要するに、ギャルゲーみたいなものです。
*一定まで好感度を上げるとそのキャラは【攻略済】に。キャラの攻略が終わったらリセットか続行を選択。リセット時には設定変更ができるかも。
*たぶんそんなに長くはしない。周回前提で。
*恋愛要素、はもちろんあるのですが…関係を深めすぎると他ヒロイン攻略は難しくなるかもしれません。
*ハーレムは距離感が大切。あんまりなオイタをすると刺される可能性もありますよ?
*目的は【攻略済】のキャラをたくさん作ること。リセットしても記録は引き継がれます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1594395036
――――……4th. 起動
朝、一日がはじまる。
どこにでもあるような至って平常な朝だ。退屈なほど平凡で。
ワルプルギスの夜だとか、そんなうっすら噂で聞いたことがあるようなないような災害の予兆も当然無縁で。
――ただ、【少し前】から俺の日常には少し特殊なものが加わっていた。
――――――
――――――
【現在】四回目
7週 31日目
[知り合い]
・鹿目まどか・・・守り合う仲間
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい
・佐倉杏子・・・仲間
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
前スレ:貴方「俺が魔法少年でヒロインを攻略するまどか☆マギカ?」
貴方「俺が魔法少年でヒロインを攻略するまどか☆マギカ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1581868368/)
前前スレ:貴方「安価でヒロインを攻略するまどか☆マギカ?」
貴方「安価でヒロインを攻略するまどか☆マギカ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1569759132/)
前前前スレ:オール安価でまどか☆マギカ 26
――――――――
34日目
今朝はいつもどおり。さすがに二日連続で遅くに来ることはなかった。
そういえば、猫のことはどうなったのかっていうのは少し気になる。今日は会わなかったんだろうか。
まどか「今日でテスト全部返ってきたね」
さやか「新しいとこもはじまったけど燃え尽きてるっていうか覚えられる気しないよねー、正直」
――……ここ数日は気の抜けきった会話が聞こえてくることが多い。
まあそれは仕方ないんじゃないんじゃないかと思う。これから休みを挟むし。
年を明けたら、二年生ももう終わりが近い。
俺らは三年生になって、巴さんが卒業する。せっかくクラスに契約者が揃ってるけど、離れ離れになるかな。
そう思うと、少し寂しく感じた。
――――
――――
*待ちに待った放課後です。
1下校前に校内でコミュ(キャラ指定)
2誰か誘ってパトロール行くか(キャラ指定・複数可)
3他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
2杏子
生徒会話、ヒロインとどうかかわらせるかが結構悩みどころだったんだよね
とりあえずゆいぐるみさんは杏子と接点作った後は適当に視点の外にフェードアウトしてもらう予定だったんだけども予想外の展開に…
まあ危害を加えたら恨み返されるのは話としてのお約束なので
一つ言えることは、オカルトに限らず危ないものはつっつかないほうがいいす
ギャルゲなのでキャラの好感度上げることに尽力しよう!
--------------------------------------------------------------------------
放課後
学校から出て近くの店の前で佐倉さんと合流する。
今日の授業中にキュゥべえを通じて放課後のパトロールに誘ってみた。
貴方「今日はどこ回るかってもう決めてるの?」
杏子「べつにー。適当」
……彼女と会うのはこの前鹿目さんも交えて一緒に行ったきりだっけ。二人で行動するのは多分初めて。
あの時とは違って驚くほど会話がなかった。
杏子「……一応マミから教わってんだろ。魔女の出やすいとこは人気の多いとこか少ないとこ」
杏子「まー、マミはわざわざニュースとか見てあたりつけたりもしてるみたいだけど。あたしはそこまでしないよ。できないし」
パトロールに関係することは答えてくれる。でもそれだけじゃあまりに味気がないような。
1交友関係について
2新聞とかならどうか
3自由安価
下2レス
1
貴方「佐倉さんって、鹿目さんと仲いいんだっけ」
杏子「……あぁ、まあまあ?」
貴方「巴さんとはコンビ組んでたんだよね」
杏子「ああ」
貴方「さやかとも仲いいんだっけ?暁美さんは?」
あれ、そう考えたら……待てよ。コレ自分以外の、女子勢とはそこそこ仲いいのか?
そんなことを思ってると、ふと思わぬところに反応された。
杏子「アンタこそ、さやかと仲いいの?」
貴方「え?」
杏子「いや、さやかのことは名前で呼んでたから」
貴方「ああ……まあ、成り行きでそうなったんだよ。仲はいいと思うよ、うん」
さやかのことは親友と呼べる存在だ。
しかしそう言うと、佐倉さんはなんだか面白くなさそうにしていた。
杏子「アンタ……この業界が男少ないからって、女にばっか囲まれて浮かれてんじゃねえだろうな?」
貴方「別にそんなつもりはないよ!」
杏子「そんならいーけど。チャラチャラしてやがったらあたしが潰すからな?」
やっぱり鹿目さんと一緒だった時とはちょっと違う雰囲気を感じる。
……佐倉さん、怖いなあ。
杏子「まーあと、ほむらは……アイツは何考えてんのかよくわかんねえな」
貴方「そうなんだ……あ、でもさ、契約者同士で仲良くなったり、たとえば恋をするのだって、別に悪いことじゃないんじゃないかな」
杏子「あー?」
貴方「もちろんそれを一番に考えてるのは浮ついてると思うよ。でも絆や守りたいって想いで強くなることはあると思うんだ」
そう言うと、佐倉さんは否定はしなかったけど――。
杏子「…………クサッ! なんだよ絆とか、守りたいとか。アンタってそんなこと言う奴だったのか?」
からかわれてしまった。自分でもちょっと、臭かったかな。
まだすぐには認めてもらえなさそうだ。まあ、この辺は態度で見せるしかないんだろう。
貴方「もちろん俺は佐倉さんのことだって守りたいよ。仲間だから」
杏子「そういうセリフはもっと強くなってから言えっての。大体あたしがやられるくらいの相手ならすぐ逃げろってんだ」
杏子「ていうかまずは自分を守ることから考えな。あたしはアンタがヘタ打って大怪我したって治してやったりとかしないからな」
杏子「ソッコーで敵を倒した後さやかかマミんとこに運ぶくらいはしてやるけど、そういうのは得意じゃないんだよ」
貴方「……認めてもらえるように頑張るよ。まあまずは、そんな状況にならないようにしなきゃだね」
杏子「その通りだ。そんなもしものこと以前にやれることはやってもらうからな!」
手厳しいけど、佐倉さんはチームでの戦い方には慣れている。
任せてくれるところは任せてくれるし、指示も的確。一応、仲間としては見てくれてるってことなんだろう。
――――そんな話をしながらやがて魔女結界を見つけ出し、入っていった。
――――
――――
杏子「あー、腹減ってきたな」
街を回っていくつか魔女と使い魔を倒したところで、佐倉さんが言った。
日の短い季節ということもあるが、景色は結構前から暗くなっていた。そろそろいい時間だ。
貴方「もう解散にする?」
杏子「それでもいーけど……あぁ、心配されんならアンタは帰ったほうがいんじゃない?ちょっとコンビニでも寄ってこよ」
貴方「別にうちも門限とかあるわけではないけどね」
とはいっても、遅く日が増えたら怪しまれることはあるかもしれないな。
佐倉さんは近くに見えた店で何か買ってくるみたいだ。
1佐倉さんはもうパトロール終わりにするの?
2それっておやつ?食事?
3自由安価
下2レス
貴方「それっておやつ?食事?」
杏子「さあ」
少し気になって聞いてみたが、返ってきたのはなんともいえない返事だった。
杏子「どっちでもよくない?どっちにでもなるし」
貴方「それって、お菓子が食事代わりってこと?」
杏子「うまくて腹が満たされりゃいいじゃんどっちでも。その日の気まぐれだよ」
予想は当たっていたらしい。
自分で好きにできるならそんな日があってもいいかもしれないが、毎日だとよくない気がする。
というか腹減ったって言ってるけど、さっきの移動中もなんか食べてたような。
……もしかしてめちゃくちゃ燃費が悪い?
貴方「食べ過ぎもよくないような……というかよく食べるね」
杏子「食っても食っても腹は減るもんだろ?」
貴方「……そうかな?」
なんて返したものか迷う。底なしの胃袋ってやつなんだろうか。
俺は食べる量は人並み程度だ。
杏子「じゃあ腹へったから解散な。アンタはどうせ、飯作って待っててくれる人がいるんでしょ」
ぶっきらぼうに去って行った背中。バランスを考えず暴食してるにも関わらず、そのシルエットは細かった。
一般人から見れば特殊なのは俺も含めてだが、仲間の中でも彼女はかなり特殊な位置にいる人だ。
違うところが多すぎてパッと見で親近感を持てるところは少ないけど、それは相手からしても多分同じ。
俺も佐倉さんのことはまだ大してわかってるわけじゃなかった。
――――でも、こう思うのは気のせいだろうか。
その姿が、少しだけ、寂しそうに見えた気がしてた。
四回目【貴方】 34日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・守り合う仲間
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい
・佐倉杏子・・・興味なさげ?↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
35日目
――――冬休み前ラストの登校日。
休み明けには忘れそうな授業を聞いて、それが終わったらみんなで大掃除をしてから解散だ。
貴方「お、窓すげー綺麗になってる」
まどか「窓ふきはこうやってやるといいって、パパに教わったんだ」
貴方「無駄にこの学校窓っつーか、ガラス張り多いしな」
仁美「なるほど。まどかさんだけにまどを拭くのがお上手――」
まどか「…………え?」
貴方「あー……」
ほむら「………… ふふっ」
仁美「ほ、ほむらさん! む、無理に笑わなくてもいいんですのよ!?」
普段無表情な暁美さんが気を遣ったのか、自然とはほど遠い顔をしてた。
意外とそういうことするんだな、とか思いつつ一昨日話してたことを思い出す。
……鹿目さんに執着することが減った、か。そもそもきっかけもよくわからないんだけど――。
別の場所を掃除してたさやかが来て、微妙なギャグに凍りついた空気をやっとぶち壊してくれた。
さやか「その洗剤渡してー!」
貴方「あ、これか。どうぞ」
さやか「ありがとー!」
さやか「いやぁ、授業一時間潰れるのはまあいいんだけどさ~……、大掃除よりは授業のがラクだよね。座ってるだけだし」
貴方「それを言ったらな……さっさと終わらせるか」
1話しに行く(キャラ名指定)
2自由安価
下2レス
真っ黒に汚れた雑巾をバケツで洗いにいくと、ちょうど仁美と同じタイミングに当たった。
手には同じように雑巾。バケツはそこそこ大きいので二人くらいなら同時に洗えるが、仁美のようなお嬢様にはなんとも似合わない姿に見えた。
仁美「拭き掃除も大変ですね。手が冷たいです」
貴方「仁美の家だとやっぱり、普段の掃除は召使さんがやってたりするの?」
仁美「そうですね。自分の部屋くらいは片づけはしますけど……」
仁美「【貴方】くんは神社のお掃除とかやってたりしそうですね」
貴方「ああ……まあ、手伝わされることはあるかもね」
そういえば、初詣の話したのって鹿目さんだけだったっけ。
暁美さんは……どちらでもいいって言ってたけど、今のところ来るかわからないな。
仁美を初詣に誘おうか?
1誘う
2誘わない
下2レス
貴方「神社といえば、志筑さんもよかったら初詣うちでどう?」
仁美「初詣ですか」
貴方「ほかに鹿目さんも誘ってるんだ。家族で来るって言ってたよ」
仁美「あら、まどかさんも……ご家族できますのね。私もぜひ行きますわ」
仁美「午後は親戚の集まりのほうに行くことになりますので、午前中だけになりますが」
貴方「へえ、お年玉いっぱいもらえそうだなぁ」
仁美「お年玉には困りませんが、堅苦しいのは好きじゃないですわ」
たしかにそれはそうかもしれない。
仁美の家って何をしてるのかはよく知らないけど、由緒正しい感じはありあり伝わってくるし。
仁美「休み中は長い事ここを離れますし、友達と関われる日ってあまりないんです」
仁美「今から楽しみが増えました。振袖を選びにいかないと」
家族のことで忙しそうな中、友達を優先してくれたのはこっちも嬉しかった。
――――
――――
掃除が終わると、先生が軽く話して解散になる。
帰りの挨拶は『よいお年を』。契約者仲間は大体休み中も会うことになりそうだけど、ほとんどのクラスメイトとは次会うのが休み明けだ。
*待ちに待った放課後です。
1下校前に校内でコミュ(キャラ指定)
2誰か誘ってパトロール行くか(キャラ指定・複数可)
3他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
2の間違いかな?当たり前だけど、校内にいるキャラじゃないと話せないよ!あとQBは大体いる。
---------------------------------------------------------------------------------------------
綺麗になった教室。
暫くこの教室ともお別れだなと思って眺めていると、窓際でキュゥべえが伸びをしていた。
貴方『窓に肉球の跡とかつけるなよ?せっかく鹿目さんが綺麗にしてたんだから』
QB『大丈夫だよ。立つ鳥跡は残さずというのかな、証拠は残さないさ』
貴方『それならいいけど……。なにやってんの?』
QB『いつもどおり様子を見に来てただけだよ。帰らないのかい?』
貴方『帰るよ』
1そういえば佐倉さんとパトロールの約束してたんだった
2QBに何か伝言を頼む
3下校前に校内でコミュ(キャラ指定)
4誰か誘ってパトロール行くか(キャラ指定・複数可)
5他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
まどか『あ、キュゥべえ』
そんなことを話してると、鹿目さんもテレパシーで会話に入ってきた。
QB『やあ、まどか。調子はどうだい?』
まどか『調子?悪くないよ』
QB『困ったことがあったらいつでも言ってね』
QB『マミや杏子もいるし、君たちも新人じゃなくなったから最近はすっかり頼られることもなくなっちゃって……』
そう言うキュゥべえはしょんぼりとした声をしているが、相変わらず表情は動いていなかった。
感情はあるのに表情を作る筋肉がないんだろうか。動物だって表情がわかることはあるのに。人間や動物とは少し違うのかな。
まどか『あ、そうだ。【貴方】くん、パトロールいかない? キュゥべえもパトロールついてくる?』
QB『ぜひとも行くよ!』
貴方『ああ、俺もいいけど……』
鹿目さん、気を遣ったのかな?
キュゥべえがいて助かった部分もある。あるけど、あんまり生活を覗くのはやめてくれ。
知らないうちにいきなり視線があるのはちょっと怖いんだ。
まどか「もう学校も終わっちゃったね。冬休みかぁ」
貴方「嬉しくないの?」
まどか「もちろん嬉しいけど……ちょっと寂しいなって。【貴方】くんはそういうこと、思わない?」
貴方「いや……気持ちはわかるかな。ちょうどそんなこと考えてる時にキュゥべえを見つけたんだよ」
まどか「あ、そうなんだ」
QB「そうだったのかい?」
校舎を出て歩きながら話す。ここまでは普通の帰り道。
キュゥべえを連れてのパトロールってどのくらいぶりだろ。ていうか、話すことすらほとんどない。
貴方「ところでキュゥべえって……なんのためにいるんだっけ?」
QB「僕と契約したのを忘れたのかい? 契約とサポートのためだよ」
貴方「忘れてないけどさ……」
契約はまあわかる。
しかし、サポートのためにいると自称するが、マスコット(?)としては割と空気。
鹿目さんは苦笑いしつつ、どうにかフォローしようとしてた。優しいなあ。
QB「君はいやに僕への当たりが強いね。君と……あと杏子もかな」
それは、事情が事情だけに恨まれるのは仕方ない気がした。
……キュゥべえは実際、そのことをどう思ってるんだろうか。
1鹿目さん、普段QBに覗かれて困ったりしてない?
2じゃあ何か戦い方のアドバイスとかしてくれ
3自由安価
下2レス
貴方「鹿目さん、普段キュゥべえに覗かれて困ったりしてない?」
まどか「えっ? たまにいるなぁって思うだけで困ったりはしてないよ」
QB「ほらね。まどかもこう言ってるよ。大体、僕が人間の生活や裸体なんて見てもなにも思わないのに」
まどか「ちょっ、ちょっと待ってよ……裸体って何? 見たの!?」
QB「?? 急にどうしたんだい?これももちろんサポートのためだよ」
まどか「さすがにそう言われると話はちがうよ!やっぱり連れていけない。わたしが今困ってるのはあなたのせいじゃない……!」
貴方「キュゥべえ…………お前ってやつは」
とりあえず、キュゥべえをじっと睨んでおく。
QB「どうしてそうなるんだい? ……わけがわからないよ」
人じゃないから仕方ないのかもしれないが、やっぱり妙に人とズレているとこがある。
サポートしようとわかろうとはしてるのかもしれないけど、根本的に分かり合えてないというか。これはきっと治らないんだろう。
鹿目さんはもちろん哀れだが、キュゥべえもなんか哀れに思えてきた。
結局、キュゥべえと別れて鹿目さんと二人で行くことになる。
――鹿目さんの家の近くの道を歩いていると、ふと思い出した。
貴方「鹿目さん……大丈夫?」
まどか「ちょっと気が滅入ったかも……」
貴方「そういえば、『今度』って言ったきりだったけど、あれからあの猫と会うの?」
まどか「あ、うん。前にも通学路で見たことはあったんだけど、近くの茂みを寝床にしてるみたいなんだ」
まどか「それであの子、わたしのこと覚えててくれたみたいで……」
鹿目さんが立ち止まり、鞄から何かを取り出そうとする。
何か包装のような音。――もしかしてこれって。そう思うと同時に、猫の写真つきの袋が見えた。
まどか「とてもなついてくれてるし放っておけなかったから。またあんなことになったら嫌だし……」
貴方「わざわざ餌買ったの!?」
まどか「遅刻した日はいると思わなかったしさすがに何も持ってなかったんだけど、あの帰りに。お小遣いで買ったんだ」
まどか「今日もあの辺にいるかな。寄ってみる?」
鹿目さんは少々戦意喪失っぽいし、気分転換のためにも寄り道をするのも悪くないのかも。
茂みを覗きこむと、皿が置いてあった。これも鹿目さんが置いたのかな。鹿目さんが近づいていくとその奥から猫が出てくる。
甲高い声や輝くつぶらな瞳は同じ。あの時は濡れていたけど、今はふわふわの黒い毛が綺麗に見えた。少し元気になった印象だ。
貴方「あの時より元気そうだね」
まどか「家から近いし、明日からも通おうと思うんだ」
貴方「……家族には内緒なの?」
まどか「うん、話してない」
1家で飼えたりってしないよね
2協力したい
3自由安価
下2レス
貴方「家で飼えたりって……しないよね」
それができるならこんなふうにはしてないんだろうな、とは思いつつも聞いてみる。
まどか「実は前に猫を飼いたいって言ったことはあるんだ。でもうちは弟もまだ小さくて大変だから、飼うなら数年後だって言われたの」
まどか「それに、庭に野良猫が来るの嫌がってたから。……もしかしたら、好きじゃないのかなって。【貴方】くんちはどう?」
貴方「うちも厳しいかな……」
まどか「……そうだよね」
そんな事情なんてつゆも知らない目の前の猫は、満足そうに鹿目さんの膝へ寄っていくと頭をすりつけていた。
こんなに懐いてるんだもんな。見放せなくなるよな。
貴方「俺たちで出来ることはしたいね。あ、そうだ、最近すごく寒いし、タオルでも敷いたら少しは温かくならないかな」
まどか「いいね。買ってくる?家にもあったかな」
貴方「今持ってたはずだから……あった。これでどう?」
鞄の中からタオルを取り出して茂みの奥の地面に敷いてみる。
大層なものではないけどないよりはマシかな。なにより、少し『住み処』って感じはしてきた。
猫も興味を持ったようで、少し匂いを確かめてからそこに座ってくれた。
まどか「乗ってくれたね。気に入ってくれたのかな」
貴方「だといいね」
大人には言えない秘密の場所。少し違うけど、秘密基地を作ってるような気分だった。
……俺たちはまだ子供だ。子供だから、自分で決められないことも多いけど。
でも――飼えなくてもやっぱり見放せないよな。
俺はまだタオル置いただけだけど、あの日一緒にこの猫を発見した仲間として、鹿目さんと同じことは思っていた。
四回目【貴方】 35日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・秘密共有↑
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい
・佐倉杏子・・・興味なさげ?
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
※これから冬休みに入ります。
※36~45日目までが冬休み期間です。
※実はこの世界、季節が動く関係上【タイムリミット】があります。攻略中のキャラがいない状態である日数を超すと……
※……まあ別になにもないんですが、強制的にリセットになります。
――――――
36日目 冬休み
貴方(今日は何して過ごそうかな……)
……冬休み初日。
今日から長い休みが始まるとあって、ごろごろしていた。
金曜が終わって、まだ普通の週末の気分。
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
と、ごろごろしてたら声をかけられた。家の手伝いでもしよう。
貴方「年の初めに向けて綺麗にしなきゃいけないもんな。まあ、今年は友達も呼ぶし」
貴方「ちょっと気合い入れっか!」
――――気合いを入れて境内を掃除した!
訪ねてきた近所の人にも褒めてもらえた。たまにはこんな日もいい、かな?
下1レスコンマ判定 訪問者
1~25…さやか
26~50…マミ
51,75…仁美
76~85…まどか
86~96…杏子
97~99…ほむら
ゾロ…安価指定
00…なんかまとめて来た!?
貴方「よし、こんなもんかな――」
落ち葉やゴミを箒で掃いて集めて、あらかた掃除が終わったところだった。
入口のほうから知り合いが来るのが見える。
仁美「【貴方】くん、ご機嫌麗しゅう」
貴方「あれ、志筑さん」
仁美「まあ、お掃除の途中でしたか?偉いです!」
貴方「これからいっぱい人も来るだろうし、ちょっと家のお手伝いをね。志筑さんはどうしたの?」
仁美「【38日目】からは旅行に行ってしまうので、初詣の下見も兼ねて今のうちに挨拶をできないかと思って」
貴方「そういえば旅行って言ってたね。それでわざわざ会いに来てくれたの?」
仁美「メールや電話でも挨拶はできますが、ちゃんと会っておきたくて。どうやって呼ぼうかなと思ってたんですが、会えてよかったです」
ふと、ちょっとだけしんみりした気持ちになる。少しの間だけど寂しくなるな。
会いに来てくれたのは嬉しかった。
仁美「邪魔をしてしまいましたわね。お掃除頑張ってください」
貴方「あ、いいよ。もう終わりにしようと思ってたとこだし。せっかくだしお茶でも飲んでく?ていうか、この階段大変だったでしょ」
仁美「お気遣いありがとうございます。いい運動になりましたわ。【貴方】くんは毎日ここを上り下りしてるんですよね」
貴方「まあ慣れたかな?おかげで足腰は強くなったのかもな」
雑談を交えつつ、寒い外から中に入る。
――――志筑さんと一緒にお茶をして過ごした!
四回目【貴方】 36日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・秘密共有
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい
・佐倉杏子・・・興味なさげ?
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
37日目 冬休み
――――少し遅めの起床。こうも寒いとなかなか布団から出たくなくなる。
普段ならあまりだらけているのもまずいが、まだまだ休みは長い。
貴方(昨日は何気にはじめて女の子の友達が来てくれたんだよな)
もっと昔は誰か女の子が来てくれたことあった……っけ……――?
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
鹿目さんと連絡取ってみた。鹿目さんも今は家でゆっくりしてたようだった。
そして、家族団欒を満喫中らしい。
貴方『――あ、そうなんだ。家族で休みを楽しんでるんだね』
まどか『うん。昨日もパパが張り切って料理してくれて、わたしも手伝ったんだ』
貴方『あ……じゃあ、このあと家に寄ってみてもいいかな?』
まどか『え? うーん……今日はみんな休みだし、家の中がゴチャゴチャしてるかも……わたしも結構散らかしちゃったし』
貴方『鹿目さんの家って、たしかあの茂みの近くなんだよね。行ってみようかなって』
まどか『ああ……わたしも今日はまだだから。そういうことならわたしも一緒に行くよ』
内緒話をするように、鹿目さんの声が少し小さくなる。
電話越しに賑やかな声が聞こえる。家族のすぐ近くで話しているらしい。
鹿目さんは家族付き合いはオープンな方だし、堂々と出来ない話っていうのも珍しいんだろう。
貴方(……何か持ってったほうがいいかな?)
1猫のおやつてきなもの
2猫のご飯てきなもの
3人用のお菓子
4自由安価
下2レス
貴方(といっても、ご飯は鹿目さんが持ってるし、猫用のものは何持っていけばいいかわからないしな)
茂みに行くだけだからあんまりかさばるもの持ってったってしょうがないだろう。
いや、多少かさばっても猫の住み処に置くのに良さそうなものなら持ってってもいいけど、何かあったかな……?
貴方(着いてから鹿目さんに相談してみるか)
――――猫の居た茂みに向かってみると、鹿目さんが先にいた。
ご飯をあげたところみたいだ。皿にキャットフードが入っていた。
貴方「元気そうだね」
まどか「うん。ご飯もたくさん食べてくれるし、すっかり元気になってくれたみたい」
とりあえず、飢える心配はなくなった。
しばらく猫の様子を眺めつつ、他に何かいるか考えてみる。
ご飯用の皿が一枚、それとタオル。タオル一枚だけじゃ寒いかな。
貴方「何か他に必要なものってあるかな?」
まどか「うーん……―――― 名前。そろそろ名前があったほうがいいよね」
貴方「名前か。たしかに猫猫ってだけ呼んでるのもな……」
貴方「鹿目さんは何か考えてるの?」
しばらく二人で考え込む。鹿目さんも特に考えてはいなかったみたいだ。
猫はご飯を食べ終えると、鹿目さんの足元へと寄っていった。
まどか「あなたはどんな名前がいい?」
鹿目さんが猫に語りかける。抱き上げると猫が鳴いた。
子猫特有の甲高い声。なんて言ったのかなんてさすがにわからないけれど。
まどか「――……エイミー。エイミーでどうかな?」
貴方「いいんじゃない?何か感じ取ったの?」
まどか「えいって抱っこしたらミーって鳴いたから……」
貴方「なるほど。それも感じ取ったって言えそうだ」
お腹が満たされたからか、エイミーは眠たそうにしていた。
鹿目さんの膝から降りると丸まって寝転がった。タオルはちゃんと寝床として使ってくれてるようだ。
まどか「【貴方】くんは他になにか思いつくことはある?」
貴方「他に必要なものか……」
1タオルの替えとか今度持ってこようかな
2首輪とか買いに行く?
3自由安価
下2レス
貴方「名前も付けたんだし、首輪でも買いに行く?」
まどか「首輪着けたら飼い猫って感じがするね。なにも着けてないと、どっか連れてかれちゃうかもしれないし……」
知らない間に保健所に連れてかれたりするかもしれない、ってことか。
そこまで考えて言ってなかったけどたしかにそうだなって思った。
他の人のとこに行くならまだしも決まらなかったら殺処分なんだろうし。
まどか「……あ、でも今財布すら持ってきてないんだった。どうせすぐ近くだからと思って」
貴方「猫の餌だけつめてきたの?」
まどか「あはは……うん、そうなるね」
貴方「取りに行く?」
まどか「うん。ごめんね、途中で寄ってくね」
駅のほうを目指しつつ、ひとまず鹿目さんについていく。
鹿目さんの家も途中にあるらしい。
――少し歩くと、立派な一軒家が見えた。表札に鹿目って書いてある。先に庭に居たお父さん?と目が合ってしまった。
「あれ?まどか、友達連れてきたの?」
まどか「あ、うん。そこで偶然会ったんだ。これから買い物に行くからまたすぐ出るけど」
「家出る時に忘れ物でもしたのかい?」
まどか「ええと、お財布を忘れちゃって!」
「そそっかしいなあ」
なんか厳格そうな人に見つかったらどうしようと思ってたけど、優しそうな印象のお父さんだった。
ちょっと安心した。
貴方「どうも。鹿目さんのクラスメイトの【貴方】っていいます」
「よく来てくれたね。これからもまどかをよろしくね」
貴方(よろしく、か……)
貴方「じゃあここで待ってるよ」
まどか「外で待ってるのは寒いでしょ?」
貴方「でも今日は家族もいて部屋が散らかってるからって……」
まどか「すぐ出るんだし気にしなくていいよ。むしろこんなところで待たせてたらパパとママに怒られちゃう」
貴方「そう言うんなら」
家に上がらせてもらうと、次に見たのは小さい男の子の世話を焼いてる母親の姿だった。
鹿目さんからの簡単な紹介の後挨拶すると、こっちに視線を向けてくれた。
「えっ、お友達?しかも男の子か~。悪いね、何も準備してなくてこんなで」
貴方「いや、急に来たのはこっちですから」
まどか「ママ、何か勘違いしてない?普通の友達だよ?【貴方】くん、こっちがわたしの部屋だよ」
両親の歓迎を受けた後、鹿目さんの部屋にたどりつく。
……知ってる人だけの空間になるといくらか落ち着いた。
まどか「あった、これとこれと……――よし、これでいいや。付き合わせてごめんね」
貴方「むしろ俺のほうが急に来たら迷惑だったんじゃ……?」
まどか「気にしなくていいよ、付き合わせたのはわたしだし。あ、でも散らかってるからあんまり見ないでね」
やっぱり女子の部屋は気になるといえば気になる。
鹿目さんの部屋はなんていうか、ぬいぐるみがいっぱいで可愛らしい感じの部屋だ。
言うほど散らかってもないかなと思ったけど、まあ言わないでおこう。
まどか「行こう」
必要なものを詰め終わったようだ。
部屋を出て廊下のほうに戻っていくと、ふと庭いじりしていたお父さんの困ったような声が聞こえた。
「あぁ、またやられたなぁ……」
まどか「パパ、どうしたの?」
「猫だよ。野良猫かどこかの放し飼いか……。畑をトイレにされちゃってた」
まどか「……」
「百均にとげとげマットでも売ってるかな……猫が食べたら中毒を起こす草だってあるだろうに。近寄らせないようにできないかな」
……家を出ると、思わず鹿目さんと顔を見合わせた。
貴方「……トイレか」
まどか「考えたことなかったね……」
まあそりゃあ猫だってどんなに可愛くたって、生き物な以上糞尿くらいする。
当たり前といえば当たり前なんだけど、どこか考えないようにしてたのかもしれない。
野良猫が人に迷惑をかけるということを。
まどか「パパも猫が嫌いなわけじゃなかったんだね。砂をかける場所があったらそこでするのかな」
貴方「トイレ置く?」
まどか「スペース的には置けないこともないかな……?」
ただ、トイレや専用の砂なんて買ったら首輪なんかよりお金はかかる。
掃除したり替えてやる手間もかかるだろうし、それも鹿目さん一人で全部やるつもりなのかな。
それに、小さい皿とタオルだけならまだしもあの茂みに置くには結構目立つ気がした。
まどか「と、とりあえず見てみようか。そのせいでエイミーが嫌われちゃうのはいやだし」
まどか「庭とかトイレにされるのは困るもんね……」
ひとまず予定通り買い物には出かけよう。デパートに向かうことにする。
貴方「――――小型犬・猫用……このへんか」
まどか「かわいいのいっぱいあるね。どれが似合うかな?エイミーは黒猫だから……――」
デパートの中にあるペットショップにつくと、さほど迷わずに辿りついた。
鹿目さんは入口付近にあったうさぎやハムスターなどの小動物にも少し目を奪われていたようだったが、今はまずエイミーのことだ。
デザインや色の違う首輪を見比べている。その横顔は楽しそうに見えた。
人間の都合ではあるが、こういうのを選ぶのは服を選ぶのと同じように楽めることだ。
しかしトイレのこととなると楽しいというよりはどうにかしなきゃいけない問題になる。……飼うのもこんな感覚なのかな?
まどか「こっちの色とどっちがいいかな?」
鹿目さんが出したのは同じデザインのピンクと黄色だった。
なんかショッピングデートの定番っぽいセリフだけど、猫用品選んでるだけなんだよな……。
1ピンク
2黄色
3あえて他のを推す
下2レス
貴方「そっちのがいいんじゃないかな? ほどよく目立ちそうだし」
まどか「ピンクのほうだね。ちょっと派手かなって気もするけど可愛いよね!」
たしかに無難っていうよりは少し派手かもしれない。
まあでも、こっちのほうがいいって思ったのはそこも含めてだった。
まどか「黒猫だから、わたしも茶色や黒みたいな暗い色だとわかりづらいかなって思ってたんだ」
まどか「でも黄色も目立つほうじゃないかな?蛍光色みたいな」
貴方「それもそうか。でもなんとなく、そっちのほうが鹿目さんらしいなって思ったから」
まどか「わたし? そうかな。でもこれはエイミーのだよ?」
貴方「なんというか……鹿目さんが選びそうかなって。つけてるリボンとかも、もっと赤みが強いけど似たような色だし」
まどか「実はこれは選んだのはわたしじゃないんだけどね。でもこれ、気に入ってるの」
まどか「もちろんそれだけで変われるわけじゃないけど、外見を少し変えるだけでも違う自分に『変身』できる気がしない?」
そう言うってことは、『変身』する前と後があったってことなんだろう。それも外見だけの話じゃなくて。
――――いつからだっけ?
それだけじゃないなら他の理由もあるってことだ。
優しそうな印象や自己主張の強くないところ。変わらないところは変わらないけど、言われてみると、変わった――……のかな。
いつもはもっと目立つさやかとかもいるから印象は埋もれがちだった。それでも鹿目さんにとってはとても大きな変化。
貴方「魔法少女の『変身』もそうかな」
まどか「! うん。そうなの。前にも話したよね。わたしは魔法少女になれたことが誇りだって」
貴方「じゃあ――やっぱりそのくらいの時期からなんだ。さっきの話も」
まどか「うん……リボンのこと言ったけど、それが一番大きいよ。もし契約してなかったら、まだわたしは自分に自信が持てないままだったと思う」
貴方「そうか、そんなに……」
まどか「普通の女の子が可愛い衣装に変身してかっこよく戦うのって、小さい頃にも憧れてたの」
まどか「さすがに大きくなったらそんなのもう忘れてたけど、本物の『魔法少女』に出会ったら小さい頃よりももっと強く憧れた」
まどか「そんな憧れの魔法少女になれて、お話の中の魔法少女みたいに普通の女の子のわたしが魔女と戦ってるんだよ!」
まどか「だから、辛いこともあるけど、仲間にも恵まれてるし今はとても幸せ」
鹿目さんの表情は自信で満ちていた。自信に満ちた、穏やかな笑顔だった。
――ああ、そうか。この表情をするようになったのは契約してからなんだ。
鹿目さんの魔法少女に対しての想いはかなり強そうだった。
……同時に、前にも感じた自己評価の低さ、それ自体が自信につながってるんだって気づいて少しだけ脆さを感じた。
鹿目さんの自信は魔法少女に関することだけで、それ以外はまだ自信を持てないままなんだろうから。
変身という言葉から連想しただけだったけど、魔法の力を得る契約は良くも悪くも人生や人柄すら変えるほど影響を与えるものなんだろう。
なら、俺自身はなにか変わっただろうか――?
考える前に、ふとよさげな雰囲気になってたところに幼い女の子の声に水を差さされて現実に帰るはめになる。
*「あのおねえちゃん魔法少女なのー?へんな話してたー」
*「しっ、聞こえちゃうでしょ!」
貴方「…………」
まどか「――こ、こんなところで堂々とする話じゃなかったよね!」
まどか「じゃあ首輪はこれにしようかな。意見ありがとう」
自信のある表情から一転、慌てふためいてた。
……さっきの会話の流れで、もしかしたらチョーカーとかも似合うかなって想像してみたことは秘密だ。
鹿目さん、あんまりそういうファッションしなさそうだけど。
と――、それは置いといて、別の棚を見にいく。
まどか「爪とぎにブラシに歯磨きセットに、色々あるんだね……。飼うなら全部必要なのかなあ」
貴方「どうなんだろう……。飼うならあったほうがいいんだろうけど、さすがにそこまではやってられないんじゃない?」
貴方「お金もそんなにあるわけじゃないし」
まどか「うーん……今は全部は買えないかな……。本当は色々と準備が必要なんだろうね。動物飼うのって」
貴方「急だったし準備が揃ってないのは仕方ないよ……」
これからどうするか、どこまでやるのかは考えなきゃいけないとは思った。
思ってたよりも、考え出せば次々と出てくるようだ。
ここまでやって見放したくないし、俺もできることはやりたい。でも――……。
貴方「これが猫トイレか。容器も砂もいろいろ種類がある」
まどか「けっこう高いのもあるね……。子猫用なら小さいし少し安いね。小さくないと茂みに隠せないし……砂、どれにしよう?」
漠然と見にきたけど、事前に調べたりもしてないからなにがいいのかさっぱりわからない。
悩んでいたところに店員が尋ねてきて、結局そのおすすめ通りに買うことにした。
出来るだけコンパクトで費用がかからないものを選んでもらった。
……野良猫、ということは言えなかった。
それは俺たちだけの秘密。それに、どこか知られることに怖さがあった。何か後ろめたいような気持ちを感じていたんだと思う。
まどか「首輪とトイレの代金、出してくれてありがとうね。どのくらいかかるかわかってなかったし、一人じゃけっこうきつかったかも……」
貴方「鹿目さんは餌まで用意してるんだし、このくらいなら安いもんだよ。二人の秘密だからさ!」
買い物が終わると、ふたたび茂みに戻ってくる。
エイミーはまだここにいた。昼寝中のようだ。
貴方「よく寝るね」
まどか「猫ってそういうものなのかも……。ただいま、エイミー」
先に茂みにトイレを置いて、砂を入れてセットする。この場所に物がまたひとつ増えた。それも今度のはそこそこ大きい。
子猫用の小さいサイズとはいえ茂みの中を覗くとかなり存在感があった。
まどか「これがエイミーのトイレだよ。今日からはここでしてくれる……?」
昼寝から起きたばかりのエイミーは、わかっているのかいないのか。
まあ、言葉がわかったとは思ってない。いっそ人間の言葉が通じたら楽なのに。
まどか「……これって子猫用なんだよね。大きくなったらもっと大きいのが必要になるのかな」
貴方「どうだろう……」
まどか「小さくて使いづらいって思ったら、別のところでするようになるかも」
まどか「というか、ちゃんと使ってくれるかな。せっかく用意しても使ってくれなかったり、別のところでもするとしたら……」
それを考え出すとどうしようもなくなる。それに、さっきは首輪を人間の都合って思ったけど。
貴方「今まではどこでしてたんだろう。この辺にはないし……。猫からしたらそこらでしたって困らないんだもんな」
まどか「うちの庭でしてたのもエイミーだったりして……」
鹿目さんは苦笑いで言う。
もしもピンクの首輪をつけた黒猫が自分ちの庭を荒らしてるのを発見したら気まずいだろうな。
まどか「……うちのっていうのも嫌だけど、人に迷惑かけるわけにはいかないよ。でもどうしたらいいんだろう」
貴方「ここだけでしてくれるようになるのが一番いいんだけどね」
まどか「うん。もちろんそれはそうなんだけど……とりあえず、してくれるかどうか様子を見るしかないかな」
慣れないと暴れるかとも思ったけど、首輪は簡単につけられた。
もう見た目は立派に飼い猫に見える。
まどか「……とりあえず、今日はこれで帰ろうかな。エイミー、またね。【貴方】くんも」
まどか「今度はまたエイミーのこと以外でもショッピングとかしに行こうか。まだ当分は余裕ないかもしれないけど……」
貴方「うん、そうだね。またどこか行ったりしよう」
どうなるかは様子を見るしかなさそうだ。
今日はこれで別れた。
四回目【貴方】 37日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有↑
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずいことがあった→
・佐倉杏子・・・興味なさげ?
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
※初詣イベントは【40日目】
―――――――
38日目 冬休み
いつも通りに起床してのんびりと過ごす。今日も寒いけど、カラッと晴れて日が差している。いい天気だ。
【38日目】――今日は志筑さんが旅行に行くと言ってた日だ。
今日から少しの間会えなくなる。寂しいな。
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
-----------------------
1は内容(a~e)もセットで選ぶんやで
ちなみに「気まずい」から「気まずいことがあった」になってますが、ほとぼりが冷めるにはもう少しかかります
基準としては冬休み明けくらい
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
……天気のいい日だし、外に出てみようか?
・探すといっても闇雲では見込みはないぞ!どこにいく?
1猫のいた茂み
2繁華街
3訓練場所
4QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
5自由安価
下2レス
駅前の繁華街のほうに出てみた。
年の瀬ということもあり、通りのあちこちでセールの文字を見かけられる。
……しかし、あまりショッピングできるほどの余裕はないかな。
貴方(来てみたはいいけど、この辺はやっぱりお金がないと楽しめないことのが多いだろうな……)
貴方(必要なものが出てきたらまた買いにいくことになりそうだし)
1お金がなくてもウィンドウショッピング
2もう一度ペットショップ見てみる
3そのへんをぶらついて帰る
4自由安価
下2レス
まあ、見るだけならタダ……か。
デパートは人でにぎわっていた。見てるとたしかにお買い得な服とかあるんだけどな。
――と、暫く見ているとふいに声をかけられた。
さやか「よっ、【貴方】!」
家族と一緒みたいだ。
貴方「さやか、ひさしぶり。家族で買い物?」
さやか「ん、ひさしぶり。まどかも誘おうと思ったんだけど付き合い悪くてさ~。ほむらはなにしてんのかよくわかんないし」
貴方「よくわかんないっつーと?」
さやか「学校で会わなくなると、連絡取るほどでもないんだよね。【貴方】は話したりしてんの?」
貴方「いや、全然……」
そういえば冬休みがはじまる前、気まずい空気だったんだっけ。
さやか「そうだよね。ていうか、あいつ一人でこの街来てるんでしょ?年末年始くらい実家に帰るんじゃない?」
貴方「ああ、そうかもしれないか」
さやか「まあわかんないけど。それも含めて全然わかってないんだよね!」
1暁美さんに連絡してみれば?
2他の仲間とはどう?
3自由安価
下2レス
貴方「暁美さんに連絡してみれば?」
さやか「それもそうだね。一応仲間なんだし」
さやかの家族にも挨拶して、それから少し店の中を回ってから帰った。
……そういえば、他にも冬休みが始まってからどうしてるかわかってない人は他にもいるな。
パトロールとか、みんなどんな感じなんだろう?
四回目【貴方】 38日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずいことがあった
・佐倉杏子・・・興味なさげ?
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
39日目 冬休み
貴方(今日は一段と寒いな……)
……布団が恋しすぎる季節。
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
月日が流れるのは早いものです……
-----------------------------------
……億劫な気持ちを振り切って暖房の効いた家から繰り出す。いつもみんなが集まってる訓練場所に行ってみた。
新人の頃はよくここにみんなで集まって訓練してたけど、今では集まるのも週に一度程度だ。
休みに入ってからは各自色々と都合があるからと日程は決めておらず。
ここに来たのは昨日仲間のことを考えたからっていうのもあったかな。誰もいないけど、動けば身体も温まるだろう。
貴方(まずは基礎的なところから……!)
――――
――――
自己鍛錬に集中し、寒さも気にならなくなってきた頃、妙な音に気づいて後ろを見る。
――……『パリッ』、という小さくなにかが砕けるような音。
貴方「!?」
杏子「やっと気付いたのか? 気配の察知はまだまだだな。そんなんじゃ後ろからグサーッとやられちゃうんじゃない?」
……佐倉さんが座ってスナック菓子を食べていた。
正直、いきなり現れたようで腰が抜けそうになったんだけど。
貴方「……気配消してた?そんな特技あるの?」
杏子「べつに。なんかやってんなって思って見てただけ。一人で特訓とは立派な心意気だな」
貴方「ま、まあいつもはやらないけど……佐倉さんも一人でここに来るの?」
杏子「毎回訓練しに来てるってわけじゃないけど。そうそう人こないし、一人のほうが気楽なこともあるんだよ」
今までこの場所に自分が来るのはみんないる時だけだった。
でもその気持ちは少しだけわかる気がした。訓練をするにしてもそれ以外でも、誰かがいれば人の目は気にしてしまうから。
貴方「……少しわかるかな。今日は訓練をしに?もしそうなら見てもらいたいんだけど」
杏子「いや、見ての通り食ってんだよ。面倒臭いから見てるだけ」
……それも一応見てくれてる、ってことになるのかな。組手とかはする気はないみたいだけど。
一人が気楽なのは共感したが、訓練となると人の目を気にした方が成果が出ることもありそうだ。
1佐倉さんって、一人が好きなの?
2年末どう過ごしてた?
3自由安価
下2レス
訓練の続きに励む。佐倉さんは本当に見ているだけだ。
その視線を受けながら、少し会話を交わしてみる。
貴方「もう年末だけど、どう過ごしてた?」
杏子「その話はあたしに聞いても面白いことなんか一つもないぞ。いつもと何も変わんないし」
杏子「話したいならそっちが話せば?」
貴方「そうだな……大体は家のことや掃除を手伝わされたりするのが日課だよ。この時期は忙しいから」
杏子「家がなんかやってんのか?」
貴方「神社だからたくさん人がくるんだ。まあ、たまに褒められたりするから悪い気はしないよ」
杏子「……ふーん」
貴方「あとはたまに散歩に出たりとかかな」
……そういえば、相変わらず興味なさげな反応に見えるけど、こう見えて人の話を聞くのは好きなんだったな。
特訓をしながらぽつりぽつりと話すことができた。
二人の時は会話に困るなって印象だったけど、まずは自分のことを話してみるのがいいのかもしれない。
反面、佐倉さんのことはまだわからないことも多い。なんとなく人から聞いて知ってたことがほとんどだ。
――しかし、どのくらい経つだろうか。
そろそろ訓練も終わりにしてもいいかなと思う頃だが、お菓子は無限に出てくる。
貴方「……まだあるの?お菓子」
杏子「まあな。特訓で腹減っただろうから、これやるよ」
貴方「あ、ありがとう」
大きな袋に入ったうんまい棒を一本くれた。
……こういうお菓子もたまに食べるとうまい。腹が減ってたのは本当だった。
四回目【貴方】 39日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずいことがあった
・佐倉杏子・・・自分のことを話した↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
40日目 冬休み
境内
今日は朝から大忙しになる。人でにぎわっていた。
――――年明け。
一年の中の一番といっていい大イベントだ。もう一つ大イベントのカウントダウンはまあ、深夜なので手伝いはなかった。
家の手伝いをしながら知り合いの姿を待っていると、約束してた通り、振り袖姿の志筑さんが来ていた。
仁美「あけましておめでとうございます!」
貴方「あけましておめでとう。そしてただいま。旅行はどうだった?」
仁美「たまにはいつもと違う景色を見るのも新鮮でしたよ。これ、お土産です」
紙袋を手渡される。中を見てみると、焼き菓子のようだった。
仁美「人気のお店なのだそうです」
貴方「わあ、ありがとう!」
仁美「今年も頑張っていきましょう。もう最後の一年になりますから」
貴方「卒業したら離れ離れか、寂しいな」
仁美「あの……前に言ったお話、どうですか?同じ高校を目指さないかっていう」
……そういえばそんな話をされたことがあったっけ。その時もそんなにまともに考えてなかったし、大して受験を頑張るつもりもなかった。
でもどうだろう? そろそろ勉強のほうも本気で頑張ってみてもいいんじゃないか。それに何より、進路についてちゃんと考えてみても。
貴方「……まだすぐには決められないけど、考えてみようかな」
仁美「視野に入れてくださるということですね!」
貴方「でも志筑さんこそいいの?お嬢様学校行くとか言ってなかったっけ?」
仁美「納得させられればいいのですわ。優秀な学校なんていくらでもありますし。それに、ちゃんと私が選んだ道を行きたいですから」
こんな言葉を聞いたら、やっぱり俺もちゃんと考えないといけないなって気がしてきた。
仁美「そして……学校を卒業しても、私たちにはあの約束がありますよね。いつか話してくれるって」
仁美「いつでも……いつになっても、待ってますからね」
……そうだ。志筑さんとはその約束もある。
勉強も頑張らないといけないし、魔法少年のほうも頑張らないといけないな。
貴方「ああ。約束だ」
なるべく早く安心して話せるように、全ての魔女を倒すんだ。――絵馬には書けない願いだけど、そう胸の中で再び誓った。
貴方「その振袖、いいね。志筑さんって和服も似合うんだね」
仁美「! ありがとうございますっ」
ふわりと花開くように、志筑さんが微笑んだ。
――――そこにまた、聞き覚えのある話し声が聞こえてくる。
まどか「ぱんぱんっと手を叩いて……あれっ、その前にもおぎじだっけ」
「ぱんぱんぱん!」
まどか「たっくん、めちゃくちゃにやったらよくないよ」
「おぎじー!」
「二拝二拍手一拝だよ。その前に手も洗わないと」
鹿目さんとそのご家族だ。
弟に参拝の仕方を教えてたらしい。
貴方「鹿目さん、来てくれたんだね。あけましておめでとう」
仁美「あけましておめでとうございます」
まどか「あけましておめでとう。仁美ちゃんも来てたんだね」
仁美「はい。午前中だけしかいられませんが」
まどか「やっぱりおうちのこと?仁美ちゃん、毎年冬休みは忙しそうだなって思ってたから」
仁美「なかなかゆっくりとはしてられませんわね……」
まどか「うちはもうゴロゴロとだらけきっちゃってるよ」
貴方「まあうちもそうかな……」
仁美「【貴方】くんはしっかり働いているじゃないですか」
貴方「まあ家の手伝いはしてるか」
貴方「じゃあ、特別に優先して……とはいかないけど、参拝しにいこうか。わからなかったら同じようにやってくれたらいいから」
まどか「たっくんも、まねっこしようね!」
みんなで列に並ぶ。
鹿目さんの家族、この間は全員家に揃ってる時の休みの風景を覗いてしまったけど、ちゃんと会うのは初めてだった。
――参拝が終わると、おみくじを引きに行った。
ここだけは友達特権で割引することを許してもらっていた。
・みんなの運勢
下1(貴方),2(仁美),3(まどか)レスコンマ判定
0~20大吉
21~40中吉
41~70吉
71~80末吉
81~90凶
91~99大凶
古典的なおみくじ。結果が出る瞬間っていうのはなんとなくワクワクするものだった。
俺も今はじめてみんなと一緒に引く。結果は――。
貴方「末吉……地味だなぁ」
仁美「地味でも幸せならいいじゃありませんか。私は……まあ、大吉!気分いいですわね」
貴方「慰められた気がしなくなった……」
まどか「……こ、これって、逆にレアだったりするんだよね?」
貴方「え?鹿目さんは? だ、大凶か。うーん、逆に……?」
俺はともかく、こうも大きく結果が分かれるとは。
貴方「まあこれは現時点での運で、悪くても変えていけると思うからさ」
貴方「運も人生も自分でつかみ取るもんだよな!」
まどか「うん。そうだよね!大凶でも頑張るよ!」
仁美「この幸せを維持できるように頑張りますわ」
神社の息子らしいことを言って、かっこいいことを言って締めてみた。
――――
――――
――……昼時になると、仁美は用事があるからと帰っていった。
自分もまた手伝いに戻ってた。
昼食休憩中に鹿目さんと二人で話す。今日は食べ物や遊びの屋台も出ている。
鹿目さんの家族も今はちょうど弟と一緒に遊びに行っているようだ。
貴方「これ差し入れでたくさんもらったから、鹿目さんもよかったらどう?うまいよ」
まどか「ありがとう!」
屋台のごはんも美味しいものだった。お祭り気分。
まどか「今日は呼んでくれてありがとう。おかげで家族みんな楽しんでるよ」
貴方「それはよかった。あ、そうだ。エイミーはあれからどう?」
まどか「トイレは使ってくれてるみたい」
貴方「そっか、ならまあとりあえずこれでいいのかな……」
「お、まどかいた。お友達とお喋り中か」
エイミーの話をしてたところにご家族がやってきて、少し慌てる。
とはいえ内容までは聞かれてなさそうだ。
まどか「たっくん、荷物増えたね!景品?」
「そこのスーパーボールすくいでとってきたんだ」
「【貴方】くん、この前はうちも何の準備もしてなかったしすぐ行っちゃったけど、余裕がある時にまたおいでね」
「きっとああいうことがなければ、まどかは男の子を家に招くなんてそうそう自分からしないだろうし」
貴方「あ、はい。ありがとうございます!」
「まどかのお友達の幅が広がったなら嬉しいし、それに……ま、歓迎するよ」
まどか「わたしももちろん歓迎はするんだけど……ママ、その間はなに!?」
鹿目さんや鹿目さんの家族と少し話をして、また手伝いに戻っていった。
2012年、か。 良く耳に馴染んだ年が去り、まだ聞きなれない新年が明けた。
――――今年もいい年になりそうだ。
まどか(もちろん歓迎はするんだけど、ママにからかわれそうなのがイヤなんだけどなぁ……)
四回目【貴方】 40日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有↑
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずいことがあった
・佐倉杏子・・・自分のことを話した
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:3回】
― 八週目(冬休み前半) 終了 ―
[好感度] to貴方
美樹さやか★★★巴マミ★★★志筑仁美★★★>鹿目まどか★>佐倉杏子>暁美ほむら
★…フラグ一段階目 「気になる」
※大抵の場所なら誘ったらOKしてくれると思います。
※放課後行動では勝手についてくることもあるかもしれません。
★★…フラグ二段階目 「特別」
※【貴方】との行動を優先します。
※ここまでくればあとは流れに乗るだけだ!
★★★…フラグ三段階目 「恋慕」
※実質落ちてる。
※個別ENDにいってもいかなくても攻略済み。
☆…互いに恋人として誓い合った仲。他の人の好感度上げすぎると多分マズイことになる。
もし他の人に言い寄るようなことしたら普通に浮気です。
▽…嫉妬Lv1
※ハーレムならつきものくらいの可愛い嫉妬だよ。
※この辺で留めておかないと色々濁るかもよ。マズそうな選択肢は控えよう。
41日目 冬休み
年が明け、イベント事も終えて冬休みも後半戦。
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
……この前は佐倉さんにも会ったし、旅行に行ってた仁美も帰ってきて、さやかや鹿目さんも誘えばすぐ会える距離にいる。
で、前に話題に出た気がするけど結局暁美さんってどうなったんだっけ?
貴方(さすがに携帯に連絡入れれば届かないってことはないだろうけど……)
久しぶりにパトロールどうですか、とメッセージを送ってみたものの。
貴方(まだ年明け早々だし、帰ってきてないかな)
――――その後、結構経ってから返事がこないことに気づいた。
どこにいるのか、真相はわからない……。
四回目【貴方】 40日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずいことがあった
・佐倉杏子・・・自分のことを話した
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:2回】
【訂正】>>107 40日目終了→41日目終了
---------------------------------------------
42日目 冬休み
……朝、か。
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/ほむら/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
※【強制END確認】※
強制ENDまで【残り:2回】→強制ENDまで【残り:1回】
現時点で攻略途中のキャラクターが二人、かつ、ほむらが未攻略です。
エンディングはいわゆる世界観の根底をゆるがすタイプのものであり、ほむら自身の好感度も展開に関係します。
それでも強制エンディングフラグを進めますか?
1強制エンディングへのフラグを進めます
2やっぱやめよう
下4レス中多数決
……もしかして、昨日は気づいてもらえてなかったのかも?
もう一度送ってみようか?
ちょっとためらったけど、もう一度昨日と同じものを送ってみた。
単に無視されてるだけだったのかもしれないから。……まあ、その心当たりはあった。
貴方(……そうか、単に暁美さんのことが知りたいならさやかに聞けばいいんだよな)
貴方(連絡してみたらって言ったのは俺だし)
今日も返事はこなかった。
その代わりにさやかに連絡してみる。
さやか『……ああ、ほむらのこと?連絡はしてみたよ』
さやか『普通にこっちにいるみたい。今頃一人でお雑煮でも食べてるんじゃない?』
貴方「……あ、そうなの?」
じゃあ、本当に無視されてるだけなのか……。いや、嫌われすぎじゃないか!?
貴方「一人でお雑煮って言い方寂しいなあ」
さやか『言ってやるなよ!』
貴方「ていうかそれも想像だろ。……でも、一人暮らしでこっちにいるならそうなるのか。お雑煮自体食ってないかもしれないけど」
さやか『帰ってやればいいのにねー。家族仲悪いのかね?』
暫くさやかと電話口でとりとめのない話をして過ごす。
――その間も返事がくることはなかった。
四回目【貴方】 42日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい→
・佐倉杏子・・・自分のことを話した
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:1回】
43日目 冬休み
……朝だ。
まだ半分あると思っていた冬休みももうすぐ明けてしまう。
なんだか少し無為に過ごした気がするな。
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/マミ/仁美)※キャラによっては断られることもあります
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
貴方「キュゥべえ、いる?」
QB「はいはい!なにかな?」
貴方「…………!」
なんとなくそんな気はしてたけど、なんかもう当然のようにきやがった。
QB「??」
貴方「……いや、本当に来るとは思ってなかった」
QB「これまでと変わらないサポートを提供するためだよ!今までだったら学校にいけば杏子以外は揃ってたけど、今はみんなバラバラだから大変なんだよね」
貴方「いやたぶんそれはサポートという名のストーカー」
QB「それで、呼んだからには用があるんじゃないのかい? いつもと同じくらいの用件なら承るよ?」
貴方「じゃあ……佐倉さんに会ったら伝言頼めるか?パトロールに誘いたい。時間はいつもの放課後くらいからで構わないから。待ち合わせ場所は――」
――ふむふむと頷いて、キュゥべえは飛び去って行った。
夕方まで暇だな。少し時間を潰すことにした。
――――
――――
夕方になって、街に出る。街中から、街の隅っこへと。
待ち合わせ場所に選んだのはいつもの訓練場所だった。この前もここで会ったから、なんとなくだった。
貴方(キュゥべえはちゃんと伝えてくれたみたいだな……)
人目につかないほうへと踏み込んでみると、先に来ていた佐倉さんが一人で訓練してる姿があった。
こういうの見るのって珍しいな。巴さんから指導されてたり、逆にさやかとかを指導してたりするのは見るけど、自己鍛錬ってあまり見ないから。
この前とは逆に、気づかれないようにそーっと近づいてみようとする。
杏子「!」
――が、さすがに気配を察する力にも長けているらしい彼女の方が一枚上手だった。
振り向きざまに突き付けられた槍には必要以上の敵意は感じられない。相手が誰だかもわかった上で、驚かされただけだった。
貴方「さ、さすがだね。佐倉さん」
杏子「あたしの背後を取ろうなんて百年早い。じゃ、行くか?」
さすがに百年は言いすぎだと思う……。そんなことを思いながら出発した。
冗談のやりとりをできるようになっただけ進展したといえるのかな。
貴方「たまに一人で訓練してるんでしょ? 佐倉さんも努力家なんだね」
杏子「まあ、むしろ一人になるついで? たいしたことじゃない」
貴方「そうか。そう言えるのがすごいよ。俺もがんばんなきゃなぁ……」
杏子「おー、頑張んな。あたしなんかよりずっとご立派な志掲げてるんだろ?」
投げやりな言い方だけど、一応応援と受け取っておいたほうがいいのかな。
足頼みに怪しい場所を回っていく。ある程度はパトロールのルートは決まっていた。
そのうちに魔力の反応を見つけ、結界に入っていった。
-------------------------
今日はここまで あしたもたぶんやる
貴方「この結界、暗くて足元が見づらいな……そうだ!ソウルジェムで照らすのはどうかな?魔力の使い方次第ではライトにできる!」
杏子「魔力の使い方としちゃ考えたほうかもな。でも却下だよ」
貴方「えっ、なんで!?」
杏子「この通路、そんなに狭くないし。こんな暗いとこに住む住人はあたしたちより闇にも目が慣れてるだろうねえ」
杏子「そんな中で目立つことしたら相手にも目印知らせるようなもんじゃん?」
貴方「ああ、言われみればたしかに……」
杏子「それに、光だけじゃない。あたしたちが魔力を辿ってここまで来たように、魔女や使い魔だって魔力に反応する」
杏子「囲まれたらちょっとキツいんじゃない?――まあ、あたしならまとめてぶっとばせないこともないけど」
佐倉さん、考えるより動くのが得意そうなタイプに見えて意外と考えてるんだなって思った。
……経験の量か。
杏子「しっかりしてよ、ガッコじゃ頭いいんでしょ?アンタ」
貴方「あれ……それは誰から聞いた?」
杏子「まどかが話してた」
鹿目さんが俺の話を、かぁ――……なんて、浮かれてる場合じゃない。
杏子「まあこのくらいならそんなに見えないわけでもないだろ」
貴方「! じゃあ、魔力で視力のほうを強化する方法は?それなら使う魔力も少しで済む」
杏子「いいんじゃない? アンタに言われたのが悔しいけど、認めてやるよ」
貴方「悔しいって、そんなぁ」
佐倉さん、素直すぎるのか素直じゃないのか、どっちが近いのかな。
まあまだ他の仲間に比べて信頼しきってないのはわかってる。地道に認めていってもらうしかないか。
――魔力を目の神経に通していくと、目に入る光が増幅され、暗闇でも細部まではっきりと輪郭が見えるようになった。
視力といっても、普通に健康診断で測るような距離によるものの見え方だけではない。
今だけ普通の人間の目よりも夜行性の猫や猛禽類の目の性能に近くなる。
杏子「見えるようになったな。じゃ、いくか――――っ、ん?」
隣でなにかをぐにゅっと踏みつけたような音がした。さっきからも歩いているうちにたびたび足を取られることがあった。
改めて足元を見てみると、なんかとりもちのような――汚い話をすれば痰の塊のような――粘着物が落ちていた。
杏子「……! きっも、うわきっも!!」
貴方「これは見えないほうがよかったかもな……」
しかし、良く見えるようにしたのにその直後に踏んづけるって、うっかりなとこもあるのかな。
杏子「とっとと魔女を倒すぞ!こんなとこさっさとオサラバしてやる!」
貴方「それには賛成だ。……それにしても、なんで魔法少年は少なからずいるのに敵は魔女だけなんだろう?」
杏子「知るか。キュゥべえが言ってたからってだけだよ。化け物共に性別もなにもないと思うけどな」
杏子「じゃあこんなキモイことするのは男だろ」
貴方「それは男女差別……」
とはいえ、見えるようになったらだいぶ気持ちの悪い結界だ。
これで家主が女……というかメス?と言われたらちょっと引くかもしれない。
貴方(それこそ化け物相手に考えることでもないか……)
――――結界の奥に居たのは予想通りの化け物らしい見た目の化け物だった。
最深部に来た途端、眩しいまでの明かりが部屋全体を照らしていた。視力の強化に当てた魔力を解除する。
杏子「なんか思った通りの奴だなあ」
貴方「たしかにね」
杏子「さっさと片付けるか!」
佐倉さんが先に攻撃を仕掛けにいく。これには注意をひきつける意味もあった。
魔法少女として先輩だからということもあるが、彼女が率先して切り込み隊長になっていることが多かった。
毎回こういう危険な部分を任せるのも気が引けるけど、やっぱり上手く出来るのは彼女のほうだし、プライドもあるんだろう。
佐倉さんは武器のリーチが長く足も速い。おまけに一撃の威力もある。いざとなれば力押しでなんとかすることもできる。
こっちも中距離までは対応できるけれど、もっと近づかないとそこまでの威力は出ない。
貴方(前も思考を大事にってのは言われてたもんな……できることを活かさないと!)
杏子『よしっ、回り込んだな!』
死角を突いた攻撃で結界の壁へと拭き飛ばし、飛び道具で磔にする。
魔女が起き上がらないうちに、佐倉さんが槍を振るって勢いをつけた一撃でトドメを刺す。
連携はスムーズだ。
杏子「いっちょあがりか」
貴方「なんとかなったね」
近くに居た佐倉さんがグリーフシードを掴みあげ、今回も何事もなく終わった――――と思った矢先だった。
杏子「…………は?」
こっちももう気を抜いてたし、佐倉さんがそんな声を上げたことすら深く気に留めなかった。
――――景色が変わるまでは。
魔女を倒せば結界は消滅し、元の景色が戻ってくる。しかし今回は予想と違う。景色は戻らず、『別の物』に塗り替えられていく。
気を抜いていた俺も、さすがにその光景を見れば異変は察する。
貴方(別の魔女が潜んでた……!?)
再び戦闘態勢をとる。何が敵かわからない中、周囲を見回す。
佐倉さんがグリーフシードを手から離したのが見えた。
杏子「まだだ!セコいマネを……!」
つまり、倒したと思ったのが偽物だったということだったんだろう。
それに別の魔力があれば二人もいればどっちかが気づけたはずだ。
変わりゆく景色の向こうに何かの影が揺らぐ。彼女はそこに再び狙いをつけて穿つ。しかし、魔女が現れたのはその背後だった。
貴方(違う!そっちじゃない――――!)
杏子「これもハズレかよ!」
現れた影は囮。もちろん佐倉さんもそれにすぐ気づく。
しかし、囮は囮でも実体を持った囮だ。絡み付いた靄が動きを遅らせた。
――――間に合えと念じ、なりふり構わず走り出す。
俺にもっと実力があれば颯爽と魔女に一撃ぶち込んで助けることもできたのかもしれない。
今度は巴さんの時みたいにはいかなかった。こんなとき、どう頑張っても何かを犠牲にしなければいけない『限界』があることを思い知った。
杏子「……はぁ!?」
仲間に危機が迫って出来たのは、間に割って入ることだけだった。
佐倉さんは覚悟していた衝撃が来ず、代わりに訪れた展開に驚いていた。
敵の攻撃を、腕を伸ばして遮った。その片腕が肘から『無くなっている』。
自分でも驚くほどに他人事に捉えてた。しかし、自覚すればするほどに痛みが現実味を伝えて悲鳴を上げた。
――……他人事じゃない。どうにかなるのかこれ。
貴方(くっ……カッコつけたけど俺も無様だよな、でも)
身体は起き上がれなくとも心ではまだ踏ん張ろうとする。俺たちの戦いは終わってない。
正直悔やみそうにもなった一瞬もあったが、それでもやっぱり、こう思った。
貴方「――――佐倉さんが無事で、よかった」
杏子「お前、ホントなにしてんだよ!? ……チッ」
ベテランでも必ず勝てるわけじゃない。相性次第なことはわかってた。
でも今までなにかあってもなんだかんだで自分や仲間に大きな被害が出ることがなかったから、こんなことは初めてだった。
……大怪我なんてもんじゃない。もし一人だったらどうにもならなかった。
貴方「ごめん……後のこと頼んだ」
杏子「言われなくてもすぐ終わらせてやる!そこで待ってろ!」
――――ついに目の前に姿を現した魔女を、佐倉さんは今度こそ無駄ない動きでなぎ倒していった。
囮なしの一騎打ちとなれば佐倉さんが負けるはずもない。戦いに舞う赤色は鮮烈に映った。
その光景を眺めているうちに戦いは終わっていた。
杏子「……なんでこんなことしたんだよ。言っただろ。あたしは治癒魔法が得意じゃないんだぞ」
杏子「あたしがやられるくらいの相手ならすぐ逃げろって」
貴方「でも……仲間は守るって誓ったから。気付いたら動いてたんだよ」
貴方「それに本当に佐倉さんはすぐに倒してくれたから、佐倉さんが動けなくなるよりはよかったんじゃないかな?」
杏子「馬鹿かアンタ……!」
そう言いつつ佐倉さんは治してくれてた。
落とされた腕は幸い回収できた。治療が得意じゃなくても二人がかりで治せば繋げるくらいにはなる。
ただ完全に修復しきれてないのか失った血の分か、まだ少し違和感は残ってるけれど。
杏子「……自業自得であるべきなんだよ」
貴方「……『自業自得』?」
杏子「今日のはアンタが勝手にヘタ打ったのとは違う。あたしの失敗だ」
杏子「『守れた』なんて思うなよ。下手したらまとめて全滅ってこともありえたんだ」
杏子「仲間ったって赤の他人庇って共倒れとかおかしいだろ。割に合うわけねえ」
杏子「……なんで自分より他人を優先する奴がいっぱいいやがるんだよ、この周りには。まさかとは思ってたがアンタもだったってわけか」
険しく呟かれたその声は、悔しげな感情も乗せていた。
……まるで認めたくないみたいな。
貴方「前に言ったことも口だけって思われてたなら、それはちょっと悲しいかな」
貴方「……でも佐倉さんは、前から仲間がいる時の失敗は連帯責任だって言ってたよ」
杏子「それとこれとは別だ!」
貴方「自分だけで勝てた自信もないし、むしろ佐倉さんには助けられたと思ってるけどね」
貴方「自分の身も守れなかったのは悔やまれるけど、やっぱり後悔はしてないよ」
杏子「死んでも同じことが言えんの?」
貴方「死んだら何も言えない、っていうのは置いとくとして……自分だけ生き残るよりはきっと。それはそれで後悔して生きてくことにはなるだろうから」
杏子「……そうか」
貴方「佐倉さんこそ、その言い方だとまるで自分は死んでもいいみたいに聞こえるよ」
佐倉さんは戦いについての考え方はかなり真面目なところがある。
魔法少女としてはあまり褒められたものではない行動をしてたっていうのも、聞いたことはあった。
……凄惨な過去のことが絡んでいるのだろう。この反応を見るにあまり間違ってなかったのかもしれないと思った。
杏子「……あたしはいいんだよ、別に」
杏子「好きでこういう生き方してんだから、それでいつか死ぬのもとっくに了承済みだ」
杏子「まあ、さっきのことは礼はしとく。アンタのことはマジに認めてやるよ」
『好きで』――と言ったけど、それだけじゃないのも知ってた。
認めると言ってくれたのは嬉しかったけど喜びきれない気分だった。
四回目【貴方】 43日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・問題共有
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい
・佐倉杏子・・・認められた↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
強制ENDまで【残り:1回】
44日目 冬休み
……契約者にも得意な魔法と苦手な魔法がある通り、身体能力にも差はある。
俺も回復魔法は得意じゃないけど、苦手というほどでもない。魔法少年として自然治癒力も人並みよりはあったようだ。
貴方(――……よしっ)
準備運動のように腕を動かす。一日経つと違和感は気にならないくらいには消えていた。
貴方(でも考えてみると、不思議なもんだよな)
貴方(一度完全に切り離されたってのによくくっつくもんだよ……)
……思い出したら寒気がしてきた。
こういうのって戦いに気が向いてる時より、後になってからのほうがくる気がする。
・何して過ごそうか
1誰かに連絡してお誘い(まどか/さやか/マミ/仁美)
※キャラによっては断られることもあります ※ほむら及び強制END関連の選択肢は冬休み明け以降
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2手軽に誰かとチャット(まどか/さやか/マミ/仁美)
3QBよぶ ※雑談、相談、杏子への伝言をたのめます
4でかける
a猫のいた茂み
b繁華街
c訓練場所
5家の手伝いでもするか
6自由安価
下2レス
貴方(そういえば、猫……エイミーはどうしてるかな)
貴方(行ってみるか)
様子をこの前鹿目さんから聞いたぶりだ。
散歩がてらにあの茂みへと足を延ばしてみる。鹿目さんほど近所でもないが、遠い散歩というわけでもなかった。
貴方(――――この辺だったよな)
エイミーが留守でもタオルやトイレといった物が目印になってる。特にトイレはおおきいぶん少し奥を覗けばすぐに見える。
見つけると少しほっとした。たった数日ぶりだ。毎日通ってるわけじゃないがそんなに時間が経ったわけではない。
貴方(エイミーも散歩にでも出かけてるのか……?)
相変わらずの寒空だが今日も晴れてる。散歩日和といえばそうかもしれない。
エイミーは不在らしいので住み処の様子を覗ってみる。
トイレは綺麗に掃除されてた。使ってないから……というわけではないと思いたい。鹿目さんから聞いた限りでは使ってるらしいし。
そうしてると、いつのまにか鹿目さんも近づいてきてた。
まどか「あっ、【貴方】くん来てたんだ」
貴方「ああ、ちょっと気になって。トイレもちゃんと綺麗にしてるんだね」
まどか「うん、お掃除はごはんあげるついでにしてるんだけど……」
鹿目さんはどこか暗い表情で言いよどむ。
貴方「……だけど?」
まどか「掃除したのは一昨日きりなの。ご飯も毎日あげにきてて、減ってることもあるけど、エイミーの姿を見てないんだ」
貴方「一昨日……か。ちょっと心配だね」
まどか「うん。前からここを住み処にしてたし……」
貴方「一昨日からトイレも使われてないんだよな。たまたま鹿目さんが来た時不在だったってだけならまだいいけど」
その場合はどこで食事とトイレを済ませてるのかが気になるとこだが。
どっか別の場所で良くしてもらってるとか、誰かが保護したとかなら……寂しいけれど、まだいい。
まどか「……今もご飯持ってきたんだけど、やっぱ心配だよ」
貴方「ご飯たまに減ってるって言ってたのは?」
まどか「エイミーが食べてるのか、他の猫や動物が食べてるのかわからないんだよね」
貴方「そうか。そうだな」
まどか「わたし、今から探しに行ってみる」
貴方「探すって、どうやって? 闇雲に探すのは無謀だよ。魔女みたいに魔力の反応もないんだから」
まどか「無謀でもいてもたってもいられないの」
鹿目さんは不安そうにしている。
まあ、たしかに俺も心配だ。ここまで気にかけてきたんだし、野良とはいえすでに自分たちで飼っているような意識はあった。
1(行先提案)
a公園
b歩道橋
c土手
d廃工場
e駐車場
2キュゥべえの奴とか知ってたりしないかなあ…
3自由安価
下2レス
もちろん歓迎ですよー
--------------------------
貴方「あのさ……縁起でもない話だけど、どこかでもし動物が死んでたりした場合って、どうなるのかな」
まどか「ふえ……? どうって……」
いけない、さらに不安そうになってしまった。
貴方「ごめん、最悪の場合を確認したいだけだから……。そういうとき、街に片づける人がいるんじゃないかと思って」
まどか「あ…… その人に聞けば確かめられるかもってこと? 誰に聞けばいいのかな?」
貴方「街の…… 市役所の人とか?」
まどか「市役所かぁ。そうだね、闇雲に探し回るよりもまずは聞いてみたほうがいいのかも」
鹿目さんも納得してくれたようだ。とりあえず二人で市役所に向かう。
ネガティブなことばかり考えてたわけじゃない。俺だって安心がしたいんだ。
――――そして、目指すは駅のほう。見滝原のもっとも賑わう中心部。
普段そうそう入ることのない場所に足を踏み入れるのは少し緊張する。
貴方「……ここか」
まどか「えぇと、どこに行けばいいのかな……?」
こっちはただの中学生二人。周りには大人ばっかりだ。来てみたはいいものの広すぎて尻込みしてしまう。
そうしていると、案内の人が声をかけにきてくれた。
事情を話して案内された先で待つ。
まどか「エイミー、大丈夫かなぁ……」
貴方「だ、大丈夫だよ、きっと…… ここに来たのも念のためだし」
特徴は伝えた。首輪があるのが役に立った。黒猫というだけではいくらでもいるだろうから。
なによし、そんなありふれた外見特徴だけでエイミーだなんて信じたくない。
でももしこれで遺体を片づけたって聞かされたら信じるしかないんだろうか。
悩み始めた時に呼ばれる。
貴方「――――あっ、そうなんですか?」
まどか「よかったぁ……」
――――結論から言って、特徴に一致する猫の遺体を清掃した報告はないらしかった。
俺たちみたいな子供相手でも優しく話してくれる人でよかったと思う。
ひとまず最悪の返事は聞かされなかったけど、まだ安心できたわけではない。
まどか「うん、見つかったわけじゃないからまだ心配だね……。どこにいるんだろう」
ただ――、こうも釘を刺されてしまう。
*「君たちの飼い猫なんだよね?出来ればこうやって心配することがないように、完全室内飼いを推奨しますよ。やっぱり平均寿命も違いますから」
貴方「え……、あー」
まどか「野良猫なんですけど……」
言葉に詰まって、鹿目さんが代わりに言った。
……死骸もだが、この人たちは前に鹿目さんのお父さんが気にしてたように糞尿も片づけてそうだ。
提案されたのは、里親を探してみてはどうかということだった。ボランティア団体に頼れば引き受けてくれるとこもあるらしい。
保健所は拒否感がある。そこでも募集はしてくれるらしいけど、一定期間以内に決まらなければ処分だそうだ。
それはいやだ。
貴方「と、とにかく、エイミーを見つけなきゃだよな。振り出しに戻っちゃったけど……」
まどか「一つ情報が得られただけでも嬉しいよ。少し安心もできたから」
帰り道、回り道をしながら元の場所へと戻るように歩いてみる。
道の隅に注意を向けてみると、野良猫は稀に見かける。でも首輪をしてるのはそう見かけない。
思った通り、闇雲に探すのはきつい。注意を張りすぎて、猫かと思ったらビニール袋だったこともあった。
……結局見つからずに戻ってきてしまったと思ったが、エイミーはあの場所の近くに居た。
黒い塊のように道の隅にうずくまってる首元にはたしかに前につけてあげた首輪があった。
まどか「エイミー!こんなところに……! もどってたんだね」
貴方「なんだ、戻ってたのか。よかった」
まどか「……エイミー?」
近づいてもいつもみたいに寄ってくることもなく、力なさそうに見えた。
よく見てみると怪我をしてるみたいだった。多分、傷痕からして猫同士の喧嘩だろうか。
猫は具合が悪くなると姿を隠すっていうのはどっかで聞いたような気はする。
まどか「エイミー!」
鹿目さんもそれに気づくと、そばに寄っていって治癒魔法をかける。
まどか「……怪我してたから姿を見せなかったのかな?喧嘩したんだよね」
貴方「それで隠れてたのかな」
まどか「縄張りを争って負けちゃったのかなぁ……」
そういえば、魔法少年・少女の世界もグリーフシードを巡って縄張り争いは多いと聞いたっけ。
より稼げる場所を求めて元居た契約者を追い出したり、追い出されたりは日常茶飯事らしい。
自分たちのいる世界と少しだけ被る。入った頃には攻め入る隙もないほどチームが出来上がってたから、実感はほとんどないけれど。
……考えてみれば、野生っていうのはもろにそういう世界だよな。思っていたよりも過酷だ。
魔法の力があればたちまち怪我は治る。医者なんかに診てもらうよりもはるかに早く完璧だ。
……しかし、それですべて解決とは思えなかった。
まどか「……【貴方】くん、わたし、やっぱり里親探してみようと思う」
まどか「役所の人にも言われて気づいたの」
まどか「最初はお腹すかせて可哀想だからって思いで始まった。だけど、ご飯をあげてればいいわけじゃなくて、他にも気にすることがたくさんあって……」
まどか「必要なものは揃えたつもりだったけど、本当だったらこういう予想外のことが起きた時にお医者さんにつれてくお金も用意できないから」
……さっきの市役所でも聞かされていた。
猫を保護している人たちが何をやっているか。かかる費用。これからワクチン注射や避妊手術もしなきゃいけないらしい。
その金も自分たちでは払えないし、野良のままでは車に轢かれたり動物や悪い人に襲われる危険から守れない。
まどか「エイミーはとてもわたしに懐いてくれたし、わたしも張り切ってた。出来ることはなんでもしようって思ってた」
まどか「でも……エイミーのことも人のことも考えたら、これが一番いいんだと思う」
貴方「うん。実際、鹿目さんはよくやってたと思うよ」
まどか「ありがとう、【貴方】くん……」
そう言った鹿目さんは、やっぱり寂しそうで。
ご飯をあげた。お世話をした。名前を付けた。首輪も着けてあげた。半分は飼ってるって感覚はあった。
貴方「……俺もここまで見てきたから他の人の家に行くのは寂しいけど、寂しいってだけじゃやっぱエゴなんだよな」
でも結局、“二人の秘密”にしかできなかったのも後ろめたい気持ちがあったからだ。
貴方「二人でエイミーに最高の里親を見つけてあげよう!」
まどか「うん!」
行き先が決まるまでの数日くらいなら、エイミーを家に置くのも親に頼み込めばなんとかなるかもしれない。
幸い二人ともペット禁止の家ではない。
そう決めて、まずは近い鹿目さんの家に頼みに行くことにした。
――――……こうして、初めて二人で共有した“秘密”は幕を閉じた。
まどか「ママ、本当にいいの!?」
貴方「話してみてよかったね……」
鹿目さんの家には今日も両親が揃ってた。
大人からしたら新年最初の平日が終わった週末、らしい。俺たちからすればもう少しで冬休みが終わっちゃうなぁと思う頃だけれど。
「にしても、野良猫かぁー。最近まどか毎日のようにコソコソ家を出てるから何かと思ったけど、そんな理由とはね」
「友達とも毎日は遊ばないだろ? ついに好きな人でも出来て密会でもしてるのかと思ったけど、違ったか」
まどか「もう、ママったら茶化さないでよ」
「いや、間違いじゃなかったか?そのこと知ってたのって【貴方】くんだけなんだっけ?」
クラスメイトとかにも少しくらい話したっけ? でも、多分ここまで関わったのは二人だけかな。
しかし、こういう風にからかわれるのは嫌じゃないだろうか……。鹿目さんの表情は髪に隠れててよく見えない。
「とにかく、一人で抱え込むなって。言ってくれれば最初から一緒に考えたのに」
まどか「ちなみに、うちでは飼えないよね……」
「うちは……暴君がいるからなぁ」
視線を向けた先から、元気の良い声が聞こえる。
こうしてる間にもお父さんはつきっきりで面倒を見てるらしい。
「どうしても飼い主が見つからなかったら考えなくもないけど、まあ子猫だし貰い手見つかるんじゃないか?」
飼い主が見つからなかったら――それに少し期待を抱きかけたが、そう考えるのは止そうとする。
新しい飼い主が決まったらもう二度と会うことはないんだろうな。そう思うとやっぱり寂しいけれど、エイミーのためには仕方ないんだよな。
バッグもなしにここまで大人しくついてきてくれたエイミーを見遣る。
……こんなにいい子なんだ。きっと貰い手だって見つかるはずだ。
まどか「うん……そうだね」
「じゃ、ネットで募集かけてみるか。今の時代ホント便利になったもんだよ」
「事務的なことはこっちでやっとくから、飼い主を選ぶのはアンタたちにしな」
「エイミーだっけ?その子のこと見てたのは二人なんだろ。きっと合う人を見極められるさ」
まどか「うん。ありがとう、ママ」
貴方「はい!責任をもって見極めます」
ひとまず、今日のところは鹿目さんのお母さんに任せて帰ることにした。
休みはもう一日ある。……それはこっちも大人も同じようだった。
四回目【貴方】 44日目終了
★まどかルート★
▼[まどかルート]に入りました。なにもしなくても好感度の上がるイベントが進みます。
個別ENDの準備はできてます。
それに伴い、ルート終了まで強制全体ENDを抑制します。
45日目
鹿目宅
冬休み最終日。
……昨日ネットに載せたエイミーの里親募集にさっそく応募が来たと聞いて、鹿目さん家に呼ばれていた。
貴方「子猫なら需要高いっていうの本当なんだなぁ」
まどか「そうだね。2件も……」
呼ばれた時には1件と聞いてたけど、ここに来る間にちょうどもう1件来たらしい。
こうして複数の人が見て飼いたいと言ってくれてると思うとやっぱり悩む。
一方がどう考えても渡したくないようなヤツとかだったらあれだけど、どっちも真剣に応募して来てくれてるんなら尚更。
「どっちが良い悪いっていうか、こういうのってある程度フィーリングも大事なんじゃないかな? ご縁っていうか」
「まあ、別に無理に今来てる中から決める必要もないけどね」
お茶菓子を持ってきたお父さんが話に入ってきた。
手作りらしい。鹿目さんのお父さんが料理得意って話は聞いたことはあったけど、まさかこうしてお菓子を味わえるなんて。
まどか「あ、だからまだ締め切ってないんだね」
「それを考えるのもアンタたちだろ?」
続いて入ってきたのはお母さん。
貴方「鹿目さんはどう思う?」
まどか「うーーん……」
しばらく悩む。
まどか「いったん締めきってみようかな? まずは今来てる人を見てみようと思う」
貴方「まあそうだな。増えすぎたらやりとりも大変だし」
まどか「とりあえずメッセージを返さないとだね……」
鹿目さんのご両親とも文面を相談しつつ、パソコンの画面と向き合う。
――その最中、派手に何か物が落ちる音がしてみんなで肩を揺らす。
「……あっ、しまった!目を離した隙に!今のはどっちー!?」
貴方「やんちゃが増えちゃったみたいだね」
まどか「エイミーってやんちゃさんだったんだね……」
そんなに手のかかる印象はなかったけど、やっぱ子猫は子猫だったらしい。
今までずっと外にいたからわからなかったが、見たことない物がたくさんあるし、色んなものに興味を持つのは仕方ないのかな。
貴方「ていうかこれ、すっごい美味しいですね」
「うん、口に合ってよかったよ」
まどか「初めてちゃんと呼ぶからってパパ張り切っちゃって」
「今日はママも休みでタツヤの面倒見ててくれるしね。まどかも作るの手伝ったんだよ」
まどか「型を抜くところだけだけどね……。いつか一人で作れるといいなあ」
貴方「ちゃんと家のお手伝いしてるんだね。お父さんに家事習ってたら上達しそう」
まどか「上達するといいなあ。家のお手伝いは【貴方】くんも頑張ってるんでしょ?」
貴方「まあ掃除くらいだよ」
クッキーをつまみつつ談笑する。
とりあえず応募の2件に返答して今日はお開きになった。
四回目【貴方】 45日目終了
★まどかルート★
46日目
ついに明けた冬休み。ついに始まった学校。
二年生最後の学期が幕を開けてしまった。
――と、そんな実感はまだあまり追いつかないが、午前のまだゆるめの授業をこなすと見知った面子で昼を食っていた。
結局ここにいる人とは冬休み中も会ってたんだよな。
さやか「やられたわー。気を抜いてたら休み明けに漢字の小テストあるなんて」
仁美「休み前に告知されてましたけどね……」
さやか「そんなの記憶からとぶ!」
まどか「わたしも実は直前まで忘れてて……」
貴方(一応忘れず警戒しといてよかったな……)
喋ってる内容もいつもどおりくだらないことで、それに安心していた。
それから昼休みの終わり間際、中庭から戻る途中で随分久しぶりに聞くテレパシーの声が聞こえた。
マミ『【貴方】くん、明けましておめでとう!』
……そういえば、こっちは普通にお久しぶりだ。
各自の予定を考慮してか、休み中にチームの集まりがなかったせいもあるけど。
貴方『明けましておめでとうございます!あと久しぶりです!』
マミ『そうね。良い休みを過ごせたかしら?』
貴方『ええ、まあ充実してましたよ。巴さんは何してました?』
マミ『色々普段できないことをやったわよ。細かいところの掃除とか、一段と料理に手間をかけてみたりとか』
マミ『換気扇ってなんてあんなに汚くなるのかしらね?』
貴方『さあ……なんでですかね』
なんだか大変だったらしいことは伝わる。
マミ『おせちも作ったのだけど、売り物にも負けないくらい綺麗に出来たのよ。今度写真を見せてあげる!』
貴方『楽しみにしておきます。……巴さんって、いい嫁になりそうですよね』
マミ『えっ!? やだもう、いきなりどうしたのよ』
……嫁というか主婦というか。多分言葉にするのに印象がいいのは前者だ。
なにはともあれ、巴さんは充実した一人の時間を送ってたらしかった。
マミ『あとは、もちろんパトロールもね。ああ、そうだ。早速だけど、次の日曜に恒例の訓練&パトロールできるかしら?』
巴さんの声が少しだけ真面目なトーンになる。
日曜……か。それまでにはエイミーの貰い先も決まってる頃かな。
貴方『はい。もしかしたら予定入るかもですけど』
マミ『ええ。駄目になったら連絡してくれればいいから』
授業開始まで念話をしつつ、ふとクラスメイトに話しかけられてしどろもどろになる。
前に巴さんが経験を積めば口頭での会話と念話を両立できると冗談で言ってたが、やっぱそんな高度なマルチタスクは不可能だ。
――――
――――
約1か月放置!ここまでの放置は初か…
------------------------------------------------------
応募の件は、放課後に実際にエイミーと俺たちに会ってみることになっていた。
まず今日は1件目。隣の市から来てくれるらしい。
まどか「じゃ、いこっか」
放課後になると自然に駆け寄ってくる鹿目さん。
思えば学校内ではさやかたちと一緒に関わることはあれど、二人で話すことってなかなかなかったか。
そんな様子を見て茶々を入れられる。
さやか「なになに?なんかいつのまにか仲良くなってない?そんな感じだったっけ二人とも」
まどか「えっと、冬休みの間とかいろいろあって」
さやか「『色々』?」
まどか「エイミーのこと!」
貴方「さやかには話してたんだっけ?今、エイミーの里親を探してるんだよ」
さやか「へー、そうなんだ」
そんな話を少しだけした後、テレパシーで悪いけどパトロールは任されてくれないかと去り際に頼みこんでみた。
さやか『もう、二人して同時に同じこと頼むんだから』
さやか『わかってるわよ!まかせときなさい!』
……思わず鹿目さんと顔を見合わせた。
まどか「【貴方】くんも同じこと言ってたんだね……」
貴方「なんか息が合っちゃったね。明日は一緒にパトロールどう?」
同じこと考えてた、ってことか。
パトロールに熱心なのはみんな同じだ。今から明日の約束をとりつけて、学校を後にする。
――――面談の場所は鹿目さんの家。
エイミーも実際にここにいる。さっきまでここにいた訪問者は、慈しみに溢れた目を向けて可愛いと、家族になりたいと言ってくれた。
湯呑に残っていた緑茶を飲み干して、鹿目さんは息をついた。
まどか「緊張した~~……」
貴方「俺も……知らない大人の人と話すのはやっぱ緊張したよ。鹿目さんが隣にいてくれたし、おじさんも見守っててくれたからよかったけど……」
貴方「エイミーは緊張してなさそうだなあ。知らない人の前でも堂々としててすごいよ」
そう言うと短い鳴き声が返ってきて、それがなんとなく誇らしげに聞こえた。
言葉が伝わったとはさすがに思っていないけれど。
まどか「人懐っこい子だし、新しい飼い主さんにもすぐに慣れてくれるよね、きっと」
まどか「……少しさみしいけど」
貴方「うん。きっと……鹿目さんは今日の人、どう思う?」
まどか「いい人だと思う。前にも猫ちゃん飼ったことあるって言ってたし」
経験があるなら心強い気はする。
俺たちなんてなんもわからない状態で手探りでやってたから、大先輩だ。
しかし、まあ。
貴方「『どっちが良い悪いというよりもフィーリングが大事』、か……」
まどか「そう言われると、難しいよね」
それからおじさんに『お茶をもう一杯どうか』と言われたのでありがたく甘えさせてもらった。
今日はおばさんはいない。前まではみんな揃ってたけど、今日はなんてことのない平日だ。
エイミーとも今のうちに触れ合っておかないと。
もう1件のほうは明後日だから、それが終わったらまたきちんと考えよう。自分たちなりの答えを出すために。
それまで――明日はとりあえず、自分たちの使命でもあるパトロールのほうに専念だ。
四回目【貴方】 46日目終了
★まどかルート★
47日目 放課後
約束してたパトロール。
とくに危なげなく2回目の戦いを終えて、寒空の下を歩いていた。
まどか「さっきはありがとう!」
貴方「さっき?なにかしたっけ……」
まどか「急に突進してきた使い魔、あれすごいびっくりしたから」
貴方「ああ、でもそのあと手の届かないとこまで飛び上がってったのを鹿目さんがすかさず射抜いてたからすごいなーと思ったよ」
協力して倒せた思い出を語ると温かな気持ちが湧いた。
物腰が柔らかくいつも前向きな姿勢は見てるだけでも元気をもらえる気がした。そんな彼女が近くにいることが嬉しい。
……クラスメイトって関係はもうすぐ終わってしまうけど、これからも仲間で友達だ。
貴方「それにしても、もうだいぶ暗くなってきたね。戦いも終わったし日がないと一気に寒くなるなぁ」
まどか「あ……あのね、もしよかったらなんだけど、今日もこのあとエイミーに会って行かない?温かいお茶も出すよ」
まどか「明日はまた面談でしょ?そしたら……もう決めなくちゃいけないんだよね」
鹿目さんは、少し寂しそうにしみじみと言った。
貴方「……うん。そうだね。甘えさせてもらおうかな」
――――
――――
48日目 放課後
――――この日の面談も無事に終えると、ひとまず脱力した。
つぶらな瞳で見上げてくるエイミーの背に手を置いて見返すと、ふいっと顔をそらされてしまった。
猫の瞳って宝石みたいで綺麗だ。でもなかなかまじまじとは見せてくれない。
貴方「今日ので応募の分の面談は全部おわりか。鹿目さんはどう思ってる?」
まどか「どっちもいい人だとは思うんだよね。一人は猫を飼ってた経験もあるし、もう一人も猫じゃなくても本当に動物が好きなんだろうなって思ったし」
貴方「ああ、犬の話とか聞けて面白かったね」
まどか「ね、面白かった」
ふふふと笑い合う。……その奥で考えていた。次の飼い主を決めて渡したら俺たちのやることは終わりだ。
鹿目さんとこうしてお茶を飲むことも減っちゃうのかな。
貴方「エイミーはどっちのほうが気に入ってたかな?」
まどか「エイミーはどう思う?」
にゃ、と猫の声がする。
もともと人を怖がらない子だ。どっちにもらわれてもうまくやっていけるとは思う。
……エイミーは伸びをすると、会話と名前をメモしてた紙に手を置いて、ふたたび短く鳴いた。
さすがに偶然だとは思う。名前を決めた時もこんな感じだったっけ。次の人のところに行ってもエイミーはエイミーと呼ばれ続けるんだろうか?
なんとなくそのしぐさが自分で選んだように見えて、俺たちはその選択に任せることに決めた。
おじさんにもそのことを伝えて、また連絡の文面を考えて――。
土曜にもう一度会って渡すことになった。
そして――――。
数日後
――――土曜日。この日も早くから鹿目さんの家に来ていた。
久しぶりに鹿目さんの家族が揃ってる日だ。あと……もう最後になるけど、エイミーも。
なにかやりのこしたことはないかな?
まどか「あっ……そうだ、写真!今のうちにみんなで撮っておこうよ!」
貴方「あ、それ賛成!」
*「いいこと言うね、まどか。うちでもいくつか撮ってたけど、【貴方】くんも一緒にいなくちゃな」
写真の中では鹿目さんの腕の中からちょこんとエイミーが顔を出していて、隣には俺とタツヤくん。
後ろに鹿目さんのお父さんとお母さんもいる。
みんながいい笑顔で写っていた。
――――
――――
――――
日曜日
まどか「なんだか……またいつもの日常にもどっちゃったみたいだね」
貴方「猫がいる生活ってどんな感じだった?」
まどか「イタズラされたり気を付けなきゃいけないことも増えたけど、楽しかったなぁ。ずっと見ていられる感じ」
貴方「あはは、だろうね。俺もこの数日入りびたりだったけど、さすがに泊まりにはいけなかったから」
今日は冬休み明けはじめての全員での訓練だった。
久しぶりに顔を合わせても空気は相変わらず。まあ数週間程度じゃ変わらないんだろうな。
で、それが終わった後はというと…………二人でカフェに来ていた。カフェといっても、ただお茶を飲むだけの場所ではない。まわりを猫に囲まれた猫カフェだった。
寂しさを埋めるため、って思うとなんだか余計に寂しいけど。遊びに出かける約束も果たせたからちょうどいいのかな。
まどか「えっ、泊まりに……!? ……それは、いきなりは無理かもだけど」
まどか「エイミーはいなくてもこれからも遊びに来ていいよ。お茶くらいなら出せるし!……マミさんみたいにオシャレな紅茶じゃないし、淹れるのはパパだけど」
鹿目さんの声が少し自信をなくしたように尻すぼみに小さくなっていく。
――街を救う力を手に入れて、魔法少女として活躍できる自分を誇れるようになったと言ってたけど、それ以外のトコは変わらずらしい。
だからこっちも、精一杯に明るい声で言おう。
貴方「ありがとう。俺も鹿目さんと一緒にいると楽しいからさ」
まどか「ほ、本当に?」
貴方「うん。もちろん」
やっぱり、鹿目さんが明るい声や顔をしていると嬉しいから。
仲が深まったからか、前よりもさらにそう思うようになっていた。
まどか「ここの猫ちゃんたちもかわいいね」
貴方「そうだなぁ……飼うのはやっぱり自分たちじゃできないし、こういうところで触れ合うのが一番いいのかも」
エイミーに着けてた首輪は、今は鹿目さんが持っている。
着けたまま渡そうか結構ギリギリまで悩んでたけど、次の飼い主は完全室内飼いをしてくれるって言ってた。もう野良猫じゃない。
だから、あの雪の中エイミーと出会って少しの間一緒にいた思い出として手元に残しておくことに決めたらしい。
まどか「……うん。わたしは最初、自分で全部なんとかしなきゃって思ってた。でもやっぱり全部なんて無理で……それって、悪いことじゃないんだね」
まどか「【貴方】くん、ありがとう。今回のことでまた一つ自分に誇りが持てた気がするの」
鹿目さんは頬を桃色に染めて穏やかに笑ってる。彼女の髪や宝石の色よりも鮮やかに見える色だった。
本当に、こっちの心まで満たされてく気分だ。
貴方「前にも言ったけどさ、鹿目さんはもっと自信もったっていいよ!」
貴方「魔法少女としての活躍はすごいし、カッコいいと思うこともある――」
まどか「かっこいいって、わたしが!?」
貴方「うん。どんな時でも勇敢でかっこいいよ」
まどか「みんなを見ててそう思うことはあるけど、そう言ってもらったことってなかったから」
まどか「あのね、もちろん【貴方】くんも……カッコいいと思うよ」
……なんだろう、二人して褒め合ってて不思議な空気が流れてるなあ。
★個別END分岐点★
鹿目さんの言葉に勇気づけられて、次に言いたい言葉はすんなりと口から出てきた。
貴方「……鹿目さんは、かっこいいし可愛いよ」
貴方「自分よりも他を優先しようとする強くて優しいところも。……気負いすぎてるときは心配になるけどね?」
貴方「それに、一緒にいるとこっちまで癒された気分になる柔らかい笑顔も。なにもかも」
まどか「え、え…………」
貴方「全部あわせて……鹿目さんのことが好きだ」
頬はさっきよりも赤みを増して、桃色通り過ぎてゆでだこみたいになってた。
珍しいけど、それをじっくり観察してる余裕なんてない。今は自分の顔も熱いや。
まどか「こ、これって……!ええと……」
貴方「……告白だよ。こんなこと軽く言ったりなんてしないよ!」
まどか「わ、わたしも……【貴方】くんのことが好き」
一世一代の告白は猫たちに見守られながらだった。
俺たちらしいのかもしれない。
……膝の上の小さな猫が、にゃあと言ってお祝いしてくれた気がした。
――――
――――
四回目【貴方】 十週目休日終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・☆恋人☆
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・気まずい
・佐倉杏子・・・認められた
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
[好感度] to貴方
美樹さやか★★★▽巴マミ★★★志筑仁美★★★▽鹿目まどか★★★>佐倉杏子★>暁美ほむら
★…フラグ一段階目 「気になる」
※大抵の場所なら誘ったらOKしてくれると思います。
※放課後行動では勝手についてくることもあるかもしれません。
★★…フラグ二段階目 「特別」
※【貴方】との行動を優先します。
※ここまでくればあとは流れに乗るだけだ!
★★★…フラグ三段階目 「恋慕」
※実質落ちてる。
※個別ENDにいってもいかなくても攻略済み。
☆…互いに恋人として誓い合った仲。他の人の好感度上げすぎると多分マズイことになる。
もし他の人に言い寄るようなことしたら普通に浮気です。
▽…嫉妬Lv1
※ハーレムならつきものくらいの可愛い嫉妬だよ。
※この辺で留めておかないと色々濁るかもよ。マズそうな選択肢は控えよう。
そろそろ【終わり】が近いため、少しだけこのまま続行します。
1好感度☆恋人☆のまま(個別END+おまけ?)
2直前の好感度★★★のまま(ハーレムEND?)
下3レス多数決
――――次の日からはまた新しい日々がやってくる。
鹿目さんとのこと、堂々と公表するつもりもなかったものの、親しい人たちの間にはすぐに気づかれて広まってしまった。
思ってた以上にみんなよく見てるらしい。
さやか「そっかぁ~……まどかがかー。意外だなあ」
仁美「今まであまりそういう話って聞きませんでしたものね」
まどか「わたしも前まではあんまり意識したことなかったかも」
日常が劇的に変化したようで、一緒に昼飯食ったり、クラスメイトとの付き合いや魔法少年としての活動はこれまでと変わりはなかった。
ちょっとだけ特別なものが加わっただけだ。
それ以外に起きた身の回りの変化といえば……。
巴さんが受験に受かったって言ってた。これも嬉しい知らせだ。
冬休み明け最初の合同訓練以降は忙しそうにしててみんなで集まることがなくなってたものの、それからはまた余裕ができたようだった。
……久しぶりの合同訓練の後、ふとずっと気になったことを思い出して暁美さんに聞いてみた。
あれ以来暁美さんは俺や鹿目さんとも少し距離を取っているようで、直接話すことが少なくなっていた。
貴方「そういえば暁美さん、連絡つかないことが増えたよね。冬休みの時もさやかとか心配してたんだよ」
ほむら「携帯の電源を切っていたから」
貴方「え、なんで?」
ほむら「……知らない人から電話がかかってくるのが怖いのよ」
貴方「なんだろう、迷惑電話?それは怖いね。着信拒否しちゃえば?」
ほむら「……」
そう言うと、暁美さんはどこか悩むように暫く沈黙を続けて。
ほむら「……そうね」
――とだけ、簡潔な言葉を返してくれた。
その時、向こうから鹿目さんの呼ぶ声が聞こえた。一緒に帰ろうって誘ってくれてる。
まどか「あっ、ごめんね。話してる途中だった?」
ほむら「いいえ、気にしないで」
まどか「あ……ほむらちゃんとは前より話すこと減っちゃったよね。また前みたいに遊びに行ったりしようよ。もしよかったら仁美ちゃんも誘って――」
ほむら「いいえ。私は別に」
暁美さんは誘いをきっぱりと断って去って行った。鹿目さんはちょっと寂しそうだ。
なにもあんな言い方しなくても……とは思う。加えて違和感。
前までだったら鹿目さんの行くところには積極的について行ってたのにな。もう興味を失ってしまったかのようだった。
鹿目さんと二人きりになって、帰り道を歩き出す。
まどか「……あ、夕焼け!」
貴方「ホントだ、綺麗だね。少しだけ日が伸びてきたかな?まだまだ冬真っ盛りだけど」
まどか「そうだね。まだまだあったかくしてなきゃ。実はね、編み物でまた新しく作ってるものがあるの」
貴方「お!完成したら見せてくれる?」
まどか「もちろん。というかね、【貴方】くんに似合いそうなものって考えて作ってて……」
貴方「ますます楽しみだなぁ」
――――
――――
それから―――日付がさらに過ぎると、あっという間に春休みが近づいていた。
長いようで短かった一年がついに終わる。
巴さんの卒業の日をみんなでお祝いして、自分たちも慣れ親しんだクラスとの別れを名残惜しんで、
学校なんて関係のない佐倉さんだけはすごくいつも通りで……。
日々はこれからも続いていく。俺には仲間がいて、友人がいて、そして恋人がいる。俺たちがちょっと特殊だからって、不安なんてない。
そしていつか、この街から魔女をすべて倒して平和を勝ち取るんだ。
大きな節目を迎えて、大きな変化がもたらされるはずのこれからの生活に期待を抱えて――――。
―まどかと進級END―
朝、一日がはじまる。
どこにでもあるような至って平常な朝だ。退屈なほど平凡で。
ワルプルギスの夜だとか、そんなうっすら噂で聞いたことがあるようなないような災害の予兆も当然無縁で。
――――――
――――――
1日目
1前の設定を引き継ぐ
2自分の状況を確認してみる(設定変更)
下4レス中多数決
1
――ただ、【少し前】から俺の日常には少し特殊なものが加わっていた。
(…………?)
何かふと違和感を覚えた。
何回も何回も同じことをやっているかのような。自分はさっきまでどこにいたっけ?もっと【先】にいたはずなのに。
――――【その先は存在しない】知らないものを創ることはできないから。
非現実的な感傷にひたりかけたが、時計を見て急かされた。ボーっとしてたら遅刻してしまう。
――――
見滝原中学校 教室
さやか「おはよう!」
まどか「おはよう、【貴方】くん」
仁美「おはようございます」
ほむら「……おはよう」
教室に着くと、迎えてくれたのはいつもの【四人】だ。
・誰に話しかける?(クラスメイト/先生/QB から指名)
下2レス
周りにいるクラスメイトの会話に入ろうか。
貴方「何話してたの?」
さやか「あー、たいしたことじゃないんだけど、仁美の新しいペンが可愛いねってこととか」
仁美「お気に入りなんです。あ、でも……【貴方】くんには興味のない話ではないでしょうか?」
貴方「いや、可愛いと思うよ。そりゃそういう話は自分からすることないけど」
他愛もない話をして朝の時間を過ごす。
今日の話題の中心は仁美みたいだ。それから、HRがはじまる直前になって、鹿目さんが何かを言いかけた。
まどか「あ、あとねっ」
まどか『今日の放課後訓練をやるんだって!【貴方】くんも来られる?』
仁美も一緒に居るから、続きはテレパシーで。
伝わった?と合図を送るようにニコッと笑った顔に、頷いて返す。なんか気恥ずかしいやり取りだ。
――――鹿目さんってこんなに積極的だったっけ。
――――
――――
放課後
学校での一日が終わると、みんなで校舎を出て訓練場所を目指して歩いた。
みんなっていうのはまあ朝いた中で仁美をのぞいたメンバーと、あと先輩の巴さんだ。全員魔法少女。俺だけ魔法少年。
さやか「おまたせー」
杏子「おっせーぞ」
マミ「ごめんなさいね。今日掃除当番だったのよ」
佐倉さんは先に訓練をはじめてたらしい。
マミ「一人でもちゃんと自己鍛錬できてるのね!熱心なのは感心するわ」
杏子「自己鍛錬くらいやるときゃやってるっつの。……この前みたいなことがあったら困るからな」
さやか「この前?」
貴方「……ああ」
1訓練に誘う(杏子/ほむら/まどか/さやか/マミ)
2自由安価
下2レス
貴方「この前パトロールに行った時のことだよね? だったら俺ももっと自己鍛錬しないとな……」
杏子「なら鍛えてやるから来いよ。ちょうどタイクツしてたとこなんだよね」
笑った口の端から八重歯が見えた。不敵な雰囲気がしつつも特に気取らない感じの表情だ。
佐倉さんの戦い方は多彩だし強いし、自分の扱うのがどんな武器でも見習うべき点は大きい。
他のメンバーもそれぞれ二,三人程度で組んで訓練をしていた。
そうして時間は過ぎて行き―――。
――――組手では今日も勝てず。まぁ仕方ないかな。
杏子「やっぱまだまだ正面から戦ったらあたしのほうが強いな」
貴方「そうだね、経験の差はすぐには埋められそうにないよ」
杏子「……でもそれだけじゃダメなんだよな」
この前やられそうになった時のことを思った以上に気にしてるらしい。
貴方「そんなに気負わなくてもいいんじゃないかな」
杏子「死にかけたくせによく言えるな」
貴方「佐倉さんは俺なんかより戦いでのことを重く受け止めてるのはわかるんだけど、気負ったって仕方ないと思うんだ」
貴方「実際佐倉さんは強いし……。こうして鍛えてくれて感謝してるよ」
杏子「……そっか。それより今日はもう腹減ったからメシ!アンタは行きつけの店とかあんの?」
貴方「えっ……あんまりそういうのわかんないや」
突然話題を振られて少し驚いた。
佐倉さんは元々風見野のほうがメインの縄張りらしいけど、見滝原のことも彼女のほうが詳しそうだ。
俺はというと、思い浮かぶところがまるでない。
杏子「まあ聞いてみただけ。あたしはラーメンでも食ってこうかな」
貴方「今のって一緒に行く流れじゃないの?」
杏子「ついてきたきゃついてこい」
まだ訓練に精を出してる人。訓練を終わりにして雑談してる人。
ほかの四人がやってることはまちまちだが、『お先』と挨拶する。佐倉さんと一緒に飲食街のほうに歩いてった。
五回目【貴方】 1日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友→
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友人(?)*関係リセット
・佐倉杏子・・・認められた
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
2日目 教室
教室に入ると、今朝も4人揃って話していた。
……見慣れた光景だと感じたけど、いつからこうだったんだっけ?。
さやか「あ! 【貴方】おはよー」
貴方「ああ、おはようさやか」
仁美「そうですわ、【貴方】くんからも言ってあげてくださいまし!ほむらさんたらお昼も少しなのに、朝ごはんまで抜いてきてるっていうから心配で心配で!」
仁美「それで体育の時にあれだけ動けるんだから驚きです。むしろそれが県大会記録の秘訣だったりして……?」
まどか「えぇ、ちゃんと食べたほうがいいと思うけどなぁ」
ほむら「……一人だとどうしても用意するのが億劫になるのよ」
さやか「腹減んないの?」
ほむら「べつに」
今日の話題の中心は暁美さんらしい。……本人は少し面倒臭そうにしているけど。
1好きな食べ物なら気が向くかもしれない、好物を尋ねる
2一人だし仕方ないと同調する
3将来誰かと暮らすようになれば変わるのかな?
4自由安価
下2レス
貴方「好きな食べ物なら気が向くんじゃない?」
まどか「あ、たしかに!朝食が好きなものだったら朝起きるのもつらくなくなるよね!」
さやか「てかむしろ一人なんだから毎朝好きなもん食い放題じゃん?」
ほむら「そう言われても…………思いつかないのよ」
仁美「えぇ!好きな食べ物がですか?!」
ほむら「意識したこともなかったわ」
その答えはちょっと予想外だった。なんというか、クールビューティな人だとは思ってたけど、それよりちょっと無機質な印象が増したって感じだ。
……でも考えてみたら自分も特に浮かばないし意識もしてなかったような。
そんなに変なことでもない、のか?
チャイムとともに担任がやってきて、一旦会話が終わる。
「はい、みなさん席についてー。HRはじめますよ」
HRがはじまる。考え事は忘れてしまった。
――――
――――
放課後
学校での一日を終えると、今日は特に予定のない日だ。
教室内ではまださやかたちは他の女子も交えて喋っている。
親交の深い4人ならともかく関わりの薄い女子がいるとちょっと入りづらいかな?
貴方(……ってか、暁美さんも一歩引いたとこから見てる感じがするな。複数人で話してるときって割といつもそうか?)
*待ちに待った放課後です。
1下校前に校内でコミュ(キャラ指定)
2誰か誘ってパトロール行くか(キャラ指定・複数可)
3自己鍛錬に行ってみる
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
また一か月空くとかやばいっすね…
話しかけようか迷ってたら、暁美さんが一人抜けてこっちに来た。
他の人たちはまだ話している。
貴方「あれ、話はもういいの?」
ほむら「放課後はパトロールに行くって言ってなかった?」
貴方「まあそうだけどさ」
今日のパトロールは暁美さんのほかに佐倉さんのことも誘っていた。
駅前にいるらしいと聞いたし今頃多分食べてるか遊んでるかして待ってるんだろう。
……彼女は携帯を持ってないから、全てキュゥべえを介してのやりとりだが。
教室から離れ、廊下を歩いていると暁美さんはぽつりと言う。
ほむら「……大勢いると何を話していいかわからないもの。あれこれ聞かれるのも疲れるわ。すぐに答えられることならいいけれど、答えられないこともあるし」
貴方「ああ、そういえば初日から質問攻めに遭ってたんだっけ。まだあんな感じなの?」
ほむら「もう数ヶ月は経つのにまだ珍しいのかしらね」
暁美さんは鹿目さんたちのグループにはいるけど少し距離がある気がするし、やっぱり基本的には群れない人って感じだ。
暁美さんに向けられるのは男女問わず憧れのまなざしだが、それに対する暁美さんの目はいつも冷ややかだった。
貴方(もう暁美さんが転入してきてから数ヶ月か。……そんなに経つのか)
駅前に近づくと、暁美さんが尋ねてくる。
ほむら「佐倉さんはどこにいると思う?」
貴方「どこかな。そういえば、暁美さんは佐倉さんとはよく会ったりする?」
ほむら「別に。パトロールはたまに行くけれど、彼女も魔法少女としての意識のほうが強いみたいだし」
そう答えるだろうなってのはまあ予想してた。二人が仲良かったらそれはそれで意外だ。
……さやかはともかく、鹿目さんと仲がよかったのは意外だった。
まずはあてずっぽうで探してみようか。
本当に見つけられなくて困ったら、テレパシーで発信しながら歩けば『駅前』の範囲なら通じるだろう。
1通りで買い食いしてるかな
2ゲーセンかな
3この前行った店に行ってみようか
4そのた(自由安価)
下2レス
貴方「とりあえず、食べ物屋の近くにいるんじゃない?」
ほむら「ありえるわね」
安直な発想だけど多分遠くはないと思う。
食べ物屋ばっかり意識して探してたら、なんか腹が減ってきた。
貴方「俺もなんか食おうかな」
ほむら「佐倉さんが買い食いしてるかもわからないのに、あなたが買い食いしてどうするのよ」
貴方「暁美さんは何か食わない?」
ほむら「私は別にお腹すいてないから」
暁美さんは小食なのか? 食への関心が薄いのかな?
通りでたこ焼きを買って食いはじめる。戦いの前に腹ごしらえも必要だよな。
貴方「暁美さん、一個もいらない? うまいよ」
ほむら「……じゃあ一つだけ」
念入りに息を吹きかけて冷ましてる様子がなんか可愛い。
そうしていると、いつのまにか佐倉さんのほうからこっちに来ていた。
杏子「何かいいもん食ってんじゃん。たこ焼きか」
貴方「うん。佐倉さんも一ついる?」
杏子「おう、サンキュ。それにしても、あんたがパトロール前に買い食いとか珍しくない? いつも素通りなのに」
ほむら「私じゃなくて【貴方】くんが言い出したのよ」
貴方「いや、パトロールそっちのけにしてたわけじゃなくてさ……最初は佐倉さんを探すつもりだったんだけど、なんか腹減っちゃって」
杏子「別にいいんじゃない? 腹が減ったら戦えないって言うだろ」
つまり、これも戦闘準備のうちってことだ。なにはともあれ、佐倉さんとも無事合流できた。
小腹を満たしてから三人でパトロールに向かった!
――――
――――
……――――そろそろ日も暮れる時間。今日のパトロールは魔女との連戦だった。それなのに疲労感はあまりない。
二人の動きが洗練されすぎてて、連携とはこういうものというのを見せつけられているかのようだった。
補助に向いた暁美さんまでいる安定感はすさまじい。
俺も活躍できてた、かな? 活躍させてもらってたというのが正しいかもしれない。
貴方「今日は魔女ばっかりだったのに、戦いはすぐに終わったね。二人ともやっぱりすごいなぁ」
ほむら「まあ、探すほうが大変ね。見つけたらあとは倒すだけだもの」
杏子「ほむらのことは、あたしもこれでも一目置いてるんだよ。純粋に強いし、まるで『昔から知ってた』みたいに動きを合わせてくるんだもんな」
ほむら「さすがに言い過ぎでしょう? 出会って数ヶ月なのよ。あなたと巴マミのようにはできないわ」
杏子「そりゃあたしとマミは昔から組んでたから連携できて当然だけどさ。あんたもこの世界随分長いんだろ?」
貴方「あれ、たしか前に暁美さんってそんなに長くやってないって……」
ほむら「そんなこと言ったかしら?」
貴方「どこで聞いたんだっけ? 記憶違い?」
ほむら「……そんなに長くはない、と思うけれど」
いつ聞いた話かわからないし、まあそれはいいや。
貴方「そういえば佐倉さんは合流前何してたの?」
杏子「ゲーセンにいた。その辺で買ったモン食いながらゲームしてた」
買い食いも一応同時に当てはまってたらしかった。やっぱり発想は合っていたようだ。
ゲーセンって飲食禁止では、とか、考えたらいけない……のか?
ただ、そういうイメージはあるものの実際に見てるのはパトロールか特訓ばかりだった。
貴方「じゃあ今度はパトロールとかじゃなくて普通に遊びにいったりしない?」
杏子「まあ、大体そのあたりにいることは多いよ。やることないし。どうしても誘いたいならキュゥべえでも捕まえて伝言してくれ」
こんなこと言ったら浮ついてるって思われるかと心配だったけど、意外にもすんなり受け入れてくれた。
前より少し仲良くなれたのかな……?
五回目【貴方】 2日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・話せる知り合い↑
・佐倉杏子・・・認められた
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
-------------------
ここまで 次回は多分そんなに間は空けない・・・はず
とりあえずリアルに死なない限りエタにはしないのでよろしくです
3日目 教室
朝、みんなに挨拶を済ませて自分の席につくと、授業が始まるまで少し時間がある。
宿題も昨日のうちにちゃんと終わらせたし、授業の準備はできている。
教室内では大体いつもどおりのメンツが固まって話してる。
今日はどう過ごそうか?
1クラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2巴さんとテレパシーでコミュ
3さっそく佐倉さんを遊びに誘う?
4自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下2レス
貴方『巴さん、おはようございます』
なんとなく、巴さんに挨拶をしてみた。
同じ学校にはいるが、とくに意識して何かに誘わなければ話す機会はあまりないものだ。
マミ『あら、【貴方】くんおはよう。どうかしたの?』
貴方『用事はないんですけど少し話したくなって。もしかして話し中だったりします?』
マミ『いえ、ちょうど私も暇だったところよ』
とりあえず元気な声が聞こえたのでよかった。
1放課後パトロールに誘ってみる(他にも同時に誘う場合は+キャラ名指定)
2特定の人物について(杏子/ほむら/他)
3会って話がしたい
4自由安価
下2レス
貴方『そういえば、巴さんって佐倉さんが契約したての頃から一緒にいたんですよね。しばらく離れてたみたいですけど』
マミ『そうね。最初の頃はそれはもう素直でいい子だったのよ?』
貴方『素直でいい子……ですか』
マミ『想像がつかない? まあ、今も根は変わってなかったから安心したわ。今でも私にとっては可愛い弟子よ』
そんなふうに言えるのって巴さんだけだろうからやっぱすごいなって気になる。
最近契約したメンバーじゃ、いくら強くなって認めてもらってもその位置にはなれない。
一見真逆に見える二人だが、根は共通している部分があるのかもしれない。
貴方『今もおふたりは仲いいんですよね。一緒に遊んだりもするんですか?』
マミ『よくうちで一緒にご飯食べたり、泊まっていったりはするけど……言われてみれば遊ぶっていうのはあまりないかもね』
貴方『あ……そうなんですね。さやかとかはよく一緒に遊んでるみたいだったから』
マミ『そうみたいね。私が普段あまりそういう遊びをしないから』
マミ『美樹さんや鹿目さんたちとショッピングに行くことはあるけれど、佐倉さんはそういうのはあまり興味ないみたいだし』
巴さんは、さやかとの仲いいとも少し違うみたいだ。多分鹿目さんとも。
みんなそれぞれの付き合い方があるのだろう。
マミ『たまには誘ってみるのもいいかもしれないわね、久しぶりに。前に一度だけゲーセンでぬいぐるみとってもらったことがあるのよ』
巴さんから昔の話を少しだけ聞かせてもらった。
――――そろそろチャイムが鳴る時間だ。話は一旦終わりにしよう。
放課後
学校での一日を終えると、今日は特に予定のない日だ。
昨日と違ってパトロールの約束とかもしてない、本当に予定の決まってない日。
教室内を見てみると、今日は鹿目さんがひとあし先に帰っていて、さやかと仁美ももう帰るところらしい。
みんなまとまって登校してくる朝と違って、帰りはパトロールのこともあるからバラけてることも多かった。
……俺はどうしようかな。
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
校内で何かやることがあればたまにはいい刺激になったかもしれないが、委員会も部活もやってないんだった。
部活なら今からでもはいれないことはないけど。
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4部活、入ってみる?一人だと意味ないので誰か(未攻略のほむら?)誘うとか
5他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
……まあ、別に今考えなくてもいいか。
貴方(帰ろうかな)
教室をあとにする。
校舎から離れて立ち寄ったのは繁華街のほうだった。
誰とも約束はしてないけど、彼女ならああ言ってたから居るかもしれない。
貴方(通りをぶらりとしながら軽く覗いてみてるけど、やっぱり一人だと寂しいな。……この前は暁美さんと一緒だったけど)
佐倉さんはいつも一人でいるんだろう。
いくらなんでも揃ってるような場所でも、もう遊びつくしたんじゃないだろうか。
けたたましい音と光を発するゲーセンの中を見ていると、奥のほうに佐倉さんがいた。昨日もここにいたって言ってた。ダンスゲームらしい。
杏子「……本当に来たんだ。それとも偶然通りかかっただけ?」
貴方「偶然通りかかるような場所ではないかな」
杏子「まあそうだな」
しかも、邪魔しちゃ悪いかと思ったけど彼女のほうから気づいて声をかけてきた。
適当に話を交えながらでも動きが鈍ることはない。よく見てみればすごい点数だ。ノーミス?
……いつも戦いに舞い跳ねる鮮やかな赤色の髪は今ゲーセンの中で揺れている。
貴方「ていうかすごいね……?」
杏子「とーぜん。慣れてるし今更ミスなんかしないって」
言葉通りいとも簡単にステップを踏み、ミスする気配など微塵も見せないまま一曲が終わる。
なるほど、ここまで極めてれば一人でも十分楽しんでるのかなあ。
杏子「で? アンタも遊びに来たの?」
貴方「佐倉さんほどゲームが得意ってわけじゃないけど、そうだね。せっかくだし。佐倉さんはこういうのが好きなの?ダンスとか」
杏子「まー、ゲームも身体動かすほうが飽きにくいかもね。曲も追加されるし」
杏子「他のゲームもニガテなもんはないけど? この辺はあたしの庭みたいなもんだし。ここのハイスコアの半分以上はあたしのなんだよね」
貴方「へー、すごい!」
でもそれって、飽きるほどやってるっていうのの裏返しでもあるわけで。
杏子「……ほかにやることもないしな」
貴方「でも、ゲームでもこれだけ極められるってすごいよ。俺はそれほど得意なものってないし、ゲーセンも買い物も大体誰かと一緒にしか行かないから」
杏子「そうか? ……そうだ、これやるよ」
貴方「あ、うん、ありがとう……」
佐倉さんはお菓子を差し出してくれた。ロッキー……いちご味だ。
……あまりルールに堂々と違反するのはどうかと思うけど、受け取らないのも悪いよな。
貴方「……これ、注意されたことってない?」
杏子「あるけど。ぶっ飛ばして逃げればいいだけだし」
そう言った後で、さすがに少し気まずそうにする。『ぶっ飛ばす』のは悪いと思ったらしい。
杏子「まー……、んー。 最近は気を付けてる」
それでもそもそもルールを破らない方向にはいかないようだ。
1ダンスゲーム、自分もやってみようかな?
2他のゲームもやってるとこを見てみたい
3自由安価
下2レス
貴方「他のゲームもやってるとこ見てみたいな」
杏子「面白いのかそれ?」
貴方「そこまで上手なプレイだと見ていて気持ちいいよ。自分でやるにも手本にできるし」
杏子「そういうもんか? まあいいけどさ」
それからプレイ風景を見せてもらったり、一緒にゲームしてみたりもした。
ゲーセンで一日過ごすのも久しぶりだ。それも、佐倉さんとなんて。
対戦なんかはまったく歯が立たなかったけど、教えてもらったり話しながらやるだけでも楽しめた。
……夕方頃になると腹が減ったということで、近くのラーメン屋に入った。
この前とはまた違う店だが、ここは醤油が美味しいらしい。佐倉さんと居るとこのあたりに詳しくなれそう。
貴方「佐倉さんはいつもこんな感じで過ごしてるんだね」
杏子「まあな」
貴方「今日は楽しかったよ! また遊んだりしようか」
杏子「……ま、どうせヒマだし。アンタと話すのも暇つぶしにはなるかな」
五回目【貴方】 3日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・話せる知り合い
・佐倉杏子・・・一緒に遊んだ↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
4日目
朝の教室内はいつもと変わりのない様子。
さて、今日はどうやって過ごそうか?
1クラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2巴さんとテレパシーでコミュ
3キュゥべえ呼んで佐倉さんに連絡
4自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下2レス
まどか「あっ、【貴方】くん。ちょっと聞いてよ。さやかちゃんがね……」
クラスメイトとの他愛もない話に混ざる。
昼も三人とは一緒だし、仲のいい人が多いから居心地がいい。
貴方「へえー。さやか、そういうの好きだもんな」
さやか「そうなのよ! ちょっとしたマイブームって感じ? とにかくおすすめだから聞いてみてよねー!」
貴方「あぁ、今度見てみるよ」
今朝はさやかを中心に音楽の話をしてたらしい。なんでも、動画サイトでも話題になってるんだとか。
みんなの好みについては一通り知ってるつもりだ。
さやかは音楽全般が好きでクラシックをよく聞いてたり、鹿目さんは演歌や昭和歌謡もたしなむとか。最初知った時は驚いた。
仁美「そういえば、【貴方】くんは音楽のジャンルだとどんなものが好きですか?」
貴方「え、そうだなあ……」
……考えつつ、少し暁美さんのほうを見る。俺が来る前からかもしれないが、人数が増えると口数が減りがちだ。
暁美さんとは1対1だと普通に話せるし仲も良くないわけじゃないんだけど。
みんなは盛り上がってるけど、暁美さんはこういう好みも『ない』って言いそうな感じがする。
1流行りの歌謡曲知ってるくらい
2ロックだぜ!
3クラシック
4まさかのデスメタ
5あえてほむらのほうに話振ってみる
6ほか(自由安価)
下2レス
-------------------------------------
あんまし人いないみたいやね…
下1レス
貴方「暁美さんはどう?」
ほむら「え……、特に考えたこともなかったわ」
話を振られると思ってなかったのか、ワンテンポ遅れて答える。しかし、まあ、予想通りだった。
まどか「音楽はあんまり聞かないのかな? とりあえずおすすめのを聞いてみたら、気に入るかもしれないよ」
さやか「あー、でもなんかアンタはそう言うんじゃないかって思ったわ。ていうか――」
結局俺も答えてないなって思ったけど、こっちも特に思い浮かばなかったからっていうのもあった。
そこから話が膨らむことはなかったが、話題は次々と進んでいく。
……ただ、暁美さんはいつもみんなと話してて楽しんでるのかな、って少し心配になった。
――――
――――
放課後
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下2レス
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テンポ悪くなるし下1採用でいいかな?いいよね!
空白期間開けすぎたせいもあって人いないしこれから暫く下1でいいか
今日の帰りも繁華街に寄ってみる。
昨日と同じような場所にいけば佐倉さんがいるかもしれないという思いもあった。
貴方(ゲーセンにはいないみたいだ)
ここに来るまでにも姿は見かけなかった。待ち合わせはしてないのでこの近くにいるとは限らない。
大体ここにいるとはいっても一日中同じ場所にいるわけではないし、繁華街の中もある程度広い。
ていうか、少し待ってたら彼女のほうから来るかも。
貴方(昨日の続きをやってみるか。せっかく上達してきたところだし……)
昨日やってたゲームをプレイしにいった。もちろんゲームは一人でも楽しめる。
もっと上達したら二人プレイももっとまともにできるようになるだろう。さすがに彼女ほどには追いつけないだろうけど。
……――時間を忘れて遊んでいたら店内で放送が流れ始めた。
あと15分で18歳未満は禁止になるらしい。随分のめりこんでしまっていたことに気づく。
貴方(やっべ、そんな時間か……!)
帰ろうとしたところで、見慣れたパーカー姿の彼女と出くわす。
杏子「おう、今日も会ったな」
これからゲームしにきたというところみたいだけど……。
杏子「今日もなんかやる?」
貴方「あと15分で立ち入り禁止らしいけど……」
杏子「だから?」
やっぱそうなるよなぁ。
佐倉さんは私服だからまだなんとかなるかもしれないけど、こっちは制服のままだからどう考えてもアウト。
いや、佐倉さんだって疑われたらごまかすすべはない。
1別のことをしないかと説得
2制服はまずいので自分は帰ろう
3まあ少しならいいか…
4自由安価
下2レス
------------
あ、癖で2にしちゃった。
下1レス でお願いします。
貴方「なんか別のことしない? ……ぶっ飛ばして逃げるのはしないように気を付けてくれてるんでしょ?」
そう言うと、う、と佐倉さんは図星のような声をあげつつ……でもそれで諦めてくれるんなら飲食禁止ことといいルール違反なんてしないわけで。
一般人に暴力を振るうのは確実に巴さんやさやかが拒絶反応起こすからその影響なんだろう。
杏子「ぶっ飛ばさないで逃げればいいだろ、べつに! ちょっとメンドイけど」
貴方「でも俺はイヤかなあ」
……あまり説教じみたことを言うと拗ねられるか?
1目を付けられてから慌てて逃げるのってカッコ悪くない?
2佐倉さんが悪いことをしてるのを見たくない
3自由安価
下2レス
--------------
手のくせ…
下1レスです
貴方「それに、佐倉さんが悪いことをしてるのを見たくない」
昔と根は変わらないって巴さんも言ってた。俺やさやかも、佐倉さんが根っから悪い人じゃないのを知ってる。
だからこそ、小さい悪事だってやめてほしいと思う。
杏子「……勝手なこと言うなよな。今更おキレイに生きるとかそんなのムリだろ。それとも、自分の目に見えさえしなければ満足か?」
貴方「佐倉さんがどうやって生きてるかはまあ、わかってるよ。仕方ないとも思う。でも、悪いことしないでもすむところはさ……」
杏子「アンタは今日はもう帰んなよ。あたしは自分のやりたいようにするだけさ」
佐倉さんはそう言うと、奥のほうへと行ってしまった。
まずいこと言っちゃったんだろうか?
後ろ髪を引かれながらも……、今日のところは帰るしかなかった。
五回目【貴方】 4日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・話せる知り合い
・佐倉杏子・・・一緒に遊んだ
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
5日目
朝の教室内はいつもと変わりない。
今日が終われば平日が終わる。週末はどう過ごそうかな。今のところは一日中予定はないし、午前のうちから出かけることもできる。
……そう考えて、昨日のことが気にかかった。
休日もいいけどあのまま間が空くのもよくないよなあ。
1クラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2巴さんとテレパシーでコミュ
3キュゥべえ呼んで佐倉さんに連絡
4自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
貴方『巴さん、おはようございます』
マミ『あら、おはよう【貴方】くん。今日はどうしたの?』
巴さんに向けてテレパシーで挨拶してみると返事が返ってきた。
1佐倉さんとのこと相談してみようか…?
2放課後パトロールに誘ってみる(他にも同時に誘う場合は+キャラ名指定)
3会って話がしたい
4自由安価
下1レス
貴方『実は、昨日佐倉さんとちょっと色々とあって……』
マミ『ケンカでもしたの?』
貴方『けんかってほどでもないんですけど』
――巴さんに昨日のことを話してみる。
巴さんなら佐倉さんと付き合いも長いし、接し方も一番慣れてそうだ。
マミ『なるほど、佐倉さんって気難しいところあるわよね。というか意地っ張りなのよね。……それも昔のことがあるからでしょうけど』
巴さんの反応は思ったよりあっさりとしていた。
でも重たい事情が絡んでると思うと、意地の一言で片づけていいのか迷う。佐倉さんの過去は普通に生きていた俺なんかには想像を絶するような話だった。
マミ『前にも言ったけど、昔はホントに素直だったのよ?』
貴方『次会う時にはどうすればいいですかね。……なんかちょっと気まずくて』
マミ『案外いつもの調子に戻ってるかもしれないわよ。もちろん、それだけじゃ【貴方】くんの言ったような問題はなにも解決しないままだけれど』
貴方『……』
マミ『正しいことに反発するのは自分でも今の生活に不安や後ろめたさを感じているからなんじゃないかしら?』
貴方『後ろめたさがあるならやめるんじゃ……?』
マミ『だからこそ“意地”なのよ。社会に反発することでストレスを発散しているところがあるのよ、きっと』
そう聞くと佐倉さんももしかしたら、内面はその辺にいる同じ年頃の子たちと変わらないんじゃないかって気がした。
今までは佐倉さんは自分とは生きている環境が違いすぎて、かけ離れたとこにいると思ってたし、俺なんかが下手に口を出したらいけないと思ってた。
マミ『でもね、私はやっぱりそういうのは見過ごせないから……私はいけないことをしたら何度でも注意するわよ』
マミ『そのせいかあまり私とは遊んでくれないのだけど……』
しょんぼりした言い方だったけど、それも巴さんらしい。巴さんも意地っ張りなところがあるから。
……言いすぎても警戒されることもあるのかも。
巴さんからアドバイスをもらった。
――――そろそろチャイムが鳴る時間だ。話は一旦終わりにしよう。
放課後
今日もこのあとの予定はない。
教室では朝と同じメンバーがまだ話してて、その内容がふと耳に入ってきた。
……そこそこくだらないことを話してた。平和な証拠だ。
もう学校を出る?
*待ちに待った放課後です。
1下校前に校内でコミュ(キャラ指定)
2誰か誘ってパトロール行くか(キャラ指定・複数可)
3他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下1レス
とりあえず教室を出ることにした。
どこへ行くかは歩いているうちに考えよう。
1繁華街に行ってみる
2自己鍛錬に行ってみる
3さらに他の場所(自由記述)
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下1レス
どこへ行こうか。
これから休日が待ってるし、このまま帰ってゆっくりするのもいいかもしれない。
そう思いながらも足が向いたのは結局昨日と同じ繁華街だった。
貴方(まあ……そう都合よくはいないか)
今日もゲームでもするか? まだ暗くならないうちに。
……そう思ってゲーセンに足を踏み入れようとした矢先、後ろから聞き覚えのある声がした。
「だーれだっ!」
貴方「……こんなことすんの一人しかいないだろ」
さやかが目の前に乗り出してくる。
鹿目さんと暁美さんも一緒にいるみたいだ。
さやか「せめて名前を答えてよ! まあいいや。さやかちゃんでした!」
まどか「じつは帰り道ずっと横にいたんだよ。ここまで一緒だと思わなかったからおどろいちゃった」
貴方「そうなの? 気付かないもんなんだなぁ……ところで、志筑さんはいないの?」
まどか「わたしたちは今日はパトロールに来たから。最初はわたしとさやかちゃんで行こうと思ってたんだけど、ほむらちゃんもついてくるって言って」
さやか「二人もいれば大丈夫って言ったんだけどさ、ほむらが心配性なんだよねぇ」
ほむら「……」
さやか「でさ、【貴方】も一人で遊びに来たんだったら仕事しようよ!【貴方】もいればちょうど半分に分かれられるじゃん?」
さやか「ぶっちゃけほむらがいるとあたしの出番ほぼなくなるんだよね」
……その場合って、俺はさやかと行くことになるのか?
1さやかと一緒に行くか
2あえてほむらを指名
3行きたくない
下1レス
貴方「わかった。じゃあ暁美さん、一緒に行く?」
さやか「……え?」
ほむら「私と?」
予想外って反応だ。一言でいえば、あからさまに不本意そう。
拒否られたりしたらちょっと堪えるな……。
貴方「だ、駄目だった?」
ほむら「あなたはいつも美樹さんと仲良くしているように見えたから。それに、半々に分かれるのよね。だったら私は……」
貴方「だって、この中で一番の新参は俺だよ。さやかと鹿目さんで行くのが不安なら、俺とさやかじゃ尚更」
さやか「……」
まどか「無理に分ける必要もないんじゃないかな? たまには四人で行くのも訓練になると思う!」
ほむら「……それもそうね。じゃあ、それでいいわ」
話がまとまって、みんなで歩き出す。このあたりに魔女がいないことはもうわかってた。
少し予定と変わってしまったけど、明日から休みなんだし今日は張り切っていくか。
――……あの時、実は不本意そうにしてたのはさやかもだったことには、気づいていなかった。
五回目【貴方】 5日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・話せる知り合い
・佐倉杏子・・・一緒に遊んだ
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
明日は休日だ……。どうやって過ごそうか?
1誘う ※キャラによっては断られることもあります
・キャラ選択(ほむら/杏子 攻略済【まどか/マミ/さやか/仁美】)※攻略済みキャラは単体での選択はNGとします
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2出かける
a繁華街
b自己鍛錬
3自由安価
下1レス
――――
――――
一週目 週末
暁美宅
さやか「――でさー、その時まどかったら」
まどか「もー! やめてよさやかちゃん!」
貴方「鹿目さんって意外と面白いとこあるよな」
土曜、休みに入っても結局昨日と変わらないメンツでまとまっていた。
ただ、珍しい場所にいた。俺が入るのははじめてだが、二人はたまに来ているらしい。
いちおう、ここに来たのは昨日のパトロールの反省会という名目だった。
しかし、ほぼ気分はオフだ。いつもの教室の雰囲気。
たしかに前はよく巴さんの家で似たようなことをしていたって聞いた。
お決まりらしく、店で買ってきたケーキもちゃんと用意してある。
ほむら「……」
……横から冷たい視線を感じる。
暁美さんは家主なのに口数は少なかった。
驚くほど生活感を感じられない部屋。暁美さんはこんな場所で暮らしているのか。
1部屋について
2反省点について
3自由安価
下1レス
貴方「てか、反省点については?」
さやか「えぇ? もう言ったじゃん」
貴方「一言だけ?」
さやか「そう言う【貴方】はなにかあるの? 四人いて一人一人がそこまで出番あったわけじゃないしあんまし思い浮かばないんだよね」
話を本題に戻そうとしてみたけど、考えてみればさやかと同感だ。
昨日は……とくにミスもなくスムーズに戦えていた。おかげで傷一つ負わずにすんだ。
まどか「さやかちゃん、魔女にトドメさしに行ったときカッコよかったよ!」
さやか「さっすがまどか、よく見てる! 照れるなあ。 そうだ、反省会じゃなくて褒め合う会にしよう!そのほうが気分いいよ!」
貴方「たしかにまぁ……そのほうがやる気が出るかもなあ」
……反省会は終わりにして、みんなで褒め合うことになった。
改めて言うのも照れくさいが、みんな長所ははっきりしてる。
さやか「――まどかの良かったところ、可愛い!」
まどか「それ戦いと関係ないよね!?」
さやか「いちいちしぐさがかわいくて、過酷な戦いの中でも癒しになるといいますかー」
さやか「ほむらもそう思うでしょ?」
急に話を振られた暁美さんはワンテンポ遅れて反応した。
でもなんで暁美さんに振ったんだろ。
ほむら「……はぁ、そうかもね」
さやか「ま、アンタならわかってくれるよね。なんかいっつもまどかのこと見てるし」
さやか「ぶっちゃけさ、それってどうしてなわけ?」
ほむら「……………」
さやか「……べつに言えないなら言わなくていいけど」
暁美さんは結局沈黙のままだった。さやかの言い方にも少しだけ棘を感じる。
しかし、ケーキを囲んでいるのだから、せっかくならもっと楽しい話をしたい。
褒め合う会も終わればただのお茶会だ。みんなで話をして楽しんだ。
― 一週目休日 終了 ―
[好感度] to貴方
【★★★】
美樹さやか,巴マミ,志筑仁美,鹿目まどか
【★】
佐倉杏子,暁美ほむら
★…フラグ一段階目 「気になる」
※大抵の場所なら誘ったらOKしてくれると思います。
※放課後行動では勝手についてくることもあるかもしれません。
★★…フラグ二段階目 「特別」
※【貴方】との行動を優先します。
※ここまでくればあとは流れに乗るだけだ!
★★★…フラグ三段階目 「恋慕」
※実質落ちてる。
※個別ENDにいってもいかなくても攻略済み。
☆…互いに恋人として誓い合った仲。他の人の好感度上げすぎると多分マズイことになる。
もし他の人に言い寄るようなことしたら普通に浮気です。
▽…嫉妬Lv1
※ハーレムならつきものくらいの可愛い嫉妬だよ。
※この辺で留めておかないと色々濁るかもよ。マズそうな選択肢は控えよう。
▼更に、さやかのほむらを見る目が変化しはじめたようです・・?
▼ほむらはまた別の方向に【貴方】に対して嫉妬心を感じ始めたようです
※ヒロインたちの仲は初期状態では『奇跡的なバランス』で保たれているため、突き詰めると瓦解する恐れがあります。
できるだけ一人ずつ接したほうがいいかも。
――――
6日目
朝の教室内はいつもと変わりない。
しかしまあ……月曜の朝って、なかなかシャキッといかない。
1クラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2巴さんとテレパシーでコミュ
3キュゥべえ呼んで佐倉さんに連絡
4自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
そういえば……休みのうちには佐倉さんとは会えなかったな。
案外いつもの調子に戻ってるかもって巴さんは言ってくれたけど、そろそろちゃんと会っておいたほうがよさそうだ。
貴方『……キュゥべえ、頼みがあるんだけど』
QB『なになに? 質問があるなら受けつけるよ! それとも杏子に伝言かい?』
貴方『佐倉さんに伝言。放課後くらいに駅前で会おうって』
QB『わかった。伝えておくよ』
キュゥべえも相変わらずだ。
俺らに話しかけられたりした時には受け応えてくれるけど、それ以外はすげー暇そうにしてる。
ごろごろと寝たり、伸びをしたり、また体勢を変えて寝たり。その姿が非常に能天気に見えてうらやましい。
貴方『キュゥべえってさ、サポートのためにずっとここにいるんだよね?』
QB『そうだけど、どうかしたのかい?』
貴方『……本当にそれだけ?』
QB『僕としてはそれ以外に理由もやることも思いつかないんだけど…… まさか僕を暇だなんて思ってないだろうね?』
貴方『うん、思ってる』
QB『ひどいなぁ、僕はこんなにみんなのためにがんばっているのに』
貴方『どうだか……』
QB『おつかいもこなすし、もう新人を見つけにいかなくていいくらいには魔法少女も足りてるし……僕はちゃんとはたらいてるよ。働いてる、働いてる』
……キュゥべえは自分で納得するようにそうくりかえしてた。そう言われればそうなのかもしれないが、やっぱり暇には変わらないと思う。
キュゥべえと少しテレパシーで話してたら、授業がはじまった。
――――
――――
-----------------------
次は夕方くらいの予定
放課後 駅前
駅前の広場には時計があり、時刻は16時前くらいを指していた。
待ち合わせるには『放課後』という時間の指定の仕方は曖昧だが、いつもそんなでもやれていた。
佐倉さんは時計の類も持ってないみたいだし、時間に正確なほうではなさそうだ。
俺がついた時には佐倉さんは袋入りのお菓子を覗きこんでいて、それからこっちに気づいて目があった。
杏子「残念だったな。もうちっと早ければいっこくらいあげられたかもしんないのに」
貴方「はあ」
杏子「じゃ、いくか?」
貴方「行くって?」
杏子「パトロールかゲーセンでもいくか。次の食いもん探すでもいいな」
貴方「たしかにおやつの時間としてはいい時間だけど、何かおすすめのものとかある?」
杏子「それなら――」
なんというか、拍子抜けするくらいいつもの調子に戻ってた。
お菓子の空袋はポイ捨てしちゃうし、そういうのは良くないんだけど、言い始めたらもはやキリがないところでもある。
小さい悪事とはいえ、それこそ見てないところではもっと悪いことはしてる……のだろう。
佐倉さんについていった先は、駅近くのデパートにある店だった。
貴方「通りにジェラート屋あったけど、こっちにもあったんだね」
杏子「あっちは洒落すぎてて落ち着かねえ」
その感じはなんとなくわかった。
前の時はさやかたちと一緒だったからいいけど、女子に人気そうな店だったから一人で行くには勇気がいりそうだ。
……佐倉さんだったら別に違和感はないけど、そういう空気が好きなほうじゃないんだろう。
貴方「おやつにしてもご飯にしても、佐倉さんといるとこの辺のことに詳しくなれそうだよ」
杏子「さやかやまどかとここに来ることはあるんだろ? アンタって意外と世間知らずに育った坊ちゃん?」
貴方「いやぁ、そんなことはないけどさ。別に普通の家だよ……至って普通の」
そういえば、佐倉さんのことは少しわかりはじめたけど、自分のことってあまり話してなかったような気がする。
杏子「フツウね…… まー、あたしも前までは外食も買い食いもめったにしてなかったんだけどさ」
貴方「あ……」
杏子「どうかしたか?」
ちょっとまずいこと言ったかなと思ったが、佐倉さんは特に気にしていないような態度だった。
気を遣いすぎるのもかえって……となるのかもな。
杏子「普通って言えるならいいコトじゃん? あんましお上品すぎるのも、それはそれで息がつまりそうだしな」
貴方「あはは……そうだね。そういうのは向いてなかったよ」
杏子「え?」
なにかおかしなことを言ったっけ?
杏子「……まあでも、大事にしろよ。普通の生活ってやつは。こんな世界にいたらいつ崩れるかわかんないんだから」
杏子「だから、本当だったら魔法少女も魔法少年も増えない方がよかったんだ」
佐倉さんは少しだけ深刻につぶやいた。
見滝原からすべての魔女を倒したい思いは本物だし、契約したことは後悔なんてないけど、だからこそ。
貴方「……うん、大事にするよ」
はっきりと言葉にした。
杏子「さてと、今日はなにして遊ぼうかな」
アイスを食い終わってテーブルを立ち、再びデパートの中を歩きはじめる。
佐倉さんともかなり色んな事を話せるようになったと思う。少なくとも前ほどの距離は感じなくなっていた。
五回目【貴方】 6日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・話せる知り合い
・佐倉杏子・・・友達↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
7日目 教室
朝の教室内はいつもと変わりない。
……さて、今朝はどうやって過ごそうかな。
1クラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2巴さんとテレパシーでコミュ
3キュゥべえ呼んで佐倉さんに連絡
4自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
鹿目さんたちのほうに寄っていくと、すぐにこっちに気づいて話題を振ってきた。
さっきから少し会話は聞こえていた。
まどか「あっ、【貴方】くんもちょっと聞いてよ」
仁美「さやかさんったらおかしなことを言うんですわ」
貴方「え、さやかが?」
……内容は至極くだらないことだったけど、くだらない会話を延々と出来るのは居心地がいい。
しかし、どうにもこの前からさやかが暁美さんを警戒しているように見える。
警戒している……というか、怪しんでいる、というか。
暁美さんはいつも一歩引いているところがあるし、みんな揃ってる時には口に出しにくいけど、
今度そのことについてちゃんと話してみてもいいかもしれない。
――クラスメイトと雑談を楽しんでから授業を受けた!
――――
――――
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下1レス
----------------------------------------------------------------------------
親友親友親友親友友達、ときて 話せる知り合い の異物感。ほむらちゃん強く生きて
明日(きょう?)もやるよ
放課後になると、繁華街のほうに寄り道してみた。
……というか、実際家もこっちのほうにあるから寄りやすいんだ。ここなら遊びも買い物もなにをするにも大体揃ってる。
多くの人が訪れるこのエリア。この時間は同じ制服の生徒も少なくない。
その中に見知った姿を見た。――暁美さんだ。
貴方「今日は一人? そういえば暁美さんも家こっちのほうだったね」
ほむら「……ええ、買い物を済ませたらもう帰るわ」
貴方「そっか」
思えば一人でいるところを見るのも珍しい。
大体見かける時は誰かと一緒の遊びやパトロールの最中だった。……普段は何してるんだろう?
1何を買うの?
2普段は何をして過ごしてる?
3自由安価
下1レス
貴方「何を買うの?」
ほむら「今日の夕食よ。特に面白いものじゃないわ」
返答は簡潔で話が広がりそうにもなかった。
気を抜くと会話がすぐ終わってしまう。でもちょうど、暁美さんとは話しておきたいこともあった。
貴方「……ところであのさ、この前からさやかと何かあった?」
ほむら「どうして?」
貴方「いや、ちょっとさやかの態度がぎこちなく見えた気がして……気のせいならいいんだけど」
ほむら「……気のせいではないと思うわよ。考えてみればたしかに私はおかしいもの」
貴方「えっ……」
ほむら「もう私のことはいいでしょう? あなたのほうが私よりみんなと仲がいいのだし」
貴方「別に俺はそんな……暁美さんのこともどうでもいいとか思ってないよ!」
貴方「暁美さんももっとみんなと話してみればいいんじゃない? せっかく近くにいるんだからさ!」
ほむら「無理よ。あなたのことは嫌いじゃないけど……あなたがいれば私なんて入る余地がなくなるもの」
彼女の言うことは分からないことはあるけれど……もしかして拗ねてる?
と、そんな似合いそうにない考えが浮かぶ。
1今からでも誰か遊びに誘おう!と提案
2もっと自分をさらけ出せばいいんじゃないかとアドバイス
3自由安価
下1レス ※どうしようもないヒント※どれを選んでも好感度は上がりません
貴方「今からでも誰か遊びに誘おう! ちょっとみんなに連絡してみるよ」
ほむら「余計な気は遣わないでいいから。そういうことされても……困るのよ」
ほむら「それに今日はまどかは巴さんとパトロールに行っているそうよ。志筑さんも用事があるようだし」
じゃあ、残るはさやかか。あとは、この辺で鉢合わせる可能性くらいありそうなのは佐倉さんくらい。
俺は二人とはそこそこ仲いいけど、たしかに暁美さんを含めるとあまり思い浮かぶことのない取り合わせだった。
でも、そもそも……暁美さんはいつも鹿目さんのことを気にかけてはいるけれど、日常生活ではどれだけ関わっているんだろう?
思えば両方一歩引いているようで、直接話しているところはあまり見てない。
貴方「そういえば、今日はパトロールにはついていかなかったの?」
ほむら「……巴さんと一緒なら心配はいらないでしょ」
貴方「まあそれもそうだね」
ほむら「そういうことだから。……じゃ」
暁美さんは去っていく。その背はいつもどおり颯爽としているが、どこか小さく見える。
人付き合いとか、意外と普通そうなことで悩むこともあるんだな。あの一見してクールで、優等生な暁美さんが。
貴方「あっ、そうだ。せっかくこの近くにあるんだから今度うちの神社にきてよ! 祈願くらいはしていけるから!」
ほむら「どんな誘い文句なのよ、それ」
五回目【貴方】 7日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・悩んでる?→
・佐倉杏子・・・友達
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
8日目 教室
朝の教室内はいつもと変わりない。
……さて、今朝はどうやって過ごそうかな。
1クラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2巴さんとテレパシーでコミュ
3キュゥべえ呼んで佐倉さんに連絡
4自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
さやか「あっ、聞いてよ【貴方】。昨日面白いことがあって――」
鹿目さんたちのほうに行くと、自然と話が始まった。
……しばらくみんなで話してたが、ふと暁美さんがいなくなってることに気づいた。
貴方「あれ? そういえば暁美さんは?」
まどか「おトイレかな?」
さやか「ほっといてもいいでしょ。何も言わずに行ったんだし」
仁美「暁美さんって少し不思議なところがありますよね。私たちと一緒にいるようないないような……」
みんなあまり気に留めてないみたいだ。
しかしやっぱりさやかは暁美さんのことになるとどこか冷たい。
1暁美さんへの態度についてさやかに聞いてみる
2暁美さんの悩みについてみんなに話す
3自由安価
下1レス
貴方「話していいかちょっと迷ったんだけど……暁美さん昨日言ってたんだ。こうして俺がいると自分の入る余地がなくなる、って」
貴方「みんなと打ち解けられないの気にしてたんじゃないかな。俺たちだけで盛り上がりすぎたのかも……」
さやか「それ八つ当たりじゃない? 自分以外のみんなが仲いいからって。わざわざ本人に直接言うこと?」
貴方「ま、まあそれもそうだけど……」
さやか「そんなの【貴方】のせいじゃないじゃん。気にしないでいいよ! 【貴方】はちょっと人が良すぎるよ!」
さやか「あんだけあからさまにあたしたちのことどうでもいいって顔してるくせに、仲間外れだって僻むとかおかしくない?」
さやか「まどかにだけこだわる理由もよくわかんないし……はっきり言って、ほむらって考えれば考えるほど気味悪いよ」
さやかがついに不満を吐き出す。……これについてはすぐにはどうにもできなさそうだ。
他の二人は同調も否定もしないけど、思うところはあるようだった。
仁美「なにかあったんですか? たしかに暁美さんの普段の態度もちょっと……アレですけど」
さやか「んまあ、仁美のいない時にちょっとね」
もしかしなくてもこの前のパトロールの時のことが発端だろう。
さやかは勘がいいから、そこから改めて色々と感じ取ってしまったのか。
まどか「本当にほむらちゃんがそんなこと言ってたの? ……あっ、べつに疑ってるわけじゃないんだけど」
貴方「……うん、言ってたよ」
まどか「ほむらちゃんはいつも堂々としててクールだから、そんなこと気にするような人だって思ってなくて」
仁美「そうですわね。私もでした」
……どうだろう。さやかは無理そうだけど、優しくて誰にも気にかける鹿目さんなら事情を話せばなんとかしてくれるかな。
二人は俺と同じように暁美さんを憧れの対象として見ていた。だからあまり深く考えなかったんだ。
なんだかんだ、暁美さんをただの身近な女子として一番に見ているのはさやかなのかもしれない。
――クラスメイトと雑談してから授業を受けた。
――――
――――
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる(遭遇ランダム)
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下1レス
……結局あれからも暁美さん、一人でいることが多かったな。
暁美さんはこれでもクラスの人気者だから、誰かは話しかけていたけど。
貴方「暁美さん、もう帰るとこ?」
ほむら「ええ」
帰りも一人みたいだ。
ほむら「何の用?」
貴方「ちょっと話したくて。帰り道でもいいけど。どうせ途中まで一緒でしょ?」
ほむら「……」
暁美さんと並んで教室を出る。
一緒に廊下を歩いてると、周りの人の視線がこっちのほうに向くのがわかる。
……もちろん見てるのは俺じゃなくて暁美さんだ。二人で居てなんて思われてるんだろ。あんまり浮かれてちゃいけないかな。
1買い物でもしてかない?
2祈願については考えてくれた?
3鹿目さんや志筑さんとはどうか
4自由安価
下1レス
貴方「祈願については考えてくれた?」
ほむら「特に祈りたいことや叶えたい希望といったものはないけれど……少し見に行くだけでもいいならね」
貴方「ああ、別に祈りたいことがなきゃ来ちゃ駄目ってことはないんだけどさ」
貴方「ていうか、そうだなあ。祈願内容なんて定番どころだと安全や健康とかでいいんじゃない? それなら誰もが望むことでしょ?」
ほむら「他の人ならともかく、私には魔法の力があるもの。神頼みなんてしなくても自分の身くらい自分で守れる」
貴方「あー、そういう考えもあるか……」
じゃあまだ時期が早いかもしれないけど学業のことでも、とか思ったけどそれも暁美さんは実力でできそうだ。
暁美さんって自分の力でなんでもできそうだから、たしかに神頼みするようなイメージとはかけはなれてるかもしれない。
暁美さんが自力でなんでもこなしちゃわないことってなんだろう?
貴方「あ、じゃあこれは? 恋愛成就とか」
なぜそれを私に? とでも言いたげな顔で、一瞬暁美さんはきょとんとした顔をする。
自分には縁の遠いものだと思ってたみたいだ。
ほむら「……好きな人はいないわ」
貴方「誤解しないでほしいんだけど、暁美さんがめちゃくちゃモテるのは勿論わかる。でも、興味がある人は今まで寄ってこなかったわけでしょ?」
貴方「暁美さんが認められるようないい出会いが訪れるように、とか……」
ほむら「たしかに、出会いというのは私の力じゃどうにもならないわね」
一応納得してくれたみたい。
とは言ってみたものの、これも出会いさえあれば暁美さんなら実力でなんとかできそうな気もしてきた。……やっぱり差し出がましかったかな。
貴方「でももし好きな人できたらすぐなんだろうなー。暁美さんに迫られてオチない男いないだろうし」
ほむら「そんなことない」
しかし、暁美さんは否定した。これって単なる謙遜?
暁美さんって自己評価が低いとこあるから本気で言ってるってこともありそうだ。
▼帰りに二人で祈願をしてきた! おまもりもサービスとして勧めてみたけど、恥ずかしいからどこかにつけたりはしない……だそうだ。
五回目【貴方】 8日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・悩んでる?↑
・佐倉杏子・・・友達
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
9日目 教室
朝の教室内はいつもと変わりない。いや、正確に言えば昨日と……だけど。
暁美さんとさやかたちの溝はますます深まってる気がする。
……さて、今朝はどうやって過ごそうかな。
1【親友】のクラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2その他のクラスメイトとコミュ(キャラ名指定)
3巴さんとテレパシーでコミュ
4佐倉さんに連絡 ※杏子との予定を入れられるのは朝のみです
a遊びに誘う
bパトロールに誘う
cほか(安価内容)
5キュゥべえと駄弁る
6自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
4選択の場合はa~cも併記してください
下1レス
まあ、昨日話してみたから鹿目さんとかは時折気にするような気配は見せているし、
女子同士のことは少しあっちに任せてみてもいいか。
キュゥべえを呼びよせて佐倉さんとの放課後の約束の伝言を頼んでみる。
貴方「……そういえば、今はもう新人を見つけにいかなくていいくらいに足りてるって言ってたよな」
QB「うん、言ったよ。それがどうかしたのかい? ……まさか増やしてほしいとか?」
貴方「いや」
この前佐倉さんと話したことを思い出していた。
今キュゥべえが言ったのとは逆。佐倉さんは新人なんか増えないほうがいいって言ってたんだ。
それに今のチームはバランスがいいほうだと思う。俺が一番の新参だから、一人くらい後輩がいてもいいって気はしないでもないけど。
QB「というか、まったく素質のある候補を見かけないんだよね。望むのなら学校の外に足を延ばせないことはないけど……」
貴方「どうせ昼寝の時間が減るからイヤとかだろ?」
QB「そんなことないよ! 僕にはサポートという大きな役目があるから、あまり分散するわけにはいかないんだよ」
あまりあちこち行くのは気乗りしなさそうだった。
サポートサポートと言うが、なにか制約でもあるのだろうか。
QB「杏子を探すのだって結構手間なんだ。彼女がいそうな場所から当たっているけれど、なかなか見つからないときだってあるんだよ」
貴方「そうなのか。まあこうして頼むのも伝言な以上、確実とは思ってないけど……」
キュゥべえのことはさておき……。
彼女には固定された連絡先というものがない。
遊びの約束くらいならまだしも、なにかどうしても伝えたいことがあった時、確実な連絡手段がないのは少し不安だ……と思った。
――――
――――
放課後
待ち合わせの場所はこの前指定したのと同じだ。
放課後になってから行ってみると今日はすんなりと会えた。
杏子「よう、今日はどこいく?」
杏子「身体動かしたい気分なんだよね。あんたボーリングとかできない?」
貴方「それにしようか。あんまりやったことないから張り合いはないと思うけど、身体動かしたい気分ってのは同感かな」
基本的には佐倉さんが主導していて、それに付き合う感じだ。
そういうのも上手そうだなって思ってたけど、実際にやってみたらその予想はやっぱり的中した。
貴方「さすがにうまいね……。ボーリングも極めてるの?」
杏子「遊べるものは大体遊びつくしてるんだよ。この辺は庭みたいなものっつったろ?」
杏子「あとは契約してからの身体能力だな。これがなかったらちっとキツいんじゃない?」
貴方「まあそうかも……」
俺も力はあるほうだから、ボールの重さとかは全然感じない。
初心者なのにそこそこやれてるのはそのおかげもあるかもしれない。
魔法の力で上がった身体能力があることで、一般人以上の恩恵を受けたり退屈になったりというのは、ほとんどの契約者は感じてると思う。
にしたって、通いつめてる佐倉さんの腕にはまだ追いつけなさそう。今から通いつめるにも……あまり毎日だと、こう、お財布が。
杏子「あー、運動もできたし腹減った! なんか食うか」
……いつものことだけど、さっきから色々とお菓子を食べてたような。
ボーリング場から出てデパートの中を歩きだす。
――すると、佐倉さんのほうに小さい子がぶつかってきた。なぜか半べそ状態だ。
佐倉さんも小さい子相手に怒ったりはしないだろうけど少し心配になった。だが、その心配はいらなかったようだ。
杏子「おいおい、アンタなんで泣いてんのさ?」
*「ママとはぐれちゃった…… うえぇ~ん!!」
杏子「あぁもう、泣くな泣くな。あ、そうだ、アメやるから!」
パーカーのポケットからアメが出てきた。佐倉さんのポケットにはいつも何かのお菓子が入ってるのかな。
少しの間、佐倉さんが小さい子を泣き止ませてる姿を眺めてた。なんだかその様子がさまになってて、微笑ましく見える。
杏子「って、あんたは何見てんだ。なんだその顔は」
貴方「いや……なんか慣れてそうだなって。保育士さんとか向いてそうだよね」
杏子「はあ? あたしみたいなのお断りだろ」
まあ、言葉遣いとか素行とかほんのちょっと改善してくれたらと思うところはあるけど。
貴方「じゃあお母さんとかでも」
杏子「……もっとねーよ。くだらねー話より考えなきゃいけないことあるだろ?」
貴方「あ、そうだね、どうしようか? つれていける場所とかある?」
杏子「でけーデパートなんだから迷子センターとかあんじゃね? アナウンスかかってんのたまに聞くよ」
貴方「じゃあそこ行こうか。きみ、ついてこれる?」
杏子「たぶんママもそこ来てくれるからな。あーでも、知らない人についていくのはダメだから名乗っとくぞ! 佐倉杏子だ」
*「うん!」
今までのことで佐倉さんの人柄は一応わかったし、こういうところがあるから普段悪いことをしていても嫌いにはなれない。
むしろ、良いところはあるのにもったいないとやっぱり思うんだ。
……わかってもらうのはすぐには難しいのかもしれない。でも、これからもっと先の未来はどうだろう?
さっきちょっとだけ未来のことを思い浮かべたついでにそんなことを考えてみた。
何かが変わる可能性はいくらでもあるじゃないか。
――その後、子供と母親は無事再会できた。
迷子センターに向かう途中でちょうどばったり会えたのだから運がよかった。
貴方「これで一件落着かな?」
杏子「ああ、そうだな。今度こそ飯いくぞ。さっきより腹減ったし」
食べ物屋の並ぶフロアで一軒の店に入っていく。
価格帯高めの店も多いけど、佐倉さんが選ぶとこは敷居が高すぎなくていい。
貴方「改めて考えてみると、佐倉さんとも色々と話せるようになったよね。最初の頃、二人だと会話がなかったから」
杏子「何話したらいいかわかんなかったんだよ。つーか興味もなかったし」
貴方「はは、辛辣だね……」
杏子「今は何するにも一人か、マミやさやかやまどかが相手だろ。男と関わること自体ないし……まぁ、小さい頃ならよく外で遊んでたか」
杏子「で、結局、マミやさやかやまどかと変わんねーわって思った」
変わらないっていうのはどうなんだろう。地味に異性として認識されていないような気がするのは残念だけど。
でもそう思ってくれるのも多分、心を許し始めてくれたからなんだろうな。
雑談の中で、佐倉さんはなんでもないことのように、ぼそっとこんなことを言った。
杏子「あたしって5年後とか生きてんのかね」
ついさっき佐倉さんの未来のことを考えたばかりだったのに、佐倉さんは自分の未来についてまるで希望を持っていないらしい。
貴方「生きてるよ。当然!」
杏子「なにさ、急に熱くなってどうかした?」
貴方「佐倉さん強いんだからそんな簡単に死なないし、マミさんやさやかや鹿目さんや暁美さんや……それに俺だって守るし!」
杏子「……そっ、か。 まあ、簡単には死んでやるつもりもないけどさ」
なんだか悲しく思えた。
前に俺が大怪我負った時もそういえば、自分は死んでもいいみたいなことを言ってたっけ。
そのことを思い出して、根本にあったのはこういう自分の未来に対しての投げやりさだったんだと気づいた。
それでも、きっと。
貴方「5年後だって10年後だって実際に生きてさえいれば、投げやりな考えだって変わるよ」
今は納得させられないかもしれないけど、そう言いきかせることしかできなかった。
――――腹を満たすとデパートを出た。
この繁華街は本当に色んな人が行き交う場所である。
それに、自分の家からもそう離れていない。ゲーセンのような時間制限のある場所を除けば、割と遅くまで遊んでいても大丈夫だった。
もう日も落ちたが大通りは明るい。その片隅に、見知った人影を見たような……気がした。
下1レスコンマ判定 *遭遇*
奇数
貴方(……気のせいかな?)
杏子「そろそろマミのとこにでも行くかな。アンタもくるか?」
貴方「巴さんのとこか。急に二人で押しかけて大丈夫かな? 俺はまた今度にしようかな」
杏子「そうか。じゃあ、またな」
貴方「ああ、うん。またね」
佐倉さんともこれまでたくさんの時間を共有し、色んなことを話すことができた。
かなり仲を深められたと思う。ただの仲間という以上の強い絆を感じる。
繁華街を途中まで一緒に歩き、今日は別れて帰った。
佐倉さんは巴さんの家には頻繁に行ってるみたいだけど、ご一緒するのは次の機会にしよう。
五回目【貴方】 9日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・悩んでる?
・佐倉杏子・・・親友↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
▼親友=攻略済みでは…ないのです。
――――
10日目 教室
朝、鞄を下ろして準備をしていると珍しくキュゥべえが机の上に飛び乗って話しかけてきた。
邪魔だと思い追い払おうとしたが、緊急らしい用があるようだ。
QB「……最近ほむらの精神状態が思わしくないような気がするんだ」
貴方『暁美さん?』
そういえば、今日は完全に一人で席にいるようだ。
相変わらず何事もなさそうな表情はしているけれど……。
QB「それでね、ほむらと話してみたんだよ」
貴方『何か面白い雑談でもできたの? キュゥべえのカウンセリングとか想像もつかないんだけど……』
QB「いや、出来ることは考えてみたんだよ。その結果、もしかして生理なんじゃないかなって思い至ったんだ」
貴方「……」
……思ったよりサイテーな話だった。
QB「君たちの年頃だとまだ慣れてなくて大変だろう?だからいい対処法でも教えてあげようかと思うんだけどね、どうしたらいいかな」
貴方『頼むからもう暁美さんに余計なこと言うなよ……つーかそれを俺に聞かれても知らねーよ……』
精神のケアもサポートのうちに含まれるのだろうか。気にかけてはくれているようだけどキュゥべえは致命的に空振っていた。
この獣は根本的に人間の感情というものを理解していないのだ。一言で言えば、致命的に空気が読めない。
まあ、キュゥべえから聞いたこと自体は気に留めておいてもいいかもしれない。
……さて、今朝はどうやって過ごそうか?
1【親友】のクラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2その他のクラスメイトとコミュ(キャラ名指定)
3巴さんとテレパシーでコミュ
4佐倉さんに連絡 ※杏子との予定を入れられるのは朝のみです
a遊びに誘う
bパトロールに誘う
cほか(安価内容)
5キュゥべえと駄弁る
6自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
貴方「暁美さん、今朝は一人?」
ほむら「……一人でいたらいけないのかしら」
机に頬杖をつく暁美さんの横顔は変わらず澄ました無表情だが、よく見たら浮かない表情に見えないこともない。
冷たく突き放すようなことを言うが、どこか拗ねたような言葉にも聞こえた。
貴方「いけないってことはないけど、いつもは鹿目さんたちと一緒にいるから」
ほむら「……」
黙り込んでしまった。……この話題はよくないか?
1話題を変えてみる
2追求し仲を取り持とうとする
下1レス
貴方「俺からもみんなに言ってみるよ。さやかだって、キツいこと言うこともあるかもしれないけどいい奴なんだよ。俺が話をすればなんとかなるって!」
ほむら「いい、あなたが口を出さないで。もうこのことは放っておいて頂戴」
貴方「いやでも……ほら、俺たちは貴重な仲間なんだしさ、ギクシャクしたままじゃよくないよ」
ほむら「仲間だということはわかってるわ。チームとして動くのに支障がないようにはする。そのくらいは美樹さんだってわかってるでしょう」
ほむら「……もっとも、私もあの子たちもお互いに助けが必要になることなんてないんじゃないのかしら」
たしかに、これまでパトロールでは二、三人で魔女を倒してきた。暁美さんや巴さん、佐倉さんなら大抵の場合は一人でも苦労しないんだろう。
全員で魔女と戦ったこともあるが、あえてチーム全員で力を合わせなきゃ勝てないほどの敵というのは今まで出会ったことがなかった。
いや、そんなものいないほうがいいに決まってる。
……もしかして、暁美さんが自信をなくした原因はそれなのか。
暁美さんはどうにも魔法少女としての力で誰かを――というか、鹿目さんを?――守ることに存在意義を感じているように思えていた。
▼嫉妬が強まったようだ…
――――
――――
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる(遭遇ランダム)
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下1レス
放課後
帰り際に声をかけてみると、長い髪をなびかせて暁美さんがこちらを振り返り、藤色の瞳が射抜いてきた。
……その視線に一瞬敵意のようなものを感じたのは気のせいだろうか。
ほむら「……もう帰るところなのだけど」
貴方「そう、じゃあ一緒に行く?」
廊下を並んで歩く。
教室内には雑談して残っている人もまだ多かった。
ほむら「朝のこと、誰にもなにも言ってないわよね」
貴方「ああ……言ってないよ。暁美さんに止められたから」
どうなんだろう。とりあえずやめておいたけど、言ったほうがよかったのかな?
ほむら「ところで、昨日キュゥべえにおかしなことを言われたわ。ついに変なことに興味持ち始めたのかしら」
貴方「へ、へえ。ちなみに話って……」
ほむら「……。知らなくていいことよ」
自分から話を振っておいてそんな。
これだけだとふわっとしすぎてて何のことやらだけど、朝聞かされてしまったせいでなんとなく意味はわかる。
1買い物でも誘う
2カフェにでも誘う
3キュゥべえのこと
4自由安価
下1レス
2
……。それ以降会話がなくなってしまった。
せっかく一緒にいるのにこのまま帰るのもなんとなく寂しい。
貴方「暁美さんってこのあと何か用事ある?」
ほむら「……別になにも」
貴方「それならちょっとカフェ寄ってかない?」
通学路の途中の交差点に見えたカフェに誘ってみる。
詳しいことは忘れたが、前にも入ったことのあるところだ。おすすめはなんだったけな。
飲み物と軽食を頼むと、ふたたび沈黙がやってくる。
ほむら「……」
暁美さんはそもそも、元々誰が相手でもあまりしゃべらなさそうだ。
失礼かもしれないが、暁美さんが誰かと打ち解けて話す姿というのがあまり想像できない。
でもまあ、やっぱり眺めているだけでも画になるというか……。
静かな音楽だけが聞こえていて、落ち着いた雰囲気とは合っているかもしれない。
ほむら「……どうかしたの?」
貴方「えっ、いや別に!」
見てるだけでも画になるとはいえ、むしろどうもしなさすぎるのはちょっと困ってたところだけど……。
そんなことを思ってると、見透かしたように言われてしまった。
ほむら「私なんかと一緒にいたってつまらないでしょう?」
ほむら「私に言い寄ってくる人だって、きっと最初はよくたって私の内面まで知れば離れて行くだけよ」
貴方「い、いやそんなことは……」
ほむら「何にも興味が持てないし、面白い話が出来るわけでもない……でもそれをどうにかすることにすら興味がないの」
暁美さんの言葉はひどく淡々としていた。
彼女は、どうしてこんなにも無気力なんだろう?
貴方「……本当に何も興味ないの?」
ほむら「ええ」
暁美さんと話すのは少し難しそうだ……けど。
1俺は暁美さんに興味があるから誘ったんだけどな
2無理にどうにかしなくてもいいよ
3何か原因があるのかもしれない
4自由安価
下1レス
貴方「俺は暁美さんに興味があるから誘ったんだけどな」
ほむら「私に?」
暁美さんは珍しく驚いた顔をする。
しかしその後、固い表情に戻ってしまう。
ほむら「……私なんかのどこに」
貴方「どこっていうか、そりゃ興味ない人と一緒に帰ったりお茶なんかしないでしょ。なんか、暁美さんは難しく考えて自信なくしてるのかもしれないけどさ」
貴方「まあ、悩んでるんだったら相談に乗るよ。ここまで言ったんだし、他の人に話しにくいこととかでも俺には話してみてよ」
ほむら「……」
こちらを見つめる眼差しには、様々な感情が見えて――――
ほむら「……そういう人だから、あなたは好かれるのでしょうね」
……一瞬だけ、やっぱり敵意を感じた気がした。
会話は少なかったが、彼女自身がなにを考えているか知ることができたのはよかった。
暁美さんのこと、最初は完璧に見えて意外と欠点もあるから親しみが持てる人だって思ったことがあった。
けど、そんなものじゃなかった。内面を見れば長所も短所もあるのはそうだが、むしろ短所も多くて――彼女はそっちばかりを気にしているみたいだ。
▼暁美さんとお茶を飲んでから帰った。
五回目【貴方】 10日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達↑
・佐倉杏子・・・親友
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
明日は休日だ……。どうやって過ごそうか?
1誘う ※キャラによっては断られることもあります
・キャラ選択(ほむら/杏子 攻略済【まどか/マミ/さやか/仁美】)※攻略済みキャラは単体での選択はNGとします
a遊びに行く
bパトロールに行く
c訓練する
d家に誘う
e相手の家に行く
2出かける
a繁華街
b自己鍛錬
3自由安価
下1レス
――――
――――
二週目 週末
駅前
遊びに行こう! と誘った時はもしかしたら断られるかもと思ったから、返事をもらえたときは嬉しかった。
こういうの、鹿目さんたちと一緒にいたことはあったけど二人では初めてかな。
貴方「暁美さんはどこ行きたいとかある?」
ほむら「いえ、任せるけど……」
貴方「じゃあ適当に店でも見て回るか」
考えてみればみんなで来た時は他の人が引っ張って行きがちだったから、二人だと個性が見えやすいんじゃないかと思った。
しかし何にも興味が持てないというのは伊達じゃなかった……。暁美さんの好きそうなものがわからない。
1ウィンドウショッピング継続
2映画見に行く?
3何か食べたい
4ゲーセン誘ってみる
5自由安価
下2レス
貴方「映画とか見にいかない? 歩き回るのも疲れるでしょ」
ほむら「そうね」
デパート内にあるポスターを見て思いついた。
これなら間とか気にせず楽しめるのだからいい提案なはずだ。
……なにか暁美さんの楽しめそうなものやってるかな。
1恋愛もの
2ホラー
3コメディ
4アクション
5魔法少女?
6自由安価
下1レス
暁美さんの楽しめそうなもの……。少しでも興味ありそうなもの……。暁美さんといえば……?
貴方「何かドリンクでも買っていこうか」
ほむら「……それはいいのだけど」
貴方「う、うん。どうかした……?」
ほむら「これがあなたの好みなの……?」
ええい、これだ! と二枚分買ってみたチケットの内容は、少女漫画特有に目が大きい丸っこい絵柄にカラフルな色彩飛び交うアニメ映画。
暁美さんといえばで思い浮かんだのが、魔法少女ってことだけだった。
…………やっぱりダメだったかなあ。
ほむら「まさかこういうのが好みだから魔法少年になったとか……」
貴方「そ、そんなわけないよ! とりあえず見てみたら意外と面白いかもしれないよ!」
ほむら「意外とって……」
ドリンクを二つ分買ってシアターの席につく。休日ということもあって、周りは小さい女の子のいる家族連ればかり。
……映画の内容は、魔法の国からやってきたピンクのリスから『ハートジュエル』なる変身アイテムを授けられた女の子たちが、
『悲しみの種』を撒き散らす悪の組織と戦って世界に平和をもたらすというものだった。 ……あれ?俺たちとも似たようなもん?
まあ、王道とはこういうものなんだよな。鹿目さんや巴さんだったらこういうのもわりと好きそうかも。
しかし、俺たちのやってることとそんなに変わらないはずなのに、どうして映画と違って現実はうまくいかないことがあるんだろうな。
……。途中で暁美さんを見てみるが、無表情であった。
キャピキャピとした声とキラキラした映像に包まれたシアターの中、仏頂面で画面を眺める暁美さんはなかなかに場違いだ。
貴方(あっ……)
瞼が閉じた……。
貴方「どうだった?」
ほむら「まあまあ」
貴方「……寝てなかった?」
ほむら「寝ながらでもわかるくらいの簡単な話だったわ」
まあ、そうだよな……子供向けだし。安心して見られたが、代わりにドキドキもほとんどなかった。
なまじ自分たちが似たようなことをやってるだけあって、華やかなだけじゃないんだぞ……とも思うかもしれない。
貴方「……ショップも家族連れで賑わってるなぁ」
ほむら「グッズ展開は当然でしょう。儲けるチャンスよ」
貴方「…………」
ほむら「何? 欲しいの?」
貴方「いや、ソウルジェム売られてるの想像した……」
映画で時間を潰してから、その辺でお昼を食べた。
……暁美さんは極めて現実的だった。まぁ、誰しもが憧れ持ってるわけじゃないよな。かくいう自分もそれほどではない。
― 二週目休日 終了 ―
[好感度] to貴方
【★★★】
美樹さやか,巴マミ,志筑仁美,鹿目まどか
【★★】
佐倉杏子,暁美ほむら▽▽
★★…フラグ二段階目 「特別」
※【貴方】との行動を優先します。
※ここまでくればあとは流れに乗るだけだ!
★★★…フラグ三段階目 「恋慕」
※実質落ちてる。
※個別ENDにいってもいかなくても攻略済み。
▽▽…嫉妬Lv2
※敵意が明確になってきた。劣等感や攻撃性が刺激されはじめて精神状態が悪化するかもしれない。
▼ほむらが【貴方】に抱く敵意は嫉妬だが、同時に惹かれ始めてもいる。このままフラグが進めば違う方向にも向くことがあるだろう。
▼同時に複数のキャラと同じくらいフラグが進行しているようだ。
――――
11日目 教室
朝、鞄を机に置いて授業の準備をする。
すると、今日もキュゥべえが飛び乗ってきた。
貴方『……今度はなんだよ?』
QB「雑談ってどうすればいいのかな? 僕も少し気づいたんだよ、昼寝をしてるよりはみんなと交流をはかったほうがいいんじゃないかってね」
……だからなんで俺のとこにくる。いくらあっちが魔法少女と関係のない志筑さんと朝から一緒にいるからって。
ていうか、気づくのが遅すぎる。
貴方『そういうのは適当に考えてくれよ。ただ、もう変なことは言うなよな』
QB「変なことと言われてもわからないんだよ」
貴方『じゃあ黙っててくれ』
QB「……」
さすがに言い過ぎただろうか。キュゥべえは言われた通り黙ってしまった。
教室内の雰囲気は穏やかだが、いつも固まっている女子グループから一人減っているのは変わらずだ。
1【親友】のクラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2その他のクラスメイトとコミュ(キャラ名指定)
3巴さんとテレパシーでコミュ
4佐倉さんに連絡 ※杏子との予定を入れられるのは朝のみです
a遊びに誘う
bパトロールに誘う
cほか(安価内容)
5キュゥべえと駄弁る
6自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
……キュゥべえのことはまあ、いいや。どうせ黙れと言われたから黙ったってだけで何も考えてなさそうだし。
一人で肘を突いて座っている暁美さんのところに挨拶しにいくと、こちらに気づく。
貴方「暁美さん、おはよう」
ほむら「……おはよう」
貴方「今日はよく晴れてて気持ちがいいね。こんな日なら外でやる体育もいつもより楽しめそう」
貴方「……手加減しなくちゃいけないのは退屈だけど。暁美さんもそう思わない?」
ほむら「そうね」
出来るだけ共感してもらえそうな話題を考えつつ雑談をしてみる。
返ってくる返事や態度は素っ気ないが、話せているだけでもいいはずだ。暁美さんだって一人でいるのが好きなわけじゃないんだから。
そんな調子で、時間になるまでいろんなことを話してみた――。
ほむら「あなたって、そんなに喋る人だったのね」
貴方「あ、ごめんね、俺ばっかり話しちゃったかな。暁美さんからも話してよ」
ほむら「……別に。私はそういうのは得意じゃない」
貴方「話に得意や不得意なんて考えなくていいよ。話したいことを話せばそれでいいんじゃないかな」
ほむら「……」
すると、暁美さんはちょっと考えるように間をあける。
ほむら「……思いついたら」
やっぱり素っ気なかったけど、そう言ってくれた。
そろそろ自分の席に戻る時間だ。暁美さんが今度何を話してくれるか、楽しみだな。
――――
午前の授業が終わると、鹿目さんたちと四人で校舎の外に行く。
昼食を含めた昼休憩の時間だ。
いつもの昼食を食べている場所に向かっている途中、さやかがちょっと不満そうに口を開いた。
さやか「……ほむらとは何話してんの?」
貴方「え、何って?」
さやか「今日の朝とかもだけど、最近何か話してるじゃん。何か聞けたの?」
貴方「いや……そういう探るような話をしてたわけじゃ」
さやか「前に言われたってことまだ気にしてんの? 気にしなくていいって」
さやかが本気で暁美さんのことを良く思ってないらしい。
相談したから鹿目さんは気に掛けるだろうと思ってたけど、あれから五人で話しているところを見かけないのはさやかが止めているのかもしれない。
……ギスギスした雰囲気は嫌だな。
杏子「よっ! ちょーど会えたならいいや、もしかしてメシの時間?」
予想してなかったところで思わぬ声が聞こえて、いったんがらりと空気が変わる。
まだ学校にいる時間に佐倉さんに会えるとは思ってなかった。ここにいるってことは、会いに来てくれたってことだろうか。
貴方「うん。昼は外で食べてるから」
まどか「杏子ちゃんはなんでここに?」
杏子「偶然このあたりに寄ったんだ」
ただ、このやりとりにまず疑問を抱いてるのは志筑さんだ。
仁美「えっと……どなたですの?」
貴方「学校外でできた友達だよ」
詳しく説明するのは大変だからそれだけ言っておいた。まだ気にしていることはありそうな様子だが。
佐倉さん、何か話したいことがあったんじゃないかな? ――と思ったが、軽く挨拶だけした後テレパシーを残してった。
『ガッコー終わったらパトロール行かないか? 久しぶりに戦いも見てやるよ。早く終わったらまた遊ぼうぜ』
……とのことだ。
放課後の予定か。どうしようかな?
1OK
2断る
3自由安価
下1レス
貴方『うん、いいよ。じゃあまた駅前で待ち合わせようか』
おーけー、と短い返事がテレパシーで聞こえた。
考えてみれば向こうからお誘いって初めてだ。いつもこっちからキュゥべえを介してだったし。
……数少ないキュゥべえの仕事がなくなったな。まあ、誘う時は助かってるけど。
まどか「珍しいね、杏子ちゃんと昼に会うなんて」
さやか「ああ、こっちで食べるようになってからは初めてだっけ?」
仁美「……?」
志筑さんもいるから、佐倉さんのことについてはそれきりで他の話題に変わっていった。
あれ、でもそもそもここで四人で食べるようになったのっていつから――?
――――
――――
放課後
午後の授業も終えて放課後になると、今日は鞄の中身をさっと整えてすぐに教室を出ようとする。
まだ四人は固まって話しているみたいだ。でも今日は約束があるから早めにいったほうがいいだろう。
……教室を出ると、すぐ前の廊下に暁美さんが誰かを待ってるみたいに立っていた。
貴方「誰か待ってるの? 鹿目さんとか?」
ほむら「……なぜ?」
俺の事待っててくれてた?――とか図々しいことは聞けなかったけど。ただ、その名前を出したことは失敗だった気がした。
ほむら「あなたは、この後は予定は?」
貴方「あ、なにか付き合ってほしいことがあった?」
ほむら「別に。帰るのなら一緒かと思っただけ」
予定はある。……けど、結局駅のほう行くから帰る方向も一緒なんだよな。
1途中まで一緒に行く…?
2いっそ暁美さんもパトロール誘おうか…?
3予定があるから、と別れる
4自由安価
下1レス
貴方「駅の方には行くから、途中まで一緒に行こうか」
ほむら「ええ」
暁美さんと並んで歩き出す。
二人での帰り道はやっぱり言葉少なだったけど、暁美さんは用事のことについて聞いてきた。
ほむら「駅の方に用があるの?」
貴方「うん、まあ。待ち合わせをね」
ほむら「……そう」
思えばパトロール自体けっこう久しぶりだけど、他の人はどうしてたかな。
佐倉さんは毎日遊んでるようでも一日のうちのどこかでパトロールしてることは多そうだし、俺も頑張らないと。
――そんなことを考えつつ足を進めていると、そろそろ駅が見えてきた。
杏子「来たか。――……って、誰と一緒かと思ったらほむらじゃねーか」
ほむら「待ち合わせの相手って、佐倉さんなの?」
貴方「ああ、これからパトロールなんだ」
ほむら「二人でパトロール?」
貴方「んー……、やりたいことはそれだけじゃないけど」
杏子「まあ、パトロールに集中してからだな!」
ほむら「……そう、気を付けて」
パトロールだけなら誘ってもよかったけど、終わったら遊ぼうとも言ってるし、そっちは暁美さんを付き合わせるには趣味が合わなさそうだ。
暁美さんと別れると、佐倉さんと今日の探索ルートについて話し会うことにした。
杏子「なんだ、あいつは帰るのか。まあ元々二人のつもりだったしな」
貴方「今日はどう回る? 最終的にはまたここに戻ってくるでしょ?」
杏子「ああ。まず工場のほうを回って――――」
久しぶりの佐倉さんとのパトロール。前に行った時よりも戦いでも息が合うようになったのを感じた。
二人で協力して結界の中の魔女を倒し、うまくいけばその喜びを分かち合う。
やっぱり、契約者同士の絆っていうのは大事だよな。
貴方「何事もなく倒せてよかったね、佐倉さん」
杏子「魔女倒したくらいで喜びすぎだ。何かあったら困るだろ」
貴方「まあそうだけど、佐倉さんと一緒だからさ。俺たちも、いいコンビになれたって気がして」
杏子「よし、じゃあ今度はそれをゲーセンでも見せつけてやろうぜ!」
杏子「あそこも遊びつくした気だったけど、今まで対戦やら協力やらは手を付けてなかったしなー。ま、アンタがいるおかげで楽しめることは増えたよ」
空はまだ明るい。立ち入り禁止の時間まではまだある。
ゲームの腕前だって上がっているはずだ。そこでも佐倉さんと対等に立つ……のはまだ先になりそうだけど。
戦いでも遊びでも、彼女に認められているのが嬉しく思えた。
五回目【貴方】 11日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達
・佐倉杏子・・・親友↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
12日目 教室
朝、鞄を机に置いて授業の準備をする。
そして当然のように俺の机にいる白い毛玉。
QB「なるほど。昨日見ていて少しだけわかったよ」
貴方『……何が?』
QB「雑談の仕方さ。行動で示してくれたってことだろう?」
貴方『あー、そうかもな』
そういえば昨日の朝、そんな話してたっけ。適当に相槌を打っておく。
QB「それでね、さっそく実践しようと思うんだ」
貴方『勝手にしたらいいじゃないか。なんで俺に報告するんだよ』
QB「だから今、勝手にしているんじゃないか」
貴方『はぁ?』
キュゥべえの言葉の意味がわからず、思わず聞き返してしまう。
……3秒くらい考えてから何が言いたいかわかった。つまり、キュゥべえは俺と雑談しようとしていると。
貴方『それより鞄からどいてくれっ、しまえない!』
QB「うわぁ」
いつまでも机に鞄を出してるのも傍から見れば変だ。
必要なものも出し終わって有無を言わさず鞄を持ち上げると、キュゥべえがすてんと転がった。
スクールバッグはベッドじゃない。
それから聞きなれた声のテレパシーが頭に響き、意識はそっちに移る。
『よう、朝から元気にやってる?』
貴方『朝にこっちに来るなんて珍しいね。おはよう、佐倉さん』
杏子『なんとなくこっちがどんなもんか気になって見に来ただけだよ。どうせヒマだし。ま、あんま気にしないでくれ』
1【親友】のクラスメイトとコミュ(呼び出しなどの指定がなければ複数人)
2その他のクラスメイトとコミュ(キャラ名指定)
3巴さんとテレパシーでコミュ
4佐倉さんと話す ※杏子との予定を入れられるのは朝のみです
a雑談
b遊びに誘う
cパトロールに誘う
d(安価内容)
5キュゥべえに構ってやる
6自由安価(上記以外でも校内の知り合いとは話せるよ)
下1レス
貴方『で、何を話すの? 雑談するんだろ?』
仕方ない。キュゥべえのこともたまには構ってやるか。
QB「今日って、いい天気だね」
貴方『……曇ってるけど?』
QB「曇ってるのは、いい天気じゃないのかい? 雨に足を取られることもないし、日差しに目や肌を傷めることもないじゃないか」
貴方『たしかに夏の日差しなんかは凶悪だけどな。普通はいい天気ってのは晴れのことを言うんだよ』
QB「じゃあ、今日みたいなのは何て言えばいいんだい?」
貴方『別に何も言わなくていいよ。なんか言うなら……いい日になるといいねとでも言っとけば?』
QB「いい日になるといい、か。確かに言われて悪い気はしない。覚えておくよ」
キュゥべえは目の前からどこかへ駆けて行った。予想のとおり、暁美さんのほうだった。
さっそく他の人にも話しに行ったのか。少し取り残された気分になる。
それから少しして、佐倉さんからテレパシーが来た。
杏子『なんかキュゥべえがおかしなこと言いはじめたんだけど? 【貴方】から聞いたって。あんま変なこと教えんなよ』
貴方『まあ、いいじゃないか。言われて悪い気はしないだろ?』
杏子『そーだけどさ……あいつに言われると薄気味わりぃ』
……人間の常識とズレてるとこあるし空気は読めないけど、こうして話してるとなんか憎めないよなあ。
普段無駄に難しい言い回しもするくせに、何も知らない子供を相手してるみたいな気になる。
しばらくすると、佐倉さんはどこか違う場所に行ったようだ。飯を食いに行くと言っていた。
佐倉さんはキュゥべえのことを良く思っていない。理由は当然、彼女に降りかかった悲劇のきっかけになったからだ。
キュゥべえの仕事は心身のサポートらしいが、だからこそ、契約がきっかけで起きた悲劇に対してどう思ってるのか―それが気になった。
――――
――――
*待ちに待った放課後です。
1繁華街に行ってみる(遭遇ランダム)
2自己鍛錬に行ってみる
3下校前に校内でコミュ(ほむら/他)
4他の場所に寄り道
※人物指定はできません。また、知らない個人宅等も無理です。知り合いを誘うことはできます。
下1レス
帰りのHRが終わると、まだ一人で自分の机にいた暁美さんのところに話に行った。
……彼女の姿を探そうとしてすぐに目が合った。彼女もこっちを見ていたのだろうか。
貴方「暁美さん今日も活躍してたね。英語の時間。あと数学もか」
ほむら「別に大したことはしてない……」
貴方「謙遜もしすぎるとかえって良くないよ。いいところは素直に受け入れてよ」
ほむら「でも……私にとってはそんなこと価値ないもの。それより私はあなたのようにそうやって色んな人と話せるほうが羨ましいわ」
貴方「えっ、俺……?」
ほむら「……私にああ言ったのだから、褒め言葉は素直に受け入れなさい」
貴方「あ、うん。ありがとう」
暁美さんから見ると、俺ってそんなふうに見えてるのか。
交友関係は広い方だと思ってたけど、とくにそこに褒められるような長所があるとは思ってなかった。
貴方「自分の長所ってあんまり気づかないし、人の長所って羨ましく思えるものなのかもな。暁美さんだってみんなから羨ましがられてるのに」
ほむら「それでも……。私と話してくれるのなんて【貴方】くんくらいだもの」
貴方「えっ……そんなことはないんじゃない? 暁美さんと話したがってる人っていっぱいいると思うけど」
ほむら「だとしても、表面的なことだけよ」
貴方「暁美さんのほうからたくさん話していけばきっと変わるよ」
ほむら「いいえ。……もういいわ。【貴方】くんだけでいい」
……そう名指しで言われると、どきりとした。
あなただけなんて、男としては羨ましい響きにも聞こえるかもしれない。でも、これはどちらかというと嫌なほうの意味だ。
何もかも諦めているかのような、閉鎖的な響きに思えたから。
でも、誰にも心を開かないよりはずっとマシだよな。
もし俺が拒絶したら、暁美さんは今後誰にも心を開かないんだろう。
ほむら「……私と一緒に居たら暗い話ばかりなのに、よく嫌にならないわね」
貴方「それでも暁美さんのことは知りたいし、もっと仲良くなりたいからさ」
1暁美さんと一緒に帰る
2パトロールに誘う
3もっとここで話す
4他の人と話す
5自由安価
下1レス
話しているうちに教室からは段々と人が減っていく。
とくにここに残り続ける理由もない。
貴方「俺たちもそろそろ帰ろうか」
ほむら「ええ」
二人で教室を出て廊下を歩き出す。
……少しの間沈黙が続いていたが、暁美さんがぽつりとつぶやくように言う。
ほむら「……私のことなんて知ってどうするのよ」
貴方「互いに知ったほうが話しやすくなるでしょ? 今も前よりは暁美さんのことはわかったし、嬉しいと思ってるよ」
ほむら「なにもない、つまらない人間だということがわかるだけだわ。それ以上になにもない」
貴方「別に、特別なものを持ってる必要はないんだよ。そんな人そういないし、俺だって」
ほむら「……何もない私でもいいのなら。これからも話してくれる?」
貴方「もちろん!」
ひたすら自己評価が低くて、自分に何も価値を見いだせてないのはもうわかってた。
ちゃんと話す前は想像すらできなかったことだ。
できれば自信を持って、他の人とも仲良くしてほしいが、まずは何かに楽しみや喜びを持ってほしい――と思った。
……教室を出る時、『不満』のようなものが込もった視線が向けられていたことには気付いていなかった。
五回目【貴方】 12日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達…↑
・佐倉杏子・・・親友
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
13日目 教室
朝、鞄を机に置いて授業の準備をする。
……机の上から赤くてまん丸い瞳が見つめていた。
QB「もっと雑談をしようと思うんだ。人間の文化を教えてくれないかな?」
あー、なんでこうなったんだろう……。
貴方『はぁ、何が知りたいの?』
QB「お腹がいっぱいになった時に言う言葉とか、感謝の気持ちを伝える時に言う言葉とか」
貴方『知らないわけじゃないんだろ? ていうか、そのままでいいじゃん』
QB「そうだけど、僕の考えと君たちの常識にはズレがあるみたいだからね」
やっと自覚したのかそれ。
なんか、言葉を教えるゲームみたいになってきた。
キュゥ・トモ
1お腹がいっぱいになった時に言う言葉を教える→『自由安価』
2感謝の気持ちを伝える時に言う言葉を教える→『自由安価』
3他の話題(自由安価)
下1レス
貴方『感謝の気持ちを伝える時に言う言葉はなぁ……サンキューベリーマッチだ! サンキューベリーマッチって言うんだ』
QB「教えてくれてサンキューベリーマッチ!!!!こうだね」
貴方『あと鞄をベッドにするなぁー!』
QB「きゅぷッ」
今日もキュゥべえが転がり落ちた。
そんなやりとりをしてると、いつのまにかいつもの三人が近くに来ていた。
さやか「【貴方】! 何してんのー?」
貴方「べ、別になにもしてないよ」
テレパシーから意識を切り替えて話す。
さやかやまどかなら、会話の流れまではわからなくても何かしてたのは見えてただろう。
……昼は毎日一緒に食べてるけど、最近は四人で話すことは前より減ったな。
まどか「そう? ちょっと楽しそうに見えたから」
仁美「なにかいいことでもあったんですか?」
貴方「そういうわけじゃないけどさ――」
仁美「実は私たちは朝、少し面白いハプニングがありまして。登校中、みんな揃ってすぐのことなのですが。――――」
さやか「あれおかしかったねぇー。あんときまどかったら――」
キュゥべえはいつのまにか目の前からいなくなってた。
どこにいったんだろう?
そう思ってさりげなく見回すように視線を動かすと、暁美さんと目が合った。こっちを見ている。……気がする。
まどか「あの……【貴方】くん、聞いてる?」
貴方「えっ、あぁうん」
1三人との話に集中しなおす
2暁美さんも会話に誘おうか?
3暁美さんと話しに行く
4自由安価
下1レス
他のことに意識は向いたが半分は耳を傾けていたはずだった。でも気が逸れてたように思われちゃったかな。
みんなが立ってるのに一人だけ座ってるのも落ち着かない。
席を立ちあがると、少し暁美さんの席のほうに近づいて聞こえるように呼んだ。
貴方「今の話面白かったからさ、暁美さんも一緒に聞こうよ」
さやか「ちょっと……」
ほむら「…………」
仁美「話はあれでおしまい、なのですが、暁美さんを笑わせるとなるとハードルが上がりますわね……」
まどか「えぇと……。あ――」
居心地の悪さを感じたのか、暁美さんは席を立ってその場を去ってしまった。
たしかにこっちを見ていたはずなのに。
さやか「さすがに感じ悪いでしょ?あれ!」
仁美「まあ……気難しい方、ですわよね」
さやか「一人でいたいなら一人でいさせてあげればいいじゃない」
貴方「でも……俺には少しずつ心開いてくれるようになったし、いつかみんなとも……」
……そう言う俺を見るみんなの目は厳しかった。
会話に誘ってみて仲良くなるきっかけになればと思ったけど、やっぱり空気がギスギスとしている。
さやかだって人に差別や意地悪をするような子じゃない。ただ、ハッキリさせたいのだと思う。
だが暁美さんには今はその気はないようだ。それは当分は変わらないのだろう。
――――
――――
朝のHRが始まり、授業が始まってからも――――
――あれからもまた視線を感じることがあった。暁美さんからも、ほかの三人からもだ。
両方から見られているからといって、両方を突き合わせればいいわけじゃないのは朝分かった。
でも、どうすればいいんだろう。前と違う空気の悪さが動きにくくて重苦しい。
昼。いつもなら外へいくところだけど、今日はどうしよう?
1いつも通り四人で外へ
2暁美さんと二人で空き教室へ
3巴さんにテレパシー
4久しぶりに屋上に行ってみようか?
5自由安価
下1レス
貴方(いや……みんなと行くか)
一瞬違う考えが浮かんだが、ソレと暁美さんの視線を振り切っていつも通り四人で外に出た。
みんなとは仲が良いし居心地が良い場所だとは思う。でも、前とは何かが変わっちゃったような。
いつか……暁美さんも入れて仲良くなれるのかな。
そう考えながら、学校での一日を過ごした。
――――
――――
放課後
ほむら「【貴方】くん、帰りましょう」
放課後になると、すぐに暁美さんがこっちの席まで来た。
まるでこの時を待っていたようだ。……別に他の時間にも話しかけてきてもいいんだけどな。
貴方「あぁ、うん」
ほむら「今日は真っ直ぐ帰る? それともパトロールでも行く?」
貴方「そうだな……」
1まっすぐ帰る
2パトロールに行く
3寄り道
aカフェ
b買い物
cその他(安価内容)
4帰る前に他の人と話す
5自由安価
下1レス
貴方「帰りに買い物でも行こうか。ちょっと見たいものがあるんだ」
ほむら「ええ。……【貴方】くんって、そういうの好きなの?」
貴方「ショッピングは大好きってわけじゃないけど好きなほうかな」
暁美さんは……そういうタイプじゃないか。
前に連れ回した時も、自分の欲しいものを探すとなるとずっと興味なさそうだった。
校舎の外に出ると、すぐのところに見慣れたパーカー姿の――佐倉さんが立っていた。
杏子「あー……、もしかして一緒に帰るとこか?」
貴方「うん。今日はこれから買い物でもして帰ろうかと」
杏子「遊びに誘おうかと思ったんだけど、予定があるなら今度でいいや。またな」
佐倉さんはそう言うとどこかへ行ってしまった。俺たちも帰り道を歩いていく。
ここ数日程からだけど、佐倉さんがこうしてこっちに寄ることも増えた。待ってたんだろう。
ほむら「佐倉さんとも随分仲がいいのね。前はそんな感じしなかったと思ったけれど」
貴方「そうだね、打ち解けたのは最近かな。でも話してみたら気が合って」
貴方「佐倉さんって思い切りのいい性格してるし。一緒に居ると楽しいっていうか」
ほむら「……そうね。私とは違って」
貴方「そ、そんなつもりで言ったんじゃないよ!?」
ほむら「ええ、わかってる。事実を言っただけだから」
……そう言われてしまうと否定はできなかった。
もちろん悪い意味じゃないけど、考えてみれば佐倉さんと暁美さんって……真逆、なタイプだとは思う。
買い物 どこのコーナーを見る?
1お菓子や食べ物
2服飾
3機械や家電
4自由安価
下1レス
駅の近くのデパートにつくと、適当に服を見ていた。
横には暁美さんが立っているが、いつも通りの無表情だ。
男物見てても興味を持てないのは仕方ないとも思えるが、さやかたちと一緒にいた頃もいつもこんな表情だった。
貴方「……暁美さん、こっちとこっち、どっちがいいと思う?」
ほむら「…………そっち」
貴方「こっちか。たしかにいいね。ありがとう」
……なんとなくこのやりとりって、男女が逆転してると思う。
貴方「暁美さんって明るい色が好きなんだね。こっちって言うかと思ってた」
ほむら「そうかしら。あなただったらそっちのほうが似合うと思っただけよ。自分用に選ぶなら別だわ」
貴方「暁美さんなら色んなの似合うと思うけどな。元がいいんだから」
ほむら「……」
貴方「暁美さんってもしかして……そういうふうに言われるのあんまり好きじゃなかったりする?」
言われ慣れてるんだろうな、とは想像がつく。
外見ばっかり見てるって思われちゃったりするんだろうか。
ほむら「……自分のことを言われている実感が沸かないのよ。そんなの自分で決められることじゃないもの」
ほむら「いつのまにか知らない器に間違えて入れられちゃったみたい」
貴方「俺みたいな凡人にはなかなか思いつけない表現だね……。外見って自分で決められないから価値があるんだろうけどね」
大多数の人からすれば嫉妬すらされそうな言い方だと思う。
でも、暁美さんの自信を持てないところは知ってる。暁美さんは本気でそんなふうに考えてるんだろう。
暁美さんに買い物に付き合ってもらってから帰った。
五回目【貴方】 13日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達…
・佐倉杏子・・・親友
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
14日目 教室
さやか「【貴方】、おはよう!」
仁美「おはようございます、【貴方】くん」
まどか「おはよう、【貴方】くん」
自分の席につくと、朝からさやかたち三人が机に来て囲んだ。
貴方「ああ。おはよう」
同時に、今朝も暁美さんがこっちを見ていることに気づく。
……キュゥべえからの視線も感じた。そっちはどうでもいい。
貴方「なんか俺だけ座ってて悪いな」
さやか「なんの。あたしは足腰強いから大丈夫よ」
仁美「私たちの席の近くで話していた時は【貴方】くんが立っていましたし」
まどか「この椅子動かせないからちょっと不便なんだよね。でもわたしも大丈夫」
そのうちキュゥべえは暁美さんと話しに行ったようだ。
キュゥべえは俺にばっかり話しかけたけど、暁美さんと話してるとこもたまに見かける。
それでもふと暁美さんがこっちを見ていることがあって、たまに目が合うと、さやかがキッとした視線を送り返してた。
他の二人は複雑そうな視線だ。でも、あまり良い感情ではないのだろうと思う。――二人まで?
距離は離れているのに冷たい空気が漂っているのを感じた。……いや、むしろこれは、熱いバチバチにも近いかもしれない。
――――
――――
放課後
ほむら「【貴方】くん、帰りましょう」
帰りのHRが終わると、今日も暁美さんが席に来る。
朝や昼休みは三人と、放課後は暁美さんと過ごすことが昨日から固まってきていた。
もちろん断る理由はないのだけど。
ほむら「今日は予定は?」
貴方「特に考えてはいなかったかな……」
ほむら「そう。じゃあ、真っ直ぐ帰る?」
放課後行動
1まっすぐ帰る
2パトロールに行く
3寄り道
aカフェ
b買い物
cその他(安価内容)
4帰る前に他の人と話す
5自由安価
下1レス
貴方「今日はまっすぐ帰るか」
暁美さんが頷いて、二人で廊下へと歩き出す。
……教室の中からまだ残ってるさやかたちの視線を感じたが、振り切って行くしかない。
校舎の外に出ると、今日も佐倉さんが立ってた。
杏子「今日はどうだ?」
これからはもう帰るだけだから、予定はない。
でも今は暁美さんと一緒なんだよな。
貴方「少し待っててくれるなら。えーっと……後であの訓練場所で会おうよ」
杏子「訓練場所? いーよ、わかった。じゃあ遊ぶ前にちょっと鍛えてやるよ」
ほむら「……」
駅のほうで待ち合わせるとなると、佐倉さんも結局帰り道を一緒に来ることになるし。
予定はしてなかったけど、久しぶりに訓練で鍛えるのも悪くはない。訓練場所も佐倉さんと思い出のある場所だった。
貴方「暁美さん、行こうか。また後でね、佐倉さん」
ほむら「……ええ」
――――
――――
暁美さんと駅前で分かれた後、家に帰って着替えてから訓練場所に行った。
街の端っこに近いここは、都会らしく混み合った駅前とはかけ離れた雰囲気の場所だ。
貴方「佐倉さん、おまたせ」
杏子「さっぱりした格好になったじゃん?」
貴方「まあ、制服よりかなり動きやすいよ」
杏子「そりゃよかった。じゃあウォーミングアップでもするか」
佐倉さんは一足先にはじめてたらしい。
一人でもたまに訓練してることがあるのを知っている。ここで会った時は意外だった。
――――彼女の槍は近距離だけじゃなく中距離まで届く。
戦闘スタイルはもちろん違うが、動きや戦い方自体は応用できることも多かった。佐倉さんの動きは参考になる。
訓練が一息つくと、草原に寝っ転がる。
日差しは温かいし、透き通った風が適度に吹いていて心地よい。
杏子「なんだよ、もう疲れちゃったか? 今日はこれからだろ?」
貴方「もうちょっとここにいてもいいなあって」
杏子「……それ、スマホ?」
寝っ転がったままスマホをいじっていると、佐倉さんが覗きこんできた。
……やましいものは見てなかったからよかった。ただのポータルサイトのトップページだ。
貴方「うん。佐倉さんは携帯持ってないんだよね」
杏子「ちょっと見せてよ」
スマホを渡すと、佐倉さんは同じように隣に寝っ転がって、見慣れないものを見るような目でスマホを見ていた。
その様子がなんかおかしい。みんな当たり前のようにスマホやら携帯やらいじってるから、こんな反応はなかなか見られない。
杏子「『パンダの赤ちゃんがやってきた』……へー」
貴方「あ、トップに表示されてたニュースか」
杏子「…………」
それからしばらく静かに画面を見つめていた。
何見てるんだろう? 覗いてみると、その内容が意外で思わず口に出してしまった。
貴方「『男子が甘やかしたくなる女子の特徴』……? そういうの見るんだね」
杏子「ぱ、パンダの下にあったからちょっと押してみただけだって! ていうか覗くなよ!……あっ」
さっきは佐倉さんは何にも気にしない様子でこっち覗いてきたけどなぁ……。
その気持ちがわかったらしく、佐倉さんは何かに思い当たったような声を出す。
しかし、今度は慌てた声に変わった。
杏子「あっ!? 何が起きた?」
貴方「ホームボタン押しただけだよ。すぐ戻せるよ」
杏子「なんか変なとこいじって壊したかと思った。もういい」
貴方「そんなに簡単に壊れないよ。俺たちの腕力で握りつぶしたりしなきゃね」
……やろうと思えばこのくらいならやれるだろう。まあ、言いたいのは物理的に壊さない限りそうそう壊れないってことだ。
でもなんで急にこんなこと言い出したんだろう。ずっと興味なさそうにしてたのに。
貴方「……スマホほしくなった?」
杏子「連絡取りづらいとは思ってきたな。なんか言いたいことある度に出向かなきゃなんないし」
貴方「でも直接会いに来てくれるのは嬉しいよ。文字や電話だとちょっと感覚違うし……便利だけどね」
杏子「ガッコーじゃ今どんなことしてんの?」
貴方「朝から誰かと話して、HRで先生の話聞いて、授業受けて……毎日同じことしてるって思うかもしれないけどまあ楽しいよ」
貴方「授業も面白いのあるし、友達とも毎日会えるし」
授業や勉強のほうはともかく、暁美さんのことがあってからは最近教室内の空気が重くなってきた。
……さすがにそれは佐倉さんには言えなかった。
杏子「ふうん」
佐倉さんはそう軽く短い相槌を打つと、芝生から起き上がる。
杏子「そろそろ行かない? 今は日が出てるけど、もう夏じゃないんだしいつまでもこんなとこで寝てるとカゼ引くぞ」
貴方「そうだね。行こうか」
杏子「ん。つーか腹減った」
貴方「俺も。何か食べようか」
杏子「駅前のクレープ! クリーム200%だ!」
ここは今は二人だけの空間。ここから出るのも少し名残惜しく感じるが、こっちの空腹も限界だ。
たまにはこんなふうにゆっくりと話せてよかった。
街の端っこから中心、繁華街のほうに戻っていくと、さっそくクレープを買って食べていた。
こっちも佐倉さんと同じ200%。ていうかそんなオプション頼めるなんてさっき知った。
手に持った感じも単純に二倍の存在感。
貴方「さすがに普通の二倍入ってるだけあってボリュームが違うね」
杏子「腹減ってんだからこのくらいはないと」
貴方「それもそうだ」
甘いものが特別好きってわけじゃないけど、動いた後だけあってペロリと食えてしまう。
二人してあっという間に食べ終わってしまった。それに、佐倉さんの豪快な食べっぷりは見ていて気持ちいい。
貴方「でもがっつきすぎだよ。佐倉さん、クリームついてるよ」
杏子「どこ?」
貴方「右の頬。手鏡とか……――持ってたら見てるか」
杏子「持ってないなー。あたし見ての通りガサツだから割りそうだし、なくても生きていけるから」
佐倉さんはいつも鞄とかも持ってないし、今言った通り、生きていくのに最低限のものしか持ち歩いていないんだろう。
とはいえ、自分も鏡は持ってない。
貴方「仕方ない、ちょっといい?」
杏子「えっ!?」
少し近づいて頬に指で触れる。クリームを拭い取って見せた。
貴方「よし、取れた」
杏子「わざわざ見せるなよ。……クリーム少しもったいないな」
貴方「え……えーと。これ舐めたほうがいい?」
杏子「それやったら引くぞ」
もちろん半分冗談だったけど、佐倉さん食べ物を粗末にするとすごく怒りそうだから。
でも、もったいないとは本気で思ってたようだった。そんなところは、らしいなと思う。
貴方「手鏡とかも持ってたほうが便利かもね」
貴方「なくても生きてはいけるけど、佐倉さん食べかすとか気づかずにつけて歩いてることありそうだし」
杏子「お、おい。やめろよな……さっきのは偶然、ともいえねーけど」
茶化して言ってみた後、ちょっと思い出した。
貴方「そういえばさっき通りがかった時見た店でも売ってたな。結構キレイなの」
杏子「ホントに見んの?」
貴方「まあ、さっきのは冗談にしても無駄にはなんないと思うよ」
少しだけ来た道を戻って店を覗きにいく。
値段も高すぎないくらい。
杏子「……手鏡っていうか、コンパクトミラーってやつか」
貴方「これならカバーもついてるから割れにくいし、ポケットに入れて持ち歩けるんじゃない?」
杏子「いやでもさ、こんなキラキラしたのあたしのガラでもないだろ」
貴方「そうかな?」
なにしろ、ソウルジェムは通常の状態だと指輪だ。佐倉さんも含め魔法少女全員、キラキラとしたものが似合わないと思ったことはなかった。
見た目だって、明るい髪色も相まって飾り立ててなくても華やかなイメージも強い。
貴方「そんなふうに思ったことないよ。こういうのだって似合うと思うよ」
貴方「ここまで勧めちゃったんだし、これはプレゼントにするから。本当にいらないっていうんだったら無理にとは言わないけど」
杏子「まあ……くれるんならいいか。無駄にはなんないだろうしな」
一応受け取ってくれるらしい。
……普段ラフなイメージはあるけど、飾ったらもっと綺麗になるんじゃないかな。なんて佐倉さんのほうを見ながら少し考える。
杏子「? どうした?」
貴方「た、大したことじゃないよ! 今日はまたゲーセン行く? 俺は制限の時間までだけど……」
杏子「ああ。そうだな」
買い物をした後、ゲーセンに向かう途中で佐倉さんが話し始める。 少し真面目な雰囲気で。
杏子「……こういう生活って、いつまで続けられるんだろうな」
貴方「え?」
杏子「あたしもさ、アンタやみんなを見てるとずっとこのままでいいのかなって、すっげーたまにだけど思うんだよね」
杏子「やりたいようにやってて楽しいには楽しいけど、それだけだし」
杏子「マミはもう三年生だし、優等生だから進路のこととかもちゃんと考えてるんだ」
杏子「みんなも高校生になって、いつか大人になっちまうんだろ? ……あたしにはそのイメージが全然なくてさ」
学校のことはともかく、今まで興味なかったスマホに興味を持ったりしたのは、普段考えないようなことを考えてたからなのかもしれない。
世間とは離れて刹那的に生きていた佐倉さんが、ついに“未来”のことを考えてくれたんだ。
でもそれはきっと、佐倉さんからしたら簡単なことではない。
杏子「てか、前も言ったけどそんなに生きる気なかったから。でも今は本当に楽しいんだよ」
杏子「こうやって一緒に遊び歩く仲間もいるし、背中を任せられる仲間もいる」
杏子「こんな日がずっと続けばいいなって思うんだよ。……でも、そういうわけにはいかないんだもんな」
貴方「……たしかに俺らはピーターパンじゃないしな。俺も佐倉さんも、自分の意思とは関係なく年が経てば大人になるんだろうな」
貴方「でもみんな今から将来のイメージなんてないと思うよ」
杏子「いろいろと桁が違うだろ?」
貴方「それでも。多分、生きてさえいれば、ものすごい人にはなれなくてもなるようにはなるんじゃないかな」
貴方「ずっと子供ではいられなくたって一緒には居られる……居たいと思う。だから、一緒に考えていこうよ。これからの未来ってやつを」
これから数年後、進路のこともそうだけど魔法の力や魔女の事情がどうなっているのかもわからない。
とりあえず今の最大の目標は魔女を根絶させることだ。佐倉さんも、俺も、みんな。できれば民間の人も。誰一人犠牲を出さずに。
――案外、佐倉さんだったらものすごい人にもなれるかもしれないじゃないか。
なにせ、自慢の親友なんだから。
貴方「今から悲観したって仕方ないよ。思ってるよりも希望でいっぱいだって。未来はいくらでも創っていけるんだからさ!」
杏子「相変わらずうぜーくらい前向きなやつ」
貴方「えぇ、ひどくない!? 渾身の励ましだったのに」
杏子「……でも、ありがと」
ちょっと素直じゃない笑顔が印象的だった。
――――
――――
ゲーセンを出たのはあれからきっかりと1時間後。年齢制限のかかる時間の前だった。
悪いことをしたがるのはストレス発散のためなんじゃないかって巴さんが言ってたっけ。
少し将来への不安が解消されたおかげかもしれない。
ゲーセンも楽しいが、ほどほどが一番だ。
杏子「まあ一人で残ってまでやるほど楽しくもないしな」
貴方「佐倉さんはこのあとどうするの?」
杏子「そのへんのホテル行くかな。マミんとこでもいいけど」
彼女の生活を考えたら一切悪事を働かないことは難しい。それはわかってはいた。
……いや、そのへんも将来には変わることもあるのかな。
貴方(……)
杏子「じゃ、またな! ……鏡、大事にするよ」
貴方「うん。またね」
そう言ってくれるならよかった。
佐倉さんと別れると、帰りの方向へ歩きはじめる。今日はまだギリギリ暗くない。
すると、後ろから呼び止められた。
「……【貴方】くん」
この声は、暁美さんだ。
お互いに近所なんだから会っても不思議ではない。
貴方「あれ? 暁美さん。また会うなんて奇遇だね。買い物?」
ほむら「……訓練なら私も役に立てるわ」
貴方「……訓練?」
ほむら「射撃はもちろん、格闘だってあなたに教えられるくらいには出来る。【貴方】くんの戦い方には向いていると思うわ」
もう帰ろうかと思ってたところだったが、だが暁美さんはやる気っぽい。
このままだと連行されそうだ。……今からやると帰るのはやっぱり暗くなるなあ。
貴方「でもどうして今になって? 放課後別れる前に言ってくれればよかったのに」
ほむら「……」
暁美さんはたしかに色々な戦い方ができるし、学べることは多いだろう。バランス型の俺とは合ってるかもしれないけど……。
――『佐倉さんと比べて』とでも言いたげな?
多分暁美さんが本当にやりたいことは『訓練』じゃない。
特訓第二ラウンド!?
1特訓に付き合う
2遅くなるからやめよう
3自由安価
下1レス
繁華街から再び訓練場所に戻ってきた。
一回ここから離れて駅の方に来たのに一日のうちに二度もここに来るとは思わなかった。
さすがにここは暁美さんにとっては文句なしに自信のある分野だ。
いきなり誘われて戸惑ったが、特訓となるといつも通りだった。
まずは主に近接のほうを見てもらっていた。バランス型であるものの魔力の消費の少ない近接が基本になるとはいえ、意外だ。
ほむら「……さすがに前に見た時より基本的な動きはよくなってるのね。でも、違う。無駄が多すぎる」
ほむら「教えられたからか知らないけれど、上手くやろうと意識しすぎてるんじゃないかしら」
いや、いつも以上に厳しいかもしれない。
ほむら「経験が足りてないのよ」
貴方「それは仕方ないんじゃ……」
実際に活動歴はみんなと比べると短いし、これまで魔女狩りばかりに時間を費やせてこれたわけでもない。
むしろ、そこはベテランではないらしいのに異様なまでに手慣れてる暁美さんのほうが気になるくらいだ。
そういえば暁美さんって、結構謎めいたとこある人なんだっけ。最近はすっかり忘れていた。
貴方「経験はこれから頑張るからさ」
ほむら「……ええ」
ああ、でもこれだけはわかる。
暁美さんっていつも無表情に見えるけど、よく見ると感情はわかりやすいほうなんだ。
……今は少し、不満そうな顔をしていた。
1放課後誘わなかったこと根に持ってる…?
2放課後はこれまで何してた?
3自由安価
下1レス
貴方「放課後誘わなかったこと根に持ってる……?」
ほむら「……」
暁美さんは肯定はしなかったけど否定もしなかった。
そういえば前にもこんなやりとりには覚えがある――気がする。
貴方「暁美さんって……答えたくない話になると黙り込むこと多い?」
ほむら「……」
貴方「……」
暁美さんはまだ無言で、張りつめた空気が漂ってる。……なんだか、こうしてるとちょっと子供っぽい行動にも思えてしまう。
多分、俺も含めてみんな勝手に暁美さんをクールで完璧な人に見すぎていた。
けど、そもそも完璧な人間なんているはずないじゃないか。
最初はただただミステリアスに見えていた暁美さんだけど、理解はできるようになってきた。
長い沈黙をやめると、暁美さんは意味深なことを言う。
ほむら「【貴方】くんも……そろそろはっきり伝えたほうがいいわよ」
貴方「ど、どういうこと?」
ほむら「誰が一番か。 全員同じように好き――じゃあ、納得できないところまで来ているの」
▼暁美さんと二度目の訓練をしてから帰った。そろそろ修羅場を避けるには選ばないといけない時がやって来ました。
五回目【貴方】 14日目終了
[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達……
・佐倉杏子・・・親友↑
・巴マミ・・・親友
[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
――――
15日目
朝は昨日と同じだ。さやかたちが席に来て、一緒に話す。
そしてそういう時には決まって嫌な空気が漂ってた。
……暁美さんに昨日の夜言われたことを思い出す。
貴方(正直、一番って表現はあまり良くないと思う……)
貴方(でも、『特別な気持ち』なら伝えるのは今だ)
・(杏子/ほむら/さやか/まどか/仁美/マミ)
※条件は全員満たしてるので、未攻略キャラの攻略が完了するまではこの分岐に戻ります
※一応攻略済みキャラも入れてるのは、攻略上意味はないけど分岐後の展開が気になる人向け
下2レス
最近、佐倉さんは一日のうちどこかで学校に来てくれていた。
今日は授業中だった。授業中には話せないけど……放課後、会う約束をとりつけた。
――――放課後、今日は暁美さんとの下校も断って、昨日と同じ訓練場所の土手へと向かった。
暁美さんは何かを悟った表情だった。
人の立ち入らない穏やかな場所だ。風が草木を撫でる音が静かに響いている。
杏子「で? 話ってなにさ? 改まって」
貴方「俺……考えたんだ。佐倉さんがこの先安心して、悪い事もしないで生きていけるようになる方法ってやつを」
杏子「色々考えてくれんのは嬉しいけどさ……そんな方法」
貴方「俺と結婚してくれないか」
杏子「……え!?」
貴方「表向きに無理なら、二人の間の約束だけでいいから。さすがに今すぐってわけにはいかないから、まだ婚約になるけど……」
貴方「佐倉さんの未来を良い方向に変えるなら、それは他の何かに任せておきたくない。自分でありたいって」
佐倉さんは驚いた表情だ。
それもそうか。いきなりこんなこと言われたら。……『結婚』なんて俺もずっと先のことだと思ってたもんな。
でも、未来を約束した佐倉さんとなら。
杏子「ほ、本気で言ってんの……?」
貴方「もちろん本気だよ。好きな人を幸せにしたいと思うのは当然、だろ? その気持ちに気付いたんだ」
杏子「そんなこと言われるなんて思ってなかったよ。これからもずっとないと思ってた。……自分が人を好きになることすら、な」
貴方「!」
杏子「でもなんかすっごい嬉しいわ。……ありがと、【貴方】! やっぱり、人生って何が起きるかわかんないもんだな!」
佐倉さんは本当に可愛らしい笑顔を浮かべていた。見てるとこっちも笑顔になる。
彼女とだったら、これから先もきっとたくさん笑顔を作っていけるだろうな。
――――こうして俺らは、二人で未来を誓った。
―――――――――――――――
分岐1 ☆杏子と恋人ルート☆
―――――――――――――――
>修羅場ルート
まずはシナリオクリア優先ということで、おまけに期待しててくれるとやる可能性アリ
さすがに刺すほど過激な恨みもないのでこのままだと長い事地味なギスギス継続になりそうで
--------------------------------------------------------------------------------------
――――
15日目
朝は昨日と同じだ。さやかたちが席に来て、一緒に話す。
そしてそういう時には決まって嫌な空気が漂ってた。
……暁美さんに昨日の夜言われたことを思い出す。
貴方(正直、一番って表現はあまり良くないと思う……)
貴方(でも、『特別な気持ち』なら伝えるのは今だ)
・(ほむら/さやか/まどか/仁美/マミ)
※条件は全員満たしてるので、未攻略キャラの攻略が完了するまではこの分岐に戻ります
※一応攻略済みキャラも入れてるのはこの話での展開が気になる人向け
下2レス
未攻略キャラの攻略が完了するまでは戻る、ということで、
ほむらを選ぶともう戻らないつもりだったんですが…
もういいか、全員いっちゃうか! わりとあっさりのもあるけど
------------------------------------------------------------
――――
――――
放課後になると、今日も暁美さんが席に来た。
ほむら「……【貴方】くん」
貴方「うん。一緒に帰ろう」
断る理由はない。……昨日、暁美さんに言われたから俺は決心したんだ。
貴方「暁美さん、昨日誰が一番かって言ってたけどさ」
貴方「みんなは友達なんだ。友情に順番なんてつけられないよ。俺はみんな大事だと思ってる」
ほむら「……そう」
貴方「でも……暁美さんのことは特別なんだよ。みんなとは違う気持ちで暁美さんのことが好きだ」
貴方「暁美さんにはただの友達じゃなくて、恋人になってほしい」
ほむら「!」
貴方「これが俺の伝えたい素直な気持ちだ。それじゃ納得できないかな?」
ほむら「いえ……いいわ。わかったわよ。私は思ってたよりも恵まれていたのね」
暁美さんの表情は今までにないほど穏やかに見えた。
ほむら「考えてみれば、今まで周りを妬んでばかりで私は本当に未熟だった。あなたにも当たってしまったわね」
ほむら「でも、【貴方】くんはそんな私にも優しくしてくれた。そんなあなたが……最初は嫌いだった」
貴方「えっ!」
ほむら「今は違うわよ」
ほむら「今になって気づけたの。そんな自分の気持ちに。……それもあなたのおかげよ」
ほむら「じゃないとずっと、私は自分のことしか考えられなかった」
貴方「ということは……?」
ほむら「……こんな私でもいいなら。恋人同士になるのなら、もう少しくらいは優先しなさい」
貴方「うん! 約束するから」
暁美さんはいつもよりすっきりとした顔をしていた。
……実際に、なにか心の中にあった重いものを一つ消せたのかもしれない。
―――――――――――――――
分岐2 ☆ほむらと恋人ルート☆
―――――――――――――――
(さやか)
さやか「本当に? 本当にあたしでいいの?」
貴方「ああ。俺が好きなのはさやかだよ」
さやか「じ、じつはね……あたしもずっと好きだったの!」
貴方「!」
思いたち、すぐに決心をした。
いつもは三人で話してるけど、その中から一人だけ呼び出して思いを伝えた。
……こんなにあっさりと両想いになれるんなら、もっと早くに伝えておけばよかった。
さやか「最近【貴方】はほむらのほうにばっかり行っちゃうしさ」
貴方「……もしかして、嫉妬してたとか?」
さやか「……うん。その余計に悪者だって思ってたとこはあるかもしんない。なんであいつなんかに、って」
貴方「……」
――――
――――
――――それから放課後、暁美さんが席に来て、帰る途中にこんな話をした。
貴方「俺、暁美さんに言われたから決心できたんだ。俺……さやかと付き合うことになった」
ほむら「……そんなこと、なぜわざわざ私に言いに来たの?」
貴方「でも、俺にとってはみんなは友達なんだ。暁美さんは誰が一番かって言ったけど……友情に順番なんてつけられない」
貴方「暁美さんのこともみんな大事だと思ってるから。それだけ、ちゃんと伝えたくてさ」
ほむら「!」
貴方「これが俺の素直な気持ちだ。それじゃ、納得できないかな?」
ほむら「いえ……いいわ。わかったわよ。私は思ってたよりも恵まれていたのね」
暁美さんは、祝福するでもなく、逆に落ち込むでもなく……ただ穏やかな表情をしていた。
この反応は正直意外だった。
ほむら「私、最初はあなたが嫌いだったの。それは妬みだった。あなたにも当たってしまったわね」
ほむら「そんな私にもあなたは優しくしてくれた。話しかけてくれた。……そんなのあなたと、キュゥべえくらいよ」
貴方「ああ、あいつ……」
あいつもなんだかんだで暁美さんのことを気にかけていた。
朝俺がさやかたちと話すようになってからはキュゥべえは暁美さんとよく話していたようだし、少しは仲良くなったのかな。
ほむら「ずっと嫌いだったけど、嬉しかった。甘えてたの。それで今度はやっとできた友達が取られるって、周りまで妬みはじめて……」
ほむら「自分から動きはしないけど一人は嫌、だなんて。自分勝手もいいところだわ」
ほむら「今になって気づけたの。そんな自分の気持ちに。……それもあなたのおかげよ。じゃないとずっと、私は自分のことしか考えられなかった」
貴方「一人が嫌なのなんて、そんなのみんな当たり前だよ。暁美さんも普通の人だったってだけだ」
ほむら「……ええ。やっぱりあなたは私の友達よ」
やっと暁美さんと、本当の友達に――親友になれた。
暁美さんはいつもよりすっきりとした顔をしていた。
心の中にあった重いものを一つ消すことができたんだ。
―――――――――――――――
分岐3 ☆さやかと恋人ルート☆
―――――――――――――――
(まどか)
まどか「【貴方】くん、そ、それって……!」
貴方「ああ。俺が好きなのは鹿目さんだよ」
まどか「は、はわわわ……」
貴方「ごめん、あの……困らせちゃった?」
まどか「う、ううん! 逆! ……とっても嬉しいの。わたしも【貴方】くんのこと、好きだったから」
貴方「!」
思いたち、すぐに決心をした。
いつもは三人で話してるけど、その中から一人だけ呼び出して思いを伝えた。
……こんなにあっさりと両想いになれるんなら、もっと早くに伝えておけばよかった。
まどか「……でも、本当はほむらちゃんのことももっと気にしなきゃいけなかったのに」
まどか「ほむらちゃんのことを見ると……今までに感じたことのないような、複雑な気持ちがして。行かないでほしいなって思っちゃってた」
貴方「……」
――――
――――
(略)>>381
―――――――――――――――
分岐4 ☆まどかと恋人ルート☆
―――――――――――――――
-----------------------------------------------------------------------
ほむらに告白しなかったルート>>381は名前だけ変えて他は共通
こっちのが心情がより詳細に語られるまである感じなんですが、
実のところ今回友情と恋愛の境界が曖昧な感じで恋愛感薄めなのが理由
(一人は嫌だという負の感情強めの独占、だから一見ヤンデレ臭くなってる)
…もう少し甘みのあるのを見るには選択肢を完全正解しないといけないかも
-----------------------------------------------------------------------
(仁美)
仁美「【貴方】くん、本当に私でよろしいんですの……?」
貴方「ああ。俺が好きなのは仁美だよ」
仁美「ありがとうございます! 実は……私もなんです。お慕いしておりました。あの時からずっと!」
貴方「!」
思いたち、すぐに決心をした。
いつもは三人で話してるけど、その中から一人だけ呼び出して思いを伝えた。
……こんなにあっさりと両想いになれるんなら、もっと早くに伝えておけばよかった。
仁美「……最近、教室内の空気がよくありませんわよね。といってもわたしたちだけですが。まるで敵を見ているかのようで」
貴方「さやかか……」
仁美「お二人の間に何があったのかよくわかってませんが、さやかさんがあんな目を向けることは普通はないはずなんです」
仁美「でも私も【貴方】くんが暁美さんのほうに行ってしまうのは嫌で、蔑ろにしてしまってました」
仁美「【貴方】くんの特別はこれからも譲る気はないですが、変わらず気にかけてくださいませんか?」
仁美「私もそんな【貴方】くんを好きになってしまったのですから」
貴方「……」
――――
――――
(略)>>381
―――――――――――――――
分岐5 ☆仁美と恋人ルート☆
―――――――――――――――
(マミ)
特に個別に話も進んでなかったのでいちばんあっさり。
――――
――――
数日後
さやか「――にしても、【貴方】がまさかマミさんと付き合うなんてね」
貴方「まさかって何だよ」
まどか「変な意味じゃないんだけど、いきなりだったから驚いたかな……」
朝、三人で話してた。
暁美さんのこちらを見る視線も険しさが前よりなくなった気がする。
さやかはまだ暁美さんのことを怪しんでいるし、まだ仲直りとはいかないけど……。
貴方「今日の昼、マミさんが弁当作ってくれたからそっちで一緒に食べられないけど、いい?」
さやか「あたりまえでしょ。行ってこい!マミさんのこと悲しませるなよ!」
気恥ずかしい思いをしつつも、応援してくれる人がいるのはうれしいことだ。
――――
――――
(略)>>381
―――――――――――――――
分岐6 ☆マミと恋人ルート☆
―――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――――――――――――
五回目【貴方】 15日目終了
[攻略済]
Compelete!!
―――――――――――――――
貴方(明日は休みか……)
貴方(今日は良い一日だった。早めに寝よう)
どのルートで続ける?
・(杏子/ほむら/さやか/まどか/仁美/マミ)
下3レス中多数決
―――――――――――――――
分岐2 ☆ほむらと恋人ルート☆
―――――――――――――――
――――
三週目 週末
休日になると、暁美さんを誘ってパトロールに出ていた。
どうせ予定もない日だ。魔法少年として精を出す一日があったっていいだろう。
朝からはじめてもう夕方になろうとしていた。
ほむら「今日は頑張るわね」
貴方「あ、長いこと付き合ってもらっちゃってごめんね。暁美さんは疲れてない?」
ほむら「私は全然。やることがない時に魔女を探しに行くことはよくあるもの」
貴方「それはすごいね……」
暁美さんはそういう時一人で行ってたんだろう。でも、あまり無茶なことはしないでほしいと思う。
実力不足とはまったく思えないけど、今は俺の恋人でもあるんだから。
貴方「……」
ほむら「次の場所に回る?」
貴方「あ、うん。回るけど。……ちょっと気になって」
ほむら「なにを……?」
貴方「闇雲に魔女を倒していくだけじゃ、魔女を倒しつくすことが出来ないのかもしれないって」
ほむら「魔女を倒しつくすこと……。それが【貴方】くんの目標だったわね」
貴方「弱音を吐くわけじゃないんだ。次の場所いこっか」
――――
――――
――――
16日目 教室
――――パトロールの時から気にかかっていた。
昨日だってかなり回った。これまでも、みんながこんなに色んな場所を回って、それでもまた魔女は現れる。
それはなぜなんだろうか?
魔女の生んだ使い魔が魔女になるという話は聞かされている。
狩り尽くしたつもりでもどこかに芽が残っていて、そこから魔女に成長するケースはあるだろうけど……。
貴方(魔女は人の負の感情を好む……らしい)
貴方(もし、魔女が人々の感情の闇からも自然に生まれるんだとしたら……狩り尽くすことは不可能になる)
悪い想像をしてしまったが、根拠はない。――――そうだ。考えてみれば俺たちは魔女を倒してるだけで、敵の実態を何も知らないじゃないか。
こんな状態で魔女を倒しつくして真の平和を手に入れるなんて夢物語だ。
たとえばこういうものにありがちな悪の組織だとか。元凶を潰さない限りはこの戦いは一生続くんだろう。
貴方(でもどうやって魔女のことを知れば?)
魔女のことを聞くならキュゥべえだ。あいつなら俺たちよりは詳しいかもしれない。
貴方『おい、キュゥべえ。話があるんだけど』
テレパシーで呼んでみる。キュゥべえは相変わらず日の当たる場所で寝ていた。
呼びかけてみると、眼が開いたと思ったが、またすぐに瞼が下がっていった。
貴方『キュゥべえったら、起きてよ。サポートは?』
QB「眠いんだ……寝かせてよ」
貴方『…………』
――――
――――
放課後
ほむら「【貴方】くん、今日は?」
貴方「パトロールにいこうかな」
ほむら「……今日も?」
貴方「うん。倒すことももちろん目的なんだけど……少しでも魔女を知るためにはやっぱりパトロールしかないと思って」
ただ、これまでもパトロールしてきて、もっと長く活動してる巴さんや佐倉さんもいるのに
今から新しい情報を見つけられることがあるのかとも思う。
貴方「そういえば、暁美さんは魔女が現れる瞬間って見たことある? グリーフシードからじゃなく」
貴方「魔力で察知しづらいからっていうのもあるけど……そもそも、パトロールしててもグリーフシードってほとんど見ることないと思うんだ」
貴方「この街のメンバーは使い魔もちゃんと倒してるし、それなのに変わらないペースで見つかるのっておかしい気がするんだよ」
貴方「……とんでもない妄言だって思うかもしれないけど」
不思議な話を聞いたような反応……だろうか。急に何を言ってるんだと思われてそうでちょっと怖い。
でも、暁美さんはちゃんと考えてくれてた。
ほむら「……少し前にはいなかったはずのの場所に、いきなり現れたことならあるわよ」
ほむら「使い魔も植え付けられたグリーフシードも確かになかったわ」
貴方「……! 本当に!?」
ほむら「街に居る魔女がどうやって発生しているのか、というのを調べるのは悪い考えじゃないのかもね」
暁美さんが賛同してくれたのは心強かった。
となると、すでにいる魔女は他の人に任せるとして、俺たちが探すのは魔女が『いない』場所だ。
今までのパトロールとは違う行動だしまったく無意味に終わるかもしれない。けど、新たな方針が出来たのはわずかな希望になった。
――――現時点で魔女がいないものの、居ることの多い場所に張ることにした。
薄暗い廃墟の中、暁美さんと二人。
恋人という関係に進展しても、相変わらず口数は少ないままだった。
貴方(というか、暁美さん告白する前とまったく雰囲気変わんないんだよな)
貴方(まだなって三日とはいえ、恋人らしい空気になったことないし……)
貴方(……いや、むしろこっちのほうこそ暁美さんからしたらそういう風に映ってるんじゃねーか!?)
しかし、こんなことを考えるにはこの場所はムードがなさすぎる。
そんな時、暁美さんがぽつりと話しはじめた。
ほむら「……今日は珍しくキュゥべえが一度も話しにこなかったわ」
貴方「え? ああ、あいつ……」
あいつもなんだかんだで暁美さんのことを気にかけていた。
朝俺がさやかたちと話すようになってからは、キュゥべえは暁美さんとよく話していたはずだ。
でも今朝は一日中窓辺のほうにいたんだった。で、俺は話しかけても、寝られた。
ほむら「私と深く付き合って話してくれるのって、あなたとキュゥべえくらいだったから」
貴方「明日文句言うか。俺も聞きたいことあったのに。キュゥべえに聞いたら少しはわかることあるんじゃないかって」
……それからしばらくボーっとして過ごした。
もう結構時間が経つが、なにも様子が変わることはない。
他の場所から使い魔や魔女が近づいて来たりすれば反応でわかるんだ。もしそれ以外でこの場所に現れることがあれば。
貴方「……やっぱり、無駄足だったかな」
ほむら「そうだとしても仕方ないわ」
貴方「まあ、そうだな……」
明日、キュゥべえやみんなにも話を聞いてみるか。
今日はもう諦めかかって明日のことを考え始めた時、ソウルジェムが魔力に反応しはじめた。
……それは、とても微かな。
ほむら「この反応、近づいてくる」
貴方「本当だ。まだ小さいけど、段々……」
微かだった反応は大きくなっていく。これは他の場所から来る魔女の反応だ。どこへいく? ここに来るのか?
新しいことが知れたわけではないが、こんなふうにやってくるのは初めて見ることだった。
廃墟の外へと駆けだす。
貴方「迎え打つか!」
反応を見て進行方向を探り、魔女が動きを止めてからすぐに結界に入る。
まるで地獄をイメージしたかのような刺々しいだった。
使い魔を倒しながら道中を進み、魔女のいる深層を目指す。ここまではスムーズだ。
そうして結界を進んでいくと、重く閉ざされた最後の扉へと手をかけた。
貴方「よし……いっせーので開けるよ」
ほむら「ええ」
開けた先にあるのは、まさに地獄の最奥にふさわしい部屋。こんな場所に似合いそうな大柄な怪物が魔女だろう。
大柄な魔女というのもいくつか相手にしてきてる。大体こういうのは、力は強いがのろくて、しぶとい奴が多い。
貴方「まずは使い魔倒す?」
ほむら「私が時間を止めて攻撃すればこのままでも……」
まだ安全な距離を保って作戦を練っているつもりだった。
その気になれば暁美さんならどんな距離からでも先手を打ち一瞬で追い詰められる。
しかし―――そのアドバンテージがこちらだけにあると思い込むのはよくなかった。
貴方(!? いま魔女が消えっ……)
どこに行ったかわからない。考えている余裕も見回している余裕もない。だが最悪なのは背後だ。
それでもここは戦闘の場。不意を突かれた状況でも、暁美さんはすぐさま振り向いて盾を持つ腕を上げる。
ほむら「なっ……――――」
その時、何かが割れた派手な破壊音が腕元から鳴り響く。
それと同時に感じ取ったのは僅かな魔力の霧散、消滅。
暁美さんの変身が解けたということだった。
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今回はここまでよ
貴方「そんな――!」
暁美さんはもう戦える状況じゃない。もたもたしていればやられる。
だったら今やるしかない! 構えも万全じゃないが武器を向けていった。
魔女の魔法が暁美さんと同じ時間停止だったらと思ったが、時間を止めている間の攻撃や行動をしてこないってことは違うんだろう。
第一印象は半分は当たってた。瞬間移動以外の普段の動きはのろい。
瞬間移動からの大振りな攻撃で確実に殺そうとしてくるタイプらしい。それさえ警戒していればいい。動きは思ったよりも単調だ。
避けられるけど攻撃が当てづらい。それこそ時間さえ止められれば相性が良かったはずなんだろうけど……!
貴方「くそっ……ちょこちょこと逃げやがって!」
ほむら「……引き付けて動作の隙を狙って」
貴方「わ、わかった!」
そうだ、訓練の時のように動きをよく見るんだ。暁美さんのアドバイスを意識して動く。
――ようやく魔女を倒すことができた。
結界が消滅して、やっとゆっくり暁美さんを見ることができる。
暁美さんは腕から血を流していた。衝撃に耐えきれなくて盾が割れたんだ。それと同時に――。
じゃあ、ソウルジェムはどうなったんだ?
貴方「……ない…………これから魔法少女としてどうなるんだ……?」
ほむら「…………」
貴方「でも、盾があったからこれで済んだんだね。よかった……」
ほむら「……そうね」
とりあえず俺の魔法で傷を治すことはできる。しかし、変身状態で壊され跡形もなくなったソウルジェムは戻らない。
暁美さんは終始、どこか実感しきれていないような茫然とした様子だった。
――――
――――
――――
17日目 朝
貴方『キュゥべえ、聞きたいことがあるんだ』
貴方『……本当に大事な話があるんだよ! 聞こえてるんだろ!?』
教室で姿を見つけてからテレパシーで呼びかけてるのに、キュゥべえは今日も窓辺で寝ている。
今キュゥべえには聞きたいことがいっぱいある。なにより一番は暁美さんのソウルジェムのことだ。
呼び続けていると、キュゥべえはやっと薄目を開けた。
QB『眠い…………』
……寝ぼけた声でそれだけ言ってまた眠ってしまった。
貴方『お、おいっ! 契約者のサポートがお前の役目なんだろ? ちゃんと仕事しろよ……!!』
いつも暇そうだしちゃんと仕事してるか怪しいと思ってたけど、こんな大事な時にサボるなんて。
休日は会ってないけど、知ってる限りじゃ昨日からだ。
何か異常が起きてる? まさか変な病気にでもかかったのか?
貴方(……あいつ、起きたらとびっきり変な言葉でも教えてやるからな。そんでみんなの前で恥かかせてやる)
いつのまにかいつもの三人が横にいた。
今日は少し早く来たはずだったけど、もう彼女たちが登校してくる時間になってたらしい。
さやか「【貴方】、おはよ。……どうしたの? なんか険しい顔してない?」
なんだかみんな、心配してるような顔してた。
キュゥべえのことは今は諦めて、二人には話をしておくか。志筑さんには悪いけど……。
さやかと鹿目さんに廊下までついてきてもらった。
まどか「わたしたちだけ呼ぶってことは、魔法少女のことなんだよね?」
さやか「キュゥべえを見てなかった? なんか話してたの?」
貴方「それが、キュゥべえは呼んでもずっと寝ててまともに話せる状態じゃなくてさ……昨日からなんだ」
基本的にはキュゥべえは学校がある間はずっと学校にいる。
鹿目さんたちは学校にいるときは誰かと一緒にいることが多いから、キュゥべえともあまり話さないんだろう。
……学校にいる時以外はどうだろう? たしかにわざわざ用事がある時っていうのは少ないが…………。
貴方「実は、暁美さんのソウルジェムがなくなったんだ。魔女と戦ってる時に壊されて……」
さやか「……は!?」
まどか「ほむらちゃん、もう魔法少女じゃないの……?」
貴方「魔法は使えないみたいだ。変身さえ」
貴方「こういう時どうすればいいか聞こうと思ってたんだけどさ。……キュゥべえに言ったら予備をくれるかもしれないし」
まどか「予備とかあるの……?」
貴方「いや、知らないけど。でもそうでもなきゃ本当に魔法少女引退になるだろ?」
さやか「あ!そしたら二個目の願い叶えられたりしない!? 壊すたびに願い叶え放題とか!」
貴方「…………」
さすがにそれはどうかと思った。
……でも、たとえそうだったとしても暁美さんからは興味も欲望も感じなくて、叶えたい願いって思い浮かばないとも思う。
さやかたちに対する敵対心ももう薄まったみたいだし。……そういえば、さやかの暁美さんへの疑念もどうにかならないかな。
貴方「二人に聞こうと思ってたことはもう一つあるんだ。二人は魔女が現れるところって見たことある?」
まどか「現れるって、グリーフシードから?」
貴方「グリーフシードからでも、どこか違う場所からやってくるでも……それ以外でも」
貴方「この街に沸く魔女がどうやってきてるのか調べたほうが闇雲に魔女を倒すよりいいと思うし、そういう意味も込めてさ」
さやか「……もしかして、【貴方】は“それ以外”ってやつを知ってるの?」
たしかにこれは、“それ以外”がある可能性を考えての質問だった。
その意図に気づいただけにしては、さやかの顔はいやに真剣だった。
貴方「知らないけど、ないとは言い切れないと思ってるんだ。全部が全部、使い魔から成長するか他の街から来てるとは思えなくて……」
さやか「あたし、昨日見たんだ。なにもなかったとこから急に魔女の結界が現れたの」
さやか「その近くにほむらが居たんだ。でも戦わないでどこかに行っちゃった」
貴方「えっと、ちょっと待てよ……昨日? 暁美さん?」
さやか「最初はもう暗かったし人違いかと思ったんだけど、やっぱほむらだと思うんだ! だって……――!」
さやか「消えたから! そんなのできるのってあいつの時間停止くらいでしょ!」
魔女が急に現れた話は暁美さんからも聞いてたが、そこで暁美さんの名前が出るとは思ってなかった。
昨日の夜ならソウルジェムがなくなったから戦えなかったのはわかるけど、時間停止?
貴方「見間違えじゃないのか? それ。暁美さんはもう魔法を使えないのに」
さやか「魔法が使えないのも嘘なんじゃないの?」
貴方「嘘って…… そんな嘘ついてどうするんだよ」
さやか「戦えるなら使い魔だったらまだしも魔女と戦わないのはおかしいし、魔女もあいつが出したって考えたらどう?」
貴方「え……」
さやか「だとしたら、あいつって本当に魔法少女なのかな?」
さやか「キュゥべえが契約した覚えがないって言ってたよね? つながるって思わない?」
まどか「そんな、本当に? でもそう考えれば………… 本当にほむらちゃんが魔女を? 魔法少女じゃなかったら……なに?」
さやか「さあ。魔女の親玉、とかね……」
俺を置いて勝手に話が進んでいく。
暁美さんは心を開いてくれた。仲良くなれた。……恋人にもなれた。
でもまだ暁美さんが語らない部分があるのは事実だ。魔法少女としての暁美さんには多くの謎がある。
さやかの暁美さんへの疑念は、薄まるどころかより濃くなっていた。
さやか「……【貴方】は誰にでも優しいもんね。ほむらのことも大事に思ってるのはわかってるよ」
さやか「あたしたちと同じくらいに……いや、もっと特別に?」
貴方「……」
さやか「でもほむらのことは信じすぎないほうがいいよ。あたしは……!いや……あたしたちも、【貴方】のことが好きだから」
…………いつのまにか廊下に人はいなくなってた。
HRが始まるチャイムが鳴って、教室に戻っていった。
心の整理が追いつかないまま。
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――――
放課後
朝はギリギリまで廊下で話していて遅れてしまい、先生から怒られてしまった。
でもまさかあんな話になるとは思ってなかったんだ。今でも考えがまとまらない。
キュゥべえも一日中寝てる。
……本当に暁美さんが魔女の出現と関わってるのか?
『ほむらのことは信じすぎないほうがいいよ』――さやかの忠告は必死だった。さやかの疑念は俺たちを守ろうとしてのことだ。
ほむら「【貴方】くん……今日は?」
貴方「あ、ああ。そろそろ行くか」
ほむら「……昨日はごめんなさい。これから私はパトロールについて行っても足手まといね」
貴方「い、いや。何も謝ることなんて……」
暁美さんは落ち込んでいる、ように見える。魔法少女としての力に自信があったから。
1暁美さんに朝のことを聞いてみる
2巴さんに魔女のことを相談しにいく
3佐倉さんに魔女のことを相談しにいく
4自由安価
下2レス
今日のところはとりあえず、ベテランにも話を聞きにいったほうがいいかもしれない。
そうだ、佐倉さんは今日は来てるだろうか。
校門の方で待ってるかもしれないと思いテレパシーを飛ばしてみると、返事があった。
貴方「今日はちょっとやりたいことがあるんだ。魔女のこと、他の人にも聞きたいから」
ほむら「……ええ」
暁美さんの意気消沈した顔を見るとやっぱり胸が締め付けられた。
暁美さんのどこまでが本当でどこまでが嘘なのかはわからない。でも、全部演技なんてできるだろうか。
貴方「おまたせ、佐倉さん」
杏子「なんか話があるって?」
貴方「うん……」
『魔女が現れる瞬間を見たことがあるか』――佐倉さんにも、みんなにしたのと同じ質問をしてみることにした。
杏子「使い魔の産み落としたグリーフシードが孵る様子ならしょちゅう見たぞ」
杏子「生まれる寸前を狙うと使い魔もいなくて魔女を倒しやすいんだ。……風見野にいた頃の話だけどな」
貴方「こっちじゃどう?」
杏子「全然。これだけの魔法少女がみんなで使い魔倒してれば当たり前だな。その割に本当によく育つ街だよ」
杏子「都会だから魔女が育ちやすいだろうとは思ってたけど、これだけグリーフシードが手に入るならどこも奪い合いなんか起きないだろうね」
まさか、他の街よりも魔女がいるのは暁美さんのせい?
佐倉さんは育ちやすいからと理由を挙げたけど、グリーフシードは全然見ないって言った。
なにより、佐倉さんは魔女が突然自然発生するケースについて言及しなかった。
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>>402
みんなで使い魔倒してれば当たり前=育たないって言ってるのによく育つって普通に矛盾してるから
「よく出る」とかに脳内置換しといてください
今回はここまで
18日目
……佐倉さんの話を聞くに、この街は他の街よりも魔女が多いらしい。
佐倉さんには暁美さんのことは言えなかった。
不確定な情報で混乱させたくなかったし、なによりそんなことが広まれば暁美さんが不利になるだろうから。
でも、少なくとも魔女が繁殖せずに発生することがあるというのはほぼ確信していた。
この前から気になっていた。魔女はどこからくるのかと。
考えてみればこの街以外でもそうだ。魔女は同系統の使い魔しか生まない。最初に生まれた魔女がいるはずだ。
ほむら「【貴方】くん」
気付けばもう放課後だ。暁美さんが席に来ていた。
貴方「ああ、暁美さん……もう帰る?」
ほむら「ええ。そうなんだけど」
貴方(まさか、その元凶も…………暁美さんが?)
ほむら「……?」
たった一人で全ての魔女を生み出してるとは考えにくいけど、前に考えたみたいに組織でもあったとすれば?
1暁美さんは信用できない
2さやかの言ったことはきっと勘違いだ
3もう少し考えてみよう
下2レス
……いや、疑心暗鬼に駆られちゃ駄目だ。
魔法少女としての、暁美さんの謎――暁美さんの『正体』が何だったとしても、今まで見てきた暁美さんも『本当』だ。
そんなに器用な人じゃないのはよく知ってる。そもそも、魔女の自然発生の話を聞いたのは暁美さんが最初だったじゃないか?
貴方「うん、一緒に帰ろうか」
ほむら「……今日はうちに来ない? ……何もなくてつまらないと思うけど」
貴方「そ、そんな気を遣わなくていいよ。誘ってもらえるのは嬉しいよ」
さっきから何かを言いかけてたってことに今気づいたが、意外な誘いだった。
暁美さんの家を訪れるのは二度目。前はさやかたちが居た。
ほむら「私もつまらないのよ、一人で家にいても。前だったらパトロールに出ていたけれど今は何もすることがない」
貴方「ああ……何かいい暇つぶしでも見つかればいいね。それか、とりあえずキュゥべえが起きてくれたら聞けるんだけど」
ほむら「キュゥべえ、どうしたのかしらね」
ソウルジェムを失ってから暁美さんは時間が余っているようだった。
キュゥべえのことも気になるが、このまま魔法少女としての力が戻ればそれで全て解決になるのだろうか――とも思ってしまう。
この先、魔女を全て倒した後は? 一生魔法少女としての力に囚われたままというのはあまりに空虚すぎる。
貴方「おじゃまします」
ほむら「ええ、とりあえずそこに掛けて」
家に上がらせてもらうと、第一印象はやはり生活感がない部屋――ってことだった。
何もないとは言っていたが、謙遜ではなく無駄なものどころか必要なものすらないように見えた。
だからかわからないが、アパートの一室にしては外観より広く思える。
円を描くように並んだ椅子。その中央にあるテーブルを挟んで二人で座っている。
四面を覆う白い壁と、規則的な振り子時計の音にどことなく圧迫感を感じる。
あの時と違って二人だけで静かな部屋だから余計に気になるんだろうか。
貴方「……この椅子の並びって時計?」
ほむら「多分」
貴方「あ、もしかして時間操作の魔法だから?」
ほむら「……多分」
貴方「そのへんで寝てるの?」
ほむら「ええ……適当に」
貴方「身体痛くならない?」
ほむら「よく転げ落ちるわ」
貴方「……」
もう少し快適にしようと思えば出来るだろうに、それも興味がないのかな……。
貴方「物増やしたりしないの? ……あれ?その箱は?」
ほむら「昨日やることがなくて掃除をしていた時に見つけたの」
部屋の隅にダンボールが1箱置かれているのを見つけた。
すでに封は開いているようだった。
貴方「ダンボール? 何か頼んだの?」
ほむら「いえ」
貴方「宅配便じゃないってことは、引っ越しの時のダンボールとか?」
ほむら「……多分」
貴方「……前から思ってたけど、暁美さんって不思議な言い方をするよね。自分のことなのによく『多分』なんて言い方をするから」
ほむら「え……?」
暁美さんについての『違和感』……それは前まで明確じゃなかったけれど、いつからか自分の中ではっきりとしていた。
それが『自分のことなのに推測のような言い方をすること』――だった。
貴方「暁美さんに何か聞いても『さあね』なんて言って誤魔化されちゃうこと多いけど、もしかして、さ」
もしかして俺の推測が全部間違ってて本当に悪いことを隠してるんだったらどうしようって思ったけど、
自分の見てきた暁美さんへの思いを信じることにした。
貴方「本当に答えられないんじゃない? ……自分でも知らないから」
ほむら「………………」
ほむら「……どうして」
ほむら「…………どうして、そのくらいのことも誰にも相談できなかったのかしらね」
ほむら「気付いたら私はこういう人だったのよ。魔法少女としての力以外、自分と言えるものが何もなかった」
ほむら「それと……『まどか』」
貴方「……鹿目さん?」
ほむら「ええ。『まどかを救う』のが自分の役目だと。それだけ意識にあったの」
ほむら「でも、そんな必要なかったのよ。【貴方】くんも知っての通り」
貴方「ああ……そうだな。鹿目さんは強い人だよ」
暁美さんはついに心の奥にしまっていたものを話してくれた。
それなら鹿目さんに執着していたのも、魔法少女としての力以外に自信がないのも無理はない。
それだけが自分を作るものだったのだから。
ほむら「どうしてまどかを救おうとしていたのか、私も結局わからなかった」
ほむら「あの子のことなんて私は本当はどうでもよかったのでしょうね。友達にもなれなかった」
貴方「今からでも友達にはなれるんじゃない……? ほら、魔法少女じゃなくなったってクラスメイトなんだしさ」
しかしそれも、暁美さんにその気があるならの話だ。それにさやかのこともある。
ほむら「このことを相談したら、美樹さんもわかってくれるのかしら?」
貴方「……いや、残念だけど、それは無理かもしれないと思う」
さやかは一昨日の一件から暁美さんを疑ってる。
今更暁美さんが知らないことを話したところで、嘘をついてると思われてもおかしくない。
貴方「そうだ、一昨日の夜って家に帰ってからどうしてた? 何か変なことはなかった? ……魔女とか見なかった?」
ほむら「外には出ていないわ。変なことは何も」
貴方「……そっか。あと、魔法はやっぱり使えないんだよね?」
ほむら「ええ。ソウルジェムは魔力の源だもの。あれがないと使えないのでしょう」
じゃあ、あの話は本当に見間違い? 消えたっていうのは?
謎は謎のままだ。
ほむら「……水も出せてなかったわね」
貴方「本当にそんなに気を遣わなくていいよ」
……思ったより話しこんでいたようだ。
いつのまにか夕方になっている。
貴方「夕食はいつもどうしてるの?」
ほむら「買うか外で食べてるわ。……食べないこともあるけど」
貴方「ちゃんと食べないと駄目だよ! 一緒にどっかいく?」
ほむら「それでもいいわね」
この辺なら、少し歩けば色々と店はある。
佐倉さんと一緒に居てせっかく料理屋事情にも多少は詳しくなれたんだ。
暁美さんの家を出る前に、蓋の開いたダンボールの中身が見えた。
貴方「それって眼鏡? 暁美さん、目悪いの?」
ほむら「いいえ……困ったことはないわ。私も昨日見つけて」
貴方「近眼用じゃないんじゃない? お洒落用とか、ブルーライトカットとか」
ほむら「私はそんなのにこだわる人だったのかしら……」
暁美さんがケースを手に取る。言ってはみたもののたしかにそういうイメージは思い浮かばない。
中身は赤縁の眼鏡だ。
貴方「近眼か遠視かわからないけど視力補正用みたいだね。レンズのむこうが歪んでる」
可愛らしいケースの雰囲気からして、暁美さんのイメージとは離れたものだった。
ダンボール箱の中には他にも似たような印象の小物類が目についた。
ほむら「どこのお店に行くの? 行きつけとかあるの?」
貴方「ああ、まあ最近気に入った店ならあるかな」
いつのまにか暁美さんもケースを元の位置に戻している。
中身は気になったが、ジロジロ見るのもあまりよくない。
これから行く店のことに思考を移した。
――――
――――
19日目
――朝、教室に行くとなんだか騒がしかった。
廊下からでも人だかりが出来てるのが見える。
そこにある席って、たしか……。
*「どうしたの? 暁美さんそれ、イメ……チェン?」
*「それ度が入ってるの?」
貴方(やっぱり暁美さんの席だ……)
暁美さんはみんなの憧れの的だ。彼女の周りに集まるのはクラスでも積極的で派手目なタイプの人が多かった。
今も男女問わず集まっているが、聞こえるのはどちらかというと、ざわめきや心配するような声だった。
……それをさやかたちは遠巻きに見ていた。
さやか「……なにあれ? アイツいきなりどうしちゃったのさ?」
まどか「ずいぶん雰囲気変わっちゃったね……」
仁美「このイメチェンは予想外でしたわ。【貴方】くんは何かご存知ですか?」
貴方「いや……」
俺だって予想外だった。
でも、昨日話した中で思い当たることなら。
貴方(……眼鏡?)
――――それから、暁美さんとちゃんと話せたのは昼休みになってからだった。
半日も経つと、物珍しさで集まっていた生徒もすでに去っていた。
ほむら「【貴方】くん、あの、あの……話してもいいですか?」
貴方「は、はあ。どうぞ?」
ほむら「昨日帰ったあと、試しにこの眼鏡をかけてみたら……記憶が戻ったんですよ!」
ほむら「ついに自分を取り戻せたんです。今なら自分がどんな人かも、どうやって育ったかも、いつ契約したかも……ちゃんと言えます」
直接話してみると、朝心配されてたのがよくわかるくらいには雰囲気が違った。
これがなくしていたものを取り戻した、本来の暁美さん。
――やっぱ、唐突に言われると困惑のほうが大きかった。
俺からしたら、今まで見てきたのが暁美さんのイメージだったから。
貴方「……それはよかったけど、そんな感じだったの?」
ほむら「…………」
そう言うと、暁美さんはおもむろに眼鏡を外した。
ほむら「話そうと思えば今まで通りにも話せるわよ。もうこっちでも慣れたから」
貴方「あ、そうなん……」
ほむら「でも……どっちにしても、そう大きくは変わってなかったのよ。人付き合いが得意じゃないのは元から。暗いのも元から」
ほむら「他の人にはそうは見えないのかもしれないけどね」
貴方「……ところで、眼鏡を外す必要は?」
ほむら「気持ちを切り替える何かが欲しいだけ」
そう言うと、暁美さんはふたたび眼鏡をつけた。
視力で困ったことはないと言ってたけど、不思議とつけても外しても過ごせるみたいだ。
貴方「それより、いつ契約したかも思い出したって言ったよね。それについては!?」
ほむら「あ……はい。それは放課後にみなさんの前で言います」
ほむら「私がはっきり事情を言わなかったせいで疑われるようなことになったんです。他の人ともちゃんと話したほうがいいと思って」
ほむら「私も実は、みんなとどう接したらいいかわからなくて……【貴方】くんとはこうやって話せたんですけど……」
貴方「俺と話せたんなら大丈夫だと思うよ? ゆ、勇気持って!」
ほむら「は、はい」
……やっぱり慣れないな。
そう思いながらも、オドオドと自信なさげにしてる暁美さんを元気づけた。
――――
――――
それから放課後、訓練場所の土手にみんなを呼んで集まった。
合同訓練は休日にやってたから、平日に集まることはそうそうない。今日は訓練じゃなく話。
ここに来るまでにもみんな特別な空気は感じ取ってたみたいだ。
キュゥべえも引っ張って連れてきたけどまだ寝たまま。
……いや、引っ張ってというのは正しくない。実際には暁美さんの腕の中ですやすやしてる。正直羨ましい。
貴方「……ここまで運んで来ても、やっぱキュゥべえは寝たままか」
ほむら「でも寝顔見てるとかわいい」
マミ「それで、暁美さんから話があるって聞いたんだけど……今日はどうしたの?その格好は?」
さやか「今日は朝からこうなんですよ。で、何を話すの?」
ほむら「と、とりあえず聞いてください……今まで話せなかった、私のことを」
暁美さんはまず、俺が昨日聞いた記憶喪失のことと、記憶を取り戻した経緯を話した。
そして、話は暁美さんの過去のことに入る。
ほむら「小さい頃から身体が弱くて、入院生活ばかりだった私にはなかなか友達ができませんでした」
ほむら「でも魔女に襲われた時、鹿目さんと巴さんに助けてもらって……そこから鹿目さんとも仲良くなれたんです」
ほむら「鹿目さんは、私にとってはじめてできた友達だった。だから大切だった。……今度は自分が助けたいと思った」
まどか「え、えっと……?」
さやか「なんでまどかが知らないのよ!」
話の途中で割り込まれると、暁美さんは一瞬口ごもり、そして片手で眼鏡を取った。
ほむら「い、いいから話を聞きなさい!」
貴方「ま、まあまあ。先を聞こう」
オドオドから一変した強気な一喝はなかなかに効いたようだ。……まあ、眼鏡取っただけなんだけど。
そして、さっきの豹変など何もなかったかのように続けた。
ほむら「……二人はその後、大きな魔女と戦ったせいで死んでしまった。それをなかったことにするためにキュゥべえと契約して過去に戻ったんです」
杏子「なるほどねえ、だからキュゥべえも契約した覚えがないと……。肝心のキュゥべえは寝てるけどな。おーい、話聞いてた?」
QB「きゅ…………?」
マミ「いつからこんな寝坊助さんになってしまったのかしら。うちにもほとんど顔を見せなくなったし……」
さやか「まあでも、ちゃんとキュゥべえと契約して魔法少女になったっていうのね」
マミ「それで、大きな魔女っていうのはどんなものなの? 私と鹿目さんでやられるくらいだし、対策が必要になるかもしれないわよ」
ほむら「たしか、ワルプルギスの夜――って聞いたような」
杏子「来んのかよ! いつ?」
ほむら「で、でもそれってずっと前のはずなので……多分もう大丈夫なんだと思います」
マミ「時間を戻ったらワルプルギスの夜がくることもなかったことになったのかしら?」
ほむら「多分……」
杏子「そりゃよかった。最悪死ぬかもしれない相手とやりあいたくなんてないよ。まあ、その時と違ってこんだけの人数がいれば勝てそうだけど」
話に出てこなかった人がいたのは気になったが、その過去自体がずっと前の話のようだ。
すでに過ぎ去った危機と考えてもいいんだろうか。
貴方「それでその話って終わり?」
ほむら「はい。これ以上はとくにないですけど……」
貴方「そっか。ありがとう。じゃあ、時間を戻ったときに記憶が飛んじゃったのかな……?」
マミ「時間と一緒に自分の記憶も戻される……そのせいで記憶に混乱が起きたとか?」
まどか「ワルプルギスの夜さんがこなくなったのはいいけど、あんまり意味ないね……。むしろマイナスかも」
杏子「ちょっとキュゥべえ」
QB「むにゅ……」
佐倉さんがキュゥべえを突っつくがほぼ無反応だ。
まどか「ま、まあ……なんだか急すぎてびっくりしたけど、今のほむらちゃんならちょっと親近感湧くかも」
ほむら「…………」
鹿目さんはそう言ったが、暁美さんはどうしたらいいかわからなさそうにしてた。
……時間を戻る前と違ってこれまでのことがあるんだから、当然だろうか。
そういえば、いつのまにか呼び方も変わってる。他の人に対する時と同じ、苗字呼びだ。
さやか「……あたしもアンタのことあからさまに疑いすぎてたよ。その話、忘れてることくらいちゃんと話してくれればよかったのに」
ほむら「ご、ごめんなさい。きっと私が臆病だから変な意地を張ってたんです」
さやか「今ならともかく、前の姿見て臆病なんてイメージ出てこないわよ!」
……と言いつつも、さやかはまだ何かを考えるようにしてた。
暁美さんの話は終わったが、まだ解散するには早い時間だ。
せっかくみんな揃ってるんだから訓練でもするか?
1みんなと訓練
2さやかと話す
3ほむらと帰る
4自由安価
下2レス
杏子「で? このあとどーすんの?」
貴方「俺はまだここに残ろうかな。せっかくだしみんなで訓練にするのもいいんじゃないかな」
まどか「わたしもそれに賛成! 休みじゃなくてもせっかく集まってるんだもんね」
杏子「お茶会があるならあたしも喜んで参加するんだけどなあ」
さやか「まーたアンタは食い意地ばっかり張って!」
マミ「ええ、終わったらしましょうか。頑張った分のご褒美は必要だものね」
さやか「え、いいんすか! やった!」
暁美さんは様変わりしてしまったが、他のみんなはいつもの空気だ。
最近はとくにギスギスとしていたから、むしろ前よりも明るく感じる。
その代わり、さっきまで中心になって話していた暁美さんは、そこがもう自分の居場所ではないというように離れたところから見ていた。
ほむら「……私は先に帰ってますね」
貴方「あ、ああ。また明日」
……暁美さんの願いは叶っていた。
悲劇の元凶のワルプルギスの夜もいなくなって、今ここにいるみんなは誰一人として欠けることなく過ごしている。
マミ「どうしたのかしら?」
まどか「ほむらちゃん、ソウルジェムがなくなっちゃってもう魔法が使えないって聞きました」
マミ「そんなことが……。暁美さんは魔法少女を続けたいと思ってるのかしら?」
前までだったら間違えなく『そうだ』と言えたけど、今の彼女の心はわからない。
貴方「やっぱり、俺たちってソウルジェムがなくなったら戦うことも魔法を使うこともできないんですかね」
マミ「そうなんじゃないかしら。ソウルジェムは魔力の源だもの」
マミ「変身するのもソウルジェムを使うし、変身せずに直接魔力を取り出して魔法を使うにもソウルジェムがないと」
貴方「やっぱそうっすかね……」
マミ「試しにやってみる? ソウルジェムなしに魔法が使えるかどうか」
みんなで訓練をする傍ら、試しにソウルジェムを少し離したとこに置いて何かできるか試したが、案の定何もできなかった。
何をどうしたらいいかもわからず、修行すれば技が打てると思い込んでいる中二病を見るような目で笑われたので虚しい気分になった。
さやか「んー……まあ、そりゃあたしたちフツーの人間だもんね。キュゥべえがくれた力がなきゃ魔法なんて使えるワケないよ」
マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
マミ「せめてキュゥべえが起きてくれたらよかったけど、これだもの」
貴方「本当ならって、疑ってるんですか?」
マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」
貴方「実は、ソウルジェムが壊された時俺も一緒に居たんです。あの時は魔女の攻撃を受け止めきれなくって」
マミ「そうだったの? それなら最初からそう言ってくれれば……【貴方】くんが言うなら信じるわ」
マミさんは暁美さんのことを疑ってるんだろうか?
さやかの時とは違って二人はあまり関わることもなかった分、険悪な様子は見られなかったけど……。
貴方「ところで、キュゥべえはなんでずっと寝てるんですかね?」
マミ「さあ……たしかにここまでくると心配よね。もし病気なら魔法で治せたりしないかしら?」
キュゥべえは相変わらず寝ている。回復の魔法を使っても無反応だった。
普段は学校に置き去りだが、このままここに置いていくのもあんまりなので結局お茶会にも持っていくことになった。
――――お茶会の帰り、みんなと別れた後は一人で帰り道を歩いていた。
暁美さんが一人抜けても、チームは以前とほとんど変わらなかった。
暁美さんは前から無口で、結局ずっと俺以外とは打ち解けられずにいた。
このチームには居場所など感じていなかったのかもしれない。でも、みんなとの記憶が戻った今なら意識は変わったんじゃないか?
貴方(あの話……みんな受け入れてくれたのかな)
前から暁美さんのことを疑ってたさやかは、途中で一回口を挟んだものの、最後を聞いた後は受け入れたようだった。
さやかのことだから嘘だと思えばすぐ食って掛かるだろうし、そうしなかったってことは言葉通りに信用はしたのだろう。
マミさんは多少疑ってたように見えたけど……。
俺もあの暁美さんの様子には今も慣れないが、あの態度が嘘にも見えなかった。
これまでの話に……
1矛盾はない
2矛盾はある
下2レス
……暁美さんはワルプルギスの夜に殺された鹿目さんたちを守る為に契約して、過去に戻ってきた。
鹿目さんに執着していたのも、キュゥべえが契約した覚えがないのもそのせいだ。
俺らから見れば暁美さんは変わってしまったが、思い出した過去に納得しているようだった。
聞いた話にたしかに矛盾はない。
貴方(…………じゃあ、気のせいか)
暁美さんは魔法少女ではなくなってしまったが、俺たちは全ての魔女を倒すことを目標に戦い続ける。
そして……――――――――不思議なことに、それは遠くない未来に達成できた。
少し前から調べていた魔女の自然発生……それも勘違いでしかなかったんだろうか?
それに、記憶が戻ったことのインパクトですっかり忘れていたが、暁美さんがそれに関わってるんじゃないかという疑いも。
この世界からは魔女がいなくなり、魔法少女も魔法少年もいなくなった。
真の平和が訪れたのだ!
ただ……キュゥべえの姿もあのお茶会の日以来見ることがなかった。それだけが気がかりだった。
一体何処に行ってしまったんだろうか? 短い間だったが一緒に過ごした友が消えたことには寂しさを感じていた。
これからも俺たちの未来は――――
――――世界は突如、全てが真っ黒に潰されて終わった。
意識が終わるその寸前、目の前には暁美さんの部屋と、そこでこちらに微笑む彼女の姿が見えた気がした。
END.? 強制終了
――――
――――
「……さすがにこの結末はあんまりだ?」
「この話に飽きた人もいるんじゃないの? ……私は飽きたわ。だってもうクリアしたゲームなのよ」
「蛇足でしかないのに、これ以上何を望むの?」
1ハッピーエンド
2謎の解明
3???の救済
「別に答えなくていいわよ」
「ハッピーエンド? 幸せなままで終わったのだからこれはハッピーエンドじゃない」
「謎の解明? 真実を知ったせいで絶望して魔女になった魔法少女を知ってるわよね。真実なんて知らないほうがいいものよ。
この世界ではソウルジェムはただの魔力の源だって? ……ええ、そうだったわね」
「3は意味が分からないわ。もう名前を隠す必要もないほど察しはついていると思うけれど……」
「……『攻略』がしたいのね。ギャルゲーだから」
※>>423を2でやり直します。???が攻略できるようになりました。
――――
――――
……暁美さんはワルプルギスの夜に殺された鹿目さんたちを守る為に契約して、過去に戻ってきた。
鹿目さんに執着していたのも、キュゥべえが契約した覚えがないのもそのせいだ。
俺らから見れば暁美さんは変わってしまったが、思い出した過去に納得しているようだった。
聞いた話にたしかに矛盾はない。
貴方(でも、巴さんが疑い始めたのはあの話を聞いてからだ。それって……)
※矛盾に関係するセリフを選んでね
1マミ「そんなことが……。暁美さんは魔法少女を続けたいと思ってるのかしら?」
2マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
3マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」
下1レス
貴方(暁美さんが魔法少女を続けたいと思ってるかどうか……前までは魔法少女であることだけがアイデンティティだったけれど今は違うはず……)
貴方(正直、記憶を取り戻した後の暁美さんがどう思ってるかよくわからないんだよな……)
※これじゃないようです…
1マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
2マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」
下1レス
貴方(ソウルジェムがなくても魔法が使えないか、試してみたけど無理だったな)
貴方(このままじゃやっぱりお休みになるだろうな……)
※これじゃないようです…
貴方(って、それじゃなくて…………『暁美さんの強さ』)
貴方(たしかに暁美さんの魔法――時間停止は強いけれど、暁美さんの強さはそれだけじゃなくて銃の腕や身のこなしもベテランじみてた)
貴方(暁美さんの話だと戦い慣れしてるわけもない病弱な少女だったはずだし、みんなと会ったのは契約してすぐってことになる)
貴方(魔法少女としてベテランの巴さんだから、真っ先にそこが気にかかったんだろう)
暁美さんが嘘をついてるようには見えなかったけど……。
もしあるとすれば、まだ思い出していない過去がある――――とか?
貴方(……そもそも、なんで暁美さんは“眼鏡”で思い出したんだ?)
貴方(眼鏡なんて、視力が悪い人にとっちゃ身体の一部みたいなものだろ。とくにそこにきっかけになるような何かがあるとも思えないのに)
貴方(見つけたのも部屋を整理しはじめてからってのも気になるし、まるであえてそこに記憶を封じ込めてたみたいな……)
そういえば、記憶が戻ったことのインパクトですっかり忘れていたが、
暁美さんが魔女の自然発生に関わってるんじゃないかって疑われてた件もあったっけ。あれはどうなったんだろう? さやかの勘違い?
貴方(あれは……)
考え事をしながら歩いていると、街中に暁美さんの姿を見つけた。
朝からしてた三つ編みはほどいていて、見慣れた姿の暁美さんだ。
貴方「暁美さん? 帰ったんじゃ……?」
声をかけてみるとこちらを向く。やはり眼鏡もなかった。
これは直感だが、彼女は今まで見てきた暁美さんではないと思った。
もしかして、さやかが見たのは――――。
ほむら「……【貴方】くん。人をその人たらしめる要素って、何だと思う? 記憶? 性格? あるいは――――行動、かしら」
ほむら「それはきっと、本人と他者で違うと思うの」
ほむら「人の性格は必ずしも生まれ持ったものだけで決まらない。『記憶』。積み上げてきた経験、年月によって変わっていくものだわ」
ほむら「他者から見たその人らしさはその積み上げによって出来た性格による『結果だけ』……つまり、『行動』」
ほむら「たとえば、『この人ならこういう振る舞いをするだろう』――――といったものだと思うのよ」
ほむら「けど、本人にとって、経験を失い結果のみが残ったとしたら、それを自分らしいと思えるのかしら?」
ほむら「私。『暁美ほむら』の『らしさ』は、まどかを救うという意思にあるのでしょう」
ほむら「でも、私はそれを受け入れなかった」
ほむら「――――偽物とはいえ、気に入らなかったわ」
偽物――。
目の前の暁美さんが偽物と言い切ったのは、今まで見てきた暁美さんのことだ。
俺の知ってる暁美さんは、記憶を取り戻す前も後もこんなに薄気味悪く笑わない。
どういうことだかはわからないが、俺からすれば目の前にいる彼女のほうが――――
ほむら「……怒ったの? 偽物という言葉が悪かったかしら。分身と言い換えてもいいわ」
貴方「……もしかして、君が魔女を発生させてるのか?」
だとすれば、目の前のこいつがすべての黒幕だ。
暁美さんの分身、というのが本当なら心が揺らがないでもないが、こいつを倒せば真の平和が訪れるんじゃ……――!
ほむら「神様……じゃなかったわ。悪魔を相手に戦いを挑むなんて無謀なことはよしなさい」
貴方「……は!?」
ほむら「貴方、余計なことを考えたでしょう? そのまま気づかないままでいればよかったのに」
ほむら「私からすればこのまま終わらせてもよかったのだけど……少し興味が沸いたから話してあげる」
ほむら「私が魔女を発生させているというのは、まあ正解といっていいわ」
ほむら「本来『無い』ものをわざわざ作り出しているのだから、そうなるわよね」
ほむら「魔女がいなければ魔法少女の日常は成り立たないから。ただそれだけ。パトロールが外ればかりじゃつまらないでしょう?」
貴方「何を言ってるんだ……? 魔女なんかいなければ命懸けで戦う必要もなくなるんだ! ずっとそれを目標にしてきた!」
貴方「それとも、まさか俺たちにただ魔法少年少女ごっこをさせたかったって理由だけで魔女を作ったのか!?」
ほむら「ええ、そのまさかよ」
目の前の暁美さんは当たり前のようにあっさりと言ってのけた。
その拍子抜けするような態度を見ると、もはや怒りをぶつける気すら沸かなくなる。
ただ何か、とてつもなく危険で大きな力を目の前にしているということを感じた。
ほむら「でもあなたたちは重要なことを知らない。本来の魔女は、魔法少女のソウルジェムから生まれるものなのよ」
貴方「……本来のって何だよ? じゃあ俺たちが戦ってたのはなんだって言うんだ?」
ほむら「さっきの言葉と合せると、偽物の魔女ね。この世界には本来『魔女はいるはずがない』のだから」
暁美さんはそう言うと、後ろに隠していた手を胸の前に持ってきた。
手に何かを掴んでいる。それは―――。
貴方「キュゥべえ!?」
乱暴に耳を持たれて掴まれているのにも関わらず、キュゥべえは未だに寝息を立てている。
ほむら「インキュベーター。本来は私達を騙し、人の感情と魂を弄ぶ敵」
ほむら「でもこの世界では“あえて”造り替えたわ。この世界のキュゥべえの本当の役割を知っている?」
貴方「俺たちの心身のサポート……とか言ってたけど」
ほむら「本当の答えは、『ゲームのサポート』よ。ゲームが終わって役割がなくなったからいらなくなったの」
ゲームが何かはわからないが、まさか――それがキュゥべえが寝てばかりになってしまった理由に関係あるのか?
そんなことを考えていると、暁美さんはどこからか拳銃を出して……キュゥべえの頭に突きつけた。
貴方「ちょ、ちょっと! 何してるんだよ!」
QB「きゅ……? ん……?」
銃口を押し付けられて、キュゥべえはやっと目を覚ます。
そして、自分の置かれている状況を理解した。
QB「ほ、ほむら……? これは…………――!?」
ほむら「最後の憂さ晴らしに、私がお前を殺す」
QB「なんで……? た、助けて……………っ!」
貴方「や、やめろって!!」
咄嗟に変身して目の前の暁美さんに飛びかかったが、まるで霞のようにすり抜けてしまう。
さっき神だとか悪魔だとか言ってたが、本当に『この世界』の存在ではないということを物語っているようだった。
ほむら「インキュベーターは本来、感情を持たない異星人だった。こんなふうに怯えることもない生き物だったのよ」
ほむら「本来のソウルジェムはこいつに造り替えられた魂そのもの。そして、濁り切れば魔女を生み出す卵」
ほむら「壊れたり身体から離れすぎることがあれば魔法少女は生きていられない。……そんなことも教えてくれずに私たちは利用された」
ほむら「そして、殺しても殺しても代わりが沸いてくる倒せない敵……それが本来のキュゥべえよ」
ほむら「杏子とかは、自分の知る記憶との態度の違いに違和感を持ったかも」
ほむら「この世界のキュゥべえには感情を与えた。苦しんでもらうためにね」
QB「…………! …………!」
キュゥべえは声にならない声を上げていた。
だが、逃げられないことを悟ると、最期の瞬間――――俺に向けて言葉を遺して、逝った。
QB「……【貴方】……仲良くしてくれて、サンキュー……ベリー…マッチ――――――」
銃声が響く。周りに人はいるはずなのに、誰もこちらに関心を向ける人はいなかった。
貴方「な、なんでその言葉をよりによって、今……全然似合わねぇよ……! こんなことなら適当に言葉教えるんじゃなかった!」
貴方「……暁美さん、こいつは人とズレてるし鈍感だけど悪い奴じゃないし俺はそこそこしゃべってたんだ。君の分身……もな」
貴方「俺からしたら本物だし一人だけだろ! 大体、本来とか偽物だとか、さっきからなんなんだよ!」
ほむら「【貴方】くんが今挙げた特徴は本来の名残ね。『外』を見てみなさい」
貴方「外…………? ここはもう外だろ?」
ほむら「意識すればもう見えるはずよ」
ここは帰路の途中……もちろん屋外だ。
でも、そういうことではなく。
『外』に意識を向けると、そこは――――見覚えのある部屋。
時計のように並んだ椅子の特徴的なこの部屋は……暁美さんの部屋だった。
そして、そこには暁美さんがいた。『外』の暁美さんがこちらに向けて語りかける。
ほむら「……こっちが見えたわね」
暁美さんの部屋の壁から見ているような視点だ。そして、『こちら』はまるで壁の一部のような――。
本来だとか偽物だとか言ってたけど、これじゃあ……今まで現実だと思っていた世界は?
貴方「それが……外の世界?」
ほむら「これも本当の空間じゃない。ここは『どこでもない空間』なのよ」
ほむら「もうすぐ宇宙は造り替えられる。今度は私が造り替える。ここはそれまでのほんの一瞬」
ほむら「私が……造り替える前の世界を懐かしむための場所」
外の世界の暁美さんは……そう言いながら、切なそうに笑っていた。
ほむら「『ソレ』は私と貴方のための世界」
ほむら「ワルプルギスの夜なんて無縁で、ソウルジェムはただの魔力の源。季節が流れ、年を越し、進級する――そんな平和な世界」
ほむら「ついでにみんな仲良く――――というのは、今回は『私』のせいで壊れてしまってたけれど」
貴方「……なんで俺のため?」
ほむら「決まってるじゃない。貴方がこのゲームの主人公だからよ」
ゲーム……そういえばさっきも言っていた。
何がゲーム? 特別なことをしてた覚えはなかった。
ほむら「私はまどかを救うために契約した。でも何回過去に戻っても救えなかった。最初は他のみんなも救いたかったけど、諦めた」
ほむら「真実を知っては絶望する。ワルプルギスの夜には勝てない。まどかは繰り返すたびに素質を増して、契約して……魔女になる」
ほむら「これが本当の私の『経験』。まどか以外に自分にすら興味を持つこともできない、こんな性格にもなるわよね」
貴方「…………」
ほむら「……いえ、そこからまたさらに変わってしまったわね」
ほむら「貴方のいる世界は、本来の世界から邪魔な『絶望』だけを取り除いて再現させた世界。いわば魔法で作られたシミュレーションのようなものよ」
ほむら「前提設定が違っても、目標は同じ。みんなと向き合って、各自の抱える問題が解決できれば攻略完了……つまりゲームクリア」
ほむら「さやかには正義の魔法少女としての在り方の自信と、失恋を乗り越える力を与えた」
ほむら「マミには孤独と奥底に抱える戦いへの恐怖の克服を」
ほむら「まどかには自分への自信を与え、自己犠牲が最善とは限らないことを教えた」
ほむら「杏子には未来への希望を与えた」
……暁美さんはみんなの名前を挙げたが、自分の名は口にしなかった。
ほむら「世界を繰り返した末、貴方は見事にクリアした。でもこれは現実じゃないからもうお別れしないといけないの」
ほむら「いくらまどかから奪った力でも現実は仮想の世界ほど都合よく造り替えられない」
ほむら「特に私自身はね。自分の記憶までいじるとろくなことにならないのは決まってるし、思い知ったばかりだもの」
貴方「じゃあ……俺はなんだったんだ? なんで俺が主人公なんだよ」
ほむら「貴方、自分の過去をどこまで思い出せる?」
貴方「自分の過去?」
今から遡っていって、契約した時のこと……今学期のはじめ……みんなとの出会い……家族との思い出。
今まで気づかなかったのが不思議なくらい、近くの記憶ですらぼんやりとしていた。幼少期なんて完全に思い出せないことに気づく。
ほむら「その世界には『矛盾』を気づかせないために多くのことに制限がかかっている。貴方が自分を考えることも、その一つよ」
ほむら「与えられた設定と、普通の人間であること……それ以外に貴方の個性はないわ」
ほむら「貴方は本来『誰でもない』、けれど私たちの近くにいた『誰か』である存在。つまり、本来私たちとは深く関わることはない人だったのよ」
貴方「……」
ずっと自分を普通の人だと思ってた。語ることがないくらいには平凡な家庭、過去……。
でも違う。なにも無いから語れないだけだったんだ。
ほむら「もう言葉も出ない?」
ほむら「貴方にもお仲間にもこれ以上出来ることはないわ。その世界でいくら足掻いたところでゲームは現実に干渉できないもの」
ほむら「じゃあ……名残惜しいけれど、さようなら。世界」
この世界のことを理解したからだろうか……。
リセットでなくなったはずのみんなとの思い出……、この世界であったことを全部思い出した。
暁美さんと作るはずの未来――さやかと考えた未来――巴さんと支え合う未来――
――仁美と約束した未来――鹿目さんと進級する未来――佐倉さんと誓い合った未来――
それらは全部叶わないのか。やっと希望を持てたって人もいるのに。
暁美さんとは険悪になったこともあった。でも、最後は仲良くなれた。
最初に会った暁美さん。まだ気の弱い少女だった頃の彼女とだって仲良くなれた。
そしてそれは…………
紛れもなく目の前の暁美さんの『一部』でもあるはずだった。
貴方「暁美さん。暁美さんにも俺が与えられたものはあるはずだよ」
貴方「最初の『攻略』では何に頼らなくとも堂々と振舞える自信を……」
貴方「最後の攻略の時は、色んなものを失いすぎてて何をというのも難しいけど……心の支えにはなれたと思う」
ほむら「……ゲームの話だわ。本当の私じゃない」
貴方「でも、分身なんでしょ。そっちからしたら所詮現実じゃないのかもしれないけど……」
俺の知る世界にいた暁美さんは分身なのだから。記憶と経験の差があれど、内面は同じはずだ。
貴方「暁美さんはみんなの救われるところが見たかったんだよな。その中には暁美さん自身も本当は含まれてたんじゃない?」
貴方「じゃなかったら、俺みたいなどこの誰かもわからないヤツじゃなくて自分の分身を主人公にすればよかったんだ」
ほむら「何を今更……私には無理よ。私には誰かを救うことなんてできない。できなかったからこうなったの!」
貴方「それは、この世界にはなかった『絶望』に邪魔されたからじゃなかった? 俺だってそんな事情があったらこうはいかないよ」
ほむら「それがなくたって……。私を見てきたならわかるでしょう」
貴方「なら、暁美さんはずっと誰かに助けてもらうことを望んでたんだよ。……本当に辛い時、助けてあげられなくてごめんな」
ほむら「何故謝るの……?」
貴方「だって、俺は『誰でもないけど近くにいた誰か』……なんだろ?」
貴方「きっと現実でも今までも近くにはいたし、これからも近くにいるはずなんだ。今度こそ、きっと、現実でも助けるから」
ほむら「…………」
貴方「……この世界を終わらせる前に、こっちの暁美さんに会う時間だけくれないか」
貴方「他の記憶も思い出したけど、やっぱ今の俺にとっては暁美さんが一番なんだ」
ほむら「な、なんなのよ……。世界が終わるということは死ぬのと同じなのよ? 貴方も、貴方の友達も、す……好きな人も全部ッ!」
ほむら「どうしてそんなに落ち着いていられるの? 私を倒すんでしょう? ……自分と友達を殺す私が憎いでしょう?」
貴方「足掻いたって無理なんだろ。神様か悪魔か知らないけど……俺が今まで倒してきたのは『この世界の魔女』で、別次元の存在の倒し方なんて知らないし」
貴方「そっちには手を伸ばすことも叶わない」
ほむら「……」
手を伸ばすが、ただ往来の中にいる自分の前に自分の手があるだけだ。『画面の向こう』へは届きそうにもなかった。
貴方「じゃあ、またそっちの世界で会ったらよろしくな」
伸ばした手を戻して、帰路の途中で進む道を変える。
『外』にはもう意識を向けなかった。俺の世界はここだ。たとえ世界が終わるとしても、最後の瞬間までここでいい。
ほむら「…………私だって、会いたかったわよ。もっと昔に……こうなる前に……」
ほむら「いいえ……どうせ、あれは…………」
ほむら「本当はもっと、深く関わらなかったクラスメイトもいっぱいいたのよね……。でも私には関わる勇気も余裕もなかった」
ほむら「話していたら何かが変わったのかしら……?」
貴方「暁美さん」
ただ、これだけ。……こっちの暁美さんには手を伸ばすことができるから。
白すぎる手に、そっと手を触れた。
ほむら「……え、ええと?」
暁美さんは記憶を取り戻してからいきなり変わってしまったようにしか見えなかったけど、今ならわかる。
これも暁美さんだって。今まで何もなかったところに、契約するまでの『経験』が戻ったんだ。
今はこっちのが素なんだろう。経験を伴わずに現在の暁美さんを模していた頃も、中身はむしろこっちに近かったはずだ。
……見かけにはそう見えなくなってたけど。
ほむら「ふ、ふふ……?」
貴方「無理に笑ってごまかさなくても……」
ほむら「ご、ごめんなさい。こういう時、どうしたらいいかわからなくて」
貴方「別に何かしてほしいわけじゃないよ?」
ほむら「そうですね……。テンパりすぎてますね私……。恋人、とか言うから」
ほむら「……まだ今は私、みんなとの関係に悩んでるんです。自分のことは話したけど受け入れてもらえるかなとか、キツい態度取っちゃったしな……とか」
ほむら「どっちの私でいこうかしら、とか」
貴方「持ちネタになってる? その眼鏡外したりつけたりするやつ……」
ほむら「も、持ちネタ、です!」
一言分だけ眼鏡を取ったかと思うと、再び戻して喋った。
……見てるぶんには面白いけど、本人は割と真剣に悩んでそうだ。
貴方「『恋人同士になるのなら、もう少しくらいは優先しなさい』――って、言ってたのに」
ほむら「ま、マネですか……? こっちの時に言われると結構恥ずかしくて……一度切り替えちゃえば平気なんですけどね……」
ほむら「あの時は……やっとできた友達を取られたくないって気持ちも大きかったんです」
ほむら「私なんて誰とも友達になれないし、誰も構ってくれないと思ってたから……」
ほむら「……その上、【貴方】くんが友達になってくれたらもうそれだけでいいやって。でも今は、やっぱり他の人とも友達になりたい」
ほむら「本当はもう一回くらい出会いをやりなおしたいけど、それも寂しいなあ……」
貴方「俺もなかったことにはされたくないな。でも、きっとまた別の世界で出会っても、友達になれるよ」
貴方「絶対、なりに行くから」
自分で言っててなんだけど、これじゃまるで友達止まりみたいじゃないか!?
なんてツッコミは暁美さんには伝わるはずもなく。
ほむら「えっと、も、戻りませんよ!? 過去には……。もう魔法も使えないし。というか私の魔法は時間を止めるだけだし……また記憶失いたくはないです」
貴方「そ、そうだな。はは……」
ほむら「実際のところ、私は恋とかまだわかってないのかもしれません」
ほむら「恋とは何かと聞かれたら、難しすぎるので……」
貴方「そんな哲学的なことは答えられない人多いんじゃないかな……?」
ほむら「でも【貴方】くんのことは好きですよ。最初に友達になった鹿目さんと同じくらい」
貴方「…………同じくらい!?」
ほむら「そういう感じじゃ駄目ですかね……」
貴方「は、はは…………まあ、いいと思う」
若干振られたみたいな感じになってるのは気にくわないが……。
思えば俺も最初は美人だとかミステリアスだとか、そんな表面的なところしか見てなかったのかもしれない。
……もちろん今はそんなことはない。
彼女のことについては、多分今目の前にいる彼女自身以上に色々知ってしまったけれど……それとは別にして、今の暁美さんは好きだ。
貴方「……そろそろ、かな」
ほむら「そろそろ? あ、あまり遅くなったら心配されちゃいますね。……あっ、またお水用意し忘れてました」
貴方「いや、いいよ。そんな気を遣わなくて。……じゃあ」
ほむら「はい。また」
――――
――――
朝、一日がはじまる。
どこにでもあるような至って平常な朝だ。退屈なほど平凡で。
ワルプルギスの夜だとか、そんなうっすら噂で聞いたことがあるようなないような災害の予兆も当然無縁で。
見滝原中に通う貴方は何の力も持たない生徒。でも――――今日から新しい友達ができた。
END
▼???→悪魔を『攻略』できた
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あと500レス近く残ってるけど次回からなにをやろうか
1スレ目も残り30レス分残ってるのでおまけをやるのは決まってるんですが、
やる内容と何を優先するかを決めます
1容赦なく攻撃が飛び交う全員嫉妬Lv3モード開始
2個別END後のちょっとした後日談とか見たい(キャラ指定)
3新しいのやりたい/別の話の続編やりたい
ここから5レス分くらい流れ見て決めます
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よし、まずはおまけ優先でいきます
次回はできれば今夜に。
あと>>442の前に1レス抜けてるの発見したんでこれだけ貼っときます
-------------------------------------------------------------------
――――――
暁美さんの家に着いてインターホンを鳴らすと、出てきてくれた。
今は別れ際に見たままの三つ編みに眼鏡の姿だ。
貴方「暁美さん」
ほむら「あ、【貴方】くん……どうした、の?」
貴方「……いや、ちょっと話したくて」
さすがに世界がもうすぐ終わるなんてことは言えない。
さっき見てた部屋と同じようだけど、違いがあるとすれば壁に『何もない』ことだ。
ほむら「いい、ですよ。座って」
貴方「ありがとう」
ほむら「相変わらずなにもないけど……」
貴方「何か物を増やす予定はあるの?」
ほむら「え、まあ少しずつは。しまってたものも少しはありますし……でも今すぐにはちょっと。家具をセットするのも重たそうだし」
貴方「……その時は手伝うよ」
ほむら「本当ですか。助かります」
貴方「そういうのは遠慮しないで頼ってくれていいよ。……ほら、恋人なんだしさ」
約束してしまったけど、守れる日が来るのかはわからない。
……そういえば、結局、恋人らしいことって何にもできなかったな。
そう思うと少し後悔しかけたけど、そういうのはあまりこっちから急いで求めてもよくないんだろう。
-------------------------
以上!
次回は前前スレの余りから!
(貴方「安価でヒロインを攻略するまどか☆マギカ?」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1569759132/))
-------------------------
おまけ編、駆け足になりましたがエンディング回収は7個でした。
杏子がずっと待機でした…。
もう一回初めからやる?
下5レス中多数決・やらない場合はこの話は終了として次を決めます
---------------------------
貴方のヒロイン攻略シリーズ 完!
次から新しいこと決めるよ
13日(土)18時くらいからの予定です
===================================================
そろそろ昔すぎて続編書けないほど忘れてたり、
原作情報不足の頃に書いた捏造過多な話(主におりマギ絡むやつ)は過去作紹介や続編選択からも削ります。
もう需要もあまりないと思うけど、やるなら同主人公で新しく話書いたほうが楽しめると思います。
【供養】
メガほむ編 :[9]>>181~[12]>>666
・・・非情になれないほむらの4ループ目、織莉子たちとの戦い。
・After『夜明け後の一週間』[12]>>93~
アマネ編 :[7]>>807~>>963,[8]>>5~>>130(GiveUp)
・・・抗争に破れて見滝原に来た最弱主人公の野望の話。 ※オリ主※
キリカ編 :[7]>>309~>>704,[8]>>475~[9]>>151
・・・本編時間軸で織莉子が既にいない世界のキリカの話。話はほぼまどマギ本編寄り。
QB編 :[2]>>198~[4]>>502
・・・感情の芽生えたQBの話。
中沢編 :[練習]>>164~[2]>>150
・・・まだ試運転。中沢が安価の導きにより魔法少女たちと関わっていく話。
さやか編 :[練習]>>8~>>154
・・・マミの死後、さやかが魔法少女になって張り切ったり悩んだりする話
・・・試験作。かなりあっさりしてます。
===================================================
*これから*
1新しい話
2続編とか
○今までのおはなし
【続編開始/指定場所からロード】
・なぎさ編【続編:あすみ編後から再開。あすなろ編】
・杏子編【続編:あすなろか安価】
・キリカ編2【続編:小話・ワルプル後新展開】
・あすみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
・+かずみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
・桐野編【キリカルート続編:小話】
○新しい話
★まどマギのほかに、おりマギ本編・かずマギ・漫画版まどマギ・TDS・PSP・劇場版のネタを含みます。
それ以外からのネタは出さないか考慮しませんが、知ってるとより楽しめるネタはあるかもしれません。
★主人公は作品中のモブやオリキャラも可。
★同キャラでも前提設定やルートによって大分話が変わるので2回以上選択も可能。
ただし同キャラで未完結が増えすぎても困るので前の話が完結している場合のみとします。
☆誰が何をする話、とかざっくりでもOK
☆マギカシリーズ外の作品の設定や世界観借りるみたいのもOK(作者が知ってるネタだけになるけど)
※もしかしたらキャラの設定とか個性が原作から崩壊するかもしれないけど、根底にある性質を大幅に変えてしまうことはしません
あくまで持ち味を活かせる形で!
↓5レス程度来たらなんかかんがえる
ID別だと4レス分だけど5レスくらいで多数決とも書いてないので、
今でてるとこから多数決とっちゃいます
1ほむら主人公(アニメ本編ベース)
2なぎさとあすみのW主人公もの(過去作なぎさ編ベース?)
3小巻主人公
下3レス中多数決
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二つの編そのままは合わせられないので設定は練り直します
神様出すならなぎさ編ベースになると思うけど、出ないかも
・詳細が判明してない(あすみに至っては嘘キャラ)から時系列とかは気にしなくていいはず
・今後原作できっちり描写されたら供養入りになる可能性
・今度こそ多分短め
---------------------------------------------------------------------------------------
「――――……こうやって毎日来て、いつも手を握っていてくれる」
「これだけで、お母さん本当に元気になれる気がするわ」
なぎさ「……うん。早く元気になってね」
隠し持った薄紫の宝石が光る。
なぎさの魔法少女としてのあかし。ソレに秘められた魔法の力を母に流し込みながら祈るのは、なぎさの日課でした。
病院の廊下を歩く。病室から出たらひとりぼっちの帰り道。
なぎさ(魔女と戦って怪我をしちゃったときの自分のケガはすぐ治せるのに……)
悪くはなってないから、たぶんぜんぜん効いていないわけじゃない。でもぜんぜん良くならない。
それはきっとなぎさの魔法がまだ弱いから。もっと強い魔法少女になれば、治せるかも。
そうと決まれば今日も魔女をやっつけにいこう!
……どうせおうちに帰ったって一人。一人は寂しい。
なぎさ(続けていれば、きっとまたおうちにも帰れるようになるはず!)
なぎさの願いが違ったら、すぐに治すこともできてたのかな?
――――――
――――私の願いは復讐だった。
幸せすら奪われた私を更に不幸にした人への、『当然の報い』であった。
――――そして、願い<呪い>は叶ったのだ。
男たちもクラスメイトも、同業の魔法少女でさえも全て腐ってた。私はあの街の全てが嫌いだった。
あすみ(……本日の魔女発見か。ま、悪くはないわね? この街も)
この街は狙った通り魔女が居つきやすく、育ちやすい。魔法少女としてはそれだけで十分。
ここが私の新天地。この世界に綺麗な場所があるなんて期待してないけど、同業が少なくて腐ってなければもっと良い。
あすみ「キュゥべえからは一人だけしか聞いてないけど……」
結界の中、聞こえてきた“声”に振り向いた。そこに悪意はない。
なぎさ「あれっ! 巻き込まれちゃったひと――――じゃないのです?」
あすみ「なーんだ、こんな子供だなんて。警戒して損した」
なぎさ「いきなりなんなのです!? 初対面のひとにする挨拶じゃないと思うのです!」
あすみ「……ねえ、お嬢ちゃん。譲ってくれる気はある? この魔女と、これからこの縄張りに出る魔女の一部」
一応、向こうから来るならすぐに武器を振るえるくらいには警戒はしていた。
断られたからって激昂はしないさ。この魔女を取引道具として扱うならそれもやり方としては間違ってない。
あすみ「……」
この返答で相手を見定めていた。
見た目で侮って殺されるなんて愚の骨頂。そんな相手をたくさん見てきたから、その一員にだけはなりたくなかった。
なぎさ「いいのですよ! おねーさんが先に見つけたならおねーさんのものなのです」
あすみ「……あっ そう」
……拍子抜けするような返事だった。
今まで見てきた魔法少女は腐ったような奴ばかりだった。新人いびりも縄張り争いも経験したことがある。
なぎさ「でも、いっしょに戦ったほうがはやくたおせると思うのですよ?」
あすみ「そんなこと言ってグリーフシード横取りするつもりだったりしない?」
なぎさ「しませんよっ! 疑り深すぎなのです!」
見た目で侮ることの危険性はさっきも考えた。
小柄な姿はナメられるのは癪だが騙しやすいのだ。無条件に人を信じることなんて出来ない。
……だから、聞こえてくる【悪意】がないことが信じる根拠。現時点では――だけど。
なぎさ「べつに魔力に困ってないです。魔法はたくさん練習したいですが……」
あすみ「……?」
なぎさ「なぎさ一人じゃ魔女を倒しきれないと思ってたところなのですよ」
なぎさ「魔法少女の仲間なんてはじめてなのです! これからよろしくなのですよ!」
あすみ「……はあ。私は一人で戦うほうがいいけど」
なぎさ「あっ、『やくわりぶんたん』って方法もありますね? たしかにいっしょだと一人のときと同じにしか回れないから……」
なぎさ「――――じゃあ、なぎさは他のところを回ってくるのです! ごぶうんをーです! 次も会ったらよろしくなのです!」
そう言うと、なぎさは駆けて行った。
なんだかやたらと嬉しそうな様子だった。
あすみ(……同業者が見つかったことがそんなに嬉しかったのか?)
……私にはわからない。
――――――
------------------
ここまで
次回は14日(日)18時くらいから
――――――
街を駆け回って魔女をたおして、あくる日もお見舞いと魔女の退治。
おうちに帰っても一人。お父さんは忙しい。
魔女退治も一人だけど、前よりも気にならない。このまちにはなぎさの他にも魔法少女がいるって知ったから。
今日も病院から出て魔女退治にいこうとしてたら、この前のひとに会った。
なぎさ「あっ、この前のひと!」
あすみ「……この前の子供」
なぎさ「こども――で言ったらなぎさたちどっちも子供じゃないのです?」
あすみ「私はあんたほど子供じゃない。アッチのほうの知識も…………なんてね」
なぎさ「アッチ? それはおねーさんのほうがおねーさんですけど……こどもって呼ばれ続けるのもイヤなのです!」
なぎさ「同じ街にいる魔法少女仲間同士、名前くらい知っておくべきなのですよ!」
あすみ「なぎさ」
なぎさ「なんで知ってるのですか!?」
あすみ「自分で言ってんじゃん。あすみ、それも聞いてないほど耳遠くないよ」
なぎさ「あすみ!」
あすみ「はいはい」
ちょっとふしぎな自己紹介が終わると、あすみはどこかへ行こうとする。
なぎさ「あすみは魔女退治中なのです?」
あすみ「いんや。今日は早めに切り上げて休みにいこー思ってたとこ。大体、魔女狩りは昼からやってたし」
なぎさ「お昼から……ですか?」
あすみ「そうだけど? 悪いー?」
なぎさ「あすみはどこの学校に通ってるのです?」
疑問に思ったのは、お昼にはまだ学校があるってこと。
でもそれを聞くとあすみは少しの間押し黙った。
あすみ「……言わなきゃいけない?」
なぎさ「べつに答えたくないならいいのですよ。『こじんじょーほー』ってやつですし」
あすみ「そう。学校に通ってないヤツなんて別に珍しくもないんじゃない? 特にこの業界は」
あすみ「それと、魔法少女同士が仲間だとか思わないほうがいいから。そんなんだとナメられて酷い目に遭うよ?」
あすみ「アンタみたいな子供はただでさえ相手を調子づかせやすいんだ。賢く生きるには、逆手にとって騙せるほど強かにならなくちゃ」
なぎさ「……舐められるですか? くさそうです」
あすみ「そう、小さな子をペロペロしたいロリコンはいっぱいいるってこと」
なぎさ「??」
あすみは最後に茶化したように言った。
それが冗談だってことはわかったけど、それ以外はよくわからなかった。
なぎさ「よくわからないけど、忠告してくれたのですね!」
あすみ「アンタ見てると色々言いたくなる。子守なんてガラじゃないし子供なんて好きじゃない」
あすみはつっけんどんに去っていった。
せっかくお互い名前を知ってるのに全然呼んでくれないなぁ。
――――――
――――――
『なぎさ』とかいう子供と知り合ってから二週間くらいが経った。
それはこの街に来てからの期間ともちょうど同じだ。
やることはほとんど変わらないけど、同業者もあの子供一人しかいない分、ここでの活動は幾分穏やかだった。
思い切ってあの家を出たけどやっていけてる。やっぱりこの世は強い者が勝つように出来てる。
あすみ「……こんなとこで何してんの」
街を散策していると、その外れに魔力の気配を感じた。
魔女はいないが魔法少女の魔力だけがあった。
なぎさ「魔法の練習……です」
あすみ「ご苦労なことね。練習に使う魔力があるなんて」
私が来るまで独占できてたのだから、余裕はあるのだろう。
そういえば、魔法をたくさん練習したいとか言ってたっけ。
なぎさ「……あすみっていつから魔法少女やってるのです? なぎさが見かけたのは最近ですが」
あすみ「ここに来る前は別の街に居た。数ヶ月くらいってとこ」
あすみ「でも契約したての頃から自分よりも経験長いヤツ伸してるよ。経験で全部が決まるわけじゃないから」
なぎさ「そうだったのですね。なぎさもそのくらいか……もうちょっと長いかもです」
あすみ「へー、その間ずっと一人でいたの? 随分と平和な街なのね」
正直、経験で全部が決まらないとはいえ、こいつより短いとは思ってなかった。
私も表社会で平穏に暮らしながら魔女を狩ってる奴らよりは実戦経験は多い自信がある。
魔女だけ狩って平和に過ごしてきた奴よりは私のが戦いを知ってる。しかしなんでこんなこと聞いて来たんだろう。雑談の一種?
あすみ「アンタ、強くなりたいの?」
なぎさ「はい。なぎさはもっともっと強くならないといけないのです」
あすみ「そうだね。強さは大事だよ。強ければ痛い思いしなくて済む」
なぎさ「……それもそうかもしれませんが、なぎさがもっと強ければ痛くさせないで済むんです」
あすみ「……?」
返ってきた答えが予想外で、意味が分からない。
なぎさ「あすみは『回復の魔法』って得意ですか?」
あすみ「……いや。むしろ苦手。そんなのいらないし」
なぎさ「そうですか……。なぎさにはまだできなくても、頼めないかと思ったのですが」
なぎさ「なぎさのお母さん、病気なんです。なぎさが魔法で治そうとしても治らなくて。それどころか……」
なぎさ「―――――悪化したって、お医者さんが言ってたのです」
あすみ「……あのさ、練習って」
よく見てみるとなぎさの手には切ったような傷がついていて、手には血がついたするどい石が握られていた。
なぎさ「病気とこんなケガじゃ違うのはわかってます! でも少しでも治さないと練習にはならないのです!」
あすみ「自ら傷なんて作ってどうするのさ。自傷行為なんて馬鹿のやることだよ!」
なぎさ「なぎさはこのくらい痛くてもいいんです! それに消えます! お母さんのほうがもっとずっと痛いはずです!」
なぎさ「お母さん、少し前まではまだ大丈夫だったんです。ずっと良くも悪くもならないままでした」
なぎさ「余命って言われてたのはもう過ぎてて、でも良くならなくて、今治せないときっと……!」
あすみ「…………」
誰かを助けるために何かしたいなんて、そんな気持ちはもう長い事忘れ去っていた。
……まだ『痛い』んだ、その感覚すら忘れた――忘れようとしてる私と違って、自ら痛みを感じたいと思ってる。
でもきっとどうにもならないだろう。魔法少女の魔法でも治せないのなら。
現に手についた傷は魔法で消せている。経験だけで決まらないと言った通り、契約した時から得意不得意は分かれてる。
なぎさの魔法ではそれ以上治せないんだ。もちろん、私の魔法でも。
少し練習したくらいでその限界を超えられるものか。
*現実を…
1つきつける
2何も言わない
下2レス
あすみ「……無理だよ。魔力の無駄だ」
なぎさ「そんなことないです……! 強くなれば……! 諦めなければ……!」
あすみ「諦めなければ報われる? 現実はなるようにしかならない。奇跡なんて起きないよ。アンタも新人じゃないんだ、薄々気づいてるんじゃないの?」
あすみ「奇跡は……もう『使っちゃった』でしょう?」
なぎさ「――! で、でも! そんなこと、やってみなければわからないです! キュゥべえに頼らないでも奇跡が起こせるって!」
……ああ、こいつ。魔女になるな。
無駄な練習のおかげで魔力を使い切って、トドメに母親が死んで、絶望するんだろうな。
現実を見ればそんな未来が容易に予想できた。
あすみ「あぁもう、頑固だな……。こんなとこで自分を傷つけてるの知ったらお母さんどう思うよ?」
あすみ「奇跡を祈るなら時間が許す限り隣に居てやれよ。……じゃないと多分、後悔するよ」
なぎさ「ううぅぅぅ…………!」
なぎさは傷を治した拳を握って、かたくかたく握りしめて、それから走り出していった。
……その背中を眺めてため息をつく。
あいつが魔女になればグリーフシードが1つ増えて、この縄張りは私だけのものになる。
考えてみればこの状況は悪くないはずなのに、今回ばかりはそんな冷めた思考をする自分が嫌に思えた。
あすみ「何やってんだろうなー……」
まだ奇跡を信じてた頃の自分と被るから、か。
――――
――――
――――
……あれからめっきりなぎさの姿を見かけなくなった。
あれだけ言ってやったのに、その辺で野垂れ死んでないだろうな。
所詮は他人が何を言おうと本人次第。どうにもならないことがあるのを知っていた。
あすみ「ねえ、キュゥべえ。あいつってまだ生きてんの?」
QB「あいつ?」
あすみ「……なぎさ」
QB「ああ、なぎさか。さっき見た時は街外れのほうにいたと思うけど」
あすみ「そう」
生きているらしい。『まだ』、かもしれない。
でも少しだけ安心してしまった。
QB「あすみはなぎさが魔女になると踏んでいたのかい?」
あすみ「まあ、そうだね。条件は揃ってたでしょ。……契約した時から」
QB「なぎさの願いは病気そのものを治す願いではなかった。身近な人の死というのは人間の心理に大きな影響を与えるからね」
QB「病を魔力で治そうとしてたみたいだけど、それも条件の一つだ。希望を抱いてからのほうが絶望は大きくなる」
あすみ「やっぱり、アンタもアレは無駄な努力って思ってたんだ?」
QB「他人のための祈りではあるとはいえ、癒しの祈りで契約しなかったなぎさが病気を治せるとは思ってなかったよ」
無駄だとわかっていて何も言わなかったのもこいつらしい。
こいつに至っては、現実を突きつけるのは可哀想だから――とかそんな理由もありえない。
ただその時が来るのを待っていたんだ。
あすみ「そうね」
だから適当に相槌を打って、それ以上は何も言うことはなかった。こんなのに振り回されていても仕方ない。
なぎさはあの時と同じ場所に居た。
なにもせず、ただぽつんとそこに居るだけだった。
あすみ「……こんなとこで何してんの」
なぎさ「…………」
返事は返ってこなかった。
心がどっか行ってしまったような目でどこかを見つめている。
なぎさ「……お母さんが死にました」
あすみ「……そうか」
なぎさ「ホントははじめから覚悟してたはずだったのです。どうにもならないってわかってたから、願ったのです」
なぎさ「もう長く生きられないから、せめて元気があるうちに食べたいものをプレゼントしたい――って」
なぎさ「それだけを考えていました」
最初は、契約した時にはまだ病気が発覚してなかったのかもしれないと思ってた。
さっきキュゥべえと話してからずっと、なぎさが病気を治すことを願わなかった理由がわからなかった。
でもやっとその理由が分かった。
あすみ「後悔してんの?」
なぎさ「キュゥべえに会ったときは願いで病気が治せるなんて考えてなくて……」
なぎさ「でも、魔力で人のケガを治せるって知って、お母さんの病気もなぎさが治せるんじゃないかって思ったのです」
なぎさ「無理、でしたね。こんなことならはじめから病気を治すことを願っていればよかった……!」
あすみ「私もお母さんが死ぬ前に願えたなら、どんな願いをしてただろうな」
あすみ「そしたら今も生きてるか、自分がどうなってるのかってのはわからないけど、今よりも後悔してないかもな」
なぎさ「あすみも、お母さんが……」
あすみ「でもその時私のところにキュゥべえは来なかった」
あすみ「文字通りアイツとの契約は『奇跡』で、しかも気まぐれなんだよ。その時願ってることしか叶わない。……考える時間でもあれば別だがな」
キュゥべえは素質のあるヤツをマークするだけでなく、願いがありそうなタイミングを見計らっているのだろう。
その瞬間に願いがあれば大抵考える時間など置かずに願ってしまう。多くの人は二つ返事で契約すると前に聞いたが、そういうことなのだろう。
……私もそうだった。既に取り返しのつかなかなくなった今となっては、そこに後悔もないけれど。
なぎさ「……そうですね。なぎさはお母さんを治せなかったけど……」
なぎさ「最後までいっぱいいっしょにいることができた。美味しいチーズケーキも食べさせてあげられた。それだけでも奇跡なんですよね」
なぎさ「この前はありがとうでした」
あすみ「ん」
久しぶりに感傷に浸った。こいつにもまだしばらく時間が必要だろう。
けれど、もうこいつは時間をかけてでも立ち直れる。
空虚の中に少しだけ光を取り戻した瞳を見て、そう思った。
―なぎさとあすみ『出会いと救い編』END―
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まずはここまでー
この二人(+QB)しかいない話終了。続きやるなら時間が飛ぶよ。
次回は多分17日(水)くらい。平日の開始時間は20時くらいになりそう。
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一区切りつきましたが、まだ続きやります…?
1続・なぎさとあすみの見滝原
2新しい話
3ほかの続編とか
下3レス多数決
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――――――――――
――――――
「う…………」
身体中が痛い。何が起きたかわからなかった。
いや、わかりたくなかった。
自分のことも、ずっと一緒にいた人のことも、なんでこんなことになってしまったのか受け入れられないでいた。
ついさっきまであったはずの日常があっさりと消えてしまった。
さっきまで見ていた景色と同じ世界。なのに、自分たちだけがこんな目に……。
――――ここはどこ。
『――――』
「……ぁ……」
『……困ったね。喋れるかい?』
大きなしっぽを揺らす、獣の影が見える。
そこに手を伸ばしかける。
『まだ意識はあるみたいだから、急がないとね。間に合ってよかった』
――――あなたは、誰?
「――――叶えてほしい願いを言ってごらん」
―――――――――――――――
続・なぎさとあすみの見滝原
―――――――――――――――
これは状況的にマミさんかな?
――――――
――――
なぎさ「…………」
あすみ「ありゃー、こりゃダメだよ。どう見ても死んでる。使い魔がいないと思ったらそういうことだったのね」
なぎさ「治せない、ですか」
あすみ「この世界じゃよくあることでしょ。今までが平和すぎたんだ」
結界の中、奥地に足を踏み入れた途端になぎさの目は『ある一か所』に釘付けになった。
人の死体。それだけなら見ることはある。こいつだって魔法少女としての活動は短くはない。
いくら助けようとしたって間に合わないことなんていくらでもある。……私は助けようとしてるってわけでもないけれど。
そして、これはなぎさにとって初めてだったらしい。結界の中で転がってるヤツは、少し前に見かけた魔法少女によく似ていた。
数日前、初めて新人と会ったなぎさは後輩ができるって喜んでいたところだった。だが、それもほんの束の間で終わってしまった。
あすみ「……集中できなくなったんなら帰ってもイイんだよ? それよりやられ方から戦略でも考えたほうが建設的だと思うけど」
なぎさ「なぎさも戦えますよ! 魔法少女なのですからっ!」
あすみ「なら、足だけは引っ張んないでね」
ようやく二人は魔女と戦う態勢に入う。
なぎさは遠くから、私は距離を詰めていっての攻撃。一緒に戦ったことはいくらかあった。
――ほんの最初だけは自分の力を見られるのを警戒したけれど、こいつを見てればすぐに馬鹿らしい気分になった。
今では魔女狩りの途中で会えば一緒に行くこともある。おかげで二人で戦うのも慣れたものになってきた。
正直、私としてはいてもいなくてもどっちでもいいってとこだけど。
今回みたいなことがあってツマンナイことで死なれても、それはそれでイヤな気はした。
あすみ(せっかく私のおかげで助かったんだもんね)
あすみ(……ま、本人は知らないだろうけど)
あすみ(しかし、『このこと』もいつまで隠しておけばいいのやら。こうしてその場を見たりしない限り、知らないままになるのかね?)
なぎさはまだどうしようもなく平和ボケしたところにいるけれど、戦いの腕は悪くない。
魔女との戦いはさほど長引かずに幕を閉じた。
なぎさ「ど、どうしよう! 消えてしまいました……!」
あすみ「何が?」
なぎさ「戦いが終わったら、せめて遺体だけでも帰してあげようと思ったのです! なのに!」
あすみ「あー……、一般人の犠牲者が取り込まれた時も死体って残んないじゃん? 生きた人しか帰れないってことじゃない?」
言われてみれば、あんまり考えたことなかった。
だとすれば魔女結界は不法投棄にもってこいの場所ってこと。
あすみ「それに、あんなやられ方した遺体なんて見つかったら絶対騒ぎになるよ?」
なぎさ「そ、それは……動物園から猛獣でも脱走したのかと思われちゃうかもですね……」
あすみ「そう。つまりどうしようもないってこと。死ぬな、としか言えない。もう遅いけど」
なぎさ「そ、そんなぁ……」
あすみ「…………」
戦ってる時はまだ大丈夫だったけど、なぎさは結構マジな落ち込み方してるみたいだった。
これは連れ回してても足引っ張るんじゃないかな?
なにより、横でウジウジされるのはうざい。
なぎさ「……なぎさは運がよかったんですかね」
なぎさ「今なら負けない自信がありますが……契約したてで一人で魔女と戦っても、こうして生きています」
あすみ「あぁ、そうだね。結局運だよ運。生きるのも死ぬのも、どんな目に遭うかも」
なぎさ「なぎさが先輩としてついてあげてれば死ななかったのでしょうか」
あすみ「次に会う後輩にはそうしてやったら? 恩を売れば利用は出来るかもよ。まあ、あんたじゃ逆に利用されるかもしれないけど」
なぎさ「お、恩を売りたいわけじゃないのです!」
この世界はこいつが思ってるより残酷で、強くないと生きていけない。
でも、残酷なものを見ても心が動かなくなるのが強くなること? 私は少なくとも、そう思ってきたところはある。
動揺しないから力を出し切れる。自分の強さを否定したくない。
この先何度も見ていればいつかはなぎさも慣れてしまうのだろうか。……人の死も、絶望でさえも。
あすみ(そんな時が来るとしたら私が話すのはその時、か?)
あすみ「今日はもう帰ったら?」
なぎさ「はじめたばっかりです! まだ帰りません!」
あすみ「何ムキになっちゃってんのよ」
なぎさ「……それに、この時間じゃ帰ってもどうせ一人です。魔女退治が終わったら大きなケーキを出しますから、あすみも一緒に食べてください」
母親が居なくなったこともあって、あれからなぎさはどうにもこっちに依存しているような節があった。
同じ縄張りの魔法少女ってだけの関係の相手に、どうしてこんなにベタベタと懐けるのかわからない。もう少しマシな相手はいるだろうに。
あすみ「ん、まー……食欲があるんなら大丈夫そうね」
なぎさ「人をくいしんぼみたいにっ! でも、食べることは大事なのですよ。人生の楽しみになります!」
どうせ一人……か。
私も一人だけど、特に気にならない。むしろ解放された気分だったから。
これも、強さに入るのだろうか。
なぎさ「そういえば、あすみはどこに住んでるのですか? 駅の方でよくおみかけするのですがっ」
あすみ「じゃあそこらへん」
なぎさ「じゃあとは!? ……うー、あすみにはお世話になっているので、ご家族やお友達がいればそのひとたちにもおすそわけしようと思ったのです」
あすみ「いや…………いないよ。家族も、友達も」
そう言うと、なぎさはどう返したらいいものか悩んだような顔をした。
どっちも当たり前にいるのが普通なのかと改めて思わされる。孤独に耐えらえるのは強さ? でも、これじゃその真逆だ。全然強そうじゃない。
なぎさ「そ、そうですか……」
あすみ「……惨めに思うのはやめて」
なぎさ「まあ友達はいますけどね」
あすみ「はあ? えーっとまさかそれ……」
なぎさ「なぎさたち、お友達ですよ! そう言ってくれなきゃ悲しいです!」
言うと思った。でも、まるで漫画の中みたいな安っぽいセリフに思えてしっくりこなかった。
ひねくれてる、とは思う。
『友達』も『孤独じゃない』も、もう私にはわからなかった。
――――
――――
お家に帰ったあと、最近――ひと月くらい前に新しくできたお友達とさっきまでなぎさはいっしょに居ました。
魔女退治の後は、とびきり大きなケーキをたいらげて、今日はおひらきです。
ケーキは作ったのでも買ったのでもありません。火はあぶないし、手作りなんてとてもできません。
これが、なぎさの魔法。
『ひとつきりのチーズケーキ』を願ったなぎさが得た、皮肉ともいえる魔法。
……一人じゃなくなるまでいてくれるようにあすみに頼んだのですが、お父さんが来る前に帰ってしまいました。
でも、待っていたら夜になってしまうから、それが正解だったかも。お父さんも最近忙しいみたい。
それに、あすみはあまり会いたくないって言ってた。
*「なぎさ、ご飯はちゃんと食べたか?」
なぎさ「それはもうたくさん! そうだ、お父さんの分もあるんだった。 ケーキ!」
*「ケーキか……ありがたいけど、お父さんも食べてきたしもう夜遅いから、余ったなら明日にでもとっといたらいいんじゃないか」
*「でも、なぎさを信頼してお金を渡してるけど、お菓子ばっかりじゃダメだぞ」
なぎさ「う、うん。お菓子だけ食べてるわけじゃないよ。お弁当とかも買ってるから」
*「そうか。ちゃんとお留守番出来てて偉いな。なぎさはもう小さくないもんな」
なぎさ「うん……」
寂しい、とは言えない。
あすみのことを聞いたらますます言えなくなった。
家族も友達もいないなんて。……それを、あんなに平然と言うなんて。
なぎさ(今度、料理とか習ってみようかな? あすみはおねーちゃんだからできるかも)
――――――
あすみ「料理を習いたい?」
なぎさ「はい。なぎさは大体お弁当か魔法でつくったケーキですましちゃうので、これってあんまりよくないんじゃないかなあ……と」
なぎさ「あと、なぎさが料理できるようになればお父さんも安心しますし、早く帰ってきた日には食べさせてあげることもできるのです!」
あすみ「今はどのくらい出来んの?」
なぎさ「今……今は……この前学校できゅうりを切ってサラダをつくりました」
なぎさ「あと、ねるねるね○ねならつくれます……以上なのです」
あすみ「それ料理じゃないし。てか、金もあって魔法で腹も満たせるならよくない?」
なぎさ「うー、んー、ですから……」
話がループしそうになったところで、ある可能性を思いつきました。
なぎさ「あっ! さてはあすみもできないんですね?」
あすみ「いや、できるし。今は必要ないからしないだけ」
なぎさ「またまたー、そんなこと言っちゃって」
あすみ「はぁぁぁぁぁああ?」
かかってきた。目標が食いつきはじめているのがわかります!
あすみはこう見えて負けず嫌いっていうことまで計算済みなのです。
あすみ「そこまで言うなら今日の夕飯だけ作ってやらんでもないけど? てか、食いたいだけでしょ?」
あすみ「市販の弁当なんて添加物まみれの贅沢品! 魔法で作るのは魔力の無駄!」
なぎさ「わーい!」
……ずいぶんと市販品をボロクソに貶しましたが、あすみはいつもどうしているのか気になります。
-------------------
ここまで
次回は18日(木)20時くらいからの予定です
――――今日の魔女退治をすませると、所変わってさっそくうちの台所へ。
その冷蔵庫の前。
あすみ「……何もないんだけどー」
中を開いたあすみが呆れた声で言いました。
お母さんが入院してから、うちの冷蔵庫はガラガラです。
なぎさ「ありゃりゃ、普段料理なんてしないから。あってもなぎさのおやつくらい……」
あすみ「そういやこれ、昨日のケーキの残り?」
なぎさ「あ……そういえば忘れていました。お父さんにあげようと思ったのですが、食べる暇ないから食べていいって」
あすみ「ふーん。ちなみに魔法で出したケーキってどのくらい持つの?」
なぎさ「言われてみればわからないのです……そんなに日を置いたことはなかったので」
あすみ「自分の魔法くらい把握しなよー。まあ、この魔法じゃ戦いに役立ちそうもないけど」
あすみ「……ねえ、毒入りケーキでも出せれば攻撃になるんじゃない?」
なぎさ「それはパティシエールのプライドがゆるさないのですよ。それに魔女や使い魔に食べさせるよりフツーに攻撃したほうが早いのではないのですか?」
あすみ「魔女や使い魔が相手ならね」
なぎさ「……」
あすみがなにかよからぬことを考えています。
なぎさ「だ、だめなのですよっ。あすみは魔法少女を敵視してますが、なぎさは仲良くしたほうがいいと思うのです!」
なぎさ「なぎさたちだって仲良くなれました。魔法少女とは言ってももとは人間なのです。ほかのひとたちと変わりなく……」
なぎさ「なぎさには、魔法少女だからってそんなに悪い人がいるとは思えません。むしろ、同じ使命を持った仲間なんじゃないのですか?」
あすみ「変わりなく……ね」
なぎさ「はい。なぎさは昨日みたいなことはもう起きて欲しくありません。そのためにも、助け合わないといけないのですよ」
あすみ「あー、昨日のねえー……それで張り切っちゃってんのか」
あすみ「まあ、仲良くなれるかっつったら相手次第じゃない? まずは警戒するに越したことはない」
なぎさ「こっちから信じないと仲良くなれるものも仲良くなれません!」
なぎさ「それでもなぎさは仲良くしたいですが、そういう人ばっかりじゃないのはなぎさも知ってますから……」
あすみはどうしてこう頑ななのでしょうか。
あすみは寂しくないのでしょうか?
なぎさはあすみのおかげで少し寂しくなくなりました。それに、はじめて後輩に会った時だって……。
あすみ「……別に敵意向けろって言ってんじゃないよ。アンタが今言ったのとは逆で、誰彼構わず敵意向けてたとしてもいつかやり返されるしそりゃアホだ」
あすみ「ま、よほど自分の実力に自信があればそれでもいいかもしんないけどね?」
なぎさ「だめですって!」
あすみ「でもさ、変わらないって言ったけどさ、そもそも人間だってクズくらいいるんだよ」
あすみはリビングでついているテレビの画面に目を向けました。
……やってたのはちょうど殺人事件の報道でした。
あすみ「こうして見えてる範囲なんてほんの一握りだよ。世の中の人がみんないい人なら防犯なんて必要ないしいじめも起きない」
なぎさ「で、でも……魔女退治は人助けの活動なのです。悪い人が契約できますか!?」
なぎさ「それに、みんななぎさたちと変わらないくらいの普通の女の子なのです。悪い事しようとしてる人がいたとしたら、止めてあげるのが仲間ってものですよ!」
あすみ「…………」
なぎさが熱弁すると、あすみはそれ以上言い返してきませんでした。
しぶしぶって感じですが……。
あすみ「……買い物行くでしょ? 早くしないと夜になるよ」
あすみに言われて思い出しました。すっかり忘れかけていたのです。
出会ってもいない魔法少女のことなんて、今話しててもしょうがないのかもしれません。
なにせ、なぎさが契約してから見滝原で出会った魔法少女なんて、まだ二人だけなのですから。次の出会いがいつになるかもわかりません。
なぎさ(……でも、あすみももっと仲良くしようとしてくれたらな)
――――
――――
なぎさ「お買い物、お買い物♪ そういえば、あすみの得意料理ってなんですか?」
あすみ「得意料理?」
返事がなかなかかえってきません。
なぎさ「あのー、やっぱり料理できないのです……?」
あすみ「違う! ……まあ、何作るかは決めないとね。で、アンタは何食いたいの」
なぎさ「それはなんでも作れるってことで!?」
・リクエスト
自由安価
下2レス
なぎさ「じゃあ、今晩はカレーがいいです」
あすみ「うん、そうだね」
なぎさ「だってちゃっかりルー持ってますし。なぎさが何と言ってもカレーにする気でしたよね?」
あすみ「一応聞いてやるつもりはあったけど、あんまりご大層なものを言われても無視する気だったよ」
あすみ「目的忘れた? ただ作ってやるんじゃないんだよ。アンタが作れるくらいのにしないと意味ない」
なぎさ「それもそうでした……」
リンゴとハチミツのパッケージ。みんな大好きカレーライス。
お手伝いではじゃがいもの皮剥いたくらいかな? なぎさからすれば十分すぎる難易度なのですが。
なぎさ「でも、甘口じゃなくていいですからっ! 子ども扱い、求めてません!」
あすみ「あー、そうだった?」
なぎさ「もしかして……なるほどなるほど、あすみが甘口しか食べられないのですね。それなら無理しなくていいのです!」
あすみ「そんなことないよ。じゃ、こっちにしよう」
なぎさ「あっ!? だからって急に辛口にしなくても!」
あすみ「ほらほら、強がるなよ」
なぎさ「極端なのです」
……他の材料も揃えてから帰りました。
あすみ「――じゃあ肉と野菜を一口大に切って。一応包丁は使えるんでしょ」
なぎさ「らじゃー!」
台所に立つと、野菜の皮を剥いて、あとは切るだけの状態になりました。
お料理を作るとなると全体像がつかめませんが、ここまでひとつひとつは手伝ったことのある作業でした。
お米はその間に炊いてくれました。
なぎさ「あの~。玉ねぎが目に染みるのですが」
あすみ「……魔法。魔法で痛覚切れば」
なぎさ「魔法で? そんなことできるのです……?」
あすみ「出来ると思えば出来るよ、多分」
なぎさ「まあいいのです。せっかく魔法を使わないお料理なんですから、頼らないことにします」
あすみ「まあ、そんならそれで。それより、ヘタのまわり切りすぎ」
なぎさ「あすみって意外と所帯じみてますよね……倹約家というのでしょうか」
あすみ「貧乏魂って言いたきゃ言えば」
……とまあ、そういうところを見ると本当に料理が出来ないってことはないのかな―と思ったりしますが、
豪勢な料理を作る感じイメージからも離れていきます。
あすみ「全部切れたねー。じゃああとはタイマーでもかけて待つか」
なぎさ「煮えたら終わりなのです?」
あすみ「ルーも溶かしてね。またちょっと煮たら」
なぎさ「たしかにこのままじゃ肉野菜スープですね」
あすみ「味つけ変えれば別の料理になるってことだよ。レパートリーが増えたね」
なぎさ「なるほど、これが応用ってやつなのですね。初めてすぐに応用編がわかるなんて、なぎさも料理の腕がランクアップした気がするのです」
あすみ「……まあ、野菜とかまだ残ってるしやってみたら」
タイマーが鳴ったあと、鍋にルーを溶かしてさらに煮込むと良い匂いがしてきました。
まさにこれはカレーのにおい! とろみ! よそってみても食べてみても、まさしくカレーなのです!
なぎさ「ちゃんとカレーですよ! 美味しいチキンカレーなのです! 二人で食べてもまだ鍋にありますね」
あすみ「四皿分だからね。残せるくらいがいいって言ってたでしょ」
なぎさ「はい。これを見せて、なぎさも料理できるんだよってお父さんに自慢して、安心してもらって……」
なぎさ「……できたら食べてもらいたいな。今日も遅いのかな」
魔法で作ったお菓子はわかりませんが、これは普通のお料理です。
きっとそんなに持つわけじゃありません。
なぎさ「あっ、そうだ、今度はお休みの日になら……!」
あすみ「……まあ、頑張れば」
なぎさ「それにしても、あすみは本当にお料理できたのですね。疑ってごめんなさいなのです」
あすみ「出来るって最初から言ってたでしょうが」
なぎさ「なぎさも火とか使っても大丈夫なのでしょうか? 今まで包丁もお母さんや先生が見てるとこでしか使ってないのです」
あすみ「危ないからって理由なら私達には理由にならないでしょ。最悪怪我したって治せるんだし」
なぎさ「ああ……魔法ですか。そういえば料理の最中にも言ってましたね」
なぎさ「あすみは料理しないって言ってましたが、普段はどうしてるのです?」
なぎさ「ボロクソ言ってましたが、結局出来合いや外食です?」
あすみ「いや…………食べてなかった。面倒くさくて」
なぎさ「ええ!?」
あすみ「アンタは魔力でお菓子を出せるでしょ。私は怪我を治す要領で魔力そのもので補うってだけ。同じようなものじゃない?」
あすみは魔法の力をかなり身近に考えてるみたいです。
なぎさもお菓子作りの魔法は普段の生活にも取り入れてました。
でも、それ以外にはやっぱり魔法は戦うために使うものってイメージのほうが大きいのです。
なぎさ「でも……それはやっぱり味気ないですよ。それに、『魔法のケーキは魔力の無駄だー』って言ってませんでしたっけ?」
あすみ「今いるとこキッチンもないし。てかあったとしても、空腹を満たして栄養補給するだけの行為って考えたら一人じゃ面倒になるよ」
あすみ「大体、飯買うための金得るのだって魔力使うのにさ」
なぎさ「そういえば、家族がいないって……。自分でお金を稼いでるのです? 魔法を使ってお仕事でもしてるのですか……?」
あすみ「……。まあ、そんなとこ」
あすみはどこか影のある様子で言いました。まるで詳細は語りたくないというように。
真実はわかりませんが、あまり良い雰囲気ではありませんでした。そもそもあすみもまだお仕事なんてできない年齢。
なぎさも後ろめたい世界にある仕事の事情はろくに知りませんが、悪い方に想像は膨らみます。
なぎさ「まさか、けしからんことでもして稼いでるのでは……!?」
あすみ「何想像した? 魔力だよ? 身体は使ってないからねー?」
なぎさ「い、いえ……! とにかくまた一緒にお料理しましょう。あすみもまた新しいお料理教えてください!」
なぎさ「そして応用を身につけて、なぎさはいつかあすみを超えてみせるのです!」
あすみ「……また気が向いたらね」
そう言うと、あすみもまんざらではなさそうでした。一人だから面倒くさくなってしまうのです。
それに……なぎさも一人は嫌でした。
――――――
-------------------------
ここまで
次回は20日(土)18時くらいからの予定
――――今日もお父さんは会社で、なぎさは学校です。
昨日は本当に久しぶりの家でのカレーライスでした。
学校の給食でもカレーは出ますが、一年生の子も同じものを食べるのでかなり甘くしてあるのです。
それも美味しいのですが、市販のルーを使った昨日のカレーのほうが『家の味』に近い味でした。
なぎさ(昨日はお父さんもいつもより早く帰ってきたし、カレーも食べさせてあげられたのです!)
なぎさ(お休みの日に作るのはまた別のお料理を考えなくてはいけませんね……)
褒めてもらえた。安心してもらえた。
なのにまだ何かが『足りない』気がするのはどうしてなのでしょう。
……お父さんには安心してもらいたいけど、なぎさは一人でも大丈夫なんだって安心してもらうほど、離れていくんじゃないかとも思ってしまうのです。
なぎさ(今日はまだカレーがあります。でも昨日よりは少ないくらい)
なぎさ(二日目も普通のカレーにするか……あすみをさそって一緒にアレンジを考えてみるのも楽しいかもです!)
なぎさには学校があります。授業は退屈なこともありますが、学校は楽しいです。
お昼はみんなといっしょに給食を食べます。
休み時間は友達といっしょに遊びます。
……それでも。
なぎさ(魔法少女のことを話せるのも、お母さんのことを知ってるのも、あすみだけなのです)
――――――
――――――
あすみ「…………今、何時だろ」
起床時間はとくに決めていない。
ここを出る時間は人が来るような時間にならないうち。
あすみ(学校行かなくなってから、ホント時間を気にしなくなったよな)
夜更かししてやることは特にないし、そんなに遅く起きることもないだろう。
最悪、人が来たとしても部屋を間違えたとでも言って出ればなんとかなるだろう。……子供だから。
本当だったら一人でこんなところに来るはずもない。
私は『子供のくせに』や『女のくせに』という言葉が嫌いだ。“アイツ”がよく言っていたからだ。
侮られたくないと思いながら、結局子供らしさというものを盾にして頼っていることに気づくと癪に障った。
あすみ(とはいえ、毎日真っ当に泊まれるくらいの宿泊代を手に入れるとなるとシャレにならないし、見た目も細工しないと一人じゃ泊まらせてくれないだろうな)
あすみ(……今日は何して過ごそー。魔女狩りは放課後なぎさが誘ってくるかもしれないし、軽く街うろつくくらいにするか?)
街を見回るついでに魔女がいたら狩る。使い魔もあらかじめ見つけて目を付けてたほうが後々狩りやすい。
……しかし、知らない地で見聞きするものが新鮮だったのはほんの最初の頃だけ。
ひと月程度もすればここにもそろそろ慣れ始めていた。
あすみ(慣れてる方が魔女を狩るにはいいんだろうけど)
なぎさの母親のことがあってから、一緒に狩りに行くことも増えた。
狩りの途中で偶然会ったときだけだったが、大体どのくらいの時間にどの場所に行けば会えるかは決まってきている。
昨日は連絡があって待ち合わせた。
今まではどちらも好きなように魔女を狩っていたが、こうなると、一緒に居る間だけはどちらかに合わせなきゃいけないことも出てくる。
まず第一の問題は使い魔を倒すかどうか、だった。なぎさは私が見逃そうとした使い魔も倒そうとする。魔女と使い魔の区別がつかないとかでもなく。
……そんなことで悩むことがあるなんて思いもしなかった。
何度も不思議に思ったが、なぎさはもう新人ではない。正義に燃え滾った新人ならありえない話じゃないけれど。
あすみの最初に居た街では、そんな人は真っ先に意地汚い人たちに潰されて死んでしまったから。
それが普通なんだと思うようになってた。
あすみ(……そうだ。この街だって、いい魔法少女だけが現れるなんてありえないんだよ)
なぎさはああ見えて頑固だ。前にも思ったことがあるが、昨日話を聞いてさらにそう思った。
あの新人のことで、他の魔法少女に対しても仲良くなるだの助けるだのと意固地になっているようだった。
その思いが良い方に作用すればいいが、現実はそうはいかない。
見て見ぬフリは同罪だ。意地汚い輩が勝つ世界なんて嫌だ。
それでも、それがこの世界の真理であることはよく知っていた。――だから私は、この世界が嫌いだった。
そして、そんな世界でも私は何者にも負けたくはなかった。
あすみには自分に向けられた『悪意』を察する力がある。そして、その『呪い』を向け返す力がある。
当然、自分以外に向けられたソレにはその力は及ぶことはない。
あすみ(つまんね……マジで飽きた。街なんてどこも同じような景色だ。人だらけ、建物だらけ)
あすみ(いっそもっと田舎のほうでも行くか? でもそしたら魔女は減るだろうな)
魔女は『悪意』と『呪い』の塊である。人もいないのどかな場所じゃ魔女も少ない。
――【魔女】はその二つに呑まれた魔法少女の成れ果て。
あすみ(いや、意外と田舎の村とか陰湿って聞くな。少なくもなかったりして?)
……ともかく、田舎云々は冗談だ。一時の気の迷い。心の中で思うだけなら、冗談みたいなことを思うことだってある。
そんなどうでもいいことを考えながら歩いていると、病院のほうから一人の女が出てくるのが目に留まった。
通行人なんて普段一々気にしないが、それが目に留まったのは、キュゥべえが隣にいて手にはソウルジェムを持っていたからだった。
あすみ(…………)
思わず隠れて様子を窺う。ここからだと声は聞き取れない。
だが、魔法で心を読み取れば声以上のものも聞き取れる。
『――――この宝石が光るところに魔女がいるのね?』
QB『そうだよ。ソウルジェムは魔力を感知することができるんだ。光の明滅が強くなるほど近くにいることになるよ』
『思ったよりも足だのみなのね。魔女探しというのは……』
どうやら女は契約したてらしい。
あすみ(女……なぎさより年は上だろうけど、そもそもなんでこんな時間にこんなとこにいるんだ? 入院でもしてたのか?)
言葉とともに読み取れたのは漠然とした『恐怖』と『不安』だった。
言葉としてまとめられていないままの感情の中に、短い言葉がとぎれとぎれに思念となって現れる。
『怖い――そんなの無理――死にたくない――……お父さんとお母さんみたいに』
あすみ(両親を失ってるのか。『死』を身近に感じて見てる。それで恐怖が焼きついてるんだな)
あすみ(……どーりで暗い顔してると思った。これから戦いに行くって顔じゃない。いや、死地に行く少年兵みたい)
新しい魔法少女との出会い。その時は思っていたよりも早くに訪れた。
それも契約したて。だからといって性根などわからないのだからすぐに信用はできない。
あすみ(『後輩』、か)
『次に会う後輩にはそうしてやったら?』……なんて、前言ったっけ。
軽いこと言わなきゃよかったかも。
あすみ(これから付き合うかもしれないんだし、探っといてやるか)
あすみ「おーい、お姉さん。これから魔女狩りなら一緒にどう? そいつよかいいサポートになるよ?」
あすみ(……クズならその場で潰す)
――――――
――――――
学校が終わった放課後。
携帯を手にして待つこと数十分……時間を見直してみたらそろそろ一時間というところでした。
なぎさ(返事がこない……。あすみ、気づいてないのですかね)
今日もお誘いしたのですが、今日はお返事がいっこうに来ません。
昨日はすぐにお返事きたのに。
なぎさ(まさか、何かあったんじゃ…… ううん。そんなの、考えすぎですよね)
なぎさ(仕方ない、一人で魔女退治に出かけましょーか……)
少し寂しさを感じますが、なぎさは出発します。
もしかしたら、途中でどこかで会えるかもしれません。お返事がくればまた場所を考え直して会えばいいのです。
そう思ったところで、知らないおねーさんから声をかけられました。
「――きみが百江なぎさちゃんだよね?」
なぎさ「はい、そうですけど……おねーさんは?」
「キュゥべえから聞いたんだ。『魔法少女のセンパイ』がここにいるって」
なぎさ「あ、新しい魔法少女さんですか! はじめまして! なぎさはなぎさっていうのです! ……って、もう知ってましたね」
なぎさ「おねーさんの名前はなんて言うですか?」
「おねーさんでいいよ。その呼び方は可愛くて好きだから」
なぎさ「えへへ、可愛いなんてー」
「じゃあ、どうしたらいいか案内してくれる? 魔女っていうのを倒すんだよね? 契約したばっかでどうしたらいいかわからないの」
――――――
――――――
あすみ「お姉さん、入院でもしてたの? どこも怪我とかしてるようには見えないけど」
マミ「ええ。といっても検査入院だけ。……見た通り私は本当に怪我なんてしてないのよ。検査でも何も悪いところなんて見つからなかった」
マミ「キュゥべえに『助けて』って頼んだから。本当に怪我が治って助かったの。……私だけ…………」
あすみ「怪我、してたんだ」
マミ「……事故に遭って」
移動しながら怪しまれない程度に探りを入れる会話をする。
この新人は『巴マミ』という名前らしい。自己紹介はさっき済ませた。
この言いぶりとさっき読心で聞いた声からすると、事故で家族全員怪我を負って、自分は願いのおかげで助かったものの親はそのまま死んだってことなのだろう。
哀れだとは思うが同情するほど心は動かない。
この世界でよくある、ありふれた不幸。魔法少女には不幸な身の上が多い。そのほうがインキュベーターが付け入りやすいからだ。
私やなぎさも含めて、なんだろうな。
だが、哀れな身の上だからといってソイツが善良な人間かどうかは別問題。むしろそのほうが性根が歪みやすいともいえる。
あすみ(……それこそ、私みたいに?)
そんな私が新人のサポートなんてしてやってるのは、害がないかどうか選別する為だけだ。
害がなさそうならなぎさに引き渡してやってもいい、くらい。そのあとの世話はなぎさに丸投げしてやる。
マミ「私や神名さんのほかにも他にも魔法少女っているの?」
あすみ「ええ、そうだけど。……なんでそんなこと気にするのよ」
他の魔法少女のことまで聞かれると思わず目は厳しくなる。探るのはいいが探られるのは抵抗がある。
マミ「キュゥべえから魔女のことを聞かされたのだけど……その時に、グリーフシードっていうのを巡って競争が起きることがあるって言ってたから」
マミ「争いや強盗の被害に遭わないように気を付けてくれって」
あすみ「へえ、珍しく忠告をしてくれてるのね」
キュゥべえがわざわざ言うなんて、本当にその問題が差し迫ってるか……もしくはマミの言っている理由がでっちあげかのどっちかだろうか。
いや、読心で見て怪しい点がないのだから、契約したてというのは信じられる。
あすみ「そんなこと聞かされて、よくいきなり現れた私を信じられたね?」
あすみ「聞かされた通り、私に潰されるかもしれないのに」
マミ「私……契約したのは数日前だけど、今までは入院してたから、まだ魔法って使ったことはないの」
マミ「本当に神名さんがそうする気なら、私にはどうすることもできないわね……。でも、魔女に一人で戦って勝てるかどうかもわからないんだもの」
マミ「グリーフシードというのを差し出せば済むのなら、それでもいいわ。二人で倒すのならあなたのほうが受け取るべきなんじゃないかしら?」
なるほど、剥がされるような身ぐるみはないし、報酬ならくれてやってもいいってことか。
あすみ「そうね、それで私という名の戦力が手に入るならたしかに安いものでしょうね?」
あすみ「でもね、まだ甘いよ。本気で新人をいびる気ならもらうのはグリーフシードだけじゃ済まない」
あすみ「競争相手になる可能性のある芽は確実に摘む。そういうものだよ」
マミ「…………」
そんなことを言ってやったらマミはちょっと青ざめた顔してたけど、なぎさみたいな甘い考えを持つ前に教えてやったほうがいいだろう。
話しているうちに魔女の反応を見つけて、マミのほうを見やる。
……話に気を取られて明滅に気づいてない。
あすみ「魔女がいるよ。ほら、レッツゴー」
マミ「え、ええ……」
なんとも頼りない返事がかえってきた。
マミ「どうして神名さんは魔女がいることがわかったの?」
あすみ「あぁ、それね」
結界を目前にしてマミが聞いてきた。
マミが言ってるのは、『ソウルジェムを持ってないのに』ってことだろう。
……そりゃそうだ。いくら新人の前とはいえ、自分の弱点を晒して歩く気にはなれない。
あすみ「勘だよ。もうちっとやってりゃ誰でもわかるようになるよ」
マミ「そう……そういうものなのね」
あすみ「もういい? 逃げられるから行くよ?」
マミ「待って、さっきも言ったけど魔法ってまだ一度も使ったことがないのよ? 一度確認だけでも……」
あすみ「中でやれ!」
入口を開き、手を掴んで中に飛び込む。
マミ「きゃっ、きゃああ!」
自分の時を思い返したってこんなにウジウジしてなかったのに。――……ああ、やっぱり新人の世話なんて面倒だ。
――それから結界に入って変身しても、マミはいちいち驚いてた。
マミ「すごいわ。本当に子供の頃に見たアニメみたい!」
あすみ「そう。少しは戦える気になった?」
マミ「ええ……少しね」
あすみ「大体アンタは考えすぎなの。常識的にありえないとか考えるから枷がかかるの。出来ると思ったことは出来るのよ」
あすみ「……もちろんなんでもとは言わないけど。出来ることはわかるように出来てるはずなんだから」
マミ「魔女って……あれ? あれが敵なの?」
あすみ「あれは使い魔。敵には変わりないね。魔女がいるのはいちばん奥」
ちんたらしているうちに使い魔がこっちに迫ってた。
自分で倒してしまおうかと思ったが、こいつに倒させてみたほうがいいと思い直す。
あすみ「ほら、倒しなよ。いい練習台がいるじゃないか」
マミ「た、倒すって、どうやっ……――」
マミの顔つきがその一瞬で変わったのがわかった。さっき私が言ったことを思い出したらしい。
多分、真面目なタイプ。ありえない不思議現象とかそのまま受け入れたりできないような。
でもその分、完全に自分のものにしてしまった後は化けるかも。
手の先からリボンが伸びて、使い魔を切り裂いた。威力はあんまりなさげ?
『もう一発!』と私が掛け声をかければ、もう一発リボンが伸びて、今度は魔女を絡めた。そこに私が鉄球を当てて倒す。
あすみ「アンタの魔法って、リボンで縛ってSMプレイってとこ?」
あすみ「動きを止めた後どうやってやっつける気だったのさ。こんなのに手間取るな。次行くよ」
マミ(さっそく帰りたくなってきたわ……教官が厳しすぎます……)
――――
――――
-----------------
今回はここまで
次回は21日(日)18時くらいから
使い魔を試し斬りさせながらの道のりは、普段よりかなり時間がかかっていた。
……あれこれと苦戦しながら、やっと魔女の住み処へと辿りついた。
あすみ「さっさと倒して終わりにしましょ。アンタは出来るとこだけ参加すりゃいいから!」
マミ「え、ええ……」
あすみ「まあ……出来るだけ敵の動き止めといてくれると助かるわー」
試し斬りといってももう少し、剣でもナイフでも斧でも槍でも――わかりやすいものがあっただろうってのが正直な感想。
なぎさのシャボン玉ラッパも一見武器に見えないが、あれはあれで使い勝手のいい武器ではある。
そして、私の『モーニングスター』というのは実にわかりやすく武器らしいものだったのだと思った。
あすみ(なんていうんだろ。こういうのって…… 攻撃性の差、とか?)
――――力を込めて踏み出すと、こちらを見た魔女の攻撃をかわして横に跳ねる。
マミの動きにも気を配って見るが、まだ動けないでいるようだった。構えだけして、戦況を目で追うのみ。
マミ「……!」
マミもやはり大してその武器を使いこなせてはいなかった。
リボンの一番わかりやすい使い方は、やっぱり縛り上げること……だ。
支援向きだが、もしこの初陣も私がついていなかったらどうなっていたのだろうか。今以上に時間がかかって苦戦する?
あすみ(……死ぬ? こんな早く?)
近くに居た使い魔をフレイルの柄で払い、続けて蹴りを入れる。
鉄球を魔女に向けて大きく振るう。――しかし、それは当たらなかった。
あすみ「今こそ、縛っといて欲しかったんだけど……ッ!」
まあ、初陣で戦況を的確に読んで敵の隙を突くなんて、そうそうできないのはわかってる。
再び魔女の攻撃を避け、外れた鉄球を敢えて更に遠くへ……鎖を長く伸ばして飛ばす。
そもそも、縛り上げることならこいつに頼らずとも私にも出来る。
あすみ「まあ、いいよ! さっきのは遊び球だし……これで完全試合だから!」
縛り上げるのに使ったフレイルの柄はもういらない。
それを放り捨てて新たな獲物を手にすると、高く跳びあがって、鎖に絡め取られた魔女の頭を粉砕する。
……潰れた魔女は汚い色の液体を撒き散らす。思わす顔を顰めたが、その液体ごと結界とともにすぐに消え去った。
液体が消えて露わになったグリーフシードを拾い上げる。
マミ「……倒したの?」
あすみ「うん。これがグリーフシードってやつ」
マミ「そう。あ、もちろん神名さんが持ってていいから。私には受け取れないわ」
確かにこいつはこの戦いでろくなことはしてない。
魔女との戦いじゃただ見てただけだ。……まあ、私があれ以上マミを立てて戦わせるのも面倒臭くなったからっていうのもあるが。
あすみ「うん、そうだね。でも……これから先、いつも誰かがついてるわけじゃないよ。一人で戦える?」
マミ「……!」
結局のところこいつも、さっきは私がいるから手出ししなくていい――と思ってたところはあるんだろう。
マミ「……私には無理よ。まだ今日は最初だったんだし、次だってそんなに変わらないわ」
マミ「この街に一緒に戦える人がいるなら、一緒に戦ったほうがいいんじゃないかしら? また次も一緒に行きましょうよ!」
あすみ「ずっとそう言うの?」
あすみ「このままじゃ変わらないよ。ずっと誰かが横に居るから……って思ってたら、いつまでも変わらないんじゃない?」
マミ「そ、そんなこと……」
あすみ「本心じゃさ、極力危険な目に遭わないようにしたいって思ってない?」
あすみ「戦うのも本当は嫌だし、他に自分より戦える人がいるなら本気なんて出さなくていい――――って」
あすみ「ま、追い込まれなきゃ本気になれないのは人間の性みたいなもんだししょうがないよ」
契約も強い意志やら覚悟やらがあったわけでもなく、どうしようもない状況で流されたような願いだ。
闘争心がない分無欲ではあるんだろう……――今のところは無害なほう、だとは思った。
少なくとも、臆病なだけではまだ断じられるほど罪深くはない。
あすみ「でもいざ追い込まれた時……どうしても一人で戦わなくちゃいけなくなった時って、死ぬの? 逃げるの?」
あすみ「うまく逃げられればいいね」
マミ「……そ、それでもやっぱり今のままじゃ無理よ」
あすみ「…………」
ま、面倒見るとして、それはなぎさに丸投げするし。
1受け入れる
2突き放す
下2レス
あすみ「……戦い方を見てくれる人ならいないでもないよ」
ふと携帯を取り出してみると、いつのまにかお昼どころか放課後の時間も越してたことに気づく。
未読が一件あった。もちろんなぎさからだ。それ以外に『私が』連絡を取る相手はいない。
あすみ(気づいてなかったな……)
もう諦めて一人で魔女狩りに出てるだろうか。
気づくと、マミが手元を見ていた。
マミ「それってもしかして親御さんから借りてるの?」
あすみ「あん?」
マミ「あまり女の子が使うイメージのある携帯に見えなかったから聞いてみただけ」
あすみ「…………あすみのだよ」
マミ「そうなの。別に趣味に文句を言うつもりはないんだけど……それより、そろそろお腹がすいてこない?」
あすみ「そりゃもう夕方手前だからね」
マミ「ええっ!? ……時間が経つのは早いわね。そうだ、今日はお世話になったし、よかったらご馳走しましょうか?」
あすみ「タダ飯なら悪くないわねー、んー……」
さっそくなぎさと会わせて引き渡してもいいが、この後でもいいか。
そう思って歩き出そうとしたところで、不審な声が聞こえた。
『――……“大きい方”のおチビちゃん。コイツは次でいいわ。確実に、一匹ずつ潰していきましょう』
あすみ「は?」
急に振り返った私をマミは不思議そうに見る。もちろん巴マミじゃない。
声の主を探して見回すと、通りの向こうになぎさと――……知らない女が隣にいた。
なぎさ「あっ、あすみー! 会えてよかったのですよ! 連絡したのに返事もこないから心配したのです!」
信号が変わると、向こうからなぎさが駆けてくる。
隣の女も。やっぱり偶然じゃなく同行してるらしい。
あすみ「メールはさっき見た……そっちの人は?」
なぎさ「このおねーさんとはさっき知り合ったのです! 魔法少女の……って、あ。言っちゃダメな状況でした? あすみこそそっちの人は?」
あすみ「こいつも魔法少女だから平気。それより、ソイツは?」
なぎさ「もー! ソイツーとかコイツーとかダメなのですよ。初対面の人に向かって!」
あすみ「はいはい……で?」
なぎさ「魔法少女の新人さんなのです。契約したばっかりでなにもわからないと言うのでレクチャーしてるところなのです!」
「まぁ、可愛らしいお嬢さんも魔法少女やってるんだ。二人ともこれからよろしくね」
マミ「ええ、よろしく……」
表面上は取り繕っているが、内面までは繕えない。さっき聞いた声と似たり寄ったりの『悪意』が漏れていた。
恐らくコイツ、新人ですらない。今までこんなのは散々見てきた。分かりやすいと思えるくらいのクズだ。
あすみ「…………私はよろしくしたくないんだけど」
なぎさ「えっ……?」
あすみ「だってそりゃあ、思ってもないことばっかり言われてもね。なぎさは騙せても私は安い芝居には引っ掛からないよ。縄張り荒らしさん」
なぎさ「なっ……何を言ってるのですか! 落ち着いてください!」
「そ、そうだよ。私はそんなつもりじゃ……!」
なにかそういう問題が近づいてそうな雰囲気はあると思ってた。
コイツは子供の魔法少女が二人見滝原に居ることを知っているらしい。大方キュゥべえが私たちの情報を売ったのだろう。
こんなのに私が騙されるわけはない……が、なぎさはこんなのでも信じている。仲良くして、救う気でいる。
私へ向けられる『悪意』ならどうにでもできるが、私以外へ向けられるソレには何の力も作用しない。
――それに歯噛みする。人の心はどうせ簡単に変えられない。そんなのはわかっていた。本当に痛い目を見ない限りは。
善良だろうと愚か者は救えない。だったら、放っておけばいい。しかし、本当に痛い目を見ることになればその時は、もう……終わりだ。
あすみ「落ち着くのはそっちだよ」
なぎさ「なぎさは落ち着いてます! 魔法少女だからって意地悪しちゃダメだって言ったのに……」
なぎさ「どうしてなぎさの時みたいに仲良くできないのですか!? そっちのおねーさんとはどうなのです?」
あすみ「コイツは別。一応見極められるくらいには一緒にいたから。あとの世話はアンタに任せようと思ってたし」
なぎさ「だったらおねーさんとも一緒にいなきゃわからないはずです! 会ったばかりで悪く言うなんて、よくないです! あやまってください!」
……自分の魔法の力を全て正確に伝えていなかったことを後悔する。
いや、それがなくたって最低限信用できるかくらい見る目はあるつもり。最悪突然襲われた場合の警戒だって怠ったことはない。
怠るべきではないのだ。一見無害そうな相手だったとしても、まだ断じるほどの罪はなくても、心は変わるものなのだから。
「なぎさちゃん、私のことはいいよ。何が怒らせちゃったのかわからないけど、もういいから……」
なぎさ「ダメなのです!」
「なぎさちゃん……」
なぎさ「なぎさはあすみにもみんなと仲良くしてほしいだけなのです……どうしてわかってくれないのですか……」
なぎさ「もしもおねーさんが悪いことをするならなぎさが止めます……それが仲間だから。その力くらいなぎさにはあるつもりです」
あすみ「…………」
なぎさ「も、もういいです! おねーさんのことはなぎさがついてるって決めてたのです!」
なぎさ「そうやって周りを敵視ばっかりするから……――――あすみには友達がいないのですよっ!」
あすみ「……は……?」
なぎさ「あ…………」
あすみ「あぁ……そうかもね。別に友達が欲しいとも思ってないし、一人で生きることにももう慣れたから」
あすみ「それでいいよ。その方が、誰に裏切られるとも誰かを喪うとも考えなくていいんだから」
――私を嘲り笑う『声』が響く。
――――忌々しい下品な笑い声が、一見澄ました様子の女から発せられていた。
殺意を込めて睨む。それには、優しげな微笑みを返された。
……騙されたフリでもしてればよかった? いや、コイツは一人ずつ仕留める気だった。
どうせ私が居る間はしっぽは出さないんだろう。
あすみ(……殺す。なぎさがどうとかは関係ない。あの女は私を馬鹿にした。ただそれが不快なだけだ)
あすみ(次は私の番? 笑わせるなよ。私に狙いを変えた瞬間がアイツの命運が尽きる時だ)
元々、キュゥべえはなぎさは死んでも私は死なないと思ってたんだろうな。
縄張りの魔法少女を皆殺しにされるのは不利益でも、一人死んで入れ替わることで波乱が起きるならそのほうがいいとすら企んでたかもな。
アイツはそういう奴だ。利用できる時は利用できるけど、味方としてはまったくアテにならない奴。
アイツのこともなぎさはまだ信じてるんだと思うと……なぜだろう。悔しく感じた。
マミ「え、ええと……神名さん?」
マミが横から戸惑ったように見ていた。……怖い顔しすぎてた。
あすみ「昼だっけ? 遅いけど。食いいく?」
マミ「さっきの子たちのことはいいの? あ、あの人は結局味方なの? 敵なの?」
あすみ「敵だよ。私は心が読めるんだ」
マミ「ええ!?」
さっきは隠しすぎて後悔したことを、巴マミには言ってしまった。
……いつも最大限の警戒を怠らない私らしくもない、早まった発言であると後で思った。
――――――
なぎさ「……ごめんなさいなのです、おねーさん」
――――思わず早足で歩き出してしまいましたが、おねーさんはちゃんと隣についてきました。
なぎさにとっては早足でしたが、おねーさんからすれば普通の速さだったようです。
「さ、さっきの子のことなら気にしなくていいからね? 行きましょう?」
なぎさ「はい…… そのことも……なのですが」
なぎさ「今はちょっと……戦う気にも教える気にも、なれません……」
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ここまで
次回は24日(水)20時くらいからの予定
「…………そう、そっか。そういうことなら今度でいいよ」
なぎさ「はい、また今度…… で、でもっ、一人で魔女と戦ったり危ないことはしないでくださいねっ!?」
「あー……、うん。そうだね」
やっぱり浮かぶのはこの前の光景。知り合ったばかりの人が、魔女の結界の中であんな……。
……それからしばらく二人とも喋りませんでした。
何を言っていいのか迷ってしまうような、なんだかぎこちない空気です。
なぎさ「……そうだっ! そのかわり、これからうちにきませんか?」
なぎさ「せっかく魔法少女の友達が増えたのです。戦いとか以外でも、おねーさんにもなぎさのこといっぱい知ってもらいたくて……!」
「まあ、なぎさちゃんのお家に招待してくれるの? うれしい!」
なぎさ「はい、こっちなのですよ!」
おねーさんもまた笑ってくれたので安心しました。
なぎさもむくれてちゃダメですね……。あすみのことはいったんおいといて……。
なぎさ(あすみ……)
足を止めたなぎさに、おねーさんは不思議そうに振り返りました。
なぎさ「な、なんでもないのですっ」
――――
――――
なぎさの家に着くと、おねーさんと二人きり。
この前のカレーの残りをどうするかと相談したところ、おねーさんが何か思いついたようで。
なぎさ「――――わぁ、おねーさんお料理上手なのですねっ!」
「大げさだよ」
なぎさ「おおげさなんかじゃないのです! なにもないと思ってたうちのキッチンからカレードリアができるなんて、夢にも思いませんよ……!」
冷蔵庫にあった牛乳となぎさのおやつのチーズ、あとお母さんがいなくなってから棚の奥に眠っていた小麦粉……。
それらを使って作ってくれたのです。
なぎさ「まるで魔法のようです!」
「だから大げさだって……ほら、出来上がったから、火傷しないように食べてね?」
なぎさ「出来上がりもすばらしいです! さっそくいただきます!」
……チーズ、お母さんが好きだったから前はこういう料理も作ってくれたな。
食べた瞬間、そんなことを思い出しました。
お母さんの好物でもあるけど、なぎさも。
なぎさ「おいしい! これ、なぎさの大好物です!」
「そうなの? よかった」
なぎさ「なんだかお母さんを思い出して…… もう作ってくれないから」
「何かあったの?」
なぎさ「死んでしまいました」
「それは辛いね……。ところで、お父さんは?」
なぎさ「今日はいつ帰ってきますかね……少し早い時もあれば、遅い時も多くて」
「そうなんだ」
なぎさ「……今度、作り方を詳しく教えてください」
「難しいと思うけど、大丈夫なの?」
なぎさ「だ、大丈夫です! なぎさはもう小さくないので……!」
なぎさ「お母さんがいなくなってしまったので、早く家事は覚えないと困るのですよ。ご飯がお菓子とお弁当と外食だらけなのです!」
「このカレーは?」
なぎさ「これは昨日あすみと一緒に作ったのです」
「……さっき会った子ね」
なぎさ「はい……」
あすみの話が出てきて、さっきのこともまた思い出しました。
あすみとの思い出はたくさんあります。そのほとんどは良い思い出です。あんなふうに喧嘩してしまったのは初めてでした。
なぎさ「なぎさもあの時は言い過ぎたのはわかってるのです。なぎさにとってもかけがえのない友達だったのに」
なぎさ「もう……友達でいられないんでしょうか」
「なぎさちゃんはどう思ってるの?」
なぎさ「なぎさは……友達でいたいです。でも……」
「でも、あの子の言ってたことは間違ってると思ってる」
なぎさ「そりゃそうですよ! おねーさんがよくても、なぎさがよくないのです……」
なぎさ「会ったばっかなのに、おねーさんのこと何も知らないのにあんなこと言って!」
なぎさ「? む……」
その時、ポケットに振動を感じました。
「あらあら、お食事中に携帯はマナー違反だよ?」
なぎさ「……それもそうなのですね」
「まあ、『そろそろ』かもしれないけど」
なぎさ「なにがですか?」
「ううん? 何でもないよ?」
夕食を食べ終わった頃、なぎさは少しウトウトとしかけていました。
このまま眠ってしまったら気持ちよさそうですが、今はお客さんも来てますし、お父さんが帰る前に寝たくはありません。
「眠くなっちゃった?」
なぎさ「ん~、まだそんな時間じゃないのに……ちょっとお水を取ってくるのです」
なぎさ「――――うわっ!?」
椅子から立ち上がろうとしたのですが、転んでしまいました。
奇妙な感覚でした。どこにぶつけたわけでもなく、足から力が抜けるようにして崩れたのです。
ただ眠いだけではこんなふうにはならないと思うのですが……。
なぎさ「いたた……あれ? 何か、おかしい……」
「横になってくれば?」
なぎさ「い、いえ。――……そうだ、治癒魔法を!」
「……ねえ、やっぱりなぎさちゃんは『小さい子』だよ」
なぎさ「え?」
「ダメじゃない。知らないおねーさんに着いてっちゃって、そのうえ知らない人の作ったお料理食べてるんだもん」
「でも、ヘンにマセてるより子供は馬鹿で素直なほうがカワイイと思うよ? なぎさちゃんは悪い子だけど、良い子だね」
なぎさ「ど、どういう意味……なのです?」
立ち上がろうとしても力がうまく入りません。
「小さいから回りも早いよね。そうして段々感覚もなくなって……最期は眠るように死んじゃうんだ~」
「『優しい』毒でしょ? 痛みもなく気づかれないままソウルジェムを蝕んで殺すの」
「たっぷり時間を稼げてよかったよ。本当は看取るまでしたかったんだけど……治癒されたら困るものね」
なぎさ「毒……って、まさか……!?」
「料理だけじゃないよ? 毒は二つあるの。一つはさっきの料理に……もう一つはこの空気全体に溶けた霧に」
「毒霧のほうはソウルジェムを蝕み、ついでに魔力を察知する能力を鈍らせる毒。そのおかげで魔法なんて使ってたこと気づかなかったでしょ?」
「料理に使ったのは身体と感覚を麻痺させる毒。毒霧だけでも似たような事は出来るけど、効きを確かめづらいしちょっと時間かかるから」
なぎさ「な、なんで……そんな……契約したてでなにもわからないって……」
そう言うと、おねーさんはくすくすと笑いはじめました。
「そんなのまだ信じてたなんて! 油断させるための嘘に決まってるのに! 簡単に信じちゃうから~、なぎさちゃんは小さい子なの」
なぎさ「……!」
――――――
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ここまで
次回は27日(土)18時くらいからの予定です
――――――
マミ「……お口に合わないかしら?」
あすみ「別に。オシャレそーな店らしくなんかオシャレな味してるよ」
マミ「褒めてるのかしら……?」
こんな微妙な時間じゃファミレスでもランチはやってないだろう。
安いバーガーでいいと言ったのだが、育ち盛りの子がそんなんじゃダメだとマミが一蹴。
マミに連れられて入ったのは、今まで縁のなかったようなカフェだった。……まあ、奢りだからいいんけど。
マミ「ねえ、心が読めるってことは本当にあの人は悪い人なんでしょう?」
あすみ「……」
マミ「このままじゃきっと、あの子危ないわよ」
あすみ「私が何言っても聞かないんだし、しょうがないじゃん。忠告はしたんだから私にしては優しいほうだよ」
あすみ「……なぎさに読心のこと言ってなかった以上証拠を提示することもできなかった」
あすみ「そうなりゃ後は考え方と経験の違いってやつじゃん? 私も誰に何言われようが今の考え方を変えるつもりないしね」
マミ「じゃあ、なんで私にだけ話したの」
あすみ「気まぐれ。かもね」
迂闊だとは思ってた。
話しすぎるのも、話さないで不利になるのも……だ。後者のことについてはさっきまで考えもしなかったけど。
マミ「……やっぱり気になってるんじゃない? だって、さっきからすごく不機嫌そうな顔してるわ」
あすみ「元からこういう顔だ」
他人なんか助けようとしたから食われる。この世界で当たり前のことが当たり前に起きてるだけだ。
ちょっと前に世話してやったからって、一生世話なんてしきれない。
あすみ「…………やっぱこういうとこって値段の割に量少ないね。もう食い終わっちゃった」
マミ「食後には紅茶がついてくるみたいよ?」
あすみ「そうなの? じゃあまだ待ってなきゃいけないのー?」
……暇になって、携帯を手に取ってみた。
手持無沙汰に携帯持ってる奴って多いけど、何やってるのかまったくわからない。最近まで携帯を持ったこともなかった。
マミには女の子が持ちそうな携帯じゃないと言われたが、そりゃそうだ。
今持ってるのは前にいた家から取ってきただけだから。いつまで使えるかもわかったものじゃない。
あすみ(もう何か月も経つしそろそろ潮時かもな。そしたら……どうしようか?)
あすみ(なければないでも困んないか。元々大して使う予定もなかったけど、思ったよりは使ったな)
元はアイツがいなくなったことを怪しまれないためにとチェックしてたはずだった。
でも今では元から入ってたデータは全部消した。メールのやりとりを見返せば、なぎさとのやりとりばっかり。
今日の放課後。それ以降のメッセージはない。……一通り見返して、一言だけなぎさに送ってみた。
『今どこ』
最後になるかもしれないメッセージ。もう死んでたって何もおかしくないんだから。
あすみ「……ね、暇だからなんか面白いこと言ってよ」
マミ「その無茶ぶりは無理があるわよ……? せっかくだから魔法少女のことについて聞かせてもらえたら」
あすみ「えー、私に話振るの?」
あすみ「魔法少女のことって言われてもなー。この後はなぎさに丸投げするつもりだったし……」
……あれ。でもなぎさが死んだらこいつのことはどうする?
そう思ったところで、さっそく、予想を反してお早いお返事が来たことに気づく。
いつもとちょっと違う、無愛想な一言で。
あすみ「……はあ?」
マミ「ど、どうしたの? さっきより輪をかけて不機嫌そうな顔をして」
あすみ「そりゃ不機嫌にもなるっての! こんなの予想の斜め上! あいつはどこまで……!」
あすみ「紅茶嫌いだったの思い出したわ。もう出る」
――――返ってきたメールには、『なぎさのいえ、おねーさんと一緒』とだけ書かれていた。
あすみ「……何故アンタまでついてきてる?」
マミ「心配してないって言ってたけど、なぎさちゃんのこと助けに行くんでしょう?」
あすみ「別に」
マミ「……違うの?」
あすみ「私はあの女のことが嫌いなんだ。居場所がわかったから殺しに行くだけ」
あすみ「私に狙いが向いてからって思ってたけど、一人潰して浮かれてるとこ想像しただけでも腹が立つ」
マミ「うーん……素直じゃないのか判断しづらいけど……」
あすみ「アンタこそ、死にたくないんだろ。戦いには間違いなくなるよ。標的の家にまで来てその場で決着着けない理由はないもの」
あすみ「だからこそ私も、なぎさに邪魔されずに殺せる現場を狙ってるんだし」
マミ「でも、私も仲間がピンチなのに見捨てるわけにはいかないわよ。なぎさちゃんはせっかく仲間になれそうな人なんだし」
あー、こいつ。臆病のくせに無駄に正義感あるタイプなんだ。
面倒くさい。
あすみ「自分が戦力になるとでも思ってるの? 人質にでもとられたらその時は真っ先に無視するわ」
マミ「……っ」
あすみ「居てもいいけど、邪魔はするなよ。それに……私たちが行くころにはなぎさはもう死んでるかもね。それ見ても動揺しない?」
マミ「神名さんこそ……しないの? なぎさちゃんが本当に、死んでても。交友はあったんでしょう?」
あすみ「もちろんしないわ」
……そうなってもきっと心は動かない。
私は今までだって色んなものを失ってきた。あんな最近知り合っただけの子供なんかよりずっと大切なものを。
そして私は、契約した日からもう何者にも動揺しない力を手に入れたんだ。
でも、もしも助けられた時はどうかな。そういう意味での『心が動く』は、長らく忘れ去っていて想像もできないけれど。
――――――
――――――
「じゃ、もう種明かしもしたし、さくっとやっちゃおうねー」
なぎさ「!」
変身したおねーさんの手から魔力の光が洩れます。その直後に放たれたのは針でした。
それを横に転がって避けます。
「チッ……あぁいけない。まだ動ける力あったの? でも次こそ終わりよ」
なぎさ「おねーさん、治癒魔法は効くって言ってましたよね……? たくさん練習しといてよかったのです!」
なぎさ「少しずつでも回復は出来てる……少し苦しいけど、そんな細い針くらいならっ!」
「掠りでもすればいいのよッ! 今度こそ眠ってもらうわ!」
足に重点的に魔力を流したおかげで、なんとか動くようには回復しました。
それでもハンデを負ってるのは事実。その上で――。
魔法の衣装に身を包み、武器を片手に持って立ちます。
「なぎさちゃ~ん? お注射の時間だよ~ッ!!」
なぎさ「っっ!」
動かれてもどこかには当たるように広範囲に飛ばしたのでしょう。
掠っただけで効く毒は恐ろしいですが、この針は物理的な破壊力は強くなさそうです。
ラッパを吹いて自分をシャボンの膜に包みます。
「なにそれ、ずるいっ!」
なぎさ(とはいえ、シャボン玉に針というのは……相性がよくないですよね)
何発かは耐えられても、防戦一方では勝てない。
「篭もってたっていつかは割れるのよ。諦めなさいよ」
「足掻くのなんて辛いだけだよ……全部諦めて寝ちゃおうよ。苦しまず死させてあげるよ?」
……そんなことは、わかっています。
なぎさ「死んでたまるか――――なのですよっ!」
身に纏うシャボン玉を大きくし、渾身の突撃をかましてやります。
おねーさんもそれは予想していなかったようで横に倒れて…… そこでシャボンの膜を破りました。
この隙に再びラッパを吹いて、今度は逆に閉じ込めてやります。
なぎさ「形勢逆転ってやつですよね? これ。えへへ……なぎさも魔女との戦いでピンチになった時にはよく使うわざなのです」
なぎさ「でも、おねーさんには……同じ魔法少女の仲間には使いたくありませんでした」
「仲間……ですって……?」
なぎさ「はい! こんなことしたらメッなのですよ!」
「メですって…………なによ、チビっ子のくせに説教して」
なぎさ「そういうのよくありませんー!」
新たな針でシャボンを割ろうとしてるのを見て、慌てて追加のシャボンを外側に被せます。
なぎさ「うわわっ、もう! 油断も隙もないのです!」
「それがいつまでも続けられる?」
おねーさんの声とほぼ同時に、くらっとするような眩暈のような感覚がしました。
これも毒のせいなんでしょうか?
なぎさ(集中が乱れて、魔法が……)
「ほーら、やっぱり。私の毒霧は『ソウルジェムを蝕む』って言ったよね?」
なぎさ「ソウルジェム……?」
確認してみれば、見たことのない黒色をしてました。
咄嗟にグリーフシードを取り出しましたが、飛んできた針に弾かれます。
なぎさ「なっ……!」
「回復なんてさせてあげなーい」
くすくすと笑う声。
なぎさ「そ、それでも負けません!」
飛んでくる針。
この時わずかに反応が遅れてしまいました。
なぎさ「あっ…………!?」
針が一本腕に掠ったようで、血が滲みます。
『よう』というのも、その感覚すら遠くなって見てから気づいたから。
感覚を鈍らせる毒、と言ってましたか。痛みもなく死ぬというのは本当らしいのです。
……そんなのはイヤです。痛くなくとも死んでたまるかなのです。
「何、誰?」
それとほぼ同時にチャイムが鳴り、おねーさんが顔を顰めました。
「あー、父親かぁ。言ってたもんね」
なぎさもお父さんかと思いましたが、その直後のものすごく乱暴な開け方をされたので違うことはすぐにわかりました。
当然、おねーさんの意識もそっちに向きます。掠りでも針を命中させたなぎさのことはもう放っておいてもいいと思ったからというのもあるのでしょう。
――――その瞬間、響いたのは小爆発の音。
それと、なぎさにとっては聞き馴染みのある鎖の音でした。
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ここまで
次回は28日(日)18時くらい
あすみ「何普通にチャイム押してんのさ! こういうのは大体力づくでいけば開くのよ」
マミ「え、それは……なんとなく。でもここなぎさちゃんの家でしょ? ドア壊れてない?」
あすみ「律儀か。どう見てもお取込み中な魔力反応してたんだからこれでいいの」
「あら、あなたたちさっきの……」
あすみ「先手必勝の一撃は防がれちゃったけど、防ぐのに使った腕は壊せたからよしとするわ」
あすみ「にしても、明らかに腕折れてんのに表情変わんないね」
「危険を察知するためにはないと困るものだけど、痛いのが好きな人なんていないでしょ?」
あすみ「おねーさん、あすみよりオトナなのにわかってないなぁ~。痛いのがイイって変態さんも中にはいるんだよ。私は違うけど」
あすみ「でもそういう人って倒錯しすぎていきなりSとM入れ替わるのも多いから気を付けてね?」
「はぁ、何? きも……」
あすみ「あはは、ごもっとも! それよりなぎさ、よく生きてたね。……あれ? 瀕死? ギリで死んじゃった?」
なぎさ「…………」
「ザンネンだけど、もうすぐ『孵る』よ。なぎさちゃんがいなくなったらきみ友達いなくなっちゃうんだっけ? ダッサい子」
「こうやって喋ってるうちにも――――……」
おねーさんもなぎさを見ます。そして、言葉を途切れさせました。
「こいつ、なんでこんな怪我を……? ――てっ、ていうか何よこれ! なんでシュークリームなんて口に咥えてるの!?」
あすみ「ふーん……このオモシロ死体、アンタがやったわけじゃないんだ?」
あすみ「まあ、わかってたけどね。お菓子出す魔法なんてなぎさしかいないだろうし」
なぎさ「ひたいじゃないれふ!」
残りをそしゃく。
みっともない食べ方になったのは反省ですが、このシュークリームはあすみの想像通り、魔法で出したものです。
みなさんは中身のクリームだけ先に吸い出すなんて食べ方やっちゃいけませんよ。
なぎさ「もぐ……――っ、この前あすみに毒入り菓子を作ってはどうかと言われましたが、これは『ハンタイ』にしてみたのです!」
なぎさ「といっても万能な解毒薬にはなりませんが、毒の成分はおねーさんが喋ってくれましたでしょ? それなら反対の効果にすればいいわけです!」
なぎさ「おかげで痺れも取れてきました。なぎさにはおねーさんみたいな毒よりこっちのほうが合ってると思うのです」
なぎさ「悪いことするなら止めるくらいの力はあるって言いましたよね! なぎさはそこまで弱くはないのですよ!」
あすみ「……はぁ、すっかり忘れてたけど、そういえばアンタも新人じゃなかったわね」
「針が掠った周辺を自分で抉り取るくらい肝が据わってたとはね……正直見くびってたわ」
なぎさ「なんて痛々しい表現! ちょっと爆破して吹きとばしただけです!」
マミ「そっちも十分痛々しいと思うけど」
「でもここはもう私のテリトリー。下準備はとっくに終わってるんだから、増えたって私の有利は変わらないわよ」
「一人は本当にただの新人みたいだし」
戦いが長引けばそれだけでなぎさたちは負けてしまうということです。
なぎさもたしかにソウルジェムを蝕むという毒霧のほうは解毒できませんでした。他の毒と違って簡単じゃないからです。
一度は注意が逸れてる間に魔力を回復できたものの、二度目はそうそうできないでしょう。
あすみ「マミ! アンタはこの家を出来るだけ換気しなさい!」
マミ「わかったわ!」
魔法少女が二人もいれば足止めはできます。
後はいつも通りあすみと二人で、決戦を仕掛けるのみ――――なのです。
おねーさんの狙いはやはり広範囲。でもなぎさも範囲には自信があります。
たくさんのシャボンを周囲に浮かせます。小さい分は脆くはありますが、一発を防ぐには十分です。
あすみ「霧も針も地味だけどウザい攻撃ね……性格の悪さが反映されてるに違いないな」
あすみ「毒って知らなかったら負けてたかもね」
イラついた様子のあすみ。
あすみの戦い方といえば、破壊力十分の鉄球で必殺を決める派手な攻撃。おねーさんとは正反対なタイプです。
普段見ていても、小さい攻撃は無視することも少なくありません。避けるということをあまり重要視してないようなのです。
もちろん毒針は無視するわけにはいかないのですが、これも相性はよくないのかもしれません。……逆に、毒を無視できれば早い?
なぎさ「でももうなぎさにさっきの毒は効きません! それに解毒はなぎさができますから!」
あすみ「あー、それもそうだったわね? こんなチンケな針……毒さえ効かなきゃ攻撃にもならないよ!」
「あっそ……でももう『優しい』のは終わりだよ」
するとおねーさんは一気に針の量を増やしてきました。
なぎさのシャボンでもこの量を食らったら耐えられないでしょう。篭もるのは逆効果――今度は何が来るのか、身構えます。
いえ、何が来たってやることは同じなのです。最大限に避ける。食らったらその効果と反対に打ち消す。
なぎさ「つっ…………!」
最初に来たのは痛みでした。
これは――――なんの毒? そもそも毒なんでしょうか? ただ針が刺さった部分がズキズキと痛んで、痛んで――――。
「単純だけど痛みに怯まない生き物なんていない。生きるのに必要な『痛み』も過ぎればショックで死んじゃうのよ」
「これで死ぬなんて不幸ね。これが一番『優しくない』毒。せめて感覚麻痺を解毒しなければよかったね?」
新たな針が生成されるのが見えます。解毒――いや、まだ踏ん張れます!
なぎさ「……と、りゃあああ――――っ!」
ええと、たぶん初めてラッパを鈍器として使いました。
踏み込んだあとは、なぎさの全体重をかけて床に倒します。おかげで新しい針の攻撃はあらぬ方向に外れていくことになりました。
なぎさ「あすみ! トドメを――ッ!」
なぎさ「あすみ…………? ――ふぎゃっ!」
「いつまでも乗っかんな!」
軽々と跳ね除けられてしまいます。なぎさの全体重は、おねーさんと比べたらかなり軽いのでしょう。
いくらなんでもこんなに至近距離で針を食らったらまずい。今度こそ解毒を……!
なぎさ(あれ……?)
口に鎮痛のシュークリームを咥えつつ、針山にされるのは覚悟してたのですが、攻撃が来ませんでした。
見てみれば黄色いリボン? でラッピングされたおねーさん。
マミ「換気扇を回して、開けられるところは開けてみたわ! 二人とも無事!?」
なぎさ「なぎさはなんとか……。解毒もできましたし。それよりあなたがやったのです!? すごいですね!?」
マミ「え、ええ!」
なぎさ「それよりあすみは……――――」
――――――
――――――
『痛み』……それは私が昔怯えていたもの。そして、契約してから感じることのなくなったものだった。
痛くないから、痛みを与えてくる奴らにも恐怖しない。戦いで攻撃を受けようが恐怖しない。
ソウルジェムと身体が離れてるから出来る芸当だとキュゥべえは言ってたが、リクツなんてどうでもいい。
その真実を聞いて絶望する少女もいるらしいが、私は歓喜した。
なぎさ「はいこれ、解毒のシュークリームなのです!」
あすみ「…………っ」
なぎさ「……? 聞いてるのです? もう! こうなのですっ!」
あすみ「むぐっ!? うぐ――……っぶ、あっま……? ……なに、これ」
なぎさ「半分落としてますよ! クリーム吸い出しよりお行儀悪いのですっ!」
なぎさ「無理矢理押し込んだのも悪かったですけど……辛そうだったので。うんんー、もっと食べやすい形にできればよかったかなあ?」
……目の前で起きてることが遠くに見えてた。いつもの感覚が戻ってきて、思考も戻ってきた。
いつのまにかあの女は縛られてて、なぎさとマミも無事だ。
なにこれ。私だけが無様?
痛みを味わったさっきから、来なければよかったと心の中で後悔しはじめてた。その気持ちは怒りへと変わる。
毒の内容は読心でわかってたはずだった。
――――魔法少女の使う魔法なら、痛覚を切り離していても効いてもおかしくはない。
しかし、覚悟していたら私はなぎさのように出来ただろうか?
いや……踏ん張れないのはきっと私だけじゃない。
あすみ「…………」
なぎさ「……ま、まだ痛いですか? 今小さいの作りますからねっ」
あすみ「ああ、うん。受け取っとく」
私にプチシューを渡すと、なぎさはリボンで縛られた女のほうに向き合った。
なぎさ「おねーさん……もうこれで決着つきましたよね?」
「……これから私をどうする気? 痛いことされた腹いせに、私を嬲り殺しにでもしてみる……?」
なぎさ「怖い事言わないでください! そんなことしたいわけないじゃないですか!」
「私は殺す気だったのに、なんでここまでされて私のこと殺さないの……逆に怖いよ。わけわかんない」
なぎさ「おねーさんもあすみに片腕やられてるので、それでおあいこなのです」
あすみ「……それでいいの?」
なぎさ「おねーさんもあすみも勘違いしてるのです! 魔法少女同士は敵じゃありません!」
なぎさ「ピンチの時は助け合えるし、仲間は多い方がたくさんの人を助けられます! 友達だって多いほうが楽しいのです!」
なぎさ「戦うのも殺し合うのも悲しいだけですよ。なぎさが死にたくないように、おねーさんだって死にたくないでしょ? どうしてわかってくれないんですか!」
マミは何も言うことなく一歩引いて見守ってた。
何? なぎさは相変わらず甘い気持ちを引きずってるみたいだけど……本当にこいつもそれでいいわけ?
「グリーフシードは欲しくないの?」
なぎさ「なぎさは必要な分だけあればいいです」
「……なぎさちゃんが欲しくなかったとしても、そういう人がいることを考えられないのはやっぱ小さい子だよ。そのせいで私にやられて」
「でも……こんな子ばっかりだったら平和なのかもね。私だってそりゃあ……死にたくはないよ。本当に、本当に許してくれるの?」
なぎさ「なぎさはおねーさんに裏切られたってわかった時、すごく悲しかったです。でも……許したいのです」
なぎさ「元はと言えばおねーさんを止めるために戦ってたのです! だから……今度こそおねーさんが仲良くしてくれるって言ってくれるなら」
なぎさ「おねーさん、強かったのですよ。これから一緒に戦ってくれるなら心強いです……!」
――ああ、わかった。
今回マミはとくに自分が被害を受けてなかったから、どうでもいいと思ってるのか。
「他の人も……そうなの?」
なぎさ「お願いします! 信じてあげてください!」
マミ「私は他の人に任せる、けど……」
あすみ「いいよ、お友達になりましょう。誰にだって改心の機会は必要よね」
あすみ「――――お姉さんってお嬢様なんでしょう? え、父親は県知事やってるの? 私生活窮屈なんだね」
「は…………」
あすみ「あぁ、珍しい苗字だ。そりゃ素性バレかねないし頑なに隠すわけね。そりゃどっかから非行のことがバレたらまずいものね?」
あすみ「学校ではいじめっ子の金魚の糞やってるんだって? 主犯じゃないのがどっか地味なお姉さんらしいなー。でもどっちもクズだとは思うよ?」
「何を言ってるの! で、デタラメ! こいつの言ってること全部デタラメ!」
あすみ「友達になるつもりなのに隠し事ばっかなんておかしいよ!」
「あ、後で言おうと思ってたのよ! でもまだ心の準備が……!」
それだけは一応本当だ。まあ『先読み』してしまったが。
そして、つつけばつつくだけ埃のように溢れてくるものだ。
……ちょっとイラついてるみたい。でも殺されるわけにはいかないから表に出すまいとしてる。
もともと強い人には逆らえないタイプみたいだから。
あすみ「ねえ? 自分でも気づいてるみたいだけど、表面上の友達しかいないなんてヘンだよね」
あすみ「お嬢様学校のことも強そうな友達のことも、本当は嫌いなのにアクセサリーにしてるの虚しいね」
あすみ「私たちのこともこれからはアクセサリー扱い? この中の誰よりもおねーさんなのに誰より薄っぺらくない?」
「そ、そんな……こと……!」
あすみ「内心嫌ってるいじめの主犯には逆らう度胸もない癖に、うっかり殺してから変な度胸だけついちゃったんだね……」
あすみ「魔法少女のほうも学校生活のほうも、どっちも自分可愛さに裏切ったり傷つけたりすることばっかり」
あすみ「そんなお友達ができるなんてステキ! ――なんて言うわけねぇだろ!!」
横っ面に鉄球を一つお見舞い。可愛らしく澄ました顔が醜く歪む。
正直わざわざ探るまでもないくらい、印象通りの中身だった。
「がは…………っ!!」
間髪入れずに次を振りかぶる。
こいつも痛覚切ってるみたいだし私の魔法では嬲り殺す手はないが、私の気が済むまで――――醜く潰れるまで叩き潰してやろうか。
なぎさ「なっ……なにしてるんですか! やめてください――――!!」
あすみ「こんな奴が改心する? 無理だね」
あすみ「クズはクズ肉になるのがお似合いだよ!」
あすみ「どうしても友達になりたいなら、地獄に行ってキレイになってから生まれ変わってこい!」
返り血に濡れる。
血も涙もない……なんてよく言うけど、それだったらなんでどんなクズにも血が流れてるのだろう?
『こんな子ばっかりだったら平和なのかもね』
それには同意するよ。なぎさみたいな人間ばかりだったら、私もこうなってないもの。
―――ソウルジェムはもちろん、身体のほうも原型をとどめない肉塊と化した頃にはなぎさもマミも目を覆っていた。
なぎさも途中まで私を止めようとしていたが、手遅れと判断したのか途中から立ち尽くすだけになってた。
なぎさ「なんでこんなことに……」
マミ「そ、そうよ。これはあんまりだわ……何も殺さなくても」
あすみ「マミには最初から殺すって言ってなかったっけ?」
マミ「だからって……」
あすみ「安っぽい暴言だと思われてたならちょっと癪なんだけど」
なぎさ「一つ聞かせてください……。さっき言ってことって本当なんですか? おねーさんのことどこかで調べたんですか?」
あすみ「実はなぎさには言ってなかった魔法があるんだ。心を読む魔法……といっても自動的に使われるのは私に向けられた『悪意』を含むものだけなんだけど」
なぎさ「じゃああすみは最初からわかってたのですね。なぎさが裏切られるって」
あすみ「うん」
なぎさ「じゃあもう一つ聞かせてください。……さっきはどうだったのですか? さっきも、なぎさたちのこと本当は裏切るつもりだったのですか?」
そうだと言えばなぎさは納得するのだろうか。
あすみ「いや? 表面上は友達になるつもりだったよ? 少なくとも『あの場では』ね。でもそれだって自分可愛さなんだよ?」
あすみ「あの女の行動原理は全部自分が可愛いから。なぎさを騙して殺そうとしたのも、学校でいじめに加担するのも全部」
あすみ「ならいつか自分が可愛いからって理由で私達を裏切ったり見捨てたりすることくらい想像つくよ。なにより私はクズと一緒に居たくなんてないし」
なぎさ「……」
あすみ「それでもまだいい人になれる可能性はあったって言える?」
あすみ「前言ってたけどさ、魔法少女になるのに必要なのは正義の心じゃなくて『願い』と『素質』だよ。……これでわかっただろ」
あすみ「いざというときに頼れない友達なんて欲しい? そんなの友達だと思わないけど」
なぎさ「なぎさには……っ わかりません」
なぎさの声が涙で揺らぐ。
なんか、似合わない臭いこと言ったな。友達なんていらないって思ってたのに。
でも、なにが友達かっていうなら……ひとつ気づいたことがあった。
なぎさ「信じたかったです。最初のときも、さっきのときも…… 本当に騙されちゃったけど、でも殺すよりは信じたかったんです」
なぎさ「可能性ならあったと思うんです……どんな悪人だってきっとそれは同じで、なぎさがそうできたら一番いいとは思います」
なぎさ「でも……そのせいで傷つく人がいる可能性もきっとあるんでしょうね。それはなぎさかもしれないし、あすみやマミ……もっと違う人かもしれない」
なぎさ「…………だから、わからない」
あすみ「……うん。アンタにしてはよく考えたじゃん」
マミ「私もそれで納得はするけど……もう少しどうにかならなかったのかとは思うわ」
マミ「……殺すにしても、そんな殺し方をする必要はなかったんじゃないの?」
……正義感の面倒臭い部分が出た。
あすみ「まぁそこは考え方の違いさね。なぎさの家をどう見ても殺人現場にしちゃったのは素直に謝るよ」
なぎさ「ひっ、そういえばそうです! お父さん帰ってきたら失神しますよ! なぎさだって今にも吐きそうなのに!」
とまぁ、こんな時にチャイムが鳴った。
あすみ「噂をすれば?」
なぎさ「あああっ、なぎさが出てきます!」
慌ただしく駆けていくなぎさの腕には、まだ痛々しい怪我があった。
……今はあのシュークリームで痛みも抑えられてるかもしれないが、よくあれを耐えて戦ってたものだ。
あすみ「……なぎさのことは頼れるって認めてやるよ。私も正直見くびってた」
なぎさ「えっ? 何か言いましたか?」
あすみ「なんでも!」
考え方は子供そのものだけど、私より強い一面もあった。
そんなところは尊敬することにした。
――いざっていう時に頼れる。そういうのを『友達』って言うんだろ?
他人から言われてもしっくりこなかったけど、やっとそう実感をもって思えたから。
――――
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ここまで
次回は31日(水)20時くらいからの予定です
なぎさ「……まさかさっそくこういう使い方をすることになるとは思わなかったのです」
出迎えついでに『よく眠れる』シュークリームを口に押し込んできたらしい。
一家の主をすやすや寝かせている間に、私がリビングの惨状をあらかた片づけたところだった。
あすみ「まあ、薬も毒も似たようなもんだからねぇ。今回は毒寄りの使い方だけど」
なぎさ「パティシエールのプライドがー」
それにしても、なぎさもマミもお通夜みたいな顔してるな。
私からすれば自業自得としか思えないけど。
あすみ「じゃ、ひととおり片づけもも済んだし帰るかな」
マミ「…………」
なぎさは私の前で空元気出せるだけまだ元気だろうが、あきらかに血の気が失せてるのはマミのほうだった。
……さすがになぎさは甘くても『魔法少女』だ。ただの一般人より戦いそのものに慣れてるし、度胸もある。
あすみ「あとなぎさ、こいつのお世話は頼んだから」
メンタルケアまでしてやる気はないから、ここらでなぎさに丸投げしておくことにした。
マミ「……魔法少女って、あんな人ばかりなの?」
マミ「グリーフシードが欲しいからってあんなふうに殺そうとしてきて……殺しちゃった。しかも、あんなに酷く……」
マミはまだ心を痛めているようだ。あんな奴の死に。
私のことも、なんて冷酷な奴だとでも思ってるんだろう。
マミ「こんなのまるで無法地帯よ! こんなことがこれからも起きるの?」
なぎさ「そ、そんなこと……!」
あすみ「無いとはもう言えないよね? 私が見てきた中じゃ一般的な部類だよ」
なぎさ「そ、それじゃ、あすみはあんなことを、何回も……」
あすみ「魔法少女になるのに正義の心は必要ないけど、あれが他の人と違う特別な人間ってわけじゃない」
あすみ「魔法少女は悪い事が簡単に出来てバレない力があるから本性が暴きだされやすいってだけ」
あすみ「契約さえしなければあの女も普通の人生を送れたかもねえ。薄っぺらい友情のもとに人を裏切って虐げ、何の報いも受けない普通の人生を!」
不要な人はいない、どんな命も尊いなんて綺麗事。
本物の悪意も憎悪も知らず、想像もできずに生きてきたから言えることだ。
そう思うと腹が立つ。さっさと帰ろうと思ってたのに。……やっぱり私はメンタルケアなんて似合わないようだ。
あすみ「マミの言う通り無法地帯なんだよ、魔法少女の世界は。強いベテランほど染まってるだろうし、弱い奴は淘汰される」
あすみ「アンタも気をつけなよ? 今は怖い怖いって思ってるかもしれないけど、いずれは力の使い方に慣れて、気づいたらすっかり染まってないように」
あすみ「不正、略奪、闘争……と来たらじきに殺しだってなんとも思わなくなるよ。人によっては最後じゃないけど」
あすみ「……まあ、私はそうなんだよね。『最初』に殺したから」
マミ「それも……殺されそうになったから仕方なく、なの?」
あすみ「ええ。私だって初っ端からそれ以外で殺したいと思うほどクズじゃなかったからね」
しんと静まり返る。今回のことでみんなも何かを察したんだろう。誰も責めようとする人はいなかった。
なぎさ「……なぎさももう悪い人がいないとは言いません。それでも、誰も信じられる人がいないわけじゃないですよ」
なぎさ「いい人ばかりじゃなくても、きっとあすみの言うような人ばかりでもない。だって、この街にはちゃんと仲間がいるじゃないですか」
ちょっとだけ世間の苦さを知ったとはいえ、相変わらずの甘く眩しいくらいのなぎさの言葉。
でも、その一言で不思議と怒りは鎮まった。
碌でもない世界だと思ってたし、今でもそう思ってる。でも――。
あすみ「……まあ、そう言われたら、それについては綺麗事だとは返せないか」
……経験の伴わない綺麗事は嫌いだけど、私も少しは変わったのかもしれない。
なぎさ「マミもそんなに怖がらないでください! なぎさが守りますから!」
なぎさ「怖い思いはさせないようにします。悪い魔法少女になるのも許しません」
なぎさ「街を守るのは魔法少女の大事な仕事なのですよ。ここは無法地帯にはさせません。なぎさたちで見滝原を守っていきましょう」
マミ「なぎさちゃん…………ええ。よろしくお願いするわ」
なぎさがマミの手をとる。
なぎさがあの女に向けようとしてた情熱は、尚更熱量を増してそのままマミに向いたらしい。
それから、なぎさはどこかへと寂しそうな目を向けた。――空の皿が置いてあるテーブルの上だった。
なぎさ「おねーさんのことも守るって思ってたのにな……やっぱり、すごくショックです。ドリアの作り方教えてくれるって言ったのに……」
マミ「……私が教えましょうか?」
なぎさ「マミもお料理できるですか?」
マミ「ちょっとした趣味程度だけど、それでよければ」
なぎさ「お願いしますです!」
なんだよ、仲いいじゃんかよ。
おまけにお洒落料理まで作れるときた。
あすみ「……やっと帰れそうだ」
なぎさ「あすみ、もう帰るです?」
あすみ「うん。お先に」
なぎさ「じゃあまたなのです!」
――――――
――――――
契約してからずっとなぎさひとりだったこの街にあすみがやってきて、そしてまた新しい仲間がふえました!
マミは最近契約したばかりの後輩だけど、この街のさいねんちょうなのです。
なぎさ「マミ、リボンをつかうの上手になってきましたね! できることも増えてるのです!」
マミ「そうかしら? ふふ……」
あれからマミとは特訓をしたり、魔女退治に出かけたり、お料理を習ったり。
特訓は街外れでやってるのですが、ここにはたまにあすみも顔を出しにきます。
あすみ「お、やってる」
なぎさ「あすみ! 見ていくといいのですよ! マミ、とても器用にリボンを操れるようになってきたんです!」
とはいえ、あすみは本当に顔と口を出す程度。
直接教えたり一緒に特訓をすることはありません。任せると言ってましたが、本当に任せきりなのです。
あすみ「SMプレイでもすんの?」
なぎさ「じしゃくであそびたいのですか?」
あすみ「え、む! ……どうせわかんないか。つまんないの。マミはわかってそうだけど」
マミ「さあ、なんのことやら……」
あすみ「でもさ……少し過保護すぎない? なにからなにまで面倒見てやって」
なぎさ「マミはまだ新人だし、大切な後輩ですからー。なにかあったら困るのです」
あすみ「まー、任せるけど」
なぎさ「それにマミはちゃんとなぎさが教えたや気づいたことはノートとってるし、えらいのですよ!」
あすみ「……ふーん?」
そう言うと、あすみもちょっと興味を持ったようす。
あすみ「思った通り細かいわね。わざわざノートにまとめるなんて思いつかなかったわ」
なぎさ「マミはとても真面目なのですよ」
……みんなでノートを覗きこんでいると、ふいに、ゴムボールがどこかから転がってきました。
「ねえ、そこの人! 悪いんだけどそのボール取ってくれない?」
なぎさ「これですか?」
転がってきたボールを投げ返します。向こうには二人の人影が見えました。姉妹でしょうか。
そのうちの一人、お姉さんのほうがこっちにきたみたいでした。
「ありがと!」
お姉さんはお礼を言いましたが、そのあと何かが気になるようにこちらを見つめてます。
言うまでもなく、魔法少女の衣装です。あすみじゃないけど、『変わった格好……』という心の声が聞こえてきそうです。
……いつのまに人がいたのでしょうか。これはうかつです。
ともあれ、ほどなくして軽く頭を下げて去って行きました。ボールと同じ赤色の髪が揺れています。
なぎさ「場所変えたほうがいいですかね?」
マミ「そうね……」
あすみ「じゃあ私は魔女狩ってくるから。さすがに三人は多いでしょ?」
なぎさ「んん、そうですね……また今度なのです、あすみ!」
マミという新しい後輩ができたのはいいのですが、あすみとの行動も少なくなってきています。
あんまり三人での行動というのはしないから。
それをちょっと寂しく思いつつも、なぎさはこの前までより寂しくはなくなりました。
見滝原を守るという新しい目標ができて、守りたい人ができて、なぎさはまた強くなれた気がします。
これからこの街はどうなるのでしょうか? また新しい出会いもあるのでしょうか。
その出会いがいいものだったら、とてもうれしいなと思うのです。
―続・なぎさとあすみの見滝原 『はじめての後輩』END―
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ここまで
次回は3日(土)18時くらいからの予定です
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戦いの決着がついたため区切りましたが、続きはほぼ決まってるのですぐにやりましょうか。
ちなみに余談ですが、
無名オリキャラのおねーさんは『悪党すぎないレベルで性格の悪い奴』がテーマでした。
オリジナル魔女図鑑の毒の魔女が原型ですが、能力が使いやすく素性を隠したがる性質が使い勝手が良かったための起用です。
一応白女在学の良家のお嬢様設定ではあるものの、
マミより年上なのでマミが中3になる頃には生きてても誰とも学校が被らない年齢。
すがすがしく悪く描ける使い捨てキャラはなかなかいないのでそういう子は貴重です。
そういう役に出来るのは沙々かオリキャラくらい。
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――――――――
お母さん、お母さん。きいてください。
あの日お母さんとおわかれしてからもう一年くらいたちました。
なぎさはこの前の春に新しい学年になりました。今は新しいクラスにもなじんで楽しく過ごしています。
そうそう、魔法少女のことも、ずっと隠してたけどここなら話してもいいよね。
この街には魔法少女のお友達が二人もいます。
途中、あらそいごとが起きたり、友達になりたかったのに拒まれてしまった人もいたけど……この三人は無事です。――この三人は。
契約したのもあすみと出会ったことも、なぎさにとってはもうすごく前のことに思えます。
なぎさはたぶん、前より強くなりました。もちろん、あすみもマミもすごく強くなったのですよ!
魔法少女のことは楽しいことばかりじゃないけど……。きっとこれからもがんばっていけます。
……目をあけると、目の前にはお母さん――のお墓があります。
今日はお父さんと一緒にお墓参りにきていました。
なぎさ「…………」
「なぎさ、もういいのかい?」
なぎさ「うん。いっぱい話せたよ。…………またね、お母さん」
声は聞こえないけど、ここにいるんだよね? そう思っていても、今でもふと寂しくなる時があるのです。
――――――――――――――――――
続々・なぎさとあすみとマミの見滝原
――――――――――――――――――
――――――
――――
なぎさ「――――マミ! 今ですっ、ぐるぐる巻きお願いするのですよ!」
マミ「ええ!」
合図とともにまわりの使い魔ごと魔女を捕えるリボン。
そこになぎさがバツグンのタイミングで仕掛けます。
なぎさ「よしっ! やってやったのです!」
マミ「やってやったわね」
シャボンが一斉に弾けると、魔女はあとかたもなく消えます。
マミと二人の魔女退治は今日も無事に終わりました。
なぎさ「使い魔と魔女の動きも味方の動きも、よく見られるようになりましたね。今日もこんびねーしょんはバッチリなのですよー」
マミ「なぎさちゃんが特訓してくれているおかげよ。契約してから今まで、なぎさちゃんがいるから怖くないんだもの」
怖い思いはさせないって約束したのです。
それをちゃんと守れてると思うと安心しました。
なぎさ「でも、『れがーれ・ばすたありあ』ってなんなのですか? この前はノートにも書いてありましたけど」
マミ「それは……必殺技よ!」
なぎさ「ひっさつわざ? ゲームみたいなのですか??」
マミ「見滝原は私たちが守るって決めたんだから、この街の魔法少女はこういう魔法少女でもいいんじゃないか……って思ってね」
なぎさ「なるほど……でもそれは一つ大きな問題がありますよ……」
マミ「なにかマズかったかしら?」
なぎさ「なぎさはラッパがあるのでしゃべれません! なぎさもやりたいですー!」
マミ「あぁ、あー……確かにそうだったわね」
何気ない会話をしながら、魔女結界を抜けたなぎさたちは日常へと帰ります。
具体的に言うと、マミの家へ。
もちろんなぎさにはなぎさの家があるのですよ。
でも、マミと知り合ってからはマミのおうちで食べていくことも多くなりました。
夕方には紅茶を飲んだり、お料理の練習をしたりします。おかげでなぎさもかなりお料理が上達しました。
マミ「今日は作りたいものがあるの。私も初めて試すのよ」
なぎさ「新レシピですか! 楽しみなのです!」
魔法の特訓はなぎさが教えてますが、料理のほうはマミのが先輩です。お勉強もマミに教えてもらうことがあります。
たいていのことはマミのほうが先輩なのは仕方ないのです。人生の先輩ですから。
マミと出会ってから仲良くなるのに時間はかかりませんでした。
マミは契約してすぐに事故で両親を亡くしていて、一人で住んでいます。
なぎさのようにお母さんだけじゃないのです。なぎさも寂しいですが、お父さんまでいなくなってたらなんて想像するのも怖いのです。
でも、一緒にいるときは寂しくないのです! ……きっとマミだって、そう思ってくれてるのです。
なぎさ「必殺技、なぎさにはどんなのが合うでしょうか?」
マミ「そうね……なぎさちゃんだったら、やっぱりシャボン? いえ、ラッパ、トランペット、あえて角笛と捉えても戦場っぽいかしら?」
なぎさ「あすみはどんなのになりますかね?」
マミ「……モーニングスター?」
なぎさ「考えたら使ってくれるかな?」
マミ「断られちゃいそうね」
なぎさ「あすみももっと楽しんで魔法少女やればいいのに」
マミ「そう思ってくれたらいいけどね。途中から考えを変えるのは難しいのかも」
考え出したら夢がふくらみます。この街の魔法少女はこうでいいというのにはなぎさも賛成でした。
――とはいえ、あすみも丸くなったのですよ? 最初からしたら……ですが。
なぎさ(今は携帯もつながらないし……本当にいろいろと大丈夫なのでしょうか?)
魔女退治の途中で会うこともあります。
向こうから来る時は訓練場所に顔を出したり、家や学校の近くまで来たりします。
でも、こっちは普段あすみがどこにいるのかもわかりませんし。聞いてみてもはぐらかした答えしかもらえませんでした。
マミと同じく家族がいないと言ってましたし、一人なのはあすみもいっしょなのです。なのに寂しくないなんて言うし……。
マミ「家に着いたら、まずは紅茶を淹れるわね」
なぎさ「はい! わーい、楽しみ!」
――――――
――――――
――――外は暗くなってきた。
日付や季節の感覚なんてとっくに狂っているが、時間だけは太陽が教えてくれる。それだけで困ることはない。
私は気付けばひどく原始的な生活を送っているようだった。
あすみ(そろそろ宿行くか。でも、この前のとこはちょっと怪しまれてきてそうだな……新しいとこにする?)
宿に長居も出来ないので日中は基本的に外だ。かといって街並みの中に興味を引かれるものもない。
野宿はさすがにできないから、暗くなれば宿を探す生活。
安定して居られる場所がない……というのもなかなかにストレスだ。これは1年ほど体験してみての気づき。
最初は何事にも縛られない自由を謳歌していたが、この無駄に文明の進んだ街の明かりの中ではそううまくもいかなかった。
街中で寝るのはごめんだけど、案外野宿も悪くなかったりして。なんて、冗談は半分で半分は本気で考えてみる。
……そもそも、私は街並みというのが嫌いだ。この街で信用できる仲間が出来たとはいえまた別問題だ。
実のところ、安定した住み処が欲しければどっかの家を襲って奪うのが一番良い。
けど、この街に来たばかりの頃だったら実行に移してたかもしれないが、今は躊躇があった。
あすみん、やっぱりホテル暮らし(?)なのか
怪しまれてるって魔法でのごまかしが効きにくくなってるのかな?
マミに頼めば泊めてくれそうではあるけど・・・
なぎさ『街を守るのは魔法少女の大事な仕事なのですよ。ここは無法地帯にはさせません。なぎさたちで見滝原を守っていきましょう』
……なぎさの言った言葉は本当だ。あれから本気でこの街の治安を守ろうとしてるし、実際守れてる。
最近はみんなベテランになったから狙われにくいが、最初になぎさを襲った奴以降にも無法者が沸いたことは何度かあった。
そりゃ私だってクズなんて嫌いだ。クズに殺されないためにクズになるより、クズを許さないって考えるほうが良い。
あすみ(それでも私ももう戻れない。結局潔白にはなりきれない…… 矛盾してるのが腹立つ)
正しいことだけして負けないのは恵まれてる人だけ――そして私はそうじゃない。そんなこと、前からわかってたことだけど。
幸い、無駄遣いする癖はついてないから前の家から持ってきたお金は結構もってた。でもそれもこの前尽きたし。
……そういえば、思ったよりは使えていた携帯ももう使えなくなったんだった。ただのガラクタだ。
データだけは入ってるから、昔のメールを見て懐かしむ……くらいには使えるが、位置情報とか取られてもマズい。
社会からほとんど接点の消えたアイツがこの世からいなくなったのに気づかれるのは時間がかかったが、ついに行方不明扱いになったらしい。
街中から遠ざかり、外れまで足を進めてきた。
人目の届かない草原とかなら寝転んでも心地よさそうかもしれない、と思い始めたところで、ぽつんと建物の明かりが見えた。
あすみ(教会……? こんなところにあったんだ)
もうこの街は探索し尽くしたと思ってたのに、まだ知らない場所があったのか。
この辺りって、なぎさがマミに特訓つけはじめた頃に最初だけ使ってたとこだったか。人がいたから移ったんだった。
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ここまで
次回は4日(日)18時くらい…にできたらいいなあ
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>>623
地の文にどのくらい詳細盛るか迷って没にしたんですが、
毎日同じところに通ってるとさすがに…って感じですね
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本日時間とれなさそうでした…
次回は7日(水)20時くらいからの予定です
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ふっかつ!!
次回は14日(水)20時くらいからの予定です
「もしかして信者さん!?」
……どうしようかな、なんて考えてたら声をかけられた。
見たところマミと変わらないくらいの年に見えるけど、信者って言ったし、そこの教会の人なんだろう。
勧誘でもされたら面倒そうだしさっさと立ち去ったほうがいい。
「って、違うか…… あれ?」
あすみ「……何?」
面倒そうって思いが顔に出て伝わったのか、落ち込んだと思うと上を見上げた。
日が落ちかけて、薄暗く少し濁った色の空。
ついに私のほうにもぽつりと一粒水滴がおちてきて、こいつが何を気にしてるのか私も理解することとなった。
「やっぱり雨だ。そういえば暗くなったら雨が降るからって言われてたんだった」
雨はちょうどパラパラと降り始めてしまった。
たったさっきまで晴れてたのに。天気予報も見ることがなくなってたものだ。誤算だった。雨じゃ野宿はできない。
というか、傘も持ってない。
あすみ「じゃ、さっさと帰れば? 気づいてるかもしんないけど私は信者じゃないし」
こいつはすぐそこに家があるんだから。
……私のほうは、廃工場とかならあるかもしれないが、さすがにそこで寝泊まりするのは本格的にみすぼらしい。
本格的にどうしようかと思い始める。街に戻る間にも濡れるだろう。
このあたりにはろくな建物もないし、トコトンついてないな。そんなイラ立ちを顔には出さないようにして去ろうとする。
――なんて思ってたら、急に、雨が止んだ。
いや、違った。困ってる人に手を差し伸べるように、こいつが私のほうに傘を向けていた。
「傘ないんでしょ? うちによってきなよ。うち、すぐそこなんだ。ほら、そこの教会」
あすみ「……なんのつもり?」
わざわざ人に差し出しているせいで自分が入りきれてない。
それはつくづく愚かで、やすやすと信じたくない行為に見えた。
あすみ「勧誘されても興味ないものは興味ないよ」
「勧誘は……ホントは父さんの教えを信じてくれたらいいけど、ムリにはしないよ。止むまで雨宿りに使ってってくれればいいから!」
「父さんと母さんだって、困ってる人はほっとくなって言うだろうしさ」
行く宛に困ってたのは本当だ。だからまあ、ここまで言われればひとまずどんなものか乗ってやらないこともない。
もちろん雨宿り以外はする気はなかった。……いつまで降り続くかはわからないが。
教会の中に足を踏み入れてみると、そこに信者らしき人はいなかった。奥にいるのは項垂れた様子の神父が一人だけ。
なんとまあ寂れた場所だろうか。その雰囲気には暗いイメージすら感じた。それとも、この手の場所に寄ったことは今までなかったがどこもこんなものだろうか。
「杏子、おかえり。おや、そちらの子は……?」
それでも神父はこちらに気づくと、明るい顔で出迎えた。
杏子「そこで会った子。雨降ってきちゃったから、うちで雨宿りしていったらどうかって言ってみたんだ」
神父「そうか。それならゆっくりしていきなさい。でも、もう暗いしあまり遅くなると心配だね……」
「おかえり、杏子。帰っていたのね」
「お姉ちゃんおかえり!」
奥からまた人が出てくる。どことなく杏子に似た女と、杏子より小さい子供だった。
「少し濡れているじゃない。今タオル持ってくるからね。ちゃんと拭かないと風邪を引いちゃうわよ」
杏子「はーい。でも本当、折りたたみもらせてもらってよかったよ。さっきまで晴れてたのに」
しばらく自分とは無関係な会話だと思って眺めてたけど、こっちにも視線が向いた。
「あなたは濡れていない?」
あすみ「……私はべつに」
振り始めてすぐに傘に入れてもらったし。
ああいうとき、人はその行動に聖女でも思い浮かべるだろうか――私は聖職者というものを大して信用してなかった。
胡散臭そうなイメージ。弱い人たちから集めた金で楽に儲けてるやつら。そいつらもただの人間の一部にすぎない。
信じるほうが馬鹿らしい。どうせ、困ってるときに神などなんの役にも立たないのだから。
夫人「杏子、最近帰りが遅いみたいだけど何をしてるの?」
杏子「待ってても全然信者さん来ないでしょ? 前まで来てた人も来なくなっちゃったし……」
杏子「父さんはここを空けるわけにはいかないだろうから、あたしも『布教』ができないかって」
神父「気持ちはうれしいが、杏子……お前はそんなこと考えなくてもいいんだよ」
杏子「でもあたしも少しは役に立ちたいからさ! きっと、もっといろんな人に聞いてもらえばわかってくれる人もいると思うんだよ」
この空間はどうだろうか。教会や聖職者、というよりも――。
ここに足を踏み入れてからまず抱いた印象は――――『家族』。世界にはありふれていて、でも私が失ったものだった。
それに私には兄弟もいないしお母さんと二人だけだったから、記憶の中のそれよりとても賑やかに見える。
私はガランと空いた椅子のひとつに座って、離れたところで会話を聞いていた。
さっき来たばかりの時以上に自分とは無関係な立ち位置で。
言ったとおり私に勧誘はしてこない。でもこれって、勧誘や説法を聞かされるよりも面倒そうな会話かも。
夫人「……お客さんがいる前でする話じゃありませんよ」
神父「それもそうだ。とにかく、あまり帰りは遅くならないように。心配をかけてはいけないよ」
杏子「わかった……」
――雨はまだ降っている。
暗くなった空の下で輝くステンドグラスからは外の様子はよく見えないが、ザアザアと音がしていた。
雨を凌げるのはありがたい。しばらくそのまま過ごしていたが、神父が私のほうに寄ってきた。
神父「雨、まだ止まないみたいだね。おうちには連絡できるかい? 今の子は携帯とか持ってるのかな」
あすみ「……いや」
神父「番号がわかるなら、電話を貸すよ。もう遅いし、迎えに来てもらったほうがいいからね」
あすみ「あすみのお母さんは忙しいの。まだまだ……、家には帰らない」
……当然嘘。でも前まで本当だったことだから、スムーズに口から出てきた。
お母さんはいくつも仕事を掛け持ちしていたから、遅くまで帰らないことはよくあった。
それに遅い時間のほうがお金を稼げるらしい。
神父「そうか……それは困ったね」
夫人「今日はうちで食べていく? これから夕飯の支度をしてくるから」
断ったほうが面倒くさい相手なら受けてもいいが、さすがにそこまで世話になるのは――と思う。
杏子「で、でもさ……ねえ、分けるぶんってあるの?」
しかし、杏子が気まずそうに言った一言で察した。
ガラガラの教会。教会というのは弱い人から集めた金で儲けるものだと思ったが、その人もいなければ成り立つわけがない。
他人に分け与える余裕もない奴らから毟り取る気はなかった。私は魔力で空腹を凌げるんだから。
あすみ「やっぱいいよ。帰るから。……お母さんが帰った時にあすみがいなかったら心配するだろうし」
あすみ「家に帰ればご飯くらいあるよ。へーき」
杏子「えっ…… あっ、そうだ、傘! それなら傘くらい持っていきなよ! 風邪引いちゃうよ!」
それすら持っていかないと納得してくれなさそうだから、傘だけ借りることにした。
自分たちも恵まれてないくせに。持たない者のくせに。身を削ってまで人のために捧げようとするから愚かなんだ。
…………それにしても、この嘘はあんまりつきたくないな。嘘をつくたびに、心がきゅっと締め付けられている気がした。
ーーーーーー
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ここまで
次回は17日(土)18時くらいからの予定です
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(普通に忘れて別の予定入れてたことに今気づく…)
(次回は18日(日)18時くらいからの予定です…)
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モモ「おなかすいたー! 今日のごはん何!?」
夫人「今日はハンバーグよ」
杏子「ハンバーグ!? やった、ごちそうじゃん!」
モモ「……」
杏子「……どうしたんだよ、モモ。うれしくないのか? モモも好きだろ?」
モモ「だって……どうせまたお豆腐なんでしょ?」
夫人「え、ええ。でも美味しく作るから」
モモ「やっぱり! 本物のお肉が食べたいよ!」
杏子「こ、こら。わがまま言っちゃだめだって。そりゃあたしも本物のがいいけどさ……食べられるだけでも感謝しないといけないんだぞ」
神父「……そうだ。我々が口にするものはすべて、神様がお恵みくださった命なんだ。感謝して頂かなければいけないよ」
神父「今日も皆で祈ろう。神への感謝を忘れれば心まで貧しくなってしまう。それが一番恐ろしいことだ」
モモ「……」
杏子「うん……」
――教えを説く神父は、子供たちの目にどう映っただろうか。二人は神妙な顔で見つめていた。
神父「心さえ満たされていれば、神はきっと私達を見捨てはしない」
ーーーーーー
ーーーーーー
日の高い昼過ぎ、一見外から見えない土手からはよく知った人の気配があった。
なぎさとマミが訓練場にしている場所だ。
昨日の雨は朝には止み、すっかり晴れている。
なぎさ「あすみも来てたのですね」
あすみ「あぁ、ちょっと寄り道してみただけ」
なぎさ「どこかにいく途中でしたです?」
あすみ「……いや別に?」
行き先が辛気臭い教会だなんて似合わない。当然信者になったわけでもない。
今日はちょっと、用事があるだけだった。
なぎさ「今日こそは一緒に訓練しませんか?」
あすみ「やらない」
なぎさ「え〜っ、なんでですかー」
あすみ「訓練なんて今更だし、実戦で事足りてるよ。それにマミのことは私は面倒見ないから」
なぎさ「じゃあ昨日考えたことがあるので聞いてほしいのです! あすみの必殺技なんですけど――」
あすみ「却下」
こいつらは真面目に訓練してるのかと思ってたら、私には考えつかないようなことをしてたりする。
おそらく何かの波長が合ってしまったんだと思うが、ますますわからない世界になってきた。
なぎさ「……なぎさたちが訓練をはじめてから一年も経ちました。あすみも油断はできないかもしれないですよ?」
あすみ「は? なにそれ、何が言いたいの?」
なぎさ「ふふふ、一回マミと手合わせをしてみたらどうかってことです! マミは一年の間コツコツと修行を積み重ねてきたのです。なぎさの指導のもと」
なぎさ「マミにとっても力を測るいい機会になると思うのです。もちろんあすみにとっても……悪くないと思うのですが?」
あすみ「…………」
私もこいつと付き合ってきて一年超。
負けん気でも刺激して乗らせようって魂胆は大方読めた。
さっきから何も言わずに後ろにいる巴マミを見る。それを理解した上でも……あまり興味が沸かない。
あすみ「あー無理無理、そっちでやってて。私はちょっと見に来ただけなんだって」
なぎさ「そ、そうですか……どうしてもというなら仕方ないですが……」
なぎさは少し残念そうだ。肝心のマミのほうはどうだか。
なぎさ「ところで、どうして傘なんて持ってるのです?」
あすみ「これ、私のじゃないんだ」
昨日借りた傘。
ずっと持ってても荷物だからさっさと返しておきたいところだった。
借りがあるから、というよりは邪魔だから返すってのが大きかった。それだけの用事だ。
あすみ「……もういいかね? 行くよ?」
なぎさ「は。はい。でもちょっとまだ聞きたいのですが……」
あすみ「ん?」
なぎさ「普段って何をしてるのです?」
あすみ「……。何をって」
なぎさ「気になっただけなのです。でも、知り合ってからたくさんたつのにあすみのことは知らないことばっかりなので……」
そう聞かれれば、今日もいつもの言葉を返す。
あすみ「さあ。テキトー」
……なぎさはやっぱり残念そうだった。
――――なぎさたちがいたトコよりもさらに風見野側に寄った街外れ。
昨日と同じあの場所は、暗かった時と違い、昼間の光の透き通るステンドグラスが立派な教会らしい雰囲気を作っていた。
扉の前まで来ると中から声が聞こえる。
あすみ(……歌声? なんかのイベントの最中?)
合唱というには少ないものの、明るい声に昨日の寂しげなイメージが遠のく。昨日は誰もいなかったけど、ほかの日は少しは信者もくるんだろうか?
しかし、その中を見れば昨日見たのと変わらなかった。
杏子「あっ、信者さん……じゃ、ないか」
広い教会の中にいるのは神父の家族だけ。
扉を開くと歌は止まり、杏子が昨日と同じ期待から落胆に変わるような声をあげていた。……こっちに期待をかけられても困るんだよ。
あすみ「昨日の傘を返しに来ただけだから」
神父「ああ、ありがとう。昨日は何事もなく帰れたかい」
あすみ「あー、おかげさまでね……」
あすみ「ていうか、さっきまでなにかやってたんじゃなかったの? 人、いないように見えるんだけど」
神父「日曜日は礼拝の日だよ。残念ながら信徒の姿はないが、私達だけでも祈りは必要だからね」
そんな行事のことは知らなかったが、どおりで太陽も高いのにみんな外にいたわけだ。こいつらも、学校はあるだろうし。
礼拝ってたぶんメインの行事。そこに人がいないってことは楽観的な思考を持つまでもなくほぼ壊滅状態ってことだ。これで成り立ってると言えるのか。
こんな宗教に興味はないが、疑問はいろいろ沸いた。
あすみ「何を祈ってるの?」
神父「世界がよりよくなることだよ。飢え、貧困、戦争、病気……あらゆる不遇の運命と苦しみにあえぐ人々をお救いいただけるように」
あすみ「その中に自分たちは入ってないの?」
神父「苦しむ人々は大勢いる。自分たちのことだけを考えていてはいけない。きっと、神も耳を傾けてくださらないだろう」
あすみ「……祈ったところでどうにかなるの? 苦しむ人が救われるのが神様のおかげなら、救われないのも神様のせいじゃないの?」
神父「…………」
神父は、黙った。
今まで優しげに語っていたその表情も、声色も、消え去って。――ただただ、悲しそうな目をしていた。
杏子「……教えを信じない人に押し付けることはしないけど。ただ、一人でも多くの人が他人のことを思って、この教えを信じていれば……苦しむ人も減る」
杏子「そうは思わない?」
そうだな。そういうことにしておいてやろう。
けど、現実問題無理な話じゃないか? 現にこの教会には誰も集まっていないのだから。
土台無理なことを唱えていたって意味がない。
神父「礼拝を再開しようか」
あすみ「私は出てったほうがよさそうね」
神父「教会は自由な場所だ。神は皆を平等に愛しておられる。好きに出入りして構わないよ」
神父もこの一家もいい人ではあるんだろう。
とはいえそう言われたところで、今のこの雰囲気の中で過ごしたいとは思わなかった。
けど、この建物の外ならしばらくはいてもいいかもしれない。都会よりは居心地がいいし、小さく聞こえる歌を環境音にするくらいなら悪くはない。
……やること、ないもんなぁ。
-------------------------
ここまで
次回は23日(金)20時くらいからの予定です
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私事ですが、少し前に目を手術しましてしばらくお休みしてました
ぼちぼち再開します
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視力矯正目的なのでとくに怪我とかではないですよー
心配してくださってありがとうございます
あすみ(……魔女でも狩ってくるか、魔法少女らしく)
――――しばらくボーッと時間を潰していたが、思い立って立ち上がる。
いつまでもこうしてても仕方ない。やるべきことは大してないが。
街の方へ足を向けて歩いていると、その途中でばったりと見知った人物に出くわす。それは、まだ日が高かった時にも見た顔だった。
なぎさ「あっ、あすみ」
あすみ「…………訓練終わったんだ」
――――――
――――――
――――あすみとはさっきぶりです。
あすみの言うとおり今は訓練が終わって、その帰りでした。
なぎさ「はい! さっきぶりなのです!」
あすみ「で、帰るの?」
なぎさ「はい。今日はおやすみの日なので、あまり遅く帰るとお父さんもきっと寂しくなっちゃうのです」
あすみ「あー……そーだね」
いつもどおり、興味のなさそうなそっけない返答です。
あすみのほうは、訓練の途中に会った時に見た傘はさすがにもう手元からなくなっています。
なぎさ「あすみのほうももしかして今帰りなのです? お友達に会ってきたんですよね?」
あすみ「友達ィ? いや違う。別にそういうんじゃないから。そういうのいないって前言わなかったっけ?」
なぎさ「でもそれけっこう前ですよ?」
あすみ「その時から何も変わんないよ」
あすみはそう言いましたが、あすみの場合は照れ隠しもあるので勘違いなのかはよくわかりません。
たしかに前に友達がいないとは聞きました。でも実際その直後に一人は増えたのです。あすみもなぎさのことを友達だと言ってくれたのですから。
……でも、あれからなぎさがマミと一緒にいるようになって、今はあすみとは少し離れてしまったように感じます。
というより、二人なら変わらなくてもマミがいると少し遠慮しているような。マミとはまだそこまで親密になれていないのかもしれませんが――。
マミがいても、それはやっぱり寂しく思うのです。それに、もっと遠慮せずに頼ってほしいですから。
あすみ「じゃ、こっちはこれから魔女狩りだから」
なぎさ「あっ、これからですか? じゃあなぎさも行きます!」
あすみ「帰るんじゃなかったの? お父さん待ってるんでしょ。帰ってやりゃいいじゃん」
なぎさ「んー、さっきはそう言ったけど…………」
一緒に行くことも減ってしまったから、行けるときには一緒に行きたい。
けど、そう言われると。
なぎさ「なら明日でどーでしょうか? 放課後の時間、マミも誘って三人でいくのです」
あすみ「三人も要る? いつも二人で行ってるんでしょ? 遊びじゃないんだし、余計に人増やしても意味ないよ」
……こういうところの考え方はあすみは本当に厳しい。でも、ちゃんとメリットがないわけじゃないはず。
なぎさ「手合わせは断られちゃいましたけど、同じ街にいるからにはほら、たまには連携とか! 試してみても損はないと思うのですよ」
なぎさ「こっちは『前に見た時と変わらない』、とは言わせませんから! なぎさもマミも毎日鍛えてますからねっ」
あすみ「…………」
数秒の考えるような間。考えるまでもなく一蹴されないのなら上出来です。
あすみ「……そこまで言うならわかった。明日ね」
なぎさ「はい! では詳しいことはまた連絡を――――……って、そういえば今ってどうなってるのです? 携帯は使えないのです?」
あすみ「ああ、そうだった。詳しいことは今決めてくれる?」
なぎさ「というか……何かあったのですか?」
あすみ「さあ? なんだろう? 私も携帯には詳しくないしなー」
なぎさ「だったら誰かに相談したほうがいいのじゃないのですか!?」
あすみ「……」
あすみは肝心なことは何も言いません。今のも明らかにはぐらかしているのだとはわかるのです。
本当の理由は、別に専門的なところにはないはずで。
なぎさ「……なぎさに相談してもいいのですよ。『友達』なので」
……『明日の約束』を決めて、今日は別れました。
あすみは本当に頑固です。
――――
――――
----------------------
ここまで
次回は10日(月)20時くらいからの予定です
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レーシックではないですね、コンタクトをインプラントするやつです
――――昨日マミにメールを送って、放課後になると先に二人で無事合流することができました。
マミとは普段からこうしてよくやりとりしています。訓練や魔女退治の連絡も、それ以外も。
雑談を交わして、途中でマミがふと時計を確認しました。
マミ「約束の時間まではあと少しね。今日は神名さんもくるんでしょう?」
なぎさ「はい。時間になって見つけられなかったら、とりあえずテレパシーを試してみることはできますけど……」
連絡手段のないあすみとの待ち合わせは、昨日くわしいことを決めたとはいえ不安になってきます。
今までは魔法なんて使うまでもなくできてたことだから、日常生活で魔法に頼るのは少し気が引けます。
でもまあ、使えなくなったのならそうも言ってられません。
マミ「なるほど、そういえばそういうやりとりの方法もあるわね」
なぎさ「でも、近くにいなければどうしようもないのです。もしなにも返ってこなかったらまたもう少し待ってみますか」
話しているうちにも時間が経ち、待ち合わせの時間になりました。
……テレパシー。結果は返事こず。
マミ「まあ、まだちょうどだもの」
なぎさ「……前はそんなに遅れるほうじゃなかったんですけどね。遅れるにしても連絡はきましたし」
それからもテレパシーを試しながら待っていたものの、何度目かになるとちょっと心配になってきます。
今は何かあっても連絡はとれない。もちろん、あすみがそうそう戦いで負けるとも思えませんが。
魔女はもちろん、悪い魔法少女に狙われた時もえげつなく返り討ちにしてるのを知っているのです。
――――そんなことを考えていると、なぎさの心配をよそにあすみはひょこりと現れました。
あすみ「お、もう揃ってるか」
なぎさ「揃ってるって、そりゃあっ」
しかも拍子抜けするような態度の軽さですっ。人の気もしらないでっ。
あすみ「そんなに過ぎてた? あーごめんごめん」
なぎさ「もーーっ。今来たのです? 何度かテレパシーまで試したのですよ!」
あすみ「最近あんまり時間を気にすることもなかったからさー」
なぎさ「むむむ……」
あすみ「怒るなよ、その分魔女をさっさと倒してやるからさ。さ、行くよ」
遅れてきたのになぜかあすみが仕切ろうとしてます。それだけ見れば怒りが湧いてもおかしくないと思うのですが。
久しぶりの待ち合わせで、前と違って……そう考えると、怒るよりも前よりどこかが変わってしまったような違和感を覚えてしまうのでした。
なぎさ「別にそんなに怒ってるわけじゃないのです」
あすみ「そう? ならいいや」
なぎさ「よくはないですけど!」
そんななぎさたちを見て、なぜかマミは笑っています。
なぎさ「ま、マミまでなんなのですか??」
マミ「仲良さそうだなって。二人だけの時にはこんなの見られないもの」
なぎさ「マミは優等生さんですからねえ……それに、二人だとなぎさのほうが師匠なので」
あすみ「……師匠なんて、いつのまにかずいぶんと楽しそうな関係になってるのね」
なぎさ「楽しそうですか? あすみも混ざってもよいのですよ!」
あすみ「それはエンリョしとく」
そんな会話をしながら、なぎさたちはようやく歩き始めます。
――――ほどなくして魔女の結界を見つけました。
なぎさ「ここは空き地みたいですけど、人のすんでる家も近くにあるしほっといたら危なかったのです」
なぎさ「でも見つけたからにはもうアンシンなのです!なぎさたちでやっつけちゃいましょう!」
マミ「ええ!」
師匠といえばマミに最初に戦い方を教えたのはあすみなんだよね
あすみが横から何かを言いたそうな、呆れたような目で見ていました。
あすみ「いつもそんなテンションなの?」
なぎさ「え? まあ……マミとはいつもこんな感じですけど、あすみと一緒のときはこういうのはなかったですね」
言われてみると、なぎさも前より少し変わっていることに気づきます。
なぎさ「あすみはこういうの好きじゃないかもしれないですが、やってみると気合が入るものですよ?」
あすみ「マミ、アンタも?」
マミ「そ、そうね。こういうふうに言ってくれるのは助かってるわよ。気合が入るし、自分の力で人助けできるんだって思えば恐怖だって薄らぐから」
あすみ「あぁそう」
三人いれば使い魔が出てきてもすぐに倒せます。
順調に進みながら、段々と深層へ近づきつつあすみがマミに問いました。
あすみ「……ねえ、アンタってたまには一人でも魔女狩りに行ってるの?」
マミ「一人ではないわよ?」
あすみ「まだ過保護してんの? マミももう一年くらいでしょ? 新人でもないのに」
なぎさ「そう言っても……せっかく仲間がいるんですし、なぎさのほうが師匠です。マミのことはなぎさが守るって言いましたから」
なぎさ「それはいつまでも変わらないのです!」
あすみ「……」
足を進め、たどり着いた小部屋の奥には、広い空間と魔女と思わしき姿がありました。
それを取り囲む使い魔たちも。
ひと呼吸の後、いよいよその奥へと踏み入れます。
あすみ「確かに戦い方はマシになってるように見えるけど、最初に見た時からやっぱ変わってないね」
マミ「……?」
なぎさ「え?」
あすみの言葉がきになりましたが、今は魔女に集中です。
――広間に足を踏み入れた瞬間、魔女がこちらを見てけたたましい鳴き声を上げます。
------------------
ここまで
次回は12日(水)20時くらいからの予定です
「!」
それを合図に、使い魔が一斉になぎさたちのほうに目を向けます。
前方から襲い来る影多数。
数を相手にするならこちらも数。ラッパを構えて吹きます!
なぎさ「そっちから来るなら早いのです! シャボンでおでむかえしてあげるのですよ!」
虹色に光るシャボンは足止めにも攻撃にもなります。
新しいシャボンがぷくぷくと浮かんでは弾け、使い魔とともに消えていく。タイミングや威力の調整も今では完璧に操ることができるようになったのです。
一気に残り少なくなった使い魔の軍勢に、ついに奥で構えていた大型の魔女が動き出します。
――思ったよりも速い動き。
なぎさ「マミ、まずは魔女の動きを封じちゃってください!」
マミ「ええ!」
あすみがすかさず突進してきた魔女の動きを殺すように頭を一発重い鉄球で殴りつけ、よろめいた隙にマミのリボンで完全に確保。
あとは煮るなり焼くなり、というやつです。
二、三発さらにあすみが攻撃を入れると魔女はグリーフシードを残して消えました。
ほっと一息つきます。すべては順調でした。今日も誰も傷つくことがなく終わってよかった。
なぎさ「やりましたね、あっという間でしたよ! みんなの力です!」
あすみ「ちなみに参考までにさ、マミだけでトドメを刺すとしたらあれからどうしてたの?」
なぎさ「マミにはリボンで縛ったあと魔力をこめて爆発させる、『フィナーレ』って技があるのですよ! リボンもほどけちゃうので本当に最終奥義なのですけど」
なぎさ「まあそれで終われなくてもなぎさがいるので大丈夫なのです。なぎさがいるかぎりぜったいに傷つけさせませんから」
あすみ「……ふーん」
聞いておいてなんだか興味なさそうな返事です。
まあ、あすみはいつもこんな感じなのですが。
あすみ「でもそれ、前にも聞いたけど、一人のときはどうするの?」
あすみ「いざ追い込まれてどうしても一人で戦わなくちゃいけなくなった時は、全力で戦えるの?」
あすみ「……それとも、死ぬの? 逃げるの?」
マミ「それは……」
なぎさ「……なんでそんなことを? それでも今なら戦えますよ。きっと。たくさん練習してきたし、一緒なら戦えてるのですから」
あすみ「私が変わってないって言ったのはそういうことだから。わざわざ手合わせなんて試さなくてもわかるの」
あすみ「年月以上に、その覚悟の違いって大きいよ? いざという時を経験してきてない人に負けることなんてないって」
なぎさ「そんなの、経験する必要なんてないです!」
あすみ「まあそうかもしれないね。守ってもらって生き延びられるなら、それでもきっと間違ってはないんでしょうよ」
……あまやかしてる、のかな?
でもやっぱり、一人で戦う意味なんてないし、それが良いことだとも思いません。
なぎさは強くなれました。魔女に苦戦することもそうそうありません。マミを傷つけさせることがないように守ることができるのです。
それは師匠としての、なぎさの役目ですから。
――――――
――――――
――――魔女狩りを終えて、さっきまで三人で歩いていた道を一人で歩く。
なぎさが提案してきたマミと一緒の魔女狩り。三人といっても、戦ってる時には二人のときとほとんど大差はなかった。
補助的な拘束能力は強いかもしれないけど、動きを止める手段も叩きのめす手段もすでに足りている。ある程度強くなれば大抵は身につくものだ。
マミのことはなぎさが過保護なほどに気にかけているとは思っていたが、イマイチ主体性が見えてこなくてあまり興味が持てなかった。
あすみ(いや……もともと任せるつもりだったんだし、私が口を挟むことでもないな)
あすみ(あいつがどんな魔法少女になろうが勝手だ。少なくとも悪事に手を染める方向に走ってないだけかなりマシな部類)
あすみ(ただ、そういうのがあまり好きになれないだけ)
一方で、なぎさは強くなってた。
それにマミのことやら街のことやら、『守りたいもの』とやらができたからか。
あすみ(……まだ、明るい。これからどうするかな)
なんとなく歩いてみて、なんとなくまたあの教会に向かってることに気づいた。
一応、好きに出入りしていいと言われた場所。
ヒマではあるが雨風しのげて、人気がない分落ち着いて過ごせる場所ではあった。
扉を開ければ優しく出迎えてくれる。そんな場所が他にないというのも事実で。
……教会の人たちもあれこれと事情を聞いてくることはない。ただ、どんなふうに思われているかは察しはつく。
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ここまで
うーん、開始も終了も遅くなって申し訳ない…
次回は15日(土)18時くらいからの予定です
杏子「ただいまー! あ、今日も来てくれてるんだ」
あすみ「来ていいって言われたから来てるだけだよ。どこにいても暇なのは変わんないけど、同じ暇ならこのくらい人気がないほうが落ち着けるし」
そう言うと、人気がないってのに引っかかったのか複雑そうな顔をする。
あすみ「……あぁ、皮肉言ったつもりはなかったんだけどね? 今日もまた布教とやらをしてきたの?」
杏子「まあそうなんだけど……ダメだったよ」
あすみ「そっか」
杏子「いきなり話しても怪しまれるから街で困ってる人がいたら助けて、そのついでに……っていうふうにしたんだけど、話そうとした途端逃げる人ばっかりで」
杏子「ひどい人だと暴言まで吐かれちゃって、ちょっと参ってきちゃったよ」
あすみ「まあー……そうだろうね」
それは私だってそうする。
関わり合いになりたくないと思えば必要以上にキツい言葉を言ってでも断って逃げる人がいるのもわかる。
けど、善意を仇で返されるのはそりゃまあ堪えるだろう。
杏子「でもたしかに、下心ありきで助けるのは良くない気もしたんだ。どうしたらいいと思う?」
あすみ「私に聞かれてもな」
杏子「そこをなんとか! 信者じゃない人から意見を聞いてみたくて!」
杏子が切実に頼んでくるものの、少し考えてみてもまともなアイデアは浮かばなかった。
あすみ「……敷居が高いのはしょうがないよ。断って逃げる人はどう接したって興味持たないだろうし、話に乗る人ってのは大体最初から興味を持ってる人だけだ」
あすみ「いきなり増えやしないよ、洗脳でもしない限りは」
杏子「魔法の力でもないと無理ってこと?」
あすみ「どうかな、現実的にも洗脳ってあるもんだよ? 拉致って囲んで信じるまで説得する宗教団体もあるって聞くけど」
杏子「そんなのがしたいわけじゃないよ。うちはそんなのとは違うし!」
あすみ「……魔法だったらクリーンなわけでもないでしょ」
取り繕っても仕方ないと率直に言ってやれば、杏子は目に見えて落胆した。
そこに、「無理を言って困らせるものじゃない」とやりとりを見ていた神父がなだめに入る。
……よく見れば、みんな最初に見た時よりもやつれていた。
遅くなりすぎないうちに立ち上がる。
ここの人たちは、探ってはこないがあれこれと世話を焼くのが好きな人たちだ。
あまり居座ってたら自分たちの分もろくにない物をまた分けてこようとしかねない。
あすみ「いつのまにか私みたいなのが一人で居座る場所になってて悪いね? なんだか貧乏神みたいになってきちゃってるかも」
神父「構わないよ。ここを居場所に思ってくれるのなら、何者だって拒まないさ」
私の魔法で洗脳はできないが、私の力は『呪い』だ。人を害するためのもの。そう考えれば、この場所はなんて私には似つかわしくない場所だろうか。
……果たしてそれを知ってもこの優しい神父と家族は拒まないのだろうか?
教会を出れば、再び煩雑とした街中へと戻っていく。
そんな日が数日続いて――――。
教会の家族の顔色は日ごとに酷いものになっていった。
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ここまで
18時とはなんなのか…
次回は16日(日)できれば夕方に…!
神父「――――どうしてこんなことをしたんだ!」
ある日の教会は珍しく騒がしかった。
まったくいい意味じゃない。神父が怒ってて、シスターが泣いてた。
どうやら杏子が何か食べ物を盗んできたらしい。
……私からすればちっぽけな悪事だけど、神父にひっついて世の中を良くするだとかなんとか言ってたアイツが、ねえ。
神父「こんなことをして私達が喜ぶと思ったのか? 人様に迷惑をかけてまで腹を満たしたいなど思わない! もしバレなかったらどうするつもりだったのだ!?」
神父「私達の神はいつでも見ている。盗みを働き、嘘をつき、神を裏切ったまま平気な顔をして過ごすつもりだったのか!」
杏子「……」
モモ「お姉ちゃん……」
夫人「私は悲しいわ……杏子がこんなことをするようになるなんて……こんなことをさせてしまうなんて」
私は冷めた目で見ていた。神なんていやしないし、ましてや助けてくれるわけがない。
こんな場所だというのに、わかりやすいほどにそれが証明されていた。そりゃこんな場所に信者は増えない。
やつれて見えたのは勘違いなどではなく、本当に限界だったのだ。もちろんそれは行動を起こした杏子に限ったことじゃない。
――でも本当に餓死したほうがマシ? プライドのために死ぬなんて馬鹿らしくない? 相手はそれで死ぬわけでもないのにさ。
杏子の行動は綺麗事言って怒ってる神父サンより理解できた。なんの力もない人間がこの状況で、こうするしかなかったってわけだ。
神父「反省していなさい」
杏子「……はい」
杏子は祈りのポーズでうつむいている。あれが懺悔とやらのつもりなんだろうか。
なぎさならこんなカワイソウな家族を見れば、汚れのひとつもない魔法のケーキでもポンと差し出してやったりするだろうか?
私にはそんなことはできない。
あすみ「なんかやらかしてきたの?」
杏子「……聞かれてたんだ。幻滅したよね。これじゃ父さんの教えを広める資格もない」
あすみ「そう? 私はよく知らないけどさー……バレないようにやればよかったのに」
杏子「あ――あんたも物盗んできたことあるの!?」
あすみ「さあねー」
杏子はまだ疑うような目で見ている。
あすみ「あーあ、この場所もそろそろおしまいか。せっかく気兼ねなく足を休められる場所ができたと思ってたんだけど、仕方ないか」
杏子「ど……どうして!? あたしのせいでそこまで!?」
あすみ「いやいや、それ以前の問題だよ。こんなガタガタでこれ以上続けてられないでしょ?」
あすみ「強いて言うなら、家族のために盗んでこなきゃ食える物もないような状況になる時点でもうおしまいってやつ」
杏子「そんな……」
あすみ「そもそも、なんでこうなったわけ? 最初からこうだったら生きてこれてないだろうし」
杏子「……もともとうちは今とは違うもっと大きい宗派だったんだ」
杏子「でも父さんはどうしたら世界がより良くなるかって考えて、本部の教えにないことも言い始めるようになって……そしたら本部から破門されて、人も離れた」
あすみ「ふーん、あぁそう……難しい世界なのね」
もとより私は教会も神父も善とは見ていない。所詮人間だし、ソイツらの中身なんてわからないからだ。
大きな組織ともなれば何かしがらみでもあったんだろう。足並み外れたことをしはじめるのは大抵気に入られないものだ。
あすみ「まー、ダメだったならしょうがない。ちゃんと頼めば少しは国も面倒見てくれるみたいだよ。早めにこの教会と下手なプライドを捨ててそうするように言ってみたら?」
杏子「いやだ……そんなのいやだ」
あすみ「でもアンタはプライドよりも生きることを考えたから盗みに手を出したんじゃないの?」
あすみ「祈ったってなんにも起きないよ。ていうか、誰かが助けてくれる、誰かがなんとかしてくれるって思いながらなんにもできない弱い人たちって――――……」
あすみ「私は嫌いなんだ」
杏子「……!?」
……むっとした感情が伝わってくる。
まだ悪意ってほど強いわけでもないけど。
あすみ「ま、私を恨まないほうがいいよ? これ以上不幸になりたくはないでしょ?」
杏子「は……? なにそれ」
あすみ「私がアンタたちの世界をよく知らないように、アンタにも知らない世界があるってことかなあ」
私が煽ったせいで悪い事が起きるのは面白くないので一応それとない忠告をしてみる。が、よくわからなそうな様子だ。
わからないならそれでもいい。……あるいは。もしかしたらこいつにも素養はあったりして?
それならそれで、自力で生きられるようにはなるかもしれない。死も身近にはなるけど。
あすみ「私のこと、他に居場所がなくていつも一人でいるカワイソウな子供だと思ってたんだよね? まあ……どう思われるのかくらいは察してたさ。そんなに間違ってはないし」
あすみ「見下してるつもりはないのかもしれないけど、自分よりか弱いと思ってた相手に強く出られると『なんでアンタなんかにそんなことを言われなきゃいけないんだ』って思っちゃうものだよね」
杏子「そんなつもりじゃ!」
あすみ「嘘だ、図星って顔してるもん。まるで心の中で思ったセリフを読み取られたみたいにさ?」
杏子「いや……なんでそんなこと言われなきゃいけないんだとは思ったよ。でも、そうだな、あたしには……なにもできないな」
……怒った後は落ち込んだ。
忙しいやつ。
あすみ「……どうせなるようにしかならないもんだよ。その中で後悔しないように選ぶしかないわけじゃん」
とはいえ、杏子には選ぶことすらできないのかもしれないけど。
これからどうするかを一番に握っているのはあの神父サンだ。綺麗事の真綿で自分たちを締め続けるような理想をどこまで追いかけるつもりだろうか。
――――――
――――――
ふわふわと浮かぶシャボン。
そこを次々とリボンが切り裂いていきます。――――今日もマミとの訓練。小さな動く目標に狙いをつけるトレーニングです。
なぎさ「今日の狙いも正確ですね! 前よりも短い時間でシャボンをすべて割れるようになってます!」
マミ「ええ!」
なぎさ「これならもぎせんとーでなぎさに勝つ日も近いかもですね〜」
最初の頃はなかなか狙った場所にリボンを当てられなかったものでした。
マミのノートには狙う位置やコツなど、その時感じたことが細かく注意書きしてあります。このノートはこれまでの経験の積み重ねなのです。
訓練に一区切りがつくとマミはノートを見返して、それからなぎさに聞いてきました。
マミ「私、ちゃんと強くなってるわよね」
なぎさ「当然なのですよ! これだけ訓練してますし、実際にいろんなことができるようになってるじゃないですか」
マミ「ええ。そうよね」
『わざわざ手合わせなんて試さなくてもわかるの。いざという時を経験してきてない人に負けることなんてないって――』
――……あの時あすみに言れた言葉。あれをまだ気にしているのでしょうか。
なぎさ「じゃ、今日も魔女退治に行くのですよ!」
なぎさ「終わったらお茶会にしましょう! あと……ちょっと今日の宿題も見てほしいところがあるのです」
マミ「ええ、あとで一緒にやりましょうか」
二人で陽々と訓練場所を離れていきます。
最初の頃のマミは、魔女退治となると緊張で顔をこわばらせていました。
でも今はにこやかで楽しげ。それに安心します。
---------------------
ここまで
次回は18日(火)20時くらいからの予定です
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今日は無理そうですね…(日付変わるまで30分)
次回は19日(水)夜に。多分。
うーん、今日も時間がないですねぇ…
今週平日はとれなさそうなので多分次は休日になります。
――――街を回り、その先で出会った魔女や使い魔を倒し、そろそろ帰ろうかと思い始めた時のことです。
見覚えのある友の姿を見つけて手を振ります。
あすみ「……ああ、奇遇」
なぎさ「あすみ! あすみも魔女退治なのです?」
あすみ「いや、別に。散歩?」
なぎさ「一人でお散歩ですか?」
あすみ「そうだけど悪いー? 暇つぶしにやるこことしちゃ健康的だと思うけど」
まあ、一人の暇つぶしといえばゲームや漫画などのインドアなものが浮かぶので、それよりは健康的かもしれませんが。
……それにしても、それだけというのもどうにも違和感があるわけです。
なぎさ(そういえば前の時も……)
なぎさ「あっちに用事があったのです?」
あすみ「まあ少し。じゃ、引き続き頑張って」
なぎさ「じつは、こっちもそろそろ終わろうかと思ってたところなのです」
あすみ「ああそうなの」
なぎさ「この後マミの家でお茶会する予定なのですよ! 用事が終わったならあすみもどうです?」
あすみ「私はいい」
相変わらずつれない返事です。でも、珍しくあすみのことが少しだけわかりました。
この辺には何もないと思ってましたが、あすみの来た方向を見てみると立派な教会の建物があることに気づきます。
なぎさ「教会……?」
マミ「え?」
なぎさ「ああ、いえ。あすみ、あっちから来たのかなって」
マミ「ええ、多分そうね……」
なぎさ「ちょっとだけ見てみてもいいですか?」
マミ「教会を?」
なぎさ「あ、イヤなら先に帰っていてもいいのですよ! ちょっと気になっただけなので!」
マミ「嫌ってことはないのだけど……でも少し帰りに買い足したいものがあるからそっちを見てきてもいいかしら?」
なぎさ「もちろんです。なぎさも長居はしないと思うので!」
そう言って、マミと別れます。
……なぎさも少し興味が沸いただけです。いつも何かとドライなあすみが通うところはどんなところなのだろう、と。
同時に、怪しいところではないんだろうとも思いましたから。
とはいえ、扉はしまっています。教会というと自由に出入りできる場所かとは思っていたのですが……勝手に開けちゃってもいいものなんでしょうか。
どうしたらいいものかと思っていると。
「あれ? ……お客さん?」
箒を持ったお姉さんが中から出てきて、声をかけられました。シスターさん? って格好にも見えませんが。
なぎさ「は、はい! といってもちょっと気になって来ただけで、とくに祈りにきたとゆーわけではないのですが……!」
「あ、あぁ……ああ! 構わないよ! うち、そうそうお客さん来ないしさ……! でもできれば父さんの話も少しは聞いてってほしいな」
お姉さんはすごく嬉しそうにして、父さん……こと、神父さんを呼びに行きました。
……うーん、気軽に来てよかったのかな? ちょっと寄ってみるくらいのつもりだったので、あまり遅くなるとマミを待たせてしまうかもしれません。
それにしても、気になることがあるのです。
なぎさ「あの……、ちょっといいですか?」
「?」
なぎさ「顔色がよくないように見えるのです。どこか具合が悪いのですか?」
「……」
なぎさ「ちゃんと食べてますか……?」
「……いや、最近余裕がなくて」
なぎさ「……あ、そうだっ、よかったらどうぞです! もらいものですが、食べきれなくて困っていたのです!」
「えっ……!?」
もちろん理由は嘘ですが、カバンに入るくらいのエクレアを魔法で作って差し出してみました。
するとお姉さんは目を輝かせます。
「えっ、いいの!?」
なぎさ「はい!」
「ありがとう!」
こうしてここに来たのは偶然ですが、喜ばれるのは嬉しいものです。
しかし、わざわざ家族を呼んで小さなエクレアを分けている姿を見ていると……なんともいえない気持ちがこみ上げてきました。
なぎさ「……」
神父様はお礼にと心を込めてお話してくれましたが、正直難しくて内容はよくわからないところもあります。
神様が本当にいるかもなぎさにはわかりません。それでもきっと。
なぎさ(…………魔法は人を助けるためにあるのです。それなら、こういう使い方だってアリですよね!)
……教会から出た後、そっと、メッセージを添えて教会の裏に箱を置いていきました。
――――
――――
なぎさ「マミ、遅くなってごめんなさいなのです!」
マミの家につくと、エントランスからマミを呼び出してみましたが、返事がありません。
なぎさ「……あれ? まだ帰ってないのかなあ」
マミ「なぎさちゃん、もしかして待たせちゃった?」
携帯を取り出して連絡しようかと思ったところで、ちょうどマミが来ました。
なぎさ「なぎさも今来たところなのです」
マミ「どうだった? 私、教会って行ったことないから」
なぎさ「なぎさのほうはですね――――」
マミと話しながら上にあがって、お茶会をはじめます。
こっちも思ってたより遅くなってしまいましたし、マミも買い物が長引いたのかなとしか思ってませんでした。
なぎさ「マミのほうはどうでしたか? 時間かかってたみたいですが、どこまで買い物に行ってたのです?」
マミ「そんなに遠くには行ってないけど……ちょっと、魔女を見つけたから倒してたの」
なぎさ「魔女……一人でですか!?」
マミ「え、ええ。大丈夫よ。前は怖かったけど、今はなぎさちゃんのおかげでもう戦い方もわかるようになったから」
マミ「なぎさちゃんや神名さん……他の魔法少女も普通は一人で倒すんでしょう?」
一人でも今ならきっと大丈夫。
この前あすみと話したときにはそう言いましたが、今までずっと二人でやってきたから、驚いたのです。
なぎさ「そうですね……も、もうベテランさんですからね。うーん」
大丈夫……とは言いましたが。やはり心配になってしまうものです。
一人で戦うほうが危険なことには代わりはないし、仲間がいるなら危険を冒す必要はない、というのはマミも最初の頃から言ってたものですから。
とはいえ、マミももう契約したてではありません。あの頃から今までで、何かしらの心の変化があったのかもしれません。
もしかしたら、やっぱりこの前あすみに言われたことも気にしているのかも。
なぎさ「で、でも! 何かあったらすぐになぎさを呼んでくださいね!?」
マミ「……ええ。わかってるわ」
――――――
――――――
まだ太陽の光が差す午後、私はまたあのみすぼらしい家族の住む教会に向かってみて、そして――――。
ここ数日の空気とは違い、いつになく元気な声に出迎えられた。
モモ「あっ、あすみだ! いつも気になってたの! 今日こそ一緒に遊ぼうよ!」
杏子「お姉ちゃんが遊んでやるから迷惑かけちゃダメだよ。ほら、いつもの丘の木まで競争するか?」
モモ「うん!」
神父「ようこそ。賑やかで悪いね。驚かせちゃったかな。前はいつもこんな感じだったんだけどね……」
相変わらず人気はないが、青白く痩せこけた顔で、力の入らない声で語るよりはよほどご利益がありそうな場所になった。
あすみ「いや? 元気そうでなにより」
それより私が気になったのは、微かに魔力を感じたことだ。
……まさか、こいつが契約した?
そう思って杏子を見る。
杏子「? ……一緒に遊ぶ?」
あすみ「かけっこ? そんなの……」
魔法少女がやれば勝負にならないことだ。まあ、こいつはそれでもおねーちゃんだから手加減するんだろうけど。
私は身内でもないヤツ相手に手加減してやったって楽しくない。
あすみ「……違う。箱?」
魔力の元はあれだ。ちょうど、夫人が持ってきた箱に目を移す。そこからよく知った魔力を感じた。
夫人「また今日も贈り物よ。わたしたちの女神様……から」
あすみ「女神様ぁ――!?」
杏子「何? またケーキ?」
モモ「甘い匂い! ケーキだよ!」
杏子「でも、本当に神様からなのかな? ていうか、うちにいるのって女神様だったんだ?」
神父「人がやることにしては不自然な点はある。ケーキは傷みやすいはずだが、外に置かれていても傷んでもいないし、そもそも直接渡せるならそのほうが早いからね」
神父「なんであれ、感謝していただかなければいけないね。さあ祈りを捧げよう」
…………呆れた。
どこでここのことを知ったのかは知らないが、よりによってこんな形で施しを与えるなんて。なぎさのやつ。
杏子「……もしかしたら、昨日来た子って関係ないかな」
モモ「エクレアくれた子のこと?」
杏子「箱を見つけたのってあの子が来てからだし、あの時もらったのも生菓子……考え過ぎかな」
夫人「ありえない話ではないけど、でもさっき言ったみたいに不自然なところはあるし、あの子の家がもしケーキ屋さんだったとしてもこう立て続けには無理じゃないかしら?」
夫人「あの子が女神様でもない限り……ね」
あすみ「……」
神父「よかったら、君も一緒にどうかな?」
あすみ「……私はいい。今日は帰る」
来た早々で帰る私は、遠慮しているようにでも見えたかもしれない。
しかし、あいつの仕業なら私が食べる意味なんて本当にないからだ。
あすみ(……こんなことしたところで自分たちで何もできないんじゃその場しのぎだ。結局何も解決しない)
あすみ(まさかずっと面倒見るつもりか?)
人がやることにしては不自然ってのは神父サンも言ってた。
魔法でやったことだからだ。今のなぎさの魔法なら腐らないようにすることも出来るだろうし、薬すら作れるのだから栄養だってコントロールできる。
魔法を施しに使うのはまだいい。わざわざ神を名乗って、人間技じゃできないことをやって――――。
あすみ(……こりゃタイヘンなことになるかもね)
-------------------------------
ここまで
次回は23日(日)夜の予定
いつもの場所に寄れば、すぐに訓練してる二人の姿を見つけられた。
あすみ「…………」
なぎさ「あっ、あすみ! 来てたなら声をかけてくれればよかったのに」
あすみ「まだ見てただけ。用ができたら声かけるよ」
なぎさ「それなら、気が済むまで見ていってくださいなのです!」
訓練の内容は二人での組み手のようだった。
なぎさのほうがだいぶ余裕で、師匠らしくアドバイスなんかしてる。
私と一緒の時には見えないような姿だ。師匠と弟子なのだから当然ではあるが、それ以外にも私の知らないような世界はあるんだろう。
出会った頃からいろんな敵と戦って、目的を持って、なぎさは確実に成長してる。でも変わらないところもある。良い部分も、悪い部分も。
むしろ目的持ってからさらに青臭くなった部分だってありそうだ。
あすみ「ねえ、なぎさ」
なぎさ「はい!?」
仕切り直して二戦目をはじめた途中で声をかけられて、なぎさは半分こちらに意識を向ける。まだ余裕そうに澄ましてる。
あすみ「教会の奴らのこと……余計なことするのやめておいたら」
なぎさ「なっ、なんのことやら!」
あすみ「私にはごまかせないのわかってるでしょ。あくまで“女神様”の仕業にしたいってつもり?」
なぎさ「それでいいのですよ。見えないところでも人助けするのが、なぎさの思う魔法少女の役目なのです」
あすみ「……まだ続けるんなら、最後まで責任持ちなよ。どんなことになっても」
なぎさ「……!?」
どう思ったのか、なぎさはまだ真剣な表情で訓練を続けてる。
あすみ「なぎさ……こっちから見るとパンツ丸見え!」
なぎさ「ふわあっ!?」
気が逸れたであろう瞬間を狙うようマミにアイコンタクトしといた。
すると、不意打ちの拘束は成功したように見えたが、
縛り上げる前にいつのまにやら仕込んでいたシャボンが次々にぶくぶくと膨らんでリボンを破って弾けた。
あすみ「……こんくらいじゃ隙は突けなかったか。つーまんない。残念だったね、マミも」
なぎさ「丸見えなわけないじゃないですか!? 変なこと言わないでください!」
あすみ「あれ、じゃーもっと生々しいの攻めたほうがよかったかな? パンツなんて水着と変わんないし、子供だましって思っちゃうか」
なぎさ「そういう意味じゃないんですけど……っていうか、マミだってそんなことでなぎさに勝ってもうれしくないですよ」
マミ「え、ええ。まあ……そうね?」
あすみ「本当に? まぐれでも一回くらい勝ちたくないの? まだ勝ったことないんでしょ?」
マミ「魔法少女同士で競うのは本来の目的でもないし、なぎさちゃんは師匠なんだから私より強くて当然よ。仕方ないわ」
あすみ「そう? 純粋な実力なんて、本当の戦いじゃ覆ることはいくらでもあるけどね」
あすみ「……要は機転ってやつだって。頭使って、一回くらい本気で勝ちにいってみなよ。負けっぱなしの試合なんてつまんないじゃん?」
なぎさも過保護だがマミはマミで真面目だから、今までこんな感じだったのかもしれない。
あすみ「で、なぎさならさらにその細工をも捻り潰してみせるんだろうね」
なぎさ「あ、あたりまえです! 師匠ですから! ……なので、マミも遠慮せず来てくださいなのですよ?」
マミ「……ええ。遠慮はしてないわよ?」
……まあでも、真面目なほうが寿命は長いのかもしれないな。
徹底して守られてるのなら、いざっていう時だって来ないんだろう。
二人を突っついて、ちょっとだけ忠告をして、深くは関わらずに去っていく。
これがいつもどおりの距離感だった。
これからどこへ行こうか。まだ明るい。また教会に戻るにも早いし、時間を潰せることといえば魔女狩りに街を見て回るくらいだ。
なぎさ「……」
…………去り際を見つめるなぎさは少し寂しそうな目で見ていて、でもそれに気づくことはなかった。
いや、そんなの気づいていたって無視していた。
あすみの方から歩み寄ることはよほどのことがない限り無理だと思うけど・・・
なぎさと関わりを持たないことが悪影響を生んでるよね、多分
だって、私ならアンタのほうが心配だって返すだろう。
一応、心配はしてるんだろうな。
あすみ『……とりあえずケーキの件、正体バレるような滑稽なことにはなるなよって言っておく』
姿は見ないまま、最後に気にかかってたことをテレパシーで伝えてから行った。
――――――
なぎさ「――――――……また言いたいことだけ言って、行ってしまいました」
マミ「なんだか、自由そうよね。神名さんって。あんなに思ったこと言うことってできないもの」
なぎさ「自由そう、ですか…… たしかにそう言うことも出来ますけど」
もっと一緒にいろんなことしたいのに。もっとあすみのことも知りたいのに。
あすみにはずっとモヤモヤとした気持ちを抱いていました。
だって、ゼッタイ困ってるのはわかってるのです。
なぎさ「マミは何か言いたいこと、我慢してるのですか?」
マミ「えっ? いえ、そういうわけではないんだけどね?」
なぎさ「そうですか? それならよかったのです」
些細な雑談でマミと笑い合って、それからまた少し訓練をして。
そうして、夕焼けを見ながら帰り道を歩きます。
なぎさにとってはこれがかけがえのない日常です。
なぎさ(そうだ。あすみの話でケーキがちゃんと届いてるのはわかったけど、みんなが元気にしてるか今日も見に行こう!)
それからも教会の人たちの顔色は良くなってて、みんな元気そうで、安心します。
またちょっとむずかしいお話を聞いて、年の近いお姉さんたちとは普通の雑談をしたり、遊んだりもしました。
女神様の話もしてくれました。本当はなぎさのことなので、ちょっと照れくさい気分になったけど……。
――――
――――
……顔を合わせて会いに行くのはたまにですが、毎日こっそりとケーキは置きに行っています。
腐ることがなくて、できるだけ栄養満点のものをと念じて。
それが終わると、文房具を取り出して今日もいつものメッセージを添えます。
なぎさ(見えないところでも人助けするのが魔法少女の役目……)
なぎさ(……そうですよね。感謝されたくてするわけじゃないから、こうして正体を隠しているのです。今日も見られないうちに――)
その時、誰もいないと思っていた教会の裏――この場所に足音がして、声がしました。
「女神様……?」
-------------------
ここまで
次回は24日(月)夜からの予定
なぎさ「ええっ!?」
驚きました。そして……何かしなくてはと考えます。
しかし、戸惑ったところでなぎさには人目をごまかす魔法なんてありませんし、都合よく忘れさせる魔法もないのです。
そんなのは、たしかに、考えるまでもなく…… とっくにわかってたことでした。
なぎさ「い、いえ! なぎさですよ! 一緒に遊んだ……! 知ってますよね!?」
モモ「知ってる、けど…… 見たもん。なぎさ、なんでそんなほうに行くんだろうなって、また遊びに誘おうかなって思ってたら……」
モモ「キラキラ光って箱が出てきたの。なぎさが女神様なんでしょ!?」
なぎさ「それは……――――」
そこまで見られてしまっては言い逃れができません。
仮面のヒーローの素顔がバレるのは、いつかあすみが言ってたように『こっけい』なことでしょうか?
それどころか今のなぎさは…… この人たちにとっては女神様、なのです。
感謝されたくてしてたわけじゃないですが……。
モモ「あのね! 女神様に会ったら、ずっと言いたかったことがあるの!」
なぎさ「な、なんでしょうか?」
モモ「いつもおいしいケーキをありがとう……ございます! 私たち家族のことをいつも見てくれて、見捨てないでくれて……!」
なぎさ「そ、そんな、改まらなくても……!?」
モモ「だって、神様なんだもん! これからもどうか……!」
なぎさ「は――はいっ! これからももちろん、なぎさの助けが必要ならお助けしますので!」
……頬が熱くなります。
感謝されたくてするわけじゃなくても、感謝されるのは悪いことじゃないんじゃないか――そう思ったのでした。
――――
――――
約束通り、次の日もマミとの訓練の前に教会へケーキを置きにいきます。
バレてしまったものはしょうがありません。見られたのはモモだけですが、一家に広まってたらと思うとどうしたらいいか。
それでも前よりも気を張らなくてよくなったぶん、気分的には楽になりました。
こっそり、っていうのも意外と疲れるのです。
なぎさ(今日はチョコレートケーキ……)
ケーキの入った箱を置いて、文房具を取り出していつものメッセージを書きます。
それから戻ろうとすると、待っていたようにモモがいました。
なぎさ「あのっ、なぎさのことって他のみんなにも話しました?」
モモは首を横に振ります。ちょっとホッとしました。
さすがに一家の全員から女神様と崇められたら気後れしてしまいます。
なぎさ「じゃあ、ヒミツにしててくれませんか? みんなと会うときのなぎさは、ただのなぎさだと思ってほしいのです」
モモ「女神様ってすごいです! こんなによくしてくれるのに謙虚で。本当に今日もありがとうございます!」
なぎさ「えへへ……」
……他の人からは女神様と呼ばれないで済むみたいですが、モモの態度は元には戻らなさそうです。
モモ「これからはもっとお祈りを頑張るので……!」
なぎさ「は、はい」
モモ「……明日はモンブランがいいな、なんて」
何かかしこまった雰囲気と思ったら。
これも、すがおがバレたっていうのでしょうか。
たしかに見られてしまったけど、ホントのなぎさは女神様ではないのです。
でも、女神じゃなくても魔法で叶えることはできます。なぎさの得意な、幸せのお菓子の魔法。
モモ「あ! ごめんなさい、わがまま言っちゃって!」
なぎさ「いえいえ、そのくらいならお安い御用なのですよ! 女神様にまかせなさいなのです!」
モモ「もう行っちゃうんですか?」
なぎさ「はい、これから予定があるので…… それが終わったらまた来るのです!」
モモ「はい! いつでも待ってます!」
ふかぶかとお辞儀をする姿に手を振り、訓練場所へと行くことにします。
――……その時、なぎさの背後では、モモの姿を探して杏子が外を見に出てきていました。
杏子「……モモ、そんなとこでなにやってんの?」
モモ「ううん、ヒミツ! それより今日も裏見てみてよ。女神様に感謝の祈りを捧げなきゃだよ!」
杏子「お、今日も来てるんだ! 今日は何かな?」
素直に喜んでいた杏子でしたが、なぎさの行ったほうを見て、少しだけ不可解な表情を浮かべます。
とはいえ、その場を見ていない杏子にはすぐに正体と結びつけることは出来なかったのですが――――というのは、なぎさの知らない部分のおはなし。
――――
なぎさ「マミ、遅くなってごめんなさいなのです!」
マミ「いえ。でも、最近少し来るのが遅いことが多いけど……もしかしてまた教会に?」
なぎさ「ま、まあそうですね!」
マミ「お祈りでもしてるの? そんなにハマるような場所なのかしら……?」
なぎさ「え、ええと! お祈りもしてませんし怪しいものにハマったとかっていうわけじゃないのですよ!? むしろなぎさが祈られてるっていうか……」
マミ「……え?」
なぎさ「なんでもないのです! さあ訓練訓練!」
半ば強引にごまかすように訓練に移ります。
マミは同じ魔法少女ですし、モモに女神様……なんて呼ばれてることは、なんとなく恥ずかしいので知られたくありませんでした。
――――モモにも言ったので、訓練が終わったらまた教会に向かいます。今度はただのなぎさとして。
なぎさ(あ。あすみ……?)
扉を開けた途端にまず目に入ったのは、教会の家族ではなくあすみの姿でした。
ガラ空きの椅子の端にぽつりと座っていて、なんだか寂しそうに映ります。
そうでした。最初にここに来たのもあすみがきっかけだったことを思い出します。
特に何をしている様子でもなく、ただそこにいるだけ。
あすみ「…………」
あすみもこちらに気づいただろうに、目を合わせてくれません。
話しかけるなオーラと言いましょうか……意図的に無視している雰囲気を感じました。
なぎさ(さすがになぎさもそのくらいは読めますけどね……)
そうしていると、あすみが席を立ちました。なぎさと入れ違いになるように去っていくつもりみたいです。
モモたちがいるので厳密には一人じゃないですけど、一人になりたかったんでしょうか……? そんな感じにも見えました。
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ここまで
次回は27日(木)夜の予定です
しばらくあすみのことを考えてましたが、声をかけられます。
夫人「あら、ようこそ。今日もきてくれたのね」
モモ「わあ! いらっしゃい!」
ひときわ明るい声で寄ってきたモモの手には分厚い本があります。勉強中だったのでしょうか?
なぎさ「むずしそうな本を読んでるんですね〜」
杏子「まあそうだね。これは聖書だよ。だから、神様の勉強。なんだかモモったら急に精を出しててさ。今日なんて遊ぶより勉強するって言うから驚いたよ」
神父「あのケーキのこともあって、目覚めたのかもしれないね。もちろん私としては嬉しい限りだ」
モモ「うん! だって今こうしているのも全部神様のおかげなんだもん!」
モモはそう言って満面の笑みをなぎさに向けます。
それは、なぎさを神様と思ってのことです。
なぎさ「ふふ。あ、あんまり無理はしなくて良いのですよ」
――なんて、ちょっと調子にのって言ったら、モモ以外からは『?』というような反応を返されてしまったのですが。
神父「まあ、ずっと本を読んでいたら目を悪くしてしまうかもしれないし、小さい頃は外で遊ぶことも大事だね」
神父「せっかくなぎさちゃんも来てくれたんだし、一緒に遊んできてもいいんだよ」
モモ「うん。じゃあ、遊びに行きましょう! めが……、なぎさ!」
なぎさ「は――はい!」
それから、今日は暗くなるまでモモと杏子と一緒に三人で遊びました。
学校の友達との遊びとなるとゲームなどのインドアになることが多いので、めいっぱい身体を動かす遊びはむしろ新鮮に感じます。
もちろん、手加減はしなくちゃならないのですが……。
魔法少女になってから近い年の子と遊ぶこと自体減ってしまったので、一緒に遊ぶ時間は楽しい時間でした。
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亀更新すぎるんですがとりあえーず1レスだけ投稿しつつ…
次回は28日(金)夜からの予定です
――――――
あすみ「…………」
……なんとなく暫く外から眺めてたら、なぎさと教会の娘らが飛び出していくのが見えた。
ケーキの件からなぎさがここの奴らに関わってることは知ってた。
飢えなくなって多少賑やかになってからも私一人だとまだ静かだが、なぎさが来たら空気はまるで別物へと変化してしまった。
なぎさはああいうやつだから。マミが来てから余計に元気になってるみたいだし。
あの空気の中にいる気はなかった。忠告ならこの前に済んでる。
あすみ(寂しい? 違う。別にそんな感情を埋めるために立ち寄ってたわけじゃない)
――だけど、なんか。
なにかが気に入らなくて、立ち去った。
――――――
――――――
モモ「め…… なぎさ、ちょっとあっちで話せる?」
――――また次の日も教会に行くと、みんな歓迎してくれて、とくにモモはリクエストのモンブランのケーキを喜んでくれました。
本当にすごい、ありがとうって。
わざわざモモは教会の裏で感謝を伝えてくれたのです。
でも、なんだか、昨日よりも少し元気がないようにも見えました。
なぎさ「あっ、またリクエストあったら聞きますよ?」
モモ「えっと、じゃあ、すっごくひさしぶりに豆腐じゃないホンモノのお肉とかも食べたいなぁ……って」
なぎさ「あ……それはできないのです。ごめんなさいなのですが……実はなぎさ、お菓子しか出せないのです。それもチーズを使ってないお菓子だけで……」
モモ「えっ、い、いいえ! ケーキ大好きです! こちらこそわがままを言ってしまってすみませんでした!」
モモ「……本当にごめんなさい、女神様。全然信仰を増やせなくて……。こんなに良くしてくれてるのになにもできてないです」
なぎさ「そ、そんなの、全然気にしてないのです……! ――――あ、というか……」
なんと言っていいかわからず、言いかけた言葉を引っ込めます。それと同時に胸が痛みました。
こうやって申し訳なさそうにされると困ってしまいます。
なぎさは本当は女神様じゃないから……。
モモ「このままじゃうちは教会じゃなくなってしまうかもしれません……だから、少しでいいので、協力してもらえませんか?」
なぎさ「ええと、なぎさはなにをすれば……?」
モモのことは今ではただ純粋に、なぎさのお友達だと思ってます。
だから、神も魔法少女も関係なく、できることなら協力はしたいと思うのです。……でも、何か嫌な予感がします。
モモ「『神様として』布教を手伝ってほしいんです!」
なぎさ「でも、それは……」
モモ「お願いします! こんなにすごい神様がいるんだって知ってもらえれば、みんなも信じてくれるはずだから……!」
いつになくモモは食い下がります。
当たり前です。自分の家の命運がかかっているのですから、そう簡単には引けません。
なぎさが『神様として』魔法少女の力を見せつければ、信仰してくれる人は増えるかもしれません。モモの家は教会を続けていけるかもしれません。
なぎさ「……………あの、ですね」
……でも、もう限界だと思いました。
これ以上自分を神様だなんて言い続けたら、人を騙してるのと同じ。
そう思って言いかけた言葉は、不意に表のほうから響いた声のせいで遮られました。
>>718 【訂正】 数行抜けてる!
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モモ「……本当にごめんなさい、女神様。全然信仰を増やせなくて……。こんなに良くしてくれてるのになにもできてないです」
なぎさ「そ、そんなの、全然気にしてないのです……! ――――あ、というか……」
なんと言っていいかわからず、言いかけた言葉を引っ込めます。それと同時に胸が痛みました。
こうやって申し訳なさそうにされると困ってしまいます。
なぎさは本当は女神様じゃないから……。
モモ「みんなが話を聞いてくれないのは、きっと、神様なんていないと思ってるからです。神様はこうしてちゃんといるのに」
モモ「今日は、学校でも神様のこと馬鹿にされてモモの家がヘンだって言われて……すごく悔しかったんです」
今まで見たことがない怒りの表情を見せます。それにきっと、その怒りはなぎさのためでもあるのです。
モモが元気がないのはそのことがあったせいでした。
モモ「このままじゃうちは教会じゃなくなってしまうかもしれません……だから、少しでいいので、協力してもらえませんか?」
なぎさ「ええと、なぎさはなにをすれば……?」
モモのことは今ではただ純粋に、なぎさのお友達だと思ってます。
だから、神も魔法少女も関係なく、できることなら協力はしたいと思うのです。……でも、何か嫌な予感がします。
モモ「『神様として』布教を手伝ってほしいんです!」
なぎさ「でも、それは……」
モモ「お願いします! こんなにすごい神様がいるんだって知ってもらえれば、みんなも信じてくれるはずだから……!」
いつになくモモは食い下がります。
当たり前です。自分の家の命運がかかっているのですから、そう簡単には引けません。
なぎさが『神様として』魔法少女の力を見せつければ、信仰してくれる人は増えるかもしれません。モモの家は教会を続けていけるかもしれません。
なぎさ「……………あの、ですね」
……でも、もう限界だと思いました。
これ以上自分を神様だなんて言い続けたら、人を騙してるのと同じ。
そう思って言いかけた言葉は、不意に表のほうから響いた声のせいで遮られました。
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ここまで
次回は30日(日)夜からの予定
*「ここがアイツの家? こんな町外れのド田舎みたいなとこにホントーに住んでるヤツなんていたんだな!」
*「おい、嘘つきモモ! きてやったぞ! 歓迎しろよ!」
なにやら乱暴な声です。
モモと一緒に表に駆け寄ってみると、モモと同じくらいの年の男の子二人がいました。
モモ「あ、あんたたち…… 何しに来たの!?」
*「お前がクラスの人みんなに『お願いだから来てください〜』って頼んでたから見にきてやったんだよ」
*「てかマジで来たのオレらだけ? オレらってやさしー。みんなモモの家はおかしいから近づいちゃいけませんって言われてるもんな」
モモ「みんな? そんなはずない!」
*「ホントだよ。モモと違って嘘つきじゃないし。モモには言わないだけだよ」
なぎさ「あ、あなたたちはバカにするためにここまできたのですか……?」
ムッとして尋ねます。興味がないなら来なければいいのに。
モモは学校でも広めようとしてたみたいです。モモを馬鹿にした人たちというのはこの二人なのでしょう。
表で騒いでいたのに気づいたのか、神父さんと杏子も出てきました。
神父「何やら声がしたが、お客さんかね……?」
杏子「あんたたちモモのクラスメイト?」
*「あ、嘘つき宗教の神父だ! 逃げろー!」
*「神父さん! 信者を増やすためなら嘘言ってもいいんですか?」
嘘……。さっきも『嘘つき』って言われていました。
もしかして、それなぎさのしたことが関わっているのでしょうか。
神父「嘘……とは何のことかな? 嘘はもちろん良くないよ。娘たちにもそう言って聞かせているが」
*「じゃあこの教会に困ったときに助けてくれる女神様って本当にいんの? 女神様が毎日ケーキくれて、願いを聞いてくれるって!」
神父「ああ、ケーキのことは心当たりがあるが、願いというと……――」
モモ「本当だよ! 今日のモンブラン、私がお願いしたんだもん」
杏子「モモ、それホントに!? 偶然とかじゃなくて?」
モモの言う願いとは、あのリクエストのことだったのです。
なぎさは大した事はできませんし、大したことをした気もありませんでした。でもモモにとっては十分すぎるほどの奇跡で――。
モモ「女神様、お願いします! 嘘つきじゃないって証明してよ!」
なぎさ「………………」
なぎさがここで何もしなければ、モモは嘘つきって言われ続けるのでしょう。
もしかしたら神父さんや杏子にも怒られてしまうかもしれません。
なぎさ「…………」
それに……、
モモからは『見捨てられた』と思われてしまうでしょう。そう思うといても立ってもいられず――。
……ソウルジェムから魔力を練りました。
なぎさ「……これ、明日の分のケーキなのです!」
杏子「な、何もないところから!」
神父「なんと…… 人の力ではないのかもしれないとは薄々思っていたが、君が…… いや、貴女が……」
なぎさ「き、気づいてると思いますが、腐ったりしませんので……受け取ってください」
メッセージはないけれど、いつもと同じ箱入りのケーキです。
*「う、嘘だろ!? なんかの手品だよな!?」
*「いやいや……信じらんないけど、これ手品とかじゃないって! 神様って本当にいたんだぁ……」
なぎさ「……」
モモ「あ、ありがとうございます! ほら、わかったでしょ!? 嘘つきなんかじゃないんだから!」
*「あ、あの……神様? お、オレらのこと祟ったりしないですよね?」
なぎさ「……きょ、今日のところは許しててあげるのです。ただし、これからモモのことをバカにしたら許しません」
男の子たちは、ぺこぺこと謝って帰っていきました。
……やってしまいました。これでもう、モモ以外からも今までのように接してもらえなくなるかもしれません。
でも、騙したままじゃ、やっぱりダメだと思うのす。
杏子「モモは知ってたんだな」
モモ「うん。たまたま見ちゃって……」
なぎさ「あの、モモ。また少し話してもよろしいでしょうか……?」
モモ「?」
教会の裏。ふたりになると、なぎさは決心します。
なぎさ「実は……なぎさは神様ではないのです」
モモ「え……!? で、でもっ、ケーキを出してずっと助けてくれたじゃないですか!? さっきだって!」
なぎさ「あれは魔法なのです!」
モモ「魔法……?」
こんなことを急に言われたって混乱するでしょう。
モモの前にソウルジェムを見せます。手に乗せて差し出した宝石をモモは呆然と見ていました。
思い切って変身してみせると、更に驚いた表情になりました。
なぎさ「今まで隠しててごめんなさい。なぎさは……魔法少女なのですよ。今見せた宝石が魔力のモトで、こうやって変身して魔女と戦って街の平和を守っているのです」
なぎさ「なぎさもただの人間なのです。キュゥべえと契約すればみんな魔法少女になれるのですよ」
モモ「み、みんなって、モモもなれるの……? モモもケーキを出せるように……?」
なぎさ「ケーキを出したのはなぎさの願いから生まれた魔法です。キュゥべえが願いを叶えてくれて、その代わりに戦うことになるのです。だから、そう願えば……」
なぎさ「……お、怒ってませんか? 騙してたこと!」
モモ「ごめんなさい…… まだ混乱してて…………」
なぎさ「そ、そうですよね! こんなこといきなり言われても困ってしまいますよね……」
モモ「…………」
なぎさ「では……もう行きますね。みんなの前で話す勇気はなくて。でもモモには知っていてもらいたかったのです」
……落ち着かない気持ちのまま変身を解いて表のほうに向かい、教会から離れていきました。
みんなと今なんて話したらいいのかわかりません。
明日からどうすればいいのでしょうか。
---------------------
ここまで
次回は2日(水)夜の予定です
――――――
――――――
中に戻ってみると、みんなまだ女神様――なぎさからもらったケーキの箱を神妙な表情で眺めてた。
神父「神様は私達を見捨てないはずだとは信じていたが……こうして目に見える形で姿を現すことがあるとは、正直思っていなかったな」
夫人「そうね。でも、目の前で見てしまったもの。まさか本当にあの子が女神様だったなんて……」
まだみんな不思議そうにしてるみたい。
人の力じゃありえないこと。それを神の力だと思っていたけれど、さっきの話はそれを否定した。
モモ「おねえちゃん」
杏子「モモ、どうした? そういえばなんか話してきたの?」
モモ「うん。……ちょっと」
みんなより一足先に部屋のほうに戻っていく。そこでお姉ちゃんにさっきのことを話してみた。
まだ整理がつかないから、まずは聞いたことをそのまま。
杏子「実はさ、前にモモが裏で話してるの知ってからちょっと怪しい気はしてて、もしかしたらなぎさが女神様なんじゃないか……とか考えたりはしてたんだ」
杏子「だって、あんなタイミングよくなぎさが来てすぐケーキ見つけるって普通ないでしょ。……でも、ホントに合ってたって思ったら今度は魔法少女って」
今も信じられない。でも、そんな変な嘘つく意味もない。
モモ「女神様だと思ってたなぎさは魔法少女で……じゃあ女神様は本当はいないの?」
杏子「あのメッセージに書いてあった『女神様』はいないだろうけど、神様はいるよ。最近熱心に祈ってたのもきっと無駄じゃないさ」
モモ「う、うん。そうだよね……」
杏子「それにしても、人間と魔法の力を与える契約なんてするやつがいるっていうのか……?」
そしたら、このプライベートな空間で聞くはずのない知らない声とともに小さな影が現れた。
「うん。いるよ」
杏子「わ、わぁっ!?」
モモ「も、もしかして……」
QB「僕がなぎさの言ってたキュゥべえだよ。魔法の使者さ。願い事があれば叶えてあげることができる」
杏子「……」
モモ「……」
お姉ちゃんと二人で顔を見合わせる。そのときわたしたちが思いついた願い事は“ふたつ”だった。
――――――
―――
―――
なぎさ「み、みなさんこんにち……あ、あれ? お客さん?」
あれからなぎさは気まずくて、昨日はついに顔を出しませんでした。
あの時は渡したのは『翌日の分』でした。だから、まだ今日の朝までは足りているはずなのです。
今日はちょうどお休みなので、朝に来てみました。
だって、助けてほしいというのはモモからの頼みでもあるのです。今から見捨てるわけになんていきません。
――――でも、そこにあったのはいつもとは違う光景で。
神父「ちょうどよかった。……どうぞお入りください」
なぎさ「ふえ……?」
神父「日曜日は礼拝の日。皆様は神様……いえ、『貴女』のためにお集まりいただいているのです」
なぎさ「……ふぇぇ!?」
中にいるのは決して大人数ではありませんが、今までと比べれば多い人数です。
子連れの家族も多く……あの時の男の子も来ていました。
その視線が一斉にこっちに向きます。
*「この子がその!?」
*「信じられない……見た目は普通の子供なのに! でもそれも聞いたとおりだわ……」
*「お祈りすれば私達にも奇跡が起こるの!?」
たしかになぎさの魔法で、ここのみんなのことは助けることができました。
でもなぎさはこんなに多くの人の『神様』にはなれません。どう答えようか迷っていると、神父さんが制しました。
神父「静粛にお願いします。お祈りや信仰とは下心を持ってするものではありません」
神父「『していただく』のではなく、神の為、人の為――ひいては世の中の為に自らが奉仕すること。そう考えているからこそ神様は目を向けてくださるのだと信じています」
神父「……そう、ですよね?」
なぎさ「は、はい。なぎさもそう思います」
なぎさ「すぐにみなさんの悩みが解消するわけじゃないかもしれませんが……きっと、良いことしてればいつかは報われると思います」
……結局なぎさは曖昧なことしか言えませんでしたが、みんなは納得してくれたみたいでした。
*「今日はお試しのつもりだったけど、これからもお祈りしてみようかな……」
*「でも……女神様? 怒られるかもしれませんが今は本当に困ってるんです。これから大事なピアノの発表会が控えてるのに指を骨折してしちゃって」
なぎさ「おケガですか……それくらいなら、なぎさの力でも治せるかも」
*「ほ、本当ですか!?」
なぎさ「――はいっと、これでどうでしょう?」
女の子の差し出した手を包み込み、その中で見えないようにソウルジェムを具現化して魔力を使いました。
*「あ、あ! 治ってる! ありがとう、ありがとうございます!」
その言葉に教会内は一斉に沸き立ちました。
……なぎさの魔法を見た男の子もいるし、戻れないのは今更です。でも。
治ってよかったという安堵と、文字通り神様のように称賛されるてれくささ。それと同時に、騙しているという罪悪感が膨らみます。
モモ「…………」
モモのほうを見ると目が合いましたが、すぐに隣にいる杏子のほうを見てしまいました。
二人は何を考えているのでしょうか。それはなぎさにはわかりません。
――――
――――
--------------------------
ここまで
(水)はちょっと仮眠とろうとおもったら朝まで寝てました
次回は5日(土)夜からの予定です
礼拝が終わるとお客さんが神父さんと話しにきました。この前見た男の子も一緒にいますし、その子の母親なのでしょう。
なんとなくやりとりを見ていると、何かを渡して頭を下げてから帰っていきました。
……なぎさは今日は、初めて見る人たちに注目されてすっかり疲れてしまいました。しかし、ここにきた目的を忘れるわけにはいきません。
神父「神様――いえ、本来ならこうして直接話すことすらおこがましいのですが……」
なぎさ「そ、そんなにかしこまらなくてもいいのです……! それで、なんでしょうか?」
神父「うちの教会にもあれからこうして私達の教えを聞いてくれる人がきてくださるようになりました」
神父「一昨日のことがあってから、あの男の子が広めてくれたみたいでね……モモから聞いた話だと、あの子たちはクラスでも発言力の高いガキ大将だったらしい」
神父「あの子たちの友達、親、そのつながりから興味を持ってもらえたようで、あのご婦人は息子がモモをいじめてすまなかったとお詫びまでしてくれて……」
なぎさ「そうだったのですね……」
あの時神父さんや男の子たちの目の前で力を使ったことがきっかけでこんなことになるなんて。
みんなを騙してしまうことにはなりましたが、めでたし……なのでしょうか?
神父「なんと感謝すればいいのか……。これからはなんとか暮らしていけそうです。貴女のおかげで私達は、生活していける力まで手に入れることができました」
なぎさ「! そ、そうですかっ。よかったのです!」
神父「これからもどうか私達を見守りください」
そんなとき、向こうから家族を昼食に呼ぶ声がしました。
今までずっと魔法のケーキを差し入れてきましたが、ついになぎさが何かをしなくてもよくなったのです。
あの時は叶えてあげられませんでしたが、モモもやっと本物のお肉を食べられます。
……すれちがいざま、モモはこっちを見てそっとつぶやきました。
モモ「……ありがとう」
真実を知っているのはモモだけ。
モモはまだなぎさが話したことは胸に留めたままのようです。少なくとも、神父さんには話していません。
これからもずっと、本当のことは知られないままなのでしょうか……?
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次回は6日(日)夜に…
――――――
――――――
――――……わたしたちが思いついた願い事は“ふたつ”だった。
モモ「……ぜんぶ叶っちゃったね」
杏子「……そうだね」
ひとつは、なぎさのようにたべものを生み出す魔法を手に入れること。なぎさは本当は神様じゃなくてモモたちにもできるなら、モモたちがやるべきだ。
そしてもうひとつは、うちが教会を続けていけるようにすること。
結局その時にはまだキュゥべえには願わないで、その次の日になったら、なぎさが力を見せつけたときの話が広まってた。
モモ「早まらないでよかったの、かな?」
杏子「じゃあ……他の願いにする?」
杏子「まだ叶えられるんだよね。どんなことでも」
モモ「他のこと……」
あの時すぐに浮かんだのはふたつで、他のこととわれるとすぐには浮かばなかった。
美味しいものを食べたり、キレイなお洋服を着たり、たくさんのお金をもらったり……とか。
今よりさらにイイ思いをすることもできるんだろうけど、そのために願うってどうなんだろう? なんだか、ズルしてるような気がした。
モモ「お姉ちゃんはなにか思い浮かぶの?」
杏子「いや……。でも」
モモ「?」
杏子「なぎさのことも契約のことも、父さんたちに話さないでいいのかな。あたしたちだけで抱えていていいことじゃない気がするんだ」
モモ「…………」
――――――
あれからはなぎさも毎日教会に行くことはなくなって、今までどおりマミと訓練したりパトロールに行ったりして過ごしました。
なぎさ(思えば最近は訓練で見てられる時間も減ってしまってて……マミには申し訳ないことをしてしまいました)
なぎさ(今日も訓練しようってマミにメールしてみますか。でも、たしか今日は――)
一週間ぶりの礼拝の日。みんなは元気にやれているのでしょうか。
マミとの予定は午後にして、あの教会のある街の外れのほうに向かうことにします。
すると、その途中であすみと鉢合わせます。そしてなぜか……引き止められてしまいました。
あすみ「……今あいつらに近づかないほうがいいよ」
なぎさ「な、なんでですか?」
あすみ「教会は閉まってる。畳むことにしたんだってさ」
なぎさ「え……!? そんな、どうして? この前ちゃんと人も来てたのに?」
あすみ「人は来てるよ。だからアンタが近づいたらヤバいことになるんだって」
あすみはそう言いますが、なぎさにはなにがなんだかまったくわかりませんでした。
でも、わからないままにしたくはありません。
なぎさ「……何かが起きているのですね。もしかしたら、それってなぎさのせいでしょうか?」
わからないなりに思い至ったのは、なぎさの嘘がバレる日が来てしまったのかもしれない――ということでした。
なぎさにもみんなを騙してた自覚はありました。おそらく、それがみんなにバレた時には良くないことが起こるだろう、ということも。
なぎさ「そうだとしたら、なぎさがなんとかしないとです! もちろんそうでなくても……何かあったら助けるって約束しました」
あすみ「…………」
あすみの横を抜け、さらに道を進んでいきます。
*「あ、女神様だ!」
*「女神様!」
なぎさ「え?」
教会の建物の前にはたしかに人が集まっていて、それを見た時なぎさは責められるんだと覚悟していました。
でも、その反応は予想と違いました。この前と変わらない照れくさくなるような呼ばれ方。バレてはいないのでしょうか?
そう思った時、扉にある大きな貼り紙が目に入ります。
なぎさ「これは……」
『申し訳ございません。私達は皆様を騙してしまいました。
女神と名乗った者は神などではありませんでした。魔女だったのです。
償いとして今日でこの教会は終わりにします』
貼り紙には目立つ赤い文字でこう書かれていました。
正体がなぎさたちが倒すべき“魔女”として書かれているのには悲しみを覚えましたが、ますます疑問がわきました。
なぎさ「どうしてこれを読んだのに、みんな……?」
*「女神様でも魔女様でも本当に力はあるなら教会なんてどうでもいいわ。もともと神なんか信じてたわけでもないもの」
*「そうだそうだ。あいつらなんか何もできないくせに!」
なぎさ「…………」
……教会に来てくれた人たちは魔法の力で起きた奇跡に興味を持ったのであって、教えに興味を持っていたのではなかったのです。
それならもう、これで神様ごっこはちゃんと終わりにすることにします。
なぎさ「みなさん、まだ騙されてますよ。……ここまでバレちゃったらしょうがないから言いますけど!」
なぎさ「傷が治ったなんてサクラです! ほんの冗談だったのですよ。魔女っていうのは……たぶん、『嘘つき』って意味なのです」
なぎさ「……だから、ごめんなさい。魔法なんてあるわけないのですよ」
みんなしばらくざわめいていましたが、なぎさにそう言い張られては仕方ないと思ったのか、次第に興味をなくしたように帰っていきます。
……良くも悪くも、彼らの多くは目に見えるものしか信じようとしない人たちでした。
教会という大人の関わる組織がついていればまだしも、なぎさだけでは神というにも魔女というにも、常識を覆すには説得力が欠けるというものです。
結局最後の最後まで、なぎさは嘘つきになってしまいました。でも神父さんたちだけが悪く思われたままになるのはあんまりだと思ったのです。
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次回は8日(火)夜の予定
やがて表は静かになって、なぎさはしばらく扉の前に立ち尽くしていました。
いつもは開放されていたはずの扉でしたが、今は鍵がかけられているようです。
なぎさ「…………」
もう一度貼り紙の字に目を向けます。
なぎさはもう、ここには来てはいけないのでしょう……。友達だと思っていたモモとも、もう……。
そんな時、中から声がしました。
モモ「……なぎさ、外にいるんだよね?」
なぎさ「! ……モモ?」
神父「やめなさい……モモ」
もう一つ聞こえてきたのは、それを制止する神父さんの声でした。
神父「あの子は神を騙った。許されない事だ。それに、その力は神の力ではなかった」
神父「私達は日々祈っている。しかしそれは、すべてが叶えられるわけじゃない。世の為に奉仕する行為こそが重要なのだ」
神父「聞くところでは、例の契約は『何でも叶える』のだろう? 彼女が何を願ったかは知らない。だが、もし平和のための布教を願ったらどうなる?」
神父「文字通り、叶えられるのだろう。だがそこにはなんの過程もない。どんなに良いことを願ったとしても、自らの思い通りになる奇跡など……私達にとっては邪悪でしかないんだよ」
なぎさ「…………っ」
神父さんたちからすればなぎさたちは卑怯に見えるのでしょう。
しかし、そう言い切られてしまうと何かモヤモヤとした気持ちが沸き起こりました。
……怒りでしょうか、悲しみでしょうか。なぎさは叶えてもらったことに後悔なんてしてないから。でも、なんと言い返せばいいのかわかりません。
神父「得体の知れぬ存在に望みを叶えてもらう契約なんて、古より伝わる悪魔に魂を売り渡す契約と何も違わない」
キュゥべえは得体の知れない存在だなんて……――そう口に出そうと思いましたが、
よく考えればキュゥべえについて知ってることなんてほとんどありませんでした。
神父「そして、そんな力に頼らなくては誰も寄り付かぬ教会など……もう私達も諦めるべきだったんだ」
なぎさ「こ、これからどうするのですか?」
神父「仕事でも探すさ。君が心配することではないよ」
なぎさは突き放されたのでしょうか。
しかし、神父さんの声は悲しげでありながらもどこか吹っ切れたようにも聞こえました。
……多分、なぎさはもうこの家に関わることはなくなるのです。
あすみ「邪悪な力だとしてもそれに命拾われたのは事実だろーが! なんて思っててもいいけどまずはそれに感謝するのが人の心じゃーないわけ?」
あすみ「でも一応やっと現実見たみたいで良かったよ! 現実見えてない正論振りかざすとことか嫌いだった!」
なぎさ「へっ?」
あすみ「……ヒトツだけアドバイスしとくと、そういうとこ直さないと次の職場でも浮いちゃうよ?」
なぎさがしんみりしていると、急にあすみが割り込んで扉に向かって言い放っていきました。最後のチャンスとばかりに……。
いつのまについて来てたんでしょう?
なぎさ「あ、あすみ……!?」
あすみ「いこっ」
……あすみの物言いはキツいですが、なぎさが言葉にできなかったモヤモヤがちょっとすっきりしました。
あっけにとられてましたが、ようやくなぎさも教会に背を向けようとします。
そのとき、背中のほうから再びモモの声が聞こえてきました。
モモ「……この前も言ったけど、ありがとう! なぎさは神様じゃなかったけど助けてくれたし助けようとしてくれたよね……」
杏子「ああ、あんな美味しいケーキなんて食べたことなかったし夢のようだったよ。あれがなかったら……」
杏子「なぎさと会えてよかった。思えばそれだって奇跡だ。だから、モモもさ、神様に祈ってたのは無駄じゃなかったんだよ」
モモ「うん!」
奇跡……キュゥべえに願ったものじゃない、ホンモノの奇跡。
考えたことはなかったですが、人との出会いも奇跡なのでしょう。だったら、きっとなぎさは恵まれています。
神父「確かに、そういう考えも出来るね。 ……ありがとう」
……少し遅れて、神父さんの声も聞こえました。
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ここまで
次回は12日(土)夜の予定です
――――――
“あなたたちの女神より”……手書きで可愛らしいメモ帳に書かれたメッセージは拙く、
上等な造りの箱とその中身のケーキがなければ、子供のイタズラとすら思いかねないようなシロモノだった。
……神? そんなのいないから代わりにやってるんだ。何もしてない神に感謝されることになっても。
でも『女神』なんて、どうしてちょっとだけ自分を出すような書き方をしたんだ。神を名乗るならただ神とだけ書けばいいのに。
あすみ「本当は最初からさ、感謝されたいって気持ちもあったんじゃないの? 『神様』って讃えられるのはイイ気持ちだったでしょ?」
あすみ「やり方だってずさんだよ。身を隠すのに特化した魔法を持ってるわけでもないんだし、毎日コソコソ置きにいってたらそりゃいつかバレる」
きっと、深く考えていなかったんだろう。助けたらどうなるかもバレた時のことも、あの家族の前で神様を名乗る意味も。
なぎさ「……そうですね。ちょっと浮かれてたとこはありました。でも、段々と騙してるって気持ちのほうが大きくなりました」
あすみ「まー、感謝されていいようなことしてるんだからそう思うのは当たり前なんだけど」
あすみ「良いことしても上手くいかないもんだよね? 恩が仇で返ってくるようなことだってあるしさ?」
あすみ「私は優しさなんて誰かに付け入られるだけの『弱み』だと思ってたよ。今も思ってる」
なぎさ「だからですか? あすみがなぎさたちとは離れて活動しているのって」
あすみ「……」
たまに通りがかりにでも訓練場に顔を出すようにはしたり、露骨に避けたりしてないつもりだったけど、さすがにそう思われてたんだ。
なぎさ「前はよく一緒にいろんなことしてたけど、今はあすみがどうしてるのか全然わからなくて」
なぎさ「そんなときあすみがあの教会に行ってたことを知って、なぎさも行ってみたのです。そしたらちょっとわかるんじゃないかって」
あすみ「私のことを知るために……?」
なぎさ「はい。あすみはどうして行ってたのですか? お祈りにきてたわけではないのですよね?」
そう問われると答えに困った。
最初は傘がなかったからって流れ的に。それからは……他に行くとこがないからだった。しいていうなら。
あすみ「そうだね、なんとなく? 何も言われなかったし」
なぎさ「なんとなくで教会に通いますかね……」
さすがにこんなんじゃ納得しないかな、と思ってたらなぎさはこんなことを言いはじめた。
なぎさ「……でも、何も言われないからっていうのは納得しました。前見かけたとき、そんな感じがしたのです」
あすみ「あぁ、そう? 納得してくれたならいいけど……」
なぎさ「もしかしたら…… 今、そういう場所がほかにないってことですよね」
あすみ「!」
なぎさ「あすみが自分のことを言わないのは前からでした。でも今は携帯も使えなくなったって言うし本当に心配で」
なぎさ「もしかしたら出会う前から何か抱えてたのかもしれないけど……何かが起きてるんじゃないですか?」
やめてよ、見透かされたくない。
人を見透かすのは得意だけど見透かされるのは嫌いだ。なんだかみじめな感じがする。
でも、そんな心まで読んだかのようになぎさは言う。
なぎさ「あすみは前、『いざというときに頼れるのが友達』だって言ってくれましたよね。今がそうなんじゃないですか? だったらもっと、頼ってほしいのです!」
……そりゃ読めちゃうか。
もう付き合いも長いし、『友達』――って認めちゃったんだから。諦めるしかないようだ。
あすみ「言ったとこでなんもできないと思うよ? 嫌な気持ちになるだけだよ? それでも聞きたいの?」
なぎさ「それでも何も知らないままよりいいはずです!」
あすみ「もう、仕方ないなぁ」
――――
――――
契約する前のこと、契約してからのこと……――――
あすみ「多分まぁ私のもありふれた不幸だよ。心読んでみると家庭環境とかやべーのってたまに見たし。そのほうがキュゥべえがつけ入りやすいでしょ」
なぎさ「つけ入るって……あすみも神父さんが言ってたようにキュゥべえを悪魔みたいに思ってるのですか?」
あすみ「あぁ、あれに関してはほぼ同意だったよ。神父サンやってたからかしんないけど、そこそこ真に迫ってるなぁと思ってた」
そんな前置きをして。
あすみ「私もお母さんいないってのは言ったじゃん。そのときにキュゥべえは来なかったってのも」
なぎさ「そうですね……聞きました」
あすみ「私の場合、お父さんも最初から家にいなかったんだ。じいちゃんばあちゃんもいない。だから、わけわかんないとこに飛ばされた」
なぎさ「ま、まさかそれでロトーに!?」
あすみ「……結論は合ってるんだけどね。さすがにそんなに簡単には路頭に迷わせられないかなー。おせっかいなことに、子供には大人が必要だってことでどっかにはあてがわれるから」
なぎさ「け、結論は合ってるのですか……?」
あすみ「うん。マミくらい大きくて家に金があれば一人暮らしもできたんだろうけど、私は無理だった。……私の場合は、父親がテキトーに友人に手を回したんだって」
あすみ「私からすれば知らない人。父親でさえよく知らないのに。向こうからしても、知らない子供なんてサンドバッグ兼ダッチワイフが手に入ったくらいにしか思ってなかったわけね」
……そのことはごくざっくりとだけ。
特にあの男のことなんか詳細に話しても嫌な気持ちになるどころじゃないし、大して話したくもない。
あすみ「しかもその時の私って暗かったから友達もいなかったんだ。前まで普通に話してた人まで離れるどころかいじめる側に回った」
あすみ「そうなるともう、目に入るもの全部、醜いなー……って思って。だから、そいつら全員『不幸』になるようにって呪って契約してやった」
なぎさ「呪いって……どうなったのですか?」
あすみ「あの男は魔女に食われて死んだ。私も途中で『口づけ』に気づいて見送ったよ。念入りに他の魔法少女がいないことも確かめて」
あすみ「いや、私が助けなきゃ助けられるはずないんだよね。それが不幸というものだから。他も……事故に遭った奴とかいたかな。全部の末路は知らないけどね」
なぎさ「殺されそうになって殺したって……そういうことだったのですね……」
あすみ「そう。心を削るような暴力も、いじめも、見殺しも立派な殺しだよ。それで私は今晴れて路頭に迷ってるとこ」
あすみ「でももちろん前よりはいいよ。あの家に居続けたくもないし、あの街の魔法少女と醜い小競り合いしてるよりはアンタみたいなのに出会えた分よかったと思う」
誰かにこんなこと話すのははじめてだった。
なぎさがどう思ってるのか気になる。でも、魔法で覗きたくはない。
あすみ「家にあったもの持ち出してこっちに来たんだけど、そろそろ色々と使えるものがなくなっちゃってさ」
あすみ「それに心置きなく休める居場所ってのも結構大事だったんだなって思った」
なぎさ「居場所……ですか…… あと携帯やお金?」
あすみ「不便だけど、携帯はなければないで慣れるよ。前まで携帯なんて持ったことなかったし」
なぎさ「たしかにとりあえずお金とおうちのほうが重要ですよね……うーん」
なぎさはあれこれと考えているようだった。
なんとかしようと考えてるのか? どうせ何も出来ないって言ったのに。
なぎさ「でも、居場所なら…… 訓練場所は好きにいてくれて構わないのですよ。訓練中も気にしませんから。たまにアドバイスとか、参加してくれたりすると嬉しいですし!」
なぎさ「そうでした。今日もマミに訓練しようって誘ったんでした。多分もうすぐ……」
……私達はいつも訓練に使ってる場所からも少し離れたところにいた。
もしマミが偶然ここに来たりしても大丈夫なようにと思って選んだ場所だ。もちろん関係ない人がよく通る場所でも話しにくいし。
なぎさ「ここからちょっとですし、あすみも来ませんか? マミのことだしちょっと早くにきて訓練はじめてると思うのですよ!」
あすみ「……まあ、いいけどさ」
行く場所もないし、行ってやってもいいか。
――――……そう思ってついていったが、なぎさの予想に反してマミの姿はまだなかった。
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ここまで
次回は13日(日)夜の予定です
あすみ「私達だけみたいだね」
なぎさ「うーん、予想はずれちゃいましたねー……」
それならそれで、訓練中しててもそうじゃなくても居るだけなら関係ない。
すると、なぎさは思いついたように言い出した。
なぎさ「そういえば、さっきの話を聞いてもわからなかったことがあるのですが……」
……なんだ。もしかしてダッチワイフってなんですかとでも言うつもりか。
そんなことを考えたが、それも違うようだった。
なぎさ「結局どうしてキュゥべえのことを嫌ってるのです? あすみは神父さんのような理由では嫌わないんじゃないかと思ったのです」
あすみ「あー……」
どう返したものかと悩む。そういえばそこには一切触れていなかった。その真実自体は、『私の過去』ってわけじゃないから。
たしかに私は心を読むまで、キュゥべえのことは助けてくれた恩人だとすら思っていた。
あすみ「……まあそれもいつか、話すよ」
私が話すのと自ら知ってしまうのと、どっちが早いだろうか。
――――――
約一年。……それは、私が契約してからの期間だった。
でもそんなの、特に実感は沸かない。その間に私の中で何かが変わったとも思ってなかった。
たしかに一人の生活は大変で、今でもたまにまだ心細くなる。でもそんなとき――――私は本当の意味で一人じゃなかったから。
自分より経験の長い人しかいない中で、自分がベテランだとも思えない。
でも――。
最初の頃に感じていた“死と隣合わせの恐怖心”というものはいつしか薄れ始めていた。
ずっと訓練してきたし、魔女とも戦ってきた。確実に強くはなれている。
『年月以上に、その覚悟の違いって大きいよ? いざという時を経験してきてない人に負けることなんてないって』
だから、この言葉に反感を抱いていたんだと思う。
そろそろ自分の腕を試してみたい気持ちもわき始めていたんだと思う。
ずっと大事に守られてきた。でも、頼ってばかりじゃなくてもう一人でもやれるんじゃないかって。やってみたいって思った。
――――……多分それは覚悟なんかじゃなくて、慢心だったんだ。
甲高い笑い声が結界内に響き渡る。
それは倒すべき魔女の声。今私は結界の奥地にまでたどりつき、頭に角を生やした大柄な魔女と対峙していた。
その姿をもう一度確認して、手に持った斧の他に攻撃手段がないことを確認する。
マミ(大きいのに動きはすばしっこいのね……セオリーからは外れてるわ。でも、縛ってしまえばこっちのものよ)
手から出したリボンで攻撃を受け流しつつ、相手の隙をうかがう。
比較的攻撃の軌道は読みやすい。それに、振るった後は隙が必ず生まれる。敵の動き自体が速めだから僅かな時間だけど、狙うならそこしかない。
マミ(今!)
手足からすばやく絡め取ることに成功する。斧が手から落ちたのを見て、私は勝利を確信した。
でも時間をかけるわけにはいかない。
そこに魔力を集中していく。なぎさちゃんと一緒に考えた必殺技。絡め取った相手を爆発四散させる技。
マミ「――――『フィナーレ』!」
技を打つ魔力を充填し、これで仕留められたはず……だった。
しかし再び斧は振りかぶられる。
マミ「つっ……――!? え…… どうしてまだ動けるの?」
いつのまにか斧はまた魔女の手の中にあって。私の渾身の必殺技にも、ものともしてないみたいだった。
避けきれなくてできた傷が痛んだけど、それも気にしてる場合じゃない。思えば、なぎさちゃんと一緒に戦ってた時はケガなんてほとんどしたことがなかった。
『アンタも気をつけなよ? 今は怖い怖いって思ってるかもしれないけど、いずれは力の使い方に慣れて、気づいたらすっかり染まってないように』
――――これまで魔法少女の力があっても悪いことはしていない。私たちには目指す道があるから。
でも、力の使い方に慣れたことで変わってしまっていたことに気づいたのは、再び『死と隣合わせの恐怖心』を味わってからだった。
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ここまで
次回は15日(火)夜からの予定です
マミ(私の必殺技は一度使えば拘束が解ける。もう一度縛ってもこんなにすぐ回復されるんじゃ……)
実際にやってみれば一人で魔女を倒すことはあっけなくできていた。
そこで薄れはじめていた恐怖はほとんど消えてしまってた。
マミ(……最初に抱いた恐怖はいつでも持ってなきゃいけないものだったのよね)
マミ(もしここで負けたらどうなるの? ……誰にも気づいてもらえないの?)
ケガをリボンで止血する。
魔女は攻撃のペースを緩めない。小細工でどうにかなる相手じゃない。
でも、きっとこんな時でも――。
なぎさちゃんがいてくれれば。いつもならちょっと苦戦することがあったって最終的にはなんとかなってた。
それってきっとすごいことだったんだ。
一人前になったつもりで突っ走ったのは私なのに。
マミ(ダメだわ……いくら隙を狙ってもこのくらいじゃ全然倒せない。こっちは怪我を治す暇もないのに)
マミ(ダメ元で、もう一度大技を当ててみましょうか……?)
でも、それで勝てればいいけどもし倒せなかったら。
リスクの高い選択のほかに、もう一つ浮かんだのは逃げるということ。
……すごく情けないし、よくないことだというのはわかっているけれど。
逃げてなぎさちゃんに連絡したほうが戦いも長引かず、犠牲が出る前に決着がつけられるかもしれない。
ここで私が負けたって街の人を危険に晒すのは同じだもの。
結局、勝てなくて悔しいのはプライドの問題で……他に考えなきゃいけないことはたくさんあって。
それに、私はもちろんまだ死にたくない。こんな形で死んだら死んでも死にきれない。
マミ(それにしても……重そうな見た目に反して軽々振り上げてるのに、攻撃の重さは見た目通りだなんて反則だわ)
マミ(大技でも効かなかったのに、ちょっと攻撃を当てたくらいじゃすぐに回復されて……)
まるで『実体がない』かのよう。
マミ(――?)
なぎさ「――――あすみ、ちょっと魔女縛っててください!」
あすみ「はいよ、言われなくても」
…………私が逃走を決めたその直後、突然声がして、鎖が“斧だけを縛り上げていった"。
なぎさ「あっ、やっぱり見分けついてました?」
あすみ「とーぜん。私の魔法なんだと思ってんの。それよりアンタのほうが『そんな』魔法もないのにさすがじゃん」
なぎさ「伊達に見滝原のヒーローやってないのですよ!」
それはついさっきまで絶望感溢れる戦場だったこの場に似つかわしくない声だった。
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次回は16日(水)夜からの予定です
比べやすい戦闘なのでわかると思いますが、このマミは本来のマミより戦闘面でもメンタル面でも弱いです。
というより、強くなる必要がなかった…というある意味平和な姿です。
あくまでこの話はあすみとなぎさがメインということで…。
――――――
――――――
なぎさ「って、マミ! 怪我してるじゃないですか! 下がっててください!」
マミ「え、ええ……」
武器を取り上げられた魔女はシャボンの中に溺れてもがき、
斧――不快な呪いを発する魔女の本体は即座に鉄クズと化した。
あすみ「いくら擬態したって魔女なんて“ダダ漏れ”で駄目だね。茶番に付き合ってやる気なんてないよ」
あすみ「マミが苦戦するくらいには身体能力も高……く見せかけてるみたいだけど? ハリボテ殴って鍛えるならなぎさとやってたほうがまだマシ」
グリーフシードを手の上で回しつつつぶやく。
マミが遅いせいでついに特訓なんてものに巻き込まれ、こんなところにまでついてくるハメになったのだから機嫌は悪い。
こいつがマミの家まで迎えに行くなんて言い出さなければ念願の原っぱで昼寝でもしてたんだけど。
なぎさ「じゃあもう一回やりますか!?」
あすみ「当分いい」
最近この街も平和だし、スポーツみたいなものとはいえなぎさと全力でやりあってみるのは興味がなくはなかった。
……けど、敗因があるとしたら最終目標が『拘束』だったことかな。呪いをぶつけ合う戦いしかしてこなかったから。
ふとなぎさとマミのほうに目を向けてみれば、手当てされてたマミはまだ呆然としていた。
なぎさ「よしよしっ、治ったのですよ! もう痛いとこないですか?」
マミ「ありがとう、なぎさちゃん。二人が助けに来てくれてよかったわ。もう駄目だと……」
なぎさ「もー、なぎさも心配したのです! これからは無理しちゃ駄目です! 一緒に戦いましょ!」
あすみ「……」
……相変わらず過保護だなあという感想しか出てこない。
いつのまにか親鳥の巣から抜け出そうとしてた雛は、今回の一件でまた巣に籠もるのだろう。
でもそれは悪いことじゃない。仲良しのまま一緒に暮らしていくのもきっといいことだ。ここは厳しい野生ではないのだから。
あすみ「……じゃ、戻るよ。まあ、私はただあの場所に居座るだけなんだけど」
なぎさ「はいっ! 行きましょ!」
――――
――――
それから訓練場所に戻って、私は言ったとおり何もせず二人の様子を眺めてた。
教会と違ってひとつ難点なのは、ここが野外だってことか。雨風を凌ぐには良い条件じゃない。
二人はまた前みたいに模擬戦をやっていた。
なぎさ「さてっ、ぜひとも破って近づいてみてくださいなのですよ! なぎさはここからでも捕まえられるのです!」
大量のシャボンに阻まれると近づくのも難しい。
ああ見えて結構器用なコントロールまでやってたらしいから、油断してると誘導されてとっ捕まりかねない。攻撃範囲の広さは大きいメリットだ。
私なら力任せに破って突き進めるけどマミには難しいだろう。そもそも見てた限りじゃ……あいつのリボンは狙いが読みやすすぎる。
――そろそろまた負けるかと思っていた矢先に魔力の小爆発が起きて、シャボンの群れが一気に弾けていった。
なぎさ「!」
マミ「毎回敵を縛って安全を確保してからじゃ、本当に最後にしか使えない。それに、『最後』になるかもわからないわよね」
マミ「だから、遠くからでも必殺技が使えないか考えてみたの。名前はまだつけてないけど……」
どうやら、先に魔力を込めたリボンの塊を作っておいてパチンコのように跳ばしたらしい。
なぎさの態度からして、いつもマミに危険が迫る前になぎさがなんとかしてるんだろう。
さっきの戦いでマミは何かを考えたらしい。……巣立つことはできなくても、無駄な経験にはならなかったようだ。
マミ「はじめて近づけたわ!」
なぎさ「ありゃ、でも近づけたからって終わりじゃないのですよ? 勝負はこれからです!」
なぎさはというと、拘束のリボンを寸手で回避。
そりゃそうだ。私相手に勝っておいて、接近戦に持ち込まれたくらいで負けてもらっちゃ困る。
あすみ(……まあでも、思ったよりは面白い試合が見れたかな)
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次回は17日(木)夜からの予定。多分あと少しのはず。
――――しばらくすると、真上にあった太陽はいつのまにか傾いていて、二人ももう訓練をやめにして帰る支度をはじめているところだった。
平日だったらもう少し遅くまでやってただろうか。今日は礼拝の日の予定だった日曜日だ。長いこと曜日なんて気にしてなかったけど。
なぎさは家族の時間を大切にしたいと言ってたし、最近はあの教会のことばかり気にかけていたからさっさと日常に戻ったほうがいいんだろう。
あすみ「……ねえ、アンタもこれから帰るんでしょ。いつも一人で何してんの」
マミ「えっ? そうね……授業の予習をしたり、紅茶に合うおやつを作ってみたりとか」
あすみ「ふーん」
聞いてはみたものの、こいつとも違いすぎた。
なぎさ「あすみったらいつもこうなのですよ。聞いておいて興味なさそうにするのです!」
あすみ「私そんな高尚な趣味ないし」
マミ「やってみたら楽しいと思うのだけどねぇ……」
なぎさ「あ、でも今度久しぶりに一緒に料理してみるのはどうです?」
あすみ「私はいい。マミに聞けばいいでしょ」
なぎさ「たしかにマミはいっぱいおいしくて見た目もキレイな料理を知ってますが……なぎさはただ、またあすみとも一緒に色んなことしたいだけなのですよ」
……確かに言われてみれば、マミが来てから暇でしょうがない時間が増えたんだった。
だからって別にマミを疎んだり、拗ねてるわけじゃない。
ただ、一年前のほうが居場所がないとか、何をするか悩むような暇もなかったのかもしれないな。
あすみ「はあ。……じゃあ今度ね」
なぎさ「! ホントですか! 約束ですよ!」
そんな約束をして、なぎさは帰っていく。するとこの場に残ったのは私とマミだけだった。
マミ「……神名さんはまだいるの?」
あすみ「そっちこそ」
私がマミを見かける時は大体なぎさも一緒にいた。
こいつと二人になるのって最初の契約したての時以来かもしれない。
あすみ「私はこれでもアンタのこと一応は認めてるよ。なぎさがついてるからってのもあるだろうけど、クズにはならなかったみたいだし」
マミ「ええ、私もできるだけこの力はいい事に使いたいしね……。でもあなたは私のことはあまり認めてくれてないのかと思ってたわ」
あすみ「あいつが張り切って甘やかしすぎてんのよ。自分が守るんだって。何でも危険を摘み取ってやってたらそりゃ、自分以上になるわけないじゃん」
あすみ「でも、今日はちょっとだけ自分で戦いの中から何か掴んだみたいね」
マミ「あの新技のこと? あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ。本当に褒められてるって気がするから」
マミ「なぎさちゃんにはありがたいと思ってるわよ。今日のことは本当にどうしようかと思ったもの……」
今日の戦いでも魔女の正体に気づかずチンタラやってたようだけど、本当に一人だったらいつか自分で気付けるポテンシャルはあったかもしれない。
でも、やっぱりそうはいかずに死んでたかもしれない。今となってはわからないことだ。
あすみ「で? まだ一人で訓練でもすんの?」
マミ「いえ、そこまではいいかしら。私もそろそろ帰るわね」
少しだけ話してからマミも帰っていく。
……――みんなそれぞれの道へ帰っていった。
あすみ(私はもう少し暗くなるまでここにいるかな)
明日からはまた平日だ。なぎさも少しは暇になるだろう。
そしたらさっきの約束でも果たしに行ってやろうか?
私の生活はこれから大きく変わることはないだろうけど、その時のことを考えたら少しは暇つぶしになった。
―『続々・なぎさとあすみとマミの見滝原』END―
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ここまで
次回は21日(月)夜からの予定
『続々』まで無事終了
これからどうするか(続きor別の、もしくはカットされたあすみVSなぎさの詳細みたいなおまけパートとか)は次回までのレスの流れ見て決めますー。
引き続きの場合は時間が飛びます。もう過去ではなくなるのでさすがに最後になると思います。
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日付変わってた。今日はもう寝よう…
次回は22日(火)夜の予定ですー、おまけからで。
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おまけ * あすみとなぎさの模擬戦のようす
>>755 あたりの二人のほうの視点
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人目につかない訓練場所。
いつもなら私の代わりにこの場にいたマミがまだ来てないから、この場所はいつになく静かだった。
両者ともにまだ動きはない。
あすみ「で、合図は? こっちはいつでもいーよ」
余裕を醸し出して笑む。
私もなぎさも素早さに自信のあるタイプではないが、わずかでも先行して動けたほうが有利なのは変わらない。
ただ、余裕がないと思われるのは癪だった。……いまさら、こいつ相手にそんなこと気にする意味もないかもしんないけど。
なぎさ「なんだか余裕そうなのです! これは今のところ模擬戦不敗のなぎさも負けてはいられませんね」
それに対するなぎさの調子はいつも通り。
――これまで一緒に魔女や不届き者と戦ったことならあったが、武器を構えて向かい合うのは初めてだった。
特訓と言うが、マミが来るまでの暇つぶしの一つだ。マミの面倒を見るのは興味がないが、なぎさとだったらやってみてもいい。
戦いは好きだし得意なほうだと思ってる。私のほうは、もちろん“模擬戦”なんて初めてなんだけど。
なぎさ「それならふかーく息を吸い込んで……1,2の3ではじめるのです!」
カウントがはじまる。
きっかり三秒―――ののち、虹色をした小さな球体が視界を飛び回って吹き出してきた。
あすみ(へえ、こんなに出せるようになってたんだ……ちょっと驚き)
数は多いがシャボンの一つ一つは小さめで、魔力に任せた物量作戦というわけでもないのだろう。
そのシャボンができるだけこちらに届かないうちに、踏み出した勢いを止めることなくなぎさとの間合いを詰める。
虹色に包まれた幻想的な景色を突き進む。
あすみ(勝負を仕掛けるなら――このタイミング!)
途中で足を止めて鉄球を振りかぶると、破裂音とともに虹色は破れ、空気を裂くように鋭く正面へと鎖が伸びていく。
小さく密度の高いシャボンは相手に届かせることを重視した牽制だろう。攻撃の勢いまで防げるものじゃない。
一度勢いをつければ私が足を止めても鉄球は加速したまま前へ進む。うまくいけば一発で拘束を決めることもできるかもしれない。
どうせシャボンはこれから増える一方。鉄球が当たれば簡単に破れるとしても、妨害にはうってつけの武器だ。囲まれるのは厄介。
あすみ(……なら、速いうちに)
なぎさ「あわわっ、思ったよりも強引に突破してこれるんですね〜……!?」
なぎさは飛び退いて避けると、こちらに向けていたシャボンをその場に留めて守りを固め、さらにシャボンを追加してくる。
さっきと同じ小さいシャボン。これならまだ次を打てる。
そう思った瞬間、周りのシャボンが次々と弾けていく。小さいけれど、鎖を巻き込んで爆発されると狙い通りの軌道にならない。
……正直ちょっと、油断してた。鎖の軌道を曲げるほど的確に位置やら弾けるタイミングやら調整できると思ってなかったから。
あすみ「ま、こんなに早くは決まらないか」
武器を引いて鉄球を戻す。その過程でもできるだけシャボンは破って“道”を作る。ますます囲まれたら厄介ってわかったし、それだけでも収穫としておこう。
そして、鎖を巻取り――――鉄球が柄の先にカチリとはまる音がした。
離れた位置から狙うには繊細なコントロールが必要だ。だったら、さらに自ら距離を詰めればいい。フレイルは最後の一手のためにとっておく。
あすみ「インファイトのがやっぱ燃えるでしょ?」
さらに踏み込む。勝つのに必要なのは、自分のペースを作ること。
それはなぎさにとっては相手をできるだけ多くのシャボンで囲って安全な位置まで遠ざかること――私は逆だ。
中距離くらいまでなら戦えるが、なぎさの得意としてない接近戦に持ち込んだほうが隙は突ける。
もちろんシャボンにも囲まれやすくはなる。でも、こんなのちまちまと破ってたらいつまでたっても勝てない。
この戦い、長引かせたほうが不利になるのは最初に思った通りみたいだから。
あすみ(――それにしても)
――戦術を考えながらふと思った。いつもなら『聞こえてくるもの』が今はない。
いくら遊びったって、『ミスしろ!』くらい思ってもいいもんなのに。
あすみ(久しぶりに静かな戦いだな)
――――――
――――――
シャボンを敷き詰めて遠ざけるつもりが予想に反して、あすみはこちらへ急接近してきました。
鎖のないモーニングスターを携えて。
あすみ「インファイトのがやっぱ燃えるでしょ?」
……いや、やっぱりこういう大胆な戦い方があすみらしいのかもしれません。
とはいえ、接近戦の間合いに入られるといくらか焦ります。新しくシャボンを出して位置を調整するのにも時間はかかるわけですし、戦いづらいのです。
あすみとの間にあったシャボンはいつのまにかキレイに消されています。
あすみはダイナミックにバトンでも扱うかのごとく鉄球を振り回します。
攻撃に巻き込まれたシャボンはあっけなく破られ、避け続けるのは長くは持たないでしょう。さっきみたいに鎖を狙って軌道を曲げることもできません。
どうやらなぎさは、このままではちょっとまずい状況のようです。ですが、このままでいる気もありません。
なぎさ「いーえっ――悪いですが、それはおことわりなのですっ!」
重い武器を振りかぶるタイミングを見計らって、脇をすり抜けます。
懐に潜り込むというのは一番に接近する瞬間でもあります。あすみもむしろ、このタイミングは狙ってくるでしょう。
同時になぎさはいっぱいに息を吹き込み、いつもの笛の音とともにシャボンの嵐を吹かせます。……これを至近距離で聞かせるのも、もしかしたら集中妨害になるでしょうか。
重い武器を振るうのはただでさえ体制を崩しやすい瞬間。なぎさの狙い通り、足元で起こった『小さな衝撃』にあすみはバランスを崩します。
あすみ「なっ……!」
最初のよりもさらに小さいシャボンを混ぜたのです。威力はありませんが作るのも狙った位置にすぐに届かせられますし、注意をそらして忍ばせやすいのです。
それに……怪我をさせるほどの威力がないからこそ、安心してぶつけられます。
さすがのあすみもこんな小さなシャボンにやられるとは思っていなかったでしょう。
今まで手早さ重視の小さいシャボンしか作っていませんでしたが、やっと人一人覆えるくらいの大きなシャボンを作る暇ができました。
なぎさ「これでかくほ! なのです!」
あすみ「…………あーあ、参りました」
あすみは負けても余裕そうでした。そこになんだか安心します。
――――こうしてあすみとの初めての勝負は決着がついたのでした。
あすみ「接近戦に持ち込めれば勝てると思ったのになぁー」
なぎさ「そういえば、あすみはさっきの戦いでも心を読んでたのですか?」
あすみ「……いや。そんな手もあったね。でもそんなヒマなかったよ」
なぎさ「意外と集中力が必要だったりするのです? 最後のは割と思いつきでしたが、それでもあすみなら途中で読めてれば対応できた気もするのです」
あすみ「買いかぶり過ぎじゃない?」
なぎさ「そうでしょうか?」
あすみ「まあ、読むのはやろうと思えばできたかもね。……勝手に読めるのは悪意だけ。いつもはそれで十分だから」
あすみもさすがにあの棘鉄球で殴ろうとしてたわけじゃありませんし、余計に大ぶりに動く必要があったのも見て取れました。
きっと、本当はあすみにとっては殴り倒す戦いのほうが早いのでしょう。
……でも、これは特訓なのです。お互いに。
あすみ「ていうかまだあいつ来ないじゃん。また暇になっちゃったね」
なぎさ「そうですね……ちょっと遅すぎるのです。家に行ってみませんか?」
あすみ「えー、私は別に」
なぎさ「そんなこと言わずに! なぎさのほうが勝ったんですし、ちょっとくらいわがまま聞いてくださいなのですよ!」
あすみ「そんな約束してないし。……はあ、しょうがないな。確かにこれはなんかあったかもね?」
なぎさ「な、何かあったら困るのです! マミ、今迎えに行くのですよ!」
―END―
※ >>761に続く…
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ここまで
次回は26日(土)夜からの予定です。
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――――――――
そういえば、いつ何をきっかけで知ったのかすらもう覚えていないものが多いのですが……。
長いこと魔法少女をやっているなら知っていて当然の知識というものがいくつかあります。
最初の頃は魔法少女はなぎさ一人だったのでそういうのに疎く、あすみに世間知らずだってばかにされることも多かったのですが。
なぎさ「あすみは『ワルプルギスの夜』って知ってますか?」
あすみ「……何、どうしたのさ急に?」
これもいつかの会話。
みんなが揃ういつもの訓練場所で、ふと口にしたことでした。
なぎさ「あ! あすみもこれは知らないのです?」
あすみ「知ってるよ。結界を持つ必要がないくらい強い超弩級の魔女――とかいうやつのことでしょ」
なぎさ「なーんだ、やっぱり知ってたのですね」
マミ「私は聞いたことないんだけど、そんな魔女がいるの?」
なぎさ「噂ですけどね。過去に世界で起きた大災害がホントはこれの仕業だって……ホントなんですかね」
あすみ「さあね。私はキュゥべえから聞いたし存在自体は疑ってないけど、どれがそうだってのは眉唾だよ」
なぎさ「じゃあワルプルギスの夜の弱点って知ってます?」
あすみ「それは知らないけど」
なぎさ「実は…… 」
そう言って溜めると、二人は食いついてきました。
なぎさ「なぎさも知らないのです!」
あすみ「はぁ〜、呆れた。昼寝するから起こさないでくれる?」
マミ「……訓練、再開しましょうか」
なぎさ「いや、そんなにがっかりさせる気はなかったのですよ!? みんなで考えてみたら面白いかなって!」
……これが『こわいはなし』なら怪物の弱点までセットになっていることは珍しくはありません。
今まで戦ってきた魔女も、どれだけ強い敵だと思えても探ってみれば弱点があったりしたのです。
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最終・なぎさとあすみの見滝原
――――――――――――――――――
*「なぎさちゃん、これからわたしの家で遊ばない? **ちゃんと***ちゃんも来るって」
なぎさ「ごめんなさい、今日も予定があるので」
――――今日も学校での一日が終わりました。
せっかくのお誘いですが、今日もお断りの返事をかえします。
*「ああ、それならいいの。なぎさちゃん忙しそうだもんね」
なぎさ「また休みの日にでも!」
予定とはもちろん訓練のことです。マミと出会ってからずっと続けてきたそれは、今でももちろん続いています。
それに今はあすみもよく訓練場所に来てくれるのです。
学校のお友達と遊ぶことは少なくなったものの、みんなで一緒にいる時間はなにより安心する時間になっていました。
この見滝原の街にあすみがやってきて、マミと仲良くなって――――あれからなぎさたちはほとんど変わらない毎日を過ごせています。
しかし、今までであった魔法少女はそれだけではありませんでした。
縄張りを奪おうとする魔法少女。ちょっとだけ話すことのあった他の町の魔法少女。それに、守れなかった新しい魔法少女。
訓練にさそったりしてみても、考え方の違いでそれを拒まれたり、最初のうちは来てくれてもいつのまにか来なくなることもありました。
その結果が、今の『変わらない毎日』になっているのです。
なぎさ(あれ? マミからメッセージが……)
そして今日、久しぶりにその日々が少し変わりそうな予感がしました。
――――
訓練場所
訓練場所にやってくると、マミの隣に見知らぬ人がいることに気づきます。
マミと同じ制服。きっと見滝原中学校の生徒なのです。
なぎさ「マミ! メッセージに書いてあった子って……!」
マミ「ええ、この子よ。今朝契約したんだって。学校で会ったの」
まどか「はじめまして。わたし、鹿目まどかっていうの」
なぎさ「よろしくなのです! マミ、後輩ができましたね!」
マミ「え、ええ。そうね」
まだ挨拶だけですが人当たりの良さそうな人です。これからも一人で危ないことをせず、訓練に来てくれるといいのですが……。
すぐに来てくれなくなったりした人のことを思うと不安もあるのです。
その人たちが全員どうなったかは知りません。会っていませんから。でも、表向きに『行方不明』となってしまった人もいました。
なぎさ「まどか、魔法少女のことはキュゥべえやマミからどのくらい聞いていますか?」
まどか「魔女と戦わなくちゃいけないってことくらいかな。まだ魔法も使っていからワクワクしてるの!」
マミ「自分の衣装が気になるって言ってたわ。まずは変身してみましょうか。私も初めてのときはいきなりで戸惑ったから」
なぎさ「そうですね! なぎさもまどかの変身した姿気になりますし!」
まどかはマミと違って怖がったりするよりも、希望でいっぱいみたいです。なぎさも最初の変身のときはワクワクしたことを思い出します。
まず変身してもらったり、魔法の力でできそうなことを一通り披露してもらっていると、奥の木陰のほうからあすみがこちらを覗いていたことに気づきます。
多分訓練がはじまるより前に来ていたのでしょう。そういうことも多いみたいですから。
なぎさ「あっ……、あすみもいたのですね。居るならこっちに来てくださいよ! 新しい仲間なのですよ!」
あすみ「新しいやつね。……あー、うん。よろしく」
まどか「うん。よ、よろしく」
あすみは見定めるような目で見ています。
あすみが新人を見て快い反応をすることって、前からあんまりありません。
あすみ「またずいぶん浮かれてるのが来たけど、『大丈夫そう』なの?」
なぎさ「……さっそくなのですが、まどかにお願いがあるのです。出来るだけでいいので訓練は来てほしいのです」
なぎさ「それと……一人では戦わないでほしいのです。危ないですから」
多分マミと出会う前に会った魔法少女も含めて、マミと他の魔法少女との違い……――――。
それは、戦いへの考え方だと思うのです。
魔法の力って、ワクワクするほどすごいです。特に慣れかけの頃ほど、魔女なんて軽く倒せるのが当たり前なんじゃないかって気がします。
でもマミは最初から『魔法少女』も『魔女』も怖がっていました。戦いも力も、軽く考えたことはなかったのです。
まどか「うん、わかった。約束するね。訓練にもたくさん出るようにするから!」
なぎさ「はい! 約束ですよ!」
あすみはきっと忠告をしようとしていたのです。思っているより危険だぞって。
――――それから今日は基礎的な戦いの訓練だけをして解散としました。
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ここまで
次回は27日(日)夜からの予定です
あすみ「新人はまだ連れて行かないんだ」
この場所を発とうとするなぎさたちを見てあすみが声をかけてきました。
なぎさ「まだやっと魔法の使い方がわかったくらいですから。急に戦えっていわれてもきっとなにをしていいかわからないと思うのです!」
これからなぎさたちは魔女退治に出かけます。
まどかも……次くらいには一緒につれていってみましょうか。頭の中で計画を立てます。
あすみ「そういうもんかね…… いや、あいつも戦いとか得意そうには見えなかったな。今まで見た中でも大分どんくさそうな部類じゃない?」
なぎさ「はじめてならしょうがないのですよ。きっと、要領を掴んだら立派に戦えます」
あすみ「また甘いんだから。でも後輩増えたらさすがに一人で全員の面倒見なくてもいいんじゃない? 魔女退治行くにもそろそろ多いでしょ」
なぎさ「! ……じゃあ、あすみが見てくれるのですか?」
あすみ「え、やだよ。そんなことは言ってないって。じゃなくて、後輩の世話は後輩に任せてみたらってこと」
マミ「……私が?」
あすみ「新人ももっと慣れてからのほうがいいだろうけど、二人もいれば前みたいなことになっても安全に逃げられるくらいの余裕はあるでしょ」
あすみ「てか、あれからだってもう……――たしか一年くらい? その時よりは強くなってんでしょ」
なぎさ「訓練ではそれもいいですけど、実戦のほうはまだ無理にしなくても……」
マミ「いえ、私もちょっと頑張ってみたいわ。後輩ってはじめてですもの」
あすみ「なぎさにばっかり先輩としてイイとことられたくないよね?」
……またあすみは焚きつけるようなことを言います。
それに今回はマミも乗り気みたいです……これは困りました。大丈夫でしょうか?
なぎさ「で、でも。それはもうちょっと、まどかが戦えるようになってからなのですよ」
あすみ「まあそうね。それよりまずはバックレないで来てくれることが条件だよね。今度のこそ」
たしかにそれはずっと気にしていたことでした。一緒に戦う仲間になるという以前のことです。
あすみは軽く言いましたが……。
なぎさ「とりあえず、まどかとは約束ができましたから! この前の子とは出来なかったですけど……」
なぎさ「まどかは素直そうな子ですし、きっと大丈夫ですよ。なぎさが守ってあげられます」
あすみ「…………」
そう言うと、あすみは少しだけ何か考えるようにしましたが、こう言いました。
あすみ「まあ、そうかもね」
なぎさ「はい!」
それから、今日の魔女退治に出発しました。
――――
――――
まどかと出会った次の日も――そのまた次の日も。
同じように訓練は続き、まどかは来てくれました。……心配事は杞憂に終わりました。最初に信じた通りだったのです。
そして、まどかもなぎさたちと一緒に戦いに参加できるようになった頃でした。
あすみが提案したように、マミとまどかが二人で魔女を倒してきたというのです。
しかしそれは偶然のことでした。通学路で襲われてた人がいたから。なんでもそれはまどかのクラスメイトだそうで。
なぎさ「それで、二人が無事なのは本当によかったと思うのですが…… ほむらも魔法少女になりたいのです?」
ほむら「いっ、いえ、まだそこまでは……!」
……ほむらには素質があるのだそうです。
魔法少女と会ったことはありましたが、その『候補』と顔を合わせるのははじめてです。
どう話せばいいのでしょう?
ほむら「でも、鹿目さんと巴さんに話は聞いて。……力になれたらとは、思います」
なぎさ「そう言ってくれるのはうれしいですけど……」
正直、そう言われてもしてもらいたいことが何も思い浮かばないのです。
なぎさは魔法少女の新人のことを守らねばならぬ立場です。魔法少女ですらない人を危険に巻き込むのは言語道断。
1力になれることはありません
2だったら契約してください
3あすみに助けを求める
4自由安価
下2レス
なぎさ「無理なのです。力になれることはありません」
ほむら「え……っ」
ハッキリ告げるとほむらは表情を引きつらせました。
ほむら「も、もちろん鹿目さんや巴さんのように戦うことはできないとは思いますけど……こう、武器とか持ってきたりしたら、少しくらいは……」
なぎさ「武器って、そのへんで調達してきたものが魔女に効くわけないじゃないですか!」
ほむら「そ、そうなんですか……」
なぎさ「いいですか? まどかとマミだってまだ二人だけで戦わせるのは不安だったのです! これ以上不安を増やさないでください! 引き返して!」
あすみ「あははははは! なぎさ、よく言ってやったじゃん! ていうかアンタ面白いこと言うね~、そんなこと言い出すやついると思わなかった」
まどか「ほむらちゃんって意外とアグレッシブだったんだね!」
マミ「心意気はいいけれど……ちょっと無謀だと思うわよ。身体強くないんでしょう?」
ほむら「うう……」
なぎさ「強かったとしてもダメですよ」
ほむら「…………はい」
シュンとしてしまいましたが、仕方ないです。曖昧に言ってついてこられても困りますから。きっと強く言うことも必要だったのです。
あすみは他人事みたいに面白そうに笑っています。
ほむら「そうですよね。今日少し動いただけでめまいがしたのに、私なんかじゃ、契約したってきっと……鹿目さんたちみたいには」
……しかし、ちょっと落ち込みすぎてしまったでしょうか?
契約したときのことならさっきのこととはまた関係のない話になるのですが。
そんなときキュゥべえがなぎさの肩の上に飛び乗って、存在をアピールするようにひょこりと顔を出します。そういえばついてきていたんでした。
QB「まあまあ、そんなに邪険にすることないじゃないか。このまま戦うのは無謀だけど、ほむらだって契約すれば戦えるようになるよ」
QB「魔法少女になれば契約前より強くなれるし、身体を強くすることを祈ったっていいんだからね。なんなら、今ここで叶えることだってできるよ?」
ほむら「……いえ、やめておきます。今はまだ……。変なこと言ってすみませんでした」
ほむらは縮こまるように頭をさげると、卑屈そうにトボトボと去っていきます。
その後ろ姿にまどかが声をかけました。
まどか「ほむらちゃん! 契約のことは関係ないとして、これからも仲良くしようね! 戦いについてこなくてもここには来ていいから!」
まどか「今は考えてなくても魔法少女のことだって無関係じゃないでしょ? 訓練の風景とか見てたってきっと損はないよ!」
まどかの言葉に、ほむらは足を止めます。
-------------------------
ここまで
次回は30日(水)夜の予定
あすみ「おい、バカ!」
まどか「え……?」
あすみが嗜めるように口を挟むと、まどかは困惑したような声を上げました。
ダメなこと言っちゃったかなって感じの顔です。
……まあ、あすみの考え方からして、新人が増えてほしくないんだろうなってことはわかります。繋がりを持たせるようなこともしたくないのでしょう。
ほむら「…………」
ほむらは背を向けて立ち止まったままです。
あすみ「勝手に余計なこと言わないでくれない? ココ以外でどれだけ仲良くしてたって構わないけど、ここはそういう場所じゃないから」
まどか「えっと、じゃあどういう……?」
しかしまどかが困惑するのも無理はありません。
ここは『訓練場所』ですが、こう言ったあすみ本人が訓練せず専らぼーっとしてたり、読書をしてたりするのですから。
あすみ「なぁに? 新入りがいっちょ前に口答えしないの」
まどか「ご、ごめんなさい。でもさっきも言ったとおり、いつか契約するかもしれないんだし見てる分にはいいんじゃないかなって」
まどかも負けていません。
物腰は柔らかいですが、威圧だけで適当に丸め込めるタイプじゃないみたいです。
マミ「確かにそれもそうよね。ここは秘密の場所だし一般人に見られたら困るけど、暁美さんはもうこの場所のことも魔法少女のことも知っちゃったんだもの」
なぎさ「うーん、なぎさもここは同感ですかね。戦いは危険ですが、見る分には安全なのです。訓練中はなぎさが見てますし、危険なことはさせませんから」
……そう言うとあすみの鋭い視線が突き刺さりましたが、見なかったことにします。
ほむら「……は、はい。ありがとうございます」
ほむらはこちらを振り返ると、消え入りそうな声で言いました。
あすみ「――そもそもなんでもここに連れてくればいいと思ってんのが悪い」
ほむらの姿が見えなくなってからあすみが言いました。
あすみはまだ不機嫌なようすです。
あすみ「候補者なんてただの一般人でしょ?」
なぎさ「でも……『ただの』では、ないのでは?」
あすみ「同じだよ。というか、どうせただの一般人でいたほうがいいんだよ。せっかく願いもないってのに、下手にこっちの世界に引き込んだせいで契約する可能性が出てくる」
まどか「それって悪いことなのかな?」
あすみ「悪いよー。まどかが増えてうちの縄張りももう4人。今までみたいに余裕はないよ?」
マミ「グリーフシード……ね」
あすみ「それにさ、この場合、単純に興味持ってとかよりそういう状況に追い込まれてする可能性のほうが大きいしヤバいと思うけど」
あすみ「たとえばこの中の誰かがちょっとでもピンチになったりしたらそれが契約理由になるかもしれないんだから。アンタら人の命運背負えんの?」
あすみは損得だけでなく、もっと重いことを考えていたんだとわかります。
でも、そういうことなら。
なぎさ「それなら大丈夫なのですよ! みんなのことはなぎさが守りますから!」
なぎさ「だから…… やっぱりまだマミもまどかも別行動で魔女とは戦わないでください。信じてないとは言いませんが、心配なのです」
マミ「ええ……そうね。今回みたいに上手くいくとも限らないものね」
まどか「で、でも、今回のこともわたしたちが駆けつけるのが少しでも遅かったら……」
マミ「それは……緊急のときには仕方ないわね」
なぎさ「じゃ、じゃあそういうときはマミと一緒なら。でもやっぱり一人はダメです!」
もちろん街の人を守ることは大事な役目です。
……だけど、マミもまどかも、なぎさにとってはどちらも大事な弟子ですから。
――――――
――――――
その翌日、マミとまどかの二人の後ろにくっついてくるようにほむらはやってきた。
マミとまどかは同じ学校だ。これまでも一緒に来ることが多かった。
さらにまどかとほむらは同じクラスだと言う。まどかは関わらせる気みたいだし、三人一緒にくるようになるのは必然というべきか。
ほむら「…………」
同じく訓練を傍観してる位置にいるが、私とはまた離れたとこにいる。
ちょっとだけつつきにいってみる。せっかくだからいびってやる。
あすみ「ねえ、なんでついてきたの?」
ほむら「つ……ついてきていいと言われたから」
あすみ「いつか契約するかもしれないからってやつ? ……でもアンタってハナから契約する気なんてないでしょ?」
あすみ「コンプレックスがあってもその解消のために契約はしないし、よほどのことがなきゃ契約なんて選択肢にもないくせに」
あすみ「アンタはここに居ても自分が契約することなんて考えてない。考えたとしても子供じみた妄想程度。ただ漠然と『すごいなあ』って思って憧れてるだけ」
ほむら「…………」
あすみ「そうじゃない? 昨日なぎさも言ってたとおり、アンタに出来ることなんてないんだよ。だからついてくる意味なんてないの」
ほむら「……お見通し……なんですか」
あすみ「そう。アンタのチープな野次馬根性なんてお見通し」
多少のぞかせてもらったが、ほとんど予想通りだった。
それもそのはず。契約したって自分が戦えると思ってないんだから。『すごい人』にくっついて回りたいだけだ。
『すごい人』に守られながら横で地味な応援だけして、その一員として役立ってるつもりになりたかったんだろう。
ほむら「……どうしてみんな、あんな怪物を目の前にして戦えるんですか? いくら魔法があったって、私には無理な気がして」
ほむら「契約する前から勇敢だったの? 私なら絶対に足がすくんでしまう。どうせみんなの足を引っ張ることになる……」
あすみ「そんなの人によるんじゃない。そう思うんなら帰れよ」
とはいえ、どんなに臆病でもいつかは慣れるし、何かがきっかけで思い切ることもある。
最初はビビってたマミだって今は戦えてる。……それに、私だって。
だから万が一よほどのことが起きて思い切ってしまう前に離れさせる必要があるのだ。
なぎさ「あれ? あすみ、ほむらと仲直りしたのですか?」
あすみ「するわけないでしょ」
訓練に区切りをつけたらしいなぎさがこっちに来る。
……いびるだけのつもりがこれ以上親近感を抱かれても困る。読書に専念することにした。
あすみ(さて、どこまで読んだっけな…………)
暇で暇で堪らない日々の中で、読書は新しく身に着けた趣味といえるものだった。
時間はつぶせる。金もほぼかからない。場所も取らない。
そういえば学校に通っていた頃は、よく図書室に通っていたと思い出す。
お母さんは遅くまで仕事してて暇だった。その時も暇つぶしに本を読んでいたんだ。
ぼんやりと訓練の風景を遠目に捉えつつ、本の世界に入り込もうとする。その時、隣から声がした。
ほむら「その本……」
あすみ「……何? 本?」
まさか今度は向こうから、またこいつに話しかけられるとは。
ほむら「いえ、読んでたなって……」
あすみ「そう。ネタバレしないでね」
ほむら「あ、もちろんです! ネタバレは一番つまらないので!」
ほむら「でも、下巻のほう読んでないんですよね……。休憩室にシリーズがあったけど、読まないうちに退院しちゃったから……」
……そういや身体弱いとか言ってたっけ。
入院中か。それはまた暇そうだな。口には出さず、心の中でだけ思う。
ほむらはそれ以上話してくることはなかった。でもたまにこっちを見ている視線を感じた。
まさか、そんなことで話しかけてくるとは思わなかった。
そんなことを話す相手がいるとも思ってなかった。でも、こっちが親近感を抱くわけにもいかない。……目を合わせず、冷たく対応することにした。
――――
――――
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ここまで
次回は3日(土)夜からの予定です
それからというもの、まどかに加えて一般人のほむらまで常連になった。
……なってしまった。私としては不本意なんだけど。
しかし、この日は何か揉めてるらしかった。
なぎさ「――――じゃ、じゃあ、今はもう治ったんですね?」
まどか「うん。終わったあと、魔法で治せるってキュゥべえに教えてもらったから」
なぎさ「で、でも、怪我したのですよね!?」
まどか「でも本当にそんなに大したものじゃないの。怪我はちょっとつまづいて転んじゃったってだけだから!」
まどかが怪我したとかなんとか。でも問題の中心はそこじゃなく。
なぎさ「結界の中で危険なのは使い魔や魔女だけじゃないのです! 足場が悪かったり罠があることだってあります!」
なぎさ「ただ転んだのとはわけが違うのですよ。戦うなら絶対にいっしょにって約束したのに……」
まどか「そ……そう思ってたんだけど、でも……」
この前改めて言いつけられてからほんの数日だというのに、まどかがソッコーで約束を破ったってのが問題ってとこだろうか。
マミ「どうして一人で魔女と戦ったの?」
まどか「友達が操られてたんです。それに、他の人も……いっぱいいて、集団自殺しようとしてました。わたしが戦わないと間に合わないんじゃないかって」
マミ「なるほどね……」
なぎさ「……だ、だからって…………」
なぎさが第一印象で素直そうと評してた通り、私もまさかこいつがこんなに早く――とは思ったけど。
一応納得できるほどの理由はあったらしい。なぎさは口ごもった。
まどか「や、やっぱり、わたしが戦うのをためらったせいで誰か傷つくと思ったら見逃せないよ……せっかく魔法少女になったんだから」
なぎさ「!」
なぎさに反発して仲間になることを拒否した魔法少女たちとはまどかは考え方が違った。
その考えは、むしろ人を助けるのが魔法少女だと正しさを謳ってたなぎさたちに近いはずだった。
あすみ(なんか面倒そうなことになってるな)
私はその修羅場じみた光景をまだ遠巻きのまま見ていた。私は人助けのためなんて考えたことないし。同じ立場では話せない。
ほむら「やっぱり……、魔女と戦うのって危険がつきものなんですね……」
あすみ「……まあ、そりゃね。怪我くらいすることはあるよ」
こいつも傍観しかできない立場だ。だからって、話に入れないからって私に話しかけないでくれないか。
ほむら「どうしたらいいんでしょうか……?」
あすみ「さあね。私に聞かないでくれる?」
しょぼんとした、陰気臭い空気を横から感じる。……傍観者だからって『同じ』じゃない。
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ここまで
次回は4日(日)夜からの予定
――――――
――――――
まどかから言われたことにハッとしてしまい、なぎさは言葉を返せませんでした。
街を守るのが魔法少女の役目。なぎさはずっとそう思ってたつもりでした。――しかし、本当にそうだったのでしょうか。
もうひとつ、なぎさには大きな役目があります。
確かに魔女を倒すまでの時間が早いほど誰かが操られたり取り込まれたりする危険はなくなりますし、なぎさもいつでもすぐに駆けつけられるわけではありません。
それでも弟子たちには一人で戦わせたくないと思うのです。危ない目に遭ったときになぎさが守ってあげられないから。
知らず知らずのうちに、マミやまどかの安全と街の人の安全を天秤にかけていたのでしょう。
なぎさ「……それなら、友達を連れて逃げたっていいのです」
まどか「でも、それじゃ他の人は」
なぎさ「一筋縄で倒せない魔女だっているのです! 魔法少女であるまどかが死んでしまったら終わりなのですよ!」
なぎさ「それでも一人で戦うのなら……戦う前に連絡してください。そしたらなぎさも助けることができるかもしれません……もし、まどかに『何か』があったとしても」
なぎさ「約束を守ってくれれば、なぎさはまどかのことを絶対に守ってみせます。……でも、破るのなら守れないかもしれません。それも一つの考え方ですから、仕方ないです」
まどか「……あ……えぇと…………うん、ごめんね」
まどかははっきりと何かを言い返すようなことはしませんでした。まだ色んなことを考えているのかもしれません。
けど、どうして謝ったのでしょうか。
再び同じ状況に立った時、なぎさにはまたまどかは同じ行動を取るのではないかと思えてしまいました。
なぎさ「……じゃあ、今日も訓練しましょう!」
なぎさの合図で今日も訓練をはじめます。
訓練中はいつもと変わりませんでした。まどかが来てから久しぶりに新人に教えるのは新鮮です。
まだまだ教えなきゃいけないことはたくさんあります。
……ちゃんと、教えたいことを全部教えられるでしょうか。
マミ「鹿目さんの弓って不思議ね」
まどか「そうですか?」
マミ「ええ。弓って扱いが難しそうだけど、思ったとおりの場所に飛んでいくんでしょう? 軌道が読みづらいのよね」
マミ「鍛えればいい武器になると思うわ」
まどか「はい。がんばります。マミさんのもすごいですよね」
マミ「少し狙い方は似ているのかしら? このリボンも狙う先を意識すると上手くいくの」
マミ「最初は私も上手く行かなくて苦労したのよ。たとえばさっきの一撃は――――」
訓練ではマミとまどかが手合わせすることもあります。その延長で直接指導することも増えました。
普段から同じ学校の先輩として接しているのでしょう。
こういう時のマミを見ていると、なぎさに勉強やお料理を教えている時のような、頼もしくて優しいお姉さんの顔です。
もちろんなぎさも見ています。もっとこうしたらいいんじゃないかって口を挟むことだってあります。
でも、段々とそんな機会も少なくなってきている気がするのです。
あすみ「マミが巣立ってくみたいで寂しい?」
……気づいたらあすみが横に居ました。
なぎさ「は、はい。まあ少し……」
あすみ「私もあいつは一生コバンザメのようになぎさについてくのかなって思ってたけど、弟子ができたら意識も変わるよね。しかも同じ学校の後輩でもあるんでしょ?」
あすみ「……まあでも、本当の意味で離れてっちゃうようなことは多分ないよ」
いつになくあすみが優しいです。いえ、出会ったときからしたらすでに大分トゲトゲは減っているのですが。
直球で優しいをかけることは今でもあまりないのです。あれ、これってもしかして。
なぎさ「もしかして、なぎさを慰めようとしてくれてるのです?」
あすみ「……だって、ハブられたみたいな顔してたから」
なぎさ「そ、そんな風に見えてたのですか?」
あすみは魔法がなくても心を読むのは上手です。間違いでもないのかもしれません。
あすみ「でもさ、こう思うようになってきてない? 自分の言うことを聞く人は守るけど、聞かない人はどうなっても仕方ない……って」
なぎさ「だ、だって……なぎさがどんなに守ろうとしたって限界はあるのです。まどかみたいな理由ははじめてだったけど……」
あすみ「現実的だとは思うよ。なんかちょっとらしくないなって思ってたけど……まあ、それも成長したってことなんでしょ」
なぎさ「…………」
……だって。どうしたらいいのでしょうか。
みんなを死なせないためには、なぎさの手が届く範囲に居てもらうのが一番なのです。
――――
――――
――――まどかとほむらが訓練の場に加わりましたが、それだけではありません。
ついでにその後のお料理のトックンにも二人が加わりました。
マミ「――――湯煎してたチョコレートはもう溶けた?」
まどか「はい! こんな感じで大丈夫ですか?」
マミ「ええ。バッチリよ」
なぎさ「こっちも生地の準備出来てますー」
まどか「みんなでお菓子作りするのって楽しいですね」
ほむら「はい。自分たちでこんなにお菓子や料理を作れるなんて、魔法みたいですね」
訓練後は魔女退治に向かうことも多いのでたまにですが、魔法少女の関係ないことにはほむらも参加してます。
その代わり、相変わらずあすみはこういうのには来ないです。
まどかはあまり遅くまでいられないので、一緒に過ごすのはティータイムだけです。
それもあって、最近ではお菓子を作ることが増えました。
今ではなぎさがおうちでも家事を任せられるくらいには上達したから――というのもあるのですが。
マミ「そういえば、鹿目さんと暁美さんにはまだ言ってなかったかしら。なぎさちゃんは魔法でお菓子も出せるのよ」
ほむら「戦うだけじゃなくて、そんな魔法もあるんですね……」
マミは自分のことのように誇らしげに言いました。
今のところはみんな無事で、問題は起きていないです。――だからって、安心していいわけじゃありません。
まどかに対する、また約束を破るんじゃないかという不安。
『破るのなら守れなくても仕方ない』――あすみの指摘どおりあの時まどかに言い放ったのはそういう真意があって、なぎさは心の底でその覚悟をしてたはずでした。
でも、まどかはいい人です。これ以上仲良くなったら、そんなに簡単に切り捨てることなんてできなくなってしまいそうなのです。
なぎさ「あの……ほむらはまだ契約って考えてないんですよね?」
ほむら「……。はい。まだ今は…………」
オーブンをセットしてケーキを焼く間、ほむらにも聞いてみました。
ほむらはずっと訓練についてきてはいますが、こうして話すのは今までほとんどありませんでした。
なぎさ「もし魔法少女になったら、ほむらはなぎさとの約束を守ってくれますか?」
ほむら「一人で戦わないこと……ですよね。守ると思います。私は一人で戦えるほど勇敢じゃないから」
なぎさ「そうですか……」
ほむらはそう言いましたが、ちょっと疑問を抱いたのが出会って初日のあの発言があるから。
……契約しないまま武器持って魔女退治についてこようとした人の言葉とは思えません。
それを指摘してやると、ほむらは慌てたようにして答えました。
ほむら「あっ、あれは勇敢なんかじゃなくって……むしろ逆です。みんなについていくだけだから。守ってもらえるから平気だと思ってたんです」
ほむら「本当は戦う覚悟なんてなかったくせに……それがどれだけ危険なことか、みんなに迷惑をかけるか考えてなかっただけなんです」
なぎさ「契約についてはゆっくり考えてくれればいいです。危ないことはしなくていいですからね」
まどか「うん。応援してくれる気持ちだけで十分助かってるよ」
ほむら「ちが……――、違うんです。私はそんなに立派な気持ちでここにいるわけじゃ……」
まどか「――?」
話しているうちに、オーブンの電子音が聞こえます。
ケーキが焼き上がりました。
------------------------------
ここまで
次回は16日(金)夜から
出来上がったチョコレートケーキはなめらかで、今日も見事な出来でした。
マミの淹れてくれた紅茶をお供にティータイムははじまります。紅茶の淹れ方もみんなで見させてもらっていました。
今ではなぎさもマミと同じくらい上手に紅茶を淹れることができます。でも、二人のときは大体マミに任せています。
紅茶でも料理でも……なぎさが完璧に覚えたと思っても、マミはよく今まで知らなかったようなことを見つけてくるので、マミにはずっと敵わない気がします。
飽くなき探究心を感じるのです。
まどか「見た目も綺麗だし、ちょうどいい甘さで美味しいです! 今度家でも作ってみます!」
マミ「ええ。ご家族に作ってあげたらきっと喜ぶわよ」
まどかは教わったレシピをノートにまとめていて、それを見たマミがメモを書き加えたりもしています。
その光景にマミと訓練をはじめたての頃を思い出します。
マミの訓練ノートはさすがに今は書き込む頻度は少なくなりましたがまだ続いています。そういえばまどかにも見せていました。
ほむら「私も練習したら作れるようになるのかな……」
マミ「こういうのって、やってみたらできるものよ。料理って出来るようになったら楽しいんだから」
まどか「ほむらちゃんも一人暮らしなんだよね」
ほむら「で、でも、全然こんな…… 巴さんみたいに立派じゃないです」
マミ「暁美さんもそうだったのね。それならこのあとお夕飯も一緒にどうかしら? 教えるわよ?」
……ふと、思いました。あすみは訓練や魔女退治のこと以外でも、こうして魔法少女と必要以上に関わるのにはまだ反対してるんだって。
あのときなぎさはこう言いました。
『大丈夫なのですよ! みんなのことはなぎさが守りますから!』 ――――でも。
『破るのなら守れないかもしれません。それも一つの考え方ですから、仕方ないです』
これじゃ大丈夫って、言えませんよね。
なぎさはなぎさ編と違って芯が定まってない感じですね
まどか「――――今日はありがとうございました。あの……っ 訓練、なぎさちゃんにも認めてもらえるようにもっとがんばるから!」
なぎさ「なぎさに……?」
ティータイムが終わって、まどかが帰る時間になります。
すると、帰り際にまどかが言いました。
まどか「うん。なぎさちゃんがわたしたちに一人で戦ってほしくないのって、安心して任せられないって思ってるからなんだよね?」
まどか「わたしは新人だしまだまだみんなより弱いけど、いつかはちゃんと肩を並べられるようになりたいの」
まどか「……なぎさちゃんとあすみちゃんみたいに」
なんでここであすみの名前が? ――そう思いましたが、すぐに納得しました。
一応魔法少女としてはなぎさのほうが少し長いとはいえ、出会ったときからあすみはなぎさの弟子だったことはありません。
大切な『友達』ですが、『守らなければならない存在』と考えたことはありませんでした。
マミとまどかは弟子で、守らなければならない存在です。
でもそれって、二人のことを対等に見ていない、認めていないってことでもあるんじゃないか――そう、思わされてしまいました。
……なんだか、まどかの言葉にはハッとさせられることが多いです。
マミ「そうね。いつかはそうならなくちゃね」
もちろんまどかは契約したてですし、今すぐに認めるわけにはいきません。
でも、いつかは一人前に。信じて任せられるようにするのは師匠のつとめでもあるのです。
まどかも帰ると、今日は三人になります。
さっき話してた通りほむらもまだ残っていました。
ほむら「さっきのこと……なんですけど」
なぎさ「さっきのこと?」
ほむら「はい、ケーキ作りの時に話してたこと……みなさんは私に契約について考えるためについてきていいって言ってくれるけど、本当は全然そういうの考えてないんです」
ほむら「誰かと一緒に過ごしたり、おうちに招いてもらったり、そういうのって初めてで……それが嬉しくて」
ほむら「私はただ……ついてきてるだけ…… 本当はよくないですよね」
ほむらはいつもよりさらに自信なさげに話します。
契約する気がまったくないのなら遊び半分で覗かれるのはたしかにあまりよくありません。
それに、遊び半分にしても訓練中はあまり構ってあげられるわけではありませんし、少し寂しそうにしてたのは見えていました。
かえって疎外感やプレッシャーを与えてしまっていたかもしれません。
マミ「……そうだったの。それじゃ、私達の訓練についてくる必要はないわね。今後は暁美さんに合った特訓をするようにしましょう」
なぎさ「えっ? どういうことなのですか?」
マミ「暁美さんには、今日から私が先輩として料理を教えてあげるわ! どう? 私の弟子になってみない?」
マミ「なぎさちゃんも私の弟子なの。暁美さんは二番弟子ね」
なぎさ「!」
マミは悪戯っぽく笑って言います。……料理の方でも、なぎさについに弟子ができるのでしょうか。
ほむら「……は、はいっ。よろしくおねがいします!」
とりあえず、早くも『免許皆伝』を望んでいるまどかにはとくに厳しく鍛えるしかないのです。
まどかのことを信じられるように。……『大丈夫』っていえるように。
魔女には新人が一人で倒せるものから、ベテランでも危険な相手までいっぱいいます。相性にもよります。
――――でも、ベテランも相性の良し悪しも関係なくすべてを覆す最悪の『敵わない相手』は、それからほどなくしてやってきてしまうのでした。
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次回は17日(土)夜からの予定
>>820 なぎさ編は色々と端折ってきてるので葛藤とかはあまりないですね
その前触れは本当に唐突で。
――――
――――
なぎさ(せっかくの休みの日なのに朝からお空がご機嫌ななめです…… 風、止むどころか強くなってるみたいですし)
朝ご飯を準備していたところに外から放送が聞こえてきて、お父さんにつれられて一緒にここまで避難してきました。
天気も悪そうなので、せっかく今日は訓練もなしにしてゆっくりとご飯を食べてお家で過ごそうと思っていたところだったのですが。
予想していたよりもさらに天気が悪かったようです。
……いえ、本当はその前にやろうと思っていたことがありました。
なぎさ(家にいたときから感じていた魔力、ここまで来ても変わりませんね)
なぎさ(結界が近くにあったからというより、ここ一帯が包まれているような……それも段々と濃くなっているような気さえします)
一帯を包み込むような魔力。それに併せたような災害。
そんな魔女のことをなぎさは知っています。キュゥべえから聞いただけではありますが。
なぎさ「お父さん、ちょっと離れていい? お友達もここに来てるみたいだから!」
「あぁ、ずっとじっとしてるのもヒマだよね。でも絶対外には出ちゃダメだよ」
おそらくあすみもマミもまどかも気づいてるはず。……そういえば、みんなもここに来てるのでしょうか?
ただの台風じゃないのだから、元凶を退治しなければおさまりません。
もしかしたら、もうそっちに行ってる可能性もあります。
なぎさ(お父さんにはダメと言われたけど……)
なぎさは魔法少女だから。みんなを守るためです。
覚悟を決めて外に出ようとすると、携帯から音が鳴りました。
――――――
――――――
たぶん、朝?
外が騒がしくて目を覚ました。スタッフが宿泊者全員に避難を呼びかけてるとか。
あすみ(ワルプルギスの夜……か)
巻き込まれないうちにと早々に外に出てきて、私は宛もなく歩き始める。
魔力の気配には起きてすぐ気づいてた。風は強さを増している。
*私は……
1魔力が強くなる方を目指して歩き始めた
2みんなが向かう方に歩き始めた
3魔力が弱くなる方に歩き始めた
下2レス
道行く人はみんな一つの方向を目指してる。多分避難所の方向なんだろう。
でもそんなの意味がない。本当に避難したいなら今からでも街から遠ざかるべきだ。
あすみ「まあ、でも。そんな伝説級の存在、姿も見ないうちにビビって逃げちゃうのももったいないよねー」
なにより無様だ。
相変わらずどこへ向かうのかはわからないものの魔力が強くなる方向を目指して歩くと、街を使い魔が闊歩してた。
簡単に倒せたし反撃すらしてこなかったけど、こんな動物が普通にいるはずもないし使い魔なんだろう。
こいつら見るようになってからは風の勢いも更に荒れている。このあたりになると、人の姿もめっきりなくなった。
すでにかなり中心部に来たはずだが、大ボスらしき姿が見当たらない。
一旦足を止めて建物の上から見渡していると、空に強い力を持つ魔法陣が描かれ、人影――といっていいのかわからない巨大な影が現れた。
一見ヒトのような顔、手足、胴があるが、大きなスカートの中からは歯車が覗いている。しかも、なぜか上下逆さに浮かんでいた。
あすみ「……そういうわけね」
あの使い魔はショーの前座のようなもの。
いつのまにか使い魔の姿も消えていた。
――――腕試しといこうか。
――――――
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【訂正】>>830 「手足」はなかったわ
腕、くらいに脳内変換しといてください
――――――
着信の相手はマミでした。マミも同じように魔力を感じ取っていて、避難所に行こうか迷っていたということでした。
マミにはまだ近づかないように言いつけつつ、まどかとも話しておかなければなりません。
なぎさ(まどか、先走って向かってたりしなければいいのですが……)
そんな心配をしましたが、その直後にまどかからも連絡がきました。
まどかも家族と一緒に避難所に来ていたそうでした。まずは避難所の中で二人で合流しました。
なぎさ「まどか! ご無事でなによりなのです」
まどか「うん、なぎさちゃんも……! ところで、この魔力ってなんなのかな? 外に魔女がいるなら倒しにいかないと」
なぎさ「そのことについて話そうと思ってたのです。なぎさも実際に見たことはないのですが……――――」
結界を持たない魔女、『ワルプルギスの夜』のことをまどかに話しました。
まどか「た、大変! そんなのが現れたなんて……! そうだ、マミさんとあすみちゃんは!?」
なぎさ「マミは外にいます。でもまだ暴風の中心部には近づかないように言っています。あすみのことは……わかりませんが」
まどか「倒しにいかないとだよね」
なぎさ「……」
相手は伝説の魔女です。普通の魔女ならなぎさと一緒に戦う分には問題ありませんが、新人のまどかをできるだけ危険には晒したくありません。
しかし、どのくらいの強さかもわからないとなると戦力が多いほうが助かるのも事実……。
1倒しに行きましょう
2待っててほしい
下2レス
-------------------------
ここまで
次回は21日(水)夜からの予定
なぎさ「はい、行きましょう! では今からマミに連絡するのです!」
……まだまどかは未熟です。
ですが、戦う意欲だけは人一倍あるのです。力にならないことはありません。
でも。
なぎさ「……でも、とても危険な相手です。危ないと思ったときには逃げるのですよ」
まどか「……うん。頑張るから、みんなで倒そうね」
……そう言っても、少し不安の残るところはあります。
するとその時、こちらに一人近づいてきました。
覚悟を決めて外に出ようとしていたところを呼び止められます。
ほむら「鹿目さんに、なぎさちゃん……二人も来てたんですね」
ほむら「なんとか一人で避難してきたんですけど、心細くて」
ほむらは一人暮らしですから、一人でここまで来て、それからもずっと一人でいたのでしょう。
外は暴風、そんな中なぎさたちを見つけて安心しているのがわかります。
でも、ついていてあげたい気持ちはやまやまですが、今に限ってはそれはできないのです。
まどか「ほむらちゃん、これからわたしたちがこの風を止めて来るから」
ほむら「え……? そんなことが……?」
まどか「これは、ワルプルギスっていう悪い魔女が起こしてる災害なの。だから倒さなきゃいけないの」
まどか「ほむらちゃんはここで待ってて」
また不安そうな表情に戻ってしまったほむら。
なぎさ「……大丈夫です。ちゃんと帰ってきますよ」
なぎさたちはそう告げて、避難所の出入り口のほうへと歩いて行くのでした。
外に出た時、わたしたちは驚きました。避難してきた時にはなかったはずの、魔女の姿があるのです。
まだ遠くて、小さくしか見えないのですが……その魔力の強大さ、禍々しさたるやこれまでの魔女とは比べ物になりませんでした。
それからマミと合流し、三人で目標へと目指していきます。
魔力だけを頼りに近づくよりは姿が出ているほうがわかりやすいのですが、
既に魔女が動き回るたびに被害が出ているようなので、急がなくてはなりません。
マミ「私も驚いたわ……。いきなり空に魔女が現れて、そこから明らかに魔力も風も強くなるのを感じたの」
マミ「それに、遠目に見ていたけれど、ビルくらいなら軽々となぎ倒しているみたいよ……恐ろしい相手だわ」
まどか「あすみちゃんは大丈夫なのかな……?」
なぎさ「! 誰か、もう戦ってる……!?」
魔女に近づくにつれて、その周りを飛び回っている人の姿や、
その攻撃によって、宙を舞うワルプルギスの夜の動きに不自然な動きが加わっていることも目に入りました。
おそらくは、あれが……。
なぎさ「あすみならそう簡単にやられたりしないのです……! ですが、こっちも急ぎましょう! これ以上被害を出さないために!」
――――――
――――――
走る。
ちょっと油断してると魔女との距離は開く一方だし、遠くから鉄球をぶつけるにも距離が開けば開くほど威力は弱まる。
もっとも、全力でぶん殴ってやった時にも大したダメージを与えた手応えは得られなかった。
あすみ「あぁ……ッ、クソ……!!」
元々私は足が速くない。
普段から身軽さよりも武器の威力を重視するスタイルだし、物理的にも発育不良気味の短い子供の手足じゃ速度が出るはずもなかった。
それでも普段の戦闘では戦い方でカバーするから気にならなかった。今になってコンプレックスを刺激されて腹が立つ。
こんなに苦戦する魔女なんてはじめてじゃないだろうか。久しぶりにイライラが湧き出てきた。
ただ走るだけでは宙を飛ぶ魔女には追いつけない。
街の脇に立つ電柱に鎖を伸ばして巻き付け、巻き取りながら一気に飛び上がる。
平面で追いつけないなら立体的な動きを交えるしかなかった。
あすみ「うらッ!」
距離を詰めたところでワルプルギスの夜に向けて鉄球を振りかぶり、叩き落としたところで、
更に長く鎖を張って地面に縛り付けては魔女の歯車部分に乗ってガンガンと殴り続ける。
あすみ「壊れちゃえ! 壊れちゃえ! このガラクタッ!」
これまでに何本のフレイルを無駄にしたんだろう。ストックには余裕があるものの消費も馬鹿になってない。
――下からこちらを覗いてくる魔女と目が合った。いや、正確には目はないが、見据えられたのがわかった。
直後にほとばしる熱気。
あすみ「バカかったくね……なんなのこいつ。さすが伝説の魔女っていうだけあるか」
退避には成功したものの結局はまた振り出し。
追いかけて殴って、どれだけ効いてるのかもわからない。飽きかけてきたな、なんて思った時、向こうから声がした。
なぎさ「あすみ! やっぱりもう戦ってたのですね!」
まどか「わたしたちも一緒に戦うから!」
マミ「それにしても、こうして見るとすごい状況ね……」
知ってる声の勢揃い。どうやらまだ抜けるわけにもいかなさそうだった。
さっきと同じことの繰り返しに、三人の力が加わる。
マミがリボンで足場を作り、まどかが離れたところから矢を打ち込み、
できるだけ近づいたところでさっきみたいに強力な一撃で動きを止める。
なぎさも範囲攻撃ではあるがシャボンじゃ着弾までに時間がかかりすぎるから、結局至近距離まで行くか、動きをとめないと当たらない。
あれほどの巨体を包み込むのは難しいんだろう。炎を吹き出す頭だけでもシャボンで閉じ込めようとしてたが、一発分しか持たなかった。
こちらの攻撃の手は増えた。しかし、まだ魔女の様子に変化は見られなかった。
なぎさ「あすみ……そういえば、ワルプルギスの夜の心も読めてたりするのですか?」
戦いの途中、なぎさが聞いてきた。
たしかに魔女は悪意の塊だし、超弩級のこいつの悪意はそれ以上だ。
あすみ「心っつーのかな……そう言えるほど単純じゃないよ。表現するなら、こいつ自身があらゆる悪意が絡み合った呪いの塊って感じかな」
なぎさ「な、なんと禍々しいのでしょう……!」
いつもなら呪いに反応する私の『呪い』も、こいつには効いてるのかもわからない。意識しすぎれば気分が悪くなりそうだ。
本気でやろうとすればやれるだろうか? しかし、上手くできる自信もなかった。
――魔女の様子にまだ変化は見られない。それに引き換え、こちらはどうだ。
見渡してみても、傷ついてない人はいなかった。
風に乗って、細かい石や建築物の破片、車なんかがぶつかってくる。
私は元々細かい攻撃は避けずに攻撃を優先したほうがいいと思っている。しかし、今の状況じゃ避けようと思っても避けきれないくらいだ。
気にしてたら動けなくなる。みんなもその傷や疲労は蓄積していってる。
あすみ「……ねぇ、もう撤退しない?」
なぎさ「な、何を言うのですか!?」
あすみ「これ以上やると、私たち無事じゃなくなるかもよ」
なぎさ「……!」
なぎさだって気づきつつあっただろうに。
マミ「でもそれじゃ、街が……!」
まどか「そ、そうです! 魔法少女のわたしたちが逃げたりしたら!」
なぎさ「いえ、でも、そうです…… だって、なぎさはここに来る前」
なぎさが何かを言いかける。しかし、強い風が吹き抜けたと同時に異変に気づいた。
あすみ「! それより上……!」
頭上から影が落ちてくる。魔女の攻撃によって破壊されたビルだ。
私の合図と同時になぎさがシャボンを膨らませてガードを張る。
それでも重みに耐えきれず、足元から崩落していくのがわかった。多分、ガードもこれ以上持たない。
なぎさ「みんな逃げてください!!」
戦ってる最中に、飛んできた細かい石や建築物の破片、車なんかがぶつかることはよくあった。
もはや気にしていられないくらいに。しかし、みんなその傷や疲労は蓄積していたのだろう。
退避する準備ができていたのは私となぎさくらいで、元々攻撃の範囲にいなかったマミを除けば……、
まどかがまだ対応しきれずにいた。
それに気づいたなぎさは。
なぎさ「マミ、まどかの足場を!」
マミ「!」
まどかを力強く突き落とし、身代わりとなっていた。
まどか「うっ…… な、なぎさちゃんは!?」
なぎさ「なぎさなら大丈夫ですよ。やっぱりまどかは逃げてください」
まどかはマミのリボンによって受け止められていた。
けど、なぎさは……瓦礫と瓦礫の間に挟まれ足を潰されていた。
まどか「で、でも……!」
なぎさ「いいから! あすみの言うとおりこれ以上は危険です! 言いましたよね、危険だと思ったら逃げてって……!」
なぎさ「マミもです……! 今、まどかを守れてよかった。でももうきっと次は守りきれないから」
まどか「ま、待って。見捨てられないよ……」
なぎさ「まどかが死んだら、ほむらは契約しますよ。まどかのために。まどかはほむらの命運を背負えますか」
まどか「……!」
なぎさ「なぎさは怪我はしましたが、足を治せば戦えますよ。こんな時くらい先輩に任せるのです……!」
マミ「…………行きましょう、鹿目さん。私達じゃ足手まといよ」
後ろ髪をひかれるような表情を浮かべながらも、まどかはマミに連れられて遠ざかっていく。
マミまで返しちゃってよかったのだろうか。しかし、万が一にも弟子を失うことを恐れるなぎさからしたら当然の判断か。
あすみ「わかってるの? 私はともかく、なぎさだってほむらと仲良くしてたくせに」
あすみ「私達だけでも勝てると思う?」
なぎさを瓦礫から引っ張り出す。治癒は得意じゃないから、あとのことはなぎさ任せだ。
なぎさ「……わかりません。でも、なぎさはやるしかないですよ」
なぎさ「まどかとマミは任せてくれたのです。負けちゃったらきっと、二人は戻ってくると思うのです。だから」
広範囲に潰された足を治すにはそれなりに時間がかかるらしい。
魔女はまだ気まぐれに街を破壊してる。
私は魔法少女だから魔女を倒さなくちゃ――とか、街や人々を守らなくちゃ――なんて思ってるわけじゃない。
もともとコイツに挑んだのも腕試しのようなもので、生きるか死ぬかの命がけで戦うつもりもない。
正直に言えば、なぎさと出会ってからはちょっとくらい感化されてたところはある。
ずっとわかった気で達観してたけど、私が思ってたのは全てじゃなくて、世界は、人間は思ってたほど汚いものばかりじゃないって気づいたから。
あの男や私を虐めたクラスメイトは、きっと人間未満のナニカだったのだろう。
私だって“いい人”になりたい。……でもみんなとは優先順位が違った。だって、私なんかが今更どうやったって偽善者にしかなれないじゃん?
とはいえ。
あすみ「あんたがそう言うなら、私ももう少し付き合ってやるしかないかな」
なぎさを見捨ててここを去ることは、どうしてもできなかった。
なぎさ「治療、終わりましたよ! またずいぶん離されちゃいましたけど……いきましょう!」
あすみ「うん、行くか」
私達は再び走り出す。武器を携えて。
暴風が起こされれば吹き飛ばされてしまうから過信はできないものの、短い距離であればシャボンを足場にも出来る。
駆け上がり、距離をつめてなぎさがシャボンを吹き出す。更に私が勢いをつけた一撃をお見舞いする。
次の瞬間には再び裂けた笑みを浮かべた顔がこちらを見た。
あすみ「鬱陶しいな」
なぎさ「大丈夫、閉じ込めてやるのですよ!」
顔を包むシャボンはやはりすぐに破られたが、一発でも耐えられるなら上出来だ。
その間にもう一発入れてやることが出来るんだから。
なぎさ「そろそろ引き時ですかね」
あすみ「ああ、また回り込むよ」
ここまできたら、やれる限りはやってやる。人数は減ったがさっきみたいに未熟な仲間を庇う心配もなくなった分戦いやすくもなった。
どうせこれ以上に強い魔女になんて会うことはないんだろうから。
あすみ「…………まったく、この風も鬱陶しいね。防ぐ手段でもありゃいいんだけど」
あすみ「どっから来るのか予測もつかないし、砂利と瓦礫のオマケまでついてくる。ま、ある程度気にしてらんないけど、さ――――」
振り返る。
あすみ「――――」
――――
――――
---------------------------
ここまで
続きは23日(金)夜に。
まどか「……ごめんね、ほむらちゃん」
ほむら「ううん、二人に何もなくてよかった。無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいんです……!」
マミ「なぎさちゃんたちがきっと倒してくれるから。私達はここで祈りながら待っていましょう」
まどか「……そうですね。わたしたちが出来ることといったら、応援……くらいですよね」
避難所の中はさらにざわついていた。
暴風は強さを増し、施設や建造物が破壊され、人々の生活の中にも影響を及ぼしていた。
マミ(それにしても…… 風、まだ強まるのかしら)
マミ(屋内に居るのにわかる風の音……。それに、魔力も――)
――その時、天井から砕けるような嫌な音がした。
ほむら「ひっ……――――!?」
破壊されるような音は続けざまに響き、ついに突き刺さった何かが顔を出す。
人々のざわめきは悲鳴にも変わっていた。
マミ「近くで戦ってるの……?」
ほむら「こ、ここは本当に大丈夫なんですか……!?」
ほむらが抱いた疑問は避難所にいる全員が持ちはじめていた。
ひとたび空いた穴をはじめにいずれは全て崩れ去ってしまいそうだ。
民衆に混乱と絶望が渦巻くのを感じ取り、まどかは声を上げた。
まどか「あ、あの! 今ので怪我人はいませんか!?」
こんな小さな女の子に話してどうなるといのか。まだ頼ろうとする人はいない。
まどか「ここにいたら危険です……! 隣町のほうまで逃げてください! わたしがみんなのことを守るから!」
マミ「……鹿目さん!」
まどかはみんなの前で衣装を纏い、その力を、意思をアピールする。
そして、はじめはあっけに取られていたマミもその意思を理解した。
マミ「……ええ、そうね。こんな時まで隠していたって仕方がないわ」
マミ「私達が守らなきゃ! 怪我人は私達が治します!」
*「お前たちは誰なんだ!」
民衆の誰かが言う。
マミ「私達は――――魔法少女よ!」
その時、二人の元にある親子がやってくる。そのうちの子供のほうが叫んだ。
*「あっちに落ちてきた瓦礫で怪我した人がいるの……! 治してあげて……!」
まどか「うん! 任せて!」
マミ「鹿目さん、お願い! 私は外を警戒しているわ!」
二人の言葉が本当だとわかると民衆はついに動き出した。
*「……やっぱり、嘘なんかじゃなかったんだ」
……二人のもとに最初にやってきた子供がつぶやく。
それは、なぎさが前に教会で指を治した少女だった。
宙に浮かぶ魔女の姿は、かつて避難所があった場所の真上にあった。
マミとまどかが防衛戦をはじめてから間もなく避難所は半壊し、大きな瓦礫と化した。
暴風が吹くたびにそれは巻き上げられて小さく砕け、削り取られていく。
幸い、逃げていく民衆を狙い撃ちにするほどの小賢しさは魔女にはない。
しかし、この戦いには違和感があった。
マミ「おかしいわ…………」
マミ「……どうしてワルプルギスの夜がここにいて、なぎさちゃんと神名さんがどこにもいないの」
ワルプルギスの夜を食い止め、その被害から守ることに必死になっていた時には考えないようにしていたことだった。
まどか「そんな……まさか……」
まどかも同じことはずっと感じていた。
その答え合わせとばかりに、無機質な声は告げる。
QB「死んでしまったよ。戦えるのは君たちだけだ」
到底受け入れられない答え。
しかし、ずっと薄々感じていたこと。
マミ「え…………」
まどか「マ、マミさん! 今は戦いに集中しましょう……!」
マミ「で、でも、なぎさちゃんと神名さんがやられちゃったのよ。私達だけじゃ、きっと……」
まどか「それでも…………わたしは戦います。わたしたちしかいないなら……」
後輩の強い思いに、マミも頷いた。
マミ「ええ………… そうね」
マミ「私はなぎさちゃんに守ってきてもらってたけど、こんな時くらいは……なぎさちゃんのためにも」
――――二人が決意を固めかけた瞬間、鋭い罵声が割り込む。
「おい!! 適当なことばっか言いやがって! 死んでねぇよ!!」
しかし、二人は息を呑んだ。
QB「…………」
まどか「あすみちゃん、それ……」
あすみ「生きてるだろ! ……私もなぎさも」
二人の知ってる、いや、『知っていた人』は、血の気が失せたなぎさをそっと地面に下ろした。
――――――
――――――
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ここまで
次回は24日(土)夜からの予定
少し前
瓦礫の山で目を覚ます。
あすみ「――……うー」
長く寝過ぎてしまった朝のような感覚だった。
爽快な目覚めには程遠い。私は痛みをなくした身体で久々の倦怠感を覚えていた。
僅かな間、寝ぼけたように意識が遠くにあった。意識が落ちる直前の記憶に思考を巡らせる。
あすみ『――――』
何気なく振り返り、言葉を失った。
なぎさは私なんかよりも身を守る術にも長けているし、勘も鋭い。
まだまだ負ける気なんてなかったのだ。私は。
人は脆い。少し当たりどころが悪かっただけであっけなく死んでしまう。
どこから何が来るかなんかわかりようのない状況。勘だけじゃ防ぎきれない攻撃。
運が悪かったって一言だけで片付けられる。
私は違う。でもなぎさは――。
あすみ「……そうか」
私はたぶん、動揺していたんだ。負ける気はなかったが、一人で戦う気もなかった。
今までのような戦意はもう保てなくなっていた。
――――そこからは覚えていない。一人で戦って、いつのまにか瓦礫に埋もれてこのざまだ。
意識のないなぎさの身体を抱きかかえて歩き始める。
ワルプルギスの夜は随分と遠くの景色になっていた。
――――
――――
……やっと仲間を見つけたと思ったら、何という目で見られなきゃいけないんだ。
マミ「い、息をしていないわ。それに、もうかなり時間が経っていると思う。言いにくいのだけど……」
あすみ「生きてるよ」
マミ「あ、あのね……」
頭のイカれた奴を宥めるみたいな。死んだことに気づいてない死者を宥めるみたいな。
現実から目を背けるのは私が嫌いなことのひとつだ。
あすみ「私だって生きてるんだから、今更じゃない?」
右の頭に手をやる。丸い形を描くはずの感触がなくなり、歪な線をなぞる。
あすみ「なんか、右の目が見えてないんだよね。ていうか触った感じ半分くらい頭が潰れてるんじゃないかと思うんだけど」
あすみ「息もうまく吸えない。鼻に血かなんかが詰まってるみたいで変な音がする」
まどか「あ……あすみちゃんは生きてるの……?」
あすみ「幽霊なんか私は信じないよ。目の前で喋ってる相手が生きてなかったらなんだっていうのさ」
マミ「生きてるにしても……。そんな状態で平気そうに喋ってられるなんて」
あすみ「私は痛みも切り離してるから。そのまま眠りこけちゃったのは、単純に欠損が大きいのとちょっと気が滅入ってたからかな」
あすみ「どんな攻撃食らったかわかんないけどさ、私に比べたらなぎさはまだ綺麗なもんでしょ」
あすみ「そもそもソウルジェムが無事なんだから死んでない。……そろそろなんとか言えよ、インキュベーター」
黙りこくって様子を眺めてたキュゥべえに話を振る。
すると、やはり悪びれた様子もなく言った。
QB「べつに嘘をつく気はなかったんだけどな。僕が確認した時点では二人共死んでたし、戦えるのはマミとまどかだけだった」
あすみ「魂のこと知ってる私がそのまま死んでやるわけないじゃん! ふざけるのもいい加減にしてくれる?」
QB「……なぎさは死んだと思い込んでいる状態だね。直接刺激を与えてみればじきに起きるだろう。本人の生きる意思にもよるけどね」
あすみ「生きる意思? 簡単な問題で良かった。それをアイツがあっけなく手放すわけがない」
こいつは言い訳をするが、どう見ても確信犯だ。
しかしさすがに観念したらしく、問い詰めればあっさりと態度を変えた。
……こうなるなら、半端な思いやりなんて持たずにちゃんと話しておくべきだった。いつから私はこんなに甘くなったのだろうか。
キュウべえがソウルジェムに触れて何かの処置を施す。
すると、なぎさは目を覚ました。
なぎさ「……ここは? あれ!? どうしてみんな!」
しかし、その一部始終を見ていた二人の反応は、やはり死者を見るような目だった。
あすみ「おはよう。ちょっとの間死んでたんだ。仮死状態ってやつ」
なぎさ「菓子状態……ですか。おいしそうですね」
あすみ「……まだ寝ぼけてるんじゃない? それか死んでる間に脳みそ腐ったか」
出会った頃からいくつか学年も上がって、年上とばかり接することの多かったなぎさは最近になって特にマセてきていた。
ちょっと小難しいこと言うようになったというか。
だから、これは久しぶりに気の抜けたやりとりだった。
やっと目が覚めたらしいなぎさは、お前に言われたくないよって感じの険しい顔で私を見る。……アンタもか。
もっとも、別に脳みそが腐ったって私達には何も問題はない。
あすみ「詳しいことは後。それより、そっちはどうなったの?」
マミ「見ての通り、ここは避難所があった場所よ。危なくなったから街の人は逃したの」
なぎさ「そうですか……街の人はみんな守れたわけですね! よくやりましたよ!」
まどか「でもまだワルプルギスの夜が……」
なぎさ「人々を守れたのなら、もう無理して戦わなくていいです。なぎさとあすみで勝てなかった魔女です。これ以上は……きっと勝ち目はありません」
なぎさ「街が壊されるのは悲しいですが、命を守ることが最優先ですよ」
マミ「でも放っておいたら、また街を襲いに行くんじゃないの?」
なぎさ「キュゥべえ。今までに現れた『ワルプルギスの夜』の伝承、最後にはどうなりましたか?」
なぎさ「きっと、物語のように誰かが倒して綺麗に終わりを迎えるだけではなかったのですよね?」
QB「……そうだね。今まで大勢の魔法少女が挑んだけど、勝てたケースが多いとはいえないね」
思わぬところで話を振られたキュゥべえは渋々答える。
なぎさ「それでもワルプルギスの夜は、世界に破壊の限りを尽くす『魔王』ではなく『災害』……災害はいつか通り過ぎるのです」
なぎさ「今考えつきましたよ。『ワルプルギスの夜』の弱点。それはきっと、飽きっぽいところです!」
なぎさ「なぎさたちが戦うとすれば、再び人が危険に晒された時です。その時は再び人々を逃がすために戦いましょう!」
あすみ「その弱点いいじゃん。実を言うと、こっちも飽きてきてたとこだったしねえ」
なぎさ「もう一度言うけど、街の人を逃してくれたのは本当によくやりましたよ! 誇りを持ってください!」
あすみ「私達も逃げるよ」
戦うにもすでに万全じゃない。魔力に余裕があるわけでもない。
前までと違って縄張りに人が増えたことも多少響いてた。今後もあるし、余りは怪我の回復に当ててほしいところだ。
まどか「……うん!」
マミ「ええ、そうね」
破壊された街の残骸を振り返る。これからどこへ向かおうか。
私はこのまま人前には出られないが、敵地でゆっくりともしてられない。
空高くに浮かぶワルプルギスの夜を眺めて、この場所に別れを告げた。
――――
――――
嵐が去った場所で、私達は再びバラバラになった。
まどかとマミは、離れた避難所に行った家族や一人で待ってるほむらに会いに行ったらしい。
家族や学校のみんなにもバラしちゃったんだから何と言われるか気にならないことはないが、それは私の問題じゃない。
あすみ「……で、アンタはなんでこっちにいるの? さっさと家族んとこ行きなよ」
なぎさ「そうなのですけど……少しは治してからにしないと、その姿をうっかり見られでもしたら」
なぎさは顔色が戻って生者らしい姿になっているものの、今の私の姿じゃ言われたとおりゾンビにしか思われない。
なぎさだって治療が得意な方ではあるものの、それに特化してるわけじゃない。
完全に回復するにはそれなりに消費も時間も必要だろう。
なぎさ「結局なぎさたちの身に何があったのです? あとで話してくれるって言ってたのです」
あすみ「こうなったカラクリは簡単だよ。魔法少女の本体はソウルジェムで、これが無事なら本来死ぬことはないってだけ」
あすみ「身体が死んで、心まで死んだ気になってたから一時的に死んだようになってたけど、ようは気の持ちようってこと」
なぎさ「……前から知ってたのですか?」
あすみ「うん。魔法少女になったばっかりの時に知ってたけど?」
けろっと言ってみせる。
その真実は、本当に私にとってなんでもなかったから。
あすみ「そのおかげで嫌な感覚を切り離せるんだって。だから私にはちょうどよかった」
他の少女は絶望することもあるって、そんな気持ち私にはわからない。
こんな身体なんかどうでもいいし、死ぬことなく安全に戦えるほうがいいに決まってる。
けど、言ったらどうなるかってことは考えないわけじゃなかった。それに私が騙されたと思ったのは『もう一つ』だ。
あすみ「本来って言ったのは、死ぬ条件はもう一つあるんだ。心が死んだら私達は死ぬから」
あすみ「それが私達が狩ってる、『魔女』ってやつ」
それでも、それを知った時の私の心に大して響くことはなかったけど。
なぎさ「……!?」
あすみ「『心が死ぬ』ってのは、絶望するってことらしい」
あすみ「死は大抵の人にとって絶望だから。死ぬことが唯一の救い、ってレベルまで来ちゃってもそれはそれで絶望的だしねえ」
あすみ「でも、絶望したから契約したはずなのにおかしい話だと思った」
契約したばかりの頃に思ったことをぽつりぽつりと話していくと、なぎさは納得したようにこれだけ言った。
なぎさ「なぎさは絶望してなかったから助かったんですね!」
あすみ「……まあ、そうなるね」
きっと、響いていないなんてことはない。どうでもいいと思ってる私とは違う。
でもなぎさはそれ以上に、そんなことじゃ揺るがないような『何か』を持ってるんだろう。
それは私が出会った頃のなぎさは持っていなかったもので、そして――
その『何か』は、私にも今ならわかる気がした。
なぎさ「……あすみはいつも無頓着なのです」
あすみ「別にいいじゃん。片目見えないのはちょっと不便だけど他に困ることもないよ。見た目もどう見ても死んでるってとこから脱せられればいい」
なぎさ「色んなことが終わって余裕が出来たら、いつかちゃんと治します」
あすみ「『ちゃんと』は治んないよ」
なぎさ「それも……いつか」
あすみ「………」
なぎさ「あすみのとこにもまた戻ってきます。だから、いつまでもこんなところでひとり寂しく隠れていないでください」
……どういう意味で言ったんだろうか。
契約する前から元々ある傷はずっと癒えない。たとえ魔法で消せても本当の意味で消したと言えるだろうか。
傷があるから恨みは消えない。恨みを忘れないから『呪い』は続く。
あすみ「――さて、と」
なぎさの姿を見送って、ポケットに手を突っ込んだ。
あすみ「本の続きでも読むかな……」
何年も住んでやっと落ち着けたと思った街は、伝説の魔女なんてものによってたった数時間で壊された。
いつも本を読んでた訓練場所にももう当分は戻れないだろう。
それでも私はずっと前から、同じように暇つぶしをしてる。
全てを解決するような素敵な打開策なんてなくて、なるようにしかならないし、失ったものは戻らないし。
でも。
あすみ(――……この日常まで失わなくてよかったかな)
―『最終・なぎさとあすみの見滝原』END―
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ここまで
次回は30日(金)夜からの予定
いつかのはなし
――――――――
――――
…………ワルプルギスの夜の襲撃以降、自分たちの街――見滝原は大きく変わってしまった。
以前の訓練場所も使えなくなったから、適当な空き地を使うようになった。
見滝原には人の居ない荒れ地がたくさんできたし、逃げた先の風見野は自然の多い町だ。使える場所はいくらでもあった。
もちろん、本当は早く元の見滝原に戻るのがいい。それでもいつもの仲間と共に過ごす、変わらぬ日常はあった。
魔力の余裕はなかなかできなかった。
余裕が出来たなら、優先すべきは魔力の回復と負傷の回復へ――折角逃げきれたのに魔女になっては元も子もない。伝説の魔女との戦いで負傷したのは全員だった。
『脳みそ半分なくなっても人は生きてられるんだって』と、多分本から得た雑学をあすみは披露した。
『でもそもそも人じゃないし、痛くないしどうでもいいから』と、あの日あすみと約束したことは本人の言葉によって先延ばしに先延ばしになっていた。
それからついに人々の生活も落ち着いて余裕を取り戻してきたある日、あすみはいつしか姿を見せなくなった。
影のようにひっそりふわふわと街の中を生きてきた彼女は、元からいなかったかのように消えてしまった。
……でもまさか、あすみが簡単に消えることも、見捨てて去ることもないって。なぎさにはそれも、お見通しだったのですからね?
あすみは結局他の人とは距離を取って深く関わることはしなかったけれど、なぎさにとっては一番付き合いの長い『戦友』ですから。
なぎさ「……これで約束は果たせましたよね? あすみ」
あすみ「まぁ、そう思っていいかもね。私はもう、人でも魔法少女でもないけれど――」
なぎさ「そんなことはどうでもいいのですよ! あすみの心は死んでないし、絶望もしてない。それが重要なのです!」
あすみ「そうだね。じゃあ、見えてないとこも確かめてみる?」
―――――――――
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なんだかんだここまで書いて完結。
次スレでやることを決めつつ、1000まではこっちのおまけでも書きます。
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○今までのおはなし
【続編開始/指定場所からロード】
・なぎさ編【続編:あすみ編後から再開。あすなろ編】
・杏子編【続編:あすなろか安価】
・キリカ編2【続編:小話・ワルプル後新展開】
・あすみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
・+かずみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
・桐野編【キリカルート続編:小話】
○新しい話
★まどマギのほかに、おりマギ本編・かずマギ・漫画版まどマギ・TDS・PSP・劇場版のネタを含みます。
それ以外からのネタは出さないか考慮しませんが、知ってるとより楽しめるネタはあるかもしれません。
★主人公は作品中のモブやオリキャラも可。
★同キャラでも前提設定やルートによって大分話が変わるので2回以上選択も可能。
ただし同キャラで未完結が増えすぎても困るので前の話が完結している場合のみとします。
☆誰が何をする話、とかざっくりでもOK
☆マギカシリーズ外の作品の設定や世界観借りるみたいのもOK(作者が知ってるネタだけになるけど)
※もしかしたらキャラの設定とか個性が原作から崩壊するかもしれないけど、根底にある性質を大幅に変えてしまうことはしません
あくまで持ち味を活かせる形で!
↓5レス程度来たらなんかかんがえる
乙です。
なぎさとあすみ、なんだかんだでもこの後見滝原でたくましく生きていきそうですね。
次は小巻を希望。
織莉子の陰口や嫌がらせが陰湿でイジメをしていた連中に堪忍袋が切れて暴力沙汰を起こしてしまう。
小巻はまだやった事ないからありかな?
>>873だと退学というより織莉子絡みで事を大きくしたくない学校側がなあなあで済ましそう
それに小巻が呆れ果てて自主退学して見滝原に転校とか?
この場合織莉子に一緒に来ないかと声をかけて一緒に転校したら契約しないかも
小巻ならあすなろ参戦を見てみたい
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4レスですが、流れ的につぎは小巻主人公ですかね。
>>873の経緯で>>875のように見滝原に転入する話とかならいい感じに原作と違う展開になりそうな気がします。
>>867だと、見滝原に住んでるっぽい小巻があすなろに行く理由付けがほしいところ…
見滝原の魔法少女なのにマミが知らないのもおかしいので、このスレだと他の地区と掛け持ちしてるとかの設定にしてましたが。
用事で通りかかったらソウルジェム奪われかけた…みたいな感じになりますかね。小巻一人であの街をどうにか出来るかはかなり不安が残るけども。
次スレ候補
小巻「見滝原中に転入したわ」
小巻「あすなろの魔法少女?」
これも下3レスくらいで決定。新しい内容・スレタイ候補があればどうぞですー。
※これまでの通し番号タイトルはわかりやすかったのですが味気なく、新規お断り感が出てくる気がしたので
1レス目でサブタイトルくらいの位置に載せるようにしようかなと思ってます
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次スレは小巻の見滝原中転入に決定。
多分次の休みくらいにはやります。
かずみin見滝原系は何回かやってネタがつきかけてるのと、かずみに主人公取ってかれそうな気がするんだ…
あと小巻があすなろ参戦というより、あすなろ組が見滝原の事情に参戦みたいになるかなって思った
・ここから「なぎさとあすみの見滝原」おまけ。
・登場したキャラの『その後』について書きます。
下1レス(キャラ名指名)
おまけ ――後日談その①あすみ――
ワルプルギスの夜が街を壊して、ついでに私が魔女になった後、それから何が変わったか。
……別に、私の生活は変わらない。
見滝原の外の生きた街並みならどこでも似たようなものはあって、さらに瓦礫の街からは人が消えて、私からすれば好都合だった。
私はその中の廃棄された建物を根城にしていた。
周りを探せば物も出てくる。元が家だらけだったのだから、無事な状態の生活必需品もちょっとくらい拝借できた。
ふと目に止まって、瓦礫の中からキラリと光る宝石のついたネックレスを拾い上げた。
どうやら私以外にも、持ち主不明の品を盗みたがる火事場泥棒は沸いているようだ。そいつらが欲しがりそうなものだった。
私はセコイ金稼ぎには興味はない。そんなことをしなくても生きていけるからだ。金の使い方なんて知らない。
それに外見を飾り立てることにも。
あすみ(……今更私みたいのが飾り立てたって、綺麗になんかなれるっていうの?)
たしかに私は最近までフードが必須だった。顔を覗いた人には驚かれた。その反応すらどうでもよかった。
哀れみを向けられる分には無視して、不当な悪意には『呪い』の報復を。醜悪なものを前にすれば本性がわかりやすく表れる。無駄な皮を剥がして見極めるにはいい鏡だ。
――けど汚いのはそれ以前のことだった。
だから魔力を食うばかりの私のことは後回しにさせたし、頭と顔面の傷どころか魔力の回復すら――――……一度は諦めたんだったっけな。
あすみ(そうだ)
あすみ(……今の私には傷はなくなったんだっけ)
傷は消えた。だからって、過去が消えたわけじゃない。
というか本当にコレはいらない。飾り付けるのならせめて自分のものにすべきだ。
私にも泥棒にも似合いそうにない華美な宝飾品は、持ち主の元に届くか知らないが交番にでも持っていこう。
……うん、私は綺麗になった。見た目じゃなくて、心のほうはそう言ったっていいだろう。
自画自賛に思われるかもしれないが、契約したての時は本当にクズになりかけてたし真っ黒に絶望してたんだから。
皮肉にも、街が壊されたおかげで私は悪事を働かなくとも良くなった。
希望自体はきっともっと前からあった。この街に来てから余裕ができて、緩やかに心は変わりはじめていたんだ。
ワルプルギスの前と後では変わってないと思ってたけど――――たぶんそれが最後に引っかかってた部分で、それがなくなったから『こう』なったのだろう。
なぎさ「あれ? あすみ、奇遇ですね!」
――――瓦礫を抜けて歩いていると私の唯一の友人と出くわした。
世の中は意外と狭いものだ。というか、今は街自体が狭くなってしまった。
あすみ「……ああ、奇遇だね」
なぎさ「これから訓練なのでよかったらあすみも来ませんか?」
あすみ「用事終わったらね」
なぎさ「はい! それとそれと……さらによかったら、その後のお茶会とお料理も。今日はマミが張り切っているのです」
新入りのまどかと魔法少女じゃないほむらまで含めて、相変わらず訓練の後まで仲良くやってるらしい。
ずっと前から、断られるとわかってるくせにこうしてたまに私にも誘ってくる。
……こいつらの能天気ぶりを見てると、意地張って一人だけ距離取ってるのも馬鹿らしくなってくるよな。
あすみ「いいよ」
なぎさ「や、やっぱりそうですよね――って、ええ!? ホントなのです!?」
あすみ「やっぱつまんないって思ったら帰るから」
今更馴染めるとも思わない。けど、これからもこの街で生きていくんだから。
なぎさの時と同じように、たとえ今から想像ができなくてもなるようにはなるとわかっているんだ。
私なりの付き合いはしてみてやろう。
え、あすみ魔女になったの!?
あすみ編みたいに魔女から人に戻ったのだとしたら、願ったのはなぎさ?
――――
――――
……で、誘われて来てみた『お茶会』とやらなんだけど。
訓練の話なら私にも突っ込めるとこはある。それ以外は思ってたとおり私の感性には合わなかった。
まどか「――そうなの! じつはうちでもこの前自分で作ってみて、そしたらパパが褒めてくれたの!」
マミ「よかったわね。今度はまた新しいレシピにも挑戦してみる?」
なぎさ「お菓子作りのレパートリーが増えますね!」
まどかが話すことといえば学校の話か家族のホンワカ話ばっかだし、一番話しづらい相手。
お菓子作りもやったことないし。
あすみ「……ふぁ~あ」
ついでに、やっぱり味覚にも合わなかった。覚悟はしてたがなんか変な感じだ。記念日でもないのに。こんなお菓子も茶も今まで馴染みがない。
気取った香りとか、そもそもお茶なのに甘くするって発想がズレてる。もちろん甘くしなきゃイイって言いたいわけじゃない。
砂糖入れてもニガイのも問題だ。茶はジュースにはなれない。
……所詮貧乏舌。もっとチープなのでじゅうぶんなんだ。私にとっての『ごちそう』は今でも駄菓子や甘いジュースだった。
あと出した後の茶葉を一回で捨てるのももったいない。まだ使えそうじゃん。飲みたくはないけど。
あすみ(ジュースってないのかな?)
つくづく紅茶という飲み物と私は合わないと思った。
なぎさ「そうなのですよ! 今度はぜひあすみも!」
あすみ「そう、って、なにが? ジュース?」
興味のない話がはじまって気が逸れかかってたところで、なぎさが唐突にこっちに話を振ってきた。
なにか目を輝かせている。
なぎさ「いえいえ、あすみもお菓子作りに参加してみればいいのです! せっかくお料理できるんですから」
あすみ「それって見合うの? 料理は買うほうが高くつくけど、お菓子って大体自作するほうが手間も金もかかると思うんだけど?」
なぎさ「あすみはコスパばっかり気にするのです…… マミも何かお菓子作りのいいところを言ってやってください」
マミ「そうね? ……まず、自分好みの味にすることができるわ。市販品って万人受けを狙うのが多いけど、甘すぎたりすることあるじゃない?」
マミ「一発で成功はしないかもしれないけど、自分の好みを探すのも楽しみのひとつよ」
あすみ「好み……ねえ」
そもそも口から物を食べるのってどのくらいぶり。
今ならコスパが一番いいのは“魔力”だ。いつのまにか、他の人からしたら随分と味気ない生活を送っていたのだろう。
縁の遠い言葉だ。私にも昔は好きな食べ物くらいあったけど、でも、それはもう……――。
なぎさ「……で、もしかしてジュースがほしいのです?」
マミ「あっ、そういえば前に紅茶苦手だって言ってたかしら……? 今日は何も用意してないわ」
なぎさ「あすみの好みって意外とおこちゃまなのですね!」
あすみ「そーいう問題じゃない。ただアンタたちとは合わないだけ」
なぎさ「じゃあどういう問題なのですか」
いつもだったら飄々と流すけど、なぎさに言われるとちょっと腹がたつ……ってのは置いといてやる。
あの頃から変わらないしこれからもきっと大して変わらないんだろう。
あすみ「まあでも、このまま何も口にしないといつかは味覚が消えてなくなりそうだしね?」
あすみ「……自分の好みってのはちょっとは考えてみてやってもいいよ。そしたら私に合わせてもらうことになるけど」
あすみ「今度から呼ぶならジュース用意しといてよ、やっすいのでいいから。……あとお菓子作るなら牛乳はあるでしょ。とりあえずそれちょうだいよ」
マミ「わかってたら最初からミルクティ用に作ったんだけどね。今度は一緒に見に行きましょうか」
マミの考える『最適』ではないらしいが、一応、怒ったりするほどのこだわりはないらしい。
仮に怒ったとしてもしらないし、無理に合わせてやるつもりはハナからない。
あすみ「そういや魔女って人間食ってたりするわけだけど、あいつらどんな感覚で食ってんだろうね? 味感じてんのかな?」
まどか「うう、急に生々しい話するね……」
なぎさ「結界自体に取り込むタイプもいますが、食べる魔女なら味もわかるんじゃないのです?」
マミ「そうでしょうね。生々しくて恐ろしい話だけど、美味しくなきゃ食べないと思うのよ」
あすみ「……美味しいのか。じゃあ私も食えたりすんのかな」
まどか「えっ!?」
あすみ「あっ、性的な意味じゃないよ」
まどか「えぇぇそんな補足はいらなくて…… どういうこと?」
マミ「どうせまた冗談かなにか……よね?」
あすみ「うん。冗談冗談」
そもそも魔法少女が魔女になるってことも、私が魔女になったってことも知ってるのはなぎさだけだ。
あの約束を、『叶えた』のは私らしいが『果たした』のはなぎさなんだから。
当分はそれでいい。二人はなぎさがまだ『一人前』に鍛えあげてる最中で、いつか認めたらなぎさが教えるだろう。
これもまた冗談って目で見られるんだろうけど。
あすみ「私は『奇跡』を叶える、良い魔女なんだから」
クリーム色の水面を揺らしてカップを取り、口に含む。
……牛乳と砂糖をぶちまけたら茶っぽさはなくなった。ひとまず、これでよしとすることにした。
『お茶会』はまだ続いていく。
まどかがホンワカな話をして、マミがお洒落ぶった話をして、なぎさは……まあいつもどおりだけど、二人だけの時よりマミたち寄りの話し方。
日が暮れたらまどかが帰って、ほぼ入れ違いにほむらが来た。マミが料理を教えてやってるらしい。
みんなにとっての日常の一部。
――――……これから、もしかしたら私の日常の一部にもなるのかもしれない。
――後日談その①あすみ おわり――
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>>886
『いつかのはなし(>>871)』はかなり情報省いたけど、
一応『人でも魔法少女でもない』と言ってるんだ…
ところで、紅茶とスイーツ好きのキャラが多すぎると思うんだよね…一人くらい紅茶嫌いやスイーツ嫌いがいてもいいと思うんだ。そう言う筆者も貧乏舌寄り。
おまけ②
・登場したキャラの『その後』について書きます。(※あすみ・なぎさ以外)
下1レス
おまけ ――後日談その②杏子――
学校の帰り、玄関のドアを開けるとすぐに、リビングの奥で座ってる妹の姿が目に入った。
杏子「ただいまー」
モモ「お姉ちゃんおかえり!」
杏子「それ宿題? 勉強してたのか? えらいじゃん」
モモ「えらいでしょ! 聞きたいとこあるからあとでお姉ちゃんも見てよ」
杏子「ああ、後でな」
制服から着替えに行く。
4人で暮らすにはこの家の部屋は少ない。部屋なんてリビングと寝るところくらいだ。
けど、夜になるまでは二人だけだし困るほどでもないか。
今まではいつもみんな家にいたけど、今は外に働きにいっている。父さんだけじゃなくて母さんもだ。
杏子(最近モモの勉強も結構難しくなってきたんだよなぁ……こりゃあたしも力入れて頑張んないと)
多分このほうが一般的なんだろう。
代わりに面倒を見てやらなきゃいけないとこも増えた。気合を入れてからモモのとこに戻る。
モモ「そういえばこの前の強風の日、見滝原が大変なことになったんだって。今日学校で聞いたの」
杏子「……ああ、こっちも聞いたよ。かなりヤバかったらしいね」
うちには今テレビも新聞もないけど、一応元教会の人間としては世間の情報に無関心になるのはよくないから、
人より気にするようにはしてる。
モモ「教会があった場所って……いまどうなってるのかな」
むかし教会があった場所はすでに売ってしまった。うちはもう教会をやめちゃったし、前のはただ住むだけには広すぎたんだ。
街や学校でも見滝原の災害のことは聞いたし、たくさんの建物が倒れたらしいとも聞いた。でも想像はつかない。
あの場所はもともと町外れだしずっと何も建ってなかったけど、ずっと暮らしてきたあの建物はもうない。
……それでも。もうなにもできなくても、あの場所が荒れ果ててるとなるといい気はしなかった。
杏子「でもさ、いいことも聞いたよ。死亡者や怪我人はほとんどいなかったんだって」
モモ「そうなんだ! 神様に祈りが通じたのかな」
杏子「そうかもね」
もう教会もやってないし、あたしたち以外に父さんの教えを信じる人もいないけど――だからこそあたしたちは大事にしなきゃいけない。
父さんがあたしたちや世の中のために思ってくれていることを。
成功はしなかったけど、間違いではなかったんだって。
「ただいま。今日は何をして過ごしてたんだい?」
モモ「おかえりお父さん! 今日はね、お姉ちゃんに勉強教えてもらってたの」
「そうか。いい子にしてたんだね」
しばらくモモと勉強してると、もう父さんと母さんが帰ってくる時間になってた。
父さんが帰ってきてから少ししてから母さんも帰ってくると、あたしは立ち上がった。
「おなかすいたでしょう。今ご飯作るからね」
杏子「あたしも手伝うよ! 今日は何?」
「今日は生姜焼きよ。帰りにスーパーで半額のお肉が手に入ったの」
それを聞くとみんなの顔がパッと明るくなった。
美味しいご飯は人を元気にさせてくれる。きっと誰にだってそう。
毎日ご飯が食べられる。特に困ってなければ当たり前のように感じることだけど、それはとてもありがたいことだ。
杏子「……モモ。今度さ、久しぶりに見滝原のほう行ってみない? 途中で前うちがあったとこにも寄れるし」
モモ「うん。気になる。あと、久しぶりになぎさにも会ってみたい。離れちゃったけど、友達だから」
あたしもゆっくりと頷く。
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今回更新はここまで。多分本日中には新スレ出すと思います。おまけは引き続き並行で。
夏休みという特大チートが到来したので更新頻度増やせるといいな~
――――
――――
あれから少し経った休みの日にバスで見滝原のほうまで出てみた。
道路が壊された一帯があるせいでいくつかの路線は変わっていて、被害の大きかったところには行けなくなっていた。
見滝原の街のほとんどを大きく迂回するようなルートだ。そんな状況を見ると街並みが壊されたって実感も沸いてくる。
かろうじて前に教会があった街の堺のあたりまでは行けたから、そこで降りることにした。
杏子「うわ……木が倒れてる」
モモ「……ここで遊んだこともあったのに」
杏子「本当にここよりヒドいのか? 道路が壊されて、ビルが倒れるほどでしょ? 街のほうは……」
教会の跡地や町外れを通り過ぎて、バスじゃいけなくなってる部分へと足を伸ばす。
町外れのほうは破壊されてても面影くらいは残ってた。
でも、進んだ先にあったのはただの瓦礫と更地。……そう表現するしかない光景だった。
モモ「なぎさちゃんは今どこにいるのかな? 街の人は無事なんでしょ?」
杏子「ああ、ほとんどは無事なはず……だけど」
こんなのを見せられたら自信がなくなってきてしまう。
それに、『ほとんど』って? 災害で怪我をした人が全くいないとは限らない。
杏子「……戻ろう。こんなの見てたら気が滅入る。さすがにこんなところには居るわけないんだから」
行こうと言い出したのはあたしだ。でも、まさかここまでとは。
被害の状況をこの目で見られただけ十分だ。……そう思うことにして去ろうとする。
あすみ「よう、久しぶりじゃん。ここ“私のうち”の近所だけど何か用でもあんの?」
深くフードをかぶっているが、その声と姿はあたしたちの知っている人物のものだった。
杏子「うち? ここが?」
あすみ「そう。ここ一帯全部私のうちの近所。誰もいなくなったから私のものにしたの」
あすみは冗談みたいなことを言いながら手を広げる。……本気なのか?
ふとフードの中を覗き見ると、思わず驚愕した。
杏子「!!」
あすみ「……私が『ほとんど』に入れなかった怪我人だとでも思っとけばいいよ」
あすみ「でもなぎさのほうは無事だから。“あっちの荒れ地”にいるよ」
方向感覚なんてなくなりそうな場所で、あすみは指を指す。
杏子「ホントに荒れ地に!?」
あすみ「うん。……んー、けど関わりすぎるのはよしときなさいよ」
あすみ「なんでそんな場所にいるかってーと、『普通じゃないこと』してるんだよ」
あすみ「アンタたちは絶対こっちの世界には関わらないでしょ。オヤジがああ言ってたもんね」
モモ「教えてくれてありがとう」
モモ「大丈夫! 魔法少女とかその前に、今日はただ、友達としてひと目会いたくなったの!」
あたしも続いて礼を言って、“あっち”を目指すことにした。
杏子「ああ、あたしからも。 ありがと!」
……あすみはさらに深くフードを被ってしまった。
進んでいくと、荒れ地の奥に多少開けた場所があることがわかった。
人がいる。近づくほどにはっきり見えてくるのは、目を疑うような光景。『普通じゃないことをしてる』って言ってたから、確かにそうなんだろう。
でも、前に父さんが言ってたような恐ろしさは感じなかった。印象でいえば――。
『魔法少女』。アニメに出てくるようなそれだった。
なぎさ「あっ……!」
瞬間、目が合った。
あたしたちの存在に真っ先に気づいたのはなぎさで、それに合わせて他の人たちも振り返った。
「えっ、一般人!?」
「これってまずいんじゃ……?」
金の髪の少女と、桃色の少女。なぎさとも雰囲気は似たようで違う系統の可愛らしい衣装を纏った二人。
二人とも慌てた様子で、あたしたちは場違いなところに迷いこんでしまったのかもって思った。
それでも、なぎさはあたしたちの知ってるなぎさだった。
なぎさ「モモ! それに杏子も! お久しぶりなのですー!!」
「知り合い?」
金色の少女がなぎさに尋ねる。
なぎさ「はい。前に教会で知り合った人たちで…… でもどうしてここにいるってわかったのです?」
杏子「さっきあすみが教えてくれたから」
なぎさ「あすみが?」
モモ「今日はなぎさに会いにきたの。ほんとはもっと話したりしたかったんだけど、あれからすぐに引っ越しちゃったから全然機会がなくて」
モモ「このあたり、すごい災害があったでしょ? 無事でよかった」
あすみの言ってたとおり、なぎさのほうは見た目も中身も変わらない。
周りの景色は変わってしまったけど、それにひとまず安心した。
なぎさ「あすみもついてくればよかったのに。まったく、照れ屋さんもここまでくると困りますね!」
モモ「少しだけどあすみとも会えてよかったよ。でも、あすみは……」
隠していた布の下を思い返す。『魔法でもなければ』治らないだろう、ひどい怪我を負っていた。
なぎさは真剣な顔をして言う。
なぎさ「あすみのことはなぎさがいつか治します。あすみとそう約束したのです」
モモ「ところで、みんなとはここで…… 戦ってたの?」
なぎさ「なぎさたちはここで強くなるための特訓をしてるのです! でもマミ、まどか、今はちょっと休憩にしましょう!」
なぎさ「なぎさも久しぶりに話したいことがたくさんあります!」
そして、今のなぎさはただの“なぎさ”ですから――そう言ってなぎさは魔法少女としての衣装を脱ぎ去った。
もちろん、こんな場所で普通に服を脱いだわけじゃない。光ったと思ったら一瞬で変わってた。
モモ「私もなの! 聞いてほしいことたくさんあって……! なぎさのおかげでモモたちちゃんと暮らせてるんだよ」
モモ「学校から帰るとお姉ちゃんと二人で少しさみしいけど、でもみんな前よりも充実した顔してるの」
杏子「あたしもなぎさには感謝してる。それからあすみにも…… なんだかんだ、あのコがキツいこと言わなきゃ父さんの中でなぎさが悪者のままになってただろうし」
ほかの二人も休憩となればいつのまにか普通の服装に戻ってた。
やっぱりここにいるみんな、神でも魔女でも、そんな大層なものじゃないんだろう。
なぎさ「あすみに伝えておきます。あすみは素直じゃないけど、きっと喜ぶのですよ!」
モモ「そういえば二人が話してるとこって見たことなかったけど、なぎさはあすみとも仲良かったんだね」
なぎさ「はい! 教会で居合わせた時には避けられてましたけど…… これからあすみのことも話すのです!」
――後日談その②杏子 おわり――
おまけ ――後日談その③ほむら――
まどか「じゃあ、ほむらちゃんも。また明日ね」
ほむら「うん。鹿目さん……また明日」
放課後、通学路の途中で鹿目さんと別れる。
学校も変わって、前とは環境が変わって、それでも私の周りが大きく変わることはなかった。
鹿目さんは今日も訓練に向かうみたい。私がそれについていく必要はない。私がついていっても何もできないから。
「それにしても今から習い事を増やすって大変ですわよね。でもまどかさん、なんだか充実してそうです」
「まどかは最近ツレないなあー。この後のショッピング、ほむらは来るでしょ?」
それに、鹿目さんだけじゃなくてこうして他の人とも打ち解けることができた。
ほむら「はい。私も行きます」
見滝原が壊滅した後、両親が迎えにきてた。このまま実家に戻ろうって。
でも私はこっちに、鹿目さんたちと一緒にいることを選んだ。
誰も知らなくても魔法少女のみんなは私の恩人で、やっと私にも大切な友達ができた。
私がわがままを言うと両親はとても驚いていた。思えば今まで私が自分で何かを選ぶことって、あまりできなかったし、しなかったから。
病室の外の世界は広くて、私の知らない人や物がたくさんあった。
同年代の誰かと一緒にいることは何もかもが新鮮で、自分が変なことをしてないか不安になることもあるけど、そんな私でも受け入れてくれる人たちはいる。
運が良かったのかもしれない。私の周りにいる人たちは優しかった。
――――みんなとのショッピングは、大体洋服や雑貨を見て回ったり、たまにCDや本を見たり。
ふと立ち寄った書店で、二人が流行りの雑誌の話をしている傍ら、私は馴染みのある本のタイトルが目にとまっていた。
「ほむら、何見てんの? 欲しい本でもあった?」
ほむら「あ、いえ……」
「そう? ならいいけど」
別に今買おうと思っていたものではなかった。けど…… 少し、ある人とした会話を思い出していた。
思い返す限り、私が見たのは冷たく素っ気ない態度。
あのとき、あの子はきっと部外者の私をわざと遠ざけようとしていたんだろう。実際私はあの子のことをほとんど知らないままもう会うことがなくなっていた。
一見何も同じところなんてなさそうなのに、小さな共通点を見つけて。でもそれから話なんて弾まなかった。
病院で途中まで読んで、あれっきり結局また忘れていた本が偶然いま目の前にあった。
彼女はもう最後まで読み終えたんだろうか?
――――ショッピングの帰り際、みんなと別れてから携帯を見てみると、ちょうど巴さんから連絡がきてた。
向こうの訓練も終わった頃みたい。
巴さんは、魔法少女にならない私にも先輩になってくれた。魔法少女にならない私のために、私に合った訓練をしてくれるって。
同じ一人暮らしだからって、お互いの家で集まって一緒にいて私に料理を教えてくれる。
なぎさちゃんも。お母さんがいなくなって、お父さんは忙しくて、だからお料理を頑張るんだって。
マミ「いいじゃない。暁美さんも前と比べればかなり上達したわよね。手際がよくなったのがわかるもの」
ほむら「さ、最初は本当に何もできなかったし、ドジばっかりだったですから……」
マミ「慣れていなかっただけだったのよ」
でもみんなと比べたら、私はどうだろう。
たまに、私も同じだと思っていいのかな? とも考えてしまう。
ほむら「……私、まだこの街にいてもいいんですよね?」
マミ「どうしたの? 急に」
ほむら「私がいま家に帰ったときに一人なのは、私が好きで選んだことだから」
私は誰かの死を経験したことはないし、いざとなったら帰れるところがある。
私がみんなと同じと言うには一人だけ『ずるい』気がしてしまって。
マミ「選べるっていいことよ。でももちろん、ご家族のことも大事にしてね」
巴さんはいつもと変わらない穏やかな笑顔を向けてくれている。その言葉には重みを感じた。
……たしかにそのとおり。変なこと考えるよりも幸せだって思わなくちゃ駄目だ。それに心配かけさせないようにちゃんと連絡もしよう。
ほむら(さっそく、帰ったら電話してみようかな。今日のこととか話してみよう)
今日も色んな人と過ごして、帰り道は一人になる。
スクールバッグのほかに手にあるのは小さな紙袋。
ショッピングでは本屋にあった本を一冊買っていた。あのとき見ていた本だ。
私があの子に会ったのは訓練についていかないことを決めた日が最後だった。
ワルプルギスの夜との戦いのとき、魔法少女のみんなと一緒にワルプルギスの夜と戦っていたらしい。
それも鹿目さんたちが避難所に戻ってきた後も、なぎさちゃんと一緒に最後まで。
それ以降もしばらく訓練には顔を出していたりしてたみたいだけど、大きな怪我を負っていて、それで……――。
今はなぎさちゃんたちの前にも姿を見せなくなった、って。全部人から聞いたことだけど、私が知ってるのはそのくらい。
だから、
今こうしてただの街角で、前と変わらない姿で、ちょうどそのことを考えた後で、
彼女を見かけたのはきっとすごい偶然なんだと思った。
ほむら「え…………、神名さん……?」
あすみ「………………」
私に気づいてもやっぱり冷たく素っ気なさそうだったけれど、
珍しくどこか考え込んだような様子で何をするでもなく佇んでいるように見えたから少し不思議に思えた。
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今回の投下はここまで、続きは多分今週中に
ほむら「ひさしぶり……ですね」
あすみ「…………」
ほむら「なぎさちゃんたちとも最近は会ってないって聞きました。……なにかあったんですか?」
あすみ「べつに…………」
やっぱりあの時と同じで、私となんか話したくないって思ってそうな雰囲気だ。
でも、なぎさちゃんの名前を出したらたった一言だけどやっと反応してくれた。
少しの間沈黙が続いてから、気になっていたことを聞いてみる。あんまり自分からあれこれ話す気はないみたいだった。
ほむら「大怪我してたって聞きましたけど……」
あすみ「……あー、そんなことも聞いてたの」
ほむら「あ、はい。ちゃんと治ったんですね」
私は見てないし、それがどの程度のものだったのかは知らない。
とはいえ、魔法があってもすぐにどうにもできない程のものだったんだから、軽くはなかったんだと思う。
あすみ「私さぁ、ホントはもう会わないつもりだったんだよね。そのために行方眩まして……消えるハズだったのに、『怪我』治ったのも“奇跡”ってゆうか」
神名さんは言いたくないことを言うみたいに話し始めた。
ほむら「……誰かに話したんですか?」
あすみ「もちろん誰にも話してないよ。追ってこられたって困るじゃん」
あすみ「詳細省くけど……『あぁもう長くないんだな』って思ってたのにさ」
ほむら「で、でも、なぎさちゃんも鹿目さんたちも……」
あすみ「……『心配してくれるのに』? だからこそって話でしょ」
ほむら「……それは……そうなのかもしれないけど」
あすみ「……そんなの置いといてよ。それで、一回死んだと思って気づいたらなぜか生きてたの」
あすみ「気にしてたこと全部解決して、怪我も治って――――いや。自分のことだから何が起きたのかはわかるよ? にしたって、あんまりにも都合がよすぎ」
私たちの会話はゆっくりと、ときに間も空けながらポツリポツリと紡がれていった。
彼女は気難しいとこはあるけど、話し方はもっと雄弁だったように見えた。なのに今はどこかぎこちなかった。
私には何があったかは詳しくわからない。でもこの問題はきっと、もっと簡単なことだ。
タイミングを失ってしまったとか、予想と違う結果になって意地を張ってどうしようか迷ってるとか。それなら私にもわかる。
見た目通りというか、意外と子供っぽいところもあるんだと思ってしまった。……こんなことを言ったら怒られそうだけど。
ほむら「今から会いに行きましょう」
あすみ「……はぁ!? 今から?」
ほむら「遅くならないうちに」
あすみ「充分遅いでしょ。別に明日とかでも……」
ほむら「だって……重大なことじゃないですか。結果的には無事でも。私だったら早く会って無事だったって知りたいって思って」
思い切って提案する。
私も悩んでばかりだけど、誰かの心を押すくらいのことなら私にも手伝える。
すると、神名さんは少し驚いた顔をして。
あすみ「…………はぁ、まあそうね。この先ずっと身を隠してくのもムリだし、一生離れるって選択肢なんかないんだから」
ほむら「一緒に行きますか?」
あすみ「一人で行けるっての! ……遅くなったら変なの沸くって聞いたことないの? 無防備にしてるといつか襲われたって知らないよ」
突き放すようだけど、私のことも考えてくれているんだってわかった。
また一人の帰路に戻ってから、そういえば本の話なんかできなかったな、と思い返す。
私はもう『魔法少女』のことには関わらないって決めたけど、彼女もこの街にずっといるらしいからまた会う機会くらいあるだろう。
こっちに来てから色んなことがあった。私の中や周囲の環境で、変わったところ、変わらなかったところ。
街が壊れたりとか、決していいことばかりではなかったけれど……それでも今は幸せで恵まれてるって胸を張って言える。
ほむら「――――……うん」
ほむら「私はちゃんとやっていけてるよ。友達もできたの。料理だって習って作れるようになったんだよ。ちょっとずつだけど」
ほむら「だから心配しないで。……うん。お母さんも元気でね」
――後日談その③ほむら おわり――
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きりがいいのでここまで
次で後日談は最後になると思います
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資格の勉強とかなんやらでなかなか時間とれてないですが、実はスレはちょこちょこきてます…!
とりあえずおまけ編締めくらいはやる!つもりはあるのでコメントは励みになります!
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