夏葉「ラスト・クリスマス」 (26)
去年のクリスマスー
私たちが一緒になって、最初のクリスマス。
今年のクリスマスー
私たちがふたりで過ごす最後のクリスマス。
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P「ー夏葉」
夏葉「……え?」
P「どうした? ボーッとして」
夏葉「ああいえ、何でもないわ。みんなは?」
P「今日はクリスマスだろ。みんな帰ったか仕事に向かったよ。後はまあ、大丈夫だろう」
夏葉「……そう。なら帰りましょうか、プロデューサー」
P「ああ。夏葉」
このことを、いつ、どんな風に、どんな顔をしてアナタに伝えたら良いのだろう。
私の今までの人生で得た数えきれない言葉の束をめくり返してみても、ぴったりな言葉は見つからなくて。
…そして、アナタは、この言葉を聞いた時、どんな顔をするのだろうー
P「夏葉」
夏葉「? 何かしら」
P「また、ボーッとしてるみたいだったから」
夏葉「そんなことないわ。大丈夫よ」
P「熱でもあるんじゃないか?」ピトッ
夏葉「きゃっ…」
P「うーん、そんなことはないか」
夏葉「もう、プロデューサーの手、冷たいわ」
P「はは、ごめんごめん。…ところで、夏葉?」
夏葉「今度は何かしら?」
P「もう「プロデューサー」でなくていいんじゃないか?」
夏葉「あ…そうね。……Pさん」
P「うん。……夏葉」
夏葉「……なんだかこそばゆいわね」
P「まだ慣れないのか? 一緒になってもう1年になるのに」
夏葉「ずっと「プロデューサー」だったもの…。アナタこそ、さっき、事務所で私のこと「夏葉」って」
P「はは、ふたりきりだしいいだろ? クリスマスなんだしさ」
夏葉「もう……ふふ」
P「では…。帰ろうか。「社長」」
夏葉「「夏葉」でいいわよ。……いいえ。「夏葉」がいいわ」
アイドルとプロデューサーとして。ずっと最高のパートナーとしてふたりで歩んでいきたいと願っていた。
そして、いつしか私はアイドルとしてではなく、ひとりの女性としてこの人とパートナーになりたいと願うようになっていた。
そんなことを……彼も思っていてくれて。いつしか私たちは恋に落ちて。
忘れもしない。思い出の夏の海で彼にプロポーズされて。
ー私たちは、夫婦になった。
P「……」
夏葉「ど、どうしたの? 私の顔に何かついてるかしら?」
P「いや、夏葉はずっと綺麗だなって思ったんだ」
夏葉「な……によ、急に」
P「いや、いつも思ってることだよ。美人社長さん」
夏葉「もうっ、えいっ!」ピトッ
P「冷たっ!」
夏葉「ふふ、さっきのお返しよ!」
P「お返しって、わざとやったわけじゃ…そら!」ピトッ
夏葉「冷たっ!」
P「……」
夏葉「……」
P「……くすっ」
夏葉「……ふふっ」
P「なんだか夏葉、昔より子どもっぽくなってないか?」
夏葉「そんなことないわ。アナタが子どもっぽいのよ」
P「そうかなあ…」
夏葉「ふふっ。ええ、そうよ。……ねえ、Pさん」
P「ん?」
夏葉「手……繋ぎましょう?」
P「ああ。勿論いいよ。エスコートさせてくれ。…そうだ」
夏葉「どうしたの?」
P「イルミネーション、見に行かないか。ほら、去年もふたりで見に行った」
夏葉「ああ、あの大通りの…ええ、是非行きましょう」
P「よし、それじゃあご案内するよ。…「社長」」
夏葉「ナ・ツ・ハ!」
アイドル事務所を立ち上げたい。結婚して最初の私のワガママを言った時のアナタの顔、私、まだ覚えてるわ。
私にとってのアナタのように、今度は私が、誰かの背中を押したかった。
私にとっての283プロのように……今度は私が、誰かに翼を授けたかった。
そんな私の側に、社長とプロデューサーという関係のパートナーとしてアナタにいて欲しい。そんな私のワガママを、アナタは笑って受け入れてくれた。
本当に、アナタには……敵わないわ。
P「…で、今度社長…天井社長の方な。に会いに行こうと思うんだ。ほら、新年の挨拶もかねて」
夏葉「ええ、いいわね。何か…そうね、お酒でも買って行こうかしら?」
P「そうだな。好きなお酒があったはずなんだよ。ほら、あれ……」
夏葉「……Pさん?」
P「あ、ごめん。ほら」
夏葉「! ……綺麗ね……」
P「ああ……本当に」
夏葉「去年と少し色合いが変わっているわね」
P「ああ。去年は赤がメインだったよな? 今年は青で、まるで、光の海みたいだ…」
夏葉「ええ…」
P「……」
夏葉「……」
P「…夏葉」
夏葉「…何?」
P「…………」
夏葉「…………」
P「……綺麗だよ、夏葉」
夏葉「言われると思った。………ありがとう」
P「はは……うん」
夏葉「………♪」
P「………なあ、夏葉」
夏葉「………何かしら?」
P「何か、俺に言いたいことがないか?」
夏葉「え…」
P「わかるよ。俺は夏葉のパートナーなんだから」
夏葉「……そう。そうよね」
P「……」
夏葉「……」
P「…あ」
夏葉「え?」
P「ほら、雪…」
夏葉「あ…」
P「……」
夏葉「……」
P「……綺麗だな」
夏葉「……ええ、本当に」
P「……夏葉」
夏葉「……うん」
P「…どんなことでも、素直に俺に伝えて欲しいな」
夏葉「……」
P「どんなことでも、受け入れるから」
夏葉「……」
P「…夏葉がいれば、俺は、どんなことでも幸せだよ。夏の葉の色も、冬の雪の白さも、春も秋も何倍も美しく感じられて……。楽しいことだけじゃない、辛いことだって、悲しいことだって、俺と夏葉のものだ。ふたりで分けたら半分になるだろ」
夏葉「…………」
P「……ゆっくりでいいんだ。これからもふたりで歩んでいく仲だろう。俺に、伝えて欲しい。何か、あったのか?」
夏葉「…………っ」
P「夏葉…」
夏葉「…………最後なの」
P「……え」
夏葉「もう…こうして……ふたりきりで、イルミネーションを見に来れるのも」
P「な……夏葉?」
夏葉「だってー」
夏葉「ー来年のクリスマスは、「3人で」過ごすんだもの…!」
去年のクリスマスー
私たちが一緒になって、最初のクリスマス。
今年のクリスマスー
私たちがふたりで過ごす最後のクリスマス。
このことを、いつ、どんな風に、どんな顔をしてアナタに伝えたら良いのだろう。できればやっぱり、ふたりきりの時がいいわね。
ーきっと幸せが溢れて、泣いてしまうから。
私の今までの人生で得た数えきれない言葉の束をめくり返してみても、ぴったりな言葉は見つからなくて。
ーこんな幸せ、経験したことないから。
…そして、アナタは、この言葉を聞いた時、どんな顔をするのだろう。
ーきっと、私を強く抱きしめて…私と同じかそれ以上に、幸せな涙を流して、笑いかけてくれるんじゃないかしら。
…………ほら、ね♪
間に合ってよかった! P夏葉夫婦のクリスマスの帰り道の話でした。
それでは、またの機会に。
この前書いたの。
P「夏葉に犬耳と尻尾が生えてる…」
P「夏葉に犬耳と尻尾が生えてる…」 - SSまとめ速報
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