恭介「チッ……」ガチャッ
理樹「あっ、お帰りなさい貴方……どう?お仕事は見つかった?」
恭介「うっせーな……パチンコ負けて機嫌悪りぃんだよ俺は」
理樹「またパチンコ行ってきたの!?最近職探しに熱心だと思ってたから私の稼ぎからお金を持って行ってるのを黙ってたのに……」
恭介「黙れ!俺がパチンコ行ったのはハロワ行ってからだよ!なんだ、それとも俺の息抜きに何か文句あんのか?」ギロッ
理樹「……ううん、そんな事ないよ」ニコッ
来ヶ谷「おい、あれは何をやっているんだ?」
西園「演劇です」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1552526788
恭介「それならいいんだそれなら。晩飯は作ってあるんだろうな?」
理樹「うん!今日は肉じゃが作ってみたんだ!」
恭介「へぇ……分かってんじゃねえか、ほら、寄越せよ」パシッ
理樹「あっ、うん……」
恭介「……」パクパク
理樹「……」パクパク
恭介「おい、さっきの仕事の話だがよ……断ってきたぜ」
理樹「えっ?なんで……この前はその仕事に決めるって言ってたのに」
恭介「だってよぉ、介護職だぜ?あんな老人どもの世話なんかしてられるかってんだ」
理樹「そうは言っても!飲食店のお仕事も続かなかったし派遣もすぐ辞めちゃったのに……」
理樹「恭介は一体なんのお仕事だったらできるの?」
恭介「ははっ、俺にはホストって言う天職があんだろ?つい最近まで荒稼ぎしてたじゃねえか」
理樹「でも……辞めちゃったじゃん、私の為にとか言って」
恭介「あぁ、まあな。でも俺の能力を持ってすれば一瞬で……」
理樹「……ごめんね、ホストのお仕事はできないよ」
恭介「は?なんでだよ」
理樹「だって恭介は契約とかそういうのを全部投げ出して突然お店を辞めちゃって、しかもお客の女の人と何人も関係を持ってたりした問題児だったんだよ?」
恭介「それがなんだってんだよ」
理樹「だからこの前お店の人が来てね、『あいつは他の仕事じゃ上手くいかないだろうけど、万が一にもホスト界には戻れない様にしておくからその旨を伝えておいてくれ』って言ってたの」
恭介「そ、そんな事在る訳……」
理樹「あるんだよ、だから大人しく違うお仕事を探して……」
恭介「うっせぇ!!」バチンッ
理樹「ひっ……なんで殴るの!」
恭介「うるせえ!!お前がそこで何とか言えば良かっただろうが!!」
理樹「だ、だって、その人たちはただその事を言いに来ただけで……」
恭介「あーうぜぇ……おい、その膨らんだ腹をだせよ」
理樹「や、やだ!お腹には赤ちゃんが……」
恭介「へっ、お腹を抱え込みながらうずくまりやがって、子供を守る母親気取りか?」ゲシゲシ
理樹「うっ……や、やめて……」グスグス
恭介「泣くなよ鬱陶しいな……おらっ、立てよ!」グイッ
理樹「や、やだぁ!髪引っ張らないでぇ!」
恭介「へっ、次はどうしてやろ「何やってんだ恭介!!」
理樹「け、謙吾さん!?」
恭介「またお前かよ……来んなって言ってんだろ」
謙吾「恭介……まだそんな事やってんのかお前」
来ヶ谷「この話の脚本は誰だ?」
クド「わたしです!」
来ヶ谷「君はどこから影響を受けたんだ?」
クド「最近見た昼ドラなのです!」
来ヶ谷「あぁ、そういう……」
理樹「うっ……グスッ……」
謙吾「で、また八つ当たりしていたのか」
恭介「違ぇよ、こいつが面倒くさいのが悪ぃんだ」
謙吾「お前……」ギリッ
理樹「怒らないで下さい、この人にも事情があって……」
謙吾「はぁ……お前はいつもそんな調子だからいけないんだ。昔からの付き合いとは言ってもこいつがクズな事に代わりはない」
恭介「誰がクズだって?」
謙吾「お前以外に誰がいる。このゴミが」
恭介「ひっでぇ言い草だな、こうして集まって来てんだから楽しくやろうぜ?おい、お前、なんかデザート出せ」
理樹「えっ、夜ご飯は……」
恭介「食う気失せた、ゴミ箱にでも捨てておけよ」
理樹「そんな……」
謙吾「捨てないでいいよ、俺が食う」
理樹「あっ、ありがとうございます……一応手間かけて作ったんで、食べてもらえれば……」
謙吾「はははっ、お前の料理を捨てるなんて勿体無い真似する訳ないじゃないか。このジャガイモとか丁度いい柔らかさで美味しいと思うぞ?」
理樹「そ、それほどでも……」エヘヘ
恭介「……チッ」
ガシャアアアン!!!!
理樹「ああっ、ご飯が!!」
謙吾「……恭介、貴様……」
恭介「へっ!偉そうな事言ってる謙吾も結局メシをたかりに来ただけなんだろ?人の家に上がりこんで来て残飯漁るとか乞食か?お前は」
謙吾「この期に及んでまだ言うか恭介!お前、そんなに理樹の事が嫌いなら離婚すればいいじゃないか!!なんでまだお前は理樹の夫で居るんだ!!」
恭介「ふんっ、そんなもんデキちまったからに決まってんだろ?やれるもんなら今すぐ腹パンして堕ろしちまいたいんだよこっちは」
理樹「そ、そんなの酷い……私はせっかく恭介に全てを捧げてきたのに……」
謙吾「あぁ、もう俺はお前に愛想が尽きた。金輪際俺に関わるな!!」バタンッ
シーーン
恭介「……あぁうぜぇ。おい、理樹。この部屋片付けとけよ」
理樹「……うん」
…………………
次の日
恭介「あー、昨日は疲れたなぁ……おい!理樹!朝飯まだか?」
恭介「……あれ、いねぇのかあいつ……」
恭介「リビングにもいねぇ……ん?何だこのメモ」
「恭介へ
ただ一言、家を出るとだけ伝えさせていただきます。貴方に残す言葉も惜しむ言葉もありません。永遠に、さようなら」
恭介「……おいおい嘘だろ?そんな事在る訳……」
ガチャッ
恭介「いねぇ……」
ガチャッ
恭介「ここにも……」
ガチャッ
恭介「てめぇ!隠れてんじゃねえぞ!!」
ガチャッ
恭介「っ……ここが最後の部屋だ……」
恭介(何だかんだ言ったってあいつは居るはずだ。そうだ、きっとこの部屋開けた瞬間笑いながら出てくる筈だ。ったく、俺を驚かせやがって、罰ゲームでデコピンでもしてやろうか……そうだ、たまにはあいつを労ってやってもいいかもしれねぇ。こうやってドアを開けたら……)
ガチャッ
恭介「……あぁ、分かってたよ……居るわけなんてないって」
部屋には何も無かった。そこに置いていたアルバムも、別れの言葉が綴られている手紙も無かった。
葉留佳「はいカット!!」
小毬「おぉ~すごくりありてぃがあったね!」
西園「とりあえず第一幕は満点ですね、さて出演した皆さん?感想をどうぞ」
理樹「あーっ、その……恭介が結構新鮮だったかな?」
西園「成る程、たしかにクズ系イケメンの恭介氏は新鮮ですね……では次」
恭介「……」ポロポロ
鈴「本気泣き!?」
恭介「理樹ぃぃぃぃぃ!!!!」ヒシッ
理樹「ちょっ!?恭介!?そんなに悲しかったの!?」
恭介「ああ勿論だ!!お前の事を殴ったり蹴ったり!その上最後に捨てられるなんて俺にとっての地獄そのものじゃないか!!!」
謙吾「あぁ、俺も同感だ……セリフ中の『クズ』ってワードについ力が篭ってしまった」
来ヶ谷「あのシーンだけ本気の罵倒だったな、俳優としては満点じゃないか?」
謙吾「ま、俺は意外と楽しかったぞ?なんせ理樹とイチャイチャ晩飯シーンを撮ったんだからな」
恭介「ふざけんなああああ!!!俺なんて、俺なんてえええええ!!!」
真人「……おい、俺の出番は?」
西園「真人君は二幕からなんで、まだ引っ込んでいて下さい」
真人「分かったよ……これ見てた奴はどんな反応してたんだ?」
葉留佳「そうですネ……とりあえずお姉ちゃんはマジ泣きしてますよ、ほらここに」
佳奈多「ヒック……エグッ……なんて可哀想な直枝……クズ男に依存して良いように弄ばれて……」グシュグシュ
鈴「させ子はひたすらお腹の子供を守ろうとする理樹のシーンで泣いてたな」
させ子『あぁ、なんて感動的なシーンなのでしょう……」ダバー
取り巻き「佐々美様、まだ序盤です!!泣くには早すぎます!」
鈴「って具合だ」
真人「そんな泣く要素あったか?いまの」
理樹「ちなみに第二幕の内容は?」
西園「そうですね、一人で街に繰り出したは良いけれども生活費に困った直枝さんは身体を売る羽目になります」
理樹「ブフッ!!」
来ヶ谷「R指定入るぞ」
西園「そして水商売をしていると工事現場帰りの真人君が来店します」
クド「デ◯ヘルなのか◯ープなのかピン◯ロなのかは未定なのです!」
小毬「??」
葉留佳「そんなもん決めなくてよろしい!!」
恭介「誰だ西園とクドリャフカに脚本任せた奴」
西園「しかしここから真人君が直枝さんに愛の重要性を説き、結局何もせずに帰るんです」
佳奈多「不能だったのね、可哀想に……」
真人「うるせえよ!!」
西園「そんな真人君に直枝さんはときめくんですが……その次のお客がなんと恭介氏なんです」
恭介「なんだと!?ここで俺なのか!?」
西園「結局金で直枝さんの身体を好き勝手した恭介氏は直枝さんを強引に惚れ直させるんですね」
来ヶ谷「テクニシャンだな」
理樹「まるで僕が変態みたいな立ち位置だね……っていうかそんな物撮れるの?」
西園「安心してください、ナレーションで済ませます」
恭介「いや待て、そんな重要シーンをナレーションとは勿体無い!カットにカットを重ねて撮りまくるべきだ」
謙吾「おいこら!それは理樹と如何わしい事をするためだろう!そんな美味し……いや羨ま……けしからん事させん!」
理樹「残念ながら僕はノーマルなんだ。だから恭介、僕は遠慮させてもらうよ」
恭介「そうか?やってみなければ分からないじゃないか」
理樹「ごめん無理」
来ヶ谷「私が相手してやろうか?」
理樹「お願いします」
謙吾「おいこらちょっと待て」
佳奈多「あら?正直演技力含めて私以外にこのシーンを演じられる人間は存在しないと思うのだけれども」
理樹「二木さんなんてすぐ取り乱すのに無理無理」
小毬「よく分からないけどわたしがやる~」
理樹「それなら是非「させたらどうなるか分かっているな?」
理樹「ごめんなさい来ヶ谷さん冗談です」
クド「みなさーん!ナレーションだって言ってるじゃないですか!!」
杉並「どうしてもと言うなら私が……」
クド「ナレーション」
沙耶「仕方ないから私が」
クド「ナレーション!!」
あーちゃん先輩「あの」
クド「うるさいですねみなさん!!!」
なんだかんだ言って劇は進んだ。ちなみに予定シーンは丸ごとカット、オチは恭介と和解して子供が生まれたと言う話だった。赤ちゃん役は鈴、今後は家族物で劇を撮るらしい…………
完
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません