ありす「真逆の心」 (3)

涙はもう少しだけ我慢しようと思った。
クリスマスの街は、まるで楽しそうに明るく照らされていた。
全く……。
それは私に段々と近づいてくる。
吐く息は白かった。

「…………」

浮かれた騒音。賑わう雑多。そして煩い足音。
耳を塞いでいたって聞こえてしまう。
(もうお終いなんだ、全部)
ーーはっ

私は苛立って、とうとう言ってしまったのだ。
にやけ顔のあなたに。
他の子のプロデュースもあるからとか言って、鼻の下を伸ばしているあなたに。

「手短に……はい。
いらいらするんですよ。
ずるい。狡猾というのか、いや。
気持ち悪いですね。
にやにやして、私を馬鹿にしてるんです?
心底、軽蔑します。
のらくくらり、今でやって来たつもりでしょうが。
クズ、とここで改めて言わせていただきます。
やっと言えました。ええ言えました。
ぎこちない私を演じるのもいい加減疲れました。
まぁ、なので、もう私に話し掛けないで下さい。

クリスマスが終わるまでにはこの事務所を辞めます。
早い方がいいでしょう、こういう事を言うのは」

止められなかった。つい、言ってしまった。
目の前が真っ暗になった気がした。

いつも、あの日だってそうだ。
いつもあなたが悪い。
思わせぶりな態度はもういらない。
他の子とのお仕事はもうとっくに終わっているはずなのに。

これでお終い。
さようなら私の小さな恋心。
雪が、降り始めた。

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