殺し屋「死んでもらうぞ」 大富豪「か、金ならいくらでも払うから命だけは」 (16)


殺し屋「そんなセリフ聞き飽きたぜ」

大富豪「待て、言い値を払うから! とりあえずほら金だ受け取ってくれ」

殺し屋「こ、こら、勝手に胸ポケットに突っ込むなっ……て、10円一枚だけかよ。安すぎるだろ」

大富豪「じゃあ100円」

殺し屋「きょうび自販機でジュースすら買えねえぞ」

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大富豪「それなら1万円。い、いや100万払おう!」

殺し屋「あほくさ。そんなセリフを吐いて生き残った奴がいると思うか?」

殺し屋「自分の命を金で買おうなんて死亡フラグの定番じゃねえか」

大富豪「だが、俺には金しか……」

殺し屋「命に値札はつけられねえよ。じゃあな」パーン


大富豪「はっ!」スッ

殺し屋「なにっ!? 大富豪の姿が消えた!」

殺し屋「いったい、どこに!?」

大富豪「ここじゃよ」

殺し屋「なにいいいいいっ!? いつの間に俺の背後に」


大富豪「ほら、約束の100万をやるから見逃してくれ」

殺し屋「こら、人のズボンのポケットに金を突っ込むな! かさばるだろ!」

殺し屋「それに、それっぽちの金で見逃すわけねえだろ」

大富豪「じゃあ、いったいいくら払えば殺さないでいてくれるんだ?」

殺し屋「あのなあ、命は金より重いんだよ」


大富豪「……なんじゃと?」ゴゴゴ

殺し屋「な、なんだよ」

大富豪「殺し屋。お前は勘違いしているぞ、時に金は命より重い」

殺し屋「はあ?」

大富豪「ほれ、受け取れ!」ドサドサッ


殺し屋「う、うわあああああ! そんな量の金の束、いったいどこに隠し持ってやがった!」

大富豪「まだまだ!」ドサドサドサッ

殺し屋「ぐえええええ、金に埋もれる……」

殺し屋「う、動けねえ」

大富豪「お札の重さは、だいたい1千万円で1kgある。いまアンタの上に乗っている金は、総額100億円」


大富豪「すなわち1000kg。どうだ、金は額によっては命より重いんだ」

殺し屋「体重の話じゃねえか!」

大富豪「これで見逃してくれるか?」

殺し屋「……見逃すも何も、もう動けねえ」

大富豪「た、助かった。100億は痛いが、命には代えられん」


大富豪「じゃあ、ワシはこれで失礼する。悪いが国外に高飛びさせてもらうぞ」スタコラ

殺し屋「ちくしょうっ! こら、待てっ!」

殺し屋「……行っちまった。まさか、金の力で俺が殺しそびれるとは」

殺し屋「『命に値札はつけられねえよ』なんて格好つけた決め台詞まで吐いたってのに……」

殺し屋「言うなれば、奴の命の価値は100億円ってことかな。へっへっへ、少し高すぎやしねえか」


殺し屋「おっと、冗談言ってる場合じゃねえや。このままじゃ、俺がボスに殺されちまう」

殺し屋「俺もこの金つかってトンズラするか」

ボス「逃がすわけないだろ」

殺し屋「げっ、ボス」

ボス「帰りが遅いから見に来たら、なんてざまだ」


殺し屋「あ、あの、ごめんなさい」ガクガク

ボス「俺はミスを許さない男だ」

殺し屋「ま、前金は返しますから命だけは!」ブルブル

ボスが銃を構える

殺し屋「金ならいくらでも払います! ほ、ほら、大富豪が置いていった100億円ですよ!」


殺し屋「ど、どうにかこの金で見逃してくれませんか」

ボス「命に値札はつけられねえよ。死ね」パーン

殺し屋「ぐえっ」ドサッ

ボス「死んだか。その100億は三途の川の渡り賃にでも使うんだな」

ボス「さて。俺は大富豪を追うとするか」


殺し屋「」

殺し屋「……ぷはあっ」

殺し屋「……行ったか。問答無用で心臓に一発とは、さすがボスだぜ」

殺し屋「でも何で俺、死んでねえんだ?」

殺し屋「あ」


殺し屋「大富豪が、俺の胸ポケットに突っ込んだ10円玉。こいつが銃弾を止めてくれたのか」

殺し屋「……つまり」

殺し屋「俺の命は10円ってことかよっ!」


――――

 おわり

――――

乙。クスッとした。つ(4)円

4円(支援)の意。記号やマークは、絵文字扱いでうまく出ない時があるので…

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