【はめふら】カタリナ「マリアがみてる」【たまに安価】 (123)

以下の点ご容赦くださいませ

★このスレは「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…(はめふら )」が原作です。

★「悪役令嬢のカタリナと主人公のマリアが幼少期に出会ったら」が趣旨です

★そのため、百合になるかはさておきマリ×カタ分を予定してます

★重要な場面は何らかの方式で安価とらせてください

★初投稿のため遅筆なので長い目で見てやってください

★はめふらに関する雑談ならどんどんお願いします


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書籍版まだ終ってない気がするけどどこまでの予定?一部?

【とある町の学校】

ザワザワザワ…ガヤガヤガヤ…

「え、じゃあ本当だったんだ!この町にきてるって話」

「うん。もうクラスの子が何人も見たみたい。絵本に出てくるような
馬車がこんな小さな町をはしっていたからとっても目立っていたって」

「どんな人たちが乗ってるのかな?やっぱりカッコいい王子様なのかな〜」

「カッコイイかは分からないけどなんだったかな、うーん……ク、ク、クラ
『クラなんとかこーしゃく』っていうらしいよ。この辺の貴族さまなんか
目じゃないってパパが」

「なんとかって…でもいいなぁ、貴族って。私たちとは住む世界がちがうんだろうなぁ〜
メイドでもいいからステキなおやしきに住んでみたいわ」

「おやしきに住むにはメイドでもそれなりの身分じゃないと。
私たちじゃあ無理だって……普通ならお目にかかることもできないんだよ?」

「えーそれじゃあ、紹介してって『特別な子』に頼んでみちゃう?クラスにいる貴族のかくしg……」

「シッ!本人に聞こえるってば……」

アハハ、ジョウダンダヨ~
モウヤメナヨ!
デモジッサイハドウナノカナ....




マリア「……」

マリア「(聞こえているのに……)」
と声に出して言えるはずもなく、しかたなく私 ____マリア・キャンベルは
いつものように聞こえていないふりをする。クラスの子たちは私に直接何かを
してくるのではなく、今みたいに遠巻きにこちらをうかがいながらあること
ないことを話してもり上がっている。


マリア「(はやく終わらないかな…)」
そんな人たちの声を聞きたくない私は教室のすみっこでひたすら話が終わるまで
何も言わずただ耐えるだけ。これは五つのときに光の魔力を発動させてから恐れられ、
今日まで繰り返してきたこと。悲しいけれど慣れてしまった日々の一コマ。

マリア「(それにしても…)」
話に私が出てきたきっかけになった、先ほどの彼女たちの会話の内容を思い返す。
どうやらこの町に貴族さま、それもこの国の中でも大きな力を持っているお家、
がきているみたい。

話の中身はさておき、正直にいうと私はこの「貴族」という言葉が苦手になっていた。
それは、どうしてそうなるのかは分からないけれど「私が光の魔力を発現したのは
父親がお父さんではなくどこかの貴族だからだ」とあの時から町中の人たちに噂され
続けているから。さっきのクラスの子が話していたのもそういうことだ。

そしてその「私の本当のお父さんは貴族の人」という言葉が、お母さんから笑顔を
無くし、お父さんが私たちから離れていってしまった原因なのだと幼いながらに感じていた。

マリア「(帰ろう…)」
今日の授業はもう終わり。「普通」であれば放課後は友達どうしで遊んぶんだろうけど
私にはそのような友達はいない。光の魔力を持つ私を、周りは「普通」と認めてはくれない。
そんな私が授業も終わったのにいつまでもいたら教室の空気が気まずいものになるし、何より私がその空気に耐えられない。

そう思い私は教室を後にした。私がクラスを出た後、聞こえてくる声の調子が明るくなった気がした。

【とある町中】

ガヤガヤガヤ…
イラッシャイ!イラッシャイ!
マズ ウチサァ...シンセンナサカナ...アンダケド、カッテカナイ?
アァ~イイッスネ〜

マリア「(帰ったらお母さんの手伝いをしてから、おつかい、その後に今日の授業の復習…)」トボトボ

マリア「(今の私じゃできることがあんまりないけど…)」トボトボ

マリア「(それでも魔力のせいにされないように頑張らないと)」

マリア「(でも…)」

ヒソヒソ…マリア・キャンベルヨ…
ネェ、ソコノアナタ!

マリア「(町の人たちの態度はやっぱり悲しい。でも今は耐えなきゃ)」

ヒカリノマリョクノ...キミガワルイワネ...
キコエテナイノカシラ? アナタヨアナタ!!

マリア「(……)」

ネェッテバァ...コッチムキナサイヨ...グスッ

学校だけではなく町中でもよくない意味で目立ってしまっている私は、
ここでも噂をされてしまっている。しかしここでももやることは一緒で
聞こえていないふりをしてやり過ごす。通り過ぎてしまえばなんてことは
ないので教室にいるより気分は軽い。そう思ったその時






??「止まりなさい!!そこのへーみん!!」




町の色々なところから聞こえてくる声はとても大きくにぎやかで
誰が誰と話している会話なのかも分からないくらいごちゃ混ぜなはずなのに
なぜかその声だけははっきりと私の耳にしっかり入って
なぜかその声は私にかけられているものなんだ、ということに気づいた。
だから私はゆっくり振り返ってみる。すると…


??「やっと気づいたわね!この私を無視するなんていい度胸だわ゛!!」


腰に手を当てた女の子が立っていた。その子はとても綺麗な茶色の髪で、
質素だけど高そうな青いドレスを身につけていてそして何より

マリア「(綺麗な水色の瞳…)」
まるで透き通った水面を見ているような、このまま見つめていると落っこちてしまう。
そんな水色の瞳が私をとらえていた。
同じく女の子の私からみてもとても可愛いなと思ったのだけれど…




グスッ...


マリア「(どうして泣きそうなんだろう…)」
その綺麗な瞳にはなぜか涙が浮かんでいたことが気になった。

ここまでです。導入部で一区切り。

>>2 お早いですね、ありがとうございます。一応魔法学園入学までを考えてます。うまくいけば...

はめふらではなくFRが元ってことでいいの?

野猿インストール前(8歳以前)ってことなのだろうか

こんばん...ごきげんよう。少しだけですけど投下していきます。

>>17 安価の結果次第でどちらにでも...とだけお伝えします。
>>18 仰る通りです。でも分水嶺はやっぱり8歳になりますね。

マリア「ええと……私ですか?」
とはいえ、このままでという訳にもいかずおそるおそる声をかけてみる。

??「そうよ、あなた以外にいて? さっきから声をかけてたのに。聞こえてなかったのかしら」グスッ

マリア「それは……ごめんなさい。」
聞き漏らしてしまった理由が理由だけにそのまま伝えることはせず素直に謝ることにした

??「まぁいいわ。ところで人を探してるの」ズズッ

マリア「人ですか? 」ハンカチツカイマスカ?

??「ええ。 私のお父様なんだけど、目を離したすきに見失ってしまって」イタダクワ。チーン!!

マリア「(お父様……)いなくなってしまったの?」

??「もともとはお父様のお仕事、しさつ? に付いてきたの」

??「でも結構退屈だったの。 だからちょっと町を探検しようとアンに気づかれないようにこそっとね。こそっと」

??「そしたらいつの間にか知らないところまで来てしまって」

??「戻ろうとしても道が分からなくなるし、お父様とアンにも困ったものね」

マリア「(それただの迷子なんじゃ……)」

??「だからこうして町の人たちに聞き回っていたのだけれど」

??「平民も心が冷たいのね。私がお願いしてもちゃんと話を聞いてくれないの」

マリア「まぁ、お可哀想に。なんて聞いたの?」

??「私をお父様のところへ連れて行って!!って頼んだの。私でもそれくらいの礼はわきまえていてよ」

マリア「…………(どうしましょう。かける言葉が見つからないわ)」

??「きっと子どもだからって馬鹿にしてるのね。まったく」プンスカ!!

??「そういうわけで、次は同じくらいの子に声をかけてみようと思ったの」

??「道案内とお父様探しに付き合ってもらいたくて」

マリア「そうだったの」

??「そうだったのよ。だから付いてきてくれるわよね?私が声をかけたんですもの」

マリア「え、はい……私でよかったら」

??「よろしくてよ!私はカタリナ・クラエス!!あなた名前は?」カーテシーチョコン

マリア「ま、マリア・キャンベルです」オジギチョコン

カタリナ「よろしくマリア。ほら、行くわよ」テツナギ

マリア「あ……(手つないじゃった)」

カタリナ「しゅっぱーつ!!」

マリア「……ふふっ」
カタリナと名乗った女の子は当然のように私の手を繋いで歩き始める。
突然の出来事で気持ちが追いつかない。カタリナのペースに押され、
「いつもの癖」でつい付いていくとも言ってしまった。


でも、決して嫌な気持ちは湧いてこない。
むしろここしばらく記憶がなかった、手から伝わってくる温もりを
確かに感じて心もわずかに温かくなれた気がした。でも……


マリア「(どこに向かおうとしてるのかしら。こっちはもう町の外れになるのに……)」
ほんの少し、ほんの少しだけ彼女の自信の源を知りたくなった。

ここまでです。
長納期大量文よりも短納期少量文を心がけていきますわ...


カタリナ「7歳!!それじゃあ私たち同い年なのね!!お揃いね!!」パァッ

マリア「うん。でも私はもうすぐで8歳になるから少しだけお姉さんなのかな」

カタリナ「なんですって? マリアの方がお姉様? みとめないわ!!」

マリア「カタリナちゃん?」

カタリナ「あなた私のこと馬鹿にしてるでしょ!!へいみんのくせに!!」

マリア「申し訳ございません、カタリナ……チャン様」

カタリナ「あぁ!!今小さくちゃんっていった!! もっ〜!!」ジダンダ

あれから勢いよく歩き始めたカタリナに今どこへ向かっているかを伝え
「早く言いなさいよ!!」と顔を赤くしながらきた道を戻るというやりとり
の後、再び町中でのカタリナのお父様探しが始まった。

探しながらカタリナとお話をするうちに
___無理をしていたのか、お嬢様言葉が無くなってきた___
少しずつだけどだんだんと彼女のことが分かってきた。

カタリナは良くも悪くも自分に正直だ。嬉しいこと、楽しいには「いい」と、
気に入らないことには「いやだ」とはっきりと言ってきた。

そして今の会話のようにその気持ちと一緒に表情もコロコロと変わるので見ていて楽しい。
私のことを時々平民とはいうけれど、きっと言葉の意味以上の意味はないのだろうし、
学校でのことに比べればずっとましだ。それよりも……


マリア「カタリナは私のことを平民って言うけど、カタリナのお家は違うの?」

カタリナ「大違いよ!!私の家はとぉーても大きいの」

カタリナ「私とお父様とお母様以外にもお世話するのが何人もいるわ」

マリア「その意味の「お家」じゃ……じゃあ、カタリナはお嬢様なの?」

カタリナ「そうよ、見てわかるでしょ」エッヘン

マリア「さっき言ってたアンさんは」

カタリナ「メイドよ。でもうちに来たのはほんと最近。でも言うことは全部聞いてくれるから好きよ。
     他のメイドと違って無表情だから何考えているかは分からないけど」

カタリナ「アンだけじゃないわ。他のメイドも使用人も、お父様やお母様でさえも
     私の言うことはなんでも聞いてくれるのよ……そう、なんでもね」

マリア「? じゃあ、私もカタリナお嬢様ってお呼びしたほうがいいのかしら」

カタリナ「えぇ〜あなたに言われるとなんか馬鹿にされているようだから嫌」

マリア「まぁ」

カタリナ「ところで、マリアみたいな平民は普段何をして過ごしているのかしら」

マリア「普段? 私はいつも学校に行っているの」

カタリナ「がっこう?」

マリア「歳が同じくらいの子たちで集まってお勉強をして……お友達と遊ぶところよ。
    カタリナは学校へは行ったことない?」

カタリナ「ないわね。私、しゃこうかい(?)デビューがまだだからあまりお屋敷から出してもらえないの。
     よそからお父様やお母様の知り合いの子どもとならあったことがあるけど。」

マリア「そうなの」


カタリナ「で、マリアはその学校の子たちと何をするのかしら」ワクワク

マリア「え……ええと、おしゃべりをしてお外で遊んで、ごはんを食べる……かな」

カタリナ「……」ジーッ

マリア「な、なに?」

カタリナ「それ本当に楽しいの?顔がちっとも楽しそうじゃないわ」

マリア「(この子……)楽しいよ。きっとね」

カタリナ「ふーん、やっぱり私には平民の感覚は分からないわ。住んでいる世界が違うもの」

マリア「そうね……」

そう言って会話を終えた私は夢からさめた気分になる。
私に友達がいたらしたかったことを話した時の顔を指摘されたこと、
そしてカタリナの言葉の意味を考えての二つの意味で。

特に後者は、決して期待していたつもりではなかったけれど、
カタリナに「平民と友達になるつもりはない」と言割れたような
気がしてちょっぴり寂しくなった。


カタリナ「どうかした?」

マリア「いいえ、なんでもないわ」

カタリナ「そう。それにしても本当に町の人たちは冷たいわ。
     はじめの時より話聞いて貰えなくなってるんじゃないかしら」

カタリナ「それになんだか私たちを見て話しているような」

マリア「……(ごめんなさいカタリナ。それは多分私がいるからよ)」

カタリナ「もう、やってられない!!マリア、休憩よ休憩」

マリア「え、でもお父様を探さないと」

カタリナ「そうだけど、歩き続けてクタクタよ。なんとかなさい」

マリア「確かに疲れましたね。じゃあ、近くに公園があるのでそこで休みましょ?」

カタリナ「よろしくてよ」

【とある公園】

カタリナ「……」ポケェ~

マリア「……」ポケェ~

カタリナ「ねぇ」

マリア「なあに」

カタリナ「ここにはよく来るの?」

マリア「昔はよく遊んでたの。でも今は……あんまり」

カタリナ「そう。」

カタリナ「……」ポケェ~

マリア「……」ポケェ~

カタリナ「ねぇ」

マリア「なあに」

カタリナ「遊んでたって、何をしてたのかしら」

マリア「そうね、木登りとかかな」

カタリナ「キノヴォリ?」

マリア「木登りよ。そのままの意味で、木にのぼるの」

カタリナ「平民はそんなことが楽しいの?野蛮だわ。そんなのただの猿じゃない」

マリア「そうね。ごめんなさい」クスッ



カタリナ「……」ポケェ~

マリア「……」ポケェ~

カタリナ「で、どうやるのかしら?」ウズウズ

マリア「……え?」


マリア「ここに足をかけて、体重をかけてと。こんな感じです」

カタリナ「ふむふむ」

マリア「(疲れていたんじゃなかったっけ)」
「木登りをやってみたい」カタリナがいきなり言い出した時はびっくりしたけど、
私がお手本で登って見せたのを真剣に観察してるところを見ると本当に
やってみたかったのね。

ちなみに私自身はブランクがあったので、登るのも一苦労だったりする。

カタリナ「なに見てんのよ。上から目線で生意気よ!!」

マリア「ふふ、じゃあここまで来てみて」

カタリナ「ぐぬぬ、今に見てなさい」


そういうとカタリナは不慣れながらも木に手と足をかけて登り始める。
この木自体はそこまで大きくはないから、うまくいけば初めての
カタリナでも登りきれるかもと思っていたのだけれど

マリア「(うそ……上手だわ。本当に初めてなの?)」

マリア「(少し強引なところがあるけどしっかり登れているし、それに私よりも上手い?)」

カタリナ「へへーん、どうよ。案外簡単なものね」エッヘン

マリア「びっくりしたわ。まさか登りきってしまうなんて。本当に初めてなの?」パチパチ

カタリナ「初めてよ。でもなんでかしら、木に登ることがとてもしっくりきてるわ」

カタリナ「やってみると木登りも悪くないわね。褒めてあげるわマリア」

マリア「楽しんでもらえたようで何よりです」

マリア「(でもなんでだろう。何か取り返しのつかないことをしてしまった気がするわ)」


カタリナ「みてみて、こんなこともできるのよ」

私が頭の中で考えている間に、カタリナは初めて木に登って
慣れてきたことが嬉しかったのか木にぶら下がりながら
どんどん先っぽの方へ進んでいく。

でもそうするとぶら下がっている木はだんだん細くなっていくわけで……


マリア「カタリナ!!だめっ!」

カタリナ「えっ?」




———バキッ————




一瞬の出来事だった。カタリナを呼び止めるために私が出した声と
彼女が掴んでいる木から聞きたくなかった音が同時に聞こえた直後
カタリナは下へと落ちていった。


ここまでです。
アン回、感動いたしましたわ......

まあ……ついにカタリナお嬢様のお脳に強い衝撃がお入りになってしまったのね
これからどうなってしまうのかしら?

これはわたマリアさんが傷物にした責任を取って一生お側に仕えないとダメですわね

既に野猿の片鱗が見えている…

いつまでもお待ちしておりますわ

こんばん…ごきげんよう。
本日は11:15から投下していきますわ。

>>43 まだその時ではございませんわ
>>44 マリアさん、ハウスですわ
>>45 きっかけって大切だと思いますの
>>46 お待たせしましたわ


マリア「カタリナ!!大丈夫!?」
急いで下に降りると芝生の上で倒れてうずくまっているカタリナに声をかける。
そこまでの高さはなかったけれど、いきなり体を放り投げられたようなものだから
落ちるまでに体を守る準備もできていなかったはず。もし大けがなんてしてたら……


カタリナ「へ、平気よこれくらいなんてことないわ」

そう言いカタリナは体を起こす。見たところ、頭を打ってしまったとか
骨が折れてしまったとか大きな怪我はなさそうで安心した。けれど……


マリア「大変、右腕から血が出てるわ」

それでも全くの無傷というわけにはいかなかったようで、
落ちたときに右腕にすり傷ができてしまったみたいだ。

カタリナ「平気と言ってるでしょ。こんなの、アンに手当てしてもらえばいいのよ」

マリア「(たしかに怪我はそこまでのものじゃない。
    しっかりと手当てをすれば大丈夫そう。それか、このくらいの傷なら……)」









マリア「(私でも「治せる」)」


マリア「(でも……怖いわ)」

たしかに治せる。あれを使えば。けれど「あのときの出来事」が
頭をよぎってしまいそれをためらってしまう。

考え直しなさい、マリア。過去に同じような怪我をした友達に
「光の魔力」を使った後どうなった。
恐ろしいものを見るような目で見られ、気づいたらみんな私から離れていった。

もし治したとしてカタリナから、あのきれいな水色の瞳で
あの時の友達のような目をされたら私はどうなってしまうのだろうか。


マリア「(カタリナには悪いけど手当てはメイドさんたちに任せましょう)」

ちょうどポケットにハンカチがもう一枚あったはず。あとはどこからかお水を
用意してそれらで応急処置をすればいい。それにここから私の家は歩いて少しだ。
そう決めて私はカタリナに声をかけようと、


カタリナ「ひぐっ……アン、お父様、どこにいるの?早く来てよ……」ポロポロ


マリア「カタリナ……」

痛みに耐えながらもその瞳からはポツポツと涙が溢れでるのをみて私は気づいた。
彼女の勢いにのまれて気にならなかったけれど、きっとカタリナは我慢していたんだ。
強がってはいたけれど、本当は心細くて、その気持ちを忘れようとしてたのだろう。
そして怪我をして、腕の痛みと一緒に寂しい気持ちも思い出してしまった、のかな。


マリア「……」

カタリナ「マリア?」

マリア「動かないで」

考えるよりも先に自然と体が動いていた。これを使ってカタリナにどう思われるかよりも
なぜだかこれ以上彼女の泣いている顔を見たくないなという気持ちが上だったから。

私はカタリナの怪我をしている右腕に手をかざし魔力を発動させる。
すると私の手からでた光は彼女の腕を包み込み傷を癒していき、
しばらくすると傷あともすっかりなくなった。我ながらきれいにできたと思う。

さてと……治療中はカタリナの反応が怖くて顔を見ることができなかった。
そして治療が終わった彼女は今どんな顔をしているだろうか。
恐る恐るカタリナの方へ振り向くと






カタリナ「……」0ヮ0

マリア「(この顔はどういう感情なんだろう)」
治療を終えた自分の腕を、うまく例えることができない
なんとも言えない表情で見つめるカタリナ。
私が今まで見たことない表情なので、彼女の気持ちを推し量ることができない。

マリア「あ、あの……」

カタリナ「……はっ!」

私が思い切って声をかけると、カタリナは我に返ったのか元の顔に戻った。
と思いきや今度は私の手を掴んで「むむむ」と聞こえてきそうな顔をしながら
ペタペタと触ってきた。なんだか恥ずかしい。


カタリナ「マリア、あなた何をしたの?」

マリア「怪我を治したの。その、魔力で」

カタリナ「魔力?あなた魔力が使えたのね!!」

マリア「え、うん。ひかりにょ!?」

カタリナ「治せるならさっさと治しなさい!!無駄に痛かったじゃないの」リョウ ホッペ ヒッパリー

マリア「ふぉ、ふぉめんなひゃい」リョウ ホッペ ヒッパラレー


それから、ヒリヒリする頬をさすりながらカタリナの話を聞いてみるとカタリナも
魔力を使えるそうで、実際に土がぽこっとするところを見せてもらった。

なので彼女からすれば魔力自体は珍しくもなく、むしろ自分以外の同年代の子が
魔力を使ったことに興味があるようだった。


カタリナ「それにしても、光の魔力なんて変わった魔力を持っているのね」

マリア「うん。でも私あんまりこの力が好きじゃないの」

カタリナ「え、どうして?」

マリア「私がこの力を使ってから、色々とうまくいかなくなっちゃって……」

カタリナ「何よそれ。今までうまくいかなかったから、
     これからもうまくいかないとは限らないじゃない?」

マリア「!!」

カタリナ「もっと自分に自信を持ちなさいな。きっとうまくいくわ!!
     なんたってこのカタリナ様を治したんだから!」ホホホ

マリア「う、うん……」アハハ...

色々と事情はあったけど、カタリナに全てを話すのは少し気が引けて
「魔力を使ってからうまくいかない」とぼんやり伝えてみたら
カタリナは嘘偽りがない顔で「きっとうまくいく」と言ってくれた。

そんな単純な話ではないのだけれど、彼女にそう言ってもらえるそれだけで
本当にうまくいくような気がするから不思議だ。


カタリナ「さてと、陽も落ちてきそうだしそろそろ行くわよ」

カタリナ「マリア」

マリア「な、なに?」




カタリナ「礼を言うわ…………あ、ありがとね」

マリア「う、うん……///」

カタリナはこちらに振り返らず私にそう告げる。どうしよう、すごい嬉しい。
魔力を使って初めて言われたお礼。私からも伝えたいことがあるんだけど
言われ慣れていないせいかどうもこそばゆくて、返事自体もそっけないものに
なってしまった。

そんな恥ずかしさを隠すように私はもう少しだけ勇気を振り絞って言葉をかける。


マリア「カ、カタリナ。陽も落ちてきたし、よかったらうちに来ない? ここから近いの……」

カタリナ「あら、気が利くじゃない。よろしくってよ。案内しなさい!!」

マリア「!!……うん!!」

そう言ってカタリナは当たり前のように再び手を繋いでくる。
彼女は何も考えなしにやっているんだろうけど、こういう何気ない
ことで私の心は軽いものになる。

そんな心を表すかのように足取りも軽く、最初に手を繋いだ時とは
逆で今度は私がカタリナの手を引き我が家を目指して歩き始めた。

ここまでです。
はめふらって5chでは人気ないって聞いたのだけれど
どうなのかしら?

乙です
なろうというだけで拒否感を示す人もいるから仕方ないことですね

ところで、カタリナにふさわしい婚約者であらせられるあの王子が出ていないのですが

乙を差し上げますわ

>>62
はてどなたかしら?ジオルド様はたまに難しい謎掛けをなさりますわね
それより花を愛でる淑女の出番はまだでしょうか

乙ですわ。良いお話でした。まるでロマンス小説の様でしたわ!
あ、あの…カタリナ様とおにい…魔性の伯爵が出てくる話はいかがですか?
もしくはカタリナ様とわた…絹のような髪とルビーの様な目を持った女の子のお話とかも良いと思いますの!

こんばん……ごきげんよう。
本日は0:30から投稿していきますわ。

>>62,>>63,>>64
幼馴染の方々、出番はまだですのでもう少々お待ち下しまし


【マリアの家】

カタリナ「小さな家ね、小屋かと思ったわ」

マリア「あはは……でも私とお母さんしか住んでないからちょうどいいかなって」

カタリナ「そんなものかしらね(ん? 「しか」?)」

マリア「お母さん、ただいま」

あれから勢いでカタリナを家の前まで連れてきてしまったけれど、良かったのかな。
今さらになって、町のどこかで迷子を保護してくれる場所に行った方がよかったのでは
と冷静に考えるようになった。もっとも私にはその場所に心当たりがなかったけれど……

一方カタリナは私の家を珍しいものを見るように観察し、遠慮ない感想を言ってくる。
まぁ、何となく予想はしていたけれどやはりお嬢様のカタリナには色々と物足りなかったみたい。
そんなことを考えながら私は中にいるはずのお母さんに向かって声をかける。


マリア母「…………おかえりなさい」

そして私の声に気づいたお母さんが、いつもみたいにどこかよそよそしさを感じる返事をする。
実の家族なのに……ただ、今日だけはそんなことは気にしている場合じゃない。だって

カタリナ「まぁ、すごい綺麗なお母様だわ! お部屋は……やっぱり狭いけれど 」

カタリナがいるんだもの。私の後ろからついてきたカタリナはお母さんを見るや、
綺麗と言ってくれた。カタリナの性格上、本心から言ってくれてることが分かるので
私は思わず笑みを浮かべてしまう。今でこそギクシャクしてしまっているけど
それでもお母さんを褒められるのは嬉しい。お部屋はお気に召さなかったみたいだけれど……


マリア母「え? マ、マリア。この子はどちら様なの? 」

マリア「ええと……町で迷子に」

カタリナ「ちょっと、迷子じゃないわよ!!ていうか、あなた私を迷子だと思ってたのね。失礼しちゃうわ!!」プリプリ

カタリナ「マリアのお母様、初めまして。カタリナ・クラエスよ!!」

カタリナ「マリアとは町で知り合って、いなくなったお父様を一緒に探していたの」

マリア母「は、はぁ……マリアの母です。こちらこそよろしくお願いします……」

カタリナ「ふふーん」ニコニコ

マリア母「(それって迷子なのでは……いえ、それよりもマリアが同じくらいの子を連れてきた!?)」

マリア母「(雰囲気からして、良いところのお嬢様なのかしら)」

マリア母「(それに、クラエスってどこかで聞いたことがあるような……)」

マリア「お母さん?」

マリア母「え、ええと……お腹すいたでしょ。ご飯作ってあるから食べちゃいましょうか」


マリア母「……どうでしょうか。お口に合いますか?」

カタリナ「んー、食べたことない味だけど悪くないわ!!」

マリア母「それは……良かったです」

マリア「(……ほっ)」
本当に良かった。カタリナのお家では想像できないけれど、き
っと普通の家では出てこないようなものを食べているはずだから。
幸いにも家の味はまだ大丈夫みたい。

マリア「(それにしても……)」
こうやってお母さんと顔を合わせてご飯を食べるのはいつ以来だろう。
いつもならお互い避けるように別々に食べるのに、今日はカタリナがいるからか
お母さんも一緒だし、一緒の席でもそこまで気まずくもない。
相変わらず会話はないけれど少しだけ昔に戻った気がして嬉しくなった。


カタリナ「……」ジィー

マリア「な、なに?」

カタリナ「マリアとマリアのお母様って本当にそっくりね」

カタリナ「マリアも大人になったらこんな感じになるのかしら」

マリア「そ、そうかな?」チラッ

マリア母「!!」

そんなことをカタリナが急に言うものだから返事に困り、何となく
お母さんの顔を伺うとお母さんは一瞬ハッとした顔になり、
またいつものもの悲しげな表情に戻った。
何を考えていたのかは……わからない。

カタリナ「まぁ、私もお母様似なんだけどね。そのせいでお父様はこれでもかってくらい私を可愛がってね〜」

マリア母「……」


それからご飯を食べながら、お母さんとぎこちないながらも話をした。

カタリナがお父様のお仕事についてきたこと、
街中でカタリナにあったこと、
お家の人とはぐれてしまったこと、
一緒にお家の人たちを探したこと、
そして一緒に公園で遊んだこと……

今日の出来事を、私にとって大切な思い出を振り返るように
私からの一方通行の会話だったけどお母さんは黙って聞いてくれていた。

そんな二人の微妙な空気に気づかないカタリナもところどころ会話に加わり
カタリナ自身のことを身振り手振りで伝えてくる。
不恰好ではあるけれど、友達を家に連れてきた家庭のように思えた。

マリア「(カタリナも同じ気持ちだと良いな)」

そう思ったその時、外からノックをする音と、「ごめんください」
という若い女の人の声が聞こえた。その声にお母さんが対応する。


マリア母「はい、どちら様でしょうか」

アン「遅くに失礼致します。私、クラエス公爵の家政婦、アン・シェリーと申します」

アン「少々お聞きしたいことがあるのですが……」

カタリナ「アン!!遅かったわね!!」ダキシメ

アン「お、お嬢様!!ご無事でしたか……本当に心配しました」

カタリナ「アンもお父様もいなくなってしまうんですもの、人騒がせよね!!」

アン「も、申し訳ありません」


外の声の主に気づいたカタリナがその人物めがけて飛び込む。
そんな、久しぶりに再会した二人のやり取りを眺めながらこの人がメイドのアンさんなのね、
とそんな感想がぼんやりと湧く一方で、楽しい時間が終わってしまうんだと分かってしまい
気持ちが沈んでしまう。カタリナがお家の人と会えたのだから喜ばないといけないのに。


その後、お母さんからアンさんにこちらの事情を説明してもらった。
それに対してアンさんいわく、やっぱりというか発端はカタリナだった。
お父様のお仕事中、飽きてしまったカタリナがお父様とメイドさんたちの
隙を見て逃げ出したらしい。

愛娘がいなくなったお父様は真っ青になり、予定していたお仕事をやめて
使用人総出で町中の建物や家を一軒一軒しらみつぶしに探していたそうだ。

そんなやり取りをよそにカタリナはマイペースにも食後の紅茶を飲んでいる。
飲みながら「だから迷子じゃないわよ!!」と文句を言っているけど。


アン「とりあえず、まずは旦那様の元へ参りましょう。とても心配されております」

カタリナ「そうね、私も早くお父様に会いたいわ。これ飲み終わったら帰りましょうか」ズズッ

アン「はぁ……かしこまりました。キャンベル様、この御礼は後日必ず」

マリア母「え、えぇ、そんな……お気になさらず」

アン「マリア様も、見ず知らずの……他人でいらっしゃるお嬢様の側にいて頂き
   本当にありがとうございました。なんてお礼を申し上げてよいか」

マリア「いえ……(……他人、そうよね)」

もちろんアンさんに悪気がないのは分かっているし、
本当に感謝してくれているのだろうというのが伝わってくる。

それでも今日少しの時間だけど一緒に過ごした分、カタリナのことを知ることができて
それが嬉しくて、それなのに他人と言われてしまって切なくなって。
そんな気持ちが沸きながらなんて答えれば良いのかわからなくなったとき




「他人じゃないわ。友達よ」



凛とした声が聞こえた。


その場にいた全員が声の方を向くと、カタリナが静かにお茶を飲んでいる。
そして、飲み終えたカップをわずかにカチャリと音を立ててソーサーの上に置く。
その所作の一つ一つが今まで見てきたカタリナとあまりにも結びつかない。
同い年なはずなのにどこか大人びて見えるカタリナはやがて口を開く。


カタリナ「アン、知っていて? 平民の子たちはお友達どうしで
     おしゃべりをしてお外で遊んで、ごはんを食べるのよ」

アン「は、はぁ……」

マリア「(あ……)」

カタリナ「私は今日、それをマリアと全部やったのよ。お父様を探しながらね」

カタリナ「平民の子ができるのだから、私にもできて当然よね」

カタリナ「はじめはマリアが私を騙してるんじゃないかと思ったのだけれどね。
     やってみたら楽しかったわ」


マリア「(覚えていてくれたんだ……)」ポロポロ

涙が止まらなかった。カタリナが私に友達と何をするのかと聞かれたとき、
苦しまぎれに言ったこと、本当な私がやりたかったこと。
それを覚えていてくれてなおかつ私を友達と言ってくれた。

きっとカタリナは深くは考えてないのだろうけど欲しかった
言葉をくれてもう胸がいっぱいいっぱいだった。


カタリナ「え、ちょっとなんでそこで泣くのよ!!普通は喜ぶところでしょ!?」

マリア「え、えへへ(いやだ。顔がぐちゃぐちゃで恥ずかしいわ。ちゃんと笑えているかしら)」


マリア母「…………」

アン「…………」

アン「失礼致しました。それでは改めて、『ご友人』のマリア様。
   お嬢様の側にいて下さってありがとうございました。私個人としてもお礼を言わせてください」

マリア「は、はい。こちらこそありがとうございました。あの、カタリナ……様」

カタリナ「なによ、そんな泣き顔で失礼しちゃうわ。あと言ったでしょ。様いらないって」ムスッ

マリア「ふふっ」

どうやらカタリナは、私が泣いているのは「自分が私のことを友達と言ったから」と
勘違いしているようで明らかに機嫌の悪い顔をしている。

あと、メイドのアンさんの前でカタリナを呼び捨てにするのはどうなのかなと思い様を
つけたけどこれもお気に召さなかったみたい。
鋭いのか鈍いのかわからないお嬢様に思わず笑ってしまう。


カタリナ「なにがおかしいのよ」ムスッ

マリア「ううん、何でもないの。カタリナ、また遊びに来てくれる?」

カタリナ「お断りよ!!何でわざわざこんな田舎に来なくちゃいけないのよ?」

マリア「え……」

カタリナ「その代わりマリア、あなたがうちに来なさい。
     私自らもてなしてあげるわ。感謝なさい」

マリア「!!……うん!!必ず行くね」

カタリナ「ふん。アン、帰るわよ!!」

アン「はい、お嬢様」


こうして、カタリナ・クラエスはアンさんと一緒にお父様が
いらっしゃるところへと帰っていった。


いつもの苦痛な日常から一転、カタリナと出会い長いようで
短かった1日が終わり、私は自分の部屋のベッドへと倒れ込む。
思っていた以上に疲れていたみたいで体が重いのを感じる。


「でも、この疲れは心地いいかも……」

いつもみたいに他人の、周りに対して気がはってしまったときの疲れ
ではなく、遊び疲れたときの、懐かしさを感じる疲れだった。

「この出会いが夢じゃありませんように……」

ここが夢の中で、寝てしまうと現実に戻ってしまうのではと
錯覚してしまうほど素敵な1日だった。
だから私は寝てしまう前に祈るようにつぶやく。

「また会えますように」
そう願いつつあの水色の瞳のお嬢様を思い浮かべながら私はやがて眠りについた。




【悪役令嬢と主人公出会い編 完】

ここまでです。
これにてまずは出会い編が終了ですわ。
次回投稿までに少しお時間をいただきますわ。
それではごきげんよう

カタリナお嬢様、ご立派になられて…
マリア様のお心を照らすそのお姿、お言葉、爺はうれしゅうございますぞ

乙ですわ
頭ゴーンからの差異をマリアさんがどう感じるのか気になりますわ

こんばん……ごきげんよう。
これから投下していきますわ。

>>88 もう大体察していらっしゃるかと思うので先に言っておきますわ。
   『あの時』にインストールをするか、しないかを(多数決?)安価
   で決めようと思いますの……人がいらっしゃれば。

   した場合→原作通りのカタリナ。言葉は不要ですわね。玄人の皆さまには
        焼き直し感が否めませんがマリアがいる分少し展開が異なる
        かもしれませんわね。
        『相も変わらずに東奔西走、好感度を上げて』コース

   しなかった場合→原作カタリナに時折ビターなテイスティングですわ。
           原作以上にわがままだけど、それでもマリアを始め
           周りの影響を受け不器用ながらも成長していく。
           そんな彼女に周りもまた救われていく。いかがかしら。
           『悪役聖女育成』コース

   どちらになっても構いませんが、どちらのカタリナも「単純」、「脳筋」、「おバカ」
   であることをお忘れなく......

   それでは皆様のご意見お聞かせくださいな。
           

【クラエス邸】

アン「以上が報告内容となります」

ルイジ「うん分かった。報告ありがとう。今日はもう休みなさい」

アン「はい……」

夜は9時をまわろうかという頃、私____ルイジ・クラエスは愛娘である
カタリナの『冒険』について詳細をメイドであるアンから聞いていた。
そして概ねを把握したので彼女に休むよう伝えたのだが様子がおかしい。


ルイジ「? どうしたんだい」

アン「旦那様、率直にお聞きいたします。今回の件、
   私はどのような罰を受ければよろしいのでしょうか」

ルイジ「いきなり何を言い出すんだい。私は別に……」
なるほど、どうやらアンは今回の件で責任を感じているようだ。
そうと分かり私は口を開くが彼女が続ける。

アン「旦那様のお仕事の間、大事なカタリナお嬢様を
   お任せ頂いたにも関わらず、私は目を離してしまいました」

アン「今回は幸運にも無事見つけ出すことができましたが、
   もしも大事になっていたかと思うと……」

彼女____アン・シェリーはシェリー男爵家からうちへ行儀見習いとしてやってきた。
表情は乏しいが、15歳にして仕事に真面目に取り組んでくれているので私も助かっている。
今日だって、カタリナを見つけ出すまでは屋敷も戻らないという気迫すら感じた。
もちろんそんな彼女を咎めるという気はおきない。




ルイジ「確かに、アンの言う通りだね。でもそれでも君を咎めるつもりはないよ」

ルイジ「アンもうちへ来てカタリナ付として半年ほどに
    なるとはいえ、まだまだ不慣れなこともあるだろうしね」

ルイジ「それに目を離したと言うのならば、我が娘の行動力を読めず
    君一人に任せてしまった私にも少なからず責任がある」

これは本当のことだ。普段は私の側を離れないカタリナがまさか自分から
いなくなってしまうなんて予想ができなかった。
父親である私がそうなのだからアンはなおさらのことだろう。

ルイジ「何より、カタリナはアンがお気に入りみたいだからね。
    私が君に意地悪したと知られてはきっと嫌われてしまうだろう」

そしてこれも本当のことだ。カタリナは他のカタリナ付のメイド達よりも
どういうわけかアンを気に入っている。最近は何をするにもどこに行くにも
アンを側に連れていたのだ。だからこそ今回の脱走には驚かされるのだが。


アン「そんな……勿体無いお言葉でございます」
本当に勿体無い、というような態度でアンが返事をする。
そんなアンにはもう少し自分の気持ちを出していってほしい
とは思うのだがまだまだ時間がかかりそうかな。

ルイジ「それにカタリナにとっても今日のことは
    かけがえのないものになったと私自身は思っているよ」

アン「マリア・キャンベル様のことでしょうか」

ルイジ「その通り。彼女がいてくれたからカタリナが無事に見つかった
    ようなものだからね。後日こちらからお礼に出向かないとね」

ルイジ「何れにせよ、今回はカタリナが無事見つかった幸運に感謝して
    この件はお終いにしよう。アンにはまた明日からも頑張ってもらうよ」

アン「かしこまりました。それでは失礼致します。お休みなさいませ」




ルイジ「(それにしてもカタリナ、我が娘ながらやってくれたものだ)」
一礼して扉の向こうへ消えていくアンを見送りながら私は今日の
カタリナ脱走劇を振り返る。考えてみれば朝の時点でおかしかった。

普段なら私の仕事に興味を持たないカタリナが今日に限ってついて行くと
言って聞かなかった。そして今日に限って私たちの側から離れて一人で
『冒険』にいってしまった。カタリナが居なくなったと聞いたときは
生きた心地がしなかった。

そしてやっと見つかったかと思えば





ルイジ「マリア・キャンベル嬢……」
平民の子と一緒にいたというだけでも驚きなのに、その子がよりによって
『光の魔力』を持つマリア・キャンベルというのだから二重の驚きである。
噂には聞いていた。数年前にこのソルシエで10年ぶりに平民生まれにも
関わらず魔力を、それも光の魔力を発現させた子がいると。
そして、そのことは社交界でもちょっとした話題になっていた。けれど……

ルイジ「(平民で魔力持ちであれば何かと苦労するのではないだろうか……)」
魔力についてあまり理解がないであろう、普通の町で魔力持ちになってしまうと
どういう扱いを受けるのか、想像はつかない。

だけど実際、アンによればあの町でマリアは有名人だったようで、
カタリナの居場所を突き止めたのもマリアが一緒にいたことが
多くの人に目撃されていたことが決め手となっていた。

ルイジ「(だけど、何より驚いたのは……)」
そう思った時、外から扉をノックする音が聞こえる。おそらく妻のミリディアナだろう。
どうやらカタリナとのお話を終えたらしい。私は思考を中断して入室を促す。

疲れ切った顔をしているミリディアナを迎えながら私はふと、なんとなく考えた。
アンにはこの件はお終いと言ったが、本当は何かの始まりだったのではないか、
ということを。

ほぼ勘みたいなものだが、きっと間違ってはいない。なぜだかそう思える自信があった。
ただし、「その始まり」が良いことなのか、悪いことなのかまでは分からないのだけれども。











【悪役令嬢と第三王子 婚約編】

ここまでですわ。
ということで、今回からはマリア、クラエス家接触編と第三王子婚約編ですわ。

早速のご意見、ありがとうございます。なるほどですね……
>>87 ん?爺?どなただったかしら......

なんとなく執事っぽいレスをしたら深読みされてしまった
次回も楽しみにしてます

こんばん……ごきげんよう。
本日はスローですが投下していきますわ。
本編の方も観ながら楽しんでくださいまし

>>103 おほほ、それは失礼いたしましたわ


【クラエス邸】

マリア「まぁ……すごい」
私の住む町からお迎えの馬車(人生の中で何回乗れるか分からないくらい立派な)
にゆられてしばらく経ったあと、私__マリア・キャンベルはカタリナのお家、
いいえ、お屋敷の前に立っていた。

うまく感想が出てこないけれど、こんな立派なお屋敷は絵本でしか見たことない。
まえに彼女が私の家を小さいと言ったことにも納得してしまう。
今更だけれど、私はこんなところに住んでいるカタリナを、
自分の家に招待してしまったことに恥ずかしくなってしまった。


メイド「キャンベルさん、こちらへどうぞ」

カタリナのお屋敷に見とれていると、お迎えに
来てくださったメイドさんが私に声をかけてくる。
私は、はっとして急いで彼女の後についていく。
田舎者だと思われていないかちょっぴり不安になる。

メイド「そんなに緊張なさらないでください」

マリア「あ、ありがとうございます。あ、あの……」

メイド「ふふ、ところでいかがでしたか? 初めてお会いした時のカタリナお嬢様は」

マリア「カタリナ……様ですか? ええと、すごく元気で
    すごくハキハキしていて……あとすごく優しかったです!!」

メイド「そうですか……その、キャンベルさん」

マリア「はい、なんですか」

メイド「この度はありがとうございました。そして、今日から頑張りましょうね」

マリア「はい!!こちらこそよろしくお願いいたします」
そう言われた私は、これから先輩としてお世話になる
メイドさんに気合を込めて挨拶をする。

そう、本当に突然のことだけれど私__マリア・キャンベルは
今日からカタリナのお屋敷に仕えることになった。
それは数日前までさかのぼる。

ここで、試験的に安価をおひとつ。

マリアがクラエス邸で……

・住み込みで働く……①

・学校がお休みの時だけ働く……②

安価はそうですわね。
↓3票のうち多かった方を採用致します。

せっかくスレタイに入れましたものね。
それでは皆様お願い致しますわ。

ご協力有り難うございます……なるほど、こうなりましたのね。
承りましたわ。お待ちくださいまし


【マリアの家】

ルイジ「初めまして、カタリナの父でルイジ・クラエスと申します」

カタリナと出会ってしばらく経ったある日、カタリナのお父様はやってきた。
それはとても美しい男の人で、別の世界の人かと思うくらいだ。
カタリナも可愛かったし、この方の娘というのもうなずける。

そして『突然の訪問で申し訳ない』と謝るお姿はこちらまで
申し訳なくなるくらい立派なたたずまいだった。
お母さんもいきなりの来訪で戸惑っているみたいだけど、
先日の件でわざわざお礼を言いにきてくださったようだと
分かるとおずおずと家の中へと案内する。


マリア「マ、マリア・キャンベルです」
ぎこちない礼で挨拶を返す。緊張してしまって
うまく出来ているかなんてわかりっこない。

ルイジ「かしこまらないで、キャンベル嬢。君は私のカタリナの恩人なのだから」

ルイジ「カタリナからは色々と聞いているよ。
    たくさん面倒を見てもらったようだね。本当にありがとう」

マリア「いえ、私は何も……あの、カタリナ……様はお元気でしょうか」

ルイジ「おかげさまでね。元気すぎて手を焼いているくらいだよ
    …………なんだか令嬢らしからぬ遊びも始めたしね」

マリア「?(最後の言葉が聞き取れなかった……)」

ルイジ「そしてキャンベル夫人もカタリナを保護頂き本当にありがとうございました」

マリア母「いえ……お気になさらず」
お母さんも私と一緒でだいぶ緊張しているのかな。話し方がどこかぎこちない
そんなやり取りをした後、カタリナのお父様__ルイジ様はあらたまって話し始める。


ルイジ「今回の件では本当に感謝しています。もし、キャンベル嬢と
    一緒でなかったらカタリナが無事だったかどうか……」

ルイジ「だからせめて私にできることで何かお礼をさせて頂きたいのです。」

ルイジ「自分で言うのもおかしな話ですが、それなりのことはできると思うのです。
    何かお役に立てそうなことはないでしょうか」

マリア「……(それなりのこと)」
カタリナと過ごしてうすうす気づいていたけど、この人と会って確信した。
学校でクラスの子達が話していた貴族こそこの方なのだろうと。
そして、それなりのこととは言葉以上の、例えばお金とか私たちじゃ
到底届かない力のことなのだろう。

この人の言葉からは本当に感謝をしているという気持ちが伝わってきた。けれど……


マリア母「申し訳ございませんが、そのお申し出は受けられません」

マリア母「何も望みません。私たちは静かに暮らしたい、ただそれだけなんです」

マリア母「お嬢様が無事だった、そのお役に立てたこと、そして
     わざわざご足労いただきお礼を頂けた、これだけで満足でございます」

お母さんがこう言うのは分かっていた。町の人たちから私が貴族の子供と
言われたことで家族がバラバラになってしまったのだ。
カタリナのお父様のせいでなくても貴族に対してあまりよく思っていない
という気持ちはわかる。

何も望まないのは本当だろう。でもそれ以上に、関わらないで、そっとして
おいて欲しいといった気持ちをお母さんの言葉からは感じた。

そんなお母さんの言葉をカタリナのお父様は静かに聞いて頷いた後私に問いかける。


ルイジ「キャンベル嬢はどうかな」

マリア「(私はどうなんだろう)」
正直、欲しいものなんてない。お母さんと同じで断ってしまってもいい。
けれど、私の勘のようなものが告げている。ここが運命の分かれ道だと。
ここで私が言ったことが後々私自身の人生を変えてしまうのだと。

もう一度私は考える。今こそ誰かの顔色を伺ってではなく、
他人がどう思っているかではなく、自分がどうしたいかを……



『もっと自分に自信を持ちなさいな。きっとうまくいくはずよ!!なんたってこのカタリナ様を治したんだから!』



その時、ふとあの人の笑顔とあの時の言葉が浮かんだ。

マリア「あ、あの!!」

ルイジ「なんだい?」

言ったらお母さんなんて言うかな。カタリナのお父様に身の程知らずと言われるのかな

マリア「私は、私は……」

でもなんでだろう。あなたがそう言ってくれたから、うまくいくと言ってくれたから
私は勇気を出して自分の望みを口にする。







マリア「カタリナ様のお側にお仕えしたいです」

ここまでです。
遅筆で申し訳ありませんわね...

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