【鬼滅の刃】美しい姉妹愛 (99)

*蝶屋敷は洋式です

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しのぶ(――10日程前からだろうか、私の便や尿に、強い毒性が見られるようになった)

しのぶ(腸内の気体にまで強い毒素が含まれているから、少しやっかい)

しのぶ(はじめはそれに気が付けなくて悲惨だった。私は、排泄中に自らの臭気を吸い込んで、二日間寝込むことになった)

しのぶ(驚いて、最初は上弦の鬼の攻撃かとさえ思うくらい……それがまさか、自分の、その、放屁……のせいだったなんて)

しのぶ(それ以後、私はおトイレのたび、技を使って毒を中和している)










~胡蝶屋敷・厠~



しのぶ「スゥゥ……――」

しのぶ(新しい呼吸、誰にもいえない、秘密の技)

 ――『肛門集中』――

 ――『蟲の呼吸、陰ノ舞、紫芳香草!』――

しのぶ(直腸に住まう蟲を活性化させ、毒素を中和させる)

しのぶ(ただし中和といっても完全ではない。うかつに臭気を濃い状態で吸い込めば体に影響がでる。抗いがたい睡魔に襲われ、数十秒で気を失ってしまう)

しのぶ(慎重に、慎重に)


 ぷー、ぷす、


しのぶ(少しづつ、少しづつ、音が鳴らない程度に)


 ぷぅー、


しのぶ(そういえば、甘露寺さんと連れ立ってお手洗いへ行った時、甘露寺さんは私の事を褒めてくれましたね)


  甘露寺『しのぶちゃんって、おトイレがとても静かで上品なのね。乙女だなぁ。見習っちゃうなぁ!』


しのぶ(ふふ……)



しのぶ(ふふ)

しのぶ(見えないところで色々と頑張っているんですよ。甘露寺さんも、きっとそうでしょう?)

しのぶ「私は、鬼を倒すためならばどんな事にだって耐えてみせる。……姉さん……」

 ……カタ、コト

しのぶ「?」

しのぶ(ドアの向こう、人の気配?)

 ……。


~数分後~

 ギィィ……

しのぶ(外、誰もいない。立ち去る気配もなかった。やっぱり最初から気のせいだったのかしら。……ん?)

しのぶ(視界の端、中庭で、一羽の蝶が舞っている……ような気がした。)

しのぶ(視線を向ける。何もいない。手入れされた緑の庭があるばかり)

しのぶ(まさか、五感に何らかの悪影響が?)

 洗面所の鏡に向かう。少し頬のこけた、自分の顔が映っていた。

しのぶ(体重も、ずいぶん減ってしまったものね)

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~蝶屋敷・中庭~

カナヲ「師範。手合わせ、よろしくお願いします」

しのぶ「木刀だからといって気を抜かないようにね」

カナヲ「はい」

しのぶ「全力で打ち込んできなさい」

カナヲ「はいっ」

しのぶ「私も全力で貴方の首を狙います。木刀でも人間の首くらいなら切断できるんですよ? ふふふ」

カナヲ「は、はいっ!」

しのぶ(カナヲに怪我を負わせないよう、私は以前よりも慎重になっていた)

しのぶ(もし今の私がカナヲを爪でひっかいてしまったら? 切り裂いた皮膚から、カナヲの体内に毒が侵入してしまう)

しのぶ「――集中なさい! 私はいま貴方の手首を切り落とせました!」

カナヲ「っ」

しのぶ(ずいぶんと腕を上げましたねカナヲ。バレないように手を抜くのがそろそろ難しくなってきました)

しのぶ(とても嬉しいです)

しのぶ(――そう、私は少し、喜びすぎた――かすかな一瞬、呼吸の集中が揺らぐほどに)

しのぶ(そしてカナヲは、その一瞬を的確に捉えていた)



カナヲ「――!」

 ドスっ!!

しのぶ「ぐぁ!」



しのぶ(みぞおちに、重い衝撃。木刀の柄が、私のお腹に深々と突き刺ささっていた)


カナヲ「……っ!」

しのぶ(カナヲの呼吸に雑念が混ざる。私に一撃を打てた喜びと、師を打ってしまった申し訳なさと。)



しのぶ「ガハッ」

しのぶ(私は己の不注意に唾棄し、と同時、腹に力を籠め反撃を

   ブゥーーーッ!




しのぶ「!?」

カナヲ「えっ」





 ……ブッ、プスー……

しのぶ「……。」

カナヲ「……。」



しのぶ(肛門が、
         熱い――)



カナヲ「…………あの……。」

しのぶ「っ……」



しのぶ(――恥じらいが、私の判断力を鈍らせた)

しのぶ(――呆けている場合では、なかったのに)



カナヲ「えっと、その、師範、ごめんなさ――うぐっ!?」

しのぶ「――!!」

しのぶ(カナヲが苦し気に鼻を喉をおさえる。私は全身が総毛立った)


しのぶ(しまった!!)

しのぶ「カナヲ!!」

しのぶ(カナヲの体を抱きかかえ、地を蹴る)

しのぶ(私はバカだ! 何て判断の遅い!)

しのぶ(一刻も早くこの場から離れなければいけない。汚染された空気をこれ以上カナヲに吸わせてはいけない)

しのぶ(爆心点から距離をとる。風向きを確認し、カナヲの顔をのぞく)

しのぶ「カナヲ!」

カナヲ「っ、はぁっ……し、師範……っ」

しのぶ(顔が紫色に染まってる。毒素が肺に入ってしまっている)

しのぶ(すぐに解毒を!)

しのぶ「カナヲ、すぐに助けます!」

しのぶ(私はカナヲを背負うと、大急ぎで医療室へ向かった)

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~蝶屋敷・治療室~

しのぶ(ベッドに横たわるカナヲも、そのそばで椅子に腰かける私も、表情はくらかったでしょう)



しのぶ(処置をしたとはいえ、肺の回復には数日かかる)

カナヲ「師範、申し訳ありません。私は未熟者です」

しのぶ「……。」

しのぶ(そんな事はない、とは言えなかった。あれが実戦だったならカナヲはやられている。過程はどうあれ、カナヲは油断した。……けれど……)

しのぶ(私の体に染み込ませた毒は、鬼を倒すための毒)

しのぶ(弟子を犯すための毒ではないのに)

しのぶ「私もまだまだ未熟者です。回復したら、また二人で頑張りましょうね」

カナヲ「はい」

しのぶ「では私は行きます。あとで着替えを持ってきますね」

カナヲ「ありがとうございます、師範」

しのぶ(衣類くらいはアオイ達に任せてもいいのだけれど……させるつもりのない負傷をさせてしまったのだし、これくらいは、ね)

しのぶ「呼吸を集中させて、早く治しなさい。じゃあね」

カナヲ「はい。また……………………あっ」

しのぶ「ん?」

しのぶ(立ち去りかけて、振り向く。カナヲは何かを言いたげに、もじもじと)

しのぶ「どうしたの?」

カナヲ「あ……えと……いえ、なんでもありません、ごめんなさい……」

しのぶ「?」

しのぶ(カナヲはお人形さんモードにかしこまってしまって、それ以上は口を開こうとしなかった)

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~蝶屋敷・カナヲの私室~

しのぶ(――ああ、そうか)

しのぶ(カナヲの部屋で衣類を準備しながら、ふと、私はそれに気づいた)



しのぶ(あの子、そろそろ生理だもの)

しのぶ(カナヲがさっき言いかけたのはそれかもしれない。多分、そうだ)

しのぶ(同性であっても、あの子にとっては言いづらい事なのね。脱脂綿、持って行ってあげましょう。たしかカナヲは私物は全部雑貨入れに……)

しのぶ(もう、雑貨入れにしまうなんて、相変わらず無頓着なのね。今度、専用の小箱を買ってあげましょう。私が脱脂綿をしまっているのと同じ小箱……)




しのぶ「…………。私の使っていた箱を、あげてもよいのだけれど。もう、私には必要ないのだから」




しのぶ(数か月前から、私の生理は止まっている)

しのぶ(おそらくもう、子供を産む機能は失われた)


   ……普通の女の子の幸せを手に入れて……


しのぶ(……姉さん、悪いけど、姉さんだってきっとこうするもの)

しのぶ「私と同じ立場になったら。姉さんだって」



しのぶ「姉さんを奪った、憎い、憎い鬼。私の命を懸けて絶対に倒す」




   …………。

しのぶ「――?」




しのぶ(また、気配……)

しのぶ(……。)

しのぶ(幻覚や幻聴がはじまっている?)

しのぶ「だとしたら、まずいわね」

しのぶ(いくらか暗澹たる気分になりながら、カナヲの私物箱を開けた)




しのぶ(こまごまとした雑貨が、雑多に投げ込まれている)

しのぶ(それらの上に一冊の本があった。その本の題名は、草書体の、えらく仰々しい文字で、次ぎのようにつづられていた)



 『女師匠と二人きりで媚薬が蔓延した密室に閉じ込められた雌継子! 理性が崩壊した師匠に襲われ激しく尻上げ淫の呼吸!!!!』



しのぶ「えっ」


しのぶ(驚いて、しっかりと文字を追えなかった。もう一度、文字列をゆっくりと目でなでる)






『女師匠と二人きりで媚薬が蔓延した密室に閉じ込められた雌継子! 理性が崩壊した師匠に襲われ激しく尻上げ淫の呼吸!!!!』





しのぶ(……驚いた……)

しのぶ「これって、エッチな、本」

しのぶ(……エッチな……本だ……)





しのぶ(それは分かる、分かるのだけれど)

 ぺら、ぺら

しのぶ(ページをめくる。キリっとした顔つきの長髪の女剣士と、男受けしそうな童顔の女剣士が、熱烈に抱き合っている。その、なぜか、二人とも、上半身の袴をはだけさせて)

しのぶ「……姉さん、カナヲがエッチな本をもっていたわ。私に黙って、エッチな本を隠しもっていたのよ。どうしましょう」





 ………………………………………………………………………………。

 …………………………………………………………………。

 ……………………………………………………。

 ………………………………………。

 …………………………。

 ……………。






しのぶ『――ええ~ん、ええ~ん……』

カナエ『――しのぶ、どうしたの、しのぶ』

しのぶ『ええ~ん、ええ~ん』

カナエ『何か、怖いことでもあったの?』

しのぶ『ぐす、ぐす……これ……お父様の……着物の下に、あった……ええ~ん……』

カナエ『まぁ、これ……エッチな本……』


続きは次の日曜を予定。

全三回投稿の予定です。

ヒノカミ神楽(原作)
https://i.imgur.com/XwL9HpX.jpg

ヒノカミ神楽(アニメ)
https://i.imgur.com/eo8rsI8.gif
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