鷺沢文香「3月14日といえば」 (18)
鷺沢文香(そわそわ……)
橘ありす「文香さん、なんだかそわそわしてますけど気になることでも?」
文香「えっ……私、そんなにそわそわしてましたか?」
ありす「……はい。さっきから、同じページを3回くらい読んでます」
文香「たいしたことではないのですが……その、プロデューサーさんからお返しをもらえるだろうか、と……」
ありす「お返し? あっ、バレンタインのですね」
文香「いえ、忘れてください」
文香「こうして言葉にしてみると、随分厚かましいというか浅ましいというか」
文香「お返しを期待して贈ったわけではないのに」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1615727705
ありす「大丈夫ですよ。文香さんが真剣に選んだ贈り物なら、きっとお返しはあるはずです」
ありす「それにどうでもいい相手ならお返しなんて期待しないはずです」
ありす「大切な相手だから、お返ししてくれるか気になってしまう……それは別に悪いことではないと思います」
文香「……そうですね。ありがとう、ありすちゃん」
文香「ところで……ありすちゃんもやはりバレンタイン派なんですね」
ありす「バレンタイン派? えっ、そんな派閥とかありましたっけ」
文香「世間一般的にはバレンタイン派が圧倒的多数なので、普段表には出しませんが……」
文香「私は、バレンタイン派ではないんです……!」
ありす(ダイの大冒険のフェンブレンみたい)
ありす「知りませんでした。本当は何派なのか、よかったら教えてもらえませんか?」
ありす(ぞくり)
ありす(……っ!? 今私は……言ってはいけないことを言ってしまった気がする)
ありす(動物的本能とでもいうのか、これ以上踏み込んではいけない予感が……!)
ありす「あ、いえ、無理にとは言いませんので!」
文香「いえ、せっかく興味を持ってくれたのですから……もちろんお教えしますよ」
ありす「あ、あの」
文香「私は……そしてプロデューサーさんは……」
ありす「文香さ――」
文香「ふんどし派です……っ!」
ありす「ふ、ふんどし……!? じゃあ贈り物って……」
文香「もちろんふんどしです。2月14日はバレンタインデーではなく、ふんどしの日です!」
文香「そして3月14日はふんどし返しの日です……!!」
日本ふんどし協会
http://www.japan-fundoshi.com/214fundoshiday
http://www.japan-fundoshi.com/archives/492
文香「文香の『ふ』はふんどしの『ふ』です!」
ありす「わかりました、わかりましたから……!」
文香「いえ、まだ何もわかっていません。Tバックの、男性用の、古臭い下着と思っていませんか?」
ありす「それは、あの……はい」
文香「メジャーなふんどしは3種類。六尺ふんどし、越中ふんどし、もっこふんどしです」
文香「その中でTバックなのは六尺だけ、現代においてはお祭りなど非日常での使用が中心です」
ありす「あ、そうなんですね」
ありす「……というか、これはアレですか。学ぶ系SSですか」
文香「ふんどしSSです」
ありす(嫌な予感はこれだった……)
ありす「バレンタイン――いえ、ふんどしの日にプロデューサーさんに贈ったのは……」
文香「今年は黒の越中にしました」
ありす(今年は!?)
文香「それではふんどしを締めて、参りましょう」
ありす「それ言いたいだけですよね?」
※ ふんどしを締めてかかる
十分決心してとりかかること。気持ちを引き締めて事にあたること。
ふんどしの種類
文香「先程も少し出しましたが、メジャーな3種類について改めて触れてみましょう」
文香「六尺ふんどし。締める前は一番シンプルで、ただの長い布です」
文香「越中ふんどし。前垂れがあります」
文香「もっこふんどし。前垂れがなくて紐パンに近いです」
ふんどしの種類と締め方
http://www.japan-fundoshi.com/archives/245
ありす「前垂れがあって、Tバックになるのがふんどしと思ってましたけど」
ありす「そういうのって存在しないんですか?」
文香「割ふんどし、または六越ふんどしと呼ばれるものがあります」
文香「その名の通り、六尺と越中の中間ですね」
現代のふんどし
文香「ふんどしの歴史や健康効果は、日本ふんどし協会が詳しく説明しています」
文香「簡単にまとめると、一時期危なかったが再評価され始めている」
文香「ゴムではないので締め付けられない、ということです」
ありす「私思うんですが、ふんどしって、語感が……ええと」
文香「かっこわるい?」
ありす「……はい。すみません」
文香「いえ、その感覚は正しいと言えます」
文香「実際、現在販売されているふんどしは『クラシックパンツ』『しゃれふん』『パンドルショーツ』など」
文香「直接『ふんどし』と言わないものも多いです」
ありす「たしかにそれならちょっと買いやすいです」
文香「今度一緒に買いに行きましょうね」
ありす「は、はい」
ありす(目的はともかく、文香さんとおでかけ……♪)
文香「どのふんどしが好きですか」
ありす「え、うーん……強いて言えばもっこです。普通のパンツに近いですし」
文香「たしかに入門には丁度いいですね」
ありす(……はっ! これだけ詳しい文香さんがふんどしを愛用していないはずはない)
ありす(つまり今、おそらく……)
文香「?」
ありす(ごくり)
フィクションとふんどし
文香「フィクションにおいては、和風なキャラがふんどしを締めている場合があります」
文香「うちの事務所で言えば、浜口さんや脇山さんなどですね」
文香「水野さんも当初有力視していましたが」
文香「すっかり食いしん坊天然キャラが固まってしまいました」
文香「裏切りふんどしです」
ありす(風評被害じゃないでしょうか……)
ありす「ええと、歌鈴さんや紗枝さんなども和風キャラと思いますが」
文香「道明寺さんはドジっ子さんですから、きっと履いてません」
ありす「怒られますよ」
文香「小早川さんはいまいちそういうイメージがありませんね」
文香「和風でもあるていど力強さを持ち合わせていることが条件と思います」
ありす「なるほど」
文香「脇山さんは剣道がありますし、浜口さんはくノ一です」
文香「くノ一といえばふんどしか対魔忍スーツです」
ありす(対魔忍?)
文香「洋服を着たことがない、存在しない設定なら力強さなどは関係なくふんどしでしょう」
文香「逆に洋服が当たり前の世界では、ギャグや記号的に使われることもあります」
文香「スマホゲームの女性キャラに衣装が追加される場合」
文香「そのゲームの方向性にもよりますが、花嫁やサンタなど季節性のもの」
文香「メイド服やチャイナドレスなど定番の衣装に比べ、ふんどしを見る機会は殆どありません」
ありす「まあ、それは……やっぱり男性向け下着というイメージは強いですし」
文香「水着の一種、そういうデザインとしてならアリだと思うんですが」
文香「日本ふんどし協会さん、デレステとのコラボお待ちしております」
ありす「やめてください」
文香「越中だけが持つ魅力として、それ単体でスカートめくりが出来ます」
ありす「ああ、前垂れをスカートに見立てて……ですか」
文香「その場合、前垂れは股間が完全に隠れるほど長いほうが良く」
文香「膝のあたりまであればチャイナドレスのようにも見えます」
文香「刺繍やレースなどで飾ってもいいですね」
文香「一方、短めで隠しきれず、ちらりと見えるというのも捨てがたく」
文香「私はどうすれば良いのでしょう?」
ありす「好きなだけ悩んでください」
ありすとふんどし
文香「そろそろふんどしを締めたくなりましたか?」
ありす「多少は抵抗感減りましたけど……」
文香「ではありすちゃんに実際にふんどしを締めてもらいましょう」
ありす「ふんどしを締めたいとは言ってません!」
文香「ありすちゃんのためにイチゴ柄の六尺ふんどしを用意しました」
ありす「イチゴなら何でも許されると思ったら大間違いですよ!」
ありす「というか、六尺はお祭り用じゃなかったんですか?」
文香「さすがです、ありすちゃん。ちゃんと覚えていましたね」
文香「でもお祭りなのでそれで良いんです」
ありす「なんのお祭りですか?」
文香「ありすちゃんの初めてのふんどし、それだけでもうお祭りです。お祝いです。お赤飯です」
ありす「そんなお祭り嫌です」
文香「もしかして締め方が分かりませんか? もっこにしましょうか?」
ありす「さっき見たので分かりますけど、そういう問題じゃなくて」
文香「頑張って作ったのですが……」
ありす(オタク特有の早口状態だった文香さんにようやく『……』が戻りました)
ありす「って、文香さんの手作りなんですか?」
文香「はい、こんなこともあろうかと」
ありす「……じゃあ、せっかく作ってくれたんですし、一回くらいなら」
文香「ありすちゃん……!!」
ありす(これまで見たこともない輝いた笑顔ですよ……)
文香「では更衣室へどうぞ。パンツの上から締めてはだめですよ。ふんどしに失礼です」
ありす「わかってますよ……」
ありす「お、お待たせしました……」
ありす「ってなんでいるんですか!!?」
P「文香が見せたいものがあるって」
ありす「嫌ですよ! 流石にそれは無理です!」
ありす「馬鹿なこと言わないでください!!」
文香「ありすちゃんが私の作ったもっこふんどしを締めてくれました」
P「なに、それは素晴らしい。ぜひ見せてほしいな」
ありす「嫌だって言ってるでしょう! 下着なんですよ、パンツと同じなんですよ!?」
~3分後~
ありす「分かりましたよ……。今回だけですからね」
文香・P(ちょろい)
ありすはゆっくりとスカートを捲りあげた。
P「おお……」
文香「とっても似合っていますよ、ありすちゃん」
P「真っ赤な顔と白いふんどしのコントラストが素晴らしい」
ありす(お父さん、お母さん、ごめんなさい。ありすは悪い大人にたぶらかされてしまいました)
文香「そのままくるっとターンしてみてください」
ありす「はい……」
ありす(くるっ)
そのときありすのもっこふんどしは役目を終え、ただの布きれになろうとしていた。
不慣れな文香が四苦八苦して作ったため、致命的に耐久性が無かったのである……!
ぱさり。
文香「あ」
ありす「え?」
ありすの足下にふんどしだったものが落ちている。
すなわち……
ありす「あ”あ”あ”あ”あ”!!」
終わり
デレステに実装するときは共通衣装でお願いします
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