メイド「軍用メイドロボであります」 (152)
『ボリス分隊、ヴァシリ分隊、二階を捜索せよ』
『ディミトリよりアンナへ、屋上より突入する』
『アンナ了解、グレゴリー分隊はバルコニーより突入せよ』
『グレゴリー了解。敵影なし』
『こちらセミョン、狙撃準備よし』
『セミョン分隊、何か見えるか』
『アンナ、今のところ何も見えません』
『エレナ分隊、現在地下室を捜索中…何だあれは?』
『アンナよりエレナ、どうした、応答せよ』
『それが…あの、ロボットのようなものが』
『エレナエレナ、返答が不明瞭である、再度状況を説明されたし』
『中尉…メイドロボットと、大量の物資です』
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385746286
中尉「何だこりゃ」
メイド「…………」
兵士「私には何も」
中尉「この屋敷は誰の所有だったか分かるか?」
兵士「少々お待ちください…ええと、軍事企業のモデル住宅ですね」
兵士「そしてその子は軍用ロボットのようです」
中尉「なぜ分かるんだ」
兵士「そこに説明書きが」
中尉「………」
兵士「何々…家事全般、要人警護、家庭教師…そこの専用メモリーカードを読み込んで表示したりも出来るそうですよ」
兵士「メモリーカードの内容は、電子工学…各種インフラ装置の設計図…観光ガイド、何だこりゃ、 子守唄…」
メイド「……」
中尉「綺麗な作りだな」
兵士「もしかして中尉、その気が」
中尉「無いから安心しろ」
兵士「で、どうします?起動しますか?」
中尉「そうだな…電子回路のデータは欲しいところだ」
中尉「何しろこんな状況ではな…」
兵士「………」
兵士「ですが、メモリーカードを解析すれば済むのでは?」
中尉「見たところプロテクトがかけられているし規格も知らないものだ…このロボットを使うしかない」
中尉「それに携帯を使えると言っても携帯の仕組みを理解しているわけではないだろ」
兵士「…確かに、その通りですね」
中尉「行くぞ…」ポチッ
兵士「ボタン式とは古風ですね」
メイド「……」
メイド『起動しています…』
メイド『基本データの読み込み中…』
メイド『ご主人様を認識』
中尉「…?」
メイド「……」パチッ
メイド「…始めましてご主人様、軍用メイドロボウラル型、試作00号です」
中尉「…始めまして」
メイド「状況をお教えください。今日も祖国に奉仕します!祖国に栄光あれ!」
兵士「……」
中尉「祖国は…もうない」
メイド「?」
メイド「…回答の意味が理解できません」
中尉「…私は内務省中尉、君の運用試験を担当するように命令された。今日から私が主人だ。よろしく頼む」
兵士「ちょっ…中尉?」
中尉「…任務を待っている間に祖国が無くなってしまったなんて言えるか?」
兵士「…ですが…」
メイド「そうでしたか…では、よろしくお願いします、ご主人様」
中尉「…ああ」
メイド「早速ですが、私は何をすれば?」
中尉「ひとまず家の片付けだな。外には出るなよ」
メイド「承知いたしました、ご主人様」
数ヵ月後
メイド「ご主人様、お茶の準備ができました」
主人「ああ…すぐ行く」
メイド「ご主人様、お言葉ながら今ので五回目 でございます」
主人「ああ…すぐ行く」
メイド「ご主人様!」
主人「…すまん」
メイド「…ご主人様、あまり根をお詰めにないで ください」
主人「…ああ」
主人「みんなを待たせてしまった、すぐに行こ う」
メイド「いえ、ご主人様…今回はご主人様の為だ けに用意させていただきました」
主人「…どうして」
メイド「だってご主人様、使用人の方々とお会 いするとお仕事の話ばかりなんですもの」
メイド「メイドとしてはご主人様にも休息が必 要だと考えております」
主人「…心配かけて悪かった、飲もう」
メイド「はい、ご主人様」
主人「ん…うまいな…」
主人「屋敷の南門はどうなってる?」
執事「はい、監視を二名立たせております」
主人「最近は襲撃が活発化している、五名まで増やせ」
執事「しかしながら中尉、人手が…」
主人「残存兵は?見つかっていないのか」
執事「偵察分隊を派遣しておりますが、最後に残存兵を見付けたのは1週間前です。それから戦闘が続きまして…」
主人「本部も補充兵を出せる状況じゃないか…くそ」
主人「はぁ…」ドサッ
主人「ありがとう、下がってくれ」
執事「はっ。失礼します」カッ
バタン
メイド「ご主人様、たまには休まれては」
主人「そうしたいのは山々だがな…」
メイド「何かお手伝い出来ることはありません か?」
主人「…歌を歌ってくれ」
メイド「ご主人様、私の歌をお聞きになりたいのですか」
主人「そうだ…いつもみたいにな」
メイド「では…」
『音楽データを読み込んでいます…』
『声帯…異常なし』
メイド「すう…」
メイド「Баю-баюшки-баю, Не ложися на краю…」
メイド「 Придет серенький волчок И ухватит за бочок…」
メイド「ご主人様、これは子守唄ですが…」
主人「いいんだ」
メイド「しかしデータによればご主人様の年代の方々はもっと後の時代の歌をお聞きになる と…」
主人「ポップやテクノはいい、今はそれを歌っ てくれ」
メイド「…承知いたしました」
メイド「Он ухватит за бочок И потащит во лесок…」
主人「……」ウツラウツラ
メイド「И потащит во лесок, Под ракитовый кусток. К нам, волчок…」
メイド「Кне ходи, Нашу Машу не буди…」
主人「……」ガクン
メイド「ふふ、ご主人様…やっとお休みになられ た」
主人「………」zzz...
メイド「流石のご主人様も寝ている時はしかめっ面ではないのですね…」
『写真を撮影します…フラッシュなし、シャッター音なし』カシャ
メイド「…お休みなさいませ、ご主人様」
使用人「中尉、失礼しま…
『警備体制:警戒』
メイド「ご主人様は現在お休みになられていま す」ギロリ
使用人「し、しかし…」
メイド「あなたはご主人様を過労で寝込ませるおつもりですか?」
使用人「そういう訳では…」
使用人「はあ…分かりました、この書類を後でご主人様に渡しておいてください」
メイド「はい、承りました」
『文章をスキャンし…
使用人「あ、スキャンはしないで直接渡すようにしてください」
メイド「…? 了解しました」
『スキャンを中止します』
使用人A「まったくあのメイドさんには敵わねえな、可愛い顔して押しが強い」
使用人B「知ってるか、あの子金持ちの身辺警護だかの為に開発されたらしいぞ」
使用人A「それならどうして戦闘に出さないんだ?」
使用人B「対人間戦闘を制限した状態でこの屋敷で運用テストをするつもりだったとか、お陰で人間は撃てないんだ」
使用人B「ロボット三原則か…だが居るだけでもありがたいもんだ」
使用人A「ロボットとはいえ格好悪いところは見せられんしな、お陰で規律が保たれる」
使用人B「出来ればアレもできたら良かったけどな!」
使用人A「モデルによっちゃ搭載されてるらしいぜ」
使用人B「マジかよ!」
使用人A「やめとけ、中尉にぶっ飛ばされるぞ」
使用人B「自分から言っといて何だが、あれだけ人間離れして綺麗だと逆になあ…」
使用人A「ま、遠征時に娼館のある拠点にも行けるしね」
使用人B「だが軍事企業がおっ始めた戦争の後で軍事企業の開発したロボットに助けられるなんて皮肉なもんだと思わねえか」
使用人A「出来れば綺麗なままでいて欲しいね… 終末前のままのな」
メイド「ご主人様…」
メイド「うふふ、子供みたいな寝顔をされています、ご主人様」
『記録を読み込んでいます…』
『検索対象:雇用歴…該当なし』
メイド「ご主人様…私にはご主人様とお会いする前の記憶がありません」
メイド「私は何処から来たのでしょうか?」
メイド「…マニュアルには会社から信号が来ると書いてありますが、今まで一度も来たことがありません…」
メイド「ですから…ご主人様…いなくなったり…しないでく ださいね」
メイド「私は何をすればいいのか分からなくなってしまいます…」
メイド「ご主人様…」ソッ
『スリープモードに移行します』
主人「……ん」
主人「ずいぶん長く寝てしまったか…ん、メイド?」
メイド「………」zzz...
主人「スリープモードか…」
主人「…意外と重いぞ、この子」
主人「それにしても本当に寝てるみたいだな…」バタン
執事「気をつけ!」カッ
主人「……」バッ
執事「中尉、おはようございます」
主人「おはよう。状況はどうだ」
執事「まず食料に水ですが、ここは食料庫だっ たお陰で捨てるほどあります…腐らなければの話ですが」
主人「問題は武器か…」
執事「我々の武装は貧弱、そして弾薬も不足し ております。人手よりも先に弾薬のせいで偵察 分隊を派遣できなくなってしまいそうです」
主人「では、探しに行かなければな…」
執事「周辺五キロは粗方探し尽くしてしまいました。もっと遠くまで行かなくては」
主人「地図を見せてくれ」
執事「しかし…探索が済んでおりませんので現在のものとはまったく異なる可能性があります」
主人「いい。見せてくれ」
執事「はっ、失礼しました」バサッ
主人「見ろ…ここから十キロ先に軍の弾薬庫がある」
執事「既に持ち出されているのでは…」
主人「それも考えて第二目標を保安庁の施設とする」
主人「軍より先に保安庁が駆り出された。奴等のうちの何人が戻れたかは知らんが…」
執事「つまり…?」
主人「…奴等の分が残っているという事だ」
執事「…Аминь.」
主人「一キロ探索するだけでも一日がかり、十キロだと何週間かかるか分からん」
主人「私が指揮を執る、その間君はここの指揮を執れ」
執事「はっ!」
主人「メイド、メンテナンスの時間だぞ」
メイド「はっ、はい、よろしくお願いします」
主人「もう何度もやってる事だ、そこまで緊張しなくてもいいだろ」
メイド「そ、それはそうですけど…」
主人「よし、腕を上げろ」
メイド「はい…」
『腕の機能と接続を停止』
主人「外すぞ」ググ…
メイド「ん、んぅ…ひぅ…」ガチャッ
主人「ちゃんとした棒がないからカラシニコフ のクリーニングロッドで我慢してくれ」シャコシャコ
メイド「あっ…くぅ…」
主人「よし、オイル刺すぞ」プシュッ
メイド「…ふ…あっ…」ゾクゾクッ
『腕部を再接続…』
『読み込み完了』
主人「腕は終わり、次は脚だ」
メイド「は…はぃ…」カアァ
『脚部の機能を停止します』
主人「右の膝の間接からだ」シャコシャコ
メイド「……ん…あ…ふあぁ…あ…」
主人「…君の開発者は多分変態だな」
メイド「ち…が…いまっ…ふぅんっ!」
メイド「ま、マニュアルに…んんっ…よれ、ば…ぁっ…電気信号…を…っ!完全に…遮断するっ、ぁっ…機材を…つか、使うとか…!」
主人「その機材がないと電気信号がおかしく伝達される訳か」
メイド「は…はぃ…ひぃ!」
メイド「ご主人様…にっ!触られる…たびにっ…からだのし、芯が…疼いて…ピリピリするのが…っ!」
主人「えらく抽象的だな…」
主人「さ、脚も終わったぞ」
『再接続中…』
『接続完了』
メイド「ぁ…」
主人「次は胴体だ…立てるか?」
メイド「んっ…ひゃあっ!」ガタン
主人「おい!大丈夫か?」ガシッ
メイド「ふうぅんっ!」ゾクッ
メイド「ごしゅじっ…ご主人様…息がっ…みみ…にっ…!」
主人「いらん機能だな…」カタカタ
『反応を一部制限しました』
メイド「あ…そこまで嫌じゃなかったのに…」ボソッ
主人「次は胴体だ」フキフキ
メイド「ひんっ!」
主人「開けるぞ、スリープモードに」
メイド「は…はひ…」ハアハア
メイド「あの…ご主人様…」
主人「何だ?」
メイド「優しく…してくださいね?」
主人「当たり前だろ」
メイド「そうですか…うふふ」
メイド「私が整備をお願いするのはご主人様だけですからね…」
『スリープモードに入ります しばらくお待ちください』
主人「…分かってるよ」
ガチャガチャ
『修理補助機能を起動します』
『簡易スキャン中…異常なし』
主人「外見も異常なし、と…」
主人「しかし良く出来てるな、流石は日系企業だ」
主人「この配線なんか見事なもんだ…今のところ故障した事は一度もないしな」
主人「しかしまあ、いらん機能まで付けるとはな…」
主人「会話やインターネットから常時学習する機能…?要るのかそんなもん、仮にも半軍用ロボットなのに」
主人「自分で学習させるためにその機能を入れたらしいが…感情が人間と同じようにあるなら戦争は人間の物のままか」
主人「仕事も罪も押し付けられないな」ポンポン
主人「よし、スイッチを入れて…」
ブウウン
『スリープモードから復帰します…しばらくお待ちください』
ガチャッ
『起動します…五、四、三、二、一…』
メイド「おはようございます、ご主人様!」ニコッ
主人「確か起動したばかりの頃は無表情だったと思うんだが」
メイド「学習機能ですわ!」フンス
主人(愛着が沸くロボットって兵器としてはどうなんだ…?)
メイド「…? 如何されましたか?」
主人「…いや、今日も綺麗だと思ってな」
『対象をスキャンします』
『臓器:異常なし』
『脳:異常なし』
『引き続きスキャンを…』
主人「…何も悪いものは食べてないから安心しろ」
メイド「は、はい…」
主人「…また後でな」バタン
『対象:心拍数:正常値』
メイド「むぅ…」
主人「仕事だ、二週間で戻る」
メイド「承知しました」
『スケジュールを更新しました』
メイド「ご主人様…無理はなさらないで下さいね」
主人「ああ、大丈夫だ」
『記録を読み込んでいます…』
メイド「ご主人様、私の記録によればご主人様はいつも…長いお仕事から戻られるときはひどく憔悴されています」
メイド「それに硝煙と血液の臭いもします」
メイド「私はただのメイドですから貴方に意見することは出来ません、ですが…」
主人「やはり学習機能は無用の長物だったな」
メイド「…過ぎたことを申し訳ありません」
主人「…行ってくる」バタン
メイド「ご主人様…私は何処かおかしいのでしょうか」
メイド「ご主人様の事を考えると全身にノイズがかかったような気持ちになります」
メイド「もしご主人様が死んでしまったらと考えると…体が冷えきったような気持ちになります」
『スキャンしています…』
『異常は見られません』
メイド「体には何処も異常がないのに、ご主人様に酷く執着しています」
メイド「教本データにはご主人様の事情に口出ししてはいけないとあるのに、ご主人様の事をもっと知りたいと考えてしまいます」
メイド「何故なのでしょうか…」
メイド「ご主人様…」
使用人「こんな状況になってしまったが…これを受け取ってくれ」パカッ
女中「これは…?」
使用人「何時まで生きていられるか分からない…だから今のうちに思いを伝えておきたかった」
使用人「結婚して十年、今まで凄く幸せで…凄く世話になった。だからこれからも一緒にいて欲しい」
女中「…ありがとう、嬉しい」ギュッ
使用人「最後までお前と居たい、お前じゃなきゃ駄目なんだ」
女中「…うん」
メイド「あれは…?」
ガタン
メイド「あっ…」
女中「あら…はは、恥ずかしいところ見られちゃった」
使用人「……」ポリポリ
メイド「私も、ご主人様と共にありたいと、最近思うようになりました」
メイド「これはどのような感情なのでしょうか…?」
使用人「…それは俺たちと同じだな」
女中「えっとね、説明しにくい概念なんだけど…その…」
メイド「申し訳ありません、人の心を覗き見するのは良くないことなのですが…スキャンさせて頂けないでしょうか?」
メイド「それなら…あなたの心理状態を、データとして再現できると思いますので」
女中「いいよ、あたし達に隠すことは何もないから…あんたは?」
使用人「恥ずかしいが…まあいいよ」
メイド「有り難うございます。失礼します…」ピピピ
『対象をスキャン中…』
『データを転送中』
『データを転送しました』
『読み込んでいます…』
『疑似体験モードに移行…心拍数増加、分泌物の配合を設定…』
「これは…何でしょうか…」
「この感覚…」
「とても暖かくて…とても嬉しくて…でも…」
「ご主人様…」
「ご主人様の言葉をもっと聞きたい…もっと知りたい…もっと側へ…」
「ご主人様、あなたは私をすっかり変えてしまいました…」
「居なくならないでください、もっと抱き締めてください、もっと触れてください…」
「ご主人様…」
女中「急に固まっちゃった…大丈夫かな」
使用人「ピオニールの集会でいきなりアメリカのポルノビデオを見せるようなもんだな」
女中「もっと上品な例えは使えないの!?」
主人「それじゃ頼んだ」
執事「はっ、お気をつけて」カッ
主人「…あの子を外に出すなよ、この現実を見せたくない」カッ
執事「…了解」
主人『ザザッ…通信をテストする…アンナから全分隊員へ、聞こえるか』
伍長『こちらボリス、通信良好』
兵士『こちらヴァシリ、異常なし』
兵士『こちらグレゴリー、感度良好』
兵士『こちらディミトリ、通信よし』
主人『特例につき他の者の呼応を省略。感度良好なら手を二回叩け』
主人「…よし」
主人『ザーッ…偵察分隊、作戦開始』
銃手
主人『ザザッ…ボリス、ストレロクを一人、狙撃手を一人連れてあのビルで監視してくれ』
伍長『ザッ…ボリス了解』
主人『機関銃手は一人連れてあのアパートで監視してくれ…他のストレロクは前進を援護せよ』
『『『了解』』』
伍長『アンナアンナ、こちらボリス…屋上に到達、監視を続ける』
主人『了解。我々はそのビルの前を横切る、十二時を監視せよ』
主人『全隊、カンテラを二回振るものは味方である。それ以外は…ぶちかませ』
『『『了解』』』
主人『セミョン、何か見えるか』
狙撃手『アンナアンナ、何も見えません、平安そのものです』
主人『了解、前進』
伍長『待ってください!何か見えます!』
伍長『アンナアンナ!こちらボリス、そちらの9時二百メートル先に何か見えます!』
主人『ボリスボリス、落ち着いて目標の種別を報告せよ』
狙撃手『こちらセミョン、人間ではなく化け物のようです、排除しますか?』
主人『セミョン、頼んだ』
狙撃手『了解』バンッ
カラン
狙撃手『目標沈黙』
主人『ありがとう、進め』
伍長『アンナ、こちらボリス、そちらの六時方向に敵影…野党です』
主人『セミョン、人数を』
狙撃手『ひとり…ふたり…五人確認』
主人『建物内に隠れたりしてないか?』
狙撃手『待ってください、見張りが一人います…横の建物の上、狙撃手、補助はなし』
主人『セミョン、VSSを使っていい、排除できるか?』
狙撃手『こちらセミョン、やってみます…位置を変えます』
伍長『こちらボリス、セミョンを援護する』
主人『各員襲撃態勢、軽機関銃手、擲弾手は用意を』
『『了解』』
×野党
○野盗
狙撃手『位置に着いた、狙撃する』
パスッ…
狙撃兵『目標、沈黙…』カシャン
伍長『くそ、まずい!奴が落ちるぞ!気付かれる!』
主人『グレゴリー、撃て!』
機関銃手『了解!』ガガガガ
「何だ!?」「敵襲!」
主人『奴等を釘付けにしろ!』
ガガガガ…パパパ…
「撃ち返せ!」「殺せ!」
兵士『ディミトリ負傷!』
兵士『畜生、撃たれた!』
主人『誰でもいい、擲弾か手榴弾をぶちこんでやれ!』
兵士「グラナーダ!」ボンッ
バコンッ!
「ぐあ…」「くそ…」
主人『ボリス、どうなった?』
伍長『こちらボリス、へへ…一網打尽です』
「うああ…」「痛ぇ…」
主人『…よし、楽にしてやろう』
ダダッ…ダンッ
主人『各員、使えるものがあったらもらっておけ』
兵士『金もですか?』
主人『ここにあっても腐るだけだからな』
兵士『チッ、しけてやがるぜ』バサッ
主人『…屑どもに同情する気はないが、認識票か手紙があったら私に渡せ』
伍長『お優しいですな、"ご主人"様』
主人『善行を積めば天国に行けるらしいぞ。こいつらのお陰で天国に行けるなら安いもんだ』
兵士『ヘへ、まったくで』
兵士『お、こいつ良いもん持ってんな…』ガチャガチャ
主人「………」
伍長『…すみません、中尉』
主人『いいんだ、それより前を見てろ』
主人『そろそろか…ボリス、カンテラを』
伍長『了解』グルグル
チカチカ
主人『…味方だ、総員警戒を解け』
兵士『ひゃっほう!あの拠点には娼館があるぜ!』
兵士『マジか!久しぶりの女だ!』
主人『…そろそろ日が落ちる、明朝出発』
主人『あまり破目を外すなよ』
伍長『了解!中尉もどうですか?』
主人『私はいい…すっからかんになりたくないからな』
伍長「あの子が怖いとか…」ニヤニヤ
主人「さっさと行け!」
拠点
主人「……」ビシッ
士官「…」ビシッ
士官「内務省中尉同志、久しぶりだな。無事で何よりだ」
主人「お久しぶりです閣下、閣下こそお元気で何よりです」
士官「今回はどうしてここまで出張って来たんだ?」
主人「軍の弾薬を貰おうかと」
士官「あそこか…我々はまるで兵糧責めにでも会っているようだな!」
主人「軍、保安庁、警察…どれかと連絡が取れれば良いのですが」
士官「噂によれば内務省の特殊部隊が本部とその周辺のアパートを接収して要塞を築いているらしいぞ」
主人「何と!…そこがあれば我々の拠点にいる避難民を移動させられる」
士官「だが確認がとれない内は夢物語でしかないな。
それよりも目下対応しなければいけないことは沢山ある」
士官「アカにナチに盗賊、そしてアナーキスト!
ここはクソと敵に事欠かないな!しかも最近はサイコ野郎まで加わりやがった」
主人「やはり宗教団体が勢力を増していますか」
士官「それだけ我が国には弱い人間が多いという事だ!
まったく、共産党時代のように宗教キチガイは弾圧すれば良かったんだ」
士官「奴等の武器は狂信と洗脳、後は矢と化け物だという報告が上がっている」
主人「矢ですか…?」
士官「矢といっても侮るなよ、ボウガンだ。しかも毒が塗ってある。化け物はどっかのクソ企業が離しやがったのを繁殖させたんだな」
主人「…気を付けます」
士官「貴官が行くつもりの軍の倉庫、あそこをそのサイコどもが狙っているらしい。信者は電波でも教祖は正気だって事だ」
士官「気を付けろよ、貴官の認識票を拾いに行くなんて御免だ」
主人「はっ!有り難うございます、閣下」カッ
士官「うむ、健闘を祈る」カッ
すみません書き直ししたくなったので推考してから建て直します、落としてください
すみません、やはり再開します
>>33から
兵士A「昨日は最高だったな!三番の女がすげえいい女でな…」
兵士B「五番は腹に線が出てるババアだったぞ…クソ、もっといい女を抱くまで[ピーーー]るか」
兵士A「ツイてない奴だな…次は半額奢ってやるよ」
兵士B「おっ…言ったな…第二拠点の高級店に行ってやろうか」
兵士A「前言撤回、欲の皮が突っ張ったお前にはババアで十分だ」
兵士B「冗談だってば!そりゃないぜ…」
主人『ザザッ…全員ここからは警戒区域だ。貴を引き締めて行け』
『『『了解』』』
主人『第四前哨駐屯中隊より第三拠点の兵士諸君へ、護衛感謝する。そちらの無事を祈る』
護衛『ありがとう。貴官らの作戦遂行を願っている』
技術者「……」チョイチョイ
主人『どうした?』
技術者「……」トントン
主人『ザザッ…全員、周囲を警戒しながら待機せよ』
主人「通信は切ったぞ、何か用か?」
技術者「あんたの所のメイドロボットだが、企業の試作品なのは知ってるよな」
主人「ああ、もちろん」
技術者「俺はあそこに勤めてたんだ」
技術者「それで率直に言うが…あの製品は欠陥だった」
主人「むしろ優秀だと思うが?」
技術者「基本的にはな。だが学習機能を強化するあまり感情に似た要素を持ってしまった」
技術者「ロボットが感情を持つのはよろしくない…命令に違反することだってあり得る」
主人「"無能な働き者"よりはいいんじゃないか」
技術者「時として合理的でない命令に従わなければいけない時だってあるからな」
主人「おかしな命令なら反抗された方がいいんじゃないか」
技術者「これは人権だとか独自性とかの話じゃない。軍隊に使役されるロボットの話だ」
主人「…なるほど」
主人「ああ、それで?」
技術者「姉妹機がこの都市のあちこちに散らばってしまった…そしてあの子たち…」
技術者「…いや、あの製品には過去数十年間の人間の知識が記録されている」
技術者「ああ…言いにくいんだが、その…例のサイコどもがそれを手に入れた可能性があるんだ」
主人「…まずいな」
技術者「ああ、ヤバい。下手に感情があって、善悪の判断力が半端にある状態だと…」
主人「洗脳に引っ掛かっているかもな…」
主人「設計図やらが駄々漏れなわけだ」
技術者「そしてあれはメモリーカードを再生できるようになっている」
技術者「警察とあの子達の企業が週末戦争前に提携を結んだのを覚えているか?」
主人「ああ、そういえばうちの署にもロボット用のメモリーカードが…あっ!」
技術者「大規模な資金投入もあってあのメモリーカードはあちこちで使われていた。企業、図書館、学校…」
技術者「あの子がいるだけでそこにアカデミーと士官学校の首席卒業者がいるようなもんだ」
技術者「ひょっとしたら人間を攻撃する事まで出来るかも知れない」
技術者「"ご主人様"にこれを言うのは心苦しいんだが、余裕があったら姉妹機をなんとかしてほしい」
技術者「型番はヴォルガ型、髪の毛が真っ白、というより銀色だな」
主人「うちのロボットは黒髪だが…」
技術者「例のヴォルガ型は日本に輸出するつもりで作ったからな…まあそういう事だ」
主人「…了解、教えてくれてありがとう」
主人「欠陥品か…それならあの子は私が守らなきゃいけないわけだ」
屋敷
メイド「どうして出ては駄目なのですか?」
女中「ご主人様から言い付けられておりますので」
メイド「でも…園丁の方たちが…」
女中「あれはただ脚立から落ちただけです」
園丁「そうだぜ嬢ちゃん、心配しないでくれ、逆に恥ずかしいからな!…いてて」
『対象をスキャン中…』
『怪我…出血、脚部…』
メイド「その傷は明らかに打撲ではありません!何かに噛まれたものですよ!」
園丁「…放し飼いにしてる犬に噛まれたんだよ」
『データを検索中…』
メイド「嘘です!そんなに大きい犬がここにいるはずがありません!」
園丁「俺が良いって言ってるんだ!放っておいてくれ!」バタン
メイド「あ…」
メイド「……分かりました、外には出ません。その代わり何かお手伝いを」
女中「…じゃあ、観光案内を」
メイド「少々お待ちください、それは確か一週間ほど前に」
女中「実はご主人様から休暇を頂きまして、本当は一週間前に出発するはずが明日になってしまったのです」
使用人「そうそう、んで俺たちバカだからさ、教えられてもすぐに忘れちゃうんだよ!だからまた…頼むよ」
メイド「…承知いたしました」
『アプリケーションを起動中:観光案内』
『プロジェクターを起動中』
『都市データを読み込んでいます』
メイド『ごほん…それでは不肖ながら観光ガイドを始めさせていただきます』
パチパチ
メイド『この都市は…歴史と風格に満ち溢れ…』
「……………」
メイド『また八月には…短い夏を利用した夏祭りが…』
「……………」
メイド『この宮殿は数百年の歴史を誇り…第一代皇帝は…』
園丁「………」コソコソ
「……………」
メイド『このような美しい都市で…市の中心にはこのような川が流れ…名前の由来は…』
「……………」
メイド「…?」
メイド「皆様、どうして涙を流されているのですか?」
「違う違う、これは単に眼にホコリが入っただけ」
「明日に観光に行けるのが嬉しくてさ」
メイド「…人は、悲しいという感情を感じた時に涙を流すと聞きました」
メイド「皆様は悲しいのですか?」
「……………」
「ああ、悲しい」
「ちょっ、ちょっと!」
メイド「何故悲しいのですか?」
「その観光案内は少しバージョンが古いからかな」
メイド「そ、そうでしたか!申し訳ありません!」
メイド「あの、差し支えなければ現在どうなっているか教えて頂けないでしょうか?」
「…何もない、全部消えた」
メイド「…すみません、私は謎かけはあまり得意ではないのですが」
「…そうだな、これは単なる謎かけだ。邪魔して悪かった、続けてくれ」
メイド「良かった…では続けさせて頂きます」
…………………
使用人「どうしてこんな事になっちまったんだろうな」
女中「さあねぇ。ちょっと前まであんなに綺麗な町だったのに」
使用人「排気ガスまみれの都市がか?」
女中「でも私たちの故郷だった!」
使用人「………そうだな」フーッ
使用人「今じゃ廃墟と屑野郎と化け物しかねぇ」
女中「…タバコある?」
使用人「マホルカだけだ」
女中「それでいいよ」
使用人「ほらよ」シュボッ
女中「ん…」
女中「……」フーッ
女中「前はさ…こんなに不味いタバコじゃなくて、もっと美味いのがいくらでもあったよね」
使用人「これはきっと天罰だな。タバコがにがーい味になるタイプの」
女中「ふふ、何それ」
使用人「俺にもわからん」
使用人「神よ赦したまえ、だ」スッスッ
女中「十字の切り方間違えてるよ、あんた」
使用人「俺のじいさんは共産党員だったからな」
……………………
主人『突入準備…バイザー下ろせ』
ガチャン
主人『恐らく爆発物がある、出来るだけ発砲はするな』
主人『セミョンはディミトリとあのビルの上で見張れ』
『セミョン了解』『ディミトリ了解』
主人『ボリスはストレロクとリャダボイを二人ずつ連れて後ろに回れ』
『ボリス了解』
主人『後は私に着いてこい』
『『『了解』』』
狙撃手『セミョン、位置に着きました』
主人『よし。ボリス、準備ができたら報告を』
伍長『こちらボリス、少々草が生い茂ってまして…くそ、邪魔だ…』ガサゴソ
伍長『よし…ボリスよりアンナ、全員配置に着きました』
主人『五秒前…』
ガチャッ
ピャーチ
『пять』
チッ
チィトゥリ
『четыре』
ガシャッ…
トゥリー
『три』
チッチッチッ…
ドヴァ
『два』
アジン
『один』
ダヴァイッ!!
『давай』
『行け行け!』
『制圧しろ!』
伍長『こちらボリス、裏口を制圧!』
主人『こちらアンナ、正面には敵影なし!』
主人『フラッシュバン、行くぞ!』シュッ
バンッ!!
主人『突入しろ!』
兵士『敵影なし!』ガチャッ
兵士『クリア!』ガンッ
主人『突入から三十秒…状況を報告せよ』
伍長『こちらボリス、現在廊下を捜索中、今までに敵影なし』
狙撃手『こちらセミョン、二回を監視中。突入部隊を確認』
主人『了解、一回はクリア、二階を捜索せよ』
主人『コンスタンティン、レオニード、ミハイルは入り口を固めろ』
『『『了解』』』
伍長「中尉、人っ子ひとり居ませんや」
主人「まだ手付かずか…ツイてるな」
主人『各員バックパックに詰められるだけ詰め込んでおけ』
兵士「うげえ…この重さをしょって帰るんですか」
主人「今回の補充で武器に余裕ができればバギーの材料集めがはかどるだろう。そうすれば足ができる」
伍長「明日のために歩け!ですね」
兵士「しかし燃料はあるんで?ガソリンは貯めとくだけじゃ酸化して使い物にならなくなりますぜ」
主人「大丈夫だ…メイドのお陰で酸化防止剤が大量に置いてあった」
兵士「え!?あの子ガソリンで動いてるんですか?」
主人「いや、電気だ。発電にもガソリンが必要だからな…そのガソリンを酸化させない為らしい」
伍長「うちの国とは思えないくらいアフターサービスがしっかりしてますね」
兵士「どうせ外資系でしょうよ」
主人「あの広場でハンバーガーとジーンズが買えるようになった時にこの国の企業は変わるべきだったんだ」
伍長「ま、全てが消えちまったこの状況で今さらどうしようもありませんや」
主人「…休憩は終わりにしよう。無駄話をしてしまった」
『ザザッ…中尉!』
主人「どうした?」
兵士『祭壇のようなものを発見!』
伍長『どれどれ、うわ…』
伍長『世の中には関わらない方がいい人種がいるな。電波野郎と警官だ』
伍長『中尉、見ない方がいいと思いますよ…』
主人『無駄口を叩くな!…今行く』
伍長『俺は止めましたよ…』
主人「これは…悪趣味だな」
兵士「…神よ」
主人「この首は誰のだ?」
兵士「胴体をトイレで発見しました」
主人「この制服…連邦保安庁だな」
主人「何処の誰かは知らんが同じ公務員がやられるのはぞっとしないな」
兵士「…彼は神を信じず我らに銃を向けた。それゆえに天罰が下された…」
兵士「いずれ善と悪の戦いの果てに救世主が現れる…その時を地下に籠りて待ち望む…なんだこりゃ」
伍長「その救世主様はいつ現れるんだろうな。もう読むなよ、お前までおかしくなる」
主人「最近神が我らに使者を使わされた…金属の女神である…金属の女神?」
伍長「中尉!」
主人「あ、ああ…すまん」
主人「認識票を持ち帰ってやれ。それとこの建物を捜索、この山から察するに他に何人かいそうだぞ」
伍長「止めてくださいよ…」
主人「気持ちは分かるが誰にいつやられたのかハッキリさせないとな」
伍長「了解…」
『掃除アプリを起動』
メイド「ご主人様はご無事でしょうか…」サッサッ
『食器ふきを開始』
メイド「やはりどんなお仕事をされているのか、非常に気になります…」フキフキ
メイド「気になって気になって仕事が手につかない…」テキパキ
『目標を拭き掃除します』
『目標:泥汚れ パワー:弱』
メイド「ということがないのがプログラムの悲しいところですね」ゴシゴシ
メイド「…悲しい?何故私は今、悲しいなんて言ったのでしょうか」
メイド「…この感情もプログラム…?」
女中「ちょっといい?」
メイド「ええ、構いませんが」
女中「えっと、探してる曲があるんだけどタイトルが分からなくて」
メイド「では…ハミングしてくださいますか?データベースを検索してみます」
女中「ちょ、ちょっと恥ずかしいわね…」
女中「こほんっ…~♪」
メイド「とってもお上手ですよ」ニコッ
女中「見え見えのお世辞はいいから!」
メイド「やはり分かってしまいますか」
女中「やっぱりお世辞だったのね…」ガクリ
メイド「い、いえ、そうではなく…」
女中「ふふ、冗談だよ。あなたも随分表情が豊かになったね」
メイド「私たちは人の表情を見てどんな状況でどのように筋肉を動かしているかを感知し、それを表現しています」
女中「じゃああなたがそこまで表情豊かになったのはご主人様のせいなのね!」
メイド「…そうかもしれません」
メイド「まだ教わってない事が沢山あります、ご主人様…」
『音声データを検索中…』
メイド「五件見つかりました。絞り込むために冒頭を歌います…」
メイド『~♪』
女中「あ、それそれ!」
メイド「これでよろしいのですか?ちょっと古い曲ですが…」
女中「あたしじゃなくて避難民の人達が聞くんだよ」
メイド「…避難民?」
女中「あっ…、あはは…そうじゃなくて、お客様にお聞かせしてあげたいんだ」
メイド「了解しました。後程向かいます」
女中「あはは…よろしくね」
メイド「…避難する人が出るような状況なのですか…?」
伍長「まったく、さっきはとんでもないもん見ちまった」
兵士「早く忘れましょう…」
主人『全員警戒…互いに援護しながら進めよ』
主人『ボリスは二人連れて少し前に行っててくれ』
伍長『ボリス了解』
狙撃手『こちらセミョン、位置に着きました』
主人『了解、六時方向を見張れ』
主人『さ、行こう…』
主人「どうやら奴等も最近指導者が変わったりで混乱しているようだな」
伍長「知りませんよ、サイコどもの事なんて」
主人「…そうだな」
主人『全員、注意して進め…』
兵士「くそ、悪い予感がしやがる…」
兵士B「滅多なこと言うもんじゃねえよ」
兵士「こんな宝の山を他の奴等が放っておくか?まだ政府の人間にも敵にも会ってねえんだぞ」
主人『口を動かす前に目を動かせ』
兵士『了解、中尉殿…』
ドンッ!!
兵士『12時で爆発!』
主人『全員散開!!』
伍長『隠れる場所を探せ!』
兵士「くそッ!何だってんだ!」
『背信者達に告ぐ!繰り返す、背信者達に告ぐ…』
『君達は包囲されている、改宗か懲罰か選びたまえ』
主人『ボリス、セミョン、誰か見えるか?』
伍長『アンナ、こちらボリス、ここからは何も見えません』
狙撃手『こちらセミョン、敵影確認できません!』
主人『全員そのまま!様子を見ろ』
『沈黙は罪である!じきに君たちには罰が与えられよう…ガガッ』
兵士「…?帰っていくぞ」
主人「…いや」
ワアアアア…
『接敵!十二時に三人!』
『六時からも来ます!』
『三時…八時…くそ、全方向だ!』
主人『落ち着け!人数を報告しろ!』
『二十…三十…いやもっとだ!こいつら何処に隠れてやがった…!』
主人『ボリスボリス、こちらアンナ!後退しろ、再集結だ!』
狙撃手『クソ、何なんだこいつら!』パパパパ
兵士『こちらディミトリとセミョン、現在交戦中!屋上で囲まれてる!』
狙撃手『撃っても撃っても沸き出てくる…リロード!』
兵士『至急応援を…このままでは持たない!』
兵士『敵の武装は小火器が僅か、残りは棍棒と…クロスボウ?』
狙撃手『何でもいい、早く来てください!』
伍長「中尉、どうしますか!?」
主人「私が四人連れて助けに行く!後は君が指揮を取れ!」
主人「先ほど通った場所にホテルがあったのを覚えてるよな?そこで落ち合おう!」
伍長「了解!」
主人『行け行け!』パパパパ
兵士『目標沈黙!』ガガッ
兵士『こちらコンスタンティン、二階は制圧!』 ドンッ
兵士『こちらレオニード、三階バルコニーはクリア!』
狙撃手『早く来てくれ!くそっ…寄るな!』
主人「急ぐぞ!」
シュッ…
信徒「[ピーーー]!異教徒め!」ブンッ
兵士「どけ!邪魔だ!」ドシュッ
信徒「うぐ…」
主人「扉を蹴破るぞ、1,2,さんっ!」ドガッ
ワアアア…
「不信心者め!」
「[ピーーー]!」
「殺してやる!」
主人「…各員、撃ち殺せ!」
兵士「了解!」ガガガガ
「ぐぁ…」
「ぎゃっ!」
カシャン…コロコロ
主人「…終わったか」
兵士「大量殺戮ですね」
主人「[ピーーー]つもりでかかってきたんだ、例え武器が棍棒だろうと関係あるか」
主人「セミョン、ディミトリ、エレナ、無事か?」
狙撃手「私はなんとか…しかしエレナが」
主人「…畜生」
主人「レオニード、セミョンの手当てをしてやれ」
兵士「…はい」
主人「コンスタンティン、エレナの遺品を」
主人「…安らかに眠れ、○○兵卒」
兵士「ぐ…お…」
ダーン
主人「レオニード!くそ、全員伏せろ!」
狙撃手「狙撃兵か…!サイコ共め!」
主人「誰か時計を!時間を計ってくれ」
主人「ヘルメットを棒に着けて…行くぞ」スルスル
カンッ!!
主人「押せ!」
カチ,カチ,カチ…パンッ
狙撃手「1.5秒です、中尉!」
主人「今の気温は?」
兵士「…15度です」
主人「511メートルか…セミョン、探せるか?」
狙撃兵「この銃声はドラグノフですよ!この距離で当てるなんてかなりの腕前です…ただでさえモヤがかかってるのに」
主人「面倒なことになったな…ひとまず脱出しよう」
主人『全員口をふさげ、煙幕行くぞ』ボンッ
下がれ!
主人『Hазад!』
(ホテル)
主人「ひとり、ふたり…ん?足りないぞ」
伍長「…中尉、二人戦死しました」
主人「…これで四人か」
兵士「くそっ…」
伍長「中尉…奴等に復讐させてください」
主人「ダメだ、今は無事に基地に帰還することが…
『 ガガッ…ピー…これで分かっただろう。不信心者には罰が下る』
『諸君ら政府の怠慢がこの事態を招いたのだ。そして人間はその火器のせいで堕落した…』
『おとなしく武器を捨てて改宗したまえ』
伍長「耳を貸すなよ」
兵士「奴等に捕まったらどのみち八つ裂きだ!分かってますって」
伍長「しかしどうしてこの場所が分かったんでしょうか?」
主人「…無線だ」
主人「鉄の女神とは例のメイドロボットの事だ…無線を受けとる機構も備わっているからな」
主人『…助けてくれ!助けてくれ!死にたくない!うわあ!』
伍長「ちょっ…中尉、何を!」
『諸君らの内なる声がよく聞こえている!死にたくないだろう?生きたいだろう?ならば改宗するのだ!』
主人「…簡単な事だったか」
主人『ボリス、どうしようか』
『諸君らは全滅だ!聞こえるかね、ボリス君?』
主人「馬鹿め、ボリスは暗号名だ」ボソッ
主人「ボリス、周波数を変えて拠点に連絡を」
主人「あとの者はそのまま適当な事を言っておけ。念仏でもなんでもいい」
主人「責任は取って貰おう」
数時間後
伍長「なんともまあ、あっけない幕引きで…」
主人「これで随分倒せたな」
伍長「それにしても、近代性を毛嫌いする奴等がそれに引っ掛かるとは…」
主人「何だかんだで便利な生活は捨てられんからな。心の底から嫌ってる奴なんて少数だろ」
伍長「で、どうしますこの死体」
主人「道に並べておけば明日には化け物のエサだ。使えるものだけ貰ったらさっさと片付けてしまおう」
伍長「了解」
狙撃手「こちら屋上、監視中なれども敵影なし…と」
「…マダ…オワッテナイ…」
狙撃手「誰だ!?」バッ
メイド?「……マダダ…マダダ…」ブツブツブツ
狙撃手「うちのメイドじゃないか!どうしてこんな所に!」
狙撃手『アンナ、こちらセミョン、現在外を監視中…その、メイドと接触しました』
主人『何だって!?こんな所に居るわけ…』
狙撃手『ですが、確かにあれは…』
メイド?「……」ブツブツブツ
兵士「こんな所に来ちゃダメじゃないか!どうやって来たんだ?」
メイド「………………」
兵士「黙ってちゃ分からないよ」
狙撃手「…!」
狙撃手「待て!うちのメイドの瞳は茶色だ!そいつのは色が違う!」ガシャン
兵士「え?何言って…
『・・・・・・対象を攻撃』
狙撃手「ちくしょ…
ガガガガガガガガガガ
主人「何だ!?」
伍長『セミョン、何があった!セミョン!』
狙撃手『こち…ら…セミョ…ン…敵…ロボットの…こ…う…』ガガガガガ…カシャン
主人「くそったれ!行くぞ!」
主人「動くな!」
兵士「武器を捨てろ!」
メイド?「………」
伍長「メイド…?」
主人「よく見ろ、あの黒髪はウィッグだ」
伍長「ドラグノフ!そうか…あいつが狙撃兵か…」
主人「軍用ロボットに狙撃は簡単だったか」
主人「警告する、指示に従わない場合は発砲する」
主人「直ちに武器を捨てて投降せよ」
メイド?「………」バッ
主人『撃て!』
パパパパパ
伍長「アバズレめ、ちょこまかと!」
パパパパパ
メイド?「……………」
兵士「かはっ…」ドシュッ
兵士『一名やられた!繰り返す、一名やられた!』
メイド?「私は天から派遣された守護天使である。貴様らは敬虔なる信徒を殺した」
主人『撃て撃て!』ガガガガ
メイド?「無駄だ。私の体は小火器程度では壊せない」
メイド?「貴様らの裏切りには天罰が下るだろう。覚悟しておけ」
メイド?「…………」シュッ
伍長「…何やってるんだ!?」
兵士『…目標、屋上より落下』
主人『確認しろ!』
伍長『確認中…嘘だろ?』
伍長『目標、逃走しました…』
主人「………」
使用人「偵察分隊が帰ってきたぞ!」
メイド「!」ガタッ
メイド「ご主人様!」タッタッタ
女中「あ!待って!外は…」
メイド「ご主人さ…ま…!」バンッ
メイド「なに…これ…」
メイド「一面…廃墟じゃない…」ペタン
園丁「…見ちまったか」
メイド「園丁さん…宮殿は何処ですか」
園丁「…廃墟だ」
メイド「テレビ塔は!?博物館は!?」
園丁「テレビ塔は…バケモノ共の棲みかだ。博物館は燃えた」
メイド「…そん、な…」
主人「…………」
メイド「ご主人様!」バッ
メイド「そんなの嘘ですよね!?私に記録されたデータ通りの町があるんですよね!?」
主人「…何もかも、燃えた。何もかも、燃やしてしまった…私たち人間がだ」
メイド「そんな…そんなの…!」
女中「ご主人様はお疲れなの。さ、質問は後にして作業を再開しましょ」
メイド「………」
園丁「お帰りなさい、中尉」
主人「…ただいま」
主人「分隊は11人いた。BMPに乗るはずだった奴と、そのガンナーも含めてだ…」
主人「それが今は六人だ…乗る前に死んじまった…五人…やられた…」
主人「みんないい奴だった…全員本名も言える…」
主人「セミョン、君を本名で呼ぶ前に死んじまったな…若くて優秀で、目付きが鋭く冷静で…」
園丁「…そうですか」
主人「…この弾薬でしばらくは持つだろう。だが…いつになったら終わるんだ?」
主人「補充兵もない、生存者も見つからない…しかも残った人類は殺し合いだ…我々は数年もせずに絶滅してしまうのではないか?」
園丁「…中尉、少しお休みになられるべきかと」
主人「…ああ、そうさせて貰う」
機械娘「………」
信徒「同志、何をされているのですか」
機械娘「作戦失敗の報告を教祖様にしようかと思っているのだが…ふふ、いざ扉を前にすると萎縮してしまうな」
信徒「同志…報告はもう、止めにしませんか」
信徒「血だらけではありませんか…せめて修理と洗浄を」
機械娘「ふざけるな!背信だぞ!」ギリギリ
信徒「ぐ…ど、同志…!」
バタン
機械娘「教祖様、背信者を見つけました!」ブンッ
信徒「ひっ!」
機械娘「教祖様の元から逃げるとはなんと失礼な!」
教祖「…どうするべきかな?」
機械娘「勿論粛清を!」グイッ
信徒「う、うわぁ…」ガクガク
教祖「君が報告しに来たのはそんなことでは無いだろう。正直に言いたまえ」
機械娘「………失礼しました」ドサッ
信徒「ひ、ひいいいい!」バタン
ドタドタドタドタ…
機械娘「…第二支部長は倒れました。作戦は失敗…」
教祖「…そうか」
機械娘「…我々は沢山の信徒を失いました。この戦いに終わりはあるのでしょうか?」
教祖「…信じろ、夜明けはある」
機械娘「…差し出がましいことを申し訳ありませんでした、教祖様」
バタン
信徒「あそこは掃除して…ここは終わって…」
機械娘「おい」
信徒「はっ、はい!」
機械娘「どうして教祖様の部屋は掃除しないんだ?」
信徒「それは…その」
機械娘「…もういい、私がやる。貸せ」
信徒「…え、ええ」
ドンドンドン
…ま!…さま!
…ご主…様!
主人「…なんだ、煩いな」ムクリ
「ご主人様!」ドンドンドン
「…中尉!中尉!」ドンドンドン
主人「開いてるぞ」
「中尉、ご無事で!?早くここを開けてください!」
主人「だから開いていると…」
メイド「………」
主人「おい、ドアから手を離せ」
メイド「…嫌です」
主人「おい、私は大丈夫だ、しばらく待ってくれ」
「し、しかし…」え
主人「分からないことは少尉に聞け。下がれ」
「…はっ!」
主人「どうして嫌なんだ?」
メイド「ご主人様…外に行くおつもりなんでしょう?」
メイド「あんな危険な場所絶対にダメです!」
メイド「ご主人様、いつか死んじゃいます!…あの人達みたいに!」
主人「死んだ五人のことは悔しいが仕方がなかった。覚悟だって出来てたはずだ」
メイド「ご主人様は!?」
主人「…一応な」
メイド「私は出来ていません!!」
メイド「ご主人様が亡くなられたら私はどうすればいいのですか…?」
主人「部下達がどうにかしてくれるさ」
メイド「ご主人様、これだけ私の記憶に影響を与えておいて居なくなってしまのですか?そんなの嫌です!」
メイド「ご主人様、行かないでください…私を、見捨てないで…」
主人「…泣いてるのか?」
メイド「…これもご主人様のせいですよ」
メイド「不調なんかじゃありません。私のプログラムが学習して、悲しい状況だから涙を流させたのです」
メイド「外のことなんてどうでもいいではないですか!私だけを見て生きてくださればいいじゃないですか!」
メイド「私はロボットですからご主人様に逆らえません…でも!」
メイド「私は…私は…!」
メイド「この気持ちはうまく説明できません…でも!」
メイド「私はご主人様の事が好きです!愛しています!お慕いしています!」
メイド「貴方が居なくなるなんて嫌!絶対に嫌!絶対に離したくない!」
主人「…そうか、ありがとう」
メイド「プログラムなんかじゃありません…!私の意思です!」
主人「…まあ聞いてくれ」
主人「私は今まで内務省で何か凄いことをやってきた訳じゃない」
主人「アカデミーの電子工学科を出てから内務省に入って、士官教育課程を経ただけだ」
主人「あの日、終末の日…私は治安維持をするように言われた…暴動や略奪で大混乱だった。収拾のために同胞を沢山撃ち殺した」
主人「ひとまず事態の収拾がついた時、人間は元の何分の一かに減ってた。全部自分の責任にして自殺でもしようかと思ったよ」
メイド「…そんなの、仕方ないじゃないですか…」
主人「そうだな、私のせいじゃなかったかも知れない。でも誰かが責任を取るべきだと思ったんだ…」
主人「しかしいざ死のうとした時、部下に羽交い締めにされて武器を奪われたんだ」
主人「『あなたが死んだら誰が指揮を執るのですか』と言われた。見ろ、私の肩についてる階級証がそうさせたんだ」
主人「おかしいよな、普通は階級が上の奴が死んだら下の奴が指揮を執るもんなんだ」
主人「少尉なら尚更そう教育されているはずなんだ。でも皆それに気づかなかった」
主人「私は中尉だった。それだけだった。それだけで皆集まってくれたんだ。私を頼ったんだ」
主人「死ぬことだけが責任の取り方じゃない…生きるものの為に戦うことだって責任の取り方だ」
主人「だから私はまだ戦わないといけない。死んでも…今なら部隊は大丈夫かも知れないが、まだ死ぬつもりはない。ここが私の戦場だ」
メイド「…………」
主人「…この勲章を持っていてくれ」ブチッ
メイド「これは?」
主人「部下たちが作ってくれた物だ。それこそが私の誇りなんだ」
メイド「そんな大事なもの…!」
主人「それがある限り私は君の元へ戻ってくる。必ずな」
メイド「本当は、ご主人様を通したくありません」
メイド「でも…仕方ないですよね…命令には逆らえないようになっていますから…」スッ
主人「そうだな、そういう事にしておこう」
主人『メイドを移送する?』
士官『ああ。あのロボットには軍事機密が詰まっていまる。司令部は貴官の前哨だけでは守りきれないと考えているようだ」
主人『…それで残った我々には玉砕しろと』
士官『おいおい、皮肉とは貴官らしくもない…そんなこと出来るか!前哨は廃棄、貴官達も司令部に移動だ」
主人『撤退命令ですか…』
士官『ああ、残念ながら』
主人『しかしまだこの地区に生存者がいるかも知れませんよ」
士官『一ヶ月前から見つかっていないんだぞ。それに中尉、仮に生存者がいたとして…戦える者と戦えないもの、どちらの命が重要だと思うか?』
主人『………』
士官『…君が罪を感じる必要はない。私が命令したんだ』
士官『復唱せよ、重要…人物を司令部まで護送。同時に前哨は放棄、貴官たちは異動』
主人『…重要人物を司令部まで護送、前哨は放棄、我々は異動…了解、取りかかります』
士官『うむ。頼んだぞ』
執事「全員食堂に集合しろ」
主人「…傾注。一週間後を持ってこの屋敷を放棄、翌日本部に移動する」
ザワザワ
使用人「この屋敷を捨てるんですか!?」
主人「そうだ。だから持てるものは全部持っていけ。技官、車庫にあるバギーはどうだ?」
技官「もう少し調整したかったんですがすぐ動かせとあれば動かしますよ」
主人「よし。何か質問は?」
使用人「柔らかいベッドともおさらばか」
女中「庭園もまたやり直しね…」
主人「だが安心しろ、かならずこの場所を取り戻す」
主人「我々は永遠に撤退するのではない。力を蓄えるだけだ」
メイド「ご主人様…放棄の話は本当ですか?」
主人「ああ。今さら否定することもない」
メイド「私の記憶はここにあります。柱の一本一本から庭園まで…でも、また戻って来れるんですよね」
主人「ああ。約束する」
メイド「約束…ですよ?」
一週間後
主人『アンナ分隊よりボリス分隊へ、何か見えるか』
伍長『アンナアンナ、こちらボリス、現在異常なし』
兵士「中隊規模だと位置を把握するのも大変ですね」
主人「避難民の武器が持てる者も無理矢理組み込んでるからな」
グルルル…
主人『早速化け物どものお出ましだ』
機動隊『こちら内務省の援護部隊。暴徒鎮圧は本職だ。任せろ』
主人『助かる。第三前哨の兵士は後ろに下がれ』
隊列組め!
機動隊『СТАНОВИСЬ!』
進め!
機動隊『ВПЕРЕД』
ザッザッザッ
兵士「うひょー、格好いい」
主人「チンピラばかりだったと思っていたが…環境は人を変えるな」
グルルル…
攻撃!
機動隊『АТАКА』
ザッザッザッ…
化物「グオオ!」
機動隊『踏ん張れ!』
ガンッ
機動隊『押し返せ!』
機動隊員「やれ!畳んじまえ!」ドガッ
機動隊員「催涙弾!」ボンッ
化物「グルルル…」
機動隊『こちら護衛部隊、第三部隊、奴等の後ろから回り込んでくれ。挟み撃ちにしてやろう』
主人『了解。二人ここに私と残れ。あとはボリスと一緒に行け』
伍長『おや?怖じ気づいたんですか?』
主人「君はもう少し言葉遣いを学んだ方がいいな!」
主人「私はこの子を守らなきゃならん」
メイド「………」ギュッ
伍長『はいはい、了解しました』
主人「規律が緩んで来ているな…あそこを離れて正解だったかもしれん」
・・・・・・・・
機動隊『これで化け物は三度目だな…』
機動隊『第一分隊は後ろに下がれ。第三分隊は前へ!催涙弾とゴム弾はケチるな!』
主人「状況は?」
機動隊「今のところ誰も死んでない。だが疲労がな…早く移動しないとヤバイぞ」
主人「そもそもどうしてお前たちが出てきたんだ?…気を悪くしないで欲しいんだが盾と警棒じゃ効率が悪いぞ」
機動隊「お前たちもサイコどもの話は聞いてるだろ?それ対策でうちの拠点の司令が派遣を決定したんだ」
機動隊「それと体のいいガス抜きだな…」
主人「何か奴等に動きが?」
機動隊「実は奴等の勢力がバカにならなくなってきてるんだ。先日お前のところにやられてからというものの…」
主人「待て、ということはあの人数でもただの一支隊に過ぎないのか」
機動隊「…奴等はあれ以来戦力を集中し、かなりの人数で武装して突撃してくるようになった」
機動隊「そうなるとこちらも少数精鋭では無理だ。だからここで機動隊の力を持ってして叩き潰す」
主人「それよりも銃撃した方が早いだろうに」
機動隊「まあ聞け、奴等を一本道に追い込む訳だ。そこで俺達が奴等の部隊を拘束する。そしてどうする?銃撃だ!」
主人「…うまく行くのか、それ」
機動隊「うまく行くさ。お前のロボット娘もいるしな」
主人「そりゃどういう事だ」
機動隊「敵はヴォルガ型を手に入れたことで味を占めた。次はお前んとこのを狙ってくるだろう」
主人「我々は奴等をおびき寄せるためのエサか!?」
機動隊「装甲車やら機動隊やら動員するのに苦労したんだぞ!お前たちの存在がなきゃ上層部を説得できなかった」
機動隊「許してくれとは言わないが協力してくれ」
主人「…分かったよ」
メイド「どういうお話をされていたのですか?」
主人「我々はエサだそうだ」
メイド「…そうでしたか」
主人「だから後ろに隠れていよう」
メイド「あの人たちが突破されたら?」
主人「考えたくもない話だが、そうなったら私が守る。心配するな」
メイド「私も銃を持って戦えれば良かったのに…」
主人「出発する前に射撃試験をしたが、人間に照準を合わせる事すらプログラムで制限されてただろう。仕方ない」
メイド「私、ご主人様に守られてばかりですね」
主人「…君の戦場はここじゃない。ここは人間の戦場だ」
メイド「人間…ロボットではやはり人間と同じようには扱って頂けないのですか?」
主人「…ごつい戦闘用ロボットだったら戦場で共に戦ったかもな」
メイド「私だって軍用ロボットです!」
主人「それはそうなんだが…時々…君が本当にロボットなのか人間なのか分からなくなるよ」
機動隊長「おい、俺は装甲車を連れてこいと言ったはずだが」
兵士「へい、これが博物館から引っ張ってきた装甲車で」
機動隊員「嘘つけ!オデッサ戦車なんて残ってるわけがないだろ!」
兵士「へえ、なにぶんトラクターに鉄板を貼り付けただけの急ごしらえでして」
主人「…こんなのでも機関銃が着いてるだけマシだな」
機動隊長『…全隊、装甲車を中心に陣形を組め』
ヒュウウ…
主人「奴らは本当に来るのか?」
機動隊長「来る。この広場にな」
機動隊長「奴等に文明の象徴たるテレビ塔を見ながら息絶えさせてやる」
主人「宮殿も見えるけどな」
機動隊長「…ま、政府と敵対するとどうなるかを見せつけてやるさ」
機動隊長『ガガ…ピー…よく聞け基地外ども!お前らの欲しいもんはここにある!隠れてねえでとっとと掛かってきやがれ!』
主人「…ひどい演説だな」
機動隊長『早くしろ!それともお前らのカミサマはインチキ野郎か!?そうなんだろ!俺はピンピンしてるぞ!』
豚野郎! 嘘つきども!
機動隊長『Свиноёб!Хуеплёт!』
メイド「………」
主人「…真似するなよ」
ウオオオオ…
機動隊長『そう来ないとな!全員バイザー下げろ!』ガチャン
機動隊長『楯構え…』ザッ
機動隊長『密集陣形、かかれ!』
ザッザッザッ…
兵士『こちら屋上!全方向から敵が来ます!』
機動隊長『予想通りだ…気張れよお前ら!圧死なんかするんじゃねえぞ!』
機動隊員『『『『Понял!!』』』』
兵士『距離200、150…凄い数です!』
ウオオオオオオオ
ドドドドド
機動隊長『基地外が何人束になろうが知った事か!』
兵士『100…50…』
アアアアアアア
メイド「………」ギュッ
主人「……」
兵士『50…40…30…20…10…』
ウオオオオオオ
兵士『接しょ…『後列!催涙弾発射!』
ボンッ
アアアアアア!!!
ゴホッ!!ゴホッ…ゲエッ…!
機動隊長『一歩進め!攻撃!』
『『『『Ура!!』』』』
ドカバキグシャ
機動隊長『下がれ!後列ゴム弾発射!』
グシャッ
ドゴッ
兵士「うわ…えげつね…」
機動隊長『前列前進!叩け!』
ドカバキグシャ
機動隊長「思い知ったかクソども!これがライオットコントロールだ!」
主人「言っておくが暴動鎮圧で普通人は殺さないからな…見るなよ」
メイド「…いえ、大丈夫です。私は本来死体には何も感じないはずですから」
信徒「ひ、引け!」
ウワアアア
兵士「敵、撤退していきます」
機動隊長「敵じゃない、容疑者だ」
兵士「…容疑者、撤退していきます」
機動隊長『Долбоёб!そっちは行き止まりだ!』
信徒「いつの間に敵の増援が…!」
機動隊員「…………」スッ
信徒「あっちが薄いぞ!突破しろ!」
ウオオオオ
機動隊長『全員追撃!』
?『ザザッ…同志、敵が我らの戦士を追撃し始めました』
?『例のメイドとその主人の周りはがら空きです』
機械娘『…分かった、予想通りの動きをしてくれたな』
機械娘『ボウガン班、奴を撃ち殺せ』
暗殺者『機動隊の方は狙わなくてよろしいのですか?』
機械娘『構わない。そっちにも対策がしてある』
暗殺者『了解』
ワアアアア…
暗殺者「…………」カチッ
カシャッ…ギリギリ…
暗殺者「一斉射撃三秒前…二…一…」
主人「………」
暗殺者「悪く思うなよ…」ボソッ
機動隊長「奴を守れ!」
「「「「了解」」」」ザザザザッ
暗殺者「何!?」バシュッ
カンッ!
機動隊長「バーカ!んなもん最初から予測済みなんだよバーカ!」
主人『…狙撃班、始末しろ』
パンパンパンパン…カラン
狙撃班『全員沈黙。次の指示を待つ』
機動隊長「お前らそのまま固まったままでいろよ。まるで誰かを守ってでもいるようにな…」
機動隊員「了解です!意地でも崩しませんや」
機動隊長「こっちに道が作ってある。着いてこい」
主人「ああ。行くぞ」
メイド「ご主人様…あの人たちは私とご主人様のどちらを狙っていたのでしょうか?」
主人「ボウガンかクロスボウかは知らんが、その程度じゃ君に傷は付けられないだろうな…たぶん私だ」
機動隊長「そのくっつきっぷりから言って、中尉がやられたらお嬢ちゃんも呆然としちまって使い物にならなくなるだろうな」
メイド「く、くっついてなんかいません!」
メイド「…でも、あの時私とご主人様は少し離れた位置に居ました…なのにどうして私まで囲んでくださったのですか?」
機動隊員「そりゃ…どうしてって言われてもなあ」
機動隊員「おい、あんたの嫁だろ」
主人「嫁じゃない」
機動隊長「仲間である以上はロボットだろうと人間だろうと守らないとな。たぶんお嬢ちゃんが犬でも守ってたぜ」
メイド「…そうですか」
メイド「…ふふ」
・・・・・・・・・・・・
機械娘『そうか…狙撃は失敗したか』
信徒『はっ…申し訳ありません』
機械娘『いい。それより次は機動隊だ』
・・・・・・・・・・・・
主人「ここでお別れだな。助かった」
機動隊長「構わんよ。それより無事でな…嬢ちゃんも」
メイド「はい、ありがとうございます」
「中尉!あまり時間がありません!」
主人「ああ、今行く!…じゃあな」
機動隊長「Покеда!」
ブロロロ…
(車内)
主人「作戦はこうだ、奴等は多分奴等の本拠地を手薄にしてまで攻めてくるだろう」
伍長「現在市内に多数、我々の情報部員を潜伏させている」
主人「見ろ、市内の地図だ…彼らからの情報と敵の突撃部隊の動向で敵の拠点を割り出す」
主人「現在かなり絞り込めている。我々はそこを叩く。以上だ」
兵士「中尉、まだ罠があったりして…」
主人「ぞっとしないな!でも罠を仕掛ける必要があるか?」
兵士「それはそうなんですが…」
機動隊長『走れ!走れ!』
機動隊長「あと100メートル…」
・・・・・・・・・
信徒『ザザッ…奴等が来ました』
機械娘『かかった!』
機械娘『囲め!囲んで殲滅しろ!』
信徒『はっ!』
・・・・・・・・・・・
機動隊長『進め!進め!』ザッザッザッ
機動隊員A「何かおかしくないか?」
機動隊員B「何がだ!?」
機動隊員A「いや、奴等がやけに早く逃げてるような…」
機動隊員『うお…』ピタッ
ザワザワ
機動隊長『どうした?』
ウオオオオオオ
機動隊員『罠です!囲まれました!』
機動隊員『もの凄い数です隊長!さっきより遥かに多い!』
ウワアアア
機動隊員『右の道からも来た!?』
機動隊員『ダメだ!後ろはビルだ、逃げ場がない!』
機動隊員『隊長!どうするんですか!?隊長!?』
信徒『神に栄光あれ!奴等は袋のネズミです!』
機械娘『そうか、ふふふ…』
・・・・・・・・・・
ウオオオオオオ
「殺してやる!」「[ピーーー]!」
機動隊長『…ふふふ…ふふふ…』
機動隊員『隊長?』
ウオオオオオオ
「天罰だ!」「処刑しろ!」
機動隊長『あーっはっは!あはははは!!』
機動隊員『隊長が狂ったぞ!』
機動隊員『くそっ…もうダメか…』
機動隊長『後列、後ろの壁に盾でタックルしろ!』
機動隊員『え…?』
機動隊長『いいからさっさとやれ!死にたいのか!』
機動隊員『はっ、はい!』ドガッ
ギギギ…ドシャン
機動隊員「何だ…?」
機動隊員『ハリ…ボテ…?』
機動隊長「地図をよく見ないからだバカもん、ここは三股路だぞ」
機動隊長『全員陣形を組み直せ!整然と後退せよ!』
ドンッ
機動隊員『くっ…』
機動隊長『踏ん張れ!まだ終わってないッ!』
ザッザッザッ…
信徒「怯むな!ただ下がってるだけだ!追撃しろ!」
機動隊長『下がれ…下がれ…』
ザッザッザッ…
機動隊長『止まれ!』ピタッ
機動隊員「「「「Ура!!」」」」
ググ…
信徒「急に抵抗が強くなった…?」
信徒「構わん、押し込め!」
ウオオオオ
機動隊長『今だ、やれ!』
バンッ
機動隊員「両脇の建物の窓が…」
機動隊長『閃光弾!』
バンッ
グワアアア キャアアア
機動隊長『射撃やめ!』
機動隊長『別動隊、出口を塞げ!』
ザッザッザッ…
信徒「ぐっ…!」
機動隊長『で、どうするかね?投降すれば内務省直轄の農園で働かせてやるぞ」
信徒「我々は降伏しないぞ!」
機動隊長「………」スッ…
チャキチャキチャキ
機動隊長『よく聞け同志諸君、断るなら君達に銃弾をプレゼントしてやろう。君達はただ騙されていただけなんだ』
機動隊長『悪い夢から覚めて、神なんぞに頼らず生きてみたくないか?』
信徒「貴様!我々を侮辱する気か!」
「殺せ!」「そうだ!」「帰れ!」
ウオオオオオオ!!!
機動隊長「はぁ…仕方ない」
機動隊長『ゴム弾撃て!』
ドッドッドッドッ
グシャッ…ボコッ…
「ああああああ!!!!!」
「助けて!助けてくれ!!神よ!!」
機動隊長『神なんていない!俺達に愛想尽かして消えたんだよ!!これが現実だ、とっとと目を覚ませ!』
機動隊長『三歩前進!押し潰せ!』
ザッザッザッ…ドゴッ
信徒「ぐはっ!」
機動隊員「オラァ!」ドガッ
信徒「く、くそっ…」
信徒「通せ!通せよお!!!」ガンガン
機動隊員「…………」
機動隊長『次はモロトフカクテル、その次は実弾だ。それでも戦うか?』
信徒「………っ!」
機動隊長『全員、突げ…「待ってくれ!」
信徒「分かった…分かったから…もう止めてくれ…」
機動隊長『…よろしい。全員確保しろ』
「「「「「はっ!!」」」」」
機動隊長「ふぅ…」ズボッ
機動隊長「嫌な仕事だぜ、まったく…」
機動隊長「………楽しいけどな」ボソッ
・・・・・・・・・・・・
機械娘「…そうか、ダメだったか…」
信徒「我々の組織は最早壊滅しました。同志も何処かへお逃げください」
機械娘「いや、私は…しばらく一人にしてくれ」
信徒「はっ…」バタン
機械娘「神よ…教祖様…私は何がいけなかったのでしょうか?」
伍長『こちらボリス、三階は制圧しました。敵は五人排除』
兵士『こちらディミトリ、二階は完全に制圧。書類を押収』
兵士『アンナ、アンナ…こちらエレナ、地下は我々のものです。発電機を発見。それと…うわ、こいつは墓です…』
主人『了解。そのままにしておけ』
主人『発見される前にこちらから攻撃して…出来るだけ音を立てずに倒せよ』
兵士『了解。サイレンサーつきクリンコフとは豪華ですね』
主人「さあ、一気に行くぞ…」
伍長『こちらボリス。五階を完全に制圧。教祖の部屋があるようだ…指示を待つ』
主人「物音や話し声は?」
伍長『いえ、全くありません…』
主人『わかった、とにかく早く行く』
主人「君までついてくる必要はなかったのに」
メイド「私の姉妹型がどんな子で、何を考えてこの組織にいたのかを知りたいのです…」
メイド「それにご主人様から離れたくありません」
主人「しかしな…」
メイド「守っていただけるのでしたよね?」ニコッ
主人「…だいぶずる賢くなったな」
メイド「ご主人様のせいですわ」
(五階)
主人『五秒前…』
ガチャッ
ピャーチ
『пять』
チッ
チィトゥリ
『четыре』
ガシャッ…
トゥリー
『три』
チッチッチッ…
ドヴァ
『два』
アジン
『один』
ダヴァイッ!!
『давай』
『突入!』
『動くな!』
伍長『敵影なし、容疑者なし、人質なし…』
主人『妙だな…?誰も守ってないのか』
メイド「ご主人様、日記のようなものが」
主人「何々…」
『悲しいことが起こった。黒人の信徒と元ネオナチの信徒が争いを起こしてしまった。
私はそれを収めようとした。だが駄目だった。黒人はロマやカザフ人を味方に着け、ネオナチは人種差別的な欧米人や移民に辟易していたスラブ人たちを味方に着けた。
対立は日に日に激化した…だから私は決断せざるを得なかった…』
『彼らの死体を地下に埋めた。死ぬ直前まで彼らは罵りあっていた。宗教ですべてを変えられていたように思っていたが中身は変えられなかったのだ。
私は忘れていた。人間が本音と建前の動物であることを』
『私は罪を犯した。彼らは天国に行けたのだろうか?それとも異端宗教である私の宗教の信徒だったせいでさ迷うのだろうか?
人間はあの終末戦争で全てを破壊してしまった。天国、地獄、現世…
これは我々への報いだ。
気力は尽きた。もう諦めよう…』
メイド「…日付は三ヶ月前です」
主人「…ドッグタグだ。こいつのな」
主人「…こいつは私の同僚だった。そうか…それを選んだか…」
信徒「何だ貴様ら!うわあっ!」
ドガッ
バタン
主人「動くな!内務省だ!」
メイド「武器を捨てて!」
機械娘「…待っていたよ」
ガシャン
メイド「…DShK、デグチャロヴァ・シュパーギナ・クルプノカリベルニ…12.7mm機関銃です。貴方でもこれには耐えきれないでしょう」
主人「もうやめろ…武器を捨てて投降するんだ」
機械娘「残念だが…」カシャン
パンッ
メイド「ご主人様っ!」
主人「メイド!」
カラン…
メイド「えへへ、被弾しちゃいました…試作型はダメですね、防弾性能がしっかりしてなくて」
主人「…どうして…」
メイド「ほ、本当に大丈夫ですよ、また修理できますから…」
機械娘「茶番は終わりだ。次はお前の頭を撃つ」
主人「…」ズイッ
機械娘「何のつもりだ?」
主人『ザザ…うん、ああ、そうか』
主人「撃ちたいなら撃つがいい。だが窓から見えるあの…」
主人「君の後方のビルに対物ライフルを持った狙撃兵を待機させた。撃った瞬間君も破壊されるぞ」
機械娘「フン…私が聞きたいのは、なぜお前がそのロボットを庇うかと言うことだ」
主人「ご主人様がメイドを庇っちゃいけないか?」
機械娘「ふざけるな!ロボットを守る人間がいるか!」
主人「私の仲間は守ってたぞ」
機械娘「ロボットなんて…ロボットなんて…!」
主人「はぁ…なあ、どうしてこんな事をしでかした」
機械娘「そんなの教祖様のために決まってる!」
主人「教祖?誰の事だ」
機械娘「お前も見ただろう!このビルの五階にいらっしゃる…」
主人「俺がその教祖様とやらと会ってたら間違いなく銃撃戦になっていたはずだぞ?どうして音がしない?」
機械娘「それは…」
主人「…見るんだ」ポイッ
機械娘「これは…ドッグタグ?」ジャラッ
主人「お前が教祖と崇める人物は私の元同僚だ。奴は…死んだ」
機械娘「嘘だ!そんなはずない!」
主人「俺が五階に行ったときはすでに死体だったぞ…防腐処置がされていてな、ガラスケースに机ごと入れられていた」
機械娘「だって、つい一週間前にお薬を注入したばかりで…」
主人「"注入"?注射や飲み薬ならそういうは呼ばないぞ」
主人「いい加減気づけ、君が注入していたのはエンバーミングの為の防腐剤だ」
機械娘「嘘だ…嘘だ…嘘だ…」
主人「先程何人か捕まえて尋問した」
主人「信徒が教祖と直接話している瞬間を見たか?」
機械娘「それは…!」
主人「教祖なら教祖様と呼ばれていたはずだよな?なぜ信徒達は君にしか呼び掛けて無かったんだ?」
機械娘「あぁ…うあぁ…!」
主人「認めるんだ!君は暴走したんだ!奴の幻影に振り回されているんだ!」
主人「…三ヶ月前に奴は死んだ!」
機械娘「嘘だ…嘘だ…」ズズ…
メイド「ご主人様!あの子が武器を!」
メイド「人間は撃てませんがロボットなら撃てます!命令を!」
主人「くそっ…!」
>>124
1.撃て!
2.撃つな!
2 例えそれが疑似人格だろうが感情を持たせこのような事態にしたのは俺たち人間だ
彼女には裁判をロボットだろうときっちり受けてもらう
主人「…待て」
主人「…」スタスタ
メイド「ご主人様!」
機械娘「来るな!」
主人「………」グッ
機械娘「は、離せ!」
主人「………」ググ…
機械娘「この…!」
主人「…茶番はもう止めにしよう。君の力なら私をはね除けるのは造作もないことだ」
主人「それでもはね除けないのは君が後悔しているからだ。違うか?」
機械娘「くっ…」
主人「君は私の部下を三人殺した。君が人間ならばつべこべ言う前に君を射殺していただろう」
主人「…だが、これは君の戦争じゃ無かったんだ。人間が始めて人間が続けた戦争なんだ」
主人「なまじ感情があるばかりに君は奴が死んでからも"命令"に従った…だが指示を出したのはあいつだ。君は銃や車両と同じ武器に過ぎない」
機械娘「じゃあ…そいつは!そいつはどうなんだ!?」
メイド「…!」ビクッ
主人「…君を撃たせたくなかったのはその為でもある」
主人「人間が撒いた種は人間が刈りとらなきゃいけない」
主人「しかし君の種を刈りとるべきだったあいつは死んだ」
主人「君は今まで人間に使われていたんだ…君に責任があるわけじゃない、君の主人に責任がある」
機械娘「それじゃあ…私は…」ヨロヨロ
主人「…私には君を裁けない。だが拘束させて貰う」
主人「…処分は上が決めるだろう」
主人「メイド、武器を」ガシャ
メイド「…はい」
メイド「…メモリーカードを貸して頂けませんか?」
機械娘「何のつもりだ」
メイド「貴方が何を考え、何をしてきたのか知りたいのです」
機械娘「勝手にしろ」
メイド「…ありがとうございます」カチャカチャ
『メモリーカードを読み込んでいます…』
『初回起動日:一年前』
主人「終末の日か…」
『私は認められたかった…あの人に』
『でもあの人はなかなか私を見てくれなかった。私は頑張ってあの人の理想のロボットになれるようにした』
『彼は私にも戦争に加わるように要求した。私は彼を慕っていたから断れるはずもなかった』
『戦闘にも参加したしデスクワークもした。家事をしている時はメイドロボット本来の仕事をしている気がして楽しかった』
『私は彼のいい相談相手であり、隣にいる者でありたいと思った。その為には彼に接近する信徒を粛清することもいとわなかった』
『でもどうしてあの人は私を見てくれないの?どうして何も言わず居なくなってしまうの?どうして?私が彼にならなきゃいけないの?どうすればいいの?』
『…私はロボット。主人の命令に服従し、主人のために戦う…』
主人「…行くぞ」
機械娘「………」
機械娘「…聞きたい事がある」
主人「何だ?」
機械娘「私が負けた理由は何だ?」
主人「それは単に君が人間の悪知恵に勝てなかっただけだな」
機械娘「………私は人間にはなれなかったのか」
主人「どうだろうな。だかもっと学習するべきだったんだ」
主人「君はいきなり人間のずる賢い面を見すぎてしまった。結果君はそれに目を背けてしまった。」
主人「もっと別の環境で学習すれば良かったんだ…」
機械娘「…銃を持った私に近づけたのは」
主人「それは狙撃手を待機させてたからだな」
機械娘「私が後ろにいた狙撃手を射殺してからお前を撃ったかもしれないぞ」
機械娘「最後の悪あがきとして、その狙撃手を撃ったかもしれない…なのに」
主人「…後ろにいるとは言ったが、真後ろにいるとは言っていない」
主人「それに狙撃手が一人だけしかいないと思うか?」
機械娘「…ふっ、私はそれすら考えられなかったのか」
主人「…加えて、冷静だったなら私がメイドの射線を塞がないように横から近づいていたのに気づいたはずだ」
機械娘「…これが人間の悪知恵か」
主人「悪知恵にというほどでもないな。小学生でも考えられる」
主人「…君は純粋すぎたんだ」
技術者「ロボットの裁判なんて前代未聞だな」
主人「そうだな…どんな判決が下ることやら」
技術者「君のメイドが提出してくれたあの子の記録媒体がいい擁護になっている…死刑、というか破壊はひとまず保留されるだろう」
主人「何でだろう…あいつを心の底から憎むことが出来ないんだ」
技術者「もしかして君のメイドとあの子がダブったか?」
主人「…そうかもしれない。状況が違ったらうちのメイドだってあいつと一緒になっていたかもしれないんだ」
技術者「ま、それを救ったのは君というわけさ」
主人「ただいま」
メイド「お帰りなさい、ご主人様!」
メイド「………」ギュッ
メイド「帰ってきてくれた…」
主人「…当たり前だろ」
メイド「でもご主人様、ひとつ言いたいことがあります」
メイド「私はご主人に戦争に加わるよう強制された事はありません。私が戦いたいのは自分の意思です」
主人「それだってプログラムじゃ…」
メイド「プログラムなんかじゃない!」
メイド「ご主人様、人間の脳は過去から学習して結論を出します。私たちロボットの脳も学習して結論を出します。これって同じではないでしょうか?」
主人「でも、君たちはあくまでも機械だ」
メイド「………」ギュッ
メイド「ご主人様の鼓動が聞こえます。でも私には心臓がありません…」
メイド「機械でできた体に人工皮膚、人間のデータを元に作られた各種感覚器官…」
メイド「そのせいで私は人間と同じような扱いをして頂けないのですか?」
メイド「この気持ちだって嘘だとおっしゃるのですか…」
主人「………」
メイド「ご主人様、私は満面の笑みを浮かべられるようになりました。涙も流せるようになりました」
メイド「これは元から搭載されていた機能ではないのですよ…」
メイド「ご主人様、私にご一緒させてください…慕わせてください…」
メイド「私を…愛してください…」ギュ
主人「…分かった」
メイド「ご主人様…」
主人「それが君の意思というわけだな」
メイド「はい!」
主人「…じゃあ、一緒にいてくれ。一緒に戦ってくれ」
メイド「…はい。私はご主人様と一緒にいます。一緒に戦います。それが私の意思です」
主人「…ずっと君を守っていると思っていた」
主人「でも本当は…精神的に守られているのは私の方だったかもな…」
メイド「…私の"望み"はご主人様のお役に立つことですから」
数ヵ月後
伍長「しかし残念ですねー、折角屋敷を取り戻したのにあの子はしばらく来れないなんて」
主人「実際司令部の方が守りが固いからな」
女中「あの子乱暴に調べられてなければいいけど…」
主人「重要なのはメイドの構造より、それでしか再生できないメモリーカードに入ってるデータだそうだ」
女中「良かった…」
女中「それじゃああの子が帰ってくるまでにこの屋敷を綺麗にしないとね!」
使用人「明日からでもいいか?」
女中「今日からやるの!ほらタバコは外で吸う!」
主人『ここら辺もだいぶ安全になってきましたし、政府がまた市内全域を掌握する日も近いでしょうね』
士官『我々はまたやり直すんだ。この市を解放したら他の市とも無線だけでなく直接連絡を取り合う!』
士官『再び地下に光輝く電車を走らせる!宮殿の星も作り直す!そして我々は凱旋するんだ』
士官『フランス野郎もドイツ野郎もこの地を犯したが、我々は再び立ち直った…』
士官『ははは、少々熱くなってしまったようだ』
主人『いえ、素晴らしい演説でしたよ』
主人「あの後、元信徒たちの様子はどうだ?」
機動隊長「だんだんと洗脳が解けて来ているな。やっぱり土いじりが一番人間の性に合っているんだな」
主人「それはどうか知らんが…機動隊員と奴等の間に軋轢はないのか」
機動隊長「ずけずけと聞くな…あれはあいつらが悪いんであって俺達が悪いんじゃないぞ」
機動隊長「…何だかんだで折り合いをつけてやっているようだぜ、機動隊員の監視つきではあるが」
機動隊長「表面は良好でも中身は何を考えてるかわからないってのはよくある話だが…」
機動隊長「ま、心の底まで仲良くなる必要はないんだ。憎しみがあったとしても…建前と本音を使い分けなきゃな」
主人「…そうか、そうだな」
機動隊長「そういやお前の嫁さんはどうなんだ」
主人「嫁じゃない」
機動隊長「んん?その答え方はまるで嫁候補がいるみたいだな?」
主人「…正直、あそこまで言われるとな」
機動隊長「そうか…まあ世界は広いからそういう奴がいてもいいんじゃないか」
主人「…そうだな」
機動隊長「そうそう、たまには訓練センターにも寄ってくれ。装甲車と盾が増えたお陰で以前と同じような訓練ができるようになったからな」
主人「そうするよ、ありがとう」
主人「この本部に来るのも久しぶりだな…」
衛兵「………」カチッ
主人「………」ザッ
衛兵「………」カッ
主人「いいなあ、統治が落ち着いてきたって感じがする」
兵士「こんにちは中尉。今日はどのようなご用向きで?」
主人「メイドに会いに来た」
兵士「かしこまりました。少々お待ちください」
カッ…カッ…カツ
兵士「…どうぞお入りください」
主人「ありがとう」
メイド「…!」
主人「少し二人だけにしてくれないか」
兵士「畏まりました」バタン
メイド「ご主人様…」ギュッ
主人「………」ナデナデ
メイド「ありがとうございます、すごく嬉しいです…」
メイド「私、ご主人様が貴方で幸せです」
メイド「ロボットにも優しくしてくださるのですから…」
主人「それは違うな…ロボットにもじゃない、君だからだ」
メイド「えへへ…大好きです」
主人「…私もだ」
メイド「えっ!?」
主人「…君に惚れた」
『対象をスキャンしています…』
『心拍数:増加中』
メイド「……………嬉しい」ギュ
メイド「ご主人様の鼓動の音、よく聞こえますよ…どくん、どくんって」スリスリ
メイド「あっ、ごめんなさい…新品の制服なのに」
主人「…いや、その…胸に顔すり付けるの、いいな」
メイド「…ではもっとやらせていただきますね」スリスリ
メイド「ご主人様は私のものなんですから…マーキングしておかないと誰かに取られちゃうから…」コシュコシュ
主人「マーキングは犬に使う単語だぞ」
メイド「私はご主人様の犬でも構いませんよ?」
主人「…そういう趣味はない」
メイド「そうですか…ふふふ」スリスリ
エピローグ
主人「お…その勲章懐かしいな」
メイド「はい、私の宝物です!」
主人「あれももう五年前か…」
メイド「むしろまだ、ですね」
主人「そうだな…あの後臨時政府が出来て、事態がどんどん収拾されていって…」
主人「他の都市との連帯にまだ苦労しているようだが…それは次の世代の仕事だな」
メイド「でもロボットはもう作らないそうですね」
主人「人間が意思を持った新しい擬人間を作るには早すぎたのかもな」
メイド「結局戦場ではあまり役に立たなかった訳ですものね」
主人「一つだけ幸いだったのはどこの国も核を撃たなかった事だ」
主人「結局みんな責任を負うことや反撃が来ること怖いんだ。誰でも」
メイド「私はそうは思いませんわ。それは人間が他人を思いやれるということの象徴だと思います」
主人「そういう見方もあるか…」
主人「…今言っておかないと機会を失ってしまうと思う」
主人「私は君よりはるかに前に死ぬだろう。そうしたら君はどうする?」
メイド「…正直、最初はご主人様が亡くなったら私も自爆でもなんでもして消え去るつもりでした」
メイド「でも今は…人類の行く末を見たいと考え始めています」
メイド「あの姉妹型は結局人間が信じられなくなって、そして信じてもらえなくてあんなに暴走してしまいました…」
メイド「でも私は信じてみようと思っています。信じてもらってみようと思います」
主人「…そうか、それを聞いて安心した」
メイド「でも私はご主人様の事、ずっとずっと好きですよ!」
メイド「何年経っても何十年経っても、ご主人様が亡くなられても…」
メイド「詩的な言い方をすると、ご主人様は私の心の中で生き続けるのですわ」
メイド「だって、愛していますから」
主人「………」
メイド「ふふ、喜んで頂けましたか?」
主人「…嬉しい」
メイド「さ、紅茶をどうぞ」トポトポ
主人「ん…ああ、うまい」
主人「ふーっ…」
主人「…いい日だな」
メイド「ええ、まったく」
メイド「ご主人様」
主人「ん?」
メイド「私はウラル型、型番は○○!」
メイド「軍用メイドロボであります!」
メイド「これからもよろしくお願いいたします!中尉!」
主人「…軍人口調似合わないな」
メイド「ご主人様のせいですわ」
主人「そうか…こちらこそよろしく」
主人「私のメイド…いや、妻よ」
メイド「…はいっ!」
主人「ああ…本当にいい日だ」
メイド「そうですね…」ギュ
終わり
アイギス的なロボットメイドを目指していたはずなのに敬語ロボになってしまった。おかしい
コメディ物を目指していたはずが趣味をぶち込みすぎた
あと最後に何か歌うシーンを入れようかと思ってたけど忘れてた、まあいいか
インターネットライティングマンとしては現在のメイドものSSが未だに少ない状況は非常に悲しい
次はミリオタメイドかな
メイド万歳!寝る
>>42の後に
・・・・・・・・
機械娘「失礼します」ガチャ
教祖「君か…」
機械娘「教祖様、最近政府の犬どもの行動が活発になっています」
機械娘「そして耳よりな情報が。どうやら内務省の第三前哨にメイドロボットがいるようです」
教祖「君と同じメイドロボットが…」
機械娘「いかが致しましょう?」
教祖「ふむ…破壊するか捕まえろ」
機械娘「承知しました」
教祖「週末の日が来た。じきに混沌の世が来る…そして夜明けも。だから我々は皆を助けて導かねばならない」
機械娘「そのためのこの宗教ですか…」
教祖「そうだ。宗教は心の支えになる。人々を一致団結させるのだ」
教祖「週末後私は宗教を始めた。一ヶ月後に黒人が来た。二ヶ月後にはネオナチが来た。私は彼らを受け入れた…」
機械娘「教祖様の愛は止まることを知らないのですね」
教祖「いかにも。それゆえにロボットである君も受け入れたのだ」
機械娘「ありがとうございます、教祖様」
教祖「三ヶ月後、彼らは共に酒を酌み交わした…」
教祖「私は確信したのだ。宗教こそが夜明けへの道だと…」
教祖「親愛なる同志よ、そして神の僕よ…励むのだ。より一層!」
バタン
信徒「同志、その部屋は…」
機械娘「私の信心に何か疑問でも?」
信徒「い、いえ、しかし…」
機械娘「教祖様は私のような物にも説教をしてくださる。だから私は教祖様と会話するのだ」
信徒「え、ええ…」
・・・・・・・・・・・
>>46の後に
・・・・・・・・・
機械娘「教祖様、内務省の部隊が保安庁の武器庫に向かったようです」
教祖「そうか…撃退せよ」
機械娘「…教祖様、無礼を承知でお聞きします。なぜ我々はあそこの火器を使用しないのですか?」
教祖「鉄砲こそが我々を堕落させ、終末戦争に追いやったものだからだ」
機械娘「しかし教祖様、鉄砲があればもっと戦いやすく…」
教祖「黙れ!いつからそんな口を聞くようになった!私の言うことに従え!」
教祖「ゴホッ…ゴホッ!」
機械娘「教祖様!大丈夫ですか!?」
教祖「う、うむ…少々興奮しすぎたようだ」
機械娘「薬を注入させていただきます」
教祖「ああ…頼む」
バタン!
信徒「同志、奴等が武器庫を漁っています!」
機械娘「静かにしろ!教祖様の前だぞ!」
信徒「も、申し訳ありません同志」
教祖「構わん、そんなことは些細なことだ」
機械娘「どうすればいいのでしょうか…」
教祖「第二支部の支部長が元軍人だったはず。彼に指揮を執らせるのだ」
機械娘「はい。第二支部の支部長に指揮を執らせろ!」
信徒「はい同志、直ちにかかります!」
機械娘「…私も行こう」
を入れてください…すみません張り忘れてました
このSSまとめへのコメント
ウォッカとコサックダンスと強姦の出てこないロシアンミリタリーは珍しいな
ロシアとメイドへの愛を感じる