エルシィ「私だけが望むセカイ」 (175)
エルシィ「にーさま、朝ですよ」
エルシィ「起きてください!遅刻しちゃいます~」ユサユサ
桂馬「~…勘弁してくれエルシィ」
桂馬「こっちはつい30分前寝始めたばっかなんだぞ」モゾモゾ
エルシィ「なんでそんな時間まで起きてるんですかそれとなんで30分だけ寝ようと思ったんですか」
桂馬「エルシィ、今日の曜日を言ってみろ」
エルシィ「え?…っと、金曜ですね」
桂馬「そう!金曜!木曜の深夜から金曜の朝まではギャルゲーマーにとってのゴールデンタイム!あいや賢者タイム!」
桂馬「駆け魂だの女神だの面倒事に巻き込まれる落とし神にとっては尚の事重要なイベントという訳だ!」
エルシィ「とりあえず元気そうで何よりです」
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桂馬「大量に生産されたギャルゲーを消費しなければならないという重圧がお前に分かるのかエルシィ~!」
エルシィ「分からなくて今ホッとしてる所です」
桂馬「とにかく起きん!ギリギリまで寝る!」
エルシィ「そんな~朝ご飯はどうするんですか」
桂馬「部屋に置いとけ。気が向いたら食う」
エルシィ「う~…今日は久しぶりに張り切ってお母様と一緒に朝食を作ったのに…」
エルシィ「エリマキトカサの目玉焼きに閻舞茸のお浸しそれから…」
桂馬「よーし今日も1日頑張るぞい」ガバッ
エルシィ「あ、にーさま!やっとご飯食べる気になったんですね!」
桂馬「朝ご飯だと?この1、2時間で10回は食べてるよ」ヌギヌギ
エルシィ「ゲームでお腹は膨らみませんよにーさま…」
桂馬「うるさい!そんな物騒な給食の献立聞いたらよっきゅんだってその日学校欠席するわ!」キュッ
エルシィ「閻舞茸美味しいのに…」
桂馬「バグ魔の基準を人に押し付けんな!とにかく僕は学校に行くか」ガチャ
麻里「やぁ」
桂馬「」
麻里「せっかくエルちゃんが早起きして作ってくれたのに何やってんのよあんたは!」
桂馬「こんな強制イベント聞いてねぇよ~!」
ピチャピチャ
桂馬「…おいこれ動いてるけど」
エルシィ「ウチの地元の食材は生命力が高いのが売りですからね!活きがいい証拠です」
エルシィ「栄養価も高いですよ!」
桂馬「現実ならいざ知らずヒロインのイベントでこんなメシマズというか読んで字の如く飯テロ案件は遭遇した事無いのだが…」
麻里「文句言わずさっさと食わんかい!」クワッ
桂馬「………っ」パクッ
桂馬「…!?」モグモグ
桂馬「これは…」
麻里「ね?普通に美味しいでしょ?エルちゃん本当に料理上手よね~」
桂馬「…ま、不味くはないな、うん」
エルシィ「」ドヤァ
桂馬「ステータスに料理が増えた位で元々底にある評価は変えれないからな調子に乗るなよヘッポコック」
TV<昨日、鳴沢市で大学生が刃物で刺され死亡した事件がありました。警察は
麻里「わっ…隣町じゃない。最近日本も物騒になってきたわね」
桂馬(こっちも大概物騒なんだよなぁ)
桂馬「第一残機0固定の現実での生死とか興味無いし」ガタッ
麻里「ちょっと桂馬、いくら何でも不謹慎よ」
桂馬「実際ほぼ関係ないし仕方ない。一々騒ぐのも下らないし」
エルシィ「あ、にーさま!どこに行くんですか?」
桂馬「学校。このままだとマジで遅刻する。色んな意味で」ピコピコ
桂馬「登校イベント消化しなきゃ…」ダダダ…
エルシィ「ちょっとにーさま!私も一緒に行きます~」ガタッ
エルシィ「待ってくださーい」タタタッ
麻里「……あらら。行っちゃった」
桂馬「だーくそ…クソゲー特有のロード時間長いのマジでどうにかならんのか…」カチャカチャ
エルシィ「にーさまー!歩きながらゲームは危ないですってば」
桂馬「エルシィ。僕がPFPを手に入れてこの道何年だと思ってるんだ」
エルシィ「何百年だろうと誇っちゃ駄目ですよ」
桂馬「後ちょっと…後ちょっと…」
ワーワー
ザワザワ
桂馬「…なんだ、騒がしいな…」
エルシィ「さっきのニュース、学校でも話題になってるんですかね…」
桂馬「馬鹿馬鹿しい。人1人死なない日の方が珍しいだろ」ピコピコ
ガラッ
歩美「あっ…」
桂馬「…?」
エルシィ「おはようございます!皆さん」
ちひろ「あー…おはよ、エリー」
エルシィ「?…なんか皆さん元気ありませんね」
京「…もしかして今朝のニュース知らないの?」
エルシィ「今朝のって…えっと…」
京「長瀬センセー、殺されちゃったって」
桂馬「っ」
エルシィ「え」
エルシィ「そ、それって…どういう…」
桂馬「…」ピコピコピコ
ちひろ「私も詳しくは知らないんだけどさー」
ちひろ「通り魔に襲われたっぽくて、犯人もよく分からないんだと」
エルシィ「そんな…」
歩美「二階堂先生も今日休みだって」
桂馬「……………」
桂馬(長瀬が殺された…?)
桂馬(通り魔…?一体どういう事だ…)
桂馬(まさか駆け魂絡みか…?)
桂馬(長瀬とは教育実習以降全く接触していない…)
桂馬(もしかしたら長瀬はディアナの言っていた女神の可能性も…それで誰かぎ)
桂馬(いやいや考えすぎだ)
桂馬(最近は現実らしかぬおつかいイベントばかりこなしているせいか関係ない事でも無理矢理そっち方面に思考を繋げがちだ…)
桂馬(ダメだ駄目、考えるなそんな事)
桂馬(今は貯まってるゲームを…)ピコピコ
桂馬「…」キーンコーンカーンコーン
エルシィ「にーさま!一緒に帰りましょー」
桂馬「は?何言ってるんだ。まだしも1時間目しか終わって……」チラッ
桂馬「…15時…」
エルシィ「大丈夫ですか?何というか、今日のにーさま目が死んでますよ」
エルシィ「今日ほとんど寝てないから体調崩しちゃったんじゃ…」
桂馬「馬鹿言え。僕にとってギャルゲーは酸素!」
桂馬「睡眠よりよっぽど身体にいい休息方法だ」
エルシィ「重圧がどうとか言ってたのに…」
開幕「…だけど今日はほとんど内容が頭の中に入らなかったな」
エルシィ「いつも授業聞いてないようでバッチリ勉強できてるにーさまが?」
桂馬「授業なんて二の次だ。それよりもPFPだ」
桂馬「せっかく良さげなエンディングを見つけたのにあまり響かなかった」
エルシィ「えぇ…」
桂馬「…エルシィ、少しの間だけミステリーゲームをするぞ」
エルシィ「へ?」
桂馬「今朝の通り魔、捕まえるぞ。ギャルゲーに集中できん」
エルシィ「にーさま…」
桂馬「とは言ったものの全く情報が無い…」
桂馬「関係者から炙り出すにも候補が多すぎる」
エルシィ「流石に大学に通ってる人全員を調べるのは無理ですしね…」
桂馬「そもそも通り魔だからな…」
桂馬「まだ長瀬だから殺したのかたまたま殺したい所に長瀬が居たのかすら分からない状況だ」
ディアナ「恐らくそれは前者でしょう」ヒョコッ
桂馬「!?天理…いや、ディアナか」
エルシィ「びっくりしました…家の陰に隠れてて…」
エルシィ「ディアナさんも今学校から帰ってきた所ですか?」
ディアナ「いいえ、今日授業はお休みだったのです」
桂馬「は?祝日じゃないだろ」
エルシィ「創立記念日ですかね…」
ディアナ「いえ……その様子だと今朝のニュースを知らないみたいですね」
桂馬「何だよ今日は占いで今朝のニュースがラッキーワードにでも選ばれてるのか?」
桂馬「なんでキャラに遭遇する度に毎度今朝のTVについて聞かれてるんだ僕は」
ディアナ「昨日天理の学校の生徒が殺されたのです」
桂馬「!?」
エルシィ「嘘…」
エルシィ「もしかしてさっきの…殺されたのって」
ディアナ「ええ。あなた方が想像している通り」
ディアナ「榛原さんが手をかけられました」
桂馬「………」
ディアナ「犯人は未だ不明で、周辺に潜んでいる可能性があり急遽休校との事で」
エルシィ「そんな…そんな話私達聞いてない…」
桂馬「同時に起こした…偶然?カモフラージュ?」
桂馬「…何にしても本格的に面倒くさくなってきたな」
ディアナ「恐らく…いえ」
ディアナ「狙いは十中八九あなた達でしょう」
桂馬「…」
ディアナ「厳密にはあなたの言う通りユピテルの姉妹を探すのが目的なのか」
ディアナ「手段はどうであれ桂木さんとエルシィさんを追い詰める事自体が目的なのかは定かではありませんが…」
桂馬「さっきの2人の接点がほぼ無い以上そう考えるのが妥当だろうな」
エルシィ「えぇ!?私達狙われてるんですか!?」
桂馬「まぁ現時点では僕の攻略対象しか襲われてないしまだ動きがはっきりしてない以上断定するに早いかもしれない」
桂馬「が少なくとも当面の直接的な狙いは攻略対象狩りなのは間違いないだろう」
エルシィ「一体誰が…」
桂馬「まぁあいつらというより僕かエルシィに恨みのある奴…」
桂馬「エルシィの場合多分悪魔が犯人だよなぁ」
エルシィ「またまた神にーさまはご冗談を」ケラケラ
エルシィ「人間界に来てから半年も経ってない上に落ちこぼれの私と縁がある悪魔なんて片手で数えられる位しかいませんよ」ケラケラ
エルシィ「えーっと、ハクアでしょ?それからノーラさん…」
エルシィ「……」
桂馬「ノーラじゃね?」
エルシィ「私1度もノーラさんに喧嘩なんて売ってませんよ~!」
エルシィ「まぁ会う度に睨まれはしますが…うー」
桂馬「何なんだろうなマジであいつ」
ディアナ「ノーラ…この間の牛悪魔ですね」
桂馬「違うけど多分あってる」
ディアナ「ノーラさんが犯人の可能性が高いのですか?」
桂馬「どうだろうな、動機としては有力かもしれないけど敢えて挙げるとするならばってノリで答えたレベルだからな」
桂馬「印象だけで言うとそんな事するような奴には見えん」オホホホホ
桂馬「もし本当にエルシィを殺したい位に憎いなら多分こんな回りくどいせずに直接殺しに来ると思う」
エルシィ「こ、殺…」
ディアナ「しかし私達がまだ彼女の本性を知らないだけという事も…」
桂馬「あるだろうな……まぁ…とりあえずこれ以上犯人について詮索するのはやめよう」
桂馬「僕達の関係者である事は確実的だろうけど埒があかない。何よりこれ以上知り合いのお面と睨めっこしても気分が悪くなるだけだろ」
桂馬「犯人の素性は最悪知らなくていい。ぶっちゃけ捕まえる必要も無いからな」
ディアナ「!?…相手が何者が分からない以上放置する訳には…」
桂馬「通り魔を制裁するのは警察なり閻魔様なりにやって貰えば良い。面倒くさいから僕はそこまでしない」
桂馬「そんな事より重要なのはこれ以上犠牲を増やさない事だ」
桂馬「目的が攻略対象の殺害ならまだこの後10人近くも殺される可能性があらって事だ」
ディアナ「…」
桂馬「当然そういう意味でも未然に防ぐ為に相手の情報を知りたい所だがそうは言ってられない」
桂馬「今ある情報をざっとまとめてできる対策を考えるぞ」
桂馬「今残っているヒロインは僕と同じ学校の生徒」
桂馬「歩美、美生、かのん、栞、楠、月夜、結、ちひろ」
桂馬「中等部のみなみ、それから鳴沢市で会ったスミレ」
桂馬「後は高梨のおばあちゃん………も一応範囲内にしておくか」
ディアナ「……」
桂馬「何だよ」
ディアナ「若い娘のみならず年老いた女性まで手玉に取ったのですかあなたは…」ガタガタ
桂馬「ほーらこういう事言い出すと思ったから挙げたくなかったんだ」
エルシィ「まぁまぁ…色々あったんですよ…色々、夏休みに…ははは」
桂馬「こいつらの記憶はほぼ全員もれなく無くなってる。話し合う土台すら出来てない現状で11人一気に匿うのはまず無理だろう」
桂馬「とりあえず優先順位を決めるべきだな」
エルシィ「優先順位?」
桂馬「何故この中の娘より先に長瀬や七香を殺したのか、まずそれを考えよう」
ディアナ「どちらも舞島高校とは接点が無さそうですが…」
桂馬「まぁ長瀬は教育実習で実際に何度か来ているから生徒以外だと長瀬が1番関わりのある奴だけど…」
長瀬「…それを踏まえてもまずすぐにはウチの高校の生徒には手を出さないだろ」
エルシィ「え」
エルシィ「この時点でもうほとんど舞高の生徒しか残ってないじゃないですか」
桂馬「だからだよ。さっきも言ったけど今回の犯人の手口が回りくどすぎる」
桂馬「僕とエルシィを精神的に追い込むならまずちひろとか歩美とか普段から親しい奴らを真っ先に狙うだろ」
桂馬「女神狩りにしたってそうだ。これだけ人数が多く集まってるならまず舞校の生徒が怪しいと睨むのが普通」
桂馬「ディアナが狙いで七香を狙ったなら分かるけどそこまで突きとめられているならディアナを直接襲えばいいからこれもおかしい」
桂馬「明確な目的がある割にはやり口が中途半端すぎる」
桂馬「確証はないが今犯人は僕達の反応を見ている……というか楽しんでいるだけじゃないのか?」
桂馬「何ならこうして僕らが悩み詰めている今も高みの見物でいるやもしれない」
エルシィ「えぇ!?」キョロキョロ
ディアナ「…大丈夫です。少なくとも近くに怪しい気配はありません」
桂馬「まぁどうせ僕達の情報は粗方割れてるんだし今更何を見られようが困りはしない…」
桂馬「…けどなるべく今の場面を目撃されるのは好ましくないな…」
桂馬「ひとまず今後の方針だけ固めるぞ」
桂馬「何か都合が悪い理由があるのか、或いは単なる冷やかしなのかは分からないがとにかく通り魔は僕らと関わりが少ない奴から排除している」
桂馬「その仮定のもとで次に標的にされそうなヒロインをピックアップすると…」
エルシィ「スミレさんと愛梨のおばあちゃん…」
桂馬「まぁ後はせいぜい夏休み以降会えてないみなみくらいじゃ無いか?」
桂馬「とりあえずこの3人に重点を置こう」
桂馬「エルシィは3人の様子を観察してくれ」
桂馬「それと念の為長瀬と七香の情報について軽くでいいから調べ直せ」
桂馬「知らないだけで実は2人に関係性がないとは言い切れない」
エルシィ「は…はい」
桂馬「ディアナ…天理は何もするな、というか極力外に出るな」
ディアナ「何故です…?現時点で私が1番自由に動けるし何より安全です」
ディアナ「殺人鬼の1人や2人私が特定して…」
桂馬「駄目だ。相手の知ってる情報が分からないこの状況で下手に動くのはリスクが大きすぎる」
桂馬「相手がただの人間じゃない可能性だってあるんだぞ」
ディアナ「それなら尚更…」
桂馬「何ならこうして僕らが悩み詰めている今も高みの見物でいるやもしれない」
エルシィ「えぇ!?」キョロキョロ
ディアナ「…大丈夫です。少なくとも近くに怪しい気配はありません」
桂馬「まぁどうせ僕達の情報は粗方割れてるんだし今更何を見られようが困りはしない…」
桂馬「…けどなるべく今の場面を目撃されるのは好ましくないな…」
桂馬「ひとまず今後の方針だけ固めるぞ」
桂馬「何か都合が悪い理由があるのか、或いは単なる冷やかしなのかは分からないがとにかく通り魔は僕らと関わりが少ない奴から排除している」
桂馬「その仮定のもとで次に標的にされそうなヒロインをピックアップすると…」
エルシィ「スミレさんと愛梨のおばあちゃん…」
桂馬「まぁ後はせいぜい夏休み以降会えてないみなみくらいじゃ無いか?」
桂馬「とりあえずこの3人に重点を置こう」
桂馬「エルシィは3人の様子を観察してくれ」
桂馬「それと念の為長瀬と七香の情報について軽くでいいから調べ直せ」
桂馬「知らないだけで実は2人に関係性がある可能性もないとは言い切れない」
エルシィ「は…はい」
桂馬「ディアナ…天理は何もするな、というか極力外に出るな」
ディアナ「何故です…?現時点で私が1番自由に動けるし何より安全です」
ディアナ「殺人鬼の1人や2人私が特定して…」
桂馬「駄目だ。相手の知ってる情報が分からないこの状況で下手に動くのはリスクが大きすぎる」
桂馬「相手がただの人間じゃない可能性だってあるんだぞ」
ディアナ「それなら尚更…」
桂馬「今は天理=ディアナがバレていない前提の話で進めているが犯人が知らないっていう確証も無いんだぞ」
桂馬「もしお前の正体を知っててこの行動を取っているって事はお前が居てもさして計画に支障は起きないと何らかの根拠があるんだろう」
桂馬「言っている意味、分かるよな?」
ディアナ「…女神でも敵わない相手なんてそうそう存在しませんよ」
桂馬「でも居る事には居るんだろ?じゃあそういう奴らの情報をまとめて僕に伝えるなりしてくれればそれでいい」
桂馬「お前に直接頼るのはどうしても、ライフが1になった時の最終手段だ」
桂馬「お前も狙われている側だって自覚しろ」
ディアナ「……桂木さん」
桂馬「やると言った以上天理の死亡ENDは絶対に回避する」
エルシィ「それで…神にーさまは何を?」
桂馬「僕は………」
桂馬「新作ゲームの消化を急ぐ!」ドーン
エルシィ「」
ディアナ「」
桂馬「こっちだって殺される身かもしれないんだぞ!」
桂馬「生きている内にやりたいゲームをコンブしておかないと…」
桂馬「買ったのにパッケージも開けずにご臨終とか僕はともかくそのゲームや製作者スタッフさんは成仏しきれんだろうが!」クワッ
ディアナ「……数秒前の自分を殺したい…」
エルシィ「にーさまはそういう人ですもんね…うん」
桂馬「勿論いつものように淡々とプレイする訳じゃない」
桂馬「屋上には度々(サボって)行ってるし図書室に行くだけじゃそこまで怪しまれないだろ」ピコピコ
エルシィ「あっ…」
桂馬「歩美やちひろ、結ならバンドなりでエルシィがいつでも顔を出せるからな」
桂馬「楠…はやられる所は想像できんしかのんはほぼ学校に来てないけど逆に1人でいる時間はほぼ無いだろ」
桂馬「不安要素があるとすれば別のクラスで接触しにくい美生位だが…」
桂馬「まぁ普段通りの生活を装ってもある程度の把握は出来るはずだ」
桂馬「エルシィは視察もあるし仕方ないが僕だけでも犯人に悟られないように平静を保ちつつ行動しよう」
エルシィ「え、えっと…バンドをこなしつつちひろさん達を護衛して、後は定期的にラーメン屋さんと義祖母ちゃん家に行って………」
エルシィ「あれ、私って結構責任重大なのでは…」
桂馬「透明になって自由に動けるのはお前しか居ないからな、こういう時くらい役に立てダメ魔」
エルシィ「うー。そんな事言わないでくださいよ~」
エルシィ「ま、まぁにーさまに頼られるってのは思いの外嬉しいですけど…」テレテレ
桂馬「当然お前に頼りっぱなしはしない」
桂馬「スミレは最近ブログを始めたからある程度の様子は覗けるし客って事で無理矢理ではあるがコンタクトを取れなくもない」
桂馬「みなみの方も頻繁に行かなければ中等部に顔を出すのは不可能じゃない」
桂馬「愛梨のおばあちゃんばっかりは連絡手段も無い上に気軽に会える距離じゃない。可能性は低いだろうが愛梨や近くにいるおばあちゃんやおじいちゃんの事もある」
桂馬「頼むぞエルシィ」
エルシィ「い、いえっさー!」
桂馬「…まぁ今できるのはこれくらいだろ」
桂馬「話が飛躍しすぎたが本当に偶然2人がほぼ同時に殺されたケースもあり得る」
桂馬「あまり目立つような行動はするなよ」
ディアナ「ええ」
エルシィ「あ、あのにーさま」
桂馬「?」
エルシィ「状況が状況ですから…他の駆け魂隊も呼んだ方がいいですかね」
エルシィ「ハクアくらいなら来てくれると思うんですけど」
桂馬「やめといた方がいいな」
桂馬「悪魔の中に犯人がいるし無闇に話を広めない方がいいだろ」
エルシィ「…た、確かに」
桂馬「とにかく早く切り上げよう。これ以上話しても進展はしなさそうだしあまり長く外で話をしている所は見られたくない」
桂馬「この話をするのは僕か天理の家だけで、どちらにしても行き来する時は窓を経由して見られないようにしよう」
桂馬「いいな?」
エルシィ「はい!」
桂馬「よし、それじゃ…天理は後頼んだぞディアナ」
ディアナ「…最後に1つだけいいですか、桂木さん」
桂馬「…何だ」
ディアナ「これは私ではなく天理からの伝言なのですが…」
ディアナ「…具体的には言えませんが天理は悪寒がするとの事で」
桂馬「悪寒?」
ディアナ「寒気…というか嫌な予感のようで」
ディアナ「直感的なものですが何か天理には心当たりがあるようです」
桂馬「心当たりって…お前と天理は10年の付き合いだろ」
桂馬「ディアナは分からないのか?」
ディアナ「恥ずかしながら…私にはさっぱり」
桂馬「…10年以上前って…ディアナが天理とあったのが小1とかそんな頃だろ?」
桂馬「それより前で今でも衝撃が走るような出来事って一体…」
桂馬「…まぁ今できるのはこれくらいだろ」
桂馬「話が飛躍しすぎたが本当に偶然2人がほぼ同時に殺されたケースもあり得る」
桂馬「あまり目立つような行動はするなよ」
ディアナ「ええ」
エルシィ「あ、あのにーさま」
桂馬「?」
エルシィ「状況が状況ですから…他の駆け魂隊も呼んだ方がいいですかね」
エルシィ「ハクアくらいなら来てくれると思うんですけど」
桂馬「やめといた方がいいな」
桂馬「悪魔の中に犯人がいるかもしれないし無闇にこの話を広めない方がいいだろ」
エルシィ「…た、確かに」
桂馬「とにかく早く切り上げよう。これ以上話しても進展はしなさそうだしあまり長く外で話をしている所は見られたくない」
桂馬「この話をするのは僕か天理の家だけで、どちらにしても行き来する時は窓を経由して見られないようにしよう」
桂馬「いいな?」
エルシィ「はい!」
桂馬「よし、それじゃ…天理は後頼んだぞディアナ」
ディアナ「…最後に1つだけいいですか、桂木さん」
桂馬「…何だ」
ディアナ「これは私ではなく天理からの伝言なのですが…」
ディアナ「…具体的には言えませんが天理は悪寒がするとの事で」
桂馬「悪寒?」
ディアナ「寒気…というか嫌な予感のようで」
ディアナ「直感的なものですが何か天理には心当たりがあるようです」
桂馬「心当たりって…お前と天理は10年の付き合いだろ」
桂馬「ディアナは分からないのか?」
ディアナ「恥ずかしながら…私にはさっぱり」
桂馬「…10年以上前って…ディアナが天理とあったのが小1とかそんな頃だろ?」
桂馬「それより前で今でも衝撃が走るような出来事って一体…」
桂馬「分かった。後で10~15年前位の舞島についても調べる」
桂馬「いやまず天理は小学校の頃こっちに来たからそれを調べても意味ないのか?…分からん」
ディアナ「………っ」ケロッ
天理「っ…」
桂馬「?天理に戻ったか」
天理「桂馬君…その…」
天理「無茶しないでね?」
桂馬「………」
桂馬「バカだな」
天理「!?」
桂馬「こういう場面では心配するんじゃなくて頑張れって応援する所なんだぞ」ナデナデ
天理「!?」
桂馬「ギャルゲーヒロインのセオリーなんだぞー?」ブーブー
ディアナ(この男は…)ムカムカ
天理「ん…うん、頑張って、ね」
天理「じゃ、じゃあ」トタタタ…
桂馬「………あ、つい頭撫でてしまった…」
桂馬「気味悪がられたか…?」チラッ
エルシィ「……」
桂馬「どうしたエルシィ」
エルシィ「あっいえ…何でもないです~!」
エルシィ「早くお家に入りましょ、ねぇ!」
桂馬「…そうだな」
桂馬「あれから数日経ったが…特に変化なし…」
桂馬「スミレはまだブログ更新してるし…なんだアイスラーメンって…」
桂馬「みなみも度々学校で見かけている」
桂馬「エルシィも愛梨達に問題は無いと言っている…」
桂馬「…どうしたもんか…」ピコピコ…
二階堂「………」ピコピコピコピコピコ
桂馬「おう!?」ガシッ
二階堂「お前の方がどうかしてるだろうがぁあぁん?」バキバキ
桂馬「ばっおまやめっ何やってんだこのVR高いんだぞいぁあああ」バリバリバリ
エルシィ「ひぃぃぃぃい」<ギャァァァ
ちひろ「懲りないなぁオタメガの奴…」
歩美「……二階堂先生いつも通りだね」
京「確かに」
桂馬「なんだあいつ!僕の大事なVR一式壊した上に没収しやがった」
桂馬「訴えてやる!器物破損!理不尽な体罰!罪状なんてどうとでもできる」
桂馬「ひはははは」
エルシィ「にーさま~、そんなのよりも大事な事があったと思うんですけど…」
桂馬「そんなの!?数多くの人間の血と汗と涙の結晶であるゲーム機が壊されるなんて前代未聞な事よりやばいイベントが現実にあるのか!?ええ!?」ガッ
エルシィ「無いです無いです!無いですから放してくださいごめんなさ~い!」
桂馬「というのは冗談で」ドサッ
エルシィ「う~…ひどいです~」
桂馬「あんな重要な事忘れる訳ないだろ」
桂馬「じゃないと屋上と図書室を頻繁に行き来するなんて面倒なおつかいイベントこなさないよ」
エルシィ「…月夜さん、相も変わらず望遠鏡覗いてばっかりですね」
桂馬「あいつがああしてる限り異常なしって事だ。今日も特に変わりはなさそうだな」
桂馬「栞も特に困った様子も何も無かったし…こっちの方は大丈夫だな」
桂馬「……問題はスミレや愛梨方面だな」
桂馬「1週間経っても動きが全く無いのも困ったもんだ」
エルシィ「もしかして私達の行動バレちゃったんですかね…」
桂馬「どうだろうな、バレている筈がありませんなんてとてもじゃないが言い切れないし…」
桂馬「下手したら相手もこっちが動くのを待ってるのかもな」
エルシィ「そんな…」
桂馬「………今日ラーメン屋かばあちゃん家、どっちかには行こうと思ってる」
エルシィ「!?…そ、それって大丈夫なんですか?」
桂馬「大丈夫な訳無いだろ。前も言ったが極力目立つ行動は避けたい」
桂馬「このまま長期戦にもつれ込んでも最悪いいかなとも思ったけどよくよく考えたらもうすぐ体育祭とか文化祭が始まるからな」
桂馬「否が応で相手が動いてくるだろう。その期間中は尚の事皆の動きも読みづらくなるし単純に人の数も多すぎて収拾がつかなくなる」
桂馬「多少強引でもこのイベントを体育祭までには蹴りをつけたい…」
桂馬「それにお前の調べだけじゃ不安だし。直接見ないと」
エルシィ「えー!?にーさま、私だけが頼りだみたいな台詞言ってませんでした!?」
桂馬「それはそれこれはこれだ」
桂馬「お前が普段から信頼されるような行動を取っていればこんな事する必要も無いんだぞ」
桂馬「少しは反省しろ」
エルシィ「う、うぅ…にーさま、いくら何でも私に対して辛辣では…」
桂馬「…さてと…」
桂馬「…愛梨のおばあちゃんは僕達と1番関わりが薄いヒロインだ」
桂馬「確かにあの付近は僕の祖父母の家もあるしあそこは色々と重要な場所ではあるが…」
桂馬「ばあちゃん単体で見るとまず真っ先に狙われる奴だと思うんだよなぁ…」
桂馬「そもそもヒロインなのにおばあちゃんとかあの件はイレギュラーな事が多々あったからあまり他と比較すべきじゃないのかもな…」
桂馬「…とにかく」
桂馬「まずはスミレのラーメン屋を偵察しに行くか…」
桂馬「…」チラッ
桂馬「のれんがかかってる。ちゃんと営業してるみたいだな」
桂馬「それに…うっすらとだけど人影も見える」
桂馬「客が何人か居るみたいだな」
桂馬「問題は店内が実際にはどうなってるかだが…」スタスタ…
ガラッ
満夫「らっしゃい」
桂馬「……」ガタッ
桂馬(おかしい…スミレが居ない)
桂馬(今はあいつが仕切ってる筈だぞ…)
満夫「おしぼりとお品書きです」
桂馬「あの…すみません」
満夫「?もうご注文はお決まりで?」
桂馬「あっ…ん…醤油1つお願いします」
満夫「醤油一丁…以上で?」
桂馬「はい…」
桂馬「あの」
満夫「?」
桂馬「ここのお店って…お父さん1人で切り盛りしてるんでしたっけ?」
満夫「……スミレの知り合いか?」
桂馬「…」
満夫「…あいつなら風邪引いて家で休んでるよ」
桂馬「さいですか」
桂馬(…やっぱりおかしい)
桂馬(本当に体調が悪いならそもそも店を休む筈だ)
桂馬(この父親の性格上尚更呑気にラーメン作ってるなんてあり得ない)
桂馬(本当に2階にいるのか…?)
満夫「醤油ラーメン一丁お待ち」
桂馬「……」パッキン
桂馬「」フーフー
ズルズル
桂馬「…お父さん、スープの出汁変えました?」
満夫「あ?…」
満夫「…まぁちょっとな」
桂馬「……」ゴクゴクゴクゴク
桂馬「お会計お願いします」ガタッ
満夫「は?え、もう食い終わったのかよお前…」
桂馬「代金ちょうど。レシート要らないんで、じゃ」スッ
満夫「お、おいちょっと待て!」
スアスタ…
桂馬(ダメだ。想像以上にまずいな、今の展開にしてもラーメンにしても)
桂馬(あの頑固親父が軽いノリでスープの味変えるわけ無いだろ、それと単純に前食った時よりまずかったし)
桂馬(攻略直後の状況とは全然違う…何が起こってるんだ?)
桂馬「……さてと」ゴソゴソ
桂馬「念の為作ってはいたもののお蔵入りしていた合鍵がこうも役に立つとは思わなんだ」チャリ…
桂馬「というかぶっちゃけがっつりギャルゲー界隈での禁忌を犯しちゃってる気もするがまぁそんな事気にしてる場合じゃないし」
桂馬「とりあえずスミレが居るかどうかだけでも確認……?」
桂馬「鍵開いてる…」
桂馬「………ゲームなら必ずサーブポイント置かれてる所だよな、これ」ガシッ
桂馬「行くしかないか…」ギィィ…
桂馬「……おいスミレ…」
桂馬「おーい…」シーン
桂馬「ここ別に部屋分かれてる訳でもない筈なんだが」
桂馬「他に見れる所といえば風呂かトイレか後は…」
桂馬「押し入れ……」スタスタ…
スッ…
桂馬「…」ドクンドクン…
スゥゥ…
桂馬「スミレ…居るのか?」チラッ
桂馬「…カーテン閉まってるし流石に電気付けないと暗すぎるな携帯携帯…」
ペトッ
桂馬「何だ今の感触」
桂馬「…血の匂い、まさかな…はは」
桂馬「…」ガラッ
桂馬「嘘だろ」
スミレ「…」ポタポタ…
桂馬「なん…で」
桂馬(なんでスミレが血塗れで横になってるんだよ)
桂馬(なんで血…家入った時…というか押し入れちょっと開けた時だった何も変な匂いは…)
桂馬(まさかコレ錯覚魔ほ)
「…」ブンッ
桂馬「!?」クルッ
桂馬(マジかよ…)
エルシィ「羽衣お願い!」ビュッ
ガッ
「…っ」ググッ
桂馬「エル…」ガシッ
エルシィ「ちょっとだけじっとしていてください!」ゴオッ
桂馬「うおっ!」
エルシィ「大丈夫ですか?怪我はありませんか!?にーさま!」ゴオッ
桂馬「大丈夫な訳あるか!ちょっと待て!とりあえず降りろ!」
エルシィ「無理です!さっきにーさまを襲った人」
エルシィ「一瞬しか見えませんでしたがあの服装冥界で見た事があります」
桂馬「!?」
エルシィ「うろ覚えですけどあのローブ、テロ組織が使っているものとかなり似ています」
エルシィ「それに近付いただけで分かりました。さっきの人の魔力とてつもなく大きいです」
エルシィ「私1人じゃ敵いません」
桂馬「それなら尚更だ!せめて1階に居る客やスミレのお父さんを逃がさないと…」
エルシィ「えっ…」キキーッ
エルシィ「にーさま、今なんて」
桂馬「いや、だからまず店に残っているキャラの安全を…」
エルシィ「1階にお店、ありました…?」
桂馬「は?」
エルシィ「待ってくださいにーさまー」
エルシィ「戻るのは危険ですって…」
桂馬(店なんてやってなかった…?そんな馬鹿な)
桂馬(ついさっきまでラーメン食ってたんだぞ…?あれも錯覚…?)
桂馬(そんな無茶苦茶な事…)チラッ
桂馬「……のれんが…見当たらない…」
ダダッ
エルシィ「ちょっと、にーさま!」
桂馬「!」ガラッ
桂馬「そん…な」
桂馬「人だけじゃない…」
桂馬「なんでテーブルも厨房も無くなってるんだ?」
桂馬「どういう事だよ…」
エルシィ「にーさまを1人にするのは流石に怖いと思って後から追いかけたんですけど…」
エルシィ「来た時にはもうこんな感じになってて」
エルシィ「にーさまの話を思い出して、2階に誰か人が居るんじゃないかと思った覗いたら…」
桂馬「さっきの場面に遭遇した訳だ」
桂馬「…待て、そういえばスミレの遺体は…」ダッ
エルシィ「にーさま!待ってくださいってば!」
桂馬「スミレ!」ガチャ
桂馬「…って返事する訳無いと思うが」
ガラッ
桂馬「……消えてる…」
エルシィ「そっちは危ないです…ってあれ」
エルシィ「ロープの人、居ない…」
桂馬「女神絡みで死体でも捕獲する必要があったのか…」
桂馬「でもそれなら血まで消す必要があるのか?今までのやり口とは異なるぞ…?」
桂馬「今更隠蔽…僕達に存在バレてるのが判明したから…?」
桂馬「分からん…」
エルシィ「あの…にーさまさっきからなんで押し入れの中ジロジロ見てるんですか?」
エルシィ「さっき何見てたんですか?」
桂馬「死体」
エルシィ「へー…死体、死体ですか」
エルシィ「ってええ!?」
桂馬「スミレは一歩遅かった…いや、それどころじゃないかもな」
エルシィ「…う、うぅ…」ヒョコッ
エルシィ「パッと見た感じ何も無さそうなんですけど…」
桂馬「血の匂いも感じないか?」
エルシィ「は、はい…ちょっとカビ臭いかなぁ…ってくらいですね」
桂馬「……」チラッ
桂馬(確かにさっき血の感触があった匂いもした、確かに見た…拭く暇も無かった)
桂馬(なのに…なんで指が綺麗なんだよ…)
エルシィ「あ、あの…本当にここに死体があったんですか?にーさま」
エルシィ「スミレさん達引っ越して実は誰も居なかったんじゃ…」
桂馬「スミレの家計はそんな大掛かりな事する余裕なんて無いよ」
桂馬「第一あれから1ヶ月あるかないかでいきなりそんな急展開は起こらないし起こせない」
桂馬「ここはただの民家じゃなくてラーメン屋だぞ。移転なんて時間にしても経費にしてもかなりかかる」
エルシィ「う…確かに」
桂馬「…とにかく行くぞ」
エルシィ「え?い、行くって…」
桂馬「愛梨の家だよ」
桂馬「相手が本格的に動いたなら…あっちも危ないだろ!」ダダダッ
エルシィ「に、にーさま!無茶ですよ!もうすぐ陽が落ちます!」
エルシィ「犯人が居るなら尚更夜中にあんな所出歩くのは危険ですよ!」
桂馬「はぁ…はぁ…」ダダッ
桂馬(どうにか歩ける距離までには漕ぎ着けた…)
桂馬(まぁ多分帰りは電車間に合わないだろうけど…最悪エルシィが居る!)
桂馬(犯人は明らかに僕に殺意があった…あの様子だと狙いは確実に僕達への報復…」
桂馬(もし店にいた人達が消えたのがあいつの仕業なら愛梨やおじいちゃん達だけじゃない!)
桂馬(ほぼ無関係の村人モブにも被害が及ぶかもしれない…!)
桂馬「気付けばその村は廃墟と化していたなんてクソみたいな展開ゲームでも許されるか…!」
桂馬「はぁ…はぁ…はぁ」
ドサッ
桂馬「おつかいイベントでクリアしたステージ各所を回らされる主人公の辛さが身にしみて分かった気がする…」
桂馬「……着いた…」
開幕「この時間帯は流石に2人とも寝てるか…?」
桂馬「インターホン…はついてないしな」
ガラッ
桂馬「くそっ…途中までついてきてたのに、どこで逸れたんだ?エルシィの奴」
桂馬「前みたいに羽衣つけて歩きたいのは山々だが呼ぶ時間も待つ時間も無い…」ソロリソロリ…
桂馬「………」
桂馬「誰か居るか…?」チラッ
シーン
桂馬「寝室はどこだ…」
「キルゾ…」
桂馬「っ!」クルッ
「あそんでくれなきゃ…」
愛梨「クビ切るぞ…」ゾゾゾ
桂馬「…………」
桂馬「なんだ、愛梨か」
愛梨「キャアハハハ!」
愛梨「何してるの?メガネの兄ちゃん、かくれんぼ?」
桂馬「そんな訳無いだろ。お前こそ何してるんだ」
愛梨「しっこしてた」
桂馬「ああそう…」
梨枝子「何だい、騒がしいねぇ」ゴシゴシ
桂馬「あ、おばあさん…」
梨枝子「あれま…あなたは確か桂木さんの所の…」
桂馬「…ごめんなさい、勝手にお邪魔してしまって」
梨枝子「いいんだよ、呼び鈴も無いからねウチには」
梨枝子「でもこんな時間に珍しいね、どうしたんだい?」
桂馬「…良かった。こっちはセーフ、だったか」ガクッ
桂馬「すみませんん、お茶なんか貰っちゃって」
梨枝子「いいのいいの。あなたは数少ないウチのお客様なんだから」
桂馬「どうも…」
梨枝子「でも急にどうしてここに?」
梨枝子「もしかして…家出?」
桂馬「したくてもできない身なんで大丈夫です」
梨枝子「???」
桂馬「あの…実は少し聞きたい事があって」
桂馬「最近何か変な事が起こったりとか…後誰かに尾けられるとか、見られているような」
桂馬「些細な事でいいので何か周りの変化がありましたか?」
梨枝子「うーん…特に何も…」
梨枝子「あっでもそうだ」
桂馬「?」
梨枝子「この数日あなたの妹さんも何度か見かけてるねぇ」
梨枝子「そういえば同じような事聞かれてたよ」
桂馬「」ズコッ
梨枝子「兄妹揃ってウチに聞き込みに来るなんて…何だい、またお化けでも出たのかい?」
桂馬「いやはや…そんな事は」
桂馬(あいつ…ちゃんと頻繁に見に来てたんだな)
桂馬(てっきり適当に済ませてるもんだと)
梨枝子「こういう田舎の村とか里はちょっとした噂でもお隣さんを介してすぐ住人全員に広まっちゃうからねぇ」
梨枝子「私はおろかここの人間は誰1人悩み事なんてないし困ってもないよ」
梨枝子「まぁそれ以前に人が居ないから悩みようが無いねぇ」キャハハ
桂馬「そうか…そう、だよな」
桂馬(…ここはそもそもこの前来た時に偶然駆け魂を見かけただけ)
桂馬(本来駆け魂の逃げ場である女性自体ほとんどいない農村地帯だ)
桂馬(駆け魂隊も編成されてないこの周辺は完全に冥界の管轄外)
桂馬(ここが通り魔の視野に入る可能性はほぼ無い…)
桂馬(そう、その筈だ…)
桂馬「…ありがとう、おばさん。何だか少し落ち着いてきた…気がする」
梨枝子「どって事無いよ」
桂馬「それじゃ僕はそろそろ家に帰るんで」
梨枝子「あれま、ついさっき来たばかりなのに」
梨枝子「それにもうこんな時間だよ、電車もバスももう止まってるんじゃ…」
桂馬「妹も探さなきゃいけないし、そうも言ってられないんで…」
桂馬「お邪魔しました」ペコッ
ガラッ
桂馬「…はぁ…」
桂馬「とりあえずエルシィを探すか…」.
桂馬「…今見たのも全部通り魔の魔法じゃないだろうな」ピコピコ
桂馬「いや、そもそも僕が錯乱してる可能性もあるのか…?」
桂馬「じゃないと夕方のアレは到底説明が付けられない」
桂馬「人の気配を消すだけならまだしても空間そのものを捻じ曲げたり改変する能力が悪魔にあるのか?」
桂馬「………」フラフラ
桂馬「ああクソ、駄目だ。善善頭が働かん」
桂馬「こういう時は精神統一、好きな物をひたすら数えろ」
桂馬「よっきゅんが1人、よっきゅんが2人…よっきゅんが…300人?…」
桂馬「えっと…よっ…きゅんが…ぁ…」ガクッ
ドサッ
桂馬「…」
「…さま、にーさま!」
エルシィ「神にーさま!」
桂馬「……ぁ?…」
エルシィ「良かった…意識が戻った…」
桂馬「ここは家か?」
エルシィ「何も覚えてないですか?」
エルシィ「にーさま、愛梨ちゃん家の近くで倒れてたんですよ?」
エルシィ「私が遅れて来た時にはもう…」
桂馬「ああ…そうか。昨日は学校終わってからずっと走りっぱなしだったからな」
桂馬「今日学校は…」
エルシィ「土曜だからお休みですよ~」
桂馬「あ、そっか」
エルシィ「…にーさま、顔色悪いですね」
エルシィ「あそこでもまた何か嫌な事でも…」
桂馬「いや、別に、特に何も」
桂馬「だからかもしれないけどな…」
エルシィ「?」
桂馬「確かに何も問題なかった」
桂馬「だが駆け魂隊も居ないし、そもそも人目が付かなそうな場所だ」
桂馬「これまでのパターンからするとまず真っ先に狙われる所のはず」
桂馬「未だに無事なのはおじいちゃんとか、愛梨達と接点が無くとも僕と関わりの深い場所だから後回しにしてるのか」
桂馬「そもそもあそこで駆け魂が出た事自体知らなかったからと考えてたけどあくまでそれは僕にとって都合の良い解釈なだけだ」
桂馬「もしかしたらエルシィと僕はスミレの時と同じように幻を見ていただけの可能性もある」
桂馬「いや、まず第一に今僕が見てる現実は本物なのか?」
桂馬「なんで突然攻略対象が殺され始めた?なんで冥界の奴らが僕を襲う?実はこれは単なる夢オチだったりするんじゃないのか?」
エルシィ「ちょ、ちょっとにーさま、落ち着いて」
桂馬「昨日から…いや、本当は先週からなのか」
桂馬「おかしいんだ、僕が見ている情報は本物、正しいのか?」
桂馬「何を根拠に、何を信じて行動をすればいいんだ…」
桂馬(視界が…頭の中がまた霞んで…)
ダキッ
桂馬「んぁ」
エルシィ「大丈夫」
エルシィ「大丈夫ですよ、にーさま」
エルシィ「幻でも夢でもありません、私はにーさまのそばに居ますから」
エルシィ「ね?」
桂馬「……」
桂馬「気持ち悪い」ドッ
エルシィ「おぼ」ドサッ
桂馬「いきなり抱きつくな、気色悪い」
エルシィ「う~…いくらなんでもあんまりですよにーさま」
エルシィ「私は私なりににーさまを励ます為のスキンシップをですね」
桂馬「それでハグって結論に至るその思考回路自体がやばい、あほくさ」
エルシィ「ぅぅう゛…」ドバババ
桂馬「…お陰で眠気が覚めた」
桂馬「飯はは…まだ出来てないよな」
エルシィ「…!」ハッ
エルシィ「はい!今から作りますよ~!」
エルシィ「えへへ~」ダダダッ
桂馬「…あんなのにフォローされるとか」
桂馬「落とし神も末だな…」
桂馬(あれからまた何日か経過した)
桂馬(依然として周りに変化は見当たらない)
桂馬(愛梨達の方も特に異常は無さそうだ)
桂馬(1つおかしな事があるとすれば…)
桂馬(スミレ関連の情報を一切他者から聞けていない事か…)
桂馬(ブログもいつの間にか消えてるし、商店外の人達にスミレのラーメン屋に聞いても全員知らないの一点張りだ)
桂馬(相手は空間を弄るだけじゃなくて人間の記憶…頭の中にまで干渉できるのか…?)
桂馬「そんな物騒なパラメータ、悪魔や駆け魂が持ってるようなもんなのか…?」ピコピコピコピコ
二階堂「……おい桂木」
桂馬「シャラップ!今ちょっと大事なQTE
二階堂「ふん」バキッ
桂馬「あぁあ゛あ゛あ゛!?」
歩美「今日バンドの練習何時までやる?」<ナニシテンダァァァァ
ちひろ「もうすぐ舞校祭だし、なるべく長く時間取りたいわな」
京「あ、でもウチ今日予備校~」<ギャァアア
ちひろ「あ~…そっか。エリーは?」キーンコーンカーンコーン
エルシィ「わわ……え?あ、私ですか?」
エルシィ「私は基本的に何時でも…」アセアセ
ちひろ「とりあえずいつも通りやって時間余ったら続行って感じにすっか」
歩美「それでいいんじゃない?」
ちひろ「じゃあ30分後に部室集合ね」
エルシィ「は、はーい…」チラッ
桂馬「」プスプス…
エルシィ「にーさま~」
桂馬「はぁぁ…また僕の残機が1つ減った…」
エルシィ「残機…」
桂馬「あの現実年増は一体僕から何度世界を奪えば気が済むんだ」プンスカ
エルシィ「寧ろにーさまを現実世界に引き戻そうと必死なだけなんじゃ…」
エルシィ「あの…にーさま今日は…」
桂馬「今日は天理…というかディアナの所に行ってくる」
桂馬「また犯人が出待ちしてるみたいだからな」
桂馬「この前しくじって慎重になってるのかもしれない」
桂馬「そろそろ後手に回るのは流石に危険な気がしてきた。何でもいいから武器が欲しい所だ」
エルシィ「武器、ですか…」
桂馬「とりあえずエルシィはちひろと歩美を見張ってろ」
桂馬「携帯渡すから、何かあったら家に連絡しろ」スッ
エルシィ「は、はい!」
undefined
桂馬「…」コンコン
シャーッ
天理「桂馬君?」ガラッ
桂馬「悪い、ディアナと少し話がしたい」
天理「あ、うん…ちょっと待って」
天理「…」フッ
ディアナ「ふぅ」
ババッ
ディアナ「お待たせしました」シュタッ
桂馬「軽快だな」
ディアナ「腐っても女神ですから、当然です」
ディアナ「それでお話とは」
桂馬「…単刀直入に聞くぞ」
桂馬「お前の知る限り最強の悪魔って誰だ」
桂馬「でもってそいつはどういう力を持っている」
ディアナ「最強の悪魔…ですか」
桂馬「いや、この際神でも人でも何でも構わないか…」
桂馬「とにかく世界をひっくり返せるような力を持っている奴は居ないのか?」
undefined
ディアナ「単刀というには少々形が歪な気がしますが…」
桂馬「重要な事なんだ。真面目に答えてくれ」
桂馬「今回はそこらの駆け魂だの悪魔だのそんな可愛い奴が相手じゃない気がしてきてな」
ディアナ「はぁ…」
ディアナ「…結論から言うとその質問にはお答えしかねますね」
ディアナ「私達ユピテルの姉妹は神の中でも選りすぐりの女神の一族でしたから…」
ディアナ「まず我々よりも強力な悪魔や人間は少なくとも私達の力が健在だった頃にはほとんど居ませんでした」
ディアナ「かといって私達レベルの魔力の持ち主でも世界をどうこうできるかと言われると話は別になってきます」
ディアナ「勿論、実力行使で無理矢理世界の風向きを変える事は十分可能でしょうが、流石に直接自分の力で世界を思うがままに作り変えたり、改変を行うとなると…」
桂馬「…つまりほぼ不可能って事か…」
ディアナ「ええ」
ディアナ「ですが私達が動けなくなってから長い月日が経ちました。その間にそういう素質に目覚めたり覚醒した者が居る可能性も当然あるでしょう」
ディアナ「…万が一にもそんな敵が現れれば、私はおろか姉様や妹達と束になっても勝てるかどうか…」
桂馬「また頭が痛くなってきたぞ…くそ」
ディアナ「それにしても何故急にそんな話を…」
桂馬「また1人殺されたんだよ、お前は知らないだろうけど」
ディアナ「!?」
桂馬「今回は前回の2人と違って飲食店の経営者兼学生だ」
桂馬「顔は広い。ちょっとやそっと記憶の消去や補完をした所で収拾はつかない…筈なんだ」
桂馬「商店街の人も同じ学校の生徒も知らん顔をしてる」
桂馬「それに実際に店に行った時も不可解な現象が起きてる」
桂馬「気づけばあった筈の物が消えてるし居たはずの人も居なくなってる」
桂馬「ビフォーアフターもびっくりなマジックだ」
桂馬「…どうやら思っていた以上に面倒なキャラにフラグを立ててしまったらしい」
ディアナ「何故急に奴は殺人の隠蔽を…」
桂馬「知ったこっちゃない」
桂馬「犯人に不都合な事が起きたか或いは単なる悪戯か」
桂馬「どちらにしてもロクな展開にはならないな」
ディアナ「…私に何か出来る事はありませんか」
桂馬「無いな。今迂闊には動かない方がいい」
ディアナ「しかし、このままあなた達だけに任せても…」
桂馬「ディアナ」
ディアナ「…?」
桂馬「お前が必要になる時は必ず来る」
桂馬「だから今は待て」
ディアナ「…」
桂馬「…」
ディアナ「…分かりました」
ディアナ「でも……無茶だけはしないでくださいよ」
桂馬「分かってるよ」
プルルルル
桂馬「!?」
ディアナ「…電話ですか」
桂馬「ディアナ、部屋に戻ってろ」
桂馬「それと意識も封じて天理に直しとけ」
ディアナ「は、はい」ガラッ
桂馬「………」
プルルル…
桂馬「…っ」
ガチャ
桂馬「……エルシィか?」
エルシィ『に、にーさま…』
桂馬「おいどうしたエルシィ、バンドは今日遅くまでやるんじゃ…」
エルシィ『そ、その…あの…助け』
エルシィ『ち、ちひろさんが…それと、歩美さんが…』
桂馬「ああもういい、何も言うな」
桂馬「今すぐそっちに行く!」ガチャ
桂馬「エルシィ!」ダッ
エルシィ「!にーさま…」
歩美「…」ガタガタ
桂馬「歩美は…とりあえず無事だな」
桂馬「ちひろは?」
エルシィ「…」チラッ
桂馬「…どいてくれ」
桂馬「…」ギィィィ
???「…」ジワァ…
桂馬「これは…匂いと話から察せてはいたが…」
桂馬「ここまで酷いか…」
歩美「あ、ぁァァ゛ァ…」ガタガタ
エルシィ「にーさま、それ…」
桂馬「あ…?」
ピリッ
桂馬「メモか?」
「ツギハオマエダ」
桂馬「………トイレでこんな殺人予告とかどのゲームの花子さんでもやらんぞ」
エルシィ「これって一体…」
桂馬「…今日は曇りだ」
エルシィ「え?」
桂馬「星が見えない以上月夜が学校に居残る理由はほぼ無い」
桂馬「図書委員もローテ的に今日はは早上がりの筈だ」
桂馬「美生もバイトだなんだと忙しくて部活をやる余裕も無い」
桂馬「エルシィ、どういう経緯で今こんな状況になってるんだ」
エルシィ「ど、どういう経緯…と言われても」
桂馬「ちひろが殺される前何があったか聞いてるんだ」
エルシィ「…え、えぇと…バンドの練習が一区切りつけて…」
エルシィ「京さんと結さんは用事があるとの事だったので、私達3人だけでも居残っていつもより長く練習しようって話になったんですよ」
桂馬「なんで早く解散させなかった」
エルシィ「い、いや…その、危険だとは分かってましたけど2人の熱意に押されて負けて…」アセアセ
桂馬「で結果こうなったと」
エルシィ「……っ」プルプル
桂馬「もう下校時刻は30分以上過ぎてる。ほとんどの生徒は帰ってるだろう。個室の中を確認できる生徒は限られる」
桂馬「この時間帯にちひろを狙って単なる悪戯目的でこんな落書き残すとは考えにくい」
エルシィ「….それって…つまり…」
桂馬「十中八九次のターゲットは決まってるだろうな」
桂馬「なんなら今も僕達が尻尾を出すのを近くで待ってるかも…」チラッ
ビュッ
桂馬「!?」ドサッ
ガギッ
桂馬「ぁ…あ?」ピクピク
エルシィ「突然ナイフが降ってき…え……?」
歩美「ァ゛…ぁ」ガクガク
桂馬「っ…危ない!」バッ
ガガッ
エルシィ「にーさま!」
ドサッ
桂馬「おい、歩美…おい!」ユサユサ
歩美「桂……木」
桂馬「…逃げるぞエルシィ」
エルシィ「に、逃げるって何処に…」
桂馬「そんなの逃げながら考えるしか無いだろ!」グイッ
桂馬「行くぞ!」ダダッ
エルシィ「は、はい!」
ダダダッ
エルシィ「うわわっ!」ガギギッ
桂馬「無尽蔵に刃物投げてくるな…」
桂馬「相手は猫型ロボットか何かか!?」ヒョイッ
エルシィ「なんで部屋の窓から正確にこっち狙えるんですかぁぁ!?」ガガッ
桂馬「とりあえず黙れお前!どの道声で位置バレるだろ!」
桂馬「というかお前は羽衣で防げよ!」
エルシィ「魔力が篭ってるのか貫通しちゃうんですよ~!」アセアセ
桂馬「肝心な時も役に立たないなこのバグシィ!」
エルシィ「ぅうえぇ~!」
歩美「…」ボーッ
桂馬「よし階段だ…!」
桂馬「頼んだぞエルシィ」ググッ
エルシィ「え、ちょっと頼んだって何を」
桂馬「それ位考えろ!」ババッ
エルシィ「いや、ちょっ…ええ!?にーさま!?」
「……」
「…?」チラッ
「居ない…足音もしないし一体何処に」
ガシャン
「!?」
桂馬「……~!」フワフワ
桂馬(いくらヒロインの為とはいえゲーム機1台は代償が重すぎる…!!)ピクピク
エルシィ「に、にーさま!急に飛び降りないで下さいよ!危うく地面に激突する所だったじゃないですか!」ボソボソ
桂馬「う、うるさい!」ボソッ
桂馬「このまま浮遊して別の部屋へ逃げるぞ…念の為透明になったままな」
エルシィ「は、は~い」フワフワ…
桂馬(ワンチャン壊れてないかもしれないし帰る前にどこかで回収しなければ…)
ガラッ
桂馬「よし…理科の準備室なら死角も多いししばらくはやり過ごせるだろ」
エルシィ「犯人さん、まんまと引っかかって落ちたゲーム機の方行ってましたね」ゼエゼエ…
桂馬「ああ…お陰で少しだけ時間は稼げた」
桂馬「けどのんびりもしてられないぞ。見失ったからしらみ潰しに一部屋一部屋回って校舎丸ごと壊すかもしれない」
エルシィ「…!」
桂馬「みなみや愛梨のばあちゃんがまだ残ってるのにもうこっちに踏み込んできた。気まぐれか何か知らないがまた作戦を変更してきたらしい」
桂馬「場合によってはまだここに残ってる生徒や教師も狙われる可能性もある」
エルシィ「ど、どうしましょう…」
エルシィ「羽衣で隠れて一旦逃げます?」
桂馬「相手はただの人間じゃないんだ。効かない可能性もある」
桂馬「奴には見えないって確証があるならさっきわざわざ飛び降りて囮を作ったりなんかせずに透明になってこっそり逃げてた」
桂馬「さらにこっちも犯人が何処にいるか分からない状態なんだ」
桂馬「逃げるルートを考えるにも動きがさっぱりな以上迂闊に動く訳にもいかないだろ」
桂馬「まぁ確かに羽衣で逃げられるならそれが1番ベストなんだが…」チラッ
歩美「…」プルプル…
桂馬「…こっちは1人動けない状況だしリスクが高すぎる。それにさっきも言った通り上手く逃げられたら今度は学校に残っているモブキャラが標的にされる危険がある」
桂馬「このまま放置する訳にもいかない」
エルシィ「そ、それじゃあどうしたら…」
桂馬「おいエルシィ、携帯返せ」
エルシィ「え、あっ…はい」スッ
桂馬「ダメ元で呼んでみるか…」ピツピッ
桂馬「それからエルシィ…」プルルル
エルシィ「?」
桂馬「……お前が頼りだ」
桂馬「ちょっと無茶しろ」
エルシィ「へ」
「くそ…あいつら何処に行った…」
「まさか逃げられた…?」
「どういう事よ、話が違うじゃない!」
「…?」チラッ
歩美「」ダダダッ
歩美「桂木…エリー…」
歩美「はぁ…はぁ…どこ行ったのよ~」
歩美「もう暗くて全然見えない…でも明かりつけたら…」キョロキョロ
歩美「…っ」ダダッ
「……ばっかじゃないのぉ?」
「もうバレてるっての」ゴオッ
歩美「ど、どうしようどうしよう…」ダダダッ
歩美「何処に行けば…」
ビュッ
歩美「!?」
ガギイッ
歩美「っ…」クルッ
「見ーつけたっ」
歩美「あんたさっきの…」
「お目当ての方じゃなかったけど、まぁいいや」クルクル
「どの道あなたも殺せって言われてるし」パシッ
ビュビュッ
歩美「ひっ…!」ダッ
ガギギッ
「すばしっこいガキな…」ブンブンッ
歩美「いっ…いやっ……!」ガガガガ…
ゴソゴソッ
歩美「っ!」ブンッ!
カランカラン
「あ?」
ガッ
「くっ…」ブシュゥゥ
(スプレー缶…中身はよく分からないけどこんなものいつの間に…)
歩美「…!」ダダダッ
「ちいっ」
ガラッ
カチャ
歩美「机と椅子と…あと教卓!」ガッ
ギシッ
歩美「とりあえずロッカーの陰に…」ヒョイッ
歩美「………」ゴクリ
…カツ…カツ
歩美「!」
カツ…カツ…カツ…
歩美「…」ドクンドクン…
シーン…
歩美「………」
歩美「撒けた…?」チラッ
バリバリイッ
歩美「!?」クルッ
「またみーつけたっ」シュタッ
歩美「ちっ…」ガシッ
「?」
歩美「っらぁっ!」ブンッ
「よいしょっと」ドゴッ
バキバキィッ
歩美「うっそ…机……粉々…」
「ふふふ…」
歩美「っ!」ダダッ
「なぁに?窓から飛び降りる気?」
シャッ
「待てよ」ガシッ
歩美「痛っ!」
グググ
歩美「は、離して…」
「ふん」バキッ
歩美「あうっ」ドサッ
グサグサッ
歩美「いった…!?」
「あーあ、一杯刺さっちゃったねぇ、破片」
「痛そー」
歩美「く…ぅ……」ジリジリ…
「壁に寄りかかっちゃって…かわいー」
「ふふ…」
歩美「なんで…なんでこんな事するのよ!」
「なんでって言われても…ねぇ」
「別に私は貴方に恨みがあるどころか会った事も無いし何なら名前すら知らない……」
「…いやでもあなたの名前…何処かで聞いた事あるような、無いような」
歩美「…?」
「まぁいいわ。印象にも残らないような子だったんでしょ、あなたはきっと」
「だから別に私はあなたに興味ないの。あるのはもっと別の方」
歩美「別の…?」
歩美「まさか…あんた桂
歩美「ぎっ!?」ガシッ
ギリギリ…
「そうそう、そいつよ、桂馬君、桂木桂馬君」
「彼をなるべーく苦しめる為にまずお友達のあなた達を殺してる訳」
「あー名前をちょっと聞いただけで虫唾が走る」
歩美「うっ….あ゛っ」
バッ
歩美「げほっげほっ!」ドサッ
「口を開けば桂木桂木って…はぁ」
「なぁに?桂馬君は貴方のヒーローか白馬の王子様か何かなの?」クイッ
歩美「うっ…」
「馬鹿馬鹿しいにも程があるわ」ガッ
歩美「……桂木が何したって言うのよ」
「んー?桂馬君はねー、小学生の時にー」
「私から大事なモノを奪ったの」
歩美「……」
「だから、滅茶苦茶にしてやりたいの」
「単純でしょ?」
歩美「それだけで…こんな沢山凶器を…?」
「ふふふ…凶器、ねぇ」
「勿論こんなに大量に刃物なんて手に入れられっこないし…」
「第一女の子持てる量じゃないよね?」
歩美「……」
「この武器はねぇ……私のお友達がくれたのよ?」
歩美「友達…?」
「そっ。数少ない私の信用に足る頼れるお友達」
「私があのちんちくりんに屈辱を受けてから…何度も復讐するチャンスを狙っていた…」
「住所の特定までは割と楽だったんだけどねぇ」
「どうもあいつのバックがちょっと厄介者だから手を出したら仕返しでこっちが蜂の巣にされかねなくて手をこまねいていたの」
「でもね、つい最近突然その子はやってきて悩みを打ち明けたら手を貸してくれるって快く言ってくれたのよ」
歩美「…そいつ絶対ロクな奴じゃないじゃん」
「ふふふ…まぁあながち間違っては無いわ。ろくでなしには変わりないわ」
「私も最初こそは驚いたけど…こんなのを見せられたら…ねぇ?」シュルッ
歩美「…?布?」
「こちらただの布ではございません。私がちょっと力を込めると…」ブワッ
パシッ
「はーい、立派な刃物の出来上がりー」パシッ
歩美「!?」
「ナイフだけじゃないよ~。銃器にスタンガン、何でもござれ」ブワッ
「まぁ正確には私が直接マジックしてる訳じゃないんだけど」
「信じられないでしょ?これで分かった?」
「私は刃物を持ってた訳じゃなくてちっちゃい布きれで作ってるの」
「これが私の秘密」
「さてと、まだ昔話を聞かせてあげたい所だけど」ヒュルッ
ガッ
歩美「うあ゛っ」ギチギチ
「そらそろ飽きてきたし、殺っちゃおうかな」
「あーでもただ殺すのもつまらないから…」
「3分このまま絞め続けても生きてるなら桂馬君を誘き寄せる人質にしてあげる」
歩美「う゛…かっ…」ギギギッ
「貴方は虚しく桂馬君の目の前で殺され彼の心に一生刻まれる悲劇のヒロインになれる」
「私はあいつに一生もののトラウマを植え付けられる。WINWINでしょ?」
「このままただ身体中の骨折られて死ぬよりかはいくらかマシよ?」
歩美「…かひゅ…」
「ほーら、頑張れ頑張れー」
桂馬「歩美!どこだ!歩美ーー!」
「!?」クルッ
歩美「待っ……」
「ふふふふふ」
「噂をすれば何とや」スタスタ…
「らっ!」ドガァッ
「こっちね…」ダダッ
桂馬「歩美!どこだ!歩美ーー!」
「…ああ、間近で聞くと本当に耳障りな声ね」スタスタ…
「さぁ感動のご対面…」
桂馬「」プカプカ…
「…………」
桂馬< 歩美!どこだ!歩美ーー!
桂馬< 歩美!どこだ!歩美ーー!
桂馬< 歩美!どこだ!歩バキバキィッ
「レコーダー…それに…風船?」
「こんなものいつの間に………」
「!」ハッ
「まさか…まずい!」ダダッ
歩美「痛た……」
歩美「全く、最近は暴力を振るうような乱暴なヒロインは減ったと思ったんだが…」
歩美「…」チラッ
ガッ
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
歩美「…だから待てって言ったのに」ヘッ
「て…テメェ…!」ビュッ
「じゃあね~」ババッ
「!?」
ダダッ
「あいつ…何処いった!?」ガバッ
「階段の時と同じ…窓から落ちた筈なのに姿は見えない今度は落下した音も無い…!」
「さっきからなんだってのよ!」ガッ
「無闇矢鱈に物に当たるのは良くないぞ」
「暴力系ヒロインが殴っていいのは主人公だけだ…いや、ぶっちゃけ主人公もダメだけど」
「!?その声…いやその腹立つ口調…」
歩美「ご名答。あたしは高原歩美……の身体を一時的に借りてる」
歩美「正真正銘あんたが殺したがっていた桂木桂馬君その人だよ」
エルシィ「はぁ…はぁ…ま、間に合った…」プカプカ…
「何…一体…どうなってんの…?」
歩美「正直ここまで^_^上手く行くとは思わなかった」
歩美「お前が大層にベラベラ喋ってくれたお陰で随分時間も稼げたさ情報も取れた」
歩美「願ったり叶ったりだ」
「ぐうっ!」ブンッ
歩美「お前はただの人間だ。この透明化を見破るどころか理屈すら知らないんじゃいくら投げても僕には…いや、僕達には当てられない」
歩美「さっきのマジックショーのお礼だ。こっちもネタバラシしてやるよ」
桂馬『エルシィ、この間の…結の駆け魂まだ持ってるか?』
エルシィ『…出所不明の勾留ビンなので爆弾とか危ない魔術かかってるか調べてて確かにまだ提出してはいませんが…』チラッ
エルシィ『に、にーさま…まさかとは思いますがあなた…』
桂馬『勿体ぶるな、面倒くさい。いくらお前でも今の流れは察せるだろ』
桂馬『歩美の身体に駆け魂を入れる。それでもって身体を入れ替える』
桂馬『僕が時間を稼ぐから気を引かせてる間に歩美を安全な場所に移動させろ』
エルシィ『いやいやいや…えぇ!?』
桂馬『歩美は今心のスキマができてる。多分駆け魂が入れる状態だろ』
エルシィ『待って待って待ってくださいよにーさま!話が読めません!』
エルシィ『前も言いましたけど捕まえた駆け魂を解放するどころかまた別の人間に取り込ませるなんて地獄ではご法度です!』
エルシィ『首ちゃんぱじゃ済みません!』
エルシィ『第一入れ替わる理由が分かりません!』
エルシィ『時間を稼ぐにしてもそれをする必要性が無いというか…』
桂馬『…馬鹿かエルシィ』
桂馬『歩美は陸上部員だぞこの野郎!僕より歩美の身体の方が断然逃げられる確率高いに決まってるだろこのヤロー!』
エルシィ『えぇ…』
undefined
桂馬『それだけじゃない。駆け魂を入れていれば、レーダーで僕の位置は分かるようになるだろ?』
エルシィ『え?あー、確かに』
桂馬『お前はずっとその動きを見張ってろ』
桂馬『歩美を避難させたら僕の所へ急いで来るんだ』
エルシィ『それでにーさまを助けてトンズラすればいい訳ですね!』
エルシィ『……でもどうやって?』
桂馬『これを使え』スッ
エルシィ『これってさっきのナイフ…』
桂馬『1つくすねておいた。何か役に立ちそうだったからな』
エルシィ『あの~、それでこれで何を?』
桂馬『…ここから先は完全に僕の勘頼みだ』
桂馬『憶測でしかないけどとりあえず聞けよ』
桂馬『まず相手の第一標的は9割方僕だ』
エルシィ『なんでそこまで言い切れるんですか?』
桂馬『あれからよく考えたけど…やっぱり最初僕を殺そうとした時から違和感があった』
桂馬『エルシィ、あいつはお前より強いんだろ?』
エルシィ『え、ああ…はい』
桂馬『もしお前も狙いなら…』
桂馬『あの時真っ先に追いかけて僕達を消していたと思う』
エルシィ『それは…アレじゃないですかね』
エルシィ『スミレさんの死体を消して隠蔽してたとか…』
桂馬『ぶっちゃけ目撃者でもある僕達見逃してまでするべき事か?それ…』
エルシィ『うーん…まぁ、確かに』
桂馬『僕はこの時点では奴に殺す必要性が無かったのかそもそも何らかの理由で僕達を殺せなかったのかと考えていた』
桂馬『そしてこれはさっきの状況にも当てはまっている』
桂馬『エルシィ、もう1度ちひろが死ぬまでの流れを教えてくれ』
エルシィ『え、えっと…バンドの練習を一区切りつけて…トイレ休憩挟んだんです』
エルシィ『それでちひろさんがお手洗いに行ったんですけどそれっきり帰ってこなくて…』
エルシィ『歩美さんが不安になって見に行くから待ってろって…まぁ待ったんですけど』
エルシィ『しばらくして叫び声が聞こえて、慌てて駆けつけたら…』
桂馬『それでさっきの状態に至る…と』
エルシィ『あの時は必死でにーさまに連絡するのが精一杯で…』
エルシィ『逃げようにも近くにいると思うと動けなくて…』
桂馬『まぁ…そうだな』
桂馬『僕が来た途端人が変わったようにこっちに殺意向けてきた』
桂馬『動くにせよ動かないにせよあの時点で既にお前達の近くに潜んでいた筈だ。どの道手遅れだった』
桂馬『僕が来る前に既に殺ろうと思えばいつでも殺れる状況になっていた』
桂馬『だが現にお前は生きている。さぁ何故だ』
エルシィ『…』
桂馬『答えは簡単。お前は正確には殺害対象外なんだよ』
桂馬『更にに言うと厳密には殺せない奴判定なんだろうな』
桂馬『犯人には僕の情報を事細かに知る事ができた
』
桂馬『がその実奴には僕が今いる位置を知る術を持ってはいない』
桂馬『ある意味コレは最初からダイレクトに僕を襲わない別の理由にも取れる』
桂馬『あいつは僕に対して死以上の恐怖を与えるのを望んでいる』
エルシィ『死…以上ですか』
桂馬『考えてもみろ』
桂馬『僕を殺すのにスミレの死体見せる必要ある?』
エルシィ『……どうなんでしょうかね…えへへ』
エルシィ『私遅れて現場に到着したので何とも…』
桂馬『そうだよ。僕が死体を見て数秒後には消していた』
桂馬『たかが死体を僕に見せびらかす為にあんな舞台装置を作ったんだ』
桂馬『相手は魔法使いみたいなもんだ。殺す方法なんていくらでもある』
桂馬『要するに犯人は僕を殺すイベントを作る為に自分の望む形になるように場をコントロールしたかった』
桂馬『だが僕は現実のキャラにはほぼ興味のないギャルゲーマー。基本的に誰とも関わらず1日を過ごす』
桂馬『攻略済みのヒロインとはほぼ接点を無くしていたし、そいつらと僕を繋げるキャラもアイテムも無かったから、イベントのフラグを立てるのには難を極めた』
桂馬『そこでお前だエルシィ)
桂馬『お前は有無を言わさず僕の後ろについてくる』
桂馬『アレだな、金魚のフンみたいなもんだ』
エルシィ『金魚…フン…』ジワァ
桂馬『フンならマーキングは簡単だろ』
桂馬『お前はバンドで多くの攻略対象と関わっている』
桂馬『勉強の為に図書館によく出向くから栞との遭遇する頻度も高い』
桂馬『他の奴らとも強引ながら接点を作れなくも無い。格好の餌だ』
エルシィ『うー……』
エルシィ『…私がいるせいでにーさまや他の人達が…』
桂馬『大元を辿れば悪魔絡みなんだから大体お前のせいで収束するんだがな』
エルシィ『う~!うぅぅ…そんな言い方しなくても』ドバババ
桂馬『誰もそうだから責任を取れとか一言も言ってないだろ』
桂馬『今やってるのは反省会じゃなくて単なる情報整理、事実確認だ』
桂馬『確かにお前がもう少し注意してたら未然に防げた事もあったかもしれない。だけど現実にはセーブデータなんて無い』
桂馬『セーブできないなら必要な情報だけロードして後はゴミ箱にでも何にでも捨ておけ』
桂馬『この後それをひっくり返せるだけの挽回をすれば良い』ポンッ
エルシィ『にーさま…』
桂馬『…いいか、話を戻すぞ』
桂馬『要点をまとめると、犯人は僕を殺したい。それもなるべく』
桂馬『これだけだ。他の奴らは舞台の引き立て役になるように殺すなり利用できるだけ利用する』
桂馬『それはさっき言った通りスミレの件で実証済み』
桂馬『偶然にもその条件は今も満たしている』
エルシィ『…あっ』
桂馬『お前も捕まえて人質にしたりできそうだが腐っても悪魔だからな』
桂馬『羽衣でいくらか抵抗できるし最後の手段だが苦肉の策で自爆する事だってできる。できればあまり手を出さず放っておきたいと思っている筈だ』
桂馬『とすると僕以外で狙われてくるのは…』チハッ
歩美『…』ガタガタ
桂馬『もし僕がこのまま1人で時間稼ぎをしても、多分すぐ殺される』
桂馬『わざわざエルシィや歩美を見つける必要なんて無いし面倒だからな』
桂馬『痺れを切らしたのか、恐らく今日中に僕との因縁に蹴りをつけるつもりでこんな大胆な行動に出たんだろう』
桂馬『じゃあ逆にこっちから餌を用意したらどうなるだろう』
エルシィ『餌…』
桂馬『歩美は僕達にとっては大切な友達…という認識だ』
桂馬『現にこうして抱えて逃げてきた訳だしな』
桂馬『あいつは何かご飯を作る為に冷蔵庫の中を覗いているとしよう』
桂馬『使う食材は分からないが味付けは欠かさない』
桂馬『そこに丁度塩なり何なり手頃な調味料があるのに使わない馬鹿な料理人は居ないだろう』
エルシィ『…にーさま、自分が何言ってるか分かってるんですか?』
桂馬『愚問だな。寧ろお前はちゃんと理解してそんな質問してるか心配だ』
エルシィ『…』
桂馬『お察しの通りだよ』
桂馬『僕が殺されて歩美が殺されるは正だが僕が殺されず歩美が殺されるはあり得ないんだよ』
桂馬『あくまで今回のケースに限っての話だがな』
エルシィ『む…無茶苦茶ですよ…にーさま』
エルシィ『そんな…危ない橋を渡る為に駆け魂を解放させようって言うんですか!?』
桂馬『けど一応理屈は通るだろ』
桂馬『今僕が言ったところでおかしな点があるなら寧ろ指摘して欲しい所だけど』
エルシィ『それは…まず色々発想がおかしいですし』
エルシィ『あくまで可能性の話の範疇じゃないですか』
桂馬『仕方ない。都合の良い解釈も少なからずあるだろうが現時点で根拠とか確実性を見出す余裕は無い』
桂馬『勝つ確率の高い博打をしてるだけだ』
桂馬『それに駆け魂で身体を入れ替えるのは他にも2つメリットがある』
エルシィ『メリット…?』
桂馬『第一に囮を作れる事だ』
桂馬『さっきも言ったが犯人は1人になってる僕を見つけたら躊躇なく殺すだろう』
桂馬『多分相手も僕が逃がす為に時間稼ぎをしてるって判断するだろうからな』
桂馬『だけど見かけたのが歩美の場合、まだ校舎に僕やエルシィが残ってる可能性が高いと見るだろう』
桂馬『だからその場合、良くて拘束、悪くても半殺し程度に済ませて僕を生かすだろう』
桂馬『そこでだ』ゴソゴソ
エルシィ『何ですか?それ』
桂馬『ICレコーダーだ』
桂馬『こいつに僕の音声を録音して誘き寄せる』
桂馬『ただこれを流すだけじゃ不恰好だ』
桂馬『そこでエルシィ、これを僕のダミーを作ってそれに貼り付けろ、でもって音声を流して僕の方にダミーを移動させろ』
エルシィ『ええ!?う…え、えぇぇ!?』
エルシィ『そ、それって私…にーさま…の身体の歩美さんを避難させてから、ですよね?』
エルシィ『時間が足りませんし、第一何処ににーさまが居るか分かりませんよね!?』
エルシィ『というかにーさまの安否も分かりませんよ!?』
桂馬『馬鹿、何の為のレーダーだよ』トントン
エルシィ『れ、レーダーって…これはあくまで駆け魂を探る為の……って、あっ』
桂馬『な?僕の場所ならすぐ分かるだろ?』
桂馬『まぁ生きてるかどうかは神のみぞ知るって感じだが』
桂馬『とりあえず何にせよ僕が生きてる前提で進めてくれよ』
エルシィ『は、はぁ………』
エルシィ『…で、それで引きつけられたら私がこのナイフでにーさまを拘束している羽衣やら何やらをズバッと……』
エルシィ『…って事ですよねぇ…』
桂馬『お、何だ。話が早くて助かる』
エルシィ『滅茶苦茶責任重大じゃないですかぁ!私!』
桂馬『いやだって…さっき無茶してねって頼んだだろ!』
エルシィ『だ、だって…いくら何でも私1人でこんな事…』
桂馬『できないって分かりきってるのを僕がお前に頼むと思うか?』
エルシィ『…』
桂馬『それにまぁ…最悪できなくてもいい』
エルシィ『えぇ!?いいんですか!?』
桂馬『いやよくねぇよ。死ぬだろうが』
エルシィ『理不尽です~…』
桂馬『2つ目のメリットは失敗した時の保険を付けられる事だ』
エルシィ『保険、ですか…?』
桂馬『あぁ、あまり死ぬ前提で話したくないけどな』
桂馬『もし僕が逃げられずに奴に殺されても死んだ歩美の身体には駆け魂が残っている』
桂馬『さぁその駆け魂は一体どこに行くと思う?』
エルシィ『それは…まぁ次の宿主を探して…』
エルシィ『…』
桂馬『あんなシリアルキラーに心のスキマなんて無い訳ないだろ』
桂馬『でもって高確率で悪魔』
桂馬『…女だ』
エルシィ『いやいやいや女の子かどうかは流石に分からないじゃないですか?』
桂馬『胸の膨らみとヒロイン独特の甘い香りを僕が見逃すと思うか!?』
エルシィ『見逃してください』
桂馬『ともかく相手は9割方女だ』
桂馬『僕が死んでも冥土の土産に駆け魂をしてやれる』
桂馬『とりあえずそれで直接僕の関係者を殺そうとはならんだろう』
桂馬『後はいつもの仕事の要領でやればいい』
エルシィ『いつもの要領って…』
桂馬『当然ながら何度も言うがコレはこの作戦がしくじった時の付け焼き刃代わりだ』
桂馬『あまりアテにはするなよ。主に僕の存亡の危機的な意味で』
エルシィ『いやでもしませんよ!?ただでさえこの駆け魂は普通の方法じゃ捕らえられない位に成長してるんですよ!』
エルシィ『これ以上レベルが上がったら誰にも手に負えなくなります!』
エルシィ『それに…にーさまには死んでほしくないです…』
桂馬『………決まりだな』
「…そんな…全部お見通しだったって事…?」
歩美「見通しもクソも無いだろ」
歩美「はっきり言ってコレは借金使ってギャンブルするみたいなその場凌ぎの方法だ」
歩美「人の命懸かってなけりゃこんな危険な事しない」
「………違う、そうじゃない…」ボソッ
「なんで…あんたがそんな、事…」
歩美「…?」
歩美「まぁいいや。それともう1つ教えてやるよ」
歩美「生憎だけど僕はお前の事なんか覚えてない」
「え…」
歩美「嘘じゃない。声だって聞いた事ないし、さっきちらっと顔が見えたが見覚えが無かった」
歩美「だからお前が僕に何か奪われたとか酷い事したとか言われても知らん」
「嘘…嘘よ。覚えてないの?」
「私の名前も?私と話した事も…?」
「あの時何の劇やったかも覚えてないの!?」
歩美「いや…そもそも劇なんかしたのか…?」
「そん、な…」
歩美「………よく分からんヒロインだなぁ」グシャグシャ
歩美「小学生の時の僕フラグ立てすぎじゃないか?天理の時といい…」
エルシィ「にーさま、そろそろ…」
歩美「そうだな。じゃ、そういう事だからそろそろお暇させてもらうよ」
「ま、待ちなさい!」
「いいの?このまま逃げたら腹いせに職員の1人や2人殺しちゃうかもよ?」
歩美「ああ、だろうな。僕でもそうする」
歩美「止めたい所だが残念な事に僕はギャルゲーの主人公。戦いは専門外だ」
歩美「だから」
ドガァッ!
「!?」クルッ
歩美「後お前の事はそっち専門の奴に任せる事にするよ」
多分分かる人にはこの時点で犯人分かっただろうから今更言っちゃうけど
原作の最終巻までのネタバレ含みます
まぁ読まなくても楽しめるようにはするけど
読んだ方が楽しいかもしれない()
天理『!』プルルル
パカッ
天理『桂馬君からだ…』ピッ
天理『もしもし…』
桂馬『天理、今家か?何も起こってないよな?』
天理『え?あぁ…うん、大丈夫。こっちは何ともないよ』
桂馬『ディアナに……いやまずは用件だけ伝えるか』
桂馬『今のさっきで悪いがお前に力を貸して欲しい』
桂馬『ディアナはともかくお前も危ない目に遭うかもしれない。来てくれるか?』
天理『………うん。私は』
天理『ディアナが居るし、桂馬君の為ならどんな危険な場所でも助けに行くよ!』
桂馬『…だそうだ。ディアナ、代わってくれ』
ディアナ『…』フッ
ディアナ『全く、あなた達は…』
ディアナ『…さぅきは危険だから頼めないという話ではありませんでしたか?』
桂馬『ああ、ついさっきまではな』
桂馬『ただ若干疑念ができたのと、ちょっとだけ問題が発生していてな』
桂馬『時間が無い。簡単に説明するぞ』
桂馬『校舎の内蔵は把握してるか?』
ディアナ『ええ。舞高は私達にとって重要な場所ですからね』
ディアナ‘『大体の構図は掴めています』
桂馬『よし、話が早い』
桂馬『まずお前にやって欲しいのは結界を張る事だ』
ディアナ『結界、ですか』
天理『!』プルルル
パカッ
天理『桂馬君からだ…』ピッ
天理『もしもし…』
桂馬『天理、今家か?何も起こってないよな?』
天理『え?あぁ…うん、大丈夫。こっちは何ともないよ』
桂馬『ディアナに……いやまずは用件だけ伝えるか』
桂馬『今のさっきで悪いがお前に力を貸して欲しい』
桂馬『ディアナはともかくお前も危ない目に遭うかもしれない。来てくれるか?』
天理『………うん。私は』
天理『ディアナが居るし、桂馬君の為ならどんな危険な場所でも助けに行くよ!』
桂馬『…だそうだ。ディアナ、代わってくれ』
ディアナ『…』フッ
ディアナ『全く、あなた達は…』
ディアナ『…さぅきは危険だから頼めないという話ではありませんでしたか?』
桂馬『ああ、ついさっきまではな』
桂馬『ただ若干疑念ができたのと、ちょっとだけ問題が発生していてな』
桂馬『時間が無い。簡単に説明するぞ』
桂馬『ウチの学校の校舎の構造は把握してるか?』
ディアナ『ええ。舞高は私達にとって重要な場所ですからね』
ディアナ‘『大体の形は掴めています』
桂馬『よし、話が早い』
桂馬『まずお前にやって欲しいのは結界を張る事だ』
ディアナ『結界、ですか』
桂馬『今僕、いや僕達は犯人に殺されかけてどうにか教室に身を隠している』
桂馬『ぶっちゃけ逃げるだけならこっちだけでどうにかなりそうだが』
桂馬『相手が相手だ。とち狂って学校に残ってる奴らを殺す可能性がある』
桂馬『だから職員室……いや』
桂馬『今から言う場所の付近でいいから結界を張ってくれ』カリカリ
桂馬『そっちに奴を誘き寄せるから頃合いを見てな』
ディアナ『…分かりましたが、結界や魔術を使って防いでも意味が無いのでは?』
ディアナ『私より魔力が強い者では簡単に破れて…』
桂馬『それなんだが、多分相手はそんな強くない』
ディアナ『え』
桂馬『なんなら悪魔の力を借りた人間の可能性すらある』
エルシィ『えぇ!?にーさまさっき悪魔の可能性の方が高いって…』
桂馬『うるさいちょっと黙ってろ』
桂馬『そもそも魔力が高い云々の話はエルシィがソースだ』
桂馬『エルシィの直感よりお前の力量の方がよっぽど信頼できる』
エルシィ『うぅ…』ドバババ
ディアナ『わ、私の方が…信用できるって…///』
桂馬『それに単なる言いがかりじゃない』
桂馬『相手は確かに飛んだり人とは思えない力で武器を投げてくるけど』
桂馬『刃物を投げてくるだけで他に魔法で攻撃しないんだ』
桂馬『相手が僕がさっき言ったようなラスボスみたいな奴なら校舎を丸ごと氷漬けにするなり火炙りにでもすれば探すまでもなく簡単に殺せるだろう』
桂馬『さっきも苦し紛れな方法で逃げてきたが透明になってるのに気づいてる様子も無かった』
ディアナ『成る程、気配も感じられない程となるとそこまで魔術の類を使いこなせてるとは到底思えませんね』
桂馬『当然根拠なんてこれっぽっちで実際の奴の力なんて分かったもんじゃない』
桂馬『できれば僕達が学校を出た後そいつを倒すとまでは行かずとも抑えつけて無力化して欲しい所だが』
桂馬『無理だと感じたらすぐに逃げてくれ。後の事はとりあえずこっちでどうにかする』
ディアナ『…』
ディアナ『分かりました。最善を尽くしましょう』
桂馬『無茶だけはするなよ?』
ディアナ『人の事を言える立場じゃないでしょう、あなたは』
ディアナ「っ!!」ガッ
「うっ…」ドサッ
ディアナ「タイミングは…ドンピシャと言った所でしょうかね」
「……っ、あんたは…」
ディアナ「生憎ですが私も貴方の事を知りません」
ディアナ「が、その反応を見るに10年前に天理と一悶着あったというのは確かでしょう」
ディアナ「尚の事放っておけなくなりました」
ディアナ「私怨の為だけに罪のない人を次から次へ手にかけて…」
ディアナ「女神の名にかけて、私が直々にあなたを粛清します」
「……なぁに?女神とか粛清とか久々の再会で思わず寝惚けちゃったのかな?天理ちゃん」
ディアナ「……」ギロッ
「なんか目つきも1周回ってかっこよくなってるし…」
「いっちょ前に天使の輪っかなんかつけてるし?」
「何それ何処で買ったの?ドンキ?」
ディアナ「買う?あなたこそ寝惚けてるのでは?」
ディアナ「これは天使の象徴。自前に決まってるで」
ディアナ「しょう!?」ボオッ!
「羽衣!」ガッ
ドガァッ!
ディアナ「ちぃっ」
「と、とりあえず距離を!早く!」ゴオッ
ディアナ「逃がすか…」ゴォッ
桂馬「おい…なんか校舎に青空教室できてるんだが」
エルシィ「ひええ…もう学校めちゃくちゃですよ」
桂馬「あの感じだと意地でも仕留めるつもりだな」
桂馬「まぁやる気満々なのに越した事は無いが…」
桂馬「あ、そうだ。エルシィ。さっきの階段の所に行くぞ」
エルシィ「え、さっきのって…」
桂馬「PFPを落とした所だよ!」
エルシィ「え~!取りに戻るんですか!?危ないですよ…」
エルシィ「ぴーえふぴーならにーさま何台も持ってるでしょ!?」
桂馬「馬鹿!アレは厳密にはPFP plusだ!」
桂馬「キーボードが使いやすいよう再設計さらてるんだ!」
エルシィ「そんなどうでもいい…
桂馬「どうでもいい!?どうでもいいだと!?貴様操作キー1つでどんなゲーム機もクソハードになり得る事も知らんのか!?」
桂馬「これだから素人は…」
桂馬「いいか!バグ魔のお前にも分かるようによ~く頭に叩き込んでやる。ボタンってのはなぁ!」
エルシィ「……」
桂馬「……?おい、エルシィ?どうした、おい?」
ガクッ
桂馬「おっ……い!?」ヒュゥゥ…
グチャ
「……なぁに?女神とか粛清とか久々の再会で思わず寝惚けちゃったのかな?天理ちゃん」
ディアナ「……」ギロッ
「なんか目つきも1周回ってかっこよくなってるし…」
「いっちょ前に天使の輪っかなんかつけてるし?」
「何それ何処で買ったの?ドンキ?」
ディアナ「買う?あなたこそ寝惚けてるのでは?」
ディアナ「これは天使の象徴。自前に決まってるで」
ディアナ「しょう!?」ボオッ!
「羽衣!」ガッ
ドガァッ!
ディアナ「ちぃっ」
「と、とりあえず距離を!早く!」ゴオッ
ディアナ「逃がすか…」ゴォッ
歩美「おい…なんか校舎に青空教室できてるんだが」
エルシィ「ひええ…もう学校めちゃくちゃですよ」
歩美「あの感じだと意地でも仕留めるつもりだな」
歩美「まぁやる気満々なのに越した事は無いが…」
歩美「あ、そうだ。エルシィ。さっきの階段の所に行くぞ」
エルシィ「え、さっきのって…」
歩美「PFPを落とした所だよ!」
エルシィ「え~!取りに戻るんですか!?危ないですよ…」
エルシィ「ぴーえふぴーならにーさま何台も持ってるでしょ!?」
歩美「馬鹿!アレは厳密にはPFP plusだ!」
歩美「キーボードが使いやすいよう再設計されてるんだ!」
エルシィ「そんなどうでもいい…
桂馬「どうでもいい!?どうでもいいだと!?貴様操作キー1つでどんなゲーム機もクソハードになり得る事も知らんのか!?」
歩美「これだから素人は…」
歩美「いいか!バグ魔のお前にも分かるようによ~く頭に叩き込んでやる。ボタンってのはなぁ!」
エルシィ「……」
歩美「……?おい、エルシィ?どうした、おい?」
ガクッ
歩美「おっ……い!?」ヒュゥゥ…
グチャ
今更ながら昨日訂正した部分にも間違いがあるのを確認した
さぅきってなんださぅきって
ディアナ「待ちなさい!」ゴゴオッ!
「ひっ…」ヒョイッ
ドガァッ
「いやいやいや」
「なんでアンタ羽衣使わずに飛べてなんか手から衝撃波みたいなの出してる訳!?」
「ジャンプ読みたての厨二だってそこまでしないわよ!?」
ディアナ「…」ゴオッ
「あくまで聞く耳持たないって訳…」
「ならいやでもひん剥いてやるわよ…」ゴソゴソ…
「」クルッ
ディアナ「!?」
ブシュゥゥ
ディアナ「くっ…」
ディアナ(さっきの…回収してたのか…)
カランカラン
「今のうちに…」ゴオッ
ディアナ「姑息な…」
天理(早く追いかけよう!?)
ディアナ「そうしたいのは山々ですが缶からガスが漏れ始めている…」
ディアナ「万が一ですが爆発する危険もあるので窓を何箇所か開けましょう」
ガラッ
「はぁ…はぁ…はぁ…」ドサッ
「何よ…何が……どうなってんのよ!」
「話と全然違うじゃない…!」
「後ちょっとであいつを殺せたのに…!」グググッ
「それに何、身体の入れ替え!?女神!?何が何だか…」
「天理も私と同じように悪魔と契約したって訳!?だから変な超能力が使え…でもあいつは女神って…」グシャグシャ
「ああもう面倒くせぇなぁ!」ガンッ
「はぁ…はぁ…落ち着け、落ち着くのよ」
「とりあえず撒けたっぽいからここで一旦あいつやり過ごそう、そうしよう」
「でもって体勢を立て直してから…」
ディアナ「あの生意気な小娘を始末しようと」
「そーそー…………」
ドガァッ
「ひぃっ!?」ドサッ
ディアナ「あなたの気配は…既に記憶しました」
ディアナ「この建物にいる限りあなたを見失う事は無いのでご心配なく」
「何よ…何よ何よさっきから!」
「皆そう!あたしの邪魔ばっか…」
「いいわよ、殺ってやるわよ。正々堂々殺りゃいいんでしょ!?」チャキ…
ディアナ「最初からそう来てくれた方がこちらとしては楽だったのですが」
天理(ディアナ…)
ディアナ(大丈夫です。任せて下さい)
ガシッ
「うらぁっ!!」ブオッ
ディアナ(机を盾に…いや視覚を封じた?)
ディアナ「芸のない方ですね!」バキィッ
ディアナ「!?」
ディアナ(しまった…ブラフか!)
ビュッ
ディアナ「うあっ」ギュッ
ディアナ(ロープを脱いで…拘束を…!?)ギチギチ
「ふぅ。危ない危ない」
「1発限りの奥の手だったけど、上手く行ったぁ…」
天理(ロープの方も羽衣で出来てたんだ…!)ギギギ…
「それじゃとりあえず…」ダダッ
「死ね」ヒュッ
バキッ
クルクル…
「っぁ…」
(脚で肘を…!?)
ディアナ「…」ブチブチッ
「はは…え、嘘でしょ、破けんの?それ」
ディアナ「っ」ゴオッ
「ぁぐぁ」バキィッ
ドサッ
ディアナ「…」パシッ
チャキ…
「い、いや…」ズルズル…
ディアナ「動くな」
「……っ……」
ディアナ「…たかが人間の分際で私達に楯突くなど愚かな…」
ディアナ「とはいえ…」チラッ
ディアナ(部屋に強い魔力がいくつか感じる…暗くて若干分かりづらいが布きれのようなものがチラチラ見られる)
ディアナ(これも恐らくエルシィさん達が使う羽衣の一部でしょう。道中にもいくつか落ちていた)
ディアナ(いつのまにこんな物を校舎全体にばら撒いて…それに)
ディアナ「ただの人間がここまで高度な魔術を使えるとは思えません」
ディアナ「桂木さんの言っていた事も気になります」
ディアナ「あなた、誰かに何処かから遠隔で魔法を発動させてもらってますよね」
「」ビクッ
ディアナ「それにしても意思疎通が気味悪いくらい息ぴったりですが…」
ディアナ「誰の差し金ですか、答えなさい」チャキッ
「………」
ディアナ「……だんまりですか。そうですか。なら」スッ
天理(ちょっと待ってディアナ)
ディアナ「私に話をさせてなんて言葉は聞きませんよ天理」
ディアナ「少しでも隙を与えたら掌変えて殺しに来ますよ」
ディアナ「第一こんな殺人鬼に話をする余地なんてありません」
天理(でも…)
ディアナ「でももへったくれもありません」
天理(多分何も書き出さなかったら桂馬君怒るんじゃないかなぁ)
ディアナ「」ビクッ
ディアナ(ロープを脱いで…拘束を…!?)ギチギチ
「ふぅ。危ない危ない」
「1発限りの奥の手だったけど、上手く行ったぁ…」
天理(ロープの方も羽衣で出来てたんだ…!)ギギギ…
「それじゃとりあえず…」ダダッ
「死ね」ヒュッ
バキッ
クルクル…
「っぁ…」
(脚で肘を…!?)
ディアナ「…」ブチブチッ
「はは…え、嘘でしょ、破けんの?それ」
ディアナ「っ」ゴオッ
「ぁぐぁ」バキィッ
ドサッ
ディアナ「…」パシッ
チャキ…
「い、いや…」ズルズル…
ディアナ「動くな」
「……っ……」
ディアナ「…たかが人間の分際で私達に楯突くなど愚かな…」
ディアナ「とはいえ…」チラッ
ディアナ(部屋に強い魔力がいくつか感じる…暗くて若干分かりづらいが布きれのようなものがチラチラ見られる)
ディアナ(これも恐らくエルシィさん達が使う羽衣の一部でしょう。道中にもいくつか落ちていた)
ディアナ(いつのまにこんな物を校舎全体にばら撒いて…それに)
ディアナ「ただの人間がここまで高度な魔術を使えるとは思えません」
ディアナ「桂木さんの言っていた事も気になります」
ディアナ「あなた、誰かに何処かから遠隔で魔法を発動してもらってますよね」
「」ビクッ
ディアナ「それにしても意思疎通が気味悪いくらい息ぴったりですが…」
ディアナ「誰の差し金ですか、答えなさい」チャキッ
「………」
ディアナ「……だんまりですか。そうですか。なら」スッ
天理(ちょっと待ってディアナ)
ディアナ「私に話をさせてなんて言葉は聞きませんよ天理」
ディアナ「少しでも隙を与えたら掌変えて殺しに来ますよ」
ディアナ「第一こんな殺人鬼に話をする余地なんてありません」
天理(でも…)
ディアナ「でももへったくれもありません」
天理(多分この人から何も聞き出さなかったら桂馬君怒るんじゃないかなぁ)
ディアナ「」ビクッ
ディアナ「な、何を根拠にそんな…」
天理(今回の事件ってこの人以外にも黒幕が居る…って事でしょ?)
天理(それに唯一繋がってる人を何も考えずに消しちゃって)
天理(予め聞いていたら未然に防げたような問題が起きた時、多分ディアナ…私もだけど多分桂馬君に嫌われちゃう…)
ティアナ「き、嫌われ…べ、別に?あんな男に愛想を尽かされた所で?私は?何とも?無いですけど?」
天理(後多分拗ねて女神探ししてくれなくなると思う…)
ディアナ「」
天理(もしかしたら今まで殺された人達の中に居たかもしれないし…)
天理(下手したら桂馬君だけじゃなくてお姉ちゃん達にも怒られるんじゃないかなぁ)
ディアナ「……天理、あなた桂木さんに毒されてません?」
ディアナ「段々思考回路が彼と同じになってきてますよ?」
天理(え?そうかなぁえへへ…)
ディアナ「褒めてない褒めてないから」
ディアナ(くそ…ダメだ、ペースを奪われるな…)
ディアナ(主導権を手放してはなりませんディアナ…)
ディアナ「…」チラッ
「…」ビクビクッ
ディアナ(だが…一理無くも無い…)
ディアナ(少なくともこの人間を利用して桂木さん達を狙ったのが誰なのか判明しないと…)
ディアナ(また同じ事が繰り返される……)
ディアナ(………1番毒されてるのは、私なのかもしれませんね…)
ディアナ「…はぁ、分かりました。貴方が説得なさい」
天理(いいの!?)
ディアナ「ただし、危険だと少しでも感じたらすぐ戻りますからね!後ナイフは手を滑らせてもこいつの喉元に刺せる位の位置に添える事!」
天理(手を滑…喉…)
ディアナ「いいですね!?」
天理(う、うん…)
天理「…」フッ
「…?」
天理「あの…すみません。私、多分あなたの事知ってます」
天理「というか、覚えてますっ」
「は?」
天理「香織さん…ですよね?小学校の時上級生で居た…」
香織「………」
天理「…やっぱり」
天理「あの後しばらくして転校して…」
天理「結局1回も話さずお別れしちゃったんですけど」
香織「…何?蓋を開ければ薄汚いドブネズミに早変わり~でドン引きしてるの?」
香織「それとも笑い堪えてる?どうぞ、好きなだけ私を笑えば…」
天理「桂馬君の所に行きましょう!」
香織「は?」
天理「それで、お…お友達になりましょう!」
ディアナ(は?)
天理「…あの後、よく考えたんですけど」
天理「私あの時やろうと思えばいくらでも殺られるチャンスあったんですよね…」
天理「確かに、香織さんに嘲られる…というか茶化された場面は何度かあったと言えばあったんですけど」
天理「そ、そもそも桂馬君とのきっかけを作ってくれたのは間違いなく香織さん…ですし///」
ディアナ(え、初耳なんですけど)
ディアナ(……という事は記憶が無いだけで本当に桂木さんはこの人と1度会っている…?)
香織「…」
天理「あの…その…だから」
天理「少なくとも私には香織さんが自分からすすんで人を殺すような悪い人にはとても見えないんです…」
香織「……っ……」
天理「あなたはただ、桂馬君と仲良くなりたかっただけ」
天理「やり方がたまたま変わってただけだったんです」
天理「今回も…多分、そう」
天理「誰かに騙されたり…脅されて半ば強引にやってただけなんでしょ?」
香織「…………」
『復讐?いいですよ。やりましょやりましょ』
『に…彼は意外とお人好しなので直接手を下すよりも周りの親密な方達を傷つけた方が効果がありますよ~』
『私はあなたの味方ですから』
香織「…」
天理「今回の事とか…後10年前の事は垣間君達にな内緒にします」
ディアナ(ええ!?ちょっと!?天理!あなた何を言って…)
天理「桂馬君は今香織さんを普通の女の子としてしか認識していません」
天理「記憶が無い今ならまだやり直せるんです!」
天理「もうこんな事はやめて、桂馬君と仲直
ビュッ
天理「痛っ」ズキッ
香織「……さい…」
天理「え…」
香織「るっさいっつってんのよクソガキ!!」ダッ
ディアナ(貴様……)ビキッ
ディアナ「天理の大事な顔によくも傷を…!」フッ
ガッ
香織「ぁぅ」ドサッ
ディアナ「もう遺言も命乞いも聞きませんよ」
ディアナ「あなたに対して慈悲を与えるのは無駄だと今のでよぅく理解しましたからね」チャキ
香織「はは…刃物持っててまだ殴ってる癖によく言う」
ディアナ「あ?」
香織「あーあ、さっき喉元ぶっ刺しときゃよかったのに」ニコッ
ガシッ
ディアナ「?」
ディアナ(何か掴んだ?)
グイッ
ディアナ「わっ」バシャァッ
ディアナ(天井にバケツ…?くそっ、魔力に気を取られてそこまで頭が回らなかった…)
ディアナ(普通の水…じゃないですよね多分)クンクン…
香織「おらっ!」ブンッ
ディアナ「濡れた所で動きは遅く…」ヒョイッ
香織「ふふ」グイッ
ディアナ「…まずい、しまっ
バチイッ
ドサッ
ディアナ「…あ、ぁぁ…」
香織「ゲームセット、ね」
ディアナ「す、スタン…ガン」
ディアナ「いつの間に…いや」
ディアナ(ただ闇雲に逃げてた訳じゃない…)
ディアナ(失敗した時の為に罠を張ってたのか…)
ディアナ「……んまと…騙され、た…!」
香織「ねぇ?今どんな気持ち、ねぇ?」
香織「たかが人間様に床舐めさせられてどんな気持ち?女神様ぁ?」
ディアナ「…くっ」
香織「…お気持ち表明しろっつってんだよ!」ドガッ
ディアナ「ぐぁっ」ドサッ
ディアナ「ぅ…」ビクビク
香織「はぁ…はぁ…、手こずらせてんじゃないわよ」
天理(ごめんディアナ…私のせいで…)
ディアナ「…いいえ、結果的に私が油断した事に変わりありません」
ディアナ「力を取り戻せてないとはいえ格下相手ならいざ知らずこんな愚者に不覚を取るなど…」
香織「誰が愚図ですって?」シュルッ
ガッ!
ディアナ「うあ゛っ!?」ギチギチ
香織「私は貴方と違って優しいからね」
香織「遺言でも、命乞いでも、何でも、いくらでも聞いてあげる」
香織「まぁ」チャキ
グサッ
ディアナ「あ゛あ゛あ゛ぁ゛!?」グリグリ
香織「貴方が生きている限り、だけどね」
ズボッ
ディアナ「はぁ…はぁ…」
香織「ふふ…どう?痛い?」
香織「私が受けた屈辱に比べればほんのちょ~っとくらいだと思うんだけど」
ディアナ「…っ」ギロッ
香織「…何、その目?まだ吠生意気な事する余裕あるの凄いなぁ」
香織「かっこいー」
香織「でもね、女神さん」
ディアナ「~っ!?」グサッ
香織「さっきのクソみたいな顔よりかは100倍マシだから安心して?」グリグリ
ディアナ「さっき…って…」
香織「なぁに?さっきのあの態度?」グサッ
香織「どの面下げて言ってるのぉ?」グサッ
香織「アンタがあたしの何知ってるのぉ?」グサッ
香織「偉そうに」グサッ
香織「上から目線で」グサッ
香織「良い子ぶってさぁ」グサッ
香織「大体さぁ元を辿ればなんで今こんな事になってるか分かるー?」
香織「半分は天理ちゃんのせいだよねぇ」
香織「あなたが」グサッ
香織「黙って」グサッ
香織「あたしの」グサッ
香織「言う事」グサッ
香織「聞いてりゃ良かったんだよ!!」グチャクチャグチャッ
ディアナ「う゛あ゛あ゛あ゛っ!!?」
香織「あのクソガキとお前が大人しく私の人形になってれば…」
香織「後ちょっとで私の理想の学校が完成する所だったのに」
香織「後少しで主人公になれたのに!」
香織「あんたは私から!」ズボッ
香織「友達も!」グサッ
香織「家族も!」グサッ
香織「信頼も!」グサッ
香織「地位も!」グサッ
香織「人生も!」グサッ
香織「全部奪ってったのよ!!」グチャグチャ
香織「はぁ…はぁ…」
ディアナ「……ぅ……ぇ…」ビチャ
香織「あらら…つい熱が入ってやり過ぎちゃった」
香織「…でもまだ結構元気そうなそんな事ないような…」
香織「自称(笑)なのかマジものなのか知らないけど女神っていうしねぇ」
香織「10箇所20箇所刺される位じゃ死なないのかな?」
ディアナ(そんな訳……ないでしょう……)
ディアナ(まずい…怪我はそこまででも無いが出血の量が…)
ディアナ(…視界が…ぼやけ、て…)
香織「まぁでももう飽きたし、疲れたからそろそろトドメ刺しちゃおっか」シュルッ
ゴォウッ
ガシッ
ディアナ「…そ………れ、は…」
香織「ふふ…天使の天敵は悪魔でしょ?」
香織「地獄のお鎌…なんちゃって」ガンッ
香織「重いから使いにくいけど一振りで人間の首くらいスパーって切れるんだって~」
香織「スパーって…どんな感じだろうね?」ニヤッ
ディアナ「…」ガタガタ…
香織「まぁこういうのは習うより慣れろ?百聞は一見にしかず?とも言うし…」
香織「実際にやってみないとわかんないよね~」ググッ
香織「って事で」
ディアナ「……め、ろ……っ!」
香織「バイバイ」ブンッ!
ズバッ
ディアナ「っ!」
ディアナ「………………」
ディアナ「………あ、……れ?」パチッ
香織「……へ?」ブシュゥ…
香織「え、なんで…私、頭…」
ディアナ(勢いよく振りすぎた…?)
ディアナ(いやそういう問題では…)
香織「え、ちょっと、待って、助けて」
ビュッ
香織「へ」ガッ
ボキボキッ
香織「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!!??」ミシミシ
ガコンッ
香織「いだい!痛い゛!いだい゛い゛い゛!!?」ゴロゴロ
ディアナ(…彼女の支配下にあるはずの羽衣が…)
ディアナ(なぜ主人の手首を折るような…)
「…あーーもう騒がしいですね…先生方に迷惑でしょう?」スタスタ
ディアナ「!?」クルッ
エルシィ「まぁお陰で何処に居るかすぐ分かったからいいんですけど」
エルシィ「いや~…すみません」
エルシィ「思いの外駆け魂とゴミ処理に手間取っちゃって」
エルシィ「遅くなっちゃいました」テヘペロ
ディアナ「……エルシィさん、あなた…桂木さんを運んでたんじゃ…」
ディアナ「何をしに…」
エルシィ「何って…やだなぁ」
エルシィ「助けに来たに決まってるじゃないですか」ニコッ
エルシィ「害あるものからにーさまを」
ディアナ「…!」ゾッ
エルシィ「さてと…しぶとい害虫の駆除は後にするとして」
エルシィ「とりあえず香織さんと色々お話ししたい事があるんですが」
香織「い゛だあ゛い!いだあ゛あ゛びぃぃ」ゴロゴロ…
エルシィ「…話せる状態じゃ無さそうですねぇ…」スタスタ…
香織「いだいだびい゛だ
グシャッ
香織「か゛あ゛ぁ゛ァ゛ア゛」バタバタ
エルシィ「ほーら、脚潰れたら手の痛み吹き飛んだでしょう?」
エルシィ「これで少しは元気に
香織「う゛ぅ゛ァ゛あ゛ア゛ぁ゛っ゛!?」ジタバタ
エルシィ「…」
ガシッ
香織「お゛ごっ!?」ミシミシ…
エルシィ「興奮しすぎですよ香織さん」
エルシィ「一旦冷静になってください」
エルシィ「ほら、肩の力抜いて、深呼吸して、リラックスですよ~」グググ…
香織「はぁっ…はぁっ……んぁあっ」
バッ
香織「ゲホッゲホッ…え゛おっ!」
エルシィ「どうですか?落ち着きました?」
香織「ぁ……ぁ、あ…?」
香織「…何が落ち着いただよ!」ガッ
香織「テメェが混乱招いてるんじゃねぇのかよ!?あぁん!?」
エルシィ「ぁぅぅ」
香織「アンタ言ったわよね?自分は言われた通り誘導してあげるから後は私の自由にしていいって!!」
香織「話が違うじゃねぇかよぉ!?」グラグラ
香織「言われた通り動いてくれねぇし勝手に自分から動いてるしさっきから私の邪魔ばっかしてんじゃん!」
香織「お前は!一体!何がしたいんだよおぉぉ」グラグラ
グシャッ
香織「ぐがばぁ゛あ゛ぁ゛!?」ドサッ
エルシィ「あー、もういいです。やっぱり貴方喋らないでください」
エルシィ「ゴミに喋る口とか顎は要りません」
エルシィ「口は…まぁ顎壊れたしいっか…」
香織「ぶぅ…ぶぶう゛…」
エルシィ「香織さん?」クイッ
香織「びっ…!」ビクッ
エルシィ「にーさまとの時間を割いてまで貴方と戯れたくなんかないので」
エルシィ「2点だけ私からお伝えしますね」
エルシィ「まず私はあなたににーさまを殺していいと言った覚えは無い」
香織「ぶぅ!?」
エルシィ「いや…いやいやいや」
エルシィ「なんで驚いた顔してるんですか?」
エルシィ「私があなたに同意したのはあくまで【にーさまへの復讐】だけですよ?」
エルシィ「いつ、どこで、私が、あなたに、にーさまを殺す許可を与えましたぁ?」
エルシィ「にーさまに触れる権限すらあなたには無いと思うんですけどぉ?」グイッ
香織「ぶっぶばぼぶっ!」
エルシィ「えーと何です?それは屁理屈だ…みたいな感じな事を言っているのかな?」
エルシィ「いや…でもこれはあなたの勘違いというか…あなたの頭がゴミ相応にオツムだったのかの2択じゃ無いですかね」
エルシィ「香織さんは本当、そういう所ですよ~?」
エルシィ「肝心な所で見落としをする、溝に溜まっている埃や汚れを放ってしまう」
エルシィ「だからすばしっこいゴキブリ1匹潰すどころか捕まえる事すら満足にできないんですよ?」クルッ
ディアナ「…っ…」
エルシィ「ディアナさんもそう思いますよね?」ニコッ
ディアナ「………」
エルシィ「…まぁゴキブリは返事なんかしないし聞いても無駄か…」
香織「ぶぼっ!ぶばびぼぶぶぼびばぼびぼっ!!!ぶぼぼっ!」
エルシィ「えー…何々?」
エルシィ「『それじゃああたしは邪魔な女を消す為にアンタにただ利用されただけだっての!?ふざけんじゃないわよ!』」
エルシィ「『この悪魔!外道!ブラコン!結婚しちゃえ!』」
エルシィ「…って感じで合ってますかね?」
香織「…!!」ゾッ
エルシィ「え?『そんな事言ってない?』」
エルシィ「またまたご冗談を。照れなくてもいいんですって」
エルシィ「まぁでもそうですねぇ…」
エルシィ「年端も行かない子どもをダシにして」
エルシィ「自分の言いなりにした上」
エルシィ「あわよくば面白半分に殺してみよう!」
エルシィ「…なんて到底笑えない冗談を悪気も無く平然と実行していた人間がこんな事どの面下げて言っているんだろうなぁ…」
エルシィ「とは思いましたよ?私」
香織「びぶ…」ガタガタ
天理(……)
エルシィ「…ただ、私も反省してます」
エルシィ「香織さんをいいように利用してたのは間違いだって」
エルシィ「今もの凄く後悔しています」
香織「…」プルプル
バキッ
香織「ばぼっ」
エルシィ「言葉を返すようで悪いんですけどぉ」
エルシィ「私あなたに言いましたよね?」
エルシィ「【殺すふりだけしてにーさまは絶対に傷つけるな】って」ドガッ
エルシィ「それなのにあなた私の話無視して躊躇なく襲いましたよね?」
エルシィ「この前も」ズドッ
エルシィ「ついさっきも」ドガッ
エルシィ「今日に限って言えば2回も」ドゴッ
エルシィ「あなたは」バキッ
エルシィ「わたしの」ベキッ
エルシィ「だいじな」ボキッ
エルシィ「にーさまに」ミシッ
エルシィ「傷をつけようとしたんですよっ!?」グシャグシャグシャ
エルシィ「ねぇこれっておかしいと思いません?」
エルシィ「おかしいですよね?」
エルシィ「私の言っている事何かおかしいですか?ねぇ?ねぇ?」
エルシィ「 ね ぇ ! ? 」グイッ
香織「ブ…ふ゛ぅ゛ぶ」ピクピク
エルシィ「はぁ…」
エルシィ「クズならクズなりに使えるだろうと誘ってはみましたけど」
エルシィ「紙クズの方がよっぽど遊べますよ、利用価値あります」
エルシィ「こればっかりは私の見込み違いでしたね、すみません」
エルシィ「で…えー、2つ目」
エルシィ「というか最後のお願いです」
エルシィ「今言った通り貴方邪魔なので死んでください」
香織「ぼ」
エルシィ「以上です」
香織「ぼぶぼびびべぼ!?」ジタバタ
エルシィ「いや…え、そんなに驚く事ですか?」
エルシィ「今の説明聞いてました?」
エルシィ「私あなたに言われてた通り協力してあげたんですよ?」
エルシィ「必要な物も舞台もぜーんぶ私が用意したんですよ?」
エルシィ「なのにあなた私の言う事全然聞かないじゃないですかぁ」
エルシィ「にーさま殺そうと必死じゃないですかぁ」
エルシィ「そんな危ない人放置する訳ないじゃないでしょう?」
エルシィ「それに…それを抜いてもあなた、殺されずになぁなぁで済まされるような状況じゃないですよね?」
エルシィ「罪も無い……あ、罪はありましたね」
エルシィ「にーさまにまとわりつく埃いくつかを祓ったのはファインプレーでしたけど」
エルシィ「実際殺人には変わりありませんし」
エルシィ「それにあなた…」
エルシィ「女王様気取りで小学校乗っ取って」
エルシィ「女の子数十人を殺そうとしたんですよ?」
エルシィ「何なら世界が崩壊する危険もあった」
エルシィ「コレ…ごめんなさいってそれとなく謝れば許されるような事、ですかね?」
エルシィ「私にはちょっと理解に苦しみますねぇ…」
エルシィ「それに、にーさまに散々警告されてましたよね?」
エルシィ「悪い事をするのはやめようねって」
エルシィ「あなたが今日今この時まで何の罰も与えられずのうのうと生きていられたのは」
エルシィ「にーさまの寛大な心あっての事ですよ?」
エルシィ「あの時にーさまが助けてくれなかったら香織さん」
エルシィ「復讐も何もあなた死んでいたんですよ?」
エルシィ「確かに生け贄にはされなかったでしょうけど」
エルシィ「10年も経ってこのザマじゃ、悪魔達全員に殺されてたでしょうねぇ…」
香織「ぶぅ゛…」
エルシィ「……分かります?」
エルシィ「あなたは10年間猶予を与えられていたんです」
エルシィ「私もね、あの時の事はにーさまがチャラにしてしてましたし…」
エルシィ「記憶が戻ってからもそれについては私からはお咎めは無しにしようと思ってたんですよ」
エルシィ「まぁ…あくまで私からは、ですけど」
エルシィ「それにさっきも言った通り貴方は頭の回る子でしたから」
エルシィ「今回の働き次第ではあなただけは見逃してあげようかとも考えてました」
エルシィ「…甘かった、ですね」
エルシィ「私も、香織さんも」ニコッ
エルシィ「そういう訳で…」ガシッ
エルシィ「そろそろ、ゴミ処理の時間ですっ」グググ
香織「へ゛は゛っ!?」ミシミシ
香織「ぶ…ぶぶは゛い゛……ふ゛ふ゛び、へ゛!」
エルシィ「ゆるしません」
エルシィ「反省する期間はとっくに過ぎました」
香織「ぶびばび!は゛ん゛べぼぶふ゛は゛ら!ぶぶばい゛っ!」ビキビキッ
エルシィ「なら死んでください」
エルシィ「お願いします」
香織「ぼべぶばばびっぼべぶばばびっぼべぶばばびっぼべぶばばびっぼべぶばばびっほ゛へ゛ふ゛は゛は゛ひ゛っ゛ほ゛へ゛ふ゛は゛は゛ひ゛っ゛ほ゛へ゛ふ゛は゛は゛ひ゛っ゛ほ゛へ゛ふ゛は゛は゛ひ゛っ゛ほ゛へ゛ふ゛は゛は゛ひ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛
グチャッ
ビチャビチャ….
エルシィ「大きいゴミは潰してなるべくコンパクトに」
エルシィ「お掃除の基本です!」エッヘン
エルシィ「それにしても…」ベチャ…
エルシィ「相も変わらず、ばっちいですね…それに臭い~…」プーン
エルシィ「これじゃにーさまに触るのはおろか近寄る事すらままなりません」
エルシィ「なんで人間って水分やたら多いんですか~…うぅ…」
エルシィ「…とまぁそれは置いといて」
エルシィ「確かもう1つそこに汚い粗大ゴミがあった筈ですけど」クルッ
エルシィ「あれ?」
プランプラン
ディアナ「はぁ…はぁ…」ダダ…
ガクッ
ディアナ「っぁ…」ガッ
ディアナ「はぁ…っ…は…ぁっ…」
天理(ディアナ!)
ディアナ「大丈夫です…この位、何でもありません…」ヨロヨロ…
ディアナ「それより…早くここから出ないと…」ダダッ
天理(窓とか…壁壊して出られないの?)
ディアナ「無理ですね、結界が張られてる…私力ではとても破れません」
ディアナ「さっき窓を開けた時は何でもなかったのに…あの短い時間で校舎全域にこんな強力な結界を張るなんて…」
天理(それじゃどうすれば…)
ディアナ「とにかく逃げましょう。どこか抜け穴か結界が弱くなっている場所があるかもしれません」
ディアナ「仮に無くても何とかできます!どうにかします!」
ディアナ「だから大丈夫、大丈夫ですから!天理っ」
天理(で、でも…)
ディアナ「このまま桂木さんに未練を残したまま死ぬつもりですか!?天理!」
天理(…でも、エルシィさんはどうするの…?)
天理(このまま放っちゃうの?)
ディアナ「…」
天理(さ、さっきのは黒幕が化けたか作った偽物かもしれないんだよ?)
天理(こんなに混乱したまま逃げちゃって桂馬君になんて言えば…)
ディアナ「…もう、奴については忘れなさい」
ディアナ「彼女は最早、私達の手には負えない化け物です」
天理(化け物って……)
天理(そんな…エルシィさんが……)
ディアナ「……」
ディアナ「とにかく下へ…階段を…」クルッ
エルシィ「…」ニコッ
ディアナ「……」
ディアナ「え」チラッ
スッ
エルシィ「これは私の持論なんですけど」ボソッ
サクッ
ディアナ「っ」ガクッ
ドッ
ガッ
ゴッ
ディアナ「ぅあ」ドサッ
ビチャ…
ディアナ「ぁ…ぅ……あ?」クルッ
ディアナ「……な…ん、で」ガタガタ…
ディアナ「わた……の…し…?」
エルシィ「口や顎だけじゃなくて」
エルシィ「ゴミに歩く足なんて、要りませんよね?」ビシャビシャ
エルシィ「あっ…でもそういえばあなたはゴキブリって設定でしたね」
エルシィ「女神って魔力が大きいですし、生命力はゴキブリ並みですから意外に当たらずとも遠からずの代名詞と思いません?」
エルシィ「ってあぁ、ゴキブリは喋りませんよね、えへへ、ごめんなさい。意味のない質問をしてしまって」
エルシィ「…まぁ、ゴミの山にしても、害虫の死に損ないにしろ」
エルシィ「階段の踊り場がこんなに汚れてたら、誰も使いたがりませんよね」
エルシィ「幸い今学校には誰も居ませんし…」
エルシィ「誰かが来ない内に」
エルシィ「何も無かったように」
エルシィ「綺麗さっぱり、私が片付けてあげます」
ディアナ「誰も居ないって…まだ先生方は職員室に…」
ディアナ(そうか、最初から…)
ディアナ(全部奴の掌の上だったのか…!)
カウ…カツ…
ディアナ「ぅ…っぅう…」
天理(ディアナ!)
ディアナ「っ…」
ディアナ(そうだ…コレは私1人の身体じゃない…)
ディアナ(私だけでなく天理の命も懸っている…!)
ディアナ(背負わされた人の命1つも守れないようでは姉様や妹達に合わせる顔が無い!)グッ…
ディアナ「例え足がもげても…私達には翼が…」ググッ
ズッ
ディアナ「あぁ゛」
エルシィ「翼?違うでしょう?」
エルシィ「貴方達の背中にあるのは」
エルシィ「ただ汚いだけの黒い羽です」ニコッ
ディアナ「……ぁ…」ピクピク
エルシィ「ふふ…」
天理(いや…やめて…)
天理(お願い……元に戻って…)
エルシィ「ええ、だから」
エルシィ「元に戻りました」スッ
「いやああああああああああああ
桂馬「天理!?」ガバッ
桂馬「はぁ…はぁ…」
桂馬「何か…今、嫌な声が…」
桂馬「いや、何かなんかじゃない…はっきりと聞こえた…」
桂馬「アレは…」プルプル…
桂馬「………ここは…?」キョロキョロ
桂馬「病院?なんで…」
桂馬(そうか…確か僕は窓から飛び降りて…エルシィに捕まって…)
桂馬「…よく分からん内に落ちてたと…」
桂馬「あのポンコツ…最後の最後で面倒な事を……」グググ
桂馬「……いやでもそうなると、なんで僕は元の身体に戻ってるんだ…?」キョトン
桂馬「落ちて怪我してここに運び込まれたなら歩美の身体の筈だよな?」チラッ
桂馬「なんで僕が入院してるんだ?」
桂馬「駆け魂はどうなったんだ?」
桂馬「学校は?」
桂馬「あ゛っ!?PFPは!?どこだ!?」ゴソゴソ
桂馬「回収しそびれた…!?まずい、下手したらまたあの現実年増担任に没収される!何なら壊れてるかのうせ
桂馬「はぁ…はぁ…」
桂馬「何か…今、嫌な声が…」
桂馬「いや、何かなんかじゃない…はっきりと聞こえた…」
桂馬「アレは…」プルプル…
桂馬「………ここは…?」キョロキョロ
桂馬「病院?なんで…」
桂馬(そうか…確か僕は窓から飛び降りて…エルシィに捕まって…)
桂馬「…よく分からん内に落ちてたと…」
桂馬「あのポンコツ…最後の最後で面倒な事を……」グググ
桂馬「……いやでもそうなると、なんで僕は元の身体に戻ってるんだ…?」キョトン
桂馬「落ちて怪我してここに運び込まれたなら歩美の身体の筈だよな?」チラッ
桂馬「なんで僕が入院してるんだ?」
桂馬「駆け魂はどうなったんだ?」
桂馬「学校は?」
桂馬「くそっ、何が何だか…」グシャグシャ
桂馬「あ゛っ!?そういえばPFPは!?どこだ!?」ゴソゴソ
桂馬「回収しそびれた…!?まずい…見つかったらまたあの現実年増担任に没収される!何なら壊れてる可能性もあるから最悪捨てられる…!」ポイポイッ
ガラッ
エルシィ「にーさま~!」ダダダ
桂馬「邪魔」バキッ
エルシィ「へぶ」ドサッ
桂馬「PFPPFPPFP…!」ゴソゴソ
エルシィ「う、ぅぅ…起きて早々ゲームの心配ですかぁ…」グスッ
エルシィ「打ちどころが悪かったらにーさま、死んでいたかもしれないんですよ!?」
エルシィ「というかもっと気にすべき事があるんじゃないですかぁ!?」
桂馬「それにしてもゲームにしても全部お前のせいだろうがこのダメデビル!!」くわっ
エルシィ「うぇぇえ…全くもってその通りなんですけど~」ドバババ
エルシィ「そこまで言う事無いじゃないですか~」
エルシィ「わ、私だって昨日必死で…慣れない事して体力がすっからかんだったんです…」ショボーン
桂馬「…」
桂馬「…そうだな」
桂馬「昨日はお前に色々と無茶させた」
桂馬「バテてお前が気絶したのは、お前のスタミナの無さを考慮しなかった僕の責任でもある」
エルシィ「あぅ」グサッ
桂馬「今回は許す」
エルシィ「」バアァァ
エルシィ「大好きですにーさま!」ダキッ
桂馬「だから邪魔だって」バキッ
エルシィ「なんで!?」ドサッ
桂馬「もういいだろ?後はPFP見つけたら話聞くからとりあえずお前も探せ」
エルシィ「ぶー」プクー
エルシィ「いいですよーだいいもーんだ」ガラッ
エルシィ「こんなもの窓から投げ捨てちゃいます!」つPFP
桂馬「何やってんだお前ぇぇぇぇ」プランプラン
ガバッ
桂馬「あるならあるでさっさと渡せよ!」
エルシィ「うぅ…にーさまが一方的に話してるから返すタイミングが見つからなかったんですよ~」
桂馬「ったく…」ピッ
桂馬「……電源は、つくな」ブゥゥン
桂馬「3、4回から落としてた筈だけど全く傷ついてなかったのか…?」
エルシィ「あー…ちょっとヒビ入ったり部品が取れてましたけど…」
エルシィ「にーさまが寝てる間に私が直しておきました!」ドヤァ
桂馬「ありがとう大好きエルシィ!」ダキッ
エルシィ「えへへえへもっと褒めてくれてもいいんですよえへへ///」
桂馬「でも部品が取れたって中のコンピューターとか大丈夫だったのか?」
桂馬「…一応ゲームのデータは無事だな」
エルシィ「あっ、挿していたゲームのデータ、少し消えてたので元に戻しておきました」
桂馬「ん、サンキュー」ピコピコ
桂馬「………え?」
エルシィ「?どうしました?にーさま」
エルシィ「手が止まってますけど」
桂馬「お前、今なんて…」
エルシィ「え、ですから…そのゲームのディスクちょっと落ちた衝撃でデータが破損しちゃったみたいなので」
エルシィ「にーさまがやってた所まで進めて元通りにしました!」エッヘン
桂馬「いや…その、え?」
桂馬「お前、なんでそんな事」
エルシィ「なんでって…」
エルシィ「私はいつもにーさまの側に居るんですよ?」
エルシィ「どのゲームがどの位まで進行してるとか嫌でも目に入っちゃうんですって」ケラケラ…
桂馬「あ、あぁ…そう…か、そうか」
エルシィ「おかしなにーさま」ニコッ
桂馬「なぁ…エルシィ。ところで、歩美と天理、ディアナは…?」
エルシィ「…あ」
エルシィ「駆け魂の方は無事捕まえられたので安心してください」
エルシィ「この勾留ビン、いつも使っているのよりも強力であっさり捕まえられました~」スッ
桂馬「あ…そうか、良かったな、うん」
桂馬「それでエルシ
ピッ
「次のニュースです」
「昨日、舞島学園で女性の遺体の一部と思われるものが発見されたとの事で警察が事情を調査しております」
「学校関係者によりますと…」
桂馬「…女性…遺体って…」
エルシィ「…」
「なお、現時点で生徒達に被害は確認されておらず、時間との関係性は無いと…」
桂馬「…全員、無事…なのか…」
桂馬「よ、よかった…」ガクッ
桂馬(歩美や天理は…他の奴らも助かったのか)
桂馬(となると女性の遺体は…学校の関係者じゃないとすると…)
桂馬(まさか犯人…ディアナが始末したのかそれとも…)
桂馬「…………え」
桂馬「待った、今…え、おかしく、ないか」
エルシィ「…どうしました?にーさま」
エルシィ「ローフの人は退治されたし、これでめでたしですよね!」ニコッ
桂馬「いや…そんな筈、ない…」
桂馬「犯人が殺されたとして…もう1人遺体が見つかる筈だろ…」
桂馬「ちひろの死体はどうなった……?」
エルシィ「…」
桂馬「生徒の無事が確認されたって…おかしいだろ」
桂馬「ちひろはどうした…死体は?…殺される前にあいつがこの前みたく消したのか?」
桂馬「見つからないならなんで家族や教師は躍起になって探してない…?例の錯覚魔法…というか記憶操作か…?」
桂馬「それに僕今バッチリ入院してるだろ」
桂馬「被害無しって…意味分からないぞ」
エルシィ「…………………」
桂馬「おい、エルシィ?」
桂馬「さっきからずっと聞いてるけど、歩美達は…どうした?」
桂馬「無事、なんだよな?」
エルシィ「にーさま、そんな事よりちょっと見てほしい物があるんですよ~」ゴソゴソ…
桂馬「…おい、何だよそんな事って…こっちは真面目に重要な事~を」
エルシィ「まぁまぁそう言わずに」ゴソゴソ
桂馬(デカいバッグだな…何入ってるんだ)
エルシィ「あったあった。えへへ…」
エルシィ「にーさま、実はですね」
コンコン
エルシィ「…」
桂馬「…誰だ」
チッ
桂馬「?おいエルシィ、今なんか言ったか?」
エルシィ「え?いえ、私は何にも…」
エルシィ「だ、誰でしょうね、ちょっと開けに行きますね」スタスタ…
桂馬「ちょっ…待て!また報復絡みの奴かも…」
二階堂「誰が誰に報復するって?」ガラッ
エルシィ「わわっ」
桂馬「げっとしま」
二階堂「今すぐここからとしまえんに飛ばしてやろうか?ええ?」
二階堂「少し様子を見に来たが、思いの外元気そうだな」
桂馬「なんでお前がここに…」
桂馬「…というかあんたは僕の事ちゃんと認識してるのか…?」
二階堂「は?何言ってんのお前…」
桂馬「…」
桂馬「何だ、話がややこしくなってきたぞ」
エルシィ「…」
二階堂「それより、私はお前の見舞いだけを目的に来た訳じゃない」
ガシッ
桂馬「ぉぅ」
二階堂「桂木、貴様昨日学校で何してた?」
桂馬「な、何ってほ、ほくらたら授業受けっれ帰っただけれふよ!?」
二階堂「嘘こけ、じゃあこの写真はなんだ!?」スッ
桂馬「!?!?!?」
二階堂「床という床にカッターが敷き詰められている上に壁にはトンネルまで開通している!」
二階堂「何をどうしたらこんな物理的に学級崩壊するんだ?おお?」ガッ
桂馬「いや。マジで!何も知らないから!マジで!」
桂馬(昨日の夜のアレ、写真撮られてたのかよ…ってかあんたも学校にいたの!?)
桂馬(テレビの映像見る限りどうにか直して誤魔化せてはいたっぽいけどぉぉ!?)ググッ
桂馬「というかなんで真っ先に僕の事疑うんですか!?」
桂馬「こんな物騒な事するような人柄に見えますか!?」
桂馬「僕はギャルゲー主人公顔負けのピュアな男子高校
桂馬「べふ」ドガッ
二階堂「そう見えるからわざわざ病院にカチコミに来てるんだろうがぁぁあ!」ガンガンガン
桂馬「いったいたいだぁ!?」
ビキビキッ
エルシィ「ちょ、ちょっと先生!それ以上は本当に冗談じゃ済まなくなりますよ!」
二階堂「私が冗談を言った事があると?」
桂馬「やばいって窓ガラスヒビ入ってるの割とやばいって」
桂馬「いわゆるゴリラ系ヒロインでもギャク補正無しでここまでしないって!!」
二階堂「周りから見れば単なる茶番にしか見えんだろうがな」
桂馬「窓割って生徒突き落とそうとするのを何処をどう見たら茶番って言えるんだこの現実年増ゴリラ!!」
二階堂「この期に及んで担任に向かってそんな舐め腐った態度を取るか…」
二階堂「いつかは更生するだろうと淡い希望を抱いていたがどうやら甘い考えだったらしい」チラッ
エルシィ「…」
桂馬「いだいいだい!待ってそれ以上強く押し付けないで潰れる!マジで潰れるから!」ギュゥゥゥ
二階堂「…………」
ググッ
桂馬「え、ちょっと?何拳なんか構えて…」
二階堂「っ…!」ブンッ
桂馬「いやああああああああっ!??」
二階堂「…」スッ
桂馬「?」
二階堂「ごめんね」ボソッ
桂馬「へ」
ドガッ
バリィィッ!
桂馬「ぅあっ…」ヒュゥゥ
エルシィ「にーさまっ!」
エルシィ「先生…なんで、なんでこんな事っ!」
ガシッ
バキィッ
エルシィ「……へぁ?」ビチャッ
二階堂「……」
エルシィ「ちょっ…なんぇ…椅子…」
二階堂「っ…」ブオッ
エルシィ「ばっ」ドガッ
エルシィ「びだっ」バキッ
エルシィ「やめっ」ズドッ
ドゴッベキッゴッメキッ
ドサッ
桂馬「いだぁぁぁあっ………」
桂馬「くないな…それ程」ヒリヒリ
桂馬「……なんであんな高い所から放り投げられたのにあざの1つもできてないんだ…?」
桂馬「というか思い切り殴られたのにあまり痛くない…いやまぁそれはいつものギャグ補正だとして…」
桂馬「さっきからガラスの破片諸踏んでるのに全然痛く無いんだが…」チラッ
桂馬「…浮いてる?刺さってる感触はあるのに…」
桂馬「一体何がどうなって…」ブルルル…
桂馬「は?」ゴオッ
桂馬「おい当た
キキィ…
桂馬「……る…」
ガチャ
「……」
桂馬「‥なんだ、僕に用か?マスクマン」
「…」スッ…
桂馬「ちっ」ダッ
ガシッ
「少々手荒いやり方ですが時間が無い故ご理解を」ググッ
桂馬「っい…放せ…」カチャッ
桂馬「へ」
「…」ズルズル…
桂馬「おま…なんだ、何だよこの手錠!?外せよ!」
「こうでもしないと暴れてでも私から逃げようとするでしょう、貴方は」ガチャ
桂馬「ぉふ」ポフ
「急ぎましょう。さっきも言いましたが」
「とにかく時間がありません」グッ
ブルルルル…
ガスッバコッドガッ
エルシィ「いだい!もうやめでください!先生!」
二階堂「…」ドガッドゴゥ
ブンッ
バキッ
二階堂「!?」クルクル(
ガンッ
二階堂(椅子の足を…)ゴロ…
二階堂「ちぃっ!」ブンッ
ヒョイッ
二階堂「ぁうっ」ガッ
ドガッ
二階堂「くっ…」ポタポタ…
エルシィ「やめろって言ってるんですけど」ビュビュッ!
二階堂「あ゛っ!?」ギュッ
エルシィ「…っはぁぁぁぁ…」ポリポリ…
エルシィ「せっかくいい雰囲気だったのに台無しになっちゃいました…」
エルシィ「おまけにセンサーも壊れちゃったし…まぁこんなのもう要らないけど」ボロッ
エルシィ「…どうしてくれるんですか?」グイッ
二階堂「…っ…」ググッ
エルシィ「今誰かにーさまを連れてどこかに行きましたよね?」
エルシィ「一体何処の馬の骨でどういう目的でどんな場所に向かっていったんですか?」
二階堂「…」プイッ
エルシィ「ん~…無視ですか」
エルシィ「じゃあ質問を変えましょう」
エルシィ「あなた、一体何者ですか」
二階堂「…………」
エルシィ「先生、さっき私を椅子で殴る時真っ先に頭を狙いましたよね」
エルシィ「もっと言うと左側」
エルシィ「そう、丁度センサーがある所」トントン…
エルシィ「なーんで最初にセンサーを壊そうとしたんですか~?」
エルシィ「まだ私に協力者が居る場合を考えて通信手段を断とうとしたんですよね~?」
エルシィ「…で、なんでこれがそんな重要なものだとただの人間が知ってるんですかね?んん?」
エルシィ「それと…今病院には結界が張られてて、だーれも入れない状態の筈なんですけど」
エルシィ「先生はどうやって入ってきたのかなぁ?」ガシッ
二階堂「…それ位自分で考えろ」
エルシィ「…………あくまでシラを切るつもりですか」
エルシィ「ここまで来て強情というかなんというか、肝が座ってますねぇ…先生」
エルシィ「まぁもっとじっくり時間をかけて尋問をしたい所ですけど」
ザクッ
二階堂「~っ!!?」ビクッ
エルシィ「早くしないとにーさまに何をされるか分かったもんじゃないですからね」
エルシィ「ちゃんと答えないと10秒に1回グサってやっちゃいますよ~グサって」
エルシィ「まぁ誰かさんの真似事みたいで気に食わないですけど」
エルシィ「そうこう言ってられないので」グサッ
二階堂「…お前は…」
二階堂「お前こそ、なんでこんな事をして
グサッ
二階堂「ぁっ」
エルシィ「質問を質問で返されても困るじゃないですかぁ」グチャグチャ
エルシィ「私があなたの問いに答える義理があるとでも?」
二階堂「…」
エルシィ「……はは~ん?もしかして元々あなたは私とそういう関係だって遠回しに言ってくれてるんですか?」
二階堂「…当然だ」
二階堂「私はお前の教師だ」
二階堂「生徒の悩みを聞くのは先生の責務だろう」
エルシィ「別に悩みなんて何も無いんですけどねぇ……」
エルシィ「…あー、そうでもないな、結構ある」アセアセ
エルシィ「まぁそうですね…結論から言うと私の目的はアレですよ、アレ」
エルシィ「にーさまの攻略、みたいな」
二階堂「…」
エルシィ「何か巷ではラスボスだの最終兵器だのって騒がれているんですけど」
エルシィ「人間界の支配とか、旧悪魔の復興とか、そんなの興味ないです」ニコッ
エルシィ「どれだけ短くても、悪い人に追われてた時間なんかよりにーさまと楽しく過ごした時間の方が濃密で、素敵で、幸せな時間ですからね」
エルシィ「ですので、にーさまには是非とも義妹ルートの攻略をお願いしたいんですけど~」
エルシィ「にーさまってばゲームに夢中で現実の方はからっきしなんですよ~」ブーブー
エルシィ「後おおよその行動原理がギャルゲーなので全然私の方に気を引いてくれないんですよ~」
エルシィ「私からアクションを起こしても素っ気なく返して進展のしようが無いし…」プクー
エルシィ「で、まぁじゃあどうしようかなぁ…ってあれこれ考えたんですけど」
エルシィ「基本的ににーさまはパラメータが高いせいで付け入る隙がないんですよね」
エルシィ「なので私の好感度を上げる方法じゃなくて、上げやすくする方法を考えました」
二階堂「上げやすく?」
エルシィ「ゲームは基本にーさまにおける武器や長所なんですけどそれと同時に弱点でもあるんですよね」
エルシィ「まずゲームができない環境には適応できませんし」
エルシィ「ゲームの内容が酷いと嘆いたり泣いちゃったりします」
エルシィ「例えば、ゲームのヒロインが殺されたりした時とか…」ニコッ
二階堂「……お、前…」
エルシィ「事実、以前精神介入でにーさまが目の前で推しの娘を殺された時…」
エルシィ「目から血を流して発狂してました…滅茶苦茶怖かったんですよぉ…」ガタガタ
エルシィ「それで、にーさまはギャルゲーを基に今まで色んな女の子を助けてきた訳で」
エルシィ「恐らく同じくらいそれはに思い入れがあると思うんですよ」
エルシィ「これは応用できるんじゃないかなぁ……って考えて」
エルシィ「にーさまが自分の攻略したヒロインばかりが次々に殺されていると知れば」
エルシィ「そもそも目をつけられたり、救えたかもしれないのに見殺しにしたと自身を責めるでしょうし、死んだ事自体にかなりのショックを受けるでしょう」
エルシィ「そんな傷、ちょっとやそっとゲームをやるだけじゃ癒せません」
エルシィ「ならどうするか?」
エルシィ「…私が優しく手を差し伸べてあげればいいんです」
エルシィ「優しい言葉で心を慰めてあげればいいんです」
エルシィ「そうすれば、にーさまは私の方を振り向いてくれる」
エルシィ「私の事を快く受け入れてくれる」
エルシィ「ふふ…なんて素敵な脚本なんでしょう」
二階堂「…」
エルシィ「…あ、でもでも、勿論私が殺したら本末転倒ですからそこは体よく、利用できる雌犬を使って始末しましたよ!?」
エルシィ「私、誰にも手は出してないですから!かみにーさまに誓っていいます!」
エルシィ「いや~にーさまの好感度は上がるし、周りのゴミ掃除も簡単に済ませられるしまさに一石二鳥ですよね!」
エルシィ「私はいわば旨味を引き立てる隠し味、スパイスのような役割ですし…」
エルシィ「掃除と料理しか取り柄の無い私にうってつけのシナリオだと思いません?」
二階堂「っ」ペッ
ピチャッ
エルシィ「……」ネチョ…
エルシィ「挑発、のつもりですかね?」
二階堂「そのまんまの意味だよ、反吐が出る」
二階堂「心から好きな奴にすすんで不幸になってもらおうなんて馬鹿が何処にいるんだよ」
エルシィ「不幸になって欲しいなんて微塵も思ってませんよ?」
エルシィ「もとより私はにーさまに幸せでいて欲しいと思っていますからね」
エルシィ「ただ私は凸凹の地面を整地して、すっきりさせようとしているだけなんですよ?」
エルシィ「荒らしてる訳じゃないんです」
エルシィ「にーさまの心の穴を私の愛情で埋めてあげているんです!」
エルシィ「…………まぁ過剰に与えすぎると盛り上がって結局凸凹のままになっちゃうかもですけど」
エルシィ「プラスマイナスでプラスになるのは確実だし構いませんよね」
エルシィ「それに…それでも不幸になったりその心の穴…スキマが残っても」
エルシィ「私が消してあげます」
二階堂「………」
エルシィ「嫌な思い出、悲しかった事、怖い記憶」
エルシィ「ぜーんぶ、私が無かった事にしてあげます」
エルシィ「そうすれば、にーさまが困る事は何も無くなりますよね?」
二階堂「…聞いた私が馬鹿だった」
二階堂「狂ってるよ、お前」
エルシィ「狂ってたとして何か問題でも?」
二階堂「ああ…困るね」
二階堂「私はお前を正しい方は導く責任がっ!?
グサッ
エルシィ「はーい、静かになるまで3分かかりました~」グチャグチャ
二階堂「あ゛あっ!?」
エルシィ「あなたは私とにーさまから貴重な時間を3分も奪ってくれました」
エルシィ「そういうことで3×2×6+言う事を聞かなかった罰諸々で4」
エルシィ「だからえーと…」ヒーフーミー
エルシィ「50回刺しまーす!」
二階堂「ごじゃ…っああ゛!?」グサッ
エルシィ「先生は意地でも時間稼ぎしたいみたいですけど~」グサッグサッ
エルシィ「そんな事した所で意味ないですよねぇ?」グサッグサッグサッ
エルシィ「早く吐いちゃった方が身の為ですよ?あ、吐きはしないでくださいね?」
エルシィ「ほら」グサッ
エルシィ「ほら」グサッ
エルシィ「ほらほらほらっ!」グチャグチャグチャ
二階堂「あ゛……ぁぁっ」ガクッ
エルシィ「ありゃりゃ、まだ10回くらいしか終わってないんですけど?」
エルシィ「気絶したら起こすの面倒くさいので殺っちゃいますよ?」
二階堂「……ぇ……ぅ…ふ」
二階堂「ふ、ふふ…」
二階堂「はははっ…!」
エルシィ「…気が動転しておかしくなったんですかね」
エルシィ「なんで急に笑い始めたんです?」
二階堂「なんでって…ぷぷ、笑うなって方が無理あるだろう!」
二階堂「妹冥利に尽きるってか!?」
二階堂「言ってくれるよ!ははは」ケラケラ
エルシィ「???……何が言いたいんです?」
二階堂「はぁ…いや…可哀想にと感じてな」
二階堂「こんな化け物の面倒を見なきゃならん桂木を思うと」
二階堂「哀れで哀れでしょうがない」
エルシィ「はぁ…だから?」
二階堂「ぶっ…まだ分かんないのかよ」
二階堂「鈍くて固い頭なのは相変わらずだなぁ、お前」
エルシィ「……」
二階堂「さっきも言ったろ、私にはお前を正さなきゃならん義務があるって」
二階堂「教師というか…上司というか…」
二階堂「妹の不出来が兄の責任なら」
二階堂「当然、お兄ちゃんの妹である私もお前を矯正しなきゃだろ?」
二階堂「な?義姉ちゃん」
エルシィ「…」
二階堂「…….あ、でも厳密にはお前は私の姉なのか?でも歳は私の方が上だし時系列的にも私が先だよなぁ」
二階堂「うーん、どうおも
ガシッ
二階堂「ぅ…かあ゛っ!?」ミシミシ…
エルシィ「……うるさいハエなので、そろそろ殺そうかと思いましたが」
エルシィ「気が変わりました」
エルシィ「出来る限り苦しめてあげるので頑張って喘いでくださいね?」グググッ
二階堂「あ゛……ぁぁっ」ガクッ
エルシィ「ありゃりゃ、まだ10回くらいしか終わってないんですけど?」
エルシィ「気絶したら起こすの面倒くさいので殺っちゃいますよ?」
二階堂「……ぇ……ぅ…ふ」
二階堂「ふ、ふふ…」
二階堂「はははっ…!」
エルシィ「…気が動転しておかしくなったんですかね」
エルシィ「なんで急に笑い始めたんです?」
二階堂「なんでって…ぷぷ、笑うなって方が無理あるだろう!」
二階堂「妹冥利に尽きるってか!?」
二階堂「言ってくれるよ!ははは」ケラケラ
エルシィ「???……何が言いたいんです?」
二階堂「はぁ…いや…可哀想にと感じてな」
二階堂「こんな化け物の面倒を見なきゃならん桂木を思うと」
二階堂「哀れで哀れでしょうがない」
エルシィ「はぁ…だから?」
二階堂「ぶっ…まだ分かんないのかよ」
二階堂「鈍くて固い頭なのは相変わらずだなぁ、お前」
エルシィ「……」
二階堂「さっきも言ったろ、私にはお前を正さなきゃならん義務があるって」
二階堂「教師というか…上司というか…」
二階堂「妹の不出来が兄の責任なら」
二階堂「当然、お兄ちゃんの妹である私もお前を矯正しなきゃだろ?」
二階堂「な?義姉ちゃん」
エルシィ「…」
二階堂「…….あ、でも厳密にはお前は私の姉なのか?歳は私の方が上だし時系列的にも妹になったのはsaga私が先だよなぁ」
二階堂「うーん、どうおも
ガシッ
二階堂「ぅ…かあ゛っ!?」ミシミシ…
エルシィ「……うるさいハエなので、そろそろ殺そうかと思いましたが」
エルシィ「気が変わりました」
エルシィ「出来る限り苦しめてあげるので頑張って喘いでくださいね?」グググッ
二階堂「あ゛……ぁぁっ」ガクッ
エルシィ「ありゃりゃ、まだ10回くらいしか終わってないんですけど?」
エルシィ「気絶したら起こすの面倒くさいので殺っちゃいますよ?」
二階堂「……ぇ……ぅ…ふ」
二階堂「ふ、ふふ…」
二階堂「はははっ…!」
エルシィ「…気が動転しておかしくなったんですかね」
エルシィ「なんで急に笑い始めたんです?」
二階堂「なんでって…ぷぷ、笑うなって方が無理あるだろう!」
二階堂「妹冥利に尽きるってか!?」
二階堂「言ってくれるよ!ははは」ケラケラ
エルシィ「???……何が言いたいんです?」
二階堂「はぁ…いや…可哀想にと感じてな」
二階堂「こんな化け物の面倒を見なきゃならん桂木を思うと」
二階堂「哀れで哀れでしょうがない」
エルシィ「はぁ…だから?」
二階堂「ぶっ…まだ分かんないのかよ」
二階堂「鈍くて固い頭なのは相変わらずだなぁ、お前」
エルシィ「……」
二階堂「さっきも言ったろ、私にはお前を正さなきゃならん義務があるって」
二階堂「教師というか…上司というか…」
二階堂「妹の不出来が兄の責任なら」
二階堂「当然、お兄ちゃんの妹である私もお前を矯正しなきゃだろ?」
二階堂「な?義姉ちゃん」
エルシィ「…」
二階堂「…….あ、でも厳密にはお前は私の姉なのか?歳は私の方が上だし時系列的にも妹になったのは私が先だよなぁ」
二階堂「うーん、どうおも
ガシッ
二階堂「ぅ…かあ゛っ!?」ミシミシ…
エルシィ「……うるさいハエなので、そろそろ殺そうかと思いましたが」
エルシィ「気が変わりました」
エルシィ「出来る限り苦しめてあげるので頑張って喘いでくださいね?」グググッ
二階堂「ぐぁっ、ぅ……あ゛っ!?」ミシミシ…
エルシィ「…おっと、危ない危ない」
ズドッ
二階堂「ぉ゛あはっ!?」メキメキ…
エルシィ「ふふ…」スポッ
二階堂「げほっぇほっ…ぅぇ…」ビチャ…
エルシィ「つい力を入れすぎて首の骨折る所でしたー」
二階堂「…おっぇ…ぐ…」
エルシィ「…へ~、ふーん、なるほど、そうですかそうですかそういう事ですか」
エルシィ「つまり室長は私が居ない間ににーさまをつけ狙っていたと」
エルシィ「一時的にとはいえ私から妹という立場を奪った分際で」
エルシィ「よくそんな事を平然とやってくれますねっ」ガッ
二階堂「がっ…ぁぁ…」ミシミシ…
エルシィ「ああ…胸がとても苦しいです」ググッま
エルシィ「苦しくて苦しくてはち切れそうです」グググッ
エルシィ「心臓が破裂して死んじゃいそうです」ググググ
エルシィ「…こんな感じにねっ!」ドガッ
二階堂「ぶあ゛っ!?…」
グチュ
二階堂「ぅ…ぼぉえ!……おぁっ」ドバッ
エルシィ「ふふふ、いっぱい吐いちゃって」
エルシィ「良かったですね、室長」
エルシィ「これでダイエット商品使わなくても体重かなり減りますよ?」
エルシィ「これでにーさまもイチコロです」
エルシィ「まぁ……この後無事に会えたら、の話だけど」
エルシィ「ねっ!?」ガシッ!
二階堂「ぇあ゛!?……ぃ…お」ミチミチ…
エルシィ「ふふふ…安心してください」
エルシィ「もっと吐き出させて、もっと痩せさせて」
エルシィ「貴方の内臓すっからかんにしてあげます」ググッ
エルシィ「お医者様に頼んでこの部屋……というか病院自体貸し切らせてもらってるので」
エルシィ「いくらでも泣き叫んで構いませんし、いくら吐いても誰も気にしないので…思う存分嬲られてください」
ブルルル
「…」
桂馬「おい、いい加減話せよ」
桂馬「ていうか放せ」
桂馬「誘拐だか拉致だか知らんがこんな事してただで済むと思ってないだろうな?」
桂馬「僕なんかじゃなくてそこら辺に居る現実女でも攫っておけ」
「…すみませんね、何せ私もみじマークですから」
「頭が会話の方に向いて事故でも起こしようものなら色んな意味で私破滅してしまいますので」
桂馬「えぇ…」
「もうすぐ運転しながらでもゆっくり話せる所は行けるのでそれまで我慢してください、桂馬君」
桂馬「…あんた、僕の名前…いや僕の事自体知ってるのか?」
「当然です、忘れられる訳がありません」
「あなたにはしても返し切れない恩がありますからね」
「まだ混乱してるでしょうし詳しく話す時間も無いですが…」
「今は2つだけ言うので、それだけは信じて下さい」
桂馬「…?」
「まず第一に私…いや、私達は貴方の味方です」
「次にエルシィさん」
「あなたの妹さんはあなたの味方です」
桂馬「……はぁ」
桂馬「それなら何1つ困る事は無い気がするが」
「正確に言えば…」
「エルシィさんはあなただけの味方です」クルッ
桂馬「…何が言いたい?」
「…」
桂馬「……なんだよ、それ」
桂馬「それはアレだよな?自分の言葉を信じろっていうのが最初のお願いで最後のはジョークかなんかのとんちって解釈でいいよな?はは…」
「恐らく、桂馬君なら何かそれを決定づけるものを掴んでいる筈です」
桂馬「いや…確かに」
桂馬「さっきはちょっと様子がおかしかったが…」
桂馬「でも……そんな」
「…焦る必要はありません」
「まだ君には考える余地がある」
「今すぐ受け入れろとは言いませんが頭の片隅のゴミ箱の中にでも入れておいてください」
桂馬「入れたら消えちゃうだろ」
「ゴミ箱に入れてもゴミは消えませんよ」
「貴方は重度の潔癖症だ」
「嫌な汚れはすぐに消したがっている」
桂馬「……」
二階堂「がはっ!ごぼぉっ!?」ズドッドガッ
エルシィ「えい」ドゴォッ
ミシッ
二階堂「っおばっ」ビチャビチャ…
二階堂「ぁぁっ……あ゛っ…」ビクビクッ
エルシィ「あー…お腹蹴られすぎて痙攣しちゃってますねこれ」
エルシィ「うーん、もっと楽しみたいし…」
エルシィ「面倒くさいけど再生してあげますか」フッ
二階堂「…っげぼっ!げほっ!おえっ…」
エルシィ「ふふふ、楽には殺さないってさっきも言いましたよね」
エルシィ「あなたは放置すると何をしでかすか分からなくて怖いですからね」
エルシィ「私にとっては最重要危険人物なんですよ、室長は」
エルシィ「なので自分の立場を弁えられるように私が調教してあげます」
エルシィ「それが私とにーさまを繋ぎ合わせてくれたあなたへのせめてもの…いえいえ精一杯の恩返しですから」
二階堂「心にも……ぅぇ…い事言うな…」
エルシィ「え、そんな事ないですよ!」
エルシィ「私をかみにーさまの所へ導いてくれたのは紛れもない室長ですから」
エルシィ「こればかりは貴方の功績ですよ、これだけですけど」
エルシィ「まぁでも、私よりも長くにーさまの傍にいて…ましてやたぶらかそうとしていたとなると」
エルシィ「結局チャラになるどころか、お釣りが来るレベルですけどね」
二階堂「……」
エルシィ「言いたい事は終わりですか?」
エルシィ「そろそろ再開したいんですけど」
エルシィ「早くサンドバッグに戻ってください」スッ…
二階堂「……」
二階堂「こっちの台詞だバーカ」ニヤッ
カッッ
エルシィ「眩っ…」ゴオッ
エルシィ(しまった…けっか
ビュビュビュッ
エルシィ「うあっ!?」ガガッ
エルシィ「羽衣…!?」
二階堂「ぉぇふ……へへ」
二階堂「結界を張るのと、お前が周りから気を逸らすのに随分時間がかかった」
二階堂「こっちは鼻から時間稼ぎをするつもりなんて無ぇんだよ!」
リューネ「いやまぁ、時間稼ぎには違いなかったっしょ…あんた」
エルシィ「…!ヴィンテージ…っ」
エルシィ「くっ…こんかもの、すぐに…」グッ
エルシィ「…ぁ…力が、入ら…」プルプル…
二階堂「そいつはついさっき作った旧地獄と新地獄の魔術を組み合わせた即席の結界だ」
二階堂「羽衣にも同じものを張っている。外せない前提で複雑というかグチャグチャな構造だから普通にやっても解除できないぞ」
二階堂「まぁお前ならすぐに壊せるだろうけど」
二階堂「その様子を見ると大丈夫みたいだな」
リューネ「ふへへ~」
二階堂「こほっ……何だよ」
リューネ「隣の部屋から覗いてたけどさぁ」
リューネ「色っぽかったよ~あんた」
リューネ「この後私にもヤらせてくれよっ」
二階堂「馬鹿かよ…もう懲り懲りだっての」
リューネ「ちぇ~なら実力行使にするか…」
二階堂「お前なぁ…」
エルシィ「室長、あなた…こんな事して後でどうなるか…」
エルシィ「テロ組織に加担するなんて許される事じゃありません!」
二階堂「おーおー、今更私の心配かい、嬉しいね」
二階堂「安心しなよ、ヴィンテージの元締めは冥界のお偉いさんだ、いやでも私を捕まえられない」
エルシィ「!?」
二階堂「お前が暴走したせいで、計画は台無し」
二階堂「利害の一致って事でこっそり一時的ではあるけど手を結んだ訳だ」
二階堂「それに…アレだぞ?私はドクロウじゃなくて記憶と力をある程度引き継いだだけの二階堂先生だ」
二階堂「ただの人間が悪魔に逮捕される訳ないじゃん」
エルシィ「っ…お前……」
ズバッ
ドサッ
二階堂「ふぅ…ようやく解放された」
エルシィ「くっ…」
二階堂「…何度も言ってるだろ」
二階堂「家族のケツ拭きを家族が請け負うなんて、万国共通の常識だろ」
二階堂「それに、お前が言った通り、私がお前に間違った就職先を選んでしまったのは事実だからな」
二階堂「教師とか上司とか、桂木家としてもそうだが」
二階堂「何より親としての責務がある」
二階堂「何がなんでも止めたかったし、止めれなくてもお前を正気に戻したかった」
二階堂「でも、甘い考えだったって…言ったよな、私」
エルシィ「ふ、ふざけるな!私がにーさまと愛し合うのがおかしいって言いたいの!?貴方達の価値観で勝手に私達を否定しないでっ!」
二階堂「違うよ、人に対しての愛情が芽生えたなら万々歳だ」
二階堂「ただ…惜しむらくは向く方向が間違っていたというか、やり方が間違っていたというか…」ポリポリ…
二階堂「まぁ…そういう事が大部分だったが当然私の思いはそれだけじゃない」
エルシィ「はぁ?」
二階堂「忘れたのか?」
二階堂「お前は私怨で私の数少ない親友に手をかけた」
二階堂「そんなの黙って見過ごす訳無ぇだろうが」パシッ
エルシィ「……ぁぅ」
二階堂「…っ」ポタポタ…
二階堂「怒りを通り越して、悲しくなったよ」
二階堂「私はお前をどうすればいいって本気で悩んだ」
二階堂「だがさっきまでのお前の言い分を聞いて吹っ切れたよ」
二階堂「覚悟もできた」
二階堂「お前はこの場で、完全に、確実に、息の根を止めるべきだ」
エルシィ「ひっ…」
リューネ「あの~…そろそろ殺りたいんすけど…」クルクルッ
リューネ「お喋りもういい?」パシッ
二階堂「ああ」
二階堂「言いたい事は終わりだ」
二階堂「どうぞ遠慮なく」
エルシィ「ちょ、ちょっと待ってくださいよ室長!私が死んだらにーさまが泣いて思わず自殺しちゃうかもですよ!ね!?」ググッ
二階堂「心配するな、私や白鳥で説得してみせる」
二階堂「あいつは馬鹿だが理解力と適応力はあるからな」
二階堂「できなくても何とかするさ」
エルシィ「そ、そうだ!私室長の為に色々ダイエットに使える物探してたんですよ!ちょっと見せたいのでちょっとだけ放してくださいよ!ね!?」
二階堂「問題ない。ここ最近働き詰めだったからな」
二階堂「もうくたくたのガリガリだ」
二階堂「ダイエットも何もしばらく何も喉を通らないだろ」
エルシィ「ねぇ、ちょっと…嘘ですよね?冗談ですよね!?室
二階堂「もういい殺れ、リューネ」
リューネ「了かーい」カチカチ…
ブンッ
エルシィ「いやっ…」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」
ブルルル…
ビッピッ
「私です。ええ、後1分で着くので」ピッ
「はい、よろしくお願いします」
ピッ
桂馬「……もみじが運転中に電話なんかするなよ」
「仕方がないんです。私の指示無しには開けられませんから」
桂馬「開ける…?」
「ほら、あそこです」
桂馬「…こんな森の中の草原に噴水…?」
ギギィ…
桂馬「う、動いた…」
桂馬「穴から少し明かりが見えるぞ」
「隠し通路です。直通ですしこれなら安全に移動できます」
「他にもダミーも兼ねていくつか作っていますけどね」
桂馬「……あんたマジで一体なんなんだ…?」
「ふふ…あなたを助ける為とさっきから言っているでしょう」
「でなければなけなしの金を払ってまでこんな事はしません。というかできません」
桂馬「…」
「急ぎましょう。私有地ですし見つかる心配は無いと思いますが」
「一刻も早く私の屋敷へ行って詳細も話したいので」
ブルルル…
桂馬「……思ったより長いな」
「念の為少し遠い所に設置しましたからね」
「例え遠回りでも発見されにくい事を最優先にしているので」
「でも、もうすぐですよ。この調子なら後5分ちょっと
「っ!?」キキーッ
桂馬「うおあっ!?」ドッ
ドガアッ
桂馬「なんだ!?なんで止めた!?何の音だ!?」
「よく分かりませんがトンネルの上に何かやってきました」
「人間ではあり得ないスピードでこちらに近づいていた…」
桂馬「飛行機でも落ちてきたのか?」
「私もそう思いたいですけどね…」
カツ…カツ…
「どうやら違うみたいですよ」スッ
桂馬「おい…あんたそれ」
「ふふ、まぁ襲われたら使う余裕も無く殺されるとは思いましたが念の為」
桂馬「こんな所で手榴弾なんか使うなよ…」
「そういう時の為のトンネルでもあります」
桂馬「嘘だろ…」
カツ…カツ…
「……」
桂馬「…」
二階堂「くっ…」ヨロ…
「二階堂さん…」
桂馬「誰か抱えてるぞ…」
桂馬(頭にあるドクロ…エルシィとかハクアと同じ駆け魂隊か…?)
「うぅ…」ボロボロ…
「彼女は確か…エルシィさんの友人のフィオーレさん、でしたか」
桂馬「2人共酷い怪我だぞ…」
「…」
ウィィ…
「どうされました!?二階堂さん!」
「エルシィさんの方は!?」
二階堂「…すまない、あと一歩の所でしくじった」
二階堂「あいつ、予め病室に爆弾を仕掛けていた…!」
桂馬「爆…え?」
「……」
二階堂「取り逃した上反撃にも遭った」
二階堂「悪いが私達を屋敷に連れて行ってくれ」
二階堂「無理ならこいつだけでもいいからそっちに乗せて治療してやってくれ!」
フィオーレ「ぅっ……」
「………」
桂馬「おい…ちょっと」
「…」
「仕方ありませんね」
二階堂「悪いな、助かる…それで
ガッ
キキーッ
桂馬「!?」
「逃げますよ桂馬君」グルッ
桂馬「逃げるって何言って…」
「いいから掴まって!」ググッ
ブルルル…
二階堂「あっおい!待ってくれ!おい!!」
二階堂「………」
ドサッ
フィオーレ「」ピクピク
ムクッ
フィオーレ「ハァ~~~」パンパンッ
フィオーレ「なんでこう…皆、私とにーさまの邪魔をするんですかなぁ」
二階堂「私はただお兄ちゃんと仲良くなりたいだけなんだぞ」キリッ
二階堂「なんちゃって」
二階堂「……乗せろって言ったんですけど」
フィオーレ「戻る気なさそうですねぇ…」ポリポリ…
桂馬「どういう事だよ!なんで2人を置いてった!?」
「………」
「彼女、いや彼女達には数分おきに私の方に連絡をするように伝えてあります」
「最後に通知が来たのは20分前でした」
桂馬「じゃあ…あいつらは偽物だって事なのか?」
桂馬「忘れたか手が空かなかっただけかもしれないだろ!?」
「私も…信じたくはありませんでしたが」
「…さっき彼女、爆弾が仕掛けられているというような事言っていましたよね」
桂馬「あ…ああ、本当なのか、アレ」
「嘘に決まっているでしょう」
「さっきも言いましたが彼女はあなたの味方です」
「仮にも入院している病院にそんな危ない物を持ち出す訳ないでしょう」
「それに…二階堂さんの話ではそういう危険物から守る為に建物の内外に結界が張り巡らされていたと言っていました」
「そもそも意味が無い筈なんですよ…」ググッ
桂馬「それ……って」
「……そういう事です」
桂馬「いやどういう事だよ!さっぱりだよ!」
「そんな筈ないでしょう!?あなたは都合の悪い現実から目を逸らしているだけだ!!」
桂馬「……」
「…とにかくここから出ます」
桂馬「出て…屋敷に向かうのか?」
「いえ、多分…先回りされてますね。あれだと」
「さっき電話に出てくれた者も本物かどうか…」
桂馬「どうするんだ、それじゃ…」
「………」
ズドォッ!!
「!?」ガッ
桂馬「だっ!」ガッ
「くっ…」キキーッ…
ドガッ!
「がっ」ガッ
桂馬「うあ」ドッ
シュゥゥ…
桂馬「っ…今度は…なんだ………」チラッ
オオオオオ…
桂馬「………何…ぁ、れ…」
「……あれがいわゆる魔獣というやつですか…」
「レーダーには映ってませんね…」
「…それにしてもそこそこ深い所まで掘ったつもりですが」
「たった一撃で…」
桂馬「冷静に解説してる場合か!」
桂馬「とにかくここから逃げ…」
カチャカチャ…
桂馬「…おい、どういう意味だコレ」パチンッ
「今の衝撃でエンストを起こしました」
「もう車は動かせません」
「君は今すぐ逃げなさい」
桂馬「あんたはどうするんだ」
「…ただ2人で闇雲に逃げてもすぐに追いつかれるだけでしょう」
「手榴弾1、2個じゃ心もとないですからね」
桂馬「待てよ、自分で何言ってるのか分かってるのか?」
「安心してください」
「たかが人間のおもちゃで悪魔が倒せるとは到底思えませんが…」
「これだけ大きな爆発でここを崩せば君を外へ逃がす位の時間は稼げる筈です」
桂馬「そ、外に逃げるって…何処に逃げれば外に出れるんだよ!?」
桂馬「万一出れたとしてその後どうすればいいんだ!?」
「……」
「このままさっきの入り口に戻るように道なりを進んでいけば、途中で隠している非常口に辿り着く筈です」
「このカードを持っていって下さい。それを読み込むと開くように設定されています」スッ…
「しばらく歩けば街に出ます…」
「私にできるのはここまでです」
ドガァッ
桂馬「…そんな…」
「…申し訳ありません」
「私が不甲斐ないばかりに…」
「10年前の借りを…ようやく返せると、そう思っていたのに…」ググッ
桂馬「10年前10年前って…なんで全員何かにつけて小学生の僕と因縁つけてるんだよ…」
桂馬「厄年か何かか?」
ズオッ
「……桂馬君」
「いきなり無関係のおじさんが君に突っかかった上に面倒事を押し付けるのは筋違いだと承知の上でお願いしたい」
「もしあなたが生き延びて、余裕ができたらでいい」
「結さんと美生さんを是非護っていただきたい…」
桂馬「…何であんたはその2人を知ってるんだ」
「私の孫の友人…幼馴染なのでね」
「今や学校は違えど交流は未だに続いています」
「彼女達が亡くなれば…うららも悲しんでしまう」
桂馬「……あんたがいなくなればもっと悲しむぞ」
「ふふ…そうですね…」
「…そうかも、しれませんね」
ズシン
「行きなさい、桂馬くん」
「タイムリミットですよ」ズシン
桂馬「…っ…」ズシン…ズシン…
桂馬「くそ、くそっ、くそぉっ!!」ガンッ
桂馬「何がどうしてこんな事に…!」ガチャ
ダダッ
「…ありがとう、桂馬君」
「………」ズシンズシン…
「すまないうらら…」
「だが君はもう1人で生きていける」スッ…
「頼れるお友達を大事に、仲良くしなさい…」
ピンッ
桂馬「…一体僕は何を…」ダダッ
桂馬「エルシィは…何をしてるんだ…」
カッッ
桂馬「っ!?」
ゴオオッ
桂馬「うおあっ!?」ブオッ
ドッ
ガッ
ゴロゴロ…
桂馬「っ……てぇ……」ズキズキ…
桂馬「あいつ…本当に……」
ピシッ
桂馬「嘘だろ…」
桂馬「ヒビが入ってきた!」ダダッ
ズドォッ
桂馬「はっ…はっ…」
ガラァッ
ドド…
桂馬「待て待て待て」
桂馬「出口に着く前にここ崩壊しないか!?」
桂馬「瓦礫に埋もれて出れなくなりましたなんてクソみたいなイベント起こすんじゃないぞ…」ダダッ…
ズズンッ…
桂馬「…はぁ…はぁ…はぁ…」フラフラ…
ドサッ
桂馬「駄目だ…少しだけ、休憩」
桂馬(崩壊が収まったのはよかったが…)
桂馬(全然着く気配が無い)
桂馬(車で数分走っただけの距離だが…)
桂馬(いくら歩いても同じ景色…)
桂馬「本当に非常口なんてあるのか…?」
桂馬「ここから入口まで後どの位なんだ…?」
桂馬「……」
桂馬「歩美…天理……」
桂馬「早く帰って、あいつらを助けないと…」ググッ
桂馬「それに…エルシィの奴、はっきりさせないと…」スタスタ…
ドガァッ!
桂馬「うがぁっ!?」ドサゥ
桂馬「ま、またトンネルが崩れ…」チラッ
桂馬「………う、そ…な…」
オオオオッ
桂馬「…後ろから足音なんか…」
ズシン…
桂馬「!?」クルッ
ズシン…ズシン…
桂馬「ぁ…か……」
桂馬(そんな…)
桂馬(こいつ…1体だけじゃないのかよ……!?)
桂馬「いつの間に先回り…」
桂馬「いや予めここに来るって分かってて…」
桂馬「挟まれ…」
ゴオッ
桂馬「っ!?」
ブオオッ…
桂馬(あ、おわた…)ガクッ
ズバァッ
桂馬「…………へ」
ゴオオッ
桂馬「うああおち、落ちる!?」ダダッ
ズドォッ
桂馬「ぐっ…」ズサァッ
桂馬「…腕が…斬り落とされた…?」
オオオオッ…
オオオオオッ!
ゴオッ
桂馬「またっ…!?」
「じっとしてなさい!」ゴオオッ
桂馬「え…」
ガッ
ズドォォッ!!
桂馬「……ほへ?」ゴオッ
「間一髪だったわね」
「後少し遅れてたらぺしゃんこになってたわよ、お前」
桂馬「ハ、ハクア…」
ハクア「……」
ハクア「来るの遅くなって、ごめんね」
桂馬「…いや、助かった」
ハクア「室長の命令で迂闊に動けなかったのよ」
ハクア「とりあえず安全な場所に移動するわよ、桂木」
ハクア「話はそれから」ゴオッ
ハクア「ここはとりあえず大丈夫そうね」ゴオッ
フッ
ハクア「ふぅ」トッ
ハクア「ほら」ドッ
桂馬「ぶっ」
桂馬「くっ…隣町にまでやってきたのか…」ムクッ
ハクア「まぁちょっと歩けばさっきの化け物の1体2体が見えてくるし…」
ハクア「ここら一帯はもう敵の巣窟になってると言っても過言じゃないわね」
桂馬「…こんな所まで」
桂馬「その割にはさっきみたいに建物が破壊されたりしてないが…」
桂馬「…というか皆普通に外出てるよな…」
ハクア「この付近の人間全員に錯覚魔法を使ってるのよ」
ハクア「街が特に異常無いのは…なんでかしらね」
ハクア「少なくとも単に街を壊すのが目的に動いてる訳じゃなさそう」
桂馬「…」
ハクア「…こんな滅茶苦茶な事、私はおろか悪魔や天使の中で出来る奴が居るかどうか…」
ハクア「複数犯ならまだ考えられない事もないけど」
ハクア「桂木、何があったのか私に詳しく教えなさい」
桂馬「そりゃこっちの台詞だ」
桂馬「なんで僕の居る位置が分かった」
桂馬「お前…この数週間何してた」
ハクア「………」
ドクロウ『お前には今後一切の外出を禁ずる』
ハクア『はぁ!?ちょ…何いきなり言い出してるんですか室長!?』
ドクロウ『駆け魂狩りは中断だ。どうせお前達のやり方は時間かかるしお前はほとんど関わらないから問題無いだろう』
ドクロウ『買い物も禁止。なるべく雪枝さんに頼んで済ませろ』
ドクロウ『とにかく外に出るな』
ハクア『ちょちょちょ…ちょっと待ってください!』
ハクア『なんでいきなりそういう話になるんですか!?』
ハクア『私何かやりました!?』
ドクロウ『別に』
ドクロウ『ほら、あれじゃ、巷で噂の感染症』
ドクロウ『かかるといかんから外出禁止令発令したの』
ハクア『は、はぁ…よく分からないですけど』
ドクロウ『それと…』
ドクロウ『この通話が終わり次第連絡網は全て絶て』
ハクア『!?』
ドクロウ『誰にも連絡を取るな、誰からの電話にも応答するな』
ドクロウ『当然ノーラやエルシィにもだ』
ドクロウ『言っとくが私に再度連絡するのも無しだ』
ドクロウ『今言った事忘れちゃいました~なんて抜かしてきたら即懲戒処分なんでそのつもりで』
ハクア『ひへぇ!?』
ハクア『いや…それじゃ私はいつ動けるようになるんですか』
ハクア『誰とも通信できないんじゃいつ動き始めていいのか知りようが無いじゃないですか』
ピッ
ハクア『っ…これは……座標?』
ドクロウ『そいつに目を光らせておけ』
ドクロウ『詳しくは言えんが…ある車に付けている発信機だ』
ハクア『はぁ…あ、消えた』スッ…
ドクロウ『センサーにそれが表示されたら、とにかくその動きを観察しろ』
ドクロウ『表示が消えて、私からの通知が来れば良し』
ドクロウ『1分経っても何の反応が無い場合は…』
ドクロウ『すぐにその反応が消えた所へ向かえ』
ドクロウ『多分探すまでもないとは思うが…異変があるはずだ』
ドクロウ『その周辺に眼鏡をかけた馬鹿が居るようなら悪いが回収しておくれ』
ハクア『は、はぁ…眼鏡…』
ハクア『………それって…』
ドクロウ『本当はあいつに直接発信機をつけてやりたい所だがそういう訳にもいかないしな』
ハクア『……室長…あなた一体何を…』
ドクロウ『無事捕まえられたらすぐにこっちに戻ってこい』
ドクロウ『すぐにだ、寄り道もするな』
ドクロウ『私からはここまでだ。これ以上長話する時間も余裕もないなでな』
ハクア『待ってくださいよ室長!あなた…何か
隠してるでしょ!?』
ハクア『ノーラやエルシィに…桂木に何かあったんですよね!?』
ハクア『ちゃんと説明してください!!』
ドクロウ『断る。お前はこの件について詮索するな』
ドクロウ『いいな』
ハクア『いい訳ないでしょ!?確かに色々ムカつく所はあるけどあいつらは私の…』プツッ
ツー…ツー
ハクア『くそっ!』ガンッ
ハクア『どういう事よ…』
ハクア「そんな感じの会話をしたのが、2週間くらい前」
ハクア「私は言われた通り、家から出ず雪枝以外の誰とも接触をしなかった」
ハクア「……本当はエルシィから電話あったから出たかったんだけどね」
桂馬「っ……あいつ、連絡するなって言ったのに…!」
ハクア「それでついさっき位置情報がまた表示されてきて、しばらくしたら消えて…」
ハクア「何も連絡が来ないから…まさかとは思ったけど」
ハクア「外に出たらさっきの化け物が徘徊してて…」
桂馬「…そいつらを躱しながら僕の所にやってきたと」
桂馬(ついさっきって…ちょっと前まで車は走ってたんだぞ?)
桂馬(走行中に発信機を付けられた…?いやいや…そんな事……)
桂馬(……まさか病院に来た時既に…)
桂馬「あいつら…こうなる事を見越して…」
ハクア「…桂木、お前の身に….エルシィに一体何が起こったの?」
桂馬「………ハクア、お前」
桂馬「僕とエルシィ、どっちが信用できる?」
ハクア「はぁ?それがどうして…」
桂馬「いいから答えろ」
ハクア「…」
桂馬「…」
ハクア「………っはぁぁ…」ポリポリ…
ハクア「そんなの、エルシィに決まってるじゃない」
ハクア「…って本人を目の前にして言える程私が無神経な女に見える?」
桂馬「おう」
ハクア「」
桂馬「まぁ悪魔だし」
ハクア「」
桂馬「がさつだし」
ハクア「」サラァ…
桂馬「それでもお前を信用してなきゃ今みたいな質問すらお前なんかに投げかけないだろ」
ハクア「……」ムクッ
桂馬「僕はお前を信じる」
桂馬「だからせめて、今だけはお前も僕を信じろ」
ハクア「……でもお前を信用して、エルシィを信じないって意味分からないわよ」
ハクア「どういう事なの」
桂馬「…っ…」
ハクア「えっと…話をまとめるわよ」
ハクア「数日前からお前が手玉に取った人間達が殺され始めて」
桂馬「手玉」
ハクア「残っている女の子を守ろうと身体を張って死守していたら」
ハクア「なんやかんやあって黒幕はエルシィだったと判明したと」
ハクア「合ってる?」
桂馬「うん」コクリ
ハクア「うんじゃねーよこのすけこまし!!」バキッ
桂馬「すけっ!」ドサッ
ハクア「別に!今までそう思ってなかった訳じゃないけど!どうやらお前の目は本当に究極的に節穴だったようね!」ガッ
ハクア「そんなやばい事をエルシィが平然とやってるとお前は本当にそう思っているの!?」ブンブン
桂馬「い、いや…だって今の話とお前の話すり合わせたらそうとしか考え…」
ハクア「だってクソもあるかぁ!」ブンブンッ
桂馬「うおうあうい」
ハクア「考えてもみなさい!」
ハクア「あののほほんと馬鹿面下げてるあの人畜無害の頭お花畑のどこに殺しのこの字でもいろはでも見あたるの!?えぇ!?」
桂馬「フォローにしてもけなしすぎだろ…」
ハクア「とにかく私にはエルシィがそんな事するとは到底思えないわ!」
桂馬「お前って本当無神経な女」
ハクア「……けど…」
ハクア「室長は誰とも連絡を取るなって…」
ハクア「エルシィとも接触するなって言ってたし…」
桂馬「もうその時点で分かってたんだろうな」
ハクア「…本当に、エルシィが…」
ハクア「でも…なんで」
桂馬「まぁ、よく分からないよな」
桂馬「僕が狙いじゃないならなんであいつらをエルシィが殺したんだ?」
桂馬「女神狩り…ならどうせここまで派手にやらかすなら最初から僕を脅すなりして奴らを誘き寄せる方法もあったのに…」
桂馬「そもそも僕は何故生かされてるんだ…」
ハクア「……」ジィィ
桂馬「な、なんだよ」
ハクア「…お前、本当に分からないの?」
桂馬「そ、そりゃ…よく分からないだろ」
桂馬「情報も少ないし」
ハクア「ふん」ゲシッ
桂馬「いだぁっ!?」
ハクア「ふんふんふん」ゲシゲシッ
桂馬「いたいいだなんで!?」
ハクア「べっつに~?」
ハクア「落とし神(笑)の癖にそんな事も察せないのか~って馬鹿にしただけー」
桂馬「なに…を、分かったような口を…」グググッ
ハクア「……なんで真っ先に私を狙いに来ないのよ…」チッ
桂馬「あ?」
ハクア「何でも無いわよ!!」
ハクア「でもまぁ…腑に落ちたというか、何というか」
ハクア「すっきりはした…気がする」
桂馬「待て待て僕にも分かるように説明しろ」
ハクア「それ位自分で考えなさい鈍感神」
桂馬「えぇ…」
桂馬「お前さっきから言ってる事滅茶苦茶だぞ」
ハクア「お前にだけは言われたくないわ」
ハクア「まぁ…そうね。お前の身はある意味絶対安心だとは思うけど」
ハクア「面倒くさい事になってるのは間違いないわね」
ハクア「とにかくここで道草なんか食ってる場合じゃないわ」
ハクア「早く冥界に逃げるわよ」
桂馬「冥界…地獄か」
桂馬「死んでないのに人間が地獄に行けるのか?」
ハクア「普通はいけないわ。法的にも本来存在を認知されてはいけないとされてるから連れて行ったりなんかしたらただじゃ済まないわ」
桂馬「それじゃどうやって…」
ハクア「どうも何も裏のルートを使うしかないじゃない」
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桂馬「裏ルート…そんなのあるのか?」
ハクア「詳しくは言えないけど、冥界のゴミ捨て場から侵入するのよ」
ハクア「出る場合そこから落ちてそのまま進めばいいだけだから楽なんだけどね」
ハクア「今回は上に上がらないといけないから誰かに引き上げてもらう必要があるわ」
桂馬「引き上げる…?飛べばいいんじゃないのか?」
ハクア「…ゴミはね、地獄の下に落とせば勝手に消えちゃうの」
ハクア「新地獄は元々、アルマゲマキナで崩壊した旧地獄の上に作られたの」
桂馬「!…あの、ディアナ姉妹が封印したとかいうアレか」
ハクア「当時程の影響力は残ってないけど今もその名残りは残っていて」
ハクア「物や植物は勿論、私達悪魔でも10分以上居て生きていられるかどうか…そんな空間よ」
ハクア「人間界に例えるなら核兵器の被爆地跡とでも言えば分かるかしら」
桂馬「そんな放射線まみれの危ないルート、尚更通れるのか?」
ハクア「ある程度残留魔法を遮断してくれる防護服があるらしいから私がそれを着て小舟を漕いで合流ポイントまで行くわ」
ハクア「それでも数分間しか効かないみたいだけど」
ハクア「お前は多分私達より耐性が無いと思うから舟に積んであるシェルターに身を潜めてなさい」
桂馬「皆、そこまで…」
ハクア「礼を言うなら室長にしなさい」
ハクア「今言った道具の用意も、私達を引き上げてくれる人も、その後の身寄りも全部室長が手配したって話なんだから」
ハクア「部下や知り合いに法を破るような協力者を募るなんて正気の沙汰じゃないわよ」
ハクア「説得にせよ買収にせよ相当手間がかかったでしょうね」
桂馬「…」
桂馬「おい待て」
ハクア「?」
桂馬「今身寄りがどうとか言っていたが…」
ハクア「そりゃそうでしょ。お前は本来地獄に存在してはならない種族」
ハクア「隠れて生活する他無いわよ」
桂馬「その場合、僕は流れに身を任せるだけでいい」
桂馬「お前は…どうするんだ」
ハクア「…どうするも何も」
ハクア「駆け魂隊には残ってられないし、私も抜けて隠居するしか無いわよね~」
桂馬「え」
ハクア「すぐには密入国の事についてバレないだろうけど、足がつく可能性が0じゃない以上長居するのは私にとってもお前にとっても危険じゃない」
ハクア「どうせいつか追われる羽目になるなら早めに逃げるに越した事は無いし?」
ハクア「それにその後も私が駆け魂隊と繋がっていたら、すぐにエルシィが嗅ぎついてくるわよ」
桂馬「…確かに」
ハクア「…まぁ、とどのつまり」
ハクア「お前と駆け落ちする…って事になるのかしらね」
桂馬「……いいのかよ、それで」
ハクア「今更そんな質問するの?」
ハクア「確かにエルシィを裏切るようでやるせないし…」
ハクア「職もなくなるし」
ハクア「肝心の駆け落ちの相手がこんな冴えない男じゃ萎えちゃうし?」
桂馬「おい」
ハクア「…それでも、私にとって分相応な選択だと思う」
桂馬「…そんな事、無いだろ」
桂馬「お前は僕なんかで人生を滅茶苦茶にされる必要なんか…」
ハクア「……だから言ってんでしょ」
ハクア「お前には私の人生滅茶苦茶にする権利があるって」
桂馬「………」
ハクア「………はぁ…」
ハクア「とにかく!時間が無いって言ってるでしょ!」
ハクア「さっさと地獄…
桂馬「駄目だ」
ハクア「へ…?」
桂馬「今のお前の言葉を聞いて決心がついた」
桂馬「僕はここに残る」
ハクア「はぁ!?お前、この期に及んで一体何を…」
桂馬「エルシィの狙いは僕なんだろ?」
桂馬「それじゃ僕が地獄に逃げたら、今度はお前やそっちの奴らが危険にさらされるかもしれないだろ」
ハクア「それは…そうかもしれないけど!」
ハクア「私達悪魔は戦える!ちょっとやそっとじゃ倒れない」
ハクア「何なら天使と協力して第二第三のアルマゲマキナを起こす事だってできる!」
ハクア「あいつをどうにかして止める方法なんていくらでもあるのよ!」
ハクア「でもここに居座らせたら手が出せない!」
ハクア「それこそお前の友達や家族の身が…」
桂馬「でも逃げたら真っ先に狙われるのもお前らじゃなくてそいつらだろ!」
ハクア「…」
桂馬「僕を誘き寄せるか、腹いせか…」
桂馬「いずれにせよ今まで躊躇なく僕の攻略対象を殺してきた奴がいいカモぶら下げてるのを手を出さずにこっちに来てくれると思うか?」
桂馬「僕は家に戻る」
桂馬「それからできる限りまだ生きている皆を連れて逃げる」
ハクア「家に戻るって…ふざけるのも大概にしなさいよ!?」
ハクア「次にエルシィが1番狙ってきそうな場所じゃない!?」
ハクア「他の女の子の家だってそう!」
ハクア「お前はただでさえ友達が少ないんだから次に来る場所なんて馬鹿なエルシィでもお前をよく知らない私でも目星がすぐつくわよ!」
ハクア「あいつが待ち伏せしてるに決まってる!!」
桂馬「…だからって母さんやあいつらを見殺しにはできない」
桂馬「母さんは急にいなくなって心配するだけならいいが」
桂馬「昔のツテを使って変な行動を取りかねないから怖いし」
桂馬「美生や結…他の奴らも、残ってる女神達がこの惨状に黙ってる訳が無い」
桂馬「放っていたら絶対に対立が起こる…そして確実に殺される」
桂馬「そうなる前にあいつらに説得して一緒に逃げてもらわないと」
ハクア「…お前、さっきからまだ皆が生きている前提で話しているけど」
ハクア「そう言える根拠とか道理でもあるわけ?」
桂馬「っ…」
ハクア「昨日まで全員普通に登校してたっていってたけど」
ハクア「お前が寝てる間襲われなかったって確証はあるの?」
ハクア「それにそいつらが本物だってどうして確信できるの?」
ハクア「昨日一緒にご飯を食べた家族が偽物かもしれないのよ?」
桂馬「…それは……」
ハクア「ありもしない可能性に縋って、自分の身を滅ぼすなんて…」
ハクア「そんな勝手、私が許さない」
ハクア「嫌でも私が無理やり…
桂馬「嫌だ」
ハクア「…桂木……いい加減に…」
桂馬「もうこのタイミングを逃したら、その縋れる可能性すら失っちゃうんだよ!」
桂馬「2度とあいつらを助けられなくなる」
桂馬「2度とエルシィを元に戻せなくなるんだよ!」
ハクア「お前…そんな事…」
桂馬「…その上お前の人生を壊して…」
桂馬「今後ここで出たであろうゲームにも拝めないまま…」
桂馬「僕はそこまでして何を理由に生きていけばいいんだ?」
ハクア「……ゲームなんてあっちでいくらでも買えるわよ」
桂馬「もう、やり直しはできない」
桂馬「このゲームはセーブデータが作れないクソゲーだ」
桂馬「何人も見殺しにした癖に今更こんな虫がいい事言う資格なんて無いけどな」
桂馬「僕が目指してるのは、皆が幸せなハッピーエンドだけなんだよ」
桂馬「そんな後味の悪いなぁなぁバッドエンディングなんか、死んでもごめんだね」
桂馬「皆助けるし、エルシィも止めるし、お前だって犠牲にはさせない」
ハクア「……」
桂馬「だからいい。ここまでしてもらって本当に悪いと思うけど」
桂馬「僕はあいつらを置いていけない」
桂馬「安心しろ。前やったクソゲーでもこういう鬱展開やシリアスはいくらでもあった」
桂馬「いつもと同じ要領でやれば…」
ギュッ
ハクア「……」
桂馬「…離せよ、動けないだろ」
ハクア「死んじゃうかもしれないんだよ?」
ハクア「いや…桂木の言う通り死んだ方がマシだったなんて事になる場合だって…」
ハクア「それでも…行くの?」
桂馬「…ああ、行かなきゃ」
桂馬「皆や……エルシィが待ってる」
ハクア「………」
桂馬「もういいだろ、とにかく僕は早く…」
ハクア「3分…いや5分、5分よ!?」ズイッ
桂馬「!?」
ハクア「家なりどことなり連れていくから勝手に探せばいいわ!」
ハクア「見つけたらそいつも地獄へ逃してあげる!」
ハクア「それで文句ない!?」
桂馬「…ハクア…」
ハクア「ただし、シェルターに入れる人も、時間も、余裕も限られてる!私だってそんな危険な場所行きたくないし行かせたくない!」
ハクア「助けるなら1人までよ」
ハクア「それが私が許せる最低の妥協ライン」
ハクア「これ以上は譲れないわよ」
桂馬「…でも僕は」
ハクア「はいか!いいえか!どっちかで答えなさいよ!!」
ハクア「最後のチャンスよ、次答えないようならお前を見捨てて私だけ逃げるから」
桂馬「…」
ハクア「…っ…」グスッ
ハクア「私は…ただ……桂木が心配で…」
桂馬「……」
桂馬「ごめん」
桂馬「ハクアがそこまで本気で僕を助けようって思ってもみなかったから」
桂馬「お前の気持ちを汲んでやれてなかった」
ハクア「…」ゴシゴシ…
桂馬「頼む…僕を母さんの所へ連れてってくれ」
桂馬「他の奴らの事はお前らに任せる」
桂馬「だから…」
ハクア「……ちっ、分かったわよ」
ハクア「契約成立ね…なんて」
桂馬「………あ!」
桂馬「そういえば僕、エルシィと契約したままだけど、どうなるんだ!?」アセアセ…
桂馬「首飛ぶのか!?」
ハクア「ぷっ…また今頃そんな要らん心配を…」スッ
フッ
桂馬「あっ…消えた」
ハクア「室長の仕業ね。まぁ当然と言えば当然だけど」
ハクア「これでお前はエルシィとの契約を完全に破棄された訳」
ハクア「半ば強制的にだけど」
桂馬「…」
ハクア「なぁに?何か不満?」
桂馬「……いや」
桂馬「何なら契約結んだまま逃げておけば自爆して道連れにできたんじゃ…」
ハクア「おい」バキッ
桂馬「おろ」ドサッ
ハクア「さっきまでの話をまた蒸し返す気か」
桂馬「悪い…」
ハクア「第一あいつのやってる事考えると首吹っ飛ばした位でくたばりそうにないけど」
桂馬「…それもそうだ」
ハクア「ほら、行くわよ」ギュッ
ハクア「お前の家に行って、お義母…もといお母様を連れてとっととトンズラよ!」
桂馬「ああ」グッ
ゴオッ
ゴオッ…
桂馬「曇ってきたな…」
ハクア「今にも降ってきそうな感じね」
ハクア「さっきから全然あの化け物達とも遭遇してないし…妙に静かだし」
ハクア「完全に、嵐の前の静けさってやつだわ」
桂馬「……なぁハクア」
ハクア「なぁに、桂馬」
桂馬「…いやお前桂馬て…」
ハクア「べ、別にいいじゃない!呼び方なんてどうでも…私の勝手でしょ!?」
ハクア「成り行きとはいえお前とバディになった訳だし?実感を湧かせる為というか、ケジメをつける為というか…」
桂馬「………いや」
桂馬「お前二股はやばいだろ…厳密には僕とお前はパートな
桂馬「へぶ!?」バキッ
ハクア「っさいわね馬鹿桂馬!!黙ってろ!」
桂馬「酷ひ」
ハクア「…で、何よ。さっさと本題に入りなさい」
桂馬「……ノーラは…他の駆け魂隊はどうした」
桂馬「お前と同じように待機していた奴らとか居ないのか?」
ハクア「さぁ…」
ハクア「お前の所に行くまで試しに何人か電話を掛けてみたけど、誰も反応無かったわ」
桂馬「………」
桂馬(…つまり、二階堂とあのおっさんはこいつらの上司と結託して)
桂馬(駆け魂隊と協力してエルシィを押さえ込もうとしたって事か…)
桂馬(なんで二階堂やおっさんが地獄の事情に詳しいのか)
桂馬(逆になんでたかが2人の人間の話をすんなり聞き入れて冥界の上層部は手を貸しているのか…)
桂馬(…それにハクアだけ手伝わせなかったのはなんでだ?)
桂馬(万が一失敗した時の為の保険?)
桂馬(ハクアは強い…こんな面倒事の後片付けなんかに回す位なら最前線に立たせた方が上手く行く可能性も高かった…)
桂馬(くっ…やっと繋がったと思ったらまた謎が増えた…)
トタッ
ハクア「着いたわよ」
桂馬「…周りには誰も居ないな…」キョロキョロ
ハクア「見えなくても近くにいるつもりで行きなさいよ」
ハクア「今のあいつなら何しでかしてもおかしくないんだから」
桂馬「ああ…」
スタスタ…
桂馬「鍵は…開いてるな」
ハクア「くれぐれも音立てないようにね」ボソボソ…
桂馬「分かってる」ボソッ
カチャ
ギ…ィィ…ィ…
桂馬「…母さん、居るか…?」
シーン
桂馬「………電気は消えてるな」
ハクア「…とりあえず居間に行ってみましょ、居間に」
桂馬「……」スタスタ
ハクア「……」スタスタ
カチャ
桂馬「………」チラッ
桂馬(カーテン閉まってるせいでほとんど何も見えないぞ…)
スタスタ
ハクア(結界は…パッと見た感じ張られて無さそうだけど)
桂馬「母さん…何処いった…」キョロキョロ
トントン
桂馬「?何だハクア」
ハクア「え?私は何も…」
桂馬「は?だって今…」クルッ
カッッ
麻里「クビキルゾ…」ギロリ
ハクア「ギャァァァァイアイアウアァアッ!?」ダキッ
桂馬「か、母さん!」
麻里「いやーごめんごめん。てっきり今噂の殺人魔でも侵入したのかと思って」
麻里「まさかハクアちゃんが来てるとは…」
ハクア「あぁ…ぃえ…その…はぃ…」ガクガク
桂馬「いい加減こっちに寄りかかんのやめろよ…」
麻里「長い事点検する所かロクに掃除もしてなかったもんだからさ~」
麻里「蛍光灯が全滅しちゃったぽいのよ」
桂馬「それで電気がついてなかったんだな…」
麻里「急いで代え探したんだけど流石に全部取り替えられる位の予備無くて家の中大捜索したの」
麻里「まぁ出る暇は無かったと思うけどインターホン鳴らさずにこっそり入ってくる桂馬とハクアちゃんだって悪いんだからねぇ?」
ハクア「は、はひぃ!」
桂馬「…でも良かった」
桂馬「とりあえず無事そうで、何よりだ」
麻里「…?」
桂馬「急で悪いけど母さん、連れて行きたい所があるんだ」
桂馬「すぐに出かける準備はできるか?」
麻里「えやだ…何々、今日母の日でも私の誕生日でも無い筈だけど」
桂馬「そういうのいいから、出れるの?出れないの?」
麻里「え~出れるけどまだ蛍光灯直せてないし…折角お友達が来てくれたならお茶の一杯や二杯位…」
麻里「ハッ…まさかあんた…ハクアちゃんを孕ませ
ハクア「」ブゥゥゥ
桂馬「出れるか出れねーか聞いてんだろーが!」
ハクア「げほっ…げほっげほっ!」
桂馬「第一現実女なんかに大事な僕の純潔を汚させてたまるか!!」
ハクア「」ガーン
桂馬「そういう話をしに来たんじゃないんだよ!」
桂馬「蛍光灯だって帰ってからいくらでも直せるし直してやるから!」
桂馬「とにかく最低限出掛けられる格好にしてくれ!頼むから!」グイグイ
麻里「えー…何コレドッキリ?やだすっごい気になるんだけど」
桂馬「だーくそくどい!早く着替えてくれ!」グイグイ
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麻里<ふんふふんふーん♪
桂馬「…ふぅ…どうにか連れ出す段階までは漕ぎ着けたな」
桂馬「後は何事も無く逃げられればいいんだが」
ハクア「どうかしらね」
ハクア「今の時点でまだ何も仕掛けてこないのが逆に怖いんだけど」
ハクア「正直お前の話を聞いてるとそこに居るお義母様も本物か怪しい所だわ」
桂馬「お前なぁ…」
ハクア「蛍光灯云々の話も少しきな臭いわ」
ハクア「安心するにはまだ早いわよ」
桂馬「…」
桂馬「…とりあえず、僕は部屋整理して使える物とか探してくるから」
ハクア「待ちなさい、私も行くわよ」
桂馬「いや、いいって…そこまでして欲しくないし」
ハクア「この状況で単独行動を取るのがどれだけ危険か分かってるの?」
ハクア「何?それとも私にお前の部屋に入って欲しくない訳?うん?」
桂馬「別にそういう事じゃなくてだな…」
ハクア「…ま…まさかお前、部屋からえ、ええええっちな本とかビデオとかゲームを持ち込むんじゃないでしょうね!?」
桂馬「だからなんでそうなるんだよ!?お前こそ緊張感持てよ!時間無いんだってば!」
ハクア「るっさい!お前の所持品なんてどうせ9割方ゲーム関連でしょ!?」
ハクア「どうせロクなもんなんて部屋に置いてる訳ないわ」
桂馬「ろ、ロクなもんって…お前まるで僕が持ってるギャルゲーコレクションがロクでもない物だとでも…?」
ハクア「まさかも何もいつも言ってんでしょうが!このたらし神!」
桂馬「お前…マジで……」
桂馬「さっきからテンションが不安定過ぎなのマジ何なの?」
ハクア「こっちはさっきから何度も何度もちびりそうな怖い思いしてる上にお前に心無い言葉を幾度となくかけられてとっくに精神ボロボロなのよ!」
桂馬「とりあえず落ち着けよ…なんで怒ってるのかよく分からんが」
ハクア「どうせ私みたいなまな板には興味出したくても出ないんでしょう!?」プイッ
ハクア「はいはい発育が良くなくて悪うございましたね」ベロベロベー
桂馬「もうやだこのバディ」
ピンポーン
ハクア「!」
桂馬「…誰だ」
麻里「あ、ごめーん!多分それ昨日通販で頼んだやつだわ」
麻里「桂馬ー!ちょっと代わりに出て!」
桂馬「え~」
桂馬「…このタイミングってあからさま…」
ハクア「多分そうでしょうね…」
桂馬「どうする?」
ハクア「…行くしかないでしょ、無視したら多分殺される」
桂馬「無視しなくても殺されそうだがなぁ」
ハクア「2人で玄関に出るわよ」
ハクア「さっきも言ったけど今バラバラに動いたら危険よ」
ハクア「私に掴まってなさい」ギュッ
桂馬「…色んな意味で恥ずかしいんだが」
ハクア「っ…が、我慢しなさい」
ピンポーン
桂馬「…」スタスタ…
ピンポーン
ハクア「……」スタスタ
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
桂馬「っ…今出るっての」ガチャ
ヒュウウ
桂馬「…居ない」
ハクア「ご丁寧に荷物だけ置いていってくれてるわ」
桂馬「どうする、とりあえず中に入って中身確認するか」
ハクア「開けた途端爆発したりしたらどうするのよ」
桂馬「そんな危ないモノここに届けられた時点でアウトだろ」
桂馬「放置するのも危険かもしれないし…」
ハクア「……ここで一度見てみるわ、外だし」
ハクア「何かあれば最悪お義母様を放ってでもすぐに逃げるわよ」
桂馬「……分かった」
ハクア「お前は周囲を警戒して」
桂馬「……」クルッ
ハクア「…開けるわよ」ゴクリ…
ビリビリッ
ハクア「……?」スッ
桂馬「何だった」キョロキョロ
ハクア「……よく分からないけど、変な柄の箱」
ハクア「ただ、何処かで見た事があるようなないような…」
桂馬「はぁ…そう」キョロキョロ
桂馬「そいつも開けてみるしかないな」
ハクア「う、うん」ドクドク…
ハクア「…」パカッ
ハクア「………」チラッ
ハクア「っ!」ビクッ
桂馬「おい、中身はな」
ドンッ
桂馬「ぃっ?」ドサッ
ハクア「早く離れ
ドガァアッ…
桂馬「…っ」
ズドオオッ
桂馬「…」ズキズキ…
バキィ…
桂馬「ぅ」ボーッ
ドガッ
「け…ま……て」ズッ
ミキッ
桂馬「…クァ…」
ガクッ
「…ぎ……つ ぎ、かつらぎ…」
桂馬「……ぅ…ん」
ハクア「桂木!!」
桂馬「っ!」ガバッ
桂馬「はぁ…はぁ……」
ハクア「良かった…気がついた…」
桂馬「ここは…家の中……」
ハクア「お前、さっき襲われて危うく死にかけたのよ?」
ハクア「まぁ私が追い払ってやったけどね」エッヘン
桂馬「?そ…そうか、ありがとう」
桂馬「…家は、何ともないのか?」
ハクア「外に出てたのが幸いしてね、ちょっと屋根壊れちゃったけど…」
桂馬「そうか…そう、だったっけ」
桂馬(さっきもの凄い轟音が出てたと思うんだが…)
桂馬(気のせいかな…)
桂馬「そういえばハクア、結局あの箱何だったんだ…」
ハクア「あー…いや…」ポリポリ
ハクア「さっき慌てていて、多分壊れちゃった」
桂馬「壊れたって…」
ハクア「踏まれてぺしゃんこになってると思う」
桂馬「えぇ…」
ハクア「まぁでも特に何か入ってた訳じゃないし別にいいかなって…」
桂馬「…そ、そう…か?」
桂馬(え…?)
桂馬(さっき開けた途端血相変えて叫んでたよな…?)
桂馬(箱の中にヤバい物が入ってて焦ったんじゃ…)
桂馬「……???」
ハクア「頭でも打ってきっと気が動転してるのよ」
ハクア「ここじゃ休めないし、部屋で少し横になったら」ギュッ
桂馬「いやでも早く行かないと…時間押してるし母さんももう準備終わってるだろ?」
ハクア「いいからいいから」グイッ
桂馬「ちょっと待てって…」
桂馬「……お前、なんか…その」
桂馬「さっきまでと手の握り方違くないか?」
ハクア「えぇ?」
ハクア「何言ってんのよいきなり…お前、女の子に握られる度に感触を楽しんでるなんて本当にいやらしい奴ね」
桂馬「いや…冗談じゃなくて…」
桂馬「さっきよりも優しいというかなんというか…」
ハクア「何?握りつぶすつもりでやれば良かったの?」
桂馬「そうは言ってないわ」
ハクア「はぁ…やっぱりお前おかしいわよ、ちょっと頭冷やした方がいいわ」ズルズル
桂馬「待てっておい!」ググッ
ハクア「うるさいわね桂木!こっちはお前の心配をして…」
桂馬「……お前今なんて呼んだ」
ハクア「え?いや…桂木って…」
桂馬「なんで…名字で…」
ハクア「え?いやいやいやいつもこの呼び方でしょ?私」
ハクア「???」
桂馬「…お前、誰だよ…」ググッ
ハクア「誰って…ハクアよ!知ってるでしょ!?」
ハクア「お前の友達で…」
ハクア「でもってエルシィの大親友っ」ニコッ
桂馬「………っ……」
ハクア「どうしたの?桂木…顔色悪いわよ?」
ハクア「もしかして急に動いたから気持ち悪くなっちゃったのかな」
ハクア「ご、ごめんね…そこまで気を遣ってあげられなくて」
桂馬「別にそんな…それよ…
ビュッ
桂馬「ぅおっ」キュッ
ハクア「ふふ…」
ハクア「これで…動く必要は無くなりましたよね?お兄さん」
桂馬「っ!?」
ハクア「なーんて、にーさまがこの間やっていたギャルゲーでハクアと物凄く声が似ているヒロインが居たので」
ハクア「つい真似しちゃいました」テヘッ
桂馬「お…ま、ぇ…」
ハクア「さ、にーさま」
ハクア「部屋でエルシィが待ってるわよ」
ハクア「早く行ってあげましょう?」ニコッ
ガチャ
桂馬「…」
エルシィ「おかえりなさい、にーさま」
桂馬「エルシィ…お前……」
エルシィ「怪我はありませんでしたか?私心配で心配で…」
桂馬「そんな事どうでもいい!」
桂馬「ハクアは…母さんはどうした!?」
エルシィ「……また別の女の話、ですか…」ハァ
エルシィ「にーさまはもう少しデリカシーを持ってお話しして下さいよ~」
エルシィ「いくら私でも妬いちゃいますよ~」プクー
桂馬「うるさい!僕は現実女なんかと馴れ合うつもりなんか無い!」
桂馬「デリカシーもクソもあるか!」
エルシィ「…そう、ですかね」
エルシィ「その割には私を放ったらかしにしてあの女達とフラフラ遊んでますよね…?」
エルシィ「どういう事ですか…?」
桂馬「だから違うって言ってるだろ!」
桂馬「お前はまず僕の質問に…」
エルシィ「……まぁでも、にーさまは妹思いのツンデレさんですからね」
エルシィ「優しいにーさまが私の事見捨てる訳ありません」
エルシィ「きっと、周りの害虫に唆されただけですもんね」
エルシィ「かわいそうに…」
桂馬「…っいい加減に、話を合わせろよ!!」
エルシィ「…あ、そうだ」
エルシィ「にーさまに見せないといけない物がありましたね」スッ
桂馬「……お前、それ…」
エルシィ「さっきハクアも言ってたじゃないですか」
エルシィ「変な柄の箱、ですよ」
桂馬「ぁ……あ゛……」
エルシィ「天理さんの持っている箱と似てますけど」
エルシィ「別に遺品とかそういう訳じゃないから安心して下さい」ニコッ
桂馬「いつ天理から、それを…」
エルシィ「ふふふ、驚くにはまだ早いですよにーさま」
エルシィ「本番はここからですから」パカッ
桂馬「!!!?」
エルシィ「じゃじゃーん」
エルシィ「久方ぶりのお母様との対面でーす!」グチャ
桂馬「っ……~っ!!?」
エルシィ「ほら、にーさま」
エルシィ「にーさまが会いたがっていたお母様ですよ!」
エルシィ「まぁちょっとお肉が見えたりしてますけど…」
エルシィ「何せ箱が小さいものですから中に入れるには必然的にコンパクトにしなきゃいけない訳で…」
桂馬「う、おぇっ…」ドバッ
エルシィ「え、ちょっとにーさま!?大丈夫ですか!?」
桂馬「げほっ…えおっ!」
エルシィ「どうしました!?また気持ち悪くなりました!?」
エルシィ「お肉の血の匂いとかかなぁ…」
エルシィ「ちゃんと取った筈だけど」クンクン
桂馬「はぁ…はぁ…!」
桂馬「……まぇ!なんで…母…ん…」
エルシィ「いや~これには地獄の底よりも遥かに深ーい事情がありまして…」
エルシィ「本当は今朝、お母様と2人でにーさまのお見舞いに行こうと思ってたんですよ?」
エルシィ「でも病院に着くなり『ちゃんとお話しして』とか『エルちゃんはそんな悪い子じゃないよね!?』とか」
エルシィ「突然喚き散らし始めて…」
エルシィ「もう全然泣き止まなくて、流石に病院に居るお医者様や患者さん達に迷惑になると思ったので」
エルシィ「少し、静かにしてもらいました」
桂馬(……今になってようやく理解した…)
桂馬(寄り道はするなって……あいつら、もう手はとっくに回していて…)
桂馬(こうならないように…そういう事、か……!!)
桂馬「僕があいつらの言う事を素直に聞いていれば…」
桂馬「ちゃんと耳を傾けていれば…」ガタガタ…
ドサッ
桂馬「ぁ……ぅぁ…」プルプル…
エルシィ「どうしました?にーさま」
エルシィ「こんなに震えて….やっぱりどこか悪いんじゃ…」
エルシィ「あ、もしかして…何か怖い夢でも見ました?」
エルシィ「今日起きた時もいきなり叫んでましたもんね…」
エルシィ「ふふ…大丈夫ですよ、にーさま」スタスタ…
ダキッ
桂馬「…ぁっ…」
エルシィ「誰が来ても私が守ってあげます」
エルシィ「何があっても私が支えてあげます」
エルシィ「にーさまは私の神にーさまなんですから」ナデナデ
桂馬「ぁ…ぁ゛……ァ゛ァッ…///」ギュッ
桂馬(体が…ボーッとして…き、た……)
エルシィ「もう疲れたでしょう?」
エルシィ「少し寝れば嫌な夢もきっと覚めますよ」
桂馬「そっ……か……夢………ら 、 め」ビクビク
エルシィ「そうです、そのまま…力を抜いて…」
エルシィ「私に全て委ねてください」
桂馬「………」
エルシィ「……ふふ」
エルシィ「 私 が ず っ と そ ば に い ま す 」ボソッ
ガクッ
チュンチュン…
エルシィ「にーさま、朝ですよ」
エルシィ「起きてください!遅刻しちゃいます~」ユサユサ
桂馬「~…勘弁してくれエルシィ」
桂馬「こっちはつい30分前寝始めたばっかなんだぞ」モゾモゾ
エルシィ「なんでそんな時間まで起きてるんですかそれとなんで30分だけ寝ようと思ったんですか」
桂馬「エルシィ、今日の曜日を言ってみろ」
エルシィ「え?…っと、金曜ですね」
桂馬「そう!金曜!木曜の深夜から金曜の朝まではギャルゲーマーにとってのゴールデンタイム!あいや賢者タイム!」
桂馬「駆け魂だの女神だの面倒事に巻き込まれる落とし神にとっては尚の事重要なイベントという訳だ!」
エルシィ「とりあえず元気そうで何よりです」
桂馬「大量に生産されたギャルゲーを消費しなければならないという重圧がお前に分かるのかエルシィ~!」
エルシィ「分からなくて今ホッとしてる所です」
桂馬「とにかく起きん!ギリギリまで寝る!」
エルシィ「そんな~朝ご飯はどうするんですか」
桂馬「部屋に置いとけ。気が向いたら食う」
エルシィ「う~…今日は久しぶりに張り切ってお母様と一緒に朝食を作ったのに…」
桂馬「…………」
桂馬「なぁエルシィ…」クルッ
エルシィ「?どうしました?にーさま」
桂馬「それって何か…その……何とかトサカの卵の目玉焼きだったりしないか?」
エルシィ「…???違いますよ」
エルシィ「今日のメインディッシュは獄モグラとオホホウレンソウの卵とじです!」ドーン
桂馬「何だその明らかに危なそうでかつ安直なネーミングの食材は…」
エルシィ「モグラってあまり食用には出されないみたいですけど結構美味しいんですよー?」
エルシィ「オホホウレンソウも食べるとたちまち身体がポカポカあったまってどんな悪魔でも天にも昇るんじゃないかって位気持ち悪い笑みを浮かべるって噂です」
桂馬「最早大麻じゃねーか」
桂馬「食わん!そんなUMA飯、食べたら腹壊すに決まってる!」ガバッ
エルシィ「わがまま言わないで早く布団から出てくださーいっ」ズルズル…
桂馬「……うーん…」ズルズル…
桂馬(何か今、思い出せそうな気がしたんだが…)ズルズル…
ヌギヌギ
エルシィ「はいはい早く着替えてください」
桂馬「食べてから部屋戻って着替えるから持って来なくて良いって…」スッ
エルシィ「もう時間ないんですってば~」
桂馬「あー、手を使わずにプレイできるハードが出ればなぁ…」
エルシィ「こんな時までゲームを…」
エルシィ「あ、そうだ。はいにーさまお弁当です」スッ
桂馬「ん」
桂馬「ゴミ箱ゴミ箱」つ弁当箱
エルシィ「おいちょっと」
桂馬「うるさい、どうせロクなもん入れてないだろ」
エルシィ「そんな事無いですよ!れっきとした人間界の食べ物です!」
桂馬「本当かぁ?」パカッ
桂馬「唐揚げ、生姜焼き、豚?…のカツ、ハムに肉巻きポテトに…」
桂馬「辛うじて存在するこの野菜は…」
エルシィ「ピーマンの肉詰めです!」
桂馬「ほとんど肉じゃん…」
エルシィ「にーさまはちょっと痩せ過ぎです。もっとお肉を食べてモリモリお肉をつけた方がいいです~」
桂馬「こんな栄養配分もクソも無い弁当を作る妹ヒロインが世界の何処に居るってんだぁぁぁあ!?」
エルシィ「いや…ちょっと最近臨時収入が入りまして…」
エルシィ「これでもまだ大量にお肉が残ってるんですよ」
桂馬「えぇ…」
桂馬「というか人間界の肉って何だよこれ…臨時収入って言ったよな」
エルシィ「秘密ですっ」テヘッ
桂馬「尚のこと怪しいわ」
エルシィ「にーさま、本当にもう時間無いですって~!」
桂馬「ちょっと待てもう少しで区切りつきそうだから」ピコピコ
エルシィ「も~」ブクー
桂馬「大体お前だけ先行ってればいいだろ…」ガチャ
エルシィ「それじゃ意味無いんですよ!」プンスカ
桂馬「別に一緒に行くメリットなんて何も無いだろ」ピコピコ
エルシィ「歩きながらゲームは危ないですってば~」スタスタ…
桂馬「お前はそうなんで…」
ギュッ
桂馬「……」クルッ
エルシィ「…」スッ
エルシィ「大好きですよ、にーさま」ボソッ
桂馬「……はぁ…」
桂馬「知ってる」ナデナデ
エルシィ「えへへ、えへ」
エルシィ「 え へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ へ 」
ピッ
エルシィ「…って感じのゲームを思いついたんですけどどうですか?」
桂馬「…」モグモグ
エルシィ「今見せたのはただのトゥルーエンドなんですけど」
エルシィ「ハクアとの駆け落ちルートとか歩美さんの身体のまま一生逃げ続けるルートとか」
エルシィ「色んなエンディングをつ
桂馬「却下」
エルシィ「え~、なんで?」ブーブー
桂馬「お前のゲームのヤンデレは中途半端過ぎる」
桂馬「片っ端から殺しまくる訳でも誰も傷つけない訳でもない」
桂馬「殺しがバレないようにってわざわざ死神代行雇ったのに最後結局バラしてるじゃないか」
桂馬「キャラがブレてる」
エルシィ「そんな事ないですよ~」
桂馬「それと僕の察しが悪すぎる」
エルシィ「にーさま攻略以外は基本ラブコメと同じ鈍感主人公ですよ~」
桂馬「後無駄に暴力シーン多い」
エルシィ「これでも削ってマイルドにした方ですよ~」
桂馬「それにテキストの誤字脱字が多い」
エルシィ「う~」
桂馬「あとなんかたまにお前のCG素っ裸になるんだけど」
エルシィ「あ、それは仕様です」
桂馬「仕様かよr
エルシィ「私のえっちな写真ですよ、興奮しませんか?」
桂馬「ふーんえっちじゃん」
エルシィ「絶対思ってねぇ」
エルシィ「う~、にーさまはいつも文句ばっかり」ドババ
エルシィ「退屈そうにしてるにーさまの為に私がゲームを作ってあげてるのに…」
桂馬「僕のゲーム辞書に妥協なんて言葉は存在しない」
桂馬「生半可な覚悟でシナリオを手がけるなプログラムなんか作るな」
桂馬「ゲーム製作に携わる人間全てに謝れ」
エルシィ「いくら何でも辛辣すぎます…うー……」ショボン
桂馬「それと、いい加減登場人物を僕達で固定するのやめろ」
エルシィ「だって~にーさま以外の男の子と話した事なんてほとんど無いですもん」
桂馬「だってもクソもあるか、立派な人権侵害だぞ」
エルシィ「違います~表現の自由です~」ベー
桂馬「おま…訴え……」
エルシィ「ふふふ、訴えられるものなら訴えてみて下さいよ!」
エルシィ「ここにはそんな事聞いてくれる人もそもそもこのゲームをプレイする人も他にいないんですよ~」ケラケラ
桂馬「……」
エルシィ「…ちょっと寂しくなりました?」
桂馬「なら帰せよ」
桂馬「もうここで飯食ってお前の自己満製作発表会聞いて寝るだけの生活はとっくに飽きたよ」
エルシィ「ふふ、ダメですよ」
エルシィ「私の事、ちゃんと好きになってくれない限り離しません」
桂馬「…」
エルシィ「そうですね」
エルシィ「私が側に居ないと生きていけないって、それ位心の底から愛してくれていると確認できたら」
エルシィ「私と一緒に帰りましょうね?」
桂馬「どっちみち離す気無いじゃないか…」
エルシィ「さっきからそう言ってるじゃないですか」
エルシィ「やっぱりにーさまは、現実だと勘が鈍いですね~」
エルシィ「……まぁ、そこも愛嬌があって可愛くて…全部ひっくるめて好きなんですけど」
桂馬「もう突っ込む気力も無いよ」
エルシィ「…それともにーさま…」
エルシィ「私と2人っきりで…そんなに楽しくないですか?」
桂馬「………」
桂馬「いや、別に」
エルシィ「えへへ、ならいいんですよ、なら!」
桂馬「……はぁ…」ポリポリ…
エルシィ「これが、私の望んだエンディングです」
終わり
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