嘉「家来? アタシの? アタシはそんなのいらない」

文香「そんな……」

莉嘉「家来じゃなくて、仲間ならいいよ☆」

文香「家来ではなく……仲間……?」

莉嘉「うん! 一緒に平家と戦おうよ、それならおっけー☆」

文香「なんという本の分厚さ……いえ、器の大きさ。わかりました、あなたについて行きます」

比奈「お見事っス」

莉嘉「あ、天狗さん」

比奈「鞍馬山での修行、こうした力のある部下……いや仲間を得たことで終了っス。もう教えることはないっス」

莉嘉「え?」

比奈「これからあなたは、奥州に行くといいっス」

莉嘉「欧州? ヨーロッパ?」

文香「奥州とは東北の地……なるほど、話は見えました。あなたは奥州の藤原氏の者ですね?」

比奈「そうっス。源氏の御曹司を鍛え、平家と戦ってもらいたいんス」

莉嘉「よくわからないけど、アタシ実力がついたならお姉ちゃんのいる伊豆に行きたい!」

比奈「それはまだ早いっス。頼朝様がお立ちになられた時、1人じゃなくてこの弁慶みたいな仲間を他にもたくさん引き連れて行った方が、頼朝様も喜ばれるはずっス」

莉嘉「えー。でも……」

文香「東北には……大きなカブトムシがたくさんいますよ」

莉嘉「行く☆」

奈緒「なるほど今回のお話の鞍馬天狗は、奥州から使わされた説か」

凛「奥州の藤原氏っていうのも、教科書で読んだ気がするね」

加蓮「この時代の有力な勢力だったんだ」

P「藤原氏は平家でも源氏でもないから、このまま平家だけの世になるとやがて平家から狙われるという危機感があった」

奈緒「残る武家勢力で有力なのが藤原氏だったわけだもんな」

凛「それで莉嘉を味方にしようと動いたんだ」

加蓮「じゃあ今度の舞台は東北だね?」

奈緒「それではさっそく、舞台は平泉へ行ってらっしゃい」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

奈緒「いやホントいい声だよな」

土屋亜子
「おカネおカネ♪ おカネおカネ♪
 おカネおカネおカネ~♪

 お金さえあれば~♪
 何でも手に入る~♪
 刀♪ 甲冑♪ 立派な馬や馬具~♪
 館♪ 荘園♪ 寄進の立派な寺社~♪
 牛車御輿自家用遣宋使船~♪
 強飯猪の肉醍醐に蘇~♪

 お金さえあれば~♪
 幸せなれる~♪
 我ら奥州藤原氏一族~♪
 オーレイ♪」

莉嘉「うわすごい。このお堂、全部黄金でできている」

文香「奥州では砂金がとれるとは聞いていましたが、これほどとは……」

亜子「や、どーもどーも。ようこそ来てくれたなあ、アタシこの奥州を支配する藤原秀衡(ひでひら)やで。よろしゅうな」


奈緒「いやもうあんまりツッこむ気はないんだけどさ、伊豆の北条氏が東北弁だったのに東北の藤原氏が関西弁なの、なんか頭がバグるよな」

凛「そう?」

加蓮「いつもの亜子じゃん」

奈緒「2人ともこういうとこ、柔軟だよな……」

亜子「奥州は、黄金だけやあらへんで。武士にとって大事なモンがあるんや」

莉嘉「武士にとって大事なもの?」

文香「“馬(ウマ娘)”……ですか?」

亜子「せや! 奥州は“最上名馬(SSRウマ娘)”の産地なんや」

利嘉「そういえば来る途中で見かけた“馬(ウマ娘)”、みんなすごく立派だった」

亜子「ちなみに“馬(ウマ娘)”に乗ったことは?」

利嘉「まだない」

亜子「牛若丸ちゃん。いや元服して義経ちゃん、ここ奥州の馬で“馬術(ウマ娘プリティーダービー)”の腕を鍛えて、一流の“競合他社ゲームプレイヤー(トレーナー)”……やなかった。一流の“武士(ギャル)”になるとエエから」

莉嘉「うん☆ アタシ、がんばる!」

亜子「ではアタシが“馬術(ウマ娘プリティーダービー)”の基本を、教えるで。まずは“選馬(リセマラ)”からや!」

利嘉「“選馬(リセマラ)”?」

亜子「エエ“馬(ウマ娘)”を選んで“愛馬(推しウマ娘)”にするんが兎にも角にも先決や」

莉嘉「それってアタシが選んでいいの?」

亜子「せやで。最初は“最上馬(SSR)”や“良馬(SR)”を引くまで何回選びなおしてもエエから」

莉嘉「じゃあアタシ、この子!」

亜子「へ? いやリセマラいうんはそういうんとちゃうで。それにこの“馬(ウマ娘)”は、実力はあるんやけどどうにも垢抜けへんトコがあってな……あ?」

莉嘉「アタシ、源義経。よろしくね☆」

“太夫黒(ユキノビジン)”『よろしく』

文香「今、この“馬(ウマ娘)”、しゃべっ……た?」

亜子「ほんまかいな!? 義経ちゃん、アンタ本当にすごい“武士(ギャル)”やで。エエわ、その“馬(ウマ娘)”アンタのモンや」

莉嘉「えへへー☆」

保奈美「こうして九郎牛若丸は、奥州で元服し名を改め源九郎義経と名を変え、この地で武士としての実力を磨いていくことになるのです」ベンベン

加蓮「ねえねえPさん、これ面白いよ。私も出たいよ。出してよ」

P「いいぞ」

奈緒「いいのかよ!?」

P「まだ撮影途中だし、別にいいぞ。加蓮は……そうだな、平知盛(とももり)役はどうだ?」

奈緒「ええっ!? 新中納言、加蓮がやるのかよ!!」

凛「有名な人なの?」

奈緒「これから先の平家側の、中心的人物だよ」

P「平知盛は、相国入道……つまり平清盛の最愛の子と呼ばれていて、要するにそれだけ清盛はこの知盛に期待をかけていたんだ」

凛「奈緒が言っていた、新中納言っていうのは?」

奈緒「この時代、女性が本名で呼ばれなかったように男性も名前じゃなくて、官位や官職で呼ばれるのが普通だったんだけどさ」

加蓮「常務とか専務って呼ばれるみたいに?」

P「そう。この時、中納言の役職に四人就いていて、しかもそれが全員平家の人間だったから『中納言』とか『平家の中納言』って言われても、誰のことかわからなくなる」

奈緒「それで一番最近、中納言になったこの知盛は新中納言と呼ばれていたんだ」

凛「なるほど、中納言ね」

奈緒「凛、中納言がどのぐらい偉い人なのかわかってるのか?」

凛「当然だよ。中納言は少納言の上で、大納言の下の位でしょ?」

奈緒「そうだけど、そういうことじゃなくてさ!」

P「今の感覚で言うと中納言は……大臣クラスかな」

凛「えっ? 大臣? 加蓮、大丈夫!?」

奈緒「具体的な偉さがわかって、急に不安になったな凛」

加蓮「だいじょーぶだよ。アタシにまかせてって」

奈緒「えー、加蓮が新中納言かよー。いいないいなー。Pさんあたしもなんかやらせてくれよー」

凛「うん。私もやりたい」

P「よし。じゃあ、凛は平重盛で奈緒は平基盛だ」

加蓮「父上、お呼びですか?」

つかさ「とーもーもーりー! 会いたかったー!! うんもう、とーーーもーーーもーーーりーーー!!!」ナデナデナデナデ

加蓮「はいはい、わかりましたから。それで今日はどのようなご用で?」

つかさ「今日もメイク、バッチリじゃん。もうほんと目に入れても痛くないわー。入れようか? とーもーもーりー!」ナデナデナデナデナデナデナデナデ

加蓮「用件は!?」

つかさ「あーん。ちょっと怒った顔も、超キメキメ。いや、用は平家の今後についてさあ」

加蓮「そういうことは、父上の跡継ぎで一族の宗主である宗盛(むねもり)兄様に……」

つかさ「いや、もちろんさ。事の順序はそうだけどさ。そういう序列的なことはキチンとした上で、大事なことは知盛に託しておきたいんだよ」

加蓮「まあ……宗盛兄様も本来は三男ですもんね。平家一門も何があるかはわからないとこあるよね」

保奈美「この時清盛の長男、平重盛。そして次男の平基盛は既にこの世を去っており、三男の宗盛が跡取りとなっていました」チーン


凛「ちょっと!」

奈緒「あんまり出番のない役でしかも、ナレ死かよ!」

P「すまん……加蓮を新中納言に推すのに、俺のツテとコネを全部使ってしまって……」

奈緒「いや、まだ撮影途中って言ってたじゃないか!!!」

凛「もう。こうなったら加蓮、私たちの分も大河ドラマ内で輝いてよ!?」

加蓮「任せて♪」

つかさ「宗盛もさあ、悪いやつでも無能でもないんだよ」

加蓮「そうだよね。細かい気遣いもできるし、みんなに優しく接してくれるし、調整能力はあるし」

つかさ「太平の世に生まれてたら、平家一門をうまくまとめていってくれるとは思うんだけどな」

加蓮「涙もろいのが玉に傷だよね」

つかさ「あとほら、デカいじゃん? 器というか、なんというか……」

加蓮「あー。おっきいよねえ、器というか……ん?」

つかさ「どこからともなく懐かしいヒット曲の歌声が……森口博子さんに寄せた歌声のこの曲は……」

加蓮「兄上のテーマ曲、夢がMORI MORI!」

有浦柑奈(“琵琶法師(シンガーソングライター)”)
「胸がMORI MORI てんこMORI MORI♪
 おさまりきらないほど♪
 胸がMORI MORI てんこMORI MORI♪
 今夜は胸がいっぱい♪」

?「とももりしゃあああん!」

つかさ「来たな。噂の主」

加蓮「会う度に泣かれるのはちょっと困るんだけどね」

大沼くるみ「知盛しゃん、ようこそおいでくだしゃいましたあ」

加蓮「うん。久しぶり、兄上」ジー

つかさ「元気そうで……なにより。うん」ジー

くるみ「?」

加蓮(やっぱ大きいよね)

つかさ(デカ過ぎんだろ……)

くるみ「知盛しゃん、どうかこれからもこの宗盛をしゃしゃえていってやってくだしゃい」

加蓮(平宗盛……名は体を表すって言うけど、ホント胸盛りってカンジ)

つかさ(平らなのに胸盛りとはこれいかに、ってカンジだよな)

くるみ「あの……知盛しゃん? 父上?」

加蓮「あ、う、うん。任せておいて」

つかさ「伊豆に流した頼朝に関しては北条からなんの報告もないんだけど、んー……どうなんだろな」

くるみ「東北の藤原氏の動きも気になりましゅ」

つかさ「だな。あそこは表向き平家一門に従順なんだけど、どうも怪しいんだよな」

くるみ「各地の平家に味方する者たちに、動静の報告をさせた方がいいと思いましゅ」

加蓮「そうとなったら早速。諸国の平家縁の者達に文を書かないとね。えーっと……あ、墨を摺ってなかったけど……いいか」グハッ

くるみ「知盛しゃん!」

加蓮「え?」ツー

つかさ「その吐血で文書くクセ、やめろって言ってるだろ。前から!」

くるみ「身体に悪いでしゅよぉ!」

加蓮「あー……う、うん。つい、ほら」

つかさ「知盛は頭はいいし、武芸にも秀でてるんだけど、身体は弱いからな。それが心配だよ」

加蓮「大丈夫だって。じゃあ文を……」グハッ

くるみ「知盛しゃん!!」

つかさ「大丈夫かな、平家のゆく末……」

森久保乃々「あ、あの、ちょっとご報告がある……んですけど」

つかさ「おお、維盛(これもり)じやねーか」

凛「乃々が出てきた! けど、維盛って?」

奈緒「平維盛は、清盛の長男である重盛の子供だから、清盛からは孫にあたる人物だな」

凛「重盛ってどこかで聞いたような……あれ? 私!?」

奈緒「そうだよ! 凛が演じる役だよ。まあ、ナレ死してたけどw」

P「ナレ死してたのは、奈緒もだけどなwww」

奈緒「Pさんの配役だろ!!!」

凛「乃々が私の子供役……がんばって!!」


加蓮「報告って?」

乃々「あの……以仁王(もちひとおう)が、お手紙を書いていまして……」

つかさ「へー。以仁王が手紙を」

くるみ「誰にでしゅか?」

乃々「誰に……というかですね」

加蓮「? 誰?」

乃々「特定の誰かだけ、ということではなくて……」

つかさ「まさか、維盛。以仁王が手紙を書いた相手、っていうのは……」

くるみ「え?」

加蓮「諸国の源氏の縁者に、決起を促す手紙を書いてるってこと!?」

凛「以仁王って誰?」

P「つかさ演じる清盛は、平家の政治力を万全にするために自分の娘を時の帝である高倉天皇に嫁がせていた」

凛「するとどうなるの?」

奈緒「清盛自身が時の天皇の義父になるんだよ。それに平家一門も、天皇と親戚になるわけだからそれが権威にもなる」

P「この清盛が自分の娘を入内、つまり天皇の奥さんにしたことで割を食ったのが以仁王だ。この方は高倉天皇の異母兄で、清盛が高倉天皇のバックについて、更にその子を天皇にしたことで、自分が天皇になることができなくなった」

凛「なるほど。それで自分が天皇になろうと、各地の源氏縁者に決起を促したんだね」

望月聖「おもちもちもちもちもちおもち~♪ 私は以仁王。この令旨を全国の源氏や東国武者のみなさんに届けてください、源行家」

一ノ瀬志希「かしこまり~にゃはは」

聖「私が帝となることができたあかつきには、協力してくださった"武士(ギャル)"のみなさんには“馬鈴薯蒸し潰し捏ね揚げ(コロッケ)”を恩賞としてさし上げますから!」

志希「いやあ~普通に所領とか官位の方がいいと思うよ?」

聖「ではそうします。"武士(ギャル)"のみなさんによろしく……あれ?」

シーン

聖「もういない……」

忍「頼朝さん! 以仁王様から文が届いてるよ」

美嘉「以仁王……後白河法王の皇子からなんの……」

まゆ「頼朝さぁん? なんて書いてあるんですかぁ?」

美嘉「……平家を倒せ、という令旨だよ」

忍「平家追討を!? じゃ、じゃじゃじゃ、じゃあ!!」

まゆ「ついに決起するんですかぁ!?」

美嘉「……ううん。行かないよ、アタシは」

志希「え? ……なんでなんで? 立って決起しちゃおうよ。あたしと共に源氏の世を作らない?」

美嘉「今はまだ、その時じゃない」


奈緒「安徳天皇が即位したことで、以仁王は天皇になることができなくなったから、この以仁王は、諸国の源氏に平家を倒せという令旨……つまり指示を出した。当然この令旨は頼朝にも届いた」

凛「安徳天皇は、つかさ演じる清盛がバックについてるから、源氏を頼ったんだね」

奈緒「ところがさっき見た通り、このことは平家に知られてしまって、以仁王は宇治で平家と戦うことになって敗死してしまう」

凛「じゃあ美嘉、決起しないで正解だったんだ」ピンポーン

P「ところが事態は、そう簡単には治まらなかった」

凛「え? どうなるの?」

奈緒「以仁王は敗れてしまったんだけど、平家を倒せという令旨を出しまくっていたことは平家に知れ渡ってしまったんだ」

P「これにより、頼朝は立場が危うくなる」

つかさ「以仁王は排除したけど、やっぱそうだよな。平家に対抗しようとすると、みんな源氏を頼るよなー……やっぱ源氏は倒さないと」

くるみ「どうしゅるんでしゅか?」

つかさ「とりあえず、以仁王の令旨を受け取った者は全員処罰な」

くるみ「はぁい」


忍「頼朝さんも、令旨を受け取ってたから……」

佐織「処分は免れないということに……」

美嘉「アタシだけならまだいいんだけど、令旨を受け取ってた源氏に心を寄せる人たちがアタシを頼ってきている……」

志希「あたしとかね~」

忍「行家さん……あなた、以仁王と一緒に戦ったんじゃなかったっけ?」

志希「途中で逃げ出して来ちゃった。にゃは」

沙織「……」ジロ

忍「それでどうするの、頼朝さん」

佐織「私たち北条はもう、頼朝さんとともにいくと決めてますけど」

美嘉「……このまま座っていても、平家から攻められるだけ。決起するしかないかな」

忍「おおっ!」

佐織「その言葉、待っていました!」

美嘉「東国の源氏に号令の文を出すよ。その上でアタシたちは平家一族、山木兼隆を討つ☆」

志希「やっちゃえ、やっちゃえ~」

沙織「……」ジロッ

加蓮「ねえねえ、山木兼隆ってどこかで聞いたような気がするんだけど」

凛「うん。えっと……あ、もしかしてまゆと結婚しそこなった」

奈緒「そう。婚礼からまゆが逃げ出してきたあの山木兼隆だよ」

P「北条一族も平家の一族ではあったんだけど、やはり末族で。それでそもそも宗時はより平家と縁を深めようと、最初に山木兼隆と政子を結婚させようとしてたんだ」

凛「じゃあこの山木兼隆って人は、まゆに逃げられて結婚ではきなかった上に、そのまゆと結婚した相手と戦うことになるの?」


まゆ「頼朝様ぁ。絶対に負けないでくださいねぇ」

美嘉「うん。それに……山木兼隆にはアタシも思うトコあるから」

まゆ「え?」

美嘉「政子の元フィアンセ、アタシが倒してくるよ」

まゆ「頼朝様ぁ////」


加蓮「こういうのいいなあ、ちょっと憧れるなあ」

奈緒「な! な!! なあ!!!」

凛「美嘉が演じてるんだけど、男らしいよね。当然、勝つんだよね? 頼朝は」

P「うむ。頼朝が決起したことで諸国の源氏ゆかりの武士が集まり、山木兼隆は倒されてしまう」

加蓮「じゃあここから美嘉ちゃんの連戦連勝の天下取りが始まるんだ」

奈緒「いやー……それが」

凛「え?」

P「頼朝はこの後、相模国……今の神奈川にいた平家の家臣、大庭一族に破れて敗走する」

加蓮「えー負けちゃうの?」

凛「加蓮は平家一門を演じてるのに、残念がるんだ」

加蓮「アタシ、美嘉ちゃん好きだもん」

奈緒「その美嘉だけど、敗走して山中に身を隠していた。平家側も必死で頼朝を探したんだけどその役目を担ったのが……梶原景時」

凛「あ、最初に奈緒とプロデューサーが言ってた」

赤城みりあ「視線関知いい感じ♪ うーん。ここにもいないかあ、カン違い。じゃあ次の……あれ? こんな山中に洞穴が。よーし、入ってみようっと」

美嘉「義時、戦いに敗れ宗時を亡くして……ごめんね」

忍「兄上は、いえ北条は頼朝さんに賭けたんです。それにまだ一戦負けただけ、最後に頼朝さんが天下を取れば、北条も勝ちです」

美嘉「……そうだね。ここから巻き返さないと……」

忍「あれ、そういえば行家さんは?」

美嘉「気がついたらいなかったよ。逃げちゃったのかもね」

忍「いつも気がつくと、いなくなるんだよね。あの人」

美嘉「私の叔父に当たる人ではあるけど、父上が清盛にやられた時も逃げちゃってたそうだからね。あの人……! 誰か来る!」

忍「平家側の者!?」

みりあ「おじゃましまーまさかこんな所に源氏の“棟梁(カリスマ)”はいないかな……あ!」

美嘉「……」

忍「……」

みりあ「……その白の“具足(ルーズソックス)”は源氏の……」

美嘉「……」

忍(いざとなったら、私が差し違えても……)

みりあ(この人が源氏の“棟梁(カリスマ)”頼朝……)

美嘉「……」ニコッ

みりあ(!!!)

みりあ「……ここには、だーれもいなかったなあ」

忍「え?」

みりあ「って、大庭様には言っておくね」

美嘉「それであなたは大丈夫なの?」

みりあ「うん。それでもしまた頼朝さんが戦えるようになったら、みりあを“家臣(いつメン)”にしてね」

美嘉「いいよ★」

みりあ「じゃあ……さよなら」

忍「た、助かったあ……」

美嘉「まだ会ったことないけど、アタシの弟もあんな感じなのかな」

忍「え?」

美嘉「ふふっ、なんでもない★ さあ、ここから巻き返すよ」

忍「はい!」

保奈美「この言葉通り、ほどなく梶原景時は大場の下を去り、頼朝の家臣として合流することになるのです」ベンベン

奈緒「頼朝こと美嘉は、ここから安房国(あわのくに)まで船で逃げる」

凛「安房国って、徳島県?」

P「それは阿波。安房国は今の千葉県南部だな」

奈緒「ここで頼朝は各地の源氏ゆかりの者に書状を送り、源氏の勢力が結集した」

加蓮「どんな勢力なの?」

奈緒「今の千葉県にいた上総氏や千葉氏に、神奈川の三浦氏とかだよ」

凛「へえ、今の千葉県に上総とか千葉って一族がいて、神奈川に三浦って一族がいたんだ」

加蓮「すごい偶然だよね」

奈緒「いや、逆だよ! 住んでる土地の名前を一族の名前にしたんだよ!!」

P「頼朝は鎌倉を拠点と定めて、武士を集めて勢力の地盤を整えた。後の鎌倉幕府の礎だな」

莉嘉「お姉ちゃんが決起した!? ホントに!?」

亜子「いや待ちや、義経ちゃん。まずはアタシの話を聞き」

莉嘉「えー、なに?」

亜子「アンタの兄の頼朝はんは今、鎌倉で地盤固めをしとる」

莉嘉「鎌倉だね? わかった!」

亜子「だから待ち、て。今はまだ行ったらアカン」

莉嘉「やだ!」

亜子「あんな、板東の武者たちは続々と頼朝はんに忠誠を誓うていっとる。けど、そうでない者もおる」

文香「常陸の佐竹……などですね」

亜子「せやで。あんな義経ちゃん、今平家は大軍を頼朝はんに差し向けようとしとる。佐竹らはあわよくば平家と呼応して、頼朝はんを挟撃して討つつもりなんや」

莉嘉「なら、なおのこと急いでお姉ちゃんを助けに行かないと!」

亜子「それで義経ちゃんまで死んでもうたら、源氏嫡流の血筋はどないなってしまうんや!」

文香「! 申し訳ありません……」

亜子「へ?」

文香「私はあなたを、機会があれば自分のいいように義経様を使う気ではないかと……疑っていました」

亜子「謝らんかてエエて。半分はそんな気やったし」

文香「まあ……!」

亜子「けど今はちゃうで。義経ちゃんを鍛えてて、ようわかったわ。あの八幡太郎義家の血筋は、伊達やないわ」

文香「義家様は、陸奥での戦いで有名ですから、あなたはよく……ご存じなのですね」

亜子「八幡太郎はおそろしや、ゆうてなあ」

莉嘉「あのー……もうアタシ、鎌倉に行ってもいい?」

亜子「だからアカンて。頼朝はんと義経ちゃん、2人とも平家と佐竹に挟まれたらどないすんねん!」

莉嘉「別にどうもしないよ?」

亜子「へぇ?」

莉嘉「その時は、一緒に戦って……戦って……戦って……もし負けちゃったらお姉ちゃんと一緒に死ぬ☆」

文香「!」

亜子「一緒に、て……死ぬ、て……あ、あんな義経ちゃん。死んだら終わりやないですかぁ?」

莉嘉「お姉ちゃんと一緒なら、それでアタシはいい☆」

文香「……ふ」

莉嘉「え?」

文香「うふふふふふふ。そうですね、死んだらその後どうなるかなど、死んでしまえばどうでもいいですものね」

亜子「んなアホな。死んで花実も咲くモンやないで?」

莉嘉「行くったら、行く☆」

亜子「アタシは許さへんで」クルッ

莉嘉「あれ……行っちゃった?」

文香「許さないけど、止めない……そういうことですよ。きっと」

莉嘉「そっか……今までありがとう。このご恩は、決して忘れないから☆」ペコリ

文香「では行きましょう……」

莉嘉「もうそろそろ鎌倉?」

文香「いいえ……ここはまだ、下野国……」

莉嘉「まだー……もう!」

文香「それにしても秀衡様、ああ言いながら私たちの手勢に……と、騎馬の武士を後から送ってくださったのには感謝……ですね」

莉嘉「最初、追っ手かと思って戦うとこだったよね☆ でもそっか、やっぱり仲間とか連れて行かないと会ってもらえないもんなんだ」

文香「手勢なり、手土産を持参は弓矢の家の習わしですから……ですがもう少しなにか、腕に覚えのある者でも加えたいですね……」

莉嘉「えー? 今からそんな人、探せないよ」

文香「いえ……下野国には確か、弓の腕で有名な一族がいたはず」

莉嘉「そうなの?」

文香「確か一族の名は……那須(なす)……」

水野翠「呼びましたか?」

莉嘉「え? あの、もしかして那須……さん?」

翠「そうです。弓にかけては並ぶ者なし、那須。私は資隆(すけたか)」

莉嘉「ホントに!? “僥倖(ラッキー)”アタシと一緒に平家を倒そうよ☆」

翠「……」

莉嘉「ダメ?」

翠「……いえ。あなた様は、源氏の方ですか?」

莉嘉「うん☆ アタシは頼朝お姉ちゃんの弟、義経☆」

翠「では源氏の御曹司……大変失礼をいたしました。私の息子が1人、既に富士川の源氏方に向かいました」

莉嘉「え? なんの話?」

翠「平家の官軍が頼朝征伐に出陣し、頼朝様も東国の武者を集めてもうすぐ合戦だと……違うのですか?」

莉嘉「もう始まるの?」

文香「急ぎませんと……!」

莉嘉「那須資隆さん、教えてくれてありがとう。じゃあ、アタシいそぐから!」

翠「あ……お、お待ちください!」

莉嘉「え?」

翠「私の息子を、郎党にお加え願えませんか」

莉嘉「え?」

文香「今ご子息は、富士川に向かわれた……と」

翠「その弟がおります」

福山舞「那須与一宗隆(むねたか)です。与一(よいち)とお呼びください。よろしくお願いします!」ペコッ

莉嘉「え? アタシも小柄だけど、まだ小さい」

文香「資隆様……失礼ですが、この子は……」

翠「心配は無用にございます。見た目で判断なされますな。私の息子たちの中で、一番の弓の射手がこの与一です」

莉嘉「11人も兄弟がいて、この子が一番すごいの!? うわあ!! アタシと一緒に平家を倒そうね☆」


凛「なんで兄弟の人数が11人って、莉嘉はすぐわかったの?」

奈緒「与一って名前は、11を意味してるからだよ」

加蓮「なんで?」

P「1から10までがひとまとまりとして、それにさらに1を与えるから……かな」

奈緒「まあだいたいこの頃の武士は、生まれた順に何々郎って名前をつけるから」

凛「えっ!?」

奈緒「なんだよ凛、急に」

凛「さっき亜子が源氏の誰だかのことを、八万太郎って言ってたよね!?」

加蓮「じゃあその人、八万男なの!? 八万人兄弟!?」

奈緒「八万太郎じゃないよ!! 八幡太郎だよ、源義家は!!」

加蓮「そういえば、私も気になってたんだけど」

P「なんだ?」

加蓮「莉嘉ちゃんの義経は、九郎って名乗ってたじゃない」

凛「うん。九郎牛若丸とか、九郎義経って」

加蓮「でも確か五条大橋のシーンで文香さんの弁慶が、義朝の八男の名前が九郎牛若とかって言ってたじゃない。あれ台本が間違ってるなら、早めにリテイク出した方がいいよ」

奈緒「いや、義経は八男で合ってる」

加蓮「え?」

凛「じゃあなんで、九郎なの?」

奈緒「頼朝や義経からは叔父さんにあたる人、つまりお父さんの弟だな、それに為朝(ためとも)って人がいたんだ」

P「有名な、鎮西八郎為朝だ」

加蓮「凛、知ってる?」

凛「全然」

奈緒「まあ、あたしも椿説弓張月でしか知らないしな」

P「歌舞伎の演目にあるんだが、とにかくものすごい豪傑で、ものすごい弓の射手だったんだ」

奈緒「で、その叔父さんとおんなじ八郎はちょっと恐れ多い、ってことで八郎は飛ばして九郎にしたらしいんだ」

保奈美「※諸説あります」

加蓮「でも義経も、後に名前が残るようなすごい武士になったんだから、八郎でも良かったかもね」

凛「まあ生まれた時にはまだ、その子がどんな大人になるかなんてわからなかっただろうから」

P「そうか、あれだ。九郎って名前をつけられたから義経は苦労するようになったのかもな。ははははは」

加蓮「……」

凛「……」

奈緒「……」

P「あ、あれ? よ、よし保奈美。物語に戻るぞ」

保奈美「……」

P「保奈美ー! 進行! ナビゲーション!」

保奈美「……それでは下野国那須の鷲子山上神社へ……行ってらっしゃい」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベン

加蓮「なんだか心なしか、声にハリがないよね……」

P「……」

莉嘉「うわ、風つよーい!」

文香「義経様、お気をつけてください……こんな崖の上でなにを……」

翠「与一の腕の程をお見せいたします。ここ鷲子山の崖より、私がまず矢を射ます。次いで与一が私の射たその矢を射落とします」

文香「え!? うった矢を射落とす……とは、飛んでいる矢を狙って射るということですか!?」

莉嘉「そんなことできるの!?」

翠「はい」

文香「ものすごい早さで動いている的を当てることになりますよ!?」

翠「はい」

文香「後から射るということは、先の矢よりも速く矢が飛ばねばなりませんよ!?」

翠「はい」

文香「この不規則で強い颪の中で……ですよ!?」

翠「はい」

文香「まさしかし……そんな……」

莉嘉「じゃあ与一くん、やってみせて☆」

舞「はい!」

文香「あの……なぜ与一さんは、目を閉じているのですか……?」

翠「私が射る所を見ていたら、その飛び具合や方角、距離から射落としても当たり前ですから」

文香「いえそれ、全然当たり前ではないですけど……」

翠「ではいきますよ、与一……はっ!」

保奈美「父、資隆の射た矢は、ひゅっという音を発し中空へと飛びます。その音を聞いた与一、カッと目を見開くと飛んでいる矢を見据えます」

舞「ひいふっ!」

保奈美「目を見開き、矢を見、つがえていた矢を放つまで刹那ほどもあったでしょうか、風に巻かれるように飛ぶ父の矢を、与一の矢は襲うように一直線に飛び、そして!」

カッ

文香「当てた……射落とした……本当に……」

莉嘉「すっごーい☆☆☆ すごいすごいすごい」

舞「あぁん!?」

文香「……え?」

舞「私の腕前なら当然でしょう!?」

莉嘉「な、なになになに? どうしたの急に目つきも口調も変わって」

翠「すみません。与一は弓の腕は間違いないのですが、兄の影響か弓を引くとしばらく、人格が変わるのです」

文香「なんと……」

莉嘉「うーん。でもそれも面白いから、ごうかーく☆」

翠「ともあれ、ご覧の通りの腕前です。義経様、どうぞこの子を郎党にお加えください」

莉嘉「ロート? よくわかんないけど、アタシと一緒に平家を倒してくれるんでしょ? 与一くん」

舞「……っ」

文香「?」

舞「そ、そうです」

莉嘉「やったあ☆ これからろしくね、与一くん」

翠「必ずや義経様の元で働き、源氏の世を作るのですよ」

舞「……わ、わかりました」

文香「……」

保奈美「さて、時は少し戻り京の都。頼朝決起の報は平家にも届きます」ベベン

つかさ「だから言ったんだよ! 禍根は断つべき、って。ああ……あの時、頼朝はやっぱり……」

加蓮「まあまあ。今更しょうがないよ」

くるみ「とにかく頼朝をなんとかしないとぉ」

つかさ「よし。維盛!」

乃々「は! はいぃ……?」

つかさ「行って、頼朝をやっつけてこい」

乃々「はいいいぃぃぃ!?」


乃々「いきなり大軍の大将とか、むりくぼなんですけど……あうぅ」

上田鈴帆「心配はなかよ。維盛しゃんは、ドーンと構えちょればよかばってん」

乃々「なかなかそういう気持ちにはなれないんですけど、伊藤忠清さんがいてくれて頼もしいんですけど」


P「平家物語ではこの時、維盛は七万の兵を率いていた、と書かれている」

加蓮「な、七万!? さいたまスーパーアリーナでもそんなにお客さん入らないよ!?」

奈緒「SSAはキャパどのぐらいだっけ?」

P「約3万7千人だから、ほぼ倍だな」

凛「これなら乃々も楽勝だよね?」

奈緒「ところが」

凛「えっ?」

P「この維盛の軍は、出発の時に」

つかさ「さあて、じゃあ兵も集めたし出陣を……あれ? 維盛?」

くるみ「維盛しゃんは、侍頭の忠清しゃんが今日は日が悪いって言ったら、じゃあ日を改めて……ってどこかに隠れちゃいましゅた」

つかさ「日を改めて、って……あのな! 兵はもう集まってるんだぞ!! 糧秣だって要るし士気も下がるだろ!!!」

くるみ「そう思って探すんでしゅけど、どこにもいなくて……」

つかさ「ああ、もう!」

P「こうして維盛軍は、出発が遅れた」

凛「で、でも遅れたからっていっても七万も兵がいたら大丈夫だよね? ね?」

奈緒「それが結果的にはこの遅れが致命的な失敗になるんだよ」

凛「どうして!?」

P「平家の兵が来る前に、頼朝が東国で勢力を回復して、そして大軍を集めていることがあちこちの武士達に伝わった。それにより、平家につかずに様子見をしたり頼朝に味方する者が続々と現れた」

加蓮「急いで行った方が良かったんだ」

奈緒「ここらへん、後で出てくると思うけど義経が強かったひとつの要因との差なんだよな」

凛「あのさ、もしかして乃々は負けちゃう……の?」

P「じゃあそれを見ていこうか。舞台は……」

保奈美「富士川、今の静岡県になります」ベンベンベン

乃々「それにしても、都を出たときは七万いた兵がずいぶんと減った気がするんですけど」

鈴帆「途中で逃亡したり頼朝に寝返る兵が出たばってん、今は正味二千ほどに」

乃々「それで対する頼朝軍は……」

鈴帆「東国の有力武者が集まって、およそ四万」

乃々「……そうですか」

鈴帆「ばってん、寄せ集めん七万より今いる兵の士気は」

乃々「明日はどうなるのか、不安なんですけど……」

鈴帆「維盛様……」


鈴帆「都1の“鷹戦士(イケメン)”と称された維盛様のあげな顔はみたくなか。この上は、この忠清の体を張ったギャグで笑顔を取り戻してもらうばい……ん?」

鈴帆(誰ばい、こげな川の中に入ってくる者どもは……あれは平家の“武士(ギャル)”やなかな。どれ……近くば行って誰何しちゃるばい)

白菊ほたる「逸見光長さん、ちゃんと……いる? 暗くてよく見えなくて……」

関裕美「うん。ちゃんといるよ、武田信義さん。私たち、姓は違うけど双子の兄弟なんだよね」

ほたる「説明的なセリフ……とってもナイスです。光長さんがお兄さんで、私が……弟。甲斐源氏として源氏の嫡流である頼朝様の目の前で……」

裕美「うん。私たちが手柄を立てて、源氏内で功名をうちたてようね」

ほたる「その為に平家の背後を突こうと、今私たちは夜襲を……たくさんいる水鳥に紛れようとこうして翼も身につけて……あれ?」

裕美「誰かいるのかな?」

鈴帆「じゃーん!」

https://i.imgur.com/hJZ6Qce.jpg
伊藤忠清

ほたる「き……」

鈴帆「お前さんらは、誰やと?」

裕美「きゃあああーーーっっっ!!!」

ほたる「み、水鳥のおばけえええーーー!!!」

鈴帆「いや、鳥のカッコしとるんは、同じやなかじゃ……」

裕美「いやあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

ほたる「きゃあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

鈴帆「そ、そんなに騒ぎよったら水鳥が……」

バサバサバサバサバサーーー!!!

鈴帆「ほれみいいいーーーっっっ!!!」

裕美「いやあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

ほたる「うわあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

バサバサバサバサバサバサバサバサバサーーー!!!

乃々「な、ななな、なんですか!? なにごとですかなんですか!? も、もしかして源氏の……頼朝の夜襲ですか!?」

バサバサバサバサバサバサバサバサバサーーー!!!

乃々「に、逃げるんですけど! 都に……全軍で逃げるんですけど!!!」

保奈美「こうして水鳥の羽音に驚いた平家の官軍は、戦わずして撤退。初めて平家の本軍と相対した頼朝は、戦わずして勝利を収めたのでした」ベンベン

加蓮「え? 戦わずしてって、これで終わり? 富士川の戦いってこれで終わりなの? 美嘉ちゃんと平家の官軍との直接対決」

P「そう。富士川を挟んで対峙した両軍だったが、平家側は水鳥の羽音に驚いて逃げ出してしまった」

凛「対峙した時にはかなりの兵数の差があったんだよね? それなら下手に戦わずに逃げて正解かも知れないけど、乃々はこの後京まで無事に逃げられるの?」

奈緒「それは後で見ていくことになると思うんだけど、実はこれが頼朝が直接平家軍と対峙した最後の戦いになったんだよな」

加蓮「最後? じゃあもう美嘉ちゃんは平家とは戦わないの?」

奈緒「直接は、な。この後、平家軍と直接戦っていくのは頼朝の弟になるんだよ」

加蓮「あ、莉嘉ちゃんか!」

奈緒「まあ他にもいるんだけどな」

凛「?」

P「この富士川の戦いの直後、戦いには間に合わなかったが義経が奥州から駆けつけてくるんだ」

加蓮「待ってました、利嘉ちゃん!」

P「では舞台はこのまま富士川から少し移動した黄瀬川で、物語を進めるぞ」

凛「乃々……無事でいて、乃々……」

保奈美「ベンベン」

利嘉「だーかーらー! アタシはお姉ちゃんの弟なんだって!」

忍「? どうしたの? 陣の外が騒がしいみたいだけど」

みりあ「あのね、頼朝さんの弟だって言い張ってる人が来てるんだって。でも、手勢もわずかでとてもそうは見えないって話なんだよ」

忍「頼朝さんの弟……それって前に頼朝さんが言ってた……ちょっと見てくるね」


利嘉「どーして信じてくれないのー! もう、お姉ちゃんに会わせて、って!!」

文香「義経様……ここは、私にお任せを……」

利嘉「え? あ、うん」

文香「陣前の皆々様方にはお役目ご苦労様に存じます! こちらにおわすは……」

忍「確かさっきの声は、こっちの陣門から……あれかな?」

文香「清和の帝第六の皇子貞純親王の皇子六孫王より七代目、相光院八幡太郎義家より長家を御守りたるよし。過ぐる保元平治の乱に非業の死を遂げた源氏の嫡流義朝が一子、八男の九郎牛若丸が元服をして今は九郎義経。ご長兄頼朝様の挙兵に一臂の与力をせんとはせ参じました。何卒、お目通りをお願いいたします……!」

忍「堂々とした名乗り……間違いないね。頼朝さんの弟さんかあ、確かにちょっと似てるかも。あー、えっと義経さんだっけ。こちらへどうぞ」

利嘉「会わせてくれるの!? でもなんで? アタシが同じこと言ってもダメだったのにー」

文香「言っている内容は同じでも……言い方が違ったのですよ……きっと。ふふっ」

莉嘉「そういうもの? ま、いいや☆」

忍「? さあ、共の方も一緒にこちらへ」

美嘉「弟が!? 九郎がアタシに会いに!? アタシの挙兵を知って、駆けつけてきてくれたの!?」

忍「私が見て来たんだけど、確かに目もととか頼朝さんにそっくりだよ」

美嘉「九郎が……生き別れのアタシの弟が……アタシの為に……」

忍「こちらに通してもいいよね?」

美嘉「もちろん! はやく、はやくここへ!!」

忍「こちらが! 頼朝さんの弟君、義経さんだよ!」バーン

文香「……私は違いますよ?」

忍「え?」

美嘉「九郎! 九郎……なの? 九郎だよね!」

利嘉「お姉ちゃん!」

忍「え? あっち?」

文香「似てないでしょう……私は」

美嘉「よく来てくれたね! 会いたかった……会いたかったよ」

利嘉「アタシも会いたかったよ! お姉ちゃん☆」

美嘉「いつか会えるんじゃないかと思っていたよ!」

利嘉「うん! アタシもいつか会えると思って、奥州で修行してきたんだよ☆」

美嘉「奥州……そうか、藤原氏の元で修行を。そうだ、九郎に会わせたい人がいるんだ。義時、蒲の冠者は」

忍「蒲殿ですか? いつものように“鍛錬中(メイク中)”だと思いますけど」

利嘉「かばのかじゃ? かばどの?」

P「さてここで、スペシャルゲストに来てもらっている」

奈緒「え? もしかして、話の流れからすると源範頼(のりより)役の娘か?」

凛「源っていうことは、源氏の誰かなんだよね?」

加蓮「でも今話題になってたのは、かばの冠者とかかば殿っていう人みたいだったけど」

奈緒「範頼は源義朝の六男なんだ。つまり、頼朝からは弟で義経からは兄にあたる人で通称が蒲殿」

加蓮「そのかば、っていうのは?」

P「範頼は遠江国蒲御厨……今の静岡県浜松市あたりで生まれ育ったんだ。蒲御厨(かばのみくりや)出身だから蒲の冠者とか蒲殿って呼ばれていたんだ」

凛「なるほど。浜松だから、蒲焼きで蒲なんだ」

奈緒「いや、違うぞ。範頼の蒲は地名であって、蒲焼きの蒲じゃないから」

加蓮「でも同じ蒲っていう字だよね?」

奈緒「そうだけど、蒲焼きは関係ないんだって!」

P「さて、ゲストの登場だ。蒲の冠者こと範頼役は……」

本田未央「はいはーい! 今回は源範頼役を仰せつかりました、本田未央でーす!! よろしくね」

凛「あ、未央がやるんだ。源なんとかの、蒲のなんとか」

未央「しぶりーん。私の演じる役ぐらいはおぼえてようー。範頼だよ、のりより。ノリがよい本田未央で、ノリよい範頼!」

加蓮「あ、確かにちょっと覚えられたかも」

未央「ありがとう、かれん。じゃあゴホウビと差し入れで……これ!」

凛「うな重? 食べていいの?」

未央「蒲焼き食べてもらって印象づける。蒲焼きだから、蒲の冠者! 蒲殿の私、本田未央をよろしく!」

凛「ほら、奈緒。やっぱり蒲焼きだからだって」

奈緒「いや、未央のその蒲焼きは名前を印象づけるためだろ!?」

未央「? さあさあ、かみやんもどうぞ」

奈緒「あ、ああ。確かに美味しそうだな……いただこうかな」

奈緒「ご一緒にポテトもいかがですかー」

加蓮「やった!」

凛「未央、この範頼ってどんな人なの? なんで未央が演じることに?」モグモグ

未央「範頼って人は頼朝がお兄さんで、義経が弟なんだけど私もお兄と弟がいるから、そういうとこ共感できるかなって思ってるんだ」

加蓮「なるほど」モグモグ

未央「ドラマの中ではお兄の頼朝は武士のカリスマだし、弟の義経は戦の天才。そういう2人に挟まれた人物の心境を演じられたらって考えてます」

奈緒「話を聞いてたら、未央にぴったりな役な気がしてきたな」モグモグ

未央「じゃあ私の登場シーンから……どうぞ!」

保奈美「……」モグモグ

嘉「あそこで“鍛錬(メイク)”してるのが、義経のもう1人のお兄さん、蒲の冠者こと範頼だよ」

未央「かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ」

利嘉「……なんであのお姉ちゃんは、変な構えをして動きながらずっと『かばでぃ』って言ってるの?」

美嘉「アタシもよくはわかんないんだけど、天竺(※今のインド)から伝わった“肉体鍛錬(スポーツ)”なんだって。その名も、かばでぃ」

利嘉「あ、それでかばの冠者とか、かば殿って呼ばれてるんだ」

美嘉「そうそう★」


奈緒「歴史をねつ造するなー! 違うだろ!! 蒲の出身だから、蒲の冠者で蒲殿だろ!!!」

未央「え?」

奈緒「だいたい、この時代にカバディがインドから日本に伝わってるわけないだろ!」

未央「いやそうとも言い切れないよ。カバディは起源がマハーバーラタにあると言われていて、その成立は紀元前4世紀頃から紀元後4世紀頃だから、平安後期に日本に伝わっていても不思議はないんだよ」

奈緒「あー……そう言われると……」

加蓮「すごい。奈緒が言いくるめられている」

凛「あれが未央が時々見せる、成績常時優秀者としての一面だよ」

未央「あくまでドラマだから独自の解釈があってもいいし、私今回の役を通じて頼朝や義経に比べるとマイナーだった範頼を有名にしたいんだよ、かみやん」

奈緒「なるほど。そういう意気込みがあったんだな」

未央「なので範頼を演じるのはノリがよい本田未央で、ノリよい範頼。蒲の冠者だから好きな食べ物は蒲焼きで、特技はカバディ」

加蓮「じゃあ好きな動物は?」

未央「え? ラクダ?」

奈緒「なんでそこはカバじゃないんだよ!?」

未央「いやほら、カバが日本に初めて来たのは1911年だからさ。平安後期にはまだ知られてないと思うんだよね」

奈緒「そこはドラマだからの独自解釈はないのか……」

凛「ラクダはもうこの頃、知られていたの?」

未央「599年に百済から推古天皇にラクダが献上された、って記録が残ってるんだって」

凛「へえ、そうなんだ」

莉嘉「お姉ちゃん、あんなにアタシに会えたら喜んでくれたよ☆」

文香「良かったですね。さすがに源氏の“棟梁(カリスマ)”と感じ入りました……」

莉嘉「とーぜんだよ、アタシのお姉ちゃんだし。それにもう1人お姉ちゃんがいて、やっぱり馳せ参じてたなんてちょっとアタシかんどー。あ、与一くん」

文香「……どこへ行っていたのですか?」

舞「あ、えっと……兄に会いに」

莉嘉「あ、そっか。与一くんのお兄さんも源氏側に参加してるんだっけ」

舞「はい。兄の十郎は、三浦様の元で働くようです」

文香「……与一さん、少しよろしいですか?」

舞「え?」

文香「気になっていたのですが、与一さんのお兄さんはどこにいるんですか……?」

舞「……」

莉嘉「もー聞いてなかったの? 弁慶くん。与一くんのお兄さんは、三浦の……」

文香「その他の……お兄さんは?」

莉嘉「え?」

文香「あなたは、与一。お兄さんは10人いるはず。他の……9人のお兄さんは、どちらに……」

舞「隠すつもりはありませんでしたけど、個人的なことなので黙っていました。他の9人の兄たちは、全員平家側にいます」

莉嘉「えー!?」

文香「やはり……少し前までは、源氏が再び立ち上がるなど、誰も思っていませんでしたからね……」

舞「はい。だけどここにきて風向きが変わりました」

莉嘉「ま、待って待って。与一くんはいいの?」

舞「兄と戦うことが、ですか? はい」

莉嘉「だってお兄さんと戦うなんて」

文香「義経様、すべては……那須の血を残すためです」

莉嘉「どゆこと?」

文香「敵味方に兄弟が分かれていれば、どちらが勝っても誰かは生き残ります」

舞「そして生き残った方は、敵に回った方の命乞いをします。たとえそれが叶わなくても……那須の血筋は残ります」

利嘉「えー? なんかヘンだよそれ。兄弟みんなで力を合わせた方がいいじゃん」

舞「……そうですね。でも世の中、本人達の思いとは別に敵味方になってしまうことはありますから」

利嘉「アタシとお姉ちゃんは、絶対にそうはならないけどね☆」

文香「……」

文香(もしそうなった時……義経様はどうされるのでしょうか……)

みりあ「頼朝さんの実の弟……? 今まではみりあのことを『弟みたい』って頼朝さんは言ってくれていたのに、また本当の弟が……?」


奈緒「さて、凛。そろそろ凛が興味を持っている話題に戻るぞ」

凛「え?」

P「平維盛一同は、富士川から京の都へと敗走していったんだけど、。その間に従う武士たちは逃亡したりして散り散りに離ればなれになっていった」

凛「そうだった! 大丈夫なの……乃々、乃々!」

P「そしてここで、この物語の一編を担う人物が新たに登場する」

凛「この乃々の危機に!?」

加蓮「まあ乃々ちゃんはともかくとして、誰?」

奈緒「源義仲(よしなか)。一般的には木曽義仲として知られる人だよ」

村上巴「殿、殿! 義仲様!!」

日野茜「ボンバー! 元気があれば、なんでもできる!! おお、これは巴ちゃん。なにごとですか!?」

巴「奥さんに向かって巴ちゃんはなかろうが。いや、知らせが入ったんじゃがあの平維盛が京へ敗走しとるけん、もうすぐ近くを通るげなけど、どげする?」

茜「平維盛が……至急、馬の準備を!」

巴「お、やるんかい? よし待っとりんさい。すぐに兵を集めるけえ」

茜「兵は要りません!」

巴「あ?」

茜「私の乗る馬だけ、用意してください!」


巴「あれが平維盛……なるほど、噂通りの“鯉戦士(イケメン)”じゃな」

茜「私よりもですか!?」

巴「アホぬかせえ。そげなわけなかろう。それよりどないするんじゃ? このまま指をくわえて見とるだけか?」

茜「指はくわえませんが、見てるだけです!」

巴「はあ? ほんなら何しに来たんじゃ」

茜「ライバルの首尾を見届けに来ました!」

巴「ライバルじゃと? あの、平家の維盛がか?」

茜「いいえ! ですが平維盛という方も、ついでに顔は覚えました!」

巴「ついで……て、ほんならライバルちゅうんは……あ、殿。行ってしまうで? ほんまに見過ごしてしまうんか? 討ち取ってしまえばよかろうに」

茜「そんなことをすると、怒られますから!」

巴「誰にじゃ?」

茜「ライバルにです!」

巴「だから誰じゃあ、そのライバルいうんは……あ、急に走り出さんで、殿!」

茜「どちらが源氏の大将として天下を取るか、勝負ですよ! ハイヤー!!」

凛「無事で良かった……乃々。茜、グッジョブ」

加蓮「茜ちゃんが言ってたライバルって、話の流れからすると……もしかして美嘉ちゃん?」

奈緒「ああ。ここから打倒平家を成し遂げるのがどちらになるか、の熾烈なデッドレースが始まるんだよ」

凛「さっき源義仲って言ってたけど、源氏の嫡流って美嘉じゃないの?」

奈緒「源義仲はお父さんが源義賢(よしかた)で、この義賢って人は頼朝や義経の父親の義朝とは異母弟の関係になる」

加蓮「ということは……美嘉ちゃんや莉嘉ちゃんからはイトコになるの?」

P「そう。つまり義仲も、源氏の正統なる血筋であることには違いない。むろん嫡流は頼朝ではあるんだがな」

奈緒「巴ちゃんは、名前の通り巴御前役なんだな。なんかこういうの、ちょっと嬉しいな」

凛「義仲の奥さんなんだね」

P「うむ。この巴御前は、この時代の女性には珍しく馬に乗り、しかも戦でも薙刀で戦ったらしい」

加蓮「あはっ。巴ちゃんらしくてイイね」

凛「ともかく。乃々と闘わずに見逃してくれた茜には、感謝するしかないね」

奈緒「……」

P「……」

凛「なに!? 歴史に詳しいそこの2人のその沈黙!!」

奈緒「実は2人はこの後……3年後に対決することになるんだよ」

加蓮「茜ちゃんと、乃々ちゃんが?」

凛「ええっ!?」

P「倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦いという」

凛「え、ど、どうなるの? どうなるの!?」

保奈美「ではこの後、維盛がどうなったのかを見ていくことにいたしましょう」ベベン

乃々「都へ帰るのは許さない。ここで待てと言われてもう一ヶ月……こ、心細いんですけど」

鈴帆「いえ、ここまで帰り着けただけでも運が良かっちゅうもんで。なんせたどり着けたのは、十騎ばっかりやったもん……なに?!」

乃々「ど、どうしたんですか?」

鈴帆「都から、使者がやって来たばってん。ついに帰京が許されるんじゃなかかと」

乃々「使者……だ、誰でしょうか……知盛さんとか……まさか宗主である宗盛さんは来ませんよね……優しいから来てくれたら嬉しいんですけど」

鈴帆「誰やろかいな、使者として来るんは」

つかさ「アタシだよ」

乃々「うわあああ!!! お、おじいさま!?」

鈴帆「相国入道様!!! まさか直々においでとは……! 」

つかさ「維盛。戦わずに逃げ帰ってきたんだってな」

乃々「あ、は、え、よ、よくご存じで……。報告がいってた……んですね? もりくぼ、穴があったら入りたいんですけど……」

つかさ「報告はきてないけど、さ」

乃々「はいぃ?」

つかさ「そんなのくるまでもなく、諸国に知れ渡ってんだよ! 平家の官軍が源氏から戦わずに逃げ出した、ってな!!」

鈴帆「そ、そぎゃんこつが……」

つかさ「なあ、維盛。どうして頼朝が逃げるお前を追走しなかったのか、わかるか?」

鈴帆「言われてみれば……清盛入道の孫ば討ち取れば、抗争前の血祭りになりそうなもんやのに」

つかさ「わざとだよ」

乃々「ええっ?」

つかさ「平家は源氏におそれをなし、戦わずして逃げた。そう宣伝したくて、そう流布したくて殺さずに兵たちを逃げさせたんだよ」

乃々「……」

つかさ「どうする? このままでいいのか? お前舐められてんだぞ、源氏に」

乃々「もりくぼは……もりくぼは……」

つかさ「ん?」

乃々「次があったら……その時は……」

鈴帆「おおっ、維盛様の目がすわって!」

乃々「次に戦に出る時は、やるくぼですけど!」

凛「出た! 乃々の、やるくぼ!! これでその倶利伽羅峠では大勝利だよね!?」

奈緒「……」

P「……」

凛「だから沈黙しないで!! どうなるの、倶利伽羅峠!?」

加蓮「あ、カンペ。えっとなになに……では、倶利伽羅峠の戦いのもう一方の主役、木曽義仲がどうなったのかも見ていきましょう♪ ベベン♪」

保奈美「加蓮さん、それ私の役目よ!」


忍「義仲は討つべきです! 当方から逃げ出した行家をかくまうなんて!」

美嘉「まあ義仲も、叔父である2人に頼られて仕方なく……なんだろうけどさ」

忍「とはいえこれは、我が鎌倉方に対する明確な反抗だよ! 見過ごすわけにはいかないよ」

美嘉「……確かにこのまま義仲が知らん顔してるなら、義時が言うように討つしかないかな」

忍「そうですとも……え? 使者? 義仲から? 違う? えっ!?」

美嘉「どうしたの? 義時」

忍「来たそうです。寸鉄も身につけず、丸腰で」

美嘉「……もしかして、義仲が? ここまで?」

忍「はい。どうします? この機会に討ってしま……」

美嘉「会うよ。こちらも“正装(最新コーデ)”で」

茜「お初にお目にかかります! 義仲です!」

美嘉「うん。アタシが頼朝。先だってはありがとうね★」

忍「え?」

美嘉「平維盛を討たないでおいてくれて」

茜「討ったら怒られそうでしたから、素通りさせました! あれで良かったのですよね!?」

美嘉「うん★ おかげで諸国に平家が、武家として力が落ちているのを印象着けられたよ」

巴(ほんじゃあ、あの時に維盛を討たんかったんは……ほんならライバルゆうんは、この男……頼朝のことじゃったんか!)

茜「では叔父の行家を匿ったこと、は帳消しにしてもらえますか!?」

美嘉「それはダメ」

巴「ほう……」スクッ↑

忍「妙なことしないでよ?」

巴「……わかっちょる」ストン↓

茜「では、それに対するお詫びとして……人質を出しましょう!」

美嘉「人質?」

茜「匿ったのは、頼られたからで頼朝さんを敵に回そうなんて思ってないという証拠に。嫡男の義高(よしたか)を」

忍「ええっ!? 嫡男を人質に……って、いいの?」

巴「ええわい。まさか粗末にはせんじゃろ?」

美嘉「……もちろん」

茜「じゃあ決まり……ですね!」

忍「本当に、あれで良かったの? 頼朝さん」

美嘉「平家と戦う前に源氏同志で戦わなくても良くなった。うん、いいよ★」

莉嘉「よくないよー!」

美嘉「義経」

莉嘉「せっかく、アタシの“初陣(デビュー)”の戦になると思ったのに!」

美嘉「義経、あくまでもアタシたちの敵は平家だよ。でも……うん、もしも」

莉嘉「なになに?」

美嘉「もしも義仲が敵に回ったら、その時は義経にその相手を頼むから」

莉嘉「うん☆」


結城晴「人質かあ。なんかあったらこの首……切られちゃうんだろーな。あーあ、はかねえ人生だったよな」

まゆ「義高さん、あんなこと言ってますけど、どうなんですかぁ頼朝さまぁ」

美嘉「……」

まゆ「頼朝さまぁ?」

美嘉「あれはアタシだよ。意に添わぬ土地へ連れて行かれ、自由にならない暮らしと監視。昔のアタシと同じ」

まゆ「……そうでしたねぇ」

美嘉「でもそこに、政子がいてくれた」

まゆ「そうでしたねぇ」

美嘉「ねえ政子。大姫を、さ」

まゆ「? 私たちの娘の大姫を?」

美嘉「義高と夫婦にしたら、どうかな?」

まゆ「それは素敵なお話ですねぇ。人質じゃなくて、私たちの婿殿でしたら、家族ですからねぇ」

晴「馬に乗ったり、弓矢の稽古をしたりしてもいい……って、頼朝ってのも意外と話のわかるやつだな。オレは体動かしてねーとだめだからなー」

喜多日菜子「はいどうぞ、これで汗を拭いてください。むふふ」

晴「お、サンキュー……って誰だよ!? お前!?」

日菜子「日菜子はここの姫で、みんなからは大姫って呼ばれています」

晴「大姫……って聞いたことあるぞ。頼朝と北条の間に生まれたっていう、あの噂の姫かよ!」


加蓮「美嘉ちゃんとまゆの間に生まれたあの赤ちゃんだった大姫が、成長して日菜子になるんだ」

奈緒「……」

凛「なんでまた奈緒は、沈黙してるの?」

奈緒「大姫については、あたしはあんまり話したくない」

加蓮「え?」

奈緒「なあPさん、このくだり別にドラマでやらなくてもいいんじゃないか?」

凛「奈緒がこんなに嫌がるとは……」

加蓮「わかった! 失恋とみた。きっと相手にされなくて泣いちゃったりするんだよ、大姫」

P「じゃあ続けるぞ」

奈緒「いや、続けない方がいいんじゃ……」

日菜子「本物の白馬に乗った王子様……じゃなくて若武者様が……日菜子のもとに……むふ。むふふ」

晴「? おーい、大姫?」

日菜子「これからこの方と、あんなことやこんなことを……むふふふふふふ」

晴「なんだよいったい。でも……けっこう可愛いよな、この大姫って娘////」

保奈美「この時、木曽義高こと源義高12歳。大姫7歳。戦乱の世相の中に咲いた、小さな恋の始まりだった」ベベベン


凛「あれ?」

加蓮「なんかいい雰囲気じゃない?」

奈緒「……」

凛「だからなにか喋ってよ、奈緒」

加蓮「なにが奈緒を、ここまでかたくなに」

P「まあ義高と大姫の間になにが起こるのかは先の話として、ここから物語は倶利伽羅峠へと進んでいくことになる」

凛「そうだった! 倶利伽羅峠!」

加蓮「次の舞台はどこになるの?」

奈緒「まずは京の都だな」

凛「あ、奈緒がしゃべった」

加蓮「え? じゃあ私、出番?」

保奈美「では舞台は京の都にまた移ります」ベベベン

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

P「この歌、CD発売してもいいんじゃないかな」

加蓮「四国や九州の“武士(ギャル)”に、奈良でも“僧兵(スキンヘッズ)”が反乱? もう、追討しても追討しても収まらないじゃない」

つかさ「富士川で平家は戦わずして逃げた、って話が伝わって一気にきたな。まあ、予想してたけどな」

乃々「ぜんぶ、もりくぼのせいですけど……」

くるみ「維盛しゃん」

乃々「あ、む、宗盛様。申し訳ないんですけど……」

くるみ「最近、武芸に精を出しているそうでしゅね」

乃々「……はいぃ」

くるみ「それでいいんでしゅ。戦で失ったものは、戦でしか取り返せないんでしゅ。次にがんばればいいんでしゅ」

乃々「もったいないお言葉です。もりくぼ……次は、やるくぼですから!」

加蓮(3年の間、武芸に真剣に取り組んだ維盛。目が違うよね)

つかさ(宗盛も棟梁としての威厳が出てきたよな)

加蓮「え? 文が? どれどれ……父上、木曽の義仲が挙兵したそうです」

つかさ「きたか……源氏のもう一人の大将。それで? 頼朝は?」

加蓮「動いてない、って。協力はしないけど、ジャマもしないってカンジ?」

つかさ「そうか。あの2人が手を組んで攻めてきたら大変だったが、そういうことなら……維盛」

乃々「はいぃ」

つかさ「兵十万を授けるから、義仲を討て」

乃々「わ、わかりました!」

つかさ「今度は逃げんじゃねーぞ?」

乃々「やるくぼですから!」

茜「後ろを襲われる心配はなくなりました! 北陸も平定しましたしいざ、上洛へボンバー!」

巴「おお、ライバルより先に京を攻め落とすんじゃ。じゃろ?」

茜「そうです!」

巴「ほんなら行こうかい。天下を取りに」

志希「お~!」

巴「……また逃げたりせんやろな?」

志希「にゃはは」


凛「十万の兵!? さいたまスーパーアリーナのキャパの約3倍!! これなら勝てる!!!」

加蓮「対する木曽義仲軍の兵の数は?」

奈緒「正確な記録はちょっとないんだけど、五千騎ぐらいだったと言われてるな」

凛「20倍の差!? 圧倒的じゃない、乃々軍は!!」

加蓮「乃々ちゃんの軍じゃなくて、維盛軍だけどね。でも十万ってすごい兵力だよね」

P「そこは新中納言が、がんばった。各地の挙兵に対応しながら、これだけの兵と糧秣を集めて維盛に託したんだ」

凛「ありがとう、加蓮。本当にありがとう!」

加蓮「アタシなんにもしてないけど、どういたしまして!」

P「平家軍は途中で刃向かう敵を倒しながら北陸を攻め上がり、ついに倶利伽羅峠で義仲軍と対峙した」

保奈美「それでは舞台は倶利伽羅峠……今の富山県と石川県の境になります」」ベンベンベンベン

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

凛「乃々……がんばって……」

巴「雲霞のごとく、とはよお言うたもんじゃ。平家軍で山肌も見えんわい」

茜「十万の兵。勢力の衰えに加え、飢饉で食力不足と聞いていた平家がこれほどの大軍をまだ繰り出せるとは、計算違いでしたね!」

巴「そいでどうするんじゃ? 無理は承知でとにかく突っ込むんか?」

茜「いえ。夜襲をします!」

巴「……まあ、まともにぶつかって勝てるわけはないが、今度は逃げんじゃろ。平維盛」

茜「承知の上です!」


乃々「敵の動きは、なにかありますか?」

鈴帆「静かにしとるばってん、なんや怪しい動きがあるらしか。来るかも知れんばい」

乃々「夜襲……ですか。もう驚かないんですけど! 逃げないんですけど! やるくぼですけど!」

ドドドドド

乃々「やるくぼですけどどどどど……どどどどど?」

ドドドドド

鈴帆「なんの音じゃあ? この地響きみたいな音は」

乃々「夜襲……でしょうか? すぐに兵をまとめて臨戦態勢に……」

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

鈴帆「あれは……!」

乃々「牛さん……なんですけどおおお!?」

茜「手勢を7手に分けて、強襲します!」

巴「7手……て、こっちの手勢は5千騎しかおらんのじゃぞ!?」

茜「それでかまいません! それと、牛は確保できましたか!?」

巴「北陸中の牛を集めたわい。けど、なんに使うんじゃ牛なんぞ」

茜「すぐにわかりますよ! 名付けて、ファイヤー作戦です!」


鈴帆「あの牛、角に松明をくくりつけちょるばい!」

乃々「ものすごい勢いで、突進してくるんですけど!」

保奈美「木曽義仲は、燃える松明を角につけた100頭の牛の大群を平家軍に突進させました。荒れ狂う牛たちは、軍勢を追いたてていきます」ベンベン

茜「今です! 牛の勢いに乗って、平家軍をツツき回すように追走してください!」

巴「おお、おう。急峻な倶利伽羅峠じゃからのう、逃げとるうちに平家軍は次々崖に落ちていくわ」

鈴帆「そげな……そげなこつ……」

乃々「十万の兵が……」


つかさ「十万の兵が1夜にして壊滅……?」

くるみ「維盛しゃんは!?」

加蓮「命からがら逃げ帰って来た……って。まあ命だけは助かったみたいだけど。もう平家には大群を動かす余力が完全になくなっちゃった」

つかさ「十万の兵が……」

くるみ「父上?」

つかさ「壊滅……」

バタン

加蓮「父上ーーー!!!」

くるみ「父上のご容態はどうなんでしゅか!」

加蓮「ものすごい熱で……」

乃々「もりくぼが負けたから……ですよね。あぅ」

加蓮「ううん。あれはそれだけじゃない、唐の国から渡ってきた悪い病じゃないかな」

くるみ「父上は、唐の国と交易してましゅたもんね」

加蓮「いずれにしてもあれだけの高熱……どうすればいいのか」

くるみ「お医者しゃんは、なんて?」

柳清良「アチョー!」

乃々「な……なんですか……!」

清良「私は宋の国からやってきた、華佗の法を学んだ医師です。ヨロシク、ホイコーロー」

くるみ「かだの法でしゅか?」

清良「華佗の法は、唐の国の進んだ医術なんですよ、カンシャオシャーレン」

加蓮「それで、父上は……」

清良「とにもかくにも、熱を下げないといけないです、オーギョーチー」

加蓮「具体的には?」

清良「玉石で作ったバスタブに、清水の冷たい湧き水をくんできてそれに漬けるしかないでカキゴーリ」

加蓮「わかった。すぐに用意する」

柳瀬美由紀「だからね、何でも言われた通りのことばかりにこだわっちゃダメなんだよ」

水元ゆかり「はあ。ですが……」

美由紀「茶道具華道立花ぜんぶ型があってなりたってるの」

ゆかり『なるほど』

美由紀「押すなよ? 絶対に押すなよ! って言われた時、時実だったらどうするの?」

ゆかり「押さない……ですかね、父上」

美由紀「ちーがーうー! 押すの。そこは押すの!! ノータイムで!!! お約束ってそういうものなの」


奈緒「時実って、ゆかりちゃん平時実役なのか? じゃあ美由紀ちゃんは……時忠?」

加蓮「平家の人間なのは間違いないと思うけど、誰? 時忠って」

P「平家にあらずば人にあらず、って言葉を聞いたことあるか?」

凛「なんか……聞いたかも。平家の人が当時それぐらい驕ってたっていう代表的な言葉だよね」

奈緒「それを言ったとされるのが、平時忠なんだ」

加蓮「え? あれって清盛が言ったんじゃないの!?」

P「よく誤解されるけど、そうじゃないんだ」

奈緒「まあ時忠も、別に驕り高ぶって言ったわけじゃなくて、平家じゃないと高い官職には就けないっていう意味だったとか色々説はあるんだけどな」

凛「それでゆかりは、その子である時実なわけか」

くるみ「石で作った“風呂桶(バスタブ)”を用意しましゅた」

加蓮「私は、比叡山から冷たい清水を汲んできたよ」

つかさ「いやちょっと待てよ。これメチャクチャ冷たそうじゃん」

清良「それはまあ、冷やすのが目的ですから。マーボードーフ」

くるみ「さあさあ父上。早く浸かってくだしゃい」

加蓮「どうそどうぞ」

つかさ「いや待てって、浸かるから。入るから。ただちょっと自分のペースで入らせろ、ってな! な!! な!!!」

美由紀「はーい」

つかさ「ゆっくり……ゆっくり入るから。ゆっくり……いいか、押すなよ? 絶対に押すなよ!」

ゆかり「はっ!」


美由紀「押すなよ? 絶対に押すなよ! って言われた時、時実はどうするの?」

ゆかり「押さない……ですかね、父上」

美由紀「ちーがーうー! 押すの。そこは押すの! お約束ってそういうものなの」


ゆかり「えいっ!」

ザッパーン

つかさ「うわあああああああああ!!!」

ジュウウウウウウウウウウ

くるみ「冷たいはじゅの、しゅみじゅがあ!」

乃々「たちまちグラグラ煮立って、玉の湯なんですけどお!」

加蓮「ちょ、ものすごい湯気っていうか、あのつめたい大量の清水が……全部蒸発しちゃったの!?」

美由紀「押すな、って相国入道様が言ってたのになんで押したの!?」

ゆかり「あの、それかお約束というものだと……」

美由紀「天然だなー時實は」

保奈美「ということで水に漬けても清盛の熱は下がらず、その年の2月4日……亡くなったのです。武家として武士として、初めて国政の頂点にたった偉大な平家の宗主の最後でした」ベンベンベンベン

くるみ「父上亡き後、平家はどうしゅればいいんでしょうか……木曽の義仲は京に攻め上って来るでしょうし」

乃々「もう動かせる兵も、限られてるんですけど」

加蓮「大丈夫。手はあるから。策もある」

乃々「え?」

くるみ「ほ、本当でしゅか?」

加蓮「そもそも平家にはまだ、大軍が用意できなくても個々の能力の高い“武士(ギャル)”はいるからね。維盛」

乃々「あ、は、はい……」

加蓮「能登を呼んで」

乃々「能登……というと能登守(のとのかみ)、教経(のりつね)さんをですか……?」


加蓮「このシーンって私が呼んでるんだけど、能登守ってどんな人なの?」

凛「これからの平家を助けてくれる人なの?」

奈緒「能登守こと平教経は、平家最強と言ってもいい武士なんだ。能登守は官名で、清盛の異母弟の子供だから清盛からは甥になる人物だな」

加蓮「てことは、アタシのイトコか」

P「王城一の強弓兵と呼ばれていて、合戦で一度の不覚も取ったことがないと平家物語には書かれている」

凛「平家にまだそんな人材がいたんだ」

奈緒「平家は一門が栄えて全員の官位があがっていくことで、公家化していったから武一筋のこの教経も、平家の世が続いていたなら目立たなかった人物かもな」

加蓮「でも逆に言えば、平家の中にもまだそういう人物が残ってた、ってことでしょ?」

P「そうだな。この教経が、ここからの物語で平家側武力の最強カードになっていく」

及川雫「新中納言様、およびですかー?」

加蓮「うん。能登守。維盛が撤退してくる間、宇治川を守ってくれてありがとう」

雫「いいえー。私は、こんなことでもないとお役にたちませんからー」

加蓮「……これからの平家は、戦いの日々が待ってる」

雫「承知してますー」

加蓮「頼むね。能登守……教経」

雫「この弓にかけてー!」


奈緒「おお、教経役は雫なんだ」

凛「確かに強そう」

P「性格的には穏やかな雫だけど、やはり大きな甲冑や弓がテレビ映えするな」

加蓮「ここから平家と茜ちゃん……木曽義仲との対決になっていくんだよね?」

P「そう。倶利伽羅峠で勝利した木曽義仲は、兵を率いて上洛を開始する。呼応した源氏ゆかりの者や反平家の者たちも土地中で加わり、京に迫る頃には大軍勢となっていた」

保奈美「それではその頃、都で平家の面々はどうしていたのか見ていきましょう」ベンベン

くるみ「一門の中には、東国へ攻めあがろうという声もありましゅ。頼朝を打ち取ってしまおうというんでしゅ」

乃々「そんな。義仲も迫っているのに……」

雫「義仲、強いですよねー」

くるみ「義仲は強い上に戦じょうじゅでしゅ。京に攻め上ってくる義仲をどうすれば止められりゅのか」

乃々「あの……新中納言様はあるんですよね? 策が」

雫「ほんとですかー?」

乃々「前に……そんなような事を聞いた覚えがあるんですけど……」

加蓮「ハッキリ言って義仲を止める策はない。でもね、最終的に義仲を動けなくする策なら、ある」

雫「すごいですー! どうすればいいんですかー?」

加蓮「京の都を放棄する」

雫「え?」

加蓮「都は福原に遷都する。父上の作った福原に」

くるみ「け、けど結局、福原からまたこの京に戻ったんでしゅよ?」

加蓮「あの時とは事情が違う。なにより攻めやすく守りにくいこの京では戦えない」

乃々「京の都は、広い街道がいくつも通っていて……守るなら兵力を分散しないといけませんからね……」

加蓮「そして私たちは海が使える。義仲には海戦の経験がない。船もない。戦いにのってこなくても私たちには瀬戸内海がある。船から義仲軍を射かける手もあれば船で先回りして挟み撃ちにしたりできる」

くるみ「海があれば義仲を倒しぇるんでしゅね!」

加蓮「ううん」

くるみ「え?」

加蓮「義仲は、あえて放置」

乃々「意味がわからないんですけど……そんなことをしても、義仲の方はこちらを倒しに来るんですけど」

加蓮「大丈夫、義仲がそれどころじゃないような羽目に陥るよう仕向けるから。ともかく私たちは福原に遷都する。それしか考えられない」

くるみ「それ以外に策は、ありましゅか?」

加蓮「ない」

くるみ「ではそうしましゅか……そうしましょう」

加蓮「え? いいの?」

くるみ「新中納言が他に策はないと言うんでしゅ、ならやるしかないでしゅ! 一族総出で遷都の準備でしゅよ!」

加蓮「兄上……ありがとう」

乃々「新中納言様……もりくぼは感動したんですけど」

加蓮「なにが?」

乃々「十万の軍がもりくぼのせいで壊滅して、平家の軍は半減して……清盛様がおられなくなってしまって……各地で反乱が起きている中で……あの義仲が攻め上がってきてきて……それなのにちゃんと策を用意しているなんて……」

加蓮「……維盛」

乃々「あ、は、はい?」

加蓮「アタシも自信なんてないんだ……それなのに一門の命運がこの身体の弱いアタシの肩にかかってる。こう見えても……必死なんだよ」

乃々「……も、もりくぼにも、なにかできることとはありませんか!?」

加蓮「じゃあ維盛は、瀬戸内の各勢力から船を集めて」

乃々「船……ですか? で、でも義仲は船は使わないと思うんですけど……」

加蓮「うん。でもこの先、海は大切な私たちの足場になる。きっと。だから今のうちに船を占めてしまって」

乃々「わ、わかりました……」

保奈美「清盛が亡くなったという報は、鎌倉にも届きます」ベベン

美嘉「え……清盛が!?」

忍「都からの知らせだから間違いないよ。去る2月4日、相国入道清盛は身罷った……って」

美嘉「清盛が……身罷った……平家の宗主が……?」

忍「おめでとうございます、頼朝さん!」

未央「これはまたとない吉報ですよ、兄上!」

莉嘉「なになに? 清盛がどうしたの? みごもった?」

未央「みごもったんじゃなくて、みまかったんだって」

莉嘉「どういう意味?」

文香「亡くなった……という意味ですよ」

莉嘉「えっ!?」

忍「これはまさしく瑞兆だよ頼朝さん。敵の大将が、こちらがなにもしないのにいなくなってくれたんですから!」

未央「うんうん。これは今後の戦いでも、私たちは有利になったと思うよ」

美嘉「うん、確かにそうだよね。これで……」

莉嘉「うわあああんんん!!!」

美嘉「え? よ、義経?」

文香「義経……様?」

莉嘉「そんな……そんなあああ!!! 平清盛が……死んじゃったなんて……そんな……そんなああああああ!!!」

忍「ど、どうしたの? こんないい知らせがきたのに、“号泣(ギャン泣き)”なんかして」

未央「あまりの幸運に“うれし泣き(ドラ泣き)”しちゃうならともかく」

莉嘉「いい知らせなんかじゃないよ!!!」

忍「え?」

莉嘉「清盛は……平家の大将は、アタシが倒そうって、ずっと思ってたのに……」

未央「あ……」

莉嘉「父上のかたきは、アタシがこの手で取ろうと思ってたのに……アタシとお姉ちゃんたちを引き裂いた宿敵が、永遠に手の届かない所に……うわああああああんんん!!!」

忍「……」

莉嘉「お父さんーーーんんん!!! わーーーーーーんんん!!!」

未央「そっか……」

利嘉「清盛が、アタシが人生を、命をかけて倒そうと決意していた宿敵が、いなくなっちゃったよおおお!!! うわーーーーあああーーー!!!」

美嘉「義経……」

莉嘉「んんん」グズグズ

美嘉「気持ちはわかるよ義経、だけどこうなったからにはさ……」

莉嘉「ま、でもしょうがないか」ガバッ

美嘉「へ?」

莉嘉「じゃあ、弁慶くん!」

文香「は? はい……」

莉嘉「次の宿敵を用意して」

文香「つ、次……ですか? おそらく平家一門を継ぐのは平宗盛だとは思いますが……平家で一番の剛の者は平教経……そしてなにより兵を率いれば戦場を掌握し、戦のない時にその準備を着々と進められるのは……」

莉嘉「一番スゴい人だね! 誰? 誰!?」

文香「平知盛……世に新中納言として知られる人物です」

莉嘉「わかった! 待ってろ新中華三昧!! アタシが相手だ!!!」

文香「……新中華三昧ではなくて、新中納言です」

莉嘉「それそれ☆」

美嘉「……」


美嘉「蒲の冠者、さっきの義経……どう思った?」

未央「え? ああ……なんていうか、可愛いなあって」

美嘉「……」

未央「大泣きしたかと思えば、コロッと泣きやんで『次の宿敵を』ってもうおかしくって」

美嘉「……蒲の冠者、じゃなくて範頼」

未央「え、あ、はい」

美嘉「あの子のこと、頼むね」

未央「えっと、それはどういう……」

美嘉「あの子はたぶん、強い。でもよくも悪くも幼子みたいなところがある」

未央「それは“いと(メッチャ)”わかるけど、でも私が? なにをすれば?」

美嘉「これからの戦、もうアタシは出ないつもり。鎌倉から東国をまとめつつ、“武家社会(ギャルサージャパン)”を作り上げる」

未央「てことは、つまり……」

美嘉「大将として、戦って範頼」

未央「大将!? 私が!?」

美嘉「信頼できる人間にしか頼めないの」

未央「うわ、わかった。やる……やります、やります!」

美嘉「頼むね★ 補佐として義経を付けるつもりだけど、さっきも言ったように……」

未央「うん! 私が助ける!! 弟を!!!」

未央(私が大将……お兄の名代として、私が戦うんだ……)

凛「ところで今更なんだけどさ」

奈緒「なんだ? 凛」

凛「源氏と平家ってどうして対立しているの?」

加蓮「それはやっぱり、同じ武家同士ということでライバル関係だからじゃないの?」

凛「それにしても、なんだかそれ以上のものがあるような感じがして」

P「なかなかいい質問だな、凛」

加蓮「え?」

P「ここでちょっと時間を戻して、源氏と平家がどうして対立するようになったのかを見ておくことにしようか」

奈緒「お、じゃあ保元の乱だな。清盛の死の25年前だ」


つかさ「いや本当マジ強いよな、お前は。あの八幡太郎の直系だけはあるぞ」

向井拓海「いやいや、清盛こそ武道だけじゃなくて金勘定や政治にもあかるい、スゲーよ」

つかさ・拓海「あはははははは!!!」


凛「つかさと肩を組んで笑ってる拓海さんは、誰の役なの?」

P「源義朝だ」

加蓮「源っていうことは源氏!? それなのに平家の清盛と、あんなに仲よさそうに……あれ? 義朝って名前にはかなり聞き覚えが……あ!」

凛「頼朝と義経、つまり美嘉と莉嘉の」

加蓮「お父さん!?」

つかさ「源氏は東国で根強い人気と支持があるから、心強いよ」

拓海「平家こそ、西国で勢力を誇ってるし、海戦につえーじゃねえか」

つかさ・拓海「あはははははは!!!」

つかさ・拓海(……こいつだけは、絶対に敵に回したくねえよな)


加蓮「なんか見た目通りに仲がいいだけ、ってわけじゃないみたいだけど」

凛「でもけっこう気が合う、って感じに見えるよね」

奈緒「同じ武家の名門の御曹司で、でも東と西という地盤や家風の違いがあって、認め合う間柄だったんだよ」

P「事実、力を合わせて戦ったこともある」

凛「それが奈緒の言っていた、保元の乱っていうの?」

奈緒「そう。この戦いは、後白河天皇と崇徳上皇の政治争いが発端なんだけど、清盛と義朝は共に後白河天皇側として戦った」

P「この戦いに勝って、後白河天皇の力は強力になる」

加蓮「でも確か、清盛は義朝と戦って倒しちゃうんだよね? なにがあったの?」

奈緒「保元の乱はさっき言ったように後白河天皇と崇徳上皇の争いで、後白河天皇側に平清盛と源義朝がついたんだけど、じゃあ崇徳上皇側に兵力として誰がついたのかと言うと」

凛「誰?」

P「平忠正(ただまさ)と源為義(ためよし)だ」

加蓮「あれ? 平と源……って、この2人は清盛と義朝とどういう関係なの?」

奈緒「忠正は清盛の叔父さんで、為義は義朝のお父さんなんだ」

凛「え!? じゃあ親戚とか親子で敵味方に分かれて戦ったんだ」

P「そもそも対立していた後白河天皇と崇徳上皇が弟と兄だったし、摂関家からも藤原忠通と藤原頼長も敵味方として関わっていたんだけどこの2人も兄弟だ」

奈緒「まあ敵味方に分かれたとはいえ、そこはやっぱり実のお父さんだから戦後に義朝も助命の嘆願をしたんだよ」

拓海「アタシの“活躍(ゴン攻め)”に免じて、親父の命だけは助けてくれよ。この通りだ!」ゲザ


加蓮「あ、やっぱり別に憎み合って敵味方に別れたわけじゃないんだ」

P「そこはまあ、立場も違ったわけだしな」

凛「それでこの助命の嘆願は叶ったの?」

奈緒「残念ながら……」

P「ところがその一方で」


つかさ「よお義朝、どうしたんだよ暗い顔して」

拓海「お、おう。清盛」

つかさ「先の戦ではお互い大活躍だったよな。おかげでアタシ、播磨守に任じられたからな」

拓海「は、播磨守!?」

拓海(だってアタシは右馬寮にしてもらっただけだぞ!!)

奈緒「ここでちょっと解説しておくと、そもそも義朝は保元の乱より前に下野守に既に任じられていて、しかも馬寮は朝廷で使う馬の管理をする役職なんだけど、宮廷でも帯剣を許されていたし、検非違使っていう警察署長と裁判官ほ同時にこなす職の補佐をしたりもしていて、武士にとっては憧れの官職だったんだ」

凛「そんなに待遇に差があったわけじゃないってこと?」

P「いや清盛の播磨守は受領としては最上位だったし、それはつまり将来は公卿となることを約束されたことになる出世だった」

加蓮「やっぱり差があったんだ」

奈緒「ここらへん色々な説があるんだけど、見方によって差があったのかなかったのか意見がわかれるあたり、義朝が不満をもった可能性はやっぱりあるんじゃないかな」

P「そう。事実……」

拓海「そもそもアタシも清盛も同時に昇殿を許されたのに、なんで清盛ばっかり後白河天皇……いや、今は上皇に呼ばれてるんだよ!」

奈緒「このあと平家は、清盛以外にもどんどん宮中で出世するようになる。もちろん政治的な才能のある清盛がそう動いてたのは間違いないんだけど、義朝はこれに焦りを感じた」

拓海「清盛が京を離れている今が“好機(チャンス)”だ。やるしかねえ、まずは清盛や後白河上皇の“背後(バック)”で動いてやがる信西ってあの“禿(太陽反射光線)”坊主からだ!」

つかさ「悲しいな……哀しいよ。義朝」

拓海「な……っ! テメー清盛」

つかさ「後白河上皇がさあ、義朝はきっと兵を興すって言っててさあ、待ち構えてたんだよ。。アタシも旧知の友を討つのは忍びないけど、命令だからさ」

拓海「清盛……それでいいのかよ! 今のままで……上皇の、朝廷の言いなりで……」

つかさ「安心してくれよ。アタシは、朝廷から政(まつりごと)を奪う」

拓海「なんだと……?」

つかさ「アタシのやり方で、ね」

拓海「清盛ーーー!!!」

保奈美「清盛の強襲に、義朝は敗走します。その都落ちの最中、嫡男の頼朝に義朝は言い含めます」

拓海「いいか頼朝、政を朝廷から奪うんだ」

美嘉「朝廷から政を?」

拓海「朝廷から送られてくる受領は四年すればまた別の土地に派遣される。だから赴任地に愛着がない。けど、“武士(ギャル)”は違う。その土地に根付き生きていく存在だ」

美嘉「受領のひどさは、よく知ってます」

拓海「やつらはひどい税の取り方をする。それで困るから荘園が増える」

美嘉「荘園は免税ですから、土地の者は自分の土地を寄進して荘園にしてるんですよね」

拓海「荘園が増えたらそれを占める藤原らの摂関家は栄える。けど、その摂関家が行う政には収入が減ってる。馬鹿なやつらだ」

美嘉「荘園ばかりで、集められる税かないんですね」

拓海「朝廷の政はダメだ。“武士(ギャル)”だ。“武士(ギャル)”が政を行うんだ。頼朝、平家も同じ事を考えてるが負けるな。源氏の政をやるんだ」

美嘉「はい。父上」


P「この後は知っている通り、義朝も頼朝も捕らえられ、義朝は殺され頼朝は伊豆に送られる」

凛「つまり源平の対立は同じように武家として、どっちが武士をまとめて武士の政治をするかの対立なんだ」

奈緒「もちろん、宗主の義朝を殺された恨みとかもあるけれどな。でもこの時代は、完全に政治は行き詰まっていた。それをなんとかしようとしていたのが源氏であり、平家だったんだよ」

加蓮「それで父上……清盛は、朝廷から政を取り上げて自分が太政大臣になって、宋と貿易したりしてたんだ」

奈緒「まあそれもまだ清盛の志の道半ばだったんだけど、その清盛の死で平家も行き詰まっていく」

P「さあ話と時代をはじめとする戻すぞ。舞台は再び鎌倉だ」

忍「蒲殿、少しいいかな」

未央「なーに? 義時さん」

忍「……」キョロキョロ

未央「?」

忍「実は……」ゴニョゴニョ

未央「えー!? 兄上が浮気!?」

忍「しーっ! 声が大きいよ!!」

未央「あ、ゴメン。でもそんな……ホント?」

忍「頼朝さんさ、流されてからずっと伊豆にいたのにその時々の都の情報に詳しかったり、以仁王からの令旨の時でも状況把握が適切すぎて」

未央「ふんふん。ん? それと浮気とどういう関係が?」

忍「つまり頼朝さんにはさ、私も……つまり監視役だった北条でも知らないような情報のリーク元を持ってるみたいなの」

未央「それが浮気相手、ってこと? いや、それはどうなのかな」

忍「実は先日、その送られてきた情報……書簡を見てしまいまして」

未央「書簡を?」

忍「これなんですけど」

未央「うわ、ピンクの和紙にあちこちちぎり絵でデコってる。すごい乙女な感じの文!」

忍「これは怪しいと思いませんか、蒲殿」

未央「確かにこれは、ただの文じゃないよね」

忍「もしかして頼朝さんの、都時代からの……」

未央「女性かも……え、い、いやなんでこれ私に?」

忍「他に相談できそうな人がいないんだよ! 義経さんとかに話したら『お姉ちゃんに聞いてみる!』とか言い出しそうじゃない?」

未央「容易に想像がつく……」

忍「中でも絶対に知られちゃいけないのが、姉上」

未央「御台様?」

忍「こんなことが姉上に知られたら……亀の前事件の再来だよ……」

未央「あの優しげな御台様に、なにがあったんです?」

忍「あのね、前に亀の前という女性がいてさ」

まゆ「義時ぃ……」ポン

未央「あ、御台様」

まゆ「なんのお話ですかぁ? まゆ、気になっちゃいますねぇ」ギリギリ

忍「待って姉上、肩に置いた手に力入れないで、痛タタタ」

未央「いつからそちらに?」

まゆ「えっとぉ、義時が『蒲殿、少しいいかな』って言ったあたりからですかねぇ」

忍「メチャクチャ最初の方からじゃない」

まゆ「それでぇ? 義時」ニコォ

忍「……なんです? 姉上」

まゆ「都からの手紙がどうしたんですってぇ?」ギリギリギリギリ

忍「やめてまってほんとうにとめて! 砕ける!! 肩の骨が!!!」

未央「うわあ、ミリミリいってる音がここまで聞こえてくる……」

頼朝「なになに? アタシの家族が集まってなんの騒ぎ?」

まゆ「義時、肩に糸くずがついてますよぉ」パンパン

忍「あ、ありがとう……姉上……」

未央「……」

頼朝「今月も都から文が届いた。平家はやっぱり宗盛が棟梁に、そして軍の大勝は知盛になるみたいだ」

未央「あれっ?」

美嘉「ん?」

未央「そのピンク色の文……」

美嘉「あ、これ? 三善康信からの文だよ」

忍「三善康信……って確か、頼朝さんの乳母の妹の……子? だっけ」

美嘉「うん。その縁で伊豆にいるアタシに、毎月3度も文で都の情勢を知らせてくれてるんだよね。もうずっと……本当にありがたいよ」

忍「え? 文の相手は三善康信? じゃあ浮気じゃあ……」

まゆ「まあ。それはお優しいご友人ですねえ。いずれ鎌倉に呼んで、御家人として要職に就いてもらわないといけませんねぇ」

みか「ホントにね。それで? なにかあったの?」

未央「いや、別に……ね? 義時殿」

忍「そうそう。ね? 蒲殿」

まゆ「それじゃあまゆは、夕餉の支度をしますねぇ」

美嘉「うん。頼むね」

保奈美「さて、その頃。京の都では」


くるみ「知盛しゃん……」

加蓮「ん? どったの、兄上。暗い顔して」

くるみ「それが……法皇様が、新中納言を呼べとお召しなんでしゅ」

加蓮「後白河法皇が? あのテキトー上皇がなんの用?」

くるみ「それはわからないんでしゅけど、火急のお召しということでしゅ」

加蓮「アタシ、忙しいんだけどなー」


宮本フレデリカ「うむ。く、苦しゅ……苦しゅうな、ない……苦しゅうないぞ。近う寄れ」

加蓮「どうしたの? その声。ガラガラでめっちゃ苦しそうじゃない」

フレデリカ「それがミーね、鳥羽殿で50日連続ライブを敢行しちゃってネー。喉が腫れて水も飲めない苦しさなんだよネー」

加蓮「そりゃ50日も歌い続けたら、そうなるでしょうね!」

フレデリカ「ミーは、喉には自信あったんだけどネー」

加蓮「はいはい、そうですか」

フレデリカ「なんでかな♪ なんでかな♪」

加蓮「だから当たり前だって」

フレデリカ「おかしいな♪ おかしいな♪」

加蓮「おかしくない!」

フレデリカ「次は東三条で船の上から40日連続夜間ライブを計画してるんだよネー」

加蓮「用件はなんですか!?」

フレデリカ「え?」

加蓮「私をお召しになった用向きはなんなんですか!?」

フレデリカ「……なんだっけ?」

加蓮(ホントこの人、上皇じゃなかったら弓矢の的にしちゃうのに)

加蓮「用がないなら帰ります。福原遷都で忙しいので」

フレデリカ「あ! それそれ」

加蓮「え?」

フレデリカ「ミーは遷都、反対!」

加蓮「どうして!?」

フレデリカ「遷都はせんとこやないどすさかいどすどす♪」

加蓮「理由を述べよ! 簡潔に!! 140文字以内で!!!」

フレデリカ「京の都が好きだから♪」(残り文字数130字)

加蓮「木曽義仲の軍が迫ってるんですよ!?」

フレデリカ「うーん。でもそれは、ミーに関係なくない?」

加蓮「……平家と源氏の争いは、上皇の知ったことではないってこと?」

フレデリカ「上皇じゃなくて今はミー、法皇ね」

加蓮「あなたみたいな、なまぐさな法皇。私は認めません」

フレデリカ「それを認めるか認めないかは、新中納言ちゃんじゃなくない?」

加蓮「……」

フレデリカ「でもミーは、新中納言ちゃんを世に新中納言ちゃんと認めさせないようにできるよ?」

加蓮「いいよ。それで」

フレデリカ「ンー?」

加蓮「別にアタシは、中納言じゃなくなってもいい。新中納言がいなくなっても、平知盛は残る」

フレデリカ「そっか。残念だネー」

加蓮「……下がります。福原への遷都に忙しいので」

長富蓮実「あの、新中納言様」

加蓮「これはこれは皇太后様」

蓮実「そんな。私なんかに皇太后なんて呼ばれ方、もったいないです」

加蓮「いえいえ、藤原忻子(ふじはらの・きんし)様は後白河上皇の中宮であったわけですからやはり皇太后様とお呼びしなければ……」

蓮実「“武士(ギャル)”でありながら教養が深く、文才もおありになる新中納言様に私、個人的に敬意を抱いているんですよ。どうか今後とも仲良くしてやってください」ペコリ

加蓮「もったいないお言葉です」

加蓮(ホントあのテキトー上皇の奥さんとは思えない、おしとやかな方だよね)

蓮実「私のことは気軽に『忻ちゃん』って呼んでくださっていいですから」

加蓮「滅相もない!」

蓮実「なんでそーなるのかな!?」ピョン

加蓮(おしとやかではあるんだけど、この人もやっぱりちょっと変わってるよね……)

蓮実「ところでまた法皇が無茶を言って、新中納言様を困らせているんでしょう?」

加蓮「はあ、まあ……」

蓮実「実は私も、中宮ではありますけど、あの人とは気が合わなくて」

加蓮(そういえばお2人の間には、お子がおられないよね)

蓮実「なので私、あの人に遠ざけられていて……寂しく悲しい人生なんです」

加蓮「ご同情申し上げます」

蓮実「では聞いてください。そんな寂しい私を歌った。寂しい熱帯魚」

加蓮「え?」

蓮実「私の~♪ “思慕(想い)”を~♪ “戯れ言(ジョーク)”にしないで~♪」

加蓮「……え?」

蓮実「いかがでしたか? 私の歌?」

加蓮「は、はあ、まあ、お見事……でした」

蓮実「ありがとうございます! 私、こうした“和歌(懐メロ)”が大好きなんです!!」

加蓮「ああー……そうなんですね」

蓮実「でもあの人は、“今様(ニューミュージック)”が好きで」

加蓮(なるほど。音楽性の違いか)


凛「和歌と今様ってそういう位置づけなの?」

P「まあ当時の情勢としては近いものがある。後白河法皇は若い時から今様に熱を入れていて、その代わりというか和歌はてんで駄目だったらしい」

奈緒「藤原忻子って、後白河法皇の奥さんか。かなりマイナーな人物だよなPさん」

P「確かにあの後白河法皇の正妻だったにしては、資料もあまり残っていないんだが、今回のドラマではフォーカスを当てたいんだ」

加蓮「じゃあまだ出番あるんだ、蓮実ちゃん」


蓮実「実は新中納言様のお耳に入れたいことがあるんです」

加蓮「なに? あ、なんですか?」

蓮実「敬語でなくていいんですよ。……法皇は、なにか企んでおいでです」

加蓮「……みたいだね。私の官位を剥奪するみたい」

蓮実「いえ、もっとよくないことを考えておられるんです」

加蓮「え?」

蓮実「それがなんなのかは、私にもわかりません。ただ、気をつけてください。何度も院宣を出しておられます」

加蓮「院宣……わかりました。ありがとうございます」

くるみ「院宣……でしゅか?」

加蓮「相手が誰なのか……義仲ではない、と思う。平家一門の誰かでもない」

雫「誰なんですかー?」

加蓮「逆に言えば、院宣を受け取るような相手は後はもう1人しか残っていない……」

乃々「え?」

くるみ「ましゃか」

加蓮「頼朝じゃないかと思うんだけど……」

美由紀「た、たたた、大変だよー!」

雫「どうしたんですか、時忠様ー」

美由紀「後白河上皇が、ご動座あそばされました!」

加蓮「へ?」

美由紀「北面武士も置き去りにして、いずこかへ立ち去られました」

雫「北面武士……たいして強くありませんし、人数も多くありませんけどーそれにしても法皇様を守る“武士(ギャル)”を置き去りに?」

加蓮「いや待って待って。動座してどうすんの? 福原に行きたくないならここにいればいいんだよ。京にいたいなら自分だけでずっといれば。帝は連れて行くけど」

美由紀「それも、帝もポツンと置き去りにして……」

乃々「帝もって……え?」

くるみ「安徳天皇をでしゅか!?」

加蓮「あんのテキトー上皇!!! 孫が、それも今上の帝がどうなってもいいっていうの!!!」

蓮実「すみません、まさか法皇がこんなことを企んでいたなんて」

加蓮「いえ。私もまさか、孫である帝をほったらかして逃げ出しちゃうとは……」

蓮実「安徳帝は私にとっても、孫にあたります。本当に申し訳ないです」

加蓮「いずれにしても、もう木曽の軍勢が迫っている……戦わずして福原に退くつもりだったけど、一戦交えるしかなくなっちゃった……」

蓮実「私は法皇がどこに向かったのか、調べてお知らせしますから」

加蓮「お願いします!」


加蓮「というわけで、能登。私と木曽の先遣兵と戦って」

雫「望むところですー。強いんですよね、木曽軍は」

乃々「それはもう……ええ」

加蓮「でも維盛のおかげで、義仲の戦い方はわかった。名乗りもない、兵の士気は高く、突進力に優れている。でも……」

雫「?」

加蓮「じゃあ能登、手はず通りに」

雫「心得ていますー!」

保奈美「平家一の豪の者として知られる教経、まずは木曽軍へと突進します」

雫「我こそは能登守平教経! この弓と刀を試したい者は、かかってきてくださいー!」

保奈美「さすがに王城一と名の知れた、教経の名乗りに、木曽軍も浮き足立ちますが、それも一瞬のこと。次々に教経に襲いかかります」

雫「ええいっ!」

保奈美「教経は当たるを幸いに、側に寄る木曽の武者を次々と切り捨てます。ならばと距離をとる木曽軍に、教経は並の武者なら3人がかりでないと引けない大弓を弾くように木曽軍に射かけます」

加蓮「さっすが伊達に王城一と呼ばれてないよね。でもさろさろ頃合いかな」

保奈美「それでも数に勝る木曽軍は、じりじりと教経に多勢で近寄ります。と、あっという間に教経は馬の口を変えると、一目散に逃げ出します」

加蓮「うんうん。きたね……まだだよ……まだ……」

保奈美「教経を追う木曽軍が林に入ると、そこには平家の軍勢500が潜んでおり、取り囲むように木曽軍に襲いかかります」

雫「まだまだ、私もいますよー!」

保奈美「そこへさらに、また向きを変え戻ってきた教経が襲いかかります。たまらず木曽軍は撤退を始めます」

雫「うまくいきましたねー」

加蓮「うん……これで時間がかせげる……かな。それにしても策は嵌まったけど、やっぱり木曽軍は屈強だね」

雫「戦いがいのある相手でしたー!」

加蓮「能登にしてみれば、一番のほめ言葉だね。ふふっ」

巴「おどれら、そいでのこのこ舞い戻ってきたんか! それでも木曽組の若いモンか! ああ!?」

茜「巴ちゃん。静かに!」

巴「じゃけんど!」

茜「平家にもまだ人がいる……そういうことです! いえ、私も倶利伽羅峠の大勝で気が緩んでいたかも知れません!」

巴「そぎゃんことは……あ? 何事……なんじゃと?」

茜「どうしましたか!?」

巴「……客じゃと」

茜「また我々と共に京に入りたいという、武家ですか!?」

巴「いやそれが……法皇じゃと」

茜「……はっ!?」


蓮実「新中納言様」

加蓮「あ、皇太后様。すみません福原へ一刻も早く撤退するためにこのバタバタで」

蓮実「法皇の行き先がわかりました」

加蓮「……どこですか?」

蓮実「叡山です」

加蓮「比叡山延暦寺……ん? 比叡山には今……」

蓮実「はい。木曽義仲の軍勢が、逗留しています」

くるみ「なんで後白河法皇しゃまは、義仲の所へ」

加蓮「平家は見限られた、ってとこかな」

美由紀「そんな! こないだまで平家は官軍で、政も取り仕切ってたのに」

くるみ「どうしゅればいいんでしゅか」

加蓮「やることは変わらないよ。西国で平家は勢力を取り戻す。そうすれば、木曽とも対抗できるし、手も結べる」

乃々「え?」

加蓮「木曽義仲はもうすぐ、とんでもない羽目に陥る。その時に手を差し伸べたいの」

乃々「え? だって木曽は……敵である源氏じゃあ……ええっ?」

加蓮「兄上」

くるみ「なんでしゅか?」

加蓮「福原じゃなくて、屋島まで退きたいんだけど」

くるみ「屋島へでしゅか?」


奈緒「屋島は今の香川県にある島なんだ。島なんだけど、干潮時は浅瀬ができて馬で渡れる場所なんだ」

P「この島は、清盛の時代から軍事拠点として準備をされてきていたんだ」

加蓮「父上……じゃなかった、清盛は平家がこうして追い込まれることを予想していたの?」

凛「加蓮、ちゃんと清盛のこと父上って言ってるw ちゃんと役に入ってるんだ」

加蓮「まあねw」

P「こうなるかを予測していたかはわからないけど、確かに屋島は瀬戸内海に平家が睨みをきかせる格好の拠点となっていたんだ」

奈緒「本当は平家は九州まで引いてそこで勢力を取り戻すつもりだったんだけど、九州は九州で政情が不安定で諦めたみたいなんだよ」

保奈美「それではまた舞台はも比叡山延暦寺へと戻ります」

巴「どげなことじゃろかのう、法皇の方からウチらのシマまでやって来るいうんは」

茜「……拝謁を賜ろうとしたのですが!」

巴「なんて言うとった? 法皇は?」

茜「ここは仮の御所に過ぎぬ……とだけ、どういう意味でしょうか!?」

巴「わからんのう……」


志希「義仲はさ、宮仕えの経験もない地方出身者だから、法皇サマの深遠なお言葉では理解できないと思うよ~」

フレデリカ「そっかー。早く本来の御所に帰りたい……都に行きたいって伝わらないか-」

志希「義仲には、あたしがそう言っておくから」

フレデリカ「うんうん。都育ちで宮仕えの経験もある行家ちゃんこと新宮十郎ちゃんを、ミーはこれからは頼りにするからね」

志希「ありがたき~」


志希「てことで、法皇サマは京の都に戻りたいので警護せよ。拝謁はその時にネ、だって」

巴「なんじゃあ。そげならそげんて言えばよかろうに」

志希「まあまあ。これが都人の表現なんだよ」

茜「ともあれ、わかりました! いざ、法皇様をたてて京の都へ」

保奈美「こうして義仲は、都入りを果たしました。そしてすぐ後白河法皇に拝謁をし、都の警護を任されます」

フレデリカ「それでそれで? ミーの義仲を討てという院宣に、頼朝ちゃんはなんて?」

志希「それがね、頼朝は『今はただ、私の罪が許されることを願うのみです』……と、こういう返事」

フレデリカ「フンフンフンフンフフーン♪ なるほどネ」

志希「これって遠回しに、義仲を討つつもりはナイって返事?」

フレデリカ「ノンノン! 逆だと思うな。頼朝ちゃんはまず、自分の官位を返せって言ってるんだよ」

志希「頼朝の官位……なんだっけ?」

フレデリカ「従五位下、が平治の乱の前の頼朝ちゃんの位だよ。いいよ、その官位復活させちゃう」

志希「頼朝もなんだかんだ言って、官位が欲しいんだね」

フレデリカ「位の欲しくない人なんていないよ。だからみんなミーを大事にしてくれるんだし」

志希「なるほどねー」

フレデリカ「そんでネ。この機会に平家との関係が深い安徳天皇は廃位して、次の天皇を立てようとおもうんだよネ」

志希「いいねいいね~ん?」

フレデリカ「どうしたの?」

志希「安徳天皇……置いて来ちゃったんでしょ?」

フレデリカ「ウンウンそだよー」

志希「じゃあ三種の神器は今は~?」

フレデリカ「あ!」

美嘉「法皇はなんて言って来た?」

忍「うんとね、源頼朝を従五位下に復認する……だって」

美嘉「そうか……うん、良かった」

忍「あのさ、頼朝さん。やっぱり官位って欲しいもん?」

美嘉「全然」

忍「え?」

美嘉「アタシは官位が欲しいんじゃないの。欲しいのは……大義名分」

忍「どういうこと?」

美嘉「義時はさ、戦に勝つには何が必要だと思う?」

忍「え? うーん、やっぱりそれは実力というか武力?」

美嘉「そうだね。他には?」

忍「運も大事かな。平維盛に勝った時もあれは、運が良かったところもあるから」

美嘉「そう。運も大事。他には?」

忍「それ以外……まだなにかあるかな?」

美嘉「あるよ」

忍「なんです? それは」

美嘉「気分」

忍「気分……って、気分で勝てるの!?」

美嘉「この人は勝てる、そう思ったら味方する。この人は負けるだろうなと思ったら見捨てるか敵に回る。そういうものでしょ?」

忍「まあ、私たち地方の豪族はね」

美嘉「つまり、周囲の勢力に『この人は勝てる!』って気分にさせるのは重要なこと」

忍「うーん、なるほど。それで?」

美嘉「アタシは昨日まで、都で父と共に乱を起こした罪人で、流人。ところが今は、従五位下の官位を持ち、法皇からの院宣も賜っている……つまりアタシたちは今は官軍」

忍「そっか! 一夜にして頼朝様は賊から朝廷から認められた官軍になったんだ!」

美嘉「義時、すぐに東国中に文を送って。源頼朝は、朝廷よりを従五位下と認められたって。つまり頼朝の軍は朝廷より正式に認められた官軍だ、って」

忍「うん! わかった! みんなをそういう『気分』にさせるよ!」

茜「平家を追討せよ、と!?」

フレデリカ「そうそう。それでネ。三種の神器を平家から取り返してきてよ」

茜「はあ。それでは近々、平家を追討いたします」

フレデリカ「なるはやでネ~。頼りにしてるから、義仲ちゃんを」

茜「ありがたきお言葉!」


凛「前に茜が、どちらが源氏の大将として天下を取るか勝負ですよ、って言ってたけどこれで茜の勝ちなわけなの?」

奈緒「確かに義仲は、他の豪族を従えて京の都に入った。将軍にも任じられて、旭将軍と呼ばれるんだけど……」

加蓮「平家もいなくなった京は、義仲の天下になったんじやないの?」

P「では、義仲が入京したあとどうなったのかを見ていこうか」


巴「しゃけらもない! なんぽ血気盛んゆうて、京の都のモンを略奪したりしちょるんはウチの若いモンもどないな了見じゃ!! 見つけしだいそんなは、ササラモサラにしちゃるど!!!」

茜「……無駄ですよ、巴ちゃん!」

巴「殿……無駄っちゅうんはどういう意味じゃ?」

茜「京の人々から略奪をしているのは、我が兵ではないんです!」

巴「はあ? ほんなら……まさか!?」

茜「我々に協力したいと、京まで進軍してくる途中で集まってきた各地の豪族や“武士達(ギャルサー)”です!」

巴「あいつら、うちの組の看板使って略奪しよるんか! 許せんのう!!」

茜「しかし寄せ集めとはいえ、私の元に集まった数万の兵がこの京にいます。その兵を食べさせるご飯が、ないんです!」

巴「食うモンがないけえ、略奪しよるわけか……しかもその数万の兵は統制がまるでとれんのじゃから、どうにもならん……」

茜「私が何を言っても、聞いてもらえませんからね! 大軍を率いているはずが、その大軍が枷になって身動きがとれません!」

巴「どげんすりゃあええんじゃ……」

茜「あはははははは!」

巴「な、なんじゃ? 殿」

茜「私はずっと不思議に思っていました! なぜ頼朝は動かないのか……鎌倉で各地の豪族を集め、御家人とし、忠誠を誓わせ、組織を作っている……なぜ京に攻め上らずにそんなことをしているのかが、ようやくわかりました!」

巴「実は、うちもわからんかった。そげか、兵の統制をとって、組織立ててそん上で動かしよるんが頼朝のやり方っちゅうことか」

茜「急いで攻めあがった私、ゆっくりと組織固めをした頼朝、ライバルとの対決は……私の負けというわけですね!」

巴「アホぬかせえ!」

パン

茜「巴……ちゃん!?」

巴「うちの惚れた男が、心底惚れた男が、そがあなことなんかぬかすなや!! うちの殿なら、弱音なんか吐かんと……なんとかせえ!!!」

茜「巴ちゃん……そうですね! 戦って……戦いだけでここまできた私です、戦うしかないなら戦いましょう!」

巴「そげじゃあ! よし、そんでどっちじゃ? 殺るんは平家か? 源氏か?」

茜「後白河法皇は、平家を討てと矢の催促です! ここは、平家をつぶしましょう! そうすれば、私にきちんと従う者も増えるかも知れません!」

巴「うちはあの後白河法皇っちゅうんは好かんが、殿が決めたならそげんしようか。よし、平家を討つんじゃ」


加蓮「あー、また茜ちゃんと戦うのかあ」

奈緒「そうは言っても、この先平家側も源氏側も戦いの連続だからなあ。誰かとは戦わないといけなくなるんだ」

凛「京の都から屋島に移った平家は、この頃どうなっていたの?」

P「四国や九州の西国からの援助を受けて、勢力を盛り返してきた。特に瀬戸内海での覇権は依然、平家の独壇場だった」

凛「力を取り戻してきたんだ」

奈緒「さあ、じゃあその力を盛り返してきた平家と義仲との対決だ」

保奈美「舞台は備中国水島。現在の岡山県倉敷市玉島です」ベベベン

加蓮「義仲が、配下の大軍を備中に送り出した!? 遅かったかー……」

くるみ「なにがでしゅか?」

加蓮「こうなるとは思ってたんだよね。義仲が京の都に入っても、寄せ集めの大軍なんかじゃ都を治めることはできない、って」

乃々「以前、新中納言様がおっしゃっていた、義仲は身動きがとれなくなる羽目になるっていうのは、そういうことなんですね」

加蓮「うん。その困った時に、手を差し伸べたら和睦ができるかもって思ってたんだけど」

雫「和睦ー!?」

加蓮「私たちと義仲で、頼朝と戦うっていうのもプランにあったんだけどね」

くるみ「しょんなこと、義仲がのむわけないでしゅ! 同じ源氏でしゅよ!?」

加蓮「源氏は平家とは違う。一門という意識がない。源氏同士でも簡単に敵に回って戦う。だから義仲を味方に……とも思ったんだけど、義仲は私たち平家と戦う道を選んじゃったみたい」

くるみ「そんなしゃきまで、父上が亡くなられた時から考えてたんでしゅか……」

雫「すごいですー」

乃々「まだ……遅くないと思うんですけど!」

加蓮「え?」

乃々「今送り込んできている義仲軍を破ったら、義仲も平家の話を聞くかも知れないんですけど」

くるみ「しょうでしゅよ。この戦いに勝って、平家はやはり強いとわかれば、手を組んで頼朝と戦う気にかも知れましぇん!」

加蓮「兄上……」

雫「勝ちましょうー! そして和睦を申し込んでみましょう」

加蓮「能登も……うん。勝とうね、この戦い」

乃々「新中納言様のこと、今更疑ったりはしないんですけど」

加蓮「うん。意味がわからないかも知れないけど、これが今回の必勝の策」

雫「言われたとおり、すべての船を綱で結びましたよー」

乃々「これでどうなんるんですか?」

加蓮「うふふ。さて、どうなるでしょうか?」

保奈美「平家側は、すべての船を綱で結び、それでも整然と木曽軍へと向かっていきます。木曽軍も、なんとか調達した船で平家側へと突撃してきます」

加蓮「源氏が、私たちみたいに自在に船を操れるわけがない。勢いに任せて進むしかないはずと読んだけど……やっぱりね」

乃々「木曽軍の船、突っ込んできたら……あわわ、こっちの船は綱で結んであるから突破できずに……むしろ綱が引っ張られてこちらの船が木曽軍の船を各個に包囲していくんですけど」

加蓮「さあ、取り囲んだ木曽軍の船をどんどん射ちゃって」

雫「狙いやすい的ですねー!」

保奈美「突撃しようとした平家側船に躱されると、船の間に張られた綱に引っ張られ、木曽軍の船は取り囲まれ、どんどん矢で射られていきます」

加蓮「逃げる船は追わないで! それが戦場とはいえ義仲に対するせめてもの誠意」

乃々「何人かは船伝いにやって来て、船上での戦いになったんですけど」

加蓮「そう。それでどうなったの?」

乃々「教経さんが、切り伏せてくださったんですけど。お陰でこちらの大勝利なんですけど。うう、もりくぼ初めて戦で勝ったんですけど……」

加蓮「さすが能登」

乃々「討ち取ったのは、足利義清に海野幸広の両大将。それから……足利義長と高梨高信と仁科盛家です」

加蓮「さて、義仲はアタシたちを手強い相手だと理解してくれるかな……」

巴「足利に海野がタマ取られたじゃと!? ウチの若いモンの中でも命知らずの腕利きじゃぞ!?」

茜「やはり……私が行くべきでした!」

巴「くっ……殿がこの都から出てしもうたら、それこそ箍が外れたみたいに寄せ集めの“武士(ギャル)”どもが暴れ出して手がつけれんようになるわい……じゃが」

茜「その寄せ集め達の横暴も、もはや捨て置けません! こうなれば……」

巴「なんじゃ? どないするんじゃ?」

茜「あり余るご飯を持つ方に、ご飯を分けてもらいに行きます!」

巴「それはまさか……」

茜「法住寺へ行きます!」


茜「失礼いたします! 将軍の義仲です! 法皇様にお目通り願います」

志希「これこれ失礼だよ~。いくら昇殿を許された身でも、いつでも法皇様にお目にかかれるワケじゃないんだよ~」

茜「ですから、失礼いたします、と申し上げました! 法皇様、お米を……ご飯を分けてください! このままでは戦えません! ご飯がなければ兵は飢えるだけです!」

フレデリカ「なんの騒ぎカナ~? あれ~? 義仲ちゃん、平家追討はどうなったの~?」

茜「その為に、ご飯が必要なのです!」

フレデリカ「水島でも負けたんだって~?」

茜「それとても、十分なお米があれば勝てました!」

フレデリカ「じゃあねえ。平家に勝ったら、ミーも考えるから」

茜「それでは遅いのです!」

フレデリカ「ここは譲れないナ~」

茜「では仕方ありません!」

フレデリカ「ン~? どうするの~?」

茜「法皇様を監禁します!」

フレデリカ「え?」

茜「失礼いたします!」

フレデリカ「え、ちょっとちょっと……ゆ、行家ちゃ~ん?」

巴「新宮十郎じゃったら、都の警護に行くゆうて去ってったで」

フレデリカ「え~!?」

加蓮「義仲は法住寺を包囲して上皇を監禁してる!? やった!」

蓮実「どうしたらいいんでしょう?」

加蓮「皇太后様は、このまま潜んでいらしてください。能登、一緒に法住寺に向かって!」

雫「いいですけど、どうするんですかー?」

加蓮「義仲と上皇の間に亀裂が入った。義仲は追い詰められている。西の平家は手強い、都は抑えきれない、東からは頼朝の軍が向かっている。この中で平家が助け船を出せば、義仲も乗ってくると思う」


雫「知盛さんはー」

加蓮「え?」

雫「本気なんですねー。本気で義仲と手を組むおつもりなんですねー」

加蓮「能登……一門の中でも私の策に反対の人がいるのもわかってるよ。でもね、源氏も平家も“武士(ギャル)”で“武家(ギャルサー)”じゃない。それに、本当の敵は源氏じゃない」

雫「私は“武芸(メイク)”のことしかわかりませんけどー、本当の敵がいるならその人と戦いたいですねー」

加蓮「いずれ……ね。平家が勝ったら、そうするから。まあもしも源氏が平家に勝っても、源氏がその敵と戦うことになるんだろうけどね」

雫「……見えてきました。法住寺ですー……あれっ?」

加蓮「立派な鎧の"武士(ギャル)"が……まさか!?」

巴「おどれら何モンじゃあ。ここになんの用じゃ!?」

雫「私たちはー……えっと」

加蓮「義仲殿にお目にかかりたいの。お願い!」

巴「おどれら……いや、こんなは……平家のモンか?」

加蓮「……うん」

巴「まさか、一門のモンかいな?」

加蓮「平……知盛」

巴「なっ……! あっははははは!」

雫「? なんですかー?」

巴「世に噂の新中納言っちゅうんは、鬼みたいなモンかと思うとったが……とてもうちらを苦しめよった平家軍の大将とは思えんのう」

加蓮「それはどうも。ううん、今はそんなことはいい。あなたこそ噂の巴御前よね? お願い会わせて、義仲に」

巴「会ってどげするんじゃ? まさかうちらを助けてくれる言うんか」

加蓮「うん」

巴「……なんじゃと?」

加蓮「平家は義仲軍と手を組みたい。西国を平家が、信州木曽や北陸は義仲が治めればいい。一緒に政をすればいい。それにアタシが奥州の藤原氏に声をかければ、頼朝を包囲することだって……!」

巴「なんでそげんことするんじゃ? アンタらん何の得がある?」

加蓮「頼朝は絶対に平家と組んではくれないから。頼朝は平家を憎んでいるから」

巴「まるでうちらがあんたらを恨んどらんような言い方じゃが、言いたいことはわかったわい」

加蓮「じゃあ!」

巴「ちいと遅かったのう……もうあと1日でも早くその話を聞いとったら、殿も考えとったかも知れん」

雫「遅かった……?」

加蓮「まさか、義仲は!」

巴「頼朝の軍が、もうそこまで来ちょる。宇治を超えたそうじゃ、殿は宇治川に向かったわい」

加蓮「遅……かった? そんな、いくらなんでもそんなに早く来られるはずが……!」

巴「九郎義経、瀬田で兄の範頼と分かれて山城田原方面へと回って、宇治に攻め入ったそうじゃ」

雫「宇治川って、私も倶利伽羅峠の戦いの後で義仲軍に備えて守りましたけど、あそこは守りやすく攻めにくい土地で、そんなにはやく抜けられるはずがありませんよー!?」

巴「ほんに、常軌を逸した早さじゃ。こっちはなんもせんうちに、攻め入られたわい」

加蓮「なんてこと……」

巴「新中納言!」

加蓮「え?」

巴「殿がのう、最期に言うたんじゃ……」

茜「巴ちゃん! 私は……負けたんでしょうかね!?」

巴「殿……」

茜「負けたのなら……私は何に負けたのでしょうか!? 頼朝にですか!? 平家にですか!? それとも私の気づいていない誰かに、ですか!?」

巴「……」

茜「どうすれば……私は勝てたのでしょうか……」


巴「殿は死ぬ気じゃ。それでうちに、北陸に落ち延びよって言われた。なあ、新中納言……平家の大将よ。殿は負けたんか? 何に負けたんか? どげすりゃあ……勝てたんじゃろうのう?」

加蓮「その答えは、私にもわからない」

巴「そげか」

加蓮「誰にもわからないと思う。ただ、ひとつ思うのは……義仲の敵は平家でも頼朝でもない」

巴「……わかった。よおわかった。今頃になって、わかったわい。なんで平家がさっさと京を去ったんか。なんで頼朝が自分では京に登らんのかが」

加蓮「一緒に来ない? 屋島に」

巴「そげなこと言われるとは思わんかったわ。いや、せっかくじゃが殿に言われたように、北陸に落ちるわい。うちも"武士(ギャル)"じゃあ。負けたら落ち延びるトコはひとつじゃけんのう」

加蓮「そうか。うん、元気で」

巴「落ち延びるからには、うちは生き延びるで。生き延びて……源氏と平家のゆく末を見とどけるけぇのう。ま、がんばりんさい」

加蓮「悪いけど、勝つのは平家だよ」

巴「……さらばじゃ新中納言!」


加蓮「遅かった……アタシ遅かったね」

雫「新中納言様が遅いんじゃなくて、頼朝軍が早すぎただけですー」

加蓮「頼朝軍が、ね。あるいは……」

加蓮(九郎義経が、だね)

莉嘉「はいはーい! アタシいちばーん☆ 宇治川でも勝ったし、お姉ちゃんとの義仲はアタシが討つって約束守ったよ。それで後は……ここが法住寺?」

フレデリカ「えっと誰、誰?」

莉嘉「え? アタシ? アタシ、源九郎義経☆」

フレデリカ「九郎義経……ああ、義朝の八男の。ミーをここから出して出して。そうしたら、いいコトあるから」

莉嘉「え?」

保奈美「木曽義仲こと源義仲。旭将軍と呼ばれながら、都人からの評判は悪く揶揄もされましたが、義仲自身は清廉で人品も卑しからなかったとも伝えられ、大軍で京に上らなければまた違った結果が待っていたのではないかとも言われています。義仲は最期は宇治川での戦いに敗れ、近江国粟津で討ち取られました。現在の滋賀県大津市です。


凛「茜も負けちゃったか。でもなんとなく茜、最後は平家と戦って負けるのかと思っていたけど、頼朝軍と戦って負けたのは意外だったかな」

奈緒「平家って、なにかがあると良くも悪くも一族が結束して事に当たるんだけど、源氏は逆に一族の中で争ったりするんだよ」

加蓮「茜ちゃんと組んで戦いたかったな、アタシも」

P「さてここで、忘れてはならないことがある」

奈緒「え? あ!」

凛「なに?」

P「木曽義仲が敗れた、ということは……」

加蓮「えっと……あ、嫡男の晴……は義高だっけ。あの子はどうなるの?」

P「それをこれから見ていくぞ」

奈緒「……」

凛「また奈緒が地蔵に」

加蓮「どうなるの?」

美嘉「そっか。義仲は範頼と義経が倒したんだね」

忍「それであの、義高は……」

美嘉「この鎌倉にいる限り、義高はアタシの娘の婿殿だよ」

忍「良かったあ」

美嘉「鎌倉にいる限りは、ね」

忍「え?」

美嘉「この鎌倉から出て行くようなことがあれば、それはアタシに対する反逆の意志とみなすからね」

忍「それはつまり……」

美嘉「義高を父親の所に行かせるから」

忍「……」


日菜子「義高様」

晴「な、なんだよ、どうしたんだよ、その真顔は」

日菜子「これは大姫が普段している妄想をやめ、集中している真顔モード」

晴「へえ。真面目な顔も可愛いよな、大姫は」

日菜子「義高様、今すぐ逃げてください」

晴「え?」

日菜子「お父上、義仲様は討たれました。私の叔父たちに」

晴「……そうか。負けたのか。父上は」

日菜子「ここにいては義高様もきっと殺されます。逃げください」

晴「そんなこと、オレに教えていいのかよ」

日菜子「覚悟はできてます」

晴「そっか。サンキューな。でも、これでお別れじゃねえーからな」

日菜子「え?」

晴「オレ、ここから逃げて木曽軍を再起させる。そしたら今度は、オレが頼朝を倒すから」

日菜子「……はい」

晴「そしたら大姫を、迎えに行くから」

日菜子「え?」

晴「大姫は、オレの宝だ」

日菜子「……待ってます。待ってますから」

晴「あんまり長くは待たせない、って」

日菜子「馬を用意しました。義高様の影武者も呼んでます。普段通り過ごしてると見せかけで逃げてください。馬は足音がしないよう綿を履かせてます」

晴「こんな周到な用意を……すげーな、真顔モード」

日菜子「そしてこれです……むふふ。あ、今は妄想は駄目駄目。女物の着物を用意しました」

晴「これ、オレが着るのかよ!」

日菜子「大姫がお手伝いしますから……むふ、むふふ、むふふふふふふ!!!」

晴「なんかヒラヒラするしスースーするけど、確かにこれならオレってわかんねーかもな」

日菜子「むふー! 今のこの義高様のお姿、大姫忘れません」

晴「なんか恥ずかしいけど……ありがとう。じゃあ、大姫……またな」

日菜子「待ってます。義高様!」

保奈美「義高が鎌倉より出奔したことは、その日の午後には露見。鎌倉中の街道に厳戒態勢が敷かれ、翌日には義高は鎌倉に連れ戻されました。ただし、その姿は……」ベベン

まゆ「大姫、心して聞いてくださいねぇ」

日菜子「むふふ、義高様。はやく……はやく大姫をむかえに……白馬に乗って……むふふふふ」

まゆ「大姫!」

日菜子「むふ? あ、お母様」

まゆ「大姫、義高殿が……鎌倉に戻られました」

日菜子「え? もうですか? も、もしかして木曽にはまだ軍がいて、それを率いて大姫を迎えに……むふふ」

まゆ「義高殿は今、寺におらるんですけどぉ」

日菜子「むふふ……お寺?」

まゆ「せめて、丁重に弔いたいとまゆが父上に願い出たんですよぉ……」

日菜子「弔い? え? な? え?」

まゆ「大姫、心して聞いてくださいねぇ。義高殿は既にこの世の人ではありません……鎌倉に帰ってきた義高殿は……首だけだったんですよぉ」

日菜子「……むふ」

まゆ「大姫?」

日菜子「むふふ、むふふふ、むふふふふふふ!!! あははははははははははははははははははははははははははははははははは」

まゆ「大姫! 大姫、しっかり!! しっかりと気を……気を確かに……」

日菜子「むふふふふふふふふふふふふふふ!!! あはははははははははははははは!!! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃーーー!!! うううわあああーーーあああーーーあああーーー!!!」

まゆ「ああ、大姫……」

保奈美「源義高こと木曽義高は、鎌倉から出ることなく討たれました。そして義高を愛していた、その愛ゆえに義高を逃がそうとした大姫はこれ以降、心を病み、館から一歩も外に出なくなったのです」ベベベベベベン

凛「ちょ、ちょっと!」

加蓮「かわいそうじゃない! 大姫!」

奈緒「だから言っただろ! このくだりのエピソードはやらない方がいい、って!」

P「しかし避けては通れない史実だしな」

凛「人質として来たのかも知れないけど、なんか可愛らしい恋をしていて微笑ましたかったのに」

加蓮「大姫だって、義高を心配して逃がしたわけじゃない。それに娘の愛してる人にそんなことしなくてもねえ!」

奈緒「しかも大姫のエピソード、これで終わりじゃないんだよ……」

凛「え?」

加蓮「これ以上まだなんかあるの!?」

P「まあそれはまた後で出てくるが……」

凛「い、いや、もういいよ!」

加蓮「これで終わりにしよ! ね! 大姫の話は」

奈緒「……」

凛「ほらまた奈緒が地蔵に!」

加蓮「話題を変えよう! 話題を! えっと、そ、そう義経ってそんなに速かったんだ」

凛「それが強さの秘訣なんだったよね」

奈緒「そうなんだよ!」

凛「よかった」ヒソヒソ

加蓮「あの雰囲気、耐えられないもん」ヒソヒソ

P「ドラマ内でも少し触れられているけれど、とにかく頼朝軍というか義経が鎌倉から攻め上がってくるスピードは異常だった。一緒に出立した範頼たちを追い抜いて自分たちだけでドンドン進んでいったんだ」

凛「前に奈緒が言ってた、義経の強さの秘密って早さだったの?」

奈緒「これから先にも出てくると思うけど、とにかく義経は早いんだよ。行動が」

加蓮「でもさ、追い抜かれてドンドン先に行かれちゃった未央は、立場ないんじゃないの?」

P「そうなんだ。それで……」


未央「うん、あのさ義経。私、思うんだけどさ」

莉嘉「なに? かばのお姉ちゃん」

未央「団体行動、って知ってるかな?」

莉嘉「えっと……難しい宗教用語?」

未央「難しくない、難しくない。少しも難しくないんだよ。あのね、みんなで一緒に行動しよう、ってことなの」

莉嘉「ふーん。それで?」

未央「義経もさ、行軍や戦では一緒に行動して欲しいんだよね」

莉嘉「そんなの今から約束できないよ。戦って刻々と状況が変わって、その場その場の判断が必要になるんだから」

未央「ううーんと、でもね、軍を上手く率いるには必要なことなの」

莉嘉「そうなの? じゃあ、うん。なるべくそうする」

未央「なるべくじゃなくて、必ずお願いしたいんだけど……ね!」

莉嘉「はいはーい」

未央(わかってくれた……んだよね? 次はとうとう平家との直接対決なんだから……ううっ緊張する)

奈緒「さて、いよいよ一ノ谷の戦いだな。源氏と平家が直接戦うことになるんだ」

加蓮「いよいよアタシ、利嘉ちゃんと戦うことになるのかー」

凛「役の上とはいえ、ちょっと複雑だよね。わかるよ」

P「その前にここでゲストとして、新たな登場人物に来てもらっている」

奈緒「え? 誰だ」

乙倉悠貴「こんにちはっ! 平知章(ともあきら)役をいただきましたっ! 乙倉悠貴ですっ!」

加蓮「平……ってことは、平家側の人間だね。やった! 仲間だ、よろしく」ギュッ

悠貴「えっと……あの、よ、よろしくお願いしますっ////」

凛「? なんで照れてるの? 悠貴」

奈緒「あはは。あのさ、平知章は平知盛の長男なんだよ」

加蓮「へえー平知盛の……ってアタシ!? 悠貴アタシの子供役をやるんだ!!」

P「平家物語には、身体の弱かった新中納言に似ず、身体創建で力も強く足が速かった……とあるな」

凛「なるほど、ピッタリだね」

P「加蓮は事務所の小さい娘たちに人気があるからな、みんなその子供役を希望して大変だったんだぞ」

奈緒「加蓮は年下の娘に対して面倒見がいいからなあ」

加蓮「そういうわけじゃあ……ほら、私は小さい頃は病院ばっかりだったし」

凛「じゃあ悠貴は希望者の中から勝ち上がったんだ」

奈緒「あたし知章役はてっきり、りあむさんとかかと思ってたんだけどな」

凛「知盛ママって呼ばれるんだw」

P「りあむはまだこの先、出番があるから今回は辞退してもらった」

加蓮「立候補はしてたんだ……w」

悠貴「それでは、いよいよ一ノ谷の戦い始まりますっ!」

保奈美「それじゃあ1184年の福原の都に、いってらっしゃい」

加蓮「……できた。一ノ谷周辺の絵図」ツー

くるみ「知盛しゃん! また吐血で絵図面を描いて!」

悠貴「父上様、“懐紙(タオル)”をどうぞっ!」

加蓮「ありがと、知章。この方が気合いが入るから……見て、兄上。源氏は一ノ谷に、きっとこの東の生田口と西の塩屋口の両面から攻めてくると思うんだよね」

くるみ「そうなんでしゅか?」

雫「はいー。義経は塩屋口から来るというのが、新中納言様の予想なんですよねー」

乃々「東西からの挟み撃ち……を狙っているんですね」

加蓮「つまり……義経は大回りして塩屋口を目指すだろうから、その途中にある三草山に平家方の小松さんを配置。でもちょっと戦闘をしたら小松さんは高砂を目指してもらって、そこから船に乗り込むの」

くるみ「わかりましゅた」

雫「そうなると義経は、勢いに乗って進撃を続けるでしょうねー」

加蓮「うん。そして範頼は生田口から進軍する。源氏は平家を挟み撃ちの形にすると思う」

乃々「義経と範頼、思ったより……手堅い戦法をとるんですね。なんだか意外なんですけど……」

加蓮「挟み撃ちは私たちも想定の範囲内。それに対して兵に陣形をしくから、ここで膠着状態になる。すると義経はきっと動く。独断で。小勢で」

雫「なんでわかるんですかー?」

加蓮「義経は、とにかく早い。木曽と戦った時もそう。馬での移動も、戦いに取りかかる時も、戦場での判断も。早すぎるほどに」

くるみ「そんなにしゅごいんですか?」

加蓮「カップ麺も3分待たずにバリバリ食べてそうなイメージはある」

乃々「それってどんなイメージなんですか……」

加蓮「とにかく機敏な人間なのは、間違いないよ。だから絶対に状況が膠着したら動き出す。たぶん、鵯越口にむかい、これを破って勢いに乗って夢野口を。さらにその先の福原を突こうとすると思う」

雫「でもー」

加蓮「うん。夢野口には能登を配置してる。だから能登は夢野口から鵯越口に向かって。能登ならそう簡単に義経でも突破はできない」

雫「もちろん、通しませんよー」

加蓮「そこで……」

悠貴「わかりましたっ! 海ですね」

くるみ「海?」

乃々「あ……」

加蓮「そう。三手に分かれた源氏をすべて足止めしたら、最初に海に撤退した小松さんが高砂から再上陸して塩屋口を源氏の背後から攻めてもらう」

くるみ「な、なるほどぉ」

雫「源氏方は、挟み撃ちにしたつもりが挟み撃ちにされているんですねー」

悠貴「平家は海を自在に使えますからっ!」

加蓮「そこでアタシと知章が鵯越口に向かい、能登と合流して源氏をすり潰していく。最初の三草山を再奪取して、残った源氏を再び挟んで壊滅させるの」

乃々「すごいんですけど! やれるんですけど!」

加蓮「3日寝ないで考えた策……たぶん、これしか勝てる手はないと思うよ」

くるみ「さしゅがです、新中納言。ではさっそく、策の通りに兵の配置を」

雫「わかりましたー」

乃々「こうなったらもう、やけくぼですけど!」

悠貴「父上っ?」

加蓮「……なに? 知章」

悠貴「先刻の策を聞いてさすがは父上だって、私感動しましたっ!」

加蓮「……うん」

悠貴「? なにか不安でもあるんですかっ?」

加蓮「これしかないと……ううん、これなら勝てるという手を考えたつもりなんだけど……」

悠貴「?」

加蓮「あはは。アタシが弱気になっちゃダメだよね。盤外の一手を気にしてちゃいけない」

悠貴「盤外の一手……ですかっ?」

加蓮「碁の対局で、想定できない対戦者以外による盤外からの一手のこと……」

悠貴「盤外から……って、そんなのズルじゃんじゃないですかっ!」

加蓮「うん……でも、どんなズルをすればこの策を破れるのか……アタシにはそれがわからない。いくら考えても全然わからない」

悠貴「それはきっと、父上の策が完璧だからですよっ!」

加蓮「……ありがとう。誰に言われるより、知章に言われるのが嬉しいよ……」

悠貴「明日は、絶対に勝ちますっ!」

加蓮「うん……」


凛「なんか、すごい。加蓮とは思えない作戦を立ててる……」

加蓮「どういう意味!?」

P「新中納言知盛は、地の利と海、そして源氏の動きを予測してほぼ完璧な作戦を立てていた」

奈緒「そしてそれは、途中までズバリはまってた」

加蓮「そーでしょ、そーでしょ……え? 途中まで?」

P「義経は大回りして塩屋口、範頼は生田口から進軍して平家軍を挟み撃ちの形にして膠着状態になる。そして義経は動く。そこまでは予想通りだったんだが」

加蓮「そこで盤外の一手っていうのが出るの?」

奈緒「ああ。義経は、誰も予測できないような行動に出た」

文香「義経様……いったいどこへ……?」

莉嘉「弁慶くん。今。何人アタシたちに付いてきている?」

文香「夢野口へ向かわせた兵から私たちは分かれましたから……今は50騎いるかどうか……」

莉嘉「えへへ☆ アタシね、気がついたんだ」

文香「なにをでしょうか……」

莉嘉「この山を越えたら、すぐ下に平家の本体がいるじゃない」

文香「この山……お待ちください、確か名前が……昨日見た絵図面では……名前が鉄拐山(てっかいさん)……」

莉嘉「まさかここからアタシたちが来るとは平家も思わないでしょ?」

文香「いえ、鉄拐山を超えると言いましても……急峻な崖しかありませんが……」

莉嘉「じゃあその崖、下りちゃえばいいんじゃない☆」

文香「今も申し上げましたが……崖ですよ?」

莉嘉「着いたー☆ ほら、真下に敵の本陣」

文香「ですからこの崖をどうやって……」

莉嘉「うんとね。落ちるより早く駆け下りる!」

文香「無理です……この崖を駆け下りることができる者など」

莉嘉「ねえ弁慶くん。見て見て」

文香「あれは……鹿が……崖を……あ、下りていきましたね」

莉嘉「ね。鹿が大丈夫なんだから、アタシたちも大丈夫だよ」

文香「鹿と騎馬では……あ、ま、待ってください義経様……」

パーッパパーパパパーパー♪ パッパラー♪

保奈美「G1、鉄拐山を駆け下りるという難レース、後白河法皇賞。いよいよスタートです」

ガッコン

莉嘉「いっくよー☆」

保奈美「さあ、ゲート開いた。各“馬(ウマ娘)”いっせいに崖をかけおりる。最初に飛び出したのは“太夫黒(ユキノビジン)”、騎手の義経いいスタートをきりました」

文香「し……仕方ありません。者ども、義経様に続きます……よ」

保奈美「義経の家臣団も後を追う。追う! しかし義経の“太夫黒(ユキノビジン)”先行している。逃げる逃げる、大逃げ。おっとそこに追いすがるのは誰だ?」

安部菜々「ウサミン星では、いつもこういう所を駆けめぐっていますからね。ここは千葉……じゃなくて馬場のようなものですからねっ!」

保奈美「佐原義連騎手の“日朝(マーベラスサンデー)”だ! 言葉通り、崖をものともせず駆け下りていく」

文香「これは……意外に……いけるのですか……ね?」

保奈美「ここで1人、とんでもない騎手と“馬(ウマ娘)”がいるぞ。誰だ……誰だ? なんと騎手の畠山重忠、愛馬の“目茶喰(ヒシアケボノ)”を担いでいるぞ。人馬が逆の、逆“馬(ウマ娘)”だー」

諸星きらり「お馬さんをケガさせちゃいけないからぁ。きらり、担いで崖をおりるにぃ。おっすおっす、ばっちし☆」

保奈美「義経一団、ものすごいスピードで崖を駆け下りていく。先頭は変わらず九郎、義経。“太夫黒(ユキノビジン)”さあ、崖ももう終わりだ。このまま決まってしまうのか!?」

莉嘉「いっちばーん☆」

保奈美「強い、強すぎる、“太夫黒(ユキノビジン)”鉄拐山の断崖絶壁を下りきりました!」

加蓮「え!?」

乃々「源氏の軍勢が、突然背後から現れたんですけど!」

加蓮「そんな……いったい、どこから……まさか!?」

雫「義経です。あの鉄拐山を駆け下りてくるのを見ましたー」

加蓮「鉄拐山を……そんな、そんなこと!」

保奈美「現れるはずのない場所から現れた源氏の騎馬軍に、平家は驚き、慌て、総崩れとなります」

加蓮「これじゃあもう……戦えない」

雫「まだまだ、盛り返せますよー!」

加蓮「……ううん、ここでこれ以上平家の優秀な人材を亡くすわけにはいかない。撤退を」

乃々「船に……海に逃げるんですけど!」

加蓮「崖から……崖を駆け下りてくる? そんな……そんな手を……」

保奈美「思いもかけぬ方角から。いや、安心できる壁として背中を預けていた鉄拐山という崖。その壁からの攻撃に、平家軍は動揺。総崩れとなります」ベベベン

加蓮「盤外の一手……」

保奈美「崩れた平家軍は、海へと逃れます。それを追う源氏軍。次々と名のある平家武者が討ち取られながら、それでも海へと多くの平家軍は逃げていきます」ベンベン

相川千夏「騎馬のまま海上の船に逃れんとする、そこな武将の方! “甲冑(コーデ)”の見事さからもさぞや名のあるお方と存じます! 私は武蔵国の熊谷直実(くまがい・なおざね)、名のあるお方が敵に背を向け逃げるのは卑怯でありましょう! お戻りなされ!」

?「……」クルリ

千夏「私の言を聞きこうして戻られたは、さすがに平家にもまだ“武士(ギャル)”がいると感服の至り。いざ、勝負!」

?「……」コクリ

ガッ! バタッ

千夏「なかなかの剣の腕前。しかしこうして組み伏せたからには、私の勝……えっ!? その顔は」

バッ

川島瑞樹「わかるわ」

千夏「え、えっと……え、ちょっと、ぷ、プロデューサー」ヒソヒソ

P「なんだ千夏、本番中だぞ」

千夏「ここ、私が演じる熊谷直実が平家の武者を組み伏せてみたら、自分の子供と同じ年頃の若武者でビックリするシーンよね?」ヒソヒソ

P「そうだが?」

千夏「なんで若武者役が、瑞樹さんなの!?」

P「それは実は、本人の希望で」

瑞樹「わかいわ」

千夏「いや、おかしいでしょ!? 瑞樹さん、私より年上なのよ!!」

P「あー、いや、そこはほら、今回の大河ドラマは実際の年齢とかそういうトコあんまり気にしないように作ってるから」

千夏「いくらそうでも、瑞樹さんを相手に自分の子供と同じ年頃だって演じるの!?」

P「ああ、演技力を発揮してくれ。頼むな!」

千夏「あ、ちょっと、プロデューサー……も、もう。な、なんと……組み伏せてみれば青年いや、ま、ま、ま、まだ、幼さの残る顔立ちの若武者ではな、な、な、ない……か」

瑞樹「わかいわ」

千夏(キツ……ツキ)

千夏「ハッ! その“笛(リコーダー)”は、我が子も同じものを……そういえば年の頃も、我が子とお、おな、同じぐらいの、わ、わわわ、若武者ではないか」

水樹「わかいわ」

千夏「我が子と、おなじ……」


橘ありす「父上。ご活躍を期待しております」

千夏「ええ。あなたも元服したら戦に出るようになる。その時まで腕を磨いておきなさい」

ありす「私は笛の稽古の方が好きなんですが……」

千夏「ふふっ。まだまだあなたが一人前の“武士(ギャル)”になるのは先のようね……」


千夏「……なにもその若い身空で死ぬことはない。今ならまだ船に乗れるでしょう。お逃げなさい」

水樹「いいえ。戦場に立った以上、1人の“武士(ギャル)”。お討ち取りなさい」

千夏「我が子と同じ年頃の……この“若武者(ちびギャル)”を……」


ありす「父上!」


千夏「……許されよ」

保奈美「こうして熊谷直実は、平家の若武者を討ち取ったのです。後に若武者の名は平敦盛(あつもり)と知られることになります……」ベンベンベンベン

乃々「生き残った兵は、ほとんど船に逃げ延びたんですけど……新中納言様もいそいで乗ってください」

加蓮「……アタシは残る」

雫「えー?」

加蓮「アタシの策は破れた……多くの平家の"武士(ギャル)"も亡くしてしまった……生きている者にも死んだ者なも顔向けができない……いっそここで……」

乃々「そんな……」

雫「新中納言様がいなくなったらー」

悠貴「父上!」

パン

加蓮「痛! と、知章!?」

悠貴「負けてませんっ! まだ平家は負けていませんっ!! この一ノ谷で負けたのなら、次で勝つんですっ!!!」

乃々「そ、そうなんですけど」

雫「その為には、新中納言様が必要なんですー」

未央「いた! あれが世に新中納言と呼ばれし、総大将の平知盛。いざ、尋常に勝負!」

乃々「な……何者なんですけど?」

未央「我こそは源の為朝が六男、源範頼! 平知盛、覚悟!」

悠貴「あなたの相手は私ですっ!」

未央「え? 誰?」

悠貴「新中納言平知盛が嫡男、平知章ですっ!」

加蓮「知章!」

悠貴「父上は、早く……早く船にっ!」

乃々「そ、そうです……!」

雫「急いでください、新中納言様ー!」

加蓮「待って、ひっぱらないで、知章ー!」

保奈美「維盛と経教に抱えられるように船へと乗せられる知盛。それを見とどけ、知章は範頼と相対します」

未央「あー逃げられちゃった」

悠貴「これで……平家は大丈夫ですっ! 父上さえおられれば、平家はきっと巻き返しますっ!」

未央「その為だけに、足止めを……敵ながら見事! でも、容赦はしないよ」

悠貴「望むところですっ!!!」

保奈美「知盛の嫡男、知章はここで討たれました。しかし、その死に顔は不思議と満足そうであったと伝えられています」ベンベンベベベン

加蓮「うう……悠貴、ゴメンね」

悠貴「短い出番でしたけど、楽しかったですっ!」

加蓮「うわあっ! い、生きてる!?」

凛「いや、それはそうだよ。ドラマの中でのナレ死なんだから」

奈緒「でもなんかこう……ジーンとしたよな。一門の未来と父親のために、命をはった悠貴には」

加蓮「うん……そうだね。ここからアタシがんばらないと」

P「じゃあ悠貴の出番はここまでで、舞台は屋島に移るんだが」

凛「瀬戸内海にある平家の今の拠点だったよね」

奈緒「一ノ谷で負けた平家は、屋島に撤退したんだけど源氏側もこの戦いの後、一悶着があったんだよ」

加蓮「勝ったのに?」

P「じゃあそれを見ていくぞ。保奈美、頼む」

保奈美「勝った源氏は京の都に戻ります」ベベベン

未央「なんで勝手に動いたの!? しかも自分の兵をほったらかして、単独で動くなんて!! 私が団体行動って言ってたでしょう!!!」

莉嘉「えー? 単独じゃないよ。仲間が五十騎ほど一緒だったもん」

未央「手勢だけ連れて、勝手に動いたのが問題なの!!」

莉嘉「勝ったからいいじゃん☆」

未央「良くない! あのね、将は軍全体を見て指示を出していかないといけないの。自分が最前線に出て、しかも手勢以外を放棄するなんてあっちゃいけないの」

莉嘉「でもあのままじゃ勝てなかったよ?」

未央「そんなことない」

莉嘉「このままじゃ負ける、って思ったからアタシあの山から下りること思いついたんだもん。間違ってなかったでしょ?」

未央「結果だけ見ちゃ駄目なんだよ」

莉嘉「負けたら意味ないもん! アタシたちがあの山から駆け下りなかったら、かばのお姉ちゃんは死んでたよ」

未央「なっ……!」

莉嘉「アタシわかるもん」

未央「というわけなんだよ~。義経ったら、ぜんっぜん私の言うこと効いてくれないし、戦場では勝手に動くし」

美嘉「……蒲の冠者」

未央「え、あ、は、はい」

美嘉「そうなるだろうとアタシ言ったし、だから頼むねとも言ったよね?」

未央「それは、でも……はい。ゴメンナサイ」

美嘉「とはいえ、義経の独断専行はやり過ぎだとアタシも思う」

未央「うん。とにかく立ち止まらない。速いことをなにより重んじてる。それがあの子の強さの源泉だとはわかっているけど」

美嘉「配下の者に目を配り、危機を取り除き、手柄を立てさせるのも将の役目。兵の集まりを軍にする事が必要。でもあの子は、その部分が見事にすっぽりと抜け落ちてる……」

未央「どうすればいいと思います?」

美嘉「前にも言ったけど、良くも悪くもあの子は幼子。九州征伐にはまた2人で行ってもらうから、その課程で言って聞かせて、そして目の前で実践してよ」

未央「私が……わ、わかった」

みりあ「頼朝様ー!」

美嘉「あら、景時。おかえり、どう? 都の様子は? 治安維持を任せた義経はちゃんとやってる?」

みりあ「義経さんは、検非違使に任官されたよ」

美嘉「……え?」

みりあ「後白河法皇様が、義経さんを検非違使に任官したんだ」

美嘉「なんですってえええ!!!」

未央「あわわ……」

フレデリカ「というわけでね、ミーは義経ちゃんを検非違使に任官しちゃう」

莉嘉「えー? でもお姉ちゃんはアタシに、勝手に官位や官職についたりしちゃダメって言ってたんだけど」

フレデリカ「義経ちゃんは都にいたこともあるから、検非違使が何かを知ってるでしょ?」

莉嘉「え? 都の警備とかするんでしょ?」

フレデリカ「それって今、義経ちゃんがやってる、頼朝ちゃんからの指示そのものじゃない」

莉嘉「うーんと、そうかな?」

フレデリカ「それにね、頼朝ちゃんが朝廷から官位もらって任官されたら、義経ちゃんドー思う?」

莉嘉「そうしたら嬉しい! だってお姉ちゃんが偉くなるんでしょ?」

フレデリカ「僧、僧。だからネ、義経ちゃんが任官されたら頼朝ちゃんだって嬉しいと思うんだよ」

莉嘉「そっか」

フレデリカ「じゃあ、検非違使になってネ?」

莉嘉「うん! まかせて☆」


文香「左衛門少尉、検非違使に任ずる……な、なんということを……この綸旨、まさかお受けになってはおられませんよね……?」

莉嘉「え? 受けたよ」

文香「勝手に任官してはならない……と、頼朝様からあれほどきつく言われていたではありませんか!」

莉嘉「でもね、アタシは都の警備をお姉ちゃんから命じられてるし、実質それって検非違使かなって」

文香「全然、違います!」

莉嘉「それにアタシが任官されたら、お姉ちゃんも嬉しいかなって☆」

文香「頼朝様は、今や鎌倉で武家をとりまとめる御所様。義経様は、弟君とはいえ御所様にお仕えする御家人。単純な肉親の情では……」

莉嘉「ぶー! もういいよ、アタシちょっと出てくる」

文香「また白拍子ですか……義経様、とにかく今すぐ検非違使はお断りに……」

莉嘉「いってきまーす☆」

文香「義経様……ああ、もう。どうしたらいいのでしょうか……」

未央「あ、あのぉー……兄上、いや御所様。義経の件、どうしましょう?」

美嘉「……とりあえず謹慎させようと思う」

未央「謹慎……ですか」

美嘉「よくないことだ、っていうのをわからせるしかないと思うんだ」

未央「待ってください。じゃあ九州へは誰が……」

美嘉「蒲の冠者、九州平定は1人でお願い」

未央「……ううっ、大役でしかも大変そうな仕事だよね」


莉嘉「きんしん、ってどういうこと!? アタシが一ノ谷で平家をやっつけたんだよ!? 納得いかない!!」

文香「ですから後白河法皇から官位や官職を受けてはいけないと……あれほど申し上げたではありませんか」

莉嘉「……お姉ちゃん、アタシのことキライになっちゃったのかな」

文香「……そんなことはないと思いますよ」

莉嘉「ホント!?」

文香「平家はやはり手強いです。それにまだ優秀な人材も残っている……簡単には倒せません」

莉嘉「ということはつまり、またアタシの出番がくるってことだね!」

文香「ですので、ここは大人しく命じられたとおり……謹慎をしてください」

莉嘉「うーん……わかった」

文香「白拍子も駄目……ですよ?」

莉嘉「……はーい」

文香「では私は、出かけてきます」

莉嘉「えー? 謹慎はどうするの?」

文香「謹慎しろと命じられているのは、義経様……ですから。ふふっ」

莉嘉「そんなあ。弁慶くん1人でどこ行くの?」

文香「これからの戦い……平家の土俵である海での戦いが必須となります」

莉嘉「え? あ、うん!」

文香「その力を借りに……アテがあるので行ってきます」

莉嘉「そっか! お願いね☆ 弁慶くん」

文香「お任せを……」

莉嘉(本当に……笑っていると、僮のような方ですね……ふふふっ)

保奈美「ここは紀伊半島、今の和歌山県の熊野灘」ベンベン

文香「久しいですね……熊野湛増」

市原仁奈「クマの気持ちになるですよ! 仁奈はクマのたんぞーでやがるです。ほんとーでごぜーますよ、弁慶おねーさん。たまには帰ってきてほしーですよ」

文香「実は折り入ってお願いが……」

仁奈「なんでごぜーますか?」

保奈美「弁慶はここまでの事情を、兄弟分の熊野湛増に説明をします」ベベン

仁奈「じゃあ源氏の味方をしろって、弁慶おねーさんは言っているわけですか」

文香「いかがです……湛増さんが今は平家に味方をしているのは知っています……ですが、私に免じて源氏に!」

仁奈「クマの水軍なんて呼ばれているでごぜーますけど、仁奈たちはもともと漁師であり、商人でやがるですよ」

文香「知っています。その手練れの水手(かこ)が、戦でも強くなった……それがそもそもの熊野水軍」

仁奈「そうでごぜーますから、弁慶おねーさんも源氏も、商人としての腕をみせてくれやがるです」

文香「……?」

仁奈「船と水手を五艘だけ貸すですから、それを元手としてどう使うか見せてほしーです」

文香「その使い方次第では、今後……」

仁奈「源氏に力を貸してあげやがりますですよ!」

乃々「新中納言様の見立て通り、源範頼は山陽を通って九州へ向かっているんですけど」

加蓮「やっばりね」

くるみ「知盛しゃん、なんでやっぱりなんでしゅか?」

加蓮「源氏の狙いは、私たち平家を瀬戸内海に封じ込めることなの。範頼が九州から中国地方を抑え、そして誰かが四国を制圧するつもり」

雫「誰か、というのはやっぱりー?」

乃々「義経……でしょうね。あう。あ、でも……」

くるみ「そうなんでしゅか?」

乃々「前に新中納言様に言われて、瀬戸内の船を出来る限り抑えたんですけど」

加蓮「そう。こうなるかもと思ってはいたけど、やっておいて良かった。義経が……ううん、源氏の誰かが四国や屋島を狙おうにも船がないはず」

乃々「さすが新中納言様なんですけど」

加蓮「屋島が安泰なら、手はある。範頼を逆に封じ込めちゃうの」

くるみ「えっ!?」

加蓮「彦島に、兵を置くの」


凛「屋島はわかったけど、彦島っていうのは?」

奈緒「彦島は、山口県下関市の南端にある島で、九州と本州を繋ぐ要所なんだ」

凛「範頼……つまり未央は中国地方から九州に行こうとしてるから、ここで迎え撃つつもりなんだね」

P「ところが」

凛「えっ?」

奈緒「新中納言の作戦は、ちょっと違ってた」

加蓮「むふふ」

乃々「彦島に兵を置いて……どうするんですか?」

雫「源範頼を、九州に行かせないんですねー?」

加蓮「ううん、逆。範頼は九州に行かせる」

くるみ「え?」

加蓮「そうしたら、彦島に兵を動員して範頼を九州に封じ込めて出られなくするの」

雫「あー」

加蓮「反平家の動きがあるとはいっても、まだまだ九州には平家に好意的な武士も多い。それに今は慢性的な飢饉。その九州に、範頼を閉じこめれば……」

乃々「範頼は自滅するかも知れないんですけど」

加蓮「援軍や糧秣がもし九州へ向かっても、私たちは船からそれを襲えばいい」

くるみ「な、なるほど」

加蓮「彦島へは私が行く。能登、その間は屋島をお願いね。屋島という平家の今の拠点がなくなっちゃったら、逆に平家は瀬戸内海に封じ込められちゃうから」

雫「わかりましたー!」

文香「5艘の船、どう使いますか……? 私としては、ゲリラ的に平家やそれに味方する船を襲っていき……」

莉嘉「見て。弁慶くん」

文香「はい……? なんですこれは……糸くずのような、タンポポの綿毛のようなものが風に流されて……」

莉嘉「奥州にいた頃に、何度か見たんだ。これって子蜘蛛が集まって糸を出して、それで風に乗って遠くに散らばるんだって」

文香「なるほど……はて、これがなにか?」

莉嘉「アタシ、すっごくいいこと思いついちゃった☆」


文香「摂津から阿波まで、武者と騎馬を船に乗せ海を渡る……? そこから陸づたいに屋島を目指すお考えでしょうが、その航路は3日はかかる海路ですよ?」

莉嘉「うん、だけどね。明日の夜、嵐が来るんだ」

文香「天台官が、そのように……?」

莉嘉「天台にも陰陽にも、アタシは知り合いはいないよ?」

文香「では……なぜ、嵐が来ると?」

莉嘉「弁慶くんも見たじゃない。ゆきむかえ」

文香「ゆきむかえ……とは、先刻のあの空を飛ぶ蜘蛛の糸……ですか?」

莉嘉「うんうん。あれってね、雪が降ったり大嵐の前の晴天に『今のうちに』って、子蜘蛛が飛び立つんだよ。アタシ、奥州でそう教わったし、確かに何度か見たゆきむかえはそうだった」

文香「では……あの、ゆきむかえから嵐が来ると義経様は……」

莉嘉「その嵐の大風に乗ったら、3日どころか一晩で阿波まで行けちゃうんじゃないかな☆」

文香「そんな……む、無茶で……」

莉嘉「……?」ニコニコ

文香(この方は……義経様は軍神だ。共につき従い、共に戦う度に……その想いは強くなる。ならば……)

文香「すぐに手勢に召集をかけます。出立は、明日の夜でよろしいですね」

莉嘉「うんっ☆」

莉嘉「クマの水軍の水手(かこ)の人たち、なんか言ってたみたいだけど、なに?」

文香「この嵐の中を船で出るのは自殺行為だ……と。それでも名にし負う熊野水軍か……と一喝しておきました」

莉嘉「さすが弁慶くん☆」

文香「馬を3艘、武士を2艘に分けて乗せました。……よいのですね?」

莉嘉「いいよ。行こう! 阿波へ!! 一晩で!!!」


加蓮「摂津ってどこだっけ?」

P「今の大阪の北の方だな。そこから船で徳島へ向かったわけだ」

奈緒「この頃、通常は3日かかる航路だったそうだけど、なんと嵐の海に乗り出した義経は……」

保奈美「さあ、どのくらいで阿波まで……いえ、そもそも嵐の中を無事に阿波までたどり着けるのでしょうか……」ベベベンベン


莉嘉「とうちゃーく☆ やったね!」

文香「船の乗り心地としては、最悪でしたね……今、水手に確認しました。ここは……」

莉嘉「どこどこ? ちゃんと阿波に着いたの?」

文香「はい……ここは阿波国、勝浦……という土地だそうです」

莉嘉「勝浦……なんか縁起がいい名前だね、勝つ! って」

文香「出航したのが……確か、丑の刻。今が卯の刻ですから……なんと二刻で着いたわけですか」

莉嘉「さあさあ、この勢いで屋島まで駆けていくよー☆」

文香「あ、お、お待ちくだ……ふふっ、本当に早さ速さでは並ぶ者なきお方ですね。皆の者、義経様に続きますよ!」


凛「着いたんだ、ちゃんと。徳島に」

加蓮「じゃあ丑の刻、卯の刻、二刻が今の言葉で言うと……はい、奈緒!」

奈緒「丑の刻は今の午前2時。卯の刻は午前6時。そして二刻というのは、4時間だな」

凛「4時間!? 最初、3日かかる航路だって言ってなかった?」

P「これこそが、義経の真骨頂とも言える速さだな。敵に身構える時間も隙も与えないんだ」

加蓮「それにしても、3日を4時間って……それはアタシも読み違えるよね」

奈緒「うん。さすがの新中納言も、まさかそんなに早く、手勢だけで陸の方から源氏が攻めてくるとは想像もできなかった」

P「もちろん、源氏がどうにかして船を用意して屋島に攻めてくるだろうとは思っていたんだが、さすがに義経の行動は想定外だったんだ」

保奈美「さて、予想もしていなかった義経の屋島襲撃に、平家一門側は……」ベンベン

雫「屋島の対岸が燃えている、ですってー!?」

乃々「民家が燃えて火の海なんですけど! まさか源氏が攻めてきたかもですけど!」

くるみ「ど、どうしましゅか!?」

雫「燃えているということは源氏だと思いますけど、直接攻めてこないということは大軍ではありませんねー。だから火を放ったんでしょうけど……。今は潮は?」

乃々「引き潮……ですけど……」

雫「では浅瀬から馬で攻めてこられますねー。迎え撃つ準備をー」

保奈美「こうして屋島の戦いが始まりました。小勢であることを平家側に見抜かれた義経でしたが、まさかの奇襲に平家側の体制は整わず、撤退することとなります」

雫「新中納言様に顔向けが……できませんー……」

くるみ「しょんなことありましぇん」

雫「宗盛様……?」

くるみ「兵だけではなく、女性も大勢いましゅ。平家一門全員を生き延びさせるのが先決でしゅ」

乃々「そうなんですけど。命が大事だと思いますけど」

雫「……わかりましたー」

くるみ「ひとつ、考えがありましゅ。源氏の武自慢を逆手に取るでしゅ」

乃々「?」

莉嘉「な、なになに? みんな、なに騒いでるの?」

文香「あれです……」

莉嘉「平家の船……あれ? 一船だけ前に出て……竿の先に掲げているのは扇?」

文香「源氏の武士よ、その実力を見せてみよ。自信があるならこの扇を射てみよ……との挑発です。のってはなりません。外れて当然の難題を出し、いざ外れれば笑いものにするという策です」

莉嘉「えー? でもだって射なかったら源氏の名折れじゃない! お姉ちゃんにも申し訳ないからやる! アタシやる!!」

舞「おそれながら」

莉嘉「え?」

舞「弓矢ならばこの与一にお任せください」

莉嘉「そういえば弓にかけては天下無双だっけ。うん! じゃあ、お願い!」

舞「わかりました」

文香「……与一さん」

舞「は、はい」

文香「源氏も平家も注目しています。名を挙げる……手柄の、そして兄弟を助けるチャンスですよ」

舞「……ありがとうございます。がんばります!」


乃々「出てきたんですけど、源氏方から武者が」

雫「あの人が、源氏の弓自慢ですかー?」

くるみ「ずいぶんとまた、小しゃいでしゅね」

乃々「平家一の強弓兵の教経さんと比べると……殊更に小さく見えます……ね」

雫「でも、弓の大きさは私に負けてないみたいですねー」

くるみ「教経しゃん、実しゃいのところどうなんでしゅか? 教経しゃんなら、この扇を射落とせましゅか?」

奈緒「いよいよきたな! 屋島の合戦の名場面、扇の的!!」

凛「古典の授業でやった覚えがある。陸の馬上から船の上の扇を射るんだよね?」

P「ここで那須与一の父親である那須資隆役を演じてくれて、シンデレラガールズ1の弓道の名手、翠に来てもらっている」

翠「こんにちは」

加蓮「あ、いらっしゃい」

翠「この名場面、扇の的を僭越ながら私が解説させていただきます」

奈緒「なるほど。あたしもどれくらい難しいのかは、ちょっとよくわからないもんな」

P「頼むな、翠」

翠「はい。まず平家物語によると2月18日の酉の刻……つまり午後6時頃、北風が強くて的となる扇を掲げた船は波で大きく上下に揺れていた、とあります」

凛「つまり的が大きく動いてるんだ」

翠「はい。それに、源氏方から見て北風ということは向かい風だったみたいですし」

加蓮「それってやっぱり難しいんだ」

翠「風は放った矢の軌道に、とっても大きな影響を与えますね。特に向かい風は飛距離に直接影響がありますし」

奈緒「そういえばこれって、扇まで距離はどのくらいあるんだっけ?」

翠「やはり平家物語に『磯へ七、八段ばかりになりしかば、舟を横さまになす』と、書いてあります」

奈緒「ということは……一段が六間で、一間が六尺で、一尺は30.3センチメートルだから……七段が76.356メートルで八段が87.264メートルか」

凛「えっ!?」

奈緒「? なんだよ」

加蓮「なんでそんなこと知ってて、しかも計算が早いの!?」

奈緒「いや鬼滅の刃でさ、大きな岩を一町先まで押して運ぶって修行があってさ、一町ってどのくらいかと思って色々調べてたら詳しくなったんだよな!!!」

凛「……ふーん」

加蓮「……そう」

奈緒「な、なんだよ! なんで急に無関心になるんだよ!!」

凛「なんかワクワクして見ていた手品のタネが、意外に単純過ぎてガッカリした時のような……」

加蓮「そうそう、それそれ。見直したところで一気に株が暴落しちゃったよね……」

奈緒「くうぅ……いつか2人に鬼滅の刃を見せて沼に引きずり込んでやるからな……」

翠「ともあれ、おおよそ80メートル前後といったところでしょうか。距離は」

加蓮「それってやっぱり、難しいの?」

翠「現代の弓道では近的場と遠的場があるんですが、長い距離を競う遠的場でも的までの距離は60メートルですから、相当遠く感じますね。80メートル先の的を射るのは」

凛「正直、翠でも難しい? この扇の的を射るのは」

翠「80メートルの距離を強い向かい風の中、しかも的が波で上下に揺れているとなると懐中させる自信はないですね」

加蓮「懐中?」

奈緒「命中と同じ意味かな」

保奈美「さてこの扇の的、平家側の弓自慢である能登守教経による見立ては……」ベベン


雫「3本矢を射ていいなら、当てる自信はありますけど、1本だけで当てる自信はないですねー」

くるみ「3本でしゅか?」

雫「最初の1矢が外れたら、それで距離を修正して、次の一矢で風の影響と角度を修正して、最後の一矢は当てられますけど、最初の一矢でいきなり当てるのは……神業ですよー」

乃々「じゃあもし、あの源氏の弓自慢が一矢で扇を射落としたら……源氏に神業の使い手がいるということに……」

くるみ「教経しゃんでもできないなら、無理にちがいありましぇん!」

加蓮「翠さんはどう? 3本射ていいなら当てられそう?」

翠「……4本にしてもらっていいですか?w」

奈緒「あはは。でも少しは自信があるのかな」

翠「弓矢の心得がある者として、ちょっとやってみたい気はしますね」

凛「わかるよ。私も心得なんかはないけど、挑戦してみたい気になるもの」

P「じゃあそろそろ本番テイク、いってみるぞ」

保奈美「那須与一は、騎馬のまま膝が濡れるまで海に入っていき、そこで弓をつがえます。平家側は並んだ船から、源氏側は馬を整然と並べて全員が彼に注目します。不思議な静寂と、異様な視線が与一に集まっています」ベンベン

舞「ギャル八幡大菩薩! どうぞこの矢、外させたもうな」

保奈美「与一が静かに念じ目を開くと、不思議と風が穏やかになりました。しかし与一、矢を射ません」

文香「何をしているのですか……せっかく風が凪いでいるというのに……ああ、また風が強くなりますよ……」

莉嘉「与一くんは、さ」

文香「え?」

莉嘉「戦っているんだよ、今。お兄さん達を助けるために」

文香「それはどういう……」

舞「弁慶さん!」

文香「え? あ、は……はい」

舞「鎌倉にお伝えください、そして軍功に記してください。那須与一宗隆は強風の中、矢を射たと。凪ではなく荒れる強風の中、矢を射たと」

文香「なんですって……では、名を挙げるため……功を高めるためにわざと凪ではなく強風の中を……」

舞「ひい、ふっ!」

保奈美「ひときわ風が強くなり、海が荒れ狂ったその時、与一はつがえた矢を射ました。射た矢は鏑矢。音を立てて与一の矢は天に昇るかと思われる高さで飛んでいきます」

文香「ほ、本当に強風の中を……ですが、これは……」

乃々「い、射たんですけど。ですけどですけど、これは」

くるみ「高いでしゅ!」

雫「高過ぎますねー。この風を、読み切れなかったみたいですー」

加蓮「鏑矢(かぶらや)、ってなに?」

翠「鏑と言って、矢が飛ぶと空気の流れを受けて笛のように音の出るものが、矢の先端付近に付いている矢なんです」

凛「あ、それで音を立てて飛んでいるんだ」

奈緒「合戦の開始の合図に射て音を鳴らしたりしたんだっけ」

翠「はい。あと儀礼とか祭典でも使っていたようですね」


保奈美「放たれた矢の飛ぶ様を見て、1人義経は万歳をします」ベベン

莉嘉「あはは☆ やったね!」

文香「え? 今、なんと……」

莉嘉「さっすが与一くん。弓矢にかけては天下無双って、ウソじゃなかった☆」

文香「……えっ?」

乃々「なんですかこれ、音が……音が空から落ちてくるんですけど」

くるみ「ましゃか……あの矢が……」

雫「風を読み違えたのは、私だったってことみたいですー!」

保奈美「向かい風の中、その風に導かれるように、そして猛禽が獲物を狙うように、与一の射た矢は扇めがけて急降下してきます。そして」

カッ

くるみ「しょんな……」

文香「本当に……この嵐のような風の中を……波に揺らぐ扇を……」

乃々「当てたんですけど! 射落としたんですけど!」

雫「敵ながら……お見事ですー!」

保奈美「鏑矢は扇と竿を結んでいた鎹に当たり、金地に赤い日の丸の扇は、はらりひらりと風に舞い、夕日に輝く海に落ちると白波の間を漂います。その“光景(映え)”に、その場の"武士(ギャル)"、敵と味方……源氏と平家の区別なく、どっと歓声が上がります。戦う相手であってもやはり“武(アート)”を重んじる“武士(ギャル)”、興奮を隠せず平家側は船端を叩き、源氏側は“箙(ポーチ)”を叩いて与一を称えます」ベベベベベベン

夢見りあむ「うわー。すごいすごい。感動。尊い。生きててくれてありがとう。もういっそ、ぼくも射♥て」

保奈美「その時、平家側の扇を掲げていた船から興奮した兵が1人飛び出し、興に乗ってその場で踊り始めます。その手には『射♥て』の“扇(うちわ)”と“篝火(ペンラ)”が」

莉嘉「なにあれ。与一くん、与一くん」

舞「あぁん!?」

莉嘉「あれも射ちゃって」

舞「射ちゃってじゃなくて、射てくださいでしょう。ひい、ふっ!」

保奈美「義経の命に、与一ためらわず矢をつがえ射ります。矢はまっすぐ兵の胸に突き刺さります」ベン

りあむ「うう……推しが尊くて死ぬ……ああ、痛た」ドボン


加蓮「いや。後で出番があるって言ってたりあむの出番、これ?w」

奈緒「色々と端折られている重要人物がいる中で、まさか名もなき兵にキャストが配されるとは……」

凛「でも心なしか嬉しそうに海に落ちていったよね、りあむw」

P「さて、こうして屋島の合戦は義経の勝利に終わった。残る平家側は彦島へと撤退した。源氏も海を追う手立てがなかった」

保奈美「そして3日後、船を調達した梶原景時が屋島を強襲しようとやって来たのですが……」ベベン

みりあ「な、なにこれー!? 誰もいないし、平家が作った内裏も焼け落ちてる?」

莉嘉「遅かったね景時ちゃん」

みりあ「義経ちゃん!? なんでここに?」

莉嘉「屋島は3日前に、アタシが陥としたよ」

みりあ「え?」

莉嘉「だからアタシのお手柄ね! えっへん☆」

みりあ「また……そんな……勝手なことーーー!!!」

忍「……だって」

美嘉「……頭痛い」

忍「で、でもまあ、難攻不落と噂されて総力戦でも多大な被害が危惧されていた屋島攻略を、わずかな手勢でしかも被害も少なく成し遂げた義経さんはえらいよ。うん」

美嘉「それは認めるし、功も認めるけど……」

忍「今回は、追認での挙兵だったし、手勢だけで攻めるしかなかったわけだし、ね?」

美嘉「義時……」

忍「な、なんです?」

美嘉「宗時のこと、悪かったと思ってる。ゴメン」

忍「……兄上は、自分で源氏に賭けると判断して死にました。悔いは無かったと思ってるよ」

美嘉「弟っていう立場、義時はわかってるから義経をかばってくれるんでしょ?」

忍「まあ……あはは」

美嘉「義経だってさ、アタシになにかあれば自分が源氏を背負わなくちゃならなくなるかもって、わかって欲しい。御家人だけど、ただの御家人じゃないの」

忍「そうだよね」

美嘉「アタシの弟だから、1回は許した。2回目の今回は、義時に免じて許すよ。でも3回目はないから」

忍「わかった。じゃあ私も行くね。彦島へ」

美嘉「うん。頼むね。色々と」

忍「うん。色々とね」

保奈美「彦島ではにげてきた一門を乗せた舟の到来について、新中納言知盛は唖然とします」ベン

加蓮「屋島が……陥ちた? またしても源氏の奇襲で? え? どうやって?」

くるみ「どうやら熊野水軍が、義経に船を貸したみたいでしゅ。その船で嵐のおおかぜに載って勝浦から陸伝いに屋島を攻めてきたんでしゅ」

加蓮「嵐の中を船で……って、難破したらどうするつもりだったの!?」

雫「おそれながらー」

加蓮「なに? 能登」

雫「源義経という男、大将の器ではありませんねー」

加蓮「そうか。世の常識や諸事、軍のしきたりとかそういったことは全然念頭にないんだ。ただ、戦って……勝つだけ」

雫「大将たるもの、配下や用兵にも気を遣うものです。でも、義経は手勢だけで思い通り好き勝手に動いていますー」

くるみ「頼朝は、よくあの義経を許してましゅね」

加蓮「……」

乃々「ともあれ屋島が燃やされて、もう平家にはここ彦島しかないんですけど」

雫「源範頼を九州に閉じ込める策も、屋島がなくなったからもうできませんし……」

加蓮「平家が矢島を抑えてるから、源氏は海路や四国を経由できなかったんだけど、それがなくなるとね」

くるみ「やるしかないでしゅ! 彦島で、背しゅいの陣でしゅ!」

加蓮「……うん。平家の命運、これからの一戦にあり。ここで勝てば、そして義経を討ち取れば呼応する四国九州の者もいるはず」

雫「やりますよー!」

乃々「こうなったらもう、やけくぼですけど!」

仁奈「嵐の海を利用して、普通なら3日かかる航路を4時間で渡るとは、すげーですよ義経おねーさん」

莉嘉「えっと、誰?」

文香「こちらは……熊野水軍を束ねる熊野湛増。我らに五艘の船を貸してくれた者です……」

莉嘉「そうなんだ。ありがとうね☆ お陰で屋島で勝てたよ」

仁奈「約束どーり、これからクマの水軍は源氏に力を貸すですよ」

文香「誠ですか……では、彦島を攻めるための船や水夫(かこ)を……」

仁奈「もちろん、用意するでごぜーますよ!!!」


加蓮「熊野水軍が源氏についたとなると、瀬戸内の他の水軍も追随するかも知れないね」

くるみ「平家に与するよう、あちこちに文を書きましゅた」

加蓮「うん。とにかくこちらも、できる限りの水軍を彦島に集めるの」

雫「わかりましたー」


未央「ようやく九州も平定できた。義経がまた勝手したらしいけど、とにかく四国も源氏の勢力下に入ったし、残るは彦島だけ。九州の水軍を彦島に向けて出陣だよ!」


まゆ「すべてが、頼朝様の思惑通りにすすんでいるみたいですねぇ」

頼朝「……そんなことない。特に義経は、良くも悪くも想定の範囲外」

まゆ「心配なんですねぇ、義経さんのことぉ」

頼朝「あの子は知らないから」

まゆ「何をですかぁ」

頼朝「政子、義経はまだ経験していなくて、アタシがはもう経験してることがあるんだけどなんだかわかる?」

まゆ「……わかっちゃいました。そうですねぇ」

頼朝「いずれは知るのかな、あの子も……」

まゆ「……」

奈緒「さあ、源平最後の戦いとなる壇ノ浦の決戦だ」

加蓮「平家もいよいよ追い詰められちゃったね」

凛「でもなんだか、源氏側も不穏な空気が流れてる気がするんだけど」

P「いずれにしても、日本の歴史上で最初の天下を分ける大戦の終わりが近づいてきた」

奈緒「源氏も平家も、彦島に持ちうる限りの船を戦力としてつぎ込んだ。その数、源氏側が830艘。平家側は500艘」

加蓮「源氏の方が多かったんだ」

P「やはり続く連勝と連敗で、様子を見ていた水軍も源氏に多く味方するようになったみたいなんだ」

凛「でも平家は海での戦いが得意なんでしょ?」

奈緒「そうなんだよ。何よりもう負けられない後がないという気概と、捨て身の雰囲気があったそうなんだ」

加蓮「じゃあ最後の戦い、壇ノ浦へ行ってらっしゃい。ううん、行こう!」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

未央「それで義時さんが鎌倉から軍勢に加わるのは、どうしたわけなの?」

忍「実は頼朝さん、いや御所様から大事な言いつけを預かってきてるんだ」

みりあ「言いつけ?」

忍「此度の壇ノ浦での戦い、重要なミッションが私たちには課せられています」

未央「ミッション?」

忍「ミッション、そのいーち!」デデン

みりあ「え?」

忍「絶対に平家に負けてはならない」

莉嘉「そんなのトーゼンだよ」

忍「しかーし!」

未央「え?」

忍「無理に追いつめたりしなくてもいい。負けちゃダメだけど、引き分けとか痛み分けでも全然オッケーだからね、だって」

未央「それってつまり、勝てなくてもいいってこと? 平家を追いつめちゃダメって……そっか!」ピコーン

みりあ「どういうことなの?」

未央「あのね、平家はヘタに追いつめられたら安徳天皇や三種の神器も道連れにしちゃうかも知れないんだよ」

忍「そう。それを御所様は恐れている。なんなら平家は存続させたっていいってさ」

莉嘉「え? なんで? 父上の敵だよ?」

未央「そうなんだけど! ね、義経、先のことも考えて。先のこと」

莉嘉「先のこと?」

未央「平家はもう、今は海を漂う流浪の身。戦に敗れ続けて味方する勢力も少ない。でも安徳天皇という高貴な正当性だけはまだある」

莉嘉「今上の帝は、今は京にいる後鳥羽天皇でしょ?」

忍「そうだけど後鳥羽天皇は三種の神器がないのに即位したから、その正統性が疑問視されてる」

莉嘉「?」

未央「三種の神器もないのに即位していいの、ってみんなが思ってる。そもそも安徳天皇は退位していないのに次の天皇をたてていいのか、って」

莉嘉「???」

忍「そこで御所様からのミッション、そのにー!」デデン

みりあ「もうわかった。三種の神器を平家から奪うか、譲る条件を付けて平家を長らえさせる交渉をしろってことだね」

忍「そういうこと。逆に言えば……三種の神器さえ平家から取り上げられるなら、平家は別にどうなってもいいってこと」

未央「兄上は、平家との決着よりも鎌倉に作る武家政府のことを重要視してるんだね」

みりあ「とにかく三種の神器を優先するんだね!」

莉嘉「はいはーい!」


文香「先ほどの会合、陰から聞いていましたが……おわかりになられましたか、義経様」

莉嘉「え? 要するに三種の神器を平家から奪っちゃえば、もう滅ぼしてもいいんでしょ? 平家」

文香「確かに理屈はそうですが……」

莉嘉「はいはーい。わかったからだいじょーぶ」

みりあ「ねえねえ義経ちゃん」

莉嘉「あ、なに? 景時ちゃん」

みりあ「明日の決戦だけど、わたしが先陣になるけどいいよね?」

莉嘉「ダメ」

みりあ「え?」

莉嘉「先陣はアタシ☆」

みりあ「義経ちゃんは、総大将でしょ?」

莉嘉「そうだよ」

みりあ「総大将が先陣なんて、聞いたことないよ! 総大将は先陣を命じる人なんだよ?」

莉嘉「じゃあ命じるね。先陣は、源義経!」

みりあ「だからそんなのダメだって!」

莉嘉「いいの。アタシが総大将なんだから、総大将のアタシが決めるの。先陣はアタシ☆」

みりあ「ダメだって言ってるでしょ!!」

乃々「新中納言様、明日はどのように戦えばいいんですか……?」

加蓮「策はないよ」

乃々「はぃい!?」

加蓮「というより必要ないの。関門海峡のこの潮の流れ、アタシたち平家は熟知している。でも……」

雫「源氏がわかっているとは思えませんねー。あの水島の戦いの時でも、義仲の軍船は動くのがやっとでしたし」

加蓮「借りてきた水軍なら、あの時よりは動きはいいとしても潮の流れまではわからないはず」

乃々「それは……はい」

加蓮「なら、普通に潮の流れを活かして戦うのみ。そうすれば、勝てる」

くるみ「はい!」

加蓮(義経……今回の戦いに盤外の一手はあるの……? アタシにはわからない、予想できない手が、今回も……あるの?)


莉嘉「という作戦なんだよ。だから与一くん、お願いね☆」

舞「あ、あの……」

莉嘉「なに? 与一くん」

舞「それは卑怯では……?」

莉嘉「……弁慶くん?」

文香「……はい」

莉嘉「卑怯、ってなに?」

舞「えっ?」

文香「端的には、正々堂々としていないこと……を卑怯と言いますね」

莉嘉「ふーん。それで、与一くん」

舞「は、はい」

莉嘉「さっきの作戦、どう? やってくれる?」

舞「あの……それで勝てるのですね?」

莉嘉「うん。あのね、クマのたんぞーくんがね、細かな潮目はわかんないけど、明日の午の刻から彦島から私たちの陣に潮が流れるんだけど、一刻もしたら潮は反転して逆になるんだって」

凛「奈緒、午の刻っていうのは何時頃?」

奈緒「午後12時だな」

加蓮「一刻は2時間だっけ?」

奈緒「そう。つまり平家としては、12時から合戦を始めて、2時間で決着をつけたいんだ。またその勝機も十分にある」

凛「平家は船の戦いに慣れてるし、彦島周辺は庭みたいなものだしね」

加蓮「アタシは、莉嘉ちゃんの作戦が気になるな。なにするんだろ」

P「では決戦の当日。寿永四年三月二十四日、西暦では1185年の5月2日の壇ノ浦。今の下関市から物語は始まる」


文香「与一さん……よく義経様のあの作戦、引き受けてくださいました」

舞「射るのは一矢でよい、と言われたので……でも、どうして一矢でいいんですか?」

文香「与一さん、あなたは……今や源氏平家を問わず、時の人なのですよ」

舞「?」


仁奈「ここの潮のながれをじゅくちしてやがる平家を相手に、一刻の間もちこたえるんでごぜーますか!?」

莉嘉「うん。羊の刻になったら潮の流れが逆になるんでしょ?」

仁奈「それはそうなんでごぜーますが、平家の猛攻を一刻も持ちこたえるのは無理でごぜーますよ」

莉嘉「だいじょーぶ☆ こっちには与一くんがいるんだから」

仁奈「与一くん……那須与一宗隆ですか? その名は武士ではない、クマの水軍にも知れ渡っているですけど」

莉嘉「へえ。なんて?」

仁奈「源氏には、神弓の射手がいる。その名は那須与一宗隆……でごぜーますけど」

莉嘉「うんうんそうそう。与一くんは、すごいんだよ」

乃々「始まったんですけど、新中納言様の言う通り、源氏はなんの策もないみたいなんですけど」

雫「珍しいですねー。源氏が、というより義経が私たちの攻撃をただ待ちかまえているなんてー」

くるみ「総大将の知盛しゃん、進軍の下知を!」

加蓮「……」

くるみ「知盛しゃん?」

加蓮「あ、ご、ごめん兄上。全船、源氏方に向けて進軍。私の合図で矢を射て」

加蓮(どうしたの義経。本当に無策で戦うの? あなたらしくないけど……もう盤外の一手はないの?)


未央「へ、平家の勢いもの凄いんだけど!」

みりあ「平家からは乗り潮、こちらは受け潮なのはわかってるけど、それにしてもすごい攻撃! 矢が雨みたいに降ってくる!」

みりあ「きゃああああああ!!!」

未央「こんなのまともに受けられないよ。とりあえず、撤退を」

莉嘉「与一くーん」

舞「はい」

莉嘉「例の策、お願い☆」

舞「は、わかり……ました。いきます! ひい、ふっ!!」

未央「与一くん? あ、あの人が、あの扇の的を射たっていう那須与一? でも今はなにを射るつもりなの?」

保奈美「与一の射た矢は、真っ直ぐに飛ぶと平家水軍先頭の船の水手(かこ)の胸を貫きます」

美由紀「水手のみんな、流れ矢に気をつけてよ! 戦いに加わらない水手を攻撃しないのは武家の習わしだけど、流れ矢に当たることはあるからね」

ひゆっ!

鷹富士茄子「む、胸に矢が……」

美由紀「言ってるそばから……もう、誰なの下手な矢で水手に当たっちゃったこの矢を射たのは……あ、矢に名が記してある。えっと……那須? 那須……なすって言ったら……」

茄子「なすじゃなくて、私は水手(かこ)ですよ~……」ガクッ

美由紀「な、那須与一宗隆……屋島の扇の的で、神業を披露した源氏の弓矢の名手……」

「お、おい聞いたか」「あの那須与一が水手を射殺したんだってよ」「神弓の使い手が、狙いを外すはずがねえ!」「源氏は俺たち水手を狙ってるんだ!!」「俺たち、殺されちまう!!!」


加蓮「船の動きが……止まった!?」

雫「前の方の船、どうなってるんですかー!?」

乃々「あわわ……平家側の船が、どんどん動かなくなっていってるんですけど、いったい何が……」

加蓮「まさかまた……義経なの!?」


未央「止まっ……た? 平家の船が止まっていく……」

みりあ「なにを……なにをしたの義経ちゃん!」

莉嘉「えっへん! さあさあ、これで一刻の間耐えられるよ」

加蓮「水手を……しかも一矢、一人だけを射抜いて、平家の水手全員に恐慌を引き起こして、全部の船を止めた……!?」

乃々「水手が恐れをなして、なだめてもすかしても、櫓を漕がないんですけど。船の中に入っちゃってるんですけど」

くるみ「那須与一の名は、今や"武士(ギャル)"の間で知らぬ者はいましぇんから! その名人が水手を狙ってるとわかったら……」

保奈美「そして時は無情にも、一刻が過ぎます」

莉嘉「さあ、潮の流れが逆になったよ! アタシ達の反撃かーいし☆」

加蓮「敵の船がものすごい勢いで襲来……矢も雨のように降ってくる。ここまでか……最後まで義経に……盤外の一手にやられちゃったな……」

雫「まだあきらめませんよー! えーい!!」

文香「あれは……能登守、平教経! あの巨躯でこちらの船に“跳躍(ジャンプ)”を。まずい……!!」

ガッ

雫「その“出で立ち(コーデ)”、武蔵坊弁慶さんですねー?」

文香「……いかにも」

雫「ということは、側にいるのが源義経で間違いないですねー!? ええーーいいっ!!」

莉嘉「! はっ……と!」

雫「一跳びで、あんな遠くの船まで……残念ですが、義経は討ち取れませんでしたー。私はここまでのようですが、せめて源氏を道連れにー!」

保奈美「そう叫ぶと、教経は源氏の武将を両脇に1名ずつ抱えると、そのまま海へと飛び込み沈んでいきます……」

https://i.imgur.com/dXEwIYQ.jpg
平教経(能登守)

乃々「二位の尼様、もはやこれまでなんですけど。お……お覚悟を……お願い……いたしますけど!」


凛「……乃々、がんばったよ。乃々は……」

加蓮「え? この最後の時に、まだ登場していなかった人がいるの? 二位の尼?」

奈緒「二位の尼は、清盛の正妻だった人で、平家一門にとってのお母さんみたいな存在なんだよ」

P「この二位の尼が、清盛亡き後は一門の精神的支柱だったんだ。当然、平家一門と共に彦島まで落ち延びており、安徳天皇を祖母として育てていた」

凛「安徳天皇……ああ、後白河法皇がほったらかしちゃったあの幼い天皇だ」

加蓮「清盛の孫の天皇なんだよね」

奈緒「そう。そしてあの後白河法皇がなんとしても欲しがっていた、三種の神器も二位の尼や安徳天皇と共にあった」

持田亜里沙「……わかりました。平家もこれで最期。せめて見苦しくないよう、その時を迎えましょう。ね、帝」

浅利七海「なんれすか~? おばあさま。これからどこかへ行くのれすか~?」

亜里沙「そうですよ。これから都へ参りますからね」

七海「都、れすか~? でもここは、海の上れすよ~?」

亜里沙「心配は要りませんよ。さあ、みんなも一緒に参りましょうね~私といっしょに、はい続いてね!」

保奈美「二位の尼の声に、場にいた女御達は涙を流しながら立ち上がります」

亜里沙「さあさあ。帝、みんなが一緒です。なにも怖くはありませんよ。海の……海の底にも、都はございます!!!」

保奈美「二位の尼は、そう言うと。走り出し、船の外へと駆け出ると、そのまま海の中へと落ちていきました。飛び込んだのではありません、落ちたのです。すべては幼い安徳帝を怖がらせまいとする心遣いでした」

くるみ「ぴ、ぴええ。み。みんないくんでしゅか? う、海の底に……い、いくんでしゅか?」

保奈美「女御達は、口々に『みなさまお先に』と言うと、二位の尼と安徳帝を追うように海に飛び込んでいきます」

くるみ「む、宗盛も……平家のみんなと一緒に……えいっ!」ドボン

加蓮「負けた……負けちゃった。義経……あなたの勝ちだよ。平家はこれで……お終い。知章……ゴメンね」

莉嘉「うーんと、弁慶くん。あそこにいるのが総大将なんじゃない? 新中華一番の」

文香「新中華一番ではなく、新中納言……平知盛です。はい、間違いないでしょう……おや、こちらを見ました。向こうも私たちに気づいたようです……」

加蓮「あなたが義経……だよね。アタシの負け。でも、なんでかな、不思議とあなたのこと憎くない。平家一門滅亡はあなたの戦での活躍によるもの……なのに、ね」

莉嘉「なんか笑ってる……笑ってるよね? 弁慶くん」

文香「はい……なぜでしょうか……」

加蓮「義経、これからきっと大変だよ。あなたの本当の敵は、私たち……平家なんかじゃないんだから。負けないでよね、私たちに勝ったんだから……って、聞こえないか。遠すぎるし、波の音で」

莉嘉「何か言ってる……なんて言ってるの?」

文香「さすがにここからでは……おや、あれは何を……」

保奈美「平知盛は、腰に差していた刀をなんと両手に持つと膝に当てて折ってしまいます。握る刀が両掌から血を流します。しかし知盛はそれにも構わず、両手に持った刀を頭上で打ち鳴らします」

加蓮「わかったー!? あなたの本当の敵、そしてやってることが!?」

莉嘉「なんだろう……自分で自分の刀を二つに折って、それを両手に持って打ち合って」

文香「あの様子、何か意味があるとは思いますが……はて」

加蓮「さて。形見代わりにずっと持ってきていたけど、一緒にいこうか。知章」

莉嘉「今度は鎧の上にもうひとつ鎧を着てる」

文香「覚悟を決めたのですね。平知盛。立派な“武士(ギャル)”でした」

莉嘉「え?」

ドボン

莉嘉「……海に飛び込んだ……さようなら。アタシの宿敵。忘れないよ、新中納言平知盛……」

保奈美「戦いに打ち破れる者、自ら命を絶つ者、壇ノ浦の海は平家の赤い旗が波間に流されていき、まるで川に流れる紅葉のようであったと伝えられます。ひと時代の栄華を極めた平家の最期でした」

凛「負けちゃったね、平家。加蓮お疲れ様」

加蓮「大変だったんだから。本当に海に飛び込んだんだよ、スキューバつけてその上から鎧着て」

奈緒「あたし達もナレ死ではあったけど、平家側だったからなんか感慨深いな」

加蓮「栄華を誇った平家一門も、この壇ノ浦で1人残らずいなくなっちゃったんだね……」

P「いいや」

加蓮「え?」

奈緒「平家という家格としては滅亡したけど、1人残らずいなくなったわけじゃないんだ」

凛「え?」

保奈美「ではここでクイズです」デデン

加蓮「え? なんで保奈美ちゃんいつもの琵琶法師じゃなくて、司会者みたいな衣装になってんの?」

凛「え? スタッフさんが回答ボタンとハットを持ってきてくれたけど……」

保奈美「平家一門生き残ったのは誰だクーイズ」パチパチパチパチ

凛「え?」

保奈美「問題」デデン

加蓮「え?」

保奈美「今回のドラマ、壇ノ浦のシーンに登場したけれど『確実に』生き残った人がいます。さて……誰でしょうか?」

凛「えっと、はい!」ポーン

保奈美「凛さん」

凛「乃々」

ブー!

加蓮「わかった!」ポーン

保奈美「加蓮さん」

加蓮「雫と私は体を重くして海に飛び込んだから確実に生きてないし、乃々ちゃんじゃないとすると残るは……くるみちゃんこと宗盛兄様!」

ピンポンピンポンピンポーン♪

奈緒「やっぱり現場にいた加蓮は、よくわかってるよな」

凛「待って。今、私が誤答したから加蓮もわかったんでしょ?」

保奈美「第2問」デデン

凛「え? え? え?」

保奈美「今回のドラマ、壇ノ浦でのシーンで登場したけれど生き残ったかも知れないなー生き残ってるんじゃないかなー生き残ってるといいなーという人がいます。……誰でしょうか?」

凛「はいはいはい!!!」ポーンポーンポーン

保奈美「凛さん」

凛「乃々!」

ピンポンピンポンピンポーン♪

凛「やっぱり生きてるんだ! 乃々!!」

奈緒「というか、どこでどう亡くなったかっていう正確な記録がないんだよな」

加蓮「乃々ちゃんの維盛って、ドラマ内で何度も『都1のイケメン』って呼ばれてたけど、そういう有名な人でもそういうことあるんだ」

P「一ノ谷の戦いの後で、戦線から離脱したという記録もあるし、壇ノ浦の合戦にも参加したという資料もあり、定かではないんだ」

凛「大丈夫、きっと乃々は生きているよ。生き延びて、平家は続いている」

P「というか、逆に」

加蓮「え?」

奈緒「平家一門でも壇ノ浦以降も、堂々と生き続けた人物もいる」

凛「それって平家の人なのに、頼朝に許されたの?」

奈緒「ああ。頼朝っていう人は、自分自身の経験から生き残った敵の大将には厳しい人だったんだけどさ」

加蓮「同じ源氏なのに、義仲を討ち取ったり、その子供の義高も討ったりしてたよね」

奈緒「それはやっばり、生き残りが力をつけて復讐してくることの強さ、怖さをよくわかってたんだと思うんだ」

P「それに頼朝は御家人、つまり自分に忠誠を誓う武士でも反抗したりする人には容赦がなかった」

加蓮「えー、なんか美嘉ちゃんのイメージと違う」

奈緒「だけどその一方で、受けた恩とか気持ちは絶対に忘れない人でもあったんだよ」

加蓮「へえ」

奈緒「さっきあたしが、平家でも壇ノ浦以降も堂々と生き続けた人物もいるって言っただろ?」

凛「うん。あれって誰のこと?」

若林智香「それは、アタシですっ☆」ジャーン

凛「え……誰?」

智香「凛ちゃーん。アタシですよっ、若林智香ですよっ!」

凛「いや、それはわかってるけどさ……」

加蓮「誰の役なの? 智香は?」

智香「アタシの演じる役は、平頼盛(よりもり)ですっ!」

加蓮「平……って、平家一門なの!? ここまで登場してなかった平家の人間が、平家が滅亡した今から出番があるの!?」

P「この頼盛という人は、平忠盛……つまり清盛の父親の五男にあたる人だ」

加蓮「ということは……父上である清盛の弟だから……え? アタシからは叔父さんになるの?」

凛「一門の中でも、めちゃくちゃ清盛に近い人じゃない!」

保奈美「それではここで、第3問!」デデン

凛・加蓮「「えっ!?」」

P「ちなみにこのクイズ、2ポイント先取した方が来年の大河ドラマの主役に抜擢されるからな」

凛「ちょっとお」(1ポイント)

加蓮「そういうの、先に言ってよ」(1ポイント)

保奈美「智香さん演じる平頼盛は、平家一門でありながら命を奪われず、逆に領地まで頼朝からもらい子孫も続いてくのですが、それはなぜだったのでしょうか?」

凛「はい!」ポーン

保奈美「凛さん」

凛「平家のお宝とか財宝を、美嘉に献上したから」

ブー!

加蓮「はい!」ポーン

保奈美「加蓮さん」

加蓮「えっと、ものすごいお世辞が上手で、美嘉ちゃんのことをほめちぎったから」

ブー!

凛「はい!」ポーン

保奈美「凛さん」

凛「舞が演じた那須与一みたいに、何か武芸で優秀な腕前があって、それで許されたとか」

ブー!

加蓮「はい!」ポーン

保見「加蓮さん」

加蓮「平家と争っている最中から、こう……平家の情報とかを美嘉ちゃんに教えてたから」

ブー!

凛「智香ー! ヒントちょうだい、ヒント!」

加蓮「ヒント、プリーズ」

智香「それじゃあ……えっとですね、アタシ自身は実はなーんにもしてません」

凛「えっ!?」

智香「アタシはなんにもしてないんだけど、頼朝こと美嘉ちゃんはアタシの命を助けてくれましたっ☆」

加蓮「はい!」ポーン

保奈美「加蓮さん」

加蓮「名前が頼盛で、頼朝と同じ『頼』っていう字が入ってたから頼朝も嬉しくて許してくれた!」

ブー!

凛「はい!」ポーン

保奈美「凛さん」

凛「顔が良かったから……美形だから許してもらえた!」

智香「えへへっ☆ ありがとうございますっ!」

凛「智香じゃなくて、平頼盛がね」

智香「……」ポチッ

ブー!

凛「今の私情が入ってない!?」

加蓮「はい!」

保奈美「加蓮さん」

加蓮「えっと……じゃあ……あ、本人じゃなくて、お父さんとかお母さんが世の中の為になる、いいコトをしたから」

……ブッブッ

凛「え?」

保奈美「いいコト……具体的には?」

加蓮「え? えっと……都の困っている人にお米とか分けてあげたり?」

ブー!

保奈美「不正解ですが、惜しいというか近いです」

智香「アタシのお母さんが、何かをしたことでアタシは許されましたっ☆」

加蓮「もうちょっとヒント!」

凛「ヒントお願い!」

智香「それじゃあ……今回のドラマ、お2人はずっと見たり演じたりしてたとおもうんだけどっ、アタシのお母さんがしたその何か……実は、ここまでのどこかのシーンで出てきてますっ☆」

加蓮「えっ?」

凛「わかったあっ!」ポーン

保奈美「凛さん!」

凛「智香のお母さんが、美嘉の命を助けるようつかさに頼んでくれたから!」

ピンポンピンポンピンポーン♪

凛「やった!」

加蓮「あー……そうか、あれかあ。池禅尼の、ハラペコクラリスさんかあ……」
 
智香「そうでーすっ☆ アタシのお母さん池禅尼が、断食をしてまで頼朝の助命をして助けてくれたこと、頼朝さんは忘れずにいてくれて、アタシの命を助けてくれたんですっ!」

加蓮「そうか。そうなんだ、頼朝は……美嘉ちゃんは命を助けてもらった恩を忘れていなかったんだ」

奈緒「これも頼朝という人物の人柄を伝えるエピソードだよな」

保奈美「さて、平家が滅亡した壇ノ浦。その報を頼朝は鎌倉で聞きます」ベベン

美嘉「義時、範頼、壇ノ浦の合戦は大勝利だったってまずは早馬からの報告を聞いてるよ。よくやってくれたね★」

未央「えっと、あの……その……」

忍「なんと言いますか……」

美嘉「どうしたの? 大勝利とは聞いているけれど、詳しい戦果はどうだったのかを聞かせてよ」

未央「も、申し上げます!」

美嘉「え?」

忍「去る3月24日、長門国壇ノ浦にて我が軍は平家との合戦におよび、大勝利。平家は……め」

美嘉「め?」

未央「め」

美嘉「め?」

未央「滅亡いたしました!」

美嘉「そう。平家は滅亡……め、滅亡!? 滅亡ってどういうこと!? アタシ言ったよね、負けちゃダメだけど必要以上に追いつめるなって」

未央「それがその……九郎がまたも大活躍して……」

美嘉「義経が? あのね範頼、アタシがなんて言ったか……」

忍「平家は負けを認めて潔く、自刃や海へと投身沈におよび、一門は全滅。なお……」

美嘉「なに? まさかと思うけど……」

忍「三種の神器のうち、草薙の剣は海へと沈んでしまいました!」

美嘉「……義経ーーー!!!」

くるみ「あ、あの、このあとどうなるんでしゅか?」

未央「まあたぶん、斬首だと思うよ」

忍「そもそもなんで他の一門の人みたいに、海に飛び込まなかったの?」

くるみ「飛び込んだんでしゅけど、胸が浮いて沈めなかったんでしゅ……」

未央「それはまた、なんというか……」

忍「うらやまご愁傷様……」

くるみ「びえーん」


保奈美「そして遅れて鎌倉に戻ろうとした義経は」ベベン

莉嘉「腰越から先に来ちゃダメ? なんで?」

みりあ「御所様からのめーれーだもん」

莉嘉「ごしょさま、ってなに? お姉ちゃんでしょ?」

みりあ「そうやって御所様の弟だからって好き勝手してるから、来るなっ言われちゃうんだからね」

莉嘉「なにそれー!」


文香「義経様……」

莉嘉「なんでお姉ちゃんはアタシに会ってくれないの? アタシ、がんばったのに……平家だって倒してお姉ちゃんやお父さんの敵もとったのに……ほめてもらえると思ってたのに」

文香(そう、義経様は軍神とも言える活躍をされた。しかしそれは……)

莉嘉「そうだ!」

文香「はい……?」

莉嘉「会ってくれないなら、そうだ手紙書いたらいいじゃん。アタシ天才☆」

文香「それは良い考えです……すぐに、文を」

莉嘉「うん! えっと……」


美嘉「文? 義経から?」

忍「うん。会ってもらえないなら、って」

美嘉「……背景。ふふっ」

忍「え?」

美嘉「やだもう。背景じゃなくて拝啓でしょ。まったく、文の書き方も……」

忍「どうしたの?」

美嘉「誰にも……ううん、そういうことを教えてくれる人が、義経にはいなかったんだろうね」

忍「お母さんと平家に捕らわれ、寺に送られて、それからは奥州で武芸を修めて……だもんね」

美嘉「……今回のこと、許すわけにはいかないけど、さ」

忍「うん」

美嘉「しばらく大人しくしてくれてたら、また鎌倉で一緒に話したりできるよね。きっと」

忍「そうだね」

フレデリカ「なるほどなるほど。結局、文を書いても会ってはもらえなかったってわけだネー」

志希「それは義経クン、危ないよ~」

莉嘉「そうなんだよー……え?」

志希「頼朝クンはさ、刃向かった人を絶対に許さないじゃナイ」

莉嘉「そうだっけ?」

志希「古くは大庭景親、木曽義仲にその息子の義時、平家一門ことに平宗盛」

莉嘉「うん……みんな殺されちゃったね」

志希「次は義経クンかも知れないよ~」

莉嘉「そんな! まさかお姉ちゃんがアタシを殺すわけないよ!」

志希「頼朝クンに殺された人はみんなそう言ってたよ~。あたし、全員とつき合いがあったから知ってるんだよね」

莉嘉「そんなあ……」

フレデリカ「そんな義経ちゃんに、これをあげちゃう。これでもう安心だからね」

莉嘉「なにこれ?」

フレデリカ「ミーからのありがたい院宣」

莉嘉「院宣?」

志希「頼朝を討て、という院宣ダヨ~」

莉嘉「いやあっ! い、要らない!! こんなのアタシ要らない!!!」

志希「もう。義経クンはウブだなあ、本気にしなくてもいいんだよ」

莉嘉「えっ?」

志希「このままだと、義経クンは頼朝クンに殺されるじゃない? でもほら、こうして頼朝クンを討てという院宣がある限り、義経クンは官軍で頼朝クンは賊軍ってワケ」

フレデリカ「なにも本当に頼朝ちゃんを討たなくていいんだよ? でもこれを持っていれば、頼朝ちゃんは義経ちゃんに手を出せないという最強の護符になるから」

莉嘉「……ほんっとーに、お姉ちゃんと戦わなくてもいいんだよね? 持ってるだけでいいんだよね?」

志希「もちのろんだよ~。さ、受け取って受け取って」

莉嘉「じゃあ……うん」

美嘉「後白河法皇が、義経にアタシを討てという院宣を出したぁ!?」

未央「義経もそれをおしいただいた、って報告が景時からあって。なんかその場には行家もいたとかなんとか……」

美嘉「……」

忍「ま、待って。あの義経さんのことだからさ、きっとまたうまいこと言われて騙されてるんだよきっと」

美嘉「あの子は……今度は……今度という今度はもう許せない……ゆるさないから!!!」

忍「御所様、恐れながら申し上げますが!」

美嘉「そっちがその気ならこっちも本気出すから! 義経追討の兵を出すから!!」

忍「御所様、待ってくださいって!!」

美嘉「大将はアタシ。アタシ自らが、討って出る!!!」

忍「御所様!!!」

凛「え、待って。別にこれ、お互い戦うほどのことじゃないんじゃないの?」

加蓮「そうだよ。ちょっと前まで、時間がたてば仲直りできそうな雰囲気だったじゃない?」

奈緒「このあたり、色んな説とか研究があるんだけど、結果として義経と頼朝は戦う事態になったんだ」

P「義経は平家との戦いで一世を風靡して、全国の武士の間や都の人々からヒーローとして認識されてたし、頼朝は鎌倉で政権を作ろうとしていたし、本当に両雄が同時に立つのは難しかったんだろうな、とは思う」

加蓮「というか」

P「ん?」

加蓮「アタシ、演じてる時から思ってたけど、この後白河って法皇がすべての元凶なんじゃない?」

奈緒「そうなんだよ」

凛「やっぱり」

P「義朝が頼朝に言っていたこと、覚えているか?」

加蓮「えっと、朝廷じゃない武士による政を目指す……とか」

P「あのシーンでも触れられていたが、この時代まで政は朝廷が行うものだった。だがその仕組みそのものが時代に合わず、破綻してきてこの源平の時代にはそれが限界に達していた」

奈緒「朝廷から派遣されてくる受領と呼ばれる国司は、税金を搾り取るだけの存在。それから逃れるには荘園という税を払わなくていい存在にみんながなろうとして荘園が増える。荘園は寺社や有力貴族の私物だったからそれが増えると国の税収が減る。このサイクルを破ろうと、武士は立ち上がったんだ」

凛「そっか。だから朝廷のトップの後白河法皇は、武士と武士を戦わせて勢力を削いだりして保身してたんだ」

加蓮「武士と武士との争いだと思っていたけど、武力の争いじゃなくてどういう政治をするかの戦いでもあったんだ」

奈緒「だから平家は福原に遷都したり宋と貿易をしたし、源氏は東国で武家政権を作ろうとしたんだな」

P「さあ、それじゃあこの頼朝と義経の戦いがどうなっていくのかを見ていこう。舞台は駿河国だ」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ~ゥイェ~ェ♪ ウォワォオイェ~ェ、ヨォ~ゥイェ~ェ♪」ベンベン

加蓮「久々に聞いた。このいい声」

保奈美「頼朝は駿河の国、今の静岡県の黄瀬川に陣を張ります」

未央「兵はすべて、かねて仰せの通りの陣に配しました」

美嘉「そう……」

忍「糧秣の運搬も終了しました」

美嘉「そう……」

未央「あ、あの、御所さ……兄上」

美嘉「……なに?」

未央「思い出すよね。この黄瀬川で、あの九郎と最初に会ったんだよね」

忍「そうそう。奥州からわずかな手勢で駆けつけてくれて。私は、お供の人を義経さんだと間違えちゃってさ」

美嘉「ふふっ……そんなこと、あったね」


未央「ここまで来たはいいけど、きっと兄上は後悔してるんだよ」

忍「私もそう思う。これでさ、義経さんが頭を下げたりでもしたら、丸く収まるんじゃないかなあ」

未央「ほんとに……義経、どうしてるんだろう」

忍「今が最後のチャンスかも知れないんだけどねえ……」



美嘉「義経……なんで来ないの。来て、一言いいわけをすれば……頭を下げればアタシは許すのに……アタシは弟を許すのに……」


保奈美「一方その頃、義経は」

文香「兵が集まりません。御所である頼朝様直々このご出陣に、各地の武士はみな恐れをなしたようです……」

莉嘉「戦う前から、アタシの負けだね。ううん、アタシそもそもお姉ちゃんとは戦いたくないよ」

文香「……」

莉嘉「お姉ちゃんが、鎌倉から動かなかったわけがようやくアタシわかった。武家をまとめて政をしたり、兵を動かして運用したり、今みたいに命令を行き渡らせる組織をずっとお姉ちゃんは作ってたんだ」

文香「そうですね……」

莉嘉「お姉ちゃんが、官位を勝手に受けちゃダメだって言ったわけもわかった。それを許すと鎌倉のお姉ちゃんの権威に関わるからなんだ。お姉ちゃんが官位を決めなきゃダメなんだ」

文香「そうですね……」

莉嘉「お姉ちゃんが、三種の神器を平家から奪うことを第一にしてたのは、朝廷に対抗する力を得るためだったんだ。今の後鳥羽天皇は、神器がないのに即位して肩身が狭いから……」

文香「はい……」

莉嘉「アタシわかった。新中納言が、平知盛が最後に見せたあの仕草の意味」

文香「! なんだったのですか、あれは……?」

莉嘉「あれはアタシに、アタシの本当の敵を教えてくれてたんだ。武士の象徴である刀、それをふたつに分けてぶつけ合っている者がいる。気をつけるんだよ……って」

文香「あっ! そうだったのですか……清盛と義朝様を、義仲と平家を、義仲と頼朝様を、そして頼朝様と義経様を……その黒幕の存在を……そう……だったの……」

莉嘉「アタシわかった。今になってわかった。アタシはアタシの本当の敵に、いいように動かされてた。お姉ちゃんの邪魔するためにアタシは使われてたんだ」

文香「なんということ……私は義経様の家来失格です。あの新中納言の真意を……助言にあの時に気づけなかったなんて……」

莉嘉「弁慶くん……アタシわかったよ。お姉ちゃんに負けて、初めて戦で負けて、負けたら……急に色々わかるようになったよ」

文香「義経様……」

莉嘉「負けるって大事だね。こんなに色んなことがわかるようになるなら……アタシ……アダジね、弁慶ぐん」

文香「……」

莉嘉「もっど早ぐ、誰がに負げでればよがったのがな……うえええええええええん」

文香「義経様! お許しください……事ここに至るのを防げなかった愚かな家臣を、どうかお許しください……」

保奈美「主従は共に涙を流しながら抱き合います。完敗でした。義経主従の初めての敗北は、矢の一本刀の一合を交わすこともない。静かな、そして完膚なきまでの敗北であったのです……」

莉嘉「……弁慶くん、アタシもうひとつわかったことがある」

文香「なんでしょうか……?」

莉嘉「木曽義仲が負けた時、北陸に向かおうとしてたじゃない」

文香「……? はい」

莉嘉「平家は一ノ谷で負けたら屋島に船で向かった。屋島で負けたら彦島に向かった」

文香「そうでしたね」

莉嘉「みんな負けたら、生まれ育ったところに、仲間のところに、自分の拠り所に逃げるんだ」

文香「なるほど……」

莉嘉「アタシにはないんだ。生まれ育ったところも、仲間のいるところも、自分の拠り所も……」

文香「ああ……そうなのでした。義経様は、生まれてすぐ戦乱で京に……」

莉嘉「お姉ちゃんだってそれは同じなのに、生涯で二度も負けたのに……自分で作ったんだよね。負けても戻れる場所を」

文香「それが、あの方が鎌倉から動かなかった、もうひとつの理由かも知れませんね」

莉嘉「アタシにはないんだ……逃げる故郷が……」

文香「……お待ちください。あります……! 逃げる場が、義経様にも!」

美嘉「義経は、我が鎌倉軍に恐れをなし敗走した。これ以上の滞陣は無用。鎌倉に引き上げる」

未央「……来なかったか、義経」

忍「良かったのか悪かったのか……どうなのかな」

美嘉「今頃きっと、あの子も気づいているよね。源氏の嫡流として生まれたアタシたちには、負けたら落ち延びる故郷がないってことに……」

未央「え?」

忍「御所様、今なにか……」

美嘉「……なんでもない」

保奈美「鎌倉に戻った頼朝でしたが、そこに意外な人物が京の都から送られてきます」

美嘉「白拍子?」

まゆ「義経さんの、お手つきだそうですよぉ」

美嘉「義経が!? 白拍子に手を出してたの!?」

忍「しかもお腹には、ややこが……」

美嘉「えええええっ!? じゃあ義経の子供……が?」

未央「どうなさいます?」

美嘉「ど、どう……って。どうしよう?」

忍「……とりあえず、その白拍子が鎌倉を、御所様をどう思っているのか確かめたらどうです?」

未央「どうやって?」

忍「近く、鶴岡八幡宮で祭事があります。そこで舞を舞わせてみたらどうかな。ちゃんと寿ぎ(ことほぎ)の舞を舞うようなら、それは心底鎌倉に忠誠の気持ちがあるってことで」

美嘉「そうか。そうだね、じゃあそうしよう」


奈緒「さてついに、義経の側室で美人で舞の名人だった静御前の登場だな」

加蓮「思い出した。都で莉嘉ちゃんが都で検非違使やってる時に、白拍子の所に通ってたっけ」

凛「そういえば……そんなことあったね」

P「ドラマ内でも言われてたが、白拍子っていうのは歌舞をする人でで静御前はその達人と呼ばれていたんだ」

奈緒「あの後白河法皇が京で日照りが続くので白拍子に雨乞いの舞を踊らせたんだけど、99人の白拍子が舞っても雨は降らなかったのに、最後の100人目の静午前が雨乞いの舞を踊るとたちまち雨が降った、という伝説のある人でさ」

P「後白河法皇はその時『かの者は神の子か』と驚いて、日本一の称号を授けたんだ」

加蓮「なんかものすごい人だね」

凛「誰がその役、演じるのかな?」

奈緒「いや、誰だろうな!? 楽しみだな!? ワクワクしてくるよな!!」

美嘉「では静よ、寿ぎの舞を舞ってみよ。見事舞えたなら、その命助けてもいいから」

ヘレン「助命でもダンサブル!」ヘーイ!

https://i.imgur.com/3CtK3iP.jpg
静御前

奈緒「ぶっ!」

加蓮「いやまあヘレンさんのダンスはすごいけど」

凛「白拍子の舞って、そんなんじゃないんじゃないの?」

P「まあまあ、鬼気迫るヘレン渾身のダンスを見てくれ」


ヘレン「吉野山♪ 峰の白雪ふみわけて♪ 姿を隠していったあの人のあとが恋しい♪」ヘーイ!!

未央「あわわわわ……」

忍「どうしたの? 蒲殿」

未央「あの静って白拍子が歌って舞っているのは、恋しい人への想いを込めた歌と舞なんだよ」ヒソヒソ

忍「へえー……え? 寿ぎの歌と舞は?」

未央「だから、そういうんじゃないのを演ってるうえに、あの静の想う人っていうのは……」ヒソヒソ

忍「えっと……あ、義経さんか!」

未央「シーっ!!!」
 
美嘉「……」

まゆ「頼朝様ぁ」

美嘉「……なに?」

まゆ「あの方、許してあげてくださいませんかぁ」

美嘉「え?」

まゆ「命だけは、どうか……この通りですからぁ」

美嘉「まさか政子が、そんなことを言うなんて……ちょっと意外だったな」

まゆ「そんなことありませんよぉ。恋しい方を想う気持ち、まゆだってよぉくわかりますからねぇ」

美嘉「……そっか」

まゆ「まゆだって、必死で嵐の夜に灯りのない山中を歩いたんですもの。あの方の気持ちも、よぉくわかりますよお」

美嘉「そんことも……あったね」

まゆ「この通りです、頼朝様ぁ」

美嘉「政子がそこまで言うなら、助けないといけないね」

まゆ「まあ。ありがとうございますねぇ」

美嘉「ただし」

まゆ「えぇ?」

美嘉「お腹の子は……お腹の子が男の子だったらその時、その子は覚悟してもらうよ」

まゆ「そんな……」

ヘレン「妊婦でもダンサブル!」ヘーイ!!!

保奈美「それからしばらく後、生まれた子は果たして……男の子でした」

美嘉「……そう。じゃあその子は由比ヶ浜の浜辺の砂の中に埋めて」

忍「え?」

美嘉「聞こえなかった? 由比ヶ浜の浜辺の砂の中に埋めてね」

忍「……わかりました。御所様」


まゆ「義時ぃ」ポン

忍「姉上。言いたいことはわかりますが、まずは私の話を聞いてよ」

まゆ「なんですかぁ? 義時は、まさか姉の夫の弟の子をあやめたりはしませんよねえ……?」ニコォ

忍「あのさ姉上。御所様はさ、目の前でこの子をどうしろとは言わなかったんだよ」

まゆ「え?」

忍「首を切れとか刀で刺せとかなんにも。ただ、由比ヶ浜に埋めろ、って。私だけに」

まゆ「?」

忍「由比ヶ浜の波と砂浜の音で、この子を埋めたなんて誰も気づかないだろうし、どこに埋められたかもわからないんだよ? 後から聞かれても私も広い由比ヶ浜のどこに埋めたのかなんて覚えてないしね」

まゆ「まあ!」

忍「ちゃんと報告状には記しておきますよ。由比ヶ浜のどこかに、義経の子供は埋められた、ってね」

まゆ「義時ぃ。あなた、やる時はやるんですねえ。お姉さん、見直しちゃいましたよぉ」

忍「まあ私も、都の貴人とひょんな事から義兄弟になって、平家を倒すなんて大それた事をして、鎌倉の武家政権で重職を担うようになったらそりゃあね」

まゆ「うふふ。じゃあこの子を、頼みましたよぉ」

忍「うん」

莉嘉「そっか奥州か。そうだね、あそこはアタシの故郷みたいな気がするね」

文香「しかし奥州にたどり着くには安宅の関を超えねばなりません……私たちは山伏で、焼け落ちた東大寺の勧進の為に通る……ということにします」

莉嘉「わかった」

文香「さあ……見えました。あれが安宅の関です」


凛「安宅の関って今のどのあたり?」

奈緒「石川県だよ。ここを通って北陸から奥州に入るつもりなんだよ義経と弁慶は」

加蓮「勧進、ってなに?」

P「寺社に対する寄進……寄付を募ることを勧進と言う。そしてこの勧進をする人たちは、勧進帳という勧進をする証明証みたいなものを持っている」

加蓮「2人はその勧進帳を持っているの?」

奈緒「いいや持ってないんだ」

凛「え? じゃあどうするの?」

奈緒「さあ、それを見ていこうか」

松尾千鶴「私は関守の富樫左衛門。勧進のためここを通りたいの?」

文香「はい……その通りです」

千鶴「このような大乱の後、まだ各地が騒然としている中を勧進に回るとは変じゃないかしら」

文香「失礼ながら、世が騒然としているからこそ、み仏の慈悲にすがろうと、勧進に努める次第です……」

千鶴「なるほど道理ですね。では、勧進帳を読み上げてくださいますか?」

莉嘉「弁慶くん弁慶くん」ヒソヒソ

文香「なんですか……?」ヒソヒソ

莉嘉「持ってるの? その勧進帳」ヒソヒソ

文香「いいえ」ヒソヒソ

莉嘉「えー!? じゃあどうするの?」ヒソヒソ

文香「どうぞ私に……お任せを」ヒソヒソ

痔ル「どうしたの?」

文香「いいえ。読み上げます……この巻物に記してあるので読み上げます。大恩教主の秋の月は、涅槃)の雲に隠れ生死長夜の長き夢、驚かすべき人もなし……」

保奈美「弁慶、何も書かれていない巻物を、天も響けと朗々と読み上げます。さしもの関守もその堂々とした読み上げに感じ入ります」

文香「……敬ってもうす。いかがですか?」

千鶴「確かに内容の確かな勧進帳」

文香「では……通していただけますか?」

千鶴「今ひとつ」

文香「は……?」

千鶴「近頃、都で噂のマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』。もしお持ちならそれを読み上げそうらえば、必ずお2人をお通しするものを」

文香「そのようなことは、いと容易きこと。よみあげます」

保奈美「弁慶は、かのフランスの大長編、マルセル・プルーストの失われた時を求めてを、3日3晩かけて、真っ白な巻物を広げつつ朗々と読み上げます」

文香「……した。いかが」

千鶴「これはお見事。疑うべきもないわ。ささ、どうぞお通りを」

文香「では……」

莉嘉「……」

千鶴「……しばらくお待ちを」

ふみか「何か?」

千鶴「そちらの小柄な方、前にちらりと見た……源九郎義経に似ているような……」

バッ

千鶴「な、なにを……」

文香「ええい! あなたがあの罪人、義経に似ているばかりに足止めを食らったではありませんか……この! この!」

保奈美「弁慶は手にした錫杖で、いやとばかりに義経を打ち据えます。その強さ、勢いにさしもの関守も慌てます」

千鶴「お待ちあれ! こちらが余計なことを申したばかりにご迷惑をおかけした。この上は是非もなし、お通りあれお通りあれ」

文香「左様か。ではまかり通る……ごめん」

保奈美「関を超え、しばらく後に弁慶はその場に土下座をします」

莉嘉「え? どうしたの弁慶くん」

文香「関を超えるためとはいえ、とんでもない無礼を主君に対しいたしました。家来として不相応。お詫びする言葉もありません」

莉嘉「もー弁慶くんってば、アタシ最初に言ったじゃない」

文香「は……?」

莉嘉「弁慶くんは家来なんかじゃないよ。アタシ家来なんて要らないもん。弁慶くんは仲間☆ アタシの仲間だからいいんだよ」

文香「もったいないお言葉……」

莉嘉「さあさあ行こうよ。ううん、帰ろう。奥州平泉へ」

比奈「ちょっと待つっス」

莉嘉「天狗さん! うわあ懐かしい☆ もしかしてアタシを迎えに来てくれたの?」

比奈「そうでもあり、そうでもないとも言えるっス」

莉嘉「え?」

鞍馬天狗「情勢は、奥州にも伝わっているっス。秀衡様は、牛若……失礼。義経さんが帰ってくるのを待ってるっス」

莉嘉「……帰ってくる、か。嬉しい。そう思われるの」

比奈「しかし秀衡様は今、病気っス。それももう、長くはないという医師の見立てっス。そして藤原家の中には、義経さんが奥州に帰るのを快く思わない者もいるっス」

文香「頼朝に……鎌倉殿に目をつけられるわけですものね」

比奈「正直、今の平泉に義経さんをお迎えしていいものか判断に迷うっス。藤原氏がいつ義経さんを討とうとするか、わからないっス」

莉嘉「いいよ。別に」

文香「義経様……」

莉嘉「別にアタシ、“自棄(ヤケ)”になってるわけじゃないよ? アタシは帰りたいんだ。“武士(ギャル)”が負けたら帰るとこが自分にもある、それを確かめに」

文香「……鞍馬天狗さん。お聞きの通りです。奥州に行き……いえ、帰ります。我々は」

比奈「わかったっス。じゃあ向かいますっスかね。懐かしの奥州平泉へ」

莉嘉「懐かしいな。みんな元気?」

比奈「日本中、飢饉が続いてたっスけど奥州は豊作だったから、お米がたくさん食べられるっスよ」

文香「それは……嬉しいですね」

莉嘉「帰ったら、また藤原家のみんなと遊びたい。山へさ、おっきなカブトムシ探しに行こうよ」

文香「……面白そうですね。お供いたします……」

保奈美「義経が平泉に帰ってからしばらくして、藤原秀衡は死去。掌を返したように義経は討たれました。抵抗することなく、主従は潔い最期を迎えたと伝えられています。一代を風靡した、戦の申し子の儚い最期でした」ベン


奈緒「え?」

凛「なんで奈緒が驚いてるの?」

加蓮「この物語をよく知ってる奈緒にしては珍しいよね」

奈緒「義経の最期って、これで終わりなのかよ!?」

凛「みたいだね」

加蓮「でもまあ私たちアイドルだし、凄惨な描写よりナレ死の方がいいじゃない」

奈緒「そうじゃなくてさ! ジンギスカン伝説は!? やらないのかよPさん!?」

凛「ジンギスカン? お腹空いたの? 奈緒」

奈緒「あのさ、源義経は実は平泉では死んでなくて、蝦夷に落ち延びてそこから大陸に渡り、ジンギスカン……あの蒙古のチンギス・ハーンになったって伝説があるんだよ!」

加蓮「奈緒」ユサユサ

奈緒「え?」

加蓮「しっかりして! そんなことあるわけないじゃない。義経がチンギス・ハーン? やだもう、ふふふっ」

凛「そういう同人誌でもあるの?」

奈緒「いや真偽はともかく、メチャクチャ有名な説なんだよ! 悲劇の英雄が実は生きていたっていう浪漫なんだよ!! ドラマなんだからやってもいいんじゃないかなPさん!!!」

P「では頼朝がどうなったのかも、見ていこう」

奈緒「おおーーーい!!! あたしを無視するなよ!!! ジンギスカン伝説やろうよってばーーー!!!」

フレデリカ「官位の斡旋に、宮中の行事に、全国の土地の差配権に……こんなに要求してくるのー? ミーこれはちょっと承服しかねないかなー」

智香「では、鎌倉殿にそのように伝えますっ!」

フレデリカ「平頼盛ちゃーん。頼盛ちゃんも、かつてはミーに仕えていたわけじゃない。そこんとこ斟酌とか伸縮しようヨー。ネ?」

智香「もうアタシは平頼盛じゃあありませんからっ!」

フレデリカ「え?」

智香「頼朝様、鎌倉殿に仕える御家人、池頼盛ですっ☆」

フレデリカ「池? 池ってもしかして、池禅尼の……」

智香「ふさわしい姓だよね、って鎌倉殿が。そして後白河法皇様に仕えたことがあるから、アタシを交渉係にされましたっ!」

フレデリカ「うえ~ん。頼朝ちゃんは都には出てこないし、"武家(ギャルサー)"を全部配下としてまとめちゃったからミーの手駒で動く"武士(ギャル)"はいなくなっちゃったし、もうミー手詰まり」

智香「その代わり、三種の神器はお渡しするそうです」

フレデリカ「ホント? やった!」

智香(三種のうち、剣は“模造(レプリカ)”ですけどねっw)

フレデリカ「天皇の正統性が戻るなら……そだ。まだミーには、戦の力は弱いけどあっちこっちに顔が利いて、扇動の上手い行家ちゃんが……」

智香「あ、新宮十郎なら討たれましたよっ☆」

フレデリカ「え?」

智香「先日、山城国で」

フレデリカ「そんな……あの逃げるのだけは名人芸の行家ちゃんが……もうホントにミー手詰まり」ガクッ

美嘉「そう。会ったこともないけど、あの法皇がそんなに落ち込んでたの★」

智香「さすがにもう打つ手がなくなりましたからねっ!」

美嘉「アタシは動かない。京の都は、公家の都。アタシは ここ鎌倉に"武士(ギャル)"の都を作るよ。ここから“武家(ギャルサー)”の政治をしていく」

忍「ついに頼朝さん……御所様は征夷大将軍に任じられましたし。その地位は揺るぎないよね」

智香「それから、ひとつ法皇様から提案がありましてっ」

美嘉「提案?」

まゆ「大姫を入内!? じゅ、入内って天皇の奥さんにするってことですかぁ?」

美嘉「そう! 朝廷に政治はさせないけど、国の象徴としてはこれからも大事にするつもり。だからこの話は願ってもないよ。それを向こうの方から頼んでくるとはね」

まゆ「頼朝様ぁ?」

美嘉「ん? なに、政子」

まゆ「大姫は、まだ……義高殿を想って……それでもようやく心の傷が少しずつ癒え始めているところなんですよぉ? それを入内だなんてぇ……」

美嘉「義高のことはもう13年も前のことじゃない! 大姫だってもう20歳だよ? 恋の傷は新しい恋をすれば癒えるかもしれないじゃない!」

まゆ「でもぉ……」

美嘉「とにかく大姫は後鳥羽天皇に入内させるからね!」


まゆ「……大姫?」

日菜子「あ、お母様」

まゆ「身体の調子はどうですかぁ?」

日菜子「最近は少し、気分がいいです……む」

まゆ「少し、お話があるんですけど、いいですかぁ」

日菜子「はい。お母様……むふ」

まゆ「実は大姫に入内のお話があるんですよぉ」

日菜子「入内? え?」

まゆ「後鳥羽天皇に嫁ぐ……という……大姫?」

日菜子「むふ。むふふ。むふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」バターン

まゆ「大姫ぇ!!!」

日菜子「あ」

まゆ「気がつきましたか、大姫ぇ」

日菜子「義高様」

まゆ「え?」

日菜子「義高様がそこに……お、お懐かしゅうございます。大姫です」

晴「誰だ? オレを呼ぶのは

まゆ「大姫? 義高殿はおられませんよ。義高殿は既に……」

日菜子「大姫です! 大姫ですよ!! あなたの大姫です!!」

晴「そうだ……オレは義高……源義高……そのように呼ばれていた……大姫……そうだ、その名にも覚えがある……いつもオレの側にいてくれた……小さな、可愛らしい姫だった……」

まゆ「大ひ

日菜子「そうです。それがこの私です! 大姫ですよ!」

まゆ「

晴「黙れ! 大姫ならここにいる! 小さな、まだ七つの可愛らしい幼い姫……お前なんか知るもんか!」

日菜子「大姫です! ここにいる私が大姫ですよ!!」

まゆ

晴「ええい! 知らぬと言ったら知らねえ! 大姫はここにいる! お前なんか大姫じゃない!」

日菜子「義高様! 義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様義高様」

美嘉「大姫が……昏睡?」

まゆ「髪が伸びたから義高様にわからないんだ……と叫んで鋏で自分の髪を切り始めたかと思うと突然倒れてそれきりにぃ……」

美嘉「そんな……大姫!」


保奈美「そのまま目覚めず、大姫は亡くなりました。愛娘の死にさすがの頼朝も涙し、しばらくは政務も滞ったと伝えられています。大姫、享年20歳。せめてあの世では、木曽義高と結ばれているといいと願わずにはいられません」ベベベン


凛「ちょっとお!」

加蓮「なんてもの……なんてもの見せてくれてるの!」

奈緒「だから言っただろ! やらない方がいいって!」

凛「可哀想じゃない! 大姫!」

加蓮「これならまだ、奈緒の食べたがってたジンギスカンの話の方が良かったよ!」

奈緒「食べ物のジンギスカンじゃないけど、そうだろ!?」

P「この後頼朝は、馬から落ちて亡くなる」

加蓮「え?」

凛「馬から落ちて、って……それだけ?」

P「そう記録されているな。馬から落ちて病を得たのか、病を患ったから馬から落ちたのかははっきりしないが、頼朝の最期だ」

奈緒「ちょっとあっけないよな」

加蓮「アタシたち平家を滅ぼして、割とすぐに亡くなったのか頼朝。まあでも鎌倉幕府は作って亡くなったんだから、この後は源氏の世の中になったんだよね」

奈緒「あ、いいや」

加蓮「え?」

奈緒「頼朝の後は、息子の頼家が鎌倉幕府2代目将軍になったんだけど、色々素行に問題ある人で、政務上の決定権を取り上げられる」

凛「将軍でしょ!? 誰に取り上げられたの? 決定権」

P「鎌倉幕府の重臣⒔人にって取り上げられ、ここから鎌倉幕府の13人の合議制という政権運営が始まる」

奈緒「将軍は事実上飾り物になって、13人の騙し騙されの陰惨な政治闘争や争いが繰り広げられる。政治と戦のバトルロワイヤルが始まるんだよな」

加蓮「ま、まあ飾り物でも源氏の幕府としては続くんなら、いいか」

奈緒「ところがこの頼家も、そして3代将軍となる実朝もさっき言った闘争に巻き込まれて暗殺され、頼朝の系譜はここで途絶えちゃうんだよ」

加蓮「ええっ!? 平家に続いて源氏も?」

P「付け加えると、実朝を暗殺したのは頼家の息子だったんだけど、その息子も嗾されただけで暗殺後に暗殺される」

凛「なにそれ」

P「13人と源氏によるドロドロの政治劇の末、最期に勝ち残るのは……」

加蓮「誰なの? 平家も源氏もいなくなった世で勝ち残ったのは」

奈緒「北条義時だよ」

凛「義時……え、忍?」

奈緒「義時は13人の中では最年少だったんだけど、最期まで生き残り、後鳥羽天皇からの政治介入も退けて鎌倉幕府の執権……実質的な支配者になる」

加蓮「なんか意外だけど、色々翻弄されて大変だったもんね忍ちゃん」

凛「一番成長して、一番強くなったのは忍だったってことなんだ」

保奈美「さて、長き渡ってこのお楽しみいただきましたこのドラマ。これにて終了です。名残惜しき限りではありますが。お別れです」

加蓮「楽しかったよね。現場も面白かったし」

奈緒「次はあたしも、ちゃんと誰か演じたいな」

凛「私も」

P「あー、凛。それで希望があるなら、早めに教えてくれよな」

凛「え? なんの希望?」

奈緒「忘れたのかよ。来年の大河、凛は主役だろ?」

加蓮「クイズで私に勝ったじゃない」

凛「あ! そうだった!!」

P「誰がいい? どの物語をやる?」

凛「え? そんなこと言われても……えっと。ええと……」

加蓮「あれがいいんじゃない? 幕末とか」

奈緒「戦国時代もいいんじゃないか?」

P「時代的に連続して、次は太平記の物語とかどうだ? 鎌倉幕府滅亡と室町幕府の成立だ」

凛「ま、待っていっぺん言わないで……な、なににしよう!? そ、相談に乗ってよ!! みんなーーー!!!」



https://i.imgur.com/nn768tX.jpg
池(平)頼盛

以上で終わりです。おつき合いいただきまして。本当にありがとうございました。
大河ドラマ大好きで、歴史特に平安後期鎌倉室町時代と大好きなので楽しんで書かせていただきました。
今年の大河ドラマも期待して楽しみにしています。

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