TV『親に内緒で子供がいかがわしいサイトを閲覧するケースが増えており……トラブルの元に……』
父「これはいかんな。一度チェックしなければ」
……
父「おい、スマホの履歴見せてみろ」
息子「う、うん……」
父「なに別に怒るわけじゃない。どんなサイトを見ててもいい。それが普通なんだ」
父「なんたって子供は好奇心の塊なんだからな。ただ一度、親として見ておきたいだけなんだ」
父「そして、子供にはまだ早いサイトがあったら教えるから……」ポチポチ
父「え……『相対性理論について』……?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1637157592
息子「お父さんも知ってるでしょ。アインシュタインが唱えた物理学の理論体系だよ」
父「お、おお! 知ってる! もちろん知ってるとも!」
父「あれだろ? 光はすっごい速いみたいな理論だろ!?」
父「人間は光の速さで動くと、どんどん若返ってく~みたいなあれだろ!?」
父「ほら、摩擦熱とかでどんどん時間が戻っていくんだろ!?」
息子「えぇと……」
父「だが、小学生がこんなこと調べてどうする!」
父「小学生なら、どうすれば光の速さでクラスの女子のスカートをめくれるのかだとかそういうことを調べなさい!」
母「なにいってるの、あなた!」
父(この間はとんだ醜態を晒してしまった……)
父(今度こそ父としての威厳を見せねばならない)
父「おい、スマホの履歴見せてみろ」
息子「う、うん……」
父(この反応! 今度こそ怪しいサイトを覗いてるに違いない!)
父「いいか、どんなサイトを見てても、お父さんは決して叱ったりしないからな」
父「ただ、親として……ん、『宇宙の誕生~ビッグバン~』……?」
息子「お父さんも知ってるでしょ。宇宙の誕生の時に起きたビッグバン」
父「知ってる知ってる! あれだろ? あのすごい大爆発!」
父「宇宙がある日、爆発してドカーンってなって、あちこちに宇宙の破片が散らばって」
父「それが太陽とか月とか地球とかになって……ってあれだろ? 花火みたいで綺麗だよな!」
息子「そんな感じ、なのかな……」
父「しかし、宇宙の誕生のことなんて知って、いったいなんの意味がある!?」
父「男の子なら、クラスメイトの女子に『ぼくと子孫を誕生させてみない?』ぐらいのこと言いなさい!」
母「落ちついて、あなた!」
父(ううむ、息子が恥ずかしいサイトを見てるのを見つけて、優しく諭してあげたいのになかなかできない)
父(親の心子知らず、とはまさにこのことだ)
父(今度という今度こそ……!)
父「おい、スマホの履歴見せてみろ」
息子「う、うん……」
父「どれどれ……なに、アニメだと?」
父「分かった、好きなアニメキャラクターのいかがわしい画像を収集してるんだな!」
父「分かる、分かるぞ。俺も昔はセーラームーンとか、ドラゴンボールのブルマとか……」
父「ん……? 『アニメーションの作り方』……?」
父「お前、アニメなんか作ってるのか?」
息子「うん、そうだよ!」
父「み、見せてみろ!」
息子「CGを使った五分ぐらいの短いやつだけど……」
父「どれどれ……」
父「……」
父「わずか五分の間に起承転結はもちろん、笑いと感動、さらには風刺まで盛り込まれてる!」
父「いいアニメを見てしまったぁ~!」
父(……今日こそ、息子を注意してやる!)
父「おい、スマホの履歴見せてみろ」
息子「う、うん……」
父(頼む! エッチなサイトを見ててくれ!)
父(エッチ、エッチ、エッチ、エッチ、エッチ……)
父「『世界平和を実現させるには』……?」
父(エッチはエッチでも、“平和”のエッチだったか~!)
父「息子よ! 世界平和なんて絶対無理だ!」
息子「え、そうなの!?」
父「そうだとも、有史以来人間がどれだけ戦争してきたと思ってる! それなのに未だに戦争はなくならない!」
父「いっとくが戦争は兵器を使うやつだけじゃないぞ」
父「かつて、アメリカとソ連の睨み合いは冷たい戦争といわれたし……」
父「お金に関する戦争に、文化に関する戦争。職場や学校でのいじめだっていってみれば戦争だ!」
父「世界平和とか考えるだけ無駄なの! 人間は争ってなきゃならない人間なの!」
息子「そんな……」
父「お父さんを見てみなさい。家庭内でいつもお母さんにいいようにされて……」
母「あなた……ちょっと戦争しましょうか」パキポキ
母「あなた、どうしたのよ」
父「……」
母「こないだからおかしいわよ。息子のスマホ見ては、わめきたてて」
母「あの子が相対性理論やビッグバンについて調べてるのがそんなに悪い事なの?」
母「好きにさせてあげればいいじゃない」
父「だって……だって……あいつを見てると……」
父「自分が情けなくなってしまって……!」
父「俺があいつぐらいの頃なんて、なにやってたと思う?」
父「ファミコンやって、アニメ見て、道ばたで拾ったエッチな本に興奮して……」
父「それなのに、あいつは……相対性理論だの、ビッグバンだの、世界平和だの……」
父「あまりにも違いすぎる! トンビがタカを産んだなんてレベルじゃない!」
父「カマドウマがカブトムシを産んじまったようなもんだ! うわぁ~ん!」
母「カマドウマて……」
父「なぁ」
母「なによ」
父「あいつ……本当に俺の子か? ひょっとして、もっと優秀な血が混ざってるんじゃ……」
母「息子の顔をよーく思い出してみて」
父「うん」
母「誰に似てる?」
父「俺」
母「分かった?」
父「はい」
父「そっくりだから、なおさらキツイんだよ!」
父「ほら、漫画でよくあるだろ? 双子キャラなのに片方の才能だけ凄いみたいな設定……」
父「同じ顔なのに、なぜあいつだけ優れてるんだ、みたいな……」
父「ちょうどあんな感じの気分なんだよぉ!」
母「双子キャラなら兄弟だからまだ劣等感抱くの分かるけど、親が子に対して抱かないでよ!」
父「きっと息子も『父ガチャ外した』って思ってるに違いない……!」
母「親が父ガチャとかいわないで! みっともない!」
父「うううっ……!」
母(これは相当重症だわね)
息子「お父さーん」
父「今リモート会議してるから、後でな」
息子「あ、ごめんなさい」
上司『まあ、待ちたまえ。せっかくだからお子さんにもちょっと参加してもらおうじゃないか』
父(また悪いクセが……この人、妙な遊び心があるから……)
上司『今からウチの部署が抱えてる問題点を挙げるから、君の意見を述べてみてくれ』
息子「はいっ!」
息子「……このように、互いが互いのやってることをしっかり把握しているチームワーク作りが大事だと思います!」
上司『素晴らしい!』
父「……!」
上司『いやー、なかなかいい意見だった。今後の参考にさせてもらうよ』
息子「ありがとうございます!」
上司『ひょっとして、父親である君より優秀なんじゃないか?』
父「ハ、ハハ……ご冗談を……」
父「どうせ俺なんて……俺なんて……」
母「そんなの上司さんの冗談に決まってるでしょ」
父「いーや、冗談じゃない。あれはマジでいってた!」
母「そんなことないって……子供を褒めて、おだててくれただけよ」
父「慰めはよしてくれ。俺は仕事ですら子供に負けちゃうんだ……こうなったら酒に溺れる!」
父「酒飲んで酔っ払ってダメ親父になる! 酒持ってこーい!」
母「はいはい」
父「むにゃ……ぐぅ……ぐぅ……」
母「ほらね、酒に溺れるなんて無理よ。ビール一杯で寝ちゃうんだから」
父「ぐぅ……ぐぅ……」
息子「お父さん、大丈夫?」
母「大丈夫よ。お父さんは私に任せて、あんたは明日の準備して、早いところ寝ちゃいなさい」
息子「うん……」
父(休日の昼間……テレビはどれもつまらんなぁ……。かといってやることもないし……)
息子「お父さーん!」
父「ん?」
息子「キャッチボールしようよ!」
父「キャッチボールか……いいだろ。広場に行こう」
息子「やったーっ!」
母「面白そうね。私もついていくわ」
父「じゃ、俺から行くぞ」
息子「うん」
父「ほらっ!」ヒュッ
息子「わっ!」パシッ
父「大丈夫か?」
息子「もっと弱く投げてよ~」
父「そんなに強かったか? 悪い悪い」
息子「じゃ、今度はこっちから投げるね」
父「いいぞー!」
息子「それっ!」ヒュッ
父「わっ! どこ投げてるんだ!」
息子「ごめんなさーい!」
父「うーん、フォームがなってないな。どれお父さんが教えてやろう」
息子「お願い……」
父「ゆっくり投げるぞー」
息子「うん、ゆっくりね!」
父「そらっ!」ヒュッ
息子「わっ!」ポロッ
父「片手で捕ろうとしたらダメだ。両手でキャッチしなきゃ」
息子「うん、分かった!」
友「おばさん、こんにちは!」
母「あら、こんにちは。息子は今キャッチボールしてるのよ」
息子「そーれっ!」ヒュッ
父「おっ、いいぞ! さっきよりコントロールがよくなった!」
友「……?」
母「どうしたの?」
友「いや、あいつ……いつも体育の時はボール投げるのもっと上手いんですよ」
母「え、そうなの?」
母(あの子、スマホをここに置いてあったわね……ちょっと覗いてみよう)
息子「お父さんのおかげだよ!」
父「ハハ、俺もまだまだやるもんだな!」
母(あの子の検索履歴……)
『お父さん 喜ばせ方』
母「ふふっ、これは……見せないようにしないとね」
~おわり~
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