提督「やっぱ万九千神社だよな」 (21)



睦月「えっ」

如月「何それ」

提督「万九千(まんくせん)神社」

望月「まんこくせー神社?」

提督「まんくせんだよ!まんくせん!」

文月「知らな~い」

雪風「そんなの聞いた事ないです」

提督「まあ、そうだろうな」

長月「それは有名なのか」

提督「有名というか……」

提督「よし、じゃあ最初から話そう」


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提督「まず、島根の出雲大社は知ってるな」

長月「馬鹿にするな」

菊月「それくらい知ってるぞ」

弥生「大きな……神社ですよね」

提督「一年に一度、日本中の神様がこの出雲大社に集まるんだ」

水無月「へえ~」

提督「集まる時期は決まっていてな、毎年十月(旧暦)の一週間だ」

三日月「結構長いんですね」

卯月「集まって何するぴょん」

提督「まあ会議とか宴会とか色々だ」

如月「宴会?」

提督「仕事の話ばかりじゃ疲れるだろ」

水無月「まあ、そうだね」


提督「この神様がどれくらいいるか知ってるか?」

皐月「えっ、神様って一人じゃないの」

提督「いや、沢山いるぞ」

文月「え~?10人くらいかなぁ」

三日月「もっといそうです」

菊月「じゃあ、100人くらい」

雪風「七人です!」

如月「七人?何で」

雪風「七福神です!」

長月「おお~、なるほど」

提督「七福神なんてよく知ってるな」

雪風「毎日夢で見ます!」

弥生「幸運艦……」

望月「幸運艦すげぇな」

提督「正解は約一万九千柱(はしら)だ」

卯月「すごいぴょーん!」

水無月「神様ってそんなにいるの!?」

提督「その神様の数にあやかって名付けられたのが、万九千神社だ」

文月「ふぇ~」


如月「ねえ、司令官。神様って八百万じゃないの」

提督「八百万(やおよろず)か」

望月「何か聞いた事あるな」

三日月「八百万の神々とか言いますね」

提督「八百万ってのは、数字じゃなくて名詞なんだ」

弥生「……名詞?」

提督「すげーたくさんとか、メチャクチャいっぱいって意味だ」

水無月「へえ~」

睦月「提督は物知りにゃしぃ」

提督「いいんだぜ、もっと褒めても」ドヤッ


提督「で、その沢山の神様だが」

提督「みんなが一直線に出雲に来る訳じゃない」

皐月「そうなの」

提督「道すがら他の神社に寄ったりするんだ」

菊月「ふむ、どうしてかな」

提督「まあ、挨拶だったり休憩だったり色々だ」

卯月「休憩なんてするぴょん?神様なのに」

提督「神様ってどんなイメージだ?」

長月「そりゃ、髭が生えてて」

菊月「白い服着てて」

提督「ほら、神様ってほとんどおじいちゃんだろ?そりゃ休憩ぐらいするさ」

如月「言われてみれば」

提督「お前らだって寄り道好きだろ」

文月「大好き~♪」

水無月「むしろ寄り道がメイン」

皐月「睦月もよく寄り道するよね」

弥生「睦月のは寄り道じゃなくて、ただの迷子」

睦月「にゃしいっ!?」


提督「そうやって各地の神社を巡りながら進んでいって」

提督「最後に立ち寄るのが、この万九千神社だ」

望月「おお!まんくせん!」

菊月「ラスボスっぽいな」

提督「ここで集合前の準備を整えて、いざ出雲へと赴くのさ」

長月「準備って、何するんだ」

提督「長旅で疲れてるしちょっと休んだり、身支度を整えたりだな」

如月「大事な場所なのね」

提督「その通り!」

提督「そして行事が終わった帰りに立ち寄る、一番最初の神社でもある」

三日月「つまり、拠点ですね」

提督「そう、ものすごく重要で不可欠な場所なんだ」

提督「ここがあるから大人数の移動や集合もスムーズに運営出来るのさ」

水無月「へ~」

雪風「すごいです!まんくせん」


皐月「そんなに大事なのに、全然知られてないね」

文月「どうしてなの~」

提督「田舎だからな」

提督「島根の山奥でこれといった名所も何もない」

提督「参拝したい人は、みんな隣の出雲に行く」

望月「そりゃそうだ」

提督「参拝客が来ないから賽銭もお布施も集まらない」

提督「お金がないから神社も敷地もボロいままだし」

提督「その地域も栄えない。勿論整備もままならない。悪循環だ」

長月「それは困ったな」

菊月「何とかならないのか」


提督「それで地域の人たちも考えたんだ」

提督「何か名物を作ろうって」

弥生「名物?」

提督「それを目当てに人が来たり、話題になったりする名物を作ろう」

如月「へえ」

睦月「それはいいアイデアだにゃ」

提督「特産品で何かないか考えたら」

提督「その辺りでは蕎麦が沢山とれるんだ」

水無月「蕎麦かー!いいねー!」

提督「しかし蕎麦は出雲でも沢山とれる」

提督「しかも出雲の方が味もいい」

文月「え~」

三日月「そんなー」

卯月「ぷっぷくぷ~」

長月「そういえば出雲そばって聞いた事あるな」


提督「蕎麦は諦めて他に何かないかと探したら」

提督「生姜が名物だったんだ」

皐月「生姜ぁ?」

望月「地味すぎ」

卯月「生姜なんかいらないぴょん」

提督「とはいえ、他には何もないしな」

提督「地域の人たちは頑張って色々な案を出した」

如月「商品開発ね」

提督「お菓子に使ったり佃煮にしたり」

提督「しかし、どれもパッとしない」

長月「生姜だしな」

水無月「そんなメチャクチャ美味しいものじゃないよ」

菊月「名脇役タイプだな」


提督「それで発想を変えて、ジュースにしてみたんだ」

雪風「ジュース?」

弥生「生姜ジュース?」

文月「え~?」

望月「そんなの絶対マズいだろ」

提督「いやいや、昔からの飲み物で生姜湯や冷やし飴ってのがあってな」

提督「生姜と飲み物の相性は悪くないんだ」

如月「そうなの」

提督「もちろん色々試行錯誤してな」

提督「甘味を強くしたり、炭酸を入れて爽やかにしたり……」

提督「そうして出来上がったのが、フレッシュ生姜汁だ」

皐月「名前ーーっ!」

水無月「何そのネーミングセンス」

文月「絶対売れないよ~」

長月「担当者クビにしろ」


提督「それから更に商品名やデザインを改良して……」

提督「遂に完成したジュースこそが、かの有名なジンジャーエールだ」

皐月「えっ!ジンジャーエールって島根の飲み物なの!?」

提督「このジュースを沢山売って、売り上げで神社を復興しよう」

提督「神社の繁栄を応援しよう」

提督「そういった意味を込めてこの商品はつくられたんだ」


提督「ジンジャー(神社)エール(応援)」


皐月「えええ~~!?」

望月「マジかよ」

水無月「絶対嘘だよ」

提督「そもそも、生姜を英語でジンジャーって言うんだ」

長月「えっ、ホントに本当なのか?この話」

菊月「そんな訳ないだろう」

皐月「ちょっと待って、ジンジャーエールって生姜入ってるの?」

弥生「……何だと思ってたの」

皐月「いや、美味しいなー……と」

如月「皐月ちゃん……」

文月「皐月ちゃん……」


提督「というわけで、今日は神社について話をしたが」

提督「この話の中に、いくつか嘘がある」

水無月「えーっ?嘘なの!」

望月「というか、全部嘘だろ」

提督「いやいや、本当の事も勿論あるぞ」

皐月「何で嘘つくのさ」

提督「この話の中で、何が嘘で何が本当か調べる事」

提督「これが今日の宿題だ」

皐月「えぇーっ!何それー」

望月「超面倒臭い」


提督「ちなみにGoogle先生は禁止な」

望月「えっ、何でさ」

提督「ちゃんと図書室で調べるように」

菊月「手間がかかるな」

長月「時間の無駄じゃないか」

提督「ネットは簡単だけど、それでは調べる力が身につかない」

提督「それに、調べる途中で目にする沢山の記事や文章が知識となって、後の勉強や人生に役立つんだよ」

如月「ネットならすぐなのに」

提督「答えを知る事は目的じゃないんだ」

提督「それはもっと大きくて大事なものを手に入れる手段なんだよ」

卯月「よく分かんないぴょん」

提督「今はそうかもな」

提督「でも決して間違いないじゃないから、今は俺を信じて遠回りをしなさい」

文月「は~い」

雪風「わかりました!」

三日月「頑張ります」


望月「まあ、こっそりググるんですけどね」

提督「あ、ズルしたらお仕置きな。尻ビンタ」

望月「!!?」

提督「全裸で尻ビンタ50発」

長月「罰が重すぎる」

望月「重罪じゃん」

睦月「裸なんてセクハラにゃしぃ」

提督「裸になるのは俺だ」

菊月「罰が重すぎる」

水無月「極刑になったよ」

提督「もしくは、妙高の部屋に拉致監禁」

弥生「罰が……重すぎる……!」

皐月「それもう死罪じゃん!」



提督「ちゃんと調べてこいよ~」

水無月「うえぇ~~」

卯月「大変だぴょん……」

望月「ダリーなー」

三日月「ほらほらみんな、文句言わない」




◇◇◇



リシュリュー「なかなか面白い授業をするわね、あなた達のアミラル(提督)は」

コマンダン・テスト「小さな駆逐艦も退屈せずに聞いていました」

大淀「まあ、話好きで子供好きですからね」

リシュリュー「いい事だわ」

明石「あ、でも上司としてはアレですよ」

コマンダン・テスト「何か問題が?」

大淀「遊び好きで女好きです」

リシュリュー「いい事じゃない」

明石「えーっ?」

コマンダン・テスト「男の人はそれくらいじゃないと」

リシュリュー「真面目なだけなんてつまらないわよ」

大淀「流石フランス艦」

明石「いい女過ぎる」


リシュリュー「日本の事はまだ何も知らないけど」

コマンダン・テスト「話を聞いて興味が出てきました」

リシュリュー「日本の文化を学んでみるのも悪くないわね」

コマンダン・テスト「その神社って、どこにあるのかしら」

リシュリュー「そうね、是非一度行ってみたいわ」

コマンダン・テスト「えーっと?マンコクセー神社でしたっけ」

リシュリュー「そうそう、マンコークッセー神社」

大淀「ちょっ、二人とも ///」

明石「万九千です!万九千神社!! ///」





おしまい


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