キョウカ「お兄ちゃーん! お迎えに来ましたよー! お兄ちゃーん! へんたいふしんしゃさーん!」
サレン「へ、変態っ……!? えっ? なに? うちの前でちっちゃな女の子が『変態不審者』とかなんとか言ってるんだけど!?」
スズメ「あぁ、キョウカちゃんですね。最近、彼とよく遊んでいるみたいで、時々こうしてお迎えに来てくれるんですよ~♪」
サレン「そうなの? あ~、それで『お兄ちゃん』って呼んでたのね。……最初の何回かだけ」
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キョウカ「ふ~しんしゃさ~ん! へ~んたいふ~しんしゃさ~ん!」
キョウカ「……あっ、やっと出てきましたね。もう、呼んだらすぐに出てきてください」
キョウカ「ふふっ。では出発しましょうか。はぐれて迷子になったらたいへんです、手をつないで行きますよ!」
キョウカ「……あなたがはぐれないようにですからね? 私は迷子になんてなりませんから。ほ、ほらっ! いいからはやく手を出してください!」
サレン「……ねぇスズメ? あいつ、おかしなことしてるわけじゃないのよね?」
スズメ「えぇっと……? おかしなこと、ですか?」
サレン「ほ、ほら……変態だとか不審者だとか呼ばれてたじゃない? いかがわしいことなんて……その……してないのよね?」
スズメ「私にも詳しいことはわかりませんけど……あの人に限ってそんなことはないと思いますよ~? 彼、お人好しっていうか、純粋な子供みたいな人ですし♪」
サレン「あたしだってそう思ってるけどさ。異常なまでに無害だし、いつもぼうっとしてるし。でもねぇ……う~ん……」
サレン「ごめんっ! あたし、ちょっとあとをつけて様子を見てくる!」
スズメ「あぁっ、お嬢さま~!?」
サレン「……仲良く手なんか繋いじゃって。こうして見てる分には、仲良しきょうだいって感じで、微笑ましいんだけど……」
サレン「『変態』っていうのがどうしても頭に引っかかっちゃって……今にも暗がりに連れ込むんじゃないかって気になっちゃうのよね……」
サレン「は~あ……。絶対そんなことないってわかってはいるんだけどさ……。あいつのこと、あたしだって信用してるし」
サレン「けど……あいつの場合、自覚なしにいかがわしいことするって可能性も、まぁ無いわけではないのよね」
サレン「……あっ! 言ってるそばから、あんなに密着しちゃって! ん~……でも女の子の方も嫌がるどころかちょっと嬉しそう……?」
サレン「あの二人、どういう関係なのかしら……? スズメの話では、よく二人で遊んでるらしいけど、歳なんて倍くらい離れてるんじゃないかって感じよね」
サレン「あいつの場合、歳は関係なく誰とでも仲良く遊べちゃうんだろうけど……何して遊んでるのかは想像もつかないわね」
サレン「……『遊び』、か」
サレン「へ、変な遊びじゃないわよね……? エッ、エッチな……遊び、とか……」
サレン「いやいやいやっ! ないない、あるわけないわよねっ! 相手はあんなにちっちゃな女の子だし! あはは……」
サレン「…………」
サレン「そういう関係だったらどうしよう……。やっぱり、大人として止めるべき? それとも……二人が真剣だったら応援する……?」
サレン「あ~~~……」
ジュン「うん? サレンちゃん? こんなところでいったい何を──」
サレン「きゃあああぁ!?」
ジュン「うわっ!? す、すまないサレンちゃん! 驚かせるつもりはなかったんだ! 私だ、ジュンだよ!」
サレン「じゅ、ジュンさん……? は~ビックリしたぁ……。心臓が止まるかと思っちゃった……」
サレン「んもう、急に声をかけないでください! ただでさえ物々しい見た目なのに、こんなタイミングで声をかけられたら……」
ジュン「きゅ、急に声をかけたのは悪かったよ……。そんなに驚くとは思ってなかったから……。私としては気さくに声をかけたつもりだったんだけど……」
サレン「そういうのは気さくな格好に着替えてから言ってくださいね。鎧と兜はしょうがないとしても、せめて色くらい明るくするとか」
サレン「あと、『ちゃん』はやめてくださいってば。子供扱いされてるみたい……」
ジュン「うぅ……。相変わらずサレンちゃ……サレンは手厳しいな。……鎧の色、か。うーん……」
サレン「おっと、こうしてる場合じゃなかった! ジュンさん、話は歩きながらしましょ。ジュンさんに時間的な余裕があれば、ですけど」
ジュン「今日は休暇だからね。私は構わないが……おや? あれは少年か? 少年と、ちいさな女の子みたいだが」
ジュン「……君、あとをつけてるな? 念のため理由を聞いてもいいかな。無いとは思うが、もし良からぬことを企んでいるようなら──」
サレン「『変態不審者さん』」
ジュン「うん……?」
サレン「あいつ、あの女の子にそう呼ばれてたのよ。ねっ? 気になるわよね?」
ジュン「……」
ジュン「…………追いかけよう」
サレン「そうこなくっちゃ! ふふっ、ジュンさんが一緒なら万が一の時も対処してくれるだろうし、あたしも安心だわ♪」
キョウカ「あの、お兄ちゃん? ちょっとだけ寄り道してもいいですか?」
キョウカ「よ、用事ってほどのことではないですけど……。たいやきを……ですね……?」
キョウカ「え? おごってくれるんですか? いえ、結構です。お小遣いがありますから」
キョウカ「……お兄ちゃんと一緒に食べたくて貯めたんですよ?」
キョウカ「な、なんでもないですよーだ! はやく並びましょう! 売り切れちゃったらたいへんです!」
ジュン「ふむ。事情はわかった。私としても、少年の素行は気になるところではある。……シロだとは思うけどね」
サレン「でも、尾行は続けるんでしょう?」
ジュン「……うん」
サレン「わかりますよ、あたしもおんなじようなものですし。やっぱり……どうしても、ねぇ……」
ジュン「サレンちゃんは……あー、サレンは──」
サレン「はぁ……もういいですよ、『ちゃん』付けで。ジュンさん、今日は休暇なんですよね?」
サレン「【王宮騎士団(NIGHTMARE)】の団長じゃなくって、ジュンさんとして接してくれるっていうなら……ちょっとくらい子供扱いされるのも有りかな~って♪」
ジュン「サレンちゃん……。ああ、今日は堅苦しいのは無しにしよう。無論、子供扱いはしないさ。君はもう立派な女性だからね」
サレン「え~? ジュンさんから見たら、あたしなんてまだまだ子供でしょう? だから、ね? あたしもたい焼き食べたいな~?」
ジュン「た、たい焼きっ? まったく、君は……はぁ。わかったよ。買ってくるからサレンちゃんはここで少年たちを見張っていてくれ」
サレン「なに言ってるのよ? 一緒に買いに行くに決まってるじゃない。そういうのも含めて楽しいんだから♪ あははっ」
キョウカ「もうっ、ほっぺたにあんこが付いていますよ? 取ってあげますから屈んでください」
キョウカ「屈んでくださいってばー! もー! とーどーかーなーいー!」
キョウカ「な、なんですか? 私の顔に何か付いてますかっ? や、やめてください! 触らなっ、あっ、ふあっ!?」
キョウカ「……むー。クリームが付いてるなら初めから言ってくださいっ。ちょっと身構えちゃったじゃないですか」
キョウカ「当然、あなたがへんたいさんだからです! そんなあなたが急に触ろうとしてきたら、身構えるに決まっています!」
キョウカ「え? 私がお兄ちゃんに触るのはいいのか、ですか? 逆に聞きますけど、どうしてダメなんですか?」
キョウカ「お兄ちゃんが私に触るのは犯罪です。私がお兄ちゃんに触るのは犯罪ではありません」
キョウカ「ふふっ。私はこうやって、あなたのほっぺをツンツン突っついても許されるんです♪」
キョウカ「あなたはダメですよ? もし無断で触ったら防犯魔石を鳴らしますからね!」
キョウカ「んぇぇ……やめへくらはい~……」
サレン「むすーっ……」
ジュン「ど、どうして不機嫌なのかな……? あんこもクリームも、サレンちゃんが食べていいんだよ?」
サレン「は~い、ジュンさ~ん♪ あーん♪」
ジュン「だから私は食べられないって。人前で兜を取るわけにはいかないんだ」
サレン「むすーっ……」
ジュン「あっ、少年たちが角を曲がった。あの道の先はたしか……森しかないはずだが」
サレン「森? ……森ぃ!? ちょ、ちょっとちょっと! そんな場所に二人で行くなんて、いったい何が目的なわけ~!?」
ジュン「それはまだわからない。目的を確かめるためにも、見失わないように慎重にあとをつけよう」
サレン「……」
ジュン「サレンちゃん?」
サレン「もし、よ? もし、あいつがあの女の子に手を出してたら……どうする?」
ジュン「無論、少年には然るべき処罰を受けてもらう。悪い子にはお仕置きが必要だ。甘やかしたところで、彼らのためにならない」
サレン「……うん」
ジュン「でもね、サレンちゃん。少年はそんな非道を行う悪い人間ではないよ。彼は良い子だ。私が保証する」
サレン「うんっ」
ジュン「大丈夫そうだね。だが、もし気分が悪くなったりしたら。あとのことは私に任せて、サレンちゃんはおうちに帰るといい」
サレン「誰が帰るもんですか。あいつはあたしたちの扶養家族よ? それに、大切な幼馴染で……かけがえのない存在なの」
ジュン「少年のことが好きなんだ?」
サレン「ばっ……!? ちちち、違うわよ!? あいつは家族みたいなもので、だからそのっ……!」
サレン「……いいけどね。好きなのは、たしかだもん。ジュンさんの思ってる『好き』とは違うと思うけど」
ジュン「私も好きだよ。少年のこと」
サレン「えっ!?」
ジュン「ふふ。サレンちゃんの『好き』と同じ好きだ。安心してほしい」
サレン「えーーーっ!?」
キョウカ「やっと森に着きましたね。毎回のことですけれど、本当にありがとうございます、お兄ちゃん」
キョウカ「最近はずーっと練習に付き合ってもらっちゃって……。おかげで、へたっぴだった私も、ちょっとは上手になったと思うんです」
キョウカ「おおきな声を出すから、やっぱりこういうひと気のない場所じゃないと恥ずかしいですが……」
キョウカ「あなたはまたそうやって、たくさんの人に見てもらいたいって言いますけど! そんなの恥ずかしすぎて無理ですからねっ!」
キョウカ「あなただから……お兄ちゃんだから、恥ずかしい姿を見せてもいいかなって思えるんですからね?」
サレン「……泣きそう」
ジュン「まあまあ、落ち着いてサレンちゃん。私はなんとなく事情が掴めてきたよ」
サレン「そう……? キスしてるところなんて見ちゃったら、あたし一生トラウマになっちゃうわよ……」
ジュン「……もう少し行った先に、少しひらけた場所があったはずだ。先回りして様子を見よう」
サレン「森の奥にある、ひらけた馬車で若い男女が二人……。あぁ……考えただけでやんなっちゃう……」
ジュン「変な考えをするからだろうに。ほら、音を立てないように移動しよう。足元に気をつけて。ふらつくようなら手を貸すけど」
サレン「……せっかくだから抱えていってよ。どうせ誰も見てないんだし、お姫様抱っこでさ♪」
ジュン「サレンちゃんがそういうなら……よいしょっと。うん、軽いな」
サレン「~~~~ッ……!!」
ジュン「わっとと。暴れたら危ない……さ、サレンちゃんっ、兜を取らないでっ……!」
キョウカ「……さて。いつもの場所に着きました。お兄ちゃん、疲れちゃっていませんか?」
キョウカ「そうですか。じゃ、じゃあさっそく……初めてもいいですか?」
ジュン「やはりこの場所で始めるみたいだ。……サレンちゃん? 聞いてる?」
サレン「……聞いてますよ」
ジュン「うぅ……。また距離が遠く……」
キョウカ「お兄ちゃんっ、今日もよろしくお願いします!」
キョウカ「すー……はー……。き、緊張します……けどっ……!」
サレン「は、始まるみたい……! ぬ、脱ぐのかしらっ!? やっぱり脱ぐのよねっ!?」
ジュン「本当は期待しているのか……?」
キョウカ「……ではっ、歌います! 聴いてくださいっ! 『リトルアドベンチャー』!」
キョウカ「~~~♪」
サレン「へっ……? う、歌……?」
ジュン「今度、町の広場でイベントがあるんだ」
ジュン「その中に、舞台で歌を披露してもらう企画もある。きっと彼女はそこで舞台に立つのだろう」
サレン「……そういえば、アヤネが張り切ってたわね。連日、家の中がステージになってるわ」
サレン「クルミと一緒に出たかったみたいだけど、恥ずかしがり屋のクルミは辞退したみたい」
ジュン「サレンちゃんが歌っているところも見てみたかったな」
サレン「あははっ。冗談言わないでよ。ジュンさんくらいのものよ? あたしの歌が聴きたい~なんて言うの」
ジュン「そんなことはないさ。サレンちゃんは、もう少し自分の魅力を自覚した方がいい」
サレン「……ばか」
ジュン「さて。少年の疑いも晴れたわけだし、私たちはもう帰ろうか。邪魔をしてしまっても悪い」
サレン「ま、待って待って! 歌の練習の後だって、エッチなことをするかもしれないじゃない?」
ジュン「サレンちゃん……さては、少し面白がっているだろう?」
サレン「……そんなことないわよ?」
ジュン「こら。目をそらすな」
サレン「ほらほら、こんな森の中だと魔物に襲われる可能性だってあるでしょ? もしもの時のために、頼りになる大人が近くにいるべきだと思わない?」
ジュン「うむ……。まったく、サレンちゃんには敵わないな。仕方ない、もう少しだけ見守るとしよう。ただし、気取られないように」
サレン「は~い♪」
キョウカ「……ふぅ」
キョウカ「ど、どうでしたか……? ちゃんと歌えていましたか……?」
キョウカ「ふふ。そんなに拍手されると照れちゃいますよ。こ、これなら……人前で歌っても恥ずかしくないでしょうか?」
キョウカ「……アイドルみたいだった? す、すごくかわいい……? そ、そんなこと……! でも……お兄ちゃんがそう言うなら……ふふっ♪」
キョウカ「お兄ちゃんのおかげで、ちょっとだけ……自信がつきました。もう練習はおしまいにします」
キョウカ「それで、ですね……? あの、その、えっと……」
キョウカ「頑張ったご褒美に……な、ナデナデしてもらえませんか……?」
キョウカ「え? 触るのは犯罪? そ、そんなの、私が許可したらいいんです! ダメなら……いいですけど……」
キョウカ「ふわ……んぅ……えへへ♪」
キョウカ「……頑張ってよかったぁ♪」
キョウカ「い、いえ、本番はまだ先でした! 頑張ったからこそ、最後まで気を抜かないようにしないと!」
魔物「──グオオオオオッ!」
キョウカ「……えっ? ま、魔物っ!?」
キョウカ「お、お兄ちゃんを守らないと……! あ……腰が……抜けちゃった……」
魔物「──グオオオオオッ!」
キョウカ「お兄ちゃんっ!? 私のことは庇わなくていいですから! お兄ちゃんだけでも──」
サレン「はあっ!」
ジュン「ふんっ!」
魔物「──ギャオオオオオッ!」
キョウカ「ふえ……? な、なに……? 助かったの……?」
サレン「大丈夫? 二人とも、怪我はない?」
キョウカ「は、はい……。ありがとうございます……」
ジュン「立てるかな。さあ、掴まって」
キョウカ「ひぃっ……!? ふ、ふしんしゃさんです……! こわい……」
ジュン「え゛っ……」
サレン「ぷっ……あははっ! ほらほら、ジュンさんは怖いって。さっ、あたしが代わりに起こしてあげる。おいでおいで~♪」
キョウカ「グスッ……うぇぇん……! お兄ちゃぁん……!」
サレン「……あらら。あいつのとこに一直線か~。ほんとに仲良しなのねぇ、嫉妬しちゃう」
ジュン「少年も、どうやら怪我はないみたいだね。やれやれ、まさか本当に魔物が襲いかかってくるとは」
キョウカ「……あの。ありがとうございます。助けてくれて……」
サレン「んー……。あのね、ちょ~っとお話ししなくちゃいけないことがあるんだけど、聞いてくれる?」
キョウカ「……???」
ジュン(尾行のことを正直に話すつもりか。サレンちゃんらしいというか……ふふ)
サレン「──と、いうわけで……」
キョウカ「ず、ずっとあとをつけてたんですか!? へ、へんたいです! お兄ちゃんに負けないぐらいのへんたいふしんしゃさんですっ!」
サレン「返す言葉もないわ……。ごめんなさい、キョウカちゃん。あんたも、疑っちゃってごめんね?」
ジュン「私も共犯だ。非礼を詫びさせてほしい。二人とも、本当にすまなかった。この通りだ」
キョウカ「……謝るときは兜を取ってください」
ジュン「う、む……。困ったな……。しょ、少年……」
キョウカ「え? そちらのこわい人、おうちの決まりで顔を見せちゃいけないんですか? ……そういうことでしたら、そのままでいいですが」
ジュン「ほっ……」
キョウカ「それで、その……へんたいさんと、ふしんしゃさんは、お兄ちゃんとどういう関係なんですか?」
ジュン「不審者さん……」
サレン「え? あたし、変態さん?」
キョウカ「……ふむふむ。へんたいさんはお兄ちゃんのママで、ふしんしゃさんは正義の味方なんですか? ちょっと意味がわかりません……」
サレン「誰がママよ! はぁ……あたしたち二人とも、そいつとは友人関係よ。……あたしはそいつを養ってたりもするけど」
キョウカ「お、お兄ちゃん……? まさか、ヒモなんですか……?」
サレン「違う違う! 生活に困ってたそいつと、一緒にいたちっちゃい女の子を、二人まとめてあたしの経営する孤児院で保護してるのよ! それだけ!」
キョウカ「お姉さんに援助してもらいながら、ちいさな女の子と暮らしているんですか……? さ、最低です……。やっぱりへんたいふしんしゃさんなんですね……」
ジュン「不審者さん……」
サレン「ジュンさんも落ち込んでないで誤解を解いてってば~!」
キョウカ「ま、まぁいいでしょう……。助けてもらったのは本当に感謝していますし、お兄ちゃんのおともだちなら……信用します」
サレン「あ~、よかったぁ……。あっ、そうそう。キョウカちゃんの歌、すっごく上手だったわよ♪」
キョウカ「うぅ、やっぱりあれも聞かれていたんですね……。で、でも、お兄ちゃんに褒めてもらったあとだから……恥ずかしいのもちょっとだけです……♪」
ジュン「うん。恥ずかしがる必要なんてないとも。イベント当日も、さっきの調子で歌えば大成功間違いなしだろう」
キョウカ「そ、そんなに褒められるとやっぱり恥ずかしいですよーっ! もぉーっ!」
サレン「あはは♪ かわいらしい子じゃない、あんたも隅に置けないわね~?」
ジュン「さあ。雑談は程々にして、ひとまず森を抜けるとしよう。魔物の血の匂いにひかれて、他の魔物が寄ってくるかもしれない」
キョウカ「そうですね。いつもは魔物なんて出なかったから……びっくりしちゃいました……」
キョウカ「わっ、わぁっ!? お、お兄ちゃん!? もう自分で歩けますから! おんぶしなくても大丈夫ですから~!」
サレン「……」
ジュン「まだ疑ってるのかな? サレンちゃん、少年は──」
サレン「ううん、疑ってはいないの。ただね……あたしもああやって、女の子扱いされたいなぁって」
ジュン「……そっか。サレンちゃんも、やっぱり大人になったんだね。よしよし」
サレン「あ痛たたたっ!? ちょっとジュンさん! 鎧を着たまま撫でないでよ! ゴリゴリ擦れてハゲちゃうってば!」
キョウカ「それでは、お兄ちゃん、サレンさん、さようなら」
ジュン「私はこの子をおうちまで送っていくよ」
サレン「うん、ありがとうジュンさん。二人とも、またね♪」
サレン「キョウカちゃん。今度孤児院まで来た時は、ぜひ中まで上がってちょうだいね。子供たちと一緒に歓迎するわ」
キョウカ「……おともだちも一緒でいいですか? 二人とも、とっても良い子なんです」
サレン「ええ、もちろん。何人でも連れてきていいから、遠慮しないで遊びに来てね」
キョウカ「ふふっ♪ ミミとミソギもいたら、きっともっと楽しくなるだろうな♪」
ジュン「……少年、少年」
ジュン「これを君に。……これが何か? ただのお土産だよ。あとで私から受け取ったことは伏せて、サレンちゃんに渡してあげてほしい」
サレン「ジュンさん? 何してるの~? キョウカちゃん、はやく送ってあげないと門限になっちゃうわよ?」
ジュン「ああ、うん。……では少年、またね」
キョウカ「あの、ジュンさん。私は手を繋がなくてはいけないほど子供ではないので。いえ、子供ですけど……そこまで子供ではないという話で」
ジュン「そ、そうか……。うん……」
サレン「は~、なんだか変に疲れちゃった。あんたのせいで神経使ったからよ?」
サレン「なぁんてね。あたしが勝手に気を揉んでただけなんだけどね。つい動転しちゃってさ」
サレン「なんで、って……。あんたがあんなちっちゃな女の子に手ぇ出してたらかなりショックだもん」
サレン「ちっちゃな女の子じゃなくてもショックだけど……って、あんたその顔。あたしの言ってることの意味、ちっともわかってないんじゃない?」
サレン「あ~……そりゃそうよね……。あんたは記憶喪失で、最低限のことしかわからないんだもん。そんな発想、最初から少しもないのよね」
サレン「心配してたあたしがバカみたいじゃない、まったくもう。いいけどさ、これからは変に不安になることもなくなるってことだしね」
サレン「……ねえ? あたしとは手ぇ繋いでくれないの? あたし、帰る途中で迷子になっちゃうかもよ?」
サレン「へっ? ずっとあたしのことを見てるから、絶対にはぐれない? ……な、なによもう。それじゃあ二人一緒に迷っちゃうじゃない」
サレン「ふふ。大丈夫よ。あんたがあたしを見ててくれるって言うんなら、あたしはあんたが迷わないように手を引いてあげる。二人でおうちに帰りましょ」
サレン「あら? これじゃ、やっぱり手を繋ぐことになっちゃうわね。ねっ、どうする? 繋いじゃう?」
サレン「んひっ……!?」
サレン「う、ううんっ、なんでもないっ! ほんとに手を繋ぐもんだから、ちょっと驚いただけ! 今のは気にしないで!」
サレン「それより……あはは。あんたの手、いつのまにか結構頼もしくなってるじゃない? これなら、ええ、安心するわね」
サレン「って。あんた、そっちの手に持ってる袋はなあに? え? わからないの? なんでそんなもの持ってんのよ……」
サレン「どれどれ……? あっ、これたい焼きじゃない。ひぃ、ふぅ、みぃ……もしかして【サレンディア救護院】全員分? これ、みんなへのお土産に買ってくれたの?」
サレン「んん? ジュンさんに内緒だって渡されたの? ……はは~ん、そういうこと」
サレン「……ったくもう。ジュンさんったら、余計なお節介焼いてくれちゃって」
サレン「ま、せっかくのお節介だし、ありがたく受け取っておきましょうか。物も、気持ちも、ね。……ねえ──」
サレン「ステキなプレゼント、ありがとね。今度、何かお礼をさせてくれる? そうね……二人でお出かけでもしてさ、いろいろ見て回るっていうのはどうかしら?」
サレン「……うん。約束っ♪」
サレン「二人で出かけるなら、その分子供たちにもサービスしないとね。今度やるっていうイベントのときに、奮発してちょっとくらい贅沢させてあげようかしら」
サレン「えっ? コッコロもステージで歌うの? じゃあ……みんなで応援して、イベントも見て回って、帰ったら打ち上げパーティーね♪」
サレン「さっそくスズメと打ち合わせしなくっちゃ! よぉ~し、忙しくなるわよ~!」
おしまい
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