男「そんな気分じゃないんだけどな…」ガチャ 元カノ「いらっしゃー、あ」 (118)



男「…は?なんで?!」パタン

元カノ「そっちこそ」

男「おかしいだろ!いったい、どうなってんだ?」

元カノ「…久しぶりだねー」





男「いやいや、っていうか、なんでここにいんだよ?」

元カノ「なんだー男もこういうところ来るんだねー」ニヤ

男「違げえよ、俺は上司に連れられてだよ」

元カノ「ほんとにー?」ニヤニヤ




男「ほんとだっての。何人かで来てるから受付に聞けばすぐ分かるだろ」

元カノ「ふーん」

男「で、なんでここに、ソープに、元カノがいるんだよ?」

元カノ「んー、ないしょー」

男「……まあいい」

元カノ「じゃあ…もうしよっか?」




男「しねぇよ」

元カノ「なんで?」

男「来たくて来てるんじゃねぇの」

元カノ「溜まってたらサクッと抜いてあげるよ?」

男「アホか。何にもしない。何にもしなくていい」

元カノ「あ、そ。じゃあこっちきて。とりあえず座ったら?」




男「…ん」ササ

元カノ「何か飲む?冷蔵庫のやつ」

男「これ、買って来てある。もともと何もしないつもりで来たから」サッ

元カノ「ほー、用意いいねー」




男「飲むか?お茶と水、どっちがいい?」

元カノ「んー、じゃあお水」

男「はい」

元カノ「ありがと」スッ

男「…」茶 ゴク

元カノ「…」水ゴクン




男「…」

元カノ「…」

男「…意外と、驚かないんだな」

元カノ「?」




男「いや、久しぶりにこんな場面で会って、もっと驚くと思った。元カノがさ」

元カノ「ううん。驚いたよ」

男「そうか?そんな風に見えなかった」

元カノ「この仕事をしてるとね、素直な気持ちを表に出さないようになるの」

男「…」

元カノ「そりゃあ付き合ってた頃はさ、そうじゃなかったし、そういう意味では私も成長してるのかなー」

男「けど、昔からの癖は簡単に変わらないもんだ」

元カノ「?」パチ




男「…昔から、気持ちを隠したり誤魔化したりするときは、いつもより瞬きが多い」

元カノ「え、多かった?」パチパチ

男「…今も」

元カノ「…男も昔から変わらないね」




男「…」

元カノ「…私が何考えてるかとか、すぐ見抜いちゃう…」

男「元カノが浮気した時も」

元カノ「…まだ言うか、それ」




男「当時、付き合ったことが俺の自信の1つだったからな」

元カノ「…」

男「今は”綺麗になった”だけど、あのときのどこの学校より、ぶっちぎりで、元カノが1番可愛かった」

元カノ「…」




男「見た目だけじゃない。一緒にいて楽しかったのもある。だからショックだったけどな」

元カノ「…ごめんね」

男「いや、いい。昔話」

元カノ「…いまは?ひとりなの?」



男「じゃなかったらここには来ない」

元カノ「…」

男「いろいろあって、なかば強制的に上司に連れてこられたんだ」

元カノ「…まだ、忘れられないんだ?」



男「?」

元カノ「私のあとに付き合った人。亡くなっちゃったんでしょ?」

男「は?なんで、それを、元カノが、知ってるんだ?」

元カノ「…男のことは、知ってたいから」




男「…ストーカー、なのか?」

元カノ「違うよ」

男「じゃあなんで知ってるんだ?同級生にも教えてないのに」

元カノ「私、その子のね、ストーカーしてたんだ」




男「…は?」

元カノ「男にしてたらすぐバレちゃうけど、あの子と仲良くなれば、男のことも知れるから」

男「…」

元カノ「…引いた?」




男「…何がしたいんだ?そんなに俺のことが気になるなら、なんで浮気したり振り回すようなことをする?」

元カノ「…許せなかったんだってば」

男「…」

元カノ「男は当時バンドやってたでしょ。私より、そのバンドを優先させるのが、許せなかったの」

男「…知ってる」

元カノ「だから、他の人との噂を作って、もっとこっちに振り向かせたかった。でもね」




男「でも?」

元カノ「ただの噂として終わらせるつもりだったのに、男は小さい噂だけで、私のこと、すごく気にしてくれたでしょ。バンドのことよりも」

男「…」

元カノ「…あのときの、あのさりげない優しさが忘れられなくて、どんどんエスカレートしていって…」




男「…毎回そこでひっかかる。だからといって、他のやつと寝るまでやるか?」

元カノ「そしたら私のことだけ見てくれるって、本気で思ってた。…私から誘ってるし」

男「…そうだったな…俺にも非があるのか。止められなかった俺にも…」
 
元カノ「ううん。悪いのは私。自分に自信が持てない私のせい。だから復縁は選べなかった。でも…」





男「…」

元カノ「…どうしても男のこと、忘れられなかった」




男「…」

元カノ「…」




男「…」

元カノ「…」

男「…なあ」

元カノ「なに?」

男「…どうしてここで働いてるんだ?」

元カノ「…」


つづく




男「…言えないならいいんだ」

元カノ「…男になら、話してみようかな…」

男「…」

元カノ「…ちょっと長くなるけど…いい?」

男「…聞かせてほしい」

元カノ「じゃあ…」




男「…」

元カノ「…実は…別れてだいぶ経ってから…交通事故で死にかけたことがあって」

男「そうなのか」

元カノ「うん…それがちょうど、男が好きだったバンドのライブに行く途中でね」

男「…」

元カノ「…3日間意識が戻らなくて」




男「…うん」

元カノ「その間に、信じてもらえないかもしれないけど…」

男「…」

元カノ「…夢を見たの。…たぶんあれは死んだ後の世界なんだろうけど」




男「…臨死体験ってことか?」

元カノ「そうだね。あれは…あの景色は、そうだと思う」

男「…三途の川、か?」

元カノ「あのときは、花畑だった。あたり一面にガーベラが咲いてて」

男「…ガーベラ…」

元カノ「…その…それでね…」




男「…?」

元カノ「…気を悪くしたらごめん…」

男「…」

元カノ「…もし、先を話して男を傷つけたら、ごめん…」




男「…何となく…」

元カノ「?」

男「…いや…独り言。だいじょうぶ。聞かせて」

元カノ「うん…。そのね、花畑に…彼女がいたの」




男「亡くなった彼女が?」

元カノ「うん…あれは間違いなく彼女だった」

男「…どんな感じで、そこにいたんだ?」

元カノ「最初は後ろ向きで、背中しか見えなくて」

男「うん」

元カノ「歌ってた。男の好きな曲…楽しそうに」




男「…そうか」

元カノ「…それから、今でもはっきりと覚えてるんだけど」

男「うん」

元カノ「私に気づいて…振り向いて笑顔で『ありがとう。よろしくね』って言われて…それで…目が覚めた」




男「…そうか…」

元カノ「…へいき?だいじょうぶ?」

男「ああ…だいじょうぶ。…ガーベラ、彼女が好きだった」

元カノ「…あのときの彼女はすごく幸せそうで、それが印象的だったの」




男「…悲しんでいるよりはいいな。…そのとき歌ってた曲は?」

元カノ「うん。曲はRAVENのBlue Waltzだよ」

男「…そうか…それも好きなやつだ」

元カノ「…知ってる」




男「…で、元カノの身体は無事だったのか?」

元カノ「うん、だいじょうぶだった…んだけど…」

男「だけど?」

元カノ「…その事故にあってから…」




男「…から?」

元カノ「…男、手出して」

男「…?」 ス

元カノ「… 」ス ニギ




男「…!」

元カノ「…」

男「これは…!」

元カノ「…感じる?」




男「ああ!…これは…どうなってるんだ?!」

元カノ「… ニッコリ」

男「…身体が…どんどん軽くなっていく…」

元カノ「…あー…やっぱり相当だね…」




男「?」

元カノ「…触って集中すると、その人がどれくらい傷ついてるか分かって、それを癒すことが出来るの」

男「…この感覚…いったいどうなってる?手を握るだけで、何でこんなに爽快な気分になるんだ…?」

元カノ「気功…なんだと思う。念っていうか、癒してあげたいって心から思うと、相手へ力を与えられるんだ」




男「…すごい力だな」

元カノ「…これが、事故ってから出来るようになったの」

男「突然?」

元カノ「うん。目が覚めて、その瞬間から、身体の感覚が今までと違っていて…うまく言えないんだけど…胸のあたりに泉が湧き出てる感じ…そこから力がみなぎってきてるっていうか」




男「…枯れたりはしないのか?」

元カノ「今のところはね。意識しなければ使わずに済むし」

男「そうなのか」

元カノ「この感じ…手を握っただけでこうなるんだったら、お互いに触れ合ったらどうなると思う…?」




男「…ゴクリ」

元カノ「…ま、私もヘトヘトになるからめったに使わないけどね」

男「…凄そうだ…力を使うのは、今彼のときか?」

元カノ「ううん、いま彼氏いないし」




男「なんで?元カノのこれを味わったら、ひとたまりもないだろう」

元カノ「もちろん、付き合ってた相手にしてあげたことはあるよ。でもね…」

男「でも?」

元カノ「これのおかげで、相手が私に依存しちゃうの」




男「依存…癒してほしくてたまらなくなるのか」

元カノ「うん…今でも元彼から連絡くるくらい。断ってるけどね」

男「よっぽどだな…」

元カノ「…今までは私が、誰かに 何かに依存してたのに、さんざん逆の立場になってみて、初めて分かった」




男「…」

元カノ「私はずっと、自分だけの、自分にしか出来ない何かを、ずっと欲してたんだって」

男「…何かに依存するよりも?」

元カノ「うん。何かに依存するんじゃなくて、自分の誇れる何かを手に入れて、自信がほしかった。それが分かったの」




男「…昔から可愛いのに、綺麗なのに、それでも自信がなかったのか?」

元カノ「…不安だった…ずっと何かに怯えてた。空っぽな感じでね…今でも、たまに不安になるよ」

男「そうか…」

元カノ「そういう時は…[田島「チ○コ破裂するっ!」]するの」




男「…自分で癒すのか?」

元カノ「…うん。そうすると力が増してく感じがするから。…それにもう、この感覚なしじゃ生きていけない」

男「…それで、その力を人に施すために、ここで?」

元カノ「うん。私がどこまで人を癒せるのか、試してみてるの。でもね、ずっと続けられる仕事じゃないと思ってるから、エステティシャンになろうと思ってる。そのためにもお金が必要だから、もう少しだけ」




男「…なるほどな…ご両親は?」

元カノ「お金が必要だから、夜の仕事をしてるのは知ってる。詳しくは言ってないけどね」




男「そっか…許してくれて良かったな」

元カノ「まあ、具体的に何をしてるかを知ったら許してくれないだろうけど。今は実家に住んでるんだけど、ウチ都営住宅だから私の収入が増えたせいで家賃が上がったって怒鳴られちゃったし。ひどくない?」




男「あはは。ご両親らしいな。…元カノ、今はもう身体はだいじょうぶなのか?」

元カノ「うん。だいじょうぶだよ。性病もないしね」

男「そっか」

元カノ「男…じかん結構経ってるけど何もしなくて良いの?」




男「さっき手を握ってもらえてだいぶ楽になった。だから何もしなくていい」

元カノ「…じゃあ今度は男の話を聞きたいな」

男「俺の話か…」

元カノ「話したくない?」




男「いや…誰にも言ってないことがあって」

元カノ「…それは、聞いてもいいのかな?」

男「…この場所だから許されるのかもな…」

元カノ「…」

男「…許されるはずだ…」

元カノ「…」




男「…」

元カノ「…」

男「…彼女…彼女といると…不思議な事が良く起こってたんだ」

元カノ「…不思議なこと?」




男「ああ。…ここでだから言うが……」スッ 水ゴクン

元カノ「…男…動揺してる?」

男「…ん?…あ、この水 元カノのか…いや…」

元カノ「…?」




男「…何となくだけど…予感がするっていうか」

元カノ「予感?」

男「うん…」

元カノ「…どんな予感?」




男「…何か、不思議なことが起きるような…そういう予感だ…いまが…彼女といたときに感じた空気感や雰囲気に似てるから」

元カノ「…」

男「…」

元カノ「…男」




男「…?」

元カノ「…」 ス 足首 サス

男「…」

元カノ「手の匂い、嗅いでみて」




男「!…これ!…やっぱり、そうか…」

元カノ「分かってた?」

男「…ああ…なんとなくな…」

元カノ「…彼女と同じ練り香水。今までほとんど使わなかったんだけど、今日はどうしても使いたくなって…」




男「…ずいぶん…懐かしい…捨てたりしなかったのか?」

元カノ「…これは…なぜか捨てられないの…自分でも分からなくて…」

男「…」

元カノ「…使いたくなって、そしたら男がきた」




男「…」

元カノ「こういうのも関係してるのかな?その時に似てる感じがするのは」

男「…たぶんな…」

元カノ「…不思議なことって、なに?」




男「…元カノが急にそれを使いたくなるのもそうだし、それとな」

元カノ「うん」

男「…この場所で、元カノにだから話すけど」

元カノ「…うん」



つづく



男「…彼女…彼女は、2人で触れ合うと、毎回イってたんだ。それで」

元カノ「男は優しいね、やっぱ。ちゃんとイかせてあげてたんだ」

男「いや…俺は…速いからな…だから、挿れるまでにせめて1度はしてあげたい」

元カノ「だから、そういうところ。」




男「そうか…」

元カノ「…んで?」

男「…怒ってるのか?」

元カノ「んなわけないじゃん」 パチ




男「…ん。…で、…その彼女が、1度の触れ合いで何度かイったあとで、一緒に眠ると」

元カノ「…うん」

男「俺たちは夢の中でも、一緒にいることができたんだ」

元カノ「ほおー…それは、起きた後に2人で確認したの?」

男「ああ…会話から景色から、何から何まで、覚えていることが同じだった。夢の中でも、起きたら確認し合おうって」

元カノ「…すごいね」




男「それだけじゃない…夢で、俺たちは空を飛んだり、2人で暮らしてたんだ…自分でも信じられない」

元カノ「…夢の中でかぁ」

男「…話しても信じてもらえないから、誰にも話さなかった。これは彼女と俺だけの秘密だから」

元カノ「うん。…今はもう夢で会えないの?」




男「会えないな。会えなくなった」

元カノ「…そうなんだ」

男「…でも、でもな」

元カノ「うん?」




男「たまに見える…いや、感じるんだ。彼女の存在を。たぶん、ここにいるんだろうなって瞬間がある」

元カノ「…それはどんなときに?」

男「…まさに、今だ。今この瞬間、この空気感、香り、雰囲気、全てだ。」

元カノ「…じゃあ、いるんじゃないかな」




男「…」

元カノ「…」

男「…実は元カノも感じてるんじゃないか?」

元カノ「…何を?」




男「…事故ってからずっと、彼女の存在を」

元カノ「…」 パチパチ

男「…」

元カノ「…」




男「…言いたくないならいい」

元カノ「そうじゃない」

男「…じゃあなんだ?」

元カノ「そうじゃない…そうじゃないの…。わたし、あの人には、彼女には感謝してる」




男「…」

元カノ「事故の後に、自分が何を、どうしていくべきか、私に指針を示してくれたんだと思ってる」

男「…」

元カノ「それに昔に、ストーカーしてたときは、ずっと男のこと話そうとしなかったけど…仲良くなってからは…」

男「…」

元カノ「私にはずーっと教えてくれてた…『私には、勿体ない人が一緒にいてくれてる』って。『私には、あの人しかいない』って。ずーっと、聞いてた」




男「…」

元カノ「…悔しかった…羨ましかったよ…。今は、だいぶ楽になったけど…」

男「…」

元カノ「…事故から目覚めてからずっと、彼女の存在は近くにある…それは確信してる」




男「…」

元カノ「誰かを癒す力が使えるようになってから、ずっと」

男「…そうか」

元カノ「きっと、この力が彼女そのものなんじゃないかって思う」




男「…」

元カノ「だから、だからこそ悔しいの。結局は、私の力じゃなくて、彼女の力でしょう?」

男「…いや、違うな」

元カノ「どうして?」




男「俺は今まで、こんな風に癒してもらったことは誰にもない。それに」

元カノ「…」

男「たとえ、その力がもとは彼女のものだとしても、受け継がれたのだとしても、それを使える”器”が”度量・技量”が”資格”があったのは、元カノだけだ。ほかには誰もいない。世界中で元カノ、ただ1人だけだろ」

元カノ「…」




男「元カノしかいない。君は特別だ。手を握ってもらったとき、分かった。なぜ特別か、わかるか?」

元カノ「…ううん」ブワ

男「…もう彼女はどこにもいないからだ…肉体的な意味では、もう2度と、現れないからだ…」

元カノ「…」




男「…」

元カノ「…うん…そうだね…そうだよね…」ポタ

男「…俺はそれを、そいつと、ずっと向き合ってきた…元カノが事故の後、その力と向き合ってきたように」

元カノ「…うん」




男「…どんな力があっても、身体がなければ、生きていなければ、共感し合うのは難しい。…もしかしたら、彼女はそれを見越したのかもしれない…」

元カノ「…」

男「…だから、誇っていい。それができる自分を。世界中でただ1人の自分を」

元カノ「…うん」ブワ ポタ




男「…俺にはできない…元カノにしか…できないことだ…」

元カノ「…うん」

男「…」

元カノ「…」ポタ




男「…ハンカチ」スッ

元カノ「…ありがと」スッ フキ

男「…」

元カノ「…」




男「…」

元カノ「…」スッ

男「…?」

元カノ「…ねえ」ヒザツキ




男「…ん?お、おい」

元カノ「…全身全霊で癒してあげる…時間が過ぎても、男を完全に癒せるまで」ベルト カチャカチャ

男「ちょ、ちょっとまて」

元カノ「やだ」チャック スー




つづく

>35
今日はここまでです。ありがとう。




男「わかった。わかったから」

元カノ「何が?」

男「…俺たちは、ここで終わるべきじゃない」

元カノ「えっ…」




男「…時間が足りない。ここで触れ合って離れるには、言葉が、答え合わせが足りないだろ」

元カノ「…」

男「…俺はもっと元カノの話を聞きたい。それに、もっと俺の話も聞いてくれ」

元カノ「…うん… 」




男「…まだ、早い」

元カノ「…分かった」

男「…元カノ、連絡先は?」

元カノ「あ…私…番号も、アドレスも…前と変わってなくて…」




男「え、マジで?」

元カノ「2台持ってる…昔のやつ…変えられないし、捨てられなくて…」

男「…そっか」

元カノ「…変えちゃうと、男ごと、どっか消えちゃう気がするから…」




男「どこにもいかないよ」

元カノ「うん…」

男「不安か?」

元カノ「少しね…」

男「自信が足りないのか?」

元カノ「…」

男「…なら、まずはそこから変えていこう」

元カノ「…うん…」




―――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――――
――――――
――――
――
-



6年後
墓地

ミーンミーン…


男「(.…彼女…

…もう知ってると思う…ずっとそばにいてくれてるんだろうから…



…俺たち…結婚するよ。

…こうやって、俺たちが立ち直れたのも…

…生きていられるのも…働いていられるのも…ぜんぶ…

ぜんぶ…君のおかげだ…

…ありがと…ありがとな… )」




コツコツ…


男「遅かったな」 フリムキ




男「!?」

彼女「あはは。何そのかお」

男「?!どうなってる?!」

彼女「んー、生き返っちゃった」 テヘ




男「信じ…られない…」

彼女「まあまあ、そんな顔しないで」




男「夢…か…?」

彼女「男ー」スッ ギュウ

男「んっ」ズン

彼女「ずっと、こうしたかったよー」ギュウウ




男「っ…この香り…」

彼女「…この肩まわり…なつかしい…ねぇ…いまここでしちゃおっか…」ササヤキ

男「は?!」

彼女「だって…もう我慢できないし。それに…」サワ




男「っつ」

彼女「…男のココも、硬くなってきてるよ…?」スリスリ

男「や、やめろ…」

彼女「…ずっと見てたよー、私がいない時に1人でしてたのも。えっちなビデオは主観モノが好きなのねー、まったくもー」ウラスジ スッ




男「やめてくれ……離れろ!」バッ

彼女「ふふふっ」




男「…君は…君は、もういない…!俺は…知ってる…知ってるんだ!嫌と言うほど…!」

彼女「…」ニコ

男「もう…幻想を追いかけるのは…やめた…夢の中で、君を探すのも…」

彼女「…」ニコニコ

男「この香りを…そこらじゅうで探すのも…俺は…俺は…」ブワッ ズッ ヒザツキ

彼女「うん。そうだね」ヨシヨシ




男「…俺は、”彼女”と一緒になる…!…君を…君を追いかけるのは、もうやめたんだ!」

彼女「…よく言えました」ギュウ




男「っ…この…感じ…」ポタッ

彼女「…うん」ヨシヨシ




男「…君を…愛してた…誰よりも…君しか…俺には…」ポタポタ

彼女「…うん。知ってるよ。ずーっとそばにいたから」ヨシヨシ

男「ずっと、会いたかった…」ブワリ

彼女「私も、会いたかったよ…だから、ずっとそばにいた」ナデナデ




男「…ありがとう…ありがとう…」ポタポタポタ

彼女「うん…」ヨシヨシ

男「…」ポタリポタリ

彼女「…男は…もう、だいじょうぶだね」




男「…」

彼女「私がいなくても、へいき」




男「…まさか…もう…」

彼女「…愛してるよ」ササヤキ スッ

男「!待ってくれ!行かないでくれ!頼む!」

彼女「…たまには思い出して。そしたらそばに行けるから。ほら、うしろ向いて。彼女がくるよ」スーッ ニコッ

男「待って…!」




ミーンミーン…ミーン…






今カノ「…おと…おと…こ…男…」

男「…っ!」





今カノ「気がついた?」

男「…ここは…」

今カノ「あの人のお墓の前。お祈りし過ぎて眠ちゃったの?はは」

男「…」バッ ギュウ




今カノ「んっ…男…どうしたの?」ギュ

男「…」

今カノ「…」

男「…お願いだ…どこにも…いかないでくれ…もう1人になるのは…耐えられそうに…ない…」ギュウ




今カノ「うん…それは私もだよ。男…なにかあったの?」

男「…ここに…ここにいたんだ…さっきまで…話してたんだ…あっという間に…いなくなって…」

今カノ「あの人が?」

男「ああ…」




今カノ「そう…」

男「…でも…きちんと、話しておいた…結婚することも…感謝してることも…」

今カノ「うん…」ギュ

男「…」




今カノ「どこにもいかないよ」ス

男「ん…身体が…軽くなってく…」

今カノ「…楽になったら…お墓、きれいにしよっか ニコ」

男「……そうだな」




今カノ「あ、ガーベラ買い占めてきたよー。そしたら遅くなっちゃった」

男「…そっか。ありがと。 ニッコリ」





おしまい


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