サイト「愛してるよ、ルイズ」ルイズ「わ、私も、あんたのことを……」 (30)

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女について説明するならば、まず初めに特筆するべきは類稀なるその美貌について触れなければならない。

トリステイン王国の名門貴族、ヴァリエール公爵家の三女として生を受けたルイズは神に祝福されたが如く大変可愛らしい美少女である。
くりくりとした大きな鳶色の瞳。
陶磁器のように白く澄んだ美しい肌。
小柄な身体と、そして桃色ブロンドの髪。

どれひとつ取っても魅力的な要素が奇跡的なバランスの上に成り立ち、集結している。
彼女が通り過ぎれば老若男女を問わず、10人中10人がハッとして振り返るであろう。
まさに、神が作りし美の化身と言っても過言ではない程に、ルイズの容姿は整っていた。

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さて、そんなとんでもない美少女のルイズにはいくつかの欠点があったりする。

欠点と言っても些細なことで、小柄なルイズは同年代の少女と比べて発育が良くない。
とはいえ、世の中にはむしろそれを望む紳士が大勢居るので、この点は別に問題はない。

ふたつ目の欠点は魔法が使えないことだ。
これについても実はルイズは『虚無』と呼ばれる伝説の系統の担い手であるので、別に一般的な五大系統魔法が使えずとも問題ない。

最後に、ルイズは少々気性が荒かった。
これについてはいただけない。欠点である。
どの程度の癇癪持ちかと言うと、たとえば。

「このバカ犬! また他の女見たでしょ!?」
「ちょっと目で追っただけじゃないか!?」
「あんたは私の使い魔なんだから余所見しちゃダメでしょ! ご主人様だけ見てなさい!」

このように、ほんの少し使い魔が余所見をしただけで乗馬用鞭を持ち出して折檻する程、ルイズは暴力的であり、これさえなければ使い魔たるサイトもこのハルケギニアという異世界での暮らしに文句はないのだが。

「罰として今日はエサ抜きだから!」
「そ、そんなぁっ!?」

いやはや現実はなんとも厳しいものである。

「畜生、ルイズの奴め。覚えとけよ」

ひょんなことから主人であるルイズを激怒させたサイトは現在、腹を空かせてトリステイン魔法学園の敷地内を彷徨っていた。

とはいえ、当て所もなく徘徊しているわけではなく、もちろん目当ては存在しており。

「わっ! サイトさん! そんなにボロボロになってどうしたんですか!? 大丈夫ですか?」
「やあ、シエスタ。飯を恵んでくれない?」

目的地である学園の厨房の裏口のドアを開けると、丁度皿を洗っていた親近感が湧く黒髪とそばかすが魅力的なシエスタがそこに居て、サイトはこれ幸いにと食料をねだった。

「貴族の皆様の余り物でよろしければ……」
「ありがとう! ありがとう! 美味いよ!」

貴族というのは大概、贅沢な生き物である。
ちょっと魔法が使えるからって威張ってる。
だからこんな美味いご馳走を食わずに残す。
改めてとんでもない奴らだとサイトは思う。

とはいえ、そんな贅沢な奴らが残してくれたおかげで残飯にありつけたわけなので、面と向かって食い物を大切にしろとは言えない。

すみません!
トリステイン魔法学園と書いていますが間違いです
正しくはトリステイン魔法学院でした
謹んで訂正します

「ぷはーっ! 美味かった。ごちそうさん」
「ふふっ。サイトさんの食べっぷりはいつ見ても素敵です。作り甲斐がありますね」
「そ、そうかな……」

出された残飯を平らげたサイトを眺めながらシエスタはニコニコしていて、そんな風に微笑まれながら優しい言葉をかけられると、大抵の年頃の男子はこの子は俺のことが好きなのではないかと勘違いしてしまう。

「今度はシエスタの手料理が食べたいな」
「もちろん。サイトさんさえ良ければ今夜にでも。ワインを用意してお待ちしてますわ」

すっかり勘違いしたサイトが調子に乗ると、悪戯めいた妖艶な微笑みを向けられて、そうすると大抵の年頃の男子はこれはいけるのではないかと間違いなく事実誤認してしまう。

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
「ほんとにいいの? 怒られない?」
「どうせ今夜も飯抜きだからさ……」
「そうですか……サイトさん、可哀想。意地悪なミス・ヴァリエールの使い魔なんて辞めて、私と田舎で暮らせばいいのに……」
「そ、それって俺と結婚したいってこと?」
「へ? あっ。た、たしかに、そう、なりますかね……やだもう! 私ったらはしたない!」

自分で言って自分で盛大に照れるシエスタに目を細めながらサイトは、ルイズの使い魔を辞めてシエスタの故郷でのんびり暮らすのも悪くないかなと思い始めていた、その時。

「見つけた」
「え? タ、タバサ?」
「こっち」
「は? え? ちょっ、待っ」
「レビテーション」

振り返るとルイズの同級生であるタバサが居て、ひょいと杖をひと振りするとサイトの身体が宙に浮かびわけもわからず連行された。

「到着」
「どこだよ、ここは!?」
「私の部屋」

連れてこられたのはタバサの部屋だった。
全寮制のこの学院では生徒一人一人に個室が割り当てられていて、ここが彼女の部屋らしい。

「なんだか、生活感のない部屋だな」
「睡眠を取れる設備さえあれば問題ない」

タバサの部屋は極端に物が少なかった。
簡素なベッドと、シンプルな机のみ。
天蓋付きのルイズの寝台とは大違いだ。

「ここで何をするんだ?」
「文字の読み書きの勉強」

ドサッと、机に大量の書物を乗せるタバサ。
それはハルケギニアの文字で書かれた本であり、サイトの目には外国語にしか見えない。
そこでようやく、以前、文字の読み書きが出来ないといろいろと不便なのでタバサに教えて貰う約束をしていたことを思い出した。

「そう言えば、そんなこと頼んでたな」
「やれる時にやっておくべき」
「わかったよ。よろしく頼むな、タバサ」

この青髪の少女はどうもそっけないようで面倒見の良いようで、わざわざサイトを捕らえてまでこうして読み書きを教えてくれるらしく、有り難くご教示頂くことにした。

「これはもしかして絵本か?」
「そう。わかりやすいと思って」
「へえ。どんな内容なんだ?」
「囚われの姫を勇者が助ける話」

どの世界においてもそのような御伽話は定番らしく、その手の物語が嫌いではないサイトはタバサが読み聞かせるストーリーに耳を傾けながら、目で異世界の文字を追った。

すると、ちんぷんかんぷんだった異世界の文字の意味がサイトの頭に入り、翻訳される。

「おお! 俺にもこの世界の文字がわかる!」
「不思議。あなたの翻訳は興味深い」
「なにかおかしいのか?」
「意味としては合ってるけど、直訳ではない。よりわかりやすい形で翻訳されている」

どうも異世界人であるサイトにはこの世界に馴染めるような能力が備わっているらしく、文字に関してはよりわかりやすく翻訳されるようだ。意味さえ合ってるならば問題ない。

「ん? ここはなんて書いてるんだ?」
「っ……それは、キスと、書いてある」

サイトがまだ習っていない単語を指差すと、どうやらそれは接吻という意味らしく、前後の文脈から辿るに助け出したお姫様から勇者がキスをされるシーンのようであった。

「わ、悪い。変なこと聞いちまって」
「いい。勉強には必要……だから」

まるで茶の間のテレビにいかがわしい映像が流れたような気まずさを覚えたサイトが謝ると、タバサは首を振りそしてじっと見つめ。

「だから……実際にしてみる必要がある」
「は?」

サイトはポカンと呆けた。
何故ならば、意味がわからないからだ。
具体的に何をすればいいのだろう。

「するって、何を?」
「これを」

ついっと、タバサの指がその単語を示す。
それはつい先ほど教わったばかりの言葉。
キスという意味を持つ異世界語であった。

「キスって……俺とタバサが?」
「嫌?」

嫌とかそういう問題ではないと思う。
気持ちの問題というか、結局同じなのか。
詰まるところ、お互いがどう思うかであり。

「タ、タバサはいいのか……?」
「私は……してみたいと、思う」

なら問題ないじゃないか、とはいくまい。
サイトは慎重な男だ。言い換えればチキンであり臆病な男である。故に言質を取りたい。

「へー。ふーん。ほほう」
「な、なに……?」
「ずばり、あなたは俺のことが好き?」

もういろいろと台無しである。やらかした。
それまでの流れやらムードやらが無に帰す。
しかし調子ぶっこいたサイトは気づかない。
そして、初心なタバサも白けたりはしない。

「私は……よく、わからない」
「わからないとな? 自分の気持ちが?」
「だから……知りたいと思う」

タバサは頑張った。彼女なりの精一杯。
これ以上ない程に健気な姿勢を見せた。
しかしながらサイトは頭が沸いていた。

「なら、教えてくださいと言うべきでは?」
「……たしかに、そうかも知れない」
「じゃあ、言ってみようか。サイトさん、私にキスして、この気持ちを教えてってさ」

常軌を逸している発言である。狂っている。
そんなことを口走れば、いかに寛大な女性とて怒る。ルイズじゃなくても、ぶちキレる。
しかしながら、やはりタバサは初心であり。

「サイトさん……私にキスして、教えて」

やや恥じらいながらも素直にそう懇願した。
そうすると大抵の男は理性を失うであろう。
キスだけで済む筈もなく、サイトはもうこのままこの無垢な少女を押し倒す気満々であり、今まさに飛びかかろうとする寸前で。

「タバサ、入るわよ~。あら、サイト? あんた達、そんなに顔を近づけて何してんの?」
「うわっ! 別に、なんでもないって!!」

褐色の肌と、豊満な身体付きのキュルケが乱入してきたことで、慌てて距離をとった。

「へえ? ふうん? もしかして……」
「よ、用件はなに?」

色恋沙汰には聡いキュルケは今の一幕で全てを察したらしくニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべで揶揄う気満々であり、それを察したタバサが珍しく慌てながら用件を尋ねると。

「ルイズが使い魔を探してて、サイトの行き先を知らないか聞きたかったんだけど、まさかあなたが部屋に連れこんでいたとはねぇ」
「文字の読み書きを教えていただけ」
「あっそ。まあ、そういうことにしとくわ」

全然信じていない様子のキュルケではあるが、友人のタバサにこれ以上の嫌がらせをするつもりはないらしく、代わりにサイトの耳を引っ張り強引に部屋の外へと連れ出した。

「痛てて! なんだよ!?」
「いいこと? 軽い気持ちであの子に手を出したら私が許さないから。わかった?」
「わ、わかったから! 肝に銘じるから!」
「ならよろしい。ああ、勘違いしないでね。真剣にお付き合いするつもりなら大歓迎だから。とはいえその前に、ご主人様の部屋に行ってちゃんと縁を切ることを忘れずにね?」

友達想いのキュルケに釘を刺されて、微熱によって焼かれて痛む耳をさすりつつ、ルイズが待つ部屋に渋々とサイトは向かった。

「た、ただいま帰りました……」
「遅い!」

緊張しつつ帰宅を告げると怒声が返ってきた。

「どこに行ってたのよ!?」
「ど、どこだっていいだろ」
「女のところね」

ルイズは妙に勘がいいのでサイトは焦る。

「た、ただ俺は飯を食わせて貰って、文字の読み書きを教わってただけだって!」
「どうだか。全然信用出来ないわ」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」

今日一日の行動を鑑みても、信用がないのは完全に身から出た錆であるが、ここで下手に出たら負けなのでサイトは悪びれなかった。

「そうね……ご主人様の良いところを挙げなさい。その内容如何で、許してあげるわ」
「わかった。まずは桃色頭だろ」
「な、なんですって!?」
「それと、つるぺた貧乳」
「あ、ああ、あんたって奴は……!」
「おまけに短気で嫉妬深くて暴力女だ」
「そ、そこまで言わなくても……」
「でも俺はそんなルイズが可愛いと思うよ」

サイトとて、学習している。成長したのだ。
ルイズは意外と打たれ弱い少女なのである。
故にこうしてけちょんけちょんに貶したあとに優しく微笑みながら褒めてやると、ほら。

「つ、使い魔の癖に、生意気なのよ……」

こんな具合に、嬉しさを隠せなくなるのだ。

「そんな生意気な使い魔がいいんだろ?」
「バカ……調子に乗りすぎ」

などと言いつつもルイズはドキドキしてる。

「卑屈よりはマシだろ?」
「ま、まあ、それはそうだけど」
「なら、自信持っていいんだよな?」
「でも、調子に乗りすぎるのはダメ」

この辺りの加減が難しいところだ。
とはいえ、サイトはもうわかっている。
ルイズはこうやって迫られると弱いことを。

「なあ、ルイズ。キスしていいか?」
「ダ、ダメに決まってんでしょ」
「じゃあ、また他の女のところに行くぞ」
「や、やだっ……お願い、行かないで」

まったく。ルイズは可愛くて困ってしまう。

「行かないでください、だろ?」
「バカサイト。調子に乗りすぎよ」
「ごめん。ルイズが可愛すぎて、つい」
「そ、そそ、それなら、仕方ないわね……」

なにが、仕方ないわね、だ。
こ、ここ、この女、沸いてやがる。
桃色頭の中身まですっかりピンク色だ。
これはもはや『お仕置き案件』である。
よしやるぞ。今日という今日はやってやる。

「ルイズ、顎あげて」
「な、なにするつもり……?」
「キス」
「だ、だから、ダメって……んっ」

キスは便利なものだ。ルイズが静かになる。

「ダ、ダメってゆったのにぃ~~~っ」
「ごめん。我慢出来なかった」
「堪え性のない駄犬はこれだから……」
「もっかいしてもいい?」
「ふぇっ? そ、そんなこと、聞かないでっ」

やれやれ。自分から目を閉じやがった。
反抗的な態度とは裏腹に待ち望んでやがる。
サイトはそんなルイズにこう命令した。

「今度はルイズから」
「わ、私からって……そんなの無理よ」
「大丈夫。ルイズなら出来るって」

するとルイズは意を決して接近してきて。

「んっ」

ちゅっと、柔らかな唇をサイトに重ねた。

「ほらな、出来ただろ?」
「うう……褒めなさいよ」
「ルイズは偉いなあ! さっすが、ルイズだ」

褒めろと言われれば素直に褒める。重要だ。
この点は欠かしてはならない。拗ねるから。
褒めれば褒めるほどにルイズはふにゃける。

「ふへへ……」
「そんなに嬉しいのか?」
「だって、普段あまり褒められ慣れなくて」

ルイズはわりと可哀想な女の子である。
こんなに可愛いのに魔法の才能がなかった。
だからこれほどに捻くれた性格となった。
けど、そんなルイズをサイトは愛しく思う。

「大丈夫。ルイズはかわいいよ」
「ほんと?」
「ああ、もちろん」
「他の娘よりも?」
「とても他と比べることは出来ないよ」

答えているようで答えになっていない。
他と比べることを、サイトは回避した。
しかし、ルイズはそのことに気づかず。

「ん。私が一番なら、それでいいわ」

などと、都合の良いように解釈してくれた。

「ルイズ、そろそろベッドに行かないか?」
「そ、それは、まだ早いわ……」
「そうかな?」
「だって、私たちまだ結婚してないし……」
「ちゃんと責任は取るからさ」
「そ、それなら、遅いか早いかよね……?」
「うん。そうだよ」

何がそうだよ、なのかさっぱりわからない。
ただやりたいだけの男の定型文である。
しかしながら、ルイズはそれを知らない。
彼女もまた、やりたいだけの女と化した。

「じゃあ、優しくベッドまで運んで」
「お安い御用だ」

ひょいとルイズをお姫様抱っこする。
羽のように軽いお姫様を寝台へと寝かす。
それを真上から俯瞰すると征服欲が増した。

「ら、乱暴にしないでね……?」
「もちろん。優しくするよ」
「あのね、私ね……その、小さいから……」
「関係ないよ」
「あとね、まだ身体を清めてなくて……」
「ルイズはいつだって綺麗だよ」
「でも、やっぱり洗ってから……」

土壇場の問答にヤキモキする。
ここで我慢するのが真の玄人である。
しかしながらサイトはただの素人であり。

「俺は気にしないよ。なんなら、洗ってないルイズの尻穴だって悦んで舐められるもん」
「え?」

しまった。
つい、迅る気持ちが抑えきれず、サイトは甘いムードをぶち壊す失言をしてしまった。

「サイト、あんた……」
「今のなし」

いかに調子に乗っていてもわかる。
それほどに、場の空気が一変していた。
なので、サイトは前言撤回を試みたのだが。

「男に二言はないわよね?」
「ル、ルイズ……?」
「やって貰おうじゃないの」

まるでサイトの覚悟を試すように。
するりと、ルイズが下着を脱ぎ捨てる。
その下には洗っていない、尻穴があった。

「お尻の穴なら始祖も許してくださるわ」
「たぶん激怒すると思うぞ」
「あんたに貴族の掟の何がわかるのよ」

貴族がどうのではなく人としてどうなのか。
平民のサイトの価値観では、アウトである。
しかし、貴族の中ではむしろセーフらしく。

「ほら、早くお舐めなさいな」
「おまっ……その格好はやめろ!」

ルイズはあろうことかうつ伏せで尻を突き上げる形で両手で尻穴を広げて見せつけてきた。
わかりやすく形容すると、女豹のポーズだ。

「ふふっ。なによ、サイト。そんなに顔を真っ赤にして。もしかして、照れてるの?」
「あ、当たり前だろ!」
「へー。そんなに私のこと好きなんだ」
「……当たり前だろ」

あれ? おかしいな。どうなってんだ?
いつしか、完全に形勢は逆転していた。
ルイズはやはり魔女であり魔性である。

「ルイズ、ほんとにいいのか?」
「ご主人様のお尻を堪能出来るのは今だけだから。もうこんな機会は二度とないから」

そう言われると、期間限定プレミアム感が増すわけで、サイトとしても決意が固まった。

「じゃあ、舐めるぞ」
「早くしなさいよ……」

舌を伸ばして、ゆっくり接近する。
ルイズの良い匂いがだんだん強くなる。
そして、舌先が触れた瞬間、穴が収縮した。

ぺろんっ。

「んあっ!」
「フハッ!」

サイトはびっくりした。愉悦が出た。
何が不思議かって、美味なところだ。
正直、舐めたら吐くかと思っていた。
ところが、洗ってないのに美味しい。
ルイズの尻穴は甘美な味わいだった。

れろれろれろれろれろれろ。

「んっ……ちょっとサイト、舐めすぎよ」
「ごめんルイズ。好きだから、ごめん」
「謝らないでよ……ふあっ……サイトッ」
「ルイズ、かわいいよ。ちゅっちゅっ」
「ひぅっ……やだっ。もうおかしくなる」
「おかしくなりなよ。俺みたいにさ」

実はこの時、ルイズも混乱していた。
まさか本当に舐めるとは思わなかったのだ。
しかもそれがこんなに気持ち良いなんて。
ルイズは思う。ああ、愛されているなと。
この犬は私に夢中なんだと。すごく嬉しい。
ほんとの犬のようにペロペロするサイトが愛しくて愛しくて、なんだか色々溢れそうだ。

「やだやだ。もうだめ。ほんとだめっ」
「ダメなの? もうやめる?」
「だめだけど……もっとして」
「仰せのままに」

もはや誰にもこの暴走を止められなかった。
若い2人は後先を考えずに尻穴に没頭した。
しかし、仕方ないのである。これが青春だ。
なのでこの後、どんなことが起ころうともそれは自己責任であり、誰のせいでももない。

「ルイズ、ヒクヒクしてる」
「い、言わないでっ」
「ルイズの尻穴、かわいい」
「だから、言わないでってば!」
「恥ずかしいから?」
「そんなこと、言わせないでっ」
「ちゃんと言って。私はお尻の穴で感じてしまうような恥ずかしい女の子ですって」

やや行き過ぎた言動であるが、問題はない。
普段ならば、ここらで痛烈なビンタが飛ぶ。
しかしルイズは尻穴に夢中なので怒らない。

「言わないもん。ご主人様のお尻の穴に夢中なのはあんただもん。私は悪くないもん」

この女、言わせておけば。なにがもんだ。
サイトはもう既にいろいろと限界だった。
すっかりふやけた尻穴に突っ込みたかった。
けれど、我慢。それはいけない。暴漢だ。
なので、サイトは舌だけで屈服を試みた。
手やその他諸々を使わずに舌だけで制する。

「ほら、ルイズ。気持ち良いだろ?」
「んあっ……きもちくないもん」
「だってこんなにヒクヒクしてるぜ」
「そ、そんなの知らないっ」

やれやれ。
知らないときたもんだこのお嬢様は。
ならばわからせてやるのが使い魔の務めだ。

「じゃあ、もうやめる?」
「やっ! あとちょっと……」
「あとちょっと舐めたらどうなるんだ?」
「知らないっ……わかんないもん」

わからないからこそ、ひとは求めるのだ。

「じゃあ、あとちょっとだけな。はむっ」
「ひぅっ! サイト、激しすぎる……んあっ」

ちょろりんっ!

「フハッ!」

なんか出た。これは間違いない。尿である。
あとちょっとの向こう側には確かな愉悦が存在しており、サイトは古の盟約に従い、神の左手のガンダールヴとして虚無の担い手の盾となり、ルイズのおしっこを顔面受けした。

ちょろろろろろろろろろろろろろろりんっ!

「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

バシャバシャと顔面に尿を受けながら、サイトは溺れる覚悟で哄笑を敢行した。決死だ。
その拍子に、これまで出番がなく、部屋の片隅に放置された相棒、デルフリンガーが目を覚まし、鞘から顔を覗かせてしみじみと。

「おっ? 相棒の奴、覚醒しやがったか。懐かしいなあ! そういやブリミルの奴もサーシャの尿を顔面受けしてこうして高嗤いしてたっけ。感極まってブリブリうんこを漏らすブリミルの姿がまるで昨日のことのように思い出せらあ。くぅ~っ! 泣けてくるぜ」

ブリミル教徒が聞けば卒倒するような回想に浸るうんちデルフリンガーに触発されたのか、サイトの尻穴からブリブリと始祖のブリミルが漏れ出て、より神々しく左手が光る。

「あ、ああっ!? あああ、ああああっ!!」

ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ~っ!

「サイトォオオオオオオオオオッ!?!!」
「ルイズ!? 待ってろ! 今助けるッ!!」

もはや手遅れであることは一目瞭然なのだが、ガンダールヴたるサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ・ド・オルニエールは糞を撒き散らしながらもルイズを救うべくもがく。

「ううっ……サイト」
「ルイズ……ごめんな、遅くなって」

7万の群勢を相手取るよりもしんどかった。
しかしサイトは糞の根を掻き分け帰還した。
ルイズは、サイトが遠くに行ったと思った。
もう会えないのではないかと思い、涙した。
それを察したサイトは黙ってルイズを抱く。

「サイト、サイトォ!」
「大丈夫。俺はここに居るよ」
「バカバカ! あんたってば私が目を離すとすぐに居なくなっちゃうんだから! 使い魔失格よ!」
「ほんとごめんな。俺は使い魔としてはダメかも知れないけど、ひとりの男としてルイズのことを守りたい。それじゃあ、だめか?」

ルイズの頬に伝う涙を親指で拭いながらサイトが尋ねると、その真剣な瞳で見つめられたルイズは頭がポーッとしてしまい、頷いた。

「いい。それでいいから、ずっと傍に居て」
「愛してるよ、ルイズ」
「わ、私も、あんたのことを……」

その時、バンッ! と部屋のドアが開いて。

「サイトさん! お夜食お持ちしました!」
「今日は出張課外授業の日」

シエスタとタバサが揃って邪魔立てをした。

「シエスタ!? タバサまで!?」

当然ながらサイトは慌てふためいた。
何故ならば、先程盛大に脱糞したからだ。
慌てて汚れた下着を脱ぎ捨てると、2人は。

「まあっ! サイトさんったら、大・胆」
「図鑑には載っていない珍しい形をしてる」

顔を覆うふりをしてしっかりとサイトの股間を凝視するシエスタと、珍しいことにやや頬を赤らめつつわけのわからないことを抜かしたタバサの反応に、サイトは恥ずかしいやら照れ臭いやらでもうどうしたらいいかわからずに適当なことを口走った。

「な、なんなら2人も混ざる?」
「サイトさん……それは流石に」
「後ろ」

ドン引きしたシエスタの姿勢と、背後を指し示すタバサの仕草に嫌な予感を覚えて、サイトはやだなあと、後ろを振り返りたくないなあと汚れた尻を尻込みしつつ、それでも覚悟を決めて振り向くと、そこには鬼が居た。

「ル、ルイズさん? 角が出てますよ?」
「つ、つつつ、角くらい出ちゃうわよ」
「せっかく美少女なんだから、ほら笑って」
「たしかに笑えてくるわね……失笑だけど」

般若の形相をして怒髪天を衝くルイズの頭部にはピンク色の角が生えておりお冠である。
ツカツカと机に向かい引き出しを開けてその中に納められていた乗馬用の鞭を手に取る。

「ル、ルイズ。落ち着いて、話し合おう」
「お夜食ってなに?」
「きっと俺が腹を空かせてると思ってシエスタが気を利かせてくれたんだよ。うん」
「ついでに私も召し上がれってわけ?」

誰もそんなことを言っていないのにも関わらず邪推するルイズに対して火に油を注ぐように、シエスタが余計な口を挟んだ。

「てへ。バレましたか。実は、下着を身につけていません。食べて貰う気満々でした!」
「シ、シエスタ……」

罪が確定したサイトの余罪を追求する。

「で? そこのちびっ子には何を教わる気?」
「お互いにわからないことを教え合う予定」
「タ、タバサ……」

一方的に決められていた授業内容はサイトの罪を更に重くして、情状酌量の余地はない。

「判決、死刑」
「ま、まけて?」
「却下」

トリステイン王国の女王たるアンリエッタの女官を務めるルイズには絶対な権力がある。
神の意志に背きし邪教徒を裁く権利を持つ。

「きょ、今日という今日は許さないから」
「相棒。悪いことは言わねえ。逃げな」

怒りのあまり全身を震わせるルイズが手に持った鞭を高らかに振り上げたところでデルフから警告が告げられて、恐怖に竦んでいたサイトは慌てて逃げ出した。

「こら、待ちなさい! 逃げるな!!」
「逃げるに決まってるだろ!?」
「このバカ犬ぅううううっ!!」

脱兎の如く部屋から飛び出したサイトは当然ながら下半身丸出しであり、それを追いかけるルイズもまた、あられもない格好だった。

「おや? サイト君。そんなに急いでどこへ」
「コルベール先生! よかった、いいところに! ゼロ戦の整備は終わっていますか!?」
「ああ、それなら燃料満タンでいつでも出撃可能にしてある。もっと簡単にあの燃料を錬成出来れば良いのだが、私の見立てだとあれの原料はこの世界においても地中に存在している可能性がありそれを採掘出来れば……」
「詳しい話はあとで!」

懇意にしているコルベール教諭との会話もそこそこにゼロ戦に飛び乗るサイト。
風魔法でエンジンをかけて貰う。
そこに、怒り心頭のルイズが追いついた。

「サイトォオオオ!! 待ちなさぁーい!!」
「これミス・ヴァリエール。廊下を走ってはいけませんよ。淑女たる嗜みを持って……」
「うるさいこっぱげ! そこをどきなさい!」
「こっぱげ……」

恩師に暴言を吐き絶句させたルイズであったが、一歩及ばずサイトが大空に舞い上がる。

「降りてきなさい! バカサイトォオオ!!」

ついに感情の昂りが臨界点を超えて、虚無系統である爆発魔法、エクスプロージョンを連発するものの射程が足りず、ただの花火となりてサイトのフライトを彩るだけとなった。

爆発の花火が咲き誇る澄みきった青空を自由に舞うサイトを見て、暴言のショックから立ち直ったコルベールは羨ましそうに目を細めていたのだが、不意に鼻腔をくすぐる便の香りが漂ってきて、思わず。

「フハッ!」

ウンコルベールは嗤う。
愉しげに。嬉しげに。眩しげに。フハッと。
この悦びは果たして自由に対する歓喜か。
それとも、奔放なサイトに対する羨望か。
なにはともあれ今日も学院は平和だった。


【ゼロの使い魔 ~始祖の悦び~】


FIN

私の中でゼロの使い魔は今も昔も原初にして頂点であり、まさに不朽の名作です
ハルケギニアのヤマグチノボル先生にこの想いが伝わることを願います

最後までお読みくださりありがとうございました!

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