【プリコネR】ノゾミ「私が深夜に徘徊してる?」 (44)

注意事項

プリコネRのSS

騎士君そこそこの知能あります

名前はデフォルトネームの「ユウキ」です

地の文有り

なんでまたこっちに立っとんねん
まぁいいやもうこのままいく
R-18じゃないけどごめんね


ユウキ「そういう噂が立ってるんだ」


お正月が過ぎてから間もないある日のお昼時

僕とノゾミはアルバイトのついでに一緒に昼食をとっていた

カルミナの新しいライブステージのお手伝いだが、そろそろ準備も佳境かというところで妙な噂を聞いたのだ


ノゾミ「それっていつくらいから?」

ユウキ「ほんの一週間前くらい前だね」

ノゾミ「んー……夜に出歩くことが無いってわけじゃないけど、深夜って時間でもないし」

ユウキ「そもそもここ一ヶ月、大晦日とお正月の時以外は新しいステージの為に基本的に僕と一緒にいたからね」

ノゾミ「そうだよね。証人もいるわけだし……」


深夜にまで一緒にいたわけではないが、日付が変わる前にはいったんお互いのギルドハウスへ戻るようにはしていた

それに深夜に、それも人がいるような場所でノゾミが練習などをするとも思えない

ユウキ「そっくりさんか、同じ格好をしたファンかな?」

ノゾミ「それってファンっていうか、私を陥れようとしてるように思うんだけど」

ユウキ「確かに、ランドソル内では知らない人がいないくらいだし迷惑行為なのは違いない」

ノゾミ「キミは私のこと知らなかったけどねー」

ユウキ「あの頃は記憶も殆どなかったから……」


僕とノゾミの出会いは本当に偶然だった

ノゾミが追っかけのファンから逃げているところを少し助けただけだった

しかしノゾミが超有名なアイドルだったとは露知らず、逆にそれがノゾミの興味を引いたようだった

なお当時僕は記憶がまだ殆どなく、それどころか人としての常識が欠けている状態であった

だから、知らなかったのはある意味仕方がないと言える

ノゾミ「じょ、冗談だって!ごめんなさい、デリカシーなかったよね……」

ユウキ「あ、気にしないで!今ではすっかり僕も大ファンだから」

ノゾミ「ありがとう。そう言ってくれるととっても嬉しい」


何気なく言った言葉だったが、予想以上にノゾミが落ち込んでしまったのですぐにフォローを入れる

カルミナの、強いてはノゾミの大ファンであるし、そんな彼女が大切な友達であるのは間違いない

アイドル用の笑顔とは違う、普通の女の子としての笑顔もやはり眩しかった

ユウキ「兎に角このままじゃ色々とマズいし、ライブ前になんとかしないといけないと思う」

ノゾミ「そうだね。キミには余計な仕事を増やしちゃうけどこの件も一緒に解決して貰ってもいいかな?」

ユウキ「勿論。放ってなんか置けない」

ノゾミ「ありがとう!」


再び太陽みたいな笑顔をくれた

今回の仕事はカルミナのステージが完了するまでの長期のお手伝いだ

予想外の一件とはいえ、乗り掛かった舟である

それに単純に困っている友達をそのままにしておくなんてことも、個人的な矜持で出来ない


ユウキ「それじゃ、まずはその偽物のノゾミの目撃情報とかを調べよう」

ノゾミ「よーし!こんなこと早く終わらせて、レッスンに戻らなくっちゃ!」


こうして僕とノゾミの不思議な体験が始まったのだった

~情報収集後~


ノゾミ「大体情報は揃ったね」

ユウキ「うん、整理してみよう」


沈むのがすっかり早くなった夕方

僕とノゾミはカルミナのギルドハウスで再び話し合っていた

分厚いコートやサングラス、ウィッグを外しながらノゾミが話し出す

ノゾミはそのままの格好で街中を歩くとまともに聞き込みなどできないので変装をしていた

見た目だけでいえば別の意味で目立っていたが

ノゾミ「えーっと、まず目撃の時間帯は深夜の2時くらいが多いわ」

ユウキ「場所もランドソルの中央広場の噴水前以外殆ど無いみたいだ」

ノゾミ「こう考えるとかなり目立つ状態ね……」

ユウキ「これ以上放っておくと絶対悪目立ちしかねない」

ノゾミ「でも、どこから来てどこに去っていくかっていうのは全然情報が無かったね」

ユウキ「それが逆にまだ噂程度で済んでるって考えると皮肉だけど」


主に見かけたという場所や時間はすぐに分かった

おまけにほぼ全てが同じ情報であったため、特定も容易だった

しかし、不可解なことに気が付いたら居なくなっていたなどと言っていたのが気になる

こうなるとそもそも人間であるか怪しい線も出てくる

丁度友人に幽霊や吸血鬼がいるため尚更だ

ノゾミ「後は危険性についてだけど……これに関しては今のところ無害」

ユウキ「暴れたりとか、ノゾミのことを辱めるっていう意図もなさそう」

ノゾミ「そう思うとますます謎が深まるわね……」

ユウキ「本当にただのコスプレしたファンだったりして」

ノゾミ「それはそれで止めさせなきゃいけないけど」


行き過ぎたファンは他人を省みないことはたまにあるとノゾミは言う

嬉しい反面、皆仲良く出来るようにしたいというジレンマも少なからず感じているという

トップアイドルの一角が言うと重みが違った

ユウキ「まぁでもこれで次やることは決まったね」

ノゾミ「中央広場に夜張り込むわけね」

ユウキ「早速今日やろうと思うけど、レッスンとかの都合は大丈夫?」

ノゾミ「チカやツムギには事情を話してあるし、寧ろ二人から一緒にいなくてもいいかって心配されちゃった」


今日一日、ノゾミが殆どレッスンやステージの準備をしていないため、さすがに不安になった

しかし、彼女の頼れる仲間はこちらの心配までしてくれていたようだ

僕自身二人にはよくお世話になってるし、改めて今度御礼をしなければと思う

ユウキ「あはは……本当にいい仲間だね」

ノゾミ「半ば無理矢理カルミナを結成したけど、皆受け入れてくれて本当に感謝してるの」

ユウキ「じゃあ二人の期待に応えなきゃいけないな」

ノゾミ「キミが居れば100人力だよ!」

ユウキ「そうかなぁ……ぼく個人じゃあまり戦力になれないから強化しか出来ないけれど」

ノゾミ「そういう意味だけじゃないの」

ユウキ「どういうこと?」

ノゾミ「もー鈍いんだから……」

ユウキ「??????」


呆れたような、それでもちょっと嬉しそうな顔をされた

ノゾミの意図が良く分からなかったが、深夜の作戦に向けて準備を始めていくのだった

ノゾミ「うぅ……冷えるわ……」

ユウキ「急な計画だったから準備が甘過ぎたかな……」


深夜1時少し前

中央広場の噴水前の樹と茂みの陰に僕らは隠れていた

犯人が現れたら様子がうかがえるように、かつ飛び出せるような位置だ

相手が神出鬼没であるため少し不安だが、視認さえ出来れば先制できるはずだ

だがポジション以外に問題が発生するのは考えていなかった

滅茶苦茶寒いのだ

動き易いようにとあまりこんもりとした防寒具は身に着けないようにしていたのが災いだった

ノゾミ「よく考えなくても今1月なんだからもっと防寒対策をしとくんだった……!」

ユウキ「犯人を見つけてもこのまま寒さで動きにくかったり……ましてや風邪なんて引いたら本末転倒じゃあ……」


軽装というほどではないが、真冬の夜を過ごすにはちょっとしたコート一枚では流石に足りない

使い捨てでもいいから毛布か何かでも持ってくるべきだったかもしれない


ノゾミ「あーもう……!早く現れなさいよ……!」

ユウキ「うーん……あ、そうだ」

ノゾミ「どうしたの?」

ユウキ「こういう時にコッコロちゃんといつもしてることがあるからそれをしよう」


身を縮めてガタガタ震えるノゾミの横で、ある妙案を思い出す

自分の従者を名乗る少女と暖を取るときには決まってやっていたことがあった

美食殿の仲間たちと以外はこういうことはしたことが無かったので、パッと思いつかなかった

ノゾミ「いつもしてること……?それって?」

ユウキ「こういうことだね」

ノゾミ「えっ、わっ、ええええええ!??????」

ユウキ「え、どうしたの?そんなに大声上げたらダメだって」

ノゾミ「だって……!どうしていきなり抱き着いてくるのよ……!」

ユウキ「??2人でいるときはこうするとお互いに暖かいから」


おもむろにノゾミの背後から覆いかぶさるように抱き着く

いい匂いと生暖かいノゾミの体温を感じる……余裕もなくノゾミは物凄い叫んだ

それはもう流石アイドルの肺活量と感嘆するくらいだった

だが大声を出すと犯人に気づかれかねないし、そもそも深夜なので近所迷惑だからすぐに窘める

すぐにノゾミは声は押さえてくれたがジタバタとしていた

ノゾミ「だからってもう少しやり方ってあるじゃない……!手をつなぐとかぁ……!」

ユウキ「でもコッコロちゃんの時は背中じゃなくて正面から暖め合うけど」

ノゾミ「正面!?そんなことされたら私の身が持たないって……!」


一旦ノゾミから離れ、今度は正面から手を広げて迎え入れる体制を作る

コッコロちゃんは最初は僕から彼女の手の中に誘い込まれるように抱き着いていたが、最近は僕の方から彼女を受け入れる形になっていた

右も左もわからず完全に色々と管理されていたが、近ごろは僕がコッコロちゃんの面倒を見ている気がする

それはそれとして、ノゾミに同じポーズを取って待機していたが、ちらちらと様子を伺うだけでこっちに来る気配はなかった

少しショックだ


ユウキ「あー……嫌ならやっぱりやめるけど」

ノゾミ「別に嫌じゃなくて、寧ろ嬉しいというか、本当は私も正面からがいい……じゃなくて!」

ユウキ「結局どうするのがご所望?」

ノゾミ「う、腕と体半分だけくっつこう?そうすれば多分大丈夫だから……」

ユウキ「分かった」

ノゾミ「はぁ~……ビックリしたぁ……」

ユウキ「なんかごめんね、無駄に疲れさせちゃったみたいで」


顔を真っ赤にしながら何故か息切れをしているので少し心配になる

自分のせいでそうなったのだから、当然謝罪を入れた


ノゾミ「……いいの、気にしないで。それよりほら、こっち来て?」

ユウキ「はい」

ノゾミ「ふぅ……もう既に別の意味で暑いくらいだけど、こういうの、いいね」

ユウキ「気に入ってくれて良かった。こうしていると暖かいだけじゃなくて、どこか安心するんだ」


今度はゆっくりと身を寄せ合う

体が触れた瞬間ノゾミはピクっ震えたが、するすると腕を掴み、体を半分預けてきた

素肌の手と手、指と指が触れ合い、お互い示唆したわけでもないのに指を絡めた

さっきの件で興奮したせいか、ノゾミの体は暖かいどころか熱いくらいだった

ノゾミ「本当ね。キミの鼓動まで感じられるもん」

ユウキ「僕もノゾミの鼓動をよく感じる。ちょっと早いくらいだけど」

ノゾミ「キミと一緒にいられるからだよ」

ユウキ「……そっか」


なぜだか僕自身も体が熱くなってきていた

コッコロちゃんと触れ合う時とは全く別の熱だ

ノゾミの体温、匂い、柔らかさ、吐息、鼓動

それらを感じるたびに熱が増えていくようだった

安心感だけでなく、なんと言えばいいのか

わからない

だが少なくとも、僕の全てを賭けてでもこれを守らなければならないという決意だけは胸に残った

ノゾミ「2時を過ぎたけど何も起きないわね……」


現在時刻は深夜2時15分

噂の時間が来ているが、広場には何の変化も現れない


ユウキ「毎日来るわけじゃないのかな」

ノゾミ「今日空振りだったらまた待ち伏せしなくちゃならなくなるし、困ったわ……」


ノゾミがうな垂れる

しかしその直後、広場に異変が起きたのを見逃さなかった


ユウキ「……その心配はなさそうだ」

ノゾミ「……!みたいね」

ノゾミも気が付いたようだ

広場に人影は無いが、噴水近くに黒い靄みたいなものが渦巻いていた

それは徐々集まり、人の形を形成していった

1分程観察した頃には、黒い靄はとある人物の姿へと変わっていた


ノゾミ?「………………」

ユウキ「……本当にノゾミだ……」

ノゾミ「私に似てる……というか瓜二つ」


姿形は完全にノゾミだった

それどころか着ている衣装も、彼女の愛用している赤を基調とした服だった

なにもかも同じ

このような存在には覚えがあった

ユウキ「……アレ、多分シャドウだ」

ノゾミ「シャドウ?」

ユウキ「最近アストルムで発生してる、誰かに瓜二つな存在だよ」

ノゾミ「そんなものがいるのね……でもどうして私のシャドウが……?」

ユウキ「シャドウはバグみたいなものだって夢の中で教えてもらった」

ノゾミ「バグ?それに夢って……」

ユウキ「なんでも、コピー元の存在の一部分だけを切り取った、ただの人形みたいなものだって」

ノゾミ「じゃあアレも私の何かの具現化なの?」

ユウキ「どうかな、前に救護院に現れたのはほんの一部の意思だけを切り取ったただの魔物だったし……」

ノゾミ「……なにんせよ、まともな存在じゃないみたいね」

そう話している最中にもノゾミのシャドウは別の行動を取り始めていた

身振り手振りをしながら口を動かしているのだ


ノゾミ?「…………~~♪」

ユウキ「……歌を歌おうとしてる?」

ノゾミ「……確かに口が動いてるね。声は殆ど出てないけれど」

ユウキ「ノゾミのシャドウらしいといえばらしい行動だ」

ノゾミ「やっぱり私はどうあってもアイドルってことなのかな」


シャドウの立ち振る舞いはとても美しかった

しかし、肝心の声が出ていないためやはり物足りない

ノゾミ「あの口の動き、もしかしてあの曲……?……っと、見とれてる場合じゃなかった」

ユウキ「……そうだね、シャドウは基本的に人を襲うから、やっぱりここで倒しておこう」

ノゾミ「自分と同じ姿のものを倒すのは気分が乗らないけど……そんなこと言ってる場合じゃないか」、


ノゾミは複雑そうだったが、腹は決まったようだ

各々の武器を確認しながら、飛び出すタイミングを計る


ユウキ「よし、行こう……!」

ノゾミ「了解……!」


目で合図をし、同時に飛び出す

飛び出す直前まで僕たちは手をつないでいたが、ついに離す

ノゾミの体温が失われるのをとても残念に思った

ノゾミ?「~~♪………??」

ユウキ「心苦しいけど、ここで倒れてくれ……!」

ノゾミ「大人しくしててね」


歌っているノゾミのシャドウの前に飛び込むと、紅く怪しく光る眼で不思議そうに僕を見てきた

ノゾミも油断なく剣を構えているが、なぜかそちらには見向きもしない


ノゾミ?「……………」

ユウキ「…………」

ノゾミ「…………」


硬直状態が続く

しかしおかしい

シャドウはこちらを眺めるだけでまったく臨戦態勢を取らない

それどころか、敵意のようなものも感じないため、いまいち僕らもどう動けばいいのかがわからない

ノゾミ?「………♪」

ユウキ「……?」

ノゾミ「……なに?」


突然シャドウが笑った

だがいやらしい笑いなどではない

見た目相応の少女の嬉しそうな、大変幸せそうな笑みだ


ノゾミ?「♪♪」


直後、こちらに駆け寄ってきた

シャドウの奇妙な行動に思考を巡らせていた僕らは反応が遅れてしまった

完全に一瞬の虚を突かれ、マズいと思った時には目の前にシャドウが居た

シャドウは僕の背中に素早く手を回す


ノゾミ「っ!?ユウキ君!」

ユウキ「っあ」

ノゾミ「♪♪♪」

ノゾミ「って、うええ!?」


そのまま吹き飛ばされたり締め付けられるのかと思ったが全く違った

普通に抱き着かれた

本物のノゾミは素っ頓狂な声を上げている

無理もない、僕も今の状況が意味不明なのだ

ノゾミのシャドウはそれはもう愛おしそうに抱き着いてきており、僕の胸板に顔を埋めて頬擦りまでしている

ノゾミ「あっ……えっ……?」

ユウキ「━━━━━━んぅ?」

ノゾミ?「♪♪♪💛💛💛」


シャドウ以外驚きで一切動くことが出来ていない状況で、さらに状況は悪化?した

シャドウは埋めていた顔を離したと思ったら、僕の顔に手を添えてきた

ひんやりとした手の温度と、それでも人を感じさせる柔らかさを頬に感じながら

唇に新しい柔らかさが追加された


ノゾミ「━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━」

ユウキ「━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━」

ノゾミ?「……💛💛」

唇の柔らかいものは、恐らくは10秒も当たってはいなかっただろう

しかし、僕にはとてつもなく長い時間に感じた

誰も言葉を発せなかった

本物のノゾミは絶句しながらなんとか口を動かしているが、何も音が出ていない

シャドウは熱っぽい目でこちらを見上げてる

見た目だけはほぼ完全にノゾミ本人なのだ

僕は突き動かされるようにシャドウを自分から抱きしめようとして


ノゾミ「……ぁ……だ、駄目ー!!!!」


本物のノゾミに突き飛ばされた

準備無しの予想外の一撃に、僕は地面へとダイブした

シャドウはちゃっかり回避しており、これまたきょとんと僕を見つめている

ユウキ「あいたた……」

ノゾミ「あ、ご、ごめんなさい!つい勢いで……」

ユウキ「だ、大丈夫……今ので僕も目が覚めたから……」

ノゾミ?「??」


痛みでぼーっとしていた頭がハッキリしてきた

さっき僕は何をしていた?

そうだ、あのシャドウと━━━━━━

シャドウ?

黒い靄

この季節

そして最近あったとある出来事

ああそうか

そういうことか

ノゾミ?「……♪♪♪」

シャドウが今度は自分から手を広げて僕を迎え入れるような態勢を作っている


ノゾミ「あっ、また……!」

ユウキ「大丈夫、僕に任せて」

ノゾミ「ユウキ君……?」


僕はシャドウが望むままに彼女の腕の中にゆっくりと飛び込む

そしてお互いに背中に手を回し、ゆっくりと抱きしめ合った

シャドウは特に動かず、静かにお互いの存在を感じあうような姿勢だった

どれくらいそうしていたか

シャドウがゆっくりと自分から体を僕から離した

ユウキ「満足したかい?」

ノゾミ?「……」


尋ねると、ゆっくりと頷いた

次の瞬間、シャドウの体が光に包まれた

ゆっくりと薄く消えていく


消える直前、名残惜しくシャドウの頬に手を当てる

シャドウは、本物にも負けない素晴らしい笑顔を見せてくれた

その笑顔の意味を、僕は理解した

そして、光が完全に霧散した

ユウキ「……」

ノゾミ「……ねぇ、ユウキ君」

ユウキ「……あ、ごめんねノゾミ。放っておいちゃって」

ノゾミ「ううん、いい……わけではないけれど、それよりも、さっきのは結局何だったの?」

ユウキ「多分シャドウ……なんだけど、残留した思念を伴った似て非なるもの……かな」

ノゾミ「……全然わからないんだけど」

ユウキ「ところでノゾミは年末に神社とかお寺に行って願いを燃やしたりした?」

ノゾミ「えっ、うん。確かにやったけれど……」

ユウキ「やっぱり。実はね━━━━」

大晦日からお正月にかけて体験したある出来事を説明する

年末にかけて集約する人々の叶わなかった願いが、妙な形で現れるというものだ

あの時の残留思念が現れるときの黒い靄は、今回の件ととても似ていた

最終的に巨大になった靄はトゥインクルウィッシュの皆と退治したが、あれだけの規模だ、どこかに見逃しがあったかもしれない

それに、人の願いなんて無限大だ

そこにシャドウが絡めばもう何が起きるかはわからない

ノゾミ「つまり、あのシャドウは私の願いの具現化だったってこと?」

ユウキ「そうなると思う」

ノゾミ「えっ、ていうことはつまり……」

ユウキ「…………うん」


見る見るうちに顔を真っ赤にしていくノゾミ

彼女が次にとる行動は手に取るようにわかる

先制するように僕の手で彼女の口を押さえておいたのだった

ユウキ「…………」

ノゾミ「…………」


カルミナのギルドハウスに戻ってきた

気まずい

それもそうだ

あのシャドウが取った行動は、ノゾミがやりたかったことでもあるのだ

つまり、一連の行動をノゾミ本人も深層意識で望んでいたわけで

ここまで考えれば、流石の僕でもノゾミが僕をどう想っていたかが分かってしまう

つまりノゾミは僕のことが━━━━


ノゾミ「ユウキ君!」

ユウキ「!?はい!」

突然の大声に、びくりとしながら僕も大声で応えてしまう


ノゾミ「私はまだトップアイドルになってません!」

ユウキ「はい!」

ノゾミ「だから、今キミにこの気持ちをハッキリとは言えません!」

ユウキ「はい!」

ノゾミ「それでも!それでも……私を支えてくれると、嬉しいな」

ユウキ「…………言うまでもないよ」

ノゾミ「……えへへ、ありがとう」

困っている人を助けるのは、自分の性格であるから今までなんとも思わなかった

だが、ノゾミに対して僕がしたいと思うことは、性格なんてもので片付けれる代物じゃなかった

何があっても、ノゾミを大切に、一番にする

顔を赤くしながらはにかむノゾミを見て、僕は誓った


こうして僕らの不思議な体験は幕を閉じた......のだが

ユウキ「ノゾミ、苦しくない?」

ノゾミ「平気、寧ろもっと強くてもいいよ?」

ユウキ「じゃあ遠慮なく」

ノゾミ「えへ、あったかぁい......」


ノゾミの背中に回した腕を優しく、しかし存在を確かめるようにしっかりと抱き締める

背中をさするとノゾミのよく手入れされた極め細やかな髪の感触も楽しめた

あの一件以降、ノゾミは定期的に僕と体をくっ付け合うことを要求してきた

なんでも、


ノゾミ「また私のああいう感情が具現化しないとも限らないから、定期的に発散しなきゃいけないと思うの」


とのことであり、あのシャドウと同じことをノゾミにしてあげることになった

アイドルとしてどうなんだろうと思うところもあるけれど、なんやかんや僕も、多分ノゾミもこういうことをしてないと本当に苦しくなってきてしまうのだ

だから、仕方ないのだ

ユウキ「今日は後どれくらい時間大丈夫?」

ノゾミ「キミとこうしたくて全部早く終わらせたから、もう今日はずっと大丈夫」


最初に抱きついたときの焦りなどはもう無くなった

それどころか二人きりになった途端にノゾミから抱きついてくる始末だ


ノゾミ「あ、いいこと思い付いた!ユウキ君、そこの椅子に座って?」

ユウキ「?いいけど」


スッと体を離すと、言われるがままにすぐ後ろの椅子に腰かけた

その直後、僕の太股の上に正面からノゾミが腰を下ろしてきた

ふわりと決して重くない、心地よい感触だ


ノゾミ「ちょっと座りにくいわね......でも、こうするとキミの顔がもっと近くで見える」

いつもなら僕の胸に顔を埋める形なのだが、この体勢だとちょうどお互いの顔が同じ高さにあった

ノゾミはゆっくりと僕の肩に顎を乗せると自分のヒットソングを鼻唄で奏で始めた

一方僕はノゾミの匂いやら膝上から全部にかけて感じる柔らかさなどで気が気ではなかった

ひたすらにノゾミがずり落ちないようにとしっかりと抱き止めてあげることだけに神経を集中させ、少しでも気を紛らわせていた

悶々としながら数分たったとき、気がつくとノゾミが肩から顔を離し、代わりに両手を置いきながら僕をまっすぐと見つめていた

それからゆっくりと僕の顔に向けて近付いて来た

何をされるのかを本能的に察知し、さすがにそれは駄目だろうと理性が訴えかける

しかし、濡れぼそった上目遣い

冬だと言うのに汗まで滲み出て上気しているノゾミの表情

僕を魅了し動けなくするには十分だった

唇にシャドウの時と同じ柔らかさが押し当てられる

熱い

段々と息苦しくなるが、僕らは離れるどころか押し当てる力を強くし、一瞬でもこの時間を長く味わい合った

酸素不足で倒れそうになりかけたとき、漸く解放される


ノゾミ「っ......はぁ......はぁ......」


足りなくなった酸素を補充するために、少し荒い息遣いになる

自然とノゾミの唇に目線を向けると、先程のキスで残った二人の唾液がキラキラと光っていた


ノゾミ「.....あのシャドウもキスしてきたんだから、私もしないと発散しきれないから......ね?」

ユウキ「......ソウダネ」

ノゾミ「だから、これも仕方ないことなんだから......♪」


お互いに言い訳を作り、またキスを交わす

こんな調子でノゾミがトップアイドルになるまで気持ちを言葉にしないなんて出来るのだろうか

ましてや色々過ちのようなものを犯すであろうことも想像に難くない

そんな疑問がわかないわけでは決してなかったが、ノゾミが口内に舌を入れてきたことで思考は溶け落ちた

シャドウと交わしたものとは比べ物にならないくらい熱く深い口付け

愛おしさしか最早感じられない

まぁ、別に構わないだろう

何故なら、僕らは今、最高に幸せなのだから

終わり
ある意味スレチで申し訳ないです、ラストはここに投下した関係で即興で書いてます
あまりにプリコネ二次捜索が寂しいので、ほならね、自分で書いてみろとやりました
プリコネもっと盛り上がれ、たぶんプレイヤー数多いし絵描いてる人も間違いなく結構やってるから、こういうの増えて
ではさらば

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