【ガルパン】小梅「みほさんが筋肉痛になった」 (35)

小梅「みほさん……筋肉痛になったって聞きましたけど大丈夫ですか?」

みほ「んー! んー!」ジタバタ

小梅「昨日の訓練厳しかったですし……筋肉痛になるのも無理はないかと」

小梅「やっぱり今日は学校を休んだ方がいいかと」

みほ「んー!」ジタバタ

小梅「ふふっ大丈夫ですよ。ちゃんと私の方から連絡しておきますから」

小梅「え……私も休むのかですか?」

小梅「当たり前です。大切なみほさんを一人にするなんて出来ませんから」

小梅「というわけで今日からみほさんの筋肉痛が治るまで永遠に面倒を見てあげますね!」ワクワク


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みほ「んーんー!」

小梅「もう暴れちゃダメですよ。みほさんは筋肉痛なんですから」

小梅「あんまり動いちゃうと……悪化して動けなくなっちゃうかも知れませんよ?」

みほ「…………」

小梅「大人しくなったみたいで良かったです」

小梅「それじゃガムテープを剥がしますね」

みほ「…………」ホッ

小梅「あ……剥がすからって叫んだりしないで下さいね」

小梅「もしも叫んだりなんてしたら今度は喉が筋肉痛になっちゃうかも知れませんから」

みほ「…………」コクコク

小梅「ふふっ……いい子です」ビリビリ

みほ「あ、赤星さん……」

小梅「下の名前で呼んで下さって構いませんよ」

小梅「だって私たちはお友だちですから!」

みほ「じゃ……じゃあ小梅さん」

みほ「どうしてこんなことするの」

小梅「こんなことって?」

みほ「その……縄で縛ったり部屋に監禁したり」

小梅「それは……みほさんが筋肉痛だから」

みほ「?」


小梅「みほさんが毎日黒森峰で頑張っているのを私知っています」

小梅「でもこれ以上みほさんに頑張ってほしくないんです」

小梅「だってみほさん無理して学校に通ってる」

小梅「だから休ませないとって思って……」

みほ「え、えっと……」

小梅「ということでこれからはみほさんの世話は私が責任を持ってさせていただきますね」

みほ「それは嬉しいんだけど……ほら学校休んじゃうと成績とか進学だって出来ないし」

小梅「進学? それってそんなに大切なんですか?」

小梅「みほさんは筋肉痛なんです」

小梅「なのに無理してまで行くほど進学なんて大切なものだと思いません」

小梅「それに未来のことなんて考えなくても良いんです」

小梅「私がみほさんを一生養ってあげますから」

みほ「小梅さん……」

みほ「小梅さんが何でこんなことしてるのか分からないけど」

みほ「こんなのおかしいよ……」

みほ「このことは誰にも言わないから」

みほ「だからお願い……」

小梅「ごめんなさい。でも今さら引くわけにはいかないんです」

小梅「これもみほさんの為ですから」

小梅「大丈夫です。最初は抵抗があるかもですけど時期にこの生活が好きになりますから」

小梅「……あ、でもさすがにずっとこのままだと辛いですよね」

小梅「縄をこうしてっと」シュルシュル

小梅「さすがに腕と足を解くことはできませんけど身体に巻いていた部分なら」

みほ「あ、ありがとう」

小梅「私はみほさんをいじめに来たわけじゃないですから」

小梅「この部屋からは出れませんけどそれ以外はなるべく自由にしてあげたいって思ってます」

小梅「あくまで筋肉痛を治す一貫としてですけど」

みほ「あ、あはは……別に筋肉痛ってわけじゃないんだけどなぁ」

みほ(何だかよく分からないけど)

みほ(今の小梅さんを刺激しちゃダメな気がする)

みほ(ここはしばらく様子を見て隙が出来たら逃げ出した方がいいよね)

みほ(きっとお姉ちゃんやエリカさんだって私がいなくなって心配してるだろうし)

小梅「みほさんはお腹空いてますか?」

みほ「うん……まだ朝ごはん食べてないから」

小梅「そうですよね。筋肉痛を治すためにはちゃんと食事を食べることも大切ですから」

小梅「というわけで朝食です」マカロン

みほ「あ、マカロンだ」

小梅「みほさんの大好物マカロンって聞いたから用意したんです」

小梅「好きなだけ食べていいですから」

みほ「ありがとう」

みほ「でも腕が縛られてると食べれないから……できれば縄、解いて欲しいかなぁ」

小梅「みほさんは腕を動かす必要なんて無いんです」

小梅「私がこうして食べさせてあげますから」

小梅「ほら口を開けて?」

みほ「え……でも恥ずかしいし」

みほ「出来れば自分で食べたーー」

小梅「ほら……口を開けて」ギョロ

みほ「う、うん……それじゃ頂きます」モキュモキュ

小梅「どうですか? 美味しいですか?」

みほ「うん……とっても美味しいよ」

小梅「えへへ……みほさんに美味しいって喜んで貰えた。嬉しい」

小梅「今日のためにマカロン沢山買ってきたので食べたくなったらいつでも言って下さい」

小梅「すぐに食べさせてあげますから」

みほ「うん……それは嬉しいんだけど」

みほ「マカロンって水分を吸っちゃうから喉乾いて来ちゃって」

みほ「えっと……水飲ませてくれるかな?」

小梅「はい! 任せて下さい」

小梅「こんなこともあろうかとちゃんと哺乳瓶を用意して来たんです」

小梅「中はちゃんとミルクじゃなくてミネラルウォーターですから」

みほ「ありがとう」チューチュー

小梅「こうしてると何だかみほさんが赤ちゃんみたいで可愛いです」

小梅「頭……ナデナデしちゃいますね」ナデナデ

みほ「うっ……」ピクン

小梅「大丈夫。怖がらなくても良いんです。私はみほさんに危害を加えたりはしませんから」ナデナデ

みほ(てっきり叩かれるんじゃないかって身構えちゃったけど)

みほ(悪いことしちゃったよね)

みほ「ごめんなさい……私その」

小梅「謝らなくても良いんです。いきなり誘拐されて監禁されて身構えるのも無理はないですから」

小梅「でもこれだけは信じて下さい。私はみほさんのことを誰よりも大切に思ってます」

小梅「だからみほさんを傷つけることは絶対にしません」

みほ「小梅さん……どうしてそこまで」

小梅「だってみほさんは私の命の恩人だから」

小梅「だからこれはちょっとした恩返し」

小梅「本当はもっと色々してあげたいけど……」

小梅「私にはこれ以外のこと思い付かなくて」

みほ「小梅さん……」

みほ「そんなことないよ」

みほ「こうして私の味方がいるってだけで」

みほ「私は嬉しかったから」

みほ「だから小梅さんにはこんな真似して欲しくないの」

みほ「今なら間に合う。私だってちょっと体調を崩したってことで済むから」

みほ「だからお願い……ここから出して」

小梅「みほさん……」

小梅「ごめんなさい。いくらみほさんのお願いでもそれを聞くことは出来ません」

小梅「みほさんは筋肉痛ですから……安静にしてないといけないんです」

みほ「小梅さん……」

小梅「さ、この話はもうおしまいです。それよりみほさんおトイレは大丈夫ですか?」

みほ「それは……ちょっとだけ」モジモジ

小梅「じゃあ私がトイレのお世話もしてあげますね」

みほ「……え?」

小梅「だってみほさんは筋肉痛ですから! トイレも一人じゃ出来ないですし」

みほ「で、でも恥ずかしいし……それに一人で出来るから……」

小梅「でもみほさんにもしものことがあったらって思うと」

みほ「も、もしものことなんてないと思うな……」

小梅「くすっ、そんなに恥ずかしがる必要無いんですよ」

小梅「赤ん坊が母親に排泄のお世話をしてもらう」

小梅「それは当たり前のことですよね?」

みほ「そうだね」

小梅「だからみほはんが私に排泄のお世話をしてもらう」

小梅「それも当たり前のことなんです」

みほ「……ん?」

小梅「というわけでしっかりお世話してあげますね」グググ

みほ「え……ちょっと小梅さん!? なんで近づいて……」

小梅「勿論トイレのお世話ですよ」ニコッ

みほ「うう……結局排泄のお世話までされちゃった」

小梅「恥ずかしがってるみほさん可愛かったです」フンス

小梅「これからは食事も排泄も全部お世話してあげますね」

みほ「こんなの……おかしいよ」

小梅「おかしくなんてないですよ」ニコッ

小梅「時期私のお世話なしじゃ生きれなくしてあげますから」

三日後

小梅「みほさんすみません。今日は学校であまりお世話出来なくて」

みほ「それは噛まないけど……」

みほ「小梅さんの爪についている赤黒いのって」

小梅「!?」

小梅「……ちょ、ちょっとした汚れですよ。すぐ拭き取っちゃいますね」タッタッタ

みほ(小梅さん……珍しく動揺してた)

みほ(小梅さんは汚れだって誤魔化したけど)

みほ(あれって……)

みほ(やっぱりこの部屋から出ないと……)

みほ(毎日ちょっとずつ縄を緩めてはいるけど)キュウキュウ

みほ(やっぱり完全に緩めるにはまだ時間が必要だよね)

小梅「あ、みほさん」

みほ「え? な、なに?」

小梅「今日はみほさんに素敵なプレゼントを用意してきました」

小梅「じゃーん」

みほ「これって……ボコ!」

小梅「はい! 通販サイトで新品が出ていたので購入しちゃいました」

小梅「みほさんの部屋……調べたけどこのボコは持っていなかったみたいだから」

小梅「その喜んでくれたら良いなぁって」

みほ「うん……凄く嬉しい」

みほ「小梅さんがいないときは一人で寂しかったから」

みほ「これで一人でも大丈夫」

小梅「一人にさせてすみません」

小梅「でもみほさんがいなくなって私まで休むようになったら怪しまれますから」

小梅「それに……他にも休めない理由があるんです」

みほ「?」

小梅「すみません。不安にさせちゃいましたね」

小梅「今日の夕食は豚ニラ炒めです。さ、お口開けて下さい」

みほ「あ、あーん」モキュモキュ

小梅「味はどうでしょうか」

小梅「私……エリカさんみたいに料理が得意ってわけじゃないから」

小梅「味付け濃かったり薄かったりしますか」

みほ「ううん。そんなことないよ」

みほ「とっても美味しい」

小梅「そう言ってもらえてよかったぁ」

小梅「それじゃご飯も食べたことですし歯磨きしちゃいましょうか」

小梅「なんだってみほさんは筋肉痛ですから」

小梅「歯磨きも私がいなくちゃ出来ないんです」

小梅「さ、口を開けて下さい」

みほ「あ、あーん」

小梅「よしよし良い子ですね」シャカシャカ

小梅「はい。完了です……みほさんに虫歯が出来ては大変ですから!」

みほ「あ、ありがとう」

小梅「良いんですよ。みほさんの為なら私なんだってしますから」

小梅「それじゃ今日は寝ましょう。あんまり夜更かしすると筋肉痛が悪化するかもしれませんし」

みほ「は、はーい」

みほ(この生活……一体いつまで続くんだろう)

みほ(いい加減終わらせなくちゃ)

みほ(こんな生活絶対続けちゃいけないよ)

みほ(それにあの赤黒い汚れも気になるし)

みほ(小梅さん……誰かに危害とか加えてないよね?)

小梅「…………」スピー

みほ(小梅さんは眠ってるし今のうちにちょっとずつ縄を緩めて)キュッキュッ

みほ(よし腕は解けた)

みほ(あとは足の方を……)キュッキュッ

みほ(小梅さんはまだ寝て……)

小梅 (●)(●) ギョロ

みほ「ひぃ!?」

小梅「どうして逃げようとするんですか!?」

小梅「私はみほさんのことを思って必死に……」

みほ「ごめんなさい。でも私……こんなの間違ってるって思うから」タッタッタ

小梅「みほさん! 待ってください! 外に出ちゃダメです!」

みほ「小梅さん……」

小梅「私はみほさんにずっと幸せでいてほしいんです」

小梅「外の世界には嫌なことが沢山あります」

小梅「でもここでなら衣食住は保証しますしみほさんの好きなボコだって」

みほ「小梅さんは……どうして私がボコのこと好きか分かる?」

小梅「えっと可愛いからですか?」

みほ「勿論それもあるよ。でも私がボコを好きになったのは」

みほ「どれだけボコボコにされても立ち向かって行くから」

みほ「だから現実が辛くても私は逃げないよ……」

小梅「みほさん……」

みほ「だから私……この部屋から出るね」ガチャリ

小梅「ダメです!」

小梅「例えみほさんがそうなることを覚悟していたとしても」

小梅「私はボコみたいに傷だらけになるみほさんを見たくなんてないんです」

小梅「だから逃げないで……私の側にいて……」タッタッタ

みほ(……ここは小梅さんの部屋)

みほ(小梅さんが追いかけてくる……!)

みほ(はやく逃げないと)

みほ(とりあえずお姉ちゃんに事情を説明して保護してもらおう)

みほ(確か三年生の部屋はこの上だから……)スルッ

みほ(あ……れ)

みほ(階段が滑って……)

ドスッ

みほ「ん……あれ」

まほ「みほ……気がついたみたいだな」

みほ「えっと……ここは」

まほ「病室だよ。小梅がここまで運んできてくれたんだ」

みほ「え……小梅さんが!?」

みほ(そうだ。思い出した……私、小梅さんから逃げようとして階段から転んだんだ)

まほ「それで……何があったんだ」

まほ「小梅に聞いても私が悪いんですと泣きじゃくるばかりでな」

まほ「ここ数日のことも含めてお前から話を聞きたいと思っている」

みほ「お姉ちゃん……」

みほ(お姉ちゃんの手……凄く震えてる)

みほ(それに目の隈だって濃いし心なしかいつもよりやつれる気がする)

みほ(態度では平静を装っているけど本当はずっと気にかけてきてくれたんだね)

みほ(でも……それでもこのことを話すことは出来ない)

みほ「ちょっとお友達の家に……」

まほ「監禁されていたんだろ」

みほ「……え?」

みほ「な……んで?」

まほ「簡単な話だ。みほの手と足に紐で縛られたような痣があった」

まほ「それを見つけた時点で誰かに縛られていて逃げる途中に気絶したことは容易に想像が付く」

まほ「それに小梅の態度やお前の違和感」

みほ「違和感?」

まほ「みほは小梅のことを赤星さんと呼んでいたからな。あれで確信したよ……みほを監禁していたのは小梅なんだとね」

みほ「あはは……お姉ちゃんには敵わないや」

みほ「でも小梅さんは何も悪いことはしてないよ?」

みほ「ただご飯を作ってもらって寝る場所を用意してくれただけ」

みほ「確かに監禁はされてたかも知れないけど」

みほ「何か嫌なことをされたわけじゃないから」

まほ「そうみたいだな。縄の痣以外に目立った外傷もない」

まほ「お前が寝ている間、保険医に診てもらったが栄養失調や脱水症状は見られなかった」

まほ「それは監禁されていたとしても少なくとも衣食住においては負担を掛けていないということだ」

みほ「うん……だからお姉ちゃん。小梅さんを責めないであげて」

まほ「責められるものか……小梅がやっていなければ……私がやっていたかも知れないんだからな」

みほ「……え?」

まほ「みほは小梅に監禁されてどう思った? やっぱり嫌……だったか?」

みほ「嫌……というよりは困惑の方が強かったかな」

みほ「どうしてこんなことするんだろうって」

みほ「小梅さんが優しい人だって知ってるから」

みほ「だから尚更どうしてこんな行動を取ったのかよく分からなくて」

まほ「……そうか」

まほ「小梅の行動は全てみほを思っての行動だ」

みほ「小梅さんがあんな行動に出た理由……お姉ちゃんは何か知ってるの?」

まほ「…………」

まほ「……本当はみほに話したくはなかったんだがな」

まほ「きっとその真実はみほにとって辛いものになる」

まほ「それでもいいのか?」

みほ「私は構わないよ」

みほ「だって今小梅さんはとても辛い想いをしてる」

みほ「なのに見捨てることなんて出来ないよ」

まほ「みほは優しいんだな」

まほ「その優しさが純粋に評価される世界なら小梅や私たちも苦しまなくて済んだのかも知れないが」

みほ「……?」

まほ「百聞は一見にしかず。ついてきてくれ、お前に見せたいものがある」

教室

みほ「ここって私の教室?」

まほ「そうだ。ここには小梅が見せたくなかった真実がある」

まほ「小梅はきっとその光景を見せたくはないだろう」

まほ「私も出来れば小梅の意思を尊重…………」

まほ「いや違うな。私も見せたくないんだ。みほが傷つく姿を見たくない」

みほ「お姉ちゃんと小梅さんが私のことを大切に思ってるのは知ってるよ」

みほ「だからきっと本当はここに入らない方がいいのかも知れない」

みほ「でも……私の問題なら尚更私が受け止めないと」

まほ「分かった。幸い今は放課後だ……教室には誰もいないだろう」ガチャ

まほ「自分の席を確認するといい。そうすれば全て分かる」

みほ「自分の席は確かここ…………え?」

『死ね!』『消えろ!』『戦犯!』『責任取れ!』

みほ「こ、この落書きって……」ガクガク

まほ「これが小梅の見せたくなかったものだ」

まほ「普段は小梅やエリカがみほにバレないようこっそり落書きを消していたんだがな」

みほ(小梅さんの赤黒い汚れって……もしかしてこの絵の具を拭いて……)

まほ「その行為もやがてはバレてしまう」

まほ「小梅はこの真実がみほに知られないようにと部屋に閉じ込めたんだ」

まほ「隠そうとしてもやがてはバレてしまう」

まほ「みほだって身に覚えがあるだろ?」

まほ「前も財布がゴミ箱に落ちてあったと言っていたじゃないか」

みほ「あれは……私がおっちょこちょいだから」

まほ「いくら不器用でも財布をゴミ箱に捨てるものか」

まほ「誰かが取って捨てたに決まっている」

みほ「…………そうだね」

みほ「あ……あはは…………」

みほ「私……間違ったことしちゃったのかな?」

まほ「そんなことはない」

まほ「ただ世界が少し残酷だったというだけだ」

まほ「小梅はみほの置かれたこの状況に酷く憤りを感じていたみたいでな」

まほ「みほは何の間違いもしていないのにどうして責められるんだと私に愚痴を溢していたよ」

みほ「そっか……でも良かった」

まほ「良かった?」

みほ「小梅さんが優しいままで」

みほ「私……小梅さんとちゃんと話してくる」

みほ「あの時は監禁されて混乱して逃げちゃったけど」

みほ「今ならちゃんとお話……出きる気がするから」

まほ「そうか……」

みほ「だから私……小梅さんとお話ししてくるね」

みほ「小梅さんは今どこにいるの」

まほ「自分の部屋で塞ぎ込んでいるよ。念のために私も同行するが構わないか」

みほ「うん……でも案内だけがいいかな。小梅さんとは一対一で話したいから」

まほ「分かった」

小梅ルーム

まほ「小梅。話したいことがある。このドアを開けてくれないか」ドンドン

まほ「返事がないか。仕方ないこのマスターキーで」ガチャ

みほ「小梅さん……?」

みほ「あれ……いない?」

まほ「これは手紙……か」

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小梅『大好きなみほさんへ』

小梅『まずみほさんに謝らなければなりません』

小梅『監禁してごめんなさい。酷い目に合わせちゃってごめんなさい。転落してごめんなさい』

小梅『そしてありがとう』

小梅『私が濁流に飲まれて死にそうになったとき』

小梅『みほさんは迷うことなく戦車を放棄して助けてくれました』

小梅『あの時の私たちはみんなみほさんと距離を置いていて』

小梅『私も黒森峰にいた二年間。独りでいるみほさんを遠巻きで見ているだけで何もしてあげなかった』

小梅『まだエリカさんはみほさんに話し掛けていたけれど』

小梅『私はただ……みほさんのことを独りでいるなぁって』

小梅『不憫だとは思っていたけど声をかけることはしなかった』

小梅『そんなズルくて汚いみほさんから見れば完全に他人でしかない私たちを』

小梅『みほさんは試合を放棄してまで助けてくれた』

小梅『あの時……水が溢れて本当に死ぬんじゃないかって思ってたから』

小梅『みほさんが来てくれたときは本当に嬉しくて頼りになって』

小梅『反面。自分はなんて情けない人間なんだろうと涙が溢れてきました』

小梅『だって私は独りで寂しそうにしているみほさんに声すら掛けなかったのに』

小梅『みほさんは自分の命が危険になるかも知れないのに』

小梅『私たちのところに駆け付けて来てくれたんですから』

小梅『だから今度は私が守る番だと考えました』

小梅『あの全国試合の後、みほさんはフラッグ車を放棄したとして黒森峰の生徒から糾弾されるようになって』

小梅『黒森峰はお嬢様校ということもあって表立った暴力とかは無かったけど』

小梅『貴重品を隠したり陰口、落書きだってありました』

小梅『何とか私たちはそれを辞めさせようと落書きをこっそり消したり陰口を辞めるように注意したり、隠した貴重品をこっそりみほさんの席に戻したり』

小梅『色々やって来ました』

小梅『だってみほさんが責められるなんておかしいと思うから』

小梅『みほさんは正しいことをしたはずです』

小梅『少なくともみほさんの行動によって私の命は救われました』

小梅『なのにみんなが見るのは試合の結果だけ』

小梅『助けてもらった他の人たちはみんな責任感からか転校してみほさんの行動を正しいと主張できるのは私だけです』

小梅『だから私が行動に起こさなければならないと思いました』

小梅『こんなやり方間違ってるとは分かってます』

小梅『それでもみほさんを傷付けないためにはこうするしかなかったから』

小梅『でも結局はそれも失敗しちゃいましたね』

小梅『私はみほさんを助けるどころか傷付けてしまった』 

小梅『最後まで恩返しが出来なくてごめんなさい』

小梅『だから最期にせめてもの罰としてこの罪は私の命で償いたいと思います』 

みほ「これって小梅さん……自殺するつもりじゃ」

みほ「い、急いで小梅さんを探さないと」

まほ「あ、ああ……私は他の生徒に小梅を見ていないか連絡する」

まほ「時間も遅いしみんな部屋に戻っていて望み薄だがな」

まほ「みほは思い当たる場所を探しに行ってくれ」

みほ「分かってる」

みほ「私が小梅さんを追い詰めたんだ……」

みほ「あの時私が逃げたりしたから……」

みほ「ううん……私がもっと強い人間だったらきっと自分は悪くないって言い返せたのかも知れない」

みほ「でも……私はそれを放棄しちゃったから」

みほ「だから小梅さんに伝えなくちゃいけない」

みほ「私を守ってくれてありがとうって感謝するのは私の方だよって」

まほ「ああ……その為にも小梅を止めなければな」

まほ「私には恥ずかしながら小梅がどこにいるのか見当が付かない」

まほ「でもみほ……お前ならきっと探し出せるはずだ」

みほ「うん……絶対に見つけて止めてくるね」タッタッタ

まほ「頼んだぞ……みほ」

小梅(海……綺麗だなぁ)

小梅(全国大会の一件から水がすっかり怖くなってしまったけど)

小梅(でもこれは罪滅ぼしだから苦しいぐらいが丁度良いよね)

小梅(結局私……みほさんと友達になれなかったなぁ)

小梅(でもこんな私に……みほさんと友達になるような資格ないよね)

小梅「さようならみほさん……」

みほ「待って! 小梅さん!」

小梅「え……みほさん」ビクッ

みほ「お願いだからこっちに戻ってきて」

みほ「こんなところにいたら落ちちゃうから」

小梅「みほさん……」

小梅「私……考えたんです」

小梅「ここで飛び降りれば戦車道の問題が明らかになってみほさんのいじめが無くなるんじゃないかって」

小梅「どのみちみほさんに助けられなければあの時……死んでいたと思います」

小梅「私を助けたからみほさんがいじめられるなら」

小梅「私の命でみほさんを救うしかないんです!」

小梅「だから今さら命を失うことに躊躇いはありません」

小梅「これもみほさんの為ですから」

みほ「そんなの……」

みほ「そんなの私の為じゃないよ!」

みほ「私は只、お友達とみんなで話したいだけ」

みほ「折角……小梅さんとお友達になれるかもしれないのに」

小梅「みほさん……」

小梅「大丈夫ですよ。私がいなくともみほさんにはきっと優しい友達が沢山出来るはずです」

小梅「だってみほさんは良い人ですから」 

小梅「でもその為にはこの環境を変えなきゃ行けない」

小梅「だから私は……!」

みほ「小梅さんは逃げるの?」

小梅「……え?」

みほ「小梅さんは言ってたよね。私は筋肉痛だって」

みほ「だから小梅さんは責任を持って私の世話をしてくれるんじゃなかったの?」

小梅「みほさんの筋肉痛は完治しました。今だってこうして立って歩けてるじゃないですか」

みほ「うん……おかげで筋肉痛も悪化しちゃった」

みほ「小梅さんが無理させたからもう動くことも出来ないかも」

小梅「え?」

みほ「もしこのまま小梅さんが自殺したら」

みほ「私も筋肉痛が悪化して何も出来なくなって死んじゃうから」

小梅「それって……」

みほ「意味は分かるよね」

小梅「…………そんなの卑怯です。私はみほさんのことを思ってしてるのに」

みほ「私のことを思うなら友達になって責任を取って」

みほ「小梅さんが言ったんだよ……私を一生養うって」

小梅「でもそれだとみほさんがまたいじめ…………」

みほ「大丈夫」

みほ「私……転校するから」

小梅「……え?」

みほ「机に書かれた落書きを見て気づいたんだ」

みほ「もう戦車道には私の居場所がないって」

みほ「だから……戦車道のない学校に転校する」

みほ「でも私一人じゃ筋肉痛で学校生活を送れそうにないから……」

みほ「小梅さんも一緒に転校して欲しいなって」

小梅(そういってみほさんは手を伸ばす)

小梅(戦車道をやっている時の凛々しいみほさんからは考えられないほど弱々しくてか細い手を)

小梅(そんなみほさんを見て私は覚悟を決める)

小梅(みほさんを一生支えていこうと)

小梅「はい! 一緒に転校しましょう!」

小梅「みほさんは筋肉痛ですから……私がずっとお世話してあげますね」

みほ「うん……約束だよ。私を見捨てないでね」ユビキリー

小梅「はい! 絶対に見捨てません!」ユリキリー

まほ「そうか……転校するんだな」

みほ「うん。黒森峰に私の居場所はないから」

みほ「今度は戦車道のない学校で自由に過ごしてみたいの」

まほ「分かった。それがお前の望んだ道なら出来るだけ協力しよう」

まほ「お母様の説得も手伝うよ」

まほ「それに私も現状としてお前を黒森峰に置いていくことはいいとは思えないからな」

まほ「だが黒森峰とは言わない」

まほ「もし戦車道をまたやりたくなったら私に報告してくれ」

まほ「その時はアンツィオなり継続なりに転校するように手配する」

みほ「あはは……」


小梅「みほさん……隊長とのお別れは……」

みほ「うん済ませたよ」

みほ「お姉ちゃんと会えなくなるのは寂しいけど」

みほ「毎日電話はするし今の私には小梅さんがいるから」

小梅「はい。これからは一緒です!」

みほ(小梅さんが笑顔でそう答えてくれる)

みほ(それだけで転校することへの不安が不思議と和らいでいくような気がして)

みほ(うん……大丈夫)

みほ(小梅さんと一緒なら戦車道がなくとも生きていける)

みほ(だから……)

みほ(これからもずっと私のお友達でいてね?)

これにてこのssは終了です。ここまで見て下さったみなさんありがとうございます。
また次のssでお会いしましょう! それではHTML依頼出しておきますね!

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