ある日
ご主人様「おい、目玉焼きにはソースだっつってんだろぉ!何回言やぁ分かんだバカメイド!」スパーン
メイド「いたーっ!なんでそーやってすぐ叩くんですか!?野蛮人!!」
ご主人様「んだとてめぇオイ!」
メイド「あんですかぁ!?事実でしょお!!??」
ご主人様「ガルルルルル」
メイド「グルルルルル」
次の日
ご主人様「トマト食えねぇからお前にやるよ」ペイッ
メイド「ちょっと!いらないからってそんなぞんざいに扱わないでくださいよ!」
ご主人様「いいじゃねぇかよ、お前好きだろトマト」
メイド「そーじゃなくて!人のお皿に投げるのはよくないでしょう!」
ご主人様「あーん?ご主人様のお恵みだぞありがたく受け取れや」
メイド「チッ…どんな生き方したらこんなクズができあがるんですかねぇ」ボソッ
ご主人様「なんじゃその態度」ペチッ
メイド「…なんやとコラッ!」ガタッ
ご主人様「あぁ!?やるかぁ!?上等やないか!!」ガタタンッ
メイド「ガルルルルル…」
ご主人様「グルルルルル…」
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ご主人様「だいたいな、お前メイドのくせに生意気なんだよ!」
メイド「そんなこと言ったらご主人様だってすぐ叩くじゃないですか!」
ご主人様「俺はいいんだよ!偉いんだから!」
メイド「偉いんだったら暴力振るっていいってんですか!やーっぱり野蛮人ですね!」
ご主人様「そういう言い方が腹立つんだよォ!」ツネー
メイド「いたたたた!ほらまた暴力!」
ご主人様「無駄にもちもちなほっぺだからなあ、よく伸びるておもしれぇや!」ムイムイ
メイド「やーめーてーくーだーさーいー!!」
ご主人様「おっぱいもこのくらい柔らかかったらもっと可愛がってやったのになぁ!」
メイド「なぁっ!!!!ぜ、絶対に言ってはいけないことを!!!!!」
ご主人様「ゲヘヘ」
メイド「うっ…」
メイド「ひぇ~ん…いくらなんでも酷すぎますぅ…」シクシク
ご主人様「え、おい、泣くなよ!!悪かったよ、言いすぎた!!」
メイド「なんちゃって~」バァ
ご主人様「あっテメーこの野郎!!!」
ご主人様「なぁメイド、あとでアレ買ってきてくれねぇ?」
メイド「アレってなんですか?」
ご主人様「アレはアレだよ…分かるだろ?」
メイド「???ぜんぜん分からないんですけど…」
ご主人様「なんだっけな…ほら、アレに使うやつだよ」
メイド「いや、ノーヒントじゃないですか!」
ご主人様「ここにこーしてあーやって使うやつ!!」
メイド「だからそれじゃ分かりませんって!!」
ご主人様「つっかえねーな!もういいわ!この無能メイド!」
メイド「なっ…誰が無能ですか!!ご主人様のアタマが空っぽなのが悪いんでしょう!」
ご主人様「あぁ!?お前よりかは上質な中身が詰まっとるっちゅーの!!脳みそこねてやるわ!」コネコネ
メイド「あうぁ、こねこねするのはやめ…やめ…」
メイド「あ!!?」キュピーン
メイド「もしかしてアレってコレのことですか?」サッ
ご主人様「それ!!!お前マジ有能!!!!!」
メイド「今日は焼きそばですよ~」
ご主人様「お前さぁ、ナチュラルに焼きそばとご飯をセットで出すんじゃねぇよ。この組み合わせはまずいだろ…」
メイド「え?美味しいですよ?」
ご主人様「味の問題じゃなくて…。炭水化物と炭水化物の組み合わせだぜ。ダメだろそれは」
メイド「でもご主人様ラーメンライス大スキじゃないですか」
ご主人様「あれはいいんだよ!」
メイド「一緒じゃないですか~」
ご主人様「違う!じゃあお前、お好み焼きとご飯一緒に食えるか?」
メイド「食べますよ!なんだったらそこに焼きそば加えてもらってもいいですよ!」
ご主人様「加えねぇわ!なにが『なんだったら』だよ」
メイド「まぁ、ご主人様がそこまで言うなら…」
ご主人様「おっ、今日は素直だな?」
メイド「この焼きそばは私がひとりで食べて、ご主人様はご飯のみということで…どうしてもというならしょうがないです」スッ
ご主人様「違うそうじゃない!!」
メイド「ご主人様この靴下穴が空いてますよ」
ご主人様「捨てとけ捨てとけ」
メイド「でもどうしたら靴下に穴なんて空くんですか?」
ご主人様「知らねーよ」
メイド「ご主人様ちゃんと爪切ってます?」
ご主人様「切ってるよ」
メイド「かかとの皮膚とか荒れてません?」
ご主人様「別に普通だよ」
メイド「おかしいですねぇ」
ご主人様「その靴下の素材が悪いんじゃねぇの」
メイド「じゃあご主人様も性根が悪いからそのうち胃に穴とか空いちゃうかもしれませんね」
ご主人様「ハハハ、確かに…」
ご主人様「お前マジで一回シメたほうがいいな」
メイド「い、今のはついうっかりってやつでして~…」
ご主人様「尚更だわ」
ご主人様「おいメイド、フリスビー出てきたからこれで遊ぼうぜ」
メイド「はぁ…ご主人様、もういい歳なんだからそんな子供みたいなことしないでくださいよ」
ご主人様「は?フリスビーは健全なスポーツ競技だが??子供っぽいイメージしか持ってないお前の方が子供なのでは???」
メイド「くっ…」
ご主人様「まぁでも確かにお前には向いてないかもな。どんくさそうだし」
メイド「は?ナメてもらっては困りますね…私はそこいらの犬よりフリスビー取るのはうまいと自負してますよ」
ご主人様「フッ…目に闘志の炎が灯ったな?いいだろうなら受けてみな…俺の渾身の一投!」ブンッ
メイド「えっ!?」
ズコッ
メイド「………」プルプル
ご主人様「おいおいどーしたぁ!顔面直撃かよ!犬よりうまいんじゃなかったのかぁ!?」
メイド「ふ…フリスビーの向きが違います。正しくは縦じゃなくて横です…」
ご主人様「!?」
メイド「健全なスポーツがどうとか言ってましたけどもしかしなくてもご主人様フリスビーエアプでしょ…」ゴゴゴゴゴ
ご主人様「ごめん今のはマジでごめん」
ご主人様「おいメイド、歯が痛い」
メイド「はぁ…虫歯ですか?」
ご主人様「分からん。だがすごく痛い。なんとかしてくれ」
メイド「じゃ、とりあえず見せてください…」
ご主人様「明らかにおかしいところがあったら教えてな」あーん
メイド「うーん…あ、ここかな?」つんっ
ご主人様「~~~~~~~ッッッッ」ガブッ
メイド「ぎゃーーーーー!!!??」
ご主人様「お前、痛いっつってんだからいきなり触るんじゃねぇよ…」ズキンズキン
メイド「それは悪かったですけど、そんな噛まなくてもいいじゃないですか~」シクシク
ご主人様「反射的に閉じちゃったんだよ…」ハッ
ご主人様「そういえばハズレの歯を押すと口を閉じるワニのおもちゃがあったよな!あれやりたくなってきた、買いに行こうぜ」キャッキャ
メイド「いやまず歯医者でしょう」
メイド「ご主人様その服どうしたんですか?」
ご主人様「買った」
メイド「変ですね!」
ご主人様「てめーコノヤロウ!!!」ボカッ
メイド「ぎゃう!!」
ご主人様「ったく、最近大人しいと思ったらいきなり暴言とは…」
メイド「だ、だってそれ、後ろ前逆ですよぅ…」
ご主人様「え?あ…ホントだ…」
ご主人様「……」
メイド「ご主人様がぶったー…私なんにも悪いことしてないのにぶったー…」チラチラ
ご主人様「な、なんか甘いもの買ってやろうか!?」
メイド「まぁそれで勘弁しといたるわ」
ご主人様「そーいうとこだぞコノヤロウ!!」ギュウウウ
メイド「いたたたたゴメンナサイ!!!!」
ご主人様「お前もたまには違う服着てみたらどうだよ」
メイド「うーん、別に私はメイド服があればそれでいいんですけどねぇ」
ご主人様「もっとオシャレしようぜ。せっかくいい…っ」
メイド「『せっかくいい』?…なんですか?その続きは??顔?スタイル??」
ご主人様(いかん!ここで褒めたら調子に乗るぞコイツは…逆にビビらせるくらいのこと言わないと)
ご主人様「せ…せっかくいい感じの背後霊憑いてるのにな!!!」
メイド「!?」
メイド「やっぱり私くらいいい子だと背後霊もいい感じなんですね~」エヘヘ
ご主人様「なに言っても調子乗るわけ?」
ご主人様「おい!餃子にはポン酢だって言ってるだろ!!」バシッ
メイド「……はぁー。ご主人様ほんとすぐ叩きますね」
ご主人様「…ふん、叩かれるようなことするお前が悪い!」
メイド「はいはい。ま、ぜんぜん痛くないからいいですけど。こんなんじゃ虫1匹殺せませんよ」
ご主人様「本気で叩いたからかわいそうだろが」
メイド「かわいそう?」
ご主人様「ハッ…!」
ご主人様「勘違いすんなよ!お前じゃないぞ!そう…かわいそうなのは虫さんだ!」
メイド「ふーん。虫さんがね。確かにそうですね。かわいそうだ虫さんが…」ニヤニヤ
ご主人様「くっ……」
メイド(というかまず叩くなや…)
ドザァアアアアアアア
ご主人様「すっげぇ雨。当分はこんな天気だってよ」
メイド「これじゃ洗濯物干せませんね…」
ご主人様「よし乾燥機買うか」
メイド「…あのねご主人様。この雨の中だれがどうやって乾燥機を持って帰るんですか?」
ご主人様「バッカおめー今どきはゾンアマに頼めばなんでもかんでもすぐに持ってきてくれんのよ」
メイド「はぁー出た出た通販サイト。配送業者がつらいつらいと嘆いてるのはご主人様みたいなのがたくさんいるからなんですね」
ご主人様「はぁ?そんなん俺の知ったこっちゃねーわ!」
メイド「私もそう思います」
ご主人様「…?」
メイド「?」
ご主人様「今のはケンカする流れじゃないのか」
メイド「あれ?そういう感じでした?」
ご主人様「ま、でも…乾燥機買うのは晴れてからにするかぁ」
メイド「知ったこっちゃないのでは?」
ご主人様「うるせーバカ」
メイド「きゃー!…あれ?」
ご主人様「?」
メイド「…今のは叩くパターンじゃないんですか?」
ご主人様「なんやねん」
メイド「あらーかわいいワンちゃんですねぇ!」
メイド「というわけで飼い主さんにお願いしてワンちゃんの写真を撮らせてもらったんですよ!」
ご主人様「ふーん」
メイド「ふーんじゃなくて!見てください!見て!」
ご主人様「あー鬱陶しい!」
メイド「…ご主人様って犬キラいなんです?」
ご主人様「犬じゃなくて、『犬をカワイがってる私カワイイ~!』と思ってるお前がキラいだ!」
メイド「むっ!なんですかその言い方!?犬カワイイ~で終わりですよ私カワイイ~なんて思ってないですよ!」
ご主人様「どーだかな」チラッ
ご主人様「なぁんじゃこの犬!?くっそかわええ!!!」
メイド「『犬をカワイがってる俺カワイイ~!』ってやつですか?」ニヤニヤ
ご主人様「うっせ!うっせ!!」
メイド「今日はご主人様の好物・大ハンバーグですよ!」
ご主人様「おう」むしゃむしゃ
メイド「美味しいですか?」
ご主人様「おう」むしゃむしゃ
メイド「…ほんとに?」
ご主人様「おう」むしゃむしゃ
メイド「…なんか反応薄いなぁ。頑張って作ったのに…」
ご主人様「いやうめぇよ。超うめぇ」
メイド「何かもう少し気の利いたリアクションが欲しいなぁ~」チラッ
ご主人様「気の利いた…」むしゃむしゃ
ご主人様「えー…口の中が肉汁で溢れて…溢れて………」
ご主人様「にっ肉汁のぉ!!帰省ラッシュやぁ!!!! 」
メイド「……」
メイド「フッww」
ご主人様「おまえがやれっちゅーたやんけ!!!」バシッ
メイド「ごめんなさい!!」
ご主人様「いけっピカピー!よけろピカピー!」
メイド(ご主人様またゲームやってる…ポコモンLet's Goピカピー…何がそんなに面白いんでしょうね)
メイド「ご主人様ゲームばっかりやってちゃダメですよ~」
ご主人様「あん?なんだぁ?構ってもらえなくて寂しいのか?」
メイド「はぁ?なに言ってんですか」
ご主人様「お前は素直じゃないからな~こっちのピカピーのほうがよっぽど素直でカワイイぜ」
メイド「なんですか!こんなねぇゲームのキャラなんてねぇ!」ツカツカ
メイド「こうしてやる!」ブチッ
バツンッ
ご主人様「てめぇコンセント抜きやがったな!」
メイド「ふふーんだ。ピカピーより私の方が優れてますね!」
ご主人様「くっそ…!お前だって昔、親にゲームやってるの止められて悔しい思いしたことくらいあるだろ!?」
メイド「……いや、うち、テレビゲームとかなかったんで…」
ご主人様「………」
メイド「………」
ご主人様「今日はもうやめにしとくけどな、次やったらお前の鼻の穴にコンセント刺して10まんボルトしてやるからな」
ご主人様「ところでおまえ、ゲームがなかったなら当時何して遊んでたわけ?」
メイド「チラシの裏に迷路書いて遊んでました」
ご主人様「な、なんて不憫な…」ガーン
ご主人様「悪かったよもう二度とお前の見てる前でゲームやらねぇよ」
メイド「いやそこまでしなくても…」
ご主人様「お前ゆうべ変なアイス食べてなかった?」
メイド「変なアイス?ああ『いちごトルコアイスチョコレートソースがけサイダー風味』のことですか」
ご主人様「多分それ。てか迷走しすぎだろ」
ご主人様「お前ああいうの俺に黙って買ってきてこっそり食うのやめろよな」
メイド「えー、ご主人様のアイスも買ったじゃないですか。こっそりじゃなくて堂々とご主人様の前で食べてたし…」
ご主人様「俺のはいつものアイスだったじゃん。俺もそういう変な新商品食いてぇよ」
メイド「うーん…でもご主人様のことだからなぁ…。たぶん違うの買ってきたら買ってきたで『こんなの食うか!いつもの買ってこいよ!』とか言いそうだしなぁ」
ご主人様「さすがにそんなワガママ言わねーよ」
後日
メイド「ご主人様、新商品のアイス買ってきましたよ!」
ご主人様「お、どんなのだ?」
メイド「じゃーん『アザラシアイス屍肉味』!!絶対ワガママ言わないんですよね?ちなみに私は普通のバニラアイス食べます」
ご主人様「そのチョイス悪意あるよな???」
メイド「ふっ、ふっ、ふっ」
ご主人様「お、なんだ、腹筋やってんのか?」
メイド「筋トレがんばってます」
ご主人様「ダイエットかね。痩せてると思うけどな」
メイド「ご主人様にいくら叩かれても平気なように丈夫な体を作らないと」
ご主人様「えっ……いや、そんなさぁ、本気で殴ってないし、ましてボディとか殴った覚えないけど…」
メイド「でも何があるか分かりませんからね。しっかり鍛えておかないと」
ご主人様(やばい思いのほか真剣だ…このままメイドが強くなっちまったら立場が逆転しかねない!)
ご主人様「俺はメイドはちょっとか弱いくらいが可愛いと思うけどな~」ボソッ
メイド「…今なんと?」ピクッ
ご主人様「オホン…俺は今のままのお前が一番好きだぜ」キリッ
メイド「もーご主人様ったらほんと私のこと大好きなんだからしょうがないですねぇ。まぁ今のご主人様がこのパーフェクトな私に釣り合うかと言われると微妙な気がするので?もう少し紳士的な言動ができるようになってくれないかなぁと思ったり思わなかったりするわけですけど?」ペラペラ
ご主人様「秒で調子乗るんじゃねぇよお前は!」スパーン
メイド「ひええ!ほら暴力!!こらやっぱ少しは鍛えとかなあかんっすわ!!」
ご主人様「くっ…」
テレビ『○○市△町の民家に刃物を持った男が押し入り、住人の女性ひとりと、騒ぎを聞いて駆けつけた近隣の男性ひとりが刺されるいう事件が~』
ご主人様「△町っつったらここからそう遠くないじゃねぇか」
メイド「物騒ですね~駆けつけた男性まで刺されちゃったなんて…」
ご主人様「なぁ、もしこの家に強盗が来たとして、当然メイドのお前は俺のことを守るんだよな?」
メイド「…いやぁ人のことボカスカ叩くご主人様ですからねぇ、強盗くらい簡単に撃退できるでしょう?」
ご主人様「無理。無理無理100パー無理。刃物持ってたら即逃げるわ」
メイド「じゃあ私も刃物を持てば叩かれなくなるってことですね!」
ご主人様「うーん………」
ご主人様(そんなもん持ってたら危ねーだろバカ!!!)ベシッ
メイド(ふぎゃ!!)
ご主人様「いや、たぶん叩く」
メイド「…私もそういうビジョンが見えました」
メイド「なんてったってア~イド~ル♪私はアイドル…」
ご主人様「なにその歌?」
メイド「ええっ!?キョンキョンをご存知でない!?」
ご主人様「あ、小泉今日子?まぁ知ってるけど…知ってるだけだな…」
メイド「ご主人様はアイドルとかあんまり興味ないんですね~」
ご主人様「いやそもそも世代が違うじゃん…俺とかお前みたいなアラサーはモー娘。とかだろ?」
メイド「あ、アラサー!?私が!?一緒にしないでくださいよ!ご主人様より4つ…あれ、3つだっけ…?」
メイド「とにかく年下ですから!まだピチピチですから!!!」
ご主人様「必死だな~…つーかそのピチピチって言い方がもう古いわ」
メイド「ぐっ…あ、そういえば昔『福田明日香』に会ったことありますよ~。LOVEマシーンの時かな~」
ご主人様「へーマジで?」
メイド「ウソで~す。その頃もう福田明日香は卒業してますから!」ケラケラ
ご主人様「なんだウソか!ハハハハハ!」
ご主人様「それ知ってるってことはやっぱアラサーじゃ…」
メイド「ちーがーいーまーすーーー!!!!!」
メイド「甘納豆おいしい…最高…」むぐむぐ
ご主人様「はぁーこりゃまた渋いもん食ってるね」
メイド「し、渋いですか?甘納豆」
ご主人様「あんまり見ねぇけどな…」
メイド「えーおいしいのに…あと干し芋とかも好きですね」
ご主人様「…こないだアイドルのハナシしたときも思ったけど、お前の趣味とか好みってなんかちょっとズレてねぇか」
メイド「ズレてるって何と比較してズレてるんですか?というかそれって何か問題ありますか?」
ご主人様「別に問題はねぇけどさ」
ご主人様「なんかそのうち刺繍とか編み物とか始めそうだな」ボソッ
メイド「!!!」
メイド「そのうちじゃなくてもうすでに刺繍やってますよ!?ダメですか!?編み物も楽しいですよ!?」
ご主人様「わ、悪かったよ…」
メイド「ご主人様も盆栽とかやればいいのに…」
ご主人様「もうただの年寄りじゃねぇか」
メイド「……」ヒロイヒロイ
ご主人様「あいつ…なに拾ってんだ??」
メイド「ご主人様!お庭に松ぼっくりがいっぱい落ちていましたよ!!」ドサッ
ご主人様「んな興奮気味に言われても…それ集めてどうすんだ?クリスマスの飾り付けでもすんのか」
メイド「なにバカなことを…松ぼっくりの使い道なんて一つしかないでしょう」
メイド「おやつに食べるんですよ!」
ご主人様「バカはおめぇだ!」バシッ
メイド「あ、知らないんですか~?『かさ』を食べたあとの松ぼっくりってね、エビフライに似てるんですよ!」
ご主人様「リスかてめぇは!」バシッ
メイド「二度も叩くなんてひどい…まるで私が冗談言ってるみたいじゃないですか!!!」
ご主人様「え、マジなの??」
メイド「……」
メイド「もしかして、普通は食べない?」
ご主人様「食べない」
メイド「そうですか…そうか、そうだったんですね」
メイド「昔、焼き松ぼっくりを皿に乗せて出す母がいつも悲しい顔をしてたのは、そういうことだったんですね」
ご主人様「えぇ…」
メイド「じゃあもしかして、セミの抜け殻もふりかけにしない??」
ご主人様「嘘だと言ってくれよ…」
メイド「ふっ…何やってんでしょうね私。このゴミ捨てときますね」
ご主人様「よ、よし今日はおまえの好きなもん食いに行こう!な!?」
ご主人様「メイドぉ、爪切り」
メイド「…あのですね、そういう言い方するのやめてほしいんですけれど」
ご主人様「なんで」
メイド「私は爪切りじゃありません。爪切りがほしいなら『爪切り取って』って言ってください」
ご主人様「んなこと気にすんなよ、伝わってんだから問題ねぇだろ?」
メイド「……」ムッ
ご主人様「わかったわかった、『メイド爪切り取って』!」
メイド「最初からそう言えばいいんですよ」スッ
ご主人様「なぁーんだその態度!?」
メイド「態度が悪いのはそっちでしょう!」
ご主人様「ガルルルルル」
メイド「グルルルルル」
ご主人様「もういいよ!早くその爪切りよこせ!」
メイド「いーえ!せっかくだから私が切ってさしあげますよ!」
ご主人様「やだ!お前わざと深爪させるつもりだろ!」
メイド「そんなことしませんよ!というかご主人様に爪切りなんてもったいない!」ポイ
ご主人様「あぁ!?じゃあどうすんだよ!」
メイド「私がこの自慢の歯でガジガジに噛み切ってやります!!!」
ご主人様「ふーん。じゃあやってみな。跪いて、俺のこの指に口近づけてガブガブしてみろ」スッ
メイド「……///」
メイド「ごっご主人様のバカ!!変態!!!よくそんなエッチなこと言えますね!?」
ご主人様「おめぇがやるっつったんだろが!?」
ご主人様「ぎゃあああ出たあああああああああ」
メイド「ど、どうしました!?」ガチャ
ご主人様「む、むむむ、む、むしむしむし…」
メイド「あ、青虫。お庭から入って来たんですかねぇ」ヒョイ
ご主人様「うわあああつまむなよぉおおお」
メイド「つままなきゃ逃がしてあげられないでしょう?」
ご主人様「ひいいいい…」
メイド「……」ニヤリ
メイド「ほらご主人様、青虫ちゃんはきっと挨拶しにきたんですよ?チューでもしてあげたらどうです??」グイグイ
ご主人様「まじやめろってええええええしぬ!くっつけたらショック死するしその前に舌噛んで死ぬ」
メイド「そんなに嫌ですか…」
メイド(弱点発見!)
翌日
メイド「……」ちょきちょき
ご主人様「メイドお前いったいなに作ってんだ?」
メイド「お面です」
ご主人様「お面?なんの?」
メイド「青虫」スチャッ
ご主人様「ふざけんな」スパーン
メイド「おぶぅ!!!えっなんで!!?青虫触れないんじゃないですか!?」
ご主人様「だからってそんな紙に貼っつけた青虫の写真なんかにビビるわけねーだろ!!」
メイド「そ、そういうものなんですか…」
翌日
ご主人様「ゾンアマでなんか買うのか?」
メイド「青虫の着ぐるみを作ろうと思って」
ご主人様「ガチじゃねぇか…」
メイド「ペプシ!!!」
ご主人様「なに?ペプシがどーした?」
メイド「あ、今の私のくしゃみです」
ご主人様「くしゃみ!?いや絶対ペプシっつったよ!」
メイド「ふぁ、はっ……ペプシ!!!」
ご主人様「ほらまたペプシって!」ケラケラ
メイド「言ってませんって!そういうくしゃみなんですよ!!」
メイド「はぁ、は……ペプシッ!…」
ご主人様「あははははははは!!!」ゲタゲタ
メイド「うぅー…」ズズ
ご主人様「……」
ご主人様「ほれ寒いならこれ着てな」バサッ
メイド「……ありがとうございます」
ご主人様「あとでペプシ買いに行こうぜ」
メイド「えーこんな寒いのに…」
ご主人様「お前のせいで飲みたくなったんだからな」
メイド「いや、そう言われても」
ご主人様「テレビの『通販アリジゴク』でやってた、よく眠れるっつー枕を買ったんだよ」ニコニコ
メイド「嫌な番組名ですね…」
ご主人様「さっそくこれ使って寝てみるから、俺がほんとによく眠れてるかどうか見ててくれ」
メイド「分かりました」
ご主人様「とか言って寝よう寝ようと意識しちゃうとなかなか眠れないんだよなぁ、昔からそうだったんだよイベントのたびに前日眠れなくて……zzz」スヤァ
メイド「秒で寝てるし」
ご主人様「……」ムニャムニャ
メイド(うーん、よく寝てるといえばよく寝てるけど、普段からこんな感じでは…)
ご主人様「……うへへ」モミモミ
メイド(枕を揉んでる!?今までになかった奇行だ!しかもなんか嬉しそう)
ご主人様「メイドおまえ…こんなにおっぱいあったかぁ?…最高じゃん…ムニャ」モミモミ
メイド「………」ピキッ
メイド「おはよぉおおおございまああああああす!!!グッモオーーーニン!ワンシャンハアアアアアオ!!!!起きてくださああああああああぁぁぁい!!」
ご主人様「なんだぁ!!!??」ガバッ
ご主人様「お、め、メイドか…ビックリさせんなよ…」ドキドキ
メイド「よく眠ってましたねぇ」
ご主人様「え?あ、そう?よく寝てた?そうかぁ、そう言われるとなんか楽しい夢を見てたような気がするぞ!」
メイド「私のおっぱいが大きくなったのがとても楽しそうでしたよ」ニコッ
ご主人様「そうそれ!手のひらにあの感触がまだ残って…」ハッ
ご主人様「もしかして俺、変な寝言言ってたか…?」
メイド「……」ニコニコ
ご主人様「しょうがねーじゃんそういう夢だったんだから!不可抗力だろ!」
メイド「そらふかふかの枕で寝たら素敵な夢が見れますわな…はん!」
メイド「でも現実はこれですから!厳しくて貧しいんですよねぇ!」ペタペタ
ご主人様「…いや待てよ、現実にできるかもしれん」
メイド「!?」
ご主人様「おまえの写真撮って、それ抱き枕カバーに加工してさ、おっぱいのところにこの枕詰めたら最強じゃね?」ニヤリ
メイド「それはいいアイデアですね!じゃあその枕にご主人様の面倒見てもらいましょう!私はもう何もしませんので!」
ご主人様「ごめんウソウソウソ!!!!」
ご主人様「このあいだ買った枕あるじゃん。あれお前にやるよ」
メイド「えっ!?あんなに気に入ってたのに??」
ご主人様「よかったのは最初だけだな。体に合わないのか、だんだん肩とか首とか凝るようになってきて…前のに戻すことにした」
メイド「そうだったんですか…でも前の枕、こないだ捨てちゃいましたよ」
ご主人様「なにっ!?」
メイド「だってもう使わないって言ったじゃないですか~」
ご主人様「ぐぬぬ…そうか、そうだな。じゃあやっあやっぱりこの枕で我慢するか…」
メイド「いっそ今度は、ちゃんと寝具屋さんに行って、ご主人様にピッタリ合うのを作ってもらいません?」
ご主人様「オーダーメイドか…メイドだけに」
寝具屋
ご主人様「…ダメだ!ぜんぜんしっくり来ない!」
店員「うーん、測定結果を反映して、素材もご自身で選んでいただいて、高さや幅も要望通りのはずなんですが…」
ご主人様「でもこれで眠れる気がしない…」
メイド「今回は諦めたほうがよさそうですね…」
その日の夜
ご主人様「……」
メイド「ご主人様、まだ寝ないんですか?」
ご主人様「もはや寝るのが嫌になっちまったよ…枕ひとつでこんな憂鬱な気分になるなんてなぁ」
メイド(なんだか不憫ですね…)
メイド「ご主人様、あのー………かなり、恥ずかしいんですが」
メイド「ひ、膝枕…とか?は…どうでしょう??」
ご主人様「お前なァ、ふざけたこと言ってる場合じゃないんだぞ?…やってみるか」
メイド「……ど、どうですか?」
主人様「なんか想像ほど柔らかくねぇし…普通に寝るより首痛くしそう…」
メイド「え!じゃあやっぱやめときましょう!」
ご主人様「でも、まぁ……気分は悪くねぇな」
メイド「……ふふ。それはよかったです」ナデナデ
ご主人様「………」
ご主人様「おいてめぇ調子のんなよ!!しれっと撫でてんじゃねぇ!!!俺ぁネコか!!!」ガバッ
メイド「あっ!人がせっかく優しくしてるのにそういう言い方する!!」
ご主人様「お前はじめてメイドらしいことしてる自分に酔いしれてるだろ!」グリグリ
メイド「酔いしれてません!てか『はじめてメイドらしいことしてる』ってどーいうことですか!!?」ギャー
結局、ご主人様が悩みに悩んでようやく新しい枕を手に入れたのは、一週間も経ってからでした…。
ご主人様「おいクソカラスども!うちの庭に居着くんじゃねぇ!!焼き鳥にして食っちまねぇうぞ!!」ブンブンッ
カラス「ギャー!ギャー!」バサバサ…
メイド「石なんか投げたら可哀想じゃないですか」
ご主人様「うるせぇ!」デコピンッ
メイド「そ、それにカラスって頭が良いから、このことをずっと覚えてて、いつかご主人様に復讐しにくるかもしれませんよ!」
ご主人様「はっ!もしそこまでしてくるんならカラスってのはお前よりよっぽど賢いな」
メイド「くっ…ごく自然にバカにされた…」
その夜
ご主人様「だからこれはあーしろって言っただろが!」ベシッ
メイド「……」カキカキ
ご主人様「…なんだ!?今日は言い返してこないのか?てか今なに書いたんだ」
メイド「私決めたんです。ご主人様に叩かれるのはだいたい私が悪いので、すぐに反抗的な態度取るのはやめます」
ご主人様「そりゃいい心がけだ」
メイド「でもこの『復讐ノート』に…ご主人様からの暴力1回=1ポイントで集計しておいて、10回超えたらそのときだけ本気で反抗します」
ご主人様「復讐ノート?ポイント??…反抗???」
メイド「ちなみに今日だけでもう3回叩かれてるので3ポイントです。あと6回まではどうぞ遠慮なく叩いてください」
メイド「ただし10回目は…」
ご主人様「うぅ…そうやってビビらせようってのか…!?」ゴクリ
メイド「…ちなみに反抗されるのが嫌なら、10ポイントを景品と引換するって手もありますよ」
ご主人様「はっ?景品???」
メイド「何か甘いものとか買ってくれたら10ポイント帳消しにします。シュークリームとかードーナツとかー」ニコニコ
ご主人様(やっぱバカだなコイツ…)
メイド「カーモンベイベーフフフフン♪」
ご主人様「なにそれ?」
メイド「えっUSA知らないんですか!?今めちゃくちゃ流行ってるのに!!」
ご主人様「ふーんそうなん?初めて聞いたわ。誰の曲?」
メイド「DA PUMPです」
ご主人様「はっ?DA PUMPが流行ったのって20年くらい前だろ、嘘つくんじゃねぇよ」ビシッ
メイド「いたー!嘘じゃないですよ!ほら今テレビ出てますよ!」
ご主人様「ああISSAだ!で周りのこいつらは誰??新ユニットか???」
メイド「これがDA PUMPなんですよ」
ご主人様「え…?KENは?SHINOBUは?YUKINARIは???」
メイド「とっくの昔に脱退しましたよ」
ご主人様「はっ!???!ふざけんなよお前、くだらねぇ嘘つくなよ!!!!」スパーン
メイド「だから嘘じゃないですって!!!ホラここ!!思いっきりDA PUMPって出てますよね!?」
ご主人様「違う…こんなのDA PUMPじゃない…ただの『ISSAと愉快な仲間たち』じゃん…俺の知ってる四人を返してくれ」
メイド(めんどくさいファン…)
ご主人様「ちなみにこの曲はm.c.A.Tが作ったのか?DA PUMPといえばm.c.A.Tだもんな??」
メイド「いえこれは洋楽のカバーです」キッパリ
ご主人様「嘘だぁああああもはやDA PUMP要素ないじゃんかあああああああ!!!」ギュウウウ
メイド「ちょっ首絞めはシャレにならな…」
ご主人様「返してくれ…俺の青春を返してくれぇえええええええ…」シクシク
翌日
ご主人様「カーモンベイベーアメリカ♪やっぱDA PUMP最高だわ!!」ピョンピョン
メイド「ご主人様、躁鬱病とかじゃないですよね?」
ご主人様「さっむ」ブルブル
メイド「確かに最近急に冷え込んできましたよね」
ご主人様「そういうわりにお前あんまり寒そうにしてないよな」ブルブル
メイド「私はまぁ…このくらいの寒さには慣れてますから」
ご主人様「あー寒風吹きすさぶ中、屋根のない家で暮らしてたんだっけ?」
メイド「そこまでひどくはないですよ!!!まぁ暖房器具はひとつもありませんでしたけど」
ご主人様「あーそう」ブルブル
ご主人様(そうは言ってもこいつだって普通の人間、暑さ寒さをまったく感じねぇってわけじゃないだろ)
ご主人様「おいメイド」
メイド「はい?」
ご主人様「そのメイド服脱げ!」
メイド「ええっ!?なに言ってるんですか!!嫌ですよ!!!」
ご主人様「そのメイド服すげー暖かい素材なんだろ!違うか!?」
メイド「違いますよ!」
ご主人様「じゃあなんだ…腹巻きでもしてんのか?」
メイド「してません!」
ご主人様「毛糸のパンツか??」
メイド「穿いてませんよそんなの」
ご主人様「いいから脱げ!こうなったら裸で暖め合うしかないだろ!」グイグイ
メイド「ちょっと!マジでやめてくださいって!!」グリッ
ご主人様「いだだだだ!わかった!わかったからやめろ!関節を極めるな!!」
ご主人様「なあメイド、動けないんだが」モコモコ
メイド「だって何するかわかりませんから。それにそれだけ厚着すればあったかいでしょう?」
ご主人様「いや限度ってのがあるじゃん!?これじゃ十二単だぞ」
メイド「でもあったかいでしょう?」
ご主人様「…あったかいよ!暖かいけれども!!!」ウゴウゴ
メイド「そうやって動いてるとなんか…新しいゆるキャラみたいですね」ニヤニヤ
ご主人様「テメー覚えてろよ!!!」
ご主人様「そろそろクリスマスだな」
メイド「そうですねぇ」
ご主人様「お前なんか欲しいものあるか?」
メイド「え?言ったらくれるんですか?」
ご主人様「バカ!俺がお前にくれてやるものなんてねぇよ。サンタさんに伝えといてやるってんだよ」
メイド「あーそういうことですか!じゃあ」
メイド「失敗しても怒らない、まして暴力なんて絶対に振るわない、とても理知的で優しいご主人様をください!」
ご主人様「あ゛!?」ピキピキ
ご主人様「いや…コホン、その願いはサンタのキャパを超えてるよ」
メイド「ああっ神龍みたいな言い訳を!」
ご主人様「よーし俺もサンタにお願いしちゃおっかなー!」
ご主人様「この生意気なメイドにお仕置きするための鞭をくれ!」
メイド「は!?」ピキピキ
メイド「…というかね、ご主人様みたいな極悪人にサンタさんがプレゼントくれるわけないでしょう!?」
ご主人様「さっきからなんだやんのかてめぇ!コラ!!!」ガルルルル
メイド「上等ですよ、五体満足でクリスマス迎えられると思わないでくださいよ!」グルルルル
ご主人様「…やめた。そもそも俺達みたいないい大人にサンタさんなんて来るわけねーわ」
メイド「そうですね。この歳になってのクリスマストークなんて虚しくなるだけです」
ご主人様「ていうかクリスマスまであと2週間もあるのにここでネタ消費しちゃって大丈夫なのか?」
メイド「それはちょっとよくわかりませんけども」
ご主人様「いってぇ!!!紙で指切った!!」
メイド「大丈夫ですかぁ?」
ご主人様「おおメイドいいところに!カットバン持ってきてくれ!」
メイド「カットバン???」
ご主人様「…そうか、地域によって呼び方が違うんだっけ…」
ご主人様「じゃあサビオ!!バンドエード!!!」
メイド「サビオ??バンドエード???新しいガンダムの名前ですか?」
ご主人様「このタイミングでガンダムの話するわけねぇだろ!これでも伝わらんのか!?正式名称は…えーと…」
ご主人様「絆創膏だ!ほらこれで分かっただろ!?」
メイド「ばん……そうこう???」
ご主人様「なんで初めて聞くみたいな顔してんだよ!!もういいわ!自分で取ってくる!」
ご主人様「ほらこれ!この傷口に貼るやつ!いくらなんでも見たことあるだろ!」
メイド「ああ…それキズバンですよね?」
ご主人様「どこの呼び方だそれ!?」
A.富山県
ご主人様「わははははは!アッハハハハハハ!!!!」ゲラゲラ
メイド(ご主人様、またテレビ見てひとりで大笑いしてる…なにがそんなに面白いんですかね)
ご主人様「うはははゲホッ、ゲホッゲホッ!!ハハ、ハハハハハ!」
メイド(むせながら笑ってる…)
ご主人様「おいメイド!お前もこっち来て一緒に見ようぜ!超おもしれぇぞ!!」
メイド「えー私はいいですよ、洗い物しなきゃいけませんから」
ご主人様「いーよいーよそんなん俺があとでやっとくから!」ニコニコ
メイド「!?」
メイド(ご主人様の口から『俺があとでやっとくから』!?)
メイド(よっぽどテレビが面白いんですね…こんなゴキゲンなご主人様見たことない)
メイド「あと、洗濯物も畳まなきゃいけないんですよね~」チラッ
ご主人様「それもやっとくって!ほら早くしないと終わっちまうぞ!」
メイド「……」ニヤリ
メイド「ついでにお風呂の掃除も…」
ご主人様「ハハ……」
ご主人様「…おい?てめぇ今なんつったコラ」
メイド(えっ急に素のご主人様に…)
ご主人様「さっきからなに調子こいてんだ!あぁん!?ぶっ飛ばすぞ!!」
メイド「ひいぃぃ!すんませんしたぁ!!」
ご主人様「おっCM明けた」
ご主人様「アッハハハハ!風呂掃除だっけ?いーよ任せとけよ!!」
メイド「……やっぱいいです自分でやります…番組終わったあとが怖いんで…」
ご主人様「おいメイド!このカレーはどういうことだ!?」
メイド「え!なんか変ですか?」
ご主人様「野菜に対して肉の量が少なすぎる!」
メイド「……そ、それで…?」
ご主人様「逆に、お前のカレーは肉がゴロゴロ入ってる気がする!」
メイド「いや別に…同じくらいだと思いますけど…」
ご主人様「納得いかん!」
メイド「分かりましたよ、じゃあ肉足してきますから」
ご主人様「まったく…!」
メイド(ほんっとしょーもないことで怒りますね…)
メイド(しかし毎回こうもわがまま言われるといつか…)
メイド「はい、どーぞ!」スッ
ご主人様「おいおい、今度は肉しか入ってねぇじゃねぇか!!」
メイド「……」イラッ
ご主人様「こんなに肉食えねぇよ!」
メイド「じゃあ頼むなーーーっ!!」ドンッ
ご主人様「!?」ビクッ
メイド「多いだ少ないだゴチャゴチャ子供みたいなこと吐かして!だったら最初から自分でよそえばいーでしょうが!!!!」ガシッ
ご主人様「ひぃ!!!」
メイド「人にッ」ドガッ
メイド「ものをッ」バギッ
メイド「頼んでおいてッ」ボガッ
メイド「あとからッ!」グオオッ
メイド「文句言うなーーッ!!!」ドッガァァァン
ご主人様「こ…こんなカスみたいなメイドにこの俺がッ!」ボロボロ…
メイド「…ってできたらどれだけ楽なんでしょうねぇ」ハァ
ご主人様「メイドまだかー!?早く肉マシマシカレー持ってきてくれよ!」
メイド「はい、どーぞ!」スッ
ご主人様「おいおい今度は肉しか入ってねぇな!」
メイド「……」ピクッ
ご主人様「これでいいんだよこれで!いただきます!」ガツガツ
メイド「ふぅ…」ホッ
ご主人様「ん?どした!?早く食おうぜ!」ムシャムシャ
メイド「いえ、ご主人様ってほんと子供みたいだなーと思って」
ご主人様「なんだとぅ!?」
メイド「ほら、口の端にご飯粒ついてますよ」ヒョイ
ご主人様「おっ悪い」
メイド(よくも悪くも子供みたいに素直で無邪気…だから怒るに怒れない)
メイド「優しいメイドさんでよかったですねぇ」ニコニコ
ご主人様「なにニヤニヤしてんだ?気味悪いわー」
メイド「気味悪いとはなんだコラッ!!」
ご主人様「やんのかコラ!なにコラタココラ!!」
ご主人様「メイドお前さぁ…ちょっと太った?」
メイド「とっ…突然なんてことを言い出すんですか!!」
ご主人様「いや…前はもっとスラッとしてた気ぃすんだけど…なんか今はそのメイド服とかキツそうだし」
メイド「これは違いますよ!最近寒くなってきたから、下にいろいろ着てるんです!」
ご主人様「あー着膨れしてるわけか」
メイド「そう!着膨れ!!」
ご主人様「ホントかぁ??重ね着っつってもせいぜい2枚くらいだろ?それでそんなに膨れるかぁ???」
メイド「膨れるんです!!なんだったら見せましょうか!?」
ご主人様「脱ぐの!?」キラキラ
メイド「…やめます」
ご主人様「チッ」
メイド(でも最近筋トレやってないしなぁ…それでいて食事量は変わってないから、太っていてもおかしくない…)
メイド「よし!決めました!ダイエットします!まずはおやつ抜き!」
ご主人様「おう、やれやれ」
メイド「ご主人様も一緒にやりましょうよ」
ご主人様「え!?なんでだよ!?俺は別に太ってないじゃん」
メイド「いいえ、今まで油断してた分いつの日か突然太り出すこと間違いありません!」
ご主人様「う、うーん…俺わりと炭水化物の掛け合わせとか大好きだし、確かにヤバいかもなぁ」
メイド「でしょう?まぁ安心してください! 買い物は私の仕事ですから、私がおやつを買いさえしなければ、ご主人様の口に入らないのは必定!」
ご主人様「そらそうだな…じゃとりあえずアレだ、まず今の体重測っとくか」
メイド「あのー記録とかそういうガチなのはやめときません???」
ご主人様「なんでだよ!!」
次の日
メイド「では買い物に行ってきます」
ご主人様「いてら」
バタン
ご主人様「……」
近くのスーパー
メイド「えーとあれとこれとそれと、ついでにこれも安いから買っておいて…」
メイド「あとは……」チラッ
メイド「ふふふ、買っちゃった~」
メイド「いきなりおやつなしは現実的じゃないし、豆大福一個くらいなら平気でしょう!」
メイド「ご主人様に貰ったお金で必要な買い物を済ませたあと、私のお小遣いでこっそり豆大福だけを別個で購入!これでレシートからは足がつかない!!」
メイド「ではいただきまー…」アーン
ご主人様「おうバカメイド旨そうじゃねぇか」
メイド「………」ダラダラ
メイド「い、いつから…?」
ご主人様「最初から。絶対こういうことするだろうと思ってコッソリ着いてきた」
メイド「…こ、これはあれですよ!あのー帰りに、お地蔵さんにお供えしようと思って……」
ご主人様「黙らっしゃい!」スパーン!!
メイド「びゃああああああ!!!!」
ご主人様「嘘ついた罰とダイエットを兼ねて、走って帰るぞ!あとその大福は俺がもらっとく」モグモグ
メイド「うぅ…堪忍してつかあさい…」ヨタヨタ
ご主人様「次そういうことしたらマジで容赦しねぇぞ」
2週間後
メイド「ご主人様!やりましたよ!2キロも痩せました!!大成功でしょう!?」
ご主人様「ふーん……」
メイド「あれっなんですかその反応…」
ご主人様「いや別に…前のほうがムチムチしててよかったなぁって」
メイド「!」ガーン
メイド「なんでそーいうこと言うんですか!?っていうか別にムチムチはしてなかったでしょ!記憶を改竄されてますよ!!」
ご主人様「いーやムチムチしてた。歩く度にムチッムチッって音してたよ」
メイド「怪物ですか私は!!」
ご主人様「…まぁでも、お前のそういう真面目なところはすごく偉いと思うぞ」
メイド「…えへ。楽勝ですよ」
メイド「じゃ、これでいつでも痩せられることが分かったので、今日からはおやつ再開…しかも我慢してたぶん増量キャンペーンということで!」
ご主人様「言ったそばからこれだよ!なにがキャンペーンだバカ!!」グリグリ
メイド「いだだだだだ!!!」
メイド「ご主人様に、ひとつ謝ってほしいことがあります」
ご主人様「…謝る??俺が???」
メイド「まぁ聞いてください…私ここに来た頃は確か、身長が164cmあったんですよ」
ご主人様「……」
メイド「それなのに、こないだ久しぶりに測ったら、162cmになってました」
ご主人様「…??」
メイド「どういうことか分かります?」
ご主人様「壊れてたんじゃないのか…身長計が」
メイド「壊れるわけないでしょうあんなの!縮んだんですよ!私が!!」
ご主人様「なんで??」
メイド「なんでってそんなの…ひとつしかないでしょう!ご主人様のせいですよ!いつも私の事バンバンバシバシ叩くから…!」
メイド「少しずつ縮んでいったんです!間違いありません!塵も積もれば山となり!出る杭は打たれるものですから!」
ご主人様「ああ…そういう理屈か…」
メイド「謝ったところで身長が戻るわけではありませんが、まぁ私も鬼ではないので、とりあえずこの件は水に流しますよ」
ご主人様「…そうか、悪かったな。ごめん」
メイド「許します!」
ご主人様「……」
メイド「~♪」スタスタ
ご主人様(いや、縮むわけなくね???)
ご主人様「この映画、予告だけでもうむっちゃ怖いな…」
メイド「こんなのどうせ、いきなりでかい音出してビビらせてくるだけですよ。そういうのは人間の防衛反応につけ込んでるだけで、恐怖とはまた別です」
ご主人様「えらい得意げに語るじゃん」
メイド「私、ホラー映画とかぜんっぜん怖くありませんから」
ご主人様「お、俺だってそんな…めちゃくちゃ苦手ってわけじゃないぞ?」
メイド「ご主人様は下手なホラーより虫が怖いんですよね」
ご主人様「あれは別格!」
ご主人様「そういうお前は?なんか怖いものねぇの?」
メイド「うーーーん…」
メイド「………」
メイド「理不尽な暴力!」
ご主人様「やかましいわ」ゲシッ
メイド「ほらぁ!こういうのっ!こういうのが一番怖いんですよ!あー怖ろしい!夜も眠れない!!」
ご主人様「……」イラッ
今日はいつもとちょっと雰囲気の違う(?)中編です…
ある日
チカチカ……
ご主人様「?」
パッ
ご主人様「電気が…おい、メイド?」
メイド「私じゃないですよ!停電です」
ご主人様「マジか」ガラッ
メイド「ブレーカー落ちたんですかね?」
ご主人様「いや…周りも真っ暗だ。なにかトラブルがあったっぽいぞ」
メイド「いつ復旧するんでしょう」
ご主人様「さぁ…結構かかるかもしれねぇな」
メイド「困りましたね。ご飯の用意ができない」
ご主人様「よし、このまま待っててもしょうがねぇし、ファミレスでも行くか」
メイド「ふぁ、ファミレス!?いいですね!行きましょう!すぐ行きましょう!」
ご主人様「お、おう?」
ファミレス
メイド「あの、えーとぉ……」ソワソワ
ご主人様「あん?」
メイド「どっドリンクバー!頼んでもいいですか!?」
ご主人様「…このクソ寒いのに?まぁいいけど」
メイド「へへ、やったぜ…」
ご主人様「そんな喜ぶことか?」
メイド「いやぁ…ほら、うちはお金なかったんで、ファミレスなんて滅多に行けなかったし……たまに行けてもドリンクバーなんて頼めなかったんですよね。水で我慢しろって」
ご主人様「ああそう…じゃあ今までの分も好きなだけ飲みゃあいい」
メイド「ご主人様はここのメニューで何が好きなんですか?」
ご主人様「いつも頼むのはドリア…あとトマトクリームパスタがうめぇ」
メイド「あれ?ご主人様トマト嫌いですよね?」
ご主人様「生のトマトは無理だけどトマトソースは行けるんだよ」
メイド「ふぅん…じゃあ私それにします」
ご主人様「それじゃ俺とかぶっちまうぞ」
メイド「味を覚えたいんです!」
ご主人様「…あーそういうこと。そんなら俺は違うの頼むかな」
メイド「あ…ボタン押していいですか?」ソワソワ
ご主人様「子供かおめーは」
ピンポーン
メイド「あれ?鳴ったかな??」
ご主人様「鳴った鳴った」
店員「ご注文お伺いします~」
ご主人様「ドリアとトマトクリームパスタとパエリア…あと小エビのサラダを」
メイド「……」ワクワク
ご主人様「?…あ、そうか…ドリンクバーもお願いします。一人だけ」
店員「かしこまりました~」スタスタ
メイド「……はぇ~」ポカーン
ご主人様「なんだそのツラ」
メイド「ご主人様って…敬語使えるんですねぇ」
ご主人様「てめっナメてん…」バッ
ご主人様「チッ……あたりめぇだろうが。ここが店の中じゃなかったら引っぱたいてるからな」
メイド「ん?…あー、それで!」
ご主人様「あ?」
メイド「なんか今日のご主人様やけに静かで優しいなぁと思ったら、外だから大人しくしてるんですね!」
ご主人様「……うるせーバーカ」
メイド「いつもこうならいいのに~」ニヤニヤ
ご主人様「ほら、さっさとジュース取りに行けよ!」
メイド「はーい」
ご主人様(いつもこうならいいのに、か)
ご主人様(…確かに…もうちょっと優しくしてやってもいいかもな…)
メイド「ご主人様!ジュース全部混ぜちゃいました!こういうのやってみたかったんですよね~!」
ご主人様「…こいつがこんなんじゃ無理だな!」
メイド「えっ?えっ?なにが???」
メイド「ご主人様はなんか飲まないんです?」ゴクゴク
ご主人様「俺ぁ水でいいよ。つーかそんなヤベェ色したのよく飲めるな…」
メイド「ご主人様って、お家でもお酒は一切飲みませんよね」
ご主人様「ん?まぁ…飲めねぇわけじゃないんだけどな」
メイド「ここ、ワインとかありますよ?頼まないんですか?」
ご主人様「俺な、酔うと性格変わるらしいんだよ…だいたいは後から人に指摘されて分かるんだけど」
メイド「ふ~~ん…」
ご主人様「もしかしたらいつも以上に暴力的になって、お前をボコボコにしちまうかもしれねぇぞ」
メイド「そ、それはちょっとまずいですね」
ご主人様「だろ?だからいーんだよ」
メイド「……」
メイド「せっかくですから一緒に飲みません?一杯くらいなら平気でしょう?」
ご主人様「要するにおめーが飲みたいんだな?…いいよ、好きにしな。でもドリンクバーのそれは全部飲めよ」
メイド「赤にします?白がいいです?」
ご主人様「どっちでもいいよ」
メイド「じゃあ生ビール!グラスで」
ご主人様「ワインじゃねーのかよ」
メイド「ピンポン押していいですか?」
ご主人様「だから好きにしろって!なんでいちいち聞くんだよ」
メイド「ご主人様ってこういうボタン押したがりな感じだから…」
ご主人様「どんな感じだ」
メイド「ではカンパーイ!」スッ
ご主人様「おう」カチン
メイド「……」ニヤニヤ
ご主人様「なんだよ?」
メイド「ご主人様と乾杯するの初めてですねぇ」
ご主人様「…そーだな」グビグビ
メイド「お味はどうですか?」
ご主人様「うめぇよ」
メイド「どれどれ」ゴクゴク
メイド「ぷはぁー!久しぶりに飲んだ~!」
店員「失礼します、小エビのサラダとドリアとパスタとパエリアです」
メイド「あじゃじゃーす!」ウイー
ご主人様(え?こいつまさかもう酔ってる!?)
メイド「食べましょ食べましょ」
ご主人様「お、おう」
メイド「……」ジーッ
ご主人様「?」
メイド「パエリアも美味しそうですね~」
ご主人様「なに…欲しいのか?じゃあ一口やるよ」
メイド「食べさせてくださいよ~」
ご主人様「は?ヤダ…」
メイド「なーにがヤダですか!たまにはいいでしょう!?前に私もアーンってやってあげましたよね?」
ご主人様「それ歯痛のときだろ!?…ちっ、これが最初で最後だからな!」
ご主人様「ほれ」スッ
メイド「あーん」パクッ
メイド「あっつ!!熱!!あっつ!!!」
ご主人様「バカ」
メイド「あ、でも美味しい~」ニコニコ
ご主人様「…バーカ」
1時間経過…
メイド「ご主人様今日は食べるの遅いですね」
ご主人様「んー…?」クルクル
メイド「さっきからそーやってパスタくるくるしてぜんぜん食べてないじゃないですか」
ご主人様「……」ピタッ
ご主人様「……なぁ」
メイド「?」
ご主人様「このまま朝まで時間潰そうぜ」
メイド「…えぇ??停電、そんなにかかるんですか?」
ご主人様「いや、そうじゃねぇけど」
ご主人様「……」
ご主人様「なんでだろうなぁ」
メイド「???」
ご主人様「いつもと違う場所で飯食ってるだけなのに、初めて…幸せだと感じてるんだよ」
メイド「…へっ?」
ご主人様「だから…もうちょっとこのまま…」
メイド「もうちょっとこの幸せを噛み締めていたいって?乙女みたいなこと言いますねー!」ケタケタ
ご主人様「そんなこと言ってねーだろ!」
メイド「大袈裟ですよご主人様。ていうか初めてってなんです??私の方がもっと前から幸せでしたから!」
ご主人様「前からぁ?」
メイド「ご主人様と一緒にここまで歩いて来た時点で、相当幸せでしたから!」
ご主人様「そらぁなんだ、俺が普段より優しいからか?」
メイド「そうですねぇ…それでかなぁ。…それだけじゃない気もしますけどね」
メイド「確かになんででしょうね?いつも一緒にいるのに」
ご主人様「…いやそれ、俺と同じこと言ってるだけじゃねーか?」
メイド「え?そう…そうですかぁ?なんかよく分からないですけど、お酒のせいということにしてください」ヘラヘラ
ご主人様「…まぁいいや。食うぞ」ムシャムシャ
メイド「食べてますよぉ」パクパク
ご主人様「メイドよぉ」
メイド「ふぁい?」モグモグ
ご主人様「お前そもそも…俺んとこでメイドやってて幸せか?」
メイド「…うーん??」
メイド「充実感はありますよ。でも幸せとは…ちょっと違うかなぁ。私はしょせん、ご主人様に雇われてる身ですから」
ご主人様「充実感かぁ。ま、そうだよな」
メイド「なんでそんなことを?」
ご主人様「いや…俺たちはしょせんどこまでいっても主人とメイドでしかないわけだろ」
ご主人様「それがこんな…ファミレスで酒飲んで楽しくおしゃべりって…いつもと違う、恋人ごっこみたいなことしてよ」
ご主人様「なんか変だなぁと思ってさ」
メイド「別に、悪い気はしませんけどね…ご主人様だってそうでしょう?」
ご主人様「……」
メイド「確かに私はあなたにお金で雇われてる。それだけですよ」
メイド「辛いことはあるし、理不尽な目にも遇うし、割に合わないと思うこともある…もういっそやめちゃおうか…ってときどき悩みます」
ご主人様(そらそうだろな)
メイド「でも…それ以上に楽しいんですよね。ご主人様って見てて飽きない」
ご主人様「!」
メイド「いっつも同じようなことで怒って、同じようなことで笑ってるのに…ぜんぜん飽きない」
メイド「これって好き嫌いで言えば好きってことだと思うんですよね~…毎日幸せ!ってほどじゃないけど…嫌いにはなれない。でなきゃたぶん、やってらんないですよ?」
ご主人様「……」
ご主人様「お前はバカで生意気で、その上お人好しなんだな」
メイド「…まず、私いうほどバカじゃないと思うんですけど?」
ご主人様「いーやお前は自分で思ってるよりずっとバカだね」
メイド「そんなこたーないです」
ご主人様「あるんだなぁそれが」
メイド「ガルルルル…」
ご主人様「ま…そういうところがいいんだよ」
メイド「……」
ご主人様「分かった。あーわかったわかった」
メイド「なにがですか?」
ご主人様「今こうやって話してる俺たちはいつもとなにも変わらない。なにも変じゃない」
ご主人様「ただ…ちょっと素直になってるだけだ。ちょっとだけな」
メイド「えぇー?ご主人様もとから素直じゃないですか?自分の感情にものっすごい素直!」
ご主人様「いや、そうはいってもなぁ、普段はいろいろ気ぃ使ってんだぞ?」
メイド「えっ?私に遠慮してるってことですか?」
ご主人様「遠慮?…うん?そう言われると…どうなんだろうな??」
メイド「してないでしょう。してたらあんなベシベシ叩かないですよ」
ご主人様「それは違うぞ、本当はもっと強く叩いてもいいんだ、でもそれやるとお前がブチ切れてめんどくさいことになるだろ?」
メイド「じゃー叩くなっちゅーの」
ご主人様「そういうふざけた口利いてる限りは無理だっちゅーの」
メイド「フフっ…あーそうですかぁ。じゃあ私も少し気をつけますー…」
ご主人様「オイ大丈夫か?おめー顔真っ赤だぜ」
メイド「そうですか?ご主人様こそ結構酔ってんじゃないですか~?」
ご主人様「もういいだろ。一通り食ったしよ、帰ろうぜ」
メイド「ん~?さっき朝までいたい、とか言ってませんでした~?」
ご主人様「…気のせいだ気のせい」
メイド「え~?そうかなぁ?言ってなかったっけ~」
ご主人様「うるせぇな、言うこと聞かねぇと置いてくぞ!」
メイド「そんな子供を叱る親みたいなこと言わないでくださいよ~」
メイド「じゃ最後にもう一杯ドリンクバーだけ…」
メイド「ご主人様もお水いりますよね~?」
ご主人様「おう、じゃあ持ってこい」
メイド「はーい……」ガタッ
ヨロヨロ
ご主人様「おいおい大丈夫かよ…あいつあの量でガチで酔っ払ってんな」
メイド「……」ヨロヨロ
メイド(恥っず!!!!!!)
メイド(ご主人様なに言ってるんだろう?と思ってたら私までつい変なことを…よりにもよって好きとか言っちゃったじゃないですか!)
メイド(いや酔ってたせいであって別に本気じゃなくて…でもご主人様はどこまで本気で聞いてたんだろう??)
メイド(まぁ…いいや。だって今、楽しいのは本当だし…)
メイド「お水持ってきました…」
ご主人様「おうサンキュ」
メイド「……」ゴクゴク
ご主人様「おめーが飲むんかい」
メイド「ご主人様にはこちらをどうぞ」スッ
ご主人様「こ、この色はさっきの…」
メイド「私がブレンドしたドリンクですよ、酔い醒ましにピッタリ!」
ご主人様「嘘つけ!」
メイド「いりません?」
ご主人様「持ってきちゃったら飲むしかねーだろ…クソ…」ゴクゴク
ご主人様「あーやっぱ不味いじゃねーか!確かに酔いは覚めるわ!」
ご主人様「これでもういつもの俺とお前な!」
メイド「はーい…」ヨロヨロ
ご主人様「はぁ…ほら」ガシッ
メイド「なんですかもー、手なんて繋いじゃって…」
ご主人様「お前がフラフラしてるからだろが!メイドなんだからもうちょっとしっかりしてくれよな」
メイド「…ご主人様こそ、ご主人様なんだからぁ、私のこと、離しちゃダメですよ?」
ご主人様「……」スパーン
メイド「いたっ!」
ご主人様「調子乗んなよ…」
メイド「ひぃ…いつものご主人様に戻ったぁ…」アワワワ
ご主人様「ほれ財布、会計頼むわ」ポイッ
メイド「あ、はい」
店員「ありがとうございましたー」
ご主人様「停電直ってっかなぁ」
メイド「もし直ってなかったらハシゴしましょうよ!」
ご主人様「……」ジロッ
メイド「う、嘘ですスイマセン…」
ご主人様「ま…今度だな」
メイド「あ、じゃあ今度はス〇ロー連れてってください」
ご主人様「いいけど…あそこあんまり美味くねぇぞ」
メイド「…それは言っちゃダメです!!」
次の日
メイド「頭痛い~」フラフラ
ご主人様(こいつ酒弱すぎ……)
おわり
その「終わり」は中編が終わりってことだろ?俺知ってるんだからな?
>>66
紛らわしくてすみません
まだしばらくは続きます。相変わらずのスローペースですが
メイド「ご主人様、今夜なにが食べたいです?」
ご主人様「そうだなぁ…こう寒いとアレが食いてぇな」
メイド「おっ、寒い日に食べるものといえばアレですね!」
ご主人様「そうだ、アレだ」
メイド「鍋!」
ご主人様「麻婆豆腐!」
メイド「……いや麻婆豆腐って…別に寒い日じゃなくても食べません?」
ご主人様「しかも激辛のやつな。寒い中汗だくになりながら食うのがうめぇのよ」
メイド「……」
数時間後
メイド「できました…」ゴトッ
ご主人様「おっ来た!激辛麻婆豆…」
ご主人様「…???赤くないじゃん…」
メイド「やっぱり湯豆腐にしました」
ご主人様「どういうつもりだコラァ!!!」
メイド「ひぇー怒らないで!!違うんです!嫌な予感がするんです!」
ご主人様「なぁにが嫌な予感だ!馬鹿にしやがって!もういい!自分で作る!」
メイド「あっちょっ…」
ご主人様「できた!フフフフ!」グツグツ
メイド「……」
ご主人様「ハナからおめぇなんかに頼むんじゃなかったよ、まったく!」
メイド「うぅ…」
ご主人様「あっつ!でもうめぇ!!かっら!!!けどうめぇ!!!」ムシャムシャガツガツ
ご主人様「汗が止まらねぇ!!そうだ庭で冷たい風に当たりながら食おう!」ガラガラ
メイド「あーあ…」
翌日
ご主人様「寒いぃ…震えが止まらん…」ブルブル
メイド「まぁ言うまでもなく風邪ですね」
ご主人様「なんでだ!?風邪ひくようなことなんかしたかぁ!?」
メイド「寒空の下、ダラダラ汗かきながら麻婆豆腐食べてたでしょう。そりゃこうなりますよ」
ご主人様「そんなことで…?」
メイド「ご主人様が激辛麻婆豆腐食べたいって言い出したときに、絶対こうなると思ってました」
ご主人様「じゃあ止めろよ!」
メイド「だから麻婆豆腐やめて湯豆腐にしたんですよ!なのにひとりで…」
ご主人様「そういうことだったのか…」
メイド「自業自得ですからね~」
ご主人様「ちくしょう…ちくしょう…」ブルブル
メイド「……」ニヤニヤ
ご主人様「なにニヤニヤしてんだ、ぶっ飛ばすぞ!」
メイド「やれるもんならどーぞ」
ご主人様「こんにゃろう!!」ブンッ
ご主人様(…ダメだ!力が入らん)ヘニャヘニャ
ぺちっ
メイド「今なにかしました?」ニヤニヤ
ご主人様「クソっお前マジで覚えてろよ!」
メイド「でもま、そうやって悪態ついてられるってことは大丈夫そうですね」ガタッ
ご主人様「お、おい待てよ!」
メイド「お大事に~」
ご主人様「待ってくれ!見捨てないでくれぇ!!」
しーーーん
ご主人様「なんて冷たいやつなんだ…ちくしょう…」ブルブル
ご主人様「あんなやつ…豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえばいいんだ…」ブルブル
ご主人様(ああ…意識が遠くなってきた…)ブルブル
ご主人様(麻婆豆腐もいいけど…あいつが作った湯豆腐もなかなか美味そうだったなぁ…)
ご主人様「一口くらい食っとけば…よかっ…た…」ガクッ
メイド「ご飯ですよぉー」ガチャッ
ご主人様「戻ってくんのかい!なにがしてぇんだおめぇは!」ガバッ
メイド「ご主人様が昨日食べなかった湯豆腐、あっため直してきたんですよ。食欲ないです?」ホカホカ
ご主人様「あっ」
メイド「?」
ご主人様「湯豆腐だ!夢にまで見た湯豆腐!これから毎日湯豆腐でもいい!」ムシャムシャ
メイド「そんなに…???」
ご主人様「おいメイド、プレゼントやるよ」
メイド「なんですか?」ガサガサ
メイド「!こ、これって…」
ご主人様「ご存知ガーターベルトだ」
メイド「こ、こんなものを着けろって言うんですか!?ご主人様ってときどきすごいエッチですよね!!」
ご主人様「ガーターベルトは別にエッチなものじゃねぇよ!これはもともと靴下を留めるためのもんだ」
メイド「へぇー…」
ご主人様「この時期は靴下がずり落ちると脚が冷えるだろ?そのガーターをつけとけば一安心というわけだ」
メイド「なるほどぉ…」
ご主人様「だいたいそのメイド服、スカートの丈が長いんだからチラチラ見えるガーターを楽しむとかそういうことできないんだろ?」
メイド「確かにそうですね…疑ってすみませんでした」
ご主人様「分かればよろしい」
メイド「じゃあさっそく着けてみますね」イソイソ
ご主人様「待てい!お前、ガーターの正しい着けかたを知らないな?」
メイド「え?」
ご主人様「ガーターベルトはパンツの上じゃなくて下だ!」
メイド「…ってことは???」
ご主人様「まずはパンツ脱ぐところからだ」
メイド「やっぱりエッチな目的じゃないですか!!!」
ご主人様「まぁ結果的にそうなってしまうのは否めないな」フフフ
メイド「いりませんよこんなもの!!」
ご主人様「…そっかァ…せっかくのプレゼント、気に入らなかったかァ…」ションボリ
メイド「…わ、分かりましたよ!また今度着けますから!!」
ご主人様「いや、今ここで着けないならそれはもう必要ない」
メイド「もはやスケベを隠す気がない!」
メイド「メリーーークリスマーーース!!!」パーン!!!
ご主人様「…うるさいよいきなり」
メイド「メリークリスマーーーーース」パンパカパーン
ご主人様「だからうるせーって!ほらクラッカー片付けろ!!」
メイド「今日はクリスマスなのではりきってそれっぽいディナー作りました!」
ご主人様「ほお…」
メイド「クリスマスといえば…?」
ご主人様「…チキン?」
メイド「はい!チキンはチキンでも、鶏ではなく…」
メイド「スズメ!の丸焼き!」
ご主人様「すずめ!?!?」
メイド「他にも?クリスマスといえば???」
ご主人様「……ケーキ??」
メイド「はいケーキ!でもあんまり高いのは買えなかったのでホットケーキ焼きました!」
ご主人様「うーん、まぁ…いいんじゃね?」
メイド「ロウソクに火をつけましょうか」スッ
ご主人様「!?オイそれガスバーナー…」
メイド「ファイアー!!」ボォオオオオオオオ
ご主人様「あああああ!マトモだと思ったホットケーキが消し炭に!!!!」
メイド「はいはい、まだありますよ~クリスマスといえば????」
ご主人様「え?…チキン、ケーキと来て、あとなにがある?」
メイド「……」ゴソゴソ
ご主人様「つけひげ……」
メイド「サンタさん!」
ご主人様「おっプレゼントくれるのか?」
メイド「ええ、この袋にね、貴重品をたくさん詰めて…」ポイポイ
ご主人様「ん????」
メイド「詰めるだけ詰めたら…」ギュウギュウ
ご主人様「……おい?」
メイド「じゃ!また来年!」バリーン
ご主人様「ふざけんな!!ただのドロボーじゃねえか!!戻ってこーい!!!」
ご主人様「うう…ドロボー…ドロボー…」ムニャムニャ
メイド「どんな夢見てるんですかね…」
メイド「ご主人様、私このままでいいんでしょうか!?」
ご主人様「なんだ急に」
メイド「このままではよくない気がするんです」
ご主人様「メイドやめたくなったのか?」
メイド「いえ!そういう話じゃなくて…」
メイド「ほら、もう今年も九分九厘終わって、もうすぐ年が変わるでしょう?」
メイド「その前に、なにかやっておかなきゃいけないことがあったと思うんですよ」
メイド「私、これを忘れたまま年を越しちゃいけないはずなんです」
ご主人様「へー…なんだろな、年末だし…大掃除か?」
メイド「それもまぁぼちぼちやる予定ですが…そんなことではなかったはずです」
ご主人様「年賀状出したか?」
メイド「出す相手がいません…」
ご主人様「ポチ袋は買ったか?」
メイド「ええっ私からお年玉貰うつもりですか!?普通逆でしょ!?」
メイド「でも…そういえばなにか、お金に関係のあることだったような」
ご主人様「金に関係のある…?」
メイド「年末…お金……」
メイド「あっ思い出した、年末調整だ!」
ご主人様「…確定申告だろ?」
メイド「へ?」
ご主人様「お前は俺に雇われているが、この契約はあくまで個人間のものだから源泉徴収はしてない」
ご主人様「だからお前がやらなきゃいけないのは年末調整じゃなくて確定申告だ」
ご主人様「まぁそれも来年の2月3月の話だから、まだ時間はある。そんなに慌てることじゃない」
メイド「……」ポカーン
ご主人様「なんだそのマヌケ面」
メイド「いや、ご主人様が急に『できる主人』アピールし出したからビックリしちゃって…」
ご主人様「……」イラッ
メイド「いやぁ普段はだらしないのにことお金の扱いに関してはシビアなんですね!さすがご主人様!そこにシビれるあこがれるゥ!」
ご主人様「うるせぇ!」スパーン
メイド「いだぁ!?」
ご主人様「時期は教えたからな。あとは自分でやれよ」
メイド「ええっ!無理ですよ!あんなややこしいの一人でできるわけないじゃないですか~」
ご主人様「みんなやってんだよ!」
メイド「年末ですしカラオケでも行きませんか?」
ご主人様「は?やだよ」
メイド「……」
ご主人様「つーかなんでカラオケ」
メイド「私だってそのー…いろいろストレス溜まってますから、歌って発散したいんですよ」
ご主人様「おめぇ普段なにするにも鼻歌歌ってるじゃねぇか」
メイド「そういう控えめなのじゃなくてもっと大きな声で歌いたいんです~…」
ご主人様「ふーん。なに歌いたいの」
メイド「そうですねぇ。この時期だと、ロマンスの神様とかー寒い夜だからとかー」
ご主人様「また微妙に古いチョイスだな…」
メイド「ご主人様もほんとはGLAYとか歌いたいんでしょう?」
ご主人様「いや、別に」
メイド「会いたいから?恋しくて?あなたを思うほど?」
ご主人様「……」
メイド「うーうー!でしょ!?」
ご主人様(うっぜ)
メイド「あーもう我慢できません!もうカラオケはいいです!家の中で歌います!」
ご主人様「は?」
メイド「はーてーしーなぁーいー星のひーかりのーよぉーにぃー…」
ご主人様「SPEEDかよ…おいうるせぇぞ」
メイド「胸いぃっぱーいのーあーいで~いまあなーたーをつぅつぅー」
メイド「み~」右手サッ
メイド「た~」左手サッ
メイド「い~」サーッ
ご主人様「振り付けやめろや」
メイド「天使がぁあ~!くれたぁでぇ」
ご主人様「うるせーっつってんだよ!!」ゴンッ
メイド「あいたぁっ!?ちょっと!今一番盛り上がるところだったのに!」
ご主人様「これ以上キンキン声で騒がれたらかなわんわ!」
メイド「てーんーしがぁ~!」
ご主人様「いい加減にしろよコラ…」ガシッ
メイド「ぐえぇ…分かりましたよぅ、もうやめますから…」
ご主人様「ったく」パッ
メイド「くれたーでぇあー↑いーわぁあー↑!!!!!」
ご主人様「よし分かった、てめぇ二度と歌えねえようにしてやらぁ!!!」
メイド「ご主人様、そろそろ年越しそば茹でましょうか」
ご主人様「おう、頼むわ」
メイド「硬さはどうします?」
ご主人様「……硬さ?」
メイド「バリカタ、針金、粉落とし、湯気通しとありますけど…」
ご主人様「それ博多ラーメンじゃねぇか!」
メイド「天ぷらは?海老でいいですか?」
ご主人様「他になに買ったんだ?」
メイド「イカにかぼちゃにさつまいも…あとかきあげもありますよ」
ご主人様「全部入れちまおう」
メイド「そんなに食べれます?」
ご主人様「食う食う全部食う」
メイド「……ほんとに?」
ご主人様「……エビとかぼちゃで」
メイド「はいどーぞ」スッ
ご主人様「おう」
メイド「…の前に、クイズです!」
ご主人様「はぁ!?」
メイド「そもそもご主人様はなぜ年の瀬にそばを食べるのかご存じですか?」
ご主人様「いや、知らねぇけど…たぶんアレじゃねぇの?そばは細長いから、細く長く生きる…長寿の祈願とかそんな感じじゃねぇの」
メイド「…ふ~ん」
ご主人様「ふーんて…答えは???」
メイド「さぁ、知りませんけど…」
ご主人様「なんやねん!」バシッ
メイド「いたぁっ!!…もう、来年は叩かないでくださいよ!?」
ご主人様「せっかくだし今年何回叩かれたか数えてみたらどうだ」
メイド「えぇ!?1、2、3、…えーと???到底数え切れるもんじゃないですよ!?」
ご主人様「それでは皆さん、よいお年を!!」
メイド「あ、ちょっとぉ!!?」
ご主人様「メイド!おい、メイド!…おい?いないのか??」ガチャ
メイド「……」
ご主人様「なんだ、テレビ見てんのか…返事くらいしろよ」
メイド「なんでづか、ごじゅじんだばぁ」ブワッ
ご主人様「うわっおま、なんでそんな号泣してんの!?」
メイド「この映画が…あまりにも私の心に刺さって…」ウルウル
ご主人様「この犬の映画…見たことあるような…盲導犬クイールだっけ」
ご主人様「そうか…目の見えない主人のために尽くす盲導犬の健気な姿を見て、自分もかくありたいと強く思ったわけだ。いい心がけじゃないか」
メイド「いえ、違います。この映画は『獰猛犬グイール』です」
ご主人様「どうもうけん!?なんだそれ!?」
メイド「優しい夫婦に引き取られた子犬のグイールでしたが、実は彼らは犬を虐めるのが大好きという残忍非道な鬼畜夫婦でした。グイールはいつか復讐してやると心に誓い、虐待の日々を耐え続けます」
メイド「そして成犬になったグイールは、ついに夫婦の喉笛を噛みちぎって復讐を果たすわけです。しかしグイールも長年の虐待がたたって、もうその体は限界が近い」
メイド「グイールは、自分のような不幸な犬が少しでも減るようにと、各地を駆け回り虐待をする飼い主に襲い掛かります。その様はまさに獰猛犬!」
メイド「自らの誇り、そして同朋の命を守るために気高く生きたグイールの物語。どうです、涙なしには見られないでしょう!?」
ご主人様「なんちゅー話だ」
メイド「ところでご主人様、いったいなんの用だったんですか?」
ご主人様「…いやぁ、別に」
メイド「……もしかして、またくだらないことで私のこと叱ろうとしてましたぁ?」
ご主人様「!」
メイド「そんなに簡単に人のこと虐めるとね、私もグイールみたいに復讐しますよ!」
ご主人様「あ゛!?やってみろやコラ」ギロッ
メイド「…!?」ビクッ
ご主人様「くだらねぇことだぁ??てめぇ、そういうのはなぁ、自分がなにやったか、よーく思い返してから言いやがれ」
メイド「あわわわわ…私、なにかしましたっけ…?」
ご主人様「鍋!火ィ!つけっぱなし!!!!」
メイド「あっ…」
ご主人様「んでのんきに映画見て号泣して、あまつさえ俺に逆襲しますだとぉ!!??せっかく俺が不問にしてやろうと思ったのによぉ!!?」
メイド「ひぃいいい!嘘です!冗談ですから!靴でもなんでも舐めますからぁああああ!」
ご主人様「俺のやってることは虐待じゃなくて正当な仕置だよなぁ!?」
メイド「その高圧的な態度はかなりアウトだと思いますけどもうそういうことでいいです!!!」
メイド「今日から令和ですよ、ご主人様!」
ご主人様「そうだなメイド!…ん???」
メイド「れーいーわ、ソーレれーいーわ!!あよいしょ!」
ご主人様「れーいーわ!!れーいー…」
ご主人様「イヤ、違う、なにかおかしい…おまえ今までなにやってたんだ???」
メイド「はい??」
ご主人様「なんか3、4ヶ月ぶりくらいじゃねぇか??」
メイド「なに言ってるんです?毎日見てるじゃないですかぁ!もーやだなー改元ボケしちゃったかな?」
ご主人様「そ、そうかぁ!毎日会ってるよな!そうだったそうだった!ていうか…」
ご主人様「改元ボケってなんだよ!」ベシッ
メイド「ったぁい!!」
ご主人様「……」ジンジン
ご主人様「うーんこの感覚も久々な気がするんだよなぁ…」
メイド「だから気のせいですって!毎日引っ叩かれてますよ!」
ご主人様「おかしいなぁ」
メイド「あんまり深く考えるとお待たせした皆さんに怒られちゃいますから、ここは素知らぬふりしてればいいんですよ!」ボソッ
ご主人様「れーいーわ!れーいーわ!」
メイド「ふぅ、これでごまかせましたね…」
ご主人様「ごまかされるかこのバカタレ!謝れ!皆さんに謝れ!」バシッ
メイド「なぁんで私なんですか!?なんにも悪いことしてないのに!」
ご主人様「だからだよ!お前がなんにもやらかさなかったせいでなんかこう話が進まなくなっちゃったんだよ!」
メイド「そんなむちゃくちゃな!」
メイド「ああ、でもこの理不尽な感じ、久しぶりですねぇ…」ホロリ
ご主人様「とりあえず2人でちゃんと謝ろう」
メイド「はい…真面目なメイドですみません」
ご主人様「俺の躾が行き届いててすみません」
メイド「こんな謝り方ないでしょー!?」ガルルル
ご主人様「うるさい!いいんだよこれで!!」
ご主人様「お前最近ほんとまじめになったよな!」
メイド「でしょう?」
ご主人様「つまらんわー」
メイド「なんで!いいことじゃないですか!」
ご主人様「そうは言ってもこう…ニーズってのがあるじゃん?みんなはさ、おまえが変なことして俺にビシバシ叩かれるところが見たいと思うのよ」
メイド「いーえそんなことないです!成り行き上そういうのが定着してしまっただけで、皆さんが見たいのは私とご主人様のドキドキ☆ラブコメディですよ!」
ご主人様「いーや違うね、血湧き肉躍るバキバキ☆バイオレンスだね。だいたいお前みたいな貧乳メイドにドキドキするわけねぇだろ」
メイド「はぁーん!?そんならたまには私がご主人様をボコボコ☆リベンジャーな感じも新鮮でいいんじゃないですかぁ!?」
ご主人様「それはないわ。そんなことされたら普通に警察呼ぶ」
メイド「ひ、ひどい!自分の悪逆非道を棚に上げて!」
ご主人様「…まぁでもさ、やっぱりお前はこういうふうにちょっと生意気でないと…落ち着かねぇんだよな」フッ
メイド「……ご、ご主人様…」
メイド「そうですね…ご主人様も、普段はクールぶってるけど、今みたいに鼻の下にごはんつぶずっとくっつけてるマヌケな姿のほうが安心感ありますよ」ニコッ
ご主人様「はよ言えコラァ!!!!」スパーン
メイド「だってハナ○ソっぽくも見えるしもしそうだったら指摘するのめっちゃ気まずいと思って!ほら私ってまじめですし!!??」
ご主人様「そんなとこでまじめになる必要ねぇわ!!」
メイド「ご主人様にひとつ文句を言いたいんですけどー」
ご主人様「あーん?文句ぅ~?言ってみろや」
メイド「ご主人様っていつも夜遅くにお風呂入りますよねぇ?」
ご主人様「いけねぇのかよ」
メイド「だって…いつも私がお風呂入って、そのあと続けて入るか訊くじゃないですか」
ご主人様「おう」
メイド「そしたら大体入らないって言うじゃないですか。じゃあもうお風呂洗っちゃいますよ、って訊くと今みたいに『おう』って言うじゃないですか」
ご主人様「…おう」
メイド「なのになんで、あとからお風呂入っちゃうんですか?結局私、次の日の朝にまたお風呂掃除ですよ!」
ご主人様「なんでってそりゃ…入りたくなったからだよ」
メイド「私が出たあとすぐ入ればいいじゃないですか、そうしたらお風呂洗うの1回で済むんですよ?」
ご主人様「…あのなーお前、どうせ俺がワガママで気まぐれなやつだと思ってるんだろ?」
メイド「まぁ、正直…」
ご主人様「それは違う。俺はな、お前が入ったあとの風呂に入りたくないんだ」
メイド「…???」
ご主人様「一番風呂じゃないと嫌なんだよ」
メイド「…いや、あの、世間ではそーいうのをワガママと言うんですけど…?」
ご主人様「なーにをお前…俺のどこがワガママだよ。俺は浴槽に他人の髪の毛一本でも浮いてるともう入れないだけだよ」
メイド「これ以上ないほどにワガママですね」
ご主人様「どうしても風呂洗いたくないなら浴槽にお前が入った形跡を一切残すな!そうすりゃ俺も気にせず入れる」
メイド「そんなの無理ですよ!じゃあこれからはご主人様が私より先に入ってください!」
ご主人様「おま…俺の浸かった風呂の水でなにする気だよ???」
メイド「なにもしませんよ!!!なんですかその逆セクハラ!」
ご主人様「そもそも俺が夜中に風呂入るのはしょうがないんだよ。もう、そーいう習慣になってるんだから。」
ご主人様「というわけではい、この話は終わりっ!」
メイド「むむむ…」
メイド「じゃあ、これからは…」
ご主人様「?」
メイド「ご主人様がお風呂に入るまでずっと起きてます」
ご主人様「いやいやいや無理だろ、おまえ8時には眠くなっちゃうじゃん」
メイド「年寄りか!そこまで早くないですよ!」
ご主人様「…そんなに風呂洗うの嫌なのか?」
メイド「そりゃ2回も洗うのは無駄だと思いますよ。でも、それよりも…」
メイド「ご主人様が『私の入ったあとのお風呂に入りたくない』なんて言ったのがショックです。別に潔癖症でもないくせに…もしかして私のこと嫌いなんですか?」グスッ
ご主人様「な、なんだよ、泣くこたねーだろ!」
メイド「もういいですよ…私はご主人様のメイドですもんね、四の五の言わずに10回でも100回でもお風呂掃除すればいいんでしょう…」グスグス
ご主人様「分かったよ、これからはお前が入ったあと洗わなくていいよ!俺もすぐ入るから!」アタフタ
ご主人様「ていうかもう一緒に入ればいいだろ!?」
メイド「えっ?」
ご主人様(…やべぇ、テンパりすぎてガチのセクハラじみたこと言っちまった)
メイド「なーんだご主人様もそうだったんですか!貧乏なうちだけかと思ってました!」
ご主人様「!?」
メイド「水道代が勿体ないから家族まとめて狭いお風呂に…。でもあの時間が実はとても幸せだったと最近になって気づいたんですよね」ニコニコ
ご主人様「いやっ待て待て!それはお前がガキの頃の話だろ!?しかも親とだからなんの問題もないのであって、今のお前と俺が一緒に入るのは…」
メイド「大丈夫ですよ、隅々まで優し~く洗ってあげますから…」
ご主人様「そ、そう?なら………」ゴクリ
ご主人様「…って悩むな!俺!」バシッ
メイド「自分を殴った!そういうパターンもあるんですね!?」
ご主人様「わわわ分かった!これからは自分が入ったあとの風呂掃除は自分でやることにしよう!な!それならいいよな!?よし!決まり!!」
メイド「もちろん、ご主人様がそうおっしゃるなら!」
メイド(ま…最初からその流れに持ってくつもりでしたけどね)ニヤリ
メイド「……」ピクッ
ご主人様「ん…?どうした?」
メイド「ご主人様、今ちょっと揺れませんでした?」
ご主人様「いやぁ揺れてないだろ」
メイド「えー、気のせいかなぁ…そんな感じしたんですけどね」
メイド「そうだテレビつけよう」ピッ
テレビ『XX時XX分頃○○県沖を震源とする震度3の地震が~』
メイド「あっほら、やっぱり!」
ご主人様「へー…この辺りは震度1か。よく気づいたな」
メイド「昔から揺れには敏感なんですよね」
ご主人様「おめーのその小さい胸が揺れるわけでもないのに?」
メイド「はぁーーん!?」
ご主人様「お、怒った」ケラケラ
メイド「てことは巨乳の人は地震で揺れるんですか!?すっご!!!」
ご主人様「ごめんそれはわかんねぇ…そんなマジで食いつかないで…」
メイド「はぁー…」
ご主人様「……」
メイド「はあーああ…」
ご主人様「……」
メイド「はああぁーああああ!!!」
ご主人様「……」スタスタ
メイド「ちょっと!こんな大きな声でため息ついてるのになんでスルーするんですか!」
ご主人様「うるせぇな!それもうため息じゃねぇよ!」
メイド「聞いてくださいよ!!連休中に久しぶりに友達に会いたいな~と思って連絡したのに誰も相手してくれないんです!」
ご主人様「へーそう、みんな忙しいんじゃねぇの」
メイド「で、よく考えたら、私がここでメイドやってることってまだ誰にも伝えてないんですよ」
ご主人様「…それで?」
メイド「だからみんな、しばらく会ってなくて今なにやってるかも分からない私から急に連絡が来て、たぶん『あっこれマルチか宗教の誘いだな』って思われた可能性があるんですよね」
ご主人様「それは考えすぎじゃねぇか?」
メイド「もー悲しくて悲しくて!」
ご主人様「メイドやってるって言やぁいいだろ」
メイド「いや、いきなり『実は私いまメイドやってて~』ってそっちのほうがやばい感じしません?」
ご主人様「お前の中ではマルチ・宗教>メイドなのか…」
メイド「なんかリアリティないなーと思って…」
ご主人様「じゃあ『お手伝いさん』とか『家政婦』でごまかせ」
メイド「なんかおばちゃんっぽい…」
ご主人様「全国の家政婦に謝れ」
メイド「うーん…どうしたらみんなに怪しまれずに会ってもらえますかねぇ。いっそ結構したことにしようかな?」
メイド「てきとーに指輪付けとけばバレないはず…旦那さんって嘘ついてご主人様の写真使ってもいいです?」
ご主人様「……」
メイド「いや冗談ですよ…そんなしかめっ面しなくても…」
メイド「でも…ちょっと寂しいなって」
ご主人様「……どっか出かけるか?」
メイド「…今日は優しいですね」
ご主人様「いつも優しいだろ、バーカ」
メイド「それで、どこに連れてってくれるんですか?」
ご主人様「お前が決めていいぞ」
メイド「動物園!」
ご主人様「動物くせーから嫌だ」
メイド「…私が決めていいんじゃ??」
ご主人様「次」
メイド「えーとじゃあ…映画館!」
ご主人様「この時期うるせぇ子供ばっかだろうし嫌だ」
メイド「ショッピング~…」
ご主人様「すぐにいるものじゃないなら通販でいいだろ」
メイド「……じゃあ近所の公園でいいですよ!」
ご主人様「そんなのいつでもいけるだろが」
メイド「あーもう!!なんだったらいいんですか!!!」
ご主人様「……」
メイド「……」
ご主人様「え、エステとか…?」
メイド「絶対行きたいと思ってないでしょう」
ご主人様「家で大人しくしてようぜ」
メイド(言い出しっぺのくせに…)
メイド「ご主人様知ってます?今日はメイドの日なんですって」
ご主人様「へー初めて知った」
メイド「そういうわけですから、たまには私のこと労ってみません?騙されたと思って」
ご主人様「たまには…ってなにを今さら…お前には普段から散々感謝してるじゃないか」
メイド「え?えー!?アレで!?感謝してるつもりなんですか!?あんだけ引っぱたいといて!?」
ご主人様「それはおめーあれだよ…愛のムチってやつだよ。感謝してるからこそだよ」
メイド「『謝』りたいと『感』じているから『感謝』ですよ!?やってること真逆じゃないですか!」
ご主人様「愚地克巳かてめーは」
メイド「だいたいご主人様、愛情とか優しさとかそういうのひと欠片も持ってないでしょ!」
ご主人様「…あのなァ、俺がお前に優しくしないのにはちゃんと理由があるんだぞ」
メイド「理由…?」
ご主人様「だって、俺が本気で優しくしたら、すぐにホレてきそうじゃん?」
メイド「は?ホレ…!?」
ご主人様「お前見るからにチョロそうだし」
メイド「チョロ…!?」
ご主人様「そういうのめんどくさいだろ?」
メイド「なっ…ご主人様、私のことそんなふうに思ってたんですか!?」
ご主人様「ああ、だから普段は意識して冷たく振舞ってんだ」
メイド「わ、わざと冷たく…!?いやないないない!あれが素でないとしたら逆に怖いですって!!!」
ご主人様「ま、どうしてもって言うなら今日くらいは優しくしてやってもいいけどな」スッ
メイド「!」ビクッ
ご主人様「フフフフフ」
メイド「な、なんですかその不敵な笑みは!何する気ですか!近寄らないでください!!」ビクビク
ご主人様「苦しゅうないぞ!!!!」バッ
メイド「ひいっ!ケダモノー!!!」
ぽん
メイド「へ!?」
ご主人様「……」ナデナデ
メイド「あのー…?」
ご主人様「…どうだ?これが俺の本気の優しさだ。ホレただろ?」
メイド「あのね…子供じゃないんですよ?これでホレるとかさすがにないでしょう…」
ご主人様「え?そーなの?」
メイド「………まぁ、もうちょっと続けてもらってもいいですけど」
ご主人様「ほら!やっぱチョロいじゃん!」ケタケタ
メイド「ううううるさいなー!!そういうのじゃないですから!!!!」
ご主人様「じゃあまた来年のメイドの日までおあずけだな」
メイド「いーです!もういいですよーだ!!だいたいなにメイドの日って!誰だよ今日メイドの日って言ったやつは出てこいよ!はっ!しょーもな!!」
ご主人様(自分から言い出したくせに…)
メイド「天気予報見てたら、今週は30度超えるところも出てくるんですって。もう夏ですね」
ご主人様「まだはえーだろ。梅雨入りもしてないのに」
ご主人様「でもあれだな…こないだから冷やし中華食べたいと思ってるんだよな…無意識に夏を感じてるのかもしれん」
メイド「冷やし中華か…いいですね」
翌日
メイド「ご要望にお答えして冷やし中華作りましたよ」
ご主人様「お!おーー……?」
ご主人様「ちょっと待て!ハムが入ってるじゃねぇか!」
メイド「…なにか問題が?」
ご主人様「普通、刻んだチャーシューだろうが!」
メイド「えぇ!?チャーシューなんて贅沢ですよ!」
ご主人様「あとクラゲも入ってねぇ!」
メイド「いらないですよそんなもの…ハム・たまご・キュウリ!この三種の神器が揃ってれば十分です!」
ご主人様「彩りってもんがあるだろ!こんな寂しい冷やし中華食いたくねぇよ」
メイド「は?」ムッカァ
メイド「…じゃートマトでも入れましょうか!鮮やかになりますからねぇ!!??」
ご主人様「ぐわーそれだけはヤメロ!わかった!このままでいいから! 」
ご主人様「……」ズルズル
メイド「どうですか?」
ご主人様「うまい」
メイド「でしょう?あ、マヨネーズいります?」
ご主人様「いらねぇだろ。何に使うんだよ…」
メイド「かけるんですよ冷やし中華に」
ご主人様「え?」
メイド「え?」
ご主人様「…なに言ってんだか」ズルズル
メイド「え??あれ???うそ????」
ご主人様「髪切ってきたぞ」
メイド「随分さっぱりしましたねぇ」
ご主人様「セットまでしてもらったけどよ、どこか行くわけでもねーんだよな」
メイド「普段からセットしたほうがいいですよ。そうやってキチッと決めてればご主人様かっこいいんですから」
ご主人様「いや何もしなくてもかっこいいだろ?」
メイド「はは……」
ご主人様「なんだその乾いた笑いは!?」
ご主人様「つーかなんで家にいるのにセットしなきゃいけねーんだよ。おめーにかっこよく思われたって何の意味もねーよ」
メイド「意味というか…身なりを整えるということは気持ちを整えるということですから、生活にもメリハリがつきますよ」
ご主人様「どーだかねー。お前メイド服着てても全然気持ち整ってないじゃん」
メイド「は!?整ってますよ!めちゃくちゃ整ってるでしょ!!あぁん!?」
ご主人様(ならその態度をなんとかしろ)
メイド「そんなこと言うなら、これから高校の頃のジャージ着て仕事しますよ!?そっちのが動きやすいし!」
ご主人様「わかったわかった!これからはキチッとするよ!そんなんされたらもうメイドと言えねぇし」
メイド「分かればよし!」
ご主人様「さて、スーツはどこにしまってあったかな…」
メイド「いや、あの…それは極端すぎる気が…」
久しぶりの中編です。前回よりだいぶ短いですが…
メイド「お買い物に行ってきますね。5時からタイムセールなので」
ご主人様「おう…」
ご主人様「ん…?待てよ、5時…?なんかやらなきゃ行けないことがあったような」
ご主人様「……」
ご主人様「そうだ!銀行で振り込まなきゃいけねぇ金があるんだ!確か今日までだったはず!」
メイド「思い出せてよかったですね」
ご主人様「よし、じゃまず銀行行ってそれから買い物だ」
メイド「えー一緒に行くんですかぁ?」
ご主人様「文句あっか?」
メイド「イエ別にー」
メイド(こっそり私の分だけおやつ買おうと思ったのに…)
ご主人様「自分だけこっそりなんか買うつもりだったろ」
メイド「!?」
〇〇銀行ATM
ご主人様「おいメイド!暗証番号覗き見すんじゃねーぞ!」ピピピッ
メイド「んなことしませんよ!失礼な!」
ご主人様「えーと振込先がこれでこーして…」ピッピッ
キャーーーッ
メイド「なんか行内から悲鳴が聞こえたような?」
ご主人様「なに言ってんだよ。…よし、振込完了っ」
イヤーーーッ
メイド「ほらまた!!見てみましょうよ!」
ご主人様「なんだっつーんだ…ゴキブリでも出たのかぁ?」ウィーン
?「!なんだてめぇは!動くんじゃねぇ!」
ご主人様「…あぁ?てめぇこそなんだコラァ!」
メイド(秒でキレた…)
?「これ見ても分かんねぇのか?」カチャッ
ご主人様「!!」
メイド「じゅ…銃!?」
メイド(てことは…)
銀行強盗!!!
ご主人様「あー…なんだ…そのー…銃…はまずいん…じゃない…かな…?」
強盗「おら来い!」グイッ
ご主人様「ぐえっ」
強盗「こいつぁ人質だ!さっさと金を用意しろぉ!!」
ご主人様「うおおおお!嘘だろぉ!!?」
行員「お、落ち着いて!」
強盗「俺は冷静だ!いいから早く金を出しやがれ!!」
メイド(あわわわ…ご主人様が人質に!!なんで!?こんなことある!?)
メイド(たまたま二人で出かけたときに限って…ってそんな…)
メイド(………)
メイド(ははーん、さてはドッキリだな?)
メイド(そういえばこないだご主人様…テレビでモニ〇リング見ながら)
ご主人様『くっだらねー。こんなドッキリ引っかかるわけねーのに』
メイド(と口では言いつつも、初めから終わりまでしっかり見てた…。相当なドッキリ好きに違いない!)
メイド(おそらく普段の私があんまり生意気だから、ドッキリ仕掛けてビビらせようとしてるんですね?)
メイド(一緒に銀行に行こうって言い出したのがそもそも不自然だったんですよ!)
メイド(いつから考えてたのか知りませんが、よくもまぁこんな仕掛けが用意できたもんですね)
メイド「……」ニヤニヤ
ご主人様(アイツなに笑ってんだ!?この緊迫した状況で壊れちまったか…)
強盗「そこの女ァ!なにニヤついてんだ!!」
メイド「え?」ニヤニヤ
強盗「撃つぞコラァ!!」チャッ
メイド「……」
メイド「その銃…モデルガンですよね?」
強盗「なにっ!」
ご主人様「え!?」
メイド(だってドッキリで本物の銃使うわけないし…)
ご主人様(モデルガン?マジで??)
メイド「……」フフン
ご主人様(あの得意げな顔!相当自信あるみてーだぞ…でもなんでアイツにそんなこと分かるんだ?)
メイド「私にはすべて分かってますよ…」フフフ
強盗「な、なにが分かってるってんだ!?」
メイド「あなたの目的(ドッキリ)ですよ…残念ながらあなたの思い通りにはいきませんが」
強盗「俺の思い通り(金目当て)にはいかない…?」
強盗「ナメてんだろお前…!このままコイツの頭ぶち抜かれてもいいのか!」
ご主人様「そ、そうだ!さっきからニヤニヤしやがって!ふざけてるとぶっ[ピーーー]ぞ!」
強盗「おめぇがぶっ殺されんだよ!」
ご主人様「あっそうか、今そういう状況か!ついいつもの感じで…」
ご主人様「おい!俺がぶっ殺されるぞ!早くなんとかしろ!」
行員(なんつー人質だ)
行員「お、お金なら用意します、だから落ち着いて!」
メイド「その必要はありません!というか用意するつもりなんてないんでしょ?(ドッキリだし)」
強盗「ねぇのか!?」ギロッ
行員「そりゃほんとは出したくないですけど、出さなきゃまずい状況みたいなので」アタフタ
ご主人様「おいなんだそのふわふわした感じ!対応訓練とか受けてねぇのか!俺が殺されてもいいのか!?」
メイド「だから殺されませんって!」
ご主人様「なんなんだおめーさっきから!黙ってろ!俺と人質変わるか!?」
メイド「いや…私が人質になったら(ドッキリが)成立しないんじゃ?」
ご主人様「成立ってなんだよ!?」
強盗「なんだこいつら…」イライラ
強盗(しかしこの女、なぜ俺に[ピーーー]気がないと分かる?確かにこの銃は偽物だが…普通の女が一目で見抜けるもんじゃねーだろう…)
強盗(まさかコイツも『同業者』か!?スジ者には見えねぇが…この状況でこんなに堂々としてられるなんて普通じゃねぇ!)
メイド「ご主人様…私をこんなくだらない方法で試してどうするんです?」
ご主人様「試すぅ???」
メイド「こんなことしなくても、私はいざとなればご主人様のために体張れますよ!」
ご主人様「…確かにめちゃくちゃ体張ってるな、こっちが心配になるくらい大胆に」
ご主人様「ていうかもう大人しくしててくれよ !このままじゃ俺が殺されちまう!」
メイド「大人しく(騙されたふり)なんてできませんよ!」
ご主人様「状況を考えろよ!」
メイド「(ドッキリの)状況はわかってますよ!でもあまりにも雑すぎて…ww」
ご主人様「なに笑ってんだてめぇ!!ぶっ[ピーーー]…じゃなくてぶっ殺されるぞこの野郎!!!!」
強盗「もういい!俺の負けだ!」
ご主人様「はぁ?」
強盗「どうやらアンタにはすべてお見通しのようだな…」
メイド(そりゃこんなありがちな設定じゃね…)
メイド「でも演技はなかなか気合い入ってましたよ。次はもっとうまくやれるといいですね」
ご主人様「ダメだろ次やらせちゃ!」
強盗「いや、俺はアンタみたいな何事にも動じない鋼のメンタルにはなれねぇ…」
メイド「ま、ご主人様に鍛えられてますからね」
ご主人様「は?」
メイド「…さ、そろそろ出てきてもいいんじゃないですか?」
強盗「そうだな…堪忍するよ…もうすぐそこにいるみたいだしな」
ウィーン
警察「警察だ!そこを動くな!」
メイド「へ?」
警察「犯人発見!確保ーっ!」バタバタバタ
メイド「???」
ご主人様「よかった…ちゃんと行員が警察呼んでたのか!」
強盗「そ、そんなに強く抑えねぇでくれよ警察さん…この銃はモデルガンだからよ…」
警察「おふたりとも怪我はありませんか!?」
ご主人様「ああ…大丈夫…」
メイド「いや…あの…あれ???看板は?」
警察「看板?」
メイド「ドッキリ大成功~!的な…」
警察「??いったい何を言ってるのか…」
ご主人様「…え、まさかお前…嘘だろ…?」
ご主人様「ドッキリだと思ってたの???この状況を???」
メイド「………」
メイド「マジなんですか?」
警察「えーと、君は、犯人を止めようとしていたわけではなく、この状況をドッキリだと勘違いして、そもそも犯人を犯人として認識していなかった…」
警察「そういうことでいいんだね?」
メイド「いやぁ…いわゆる仕掛け人だと思ったんですよ…」
警察「君ねぇ…結果的に銃が偽物だったからよかったけど、もし犯人が君の言動に刺激されて発砲なんてしてたら、今頃とんでもないことになってたよ」
メイド「はい…おっしゃる通りです…」
ご主人様「ほんとすんませんした!よく言い聞かせておきますので!」
警察「いやぁまぁ、無事でよかったけどねぇ…」
メイド「……」トボトボ
ご主人様「あのなぁ、言いたいことはいろいろあるけどな、まずお前、俺に謝れ」
メイド「はい…ご主人様のヘタなドッキリだと思い込んですみません」
ご主人様「マジで心臓バクバクだったんだからな!」
メイド「へへ…あれがガチならそりゃー焦りますよね」
ご主人様「へへ、じゃねぇわ!」スパーン
メイド「………」ジワッ
メイド「あ、あれ?」ボロボロ
ご主人様「な、なんで泣く!?」ギョッ
メイド「安心したら急に…ご、ご主人様が無事でよかった~!殺されるかと思いましたよ~!」
ご主人様「それ騙されたやつのリアクションだろ!!」
メイド「…あれ、そういえばなんで私も銀行に来たんでしたっけ」
ご主人様「このあと買い物行くんだろ?」
メイド「あ!タイムセールは!!」バッ
PM5:30
メイド「あああああダメだ!とてもじゃないけど間に合わない!」
ご主人様「ばーか、今日は俺もいるんだから、金なんて気にしねぇで好きなもん買えよ」
メイド「……え、いいんですか!」
ご主人様「…まぁ、結果的に、お前のおかげであの銀行は金盗られなくて済んだわけで」
ご主人様「あそこの金庫には俺の金もたっぷりあるはずだからな!」
メイド(銀行の金庫ってあんまり入ってないって聞いたけどな~…)
おわり
メイド「ご、ご主人様…大変なことになりました」
ご主人様「どうした?」
メイド「掃除してたら…エプロンがやぶれちゃって…」ボロッ
ご主人様「どんだけ無理な体勢で掃除してたんだよ」
メイド「寝るときと外出るとき以外はずーーーっと着っぱなしだったので、多少傷んでたのかもしれません」
ご主人様「うーん…代わり用意してないからな…もうエプロンなしでいいか!」
メイド「それって大丈夫なんです?」
ご主人様「大丈夫って…?ないと支障あるか?平気だろ?」
メイド「支障というか、メイドとしてのアイデンティティがなくなってしまうよーな気がして」
ご主人様「…変わんねぇよ!なにがアイデンティティだ!一丁前に」
メイド「ま、そうですよね!エプロンがないくらいでね…」
メイド「……」ゴシゴシ
ご主人様(とは言ったものの、確かにエプロンつけてないだけでメイドっぽさが大幅に薄れたような気がする)
メイド「…なに見てるんです?」
ご主人様「なんかその格好だと、ピアノの発表会みたいだな」
メイド(ピアノの発表会見たことないからどう反応したらいいのか分からない…)
ご主人様「メイド服そのまんま着てるよりもコスプレするんだよな」
メイド「でも買い物とかで外に出るときはいつもこの格好ですよ。ちょっとシックなワンピースに見えるでしょう?」
ご主人様「いやシックっていうかゴシックだよ。お前たぶん街ゆく人に変なやつだと思われてるぞ」
メイド「…家の中とはいえ常にメイド服着てる時点でたいがい変だと思いますよ」
ご主人様「バカだな…メイド服は男のロマンなんだぞ」
メイド「そのロマンを実践するのがおかしいんですってば。別にお客さんお迎えするわけじゃないんだし、どんな格好でもいいはずでしょう?」
ご主人様「お前もしかして、そのメイド服…嫌々着てる?」
メイド「……!」
メイド「嫌々…ってことはないですけど…正直たまーに、なんでこんな格好してるんだろうって我に帰る瞬間はあります…」
ご主人様「…そうか…そうだったのか…そりゃそうだよな」
ご主人様(やることはきっちりやってるんだし、無理にメイド服着せる必要ももうないか…よし)
ご主人様「分かった!いい機会だし思い切ってメイド服は卒業ってことで…」
メイド「でも…」
ご主人様「…ん?」
メイド「今、エプロンつけてない自分に、すっごく違和感があるんですよ。なんか落ち着かないっていうか…」
メイド「たぶん私、ご主人様と一緒にいるうちに、変なところが移っちゃったんでしょうね」
ご主人様「……」
メイド「だから責任取って、新しいエプロン買ってくださいよ!」
ご主人様「…責任ってお前なぁ……ま、今回ばかりはしょうがねぇ。買ってやるよ!」
メイド「今度はもっと生地のちゃんとしたやつにしてくださいね。あんな安っぽいのじゃなくて!」
ご主人様「や…安っぽいだと!?そんなはずは…!」
メイド「だってしょせんはコスプレ用でしょう?年中着ることなんか想定してないだろうし…そりゃー糸も解れるし穴だって空きますよ」
メイド「そうだ!こうなったらもう職人さんに作ってもらおう!オートクチュールって言うんですか?いくらかかるか知らないけど、どうせご主人様が出してくれるんだし高級素材ふんだんに使って…」ブツブツ
ご主人様「…てめぇ、調子乗ってんなぁ!?」
ご主人様「よし!じゃあこれからは『メイド服風ビキニ』着て仕事しな!結構きわどいやつ!そしたら大事なところがこんにちはしないように大事に着るだろ!!」
メイド「なっ!?それじゃ私、変を通り越してただの変態じゃないですか!!」
ご主人様「いいじゃん変態メイド!もちろん買い物するときもそのまんまな!」ケタケタ
メイド「絶っっっ対イヤですよ!普通のでいいです!」
ご主人様「…普通の『で』?まだ立場が分かってねぇようだな?」
メイド「……普通の『が』いい!です!間違えました!お願いします!!ビキニだけはどうかご勘弁を!!!!」
ご主人様「分かればよろしい」
その後
ご主人様(うげー本格的なのってこんなに値段するのかー…)カチカチ
また更新空いてしまってすみません
明日はチュー編です
メイド「うぎゃー!!!」
ご主人様「!?な、なんだぁ?」
メイド「ちゅ…ちゅ…ちゅー!!!はひぇーーー!!!」
ご主人様「おいどうした!なにチューチュー騒いでんだ」
メイド「て、テレビでぇ…いきなり…ちゅ…注射のシーンが!!」
ご主人様「は…?それと今叫んでたのとなんの関係が?」
メイド「私!!注射!!!怖いんですよ!!!!!」
ご主人様「声がでけぇわ!」バシッ
メイド「だ、だってぇ…」
ご主人様「注射が怖いだぁ?そんなもん好きなやつのほうが珍しいだろ。痛いしな」
メイド「痛いのは別にいいんですよ。我慢できます。でも、でも…でも…」
メイド「どうしても、肌に刺さってるところを直視できないんです!ドラマとかでも無理!」
ご主人様「そりゃあれか?先端恐怖症ってやつか?」
メイド「違いますよ。画鋲とかは平気ですし…そんな大袈裟なものではないです」
ご主人様「悲鳴あげるほどビビってる時点で相当大袈裟だと思うが…」
メイド「注射以外にも、ピアスが怖いです。タトゥーも怖い。たぶん、体に針を刺すとか通すとかそういう行為全般が無理なんですよ…」
ご主人様「なるほど…まぁ分からなくもないが…」
メイド「あ、でも鍼治療はやってみたいなぁ」
ご主人様「こいつはどうだ?」ゴソゴソ
メイド「?ご主人様、なにしてるんです?」
ご主人様「爪楊枝」シャキーン
メイド「は?」
ご主人様「これでつんつんされるのも怖いのか?」ジリジリ
メイド「ちょっ…!!なにしてるんですか!!ほんと無理なんですって!!!」
ご主人様「ぐへへ」ジリジリ
メイド「……」フラッ
ご主人様「!?」
メイド「はっ…恐怖のあまり一瞬意識が…」
ご主人様「悪いやりすぎた…確かに重症だな」
メイド「ど、どうしたら克服できますかね…」
ご主人様「克服もなにも…実際に注射打ってるところ見て、大したことないと思い込むしかねーだろ」
メイド「でも私ご覧の通り超健康ですし、病院行く用なんてないですよ」
ご主人様「そういえば俺も、もう長いこと注射なんて打ってない気がする…最後に打ったのはいつだったかな」
メイド「なんか…病気じゃなくても使えて、元々な健康な体がさらにハッピーになれる薬とかないかなぁ」
ご主人様「それはいろいろとまずいだろ…」
ある日の夜
ご主人様「おいメイド!起きろ!」
メイド「うーんむにゃむにゃ…もうこれ以上食べられないですよ…」
ご主人様「なんてベタな寝言だ…ほら!起きろって!」ペシペシ
メイド「うぅ…なんですかぁ…まだ真っ暗じゃないですか」
ご主人様「ネズミが出たんだ!!」
メイド「…ねずみ??」
ご主人様「さっき部屋で作業してたら天井のほうからカサカサ聞こえてきてな」
ご主人様「最初は無視してたんだがしばらくしたら…」
『キキキッ』
ご主人様「って鳴ったんだよ!これネズミだろ!?」
メイド「うーん。たしかに怪しいですけど…姿を見せたわけじゃないんでしょう?屋根裏でちょろちょろしてるだけなら別にいーじゃないですか」
ご主人様「よくねぇよ!家にネズミなんかがいるってだけで気分悪いわ!」
メイド「…ていうか作業ってなにを?」
ご主人様「仕事だよ!しれっと聞き出そうとするんじゃねぇよ。契約違反だぞ」
メイド「チッ…」
ご主人様「とにかく来い!」
メイド「ご主人様、ネズミ怖いんです?」
ご主人様「いや怖いとかじゃなくてフツーにキモいだろ」
メイド「キモいかなぁ。よく見たら結構かわいいですよ。瞳がつぶらで」
ご主人様「かわいくねーよネズミなんか!」
メイド「でもご主人様、ピカピー好きじゃないですか」
ご主人様「バカにしてんのか!あれはゲームのキャラだろが!」
メイド「わ、分かってますよ」
ご主人様「そもそもピカピーはネズミポコモンといいつつモチーフはキンクマハムスターなんだぞ。俺はハムスターは好きだ」
メイド(なにその蘊蓄…)
ご主人様「キモいのは見た目だけじゃねぇ。あいつら菌とかいっぱい持ってんだろ?」
メイド「それはたしかに気になりますけど…」
ご主人様「ペストにでもなったらどうする!」
メイド「なるかなぁ…」
ご主人様「俺、虫とかネズミとか汚ねぇの無理なんだよ。あと心が汚いメイドもダメ」
メイド「さーて寝よっと」
ご主人様「待て待て待て!!!冗談だから!!!!」
ご主人様「俺の部屋からは天井覗けないが、隣のこの部屋からなら入れるはずだ…」
ご主人様「よいしょ」パカッ
ぶわぁっ
メイド「うわー!すごい埃!」
ご主人様「ゲェッホゲッホ!!や、やばい!一旦閉めるからマスク持ってきてくれ!あとライトも」
メイド「はい」
メイド「…持ってきました」スチャ
ご主人様「じゃあ代わってくれ。いきなりネズミ出てきそうで怖い!」
メイド「分かりました……」モゾモゾ
ご主人様(今メイド服着てたら絶対パンツ見えてるな)
メイド「うーん…」スポッ
メイド「埃がひどくてよく分かりませんでしたが、特にネズミらしい姿は…」
ご主人様「そうか…まぁどのくらいの大きさかわかんねぇしな…」
メイド「…たぶん、ご主人様の手のひらと同じくらいか、それより少し大きいくらいだと思いますよ」スッ
ご主人様「!」ピクッ
メイド「そんな今さら、手を触られたくらいで照れなくても!乙女ですか!」
ご主人様「埃だらけのきたねぇ手で触られたからびっくりしたんだよ」
メイド「!?」ガーン
ご主人様「なんで見てないのに大きさが分かるんだ?」
メイド「もしこの屋根裏にネズミがいるとしたら、それはきっとクマネズミですよ。あれはだいたいこれくらいの大きさですから、ウロウロしていたら分かるはず…」
ご主人様「クマネズミ?強そうな名前だな…他になにネズミがいる? 」
メイド「有名なのはハツカネズミとドブネズミですね」
ご主人様「あー知ってる知ってる」
メイド「ハツカネズミはかなり小さいので、狭い家具の隙間などに入り込むことが多いです。一度入り込まれると見つけるのに苦労しそうですが、屋根裏にはあまり居着かないのでおそらく違うと思います。実験用のネズミで『マウス』と呼ぶのは小さなハツカネズミのことです」ペラペラ
メイド「逆にドブネズミはクマネズミ以上に大きいです。水がある場所を好むので床下にいることが多いです。やはり屋根裏にはなかなか現れないでしょうね。実験用のネズミで『ラット』と呼ぶのはドブネズミを改良して作られたやつです」ペラペラ
メイド「そもそもこういう民家に出没するネズミって大半がクマネズミなんですよね」
ご主人様「…なんか妙に詳しいな、おめーオタクか??ひくわ」
メイド「そっちから聞いてきたくせに!…別にオタクではないですけど、いろいろ調べてた時期がありまして」
ご主人様「…なんで?」
メイド「昔住んでた家がボロかったから、よくネズミが出たんですよ。捕まえなきゃいけない→そのためにはまず敵を知る必要がある→図書館でネズミの本を読む…という感じで」
ご主人様「捕まえて…食ってたのか!?貴重な食料として!?」
メイド「さすがに食べませんよ」
メイド「ついでにもうひとつ教えておきますと、クマネズミの中にはスーパーラットという優れた個体が存在するそうです」
ご主人様「スーパーラットぉ?なにがスーパーなんだ」
メイド「一見同じネズミでも、生き物ですから当然個体差がありますよね。たとえば罠に気づかずすぐに捕まってしまうおバカなネズミと、罠を罠と理解し警戒できる賢いネズミがいたとして…」
ご主人様「ネズミにバカとか賢いとかあんの?」
メイド「ありますよ!奴らの知能をナメちゃいけませんよ…」
メイド「で、その賢いほうのネズミが子供を産むと、その中に親から賢さを受け継いだのが出てきます」
ご主人様「遺伝か」
メイド「その賢い子供が、もし別の賢い個体と子供を産んだら、その子はさらに賢いネズミになるかもしれませんよね。ネズミの繁殖ペースはご存知のようにとても早いので…」
ご主人様「なるほど…繰り返すほどに賢いやつが誕生していくわけだ」
メイド「そう。そいつらがスーパーラットです」
ご主人様「へー…でもしょせんネズミだろ?」
メイド「だからそーやって侮ってはいけないんですって。知能に限らず、運動能力とか毒エサへの耐性とかで驚くほど優秀なのがいるそうですから…」
ご主人様「じゃあもしかしたら、おまえよりネズミのほうが優秀かもな」
メイド「寝ます」
ご主人様「だから冗談だよ!!」
メイド「さて、目視はできませんでしたが…一応『いるかもしれない』と仮定して、罠を仕掛けましょうか」
ご主人様「おっ!罠といえば…バチン!って挟むタイプのネズミ捕りだよな。粘着シートもあるか。スーパーラットも殺せる猛毒エサとか!?せっかくだし全部買おう!」
メイド「なにが全部ですか、バカなこと言わないでください!ひとつも買いません。家にあるもので作ります」
ご主人様「自作かよ!?」
メイド「そうです、Do It Yourself!ってやつですよ!わざわざ罠を買ったって、結局ネズミいませんでしたじゃお金の無駄になるでしょう?」
ご主人様「…それはネズミどもを子々孫々に至るまで根絶やしにできるような罠なのか?」
メイド「それはちょっと期待しすぎです。既製品でもそこまではたぶん無理ですよ。とりあえず、今から言うものを用意してもらえますか」
ご主人様「え、俺が?」
メイド「そうですよ。私はここで屋根裏見張ってますから。さぁ早く!」
ご主人様(くっ、こいつに知識でマウントを取られ、上から指示を出される日が来るなんて)
ご主人様「持ってきたぞ!まずは水を半分くらい入れたバケツに、空のペットボトルだろ、細長いものってのは…竹ひごでいいよな?」
ご主人様「錐…はなかったからドライバー。あとガムテ。食パン、魚肉ソーセージ、バター。これ餌?チーズじゃなくていいのか?」
メイド「ありがとうございます。別にネズミはチーズしか食べないわけじゃないですよ。なんだって食べますよ」
メイド「あ、ちゃんと軍手してます?人間の匂いがついたものは避けられるかもしれませんからね」
ご主人様「してるよちゃんと。お前の分も持ってきた」
メイド「…では作り方を説明しましょう。最初に言っときますがわりと簡単です」
ご主人様「ふむ」
メイド「まず、ペットボトルの蓋と底、それぞれ中央にドライバーを使って、竹ひごが余裕で通るくらいの大きさの穴を開けます。ほんとは錐があれば楽なんですけどねー」
メイド「で、…竹ひごを、ペットボトルの穴に通します…長さが足りなければ2本をガムテープでつないで延長するか、なんだったら丈夫な紐とかで代用した方が早いかも」
メイド「そしたらバケツの縁に竹ひごの両端を乗せて、橋のようにかかってる状態にします。竹ひごは動かないようにガムテで固定しましょう」
ご主人様「ふむふむ」
メイド「あとはペットボトルの表面…できれば中央あたりにガムテをペタペタ貼って、そこに食パンとソーセージをちぎってくっつけるだけです。バターはそれ以外のところにテキトーに塗っておいてください」
ご主人様「…それだけ?これどういう罠なんだ?」
メイド「まず、ネズミがエサの匂いにつられてやってきますよね。ネズミはエサを取るためにペットボトルに乗るわけですが」
メイド「竹ひごを通しただけのペットボトルはゆるゆるですから、重さがかかった瞬間に、くるっと回転しちゃうわけです」
ご主人様「あー、それで乗ってるネズミは振り落とされると」
メイド「そう。で下の水にドボン。この高さを登る方法はありませんから、あとは溺れ死ぬか餓死するかのどちらかです」
ご主人様「たまんねーなそりゃ。でもよ、ネズミが落ちる寸前にペットボトルにしがみついたりしねぇのか?」
メイド「ネズミの小さな手でツルツルしたペットボトルを掴むのは無理でしょうね」
ご主人様「…そもそも、ネズミはどうやってこのペットボトルのところまでたどり着くんだ?バケツは内からも外からも登れないだろ」
メイド「あっ…それは素で忘れてました。バケツの縁まで登っていくための道を作っておかないといけませんでしたね…」
メイド「ダンボールを適当な長さに切って、バケツの縁から滑り台みたいにかけておけば、ネズミが登ってくれるはずです」
ご主人様「ふーん…なるほどね」
メイド「どうです?家にあるものだけで作れて、難しい工作はいらない」
メイド「一度の設置で、餌が残ってる限りは何匹でも捕獲できる可能性がある。電気とか使わないから危なくないし、中が水だからネズミの死骸もグロくない。…完璧じゃないですか!?」
ご主人様「たしかに聞いてる分にはいい感じだが、完璧かどうか決めるのは実際に捕獲できてからだろ?」
ご主人様「そう都合よく来るかなぁネズミ」
メイド「どうでしょうねぇ。こればかりはどんな罠だって一緒です。結局はネズミの気分次第。そもそもいると決まったわけでもありませんし」
メイド「まぁこんなの別に、うまくいくまでずーーーっと置いとけばいいんですよ」
ご主人様「…よし、じゃあさっそく作るか!」
メイド「一人でできますよね?やり方は教えましたし…」
ご主人様「だめだ!手伝え」
メイド「えー……」グラグラ
ご主人様「なんだよ…おまえもしかして眠いのか?」
メイド「当たり前でしょう…今何時だと思ってるんです」
ご主人様「えーと……2時…40分…」
メイド「5分で終わらせますよ」
ご主人様「…おう」
てきぱき…
ご主人様「できた。あとはこれを天井裏に置いとくだけだな」
メイド「……はい…」ウトウト
ご主人様「よし名付けて『地獄のプール』だ。頼むぞ~」
ご主人様(でも寝てるときに、ネズミがバシャバシャ泳ぐ音とか聞こえてきたらすげー嫌だなぁ)
翌日
メイド「おはよーございます…」
ご主人様「……」じーっ
メイド「あ、バケツ…どうですか?」
ご主人様「3匹浮いてる」
プカー…
メイド「おおー…まさか一晩で3匹も捕まるとは。ていうかほんとにいたんですね」
ご主人様「これはクマネズミか?」
メイド「…そうですね。この大きさなら間違いないと思いますよ」
ご主人様「……」
メイド「ど、どうしたんです?ネズミ捕まってよかったじゃないですか」
ご主人様「虚しい…」
メイド「はい…?」
ご主人様「こんな小動物をいたぶるなんて人間のすることじゃねぇよ」
メイド「…?…????」
ご主人様「こいつら3匹仲良く、美味しそうな匂いに惹かれてやってきただろうに…脱出不可能の水中にドボン。必死でもがいたんだろうな…」
メイド「いや…いやいやいやいや…ご主人様、キモいキモいって散々言ってたじゃないですか」
ご主人様「どこがキモいんだ。よく見ろよ。こんなにつぶらな瞳の可愛い生き物が他にいるか?」
メイド「それ私も言った覚えが…」
ご主人様「でもこいつらはもう動かない。かわいそうに。生きたまま捕まえる罠がよかったな。そんでどっかに離してやればよかった」
メイド「えー……」
ご主人様「…殺しちまったものはしょうがない。こいつらは丁寧に埋葬してやろう。それが俺にできるせめてもの償いだ」
メイド「あの…そんなに落ち込まなくてもよくないですか?」
ご主人様「俺はな…ダメなんだ…こういういたいけな生物をいじめることができないんだ…根っからの善人だからな」
メイド「は?私のことはいじめるのに?」
ご主人様「今日はやめよう…そういういがみ合いは」
メイド(えー…なにこの…悪いことしたみたいな空気。言われた通りにやっただけなのに)
メイド(しかし…ご主人様にこんなナイーブな面があるとは意外でしたね…見直したというか…らしくないというか…)
その日の夜
ご主人様「おいメイド!!!また天井から音がした!」
メイド「そうですか…あの3匹以外にもまだ何匹かいたんでしょうね。生け捕りするなら、今度は空のバケツ設置しましょうか」
ご主人様「はぁ?生け捕り?」
メイド「え?」
ご主人様「ふざけんな、ぬるいこと言ってないでぶっ殺せよ!迷惑してんだぞこっちはよぉ」
メイド「いや…ご主人様?今朝はあんなに悲しんでたじゃないですか…」
ご主人様「知るか。気が変わったんだよ。というかお前の罠は確実性がなくてまどろっこしい!毒ガスでも炊いて全滅させろ!」
メイド「えぇ…こっわ…同一人物とは思えない。ご主人様マジで多重人格なんじゃないですか??」
ご主人様「いいからなんとかしてくれ!早くやれ!今やれ!すぐ殺れ!」バシバシ
メイド「痛たた!分かりましたから!なんでそう感情の振れ幅が大きいかなぁ!?」
メイド(…まぁでも…ご主人様はこうでなきゃって感じもしますけどね…)
このあとめちゃくちゃネズミ捕った。
ちゅー編①と②の2本立てでお送りしました
この物語はフィクションですが、ネズミの話は少しノンフィクションです
ご主人様「メイドのやつ、今日はやけに帰ってくるのが遅いな…余計なもの買ってんじゃねーだろな」
メイド「ただいま帰りましたよーっと」ガチャ
ご主人様「お、噂をすれば…」
メイド「いいもの買ってきましたよぉ~」ニヤニヤ
ご主人様「…なんだそのでかい袋」
メイド「じゃーん!これです!」バッ
ご主人様「お…スイカじゃねーか」
メイド「はい!しかも大玉!」
ご主人様「本格的に夏らしくなってきたしな…よし食おうぜ。切ってくれ」
メイド「はぁ~やれやれ…『切ってくれ』ですって。分かってないですねぇ」
ご主人様「…どういうことだ?自分で切れってことか?」
メイド「そんなの決まってるでしょう!」
メイド「ス!イ!カ!わ!り!!スイカ割り、ですよ!!」
ご主人様「はぁ!?家で!?バカか!」
メイド「大丈夫ですよ!ゆかが汚れないようにブルーシート買ってきましたから!もちろんスイカぶっ叩く角材も!」
ご主人様「おめーさてはホムセン寄ってて帰り遅くなったな…?」
ご主人様「つーかどんだけ周到に準備したって、フツー家の中でスイカ割りなんてやらねぇよ。アホ」
メイド「…そうですか。そうですよね」
メイド「せっかく立派なお庭があるんですから、太陽の下でやらなきゃ嘘ですよね!」
ご主人様「いや家の中じゃなくて庭ならいいとかそういうこと言ってんじゃねぇって」
メイド「とーもだちーがーでーきーたー、スイカの名産地~♪」
ご主人様「聞けや話」
メイド「用意できましたよ」
ご主人様「もう勝手にしろ…割ったスイカは俺にもよこせよ」
メイド「ご主人様はやらないんですか?」
ご主人様「アホか。誰がそんなガキみたいな…」
ご主人様(…いや、ガキの頃もスイカ割りはやったことねぇな。まったくの未体験だ。こんな機会、二度と来ないかもしれん)
ご主人様「しょーがねぇな~」イソイソ
メイド「じゃ今から割りますから、ご主人様は見ててください」
ご主人様「おい!?」
メイド「なにか?」
ご主人様「今のは俺にやらせる流れじゃねぇのかよ」
メイド「いやぁでもスイカ買ったの私ですし…」
ご主人様「俺が渡した金だろ?」
メイド「言い出しっぺは私ですよ」
ご主人様「いーからやらせろや!!」グイッ
メイド「あ!返してくださいよ私の棒!」
ご主人様「おめーのじゃねーよ!名前書いてあんのか!?」
メイド「名前は書いてないですけど……あ!毛虫ついてる!」
ご主人様「うおっマジで!?」パッ
メイド「嘘ですよ!」パシッ
ご主人様「てめっ…!!」
メイド「ターゲット、ロックオーン!」
ご主人様「だめだ!よこせ!やらせろ!俺にやらせろー!」
メイド「でぇrrrrrrりゃああああああ!!!」ブンッ
ドチッッ
ご主人様「!!」
メイド「…あれ?」
ポロッ
ご主人様「……」
メイド「……」
ご主人様「なんだ?この…中途半端な…」
メイド「割れ…っていうか欠けただけ…おかしいなぁ…」
ご主人様「はいお前の番おわり!つぎ俺な」バッ
メイド「あーずるい!!」
ご主人様「ずるくねぇわ!見てな、こういうのはコツがあるんだよ」
メイド「なんですかコツって」
ご主人様「それは…あの…なんか…こう…とにかく勢いよくドーンだ!!」ブンッ
メイド(ミスれミスれミスれミスれ…)
ボチッ
ご主人様「……」
メイド「ふっ…。なーんだやっぱりご主人様のほうがヘタじゃ…」
バカッ
ご主人様「きた!綺麗に真っ二つ!完璧なスイカ割り!」
メイド「えー!?ちょっ…なんですか今の間!?」
ご主人様「よし食うぞ!」ヒロイヒロイ
メイド「うぅ~悔しい…もっと景気よく割りたかったのにー…」ヒョイ
メイド「あ、でも美味しい」ムシャムシャ
ご主人様「つーかさぁ、スイカ割りって目隠ししてやるもんじゃねぇの?」ムシャムシャ
メイド「…そういえばそうですね。あとグルグル回って…平衡感覚失った状態で…とか…」ムシャムシャ
ご主人様「今度はガチでやろうぜ!」
メイド(やろうぜ!って…最初あんだけバカにしたのに…)
二日後
メイド「あの…ご主人様…」ダラダラ
ご主人様「ど、どうした?」
メイド「これを…」スッ
ご主人様「なんだ…回覧板じゃねぇか」ペラッ
『○月○日○時頃、○○町○○にて、男性が棒状のものを振り回す事例が発生。
付近の住人は、「やらせろよ!」と叫ぶ声や、女性の叫び声を聞いていた。
また、男女間には以前から喧嘩や揉め事が確認されており、痴情のもつれから暴行に発展した恐れがあるとの通報があった。』
ご主人様「……これは…もしや…」
メイド「たぶん、こないだの私たちのことだと思うんですけど…」
ご主人様「………」パタン
ご主人様「…よし、スイカ持って近隣の皆様に謝りに行くぞ」
メイド「はい…」
ご主人様「でも(スイカ割り)やらせろよ!は言った覚えあるけど、女性の叫び声ってのはなんのことだ?」
メイド「でりゃあーって…私が…」
ご主人様「……」ペチッ
メイド「痛っ!」
ご主人様「もう絶っっっ対スイカ割りやらねぇかな」
メイド(やっぱりこういうのは然るべき場所でやらなきゃダメってことですね)
ご主人様「あと、『以前からの喧嘩や揉め事』ってのもなんのことだか…」
メイド「は?なにすっとぼけてんですか?」
ご主人様「あ?やんのかコラ??」
× 「もう絶っっっ対スイカ割りやらねぇかな」
○ 「もう絶っっっ対スイカ割りやらねぇからな」
ご主人様「……」むしゃむしゃ
メイド「今日のご飯はどうですか?」
ご主人様「ん?美味いよ」
メイド「実は、隠し味にアレをあーしてこーして…」ペラペラ
ご主人様「今さら言うことじゃないかもしれないけど、おまえの料理なかなかうまいよな」
メイド「ほんと今さらですね!もっと日頃から褒めてくれてもいいのに」
ご主人様「いったいどこで覚えてきたんだ?」
メイド「ほとんどは学生の頃やってたバイトですかね」
ご主人様「どこでバイトしてたんだ?」
メイド「えーと…居酒屋さん、中華料理屋さん、イタリア料理屋さん、タイ料理屋さん、お弁当屋さん…他にもあったかな?アイス屋…はちょっと違うか」
ご主人様「そんなにやってたのか!?」
メイド「はい…別にまかないがあるところならどこでもよかったんですけどね」
ご主人様「なるほど」
メイド「もちろんお金も稼ぎたかったんですが、家で料理できるようになるためにいろいろ教えてもらいました」
ご主人様「へー…」
ご主人様「そのわりに料理のラインナップはそこまで多くないような…?俺にもイタリア料理とか作ってくれよ」
メイド「そりゃー私が極めたのは『安い食材を無駄なく使えて美味しい料理』ですから。そういう高いのはお店で食べてください!」
ご主人様「…まぁとにかく料理の腕は自信あるんだな」
メイド「いやいや料理の腕『も』ですよ。他にもいろいろ自信ありますよ?」
ご主人様「うん?他にも?……???」
メイド「なんですかその白々しいリアクション!も少し私の仕事っぷりを評価してください!」
ご主人様「あーしてるしてる。えらいえらい」
メイド「ぜんっ…ぜん心がこもってませんよ。もっと大きな声ではっきりと!」
ご主人様「…えらいねぇ!!!!」バシッ
メイド「ぎゃ!!!褒めながら叩かないでくださいよ!プラマイゼロじゃないですか!」
ご主人様「なにがだよ」
ご主人様「おいメイド、今からちょっと走ってくるわ」
メイド「え!?どうしたんですか急に」
ご主人様「……そういう気分になったんだよ」
メイド「ええ…?怪しいな…なんか企んでます?」
ご主人様「企むもクソもねーよ!ただのジョギングだっての」
メイド「いやいやいや。ご主人様がそんな健全なことするわけないじゃないですか」
ご主人様「あぁ!?どういう意味だそりゃ!?もういい!そんなに言うならおめーも着いてくりゃいいだろ!」
メイド「…いいですとも!着替えてきます!」
メイド「準備できましたー」
ご主人様「ん?おまえそれ…たまに家で運動するときに着てる高校ジャージじゃないな?他にも持ってたのか」
メイド「外で高校ジャージはいくらなんでも恥ずかしいですよ…」
ご主人様「そりゃーそうか」
メイド「これは中学のときのやつです」
ご主人様「…そっちのほうが恥ずかしくねぇか!?つーか物持ち良いな」
メイド「こっちは名前が入ってないし、ちょっとオシャレなんですよ。さすがに窮屈ですけど…」
ご主人様「じゃ、行くぞ!」ダッ
メイド「えっちょっ…いきなり全力ダッシュ!?」
ご主人様「あん?着いてこれねぇのか?」
メイド「いやジョギングってもっとゆっくり、一定のペースで走り続けるのが大事だと思うんですよ」
メイド「そのスピードだとすぐ息切れしちゃいませんか?ランニングなら分かりますが」
ご主人様「なんだよめんどくせーな…じゃあお前のペースでいいから先行きな!俺がついてくから」
メイド「えー…まぁいいですけど…。じゃあいきますよ」タッ
ご主人様「……」タッ
メイド「いや~それにしてもご主人様がジョギングに興味あっただなんて。意外ですね」タッタッ
ご主人様「……」タッタッ
メイド「こうやってご主人様と一緒に外を走る日が来るとは思いませんでしたよ。二人で外出ること自体わりと珍しいのに」タッタッ
ご主人様「……」タッタッ
メイド「これからも時々、こうやってジョギングするのもいいかもしれませんね」タッタッ
ご主人様「……」タッタッ
メイド「あのご主人様…聞いてます?」タッタッ
ご主人様「…ん?ああ悪い、お前のケツ凝視してた」
メイド「は!?なにしてんですか!!?」バッ
ご主人様「いやぁ…いつもはメイド服で隠れてて分からんが、ジャージだとラインがくっきり…」
メイド「はいやめーっ!!こんな下心丸出しのジョギングはもう終了です!撤収!」
ご主人様「待て待て!分かったよ!じゃあおまえの横並んで走るわ!それならいいだろ?」
メイド「まったく…」
メイド「ご主人様も、普段から体動かす習慣をつけといたほうがいいですよ」タッタッ
ご主人様「……」タッタッ
メイド「いつもずーっと部屋にこもってお仕事してるんでしょう?そんなの絶対体に悪いですよ」
ご主人様「……」タッタッ
メイド「室内でできる運動もいろいろありますけど、やっぱり外に出ると気持ちがすっきりしますよね」タッタッ
ご主人様「……」タッタッ
メイド「…ちょっと、また無視ですか?」チラッ
ご主人様「ん…?」ジーッ
メイド「なんですか!今度はどこ見てるんですか!」
ご主人様「思ってた以上に揺れないんだな…」
メイド「ああ胸ね、そりゃまあ揺れるほどありませんから……ってコラぁあ!!!!」
ご主人様「うおっしまった声に出てたか」
メイド「やめやめやめ!!これのどこが健全ですか、世界で一番不健全なスケベジョギングじゃないですか!!!」
ご主人様「わぁかった!分かったから!もうそーいう目では見ないって!な??」
メイド「次やったらマジで帰りますからね!?」
メイド「よく運動しながら音楽聞くんですけど、ジョギング中に限っては音楽なしのほうがいいかもしれないですね」タッタッ
ご主人様「……」タッタッ
メイド「単純に危ないからっていうのもありますけど、自分の足音とか街の音とか…自然と耳に入ってくるそういうのが、結構心地いいんですよね」タッタッ
ご主人様「………」タッタッ
メイド「ほら、こうやって耳をすませると…」
ハァ…ハァ…
メイド「ん?」チラッ
ご主人様「はぁ…はぁ……!」ヨロヨロ
メイド「ストップ!ストーップ!い、一旦やめましょう!顔色やばいですよ!」
ご主人様「えぇ…?何言ってんだよ、まだまだこれからだろ…?」
メイド「いやいや…そんな死にそうな顔で言うことじゃないですって!ちょっと飛ばしすぎました!すみません」
ご主人様「いいってことよ…さぁもうひと踏ん張りぃ…」ヨロヨロ
メイド「だからこれ以上はダメですよ!歩いて帰りましょう!ホラ肩貸しますから!」
ご主人様「はぁ…はぁ…お、おまえ…さては…」
メイド「?」
ご主人様「もう疲れちまって、ギブアップしたいんだろ…なっさけないやつだな…」
メイド「……」イラッ
メイド「よーしそうおっしゃるなら…今から全力疾走で家まで競走しましょうか」
ご主人様「ごめんさすがに無理!帰ろう!ゆっくり歩こう!!」
メイド「はぁー無事帰ってこれた。大丈夫ですか?ご主人様」
ご主人様「こ…こんくれー余裕だっての」ガクガクダラダラ
メイド「いや脚ガクガクで汗ダラダラですよ…」
メイド「あーでも私も…ジャージ暑っつい…」ヌギヌギ
ご主人様「…汗で透けてるぞ。なにがとは言わんが」ボソッ
メイド「…なんで今日そんないやらしい感じなんですかねぇ!?」ガクンガクン
ご主人様「やめ…まじ…死ぬぅ…」
1時間前
ご主人様『なんか無性にムラムラするな…ジョギングでもして気を鎮めるか』
ご主人様『おいメイド!今からちょっと走ってくるわ』
おわり
ご主人様「あっち~~~…」
メイド「暑いですねぇ…湿気がすごい…」
ご主人様「窓閉めてエアコンつけるか…」
メイド「そうですね」ガラガラ
ご主人様「ほいピッと」ポチ
しーん
ご主人様「???」ポチポチ
しーーーん…
ご主人様「つかねぇ!!」
メイド「あらら…」
ご主人様「くっそー…修理してもらうか…」
メイド「連絡します?」
ご主人様「あーいーよいーよ俺が電話する」トトトトッ
ご主人様「あぁもしもし…エアコンが故障しまして…ええ修理を依頼したいんですが…」
ご主人様「え!?明後日の夕方まで来れない!?」
メイド「!」
ご主人様「…そうですか…じゃあそれで…ハイ、お願いします…」ピッ
ご主人様「……聞いての通りだ」
メイド「…い、忙しいみたいですね」
ご主人様「忙しいだぁ…?業者の都合なんて知らんわ!」
ご主人様「明後日までなんて待てるか!今日中になんとかしねぇと…」
メイド「あ…でもご主人様、部屋にもエアコンあるんでしょう?そっちが使えるなら部屋にこもってればいいじゃないですか」
ご主人様「今日はリビングでゆっくりしてたい気分なんだよ」
メイド「出た!謎のこだわり!わがまま!」
ご主人様「うるせえや!」デコピンッ
メイド「痛!…あ、そうだ!ちょっと待っててください」スタスタ
ご主人様「?」
メイド「うちわ持ってきましたよ!」ジャーン
ご主人様「…おう」
メイド「はい、どうぞ」スッ
ご主人様「……は?おまえが扇ぐんじゃねぇの?」
メイド「ああ、いいんですか??」パタパタ
ご主人様「自分に扇いでどうすんだ!俺に扇げよ!」
メイド「えー…ご主人様の気の済むまでやってたら私の腕もげちゃいますよ」パタパタ
ご主人様「もげるか!オラ貸せ!」バシッ
メイド「あー!」
ご主人様「……」パタパタ
ご主人様「大して涼しくねーなぁ…」ポイッ
メイド「……」
ご主人様「今どきこんな効率悪いもん使うの鰻屋くらいじゃねぇか?」パタパタ
メイド「…鰻屋??なんで鰻屋がうちわ使うんです?」
ご主人様「なんでって…そういうの見たことあるだろ?鰻焼きながらパタパタ~って扇いでるとこ…」
メイド「いやぁ私、鰻屋行ったことないんで」
ご主人様「…それは経済的な理由で?」
メイド「もちろん」
ご主人様「そ、そのうち連れてってやるよ…」
メイド「ほんとですね?言質とりましたからね」
ご主人様「……そういえば、お前の部屋にはエアコンないよな?あの部屋ずっと使ってなかったし」
メイド「ええ、ついてないです。だから扇風機使ってます」
ご主人様「貸してくれよ」
メイド「いいですけどあんまり涼しくないですよ。アレたぶん相当古いやつでしょう?最近カタカタ音も鳴るようになったし…」
ご主人様「……」
ご主人様「新しい扇風機買いに行くかぁ…」
家電量販店
ズラァァァッ
メイド「これ全部扇風機ですか?」
ご主人様「おお…さすがにこの時期は気合い入ってんな」
メイド「よりどりみどりですねぇ」キョロキョロ
ご主人様「おい、見ろよメイド」
メイド「なんかいいのありました!?」
ご主人様「空気清浄機だ」
メイド「いや扇風機見ましょうよ…」
メイド「は!これは!」
ご主人様「どうした?」
メイド「お掃除ロボ!私これ欲しいです!」
ご主人様「いいね、こいつがいればお前の給料大幅カットだな!」
メイド「イヤですよ!!」
ご主人様「じゃ諦めな」
メイド「この…『いちぶんのエフゆらぎ』ってなんですかね?」
ご主人様「いちぶんのエフじゃなくて『1/fゆらぎ』だろ。人が心地良さとか快適さを感じるリズムがあるんだよ。たぶん自然の風を再現してるんじゃねぇか」
メイド「へぇー。風は風でしょう?なにが違うんだろう。水素水みたいなものかな。うさんくさー」
ご主人様「怒られるぞメーカーに」
メイド「羽のない扇風機はどうです?実物見るの初めてですけど、こんなのでもちゃんと風出るんですね」
ご主人様「でも羽ありと比べたらちょっと風が弱い気がするな」
メイド「サッカーボールみたいなのもありますよ。インテリアっぽくてかわいい」
ご主人様「…ん!?なんでそんなのが3万もするんだ!?」
メイド「はっ!よく見たらどれも結構高いですよ!扇風機って数千円で買えるものだとばかり思ってましたけど…」
ご主人様「今どきのは多機能に加え見た目も無駄にオシャレだからな…」
メイド「高級路線ってやつですかねぇ」
ご主人様「そういうこだわりも悪くないが、俺的にはもっとシンプルなのが…」
メイド「じゃあこのでかいのなんてどうです!?」ブォオオオ
ご主人様「それ送風機な!シンプル通り越して扇風機ですらねぇよ!!!」
メイド「でも涼しいですよ」
ご主人様「そんなの個人で使うのT.M.Revolutionくらいだろ」
20分後
ご主人様「よし!決めた!」
メイド「私も決めました!」
ご主人様「ん?俺が買うんだからお前が決める必要なくね?」
メイド「えーそういうこと言います~?せっかく着いてきたのに…それにご主人様、こっちのほうが気に入るかもしれませんよ?」
ご主人様「別になんでもいいけどよ…」
メイド「お互いせーので選んだの指しましょう。いきますよ、せーの…」
ご主人様「これ」ピッ
メイド「それ!」ピッ
ご主人様「…一緒じゃねぇか!!」
メイド「本当だ…奇遇ですね」
ご主人様「やっぱやめよ」
メイド「なんでですか!!」
ご主人様「お前なんでこれにしたんだ?」
メイド「それはもちろんお手頃価格だからですよ。むしろそこしか見てませんでしたし」
ご主人様「俺はこのシンプルかつスタイリッシュなデザインが気に入った。値段なんて見てなかった」
メイド「いや見た目はだいぶしょぼいと思いますけど」
ご主人様「あ?俺のチョイスにケチつけるつもりか?…しかしこんな安いとすぐ壊れそうで不安だな」
メイド「は?安物=壊れやすいとは限りませんよ?というかエアコン直ったらもう使わないでしょう?」
ご主人様「ちっ。でもまぁ一致したなら悩むことねぇか…買ってくるわ」
メイド「あ、そうだ。ポイント使ったらもっと安くなりますよ」
ご主人様「ほんとケチくせーなおまえ…」
ご主人様「あ゛~~~」
メイド「うわ…いい歳した大人がそんな子供みたいなこと…」
ご主人様「うるせぇ!強風くらえ!マリリン・モンローみたいにスカート捲れ上がりやがれ!」ブォオオオオ
メイド「ちょっ…やめてくださいよ!」バッ
ご主人様「ハッハッハッハ!エアコンなしの生活なんて考えたことなかったが、扇風機もなかなかいいもんだな!これならしばらくはやっていけそうだ」
メイド「まぁーはしゃいじゃって…」
メイド「…それにしてもエアコン…本当に壊れたんですかね?」ポチッ
ご主人様「つかねーだろ?」
メイド「これ、リモコンの電池切れてるんじゃないですか?」
ご主人様「え?」
メイド「だってほら…パネルの表示自体が消えてますよ」
ご主人様「…ま、まさか……そんな初歩的なミスなわけ…」
メイド「一応、電池取り替えてみますね…」ゴソゴソ
メイド「さぁこれで…」パチッ
メイド「どうかな?」ピッ
ウィイイーーーン…
ご主人様「……」
メイド「……」
ご主人様「…あーやっぱエアコンが一番涼しいわ!ん?なにこれ?扇風機??こんなガラクタはおまえにくれてやるよ!!」
メイド「そんな悲しそうな顔しなくても…」
おわり
暑くなってきて、仕事がひとつ増えました
メイド「~♪」
ピローン
メイド「えぇ?また?」スッ
LINE『コーヒーおかわり頼む』
メイド「はいはいすぐ用意しますよっと」
ご主人様が、やたらとアイスコーヒーを飲むのだ…
メイド「これで6杯目…そんなにガブガブ飲んで大丈夫なんですかね」
メイド「ご主人様、持ってきましたよ」コンコン
ご主人様「おうサンキュ。これ、空のコップ」ヒョイ
メイド(しかもコーヒーカップじゃなくてマグカップだから…氷で多少かさを増してるとしても、一杯200ml以上…)
バタン
メイド(てことは6杯で1200ml……あれ?そうやって考えるとそこまで大した量じゃないのかな?)
メイド「ちょっと調べてみよう…カフェイン、摂取量…」ドキドキ
メイド「目安としては…」
メイド「1日マグカップ3杯まで!?」※WHO基準
メイド「やばい!もう2時間で6杯!こんなの絶対致死量じゃないですか!」※そんなことはありません
ご主人様「うぅ…」
メイド「はっ!今の呻き声は!?まさかさっそく中毒症状が!?ご主人様!」ドンドン
ご主人様「ぐ…」ガチャッ
メイド「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」ガシッ
ご主人様「おい、どけ!ウ〇コが漏れる!」
メイド「は?」
ご主人様「トイレトイレ…」バタバタ
メイド「なんだ…お腹壊しただけか…」ハァ
ジャーーーー
ご主人様「ふう」
メイド「冷たいの飲み過ぎですよ」
ご主人様「そうだな…」
メイド「ほら、温かいの入れましたから」スッ
ご主人様「ん…今日は気が利くな」
ご主人様「ってこれコーンスープだろ!ホットコーヒーじゃねぇのかよ!こんなんで仕事できるかよ!」
メイド「まぁまぁ、結構おいしいですよ」
ご主人様「……」ズズ
メイド「ああ、確かにうめぇわ」
翌日
LINE『コーンおかわり持ってきて』
メイド「これで8杯目…今度は塩分取りすぎなんじゃ…」
ご主人様「おいメイド…カレーにはらっきょうだって言ったよな」
メイド「……そーでしたっけ?」
ご主人様「前にも福神漬け出してたし、その時に言った!いい加減覚えろよ」
メイド「いやぁでも福神漬けのほうが美味しいですし…」
ご主人様「いーやカレーには絶対らっきょうだね。そんなごちゃごちゃしてて何が入ってるかわからんもののどこがいいんだか…」
メイド「むっ…らっきょうなんて、おじさん臭いったらありゃしないですよ!」
ご主人様「お前がなんと言おうが絶対にらっきょうだ」
メイド「絶っっっ対に福神漬けです」
ご主人様「…よし。表出な」ガタッ
メイド「上等ですよ…ただしカレーは残さず食べてくださいね」ムシャムシャ
ご主人様「……」スッ
ご主人様「だいたい、てめぇとは前々から好みが合わないと思ってたんだ」ムシャムシャ
メイド「別にいいじゃないですか、ご主人様が文句つけなきゃ済む話でしょう?」ムシャムシャ
ご主人様「ここらでハッキリさせようや」
メイド「…何をです?」
ご主人様「俺とお前の好みが、どのくらい一致してるのか…あるいはどのくらいかけ離れてんのかってことをだ」
メイド「それハッキリさせてどうなるんですか?」
ご主人様「あんまり合わねぇようならお前とはさよならバイバイだ」
メイド「え!?そんなむちゃくちゃな!」
ご主人様「まぁとにかくやってみようや…名付けて、究極の2択ゲーム!」ドン☆
メイド(なんじゃそら…)
ご主人様「いいか、これからお互いに『〇〇と××、どっちが好き?』てな具合に質問を投げ合う」
ご主人様「その答えが…そうだな、3回も一致すれば、俺たちはなんとか仲良くやっていけるってことになるだろう」
メイド「まーたくだらない遊びを…」
ご主人様「第1問、『きのこの山とたけのこの里、どっちが好き!?』」バン☆
メイド「!!!」
メイド(なるほどこれは確かに究極の2択!)
メイド(個人的にはどっちでもいいんだけど、答えが一致しなきゃいけないわけだから、ここはご主人様が好きそうな方を選ばないと…)
メイド(ご主人様は普段キノコの好き嫌いが多いから、たけのこの里?いやでも、これはしょせんキノコの形したチョコレート菓子…)
メイド(そういえば前にクッキー買ってきたときに硬くて好きじゃないとかぼやいてたような…たけのこの里はクッキーでできてる)
メイド(ということはクラッカーを使ってるきのこの山のほうが…よし、こっちだ!間違いない)
メイド(…いや、待てよ…?そもそもご主人様が素直にどちらかを選ぶだろうか?このひねくれ者のご主人様が!)
メイド「……」
ご主人様「長考だな…こういうのは直感が大事なんだぞ」
メイド「…わかりました!答えは…」
メイド「……ロッテ、パイの実!」
ご主人様「…バカかお前!2択だっつってんだろ。せめて同じ明治から選べよ」
メイド「…さすがに深読みしすぎたか~」
ご主人様「正解はコアラのマーチでした」ニヤリ
メイド「はぁ!?やっぱり2択無視じゃないですか!!ていうかそれもロッテの商品だし!!!」
ご主人様「ん!?そうか、ロッテコアラのマーチか…」
ご主人様「なるほど…そう考えると、お前のパイの実は限りなく正解に近かったわけだな…」
ご主人様「やるじゃねーか。見直したよ」
メイド「ていうか2択捨てた時点で好みとか一切関係ないですよね」
ご主人様「そんなのどーでもいいからほれ、カレーのおかわり頼む」
メイド「あ…はぁ…」
ご主人様「ついでだからもうひとつ…『洋画は吹き替え派?字幕派?』」
メイド「ご主人様がお金出してくれるならどっちでもいーですよ」
ご主人様「…その答え方はずるいよな」
メイド「ご主人様ごめんなさい」
ご主人様「…なんだ藪から棒に」
メイド「許してください」
ご主人様「何をだよ?」
メイド「それを言ってしまうと間違いなく怒られるので、まずは許してください」
ご主人様「ふざけんな!卑怯だぞ!いいから言えよ!」
メイド「これ……」スッ
パカーーーン
ご主人様「お、俺の茶碗…?」
メイド「…割ってしまいました。ご覧のように真っ二つに。申し訳ないです」
ご主人様「…落としたのか?」
メイド「はい。洗ってるときに、ツルッと…」
ご主人様「普段から俺のことが気に入らなくて、わざと落としたんじゃないかぁ~?」
メイド「そんなことしませんって!もし自分でやるなら、もっと恨みを込めてバキバキに粉砕しますよ!」
ご主人様「おい」
メイド「とにかくやってしまいました。ごめんなさい。反省してます」フカブカ
ご主人様「……まぁ割っちまったもんはしゃーねぇよ。代わりの茶碗は…たぶんないよな」ゴソゴソ
メイド「……」
ご主人様「!…なんだよ、いつまでもしょげてんなって。わざとじゃねぇならもういいから」
メイド「いえ…私、初めて失敗らしい失敗しちゃいましたから…ちょっとショックで」
ご主人様「……」
ご主人様「今なんて??『初めて失敗らしい失敗した』???」
メイド「…なにかおかしなこと言いました?」
ご主人様「普段から失敗しまくってるじゃん。むしろ茶碗割っちゃうなんて失敗としちゃ可愛いほうだろ」
メイド「……?」
ご主人様「なんでピンと来てねぇんだよ。こないだ中身入った牛乳パック冷蔵庫から出したまま一晩放置してただろ。その前は、野菜の捨てる部分と間違えて切ったほうをゴミ箱に入れてたよな」
ご主人様「もうすぐ台風が来るってニュースでやってたのに忘れて洗濯物外に干してえらいことになってたし…あと玄関にムカデ出たとき咄嗟とは言え俺の靴で叩き潰しただろ!あれ地味にショックだったんだからな!」
メイド「…そりゃ、ひどいメイドがいるもんですねぇ」
ご主人様「全部おめーの話だよ!」バシッ
メイド「痛ぁ!すいません!」
ご主人様「…それより、手は大丈夫だったのかよ?割れたところで指切ったりしてねぇか?」
メイド「!……あ、はい。それは大丈夫です。洗い物するときは必ずゴム手袋してますから…」
ご主人様「ふーん。そっか…」
ご主人様「ん?待てよ?ゴム手袋してんのに手が滑ったのか?」
メイド「!滑りますよ、そういうこともあるんです」
ご主人様「ほんとかぁ~?」
メイド「わざとじゃないですってば!私…」
ご主人様「?」
メイド「…そんなことするほど、ご主人様のこと嫌ってませんよ…」
ご主人様「…分かってるよ。だからこっちも多少のミスは大目に見てやってるだろ?」
メイド「……」
ご主人様「ん?」
メイド「ご主人様って、結構私のこと気にかけてくれてるんですね。手、怪我してないか心配してくれましたし。ちょっと意外でした」
ご主人様「…なにおまえ、もしかして照れてんの?」
メイド「……茶化さないでくださいよ」
ご主人様「いいか?おめーのミスは、いちいち怒ってたらキリがないから見逃してやってんだよ。あと怪我してねーか心配するのは、ハサミを人に渡すときに刃の部分を持つくらい当たり前のことだ」ペラペラ
メイド「………」ムッ
メイド「はぁー。そうですか。そういう感じですか。せっかく人が素直に…。いや、もういいですよ。ハサミのくだりはいらなかったと思いますけどね!」
ご主人様「なんだ、やっぱ照れてたんだ」ニヤニヤ
メイド「うるさいなぁ、とにかく明日には新しい茶碗買ってきますから!どういうのがいいとか希望ありますか!」
ご主人様「割れたのと同じくらいの大きさのやつな」
メイド「わかりました。とびっきり可愛いデザインのやつ探してきますね」
ご主人様「フツーのでいいって」
メイド「お詫びの意味を込めて花柄にします」
ご主人様「いらねーよその気遣い!」
ちなみにメイドがご主人様の靴で叩き潰したムカデですが、素手で触ろうとするのは危険なので出来れば箒などで追い払いましょう。
メイドは基本的に虫は平気で、なるべく殺さず逃がすよう心がけていますが
ムカデやヤスデ等の多足類は苦手で、ついパニクってしまうようです。
メイド「ご主人様!いつも行くスーパーの前の通りに、いつの間にかパン屋ができてたんですよ!!」
ご主人様「それで?」
メイド「買ってきました!」ドサッ
ご主人様「うおっ…これ全部パンかよ?他の食材は???」
メイド「予定を変更して、今週はパンパーティーにしましょう」
ご主人様「略してパンティーだな」
メイド「略す意味あります??」
ご主人様「つーか勝手に決められても困るぞ。俺、パン食えねぇのに」
メイド「え!?パンが食べれない!?まさかアレルギー!?」
ご主人様「いや、食えないことはないけど…元々あんまり好きじゃねぇんだよ」
メイド「パンが好きじゃない!?そんな人間がこの地上にいるんですか」
ご主人様「いるよ!なんつーかほら…米食わねぇと力が入らねぇんだよ。日本人ってそういうもんだろ?」
メイド「そんなのご主人様だけですよ…。でもほら、いっぱい買いましたから、なにか一個くらい食べたいのあるでしょう?」
ご主人様「うーんそうだな…メロンパンはあるか?」
メイド「メロンパンですか…ありますよ」ガサガサ
メイド「あ!」
メイド「ややややっぱり買ってないです!」サッ
ご主人様「おい!てめぇなに隠してんだ!それメロンパンだろ!!」
メイド「違うんです、これただのメロンパンじゃなくて『1日10個限定!やわらかさの暴力メロンパン』なんですよ!だから譲れません!!」
ご主人様「どんなメロンパンだよ……じゃあいいよ別の選ぶから」ガサガサ
ご主人様「クロワッサン、ベーコンエピ、クリームパン、焼きそばパン…この辺か…」
ご主人様「お前、メロンパン以外にどうしても食いたいのあるか?」
メイド「はー、パン屋でお金気にせず好きなだけパン買うのって、ちっちゃい頃からの憧れだったんですよね…夢がひとつ叶った…」
ご主人様「おいっ!聞けよ」
メイド「え?ああそのパン?もちろんぜーんぶ私のですよ。ご主人様にはひとつもあげません」
ご主人様「ふざけんな!!」スパーン
メイド「しまったつい本音が!」
ご主人様「もういい!お前ひとりで食ってろ!」
メイド「いやぁなんかすみませんね。我慢させてるみたいで…」
ご主人様「みたいじゃなくて我慢してんだよ!!!」
翌日
ご主人様「あぁ?お前なんで米食ってんだ?」
メイド「え!いや、その…」
ご主人様「昨日さんざんうめぇうめぇってパン食ってたじゃねぇか。『もう一生パンでもいい!』って言ってたろ。まさか全部食ったってことはねぇよな?」
メイド「まだ残ってますよ…でもその…あ…飽きちゃいまして…」ボソッ
ご主人様「……は?」
メイド「ほ、ほら、やっぱりご主人様の言う通り…日本人は米食べないと元気出ませんから!ね!?」
ご主人様「……」ベシッ
メイド「痛ぁ!」
ご主人様「お前もうパン屋禁止な…」
メイド「そ、そんな!それだけは勘弁を!!」
ご主人様「この女優、最近よく見るなぁ…」
メイド「そうですね。なんかの映画の主演やって人気出たらしいですよ」
ご主人様「こんなぶちゃいくが主演かよ。この顔じゃせいぜい30点だ」
メイド「…ご主人様、よく知りもしない人に点数つけるなんて失礼ですよ」
ご主人様「よく知ってるやつならいいのか。点数つける時点で趣味悪いだろ?」
メイド「自覚あるならやめましょうよ…。それに人間顔だけじゃありませんから。顔が30点でも性格が100点の人だっていますよ」
ご主人様「じゃあお前俺に点数付けてみろよ」
メイド「…なんの『じゃあ』ですか。まぁでも、そうですねぇ…」
メイド「ご主人様は…顔だけなら…80点かな」
ご主人様「お?意外と高得点じゃん」
メイド「いや高すぎか…70点。…もっと低くてもいいな。60点にしよう。……もう少しおまけして55点…」
ご主人様「どんどん下がってるじゃねーか!」
メイド「でもご主人様全体として見ると、-800万点です!!なぜなら性格がアレすぎるから!!!」
ご主人様「桁が違いすぎるだろ…つーかアレってなんだアレって」
メイド「言ったらたぶん一発でクビにされるんで言いません」
ご主人様「お前もたいがい失礼……まぁいい、それじゃあ俺からも点数つけてやる」
メイド「ふん!えぇどうぞどうぞ!」
ご主人様「まず顔は…」
メイド(ご主人様のことだしどうせ-2億点とかだな)
ご主人様「すげーかわいいから100点満点!」
メイド「はっ!どんなのが来るかと思えば100点?そんな点数じゃ驚きませ…」
メイド「…………」
メイド「へ…???」カーッ
ご主人様「……っ」
ご主人様「だははははは!!!!照れてる!真に受けてるよ!!マジ単純!超純粋!ウソだよバーカ!!なにがカーッだよコイツ!!!」ゲタゲタ
メイド「……」プルプル
メイド「すぐそうやっておちょくって……!ご主人様のひとでなし!!溶けたアイス!!!腐ったアボカド!!気泡だらけのスマホ保護フィルム!!」
ご主人様「なんだよそれ!悪口ヘタクソか!」ゲラゲラ
メイド「じゃあ…なんだろ……覚せい剤所持!!!」
ご主人様「そういうご近所に聞かれたらマジで誤解されそうなのはやめろや!!?」
メイド「ま、真面目に採点してくださいよ!何点なんですか!?正直に言ってください!」
ご主人様「あ~ん?教えな~い。ヒトに点数つけるなんて失礼っつってたもんなぁ?」
メイド「…ご主人様ほんと最低ですね!ほんっとに!!800万なんて甘すぎました!マイナス8兆。いや京です京!もしくは垓!」
ご主人様「垓ってゼロ何個だよ?」
メイド「……えーと?いちじゅうひゃくせんまんじゅうまんひゃくまん……20くらい?」
ご主人様「し、知らねーでテキトー言ってやんの!!!」※合ってます
メイド「うるっさいですね!ご主人様なんてもはや数字じゃ測れない規格外のアレですから!!」
元号が変わったり消費税が上がったり、何か大きな変化があるたびにこのふたり復活します。
嘘です。主な要因はネタ切れですが、他にもいろいろなことがあって1ヶ月以上空いてしまいました。
またそのうち書きますので気長に待っててください。
ご主人様「おいメイド」
メイド「はい?」
ご主人様「ん」スッ
メイド「…なんですかこの封筒。郵便ですか?宛先書いてないですよ」
ご主人様「寸志だよ」
メイド「すんし…」
メイド「…ぇあ!?は!?!?!?!?」
ご主人様「いや驚きすぎ」
メイド「な、なんのつもりですか?給料の前貸しですか!?」
ご主人様「寸志っつってんだろ。日頃のお前の仕事っぷりに、労いの気持ちとこれからも頑張れよという思いを込めて……」
メイド「ねぎらい!???!!!?!!?!???!??!!」
ご主人様「だから驚きすぎだろ……ケンカ売ってんのか」
メイド「な、中見てもいいです?」
ご主人様「もちろん」
メイド(まぁ寸志だし、せいぜい10000円とか、よくて2,3万かな…でもわりと分厚い気が……)カサッ
メイド「いち、にぃ、さん……」ぴら、ぴら
メイド「……」ピラピラピラ
メイド「け、結構……思ってたより……えぇ…?これが寸志…?こんなに貰っていいんです?」
ご主人様「ボーナスてのはだいたい、給料の何ヶ月分とかだからな…お前の月収が…えーと……いくらだっけ…」
ご主人様「…とにかく、そう考えるとボーナスと呼ぶにはちっと少ねぇから、一応寸志ってことで」
メイド「はぁ。あ…ありがとうございます。いやほんとに。まさかこういうの頂けるなんて夢にも思わず…喜びより驚きが勝ってますけど」
ご主人様「おう…」
メイド「……じわじわ嬉しくなってきた……どうしよう。とりあえず肩でも揉みましょうか」
ご主人様「露骨にこびへつらうなや」
メイド「えへへ……新しい靴とか買っちゃおうかな」
ご主人様「大事に使えよ」
メイド「株でもやってみようかな」
ご主人様「話聞いてた???」
翌日
メイド「あの、ご主人様…昨日聞きそびれてましたけど、ボーナスってふつう年に2回貰えるものですよねぇ…」
ご主人様「……」
メイド「次はいつですか?冬ですか?」
ご主人様「あのな、もう1回言うけどあれはボーナスじゃなくて寸志。次がいつになるかなんて決まってねーよ」
メイド「え!?じゃあもうくれないんですか!?」
ご主人様「お前の働き次第ってことだ」
メイド「ケチなこと言わずに来週にでもくださいよぉ…」
ご主人様「はぁ?」
メイド「だってほら…ラルクが昔2週連続でシングル出してたじゃないですか。GLAYに至っては2枚同時にリリースしてましたよ」
ご主人様「なんだそのたとえ。いいか、ボーナス…じゃなくて寸志ってのはシングルじゃなくてアルバムみたいなもんだと思え」
ご主人様「そう気軽に出すもんじゃねぇんだよ」
メイド「でもB'zはベストアルバムいっぱい出してたじゃないですか」
ご主人様「うるせえな!あれは例外!キャリアがなげーからいいんだよ!」
ご主人様「そうだ、お前のボーナスもB'zのベストみたいに5年に1度とかにするか」
メイド「……」しお…
ご主人様「嘘だよ」
メイド「せめて来月…!」パァッ
ご主人様「それは早すぎ」
メイド「チッ」
ご主人様「そんな態度だとこの先1年は貰えないだろうなぁ…」
メイド「!?うそ!嘘です!今のはなんだろう…鳥の鳴き声かな!?」
飴と鞭じゃないけど、たまにはこういうのも…と思ってこれを書いて保存しといたのが2ヶ月ほど前…
投稿しようかどうしようかと悩んでいるうちに、時期がちょっとズレてしまいました。
ネタは鮮度が大事ですね。
メイド「大人の趣味が持ちたいです!」
ご主人様「…ん?」
メイド「大人の趣味が持ちたいんですよ!!!」
ご主人様「俺に言ってんのか??」
メイド「いや他にいないでしょ…」
ご主人様「大人の趣味…大人の趣味ね…」
ご主人様「ゴルフ…とかそういうのか…?」
メイド「それって大人の趣味っていうかオッサンのスポーツじゃないですか?」
ご主人様「おまえ全国のゴルファーにしばかれるぞ」
メイド「そういうのではなくて…もっとメイドやりながら片手間にできそうなのがいいんですよ」
ご主人様「なるほど。じゃあ御朱印集めとかどうだ」
メイド「あー御朱印集め!いいですねー最近若い女性にも人気があって…」
メイド「ってそれめちゃくちゃ時間かかるやつ!!」
メイド「そんなの絶対片手間にできませんよ!1日使うつもりでスケジュール組んで、しかもそれを何回も繰り返すやつ!!!話聞いてました!?」
ご主人様「怒るなよ、冗談だよ…じゃあ手芸だな。アクセサリー作りとかどうだ」
メイド「あ、それいいですね」
ご主人様「んで売って生活費の足しにしろ」
メイド「いや、小銭稼ぎがしたいわけじゃなくてですね…」
ご主人様「なにぃ?じゃあ作ったペンダントだのネックレスだのを身につけて過ごすわけか?年中メイド服のおまえが???コスプレ感増し増しだな!」
メイド「ううっ…そう言われるとちょっと違う気がしてきました…」
ご主人様「ま、せっかくやるならメイドの仕事の延長線上にあるものがいいんじゃねーの」
メイド「と言いますと…?」
ご主人様「マッサージだ!やっぱりメイドなんだからそれくらいはできないとな!」
メイド「その場合、ご主人様が練習台になりますけど…」
ご主人様「俺を実験台に!?やってみろ!ちょっとでも痛くしたらぶっ飛ばされるっつー覚悟があんならな!」
メイド「じゃあどうしろって言うんですか!」
ご主人様「本とかで勉強すりゃーいいだろ」
メイド「本読んだくらいでマッサージの技術なんて身につくわけないでしょう!エロ漫画読んだだけの童貞が初本番でいきなりテクニシャンになれると思いますか?」
ご主人様「うっ…た、確かに…」
メイド「なにかないかなぁ。いい趣味ないかなぁ」
ご主人様「カメラはどうだ」
メイド「私、ファッションでカメラぶら下げてる女子とか死ぬほど嫌いなんですよね。あんな高いものを周囲へのアピールだけに使うとか!」
ご主人様(別にファッションなんて言ってねぇのに…)
ご主人様「じゃあ楽器はどうだ」
メイド「…結構いいかもしれません。ギターとか弾いてみたいです。でもギターこそ高そうですね」
ご主人様「あ、言い忘れてたけどうるせーのはダメだからな」
メイド「うるさくない楽器なんてあります???」
ご主人様「……静かに出来て、実用性があって…」
メイド「かつお金もあんまりかからない…そんな都合のいい趣味ないかぁ…」
ご主人様「…いや、ひとつだけあるな」
メイド「え、なんですか?」
ご主人様「おまえがいつもやってることだ」
メイド「…それってもしかして 」
ご主人様「料理」
メイド「……うぅーん…???」
ご主人様「露骨にイヤそうな顔すんなや」
メイド「イヤっていうか…なんか…結局それ?って感じが…いや料理好きですけどね…でも…うーん…趣味になるのかなぁ……」ブツブツ
ご主人様「…やり慣れてないことを無理に趣味にしようと思っても、すぐに飽きたり、自分に合わないと感じたりすると思うんだよな」
ご主人様「だったら、最初から馴染みがあることややり慣れてることをより深く掘り下げていくほうが、趣味として続けていけるんじゃないか?」
メイド「…なるほど!なんか今日のご主人様めちゃくちゃいい事言いますね!」
ご主人様「だろ?」
メイド「よーし、料理!分かりました!これからはいろんな料理に挑戦してみます!」
ご主人様「まぁ食費は今まで通りだけどな」
メイド「え?それじゃ買えませんよ?オマール海老とか国産和牛とか」
ご主人様「なに作る気だてめぇ」
メイド「なにって…人間の食への欲望をこれでもかというくらい体現した超高級料理を…」
ご主人様「大人しくパンでも作っとけや!!!!」
メイド「“ままどおる”を貰いましたよ」
ご主人様「…なんだぁそれ?」
メイド「東北のほうのお菓子です…こういうの」
ご主人様「へー?マーマレードみたいなもんかね」
メイド「ん…?」
ご主人様「なんだよマーマレードも知らねぇのか」
メイド「…柑橘系のジャムですよね??知ってますけど、これのどこがマーマレード…?中に入ってるのは白あんですよ」
ご主人様「は?マーマレードってのは丸い焼き菓子のことだよ。ジャムってお前なに言ってんだ?」
メイド「…?」
ご主人様「『?』じゃねぇよ、ったくこれだから貧乏人は…」
メイド「もしかして、ご主人様が言ってるの、マドレーヌじゃないですか」
ご主人様「………!?」
メイド「…え、マーマレードとマドレーヌ勘違いしてたんですか?」
ご主人様「………!!!」
メイド「そもそもこれ和菓子ですから、マドレーヌと大して似てませんし、その上マーマレードと間違えるなんて…」プークスクス
ご主人様「おめぇがややこしいもん持ってくるからだろ!」
メイド「うわぁ八つ当たりww」
ご主人様「マジぶっ飛ばすぞてめえ!!」ブンッ
メイド「ひゃー怖い!て包み紙投げないでください!」
ご主人様「ったく…バカにしやがって、おれはそもそもこういう甘いのはあんまり興味ねぇんだよ」パクッ
ご主人様「…あ、うめぇなこれ」モグモグ
メイド「でしょう?」
ご主人様「なんつったっけ?ままれーぬ??」
メイド「もうごっちゃになってるじゃないですか…」
メイド「寒くなってきたし、ストール買っちゃいました」
ご主人様「ふーん」
メイド「ご主人様はこういうの持ってないんですか?」
ご主人様「探せばどっかから出てくるかもしれんが、もう何年も使ってねぇなぁ」
メイド「試しにこれ巻いてみてくださいよ」グルグル
ご主人様「いーよ俺は…!」
メイド「…うん、なかなかイケてるじゃないですか!やっぱご主人様、きちんとオシャレすればそれなりに…」
ご主人様「いらんっつーの!」ほどきほどき
メイド「ああっ!?」
ご主人様「素材がやっすいやつは首がチクチクするから嫌いなんだよ。買うならもっと上質なやつを買え!」
メイド「えー…ちょっと贅沢して高いやつ選んだのに」
ご主人様「お前が自分で使うために買ったんだろ?ほら巻いてやるよお嬢さん」グルグル
メイド「あの…ちょっと…」
ご主人様「これでよし!」
メイド「わぁインド人みたーい…」
メイド「じゃなくて!頭に巻いてどうするんですか!!!」
ご主人様「でもふざけてやったわりにはカワイイ感じになってるぞ」
メイド「カワイイ!?これが!?…ま、まぁこれは…私という素材が上質だということですね!」
ご主人様「……」イラッ
ご主人様「よォし今度はお望み通り首に巻いてやらぁ!!」グルグル
メイド「ぐえぇ…!じょ、冗談なのにぃ…!これ一番やっちゃダメなやつ…!」ギリギリ
ご主人様「なぁお前、新しいポコモンやりたくないか?」
メイド「急になんですか…?新しいポコモン?えーと…塩と胡椒でしたっけ」
ご主人様「矛と盾だよ」
メイド「うーん。私は別に…そんなに興味ないですね」
ご主人様「…そうか。じゃあいい」
メイド「えっ…?ご主人様のほうがやりたいんじゃ?」
ご主人様「うっ…」
メイド「なにが『うっ』ですか、欲しいなら自分で買えばいいでしょう?前にピカピーのやつやってたし、今更…」
ご主人様「そこなんだよ」
メイド「はい?」
ご主人様「確かに去年、ピカブイ(※)は買った。だけど俺ぁ実はポコモンシリーズを長年追っかけてるわけじゃねーんだ」※Let's Goピカピー&デーブイ
メイド「?」
ご主人様「俺はゴリっゴリの初代厨なんだよ」
メイド「初代厨…つまりほかのシリーズは認めてないってことです?」
ご主人様「そうだ。ピカブイは初代のリメイクだからつい手が出ちまったが、純粋な新作はもう十何年とやってねぇ」
メイド「ふーん…でも、初代厨っていうなら当然今作もスルーでしょう?なんで興味持ってるんですか?」
ご主人様「…ネットで猛烈に叩かれててなぁ、逆にちょっとやってみたくなったんだよ」
メイド「そんな理由で…」
ご主人様「だからお前に買わせて、お前が遊んでる様子を見て、良さそうならご主人様権限でぶんどってやるつもりだった」
メイド「ガキ大将かな?」
ご主人様「今作は、ポコモンが巨大化する新機能『デカマックス』ってのがあるらしいぞ」
メイド「でかくなってどうすんです…?」
ご主人様「異なる種類の化石同士を組み合わせて復元できるらしいぞ」
メイド「いや同じ種類同士で組み合わせたらいいじゃないですか」
ご主人様「なんと、盾と矛とで一部ジムリーダーが違うらしいぞ!」
メイド「どうせなら全部変えたらいいのに」
ご主人様「テメエ文句ばっか言ってんじゃねえぞ!!買う気ねーのか!?」
メイド「なにキレてんですか!?別にいらないって言ってるのに!」
ご主人様「じゃあ俺が買っても絶対にやらせてやらんからな!」
メイド「いいですよ別に…てことは、やっぱ買うんですね?」
ご主人様「…いやぁ?買わないけど??」
メイド「あ…そう…」
翌日
ご主人様「なぁもし買うとして最初の3匹はどれがいいと思う?」
メイド「めちゃくちゃやりたがってんじゃないすか…」
メイド「朝ご飯できましたよ」
ご主人様「おうサンキュ…テレビつけてくれるか」
メイド「『サッパリ』ですよね。ご主人様ほんとこの番組好きですねぇ」
ご主人様「まぁ、情報番組なんてどれも一緒なんだよ。わざわざ見る必要ないんだが」
ご主人様「しかしこの『サッパリ』は女子アナがかわいい!」
メイド「あーたしかに可愛いですよねこのアナ…」
ご主人様「違う、こいつじゃない!このあと出てくるアナだ」
メイド「このあと?」
テレビ『お待たせしました、今日の占いコーナー♪』
ご主人様「これ!このアナ!めちゃ好み!おっぱいもでけぇしな」
メイド「……ふーん」
テレビ『2位から11位はコチラ!』ズラーッ
ご主人様「おうし座が入ってねぇな」
メイド「私のいて座も入ってません」
ご主人様「てことはどっちかが1位で、どっちかが最下位だな」
メイド「正直どーでもいいですけどねー…」
テレビ『今日の1位は…いて座のあなた!ラッキーカラーはエメラルドグリーン!』
メイド「やった!1位ですよ私!嬉し~!」
ご主人様「どうでもいいんじゃなかったのかよ」
メイド「あ…てことは…」
テレビ『そしてざぁんね~ん!本日最下位はおうし座のあなた!ラッキーカラーはどどめ色…』
ご主人様「……」
メイド「……」
ご主人様「…俺がヘコんでると思ってるだろ」
メイド「え?そ、そりゃ最下位だし…」
ご主人様「わかってねえな~~~!これが目当てだったんだよ!」
メイド「目当て?」
ご主人様「聞いたか?今のアナの『ざぁんね~ん!』あの嗜虐心たっぷりの言い方がゾクゾク来るわけよ!」
ご主人様「このために毎日占い見てんだからな!いやー今日はいい日になるぞ!」
メイド「ご主人様…ときどきナチュラルにキモいこと言いますよね」
メイド「ご主人様、マナ雪2見にいきません?」
ご主人様「…マナ雪…『真夏の雪見だいふく2』か。そもそも1を見てねぇからなぁ」
メイド「ええ!あの名作を見ていない!?宗教上の理由ですか!?」
ご主人様「どんな宗教だ…俺は昔っからああいう3DCGのアニメーションが好きじゃねぇんだよ」
メイド「そうですか…。じゃあ諦めますね」ガックリ
ご主人様「なんでだよ。ひとりで観てくればいいだろが」
メイド「う~ん…私、見たあとに『あれがよかったあそこはダメだった』って言い合うのが好きなんですよ。ひとりじゃそれができない…」
ご主人様「なら友達誘って…いや、そうか。友達なんていないんだったな…」
メイド「いますよ少しは!!!ただ急に誘って来てくれるかどうか…」
メイド「ていうか単純にひとり映画って…すごい寂しい感じするじゃないですか」
ご主人様(俺はそういうの全然気にしねぇんだけどな…)
ご主人様「よしわかった…じゃあお前、今から1の内容を俺に丁寧に教えろ」
メイド「え?」
ご主人様「それを聞いて、俺が『なるほど面白い映画だな、続編見に行くか』って気になったら俺もついてってやる」
メイド「なんでそんなめんどくさいことを…」
ご主人様「嫌ならひとりで寂しく観てくればいいさ…」
メイド「わ、分かりましたよ!えーとまず、雪が降る街で1人の少女が…」
10分後
メイド「で、ラストはでろでろに溶けた大福をみんなで囲んであの名曲を歌うわけですよ。ね?傑作と言われる理由が分か…」
ご主人様「zzz…」
メイド「……。しばいたろかコイツ…」
ご主人様「んお…終わったのか…。なげー映画なんだな。3時間くらい喋ってたんじゃないか?」
メイド「んなわけないでしょ!本編が2時間弱なのに!」
ご主人様「ま…長々と語ってくれたお礼に、着いてってやることにしよう」
メイド「着いてったってご主人様、絶対に映画館でも寝ちゃうじゃないですか!?」
ご主人様「そりゃ内容次第だろ、絶対ってことはない。(まぁ九分九厘寝ると思うが…)」
メイド「あ、じゃあ4DXとかどうです?座席が動いたり水がプシューって出てきたり…さすがに起きてられますよね?」
ご主人様「あれたぶん3000円くらいするぞ。俺は別にいいが、貧乏性のお前に出せるか?映画1本に3000円…」
メイド「た、高すぎる…!TSUTAYAなら好きな映画30本借りられるのに!」
ご主人様「旧作だけな」
メイド「しかも…ちょっと待ってくださいよ…!私、普段あんまり映画見ないから、たまに映画館行くと浮かれちゃって
欲しくもないパンフレットとかポップコーン買っちゃうタイプなんですよ!?ヘタすると諭吉が飛んでいってしまう…!」
ご主人様「それは我慢しろや」
メイド「なんか、見る気なくなっちゃったなぁ。やっぱりやめときましょうか。どうせまたテレビでやるでしょうし…」
ご主人様「そんときゃ俺も一緒に観てやる」
メイド「…約束ですよ」
ご主人様「ただしおめー、途中で寝たりしたら引っ叩いて起こすからな」
メイド「ど、どの口がそれを…!」
気がつけば、このスレ立てて丸一年経ってました(放置してた時期もありましたが…)
これからも、こんなゆるゆるペースで続けていきますので、よろしくお願いします。
メイド「ご主人様、今年の流行語が発表されましたけど、知ってるのありました?」
ご主人様「いやぁ毎年ちらっと聞くけど『流行ったか?』ってのばっかで興味ねぇんだよな」
メイド「あな番とかサブスクとか」
ご主人様「今年はそういう略語が多かったのか?」
メイド「いえ別に…なんか私的にも興味ないやつばっかでしたし。じゃ、ご主人様の中で流行った言葉ってあります?」
ご主人様「………」
メイド「ないんですね?」
ご主人様「…生ハメ」
メイド「…は?今、なんて??」
ご主人様「生ハメ」
メイド「急に下ネタぶっ込むのやめてくださいよ!心臓に悪いんで!」
ご主人様「下ネタじゃねーよ」
メイド「じゃあなんですか!」
ご主人様「略語だよ。『生』意気で『は』たらかない『メ』イドで生ハメ」
メイド「はあ…なるほど…」
メイド「…いやいやいやなるほどじゃなくて。それ私のこと言ってます?」
ご主人様「他にいねぇだろ」
メイド「生意気は100歩譲ってまぁいいとして、働かないは納得いかないんですけど!?」
ご主人様「なんだったらいいんだよ」
メイド「生意気だけど可愛くて働き者のメイド、にしましょう!」
ご主人様「生カハメ…?ダメだな、語呂がよくない」
メイド「語呂なんてどうでもいいじゃないですか」
ご主人様「…待てよ!閃いたぞ!…生意気で可愛くて働き者でだらしないメイドだ」
メイド「だ、だらしない!?私が!?」
ご主人様「まぁいいから、頭文字をとってみな」
メイド「…なま…か…は…だ…め…???」
ご主人様「『ま』はいらない」
メイド「なかは…だめ……」
メイド「ってちょっと!やっぱり下ネタじゃないですか!!いい加減にしてくださいよ!!!!」
ご主人様「うわマジで怒ってるよ。ぴえん」
メイド「……なんです?それ」
ご主人様「流行語だよ…」
ご主人様「あああ疲れた…糖分が足りねぇ…甘いもんが欲しいな」チラッ
メイド「……」ウィーン
ご主人様「甘いものが食べたいなぁ」チラッ
メイド「……」ガーッ
ご主人様「……」ズンズン
ご主人様「掃除機の音で聞こえねぇかぁ!?甘いもんが食いてぇなぁああああ!!!」
メイド「うるさっ!鼓膜破れたらどーすんですか!」
ご主人様「破れねぇよ!」
メイド「…甘いものぉ?お饅頭ありますから、それでよければあげますよ」
ご主人様「分かってないな…そういうのじゃないんだよ」チッチッチ
メイド「じゃあどういうのです?」
ご主人様「和菓子じゃなくて洋菓子の気分なんだ」
ご主人様「それも…そうだな…シュークリーム!が食べたい」
メイド「そんなもの家にはないですよ…ほら掃除の邪魔なんであっち行っててください」シッシッ
ご主人様「お前さ。こういう時に…」
ご主人様『わかりました!すぐに買ってきます!(裏声)』
ご主人様「…って駆け出すのがメイドってもんじゃねぇのか?」
メイド「そんな汚い声のメイドさんはこの家にはいませんよー」
ご主人様「うるせぇな!減らず口たたいてねぇですぐ行ってこい!」グイグイ
メイド「わ、分かりましたから!押さないでください!」
ご主人様「ほら3、2、1、ゴー!!」
10分後
メイド「はい、買ってきました…。どうぞ」ホカホカ
ご主人様「そうそうやっぱり寒い日にはホカホカの……って肉まんじゃねぇか!」
メイド「あっ間違えた…これは私が食べる分でした。シュークリームはこっちです」スッ
ご主人様「ったく…サンキュ」ガサガサ
ご主人様「いただきマッスル」パクッ
ご主人様「!」
メイド「…どうしました?」
ご主人様「違う…これじゃない」プルプル
メイド「…お望みのシュークリームですが?」
ご主人様「俺が食べたいのはもっと…生地がカリカリのやつだ…」
メイド「あーカリカリのやつ。ある!ありますねそういうの!私としたことが~!」
ご主人様「ハハハ…ウッカリさんだなお前は!」
メイド「アハハハハ…」
メイド「今からもっぺん買ってこいと…?」
ご主人様「…頼んだぞ」ポン
メイド「…冗談でしょう?明日じゃダメなんですか!?これで我慢してくださいよ」
ご主人様「今日だ…今日のうちにカリカリのシュークリーム食べないときっと俺は死ぬ…」
メイド「でも…さっきのコンビニにはそんなの売ってませんでしたよ!」
ご主人様「コンビニはひとつじゃない。きっとどこかにあるはずだ。その足で探すんだ!」
メイド「あの…えーと…その…」
メイド「一発殴っていいです?」
ご主人様「えっこわ…ダメに決まってるだろ…」
メイド「……」
バタン
ご主人様「無言で出て行っちまった…さすがに怒ったかなアイツ。悪いことしたなぁ(でも止めない)」
40分後
メイド「……」ガチャッ
ご主人様「お、おかえり…ずいぶんかかったな…どこまで行ってたんだ?」
メイド「……」ドサッ
ご主人様「!?なんでエコバックなんだ?コンビニ行ったんじゃないのか?」
メイド「作ります。私が。今から」
ご主人様「作るぅ!?カリカリのシュークリームを!?」
メイド「カリカリのシュークリームを。材料調べて、スーパーで揃えました」
メイド「…文句ありませんね?」ギロッ
ご主人様「…ない…です」
メイド「なら大人しく待っててください」
ご主人様「……ハイ」
メイド「ふー……」スタスタ
ご主人様(なんて恐ろしい目だ…やっぱ怒ってるぞ…)
2時間経過
ご主人様「あーシュークリーム…シュークリーム~…カリカリの…食べたい…」グルグル
メイド「できました」トントン
ご主人様「待ってましたぁ!」ガチャッ
ご主人様「あれ…?持ってきてないのか?」
メイド「1階にあります。とりあえず降りてきてください」
ご主人様「お、おう…」
リビング
ご主人様「うわっ!?多くね!?これ全部お前が!?」
メイド「もちろん。時間かかりましたがとりあえず20個作りました」
ご主人様「すげ…」
メイド「お口に合うかどうか…まずはひとつ食べてみてください」
ご主人様「じゃあ…いただきます」スッ
ご主人様「!」カリッ
ご主人様「こ、これだぁ!!この食感!まさに理想のシュークリーム!甘さも絶妙だ!」
メイド「それはよかったです」
ご主人様「無理言ってごめんなぁ!?俺が悪かったよ!」ガバッ
メイド「いえいえお気になさらず~。だから抱きつかないでくださいね」ヒラリ
メイド「とにかく今は心ゆくまで味わってください。あと19個ありますから」
ご主人様「……」ピクッ
ご主人様「お、お前は食べないのか」
メイド「私はいいです。肉まん食べましたし」
ご主人様「俺ひとりでこれ食うの…?」
メイド「えっ?まさかご主人様…全部食べられない、なんて言うつもりはないですよね?」
ご主人様「……」チラッ
ご主人様(…15個なら…いやキツイな。10…も無理そう…。たぶん7個くらいが限界…)
メイド「あれだけ食べたがっていたのに…せっかく手作りしたのに…まさか、残すつもりじゃないですよねぇ!!??」
ご主人様「ま…まさか、そんな…ねぇ…」
ご主人様「頑張る…かぁ…」パクパク
メイド「さて、材料余ってるんであと10個くらい作っちゃいますか…」
ご主人様「!?」ブハッ
ご主人様「ゴホゴホ…いや、いいよ!20個もあれば十分…」
メイド「遠慮しないでください、私はご主人様の喜ぶ顔が見たいだけですから♡」ニコッ
ご主人様(目が笑ってない…)
ご主人様「……わ~い」
メイド「ご主人様ったら白目剥くほど嬉しいんですかぁ?」
ご主人様「オイシイ…オイシイ…」ムシャムシャ
メイド「ちなみに夕飯はご主人様の大好きなカニクリームコロッケにするつもりですが…」
メイド「この感じだと食べられそうにないですね。いや~残念」ニヤニヤ
ご主人様「謝ったじゃん俺!謝ったじゃぁん!!!」
ちょっとだけおまけ
ご主人様「おまえ、シュークリーム作りの才能あるぜ」
メイド「ホントですか?」
ご主人様「メイドさんの手作りシュークリーム屋さん。流行りそうだな。店開けよ」
メイド「なんだかマニアックですね…」
メイド「私はメイドの手作り肉まん屋のほうがイケると思うんですけど」
ご主人様「そっちのほうがマニアックじゃねぇ?」
メイド「あけましておめでとうございます…」
ご主人様「深々と頭を下げるのはいいけどよ、クリスマスはどうしたんだよ」
メイド「はぁ…いろいろ忙しかったので、書けなかったんじゃないですか」
ご主人様「まぁ時間があったとしても、書けるような内容じゃないもんな」
メイド「え?」
ご主人様「俺たちあんなことやこんなことまでしちゃったからな…」
メイド「な、なんのことですか!?」
ご主人様「ここではちょっと…」
メイド「思わせぶりなこと言わないでくださいよ!みんな信じちゃうでしょう!」
ご主人様「なに照れてんだよ…俺とお前の仲だろ?」
メイド「だからそういうのやめてくださいって!!!」
ご主人様「一緒にクリスマスケーキ作って…楽しかったよなぁ?」
メイド「急にピュア!!!」
年内に一回くらいは更新したかったけどできませんでした。すみません。今年もよろしくお願いします。
ご主人様「結局この世に、良い肉以上のご馳走って存在しないと思うんだよ」
メイド「…なんの話ですか?」
ご主人様「うまいステーキが食いてぇなって話」
メイド「ああ、いいですねぇ。美味しいステーキ屋…どっかにありますかねぇ」
ご主人様「ねぇだろうなぁこのへんには」
メイド「でさぁねぇ~」
ご主人様「でもどうしても食べたい。となりゃあ…」
メイド「となりゃあ?」
ご主人様「家で焼くか!!」
メイド「おおっ!?」
ご主人様「しかも肉は通販で探す!」
メイド「通販!?マジですか!?えらく気合い入ってますね!」
メイド「でもそれだと今日は食べられないんじゃ…」
ご主人様「分かってねぇな。こういうのは、思い立ってすぐ食うより『食べたい気持ち』を数日熟成させたほうがいいんだよ」
メイド「いやぁ、私は思い立ってすぐ食べないとどうでもよくなっちゃうタイプですね」
ご主人様「じゃあお前は食わなくていいぞ」
メイド「ウソ!ウソです!半年待ってでもいい肉食べたい!!」
ご主人様「じゃあ俺が最高の肉見つけて注文しといてやるからよ、焼くのはお前に任せるぞ」
メイド「え~……ハイ」
3日後・夜
メイド「ご主人様、なにか荷物届きましたよ!」
ご主人様「なにかって、肉しかねぇだろ!」
メイド「開けちゃっていいですか!?」ビリビリ
ご主人様「聞く前に開けてるじゃねぇか」
メイド「おお…!これは…」
ご主人様「ご存知、宮崎牛だ!」
メイド「へぇ~宮崎牛ですかぁ…!初めて見ました!」
メイド「…でもどうせなら神戸牛とか松阪牛がよかったなぁ」ボソッ
ご主人様「ハイお前もう食う権利ナシ!俺一人で食べまーす!」
メイド「わああ!冗談ですって!」
ご主人様「宮崎牛ナメんなよ。これ2枚で14000円すんだからな」
メイド「い、いちまんよんせん!?てことは肉1枚7000円!?」
ご主人様「ま、今年1年を締めくくる贅沢だと思えば安いもんだ」
メイド「まだ今年始まったばかりですけど…」
ご主人様「よし!んじゃさっそく焼いちゃってくれ!」
メイド「いやいや」コンコン
メイド「カチカチに凍ってますから、まずは解凍しないと」
ご主人様「火にかけりゃ溶けるだろ?」
メイド「そんなことしたら中が凍ったままの台無しステーキになっちゃいますよ…」
ご主人様「何時間くらいで溶けるんだ」
メイド「今みたいな寒い時期は解凍に時間がかかりますから、冷蔵庫に入れて明日まで放っておきます」
ご主人様「明日ぁ!? おい聞いてねぇぞ!今日は食べられねぇのかよ」
メイド「え、でも食べたい気持ちを熟成させてうんたらかんたらって…」
ご主人様「誰だよそんなワケ分からねぇこと言ったのは。食いてぇときに食うのが一番に決まってるだろ」
メイド「………」
ご主人様「じゃあ今日の晩飯は?」
メイド「もやし炒めです」
ご主人様「なるほど、明日のステーキに備えて食のハードルをぐっと下げておくわけだな」
メイド「…私のもやし炒めがしょぼい料理みたいな言い方しますねぇ」
ご主人様「あ、いや違う!今のは言葉のあやってやつで…!」
メイド「ご主人様のはもやし抜きにしようかな…」
ご主人様「何が残るんだそれは」
さらに翌日
メイド「今から付け合わせの野菜とか、その他もろもろを買ってきます」
メイド「冷蔵庫の肉はいい感じに解凍できてる頃だと思いますが、勝手に出したりしないでくださいよ」
ご主人様「…それ、フリかぁ…?」
メイド「絶対に冷蔵庫から出さないでくださいね!ではいってきます」ガチャ
ご主人様「おう」
バタン…
ご主人様「フリ以外の何者でもねぇだろ」スタスタ
ご主人様「……」ガラッ
ご主人様「おー溶けてる…これもう食えんじゃねぇか」ツンツン
ご主人様「……」
ご主人様(なんで俺が俺の金で買った肉をアイツにも食わせてやらなきゃならないんだ…?別に俺一人で食っちまってもいいハズだよな)
ご主人様「高級シャトーブリアンだぞ…アイツには贅沢すぎるだろ…」ゴクリ
\ライン!/
ご主人様「うおぉビックリしたぁ!」
ご主人様「なんだよ…メイドからか」
メイド『一人で食べようとかバカなこと考えないでくださいよ😠』
ご主人様「こいつ、エスパーか…?」ドキドキ
メイド「ただいま帰りましたー!」クルクル
メイド「あ!やっぱり肉出してる!」
ご主人様「み、見てただけだよ!」
メイド「どうですか?解凍できてます?」
ご主人様「できてんじゃねぇかな」ツンツン
メイド「じゃあ常温になるまで、そのまま置いておきましょう」
メイド「その間に、付け合わせの野菜だけ先にやっときますか」テキパキ
ご主人様「…なにか手伝おうか?」
メイド「じゃあ良さげなお皿出しておいてもらえますか」
ご主人様「良さげな皿?普通のでいいよ」
メイド「それじゃ小さくないです?」
ご主人様「いや、肉は火ぃ通せば多少縮むはずだし、野菜だってアホみたいに盛り付けるもんじゃねぇし、これで充分だろ」
メイド「こういうのは大きめのお皿にちょこんと盛ってあるのがオシャレなんですよ。高級料理ってそういうものでしょう?」
ご主人様「分かったよ…」
メイド「本当は黒い石でできたのがいいんですけどね」
ご主人わ様「一般家庭にそんなもんあるか」
メイド「さて、そろそろ焼きますか…」
ご主人様「いよいよだな」
メイド「まずは肉に塩、胡椒を振ります」バッバッ
メイド「しっかりと…」バッバッバッバッ
ご主人様「やりすぎじゃねぇか?」
メイド「……」ピタッ
メイド「まだ大丈夫です!」バッバッバッバッ
ご主人様「ホントかよ…」
メイド「そしたら、フライパンに牛脂を溶かしておきます」ボッ
メイド「さらにフライパンをもうひとつ…今日の私は二刀流です」ボッ
ご主人様「なに?フライパンふたつでいっぺんに焼くのか?」
メイド「なにか問題が?」
ご主人様「肉は一枚ずつ集中して焼いてくれよ!」
メイド「まぁ任せてください」シュウウウ~
ご主人様「煙上がってるぞ!?」
メイド「…大丈夫ですって!気が散るから向こう行っててください!」
ご主人様「ダメだ!俺が見てねぇところでおかしなことされたら困るからな!!」
メイド「別に何もしませんよ!…さぁそんなこと言ってる間に肉を投入!」ジュッ
ご主人様「おおっ!」
メイド「あ!そうだ!焼き加減はどうしますか!?」バチバチバチ
ご主人様「じゃあ…レアで」
メイド「レアとか言われてもよく分かんないんで、とりあえず美味しく焼きますね」
ご主人様「なら聞くなや!」
メイド「一旦弱火にします。この状態で1分くらい…」
ジュウウウウ…
ご主人様「……いい音だなぁ。いやまったくこの世で一番耳に染みる音かもしれんな」
メイド「なに浮かれてるんですか…」
メイド「…あれ?トングは??」
ご主人様「お前さっきから大事そうに持ってるじゃねえか…」
メイド「あっあっ…ホントだ…ぼーっとしてました」
ご主人様「浮かれてるのはどっちだよ」
メイド「さぁ肉をひっくり返しますよ~」
メイド「はいっまずは片面の焼き加減!」クルッ
ご主人様「美味そうじゃん!」
メイド「もう片方もすぐにひっくり返す!」クルッ
メイド「ここでまた強火に………あ!!!」ハッ
ご主人様「…ん!?どうした!?」
メイド「にんにく!入れ忘れてました!どうしましょう!?」
ご主人様「いいよもうそのまま行け!」
メイド「でもにんにく入れないと香りが…」
ご主人様「いいから肉に集中しろ!焦げるぞ!!」
メイド「じゃあにんにくなしで…あーあ失敗しちゃったな…」
メイド「なーんて落ち込む素振りを見せつつも、ここですかさず火を弱火に!」カチッ
メイド「ここからの時間で焼き加減が決まります。目で見て、ご主人様がいいと思うタイミングで止めてください」ジュウウウ…
ご主人様「……」
ご主人様「もういいぞ!」
メイド「え~?まだ早いと思うけどなぁ…」
ご主人様「じゃあ言うなや!!!」
メイド「こ、このへんにしておきましょうか」カチッ
ご主人様「あとは盛り付けるだけだな!」
メイド「いえ!盛り付けてから少し肉を休ませます」
ご主人様「………」
メイド「なんですかその顔…ここまで来てお預け食らうのがそんなに嫌ですか?」
ご主人様「それもあるが、まず『休ませる』ってなに?」
メイド「……え?」
ご主人様「料理うまいやつってすぐ『休ませる』とか『寝かせる』とか使うけど、どういう意味なんだよ」
メイド「そ、そうすることで味がいい感じになるんですよ!」
ご主人様「いい感じってなんだよ。さてはてめぇもよく知らずに使ってるだろ!」
メイド「…だって全部ネットで調べた情報ですし!なんか文句ありますか!そもそも私、ステーキなんて焼いたことないんですもん!」
ご主人様「ステーキ焼いたことないんですもん!?」
メイド「そうですよ!せっかくいい肉買うって言うんだから、しっかりした焼き方を予習して、万全の体制で迎えようと…それが肉に対する礼儀ですよ!」
メイド「肉が肩もめと言ったら肩を揉み、喉が渇いたと言うなら水を与え、焼いたあとは休ませる!そう、これこそがメイドの嗜みという…」
ご主人様「話長い。肉が冷める」
メイド「………はい。もう食べ頃ですね」
ご主人様「肉盛り付けた。野菜も。あとなんだ?調味料か?」
メイド「岩塩とわさび醤油は用意しました」
ご主人様「完璧、超有能。よっし食うぞぉ!いただきます」
メイド「いただきます!」
ご主人様「……」
メイド「なにじっと見てるんですか」
ご主人様「いやぁなんか緊張してな…お前こそなに肉をナイフでちょんちょんつついてんだよ。行儀悪いぞ」
メイド「ちゃんと焼けてるかどうか不安で…」
ご主人様「どれ…」スクッ
ご主人様「お、柔らかい!」
メイド「マジですか!?箸でも切れちゃう!?」スッ
メイド「ああっ!ダメだ!テレビでよく見る『箸で切れるくらい柔らか~い!』っていうのやってみたかったけどさすがにそこまでではなかった!」
ご主人様「握力が足りねぇんだ」
メイド「そういう問題じゃないと思います」
メイド「では…7000円のお肉…」ソーッ
メイド「えいっ」パクッ
メイド「!!!!」ピシャーーーン
ご主人様「ど、どうした…」
メイド「おいひい…おいしすぎる…ショックでちょっとちびりそうになりました…」
ご主人様「もしちびったら家から叩き出すけどな」
メイド「えーちょっとこれ…美味しすぎないですか??7000円の肉ってこんなに…神かな???」
メイド「いや、私の焼き方が上手すぎるのか…?もしやステーキ初挑戦にして名店シェフに並んでしまった…???」
ご主人様(名店の肉なんて食ったことねぇくせに…)
メイド「肉…これが肉なら、今まで私が食べていたものはなんだったんですか?私のこれまでの人生とは、仮初のものだったのかもしれない…ここから新しく始まる…そんなことを予感させる極上の一切れ」
ご主人様「バカじゃねえの?」
メイド「はぁ…幸せ……」モグモグ
メイド「これはまるで、牛の天使の仮面舞踏会…」ジーン
ご主人様「もうなんのこっちゃ分からんわ」
メイド「ん!?え!?ご主人様食べるの早くないですか!?もうほとんど残ってない!」
ご主人様「おめぇが遅ぇんだよ。いちいち大袈裟なリアクションしながら食ってるからだ」
メイド「ごっ、ご主人様が料理への反応薄いのはいつものことですけど…この7000円の宮崎牛でもそんなもんなんですか!?」
ご主人様「……うめぇよ…満足してる。かなりな」
メイド「ほんとですかぁ~?」
ご主人様「ほんとほんと…いや…なんと言えばいいか …俺ぁそういう食レポみたいなのできねぇから…」
ご主人様「……」
ご主人様「…やばい…泣きそうになってきた」
メイド「なんで!?」
ご主人様「味を思い出して感動して泣くくらいにはうまかった…」
メイド「じゃあ最初からそのリアクションしてくださいよ…」パクッ
メイド「いやぁでもホント美味しいです!これは今までご主人様から受けた酷い仕打ちがすべて帳消しになるくらい感動しました!」ニコニコ
ご主人様「ああそう…」
メイド「はぁ…でも、150gって意外と少ないですね…もうあとこれだけしかない」
ご主人様「お前が次になに言うか予想できるから先に答える。高かったからだよ」
メイド「なんでもっと大きいの買ってくれなかったんですか!」
ご主人様「高かったからだよ!!!!!!!」
メイド「ごちそうさまでした」ペコリ
ご主人様「ごちそうさま」
メイド「ご主人様、こんな美味しいお肉を買って下さりありがとうございました…」フカブカ
ご主人様「いやいやそんなご丁寧に…こちらこそ美味しく焼いてくれてどうもありがとう」フカブカ
メイド「また月イチくらいでこういうの食べたいですね!」
ご主人様「…は?次なんてねぇよ。お前はこの先一生『あのとき食べたお肉美味しかったなぁ』って今日を懐かしみながら生きるんだ」
メイド「……まじすか?また急にいいもの食べたくなったりしません?」
ご主人様「なるかもしれんしならんかもしれん…また親切にお前の分を用意してやるかどうかも分からん」
メイド「そんなぁ」
ご主人様「そんなに食べたきゃ自分で金貯めて買えばいいじゃねぇか」
メイド「……じゃあ、そのときはご主人様が料理してくださいね」
ご主人様「やだよ。どこの世界に主人に飯作らせるメイドがいるんだよ」
メイド「!」ガーン
ご主人様「じゃ、片付け頼んだぞ」スタスタ
メイド「あっ!逃げないでくださいよ!片付けはもちろんしますけど!!ちょっとぉ!」
また随分と空いてしまいましてすみません
自分でも迷走してるなーと思いつつも、最近食べ物ネタばかりですね
ご主人様「へあっくしゅ!!!」
メイド「わっ!ちょっとご主人様…!くしゃみかかったじゃないですか!」
ご主人様「すまん。いや悪気はないんだよ」
メイド「くしゃみするときは手で口元抑えないと!おっさんっぽいですよ」
ご主人様「おっさんだと!?言ったなこの野郎!!」グリグリ
メイド「いだだだだ!!!」
ご主人様「うっ…ぶぇーくしゅ!!」
ご主人様「やべ鼻水が…ちょうどいいや、お前のエプロンで鼻かませろ」
メイド「それはマジで無理です……」ススス…
ご主人様「おい距離取るな!ウソだから!ティッシュ取ってくれ!」
メイド「はっ!ご主人様まさか、今話題の新型…」
ご主人様「ないない…ていうかシャレにならんからそういうのやめろ」
メイド「手洗いうがいとか、ちゃんとしてますか?」
ご主人様「いやしねぇよ?」
メイド「即答…」
メイド「お前はいつもやってんのか」
メイド「当たり前じゃないですか。外出る時はマスクもしてますし、対策は常にバッチリです!」
ご主人様「ふーん…そりゃ当然だよな。万が一にもお前が風邪なんてひいたら、えらいことだからな」
メイド「それは、私のことが心配という意味ですか?」
ご主人様「なわけねぇだろ。ただ俺が困るってだけだ」
ご主人様「まぁ、そもそもバカは風邪引かねぇから、気にする必要なかったか!」
メイド「…よくもそういう冷酷無比なことをペラペラと言えるもんですねー。心が風邪を引いてますよ」ジトー
ご主人様「…うっせ」
メイド「ご主人様のくしゃみほどはうるさくないと思いますけどねぇ!」
ご主人様「しゃらくせぇわ!」
あ、間違えてる!
メイド「即答…」のあとのセリフはご主人様ですね
ご主人様「おいメイドぉ、ギザ10出てきたからお前にやるよ」
メイド「…使えばいいじゃないですか?自分で」
ご主人様「俺はもう全部電子マネーで払ってるから」
メイド「でもほら、なにかの間違いでキャッシュレス決済対応してないお店とか入っちゃったら困りますよ」
ご主人様「そんな間違いはしねぇよ俺は」
ご主人様「だいたい、現金しか使えねぇ店に10円だけ持ってっても意味ねぇだろ」
メイド「…じゃあ、もらいます。ください」
ご主人様「…『じゃあ』だと?テメェは10円をたかだか10円と軽んじるほど裕福なのかよ?」
メイド「べ、別に軽んじてません!」
ご主人様「このギザ10はなぁ、なんと現代の1円の10倍の価値があるんだぞ!」
メイド「そりゃそうでしょ10円なんだから」
ご主人様「大事に取っとけよ」ポイッ
チャリン
メイド「うわ、投げるとか!最低ですね、造幣局の人に怒られますよ」
ご主人様「そんときゃ俺から造幣局にそんなミスすんじゃねぇって説教し返してやる」
メイド「…そういえばギザ10って、どーいう経緯でできちゃうんですかねぇ」ヒョイ
ご主人様「知らね。でも発行された時期によっちゃ、価値が出ることもあるらしいぞ」
メイド「え!」バッ
メイド「昭和26年!昭和26年て書いてあります!」
ご主人様「なんだ?その目は…自分で調べろバカ」
メイド「えーと…『ギザ10 昭和26年 価値』…」
メイド「ろっ…6万円…!?」
ご主人様「ハァ!?」
メイド「…じゃあ私は…これで…」コソコソ
ご主人様「待てぇ!!」ガシッ
メイド「ぎゃーー!!襟掴まないでくださいよ!首絞まる!!」
ご主人様「ギザ10返しやがれ!そいつは俺のだ!!!」
メイド「違いますー!私のですー!投げてよこしたあの時点で、ご主人様の所有権はなくなりました!」
ご主人様「ふざけんな!返せよ俺の6万円!!ドロボウ!!」
メイド「誰がドロボウで……あっ!ちょっと待った」ピタッ
メイド「これ、『未使用に限る』って書いてありますよ…」
ご主人様「………」
ご主人様「ふっ、10円玉ひとつではしゃぐなんて、これだからビンボー人は嫌だよな」
メイド「よう言うわこの人…」
メイド「う~ん」
ご主人様「どうした?悩み事か…ってタイプじゃねぇよなお前は」
メイド「ゆうべ、変な夢を見まして…それが頭から離れなくて」
メイド「ほら、夢って何かを暗示しているって言うじゃないですか。あの夢はどういう意味なんだろうってずっと考えてるんです」
ご主人様「どんなのだ」
メイド「大きなワニがひっくり返ってるんですよ。で、『オコシテオコシテ』って言ってるんですね」
ご主人様「……」
メイド「私はすぐそばで見てるんですけど、ワニだから、起こした途端に噛み付いてくるんじゃないか…と思って、なかなか手が出せないんですよね」
ご主人様「……」
メイド「そしたら、仰向けだったワニが、自力でくるんと元の体勢に戻ったんですよ。そのあと、なんて言ったと思います?」
ご主人様「…なんで起こしてくれなかったんだ、とかか?」
メイド「当てる気あります?」
ご主人様「あるわ!」
メイド「ワニは一言…」
ワニ『ラコステ』
メイド「って言ったんです。そこで目が覚めました」
ご主人様「……その夢の意味するところは分からんが…」
ご主人様「おまえたぶん疲れてんだよ」
メイド「そ、そうですかね!?」
ご主人様「ていうかそれ、イチローが着てたパチモンTシャツじゃねぇか」
メイド「あー……」
ご主人様「そういやぁ俺も最近イヤな夢を見たな」
メイド「どんなんですか?私がいなくなる夢とか?」
ご主人様「そんなの別にイヤじゃねぇよ」
メイド「え!?」
ご主人様「歯が抜ける夢だ」イー
メイド「歯?それのどこがイヤな夢なんです?」
ご主人様「抜けるつってもあれだぞ、全部の歯がグラグラしてて、触っちゃいけないと分かってるのに舌で触れて取れちゃうっていう…」
メイド「た、確かにイヤですねそれ」
ご主人様「んで口の中が抜けた歯でいっぱいになって、ジャリジャリジャリジャリ…」
メイド「うわ~…想像しただけで鳥肌が…」
ご主人様「あの感触が夢とは思えないくらい気持ち悪いんだよなぁ~。しかも似たような夢を何回も見たことあって…」
メイド「へ~…。いやでもね…それ聞いて分かりましたよ…」
ご主人様「ん?なにが?」
メイド「他人の見た夢の話って、ほんっと聞いててつまらないですね!」
ご主人様「てめーから話し始めたんだろうが…歯ぁ全部抜くぞコラ!」
メイド「今日はバレンタインデーですよ」
ご主人様「なに?チョコくれんの?」
メイド「…ご主人様みたいな冷血動物でもチョコ欲しいんですね」
ご主人様「誰が冷血動物だコラ」スッ…
メイド「あっ!なんですかその手!まさか叩くつもりですか!そんな人にチョコレートはあげられませんよ!」
ご主人様「あぁ?」
メイド「チョコが欲しいなら、今日一日くらいは日頃の態度を改めてみてはどうです?」
ご主人様「ああ?その言い方だと態度を改めねぇ限りチョコくれねぇみてぇだな」
メイド「みてぇじゃなくてそういうことです!」
ご主人様「じゃあいらね。別に俺チョコそんなに好きじゃねぇし」
メイド「えっ?」
ご主人様「それに最近は甘いもの控えるようにしてんだよな」
メイド「えっえっ」
ご主人様「じゃ、俺は部屋に戻るからな」
メイド「いやちょっちょっちょっ…も、もし私が夜なべして手作りチョコとか用意しててもそういう態度取るんですか?」
ご主人様「そんなん知らんよ。俺から作ってくれって頼んだわけでもないしな」
メイド「ええええ…」
ご主人様「なにちょっと泣きそうになってるんだよ」
メイド「せっかく…用意したのに……」
ご主人様「…しょうがねぇな。お前がそこまで言うならもらってやるよ」
メイド「ほ、ホントですか?」ウルウル
メイド「…いや違う違う違う。おかしいでしょう。『ご主人様が態度を改めたらあげる』って話だったのに、なんで私がウルウルしなきゃいけないんですか!」
ご主人様「チッ気づいたか…押してダメなら引いてみろ作戦失敗だな」
メイド「まぁ実は私も、夜なべなんてしてないんですけどね!用意してたのはコンビニで買ったやっすいやつです!」スッ
ご主人様「手作りですらねぇのかよ!さっきしょげてたのはなんだったんだ」
メイド「『もし』って言ったじゃないですか?これは普段なんでも手作りの私があえて手作りをしないという超高等テクニックで…」
ご主人様「なんの話をしとんじゃてめーは」
メイド「というわけではいドーゾ」
ご主人様「サンキュ…ってチョコボールじゃねぇか!」
メイド「なにか問題でも…?」
ご主人様「問題っていうか…これをバレンタインに選ぶセンスが…」パクッ
メイド「あいにくこれより美味しいチョコは知らないんですよ」
ご主人様「…可哀想に。じゃあホワイトデーにはゴディバのチョコを買ってやろう」ポリポリ
メイド「ま、マジすか!!」
ご主人様「ただしお前の態度次第だがな…」
メイド「あれ?そのセリフどこかで聞いたような??」
ご主人様「あのさ、お前って1日終わって、夜すぐ寝てるわけじゃないよな?何してんの?」
メイド「??何って…スマホいじってるくらいですよ」
ご主人様「スマホでなにやってんだ??」
メイド「YouTubeで動画見たり、アプリで漫画読んだりしてますけど…」
ご主人様「なんの動画だよ」
メイド「…なんでもいいじゃないですか」
ご主人様「そうか、言えないような内容なのか…まぁ俺は別にいいけどな、イケボのVtuberにスパチャ投げまくってても」
メイド「妙にリアルですけどそんなことしてませんから!もっと普通の…動物とか音楽とか、お笑いとか料理講座とか!本当ふつーのやつですよ!」
ご主人様「お笑い……」
ご主人様「たまにお前の部屋の前通ると笑い声が聞こえてくるのは、それが理由だったのか」
メイド「…???」
ご主人様「いや、なんで笑ってんのか知りたかっただけなんだ。夜な夜なこっそり変なクスリとかやってるわけじゃないなら、別にいい」
メイド「笑ってないですけど…」
ご主人様「ん?」
メイド「私、動画見たくらいで声出して笑ったりしませんよ。ご主人様の邪魔にならないように気を遣ってるつもりですし」
ご主人様「……」
ご主人様「じゃああの笑い声はなんだ?何に笑ってんだ?」
メイド「だから笑ったりしませんって。イヤホンつけてるから、動画の音が部屋の外まで聞こえることもないはずですけど…」
ご主人様「お前以外に誰がいるんだよ…女の笑い声だぞ」
メイド「……マジで言ってるんですか?」
ご主人様「……」
メイド「あの……」
ご主人様「……わーーーーーっ!!」
メイド「うわぁ!ビックリしたぁ!」ドキドキ
ご主人様「なんてな」
メイド「…やめてくださいよそーいう冗談!」
ご主人様「ははは、悪い悪い」
メイド「目が笑ってないですよ」
ご主人様「まぁ冗談じゃねぇからな。実はこの家な…」
メイド「?」
ご主人様「…いや、やっぱやめた。俺の気のせいってことにしておこう」
メイド「えっちょっ…今なに言おうとしたんですか」
ご主人様「ところでお前、スマホいじる以外にやることないって可哀想なヤツだな」
メイド「いいでしょ別に…寝る前に少しくらい!」
ご主人様「ごちそうさん。あー美味かった。やっぱ冬は鍋だな」
メイド「じゃ、片付けますね…」スッ
ジュッ
メイド「あちゃちゃちゃちゃ!?」
ご主人様「おい何やってんだ、危ねぇだろ!」
メイド「も、もう冷めてると思って…」ヒリヒリ
ご主人様「バカだな…フツー持ち手のとこタオルとかで覆うだろが」
メイド「うぅ…バカって言った方がバカなんですよ…」
ご主人様「いいから手ぇよく冷やしとけよ」
メイド「はぁい…」トボトボ
メイド「…あ、そうだ!!」
ご主人様「?」
数日後
メイド「ご主人様~」
ご主人様「…オメェなに隠れてんだ?」
メイド「じゃーん…」スッ
ネコ『これでもう火傷しないニャー!』パクパク
ご主人様「な、なんだそのパペットは」
メイド「フフ…作っちゃったんですよねぇ…お手製ミトン!」ヒョコ
ネコ『ただのミトンじゃ面白くないから、目と耳と鼻もつけてパペット風にしたニャー!』
メイド「フフフ…可愛いでしょう」
ご主人様「可愛いネコでアツアツの鍋掴むのか。鬼畜じゃねぇか」
メイド「その発想が鬼畜なんですよ…あ、ちなみに左手は~」スッ
メイド「じゃーん!」ヒョコ
ご主人様「…くま???」
メイド「イヌですよ!!イ・ヌ!!!」
イヌ『ワンワンワンワン!!』パクパク
メイド「あ、こうやって両手につけるとまるでパペットマペット。なんちゃって~!」パタパタ
ご主人様「くだらねー…一人でやってろ」
さらに数日後
メイド「今日はぶりしゃぶです!熱いのいきますよ~」グツグツ
ご主人様「おう…ん?お前こないだ作ったミトンはどうしたんだ」
メイド「…いや、あれ…実は一度もミトンとして使えるのか試してなくて…」
メイド「ホントに大丈夫かなーとか…また火傷したらイヤだしなーとか…で結局タオルを使ってます…」
ご主人様「……」ゴソゴソ
ご主人様「……」スチャッ
メイド「あの…私のイヌミトン…」
ご主人様「ボクだって役に立つんだワンワンワン!!」ガブガブ
メイド「いたたた!そういう使い方はしちゃダメです!!!」
ご主人様「はよ食えワンワン!」パクパク
メイド(くだらないとか言っといて、私より気に入ってるような…)
メイド「今日はオムライス作りますよ~」
ご主人様「オムライスか…」
ご主人様(あんまり意識したことなかったけど、メイドさん=オムライスみたいなイメージあるよな)
ご主人様(ケチャップでハートマークとか可愛い絵を描いたりしてな)
ご主人様(まぁこいつに限ってそんなことはしないだろうが…)
メイド「ハイどうぞ」コトン
ご主人様「おっ、これは…!?」
ふわっ トロォ~
ご主人様「洋食屋の本格的なやつ!ケチャップじゃなくてデミグラスソースのやつ!!」
メイド「え、私なんか間違えました?」
ご主人様「メイド!庭にヘビがいるぞ!」
メイド「ヘビ?アオダイショウですか?」
ご主人様「種類は分からんが、そこでじーっと日光浴してる」
メイド「ああ、これ…ヘビじゃなくてカナヘビですよ」ヒョイ
ご主人様「カナヘビ…ヘビなんじゃん」
メイド「違いますよ。ほら、手足が生えてるでしょう?」
ご主人様「でもヘビって名前についてんならヘビだろ?」
メイド「トカゲですトカゲ。こんなの常識じゃないですか!?」
ご主人様「トカゲっぽいヘビか」
メイド「だから違いますって!」ブチッ
ご主人様「うわ、切れた」
メイド「別にキレてませんよ!」
ご主人様「いや、そいつ」
メイド「あ…」ビチビチ
カナヘビ「」サササ…
ご主人様「しっぽ切って逃げたってことは、さてはこいつトカゲの仲間だな?」
メイド「だからそう言ってるのに…ゴメンねカナヘビちゃん」
ご主人様「これから出かけてくる」
メイド「…急ですね。どちらへ?」
ご主人様「ほら、お前もこの1万円でどっか遊んでこいよ」スッ
メイド「いや、どこ行くのかって訊いてるんですけど」
ご主人様「しょうがねぇな。じゃあもう1万やるよ」
メイド「なんでそんな頑なに隠すんですか!?」
メイド「ハッ」
メイド「そういえばいつもよりずいぶんキチッとした格好ですけど、もしかして女性の方と会ってくるとか?」
ご主人様「!」ギクッ
メイド「うわー絶対やらしいお店だ!やらし~お店に行くつもりだ!!」
ご主人様「そういうのじゃねぇよバカ!こんな時期にそんなとこ行くか!」
メイド「そういうのじゃない…?ってことは…」
ご主人様『ウチのメイドが生意気でな…新しいメイドを雇おうと思うんだ!』
???『雇って雇って~!』
ご主人様『顔よし胸よし性格よし !合格っ!!』
メイド「私クビですか!?」
ご主人様「なんでそうなる!?とにかく俺のことは気にせんでいいから、お前もどこへなりとも行ってこい!」
メイド「……はぁい」
ご主人様「安心しろ、ちゃんと夜までには帰ってくるから…じゃあ行ってくる」ガチャッ
バタン
メイド「……どこへなりとも行ってこいってことは、つまり」
メイド「…『たまたまご主人様と行き先が同じ』でも問題はないはず」ニヤリ
メイド「というわけでぇ、追跡、開始!!」コソコソ
〇〇駅
メイド「電車かぁ…どこまで行くんだろう」
ご主人様「……」スタスタ
メイド「あんまり近くにいると見つかりそうだし、離れすぎると見失いそうだし、尾行って意外と難しい…」
20分後
メイド「……」(暇なのでスマホゲーやってる)
プシュー
ご主人様「……」スタスタ
メイド「…ん!?あ!降りてる!やばい!」
△△駅
メイド「さてさて…大きい駅だから周りにはいろいろありますけど…どこ行くつもりなんでしょうね」
ご主人様「……」ウィーン
メイド「すぐそこのスタボ…!」(※スターボックスコーヒー)
メイド「へ~ご主人様もスタボとか行くんだぁ…」ソロリソロリ
メイド(どこに座るんだろう…外から見える位置だといいけど)コソコソ
メイド「…あっ!」
ご主人様「よう。久しぶりだな…」
???「…そうね。久しぶり。本当に久しぶり」
メイド「マジで女の子…!えーっ!しかもすごく若く見えるんですけど!?」
メイド「まさか女子高生?まさか…パパ活!?」
メイド「くっ、ここからじゃなにを話してるのか分からない~!」
メイド「あっ!」
メイド(ご主人様のすぐ後ろの席が空いてる…)
ウィーン
メイド「一番安いコーヒーひとつ…」ヒソヒソ
店員「は、はぁ…」
メイド(大丈夫…たぶん大丈夫…ご主人様が何かの拍子に振り向くことはあっても、わざわざ後ろの人の顔を覗き込んだりしないはず…)ドキドキ
メイド(一応、変装もしてるし…帽子被っただけだけど…)
???「で、一人暮らしはどんな感じ」
ご主人様「もう長くなるんだ、どうってことねぇよ」
???「ふーん…」
メイド(…ん?ご主人様、一人暮らししてるって設定なの??私がいるのに??)
メイド(あ、もしかして…私のことを隠しておきたい間柄ってことかな…)
???「ご飯はちゃんと自分で作ってるの」
ご主人様「おうよ」
???「ふーん…じゃあ昨日の夜はなに食べたの?」
ご主人様「えー、た…タコスライス」
???「意外…そんなの食べるんだ」
メイド(まぁ私が決めたメニューですからね)
ご主人様「け、結構簡単に作れるしな…オススメだぞ」
メイド(自分が作ったわけでもないのに!)
???「そう…じゃあ、他のこと…たとえば掃除とか洗濯も毎日やってる?」
ご主人様「そりゃー毎日やってるよ、当たり前だろ」
メイド(……やってもらってる、でしょう!)
???「柔軟剤とか、使ってる?」
ご主人様「え?っと…」
メイド(使ってる!使ってますよいつも!)
ご主人様「まぁあんなんいらんわなぁ、効果があるのかないのかよく分からんし」
メイド(…あーそうですか。効果があるのかないのかよく分かりませんか…全然違うのに!)
メイド(ていうかホント誰なのこの子は??なぜご主人様の一人暮らし事情を探りたがっているの??)
メイド(もしかして元カノ!?…にしては幼いか。さすがにないですよね?)
???「ゴミとかちゃんと出してる?」
ご主人様「お、おう、きちんと分別して、ゴミの日に…」
メイド(全部私がね)
???「じゃあ、燃えるゴミは何曜日に出すの?」
ご主人様「えっ?」
???「毎回ちゃんと出してるなら、当然知ってるわよね」
ご主人様「えっ…と」
メイド(…まずい!ご主人様に答えられるわけがない!だって毎回私が捨ててるんだから!)
ご主人様(思い出せ…メイドが『ゴミ出し行ってきま~す』って家を出ていくのは毎週何曜日だ?たしか…)
ご主人様「金…曜日」
メイド(…そう!金曜日!分かってるじゃないですか~!)
???「…と?」
ご主人様「…と、とは?」
???「燃えるごみは週2回、常識でしょ?」
ご主人様「………」
メイド(…確かにゴミの日は週2回ある!でも私は金曜日に1週間分をまとめて出すようにしてるから…ご主人様に分かるかな…)
メイド(ていうかこの子、明らかにご主人様を試してる!まるで一人暮らししてるのを疑ってるかのような…!)
???「もしかして、分からない?」
ご主人様(冷静になれ…金曜日のほうは間違いないはずだ)
ご主人様(ということは、間隔から考えればその次は月曜日か火曜日なのは明白)
ご主人様(そしてこの2択なら、仮に外しても『普段その曜日には出さないから忘れてた』で誤魔化せるはずだ)
~この間0.5秒~
ご主人様「たしか…火曜日!」
???「火曜日と…金曜日…」ゴゴゴゴゴ
ご主人様「……っ」ゴゴゴゴゴ
???「まぁ、私は正解を知らないんだけど」
メイド(がくっ)
ご主人様「お…お前なぁ…」
???「今、安心したでしょ」
ご主人様「え」ギクッ
???「ほんとは、一人暮らししてないんじゃない?」ゴゴゴゴゴ
ご主人様「………!!!」
メイド(雰囲気がおかしい!あれ!?これってそういうSSでしたっけ!?)
ご主人様「…なんで…そう思うんだ…?」
???「…いくつかあるけど、まず、真っ先に思ったのは…」
???「服装が綺麗すぎる…」
ご主人様「!」
???「身なりに気を遣うタイプじゃないのに、そんなにパリっとしたシャツを着てるってことは、誰か別の人がアイロン掛けとかしてくれたんじゃない」
メイド(…確かに、ご主人様は普段あまり人に会わないから、いつももっとだらしない格好してる…でもそれだけじゃ断定はできないはず。たとえばクリーニング屋とか…)
ご主人様「こ、これはおろしたてのシャツだからだ」
メイド(そういう言い訳の余地がありますよね…)
???「…胸元のボタン、糸が解れて取れそうになってるけど」
ご主人様「!」ハッ
メイド(あ~!それ、前から気になってたけど『しょっちゅう着るわけじゃないって言ってたし、取れてから直せばいいか!』ってほっといたやつ~!)
???「それがおろしたて…とんだ粗悪品掴まされたのね」
ご主人様「そ、そういうこともあるだろ…」
???「もうひとつ違和感があったのは…タコスライスを食べたってところ」
ご主人様「俺がそんな洒落たもん作るように見えないってか?失礼なヤツだな」
メイド(そりゃ私が作ったし…)
???「洒落たものっていうか…タコスライスって、アレが入ってるでしょ」
ご主人様「…アレ?」
???「トマト」
ご主人様「!!」
メイド(入れましたねぇ。ご主人様が嫌いを克服できるように!って…意地悪じゃないですよ?)
メイド(……あ、まさか)
???「トマト…ずっと嫌いだったのに、自分から食べるようになったんだ?」ドドドドド
ご主人様「……」
メイド(後ろからでも分かるこの緊張感…!!)
???「トマト嫌いな人が、わざわざタコスライスを作るとは思えないんだけど」
ご主人様「…さ、最近食べられるようになったんだ。いつまでも好き嫌い言ってられないからな」
メイド(めっちゃ残してましたけどね)
???「偉いわね。じゃあ…私が今食べてるこのパンに挟まってるスライストマト」
???「これも『食べられる』ってことよね」スッ
ご主人様「…ッ!!!」
メイド(あーあ、自分で自分の首締めるようなこと言うから…)
ご主人様「いらねぇよ!お前の食いかけなんて!」
???「そう、じゃあいい。で、ほんとに一人暮らししてるの?」パク
ご主人様「だから、してるっつーの!」
メイド(私が…)
ご主人様「飯の支度も買い出しもごみ捨ても洗濯も風呂掃除もアイロン掛けも…」
メイド(全部…)
ご主人様「俺一人でやってるっつーの!!!」
メイド(ウソつけぇええええええ!!!!!)ガタンッ
???「!?」
ご主人様「は!!?」クルッ
メイド(や、やっばぁぁあああ!!!勢いに任せて立ち上がってしまった…!)
メイド(いや!こうなったら堂々と…この子の正体を聞いてやる!)
ご主人様「お前…まさか…!」
メイド(振り向いて…言ってやる!『あなたはご主人様のなんなんですか!?』って)
メイド「あな…」クルッ
???「もしかして、お兄ちゃんのお知り合い?」
メイド「……」ピタッ
メイド「……」ギギギ
メイド(お兄ちゃん…ってことは…)
メイド(…妹!!??)
ご主人様「……テメェ、どういうつもりだ…」
ご主人様「どういうつもりだ、コラ」ズイッ
メイド「あははは…なんの事でしょう、人違いだと思いますケド…」
ご主人様「……」バッ
メイド「あ、帽子……」
ご主人様「そうかい、人違いかい。よーく見たことあるツラなんだがなぁ」
メイド「あぁご主人様じゃないですかぁ!奇遇ですね!いやぁ誰かと思いましたよ!」
メイド「なんだか急にスタボのコーヒーが飲みたくなっちゃって!ここにしかない限定メニューがあるとかないとか!まぁ私が飲んでるの一番安いやつですけどね!あはは!」
ご主人様「………」
メイド「はは…は…そ、そんな修羅みたいな表情しないでくださいよ…」
???「お兄ちゃんのお友達?」
メイド「ええまぁあのーちょっとした知り合い?って言うか~…」
ご主人様「こっち来い」グイッ
メイド「ぐえっ」
メイド「あの、ご主人様…なんで窓際に座らせるんデスカ…」
ご主人様「こうやってがっちりガードしとけば逃げられないだろ」
メイド(やり口がプロ…)
???「ご主人様って、どういうこと?」
ご主人様「ちっ…テメェがついてきたせいで面倒なことになったじゃねぇか!」
メイド「し、知らないですよ~!着いてきたんじゃなくてたまたま行き先が同じだっただけで…」
ご主人様「じゃあなんで中途半端な変装してんだ!下手な言い訳すると引っぱたくぞコラ!」
メイド「うう…」
???「やめてお兄ちゃん。私が質問してるのよ」ジッ
ご主人様「……分かったよ…」
メイド(…うわぁ、さっき外から見たときはよく分からなかったけど、超美少女…)
???「この人は、お兄ちゃんの、何?」
ご主人様「…か、家事をやってもらってる人だ」
???「家政婦?」
ご主人様「一般的な言い方をするとそうだな」
メイド「もっと可愛い言い方があるんじゃないかな~…なんて…」
???「メイドさん?」
メイド「そう!それ!」
ご主人様「お前マジで調子乗るなよ…」グリグリ
メイド「アウアアア」
???「なるほど、一人暮らしをしてるけど、家事はこの人がやってくれてるのね」
メイド「 いや、一人暮らしじゃないですよ。同居してます」
ご主人様「おいっ!」
メイド「あ…言わない方がよかった感じです?」
???「同…居……」
???「なるほど、そういうこと…。そうよね。お兄ちゃんも大人だもんね」
メイド「いやー中身は子供みたいですけどね!ところであなたは、ご主人様の…?」
???「私は、その人の妹よ」
ご主人様「どうしてこうなった…」
メイド「ずいぶん若く見えるんですけど、その…おいくつですか?」
妹「このあいだ20歳に…」
メイド「はたち!?ウソ!?」
妹「これ、学生証」スッ
メイド「ホントだ~……!」
メイド「ってうわ!〇〇大学!?頭いいんですね!?」
妹「別に普通よ」
メイド「ご主人様、こんなに可愛くて利発そうな妹さんがいるのに、どうして教えてくれなかったんですか~」ニヤニヤ
ご主人様「お前に教える必要ねーだろうが」
妹「お兄ちゃん、私たち家族が嫌でこっちに移ってきたらしいから」
ご主人様「別にそういうわけじゃねぇよ」
妹「じゃあどうして全然連絡取ってくれないの」
ご主人様「タイミングがなかっただけだって」
妹「こうやって面と向かって話すのだって2年ぶりじゃない」
メイド「2年も会ってなかったんですか!?実の妹と!?」
ご主人様「…そうか…お前の高校卒業以来だから、それくらいになるのか」
妹「今年から大学のキャンパスが変わって、一人暮らしをすることになりそうだから、お兄ちゃんにアドバイスを貰いに来たの」
メイド「なるほど…それで…」
メイド「…それ、私に隠す必要ありましたぁ?」チラッ
ご主人様「うるせーな…」
妹「でも、様子がおかしいのはひと目で分かったわ…何かを隠している感じ…」
メイド「後ろで聞いてましたけど、すごい洞察力でビビりましたよ…」
ご主人様「お前のそういう勘が鋭いところがイヤで会いたくなかったんだ」
妹「お兄ちゃんがボロを出しやすいだけよ」
メイド「ぷっ…」
ご主人様「んだコラァ!てめぇが反応しなけりゃ誤魔化しきれたかもしれねぇだろうが!!」
メイド「ひゃぁ!」バッ
妹「…とっさに頭を庇う…」ジッ
妹「お兄ちゃん、もしかして、この人のことしょっちゅう叩いたりしてる?」
ご主人様「!」ギクッ
妹「メイドさんの反応が、日頃から叩かれてる人のそれよ…DV被害者とかによくある…」
メイド「ひどい時は日に5,6回は叩かれるんです…」シクシク
ご主人様「ち、違う!これは躾だ!悪いのはソイツ…」
妹「DV加害者の典型的な言い訳ね、警察に行きましょう」
ご主人様「クソっ、これ言うほど立場が苦しくなるパターンだ!」
妹「お兄ちゃんに一人暮らしのアドバイスを求めても、ほとんど役に立たないのはよく分かったわ」
ご主人様「待て!俺だってコイツがウチに来るまではちゃんと一人暮らししてたんだぞ!」
メイド「そのはずですよね」
ご主人様「ただ、あの頃の俺がどうやって一人で生きてきたのか覚えてないだけで」
妹「意味ないじゃない…」
妹「というわけで予定を変更して、メイドさんとの日々の暮らしを聞かせてほしいんだけど…」
ご主人様「しねーよそんなつまんねー話!コイツもう帰らせるから!」
メイド「ええっ、なんでですか!」
ご主人様「だいたいなんだお前は!メイドのくせにコソコソついてきやがって!俺のこと信用してねぇのか!」
メイド「信用してないとかじゃなくて、ただ純粋に気になっただけです!」
ご主人様「いいからとっとと帰れ!」
メイド「逆にご主人様が帰ったらいいのでは?」
ご主人様「なんでだよ!」
妹「……」ジーッ
ご主人様「な、なに見てんだよ」
妹「私の思ってる主従関係とだいぶ違うというか…ずいぶん仲良しなのね」
ご主人様「はぁ!?どこがだよ!外じゃなかったら今頃凹だぞボコ、こんなやつ!」
メイド「さては妹さん、『トムとジェリー』見て微笑ましいなと思うタイプですね!当人たちはお互い必死なのに!」
妹「…お兄ちゃん、私、もう一杯飲み物がほしいんだけど、頼んできてくれない?」
ご主人様「あ?」
妹「1回しか言わないからよく聞いてね」
妹「ベンティ、ダークモカチップクリームフラペチーノ、ノンファットミルクに変更、
ライトアイス、ソイミルク追加、クアトロショット、チョコレートソース追加、
キャラメルソース追加、バニラシロップ追加、キャラメルシロップ追加、
アーモンドトフィーシロップ追加、ヘーゼルナッツシロップ追加、
エクストラチップ、エクストラホイップ、エクストラパウダー」
ご主人様「?????」
メイド「?????」
妹「お願いね」
ご主人様「????????????」フラフラ
妹「考えうる最長のオーダーよ」
メイド「通るんですかソレ…」
妹「これで二人きりになれた」
メイド「あ、そういうこと…」
妹「お兄ちゃん、元気にやってる?」
メイド「…ええ、まぁ、病気とかはしてないですね」
妹「そう…よかった」
メイド「あの、妹さんは…ご主人様とはホントにぜんぜん連絡取ってなかったんですか?」
妹「最初のうちはときどきLINEしてたけど、素っ気ない返事ばかりで…気がついたら1年以上放ったらかしにしてたわ」
メイド「私の前でも、妹さんがいる素振りなんて見せたことなかったから…正直驚きました」
妹「…お兄ちゃんは、家族のことがあんまり好きじゃないみたい。だから話したがらないんだと思う」
メイド「なにかあったんですか…?」
妹「何もなかったから…かも。私、お兄ちゃんと少し歳が離れてるから、小さい頃は両親も私に構いっぱなしで」
妹「そのせいか知らないけど、なんとなく、家族4人で楽しく過ごした記憶ってあんまりないの」
メイド「でも、嫌われてるようには見えませんよ」
妹「…そう?」
メイド「今だって、文句ひとつ言わずにオーダーしに行ったじゃないですか?私がこんなこと頼んだらたぶん半殺しにされますよ」
妹「だって主従関係なんでしょ…」
メイド「あ、そうか!」
妹「私が小学生になったときにお兄ちゃんはもう中学生だったから、昔は勉強とかもよく見てくれたの」
妹「でも私、結構頭よかったから…お兄ちゃんに教えてもらわなくてもだいたいできちゃってたの。今思うとお兄ちゃん、つまんなかったでしょうね」
メイド「そっか…ご主人様は、お家に居場所がないと思ってたのかもしれませんね」
妹「…今でも、そういう節がある?」
メイド「うーん。今は逆に、ほとんど外に出ませんよ」
妹「じゃあ、居心地いいのかもね」
メイド「そりゃ、部屋で仕事だけしてれば、他のことは全部メイドの私がやっといてくれるわけですからね…」
メイド「…あ!そういえば…妹さんは、ご主人様がなんのお仕事をされてるか知ってますか!?」
妹「…前聞いたのと変わってなければ」
メイド「教えてください!」
妹「…知らないの??」
メイド「頑なに話してくれないんですよ!」
妹「……あんまり大きな声では言えないんだけど……」
妹「お兄ちゃん、赤ん坊の内臓にクスリを詰め込んで、海外に出荷するのが仕事なのよ」
メイド「…!!!」
メイド「どうりで…」
妹「というのは冗談…」
メイド「な、なぁーんだ!」
ご主人様「なにが『どうりで』だよコラ!?」
メイド「ごしゅっ…!あばばばば!?」
ご主人様「ほら、バニラのフラペチーノ」
妹「頼んだのと違うけど」
ご主人様「あんなの覚えられるか!お前、バニラ好きだろ?昔よくバニラアイス食ってたし」
妹「……」
ご主人様「それよりオイ、てめぇ…仕事のことは詮索するなって常日頃から言ってるよなぁ」
メイド「ご、ご主人様に直接聞かなきゃセーフかな、と思って…」
ご主人様「こっそり尾けてきたり、今日のお前はいつになく卑怯だな」
メイド「ひ、卑怯!?」ガーン
妹「…お兄ちゃん。私、これ飲んだら帰るわね」
ご主人様「ん?いいのかよ」
メイド「卑怯…卑怯…」ブツブツ
妹「聞きたいこと、なくなっちゃった。お兄ちゃんも楽しくやってるみたいだし…もういいかなって」
メイド「……」ピクッ
メイド「あの…ホントに、一人暮らしのアドバイスだけ貰いにきたんですか」
妹「?」
メイド「他に何か…用事があったりしませんか?」
妹「……」
ご主人様「お前なに言ってんだ?」
妹「あった、けど…もういいの」
メイド「……ご主人様、ちょっと」グイッ
ご主人様「トイレならあっちだぞ」
メイド「違いますよ!いいから来てください!」グイグイ
妹「………」
ご主人様「なんだよ!」
メイド「ご主人様、………、………?」
ご主人様「…!」
メイド「やっぱり…」ハァ
妹「…あ、戻ってきた」
ご主人様「………」
妹「なに?」
ご主人様「遅れてすまん!誕生日おめでとう!」
妹「……どうして?」
ご主人様「だってコイツがさぁ…」
メイド『ご主人様、妹さんの誕生日、4日前でしたけど、なにかお祝いしました?』
ご主人様『…!し、してない…てかなんでお前がアイツの誕生日知ってんだ?』
メイド『やっぱり…』
妹「…さっき見せた学生証ね」
メイド「はい…」
妹「……」
メイド「それまでぜんぜん連絡取ってなかったのを、一人暮らしについて相談したい、って呼び出したんですよね」
メイド「でももしかしたら、20歳のお祝いもしてもらいたかったんじゃないかな、って…」
メイド「ご主人様こんなだから、自分からお祝いなんてしてくれなさそうだし…」
妹「……」
ご主人様「なんだよ…じゃあマジでそのつもりで呼んだのか」
妹「…そうよ。ちょっと…ちょこっとだけ、お兄ちゃんにお祝いしてほしいなって…」
妹「別にLINEでもいいから、なにか一言くれれば、会わなくてもいいかな、って思ったんだけど」
ご主人様「バカだな、そうやって言やぁいいのに…」
メイド「バカ!?バカはご主人様でしょう!誕生日迎えた人に自分からそんなこと言わせませんよフツー!」
メイド「周りの人間が自発的にお祝いしてくれるのがいっちばん、う・れ・し・い・ん・で・す・よ!!!!」
ご主人様「うっ…」
妹「まったく、冷たいお兄ちゃんでイヤになっちゃう…」
メイド「人の身内のこと悪く言いたくないですけど、この人ホント冷血動物ですよね!」
ご主人様「くっ…」
メイド「こんなご主人様だから、当然プレゼントとかは用意してません!私が代わりに謝ります!ごめんなさい!」
妹「そんな…別に…」
メイド「そうだ!ご主人様!ここに2万円あるから、これで何か買ってあげましょう!もちろん後日それとは別にもっといい物を用意するんですよ!?」
ご主人様「それ、家出る前にお前に渡した金じゃねーか!!」
妹「…プレゼントなら、もうもらったわ」
メイド「え?」
ご主人様「……」
メイド「なんですかその『ほらー』って顔!」
妹「これ」スッ
メイド「バニラのフラペチーノ…?」
ご主人様「…そんなんでいいのか?」
メイド「そんな遠慮なさらずに…高いお財布とか買ってもらいましょうよ、一度しかない20歳の誕生日なんですから!」
妹「半分は嫌味よ」
ご主人様「!」
妹「でも半分は…本当に嬉しかったの。だってさっき、言ったわよね」
ご主人様『昔よくバニラアイス食ってたし』
妹「ずっと、お兄ちゃんは私のこと、どーでもいいのかと思ってたけど、ちゃんと見ててくれたのね」
ご主人様「……」
妹「それが分かって、よかった。私一人で勝手に気まずい思いをしてたみたい」
ご主人様「お前いつも、俺の分までアイス食っちまってたからな。嫌でも覚えてらぁ」
妹「…それ、小さい頃の話でしょ?食べ物の恨みは恐ろしいわね…」
妹「…メイドさんも、ありがとう。なんだか私よりずっと洞察力があるようだけど」
メイド「たまたまですよ…私もご主人様に誕生日祝ってもらったことありませんし、なんかピンと来ちゃいました」
ご主人様「お前誕生日いつだっけ?」
メイド「教えませ~ん。自力で思い出してくださ~い」
妹「…じゃあ、またね。お兄ちゃん、メイドさん」
ご主人様「おう」
メイド「今度はぜひウチに来てください!おもてなししますよ!」
メイド「あ、LINE追加しましょう!私ならいつでも、料理とか家事のことなんでも教えられますから!この人と違って!」
ご主人様「おい…」
妹「うん、お願いするわね」
妹「あと、メイドさん」
メイド「はい?」
妹「お兄ちゃんのこと、これからもよろしくね」
メイド「…もちろん、それが私の仕事ですから」ニコッ
ご主人様「騙されるなよ、これ営業スマイルだからな」
メイド「違いますよ!」
ご主人様「ふぅ…さて、俺もそろそろ帰るか」
メイド「その前にコーヒーもう一杯飲んでもいいです?私スタボにもちょっと憧れてたんですよ」
ご主人様「好きにしな。金は自分で払えよ」
メイド「当たり前じゃないですかぁ」
ご主人様「あと2万円も返せよ」
メイド「ええっ!あ、あれは私にくれたものでしょう!?」
ご主人様「ここまでついてきた罰だ。罰っつーか、元々俺の金なんだからプラマイゼロだろうが」
メイド「半額じゃダメですか?」
ご主人様「全額!!」
メイド「…それにしても可愛い妹さんでしたねぇ。頭もいいし…さぞやモテるでしょうね」
ご主人様「さー。その辺のことはよく知らねぇ」
メイド「それに比べてこの兄と来たら…」
ご主人様「あ?やんのかテメェ」
メイド「……ところでご主人様。なんで最初、妹さんに私(メイド)を雇ってること隠してたんですか」
ご主人様「言えるわけねえだろ…」
メイド「なんでですか?まるでメイドを雇ってることに後ろめたさがあるみたいじゃないですか」
ご主人様「…ないと言えば嘘になるな」
メイド「ふーん…」
メイド「ところで、今日は私服で来たから、普段はメイド服着てること、妹さんは知らないはずですよね」
ご主人様「…それがなんだよ?」
メイド「…バラしちゃおうかな?ご主人様の命令でいつもこんな格好しています、って」
ご主人様「や、やめろ!」
メイド「だってご主人様、メイド服はロマンなんでしょ?きっと分かってくれますよ」
ご主人様「身内は別だ!やめろ!マジで引かれる!」
妹(そういえばお兄ちゃん…まさかあのメイドさんにメイド服着せたりしてないわよね)
おわり
メイド「たったらたった~♪」
メイド「小(シャオ)小(シャオ)小(シャオ)小(シャオ)小籠包(シャオロンパオ)~♪」
メイド「あつあつたぷたぷ肉汁入り~♪」
ご主人様「なんだァそのマヌケな歌は?」
メイド「小籠包の歌。作詞・作曲わたし」
ご主人様「へぇ!てことは、この蒸し器の中は小籠包か」パカッ
メイド「あっ」
ブワアッ
ご主人様「熱ッちぃ!?湯気熱っちぃ!!!!」
メイド「えぇ~…大丈夫ですか?」
ご主人様「お、おう…火傷したかと思ったわ」
メイド「いや、頭のほうです」
ご主人様「どういう意味だコラ!?」
メイド「さて、そろそろいい頃ですかね。リビングへGO!」ソソクサ
ご主人様(逃げやがった)
ご主人様「小籠包は酢醤油とショウガで食べるもんだったよな」
メイド「もちろん用意してます」
ご主人様「でも俺はこういうの最初はなにも付けずに食う主義だから」パクッ
メイド「あっ」
ジュワッ
ご主人様「熱ッッッッ!??!???!!」
メイド(さっきのから何も学習していない…)
ご主人様「ま、マグマが…マグマが口の中で弾けた…」
メイド「あつあつたぷたぷ肉汁入り~♪ハイお水どうぞ」
ご主人様「くそっ、お前の変な歌のせいだ。呪いの歌だそれは」ゴクゴク
メイド「関係ないですよ…ちなみに私これで歌手デビュー目指してるんで」
ご主人様「なーにバカなこと…」
メイド「あっつい小籠包一口で食べようとする方がよっぽどバカでは?」
ご主人様(返す言葉がねぇ)
メイド「仕方ないですね」フーフー
ご主人様「えっ」
メイド「これでもう熱くないですよ。ほら…」スッ
ご主人様「…」アーン
メイド「ぱくっ。うーん美味しい!さすが私!」モグモグ
メイド「おやご主人様、なにアホみたいに口開けてるんですか?」
ご主人様「……」プルプル
メイド「えっ、もしかして食べさせてもらえると思ったとか!?んなわけないでしょ~甘えん坊さんかな~?」ニヤニヤ
ご主人様「…ダメだ今日はコイツに勝てん!」
メイド「いや別に勝ち負けとかないですから…」
ガタガタ…ガタ…
ご主人様(ずいぶん風が強くなってきたな…)
メイド「~♪」トタトタ
ご主人様「…ん?」
メイド「窓を開けましょ♪ルルル♪呼んでみましょうメイドさん♪」ガラッ
ご主人様「おまっ」
ビュオオオオオオオオ!!!!
メイド「ぎゃーーーっ突風!!!!」
ご主人様「アホか!なにやってんだ!?」ガタッ
メイド「洗濯物をっ…取り込もうと……うわあああやばい、立ってられないぃ!」ヨロヨロ
ご主人様「閉めろよ!中入れ!」
メイド「ダメです!だってほらシャツとか靴下とか!今にも飛ばされそう!!!」バタバタ
ご主人様「お前のほうが飛ばされそうじゃねぇか!」
メイド「ご主人様も手伝ってください!私一人じゃ無理です!」
ご主人様「チッしゃーねぇな、俺は自分の洗濯物しか取り込まんからな!」
ゴオオオオオオオ…
メイド「これ、春の嵐ってやつですかね!?」
ご主人様「なんでもいいよ!ちゃっちゃと取り込まねーと…ぶおっ!」パフッ
メイド「あっ!?」
ご主人様「な、なんだこのスケベな下着は!明るい窓のお向いさんから飛んできたのか!?」バッ
メイド「それ…私です!!」
ご主人様「はぁ!?お前こんなの持ってたのかよ!?」
メイド「勝負下着ってやつですよ!」
ご主人様「勝負下着!?ってことは…お前まさか…」
ビュオオオオオオオオオオ
ご主人様「…それどころじゃなかった!さっさと戻るぞ!」
メイド「はいいいぃ…!」
ピシャン!
ご主人様「ふぅ…えれー強風だったな。いやもはや暴風かアレは」
メイド「そうですね…」パタパタ
ご主人様「って、なにしれーっと何事も無かったかのように洗濯物畳んでんだよ」
メイド「な、何事もなかったでしょう!?」
ご主人様「説明しろや!勝負下着ってどーいうことだ!」
メイド「どーもこーもないですよ!私が持っててなにか問題がありますか!?」
ご主人様「やっぱりお前、俺のカラダ目当てで…!」
メイド「ちっがいますよ!!どっちかって言うと私のセリフですそれ!」
ご主人様「誰がテメーみたいな貧乳にそそられるか!うぬぼれてんじゃねーぞ!!」
メイド「あ゛ぁ!?シバくぞワレ、コラ!」
ご主人様「し、しかし普段のお前はともかく、こんなエロい下着で迫られたら話は別かもしれん…」
メイド「迫りませんって!」
ご主人様「じゃあなんでこんなもん持ってんだよ!」
メイド「勝負下着ってのは勝負のときにつける下着なんだから別に私が持ってたっていいでしょう!」
ご主人様「勝負って誰との勝負だよ!」
メイド「誰?誰っていうか…!」
ご主人様「言いよどむってことは…こりゃーもう間違いなくアレだな!」
メイド「特売の日に、他のお客さんに負けずに目当てのものを手に入れたいときに、それを履いて気合いを入れるんですよ!」
ご主人様「はっ??」
メイド「分からないんですか!?特売とは主婦にとって、同じ主婦との戦いなんですよ!私は主婦ではないけど!」
ご主人様「いや…分からないですか!?じゃなくてさ…お前こそ、勝負下着の意味分かってんの?」
メイド「…意味って…今言ったような状況のときに着けるものじゃないんですか??」
ご主人様「……まぁ、そういう使い方するやつもいるにはいるだろうが…」
ご主人様「いいか?基本的に勝負下着ってのはな…」ゴニョゴニョ
メイド「……!?」
メイド「えー…『勝負』ってそういう意味だったんだー…うわー……」
ご主人様「マジで知らんかったんかい…」
メイド「そ、それよりも!…いつまでも人の下着握ってないで、返してください!」
ご主人様「お、おう…悪かったな…」
メイド「……」カァアアア
ご主人様「顔真っ赤だぞ…でも『そういうつもり』で持ってたわけじゃないなら、別に照れるこたぁねーだろ?」
メイド「…そりゃ、そうですけど……」
ご主人様「ところでお前は…」
ご主人様「『そういうつもり』じゃないにしても、今まで何食わぬ顔して、時々そのパンツ履いて生活してたわけだ?」
メイド「……」プルプル
ご主人様「俺ぁそんないやらしいメイドに育てた覚えはないんだけどなぁ…」ボソッ
メイド「私は別にいやらしくないです!!!」
ご主人様「いーや、めちゃくちゃいやらしいね!よく見ろそのパンツを!!!」
メイド「こんなのちょっと、色が派手で、おしりの辺りが透けてるだけじゃないですか!!ちっっっともいやらしくないですね!!」
ご主人様「ああそうかい!じゃあ今ここでソレ履いて俺に見せてみろ!いやらしくないならできるよな!?」
メイド「ええいーですとも!!」スッ
メイド「……」ピタッ
メイド「あっぶな~…!乗せられるところだった…!」
ご主人様「ちっ、いけると思ったのに…」
メイド「とにかく私がこれ持ってるのはそういう意味じゃないですから!いいですね!」
ご主人様「わかったわかった…ところでさっきからあそこではためいてるの、色的にそのパンツとセットのブラじゃねーの?」
メイド「早く言ってくださいよ!?飛んでったらどうするんですか!」ガラッ
ご主人様「お前の場合、ブラなら別になくたって問題ないだろ」ケラケラ
メイド「あー、なんだか手が滑って今取り込んだご主人様の洗濯物まとめて吹き飛ばしちゃいそう…」
ご主人様「ごめんウソウソウソ!!!」
2日後
ご主人様「おいメイド、今日は特売らしいけど、ちゃんと勝負下着履いてるか?」ニヤニヤ
メイド「……」ガチャ
ご主人様(…怒ったかな?ま、あんまりいじめないでおいてやるか)
メイド「……確めてみます?」
ご主人様「!?!?」
メイド「なーんちゃって…じゃ行ってきまーす」バタン
ご主人様(やっぱドスケベメイドだろアイツ…)ドキドキ
相手が誰であれセクハラはダメ絶対!また次回!
ご主人様「今日のメシはうんまいなぁ!俺好みの味付けだ」ムシャムシャ
メイド「主人とメイドは一心同体ですから!味の好みも分かってきましたよ」
ご主人様「お、格言が出たねぇ」パクパク
メイド「ところで『今日のメシは』って言い方に含みがありません?」
ご主人様「い、いやお前のメシはいつも美味いぞ!?ハハハハハ…」モグモグ
ご主人様「パ゙ッ゛!?!?」ガブッ
メイド「…?どうしたんです?」
ご主人様「~~~ッッ!!!」
ご主人様「か、噛んだッ…頬の内側をガリっと…」
メイド「あー…食べながら喋るから…」
ご主人様「ちょ…ティッシュ取って…」
メイド「はい」シュッ
ご主人様「ペッ」
ご主人様「ぎゃあ!ティッシュに血が!!なんじゃあこりゃああ!!!!」
メイド(ジーパン…?)
ご主人様「メイド…俺が死んだら…お前が俺の跡を継ぐんだぞ…」
メイド「いや死にませんよ…そもそも何を継げってんですか」
ご主人様「まぁいいやメシ食お」パクッ
ご主人様「っ痛てぇえ!!!」
メイド「無理して食べない方がいいですよ!滲みるでしょう」
ご主人様「いや食う!」パクッ
ご主人様「ぐううううううう」ジタバタ
メイド「ご主人様って実はマゾ?」モグモグ
ご主人様「てめーはなに平気な顔してメシ食ってんだよ!?」
メイド「そりゃだって私はなんともないですもん」
ご主人様「主人とメイドは一心同体じゃねぇのかよ!」
メイド「は…?誰がそんなことを?」
ご主人様「お前じゃあ!!!」
ご主人様「いいか、俺が一口メシを食うたびに激痛が襲う、そしたら俺はお前を一発ずつ殴る!」
メイド「意味が分からないんですけど!?」
ご主人様「痛みによるストレスは、他人を痛めつけることでしか発散できねぇんだよ!」
メイド「なんて無茶な理屈…左頬が痛いなら、うまいこと右側で食べればいいだけの話でしょう」
ご主人様「…ほーん??」パクッ
ご主人様「……」モグモグ
ご主人様「うん…食べづらいけどこれなら痛くないな」
メイド「ね?」
ご主人様「よーし完食しちゃうぞー!」ムシャムシャ
メイド「あっ!そんなに調子に乗ってがっついたら…」
ご主人様「う゛っ!!!!」ガリッ
メイド「……あーあ、右も噛みましたね?」
ご主人様「だあああああなんでこうなるんだよおおおおお…」
メイド「一番気をつけるところでしょう普通……」
ご主人様「お前が変なこと言うから!」
メイド「なんでもかんでも私の責任にしないでくださいよ!」ムカッ
メイド「ご主人様の!食べ方が!不!器!用!なんですよ!!!」
ご主人様「んだとぁ!?」バッ
メイド「叩く気ですか?フフン、言っときますが今のご主人様では私に勝てませんよ!」
ご主人様「あぁ…?」
メイド「なんなら指先ひとつで返り討ちにしてさしあげましょう」ピッ
ご主人様「やってみろやコラそんな漫画みたいなこと」ペシッ
メイド「………」
メイド「忠告はしましたからね」スッ
メイド「ほーっぺ」つん
ご主人様「おごォ!!!??」ズキィン!!
メイド「冥 道 指 激 殺!!!!」
メイド「外から相手の口内炎(弱点)を刺激して致命傷を与える、冥道暗殺拳の秘技のひとつです」
ご主人様「メイド暗殺拳て…なんだ…」ガクッ
メイド「…明日の朝はお粥にしますよ。いいですね?」
ご主人様「お、お願いします…」
次回更新も近日中に。ちなみに最終回です。よろしくお願いします。
メイド「今年もこの日が来ましたね!」
ご主人様「ん…なんだっけ?」
メイド「忘れたんですか!?今日5月10日はメイドの日!去年も言ったでしょう?」
ご主人様「あーそれか…俺ぁてっきりお前がでっちあげた架空のイベントかと」
メイド「まぁ実際のところ世間にはあんまり浸透してないでしょうけどね」
ご主人様「前回はナデナデしてやったらお前がすごくドキマギして終わったんだよな、じゃ続きやるか…」
メイド「アレはもういいです!!!」
メイド「今年は別の方法で労ってくださいよ~」
ご主人様「うーん、そう言われてもな」
ご主人様「こんな時だから、好きなとこ連れていくとな、美味いもん食いに行くとかそういうのは難しいしなぁ」
ご主人様「なんか欲しいものがあれば、通販で買ってやってもいいぞ」
メイド「…たぶんそう言われるだろうと思ってここ3日くらい考えてたんですけど、欲しいものは特にないんですよね」
ご主人様「お前って物欲ねぇよな…俺も人のこと言えんが」
メイド「で、思いついたんですが…今日1日だけ、ご主人様が私のメイドになってみるというのはどうでしょう?」
ご主人様「俺がメイドに???」
メイド「いつも私がやってることをそのまんま再現する形で生活してみるんです」
ご主人様「お前がメイドとしてのいろはを手取り足取り教えてくれんのか?」
メイド「いえ、今日の私はご主人様の役なので、基本的には何もしません。ただダラダラ見てるだけです」
ご主人様「普段の俺は部屋で仕事してるだろが…」
ご主人様「ま、いいか。1日だけなら」
メイド「やった!じゃあさっそく…」
メイド「このメイド服に着替えてください!」スッ
ご主人様「はァ!!??メイド服着んの!?」
メイド「当たり前じゃないですか!メイド服着てないメイドはメイドとは言えませんよ」
メイド「とは言えスカート履くのはさすがにキショ…まずいんで、今回はメイドエプロンだけにしておきましょう」
ご主人様「今なに言おうとした…?」
メイド「っ……ww」プルプル
ご主人様「エプロンだけなら…と思ったけど…やっぱやめねぇ??」フリフリ
メイド「着てから言います?」
ご主人様「だって見ろよこれ、辞書で『滑稽』って引いたら今の俺の姿が出てきそうだぞ」
メイド「そんなことないですよ、お似合いですよご主人様」プルプル
ご主人様「なら顔を背けるんじゃねえ」
メイド「服装の次はその口調です!」
ご主人様「あ?」
メイド「メイドは謙譲語が基本!そして穏やかな口調で主人を常に心地よくさせるものです」
ご主人様「おめぇいつもラフな敬語じゃん」
メイド「私はほら距離感を大事にしてますから」
ご主人様「意味が分から…分かりませんわ」
メイド「それメイドというよりお嬢様口調ですよね」
ご主人様「関西弁かもしれませんよ」
メイド「そう!その感じ!今のかなり自然でしたよ!」
メイド「見た目と口調がメイドならそれはもうメイド!というわけでここからは私もご主人様モードでやらせていただきます」
ご主人様「おう…はい」
メイド「まぁしっかりやっとくれや!ガハハハ!」
ご主人様「……」
メイド「…こんな感じじゃないですか?いつものご主人様」
ご主人様「いや、むしろいつものメイドと変わってねぇなと思った」
メイド「あんですとぉ!?」
ご主人様「んで俺ぁ何すればいいんだ『メイド様』?」
メイド「いつも私がやってることを思い出してみてください」
ご主人様「お前いつも何してるっけ?」
メイド「すっごくテキパキ働いてますよぉ~?」
ご主人様「誰も使ってねえ部屋も毎日掃除してるもんな」ハハハ
メイド「…!?」ガーン
ご主人様「よし、俺に任せとけ。メイド様はそこでテレビでも見てな」
メイド「あ、ハイ…じゃお願いしまーす」
1時間後
ご主人様「終わったぞ」
メイド「ちゃんとやったんですか?…確認します!」ツイー
メイド「ほぉらここにホコリが残ってますわよ!?」オホホホ
ご主人様「そのうっとうしいキャラやめろや」
メイド「まぁ普段の私もそこまでやってないんで別にいいでしょう!」
ご主人様「いいんかい…んで次は?」
メイド「ではお昼ご飯の支度を…」ハッ
メイド「そういえばご主人様の手料理って初めて…??」
ご主人様「お前が来てからは作ったことねぇなぁ…なにが食いたい?」
メイド「ご主人様の一番得意な料理を!」
2分後
ご主人様「へいお待ちィ」
メイド「早くないですか!?って、これは…」
ご主人様「エッグ・オン・ザ・ライス~だし醤油をかけて~」
メイド「カッコつけてますけど要は卵かけご飯ですよね…?」
ご主人様「フッ、一部地域ではそう呼ぶらしいな」
メイド「全国どこでも卵かけご飯ですよ!…ていうかまさか、これしか作れないとかそういうオチじゃないですよね…」
ご主人様「まさか!他にも作れるに決まってんだろ。楽なのを選んだだけだ」
メイド「私が頼んだのは楽なのじゃなくて得意料理ですよ」
ご主人様「いいから早く食え!ご飯が冷めるだろ!」
メイド「はぁ、いただきます…おいしい、そりゃおいしいですよ…だって卵かけご飯なんだから」
ご主人様「食ったら食器洗うからそのままにしとけよ」
メイド「洗い物、お茶碗とお箸だけじゃないですか」
ご主人様「一人暮らしのコツは洗い物を増やさねぇことだからな」
メイド「二人いますけど…」
ご主人様「さて次は何したらいいのかな」
メイド「えーとお皿片付けたあとは…いつもの私はご主人様と少し喋ってますね…」
ご主人様「お前ヒマなん?」
メイド「も、もうちょっと言い方ってものが…」
ご主人様「んじゃ買い物でも行ってくるかな~」
メイド「あ、でしたら買うものをメモしますので…」
ご主人様「いいよ俺が決めるから」
メイド「…家に足りないものやなくなりそうなものがないか確認するのもメイドの仕事ですよ」
ご主人様「…お前がきっちり管理してんだから平気だろ?どうせ俺がメイドやるのも今日だけだしな」
メイド「まぁ確かに…」
ご主人様「夕飯のリクエストはあるか」
メイド「えー…今食べたばっかりで何にも…じゃあ今度こそ、ご主人様の正真正銘の得意料理を!」
ご主人様「……」
ご主人様「行ってくらあ」
メイド(今すごい嫌そうな顔したなぁ…)
バタン…
メイド「うーん……」
メイド(なんか思ってたのと違うような)
メイド(こんな淡々とした感じじゃなくて、もっとこう、ご主人様に私の日々の苦労を理解してもらう予定だったのに)
メイド(今のところご主人様、そんなに苦と思ってなさそう…もしかして私が甘いのかな??)
メイド(そもそも私だって相応の対価はきちんと頂いてるわけで…こんなことさせてなんの意味があるんだろう…)
メイド「…ていうか、あれ?」
ご主人様「エプロン着たままだった!」ガチャ
メイド「ですよねぇ!」
ご主人様「ただいま」
メイド「…おかえりなさい~。何を買ったんですか?」
ご主人様「大したもんは買ってねぇけど…ほらこれ」ゴソゴソ
メイド「あ!このスイーツ、テレビでやってたやつ!」
ご主人様「おう、お前それ食べたいって言ってただろ」
メイド「気が利きますねぇ…ありがとうございます」
ご主人様「さて、買ったものしまって、洗濯物取り込んで…風呂掃除もしねぇとな。そんでまた飯の支度だ…」スタスタ
メイド「あの…もうちょっとゆっくりやってもいいのでは?」
ご主人様「ん?別に急いでねぇぞ俺は」
メイド「あー……」
メイド「ふ…普段の私より早い気がして…」
ご主人様「じゃあなんか取りこぼしてる作業があるかもな」
メイド「いえ、そういうのは特に…ないんですけど…」
ご主人様「まぁ俺いろいろ雑にやってるかもしれねーからよ、気になるところがあったら言ってくれや」
メイド「は、はい…」
メイド「なんか違う…なんか違う…なんか違う…」ズーン
メイド「これじゃ普段の私がのんびりやってるダメメイドみたい…そんなつもりないんだけどな~」
メイド(でも私、ご主人様が部屋から出てくると何かにつけて話しかけたりしちゃうから、その時間が…)
メイド「…無駄、なのかなぁ?」ハァ…
メイド「……」
メイド(あ、違うか…もともとは私もあんな感じだったんだ…無言でテキパキやることだけやってて…そしたら)
ご主人様『俺の話し相手を務めるのもお前の仕事だ!会話はストレス解消になるからな』
メイド(なんて言ってたけど、今じゃ私のこと叩いてるときの方がストレス解消になってたりして…)
メイド(…眠くなってきちゃった…)ウトウト
ご主人様「おいメイド様!飯できたぞ!め・し!」
メイド「へえぁ!さっき食べたばっかり…あれ!?もう6時!?」
ご主人様「おめー爆睡してたぞ。ヨダレまで垂らして」
メイド「あ、ほんとだ…机で寝るのなんて何年ぶりだろう…」ゴシゴシ
ご主人様「なんか、メイド服着てないだけですげえだらしなく見えるな」
メイド「別にだらしなくないですよ…でもたしかに、いつもより気が緩んでしまって…」
メイド「そう、普段の私はメイド服と一緒に緊張感もまとってるんです!」
ご主人様「うまいこと言ったつもりか?」
メイド「ご主人様も気が緩んで敬語とか完全に忘れてるじゃないですか」ニヤ
ご主人様「うるせーんですよ、それよりほれ」ドンッ
メイド「おー、チャーハンですか!…あれ、卵かけご飯と少しかぶってるような…」
ご主人様 「全然違ぇよ、火使ってんだからこっちは!手間が段違いだ!文句あんなら…」
メイド「い、いただきまーす…」パクッ
メイド「…うん!美味しい!!ちゃんとしたチャーハンだ!」
ご主人様「なんだと思ったんだよ」
メイド「パラパラで、味付けもしっかり…でもなにか入れてますね?」
ご主人様「具は卵とネギとハムだけだぞ」
メイド「調味料ですよ!何か変わったもの入れたでしょう?」
ご主人様「そりゃ企業秘密だ」
メイド「あ、もしかして、隠し味に愛情♡とか?」
ご主人様「そんなんで味は変わんねーよ」
メイド「も~野暮なこと言わないでくださいよ!こういう小粋なシャレを駆使してこそ真のメイドなんですよ?」
ご主人様「くだらねーこと言うとメイド様に引っぱたかれちまうからな」
メイド「私は誰かさんと違って、そんな乱暴なことしませんよ~」
メイド「で……どうですか?メイドやってみて」
ご主人様「意外だったのは…」
ご主人様「この一見わずらわしいエプロンも、着けちゃえば特に気にならないってことだな」
メイド「でしょう!?機能美と言いますか、うまいこと作ってあるんですよ!」
メイド「それに、メイド服着てると自然に、頑張ろう!って気持ちになってくるでしょう?」
ご主人様「いや俺は別に…」
メイド「あれ!?そっかー…じゃあもう脱いでいいですよ」
ご主人様「いや、まだ俺のメイドライフは終わりじゃないからな、最後までこの格好でやりきるぞ」
メイド(もしかして結構楽しんでるのかな)
ご主人様「さぁ風呂が沸いたぞ。入れ入れ」
メイド「メイドさんなんだから、背中流してくださいよ」クネクネ
ご主人様「……」
メイド「…なんて、私だってそんなことしたことないのに…」
ご主人様「しょうがねぇな」グイッ
メイド「ぎゃーーちょっと!脱がないで!冗談ですから!!」
ご主人様「だったらさっさと入ってこい!」
メイド「びっくりした~…」
メイド「ふーさっぱり…あれ、エプロン脱いじゃったんですか?可愛かったのに」
ご主人様「この格好でやることはもうないからな」
メイド「じゃあご主人様のメイド体験は、これでおしまいですね」
ご主人様「…『この格好』でやることはな」
メイド「…?」
ご主人様「んじゃ俺も風呂入ってくるわ」
メイド「ん…?なんか意味深…?」
メイド(ご主人様…メイドというよりただの主夫って感じだったような…)
メイド(それにしてもご主人様、ちゃんと料理できるんですね)
メイド(……ま、今年のメイドの日はこんなもんですかねぇ)
ご主人様「上がったぞー」
メイド「はーい」クルッ
メイド「ってうわぁ!?なんでパンイチなんですか!風邪引きますよ!」
ご主人様「俺はまだメイドだぞ」
メイド「はい…?どういうことです??」
ご主人様「こういうことだよ」ドンッ
メイド(…壁ドン????)
ご主人様「夜の相手すんのもメイドの仕事、だろ?」
メイド「夜の…相…手……」
メイド「え?ええええええええ!!!??」
メイド「な、ななななに言ってんですか!私ふだんそんなことしてませんし!!」
ご主人様「そりゃお前とはそういう契約だからな。だが今日1日メイドやってる俺に契約もクソもねー」
ご主人様「安心しろ、メイドらしく優しく丁寧に御奉仕してやるから」
メイド「そ、そんな御奉仕いりませんよ!」
ご主人様「でも逃げねーんだな?…どうしても恥ずかしいなら目瞑っとけ」
メイド(……今の私はメイドじゃない…なら…)
メイド「いいのかな……?」ギュッ
ご主人様「……」
メイド「……!!」ドキドキ
ご主人様「くっ」プルプル
メイド(…あれ?)パチッ
ご主人様「だはははははははははははははは!!!!!」
メイド「…へ?」
ご主人様「去年と同じじゃん!まったく同じパターンじゃん!!お前ほんとチョロいな!!!」ゲラゲラ
メイド「去年……」
メイド「…はっ…!!!!!」
メイド「だ…騙しましたね!!?」
ご主人様「うはははは!!!目ぇギュッと瞑って『いいのかな?』だってよ!ノリノリじゃんお前ぇ!!」ゲラゲラ
メイド「ちがっ…くっ……うわーもう最悪!!!」
ご主人様「はーおもろ…久しぶりに涙出るほど笑ったわー」
メイド「私こそ涙出そうですよ!まんまとやられました!ご主人様のいけず!色情魔!」
ご主人様「色情魔!?そりゃ言い過ぎだろゴラァ!!」スッ
メイド(やばい!叩かれる!)ビクッ
ポン
メイド「!」
ご主人様「いつもありがとな」ナデナデ
メイド「……こ、こちらこそ…」
メイド「いつも『虐めてくれて』ありがとうございますゥウウウグルルルゥ…」
ご主人様「そ、そこまで怒るか…?」
メイド「もう、怒髪天を衝く一歩手前ですよ!」
ご主人様「……ははははは!!!!」
メイド「なーにがおかしいんですか!!」
ご主人様「だってお前のあのキス待ち顔思い出したらよー!!!写メ撮っとけばよかった!!!」
メイド「んなことしたらマジで裁判沙汰ですよ!!」
メイド(でも…そうか。別にご主人様にメイドやってもらう必要なんてなかったんだ)
メイド(ただひと言、こうやって『ありがとう』って言ってもらえるだけで、こんなに…)
ピンポーン
ご主人様「?」
メイド「こんな時間になんでしょう?…あ!もしかして私へのサプライズプレゼントとか?」
ご主人様「あるわけねぇだろそんなもん」
メイド「……ですよね~。今開けまーす」パタパタ
ガチャ
妹「こんばんは…」
メイド「あら、妹さん!どうしたんですか!?」
ご主人様「なんだァ、お前かよ」
妹「急にごめんね。今日はメイドの日だって聞いて…いつもお兄ちゃんが世話になってるだろうし、お礼にケーキを買ってきたの」
メイド「これこそホントのサプライズですよ~。女神かな?」ダーッ
ご主人様「怒ったり泣いたり情緒不安定なヤツだな」
妹「…それに、ゆうべ変な夢を見て…心配で見に来たの」
メイド「夢…?」
妹「お兄ちゃんとメイドさんが…」
妹「……!!」
メイド「ど、どうしたんですか、固まっちゃって…」
妹「お兄ちゃん…堂々としすぎててスルーしそうになったけど…なんでパンイチなの…」
ご主人様「ん?」
妹「そうか…やっぱりあれは予知夢だったんだわ…お兄ちゃんとメイドさんが一線を超えて…」
メイド「え!一線!?ち、違います!未遂…そう未遂ですよ!」
妹「なんとなく、この家から、ラブコメの波動みたいなのが見えていたのよね…」
メイド「ラブコメの波動!?」
ご主人様「なんじゃそら」
妹「当然よね…ひとつ屋根の下で男女が共同生活してて、何も起きないはずがなく…」
メイド「何も起きてませんってば!」
ご主人様「変なこと言ってねぇでさっさとそれ置いて帰れ」シッシッ
メイド「そんなこと言ったら可哀想ですよ!鬼!鬼畜だ!」
妹「いいの…お邪魔だったみたいだし…」
メイド「いや、ホントに違うんですって…!ほら!ご主人様も説明を…」アタフタ
ご主人様「…そうだな、今から2回戦だからな」キリッ
メイド「ちょっ…だからそういうバカみたいな悪ノリしないでくださいって!!!」
ご主人様「あぁ?誰がバカだとテメェ!!」ベチッ
妹(うわ、いきなりビンタ…いつもこんな感じなの…?)
メイド「……」プツン
メイド「言わせてもらいますけどねご主人様…」
ご主人様「あ?」
メイド「この世にあなた以上にバカで、そして野蛮な人は存在しませんよ!」
メイド「野生のゴリラだって、絶対もっと賢いし紳士的です!ご主人様はゴリラ以下!」
ご主人様「ゴ……」ブチッ
ご主人様「オイ!表出ろや!!!」
メイド「上等ですよコラ!!!」
妹(なるほどいつもこうなのね…)
妹「私、ケーキを分けておくわ」
メイド「ええどうぞお上がりください、すぐ終わらせて戻りますから!」
ご主人様「俺のケーキは大きめに切れよ!コイツのはコイツの胸みてーに薄くすりゃいいから!」
メイド「…フッ、バカの一つ覚えみたいに胸のことばっかり!まぁ私ってそれ以外は完璧ですものね!」
ご主人様「てめぇのどこが完璧だよ!絶壁の間違いだろうが!つーかまたバカっつったなぁ!?」ベシッ
メイド「痛ったぁ!!このっ…何度でも言ってやりますよ!バーカバーカ!ご主人様のバーカ!!」
ご主人様「てめぇってやつは…ほんっとに…」
ご主人様「メイドのくせに生意気だ!!!」
メイド「ご主人様こそすぐ叩く!!!」
おわり
前回お伝えしたように、今作はこれにて終了とさせていただきます。
完結というよりは単なるネタ切れなので、少々唐突な感じはあるかもしれませんが
書きたいと思った話はほぼ全部書いたつもりです。お楽しみいただけましたでしょうか。
ちょっとズレた主人とメイドでしたが、こんなふたりの日常にお付き合いくださり、ありがとうございました!
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