幼馴染「僕は君みたいな貧乏人には興味無いからね」(286)

書き直します


男「俺だってお前なんかに興味ねーし!」

幼「どうかな....?」

男「な、なんだよ....」

幼「君、会話の時たまに胸に視線をやるよね」

男「っ」

幼「あれ、女子側からしてみればバレバレなんだよ」

男「それはあれだな、視線が下に行ってしまう癖で」

幼「あぁ 太ももか」

男「そうそう」

幼「ハァ....」

男「いや待て今のはノリでボケただけであって」

幼「何故君のような性獣がボクより成績が優秀なのか本当に疑問だよ」

男「そんなの俺がしっかり勉強してるからだろッ」ドヤッ

幼「また胸に視線を送ったね」

男「話聞けよ」

幼「君の親友の友君」

男「ん?友がどうした」

幼「先日、彼女らしき人物とデートをしていたようだよ」

男「は?」

幼「××駅で美人な先輩と手を繋いでいるところを目撃されたようだね」

男「え?友が?友に彼女?年上の?は?」

幼「先を越されたようだね」

男「何かの間違いだろ」

幼「また一人童貞友達を失ってしまったね」

男「あいつだってまだ童貞かもしれんだろ」

幼「どうだか....っと、噂をすれば....」

男「!?」

友「キャッキャッ」
先輩「ウフフ」

男「............」

幼「青春だね」

男「マジカヨ....」

男「もういいや そろそろバイトの時間だし....」

幼「君はいてもお荷物だろうけどね」

男「うっせ」

幼「........今日は何時までバイトなんだい?」

男「23時までだったかな?」

幼「高校生が23時まで働くのは違法だね 通報しておくよ」

男「ヤメロ!」

幼「ッ、冗談に決まっているだろう」

男「ハァ...」

幼「死ぬのかい?」

男「いやなんだよその質問....」

幼「君は学生の本分を知っているのかな?」

男「わあってるよ」

幼「........無理をしないように」

男「んー」

幼「君のお母さんが迷惑するだろう」

男「迷惑なんてしてねーよ」

幼「君はどうでもいいけど、君のお母さんのような人の良い女性が苦労するのは胸が痛むからね」

男「俺は?」

幼「んー、んー、うん」

男「そんなに悲しいかー」

幼「今日の夕御飯のことを考えていた」

男「お前俺が死んだりしたら悲しむくさに」

幼「ご祝儀代がかさむからね」

男「香典な」




男「ただいま」

男母「あらあらお帰りなさい」

男「まだ起きてたの?」

男母「もうそろそろ寝るとこほだったのよ」

男「そっか」

男母「お風呂に入る?」

男「ガス代勿体ないから水シャワーにするよ」

男母「駄目よう せめてお湯にしなきゃ」

男「夏だし平気だよ」

男母「風邪引かないでね?」

男「母さんこそ体壊しちゃ駄目だよ」

男母「ウフフ 平気よ おやすみ」

男「うん おやすみ」

男「........さて、シャワー入って眠気覚ますか」

男「今日は英文法進めとかないとな」

ーーーー 男の住むボロ賃貸の隣の一軒家

幼「........」

幼「まだ灯りが点いてる........」

幼「........」

翌朝

男「ふぁぁ......」

幼「真夜中まで自家発電していたのかい?」

男「ンガッ なんじゃそりゃ」

幼「夜中まで電気点けっぱなしは勿体ないよ」

男「起きてたのかよ」

幼「君の喘ぎがうるさくてね」

男「喘いでねーよ」

幼「ティッシュの消費も馬鹿にならないだろう」

男「だから喘ぐような事してねーよ」

幼「にしても窓全開だと虫が入るだろうに」

男「網戸も虫除けもしてるよ まあ夜でも暑いからな」

幼「エアコンつけなよ」

男「勿体ない」

幼「扇風機は?」

男「無くてもいける暑さだった 多分」

幼「ふうん」

男「今日は図書館→フードコートのコンボで酷暑を凌ぐぜ」

幼「フードコートだなんて....ボクには集中出来るような環境じゃないね」

男「慣れだよ慣れ」

幼「自宅の方がクーラーも利いてるし落ち着けるからね」

男「あーはいはいよかったな」

幼「もしよければ君にも使わせてあげてもいいよ」

男「なにっ!?」

幼「15分500円ね」

男「高っ」

幼「破格だよ 君なんぞがボクの部屋を利用できるんだから」

男「昔はしょっちゅう使用したけどな」

幼「そうだね その時の利用料金もまだ未払いだし」

男「えぇ....」




その日のお昼

友「いやぁー うちの学食も微妙だよなあ」

男「そうか?280円ラーメンの大盛無料デーなんて日には自炊せずに学食1択だけどな」

友「俺の彼女が行く大学の食堂と比べたらなぁ」

男「ナチュラルに彼女自慢すんなや」

友「悪い悪い けどお前こそ羨ましいわ」

男「?」

友「とぼけんなよ 幼馴染ちゃんがいるくせに」

男「幼馴染は俺なんか眼中無いぞ?」

友「またまた....」

男「結構理想高いからな あいつ」

友「そうなの?」

男「3Kってやつは必須じゃないのか?そもそも男子側だってあいつに近寄らないだろ」

友「(それはお前がいるからでは?)」

男「まあ裏では仲良い男子とかいても不思議じゃないけどさ」

友「幼馴染ちゃんとLINEとかしてねーの?」

男「してないな そもそも俺自体が未だにガラケーという」

友「あぁぁ じゃ、lineもできねーのな」

男「うむ ガラケーでもできるらしいが必要な通話のみでいい」

友「ご立派な節約魂ですな」

友「でも幼馴染ちゃんが男子と話してるの、あんまり見た事ねーな」

男「根暗だからな」

友「でもスタイルはすげえいいよな」

男「お前彼女いるくせに」

友「そりゃあ彼女が一番だぜ ぷにぷにの唇にあの柔らかい胸に細い腕....」

男「しねー」

友「まあお前にわかる日がくるといな(フッ」

男「調子に乗るなよ畜生!羨ましかなんかねーからなっ」




ーーー放課後ーーー

男子「よっす幼馴染ちゃん!」

幼「?」

男子「これから皆でカラオケ行こうって話なんだけどさ!幼馴染ちゃんも行こうって!」

幼「ごめん ボクはいいや」

男子「えぇぇ 男子の奢りだぜー?」

幼「他人の歌を聞くのも、見せ物みたいに聞かれるのもあんまり好きじゃないんだよね」

男子「そこをなんとか!幼馴染ちゃん!!」

幼「んー……」

ーーーカラオケ 大部屋

女子「幼馴染ちゃんが来るなんて珍しい事もあるんだねぇ」

幼「奢りと聞いたので」

女子「私もそれが一番の理由かなー?」

幼「........」モグモグ

女子「でもさ、○○校のお金持ち君達が来るってのも大きな理由あなー」

幼「そうだね」

女子「この部屋の貸し切るお金も彼ら持ちなんだってー」

幼「素晴らしいね ただ学力的にも見た目的にも偏差値は40がいいところかな」


男子s「ねね!幼馴染ちゃんってLINE教えて!」

幼「無理です」

男子s「えぇ!教えてよっ」

幼「ゴメンなんだけど 仲の良い人にしか教えていないんだ」

男子s「えええ....」

幼「そういうわけだから」

男子s「じゃあまた今度遊ぼうね 俺、幼馴染ちゃんともっともっと仲良くなるよ!」

幼「は、はぁ」

男子s「もっともっと楽しませてみせるっ!頑張っちゃうぜ!」

幼「............」

男子s「(はい好感度上がった 少しドキッとしたべ?)」

幼「(......一番苦手なタイプだな)」




その日の夜 とあるフードコート

男「............」カキカキ

男「............」カキカキ

男「(混んできたのかな?)」カキカキ

男「(2人席一人で使ってるわけだし......退くか)」

<ガタッ

男「あっ、すいません 今退きまッ........なんだ幼馴染か」

幼「あれ? 君のことだから飛び跳ねて喜ぶかと思ったのに」

男「なにしてんだよ」

幼「こっちが聞きたいよ」

男「俺は見ての通り勉強だ」

幼「ここは勉強するところじゃないよ」

男「わかってるよ 今退くって」

幼「何も買わないで水だけは飲んでいるとか....ドン引きだよ」

男「くっ!貧乏臭くて悪かったな!」

幼「それでもこうしてボクが向かいに座れば様になるんじゃないのかい?」

男「その見せびらかすようにパフェを食べれば様になると?」

幼「そうだね 格差社会としての縮図も所々見せれるし」

男「絶対集中出来ないんだが」

幼「この程度で集中出来ないのは言語道断だね」

男「一度切れた集中なんだ」

幼「ふぅん ボクが邪魔したって言いたいんだ」

男「違う違って」

男「にしても、なんでこんな時間にフードコートなんているんだよ」

幼「甘いものが食べたくなったから」

男「甘いモンなら今日行ったカラオケでたらふく奢って貰えばよかったのに」

幼「な、なんなんななななんで君がカラオケのことを知ってるんだい?」

男「何でって、俺も誘われたし....」

幼「誘われた?君が?」

男「男子の奢りと聞いて即断った」

幼「何故君なんかを誘ったんだろうね」

男「まったくだ!俺にも奢ってくれ!」

幼「惨めだね」

男「そうだな 与えられることを求めちゃいけないな」

幼「一口あげようか」

男「いや、遠慮しておく」

幼「どうして?」

男「口以外に突っ込まれそうで怖いからだ」

幼「きっと恐らく平気だよ 多分」

男「ヤル気MAXじゃねーか」

幼「勿体無いなー 美味しいのに」

男「ハァ....」

幼「どうかしたの?」

男「ん?いや、少し疲れてるのかなーって」

幼「今死体みたいな顔になっていたよ」

男「まだ生きてる」

幼「ここ、今日は20時で閉まるそうだよ」

男「嘘だろ?」

幼「そこに書いてあるじゃないか それにさっきも放送が流れていたよ」

男「.......マジカヨ」

幼「良かったね」

男「しょうがないか....マックか家だな」

幼「あそこのマックは店内での勉強は禁止になったんだよ」

男「ええぇ」

幼「君みたいなのが水やらコーヒー一杯で何時間も粘るからだろうね」

男「そんな....畜生....なんて日だ……」

幼「諦めて家ですればいいじゃないか」

男「そうするかー」

幼「........」

男「そろそろ帰るかな」

幼「入館料さえ払えば、ボクの部屋を貸してあげてもいいよ」

男「なんだよ入館料って....」

幼「初回限定サービスもあるけどね」

男「どうせろくなサービスじゃねえんだろ」

幼「初回三時間は無料だよ」

男「っ 」

幼「冷房はもちろんアリ」

男「っっ」

幼「冷たい麦茶も飲み放題」

男「っ!み、魅力的なサービス内容だな」

幼「ただし」

男「やっぱり “ただし” なんだな....」

幼「やる内容は週末用に出された宿題」

男「なるほどね。部屋貸すから宿題手伝えってか」

幼「うん」

男「どちらにせよ片付けないといけない事だし、お邪魔させてもらう」

幼「ちなみに部屋を汚す度にペナルティーだからね」

男「汚さねーよ」

幼「一歩足を踏み入れる度に汚れていくものだとカウントするから」

男「......ハァ」

幼「お母さんにLINEをするから待っていてくれるかな」

男「あぁ」

幼「君のような盛りのついた飢えた性獣を家に招くとなると警戒態勢をしかないといけないからね」

男「アホか」

幼「どうかな?」

男「幼馴染の仲につけこんで手を出すほど童貞こじらせてねえし」

幼「いやらしい眼で見てくるくせに」

男「見てない!(見てます!)」

幼「....どうかな?」




幼馴染の家 の前

幼「ちょっと」

男「何だよ」

幼「何でついて来るのかな?」

男「お前の家で宿題やるからだろ」

幼「えっ?」

男「そっちの提案だろ! “何言ってんのコイツ” みたいな眼で見るな!」

幼「不審者を見るような眼だと言ってほしい」

男「どっちの眼でも失礼だぞ」

幼「とりあえず少し部屋を片付けたいから外で待っていてくれないかな?」

男「ん わかった」

幼「勝手に入ってくるなんて言語道断だよ」

男「待ってるけどそのまま忘れるなよ?」

幼「それに関しては保証は出来ないけど」

男「しろよ。お前マジ10分経ったら帰るからな」

幼「あ、待ってる間は……くれぐれも」

男「?」

幼「くれぐれもお母さんには見つからないように」

男「幼馴染の?」

幼「そう」

男「え?俺が来るって連絡してあるんだろ?」

幼「いいからっ 待っておくこと!」スタスタ ガチャ

男「なんだよ....まあいいか」

男「にしても」

男「幼馴染の家に入るのは小学校以来か?....うん」

男「懐かしいな……なんか緊張してきた」




ガキ『何で女なのにボクとか言ってんだよー!』

幼『うぅ....』

ガキ『コイツ本当はオトコなんじゃねーの?』

幼『ち、違うもん ボクは女の子だもん!』

ガキ『髪も短くてオトコみたいだしオトコだろ!』

幼『オトコじゃないもん....』

男『おいっ!』

ガキ『っ、』

幼『あっ』

男『また幼馴染ちゃん虐めてるな!?』

ガキ『ハッ!お前、幼馴染のこと好きなんだろ!?』

男『スススすす好きとかそそそそんなんじゃないししし!』

ガキ『すーきなんだ好きなんだー!』ギャハハハ

幼『ボクは好きじゃないもん!』

男『マジカヨ!?』ガーン (゚◇゚)

ガキ『ップ』

男『........なんて日だ』ションボリ

ガキ『ップハハハハ! 男だせー!』

男『うぅ....』

ガキ『男がオトコに振られたぞー!わぁーい!』

男『ふ、振られてないし!』

幼『クスクス』

男『いや幼ちゃんも何笑ってんの!?』

ガキ『皆に言いふらしてやろー!』

男『あっ!待てっ!........っ、逃げるの早っ』

男『平気?』

幼『ボクになんか用?』

男『いや、なんかちょっかい出されてたから』

幼『出されて無いよ』

男『嘘だあ?』

幼『嘘じゃないもん』

男『また幼ちゃんのことオトコだなんだ言ってたんでしょ』

幼『........』プイッ

男『きっと幼ちゃんが可愛いからちょっかい出すんだね』

幼『かっ、可愛っ....』

男『どっからどうみても女の子なのにねっ』ニコニコ

幼『........う、うるさいなあ ほっといてよ』




・ 

幼馴染の部屋

幼「片付けないと....」セッセッ

幼「男が部屋にくる……」

幼「........」

幼「……フフ」




幼母『男君のところはお父さんがいなくなっちゃったから、しっかり面倒見てあげてね?』

幼『いなくなったの?』

幼母『遠い遠い場所に行ってしまったの』

幼『??』

幼母『二度と会えないくらい遠い場所に行っちゃったから....寂しくさせちゃ駄目よ?』

幼『?? わかったー』


男『........』

幼『男君』

男『あ、幼ちゃん』

幼『元気無いね』

男『そうかな?』

幼『うん』

男『気のせいだよ』

幼『....?気のせいじゃない』

男『........』

幼『…………』


幼「よし、片付いた」

幼「ふぅ」

男「あいつまだかよ....」

<ガチャッ

男「おっ」

幼母「おっ?」

男「って、どうも....ご無沙汰してます....」

幼母「あら?あらあらあら!?」

男「ど、どうも」

幼母「男ちゃんじゃないのー!上がって上がってー!」

男「いいんですか?」

幼母「んもちろん!さっ!早くっ!早くっ!」

幼母「幼馴染が彼氏連れてくるっていうからー!」

男「??」

幼母「やっぱり男君だったのねぇー」

男「彼氏?いや別に付き合っては」

幼母「幼馴染なら今必死で部屋を片付けているからッーー」

幼「ッッッ!」 バタン!

男「おっ」

幼母「あら」

幼「こっち!!!」グイッ!

男「うぉっ!?」

幼母「……お赤飯あったからしら」

男「ちょっ!そんな引っ張るなって!」

幼「んもう!何で入ってきてるんだい!?」


幼馴染の部屋


男「おばさんが勝手に....」

幼「見つかった君が悪い」

男「いやぁ....そんなこと言われても」

幼「な、なんか変な事言われなかったかい?」

男「変な事?」

幼「........うん」

男「変っていうか、おばさんは俺と幼馴染が付き合ってると勘違いしてるみたいだったぞ?」

幼「........、そ、そうかい それは最悪な勘違いだね」

男「最悪で悪かったな 後でちゃんと否定しとけ」

幼「ボクはそのつもりだよ」

男「そんなことより、宿題やるんだろ」

幼「.......うん」



ーーー小一時間後 

<コンコン

幼母「オホホホー 失礼ー」

幼「うぐっ な、何かな?」

幼母「差し入れでーす」

男「わざわざありがとうございます」

幼母「いいえいいえー」

幼「ほらっ 用が済んだなら出ていきなよ」

幼母「ウフフ それもそうね」ウフフ

幼母「男君、着替えはあるの?」

男「へ??」

幼「ちょっ」

幼母「あら?泊まっていくんでしょ?」

男「? 泊まりはしませんけど」

幼母「あらー?」

幼「んもう!いいからっー!出でって!」バタン!

男「幼馴染のお母さんも変わってないな」

幼「フゥ そ、そうだね お泊まりだなんて子供じゃあるまいし」

男「差し入れは嬉しいけど....」

幼「........」

男「なぜ赤飯なんだ...」

幼「君の好物だからじゃないかな?」

男「別に好きでも嫌いでも無いんだが」

幼「いいじゃないか別に 食費が浮いて良かったね」

男「余計なお世話だ」

男「....美味い」

幼「炊きたてだからね」

男「この漬け物も」

幼「そうだろうね」

男「そしてこの煮物も」

幼「普段の君の食事を考えれば美味しいだろうね」

男「....うむ」

幼「ちゃんと栄養のあるものもを食べているのかい?」

男「んー、....まあ」

幼「どうせプロテインやらサプリメントやらで済ませているんだろう」

男「プロテインは飲んでるけど、サプリメントは逆に金かかるだろ」

幼「ふぅん」

男「白米は自炊して半額の総菜を買う!これにつきるな」

幼「おや?ベランダで自家栽培していたんじゃなかったのかい?」

男「カラスさんがね....」

幼「君は小学校の時も朝顔を枯らせていたね」

男「毎日世話してたのになー」 

幼「肥料をやり過ぎたんだっけ?」

男「そうそう! たくさんやればやるだけ育つと思ってたからさ」

幼「欲を張りすぎて哀れな結果を招いてしまったわけだね」

男「まだ子供だったしな」

幼「ま、君の場合は栄養が足りなすぎて枯れないか心配だね」

男「一応考えてはいるんだぜ?」

幼「具体的には?」

男「んー、まずはご飯にプロテインをかけてみたんだ」

幼「........」

男「これがとてつもなく不味くてだな」

幼「普通ならかける前に気づくよね?」

男「その時は新たな発見に飢えてたんだよ」

男「とりあえず頑張って食べたんだけどな」

幼「食べ物で遊ぶと罰が当たるよ」

男「本気でイケると思ったんだよ」

幼「君のお母さんも大変だね....そんな味覚の息子がいると」

男「うっせぇな....」カキカキ

幼「っげ」

男「どうした?」

幼「も、もうそんなところまで進んでいるのかい?」

男「何驚いてるんだよ」

幼「ちょっと見せたまへよ」

男「写す気だろ」

幼「失礼だね 参考にするだけだよ」

幼「見せなよ」ヒョイッ

男「あっ、おい返せ!」ガバッ

幼「フフフ 返してほしくッーーにゃっ!?」

男「うおっ!?」ドサッ

幼「...........んっ.....」

男「いっててて....」

幼「........」

男「す、すまん大丈夫か?」

幼「ど、どさくさに紛れて抱きつこうとしたね?」

男「いやいや!わざとじゃないって!」

幼「汚された....」

男「なっ!まだどこも触ってねえし!」

幼「まだっ!?」

男「いや、だからそういう まだ じゃなくってだな....」

幼「........」ジトッー

男「そんな眼で見ないでっ!」

幼「........君の前では薄着を控えた方がいいみたいだね」

男「なっ....!」

幼「ふぅ....騒いだら暑くなってきたよ」パタパタ

男「ッーー」ゴクリ

幼「ほら」

男「ず、ずるいぞ!そんなの誰だって意識するだろ!」

幼「ふぅーん ボクの体でいかがわしい事を考えちゃったんだ」

男「考えてないわっ!」

幼「どうかな?」チラッ

男「........、さあ?」

幼「暑い暑い」パタパタ

男「知るか........」チラッ

幼「ほら見た」

男「クソッ!」

幼「君もまだまだだね」

男「これは男子として健全だからこその反応だと思いまーす」

幼「ふぅーーん」

男「あぁぁもうっ!」

幼「カルシウム不足かな?」

男「集中できねぇ....そろそろ帰ろうかな....」

幼「っ」

男「な、わけで」

幼「駄目だよ ボクの宿題がまだ途中じゃないか」

男「知るかよそんなの」

幼「君、ボクの部屋を利用しておいてそんな言葉が吐けるのかい?」

男「俺は終わったんだ」

幼「そうかい なら規約違反として」

男「何だよ規約違反って!」

幼「私の宿題を終わらせずに帰るなんて規約違反に決まってるじゃないか」

男「ならとっとと終わらせるぞ」

幼「そう、なら教えてくれてもいいよ」

男「ナチュラル上から目線」

幼「向かい合っていやらしい眼で体見られる嫌だから隣にきなよ」

男「帰るぞ貴様」

幼「本気にすると言うことは少なからず見ていたという事だよね?」

男「あぁもう!やるぞ!」

幼「ヤルって....な、何をだい?」

男「そのヤルじゃねーよ」

幼「ん?君の言う“そのヤル”というのは一体......」

男「宿題だぼけ」

幼「ボクにはそうは聞き取れなかったけど」

男「もう宿題しましょうよ幼ちゃん....」シクシク

幼「....、随分と懐かしい呼び方やをしたね」

男「わからないところは教えるから」

幼「ん……」

男「?」

幼「隣」トントン

男「はいはい」




男「これで式ができるだろ?」

幼「....ん」クンクン

男「聞いてる?」

幼「ん、き、聞いてるっ」

男「この式さえできれば後はいつもと同じだよ」

幼「ん わかった」

やべ私にしちゃったままだったわ

男「はい次な」

幼「ん 休憩する」

男「うおい」

幼「糖分が足りなくなってね コーヒーを入れてくるよ」

男「あ、俺のも」

幼「380円」

男「高っ」

幼「しょうがない 海より深いボクの懐に感謝するんだね」

男「砂糖入れすぎだろ」

幼「うるさいなあ」

男「あぁあぁ糖尿病になるなこりゃ....」

幼「君は?」

男「一個ずつでいいや」

幼「ん」

男「にしても」

幼「?」

男「幼馴染の部屋、そんなに変わってないのな」

幼「汚れるからそんなに見ないでくれるかな?」

男「なぜ汚れるんだ....お?」

幼「?」

男「あれ懐かしいな 俺があげた人形じゃん」

幼「しまッーー」

男「島?」

幼「(しまった....隠すの忘れた....)」

男「おちんちん」

幼「あ、あれは処分に困っていてね」

男「結構大きいからなー その人形」

幼「う、うん」

男「なんでベッドの上に放置してんだよ」

幼「それは、その、サンドバッグに使っていてね....」

男「サンドバッグ!?」

幼「新しいフェイバリットをその人形で練習するんだ」

男「えぇ」

幼「順逆自在の術はもうできるよ」

男「えぇ...」

幼「ほら、無駄話はいいから宿題の続きをするよ」

男「自分が休憩するって言い出したんじゃねーか」

幼「もう糖分とカフェインの補給は終わったからね」

男「コーヒーなんて飲んだら眠れなくなるだろ」

幼「ボクは君と違うからね」

男「ワサビ苦手なくせに」

幼「っ」

男「そんなに砂糖入れるなら無理してコーヒー飲むなよ」

幼「うるさいなあ」





男「よし、終わりっ!」

幼「ん」

男「今何時....って日付変わっとるがな」

幼「いつまで居座る気かな?」

男「お前なぁ」

幼「夜中まで居座ってボクの寝込みを襲うつもりだろう」

男「誰が襲うか」

男「ご両親は?」

幼「とっくに寝ているさ」

男「男の俺がいるのに?」

幼「空気にしか思われてないんじゃないかな?」

男「えぇぇ 一応男女が同じ部屋にいるんだぜ?」

幼「見知らぬ男が家にいるとはワケが違うんだよ)

男「でも俺も帰るかな」

幼「っ」

男「それじゃ」

幼「き、きみ!」

男「?」

幼「なんか汗臭いよ....うん」

男「え?お、俺が?マジ?」クンクン

幼「うん」

男「え?えっ?ずっと汗臭かったの!?」

幼「う、うん!」

幼「お風呂に入ってきたらどうだい?」

男「帰ってシャワー入るよ」

幼「シャワーじゃ落ちないよ」

男「いや落ちるだろ」

幼「またガス代ケチる気だね?」

男「夏場は特にシャワーだけでいいだろーが」

幼「だから臭いんだよ、うん」

幼「もうこの際だからウチのお風呂貸してあげてもいいけど」

男「けど、お高いんでしょう?」

幼「なんとっ、0円のところタオルも付いて9980円だよ」

男「おお、一万切るのか!やっすぅーい」

幼「今ならボクも一緒に入ってあげてもいいよ」

男「えっ」

幼「おや?本気にしたのかい?」

男「いや....いらないオプションだなーって」

幼「そんな事言って、いざボクが入ってきたら喜ぶよね?」

男「そういや、昔は何回か一緒に入ったよな」

幼「うん あっちこっち触られまくったよ....」シクシク

男「いや、全く触ってない」

幼「どうだか」

男「あの時はあんまり女の子として見てなかったわけだし」

幼「あの時は?まるで今は....」

男「男と女だろ 一応な、一応」

幼「やっぱり喜ぶんじゃないか」

男「なんでそうなるんだよっ」

幼「せっかく背中くらいは流してあげようと思ったのに」

男「いや、いいって....」

幼「まあとっとと入ってきなよ」

男「おう.......って入らねえよ」

幼「沸いてるよ」

男「いやだからって」

幼「お母さんが用意してくれたみたいだ」

男「いやさあ」

幼「君の為に」

男「いや........」

幼「わざわざ、君の為に、厚意で」

男「........はい」

幼「早く入ってきなよ」

男「いいのか?」

幼「うん」

男「じゃあ入るよ すぐ出るけど」

幼「ゆっくりすればいいのに」

男「長風呂入ったら眠くなるんだよ」

幼「昔からそうだよね」

男「ま、こんな時間なわけだし....すぐ出ないとな」

幼「........」




浴槽

男「(まさか幼馴染の家の風呂に入るとは)」

男「(変な妄想しないうちに出なければ)」

幼「ねえ」

男「うおっ な、なんだよっ」

幼「いや、浴槽で寝てないかと思ってね」

男「寝ねーよ」

幼「そうかい ならいいけどね」

男「そろそろ出るところだ」

幼「ふぅん」

男「........お前はそこで何してるんだよ」

幼「? 洗面所を掃除しているんだよ」

男「俺が出れないだろ」

幼「気にせず出てくればいいじゃないか」

男「アホか タオルも無しに」

幼「君のはボクのと違って成長してないだろう」

男「しとるわアホ」

幼「まだ10分はかかりそうかな」

男「おい、のぼせちまうだろ」

幼「せいぜい気をつけることだね」

男「ハァ....」




男「やっと上がれた....」

幼「顔、真っ赤だよ」

男「横になりたい....」

男「のぼせてはいないが、眠くなってきた....」

幼「ふぅん」

男「帰る」

幼「えっ」

男「帰る」

幼「っ」

男「帰って寝る」

幼「そ、そんなフラフラじゃ危ないよ」

男「家隣じゃねーか」

幼「そういう問題じゃないよ」

男「眠い」

幼「ボクの部屋のベッドを使わせてあげてもいいよ」

男「誰がつかうか....」

幼「とりあえず具合悪いならベッドに横になりなよ」

男「........」ドサッ

幼「少し休んでから考えるといいよ」

男「ん........そうする........」

幼「うん........」

男「........zzz ....zzz」

幼「....男?」

男「....zzz....zzz」

幼「ねぇってば」ツンツン

男「んにょっ........zzz」

幼「寝た?」

男「....zzz....zzz」スースー

幼「よし 男の宿題だけ処分しなくちゃね」チラッ

男「....zzz....zzz」スースー

幼「........」ゴクリ

幼「............」

幼「本当に寝たのかな?」サワサワ

男「んんん........zzz....」

幼「君、女の子の部屋でよく熟睡できるね」

幼「.....」クンクン

幼「ボクを女の子として見てるのかい?」

男「zzz....zzz」

幼「........」

幼「........きっと見てくれてるよね?」

男「zzz........zzz」

幼「........」チュ





翌朝

男「........ん 朝か....」

男「........朝?........ふがっ!?」

男「こ、ここは!」

幼「ボクの部屋だよ」

男「ぁぁああぁぁ........寝落ち....」

幼「確信犯だろう ベッドまで占領しておいて」

男「えー?俺こんな行儀良くベッドで寝てたっけ?」

幼「うん」

男「えぇー........?」

幼「おかげでボクはソファーで寝るはめになったじゃないか」

男「起こしてくれれば....」

幼「居直るのかい?」

男「す、すいません」

幼「まったく....君の図々しさには驚かされるよ」

男「すまぬ....すまぬ....」

幼「この責任はとってもらうからね?」

男「えっ、と.... どうやって取ればいいんですかね」

幼「君、今日の予定は?」

男「今日?今日は特に何も無いな バイトも休みにしたから勉強するつもりだった」

幼「そうかい つまり暇人なんだね」

男「いやまあ....そうなのかな?」

幼「なら少し付き合ってもらうよ」

男「はぁ?何にだよ」

幼「何でもいいじゃんか 荷物持ち係なんだから」

男「....は?」



ーーー昼

男「で、何買うんだよ」

幼「さあ?」

男「さあ?って」

幼「特に決めてはいないよ 買いたいモノがあれば買っていくけど」

男「重いのは止めような」

幼「そのために君を連れてきているんだけどね」

男「.......ハァ」

男「服でも買うのか?」

幼「部屋着のシャツでも買おうかな 薄着のやつ」

男「ふーーん」

幼「今いやらしい妄想をしたね?」

男「いや全く」

幼「ふーーん」

男「なぜ部屋着でいやらしい妄想をしなくちゃならねーんだよ」

幼「じゃあ水着」

男「!?」

幼「君も素直な反応するね」

男「してやったんだ どうせ買わないくせに」

幼「つまらないね」

男「まずお前泳げないだろ」

幼「うるさい」

男「一度溺れかけたのを助けてやったっけ」

幼「また昔の話を恩着せがましく....」

男「恩着せがましくないだろ」

幼「あ、あれはボクは溺れていたわけじゃなくて....君が出しゃばって助けにくるのが....」

男「ゲホゲホ泣いていたくせにな........」

幼「うるさいなあ せっかく水着を見定めてもらおうと思ったのに....」

男「なにっ!?」

幼「嘘だよばーか」

男「知ってたし」

幼「ちょっと期待したくせに」

男「微粒子レベルでな」

幼「ハァ....君とくだらない やりとりをしたおかげでお腹が空いてきたよ」

男「もう昼過ぎてるからなあ」

幼「君のおごりとは言え いいものを食べたいね」

男「んんん?」

幼「どうしたのかな?そんな顔して」

男「なーんで俺が奢ることになってるんだ?」

幼「当たり前じゃないか....今のご時世、初デートでは男子が奢るのがマナーなんだよ」

男「なんだよデートって」

幼「ッッッ、デ、デートてととと言うのはねっ......その、周りから見たらボクらはアレにゃんだよ?」

男「にゃん?」

幼「男女二人でお店に入ったらカップルに見えるだろう?」

男「んー、まあそうだな」

幼「と、言うわだよ これは疑似デートなんだ」

男「疑似デート......」

幼「君、昨日お給料日だったじゃないか」

男「なんで把握してんの?」

幼「2つ掛け持ちしてて15日と25日がお給料日なことくらい知ってるよ」

男「........」

幼「つまり財布の紐はゆるゆると言うわけだ」

男「カッチカチやぞ」

幼「さっ、どこかお店に入ろうか」

男「ハァ....」

幼「ここは学生らしく、ゼイサリアにしよう」

男「いい心構えだ」

幼「デザートもドリンクバーもしっかり注文するけどね」

男「」

幼「ほら、入るよ」

幼「フライドポテトとタコのカルパッチョとたらこクリームパスタと食後にストロベリーアイスをください」

店員「おちん」

男「ミラノ的ドリアで....」

店員「ちん」

幼「ドリンクバー二つ」

男「」

店員「おちんちん」

幼「以上で」

幼「せっかくドリンクバーを注文したのだからつぎにいかないとね」

男「まったくだ」

幼「君の分も入れてきてあげるよ」

男「烏龍茶で」

幼「ミックスね」

男「は?えっ?」

幼「はい 君の分」

男「なんだこの色!?」

幼「美味しいよ 多分 」

男「これを飲めと....?」

幼「炭酸入ってるし平気だよ」

男「なんで平気になるんだっ!」

幼「.......パシらせておいて酷いね」

男「........」




幼「うん 美味しかった」

男「な」

幼「さて」

男「出るのか?」

幼「ん その前に」

男「あぁトイレか」

幼「それは言葉に出すものじゃないよ」

男「はいはい」





ーーートイレから戻って

幼「あれ?....男がいない」

幼「........」

店員「さっき会計済まして出て行きましたー」

幼「っ....」


ーーー店の外

男「おっ、やっとか」

幼「むぅ、レディに対して失礼だよ」

男「怒んなって」

幼「食い逃げかい?」

男「怒るぞ」

男「ちゃんと払ったよ」

幼「えっ....えっと、いくらかな?」

男「安かった」

幼「........」

男「ほら行こうぜ」

幼「ゼイサリアごときでドヤ顔かれるなんて」

男「くそっ!会計払わないで店出ればよかった!!」

幼「これじゃあ君に借りができたみたいで気持ち悪いね」

男「別にいいだろ」

幼「よくないよ これはボクと気分的な問題なんだ」

男「いつも世話になってるからさ」

幼「........」

男「なんだよその顔」

幼「君に借りを作るなんてもってのほかだからね」

男「借りって言ったってたかが昼飯じゃんか」

幼「い、一応言っておくけどね ボクはちゃんと払うつもりだったんだよ?」

男「で、本当に俺に奢られたから気に食わないとな?」

幼「まあその通りだね」

男「俺も幼馴染に奢るつもりだったんだ 」

幼「本当かな?」

男「それでもって、いざ会計になったら幼馴染が割り勘にするだろうから先に会計しただけだし」

幼「ッ........」

男「もういいだろ 俺へ自分の意志で金払ったんだから」

幼「........」

幼「これじゃあ本当に君に借りができたみたいじゃないか」

男「だーかーらー」

幼「........オホン」

男「?」

幼「君が奢ったんだ ボクも何か恋人らしい行動を取らないとね」

男「奢るのって恋人らしいのか?」

幼「もちろん デートだもん」

男「恋人らしい行為ってなんだ?」

幼「んー ....う、腕を組んであげてもいいよ」

男「腕っ!?」

幼「うん」

男「そそそ、それはさすがにアグレッシブ過ぎないか....ッ」

幼「フフフ 腕を組むくらいどうってことないだろう」

男「い、いやそっちはどうってこと無くても恥ずかしいのだが....」

幼「なに赤面しているんだい?」

男「してねーよっ」

幼「本当はしてほしいんだろう?」

男「誰がッー」

幼「ほら」グイッ

男「おっふ......」

幼「..........ど、どうだい?」

男「はい」

幼「はいって....」

男「はい」

幼「どうなんだい?」グイッ

男「いや、はいまあ腕を組んでるなあって......はい....」

幼「もっと喜びたまへよ」ムニュッ

男「ッッ!?(こ、この腕に当たる感触はまさしく!)」

幼「どうなんだい?」

男「は....はい........はぅっ」

幼「な、なんかこっちまで恥ずかしくなってくるじゃないか」

男「いやだって腕とか組まれるの初めてですしお寿司ペプシ」

幼「昔よく手を繋いだじゃないか」

男「ガキの時代と比べられても」

幼「今とまるで感触が違うと?」ムニュッ

男「やっぱりわざとか....!」

幼「何がかな?」ムニュッ

男「“当ててんのよ”ってやつだろ........?」

幼「まったく....すぐ破廉恥なことを考えるんだね」

男「誰だって意識するわっ!」

幼「嫌なのかい?」

男「い、いや別に嫌ってわけじゃなくてだな」

幼「嬉しいんだね」

男「なぜその2択なんだ」

幼「ほら ちゃんと歩きなよ」

男「わーってる」

幼「........」
男「........」
幼「........」
男「........」

幼「ね、ねえ」

男「な、何だ」

幼「これ....歩き難いね」

男「....うん」

幼「やめようか」パッ

男「おうっ」

幼「そんなに残念がらなくても」

男「なってない なってない」

幼「腕を組んでも恋人のようには出来なかったね」

男「お互い経験値が低いんだな」

幼「ボクは君よりあるとは思うけど」

男「てぇマジ?」

幼「うん」

男「っても誰とも付き合った事ないくせに」

幼「それはどうかな?」

男「ッッ!?」

幼「まあ無いけどね」

男「そ、そうか....」

幼「おや?何をホッとしているのかな?」

男「別にー??幼馴染に先越されたと思っただけだし....」

幼「........ね、ねえ」

男「ん?」

幼「そそそそういえば....君は先月に4組の女さんに告白されたそうじゃないか....」

男「まあ、されたけど何で知ってんだよ」

幼「....断ったそうだね」

男「あんまり接点無かったしな」

幼「ふぅん」

男「それに俺は勉強とバイトで精一杯だからさ」

幼「ボクは君がモテるって都市伝説クラスの噂を聞いてね」

男「モテるっ?俺が!?」

幼「うん」

男「そりゃ都市伝説だな....モテたことなんて経験無いぞ」

幼「君、高校に入って何人に告白されたんだい?」

男「へー?何人とか言われてもなあ....」

幼「6人だよ」

男「そうだっけ? いやなんでお前が知っているんだ」

幼「なんとなく」

男「つーか、そんなのカウントしないって」

幼「うわっ....この発言....」

男「俺告白とかされても誰にも言ってないんだけどな....」

幼「き、きっと告白した女子が君ごときに振られたと広めているんだよ」

男「えぇー」

幼「ま、まったく何で君なんかに告白するんだろうね」

男「んー?妥協されてるのかもな」

幼「妥協?」

男「ほら、下手にイケメンだったり高みを狙うよりは手頃に思われてたり」

幼「そんなことないよっ」

男「えっ?」

幼「えっ?」

男「何か言った?」

幼「え、えっと....」

男「そりゃあ恋人とか興味無いわけじゃないし」

幼「ふーん」

男「ま、今の俺には恋人まで作ると荷が重いって話よ」

幼「できた事無い人が言ってもね....」

男「う、うっせえな!俺だってそりゃカップルは羨ましいんだよっ」

幼「おや?羨ましいんだ」

男「高校生活な一つの楽しみだろ」

男「てか幼馴染のほうはどうなんだよ」

幼「何が?」

男「彼氏の一人や二人、いてもおかしくないだろ」

幼「ボクは別に必要としていないからね 羨ましくもないし」

男「へぇ」

幼「それに男子に性的な目で見られるのも好きでないんだ」

男「(エロい体しておいて....)」

幼「今いやらしい事を考えたね?」

男「いえいえ考えてませんとも」

男「幼馴染の夢は玉の輿だもんな」

幼「はっきり言うと女性なら誰だって財力のある人間には目がいくものだよ」

男「ま、そりゃ立派なステータスだもんな」

幼「品定めしていく内に三十路を越えて売れ残りになってしまうからね」

男「売り手市場から一気に買い手市場だもんな」

幼「そういうことだね」

男「ていうか私立行けば良かったじゃんか」

幼「ボクは別にそこまでお金持ちと結ばれたいわけじゃないよ」

男「はいはい」

幼「むぅ」

男「まあ幼馴染なら苦労はしないだろうよ」

幼「どういうことかな?」

男「幼馴染ほどの外見なら金持ちの方から寄ってくるからな」

幼「ボクはきちんと中身を見てくれる人を選びたいね」

男「財力で選ぶ奴のセリフかそれ」

幼「うるさいなあ」

男「で、昨日のカラオケでは見つかったのか?」

幼「駄目だね」

男「駄目なのか」

幼「お金持ちの息子ってだけで教養も無いような人たちだったよ」

男「....お前、理想高いよな」

幼「そうかな?」

男「必ずダメ出しから入るし」

幼「それは否定できないかも」

男「ま、いい奴が見つかるといいな」

幼「........」

男「で、服はいいの見つかったのか?」

幼「えっ?えっ、と....」





男「さて、帰ったら勉強せんとな」

幼「君は勉強のことしか頭に無いのかい?」

男「センターに向けて対策練らないと」

幼「センター???まだ高校二年なのに?」

男「んー、うん」

幼「気が早いね」

男「んん........」

幼「どうかしたの?」

男「ま、俺には塾やら予備校やらに行く金も出せるかわからないラインなんだよ」

幼「それは残念だったね」

男「ああ」

幼「....あ、あのさ」

男「?」

幼「今日は、その、ご飯ありがとう....」

男「お礼言われる程のランチの質でもないぞ」

幼「そ、そのまあ腕を組んだだけじゃ対価にならないと思うんだ」

男「いや俺は別に対価とか」

幼「あ、あのその....ボクの部屋でよければいつでも勉強しにおいでよ」

男「へっ」

幼「連絡さえくれれば自習室として使ってくれてもいいよ」

男「いや、それは流石に申し訳ないと言うか」

幼「君は残念ながら勉強は人並み以上に出来るからね」

男「残念で悪かったな」

幼「宿題を中心に自習しにおいでよ」

男「でも幼馴染の親にも気を遣わせて悪いだろ」

幼「いやいやむしろもった気を遣わせてあげなよ」

男「はぁ??なんでだよ」

幼「なっ、何でもだよ....」

男「そりゃ冷房の効いた部屋で勉強できるのははっきり言ってすごい魅力的だからな」

幼「そうだろうね」

男「でも俺幼馴染の連絡先知らないし」

幼「!!! そ、そうだね 連絡先を交換しようよ」

男「そうだな」

幼「君は未だにガラケーなんだよね」

男「悪かったな」

幼「まったく....しょうがないからメールで相手してあげるよ」

男「なんかムカつく」 

幼「何故君なんかにボクの連絡先を教えてあげなければならないのかね」

男「えぇ....自分で提案しておいて....」

幼「それと!ボクのアドレスとか他人に教えないように」

男「あー 稀に聞かれるんだよな」

幼「そのたびに知らないと答えているのかい?」

男「あぁ まあそのたびに嘘だろ嘘だろ言われるけどな」

幼「ふぅん これからも教えないように頼むよ」

男「今まで通り 知らないって言っとけばいいわけだ」

幼「えっ、と....“知ってるけど教えない”でいいんじゃないかな?」

男「えぇ?知ってるって言ったら余計面倒だろ」

幼「むぅ」

男「俺押しに弱いし」

幼「そうだった 君は誘惑に弱い男だったね」

男「変な言い方にするなや」

幼「君だって安易に教えられたら嫌だろう?」

男「確かに」

幼「ボクだって同じさ だからボクにアポなんて取ろうとせずにきっぱり断ること いいね?」

男「はーい」

幼「....わかっているのかな?」

男「メアドとか手打ちでいいんだよな....?」

幼「これだからガラケー民は....」

男「あんまり交換とかしないからさ」

幼「他の男子とかは?」

男「友の奴が俺のメアド聞かれたら教えてるっぽくて、そいつから俺にメール来たらコッチが登録してる感じかな?」

幼「へぇ....そ、それは女子も一緒なのかい?」

男「んー?そうだな たまにメアド渡されたりしたけど」

幼「君が顔文字使ったりしているのを想像すると吐き気と頭痛が同時にくるね」

男「うるせえな 幼馴染はどうなんだよ」

幼「君には使わないであげるよ」

男「幼馴染の方が顔文字使いそうなイメージ無いけどなあ」

幼「失礼な」

男「えぇー幼馴染が(`・ω・´)とか(。・ω・。)とか使ってるって考えたら....ブフッ」

幼「君のメアドを片っ端からスパムに登録しておくよ」

男「すいませんでした」

幼「君が期待しているような可愛い顔文字も絵文字無いよ」





土曜日 昼 学校



教諭「はい!講習はこれにて終了!みんな土曜日なのにお疲れ様!」

生徒「起立 気を付けーおちんちーん」

男「ありがとうございまんこしたー」

「終わったー」 「帰りにラーメン行こうぜ!」

男「(さすがに午後は教室閉めるよな......)」

幼「午後は教室使えないよ」

男「ぬおっ!?」

幼「どうせ居残って勉強でもしようとしていたんじゃないのかい?」

男「......まあ」

幼「君の考えそうなことだね」

男「15時からバイトだから微妙に時間余っちゃうんだよな」

幼「バイト先に休憩室は無いのかい?」

男「そういや.....あるけど駄目だな まああるには、ある」

幼「?」

男「女先輩とかいたら勉強どころじゃないし」

幼「女先輩......?」ピクッ

男「2コ上の人でさ ○○女子大通ってるめっちゃ頭いい人なんだけどさ」

幼「ふぅぅん で、その学業優秀の先輩がいて何で駄目なんだい?」

男「いやもうマシンンガントークでね 話かけてきまくりなんだよ...」

幼「ふぅん.....あっそ...」

男「今日シフト被ってるんだよな...帰りに捕まるとこれまた話が長いんだよ」

幼「帰りって何時なんだい?」

男「今日は22時だ 長い長い一日だ」

幼「それは大変だね」

男「無理やり晩飯奢ってくるのし」

幼「...........」

男「面倒見はいいんだよな ちょっとお節介だけど」

幼「今日とか御馳走にでもなればいいじゃないか」

男「いやいや 与えられる事に慣れるのは男としてさ」

幼「と、言いつつ期待しているくせに」

男「期待も何も向こうが奢るって言ったら断っても聞かないんだよ」

幼「そんなお節介さんなのかい?」

男「やばいね」

幼「........」

男「先々週なんて断ったら『じゃあウチに食べに来い!』だぜ?流石に焦ったな」

幼「っ!?」

男「仮にもあんた一人暮らしだろって...」

幼「い、いかっ....」

男「イカ?」

幼「ぃぃ、行かなかったのかい?そそそ、その先輩の家とやらに」

男「流石に断るよ 気まずいし」

幼「ふぅぅぅん 君にしては意外な選択肢だったね」

男「なんで意外なんだよ」

幼「君のような野獣はてっきりその先輩も御馳走になるのかと」

男「んな真似するか 好きでもないし」

幼「っ、...そう」

──────夜 男のバイト先

男「ふぅ....(あと15分か)」

先輩「あぁーやっと暇になったね」

男「ですな」

先輩「お腹ペコペコのバッキバキだよー」

男「バッキバキて...」

先輩「まあ私腹筋割れてるし」

男「おぉ、流石陸上部!」

先輩「見る?」

男「えっ、遠慮しておきます」

先輩「フフフ 時に男君!夜ご飯はどこで食べるのかにゃ?」

男「家帰ってから食べます」

先輩「ええぇ?家帰るまでに餓死しちゃったらどうするの?」

男「どんな極限状態ですか」

先輩「明日休みでしょ?なら先輩が御馳走するよ!」

男「いやいや大丈夫ですって」

先輩「遠慮しないでよう」

男「してないですって あっ、ほらお客さッーー」

先輩「いらっしゃいませい!」

幼「ストレートティーください アイスで」

先輩「はい お待ちください」

男「(何でアイツが...)」

先輩「およよ?どしたの?」

男「あ、いや、知り合いなんです」

先輩「えっ?あのおっぱい大きい子?」

男「いや、まあ、はい......」

先輩「彼女か!!」

男「いや付き合ってるとかじゃないんですけどね」

先輩「ふぅん……見せつけてくれるね」

客席

男「ほいアイスティー こんな時間に何しに来たんだよ」

幼「ちょっと近くまで用事があってね」

男「用事?こんな時間に?」

幼「まだ九時台じゃないか」

男「まぁそれもそうだけどさ ここらへん夜になると真っ暗だし」

幼「そうだね」

男「とりあえず22時過ぎまで待ってろよ」

幼「む」ピクッ

男「もう用事は住んだんだろ?」

幼「う、うん」

男「じゃあ俺も一緒に帰るからさ 上がるまで待っててくれ」

幼「ッ、しょうがにゃいなあ...」

アップ後

先輩「えっ!?もう帰っちゃうのかい?」

男「あいつ待たせてるんで」

先輩「一緒に帰宅?それとも今夜は......おちょめちょめ!?」

男「おちょっ?いや、まあ家が近所なんですよ」

先輩「へえぇ いいなあ」

男「いいのか悪いのか」

先輩「男君が22時に上がるって知ってたの?」

男「まあ、多分」

先輩「ふぅん あぁっぁあ!羨ましいね!」

男「?」

男「?」

先輩「君も罪な男だねえ」

男「な、なんすか茶化さないでくださいよ」

先輩「フフフ 照れない照れない」

男「あぁもう!お疲れ様でしたっ!」

先輩「はいはいお疲れ様!そんでもって御馳走様!」

男「んじゃ!」

先輩「.....ハァ 羨ましい」

男「おう」

幼「ん」

男「帰ろうぜ」

幼「ん」

男「どうした?」

幼「あの先輩に晩御飯誘われてないのかい?」

男「ん?まあ毎回の事だし断ったけどさ」

幼「ボクなんかほっといて食べに行けばいいのに」

男「そういうわけにはいかないだろ」

幼「........」

男「ほらっ 帰ろうぜ」

幼「ん」

帰路

男「徒歩だったのか」

幼「ん」

男「用事ってなんだったんだ?」

幼「君には関係の無いことだよ」

男「教えてくれたっていいじゃんかよ」

幼「無いったら無いよ」

男「はいはい分かりました」

幼「にしても」

男「?」

幼「実に美人な先輩だったね」

男「ああ女先輩か」

幼「そして確かに壊れたラジオ感は出ていたね」

男「だろ?止まらないんだよ」

幼「あんな美人な先輩にご飯に誘われるんなんて......それを断るなんてね」

男「美人は別に関係無いけどな」

幼「勿体無いことするね」

男「奢ってもらうのって気が引けるだろ」

幼「おや?招待されたんじゃないのかい?先輩の部屋という花園に」

男「言い方おっさん臭っ!」

幼「食欲と有り余った性欲も満たされるはずだったのにね」

男「いちいち突っ込むのも面倒くせぇ」

幼「........オホン ま、ませっかく御馳走してもらえるチャンスだったのにボクのせいで潰れてしまったわけだね」

男「いや別にそんな風には」

幼「あ、あ、あれだね お詫びにボクの家が夜ご飯を出せばいいんじゃないのかな?」

男「?」

幼「ボクの家で食べていきなよ」

男「いやいやそれが一番気が引けるんだって」

幼「今お母さんに連絡するよ」

男「そんな急に」

幼「OKだそうだよ」

男「早ッ」

幼「LINEは早いんだよ」

男「そ、そうなのか」

幼「それで、食べて行くんだよね?」

男「でも.....」

幼「ボクの母親は君のためにもう夜ご飯を作っているだろうね...」

男「えぇ」

幼「その気持ちを無下にするなら別に」

男「わ、わかったよ御馳走になるよ」

幼「そう ついでに宿題もやろうね」

男「そっちがメインだったろお前」

幼「何を言うんだか......御馳走になっておいて」

男「まぁ明日休みだからいいけどさ」

幼「また寝る気だね」

男「今度は寝ねーよ」

幼「どうだか」

男「寝ないって」







幼母「遠慮しないでねっ!」

男「いつもスイマセン......」

幼父「男君の親父には俺が若いころにかなり世話になったからな!遠慮するな!」

男「は、はぁ(幼父さんかなり酔ってるな)」

幼父「今日はあれらろ!!泊まってくんだろ!?ん!?」

男「い、いやそういうワケでは....」

幼父「られー?幼馴染が今晩は男君が泊まッーんぐぉ!?」

幼「ほら、酔っ払いはとっとと死んで」

幼母「お父さん大分酔ってるみたいね」

幼「お母さん、この酔っ払いを部屋まで」

幼母「はいはい」

男「お前なぁ......お父さんにエルボーかますなよ」

幼「お酒入るとあることないこと喋るからね」


───────幼馴染の部屋

幼「は?」

男「だから俺はもうやってあるんだって」

幼「あ、あ、あの量の宿題を?」

男「結局バイトまでの時間と休憩中に終わっちまった」

幼「そ、そういうところは恐れ入るね」

男「下手に残しておくとプランたてにくいからさ」

幼「そう」

男「...」

幼「......」

幼「ッ、......強いて言うならココとココとココと他には」

男「めっちゃあるやん」

幼「教えてくれてもいいよ」

男「.......ハァ」

幼「ほら、隣来てよ」トントン

男「はいはい」





幼「うん、終了」

男「お前殆ど俺の写したしただけじゃねーか」

幼「減るもんじゃないし」

男「いいように利用しやがって」

幼「お詫びにお風呂を貸してあげるよ」

男「もう夜遅いしいいよ」

幼「せっかく君のために沸かしたのに?」

男「いや、でもですねえ」

幼「わざわざ沸かしたガス代......」

男「俺の断れないツボをグイグイ圧すな」

幼「ちょろいからね」

男「はい」

幼「遠慮されるような事ではないよ せっかく準備したんだし」

男「準備してから言われると断りにくい」

幼「知ってて準備してるんだよ」

男「ハァ...」

幼「はい早く行っておいで」

男「えぇ」

幼「はよ」

男「ハァ はいはい」



男「ふああ」

幼「長いお湯だったね 遠慮しないタイプだったんだね」

男「お前が洗面所にいるから出られなかったんだろ...」

幼「おや?」

男「んなんだぁよ...」

幼「眠そうだね」

男「んん......帰らなければ........」

幼「あっ」

男「ん?」

幼「君に渡すものがあるんだった」

男「はえ?」

幼「その前にお風呂に入ってくるから待っててね」

男「ええぇぇっぇ」

幼「今玄関とか窓開けるとセコム来るからね(大嘘)」

男「軽い軟禁じゃねぇか」

幼「寝ててもいいよ」

男「そういわけには...」

幼「っじゃ」

男「......眠い......」






───────────────

小学生時代のお話


男「おはよう幼ちゃん!」

幼「おはよう男君」

.......男君のお父さんが居なくなったと聞いてから随分と時間が経った
��亡くなった��ではなくて、��居なくなった��という話はどこか引っかかっていたけど

男「昨日突き指したところすごい腫れちゃったよー」

幼「気をつけないと駄目だよ?」


いつも通り彼は元気だった

男君のお父さんが居なくなってから、彼と男母さんは隣のアパートに引越してきた」
元から親同士が仲良く、同じように仲の良かった私はとても嬉しかった
私一人だった登下校が彼との二人での登下校になった。二人だけの時間。男君も同じように嬉しく思っているんだろうと思った


ある日 土曜日

男「あ、おはよう」

幼「おはよう」

男「.......」

幼「ねぇねぇ、たこ焼きマントマン見た?」

男「あっ、あっ、うーん......見てないや」

幼「そっかー ボクも途中までしか見てないけどね」

男「.......」

幼「元気無いね」

男「そんなことないよ」

幼「そう? 嫌だなぁ今日...」

男「......」

幼「授業参観だなんて...来なくていいのに.......」

─────────学校

先生「はい!じゃぁ今日は作文をね!発表ね!してもらいます!」

生徒「ヤダヤダー」

先生「フフフフ 今年は誰に読んでもらうかはぶっつけ本番で指名しますからねぇ」

男「........」キョロ...

幼「嫌だなぁ」キョロキョロ

「ゲッ!俺のトーチャン!」「あ!○○のお母さんだ!」
「おぉ、△△の母ちゃんの着物だぞ!」「●●の母ちゃんってマジでマサイ族だったんだな!」

幼「あっ!」

男「!?」

幼母「チャオー」フリフリ

幼「うぅ....(何で来るかなぁぁ)」

男「.....」ガックリ

先生「はい!幼馴染さん!読んでくださーい!」

幼「っ!?」

幼「------です。おわり」

パチパチパチんこパチパチパチパチパチ

先生「いやはや本当に素晴らしい作文でした」

幼母「よっ!にっぽんいちー!」 \ドッ/

幼「あぅうぅぅ」

「ギャハハハ!幼の母ちゃん面白ぇー!」

先生「さあて次は」

「幼馴染読んだんだから次は男の番ー!」「そうだー!」

男「えっ えっ?」

先生「.......」

「ほら恥ずかしがってないで読めよ男ー!」「はーやく!はーやく!」

先生「と、言うわけで読め読めうるさいけど本当は自分が読みたくてしょうがない△△!」

「えぇ!?」「アハハ!△△だせー!」

先生「さ、読んでみよう!」

男「ホッ」

-----授業終了

幼「もう!なんで来るの!?」

幼母「だってぇー授業参観だしぃー」

幼「ばかばかばか!」

幼母「オホホホ それじゃ、私は先に帰るわねっ」

幼「帰ってよもう」

男「......」

幼「変にお洒落までしてくるなんて......ああ恥ずかしい」

男「そうかな?」

幼「男君のお母さんは?」

男「仕事」

幼「仕事かぁ いいなぁ」

男「なんで?」

幼「だって仕事だったら来ないでしょ?」

男「......うん、来ない」

幼「ボクなんて来ちゃった挙句に作文まで読まされたよ」

男「良かったよ?幼ちゃんの作文」

幼「良くないよっ 恥ずかしいだけだもん」

男「そう?かなぁ」



運動会   お昼

男「...........」

「お弁当食べよう!」「うわぁ!△△ん家の弁当すげぇ!」「お父さん撮ってー!」「●●の父ちゃんシマウマの肉獲ってきてるぞ!!」

男「.............」

男「......」スタスタスタ


幼「......」キョロキョロ

幼母「どうしたの?」

幼父「男君はどこだ?」

幼「それが探してるんだけど...」

幼父「んー?午前中は玉入れに出ていたんだよなあ?」

幼「誰かと食べているのかな?」

幼母「だといいけれど...」

幼「ボクもお腹空いた」

幼父「おう!パパもお腹空いたぞ!」

幼母「男君の分はあってもパパの分は無いわよ」

幼父「おうぅ」



ーーーー校内 図書室

男「...........」ガサガサ

男「おにぎりじゃなくてパンにすればよかった」

男「...明太子にすればよかった......」

男「雨...降ればよかったのに...」


____午後

幼「どこに行ってたんだい?」

男「ん ちょっとね」

幼「お母さん来た?」

男「仕事」

幼「そっか」

男「ん」

男「ん」

幼「あれ?じゃあお昼は誰と食べてたの?」

男「え、と、友達と...」

幼「そっか ならいいなだけど」

男「うん」

幼「.........」

<<<小学校 六年生>>>

幼馴染の家

幼父「よっ!ほっ!」

男「えぃ!」

ゲームオーバー!

幼父「おっとと、また負けちゃったな!」

男「俺の勝ちー!」

幼父「強いなぁ男君は!」

男「えへへ」

幼「お父さんが弱いんだよ」

幼父「そういえば来週は運動会だな」

幼父「そうねえ」

幼「嫌だな」

男「......」

幼父「親子参加種目は二人三脚と綱引きと......あとなんだっけか?」

幼「出なくていいよ」

幼父「どうだ男君!俺と二人三脚でないか!?」

幼「っ」ムスッ

男「えっ?」

幼父「男君足速いし優勝できると思うぞ!ガハハ!」

幼「(最近パパって男君に甘いよね)」
幼母「(仕方ないじゃない......)」
幼「(......)」

幼父「どうだ?」

男「えっ?い、いいのかな?」

幼父「いいに決まってるだろう!俺と組めば優勝間違い無し!」

幼「むう」ムスッ

男「えへへ、じゃ、じゃあ」

幼「駄目」

男「っれ?」

幼父「っと、いいじゃないか別に」

幼「二人三脚はあくまで親子だもん」

幼母「いいじゃないの別に……」

幼父「そうだぞ 親子みたいなもんなんだし」

幼「むう!パパは私のお父さんでしょ!?」

幼母「ほらほら嫉妬しなーいの」

男「あ、あの......」

幼「駄目ったら駄目!」

幼父「ハッハッハ!嫉妬だなんてなー じゃあ幼二人三脚出るか!?」

幼「出るわけないじゃん」

幼父「なら別に男君と出てもいいだろう」

幼「むう」

男「い、いいの?」

幼母「もちろんよ」

幼父「優勝するぞー!」

男「へへへ.....親子二人三脚.....」

幼「駄目!パパは私のお父さんなの!」

男「でも幼ちゃんのお父さんは」

幼「駄目に決まってるじゃん!男君のお父さんじゃないんだしっ!」

幼母「幼馴染ねぇ」

幼父「だいたい男君お父さんいないくせっ!!!」

男「ッ......」
幼父「!」
幼母「!!」

男「あっ、そ、そうだったー!俺お父さんいないんだったー!」

幼「.........え、えっとその、あの、その.....」

男「だから駄目なんだった!ごめんね幼ちゃん!俺もう帰らなきゃ!」

幼「あ、あの」

男「お邪魔しましたー!」

幼母「ッ」バチーン!

幼父「ちょっ!?ビビビンタですか....」アワワ

幼「痛ッ!?」

今現在最初で最後の母の激怒。痛かったけど...だけどそれ以上に痛かったのは男なんだろう
自分の軽率な発言。そのあとの男の表情は一生忘れられない
授業参観の時も、運動会の時も、誰かを捜すように周りを見渡していた彼の心をしった
突きつけられる彼の現実を、彼の痛みを......どうして私はもっと早く気付いてあげられなかったのだろう

運動会前日

TV「明日は快晴です!山下!金返せ!」

幼「.......」

幼母「運動会日和ねえ」

幼「ねえお母さん」

幼母「なあに?」

幼「あのね、明日のお弁当なんだけどさ......」

────翌日運動会 お昼


男「.........」

「▽▽の家も一緒に食べよう!」「お父さん!綱引き出ようよ!」
「父ちゃん、二人三脚前に食いすぎないでよ」
「●●の母ちゃん50m4秒台らしいぞ」「やべえだろそれ」


男「........」スタスタ


─────校内図書室

男「(お昼、食べよう......)」

幼「図書室での飲食は禁止だよ」

男「ッ!?」ビクッ

幼「まったく....どこに行くのかと思えば」

男「な、なんだ幼ちゃんか」

幼「トイレの時以外は校内に入っちゃダメって先生言ってたじゃんか」

男「.....俺は毎年入ってるし」

幼「毎年ねぇ」

男「で、どうしたの?みんな外にいるよ?」

幼「い、いや、その」

男「?」

幼「ボ、ボクもここでお昼を.....」

男「そっか」

幼「......」

男「......」

幼「と、言うワケだよ」

男「じゃあ一緒に食べようか」

幼「っ、うん」

幼「そうだ」

男「?」

幼「おかずの交換っこをしようよ」

男「え?....でも俺コンビニのおにぎりだよ?」

幼「っっっとと、そ、そうだったね」

男「ごめん...」

幼「まあでもいいよ ボクの親はどうやらおかずてんこ盛りにしてしまったらしいんだ」

男「そっか」

幼「ほら、あげる」

男「えっ、いいの?」

幼「遠慮しないでよ はい」

幼「これとかこれとかこれとか」

男「わぁ...」パァ

幼「おにぎりだけじゃパワー出ないからね」

男「いただきます」

幼「どうぞ」

男「モグモグ」

幼「.......毎年ここで一人で食べてたのかい?」

男「モグモグ......ん....」

幼「そう」

男「.........」

幼「.........」

男「.......結局、今年も来なかったんだ」

幼「お父さん?」

男「来るわけないのにね」

幼「......」

男「ありがとう幼ちゃん」

幼「っ」

男「今年は楽しい運動会だったかも」

幼「まだ終わってないじゃないか」

男「それもそうだね」









委員長「では!体育祭にむけての種目別エントリーを始めます!!」

委「内村君と荒波君は代表リレー」

委「石川君と梶谷君と筒香君と下園君は騎馬戦!」

委「多村君が怪我をしてしまったので欠場」

委「井納君はパン食い競争!」

委「男!」

男「あー、俺は玉入れがいいなー」

委「そんな種目は無い」

男「疲れないやつで」

委「安心しろ お前にはとっておきの種目がある。内定済みだし拒否権も無い」

男「んっ?え?」

ちょっと前


幼「なんでボクが二人三脚なんかしなければならないんだい?」

委「そこをなんとか.....!!」

幼「.....」

委「ウチのクラスから一組出さなきゃいけないんだけど生憎出せるのが幼馴染さんとこだけなのよ...」

幼「どういう意味だい?」

委「で、でも男のほうは了承してくれてるんだよ!(嘘)」

幼「っ」ピクッ

委「とととりあえず相手はともかく男女二人三脚には出てくれるみたいでさ」

幼「別に彼が出ようがボクには関係ないけど」

委「そ.....そうだよな.....」

幼「他をあたってみなよ ま、相手なんて見つからないだろうけど」

委「んー、まぁ男とペアならいいって子は何人かいるからそっち当たるかあ」

幼「ッッッ」キュピーン

委「ぴぇっ(なっーーなんだ??殺気っ!?)」

幼「そんな罰ゲームじみたことを引き受けてくれる人がいるとでも?」

委「へ?ま、まあ......」

幼「.....ふぅん」

委「ギャル子ちゃんとか『別に男っちとなら全然余裕っしょ!』みたいなノリだったし」

幼「それはやせ我慢だね」

委「えぇ!?そ、そんな風には見えなかったけど.....むしろノリノリだったような」

幼「ギャル子ちゃんはクラスのムードメーカーだから気負わせたくないものだね」

委「んんん、あ!でも」

地味子『うーーん....え?男君がペアなんですか?そ、それなら....』

委「って言っててくれてたし」

幼「地味子ちゃんは断れない優しい子だからね」

委「えぇぇぇ....あ、で、でも留学生のユリアンちゃんは」

ユリアン「オレ....ツヨイヤツ.....モトメル....」

委「だったし!」

幼「あの子のポテンシャルに二人三脚は役者不足だね」

委「あ、でも影薄子ちゃんは!」

影薄子「..............」コクッ

委「って返事くれたし!」

幼「寝ていただけだよ」

委「それならあの子は!」

幼「ダメ」

委「あの子!」

幼「駄目」

委「あの子!」

幼「め」

委「ハァハァ.....じゃ、じゃあどうしろと.....」

幼「しょうがないからボクが出るしかないね」

委「(最初からそう言ってよ....)」

幼「クラスのためだからね」

委「あ、ありがとう...」

そんで


委「お前は二人三脚」

男「?」

委「幼馴染さんと」

男「は?」

委「確定事項につき拒否した場合は内申に影響するおそれもあるとかないとか」

男「選択の自由は?」

委「あと打ち上げについてなんだけど」

男「えぇー...」


放課後練習

男「で、だな」

幼「最悪だね」

男「お前こそなんで断らなかったんだよ」

幼「仕方ないよ ボクも断腸の思いだったんだ」

男「.......」

幼「ま、こうなってしまった以上はクラスの皆に迷惑はかけれないからね」

男「まあな」

幼「フム で、このハチマキを足に巻くわけだけど」

男「左右どっちがいいんだよ」

幼「......」

男「な、なんだよ急に黙るなよ」

幼「ボクにいい考えがあるんだ」

男「?」

幼「これを君の首に巻いて君が這いつくばる。それにボクが跨ってゴールを目指すっていう画期的な案なんだけど」

男「突っ込まんぞ」

幼「冗談だよ こんなの君にとってはただのご褒美だからね」

男「ドMか俺はあんめ」

幼「まったく.....ふざけたこと言ってないで左右どっちか決めなよ」

男「俺は終始真面目だったぞ じゃあ俺が右 幼は左な」

幼「ん」

男「とりあえず.....実際に走ってみるか?」

幼「その前に」

男「? どうした?」

幼「まず二人三脚とはボクの体には一切触れないこと」

男「え?それ無理じゃね?」

幼「汗をかかないこと 息もダメ こっちも見ないこと」

男「......」

幼「なんだいその目は?」

男「いや、なんていうか嫌なら嫌とはっきり言ってくれ」

幼「っ」

男「とりあえず委員長には俺のほうから言っておくよ 二人三脚って意外とハードみたいだし幼にはキツ」

幼「オホン」

幼「わかったよ しょうがないなあ」

男「はえ?」

幼「委員長に迷惑かけれないし練習してあげるよ」

男「っても息もするし汗もかくし体だって密着すれば多少は触れるぞ」

幼「我慢するよ」

男「どうせ始めたらぶう垂れるくせに」

幼「君は失礼だね どうせ二人三脚に乗じて淫らなハプニングを期待していたんだろうに」

男「してないけど」

幼「どうだか」

男「ハァ あぁもうやるぞ」




男「っよっと....(ギュ」

幼「きつい」

男「きついくらいが丁度いいんだって」

幼「近い」

男「仕方ないだろ」ガシッ

幼「んぇッ!?」

男「うわっ....お、お前変な声出すなよっ」

幼「きききき君が急に肩抱き寄せるから!」

男「え、だって二人三脚ったら肩組まないと走れないだろ?」

幼「しょ、しょーだけど....」

男「痛かったか?」

幼「平気 気持ち悪かったけど」

男「すいませんね」

幼「迂闊だった 確かに二人三脚は肩組んでたね」

男「あとはシンクロですな」

幼「君は早漏だから先にテンポ取りそうで嫌だよ」

男「はぁ」

幼「早漏テンポテンツと改名するべきだね、うん」

男「突っ込まないからな」

幼「事実だと認めるんだね?」

男「違うわ!!」

男「お前な、女子なら早漏とかいう言葉は控えろよ」

幼「焦らないでよ」

男「呆れているんだ とりあえず練習するぞ」

幼「はいはい」

男「んと 1 2 1 2 の掛け声で足出してけばいっか」

幼「君は手を出すが早いからゆっくりね」

男「なんの話だ」

男「とりあえず幼の右足の歩幅に俺が合わせる」

幼「はい」ヒョイ

男「こんなもんか」

幼「む」

男「なんだよ」

幼「肩の触り方がいやらしい」

男「いやらしくないだろ」

幼「なんか嘗め回すようにさわってくるから」

男「ソフトに触ってるんです」

幼「ソフトタッチというやつだね」

男「んん?んー、タッチではないだろ」

幼「ん」

男「時間も無いし練習しようぜ」

幼「走るのかい?」

男「まずはゆっくりな」

幼「あんまり興奮して早く腰動かさないでね?」

男「足な」

幼「っけ」

男「せーの」
幼「せーの」

男「いっち」ヒョイ

幼「に」ヒョイ

男「いっち」ヒョイ

幼「今えっちって言った?」ピタッ

男「いっーちょえ!?」ズザッー

幼「ちょちょちょ、転ばないでよ」

男「止まるなよっ!」

幼「だって今なんか卑猥な言葉が聞こえたから.....」

男「どんだけ思春期脳だよ ったく...」

幼「怪我しないでよね?」

男「あやうくしかけたわ」

周り「なにやってんだお前ら」

周り「相変わらず仲良いな 優勝頼むぜ」

男「.....予選突破も怪しい.......」

幼「まったくだよ」ハァ

男「とりあえず.......」

男子「いちに!いちに!いちに!」
女子「ああああああああああああ!!!」

男「あのペアくらいとは言わないけどそれなりに走れないと本番で大恥だからな」

幼「まったくだね 君のせいとは言え恥をかくのはボクもごめんだし」

男「おうテメェだったら真面目に練習しろや」

周り「頼むぜお前らー」
周り「男が羨ましいよ...」
周り「最低でも決勝行けよなー」

幼「ボク、あまり走るのとは不得手なんだけど」

男「知ってるよ」

男「まずは一緒に走ることから合わせようぜ」

幼「それが一番難しいんだよ」

男「まぁそうかもしれんが」

幼「........」

男「よしっ」ガシッ

幼「にょっ」

男「とりあえずあのラインまで走るぞ」

幼「ハイハイわかったよ」

男「せーっの」





放送「チンポンマンポーン 今日の練習時間はしゅーりょー早よ帰れ」

男「っげ、もうこんな時間か...」

幼「まったくだね」

男「ふう....」

幼「なんだいその溜息は」

男「二人三脚でも結構疲れるもんだな」

幼「まるでボクとのペアが一番疲れるみたいじゃないか」

男「そうは言ってないだろ」

幼「........」ジーッ

男「な、なんだよ」

幼「ちょっとボクの胸とかに意識してたくせに」

男「んがっ!あ、あれは...!」

幼「おや?否定しないんだ」

男「いやちょっと待て待て待て」

幼「あれだけ体が密着してるのもおかしいと思ったんだよ」

男「不可抗力だって!密着してるのはしょうがないだろ!」

幼「ふぅん」

男「そりゃちょっとくらい意識はするだろ!」

幼「まったくそんなにムキにならなくても」

男「お前が茶化してくるからだろ」

幼「幼馴染なのにそんなの意識しちゃうんだね」

男「当たり前だろ」

幼「えっ?」

男「いや、男と女なんだから意識するのは当たり前だろ.....幼馴染同士とか関係ねーし」

幼「.......そ、そうなんだ」

男「なんだよ今度は急にしおらしくなって」

幼「君もあれだね、あれ」

男「アレ?」

幼「ボクはもう着替えに行くから じゃっ」

男「あーハイハイ」

━━━━━更衣室

幼「...........」

女子「あれ?幼馴染ちゃんどったの?」

幼「へ?」

女子「いや、機嫌いいなあってね」

幼「そ、そう?」

女子「うん もしかして男君と何かあった?あったの!?」

幼「特には何も無かったけど....彼はやはりケモノだったね」

女子「.....?そ、そうなの?」

幼「うん」

女子「なんか男君に嬉しいことでも言われたのかと....」

『意識するのは当たり前だろ 幼馴染同士とか関係ねーし』

幼「......ないない」

女子「ムフフ どーだか?」


体育祭一週間くらい前 まぁ一週間くらい前だよだいたい

男「はい」

後輩「あ、ありがとうございます!」

男「そんなかしこまってお礼言われるほどの事じゃないけど.......」

後輩「いえいえ!男先輩は教えるの上手ですから!」

男「そう言われると調子乗るからやめて!」

後輩「フフフ あの、男先輩も二人三脚出るんですよね?」

男「ん、出るよ も ってことは後輩ちゃんも?」

後輩「はい!出ます!」

男「おー」

後輩「.........あ、あの先輩」

男「?」

後輩「私と勝負しませんか?」

男「勝負?」

後輩「そうです!二人三脚で!」

男「あー どっちが勝つかみたいな?」

後輩「はい!」

男「いいね けど俺のところは予選突破も怪しそうだわ」

後輩「そ、そうなんですか...?」

男「幼馴染の奴がなあ.....」

後輩「そ、それでですね先輩 もしよければこの勝負にちょっと条件をつけたいんです!」

男「条件?」

後輩「はい!」

男「え?え?条件とな?」

後輩「それは明快!勝ったほうの言うことを聞く!です!」

男「..........えぇ」

後輩「どうでしょう!?」

男「えぇえええぇぇっぇぇぇぇぇぇ」

後輩「先輩にとって悪い話ではないと思います!」

男「な、なんでさ」

後輩「例えば先輩が勝てばコレをあげます!」

男「そ、そ、それは食堂の食券!!?」

後輩「21枚あります....フフフ」

男「そ、それは魅力的すぎる...!」

後輩「別に私も無理難題の注文をするつもりじゃありませんよ?」

男「えぇ...でも....」

後輩「そのほうが楽しいし!」

男「むう....」

後輩「ね?(食券チラッー」

男「いやでも」

後輩「はい勝負成立です!では来週の本番は楽しみにしています!」

男「あっちょっー」





幼「そんなくだらない誘い文句を真に受けたと」

男「いやなんか勝手に話が進行してしまって」

幼「君もキッパリ断れないね」

男「別に食券に目が眩んだわけじゃないぞ」

幼「でもどうするんだい?言うこと聞くだなんて」

男「んー、まぁ後輩ちゃんの言うことだから宿題の手伝いとかかな?」

幼「.......」






幼「やあ」

後輩「! 幼馴染...先輩!」

幼「なにやら男に勝負を仕掛けたそうじゃないか」

後輩「はい!」

幼「何を考えてるか知らないけど」

後輩「フフフフ 本当に知らないんですか?」

幼「ッ」

後輩「体育祭本番 私が勝ったら男先輩貰いますから」

幼「は?」

後輩「聞こえなかったんですか?男先輩、私の彼氏にするから」

幼「ふうん」

後輩「約束は約束ですからね」

幼「『私の彼氏になって』とでも言うつもりかい?」

後輩「そこらへんは色々考えてます どうせ勝つのは私ですからね!」

幼「っ」ピキ

後輩「男先輩なら誠心誠意伝えれば断れないって信じてますし!」

幼「男に好意は無いかもよ?」

後輩「そんなの関係ないですよ 私の事好きにしてみせますから」

幼「っっ」ピキキ

後輩「フフフフ 楽しみです」

幼「そんな条件飲むわけないと思うけどね」

後輩「別に方法はいくらでもあります!ウチに呼んで既成事実作るって手段もアリですし!」

幼「っっっ」ピキピキキ

後輩「あぁぁ 早く体育祭来ないかなー」

幼「そうだね....」

後輩「あ、行っちゃうんですか?」

幼「これから練習があるんでね あとそれから」

後輩「?」

幼「二人三脚なんだ 勝ったらボクの言うことも聞いてもらうからね?」

後輩「.....望むところですよ」

幼「........ふん」

宣戦布告の夜 幼馴染の家

幼「........................」

幼「『私のこと好きにしてみせますから』」

幼「........」





翌日 放課後

男「練習しないのか?」

幼「うるさい」

男「えぇ...」

幼「ボクはちょっと考え事をしているんだよ」

男「そうか」

後輩「せーんぱい!」

男「うわっ!? びっくりした...」

後輩「フフフフ ちゃんと練習してますか?」

男「見ての通り!」

幼「む」

後輩「わお!仲の良いお二人には練習なんて必要ないんですね!」

男「そういうワケでは」

後輩「先輩、ちゃんと約束守ってくれるんですよね?」

男「え、えっとまぁその常識の範囲内だったらね」

幼「......」

後輩「私、勝ったら先輩の彼女にしてもらいます!」

幼「ッッッ!!」

男「かのッーー?ジョジョ?」

後輩「聞こえなかったんですか?先輩の恋人にしてもらいます!」

男「え、えぇぇぇっとそれは常識の範疇から逸脱しているような」

後輩「私じゃダメですか?」

男「いやダメとかそういう話じゃなくてさ」

後輩「嫌いなんですか?」

男「いや好き嫌いの話ではなくて」

後輩「言うこと聞いてくれるんですよね?」

男「あのですね後輩ちゃん」

後輩「では先輩!予選通過頑張ってくださーい!それではー」スタスタ

幼「おや?追わないのかい?」

男「参ったなマジで」

幼「来月には彼女になっているかもしれないのに」

男「いや、それはちょっと......」

幼「彼女では不服だと?」

男「いきなり付き合えとか言われてもなぁ......ハァ......」

幼「そんなに喜ぶと気味悪いよ」

男「うん喜んでるようには見えないよね?」

幼「脱童貞だー!みたいに張り切ってるようにしか」

男「どういう眼をしているんだ」

幼「後輩ちゃんはいい子だよ」

男「んん、それは知ってる」

幼「じゃあなんで?」

男「......なんでもだよ お前好きじゃないけどいい男に負けたら付き合えって言われたどうする?」

幼「家柄や将来性を吟味した上で結論を出すね」

男「......あっそ」

幼「でも君、わざと負けたりしないだろうね」

男「するかアホ」




大分前

男『(確かウチの学校入学試験日今日なんだよな)』

男『(ま、図書館塔は開いてるみたいだしそこで勉強しよ)』

後輩『ッ.....ッッ........!!』

男『?』

後輩『(無い!無い.....!!!!!Suicaどころかパスケースごとない!!)』

男『....?ど、どうかしたの?』

後輩『ッ、あ、あっあっの.....』

男『(えっと、この駅で降りたってことはウチに受験するのかな?)』

後輩『(あ!こ、この制服...●●高校の人)』

男『なんか尋常じゃないくらい焦ってるから....』

後輩『え、ええっと...えっと.....グスッ....』

男『!? (え!?泣くの!?どうした!!?痴漢にでも遭ったのか!?)』

後輩『グスツ....じ、実は....かくかくしかじか』

男『あーなるほど、パスケースには受験票も入っていたと(説明口調)』

後輩『わ、わわたし受験もう...できない...』

男『とりあえず学校行こうよ 俺からもお願いしてみるから』

後輩『えっ。。。』

男『こんなところで泣いてなってしょうがないよ 駅員さんには俺から伝えるしとりあえず学校へ行こうよ 試験時間に間に合わんくなる』

後輩『で、でも私受験票が』

男『でもじゃない 行くぞ』

後輩『は、はい!』





幼「君も随分と人がいいね」

男「いや誰だってそれくらいはするだろ」

幼「いいや、しないとは思うけどね」

男「そうかな...」

幼「可愛い女の子が困っていればするだろうけどね」

男「まるで俺に下心があったみたいな言い方ヤメロや」

幼「あったくせに」

男「ねーよ」

幼「......」

体育祭二日前

男「ふう」

幼「大分私の足を引っ張らなくなってきたね」

男「俺が幼の歩幅に合わせてるんだろーが」

幼「それで、タイムはどうだったんだい?」

男「99秒だ」

幼「100秒切ったんだね」

男「まーなー」

幼「君の自家発電とどっちが早いかな?」

男「急に下ネタぶっこむのやめろ」

男「偵察部隊によると優勝候補は後輩ちゃんらも含めて95秒とからしい」

幼「毒でも盛ろうか」

男「二人三脚は男女ペアで出るから得点高いんだと......そりゃどのクラスも本気になりますわ」

幼「それで、このままで勝てるのかい?」

男「予選は突破できそうじゃないか?」

幼「あの子に勝てるのかい?」

男「も、もちろん勝ちますとも」

幼「でも負けても可愛い年下の彼女ができて嬉しいんじゃないのかい?」

男「だーかーらー 万が一そうなっても断るよ」

幼「でも約束なんだから断れないだろう」

男「ッぐ.....だったらもっと頑張ろうぜ」

幼「うーーん、そうだ」

男「?」

幼「もしボクらのペアが勝ったらボクが君の言うこと聞いてあげるよ」

男「へあ?」

幼「後輩ちゃんのペアに勝ったら」

男「うーん、と、それは、うんわかった」

幼「だからもっと頑張らないとね」

男「とは言っても幼はもうクタクタじゃん」

幼「ボクはまだ平気だよ」

男「お前もともと体育系じゃないんだし」

幼「まあ確かに君の強引なリードに少し疲れてはいるね」

男「ちょっと休憩しようぜ」

幼「心配には及ばないよ」

後輩「私は絶対に手は抜きませんからね」

幼「そう気合たっぷりに言われても......」

後輩「でも負けたら男先輩は私の彼女になっちゃいますよ?」

幼「そうだね」

後輩「もしかして、『きっと男なら断る』って考えてません?」

幼「っ」

後輩「そもそも幼馴染先輩は男先輩のこと好きなんですよね?」

幼「だ、.......」

後輩「明後日の本番前に確認しておきたくって」

幼「それと二人三脚と何の関係があるんだい?」

後輩「大アリじゃないですか 何とぼけてるんですか」

幼「だ、だいたいボクは......」

後輩「好きなんですよね?」

後輩「最初、お二人は付き合ってるのかなー?って思ってたんです」

幼「......」

後輩「男先輩は優しくてかっこいいし、幼馴染先輩は美人だし」

後輩「でも、そういう仲じゃないのなら遠慮無くいかせてもらいます」

後輩「使える手段はなんでも使います!」

幼「......」

後輩「で、男先輩のこと好きなんですよね?」

幼「......」クルッ

後輩「ちょ、に、逃げるんですか?」

幼「.....」クルッキョロキョロ

後輩「......何してるんですか?」

幼「だ、だれもいない?」

後輩「私たちしかいませんよ」

幼「そ.....オホン」

後輩「好きなんですよね?男先輩のこと」

幼「.........ん」コクン

後輩「.......そ、そうですか」

幼「ん、こ、これ男には内緒だにょっ?駄目だよ?」グイグイッ

後輩「い、言いませんってば!ちちちち近いですって!」

幼「小さい時からずっと好き」

後輩「わ、わかったから近いですって!(めっちゃ目がすわってて怖い!)」

幼「君みたいに真っ直ぐな子に男は弱い」

後輩「でしょうね」

幼「ボクらが勝ったら勝ったで言うこと聞いてもらう」

後輩「.....男先輩に近づくなとでも言いたいんですか?」

幼「そんなんじゃないよ それじゃ、ボク行くから」

後輩「フフフフ、頑張りましょうね  ていうか幼馴染先輩」

幼「何?」

後輩「幼馴染先輩ってクール美人かと思ったけど、結構可愛いんですね」

幼「......うるさい」スタスタ

>>213>>214で時系列空いてます。すまんこ

後輩「でも、負けないですよっ」





お昼

後輩『(なんとか試験は受けさせてもらったけど...)』

教員『えっと、後輩さんは....あ、いたいた貴方ね』

後輩『?』

教員『コレ』

後輩『!! 私の.....パスケース....!!』

教員『ウチの生徒が届けてくれたの 朝に落としたって女の子がいるからって駅まで行って落とし物が無いか尋ねてくれたそうよ』

後輩『ありがとうございます!』

教員『お礼は届けてくれた先輩に言ってね。そのためには午後も試験頑張らなきゃね』

後輩『はい……!』

試験終了

夕方

後輩『(試験はできてるはず……!大丈夫……!)』

後輩『……あっ』

男『あっ』

後輩『あ、あの!今朝はありがとうございました!』

男『無事受けられたみたいだね』

後輩『はい!』

後輩『是非お礼がしたいのですが……!』

男『えぇっ!?いや、いいって』

後輩『いけません!母の教えですので』

男『たまたま?なだけだし』

後輩『先輩が声をかけてくれたおかげです』

男『いや……まぁ……』

後輩『(先輩とか言っちゃった……)試験を受けさせてもらえたので落ちても悔いはないです』

男『落ちてもとかいきなりネガティブな』

後輩『私、先輩に声をかけてもらえなかったら試験受けられてないですよ』

男『まあ真っ白になってたもんね、君』

後輩『あとは塾に持っていって自己採点して……結果を待つのみです』

男『おぉ自己採点か……俺も去年やったなあ』しみじみ

後輩『あっ、せ、先輩は今一年生なんですか?』

男『うん だからなんか先輩って言われると歯がゆいっすね、はい』

後輩『(じゃあ私が受かったら来年もいるんだ……)』

男『時間大丈夫なの?』

後輩『へ?あ、はい……?』

男『もしよければ試験問題見せてほしいんだけど……いいかな?』

後輩『あ!は、はい!何時間でも見てください!』

男『何時間でもって……』


ーーー中庭 購買のテラス

後輩『わ、私、座ってていいんでしょうか』

男『へーきへーき』ペラペラ

後輩『うぅ……』

男『………………』ペラペラ

男『…………………』

男『……………………』

後輩『(めっちゃ真剣に見てる……)』チラッ

後輩『(……)』ドキドキ

後輩『あ……あの……どうでしょうか……』

男『今年も結構難しいね』

後輩『ここ、国数英は自校作成ですもんね』

男『国語65 数学51 英語67』

後輩『へっ?』

男『去年の平均点なんだ』

後輩『や……やっぱり難しいんですね』

男『まあ早慶レベルだからね……これに関しては……』ペラペラ

後輩『(か、かっこいい……!この心地いい先輩風……!!)』

男『理社はどうだった?』ペラペラ

後輩『あ……け、結構できました』

男『そっか』

後輩『満点は無いと思うんですけど……とりあえず全部解けたって感じです』

男『…………』ペラペラ

男『おぉ…………社会とか一通り全部合ってそうだけどね……』

後輩『ほ、本当ですか!?』

男『うん、でもまあ理社に関しては90点以上は欲しいってのが切実』

後輩『な、なるほど』

男『あとは内申点』

後輩『ですよね……』

男『うち、内申点に関しては甘々だからさ』

後輩『らしいですね、聞きましたそれ』

男『普通は内申点1点で6点換算なんだけど、今年は7.8点換算っぽいし』

後輩『ひえっ……それは初耳です』

男『内申点あれば誰にでもチャンスはあるって方針だからねぇ』

後輩『確かに……それもあって私、ここにしたのもあります』

後輩『にしても三教科の平均点……やっぱり難しいんですね』

男『塾で去年の問題やらなかったん?』

後輩『うっ……やりました……』

男『あ、あまり宜しくないといった顔だけど』

後輩『三教科とも40点台で……』

男『40点台か……うーん、まあ模試と考えれば』

後輩『先生が去年の平均点教えてくれない理由がわかりました』

男『いやいや40点台でも合格してる人たくさんいたようち』

後輩『そうなんですか!?』

男『(幼馴染とか)30点台叩き出して合格してる人もいたし』

後輩『はぇ……』

幼馴染『男』

後輩『っ』

男『わ、びっくりした』

幼馴染『何してるんだい?』

男『いや、ちょっと今日の試験問題見せて貰っててさ』

幼馴染『ふぅん』

後輩『(わぁ…………)』

幼馴染『ナンパしてるんだ』

男『してねえよ』

後輩『(すごい美人……)』

幼馴染『どうせ去年俺は国語98点立ったぜーって自慢してたんじゃないのかい?』

男『してないよ それに97点だし』

後輩『きゅきゅきゅーじゅーななっ!?』

男『まあ数学がその分低かったけどね』

幼馴染『で、知り合いなのかい?』

男『いや』

後輩『えっと、あの……かくかくしかじかでして……』

幼馴染『ふ う ん ……』

後輩『(あっ……)』

後輩『(この人……)』

幼馴染『君も気持ち悪いくらいお節介だね』

男『それで結構』

後輩『あ、あの』

男『?』

後輩『お二人って……付き合ってるんですか?』

幼馴染『ッ、……』チラッ

男『付き合ってないよ』

幼馴染『……そ、そんな風に見られるなんてね』

後輩『そ、そうなんですか……てっきり……』

後輩『(でも何となくわかる)』

後輩『(この幼馴染って人は……)』

後輩『(……この先輩が好きなんだ)』




体育祭前日

男「いちにっいたにっ」

幼「ッ、……にっ……にっ……」

友「っよし、いいタイム!」

男「まじ?」

友「明日の本番、午前中の予選は突破できそうだな」

男「問題は午後か」

幼「…………」

友「一年生のペアにすげえ速いのいるらしいからな」

男「知ってる」

男「まあ、まずは走りきって予選突破だな」

幼「……ふん」

男「どうした?」

幼「別に」

男「不機嫌じゃん」

幼「じゃない」

友「お?痴話喧嘩なら本番終わってからにしてくれ」

男「そんなんじゃないって」

夕方

男「幼馴染」

幼「……何」

男「えっと、なんだ……一緒に帰ろうぜ」

幼「ッ、……ん」プイッ

男「え?どっち?」

幼「ん!」プイッ

男「そっぽ向きながらOKみたいに言われても」

幼「…………」グイッ

男「あのネクタイ苦し」

ーーー帰路

男「なんか緊張するな」

幼「……どーしてさ」

男「いやいやだって二人三脚走るわけだし」

幼「……君は……わざと負ける気なんだろう……」

男「なんでだよっ」

幼「後輩ちゃんと付き合うための口実に」

男「付き合わないって」

幼「でも約束してる」

男「してないよ、むこうが勝手に言ってるだけだろ」

幼「……君は」

男「?」

幼「あれだけ迫られたら……後輩ちゃんが君のこと好きだってわかってるんだろう?」

男「……まぁ……だろうとは……」

幼「後輩ちゃんはいい子だよ」

男「それと付き合うかどうかは別だろ」

幼「…………」

男「とりあえず、きっちり勝ったうえできっぱり断らないと」

幼「……断る理由があるのかい?」

男「えっと……そりゃあ……」

幼「…………」

男「あるよ……」

幼「ないよ」

男「ある」

幼「ない」

男「あるって!」

幼「っにょ、」ビクッ

男「……ごめん」

幼「奇声はやめてくれないかな?」

男「奇声ではない」

幼「まったく……」

幼「ねえ」

男「?」

幼「ホントに負けても断れるのかい?」

男「え?断るけど……」

幼「ふぅん……」

男「な、なんだよ」

幼「お試しでいいからって言われたら?」

男「お試しぃ?」

幼「そ」

男「ガールフレンド(仮)的な?」

幼「んー、まあ」

男「尚更断るってーの」

幼「グイグイ来られても?」

男「えぇ」

幼「グイグイ迫ってきたらどうするの?」

男「そ、それは……」

幼「ほら」

男「うぐっ」

幼「この時点で危ないじゃないか」

男「勝てばいいんだよ勝てば」

幼「どうだか…」

男「まずは予選突破しねえとな……」

幼「足を引っ張らないようにね」

男「おめーがな」


体育祭当日

後輩「おはようございます!」

幼「ん、おはよう」

後輩「お元気そうですね!」

幼「この顔がそう見えるかい?」

後輩「物凄く気合いが入っています!」

幼「不機嫌なだけだよ」

後輩「男先輩と何かあったんですか?」

幼「ん、何もない……」

後輩「私、遠慮しませんからね!」

幼「まあ、ボクも負ける気はないよ」

後輩「ッ……フフフ、やっとやる気になってくれましたね」

後輩「でも勝つのは私たちのペアですよ」

ロボ「ソーダ ソーダ」

幼「……ずるくないかい?」

後輩「何を言ってるんですか彼もれきっとした在校生なんですから」

ロボ「ソーダ」

幼「ハァ……」


二人三脚 予選

男「さて」

幼「……」プイッ

男「なんだよ」

幼「わざと負ける気だね」

男「負けねーよ」

幼「ッふん」

男「予選はさすがに突破しねえと」

男「3つの組に別れるけど」


後輩「がんばってくださーい!!」


男「あの優勝候補たちとは別の組だからな」

幼「あれいいの?」

ロボ「コーホー」

男「知らん」

あれ

男「とにかく予選突破して午後の決勝に残らないと」

幼「ん」


「「次の組は準備してください」」


男「キツくないか?」ギュッ

幼「キツい」

男「えぇ……このくらいは?」ぎゅっ

幼「ゆるい」

男「おい」

幼「なに」

男「朝からずっと不機嫌だな」

幼「別に……」

男「ほら」

幼「ほらって何が」

男「幼馴染は不機嫌な時『別に』ってよく言うから」

幼「勝手に決めつけないでくれるかな」

男「(なんでそんな不機嫌なんだ……)」

幼「とっとと結び直してくれないかな?」

男「はいはい……」ギュッ


「「位置について……ヨーイ……」」チンポ!

男「いちにっ いちにっ」

幼「ッちに……に……」



ゴール!!

男「ハァハァ……」

幼「ハァハァ」

男「声ちっさくないすか?」

幼「君が隣でハァハァえっちにえっちに言うからだよ」

男「言っとらんわ」

男「ま、ダントツで1着だったし決勝もいけそうだな」

幼「……ふん」

男「とりあえず足のほどッーー」

幼「どーせ勝つ気ないくせに」クルッ

男「どおまっ」ズッデン グギッ

幼「きゃっ!?」

男「ッッ……」

幼「ご、ごめん」

「ちょっと大丈夫??」

「コケたねえ」

男「ッ……」

幼「ほ、ほどくのわからなくて」

男「いっ……ッ……」

幼「……、……男?」

男「(っべぇヤッた……)」

幼「え、え?大丈夫……だよね?」

男「ちょっと、、、保健室行ってくる」

幼「あっ、待って……」


保健室

保険医「足捲って」

男「ッ……」

保険医「あらぁ」

幼「(腫れてる……)」

男「ッーー」

保険医「そんなに痛い?」

男「足もなんですけど……」サッ

幼「ちょ、その左手!」

保険医「ちょっとそれ折れてるわよ」

男「さっきよりめっちゃ痛いっす」

保険医「さっきまではアドレナリンが分泌されていたからそんなに痛くなかったのよ」

男「ぐぅ……」

幼「びよよよびょびよょういんに」

男「落ち着け」

幼「びょにょ」

保険医「足の方は捻挫だとしてもかなり深刻よ?左手に関しては誰が見ても折れてるってわかるし」

男「痛み止め飲んで頑張ります」

幼「っ」

保険医「先生の言ってること聞いてた?」

保険医「見過ごすわけにはいきません」

男「あれですあれ」

保険医「あれ?」

男「いいからテーピングだ!ってやつです」

保険医「あのねぇ……」

幼「すぐ病院行ったほうがいいんじゃないのかい?」

保険医「その通りよ」

男「……」

幼「ご、ごめん……その、元はと言えばボクの不注意なのに」

男「せっかく……」

幼「?」

男「いや、なんでもない」

幼「はっきり言ったらどうなんだい?」

男「何でないって」

保険医「ほらそこ、イチャイチャしないの」

男「して」
幼「ません」

保険医「いい?午後の競技に出る出ないの話じゃないの」

男「あい……」

後輩「先輩ッー!!」ガチャン

男「っ 」

幼「チッ」

保険医「静かに入ってきなさい!」

後輩「ス、スイマセン!」

保険医「まったくもう……」

後輩「先輩がお怪我をなされたと聞いて!」

男「まあ大した……大した怪我みたいで」

幼「見ての通りだよ 君は頭のネジでもハズレたのかい?」

後輩「むぅ!幼馴染先輩ひどい!」

幼「ボクらはこの通り決勝には出られなくなったから」

男「後輩ちゃんは頑張ってね」

幼「……ッ……」

後輩「そ、そうですか」ホッ

幼「ん?」

男「どうした?幼馴染」

後輩「そ、それでは私はこれで」

幼「待ちなよ」

後輩「失礼しむぁ?」

幼「君、今……何かホッとしなかったかい?今」

後輩「し、ひ、してないですよ」

男「幼馴染、あの約束は無理矢理で」

幼「勝ったんだよね?予選」

後輩「……」

男「えっ?えっ???」

後輩「この勝負、引き分けですね……!!」

男「えっ??ま、負けたの!?」

後輩「いやその実は……」


後輩の組の予選

後輩「行くよロボちん!」

ロボ「了解シタ」

後輩「あれ?ロボちんその靴おかしくない?」

ロボ「秘策」

後輩「???」

ロボ「昨日、ローラー付キノシューズ発見、タダチニ購入」

後輩「え、それ」


位置について ヨーイ


後輩「ちょっ」

ロボ「後輩ハ掴マッテレバイイ」

パァン!!

後輩「いやぁぁああぁぁぁ!!!!」

男「失格!?」

後輩「はい……タイヤ付きのシューズを履いてきてたばかりに……」

男「いやファイティングコンピューターの時点で反則だけど」

後輩「今回はお互いに」

幼「お互いに?」

後輩「へ?」

幼「ボクらは予選突破」

後輩「……!」

幼「君は失格」

男「やめて差し上げろ」

幼「どっちの勝ちかな?」

後輩「うぐっ……ぐぅ……先輩たちです……」

幼「そうだよね?」

後輩「しょうでひゅ……」

幼「まったく……くだらない賭け事までして」

後輩「うぅ」

男「また来年な、後輩ちゃん」

幼「っ」

後輩「先輩…!」キュン

幼「ほら病院行くよ」

保険医「幼馴染さんは行かないわよ」

幼「うぐ」

後輩「私が」

保険医「貴方たちは行きません」






後輩「先輩、大丈夫ですかね?」

幼「……だと思う」

後輩「幼馴染先輩」

幼「?」

後輩「私に言うこと聞かせるんじゃないんですか?」

幼「んー、そんな話してたっけ」

後輩「してました」

幼「何を怯えているんだい?」

後輩「うぅ……だって男先輩に近付くなとか……言うんじゃないかって」

幼「ボクがそんな下衆に見える?」

後輩「み、見えません!断じて!」

幼「そういう命令してもいいけど」

後輩「ひえぇ……」

幼「ハァ……するわけないでしょ」

後輩「ほぅぉ、本当ですか?」

幼「君は本気でこの方法で彼女になるつもりだったのかい?」

後輩「だってぇ」

幼「ハァ」

後輩「とっとと二人がくっついてくれれば諦めるのに……」

幼「っ」

後輩「周りも皆そう思ってますよ」

幼「ぼ、ボクらは別に……」

後輩「でも好きなんですよね?男先輩のこと」

幼「…………」キョロキョロ

後輩「いませんって誰も」

幼「…………ん」コクン

後輩「(この人やっぱ強ぇな)」

幼「な、内緒だよっ!?」グイッ

後輩「わわはわわわかってますって!顔近い!」

幼「あんまり……」

後輩「?」

幼「男の負担になりたくないんだ」

後輩「負担……?」

幼「きっと男は真剣に悩むから」

幼「ボクが相手でも君が相手でも」

幼「それで成績に響いたら申し訳ないし」

後輩「んなもん悩ませればいいんですよ」

幼「っ」

後輩「悩んでもらって答え出してもらいましょうよ」

後輩「私たちだって悩んでるんですし」

幼「そうだけど…」

後輩「先輩、一度でいいから男先輩に素直になってみればいいと思います」

幼「……」

後輩「いつもいつもつっけんどんなの勿体ないです」

幼「…………」

後輩「はっきり言うと破壊力は高いと思いますよ」

幼「……………………」







男母「ごめんねえ幼馴染ちゃん」

幼「いえいえ」

男母「じゃあ当直行ってくるね」

男「いってらっしゃい」

幼「お気をつけて」

バタン

男「うーん……」ブラブラ

幼「痛むかい?」

男「まあ……」

男「まあ足は捻挫だったし」グッグッ

幼「でも手は」

男「まぁ利き腕じゃないから」

幼「……」

男「なんか、その、気にすんなよ」

幼「ごめん」

男「いいって」

幼「本当に……ごめんなさい……」

男「うん、だからもう謝るの禁止な」

幼「………」

男「えっと……帰らんでいいの?」

幼「ん、平気」

男「そういや打ち上げ行ったの?」

幼「行かないよ」

男「そっか…… 」

幼「……」

男「……」

幼「ねぇ」

男「ん?」

幼「さっき保健室でさ、『せっかく』って言いかけたよね」

男「うっ」

幼「あれ、何て言おうとしてたのかなって」

男「あれは……その……」

幼「何だい?」

男「いや、せっかくさ……」

男「せっかくさ、幼馴染と二人三脚だったから……もう一回出たかったなあって……思っただけだよ」

幼「ッッ」

男「来年同じクラスかも種目があるのかもわからないしさ」

幼「ふ、ふぅん……」

男「なんだよその顔」

幼「そ、そそそんなにボクと二人三脚を走りたかったのかい?」

男「うん……俺はな」

幼「…………」

男「何だよ黙んなよ」

幼「ボクも……まあ、あと一回くらいならいっしょに走ってあげてもよかったよ」

男「ふふっ……何だそれ」

幼「ッ、(笑った……)」

男「幼馴染?」

幼「……好き」

男「え?」

幼「君の笑った顔……大好き……」

男「わ、わら……??(いや、えっ?)」ドキドキ

幼「困ってる時の顔も真剣な時の顔もムッとしてる時の顔も全部好き」

幼「笑ってる時の顔が一番好きなんだ、ボク」

男「え、えと……」

幼「……」チラッ

男「(顔近い……)」ドキドキドキドキ

幼「最近笑ってるかい?」

男「言われてみれば、そんな笑ってないかもな」

幼「久々に見たよ、君の笑顔」

男「……」

幼「小さい時からずっと大好きなんだ、君の笑顔」

男「……うん」

幼「……ごめん」

男「 幼馴染……(……震えてる)」

幼「……あのっ……」

男「幼馴染」

幼「ッ、な、何だい……?」

男「一応聞くけど、その、そのさっきの好きってさ……そういう好きってことだよな?」

幼「…………」ムスッ

男「(えっ!?違うの!?)」

幼「…………」

男「えっ、えっとさ……俺の思ってる好きと同じでいいんだよな……??」

幼「ッ……」ピク

男「幼馴染?」

幼「君の思ってる、好き、とは??」

男「えっ」

幼「説明してくれないかな?」

男「いや、あの、」

幼「君の思っている好きって」

男「好きって事だよ!」

幼「っにょ」

男「にょ?」

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