【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編 (364)

※注意

このスレは
【ダンガンロンパ】【安価】モノクマ「コロシアイ研修旅行だよ!」【オリキャラ】
【ダンガンロンパ】【安価】モノクマ「コロシアイ研修旅行だよ!」【オリキャラ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433163240/)
の主人公を変更した安価なしリメイクです。

・ダンガンロンパシリーズ、過去作のネタバレがあります

・舞台はジャバウォック島ですが、建物の配置やある施設などが変わります

・オリキャラ中心になりますのでご注意ください
・過去スレ
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469192282/)

注意は以上です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1565729618

・研修旅行名簿

男子

・赤穂政城(アコウ マサキ)
才能…【超高校級のヒーロー】
身長…177cm
料理の腕…60→25
掃除の腕…55→20

・如月怜輝(キサラギ レイキ)
才能…【超高校級のヒーロー】
身長…182cm
料理の腕…9
掃除の腕…15
赤穂への印象【……僕は、あなたが】

・苗木 誠(ナワキ セイ)
才能…【超高校級の幸運】
身長…170cm
料理の腕…60
掃除の腕…60
赤穂への印象【さっさと死んでね寄生虫!】

・薄井千里(ウスイ チサト)
才能…【超高校級のサイキッカー】
身長…163cm
料理の腕…75
掃除の腕…95
赤穂への印象【……妹、大切にな】

・佐場木 半次(サバキ ハンジ)
才能【超高校級の裁判官】
身長…186cm
料理の腕…35
掃除の腕…56
赤穂への印象【……お前はヒーローだった、間違いなくな】

・グレゴリー・アストラル三世
才能【超高校級の設計士】
身長…190cm
料理の腕…45
掃除の腕…61
赤穂への印象【辛い役目を負わせて、ごめんなさい】

・道掛 走也(ミチカケ ソウヤ)
才能…【超高校級のサイクリスト】
身長…192cm
料理の腕…52
掃除の腕…32
赤穂への印象【なんでだよ!なんで……!】

・鞍馬 類(クラマ ルイ)
才能…【超高校級の???】
身長…178cm
料理の腕…90
掃除の腕…90
赤穂への印象【御影さんを死なせないでください】

・女子

・六山 百夏(ムヤマ モモカ)
才能…【超高校級のデバッガー】
身長…160cm
スリーサイズ…B88 W60 H90
料理の腕…2
掃除の腕…60
赤穂への印象【ゲームだとよくあるけど……やっぱり辛いなぁ】

・四方院 奏(シホウイン カナデ)
才能…【超高校級のフルート奏者】
身長…165cm
スリーサイズ…B84 W54 H79
料理の腕…95
掃除の腕…93
赤穂への印象【凪と向こうで見てますね……ふふっ】

・静音 凪(シズネ ナギ)
才能【超高校級の指揮者】
身長…150cm
スリーサイズ…B73 W53 H76
料理の腕…20
掃除の腕…10
赤穂への印象【いいやつだな!奏と話すのを許す!】

・兵頭 千(ヒョウトウ セン)
才能…【超高校級の選挙管理委員】
身長…169cm
スリーサイズ…B85 W58 H87
料理の腕…97
掃除の腕…59
赤穂への印象【……それしか、なかったのでしょうが】

・遠見 メメ(トオミ ――)
才能…【超高校級の観測手】
身長…167cm
スリーサイズ…B78 W58 H80
料理の腕…47
掃除の腕…13
赤穂への印象【後は任せたでありますよ!】

・津浦 琴羽(ツウラ コトハ)
才能…【超高校級の通訳】
身長…171cm
スリーサイズ…B83 W56 H80
料理の腕…57
掃除の腕…38
赤穂への印象【なんであなたが……】

・土橋 美姫(ツチハシ ミキ)
才能…【超高校級の土木作業員】
身長…174cm
スリーサイズ…B95 W57 H88
料理の腕…85
掃除の腕…80
赤穂への印象【答え、聞きたかったなぁ……】

・ジェニー・クラヴィッツ
才能…【超高校級の道化師】
身長…146cm
スリーサイズ…B75 W52 H74
料理の腕…40
掃除の腕…30
赤穂への印象【生きてください……】

・御影 牡丹(ミカゲ ボタン)
才能…【超高校級の???】
身長…158cm
スリーサイズ…B81 W56 H82
料理の腕…0
掃除の腕…0
赤穂への印象【兄さん……私を1人にしちゃ嫌だよ……】

【御影のコテージ】

御影「……」

あれから何日経ったっけ……

御影「……」

別に関係ないか……

御影「ゲホッ、ゴホッ!」

ご飯を食べる気力も、薬を飲む気力も、ない……

私ここで死ぬのかな……

御影「ああ……」


それも、いいかもね……

御影「兄さん……」







CHAPT.5【哀れなる罪人に裁きを】(非)日常編






【ホテルミライ・レストラン】

津浦「ふうっ……」

あの悪夢のような学級裁判から2日経ちました。

Mr.赤穂の死……それがもたらした絶望はあまりにも大きく。

ワタシ達は新しく開いた島さえ、調べられていません。

道掛「くそっ!やっぱり駄目だ!」

津浦「Mr.道掛……やはりMs.御影は?」

道掛「コテージから出てきてくんねえ……咳は聞こえるしこのままじゃ、牡丹ちゃん死んじまう……!」

津浦「……」

六山「おはよう」

津浦「Ms.六山、おはようございます」

道掛「百夏ちゃん今日もゲームしてねえんだな」

今まで、それこそ学級裁判中ですらゲームをしていたMs.六山もあの一件から一度もゲームをしていません。

六山「さすがのわたしもそんな気分じゃないよ……」

道掛「……だよな、悪い」

兵頭「……皆さん、大なり小なり参っていますね」

道掛「千ちゃん、如月はどうだった?」

兵頭「見つかりません。コテージにも帰った様子はありませんし……」

Mr.如月は行方不明、Ms.御影はコテージから出てこず、ワタシ達は何も出来ていない状況。

そんな状況下でも。

佐場木「……」

Mr.佐場木は抗っていました。

道掛「佐場木!」

佐場木「第5の島の調査を終えた。とはいえ、脱出に繋がるものはなかったに等しいが」

Mr.佐場木は今までのように島の調査や見回りを続けているようです。

それはきっとMs.遠見の遺志を無駄にしないため……手首に巻かれたリボンがそれを証明するように揺れていました。

兵頭「袋小路ですね、何もかもが」

道掛「モノクマの野郎も絶望した姿を観察したいから何もしないとか言いやがって!」

モノクマはあの学級裁判から放送以外に全く姿を見せません。

何もしなくてもワタシ達が苦しみ、絶望する……そう思っているのでしょう。

六山「でもどうするの……如月くんはどこにいるかわかんないし、このままだと御影さん衰弱死しちゃうよ」

津浦「せめて出てきてくれれば……」

兵頭「それなんですが……1つ案はあります」

道掛「マジか!?」

兵頭「しかし逆効果になる恐れもあります……だから踏みきれません」

佐場木「……話してみろ。どのみち動かなければ、始まらん」

兵頭「……わかりました」

【御影のコテージ】

御影「……」

目が霞んできた……もうすぐ兄さんに会える……

御影「……」

私、結局兄さんに何をしてあげられたんだろう。

兄さんは私を気にかけてくれてた、だけど私は素直にならずに時間を無駄にして……

御影「っ……」

涙なんてとっくに枯れたはずなのに絞り出すように溢れてくる。

御影「兄さん……」

コツ

御影「えっ……?」

今の、音。

コツ……コツ……

木を叩くこの音は……

御影「兄さんの、杖の音だ……」

もしかして迎えに来てくれたの?

それとも幻聴?

御影「……」

ううん、そんなのどうでもいい……

幻覚でも、幽霊でも、兄さんに会えるかもしれない。

それだけが今の私にとって大切な事。

フラフラになった身体で音の鳴る方向に向かって歩く。

そしてコテージの扉を掴んで、開けて――







御影「うあっ!?」

私は、強い力で押さえつけられた。






佐場木「出てきたぞ!点滴と水を!」

津浦「はい!」

御影「っ、っ!」

いきなりの事にわけもわからず暴れるけど、身体が全く動かない。

道掛「暴れないでくれ牡丹ちゃん……!」

六山「薬あったよ!」

佐場木「貸せ、すぐに飲ませる!」

口をこじ開けられて、薬と水を流し込まれる。

その時私は、見た。

兵頭「……」

兄さんの杖を持つ兵頭……

ああ、そういう事。

私を、嵌めたんだね。

御影「何の、つもり……」

兵頭「御影さんを外に出すにはこれが確実だろうと思いまして。栄養失調で判断力がさらに低下しているでしょうし」

御影「そんな事を聞きたいんじゃない……!」

よりによって兄さんの杖を利用した。

許せない、許せるわけない。

御影「こんな、兄さんの死を――」







兵頭「赤穂さんを侮辱しているのはあなたでしょう?」

御影「は?」






私が、兄さんを侮辱……?

兵頭「あなたがこのまま栄養失調で死んだとしましょう。そうなったらあなたを庇った赤穂さんの死が完全に無意味なものになります」

御影「そんな事!」

兵頭「あるんですよ。彼は最期にあなたに何を望みました?後を追って死ぬ事ですか?」

御影「それは……」

違う。

兄さんが最期に私に望んだのは……


赤穂『――守れて、よかった。お前は、生きて、くれ……そして、幸せになって…………』


わかってる。

そんなのわかってるけど……!

御影「じゃあどうしろって言うの!?」

私にとって兄さんと過ごす時間が何よりも幸せだったのに!

その兄さんがいなくなってどう幸せになればいいの!?

こんな、こんな病気だらけの身体で、どうやって……

兵頭「それはわかりません……幸せになる方法は人それぞれですし、一生かかっても見つけられない人も私はたくさん見てきました」

御影「……」

兵頭「でも御影さん」

兵頭「あなたは死んではいけません」

御影「私がこんな才能だから……?」

兵頭「違います」

兵頭「それが、赤穂さんが自分の命を懸けても守りたかったものだからです」

佐場木「人はいずれ死ぬ。急いで追わなければならないというものでもあるまい」

津浦「……気持ちがわかるとは言えません。でもワタシは、彼に救われた命を捨てたくないと思います」

道掛「牡丹ちゃん死んだら、俺泣くぞ!だから生きてくれよ!」

六山「それにこんな形で死んだらモノクマ喜ぶよ?それでいいの?」

御影「……」

兵頭「それに御影さん」

兵頭「私達もあなたに死んでほしくありません。赤穂さんには遠く及ばないでしょうが……それでは、不足ですか?」

御影「……」

兄さん。

兄さんは前に、みんなと仲良くしろって言ってたよね?

御影「っ、ううっ」

私、兄さんの願い叶えられたのかな?

御影「うわあああああっ……!」

私……生きていて、いいのかな?

『当たり前だろ』

……うん、兄さんならきっとそう言うよね。

兄さん……私、もう少しだけ、頑張ってみるよ。

きっと、それが……赤穂牡丹のやるべき事だから。

【御影のコテージ】

それから私はみんなに、一旦戻ってもらった。

1人になって……したい事があったから。

御影「……よし」

【ホテルミライ・レストラン】

御影「……お待たせ」

道掛「おっ、牡丹ちゃん来……なあっ!?」

津浦「Ms.御影、その髪は……」

みんな驚いてる……当たり前か。

今まで腰までだった髪、バッサリ切っちゃったもんね。

佐場木「1つの決意表明か」

六山「うん、そういうイベントもいいんじゃないかな」

御影「ちょっと慣れないけどね」

兵頭「お似合いですよ御影さん」

御影「……」

無言で兵頭の前に立つ。

兵頭には言わないといけない事があるから。

兵頭「御影さん?」

御影「牡丹」

兵頭「はい?」

御影「牡丹って呼んでよ……私も千って呼ぶから」

兵頭「……」

やっぱり、いきなり過ぎた?

友達作りなんて、まともにしてなかったから……

兵頭「……ふふっ、わかりました。牡丹さん」

御影「あっ」

佐場木「……御影も戻ってきたところで今後について話し合うぞ」

道掛「おう!」

津浦「まだ問題は山積みですからね」

六山「如月くんの事とかね……」

兵頭「そうですね。ほら、座ってください牡丹さん」

御影「うん……ありがとう千」







【第1の島・歩道】

如月「…………」






今回はここまで。

御影「じゃあ佐場木以外第5の島にはまだ行ってないんだね」

道掛「ぶっちゃけそれどころじゃなかったしな!」

御影「……私のせいだよね、ごめん」

津浦「Mr.道掛……」

道掛「えっ、いや俺そんなつもりじゃ!?」

佐場木「そこまでにしておけ。俺の調査では脱出に繋がる物は見つからなかったが……視点を変えれば見つかる物もあるかもしれない」

六山「じゃあわたし達も……行こっか?」カチカチ

兵頭「またゲームを再開するんですね……」

六山「御影さんの復帰祝い……かな?」

御影「まあ、ゲームしてない六山なんて縁起悪いからその方がいいよ」

六山「ふふん、褒められたよ」

津浦「褒めた……?」

道掛「とにかく行ってみようぜ!もしかしたら如月もいるかもしんねえし!」

兵頭「そうですね……」

そうして私達は、第5の島に行く事になった……

【第5の島・スプリングアイランド】

御影「わあ……」

橋を渡った私達を出迎えたのはピンクの花びら。

桜の花びらが風に舞って……こんな形じゃなければ感動していたかもしれないね。

道掛「つうか……ずっと思ってたけど相変わらず季節感滅茶苦茶だよなこの島」

津浦「こんな距離でここまで明確に四季が分かれる島というのは、確かに珍しいですね」

六山「珍しいというかあり得るの?ゲームの中じゃないんだよねここ」

佐場木「……異常過ぎて麻痺していたが、この環境自体が何らかの手がかりになるか」

兵頭「まずは島を調べましょう。佐場木さん、案内をお願いします」

調べたっていう佐場木の先導で私達は歩き出す。

何でもいいから見つかればいいんだけど……

【モノクマ量産工場】

御影「ここって……」

第4の島にあったモノクマ量産工場。

それと全く変わらない建物がここにもあった。

六山「モノクマの言ってた量産工場のスペアだね……」

道掛「こんなもんがあったからメメちゃんも赤穂も……」

兵頭「中はどういった感じなんですか佐場木さん」

佐場木「ほとんど変わらない。ただ1つ……自爆スイッチが消えた事以外はな」

津浦「同じ轍は踏まない、というわけですか」

その後念のために調べてみたけど……中はやっぱり第4の島のと変わらなかった。

御影「……」

これがあったんだからあの時モノクマがあんなに焦ってたのも演技だったんだろうね……

御影「……最悪」

本当に、最悪だよ。

【神社】

御影「ここは、神社?」

道掛「こんなもんまであんのか」

鳥居をくぐった敷地の中には立派な建物。

六山「うーん、よしここはこれの出番かな」

津浦「それは?」

六山「メダルだよ。お賽銭代わりになるかなって」

佐場木「神頼みか……こんな状況ではなんでもするべきか」

六山からメダルを受け取った私達は並んで賽銭箱にそれを放り投げる。

御影「……」

どうかもう誰も死なずに済みますように。

みんなでこの島から脱出出来ますように。

きっとみんなも同じ願い事だろうけど、人数が増えればそれだけかなう確率も上がるかな?

道掛「よし!しっかりと願ったぜ!もう誰も死なずに済みますようにってな!」

兵頭「言ってしまうとかなわないらしいですが」

道掛「……今の聞かなかった事にしてくれ!!」

【武器庫】

御影「これ……!」

そこにあったのは銃やらナイフやら爆弾やら……戦車とか戦闘機もある。

佐場木「ここは武器庫……というにはまた違う物もあるが」

道掛「この戦車ってあの時見たのと似てんな」

津浦「Ms.静音とMs.六山の時のですか……あれからかなり経ちました」

六山「……」ブルッ

兵頭「大丈夫ですか?」

六山「うん、まあ……」

御影「ピコピコハンマー……なんでこんなものまであるんだろう」

なんかとにかく色んな物を詰め込んだって感じ……

【???】

道掛「なんだここ?」

次に私達が来たのは真っ黒な建物。

看板とかもないし……なんなんだろ。

佐場木「ここは入らない方がいい」

兵頭「佐場木さんはここがいったいどういう場所かご存じなんですか?」

佐場木「ああ、その上でもう一度言う。ここはやめておけ」

六山「せめて何があるかぐらいは教えてほしいなぁ」

津浦「Ms.六山の言葉に同意します。ろくなものでないのはわかりますが……」

佐場木「……死体だ」

道掛「はっ!?死体って誰のだよ!?」

佐場木「わからん。少なくとも百人以上は死んでいたようだからな」

御影「それってもしかして……ここの」

兵頭「いたはずの職員の謎がようやく解けた……という事ですか」

六山「ここの中で全員殺されちゃったんだね……」

佐場木「……」

津浦「Mr.佐場木?」

佐場木「帰ってから話す。次に行くぞ」

そう言って歩いていっちゃった佐場木……私達は困惑しながら、その後を追いかけていった。

【桜の大樹】

御影「……!」

私達が最後に来たのはこの島の道にある桜の中でも一際大きな桜の木。

それはあの第3の島にあった花よりも大きくて……私達は圧倒されてしまう。

兵頭「綺麗な桜、ですね」

津浦「はい……」

六山「ゲームで見たやつよりも大きいね」

道掛「こんなもんもあるんだな……」

佐場木「……」

私達はしばらく桜の木を眺めていた。

こんな事に巻き込まれて、大切な人も失って。

それでも私はこうして生きてる。

御影「……兄さん」

兄さんにも見てほしかったな、ここ……

【ホテルミライ・レストラン】

御影「確かに手がかりはなかったね……」

兵頭「如月さんも結局見つかりませんでした」

道掛「その代わりいいもん見れたけどな!」

六山「代わりでいいのかなぁ」

佐場木「……」

津浦「あのMr.佐場木?それで帰ってから話す事とは」

道掛「そういえばそれがあったな!佐場木がわざわざ改めて言うって事はかなり重要っぽいよな!」

佐場木「……」

兵頭「あの黒い建物……死体置き場とでもしておきましょうか。あそこで何を知ったんですか?」

佐場木「……六山」

六山「えっ、わたし?」

佐場木「お前は言ったな?職員達はあの場所で殺されたと」

六山「う、うん」

佐場木「それは違う」

道掛「はっ?」

佐場木「あそこにあった死体を調べるだけ調べた。そしてはっきりした」

御影「何が……?」







佐場木「あの場にいた百人以上の人間は」

佐場木「全員自殺していた」






今回はここまで。

道掛「自殺って、なんだよそれ……!」

佐場木「それも全員笑顔で死んでいた」

津浦「ひっ!?」

笑顔で自殺していたって……想像しただけで寒気がする。

兵頭「なぜそのような……」

佐場木「それはわからん。しかしはっきりしているのは異常な何かが起きたという事だ」

六山「集団自殺……予備学科の事件みたいだね」

津浦「あれは確か【超高校級の絶望】の仕業でしたね……」

御影「だけどもう【超高校級の絶望】はいない。【絶望の残党】だって」

兵頭「……何にせよ、私達の置かれている状況に変わりはありません」

佐場木「兵頭の言う通りだ。黒幕がいったいどんな手段で職員達を自殺させたか……それを知る術は今の俺達にはない」

御影「……そうだね」

道掛「わざわざコロシアイなんかさせてんだ。向こうもそれをやる気はねえんだろうな」

津浦「使う気ならMr.苗木が嬉々として使いそうですしね」

笑顔で集団自殺していた職員……

兄さんなら、どう感じたんだろう……?

如月を見かけたら報告するって決めて、私達は一旦別行動する事にした。

御影「そういえば千」

兵頭「なんですか牡丹さん」

御影「あんた投票で興奮しなくなったね」

遠見……いや、その前の苗木から千は薄井やグレゴリーのような反応をしなくなってた。

もしかして……

兵頭「ああ、あれは驚きが勝った……と言うんでしょうか」

御影「驚き?」

兵頭「苗木さんが黒幕だった、遠見さんは抵抗して……赤穂さんが亡くなった」

兵頭「衝撃が大きすぎてそちらに思考を割けなかったんですよ」

御影「要するに……」

兵頭「そういう事がなければ、またああなると思います」

御影「……難儀だね。別にコロシアイ煽ったりしてるわけでもないのに」

兵頭「仕方ありませんよ。生まれ持った性質だったんでしょうし」

御影「……」

せっかく仲良くなれた気がするのに、ここから脱出したら千はもう未来機関から離れるつもりで。

いや、私だって軟禁状態になるかも……

御影「本当、やんなるよ」

兵頭「そうですね……」

佐場木「……」

佐場木が手首を擦りながら何か考え込んでる……

御影「遠見の事でも考えてたの?」

佐場木「……御影か。間違ってはいない」

御影「やっぱり辛い?」

佐場木「当たり前だ。あいつは命を懸けて戦った……しかしそれすらあのふざけた黒幕の手のひらの上でしかなかった」

佐場木「あいつは嘆くだろう。自分の死を受け入れていたとはいっても、それはきっと自分を最後の死者だと思っていたからだ」

御影「……うん」

佐場木「……赤穂の死を、俺達は防げなかった。その術すらなかった」

佐場木「……だからこそ俺は奴に聞かなければならない」

佐場木「本当に赤穂を見殺しにしたのかをな」

奴……如月の事だよね。

如月は兄さんを助けられたのにそうしなかった……もしそれが本当なら。

私は、どうするんだろう……

津浦「Ms.御影は黒幕が本当にワタシ達の中にいると思いますか?」

御影「黒幕……」

苗木はそう言ってたけど、モノクマは内通者に関しては嘘ついてたんだよね。

津浦「ワタシの場合は正直信じたくないというのが一番の理由になってしまいますが……」

御影「私だって同じだよ」

今生きている中に黒幕がいる。

私だって信じたくない……でも苗木という前例がそれを許さない。

今こうして話してる津浦がそうかもしれないんだ。

津浦「今までコロシアイに巻き込まれてきた皆さんも、こんな気持ちだったのでしょうか……」

そういえば、今も別のどこかでコロシアイが起きてるんだよね……

そっちは、どうなってるんだろう……

道掛「おっ、牡丹ちゃん!」

御影「道掛」

島の道を歩いてると道掛が自転車でこっちに向かって走ってきてた。

そういえば……

御影「道掛、私が塞ぎ込んでから毎日コテージ来てくれてたよね」

道掛「んっ?ああ……牡丹ちゃんをほっとけなかったしな」

御影「ありがとう。死んだら泣くって言ってくれたのも嬉しかったよ」

道掛「お……おう」

御影「どうしたの?」

道掛「いや、こうして牡丹ちゃんと向かい合って話すってなかなかなかったからさ」

御影「そういえば……私だいたい兄さんと一緒だったしね」

道掛「だからちょっと緊張してる」

御影「緊張ってそんな大袈裟な……」

いや、昔の私なら確かに話しかけにくかったかもしれないけど……

道掛「まあ牡丹ちゃんかわいいしな!緊張もするってもんだ!」

御影「ちょっ」

そういうのをいきなり言わないでよ……恥ずかしい。

こっちはここまで。
続けて洋館を更新します。

御影「あれ?」

六山「……」

あそこにいるの六山?

どこに行くんだろう。

【電気街】

六山「これもダメ……これも違う……」

御影「……」

色んな物漁ってるみたいだけど……声かけてみようか。

御影「六山?」

六山「っ!?」

それはいつもどこかのんびりしてる六山とはまるで違う反応だった。

というか声かけただけでこの反応って……

六山「なんだ、御影さんか……どうしたの?」

御影「いや、どうしたのはこっちの台詞なんだけど……」

六山「わたしはゲームに使える何かないかなぁって探しに来たんだよ」

御影「えぇ……」

あんな鬼気迫る感じでやってたのがそれって……

六山「だけど全然ダメだね。こんなに電化製品あるのに全く役に立たないよ」

御影「今持ってるのじゃダメなの」

六山「御影さん、ゲームの世界は日進月歩なんだよ?」

よくわかんないけど、ダメなのはわかる。

御影「ま、まあ……ほどほどにしときなよ」

六山「まかせて。ウルトラレアを見つけてみせるよ」

御影「……」

六山って時々よくわかんない……



六山「…………」

佐場木「如月は見つかったか」

道掛「どこにもいねえ……あいつ本当にどこ行っちまったんだ?」

津浦「心配ですね……あの時の反応を考えると」

兵頭「……」

御影「私はそれどころじゃなかったからよくわかんないけど、相当荒れてたんでしょ?」

六山「荒れてたというか、認めたくないって感じだったかな」

御影「認めたくない……」

それって如月が、兄さんを見殺しにしたって話だよね……

兵頭「しかし如月さんが赤穂さんを見殺しにしたというのは、モノクマが勝手に言った事です」

道掛「そりゃ、そうなんだけどさ……」

兵頭「内通者に関しても嘘をついた相手です。信用するに値しないのでは?」

津浦「そう言われると……」

御影「……」

如月の事はいくら話しても堂々巡り……本人が見つからないとやっぱりどうしようもないね。







如月「それは違いますよ……」






御影「っ!?」

それはまるで幽霊のように。

如月がいつの間にかそこにいた。

佐場木「如月……貴様、今までどこにいた」

如月「モノクマと、少し交渉を」

道掛「こ、交渉?」

兵頭「それより如月さん、今の違うとはいったい」

如月「赤穂さんの事です」

津浦「えっ……」

如月「モノクマの言う通り、僕は妹が生きて仲睦まじくしている赤穂さんに嫉妬していました」

六山「……認めるの?赤穂くんを見殺しにしたって」

如月「…………」

御影「何とか、言いなよ……」

如月「……はい。僕は赤穂さんを、見殺しにしました」

御影「っ!!」

頭に血が上るのがはっきりわかった。

この男は兄さんを見殺しにしたと認めた……ううん、実質兄さんを殺したんだ。

……許さない。

許せるわけがない!

御影「如――」







パンッ……!






御影「……えっ?」

私が立ち上がるよりも早く。

私が何かを叫ぶよりも早く。

六山「……」

六山が如月の頬にビンタをしていた。

……なんで?

六山「な、なんで、そんな……!」ポロポロ

なんで、六山泣いてるの?

如月「六山さん……?」

六山「それだけは、その口からそんな言葉だけは聞きたくなかったよ……!」

津浦「Ms.六山!?」

道掛「百夏ちゃん!?」

その場を走り去る六山……勢いが削がれて、叫ぼうとしていた事が口の中に消えていく。

兵頭「……追いかけ、ます」

佐場木「……任せる」

兵頭「如月さん……」

如月「……」

兵頭「私も、聞きたくなかった……否定して、ほしかったです」

千も俯いたまま、六山を追いかけていって。

後に残された私達は何も言えなかった。

佐場木「……如月、モノクマとの交渉とはなんだ」

如月「……」

佐場木「それを言いに来たんだろう……さっさと話せ」

如月「……数日内に」







如月「僕は、このコロシアイ研修旅行の黒幕を殺します」






今回はここまで。
続けて洋館を更新します。

佐場木「……貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

如月の黒幕を殺すという宣言……モノクマと交渉したって言ってたけど、それがこれなの?

如月「あの学級裁判から2日……僕はずっとモノクマと話していました」

如月「そしてそれはようやく実を結んだ」

如月「モノクマを操る黒幕……それを探しだして殺せるかというゲームを行うと宣言させたんです」

御影「モノクマがそんな……」

モノクマ「うぷぷ、呼んだ?」

道掛「うおっ、出やがった!?」

モノクマ「いやー、如月クンたら本当にしつこくてね!この2日間全く眠れなかったよ!」

津浦「し、しかし黒幕を殺すゲームなんて……あなたは本当にそれを受け入れたんですか?」

そうだ、自分が殺される事を受け入れるなんて普通はあり得ない。

モノクマ「如月クンがしっかり特定出来るならそれはそれでありかなって思ってさ!」

だけどモノクマは普通じゃない。

だからこんな話さえも受け入れちゃうの……?

佐場木「……誰が黒幕かはっきりさせられるというのか」

如月「はい。ヒントはあったので」

道掛「ヒントって黒幕のか!?なんだよそれは!」

如月「すみません、それは話せないんです」

モノクマ「これはあくまでボクと如月クンのゲームだからね!」

御影「何よそれ……!」

勝手にそんな事決めて、どこまで……!

モノクマ「うぷぷ、じゃあ如月クン頑張ってね!」

如月「……皆さん、安心してください。僕はこのコロシアイを必ず終わらせます」

如月「それが僕の、最後の仕事ですから」

佐場木「待て如月!」

言うだけ言ってモノクマも如月もいなくなった。

道掛「どうなってんだよ……」

津浦「黒幕のヒントとは、いったい……」

佐場木「……兵頭と六山が戻り次第対策を話し合うぞ」

御影「対策……」

佐場木「モノクマは俺達の中に黒幕がいると言っていた。そして如月は黒幕を殺すと宣言した」

御影「あっ……」

佐場木「あの殺人鬼は俺達の中の誰かを殺すと、コロシアイを行うと言ったも同然だ」

佐場木「誰よりも警戒すべき危険人物になったんだあの男は……!」

如月は殺人鬼で、でもそれには歪んでいても正義があったからコロシアイに関しては安全だって言われてた。

佐場木「ちっ、これ以上……!」

だけど今の如月にその枷はない……如月は私達の中にいるっていう黒幕を殺すため、正義のために動いてると思ってるから。

道掛「くそっ、あんな事があったのに、まだこんな……!」

だけど如月の考える黒幕が本当に正しいか私達にはわからない。

ヒントだって本当に黒幕を示すものかわからない。

津浦「Mr.如月……あなたは」

それについて話し合えない以上、如月が勘違いして違う人を殺す可能性は十二分にあって。

六山「うわぁぁぁぁんっ!うっ、ぐすっ」

そして狙われたら、私達は絶対に抵抗もできずに殺される。

兵頭「私はどうしたら……」

止められた鞍馬もいない今、私達は……

御影「……兄さん」

誰を殺すかわからない殺人鬼のいるこの島という檻に、閉じ込められたんだ。







――そして3日後。

私達は目の当たりにする事になる。

この島の……最後の殺人を。

だけど今の私達にそんな事はまだ、わからなかった。






今回はここまで。

【22日目】

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

御影「……」

如月の黒幕殺害宣言から1日経った。

あの後千が連れてきた六山はずっと泣いてて、まるで話にならなくて。

なんであんなに泣いたのか理由を聞いても全然答えない六山を宥めるのに必死で、結局如月対策の話し合いなんてまともに出来なかった。

御影「今日こそ、話し合わないと」

これ以上人が死ぬなんて、ごめんだよ。

【ホテルミライ・レストラン】

佐場木「集まったか」

御影「……六山は?」

津浦「あそこに」


六山「なんで、急がないと、早く早く早く」カチカチカチカチカチ


御影「……」

もう、まともに話すのも無理かもしれない……ゲームを鬼気迫る表情で操作する六山に私はそう感じざるを得なかった。

兵頭「あれでは、話し合いには参加出来ないでしょうね」

道掛「でもどうして百夏ちゃんはああなっちまったんだ?」

津浦「やはり、その……見殺しの件が大きいのでは?」

六山にとって如月は、モノクマから助けてくれた文字通りヒーローだったもんね。

兵頭「……牡丹さんは、大丈夫ですか?」

御影「六山があんなに取り乱すの見たら逆に冷静になれたよ……あいつを許すつもりはないけど」

如月が兄さんを見殺しにした事は絶対に許さない。

だけど今はまずあいつがしようとしてる殺人をどうにかしないと。

御影「そういう千はどうなの?」

兵頭「……正直ショックでした。ですが、今はそれどころではありませんから」

佐場木「仕方がない、六山は抜きで話し合うぞ。昨日如月が黒幕の殺害を宣言したというのは話したと思うが」

兵頭「まさかそんな事になっていたとは思いませんでした……」

道掛「ヒントがあるって言ってたよな……俺達には何の事だかわかんねえけど」

津浦「ワタシ達がモノクマの言う黒幕探しゲームに参加出来ない以上、Mr.如月が正解を導き出すのかもわかりません」

御影「だから無実の人をあいつが殺すかもしれない……それが今の状況だよね」

佐場木「まずは俺と道掛が見回りと護衛だ。いいな?」

道掛「おう!狙われてもいざとなりゃ、俺は自転車で逃げられるしな!」

佐場木「その脚力、頼りにさせてもらう。津浦、お前と他の3人は図書館で手がかりを探せ。モノポイズンの事もある、黒幕が何か隠している可能性があるからな」

津浦「わかりました。しかしMs.六山は……」

佐場木「かといって1人にはさせられん。だから六山は図書館に引きずっておけ」

兵頭「わかりました……いざというときは私達の中の誰かが狙われた時、他の3人が盾になれば如月さんの動きは止められるはずです」

御影「そうだね。自分が黒幕と決めた人間以外を殺すわけにはいかないだろうし」

佐場木「……あくまでもそれは最終手段だ、いいな?」

道掛「そういえば、佐場木はどうすんだよ?1人で動くつもりなんだろ?」

佐場木「俺にはこれがある」

そう言って佐場木が出したのは一粒の錠剤。

これってもしかして……

兵頭「鞍馬さんの身体強化薬ですか?」

佐場木「かき集めてなんとか一粒分を確保しておいた。鞍馬のコテージに入れれば瓶ごと確保して全員に配れたが……」

津浦「無い物ねだりをしても仕方ありません……とにかくすぐ動きましょう。Mr.如月がいつ動くかわからない以上時間は大切です」

津浦の言葉に頷いて、私達は動き出す。

もう誰1人欠けさせないために、神社での願いを叶えるために……

今回はここまで。

【図書館】

……そうは言っても千にすら読めない言語の本に関しては完全に津浦に頼りきりで。

それに体力もそんなにあるわけじゃない私ははっきり言ってお荷物だった。

御影「……」

六山「……」カチカチカチカチカチカチカチカチ

そんなわけで、今私は黙ってゲームをやり続ける六山と過ごすっていう気まずい時間を過ごしていた。

御影「……」

図書館に行く時六山は素直についてきた……というよりは、まるで他の事は何も眼中にないって感じで抵抗しなかった。

御影「……」

でも本当にどうしちゃったんだろう……如月の事がショックだったにしても六山のこれは明らかに常軌を逸してる。

御影「……どうして、ゲームなんてやってんの」

答えなんて来るはずもない、そんなの承知で呟いた私の疑問に。


六山「みんなを助けるためだよ」


六山は、はっきりそう答えた。

御影「えっ?」

あまりにはっきりとした答えに思わず六山を見る。

だけどその姿はさっきまでのと変わらなくて。

空耳?それにしては、今のは……

六山「……」カチカチカチカチカチカチカチカチ

津浦「……」

御影「どう?」

津浦「ダメですね、言語の違いはあれど中身に関しては特筆したものはありません」

読み終わった本の山に新しく1冊加えて津浦は大きく伸びをする。

その目には隠しきれない疲労感が漂っていた。

御影「休憩した方がいいんじゃない?今お茶持ってくるよ」

津浦「ありがとうございます。Ms.御影」

御影「これぐらいしか出来ないし」

持ち込んだペットボトルのお茶を津浦に渡す。

それを飲みながら津浦はそんな事ありませんよなんて私に笑いかけてきた。

津浦「こうしていてくださるだけでワタシには励みになりますから。元々ワタシは怖がりでしたから、1人ではやはり押し潰されてしまうので」

御影「怖がりなのはよく知ってるよ」

銃を持ち出した時とか、本当に焦ったし。

津浦「……前にMr.赤穂にも話したのですが、そんなワタシがここまで生きていられたのは奇跡だと思うんです」

御影「奇跡……」

津浦「はい。だからワタシは……」

御影「それはきっと、全員そうだよ」

津浦「えっ」

御影「私や千は殺されかけたし、六山も処刑されかけた。佐場木や道掛だって何があってもおかしくなかった……如月は、よくわかんないけど」

御影「今生きていられるのが奇跡なのはみんな同じ。だから津浦だけが気負わなくていいよ」

津浦「……」

御影「……なんて、私は思うんだけど」

津浦「……ふふっ、ありがとうございます。Ms.御影」

御影「特にたいしたこと言ってないし」

津浦「いえ、少し焦ってたので……本当にありがとうございます」

津浦は笑ってまた本を読み始めた。

まあ、役に立てたなら……よかったかな。

道掛「よっ、様子見に来たぜ!」

御影「特に構えないけど、それでもいいならゆっくりしなよ。はいタオルとスポーツドリンク」

道掛「サンキュー牡丹ちゃん!」

自転車で走り回ってたのか道掛はたくさん汗をかいていた。

この島、無駄に広いから疲れるよねやっぱり。

道掛「ぷはー、生き返った!」

御影「なにか変わった事あった?」

道掛「特にはねえかなぁ……つうか、如月を全然見ないんだよな」

御影「如月……」

道掛「あっ、悪い……牡丹ちゃんからしたら如月はあれだもんな」

御影「ううん、気にしないで」

今は、それどころじゃない……そう言い聞かせてるのは、否めないけど。

道掛「と、とにかく!俺もやれる事をしっかりやるからさ!牡丹ちゃん達も無理しないで頑張ってくれよな!」

如月の名前を出して気まずかったのか、道掛は図書館から飛び出していく。

……そういえば前に兄さんが道掛と如月が2人乗りしてたとか言ってたっけ。

御影「……」

道掛も、色々複雑なのかもね……

今回はここまでで。

御影「千、そっちはどう?」

兵頭「芳しくありませんね……やはり情報があるとしたら津浦さんにしか読めないものにありそうです」

千は自分でも読める本から情報を探していた。

津浦の負担は減るし、少なくともいいアイデアだとは思ったんだけど……

御影「少し休みなよ。日本語の本なら、私だって出来るからさ」

兵頭「……すみません、お言葉に甘えます」

千は椅子に座ると脱力したように机に突っ伏す。

大丈夫なのかな……

兵頭「……牡丹さん」

御影「えっ、なに?」

兵頭「私は、何が出来るんでしょう」

御影「千……?」

兵頭「……ごめんなさい、忘れてください」

それから千は何も言わなくなっちゃった……

何が出来るか、なんて私にもわからない。

でもやるしかないんだ……私達に他に道はないんだから。

佐場木「様子はどうだ?」

御影「全然。そっちは?」

佐場木「如月は見つけたが、逃げられた」

あいつの脚で逃げに徹されたら……追い付けるわけないよね。

佐場木「黒幕に関しても調査はしているが……奴の言うヒントがわからない以上取っ掛かりがない」

御影「ヒントか……」

如月はいったいどこでヒントを見つけたんだろう。

モノクマが渡した……って事はなさそうだけど。

佐場木「何にしても無理はするな。適度に休息は取るようにしろ」

御影「そうする……でも佐場木も変わったね」

佐場木「何がだ」

御影「もっと近寄りがたい印象があったから」

佐場木「……」

御影「まあ、こっちも無理はしないようにするから。そっちも無理しないようにね?」

佐場木「……ああ」

佐場木が変わったのはきっと遠見の影響、なんだろうね……

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

御影「もうこんな時間なんだ……津浦、千。そろそろ終わりにしたら?」

津浦「そう、ですね。睡眠はどうしましょう」

兵頭「コテージに戻って1人になるのも……とはいえ、ここは暑いですね」

御影「じゃあ私のコテージ来なよ。全員泊まる形にしよう」

兵頭「いいんですか?」

御影「むしろこんな形でしか役に立てないし……ほら、六山行くよ」

六山「……」カチカチカチカチカチカチ

【サマーアイランド・歩道】

津浦「明日も朝から手がかり探しですね」

兵頭「そうですね……」

御影「……」

今日は結局手がかりは見つからなかった。

このまま何も見つからなかったらどうしようなんて考えがどうしても頭に過って。

だから私は前を歩く2人が足を止めた事に気付かなかった。

御影「えっ、どうしたの」

津浦「……」

兵頭「如月さん……」

六山「……!」

私達が歩く道の先、そこに……如月が立っていた。

如月「お疲れ様です」

兵頭「……どうして、ここに?」

如月「具体的には話せませんが、報告ぐらいはしておくべきかと思いまして」

津浦「報告……?」


如月「黒幕を3人にまで絞り込みました」


御影「……!」

もう半分、絞り込んだの……!?

如月「佐場木さんと道掛さんにも伝えておいていただけますか?」

御影「待ちなよ!いったいどうやってそんな!」

如月「それは言えないんです。モノクマとの契約なので」

兵頭「またそんな……!」

六山「……させない」

御影「えっ、六山?」

六山「絶対にさせないよ。もう人なんて殺させない」

如月「……相手は黒幕ですよ?」

六山「それでも!わたしは絶対許さないから……!」

如月「……そうですか」

如月は背中を向けてその場から走り去る。

六山「……戻ろうみんな」

御影「えっ」

六山「もう半分にまで絞られたんだよ。急いで何とかしないと」

御影「ま、待ちなよ!千も津浦も1日中……」

津浦「そう、ですね」

兵頭「わかりました」

御影「ちょ、ちょっと!」

兵頭「急がないといけないのは、六山さんの言う通りですから」

津浦「徹夜ぐらい、誰かが死ぬ事に比べたら……」

そう言って来た道を戻っていく3人……私はどうする事も出来なくて後を追いかけるしかなかった……

【23日目】

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

御影「……」

兵頭「すぅ、すぅ」

津浦「……くぅ」

結局明け方まで手がかり探しをやり続けた千と津浦は倒れるように寝ちゃって。

六山「違う、違う……」カチカチカチカチカチカチ

そんな中でも、六山は相変わらずゲームばっかり。

2人を作業に戻らせたのに本人はこれ……正直腹が立った。

御影「ちょっと六山」

六山「……」カチカチカチカチカチカチ

御影「っ、こっち向きなよ!」

六山「……なにかな」

御影「2人にこうさせて自分はゲーム!?いい加減にして!如月を何とかしないといけないのは正しいけど、だったらそっちも何かしてよ!」

六山「これは」

御影「みんなを助けるためって?ゲームしてどうやってみんなを助けるの?教えなよ!」

六山は確かに普段からゲームばっかりで、それがいつもの彼女だけど。

こんな時までゲームされたら、さすがに言いたくもなってくる。

六山「……そうだね」

六山がゲームをしたまま立ち上がる。

そして図書館の奥、佐場木が前に言っていた危険な本がある黒いカーテンの一角に歩いていった。

御影「ちょっと六山!」

慌てて追いかけると六山はまだゲームをしてて。

取り上げようかと迷った私に、六山は画面を見せてくる。

御影「…………えっ?」

それは、文字を入力する画面。

カーテンに囲まれて少し暗い中を照らすそこに……短く一文が書かれていた。







【わたしの本当の名前は、六山百夏じゃありません】

そんな……理解出来ない、一文が。






今回はここまで。

御影「どういう、事……?」

六山がいきなり打ち明けてきた【自分の名前は六山百夏じゃない】という事実。

私はそれを飲み込めないでいた。

六山「……」カチカチカチカチ

【とりあえず聞かれてたらまずいから画面で話すね?御影さんもあまり声に出さないでくれると助かる、かな】

【わたしは未来機関から送り込まれた工作員。才能も本当はデバッガーじゃなくて工作員なんだ】

御影「……」

【これね、ゲームに偽装した本部との連絡ツールなの。いつもゲームしてるだけの子って思わせれば相手を油断させられるし、デバッガーって表向きの才能にはピッタリだったんだ】

御影「……!?」

じゃあ六山は外に助けを呼べるって事!?

【でもこの島プロテクトとジャミングがすごいから、本部と連絡が取れなくて……だからプロテクトとジャミングを少しずつ突破してたんだ】

じゃあ助けを呼ぶために六山はいつもあんなに……

【ずっと、ずっと助けを呼ぼうとした。人が殺される度に、学級裁判で処刑される度に、何度も何度も……】

【でも赤穂くんが、モノクマに殺されて……わたし一度諦めたの。もう無理だって、何も出来ないって】

御影「……」

【でも立ち直った御影さんを見て、わたしが諦めたらダメだって思って……だから】

六山は、ずっと戦ってたんだ。

この状況を打破するために、1人で。

御影「……でもなんで?」

なんで工作員なんて必要だったの?

そこまでは口にしなかったけど、六山には伝わったのか彼女はその理由を教えてくれた。

【未来機関第20支部のメンバーの中に、超高校級の絶望の残党がいるって情報を掴んだんだよ】

そんな、また衝撃的な事実を。

絶望の残党が、私達の中に……!?

【それもかなり昔から絶望に染まってたらしくて、江ノ島盾子にも従ってたみたい】

【その人の調査、出来れば捕縛がわたしに与えられた任務】

【実はわたしの六山百夏って名前は、相手を誘い出す側面もあるの】

御影「……?」

【御影さんは、七海千秋って知ってるかな?】

七海千秋……?

御影「ごめん、わかんない」

【元77期生の超高校級のゲーマー。人類史上最大最悪の絶望的事件の直前に行方不明になった人】

【でも本当は……遺体が見つかってるの。希望ヶ峰学園の地下から】

御影「……!」

【なぜか遺体は綺麗にされてたけど、少なくとも殺されたって事はわかった】

【その七海千秋さん殺害に、その残党は関与しているみたいなんだ】

御影「……あっ」

そこで私は気付いた。

六山百夏……その名前は七海千秋をいじったものだって。

【この名前に反応してくれる人がいれば、わかりやすかったんだけど……さすがにそう簡単に尻尾は出さなかった】

【だから支部で仕事しながら見つけようと思ったんだけど……こうしてコロシアイが始まって】

【多分苗木くんに協力してたもう1人の黒幕は、その残党だよ】

もう1人の黒幕は絶望の残党……

そんな人間が、私達の中にいる……

【だからお願い、わたしにこのまま連絡を取るのを続けさせて。後少し、後少しで全部突破出来るの】

連絡さえ取れれば未来機関が動く。

もう誰も死なずに済むかもしれない。

それを理解した私は……六山の言葉に頷くしかなかった。

【ありがとう……この後も今まで通り六山百夏として接してくれると、嬉しいな】

そうして微笑んだ六山の瞳に浮かぶ並々ならぬ決意。

私は、この子はどれだけ辛かったのかな、なんてふと思った。

自分の事は内緒にしてほしいと頼む六山に、私は頷いて答えた。

まだ何もわからない以上、六山については黙っていた方がいいのはきっと間違いないからね。

兵頭「おはようございます……」

御影「おはよう千。すごい汗だよ、ちょっと着替えたら」

兵頭「ありがとうございます」

千に着替えと飲み物を渡して、カーテンのかかった一角に連れていく。

兵頭「今日も手がかり探しですね。津浦さんはまだ?」

御影「うん、起こしてない。多分一番疲れてるだろうから」

兵頭「それがいいですね……六山さんは?」

御影「えーと、いつも通り、かな」

兵頭「そうですか……早く立ち直ってくださればいいんですけど」

ごめんね千。

本当はもうすぐ助けが来るかもしれないって伝えたいけど……約束したから。

兵頭「さて、そろそろ始めましょうか……」

御影「食べる物用意してあるから」

兵頭「はい」

……如月があんな事始めなければただ待つだけでよかったかもしれないのに。

千の背中を見つめながら、私はそんな風に感じた。

佐場木「半分に絞った、か」

昨日如月が言っていた事を様子を見に来た佐場木に伝える。

聞いた佐場木は顔をしかめて考え込んでいるみたいだった。

佐場木「奴はいったい何を調べ、どうしてその結論に至ったか……残りの候補については何も言ってなかったんだな?」

御影「うん、それはモノクマに口止めされてるんだと思う」

それがわかれば、まだ対策もたてられるかもしれないのに。

佐場木「……」

御影「とにかく急がないとまずいかもしれない。まあ、私は何も出来てないんだけど……」

佐場木「そんな事もないだろう」

御影「そうかな」

佐場木「お前が塞ぎ込んでいた時、俺達もまた停滞していた。その空気が変わったのは、やはりお前が戻ってきてからだ」

御影「……」

佐場木「卑下する事はない。お前も立派な助けになっている」

それだったら、いいんだけど……

御影「んしょ、よいしょ……」

ショッピングモールで足りなくなった物を補充した私は1人図書館に向かって歩いていた。

本当は1人で行かない方がいいんだけど、みんな頑張ってるから邪魔はしたくない。

御影「ふぅ、ふぅ」

でもこの島の暑さはやっぱりキツい……元々体力のない私は何回も休憩しながら少しずつ進んでる状態だった。

道掛「牡丹ちゃん!」

御影「あっ、道掛……」

道掛「そんな大量の荷物1人で運んでたのか!?無茶は駄目だって!ほら、貸してくれ!」

御影「あっ」

道掛「よっと……よし、牡丹ちゃん乗ってくれ。図書館まで送るからさ」

御影「でも」

道掛「遠慮すんなって!」

道掛の言葉に甘える事にして、私は自転車に乗る。

道掛はしっかり掴まっててななんて言いながら自転車をこぎ出した。

御影「ありがとう」

道掛「いやいや、牡丹ちゃんと二人乗り出来て嬉しいから礼なんかいいって!」

御影「こういう時は素直に受け取った方がモテるよ?」

道掛「マジか!じゃあ今のなし!」

御影「あははっ」

私、わかってるよ。

道掛が私に気遣ってスピード抑えてるの。

……本当、私もっと早く素直になってたらよかったな。

そうすればきっと兄さんも安心して……

津浦「これは……」

御影「何かあったの?」

津浦「いえ、Mr.グレゴリーの事が書かれた本があったもので……」

御影「グレゴリーの?どんな本なの?」

津浦「あの人は謎の多い人でしたから。やれ実は2人いるだの過去から来ただの宇宙人だの……色々好き勝手書いてあります」

御影「それはまた……」

実際は、グレゴリーもただの人だった。

津浦に過去がばれるのが怖くて、四方院を殺してしまった普通の人。

津浦「……」

御影「大丈夫?」

津浦「はい、大丈夫です。ワタシはやっぱり死ねないという思いがますます強くなりました!」

気合いが入ったみたいでまた作業を始める津浦。

私が兄さんの事があって死ねないように、津浦も死ねない理由がある。

……うん、私も頑張ろう。

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

御影「……」

また1日が過ぎた。

本はだいぶ減ったけど……

兵頭「はぁ……今日も徹夜になりそうですね」

津浦「はい……」

六山「……」カチカチカチカチ

御影「ちょっと待った」

また徹夜しようとする2人を止める。

こんな事続けてたら2人共倒れちゃう……ここは止めとかないと。

御影「明け方になって眠るなら今寝て明日に備えた方がいいんじゃない?」

兵頭「……それもそうですね」

津浦「休息は、とった方がいいかもしれませんね」

納得してくれたのか千と津浦は本を閉じて寝る準備に入る。

そしてそんなにしない内に、寝息が聞こえてきた。

御影「六山も……無理はしないでよ」

六山「……うん、ありがとう」

3人を置いて外に出る。

夜風に当たりながら電子手帳を開いて、モノクマファイルって書いてある項目を操作する。

2つの隠されてた項目……モノクマファイルと証拠記録。

事件が起きなきゃずっと???のままだったはずの項目。

それを見ると、悲しさと黒幕への怒りが強くなる。

それでも如月を私達は止めないといけない。

御影「……どうせいるんでしょ。出てきたら?」

如月「……」

だから、私は。

御影「如月」







御影「黒幕は私だよ」

私に、出来る事をやるんだ。






如月「……」

もちろん私が黒幕だなんて嘘。

それでも妹に似てるらしい私がこう言えば、如月だって少しは戸惑うはず。

そうして六山が救助を呼ぶ時間を稼げれば……!

如月「あなたは優しい人ですね」

御影「……意味、わかんない」

なのに。

如月「あなたは誰も死なせたくない。だから僕の動揺を誘うためにそんな嘘をついた」

御影「……」

そんな私の悪あがきは、あっさり見破られて。

如月「御影さん、あなたは黒幕を騙るには優しすぎますよ」

御影「っ、そこまでわかるなら、今すぐやめてよ!」

如月「……」

御影「きっともうすぐ、助けは来るから!だから、あんたがそんな事しなくても……!」

如月「なぜ助けが来ると?」

御影「それ、は……」

如月「……2人まで絞りました」

御影「っ!」

そう言って如月は姿を消した。

私は……何も、出来なかった。

御影「うっ、ううっ」

兄さんなら、こんな時どうしたの?

教えてよ、兄さん……

【24日目】

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

御影「……」

私はその後、図書館で膝を抱えていた。

如月は2人まで絞ったって言ってた……つまりもうすぐ如月は誰かを殺す。

それなのに私達は何も出来てない……それでもみんなは頑張ってて。

御影「私は……」

トントン

御影「……?」

六山「ちょっといいかな?」

六山は黒いカーテンを指差してる……何か、秘密の話って事だね。

御影「わかった……」

※※※※

【ジャミング、9割ぐらい突破したよ】

御影「本当!?」

【うん。明日には未来機関に連絡出来ると思う】

御影「よかった……!」

【ありがとう御影さん。御影さんがいてくれたから、わたし頑張れたよ】

御影「そんな、私は何も……」

【ううん、やっぱりね……1人でずっと秘密の作業するのはキツいんだ】

【誰かが自分のしてる事を理解してくれている……それだけで力が湧いてくるの】

【だから御影さん、本当にありがとう】

御影「六山……」

私こそ、お礼を言いたいよ。

自己嫌悪入ってた私を……まだ踏みとどまらせてくれて。

御影「ありがとう、百夏」

【どういたしまして】

津浦「っ、Ms.兵頭!Ms.御影!来てください!」

兵頭「どうしました?」

御影「もしかして何か見つかったの!?」

津浦「はい!絶望教についての本を見つけました!」

兵頭「絶望教といえば、あのパソコンに入っていた……!」

御影「新興宗教、だったよね?」

津浦「この本によると、絶望教は超高校級の才能を持つ1人の開祖と2人の協力者が産み出したようです」

兵頭「なるほど……つまりこのコロシアイにもその3人が?」

津浦「いえ、開祖は動かないらしく実務は協力者の2人が行っていると」

御影「名前とかは!?」

津浦「そこまでは……しかし協力者は男女2人組のようです」

兵頭「1人が苗木さんだとすれば……もう1人は」

御影「女……」

思わず顔を見合わせる。

私達の中に、黒幕がいるの……?

津浦「とにかく、これは大きな前進である事に間違いはありません」

兵頭「そうです、ね……」

御影「……」

黒幕は私達の中の誰か……

でもなんだろう……この、妙な違和感。

私、何か重大な事を見逃してる……?

ドォン!

御影「!?」

な、何今の音!?

※※※※

【中央の島】

佐場木「ぐっ、っ……!」

道掛「佐場木!!」

音の方へ来た私が見たもの、それは膝をつく佐場木とそれに駆け寄る道掛。

そして……

如月「だから無駄だと言ったんです……」

如月の姿だった。

御影「な、何があったの!」

佐場木「下がっていろ……!」

如月「佐場木さんが僕を拘束するとおっしゃるので……抵抗させていただきました」

道掛「くそ、佐場木薬飲んでんのに手も足も出ねえんだ!」

御影「嘘……」

じゃあ鞍馬は、いったいどれだけの薬をいつも飲んでたの……

佐場木「ぐっ、そうだとしても俺は貴様を止めるぞ如月怜輝……!」

如月「佐場木さん……僕はあなたを殺したくありません。退いてください」

佐場木「貴様が黒幕を殺さないというなら聞いてやる……!」

如月「そうですか」

佐場木「っ!」

それは一瞬の出来事だった……如月が、佐場木のお腹を打ち抜いて。

佐場木はその場に崩れ落ちた。

道掛「佐場木ぃ!!」

如月「気絶させただけです……目覚めたら謝罪を」

御影「待って!私達も黒幕のヒントを見つけたよ!」

如月「……」

御影「絶望教の協力者!それが男女2人って事!だからもう少し、もう少しだけ待って」

如月「――まだそこまで、ですか」

御影「えっ……」

如月「……」

御影「待って!ねぇ、待ってよ如月!」

如月はいなくなった……
まだそこまでって、どういう意味なの?

如月はどこまで、わかってるの……?

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

御影「……」

あれから道掛が佐場木を病院に連れていって。

もう図書館には何もないから、千と津浦もそっちに行ってもらって。

六山「……そっか」

御影「……」

私は、百夏と図書館にいた。

百夏は気遣ったのかお茶を淹れてくれたけど、飲んでも美味しいかどうかもわからなかった。

六山「如月くんは、いったいどこまでわかってるんだろう」

御影「わかんない、もうわかんないよ……」

六山「……」

御影「ごめんね、百夏も頑張ってるのに愚痴なんて」

六山「ううん、いいんだよ。わたしだって如月くんは止めたいし」

御影「……」

もう後は百夏が未来機関と連絡取るのを待つしか……

六山「大丈夫、きっと最後は丸く収まるよ」

御影「そうだと、いいんだけど……」

六山「とりあえず明日だよ!明日が勝負!だから今日は休んで、明日頑張ろう?」

御影「うん……」

なんだろう、百夏が励ましてくれて安心したのか眠くなってきた……

御影「ごめん、ちょっと寝る……」

六山「うん、おやすみ」

明日……明日……頑張――







六山「…………」

六山「――ごめんね」






【25日目】

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

御影「んっ……あっ、朝……?」

ぐっすり眠っちゃったんだって慌てて飛び起きる。

その拍子にいつも百夏が着てるパーカーがパサッと落ちた。

御影「あっ、かけてくれたんだ……百夏、ありが――」

お礼を言おうと周りを見渡す……だけど、百夏はいない。

御影「……………………はっ?」

その代わりに、図書館の壁に……大きな文字が書いてあった。




【正義の裁きを執行する】って赤い文字が。

御影「嘘……嘘、嘘嘘嘘嘘!!」

まさか、如月が百夏を!?

違う、違うよ!百夏は黒幕なんかじゃない!

兵頭「牡丹さん、まだこちらに……っ、これは!?」

御影「千!百夏が、百夏が如月に連れていかれたんだ!急いで捜さないと!」

兵頭「っ、まずは病院に!そこに皆さんいます!」

※※※※

道掛「如月が百夏ちゃんを!?」

津浦「そんな……!」

佐場木「ちっ、とにかく捜すぞ!手分けして、ぐっ」

兵頭「その怪我では無理です佐場木さん!」

御影「と、とりあえず1つずつ島を捜そう!佐場木はこの島を任せれば」

津浦「ならワタシはウインターアイランドに!」

道掛「俺はサマーアイランドに行く!」

兵頭「では私は、第1の島を……!」

御影「じゃあ私はスプリングアイランドに行ってくる!」

急げ、急げ急げ!

まだ、間に合う……ううん、間に合わせるんだ!

【スプリングアイランド・桜の大樹】

御影「はぁ、はぁ……」

とりあえず死体置き場以外を探し回って、最後にたどり着いたのはあの桜の樹……ここに百夏と如月はいるの?

御影「桜吹雪で、前見にくい……」

舞い散る花びらの吹雪を進んで……

御影「……あ」

そして私は、見つけた。




最悪の、結果を。







【幹にもたれかかったその身体は、半分が桜の花びらに埋もれていた】

【それはまるで眠ってるみたいに安らかな顔】

【だけど左胸に空いた穴から流れる血が、もう生きていないって示していた】












【どうしようもなく、言い訳のしようもなく、死んでいた】

【六山百夏を名乗っていた彼女は、死んでいた】






御影「もも、か……」

頬を触っても冷たい……まるで兄さんみたいに。

百夏は、殺されたんだ。

御影「如、月……!」

間に合わなかった。

私達のために人知れず戦っていた彼女を黒幕と勘違いして如月は殺した。

また、私からあいつは……奪ったんだ……!

御影「とにかく、みんなに……あれ?」

その場から離れようとした私はふと気付く。

百夏の後ろ……幹の反対側……


桜の花びらが、不自然に盛り上がっていた。


御影「……」

歩み寄ってその花びらを払う。

そして私は知るんだ。







――これは、長い長い1日の始まりにしか過ぎなかったって。












【左腕はあらぬ方向に】

【右腕は折れたのか腫れ上がって】

【右足は捻れて】

【左足は膝から逆に曲がって】

【首も折れてるのかダランとしたその口元は、なぜか笑ってて】

【そして左胸には、お揃いのように空いた穴……】












【そんな状態で死んでいた】

【如月怜輝も、死んでいた】












CHAPT.5【哀れなる罪人に裁きを】(非)日常編 END

生き残りメンバー7→5人

NEXT→非日常編






今回はここまで。

次回は捜査編から。

また夜に洋館を更新したいと思います。

それでは。







CHAPT.5【哀れなる罪人に裁きを】非日常編






御影「……」

どう、なってるの……

なんで百夏だけじゃなくて、如月まで死んでるの……!?

道掛「牡丹ちゃん、ここにいたのか!」

佐場木「これは……!?」

津浦「Ms.六山……」

兵頭「如月さんまで、どうして……」

呆然としているとみんなが集まってきて、そして……

ピンポンパンポーン!!

モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」

ピンポンパンポーン!!

モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」

2回鳴るアナウンス……それがはっきりと百夏と如月、2人が死んだって証明した。

モノクマ「いやー、とうとう恐ろしい殺人鬼が死んでくれたね!これでボクも枕を高くして眠れるよ!」

御影「モノクマ……」

こいつが出てきたって事は、百夏はやっぱり黒幕なんかじゃなかったって事で。

それは如月が結局間違えて死んだっていう事実を、私達に突きつけていた。

モノクマ「うぷぷ、それじゃあお祝いにテンション上げていこうかな!」

モノクマ「ザ・モノクマファイルー!」

モノクマ「頑張ってね、もう議論を引っ張っていた赤穂クンはいないけど!」

御影「っ!」

兵頭「牡丹さん……!」

千が私の腕を掴む。

その腕から伝わる震えが……私の頭を冷静にさせてくれた。

御影「……大丈夫。何もしないから」

兵頭「……」

私の腕を掴んだままの千の手を握る。

私は冷静だって、それが一番の証明になる気がしたから。

兵頭「……わかりました」

御影「うん」

そしてようやく千が納得してくれた頃には、モノクマは消えていて。

捜査……兄さんがいない今、私にどれだけ出来るかわからないけど……

やれるだけ、やってみせるよ……!

    【捜査開始】

御影「えっと、まずはモノクマファイル……」

兄さんはいつもこれを読むところから始めてたよね……

【被害者は如月怜輝。
両名の死亡推定時刻は午前4時から5時の間。
両名の死体発見現場はスプリングアイランド桜の大樹。
両名の死因は心臓を一突きされた事によるショック死。
如月怜輝の両腕、両脚、首の骨は折れている】


御影「何このファイル……」

百夏の名前が、書かれてない……?

確かに百夏の本当の名前は六山百夏じゃないみたいだけど……

だけどそれをわざわざ隠す意味って……

コトダマ【モノクマファイル5】を手に入れました。
〔被害者は如月怜輝。
両名の死亡推定時刻は午前4時から5時の間。
両名の死体発見現場はスプリングアイランド桜の大樹。
両名の死因は心臓を一突きされた事によるショック死。
如月怜輝の両腕、両脚、首の骨は折れている〕

コトダマ【モノクマファイルの記述】を手に入れました。
〔モノクマファイルに六山の名前が書かれていなかった〕

コトダマ【六山百夏の正体】を手に入れました。
〔六山百夏は未来機関から送り込まれた超高校級の工作員。
名前も偽名であり、本当の名前は別にあった〕

御影「……」

私はまず百夏の死体の方に歩み寄る。

百夏は私が見つけた時みたいに身体が半分桜の花びらに埋もれていた。

兵頭「目立つのはやはり、左胸の傷でしょうか……貫通しています」

御影「っ」

兵頭「どうやら、他に目立つ外傷はないようです」

心臓を一撃……それはどうやら正しいみたいだね。

兵頭「そういえば六山さん、パーカーを着ていませんが」

御影「あっ、それなら私が持ってるよ。昨日寝ちゃった私にかけてくれたみたい」

兵頭「ああ、なるほど……ならリュックもそちらに?」

御影「えっ」

そういえば……リュックがない。

百夏がいつも背負ってたあのリュック、図書館にあるのか後で確かめよう……

コトダマ【六山の死体】を手に入れました。
〔六山の死体は半分ほど桜の花びらに埋もれていた〕

コトダマ【左胸の傷】を手に入れました。
〔死因だろう六山の左胸の傷は身体を貫通している状態だった〕

コトダマ【六山のリュック】を手に入れました。
〔六山がいつも背負ってたリュックが消えていた〕

兵頭「……これは」

御影「どうしたの?」

兵頭「六山さんのスカートのポケットに、こんな瓶が」

【身体強化薬】……ってこれもしかして!?

兵頭「赤白の錠剤……おそらく、鞍馬さんが服用していた物ですね」

だけどなんでそれを百夏が……

コトダマ【身体強化薬】を手に入れました。
〔六山のスカートのポケットに入っていた薬。
鞍馬の使用していた物だと思われる〕

今回はここまで。
次回捜査終了です。

御影「他に何か……あれ?」

百夏の右手……ここだけ血塗れになってる。

兵頭「怪我をした、というわけではなさそうですね」

御影「じゃあこの血はどこから……」

なんだろう……なんか気持ち悪い。

死体がどうとかじゃなくて、今のこの状況が、なんだか……

御影「……」

コトダマ【六山の右手】を手に入れました。
〔六山の右手は手首まで血塗れになっていた〕

御影「百夏はこんなところ、かな……」

次は如月を調べよう。

佐場木「……」

埋もれていた桜の花びらから出されたのか寝かされてる如月の死体の方には佐場木がいた。

今、佐場木はどんな気持ちで調べてるんだろう……

佐場木「御影か」

御影「何かわかった?」

佐場木「いくつかある。まず如月のこの両手両足、そして首の骨折だが……これは生前のものだ」

御影「嘘……」

つまり如月は……

佐場木「両手両足と首を潰し、心臓を一撃……このような殺し方をする奴を俺は1人知っている」

御影「えっ、誰!?」

佐場木「ジャスティスジャッジ……この男如月怜輝の殺人鬼としての名だ」

御影「……!」

そういえば……最初の学級裁判で如月は素手で薄井の手を潰してた。

だけどなんで如月本人がその殺し方で……

コトダマ【如月の死体】を手に入れました。
〔如月は両手両足首の骨が折れていたが、それは生前のものらしい。
死体発見時に死体は桜の花びらに完全に埋もれていた〕

コトダマ【ジャスティスジャッジ】を手に入れました。
〔如月怜輝の殺人鬼としての名前。
犯罪者をターゲットに両手両足首を潰した後、心臓を素手で貫いて殺す殺人鬼〕

御影「他には、何かわかる?」

佐場木「どうやら如月は誰かと争ったようだ。いくつか殴られたような痕があった」

御影「……如月に?」

佐場木「そうだ」

如月が殴られた?

戦車相手にしても無傷だったあの如月が?

確か前如月は……

※※

如月『なるほど……脳のリミッターを外している僕と渡り合えた理由はそれですか』

※※

そう言ってたよね……

御影「……」

もし出来るとしたら、それは……

御影「……っ」

まただ、また気持ち悪さが……

いったいなんなのこれ……

コトダマ【争いの痕跡】を手に入れました。
〔如月の身体にはいくつか殴られたような痕があった〕

コトダマ【如月怜輝】を手に入れました。
〔如月は脳のリミッターを外し、戦車を相手にしても無傷なほど身体能力が異常に高い。
そんな彼と渡り合う手段は限られているが……〕

道掛「くそ、どうなってんだよ!百夏ちゃんと如月が揃って死んでるって!」

御影「ちょっと落ち着きなよ……私達は今それを調べてるんだから」

道掛「わかってるけどさ……」

バキッ

道掛「はっ?」

御影「ちょっと道掛、今何か踏んだ?」

道掛「いや……」

道掛が花びらを払うと……電子手帳が真っ二つになっていた。

道掛「うおわあっ!?ま、マジかよおい!」

道掛が慌てて拾うけど、もうどうしようもないのが見てすぐにわかる。

道掛「だ、誰のなんだ?牡丹ちゃんか!?」

御影「いや、私のはあるけど……」

その後みんなにも確かめていくけど千、津浦、佐場木も電子手帳は持っていた。

そして如月も持ってるのを佐場木が確かめた。

つまりこれは……百夏の電子手帳?

道掛「百夏ちゃんのやつだったのか……」

御影「……」

百夏の電子手帳が、偶然真っ二つになった?

なんだろう……すごく、引っ掛かる。

コトダマ【壊れた電子手帳】を手に入れました。
〔桜の花びらに埋もれていた電子手帳。
六山の物で道掛が踏んで壊したと思われるが……〕

御影「図書館に戻ってみようかな」

あそこにリュックがあるか確かめないと……

【図書館】

津浦「Ms.御影」

御影「津浦もここに来てたんだ?」

津浦「えぇ、Mr.如月がここからMs.六山を連れ出したなら何か手がかりがあるかと思いまして……しかしあれは」

津浦が見ているのは壁に書かれた【正義の裁きを執行する】って赤い文字。

津浦「ペンキで書かれているようですが……」

御影「これも如月が書いたのかな」

津浦「……」

御影「津浦?」

津浦「少し待っていてください」

そう言って津浦が入っていったのはあの黒いカーテンの一角。

そして戻ってきた津浦は一冊のファイルを持っていた。

御影「なにそれ?」

津浦「ジャスティスジャッジ……Mr.如月の犯行について書かれた資料です」

津浦が開いた中には読めないどこかの文字と何枚かの写真……

御影「っ……」

気分悪くなりそう……だけどきっと手がかりになるはず。

津浦「……変ですね」

御影「何が?」

津浦「Mr.如月の犯行には3つの特徴があります」

津浦「殺害した死体は必ず四肢と首の骨が砕かれ、心臓を貫かれている事」

津浦「絶対に犯罪者以外は殺害しない事」

津浦「そして現場に必ずその犯罪者の犯罪歴が克明に記された紙が貼られている事」

御影「……あれ?でもあそこにそんなのあった?」

津浦「それに、ジャスティスジャッジがこのような見せつける文を書いたという事例はありません」

津浦「これは……本当にMr.如月の書いたものなんでしょうか?」

この文字は……如月が書いたものじゃない?

コトダマ【壁の文字】を手に入れました。
〔図書館の壁に赤いペンキで書かれた【正義の裁きを執行する】という文字〕

コトダマ【ジャスティスジャッジの犯行の特徴】を手に入れました。
〔ジャスティスジャッジの犯行には殺害方法以外に2つの特徴がある。
絶対に犯罪者以外は殺害しない事。
現場に必ずその犯罪者の犯罪歴が克明に記された紙が貼られている事。
しかし紙はなく、赤いペンキで文字を残したという事例はない〕

御影「そうだリュック……」

百夏のリュックを探さないと。

※※

御影「ない……」

いったいどこにいっちゃったんだろう……

コトダマ【六山のリュック】をアップデートしました。
〔六山がいつも背負ってたリュックが消えており、図書館にも存在しなかった〕

御影「後は……そうだ、コテージ」

何か手がかり、あるかもしれないよね。

※※

【如月のコテージ】

御影「これ……」

赤いペンキの缶……これが如月のコテージにあるって事は……

御影「いや、ちょっと待って」

なんかおかしい……

御影「他にも、何か……あっ」

机の上に大切そうに置いてあるバッジが目に入る。

これヒーロー物だよね……如月なら不自然じゃないだろうけど。

御影「でもこれ……多分3回目の学級裁判で」

※※

赤穂『じゃあ……教えてください』

如月『なんでしょう?』

赤穂『如月さんの妹さんのバッジがなんで発電所にあったんですか』

如月『……!』

御影『妹の、バッジ?』

※※

御影「兄さんが、言ってたやつだよね?」

如月の妹のバッジ……確か死んでるってモノクマが言ってたけどなんでそれがあるんだろう。

コトダマ【赤いペンキ】を手に入れました。
〔如月のコテージにあった赤いペンキの缶〕

コトダマ【ヒーローのバッジ】を手に入れました。
〔死んだ如月の妹が持っていたらしいバッジ。
学級裁判の様子を見るに本来はないもののはずだが……〕

御影「次は百夏のコテージ……」

ガチャガチャ

御影「えっ」

コテージが、開かない?

御影「ちょっとモノクマ!」

モノクマ「はいはい、なんでしょう!」

御影「百夏のコテージが開かないんだけど」

モノクマ「……」

御影「百夏は被害者だから調べていいはずでしょ?早く開けてよ」

モノクマ「それは無理です!だって壊れたから!」

御影「は!?」

モノクマ「いやー、修理するにしてもその間に学級裁判始まっちゃうし、今回は諦めて!」

御影「待ちなよ!ちょっと!」

壊れたって……

コトダマ【六山のコテージ】を手に入れました。
〔捜査中六山のコテージに入る事が出来なかった。
モノクマいわく鍵が壊れたらしい……〕

御影「……」

入れないものは、仕方ないよね。

そう思って踵を返した私の前に……

モノクマ「……」

またモノクマが現れた。

御影「モノクマ……今度は何?」

モノクマ「……」

モノクマは何も言わずに封筒を私に差し出す。

それを受け取ると、モノクマはそのまま姿を消した。

御影「なんなのもう……」

不満を漏らしながら私は封筒を開ける。

そこには1枚の紙と……電子手帳が入っていた。

御影「これ……」

【経過は順調みたいで何よりだ。
まあ、今回の手術は初歩も初歩だからミスする心配はなかったけどな。
これからお前がどんな人生を歩むか、楽しみにしてるよ。
全く、馬鹿な親を持つと苦労するよな?】

御影「……」

手紙を読んだ私は電子手帳を起動する。

そこに出た名前……

それを見て、私は。

キーンコーン、カーンコーン…

モノクマ「タイムアップー!」

モノクマ「そろそろ学級裁判を始めましょう!」

モノクマ「オマエラ中央の島に集合してくださーい!」

ブツン!

御影「……」

行こう。

【中央の島・未来機関第20支部】

佐場木「来たか」

道掛「牡丹ちゃん、遅いぜ!」

御影「うん、ごめん」

津浦「……もうこれしか、いないんですね」

兵頭「そして、さらに減る事になるんでしょうか……」

御影「千、それ……」

千の首に巻かれているのは、如月のマフラー。

あいつが最期まで着けていた……遺品。

兵頭「思った以上に、彼を失った事が堪えているみたいです……牡丹さんにはあんな風に言ったのに」

御影「……」

今、千は戦ってる……だったら私は1つしか言えない。

御影「千、私達もいるからね」

兵頭「……はい」

千の頷きと同時に、鍵の開く音。

佐場木「行くぞ」

佐場木を先頭に私達はエスカレーターを降りていく。

御影「佐場木、百夏の死体は調べた?」

その道中。

佐場木「ああ、当然調べた」

私は確認する。

御影「百夏の頭に、手術の痕なかった?」

最後のピースを。

佐場木「……年月が経つのか微かにだが、あったな」

御影「……ありがとう」

コトダマ【六山の手術痕】を手に入れました。
〔六山の頭にあった年月の経つ手術の痕〕

【学級裁判場】

モノクマ「……うーん」

佐場木「何を唸っている」

モノクマ「いやさぁ、オマエラさっきボクと会わなかった?」

津浦「何を言っているんですか?」

モノクマ「なんか記憶が飛んでるというか……」

道掛「意味わかんねえ」

モノクマ「まっ、いっか!じゃあオマエラ席についてください!」

モノクマに促されるまま私達は席につく。

……六山百夏、如月怜輝。

また2人の仲間を私達は失った。

そしてその犯人は……

佐場木「今回の手口……」

津浦「……疑問が多いですね」

道掛「犯人は絶対見つけてやるからな!」

兵頭「……」ギュッ

必ずいるんだ。

御影「……」

そして始まる学級裁判。

だけど私だけは知っている。

この学級裁判は普通じゃない。

それはあの手紙と。

御影「力を貸して……兄さん」







【如月怜那】

――この電子手帳が、証明してる……!












コトダマ【謎の手紙】を手に入れました。
〔モノクマに渡された謎の手紙。
内容は>>103

コトダマ【電子手帳】を手に入れました。
〔モノクマに渡された電子手帳。
起動すると【如月怜那】という名前が表示された〕






今回はここまで。

次回学級裁判開廷。

・コトダマ一覧表

【モノクマファイル5】
【モノクマファイルの記述】
【六山百夏の正体】>>91

【六山の死体】
【左胸の傷】>>92

【身体強化薬】>>93

【六山の右手】>>95

【如月の死体】
【ジャスティスジャッジ】>>96

【争いの痕跡】
【如月怜輝】>>97

【壊れた電子手帳】>>98

【壁の文字】
【ジャスティスジャッジの犯行の特徴】>>99

【六山のリュック】>>100

【赤いペンキ】
【ヒーローのバッジ】>>101

【六山のコテージ】>>102

【六山の手術痕】>>104

【謎の手紙】
【電子手帳】>>107

六山百夏と如月怜輝の死。
黒幕殺しを宣言していた如月がなぜ死んだのか。
なぜ六山が殺されたのか。
謎多き中御影は確信していた。
この裁判、何かがおかしいと。


     【学級裁判開廷!】

モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

道掛「結局何度考えても俺にはさっぱりだ……なんで如月が死んじまったんだ?」

佐場木「それを話し合うためにも、まずは事件の流れを追う必要がある」

津浦「そうですね……Ms.御影、よろしいですか?」

御影「……」

兵頭「牡丹さん?」

御影「あっ、えっ?なに?」

兵頭「昨日の夜の事をお話いただけますか?私達は病院にいたので……」

御影「あっ、そうだね……」

とはいっても、私も詳しい事がわかってる訳じゃないんだよね……

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【モノクマファイル5】
【六山の死体】
【壁の文字】

御影「昨日私と百夏は図書館にいたんだ」

御影「色々話してる内に寝ちゃって……目を覚ましたら百夏がいなくなってて」

兵頭「そこに私がやって来た……」

佐場木「そして俺達に如月が動いたと話がきたわけか」

津浦「【眠っている間にMs.六山は】……」

道掛「んっ?ちょっと待ってくれよ」

道掛「牡丹ちゃんは、【百夏ちゃんが如月に直接さらわれたのを見た】とかいうわけじゃないんだよな?」

御影「……まあ、そうだね」

道掛「だったら如月が何かしたとは限らないんじゃねえか?」

道掛「【百夏ちゃんが偶然外に出てった】って可能性もあるはずだぜ!」

【百夏ちゃんが偶然外に出てった】←【壁の文字】

御影「それは違ってるよ!」


御影「ううん、間違いなく図書館で何かがあったはずだよ」

御影「図書館の壁には【正義の裁きを執行する】って赤い文字があったからね」

道掛「佐場木?」

佐場木「俺の事じゃない」

兵頭「あの赤い文字は……血だったのでしょうか?」

津浦「いえ、調べましたがあれはペンキだったようです」

道掛「わざわざペンキでそんなもん書いたのか?」

御影「そのペンキだけど……一応見つかったんだよね」

佐場木「いったいどこにあったんだ?」

赤いペンキ……それがあったのは。

【赤いペンキ】

御影「これだよ!」


御影「如月のコテージ……そこに赤いペンキの缶があったんだ」

兵頭「如月さんの、コテージに……」

津浦「つまり、あの文字はMr.如月が書いたと……しかし」

佐場木「疑問があるな」

道掛「わざわざコテージに戻しに行った事だな!俺にもわかるぞそれは!」

御影「そうなんだよね。あの文字を如月が書いたなら、如月は百夏をさらって文字を書いてコテージに缶を置きに行った事になるんだ」

兵頭「六山さんを黒幕と睨んでいたなら、そんな悠長な事をしていたのは……不自然です」

津浦「万が一ルールに抵触して誰かがまた亡くなるのを恐れた、という可能性もあるのでは?」

道掛「そういや、ポイ捨ては禁止だったもんな!」

御影「ううん、それはないと思う。だってルールには……」

※※

2…共同生活を快適に過ごすため道端や海などにポイ捨てをする事を禁じます。

※※

御影「ってあったわけだから……」

佐場木「おそらく屋内でのそれは禁止されていない。苗木の事件を思い出せばわかるはずだ」

兵頭「苗木さんは薬をばらまいた……鞍馬さんに拾わせるためとはいえ捨てたのは間違いありませんね」

道掛「じゃあ置きっぱなしにしても問題はなかったわけか……」

佐場木「文字について疑問は残るが……一時それは保留だ」

兵頭「話す事は他にもたくさんありますからね」

御影「じゃあ次は、私が2人を見つけた時の話をするよ」

津浦「はい、お願いします」

御影「それぞれ島を調べるってなった後私はスプリングアイランドに行ったんだけど……」

御影「桜の木に寄りかかってる百夏を見つけたんだ」

御影「そしてみんなを呼ぼうって行こうとしたら……反対側に妙に花びらが盛り上がってる部分があって」

御影「それで花びらを払ったら……中に如月の死体があったんだよ」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【ジャスティスジャッジ】
【六山の右手】
【如月怜輝】

兵頭「発見時の状況はこれでわかりましたが……」

津浦「ここから次は何を話しましょうか」

道掛「なあ、1つ気になる事があんだけど」

佐場木「なんだ」

道掛「モノクマファイルには如月の骨が折れてるってあったろ?」

道掛「あれって何でなんだ?」

津浦「[抵抗を防ぐため]では?」

佐場木「[あれそのものに意味があった]からだ」

兵頭「しかしそれは……」

如月の骨折……あれは、確か。

[あれそのものに意味があった]←【ジャスティスジャッジ】

御影「それに賛成だよ!」


御影「あれは、ある殺人鬼の殺し方だったんだよ」

道掛「殺人鬼!?そんな奴がまだいたのか!?」

兵頭「ですがその殺人鬼の名前は……」

佐場木「【ジャスティスジャッジ】……如月怜輝の事だ」

道掛「はっ?つまり如月は如月の殺し方で死んでたって事か?」

津浦「そう、なりますね」

道掛「いやいやいやいや、意味わかんねえよ!?なんで如月が如月に殺されたみたいになってんだ!?あいつ実は2人いたのか!?」

津浦「……自殺、だったのでは?」

佐場木「自殺だと?」

津浦「ワタシ、気になっていたんです。Mr.如月が黒幕を殺すと宣言した時」

※※

如月『……皆さん、安心してください。僕はこのコロシアイを必ず終わらせます』

如月『それが僕の、最後の仕事ですから』

※※

津浦「そう口にしたのを」

兵頭「最後……」

津浦「Mr.如月はMr.赤穂を見殺しにしました」

津浦「そんな自分を許せなかった……可能性はあるのでは?」

御影「如月が自殺……?」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【ジャスティスジャッジの犯行の特徴】
【身体強化薬】
【争いの痕跡】

津浦「Mr.如月は自殺だった……その可能性があります」

道掛「【赤穂を見殺しにした】事で自分を殺したってのかよ!」

兵頭「その前に六山さんを黒幕と睨んで殺害した……」

佐場木「……あの殺人鬼が自殺か。考えられないとは言わんが」

兵頭「確かに【殺害方法、ターゲット……全て如月さんの犯行を示しています】が……」

道掛「自分で骨折ったのか……どこまで徹底してんだよ!」

如月が自殺……本当にそうなの?

1つある、疑問……それを言ってみよう。

【殺害方法、ターゲット……全て如月さんの犯行を示しています】←【ジャスティスジャッジの犯行の特徴】

御影「それは違ってるよ!」


御影「待って。如月の犯行なら足りない事があるよ」

兵頭「足りない事ですか?」

御影「ジャスティスジャッジ、如月の犯行には3つの特徴がある」

御影「1つ、殺す時は両手両足首を折ってから心臓を貫く」

御影「2つ、ターゲットは犯罪者だけ」

御影「3つ、ターゲットの罪を書いた紙がある事」

道掛「紙?そんなのあったか?」

佐場木「なかったな」

兵頭「今回だけ、省いた可能性は……」

御影「でもペンキで文字を書く余裕はあったんだよ?」

津浦「……そういえばあの文字は今までの犯行にはなかった特徴でした」

佐場木「如月の犯行に例外があった事はない。今回だけ例外があったとは考えにくい」

道掛「ああもう、わけわかんねえ!いったい何がどうなってんだよ!」

道掛「如月が百夏ちゃんを黒幕だって殺してその後自殺したんじゃねえなら、誰が如月殺せんだ?」

道掛「薬飲んでも佐場木は手も足も出なかったんだぜ!?」

如月が自殺じゃないなら、誰に殺されたか……

御影「……」チラッ

モノクマ「うぷぷ」

まだ駄目、これを出しても言い逃れされる。

だったらまずは……アイツの思惑に、あえて乗らないと……!

佐場木「……如月が死んでいた以上、一筋縄ではいかないのはわかりきっていた事だ」

兵頭「如月さんの自殺ではないだろう……それがわかっただけでも大きいですね」

津浦「では次は……」

道掛「百夏ちゃんについて話そうぜ!俺すげえ気になってる事あんだよ!」

道掛の気になってる事……それはあれかな。

【モノクマファイルの記述】

御影「これだよ!」


御影「それって、モノクマファイルに百夏の名前がなかった事?」

道掛「そうそう!今までの事考えるとモノクマファイルに書かれてなかった事ってかなり重要だったろ?」

佐場木「それは俺も気になってはいた。なぜ六山の名前というあからさまなものが書かれていないのか」

御影「……」

百夏の名前……私はそれについての情報を持ってる。

慎重に、それを出していかないと……

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【六山百夏の正体】
【六山の右手】
【六山の死体】

佐場木「なぜ六山の名前がモノクマファイルに書かれていないのか……」

兵頭「六山さんの名前が事件の鍵を握る、という事なんでしょうか」

津浦「しかし名前が事件の鍵を握るというのはどういう……」

道掛「わかった![百夏ちゃんは六山百夏じゃなかった]んだ!」

津浦「[Ms.六山が誰かと入れ換わっている]……?」

兵頭「そんな馬鹿な……私達の誰も彼女と入れ換われるとは思えません」

佐場木「他に可能性があるとするならば……」

[百夏ちゃんは六山百夏じゃなかった]←【六山百夏の正体】

御影「それに賛成するよ!」


御影「道掛の言う通りだよ」

道掛「マジか!」

兵頭「牡丹さんも入れ換わり説が正しいと言うんですか?」

御影「ううん、そうじゃない。でも百夏は六山百夏じゃなかったんだよ」

佐場木「……偽名か」

津浦「偽名……六山百夏という名前は本名ではなかったと?」

御影「そうだよ。私は百夏からそれを直接教えてもらったから間違いないよ」

道掛「じゃあ牡丹ちゃんは百夏ちゃんの本名知ってんのか!」

御影「……ううん、百夏は六山百夏として接してほしいって言ってたから」

道掛「そうか……そう上手くはいかねえか」

津浦「しかしなぜ偽名を?」

御影「それはきっと、百夏の才能が関係してたんだと思う」

佐場木「名前だけではなく、才能も偽っていたという事か……御影、お前はそれを知っているのか?」

御影「うん」


御影「百夏の才能は、【超高校級の工作員】だよ」

道掛「超高校級の……」

津浦「工作員、ですか?」

御影「本人がそう言ってた。未来機関から送り込まれたって」

兵頭「未来機関が?いったいなぜそんな……」

御影「それは……ごめん、わかんない」

百夏の目的、絶望の残党がいるかもしれないって話。

それを私は言わなかった。

モノクマ「……」

モノクマ、その向こうにいるはずの黒幕。

そいつを追い詰めるためにも今はまだ……

佐場木「目的はどうあれ、六山が偽名を使っていたのは事実だ」

佐場木「それを奴が知っていたのもな」

モノクマ「うぷぷ、何の事かな?」

佐場木「それを踏まえて議論を再開するぞ」

道掛「おう!」

御影「……」

捜査で感じていた気持ち悪さ、そして出てくる証拠……

それの示すものがきっとただ1つ……

問題は、その先……!

     【学級裁判中断!】

一旦ここまでで。







     【学級裁判再開!】






佐場木「六山が偽名を使っていた【超高校級の工作員】だった……」

兵頭「問題はそれをモノクマファイルから隠していた事……」

津浦「隠された名前……どうにか知る方法はないでしょうか」

道掛「あっ、そうだ!だったら電子手帳見ればいいんじゃねえのか!」

道掛「あれ、電源入れたら名前出んだろ!」

御影「……」

佐場木「……」

兵頭「……」

津浦「……」

モノクマ「ええー……」

道掛「な、なんだよ?なんでそんな何言ってんだお前って目で見るんだ!?」

道掛は忘れちゃったみたいだね……百夏の電子手帳が今どういう事になってるか。

【壊れた電子手帳】

御影「これだよ!」


御影「ねぇ、道掛……捜査中に電子手帳壊したの覚えてる?」

道掛「うっ……そんな事もあったな」

御影「……それ、誰の電子手帳って事になったっけ?」

道掛「そりゃ、確か百夏ちゃ……」

道掛「…………」

道掛「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?百夏ちゃんの電子手帳、俺がぶっ壊しちまったじゃねえかよぉぉぉぉ!?」

佐場木「思い出したか」

兵頭「道掛さん……」

津浦「どうリアクションすればいいのでしょうか……」

御影「と、とにかく!電子手帳から名前を探るのは無理だから……違う方向から百夏の名前を探ってみようよ」

佐場木「他に手段もないだろうな……」

道掛「うぐぐ……」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【六山のコテージ】
【六山の手術痕】
【争いの痕跡】

佐場木「六山の名前……それを探る方法はあるか」

兵頭「【電子手帳は壊れてしまいました】から無理ですね」

道掛「わ、悪い……」

津浦「ま、まあ、Mr.道掛もわざとではなかったわけですから……」

津浦「そうです、Ms.六山のコテージになら手がかりがあったのでは?」

津浦「Ms.六山は被害者、【コテージにも入れたはず】ですよ」

道掛「おぉ、さすが琴羽ちゃん!」

百夏のコテージ……そこを調べられたら、よかったんだけどね。

【コテージにも入れたはず】←【六山のコテージ】

御影「それは違ってるよ!」


御影「残念だけど……百夏のコテージには入れなかったよ」

津浦「な、なぜですか?」

御影「モノクマいわく、鍵が壊れたらしいけど」

佐場木「鍵が壊れただと?」

モノクマ「そうだよ!壊れちゃったら入れないでしょ?修理にも時間がかかるし!」

兵頭「……怪しいですね」

道掛「すっげえ怪しい」

津浦「怪しいです」

佐場木「状況証拠は揃っているな」

モノクマ「なにさなにさ!クマをまるで悪者みたいに!」

モノクマ「ボク以上にまともなクマなんていないんだぞー!」

御影「……」

モノクマの言葉は無視するとして……このままだと百夏の名前を証明出来ないね。

だったらここは先に……

御影「ねぇ、これも保留にして次の話題に行かない?」

佐場木「袋小路にいるままよりはマシか……」

道掛「でも何を話すんだよ?」

御影「今までは図書館の文字とか百夏の正体を話してたから……死体から、議論しようよ」

兵頭「そちらはあまり触れてませんでしたね……」

モノクマ「うぷぷ、頑張ってねー」

津浦「腹が立ちますね……」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【六山の死体】
【如月の死体】
【如月怜輝】

佐場木「死体について話し合うぞ。疑問点があればあげてみろ」

兵頭「やはりなぜ如月さんだけ骨を折られていたか……」

道掛「そもそも如月と百夏ちゃんってどっちが先に殺されたんだ?」

津浦「やはり[六山さんが先に殺害された]のでは?」

兵頭「[如月さんが先に殺害された]のは、考えにくいですよね」

佐場木「殺された順番か……モノクマファイルからでは特定は不可能だな」

道掛「くそっ、また袋小路かよ!」

殺された順番……それはきっと。

[如月さんが先に殺害された]←【如月の死体】

御影「それに賛成だよ!」


御影「千、多分殺されたのは如月が先だよ」

兵頭「如月さんが先に……」

道掛「ちょ、ちょっと待ってくれよ!なんでそんなはっきり言えるんだ!?」

御影「……私が見つけた時、如月の死体は花びらに埋もれてたんだよ」

佐場木「確かに花びらを払ったと言っていたな」

そう、そこにもう1つ……!

【六山の死体】

御影「これだよ!」


御影「そして百夏の死体の方は半分埋もれてる状態だった……」

兵頭「全て埋まっていた如月さんと、半分埋もれていた六山さん……なるほど、それなら殺された順番は如月さん、六山さんで正しいようですね」

津浦「しかし、どうやってMr.如月を……」

如月と犯人の間に何があったか……

少し考えてみようか……

【ショットガンコネクト開始!】

まず、最初に考えるべきは……

コトダマ>>109
【争いの痕跡】
【如月怜輝】
【六山百夏の正体】

課題
【今回被害者になったのは?】
【今回クロになったのは?】
【今回死ななかったのは?】

【如月怜輝】―【今回被害者になったのは?】

今回被害者になったのは如月……

だけど如月を殺すなんて難しい……

コトダマ>>109
【争いの痕跡】
【ヒーローのバッジ】
【モノクマファイル5】

【如月怜輝】―【今回被害者になったのは?】―【争いの痕跡】

だけど争いの痕跡があった。

如月と犯人は争ったはず……

つまり……!

結論
【如月は正面から殺された】
【如月は不意討ちで殺された】
【如月は遠くから殺された】

【如月は正面から殺された】

御影「これが私の結論だよ!」


御影「如月は、正面から殺されたんだと思う」

佐場木「正面から……あの殺人鬼を殺したか」

御影「佐場木も争った痕があるのは見たでしょ?」

佐場木「にわかには信じがたいが、あれは間違いなく争いがあったのを示す証拠だな」

兵頭「……」

津浦「Mr.如月が正面から殺されたなんて……」

御影「でも他に可能性はないよ。如月は……」


道掛「ちょっと待ったぁ!」反論!


道掛「いやいや、待ってくれよ牡丹ちゃん!やっぱそれはおかしいって!」

御影「……」

道掛「牡丹ちゃんだってわかってるはずだろ!」

道掛「如月が正面から殺されたなんてあり得ないってな!」

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>109
【身体強化薬】

道掛「如月の強さは俺達皆見てきたはずだ!」

道掛「あいつを正面から殺すなんて無理だって!」

御影「如月は確かに強いよ。だけど無敵だったわけじゃない」

御影「私達は如月と対等にやりあった人間を知ってるはずだよ」

道掛「それ、鞍馬の事だよな?」

道掛「そりゃ、鞍馬なら出来たかもしんねえけど……でもあいつはもういねえし」

道掛【もう如月と戦う手段なんかどこにもねえんだって!】

【もう如月と戦う手段なんかどこにもねえんだって!】←【身体強化薬】

御影「その反論、断ち切るよ……!」


御影「手段は、あったよ」

道掛「はっ!?」

御影「身体強化薬……鞍馬が如月とやりあえた理由になった薬の瓶が現場にあったんだよ」

津浦「身体強化薬……Mr.苗木も相当な力を発揮していましたね」

佐場木「瓶ごとあったなら、鞍馬のように立ち回る事も可能だったろう」

兵頭「ま、待ってください!牡丹さん、しかしその薬があったのは……」

御影「……うん、この薬があったのは」

御影「百夏のスカートのポケット、だった」

道掛「……ま、まさかじゃあ!」

御影「……」チラッ

モノクマ「盛り上がってきたみたいだね!そろそろ学級裁判も大詰めかな!」

御影「……そう、この事件の犯人は」







御影「百夏、だったんだよ」






津浦「Ms.六山が今回の事件の犯人……!?」

兵頭「殺された順番、怪我の具合……確かにそう考えると自然ではありますが」

佐場木「最初に話した六山を殺した如月が自殺したのではなく、如月を殺した六山が自殺した……」

道掛「で、でもなんでだ!百夏ちゃんは黒幕じゃないんだろ!なんであそこまでして如月を殺す必要があるんだよ!?」

御影「それが、百夏の名前を隠した理由なんじゃない?」

佐場木「六山が如月を殺した動機……名前がわかれば明らかという事か」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>109
【ヒーローのバッジ】

道掛「百夏ちゃんが如月を殺したなんて信じらんねえよ……!」

兵頭「状況だけなら、可能性はありますが……」

津浦「【名前さえわかればそれも納得出来る】のでしょうか……」

道掛「でもさっきは話し合っても何もわかんなかったじゃねえか!」

佐場木「【手がかりがない】以上、それも無理はない」

百夏の本当の名前……

それが、この事件を紐解くきっかけになるはずだよ……!

【手がかりがない】←【ヒーローのバッジ】

御影「それは違ってるよ!」


御影「百夏の本名……その手がかりはあるよ」

佐場木「なに?」

御影「如月のコテージにあったこのバッジ……これがそうだよ」

兵頭「そのバッジは」

御影「3回目の学級裁判、如月が犯人じゃないかって話になったの覚えてる?」

津浦「そんな事もありましたね……そういえばあの時Mr.赤穂は」

※※

赤穂『じゃあ……教えてください』

如月『なんでしょう?』

赤穂『如月さんの妹さんのバッジがなんで発電所にあったんですか』

如月『……!』

御影『妹の、バッジ?』

赤穂『ここに妹さんがいるって言うんですか?』

※※

津浦「そう詰め寄って……っ、まさか!?」

御影「そう、兄さんは……あの時真実の一端を口にしてたんだ」

御影「六山百夏……その正体は!」







御影「如月怜輝の妹だったんだよ!」






道掛「も、も、百夏ちゃんが……如月の妹ぉ!?」

御影「そう考えれば辻褄があうよ!如月が兄さんを見殺しにしたって聞いた時の百夏の態度も!」

※※

御影『……えっ?』

私が立ち上がるよりも早く。

私が何かを叫ぶよりも早く。

六山『……』

六山が如月の頬にビンタをしていた。

……なんで?

六山『な、なんで、そんな……!』ポロポロ

なんで、六山泣いてるの?

如月『六山さん……?』

六山『それだけは、その口からそんな言葉だけは聞きたくなかったよ……!』

※※

御影「百夏が、あんなに如月を止めたがってたのも」

※※

六山『……させない』

御影『えっ、六山?』

六山『絶対にさせないよ。もう人なんて殺させない』

如月『……相手は黒幕ですよ?』

六山『それでも!わたしは絶対許さないから……!』

※※

御影「百夏は如月を、自分のお兄ちゃんをどうしても止めたかったんだ……」

佐場木「……待て御影。お前のその推理には大きな矛盾がある」

御影「矛盾?」

佐場木「前にモノクマは言っていたはずだ」

※※

モノクマ『如月クン、キミ御影さんと同じ才能の妹さんがいたよね?』

モノクマ『だけどその妹さんはもういない!死んでしまってる!』

※※

佐場木「そして如月もそれは認めていたはずだ」

※※

如月『モノクマの言う通り、僕は妹が生きて仲睦まじくしている赤穂さんに嫉妬していました』

※※

兵頭「そうです……私も、如月さんの妹さんの話は以前聞いていましたが、如月さんは妹は殺されたとはっきり……」

御影「……本当に、そうだったのかな?」

津浦「どういう意味ですか?」

御影「如月の妹は……本当に殺されたの?」

道掛「で、でも如月がそう言ってたなら……」

如月の妹が生きていたかもしれない……それを示すんだ!

【謎の手紙】

御影「これだよ!」


御影「ここにある手紙が、その証明になるかも」

モノクマ「……!」

佐場木「なんだその手紙は?」

御影「ちょっとね……とにかく中身を聞いて」

【経過は順調みたいで何よりだ。
まあ、今回の手術は初歩も初歩だからミスする心配はなかったけどな。
これからお前がどんな人生を歩むか、楽しみにしてるよ。
全く、馬鹿な親を持つと苦労するよな?】

兵頭「手術……馬鹿な親……」

道掛「これが、百夏ちゃんの事言ってるのか?」

御影「千、如月から聞いた妹さんの話って……」

兵頭「親代わりだった施設の人が、妹さんをマッドサイエンティストに引き渡したと……」

津浦「馬鹿な親、ですか」

御影「それに、手術って単語も百夏と繋がるんだ」

【六山の手術痕】

御影「これだよ!」


御影「佐場木、百夏の頭には手術の痕があったんだよね?」

佐場木「ああ」

兵頭「その手紙が、六山さん宛なのは疑いようがなさそうですね」

モノクマ「……あのさ、ちょっといい?」

道掛「なんだよ、急に!」

モノクマ「御影さん、その手紙どこで手に入れたの?」

御影「はっ?何言って……」

渡したのはあんたでしょという言葉を飲み込む。

……まさか、これを渡したのはモノクマの意思じゃない?

そういえば裁判前……

※※

モノクマ『……うーん』

佐場木『何を唸っている』

モノクマ『いやさぁ、オマエラさっきボクと会わなかった?』

津浦『何を言っているんですか?』

モノクマ『なんか記憶が飛んでるというか……』

※※

じゃあもしかしたら……この手紙と【アレ】はモノクマの想定外?

私はこれも含めて、あいつが作った筋書きだと思ってたけど……

だとしたら……いけるかもしれない!

御影「百夏のパーカー、だよ」

モノクマ「……万が一考えてたってわけね。あのスパイらしいやり口だよ」

モノクマ「まっ、いいや!じゃあ続きを……」







御影「もう、いいよ……」






モノクマ「んっ?いいって何が?」

御影「百夏が犯人なのは揺るがない。もうどうしようもない」

津浦「そう、ですね……」

モノクマ「あっ、そう?じゃあ投票……」

御影「その前に!知ってるなら教えてよ!」

御影「百夏の、本当の名前……」

モノクマ「はい?」

御影「私、百夏から本名教えてもらえなかった。私が思ってたより、百夏は……私を信用してなかったんだ」

兵頭「牡丹さん……」

御影「だから、だからせめて知りたい!投票する前に、あの子の本当の名前……」

道掛「……」

御影「お願い、だから……」

佐場木「……だそうだが?」

モノクマ「……うぷ」

モノクマ「うぷぷぷぷ!いいねぇ、その絶望した感じ!」

モノクマ「わかったよ!そんな信用してもらえなかった可哀想な御影さんに六山さんの本名教えてあげるよ!」







モノクマ「彼女の本名は如月怜那!」

モノクマ「お察しの通り如月怜輝クンの妹でーす!」






御影「…………」

モノクマ「うぷぷ!満足した?これが御影さんが教えてもらえなかった名前だよ!」

佐場木「如月怜那……」

兵頭「まさか本当に如月さんの妹さんが……」

道掛「百夏ちゃ、いや、怜那ちゃんは兄貴を殺しちまったって事かよ……」

津浦「救われない、結末ですね……」

モノクマ「おやおや、全員暗くなっちゃった!」

御影「…………」

モノクマ「ねぇ、御影さんは今どんな気持ち?絶望した?絶望しちゃった?」

御影「…………今の、気持ち?」

モノクマ「そうそう!」

御影「そう、だね……」







御影「確信したよ」

御影「百夏は、怜那は犯人じゃないってね!」






モノクマ「…………は?」

道掛「ちょ、ちょっとどういうこった!?」

御影「ごめんみんな……実は私1つ隠してた事があるの」

津浦「隠してた事?」

御影「私、この裁判は茶番だと思ってた」

佐場木「茶番だと?」

御影「捜査の時に気持ち悪かったんだ。証拠全部が怜那を犯人だって指し示してるみたいで」

兵頭「それは確かに……」

御影「怜那が如月の妹だって突き止めて、あまりに悲しい事件として私達が絶望する……それがモノクマの筋書きだって思ってた」

モノクマ「……」

御影「モノクマ、さっきの質問に本当の答え返すよ」

御影「あの手紙は、あんたから貰ったんだよ!」

モノクマ「なんだって……!?」

御影「この際何があったかは関係ない!重要なのは、あんたにとってこの手紙が想定外だった事!」

モノクマ「……」

御影「だったらこれも……あんたの想定外だよねモノクマ!」

【電子手帳】

御影「これだよ!」


御影「ここにある電子手帳……誰のだと思う?」

道掛「牡丹ちゃんのじゃないのか?」

御影「私のならここにあるよ」

モノクマ「まさか!?」

御影「これはね」ピッ

【如月怜那】

御影「怜那の電子手帳だよ!」

モノクマ「なんでオマエがそれを持ってるんだ!!」

御影「言ったでしょ?あんたが私に渡したんだよ!」

モノクマ「そんなのこっちは……!」

佐場木「待て!如月怜那の電子手帳があるなら……」

佐場木「あの現場にあった壊れた電子手帳は誰の物だ!」

津浦「あっ……!」

兵頭「私達は全員持っています!如月さんの電子手帳も確認しました!」

道掛「それで怜那ちゃんのがそこにあるなら……!」

御影「そう!事件があった時、現場にはもう1人いたんだよ!」

モノクマ「……」

御影「持ってる私達を除外するなら、答えは1つしかない!」

御影「モノクマ、ううん、黒幕!」

御影「あんたが如月と怜那を殺した犯人なんだよ!」

モノクマ「……」

御影「言い訳はある?」

モノクマ「……」

道掛「何か言えよこの野郎!」

モノクマ「…………」







モノクマ「タイムアッーーーープ!!」






御影「は……」

モノクマ「さあ、投票タイムに入ろうか!オマエラ、さっさと投票しちゃってくださーい!」

道掛「ま、待てよ!投票って言ったって……」

津浦「だ、誰に投票すれば……っ、なんですかこれ!?」

津浦の言葉に投票画面を見る。

そこには……生き残った私達以外の投票先が、なくなっていた。

佐場木「何の真似だこれは!!」

モノクマ「えー?如月怜那さんは犯人じゃないんでしょ?だったらオマエラの中にしか犯人いないじゃん!」

御影「ふ、ふざけないでよ!こんな……」

モノクマ「あっ、そういえばさぁ」

モノクマ「死亡推定時刻の頃って御影さん以外病院にいたよね?」

御影「……!?」

モノクマ「第一発見者も御影さんだし、ポケットに薬突っ込んだりとかも出来るんじゃない?」

御影「あっ、なっ」

まさかこいつ……私を、殺そうとしてるの……!?

モノクマ「それを踏まえて投票してくださーい!ほら、後一分だよ!」

佐場木「くそっ!」

津浦「ど、どうしたら……」

道掛「ふざけんなよちくしょうがぁ!!」

御影「……」

こんな……なりふり構わないで来るなんて……

私、どうしたらいいの……?







兵頭「私に投票してください!!」






御影「せ、千……?」

兵頭「私は牡丹さんを呼びに皆さんと離れていた時間がありました!」

兵頭「薬も見つけたのは私!見せかける事は可能です!」

道掛「せ、千ちゃん何を……」

兵頭「急いでください!早く!」

モノクマ「そうだよー!ほら投票しないとおしおきしちゃうからね!」

津浦「っ、うううっ……!」

モノクマ「後30!」

道掛「くそっ!くそっ!ちくしょーーーー!!」

モノクマ「20!」

佐場木「この腐れ外道が……!」

モノクマ「10!9!」

兵頭「牡丹さん!急いでください!」

御影「や、やだよ!なんで!千は犯人じゃないのに!」

モノクマ「8!7!」

兵頭「これが一番いい方法なんです……さぁ、早く!」

御影「嫌だ!やだやだやだ!兄さん、怜那、千までいなくなったら私……!」

モノクマ「6!5!4!」

兵頭「牡丹さん」

御影「あっ」

モノクマ「3!2!1!」

兵頭「ありがとうございます」

そう言って牡丹は、私の手を掴んで自分に……投票させた。







         VOTE

      兵頭 兵頭 兵頭

       チャッチャッチャー!













     【学級裁判閉廷!】






今回はここまで。

次回おしおきです。

>>158訂正

御影「せ、千……?」

兵頭「私は牡丹さんを呼びに皆さんと離れていた時間がありました!」

兵頭「薬も見つけたのは私!見せかける事は可能です!」

道掛「せ、千ちゃん何を……」

兵頭「急いでください!早く!」

モノクマ「そうだよー!ほら投票しないとおしおきしちゃうからね!」

津浦「っ、うううっ……!」

モノクマ「後30!」

道掛「くそっ!くそっ!ちくしょーーーー!!」

モノクマ「20!」

佐場木「この腐れ外道が……!」

モノクマ「10!9!」

兵頭「牡丹さん!急いでください!」

御影「や、やだよ!なんで!千は犯人じゃないのに!」

モノクマ「8!7!」

兵頭「これが一番いい方法なんです……さぁ、早く!」

御影「嫌だ!やだやだやだ!兄さん、怜那、千までいなくなったら私……!」

モノクマ「6!5!4!」

兵頭「牡丹さん」

御影「あっ」

モノクマ「3!2!1!」

兵頭「ありがとうございます」

そう言って千は、私の手を掴んで自分に……投票させた。

モノクマ「うぷぷ、お見事!大正解!」

モノクマ「今回如月怜輝クンと六山百夏改め如月怜那さんを殺害したクロは……」

モノクマ「兵頭千さんでしたー!」

津浦「うっ、ううっ……」

道掛「てめえ、いけしゃあしゃあと……!」

佐場木「……」ギリィ

御影「…………」

正、解?

何が正解なの?

御影「ふざけないでよ!」

千が犯人なわけないのに。

あんたはそれを一番よくわかってるくせに……!

兵頭「……皆さん、私のわがままを聞いてくださってありがとうございました」

御影「っ!」

頭を下げる千の腕を掴む。

御影「千もなんでこんな事!自分が何をしたかわかってるの!?」

自分から死ぬような真似をした千の事が理解出来ない。

私には生きてほしいって言ったのに!

御影「答えてよ!これの何が一番いい方法なの!?」

兵頭「……」

頭を下げたままの千を揺さぶりながら問い詰める。

だけど千は何も言ってくれなくて、それがさらに私の苛立ちを掻き立てて。

御影「千!」

だけど、私のそんな言葉は……







兵頭「こうしなければ、あなたが殺されていたじゃないですか!」

そんな千の悲痛な叫びに、掻き消された。






御影「……!」

兵頭「私は……ずっと悩んでいました」

兵頭「元々、自分がどこかおかしい事は知っていたんです。人の人生を左右する選挙、それに対して気分が昂るなんて……」

兵頭「だけどこの学級裁判で知ってしまった禁断の味。誰かを直接死に追いやる投票で快楽を得る自分自身」

兵頭「あれで私は……とうとう理解してしまったんですよ」

兵頭「自分は、生きていてはいけない人間だって」

兵頭「あの日から、私は心の片隅で怯えていました」

兵頭「死んでしまいたかった!だけど苗木さんに襲われてそれが現実味を帯びたら、今度は死ぬのが怖くなって!」

兵頭「だけど私はいつかあの投票をしたいがために誰かを殺すかもしれない」

兵頭「もう私は……自分自身が信用出来なかった」

兵頭「だから、私は……お願い、してたんですよ」

兵頭「如月さんに……もし私が止まらなくなりそうになったら、私を殺してくださいと」

御影「っ!?」

兵頭「最初は断られましたけど、誰かの未来を守るためだって説き伏せました」

兵頭「それで私は安心できた、いざという時に止めてくれる人がいるんだからと」

兵頭「……それなのに、もうあの人はいない」

兵頭「だから私は……」

御影「だ、だからって!」

兵頭「でも……」

兵頭「それ以上に、私は自分が死ぬ恐怖よりも、何よりも」

兵頭「牡丹さんに、死んでほしくないんです……」

御影「えっ……」

兵頭「牡丹さん、こうして名前を呼ぶようになったあの日」

兵頭「私が、どれだけ嬉しかったかわかりますか?」

兵頭「こんな私に、友人として接してくれるあなたに私がどれだけ救われていたかわかりますか?」

兵頭「あなたがいれば……もしかしたら自分を乗り越えられるかもしれないと思いました」

兵頭「そんなあなたが死ぬ?よりによって投票で?」

兵頭「……牡丹さん、言いましたよね。私までいなくなったらと」

兵頭「私も、同じです」

兵頭「あなたがいなくなったら、私はきっと……誰かを殺す投票を求める最低最悪の絶望に、堕ちます」

御影「せ、ん……」

私は……千をもっと強い女の子だと思ってた。

冷静で、もちろん投票云々は理解出来なかったけど……それでもどこか、千なら大丈夫だなんて思ってた。

私は……千の事も、まるでわかってなかったんだ……

兵頭「だから、これでいいんです」

兵頭「あなたならきっと……大丈夫だと信じています」

御影「やめ、てよ……私そんな強くないよ……」

兵頭「ふふっ、御影さんは強いですよ。だってあなたはずっと病気と戦っているんでしょう?」

御影「それ、は……」

兵頭「もっと自分を信じてください。そして何より……」

兵頭「黒幕は、あなたをこんな形で殺そうとするくらい恐れているんですから」

御影「……!」

モノクマ「おーい!いつまで2人の世界作ってんのさ!」

兵頭「ああ、ごめんなさい。あなたが小者すぎて忘れてました」

モノクマ「……」

兵頭「佐場木さん、津浦さん、道掛さん……牡丹さんを、お願いします」

佐場木「……どいつもこいつも、勝手な事を」

津浦「Ms.兵頭……ワタシ、ワタシは……」

道掛「うぐっ、く、そぉ……!」

モノクマ「だいぶ尺はとってあげたし、もう始めるよ!」

兵頭「……」

御影「せ、千……!」

モノクマ「それでは今回は、【超高校級の選挙管理委員】である兵頭千さんにふさわしいスペシャルなおしおきを用意いたしました!」

兵頭「牡丹さん、こんな私と友人になってくれてありがとうございました」

モノクマ「それでは張り切って参りましょう!」

兵頭「……大好きですよ、牡丹さん」

モノクマ「おしおきターイム!!」

そう言って千は……笑って、連れていかれた。

御影「う、あっ」

御影「いやだよ、待ってよ……」

御影「せ、ん…………」







       GAME OVER

 ヒョウトウさんがクロにきまりました。

    おしおきをかいしします。






【処刑投票~あの子は死ぬべき生きるべき?~】

【超高校級の選挙管理委員兵頭千処刑執行】

処刑場に連れていかれた兵頭さんの首が台にセットされます。

その上には目映いばかりに輝くギロチン。

兵頭さんの隣にはモノクマも一緒にギロチン台に繋がれていて。

どうやら、投票でどちらを処刑するか決めるようです。

投票券を持ったモノクマ達が殺到し、次々に投票を行っていきます。

兵頭千…0

モノクマ…10

票が増える度にモノクマの方のギロチンが高度を下げていき、泣き叫ぶモノクマ。

一方の兵頭さんはただ目を瞑ったまま。

兵頭千……0

モノクマ……50

どんどんモノクマに迫るギロチン。

殺到する投票。

兵頭千……0

モノクマ……100

そしてファンファーレが鳴り響き、モノクマがギロチン台から解放されました。

兵頭さんがこれはどちらを生かすかの投票だと理解したのと同時にギロチンが落ちて――







「はい、終了ー!」

ブツンッ






モノクマ「…………は、なに、これ?」

道掛「えっ、えっ……なんで映像切れたんだ!?」

津浦「それに今の声はいったい……」

佐場木「おい、また映像が……」

「はい、楽しんでいただけたかな!ドッキリ処刑ショー!」

映像の向こうには、解放された千の姿。

何が起きたのかわからないみたいでキョロキョロと辺りを見回してる。

御影「せ、千!」

「そんな泣かなくても死んでないから安心しろって」

モノクマ「なんの、何のつもりだよオマエ!」

「んー?何のつもりぃ?そりゃこっちの台詞だっての」

「自分が犯人の癖に追い詰められたら即刻打ち切って冤罪確定投票とかつまらない真似しやがってさぁ」

「偽装殺人とかで参加者側に嵌められたならともかくさ、コロシアイの管理する側がそれしたら駄目だろ?まあ、俺が言えた台詞でもないけどな!」

モノクマ「オマエ!オマエがあの電子手帳を……!」

「はい正解」

「ああ、後もう1つお前が知らない事あるんだよ」

モノクマ「はあ?」

「如月兄妹は、お前に勝った……意味わかるよな?」

モノクマ「……!!」

「さあ、俺の介入はここまでだ未来機関!後はせいぜい楽しませてくれよ!」

「お前達の結末に俺はすごく興味が湧いてるからな!!」

ブツンッ

モノクマ「あの、狂人がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

津浦「な、何がどうなって」

道掛「そ、それより千ちゃん助けに行こうぜ!助かったんだろ!」

御影「っ!」

佐場木「御影、待て!」

モノクマ「……」

モノクマ「ふ、ふざけるなよあの狂人……最後の最後でこっちの計画をぶち壊して……」

モノクマ「……う、うぷぷ!」

モノクマ「いいさいいさ!あいつの介入もここまで!だったら今度は正面から叩き潰してやる!」

モノクマ「全ては、絶望のため!あの人の望んだ世界のために……!」

モノクマ「うぷ、うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!」







CHAPT.5【哀れなる罪人に裁きを】END

生き残りメンバー5人

To be continued...












【ハッキング済みモノクマ】を手に入れました!






CHAPT.5終了です。

次回からCHAPT.6、最終章突入です。

それでは、今回はこれにて。

【???】

「……それで、この情報は確かなのだろうな?」

「間違いないと思うよ。座標、兵器の配置……全てこちらの持つ情報とも一致するからね」

「送り主は【超高校級の狂人】か……なんでわざわざこちらに送ってきたのやら」

「み、みんなー!大変大変だよー!」

「ど、どうしたの?」

「×××××が、1人でさっき来たメールの場所に行っちゃったんだよ!」

「な、なんですってぇ!?」

「仕方ないとは思うよぉ?ほら、あそこには……」

「そうですね……それに添付されていた動画によると彼女はもう」

「と、とにかく追いかけないと……」

「オレ達謹慎中だけど、そうも言ってらんないねぇ」

「行かないと……だめ……」

「待て。全員で行くわけにもいくまい」

「そうよ。ここを守る人手も必要だもの」

「そうだね……じゃあ、何人かを」

「ならば×××、×××××、×××××……そなた達が行け」

「俺様達がか?」

「いざというとき、あの男を止める必要があるからな」

「わ、わかりました!」

「えぇ、任せて!」

「わかった、行ってくらぁ!」

「……彼の目覚める世界を平和にするためにも、頼んだよ」







「…………」

「必ず取り戻す」

「たとえもう、喋らない骸だとしても」

「好き勝手になど、させるものか……!」












CHAPT.6【かくして××の遺志は××を××す】






【学級裁判処刑場】

御影「千!!」

兵頭「あっ、牡丹さ……」

呆然としたままの千の身体を強く抱き締める。

兄さんみたいに冷たくなっていかない。

怜那みたいに冷たくない。

千は生きてる、今こうしてここにいるんだ……!

佐場木「命を拾ったようだな」

津浦「よかったです、本当に……!」

道掛「全くだぜ!」

兵頭「……」

御影「千、もうこんな事しないで。私がいたら乗り越えられるかもしれないんでしょ?」

兵頭「牡丹さん…………はい、ごめんなさい」

モノクマ「あらら、感動の再会?」

御影「モノクマ……!」

モノクマ「そう睨まないでよ!ボクも少し反省したからさ!」

佐場木「反省だと?」

モノクマ「うん!そういうわけで……最後の裁判やろうか?」

津浦「最後の……」

道掛「裁判!?」

モノクマ「如月兄妹を殺したクロ!ここの謎!そしてボクの正体を明らかにしてもらうんだよ!」

兵頭「……なぜそんな」

モノクマ「色々あったからね!それでやるの?やらないの?」

御影「……」

最後の学級裁判……そんなの決まってる。

御影「やるよ……今度こそあんたを、引きずり出してやる……!」

モノクマ「その威勢が最後までもてばいいね!アーハッハッハッハ!」

このコロシアイの黒幕、苗木と協力していたもう1人……兄さんと怜那を殺した相手。

御影「絶対に、負けない……!」

導入のみですがここまで。

次回最後の捜査です。

エスカレーターで地上に戻った私達……それと同時にチャイムが鳴る。

モノクマ「えー、これより最後の捜査タイムとなります!」

モノクマ「今まで入れなかった場所も入れるようになったので頑張って捜査してくださーい!」

津浦「入れなかった場所……コテージでしょうか」

佐場木「発電所の全ての部屋にも入れるようになっただろう」

道掛「とにかく調べようぜ!あの野郎の事だ、また変な事してくるかもしれねえし!」

兵頭「賛成ですね。効率のために、ここは手分けして捜査しましょう」

御影「……絶対見つけよう、黒幕に繋がる証拠を!」


      【捜査開始】

【コトダマを整理しました】

御影「まずは……コテージに行ってみよう」

【赤穂のコテージ】

御影「…………」

兄さんのコテージ。

兄さんがここにいたって確かな証。

御影「……捜査しなきゃ」

もしかしたら兄さん、何か気付いてたかもしれないし……

御影「あっ、これ手帳……」

兄さんのかな……

【行方不明だった牡丹と再会した。
髪の色とか、色々気になる事はあるけど……あいつが生きてくれていたってだけで、俺は嬉しい。
これから、兄妹としての時間を取り戻していかないとな】

御影「……」

兄さん……

御影「っ、泣くのは、後……!」

ここで立ち止まるなんて、それこそ兄さんは望まない……!

御影「……あれ?」

この3日目の……

【如月さんがモノクマに殺されそうになった六山を助け出した。
やっぱり如月さんは凄いヒーローだ。
そういえば夜空を見た時、何か違和感を覚えたけど……あれ、なんだったんだ?】

御影「夜空に違和感……?」

兄さんは夜空を見て……何かを感じ取った。

御影「それっていったい……」

コトダマ【赤穂の違和感】を手に入れました。
〔3日目に赤穂は夜空を見て違和感を覚えたようだ〕

御影「次は……あっ」

津浦「……」

あれ、津浦……入ったのは……

【グレゴリーのコテージ】

御影「津浦」

津浦「あっ、Ms.御影……すみません、やはりどうしても」

御影「ううん、私も今まで兄さんのコテージにいたし……」

津浦「ありがとうございます」

グレゴリーのコテージは何というか、普段のあいつらしい怪しい感じだった。

壁にかかった2つの仮面とマントとか……どれだけスペアあったんだか。

御影「……あっ」

机の上にあった【月刊真実11月号】っていう一冊の雑誌。

これって苗木が四方院に送った……

津浦「4年前の月刊誌……これがきっかけで、あの人は……」

御影「津浦……」

津浦「……少し1人になっても、よろしいですか?」

御影「……うん」

御影「次は……鞍馬のコテージかな」

【鞍馬のコテージ】

御影「まるで生活感がないね……」

鞍馬はいったいどんな気持ちでここの生活を過ごしてたんだろう。

御影「……何もないかな?」

空振りだった事を残念に思いながらコテージのドアを開けようとして……ベッドに並んだぬいぐるみが目に入る。

御影「そういえばあいつ暇さえあればこういうの作ってたよね」

……あれ、そのわりには数が少ないような。

コトダマ【ウサミのぬいぐるみ】を手に入れました。
〔鞍馬がよく作っていたぬいぐるみ。
なぜか数が少なく感じるが……〕

御影「次はあいつのコテージ、だよね」

【苗木のコテージ】

御影「……」

大量に積まれた洗剤や日用品……土橋を殺した毒の材料。

御影「あいつには、ずっと苦しめられてきたよね……」

腹立たしく感じて、洗剤の1つを蹴る。

そんなに強く蹴ったつもりはなかったけど、洗剤は倒れて中の粉が床にばらまかれた。

御影「あっ、まずっ……」

慌てて洗剤を手に取ると……中にビニール袋が入ってた。

御影「……ノート?」

苗木の日記?みたいな感じだけどなんでここに……

【寄生虫と一緒に働く事になった。
寄生虫の称号を押し付けられた事はヘドが出るけど、これも後々の計画のためだと思って我慢する。
……計画をどこから嗅ぎ付けたのか、接触してきた奴がいた。
環境と機会の提供ね……いいさ、精々利用させてもらうよ】

御影「……」

苗木はやっぱり黒幕の1人だったみたいだね……

コトダマ【苗木の日記】を手に入れました。
〔コテージの洗剤に隠されていた苗木の日記。
内容は【寄生虫と一緒に働く事になった。
寄生虫の称号を押し付けられた事はヘドが出るけど、これも後々の計画のためだと思って我慢する。
……計画をどこから嗅ぎ付けたのか、接触してきた奴がいた。
環境と機会の提供ね……いいさ、精々利用させてもらうよ】〕

御影「他のみんなのコテージも見てみよう」

その後如月や怜那のコテージも調べてみたけど、何もなかった。

そして手当たり次第に入った最後のコテージは……

【静音のコテージ】

最初に殺された、静音のコテージだった。

御影「楽譜と四方院との写真がいっぱい……」

四方院を好きだった、静音らしい。

御影「……あっ、ぬいぐるみ」

ベッドの上に置いてあるぬいぐるみは鞍馬が縫ってた物と同じやつ。

もしかして、鞍馬が静音にプレゼントしてたとか?

御影「あの2人そんなに仲良かったっけ……」

ぬいぐるみを持ち上げてみると、耳のリボンに何か縫い込まれてるみたいだった。

御影「何これ……」

【才能を持つ者達を支えるのが今回君が送られた役目である。
17名の才能、存分に側で感じその偉大さを理解するように願う】

……これ多分、鞍馬がリボンに縫い込んだんだよね?

御影「なんなん、だろう」

コトダマ【リボンの手紙】を手に入れました。
〔静音のコテージにあった鞍馬の縫ったらしいぬいぐるみのリボンに縫い込まれていた手紙。
内容は【才能を持つ者達を支えるのが今回君が送られた役目である。
17名の才能、存分に側で感じその偉大さを理解するように願う】〕

御影「次は……あっ、発電所に行ってみよう」

【発電所】

佐場木「御影、捜査はどうだ」

御影「色々出てきてはいるかな。発電所に何かあった?」

佐場木「制御室の奥に扉があったんだが……そこが開いた。来てみろ」

【発電所・中央制御室】

御影「うわっ、スイッチがいっぱい」

佐場木「下手に触るなよ」

御影「わかってるよ……わっ!?」

辺りを見渡しながら、歩いていると躓いて……

スイッチをいくつか、切っちゃった。

佐場木「おい……」

御影「す、すぐに直すよ!」

あ、あれ?

どのスイッチだったっけ……?

御影「……よし」

これでいいはず。

…………多分。

コトダマ【発電所のスイッチ】を手に入れました。
〔発電所の入れなかった部屋にあった大量のスイッチ。
いくつか御影が弄ってしまった〕

発電所の捜査をするっていう佐場木を置いて外に出る。

御影「……えっ?」

外に出た瞬間、私は目の前の光景に唖然としてしまう。

さっきまで日光が地面を照らしていた空が……星が瞬く月夜になっていた。

御影「な、何これ……!?」

道掛「あっ、牡丹ちゃん!」

御影「道掛、何があったの!?」

道掛「わかんねえ!さっきいきなり真っ暗になったと思ったら、星が出てきて……これもモノクマの仕業なのか!?」

御影「……」

さっき、いきなり真っ暗に……

そういえば、第3の事件の時も急に暗くなって、星も月もなくて……

御影「……」

もしかして……

コトダマ【急な夜】を手に入れました。
〔御影が発電所から出た時、入る前は青空だった空が星空になっていた〕

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔いきなり真っ暗になったと思ったら星が出てきたらしい〕

コトダマ【第3の動機】を手に入れました。
〔モノクマによってもたらされた暗闇。
事件が起きるまで星も月もなかった〕

御影「……」

考えながら夜道を歩く。

もしこの考えが正しいなら……

兵頭「牡丹さん」

御影「千」

兵頭「急に暗くなりましたが、大丈夫でしたか?」

御影「うん……というか、多分私のせいだよこれ」

兵頭「はい?」

御影「何でもない。千は捜査どう?」

兵頭「……これからスプリングアイランドの死体置き場に向かおうかと」

御影「えっ」

兵頭「調べない場所があるのは望ましくないので……」

御影「……」

千を1人で死体置き場に……

御影「私も行く」

そんな事、できるわけない。

兵頭「いいんですか?」

御影「1人で行かせた方が後悔するよ」

兵頭「……ありがとうございます」

【死体置き場】

黒い建物……死体がたくさんあるっていう中に千と手を繋いで入っていく。

兵頭「っ、これは」

御影「……!」

そこは、大きなモニターがある広場みたいな場所だった。

だけど床がどんな色かとかはまるでわからない。

だって床を埋め尽くすみたいに死体が転がっていたから。

兵頭「本当に、全員が笑顔で亡くなっています」

御影「どんな事したらこんな事になるの……?」

この人達、全員未来機関の人なんだよね……

御影「……あっ」

下の方の死体……何か口の中に詰めてる。

御影「……」

手がかり、かもしれないし……

震えを我慢して死体の口に手を突っ込む。

そして引きずり出したのは……メモ用紙だった。

【まさかこんな事になるなんて……
全員集められて、モニターに何か映されてから、次々に周りが自殺していく。
自分は偶然靴紐を直すためにしゃがんだから助かった。
だけど自分ももうすぐあいつらに殺される……だから、だからせめてこれだけは伝えたい。
絶望教は、新しい超高校級の中に】

御影「……絶望、教」

確か1人の教祖と男女の協力者がいるんだよね。

その協力者が、私達の中にいるんじゃないかって話になってたんだっけ……

コトダマ【職員のメモ書き】を手に入れました。
〔死体置き場の死体が口に詰めていたメモ書き。
内容は【まさかこんな事になるなんて……
全員集められて、モニターに何か映されてから、次々に周りが自殺していく。
自分は偶然靴紐を直すためにしゃがんだから助かった。
だけど自分ももうすぐあいつらに殺される……だから、だからせめてこれだけは伝えたい。
絶望教は、新しい超高校級の中に】〕

コトダマ【絶望教】を手に入れました。
〔世間を騒がせている新興宗教。
誰かを絶望させる事を教義としているらしい〕

コトダマ【協力者】を手に入れました。
〔絶望教の立ち上げに協力していた男女2人組。
1人は苗木と思われるが……〕

兵頭「……あっ、牡丹さん!」

御影「えっ、なに?」

兵頭「これ……六山、いいえ、怜那さんのリュックですよ」

千が死体の下から引きずり出したのは、間違いなく怜那の背負っていたリュック……

兵頭「死体の下から出たのを見るに、置いたのは黒幕でしょうね」

御影「だろうね……事件があったから多分ここに来る余裕なかっただろうし」

リュックの中にあるゲーム機は全部壊されていた。

怜那の言葉を信じるなら、全部通信機だったみたいだから……黒幕が残すはずないか。

兵頭「あっ、1つ画面が映りますよ」

御影「本当?」

千が持っていた他に比べて壊れてないゲーム機。

その画面には変なものが映ってた。

【未来機関第20支部
[ヒ××ー]
ア××マサ××キサ×ギ××キ
[工×員]
××××レ×ナ
[×××ッカー]
×ス×チ×ト
[×計士]
×××××・×××××××
[土×××員]
ツ×××ミキ
[通訳]
ツ×ラコ×ハ
[××]
×ワキセ×
[裁××]
×バキハ××
[××手]
ト×ミ×メ
[×イ××スト]
ミ××ケソ×ヤ
[×化師]
××ニークラ×××ツ
[××者]
シズ×××
[××ート×者]
シ×××ンカ×デ
[×××]
ミ×××××
[×××理委員]
ヒ××トウ××
×××ルイ】

御影「これ……私達の名前?」

兵頭「そのようですが……」

コトダマ【如月怜那のリュック】を手に入れました。
〔如月怜那がいつも背負っていたリュック。
死体置き場の死体の下に隠されていた〕

コトダマ【残されたデータ】を手に入れました。
〔リュックに入っていたゲーム機の1つに映っていたデータ。
内容は>>191

御影「他には……あっ、これみんなの……」

リュックの中には、ゲーム機以外にスクラップブックが入っていた。

【犯罪組織壊滅!お手柄高校生は【超高校級のヒーロー】!】

これは5年前の新聞。

【大注目!小学生ピエロ、サーカスデビューに密着!】

これは8年前の雑誌。

【謎深き仮面の設計士!その謎を追え!】

これも6年前の雑誌だね。

【賞を総なめ!新しき天才楽団!】

これは2年前の地方新聞。

【大統領の通訳は中学生?その正体とは?】

これは3年前のスポーツ新聞。

その他にもたくさんの記事がスクラップされていた。

御影「怜那……」

怜那は、何を思ってみんなの事をスクラップしてたんだろう……

コトダマ【スクラップブック】を手に入れました。
〔如月怜那が持っていたスクラップブック。
>>192を始めとした今回のコロシアイメンバーの記事がスクラップされている〕

キーンコーン、カーンコーン……

モノクマ「うぷぷ、後悔のないように捜査は出来たかな?」

モノクマ「まあどちらにしてもオマエラを待つ未来は変わらないけどね!」

モノクマ「さあ来なよ!絶望をたっぷりとプレゼントするからさ!」

モノクマ「アーハッハッハッハ!!」

御影「……」

兵頭「いよいよ、ですね」

御影「……うん」

【未来機関第20支部】

道掛「おっ、来たぜ!」

佐場木「……」

津浦「とうとう、最後なんですね」

御影「津浦……そのマントって」

津浦「……はい」

道掛「そんな気にすんなって!佐場木と千ちゃんも似たようなもんだしな!」

御影「私も兄さんの杖持ってきたよ」

兵頭「皆さん、失いながらここまで来ましたからね」

佐場木「……泣いても笑っても、これが最後だ」

道掛「おう、黒幕の野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ!」

津浦「殴るかはともかく……負けるつもりはありません」

兵頭「必ず、生きて帰りましょう」

御影「……」

誰からともなく手を重ねる。

もう引き返せない、そのつもりもない。

私達は……勝つんだ。

御影「行こう!」

【学級裁判場】

モノクマ「来たね来たね!わざわざ絶望しにやって来るなんて涙が出てくるよ!」

兵頭「そちらはまたハッキングされて処刑を邪魔されないようにしましたか?」

モノクマ「もちろんだよ!今度はボクが助けると思わない事だね!」

道掛「絶対ぶちのめしてやる!覚悟しろよ!!」

モノクマ「やれるもんならやってみなよ!」

津浦「あなただけは、許しません」

モノクマ「許さなくて結構だよ!」

佐場木「……貴様だけは地獄に叩き落とす」

モノクマ「それは果たしてどちらかなー?」

御影「……」

12人。

このコロシアイで12人も、殺された。

私は大切な家族を失って、それでもまだ生きてる。

それにはきっと意味があるはずなんだ。

御影「……始めるよモノクマ」

もう誰も死なせない。

私達は生きてここから帰る。

御影「……あんたにだけは、負けない!」

そして始まる。

最後の学級裁判が。

今。


始まる。

今回はここまで。

次回学級裁判スタートです。

それでは。

・コトダマ一覧表

【左胸の傷】>>92

【六山の右手】>>95

【壊れた電子手帳】>>98

【電子手帳】>>107

【赤穂の違和感】>>182

【ウサミのぬいぐるみ】>>184

【苗木の日記】>>185

【リボンの手紙】>>186

【発電所のスイッチ】>>187

【急な夜】
【道掛の証言】
【第3の動機】>>188

【職員のメモ書き】
【絶望教】
【協力者】>>190

【如月怜那のリュック】
【残されたデータ】>>191

【スクラップブック】>>192

とうとう始まる最後の裁判。
如月兄妹を殺したのは黒幕なのか。
黒幕は果たして誰なのか。
この未来機関第20支部は何なのか。
そして……御影達が得るのは希望か絶望か。
全てに答えを出す時は、やってきた。


     【学級裁判開廷!】

モノクマ「うぷぷ、今回は最後の裁判という事で特別ルール!」

モノクマ「如月兄妹を殺したクロ、ボクの正体、この島の秘密……」

モノクマ「全ての謎を明らかに出来たらオマエラの勝ち!」

モノクマ「出来なければボクの勝ち!」

モノクマ「うぷぷ、今回はボクも参加するからね!」

御影「まずは、如月と怜那を殺したクロをはっきりさせよう」

道掛「そうだな!モノクマ、てめえが犯人だ!」

モノクマ「ひ、酷い!ボクを犯人だなんて……」

津浦「白々しい……」

兵頭「全くですね」

佐場木「そんな事が言えるのも今の内だけだ……議論を始めるぞ」

御影「……」

確実に、一歩ずつ。

あいつを追い詰めるんだ……!

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>196
【左胸の傷】

モノクマ「ボクは犯人じゃありませーん!」

道掛「だったらなんで【千ちゃんに罪着せようとしやがった】!」

モノクマ「えー、そんな事したっけかなぁ?」

津浦「とぼける気ですか!?」

モノクマ「だってボクは犯人じゃないもんねー!」

佐場木「あの電子手帳はどう説明する?」

モノクマ「如月クンか六山さんが【死んだ誰かのを持ってた】んじゃない?」

兵頭「あの反応を見るに怜那さんの電子手帳を隠していたようですが、それはなぜです」

モノクマ「プライバシーの保護だよ!」

モノクマ「いいじゃん!もう【六山さんが犯人】って事でさ!」

モノクマ「ほら、御影さんが変な事言う前はそんな展開だったしさ!」

あくまでも逃げようっていうんだね……だけど逃がさないよ!

【六山さんが犯人】←【左胸の傷】

御影「それは違ってるよ!」


御影「……怜那を黒幕と間違えた如月に襲われた怜那が身体強化薬を飲んで応戦」

御影「自分のお兄ちゃんを殺しちゃった怜那が絶望して自殺……あんたが思い描いてた展開はこう?」

モノクマ「うぷぷ、なんだ!真相をきちんとわかってるじゃない御影さん!」

御影「ふざけないでよ!そんなのあんたが作った偽物の真相でしょ!」

兵頭「そもそもそれが真相ならやはりあの投票はおかしいですね」

モノクマ「御影さんが犯人じゃないもんってわがまま言うからだよ!ボクだって不本意だったのに……ショボーン」

佐場木「戯れ言を……」

怜那が如月を殺して自殺……そうだとしたら違和感がある。

それを突きつけるんだ……!

【六山の右手】

御影「これだよ!」


御影「だったら、あの右手はなんなの?」

モノクマ「あの血塗れの右手?まさに犯人を示す決定的証拠じゃん!」

御影「……つまりあんたは、怜那があの右手で如月と自分の左胸を貫いたっていうんだね?」

モノクマ「そうそう!」

御影「だったらなんで……【血が手首までしかない】の?」

モノクマ「…………はへっ?」

佐場木「六山の傷は貫通していた。あの傷を手で作ったならば……」

佐場木「間違いなく、手首を越えて血が付着するだろう」

モノクマ「ドキィ!?」

兵頭「それなのに手首までしか血がなかった……おかしいですね?」

津浦「Ms.怜那を殺害した後、傷口に右手を入れて血をつけたのでしょうね」

モノクマ「ドキドキィ!?」

道掛「だいたい自分でやったなら右手が左胸に刺さったまんまなんじゃねえのか!」

モノクマ「ドキドキドキィ!?」

御影「如月の手は血塗れになってない!怜那の手は今言った通り!」

御影「誰かが後から痕跡を消したでもないならそんな事になるわけない!」

御影「モノクマ!2人を殺したのはあんた」

モノクマ「ドッキドキのワックワクー!」反論!

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>196
【如月怜那のリュック】

モノクマ「好き勝手言ってくれちゃって!」

モノクマ「ボクが犯人だなんて証拠、どこにもないじゃない!」

御影「しつこい……!」

御影「いい加減認めなよ!」

モノクマ「やーだよー!」

モノクマ「ボクは真っ白!ボクは無関係!」

モノクマ【第三者なんてあの事件にはいなかったんだよ!】

第三者なんていなかった?

そんなはずない!

それはあれが証明してる!

【第三者なんてあの事件にはいなかった】←【如月怜那のリュック】

御影「その反論断ち切るよ……!」


御影「第三者なんていなかった?」

モノクマ「そうそう!あれは兄妹喧嘩だったんだよ!電子手帳は死んだ誰かのを持ってたで説明つくし、血だって色々偶然が重なった!」

モノクマ「何も問題ないね!」

御影「問題ありだよ」

御影「第三者がいないなら……」

御影「この怜那のリュックに説明がつかないからね!」

モノクマ「ギクゥ!?」

御影「これ、死体置き場から見つけたものなんだけど……なんでそんなところにあったの?」

兵頭「怜那さんが置く理由はありませんね」

佐場木「如月にもないだろうな」

御影「じゃあ誰が死体置き場にリュックを置いたのか……答えは1つしかない」

御影「あんたが置いたんだよモノクマ!そしてそんな事をした理由はただ1つ!」

御影「あんたが事件に関わってるからだよ!」

モノクマ「ドッヒャアッ!?」

道掛「ぶっ倒れたな……」

津浦「静かになったのでよしとしましょう」

佐場木「如月兄妹を殺したのは間違いなく奴だ。しかしそれだけでは謎が残る」

兵頭「誰がモノクマを操る黒幕なのか、ですね」

御影「じゃあ次は黒幕を明らかにしよう」

きっと私達なら答えを出せるはず……!

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>196
【職員のメモ書き】
【絶望教】
【協力者】

佐場木「モノクマを操る黒幕は何者なのか……」

道掛「苗木と協力してた奴なんだよな?」

津浦「はい……そしておそらく」

津浦「【絶望教が関わっている】はずです」

兵頭「それは間違いないでしょうね」

道掛「うーん、でも本当に関わってんのか?」

道掛「あの野郎、嘘だらけだし……」

道掛「【絶望教も無実】でカモノハシかもしんねえぞ!」

御影「カモノハシ?」

佐場木「カモノハシ?」

兵頭「カモノハシ……?あの津浦さん、通訳を」

津浦「……わ、わかりません」

道掛「なんだこの空気!?」

【絶望教も無実】←【職員のメモ書き】

御影「それは違ってるよ!」


御影「少なくとも絶望教が関わってるのは間違いないよ」

御影「死体置き場から、こんなメモ書きが出てきたからね」

佐場木「メモ書き?死体が所持していたのか」

御影「正確には、口の中にあったやつだよ」

道掛「口の中に!?牡丹ちゃん、度胸あんな……」

津浦「内容はどういったものなのですか?」

御影「えっと……」

【まさかこんな事になるなんて……
全員集められて、モニターに何か映されてから、次々に周りが自殺していく。
自分は偶然靴紐を直すためにしゃがんだから助かった。
だけど自分ももうすぐあいつらに殺される……だから、だからせめてこれだけは伝えたい。
絶望教は、新しい超高校級の中に】

佐場木「新しい超高校級……俺達か」

道掛「やっぱり俺達の中に、いやがんのか……!」

御影「それだけじゃないと思う」

兵頭「それだけじゃないとは?」

御影「前に、怜那が教えてくれたんだけど」

※※

【未来機関第20支部のメンバーの中に、超高校級の絶望の残党がいるって情報を掴んだんだよ】

【それもかなり昔から絶望に染まってたらしくて、江ノ島盾子にも従ってたみたい】

【多分苗木くんに協力してたもう1人の黒幕は、その残党だよ】

※※

御影「だから怜那はその残党が殺しに関わっていたっていう七海千秋って人の名前をもじった六山百夏を名乗ってたって」

佐場木「絶望の残党……」

道掛「そこでそいつらが出てくんのかよ!」

兵頭「絶望の残党が絶望教に関わっていた……これだけでも重大な事実ですが」

津浦「今はそれが何者なのかを明らかにしなければ」

絶望教……絶望の残党……

そんな奴が私達の中にいるの……?

モノクマ「…………」

【協力者】

御影「これだよ!」


御影「絶望教は……2人の協力者がいるんだよね」

津浦「はい。男女のその協力者が実務を担当していると」

道掛「1人は、苗木なんだよな?」

兵頭「おそらく……そして苗木さんの言葉を考慮するともう1人も私達の中にいます」

佐場木「苗木が協力者の1人ならもう1人は女子になるが……死亡した者を除外すると」

御影「私、千、津浦の誰か……」

道掛「でも牡丹ちゃんと千ちゃんは殺されかけたぜ?」

兵頭「そうなると残りは」

津浦「ま、待ってください!ワタシは黒幕などでは……!」

御影「…………」

津浦が黒幕?

あれだけ頑張ってた姿が嘘?

御影「……」

そういえば、あれ……

もしかして…………

御影「……本当に黒幕は女子なの?」

道掛「だって絶望教は男女なんだろ?だったら当然苗木ともう1人って事になるぜ?」

御影「そこが疑問なんだよ」

兵頭「疑問です、か?」

そう、これはずっと頭の中にあった違和感。

それがようやく形になった……


御影「――超高校級の人間が作った絶望教に、あの苗木が協力する?」


津浦「あっ……!」

道掛「ど、どういう事だ?」

御影「絶望教の開祖って才能があったんだよね?」

津浦「は、はい。具体的な名前はありませんでしたが」

佐場木「思い出してみろ、あの男の本性を」

※※

苗木『挙げ句のはてに世界を滅茶苦茶にしたのも、その世界を管理者気取りで牛耳ってるのもどいつもこいつも才能のある奴らばかり!』

苗木『【超高校級】なんているから絶望が広まる……君達は異物なんだ、凡人達の希望を食らって世界に巣食う寄生虫なんだよ』

苗木『だからさ……』

苗木『早く死んでよ』

苗木『この世界を本当に支える大多数の凡人達が、希望を持って生きるために!』

苗木『さっさと絶滅しろよこの寄生虫!』

苗木『お前達は明確に害する絶望なんかよりはるかにたちが悪いんだからさぁ!』

※※

佐場木「奴は才能を憎んでいた。その全てを滅ぼしたいほどに」

御影「そんな苗木が、才能を持つ人間に協力して宗教を立ち上げた」

兵頭「……考えにくいですね。つまり前提としていた女子が黒幕であるという論がそもそも疑問視される」

津浦「振り出しに戻ってしまった……というわけですか?」

道掛「いや、でも我慢してたのかもしれないぜ?」

道掛「あいつ、表面上は……俺とも仲良くしてたしな」

津浦「Mr.道掛……」

御影「……ううん、やっぱり苗木は協力者じゃないよ」

それを証明する物が、あったはずだよね……

【苗木の日記】

御影「これだよ!」


御影「これ苗木の日記なんだけど……ここを見て」

【寄生虫と一緒に働く事になった。
寄生虫の称号を押し付けられた事はヘドが出るけど、これも後々の計画のためだと思って我慢する。
……計画をどこから嗅ぎ付けたのか、接触してきた奴がいた。
環境と機会の提供ね……いいさ、精々利用させてもらうよ】

兵頭「これを読む限り、コロシアイを計画していた苗木さんに誰かが接触したようですね」

津浦「しかし絶望教はワタシ達が配属される前には既に立ち上げられていたはず」

道掛「だったらこの文はおかしいよな……」

佐場木「苗木は絶望教の協力者ではなかった……そう結論付けていいだろう」

兵頭「何もわかっていない状態に戻ってしまいましたね……」

御影「ううん、絶望教が関わっているのは間違いないってわかったんだし、少しは進んでるよ」

津浦「絶望教が関わっている……それが誰なのか手がかりがあれば」

佐場木「苗木のコテージに手がかりはなかったのか」

御影「さっきの日記だけだね……」

道掛「怜那ちゃんのコテージになら手がかりがあったんじゃねえか!?」

御影「何もなかったよ……調べたから間違いない」

兵頭「鞍馬さんのコテージにはぬいぐるみぐらいしかありませんでした」

津浦「黒幕も手がかりがあれば処分したのではないでしょうか……」

道掛「くそ!」

コテージか……捜査中は被害者のしか入れなかったし、その後はどこにも入れなかったし……

御影「…………あれ?」

ちょっと待って。

死んだ人のコテージには、入れない。

だとしたら……

御影「っ!」

道掛「うおっ、どうしたんだ牡丹ちゃん!?」

これと、これと、これと……

御影「……まさ、か」

これが真実?

あいつが、黒幕なの!?

御影「……わかった、かもしれない」

兵頭「えっ?」

御影「黒幕が誰か……」

津浦「本当ですか!?」

佐場木「話してみろ。このままだと袋小路だ」

御影「じゃあ、1つ聞きたいんだけど」







御影「津浦、マントどこから持ってきたの」

津浦「えっ……?」






津浦「これはMr.グレゴリーのコテージから……」

御影「そっちじゃなくて……あの第3の動機で真っ暗になった時」

兵頭「そういえば、津浦さんはあの時グレゴリーさんの仮面とマントを着けていましたね」

津浦「それも、もちろんMr.グレゴリーのコテージからですが」

佐場木「待て、それはおかしい」

佐場木「グレゴリーはクロだ。捜査中もコテージには入れなかったはず」

佐場木「津浦、お前はどのタイミングでマントと仮面を手に入れた」

津浦「あの、だからMr.グレゴリーが処刑された後……」

道掛「あっ、でも俺前に間違えてグレゴリーのコテージに入りかけたけど入れなかったぜ!」

津浦「で、でも確かにワタシは!」

御影「……」

もう間違いない。

黒幕は……

御影「……津浦は黒幕じゃないよ」

津浦「み、Ms.御影」

御影「もし津浦が黒幕ならもっと言い逃れのしようがあるでしょ?」

御影「グレゴリーのコテージの鍵を預かってたとか……こんな普通ならあり得ない主張する意味がない」

道掛「でもだったらなんで琴羽ちゃんは……」

御影「事実だったからだよ」

御影「処刑された後、グレゴリーのコテージは開いてた」

兵頭「なぜそんな事が……モノクマのミスでしょうか」

御影「……ミスなのかもね」

御影「まさか、学級裁判が終わってすぐに入ってくるとは思わなかったんだよ」




御影「……【自分のコテージ】に、ね」

津浦「は…………」

佐場木「……御影、何を言っているのか理解しているのか?」

御影「……うん」

御影「そのために確認したいんだけど、誰か【あいつ】のスタンスとかわからない?」

御影「例えば……どんな場所に自分の設計した物があるか知ってるかとか」

佐場木「それなら以前奴から危険物を没収した時に……大型の冷蔵庫がどこかの街にあると話していた」

兵頭「【あの人】は……どこに自分の設計した物があるか理解していた?」

道掛「そういや……この島にも、【あいつ】が設計した物あったよな?」

御影「この島は特徴的だよね。あんな大きな冷凍庫があるこの島を少なくとも【あいつ】は理解していた可能性があるはずなんだよ」

津浦「ま、待って、ください、皆様何を……」

御影「なのに何も言わなかった……ねぇ、モノクマ」

モノクマ「……」

いつの間にか倒れていたモノクマは起き上がってた。

無言のままのモノクマ……その向こうにいるだろう【あいつ】を睨む。

御影「あんたが黒幕なんじゃないの?」







御影「絶望教の協力者」

御影「怜那が追ってた絶望の残党」

御影「そしてこのコロシアイ研修旅行のもう1人の黒幕」

御影「それはあんただよ……グレゴリー・アストラル三世!!」






御影「これが真相だよ……私が考える黒幕の正体」

モノクマ「…………」

道掛「マジ、かよ……」

津浦「う、嘘、ですよね……?Mr.グレゴリーが、黒幕だなんて……」

兵頭「……本人に聞いてみましょうか」

佐場木「モノクマ、何か反論はないのか?」

モノクマ「うーん……じゃあ一つだけいいかな?」


「【絶望の残党】?我をあんな雑兵と同類に見るなど、あり得ん」

声と同時に煙が辺りを包み込む。

御影「……!」

そして煙が晴れた時……モノクマがいた玉座には、1人の男が座っていた。

白と黒に分かれたマント、顔の上半分を覆う仮面……全部があのままのはずなのに。

「奴らは所詮戯画の光を浴びた紛い物。我とは違う」

でも雰囲気とか何もかもが違う。

こいつは、こいつが……

「なぜなら我は……遥かなる過去から!」

津浦「あっ、ああっ、そん、な……」

グレゴリー「絶望の姫に自らの意志で魅入られていたのだから!」

グレゴリー「よくぞ見抜いた、哀れなる希望の信徒達よ!」

グレゴリー「だがまだ絶望演舞は終わらぬぞ?」

グレゴリー「絶望せよ!愚かなる道化共!世界を包む大いなる絶望の前にひれ伏すがいい!」

グレゴリー「ククッ、フハハハハハハハハハハハッ!!」

私達を殺し合わせた、黒幕……!







    【学級裁判中断!!】






今回はここまで。

コロシアイ研修旅行の黒幕が明かされました。

次回、学級裁判中盤戦です。

それではまた。







     【学級裁判再開!】






グレゴリー「ククッ」

御影「……」

信じたくはなかった。

だって津浦を助けたのも、津浦に過去を知られたくなくて四方院を殺したのも、津浦に処刑前自分を見せたのも……全て嘘になるから。

道掛「グレゴリー……てめえ、琴羽ちゃんをここまで裏切ってやがったのか!!」

グレゴリー「囀ずるな音速の疾走者。我にとって言の葉の魔術師を裏切ったという事実など存在しない」

グレゴリー「我は根本から寄り添った事などないのだからな!」

道掛「て、てめえ……!」

兵頭「まさか、あなたが黒幕だったとは……」

佐場木「あの嘆きも、嘘だったという事か」

グレゴリー「フハハッ!そのようなか弱き憎悪では我を貫く事など出来ぬぞ!」

グレゴリー「我は絶望の姫により、絶望さえも糧とする者となったのだから!」

津浦「…………」

グレゴリー「さて言の葉の魔術師よ。我の全てを真に理解したようだが……その心に絶望の帳は降りてきたか?」

津浦「…………」

御影「つ、津浦!」

津浦は俯いたまま顔を上げない。

当たり前だよ、こんなの私にとって兄さんが黒幕だったようなもの。

もしかしたら津浦はもう……

グレゴリー「ククッ、どうやら言の葉の魔術師もまた絶望の果実を口にしたようだ……もはや絶望郷への入口は開かれたも同然よ!」

津浦「…………」







津浦「あなた、誰ですか」






御影「つ、津浦?」

もしかして、現実を認められなくて……

グレゴリー「ククッ、現から逃れるか?我はグレゴリー・アストラル三世!それは言の葉の魔術師が最も理解しているはずだが?」

津浦「いいえ、違います。あなたはワタシの知るあの人じゃない」

道掛「こ、琴羽ちゃんどうしたんだ?」

顔を上げた津浦の顔に絶望の色はなかった。

そこにあったのは……怒り。

大切な思い出を土足で踏み荒らされた、憎悪にも似た怒りの炎だった。

津浦「議論しましょう皆様。まだワタシ達は黒幕を暴いていません」

兵頭「津浦さん……」

津浦「あの人を騙るこの偽者の仮面を、剥ぎ取りましょう!」

佐場木「……いいだろう、議論するぞ」

御影「……」

こいつは、グレゴリーじゃない?

どうして津浦は、そう思ったんだろう……?


グレゴリー「……愚者が」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>196
【絶望教】
【電子手帳】
【壊れた電子手帳】


津浦「この人はワタシの知るMr.グレゴリーではありません」

津浦「断言します」

グレゴリー「まだ逃げるか言の葉の魔術師よ!」

グレゴリー「我はグレゴリー・アストラル三世!そこに【一点の虚偽もありはしない】!」

道掛「か、【格好】はおんなじだよな?」

佐場木「【声色】も、あの男と変わりがないように聴こえるが」

兵頭「特徴的な【口調】も、グレゴリーさんのように思えます」

グレゴリー「ククッ、どうやら言の葉の魔術師こそが哀れなる愚者と決まったようだな?」

グレゴリー「我は【絶望の姫】に付き従う者!」

グレゴリー「早急に理解せよ言の葉の魔術師!」

津浦「……いいえ、やはりあなたは違います」

津浦「その【言の葉】は、嘘をつきませんから」

津浦がどうしてグレゴリーじゃないと判断したのか……

思い返せば、わかるかもしれない。

【絶望の姫】←【言の葉】

御影「それは違ってるよ!」


御影「ねぇ……その絶望の姫って、江ノ島盾子の事?」

グレゴリー「貴様ごときが絶望の姫の真名を語るか!恥を知れ!」

御影「……津浦、私にもわかったよ」

御影「こいつは、私達と一緒にいたグレゴリーじゃない!」

グレゴリー「何を言うか!」

御影「思い出したんだよ、前に一回……グレゴリーが江ノ島盾子の名前を出した事があるの」

※※

グレゴリー『案ずる事はない!絶望郷に射す光は既にこの現世に産み落とされた!【絶望の女神】は既に地に墜ち、残されし災厄の担い手達ももはや風前の灯!』

薄井『何言ってんのかわかんねえよ……』

津浦『通訳しましょう。【心配はいりません!世界には超高校級の希望がいます!江ノ島盾子は倒れ、絶望の残党達も追い詰められています!】と、Mr.グレゴリーは仰っています』

グレゴリー『ほう、言の葉の魔術師よ。我が天界の言霊を理解するか』

津浦『ワタシは通訳ですから』

※※

御影「あの時、グレゴリーは江ノ島を【絶望の女神】って呼んでた」

御影「だけどあんたはさっきから江ノ島を【絶望の姫】って呼んでるよね?」

グレゴリー「……!」

津浦「些細な、事かもしれません」

津浦「だけどワタシにはその些細な一点で充分なんです」

津浦「あなたがあの人と別人だと理解するのは!」

グレゴリー?「チッ……!」

道掛「じゃあ、こいつ誰なんだ!?」

佐場木「黒幕なのは間違いないだろう。わざわざ姿を現したんだからな」

兵頭「問題はなぜグレゴリーさんを騙るのか、ですね」

グレゴリー?「愚者共が……!我はグレゴリー・アストラル三世!そこに虚構など存在せぬわ!」

私達と一緒にいたあのグレゴリーじゃないこいつの正体……必ず暴くんだ!

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>196
【リボンの手紙】

グレゴリー?「我は<グレゴリー・アストラル三世>!」

グレゴリー?「理解せよ、愚者共!」

津浦「あなたは<Mr.グレゴリーではありません>!」

道掛「琴羽ちゃんが正しいとして……結局こいつ誰なんだ!」

兵頭「仮面を被っているなら、<亡くなった誰か>でしょうか」

佐場木「しかしここまで奴と該当する人間は今まで死んだ中にいない」

道掛「だったら<18人目>なんだな!それしかねえよ!」

グレゴリー?「貴様らぁ……!」

……そういえば。

あれってそういう意味だったんじゃ!

<18人目>←【リボンの手紙】

御影「それに賛成だよ!」


御影「道掛の言う通り、こいつは今までにいなかった18人目だと思う」

道掛「やっぱりか!」

グレゴリー?「……」

佐場木「なぜそう思う?」

御影「静音のコテージにぬいぐるみがあったんだけど……そのリボンにこんな手紙が縫い込まれてたんだよ」

【才能を持つ者達を支えるのが今回君が送られた役目である。
17名の才能、存分に側で感じその偉大さを理解するように願う】

津浦「これは……」

御影「この手紙が、こいつが18人目って」


グレゴリー?「絶望郷に誘ってくれるわ!」反論!


グレゴリー?「我が語られぬ者だと?笑わせる!」

グレゴリー?「その思い上がり、捩じ伏せてくれるわ!」

【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>196
【ウサミのぬいぐるみ】


グレゴリー?「貴様の妄言にはもはや一片の真実も眠りはしない!」

グレゴリー?「その口、沈黙の神に捧げよ!」

御影「黙らないよ」

御影「あんたは間違いなく18人目なんだ!」

グレゴリー「その文は鎮魂の指揮者の式神のものであろうが!」

グレゴリー「ならば才を持ちし者は彼の者を除き15!」

グレゴリー【鎮魂の指揮者の手紙など此度の事象には関係を持たぬ!】

これは静音の持っていたぬいぐるみから出てきた。

だけどそれは、手紙も静音の物だって事じゃない!

【鎮魂の指揮者の手紙など此度の事象には関係を持たぬ!】←【ウサミのぬいぐるみ】

御影「その反論、断ち切る……!」


御影「これは確かに静音の持っていたぬいぐるみのリボンに縫い込まれてた」

御影「だけどそのぬいぐるみを作ったのは鞍馬だったんだよ!」

佐場木「鞍馬か……確かに奴はよくぬいぐるみを作っていた」

道掛「もしかしてそれを凪ちゃんにプレゼントしたのか?」

兵頭「なかなか想像しにくい光景ですが……」

御影「多分、鞍馬はこの手紙を隠したかったんじゃないかな」

御影「静音かジェニーならぬいぐるみをもらってもきっと鞍馬を疑わなかったろうし……」

佐場木「見られたくない物を預けるには最適だった、というわけか」

グレゴリー?「……」

御影「鞍馬が受け取った手紙なら、私達の中には才能のある人間が17人いた事になる」

津浦「才能のないMr.鞍馬を除くと、ワタシ達は16名」

御影「その17人目の才能の持ち主が、この黒幕だったんだよ!」

グレゴリー?「……ならば聞こう!我は何者だ!その正体を明らかに出来ねば、貴様らの敗北よ!」

御影「……」

あれがもしかしたら、答えを導きだすかもしれない!

【残されたデータ】

御影「これだよ!」


御影「これで……わかるかもしれない」

道掛「それゲーム機か?」

御影「怜那の持ってたゲーム機の1つだよ。他のは壊れてたけど、これだけは画面が映るんだ」

佐場木「見せてみろ」

御影「うん、これだよ」

【未来機関第20支部
[ヒ××ー]
ア××マサ××キサ×ギ××キ
[工×員]
××××レ×ナ
[×××ッカー]
×ス×チ×ト
[×計士]
×××××・×××××××
[土×××員]
ツ×××ミキ
[通訳]
ツ×ラコ×ハ
[××]
×ワキセ×
[裁××]
×バキハ××
[××手]
ト×ミ×メ
[×イ××スト]
ミ××ケソ×ヤ
[×化師]
××ニークラ×××ツ
[××者]
シズ×××
[××ート×者]
シ×××ンカ×デ
[×××]
ミ×××××
[×××理委員]
ヒ××トウ××
×××ルイ】

津浦「ほとんど、わかりませんね」

御影「でも推測は出来ると思う」

兵頭「×は一文字を表しているようですね」

道掛「名前はカタカナなんだな」

佐場木「それを踏まえると……こうか」

【未来機関第20支部
[ヒーロー]
アコウマサキ×キサラギレイキ
[工作員]
キサラギレイナ
[サイキッカー]
ウスイチサト
[設計士]
グレゴリー・アストラル三世
[土木作業員]
ツチハシミキ
[通訳]
ツウラコトハ
[幸運]
ナワキセイ
[裁判官]
サバキハンジ
[観測手]
トオミメメ
[サイクリスト]
ミチカケソウヤ
[道化師]
ジェニークラヴィッツ
[指揮者]
シズネナギ
[フルート奏者]
シホウインカナデ
[被験体]
ミカゲボタン
[選挙管理委員]
ヒョウトウセン
クラマルイ】

道掛「おぉ、だいぶ埋まっ……んんっ?」

津浦「どうなさいました?」

道掛「いや……赤穂と如月の間の×ってなんなんだ?」

兵頭「それに、なぜ三世だけカタカナではないんでしょう」

佐場木「……」

御影「これ、もしかしたらこうなるんじゃない?」







【未来機関第20支部
[ヒーロー]
アコウマサキ・キサラギレイキ
[工作員]
キサラギレイナ
[サイキッカー]
ウスイチサト
[設計士]
グレゴリー・アストラル三世
[土木作業員]
ツチハシミキ
[通訳]
ツウラコトハ
[幸運]
ナワキセイ
[裁判官]
サバキハンジ
[観測手]
トオミメメ
[サイクリスト]
ミチカケソウヤ
[道化師]
ジェニークラヴィッツ
[指揮者]
シズネナギ
[フルート奏者]
シホウインカナデ
[被験体]
ミカゲボタン
[選挙管理委員]
ヒョウトウセン
クラマルイ】






佐場木「これは……!」

御影「ジェニーのところ、見てほしいんだけど……名前には・がついてないよね?」

兵頭「た、確かに」

御影「三世がカタカナじゃない、名前にはつかない・がある……津浦」

津浦「はい」

御影「前に、言ってたよね?」

※※

津浦『これは……』

御影『何かあったの?』

津浦『いえ、Mr.グレゴリーの事が書かれた本があったもので……』

御影『グレゴリーの?どんな本なの?』

津浦『あの人は謎の多い人でしたから。やれ【実は2人いる】だの過去から来ただの宇宙人だの……色々好き勝手書いてあります』

※※

御影「ってさ」

津浦「ま、まさか!」

グレゴリー?「……」

御影「あんたはずっと自分をグレゴリー・アストラル三世だって主張してた」

御影「それは合ってたんだね……【あんたもグレゴリー・アストラル三世】だったんだから」

佐場木「二人一役か……グレゴリー・アストラル三世という存在を2人が共有していた」

道掛「マジかよ……」

御影「グレゴリーが2人だった……それを示す証拠もあるんだ」

【スクラップブック】

御影「これだよ!」


御影「これは怜那のリュックに入ってたスクラップブックなんだけど……見てみて」

道掛「おっ、これ俺が初めて優勝した時の記事か!懐かしいな!」

佐場木「俺の記事もあるのか……」

兵頭「怜那さんは全員の記事をこのスクラップブックに貼り付けていたようですね」

御影「その中にあるこのグレゴリーについての記事……これがグレゴリーが2人いる証拠だよ」

津浦「タウン情報誌の記事ですか……日付は、6年前?」

御影「グレゴリーが仮面を着けるようになったのは5年前の事故が原因だったって言ってたよね?」

道掛「あれ?だけど6年前にはもう仮面着けたグレゴリーがいるってのはおかしくね……」

佐場木「そうか……俺達の知るグレゴリーは、既に存在していたグレゴリー・アストラル三世の姿を借りた存在だったのか」

兵頭「それなら、今まで正体不明だったのも頷けます。2人いる事さえわからなければ、どうしても人は1人を正体として当てはめようとするでしょうから……」

御影「まだ反論があるなら、決定的なものがあるよ」

御影「今すぐその仮面を取って」

グレゴリー?「……!」

御影「私達と一緒にいたグレゴリーの素顔はみんなが見てる。津浦が銃を持ち出した騒ぎの時にね」

津浦「……ワタシは、はっきりと覚えています」

津浦「きっと二度と忘れられないぐらいに……焼き付いていますから」

グレゴリー?「…………」

御影「グレゴリーは2人いた。そしてあんたはそのもう1人の方」

御影「それが私達の改めて出した結論だよ!」

「……………………」

佐場木「そろそろ教えてほしいものだな。貴様の本名を」

道掛「そうだぜ!紛らわしいからさっさと仮面取りやがれ!」

兵頭「黒幕の顔、私もぜひ見てみたいですね」

「……………………」







「……もういい」






御影「……!」

「アイツが黒幕だって思ってさっさと絶望すりゃいいものをグチグチと……」

苛立ち混じりの声を吐き出しながら黒幕が仮面を外す。

その下の顔は……やっぱり私達が見たグレゴリーの素顔とは似ても似つかない。

「まあ、こんなふざけた喋り方にも飽き飽きしてたところだ。ちょうどいいのかもしれないな」

「改めて自己紹介でもするか」

古黄泉「私は古黄泉幽星。【超高校級の設計士】だ」


古黄泉 幽星(コヨミ ユウセイ)
【超高校級の設計士】


御影「古黄泉、幽星」

兵頭「……なるほど。だからグレゴリー・アストラルなんですね」

道掛「へっ?何がだ?」

津浦「アストラルは漢字で星に幽霊の幽と書いて星幽と表記されます」

佐場木「奴の名字コヨミ……グレゴリオ暦からグレゴリーと名付けたか。暦はコヨミとも読むからな」

古黄泉「やめてくれよ!人が厨二真っ盛りの時に必死に考えた名前の由来を解説すんのは!」

道掛「???」

御影「……」

私もよくわかんない……

古黄泉「まあとにかくおめでとう!私の正体をよく見破ったよ!」

古黄泉「津浦は安心したか?あのグレゴリーが黒幕じゃなくて!」

津浦「……」キッ

古黄泉「ああ、怖い怖い……じゃあ第2ラウンド、始めるとしようか?」

一旦ここまで。

続きはまた夜に更新します。

それでは。

御影「第2ラウンド?」

古黄泉「そうだ。まだこの私が黒幕だった事しか明かされてないだろう?」

古黄泉「次は、そうだな……この島の秘密について解き明かしてもらおうか?」

兵頭「この島の秘密……」

道掛「もう黒幕がわかった以上そんな事する必要あんのか!?今すぐてめえを……」

古黄泉「馬鹿だなぁ道掛。そんなの許すわけないだろ?」

そう言って古黄泉が取り出したのは……赤白の錠剤の詰まった瓶。

古黄泉「ククッ、中身は言わなくてもわかるよな?」

佐場木「身体強化薬か」

古黄泉「私は如月怜輝にも勝った。こう言えばおとなしく議論、してくれるよな?」

道掛「っ……!」

津浦「仕方がありません……議論しましょう皆様」

兵頭「悔しいですが、他に選択肢はないですね」

御影「……」

この島の秘密について、か……

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>196
【急な夜】
【発電所のスイッチ】
【赤穂の違和感】


古黄泉「この島の秘密……」

古黄泉「解き明かせるかな?」

佐場木「この島には異常なところが多々あった」

兵頭「<四季を再現している島>からして異常ですね」

津浦「<島を繋ぐあの橋>も、今考えると……」

道掛「でも<ゲームの中>ってわけじゃないんだよな……」

古黄泉「おいおい、まさかこんな事で躓くのか?」

古黄泉「どう考えても<あり得ない事が起きた>はずだろう?」

……多分あいつが言ってるのは。

<あり得ない事が起きた>←【急な夜】

御影「それに賛成だよ!」


御影「あり得ない事……この島が急に夜になった事でしょ?」

古黄泉「そうさ、あんな異常事態はそうそうないだろう!」

道掛「そういや、あれなんだったんだよ!」

兵頭「捜査中いきなり夜になったんですよね……」

津浦「あれには驚きました……」

佐場木「今の時間は……午後3時か。暗くなるには早すぎるな」

古黄泉「あれは私も想定外だったんだ。まさかあんな事になるとは思ってなかったからなぁ」

道掛「あれって、てめえがやったんじゃねえのか!?」

御影「……」

急に夜になった島……その前に起きた事を考えると原因は……

【発電所のスイッチ】

御影「これだよ!」


御影「多分……私がやったんだよ」

道掛「牡丹ちゃんがか!?すげえな!」

御影「いや、そんな誉められるような事じゃないんだよね……」

津浦「どういう事ですか?」

御影「発電所を調べてた時に……私転んでスイッチをいくつか弄っちゃったんだよ」

佐場木「……間違いない。俺もその場にいたからな」

御影「それで、直そうとしたんだけどどれがどれだかわかんなくて……」

兵頭「適当に弄った、と」

御影「う、うん……その後発電所出たら夜になってたから」

道掛「……朝と夜ってスイッチでなんとかなんのか!?」

兵頭「そんなわけないでしょう。当然理由があった……それは考えてみればわかるはずですよ」

理由……うん、考えてみよう。

【ショットガンコネクト開始!】

急な夜……その前この島に起きた事……

コトダマ>>196
【赤穂の違和感】
【電子手帳】
【道掛の証言】

課題
【スイッチを触って出来た事は?】
【この島に起きた奇妙な出来事は?】
【御影がやってしまった事は?】

【道掛の証言】―【この島に起きた奇妙な出来事は?】

道掛は言ってた……夜空になる前真っ暗になったって……

それと似た事が前にもあったはず……

コトダマ>>196
【絶望教】
【壊れた電子手帳】
【第3の動機】

【道掛の証言】―【この島に起きた奇妙な出来事は?】―【第3の動機】

第3の動機の暗闇、星明かりも月明かりもないまっ暗闇。

そして道掛が見た真っ暗になった後の星空……

つまりこの島の空は……!

結論
【この島の空は作り物だった】
【この世界は電脳世界だった】
【技術が進んだ】

【この島の空は作り物だった】

御影「これが私の結論だよ!」


御影「この島の空は、作り物だったんじゃない?」

道掛「つ、作り物?空がか?」

御影「……というより」

御影「この島そのものが作り物だった……そう考えた方がいいかも」

津浦「島そのものが……!?」

佐場木「つまり俺達がコロシアイをしていたこの島々は……人工島だったというのか」

御影「そう考えると四季がバラバラの島にも説明がつくよね?」

兵頭「もっと言うなら、私達全員が流れ着いたのも人工島であるこの島が回収したと考えれば……」

道掛「おいおい、なんかとんでもない事ばっかわかってる気がすんぞ……!」

御影「今思えば……あれもそういう意味だったのかな」

兵頭「あれ?」

【赤穂の違和感】

御影「これだよ!」


御影「兄さん、星空に違和感があったみたいなんだ」

津浦「違和感とはいったい」

御影「具体的な事はわかんない。気のせいって事にしたみたいだけど……多分」

古黄泉「いや、あれは焦ったな。何しろ夜空を動かした瞬間を見られたんだから」

御影「……!」

古黄泉「正直赤穂政城は警戒してたんだよ。どうもアイツ嫌な目してたからな」

古黄泉「絶望の嫌う光……希望の輝く目」

古黄泉「だから苗木には赤穂政城はさっさと殺せって提案したんだぞ?なのにアイツ、寄生虫を減らすのが最優先だって聞く耳持たなくてな……」

御影「っ、まさか兄さんを狙ってた理由って」

古黄泉「邪魔になりそうだから以外にないだろう。事実妹のお前もこれだけ私の邪魔をしてくれる……アイツが生きてたらなんて、想像したくもない」

道掛「っ、てめえ、そんな事で赤穂を……!」

兵頭「やはり絶望は、理解出来ない存在ですね」

佐場木「……その言い方からして認めるのか。この島が人工島であると」

古黄泉「もちろんだ!この島は設計士グレゴリー・アストラル三世の最高傑作だからな!」

古黄泉「ククッ、最もその使われ方は当初とはだいぶ違うが」

古黄泉「さて、お前達はこの島が人工島である事も解き明かした!」

古黄泉「第3ラウンドはこのコロシアイの目的を議論してもらうとしようか!」

道掛「コロシアイの目的……苗木は皆殺しだったよな」

津浦「超高校級の絶望に影響されて……というわけじゃないですよね?」

兵頭「先ほどの反応からすれば、それもあるでしょうが……」

佐場木「少なくともただの愉快犯という事はないだろう」

御影「……」

コロシアイの目的……こいつがどんな人間か考えればきっと答えは出るはず……

【絶望教】

御影「これだよ!」


御影「絶望教……あんたはその協力者なんだよね?」

古黄泉「ああ、そうだ。自堕落極まりない教祖や面白おかしい同僚と楽しくやってるよ」

御影「その絶望教の教義……それを考えればこいつの目的もわかるんじゃないかな」

兵頭「絶望教の教義……確か世界の希望と絶望の総量は決まっていて誰かを絶望させれば自分達に希望が訪れる、でしたか」

道掛「じゃあまさかこいつのコロシアイの目的ってのは」

津浦「希望を得るために、ワタシ達に絶望を……?」

古黄泉「クッ、ククッ……」

古黄泉「ハハハハハハハハハハッ!!」

佐場木「何を笑っている?」

古黄泉「浅い、浅い浅い浅い!この私を誰だと思ってる!?」

古黄泉「江ノ島様に魅入られた絶望の使徒だぞ!」

古黄泉「希望と絶望の総量?絶望させれば希望が訪れる?ハッ、私にとってそんなものただの建前だ!」

古黄泉「なぜなら私からすればそんなもの嘘っぱちだからなぁ!」

御影「う、嘘っぱち……?」

古黄泉「江ノ島様がせっかく絶望を蔓延させたというのにあの忌々しい希望が全てぶち壊してくれた!」

古黄泉「世界がまた希望に包まれる……それだけは阻止せねばならなかった」

古黄泉「故に絶望教なんていうイカれた宗教に手を貸したんだ」

古黄泉「希望が得られると思えば勝手に絶望を広めてくれるからな」

古黄泉「私は奴らとは違い、ただ単純に絶望を求めているんだ!」

古黄泉「2代目【超高校級の絶望】としてな!」

道掛「2代目……」

兵頭「【超高校級の絶望】……」

古黄泉「ククッ、他の残党が何やら2代目を作ろうとしていたみたいだが、そんなの必要ない!」

古黄泉「この私が、古黄泉幽星こそが!」

古黄泉「江ノ島様の後を継ぐ2代目【超高校級の絶望】となるのだから!」

佐場木「つまり貴様の目的は……再び世界を絶望に染め上げる事か」

古黄泉「そうだ!江ノ島様は志半ばでその命を散らした!」

古黄泉「だから私がそれを引き継ぐ!この世界を絶望に染め上げ、絶望郷とするんだ!」

古黄泉「このコロシアイはいわば新しい世界の狼煙!お前達という生け贄を捧げ、絶望は再び産声をあげるんだよ!」

御影「っ、どこまで好き勝手な事……」

古黄泉「私の目的もわかっただろう?私にとってお前達は重要な道具だ」

古黄泉「77期生を絶望に変えるきっかけだったあの女を殺すための装置、江ノ島様のコロシアイのために捧げた装置……そしてこのコロシアイに使った装置!」

古黄泉「数々の物と同じ愛すべき道具だ」

道掛「ふざけやがって……!」

古黄泉「さて、そろそろ最後の投票としようか?」

津浦「最後の投票……」

古黄泉「さあ選べ!お前達の結末をな!」

御影「……」

古黄泉の言葉に投票画面を見る。

御影「えっ」

兵頭「っ!」

佐場木「なっ……!?」

道掛「はあっ!?」

津浦「……!」

だけど、その画面にあった選択肢は……







     【死】  【絶望】






佐場木「なんだ、これは……!」

古黄泉「【死】を選べば処刑する。存分に苦痛を味わって死ね」

古黄泉「【絶望】を選べばお前達を【超高校級の絶望】として迎え入れてやるよ」

古黄泉「安心しろ、江ノ島様が作ったこの洗脳映像でしっかり絶望に染め上げてやる」

道掛「ふざけんじゃねえぞ!実質選択肢なんかねえじゃねえか!!」

古黄泉「選択肢?ククッ、まさかお前達……」

古黄泉「私が【希望】なんて選択肢を与えてくれると思ってたのか?」

津浦「っ、最初からあなたは……ワタシ達に勝たせる気などなかったんですか?」

古黄泉「逆に聞くけどな、なんで負ける選択肢をこちらが組み込まないといけないんだ?」

古黄泉「お前達は生け贄だって言ったはずだ。死ぬか絶望になるか以外の選択肢なんか必要ない」

兵頭「だ、だったら私達は……何のために……!」

古黄泉「だから言ったじゃないか……グレゴリー・アストラル三世だと思う内に絶望しろって」

御影「あ、あんたは……!」

古黄泉「それに……これはお前達のためでもある」

古黄泉「津浦」

津浦「……!」

古黄泉「お前、安心してたな?黒幕が好きな男じゃなくて」

津浦「何を……!」

古黄泉「そんなお前に問題だ」

古黄泉「数々の処刑器具、コロシアイのためのこの島……誰が設計したと思う?」

津浦「は……?」

古黄泉「実はな、これ設計したの私じゃないんだ。じゃあ誰が設計したのか……」

津浦「ま、まさか、そんな……」

古黄泉「ああ、確かにアイツは黒幕じゃない」

古黄泉「アイツはコロシアイのための道具を設計する、共犯者だったんだからな」

津浦「う、嘘です!そんなの……!」

古黄泉「じゃあ津浦……なんでアイツは私の存在を出さなかった?」

古黄泉「私だけいないとわかれば当然疑問に思うだろう?」

古黄泉「なのに何も言わなかった……アイツはな」

古黄泉「黒幕が誰かわかってて、黙ってたんだよ!」

津浦「あ、ああ……そんな……嘘です、そんな……」

御影「つ、津浦!」

古黄泉「道掛」

道掛「なんだよ!」

古黄泉「……いや、お前はどうでもいいか」

道掛「はあ!?」

古黄泉「お前は他の全員が【絶望】を選べばそれに付き合うだろう?」

道掛「んな事……!」

古黄泉「いいや、選ぶさ。お前は馬鹿だが、人を受け入れる事に関しては才能がある」

古黄泉「鞍馬、苗木、如月……また失いたくないよなぁ?」

道掛「ぐっ……!」

古黄泉「明るく振る舞ってもその心に絶望が蓄積されてんのはわかってるんだよ」

古黄泉「それにお前、御影が好きだろ?」

道掛「っ!」

御影「えっ……」

古黄泉「惚れた女を見捨てられるか?なあ、道掛!なあなあなあ!」

道掛「うっ、ぐっ……!」

御影「道掛……」

古黄泉「佐場木」

佐場木「……」

古黄泉「お前は今までとやる事は変わらないさ、気にするな」

佐場木「なんだと?」

古黄泉「罪を憎んで犯罪者を地獄にがお前のモットーだったな?」

古黄泉「だけどそれは犯罪者相手に絶望を与えるのと同じ……お前はある意味一番絶望に近い」

佐場木「貴様……!」

古黄泉「例えばその中に1人冤罪がいたらお前はどうする?」

佐場木「俺が冤罪で判決を下したと言うつもりか!」

古黄泉「今はなくても、この先ないって言い切れるか?」

古黄泉「この絶望に満ちた世界、たくさんの罪が溢れるこの世界で間違わずにいられるか?」

古黄泉「既に2回も間違えたお前が」

佐場木「……!」

古黄泉「ククッ、絶望になればそれすら受け入れられるぞ。間違えようが、希望を裁こうが……全て絶望という悦びになる」

佐場木「…………」

御影「さ、佐場木……」

古黄泉「兵頭」

兵頭「っ」

古黄泉「お前は自分で一番よくわかってるはずだ」

古黄泉「自分がいずれ絶望になると」

兵頭「わ、私は」

古黄泉「まさかこの先御影と一緒にいられるなんて思ってないよな?」

兵頭「……!」

古黄泉「お前は支えを失う、お前はもう止める楔がない……その果てにあるのは」

古黄泉「自分の快楽のために人を殺す殺人鬼の誕生だ」

兵頭「やめてください!」

古黄泉「それが現実だ!お前はもう救われない、お前はもう止まらない!」

古黄泉「何をしようが、何を言おうが、何を考えようが!」

古黄泉「兵頭!お前の未来は絶望しかないんだよ!」

兵頭「うううっ……!」

御影「千!あんた、みんなに……」

古黄泉「……なあ御影」

御影「なに!言っとくけど私は――」







古黄泉「お前の人生ってなんなんだ?」






御影「な、に……」

古黄泉「親に捨てられ、イカれた奴に身体ぐちゃぐちゃにされ、今も未来機関に利用される」

御影「……」

古黄泉「挙げ句このコロシアイで大切な兄貴を失って、打ち解けた相手も失って……」

御影「それはあんたが!」

古黄泉「そして必死に生き延びた先に待つ未来は……未来機関の実験台としての日々だ」

御影「っ!」

古黄泉「お前の人生、希望なんてどこにある?」

古黄泉「利用されて、大切な人間は死んで、治りもしない病気をずっと抱えてる」

古黄泉「お前は生まれながらの絶望だよ御影牡丹」

古黄泉「だってお前には」

古黄泉「過去現在未来永劫!希望なんかないんだからなぁ!」

御影「!!」

……わかってる。

わかってるんだよ。

兄さんは私のせいで死んだ。

怜那の事だって、何も気付けなかった。

そして今……私は、みんなに何も言えない。

私、私は……

御影「…………」



兄、さん…………ごめんなさい。


私、もう、だめ……みたい…………

今回はここまで。

次回、学級裁判完結。

それではまた……







もう、どうしようもないんだ……






御影「……」

死ぬか、【超高校級の絶望】になるか……

私達には、それしか選択肢がない。

古黄泉「さあ、そろそろ自分達の立場を理解しただろう!投票といこうじゃないか!」

津浦「死ぬ、わけには……でもワタシは……」

道掛「どうすりゃ……いいんだよ……!」

佐場木「…………」

兵頭「わかっていたのに……私の未来には……」

みんな、もう折れちゃってる……

私だって、同じだ。

死ぬか絶望になるか……どちらにしても、私達はなすすべもなく負ける。

みんなの死を背負って、絶対生き残るんだって思ってたのに。

兄さん……

兄さんなら、こんな時…………







カチッ






御影「えっ……」

握り締めていた兄さんの杖。

そこから何か、音がして……

御影「……何、これ」

見てみたら、杖の持ち手部分が空洞になってて……中に一枚紙が入ってた。

御影「……」カサッ

【もし俺が死んだ時のために、ここに遺言を残しておく】

御影「……!」

兄さんの、遺言状……?

【もしコロシアイが起きたら、俺は死ぬと思う。だってコロシアイが起きるなら、俺以上に狙いやすいやついないからな】

【実のところ、死ぬ事はあまり怖くないんだ。
元々塔和シティで死ぬと思ってたところを生き残ったからかもな】

【ただ、1つ】

【心残りがあるとするなら、それは……】

【牡丹、お前の事だよ】

御影「っ!」

【お前に何があったかは、わからない。だけどきっとお前は昔の優しい牡丹のままだ】

【だからもし俺がお前を庇って死んだ時、自分のせいだって責めてそうなんだよ……当たってるか?】

【もしそうなら、それは違ってるぞ牡丹】

【お前を守れたなら俺は後悔しない。お前がこの先も生きていけるなら、それ以上の報酬なんてない】

【だから牡丹】

【もしお前がこの先絶望しそうになった時のために……この言葉を、遺しておくな】







【負けないでくれ牡丹】

【俺にとってお前は】

【希望、そのものなんだから】






御影「…………」

【ああ、でも生きてる内にこれ見られたら恥ずかしいな!?】

【牡丹、もし俺が生きてる内にこれ読んだなら……なかった事にしといてくれ!】

御影「…………」

私馬鹿だ。

何が、だめなんだろう。

何が、わかってたんだろう。

兄さんがなんで私を守ってくれたのか。

怜那がなんで私に打ち明けてくれたのか。

そんな事も、きちんと考えなかったのに!

「……」

古黄泉「ハハハハハハッ!」

私の人生に希望なんてない?

なんでそんな事……

「……」ダンッ!

古黄泉「……んっ?」

こんな奴に決められないといけないの!!

「……私は選ばない」

古黄泉「……はあ?」

「あんたみたいな奴の決めた選択肢なんか選ばない!」

「過去に希望があったか!今に希望があるか!未来に希望が待ってるか!」

「それは私が、私自身が決める!」

「あんたが何を言おうと……」

「私はもう、私自身に絶望しない!」

だって私は……!

赤穂牡丹「赤穂牡丹を、希望と言ってくれる人がいるんだから!!」

赤穂政城の、私の大好きなヒーローの妹なんだ!

古黄泉「何を言ってやがる……頭おかしくなったか?」

牡丹「……」

古黄泉「まあいいさ、勝手に拒否してろ。他の連中は……」

牡丹「無駄だよ」

古黄泉「あ?」

牡丹「あんたは、ここにいる誰1人絶望なんてさせられない」

牡丹「それを今、証明してあげるよ」

古黄泉「……ほざくなよ御影!お前に何が出来る!?」

古黄泉「今まで誰かに守られるだけだったお前がぁ!!」

牡丹「……」

そうだよ。

私は今まで守られてばかりだった。

だけど、そんな私がこうして立ち直れたのに。

みんなが、立ち直れないわけがない!!

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ
【真実の追求】
【可能の追求】
【正義の追求】
【未来の追求】

牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」

牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」

古黄泉「出来るものか!お前なんかに!」

古黄泉「この絶望を晴らす事なんてなぁ!」

津浦「【あの人が、共犯者だったかもしれない】……ワタシは……」

道掛「【俺には何も出来ねえのかよ】……!」

佐場木「【……遠見、俺は】」

兵頭「【私には、未来なんて】……」

【あの人が、共犯者だったかもしれない】←【真実の追求】

牡丹「立ち止まらないでよ……!」


牡丹「津浦!顔を上げて!」

津浦「し、しかしMr.古黄泉の言葉が、正しければ……」

牡丹「そんなの本当かわからない!さっきのこいつの言葉を思い出しなよ!」

※※

古黄泉『もちろんだ!この島は設計士グレゴリー・アストラル三世の最高傑作だからな!』

古黄泉『ククッ、最もその使われ方は当初とはだいぶ違うが』

※※

牡丹「あいつははっきり言った!使われ方が当初とは違うって!」

津浦「……!」

牡丹「だったら本当にグレゴリーが共犯者だったのか……それだってわからない!」

牡丹「それにまだ、グレゴリーの名前だって知らないんだよ?」

牡丹「真実を、あいつの事を追い求めよう……津浦!」

津浦「……」

津浦「そう、でした」

津浦「ワタシは……こんなところで、立ち止まっている暇はなかったんでした」

津浦「ありがとうございます、Ms.赤穂」

津浦「ワタシはあの人の事を知りたい……だから!」

津浦「あなたの本当か嘘かもわからない言葉に、傾ける耳はありません!Mr.古黄泉!」

古黄泉「なっ……!?」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ
【可能の追求】
【正義の追求】
【未来の追求】

牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」

牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」

古黄泉「く、糞……!出来るはずがない!お前なんかに!」

古黄泉「この絶望を、晴らす事なんて!」

津浦「ワタシは迷いません!あの人を知るためにも!」

道掛「【俺には何も出来ねえのかよ】……!」

佐場木「【……遠見、俺は】」

兵頭「【私には、未来なんて】……」

【俺には何も出来ねえのかよ】←【可能の追求】

牡丹「そんな事ない!」


牡丹「道掛……」

道掛「情けねえよ、牡丹ちゃん……俺、こんな時どうすりゃいいのか、わかんねえ!」

牡丹「……ありがとう」

道掛「へっ……?」

牡丹「ずっと、言えてなかったよね」

牡丹「道掛なんでしょ?苗木に襲われた時私を助けてくれたの」

道掛「あっ、それは……」

牡丹「思い返したらさ、私道掛にたくさん助けられてたんだよね」

道掛「……」

牡丹「だから、道掛は何も出来ないなんて事ないよ」

牡丹「少なくとも私に、とってはね」

道掛「…………はっ、あはははははっ!」

道掛「やっぱり俺馬鹿だわ!今の言葉だけで頭ん中スッキリだ!」

道掛「おい古黄泉この野郎!俺は決めたぞ!」

道掛「てめえなんかに牡丹ちゃんも他のやつらも触らせねえ!」

道掛「惚れた女の子も!ここまで一緒に来た仲間も見捨てねえ!」

道掛「そして今思い出したぞ!」

道掛「カモノハシじゃねえ!カモフラージュだってなぁ!!」

古黄泉「馬鹿はこれだから、たちが悪い……!」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ
【正義の追求】
【未来の追求】

牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」

牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」

古黄泉「なんだよ、これは……!で、出来るはずがない!」

古黄泉「この絶望を、晴らすなんて……!」

津浦「ワタシは迷いません!あの人を知るためにも!」

道掛「出来る事なんか考える前にやる!俺は馬鹿だからなぁ!」

佐場木「【……遠見、俺は】」

兵頭「【私には、未来なんて】……」

【遠見、俺は……】←【正義の追求】

牡丹「胸を張りなよ!」


牡丹「佐場木、いつものあんたらしくないよ……あんなやつ、あんたの嫌いなタイプでしょ」

佐場木「……遠見の時、前回の裁判、俺は結局間違えていた」

佐場木「苗木を懐に入れ、好き勝手させたのも俺だ」

牡丹「それは……」

佐場木「だが」

牡丹「えっ」

佐場木「そんな俺をあいつは赦した。本末転倒だと説教された」

佐場木「そして俺はまだ……あいつとの約束を果たしていない!」

佐場木「正義の追求は俺の人生をかけて行う事だ!常に悩み、苦しみ、そして判決を下すのが俺の仕事!」

佐場木「こんなところで足踏みなどしていられるか……失せろ犯罪者」

佐場木「貴様には有罪を叩きつけてやる!古黄泉幽星!!」

牡丹「なんだ……大丈夫だったんじゃん」

古黄泉「どう、なっている……!?」

【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ
【未来の追求】

牡丹「あんたには私達を絶望なんてさせられない!」

牡丹「それを今証明してあげるよ!古黄泉幽星!」

古黄泉「ば、馬鹿な馬鹿な馬鹿な……!」

古黄泉「なんで絶望しない、なんでそんな……!」

津浦「ワタシは迷いません!あの人を知るためにも!」

道掛「出来る事なんか考える前にやる!俺は馬鹿だからなぁ!」

佐場木「貴様に心配される謂れはない!地獄へ落ちろ、犯罪者!!」

兵頭「【私には、未来なんて】……」

【私には、未来なんて】←【未来の追求】

牡丹「負けないで、千……!」


牡丹「千!」

兵頭「牡丹さん……」

牡丹「私との約束、忘れてないよね?」

兵頭「約束……」

牡丹「もう前の裁判みたいに、自分の命を粗末にしないで」

兵頭「ですが、私は……牡丹さんだって」

牡丹「私は、千に側にいてほしい」

兵頭「……!」

牡丹「未来がどうなるかなんて、誰にもわからないよ」

牡丹「だからみんな頑張って、いい未来にしようとする」

牡丹「だから一緒にさ、いい未来を目指そうよ千」

牡丹「私達、友達なんだから」

兵頭「……」

兵頭「諦めて、いました」

兵頭「選挙だって、皆さん諦めていた人なんていなかったのに」

兵頭「どんな強大な相手でも、諦めずに戦い抜く……今も選挙も同じ事」

兵頭「だったら私は……より良い未来を追求します!」

兵頭「牡丹さんと一緒に!」

牡丹「……うん!」

古黄泉「なんで……なんでだ!?」

牡丹「……あんたには私達を絶望なんてさせられない」

牡丹「それが証明されたよ!古黄泉幽星!」

古黄泉「馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!」

古黄泉「なんでそんな希望に満ちた目をしている!なんで絶望が晴れている!」

津浦「【死】か【絶望】……どういたしますか?」

道掛「んなもん決まってるぜ!どっちも選ばないってな!」

佐場木「はっ、犯罪者らしい手口だったが……」

兵頭「ふふっ、正解なんて最初から決まっていましたね」

古黄泉「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!」

古黄泉「オレの思い通りになんでならないんだよ!!」

古黄泉「この、雑魚共がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

【パニックトークアクション開始!】

古黄泉「絶望しろ!絶望しろ!絶望しろ!絶望しろ!絶望しろ!」

古黄泉「お前達に私、オレの計画が……」

古黄泉「認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない!!」

古黄泉【お前達に、希望などあるはずがねえんだよぉ!!】




     望

希        追求

     の

【希望の追求】


牡丹「これで終わりだよ!」


牡丹「あんたの負けだよ古黄泉幽星!もう私達を絶望なんてさせられない!」

牡丹「希望は私達が自分で追求する!あんたが何を言ったってね!」

古黄泉「あり得ない、お前達なんかに、お前達ごときに……」

牡丹「だから【死】も【絶望】も……私達は選ばない!」

牡丹「それが私達の答えだよ!」

津浦「はい!」

道掛「おう、もちろんだ!」

佐場木「他の選択肢など必要ない……ある意味では貴様の言う通りだったな」

兵頭「これで、終わりですね……!」

古黄泉「ち、ちくしょうが……!」

古黄泉「どいつもこいつも……オレに逆らいやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

喚く古黄泉を無視して私達は投票画面をそのままにする。

そこから誰も投票しないまま。

最後の学級裁判は、終わった。







     【学級裁判閉廷!】






今回はここまで。

次回第6章完結。

それではまた……

佐場木「終わったな」

津浦「そうですね……長い1日でした」

投票ゼロって表示された画面を見て大きく息を吐く。

コロシアイは……終わったんだ。

古黄泉「なんでだ……オレの計画は完璧だったはずだ……」

私達の選択が信じられないのか、古黄泉はガタガタ震えてる。

古黄泉「あり得ない!このオレの、2代目【超高校級の絶望】になる男の計画が……!」

牡丹「……あんたは【超高校級の絶望】にはなれないよ」

古黄泉「なんだと……」

牡丹「ううん、あんたは何にもなれてない」

牡丹「このスクラップブック……それまで小さな記事での扱いだったグレゴリーが有名になったのは4年前……もう1人のあいつがグレゴリーになってから」

牡丹「それにこの島もあいつが設計したなら……あんたは何を設計したの?」

古黄泉「……!」

牡丹「絶望としてだって、あんたは江ノ島盾子に従ってたけど……絶望になりきれてない」

牡丹「今のその反応がそれを物語ってる」

古黄泉「やめろ……」

牡丹「その後あんたは絶望教に逃げ込んで、コロシアイを計画していた苗木に便乗して……」

古黄泉「やめろ……!」

牡丹「あんた、1人で何かをした事あるの?」

牡丹「【設計士】としても、【絶望】としても、クロとしても、黒幕としてもあんたは失敗してる!」

牡丹「この選択肢だってそうしないと、負けるのがわかりきってたからでしょ!」

牡丹「あんたは……希望でも絶望でもない」

牡丹「ただの中途半端なだけの人間なんだよ!古黄泉!」

古黄泉「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

古黄泉「くそが……好き勝手言いやがって!」

古黄泉「だけど投票しなかった以上覚悟できてんだろうな……!」

佐場木「道掛!」

道掛「おう!」

佐場木と道掛が私達を庇うように前に立つ。

古黄泉はそんな私達を馬鹿にしたように笑いながら、今までおしおきに使ったスイッチを取り出した。

古黄泉「庇ったところで無駄だ!お前らは全員ここで処刑されて死ぬ!」

津浦「……!」

兵頭「絶体絶命の状況ですね……」

道掛「だとしても、おとなしく処刑なんかされてやるかよ!」

佐場木「最後まで抵抗はするぞ」

古黄泉「それでは!投票放棄したお前らに!スペシャルなおしおきを用意しました!」

牡丹「……」

考えるんだ……この状況をどうにかする方法。

最後まで諦めずに、戦うんだ……!

古黄泉「それでは張り切ってまいりましょう!おしおきターイ――」







ドォンッ!!






古黄泉がスイッチを押す直前、大きな揺れが裁判場を揺らす。

古黄泉「なっ」

道掛「隙ありだこの野郎!」

それに気を取られた古黄泉の顔を、道掛が思いっきり殴り飛ばした。

古黄泉「ぎっ!?」

飛んだ拍子にスイッチと薬瓶が床に落ちる。

それを佐場木と千が急いで回収した。

古黄泉「は……がっ、なんだ、何が起き……」

古黄泉がスイッチを入れたのか、モニターに海が映る。

海にはモーターボートがあって、その上には1人の男が立っていた。

古黄泉「誰だ……」

『……』

古黄泉「お前誰だぁ!?」

『……自分か?自分は』



切原『未来機関第17支部所属、切原生人だ』

牡丹「切原って、確か遠見が言ってた……」

佐場木「あいつの所属していた部隊の、隊長か」

姫埜『あっ、いたわよ!』

歌恋『生人さん!やっと追い付きました……!』

当麻『切原!1人で動くんじゃねえ!』

切原『……お前に言われるとはな』

兵頭「あれは未来機関……」

道掛「助けが来たのか!」

古黄泉「な、なんでだ!この島はステルスと光学迷彩を駆使した要塞だぞ!」

古黄泉「どうやってここを突き止めた!?」

当麻『てめえが古黄泉幽星か……ここの場所を教えてくれた奴がいたんだよ』

古黄泉「……まさかあの狂人!?」

姫埜『確かに【超高校級の狂人】からもメールが届いたわ。だけどそれより早く連絡が来ていたのよ』

古黄泉「ふざけるな!あいつじゃないなら他に誰がいるっていうんだ!」

歌恋『如月怜那さん、という方です』

牡丹「怜那が……?」

切原『いきなり送られてきた救助を求める通信。しかし未来機関に如月怜那という人間はいなかった……故に確認に手間取った』

津浦「Ms.如月は工作員……表向きにはいない事になっていたのでしょう」

当麻『そこに【超高校級の狂人】を名乗る奴からだめ押しみてえに同じ情報が来た……だから俺様達が来たんだよ』

古黄泉「な、な……」

牡丹「……如月兄妹は、勝った」

兵頭「えっ?」

牡丹「千を助けた人が言ってた言葉……あれってこういう事だったんだ!」

切原『今からそちらに侵入する』

姫埜『待っててね、もうすぐ救助するから!』

歌恋『それと古黄泉さん、あなたも確保します……!』

当麻『とにかく動くなよ!いいな!』

モニターに映ったボートがこっちに向かってくる。

私達、助かったんだ……!

佐場木「救助が来るか……道掛、古黄泉を拘束するぞ」

道掛「わかったぜ!おとなしくしろよ古黄泉!」

古黄泉「…………」

津浦「っ、Mr.道掛!Mr.古黄泉から離れてください!」

道掛「はっ!?」

古黄泉「おせえよ!」

古黄泉が懐から取り出したボタンを押す。

その瞬間、裁判場の天井が爆発した。

道掛「うおっ!?」

牡丹「大丈夫!?」

古黄泉「ハハハハハッ!オレは捕まらねえ!またいつかお前らを殺しに来てやるよ!じゃあな未来機関!」

瓦礫の向こうにいる古黄泉は笑って、扉に走っていく……あいつまさか!

佐場木「ちっ、逃げる気か!」

道掛「追いかけるか!?」

兵頭「駄目です!完全に分断されて……それにここも崩れます!」

牡丹「とにかく、外に出よう!」

私達も急いで裁判場の出口、エスカレーターに向かう。

その後ろで裁判場はまた爆発して……崩れていった。

佐場木「急げ!ここももたない!」

津浦「は、はい……!」

道掛「くそ、最後まであの野郎は変な事しやがって!」

牡丹「はぁ、はぁ……」

走っていくみんなを必死に追いかける。

こんな走った事ないから、胸が痛くなってきた……

兵頭「牡丹さん、大丈夫ですか?」

牡丹「はぁ、はぁ……」

千の言葉にも上手く言葉を返せない。

それでも大丈夫だって伝えるために、手を上げようとして。


私のいた場所が、崩れた。


牡丹「えっ……」

身体が浮く。

引っ張られるように、下に落ちていく。

兵頭「牡丹さん!!」

千が伸ばした手に私も手を伸ばすけど、その手は空を切って。

私は、手を伸ばしたままの格好で……暗闇に落ちていった。

兵頭「牡丹さーーーーーんっ!!」

※※

古黄泉「糞、あの女、絶対に殺してやる……」

古黄泉幽星は逃亡用の通路を走りながら自分の計画を狂わせた女への憎悪をたぎらせていた。

古黄泉「御影、牡丹……!」

赤穂政城の妹、ただ病気を抱える事しか出来ない役立たず。

そんな女に、中途半端と評された事は古黄泉のプライドをズタズタに引き裂いていたのだ。

古黄泉「とにかく、まずは脱出して……絶望教に合流だ」

手元には自分が拾ってやった人形に作らせた設計図が大量にある。

これに手を加えれば、また誰かを絶望させる処刑装置に出来るだろう。

古黄泉「オレはまだこれからだ……必ず江ノ島様の後継者として」

「うぷぷぷぷ」

古黄泉「!?」

いきなりの笑い声に足を止める。

古黄泉の視線の先……そこで笑っていたのは。

古黄泉「モノクマ……」

モノクマ「やあやあ古黄泉クン!随分無様な姿だね!」

古黄泉「なんだお前……またあの狂人が操ってんのか?」

モノクマ「あらら、忘れちゃったの古黄泉クン?」

モノクマ「キミのパートナーをさ!」

古黄泉「……お前か」

絶望教で共に仕事してきたもう1人の協力者。

モノクマを操るのがそいつだと気付いた古黄泉は警戒を解く。

古黄泉「お前が来たなら話は早い。本部に戻ると教祖に」

モノクマ「ああ、それなんだけど教祖様からキミに伝言だよ」

古黄泉「伝言?」







モノクマ「――古黄泉幽星なんて人間は絶望教にいない」

古黄泉「…………は?」






モノクマ「絶望教とキミは無関係!それが教祖様からキミへの伝言だよ!」

古黄泉「な、何を言ってやがる!!オレが今までどれだけ協力したと」

モノクマ「協力ぅ?じゃあ聞くけどさ」

モノクマ「キミ何をしたの?」

古黄泉「何って、お前……」

モノクマ「だってキミが持ってきた設計図ってみんなグレゴリークンの設計図に手を加えたものでしょ?」

モノクマ「しかも加えた部分はどこもかしこも凡庸もいいとこ!はっきり言って誰でも考えつくよあんなの」

古黄泉「なっ……」

モノクマ「それでも野望に燃えてるから今回のコロシアイを見てたのにさ……」

モノクマ「キミ、グレゴリークンのおしおきでわざと機械を崩したでしょ?」

古黄泉「……!」

モノクマ「くだらないよね。自分の処刑装置まで一流のものを設計しちゃう彼に嫉妬しておしおきぶち壊すなんて」

古黄泉「だ、黙れ……!」

モノクマ「後苗木クンの邪魔も随分してくれたよねぇ?キミが邪魔しなければ彼の全滅って願いは達成されてただろうに」

古黄泉「黙れって言ってるだろうがぁ!」

モノクマ「黙るのはお前だよ古黄泉幽星」

古黄泉「……!」

モノクマ「本当に何一つ満足に出来やしない!挙げ句の果てに逃げてまたこっちにすり寄ろうなんていい迷惑だよ!」

古黄泉「オ、オレは……」

モノクマ「だからね古黄泉クン」







モノクマ「最期ぐらい、きちんと処刑されてね!」






古黄泉「は、あ……!?」

モノクマ「キミは負けたんだ!黒幕として潔くおしおきを受けるのが筋ってものだよ!」

古黄泉「ま、待て」

モノクマ「それでは!今回は超高校級の……あー、設計士でも絶望でもないしなぁ」

モノクマ「よし!【超高校級の雑魚】の古黄泉幽星クンにふさわしいおしおきを用意しました!」

古黄泉「や、やめろ……嫌だ、死にたくない……!」

モノクマ「それでは張り切ってまいりましょう!」

古黄泉「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

モノクマ「おしおきターイム!」

ピコンッ

古黄泉「がはっ!!」

大量の槍が古黄泉の身体を貫く。

しかしその槍は全て……

モノクマ「あらら、全部急所外してるよ。こんなとこまで中途半端なんだねぇ」

古黄泉「い、痛い、痛い……」

モノクマ「せっかく死の絶望を味わえるんだから喜びなよ……キミは絶望なんでしょ?」

古黄泉「た、助けて、誰か、助けて……」

モノクマ「……はぁ」

モノクマ「せいぜい失血死するまでの短い時間を過ごしなよ」

モノクマ「じゃあね、【超高校級の雑魚】古黄泉幽星クン」

古黄泉「あ、が……」

モノクマも消えて暗い通路に血を流す古黄泉だけが残される。

古黄泉「誰か、助け、て……」

失血死するまでの短いようで長い時間……古黄泉は本当の【絶望】を、味わう事になるのだった。

【???】

牡丹「んっ……」

あれ、ここは……

牡丹「私確か……逃げる途中で、落ちて……」

でもまるで怪我は、してない……

牡丹「というかここどこ?」

映画館のように、見えるんだけど。

「牡丹」

牡丹「えっ……」

もう聞けないはずの声、それが聞こえて振り向く。

そこには……

赤穂「……」

兄さんが……いた。

牡丹「兄、さん……」

赤穂「ああ、俺だ。髪切ったんだな、よく似合ってるぞ牡丹」

牡丹「……兄さん!」

立ったままの兄さんに抱きつく。

兄さんはちょっと驚いた顔をしてたけど、すぐに私の頭を撫でてくれた。

赤穂「よく頑張ったな……きちんと見てたぞ」

牡丹「うんっ……うんっ……」

赤穂「……」

牡丹「兄さん、私、私ね……兄さんと話したい事がたくさんある」

赤穂「ああ」

牡丹「兄さんとしたかった事も、たくさんある」

赤穂「ああ」

牡丹「……でも、私」

赤穂「……わかってるよ」

牡丹「……」

赤穂「牡丹はまだ生きないと駄目だ。ここは夢かもしれない、死んだ人間の来る場所かもしれない……どちらにしても、牡丹のいるべき場所じゃない」

牡丹「……」

赤穂「待ってる人が、いるんだろ?」

牡丹「……うん」

赤穂「じゃあ、行かないとな」

牡丹「うんっ……」

赤穂「……幸せにな」

牡丹「……うんっ、私、幸せになって……頑張って、生きていくよ……!」

その言葉を待っていたかのように、景色がぼやけていく。

最後に見た兄さんの顔は……

とてもいい、笑顔だった。

兵頭「牡丹さん!」

牡丹「……せ、ん?」

津浦「よかった、目を覚ましました!」

道掛「牡丹ちゃん、大丈夫か!怪我してないか!?」

佐場木「落ち着け道掛」

牡丹「私、助かったんだ……どうして……」

兵頭「……これを」

牡丹「あっ、これ……」

兄さんの、杖……なんで折れて……

津浦「多分落ちた時、この杖が引っ掛かって真っ直ぐ落ちるのを防いだんです」

兵頭「私達が見つけた時……この杖が支えになって、瓦礫から牡丹さんを守っていました」

道掛「それで、牡丹ちゃんを安全なところに引っ張り出したんだよ。そしたら……」

佐場木「その杖は折れた。まるで、お前が助かるのを待っていたかのようにな」

牡丹「……」

兄さんの杖が……

牡丹「うっ、ふっ……うううっ……」

兄さんは、最後の最後まで……私を、助けてくれたんだ。

それを理解した私は、泣いた。

みんなに慰められながら、人目なんて気にしないで泣き続けた。

それが、このコロシアイの最後。

長い長い1日の……終わりだった。







CHAPT.6【かくして英雄の遺志は希望を救済す】END

生き残りメンバー5人






今回はここまで。

次回エピローグです。

それでは。







……それから、ほんの少しだけ時は流れて。






道掛「牡丹ちゃん、好きだ!付き合ってくれ!」

牡丹「……えっと、まだ友達でいよう?」

道掛「ぐはぁ!?」


津浦「これで20連敗ですか……Mr.道掛もなかなかタフですね」

兵頭「その気になればストーカーとして罪に問えるのでは?そこのところどうなんです佐場木さん」

佐場木「赤穂次第だろう」


道掛「お前ら!さっきから聞こえてんぞ!?」

牡丹「あはは」

未来機関に助け出された私達はカウンセリングも兼ねて救助してくれた第17支部に籍を置く事になった。

千は最初いていいのかって悩んでたけど、私達の必死の説得と……ここにいる兄さんの同期生の人に何か言われて、残るって決めてくれた。

千にその事を聞いてみたら何でもその先輩は、絶対許されない事をしたのにまだここにいられるって言ってた。

詳しい内容は教えてくれなかったけど……きっとそれは私が知る必要は、ないんだと思う。

和水「随分と賑やかだね」

兵頭「和水さん」

道掛「和水先輩!俺またフラれましたぁ!」

和水「セラピー前に心に新しい傷を負うのはどうかと思うよ道掛クン……」

牡丹「あれ、もうそんな時間?」

佐場木「コロシアイの時とは、やはり時間の感覚が違ってくるな」

和水「いい傾向だね。日々が早く感じるのはそれだけ充実しているという事だよ」

津浦「そんなものなのですか?」

和水「1日1時間1分1秒がまるで永遠のように感じる……」

牡丹「あっ……」

兵頭「……」

津浦「……!」

道掛「うっ」

佐場木「……」

和水「キミ達もコロシアイでそんな地獄のような時間を味わったはず。それと今を比べれば……やはりね」

牡丹「……」

【キミ達も】……その言葉の意味を私達は聞かなかった。

和水「さぁ、今日のセラピーを始めようか」

和水先輩の表情だけでわかったから……多分この人は、私達みたいに誰かを……

牡丹「……迷っちゃった」

セラピーとカウンセリングを終わらせて、トイレに行ったら迷うなんて……

牡丹「昔の私なら、もっと警戒して進んでたんだろうけど……」

それだけ私も変わったって事かな……

牡丹「えっと……」

とりあえず誰かに会えるかもしれないから手当たり次第部屋に入る事にした。

そして入った最初の部屋……そこはどこか雰囲気が違う部屋。

たくさんのコードが繋がったカプセルに1人の男の人が眠ってる。

そしてそのそばに、未来機関の制服を着た1人の女の人が座ってた。

「……あれ?」

牡丹「あっ」

「どうしたの?何か、用かな?」

牡丹「え、えっと、私迷っちゃって」

「……あっ、そっか。あなたがこの前保護されたっていう子だね?」

牡丹「……」

「待っててね、今連絡するから」

牡丹「あ、あの」

「んっ?」

牡丹「その人は……」

「……」

聞いちゃ、いけなかったのかもしれない。

女の人が黙ってしまって、私がそう思った……次の瞬間。

「私の、とてもとても大切な人だよ」

そんな、幸せそうな声が聞こえてきた。

牡丹「……」

「今は、ちょっと色々あって寝てるんだけど……いつ目を覚ますかわからないから私がこうしてそばにいるの」

牡丹「……」

「……あっ、連絡しないとね」

牡丹「きっと」

「えっ?」

牡丹「きっと、起きますよ」

それは、私が言うべき事じゃないかもしれない。

だけどこの人を見てると……そう言いたくなった。

「……ありがとう」

牡丹「……」

この支部の人達も、色々あるみたいだね……

兵頭「牡丹さん」

牡丹「千」

兵頭「隣いいですか?」

牡丹「うん、もちろん」

千が私の隣に座る。

こんな風になるなんて、1ヶ月前は考えられなかったな。

兵頭「牡丹さんは、これからどうします?」

牡丹「これから?」

兵頭「今はこうして、ここの皆さんのお世話になっていますが……いつまでもというわけにはいかないでしょう?」

牡丹「……そうだね。古黄泉の事もあるし」

古黄泉が殺されていたって聞いたのは、私達が保護された3日後の事だった。

犯人は不明。

でも私達は……絶望教の仕業だと思ってる。

兵頭「絶望教も今はおとなしくしていますが……」

牡丹「……千、私ね」


牡丹「――第20支部の支部長になるよ」


兵頭「支部長、ですか?」

牡丹「きっとあのままなら兄さんがなってたはずの支部長」

牡丹「私はその立場になって……戦う」

兵頭「牡丹さん……」

牡丹「兄さんと約束したんだ。幸せになるって」

そのためにも、絶望教をそのままになんて出来ない。

牡丹「……千は、どうする?」

兵頭「……」

牡丹「出来れば私は……」

兵頭「そんなの、決まってるじゃないですか」







「ついていくぜ!」

「ワタシ達も、一緒に行きます」

「奴らを相手にするなら俺達にも声をかけろ」






牡丹「みんな……」

道掛「牡丹ちゃんを守るのが俺のしたい事だしな!」

津浦「あの人を利用した人の仲間なら……ワタシの敵ですから」

佐場木「いずれ地獄に叩き落とさねばならん相手だ。付き合おう」

牡丹「……」

兵頭「私もですよ、牡丹さん」

牡丹「……」

兵頭「私は未来を追い求めると決めました。あなたも幸せを追い求めるために戦うなら、お付き合いしますよ」

牡丹「……あ、ありがとう、みんな」

道掛「よっしゃあ!頑張ろうぜ、死んだ奴らの分もな!」

津浦「Mr.道掛はまずMs.赤穂相手の連敗を何とかしなくてはいけませんね」

道掛「うぐっ」

佐場木「……【まだ】の意味に気付けない内は無理だろうがな」

牡丹「佐場木!」

兵頭「ふふっ」

私は未来に向かって歩いていく。

未来に希望があるか。

怜那が信頼してくれた事に応えられるか。

兄さんとの約束を果たせるか。

みんなの死を、無駄にしないよう生きていけるか。

まだ何もわからないけど。

私はそれを探して、追って、求め続ける。

それが私の一生をかけた探求、追求(クエスト)。

赤穂牡丹の生きる道なんだ。

だから兄さん、見守ってて。

今度会いに行く時は……きっと。

笑って、胸を張って、会いに行くから。

……さぁ、今日も始めよう。







――幸せを追い求めるための戦いを!












エピローグ【新しき英雄の産声】END












【???】

「絶望は滅びない、絶望は何度でも産み落とされる」

「今最後のピースは揃った」

「これより計画の始動を宣言する」

「……最後のコロシアイの、始まりだ」












NEXTSTAGE

【ダンガンロンパ・ラストバレット】

To be continued...












【英雄の杖】を手に入れました!






これにてダンガンロンパ・クエストを完結とさせていただきます。

長い道のりでしたが、何とか完結出来たのは皆様のおかげです……

現在進行中の洋館ロンパ、そして次回作にてまたお会いしましょう。

ありがとうございました!

【第4の学級裁判後】

赤穂「あああああああっ!!」

如月「……!?」

赤穂さんが御影さんに飛び込んで、持っていた杖で突き飛ばす……

それと同時に、床が動いたのを僕は考えるより先に理解しました。

だから、僕は対応出来た。

この後起こる惨劇を、止められた。

如月「……!」

それなのに、僕の脚は動かなかった。

動かなければ、どうなるか理解していたはずなのに。

そして。

そして……

その日、僕の正義は。


死にました。







EXTRACHAPT【彼が最期に成した正義】






【如月のコテージ】

如月「……」

赤穂さんが死んだ。

僕がモノクマを破壊した事による連帯責任。

その標的となった御影さんを庇って、殺された。

如月「……」

僕は、赤穂さんを助けられなかった。

違う、僕は……赤穂さんを、見殺しにしたんです。

如月「嫉妬……」

羨ましかった。

御影さんは僕の妹と、怜那と同じ体質で、それなのに彼女は生きていて。

赤穂さんもそんな彼女を大切にしていて、2人は本当に……仲睦まじくて。

如月「……」

モノクマの言うように、死ねばいいなんて思っていない。

だって、僕は誰よりもその痛みを知っていたはずだ。

だから、僕は……

如月「……はは」

僕は……誰に、何を言い訳してるんでしょう?

何を言おうが、僕が赤穂さんを見捨てたのは事実。

僕はもう……正義を語れるような存在ではない。

如月「……」

発電所で拾ってからずっと持っていた怜那のバッジを机の上に置く。

これを持つ資格なんて、僕にはないのだから。

如月「……」

僕は許されない事をした。

その償いはしなければならない。

如月「そのために僕が出来る事は……やはり、黒幕を殺す事でしょうか」

思わず自嘲の笑みが浮かぶ。

殺す事しか浮かばない……こうして正義のためという芯すらなくなった僕のなんと醜い事か。

如月「モノクマ」

しかしそれも受け入れましょう。

僕は殺人鬼如月怜輝。

なら、それらしくやるだけです。

モノクマ「ハイハイ、なんでしょうか殺人鬼の如月クン!」

如月「コロシアイをします。その代わり僕の提案を聞いてください」

モノクマ「コロシアイをやるのは歓迎だけど提案って?」

如月「僕達の中に黒幕がいると苗木さんは言いました。その黒幕を当てるヒントをください」

モノクマ「えー?コロシアイするならそんなの必要なくない?」

如月「必要なんですよ」

如月「なぜなら僕が殺すのは黒幕ですから」

モノクマ「……あのさ如月クン?」

如月「はい」

モノクマ「そんな提案ボクが受け入れると思う?」

如月「ダメですか?」

モノクマ「ダメに決まってんでしょうが!全く、変な事でボクを」

如月「待ってください」

逃げようとするモノクマの頭を掴みます。

逃げられるわけにはいきませんからね。

モノクマ「ちょっと!ボクへの暴力は」

如月「暴力など振るっていませんよ?ただ話を聞いてもらいたいだけです」

モノクマ「だからダメ!」

なかなか折れませんね……いいでしょう。

長期戦は覚悟の上でしたから。

【2日後】

如月「僕が外せばあなたの見たい絶望的な展開が見られます。あなたにとっても悪い提案ではないでしょう」

モノクマ「あー!もうわかったよ!やればいいんでしょ、やれば!」

如月「ありがとうございます」

モノクマ「全くまさか2日ぶっ続けで話す事になるとは思わなかったよ……!」

如月「僕は慣れていますから」

モノクマ「こっちはいい迷惑だよ!とにかく、細かいルールは後で伝えるから!せいぜいコロシアイを盛り上げてよね!」

如月「……」

消えたモノクマの寝言を無視して、これからを考えます。

やはりまずは皆さんに話をする必要があるでしょうね。

反応と……他にも確かめたい事がありますから。

如月「…………」

歩道からホテルの方に目を向けます。

……次が最後の殺人になる。

願わくは、その死が2人で済めばいいですね。

黒幕と、僕。

死ぬのは2人で、充分です。

ホテルに皆さん集まっているようなので、モノクマとの交渉結果を伝えに行きます。

如月「しかし随分と縛ってきましたね……」

あれから現れたモノクマはいくつかのルールを決めました。

1つ、この黒幕当てゲームは僕のみが行う事。

1つ、僕が得た情報を他の皆さんに伝えてはならない。

1つ、殺せるのは1人まで、外した場合おしおきは抵抗しない。

どのみち皆さんを巻き込みたくはないので……たいした障害にはなりませんが。

兵頭「しかし如月さんが赤穂さんを見殺しにしたというのは、モノクマが勝手に言った事です」

道掛「そりゃ、そうなんだけどさ……」

ホテルに近付いてきたところで皆さんの話し声が聞こえてきます。

如月「……」

兵頭「内通者に関しても嘘をついた相手です。信用するに値しないのでは?」

津浦「そう言われると……」

兵頭さん……あなたは優しい人ですね。

以前あなたに自分を殺してほしいと頼まれた時も思いましたが……そんな風に考えられるあなたなら、きっと乗り越えられますよ。

僕とは、違ってね。


如月「それは違いますよ……」

いきなり僕が現れた事に驚いたのか、皆さんの目が見開かれています。

……これではまだわかりませんね。

御影「っ!?」

佐場木「如月……貴様、今までどこにいた」

如月「モノクマと、少し交渉を」

道掛「こ、交渉?」

兵頭「それより如月さん、今の違うとはいったい」

兵頭さんの声は震えています……無理もないですか。

自分が擁護した相手がそれをこれから否定しようとしているのだから。

如月「赤穂さんの事です」

津浦「えっ……」

如月「モノクマの言う通り、僕は妹が生きて仲睦まじくしている赤穂さんに嫉妬していました」

もし赤穂さんにこの気持ちを吐き出していたら、あの結末は防げたのでしょうか?

いや……そんなもしもに意味はありません。

六山「……認めるの?赤穂くんを見殺しにしたって」

如月「…………」

御影「何とか、言いなよ……」

僕が犯した罪、もしも殺人の手段に見殺しがあるなら既にクロとして裁かれなければならないほどの大罪。

如月「……はい。僕は赤穂さんを、見殺しにしました」

もうそれは取り消せないんですから。

御影「っ!!」

御影さんの瞳が困惑から憎悪の色に染まります。

えぇ、あなたには憎む資格がある、僕を殺す資格がある。

しかし……それだけはさせてあげられません。

なぜなら――







パンッ……!






御影「……えっ?」

御影さんに殴られるのは想定していました。

御影さんに罵倒されるのは想定していました。

六山「……」

だからこそ、僕は……あまりに想定外だった彼女の手を避けられませんでした。

なぜですか?

六山「な、なんで、そんな……!」ポロポロ

なぜ、あなたが泣いているんですか?

如月「六山さん……?」

六山「それだけは、その口からそんな言葉だけは聞きたくなかったよ……!」

津浦「Ms.六山!?」

道掛「百夏ちゃん!?」

を泣いて走り去っていく六山さんの姿。

あり得ないのに、その背中に怜那の姿が被ります。

兵頭「……追いかけ、ます」

佐場木「……任せる」

兵頭「如月さん……」

如月「……」

兵頭「私も、聞きたくなかった……否定して、ほしかったです」

覚悟していたはずなのに。

六山さんの事でそれが剥がれたのか、兵頭さんに何も言えません。

結局僕は……

佐場木「……如月、モノクマとの交渉とはなんだ」

如月「……」

佐場木さんの言葉に我に返ります。

佐場木「それを言いに来たんだろう……さっさと話せ」

ありがとうございます、佐場木さん。

危うく目的を忘れてしまうところでした。

如月「……数日内に」







如月「僕は、このコロシアイ研修旅行の黒幕を殺します」






佐場木「……貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

如月「あの学級裁判から2日……僕はずっとモノクマと話していました」

経緯を話しながら、僕は皆さんを観察します。

如月「そしてそれはようやく実を結んだ」

如月「モノクマを操る黒幕……それを探しだして殺せるかというゲームを行うと宣言させたんです」

御影「モノクマがそんな……」

モノクマ「うぷぷ、呼んだ?」

道掛「うおっ、出やがった!?」

モノクマ「いやー、如月クンたら本当にしつこくてね!この2日間全く眠れなかったよ!」

確かめる、確かめる。

皆さんの行動を、皆さんの様子を。

津浦「し、しかし黒幕を殺すゲームなんて……あなたは本当にそれを受け入れたんですか?」

モノクマ「如月クンがしっかり特定出来るならそれはそれでありかなって思ってさ!」

思ってもいない事を。

あなたが渡すだろうヒントに真実などないのでしょう?

佐場木「……誰が黒幕かはっきりさせられるというのか」

如月「はい。ヒントはあったので」

正確には、今得ている最中ですが。

道掛「ヒントって黒幕のか!?なんだよそれは!」

如月「すみません、それは話せないんです」

得たヒントを話すのは禁止されていますし、何より……モノクマに悟られるわけにはいきません。

モノクマ「これはあくまでボクと如月クンのゲームだからね!」

御影「何よそれ……!」

モノクマ「うぷぷ、じゃあ如月クン頑張ってね!」

如月「……皆さん、安心してください。僕はこのコロシアイを必ず終わらせます」

モノクマは消え、僕は皆さんに背を向けます。

今この瞬間、僕は確信しました。







如月「それが僕の、最期の仕事ですから」

僕以外の6人。

――その中に、黒幕はいないと。






如月「……」

今回、黒幕はおそらくアルターエゴを使用していません。

もしもモノクマがアルターエゴならばあの苗木さんが僕達の中の誰と共犯になる必要性がない。

才能を憎む、皆殺しを画策していた彼が例外を作るとは考えられません。

利用するだけ利用してというケースなら今まで通りにやればいいので、やはり共犯者など必要ない。

それに皆殺し防止のルールだって、苗木さんの意思をくんだアルターエゴなら作らないでしょう。

如月「……」

おそらく彼がもう1人の黒幕の存在を明かしたのは、その黒幕をも殺すため。

僕達に疑心暗鬼を生み出すと同時に、共犯者のアルターエゴという逃げ道を封じ、最終的に1人でも多くの超高校級を抹殺する。

あらゆる悪を見てきた僕だからこそ、ナワキセイという人間ならそれぐらいはやるという確信がありました。

だから僕は皆さんを観察した。

モノクマを拘束して眠らせないようにした上で。

脳を弄って徹夜が苦にならない僕と違って皆さんにはあれはキツかったはず。

事実モノクマは何度も沈黙しそうになっていました……その度に僕が起こしましたが。

そして、あの中に……徹夜させられただろうそんな人間はいなかった。

つまり黒幕は……生き残り以外の中にいる。

それが僕の出した結論でした。

【スプリングアイランド・死体置き場】

如月「……」

【黒幕は絶望教の男女の協力者の1人である】

モノクマからもらったヒントという建前の誘導に僕は改めて相手が当てさせる気などないと理解します。

しかしおかげで生き残りに黒幕はいないという考えが正しいと思えるわけですが。

如月「……」

生き残りにいない以上考えられる可能性は2つ。

第3者か、死を偽装した人間がいるか。

死の偽装、これに関しては殺された静音さん、四方院さん、鞍馬さん、ジェニーさん、土橋さんは除外していいでしょう。

つまり黒幕は第3者、映像越しにしか死を確認出来なかったクロの薄井さん、グレゴリーさん、苗木さん、遠見さんに絞られるという事。

如月「……ふむ」

わざわざ男女の1人と書いたのは苗木さんが絶望教の協力者と誤認させ、黒幕を女子と思わせたいからでしょうか?

そうだとするなら、遠見さんも除外してよさそうですね。

如月「……さて」

そろそろ皆さんの様子を見に行きましょう。

出来るだけ固まってもらえると、助かるのですが……

【サマーアイランド・歩道】

如月「……」

歩きながらも黒幕に関する推理はやめません。

そしてちょうど先ほどの考えも合わせて苗木さんを候補から除外したところで。

皆さんがやって来ました。

如月「お疲れ様です」

兵頭「……どうして、ここに?」

如月「具体的には話せませんが、報告ぐらいはしておくべきかと思いまして」

それと、皆さんが無事かの確認も……

津浦「報告……?」

如月「黒幕を3人にまで絞り込みました」

第3者、薄井さん、グレゴリーさん。

この中の誰かが黒幕と見ていいでしょうから。

御影「……!」

如月「佐場木さんと道掛さんにも伝えておいていただけますか?」

御影「待ちなよ!いったいどうやってそんな!」

如月「それは言えないんです。モノクマとの契約なので」

兵頭「またそんな……!」

六山「……させない」

去ろうとした僕の足を力強い言葉が止めます。

振り返って見た六山さんの瞳には、並々ならぬ決意の光が宿っていました。

御影「えっ、六山?」

六山「絶対にさせないよ。もう人なんて殺させない」

如月「……相手は黒幕ですよ?」

わかりません。

なぜ彼女はここまで僕を止めようとしているのか。

六山「それでも!わたしは絶対許さないから……!」

如月「……そうですか」


なぜか居心地が悪くて、僕はそれだけ言って走りました。

まるで……怜那に責められているような。

そんな、気がしました。

【スプリングアイランド・死体置き場】

如月「……」

【女子の1人は偽名である】

露骨ですね。

翌日に追加としてもらったヒントに僕は心の中でそう吐き捨てます。

やはり推理はこの路線で正しいようですね。

如月「候補は3人……ここからどう絞るか」

薄井さん、グレゴリーさん、そして第3者。

如月「……」

薄井さんは、除外していいかもしれません。

サイキッカーである彼なら処刑の偽装も容易いかもしれませんが……あの時僕は彼の腕を間違いなく砕きました。

あの怪我のままモノクマの操作は難しいでしょうし……モノクマは最初とまるで変わらないように見えましたから。

如月「そうなると……」

黒幕は、グレゴリーさんか第3者。

ここの設備を設計したのがグレゴリーさんなら色々と説明がつきますし、何より彼は仮面を着けて素顔は津浦さんの一件でしか見せた事がない。

彼がそもそも本当にグレゴリーさんなのか……それに誰も答えが出せない。

如月「……」

しかし、これが真実なら……津浦さんにはあまりにも惨い結末になってしまいますね。

如月「……また1日が終わりますか」

皆さんの様子を見に行きましょう。

如月「佐場木さんや道掛さんは見回りですか……」

おそらく僕を警戒しての事でしょう……皆さんは僕が生き残りの中に黒幕がいると思って行動していると考えているでしょうから。

如月「……」

騙している事に思うところはあります。

しかし全ては黒幕を殺すため。

皆さんには、あと少し我慢してもらいましょう。

女子の皆さんは図書館でしたね……そちらに向かうとしましょうか。

【サマーアイランド・図書館前】

僕が着いたのと同時に、御影さんが図書館から出てきます。

御影「……どうせいるんでしょ。出てきたら?」

彼女はしばらく電子手帳を見ていると……そう声をかけてきます。

どうやら僕を呼んでいるようなので、素直に姿を見せました。

御影「如月」

御影「黒幕は私だよ」

如月「……」

突然の告白。

僕はそれを聞いて、悲しくなりました。

彼女は自分の命を懸けて僕を止めようとしている。

気づいてますか?ご自身の身体が震えている事に。

それでもあなたは嘘をついた。

如月「あなたは優しい人ですね」

ありがとうございます御影さん。

やはり僕は黒幕を殺さないといけないと深く心に刻みました。

お兄さんを見殺しにした僕があなたに出来る償いは。

生かして帰す以外に、ない。

【スプリングアイランド・死体置き場】

如月「……」

【黒幕はモノクマを全員の目の前で操縦している】

如月「つまりいつもゲーム機を触っている六山さん……」

それが黒幕の導きたい結論ですか。

如月「……ふむ」

黒幕はなぜ六山さんを殺したいんでしょうか。

彼女が偽名ならそこにヒントが?

如月「……少し外に出て考えてみますか」

【中央の島】

佐場木「ぐっ、っ……!」

道掛「佐場木!!」

如月「だから無駄だと言ったんです……」

まいりました。

まさか佐場木さんと道掛さんに見つかってしまうとは……

御影「な、何があったの!」

御影さんまで……これは早めに退散した方がよさそうだ。

如月「佐場木さんが僕を拘束するとおっしゃるので……抵抗させていただきました」

今捕まるわけには……いきませんからね。

如月「佐場木さん……僕はあなたを殺したくありません。退いてください」

佐場木「貴様が黒幕を殺さないというなら聞いてやる……!」

如月「そうですか」

佐場木「っ!」

最大限手加減をしながら佐場木さんを気絶させます。

まさに逃げる犯罪者の姿……ですね。

道掛「佐場木ぃ!!」

如月「気絶させただけです……目覚めたら謝罪を」

御影「待って!私達も黒幕のヒントを見つけたよ!」

如月「……」

御影さんが言うには、黒幕が絶望教の協力者で男女2人という事がわかったと。

如月「――まだそこまで、ですか」

御影さん、それは違いますよ……

御影「えっ……」

如月「……」

御影「待って!ねぇ、待ってよ如月!」

時間の猶予はありません。

いつまた黒幕が動くかわからないのだから。

あそこまで露骨な誘導……黒幕は、近々動くはず。

それだけは、阻止しなければ……

【オータムアイランド】

如月「……」

どうやら皆さんは病院に集まったようですね。

それがいい、集まれば黒幕も手出しがしにくい……僕が動かない理由にもなります。

如月「……」

津浦さんや兵頭さん、道掛さんが病院に出入りするのが見えます。

おそらく佐場木さんの看病を行っているのでしょうね。

如月「……」

今日も、何事もなく……


如月「……?」

おかしい。

六山さんと御影さんが……出てこない。

六山さんはともかく、御影さんがここまで出てこないのは……

如月「まさか」

2人は、あの場にいない?

如月「……しまった!」

あの誘導から近々動くのは推測していましたが、まさかこれほど早く動くとは!

病院から離れて図書館に向かいます。

急がなければ、黒幕なら御影さんと六山さんを同時に殺害できる機会を見逃すはずがない!

【サマーアイランド・図書館】

如月「……!」

御影「すぅ、すぅ……」

御影さんは……無事ですか。

思い過ごし、だったのでしょうか……

如月「なっ」

しかし安堵しかけた心は壁を見てすぐに否定されます。

【正義の裁きを執行する】

僕を連想させるとしか思えない文章。

そこから黒幕が何をするつもりか容易に想像出来ました。

如月「……六山さん!」

彼女が、危険だ……!

【スプリングアイランド・桜の大樹】

如月「……!」

いた。

桜の花びらの中で見えたのは、腕と首を掴まれた六山さん。

そして見た覚えのある仮面とマント。

如月「はああああっ!」

叫びと共に間に割って入ります。

そして六山さんを掴んだ腕を――

如月「……!」

今の一撃で腕を折るつもりでしたが、避けられた?

六山「げほっ、こほっ!」

如月「無事ですか六山さん」

六山「お……如月、くん」

「ほう、英雄の登場とはまるで絵物語のようだな?」

この口調……やはり。

如月「グレゴリーさん。あなたが黒幕でしたか」

グレゴリー「フハッ!肯定しよう紅纏いし狂戦士!我こそがこの絶望演舞の担い手にして支配者よ!」

如月「自分で動くとは、それだけ追い詰められているという事ですか?」

グレゴリー「なに、ちょっとした児戯に過ぎん。我としては紅纏いし狂戦士がこの場に召喚された事はむしろ愉快だ」

如月「……津浦さんには悲しい結果となりましたか」

目の前にいる仲間、いえ、裁くべき悪を見据えます。

六山「待って如月くん……!その人はわたし達の知るグレゴリーくんじゃない!」

如月「……どういう事でしょう」

「なんだよ。さっさとネタバレするなよ、萎えるな」

如月「……あなたは何者ですか」

古黄泉「私は古黄泉幽星。まあこのコロシアイの黒幕で本物のグレゴリー・アストラル三世だ」

如月「……」

本物のグレゴリーさん?

そもそもなぜ六山さんはそれを知っているのか。

色々聞きたい事はありますが……わかる事は1つ。

如月「あなたは裁くべき、悪。それさえわかれば充分です」

古黄泉「はあ、これだから殺人鬼は……六山はどう思う?」

六山「うるさい……!」

古黄泉「あっ、そう。まあ元々殺すつもりだったし……早いか遅いかの違いか!」

如月「……!」

六山さんを突き飛ばして古黄泉さんの拳を受け止めます。

その一撃は、まるで……

如月「これはまさか鞍馬さんの……!」

古黄泉「その通りだ!身体強化薬があればお前とだってやりあえる!あの無能の鞍馬すらあんな風になったんだからな!」

六山「っ、鞍馬くんを馬鹿にしないで……!」

古黄泉「本当の事を言われて怒るなよ!アハハハッ!」

如月「……鞍馬さんに才能はなくとも」

如月「あなたにだけは無能と言われたくないでしょうね」

古黄泉「あ?」

如月「こうして対峙してわかりました」

如月「あなたは悪として、苗木さんにはるかに劣ります」

腹立たしい、という気持ちは初めてでした。

こんな小者に、何人殺された?

こんな小者に……土橋さん、遠見さん、そして。

赤穂さんは……!

如月「来なさい……無能」

古黄泉「てめえ!!」

一旦ここまでで。

単調、単純、短絡的。

古黄泉幽星という男の攻撃を捌きながら僕はそう結論づけます。

向こうに身体強化薬がなければ即座に決着がつくだろう相手。

今まで数多く裁いてきた悪の中でも下から数えた方が早い男。

古黄泉「ちっ、ちょこまかと!」

如月「……」

しかしだからこそ身体強化薬の効果は凄まじいの一言でした。

元々鍛えていたらしい鞍馬さんがあれだけの力を持つのは理解できますが、まさか僕がここまで決めきれないとは……

古黄泉「っと!」

六山「……!」

如月「っ!」

六山さんの存在がこの状況をさらに膠着させています。

古黄泉幽星は少しでも六山さんが動けば即座に彼女を殺そうと動き。

僕は彼女への攻撃を無理にでも防がなければならない。

これが殺す戦いばかりしてきた僕への、報いという事なのかもしれません。

しかし、そうだとしても。

僕は……!

古黄泉「うおっ!?」

古黄泉幽星が桜の花びらに足をとられたのか体勢を崩します。

それはやってきた好機……見逃すわけにはいきません。

如月「これで……」

古黄泉「終わりだなぁ!」

六山「如月くん!」

如月「!?」

六山さんの声に、無意識に身体が動きます。

その次の瞬間、僕のいた場所を赤穂さんを殺したあの槍が貫きました。

これが古黄泉幽星の……

古黄泉「ハハハッ!」

六山「あっ!?」

如月「……!」

体勢を立て直したその刹那で、状況は動きました。

六山さんが古黄泉幽星に捕まるという、最悪の形で。

古黄泉「ハハハハッ!やっと止まりやがったな殺人鬼!」

六山「放して……!」

古黄泉「お前もさっきからコソコソと何かしようとしてたな……未来機関に連絡でもするつもりだったか?ハハハハッ!残念だったなぁ!」

如月「……彼女を放しなさい」

古黄泉「あ?それが人にものを頼む態度か?ヒーローの風上にもおけないなぁ!」

六山「っ……!」

腕を折ろうとしているのか、六山さんが痛みを堪えるような声を漏らします。

……この手の、人間が要求しているのはきっと。

如月「六山さんを……放して、ください」

僕が頭を下げた事がそんなに嬉しいのか、古黄泉幽星は高笑いをしています。

頭などいくらでも下げます……少しでもこの状況を打開しなければいけないのだから。

古黄泉「よーし、次は自分でその腕、折ってもらおうか」

六山「!?」

人質を得た途端にこれですか……どこまでも、矮小な悪だ。

如月「……」

そんな悪から彼女を守りきれなかった僕も……とてもヒーローなどと言えない、ですね。







バキッ






如月「っ……!」

古黄泉「ハ、ハハハッ!本当に折りやがった!やっぱり頭のイカれた殺人鬼はやる事が違うなぁ!」

六山「っ、っ……」

垂れ下がった僕の左腕を見た六山さんが泣きそうに顔を歪めます。

そんな顔をしないでください……僕は大丈夫ですから。

古黄泉「ハハッ、じゃあ次は片足を折れよ!しなかったらどうなるかわかるよなぁ!」

如月「……」

その後も、古黄泉幽星の言うがままに僕は自分を傷つけます。

古黄泉幽星……そんなに愉快ですか。

愉快でしょうね、あなたは僕をいつも周りに危害を加えるという形で抑えてきた。

その枷がなくなったと勘違いした僕のせいで赤穂さんは殺され、今も六山さんが危険な状態。

僕自身も、僕を嘲笑いたいぐらいです。

六山「……」パクパク

如月「……?」

六山さんが、何かを言っている?

六山「……」パクパク

如月「……!」

六山さん、あなたは。

古黄泉「ハハハッ!じゃあ次は……!?」

片足だけで跳ねるように古黄泉幽星に向かいます。

古黄泉「なっ、お前!?こっちには人質が」

如月「覚悟の上です……僕も、彼女も!」

六山「……」コクッ

【ここで如月くんが殺されたら、わたしも彼に殺される】

【わたしは……こんな奴に殺されたくない】

【わたしだって、死ぬ覚悟は出来てるから】

【だから2人で、彼を……】

この状況を生んだのは僕の責任。

彼女を殺す事などしたくはない。

しかしこのままではただこの男に殺されるだけ。

だから僕は。

僕は……

古黄泉「や、やめろ、来るな!」

如月「――六山さん、すみません」

六山「わたしも、ごめんね」

交わす言葉はそれだけ。

僕はそのまま、右手で彼女もろとも、古黄泉幽星を――







古黄泉「妹をその手で殺す気か!?」






如月「は」

古黄泉幽星の言葉に、全ての時が、止まりました。

妹?

誰が?

六山さんが、妹?

如月「怜、那?」

「ぁ……」

その名前への反応。

彼女の揺れた瞳。

その全てで、僕が彼女が何者かを、ようやく理解したその時――







怜那の胸から、腕が生えて、僕の右手を、掴んで。

古黄泉「捕まーえたぁ!」

バキッ






如月「っ!」

崩れ落ちる怜那を、まともに動かない身体で受け止めます。

怜那「……」

胸から流れ出す血、それだけでもう手遅れだとわかってしまう。

如月「怜那……なんで、なんで……!」

なんで、生きているのか。

なんで、言ってくれなかったのか。

なんで、なんで、なんで、なんで……

僕の頭を疑問がぐるぐると回って、何も言葉にならなくて。

怜那「……ぉ、兄ちゃ……」

如月「っ!」

怜那が僕のジャケットに何かを忍ばせます。

これは、ゲーム機?

怜那「つうし……ぁ、……し……たす、け……よべ……」

如月「……」

これは通信機?

後少しで助けを呼べる?

怜那「……あの時助けてくれて、ありがとう、お兄ちゃん」

それは、もう虫の息だった怜那が言えるはずもないはっきりした言葉。

だけど確かにそう、言って、怜那は……

古黄泉「ハハハッ!感動の再会即終了!最高に絶望的だなぁ!」

如月「……」

怜那……

わかっています。

僕のやるべき事……

古黄泉「がっ!?」

如月「……」

古黄泉幽星を残った右足で蹴り飛ばし、飛んできた電子手帳を踵で砕きます。

古黄泉「てめえ、まだ!」

まだ気付かせるな、怜那の遺したこれを。

この通信機が、助けを呼ぶまで……守りきる。

それが殺してばかりだった僕の。


最期の、仕事です。

あれから、どれだけ経ったのか。

もうそれがわからなくなってきた頃。

古黄泉「はぁ、はぁ……この野郎……手こずらせやがって……!」

如月「……」

右足も折られた僕は、幹に寄りかかっていました。

古黄泉「ハハッ!だけどこれで終わりだ……最期の言葉くらいなら聞いてやるぞ」

如月「……」

最期の言葉ですか。

こんな男に言う事なんて……ああ、1つありました。

如月「お前は負けますよ。せいぜい幻の勝利に酔ってなさい……雑魚が」

古黄泉「てめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

バキッ!

首を、折りましたか。

本当に、短絡的な……

古黄泉「はぁ、はぁ……!」

でも、いいでしょう。

僕の役目は果たしました。

先ほど聞こえた微かな音……怜那の思いが届いた証。

それさえわかれば、もう充分です。

如月「……」

妹が生きていた事にも気付けず、正義を気取って殺戮を繰り返し、憧れてくれた彼をくだらない嫉妬で見殺しにして、あの子をまた守れなかった愚かな男。

如月「……」

あの電子手帳、この通信……

皆さんの脱出のために、少しぐらいは……役に、立てたでしょうか。

怜那……

馬鹿な、兄で……すみませんでした。

だけど。

身勝手な話ですが。







――あの時、あなたを守れて、よかった。

心臓を貫かれる直前、僕はそんな事を考えて……本当に自分はどうしようもないなと自嘲の笑みを、浮かべて――






END

この時如月が時間を稼いだ事で古黄泉は怜那の血の処理、現場の偽装に追われ花びらに埋もれた電子手帳の回収や如月のジャケットにあった通信機は回収したもののしっかり確認する事が出来ませんでした。

【過去・孤児院】

怜那「お兄ちゃん!」

如月「どうしました怜那?」

怜那「どうしました?じゃないよ!またヒーローごっこして怪我したって聞いたよ!」

如月「……そうは言いますがね、僕はヒーローとして当たり前の」

怜那「妹を泣かせるお兄ちゃんなんかヒーローじゃないもん!」

如月「うっ……そう言われると、何も言えませんね」

怜那「うー!」

如月「わかりました……今度プリンを買ってあげますから」

怜那「ほんと!?やったー!さすがヒーロー!」

如月「……」

怜那「あっ、そういえばお兄ちゃん。まだあのヒーローの言葉遣い真似してるの?」

如月「慣れてしまいまして。小学生らしくないのは理解してますよ」

怜那「うーん、でもお兄ちゃん。テレビのヒーローと同じ言葉遣いしてもヒーローにはなれないよ?」

如月「……キツい事を言いますね」

怜那「本当の事だもーん……けほっ、こほっ!」

如月「怜那!?」

怜那「もう焦りすぎだよー。わたしが咳するなんていつもの事なのに……えっと、薬は……」

如月「……いつか必ず、僕が病気を治しますから」

怜那「……へっ?」

如月「必ず助けますから……僕はヒーローですからね」

怜那「……ほんと?」

如月「はい……ああ、そうです。怜那にこれをあげましょう」

怜那「これお兄ちゃんが大事にしてるバッジ……」

如月「約束の証です。僕は何があっても、怜那のヒーローであり続ける」

怜那「……うん!」







わたしは、こんな日々が……ずっと続くと思ってた。

優しいお兄ちゃんや、孤児院のみんなと一緒に過ごしながら大人になるのかな、なんて思ってた。











だけど、わたしのそんな未来の光景は。

あの日、全部壊された。






【???】

怜那「……」

痛い、痛いよ……

なんで、こんな事に、なっちゃったのかな……

いきなり連れてこられて、怖い人に、身体、切られて……

もう、何も見えない……聞こえない……

わたし、死んじゃうのかな……

怜那「ゃ、だ……ょ……」

お兄ちゃん、助けて……

お兄ちゃ……ん……




「うっ、またあのマッド人を切り刻んだな……」

「んー?こいつまだ……」

「そういえば、あっちに……」

「…………」

「ああ、駄目だ」

「【こんな状態から人は助かるのか?】」


佐木原「確かめたくて仕方がない……!」

【???】

「……っ、うっ」

佐木原「おー、目を覚ましたか」

「えっ……だ、れ……」

佐木原「俺が誰かなんてどうでもいいだろ?それより新しい身体はどうだ?」

「新しい……身体……?」

男の人が、わたしに鏡を見せる。

「……えっ?」

だけどそこに写ってたのは、わたしの顔じゃない。

佐木原「脳移植した。お前あのままだと死んでたからな」

「……」

佐木原「あのマッドがあんな綺麗な身体残してたのは俺も驚いたけどな……まあ、おかげでお前は助かったわけだ」

この人が、何を言ってるのかは……よくわかんなかったけど。

「……」ポロポロ

生きてる。

それがただ嬉しくて……わたしは、おもいっきり、泣いちゃって。

その日わたし如月怜那は死んで。

その日わたし如月怜那は生まれ変わったんだ。

【孤児院】

怜那「……」

帰ってきたけど……でも、よく考えたら……

わたし、今までのわたしじゃないんだ……

怜那「どう、しよう……」

神乃木「……あの、どちら様でしょうか?」

怜那「きゃっ」

美魅お姉ちゃん……お兄ちゃんより年下なのに孤児院のまとめ役をしてるお姉ちゃん。

わたしもたくさん遊んでもらって……そんなお姉ちゃんに誰?って聞かれて……すごく、泣きたくなった。

神乃木「えっと……うちの子の、お友達ですか?」

怜那「ぐすっ……え、えっと、お兄ちゃ……如月……くん……います、か」

神乃木「……如月、くん」

お兄ちゃんを呼んで、とにかく話そう。

そう思ってたわたしは……

神乃木「如月くんは……もういません」

怜那「えっ」

神乃木「この前、妹さんが亡くなって……そのまま、いなくなってしまいました」

う、そ……

怜那「……!」

神乃木「あっ!待っ……」

わたしはもう聞きたくなくて、美魅お姉ちゃんから逃げた。

お兄ちゃんがもういない。

みんなはわたしが死んじゃったって思ってる。

怜那「ぐすっ……うええええんっ!」

これから、どうすればいいのかわからない。

わたしは、ひとりぼっちになっちゃったんだ……

【公園】

逃げたわたしは……でもどこにも行き先がなくて、公園のブランコに乗って泣いていた。

怜那「ぐすっ……」

わたし、どうしたらいいのかな……

お兄ちゃんはいない……わたしの居場所もない……ううん、それ以前に。

怜那「怖い、怖いよぉ……」

人が、怖い。

わたしはまだ小学生だけど……神父様がわたしをあの怖い人に売ったんだって事はわかってた。

あんなに優しい神父様がそうだったのに、他の人がどうかなんてわからない。

怜那「うっ、うっ、ぐすっ」

せっかく生きてるのに、わたし……何も出来ない。

怜那「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ……」

このままずっと泣いて、お兄ちゃんを呼んで……そうするしかないと思ってた。

「だ、大丈夫……?」

だけどそんなわたしに声をかけてくれた人がいた。

怜那「えっ……だ、誰……?」

それはわたしと同じくらいの男の子。

「あっ、えっと、僕は……」







それがわたしと彼……

鞍馬「鞍馬……鞍馬類だよ」

鞍馬くんとの、出会いだった。






今回はここまで。

明日洋館を更新したいと思います。

申し訳ありません、洋館更新を明日に延期します。

【鞍馬の家】

鞍馬「ほら、入って」

怜那「う、うん……」

鞍馬くんに連れられるまま、わたしは彼の家に招かれる事になった。

大人は怖いけど、同い年くらいの鞍馬くんならあんな事にはならないよね……

怜那「えっと、1人なの?パパやママは?」

鞍馬「2人共仕事が忙しいからほとんど帰ってこないんだ」

怜那「そうなんだ……」

だからちょっと大人びてるのかな……

ジュース持ってくるねと鞍馬くんは部屋から出ていって、わたしは1人部屋に取り残される。

怜那「ついてきちゃったけど……これからどうしよう」

わたしを知ってる人なんてどこにもいない。

ううん、お兄ちゃんならきっと話せばわかってくれる。

でも、お兄ちゃんがどこにいるか全然わからない。

怜那「うっ、ぐすっ」

鞍馬「また泣いてる」

怜那「あっ……」

鞍馬「とりあえず、ジュースでも飲んで。そのままじゃ干からびちゃうよ」

怜那「うん……」

あっ、美味しい……

鞍馬「えっと、それで……なんで泣いてたの?僕でよかったら、話聞くよ?」

怜那「……」

言っていいのかな……でも、聞いてくれるっていうなら……

その時のわたしは心細くて、誰でもいいからこの不安を吐き出したくて。

だからわたしは全部話した……本当に全部を。

鞍馬「……本当に?」

怜那「……」

信じてくれるわけない。

そんな事わかってた。

体の事、死にかけた事、それを助けてもらった事、居場所がなくなった事。

もしわたしが聞いたら、お兄ちゃんが好きなヒーローの話かな?って思うもん……

鞍馬「そっか……じゃあ今怜那ちゃんは帰る家がないんだ」

怜那「……うん」

鞍馬「……よし!じゃあここにいなよ!」

怜那「……へっ?」

鞍馬「空き部屋ならいっぱいあるし、さっきも言ったけど父さんも母さんも滅多に帰ってこないから」

怜那「で、でも迷惑だよ」

鞍馬「迷惑って誰に?僕がいいって言ってるのに」

それはそうかもしれないけど……

鞍馬「それに……僕も1人だから、少し気持ちはわかるんだ」

怜那「えっ……」

鞍馬「僕、学校行ってないんだ。無駄だから必要ないって言われてて……だから友達もいない」

怜那「……」

鞍馬「怜那ちゃんがここにいてくれると、僕も寂しくないし……男なのに情けないけど」

今のわたしは1人。

今の鞍馬くんも1人。

だから、きっとおかしな事だったのかもしれないけど。

怜那「……ありがとう」

この選択だけが、わたし達の救いだった。

その日から、わたしと鞍馬くんの生活は始まった。

それでわかったのは、鞍馬くんはすごく頭がいいって事。

鞍馬が学校に行かなくなった理由もそれが関係してるみたい。

怜那「この本何……?」

鞍馬「とある学者の論文をまとめた物だよ。読んでみる?」

怜那「これなんて書いてあるの……」

それと、鞍馬くんのパパママは本当に帰ってこない。

半年に1回、どちらかが帰ってくればいい方で……わたしが鉢合わせた時も特に気にしてなかった。

わたしは助かったけど……鞍馬くんは辛そうで。

そんな彼を見てわたしが頑張らないと!と思って料理を作ろうとしてみたりもしたんだけど。

鞍馬「……」

怜那「もう料理なんかしない……」

そんな日々を過ごしながら、何年か経って……わたしはある日その記事を見つけた。

【犯罪組織壊滅!お手柄高校生は【超高校級のヒーロー】!】

怜那「これ……お兄ちゃん……」

本当にヒーローになったんだ……すごいよお兄ちゃん。

鞍馬「会いに行く?」

怜那「……ううん」

お兄ちゃんはお兄ちゃんの人生を歩んでる。

だったら死んじゃったわたしが会いに行っても……きっと邪魔になるだけだよね。

怜那「類くんを1人にも出来ないし」

鞍馬「それ、怜那には言われたくないよ」

だけどわたしは、1つだけ気になり事があった。

それはインタビューを受けるお兄ちゃんの写真。

……お兄ちゃんの笑顔って、こんなだったっけ。

類くんとの日々は幸せな時間だった。

だけどわたしはよく知ってる。

幸せな時間の終わりはいつも突然だって。

怜那「る、類くん」

鞍馬「はぁ、はぁ……」

【人類史上最大最悪の絶望的事件】。

後にそう呼ばれるこの事件が、わたし達の日常を……跡形もなく消し去った。

鞍馬「っ、なんで……!」

怜那「……」

この事件は文字通り人類史上最大最悪で……

鞍馬「僕は、こんな……」

同時に、類くんにとっても絶望的な出来事だった。

類くんは天才、いわゆる神童って呼ばれる人で。

でもその力は……この狂った世界ではなんの意味もなかった。

鞍馬「……」

怜那「……」

そして、わたしは……この状況を生き延びるためなのかな……

まるで昔見た映画のスパイみたいに立ち回れた。

鞍馬「……」フラッ

怜那「類くん、どこに行くの?」

鞍馬「……どこに行けば、いいんだろう」

怜那「……」

鞍馬「僕は、何も知らない。外に出る必要なんてほとんどなかった」

鞍馬「だけど世界がこうなって……僕は、ただの大海を知らない蛙でしかないとわかって」

鞍馬「怜那……僕は、どうしたらいいんだろうね」

怜那「……わからない、よ。わたしだって、似たようなものだから」

鞍馬「……」

怜那「でも、それなら探せばいいんだよ!」

鞍馬「探、す?」

怜那「どこに行くか、何をすればいいのか……いくらでも探せるよ」

怜那「わたし達は、生きてるんだから!」

鞍馬「……!」

怜那「そうだ、これあげる!」

鞍馬「これは、バッジ?」

怜那「わたしの大切な物なの。わたしはたくさん心の支えにしてきたから……類くんにも、効果があるといいんだけど」

鞍馬「……ありがとう、怜那」

それからわたし達は、2人である組織に保護された。

未来機関。

この絶望的な世界で戦う組織……わたしは工作員の才能があるらしくて、訓練を受ける事になって。

怜那「はぁ……疲れたよ」

鞍馬「怜那」

怜那「類くん!お仕事終わったの?」

鞍馬「一応任された分は……才能がない僕が頼まれる仕事なんて微々たるものだけど」

類くんは、才能がないって言われたらしい。

正直、あの類くんに才能がないなんて未だに信じられない気持ちでいっぱいだけど……

怜那「そんな事言わないでよ。わたしは類くんがいるから頑張れるのに」

鞍馬「……ごめん」

そのせいなのか、類くんはわたしと話す時ぎこちなくなる事が増えてる。

こんな風に気まずくなりたくなんてないのに……

鞍馬「……」

怜那「……」

鞍馬「じゃあ、僕は行くから」

怜那「……うん」

こんなはずじゃ、なかったのにな……

怜那「……類くん!」

その日、訓練を兼ねた任務から帰ってきたわたしは類くんの部屋に飛び込んだ。

類くんが、未来機関の開発した新薬の実験台になったって聞かされたから。

しかもそれが薬剤師の忌村支部長が作った物ならともかく、別のルートで作られた物だって言うから……余計に胸騒ぎがした。

鞍馬「……」

部屋にいた類くんがわたしに向ける視線は、すごく空虚なもので。

なんで、そんな目でわたしを見るの……?

怜那「じ、実験台になったって本当に?なんで、そんな」

鞍馬「そんなの決まっているでしょう」

怜那「…………えっ」

だ、れ……?

鞍馬「僕は希望を求めている。そのために実験台に志願したんです」

あなたは、誰?

鞍馬「それと僕は第1支部に転属になります。二度とあなたと会う事はないでしょう」


鞍馬「さようなら【如月さん】」


怜那「……ぁ」

後からその薬は脳の活性化の代わりに人格に影響を与える物だからと、忌村支部長が作るのを許さなかった失敗作な事。

人格を戻す方法は、ない事を知った。

なんで類くんがそんな薬を飲んだのかもわからないまま。

類くんは、わたしの前から姿を消した。

六山「……」

類くんがわたしの前からいなくなって1年……任務のために新しい支部の初期メンバーに選ばれたわたしは支部に向かう船に乗っていた。

【絶望の残党】……それが新しい支部の初期メンバーの中にいるって情報。

牽制も兼ねたこの六山百夏って名前に反応する人はいなかったけど……まだ油断は出来ないね。

六山「……」チラッ

だけど驚いたのは……

如月「……」

鞍馬「……」

お兄ちゃんと類くん。

わたしにとって忘れられない2人がここにいた事。

もちろん任務の前に調べたからいるのは知ってたけど……

如月「どうしました六山さん?僕の顔に何かついてるでしょうか」

六山「ううん、なんでもないよ」

お兄ちゃんは結局あの話し方のままなんだ。

グレゴリーくんもそうだけどなんだか芝居がかってるというか……そういえば。

グレゴリーくんは二人一役らしいけどもう1人はどこにいるのかな……

そんな疑問が頭に浮かぶのと同時に……

「うぷぷぷぷ……呑気だねオマエラ」

悪夢はまた唐突に、始まった。

【六山のコテージ】

六山「……」カチカチカチカチ

っ、だめだ……通信出来ない。

この島、大規模なジャミングがかかってる……突破するには時間がかかりそう。

六山「ゲーム好きって事にしておいてよかった」

これなら堂々とジャミングの攻略に取りかかれるからね……

六山「だけどコロシアイなんて……まさかこんな大胆に動くなんて」

とにかく調査して、わたし達の中にいるなら確保……もしいなくても、未来機関に通信できればわたしの勝ち。

六山「頑張ろう」

※※※※

六山「はぁ、はぁ……」

ジェニー「モ、モモカ!?」

六山「……ボス撃破、だね」カチカチ

静音さんが見せしめにモノクマに殺されそうになって。

わたしは思わずパイプでモノクマを壊してた。

もちろんそれをしてただですむわけがない。

わたしを処刑するって言い出したモノクマは戦車を持ち出した。

モノクマは無傷で戦車を無力化出来たら助けるなんて遊ばれて。

六山「あ、あああ……!」

思わず目をつむる。

迫る死に、なすすべもないわたしを救ったのは……


如月「なるほど、ならばその条件を達成させていただきましょうか」


お兄ちゃん、だった。

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