メイド「ご主人様…」 (69)
メイド「失礼いたします、ご主人様」ガチャツ
メイド「ふふ、ご主人様は外出中ですけどね」
メイド「ご主人様の部屋、とってもいい匂い…」スンスン
メイド「掃除するのが勿体ないくらいですわ…」スンスン
メイド「ああ…ご主人様のベッド…」ボフッ
メイド「うふふ、こうしてるとご主人様に抱き締められてるみたい」
メイド「一度でいいからご主人様に抱き締められてみたいですね」
ピピピ…
メイド「あら、電話だわ」
メイド「はい、私です」
ご主人『もしもしメイドさん?あと15分くらいで家に戻りますね』
メイド「承知いたしました、坊っちゃま。お待ちしております」
ご主人『俺はもう高校生だよ…メイドさん』
メイド「あらあら、坊っちゃまは坊っちゃまですわ」
メイド「私の…ね」ボソッ
ご主人『何か言った?』
メイド「いいえ、何も。気を付けてお戻りくださいませ」
ご主人「はい。それじゃまた後で」
メイド「鏡、鏡は…と」
メイド「うん、これならご主人様と会っても恥ずかしくないわ」
メイド「ご主人様がお戻りになられるまでに紅茶を用意しないと…」スタスタ
ガチャン
スタスタ
メイド「あっ、そうだ…YシャツYシャツ…」ガチャッ
メイド「ふふふ、一枚お借りしますねご主人様…ああこんなにご主人様の匂いが…」スンスン
メイド「ってこんな事してる場合じゃありませんわ!名残惜しいですけど…」
カランカラン
ご主人「ただいま、メイドさん」
メイド「お帰りなさいませ、ご主人様」
メイド「さあブレザーはこちらに…」
ご主人「いいよ、自分でやるから」
メイド「ダメです。ご主人様は脱いだものを散らかしっぱなしにするんですもの」
ご主人「酷いなあ…それはもう卒業したよ…」
メイド「居間に紅茶とクッキーを用意させて頂きましたわ。どうぞお召し上りになってくださいませ」
ご主人「何から何でありがとう…それじゃ先行ってるね」スタスタ
メイド「はい!ご主人様」
メイド「うふふ…ご主人様のブレザー…」
メイド「後で頬擦りしよっと」
夜
ご主人「お休みなさい、メイドさん」
メイド「お休みなさいませ、ご主人様」
メイド「お仕事も終わりましたし、自室に戻りますか…」
使用人室
メイド「やっぱり私ひとりにはこの部屋は広すぎますね…ああご主人様と…」
メイド「おっといけない、また妄想の世界に入るところでしたわ」
メイド「日記日記、と…」
メイド「そういえばもうすぐご主人様のメイドになってから五年が経ちますわね…」
五年前
ご主人「新しいメイドさん?」
主父親「ああ。そろそろ専属のメイドが必要になって来るだろうからな」
主父親「一応何人かに話を着けてある。最初はこの屋敷のメイドとして働き…一ヶ月後に決めてもらう」
ご主人「なんか人を買うみたいで嫌だなあ」
主父親「もちろんメイドたちにも拒否権はあるぞ。だからお前の方からもメイドに好かれないと駄目だ」
ご主人「まあ、それなら…」
主父親「一週間後から始めるから今のうちに…ほら、履歴書でも読んでおきなさい」バサッ
ご主人「はーい」
主父親「返事は?」
ご主人「…はい」
主父親「よろしい」
メイド長「メイド!起きなさい!」
メイド「あと五分…」
メイド長「馬鹿言わないの!さっさと起きる!」
メイド「ふぁい…」
メイド長「まったく…」
メイド長「ねえ、今日学校は…」
メイド「……」
メイド「嫌…学校は嫌…」ガタガタ
メイド「もう罵られるのは嫌…嫌なの…」ガタガタ
メイド長「……。」
メイド長「ねえ、メイド」
メイド長「私の職場で坊っちゃまのメイドを募集してるの」
メイド長「優しい方よ」
メイド「結局やらないと家から追い出すって脅されてメイド候補者になったんでしたっけ…」
メイド「うふふ、お母様には感謝しなければいけませんね」
メイド「えっと、その後は…」
・・・・・・・・・
メイド「メ、メ、メイドともうひまっ、申します…よ、よろしくお願いいた、いたします…」
ご主人「あはは、僕は四男だしそれほと期待されている訳でもないからそこまで本気にならなくて良いですよ」
ご主人「何はともあれ一ヶ月よろしくお願いします、メイドさん」
メイド「はっ、はい!」
ご主人「使用人室はあそこ、マニュアルはこれ、何か用があったら何時でも部屋にいらっしゃってください」
メイド「こ、これ、ご主人様がお書きになったのですか?」
ご主人「え?まあ。他のメイドさん達から聞いたのを書いただけですけどね。それがあった方がいいかと思って」
ご主人「もしかして…ご、ごめんなさい!余計でした?」
メイド「そっ、そんな事ないですっ!凄く嬉しいです!あ、ありがとうございます…」
ご主人「それは良かったです。…それではまた後で」
メイド「はっ、はい!」
スタスタ
ご主人「綺麗というか…可愛いな」
ご主人「僕美人苦手なんだよな…はぁ」
ご主人「いらっしゃってくださいじゃなかった!いらしてくださいだ!ああー!」ブツブツ
メイド長「どうでしたか?」
メイド「こ、こんなの貰った…」
メイド長「職場では敬語!」
メイド「はっ、はぃぃ!これを頂きました!」
メイド長「マニュアル…やっぱり坊っちゃまはお優しい方ですね」
ご主人「あーもっと国語勉強しないと…なんだよいらっしゃってくださいって…」ブツブツ
メイド「…ふふっ」
二週間後
ご主人「いつ帰ってきてもメイドさんいるな…」
ご主人「メイド長さん、ちょっと宜しいですか」
メイド長「はい、何なりとお申し付けくださいませ」
ご主人「その…メイドさんは普段何を?えっと…今は学校のある時間だと思うのですが」
メイド長「それは…あの子、いいえ、メイドは学校に行きたがらないんです」
ご主人「それは…不登校というものですか?」
メイド長「はい、恥ずかしながら…」
ご主人「恥ずかしい事ではないと思いますよ…しかし屋敷では普通に働いていらっしゃるようですが…」
メイド長「メイドは…学校だけが駄目なんです」
ご主人「…そうですか。お時間を取らせてしまってすみません」
すまんちょっと開きます
ご主人「学校か…」スタスタ
「…でさ」
「…だよねー」
ご主人「…。」ピタッ
「こいつウザくない?」
「メイド長の娘なんだって?縁故かよ」キャハハ
「何で笑わないの?」
「こいつヒキコモリなんだってさー笑えるよね」ケラケラ
メイド「…っ」
ご主人「メイド候補達か…本人の目の前であんな事を…」
ご主人「あいつらは落とすとしよう。その前に…」
ご主人「ああ、皆様お揃いで」
「!」ビクッ
ご主人「作業中のところ申し訳ありません、メイドさんにやって貰いたい事があるのでお借りしますね」
「で、でも掃除が…」
ご主人「父と母、メイド長さんには僕が伝えておきます。ご心配なさらず」
「…っ、分かりました」
ご主人「着いてきてください」
メイド「…はい!」
スタスタ
メイド「あの、それで何を」
ご主人「え?えーっと、その…じゃ、じゃあ、本棚の整理を」
メイド「あの…そこはご主人様がやらなくてよろしいと仰られた所なのですが」
ご主人「い、いいから!」
メイド「出すぎた真似をしてしまいました。では…」
メイド「…ご主人様」
ご主人「何ですか?」
メイド「…ありがとうございます」
ご主人「何の事ですか?」
メイド「…いえ、失礼しました」
メイド「…ふふっ」
メイド「その後、ご主人様は事あるごとに私を助けてくださいましたね」
・・・・・・・・
「おい、早くしろよ」
メイド「…はい」
ご主人「ああ!その箪笥はやらなくていいですよ」
「ちっ…」ボソッ
「何故ですか?」
ご主人「ほら、あの…男の理由的な…ほら、分かるでしょう?」
・・・・・・・・・
メイド「でもあれ半分本気だったみたいですね、うふふ」
メイド「私から隠し通せると思ったら大間違いです…私が一番ご主人様の事よく知ってるんですから」
メイド「ご主人様の理想になれるように私毎日努力してますよ…ふふふ」
・・・・・・・・・
「あいつに足引っ掻けるぞ」ボソボソ
「クビになんじゃね?」ケラケラ
「それっ」
メイド「きゃっ!」ガシャン
メイド長「何事ですか!?」
ご主人「ああ…派手にやりましたね…」
メイド「も、申し訳ありません!」
ご主人「うーん、丁度いい機会ですし新しいのにしましょう」
「は!?それどういう事だよ!」
ご主人「あなたは言葉使いの勉強から始めましょうか」
「くそっ…」
メイド「ご主人様、最後の方は私を部屋で匿っていてくださいましたね」
メイド「おかげですっかりご主人様の匂いが好きになってしまいました、うふふ」
・・・・・・・・
主父親「誰か決まったか?」
ご主人「メイドさんにするよ」
主父親「即答か…ひょっとして惚れたか?」ニヤニヤ
ご主人「そうじゃないけど…あの人が満面の笑みを浮かべたところを見てみたいから」
ご主人「それに実際掃除も上手だし手際もいいし…」
主父親「…実は、他のメイド候補たちからあいつは使えないだとかお前の悪口を言っているだとか垂れ込みがあった」
ご主人「そんな!あの人は一番有能だし悪口なんて言わないよ!」
主父親「なるほど…」
主父親「メイド長から今年の候補はすこぶるレベルが低いと聞いているんだ」
主父親「お前はどう思う?」
ご主人「あんまり人の事は悪く言いたくないけど…兄さんたちの時はもっといい人たちだったよね」
主父親「…お前の人を見る目は確かだと思う。よし、それで決まりだな」
ご主人「伝えてくるよ」
ご主人「受け入れてくれるといいけど…」
ご主人「メイドさん、そろそろ一ヶ月になりますね」
メイド「っ!」ビクッ
メイド「は、はい…」
ご主人「そこでなんですが…」
メイド「やっぱり私なんかじゃダメですよね、そうですよね…」
ご主人「~っ!ああもう!」
ご主人「メイドさん!僕の専属になってください!」
ご主人(なんか恥ずかしい言い方だな)
メイド「えっ…ええ…!?」
メイド「っ…!」ポロポロ
メイド「ぐすっ…ひっく…」ポロポロ
ご主人「…一応拒否権はあります」
メイド「ちっ…違うんです!嬉しくて…っ」
メイド「でっ…でもなんで…!私なんか…っ!」
ご主人「メイドさんの満面の笑みを見てみたいから…ですかね」
メイド「なっ…」
ご主人「…コホン。それはともかく、実際メイドさんは優秀ですよ。あなたは自己評価が低すぎます…子供に言われても嬉しくないでしょうけど」
ご主人「それで、どうしますか?」
メイド「ふっ…不束者ですが、よろしくお願いします」
ご主人「…それは結婚の時の挨拶です」
メイド「えっ…あっ、そんなつもりじゃっ…そのっ…あぅぅ…」
ご主人「…じゃあ両親とメイド長さんに報告して来ます。その後あなたの部屋などを決めましょう」
・・・・・・・・・
メイド「あの時は凄く嬉しかったです…ご主人様」
メイド「嬉しくて私ずっと泣いてましたから…もっとご主人様と一緒にいられるって分かって…」
メイド「ご主人様、あなたはとっても暖かかったです…今度は物理的にも暖かく…おっといけませんわねうふふ」
メイド「新しいメイド服…」
メイド「ご主人様、どう思ってくれるかな」コンコン
ご主人『どうぞ』
メイド「失礼します」ガチャ
メイド「どう…ですか」
ご主人「おっ!よくお似合いです。格好いいですね!」
メイド「かっこ…いい?」
ご主人「?…ええ」
メイド「…そうですか、格好いいですか」
ご主人「…もしかして怒ってますか?」
メイド「怒ってないです!」
ご主人「…なんかすみません」
ご主人「…それはさておき、メイドさんの候補期間は今日で終わりで明日からは研修になります」
ご主人「研修と言っても今までとほとんど変わりませんし、扱いも普通のメイドと同じですが」
ご主人「…伝統的に、候補期間が終わった後は餞別として出来る範囲で希望を聞くことになってます」
メイド「…いくつまでですか?」
ご主人「そ、そう来ますか…出来る範囲であれば…」
メイド「…それでは、私に対して敬語で話しかけるのを止めてください」
ご主人「えっ…それはどういう事ですか」
メイド「敬語はダメです」
ご主人「…分かったよメイドさん」
メイド「うふふ…」
「何で私達がクビなんだよ」
「ふざけやがって」
「おい、お前が専属になったらしいな。あのお坊ちゃまに色目でも使ったのかよ」
メイド「いいえ?」
「ふん…お坊ちゃまに媚でも売ってろよ、ブス」
メイド「はい!そうします!」
メイド「だってご主人様の事、好きですから!」
メイド「あっ、その、好きって言うのは恋愛的な方じゃなくて…」
「…もういい、やる気なくした」
メイド「その後、私が再び学校に通い始めた時…」
・・・・・・・・
ご主人「メイドさん、これどうぞ」
メイド「これは?」
ご主人「レコーダーだよ。メイドさんに何か言ってくる奴がいたら録音して…僕のところへ持ってきて」
メイド「で、でも!こんな高いもの…」
ご主人「メイドを気にかけるのも主人の仕事だよ。どうせ使ってないからこういう必要な時に使わなきゃね」
・・・・・・・・
メイド「レコーダーを持ち帰った時、そしてその音声をお聞きになった時、ご主人様は自分の事のようにお怒りになられましたね」
・・・・・・・・
ご主人「…よし、このクズどもに容赦はいらないな…電話を」プルルル
ご主人『もしもし父さん?ちょっとメイドさんとメイド長が疲れてるみたいだから休暇をあげたいんだけど…ううん、数日でいいよ』
ご主人『そうそう、この県の教育委員会と…』
ご主人「手紙、電子メール、それに…宛先は」
ご主人「父さんに感謝しなきゃな」
メイド「あの、ご主人様は何を?」
ご主人「ちょっとメイドさんが笑ってくれるようになる事をね」
ご主人「全ては整った、さあ行こう」
メイド「…?」
ご主人「ごめん、ちょっと格好つけたくなった」
メイド「ご主人様は格好いいですよ!」
ご主人「ありがとう。それじゃメイド長の所へ…」
メイド長「どういう事ですか!?私は休暇など申請していませんが」
ご主人「まあこれを聞いてください。それから…メイドさんは勇気を振り絞って僕に全部話してくれました」
ご主人「迷惑をかけたくないのと恥ずかしかったから何も言わなかったそうですね。だけどそれも終わりだ」
ご主人「終わらせるためには保護者の力が必要になるのです」
このSSまとめへのコメント
これ続きあったはず
ちゃんとまとめようよ