バッティングセンターに快音が響き渡る。
カキーンッ!
男(よし……絶好調!)
男(全部当てられたし、いくつかは結構いいコースへ飛んでいったぞ!)
男(だいぶ打てるようになってきた!)
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打席から出てきた男に、常連が話しかけてくる。
常連「最近よくここに来るが、だいぶよくなってきたじゃねえか、兄ちゃん」
常連「そろそろ110km/hや120km/hにチャレンジしてみたらどうだい?」
男「いやぁ~、自分にはまだ100km/hぐらいがちょうどいいっすよ!」
男「それじゃ、俺はこれで!」
帰り道――
男(あ~、スッキリした! バッティングセンターがこんなに面白いもんだったとは!)
男(次からは110km/hあたりにチャレンジしてみようかな……)
強盗「おい、金を出せ」
男「!?」ビクッ
男(な、なんだこいつ……まさか強盗!?)
強盗「出さないと、死ぬことになるぞ」サッ
男(ピストルゥ!?)
男(ボールは打てるようになったけど……いくらなんでも銃弾は打てねえ!)
男「わ、分かったっ! 出す! 出すから……撃たないでくれっ!」
強盗「よし……早く出せ」
男(くっそぉ~、こんなことになるなんて! だけど命には代えられないよな……)
強盗「早くしろ」
男「わ、分かってる!」ゴソゴソ…
男「ほらっ!」ポイッ
強盗「どれ……」
強盗「札はひい、ふう、みい……なんだこれ、シケてやがる」
強盗「とんだハズレをひいちまった。こんなしょぼくれた奴を狙うんじゃなかったな」チッ
男(なんだと……!? 強盗の分際で好き勝手いいやがって……!)
強盗「カードは……ちっ、ポイントカードばっかじゃねえか」バサッ
男(てか、スキだらけだよな今……もしかして、かかっていけば勝てるんじゃないか?)
男(俺だって最近バッティングセンター通って、体鍛えてるんだ……いける!)
男「だあぁぁぁぁぁっ!」ダッ
ドカッ!
強盗「うおっ!?」
強盗「な、にしやがる!」ブンッ
ガッ!
男「ぎゃぁっ!」ヨロッ
男(甘かった……! こいつ予想以上に力が強い……!)
強盗「このヤロウ……ブッ殺してやる!」チャッ
男(あっ!)
強盗「死ねっ!」グッ…
男(ああ……俺、死んだ――)
パンッ!
スパァッ!
真っ二つになった弾丸が地面に落ちた。
男「え!?」
強盗「なに!?」
剣士「そこまでだ、悪党」
男と強盗の間には、一人の剣士が立っていた。
強盗「このヤロウ! ジャマすんなァ!」
パンッ! パンッ!
スパァッ! スパッ!
剣士「無駄だ……」
男(すごい! 銃弾を斬るなんて! ……こんなことできる人間がいるなんて!)
強盗「くっ、そ! バケモンがぁっ!」グッ…
剣士「遅い」スッ…
ドカッ!
強盗「ぐえぇっ……!」ドサッ…
剣士「安心しろ、峰打ちだ」
男「あのぉ……ありがとうございました……」
剣士「別に大したことではない」
剣士「だが、武器を持った相手にむやみに飛びかかるのは感心せんな」
剣士「私が通りがからねば、死んでいたぞ」
男「す、すみません……」
剣士「強盗はしばらく目を覚まさんだろうし、後のことは任せた」
男「――あのっ! せめてお名前を!」
剣士「名乗るほどの者ではない。これから修練があるのでな」スッ…
男「あっ……」
男は感動していた――
男(銃弾を見切り、あっさり強盗を倒し、名も名乗らず去っていく……)
男(すごいなぁ……まさか現代の日本にあんな剣士がいるなんて!)
男(きっと……俺なんかとは全然違う生活をしてるんだろうなぁ……)
……
……
……
スパァッ! スパッ! シュパッ!
剣士(よし……絶好調!)
達人「君がこの知る人ぞ知る修練場に来てからしばらく経つが――」
達人「もうすっかりピストルの弾は斬れるようになったな!」
達人「そろそろ私のように、マシンガンや大砲の弾にチャレンジしてみたらどうかね?」
剣士「いやぁ~、自分にはまだピストルぐらいがちょうどいいっすよ!」
スパァッ!
カッティングセンターに快音が響き渡る。
おわり
昔別板に投下したSSのリメイクとなります
ありがとうございました
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