主人「お、おう」
メイド「それは承諾という意味でよろしいのですね!?」
主人「いや……」
メイド「そんなぁ!私の心をもてあそんだ上にお捨てになるなんて!」
主人「もてあそんでもないし捨ててもないけど」
メイド「よよよ…年増などご主人様はお嫌いですわね……」
主人「三十路だっけ」
メイド「まだ二十台です!」
主人「アラサーか」
メイド「アラサーではありません!」
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主人「メイドさん、アラサーはアラウンドサーティの略だよ」
メイド「アラウンドじゃありません!!」
主人「あれ?じゃあちょっと執事に頼んでこの屋敷の使用人名簿を…」
メイド「に、にじゅう…ゴニョゴニョ…サイ…デス」
主人「それはアラウンド」
メイド「きぃーっ!!」
主人「外見が全然変わらないから年齢が分かりにくいんだよね」
メイド「そ、それって…」
主人「まあいいや、それでどうして僕なの」
メイド「それは…そ、そろそろ、結婚、したいかなぁーって…」
主人「彼氏いたでしょ」
メイド「六年前からいないです!」
主人「僕が小学校のときだから…メイドさん高校生だっけ?あの時彼氏できたーって舞い上がってたじゃん」
メイド「そ、そんなに喜んでません!」
主人「僕が泣きたくなるくらい喜んでたよ」
メイド「…?」
主人「で、その彼氏とはなんで別れたの」
メイド「六年前に分かれたのとは別の人です」
主人「聞きたくなかった」
メイド「その…高校デビューしてできた、彼氏なのですが…」
メイド「ポイ捨てしてて、それで冷めて…」
主人「真面目だね」
メイド「でなければこんな事になってませんわ」
主人「こんな事?メイドさん、僕に求婚することはこんな事なの…?」
メイド「細かい人は嫌われますわ」
主人「いやいや」
ピピピピ・・・
主人「あー!もう行かないと」
主人「…つづき、後で聞かせてもらうからね」
メイド「はい、行ってらっしゃいませご主人様」
メイド「あっ、そうそう」
主人「ん?」
メイド「はやく戻ってきてくださいね、ご主人様」ニコッ
主人「…まったく、そういうところが…まったく…」バタン
主人「ごちそうさま」
メイド「いかがでしたか?」
主人「今日も美味しかったよ」
メイド「本当ですか?女子力アップのために練習したかいがありましたわ」
主人「女子力って言葉がすでにアラサーくさい」
メイド「……」ズーン
主人「ごめん冗談だよごめん」
主人「メイドさんの料理は昔から変わらないよ」
メイド「それは、その、昔から美味しかったという事ですか?」
主人「ああ。今も昔も、ずっと美味しかった」
主人「女子力とか関係なく」
メイド「ふふ、ありがとう、ございます」
主人「さ、それでその後高校生活はどうなったの」
メイド「高校生のうちは彼氏作らない!とか言って適当な同好会に…」
主人「もしかして彼氏持ちは滅びろとか言ってなかった?」
メイド「…ええ」
主人「うっわ!」
メイド「!?」
主人「うっわ!うっわ!元彼氏持ちが!?その顔で言うの!?」
メイド「褒めてるのかけなしてるのかどっちなんですか!?」
主人「他の生徒に嫌われるな、それは」
メイド「ええ、まあ…」
メイド「私の目の前ではみんな同調してくださるのですが……」
主人「うん……」
メイド「ある日私が用事があって部室を離れて、用事を終えて戻ってきた時、部室でほかの人たちが……」
主人「うん……うん……」
主人「……嫌味にも程があるな」
メイド「……今思い返せば、ほかの人たちは責められませんわね」
メイド「その後部活は出なくなりました」
主人「突然早く帰ってくるようになったのはそういう事だったのか」
主人「まあ、嬉しかったけどさ」ボソボソ
メイド「そこです!そこで、帰ってきたらご主人様はいつも笑顔で出迎えてくださいました」
メイド「それでちょっとその、ときめいてしまって」
主人「言ってくれれば良かったのに」
メイド「……」
主人「……」
主人「……続けて」
メイド「……そういう性格なのがいい!とかのたまって告白してくる男子生徒もおりましたわ」
主人「のたまってって……まあそりゃ可愛けりゃほっとかないだろうな」
メイド「か、可愛いだなんて」
主人「昔は、ね」
メイド「ひどい!」シクシク
主人「嘘泣きはやめようか?それで?」
メイド「自分だけは分かってあげる、的な態度が伝わってきたので断りましたわ」
主人「きっついなぁ」
メイド「3人くらいおりましたわ」
主人「それも知りたくなかった」
メイド「というわけでご主人様!私と結婚してください!」
主人「なんで」
メイド「ご主人様だけは私のことを分かってくださるから、ですわ!」
主人「メイドさんの男性遍歴をついさっきまで知らなかったんだけど」
メイド「こ、これから…きっと分かっていただけます!」
主人「はぁ…わかったよ、とりあえず洗いざらい吐いてもらおう」
主人「大学行ってただろ大学、そこではどうだったんだ」
主人「学生のうちなら相手の年収とか関係ないでしょ」
メイド「ええ、まぁ……」
メイド「大学ではおとなしめの格好をするとおとなしい人にもてると聞きました」
主人「それで髪の毛を…えっと、なんだっけ、なんとかパーマにするのやめたんだな」
メイド「気づいてらしたんですか?」
主人「まあね」
メイド「……そうですか」
メイド「……ふふ」
主人「いや、流石に気がつくだろ」
メイド「またそんな事言って~、やっぱり私のことを見ていてくださったのですね、ご主人様ぁ~!」
主人「アラサーが語尾伸ばさないでくださいよ」
メイド「ひどい!!」
メイド「んんっ…それで、狙い通り大人しそうな彼氏ができました」
主人「おお、よかったね」
メイド「でも!あの人半年していきなりホテル行きたいとか言い出して!」
主人「うーん、それは普通じゃないのか?」
メイド「そんな!ご主人様含めて男性はすべて狼なのですか!?」
主人「男は狼とかいう言い回しも久しぶりに聞くなあ」
メイド「……こほん」
メイド「……婚前交渉なんてもっての外ですわ!」
主人「中世か!」
メイド「手を繋ぐ以上は将来を誓い合った人でないと」
主人「いったい何処の時代に暮らしてるの?メイドさん」
メイド「現代ですわ!」
主人「わかっとるわ!」
メイド「でも、メールは一日二桁送ってましたから、愛情は伝わっていたはずです!」
主人「何?じゃあメイドさんは手までしか許さず、そのくせメールだけはしつこく送りつけてたわけ?」
メイド「はい!」
主人「かわいそうに…」
メイド「悲しいことに、彼氏のほうから別れを切り出されましたわ」
メイド「『君が綺麗なのは認めるけど遊ばれているようにしか思えない』って…」
主人「かわいそうに…」
メイド「かわいそう?ご主人様は私の純潔が守られていた事をかわいそうと仰るのですか?」
主人「あーはいはい細かい人は嫌われる細かい人は嫌われる」
メイド「ふんっ!」
主人「アラサーがふんっとか言わないでくださいよ」
メイド「……」シクシク
主人「それでどうなったの?流石にそこまで行けば婚前交渉禁止とかやめようと思うでしょ」
メイド「はい…えっぐ、ぐすっ…づぎ、つぎの彼氏は…ひっく、応じてあげようど…おも、思って…」ポロポロ
メイド「でも、次の人ばおぐ、奥で、奥手っずぎでっ、自然じょ…じぜんっ、消滅…しちゃっで…」ポロポロ
メイド「その次をさがそ、ざがそうがどっ、がんばっだんです」ポロポロ
主人「…失敗したんだな」
メイド「…選り好み、してました」ポロポロ
主人「え?」
メイド「…選り好み!じでまじだ!!!!」ウェーン
メイド「だって!ヒック、グスッ初めての人と!エグッ結婚したかったんだもん!グスッ」ウェーン
主人「昔の少女漫画か!」
メイド「いいじゃないですか!私は綺麗なんだがらあ!」ウェーン
メイド「ひっく、ご主人様がそ、そう仰ってくださったんですがらぁ!!」ウェーン
主人「お、おう……」
主人「ま、まあ変に謙遜しないのはいい事だな……」
主人「で、そんなに選り好みするのにどうしてポンポン付き合うんだ?」
メイド「だって!そうしなきゃ結婚できないかもしれないんだもん!」ウェーン
メイド「信頼を確かめあわないと結婚できないんだもん!!」ウェーン
主人「…高校生のときからそんなこと考えてたの?」
メイド「将来は!立派なお嫁さんになるのが夢だったんだもん!」ウェーン
主人「……」
主人「相手は誰でも良かったの?」
メイド「やだぁ!何処かしら立派な人じゃないとやだぁ!」ウェーン
主人「めんどくせぇ…」
メイド「でも!ご主人様お金持ちだし!お金持ちだし!何よりお金持ちだし!」
主人「親がね」
メイド「それに…結構、好み、だし……」ボソボソ
主人「……卑怯者め」
主人「はあ・・・昔は可愛かったんだよ、メイドさん」カタカタ
主人「まあ今もあんまり変わらないけどさ…むしろ綺麗になってるけどさ」カタカタ
『En colonne, couvrez!』
主人「恋をすると綺麗になるってやつかね、結構ショックだよなあ…」カタカタ
『Coude a coude a droite, alignement!!』
主人「でも何だかんだでスペック高いんだよな」
主人「料理掃除洗濯家事全般できるし綺麗だし全然劣化しないし」
『Fixe!!』
主人「・・・あれ?やばいかも」
『Rompez les rangs!』
主人「あと笑顔がいい」ターン
『Portez… Armes!』
主人「まずいなあ、非常にまずいなあ……どうしようかな……」
主人「そうだよ、メイドさんの料理スキルとか家事スキルを見せれば完璧じゃん」
主人「どうして見せなかったの?」
メイド「だって・・・私、住み込みですから」
主人「え?だってメイドさんの実家がここの近くに」
メイド「ここが私のお家ですので!!」
主人「なら相手の家でもいいじゃん」
メイド「そんな!そんな事したらなし崩し的になりますわ!」
主人「喜んでいいのか悪いのか…」
メイド「ですからご主人様!養ってください!」
主人「まあ、確かにそれだけスキルがあれば養われる側だろうなあ」
メイド「やった!」ピョンピョン
主人「年甲斐もなく飛び跳ねないでくださいよ」
メイド「・・・・・・」ズーン
主人「ごめんね可愛いから続けてよそんなに落ち込むとは思わなかったからごめんね」
主人『そんな感じなのです』
『はー、まったく貴殿もメイドさんメイドさん飽きないでござるな』
主人『それ以外の話もしてますよ』
『まったく!そんな話を聞かされるこっちの身にもなってくだされ』
『貴殿に同じ帝国軍人として聞きましょう、実際悪い気はしないというか、好きなのでござろう?』
主人『そんなことは・・・ない・・・はずです』
『腸詰め食いとイワンの馬鹿めを大陸軍の総力を持って叩き潰すのとどちらが好きでござるか?』
主人『まあ、それも好きではありますが……』
『我らの兵士が好きなのは何でござるか?』
主人『玉ねぎに塩をかけたやつですね』
『で、実際のところはどうなのでござるか?』
主人『……Je ne parlerai qu'en prsence de mon avocatJe ne parlerai qu'en prsence de mon avocat』
『おやおや、辞書の例文を読み上げるのは感心しませんなあ』
『しかし綺麗なのであらば世の中の男どもが放っておくわけないでござる』
『恋人ができててしかるべきではございませぬかな』
主人『ええ、それは理解しているのですが』
『我らが皇帝陛下も年上のジョセフィーヌと結婚したのでありますれば、これからはルネッサンスよりもさらに頭を新しくするべきではござらぬか』
主人『……』
『おっと!少々演説が過ぎたようでござるな…しかし同胞よ、貴殿の直感に従うべきであると拙者は思うのでござる』
『梅毒のようにガムランになってからでは遅いのでござるよ』
主人『すみません、そちらは詳しくないのですが…』
『国防軍公認英雄のガムランを知らない…だ… と……!?…くっ、早とちりをしてしまったようでござるな!失敬!ドビュッシー』
『最後の授業 さんがログアウトしました』
主人『……閣下、ドビュッシーはナポレオン三世よりも後ですよ』
メイド「ご主人様の許婚?」
使用人「そうよ、もう破談したらしいけどね」
メイド「そうですか・・・」ホッ
使用人「あんた、なんでホッとしてるのよ」
メイド「だって私のご主人様が・・・」
使用人「過保護ねえ」
メイド「どういう事ですか!」バンッ
主人「うぉ!?なんだいきなり」
メイド「許婚だなんて!」
主人「決めたのは親だけどな」
メイド「で、でも!黙っていたのはひどいです!」
主人「メイドさんだって彼氏がいたのを僕に教えてくれなかったでしょ?」
メイド「そ、それはその・・・」
主人「ま、結局縁談は破談になったんだ、何もやましいところはないよ」
メイド「ち、ちなみにどうして破談に?」
主人「結構前から決まってたらしいんだけど、相手に将来を誓った恋人が居たらしくてね」
メイド「ご主人様は、その、お嫌ではないのですか?」
主人「嫌?何が?だってわざわざ二人の仲を引き裂く必要もないだろ」
主人「それにお互い何人か付き合った相手も居たわけだしね」
主人「お互いの親が酔っ払った口約束で決めたうえに忘れてたらしい」
主人「まー、本当に重要な約束だったらどっちの親も子供が付き合いだした時点で止めてたはずだし」
メイド「何人か・・・付き合った・・・?それ、どういうことですか?」
主人「あっやべ」
主人「そりゃ、僕にも彼女はいた」
メイド「私に教えてくださっても・・・」
主人「君だって教えてくれなかっただろ!」
メイド「それは・・・」
主人「メイドさんが僕に教える義務がないように、僕にも教える義務はないよ」
メイド「・・・そうですね、ごめんなさい」
主人「うーん、でもどうして僕、あの時メイドさんに黙ってたんだろ?」
主人「そりゃ教える義務はないけど、小さいころからずっと僕の面倒を見てくれてたわけだしなあ」
主人「メイドさんが僕に黙ってたから?いや、黙ってたわけではないか・・・」
主人「悔しかったのかね」
『それは嫉妬でござるな!』
『ジュテームでござる!ジュテームでござる!』
主人『そんな高尚なものでは…』
『舶来の単語が高尚と思い込んではいけませぬぞ!貴殿のように昔の人間も嫉妬に身を焦がしたのでござるよ、重いものから軽いものまで』
主人『では、自分はどうすれば』
『んんwww貴殿はもはや幼年学校の小僧ではないのでござるからしてwww』
『貴殿よ、覚えておかれるがよろしいのは、他人から聞く他人の色恋の話ほど面白いものはないのでござる』
『しかし拙者に出来るのは話を聞くだけであるからしてwww最後の判断は貴殿がすべきでござる』
主人『……そうですね、おっしゃる通りです』
『おっと拙者そろそろ人生という戦役に参加せねばならないようでござるwww』
『次は戦場にてまみえましょうぞwww』
『Vive la patrie!』ドビュッシー
主人「……よし、話してくれ」
メイド「ご主人様にすべてをお話しするのは私の義務ですわ」
メイド「以前、ご主人様は私がまったく変わっていないと仰いましたね」
主人「ああ、そうだね」
メイド「でも、自分のことはわたしが一番わかっております・・・特に外見については」
メイド「外見はどんどん変わっていくのに、私の中身だけが取り残されていくのです」
メイド「ご主人様もほかの使用人の方もやさしいし、生活に不満も不安もないし、ここはとても居心地がいい場所です」
メイド「でも外見は・・・ふふ、ご主人様がお優しいのか鈍感なのかは分かりませんが、ほら、現に私のお肌は」
主人「もういい」
メイド「いいえ、自分自身の事はよく分かっております。どこに弛みができてるとか、どこが痛いとか…」
メイド「やっぱり私はご主人様に比べたらおばさ」
主人「うるさい!」
メイド「……」
主人「メイドさんは底抜けに明るいのに落ち着いたところがあって、それで笑顔がすごく綺麗で、それがいいんだ」
主人「綺麗な人は綺麗な年のとり方をするって聞いたから、メイドさんだってきっときれいに年をとるはずだ」
主人「そうでなくても・・・その、僕が綺麗に、年をとらせてみせるから」
メイド「年をとらせてみせるって…喜んでいいのやら・・・」
メイド「・・・・・・でも、ありがとうございます」
メイド「綺麗に年を重ねられるようにがんばります!」
主人「・・・ああ」
メイド「綺麗ですか…ふふ、嬉しいな…」
メイド「で、『綺麗な』あなたのメイドがその後どういう生活をしていたか興味ありませんか?」
主人「ま、まあな」
メイド「大学出て、それで女子力を身につけようと思いました」
主人「ふむふむ」
メイド「ネイルアートとかヨガは独りよがりだと聞いてやめました!」
主人「ほうほう」
メイド「大企業の社長とかと知り合いになれるんじゃないかと思って都内の料理教室に通いました!」
主人「・・・・・・」ドンビキ
メイド「ご主人様だってサークルを女の子がいるかいないかで決めてましたよね?お見通しですよ!」
主人「・・・続けて」
メイド「おばあさんとおじいさんだけでしたわ!」
主人「・・・・・・」ホッ
メイド「お友達になりましたわ!」
主人「すげえコミュ力」
主人「それ以外には?」
メイド「めんどくさくなってやめましたわ」
主人「え?」
メイド「だから!結婚相手探すのがめんどくさくなったんです!!!」ガタン
メイド「料理教室のお友達にも人生は長いって諭されたし・・・」
メイド「相手は直感で分かるって・・・」チラチラ
主人「・・・・・・」
メイド「あ!目を逸らしましたね!」
主人「うるさい!」
メイド「今度はご主人様の番ですわ」
主人「そう言われても何を話せばいいのやら」
メイド「・・・ちなみに、今まで何人と?」
主人「・・・人並みってことにしておいてくれ」
メイド「むうーっ」
主人「・・・メイドさんに彼氏ができた腹いせに付き合ったのが一人、そのあと一人」
主人「それだけだ、それだけ」
メイド「え?小学生で?」
主人「さすがにそこまでませてない」
メイド「ん、腹いせ、とは?」
主人「・・・初恋、だったんだよ」
メイド「え?どなたがですか?」
主人「だからメイドさんがだよ!」
メイド「えっ・・・えっと・・・そのっ・・・」
主人「あーもう恥ずかしい・・・」
主人「結局腹いせは腹いせだったし、長くは続かなかったけどね」
メイド「・・・・・・」
メイド「あれは、一過性のものだと思ってました」
主人「何が?」
メイド「ほら、昔ご主人様がちっちゃかったころメイドさんだいすきーだい
主人「忘れてくれ」
主人「はあ、あの時はアピールしてたつもりだったんだよ」
メイド「それは申し訳ありません・・・ですが」
メイド「・・・仮に大学生のご主人様が小学生の私に大好きって言われたとして、どうします?」
主人「それはもちろん付きあ
メイド「・・・・・・」ジトッ
主人「・・・冗談だよ、確かに子供の考えることだ、って思うのは仕方ないな」
メイド「そういう事ですわ」
メイド「でも、確かにかなり心を動かされたことは事実です」
メイド「だってご主人様を受け入れれば将来安泰だし浮気も多分しないし将来安泰だし」
主人「・・・・・・」
メイド「で、でも!流石に年齢差が大きすぎます!」
メイド「だってご主人様が社会人になったとき私の年齢は・・・・・・!」
メイド「わたしの年齢は・・・・・・」
メイド「・・・・・・」ズーン
主人「はあ・・・わかってたよ、歳が離れてるのは」
主人「それでも本気だったんだ」
メイド「本気だったのはいつまで、ですか?」
主人「彼女できるまでかな、いや、それよりも後かな・・・」
主人「初彼女の時もやっぱりどこかで本気になれなかったんだ」
主人「本気で向き合えないのは失礼だと思って関係が深くなる前に分かれちゃった」
メイド「真面目ですわね」
主人「そうじゃなかったら・・・って、前にもこのやり取りしたぞ」
主人「まあ、いまいち本気じゃなかったのはあっちも同じなんじゃないかな、自然消滅だし全然揉めなかったし」
メイド「しかし、これで私とご主人様は相思相愛だったというわけですね!」
主人「それはどうだろうな・・・?」
主人「で、メイドさんは本当に僕のこと好きなの?」
メイド「もちろんですわ」
主人「本当に?」ジッ
メイド「本当です」ジッ
主人「……」ジーッ
メイド「うぅ・・・」プイッ
主人「目をそらしたな」
メイド「違います、これはその、恥ずかしいから・・・」
主人「子供のころ、相手の目を見ただけで考えてることが分かればいいなと思ってた」ジーッ
メイド「ごしゅじん、さまは、私が何を考えているか分かりますか?」
主人「いや、さっぱり」
メイド「分かってしまったら、その、きっと私、すごく恥ずかしいです」
主人「そうか」
主人「はあ・・・子供のころの思いがやっと叶ったと思ったら」
主人「メイドさんはアラサーだし彼氏いたし」
メイド「あ、アラサーは関係ないです!」
主人「僕も彼女いたし・・・・・・はあ・・・・・・」
主人「結局、どうして僕に彼氏が居たことを教えてくれなかったの?」
主人「まあ確かに使用人たちには話してたみたいだけど」
主人「メイドさんに彼氏ができた後も、それを知るまで…僕、好き好き言いまくってたよね?その時教えてくれてもいいだろうに」
メイド「それは・・・その・・・」
主人「諦めさせたいならその場で言えばよかっただろ」
メイド「そ、その、えっと、あの時は言いたくなかったんです」
メイド「どうしてでしょう・・・やっぱり、私もご主人様のことが・・・」
主人「あの年齢差でそれはちょっとなぁ」
メイド「だってご主人様あの時大人びてたし時々どきっとするような事おっしゃるし」
主人「・・・ショタコン?」
メイド「あのままだったら完全にそうなってましたわ」
主人「……」
メイド「だってご主人様ちっちゃかったんだもん!今でもちっちゃいんだもん!」
主人「誰がチビだ!」
メイド「私とそんな変わらないんですもの!」
主人「……否定できないのがつらい」
メイド「……だから、間違えが起こる前に私もご主人様から離れようと思っておりました」
メイド「家柄も違いますし、ご主人様もメイド離れすべきでしたから」
主人「余計なお世話だな、まったく」
メイド「……ごめんなさいご主人様、私、ひとつ嘘をつきました」
主人「どこ?」
メイド「相手を探すのに飽きたのではなくて、やっぱりご主人様を諦めきれなかったのです」
メイド「悩み続けていたらここまで来てしまいました」
メイド「だからご主人様、私と…」
主人「…………」
メイド「…………」
主人「……」
メイド「あの……」
主人「……」
メイド「あう……」
主人「……」
メイド「その…何とか仰ってください……」
主人「……」
主人「……いいよ」
メイド「そうですか…そうですよね、やっぱりダメ……え?」
主人「恥ずかしいから二度も言わせないでくれ」
メイド「どう、して?」
主人「やっぱり僕も諦められなかったみたいだ」
主人「それにやっぱりメイドさんは能力が高いし、断る理由がない」
メイド「で、でも、私、こんなおばさ
主人「だから止めろって言っただろ」
主人「メイドさんはメイドさんなんだ、僕には」
メイド「でも、ごご、ご主人様にはこの先もっと若くてかわいい人が」
主人「嫌なの?」
メイド「嫌なわけありませんわ!でも!」
メイド「でも……!」
メイド「……」ジッ
主人「……」
主人「嘘をついてるように見える?」
メイド「いえ……」
メイド「ごしゅじん、さま…」
メイド「…………」ギュ
主人「本当は抱き締めたいんだけど」
メイド「そうですか」
主人「これだと抱き締められてるみたいだな」
メイド「昔と同じ、昔と同じですわ」ナデナデ
主人「おい子供扱いするな」
メイド「……ふふっ」ナデナデ
メイド「ご主人様はご主人様ですわ」ナデナデ
主人「あーもう好きにしてくれ」
メイド「はい、そうさせていただきます」ナデナデ
主人「……」ソッ
メイド「わ、ご主人様の手、暖かいです」スリスリ
メイド「でも突然どうしたのですか?私の頬が何か…」スリスリ
主人「すべすべしてるな」
メイド「気づいてくださいましたか?」
メイド「これを維持するのは大変でしたわ!夜遊びはできないし冷やさなきゃいけないし」スリスリ
メイド「食生活にも気を配らなければなりませんでしたから」
主人「お陰で僕も健康になったな」
メイド「でもそれもこれもご主人様のためですから」スリスリ
メイド「そして、ご主人様のお陰でもあるのですわ」スリスリ
主人「またそうやって……ああもう」
メイド「嬉しいですか?ほら、目を合わせてくださいね」ニコニコ
主人「合わせられないのが悔しい」フイッ
主人「それにしても…その外見なら僕よりももっと良さそうな奴が寄って来そうだけど」
メイド「ええ、いい人かは別にして……確かに話しかけられる事はあるのですが」
主人「……」
メイド「嫉妬してくださるのですか?」
主人「……うるさい」
主人「三高だっけ?僕は……学歴はまあいいとして、高収入かはわからないし……くっ、高身長じゃないぞ」
メイド「収入は愛でカバーですわ!」
主人「前と言ってること違うじゃねーか!」
メイド「ご両親から『どこかの関連会社に放り込んでおくから将来は大丈夫』と伺っておりますので大丈夫です!」
主人「いつの間にそんなに仲良くなったの!?」
主人「くそ、絶対普通に就職してやる…」
メイド「身長は…………」
主人「せめて目線を上げるふりをしてくれ」
メイド「そうですね、こうやって…」
メイド「ほら、同じ目線になれるのですから、それは私にとって嬉しいことなのですよ」
メイド「ん……」コトッ
メイド「ご主人様の肩に寄り掛かれますしね」
主人「ヘッドドレスは外してくれ、くすぐったいから」
メイド「もう、素直に喜べばいいのに」
主人「喜んでない」
メイド「本当に?」
主人「……はい、嬉しいです」
メイド「くふふ」
メイド「でもやっぱり一番大事なのは…」
メイド「その人が、私を大切にしてくださるかです」ギューッ
主人「ヘッドドレスが胸に当たって痛いんだけど」
メイド「いいのですか?外したら直接ご主人様の胸の音が聞こえてしまいますが」
主人「……やっぱりそのままで」
メイド「はい、お望みとあれば」クスクス
主人「三高だけじゃなくて大事にもしてほしいの?」
メイド「私はわがままですから」クスクス
主人「他にもあるのか」
メイド「いいえ、もう十分ですわ」
メイド「…………」ギュッ
主人「昔とは逆だな」
主人「以前は僕がメイドさんの胸に顔を埋めてたから」
メイド「愛する人の胸が一番落ち着くのですよ、ご主人様」
主人「そうなのかな」
主人「そうなのかな」
メイド「あ、ひとつありました、わがまま」ジッ
主人「何?」フイッ
メイド「ふふ、私の目を見てくださいね?」
主人「ああ……」
メイド「ご主人様」
主人「どうした」
メイド「ごしゅじん、さま……」ギュウウ
主人「聞いてるよ」ナデナデ
メイド「……」フーッ
メイド「……」ガバッ
メイド「ずっと……ずっと申し上げたいと思っておりましたわ」
メイド「ご主人様、結婚してください!」
主人「俺から言いたかった」
メイド「ふふ、目を見れば分かります」
主人「……」
メイド「……」
主人「そうだね」
メイド「そうですわ」
主人「……」
メイド「……」
メイド「ふふふ」ギュ
メイド「ご主人様、大切にしてくださいね」
主人「ああ、大切にする」
メイド「ずーっと大切にしてくださいね」スリスリ
メイド「…………ごしゅじんさま」ニコニコ
主人「年齢も自覚したほうがいいな」
メイド「えっ!?酷いですわ!」
主人「……弱いんだよ、ギャップに」
おわり
途中のフランス語で会話してたやつは何?
あとがき
ビバメイド
あっフランス人では梅毒より捕虜皇帝と復讐将軍()の方が好きです
>>44
フランス軍の基礎教練なので元ネタなし
うーんライミーは要らなかったか
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