柔道家「これより魔女刈りを決行する!」魔女「ええっ!?」 (44)

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~ 魔女の家 ~

柔道家「貴様がこの森で一人で暮らすという、若き魔女だな?」

魔女「そうだけど、お前はだれだ?」

柔道家「これは失礼、私は柔道家」

魔女「ジュードー? なんだそれ?」

柔道家「我が祖国に伝わる伝統武術だ」

柔道家「これよりその柔道で、魔女刈りを決行する!」

魔女「ええっ!?」

柔道家「とおりゃぁぁぁぁぁっ!!!」ガシッ

魔女「わっ!?」

柔道家「喰らえッ! 我が得意技、大外刈りを!」グイッ

魔女「わわわっ!」

魔女「えーいっ!」パァァ…

柔道家「むっ!?」グルンッ



ドシィン……!



柔道家(……!? ひっくり返されたのは、私の方だと!?)

魔女(ビックリした……)ドキドキ…

魔女「なんなんだ、お前!」

魔女「いきなりつかみかかってくるなんて、頭おかしいんじゃないのか!?」

柔道家「…………」

柔道家「さすがは魔女……やはり一筋縄で刈らせてくれる相手ではないようだ」

柔道家「また後日、挑戦しにくる!」タッタッタ…



魔女(行っちゃった……)

魔女(私にお客が来るなんて、いつぶりかな)

魔女(お客といっても、あのジュードーの奴は私を倒しに来たみたいだけど)

魔女(でも……あんまり悪い奴じゃなさそうだった)

魔女(私も森を出て、もっと色んな人と知り合いたいな)

魔女(だけどダメなんだ。だって私は……魔女だから)

魔女(森を出たらみんなに怖がられて迷惑かかるし、ここにいなきゃいけないんだ……)

次の日――

魔女(……今日は森でとったキノコで、スープを作ろうかな)





「たのもうっ!!!」





魔女(こ、この声はっ!)

魔女「またお前か!」

柔道家「昨日に引き続き、魔女刈りを決行しに参った!」

柔道家「魔女よ! いざ勝負!」ザッ

魔女「アハハ……おかしな奴だなぁ。いいぞ、相手してやる!」

柔道家「いくぞぉぉぉっ!」ダッ

柔道家「でぇりゃぁぁぁぁぁっ!!!」ガシッ

魔女「またつかみかかってきた!」

柔道家「昨日とはちがう技を出すぞ! とうりゃあ、大内刈りッ!」グイッ

魔女「むっ!」

魔女「でーいっ!」パァァ…

柔道家「おわっ!?」グルンッ



ドシィンッ……



柔道家「またもあっさり投げられてしまった……。技は完璧だったはずなのに……」

柔道家「貴様、いったいどんな技を使ったのだ?」

魔女「技……? 技なんか使ってないぞ。魔法でお前をくるっと回しただけだ。くるっと」

柔道家「魔法……! うむむ、勉強不足であった」

柔道家「魔女よ、今日のところはこれで引き下がる。が、またいずれ挑戦に来るぞ!」タッタッタ…



魔女(帰っちゃった……)

魔女(ちぇっ、ご飯ぐらい食べてけばいいのに)

次の日――

柔道家「魔女よ、いざ勝負!」

魔女「昨日来たばかりなのに、もう来たのか!」

柔道家「いずれ挑戦に来る、といっただろう」

魔女「いずれって、もう少し間を開けるもんだと思ってた」

柔道家「む、一理ある……。しかし、来てしまったものはしょうがない! 勝負!」

魔女「かかってこい!」

柔道家「ぬぉりゃぁぁぁぁぁっ!!!」ガシッ

魔女「またか!」

柔道家「今度は――小外刈りッ!」グイッ

魔女「むっ……!」

魔女「たあっ!」パァァ…

柔道家(来た……! 自分の体を他人に操られるようなこの感覚!)グル…

柔道家(こらえてみせるっ……!)グッ…

柔道家(が、無理っ……!)ルンッ



ドシィンッ……!

魔女「さすがにもう分かっただろう?」

魔女「お前がどんなに力が強くても、素早くても、技がすごくても――」

魔女「お前にさわらずにお前をふっ飛ばすことだってできる私に勝てるわけないんだ!」

柔道家「うむむ……魔法とは、かくも強力なものなのか」

柔道家「だが、まだ私は諦めていない! また明日、挑戦しにくる!」タッタッタ…



魔女(お、明日も来てくれるのか)

次の日――

魔女「…………」ソワソワ…





柔道家「たのもうっ!!!」





魔女(来たっ! ジュードーの奴!)

柔道家「今日こそ……魔女刈りを成し遂げてみせる!」

魔女「来いっ!」

魔女「私もお前のことをちょっと気に入ったから、今日はちょっと本気でやってやる!」

柔道家「光栄だ!」

柔道家「でぃやぁぁぁぁぁっ!!!」ガシッ

柔道家「小内刈り――」

魔女「えいっ!」パァァ…



グルンッ!



柔道家「くっ……まだ倒れてはいない! 双手刈り――」ダッ

魔女「たあっ!」パァァ…



グルゥンッ!



柔道家「ぬおお……っ!」ドザッ…

柔道家「技に入ることすらできず、投げ飛ばされてしまうとは……。これが魔法か……」

魔女(ちょっとやりすぎたかな……?)

柔道家「ううむ……完敗だ……」

柔道家「今日のところは、これで帰るとしよう」

魔女「あの……また来る、よな?」

柔道家「無論だ!」タッタッタ…

魔女「…………」ホッ…

その夜――

魔女(ジュードーの奴、明日は来てくれるかな?)

魔女(だけど今日は、今までよりずっと落ち込んでたみたいだし……)

魔女(もしかしたら、来てくれないかも……)

魔女(私のバカ! ちょっと本気なんか出すんじゃなかった!)ポカポカ

その次の日――

魔女「…………」

魔女(ジュードーの奴、今日は遅いな)

魔女(いつもならそろそろ、“たのもうっ”ってデカイ声が聞こえる時間なのに)





ザッザッザッ……





魔女(来たっ!)

魔女「!!!」

魔女(なんだ……? 偉そうなおっさんが、いっぱい兵隊を引き連れて……)





王「かなり広い森だったので苦労したが、ようやく見つけたぞ、魔女よ」

魔女「お前、だれだ?」

王「ワシはこの国の王だ」

魔女「王様……!? 王様が私になんの用だ?」

王「知れたことよ……魔女狩りだ」

魔女「魔女狩り……? お前も、私とジュードーしたいのか?」

王「なにをいっておるか。おぬしには今日ここで消えてもらう」

魔女「え……!」

魔女「なんで……!? 私、魔女だけど……何も悪いことしてない……!」

王「悪いことをしていない、だと? ふん、ほざきおるわ」

王「魔女よ、おぬしのような邪悪な存在はこの世にいるだけで罪なのだ!」

王「今ここで、ワシの兵をもって、おぬしをおぬしがいるべき場所に送ってやる!」

王「……地獄へな!」

魔女「そ、そんな……。いやだ……やだぁっ!」

王「かかれぇっ!」

兵士A「はっ!」ダッ

兵士B「ははっ!」ダッ



魔女(どうして……? 私、何もしてないのに……! どうして……!)

魔女(どうして、魔女狩りされなきゃいけないんだ……!)

魔女(いいさ、そっちがその気なら私だってとことん――)

柔道家「てぇりゃぁぁぁぁぁっ!!!」ガシィッ ブオンッ

兵士A「ぐわっ!」ドサッ

兵士B「ぐぎゃっ!」ドサッ



魔女「え……!?」



王「む……ワシの精鋭たちをあっさり投げ飛ばすとは……何奴!?」

魔女「ジュ、ジュードーの奴!? 来てくれたのか……!」



柔道家「そう、私は柔道家だ!」



王「ほう……柔道家がなぜこんなところへ?」

柔道家「王よ」

王「なんだ」

柔道家「この娘に先に目をつけたのは私だ」

王「そうだったのか!」

柔道家「よって、私が先に“魔女刈り”する権利があると主張する!」

王「……たしかに!」

王「よろしい……おぬしが先に魔女と戦うがいい」

柔道家「感謝する」ペコッ

柔道家(これまでは歯が立たなかったが、今日は絶対に負けるわけにはいかんッ!)メラメラ…

柔道家「とおりゃぁぁぁぁぁっ!!!」ガシッ

魔女「!」

柔道家「ゆくぞッ! ――大外刈りッ!」グイッ

魔女(初めて私と戦った時と同じ技……! こいつの得意技……!)

魔女(あの時は私が勝ったけど……今日は気迫がちがう!)

魔女「えーいっ!」パァァ…

柔道家(今日こそ……勝つ!)ググッ…

魔女(あれ? 今、魔法浴びせたのに!)

柔道家(彼女の魔法に逆らわず、全身を使って、一気に彼女の足を刈るッ)ガシッ

魔女「うわっ!?」フワッ…



柔道家「柔よく――魔を制すッ!!!」グワッ





ブオンッ! ドサァッ……

魔女「…………」

魔女(あれ……?)

魔女(背中から地面に叩きつけられたのに、全然痛くない……)

魔女(そうか……ジュードーの奴、私が痛くないように投げてくれたんだ……)

柔道家「王、判定は!?」



王「む、むむむ……一本ッ!」バッ

柔道家「王よ……今、私は魔女に大外刈りを決めた」

柔道家「魔女刈りは達成された! よって魔女狩りも終了したことになる!」

王「ぐっ!」

柔道家「たしか、この国には――」

柔道家「“一度魔女狩りを受けた者を、二度魔女狩りすることはできない”」

柔道家「――という法律があったはずですな?」

柔道家「つまり、もはや誰もこの娘を罰することはできないッ!」

王「うむむ……そんな法律はないが……そこまで言い切られたら仕方あるまい!」

王「この魔女は無罪放免! 自由の身とする!」





ワアァァァァァ……!





柔道家「これぞ、柔よく王を制す!」









魔女「ありがとう……お前のおかげで私、自由になれた」

魔女「お前は私を魔女狩りにあわせないために、私に挑みにきていたんだな?」

魔女「私を“魔女刈り”すれば、王様は私に手を出せなくなるから……」

柔道家「そのとおりだ」

柔道家「一週間ほど前、あの王が魔女狩りを始めるかもしれないという噂を聞いたのでな」

柔道家「この森で暮らすという君のことが心配になったのだ」

魔女「でもさ、それだったら、私にわざと技にかかってくれっていえばいいのに」

柔道家「柔道家たる者、それだけはできぬ」

柔道家「最悪の場合は、私が女装して君の代わりに捕まるつもりでいたしな」

魔女(それはさすがにムチャだろう……)

魔女「でも……本当にありがとう」

柔道家「こちらこそ、私が未熟なばかりに君を危険な目にあわせてしまった」

柔道家「では稽古があるので、これで――」スッ…

魔女「あ……」





魔女「…………」グッ…

魔女「ま、待ってくれっ!」

柔道家「ん?」

魔女「ジュードーってのはあれか? 投げたらそれで終わりなのか?」

柔道家「いや……そこから寝技に移行する場合もある」

魔女「だ、だったら……それを私にも教えてくれ! ジュードー教えてくれ!」

柔道家「なぜだ?」

魔女「だって……もっと一緒にいたいから……。お前と……」

柔道家「……いいだろう。私も実はそう思っていたところだ」

魔女「ほ、本当か!?」

魔女「じゃあ、ここじゃ汚れちゃうから……私の家の中で!」

柔道家「よかろう」

……

魔女「こうか!? これでいいのか!? 固め技ってのは!」ギュッ…

柔道家「そうだそうだ、君はなかなかスジがいい」

魔女「本当か!? 私、スジいいのか!」

柔道家「私が柔道に関してお世辞をいうことはない」

魔女「アハハ、私はスジよくて、お前はセジいわないのか!」

柔道家「……ところで」

魔女「なんだ?」

柔道家「やはり、えぇと……男女で寝技をかけ合うのはあまりよくない気が……」

魔女「なんでだ? いいじゃないか、私とお前の仲なんだから!」

柔道家「君がいいのなら、いいのだが」

柔道家「もう少し君が上達したら、乱取りをやろう」

魔女「ランドリー!?」

魔女(ランドリーって洗濯屋さんのことだよな。つまり洗濯する時みたいに――)

魔女「私とお前がもみくちゃになるってことか!?」

柔道家「そうだ」

魔女「面白そう、やろうやろう! なんなら今すぐ私たち、もみくちゃになろう!」ガシッ

柔道家「お、おいおい……まいったな」

魔女「私、ジュードー大好きだ! お前のこと大好きだ!」ギュッ…



どうやら柔道家は、“魔女刈り”で魔女の心を狩ってしまったようである――







~ 終わり ~

以上で終わりです
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