男「結婚前夜、君のスマホを覗いた」 (12)

夜、居酒屋

友「かんぱーい!」

男「今日で何度目だよ」

友「いいんだよ、祝い事なんだから」

男「そういうもんかねぇ」

友「それにしても、お前がとうとう女ちゃんと結婚とはなぁ」

男「意外?」

友「いいや? 予想通りというかなんというか。遅すぎたくらいだな、うん」

男「25で結婚なんだから、早い方だろ?」

友「高校の時から付き合ってるんだろ? 俺はてっきり大学卒業して直ぐ結婚かと思ってたよ」

男「それは早過ぎ」

友「んなことないって。スマホまでお揃いなんだろー? どんだけ仲良いんだよ」

男「うるせーなぁ」

ピローン!

友「スマホ鳴ってるぞ、噂の女ちゃんか?」

男「いや、俺の着信音じゃないぞ」

友「え? でもお前の鞄から聴こえるけど」

男「ん?」ゴソゴソ

友「今日はお前の結婚前夜だからなぁ、飲みまくるぞー!」

男「――これ、女のスマホだ」

友「はっはっは! お揃いになんてするから間違えるんだよ!」

男「声でかいって……」

スマホ「SMS:あと10分で着く」

男「え?」

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友「どうした?」

男「いや……」

友「なんだよ、浮気のメッセージでも見ちまったか? わはは」

男「なんだ、その、そうかもしれん」

友「はぁ?」

男「ほ、ほら、これ」

友「――あー……まじか」

男「え、えぇ? まじで? うわ、うわぁ……」

友「いやいやいや! ありえないって」

男「そ、そうだよな?」

友「そうそう。どこの阿呆が結婚直前に浮気するんだよ。しかも、あの女ちゃんだぞ?」

男「ああ、そうだ。そうなんだよ」

友「……」

男「……」

友「女ちゃん、今日何してるんだっけ」

男「え?」

友「一応だよ、一応。だってお前、全然納得いってないじゃん」

男「そ、そんなことねぇよ。女の事は信じてるよ、ちゃんと」

友「いいから言えって。女ちゃんの予定は?」

男「今は、家に居る筈だ」

友「お前は今日なんて言って出てきたんだ?」

男「なんても何も、いつも通りだよ」

友「0時くらいに帰るって?」

男「うん」

友「……スマホの中、見るって訳にはいかんの?」

男「は、はぁ!? ありえないだろそんなの!」

友「SMSのとこ見るだけだよ。そいつとのやりとりだけ!」

男「それが駄目だっつってんの!」

友「……」

男「……」

友「俺が酔っ払って勝手に開いたって事にして良いぞ」

男「……すまん」

友「気にすんな」

男「じゃあ、開くぞ……」

友「おう」

男「……」

友「どうだ?」

男「待って」

友「うん」

男「駅前で待ち合わせしてるみたい」

友「誰と?」

男「分からん」

友「はぁ?」

男「いや、番号登録ないんだよ! 知らん番号と突然やり取りしてるんだ」

友「ちょっと貸してくれるか?」

男「ああ……」

090~「俺の事分かる?」

女「うん、大丈夫」

090~「19:30に××駅前で大丈夫?」

女「うん」

090~「分かった」

女「じゃああとで」

友「今日の三時過ぎのやりとりだな。これより前は何も無しで、最後はさっきのメッセージ、か」

男「なあ、これってさぁ……」

友「これは、なんつーか」

男「浮気だよな……」

友「まだ分かんないって! 相手も女かもしれないだろ?」

男「でも、今日は家に居るって言ってたんだ……嘘ついた事には変わりないだろ」

友「まあなぁ……」

男「なんでこうなるんだよ……結婚前夜だぞ? ありえねぇだろ……」

友「うーん」

男「どうすりゃいいんだ……」

友「行ってみるか」

男「どこに?」

友「××駅」

男「嘘だろ?」

友「行くしかないだろこれは。××駅までは歩いて5分くらいだし、今なら間に合うぞ」

男「いや、でも」

友「グダグダ言ってないで早く行くぞ! すいませーん、お勘定!」

男「分かったよ……」

19:30、××駅前

男「人多いな……」

友「週末だからな」

男「本当に来るんだろうか……」

友「それを確かめに来たんだろ?」

男「なあ、やっぱり戻らないか?」

友「ここまで来てそれはないだろ! 気になってるんだろ?」

男「そうだけどさ、実際浮気だったら立ち直れないというか……」

友「お前そんなに腑抜けだったっけか」

男「これは別だろ!」

友「ちょっと待て、なんか騒ぎが――」

通行人「きゃああああああ!!!」

通行人「うわ、血!?」

通行人「警察呼べ警察!」

男「な、なんだよ一体……」

友「男、女ちゃんのスマホ貸せ」

男「え?」

友「いいから!」

男「お前、何して――」

ピリリリリ

通行人「何か鳴ってるぞ!」

通行人「この人のスマホじゃない?」

友「ちょっと行って来る」スタッ

男「え? おい、ちょっと!」

通行人「うおっ! 押すなよ!」

友「うるさい!」ゴソゴソ

通行人「あんた、何してんだ?」

友「あったぞ……」タッタッタ

通行人「お、おい!」

通行人「なにあれ、泥棒?」

通行人「誰か追っかけろって!」

通行人「警察まだかよ!」

友「ぼさぼさすんな、行くぞ!」グイ

男「うわっ! おい、何処行くんだよ!」

夜、路地裏

友「はぁ、はぁ、はぁ……」

男「はぁ、はぁ……な、なんなんだよ一体。さっきの奴、血塗れだったぞ……?」

友「……多分、何かで刺されてた」

男「え?」

友「だからあいつのスマホ盗ってきた」

男「な、なんでそんな……」

友「非通知でさっきの番号に掛けたら、あいつのスマホが鳴ったんだよ!」

男「あの、倒れてた男の……?」

友「ああ。つまり、女ちゃんと待ち合わせしてた男が刺されてたんだぞ?」

男「それって……」

友「このスマホ警察に見られたら、女ちゃんが疑われるだろ。だから、とりあえず持ってきた」

男「もうわかんねぇよ……なんだよこれ、何がどうなってるんだ?」

友「何だか分からないが、やばい事になってるみたいだな。女ちゃん」

男「これからどうすれば良いと思う?」

友「とりあえず、お前ん家行こう。女ちゃんが居るかもしれない」

男「そ、そうだな。駅前には居なかったもんな?」

友「ああ、そうだ」

友(あの時は、だけどな。もしかしたら、あいつを刺したのは――)

男「どうした?」

友「なんでもない。早いとこ行こうぜ」

一旦区切り。明日また投稿します。

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