P「海外版牧場物語」 (125)


目の前に広がる数字の羅列

止むことのない電話

更新され続ける目標(ノルマ)


ここは、ブラックウェルカンパニー


あなたは高校を卒業後、上京してこの会社に就職

順風満帆の人生が、あなたを待っているはずでした

…しかし、その会社はあなたの想像を遥かに超えて


黒い会社でした


黒井「ハーハッハッハッハッ!無理というのは、嘘つきの言葉だ!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1558615612


心も身体も疲弊したあなたは、机の中にある手紙を手にします

それは、上京する前におじさんから渡された、一通の手紙でした


『君がこの手紙を読んでいるということは、今の生活に耐えきれなくなったということだろう』

『私も若いころはピーンときたことを行い、様々なことにチャレンジしたものだ』

『私の従兄の電話番号を書いておく、そこに連絡して私の名前を伝えるといい』

『君の新しい生活を、応援しているよ!頑張ってくれたまえ!』


あなたの物語が、今、始まろうとしています


ルンファク5制作発表記念(大遅刻)

元ネタはありますが、知らなくても問題ありません

ミリマス(ミリシタ・ドラマCD)がメイン、選択肢は気が向いたら

一応ラブコメ路線でいきますが、変更する可能性あり


【春の月、一日目】

長い旅路を経て、青年はとある町にたどり着いた

停車したバスから降り、辺りを見渡す

ここは、ナムコタウン

山と海に囲まれた自然豊かな町である

どこかに看板はないか、歩き出そうとしたその時…


「こんにちは!あなたがプロデューサーさんですよね?」


可愛らしい女性が声をかけてきた、彼女候補だろうか


P「…プロデューサー?」

「あ、あれ?違いましたか…?」

「町長さんからこの村をプロデュースする方が来るって聞いていたんですけど…」


…そう言えばそのようなことを電話で聞いたような気がする

イマイチ何をするのかピンと来ないが、その職業名を指す人物は俺だろう


美咲「よ、良かったぁ…あ!私、美咲って言います!」

美咲「この町の役所で事務員をしていて、プロデューサーさんを家まで案内するよう頼まれたんです」


それはありがたい、遠慮なく案内してもらおう


美咲「町長さんはプロデューサーさんのお家で準備をしているみたいですよ」


美咲さんに連れられて新しい自宅へと移動する

…しかし、実に可愛らしい人だ

年も近いだろうし、小動物系の癒しも感じる

だが、残念ながら攻略対象ではないらしい


美咲「到着しました!」


…ここが新しいマイホームか

決して大きくはないが、一人暮らしには十分な一軒家がそこにあった

庭もすっかり荒れているが、追々綺麗にすればいいだろう


<ガチャッ

労せず手に入れた土地と家に感動していると、扉が開いた


「おぉ!君がP君かね?」


俺の顔を見て、名前を言い当てた人物

おそらくこの真っ黒の人が、俺の叔父の従兄でこの町の町長さんだろう


町長「いやーよく来てくれたねぇ!君のことを町民皆が首をながーくして待っていたんだ!」

町長「この町に人が引っ越すなんて、ここではそうないことだからねぇ!ちょっとした大イベントだよ!」


町長「では、早速みんなに挨拶を…と言いたいところだが、長旅で疲れただろう」

町長「今日はもう休むといい」

P「ありがとうございます」

町長「うむ、明日になったらまずは町役場に来るといい」

町長「そこで今後の方針を話し合おうじゃないか」

P「はい!」

町長「うん、いい返事だ!ではまた会おう!」


一日目、終了

【人物紹介】

P(プロデューサー)
主人公、この世界ではアイドルではなく町人の人生をプロデュースする模様
ブラック企業を辞めて田舎に引っ越し、牧場(農場)の経営は…未定
良くも悪くも平均的な能力だが、人を育てる力は一流

順二朗(町長)
言わずと知れた我らが社長、この世界では町長にジョブチェンジ
イベントの企画から結婚式の神父まで幅広く活動、おかげで真っ黒
残念ながら非攻略対象

美咲(事務員)
なんと!劇場の事務員は町役場の事務員に
趣味で服屋(仕立て屋)をやっている、副業ではないのでセーフ
残念ながら非攻略対象


【春の月 2日目】

朝、早々に就寝したおかげかとても良い目覚めだ

いつもなら胃を満たすためだけの朝食も、ここでは至高の時間に感じる

朝食を食べ終わり、着替えて家を出る

まだ時間には余裕があるが、どうせなら町の様子を見ながら行くのも悪くないだろう


【海岸】

潮の香りに誘われて海岸に来てしまった

まだ少し肌寒く、泳ぐには流石に早い

だが、あのようにトレーニングをするには最適な時期だろう

「……!」

砂浜で走っていた人物がこちらに気づいたようだ

…こちらに向かって走って来ているような気がする

いや、確実にこちらに向かって……!?


ズサァァァァ!!


「ねぇねぇ!もしかしてあなたが昨日引っ越してきたっていう人!!??」


あと少しでぶつかろうという距離で停止し、息を吸う間もなく質問してきた少女

…元気な子だ、少し戸惑いながらも肯定する


「やっぱりぃ!!こんな時間にここを歩いてるの私くらいだからさ、絶対そうだと思ったよ!」


海美「私、海美!海が美しいって書いて海美だよ!よろしくね!」


元気よく彼女はそう自己紹介してくれた

こちらも暗い話は避け、仕事のためにこの町に来た要点だけを説明する


海美「へープロデューサーかぁ…プロデューサーってなに?」

P「いや、俺も詳しいことは聞かされていないんだ…当面は雑用でもするのかもしれないな」


海美「ふーん…じゃあさ!暇な時でいいから一緒に運動しようよ!」

P「運動?」

海美「うん!サイクリングとか、水泳とか、球技や体操もいいよね!」

両手を上下に振りながら、前のめりに勧誘してくる


運動か…そういえば久しくしていないな

健康のためにも、悪くない提案かもしれない


P「そうだな、生活が落ち着いたら声をかけるよ」

海美「うん!約束だからね!」


【街中】

海美と別れて町の中を散策する

早朝のためか、はたまた人口が少ないせいか、町の中を歩く人物は見当たらない

しかし商店や診療所、図書館や喫茶店など…ある程度の施設はそろっているようだ

採算は取れているのだろうか?


「……」

P「…?」


ふと、視線を感じて振り返ると…少女がこちらを見ていた


「…うちに何か御用ですか?」

P「え?あ、いや…」

「準備の邪魔なので、用がないならどいて下さい」


取り付く島もなく、少女は【最上商店】と書かれた店の中へ入っていった

失敗した、どう考えてもファーストコンタクトとしては悪い方だろう

次会うときにはちゃんと話せればいいが…


【役場】

少し気落ちしながら、役場へと辿り着く

昔ながらの建物といった印象で、趣のある様子だ

中に入ると、緑の服を着た女性が出迎えてくれた


「おはようござピヨッ!?若い男の人ぉ!?」


なかなかユニークな方のようだ


小鳥「す、すみません…先ほどは大声を出してしまって」


彼女は美咲さんと同じくこの町の役場職員で、小鳥さんという名前らしい

何でも今日俺が訪ねてくることは知っていたが、年上だと思っていたそうだ


小鳥「そ、それにまさかこんなにいい人だなんて…!」


これはチャンスよ小鳥!と小さく呟いているが、残念ながら攻略対象外である


町長と美咲さんは別の用事で遅れるとのことで、小鳥さんと話を続けることにした


小鳥「町長から話があると思いますけど、Pさんにはプロデューサーとして働いて頂きます」

小鳥「といっても町長の思いつきで役職名がそうなっただけで、やって頂くことは町のお仕事全般ですね」

P「というと…何でも屋のような?」

小鳥「はい!なので、まずは住人の皆さんと仲良くなることがお仕事です!」

P「なるほど…」

P「…あ、そうだ」


ここに来る前に会った少女のことを思いだし、小鳥さんに聞いてみることにした


小鳥「最上商店の…なら、その子は静香ちゃんですね」

P「開店前に邪魔をしてしまって…悪いことをしました」

小鳥「あー…いえ、機嫌が悪そうに見えたならプロデューサーさんのせいじゃないと思いますよ」

小鳥「ちょっと今…いろいろあるみたいで」

P「…そうですか」


誰しも何かしらの悩みは抱えているものだが、彼女もまたその一人ということだ

…俺に、何か出来ることはあるだろうか?


その後、町長と美咲さんが合流し、今後の俺の活動について話し合った

小鳥さんの言っていた通り、当面は住人の依頼をこなすことが仕事らしい


町長「まずは挨拶まわりだ、すべての住人に声をかけて君の名前と顔を覚えてもらおうじゃないか」


すべて…といってもこの町の住人は20人前後しかいないため、さほど苦労はしない

…そう思っていた時期が、俺にもあった


【人物紹介②】

海美(????)
筋肉の声を聞いて!スポーツと女子力をこよなく愛す少女
祖父母と住んでいるのは彼女の希望、両親はともに健在
攻略対象、難易度はやさしい…が、一筋縄ではいかない様子
表面上の言葉や動きだけで、相手の底を知ることはできない

小鳥(事務員)
ナムコタウンの役場事務員その2、2X歳
美人で愛想も良く、少々抜けているところも男心をくすぐる
本人の結婚願望は強いが、残念ながら攻略対象外

静香(店員)
最上商店の看板娘、少々キツイ性格をしているが素直になれないだけ
両親と上手くいっておらず、お店の手伝いよりも剣術の特訓の方が好き
攻略対象、難易度はやや難しい、だが中盤を乗り越えれば楽
あなたは彼女の心に隠された本心を、見抜くことが出来るでしょうか?


【診療所】

役場を後にし、まずは町の中から声をかけていくことにした

美咲さんに頂いた地図を頼りに建物の位置を確認する

最初に入ったのは、健康を守る要である診療所だ

ここには2人の住人が働いているらしいが…はたしてちゃんと機能しているのか


「おはようございます!あら、あなたは…?」 


扉を開けて入ると、きれいな女性が出迎えてくれた

ナース服を着ている受付の女性…おそらく、彼女が風花さんだろう


風花「男性と話すことはあまりないので、少し緊張しちゃいますね…」


照れる彼女に可愛らしさを感じながらも、こちらも緊張していた

目の位置を固定させるのが辛いと感じたのは、人生で初めてかもしれない


風花「あ、それともっと砕けた話し方で良いですから、私の方が年下…だと思いますし」

P「…そう、ですか?なら…そうさせてもらおうかな」


風花「ちょっと待っててくださいね」

頃合いを見てもう一人の住人を呼んでもらう、何とか平静を装えた…と思う

しかし、服の上からあそこまで主張できるのは相当の…


「随分と疲れた顔してますね、まぁだいたい予想はつきますけど」


メガネを少し上にあげながら、にやりと嫌な表情を浮かべた白衣の人物


P「…君がドクター律子か、随分若いな」

律子「その言い方は褒め言葉として受け取りにくいのでは?」

P「そうか、それはすまなかった」


その後もしばらく軽口の押収があったが、一区切りをつけ改めて自己紹介をする

彼女がこの診療所の主治医であり、薬学・科学にも精通しているというドクター律子その人だ

開口一番含みのある発言で話しかけてきたが、おかげでこちらも素で話しやすかった


律子「ま、困ったことがあったらいつでもどうぞ。なんでもは出来ないですけど」

律子「…そうそう、夜になったら合わせたい子がいるので、また寄ってください」

律子「ちょっと変わった子なんで、プロデューサー殿にぴったりかもしれませんね」


医療機関に来たはずだが、なぜか疲れて診療所を後にする

一通り内装も確認したが、診療所の設備としては十分に見えた

…それよりも、謎の機械や薬品の方が気になった

地下室もあるようだったし、あの診療所には秘密がたくさんありそうだ


風花「プロデューサーさんって噂と違っていい人ですね、全然見られなかったんですよ」

律子「あー…まぁ、そうですね…あはは」


【図書館】

さて、気を取り直して次にやってきたのは図書館だ

落ち着きを取り戻すにはちょうどいいだろう

司書の方に挨拶して中へと入り、辺りを見渡す

…いた、この時間に机に座って作業している人物

おそらく彼女が、俺と同じように最近移住してきた子だろう

集中しているようなので少し悩んだが、タイミングを見て話しかけてみることにした


「……え?」

声をかけ、顔を上げた瞬間に固まってしまった

邪魔をされたことに腹を立てている様子ではない、何かまずいことでもしたのだろうか


「……イファイ」


突然自分の頬を引っ張り、現実であることを確認している

かわいそうに、おそらく残念な子なのだろう


百合子「す、すみません!変なことばっかりして…」


しばらく顔を見合せているとハッと意識を取り戻し、謝罪された

彼女の名前は百合子、俺と同じく都市部から引っ越してきて一人暮らしをしているらしい

ようやく話が通じるようになったため、呆然としていた理由について聞いてみると、少し言い淀んだ後…


百合子「じ、実は…今書いている小説の主人公のイメージに、Pさんがそっくりでして…」

百合子「もしかして、妄想が現実になる力でも目覚めたのかと思っちゃいました!」

P「な、なるほど…ちなみに、どんな話なのか見せて貰えないか?」

百合子「えぇ!?だ、ダメです絶対!恥ずかしくて死んじゃいます!」

P「…そうか、残念なような…ほっとしたような」


百合子「でも…もし作品の資料集めに協力して頂けるなら…」

百合子「完成した小説を…見てもらえますか?」


なぜか頬を赤らめながらお願いされてしまった


P「…分かった、大したことは出来ないだろうけど協力するよ」

百合子「ほ、本当ですか!ありがとうございます!!」


小説の資料集めか…何をするのかよくわからないが、なるべく協力してあげよう


【人物紹介③】

風花(ナース)
本業復帰、初期案は医者役だったが律子に献上
自身の一部に気になる部分があり、コンプレックスとなっているらしいが…?
攻略対象、難易度はやさしい、誠実に対応すれば特に苦労する部分はないが、色々と我慢が必要
自身をどう評価するか、それが問題である。あなたは彼女を、どう見たいですか?

律子(医者)
正確には医者兼科学者、薬の調合等も出来る万能の人、原作の眼鏡の子と医者のキメラ役
趣味でロボットを作ったり、怪しい薬を勧めてきたりもする、ゲーム好きの義理の妹がいるらしい
攻略対象、難易度はノーマル、だが奥手なため少々強引にいく必要がある
刺激的な日々を過ごしたい?なら、その夢は叶うはずですよ

百合子(小説家)
妄想炸裂ガール、小説家になることを夢見て執筆中、恋愛脳
ゲームや漫画なども好きで守備範囲はかなり広い
攻略対象、難易度はやさしい、というかチョロイン
あなたの物語は、彼女によって書き進められ、彩られていきます


【街中】

P「…何か本でも借りていけばよかったかな」

話すことに集中していたせいで図書館の本を確認するのを忘れていた

…まぁ、また行く機会はあるだろう

そう考え他の住人を探そうと、移動しようとしたその時

「~♪」

歌声と、ギターの音が聞こえた


「…♪」

P「…すごいな」

今まで様々な音楽を聴いてきたが、彼女の歌とギターはどこか違うと感じた

月並みだが、心に響くというか…とにかくずっと聞いていたくなる音だった


「…ふぅ」


音が止み、辺りに自然の音が戻る

余韻に浸っていると、目が合ったので声をかけてみることにした


P「いい音だった、聞き惚れたよ」

「サンキュ、観客がいてくれたおかげかもな」

P「失礼だが、所属は?」

「まさか、フリーに決まってるだろ」

驚いた、これほどの腕の持ち主がどこにも所属していないなんて

「…色々あってな」


彼女はジュリアと名乗った、何でも芸名らしく本名は秘密らしい


ジュリア「へぇ、アンタがあの噂のやつか」

P「…噂?」

ジュリア「あぁ、面白いものからきな臭いものまで、いろいろ流れてくるぜ」

P「…ろくでもなさそうだな」


試しに一部聞いてみると、未来からやってきたアンドロイド…とか

伝説の勇者の子孫とか、ヴァンパイアの末裔とか、石油王とか

ミシロ帝国のスパイなどという噂まで流れているらしい


ジュリア「そうだ、もしあたしの妹に会ったら仲良くしてやってくれ」

ジュリア「ちょっと素直じゃないところもあるが…まぁ可愛いやつだよ」

ジュリア「身長はこれくらいで、髪は茶色、名前は…」


別れ際にジュリアの妹のことを聞いて、別の場所に移動する

この時間は隣町の学校へ通っているらしいので、また帰ってきたら話しかけてみよう

…さて、次の場所だが


P(早めに行った方がいいよな)


【最上商店】

店の前に立って息を整え、ゆっくりと中へ入る

店内は食料品から雑貨品まで、幅広く揃っている様子だった

この町で買い物をするならここか…もう一つの場所しかない

おそらく、俺が買い物をするのはここだけだろうが


P「こんにちは」


レジに立っていた女性に声をかけ、簡単に自己紹介をして相手の名前を聞いてみる

女性は最上商店の店主の奥さんで、お店のレジや品出しを担当しているらしい

ご主人と奥さん、そして娘さんが一人いるらしいが…


ご主人は商品の仕入れで出ているらしく、娘さんの話へ移る

少しだけ緊張しながら、2階にいるという娘さんを呼んでもらった


静香「…何?母さんも同じことを…」

静香「…!」


小さな足音とともに朝の少女が一階へと降りてきた

静香の目が奥さんから俺へと移り、警戒した様子になる

俺はあらかじめ用意していた挨拶と朝の謝罪を伝えて、相手の反応を見た


静香「…そうですか、あなたが」

静香「それならそうと言ってくれれば良かったのに…」

静香母「静香」


奥さんが静香をたしなめ、俺に謝罪をしている

こちらも不審であったことを改めて謝罪した


静香「…」


空気が重い、さっさと自分の仕事について話してここは帰ろう


P「何か悩みとか、こうして欲しいという要望があったら聞かせてください」

P「可能な限り、お手伝いしますので」


町役場の前にある掲示板についても説明して、より良い町作りに役立てて欲しいと伝えた

匿名で投稿できる要望箱を設置することも付け加えておいた


静香「…それは、どんな内容でも良いんですか?」

P「はい、お仕事はもちろんプライベートなことまで、もちろん秘密は守ります」

静香「…そうですか」


何か言いたいことがあるのか、静香は少し悩んでいる様子だった

しかし、俺が帰るまでそれ以上何か話す様子もなく

取り留めない話を彼女の母親と話して、店を後にした


…こちらから聞くべきだったのかもしれないが、何となくそれは悪手のような気がしてやめた

今は、自分のやるべきことに集中しよう


【森】

商店を出て町の中心から少し離れた場所まできた

木々や草花がより多く見えるようになり、より自然を身近に感じる

…確か、この辺りにいると聞いたんだが


「んー…悪くないですけど、エッジ(鋭さ)が足りませんね」

「もっとシャープ(鮮明)なインプレッション(印象)にするには…」


向こうの方から大きな独り言が聞こえる

どうやらこの声の主が、目当ての住人のようだ


声の方向へ歩いていくと、何やら奇妙な絵や彫刻?のようなものが辺りに散らばっていた

それらに導かれるように進んだ先に、彼女は一人でキャンパスへ向き合っていた


「むー…このバック(背景)に映えるラディカル(先鋭的)なシーン(情景)は…」

P「…あの、ちょっといいかな?」

「…?、はい、なんでしょう?」


彼女の横に立ち、声をかける

集中しているところ悪いが、話を聞いてもらおう


ロコ「ほほう、あなたが例のニューフェイス(新人)ですか!ルモアズ(噂)は聞いてますよ」


彼女はロコと名乗った、彼女も少し前にナムコタウンに移住してきた人物らしい

移住した、と言っても彼女は森にテントを張って暮らしているとのことだが…


ロコ「ロコアートを思う存分作るには、マーベラスな(素晴らしい)環境なんです!」

P「ロコアート…というと、これのことか?」


近くに落ちていた手のひらサイズの小物を拾ってみた

…確かに、見ていると何やら引き込まれる何かがあるような


ロコ「…!、分かりますか!?ロコの込めたパッション(情熱)とエクスプロージョン(爆発)が!」

P「…あぁ、確かに何か感じる」

ロコ「~~~~!!」パァァ


お世辞ではなく、本当に何かあるような気がする

具体的に何かと聞かれたら、言葉に出来ないが…


その後、機嫌を良くしたロコに一通り作品を説明してもらった

何かを感じる物とそうでない物もあったが、ロコも俺の意見に賛同していた


ロコ「ここまでロコナイズ(ロコナイズ)を理解してくれる人に会えるなんて…感動です!」


どうやら自身の作品を理解してくれる人物に会えてうれしいようだ

セッションしましょう、と作品制作に誘われたが、まだ挨拶周りが終わっていないため丁重に断った

別れ際に、今日の出会いの記念にと、小さな星の形?のロコアートを貰った


【喫茶店 スタードロップ】

ロコと別れて町へと戻ってくると、ちょうど昼になった頃だった

家に帰ってもいいが、せっかくなので唯一の飲食店に顔合わせも兼ねて行ってみよう


ドアを開けると、チリンチリンと昔懐かしいベルが俺を歓迎する

店内はなかなかの広さで、バーカウンターや個室らしき部屋も確認できた

昼になったばかりだからか、店内にまだ客は見えない

代わりに、テーブルを拭いていた彼女が俺を迎えてくれた


「いらっしゃいませ!お好きなテーブルにどうぞ」


せっかくなので、カウンターへ座って挨拶をする


「こんにちは、はじめて来て頂けましたよね?」


彼女は歌織さんというらしい

この空猫喫茶店のオーナーであり、副業で音楽の先生もしているとか


歌織「普段はあまりお店には出ないんですけど、今日はちょっと人手が足りなくて」

歌織「でも、おかげでPさんにお会いできましたし、これも縁かも知れませんね」


歌織さんと話をしつつ、腕利きのシェフが作ったという料理に舌鼓を打つ


歌織「お昼は喫茶店としてランチやコーヒーを提供していますが、夜はバーとしてお酒も出しているんです」

歌織「ぜひ夜にも来てみてくださいね」

P「はは…分かりました」


約束ですよ?と少しいたずらっぽい笑みでお願いされてしまった

意外と強かな人のようだ


食事を終える頃には、店の中にはたくさんの人が座って談話や昼食を楽しんでいた

見るとそのほとんどが武器を携帯している

彼らは一体…


歌織「あぁ、冒険者の方たちですよ」

P「冒険者?」

歌織「はい、この町の近くに洞窟があるんですけど、そこに眠る秘宝を探しにきているのだと思います」

P「秘宝、ですか…」


【人物紹介④】

ジュリア(ギタリスト)
あたしの歌をきけぇ!ロックを愛しロックに生きる系女子
ロック歌手を目指しバンドを組んだこともあったが…
攻略対象、難易度はふつう、惚れさせるというより惚れさせられる可能性が?
一生懸命に何かを頑張る子は、お好きですか?

ロコ(芸術家)
インスピレーションが湧いてきました!
特別な感性を持った女の子、その才能は本物だが万人向けではない
攻略対象、難易度はやさしい、承認欲求に飢えているため優しさが重要
理解するということは、同時に理解されようとすることである

歌織(喫茶店オーナー)
私の料理…食べてみたいですか?原作における酒場の主人と子供たちの先生のキメラ役
空猫喫茶店オーナー兼音楽の講師もやっているらしい、弱点は朝
攻略対象、難易度はやや難しい、謎の組織が彼女を守っているとか何とか
普通の出会い、普通の友情、普通の恋愛…それらが最も難しい


【ミリオン洞窟】

P「…ここか」


町の中心から見て北東の方向に歩くこと数十分

木々に隠されるように、その洞窟はあった

一見どこにでもある普通の洞窟に見えるが、何でも入るたびに地形が変わったりするらしい

また、下層に行くほど凶暴なモンスターも住み着いており、今のところ誰も最下層に辿り着いていないとか…


P(どんな願いでも叶える秘宝『ミリオンスター』…か)

P「まぁ、俺には関係のない場所だな」

「それはどうでしょうか?」

P「え?」


先ほどまで誰もいなかったはずだが、木の横にローブを纏った女性が立っていた

何やら周囲の空気も不思議な感じがする…


「その洞窟は多くの縁(エニシ)が集いし場所、様々な点と点が繋がる地なのです」

「道筋によっては、貴方も交わる可能性はあると思われます」

「もし中に入られる時には、十分にお気を付けて…」


それだけ言って、ローブの女性は後ろを向いて歩きだそうとする

とっさに相手の名前を聞くために呼び止めた


「…私の名前ですか?」

「…ふふ、それは…トッ」

「貴音、やっと見つけたの!」


唇に指を当て、何か決め台詞のようなものを言おうとしていた彼女を遮るように

金髪の少女が茂みから現れた


貴音「…」


美希「…あれ?そこの人ってもしかして…」

P「…えっと、俺は昨日この町に引っ越してきた…」

美希「あ、やっぱりそうなの!」

貴音「…出来ればもう少し違う形で自己紹介したかったのですが、仕方ありませんね」

貴音「私の名は貴音、こちらは妹の美希です」


なるほど、彼女たちが町のはずれに住んでいるという不思議姉妹か

かなり立派な屋敷に住んでいると聞いていたが、こんなところで会えるとは…

こちらも簡単に自己紹介をした


美希「へー…じゃあこの人があの」

貴音「美希」

P「…あぁ、気にしてないから大丈夫」


どうやら俺の噂は町のはずれまで広まっているらしい


そのあとも、お互いのことを簡単に紹介しあい、親睦を深めた

いつか機会があれば家にも訪問する約束をし、普段何をしているのか尋ねてみると…


貴音「まことに残念ながら、それはまだお伝え出来ません」


と言われてしまった、美希は昼寝が趣味らしい

色々と疑問に思いながらも、キリがいいところで二人と別れた


美希「…いいの?お告げの事言わなくて」

貴音「まだ確定ではありませんし、伝えることで好転するとも限りません」

美希「ふーん…まぁ美希的にはどっちでもいいけど」

美希「それよりおなかすいたの!早く帰ろ!」

貴音「…そうですね、では…らぁめんを作りましょう」キリッ

美希「えー…またなの…」


【街中】

再び町に戻り、住人への挨拶まわりを続ける

町の中で戻って来ていた静香の父や、散歩中だった海美の祖父母

買い物に来ていたジュリアの母には会うことができた、残るは…

牧場を営む姉弟、ジュリアの妹、律子の義妹のはずだ

もちろん他にもこの町や周辺で働いている人物はいるが、今は住人を優先していこう


【北沢牧場】

時刻は夕方になり、辺りを夕暮れが照らす

日が長くなったとはいえ、まだ冬の月の名残を感じる肌寒さだ

朝は放し飼いにされていた動物たちも、すでに建物の中に入れられたようだ


それなりの距離を歩き、若い姉弟が二人で住んでいるという家の前に立つ

ふと、近くを見渡すと幼い少年が遊具で遊んでいるのが目に入った


P「こんにちは、ここのお家の子かな?」


屈んでゆっくりと少年に話しかける

少年は手に持っていた遊具を置き、こちらを見て、頷いた


P「じゃあ、君が陸くん?」


少し考えるように視線を外し、もう一度頷いた

…しっかりとした子だ、動作ひとつひとつがとても幼年期のそれとは思えない


これなら会話になるだろう

そう思い、なるべく簡単な言葉を選びながら自己紹介をする

りく君は俺の顔をじっと見つめ、しっかりと話を聞いてくれた


一通り話し終え、お姉さんの居場所を聞こうとした矢先


「その子に、何の用事ですか」


とても冷え切った言葉が、後ろから投げかけられた


初対面の相手に、ある程度警戒するのは当然の反応だ

だが、この反応は…


「…そうですか、わざわざここまで来て頂いてありがとうございます」

「ですが、特に困っていることはないのでもう来て頂かなくても大丈夫です」


こちらの自己紹介をすべて聞く前に、遮られてしまった

陸くんの手を引いて家の中へ入ろうとしているところを、呼び止めようとしたが…

その背中は、明らかにこちらを拒絶していた


小鳥『牧場の姉弟、志保ちゃんと陸くん何ですが…』

小鳥『ご両親お二人とも村から離れて生活されていて…』

小鳥『今の牧場の経営は、志保ちゃんが一人で行っているんです』

小鳥『町としても支援をしようとしたんですが、頑なに拒否されてしまって』

小鳥「何とかしてあげたいんですけど…』


帰り道、小鳥さんの言葉を思い出しながら志保たちのことを考えていた

ナムコタウンがあるバンナム王国では、初等部を卒業すれば大人と認められる

故に、志保が拒否すればそこに市町村が介入する余地はない

しかし他の住人も言っていたが、志保は相当無理をしている様子だという

事実、先ほどの僅かな会話でもそれは伺えた

…どうすればいいのだろうか


【人物紹介⑤】

貴音(???)
謎の神秘オーラを纏う美女、その正体は…?原作におけるヤベー姉ちゃんとヤベーやつの混合役
意味深なことをよく呟くが、呟きすぎて重要なことが分かりづらい
攻略対象、難易度は…不明
月を眺める彼女の横顔は、あなたを強く魅了することだろう

美希(ニート)
神に愛された天才少女、だが本人にやる気はない
基本見ただけであらゆる技術を模倣できるが、料理だけは苦手
攻略対象、ある程度までは骨が折れるが、一定以上上がるとぐいぐい来る
彼女を夢中にさせられる、それ以上の喜びはあるでしょうか?

志保(牧場主)
一人でも大丈夫沢志保、弟の陸のために毎日奮闘中
父は蒸発、母は心労で入院、彼女が一体何をした
攻略対象、難易度はかなり難しい、√を進むのはそれ相応の覚悟が必要
置いていかないで、と彼女は言った、それ以降、彼女は人を見なくなった


【北沢牧場 外】

牧場の入り口を出て町へと戻る、先ほどの出来事を思い出しながらゆっくり歩いていると…

「ニャ‐」

P「?」

草むらから声が聞こえ、足を止める

辺りを見渡すと、不自然に置かれた段ボール箱が目に入った

前にこの道を通ったときには、このような箱は無かったはずだ

…確かめた方が良いだろう


「ニャオー」

箱を開けると、小さな猫が嬉しそうに顔を出した

よく見ると、箱の側面には『拾ってください』という文字が書かれている

…場所的に、牧場なら面倒を見てくれるのではと思っての行動だろう

だが、理由はどうあれ人間の身勝手であることに違いはない

意味はないだろうが、猫の頭を撫でながら心の中で謝罪した

猫は特に嫌がる様子もなく、むしろ嬉しそうに撫でられていた


【街中】

「ミャー」

結局、猫をそのままにするわけにもいかず連れてきてしまった

一旦家に置くことも考えたが、律子との約束の時間が迫っているので連れていくことにした

それに、もしかしたら俺よりもこの子を大切にできる飼い主に会えるかもしれない


「ちょっとあなた!その子をどうするつもり!!」


…どうやら、さっそく出会えたようだ


どうしてそんなことが出来るの?、この子の気持ちを考えて…などなど、火を噴くように怒られてしまった

…うん、まだ会って間もないが、この子がとても良い子なのは分かった

であれば、早くこの誤解を解く必要がありそうだ


「…じゃあ、この子を捨てに来たんじゃなくて、拾ってきたの…?」


見知らぬ人物が拾ってくださいと書かれた段ボールに猫を入れて歩いていたのだから、無理もない


「ふ、ふーん…そうだったんだ、なら、いいけど…」


ばつが悪そうに下向く少女

…しかしこの子の容姿、ジュリアが言っていたあの子かもしれない


P「もしかして、君がジュリアの妹さんかな」

「…え?」


昨日引っ越してきたこと、ジュリアと昼に会ったことを簡単に説明した


桃子「はぁ…お姉ちゃんから何を聞いたか知らないけど、余計なことは忘れてね」

桃子「いーい?桃子との約束だから、分かった?」

P「あ、はい」


桃子「…それで、その子はどうするの?」

P「飼うつもりはあるけど、俺より適した人がいるなら任せたいと思ってる」

P「後はこいつがなんて言うかだな」

「ミャー」

桃子「…猫の言葉なんて分かるの?」

P「いや、でも何となく分かるはずだ…な?」

「ミャオー」

P「うんうん、そうかそうか」

桃子「…」


P「さて、そろそろ暗くなってきたな…家まで送ろうか」

桃子「…すぐそこだから、着いてこなくていいよ」

P「そうか?でも万が一ってことも」

桃子「お兄ちゃんが不審者に見られてもいいならいいけど」

P「…気をつけて帰れよ」


考えてみれば、普通に通報案件だった

まぁ、住人のほとんどと知り合いにはなれたから大丈夫だとは思うが…

…それより、お兄ちゃん…か

桃子「なに?桃子にそう呼ばれるのが嫌なの?」

P「いや、そう呼んでもらえる人物に相応しくなれるよう、頑張ろうと思っただけだ」

桃子「…そっ」

小さくそう呟き、桃子は自宅に帰っていった

なぜか嬉しそうにミャアと鳴いた子猫を撫でながら、診療所へと向かった


【診療所】

律子「時間どおりですね…って、どうしたんですその猫」

かくかくしかじかローリングさんかく

律子「ははぁ、捨て猫ねぇ…それで、飼い主探しって訳ですか?」

P「あぁ、誰もいなければ俺が飼うよ」

律子「それは良い心がけですね、まぁうちで飼ってもいいんですけど…」


P「いいのか?」

律子「研究所の方なら常にあの子がいますから、それにちょっとは他のこともさせないと…」

律子「…とにかく、聞いてみないことには分からないので、会いに行きましょうか」

P「妹さん…だったか、仕事帰りなのか?」

律子「いえ、ちょうど起きた頃だと思います」

P「…え?」


【研究所 杏奈の部屋】

律子「杏奈、入るわよ」

杏奈「…」

扉の外から中を伺うと、薄暗い部屋の中で寝そべりながらディスプレイを見つめる少女の後ろ姿が見えた

よく見ると、コントローラーのような物を握っている…何かのゲームだろうか

律子「まったく、するなとは言わないけど食事はちゃんととりなさい」

杏奈「…うん」

そう言いながら画面から目を離そうとはせず、凄まじい速度で指を動かしゲームをプレイしている

この動き…並みのプレイヤーのものではない


律子「それと、今日はお客さんが来てるからこっち向きなさい」

杏奈「…?」

律子「この人はプロデューサー殿、昨日この町に引っ越して来た新しい住人よ」

杏奈「……よろしく、お願いします」

P「こちらこそよろしく」

「ニャー」

杏奈「…?」


P「あぁ、ちょっと前に拾ったんだ」

杏奈「…かわいい」

「ミャー!」

杏奈「お名前は?」

「ミャーオ」

杏奈「そっか、よろしくねミャオ」

「ミャー」


…会話をしているのだろうか

律子に目線で確認すると、その疑問を言葉にしてくれた

律子「杏奈、この子の言葉が分かるの?」

杏奈「…うん、ちょっとだけ」

律子「ほ、本当に?初耳なんだけど…」

杏奈「…言う機会が、無かったから」


彼女が本当に猫と話せるのかどうか、その真偽は分からない

しかし、杏奈が猫から好かれているのは目に見えて分かった

「ニャー」

杏奈「…そうなんだ、一人で…大変だね」

彼女なら、きっとこの子を幸せにしてくれるだろう

そう思い、杏奈にこの子を飼うことを勧めてみた


杏奈「…杏奈が、ミャオを?」

P「ミャオ…というのは、この子の名前かな?」

杏奈「…うん、お母さんにつけてもらったんだって」

P「…そうか、名前があったんだな」

「ミャー」

杏奈「…ミャオはどうしたい?ここに住みたい?」


「…」

ミャオは俺の顔を見つめて、考えているように見えた

もしかして、元の家に戻りたいのだろうか?

あるいは、自由に野良猫として生活したいのかもしれない

…できる限り、この子の要望を叶えてあげたいが…

「ニャー」

杏奈「…ミャオ、プロデューサーさんと一緒にいたいって」

P「…」

P「え?」


【人物紹介⑥】

桃子(初等部学生)
妙に大人びた少女、いいよ桃子そういうの慣れてるからとかは言わない
ジュリアの妹で、母と3人暮らしをしており、父は軍人として戦争に参加している
残念ながら攻略対象外だが、とある√では重要人物となる

杏奈(プロゲーマー)
スイッチ系女子、2重人格というわけではない、どちらも彼女の意思で存在する
律子の義理の妹で、杏奈は母方の連れ子、医者と科学者の子だが仕事はプロゲーマー
攻略対象、養うという“覚悟”があれば何とかなる、準備はいいか?俺はできてる
この世界はゲームである、そう思うことで、私はなんでも出来るようになった

ミャオ(猫)
おやー、ここはどこでしょうか?
むむ、真っ暗で何も見えません…困りました
…誰か歩いてきてるみたいですね、声をかけてみましょう!
優しい人だと、良いですなー


【研究所 実験室】

律子「…よし、特に病気とかはなさそうですね」

律子「外傷もないですし、とりあえず今できることはこれで終わりです」

律子「あとは予防接種の薬がきたら連絡するので、また来て下さい」

P「ありがとう、しかし凄いな…猫の診察もできるなんて」

律子「私しか医者がいませんからね…この町の医療はほとんど私の仕事何ですよ」

P「…そうか、大変だな」


「ミャー…」

P「お疲れ様、終わったみたいだから帰ろうか」

「ニャー」

律子「でも、本当に良いんですか?飼うこと決めちゃって」

P「あぁ、もともと飼うつもりはあったし、それに…杏奈のお墨付きだしな」

律子「…まぁ嘘をつくような子じゃないですけど」

P「そういえば律子も知らなかったんだな、杏奈のこと」


律子「えぇ、あの子余程のことがない限り外に出ませんから」

P「…ご両親は?」

律子「特には、ああ見えてその筋だと有名みたいですからね…」

P「そうか…」

律子「ですから、良ければ顔を出してあげてください」

律子「あの子もきっと喜ぶと思うので」

P「分かった、そうさせてもらうよ」


【街中】

P「…すっかり遅くなったな、夕食どうするか…」

律子と別れ、夜空の月を眺めながら自宅へと向かう

あたりはすっかり暗くなり、ポツポツとある街灯を頼りに夜道を歩いていく

「ミャー」

P「ん?あぁ大丈夫、ミャオのごはんもちゃんとあるからな」

「ニャー!」

…しかし、今日一日で色んなことがあった

明日の町長への報告、どうまとめたものか


P「…?」

物思いにふけていると、黒塗りの車が近づいているのが分かった

念のため少し警戒し、歩道の端に寄って車を見送る

…特に何事もなく、車は一直線に町の奥の方へと走り去っていった

P「…」

「ニャー」

P「ん、あぁ…帰ろうか」

なぜか少しだけ嫌な感じがしたが、今は家に帰ることを優先した


【車内】

「…フン、いつ見ても殺風景な街だ」

独り言なのか、はたまた車の運転手に同意を求めているのか

後部座席に座る男は不機嫌そうに呟いた

車は真っすぐに町の奥へと向かい、町内を走り抜けていく

…途中、こちらを見つめる人影を見たような気がするが、男は気にも止めなかった


【ブラックマート ナムコ支店】

町の外れに佇む一つの店

暗闇に包まれた時間であるにも関わらず、店から放たれるギラギラした光が辺りを照らしている

その店に先ほどの車が近づいていき、裏口で停車した

店長「黒井社長、お久しぶりです」

停車してすぐに小太りの男が車に近づき、声をかける

黒井「首尾は?」

店長「…はい、まずはこちらのデータを御覧下さい」


黒井と呼ばれた男は車から降り、小太りの男と共に店内に入っていく

さらに地下へと続く階段を降りていき、様々なセキュリティを越え奥へ奥へと入っていく

そして、田舎町には不釣り合いな機械に囲まれた部屋へと辿り着いた

黒井「…では、未だに何の対策も出来ていない…と?」

手元の資料を見つめながら、声を低くして小太りの男に問いかける


店長「も、申し訳ありません…ですが、冒険者の呼び込みは上手くいって…」

黒井「そんなことはどうでもいい!すでに収集率は規定値を超えている」

黒井「…貴様の役割はこんな辺境の町で売上を伸ばすことなのか?」

黒井の激昂に小太りの男は深々と頭を下げ謝罪する

黒井「さっさと片を付けろ、でなければ…分かっているな?」

店長「は、はい!全力で当たらせていただきます!」


小太りの男は逃げるように部屋を後にした

その姿を忌々しそうに見送り、黒井は画面に映るグラフを見つめる

緩やかに上昇し続けていたそのグラフの線は、ある日を境に停滞している

何らかの問題、あるいは妨害を受けていることは明白だった

黒井「…」

無機質に響く機械の音が、静寂に包まれる地下室をより不気味に感じさせた


【二日目 終了】

・全住人(現状町内に住む者)への挨拶達成

・攻略対象の√解放、選択肢によって分岐

・基本は親愛度の高い住人が優先されますが、特殊な条件で解放される√もあります


【春の月 3日目】


朝、さっそく昨日の成果を町長に報告し、指示を仰ぐことにした


町長「昨日の挨拶回りで理解したと思うが、この町には問題を抱えている人が何人もいる」

町長「そこで、君には彼らの助けとなってもらいたい…というのは昨日も話したね?」

P「はい」

町長「もちろんそちらも重要なのだが…君にはもう一つ、気を付けてもらいたいことがある」

P「気を付けること…」

町長「うむ…この町の奥に、大きなスーパーマーケットがあることは知っているね?」


…無論だ、内情についてならこの町の誰よりも知っている自負がある


P「…ブラックマート、ですね」

町長「あぁ、嫌なことを思い出させるかもしれないが…」

P「いえ、大丈夫です。続けてください」

町長「…君もよく知っているように、ブラックマートはブラックウェルカンパニーの子会社だ」

町長「多数の商品を揃え、良質で安価な物を売ることで有名な会社…なのだが」

町長「私は、あの店には何か裏があると考えている」

P「…」

町長「というのも、ブラックマートがナムコタウンにわざわざ出店した理由がわからない」

町長「私が言うのも情けない話だが、この町よりも隣の町の方が人口も物流も栄えている」

町長「それに、特別他の町へのアクセスが良いとも言えないのに…だ」


P「その後、何か問題は?」

町長「…私の知る限りでは、住人や冒険者からの評価は悪くないようだね」

町長「一部の住人からは苦情や依頼も寄せられているが…町長の立場からすると難しい問題だよ」

町長「何か悪事の尻尾でも掴めれば、強行策に踏み切れるのだが…」

P「…では、その尻尾を掴むのに探りを入れていけば良いでしょうか?」

町長「いやいや、君にそんな危険なことを任せるつもりはない」

町長「最初に言ったように、気を付けているだけでいいんだ…くれぐれも自分から関わらないようにしてくれ」

P「…」


町長「…実は、ブラックウェルカンパニーの社長とは古い付き合いでね」

町長「やつは目的のためなら手段を選ばない男だ…十分に注意して欲しい」

P「…分かりました」

町長「さて…暗い話をして悪かったね、私から君に伝えることは以上だ」

町長「困ったことがあればいつでも相談してくれ、可能な限り協力しよう」

P「ありがとうございます、ご期待に応えられるよう頑張ります!」

町長「うむ、幸運を祈っているよ!」


【第一章 完】

・ここから分岐、強くてニューゲーム時もここから開始

・攻略対象は12人+α(分岐によって追加)

・続きは需要があれば


【おまけ】

「女子力、女子力が上がってる気がする!」

「恋しますよ!?」

「大丈夫だよ!プロデューサーさんは杏奈が守るから!」

「当面の目標は、この子を目覚めさせることですかね」

「私の中に、別の人格(ココロ)が存在するようです」

「お、お願いします!自分に自信が持てる特訓をしてくれませんか!」

「シズ、悪いことは言わない…『如月千早』を追うのはやめた方がいい」

「私たちに、関わらないでください」

「ロコのパートナーは、プロデューサーしか務まりません!」

「白馬の王子様…なんて、期待しちゃダメですよね」

「努力とか、友達とか、勝ち負けとか…そういうのは疲れるって思うな」

「私は…千早さんのようになりたいんです」

「響…どこですか響…」

「ハッピーエンド…ですな~」

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