提督「やっぱ万九千神社だよな」 (21)
睦月「えっ」
如月「何それ」
提督「万九千(まんくせん)神社」
望月「まんこくせー神社?」
提督「まんくせんだよ!まんくせん!」
文月「知らな~い」
雪風「そんなの聞いた事ないです」
提督「まあ、そうだろうな」
長月「それは有名なのか」
提督「有名というか……」
提督「よし、じゃあ最初から話そう」
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◇
提督「まず、島根の出雲大社は知ってるな」
長月「馬鹿にするな」
菊月「それくらい知ってるぞ」
弥生「大きな……神社ですよね」
提督「一年に一度、日本中の神様がこの出雲大社に集まるんだ」
水無月「へえ~」
提督「集まる時期は決まっていてな、毎年十月(旧暦)の一週間だ」
三日月「結構長いんですね」
卯月「集まって何するぴょん」
提督「まあ会議とか宴会とか色々だ」
如月「宴会?」
提督「仕事の話ばかりじゃ疲れるだろ」
水無月「まあ、そうだね」
提督「この神様がどれくらいいるか知ってるか?」
皐月「えっ、神様って一人じゃないの」
提督「いや、沢山いるぞ」
文月「え~?10人くらいかなぁ」
三日月「もっといそうです」
菊月「じゃあ、100人くらい」
雪風「七人です!」
如月「七人?何で」
雪風「七福神です!」
長月「おお~、なるほど」
提督「七福神なんてよく知ってるな」
雪風「毎日夢で見ます!」
弥生「幸運艦……」
望月「幸運艦すげぇな」
提督「正解は約一万九千柱(はしら)だ」
卯月「すごいぴょーん!」
水無月「神様ってそんなにいるの!?」
提督「その神様の数にあやかって名付けられたのが、万九千神社だ」
文月「ふぇ~」
如月「ねえ、司令官。神様って八百万じゃないの」
提督「八百万(やおよろず)か」
望月「何か聞いた事あるな」
三日月「八百万の神々とか言いますね」
提督「八百万ってのは、数字じゃなくて名詞なんだ」
弥生「……名詞?」
提督「すげーたくさんとか、メチャクチャいっぱいって意味だ」
水無月「へえ~」
睦月「提督は物知りにゃしぃ」
提督「いいんだぜ、もっと褒めても」ドヤッ
提督「で、その沢山の神様だが」
提督「みんなが一直線に出雲に来る訳じゃない」
皐月「そうなの」
提督「道すがら他の神社に寄ったりするんだ」
菊月「ふむ、どうしてかな」
提督「まあ、挨拶だったり休憩だったり色々だ」
卯月「休憩なんてするぴょん?神様なのに」
提督「神様ってどんなイメージだ?」
長月「そりゃ、髭が生えてて」
菊月「白い服着てて」
提督「ほら、神様ってほとんどおじいちゃんだろ?そりゃ休憩ぐらいするさ」
如月「言われてみれば」
提督「お前らだって寄り道好きだろ」
文月「大好き~♪」
水無月「むしろ寄り道がメイン」
皐月「睦月もよく寄り道するよね」
弥生「睦月のは寄り道じゃなくて、ただの迷子」
睦月「にゃしいっ!?」
提督「そうやって各地の神社を巡りながら進んでいって」
提督「最後に立ち寄るのが、この万九千神社だ」
望月「おお!まんくせん!」
菊月「ラスボスっぽいな」
提督「ここで集合前の準備を整えて、いざ出雲へと赴くのさ」
長月「準備って、何するんだ」
提督「長旅で疲れてるしちょっと休んだり、身支度を整えたりだな」
如月「大事な場所なのね」
提督「その通り!」
提督「そして行事が終わった帰りに立ち寄る、一番最初の神社でもある」
三日月「つまり、拠点ですね」
提督「そう、ものすごく重要で不可欠な場所なんだ」
提督「ここがあるから大人数の移動や集合もスムーズに運営出来るのさ」
水無月「へ~」
雪風「すごいです!まんくせん」
皐月「そんなに大事なのに、全然知られてないね」
文月「どうしてなの~」
提督「田舎だからな」
提督「島根の山奥でこれといった名所も何もない」
提督「参拝したい人は、みんな隣の出雲に行く」
望月「そりゃそうだ」
提督「参拝客が来ないから賽銭もお布施も集まらない」
提督「お金がないから神社も敷地もボロいままだし」
提督「その地域も栄えない。勿論整備もままならない。悪循環だ」
長月「それは困ったな」
菊月「何とかならないのか」
提督「それで地域の人たちも考えたんだ」
提督「何か名物を作ろうって」
弥生「名物?」
提督「それを目当てに人が来たり、話題になったりする名物を作ろう」
如月「へえ」
睦月「それはいいアイデアだにゃ」
提督「特産品で何かないか考えたら」
提督「その辺りでは蕎麦が沢山とれるんだ」
水無月「蕎麦かー!いいねー!」
提督「しかし蕎麦は出雲でも沢山とれる」
提督「しかも出雲の方が味もいい」
文月「え~」
三日月「そんなー」
卯月「ぷっぷくぷ~」
長月「そういえば出雲そばって聞いた事あるな」
提督「蕎麦は諦めて他に何かないかと探したら」
提督「生姜が名物だったんだ」
皐月「生姜ぁ?」
望月「地味すぎ」
卯月「生姜なんかいらないぴょん」
提督「とはいえ、他には何もないしな」
提督「地域の人たちは頑張って色々な案を出した」
如月「商品開発ね」
提督「お菓子に使ったり佃煮にしたり」
提督「しかし、どれもパッとしない」
長月「生姜だしな」
水無月「そんなメチャクチャ美味しいものじゃないよ」
菊月「名脇役タイプだな」
提督「それで発想を変えて、ジュースにしてみたんだ」
雪風「ジュース?」
弥生「生姜ジュース?」
文月「え~?」
望月「そんなの絶対マズいだろ」
提督「いやいや、昔からの飲み物で生姜湯や冷やし飴ってのがあってな」
提督「生姜と飲み物の相性は悪くないんだ」
如月「そうなの」
提督「もちろん色々試行錯誤してな」
提督「甘味を強くしたり、炭酸を入れて爽やかにしたり……」
提督「そうして出来上がったのが、フレッシュ生姜汁だ」
皐月「名前ーーっ!」
水無月「何そのネーミングセンス」
文月「絶対売れないよ~」
長月「担当者クビにしろ」
提督「それから更に商品名やデザインを改良して……」
提督「遂に完成したジュースこそが、かの有名なジンジャーエールだ」
皐月「えっ!ジンジャーエールって島根の飲み物なの!?」
提督「このジュースを沢山売って、売り上げで神社を復興しよう」
提督「神社の繁栄を応援しよう」
提督「そういった意味を込めてこの商品はつくられたんだ」
提督「ジンジャー(神社)エール(応援)」
皐月「えええ~~!?」
望月「マジかよ」
水無月「絶対嘘だよ」
提督「そもそも、生姜を英語でジンジャーって言うんだ」
長月「えっ、ホントに本当なのか?この話」
菊月「そんな訳ないだろう」
皐月「ちょっと待って、ジンジャーエールって生姜入ってるの?」
弥生「……何だと思ってたの」
皐月「いや、美味しいなー……と」
如月「皐月ちゃん……」
文月「皐月ちゃん……」
提督「というわけで、今日は神社について話をしたが」
提督「この話の中に、いくつか嘘がある」
水無月「えーっ?嘘なの!」
望月「というか、全部嘘だろ」
提督「いやいや、本当の事も勿論あるぞ」
皐月「何で嘘つくのさ」
提督「この話の中で、何が嘘で何が本当か調べる事」
提督「これが今日の宿題だ」
皐月「えぇーっ!何それー」
望月「超面倒臭い」
提督「ちなみにGoogle先生は禁止な」
望月「えっ、何でさ」
提督「ちゃんと図書室で調べるように」
菊月「手間がかかるな」
長月「時間の無駄じゃないか」
提督「ネットは簡単だけど、それでは調べる力が身につかない」
提督「それに、調べる途中で目にする沢山の記事や文章が知識となって、後の勉強や人生に役立つんだよ」
如月「ネットならすぐなのに」
提督「答えを知る事は目的じゃないんだ」
提督「それはもっと大きくて大事なものを手に入れる手段なんだよ」
卯月「よく分かんないぴょん」
提督「今はそうかもな」
提督「でも決して間違いないじゃないから、今は俺を信じて遠回りをしなさい」
文月「は~い」
雪風「わかりました!」
三日月「頑張ります」
望月「まあ、こっそりググるんですけどね」
提督「あ、ズルしたらお仕置きな。尻ビンタ」
望月「!!?」
提督「全裸で尻ビンタ50発」
長月「罰が重すぎる」
望月「重罪じゃん」
睦月「裸なんてセクハラにゃしぃ」
提督「裸になるのは俺だ」
菊月「罰が重すぎる」
水無月「極刑になったよ」
提督「もしくは、妙高の部屋に拉致監禁」
弥生「罰が……重すぎる……!」
皐月「それもう死罪じゃん!」
提督「ちゃんと調べてこいよ~」
水無月「うえぇ~~」
卯月「大変だぴょん……」
望月「ダリーなー」
三日月「ほらほらみんな、文句言わない」
◇◇◇
リシュリュー「なかなか面白い授業をするわね、あなた達のアミラル(提督)は」
コマンダン・テスト「小さな駆逐艦も退屈せずに聞いていました」
大淀「まあ、話好きで子供好きですからね」
リシュリュー「いい事だわ」
明石「あ、でも上司としてはアレですよ」
コマンダン・テスト「何か問題が?」
大淀「遊び好きで女好きです」
リシュリュー「いい事じゃない」
明石「えーっ?」
コマンダン・テスト「男の人はそれくらいじゃないと」
リシュリュー「真面目なだけなんてつまらないわよ」
大淀「流石フランス艦」
明石「いい女過ぎる」
リシュリュー「日本の事はまだ何も知らないけど」
コマンダン・テスト「話を聞いて興味が出てきました」
リシュリュー「日本の文化を学んでみるのも悪くないわね」
コマンダン・テスト「その神社って、どこにあるのかしら」
リシュリュー「そうね、是非一度行ってみたいわ」
コマンダン・テスト「えーっと?マンコクセー神社でしたっけ」
リシュリュー「そうそう、マンコークッセー神社」
大淀「ちょっ、二人とも ///」
明石「万九千です!万九千神社!! ///」
おしまい
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