どうも、皆さんこんばんは。
今更自己紹介をする必要もないかとは思いますが、一応名乗りを上げさせて貰いますね。
我が名はめぐみん!
紅魔族随一の爆裂魔法の使い手にして、このすばの正ヒロインにまで昇り詰めた者!
というわけで、カズマの女です。
決め手はベロチューでした。
若気の至りですね。
とはいえ、何事もやった者勝ちなのでひとまずは結果オーライとしておきましょう。
さて、そんな私は今、パーティメンバーと暮らしている屋敷のリビングで寛いでます。
具体的に描写すると、うつ伏せでソファに横になってかなりだらしない姿勢です。
何故こんなあられもない格好をしているかを説明しますと、爆裂魔法の反動です。
爆裂魔法はその凄まじい威力と引き換えに膨大な魔力を消費するので毎回こうなります。
「なんだめぐみん、居たのか」
「なんだとはなんですか、カズマ」
そして現在、屋敷には身動きの取れない私とカズマの2人きり。事件の匂いがしますね。
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「その様子だと今日も日課の爆裂散歩に行って来たみたいだな」
「帰りはダクネスに運んで貰いました」
先述した爆裂魔法の反動により単独では帰還が困難な私には運搬役が必要不可欠です。
今日はダクネスに連れて帰って貰いました。
ちなみにクルセイダーの彼女は敬虔なエリス教徒なので今は教会に拝礼に行ってます。
「アクアは?」
「今日は昼からお酒を飲みたい気分だと言って先程出かけていきました」
「どうせ夜も飲む癖に、駄女神め」
やれやれと呆れつつも、キッチンの戸棚からアクアが隠していた酒瓶を取り出して酒盛りを始めようとするカズマを嗜めます。
「それはカズマと飲むためのお酒だとアクアが言っていたので勝手に飲むのはやめておいたほうが良いと思いますよ?」
「どうせ自分で言ったことをすっかり忘れてひとりで飲んで空にする癖に、本当に余計なことしか言わないなあいつは」
とかなんとか悪態を吐きつつも満更でも無さそうな顔をして酒瓶を戸棚の奥に仕舞い直すカズマのことが私は大好きです。
「暇だな」
「そですね」
暇なら冒険者ギルドにでも行ってクエストを受けてくればいいのにこの男は一切働こうとしません。働いたら負けだと思っています。
「ところでめぐみん」
「なんですか?」
「俺の認識が間違っていなければ今現在、この屋敷には俺とめぐみんの2人きりということになるが、相違ないか?」
「まあ、そうなりますね」
そんな分かりきったことをいちいち確認してくる辺り、カズマの人間としての器の小ささを如実に示していますが、2人きりなことに違いはないので私が肯定すると溜息を吐き。
「だったら、そんなところに寝てないで俺のベッドに来いよ。ほんと気が利かないな」
「最低ですね! 今のは本当にあり得ないくらい最低な発言ですよカズマ!!」
私が憤慨するとカズマは右手を掲げてとあるスキル名を口にしました。
「スティール」
「あっ!」
気づいた時には既に遅く、私のパンツは強奪され、カズマの手中に収まっていました。
「なんかいつも同じパンツで飽きてきたな」
「こ、この男……!?」
今日のカズマはいつにも増してヤバいです。
悪い意味で振り切れています。クズマです。
そんな最低最悪なクズマはいそいそと私のパンツを懐に仕舞って立ち去ろうとしました。
「ま、待ってくださいよ! スースーするからパンツ返してください!」
「10分くらいしたら返すよ」
「ひとのパンツで何をする気ですか!?」
飽きただのと抜かしておきながらこの男。
まあ、その辺に捨てられるよりは女としての矜持が保たれる分良いのかもしれませんが、それでも生理的な嫌悪感が募ります。
「何ってナニだよ。めぐみんもするだろ?」
「しませんよダクネスじゃあるまいし!!」
「今のは聞かなかったことにしてやろう。じゃあな、めぐみん。すぐ戻るから待ってろ」
怒りのあまり失言してしまった私をスルーしてやはり立ち去ろうとするカズマを引き留めるべく、私は考えに考えを重ねて妙案を閃きました。
「実は先程、トイレに行ったばかりなので」
「なん、だと……?」
立ち止まるカズマ。そしてパンツを取り出して窓から差す日光に翳して確認しています。
さすがに恥ずかしいのでやめて欲しいです。
「ふーむ……特にシミは見当たらないな」
「もういいから早くパンツ返してください」
一応言っておきますが、トイレに行った直後というのは口から出まかせです。嘘です。
そもそもトイレに行こうにも爆裂魔法の反動で動けないので行きようがありません。
「おかしいな。俺の優れた推理力によると爆裂魔法を撃った弾みでめぐみんのめぐみんがぶりっと出た筈なんだが……」
「なんですかその意味深な表現と擬音は詳しく聞こうじゃないか!?」
特に擬音が気に入らなくて問い詰めると、カズマは私のパンツを鼻に近づけて。
「すぅーはぁー……めぐみんの匂いがする」
「ドン引きですよ! どうしてそこまで好感度を下げられるのか理解しかねます!!」
ひとのパンツを目の前で嗅いだカズマは私のすぐ傍でしゃがみ込み髪の匂いを嗅ぎます。
「ほら、やっぱりめぐみんの匂いだ」
「ッ……!?」
すごく気持ち悪いのに、でもなんだか満更でもないような、そんな不思議な感覚になって何故か赤面してしまう自分がほんとチョロすぎて嫌になります。
「……カズマ」
「どうした? 今度こそ本当にトイレか?」
「違いますよ! その……わ、私にも……」
「なんだよ、はっきり言えよ」
せっかくの貴重な2人きりのひとときなので、ここは素直にはっきり言いましょう。
「私にもカズマの匂いを嗅がせてください」
「俺のパンツを嗅ぎたいのか?」
「そんなわけないじゃないですか!? 普通に髪の匂いで良いですから!!」
「仕方ないなあ……ほれ」
頭をこちらに差し出すカズマの髪を嗅いでいると、カズマの匂いがして満たされました。
「カズマの匂いがします」
「そんなの当たり前だろ」
「ふふっ。そうですね」
「何笑ってんだ。おかしな奴だな」
何だか期せずして良いムードになりました。
日頃仲間をぞんざいに扱うカズマですが、なんだかんだと文句を言いつつも大切に思っていることが彼の呆れたような笑みから伝わって、胸が高鳴ります。
「カズマカズマ」
「今度こそ俺のパンツを嗅ぎたくなったか?」
「そんなことより、またキスしませんか?」
「い、いきなり何を言い出すんだよ!?」
そう言って唇を突き出すと、やおらカズマは慌てふためきました。やはりヘタレですね。
「私が身動きの取れない今ならカズマの好き放題ベロを入れられますよ?」
「あ、あれはめぐみんのほうから……!」
「さあ早く! 私は逃げも隠れもしません!」
都合の悪いことを聞き流しつつ、カズマを急かすと彼はしばらく逡巡してヘタレました。
「あのな、めぐみん。俺は身動きの取れない女の子にキスするほどクズじゃないんだよ」
たしかに正論で美談のように聞こえますが、先程この男は身動きの取れない私からパンツを強奪したことを忘れてはなりません。
「カズマはずるいです」
ここは強気に反論するよりも、あえて弱々しく駄々を捏ねるべきだと判断して。
「自分からは何もしてくれないのですか?」
するとカズマはハッと我に返ったような顔をして心底申し訳無さそうに頭を下げました。
「ごめん、めぐみん。俺が間違っていたよ」
ふふん。どうやら私の勝ちのようですね。
おっと、ついつい邪悪な笑みが溢れそうになりますがぐっと堪えてカズマを励まします。
「謝る必要はありません。これまでも、そしてこれからも持ちつ持たれつ仲良くしましょう。私たちは、仲間なのですから」
「めぐみん……」
決まりました。我ながら非の打ち所がない素晴らしい名言です。カズマは目を潤ませて。
「じゃあ、今からめぐみんの生尻にベロチューするから……」
「ちょっと待ってください」
急転直下の超展開。いきなりおかしな方向に話題が逸れたことにより、望まぬクライマックスが近づいていることを私は悟りました。
「俺はこれ以上めぐみんを待たせたくない」
「ひとのことを思いやるように見せかけて自分勝手に話を進めるのはやめて貰おうか」
私はカズマにそもそもの疑問をぶつけます。
「カズマ。お尻にベロチューとは……?」
「尻穴にベロを……」
「よーしわかった。やめてください」
頭が沸いているとしか思えないカズマの発言に目眩がして、すぐに遮りました。
しかし、カズマは私の性格を熟知しているのでこんな風に挑発してきました。
「もしかして、怖いのか?」
「こ、怖くなんてありませんとも! ただ私は生理的に受け付けないだけで……」
「そっか。なら、俺は自分の部屋に戻るよ」
「ま、待ってください!」
ああ、もう。やはり私はチョロいです。
負けず嫌いな私は挑発にめっぽう弱いです。
意地悪なカズマの袖を掴んで引き留めます。
「なんだよ、めぐみん。俺のことなんか生理的に受け付けないんだろ?」
「普通が良いんです! 普通のキスを……!」
「普通のキスなんかじゃ満足出来ない癖に」
「うぐっ!?」
確かに普通よりも特別なものが欲しいのは間違いありません。数日前の記憶が蘇ります。
カズマが外出する際に冗談でアクアに「行ってらっしゃいのちゅーは?」と尋ねたところ、特に躊躇うことなく自然にほっぺにちゅーをするアクアを目撃して衝撃を受けたり。
カズマが就寝前のダクネスに「おやすみのちゅーは?」と寝ぼけたことを言った際も、「ほ、ほっぺでいいか……?」などと抜かして顔を真っ赤にしたダクネスが遠慮がちにキスしているのを目撃して衝撃を受けたり。
そんなこんなで普通ではない特別なキスを私が望んでいることは確かに事実なわけで。
「……私だけですか?」
「ん? どういう意味だ?」
「お尻にキスするのは私だけですか?」
我ながら頭の沸いた問いかけをすると、カズマは安心する笑みと共にしっかりと頷いて。
「ダクネスは尻より胸のほうが魅力的だし、アクアの唯一の取り柄は面の良さだからな。尻に関してはめぐみんは自信を持っていい」
「やっぱり最低最悪です! 生きていてはいけない生物ですよ、この男は!?」
などと憤慨しつつもお尻を褒められて満更でもない自分は確かにいて、やっぱりカズマは私の扱いが上手くてずるいと思いました。
「まったく、仕方ありませんね」
「ということは?」
「いいですよ……特別にお尻にキスしても」
「フハッ!」
私が折れるとカズマは勝ち誇ったように愉悦を漏らしました。屈辱です。だけど何だか。
「おかしいです……何故かドキドキします」
期待しているのでしょうか。変な気分です。
「では、早速……」
「な、なるべく優しくお願いします」
「ああ、わかってる。全部俺に任せろ」
そんな無責任なことを言って、私のスカートをめくるカズマ。当然、下着はありません。
白日の元に晒された私のお尻を見て、「エモーション」だの「コンモツィオーネ」などとわけのわからない言語を呟いたカズマは何を思ったのか脈略なく。
「えいっ」
スパンッ!
「きゃあっ!?」
「フハッ!」
いきなりです。突然、お尻を叩かれました。
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
スパパパパパパパンッ!!!!
「っ~~~~~!?!!」
容赦なく叩かれ続け、何が何だか分からず混乱しながらも、何故かドキドキします。
痛いけど、カズマも本気で平手打ちをしているわけではないようで、絶妙な力加減です。
ジンジン痺れてきて、気がつくと私は。
「んっ……ふあぅっ」
ちょろちょろちょろちょろ。
「フハッ!」
自分の意思とは関係なく流れでるおしっこ。
紅魔族はトイレなんかしないのに、よりにもよってカズマの目の前で漏れちゃいました。
それを見てまたもや愉悦を溢したカズマに受け入れて貰えたことが嬉しくて嬉しくて。
「カズマ……好きです。大好きです」
「ああ。俺もめぐみんのことが大好きだ」
そう言って、今度こそ優しくお尻にキスをしてくれるカズマが好きです。
至って普通のキスで、ベロをお尻の穴に入れてこないところも、大好きです。
「今、綺麗にしてやるからな」
「いつも苦労をかけますね」
「いいんだよ。仲間なんだから」
事後、タオルで拭いてくれるカズマ。
なんだかんだ言ってもやはり仲間想いです。
とはいえ、その光景は第三者から見ればやはり異常な大惨事だったらしく。
「な、何をやっているんだ、お前たちは」
「うわ~これはさすがに引くわ~」
「!?」
どうもいつの間にか帰宅していたダクネスとアクアにしっかりと目撃されていたようで。
「ち、違うんだ! めぐみんの奴が爆裂魔法で身動きが取れなくてトイレに行けずに漏らしてそれを俺は拭いてやってるだけで……!」
「この男! 死なば諸共ですよ! ダクネス! カズマの懐に私の下着が入ってる筈です!」
私の告げ口によってカズマは即座に拘束されて、懐から証拠のパンツが押収されました。
「ほ、本当だ……」
「カズマさんってばとうとう一線を……あ、警察ですか? しばらくうちのカズマさんを預かって貰いたいのですが……」
「畜生! 覚えてろよめぐみん! ムショから出てきたら今度こそ尻穴をふやけるくらいにベロチューしてやるからな!?」
騒ぎを聞きつけて駆けつけた警官に連行されるカズマに手を振りながら、その時が愉しみだと私は期待に胸を膨らませ、気長に彼の帰りを待つことにします。待ち遠しいですね。
【この素晴らしく良い女に祝福を!】
FIN
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