霊能力者「寺生まれの“D”です」 (133)

深夜VIPでやってましたが、本来はこっちで立てる予定だったので移動しました

前スレ↓
霊能力者「寺生まれの“D”です」 - SSまとめ速報
(https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1537723453/l30)

基本的には設定同じです

一応1から再スタートということで

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1540864580

俺の名はD

…そうスレタイでは名乗ったのだが、当然の事がこれはあくまでイニシャルだ

本名は寺田 大輔(てらだ だいすけ)

みんな大好き“Tさん”と名乗っても問題ない名前だが、俺は「破ぁ!」1つで悪霊を倒せるほど強くはないなので“D”と名乗っている

ぶっちゃけた話、名前の枠は“霊能力者”になるのだから本名とかイニシャルとかは割とどうでもいい事なのだが

因みに寺生まれのTさんとは違い、俺はガッツリこの力を主に使う職業に就いている

別にそういう会社とか組織がある訳じゃなく、個人経営の事務所ではあるのだが

勿論インチキではない

正真正銘のモノホンの悪霊退治だ

そう、例えば

息子さん「クケッ……!クケケケッ!」

母親「先生っ、息子は……!」

霊能力者「任せておいて下さい」

こんな風に

息子さん「クケーッ!」

じたばた

霊能力者「物理的に縛ってるとはいえ、あんまし時間はかけられないね」

母親「息子は助かるのでしょうか!?」

霊能力者「んー、多分大丈夫かと。さて、」

助手「“D”先生、どのセットを今回は使いますか」

霊能力者「セットXで」

助手「了解しました」

パカッ

霊能力者「これでよし、と」

母親「あのー、先生……。それは……?」

霊能力者「霧吹きと十字架です」

母親「それは見れば……」

霊能力者「……まあ、言いたいことは分かりますよ?ただ最近の除霊はマルチにカバーしないとやってられないんですよ」

母親「は、はあ」

霊能力者「助手ー、霧吹き頼む」

助手「はい」

プシャッ

息子さん「ギィィヤァァァァァア!!」

母親「!!」

助手「ただのオリーブオイルなので大丈夫ですよ」

霊能力者「効いたってことはやっぱりかー。やっぱりあれかー」

母親「あれとはなんですか!息子には何がついてるのですか!?」

霊能力者「悪魔です」

母親「」

助手「正確には映画『エクソシスト』に出てくるようなアレです」

霊能力者「コイツがモノホンなら面倒だな。一応本も用意しておいてくれ」

助手「かしこまりました」

母親「あ、悪魔って」

霊能力者「なんか最近外来種的なノリで日本にもきてるみたいなんですよー」

母親「外来種って……」

息子さん「クケケケケケーッ!」ふわっ

母親「む、息子の体がう、浮いて!!」

助手「もう完全に映画のようになっていますね」

霊能力者「……さっきも言った通りモノホンのガチ悪魔なら俺の“本業”とは少し違う分野になるので面倒ですけど。多分それとは違うと思うので安心してください」

母親「違う?」

息子さん「クケーッ!」

霊能力者「まあ見といて下さい」

助手「先生、全ての準備が整いました」

霊能力者「じゃあやりましょか」

息子さん「クケケケーッ!」

じたばた

霊能力者「こっちを見やがれ!」ぐいっ

ギンッ

息子さん「グゲッ」

助手「霧吹きもどうぞ」

プシャッ

息子さん「グゲゲッ」

霊能力者「十字架見えてんだろ、名前を言え」

息子さん「グギッ、グギゲゲゲッ……!」

霊能力者「こりゃどっちか分からんなぁ……。助手、」

助手「銀で出来たフォークもどうでしょうか?」

プスッ

息子さん「グゴギィィイイイイイイイ!!」

霊能力者「名前を言えば外に出られるよ?」

息子さん「べ、ベリアル!我が名はベリアルッ!!」

ボワンッ

母親「ひっ!あ、悪魔っ!?」

助手「先生」

霊能力者「……」

ベリアル?「このエクソシスト共め!次は貴様らにとり憑いてやるっ!!」

母親「ひいっ!」バタリッ

助手「先生」

霊能力者「分かってるよ」

ベリアル?「怖気付いたか」

霊能力者「……可哀想だからお前に最後に1つ教えてやるよ」

ベリアル?「な、何をいきなり」

霊能力者「本物の悪魔は日本語じゃ喋らんぞ」

ベリアル?「え」

霊能力者「破ァッ!」

チュボンッ!

ぺしぺし

助手「起きて下さい」

母親「あれ?悪魔は……」

霊能力者「あのもどきは無事除霊したので問題はありません」

母親「で、では息子は!」

霊能力者「ご覧の通り」

息子さん「Zzz......」

母親「ああ…!」

霊能力者 「これでもう大丈夫ですよ」

──────
────
──

助手「それにしても最近増えましたね、“悪魔もどき”」

霊能力者「……正直今さら感あるけど、どっかで流行ってんのかねぇ」

本来ならば地縛霊という存在で産まれる筈であった悪霊

しかし、現代のネット社会では誰もが簡単にイメージの共有を行い、拡散する時代

人の恐怖に対するイメージの変化はハッキリと現実の世界にも影響を及ぼしていた

積もり積もった多くの“ソレ”が現実のものとして現れる様になったのだ

既存のものとは比べ物にならない形で

霊能力者「……」

助手「……私の顔になにか」

霊能力者「別にー」

これはそんな徐々に無理ゲー化していく悪霊たちと仕事で戦う霊能力者、“寺生まれのD”の日常物語

第1破ァッ!「コトリバコ」

─お寺─

霊能力者「お邪魔しまーす」

住職「おお!久しぶりじゃなぁ大輔。元気にしとったか」

霊能力者「爺さんも元気そうでなによりだ。それと、仕事の時は“D”で呼んでくれって」

住職「すまんすまん。つい癖でな」

助手「ご無沙汰してます」

住職「お、助手ちゃんも久しぶりじゃな。少し見ない間に随分とまあ美人さんに」

助手「頑張りました」

住職「ふむ、やはり最近のは凄いのぉ」

霊能力者「そいつが特別なだけだからな」

住職「さて、積もる話もあるが事態は急を要するのじゃ。仕事の話をしよう」

霊能力者「爺さんが俺に依頼を回すくらいだ。そーとー洒落にならんやつでも来たのか」

住職「うむ。下手に手をつければワシが死ぬ」

助手「……確かに御堂の方から凄まじい“圧”を感じます」

霊能力者「なるほどね。じゃあさっさと現物の確認でもしようか」

住職「ではワシの後ろについて参れ」

─御堂─

男「……」ブツブツ

女「……」

カリカリ......

霊能力者「おおー。盛大にやられてんだな」

住職「この2人の友人たちがここに連れてきた時は発狂しておったわい。今は応急処置でなんとかなっとるが」

助手「ですが、このままでは死んでしまいますね」

霊能力者「こりゃ急がないとな」

住職「すまんが頼めるかの」

霊能力者「仕事はお断りしない主義なんでね。承るよ」

助手「因みに報酬なのですが」

住職「うむ。こやつらが取ってくれ」

霊能力者「おーけーおーけー」

住職「さて、ワシはこやつらの友人を除霊するから後は任せたぞ」

スタスタ......

男「……」ブツブツ

霊能力者「こいつの手に持ってるこの箱が元凶か」

箱?「……」

助手「間違いないかと」

霊能力者「……どうしよう」

助手「どうにかするのが私たちの仕事かと」

霊能力者「いや、住職が俺らに泣きつく代物だから相当な呪物だとは思ってたけどさぁ」

助手「形状からすれば、これはかの有名な“コトリバコ”でしょうか」

霊能力者「だよなぁ」

女「……」キリキリ

霊能力者「それにしてもこいつらも運が悪いなぁ。おおよそ倉庫で作業中にでも出て来ちゃったんだろうな」

助手「格好からして作業着ですしね」

霊能力者「ホントに運が悪い。まさかぽっと出にこんなのが入ってるとは思わなかっただろうしな」

男「……」ブツブツ

助手「如何致しましょうか」

霊能力者「うーん……。ネットじゃ処理方法とかなんて書かれてる」

助手「『強力な呪いの為、長い年月をかけて寺で浄化する』と」

霊能力者「そうか。じゃあセットTで」

助手「畏まりました」

霊能力者「俺はこいつら外に出すから助手は住職に伝えてセットを車から頼む」

助手「はい」

─境内─

男「!!!」じたばた

女「ーっ!」じたばた

霊能力者「外に出す前に縄で縛っておいて正解だったな」

助手「準備が整いました」

住職「なんじゃこの装置は」

霊能力者「除霊用のセットだよ。超強力な」

住職「本当に大丈夫か?それはとんでもない代物と説明を受けたのじゃが」

霊能力者「そうだね。最近のものじゃ特に強い描写が間接的にされているタイプだ」

助手「モノによっては強さがマチマチという表現もされてはいますが」

霊能力者「でも、これには関係ない」

住職「関係ない……?」

霊能力者「ああ。今回“現象化”したコイツはガワだけを真似たヤツだ」

住職「それはどういうことじゃ」

霊能力者「この“コトリバコ”ってのは確かに強力な呪物ではあるんだが、それの真骨頂は“一族根絶”という点だ」

助手「確かこれが置かれた家の女・子どもを呪い殺してしまうといったものでしたね」

霊能力者「そう、だからだ」

住職「!」

霊能力者「なんでこの女は生きてんだ?」

女「ーっ!」じたばた

霊能力者「呪いそのものは相当なものだったが、今回のは形だけを真似たものとして現象化している。それなら面倒なことはしなくていい」

助手「なるほど。だからセットTを」

霊能力者「そゆこと。シンプルに行こう」

ピッ

ジュワァッ!

バチバチ......

住職「!?」

助手「問題なく動きましたね」

霊能力者「まあ、困ったらこれだよね」

住職「な、なにをしておるんじゃ!?」

霊能力者「テルミットとかいう少し強力なお焚き上げだよ」

助手「あちらをご覧下さい」

男「ぐあああ……」

女「ぐぅぅううう……!」

シュウウウ......

住職「むっ、呪いが離れていっておるぞ」

男「もしこれが忠実に再現されたものなら別のやり方になったんだけどね。でも“コトリバコ”の名を宿したただの呪物ならこれで十分。それに、」

ズズズ......

「……!」ズアッ

霊能力者「破ァッ!」

ボチュンッ!

霊能力者「中に居たのも水子の霊ですらなかったし」

「「っ……」」

どしゃあ

助手「気配は全部消えました」

霊能力者「そっか。じゃあ後は箱が燃え尽きるのを待ちましょか」

コトリバコ「……」ぱちぱち

メラメラ......

──────
────
──

住職「いやはや、やはり最近の子は頼りになるのう。ワシも今度から導入してみようかの、てるみっと」

霊能力者「このセットなら“B”が売ってくれるけど」

住職「なに、あやつか。それならやっぱり無しじゃな」

霊能力者「それがいい」

住職「こっちで彼らの身元は調べて後日寄越そう。今日は本当に助かったわい」

霊能力者「事務所の方に頼む。それじゃあなー」

助手「……」ぺこり

すたすた......

住職「しかし世も末よのう」

ポリポリ

住職「話を聞く限りではまるで伝承呪物の様な代物が全くの前触れもなし出てくるとは」

霊能力者「最近のは本当に面倒だな」

助手「そうですね。物理除霊に頼らなければならない事が増えてきていますし」

霊能力者「だから俺みたいな特殊なモノ専門も需要があるんだけどさ」

助手「……」

霊能力者「ま、数が増えてもやっぱりそんな数は少ないしなんとかなるでしょ」

助手「それもそうですね」

霊能力者「よし、今日はさっさと帰って明日の依頼の準備でもするか」

助手「明日の依頼は……、」

ペラペラ

助手「某村での“くねくね”と思わしきモノの処理ですね」

霊能力者「……」

助手「……」

霊能力者「……マジ?」

第1破ァッ! 終わり

ワード解説

現象化
・このスレでは幽霊と言ったものが産まれる事を“現象化”と表現する。詳細はまた別の項で



物理除霊
・“破ァッ!”といった摩訶不思議な力を使わず、字面通り物理的に霊媒を消し去る除霊方法
形がある物ならこれで何とかなる事が多いので、日常生活でうっかり呪物を見つけたりしたら迷わず燃やそう



寺生まれのTさん
・寺生まれの有名人
よくTさんが破ァッ!すれば何とかなるイメージもあるが、最近は修行をしていないということで苦戦する描写がある時もある
寺生まれって凄い

第2破ァッ!「蠱毒」

─某県X山─

霊能力者「今回はさっくり終わりそうだな」

助手「そうですね」

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」←5m超

霊能力者「2つの意味で」

ドオオオオンッ!!

─3時間前─

霊能力者「無縁仏の処理場ですか」

管理人「はい。私が管理している山なのですが……、一部を処理地として貸し出してまして」

霊能力者「なるほど。確かに人里からかなり離れているこの山なら霊障等の被害は出ませんし、自然消滅のしやすい環境ではありますね」

管理人「私もその様な説明を受けて貸し出したのです。ところが……」

霊能力者「減るどころか増えたと」

管理人「はい……。ですので是非除霊を」

霊能力者「それは構いませんが」

助手「ですが、可笑しな話ですね。ここはあくまでも墓石の処理のみを行う場所の筈です。とても増えるような環境では」

霊能力者「墓石の方に良からぬものが取り憑くこと事態が稀な事なんですよ。心当たりとかありますか?」

管理人「……先日、私の方で貸出先へ問い詰めたところそこを仲介として複数のところで共有していた事が分かりまして」

霊能力者「あー……。なるほど、何となく展開が読めました」

管理人「ここ半年で想定の10倍のも墓石を破棄したと言われました」

助手「……」

霊能力者「場所が場所なだけに管理人さんが見に来れないという事で調子に乗った結果こうなってしまったと」

管理人「そうなりますね」

霊能力者「……分かりました。では、あなたが貸し出した方のリストを渡して下さい。それを今件の報酬としますので」

管理人「えっ、あの、お金は……」

霊能力者「そいつらからぶん取りますよ。形態こそ違えど同じ業界の人間ですから懲らしめてやらないと」

管理人「あ、ありがとうございます!」

霊能力者「後はお任せて下さい」

──────
────
──

パラパラ......

霊能力者「っと、カッコつけて言ったのにこんなのがいるとは聞いてねぇ!」

助手「まさか怨霊同士がバトルファイトをして超弩級怨霊になっていたのは想定外でしたね」

霊能力者「正に“蠱毒”状態とでもいうか」

助手「今度の新しい研究テーマにされてみては?」

霊能力者「生きて帰れたらな」

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」

ドオオオオンッ!!

霊能力者「うひゃあ」ピョンッ

助手「流石にこのサイズになるとただの怨霊でも“物理干渉力”が凄まじいですね」

霊能力者「オマケにだ」グッ

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」

霊能力者「破ァッ!」

ボシュウッ......

怨霊「?」

霊能力者「デカすぎるせいで“破ァッ!”が分散されて効果がない」

助手「ここまでのサイズになられると物理除霊も厳しいですね」

霊能力者「いやマジでどうするよ」

助手「ここは一先ず撤退して援軍を呼びますか?」

霊能力者「……いや、さすがにこれはもう放っておけるモノじゃない。逃げながら策を練る」

助手「畏まりました」

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」

ズウン、ズウン......

タッタッタッ......

霊能力者「ざっと見て20体程度は吸収してるな」

助手「加えて地縛霊化の傾向も見られます」

霊能力者「いよいよ持って今日中に片付けないといけないな」

助手「まだ大きいだけの怨霊で済んでいる内に処理をしたいところですね」

霊能力者「しかしまあ、核になってる奴は相当な人望の持ち主だったみたいだな」

助手「恐らくは芸能人クラスはあるかと」

霊能力者「どう見ても外部干渉による現象化だもんなぁ。……そんな人でも無縁仏として処理されちまうのが今の世の中なのな」

助手「永代供養の手続きをされていなかっただけでは?」

霊能力者「最近の永代供養は管理者が居なけりゃ長くても精々半世紀程度だ。悲しいけど土地がないしね」

助手「なるほど」

霊能力者「とにかく現状アレを祓うとするならある程度アレを小さくする事が大前提だ」

助手「何か方法も思いつきましたか?」

霊能力者「なし」

パキパキッ!

霊能力者「んっ!?」

助手「あれは、」

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」ブンッ!

ビュオッ!

霊能力者「大木投げとか有りかよ!?」

助手「ここはお任せ下さい」ザッ

シュルッ

助手「フッ」

ズパンッ!

ドドーン......

怨霊「!!」

霊能力者「キレイに真っ二つ。お見事」

助手「お褒め頂き有難いですが、それどころではないかと」

霊能力者「まあ、木を引っこ抜いてぶん投げてくるとかもう出てくる所間違ってるわ」

助手「少なくとも悪霊退散イエーイなノリで出てくる話では少し場違いですね」

霊能力者「あれだな。俺が女ならお前と一緒に変身して合体技で倒してるようなヤツだわ」

助手「合体がお望みですか」スルッ

霊能力者「誰がそっちの意で取れといった。そして生憎そんな趣味はない」

助手「連れないですね」

霊能力者「キミさっき自分でそれどころじゃないって言ったよね?」

助手「先生がついに私を受け入れてくれと思ってしまい、つい」

霊能力者「一生ないから安心しろ」

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」

ダンダンダンッ!

霊能力者「ほら、こんなふざけた会話してるせいで怒ってんじゃん」

助手「嫉妬でしょうか」

霊能力者「どこにそんな要素があった」

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」

ドシンドシンッ!

助手「しかしこんなに暴れられると土砂崩れや山崩れが心配になりますね」

霊能力者「幸い下の方には人里がないからあんまし直接的な被害は無さそうだがな」

助手「……環境が特殊だったとはいえ、やはり怨霊としては異常なまでに物理干渉力ですね」

霊能力者「“P”の奴なら難なく処理できそうなんだけどなぁ」

助手「あのクソッタレスタンドもどき共なら確かに同じレベルの物理干渉力があるので問題なさそうですね」シャキン

霊能力者「何故そんなに敵視する」

助手「出会う度に必ず問答無用で現象化して襲ってくるゴミ共を好きになるとでも」

霊能力者「そりゃそうだよね。……あっ」

助手「どうされました」

霊能力者「いや、なんか思いついた。つか、今更気づいた」

助手「……私はどのように」

霊能力者「あいつに1つぶちかましてくれ。で、可能であれば4分割」

助手「……どうして気づけなかったのでしょうか」

霊能力者「見た目が怨霊だからだろうな」

助手「ですね。それでは」タッ

怨霊「ウオオオォォォォォ!!」ブンッ!

スカッ

怨霊「!?」

“今、あなたの後ろにいるの”

ズパパンッ!

怨霊「ウオオオォォォォォオオオ!?」

霊能力者「これまたキレイな4分割!」

ダッ

怨霊×4「!!」

霊能力者「破ッ、破ッ、破ッ、破ァーッ!」

ボボチュンッ!

怨霊「ウオオオォォォォォ……」

シュウウウ......

怨霊「」

さらぁ...

助手「終わってみれば呆気ないものですね」

霊能力者「まあ、元はただの怨霊だしな」

──────
────
──

霊能力者「んじゃ、リストも貰ったし明日からは早速コイツらから集金しますか」

助手「……それにしてもやはり今回の怨霊は特殊でしたね」

霊能力者「どこら辺が特に?」

助手「物理干渉力もそうですが、怨霊が他の怨霊を取り込み巨大化したという点でしょうか」

霊能力者「まあ、普通は有り得ないよな」

助手「ええ。無縁仏として破棄されているのですから、基本的に怨霊同士が縁もゆかりも無いですし怨霊同士が戦っても普通は負けた方が消えるだけ筈なのです」

霊能力者「そう、通常なら有り得ない事態が今回起きている。だが、今回の件で少し違うのはアイツらには共通の認識があったということだな」

助手「共通の認識、ですか」

霊能力者「そう“捨てられた”ていう共通認識。そんな霊がごっそり1箇所に固まっていたら今回みたいな事が起きなくもないなと思うわけ」

助手「……自発的に“蠱毒”をしたと見た方がよろしいのでしょうか」

霊能力者「祓った今じゃ確認のしようがないけど、その可能性も無くもないんじゃないかな。勝手な想像だけどさ、」

「忘れて欲しくなかったんじゃないかな」

第2破ァッ! 終わり

ワード解説

物理干渉力
・霊が物理的にとやかくする力
基本的には物理的にいろいろと出来るヤツの方が霊としては力がある
特にそこには存在しない物を出せる様なヤツは極めて危険
つまり田舎の夜道を走るタクシーの後部座席をぐっしょり濡らす女は脅威的な力を持っている

タクシーの女幽霊>映画『エクソシスト』の悪魔

くらいのイメージ

登場オカルト紹介 その1

コトリバコ
・ざっくり言えば水子の遺骸を主な材料として作られた仕掛け箱の様な見た目の呪物
“子獲り箱”とも呼ばれる
名前通りの効果を持ち、これが置かれた家の一族の女・子供を全て呪い殺しその一族を根絶やしにする
詳細を知りたければ洒落怖スレを見よう
ネット発祥されているので多分現実には存在しないと思うが、もし運悪く見つけてしまったら素早く近くのそれっぽい施設でお焚き上げをして貰うのがオススメ

登場オカルト紹介 その2

怨霊
・怨みやらを募らせ人に危害を加える危険な霊
本スレにおける“幽霊”は基本的に発生条件あり、以下2つのどちらかを満たすと“現象化”する↓

1.当人が死ぬ間際に出した何らかの強い感情がある物質に作用して発生(内部干渉)

2.他人の故人を思う強いある一定の感情がとある物質に作用して発生(外部干渉)

どちらにせよ、これで発生したものは当人ではなくあくまでもそれを糧に現象化した“別の何か”なのでさっさと除霊してあげるのが本人の為でもある

第3破ァッ!「ジャック・オー・ランタン」

─事務所前─

助手「早くも時事ネタですか」

霊能力者「うん、メタなこと言うと予定なら“第10破ァッ!”ぐらいがここにくるようにしようとしてたんだけど。結局ここになってしまった」

助手「そうですか。でもこうなってしまった以上は仕方ありませんね」

霊能力者「そ、特にすることも無いが俺らもちったぁ楽しもう」

助手「そうですね」

霊能力者「はい、メタな会話終わり」

タッタッタッ!

「「「トリック・オア・トリート!!お菓子くれなきゃ悪戯するぞっ!」」」

助手「来ましたね」

子どもA「くださーい」

霊能力者「おうよく来たな。悪戯されちゃ困るから持ってけ持ってけー」

ドサッ

子どもB「やったーっ!」

子どもC「あっ、変形ロボラムネも入ってる!!」

霊能力者「これで悪戯は勘弁してくれるか?」

子どもA「今日のところはこれで満足してあげる!」

「「「ありがとうございましたー!」」」

霊能力者「車に気をつけるんだぞ」

「「「はーいっ!!」」」

タッタッタッ......

助手「今日はあと何組程くるのでしょうか?」

霊能力者「去年が10組くらいだったからなぁ。今年も多分そのぐらいか」

助手「それなら今ある分でも余裕ですね」

霊能力者「余れば茶菓子にでも使えばいいしな」

「おーい」

霊能力者「ん?」

組長「よっ、お疲れさん」

霊能力者「あ、組長さん」

組長「組長言うな」

助手「すいません組長さん。この人も長年のイメージが離れないようで」

組長「……もう何も言うまい」

霊能力者「でも、ヤクザから消費者金融()に変わっただけじゃないですが」

組長「組長から社長に一応役職が変わってんだよ。それに前に比べりゃ業務はクリーンだ」

霊能力者「比べる先が問題あり過ぎな気が」

組長「ったく、相変わらずだな。5年前に事務所設営費を無利子無担保で貸してやったのをもう忘れたのか?」

霊能力者「そのもっと前に面倒なモノ祓ってやったのも忘れたんですか?」

組長「分かった分かった、この話はやめよう」

霊能力者「そうですね」

助手「ところで組長さんは何のご要件でしょうか」

霊能力者「まだ“アレ”が出る時間でもなでしょ」

組長「あー、それが実はさっき目撃情報が出たんでな」

霊能力者「アレの?」

組長「ああ、アレだ。で、お菓子の買い足しついでに伝えに来たわけ」

助手「部下の方にお任せになられないのですか?」

組長「いや、俺の顔みたら子ども泣くから裏方しか俺の仕事がないんだよ」

霊能力者「最近はようやく年齢が顔に追いついてきた感じですしね」

組長「俺ももう40だしなぁ……。じゃなくて、目撃情報があったから至急向かってくれ。追加で目撃情報が入り次第LINEで連絡する」

霊能力者「了解しました」

スタスタスタ......

組長「……毎年悪いね。先生を使わせてしまって」

助手「いえ、ここで根を張って活動すると決めた時からこの件についても折り込み済みでしたから」

組長「……」

助手「好きでやってらっしゃる事なので、気にされなくて大丈夫ですよ」

組長「そうか。それなら構わない」

助手「……」

組長「ところで1つ気になったんだが」

助手「なんでしょうか」

組長「お前さんのその格好は所謂コスプレってやつか」

助手「はい。思い切って今年は露出の高いモノにしてみました」

組長「最近の若者の流行りってやつか。で、先生の反応は?」

助手「……」

組長「……まあ、頑張れ」

街中に彩られたハロウィンのイルミネーション

都会の方じゃただのコスプレ祭りになっているようだが、この地域では相も変わらず子ども向けのお菓子配りイベントとして続いている

ただ、時代に合わせて服装が普通の私服だったのがそれっぽい仮装へと変わっていったりはしてるのだが

という事で本来ならその程度のイベントなのだが──、

子どもA「次はあっちの家に行こーぜ!」

「「おー!」」

タッタッタッ!

「……」

トットットッ......

霊能力者「……破ッ」

「カボッ!?」

ボチュンッ!

何故かこの街ではこのハロウィンの日にはカボチャのお化けが出るのだ

そう、俗に言う“ジャック・オー・ランタン”が

日本ではそこまで“ジャック・オー・ランタン”そのものについては深い関心がない為か、形だけを真似したモノが現象化している

ようはカボチャ頭の妖怪程度のものしか出ない

それが幸いしてこの日に出てくるヤツもただ出てくるだけの、危険性がないものばかりだ

だが、“万が一”が起きることも危惧してこの日は目撃情報が出しだい街を歩き“ジャック・オー・ランタン”を消している

霊能力者「でもさ、わざわざ話にしてるもんな」

当然ながら、今回が毎年のように終わることは無く“万が一”が発生する

デジャブというものだ

霊能力者「あれか、最近流行ってんのか鎌持ってるカボチャ頭が」

ジャック・O「……」

ギラリッ

スパンッ!

霊能力者「あっぶね!」

ジャック・O「……」フワッ

ススススス...

スパンッ!

霊能力者「だから危ねぇっての!」

ダッ

ピッ

霊能力者「助手!緊急事態だ」

助手『如何致しましょうか』

霊能力者「各自治体のお菓子配ってる人達に子ども達の保護を通達。可能な限り外に誰も出させるな」

助手『警察には?』

霊能力者「勿論通達」

助手『畏まりました。D先生、お気をつけて』

ピッ

霊能力者「さて、久しぶりのソロか」

ジャック・O「……」

霊能力者「ま、取り敢えず……。破ァッ!」

ジャック・O「……!」

バシュウ......

霊能力者「効果なし。ぽっと出の割にガッツリ受肉してるってヤバいな」

ジャック・O「……」

ブワッ

霊能力者「そして当然のように浮遊で移動かよ!」

スパンッ!

霊能力者「うおあっ!?フードが切れたっ」

ジャック・O「……」

霊能力者「ヤバいヤバい。俺そんなガチバトルみたいなことしたくないんだけど」

ジャック・O「…シイ……セ」

霊能力者「なに、なんか言ったか」

ジャック・O「……」ブンッ!

ズパシッ

霊能力者「返事の代わりにブンブンするのやめろ。マジでこういったバトルは他所でやってくれよ!」

ジャック・O「……タ…コ……」

ゆらぁ......

霊能力者「ああクソッタレ!体育3には荷が重すぎるわ!」

ダッ

スパンッ、スパンッ!

ジャック・O「……ヨコセ…!」

霊能力者「なにをだ!腹から声をだせって!!」

ジャック・O「タマシイヲ…、ヨコセ!!」

スパンッ!

霊能力者「うるせぇ!!」

ズザザザッ!

霊能力者「なんでお前が死神みたいになってんだよ」

ジャック・O「……」

ピコン

霊能力者「……あれか、悪魔絡みのエピソードと絡まった結果産まれたのか」

ジャック・O「ヨコセ……、タマシイ」

霊能力者「そんなものは無い。俺を掻っ捌いても出てくるのは少し黒ずんだ肺とストレスでやられた他の臓器だけだ」

ジャック・O「……!」

スパンッ!

霊能力者「言葉は発しても話は通じないのなっ」ピョンッ

霊能力者「さてどうすっか!」

ジャック・O「……」

受肉をしているモノを祓う場合はそれこそ物理除霊の出番である

この手の相手で最もシンプルなやり方は、見た目が分からなくなるまでミンチにするか切り刻むというものだ

助手がいれば切り刻ませたが、ないものねだりは出来ないのでこれは却下

通常の力技での除霊も可能であるが、先程も撃って効かなかったのでこれも却下

そもそも受肉をしている様な相手には“Tさん”よろしくの“破ァッ!”程度の力がないと無理だ

つまり残された選択肢はただ一つ

霊能力者「複合で行くしかねーか」

ジャック・O「……」

霊能力者「と、確かコートの裏にっと……」さっ

スパンッ!

ジャック・O「……」ブンブンッ

霊能力者「てめっ、探してる間はやめろっての!」

ガサゴソ

霊能力者「ったあ!!」

ジャック・O「……」ピタッ

霊能力者「じゃんじゃかん。はいよお待たせこいつがウワサの“セットS”だ」

ジャック・O「……」じりっ...

霊能力者「……警戒するの早くない?」

ジャック・O「……」じり、じり...

霊能力者「受肉してるから知能もやっぱたけーな」

ピッ

ピリッ

霊能力者「うむ、問題はなく作動はするか」

ジャック・O「……」ふわふわ

霊能力者「ちっ、カウンター気味に仕掛けようかと思ってたが、こうも警戒されるとなぁ……」

キキーッ

ジャック・O「……!」

組長「手こずってるようだな!手を貸してやってもいいが」

霊能力者「そいつはおいくらで?」

組長「お好きな額で」

霊能力者「じゃあ2000円くらいで」

組長「OK。契約成立だ」

ジャック・O「……」バッ

スパンッ!

組長「とっ、これでもくらいやがれ!」スチャッ

ターンッ

ジャック・O「……!?」

霊能力者「おまわりさーん!」

組長「ただの殺意の高いモデルガンだ」

霊能力者「結局アウトだろ!」

ジャック・O「ヨコセェ!」ブワッ

組長「これでジャスト2000円だ!」

ターンッ、ターンッ!

ジャック・O「……!!」ビタッ

組長「やれっ!」

霊能力者「助かったよ組長。背中がガラ空きだ」

ザッ、

ジャック・O「……!?」

霊能力者「オラァッ!!」ブンッ

バヂィッ!!

ジャック・O「!!?!??!!」びくくんっ

霊能力者「んでもってぇ」

バッ、

霊能力者「破ァッ!」

ジャック・O「ヨ、ヨコセェ…、」

ボチュンッ!

霊能力者「ふー、危なかったぁ……」

組長「……おい」

霊能力者「なんでしょか」

組長「妙にさっきは慣れ慣れしかった事はこの際置いておこう」

霊能力者「是非そうして下さい」

組長「お前の手に持ってるソレ、俺に当てて使ってみろ」

霊能力者「……人間用じゃないので」

組長「だよなぁ、バチってなった瞬間にカボチャ野郎の中身が見えたもんなぁ」

霊能力者「護身用ですからねー」

組長「テメェもアウトじゃねぇか」

霊能力者「そこはお互い様ということで」

──────
────
──

霊能力者「ってことがあってさ」

助手「なるほど、それは大変でしたね」

霊能力者「そっちはどうだった」

助手「皆さんの協力もあり、けが人は出ませんでした」

霊能力者「そっか」

助手「それにしても不思議ですね。まさかあのような存在が現象化するとは」

霊能力者「……」

助手「どうされました?」

霊能力者「いや、“G”の研究を思い出してさ」

助手「Gさんですか」

霊能力者「あいつが主にしてるのが現象化と感情の関係性についての研究なんだが、その中にあった“個人感情”の内容を思い出してな」

助手「……確か端的に言いますと『一個人の感情から産まれた霊はそのスケールが大きくなり辛い変わりに性質に歪みが生じやすい』というものでしたね」

霊能力者「うん、だいたいそんな感じ。複数の感情から現象化が発生する場合はその感情の共通項が結びつき発生する。だからそこまで特徴的なものにはなり辛い。だが逆に個人だとそれそのままが反映される」

助手「何故それを思い出されたのですか?」

霊能力者「いや、冷静に考えたら受肉しちゃうレベルってかなりの有名どころじゃないと無利なんだよ。それこそ高校の時に祓った“リョウメンスクナ”とかみたいな」

助手「……」

霊能力者「だからあんなぽっと出が受肉するなんて本来なら有り得ないことだろ」

助手「つまり、」

霊能力者「この街にヤバい奴がいる可能性が高い。人畜無害なヤツをキラーマシンにしてしまう程の闇を抱えた人間が」

助手「そうですか」

霊能力者「いや、そうですかって。もっと別の反応があるでしょ」

助手「例えば『まさかそのような人が……?』とかですか」

霊能力者「うん、そんな感じ」

助手「果たしてそれでよろしいのでしょうか?」

霊能力者「え?」

助手「話の初めをメタな会話でスタートし、内容もシリアス要素がゼロなのにオチで唐突にシリアスオチを持ってくるのはどうかと」

霊能力者「仕方ないだろ。本来想定してた適当な会話からの“ハッピーハロウィン♪”的なオチはもうハロウィン終わってるから使えないし」

助手「してもいいじゃないですか。ハッピーハロウィン」

霊能力者「なっ」

助手「年を跨いでメリークリスマスをしてる訳でもありませんし。この程度は時事ネタとしてもロスタイムの範疇内ですよ」

霊能力者「……いいのか?俺はハッピーハロウィンをしても」

助手「ええ。ハロウィンメインの単発スレでもありませんし」

霊能力者「……コホン。それでは、」

組長「みんなもハッピーハロウィン♪」

霊能力者「お前が言うのかよ!」

第3破ァッ! 終わり

今後時事ネタはしません

第4破ァッ!「怨念」

─事務所─

「……」

女の子「あ、あの〜……」

霊能力者「お前に色々と言いたい事がある。だが先に確認しておきたい事がある」

助手「よろしいですか」

霊能力者「ああ」

助手「……“パトリック=ピース”25歳。職業は芸能事務所のマネージャーで、既婚。イタリアの片田舎出身ではありますが、半年後に娘が産まれる予定なのでそのついでに帰化予定。高校時代はD先生と同じ部活に入っており後輩でした」

霊能力者「で、部活内では“P”。その特異な出生から周りからは“小屋生まれのP”と呼ばれ、当時の霊媒部の中でも一目置かれる実力者……。だったよなぁ」

P「……はい」

霊能力者「なーんでそんなお前がウチに“丸投げ”の依頼しに来てんだ?」

P「えーっと、それは……」

霊能力者「それに、マネージャーのくせに名前が“P”とかややこしいにも程があるわっ!」

助手「普通Pならばプロデューサーだとおもうのですが」

P「そんな事言われても」

女の子「ま、マネージャーを責めないであげて下さい!この人は一応プロデューサー業もしてますし、他にも事務や会計、清掃業も1人でしてるんですよ!」

霊能力者「他に誰か人雇えよ」

女の子「あ、私“春風 マミア”って言います!アイドルやらせて貰ってます!これ今度出すCDなんですけど是非聴いて下さい!」

霊能力者「お、おう」

助手「強引に話題を変えましたね」

霊能力者「お前は依頼と営業どっちをしにきたんだ」

マミア「どっちもです!」

霊能力者「……逞しいなぁ」

助手「サラッと名前が固有名詞になってますね」

マミア「一応今後も出番がある予定ですので!」

霊能力者「マジかよ」

せめてさ以前のスレに報告しなよ
打ちきりかどうかさ
待ってる人もいるんじゃないの?

>>77
ご指摘ありがとうございました
打ち切りという形ですが前スレを完結させましたので今後はここで続けます

P「あの……」

霊能力者「……なに」

P「いえ、先輩の仰る通りで……。本来なら自分で解決すべきことなのは分かっているのですが」

霊能力者「いや、もうそれはいいよ。なんとなーくだけど、お前が解決出来なかった問題の目処はたってる」

P「本当ですか!?」

霊能力者「仕事にしてるしな。それにさっきのもあくまでも体裁と建前のポーズだ。先に言ってた事実を作っとかないとうるさい外野にこの件がバレた際に俺までネチネチ言われるわ」

P「……すいません。そこまで思慮が至りませんでした」

霊能力者「気にすんな。お前の“アレ”は強力な分融通が効かないからさ、こんな事があるのも仕方がない」

助手「……通りで今日は出てこないと思っていましたが何かトラブルでも?」

P「ええ……。実はこの件がショックで引きこもってしまったみたいで」

助手「……」グッ

霊能力者「そこガッツポーズしない。じゃ、詳しい話でも聞こうか」

P「はい。では彼女から……」

マミア「あの!何処からお話をすれば」

霊能力者「まあ、関係ありそうな事は全部。足りない部分は質問するから」

マミア「は、はい!」

助手「先生、録音はされなくてもよろしいのですか?」

霊能力者「あっ、この手の依頼は久しぶりだから忘れてた。会話の録音とか大丈夫か?」

マミア「えっと、どうなんでしょうか!」

P「あまりこういうのはOK出してはいけないんだけど……。先輩を信用します」

霊能力者「まあ、1回リピートした後にその場で即削除するからその手の心配は要らんぞ」

助手「電波を飛ばさないオンボロ機なので二重に安心です」

P「……ではお願いします」

霊能力者「はいよ、任された。じゃあよろしく」

マミア「では──、」

えっと、さっきも言いましたけど私アイドルをしてまして!

デビューまだ半年なんですがは、運がいいことに割と順調に活動させてもらってます

えっ、本当ですか!?

偶然でも覚えて頂けて嬉しいです!

実はアレが初めてのTV出演だったんですよ!

どうでしたか私の“死体役”!!

あっ、すいません……!

つい嬉しくて……、えへへっ

あっ、それですね、ここ1ヶ月ぐらいなんですよ

不思議?というか、不自然な事が身の回りで起き始めたのが

最初はほんの些細なことだったんですよ

その日の前日に新しい楽曲の歌詞を覚えようと思ったら寝落ちしちゃって……

それでその日は少し予定よりも遅く起きちゃったんです

まだ遅刻をするような時間ではありませんが、大急ぎで支度をして玄関に向かったら派手にコケちゃって

あ、コケたことは関係ありませんよ

……実は私結構ドジで

そうなんですよ!

こないだもうっかりラジオの台本と教科書を間違えちゃって……、ってこの話は関係ありませんね!

……どこまで話ましたっけ

あ、コケたところですね

はい、それでコケた先にあった私のブーツを見たら2足とも“靴紐の真ん中部分を一直線に切られていた”んですよ!

ですよね!?

私もすっごく驚いちゃって

ドジもここまで来たかなって最初は能天気に思っていたんですけど

でも、これが始まりだったんです

とは言っても先週のライブまではあくまでも何かドジをしちゃったらがドジが追加される程度だっんですけど

えーとっ、例えば砂糖とお塩間違えちゃったら直後にレンジがボンッみたいな

まあ、思うところはありましたけど、基本被害は私だけだったので

ただ、こないだのライブでその……

……少し振り付けを間違えたんですけど、その際に照明が落ちてきて…少し

私は怪我をしなかったんですけど隣にいた子が怪我をしちゃって……

幸いちょっとした切り傷で済んだんですけど、もうこれは不味いなって

このまま放っておいたら私以外にも傷つく人が出ると思ってマネージャーさんに相談して今に至ります

ざっとこんな感じですけど……

ピッ

霊能力者「なるほど、ねー」

助手「聞いている限りでは最初から既に不味い気がしたのですが」

マミア「えっと、一応は私だけの被害でしたので!一人暮しですし」

霊能力者「ふーん。で、相談したPでもどうにもならずにここか」

P「不甲斐ないです……」

霊能力者「じゃ、質問。つっても1つだけだけど」

マミア「は、はい」

霊能力者「ここ半年以内にどっかの神社に行ったりした?」

マミア「行きました!」

霊能力者「よろしい。助手、」

助手「はい」

霊能力者「首筋辺り」

助手「畏まりました」シュバッ

マミア「ひゃんっ!?」

P「ちょっ!?」

霊能力者「あった?」

助手「一瞬ではありましたが、“呪印”らしきモノが見えました」

霊能力者「ふーん。なら確定か」

マミア「何か聞き捨てならぬなワードが」

霊能力者「単刀直入に言います」

マミア「はい」

霊能力者「あなたは今なにかしらのツヨーイ怨念に呪われてます」

マミア「はい、は……、うぇっ!?」

助手「それもかなり高度でインチキにでも頼んだら最後、死ぬようなものですね」

マミア「」

P「先輩それは本当ですか!?」

霊能力者「嘘言うわけないだろ」

助手「まあ、何もしなければ現状維持で済みますが」

マミア「……」

霊能力者「さて、録音はもう要らねーか。助手ー」

助手「はい」ぽいっ

スパパパンッ

ゴトトッ...

マミア「!?」

霊能力者「これで録音データは削除っと。さて、」

マミア「あ、あの!今漫画みたいな光景がっ」

霊能力者「スルーしろ」

助手「聞かないことがいい事もありますよ?」

ぽんっ...

マミア「……はい」

霊能力者「さて、順を追って説明しよう。まず1つ目、Pがこの件で役立たずの理由だが」

P「……僕の“守護霊”さんでは反応できませんね。“呪(まじな)い”には」

霊能力者「さすがにそれは分かるか。お前が抱え込んでいるスタンドもどきは形の無いものには干渉出来ない仕様だからな。だから存在認知すら出来ない」

助手「それ以外が万能薬過ぎる故の弱点でしょうね」

マミア「守護霊、ですか?」

霊能力者「なんだお前、教えてないのか」

P「……現在見せられないものをどう説明しろと」

霊能力者「何度も済まんが助手ー」

助手「……」

霊能力者「……手くらいは繋いでやる」

助手「分かりました」

ビュッ!

マミア「なぁっ!?」

ブオン...

ガシィッ!

P「随分強引ですね……」

霊能力者「そうでもしないと出てこないだろ」

マミア「か、刀が急に出てきたのもビックリですけど!マネージャーさんの背中から光腕がはえてますよ!?」

P「今は腕しか出てきてくれないけどこれが僕の守護霊だ」

マミア「普通の人じゃないとは思ってましたけど、本当にそうじゃなかったんですね……」

霊能力者「実はキミも少し違うみたいだげど」

マミア「ふぇ?」

助手「今は随分と弱々しいですね。このまま腕を叩き切っても」

霊能力者「ダメだ」

助手「分かりました」スッ

霊能力者「一応コイツにもそれっぽい力があるのは把握して貰えたかな」

マミア「は、はい」

霊能力者「で、今お前さんが迷惑しているそれはさっきも言ったが“怨念”と呼ばれるもので、実態がないから物理的な対処は出来ない」

P「……改めてそっちの道に進まなくて良かったと思います」

霊能力者「しょぼくてもオールマイティじゃないとやってられんよ」

マミア「あの!」

霊能力者「なに?」

マミア「さっき神社に言ったことを聞かれましたが、それと怨念って関係あるんですか?」

霊能力者「大ありさ。じゃ、2つ目ね」

助手「先生、周辺の神社のリストです」

サッ

霊能力者「さんきゅー。……ふむ、××神社かな、行ったのは」

マミア「凄い!そこです、私が行ったの!」

霊能力者「まあ、県内だけならここぐらいだもんなぁ有名な勉学技能とかに御利益あるとこ」

マミア「2ヶ月前にそこにお参りしてきました!」

霊能力者「そうかそうか。おめでとう、そこで呪いの御加護を頂いてます」

マミア「」

助手「稀によくある事ですね」

霊能力者「つっても別にその神社だけのせいでもないけどな。あくまできっかけがそこって話だけど」

P「でもどうして神社で……」

霊能力者「後で触れようかと思ったんだけどさ、一応ちゃんとした御加護も受けてるよ」

マミア「それって」

霊能力者「おめっとさん。ドジの方が先行して気づかなかったみたいだけど、最近仕事の調子わりといいでしょ?」

マミア「……言われてみれば!本当に効果があるんですね♪」

霊能力者「あくまでもそっちの方で運気が上がる程度だけどね」

助手「呪われる事も珍しいですが、御利益を授かれるのも珍しいことです」

P「……なんと言っていいのか」

霊能力者「まあ、どっちかと言えば現状だと怨念のほうが強い分有難み薄いよな」

マミア「ですよねー」

霊能力者「まあ、ガッツリ御加護のってる証拠にさっきPの背中の腕見えたろ?」

マミア「すっごく光ってました!」

霊能力者「この道に通じてるやつ以外は基本的には見えないんだよ、アレ」

マミア「へぇ〜」

霊能力者「で、ついでに呪われてるから腕までハッキリ見える」

マミア「うへぇ……」

霊能力者「さて、話しを戻そう。お前さんは運良く神社で御利益も授かったが、ついでに呪いのもゲットした。その理由は実に単純で誰かの怨念とお前の願いが神社という場所で一致したからだ」

マミア「願い?」

霊能力者「神社でなんて願ってた?」

マミア「トップアイドルになりたい!です!!」

霊能力者「だろうね。だからなれなかった人の怨念が取り付いたよ。御加護に便する形でね」

マミア「」

助手「感情の起伏が忙しい子ですね」

P「そこが彼女のいい所なんだけどね」

霊能力者「さて、これが最後で3つ目。この怨念はちょー強い。まだ確認は出来ていないけど、話しを聞いているだけでも干渉力の高さは分かる。でも問題はそこじゃない」

マミア「……」ゴクリ

霊能力者「御加護に便乗してるせいであるじょうけんの」

>>93 誤送信

霊能力者「さて、これが最後で3つ目。この怨念はちょー強い。まだ確認は出来ていないけど、話しを聞いているだけでも干渉力の高さは分かる。でも問題はそこじゃない」

マミア「……」ゴクリ

霊能力者「御加護に便乗してるせいで推測段階だが、ある条件を満たすととんでもない威力のある呪いになる」

マミア「それは……、」

霊能力者「ドジだ」

マミア「ですよね」

霊能力者「それも規模が大きくなればなるほど大きくなる」

マミア「ぐ、具体的には」

霊能力者「もしドームでライブをしてる最中にドジったらドームが物理的に崩壊する」

マミア「」

霊能力者「あくまでも予想だけどね」

P「本当にそんな強力な怨念が?」

霊能力者「御加護に便乗してるからな。寧ろさっきのシチュエーションだとこれで済めばマシな方の可能性がたかい」

助手「アイドルのドジで地域がヤバい、ですね」

マミア「あ、あはは……」

霊能力者「だから下手に手を出すと俺も死ぬしお前さんも死ぬ。でも放っておいてもその内どっかで重大なドジをやらかして場合も死ぬ」

マミア「……」

霊能力者「寺に行ったら間違いなく“もう助からない”って言われるかもな」

助手「困りましたね」

P「……」

マミア「あの、私はどうすればいいでんすか……?人に迷惑をかける前にどこかで死んだ方がいいですか?」ぎゅうっ...

霊能力者「いや、なんでそんな話になってんの」

マミア「だって……!」

霊能力者「依頼はすればいいじゃん、俺に。“祓って下さい”って」

マミア「でも、下手したらあなたも死ぬって!」

霊能力者「成功させればいいだけの話だろ」

P「先輩……」

霊能力者「まさか忘れたのか?俺は寺生まれの“D”。除霊を職業にしてる霊能力者だぜ」

──────
────
──

霊能力者「って啖呵を切ったのはいいんだけども」

助手「この仕事を受けられのですか?」

霊能力者「頼まれたかね。仕方がない」

助手「そうですか」

霊能力者「なんとかするしかあるまいよ」

助手「分かりました」

霊能力者「つかそれよりも別に気になってることがあってな」

助手「なんでしょうか」

霊能力者「今すぐにあいつが務めてるプロダクションの情報調べておいてくれない?規模とか活動とか、会計とか」

助手「畏まりました」

霊能力者「たのむよー」

助手「それでは」

ぱたぱた...

バタンッ

霊能力者「軽いノリで始めたのにここまでヤバいヤツにぶち当たるとはなぁ」

ぽよんぽよん

ぷよんっ

「……」うにうに

霊能力者「……うーむ。コイツが気を使ってうにうにされにくるとは。相当アレな顔をしてるのか、俺は」

「……」ぷよーん

霊能力者「どうしたもんか」

「……」ぽよよん

霊能力者「相変わらず何かを言いたがってるのは分かるが、それを読み取れないな」

「……」ぱるんっ

霊能力者「なぜ分裂した……。あっ!?」

「……」うにうに

霊能力者「……おーけー。あっという間に策が出来上がった」

「……」

霊能力者「早速準備に取り掛かるか。助かったよ“うねうね”」

うねうね「……」ぽよん

※うねうね

前スレの 第2破ァッ!「くねくね」 で連れて帰った“くねくね”のこと
その内こっちのスレでもリメイク予定です

─ライブ会場─

霊能力者「あれから3週間経ちましたっと。悪いね、連絡から2週間後に無理やりやらせちゃって」

P「いえ、元からライブの予定は入ってたので。予定だった会場とも距離が離れてないので返金等も特にありませんでしたし」

霊能力者「それならよかった」

マミア「あの!」

霊能力者「あい」

マミア「ほ、本当にこんな大きな箱でやるんですか!?」

霊能力者「比較対象がいつもの小さな地下ステージだからつってもさ、ここもそんな大きくねーぞ」

マミア「それに使用料もタダって……」

霊能力者「お礼ならここの管理人に
言ってね」

組長「若い奴にお嬢ちゃんのファンがいたしな。半壊でもさせん限りは好きに使ってくれ」にっ

マミア「はひっ!」

助手「いつ見ても威圧感が溢れ出る笑顔ですね」

組長「仕事なもんでな。んじゃ、俺はここでおいとまするから後はご自由に」

霊能力者「任されました」

マミア「あ、ありがとうございました!!」

組長「がんばれよー」フリフリ

バタンッ

霊能力者「んじゃ、今日の除霊スケジュールに関してもう一度おさらいね」

助手「細部につきましてはお手元の資料を」

霊能力者「ざっくりと手順だけ確認な」

①普通にライブします

②どっかでミスったら多分怨念発動するので用意した“写身式神”に移します

③そのまま流れで除霊します

霊能力者「っと、こんな感じだな」

マミア「私のドジが大前提なんですね」

霊能力者「あったりまえよ。“ドジかわアイドル”がドジしないなんてミスはないだろうしな」

マミア「好きでドジってる訳じゃありませんよ!?」

霊能力者「まあ、今回はわざとやられても困るんだがな」

助手「いつも通りに全力でやってドジをして下さい」

マミア「なんか釈然としない!」

霊能力者「ま、今回はサポートとして助手がバックダンサーとしてさんがするから細かいことは気にせず頑張ってね」

助手「……」ぺこり

マミア「よ、よろしくお願いします!」ぺこりっ!

P「今回は事前にサプライズ演出があると通知している。恐らく式神に写しても大人しく除霊はされない。大変だと思うが、可能な限り臨機応変に演じてくれ」

マミア「あくまでも“演出”ってことですよね」

P「ああ」

霊能力者「さてと!そんじゃ後は成り行きに任せていきましょ」

マミア「はいっ」

P「それでは2人は控え室の方に」

助手「お先に失礼します」

マミア「失礼します!」

バタンッ

P「さて、こちらも……」

霊能力者「ちょっと待った」

P「?」

霊能力者「報酬の件だが」

P「大丈夫ですよ。弱小事務所ですが、100万ぐらいなら経費で出せますから」

霊能力者「ホントかぁ?」

P「……前払いが少なかったですか?」

霊能力者「そーじゃなくて、経費の部分」

P「!」

霊能力者「悪いがお前のポケットマネーからなら俺は受け取らねーし、回れ右で帰るぞ」

P「……なぜ、そう思ったんですか?」

霊能力者「お前の嫁さん“E”からさ“マミアちゃんの事を何としても頼む”って聞いてさ。ちょいとカマかけたら直ぐにゲロっちったよ」

P「……」

霊能力者「こっちでお前んとこの事務所の経営調べたらあんなヒヨっ子アイドルにぽんと100万も出せる能力があると思えなくてな。悪いが勝手にいろいろと調べさせて貰ったよ」

P「お願いです!報酬が足りないならもっと出しますっ!だから、」

霊能力者「そっちの事情は分かってるよ。家族ぐるみであの娘の世話してやってるのも知ってるし、あの報酬がお前ら2人の貯金から出てることもだ」

P「……」

霊能力者「でだ、既に振り込まれちった頭金20万は一応貰うからさ」

ガサゴソ

霊能力者「残りの80万はこないだお前らか置いて帰ったこの4枚のサイン入りCDにしろ」

P「あの、そのCDにそんな価値は」

霊能力者「だからお前がこのCDの価値を上げるんだよ、全力でな」

P「……」

霊能力者「期限は特に設けねーからよ」

P「……そう言えば先輩ってブラック・ジャック好きでしたよね」

霊能力者「うっせ。人の好意は黙って受け取れ。じゃなきゃ帰る」

P「分かりました。では今回はお言葉に甘えさせて頂きます」

霊能力者「物分りが良くてよろしい。では行こうか」

P「はい」

─控え室─

マミア「ほわー……。やっぱり凄いですね……」

助手「衣装の着方に問題ありましたか?」

マミア「いえ!そういう訳じゃなくて、助手さんはやっぱり凄いなぁと」

助手「凄い、ですか」

マミア「そうですよ!初めて事務所にお邪魔した時から思ってましたけど、モデル顔負けの抜群のスタイルに加えて大人の女性という雰囲気の中にある可愛らしさ、本来なら私たちの立場は逆ですよ!」

助手「はあ、」

マミア「知らない人が見たら助手さんがメインにしか見えません!」

助手「……なるほど。それはいけませんね」

マミア「あ、いえ、そーいう事ではなくてっ!?」

助手「ならこうしましょう」しゅる...

マミア「!?」

ポンッ

助手(中)「一般的な女子高生の体にしました。これなら問題はないかと」

マミア「……どこからツッコンでよいのやら!?」

助手「もう少し抑えた方が良いのでしょうか?」

マミア「いや、そーいう問題じゃないですよ!?その前からです!」

助手「前?」

マミア「そーですよ!こう、しゅるっとなってポンッですよ!」

助手「しゅるっとなってポンッ?ですか」

マミア「……流石は霊能力事務所。生きてる世界が違います!!」

助手「?」

マミア「いえ、もう大丈夫です。本番前なので無理矢理飲み込みましたっ!問題解決です」

助手「大丈夫なら構いませんが」

マミア「……世界は本当に広いです」

助手「?まあ、歩ける距離ではありませんね」

マミア「もう深く考るのはやめます!」

助手「そうですね。負の感情を抱えているとそれだけで生存率を下げることになりますから」

マミア「せ、生存率……」

助手「大丈夫ですよ。貴女が自分の本分に集中して頑張れば頑張るほど生存率は上がります。ライブの成功=除霊の成功をお忘れなく」

マミア「!」

助手「私も最大限サポートしますので」

マミア「……あの、私は頑張って自分が持てる最大限で歌って踊りますので、改めてよろしくお願いします!」

すっ

助手「はい。こちらこそ」

がしっ

マミア「えへへっ……」

助手「……その様子なら大丈夫ですね。それでは時間も近いですので行きましょう」

マミア「はいっ!」

─客席─

ざわざわ

「マミアちゃんもこんな所で歌えるようになるなんてなぁ」

「ファンクラブも気付けば3桁っすよ。このペースならメジャーデビューも夢じゃなくなってきてるっすよ」

「ううっ……。やっぱりワイの目に狂いはなかったんや」

「頑張れよー!マミアちゃーん!!」

ドンッ

「うっ」

「あっ、すいません!大丈夫ですか、お姉さん」

「いや済まない。こちらこそ不注意していた」スタスタ

「……女性ファンっすかね」

「この段階で女性ファンとは。やはりマミアちゃんはトップアイドルの才能があるな」

スタスタ...

「……以前よりもかなり人が多いな」

霊能力者「よう、やっぱり来てたか“E”」

E「当たり前だ。あの娘にもしもがあったら困るからな」

霊能力者「随分とまあ過保護なもんで」

E「ふんっ」

霊能力者「つか相変わらずグラサンなのな。こんなに暗かったら見えなくねーか」

E「心配は無用だ。内側からは見える仕様になってる」

霊能力者「なるほど」

E「そんなことよりお前はここにいていいのか。Pから内容は聞いているが」

霊能力者「会場の最終チェックをしてるだけだ。すぐ舞台袖にもどるさ」

E「そうか……」

霊能力者「……」

E「なあ、」

霊能力者「大丈夫だって。俺に任せとけっての」

E「いや、お前だから」

霊能力者「それに今回な助手がバックダンサーにいる」

E「それなら安心だ」

霊能力者「おい」

E「……頼むぞ」

霊能力者「へいへい。任せときんしゃい」

E「もしあの娘に何かあったら死ぬまでお前の眼を睨んでやる」

かちゃっ

霊能力者「おー怖い。全力でやる所存であります」

E「ならさっさと行け」

霊能力者「へいへーい」

たったったっ......

E「……」

ぎゅうっ

─舞台袖─

マミア「すごい……。チケットは全部捌けてたというのは聞いてましたけど」

霊能力者「まっ、御加護ブーストもありゃこんぐらいは屁でもねーさ」

マミア「霊能力者さん!」

霊能力者「Eの奴も来てたしな」

マミア「E……、あっ、エリカさんですか!?」

霊能力者「おうよ」

助手「Eさんがいるなら安心ですね」

霊能力者「こっちとはしては想定外だったが、万が一客席の方になんかあった時の保険が出来て助かるわ」

マミア「もしかしてエリカさんも霊能力者なんですか?」

霊能力者「うーん……。まあ、それに近いと言えば近いような」

マミア「?」

助手「彼女は“邪視”ですからね」

マミア「じゃし?」

霊能力者「ざっくり言えば目が合ったヤツを呪える力を持ってるヤツのことだ」

マミア「」

助手「個人差はありますが、彼女の場合は霊にもそれを適用できる程強力な力です」

マミア「あっ、だから濃いめのサングラスを常に掛けてたんだ」

霊能力者「ある程度コントロール出来るようにアイツはなってるが不意に発動する可能性もあるしな」

マミア「へー……。意外と霊能力者って身近にいるんですね」

助手「それは偶然かと」

霊能力者「つかよく見たらお前それは」

助手「私が目立つとマズいと思いまして」

霊能力者「あのなぁ……」

マミア「助手さんって凄いですね!」

霊能力者「……まあいいか」

とっとっとっ、

P「そろそろ時間だからみんな持ち場に着いて下さい」

マミア「はい!」

霊能力者「おっと、その前に」

スッ

マミア「これは?」

霊能力者「今回使う“写身式神”だ。これの真ん中ら辺に指でもなんでもいいから、お前のサインを残せ。それで写身の準備が完了する」

マミア「こうですか?」

サラサラッ

霊能力者「……うん、おーけー。じゃ、行ってきな」

P「マミア!確かに今回は除霊の為のライブかもしれないが……」

マミア「大丈夫ですよ、Pさん!」

P「!」

マミア「私はファンのみんなを笑顔にする為に歌います!そしてついでに除霊しちゃいますからっ」グッ

P「よし、なら最高のライブにしてこい!」

マミア「はいっ!」

タッタッタッ......

助手「……」ぺこり

スタスタ...

霊能力者「なーんか一見そんな風には見えんけど、やっぱアイドルはアイドルなのな」

P「マミアはこんな所で満足できる様な逸材ではありませんから」

霊能力者「なるほどねぇ。お前ら2人が入れ込むわけだ」

P「さて、我々も持ち場へ行きましょう」

霊能力者「ああ」

─ステージ裏─

スタッフ「マミアさーん!準備が出来ましたー」

マミア「はい!」

助手「……」

マミア「緊張してます?」

助手「いえ、久しぶりにこのサイズになったのでコントロールの微調整をしていました」

マミア「なるほど。流石は助手さん」

こきりっ

助手「あっ」

マミア「どうかしました?」

助手「いえ、あばら骨が2本外れました」

マミア「!?」

モゾッ

こきゅ

助手「これでよしですね」

マミア「ワースゴイナー」

助手「さて、私の準備は出来ました。後はあなたのお好きなタイミングで行ってください」

マミア「わかりました!では勢いそのままに、このままいっちゃいましょう!」

助手「畏まりました」

マミア「では行きますよ!」

がしっ

助手「!」

マミア「ごー!」

タッ!

助手「おー」

─スタッフルーム─

P「っと、また合図も無しにステージに行っちゃったか」

カチッ

バッ

『あっ、あー、マイクテース!聞こえてますかー!』

おおおおおおおおお!!

P「よし、今日もギリギリセーフ」

霊能力者「おい、リハーサルと全然違うじゃねーか」

P「いつもの事です」

霊能力者「いつもの事で済ませていいのことなのか。これ」

P「まあ、今はできるだけのびのびさせてあげたいですから」

霊能力者「ふーん。そんなもんかね」

『急に会場変わったけど、みんな来てくれてありがとー!』

わあああああああ!

霊能力者「しっかしまあ。そこまで大きくないとはいえ、この人数にしてはエラい熱気があるな」

P「あの娘のキャラにみんな連られてしまいますからね。元気のいいファンが多いんですよ」

『やっほーい!』

やっほぉぉぉおい!!

霊能力者「にしても、歌いもしない内から飛ばしすぎじゃねーか?」

P「ほぼ全てのライブで終わりごろにはマミアもファンもみんな疲れ果ててます」

霊能力者「元気が良すぎるのも考えものだな」

『あっ、忘れてた!今日はスペシャルなサポートとして私のお友だちが来てます!と、いうより横に立ってる彼女です』

『寺田メリーです。本日は宜しく御願いします』ぺこり

わあああああああ!

『みんなありがとー!今日は2人でがんばりまーすっ!』

わあああああああ!

霊能力者「……あいつ昔の体にしてんのにノリは最近のままか」

P「まあ、アイドルとしてなら昔の彼女の方がキャラ的にあってますね」

霊能力者「こっちとしては昔と今の間ぐらいがちょうどいいんだがなぁ」

P「言ったらしてくれるんじゃないんですか?」

霊能力者「ロボットだったら迷わずそうしてるわ」

『今日はガッツリ歌いますので、挨拶はこの辺にして早速1曲目いきますよ!』

うおおおおぉ!!

『では本日の1曲目で“トワイライト”』

♪〜

『鉄塔の──♪』

霊能力者「おい、ライブの1曲目からカバー曲歌うアイドルなんて聞いたことねーぞ!」

P「持ち歌が少ないのでどうしてもカバーで埋めないといけなくて……」

霊能力者「いやそうじゃねぇだろ!せめて1曲目はオリジナル持ってこいよ!?」

『胸のポケットに──♪』

P「……確かに」

霊能力者「なにやってんだ……」

P「でもですね」

霊能力者「なんだよ」

『君の出番だよ〜♪』

きみのでばんだよぉぉぉぉおおお!

P「意外とウケが良いんですよね」

霊能力者「それはそれでどうなんだ……?」

P「まあ、これもマミアのウリの1つですから」

霊能力者「メジャーデビューしたら出来ねーじゃねぇか」

P「その頃には持ち歌だけでライブが出来ますよ」

霊能力者「……そうかい」

『♪〜』

霊能力者「まあ、この際カバーは置いとく。でだ、この曲選はなんだよ。どう考えてもアイドルがライブで歌う曲じゃねーだろ」

P「基本的には彼女に選ばせてますので」

霊能力者「えっ。これアイツの選曲なのか」

P「ええ」

霊能力者「……リスト見せろ」

P「どうぞ」

ぺラッ

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