【艦これ】外地鎮守府管理番号88 特別番外編 香港騒乱 (94)

携帯からのスレ建て、書き込みはPCから予定

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1546428756

※潜入的な事をやっていますが物語進行の都合上名前を変えずそのままで表記させていただいております。
その辺り御了承いただけると幸いです。


香港 金融街 高層ビル内オフィス



長門「CEO 本日の予定ですが。」

CEO「あぁ、長門君か。予定の確認だね。頼む。」

長門「本日の午前の予定ですが………。」



長門が朗々と歌を謳うが如く

その澄んだ声音で予定を読み上げる。



長門「それから党地区委員長の周様から面会の要請がありましたので……。」



急な予定の変更にも時間の調整をして組み込んでくるのはまさしく優秀。



CEO(実に優秀な秘書だな。)

長門「いつも使用されるナイトクラブの貴賓室の方へ予約を入れておきました。」

長門「CEO?」

CEO「あぁ、すまない。少し考え事をしていた。うん。ありがとう。」

長門「車は表に回しております。」

CEO「あぁ、分かった。

君はこのまま社内に残って明日以降の予定の調整を頼むよ。」

長門「了解いたしました。」


CEO移動中車内



タブレットを取り出し電源を入れ社内の隠しカメラの様子を確認するCEO



秘書課 室内 



長門「明日のCEOの御予定にある人民代代表の劉様との会談ですが

劉様の奥様がお誕生日なので……。」



秘書課の者達と細かい打ち合わせ。

実際半年程前から入社し秘書業務を行う長門は実に優秀だった。

いや、優秀と言う言葉で片付けるには言葉が足りないほどに優秀だった。

今、映像で確認したように商談相手の家族構成や誕生日、

あるいは子供が嵌っている趣味。

そういったものを調べ、相手との会談時にちょっとしたプレゼントや

時として中国的会話の役に立てる事がこの会社の事業に大いに役立っていた。



CEO(だけに何処かの情報機関がうちの会社に探りを入れてきたかと思ったが。)

CEO(考えすぎか?)



同香港 荃湾区(チュンワン区) 某所

業者向け荷物搬入口 通用門 警備員詰所



グラ「お疲れ様です。」

摩耶「新設アトラクションに使用する機材の搬入です。」

摩耶「サインとゲートの通行許可をお願いしまーす。」ニヤ

グラ「了解です。確認しますね。」



業者が差し出す確認用書類にサインをし

ゲート開放のスイッチを入れるグラーフ。



摩耶「どうもー。」



摩耶が受け取った書類の一番上には一枚のメモ紙。

周囲にそれとなく目を配り、そのメモ紙をポケットに入れる摩耶。

そして、乗ってきたトラックを運転し施設の内部へと消えていった。


香港 男人街内屋台街 深夜



雪風「ラーメン出来たアルヨー!!」

時雨「はーい。」

川内「注文だよ!」

川内「水餃子一杯!」

雪風「了解アル!」



香港の夜の街に美人娘々で繁盛している屋台があった。



客「脂マシマシニンニクマシマシチョモランマ。」

時雨「!」

川内「!」

時雨「今日はこのお客様でラストオーダーだよ!」

川内「さぁ、帰った帰った!」



時雨と川内がラストになる客が

屋台の席に着いたのを確認して食事を終えた客を追い出す。

そして。



スパ「無事に接触出来ました。」

雪風「ラーメン出来たアルヨー!」



つ 二郎系どか盛ラーメン



スパ「姉さん。ちょっと冗談が…?」

雪風「注文した以上は食えヨロシ。」

スパ「いや、注文は符丁で……。」

雪風「私の奢りだ。遠慮はいらん。腹一杯食え。」

ニッコリ

スパ「おっおいひいれふ……。」(涙目)



一同はとある目的の為、香港に潜入、潜伏していた。


それは半年程前の事、

とある大規模作戦が終わり日々の個別任務に追われていたときの事。

執務室



提督「皆集合してくれてありがとう。」

時雨「僕達に何か用かな?」

提督「あぁ。

   だが、今回お前達に依頼する作戦なんだが

   本来は海軍がやる仕事ではないんだ。」



提督が話す話は艦娘がタンカー等商船警護を終えた後に

行方不明になる事が最近起きているという話。

あわせて日本の防衛関連企業の某国現地法人社員が

不当な拘束を受けたりすることが最近増えているという話。



長門「まっ黒じゃないか。」

提督「なんだがな。相手と場所が不味いんだよ。」

提督「相手が相手だけに大きく出れないんだ。」

提督「後、消えた寄港地が国際港湾でも

   上海とかのあからさまなところではなく香港なんだよ。」

雪風「香港だと違うのですか?」

提督「微妙に違う。」

提督「上海だと管理がもろだから外交ルートは元より

   艦娘運用国の常任理事国様みんなで

   文句を言ってど突きまわせるんだが香港は違う。」

時雨「香港もあの国の一部なんじゃないの?」

提督「香港は一国二制度って言ってな英国から返還されたとき

   50年は急激な体制の変更は行わないって宣言を内外に向けてやっている。」

提督「だからあそこは資本主義で共産党政治のエアポケットでな。

   あの国が自国の直接関与を暈す為に使われる地域になってしまっている。」

摩耶「そういえばそんな事いってたけどよ。

   中身はまっ赤じゃねぇか。」

提督「そこなんだよ。中身は赤なんだけど外見は限りなく赤に近い青。

   そんな訳だからちょくちょく自由を求める民主化デモが起きている訳だ。」


長門「成る程読めた。

   完全民主化の後に独立を求める反体制派が

   日本や他常任理事国への取引材料にする為に

   艦娘を拉致したという事にしているという事か。」

長門「自分達への民主化運動への後押しをさせる為のという理由づけだな。」

提督「そういう事。

   かなり突拍子もない上に無理筋だが一応有り得なくはないんだ。」

提督「さらにあちらの国の武装警察様から

  『 容疑者 』が『 自白 』しました。

   と言われちゃぁな。」

提督「表向きには手打ちにするしかなかろうよ。」

提督「それにな…、まぁ、なんだ、

   足りないけど足りている数の引渡しがあればな。」

長門「深く追求は出来ないという事か。」

川内「うわぁ…。」

グラ「証拠が無い状態で自白しましたと言い切るあたりはあの国らしいな。」

提督「嘘も百万回言えば本当になる、はグラーフ。

   お前さんの祖国の宣伝相閣下のお言葉だろ?」

グラ「はは。耳が痛いな。」

グラ「確かに我が国の元宣伝相殿のお言葉だな。」

提督「対外的にはそれで終了でこちらも深くは突っ込めないが。」

時雨「それを良しとしない訳なんだね。」

提督「そういう事。言った様に数が足りていないんだ。」

摩耶「けどよぉ。なんであたしらなんだい?」

提督「ここが非正規扱いだからさ。」

摩耶「?」

長門「正規の軍隊を動かしていらぬ緊張を作りたくないという事か。」

提督「察してくれて助かるよ。」

長門「まったく難儀だな。」

提督「あぁ。」

川内「非正規なら失敗しても隠蔽しやすいって事ね。」

雪風「碌でもないですねぇ。」

雪風「ところでしれぇ、ウォースパイトさんはどうして居るんですか?」

提督「まぁ、ちょいとな……。」


香港 旧市街区 貧民街 高層ビル内の一室



雪風「明日の仕込みに麺を作るのでそこの小麦の袋いいですか?」

時雨「了解。」



ドサッ

ドコドコドコドコ

ペッタンペッタン

子気味良い音と共に麺打ちを始める雪風。

もちろん窓は開けて換気は良くしてある。



川内「にしてもまぁ、イギリス統治の時代が長かったもんねぇ。」

スパ「何ですか皆して、私が参加しちゃまずいんですか。」プクー



そう、出身がやんごとなき御身分のウォースパイトは

香港が嘗てイギリス領であった関係から香港内の色々な顔役に伝手があるだ。

そして、今回の作戦においてイギリス他、

日本以外の艦娘運用国の中で参加させる艦娘として最適だったのだ。

もともとが非正規、さらに言えば秘密裏に捜索、

必要あれば救出までやらなければいけない作戦。

日本以外の国からしてみれば艦娘に関する技術が

某国へ漏れるのは何としても避けたい、当たり前といえば当たり前。

現在運用している国同士では紳士協定という暗黙の了解で

対深海以外にその技術は転用しないとなっている。

しかし、某国へ技術が渡り、

そんな事は知ったことじゃないとばかりに陸上歩兵へ転用されれば?

最強の歩兵部隊が出来上がるという悪夢を見る事になる。

だからこそ今回の作戦に協力し、

かの国の野望を挫きたいというのが本音なのだが

如何せん表立って動き刺激するのは避けたいという本音もある。

実際に部隊を出す日本からしてみてもいざ動かして万一の時に梯子を外されてはたまらない。

だからこその保険という意味合いも含んで……。


スパ「自分が参加しているという訳ですね。」

川内「だねー、外交的取引材料って奴?」

スパ「そうそう、明日の天気なんですが。」



露骨な話題変えをしつつ

手元の紙で筆談を始めるウォースパイト。



スパ(社員を人質に取られている日本企業の代理人には話が付きました。)

川内「明日は雨って聞いたよ。」

川内(軍事施設の撮影って嫌疑を掛けられていた人達だよね?)

スパ「雨だと観光して回るのによくないのではないでしょうか?」

スパ(日本側が相手政府の要求する物品の引渡しを飲むことで明日解放となるそうです。)

筆談で細かく打ち合わせ。



人質となっている社員が解放されたのを確認後

第三国の中国でも日本でもない国の運送屋を利用して

日本から中国に艦娘建造に関わる装置が香港に運び込まれる。



時雨「雨が降っていても関係ないよ。」

時雨「雨が降っていてもね。」

時雨(ビル下に車が3台来た。お客さんの歓迎会に入るよ。)



筆談で会話をしていたのは数日前から監視の目が付いていたので盗聴対策。

雪風がわざとらしく騒音を立てながら麺を打っていたのもその為である。



雪風「麺をもっと作りますね!」



時雨の合図を元に小麦の粉をざっと部屋にばら撒き始める雪風。



雪風「ウォースパイトさん。そこのバスクリンの缶いいですか?」

スパ「これ、何が入っているんですか?」

雪風「それの中身は……。」

雪風「秘密です。」ウフフ

川内「電気を消して電球割ってと……。」カシャ



バスクリンの缶を受け取った雪風が蓋を開けばら撒き始めるのは黒い粉。

室内に粉塵が程よく舞い上がったのを見計らい3人は隣室へこっそり移動する。


ドタドタドタ



「不要动!如果抵抗的话,杀!」(動くな!抵抗すれば殺す!)



ドアを蹴破り武装した一団が室内へ雪崩れ込む。

室内は襲撃を察知していた為、当然明かりは消されており暗い。

そして、彼らはうかつにも室内照明のスイッチを入れてしまった。

カチッ

ドゴン!



「哎呀――――!」(アイヤ――――!)



中国人が驚いた時によく言うお定まりの台詞。

それを盛大に雄叫びながら侵入者達は吹き飛んだ。

雪風達が何を仕掛けたかは言うまでも無いことであろう。

密閉された室内空間に燃えやすい粉末、

この場合、小麦粉とバスクリン缶の中身。

木炭を細かく砕いた木炭粉を混ぜ合わせ、

白熱電球のガラスを割っていたのだ。

そんな素敵状態の中で灯りをつければ白熱電球のフィラメントが着火装置となり。

映画に小説、ラノベに漫画に引っ張りだこでおなじみの

『 粉塵爆発 』が起こるのである。



雪風「まだ軽く燃えてますね。」

川内「私は階下の後詰の部隊を始末してくるね。」



ヒラリとベランダから下へ向けて文字通りに落ちていく川内。



スパ「姉さん、ここ15階……。」

「由于紧急帮助是求!」(至急応援を求む!)

雪風「あら、生きてましたか。」



首に特殊鋼線を引っ掛け一気に輪を縮める。

スパッ



スパ「あっ。」

椿の花が落ちるかのごとく首がボトリと落ちる。

階段に潜んでいたのであろう敵の第二陣が攻めて来るが。

ダン!

敵の懐に一気に踏み込みその勢いのままに掌底を食らわす雪風。

鳩尾に食らった所為か

防弾チョッキらしき物をつけていたにも関わらず吐瀉物を漏らす敵。

幸いにもガスマスクを付けていたおかげ(?)か

雪風にそれが掛かる事は無い。

そしてその後ろから来ていた相手に暗器の針を投げる。

艦娘の力で投げられたそれは容易に眉間を貫通した。


雪風「突入前の食事は避けるべきでしょうに。」

時雨「そうだね、毒ガス等の対策を考えるなら

   マスクをしていても避けるべきだよね。」



駆逐艦娘の小柄な体格を生かし一気に敵の懐に潜り込む時雨。

そして、体を落し一気に突き上げる要領で敵の顎を上方へ撃ち抜く。

首がおかしな方向へ曲がって見えたのは決して目の錯覚ではない。



スパ(ヒェッ。)



室内に侵入してきた敵の排除が完了すると

雪風が敵の死体からインカムを拾う。



雪風「喂喂?」(もしもし?)

「是谁?」(誰だ?)



聞いたことの無い声音に誰何を返す敵。



雪風「是毁掉你们的泰山府君也」(お前達を殺す閻魔だ。)

「什么?」(は?)

川内「已經死了」(お前はもう死んでいる。)

「グッ オアッ パッ ペギャッ」



インカムの向こうからは川内が仕事をしている音が聞こえる。



川内「情報を引き出すのに一人生きてれば十分でしょ?」

雪風「えぇ、流石です。」

時雨「じゃぁ、移動するとしようか。」

雪風「そうですね。ここはもう使えませんし。」



襲撃に遭い、爆発により室内が散らかった状態を片付けることなく移動をする一同。


スパ「このままでいいんですかね?」

雪風「場所が場所ですから。」

時雨「貧民街区だと犯罪組織の抗争なんかは日常茶飯だからね。」

時雨「観光地区の煌びやかさからは思いもよらないとは思うけど。」

時雨「隣で銃声が聞こえようと爆発音が聞こえようと

   巻き添えを食らいたくないから決して部屋から出て覗いたり、

   警察に電話するような事はしない。」

時雨「慣れているからこその人生訓だね。」

スパ(やべぇ、話についていけない。潜ってる修羅場の数が三桁くらい違う気がする。)

雪風「あそこで1年生き延びれば分かるようになりますよ。」

スパ「あの…、分からなかったら?」

時雨「んふふふ。」ニコ

雪風「んふふふ。」ニゴォ



つまりはそういう事である。



スパ(姉さん達の無言の笑顔が怖い!)


ウォースパイトは引き攣った笑顔のまま時雨達の後を付いて行くのだった。

本日分更新ここまで
元ネタご紹介&配役御案内

元ネタ

砂の薔薇 第5巻 九龍特急 

配役

真理子=長門

ヘルガ=時雨

アイリーン=ウォースパイト

デライラ=川内

鈴=雪風

コリーン=摩耶

ジェシカ=グラーフ

大雑把な役割分担としてはこのような形でございます
後はいつもの脇を彩るおっさん達が出演予定デース
香港の地理を調べるのにグーグルマップをグリグリやってました……
それではここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レス
お気軽にいただけるといちが喜びます
また、前作品の末尾で頂いた感想レス、ありがたく拝読いたしました
次のプロットは見直し見直しでやってる段階です…、夕立にするか響にするかで色々悩んでいるキャラが
暫くはこの話の作成になるかと思いますので気長にお待ちいただけると幸いです
ここまでお読み頂きありがとうございました


日が明けて翌日

香港仔魚類卸売市場 近辺 冷凍倉庫 

※敵との会話は中国語で話していると脳内補完していただけると感謝。

一人の男が全裸で木製の簡素な椅子に縛り付けられていた。



バシャバシャ



雪風「おはようございます。目覚めはいかがですか?」

時雨「まだ眠たいのならお代わりもあるよ。」



バシャバシャ



川内「冷凍庫内だから下手につつくとくっついちゃうね。」



椅子にくくりつけた男を叩こうとして

床に張り付いた棒状の何かを剥がしながら川内が言う。



スパ「めっちゃ寒いです。」ガタガタガタ

雪風「さて、貴方の素性、

何故襲撃をかけてきたのか語ってもらいましょうか。」



時雨が上着のポケットからICレコーダーを取り出す。



時雨「厚着してても結構寒いから手短に頼むよ。」

「………。」

川内「追加がやっぱりいるかな?」



バシャバシャ

相手の目が覚める前からかけ続けているそれは。


スパ「油臭いですけどガソリンですか?」

雪風「その通りです。ガソリンの引火点は-45℃。

非常に揮発性が高い液体です。」

雪風「液体は蒸発するさいに周囲の温度を吸収して蒸発していきます。」

雪風「後の説明は不要ですね。」

スパ「えーっと極寒の冷凍庫の中でガソリンをぶっ掛ける事で

対象の体温を奪い更に寒くしてあげていると。」

時雨「ガソリン価格もそれなりの時代でかなりのサービスだよ。」

川内「水だと冷凍庫内では液体が維持できないのよね。

ガソリンは凝固点が-90℃だから。」

スパ「液体でぶっかけられると。」

川内「そういう事。ほらさっさと喋らないと更に寒くなるぞー。」

雪風「ほどほどで止めないと凍死するでしょうか?」

時雨「喋る気になったかな?」

時雨「もう一度聞くよ?君の所属と階級。

僕達を襲撃した理由を話して貰おうか。」

「………。」

時雨「君の足元、うん、そう、君が座っている椅子の下に盥があるのに気付いたかな?」

時雨「僕の提督は煙草をこよなく愛していてね。

敵と分かり合うには煙草を交換してみるのもいいぞって言われた事があってね。」

時雨「僕とした事が実にうっかりしていたよ。君は煙草好きかな?」

「!!?!?!?!?」



慌てるのも無理はない。

なにせガソリンが盥にたっぷりと溜まってなおも蒸気が上がり続けている所に

I like Somokingとばかりに火の付いた煙草を投げ入れる行為は正気の沙汰ではない。


「待ってくれ喋る。」

雪風「どうぞどうぞ。」



そして、暫くの間、一問一答形式で雪風が尋問を行いそれに男は応えていった。



雪風「国家安全部所属ですか……。存外大物でしたね。」

スパ「何かまずいんですか?」

雪風「私達が居るこの国の諜報機関はいくつかありますが

此方にいる方の所属は行政機関である国務院の所属なんですよ。」

雪風「軍とは別の諜報部門で完全に国が主体的に関わっているって事です。」

雪風「貴方の国の秘密情報部に相当する機関です。」

スパ「あー、あの。ジェームズ・ボンドの。」

川内「軍部の暴走って言い訳による切捨てが出来ないくらいに真っ黒って事かぁ。」

川内「で、後聞きだしたいことはあったっけ?」

時雨「川内、肝心要の事があるよ。」

時雨「さてと、僕が聞きたい事は1つ。」

時雨「この冷凍倉庫には部品がいくつもあったけど人数が足りないんだ。」

時雨「足りない人数を何処に保管しているか教えて貰ってもいいかな?」

「………。」

時雨「僕らが尋問のためにこの場所を選んだのは決して偶然じゃぁない。」

時雨「君達が何処かで僕らの仲間を解体し、部品、そう。

部位ごとに保管する為の冷凍庫として此処を選んだまでは調べは付いているんだ。」

時雨「ここなら冷凍トラックが入り込んでも解体に伴う血肉の処理もしやすいしね。」

時雨「更に言うなら魚の生臭さで万一、

保管している部品が腐ったりしてもばれる事はない。」


「………。」

時雨「だけど、今まで消えた艦娘の人数と

ここに保管されているパーツの数から推測される人数が合わないんだよ。」

時雨「ここの人数だけでは足りないんだ。どこに監禁されているのか。」

時雨「ある程度の目星は付いているんだ。でも、確証が欲しい。」

時雨「君は知らないかな?」



にっこりと笑いかけるがその顔が笑っている様に見える

と、言うのはこの場に居るものでは一人としていないだろう。



「…………。」

時雨「話した後の君の立場の事を考えているなら安心してくれていいよ。」

時雨「情報を貰うんだ。お金だって用意している。」

川内「あぁ。これか。」



ゴトリと音を立て地面に置いたのはゼロハリのアタッシェケース。



川内「まぁ、分かると思うけど中身は定番だよね。」

時雨「僕らが君の逃走用資金として用意したものだ。」

時雨「君が喋ってくれるなら好きに使ってくれて構わない。」

時雨「これだけしても喋らないと言うなら君にはもう、用はない。」



離れた位置に居る川内が洒脱なライターを取り出し、火をつけようとする。



「待ってくれ。知っている事は話す。」



そして、必要な事は全て聞き出し後々の為に録音も終えた。


雪風「では、長門さんと合流しましょう!」

スパ「あれ?解放しないんですか?」

時雨「僕が一言でも解放するといったかな?」



先程のやりとりを一言一句思い出し。



スパ「言ってないですね。」

川内「お金はお金でも冥銭だしね。」

川内「この国の追跡がどんなに凄くても

   流石にあの世へ高飛びすれば追いかけられないでしょ。」

川内「まっ、あの世で使うお金がいっぱいでお金持ちだよ。」

川内「ほら、よく言うじゃない。」



続く言葉は低くくぐもり冷え冷えとした底意地の悪い笑顔と共に。


川内「地獄の沙汰も金次第、ってね。」



懐紙を取り出し火をつけ、

川内が盥に投げ込んだのは冷凍倉庫の出入り口まで歩いての事だった。



時雨「さぁ、ここからは僕らのターンだ。」

川内「この炎は宣戦布告の狼煙火って奴だぁね。」



燃え盛る炎と煙、戦場で嗅ぐ硝煙や油とはまた別の香り。

救えなかった艦娘への送り火を背に彼女達はまた、

香港の闇へと消えていった。


香港のタブロイド紙三面を魚市場での倉庫火事が紙面を賑わした翌日。


スパ「風がかなり巻いてますね。」



ヒュルルルー



長門「ビル風の凄さは香港名物でもあるからな。」

長門「高層ビルが立ち並ぶ都市ならではと言えなくもないがな。」



観測用の双眼鏡を片手に長門が言葉を返す。



長門「一発こっきりだ。やり直しは効かない。しっかり決めてくれ。」

スパ「姉さん達の肝の据わり方は異常ですよ。まったく。」



ぶつくさと言いながら構え、スコープを覗く。

ビルの屋上に腹ばいになり構える銃は

イギリス製の対物ライフルAW50。

しかし、それは見た目が少し違った。



長門「檄鉄と薬室部分の部品ぐらいしか持ち込めなくてな。」

長門「流石に分解してでも全てを持ち込むには難しかった。」

スパ「金次第でなんとでもなりそうですがね。」

長門「こっちの製造業で使う

   業務用3Dプリンターで作ったものだから強度が無い。」

長門「拳銃弾なら3Dプリンター製でも連発に耐えるようだが。」

スパ「流石に12.7mmは持ちませんか。」

長門「後始末の問題もあるしな。」

スパ「だとしても、対象の頭はダイヤモンドか何かですか?」

長門「例に漏れず防弾車での移動なんでな。クラスがEN-B7」

スパ「あぁ、ですと普通の狙撃銃じゃ無理ですね。」

スパ「悪い事している自覚があるから命を守る為の金は惜しまないという事ですね。」



ちらりと長門が左手につけた腕時計を確認する。

秘書として働いていた間に把握した出社時間と通勤ルート。

その通勤ルート内で車内の目標を狙撃するつもりなのである。

後の逃走までを考えると住んでいる住居や車の乗り降りの時に狙うより

移動中に狙う方がいいとの結論からの狙撃ポイントなのである。


長門「そろそろだ。」



長門がそう呟き、ウォースパイトは再度、銃を構えなおす。



長門「風向き 東南 風速 3m……。」

長門「目標まで5km」

スパ「えーっと…、何ヤードですか?」

長門「……、3.15?」

スパ「了解。」



そして、ウォースパイトが覗くスコープに1台の高級車が移りこむ。

マイバッハS600の後部座席に狙撃対象は寛いだ様子で座っている。



CEO「長門君は休暇か……。」



運転席とはスモークの防弾ガラスで仕切られている為、

誰に話すでなく独り言を呟く。

車外との窓ガラスがスモークではなく

普通の透明な防弾ガラスなのは見栄を張り面子を重んじる中国人らしく

自分が臆病者と他人に侮られたくない為か。

車に乗る人物の人となりを良く表しているとも言える。

そして、優秀な秘書が先日から休暇をとっている事により生じている不便に愚痴が漏れる。

長門は休暇に入る前、入っていた予定には全て微に入り細に入り必要な手配、

指示を済ませていた。

だけに、突発的な事項には対応できず昨晩から事態収拾に追われていた。


CEO「まったく誰が……。」



北京閥との顔を繋いで中南海の奥の院に

ようやく名前が売れて来たと思った矢先に。



CEO「軍に貸していた冷凍倉庫が吹き飛ぶとは……。」

CEO「貴重な商品が……。」



そう、軍に貸し出した冷凍倉庫内に

保管されていた物についてCEOは知っていた。

そして、更にはそれを軍以外にも他の国へ横流ししていたのだ。



CEO「金のなる木が……。」



何者かの爆破により吹き飛んだその被害額を考えれば

ぼやきたくもなるというものである。

ボッ!

車内に真っ赤な華が咲き石榴が割れるかの如くCEOの頭部は無くなった。



スパ「目標排除確認。」ヨッコイセ

長門「同じく確認。にしても、なんというか。」

スパ「対物ライフルで吹き飛ばすと文字通りに吹き飛びますからね。」



銃口から煙がたなびく状態のAW50をぼきぼきと力任せに折るウォースパイト。



スパ「結構軽く壊れますね。」

長門「だから1発分の耐久力しかないのさ。さぁ、急ぎ撤収するぞ。」

長門「流石に音までは消せないからな。」



狙撃時の音で警察が来る前に急ぎ二人は撤収したのだった。

以上短いながらも更新終了で御座います
勘のいい方はここまでのヒントで研究施設等が何処にあるか分かるんだろうなぁと
それはそうと、みなさまイベ楽しまれてます?
私は秋月型の2セット運用を目指し涼月の二人目をゲットすべくお目目ぐるぐるになりながら輸送丁堀しています
ガチャンは心に来ますね、終了日が告知されたのでいい加減見切りをつけないといけないところ
ZECO津風ことアメリ艦天津風はちゃっかり確保してるんでギリギリまで掘りたいところ
秋月型はほんと何人居ても腐らない娘なので掘れる時は掘っておきたいですね
感想、乙レス、ありがとうございます、お気軽に残していただけるとイチが喜びます
では、次回もお時間よろしければお読みいただけると幸いです、ここまでお読み頂きありがとうございました

229出撃 191 S勝利 2 A敗北 36道中撤退
涼月2人目を掘ろうと軽く考えていてえらいことになりました
なんとかお迎えできたのでよかったようなものの、E3まで通しての攻略より資源、バケツが飛びました
お高い女、涼月
イベ自体はリセ堀なども活用していたので、今回は無事全甲達成できました
海域数が少ない時くらいは頑張らないといけないですね、早波?知らんですよ?
では、お時間宜しければ本日の更新もお付き合いをいただけると幸いです


香港 九龍 尖沙咀 重慶大廈内ショッピングセンター



グラ「やぁ。Guten Tag 今、来たところかな?」

川内「伯爵達も?」



グラーフと摩耶が二人一緒に並んでいる。



摩耶「おう。今来たところだぜ。皆、時間通りだな。」

時雨「早くても遅くてもいけない。」

「確かに、時間を守るというのは信用商売には大事だね。」



一同の待ち合わせ場所に現れるアロハシャツの中年男性。



雪風「お久しぶりです。」

「やぁ、君はまったく容姿が変わらないね。」

「だが、昔と比べて随分雰囲気が明るくなった感じがするよ。」

スパ「姉さん、こちらの方は?」

雪風「こちらの方はや「柳(リュウ)と言います。」



雪風と日本語でやりとりをしウォースパイトに流暢な英語で話しかける。



柳「先日御連絡をさせていただいた代理人は私の部下でしてね。」



素性を知る雪風の紹介を遮り自分から自己紹介。

雪風には素性を話すなというメッセージを送ると同時に

他のメンバーへは自分の素性を詮索するなという事。



柳「そちらがされた仕事についてその後の動きを含めて打ち合わせ宜しいですか?」



眼鏡をかけアジア系の人懐っこい笑顔、

しかし、自分達の提督程では無いものの

何処となく胡乱な雰囲気を纏った中年の後ろを一同は付いていく。

そして、一向は一軒の高級中華料理屋の中へと消えてった。


中華料理店内



柳「好きなものを頼んで貰って大丈夫だから。」



そう柳が言うとめいめい

思い思いの物を注文し始める。

燕の巣だの鱶鰭だの干鮑だのと

高級食材に遠慮が無いのは人の財布だからか。



柳「おじさんちょっと後悔してるかも。」ニコニコ

雪風「ほれ…モグモグ こふご……モグモグ」

長門「すまない。

   今後の此方の予定とそちらの予定のすり合わせを行いたいのだが。」



口いっぱいにハムスターの様に食事を詰め込み

話そうとした雪風を遮り長門が話し始める。



長門「こちらも予定通りの進行で

   後は監禁されている娘達の解放、国外への脱出だけだ。」

長門「もっとも最後が一番困難なのだがな。」

柳「監禁場所の目星はついたから行動に移ったのじゃないのかな?」

柳「社員の解放に要求していた艦娘の艤装や

  建造設備の貸与を承諾したのも準備完了したからだとおじさんは睨んでいる。」

柳「良ければおじさんも協力したんだから場所は何処だったか教えて貰いたいね。」

グラ「お察しの通りだ。監禁場所とされる施設には我々が既に入りこんでいる。」

グラ「先日の倉庫火災の件については検体を残さないようにする為のものだ。」

グラ「それと、その後の敵の動きを見て監禁場所の特定を確実にする為のものでもあった。」

摩耶「まっ、あたしらの提督が条件に当てはまる施設は

   ここくらいしかないだろって言ってたからな。」

摩耶「大量に電気を消費してもおかしくなく、万一子供がうろついても問題なし。」

グラ「つねに人の出入りが激しく、巨大な研究施設などを作っても目立たない。」

摩耶「施設の増設を行ってもまったく不審に思われないってもの重要だな。」

グラ「加えて様々な機械の搬入を行っても不審に思われることがない。」

グラ「海外資本も入っているからまさか、という点で盲点になりやすい。」

摩耶「さらに大量の警備員や顔を隠した不審人物が居ても怪しまれない場所。」

摩耶「後、案の定で倉庫火災の後に警備も増えたしな。」

柳「……、よほど大きな商業施設か軍施設か……。」



香港の地図を頭に浮かべ、そんな条件が当てはまる場所と言えば?


柳「成程、香港ディズ○ーランドか。」

グラ「御名答。」

摩耶「いくらパーク利用者向けの

   フェリー埠頭があるといっても貨物船はちょっとね。」

摩耶「流石にテーマパークに貨物船を横付けしてってなると

   おかしさ極まりないからな。」

摩耶「それで香港ディ○ニーに資本参加している

   例の会社が持っている倉庫に保管していたって寸法さ。」

グラ「あのテーマパークのモットーは現実を感じさせない。だからな。」

摩耶「ゴミ搬出車両の為の車両用地下通路、従業員の移動用地下通路等。

   まぁ、広大な地下世界が広がっているんだぜ?」

摩耶「ありゃ、悪の結社のアジトがあるって言われてもあたしは信じるね。」

長門「実際に悪の組織の拠点があった訳だがな。」

柳「なかなか目の付け所が素晴らしいねぇ。」

柳「そちらの提督さんは商売人になってもきっと成功できるだろう。」



あくどい笑顔を見せて提督への賛辞を述べる柳。



雪風「火種にするのは勘弁して欲しいです。」

雪風「というより死にたくなければ弁えるのも優れたビジネスマンです。」

柳「はは。雪風ちゃんに睨まれるような事はおじさんもやりたくないさ。」

柳「じゃぁ、最後になんだけど脱出用手段は事前の打ち合わせ通りの用意。」

柳「第三国の所属を装っているから取りあえずは無関係っぽいかな?」

長門「分かりやすい特徴は有るのか?」

柳「スカルマークのペイントアートが入っている。」

柳「運び屋も修羅場をいくつも潜ったスペシャリストを雇っている。」

柳「運べないものは地球ぐらいと嘯く連中だ。

  越えた鉄火場は両手足の指で足りない程だ。」

長門「成程。それは頼もしいな。」

長門「その連中が中国との取引材料になっている物を運んでくるわけか。」

柳「そういう事。上手く事を運んで欲しい。これは私の上も望んでいる。」

柳「まっ、そういう訳で彼らはいつ香港に来ればいいのかな?」

長門「………、そうだな。」

長門「……、3日後で。」

柳「3日後ね。」

柳「指定を受けていたトラックはこちらでディ○ニーの駐車場に回しておこう。」

柳「鍵の受け渡しは現場で。」

柳「解放パーティーの準備もしておくよ。」

長門「あぁ、よろしく頼む。」



そして、会話を終えた後に伝票が運ばれてくる。


長門「随分と金額がはるようだが?」



伝票に何かを書き込みそれを柳へと渡しながら話をする長門。



柳「あぁー、成程。確かにこれは…。」

柳「でもまぁ、おじさんが奢るっていっちゃったからね。」

柳「おじさんが払うよ。」

雪風「ご馳走様でした!」

一同「ご馳走さまでした。」

柳「いやー、可愛い娘ちゃん達から御礼言われると

  おじさん嬉しいよ?」ニコニコ



長門から渡された伝票をぐしゃりとポケットに突っ込むのを確認して

食事を終えた一同は席を離れたのだった。



(全員聞いてくれ)



店を出たタイミングで長門が小声で注意喚起。

そしてハンドサインで何某かを伝える。

その後、一同から了解の確認を取ると

それぞれがまたチームに別れ香港の雑踏へと消えていった。


作戦決行日 香港ディズ○ーランド入り口



時雨「雪風、ワンデーパスだよ。」

雪風「こういう仕事でなければ楽しめたのでしょうけど。」

長門「さてと、妹よ。いこうか。」

スパ「雪ちゃーん行きましょうかー。」



変装して園内に入る二組の姉妹。

テーマパークだけあって

家族連れに見せかけて入れば違和感はどこへやら。



長門「雪風の変装はなんというか。」ブフォォ

時雨「うん。ありだとは思うよ。」フフフ

雪風「解せぬ。」



フリルがたっぷり付いたゴシックロリータと

形容するのが正しいいかにもなお嬢様な格好の雪風。



スパ「いやぁ、頭のヘッドドレスもすごく似合っています。」ホクホク



雪風の服装はウォースパイトプロデュースである。

その役割は姉長門、妹時雨。

そして母ウォースパイトに娘雪風。



雪風「解せぬ。」



約一名が不機嫌なのはこの際見なかった事にするのが妥当だろう。

川内は先日の食事会の後、

既に園内にスーツアクターのバイトとして潜入している。

川内曰くダンサーとして正社員を打診されたが断ったとか。

そして、園内で時間を過ごし時刻は夜間パレードの時間となる。

一般客がパレードの行われる大通りへと集まる中、一同は移動を開始した。

一行が向うのは飲食店が集まっているエリアへ。


「お客様、メッセージとこちらをお預かりしています。」



店内に入ればスタッフが近付いてきて一枚のメモ紙を渡してくる。

メモ紙を開けば園内スタッフが出入りする地下通路のある

バックステージへの入り口が記されていた。

そして、車のナンバーが書かれたキーホルダーが付いた鍵が一本。



長門「移動するぞ。」



パレードへ向けて移動する人ごみに紛れながら移動する一行。



時雨「鼠の王国だけに地下世界が好きだなんて。」

長門「なかなか皮肉というか洒落が効いているじゃないか。」

スパ「アメリカンジョークは品がないからいやですねぇ。」

雪風「周囲には私達以外に人気はないです。」



そして中へ入れば。


「ヤァ!魔法の世界へようこそ!」



見覚えのあるあのキャラクター。



長門「川内。潜入お疲れ。詳細はつかめているか?」

「なんだ声で直ぐわかったの?」



首からを上を外し見えてはいけない中の人が顔を覘かせる。



川内「長門と時雨は変装しないと関係者っぽくないけど…。」



言いよどんだ先に視線を居るのは雪風とウォースパイト。



川内「二人はいっか。」

雪風「解せぬ。」



バックステージ自体は広大な敷地内に様々なアクターやパークスタッフ。

所謂裏方達が様々な仕事を行うところである。

それは園内営繕の為の道具の管理やショーの為の練習、

あるいは遊戯施設の運営状況。

使われていないシーズン事のアクター達のスーツ。

例えるなら美人女優の腹の中。

まず滅多にお目にかかれる場所ではないのだ。

それだけに見えない、

スタッフ達ですら把握していない場所があってもおかしくなかったりする。


川内「目的地への移動用地下通路はこっちね。」



園内の特定場所にスーツアクターが

急に登場したりすることが出来るのも地下通路のおかげ。

バックステージから案内されたそれは

途中まではスタッフ用通路として利用されているようだが……。



川内「こっから先は研究施設。」



地下通路を通る中で先頭をあるいていた川内が注意喚起。



長門「監視カメラは?」

川内「先行している伯爵が黙らせて偽の映像ながしてる。」

川内「仕事が終わるまで何も異常はないよ。」



川内を先頭に廊下を進む一行。



「不……。」

ゴトリ



雪風「死人に口無しアル。」

時雨「アル。」クックック

川内「アル。」フッフッフ



雪風のワイヤーソーが曲がり角で出会った敵の首を落す。



長門「なかなか重武装の警備員だな。」

スパ「当たり前の様にコピー品が多いですね。」



装備を剥ぎ取りながらその模造品を観察し

ハンドガンのスライドを引き給弾。

通路にいる警備兵を幾人か始末し

死体は空いてる部屋へと片付けながら進行する一行。


時雨「雪風はいいの?」



先ほどから音を立てずに暗器と

ワイヤーソーのみで敵を切り刻む雪風に声をかける時雨。



雪風「これの方が慣れていますし

   こういった狭いところで大立ち回りするには厳しいですから。」

時雨「そっか。」



ギュイン!

ピーン!

必殺仕事人の三味線屋 勇次の様に

距離の離れた相手の首にワイヤーを飛ばし巻き付ける。

ギュンギュンとワイヤーにテンションが掛かる音が当たりに響き。



スパ「グロ注意。」



ピーン! (ワイヤーを指で弾いた)



雪風「今更です。」



ガクッ

敵の首が胴と泣き別れした。



長門「問題なし。」



背を低くし一陣の風となり廊下を駆け抜けていく一同。



摩耶「こっちこっち」



幾つかの角を曲がり施設の奥深くへと進んでいった所で

摩耶が通路奥から手招きをしてくる。



摩耶「いらっしゃい。」

長門「ここか?」

摩耶「ここは工場だよ。」



入り口扉付近で会話を交わす。

中に入れば正しく工場、人体加工場そのものだった。


摩耶「潜入工作、救出ってことであれば隠密行動が旨なんだけどね。」

摩耶「伯爵と二人でここの職員は黙らせて一箇所にまとめてあるよ。」

雪風「ここはプラステネーションの加工場ですか……。」

川内「各地の職業紹介所に連れてこられた反政府活動家や少数民族。」

川内「あるいは宗教活動家。それらの成れ果てがこれかぁ。」

時雨「人体模型かぁ……。随分と酷い扱いだね。」

川内「こういうのがあるって言うのは

   なんというか統治に苦労しているのが伺えると思うけどね。」

川内「統治する上での綻びっていうのかね。

   見せしめを出さないといけないほどに政治への抵抗活動が見えてきているってのは。」

長門「まっ、それを我々が今する話しではないさ。」

長門「摩耶、何某かの意図があってこっちへ誘導したんだろ?」

摩耶「さっすが長門の姉御。

   ここに捕らわれている連中を解放して目くらましにと思ってね。」

長門「成程。中国当局の動きを分散させる目的か。」

摩耶「そそ、連中にとってどっちがより蓋をしたいものかって事。」

雪風「ハウスマヌカンの仕事を紹介で職業紹介所ですか…。」

長門「こっちの職業は一生がそこで終わる訳だが何とも皮肉が効いているな。」

時雨「それで、僕達の本来の目的である救出対象はどこかな?」

摩耶「それも突き止めてある。」

摩耶「付いて来て。」

摩耶「と、後、時雨はちょっと覚悟しておいて。

   捕らわれていた娘は形式上は時雨の姉妹艦になるからさ…。」



歯切れ悪く言う摩耶。

その後、一行は摩耶に連れられて施設奥へと更に進んだ。

先を進む摩耶が手早くカード鍵をいれ扉を開けた。

今日は此処までです、お読み頂きありがとうございました
中国の人間工場は昔人体の不思議展というのがあったましたがあれですね…
妊娠1週目から出産間近の女性の人体模型(本物)
はい、中国国内で非合法組織とされている法輪巧の信者と噂されていた奴
また、イギリスBBCが去年天津での臓器売買を囮捜査的な形で取材していたのも記憶に新しいかと思います
命が紙切れより安い国、恐ろしい国ですよね、本当に
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、お気軽にレスいただけるといちが喜びます
次回もお時間宜しければお読みいただけると幸いです

おつ
あれも運営組織が変わるまでは割とまともな資料だったんだがねえ…
仕事柄良く見に行ってたが運営変わってからあからさまに遺体で遊ぶようになったんで切った

そしてテーブルトークのシナリオで全く同じ理由で同じ場所にロクでもない組織の拠点を設置したことがあるんでニヤッとしてしまった

寒いですね、ほんとつらみ

長門「これは予想以上に酷いな。」

雪風「吐き気を催しますね…。」

川内「なんて酷い。」


一同が扉の向うの惨状に絶句する。

そこには多くの艦娘だった者達が並べられていた。



時雨「………。」



近くのベッドの上に眠らされているのは

白露型の制服を着た艦娘。

ただ、その様は異様の一言に尽きた。

逃亡防止目的かはたまた別の理由か

四肢は切断され体の至るところから管が伸びている。



摩耶「時雨……。」



時雨が黙ったままその制服を捲る。

そこには穴があった。

内蔵はひとつ残らず摘出され、

その心肺機能は全て周囲の機械が役割を果たしている状況。

正しく表現をするなら、それは生きる屍だった。



時雨「あんまりだよ……。」

摩耶「その脇にある機械を止めれば……。」



服を元に戻し合掌。



時雨「ごめんよ。僕にしてあげられるのはこれくらいで。」



そして、機械は止められた。



時雨「………。安らかに。」



合わせた手を離し、再び目を見開いた時雨は明らかな怒りを周囲へ発していた。



時雨「ここは跡形も無く消す。」



怒気をこめて改めて決意表明。



長門「あぁ、残しておくわけにはいかない。」


一同が決意を新たにしたところでグラーフが合流を果たす。

ガチャリ



グラ「なかなか開錠に手間取ったがどうにかだ。」ジュウヲオロシテ

時雨「伯爵。その二人は?」ゴメンヨ、テキカトオモッタ



突きつけた銃を降ろし、

時雨が背中に担がれた艦娘視線を移す。

捉えられていたの?とは言外の言葉。



グラ「あぁ。山風と海風だ。形式上は時雨の妹に当るのかな?」

時雨「うん。」



生気無く、極限にまで痩せている二人。



グラ「言葉は悪いが逃走を防ぐ為に体力を奪うのは良くある事。」

グラ「その中で解放して連れて帰る事が出来る状態だったのはこの二人だけだ。」

長門「……、そうか。」

グラ「時雨、二人は摩耶と川内に面倒を見させるがいいな?」



自力で歩く事は出来ないで有ろう事は見れば分かる、

そしてグラーフの判断は。



グラ「放火する方に回りたいだろ?」

時雨「ありがとう。」

時雨「そうだね。いい雨を降らせようか。」

グラ「うむ。血の雨だな。」

川内「放火大好き。」

雪風「雪風も派手にやるのは大好きです。」



長門達が潜入した翌日の早朝。

香港中に轟音が響き渡った。



人民解放軍駐香港部隊

中将「何事だ!」

兵1「デ○ズニーランドが爆発と報告が来ています!」

中将(まさか?いや、間違いないだろう。)

中将(くそ!監視を付けていたのも気付いて偽の情報を流していたのか!)

兵1「反政府テロではないかと思われます!」

中将(こいつらはあそこに何が有るかを知らない。)

中将(見られれば私の首が飛ぶ。)

中将(だから外資の入ったあそこが爆発ともなれば

テロ活動と考えるのが自明。)

中将(派手に爆発すると香港内にいる外国人記者どもが間違いなく騒ぐ。)

中将「香港政府に戒厳令を出させろ!我々への出動要請は!?」

兵1「早朝の為、まだ政府関係者が動いていないようです。」

中将(一国二制度の弱点を突かれたな。

形式上出動要請を受けて出動する形になる。)

中将(裏を返せば中央の判断を待たないといけないから時間差がどうしてもでる。)

兵2「本土側の部隊の召集、急いでいます!」

中将「香港への部隊展開が許されるかどうかの確認を急いでくれ!」

中将(民主化運動が激しいなか本土にある本隊が展開する事は難しいだろうな。)

中将(賊が逃げるとしたら陸路は我々が橋を封鎖すれば難しい。)

中将(となれば、海か空か。)

中将(逃げおおせた後を考えれば海の方が周辺諸国へと逃げやすい。)

中将(タイ、フィリピン、マレーシア。第三国へは海からが早いからな。)

中将(手際の良さ、図ったように早朝に行動を起こした辺りを考えれば

何処かの国の工作機関の支援を受けているのは間違いない。)

中将(となれば飛行機をハイジャックするより船で外洋を目指した方が生存率は高くなる。)

中将(我が国の連中じゃあるまいに、

流石に工作機関の人間が第三国の人間を人質にとる訳にはいかんだろう。)

中将(ばれたときの国際的世論のごまかしが効かないからな。)

中将(だが、即応戦力の艦艇大隊では船舶全ての臨検は難しいか?)

中将「艦艇大隊の方に連絡を!敵は海から逃げる可能性が高い!海上封鎖を急がせろ!」

中将「南海艦隊の司令部にも連絡を急げ!」


兵2「了!」



香港欣澳(サニーベイ)停車場



長門「さてと、この車はここで放棄だ。」

摩耶「この車は連中にあげていいのかい?」

長門「逃走用に車が必要だろう?」

雪風「雪風達には必要ないですしね。」

川内「逃走して貰って対処しなければいけない事案を増やすって事か。」

川内「長門はえぐいねぇ。」

長門「もともとその為に脱出させたのだからな。

   市内に出れば後はいかようにでもするだろう。」

摩耶「一応、米国の総領事館のルートはナビに入れてあるからな。」

摩耶「何があそこで行われていたかの生き証人だ。」

グラ「政治的亡命というのが成り立つ。」

グラ「後々の事を考えれば駆け引きのいい手札になるといえるだろう。」


海を臨むパーキングエリアから

一緒に脱出してきたウイグル等の活動家を見送る一同。



時雨「高速道路の途中にこんな風に海に隣接したパーキングエリアがあるんだね。」

グラ「あぁ。海の見える夜景スポットという奴だ。」

グラ「恋人達が…、という奴だな。」

川内「早朝だからいないけどね。ウォースパイト?担いでもらってもいい?」

スパ「了解です。海風さん?背中に紐かけますよー。」



ガチャガチャ

逃走用車両から先に降ろしておいた機械一式を調整する摩耶とグラーフ。



摩耶「持ち込めたのが艦娘候補生の

   水上走行練習用艤装だからな。」

摩耶「武装がないんだ。」

長門「仕方ないだろう。

   皆、目的地についたら間違いなく回収してくれ。」

長門「残さない様に頼む。」

時雨「勿論だよ。」



香港 ビクトリアパーク 展望台



「やぁ、此処からだと香港が一望できるねぇ。」

「えぇ、夜はとても綺麗ですよ。」

「貴方みたいな可愛い娘ちゃんと是非みたいもんだ。」

「向うのテーマパークから上がる花火も綺麗に見えますよ。」

「成程、確かに綺麗だ。」



島向うに上がる煙を眺める二人。



『 煙草はお好きですか? 』

『 ウルグアイ産の紙巻が好きでしてね。 』

『 アークロイヤルですか。確かにいい物ですね。 』

「柳(りゅう)といいます。サーカスの方向から?」

「えぇ、女王陛下がお望みでしたので。」

「この後食事でもいかがですか?」

柳「いやいや。止めておきますよ。」

柳「確かに女性は情報の宝庫とは言います。」

柳「貴国の有名な諜報員の様に女性と宜しくやるのは重要といえますが。

  ご遠慮しておきましょう。」

柳「貴女は艦娘でしょう?」

「その質問に答える権限を持ちません。」

柳「私の昔の知り合いに可愛らしい、そうですね。

  私に家族が居れば娘くらいの容姿の艦娘がいるんですがね?」

柳「歩く火薬庫の通り名で、まぁ、見た目以上に危険でして。」ハハハ

柳「なので艦娘さんは見た名以上の恐ろしさが有ると知っているので

  仕事以上の付き合いは控える事にしているんですよ。」

柳「例え麗人からの食事のお誘いであったとしても。です。」

「成程、リスク管理の出来る優秀な商売人の様ですね。」

柳「どーも。」ニコ



「タンカーの入港は今日で間違いないのですね?」

柳「えぇ、彼女達から今日で聞いていますので。」

柳「流石に中国政府の手は長い。各所に耳がある。」

柳「事前の取り決めで入港させると

  その前の寄港地で足止めを喰らうところでしたよ。」

柳「それから、この公園は事前に掃除済みですのでそこはご安心を。」

「こちらもパワーボートの方を用意しておきました。」

「そちらの方の手筈は間違いないですか?」

柳「えぇ、間もなくデモが始まります。」

柳「それに合わせて花火の打ち上げ時間も調整してくれたようですしね。」

柳「彼女らは優秀ですよ。」




人民解放軍駐香港部隊



中将「香港市内で反政府デモ?!」

兵1「はい!そちらの鎮圧に武警が出動していて

   周囲には既に外国人記者が居る為、

   我々軍隊の部隊展開は不味い事になると!」

中将「くそ!天安門か……。」



現代国家が民主化運動を武力で鎮圧し、

世界中に映像が配信されたあれ。

あの時以上にメディアやネットが発達した今、

第二の天安門は起こすわけにはいかない。

只でさえ普段の活動に人民解放軍の制服着用は避け、

そうととられ無い様注意を払っているので

『 天安門 』事件の再来に見られるのは避けなければならない。



中将(ディズ○―の爆発は地下でしていた事を考えれば

   ガス爆発と発表するしかないのを知った上での手か!)

中将「ちくしょうめ!」

兵2「中将。広州の各地で反政府デモが起きているそうです!」



そして、香港に隣接する広州、本土でのデモ活動の連絡も入る。



中将「はぁ?なんだって?!」



だが、国内のデモであれば鎮圧は容易いはずだが?



兵2「それが地方党政府へのデモでして。」

中将(あっ!くそやられた!)




ビクトリアパークで双眼鏡から海上を眺める柳。



柳「反政府デモってのは須らく排除されるものだが……。」

柳「この反政府デモは中央ではなく

  地方政府を対象としたものなんですよ。」

「なかなか考えられていますね。」

柳「えぇ。中央政府ではなく地方政府というのがミソですね。」

柳「党中央は反腐敗を掲げていますし、

  その腐敗の温床に地方党組織がある事を認識している。」

「いつぞの薄熙来(ハクキライ)を彷彿とさせますね。」

柳「そうです。将来の国家主席とまで目されていた人物が

  権力闘争の末に消えた例の事件ですよ。」

柳「現主席は皇帝とも言われますからねぇ。」

柳「自分の椅子を脅かす相手を消す材料があれば容赦しないでしょうね。」ニコニコ

「君主の椅子は適度に座り心地が悪い方がいいと言われますが?」

柳「ダモクレスの剣ですか?はは。

  権力者たる者、常に自分の座が危ういという

  意識を持っているという点だけは同じですね。」

柳「ただし、民衆へ心を向けるか、心を閉ざすか、まったく逆のようですが。」

「王様の耳はろばの耳でなければならない。」

柳「童話では王の耳がロバの耳である事により

  部下達からの話をより聞きやすくなり

  多くの諫言に耳を傾ける賢王になったと話が纏められるそうですよ。」

「ですが、話の元になった王の様に石を金へ変える能力はこの王は持っていない。」

柳「相手を借金で縛りその対価に領土や港を租借する。」

柳「金が幾らあっても足りませんやね。その金は何処から出ているのかというと。」

「自国民の底辺からの搾取ですか。」

柳「底辺層の生活はいつまで経っても改善されませんからねぇ。」

柳「底辺層の生活向上の為に使う金が

  回っていないと耳元で囁いてあげれば。後はどうなるか?ですよ。」



「デモ隊は簡単に排除されませんか?」

柳「そこは更に一工夫ですよ。

  デモ隊には子供を連れて平和的な行進でシュプレヒコールは挙げさせない。」

柳「更に、現国家主席の肖像画を掲げさせ、

  党中央の政治手腕については賛美させるおまけつき。」

「成程。それでは武警等の治安部隊には手を出せない。」

柳「そうです。まるで神の信徒が天におわす主神に

  あぁ!神よ!と懇願するあれですな。」

柳「我が神、我が神、我らをお見捨てになられたのですか!ですよ。」

「まるで新約聖書の一節ですね。」

柳「敵を知り、己を知れば百戦自ずと危うからず。

  敵の嫌がる事を徹底的に行えないと世界を相手に商売を出来ませんから。

  宗教等を抑えるのは基本ですよ。」

柳「デモ隊の通過ルートは外資系企業や観光地を通るようにして

  外国人の目のつきやすいところを通るように設定しています。」

「そうなると外出禁止令で対応する事になりそうですね。」

柳「地方政府がそれをやると強烈な汚点になります。」

柳「中央を狙う人間がそれを出来るかどうか。」

「ではどうするんですか?」

柳「情報が出ないようにした後で見なかった事にするのが一番です。」

柳「下手に治安部隊を出して対処したのが外国へ知れると不味いですからね。」

柳「烏を白いと言わせてそれを正しいとするやり方と同じですよ。」

柳「全員でその様な事はありませんでした!と言うしかない。」ニコニコ

柳「国内から海外へ接続するネット網はある程度抑えれますから。」ニコニコ

「はははは。」


柳「指を咥えてデモ隊が解散するまでを見るしかないわけですよ。」

柳「打ち壊し等の暴動をしない限りは手が間違いなく出せない。」

柳「それにある程度のガス抜き、

  諸外国の報道に対しては我が国はデモも行える民主的国家だと。

  いえなくも無いですしね。」

「壮大な皮肉ですね。」

柳「まま、そういう訳でして。

  後の中央の動きとしては原因を調べないわけには行かないでしょう。」

柳「そして、何故デモが起きたのかを調べれば

  誰を怒らせたのかが透けて見えてくる。」

柳「そうすれば手打ちにする為に誰に詰め腹を切らせるかと言う話になる。」

「ははぁ。責任者の首を渡すから今回はすみませんでしたと言わせるわけですね。」

柳「面子に拘る文化ですからね。」

「謝らせた後の手打ちについても決められていらっしゃるんですか?」

柳「えぇ、相手に実利を与えないと流石に問題になりますからね。」

柳「大国ゆえに面子が潰されたと思えば後が容赦ないですから。」

柳「しかし、実利があると理解できれば謝れる。

  幾つもの顔を使い分けられるしたたかな国ですよ。」

柳「火を付ける時は消化の仕方をしっかり考えて火を付けないと

  思わぬ大火になります。」

「成程。」

柳「この国の厄介な点は50年100年先に有利になれれば良いという考え方が出来る事ですかね。」

柳「時間の捉え方が違うというのは厄介ですよ。」

「肝に銘じておきましょう。

 我が国はそれでしてやられ香港を返還しなければならなくなりましたからね。」

柳「普通、100年の租借なんてなれば返して貰えるなんて思いませんからなぁ」

「まったくです。」

柳「一時的には経済的負担等を切り捨てられたのでしょうが。」

「外交的影響力は予想以上に悪くなったと言えますね。」

柳「何事も目先だけでは分からないというのは商売に携わる物として肝に銘じたいですね。」

(日本という国のソウゴウショーシャと言う所の勤め人は

  CIAの連中にも勝るとも劣らない手管を見せる……。)

(『 火付けの 』と異名と取るだけある。本国への報告が増えるなぁ。)

柳「どうされました?」

「あぁ、いえ。少し考え事をしていただけですよ。」


香港国際空港(チェクラップコク国際空港)上空



「よーし、よーし、チャイナドレスの姉―ちゃん達が俺を待ってるぅぜ ――― い。」

「機長、管制に繋がりましたよ!」

「お—し、お―し!香港管制!尻と胸のでかい姉ちゃんが居る店教えてくれ!」

「機長!なにいってんですか」

「ばっかお前、重要な事だろうが!」

「下りる滑走路聞かないと後がまずいですぜ大将。」

「あ―――、わ ―――った。」

「香港管制。何番に下りればいい?」

「3番ね。了解。」

「たく、野郎の管制は勃つもん勃たんぜよ。」

「機長はそればっかすね。」

「ロクスケ、ディンキー、今回の積荷はやばいもんだそうだ。」

「気を引き締めて掛かってくれ。」

「うっす。」

「了解。」



一機の貨物機、B-747が香港国際空港に着陸した。

本日はここまでです

>>45
悪の組織の拠点にぴったりなお城までついてくるというオマケつき
割と拠点としては使いやすいですよねー、後は刑務所、警察署といった公的機関でしょうか?
地下鉄の廃線、カタコンベなんかは欧州なんかで使いやすい拠点ですね(マフィアが実際に使っています)
文中に出ているデモなんかは最近の中国の実際でしょうか?
地方政府を責めていくというやり方はなるほどなぁと
最近脱税に関連して女優が一人消えて、最高裁判所の長官が捕まりそうですけどこれも権力闘争の関係だそうです
報道を読んでもいまいち関連性が?なんですけど、なんかあるんでしょう
尚、女優の方は144億円の追徴課税とか
一時期消息不明だったんで人体模型の仲間入りしたとか噂も流れていましたねぇ
中国は知れば知るほど不気味な国

本日もお読み頂きありがとうございました
あまり艦娘のグロ描写はやれなくはないがやらないほうがいいと判断しておりますので
さらりと流させていただきました、次回も書き溜めが出来ましたら更新させていただきたいと思っています
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、お気軽に残していただけるといちが喜びます
また前スレでちょこちょこボツねた、おもいついたおまけ話などを
あげていたりしますのでそちらもお読みいただけると幸いです

少しずつ思い出しながら再度の執筆…
とんだ分をまとめなおして投稿です
お時間宜しければお付き合いいただけると感謝です


88鎮守府



「やはり俺を殺しに来るのはお前だったか……。」

「司令。申訳ありません。」

「皆の為に死んではいただけないでしょうか?」

「いいさ。それで、相手からの保障は確認できてるのか?」

「俺という邪魔者を殺したら止める者がいなくなるからお前達こそ真っ先に殺されるぞ?」

「それは手配しています。」

「どうせ国外に逃げるとかだろ?ちゃんとその先を考えているのか?」

「………。」

「まったく。……、これをやろう。

 こういう時のために作っておいた海外銀行の貸金庫だ。」

「バーで100本ある。全員逃げる為の金に当てろ。暗証番号はお前の進水日だ。」

「俺を殺した後は、そうだな。たまに墓に線香の一本でも頼む。」



ゴトゴト

チャキッ



「司令!」

「じゃぁな。」



パン!



「司令 ―――――― !」






「まさかの裏切りきたぴょん!」

提督「最近の朝ドラは結構重たいんだな。」

「あっ、司令官どうしたぴょん?」

提督「ちょっと衛星放送が見たくなってな。

テレビがある所で一番手近だったのがここなんだよ。」

「食堂のテレビのリモコンはそこにあるよ。」

提督「すまんな。ちょっと変えるぞ。」



テレビのリモコンを操作しチャンネルを変える提督。

香港国際空港内を撮影して回っているテレビクルー達がテレビに映る。

彼女達は特別な許可を得て滑走路が見える駐機場周辺を撮影中である。



「ども!日本のお茶の間の皆さん!レポーターの青葉です!」

青葉「本日は魅力溢れる香港をずずいと余すとこなく紹介いたしますよ!」

つ カンペ

青葉「はい!まずは此方!ここは何処だと思います!?」

青葉「こちら香港の空の玄関口、香港国際空港です!」

青葉「海の上に作られているので24時間飛行機が離着陸し放題なんですよぉ!?」

ゴーッ! ←飛行機が着陸してきました。

青葉「しかも!ご覧下さい!あちらの貨物専用ターミナル!」

青葉「あの巨大な専用ターミナルが或るおかげで

貨物取扱量は世界一位を誇っています!」

つ カンペ

青葉「あっ、あちらに移動するんですね!了解しました!」

青葉「テレビをご覧になられている日本の皆さん!移動しますので暫しお待ち下さい!」



移動中



青葉「空港が海の上ですので当たり前ですがあちらには海が見えます!」

青葉「はい!カメラさん海を写して下さい!」

青葉「おお!?なにやら派手な爆発が見えますねー!(棒読み)」

青葉「あれ?なんでしょうねー(棒読み)」

青葉「あれ?あれ?なにやら怪しい人達がこっちに向かってきていますよ?!(棒読み)」

「動くな!お前達には一緒についてきてもらう!」

青葉「大変です!テロリストです!青葉達人質になっちゃったー!(棒読み)」

「黙って早く動け!」

青葉「暴力反対です!(棒読み)」



88鎮守府食堂



「あれ、なんか突撃スクープになってない?」

提督「予定通りだ。

ちょいと時間が遅い気がしなくもないがまぁ、いいだろう。」

「あれ?狙ってなの?」

提督「あぁ、此処の運営資金を作るのに重要なんでな。この目で確認しておきたかったのさ。」

「ふーん、じゃぁ、暫くはここで見ていくんだねー。」

「ちょっとつまみ作ってくるね!」

提督「すまんな。」



貨物機専用ターミナル



青葉「暴力反対!(棒読み)」

「あの飛行機だな。」

「タラップもいい感じに準備してあるね。」

「全員急いでくれ!」

青葉「あーれー(棒読み)」



貨物機機内



青葉(カメラさん!全部の機材の電源を切ってください!)

青葉「と、皆さん御疲れ様です!」

長門「変装しているから分からないが海軍の関係者か?」

青葉「変装しているのはお互い様ですが。」

青葉「はい。海軍特務機関付きの青葉です。」

長門「海軍特務機関か。」

青葉「えぇ。情報収集、広報任務は大事ですので。」

「と、挨拶は後回しにしてくれ。直ぐに飛ぶ。」

「追っ手と借金取りはこねぇ方がいいと昔から言うからな。」

ロク「今回は座席も幾つかセッティングしていますからそちらに掛けてくださいね。」

時雨「了解したよ。」




操縦室



「ロクスケ。勃起してきた。」

ロク「何言ってんですか機長!」

「ハクイ姉ちゃんに可愛い嬢ちゃん。おめーインポだな?」

ロク「今回の積荷でしょ!?」

「お前、あれが荷物に見えるのか。いい眼科紹介しようか?」

ロク「そういう話じゃないでしょう!?」

ディン「大将、さっさと飛ばさねーと

上空から下りてくる連中が重なるから飛べなくなりますぜ。」

「香港管制にはエマージャンシーコールだしたか?」

ディン「緊急事態宣言は出しました。さっさと飛ばさないと怖い連中がきますぜ。」

「うっし!ささっと機体を上にあげんぞ!」

「ロクスケ!読み上げ開始してくれ!」

ロク「了解!」

ロク「V1!」



キィィィィィン!



ディン「大将!管制がなんか言ってきてます!」

「るっせー!こっちはハイジャックされてんだ!」

「適当にいっとけ!ニイーハォ!シェイシェイとかでいいだろが!」

ロク「VR!」



グイッ



「うし!」

ロク「V2!」



キュッ



「足が地面を離れりゃこっちのもんだ!一気に駆け上がるぞ!」

「はっはっは!バカ管制め!

中華訛の英語なんざ聞き取れるか、ばぁ――――かぁ!」



キィィィィィィィイン!




高度1万メートル



「と、ロクスケ、オート入れてくれ。」

「ハイジャック犯のお嬢さん達に挨拶しねーとな。」

ロク「了解っす!」



そして



「自己紹介が遅れたな。俺がこの飛行機の機長、モーガンだ。」

モ「嬢ちゃん達の素性に付いては何も言わないでくれ。」

モ「俺たちは何も知らない。

  あくまでハイジャック犯の目的地に向け飛行しているだけにすぎない。」

モ「積荷についてはあんたらが使うものとしか聞いていない。」

モ「カーゴ室には自由に出入りできるようロックは解除してある。」

青葉「ありがとうございます。」

モ「行き先はパリでいいんだな?」

青葉「えぇ、フランスは花の都。シャルルドゴールへお願いします。」

時雨「オーストラリアとかではなくパリなのかい?」

青葉「おっしゃる事は分かるんですが…。声からして時雨さんですか?」

青葉「オーストラリアには確かに米軍基地があるんですが

   あそこは島国ですからね。」

青葉「現状オーストラリアから日本までの海路が確保されてないんですよ。」

長門「確かにな。」

青葉「それで欧州救援作戦なんてものが

   欧州からの支援要請に基づいて発案されましたので。」

摩耶「成程、それにかこつけて大手を振って帰ってくるってことか。」

青葉「さようでございます。」

青葉「……、と、とりあえず自己紹介をさせていただきましょうか。」



そして、青葉がつれているクルーを含めてお互いの自己紹介が行われる。



長門「随分と濃い連中だな。」

青葉「いえいえ。そちらほどでは。」

青葉「外事、陸幕、海軍特務機関、

   諜報関連の集合ですが表向きの肩書きはジャーナリストですので。」ニカ

川内「間違ってないってのがまた性質が悪い。」

長門「それでだ。無事にいくとは考えていないんだろ?」

青葉「するどいですねぇ。」

グラ「面子を潰された相手というのはなりふり構わなくなる。」

グラ「そうなった相手というのは引き際を弁えないから実に厄介になる。」

雪風「この貨物機を落としに来るという事ですか?」

青葉「そこで衛星通信設備のこれの出番ですよ。」



つ ホレ



スパ「なんですか?その手?」

青葉「いや、証拠映像くらいとってきてるんでしょ!?」

グラ「あぁ、これだ。」

つ SDカード

青葉「さっすが。これで仕事がやりやすくなります。」

青葉「スタッフの皆さん!準備はいいですか!?」

長門「何をする気だ?」

青葉「まぁ、黙ってみていてくださいよ。」



ビクトリアパーク 展望台



柳「と、そろそろですかね」

「そうですね。そろそろかと思います。」

柳「東京の開場30分前、いい時間です。そちらの仕込みは?」

「事前に完了しています。

 政権が変わって自由に使える予算に制限が入っていますのでお誘いただき助かりました。」

柳「いえいえ、こちらとしても仕掛け人は多ければ多いほどいいので、ついでですよ。」

「恐ろしい事をさらりと言われますね。」

柳「では、そろそろ始まりますかね。」



そう言い近くにおいていたブリーフケースの中から

ノートPCを取り出し電源を入れる。



柳「日本のテレビ番組もちょっと規制をすり抜ければ

  この国でも見れますからね。」

柳「決行時間の打ち合わせ、そして飛行機での脱出時間。

  ぎりぎりで間に合いましたよ。」

「取引時間中でもよかったのではと思いますが?」

柳「東京はそれでもいいですがね、上海、香港が開く前にってのが肝なんですよ。」

「政府が市場介入、もしくは取引中止をしそうなものです。」

柳「そこが事前に説明をさせていただいている点なんですよ。」



柳が開いたPCからはちょうど日本のテレビ番組で人体解体工場の映像が流れていた。

機内で簡単に加工はしたのだろうがその内容は衝撃的なものなのは間違いない。



柳「中国という国は実に面子を重んじます。」

柳「そして、それは恥をかく、かかされるのが嫌いという事につながります。」

柳「以前から中国は様々な方面で人権問題が持ち上がっています。」

「えぇ、それは仰るとおりです。」

柳「しかし、ここまで決定的な証拠は表に出ることはなかった。」

柳「とくに今回の、加工工場の映像が流れるのは決定打です。」

柳「安保理での人権問題における緊急決議の動議発動には充分です。」

「我が国もロシアに働きかけていますからね。」

柳「拒否権の発動で回避はするでしょうが個別の制裁を行う大義は此方にある。」

「最短で1週間。最長で1ヶ月。」

柳「えぇ、稼ぎ場ですよ。活動資金を大いに稼ぐチャンスです。」



「市場を閉鎖しない場合は買い支えをしなければいけないでしょうね。」

柳「閉鎖すれば市場操作、閉鎖せずに買い支えても市場操作。」

柳「どちらにしてもまた、別の制裁の口実を与える。詰みですな。」

「恐ろしい事を考えられる。」

柳「外貨準備を吐き出させるのにも都合がいい。」

柳「ロシアにしても大手を振って金を稼げるチャンスですからね。」

柳「取り締まる側が市場操縦を行うんですからこれ以上無い儲け話ですよ。」

「こちらが始めて此方で止め時を決めれらるというのはいいですね。」

「そちらの言葉で濡れ手で粟の一掴みですね。」

柳「経済戦争は目に見えないので実感が湧きにくいですがその実、

  軍事力での殴り合いよりえげつないですからね。」

柳「通常の武力による戦争は勝った方にも経済的損失、人的損失。

  様々な損失が長く影響してきます。」

「若年層の人口構造を壊してしまいますからね。」

柳「ですが、経済での殴り合いは違う。一方的な蹂躪ですよ。」

柳「大国相手ですから倒れた後の影響も計り知れませんがね?そこまではやらない。」

柳「細く長く、生かさず殺さず。これが肝心です。」

「東京から世界を一周してNYで終了ですね。今日一日は金融関連の社員は忙しいでしょう。」

柳「えぇ、こっち側の人間は儲かり、あっち側は大損。」

柳「ついでで水道管の穴の位置のチェックもできますからね。」

柳「私としては一石三鳥くらいのありがたさですよ。」

「資本主義バンザイ、ですね。」

柳「えぇ、まったくです。」

柳「ただ、問題がありましたな。」

「?」

柳「これから朝食の時間なんで今日の朝食は遠慮したくなりましたよ。」

柳「流石に食欲が…。」

「確かにそうですね。」クフフフ



そこには資本主義の素晴らしさを語り合う二人が静かに笑いあうのだった。

88鎮守府の裏金をどうやってつくっているのさー
という部分のお話を全面に
簡単なお話、世界の物流情報でお金を稼いでいるという部分ですね
今回は市場相場も行っています、書いておいてなんですがあくど過ぎますね
後、1回か2回程度で終われるかと思います、PC安いのを買いなおす予定
それまで持ってくれ年代物の予備!!!
ほそぼそと続けている元スレの方ですが何かこんなの読みたい等
希望いただければコネタみたいな形でやりたいなと思っています
ここまでお読み頂きありがとうございました!

久しぶりに来ました
生きていました!次回のイベハワイかぁ……
お時間よろしければお読みいただけると幸いです


食堂

「映像が切り替わったね。」

提督「まぁ、そうなるなぁ。」

「ルパンでさ、銭形刑事が偽札持ってどうしようってやっているの思い出した。」

提督「マッチポンプってやつだな。」

「で、全員逃げきれるの?」

提督「手筈はつけてる。なら、後は全員を信用するだけだろ。」

「ふうん。」

提督「まぁ、索敵係が大変だろうな。」

「摩耶嬢、いけんの?」

提督「そうさな。お前さんが料理長として仕事しだした後に着任したんだったな。」

提督「ならばだ。今日までその成長を見続けてきたお前さんなら分かるだろ。」

提督「狂人の集団において真面目を貫ける奴の重要性くらいは。」

「分かるよ。分かるから聞いたのよ。」

「真面目すぎるから周りの捻じ切れた連中と自分を比べ、

 自分が凡人に近いことを悩んでいるって知ってる。」

「そして、その不安の裏返しがあのぶっきらぼうな性格って事もね。」

「うちじゃない他所でなら余裕のエース、看板背負ってると思うよ。」

提督「お前さんが料理人なのは海軍の損失だな。」

提督「どっかの指揮官におさまんねぇか?推薦状なら束で書いてやるぞ?」

「やだよ。責任のある立場ってのは。私は気楽に生きたいんだ。」

「鍋に、フライパンの火加減を見ているくらいの生活が丁度良いのさ……。」

「それに、ここの食事がまた時間制に逆戻りだよ?」

提督「それは困るな…。まぁ、摩耶に関しちゃもう少し自信もってもらわなきゃな。」

提督「だから俺があいつに今回、ちょいと自信を持たせてやる為に一肌脱ぐんだ。」

提督「上の信頼ってのはここぞという時にはプレッシャーであり強烈な壁になる。」

「だけど乗り越えればそれは強烈な自信になるってね。」

提督「そういう事だ。あいつも一皮剥けてくれねぇと今後困るのさ。」

「やだ、一皮剥けるだなんてぇ。」

提督「?」

「女の子相手に卑猥だわ。」

提督「あぁ、そうか………、そうだな。すまん。」

「それにそういう言葉は直接言ってやりなよ。童貞(チェリーボーイ)じゃないんだからさ。」


フンと鼻を鳴らし一言。


提督「俺に期待してんじゃねぇよ。俺はいまだに死んだ女の尻を追ってるマザコンさ……。」

「よく言うよ。」


再び機内



長門達は貨物機の貨物室内。

それも飛行機の最後尾に近い貨物室内に居た。



長門「それで、我々の艤装はこの貨物室内に?」

青葉「えぇ、普段お使いのという訳にはいきませんが

   同じ艦名の方が使われているのを用意しています。」

摩耶「にしても使うことなんてあるのかね?」

長門「あるさ。追い詰められた相手というのは何をするか分からんからな。」

青葉「そして、摩耶さんにはこちらを。」

摩耶「何これ?」

青葉「レイセオン製と言えばお分かりいただけるでしょうか?」

長門(老舗レーダーメーカーだな。)

摩耶「あー、成程。『 まや 』つながりかぁ。」

摩耶「でも、これはあたしに使いこなせれるのかね?」



摩耶の質問に青葉の纏う空気が変わった。



青葉「使えるかな?じゃぁ困るんだ。」

青葉「いいか?あんたの提督からあんたならこれを使いこなせると聞いたんだ。」

青葉「あんたの上はあんたを信用して出来ると太鼓判を押したんだ。」

青葉「それなら上の期待に応えるのが部下の義務ってやつじゃぁないのかい?」



摩耶の上着の襟首を掴み顔を自分の近くに寄せて笑顔で語りかける青葉。



摩耶「あぁ、わぁったよ…。」



ぶっきらぼうに返答する摩耶。



青葉「さて皆さん、艤装が入ったコンテナを開けて頂いたらお分かりかと思いますが、

   酸素吸入マスクありますね?」

時雨「おあつらえ向きに防寒用具も完備か。」

雪風「つまりは貨物室の後ろを開けると言う事ですね?」

青葉「正解です。もう直ぐ圧を少しずつ抜いていきますので手早くお願いしますね。」



武装のない貨物機に戦闘機が襲い掛かってくるわけであれば

それに対抗するにはとるべき手段は一つしかない。



川内「にしても、後ろの扉を開けたら速度落ちるんじゃないの?」



貨物機の後ろ扉が少しずつ開いていくのを眺めながら単純に疑問を訊ねる川内。



グラ「ふむ、まぁ、それは仕方あるまいよ。」

グラ「それより摩耶の探知がどうなっているかが重要だな。」

摩耶「お客さんは今の所まだだね。」

摩耶「巡航速度の落ちたこの飛行機に向って来るのなら

   そこまで時間は掛からないとおもうんだけど。」



無理やりでの使用のためか眉間に皺を寄せて処理を続ける摩耶。



長門「にしても随分と準備がいいようだが?」

青葉「海軍の軍令部で昔ちょいと面白い提案をした人が居たんですよ。」

雪風「面白い?」

青葉「えぇ、艦娘の空挺部隊を組織して敵泊地へ高高度降下低高度開傘をやろうとしたんですよ。」

長門「空挺部隊による拠点強襲か。」

青葉「発想は悪くないんですよ。成層圏には敵の機体はまず確認されていませんしね。」

青葉「ただ、実行に当っての問題が多すぎて立案者みずから没にされたんですよね。」

グラ「だろうな。結局、強襲が成功しても帰り道の問題があるからな。」


青葉「仰るとおり敵を叩いても帰れないと意味がないですし、

   後ろを叩くにしても正面側の道を整備する部隊は当然必要になるわけです。」

青葉「挟み撃ちする為の精強な部隊が数居ないと実現できない作戦なんですよね。」

青葉「流石にオーバーロード作戦みたいな物量で殴るなんて事

   やる余裕があるなんて世界のどこの国にも……。」



ないといいかけ慌てて訂正。



青葉「いぇ、日本にはありませんからねぇ。」

青葉「それに物量投げるにしても損失が大きすぎますので無謀極まりないという訳です。」ニカァ

時雨「確かに片道切符を渡されて行って来い、は後ろ弾案件だね。」

青葉「まぁ、この案が一つの可能性として提案された時には

   それを可能としうる精強な部隊を有する鎮守府がなかったという訳です。」

青葉「ただ、装備に関しては人間の装備の流用で問題がなさそうという事でしたので

   装備はそのまま有るという訳ですね。」

川内「なら、この飛行機からジャンプするの?」

青葉「いえいえ、装備などの準備良かった理由をお話したまでですよ。」

青葉「私達は逃げるにしても堂々と逃げないといけませんからね。」

長門「やはり敵を迎え撃つ形になるのか。」

青葉「後ろを開けると寒さも気圧の低下も一気に来ますからね。

   その対策用に流用したというだけです。」

青葉「迎撃の荒事はお任せしますね。」


長門「さてとだ、レーダーだけだろうから

  原始的やり方かつ最も効果的な迎撃方法になるわけだが……。」



そういい、グラーフのほうを見る長門。



グラ「摩耶が探知できるかどうかだな。」

摩耶「あたしが責任重大ってかい?」

長門「レーダー探知できないと難しい、頼めるな?」



長門のいつになく真剣な顔に。



摩耶「腹をくくりますか…。」

長門「あぁ、頼りにしてる。」



そして、艤装での処理を丹念に行う摩耶。



操縦室



ロク「機長、ベトナム方面に抜けられないんですかね?」

モーガン「さすがにベトナムも中国さんと事は構えたくねえのさ。」

モーガン「そして他の国境を接している国にしても

     中国と正面きって事を構える国力なんざまったくねぇ。」

ディン「表向きはいがみ合っていても本気でやりあえば一方的蹂躪でしょうしな。」

モーガン「そういうこった。だから全力で逃げにぁならんのよ。」

モーガン「中国と正面きってやれるのはインドくらいなもんだろうが双方核をもってるからな。」

ロク「アポカリプスエンドはまずいっすね。」

モーガン「最後の最後での理性って奴が働けばな。」

モーガン「だから定期航路をガン無視して最短距離で飛んでんだ。」

モーガン「燃料の減りを無視してエンジンぶん回しちゃいるが

     香港から連絡がいきゃぁそろそろ迎撃機が上がってきてもおかしかねぇ。」

モーガン「今、どの辺りとんでる?」

ロク「そろそろチベットですね。」

ディン「大将、中央アジアへ抜けるにしても

    5時間切る速さで飛んでると減り方が厳しいですぜ?」

モーガン「まぁ、一応追撃を頑張って交してアフガンまで抜ければ

     米軍のエスコート付きちゃ聞いている。」

モーガン「香港で給油してないがアフガンまでは余裕で飛べる距離だからな。」

モーガン「燃料減らして軽くしている分速度も稼げる。」

モーガン「着けば一旦降りて本来の目的地パリまで

     米軍さんが空中給油まで出して護衛してれくれるって話だ。」

ディン「抜けれればって訳ですな。」

モーガン「おう。俺に任せとけ。抜くのは得意だ。」

モーガン「あんだけ美人の姉ちゃんがそろってんだ。抜ける。」

ロク「あー…、はいはい。とりあえず、何します?」

モーガン「何ってナニだろ?」

ディン ハァッ(溜息)





貨物室



長門「さてと、追っ手が何機くるかだな。」

長門「グラーフ、意見を聞きたい。」

グラ「私か?」

長門「あぁ、技術士官という事で来ているが早い話し諜報も兼ねていたんだろ?」

グラ「まぁ、今更だな。」

長門「情報分析能力が無いとそういった仕事はできないからな。」

長門「冷静な意見を聞きたい。」

長門「中国空軍の使用する戦闘機の兵装と

   空対空での一般的な攻撃手段について教えて貰えないか?」

グラ「そうだな、主力戦闘機で言えばJ-10 殲10と呼ばれる物だな。」

スパ「殲20じゃないんですか?」

グラ「さすがに配備数がな。なのでマルチロール機としての此方が出てくると思う。」

グラ「後は空対空ミサイルだがイスラエルやら中国オリジナルやらまぁ色々だ。」

グラ「とはいえ対処法方は古典的で変わらんさ。」

グラ「フレアとチャフで対処可能だ。」

長門「なるほど。」

グラ「青葉、君の所属は海軍内の諜報機関なんだろ?」

グラ「で、あれば中国空軍の迎撃機が上がってくるまでの時間と

   その所属については事前に把握できているのじゃないかな?」




青葉「隠し事は出来ませんね。私としてもその見解です。」

青葉「香港内外での反政府デモ、

   それと海上へ逃走したように見せかけた欺瞞工作。」

青葉「敵への妨害工作を入れても凡そ稼げて2時間ですかね。」

長門「随分稼げるもんだな。」

青葉「中国軍内にも色々協力者を作っているのは勿論ですが

   諜報活動には派閥争いの火種に薪をくべるお仕事もありますから。」

青葉「私達を追って来るのは多くて一小隊ってとこでしょう。」

長門「根拠は?」

青葉「香港駐留部隊で使用できる航空兵力はありますが

   回転翼ですから飛行機の追撃能力は無い。」

青葉「となると、よくある話です。駐留軍の指揮官は陸軍だが固定翼は空軍。」

青葉「気付いて指揮官が要請しても管轄の違いで即では飛べない。飛ばせない。」

青葉「スクランブルに常に供えていないのであれば給油して、ミサイル積んで。」

青葉「そういった細々したところでゆっくり、ゆっくり時間を掛ける。」

青葉「ただし、遅すぎるとこちらの協力者も危なくなりますからね。」

川内「怪しまれずに稼げる限界が2時間ってわけね。」

青葉「左様でございます。」

青葉「2時間かけて稼いだ時間分こちらも移動できますからね。

   それをつめるために限界まで速度を出して飛んで来たとしても

   追いつくまでにはまた時間がかかりますからね。」

時雨「中国国土は広いんだ。

   僕らの飛行している経路の先に有る基地から出撃なんてことはないのかい?」

青葉「するどいですねぇ。

   可能性としてはありえますが俎上に上がった時点で無視出来るだろうという事で。」

時雨「どうしてだい?」


青葉「事前に逃走経路上の指揮官級を全て洗ったんですがね

   香港駐留軍の指揮官の地縁、血縁は居ないと判明しているんです。」

雪風「それは何の関係があるんですか?」

青葉「中国人が面子ともに一族のつながりを重んじる事はご存知だと思います。」

長門「儒教文化圏ではよくある話だな。」

青葉「つまり、香港駐留軍の指揮官の困難を助けてあげる仲間が居ないという事なんですよ。」

青葉「更に言えばこの貨物機は登録上はブリティッシュエアウェイズ。」

スパ「あら、私の祖国のフラッグキャリアじゃない。」

青葉「さいです。英国航空ですから撃墜をするには冒険が過ぎるという事です。」

青葉「寧ろ政治犯の脱走を見過ごして

   それの手引きをした第三国を仮想敵国として

   自国内に敵が居るとアピールしたほうが国内の団結を図れる。」

青葉「昔から国民の団結を図るには敵を作るのがポピュラーですから。」ニタリ

長門「実に酷い計算だが実に有効だな。」

青葉「それでも撃墜しないとは言い切れません。可能性は半々ですよ。」

川内「その備えがこれらということかぁ。」




青葉「この貨物機の車輪が香港から離れた時点で

   駐留軍の指揮官の首は切り取り線から切れていますからね。」

青葉「よっぽどの縁がない限りは泥舟を助けるお人よしは居ないって訳ですよ。」

時雨「なるほどね。だから手ごまのやりくりの範囲内でしか動けないって事ね。」

青葉「左様で御座います。」ニカ

青葉「なので最新鋭機が来るにしても今しばらく時間がかかるという事です。」

青葉「さすがに香港近郊からは航続距離の関係で飛んでこないにしても

   処罰が決まってる相手におべっか使う相手なんて居ませんしね。」

青葉「やる気を出すにしても最低限のポーズでしょう。」

青葉「レーダーは最新鋭の機体でも写る高性能のを用意していますが、どんな按配です?」



ここで青葉が摩耶の方を振り返る。



摩耶「普段使用のレーダーとの違いに眼が回りそう。」

摩耶「後、レーダーの処理に全部持っていかれるからあたしは戦力にならないぜ?」

川内「そのレーダー普段使いできないの?」

摩耶「無理だな。艤装接続に色々、間かまして……。」

摩耶「よくわかんねぇなこれ、これ以上負荷が掛かると頭がやけるんじゃねぇかな?」

グラ「良く分からないが動いているからヨシッ!は技術者として頭の痛い話だな。」

摩耶「とはいってもねぇ。頭の中に洪水の如く周囲の状況が流れ込んできやがる。」

青葉「技研も危ないものつくってますねぇ。」クスクス


長門(実機テストも兼ねてのか…、味方も怖いという奴か。)



そして、一同が機内貨物室の他の積荷について確認を終え、

迎え撃つ準備を終えたくらいに敵は丁度やってきたのだった。



摩耶「きたぜ!後方5時の方角!距離60000!機影4!編隊組んでやがるぜ!」

グラ「敵が此方を撃墜するにはミサイルでロックする必要性がある!」

グラ「敵は此方がただの貨物機としか知らされていないはず!」

グラ「であれば赤外線ホーミングミサイルの使用だ!」

グラ「摩耶!ミサイルが発射されれば光点が増える!」

グラ「ミサイルとの距離が10000になったら、直ぐ知らせてくれ!」

グラ「後方から燃料投下の準備はいいか!?」



グラーフが敵の使用ミサイルを読む。

この判断が間違えれば貨物機は撃墜される事となる。

だが、誰一人としてグラーフの判断を疑うものは居ない。

それはお互いに幾つもの死線を潜り抜けてきた仲間であり。

背中を任せる、命を預け、

万一命を落とす事になったとしても悔いが残らない相手であるからだ。


政治と軍事は切っても切れないお話
軍人が優秀で政治家があれだと戦争はやめ時がつけれなくなることがあります
軍人があれで政治家が優秀だと軍人の暴走をとめれなくなることがあります
とっちもあれだとブレーキの壊れた暴走特急で国がなくなります
どっちも優秀だといけいけどんどんになり国の体力を無視して全力疾走
結局全部国がなくなります、どうすればいいんでしょうね(適当)
ここまでお読み頂きありがとうございました!
秋津洲4人目欲しいけどでねぇといいながら周回しております!
次イベはハワイ!ハワイです!大艇今から掘らせるってそういうことだろ運営さんよぉ!
楽しんでいきたいですね(白目)

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